解説『やさしい理系数学』第 6 章 微分法 例題 16 類題頻出

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『やさしい理系数学』は「内容はいいのに解説が少ない」という評判なので,
ここではその解説部分を補充する形でやっていきます.

【解説】『やさしい理系数学』第 6 章 微分法 例題 16 類題頻出

問題

曲線 \(y = x^3 – x\) に 3 本の接線が引けるような点 \((a, b)\) の存在範囲を求めて,
\(xy\) 平面上に図示せよ.

ポイント

グラフを描いて適当に調べてみるとほとんど自明だが,
それを実際に一分の隙もなくきっちり証明するのが大変なところ.
具体的には次の箇所だろう.

  • \((a ,b)\) の条件を求めるためにクッションとして「3 本の接線を持つ」という条件を式に落とす.
  • 3 接点の存在条件を \((a, b)\) の条件に読み替える.
  • 3 次関数の特性を使う.

解説

これも実験してみるとだいたいの答えがわかる.
要は実際にグラフを描いて
3 本接線が引けそうな点 \((a, b)\) を絞り込んでみればいいのだ.
問題はそれをどう示していくか.

話を進める前に実験してみよう.
まず \((a, b) = (0, 0)\) では原点での 1 本しか引けない.
そしてグラフが原点対称であることに着目する.
この対称性を使えば \(0 < x\) で考えてあとはくるっと回せばいいことがわかる.
考えやすいように, 明らかに接線が引けるところで考えよう.
\(x\) も \(y\) も大きいところで考えれば次の 3 点を接点とする接線が引けることがすぐわかる.

  • \(x > 0\) が十分大きいところ.
  • \(x > 0\) が小さめ (極値を取る \(x = 1/\sqrt{3}\) の近く) のところ.
  • \(x < 0\) の極値の近く.

本当は確認が必要なことではあるが,
あとは \((a, b)\) を連続的に動かせば対応する接点も連続に動くことを使って接点の動きをトレースすればいい.
接点が重なってしまって接線がその分少なくなる箇所が見えてくる.
これが排除すべき領域だ.
この時点で範囲を明確に予測できるなら,
はじめに「この思考実験によって求める範囲がどこそこと予測できる.
以下これを示す」と書いてしまってもいい.
もしくは実際にメモスペースで解ききったのだが書き写す時間が足りない,
という危機に陥ったときに使ってもいい.
適当な説明をつけておけばそれで部分点はくるはずだ.
実験はこのくらいにしておこう.

「接線を引ける」という条件があるので,
まずは曲線 \(y = x^3 – x\) の接線を求めてみる.
接点を \((t, t^3 – t)\) として微分を使えばすぐわかる.

\begin{align} y = (3t^2 – 1)(x – t) + t^3 – t = (3t^2 – 1) x – 2t^3. \end{align}\((a, b)\) はこの接線上にあるのだから素直に代入してみる.

\begin{align} b = (3t^2 – 1) a – 2t^3. \label{univ-entrance-exam109} \end{align}おそらくここでいったん手が止まるはずだ.
次に何をするか, どう動けばいいかの方針を立てられるかがキモ.

ここで問題文を思い出す: 国語の問題なわけだ.
まだ使っていない「接線が 3 本引ける」という条件を使ってみよう.
するとこの式は \(t\) に関する 3 次方程式と思えばいい.

実際にはさらに 3 次関数の特性を使う必要がある.
3 次関数は接点と接線が 1:1 に対応する.
例えば 4 次関数では複接線を持つ場合があることに注意しよう1.

ここまでステップを踏むことで, ようやく \(t\) の 3 次式の使い方がわかる.
最終的には【3 つの相異なる実数解を持つようにする】と読み替えればいいのだ.
この辺の言い換えは国語・数学にまたがる問題だ.
国語の訓練にもなっていることを意識しながら勉強すれば,
国語の成績も上がっていく.

次はこれをさらにどう読み替えるかだ.
1 つの実数解を持つことはすぐわかる.
他の問題 (例題 44 三重大) でも出てくるように,
奇数次の多項式だから実数解を 1 つは必ずもつ.
他 2 解が虚数になる可能性をどう排除すればいいかを考えないといけない.
ここでようやく \((a, b)\) の条件に落ちてくる.
適当な \((a, b)\) なら他 2 解も実数になってくれる.
そしてここでまた手が止まるだろう.
この条件を具体的に書けばいいかぱっと思い浮かぶだろうか.

手・頭を動かす方法はいくつかあるだろう.
2 次方程式なら実数解を 2 つ持つ条件として判別式による方法がある.
このとき, 判別式を不等式として使うのだから,
3 次でも同じようなことができないかと考えてみてもいい.
他にも, 例えば存在範囲を求める問題なのだから「具体的にこれ」というよりも範囲を示す形に落ちるはずで,
高校の範囲でいうならやはり不等式による表現が候補にあがる.

結局不等式で【3 解を持つ】ことを表現すればよさそうだ.
これもやはり国語・数学の融合問題といえる.
それはそれとして数学としてどう表現するか, だ.
ぱっと思いつくならそれでいいが, 例えばこう考えればいい:
逆に【解が 1 つまたは 2 つになってしまうのはどういう状況か】を考えるのだ.
今考えるべき 3 次関数は \(y = f(x) = 2x^3 – 3ax^2 + a + b\) だ.
\(y= x^3\) のようにこぶがない場合,
3 次関数は明らかに 1 つしか解を持たない.
つまりこうなってはいけない.
またこぶがある多くの 3 次方程式はどうだろうか.
いつだって 1 つは実数解はある.
もちろんグラフを描きながら考えた方がいい.
ここで分水嶺が極値の値にあることに気付ければ上出来だ.
どちらかの極値がちょうど 0 のとき, 解は 2 つしか持たない.
逆にどちらの極値も 0 でないならうまい具合に解を 3 つ持ちそうだ.
これで条件がわかった: 極値がどちらも 0 でないことだ.

そうはいってもまだ終わらない.
今考えている関数は \(f'(x) = 6x(x- a)\) で極値を取る \(x\) も極値もすぐわかるが

\begin{align} f(0) = a + b \neq 0, \quad f(a) = -a^3 + a + b \neq 0 \end{align}というだけではほとんど何もできない.
もう少し数学的表現を磨く必要がある.
先程の考察の時点でやってもよかったのだが,
あえて分けてやってみた.

注意深い方は気付いたと思うが,
何がまずかったのかというと【逆にどちらの極値も 0 でないならうまい具合に解を 3 つ持ちそうだ】のところ.
そもそも【持ちそうだ】としか言っていなくて【持つ】と断言していない.
グラフを描けば一発でわかるように,
どちらの極値も正または負だと解は 1 つしかないのだ.
つまり 3 解持つには単に【どちらの極値も 0 ではない】ではなく,
【どちらの極値も 0 ではなく異符号になっていること】と言うべきだった.

この問題の難しいところはここまでやっても終わらず,
さらに最後の詰めが必要なところだ.
このワンステップは宿題としよう.
もちろん本の解答を見ればわかるので,
興味がある人は本を買って読んでみよう.

最後に: 気軽に質問してください

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脚注:

1

複接線というのはある点での接線が他の点での接線にもなっていることだ.
図を描いてみるとわかる.
極値が 3 つある 4 次関数,
例えば \(f'(x) = x (x+1)(x-1)\) を考えると谷が 2 つできるので,
うまいこと複接線が描ける.
これもグラフを描くとわかるが, \(y=x^4\) は複接線を持たない.
4 次だからといって必ず複接線を持つわけではないこともこれですぐわかる.


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