『やさしい理系数学』例題の詳しい解説 数学ができる人はこんなふうに問題を見て考える!
おことわり
これはKindleで出版している本の原稿をもとにしています. Web掲載に合わせて編集せずに原稿をほぼそのまま載せているため, Web上では読みにくい可能性があります. 必要に応じてKindle版を購入してください.
はじめに
この本では[@KazuhiroMitsuya1, 『やさしい理系数学』]の例題を元に脳内授業の仕方を説明します. 脳内授業に関しては同じく Kindle で出版している『独学のすゝめ』[@phasetr6]を参考にしてください. この本を書いた理由は, まさに上の『独学のすゝめ』の読者さんに「実際にどう独学を進めればいいかわからない, わかりづらい」と相談されたからです. そこで, 実際に『やさしい理系数学』の例題を使って受験生に指導したときのノートを公開する形でこのご要望に応えました. この本はよく「解説が少ない」と言われます. 使ってみてわかりましたが別解もたくさんあってなかなか楽しい本ですが, やっぱり受験生は使いづらいみたいです. そういうこともあって, 毎回資料を準備して指導していました. それがこの本の雛形になっています.
ほぼ暗記しかやりようがないような問題や微分方程式などいまの課程外の問題もあるため, 全ての例題を解説しているわけではありません. 何より, どんな感じで脳内授業していけばいいかを説明する素材として『やさしい理系数学』[@KazuhiroMitsuya1]を使っているだけなので, あらかじめご了承ください. 正式な解答や演習問題についてはきちんと『やさしい理系数学』を買って確認してください. 量をこなせばいいわけでもないですが, 例題の 50 題だけでは少なすぎるのも事実です. 薄い本なので全体を通して取り組みやすいです. 演習問題まできちんとやりましょう. 演習問題ふくめ, 「この本に載っていない分の問題の授業の様子も知りたい!」というご要望があれば, 追加は検討します. 指導していた生徒さん達がとても素直だったこともありますが, この内容で指導した高 3 生は 3 ヶ月指導しただけで偏差値が 47 から 62 まで上がりました. 『やさしい理系数学』は難しく気楽に読める本ではないでしょう. でも, 読めば必ず身になるよい本です. 特に難関大の理系受験生の皆さんはこの副読本も参考にしながら『やさしい理系数学』をしゃぶり尽くしてください.
もしかしたらあなたは私のこの本を読んで, 「このくらいなら自分でもできる」「大した解説じゃない」「このくらいの解説なら自分でもできる」と思ったかもしれません. そんなあなたはぜひ数学科に来てください. 教官含め, 数学科の人達はそういう人材を待ち望んでいます. 私は中高と数学が苦手で, 受験でも苦しんで「こんなに数学ができないんじゃ数学科に行っても何にもならないだろう」と思い, 物理学科に進学しました. 物理もたいがいひどかったですが数学よりはよかったのです. それでも大学に入ってからもずっと数学を勉強し続け, 大学院では東大の数学科 (数理科学研究科) に行って何とかやっていけるくらいに数学への耐性だけはつきました. まがりなりにもきちんと研究して成果も残せました. どんなに小さくマニアックな分野の結果であろうとも, 世界ではじめての, 前人未踏の結果です. 現時点ですら「この程度」の解説しか書けず, 受験でこれ以上ないほど数学で苦しんだ私でも, です. 私の受験生の頃の数学はもちろん今よりもはるかにひどい状態でした. ここまでの深さで数学を理解もしていなかったし, きちんと暗記もできていませんでした. それでも努力を続けて大学院で数学科に進学するレベルになりました. あなたがいまの時点で私を越えているならすごいことです. もっと遠く深い世界に行けるでしょう. 数学科でなくても大学は楽しいです. 大学進学後は思う存分学業に打ち込んでください.
さて, 本題に戻ってこの本に関する説明に戻ります. 実際の指導で何度も強調したことは実際に本文でも説明していますが, ここにもまとめておきましょう. メインは次の 2 つです.
まずは言うまでもないこと, 暗記です. 数学ではよく理解が大事と言われます. それは当然です. そのうえで覚えるべきことはきっちり覚えてください. 極端なことを考えてみましょう. 微分積分の理論それ自体を試験本番の短かい時間で思いつける自信がありますか? ふつうの人どころか天才でも無理です. 数学史, 人類史に名を残すレベルの天才が何年, 何十年もかけてようやく思いついた解法があって, それが前提になっている問題があります. むしろ「昔の人はすごいこと思いついたな」と素直に驚くところです. 微分積分はニュートンやライプニッツのように, 数学史, 科学史, 人類史に名を刻む天才が長い時間をかけて見つけた概念です. そんなのが試験時間中にホイホイ思いついたら苦労しません. 大学受験で出てくる問題とその解法にはそのレベルの「こんなもん試験時間内に思いつくか」という解法が割とたくさんあります. そういうのはもう覚えておくしかありません. 時間をかければ思いつけるかもしれませんが, そんな危険な勝負は勧められません. あなたは大学に入って自分の好きな勉強をすることが一番の目的のはず. 大学入試はさっさと通り抜けてほしいです. 私は一浪したとき, 早く大学に入りたくてたまりませんでした. 浪人が無駄とまでは言いませんが意味もなく遠回りをすることもないでしょう.
[@phasetr6, 『独学のすゝめ』]でも説明しているように, 大学で覚えなければいけないことは, 少なくとも高校 3 年間でやる量とは比べものにならないくらいたくさんあります. 日本史, 世界史, 地理や英単語のように, どうしたって覚えていないといけないことはたくさんあります. 数学でも同じです. 身近に大学生がいるなら, 知っている数学の定理や公式, 理論を名前だけでも挙げてもらってください. どれだけ多くのことを覚えていないといけないかがわかります.
理解はもちろん大切です. 理解しなくていいとは一言も言っていません. ただ特に難関大学を受ける生徒さんほど理解を重要視しすぎて暗記がおろそかになってしまって, 点数が伸びないことがあるから, あえて強調して言っています. むしろ理解にばかり重心があって暗記がおろそかになっている人がとても多いです. 受験生の頃の私もそうでした. 私の失敗をくり返してもらいたくありません. 覚えるべきことはきっちり覚えてください.
本当にひらめきが必要になったとしたら, それはもう受験勉強ではなくて研究です. 大学受験や大学院の院試すら飛び越えています. そんなこと, そもそも求められていません. 私が学部のときの指導教官, 早稲田の応用物理学科の大谷光春先生は, 自分が一番いい仕事, 研究をしたときのことを次のように言っていました.
あのときは自分でひらめいたというよりも, 天からパーッと啓示がふってきたかのようだった. あの感覚は言葉で言い表せない.
試験会場でこんなことになったら, むしろその感動で試験どころではなくなってしまいます. 実際センター試験中にある数学的な事実に気付いてしまい, 感動してしまってどうしようもなくなってしまった, という人が本当にいます.
数学だとあまりにも暗記についての認識がおかしい人がいます. きちんとした暗記は本当に必要です. 他にも勉強法についていろいろ言いたいことはありますが, 詳しくは『独学のすゝめ』[@phasetr6]を読んでください.
次, 実験です. 受験であまり強調されているのを見たことがないのですが, 数学に限らず研究するときにも大切なことです. 単に受験というだけではなくて, 大学・大学院で研究するときにも大事だし, 社会に出てビジネスするときにも大事です. あとで具体的な問題で具体的に解説しますが, いきなり一般的に考えないで具体的な値で試してみるといったことです. 当たり前と思っている人には当たり前ですが, できていない人, もっと言えばそもそも知らない人も多いのです. ここではふわふわしたことしか言えないので, ぜひ本文を読んで実験という大学・大学院に入ってからも使える大切な研究手法を身につけてください. 具体的にどうやるかは本文をしっかり読んで真似して体得してください.
前置きが長くなりました. それでははじめましょう!
解説
第 1 章 数と式, 論証 例題 1
問題 1
\begin{exercise}[九州工業大]\label{univ-entrance-exam9} a, b, c は整数で, 0<a<b とする. 整式 f(x)=x(x−a)(x−b)−17 が x−cx-cx−c で割り切れるとき, aaa, bbb, ccc の値を求めよ. \end{exercise}
ポイント: 問題 1
因数定理 (一般には剰余の定理), 素数, 整数の扱いがポイントだ. この問題の最初の勘所は ccc を解にもつと言わずに (x−c)(x-c)(x−c) で割り切れるといっているところ: この言い換えをきちんとクリアする必要がある. ある程度できる人・慣れた人ならこのくらいは簡単だろうが, 適切に条件を言い換えていく練習はやはり必要だ. そしてはじめから因数分解してくれているのもポイントで, 誘導をうまく使う必要がある. これもなかったら問題が一段難しくなるポイントだ: 問題 \ref{univ-entrance-exam41} を見るとそれがわかる. 最後の吟味はしらみつぶしでもいいが, 順序に着目すれば手数が減らせる. 手数が減ればミスも減るから, なるべく楽にするために頭を使うのはとても大事.
方針: 問題 1 まず注目したのは (x−c)(x-c)(x−c) で割り切れるという条件だ. 割り切れるというのだから実際にそう書いてみよう. f(x)=(x−c)q(x).f(x)=(x−c)q(x).\begin{align} f(x) = (x-c) q(x). \end{align}f(x)=(x−c)q(x).f(x)=(x−c)q(x). ここで q(x)q(x)q(x) は 2 次の整式だ. 文章で書かれたり講義を受けたりしているとさらっと流してしまいがちだが, こういう部分をなめてはいけない. 初学者はこういう部分が本当にできない. 他の問題の解説でも何度でも繰り返し解説していくけれども, 明らかな条件や主張があるときはできる限り式で書き下してみよう. そこから発想が生まれることがある. もっと正確には次に取るべき手立てが見つかるのだ. 慣れないうちは 1 ステップごとにうるさいくらいに式を書き下す習慣をつけてほしい.
さて上の式さえ書ければ f(x)f(x)f(x) は x=cx=cx=c を解に持つことがわかるから f(c)=0f(c) = 0f(c)=0 で c(c−a)(c−b)=17.c(c−a)(c−b)=17.\begin{align} c(c-a)(c-b) = 17. \end{align}c(c−a)(c−b)=17.c(c−a)(c−b)=17. 17 が素数で aaa, bbb, ccc は整数だから ccc, c−ac-ac−a, c−bc-bc−b は 17 の素因数にしかなれず, それは 1 と 17 しかない. 実際には符号も含むことに注意しよう. あとは 0<a<b0 < a < b0<a<b に注意しながらしらみつぶしで探せばいい.
