線型代数と表現論・圏論

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Twitter で保型表現と Galois 表現という PDF を見かけた.
中身は数論なのだが, その中で表現論や圏論,
線型代数に関する部分が面白かったのでそこだけメモしておきたい.
数論部分については分からないので, 触れない.

長くなるが, 個人的に面白いと思った部分を引用しておこう.
面倒になったので引用しないが,
3.2 節にも線型代数と表現論ということで大事な記述がある.
興味のある向きはそちらも参照されたい.

より現代的な視点からは, 表現論の重要性は何と言っても理論の線形化にある.
ブルバキはかなり早くから線形代数の重要性を強調したが, もちろん,
必ず体系的に解ける唯一の問題としての連立一次方程式, すなわち完全に信頼できる方法論としての
線形代数の強みは周知の通りであろうから, ここでは圏論的な視点を強調しておく.
線形代数 (体 $K$ 上の有限次元ベクトル空間の理論) は, 代数的構造の見通しのよい理解と操作のひな型となった.
圏論の方法は, ここの数学的対象 (集合とその元) を直接分析するよりも, それらの間の相互関係,
つまり構造射の集合を理解しようとする.
共通の構造を持った対象の全体 (圏) という文脈の中に置くことによって,
個々の対象の役割, ひいては本質がよく見える, という考え方である.
古典的な数学的結果も, それが対象の具体的な表示の仕方に依存しない結果であれば,
圏の性質, あるいは圏と圏の間の関手の性質として表現することができる.

体 $K$ を固定し, $K$ 上のあらゆる有限次元ベクトル空間のなす圏を $(\mathrm{Vect}/K)$ で表すことにしよう.
圏 $(\mathrm{Vect}/K)$ の対象は $K$ 上の有限次元ベクトル空間であり, それらの間の射 (構造射) は $K$ 線形写像である.
この圏の対象の同型類は, 次元という自然数の不変量で完全に決まる.
つまり, 同型類の集合から自然数の集合 $N$ (0 を含む) への全単射がある.
各 $n \in N$ に対して $K^n$ (数ベクトル空間) という具体的な対象を構成でき,
これらの対象への同型を決める (基底を選ぶ) ことで任意の対象・射の具体的な表示が得られる.
対象 $V$ から $W$ への集合は加法群の構造を持ち,
部分対象・商対象・核・像・余核・余像・準同型定理・直和・完全系列が定式化できる Abel 圏になる.
さらに任意の短完全系列は分解し, 実際あらゆる対象は 1 次元の対象の有限個の直和に分解される (半単純性) .
$K$ が代数的閉体ならば, 自己準同型射も直和分解 (対角化) されたものと簡単なベキ零元の和に書ける (標準形) .
さらに内部テンソル積・内部 Hom ・双対対象が定義されるのでテンソル圏, とくに淡中圏になっている.
これらの操作 ($\otimes$, $\otimes$, Hom, *) の他に, 対称積 $\mathrm{Sym}^n$ ・外積 $\wedge$ など,
対象から新しい対象を構成する標準的な操作がいくつか定義できる
(強いて言えば, 対称群 $S_n$ の各表現に対応するベキ等元に応じて作られる) .
各対象 $V$ の自己同型群は一般線形群 $GL (V)$ であり, さらに各対象に最高次形式 $\wedge^{\mathrm{dim} V} V \cong K$
(行列式) ・内積・交代形式・エルミート形式などの付加構造を定義した圏を定義することもでき,
それらの圏での自己同型群は特殊線形群・直交群・斜交群・ユニタリ群などの古典群になる.
だいたいこの程度が, 数学科で学ぶ線形代数の全体であり, これで l $(\mathrm{Vect}/K)$ は完全に理解されたと感じられる.
つまり, これ以上 $(\mathrm{Vect}/K)$ に関して解かれるべき問題はないようだ (これは驚くべきことかもしれない) .
この $(\mathrm{Vect}/K)$ の理論 (線形代数) の, 数学を記述する方法論としての威力は絶大であった.
幾何学では位相空間や多様体の圏から $(\mathrm{Vect}/K)$ への関手 (コホモロジー理論) がいくつもの深い結果をもたらし,
空間上の関数の貼り合わせ (局所・大域原理) やベクトルバンドルの理論は,
開集合の圏から $(\mathrm{Vect}/K)$ への関手 (層) として記述され,
微分形式や多様体上の調和解析 (Hodge 理論) などの理論が見通しよく理解された.

