右作用・左作用と英語表現

これは私が所属している語学コミュニティに投稿したコメントです.

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数学・語学ネタを見つけたのでシェアしておきます.

数学の専門用語に対する簡単な解説

一応書いておくと, ここでの作用 action は表現論の専門用語で, 右作用は right action, 左作用は left action です.

念のため書いておくと, 「正しい」の意味での right を使った Is this right? とまぎらわしいから right を correct に言い換えたというのは数学に関係ない話です.

学生時代, 竹崎正道先生から「解析はよく左作用を使うが代数はよく右作用を使う」と言われたのを思い出します.

なぜ右が「正しい」のか?

それはそれとして, 左右, 特に right と言えば「正しい」といった意味を持つ不思議な単語で, この辺はキリスト教に由来すると聞いています.

この辺の事情をはじめて知ったのは (割と有名なはずの) ライトノベル, 「とある魔術の禁止目録」の記述からでした. 神の右席, 右方のフィアンマというキャラがいるのです. ちなみにこのキャラは名前がイタリア語の炎の fiamma に由来していて, そのまま炎使いです. 他にもテッラ, アックア, ヴェントというキャラがいます. これをはじめて読んだときはイタリア語を全く知らなかったので何にもわかりませんでしたが, いま思うとキャラの得意魔法の系統と同じイタリア語でした.

前も書きましたが, エンタメからの語学・人文学で遊べるところがたくさんありますし, ネット上で簡単に元ネタ紹介をしているサイトも多いので, そういうのをまとめたコンテンツを作りたいですね. いまは優先順位の関係で手が出ませんが.

日本語の「右腕」

ふと日本語での「右腕」はキリスト教圏由来の言葉なのかと疑問が浮かんだので軽く調べてみると, こんなページが出てきました.

「右」という字が単なる位置の表現であるだけでなく、 「優れたもの」であるという意味を持っています。

「漢」の時代に右を上座にしたことに由来するとも言われています。 俗に言われる「右に出る者がいない」というのもそうした表現の一つです。 そうしたことは英語の「right」が正しいという意味をもっているのと共通性があります。 いずれにせよ、そうした意味から「頼りになる」のは「右腕」なのです。 もちろん大半の人が右利きであることも前提になっているでしょう。

こうなると中国文化圏の話を知らないことには何とも言えません. 左利きの人が多い文化圏だとどうなるのかも気になりますが, これによると右利きの方が圧倒的に多いとか.

ただし優劣の判定も微妙です. 例えば私がやっている柔道だとふつう利き手と組は一致させます. つまり右利きの人は組むときも右組です. 右組が圧倒的に多いので右対右の経験は多くても, 右組の人は右対左の経験が少ないためやりにくいのです. 一方, 左組の人は右組の人とやり慣れているので相対的に右組に対して強いことがあります. 一般に野球なり何なり他のスポーツでも, 敵としてのサウスポーは厄介なのではないかという印象もあります.

プログラミングでの Right/Left

実は英語で右が「正しい」を意味することを使った, あるプログラミング言語またはその一群での応用があります.

例えば Haskell には Either という型があります. 典型的には Right は処理の成功, Left は処理の失敗を表すのに使います. キリスト教由来 (?) の英語の用法がプログラミング言語にも波及している例です.

私がやりたいのはここまで含めた「多言語」学習です. ちょうど今日の「初級者の為の多言語学習イントロ」話で自然言語を深く知るには文化の理解が必要不可欠とあったように, 各プログラミング言語にもその出自や発展に背景文化があります. もっと言えば自然と語り合う「言語」である数学や, 実際に自然と語り合う語学である物理にもそれ相応の背景や文化があります. 科学がヨーロッパで発生した文化という背景も考えるなら, ここにもキリスト教の影響があります.

この辺の多角的な「語学」の展開を探るべく, 次のような勉強会を主催していろいろ遊んでいます.