もちろん実際にはしらみつぶしの前にもう少し絞り込めるし, 余計なミスも減るからそうした方がいい. 17 が素数だから ccc, c−ac-ac−a, c−bc-bc−b のうち ±17\pm 17±17 を取るのは 1 つしかなく, 他の 2 つは ±1\pm 1±1 になる. 3 つの積が正だから負の数になるのは 3 つのうち 2 つだけだ. さらに aaa, b>0b>0b>0 だから c−b<c−a<cc-b < c-a < cc−b<c−a<c で, 上の絞り込みから 0<c−b<c−a<c0 < c-b < c-a < c0<c−b<c−a<c か c−b<c−a<0<cc-b < c-a < 0 < cc−b<c−a<0<c しかない. あとはこれをまとめて解答にすればいい. 正式な解答は『やさしい理系数学』[@KazuhiroMitsuya1]を見てほしい.
問題 2
\begin{exercise}[宇都宮大]\label{univ-entrance-exam10} 整式 (x+1)10(x+1)^{10}(x+1)10 を次の式で割ったときの余りをそれぞれ求めよ.
- 1−x21-x^21−x2.
- (x−1)2(x-1)^2(x−1)2. \end{exercise}
ポイント: 問題 2 これも剰余の定理, 整式の除法が核だ. 二項定理や微分を使う手法も身につけたい. 特に重解を持つ整式での割り算で余りを求めるときの微分は大学でも使う標準的な方法だ. 整式を展開するのに二項展開を使う手法もきちんとおさえたい. 展開係数を二項係数で具体的に書けるのもポイントで, 整数問題で時々出てくる. また時々 (x+1)2016(x+1)^{2016}(x+1)2016 などその年特有の次数で出してくることもある. 一般的な手法もいいが, 実験や一般化してからの特殊化という手法もきちんと身につけておいてほしい.
方針: 問題 2 問題 \ref{univ-entrance-exam10} は剰余の定理を使うのが基本だろう. その基本さえわかっていれば (1) は解ける. 問題は (2) で, 具体的には重解を持っているところ. 自分で解こうとしてみればすぐわかる. これをどうくぐり抜けるかがポイントだ. その前に実験について強調しておこう. よくわからないことがあったらとりあえず実験できないかを考えよう. そのとき問題の一般化と特殊化という手法が大切だ. 要は (x+1)10(x+1)^{10}(x+1)10 を考えるのではなく (x+1)n(x+1)^{n}(x+1)n を考えてしまうのだ. そして n=1,2,3,…n=1, 2, 3, \dotsn=1,2,3,… として様子を見てみる. できるならここから帰納法で証明していってもいい.
具体的にやってみよう. n=1n=1n=1 だと何もすることがないので n=2n=2n=2 から. そのときは (x+1)2=−(1−x2−1)+2x+1 =−(1−x2)+2x+2.(x+1)2=−(1−x2−1)+2x+1 =−(1−x2)+2x+2.\begin{align} (x+1)^2 &= -(1 - x^2 - 1) + 2x + 1 \ &= -(1 - x^2) + 2x + 2. \end{align}(x+1)2=−(1−x2−1)+2x+1 =−(1−x2)+2x+2.(x+1)2=−(1−x2−1)+2x+1 =−(1−x2)+2x+2. n=3n = 3n=3 だと (x+1)3=x3+3x2+3x+1 =−x(1−x2−1)+3x2+3x+1 =−x(1−x2)+3x2+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2−1)+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2)+4x+4 =(−x−3)(1−x2)+4x+4.(x+1)3=x3+3x2+3x+1 =−x(1−x2−1)+3x2+3x+1 =−x(1−x2)+3x2+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2−1)+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2)+4x+4 =(−x−3)(1−x2)+4x+4.\begin{align} (x+1)^3 &= x^3 + 3x^2 + 3x + 1 \ &= -x (1 - x^2 - 1) + 3x^2 + 3x + 1 \ &= -x(1-x^2) + 3x^2 + 4x + 1 \ &= -x(1-x^2) - 3 (1 - x^2 - 1) + 4x + 1 \ &= -x(1-x^2) - 3 (1 - x^2) + 4x + 4 \ &= (-x - 3)(1-x^2) + 4x + 4. \end{align}(x+1)3=x3+3x2+3x+1 =−x(1−x2−1)+3x2+3x+1 =−x(1−x2)+3x2+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2−1)+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2)+4x+4 =(−x−3)(1−x2)+4x+4.(x+1)3=x3+3x2+3x+1 =−x(1−x2−1)+3x2+3x+1 =−x(1−x2)+3x2+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2−1)+4x+1 =−x(1−x2)−3(1−x2)+4x+4 =(−x−3)(1−x2)+4x+4. もっとやってもいいが, 何となく余りは 2n−1(x+1)2^{n-1} (x + 1)2n−1(x+1) になりそうだ. ここから一般的な証明や帰納法のステップが踏めなくても, 「これを数学的帰納法で示す」と書いておけば部分点は来るはずだ. そういう点の稼ぎ方も覚えておくといい. 後半の (2) も同じように解ける.
自然なのは剰余の定理を使った方法だろうから, それを説明する. 商を q(x)q(x)q(x), 余りを ax+bax + bax+b とすると (x+1)10=(1−x2)q(x)+ax+b.(x+1)10=(1−x2)q(x)+ax+b.\begin{align} (x+1)^{10} = (1 - x^2) q(x) + ax + b. \end{align}(x+1)10=(1−x2)q(x)+ax+b.(x+1)10=(1−x2)q(x)+ax+b. 1−x21 - x^21−x2 は ±1\pm 1±1 が解だからこれを代入して出てくる連立方程式を解けば (1) は終わりだ.
そして問題は (2). まず剰余の定理で書いてみよう. (x+1)10=(x−1)2q(x)+ax+b.(x+1)10=(x−1)2q(x)+ax+b.\begin{align} (x+1)^{10} = (x-1)^2 q(x) + ax + b. \end{align}(x+1)10=(x−1)2q(x)+ax+b.(x+1)10=(x−1)2q(x)+ax+b. x=1x=1x=1 を代入すると a+b=210a+b = 2^{10}a+b=210 という条件式は出てくるが, 重解だからこれ以上の条件が出てこない. もう 1 つ条件を出さないといけないがそれをどう出すかがポイントだ. 適当に値を入れても意味はない: q(x)q(x)q(x) が具体的にどんな形をしているかわからないからだ. 上のように実験して検討をつけてもいいがこれも一般的な手法がきちんとある: 両辺を微分すればいい. (x−1)2q(x)(x-1)^2 q(x)(x−1)2q(x) に積の微分を使うところが気になるかもしれないが 2 次の整式だから 1 回微分しても消えない. 微分してからまた x=1x = 1x=1 を代入すればもう 1 つ条件が出る. もう 1 つは二項展開で力づくで余りを求めてしまう方法だ. 二項展開自体がやはり時々出てくる手法で, いくつか具体例となる問題・実際の応用例を確認して使いどころを複数回見ておきたいところ. そうしないと初めて見る問題, もっというなら試験本番で「ここでも使えるだろうか」という発想が浮かんでこないだろう. どちらも身につけておくべき手法だから繰り返し復習してほしい.
問題 3
\begin{exercise}[室蘭工業大]\label{univ-entrance-exam11} xn+yn+zn−nxyzx^n + y^n + z^n - nxyzxn+yn+zn−nxyz が x+y+zx+y+zx+y+z で割り切れるような正の整数 nnn を求めよ. \end{exercise}
ポイント: 問題 3 3 次の因数分解公式, 実験, 特殊値から絞り込む, オーダーを見る (特に偶数時の振る舞い) といったポイントがある.
方針: 問題 3 まず次の 3 次の因数分解公式は覚えておこう. 時々出てくる. x3+y3+z3−3xyz =(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yx−zx).x3+y3+z3−3xyz =(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yx−zx).\begin{align} &x^3 + y^3 + z^3 - 3 xyz \ = &(x + y + z)(x^2 + y^2 + z^2 - xy - yx - zx). \end{align}x3+y3+z3−3xyz =(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yx−zx).x3+y3+z3−3xyz =(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yx−zx). これを試験本番でひらめくというのはさすがに大変だ. 形自体は綺麗だし覚えにくいということもないだろう. これを念頭におけば n=3n=3n=3 が求める正の整数の 1 つであることはわかる. だから問題はこれ以外の nnn があるかどうかで, これを示すことに精力を注ぐことになる.
これもとりあえず割り算してみよう. f(x,y,z) =xn+yn+zn−nxyz =(x+y+z)q(x,y,z).f(x,y,z) =xn+yn+zn−nxyz =(x+y+z)q(x,y,z).\begin{align} &f(x, y, z) \ = &x^n + y^n + z^n - nxyz \ = &(x+y+z) q(x, y, z). \end{align}f(x,y,z) =xn+yn+zn−nxyz =(x+y+z)q(x,y,z).f(x,y,z) =xn+yn+zn−nxyz =(x+y+z)q(x,y,z). 形式的に 3 変数関数 qqq が出てくるが気にすることはない. これさえ書いてしまえば x+y+z=0x+y+z=0x+y+z=0 としてみるところまではいくだろう. xn+yn+zn=nxyz.xn+yn+zn=nxyz.\begin{align} x^n + y^n + z^n = nxyz. \end{align}xn+yn+zn=nxyz.xn+yn+zn=nxyz. そしておそらくここで手が止まる. 一番シンプルなのは次数を見ることだ. 左辺は xxx, yyy, zzz の nnn 次式だが右辺は xyzxyzxyz で 3 次式になる. この nnn が一致しないといけないので n=3n=3n=3 しかありえない.
また別の見方として数列の極限でよく使う手法も紹介する. 受験生が知る必要は全くないが, 大学でもよく使う標準的なものの見方だ. わかりやすいように nnn を十分大きい偶数, 特に n=20n = 20n=20 としよう. xxx, y→∞y \to \inftyy→∞, z→−∞z \to - \inftyz→−∞ (z=−(x+y)z = - (x+y)z=−(x+y) だから) とすると左辺は 20 乗のスピードで正の方向に大きくなっていくが, 右辺は高々 3 次のスピードでしか大きくならないし, そもそも負の方向に飛んでいく. 要は全くスピードが釣り合わないし方向も真逆だ. これは nnn が十分大きくなくても成り立つし, 似たような議論が n>3n > 3n>3 の奇数であっても成り立つ. n<3n < 3n<3 だと右辺のスピードが早くなる. つまり n=3n=3n=3 しかありえないのだ. これをきちんと書けば解答になる.
他には特殊値を代入して決定する方法もある. これはある種の実験と言える. 実験の一種と思えばこの問題特有の解法なのではなく一般的な手法と思えるだろうし, 実験の威力もわかるはずだ.
