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語学

ホームで紹介した「理系のためのリベラルアーツ・総合語学」の視点から語学コンテンツを展開します. 勉強の役に立つツール・文献類も紹介しています. これはもともと私が参加している語学・言語学コミュニティでの情報共有用に整理した参考コンテンツ集です. 一般公開しても問題ない内容だったためこちらに載せることにしました.

  • 予定: ネーミングの科学
  • 予定: アニメ・漫画・ゲームの語学 エンタメに見る言語の世界
  • 予定: テクニカルライティング
  • 予定: マーケティングの音声学

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学習の基本

基本

語学学習の基本は発音練習です. もしあなたが (私のように) 本を読むことだけに興味があるのだとしても, です.

その最大の理由は言語は音主体の概念だからです. 文字が発明されたのも, ましてや多くの人が読み書きできるようになったのはつい最近です. 音は言語にとってそれだけ多くの情報を持っています.

単語を覚えるときも単語の音のイメージが重要です. 例えば英語では sp がつく単語には, そのスペルと音から来る「シュパーン」というイメージがあります. たとえばスプラッター映画の splatter には「シュパーンと跳ねる」イメージがあります. 他にも speak は「唾を飛ばしてしゃべる」のイメージです. 英語で格が消滅したように, 音の都合によって歴史的に文法が変わることさえあります.

はじめは雑な発音でも構いません. まずは音読の習慣をつけましょう. 全てはそこからです.

発音抜きの語学の数学・物理対応版

おそらく「発音抜きの語学は式抜きの数学・物理」と同じです. 文の強弱のリズム・ストレス・メロディをまとめてプロソディと言います. 言語はもともと文字を持っていませんし, 音に載せないとわからない部分がある. 聞いて心地良いリズムがあり, 発音のしやすさをはじめとして音は文法にさえ影響を与えます.

俳句の五七五など, 言語コミュニケーションでは語呂の良さもとても大事です. これを書いている時点でヒンディー語を勉強したことがないためどこまで本当なのかかわからないものの, ラマヌジャンを育んだインドのヒンディー語は音のリズムがよいと聞いています. 他にはイスラム教のクルアーンも韻律を重視した文章だとか.

広い意味での暗記

これは単語・熟語もそうですし, 活用・格変化を含めた文法もそうです.

何をどう言おうが言語は一定のルールを持ちます. 通じると言えば通じるけれども, それがわかりやすいかは別です. もしあなたが誰かと・何かとコミュニケーションを取りたいなら, 適切なルールに則った方がうまくコミュニケーションできるはずです. その一つがまさに文法です.

日本語を母語とする日本人は文法について細かいことを勉強したことがなくても日本語を話せます. それと同じくらいの膨大な量を浴びれば, 他の国の言語もある程度は自由に操れるでしょう. しかし日本語と同じだけの量を浴び, その中から自力でルールを見つけ出して運用するのは何をどう考えても時間の無駄です. 効率ばかりが全てではありませんが, あまりにも効率が悪すぎるのは問題です. もしあなたが世界の誰も文法を知らない言語を研究しようとしているならともかく, あなたは語学を何かの目的のために勉強しているはずで, できる限り効率よく効果的に勉強したいはずです. 延々とくり返す中でようやく三人称単数現在の動詞には s がつくことを自力で悟るのを待つより, 人称・数・時制のような文法概念を知り, 三単現の s を法則として学び, その法則の適用練習をした方が遥かに速く楽です.

なぜ多言語を扱うのか

このサイトは理系のためのリベラルアーツ・総合語学という大きな方向性があります. その中で語学, 特に英語は重要な核の一つです. 英語一つだけでも大変なのになぜたくさんの (自然) 言語を扱うのかと思っている方がいます. あなたもそうかもしれません. 結論から言えば総合的な言語への認識を上げるため, とりわけ自然言語の運用力を上げるためです. もっと強く言えば, 母語 (である日本語) の運用精度を上げるためです. 以下, 母語の代わりに日本語と書くことにします.

よく言語に関する能力は母語 (日本語) の能力で決まると言われます. 実際, 日本語で言われてさえわからないことが英語や他の言語ではまず理解できません. かといってなかなか日本語それ自体を勉強するのは大変です. いちいち日本語学・日本語の言語学の専門書の適切な記述にあたれるわけでもありません. そんなときは比較対象として他の国の言語を勉強することで, 逆説的に日本語に焦点を当ててみよう, それが多言語に触れる理由です.

例えば実際にロシア語の本を読んでいて出会った例を挙げましょう. 日本語で「医者の兄」というとき, 「ある医者の兄」と「医者である兄」の意味があります. しかしロシア語ではこれらをはっきり区別します. 特に брат доктора (brat doktora) は「ある医者の兄」の意味です.

