動詞

動詞の三変形

基本

次の三つを動詞の三変形と言います.

過去基本形と過去分詞の作り方でドイツ語の動詞を規則動詞と不規則動詞にわけます. 規則動詞は弱変化動詞とも言います.

規則動詞の三変形の作り方

まずは規則動詞の三変形の作り方を覚えましょう. 人称変化はあとに回します.

不定形 -en 過去基本形 -te 過去分詞 ge-t
lernen lernte gelernt
weinen weinte geweint
warten wartete gewartet
reden redete geredet

規則動詞は不定形・過去基本形・過去分詞の全てで語幹が同じです. 過去分詞は gelérnt のように ge- の次の綴りにアクセントを置いて読みます

英語と似ている部分もあればそうではない部分もあります. 英語だと過去系・過去分詞には -ed, -d をつけていたわけで d と t は濁音化したかどうかだけの違いで同じとみなしていいでしょう. ドイツ語の過去分詞には語頭に ge がつきます.

語幹が -t や -d などで終わる動詞は過去基本形の語尾 -te と過去分詞の語尾 -t の前に e を入れます.

不定形 -en 過去基本形 -ete 過去分詞 ge-et
warten wartete gewartet
reden redete geredet
atmen atmete geatmet
regnen regnete geregnet

不規則動詞

動詞の幹母音が変化する強変化動詞, 幹母音の変化はするものの語尾の形が規則変化と同じ混合変化動詞 (Mischgruppe), 全く規則性がない完全不規則動詞の 3 種類あります.

強変化動詞

基本

過去基本形の語幹が不定形と変わります. 過去分詞の語幹は動詞によって違い, 不定形と同じ・過去形と同じ・どちらとも違うとバリエーションがあります. 過去基本形には語尾が付かず, 過去分詞の語尾も -t ではなく -en です.

不定形 -en 過去基本形 -×-te 過去分詞 ge-×-en
lesen las gelesen
kommen kam gekommen
schreiben schrieb geschrieben
fliegen flog geflogen
finden fand gefunden
brechen brach gebrochen

細分類

不定形・過去基本形・過去分詞の語幹の変わり方は次の 3 通りです.

[○-□-○]: 不定形と過去分詞の語幹が共通

| lesen | las | gelesen | | kommen | kam | gekommen |

[○-□-□]: 過去基本形と過去分詞の語幹が共通

| schreiben | schrieb | geschrieben | | fliegen | flog | geflogen |

[○-□-△]:不定形・過去基本形・過去分詞の語幹が全て違う

| finden | fand | gefunden | | brechen | brach | gebrochen |

次のように語幹の母音だけでなく子音のつづりも変わる場合があります.

| stehen | stand | gestanden | | gehen | ging | gegangen | | nehmen | nahm | genommen |

混合変化動詞

基本

不定形と過去基本形で語幹が違うものの, 過去分詞の語幹は過去基本形と同じで強変化動詞型です. 過去基本形には -te, 過去分詞には -t で規則動詞と同じ語尾で弱変化型です. この事情から混合変化と呼ばれます.

混合変化動詞はあまり種類はないものの, よく使う身近で基本的な動詞に多いのが面倒なところです. 英語でも have, go, get, think など基本的な動詞が不規則変化するのと同じです. がんばって覚えるしかありません.

次の話法の助動詞も混合変化です.

三変形

不定形 -en 過去基本形 -×-te 過去分詞 ge-×-t
bringen brachte gebracht
denken dachte gedacht
wissen wusste gewusst
kennen kannte gekannt

完全不規則動詞

sein, haben, werden

時制や受動態を表す助動詞にもなるのでこれが最重要で必ず覚える必要があります.

不定形 過去基本形 過去分詞
sein war gewesen
haben hatte gehabt
werden wurde geworden

現在形

基本

守備範囲は英語よりも広く, 次のようなイメージで捉えます.

人称変化の基本

ドイツ語では主語に応じて動詞の語尾が変化します. これを人称変化と言います. 特に現在形の人称変化を現在人称変化と言います.

標準的な変化

一般形
人称 単数 複数
一人称 ich -e wir -en
二人称 親称 du -st ihr -t
三人称 (男性) er -t sie -en
一般形の例

例として lernen (---を勉強する) の現在人称変化を見てみましょう.