第 1 章 数と式, 論証 例題 2
\begin{exercise}[横浜市立大]\label{univ-entrance-exam12} 1 以上の整数全体の集合を NNN とし, その部分集合 S={ 3x+7y }x,y∈NS={ 3x+7y }x,y∈N\begin{align} S = \set{3 x + 7y}{x, y \in N} \end{align}S={3x+7y}x,y∈NS={3x+7y}x,y∈N を考える. SSS はある整数 nnn 以上のすべての整数を含むことを示し, そのような nnn の最小値を求めよ. \end{exercise}
ポイント
ポイントは実験, 分類, 特に余りによる整数の分類だ. また SSS がある数以上の全ての整数を含むことは自明ではない. 例えば係数の (3,7)(3, 7)(3,7) が (2,4)(2, 4)(2,4) だったらと思えばいい. 一般に分類問題はとても大事で, 特に 2 分法がその基本になる. 要はある性質を持っているか持っていないかという話だ. 例えば偶数と奇数は 2 で割り切れるかどうかだし, 有理数と無理数は整数比で書けるかどうかだ. これについては本題とは少しずれる部分もあるが大事な考え方なので紹介しておく.
1 例として教科書にもある「2\sqrt{2}2 が無理数」であることの証明を考えよう. 2\sqrt{2}2 を有理数と思って背理法を使うというのは, 元々無理数自体が「有理数でない実数」という定義であり, 有理数でないことを示す以外の方法が原理的に取りづらいということでもある. このようにして関係がないように見える手法にも関係性を見出し, 点と点を繋いで線にして構造を見抜き, 理解を網の目状に構成していくと記憶の負荷も大きく減る. ここでそもそも色々な手法を知らないと網の目も作りようがない. だから「まずは大雑把に全体を見渡して概要を把握すべし」と言っている.
あまりを見るという手法は整数に関わる問題を扱う場合の基本だ. 一般には, 適当な共通項でくくったとき, そこから漏れる部分があってそれこそがその対象の本質であるというような考え方だ. これだけ言ってもわからないと思うが, 適当に例を作って考えてみてほしい.
例が適切かどうかはわからないが, いわゆる「理工学部男子ファッション」としてのチェックシャツを考えよう. 時々ネタになるのだが理工学部の男子はチェックシャツ着用率が極めて高いというネタがある. しかしチェックシャツ着用という共通項から外れた部分にその人の本質があるわけだ. 理工学部といっても, いわゆる理学部か工学部かというだけでかなり趣味志向が変わる. これもこれで適当な共通項でのくくりになる. 理学部でも数学科か, 物理か, 化学か, 情報かといった要素でまた大きく人の特性が変わる. こうやっていろいろな要素, 共通項でくくっていってもまだ一般化されずに残る部分こそがその人の本質だと思うのだ. 自分でも適当な例を考えて「あまりに着目する」という手法を血肉にしていってほしい. 受験生が知る必要は全くないが, 数学だと 1 つの究極形としてコホモロジーという概念がある.
方針
方針 1 まずは実験してみよう. y=1y = 1y=1 とすると { 3x+7 }x∈N ={10,13,16,19,22,25,…}.\begin{align} &\set{3x + 7}{x \in N} \ = &\cbk{10, 13, 16, 19, 22, 25, \dots}. \end{align}{3x+7}x∈N ={10,13,16,19,22,25,…}. これをどう読むか, 読めるかが命運を分ける. 実際には次のように読むのだ. { 3x+7 }x∈N ={10,13,16,19,22,25,…} ={3 で割ると 1 余る 10 以上の整数}.\begin{align} &\set{3x + 7}{x \in N} \ = &\cbk{10, 13, 16, 19, 22, 25, \dots} \ = &\cbk{\text{3 で割ると 1 余る 10 以上の整数}}. \end{align}{3x+7}x∈N ={10,13,16,19,22,25,…} ={3 で割ると 1 余る 10 以上の整数}. さらっと書いたが, 最後の余りを見るという手法が決定的に大事だ. いわゆる整数問題の基本なのできちんと身につけておくこと. もっと一般に代数学や数論の基本でもある. つまり実験+余りを見ることでこの問題は解けるのだ. 次に y=2y=2y=2 とすると { 3x+14 }x∈N ={17,20,23,26,…} ={3 で割ると 2 余る 17 以上の整数}.\begin{align} &\set{3x + 14}{x \in N} \ = &\cbk{17, 20, 23, 26, \dots} \ = &\cbk{\text{3 で割ると 2 余る 17 以上の整数}}. \end{align}{3x+14}x∈N ={17,20,23,26,…} ={3 で割ると 2 余る 17 以上の整数}. y=3y=3y=3 とすると { 3x+21 }x∈N ={24,27,30,33,…} ={3 で割り切れる 24 以上の整数}.\begin{align} &\set{3x + 21}{x \in N} \ = &\cbk{24, 27, 30, 33, \dots} \ = &\cbk{\text{3 で割り切れる 24 以上の整数}}. \end{align}{3x+21}x∈N ={24,27,30,33,…} ={3 で割り切れる 24 以上の整数}. SSS はこれらの和集合で互いに共通部分もない. この 3 つで尽きることが不安なら例えば { 3x+28 }x∈N\set{3x+28}{x \in N}{3x+28}x∈N を具体的に書いてみるといい: { 3x+7 }x∈N\set{3x + 7}{x \in N}{3x+7}x∈N に含まれることはすぐわかる. 整数を 3 で割った余りは 0, 1, 2 の 3 通りしかない. 見てすぐわかるように小さい方は尽くしきれていないが, ある程度大きい数は全て SSS に含まれることになる. あとは含まれない数を丁寧に考えればいい.
方針 2 もう 1 つ, 基本的で標準的な手法があるのでそれも紹介しておこう. 3 と 7 が互いに素であることを本質的に使っていることが明確にわかる点でいい解答だ. 各ステップを完全に身につけておく必要がある.
大学だとよくやることなのだがまずは n∈Sn \in Sn∈S を 1 つ取ってくる. 適当に取ってきただけなので SSS の任意の要素だ. この nnn がどういう条件を満たすのか調べていこうという方針を取る. まずは SSS の要素だから何か自然数 xxx, yyy があって \begin{align} 3x + 7 y = n \label{univ-entrance-exam42} \end{align} となる.
この次は知らなければ思いつかないだろう. xxx は自然数としていたし本来考えるべきは SSS の元だが, それは無視して 3x+7y=13x+7y=13x+7y=1 となる xxx, yyy を具体的に 1 つ考えるのだ: x=−2x = -2x=−2, y=1y=1y=1 とすればいい. \begin{align} 3 \cdot (-2) + 7 \cdot 1 = 1. \label{univ-entrance-exam43} \end{align} ここで辺々に nnn をかけると 3⋅(−2n)+7⋅n=n.3⋅(−2n)+7⋅n=n.\begin{align} 3 \cdot (-2n) + 7 \cdot n = n. \end{align}3⋅(−2n)+7⋅n=n.3⋅(−2n)+7⋅n=n. (\ref{univ-entrance-exam42}) から (\ref{univ-entrance-exam43}) を引くと 3(x+2n)+7(y−n)=0.3(x+2n)+7(y−n)=0.\begin{align} 3 (x + 2n) + 7 (y - n) = 0. \end{align}3(x+2n)+7(y−n)=0.3(x+2n)+7(y−n)=0. これは昔, 賢い人達が死ぬ程苦労して編み出した方法で, その有効性が認められたからこそ長く伝わっているのだ. むしろ身につけるべき手法として大学で徹底的に叩き込まれるくらいの内容だ. そういうのをひらめきで何とかしようというのは人類レベルの挑戦なので, 受験のときにはお勧めできない. だからきちんと基本的なことを覚えようと言っている.
それはそれとして先に進もう. 3 と 7 は互いに素だから x+2nx+2nx+2n は 7 の倍数, y−ny-ny−n は 3 の倍数になっていなければ和が 0 にはならない. そこで整数 mmm を使って x+2n=7mx+2n = 7mx+2n=7m, y−n=−3my-n = -3my−n=−3m としてみよう. 新たな整数パラメータの導入がまた一山だ. さらに話は続く. 条件が明確なのは xxx, yyy で, 両方とも自然数だった. 使える条件はここなので次のように書いてみる. 0<x=−2n+7m, 0<y=n−3m.0<x=−2n+7m, 0<y=n−3m.\begin{align} 0 &< x = -2n + 7m, \ 0 &< y = n - 3m. \end{align}0<x=−2n+7m, 0<y=n−3m.0<x=−2n+7m, 0<y=n−3m. ここから 27n<m<n3.27n<m<n3.\begin{align} \frac{2}{7}n < m < \frac{n}{3}. \end{align}72n<m<3n.72n<m<3n. 今度はこれをどう読み, どう次の手に繋げるかが問題だ. 実際には mmm を整数として存在させるために nnn がどういう条件を満たすべきかを示す条件と読めばいい. そういう条件と読めたのはよくても, 次の手をどう打つか, さらにはどう式として表現していくかが問題になる. 両端の差が 1 より大きければその中に自然数があるのだからそれを書き下すことになる. つまり n3−27n>1.n3−27n>1.\begin{align} \frac{n}{3} - \frac{2}{7} n > 1. \end{align}3n−72n>1.3n−72n>1. ここから nnn が満たすべき条件が出てくる.
さらっと書いている部分もあるが, この方針では各ステップ全てが勝負どころだ. まずは丸暗記で構わない. とにかくきちんと隙なく再現しきれることを目指してほしい. それが終わったら, 次はこの類題, または同じ手法が使える問題に出会ったとき, どうすれば自分がこの解答と同じように考えていけるかを考えていってほしい. これは忘れた頃に復習してみることで実際に試してみるといい. そういう目で見ていくと上のステップの勝負どころが見えてくる. やはりまずは解答の全体像を把握することが必要だ. その上で各ステップを検討し, 自分が埋められなかったステップを埋めていこう.
補足 次のようなご質問を頂いた.
(本の) 【解法 1 】P.8 最初, x>0x > 0x>0, y>0y > 0y>0 というところで x≥1x \geq 1x≥1, y≥1y \geq 1y≥1 としなくていいのか. また x≥1x \geq 1x≥1 とすると答えが変わってしまう.
なかなか鋭い指摘で感心した. 結論からいうと, まず【答え】は変わらない. 変わる・変えないといけないのは解答・答案の方だ.
(計算ミスしていなければ) xxx, y≥1y \geq 1y≥1 として進めると n≥37n \geq 37n≥37 になった. 実際 n≥37n \geq 37n≥37 の自然数は全て SSS に入る. 実際の答えは 22 以上だから, 22-36 まで全て含むことを 追加で示さないといけない. x>0x > 0x>0 と x≥1x \geq 1x≥1 でここまで変わるのも 不思議な感じはするが, ここまで見えているから本は x>0x > 0x>0 で 解答を作っているとも言える.
ここでさらに, 素直にやるなら 22-36 は 1 つ 1 つ個別確認するしかない. 37 以上は大丈夫だと示したので あとは 36 以下の自然数だけ見ればいいからだ. ただ単純に考えると, 特に試験本番で数え漏れが起きるかもしれない. 系統的に数え切る方法を考えたくなる.
その究極的な形が本の【解答 2】だ. 系統的に数えないと漏れる, そういうこともわかって, 【解答 2】の威力もついでにわかる.
