数学科に関するとんでもない嘘まみれの情報を見つけたので 大学受験勉強法

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目次

数学科に関するとんでもない嘘まみれの情報を見つけたので 大学受験勉強法

Twitter で次の,
地獄の底から湧き出てきたかのような
ひどい情報を見かけました.

http://tinyurl.com/nsfwlms
文章も引用しておきましょう.

====引用はじまり
何、これ?「「数学」で学べる事は?
情報の基礎であるWord、Excel、PowerPointで、
レポートやプレゼンテーション資料を作成する技術。
(以下略)」
http://tinyurl.com/pt622bu
====引用終わり

「この文章を書いた馬鹿はどこのどいつだ.
連れてこい」と言いたくなるレベルのひどさです.
大急ぎで引用しつつ, いくつかコメントします.

====引用はじまり
「数学」とはどんな分野か?
●会計や情報処理プログラミングなど多岐に渡って研究
====引用終わり

数学の専門の話が一切ない時点で
何だこの説明は, と思いますが,
会計の話をするというのは聞いたことがありません.
統計学は専門にやっている人がいますが,
会計と統計は全く違います.

世間的な意味で「情報処理」というと,
情報処理技術者とかそういう方向を想定するでしょう.
そんなことは数学科ではしませんし,
どの学部学科でもやらないでしょう.

情報科学科・情報工学科ですることも
全く違うことです.
もちろん関係はありますし,
情報工学ならもっと関係は深くなりますが,
Word や Excel の使い方なんてやりません.

====引用はじまり
情報化社会には欠かすことの出来ない分野。
====引用終わり

Amazon や楽天などネットで買い物をしたことがある人は
多分使っています.
暗号の理論や, それ以外にも符号理論,
Google の検索で有名なページランクの基礎原理など
いくつか情報関係の応用はありますが,
数学それ自体ではなくあくまで応用です.

この辺がやりたければ数理工学科などに
進学するのがいいでしょう.
名前が多少違くても近いことをやっている学科はあります.
数理工学そのものずばりなら,
東大と京大にはあったはずです.

応用数学科もそれなりに
近いことをしている人はいますが,
この「近いこと」は暗号の理論だとか
そういう意味での近さです.

情報化社会に深く関わりがある部分はありますが,
あくまで数学の一部です.

====引用はじまり
数学は情報科学の基礎となるもので、
コンピューターのプログラミングなどにも直接的に関係している。
====引用終わり

基礎の 1 つではありますが,
あくまでそれだけです.
数学科で情報科学関係のことを学べると思ってはいけません.
大抵ほとんど全くやりません.

そういうことがしたければ,
情報科学・情報工学などそのものずばりの
ところに行くようにしてください.
数理工学とか応用数学でもまあいいですが,
それだとあまり深く突っ込んでやらない可能性も高くなります.
もちろん自分で勝手に独学すればいいだけですが.

話がずれますが,
こういうときにどうしても独学しないといけなくなるので,
受験のときから独学の習慣と方法を身につけるように
勧めています.

====引用はじまり
情報技術は各種学校や企業でも、日常的に使われるもので、
その技術は日々進歩しているので、常に学ぶ姿勢が必要とされている。
====引用終わり

ここでいう情報技術が何を指しているのか,
まずそこからが問題です.
情報関係の技術が日進月歩というのも正しいですが,
ハード面での進歩からソフト面での進歩まであり,
全部やるのも到底不可能ですし,
数学が直接関係ないのもたくさんあります.

非常に誤解を生む文章というか,
書いた人が何を考えて書いたのか,
正気かどうかを疑わざるをえない文章で,
頭が痛いです.

====引用はじまり
また、情報科学の基礎として必要な数学を、入門から数値解析まで
体系的に修得することにより数学の専門家としての要素を身に付けることができる。
====引用終わり

情報科学の基礎となる数学以外にも
数学はたくさんあります.

また数値解析はあったとしても選択の講義でしょう.
数値解析自体を専門にしている人もいますが,
体系的にやるかと言われると微妙です.
数学として体系的にはやりますが,
数値計算の実務に使うようにやるかというと
また別なので.

あと数学で数値計算する人,
そんなに多くないというか少ない印象があります.

情報科学の基礎と思って数学をしているわけでもないですし,
情報まわりの数学をやったところで
数学としての数学を体系に学ぶことはできません.
情報関係の数学だけで
数学の専門家としての素養は身につきません.

本当にこの文章が何を言っているのか
全くわからず混乱しまくっています.

====引用はじまり
「数学」で学べる事は?

情報の基礎であるWord、Excel、PowerPointで、
レポートやプレゼンテーション資料を作成する技術。
また、情報の誤りを自動的に検出・訂正する符号の仕組みを理解し習得できる。
コンピューターの本質を理解し、幅広くプログラミングを作成する能力を養える。
====引用終わり

嘘もいいところです.
何をどうすればこんなひどいことを書けるのか,
全く理解できません.

まず Word, Excel はほとんど使いません.
発表のときに PowerPoint を使うのではないか,
そう思う人がいるかもしれませんが,
数学科ではあまり使いません.

式を書くのが弱いからです.
もっというと式混じりの文章,
特に論文を書くのに使う TeX というソフトがあって,
それで発表に使うスライドを作れるので,
そちらで発表用の資料を作ることがほとんどでしょう.

