書評 堀畑和弘・長谷川浩司『常微分方程式の新しい教科書』

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いま現代数学観光ツアーでの次の動きのために常微分方程式とか勉強し直そうと思っていて,
本を物色しているところだ.
たまたま Twitter で相互フォローの東北大の教官,
堀畑さんと長谷川さんが本を出したというのでちょっと聞いてみたら
献本してくださるというので厚かましくも献本してもらった.

あとで読み返すときの参考にもなるよう,
読書メモをつけておいた.
他の方の参考にもなるだろう.
現代数学観光ツアーの読者の方々にも案内しておくことにしよう.

献本してもらえたらバンバン書評を書いていく所存.

総評

まずレイアウトがすっきりしていて見やすいというのが一番の印象.
計算もそこそこ丁寧で取り組みやすそうな感じがする.

考えてみると常微分方程式の本をまともに読んだことがなくて,
他の本を知らないので比較はできないのだが,
単純な解法だけで終わらず, 行列の指数関数とか行列と絡めた解法,
力学系との関係, 平衡点まわりでの解の振る舞いなど理論面についても
ギリギリの線を攻めていて, 幅広いテーマをテンポよく書き切っている感じがある.

特殊関数についても物理や偏微分方程式との関係がちゃんと書いてある.
現代数学観光ツアー
「常微分方程式の本を読んでいたとき,
いきなりルジャンドルとかベッセルが出てきて,
何なのかわけわからなくて読み進めるのやめた」みたいなアンケートの回答をもらったことがある.

意味があるから書いているに決まっている,
すぐにたくさん情報出てくるだしちょっとは調べろよ,
みたいなことは思った.
しかしそれはそれとして説明はちゃんとしないといけないというのはあり,
そういうのも少ない紙数の中で突っ込んである.

紙数が少ない中でも有名な例や大事な例を割ときっちりおさえていて,
それについてはよく盛り込んだなという感じすらある.

少ない紙数なので説明が少ないところはもちろんたくさんある.
その中でも理論的に広い世界を見せようという工夫がされている.
単純に解法だけ知りたい人にはあまり進められないが,
理論的なところに興味があったり,
定性的なところまで知る必要がある人にとっては,
その方面に対する一冊目にはいいと思う.

この辺のコメントがあったらいいのにな,
というところは以下の細々としたコメントで
「補足」をしているので,
そのコメント群から適当に探求をしていってほしい.
現代数学観光ツアーでも参考文献に入れておこう.

細々としたコメント

他の本を知らないので何とも言えないところだが,
記号として関数に $x$, 変数に $t$ を使っていて物理っぽい.
偏微分方程式だと関数には $u$ を使っているのをよく見る.
$u$ に関しては他とぶつかりにくい記号という感じはある.

P.2.
放射性元素の個数を時間変化で追いかけると不連続関数になるはずだから,
微分自体に意味づけ必要で物理的にはかなり繊細な問題ではある.
もちろんその辺の細かい話はしていない.
気になる人には気になるだろう.

細かいことをいえばある放射性元素が 1 発である非放射性元素に変化する確率の話なのか,
全ての放射性元素に対する話として,
適当な遷移を経て最終的にある非放射性元素に変化する確率なのかとか,
わりとめんどいところはある.
ラムダの意味づけ問題とも関わる.

ただ放射性元素の種類によると言い切る部分の物理的解釈の話で要は物理で与太話ではある.
そもそも確率の定義から割と繊細な感じがある.

4 ページ.
微弱な電波の増幅の話は大事.

4 ページ
資本 Kapital は何でドイツ語なのか.
経済での慣習?
拡大相似的というところ $\alpha$ が小さくないと成り立たなそうだし限界来そう.
$K$ と $L$ にもよるのか.
経済学的な議論は気になる.
1.16 は $f(k)$ に関して $(t)$ のつく位置合ってる?

ページ 6.
シェイクスピアの話は面白い.
係数も時間変化しそうだし方程式自体も時間変化しそう.
制御やフィードバックとかのもっと一般的な応用がある話っぽいので
そこまでのコメントがあるともっと良くなる.
今ふと思ったが, これに限らず本にも書こうと思ったが紙数制限で盛り込めなかった話を,
細かい説明なくていいので放流してもらえると助かる.
ただ完璧主義の方だとそういうのは心情的に許せないっぽいし,
それは諸々の大人の事情もありそうだから,
思いつく限りはコメントをつけまくるお仕事を私が勝手にしていくつもりでコメントつけていこう.

