解説『やさしい理系数学』第 1 章 数と式, 論証 例題 4 早稲田大

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『やさしい理系数学』は「内容はいいのに解説が少ない」という評判なので,
ここではその解説部分を補充する形でやっていきます.

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解説『やさしい理系数学』第 1 章 数と式, 論証 例題 4 早稲田

問題 (早稲田大)

\(n\) は 2 よりも大きい整数とし, \(a_1\), \(a_2\), \(\cdots\), \(a_n\) ; \(b_1\), \(b_2\), \(\cdots\), \(b_n\) は正の数で

\begin{align} \sum_{i=1}^{n} a_n = \sum_{i=1}^{n} b_n, \quad \frac{b_1}{a_1} < \frac{b_2}{a_2} < \cdots \frac{b_n}{a_n} \label{univ-entrance-exam16} \end{align}をみたすものとする.

このとき, \(0 < m < n\) であるすべての整数 \(m\) に対して

\begin{align} \sum_{i=1}^m a_i > \sum_{i=1}^m b_i \label{univ-entrance-exam14} \end{align}が成り立つことを証明せよ.

ポイント

これも実験してみるといい.
当たり前のことだが, 問題文にある正の数という条件,
\(n\) の条件, \(a_j\) と \(b_k\) が満たす条件・束縛条件をきちんと理解して使い切ることが大事だ.
証明が終わってみると自明としかいいようがなくなるのだが, それをいかにして示すかに苦心することになる.
また, \(b/a=d/c=f/e\) というように比が一定の数が出てくるとそれを共通の定数 \(k\) としてみるという手法があるのだが,
それのバージョンと思って式をいじってみられるかも勘所だ.

本にある別解のうち, 加比の理とあるのは他でも使えそうなので紹介しておきたい.

方針

本には解法が 3 つあげてあるが,
ここでは 2 つだけ紹介する.

方針 1 (本の【解答 2】)

まず一般性がありそうで他でも使いやすそうな方を紹介する.
それは本で加比の理と呼ばれている.

命題 (加比の理)
\(a\), \(b\), \(c\), \(d > 0\) のとき

\begin{align} \frac{b}{a} < \frac{d}{c} \Rightarrow \frac{b}{a} < \frac{b+d}{a+d} <\frac{d}{c}. \end{align}証明は左 2 つ, 右 2 つで分母分子を払って計算すればいいだけだ.

この方針・解法に関して質問を頂いたので注意しておく.
具体的には【正しくは数学的帰納法で】とあるところで,
数学的帰納法の使い方がよくわからないとのことだった.
確かに少しわかりづらい気もするので補足する.
わかりづらいのは仮定と示すべきことがはっきりしていないことによる.
示すべきなのは次の命題だ.

命題 一般化された加比の理
\(a_1, a_2, \dots, a_n\), \(b_1, b_2, \dots, b_n\) が全て正の実数で

\begin{align} \frac{b_1}{a_1} < \frac{b_2}{a_2} < \cdots < \frac{b_n}{a_n} \end{align}を満たすとする.
このとき次の不等式が成立する.

\begin{align} \frac{b_1}{a_1} &< \frac{\sum_{k=1}^{m} b_k}{\sum_{k=1}^{m} a_k} < \frac{b_{m}}{a_{m}}, \quad 1 < m \leq n, \\ \frac{b_1}{a_1} &< \frac{\sum_{k=1}^{m} b_k}{\sum_{k=1}^{m} a_k} < \frac{\sum_{k=1}^{n} b_k}{\sum_{k=1}^{n} a_k}, \quad 1 < m < n. \end{align}問題の解答に必要なのは後者の式だ.
証明は本に書いてあることを素直に一般化しつつ直接計算するだけなので省略する.
数学的帰納法を使うまでもないとは思う.