このくらいまで読み込めると この問題の演習効果もぐっと上がる.
第 1 章 数と式, 論証 例題 3
\begin{exercise}[有名問題]\label{univ-entrance-exam13} 正の整数 aaa, bbb, ccc が a2+b2=c2a2+b2=c2\begin{align} a^2 + b^2 = c^2 \end{align}a2+b2=c2a2+b2=c2 をみたすとき, 次の (1), (2), (3) を証明せよ.
- aaa, bbb のいずれかは 3 の倍数である.
- aaa, bbb のいずれかは 4 の倍数である.
- aaa, bbb ccc のいずれかは 5 の倍数である. \end{exercise}
ポイント もちろん Pythagoras の定理が元ネタで, 有名問題だ. 手法含め完璧にしなければいけない. これも問題 \ref{univ-entrance-exam12} と同じく余りと整数の分類が一番肝心なところだ. 絶対に覚えておかなければいけない. あとはおまけで「いずれかは」と来たら背理法を使ってみようと思えるか, 場合分けは分けるべくして分けることが身についているかというポイントもある. 私自身ときどき場合分けでミスすることはあるが, そういう場合は大抵問題の全体像が見えていない.
あとは小学校以来有名な等式 32+42=523^2+4^2=5^232+42=52 で何となくこれもありえそうと想像できるかいうか, 一般的に言えるのか, という驚きというか気付きがあるかというのもある.
せっかくなので小ネタとして Pythagoras 数も紹介しておこう. 代入してみればすぐわかるが mmm, nnn を m>nm > nm>n を満たす整数とし a=m2−n2a = m^2 - n^2a=m2−n2, b=2mnb = 2mnb=2mn, c=m2+n2c = m^2 + n^2c=m2+n2 とすると, これは Pythagoras の定理を満たす整数になる.
またあまりに着目するということ自体, 数学としても本質的な視点であることも紹介しておく. 例えば 14=4⋅3+214 = 4 \cdot 3 + 214=4⋅3+2, 5=1⋅3+25 = 1 \cdot 3 + 25=1⋅3+2 で, 共通の何か (3 の倍数で切り取れる部分) を無視しすれば 141414 と 555 はある意味同じなわけだ. 余り 2 という共通項を持つわけで, これを 14 と 5 は似ていると思うようにする. 333 の倍数という共通の要素に収まりきらないのが余りで, 共通部分からはみ出した部分こそが xxx の本質だと思うのだ. 余りは名前からしても「共通の部分を抜き出したあとの余計な残り物」という感じで 否定的な要素に見えるかもしれないが, 話を反転させて余りこそを「ある部分を無視した共通項」とみなすのだ. 数学的にこれを徹底的に突き進めた概念として例えばコホモロジーがある. 現代数学, 特に代数・幾何ではもはや欠かすことのできない概念だ. ここで詳しく論じきれるような話ではないが, 余りに注目するのは数学的にも極めて重要な話なのだということだけ, 頭の片隅に留めておいてもらえると嬉しい.
方針 これは余りによる整数の分類一本で攻める. 完全に定型処理で特に方針として解説することもないのですぐに解答に進む. 定型処理だからといってなめてはいけない. 整数問題のアプローチの基礎だから, 完璧にしておくこと.
強いていうなら (2) で 4 で割った余りではなく 16 で割った余りを見るところが方針決定での大事なところだろう. 4 では 4m4m4m と 4m+24m+24m+2 の場合が重なってしまって区別がつけられないからだ. 8 にするかとかいくつか次の手の打ち方を考える必要があるが, これも実験してみてうまくいく数を探すしかない. また 4m±14m \pm 14m±1 というのをどうすれば思いつくのかとも思うだろうが, 4m4m4m, 4m+14m+14m+1, 4m+24m+24m+2, 4m+34m+34m+3 と余りを 0, 1, 2, 3 としておいて, 4m+3=4(m+1)−14m+3 = 4(m+1) -14m+3=4(m+1)−1 と書き直しただけだ. これは 3 の余りでも 5 の余りでも同じ.
第 1 章 数と式, 論証 例題 4 早稲田大
問題 (早稲田大) \begin{exercise}[早稲田大] nnn は 2 よりも大きい整数とし, a1,a2,⋯ ,ana_1, a_2, \cdots, a_na1,a2,⋯,an ; b1,b2,⋯ ,bnb_1, b_2, \cdots, b_nb1,b2,⋯,bn は正の数で \begin{align} \sum_{i=1}^{n} a_n = \sum_{i=1}^{n} b_n, \quad \frac{b_1}{a_1} < \frac{b_2}{a_2} < \cdots \frac{b_n}{a_n} \label{univ-entrance-exam16} \end{align} をみたすものとする.
このとき, 0<m<n0 < m < n0<m<n であるすべての整数 mmm に対して \begin{align} \sum_{i=1}^m a_i > \sum_{i=1}^m b_i \label{univ-entrance-exam14} \end{align} が成り立つことを証明せよ. \end{exercise}
ポイント これも実験してみるといい. 当たり前のことだが, 問題文にある正の数という条件, nnn の条件, aja_jaj と bkb_kbk が満たす条件・束縛条件をきちんと理解して使い切ることが大事だ. 証明が終わってみると自明としかいいようがなくなるのだが, それをいかにして示すかに苦心することになる. また, b/a=d/c=f/eb/a=d/c=f/eb/a=d/c=f/e というように比が一定の数が出てくるとそれを共通の定数 kkk としてみるという手法があるのだが, それのバージョンと思って式をいじってみられるかも勘所だ.
本にある別解のうち, 加比の理とあるのは他でも使えそうなので紹介しておきたい.
方針 本には解法が 3 つあげてあるが, ここでは 2 つだけ紹介する.
方針 1 (本の【解答 2】) まず一般性がありそうで他でも使いやすそうな方を紹介する. それは本で加比の理と呼ばれている. \begin{prop}[加比の理] aaa, bbb, ccc, d>0d > 0d>0 のとき ba<dc⇒ba<b+da+d<dc.ba<dc⇒ba<b+da+d<dc.\begin{align} \frac{b}{a} < \frac{d}{c} \Rightarrow \frac{b}{a} < \frac{b+d}{a+d} <\frac{d}{c}. \end{align}ab<cd⇒ab<a+db+d<cd.ab<cd⇒ab<a+db+d<cd. \end{prop} 証明は左 2 つ, 右 2 つで分母分子を払って計算すればいいだけだ.
この方針・解法に関して質問を頂いたので注意しておく. 具体的には【正しくは数学的帰納法で】とあるところで, 数学的帰納法の使い方がよくわからないとのことだった. 確かに少しわかりづらい気もするので補足する. わかりづらいのは仮定と示すべきことがはっきりしていないことによる. 示すべきなのは次の命題だ. \begin{prop}[一般化された加比の理] a1,a2,…,ana_1, a_2, \dots, a_na1,a2,…,an, b1,b2,…,bnb_1, b_2, \dots, b_nb1,b2,…,bn が全て正の実数で b1a1<b2a2<⋯<bnanb1a1<b2a2<⋯<bnan\begin{align} \frac{b_1}{a_1} < \frac{b_2}{a_2} < \cdots < \frac{b_n}{a_n} \end{align}a1b1<a2b2<⋯<anbna1b1<a2b2<⋯<anbn を満たすとする. このとき次の不等式が成立する. b1a1<∑k=1mbk∑k=1mak<bmam,1<m≤n, b1a1<∑k=1mbk∑k=1mak<∑k=1nbk∑k=1nak,1<m<n.b1a1<∑k=1mbk∑k=1mak<bmam,1<m≤n, b1a1<∑k=1mbk∑k=1mak<∑k=1nbk∑k=1nak,1<m<n.\begin{align} \frac{b_1}{a_1} &< \frac{\sum_{k=1}^{m} b_k}{\sum_{k=1}^{m} a_k} < \frac{b_{m}}{a_{m}}, \quad 1 < m \leq n, \ \frac{b_1}{a_1} &< \frac{\sum_{k=1}^{m} b_k}{\sum_{k=1}^{m} a_k} < \frac{\sum_{k=1}^{n} b_k}{\sum_{k=1}^{n} a_k}, \quad 1 < m < n. \end{align}a1b1<∑k=1mak∑k=1mbk<ambm,1<m≤n, a1b1<∑k=1mak∑k=1mbk<∑k=1nak∑k=1nbk,1<m<n.a1b1<∑k=1mak∑k=1mbk<ambm,1<m≤n, a1b1<∑k=1mak∑k=1mbk<∑k=1nak∑k=1nbk,1<m<n. \end{prop} 問題の解答に必要なのは後者の式だ. 証明は本に書いてあることを素直に一般化しつつ直接計算するだけなので省略する. 数学的帰納法を使うまでもないとは思う.
方針 2 (本の【解法 1】) 次に本の【解法 1】を検討する. まず私がやってみた (間抜けな) 初手の実験を紹介しよう. 本当に問題の条件が成り立つかを知るために n=3n=3n=3 とし, そして計算が簡単になるよう a1=a2=1a_1 = a_2 = 1a1=a2=1, b1=1b_1 = 1b1=1, b2=2b_2 = 2b2=2 としてみた. 和が等しくなるように a3a_3a3 と b3b_3b3 を決めてみようと思ったのだが, そもそもここで頓挫した. それも当然で, 問題の条件下では式 (\ref{univ-entrance-exam14}) が 成立しなければいけないのに それを無視して aja_jaj, bkb_kbk を設定したからだ. また, 後づけの理由だが上の設定はきちんと解釈すれば「正しい実験」にもできた. 添字 (順番) を 1→21 \to 21→2, 2→32 \to 32→3, 3→13 \to 13→1 とすれば 正しい順番にできるし, 証明すべき不等式も成立している. 1 つの実験だけで見抜けるものではないが, 上の入れ換えをした上で b1/a1<1≤b2/a2<b3/a3b_1 / a_1 < 1 \leq b_2 / a_2 < b_3 / a_3b1/a1<1≤b2/a2<b3/a3 が成立していることも注意しておこう. 実際示すべきはこの式だ.