人称 単数 複数
一人称 ich lerne wir lernen
二人称 親称 du lernst ihr lernt
三人称 (男性) er lernt sie lernen

口ずさんで覚えるようにしましょう. いくつか特徴があります. 主語が複数のなら二人称親称の ihr 以外は語尾がすべて -en です. 敬称の Sie は三人称複数の sie を転用していて単数の Sie の語尾も -en です. 主語が sie/Sie の時には大文字・小文字と動詞の語尾を確認して意味を取る必要があります.

語幹が -t, -d で終わるとき

発音しやすくするため語幹と語尾の間に -e- を入れます.

人称 単数 複数
一人称 ich arbeite wir arbeiten
二人称 親称 du arbeitest ihr arbeitet
三人称 (男性) er arbeitet sie arbeiten
語幹が -s, -ss, ß, -z で終わるとき

du の -st は s が落ちて -t だけに変わります.

人称 単数 複数
一人称 ich schließe wir schließen
二人称 親称 du schließt ihr schließt
三人称 (男性) er schließt sie schließen

定形と不定形

例を lernen に考えます. 語幹はどれも lern- で同じです. 語幹はいわゆる動詞の本体で, これに主語の人称と数 (すう) に応じた語尾が付きます. 語尾つきの lerne や lernen は主語に応じて語尾が定まった形であることから定形と言います.

一方, 辞書の見出し語のように動詞を単に挙げるときの形を不定形と言います. 不定形は語幹に語尾 -en が付いた形で, 特に lernen では主語が Sie や wir の時と同じ形です. いくつかの例外を除いてドイツ語の動詞は基本的に -en で終わり, 多くの動詞で Sie や wir に対する定形と不定形は一致します.

Note

sammeln のように不定形の語尾が -n の動詞もあります.

Note

不定形が -eln で終わる動詞 (語幹が -el で終わり, 不定形の語尾が -n の動詞) は主語が ich のときに語幹末の e が脱落します. 例えば lächeln (ほほえむ) は ich lächle で lächele の e が脱落しています.

Note

ここでの Sie は敬称 (「君・君達」に対する「あなた・あなたたち」) で, 常に S は大文字です. 三人称単数 sie (彼女) とは違います.

二人称に対する注意

reden (語る) や arbeiten (働く) のように語幹が -d や -t などで終わる動詞は語尾 -st と -t の前に e を入れます. 発音しやすく・聞き取りやすくするためです. 日本語でも音便のような似た現象があります. 例をいくつか挙げておきます.

reisen (旅行する), heißen (~という名前だ), tanzen (踊る) のように, 語幹が -s, -ß, -z などで終わる動詞は du の語尾を -st ではなく -t にします.

三人称に対する注意

単数の「彼女は」も複数の「彼ら/ 彼女たち」も sie です. 動詞の語尾が単数なら -t, 複数なら -en で違うので区別できます.

一方で複数の sie と二人称敬称の Sie は動詞の語尾も一緒です. そもそも二人称敬称の Sie は 3 人称複数形の転用で音では区別できません. ふつうは状況や前後関係から「彼ら/ 彼女たち」なのか「あなた/ あなたたち」なのか判断します. 敬称の Sie と違い, 三人称単数の sie も 3 人称複数の sie も文頭以外では s を小文字で書きます.

reden (語る) や arbeiten (働く) のように語幹が -d や -t で終わる動詞は語尾 -t の前に e を入れます. 発音しやすく・聞き取りやすくするためです.

不規則変化

sein

英語の be 動詞にあたる sein を筆頭に不規則変化する動詞があります. 英語でも be 動詞, have, get など基本的な動詞は悉く異様に不規則に変わります. その事情はドイツ語でも変わりません.

人称 単数 複数
一人称 ich bin wir sind
二人称 du bist ihr seid
三人称 男性 er ist sie sind

haben

ドイツ語の haben は英語の have にあたります. 英語と同じように日本語での「持つ」からは想像できない多彩な用法があります.

人称 単数 複数
一人称 ich habe wir haben
二人称 du hast ihr habt
三人称 男性 er hat sie haben

werden

英語での become にあたる単語です. 次のような助動詞の用法もあります.

細かいことはそれぞれの項目で議論します.

