語学学習: bootstrap, vacuum, three nines の話

ある語学学習コミュニティに所属しているのだが, そこで今日タイトルにある 3 単語の話になった. 理工系市民としてはまたちょっと違う言語感覚というか見ている世界の違いのようなものがあったので, それを共有する目的で記事を書く. もともとそのグループのチャットで書こうとしていた文章なので, 以下敬体になっている.

bootstrap

bootstrap は IT 用語としての用法があります.

また CSS ライブラリでも bootstrap があります.

その専門家であるデザイナーに頼らず開発者だけでデザインできるようにするためのライブラリで, そういう意味で「自給」の感覚を表しているのだろうと思います.

vacuum

人文学的真空

真空について, その語の歴史的経緯などを把握していないので何とも言えない部分はありませんが, いわば人文学的真空と科学的真空で似た意味・用法はあるにせよ, 冠詞や形容詞がつく気分は大分違うのではないかという気分があります.

人文学的真空としてイメージするのは次のような話です.

あと仏教での真空もあります.

いわゆる涅槃なので vacuum のところでコメントしていいのかは微妙です.

仏教用語としての意味はともかく, 適当な意味での無・虚無を表す言葉なのだろうと思います. ここでどんなタイプの無なのかを示すために冠詞なり形容詞がつくのだろう感があります. また, これはこれで物理的な真空の定義というか気分から来ている言葉でもあるのでしょう.

科学的真空

というわけで, ここからは科学的な意味での真空を見ます. 少なくとも 2 つの意味があります. まず 1 つは大気圧より低い気体の状態を指します.

大まかに言えば圧力はその気体を構成する粒子の密度によるので, 密度に応じて多種多様な真空があり, どういう真空なのかを指定するために冠詞や形容詞がつきます. 特に高真空という概念があります.

もう 1 つは場の量子論での真空です. 高度に数学的な定義なのでこの場でスカっと言えないのですが, 何にせよ場の量子論では多種多様な真空があります. あと粒子の生成消滅が起きているので, 無・虚無のような静的な対象ではありません. 次のような印象的な名前の記事もあります.

南部さんあたりで非常に有名になったノーベル賞に関わる話もあります.

この文章を見てもらうと例えば次のような一文があります.

われわれの住む真空は1つなので,そこではH の位相は1つに定められており,H の位相を変えると(たとえばH → -H ),こんどはH が0でないため,別の真空になってしまう。ちょうど上記の例で倒れた棒の方向が決まってしまうように,この真空では位相変換の対称性が破れているのである。

あの真空やこの真空が出てきます. この文脈から形容詞がつく真空概念が出てきて, 例えば physical vacuum はよく出てきます.

純粋に数学的に定義される真空に対して, その中で物理的に実現される真空というような気分で physical vacuum が使われます.

three-nines については昔アニメのエヴァンゲリオンで「オーナインシステム」という単語がまさに同じ意味で出てきました. 私はこれで覚えました. 私にとっての Word-Picture-Emotion がまさにエヴァンゲリヲンが真っ先に出てきます.

これまた IT 系でよく使われる表現でもあります.

その他メモ

他の人のコメントをまとめておく.

その 1

sandbag

以下引用.

・サンドバッグとは綴りは、sandbag です。 名詞としては、「砂袋」「土嚢」といった意味となります。 動詞としては、「砂袋で守る」「土嚢を積む」「砂袋で打ち倒す」といった意味となります。

また、bluff (ブラフ)の反対語として、「実際より弱く見せる」といった動詞の意味もあります

関連語としては下記等があります。

sandbagger 名詞で、「強盗」「実力をごまかす人」といった意味となります。

ちなみに、ボクシングの練習用のあの練習用の器具ですが、 punching bag boxing bag bag とかで通じます。

common denominations

共通項が多いって英語でなんて言うの?

Many common denominators. Many common points. 「(私たちは)共通項が多い」= We have many common denominators. あるいは「(私たちは)共通点が多い」= We have many common points. / We have many things in common.

可算名詞は裸で使わない

さて、では「学校に行く」という時の go to school は、なぜ a もthe も付いていないのでしょうか。 この時のschoolは抽象的な意味だと考えられます。 「その学校に行く」「ある一つの学校に行く」というよりも、「学校という学ぶところに通っている」という意味が含まれているのです。

そのほかに、go to bed は「寝る」ですが、「そのベッドに行く」「ある一つのベッドに行く」というよりも、「眠る場所としてのベッドに行く、眠りに行くんだ」という意味で、bedは抽象的な意味になります。

by bus もそうです。抽象的に「バスという乗り物で」ということで、the , a をつけないつけません。

pear-shaped

When something goes wrong or fails. 物事が悪化する、失敗する。

" I had spent all afternoon mixing my cake for the party tonight. But when I took it out of the oven, it had gone all pear-shaped."

