Twitter まとめ:微分積分と線型代数からの突然の幾何学と解析力学

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「自然な~」「自然に~が定義できる」というのは本などでよく見かける言葉だが,
初学の段階では何がどう自然なのか全く分からないこともよくあり, 大変腹立たしい.
今回, ここ で「自然な直交座標」というので悩む若人がいたので,
図々しくも老人が出しゃばった話をまとめたい.
今見たら流れを把握せずに変なことを言っている部分があったので猛省している.

自然な直交座標っていうけど逆に不自然な直交座標ってなに? 私の発想力じゃ思いつかん

@dream_taro 正規じゃない場合とか?

@zomi1202 あー, なるほど. でもそれだったら正規直交座標って書いてくれればいいのにね

@dream_taro あるいは違うかも. どういう文脈?

@zomi1202 重積分するよー, 暗黙のうちに自然な直交座標が入ってるのを仮定してるよー. って感じ

@dream_taro んん?? 座標入ってるってベクトル空間に入れる, ということを想定してるのかな??

@zomi1202 文脈みたらやっぱり正規直交座標ってことっぽいと解決した

@dream_taro @zomi1202 微妙なところですが, 普通 (1,1)/ √ 2,(1,-1)/ √ 2 みたいなのが「自然でない直交座標」ですね.
むしろ (1,0),(0,1) みたいなのを指して「自然な」というのであって, それ以外が全部「不自然」ですが, 微妙な点があってアレです

@phasetr @dream_taro んーと, よく理解できてないのですけど,
その”不自然”という用語は既に別の座標 (基底) が定まってる事を前提としてるのでしょうか?

@zomi1202 そうです. 既に基底を取っているところに別のを取ってくるから不自然に見える, という感じ.
基底を取り替えれば不自然だった方が自然になるので「微妙なところ」と表現しました.
はじめから座標を入れていなければ出てこない話です.
きちんとやると幾何の話になって大変で面白い

@phasetr 幾何というと全然分からないのですが, 微分形式の周辺のお話ですか?

@zomi1202 座標に依存しないで議論を展開するという根本的なところです.
微分法に関しては, 直接的には微分形式というよりベクトル場かと思いますが

@phasetr ふむふむ.
ベクトルって早々と座標導入しちゃう本多いですけど, あえて入れずに論じるの楽しいですね.
(今読んでるベクトル解析の本がちょうどそういうのでした)

@zomi1202 座標に依存したくない, という気持ちが分からないとつらいので難しいところです.
物理でも大事な話ですが

自然な直交座標系については上で書いた通りだ.
線型代数の話になる.
この辺で既に微分積分と線型代数の根本的な結び付きが出てきているのだが, その辺は適宜勉強されたい.

それはそれとして, 座標系に依存しないで解析学を展開しようと思うと幾何学が出てくる, という話だ.
初学者にとっては出てきた結果が取った座標系に依存するかどうか, という話そのものがよく分からないと思う.
具体的に考えてみるとこういう感じだ.
3 次元の Laplacian を自然な直交座標系と極座標系で書いてみると次のようになる.

\begin{align} \triangle_{\mathrm{o}} &= \frac{\partial^2}{\partial x^2} + \frac{\partial^2}{\partial y^2} + \frac{\partial^2}{\partial z^2}, \\ \triangle_{\mathrm{p}} &= \frac{\partial^2}{\partial r^2} + \frac{2}{r} \frac{\partial^2}{\partial \theta^2} + \frac{\cos \theta}{r^2 \sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} + \frac{1}{r^2 \sin^2 \theta} \frac{\partial^2}{\partial \phi^2} . \end{align}

引用のために添字をつけたが, 当然同じ作用素だ.
何も知らずに \(\triangle_{\mathrm{o}}\) と \(\triangle_{\mathrm{p}}\) を見て同じ作用素と思えるか, という話.
化け物ならいざ知らず, 普通は無理だろう.
「見かけに騙されずに同じものは同じと思いたい」という欲求が「出てきた結果が取った座標系に依存するかどうか」という問題だと思ってほしい.
Laplacian の定義については Riemann 多様体上での定義を参照されたい.
Riemann 多様体自体の定義を把握するだけでも死ぬ程辛いだろうから初学者にはお勧めしないが.