$R$ と $J$ の値の制限があるが,
この微分方程式の解,
本当にその範囲内に収まるのだろうか.
係数にもよるのか.
数学的にやるのめんどいというか,
そもそもほぼ未経験の微分方程式論でどうやっていくのかちょっと想像つかない.
そんなときこそパワーで押し切れる数値計算やってみたい.
パラメータによって振る舞いがどこまでどう変わるか気になる.
符号以外の定量的なところを知りたい.
市民なので原論文読みに行けなさそうなのでつらい.

固有値制御の指摘も大事.
精度が高い非線型のほう,
こちらにも線型化が有効なのだと勝手に想定しているが,
力学系的に本当のところはどうなのだろう.
全く詳しくないので気になる.
あと心理学的にこの手の数学的手法はどの程度有効性があるのかとかそういう話も気になる.

7 ページ.
モデル化で (1).
いきなりデータ取るの?
まず理論的な定式化してからその予測に基づいて検証やるのかとか思っていた.
もちろん先にデータがあるケプラーの話みたいなのもあるし,
理論はよくわからないがとにかくデータ取れたみたいなのも多いとは思う.
特に非理工系なら理論 (数学的な方程式) の存在すら極めて非自明だし.
とかいろいろ思ったがちゃんと 8 ページに書いてあった.

ページ 9.
関数 $P$ や $Q$, 何の関数か書かれていないので $x$ の関数かもしれないし,
書き方微妙な感じがある.
数学の人間だけの小うるさい話かもしれない.
私もすっかり数学的な判断の枠組みに浸かってしまった.

ページ 10.
同次 (斉次), 何でこういう名前が付いているのだろう.
どんな経緯によるのか.
歴史的事情も何かあるのだろうか.

ページ 10.
行列使ってまとめると線型性が形式的に見やすくなる.
線型代数のご利益だし強烈な破壊力を見せるところでもある.
こういうところをはじめから紹介してくれているのは親切感がある.
見習いたい.

ページ 11.
非同次線型への書き直し.
これは大事.
同次方程式をこれに書き換えて存在証明をすることだってある.
実際, 私の学部 2 年のときの講義でやった証明がそうだった.
解析力学でハミルトン形式でも似た話は出てくる.
(似た話というか本質的に同じなのか?)
もっと強調してもいいのでは感もある.
でも初学者向けにはきつすぎるから省いたのだろう.
この手の配慮, 逆に初学者には手法の広がりが見えなくなるのでなかなかつらいところもある.
私はゴリゴリ書いていくコンテンツを作って補完していこうという決意を新たにする.

ページ 12.
本書の主要部.
大事な指摘だ.
数値計算も大事だしその数学的保証という道もある.

ページ 13. 2.7
微分作用素の因数分解,
演算子法を想起する.
実際, あとで演算子法の話はある.

ページ 14, 特異解
よく見かけるきわどい例だ.
ビンビン異常な感じはあるが,
注意を見ると変数変換で特異解は「消える」ようだし,
何となく代数解析的にどういう扱いになるのか気になる.

高いレベルの一般論から見たとき,
異常な例がどういうところに入るのか,
気になって仕方ない.

微分方程式は個別具体的な話になりがちな感じがあるので,
何か背景があるなら多分相当特殊または綺麗な世界がある感じがある.
私自身の研究上の趣味として今の数学の一般論で切り崩せないところを個別具体的にアタックしていく的なところにフォーカスが当たりまくっているが,
勉強的には綺麗なところも興味はある.
あと負の時間への延長と複素化した時の振る舞いも気になる.

ページ 15.
例.
なかなかクレイジーだなと思ったら非線型だった.
ちょっと考えれば当たり前か.
非線型, 何が起こるかわからなくてリアルに恐ろしい.
その前の例もだが.

ページ 15.
解の一意性は工学的応用・シミュレーションでも大事だし,
もっと強調していい気もする.
ただそれを言うならむしろ安定性の方なのか.
こんなこと重々承知であえて削ったのだろうというのは察する.
そういう私が話したいことは私のコンテンツでやればいいし,
ガンガンやっていこう.

ページ 16.
変数分離形.
変数分離で綺麗に解ける理由には代数解析的な理由があり,
その辺の代数解析的な知見の蓄積もある気がした.
根拠は全くない.
こういうのはどう調べたらいいのだろう.

