動詞

基本時制

過去形・現在形・未来形があります.

過去形

動詞の過去形は主語の数と性に応じた形をとります. 不定形の-тьを除いて単数では男性形・中性形・女性形それぞれに-л, -ло, -лаを, 複数にはどの性にも-лиをつけます. 過去形は状況によって過去進行形の意味「---していた」も表します.

主語ктоとчтоはонとоноと同じでそれぞれ三人称単数の男性, 三人称単数の中性として扱います.

過去形でアクセントが変わる場合があります. アクセント移動の規則はありません.

主語 / 不定形 чита́-ть де́ла-ть бы-ть
単数 男性 он- я ты чита́-л- дела-л- бы-л-
単数 女性 он-а я ты чита-ла дела-л-а бы-л-á
単数 中性 он-о чита-ло дела-л-о бы́-л-о
複数形 (三性共通) он-и мы вы чита-ли дела-л-и бы́-л-и

現在形

いくつかの雑多な特徴をまとめます.

е (第Ⅰ)変化動詞

е(第Ⅰ)変化動詞は不定形から-тьを取り, 主語の人称と数にあわせて-ю, -ешь, -ет, -ем, -ете, -ютを語尾につけます.

動詞читатьの活用を見てみましょう.

人称 単数 複数
一人称 я читá-ю мы читá-ем
二人称 ты читá-ешь вы читá-ете
三人称 он читá-ет они читá-ют

-ся動詞

基本

語尾が-сяまたは–сьの動詞を-ся動詞と呼びます. 語尾-сяは母音の後では–сьに変わります. 語尾-сяの起源は「自分自身を」または「自分自身 (のため) に」で, 動詞にいろいろな意味, 例えば「自分で~する」, 「再帰」, 「受動」, 「相互」などの意味を付加します.

-ся動詞の変化形の一部(-ться・–тся)は例外的に[-тца]と発音します. 全ての動詞に-сяのついている形とついていない形があるわけではなく, どちらか一方がない動詞もあります. たとえばулыбáтьсяには-сяがついていない形はありません. 一方знатьには-ся動詞がありません.

活用例

ここではзанимá-ть-сяの変化を例に挙げます.

過去形

主語 活用
он занимá-л-ся
она занимá-ла-сь
оно занимá-ло-сь
они занимá-ли-сь

現在形

人称 単数 複数
一人称 занимá-ю-сь занимá-ем-ся
二人称 занимá-ешь-ся занимá-ете-сь
三人称 занимá-ет-ся занимá-ют-ся

変則的е (第Ⅰ)変化動詞: писáть, интересовáть

典型的なе (第Ⅰ)変化動詞と活用が少し変わります. ただし語尾は一人称単数・三人称複数形以外, 典型的な変則的е (第Ⅰ)変化動詞と同じです.

писатьのように不定詞 (不定形) でアクセントが-тьの前の母音にある動詞はアクセントが語幹に移動することがあります. 不定詞が-оватьで終わる動詞の現在人称変化は語尾の前に-уを入れるので, 語義は-ую, -уешьです.

писáтьの現在変化

現在語幹はпиш-です.

人称 単数 複数
一人称 я пиш-ý мы пиш-ем
二人称 ты пиш-ешь вы пиш-ете
三人称 он пиш-ет они пиш-ут

-овать終端の動詞の現在変化

単数 複数
一人称 я интерес-ý-юсь мы интерес-ý-емся
二人称 ты интерес-ý-ешься вы интерес-ý-етесь
三人称 он интерес-ý-ется они интерес-ý-ются

и(第 II)変化動詞

現在形

基本

不定詞(不定形)から-тьとその前の母音を取り除くと現在語幹です. е (第Ⅰ)変化動詞と同じように, 主語の人称と数に応じて語幹に-ю, -ишь,-ит,-им,-ите,-ятをつけます.

и(第 II)変化動詞は一人称単数と三人称複数形以外で, 語尾に-и-が現れる特徴があります. 不定詞(不定形)で-тьの前の母音にアクセントがある動詞は, アクセントが移動する場合があります.

活用例: говорить

人称 単数 複数
一人称 я говор-ю мы говор-им
二人称 ты говор-ишь вы говор-ите
三人称 он говор-ит они говор-ят

活用例, アクセント移動: смотрéть

人称 単数 複数
一人称 я смотрю мы смóтрим
二人称 ты смóтришь вы смóтрите
三人称 он смóтрит они смóтрят

歯音変化

現在語幹が歯音с, з, т, дで終わるи (第 II)変化動詞は, 現在一人称単数のときだけ下図のような音の交替が起こります.

語幹末 Яに続く形だけ
с ш
з ж
т ч / щ
д ж
ст щ

歯音変化では一人称単数形以外の子音の交代は起こりません.