特に自然科学は日常に潜む何気ない現象を詳しく調べることが全てのはじまりです. 日々話す日本語・自然言語の何気ない現象に目を向け, 一歩立ち止まって考えるのは自然科学を考える上でも大事な営みです. 英語だけでは見えない世界もたくさんありますし, 言語にも好き嫌いがあります. だからこそいくつかの言語の世界に触れてみよう・触れてみてほしい, そんな思いを込めて私自身日々勉強しています.

基本ツール類

Google 多言語検索帳は各シートの一番左に単語を入れると, 多言語での Google 翻訳の結果を一気に出力してくれます. もとが Google 翻訳なので単語だけではなく文章も翻訳できます. 各シートごとに翻訳元の言語をいろいろ変えられます.

Basic English のシートは基礎語 850 語あれば英語でコミュニケーションできる, という思想のもとに整理された英単語集の単語をもとに, 各言語の翻訳を Google 翻訳で自動生成しています. 他の言語でも基本的な単語が対応しているはずなので参考になると思って作った資料です. このシート自体には他の資料からの単語も叩き込んであるので, 出典の列から BasicEnglish で絞り込んでみれば 850 語だけが見られます.

必ずしも翻訳の精度は高くありませんが, さっと多言語を串刺しにして調べる分には便利です. 特に明らかな類似がある単語・言語を眺めて遊ぶこともできます.

発音も重要なので, 発音チェック用の資料として, Google 翻訳のページと ReadSpeaker を挙げてあります. Mac には標準の発音チェックツールもあります.

最後の語学コンテンツ集は溝江塾の過去のコンテンツ, 特に昔私が参加したセミナーの資料も入っています. 最後の方に入っている次の 3 つのセミナーの記録は, もとがセミナーの記録なのでまとまっていて読んで楽しいと思います.

  • 2015-08-23 英語学習と脳科学,
  • 2014-08-23 英語発音矯正講座 たった一日であなたの英語発音がネイティブ発音に変わる
  • 2014-07-26 ハイパーボキャブラリーセミナー

私の語学学習・自作コンテンツ資料まとめから一括生成しているので, 私の自作コンテンツも入っています. いろいろあって理工系を志す中高生向けコンテンツとして, 「アインシュタインの特殊相対性理論の論文を英語・多言語で読む」というコンテンツを作っていて, その資料が入っています. 私の現状の知識・調査能力などの限界でろくな解説がつけられていない部分も多いものの, 単語編の Maxwell や bewegen のところがいまのお気に入りです.

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参考文献集

言語学の語彙メモ

  • back consonant: 後舌子音
  • back vowel: 後舌母音
  • central approximant: 中央接近音, 舌の中央部にやや広い隙間を作り, そこから呼気を出すことによって産み出される音
  • consonant: 子音, 口腔内で呼気の流れがある程度妨げられて発せれられる言語音
  • consonant shift: 子音推移 (グリムの法則)
    • (p, f, b), (t, th, d), (k, h, g) の置換
    • "3" に関わる印欧祖語の振る舞い: 英語は three の th だが, ロシア語 (tri), ラテン語 (triangle), ギリシャ語 (trihedral) は t.
    • (ru) pol- = (en) full
    • (ru) do = (en) to
    • (lat) plenitude = (gr) plethora = (ru) polnost' = (en) fullness
  • fricative: 摩擦音, 口腔内に狭い隙間をつくり, その間を通る呼気の摩擦により産み出される音
  • front consonant: 前舌子音
  • front vowel: 前舌母音
  • grade: 階梯. 母音の音色の変化のこと.
    • (full) e-grade
    • (full) o-grade
    • reduced grades
    • zero-grade (i.e. no vowel at all)
  • hard: 硬 (音)
  • implosive: 入破音, 空気を吸い込むことによって産み出される音
  • lateral approximant: 側面接近音, 舌の側面にやや広い隙間を作り, そこから呼気を出すことによって産み出される音
  • liquid: 流音 (r や l)
  • manner of articulation: 調音法
  • nasal: 鼻音, 鼻腔から呼気を出すことによって産み出される音
  • onomatopoeia: 擬音
  • point of articulation: 調音点
  • sibilant: 歯擦音
  • soft: 軟 (音)
  • stop, plosive: 閉鎖音, 破裂音, 口腔内を閉じて呼気の流れを一旦止めることにより産み出される音
  • voiced: 有声音, 調音の際に声帯の振動を伴う音
  • voiceless: 無声音, 調音の際に声帯の振動を伴わない音
  • vowel: 母音, 口腔内で呼気の流れがあまり妨げられないで発せれられる言語音
  • vowel gradation: 母音交替
    • 例: sing, sang, sung, song
    • 例: (ru) vod-, ved-, vad- in proizvodnaya derivative; proizvedeniye product; povadka conduct, habit