方針 2 (本の【解法 1】)

次に本の【解法 1】を検討する.
まず私がやってみた (間抜けな) 初手の実験を紹介しよう.
本当に問題の条件が成り立つかを知るために \(n=3\) とし,
そして計算が簡単になるよう \(a_1 = a_2 = 1\), \(b_1 = 1\), \(b_2 = 2\) としてみた.
和が等しくなるように \(a_3\) と \(b_3\) を決めてみようと思ったのだが,
そもそもここで頓挫した.
それも当然で, 問題の条件下では式 \(\sum_{i=1}^m a_i > \sum_{i=1}^m b_i\) が
成立しなければいけないのに
それを無視して \(a_j\), \(b_k\) を設定したからだ.
また, 後づけの理由だが上の設定はきちんと解釈すれば「正しい実験」にもできた.
添字 (順番) を \(1 \to 2\), \(2 \to 3\), \(3 \to 1\) とすれば
正しい順番にできるし, 証明すべき不等式も成立している.
1 つの実験だけで見抜けるものではないが,
上の入れ換えをした上で \(b_1 / a_1 < 1 \leq b_2 / a_2 < b_3 / a_3\) が成立していることも注意しておこう.
実際示すべきはこの式だ.

うまくいかなかったので次の手を打ってみた.
\(b/a=d/c=f/e\) というように比が一定の数が出てくるとそれを共通の定数 \(k\) としてみる手法が大学でもある.
今回は等号ではなく不等号だがバリエーションなので使えないかという発想に至った.
これはいわゆるひらめきだが, その基礎には大学でも繰り返し使ってきた手法が基礎にあることに注意してほしい.
本当の無から作り出したわけではないのだ.
具体的にどうしたかというと次のようにした: \(k_i = b_i/a_i\) としたのだ.
こうしたからといって何か新しくわかったわけではないが, とりあえず条件を整理してみる.

\begin{align} k_1 < k_2 < \cdots < k_n, \quad b_i = k_i a_i. \label{univ-entrance-exam15} \end{align}ここで後者を見た瞬間に \(\sum_{i=1}^{n}a_i = \sum_{i=1}^{n} b_i\) に代入してみようと思った.
単に \(b_i\) は \(a_i\) の倍数と書いただけだが,
これを見てすぐに次の発想が出てきたのだ.
うまくいくかはともかく書き直してみよう.

\begin{align} 0 = \sum_{i=1}^{n} a_i – \sum_{i=1}^n b_i = \sum_{i=1}^{n} a_i – \sum_{i=1}^n k_i a_i = \sum_{i=1}^n (1 – k_i) a_i. \end{align}そしてこの瞬間, 終わったと思った.
この問題が自明になった瞬間と言える.

なぜ自明かを説明しよう.
\(a_i\) は正だったから上の和が 0 になる可能性は 2 つある.
1 つは全ての \(k_i\) が 0 になることだが \(k_1 < k_m < k_n\) からそれはない.
したがってもう 1 つの可能性しかない.
それは \(1 – k_i\) が正になったり負になったりすることで調整している可能性だ.
特に \(k_1 < k_m < k_n\) から, 適当な \(0 < n_0 < n\) があって,
それを境に \(1 – k_i\) の符号が反転する.
特に \(m \leq n_0\) の場合を考えると \(1 – k_m \leq 0\),
つまり \(a_m > b_m\) となるから

\begin{align} \sum_{i=1}^{m} a_i > \sum_{i=1}^{m} b_i \end{align}となる.

\(n_0 < m < n\) のときは 1 つステップを踏む必要がある.
\(a < b\), \(c < d\) なら \(a+c < b+d\) だが,
今は \(a < b\), \(c > d\) で \(a+c < b+d\) が言えるかが問題だからだ.
当然一般には言えないが, 問題文をきちんと読めば問題の条件下では成立しているのがわかる.
条件式から \(n\) まで全て足してはじめて和がイコールになるので,
\(m\) までの部分和で不等号がひっくり返ることはない.
このような文章を書くだけでも正解にしてもらえるだろう.
解答ではこれを式を使ってきちんと説明してみる.
厳密な証明をつけるいい練習になるだろう.

最後に一言いうと, 問題で示すように言われているのは
\(\sum_{i=1}^{m} a_i > \sum_{i=1}^{m} b_i\) だが
勘所はある \(1 < n_0 < n\) が存在して \(b_{n_0}/a_{n_0} \leq 1\) となることだった.
きちんと証明していないがおそらくこの 2 つは同値だ.
受験勉強をはじめたばかりのときは浅く広く暗記中心で早くから種をたくさん蒔いていくことが必要だが,
少しずつ深く高く種を育て芽を出させる必要がある.
その深く高く育てるところためにこのような突っ込んだ考察が欠かせない.
少しずつでいいから, 自分でも考えを深めていってほしい.

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