数学科の文化からすると,
スライドすら使わず
黒板に板書することも多いです.

符号の仕組みうんぬんというのは
上でも少し書いた符号理論のことでしょう.
符号理論は代数幾何という数学が
関係していますが, (代数幾何が) 破滅的に難しいです.

学部 3 年くらいから専門にわかれはじめるところで
学ぶことなので, 皆がやるわけではありません.
大学院からとはいえ数学を出ている私も,
代数幾何はほとんど全くわかりません.
実際, 専門が違う場合,
私のように代数幾何は全くわからないという人も多いです.

そして数学をやっていても
コンピュータの本質など全くわかりません.
そもそもそういうことをやらないからですが.

プログラミングも必修ではありません.
やる人は勝手にやっています.
それ自体専門で, 企業と共同研究している人もいますが,
それはそういう専門だからです.

それにしても数値計算が主体で,
幅広くプログラムすることはありません.
文章書いた人が幅広いプログラムというので
何を考えているのかもわかりませんが.

どうでもいいですが,
【プログラミングを作成する】という言葉おかしいですね.
【プログラムを作成する】ならわかりますが.

====引用はじまり
「数学」に関連する仕事は?

企業でコンピューターを使ったプレゼンテーションなどの資料の作成や、
情報処理や在庫管理・会計などにも幅広く役立つ知識。
また企業や各種研究機関などでも、
それぞれの内容に応じたコンピューターのプログラミングに活用できる。
各種学校でも指導者として活躍できる仕事だ。
====引用終わり

これもよくここまで嘘八百書けるなと
怒りすら覚える内容です.

プレゼンテーションの資料作成など
誰でもやるので, 数学科とか全く関係ありません.
在庫管理はロジスクティスあたりで
無関係とは言いませんが,
応用数学の OR (Operations Research) で対応すべき話でしょう.

会計というのは何を意図して言っているのか
本当に全くわかりません.

基本的にプログラミングは
自分で勝手にやるもので,
教わるものではありません.
講義はいくつかありますが,
それで身につくなら何の苦労もありません.

最後の【学校でも指導者として】とかいう一文も,
本当に気が狂っているとしか思えない
紹介文で意味がわかりません.

せっかくなので,
具体的な話としては 2008 年頃の東大数学科,
修士課程の話しか知りませんが,
少しお話しておきます.

就職先として多いのは,
小中高の教員, 金融・保険関係,
その次にメーカーの技術職あたりだったはずです.
あと半分くらいが博士課程にまで行きます.

金融関係って何で?
と思うかもしれませんが,
クオンツという専門職があり,
この人達は確率微分方程式という数学を
使ったりする (学部 4 年くらいでやる内容) ので,
ある程度数学がいるのです.
興味がある人は『物理学者、ウォール街を往く。』とかを
読んでみてください.

http://tinyurl.com/occ437b

保険関係でもアクチュアリーというのがあり,
料率計算をする専門家がいます.
そこを目指して行く人がいるわけです.
卒業生にもたくさんいます.
OB 会に行ったらやたらたくさんいたので驚きました.

メーカーだと数値計算まわりで
いろいろあるようです.
受験生には有名でないでしょうが,
化学系のメーカーで昭和電工という有名な会社があります.

そこに行ったとき, 数学関係の人は
数値計算まわりでとても求められている
という話を社員の方から伺ったことがあります.
その方は生物出身と仰っていました.

メーカー関係だとデザインにも関係します.
デザインは格好いいだけでは話になりません.
風の抵抗をおさえたり,
燃費などとも関わるからです.

試作品を作って風洞実験すればいいのですが,
いちいち作っていたらその分のお金と
時間がかかります.
それを削るために数値実験をするのです.
流体力学など物理の基礎知識もいりますが,
それはチームで専門の人が他にいれば,
本当に細かい部分はカバーしてもらえます.

数学の就職というと,
私はこういうイメージが強いです.
情報関係もないわけではないですし,
実際にいますが,
メインとは言い難いのが実情と思います.

あとついでに書いておくと,
最初にツイートを紹介した人は
奈良女子大, 情報科学科の鴨浩靖先生です.

情報科学科所属ではありますが,
正確には数学者と言った方がいいでしょう.
http://tinyurl.com/nza3jp7

高校生の皆さんには意外かもしれませんが,
時々「本来の所属とは違う学部学科にいる教官」もいます.
例えば東工大から京大の大学院に行った知人がいるのですが,
彼は物理から情報に行きました.

情報系の研究に専攻を変えたと
思うかもしれませんが,
あくまで教官は物理の人で,
何故か所属が情報だから
そこに行ったということです.

工学部の中にバリバリの数学をやっている人がいたりもします.
大阪大学の基礎工学部にそういう人がいます.

この辺は大学院のときに考えるべきことで
大学受験で考える必要はないことですが,
せっかくなので少し説明しておきました.

本題に戻りますが,
とりあえず自分が所属していた学科でもあり,
はっきりと知っていることなのでコメントしました.
しかし受験界隈にはこのような大嘘が
意外と蔓延しているのかもしれません.

ネットの情報を鵜呑みにしないで,
信頼できる人から情報を取ることも
忘れないようにしてください.

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