偏微分方程式版でも積の形に分解するし,
そこからフーリエ的に重ね合わせたりもするし,
そっちの理由とかも当然に気になる.
常微分方程式と類似の理由によるのかどうか.

ある種の完全微分方程式的な香りはある.
それがどの程度関係しているのかよく知らない.
和では駄目で積でこそ意味があるというのもあまりきちんと捉えられていない.
簡単な理由だったりしたら自らの不見識が死ぬほど恥ずかしくなるがそれはそれで仕方ない.
全くわからないが有理型の微分形式とかなんかそんな感じなのだろうか.
気になること山ほどあるし, これをスルーしまくっていた昔の自分もすごい.
知識と経験を身につけた上で振り返るとこんなに見える世界が変わるのかと改めて驚いている.

ページ 16.
定義域問題.
常微分方程式での定義域問題はどういう感じになるのか全く想像がつかない.
いま記憶を掘り下げたら幾何での局所一係数群とベクトル場の関係くらいしか常微分方程式の定義域問題を真剣に考えたことなかった.
偏微分方程式では (非線型?) 放物型方程式で解の爆発とかあるし,
常微分方程式ではどんな面倒があるのだろう.

ページ 17.
ロジスティック.
特殊解の出し方など面倒な話が多くて割と真剣に意味がわからなくて困る.
線型作用素論と線型の方程式しか扱って来なかったから非線型に対する感覚が薄くて,
こんなのでも衝撃を受ける.
むしろ線型の世界がどれだけ綺麗なのかに衝撃を受けるべきなのだろう.

ページ 18.
同次形.
全くわからないが射影空間内で意味がある微分方程式はだいたいこんな感じなのだろうか.
射影空間では空間変数の同次性は大事なはずだが時間変数についてはどうなのだろう.
この程度すらよくわからないこと, さすがに自らの不見識さを感じずにはいられない.
ページ 21 で双曲線とか出てくるのにはどうしても代数幾何を連想してしまう.
気になる.
代数幾何もちゃんとやりたい.
通信講座を作るていで強制的にやる時間作りたいくらい.

ページ 24.
定数変化法.
初めて見たときなんだこの異常な方法は, と思った方法だ.
これ, 発見者はどういう経緯でこの解法を見つけ, どう合理化してきたのだろう.
最初から理論先行で解法を見つけたとは考えづらいし.

ページ 29.
全微分が何なのか未だに全くわからない.
1 次微分形式と違うのかどうかとかそういうのもいまだによくわかっていない.
試問のときいきなり「全微分の定義を言ってください」と言われて
しどろもどろになった院試の時を思い出す.

ページ 30.
5.2 節, 注意 5.2.1
「解ける方程式」に対する種明かしが来た.
でもどの程度まで完全形式からくる話と思えるのだろう.
有理多項式 (と呼んでよかったか?) から来る微分形式と代数幾何的な香りを感じる.
ドラームコホモロジーだとか幾何で完全形式作りたいとき,
とりあえず多項式使えば割と気楽に作れるのかと今更ながらの発見があった.
閉形式の組織的な作り方もあるのだろうか.
気になる.
そのあとも幾何とコホモロジー, 代数の香りがする.

定理 5.3.1 の証明,
多様体上でドラームコホモロジーやるときのホモトピー作用素的な話の原型なのだろうか.
あとで確認しよう.

ページ 36.
問題 5.3.1.
デカルトの葉線は特異点あるしめちゃくちゃめんどいだろう.
こんな簡単なやつからめちゃくちゃめんどいのが出てくるから代数幾何怖い.
あと完全形式で潰れるこの辺の話,
コホモロジー的にはどう捉えたらいいのかとかこれも未だに全くわからない.

ページ 41.
積分因子, こいつは代数的, 幾何的に何か意味ありそう.
積分因子の一意性のなさ, そして解には一意性があるわけで割と謎.
多分なんか綺麗な話が裏にある気がしている.

ページ 41.
6.2.
このダイレーションによる不変性はどんな対称性なのだろう.
各種関係式や積分因子の形にも意味がありそうだが.
解が存在する定義域も気になるが,
関数解析的にやるとき, どんな関数空間を設定すればいいのだろう.
指数がかかっているから可積分性かなり悪そう.
常微分方程式というか, 時間発展があるとき時間に関する可積分性はふつうよくないのか.
時間に関して連続性はそれなりに仮定できそうではある.
発展方程式やるときも時間に関しては連続性とか微分可能性を
課すだけで可積分性をつけることはあまりなさそうだし,
それはそうか, という感じはある.

