2021-06-12 メルマガ原稿 リーマン面と被覆空間, ホモトピー

リーマン面の普遍被覆空間

全てのリーマン面に対して普遍被覆空間が存在します. ここでリーマン面は定義に連結性を含めていたことを思い出してください. 単なる一次元の複素多様体ではないのです.

これをきちんと議論するには, もちろんトポロジー, 特にホモトピーに関わる議論の準備が必要です. それは次回に回すことにしましょう.

普遍被覆の例

ただひたすらに多項式や指数関数が大事です.

複素平面 $\mathbb{C}$ は単連結なので, $\exp \colon \mathbb{C} \to \mathbb{C}^{\times}$ は $\mathbb{C}^{\times}$ の普遍被覆です. 被覆変換群と基本群が完全に決定できます.

被覆空間論としても基本的で, ホモトピー論, 特に代数トポロジーへの入門に一変数関数論が使えます. このためだけにも勉強する価値があると言えるほどの大事な例です.

左半平面 $H$ と原点を除いた単位円板 $D^\times$ も, 指数関数 $\exp \colon H \to D^{\times}$ として, $D^\times$ の普遍被覆を構成します.

原点を除いた単位円板の被覆空間の決定

結論だけ書くと, 被覆が無限枚の場合に指数関数が出てきて, 有限枚の場合に単項式 $p_k(z) = z^k$が出てきます.

前から言っている通り, 指数関数と多項式の重要性がこんなところにも出てきます. テイラー展開からもわかるように, 被覆空間の文脈で見ると指数関数は気分的には無限次の多項式 (単項式) です. 代数トポロジー修行中の身からすると, 解析学から直観を育てる上で常に頭に置いている例です.

一変数であろうとも, 多項式と指数関数をぎりぎりの限界で突き詰めれば, ここまでの世界を射程圏内におさめるのです. 関数論の威力とも言えます.