唇音変化動詞

現在語幹の語尾が唇音п, б, ф, в, мのとき, яに対応する形(現在一人称単数形)だけ唇音の後にлの音を挿入します. 命令形は現在三人称複数形から語尾を除いた現在語幹をもとに作ります.

例: люб-и-ть

人称 単数 複数
一人称 я любл-ю мы люб-им
二人称 ты люб-ишь вы люб-ите
三人称 он люб-ит они люб-ят

命令形

命令形は現在三人称複数形から語尾を除いた現在語幹をもとに作ります. - люб-и-ть: любл-ю, люб-ишь,.. - 命令形 люб-и

特殊変化

хотéть

基本

хотéтьの現在形は単数形がе (第 I)変化型, 複数形がи (第 II)変化動詞として変化します. アクセント変化も特殊です.

不定詞 (不定形) と現在形で子音が変わり, アクセントがいったん左に移ったあと複数形で戻ります. このようなアクセントの移動はほかの動詞にはありません.

現在活用

人称 単数 複数
一人称 я хочý мы хотим
二人称 ты хóчешь вы хотите
三人称 он хóчет они хотят

命令形

動詞の命令形は現在語幹に-й, -иあるいは-ьをつけて作ります.

現在語幹は次の通りです.

1)アクセントは不定詞のアクセントから判断します.       смотрéть смотри-те 2) -аватьに不定形が終わる動詞はふつう不定形の-тьをの ぞいた形から命令形を作ります. давáть: да-ю, да-ёшь,.. – давáй (与える)

例外) пóмн-и-ть: пóмн-ю, пóмн-ишь,..命 令形 – пóмн-и (覚えている)

Тыに対する命令形の作り方

выに対する命令形

合成未来形

бытьの未来形はе (第Ⅰ)変化動詞型の変化で, быть以外の一般動詞の未来形は「бытьの未来形 + 不定形」で表し, 合成未来形と呼びます.

быть

人称 単数 複数
一人称 я бýд-у мы бýд-ем
二人称 ты бýд-ешь вы бýд-ете
三人称 он бýд-ет они бýд-ут

быть以外

人称 単数 複数
一人称 я бýду читáть мы бýдем читáть
二人称 ты бýдешь читáть вы бýдете читáть
三人称 он бýдет читáть они бýдут читáть

体(アスペクト)

基本的な意味と具体的な意味

ロシア語の動詞は完了体と不完了体に分かれ, 多くの動詞が基本的な意味が同じ完了体と不完了体の対を持ちます.

完了体動詞は特に具体的な動作に一区切りをつけるとき, 完了・終了した結果に焦点があたるときに使います. もちろん完了・終了が一番はっきりした区切りです.

体と時制

不完了体動詞には現在形・過去形・未来形があります. 一方, 完了体動詞には現在形および過去形の二つしかありません. 完了体も不完了体も現在形や命令形の作り方は同じです. 完了体は「読んでしまう」のように現在形が未来の意味を表すので, 特別な未来形は必要ないとみなします.

不完了体動詞 完了体動詞
過去 читáл прочитáл
現在 читáю прочитáю
未来 бýду читáть прочитáю

体の用法1: 過去形

完了体動詞の過去形は具体的な一回の動作の完了, 完了した動作の結果が話している時まで残っていることを表します. 不完了体動詞の過去形は動作の「経験(過去の動作事実の有無の確認)」, 「過程」や「反復」を表します.

体の対

不完了体に接頭辞がつく場合

不完了体 完了体
читáть прочитáть
писáть написáть
дéлать сдéлать

完了体-тьの直前の母音が変わる場合

不完了体 完了体
показáть покáзывать

語形が違う場合

不完了体 完了体
решáть решить
брать взять
говорить сказáть

дать型動詞の変化

現在形の変化は次の通りです.

人称 単数 複数
一人称 я дам мы дадим
二人称 ты дашь вы дадите
三人称 он даст они дадýт

状態変化を表す動詞の要求する格

状態の変化「---になる」を表す動詞に連なる普通名詞や形容詞はふつう具格(造格)です.

完了体 不完了体
стать становиться
оказаться оказываться
остаться оставаться

давáть型動詞の変化

語幹がда-, зна-で不定形語尾が-ватьの動詞の現在形は, 不定形からватьを除きその後ろにе (第Ⅰ)変化動詞の語尾をつけます. 動詞の命令形は不定詞からдавай (те)のように作ります.

例えばдаватьの現在形の変化は以下のとおりです.

人称 単数 複数
一人称 я даю мы даём
二人称 ты даёшь вы даёте
三人称 он даёт они дают

плавать「泳ぐ」, звать「呼ぶ」などは語幹が違うためこの型の変化ではありません.

