解説『やさしい理系数学』第 1 章 数と式, 論証 例題 2 横浜市立大

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また見ていない方は次のページや
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『やさしい理系数学』は「内容はいいのに解説が少ない」という評判なので,
ここではその解説部分を補充する形でやっていきます.

大学受験に限らず何か聞きたいことがあれば

このページを参考に気軽に質問してください.

必要な情報がなく, 適切なアドバイスができないことが多いためです.

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どんどんアウトプットすることが大事です.
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メールや LINE だと式を書くのが大変でしょうから,
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問題(横浜市立大)

1 以上の整数全体の集合を \(N\) とし, その部分集合

\begin{align} S = \{3 x + 7y\}\{x, y \in N\} \end{align}を考える.
\(S\) はある整数 \(n\) 以上のすべての整数を含むことを示し, そのような \(n\) の最小値を求めよ.

ポイント

ポイントは実験, 分類, 特に余りによる整数の分類だ.
また \(S\) がある数以上の全ての整数を含むことは自明ではない.
例えば係数の \((3, 7)\) が \((2, 4)\) だったらと思えばいい.
一般に分類問題はとても大事で, 特に 2 分法がその基本になる.
要はある性質を持っているか持っていないかという話だ.
例えば偶数と奇数は 2 で割り切れるかどうかだし, 有理数と無理数は整数比で書けるかどうかだ.
これについては本題とは少しずれる部分もあるが大事な考え方なので紹介しておく.

1 例として教科書にもある「\(\sqrt{2}\) が無理数」であることの証明を考えよう.
\(\sqrt{2}\) を有理数と思って背理法を使うというのは,
元々無理数自体が「有理数でない実数」という定義であり,
有理数でないことを示す以外の方法が原理的に取りづらいということでもある.
このようにして関係がないように見える手法にも関係性を見出し,
点と点を繋いで線にして構造を見抜き,
理解を網の目状に構成していくと記憶の負荷も大きく減る.
ここでそもそも色々な手法を知らないと網の目も作りようがない.
だから「まずは大雑把に全体を見渡して概要を把握すべし」と言っている.

あまりを見るという手法は整数に関わる問題を扱う場合の基本だ.
一般には, 適当な共通項でくくったとき, そこから漏れる部分があってそれこそがその対象の本質であるというような考え方だ.
これだけ言ってもわからないと思うが, 適当に例を作って考えてみてほしい.

例が適切かどうかはわからないが, いわゆる「理工学部男子ファッション」としてのチェックシャツを考えよう.
時々ネタになるのだが理工学部の男子はチェックシャツ着用率が極めて高いというネタがある.
しかしチェックシャツ着用という共通項から外れた部分にその人の本質があるわけだ.
理工学部といっても, いわゆる理学部か工学部かというだけでかなり趣味志向が変わる.
これもこれで適当な共通項でのくくりになる.
理学部でも数学科か, 物理か, 化学か, 情報かといった要素でまた大きく人の特性が変わる.
こうやっていろいろな要素, 共通項でくくっていってもまだ一般化されずに残る部分こそがその人の本質だと思うのだ.
自分でも適当な例を考えて「あまりに着目する」という手法を血肉にしていってほしい.
受験生が知る必要は全くないが,
数学だと 1 つの究極形としてコホモロジーという概念がある.

方針

方針 1

まずは実験してみよう.
\(y = 1\) とすると

\begin{align} \{3x + 7\}\{x \in N\} = \{10, 13, 16, 19, 22, 25, \dots\}. \end{align}これをどう読むか, 読めるかが命運を分ける.
実際には次のように読むのだ.

\begin{align} \{3x + 7\}\{x \in N\} = \{10, 13, 16, 19, 22, 25, \dots\} = \{\text{3 で割ると 1 余る 10 以上の整数}\}. \end{align}さらっと書いたが, 最後の余りを見るという手法が決定的に大事だ.
いわゆる整数問題の基本なのできちんと身につけておくこと.
もっと一般に代数学や数論の基本でもある.
つまり実験+余りを見ることでこの問題は解けるのだ.
次に \(y=2\) とすると

\begin{align} \{3x + 14\}\{x \in N\} = \{17, 20, 23, 26, \dots\} = \{\text{3 で割ると 2 余る 17 以上の整数}\}. \end{align}\(y=3\) とすると

\begin{align} \{3x + 21\}\{x \in N\} = \{24, 27, 30, 33, \dots\} = \{\text{3 で割り切れる 24 以上の整数}\}. \end{align}\(S\) はこれらの和集合で互いに共通部分もない.
この 3 つで尽きることが不安なら例えば \(\{3x+28\}\{x \in N\}\) を具体的に書いてみるといい:
\(\{3x + 7\}\{x \in N\}\) に含まれることはすぐわかる.
整数を 3 で割った余りは 0, 1, 2 の 3 通りしかない.
見てすぐわかるように小さい方は尽くしきれていないが,
ある程度大きい数は全て \(S\) に含まれることになる.
あとは含まれない数を丁寧に考えればいい.