ページ 45,
多項式というか関数の一次独立,
明示的に例が上がっていてとても大事っぽい.
今さらだが紙数が少ない中でも有名な例や大事な例を割ときっちりおさえていて,
よく盛り込んだなという感じがある.

ページ 47.
重解はともかく,
減衰のある調和振動子の問題で教養の物理というか力学でやるやつ.
とても大事.
ちゃんと章末問題にも書いてあった.

ページ 57.
演算子法.
これ, 数学的にはどんな道具で厳密化するのだろう.
代数解析だと基本は環という気がするし,
体の構造叩き込んでいる感のある演算子法はちょっと違う気もする.
でもよくわからない.
超準解析と演算子法みたいなのもあった気がする.
魔法少女に聞いてみよう.

改めて具体的な解法は割とどうでもよくて背景にある理論,
または何か理論があってほしい欲求が自分の中にあるのを感じる.

ページ 61.
行列の指数関数.
ふつうこういうのを見ると驚くのだろうが驚いた記憶がない.
特に物理でだいたい何かの流れでわけわからないのが出てきて,
だいたい何もかもよくわからないので驚く前に着いて行くだけで手一杯,
いつの間にか慣れていて不思議さを感じるどころではないというのが私の平常運転だ.
何でみんなそんなに初見で驚けるのか, それにいつも驚く.

物理では量子力学で微分作用素やハミルトニアンの指数関数がゴリッと出てくるので行列の指数関数程度で驚いていてはいけない.
この辺は現代数学観光ツアーでも案内したところだ.
数学でもベクトル場を指数の肩に乗っけたりといろいろな概念が指数の肩に乗る.
指数関数, パワーがある.
$p$ 進だとあまり性質よくなかった記憶がある.
$p$ 進の線型常微分方程式はどうなっていただろうか.
数学の現在を流し読みし直そう.

あと行列係数にした微分方程式については,
ベクトルがもろに関数,
行列が作用素になったバージョンだと発展方程式になるしそういう妄想も膨らむ.
作用素値行列という話に持っていくと作用素環とか $K$ 理論とかも想起するし楽しそう.
この形見るだけで楽しめる.

文章だとまるで何も想像が膨らまなくても,
式を何か 1 つ見るだけで自分の頭の中の数学世界が一気に展開されるのでその辺も式を使う醍醐味という感じがある.
数学をやった人間の特権だ.

例 9.2.1 もリー環, リー群を想起する.
定理 9.3.1 も超長距離の射程を持つ.
なるべく広く深い世界を見せようとしている著者のメッセージが見える.
ただ, 初学者, もっというなら昔の自分は当然ながらこんなのは全く見えず感じ取れもしなかった.

その当時こんなこと聞かされて理解できた自信は全くないが,
それでも聞きたいし読んだ本には書いてあって欲しかったというのはある.
見えたあとでの後出しジャンケンだしわがままというのもわかる.
だからこそ本当に先の先まで書き含めたコンテンツが実際のところどうなのか,
本当にお役立ちコンテンツになるのか実験してみたいし,
だから現代数学観光ツアーとかやってみている.
これの欠点は展開できる世界がそのまま著者の限界を見せることだ.
私が見えていない世界は紹介のしようがない.
自らの不勉強さを晒すことにもなる.
それでもやろうという無駄な気概が大事だと信じてやっていこう.

ページ 70.
対称ではない行列の対角化,
10 年以上やってないので面食らってしまった.

ページ 75.
$\mathrm{det} \, e^A = e^{\mathrm{tr} \, A}$, リー群とかリー環やっているとよく出てくるのだろうか.
私がやっている場の理論まわりの作用素論だとでてくる大概の作用素に対してトレースが定義すらできないし,
冨田竹崎理論的にそれが勘所でもあるから使いどころが今ひとつ見えていない.
Confined Hamiltonian くらいであればコンパクト性しか要求されず調和振動子は入るし論文にも出てくるからまだ活躍どころはある.
調和振動子くらいならトレースクラスにも入るのか.