うまくいかなかったので次の手を打ってみた. b/a=d/c=f/eb/a=d/c=f/eb/a=d/c=f/e というように比が一定の数が出てくるとそれを共通の定数 kkk としてみる手法が大学でもある. 今回は等号ではなく不等号だがバリエーションなので使えないかという発想に至った. これはいわゆるひらめきだが, その基礎には大学でも繰り返し使ってきた手法が基礎にあることに注意してほしい. 本当の無から作り出したわけではないのだ. 具体的にどうしたかというと次のようにした: ki=bi/aik_i = b_i/a_iki=bi/ai としたのだ. こうしたからといって何か新しくわかったわけではないが, とりあえず条件を整理してみる. \begin{align} k_1 < k_2 < \cdots < k_n, \quad b_i = k_i a_i. \label{univ-entrance-exam15} \end{align} ここで後者を見た瞬間に ∑i=1nai=∑i=1nbi\sum_{i=1}^{n}a_i = \sum_{i=1}^{n} b_i∑i=1nai=∑i=1nbi に代入してみようと思った. 単に bib_ibi は aia_iai の倍数と書いただけだが, これを見てすぐに次の発想が出てきたのだ. うまくいくかはともかく書き直してみよう. 0=∑i=1nai−∑i=1nbi=∑i=1nai−∑i=1nkiai=∑i=1n(1−ki)ai.0=∑i=1nai−∑i=1nbi=∑i=1nai−∑i=1nkiai=∑i=1n(1−ki)ai.\begin{align} 0 = \sum_{i=1}^{n} a_i - \sum_{i=1}^n b_i = \sum_{i=1}^{n} a_i - \sum_{i=1}^n k_i a_i = \sum_{i=1}^n (1 - k_i) a_i. \end{align}0=i=1∑nai−i=1∑nbi=i=1∑nai−i=1∑nkiai=i=1∑n(1−ki)ai.0=i=1∑nai−i=1∑nbi=i=1∑nai−i=1∑nkiai=i=1∑n(1−ki)ai. そしてこの瞬間, 終わったと思った. この問題が自明になった瞬間と言える.
なぜ自明かを説明しよう. aia_iai は正だったから上の和が 0 になる可能性は 2 つある. 1 つは全ての kik_iki が 0 になることだが (\ref{univ-entrance-exam15}) からそれはない. したがってもう 1 つの可能性しかない. それは 1−ki1 - k_i1−ki が正になったり負になったりすることで調整している可能性だ. 特に (\ref{univ-entrance-exam15}) から, 適当な 0<n0<n0 < n_0 < n0<n0<n があって, それを境に 1−ki1 - k_i1−ki の符号が反転する. 特に m≤n0m \leq n_0m≤n0 の場合を考えると 1−km≤01 - k_m \leq 01−km≤0, つまり am>bma_m > b_mam>bm となるから ∑i=1mai>∑i=1mbi∑i=1mai>∑i=1mbi\begin{align} \sum_{i=1}^{m} a_i > \sum_{i=1}^{m} b_i \end{align}i=1∑mai>i=1∑mbii=1∑mai>i=1∑mbi となる.
n0<m<nn_0 < m < nn0<m<n のときは 1 つステップを踏む必要がある. a<ba < ba<b, c<dc < dc<d なら a+c<b+da+c < b+da+c<b+d だが, 今は a<ba < ba<b, c>dc > dc>d で a+c<b+da+c < b+da+c<b+d が言えるかが問題だからだ. 当然一般には言えないが, 問題文をきちんと読めば問題の条件下では成立しているのがわかる. 式 (\ref{univ-entrance-exam16}) があるので, nnn まで全て足してはじめて和がイコールになるので, mmm までの部分和で不等号がひっくり返ることはない. このような文章を書くだけでも正解にしてもらえるだろう. 解答ではこれを式を使ってきちんと説明してみる. 厳密な証明をつけるいい練習になるだろう.
最後に一言いうと, 問題で示すように言われているのは ∑i=1mai>∑i=1mbi\sum_{i=1}^{m} a_i > \sum_{i=1}^{m} b_i∑i=1mai>∑i=1mbi だが 勘所はある 1<n0<n1 < n_0 < n1<n0<n が存在して bn0/an0≤1b_{n_0}/a_{n_0} \leq 1bn0/an0≤1 となることだった. きちんと証明していないがおそらくこの 2 つは同値だ. 受験勉強をはじめたばかりのときは浅く広く暗記中心で早くから種をたくさん蒔いていくことが必要だが, 少しずつ深く高く種を育て芽を出させる必要がある. その深く高く育てるところためにこのような突っ込んだ考察が欠かせない. 少しずつでいいから, 自分でも考えを深めていってほしい.
第 2 章 関数と方程式・不等式 例題 5
問題 1
\begin{exercise}[東海大]\label{univ-entrance-exam40} 2 次方程式 x2+mx−12=0x2+mx−12=0\begin{align} x^2 + mx - 12 = 0 \end{align}x2+mx−12=0x2+mx−12=0 の 2 解がともに有理数となるような自然数 mmm の値を求めよ. \end{exercise}
問題 1 ポイント 解に関する話で 2 次方程式なのだから解の公式がまずポイントだ. 何度となく強調しているように, 試行錯誤, 実験も大事なのできちんと身につけてほしい. ある整数が 2 乗の形になるかならないかを調べる問題は時々出てくるので, そのための処方箋もきちんと覚えて道具箱に入れておく必要がある. 有理数は整数/整数という形だからどこかしらで整数が絡んでくる. 整数に関する基礎知識もきちんと整理しておく必要がある. 解に有理数という条件があってその上で係数を決定する問題だから, 解と係数の関係を使うことも考えよう. もちろん係数にも自然数という条件がある. 単に整数ではなく自然数 (正の整数) というところでさらに絞り込みがかかる.
また, 一般に代数方程式が有理数解を持つとき, その有理数解が整数解になることがある. それは定理として明確な形で証明できる. そして今回, 実際に有理数解は (2 解とも) 整数解になる. 整数は有理数以上に厳しい制限がかかるから, それをうまく使えないか考えてみるのも大事だろう. 例えば和と積が両方偶数になる 2 数は両方とも偶数になる. これは問題 \ref{univ-entrance-exam13} でも出てきた「あまりに着目」する手法で考えていくと簡単に証明できる. 命題としてまとめておこう. \begin{prop}\label{univ-entrance-exam18} f(x)=∑k=0nakxkf(x) = \sum_{k=0}^n a_k x^kf(x)=∑k=0nakxk は整数係数の多項式とする. 代数方程式 f(x)=0f(x) = 0f(x)=0 が ppp, qqq を互いに素な整数として有理数解 q/pq/pq/p を持つなら, ppp は最高次の係数の約数であり qqq は定数項の約数である. \end{prop} \begin{proof} f(q/p)=0f(q/p) = 0f(q/p)=0 だから 0=∑k=0nak(qp)k=an(qp)n+∑k=0n−1ak(qp)k.\begin{align} 0 = \sum_{k=0}^n a_k \rbk{\frac{q}{p}}^k = a_n \rbk{\frac{q}{p}}^n + \sum_{k=0}^{n-1} a_k \rbk{\frac{q}{p}}^k. \end{align}0=k=0∑nak(pq)k=an(pq)n+k=0∑n−1ak(pq)k. 辺々 pnp^{n}pn をかけると anqn=−p∑k=0n−1akqkpn−kanqn=−p∑k=0n−1akqkpn−k\begin{align} a_n q^{n} = - p \sum_{k=0}^{n-1} a_k q^k p^{n-k} \end{align}anqn=−pk=0∑n−1akqkpn−kanqn=−pk=0∑n−1akqkpn−k ppp のべきを見ると右辺は整数だから左辺も整数でなければならない. ppp と qqq は互いに素だったから ana_nan は ppp の倍数でなければならず, ppp から見れば ppp は ana_nan の約数になる. 一方, 辺々に pnp^{n}pn をかけた式は次のようにも書ける. a0pn=−q∑k=1nakqk−1pn−k.a0pn=−q∑k=1nakqk−1pn−k.\begin{align} a_0 p^n = - q \sum_{k=1}^n a_k q^{k-1} p^{n-k}. \end{align}a0pn=−qk=1∑nakqk−1pn−k.a0pn=−qk=1∑nakqk−1pn−k. 右辺は整数で ppp と qqq は互いに素だから qqq は a0a_0a0 の約数でなければいけない. \end{proof} \begin{prop}\label{univ-entrance-exam17} aaa, bbb を整数とする. a+ba+ba+b, ababab が両方偶数になるなら aaa も bbb も偶数になる. \end{prop} \begin{proof} 対偶を見ればいい. aaa か bbb のどちらかが奇数とすると a+b=2(l+m)+1a+b = 2(l+m) + 1a+b=2(l+m)+1 となって和が奇数になってしまう. 両方とも奇数なら積が奇数になる. \end{proof}
また数学は「---が存在しない」ことをきちんと示せるという特徴がある. 他の学問だと虱つぶしに全て調べきることが原理的にできない (場合が大半な) ので, 「これ以外にない」というのはなかなか言えない. 例えば物理で「そんなことはありえない」と言っても実験的に実現できてしまったら終わりだ. この問題では実際に「実験して出した答え以外に解がない」ことを証明する必要がある. そこでこの辺の認識があるかどうかが問われるのだ. それをきちんと示せてしまう分, 本当にきちんとそれを証明しないといけないから.
問題 1 方針
方針 1 あとで別解も紹介するが, 2 次方程式なので解の公式があり, 実数か有理数をわける分水嶺として根号部分があるから, そこに着目するのが一番素直な方針だろう. というわけでまずは解の公式に叩き込む. x=−m±m2+482.x=−m±m2+482.\begin{align} x = \frac{-m \pm \sqrt{m^2 + 48}}{2}. \end{align}x=2−m±m2+48.x=2−m±m2+48. いまの場合 g(m)=m2+48g(m) = \sqrt{m^2 + 48}g(m)=m2+48 が整数になっていてくれればいい. 何度も言っているが, 無理に一般的にやっていこうとする前にまずは実験してみよう. m=1m=1m=1, m=4m=4m=4 のとき, g(1)=7g(1) = 7g(1)=7, g(4)=8g(4) = 8g(4)=8 になるから, 少なくともこの 2 解はある. 実験を頑張った人は m=11m=11m=11 まで見つけられるだろう. 判別式で見ずに元の方程式 x2+mx−12=0x^2 +mx -12 = 0x2+mx−12=0 から直接考えた方が見やすいかもしれない. 問題はこれ以外に解があるかどうかだ. さすがにこれは一般的に示さないといけない. これも何度も言っているがここまで書いて「少なくとも m=1m=1m=1, 444 は解になる. 他の解があるか, またはそれに限るかを調べる. 」とか書いておけば部分点が来る. 地道にこういう習慣もつけていこう.
実験の習慣があればここまでは来られるはずだ. 何も知らなければ次のアクションをどうすればいいかで手が止まるだろう. ここもやはり基本的な手法を覚えているかどうかで決まる. 具体的には次のようにすればいい: lll を自然数として m2+48=l2m^2 + 48 = l^2m2+48=l2 とする. もっと自然な流れはこれだ: m2+48\sqrt{m^2 + 48}m2+48 が整数でなければいけないのだからまず整数 lll を使って m+48=l\sqrt{m + 48} = lm+48=l としてみる. 最終的に消さないといけないパラメータを増やすことになるのでかなり嫌な選択肢ではあるが仕方ない. ここでまた手が止まるだろう. このままでは手の打ちようがない. そこで 2 乗を計算してみられるかが勝負だ. つまりここまでパラメータを増やして「ルートは整数であるべき」という要請を具体的に式に落とし込めるか, そのままでは手の打ちようがないから次の手が打てるように 2 乗してみられるか, という 2 つのポイントを乗り越えられるかが勝負になる. さらに計算すると l2−m2=48⇒(l+m)(l−m)=24⋅3.l2−m2=48⇒(l+m)(l−m)=24⋅3.\begin{align} l^2 - m^2 = 48 \Rightarrow (l+m)(l-m) = 2^4 \cdot 3. \end{align}l2−m2=48⇒(l+m)(l−m)=24⋅3.l2−m2=48⇒(l+m)(l−m)=24⋅3. ここまで来れば最後の詰めだ. 左辺は 2 整数の積, 右辺は素因数分解された形なので適当に素因数分解していけばいい.