動詞естьの変化

動詞есть「食べる」の活用表は単語集

動詞が完了体で上に述べた意味の動詞の場合, 動作が目的語の全体に及ぶ場合には対格, その部分だけに及ぶ場合には属格(生格)にします. 規則動詞であるе(第Ⅰ)変化動詞, и(第Ⅱ)変化動詞の語尾とまったく別の動詞にесть(とдать)があります. これと対応の完了体(съесть)以外にこの型の変化はありません.

移動動詞

基本

日本語では徒歩でも乗り物に乗っていても同じように「行く」と言えます. しかしロシア語ではドイツ語のgehenとfahrenのように, 歩いて行く場合はидти, 乗り物で行く場合はехатьのような使い分けがあります. 飛行機で移動する場合はлететьです.

一方日本語のように「行く」「来る」の形の上での区別はなく, ロシア語ではどちらの場合もидти・ехатьを使います. 日本語と語感のずれがあるので注意してください.

使い分け

代表例

定動詞 不定動詞
移動する, 歩く идти ходить
(乗り物で)移動する ехать ездить
飛ぶ лететь летать
持ち運ぶ нести носить
導く вести водить
乗り物で運ぶ везти возить

語形成

接頭辞+移動動詞

接頭辞を移動動詞につけると新しい意味の動詞ができます.

接頭辞をつけるとき語形が変わる場合があります. 特にидтиは-йтиに変わり, ездитьは-езжатьに変わります.

接頭辞がついた動詞は移動動詞ではなく新しい動詞です. ふつう完了体と不完了体のペアとして処理します.

副詞的分詞: 副詞的分詞・副動詞

動詞から作られた副詞を副詞的分詞(副詞的分詞・副動詞)といいます. 副詞的分詞には不完了体から作られる不完了体の副詞的分詞と完了体から作られる完了体の副詞的分詞があります.

副詞的分詞は動詞の体・格支配を保ちます. ただし比較級はなくほかの語形変化もありません.

不完了体の副詞的分詞

作り方

用法

完了体の副詞的分詞

作り方

用法

形容詞的分詞: 形容分詞・形動詞

動詞から作られた形容詞を形容詞的分詞(形容分詞・形動詞)といいます. 形容詞的分詞は能動と受動に大別され, それぞれ現在・過去の2つに分かれます. 未来形はありません. 文体的には受動過去分詞以外は文章語的です.

形容詞的分詞の種類

能動形動詞現在形

作り方

不完了体動詞の現在語幹に次のように要素をつけます. 変化はхорошийと同じです.

注意

用法

ふつう名詞を修飾する修飾語的な用法として使われ, 被修飾語の性・数・格に応じた形をとります. 形容詞的分詞の代表形は形容詞と同じく男性単数主格形です 意味はふつう「---しているところの」を表します.

能動過去形容詞的分詞

「---していたところの」, 「---し終わったところの」を主にあらわす分詞をここで学びます. 不完了体動詞から作られる分詞と完了体動詞から作られる分詞で二種類あります. 変化はхорошийと同じです.

作り方

注意

用法

おもに「---し終えたところの」「---していたところの」の意味を持ちます.

受動分詞現在形

形容詞的分詞(形容分詞・形動詞)のうち「---されるところの, されているところの」をあらわします.

作り方

注意

用法

受動分詞過去形

形容詞的分詞(形容分詞,形動詞)のうち, 「---されたところの, ---されてあるところの」を表します. 受動分詞性によって他動詞ではない-ся動詞からは作れません.

特徴

形容詞的分詞のなかでこの分詞だけが次の特徴を持ちます.

作り方

不定詞と受動分詞過去形の関係は主に次の三通りに分かれます.

用法

受動過去分詞, 受動文

受動過去分詞は完了体から作られるため, 受動過去分詞は完了体的な受動文「---された, ---されている, ---されるだろう・されているだろう」で使われます.

受動過去分詞の短語尾形は受身文で使います. 反復などの不完了体的な受身は不完了体動詞の-ся動詞が表します.

作り方

注意

бытьの用法

бытьは主語に応じた性・数を取ります. 現在形では省略するものの, 特にбытьは時制を示すために使います. 過去形ではбыл,была,было,былиです.

-ся動詞の受動文

受動過去分詞以外に-ся動詞でも受動文が作れます. 反復・一般論・動作の過程など不完了体動詞に固有の動作・状況を表します.

この受動文を作るには次の条件があります.

動作主を表す具格(造格)がないと受動的意味でなく, ふつうは主語の自発的な動作と解釈します.

作り方

三人称複数文(不定人称文)との対比

受動過去分詞や-ся動詞による受動文は硬い感じを与えます. 会話ではよく三人称複数文を使います. 三人称複数文では主語は明示されなくても背景に感じられます.

Local Variables

Local Variables:
eval: (face-remap-add-relative 'default :family "Noto Sans")
End: