英語をどう教えるか?

今日の講義で英語をどう教えるか, みたいな話があったので勝手に私の事例を書いておきます. 実はいま, 地元の区の理工系教育に何か絡めないかと思い, たまたま最近知り合いが区議になったこともあって相談・提案をしています. (添付ファイルが現状の提案内容です.) 理工系を志す中高生にターゲットを限定した上で, 私が英語を教えるなら, アインシュタインの特殊相対性理論の論文 (原論文はドイツ語なので英訳) を読むスタイルで教えます. さしあたって, 英単語をやりつつ, 日本語訳を読みながらでいいからとにかく英文にアタックしろ, というスタイルで突っ込んでいきます. これには (私と同じ趣味の) 理工系に限定した部分が効いています. 理工系の専門用語は英語・日本語ともに格好よくて濫用したくなるので, そういう事情を使っています. 勝手にくり返す (くり返したくなる) 格好いい単語があるので, それで記憶にとって重要なものの, 退屈になりがちな反復を乗り越えてもらいます. また, 理工系に限らず, 相対性理論は人の興味を引くようで, 「文系だが相対性理論は理解してみたい」という人も一定数いたりします. それを理解したいという強烈なモチベーションがある前提なので, それなら突撃しろという感じでやります. 日常会話ベースだと本当にやる気が出ない性質の人を相手にする想定なので, それならはじめから本丸に突撃するぞ, という趣旨です. 論文レベルの書き言葉なので, 文法事項はかなり固く守られていますし, 1 文もそれなりに長く, 最低限文法がわかっていないと読めません. 中高生がふだん触れる学校英語・受験英語がどれだけ大事かわかるという点からも, とにかく本物に触れろ, 最終目標物に触れてこい, そういうスタンスでやります.

話が少し変わりますが, 実は私は大学のとき, ドイツ語でアインシュタインの相対性理論の原論文を読もうというドイツ語の講義があり, それで途中まで原論文を読んだことがあります. 1 文 1 文がやたら長くて閉口した記憶があり, コンテンツ作成のために眺めていて, 改めて読むのがつらい文章です. 講義の担当教員はふつうに文学系の教員だったのですが, やはり理解したいからといってがんばって原論文を読んだ人のようで, 「アインシュタインのドイツ語は非常に上品ですばらしい. ドイツ語教材としてもっと使うべきとさえ思う」と言っていました. 印象的な一言だったので今も覚えています.

さらに語学・言語学という面でいうなら, 私にとって物理は自然とコミュニケーションするための語学で, 数学は語学かつ言語学です. 英語は物理・数学・プログラミングをしようとしている人とのコミュニケーションツールです. プログラミング言語にも文法があり, 基本的な言語体系が何となく英語なので, プログラミングの勉強も英語の勉強の側面があります. この 3 点セットで自然とコミュニケーションするための「語学」をやろう, というのが骨子です. 理工系にとって数学は冗談抜きで第二言語です. 物理だとまず共通語は broken English で, あとは式さえ書けばもう話は通じるという教育を受けてきました. そこまで含めた総合的な語学教育・理工系コミュニケーション術みたいなところが目標です.

そのあたりで今日たまたまいろいろ考えていたのですが, 私が知る限り, この 3 つのうちのどれも, できない人は WPE の Picture と Emotion に課題があるように思います. 例えば電磁気学の話をしていてアルファベット E を見たら, これは電場であって, 関連する電磁現象が頭の中を飛び回ります. それは適当な意味で絵画・映像的な要素がありますし, それなりに感情をゆさぶる部分があるのです. Emotion はともかく, Picture に関してはプログラムでお絵描きできますし, それがいまの私の仕事でもあります. そういうのも兼ねて総合的な「理工系の語学」みたいなことを企画し, 進めています.