何をしたか, 式の形で流れを整理しよう. l=m2+48 l2=m2+48 (l+m)(l−m)=24⋅3.l=m2+48 l2=m2+48 (l+m)(l−m)=24⋅3.\begin{align} l &= \sqrt{m^2 + 48} \ l^2 &= m^2 + 48 \ (l+m)(l-m) &= 2^4 \cdot 3. \end{align}l=m2+48 l2=m2+48 (l+m)(l−m)=24⋅3.l=m2+48 l2=m2+48 (l+m)(l−m)=24⋅3. 式で書けばそれぞれ 1 行だが各ステップ全てが勝負所になっている. 知っていれば何ということはないが, 何も知らずに試験会場で思いつけるかと言われるとこれはつらい. (l+m)(l−m)=24⋅3(l+m)(l-m) = 2^4 \cdot 3(l+m)(l−m)=24⋅3 から左辺の 2 整数に因数をふりわけるラストステップも, 普通の精神状態ではない試験本番できちんとそこまで辿り着けるかと言われると相当きつい. 呼吸するように自然に動けるよう思考が流れるように, 繰り返し復習して完璧に身につけなければいけない.
それでは最終ステップだ. 整数に関する基本定理, 素因数分解をきちんと使えるかが大事になる. mmm は自然数なので l+m>l−ml+m > l-ml+m>l−m だからこれに注意すれば素因数分解の組も決まる. 実際には事前にもっと絞り込める. 具体的には (l+m)−(l−m)=2m(l+m) - (l-m) = 2m(l+m)−(l−m)=2m に注意する. 命題 \ref{univ-entrance-exam17} から l+ml+ml+m, l−ml-ml−m は両方とも偶数になる. つまり l+ml+ml+m, l−ml-ml−m ともに 3 だけを因数にすることはない. この条件下で素因数分解のペアを考えていけばいい. 表にするとわかりやすいだろう.
方針 2 命題 \ref{univ-entrance-exam18} を使って有理数解が整数解になると言ってしまってもいいが, ここでは直接見てみよう. 別解は解を有理数と仮定してから絞り込みをかける. これも有理数ならどうなるか, どんな性質を持つべきなのかを実験しているといってもいい. ppp, qqq を互いに素な整数で p>0p>0p>0 としておく. q/pq/pq/p を f(x)=0f(x) = 0f(x)=0 の有理数解とすると (qp)2+m(qp)−12=0⇒q2=p(12p−mq).\begin{align} \rbk{\frac{q}{p}}^2 + m \rbk{\frac{q}{p}} - 12 = 0 \Rightarrow q^2 = p(12p - mq). \end{align}(pq)2+m(pq)−12=0⇒q2=p(12p−mq). ppp, qqq は互いに素だから p=1p=1p=1 となるしかない. つまり f(x)=0f(x) = 0f(x)=0 の 2 解は整数になる. また解と係数の関係から 2 解の積は −12-12−12 になる. 2 解を α\alphaα, β\betaβ とすると, 再び解と係数の関係から mmm は −(α+β)- (\alpha + \beta)−(α+β) になる. αβ=−12\alpha \beta = -12αβ=−12 となるペアの中から mmm が自然数になるペアだけ選べばそれが解だ.
問題 2
\begin{exercise}[防衛大]\label{univ-entrance-exam41} 実数係数の 3 次方程式 2x3−3ax2+2(a+7)x+a2−9a+8=02x3−3ax2+2(a+7)x+a2−9a+8=0\begin{align} 2 x^3 - 3ax^2 + 2(a+7) x + a^2 -9a + 8 = 0 \end{align}2x3−3ax2+2(a+7)x+a2−9a+8=02x3−3ax2+2(a+7)x+a2−9a+8=0 の解が全て自然数であるとき, aaa の値と 3 解を求めよ. \end{exercise}
問題 2 ポイント ここも解が全て自然数というところからいろいろなことが決まる. 解の条件があって係数 (と解) を決めろと言っているので解と係数の関係が主戦場になる. もっともらしく実数係数と言っているが aaa が本当に純粋な実数になることはないだろう (整数か自然数になるだろう), と予想できるかもかなり効いてくる. うまく適当な難易度にするため, 解けるようにするためもあるが, 式の見た目はごついので, それに惑わされないようにする必要もある. 定数項が特にごついが, 何かいわくありそうと思える反射神経がほしい.
少し話がずれるが, 解が自然数というだけからこの面倒そうな 3 次方程式のパラメータ, aaa の値と 3 解が決まってしまうことに驚くような感性がある人は数学がよくできる人だろう. ここでの「よくできる」は今の偏差値とか成績とかそういう話ではなくて, 数学的に豊かな感受性があるかどうかという話だ. 問題の見た目のごつさに惑わされず, そういう視点を持てた人は自分の数学的感性に自信を持っていい. 数学科志望で「そんなことまで感じられなかった」という人がいるかもしれないが, 落ち込む必要はない. そういう感性をゆっくり育てていってほしい. あとあと, 本当に決定的に効いてくる. 受験勉強の中でもこうした感性を磨いていこう.
問題 2 方針 ポイントでも書いたように 3 次方程式の解と係数の関係を調べにいくのが基本だ. 3 解を α\alphaα, β\betaβ, γ\gammaγ で α≤β≤γ\alpha \leq \beta \leq \gammaα≤β≤γ とする. 解に順序をつけたのはいわゆる「こうしても一般性を失わない」というやつだ[^univ-entrance-exam19]. 解と係数の関係から \begin{align} \alpha + \beta + \gamma &= \frac{3}{2} a, \label{univ-entrance-exam20} \ \alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha &= a + 7, \label{univ-entrance-exam21} \ \alpha \beta \gamma &= - \frac{1}{2} (a^2 - 9a + 8) \label{univ-entrance-exam22}. \end{align} 解と係数の関係を使えばここまでは来れる. 次はこの式をどう読むかだ[^univ-entrance-exam23]. まず最初の式から aaa は偶数でなければならない. これだけで既に整数どころか偶数としての絞り込みが入った. この時点で整数に関する知識をきちんと頭にロードしておこう. 他をどうするかと思っても最後の式からは整数となることしか読み取れない. 「試験問題だし絞り込むための条件がどこかにあるはずだ」と思ってみたり, あからさまにごつい定数項は何だと思ってみてもいいが, とりあえず最後の式からも条件を引き摺り出せないか考えてみよう. 左辺の積が自然数だから右辺も自然数, 特に正の数である必要がある. 2 次間数になっているから実際にグラフを描けばよくて, やってみると 1<a<81 < a < 81<a<8 とわかる. この中で偶数だから a=2a = 2a=2, 444, 666 まで絞り込める. ちなみにここは因数分解もできて a2−9a+8=(a−1)(a−8)a^2 -9a +8 = (a-1)(a-8)a2−9a+8=(a−1)(a−8) だ. どちらが見やすいかは人によるだろうが, こうしておくと私にはあからさまに整数に関する条件に思える. こういうのを見ると問題 \ref{univ-entrance-exam9} のポイントで「はじめから因数分解してくれているのもポイント」と書いたが, ここでその意味もわかってもらえるだろう. 漠然と 2 次関数で書かれているよりも因数分解されている方が整数らしい感じがある.
univ-entrance-exam19: 定石だし, 考えていく上で楽にもなるので必ず身につけておくこと.
univ-entrance-exam23: 式から情報を読み取る技術は例えば物理で役に立つ. もっと言うなら式と現象と頭のイメージを一致させていかないと物理にならない.
第 2 章 関数と方程式・不等式 例題 6
問題 \begin{exercise}[埼玉大]\label{univ-entrance-exam27} 正の実数 xxx, yyy が x2−2x+4y2=0x^2 - 2x + 4y^2 = 0x2−2x+4y2=0 をみたしながら変わるとき, xyxyxy の最大値を求めよ. \end{exercise}
ポイント 適当な拘束条件下での最大最小問題だ[^univ-entrance-exam28]. 最大・最小問題なのでまず微分が使えないかという発想が出てくるだろうが, 見た目は xxx, yyy の 2 変数があって高校範囲の 1 変数の微分の枠からはみ出るから, 何とか 1 変数に叩き落とす必要がある. ここを乗り越えられるかが第一のポイントだ. その他, 最大値だけ出せばいいので不等式とその等号成立条件を調べる方針もある. さらに純粋に式の処理と思ってもいいし, 幾何学的に見る視点も大事で, それも別解として使える.
あと, そこまでわからなくてもいいのだが, この問題では xxx, yyy が正という条件はなくても最大値は出せる.
univ-entrance-exam28: 実用的にも大事だ. 微分方程式の数値計算・シミュレーションやその他いろいろな数値計算で, 実際に何百どころか何億という連立一次方程式が出てくる.
方針
方針 1 方針はいくつかあるが, まずは私がはじめに考えたことを説明しよう. xyxyxy の最大値を見たいのだから具体的に xy=kxy = kxy=k としてみる. これは小学校以来の双曲線の方程式だ. そして x2−2x+4y2=0x^2 -2x + 4y^2 = 0x2−2x+4y2=0 は楕円の方程式なので, これは双曲線と楕円が交点を持つ最大の kkk を求める問題になる. y=k/xy = k/xy=k/x として楕円の方程式に代入しよう. 0=x2−2x+4k2x2⇒x4−2x3+4k2=0.0=x2−2x+4k2x2⇒x4−2x3+4k2=0.\begin{align} 0 = x^2 - 2x + 4 \frac{k^2}{x^2} \Rightarrow x^4 - 2x^3 + 4k^2 = 0. \end{align}0=x2−2x+4x2k2⇒x4−2x3+4k2=0.0=x2−2x+4x2k2⇒x4−2x3+4k2=0. つまり x4−2x3+4k2=0x^4 - 2x^3 + 4k^2 = 0x4−2x3+4k2=0 が解を持つような kkk の最大値を調べればいい. ただし上の式が解を持つ kkk の最大値を調べようと思うとちょっと苦しくなる. そこでさらに x4−2x3x^4 - 2x^3x4−2x3 が最小値を持って, その最小値がそれがぎりぎり 4k24k^24k2 になる kkk の値を見よう, と視点を変えてみる. ここが結構大事なところで, この読み替えができると計算が楽になるしミスも減る. これで問題は f(x)=x4−2x3f(x) = x^4 - 2x^3f(x)=x4−2x3 の最大最小問題に帰着した. ただし元が楕円の方程式から来ているから xxx は 0<x<20 < x < 20<x<2 の条件が入っていることに注意する. きちんと 1 変数の微分の問題に落ちていることも確認しておこう.