ページ 77.
冒頭の時間無限大の振る舞いを見るという話だけ見てもこの節の難易度の高さが伺える.
もちろん面白いし応用上も大事な話だ.
時間無限大というと散乱理論が真っ先に想起される.
非平衡統計での平衡への回帰問題もある.
確率論で時間を過去の無限大に飛ばした時の話で古代解 ancient solution みたいな話を見かけたこともある.
リッチフローの話でも出てくるらしい.

9, 10 からの続きだから当然 2 階の方程式だ, という話なのだろうが,
やはりちゃんと 2 階と明示してほしい.
系 11.1.1 で断りなく微分方程式うんぬんと書いてあって,
解空間が必ずしも 2 次元とは限らないのでは, とちょっとびっくりした.
数学徒がこの辺うるさいだけで一般の理工学関係者が見ると「いちいちうるさい」と思うのだろうか, という感じもある.
別に数学徒特化型の本でもないが, ぱらっと見たときに「え, いつでも 2 次元なの? 」と誤解を生まないだろうか,
と見たことのない一般理工学徒を仮定してそれに責任を押し付けていく方の市民だ.

まったく関係ないが,
トポロジー入門あたりにある「一般の位置」という概念,
アレは割とめんどくさい概念だな, というのをふと想起した.

ページ 87.
第 3 部は冒頭からパンチ力が高い.
何で自励系というのだろう.
何由来の言葉なのか.

ページ 87.
解曲線が 1 点 $p$.
曲線なら 1 次元であるべきなのに 0 次元になっているという話,
これ実はかなりめんどい話なのでは.
そんな時があるのかどうか知らないものの,
代数幾何と絡むことがあるなら,
ある種の特異点解析というか特異点解消みたいな話題も出てくるのだろうか.

定理 12.1.1 も強烈な分類定理だ.
ただ限定が強烈すぎてこれだけ見ると自励系は何か面白いこと起きるのかという感じもしてくる.
もちろん個々の系を見ると大暴れするはずで,
そんなに大人しくもなるわけないだろうというのも想像できる.
個別具体的な話と猛烈に一般的な話, そのギャップみたいな何かを感じる.
どうするとうまく言葉になるのだろう.

ページ 89.
めちゃくちゃエネルギー保存.
多分一般化できるのだろう.
あと, これは次元関係あるのだろうか.

P.91, 注意 12.1.3.
【自励系の名は上のような物理学の例に由来し】どう由来しているのかよくわからない.
相空間という名前を聞くとテンションが上がる.

P.91. 12.2 節, 「第 1 積分あるいは保存量」.
当然解析力学や群, ネーターの定理とかそういうのが一気に頭の中にロードされてくる.
尊い.

P.93 ロトカ-ボルテラ方程式.
何故かテンション上がる.
ボルテラと聞くと何となく積分方程式の方がイメージ強い.
あくまで私の中では, という話.
ボルテラの積分方程式を出すならフレドホルムの積分方程式ももちろんセットでくる.
あまり詳しく知らないものの Wikipedia 先生には次のような記述がある.

ヴォルテラ積分方程式は、人口学や、粘弾性物質の研究、保険数学に現れる再生方程式などへと応用されている。

フレドホルム積分方程式は信号処理の理論において自然に生じ、中でもデビッド・スレピアン(英語版)により広められた有名なスペクトル密度問題(英語版)は最も顕著である。フレドホルム積分方程式はまた、線形前進モデリングや逆問題においても用いられる。

注 12.3.2 が切ない.
こういう具体例を見ると微分方程式は遊べる要素が多いから,
数値解析とも絡めて遊び倒したくなる.
プログラミングの勉強も込めていつか微分方程式で遊ぼう企画を立てたい.
幾何との絡みもあるしカオスとかフラクタルとかそういうのもあるし,
夢だけはどこまでも広がる.

P.98. Chapter 13 【平衡点のまわりでの解の挙動】
詳しくはないが少なくとも初等的な範囲の力学系の理論では線型化が大事と聞くし,
ここもその香りを感じさせるという点ではギリギリの線を突いている感じがある.
具体例も扱いつつ計算もそこそこ丁寧.
物理や応用とも絡めた例とか章末演習も含めて一通り目を通すべきところ.

私の個人の経験というか思い出からいうと,
これに関しては「平衡点近傍でポテンシャルが作る行列が正定値ならその系は安定」というのが印象深い.
学部 1 年の力学でやった.
そのとき担当教官の大場一郎先生が「こんなすごい結果が一般的に証明できる.
素晴らしいと思いませんか?」みたいなことを言っていたのを 10 年以上経ったいまでも覚えている.

