2021-06-23 英語と日本語で順番が入れ替わる言葉¶
これは私が所属している語学コミュニティで出てきた話です.
はじめに¶
はじめに次のような問題が出てきました.
(2) 英語の決まった語順
- 飲食業界 ( ) and ( ) industry
- 需要と供給
- 濃淡
- 前後に
- 寒暖
- 新旧
- 東西南北
私のコメント返し¶
これに対して次のようにコメントしました.
いま相対論の本を読んでいて出てきたのですが, 時空と spacetime は日英で順番が逆の例です.
コメントその 2¶
さらに次のように返ってきていわく.
物理ではどうなんだか分からないですが, 時空間となると, time and space になっちゃう?! んですかね. 時空と時空間の区別でつまずいていたります. 中国語で時空間が时间和空间(時間 + 空間) って丁寧に書いていたので面白いと思いましたが, time が先ですね. 自分のツボは 1 語なら, spacetme なのに, and を使ったら, time and space になることに驚きです. 概念に差があるからなのか?! という謎です.
コメントその 3¶
私からのさらなる回答
私もこれに対する英語の語感覚があるわけではないので微妙なところですが, 例えばゴリゴリの物理のページを見ると, time and space よりも space and time のほうが出てくる回数が多いですし, 他にいくつか見たページでも space and time のほうが使われているようなので, 少なくとも物理では分けるときも space and time の方が多い可能性があります.
この順序付けで一つありうるのは (昔の) 座標への番号の振り方です. 空間の x, y, z 成分を x_1, x_2, x_3 のように番号で書くことがあり, かつては時間成分を 4 番目に振り分けて x_4 = ct (または ict) のように書いたので, この意味では時間は空間のあとに来ます.
ただしこの言い分が微妙なのは, 最近は t を第 4 成分ではなく第 0 成分に持ってきて書くことが多い (ように見える) ことです. 昔, 相対論が出てきて時間が第四成分メイン扱いの間に spacetime の順が決まり, あとでいろいろな都合から第 0 成分にうつしたときにわざわざ定着した語順を変えなかった, みたいな話はある可能性はあります.
あとあまり時空間という言い方聞かないですね. 日本語で言うときは「時間と空間」か単に時空としか言わないような印象があります.
さらにドイツ語でも Raumzeit のようです. https://de.wikipedia.org/wiki/Raumzeit フランス語でも https://fr.wikipedia.org/wiki/Synchronisation_d%27Einstein を見ると espace-temps のようです. イタリア語も https://it.wikipedia.org/wiki/Tempo_proprio では spazio-tempo です. ちなみにイタリア語のページを見ると時間が第 0 座標扱いの式が出てきます.
コメント 4¶
読んでいる本を改めて見たら中国語についてのコメントもありました.
「容器」 とも言える空間 (space) と時間 (time) について説明しておこう. これらを合わせて時空(英語では順序が逆で spacetime)と呼ばれることが多い. ちなみに,宇宙という単語は「四方上下謂之宇,往古来今謂之宙」(淮南子『斉俗 訓』) から来たとされている. 宇が空間,宙が時間に対応し,合わせて「万物を包容する空間.自然法則が成り立つすべての時間と空間.すべての天体を含む空間」の意味であるが,この語源に従えば,宇宙という単語は順序まで含めて英語の spacetime そのものである.
須藤靖, 一般相対論入門 改訂版, P.11
中国語の辞書サイトで調べてみたら次のように出ていました.