私は今晩のパーティーのために、午後の時間をずっとケーキつくりに費やした。 しかし、オーブンから取り出した時、台無しにしてしまった。

本来、洋ナシ形をした、というと、普通はふくよかな、柔らかな形やラインをした、という意味しますが、go pear-shaped といえば、計画などが失敗する、状況が悪化する、という意味になります。 これは、イギリスやアイルランド、オーストラリアなどに限って使われる比較的新しい口語のようです。 "It's all gone pear-shaped" という形で用いられることが多く、最悪の結果になった、台無しになった、という意味になります。 本来のイメージの良い 「 洋ナシ形 」 とは程遠い意味であり、不思議ですが、この言葉の語源には様々な説があります。 一説には、「 英国空軍でアクロバット飛行の練習の際に、新人がきれいな円を描けずに、いびつな円になってしまう様子から来ている 」 といわれます。 他には、「ガラス工芸で、熱したガラスを吹いて球形を作る際に失敗して洋ナシ形のようにいびつになってしまった様子からきている」 とか 「本来、球形のはずの真珠が、質の良くないものだといびつに歪んでいることにちなんでいる 」 等、多くの説があるようです。

いずれの説にも本来の球形が歪んでしまった、という共通したイメージがあると考えられます。

その 2: ロミオとジュリエットの一節

a rose by any other name (他のどんな名前で呼んでもバラ) の部分は現代でもたびたび引用され、パロディ表現もたくさん作られています。ぜひ覚えておいてください。

それは、ジュリエットが、 What's in a name? (名前というものにはどんな意義があるのか?)を自問自答したセリフの、答えの部分です。ニュアンスは、『ロミオとジュリエット』(シェークスピア)を読むとわかります。

JULIET: 'Tis but thy name that is my enemy; Thou art thyself, though not a Montague. What's Montague? it is nor hand, nor foot, Nor arm, nor face, nor any other part Belonging to a man. O, be some other name! What's in a name? that which we call a rose By any other name would smell as sweet.

(私の敵なのは、貴方の名前だけ。 貴方は貴方、モンタギューではなくても。 モンタギューって何? 手ではないし、足でもないし、 腕でも、顔でも、その他の体の部分でもない。 あぁ、他の名前になって! 名前には、何があるというの? 私たちがバラと呼ぶものは、 他のどんな名前で呼んでも、同じように甘く香るわ)

その 3: 中国語でのロミオとジュリエットに関するやりとり

3-1

「"What's in a name? That which we call a rose. By any other name would smell as sweet."のくだり、中国語ではどう訳される?」という話になり、2 人で探して比べてみました.

「名字有什麼意義呢?玫瑰如果不稱為玫瑰,仍是一樣芳香甜美。(名前に何の意味があるというの?薔薇は薔薇と呼ばれなかったとしてもなお、芳しく香るというのに。;台湾版)」

「名字代表什么?我们所称的玫瑰 换个名字还是一样芳香。(名前が何を表すというの?私たちが等しく薔薇と呼ぶものは、その名を換えても芳しく香るでしょうに。;中国大陸版)」

なかには、

「名稱並不重要,玫瑰不叫玫瑰,芳香依然不減。 (名前なんて大して重要じゃないし。薔薇は薔薇と呼ばれなくても、その香りは減るもんじゃないっしょ!?;台湾版)」

という情緒ゼロ(でもわかりやすい!?)訳も。 ちなみに「ロミオとジュリエット」、繁体中国語では「羅密歐與茱麗葉」です!

3-2

羅密歐與茱麗葉 が 濃厚接触??に似てるやんけ?!って思ってしまった自分。 まだ中国語修行が足りないな!と自責。 芳香依然不減。 芳香の部分を、脂肪に置き換えて読みそうになった自分に自己嫌悪! ってことで、情緒ないながらも明晰さは正義?の部分も味わえて面白いです! 個人的には 名字代表什么? 代表って部分、ひょっとして、英語だと represent ? って思ったりしてセルフシビレてました。 What does a name represent ?

3-3

represent 英[ˌreprɪˈzent] 美[ˌreprɪˈzent] v. 代表; 作为…的代言人; 维护…的利益; 等于; 相当于; 意味着; [例句]The offer has yet to be accepted by the lawyers representing the victims. 受害者的代理律师还没有接受这个提议。

まさにそうでした!