上で微分作用素の話にしたが, 当然微分方程式も関係してくる.
物理でも同じような要求は出てきていて, それが解析力学の基本的な発想にもなっている.
「見かけに騙されずに大事なことを見抜く」というのも大事だが, もう 1 つ,
面倒くさそうな (見かけの) 方程式を上手く変換していって解きやすくする, という方向もある.
変換していった先と元の方程式が同じなら簡単な方で解けばいい, となって無事に話が終わるのだが,
本当にそうやっても大丈夫か, という保証を与えるのが解析力学の要点で幾何学的に大事なことでもある.

詳しくは解析力学で学んでほしいが, 量子力学で簡単な例を出そう.
水素原子の Schrodinger 方程式を考える.

\begin{align} H = \triangle – \frac{e}{r}. \end{align}

詳しい部分は省くが, Coulomb ポテンシャルは球対称性を持っているし,
Laplacian も球対称性を持っている.
(本当は考えている空間の対称性も大事だが, 今は \(\mathbb{R}^3\) 全体で考えていることにしてとりあえず不問にする.)
したがって球対称性を重視した座標系で書いた方が記述がすっきりする (だろうと思える).
そこで Laplacian は極座標系で書いた方がいいのではないの, という発想が出てくる.
これをやっても大丈夫, という保証をつけるのが解析力学・幾何学的発想だ.
解析力学は機械工学などでも大事になると聞いているので, 関係各位は頑張って勉強されたい.

工学の人でも読めるような本は知らないので, 関係各位はお勧めがあれば教えてほしいのだが,
とりあえず物理の理論系や数学の人向けに読んで面白い本だけは紹介しておこう.
どの本だったか忘れたし内容も忘れたのだが, 坪井先生の本のどれかに,
「現代的な幾何学ではベクトル場と微分形式を概念的に分離したことが画期的な成果だ」という一文があった記憶がある.
どう大事なのかいまだに全く把握できていないので分かる人は教えてほしい.

新井先生の本は物理を元ネタに対称性の数学を議論している.
最後に超対称性まで出てきて無茶苦茶と言えば無茶苦茶だが,
かなりアドバンストな所まで扱っているとも言えるので, 読んでいて楽しい本ではなかろうか.

山本義隆本は物理の人から見た解析力学の本だが, 数学的にもある程度のレベルまできちんと書いた本だ.
多様体論をきちんと使っているので, 物理の人の多様体論入門にもいいかもしれない.
はじめて解析力学を学ぶのには死ぬ程きついと思うが, 私が幾何学できなさすぎるだけかもしれない.

読んだことはないが評判はいいので深谷先生のベクトル解析と解析力学の本を入れておいた.
読んだ人は感想教えてほしい.

上で少し書いた坪井先生の本, どれだか忘れてしまったので, それっぽいのを全部挙げておいた.
前書きに書いてあったはずなのだが, 本を持っていないし近くに置いてあるところもないので確認できていない.

多様体論自体でも丁寧な本として松本先生のも挙げておこう.
まだるっこしいと言えばまだるっこしいと言える.
以前宇宙賢者とも少し話したが, 実多様体論は 1 の分割だとかで技術的なところがとても面倒くさい.
複素多様体をやった方がストレートに幾何幾何したところに行ける感じはあるが, よく分からない.
ただ, 複素多様体だと多変数関数論がはじめに出てきて, そこでちょっとアレ感がないでもない.
あと層係数のコホモロジーも微妙にアレ, という気もする.
結局何にしろつらかった.

Riemann 多様体のいい本, よく知らないのだが, 幾何学的変分問題はかなり読みやすい本なのでこれはお勧めしておこう.
Riemann 多様体の勉強にもなるだろう, と前書き的なところにも書いてあったので,
Riemann 多様体の基本的なところは多分おさえてあると思っている.
変分は解析力学でも出てくるし, 変分自体, 物理でとても大事な切り口なので,
数学的にきちんとやってみたいと思ってしまった人はやってみると面白いかもしれない.


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