さて, われわれのテーマの視点からは, $(\mathrm{Vect}/K)$ とは, 自明な群 $G = {1}$ の
有限次元表現のなす圏に他ならない.
その意味では, 表現論とは線形代数の一般化である.
表現論が, 数学的理論を記述し理解するための言語として機能する所以がここにある.
一般に, 群 $G$ の, 体 $K$ 上の有限次元ベクトル空間への表現, すなわち $G$ の作用が定義された $( \mathrm{Vect} / K )$ の
対象のなす圏を $(G-\mathrm{Rep}/K)$ と表そう.
この圏の射は, $G$ の作用と整合的な $K$ 線形写像 (表現の間の準同型写像) である.
繰り返すが, 自明な群は自明にしか作用できないから, 自然に圏同値
$({1}-\mathrm{Rep}/K) \cong \mathrm{Vect}/K)$ がある.
そして, $G$ が有限群で $K$ が標数 0 の代数的閉体の場合, 上に素描した
$\mathrm{Vect}/K$ の理論がほぼそのまま $(G – \mathrm{Rep}/K)$ の理論に一般化される, というのが, 有限群の表現論の基礎である.
とくに, 0 と自分自身以外に部分対象を持たない既約な対象 (既約表現) が
既約指標 (共役類の集合の上の関数の空間の直交基底をなす) によって分類され,
任意の対象は既約対象の直和に分解すること (半単純性, あるいは完全可約性) が基本定理になる.
既約な対象はもはや 1 次元とは限らないが, その自己準同型は $\mathrm{Vect}/K)$ の既約対象
(1 次元ベクトル空間) と同じく定数倍のみである (Schur の補題) .
しかし, この $\mathrm{Vect}/K)$ から $(G-\mathrm{Rep}/K)$ への一般化によって, 理論の構造的な操作に新たな自由度が加わる.
すなわち, 群 $G$ を変えるという自由度である.
群準同型 $f : G \to H$ が与えられると, $H$ の表現は $f$ で引き戻すことで自然に $G$ の表現になるから,
Abel 圏の間の加法的関手 $f^* : (H-\mathrm{Rep}/K) \to (G-\mathrm{Rep}/K)$ ができる.
とくに $G$ が $H$ の部分群で $f$ が包含写像の場合は $f^*$ は表現の制限 $\mathrm{Res}^H_G$ であり,
その左随伴関手は表現の誘導 $\mathrm{Ind}^H_G$ である (Frobenius 相互律) .
単に一つ一つの準同型 $f$ による引き戻しを考えるだけでなく, あらゆる準同型 $f$, さらには剰余群 $G/H$,
直積群 $G \times H$ など群の圏におけるあらゆる操作に付随して,
異なる圏$(G-\mathrm{Rep}/K)$ たちの間の関手を考えることができる.
このようにして, 群の理論が線形化される, すなわち線形代数の言語で記述される,
いや線形代数という理論そのものの一般化として理解される.
これが表現論の考え方である.
理論のパースペクティブがより高次になっているという意味で, 表現論は群論に従属するものではなく,
群論を発展させた理論であるという面がある.
これから, 表現論による理論の記述の強みを解説していきたいが, その前にわれわれの興味 (代数的整数論) に
沿った具体的な対象を導入していくことにしよう.

追記

kyon_math さんから次のようなご指摘を頂いた.
触れたことがない正標数の話なので正直全く勘が働かなくて分からないが,
他の方には即参考になる可能性もあるのでメモしておく.
ちなみにこれこれ.

@phasetr K が代数閉体でない場合でも, 半単純元と冪零元は定義できてジョルダン分解が成り立ちますね.

@kyon_math @phasetr 群の表現の既約分解については, 有限群であることを仮定した方がいいかも.
有限群の場合, 表現の既約分解は代数閉よりも標数の制約の方が大きい (マシュケの定理).
代数閉でも標数が正だとその表現論は難しい. (still in progress)

あと Maschke の定理はこれ.
恐るべし正標数.

2013/02/02 追記
kyon_math さんからさらに教えて頂いた.
あとで読もう.

@phasetr ああ, 吉田さんのだったんですね.
吉田さん, かなりぶっ飛んでるからなぁ (もちろんいい意味で)
駒場中高等部向けのガロア理論の講義録も見っけた. http://bit.ly/XsPy0U
あわせてガロア理論の基本定理について http://bit.ly/Xcw2E5


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