  • accusative: 対格
  • case: 格
  • dative: 与格
  • instrumental: 具格・造格
  • prepositional: 前置格
  • nominative case: 主格
  • genitive: 属格; スラブ語では生格

言語名

  • English: 英語
  • proto Indo-European: 印欧祖語

時制

  • future tense: 未来時制
  • past tense: 過去時制
  • tense: 時制

  • feminine: 女性
  • gender: 性
  • masculine: 男性
  • neuter: 中性

品詞

  • adjective: 形容詞
  • cardinal numeral: 基数詞
  • ditransitive verb: 二重他動詞
  • indeclinable noun: 不変化名詞
  • intransitive: 自動詞
  • noun: 名詞
  • numeral: 数詞
  • ordinal numeral: 序数詞
  • participle: 分詞
  • particle: 不変化詞 (語形変化のない副詞・前置詞・​接続詞など)
  • parts of speech: 品詞
  • personal pronoun: 人称代名詞
  • preposition: 前置詞
  • pronoun: 代名詞
  • reflexive: 再帰動詞
  • transitive: 他動詞
  • verb: 動詞

MISC

  • alveolar ridge: 歯茎
  • aphetic: 語頭音消失
  • articulation: 調音
  • aspect: 体
  • coinage: 造語
  • compound: 合成語
  • copula: 繋辞 (文の主語と述語を結ぶための補助的な品詞)
  • copulative: 連繋的な
  • declension: 語形変化, 屈折, 曲用 (名詞などが性・数・格といった文法カテゴリーに対応した語形変化)
  • declied: 屈折した (inflected)
  • defective: 屈折形
  • diminutive: 指小辞
  • direct object: 直接目的語
  • glottis: 声門
  • grammar: 文法
  • hard palate: 硬口蓋
  • imperfective aspect: 不完了体
  • indirect object: 間接目的語
  • inflection: 屈折
  • interrogative: 疑問
  • larynx: 喉頭
  • lips: 唇
  • nasal cavity: 鼻腔
  • object: 目的語
  • oral cavity: 口腔
  • orthography: 正書法
  • perfective aspect: 完了体
  • pharynx: 咽頭
  • phonetics: 音声学, 言語の音に関する物理的特性 (physical properties) を扱う
    • articulatory phonetics: 調音音声学, 言語音を発する側に関する音声学
    • auditory phonetics: 聴覚音声学, 言語音を聞き取る側に関する音声学
    • acoustic phonetics: 音響音声学, 言語音を発する側と聞き取る側の間に関する音声学
  • phonology: 音韻論, 言語の音に関する心理的特性 (psychological properties) を扱う
  • plural: 複数
  • root: 語根
  • sign language: 手話
  • singular: 単数
  • subject: 主語
  • teeth: 歯
  • tongue 舌
  • uvula: 口蓋垂
  • velum, soft palate: 軟口蓋
  • vocal cord: 声帯

雑多な事実メモ

  • hieroglyphs = pictograms
  • Phoenician alphabet (essentially the same as the Hebrew)
  • alpha = aleph

Mac限定: 音声読み上げ

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say -v "Amelie" "je suis, tu es, il est, nous sommes, vous êtes, ils sont"

brew install sox --with-lame
sox file1.mp3 file2.mp3 output.mp3

いくつかの基礎知識

日本語で「てにをは」を格助詞と言うときの格のことで, Wikipediaにいろいろな情報がまとまっています. 必ずしも専門家のチェックを受けたわけではないので注意して読む必要があるとはいえ, 一つ参考になる資料です. 英語・フランス語・イタリア語などにはない概念なので, 他の言語を勉強するときに注意する必要があります.

いくつかの言語での状況を表にまとめておきます. 詳しくは各言語での格情報を見てください. Wikipedia にあるように言語によって状況は違っていて複雑です. 念のため書いておくと格という概念を持つかどうかと, その概念が表す意味を持つ文法・構造・表現を持つかは別の話です.

格名 英名 (case) 日本語 ドイツ語 ラテン語 ギリシア語 サンスクリット
主格 nominative ~は o o o o
呼格 vocative ~よ! (呼びかけ) o o o
対格 accusative ~を o o o o
属格 genitive ~の o o o o
与格 dative ~に o o o o
奪格 ablative ~から o o
具格 instrumental ~によって (手段) o
処格 (地格) locative ~において (場所) o