これをもっとダイレクトにやると本 \cite{KazuhiroMitsuya1} の【解答 2】になる. 条件式から 0<4y2=−x2+2x0 < 4y^2 = -x^2 + 2x0<4y2=−x2+2x であり 0<x<20 < x < 20<x<2. xyxyxy は正だから xy=x2y2=x2−x2+2x4=14−x4+2x3.xy=x2y2=x2−x2+2x4=14−x4+2x3.\begin{align} xy = \sqrt{x^2 y^2} = \sqrt{x^2 \frac{-x^2 + 2x}{4}} = \frac{1}{4}\sqrt{-x^4 + 2x^3}. \end{align}xy=x2y2=x24−x2+2x=41−x4+2x3.xy=x2y2=x24−x2+2x=41−x4+2x3. だから f(x)=−x4+2x3f(x) = -x^4 + 2x^3f(x)=−x4+2x3 を 0<x<20 < x < 20<x<2 の範囲で最大化すればいい. この区間で最小値を取ってくれるならそれでいいが, そうならない場合は端点の情報を調べる必要もある. これはシンプルだからあまり困らないものの 4 次関数ではあるから割と面倒になる可能性もある. きちんと追い切れる計算力をつけないといけない.
方針 2 次はちょっと豪快に相加相乗平均の不等式を使う. 1 点ちょっとした閃きというか洞察が必要なところがあって, わりと難しいが覚えておくべき技術とも言えるから紹介したい. 楕円だからというところから決めてもいいが, まず xxx の変域を調べよう. 0<4y2=−x2+2x0 < 4y^2 = -x^2 + 2x0<4y2=−x2+2x だから 0<x<20 < x < 20<x<2. また xyxyxy が正ということもあり, xyxyxy の最小値と x2y2x^2 y^2x2y2 の最小値は 1:1 に対応する. そこで x2y2x^2 y^2x2y2 を計算する: これは y2=(−x2+2x)/4y^2 = (-x^2 + 2x)/4y2=(−x2+2x)/4 を使えるからだ. x2y2=14x2(−x2+2x)=−1413x⋅x⋅x⋅(6−3x).x2y2=14x2(−x2+2x)=−1413x⋅x⋅x⋅(6−3x).\begin{align} x^2 y^2 = \frac{1}{4} x^2 (-x^2 + 2x) = - \frac{1}{4} \frac{1}{3} x \cdot x \cdot x \cdot (6 - 3x). \end{align}x2y2=41x2(−x2+2x)=−4131x⋅x⋅x⋅(6−3x).x2y2=41x2(−x2+2x)=−4131x⋅x⋅x⋅(6−3x). ここで 1/31/31/3 を挿入しているのは次の相加相乗平均を使う準備だ. さらっと書いたが, 相加相乗平均を使いたいならこれに気付く必要があるし, そもそも x3x^3x3 を x⋅x⋅xx \cdot x \cdot xx⋅x⋅x と分解できるかも大事だ: これはなかなか思いつかないだろうから, やはり少なくとも 1 度は経験しているかどうか, 知っているかどうかが勝負を分ける. ここでもきちんと 1 変数の問題に落ちていることを確認しておこう. 4 変数の相加相乗平均の不等式から x⋅x⋅x⋅(6−3x)n≤x+x+x+(6−3x)4=32.x⋅x⋅x⋅(6−3x)n≤x+x+x+(6−3x)4=32.\begin{align} \sqrt[n]{x \cdot x \cdot x \cdot (6 - 3x)} \leq \frac{x + x + x + (6-3x)}{4} = \frac{3}{2}. \end{align}nx⋅x⋅x⋅(6−3x)≤4x+x+x+(6−3x)=23.nx⋅x⋅x⋅(6−3x)≤4x+x+x+(6−3x)=23. 等号成立条件は 4 つの変数が全て一致するときで, 結局 x=6−3xx = 6 - 3xx=6−3x. あとはこれを解いて 0<x<20 < x < 20<x<2 であることを確認すればいい. この最後の確認がないと減点されるかもしれないので注意しよう. もっと言うなら, チェックする習慣がついていないと, 他の問題を解いているときに条件見落としで本当に不適なものを解答に含めてしまう可能性がある.
方針 3 焦って見抜けないと悲惨ではあるが, 条件式は楕円の方程式とわかっているのでそれを直接使う解法もある. 楕円のパラメータ表示を使えばいいのだ. x−1=cosθx - 1 = \cos \thetax−1=cosθ, y=12sinθy = \frac{1}{2} \sin \thetay=21sinθ とする. xxx も yyy も正なので 0<θ<π0 < \theta < \pi0<θ<π という条件がつくことに注意しよう. ここでもきちんと 1 変数の問題に落ちていることも確認しておく. こうなると xy=(1+cosθ)sinθ/2=f(θ)xy = (1 + \cos \theta) \sin \theta / 2 = f(\theta)xy=(1+cosθ)sinθ/2=f(θ) になるから, 単純な f(θ)f (\theta)f(θ) の最大最小問題になる. やはり微分が一番てっとりばやいだろう.
第 2 章 関数と方程式・不等式 例題 7
問題 \begin{exercise}[高知大]\label{univ-entrance-exam29} 任意の正の数 aaa, bbb に対して, つねに \begin{align} \sqrt{a} + \sqrt{b} = k \sqrt{a + b} \label{univ-entrance-exam30} \end{align} が成り立つような実数 kkk の最小値を求めよ. \end{exercise}
ポイント あまり難しくない問題だが, 色々な解法があるのでそれをさらっと復習するのに非常に使える. いくつかの解法の共通点を挙げると, aaa, bbb と 2 つあるパラメータを 1 つに落とすところがポイントで, 問題 \ref{univ-entrance-exam27} と同じ手法が使える. ここでも手法として実験が使えることを指摘しておこう. 整数問題でもよく「必要条件から絞り込む」という手法が紹介されるが, それと同じことだ.
またこの手の問題は大学, もっというなら研究でよく出てくる. 不等式の最良定数を求める一連の問題があって, そういう論文もたくさんある. 等号成立条件も大事で, それを調べるだけでも長い議論が必要になることも多いし, 実際論文にもなっている. 応用上も大事で, 例えば数値計算をするとき, その手法 (アルゴリズム) が正当かどうか, 特に収束するかどうかを判定するのに途中で使う不等式の全てで最良評価をしていく判定法がある. こういうときに 1 つ 1 つの不等式の最良定数がないと困る事情がある.
方針 あまり方針としていうことはない. 次の方法が身についているかを確認してほしい.
- 相加相乗平均の不等式.
- 三角関数の利用.
- 微分の利用.
- 凸関数の利用.
- ベクトルの内積の利用.
- 必要条件からの絞り込み.
最大最小問題なら微分に叩き落とせないかを考えるのは自然だろうから, 私は微分が 1 番汎用的な解答で, 1 番素直なのは相加相乗平均だろうと思う.
三角関数, 微分, ベクトルの内積利用ではパラメータを 1 つに減らして調べるという共通点がある. 三角関数では aaa, bbb というパラメータを θ\thetaθ 1 つに, 微分では b/a=x>0b/a = x > 0b/a=x>0 としてパラメータを xxx 1 つに, ベクトルでは y⃗=(a,b)\vec{y} = (\sqrt{a}, \sqrt{b})y=(a,b) としてパラメータを y⃗\vec{y}y 1 つに落とし込む. 特に微分では式が 1/21/21/2 乗の同次式であることに注意しよう. このおかげで 1 変数の問題に落としこめるのだ.
また凸関数の定義も一応注意しておこう. 高校だと 2 階微分の符号を見るのが一般的だろうが, 正式な定義は次のようになる. \begin{defn}[凸関数] 関数 fff が次の条件を満たすとき fff を下に凸な関数と呼ぶ: 0≤t≤10 \leq t \leq 10≤t≤1 に対して f(ta+(1−t)b)≤tf(a)+(1−t)f(b).\begin{align} f \rbk{t a + (1-t) b} \leq t f(a) + (1-t) f(b). \end{align}f(ta+(1−t)b)≤tf(a)+(1−t)f(b). 関数 fff が次の条件を満たすとき fff を上にに凸な関数と呼ぶ: 0≤t≤10 \leq t \leq 10≤t≤1 に対して tf(a)+(1−t)f(b).≤f(ta+(1−t)b)\begin{align} t f(a) + (1-t) f(b). \leq f \rbk{t a + (1-t) b} \end{align}tf(a)+(1−t)f(b).≤f(ta+(1−t)b) \end{defn} 図を見ながら式を書けばいいだけなので別に難しいことはない. これで覚えておくと, 単に凸という形と微分の結びつきを知るだけではなく, 凸関数を使った不等式が使えるようになるから扱える手法が増える.
ここで話しきれるような話題ではないが, 物理での応用, 特に平衡熱力学では凸関数が大事な役割を果たす. そのときには凸関数が連続だが必ずしも微分可能ではないこともいろいろな形で効いてくる.
第 3 章 平面・空間図形 例題 8
問題 1
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam156} 三角形 ABC\mathrm{ABC}ABC の内部の 1 点を O\mathrm{O}O とし, OA\mathrm{OA}OA, OB\mathrm{OB}OB, OC\mathrm{OC}OC の延長がそれぞれ辺 BC\mathrm{BC}BC, CA\mathrm{CA}CA, AB\mathrm{AB}AB と交わる点を順に D\mathrm{D}D, E\mathrm{E}E, F\mathrm{F}F とするとき, ODAD+OEBE+OFCF=1ODAD+OEBE+OFCF=1\begin{align} \frac{\mathrm{OD}}{\mathrm{AD}} + \frac{\mathrm{OE}}{\mathrm{BE}} + \frac{\mathrm{OF}}{\mathrm{CF}} = 1 \end{align}ADOD+BEOE+CFOF=1ADOD+BEOE+CFOF=1 が成り立つことを証明せよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 1 cyclic に文字が出ていることがポイントだろう. 何か共通の手順・方法で比を別の表現に落として整理していけばいいのではないかと思える. それが具体的に何かが問題だ. 平面幾何の問題なので辺の長さか面積くらいしか使える道具はないので, 何とかしてこれらに落とすしかない.