方針 2

もう 1 つ, 基本的で標準的な手法があるのでそれも紹介しておこう.
3 と 7 が互いに素であることを本質的に使っていることが明確にわかる点でいい解答だ.
各ステップを完全に身につけておく必要がある.

大学だとよくやることなのだがまずは \(n \in S\) を 1 つ取ってくる.
適当に取ってきただけなので \(S\) の任意の要素だ.
この \(n\) がどういう条件を満たすのか調べていこうという方針を取る.
まずは \(S\) の要素だから何か自然数 \(x\), \(y\) があって

\begin{align} 3x + 7 y = n \end{align}となる.

この次は知らなければ思いつかないだろう.
\(x\) は自然数としていたし本来考えるべきは \(S\) の元だが,
それは無視して \(3x+7y=1\) となる \(x\), \(y\) を具体的に 1 つ考えるのだ:
\(x = -2\), \(y=1\) とすればいい.

\begin{align} 3 \cdot (-2) + 7 \cdot 1 = 1. \end{align}ここで辺々に \(n\) をかけると

\begin{align} 3 \cdot (-2n) + 7 \cdot n = n. \end{align}辺々を引くと

\begin{align} 3 (x + 2n) + 7 (y – n) = 0. \end{align}これは昔, 賢い人達が死ぬ程苦労して編み出した方法で,
その有効性が認められたからこそ長く伝わっているのだ.
むしろ身につけるべき手法として大学で徹底的に叩き込まれるくらいの内容だ.
そういうのをひらめきで何とかしようというのは人類レベルの挑戦なので,
受験のときにはお勧めできない.
だからきちんと基本的なことを覚えようと言っている.

それはそれとして先に進もう.
3 と 7 は互いに素だから \(x+2n\) は 7 の倍数,
\(y-n\) は 3 の倍数になっていなければ和が 0 にはならない.
そこで整数 \(m\) を使って \(x+2n = 7m\), \(y-n = -3m\) としてみよう.
新たな整数パラメータの導入がまた一山だ.
さらに話は続く.
条件が明確なのは \(x\), \(y\) で, 両方とも自然数だった.
使える条件はここなので次のように書いてみる.

\begin{align} 0 &< x = -2n + 7m, \\ 0 &< y = n – 3m. \end{align}ここから

\begin{align} \frac{2}{7}n < m < \frac{n}{3}. \end{align}今度はこれをどう読み, どう次の手に繋げるかが問題だ.
実際には \(m\) を整数として存在させるために \(n\) がどういう条件を満たすべきかを示す条件と読めばいい.
そういう条件と読めたのはよくても,
次の手をどう打つか, さらにはどう式として表現していくかが問題になる.
両端の差が 1 より大きければその中に自然数があるのだからそれを書き下すことになる.
つまり

\begin{align} \frac{n}{3} – \frac{2}{7} n > 1. \end{align}ここから \(n\) が満たすべき条件が出てくる.

さらっと書いている部分もあるが,
この方針では各ステップ全てが勝負どころだ.
まずは丸暗記で構わない.
とにかくきちんと隙なく再現しきれることを目指してほしい.
それが終わったら, 次はこの類題, または同じ手法が使える問題に出会ったとき,
どうすれば自分がこの解答と同じように考えていけるかを考えていってほしい.
これは忘れた頃に復習してみることで実際に試してみるといい.
そういう目で見ていくと上のステップの勝負どころが見えてくる.
やはりまずは解答の全体像を把握することが必要だ.
その上で各ステップを検討し, 自分が埋められなかったステップを埋めていこう.

補足

次のようなご質問を頂いた.

(本の) 【解法 1 】P.8 最初, \(x > 0\), \(y > 0\) というところで
\(x \geq 1\), \(y \geq 1\) としなくていいのか.
また \(x \geq 1\) とすると答えが変わってしまう.

なかなか鋭い指摘で感心した.
結論からいうと, まず【答え】は変わらない.
変わる・変えないといけないのは解答・答案の方だ.

(計算ミスしていなければ) \(x\), \(y \geq 1\) として進めると
\(n \geq 37\) になった.
実際 \(n \geq 37\) の自然数は全て \(S\) に入る.
実際の答えは 22 以上だから, 22-36 まで全て含むことを
追加で示さないといけない.
\(x > 0\) と \(x \geq 1\) でここまで変わるのも
不思議な感じはするが,
ここまで見えているから本は \(x > 0\) で
解答を作っているとも言える.

ここでさらに, 素直にやるなら
22-36 は 1 つ 1 つ個別確認するしかない.
37 以上は大丈夫だと示したので
あとは 36 以下の自然数だけ見ればいいからだ.
ただ単純に考えると, 特に試験本番で数え漏れが起きるかもしれない.
系統的に数え切る方法を考えたくなる.

その究極的な形が本の【解答 2】だ.
系統的に数えないと漏れる,
そういうこともわかって,
【解答 2】の威力もついでにわかる.

このくらいまで読み込めると
この問題の演習効果もぐっと上がる.

最後に: 気軽に質問してください

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