人称 単数 複数
一人称 ich werde wir werden
二人称 du wirst ihr werdet
三人称 er wird sie werden

wissen

人称 単数 複数
一人称 ich weiß wir wissen
二人称 du weißt ihr wisst
三人称 er weiß sie wissen

幹母音が変わるタイプ

まずは表を挙げます. 三人称単数は代表として er だけにして敬称の Sie を省略しています.

幹母音が変わるのは二人称(親称)単数三人称単数の二箇所です.

a --> ä

人称 単数 複数
一人称 ich falle wir fallen
二人称 du fällst ihr fallt
三人称 er fällt sie fallen
人称 単数 複数
一人称 ich fahre wirfahren
二人称 du fährst ihr fahrt
三人称 er fährt sie fahren

e --> i/ie

人称 単数 複数
一人称 ich spreche wir sprechen
二人称 du sprichst ihr sprecht
三人称 er spricht sie sprechen
人称 単数 複数
一人称 ich sehe wir sehen
二人称 du siehst ihr seht
三人称 er sieht sie sehen

注意

他にも次の動詞は特殊変化です.

定形の位置

ドイツ語は格を持つため語順がある程度自由です. しかし動詞の位置には決まりがあります. それを確認しましょう.

lerne や lernst のように主語に応じた語尾が付いた形を定形と言い, 定形の動詞を定動詞と言います. ドイツ語では定動詞の位置が大事で文の種類によって決まっています.

例えば同じ単語を使って「ハンスは今日赤ワインを飲む」を書いてみましょう. もちろん英語でも語順にはある程度の自由度があります. しかしドイツ語での語順の自由度と英語の自由度には違いがあります.

  1. Hans trinkt heute Rotwein.
  2. Heute trinkt Hans Rotwein.
  3. Rotwein trinkt Hans heute.

例 1 では主語の Hans が, 例 2 では副詞 heute (今日) が, 例 3 では目的語の Rotwein (赤ワイン) が文頭にあります. 例 2-3 は英語ではありえない語順ですが, ドイツ語ではよく出てきます.

この平叙文では定動詞が必ず第二要素に置かれることに注意してください. ここで第二要素と書いたのは文頭が句になっているとき, 必ずしも「二番目の単語」ではないからです.

Note

接続詞をはさむ場合は形式的に定動詞が三番目に来ることがあります. 例えば"Hans trinkt Rotwein, aber Hanna trinkt Weißwein."のような例です.

疑問文の作り方

二種類の疑問文

疑問文は次の二種類があります.

決定疑問文

決定疑問文は定動詞を文頭に置くだけで, 英語の do や does のような助動詞は使いません.

補足疑問文

疑問詞を文頭に置いて定動詞を二番目に置きます.

Note

英語の yes に当たるドイツ語は ja で, no に当たるのは nein です. この他に決定疑問文への返答に使える単語として doch もあり, これは否定疑問文に対して「---しないのか?」に対して「いや, --する」と答えるときに使います.

Note

補足疑問文に使う疑問詞は wann (= wenn), wo (= where), wer (= who), was (= what), warum (= why), wie (= how) などです.

命令形・命令文

命令文の種類・活用例

命令文には次の 3 種類があります.

いくつかの動詞に対する活用を表にしておきます. 例外については別途項目を立てます.

人称 antworten gehen
親称単数 – [e] Antworte! Geh[e]!
親称複数 – t Antwortet! Geht!
敬称 (単複同形) – en Sie Antworten Sie! Gehen Sie!

主語

du と ihr に対する命令文にはふつう主語をつけません. 一方 Sie に対する命令文は常に主語をつけます.

du に対する語尾

次のルールがあります.

例外: sein

人称 sein
二人称親称単数 sei
二人称親称複数 seid
敬称 seien Sie

添える副詞

英語でも please をつけるように, ドイツ語でも bitte (どうぞ), mal (ちょっと), doch (ぜひ) などの副詞を添えることがあります.

非人称動詞

自然現象とともに使う動詞

この regnen ように常に es を主語にして文を作る動詞を非人称動詞と言います. 自然現象を表す動詞 schneien や blitzen が典型的です.

gehen, geben

他には gehen にも es geht + 3 格, geben にも es gibt + 4 格にも非人称動詞の用法があります. 意味・例文はコンテンツアーカイブを参考にしてください.

気候・天候・時刻

これらも主語を es とする非人称動詞で表現します.

