Euler の公式と関数論: 1 変数関数論と多変数関数論の深い溝の狭間で

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こんな会話をしたのでメモ代わりも込めて記録しておく.

TL がおおかみこどもだけでなんかつまんね

@1112345678999 そんなときこそ数学

@phasetr あまり詳しくないので大きな声で言えませんが, オイラーの公式は三角指数が絶妙に組合わさっているこの世で一番綺麗な数式だと思ってます

@1112345678999 オイラーはむしろ, 指数関数を複素領域にまで拡張する時のキーである一致の定理の破壊力に思いを馳せます.
また, 一変数での一致の定理は集積点を含む集合上の一致だけみればいいのですが, これは多変数では成立しないので一変数と多変数の差異も際立つ深い定理です

@phasetr (理系学院生なのにピンとこないヤバイ……)

@1112345678999 この間で早稲田で数学科学生向けに関数論セミナーをしたときからずっと書こうと思っていた話なので後でブログにまとめます.
そして DVD にもする予定がある方の市民

まず 1 変数の一致の定理を書いておこう.

一致の定理 (1 変数)

\(U \subset \mathbb{C}\) を領域とする.
関数 \(f, g \colon U \to \mathbb{C}\) が正則で \(C \subset U\) が \(U\) の中に集積点を持つとする.
このとき \(C\) 上で \(f = g\) なら \(U\) 上で \(f=g\) となる.

この定理は次の 1 変数関数の零点の振る舞いによっている.

定理 (1 変数での零点の孤立性)

関数 \(f \colon U \to \mathbb{C}\) が正則で恒等的には 0 でないとする.
このとき \(f\) の零点は孤立している.

1 変数での一致の定理の証明は次の通り.

\(h = f – g\) を定義したとき, \(h\) はもちろん正則だが \(C\) 上 \(h = 0\) となるが,
\(C\) は \(U\) 内に集積点を持つため零点は孤立しない.
したがって \(U\) 上全体で \(h = 0\) となる必要がある.

孤立性さえ認めるなら証明は簡単だが, 当然零点の孤立性に強く依存している.

これが多変数でどうなるか.
次のように変わるのだ.

定理 (多変数. 零点集合の性質. )

\(n \geq 2\) とし, \(U \subset \mathbb{C}^n\) を領域とする.
関数 \(f \colon U \to \mathbb{C}\) が正則なとき, \(U\) のある開部分集合上 \(C\) で
\(f\) が恒等的に 0 になるなら, \(f\) は \(U\) 内で恒等的に 0 になる.

1 変数のときは (C) が閉集合でも良かったのだが, 多変数では開集合に限定される.
これがポイントで, 一致の定理の (C) の条件として決定的に効いてくる.

1 変数のとき, 閉集合でもいいというのは決定的に大事だ.
上にも書いたとおり, 閉集合上での一致さえ言えればいいのだが, 複素平面の中で実数全体は閉集合にはなるが開集合にはならないことに注意しよう.
実数上での一致から全体の一致が結論でき, これが指数関数の複素拡張の一意性を生み出す.
これが Euler の公式に正当性を持たせる根拠になっている.

また, 多変数の場合は多変数の場合で開集合に限定した一致の定理というか, 零点の振る舞いが決定的だ.
セミナーのとき, ヘイヘイにも問題を出し (て即答が得られ) たのだが,
閉集合上で (f=g) になったとしても全体で (f \neq g) という例が簡単に作れる.
これは (1 変数のときの) 一致の定理の証明からも反例が作れるし,
もっと大事なこととして代数幾何から反例が作れる.
だからこそヘイヘイに問題を出したのだが.

もっと強くいうと, 代数幾何から反例が作れるというより, 代数幾何学の成立そのものが反例となっているといっていい.
(Affine) 代数多様体は複数の多項式の共通零点として定義されるが,
多項式は連続で零点集合なので, 代数多様体は ((\mathbb{C}^n) の Euclid 位相で) 閉になる.
このとき, 多変数でも 1 変数のときと同じく閉集合上の一致で全体が一致を導いてしまったら,
上述の定義多項式は全て 0 にならねばならず, 代数多様体が (\mathbb{C}^n) 全体にしかなりえない.
当然こんなことは起きない.

1 変数と多変数の関数論の決定的な違いになっているし, 1 変数の時の特殊事情はそれはそれで圧倒的な結果を生み出す.
こうした背景があるからこその Euler であり, ただ式だけ見て美しいというのはそれはそれで構わないが,
私の興味関心はそこで終わらないしここまで詳しく喋らせろ, という話になるが,
これはこれで鬱陶しいと思われるから Euler は原義マスハラである, という主張をしているという話だった.


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