揮発性を決める物理・化学: 京都は福知山でのガソリン引火事件から

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ふとこんなことを思った.

https://twitter.com/AerospaceCadet/status/369608834240630784 これを見て, ガソリンやエタノールが揮発性高い理由, どの辺にあるのかとふと思った. 考えてみるとあまり詳細を把握していなかった. 揮発性に関して構造や組成から何か分かることはあるのだろうか. 無学を晒しまくっているが

上記ツイートで引用したツイートはこれ.

「ただ揮発性が高いことはあまり知られていない」. ド文系の間ではだろ. こんなデタラメを一般常識みたいに書くんじゃない. これだから新聞屋は. 花火大会爆発事故 気化したガソリンが原因かhttp://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/08/20/kiji/K20130820006452800.html

で, 色々教えてもらった.

@phasetr http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%92%B8%E6%B0%97%E5%9C%A7 困ったときの wikipedia
@phasetr あんまり良い場所じゃなかった. http://s-ohe.com/bs_jokiatu.htm こっちのが良さそう.
@phasetr 大雑把に言うと, 液体の分子が重いと揮発しにくくなります. ガソリンより灯油の方が揮発しにくい理由は大体これです. また, 分子同士に引き合う力が働くと揮発しにくくなります. 水がガソリンやアルコールより揮発しにくいのはこれが主な理由です.
@kitayamatakeshi ありがとうございます. 「水は水素結合があるから揮発しづらいのだろうか. しかし揮発性と分子間力に関係があるのか」と思っていたので, 本当に関係があると知ってちょっとびっくりしました
@phasetr はい. 水は H2O なので分子の重さは酸素分子よりも軽く, 常温では気体になっている筈ですが, 水素結合のせいで液体になっています.

あと こんなのも.

そんなときこそヤフー知恵袋 / 有機溶媒の揮発性は何で決まるのでしょうか? – Yahoo! 知恵袋http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1445467454

知恵袋の回答も引用しておこう.

揮発性は潜熱で決まります. トルートンヒルデブランドの経験則では, 潜熱は沸点を決める要因でもあります. 「分子量が大きな分子は沸点も高い」というのは本当は正しくなく, 沸点は分子間力の大小で決まります. 分子間力のうち, 特に van der Waals 力 (分散力) と水素結合が大きな役割を果たします. 分散力はその分子の電子分極能 (電子の揺らぎやすさ) で決まるものです. ですから, 有機フッ素化合物のような例外的なケースを除けば, 電子の数の多い=分子量の大きな分子ほど大きな分散力で相互作用するということになります. この辺について興味があれば, 私の論文も読んでいただけるとありがたいです. T. Katagiri, K. Uneyama, A Correlation between Boiling Point and Refractive Index of Organic Compound: A Possible Role of Fluorine Atoms in Intermolecular Interaction, Bull. Chem. Soc. Jpn. 2001, 74, 1409-1410.
さて, DMSO やアセトンは aprotic な溶媒で, 水素結合はしないと考えられています. たしかにプロトンのやりとりをするような水素結合はしないのですが, 電荷相互作用的な「弱い水素結合」をおこし, そのため, enol 型構造の寄与があります. そのため, 分散力以外の相互作用により, 液体中でも二量体構造の寄与があり, 分子間力が大きくなります. この辺りは, わりと最近の論文で報告されています. U. Onthong, T. Megyes, I. Bako, T. Radnai, T. Grosz, K. Hermansson, M. Probst, Phys. Chem. Chem. Phys., 6, 2136 (2004). S. E. McLain, A. K. Soper, J. Chem. Phys. 124, 074502 (2006). そのため, DMSO やアセトンは分子量に比して大きな分子間力による高い沸点, 低い揮発性を持ちます.

分子間力というミクロな話が揮発性というマクロに影響しているというの, なかなか衝撃的. 分子間力のオーダーと振り切るべき束縛エネルギーというか, その辺のオーダーを私が把握できていなかったというのも大きな問題という感ある. この辺のオーダーを探ればもう少しピンと来る可能性はある.

この辺か.

分子間力 (ぶんしかんりょく, 英語:intermolecular force) は, 分子同士や高分子内の離れた部分の間に働く電磁気学的な力である. 力の強い順に並べると, 次のようになる 1.

  1. イオン間相互作用
  2. 水素結合
  3. 双極子相互作用
  4. ファンデルワールス力

これらの力はいずれも静電相互作用に基づく引力である. イオン間相互作用, 水素結合, 双極子相互作用は永続的な陽と陰との電気双極子により生じるが, ファンデルワールス力は電荷の誘導や量子力学的な揺らぎによって生じた一時的な電気双極子により生じる. 永続的な電荷により引き起こされる引力や斥力は古典的なクーロンの法則で示されるように距離の逆二乗と電荷の量により決定づけられる. 前 3 者の相互作用の違いはおもに関与する電荷量の違いであり, イオン間相互作用は, 整数量の電荷が関与するため最も強い. 水素結合は電荷の一部だけが関与するため, 1 ケタ弱い. 双極子相互作用はさらに小さな電荷によるため, さらに 1 ケタ弱い.
非常におおざっぱに捉えると, 力の大きさは以下のようになるだろう.

イオン間相互作用 1000
水素結合 100
双極子相互作用 10
ロンドン分散力 1
分子間の万有引力 10-35 (参考)

よく分からない. 何かミクロレベルで正確にオーダー比較できるのデータどこかにないか.

追記

kitayamatakeshi さんから追加でコメントを頂いた. ここについたリプライでコメントが見られる.

@phasetr 私のツイートで「大雑把に言うと, 液体の分子が重いと揮発しにくくなります」と書きました. この時は分子の質量が重い方が揮発しにくいと思っていたのですが, あとから考えると, 原因は質量ではない気がしてきました. (続く)
@phasetr 現象論としては間違った表現ではないので訂正はしませんが, 知恵袋の方にある「分子が大きくなると分散力が大きくなる」という事の方が, 分子量が大きい方が一般的に揮発性が低い事の理由の説明としては適切だと思います. 失礼しました.

頼んだわけでもないのにわざわざ時間と労力を割いて色々教えてもらえるのでとても助かっている. 楽しい.


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