主語が ich のときの省略

「(私は) 寒い」・「(私は) 気持ちが悪い」の「私」 のように, 寒さや暑さを感じる主体の人は 3 格または 4 格で表します. そしてこのときの es はよく省略されます.

分離動詞

基本

ある前置詞と動詞が組み合わさって一つの動詞を作ることがあります. それが分離動詞の典型例です. 例えば auf + stehen (= stand) の aufstehen の意味は「起きる」です. 他にも an, zu なども分離動詞を作ります. この前置詞相当の要素を分離前綴りと言います.

不定形は分離前綴りを動詞本体の前に付けて aufstehen, anrufen, zumachen のように綴ります. ほとんどの辞書の見出し語は auf|stehen のように縦線が入っています.

分離前綴りの例

非分離前綴りと同じく, 前置詞と同じ形が多いです. 実際, 前置詞と結びついてできた動詞でもあるからです.

他に durch-, um-, unter-, über もあります. これらは非分離前綴りになることもあります.

発音

分離動詞は áufstehen のように前つづりアクセントを置いて読みます.

分離前綴りの挙動

分離前綴りは動詞本体から離れて文末に置かれる場合と, 動詞本体と合体したままの場合があります.

結論から言うと, 現在形については, 動詞単独で使う場合は分離前綴りが分離し, 助動詞がある場合は動詞本体と分離しません. 分離するのは動詞が本来の定型第二の法則が発動して枠構造が発動するときで, 助動詞があると助動詞に対して定型第二の法則が優先して発動して助動詞-本動詞全体で枠構造が発動するため, 分離前綴りによる枠構造が発動しないからです.

これは慣れの部分も大きいため, 実際に例文をたくさん確認して慣れてください.

非分離動詞

非分離動詞の例

動詞 bekommen は kommen に be- という前綴りが付いた動詞です. ここで kommen に an の付いた ankommen とは違い, 前つづり be- は分離しません. このような動詞を非分離動詞と言います.

非分離前綴りの例

非分離前綴りの典型的な例を挙げます.

これは次のように覚える覚え方が有名です.

他に durch-, um-, unter-, über もあります. これらは分離前綴りになることもあります.

発音

非分離動詞は動詞本体にアクセントを置きます.

過去人称変化

基本

文章での説明

下にある表も合わせて確認してください. 一人称単数と三人称単数では語尾が付かないこと以外, 全て現在人称変化の語尾と同じです. ただし過去基本形が -e で終わっているときは, 一人称称複数と三人称複数の語尾が -en ではなく -n です. 最終的な形が -en となっていればいいと覚えてください. 逆に言えば最終形で -een と重ねません.

過去形の変化表

人称 単数 複数
一人称 ich -- wir -[e]n
二人称 du -st ihr -t
三人称 er -- sie -[e]n

参考: 現在系の変化表

すぐに比較できるように再掲します. | 人称 | 単数 | 複数 | |--------|--------|---------| | 一人称 | ich -e | wir -en | | 二人称 | du -st | ihr -t | | 三人称 | er -t | sie -en |

sein

最重要動詞 sein, haben, werden を例に過去形の人称変化の仕方を見てみましょう.

人称 単数 複数
一人称 ich * war wir waren
二人称 du warst ihr wart
三人称 er * war sie waren

haben

人称 単数 複数
一人称 ich * hatte wir hatten
二人称 du hattest ihr hattet
三人称 er * hatte sie hatten

werden

人称 単数 複数
一人称 ich * wurde wir wurden
二人称 du wurdest ihr hattet
三人称 er * wurde sie hatten

過去分詞

意味

「---した」または「---された」という意味の形容詞のように使えます. 名詞にかかるときは形容詞と同じ語尾を付けます.

ge- の処理

次のような場合, 過去分詞の目印である ge- に注意が必要です.

分離動詞の過去分詞

ge- が分離前綴と基礎動詞の間に入ります.

もともと副詞と動詞にわかれていて, それが徐々に一体化して一語になった成り立ちがあります. その成り立ちを優先して, 過去分詞を作るときはも前綴りを離して動詞本体を過去分詞にし, それから前綴りをつけ直す形にしているだけです.

非分離動詞, -ieren で終わる動詞

ge- がつきません.