ちなみに私はこのとき, この講義で「すごい」とは全く思えなかった.
講義の議論や計算は追えたが「よくわからないがこれはすごいらしい」というの,
何がどうすごいのか全く感じとれなかったからだ.
このあと学部 2 年で友人の誘いで夏に KEK に行ってそこで
「調和振動は古典力学からニュートリノの質量に関するうなりまで全ての物理を貫く決定的に大事な話なんだ」みたいなことを聞いたのも覚えている.
そのときもよくわからなくて「そうなのか」くらいのぼんやりした感覚しか持てなかった.
黒川さんの「学部 2 年で解析力学なんて難しいことをやっているの!?」みたいなコメントが印象的で,
それもまだ覚えている.

今では確かに強烈な話だな,
というのはわかるし力学系的な安定性に関わる決定的な議論だというのもわかる.
でも本当にピンと来ているかと言われると心許ない.

何かそういう学部低学年のときのピンと来なかった遠い記憶を思い出させる話だ.

ちなみに P.100 の定理 13.1.1 がまた強烈で.
微分方程式で線型代数の諸結果,
特に線型化した行列の固有値の議論が定性的に大きく効いてくる話は線型代数の活用で決定的に大事なので,
絶対におさえておくべき.
機械工学でロボットの安定制御とかそういうときにも効いてくる.
平衡点近傍で放物線の回転面みたいになっているか,
回転面でも先端が上向きか下向きかがあるし,
馬の鞍 (まさに鞍点) のようにある方向から見ると極小,
ある方向から見ると極大という状況がある.
局所的な振る舞いが大域的・定性的な振る舞いをも決めるという豪快な結果なのでなめてはいけない.

P.110 例 14.2.3.
級数解が存在しない例,
注意 14.2.1 のコメントが嬉しい.
$t=0$ での非解析性が効いていることをちゃんと書いてくれている.
非解析性があるんだろうなと思ったらちゃんと書いてくれていたという.
親切だ.

P.111. ポホハンマー記号.
階乗絡みの話で Bhargava の仕事を思い出した.

階乗まわりだからやはり組合せ論に応用があるらしい.
超幾何級数論にも応用があるとか.

P.113. Chapter 15, 線形方程式の正則点と確定特異点.
確定特異点, いまだに全くわからない.
Riemann-Hilbert 対応とかいろいろ話はあるというのは知っている.
偏微分方程式版だとどういう話になるのだろう.
柏原さんの仕事がある.
気になることがたくさんある.

  • http://www.math.titech.ac.jp/~yamakawa/proc-biwako2.pdf

P.122. Chapter 16 ルジャンドル多項式.
冒頭部の特殊関数への導入がけっこう数学的に大事っぽい.
ただ非数学の人達には全く響きそうにない書き方な気がするがどうなのだろう.
偏微分方程式との関係はもっと早く強調してもいいと思っている.

内積とか直交多項式は導入が唐突という感じはある.
注意 16.2.2 は線型代数との接続上決定的なのでちゃんと読むべき.

母関数もどう捉えればいいのかいまだによくわかっていない.
いまだに, というか学部 2 年で何となくちょろっとやったきり,
母関数にどういう背景があるのかを再勉強していない.
どんな本に書いてあるのだろう.
関数解析系, 代数解析系それぞれでの話があったりするのだろうか.

と思っていたら注意 16.3.2 があった.
これは電磁気で多重極展開とかあってまさにその辺.
どんなところで応用があるか一言でもコメントがあると良かった.
ディラックの $\delta$ とかもさらっと出てきた.

P.132 Chpater 17 ベッセル関数.
「ベッセル関数は超幾何関数の 2 つの特異点を合流させることで生じる」とか,
けっこう大事そうなことが冒頭にさらっと書いてある.

こっちも 2 体問題とか物理系での応用話がある.
P.136 の問題 17.2.1 には人工天体の軌道計算にも使われるというコメントあり.
知らなかった.

Pl.139 17.4 太鼓の音.
ルジャンドルのときと同じで,
ここも改めて偏微分方程式との関係に関する説明がある.
注意 17.4.1 で太鼓の音と音程に関する話があって,
この話知らなかったのでちょっとびっくりした.

追記

リプライの記録.

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