まず ge- が付いている普通の過去分詞のアクセントは, ge- ではなく ge- の後ろの綴りに置かれます. 一方, 非分離動詞と -ieren で終わる動詞は, 語頭の綴りにアクセントが置かれない共通点があります. これらの動詞の過去分詞に ge- をつけてしまうと, アクセントが置かれる綴りは前から 3 番目 (以降) になってしまいます. そしてドイツ語の単語は語頭の綴りにアクセントを置くのが基本です.

このように 3 番目 (以降) にアクセントが来る語形をわざわざ作りたがらないのがドイツ語の感覚です.

現在分詞

作り方

現在分詞は動詞の語幹に -end を付けて作ります.

不定形の語尾が -n だけの動詞は語幹に -nd を付けて現在分詞を作ります. ただし tun は tuend, sein は seiend です.

意味

「---している」という意味の形容詞のように使えます. 名詞にかかるときは形容詞と同じ語尾を付けます.

現在完了形

基本

現在完了は次の組み合わせのどちらかで作ります.

大半の動詞は前者で, 少数の例外が後者です. この例外は自動詞のうち, 典型的には往来発着と呼ばれるタイプの動詞です. 完全不規則動詞に重要なものが大量に入っているように, 基本的で重要な動詞がこの例外に入っています.

もう少し書くと, 他動詞 (= 4 格目的語を取る動詞) は全て haben 支配です. 自動詞 (= 4 格目的語を取らない動詞) であっても, helfen (3 格を手伝う) や raten (3 格に助言する) のように, 他に働きかけるタイプの意味を持つ動詞も全て haben 支配です.

haben 支配

haben の現在形と過去分詞を組み合わせて作るのが基本です. 英語の現在完了と同じく, haben ((en) have) と過去分詞を組み合わせて完了形を作る点は同じです. ドイツ語の文では過去分詞が haben の直後ではなく文末に置かれる点に注意してください.

特にドイツ語口語では過去を表すにごく普通に現在完了形を使います. 英語の現在完了とは守備範囲が違うので注意してください.

過去形も現在完了形も過去を表せます. 地域や発話状況, 話し言葉か書き言葉か, 個人の好みによる違いもあり, 両者の使い分けは必ずしもすっきりしません. それでもまずは次のように認識してください.

sein 支配

往来発着と呼ばれる, 次のような動詞に対する完了の助動詞は sein です.

従属文での語順

従属文では定動詞が最後に置かれます. 完了の助動詞が定動詞扱いなので, 完了の助動詞 haben が文末, 過去分詞はその前に置かれます.

過去完了形

基本

過去完了形は haben あるいは sein の過去形と過去分詞の組み合わせで作ります. 英語と同じく, 過去完了形は「過去のある時点から見て既に完了していた事柄」を表すのが基本です.

注意が必要な例

次の二文の意味を考えましょう.

現在完了形は「完了したことを現在の立場から表す」のが基本でした. つまり前者は現在の立場から見て「それを忘れてしまった」と言っていて, 「今は覚えていない」です. 一方, 過去完了形は (間近の過去も含めて) 過去の時点に身を置いて「(その時は) それを忘れていた」と言っていて, 逆に「今は思い出した」です.

未来形

「werden+本動詞の不定詞」の組で未来形を作ります. 活用も改めて載せておきます.

人称 単数 複数
一人称 ich werde wir werden
二人称 du wirst ihr werdet
三人称 er wird sie werden

完了形と助動詞の組み合わせ

完了形は werden, müssen, können などの助動詞と組み合わせられます. 例えば werden と完了形の組み合わせは未来完了形です. このとき werden などの助動詞は定形で, 完了の助動詞 haben・sein は不定形です.

実は werden と完了形の組み合わせは過去の事柄に関する推量にも使われます.

不定詞句

基本

不定詞を核とした句の形で並べた動詞を含む表現を不定詞句と呼びます. 英語では to 不定詞で書くところをドイツ語では zu なしで書き, さらに不定詞を句の最後に置きます. 特に動詞を含むイディオムはふつうこの形で書きます.

不定詞句では動詞に関係が深い語・語句ほど動詞の近くに置かれます.

辞書に出てくるときのルール

よくいくつかの省略語と一緒に出てきます.

省略語 意味
jm 人を指す名詞
jn モノを指す名詞
et^4 数字の部分は格
js 人間の 2 格
jm 人間の 3 格
jn 人間の 4 格

例を見ましょう.

zu 不定詞

基本

次のように不定詞の前に zu を置いたセットを zu 不定詞と言います.

ここでは Jeden Tag für die Familie zu kochen でまとまっていて, このまとまりを zu 不定詞句と言います. zu 不定詞も zu 不定詞句も名詞のように「---すること」という意味で使えます.

英語と同じく仮主語を使った構文もあります.

カンマがつくことに注意してください.

zu 不定詞句の作り方

英語の to 不定詞と違ってドイツ語では zu 不定詞が最後に置かれます.

分離動詞は分離前つづりと基礎動詞の間に zu を入れて zu 不定詞を作ります. 分離動詞の過去分詞と同じく, まず前つづりを外して動詞本体の直前に zu を置き, 前つづりを付け直すと考えてください.

zu 不定詞句の用法: いろいろな品詞

次のような用法があります. - 主語 - 目的語 - 形容詞 - 名詞の詳細化

詳しくはいろいろな例文を見てください.

da[r]- + 前置詞に zu 不定詞句が結び付くことがあります.

ここで auf (3 格) bestehen で「3 格の対象にこだわる」という意味なので, 上記の darauf bestehen は「それにこだわる」という意味であり, zu 不定詞句は「それ」の具体的な内容です. 後者の auf (4 格) kommen は「4 格の対象を思いつく」という意味なので, darauf kommen は「それを思いつく」という意味であり, zu 不定詞句は「それ」の具体的な内容です.

zu 不定詞句の用法: 他の前置詞との組み合わせ

もう少し例・用法を見ておきます. まず um, statt, ohne と zu 不定詞句が結び付く例です.

ここで um と zu 不定詞句は「---するために」, statt と zu 不定詞句は「---するかわりに」, ohne と zu 不定詞句は「---せずに」という意味です.

zu 不定詞句の用法: 他の前置詞との組み合わせ

etwas と nichts と組み合わさる場合があります. いったん zu 不定詞は「---するべき」と考えておいてください.

zu 不定詞句の用法: 動詞との組み合わせ

この zu schreiben を「書くべき」と考えれば「私は今日書くべき 2 通の手紙を持っている」と思えばよく, 端的には「手紙を 2 通書かなければならない」と読めばいいでしょう. まさに英語の have to で「---しなければならない」という意味を持つのと同じです.

これ以外にも brauchen (= need), anfangen (= begin) と zu 不定詞の組み合わせもあります.

再帰動詞

基本

再帰代名詞との組み合わせで一つの意味を表す動詞を再帰動詞といいます.

ここでは 4 格の再帰代名詞とのセット sich ärgern で「怒る」という 1 つの意味を表しています. 再帰動詞を不定形で挙げるとき sich ärgern のように動詞を後ろに置きます.

現在人称変化の表は次のように書きます.

人称 単数 複数
一人称 ich ärgere mich wir ärgern uns
二人称 du ärgerst dich ihr ärgert euch
三人称 er ärgert sich sie ärgern sich

いくつかの例

次の例の再帰代名詞はすべて 4 格です.

他動詞との対応

次のように他動詞と対応関係が見られる場合もよくあります.

動作・行為の対象を示す前置詞

例を挙げます.

3 格の再帰代名詞とセットになる再帰動詞

数はあまりありません. 次のような例があります.

受動文

現在形と過去形

次の形で作ります.

werden は受動の助動詞で, 主語に応じて人称変化します. 過去分詞は文末です. もちろん従属文では受動の助動詞 werden は過去分詞の後に置かれます. 過去時制の受動文を作るときは werden を過去形にします.

行為の主体を表したいときは前置詞 von を使います.

完了形

助動詞 werden を現在完了形にすれば現在完了形の受動文になります. 特に werden は sein 支配なので, werden の過去分詞と sein で現在完了形です. 受動の助動詞の過去分詞は geworden ではなく worden であることに注意しましょう. 何故かというと直前に本動詞の過去分詞があるので, これとアクセントの位置が同じ geworden が続くのを避けているからです.

時制との関係については箇条書きでまとめます.

従属文では定動詞の sein が文末に置かれ, 「本動詞の過去分詞-worden-sein (定形)」の順です.

例を見ましょう.

受動態と助動詞

受動態は他の助動詞 müssen や können などの助動詞と組み合わせて使えます.