問題 2
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam157} 三角形 ABC\mathrm{ABC}ABC の辺 BC\mathrm{BC}BC の延長上の点 P\mathrm{P}P を通る直線が AB\mathrm{AB}AB, AC\mathrm{AC}AC と交わる点をそれぞれ D\mathrm{D}D, E\mathrm{E}E とし, BE\mathrm{BE}BE, CD\mathrm{CD}CD の交点と点 A\mathrm{A}A を通る直線が BC\mathrm{BC}BC と交わる点を Q\mathrm{Q}Q とするとき, PB :PC=QB :QCPB :PC=QB :QC\begin{align} \mathrm{PB} \colon \mathrm{PC} = \mathrm{QB} \colon \mathrm{QC} \end{align}PB:PC=QB:QCPB:PC=QB:QC であることを証明せよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 2 辺の比に関する話なので基本はメネラウスの定理・チェバの定理だろう. 完全に平面幾何という感じの問題でしか出てこないことが多いが, 難しい問題になると幾何学的な考察が効いてくることは多いし, それを鍛えるために触れておくことは損ではない.
方針としては PB\mathrm{PB}PB, PC\mathrm{PC}PC, QB\mathrm{QB}QB, QC\mathrm{QC}QC を捻り出すことをまず考える. これらが出てくるようにメネラウス・チェバを使う.
問題 3
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam158} 四角形 ABCD\mathrm{ABCD}ABCD のどの頂点も通らず, どの辺とも平行でない直線 lll がある. lll と直線 AB\mathrm{AB}AB, BC\mathrm{BC}BC, CD\mathrm{CD}CD, DA\mathrm{DA}DA との交点をそれぞれ P\mathrm{P}P ,Q\mathrm{Q}Q, R\mathrm{R}R, S\mathrm{S}S とするとき, APPB⋅BQQC⋅CRRD⋅DSSA=1APPB⋅BQQC⋅CRRD⋅DSSA=1\begin{align} \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RD}} \cdot \frac{\mathrm{DS}}{\mathrm{SA}} = 1 \end{align}PBAP⋅QCBQ⋅RDCR⋅SADS=1PBAP⋅QCBQ⋅RDCR⋅SADS=1 が成り立つことを証明せよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 3 cyclic に綺麗に書けているのでいかにもいわくありげというのに気付くことが一番大事. 実際, これは四角形版のメネラウスの定理だ. 三角形版のメネラウスを組み合わせて使うと証明できる.
第 3 章 平面・空間図形 例題 9
問題 1
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam159} 三角形 ABC\mathrm{ABC}ABC の外接円の中心を O\mathrm{O}O とし, B\mathrm{B}B, C\mathrm{C}C から対辺に下ろした垂線の足をそれぞれ D\mathrm{D}D, E\mathrm{E}E とすると, OA⊥DE\mathrm{OA} \perp \mathrm{DE}OA⊥DE であることを証明せよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 1 垂直というのは要は角度の情報を取ってこいということだ. そこから角度関係の定理や発想をフルに使う必要が出てくる. 具体的に錯角などをいろいろ使っていって角度を計算していくこともできるだろうが, 垂直・直交性を示すとなると平行・垂直を組み合わせる方法も思いつく. もちろん組み合わせて考えていくことも必要だ. この辺を思考の軸にして議論を進めていく.
問題 2
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam160} 円 OOO の周上の 1 点 C\mathrm{C}C を中心とする任意の半径の円 CCC と円 OOO との交点を A\mathrm{A}A, B\mathrm{B}B とする. 円 OOO の周上の任意の点 P\mathrm{P}P をとり, 直線 PA\mathrm{PA}PA, PB\mathrm{PB}PB が円 CCC と再び交わる点をそれぞれ Q\mathrm{Q}Q, R\mathrm{R}R とすると, AR∥BQ\mathrm{AR} \parallel \mathrm{BQ}AR∥BQ であることを証明せよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 2 こちらもやはり角度に関する主張を積み上げていく. 平行性から角度に関する情報を引き出せるように, 逆に角度から平行性を導くことができる. 例えば錯角を使う方法などいろいろある.
第 3 章 平面・空間図形 例題 10 早稲田大, 大阪大
問題 1 (早稲田大)
\begin{exercise}[早稲田大]\label{univ-entrance-exam162} 三角錐 OABC\mathrm{OABC}OABC があり, OA=OB=OC=2,BC=CA=AB=1OA=OB=OC=2,BC=CA=AB=1\begin{align} \mathrm{OA} = \mathrm{OB} = \mathrm{OC} = 2, \quad \mathrm{BC} = \mathrm{CA} = \mathrm{AB} = 1 \end{align}OA=OB=OC=2,BC=CA=AB=1OA=OB=OC=2,BC=CA=AB=1 とする. 辺 OB\mathrm{OB}OB, OC\mathrm{OC}OC 上にそれぞれ点 P\mathrm{P}P, Q\mathrm{Q}Q を l=AP+PQ+QAl=AP+PQ+QA\begin{align} l = \mathrm{AP} + \mathrm{PQ} + \mathrm{QA} \end{align}l=AP+PQ+QAl=AP+PQ+QA が最小になるように取る.
- lll の最小値を求めよ.
- 三角形 APQ\mathrm{APQ}APQ の面積を求めよ.
- 三角錐 OAPQ\mathrm{OAPQ}OAPQ の体積 V1V_1V1 と元の三角錐 OABC\mathrm{OABC}OABC の体積 VVV との比の値を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 1 立体図形を考える場合の常套手段, 平面に落とす手法を使うことを考える. もちろんどんな平面に落とすかを考えるのがポイントでつらいところ. 回転体の体積のような場合はどこで切ればいいかはわかりやすいがなかなかそうもいかないことが多い. 三角錐のような綺麗な図形が出てくる場合が大半だし, 今回は展開図を考えることで平面に落とす手法が使える. これも道具箱にきちんと入れておこう. 平面幾何の諸定理や思考法も自由に使えるようにしておくこと.
問題 2 (大阪大)
\begin{exercise}[大阪大]\label{univ-entrance-exam163} SSS を半径 1 の球面とし, その中心を O\mathrm{O}O とする. 頂点 A\mathrm{A}A を共有し, 大きさの異なる 2 つの正四面体 ABCD\mathrm{ABCD}ABCD, APQR\mathrm{APQR}APQR が次の 2 条件をみたすとする.
- 点 O\mathrm{O}O, B\mathrm{B}B, C\mathrm{C}C, D\mathrm{D}D は同一平面上にある.
- 点 B\mathrm{B}B, C\mathrm{C}C, P\mathrm{P}P, Q\mathrm{Q}Q, R\mathrm{R}R は球面 SSS 上にある.
このとき, 線分 AB\mathrm{AB}AB と線分 AP\mathrm{AP}AP の長さを求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 2 問題 1 と基本は変わらず, 立体図形を考える場合の常套手段【平面に落とす】を使うことを考える. 球はいろいろな情報を持っているのでそれをあますところなく使い切る.
第 4 章 図形と方程式 例題 11 類題頻出
\begin{exercise}[問題 1]\label{univ-entrance-exam128} xyxyxy 平面上の点 (1,2)(1, 2)(1,2) と, 直線 ax−y=2a−1ax−y=2a−1\begin{align} ax - y = 2a - 1 \end{align}ax−y=2a−1ax−y=2a−1 との距離の最大値と, そのときの実数 aaa の値を求めよ. \end{exercise} \begin{exercise}[問題 2]\label{univ-entrance-exam129} O\mathrm{O}O を原点とする座標平面上の点 A(1,2)\mathrm{A} (1, 2)A(1,2) を通る直線が 両座標軸の正の部分と P\mathrm{P}P と Q\mathrm{Q}Q において交わるとする. 三角形 OPQ\mathrm{OPQ}OPQ の面積を最小にするには, P\mathrm{P}P, Q\mathrm{Q}Q をどこにとればよいか. \end{exercise}
ポイント 【問題 1】のポイントは次の通り.
- 点と直線の距離公式.
- 最大最小問題の処理.
- 実数条件.
- 直線が必ず通る点.
【問題 2】のポイントは次の通り.
最大最小問題については例題 7 (問題 \ref{univ-entrance-exam29}) を参考にしてほしい.
方針
問題 1 方針は 3 通りくらいある. それぞれ見ていこう.
愚直な方法は点と直線の距離をそのまま使うことだろう. 求めるべき点と直線の距離を ddd とすると, d=∣a+1∣a2+1.\begin{align} d = \frac{\abs{a + 1}}{\sqrt{a^2 + 1}}. \end{align}d=a2+1∣a+1∣. あとはこれの最大最小の処理をするだけ. 理系の人は微分を使えばいい.
他には d=∣a+1∣a2+1d = \frac{\abs{a + 1}}{\sqrt{a^2 + 1}}d=a2+1∣a+1∣ は絶対値があってうっとうしいので これを外すこと, aaa の実数条件を使うことを考える. 両辺を 2 乗して整理すれば aaa の整式ができる. ここから aaa の実数条件に落とし込む. aaa の 2 次式になるとは限らないので場合分けには十分気をつける.
もう 1 つは問題の直線 lll が必ず通る点を調べてみる. 方程式は y−1=a(x−2)y - 1 = a(x-2)y−1=a(x−2) と書き直せるからこの直線は (2,1)(2, 1)(2,1) を必ず通る. 点と直線の距離の定義から, この距離は点から直線 lll におろした垂線 (線分) の長さだ. だからこの垂線と lll が直交するときに距離が最小になるはずで, この直交条件を調べればいい.
問題 2 具体的に P(p,0)\mathrm{P} (p, 0)P(p,0), Q(0,q)\mathrm{Q} (0, q)Q(0,q) (ppp, q>0q > 0q>0) と座標を徹底的に使うようにすればいい. そうすれば △OPQ=pq/2\triangle \mathrm{OPQ} = pq / 2△OPQ=pq/2 になるから ppp, qqq の動く範囲を調べればその中で最大最小の評価ができる. その条件が何かだが, 問題文の条件しか使えないので問題文を読む. すると直線 PQ\mathrm{PQ}PQ が A\mathrm{A}A を通るから直線 PQ\mathrm{PQ}PQ の方程式を立てて代入して次の制限がつくことがわかる. 1p+2q=1.1p+2q=1.\begin{align} \frac{1}{p} + \frac{2}{q} = 1. \end{align}p1+q2=1.p1+q2=1. あとは △OPQ\triangle \mathrm{OPQ}△OPQ に突っ込んで調べればいい.
第 4 章 図形と方程式 例題 12 類題頻出
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam134} xyxyxy 平面上の 2 直線 l1 :mx−y+2m=0,l2 :x+my−2=0l1 :mx−y+2m=0,l2 :x+my−2=0\begin{align} l_1 \colon mx - y + 2m = 0, \quad l_2 \colon x + my - 2 = 0 \end{align}l1:mx−y+2m=0,l2:x+my−2=0l1:mx−y+2m=0,l2:x+my−2=0 の交点を P\mathrm{P}P とする. mmm が全ての実数値を取って変わるとき, 交点 P\mathrm{P}P の軌跡を求めよ. \end{exercise}
ポイント
- パラメータ入りの直線が必ず通る点を調べる.
- 直線の方向ベクトル・法ベクトル.
- 求めたい図形が通る点・通らない点の吟味.
- 幾何学的な視点と代数的視点: 直線の交点と連立方程式の解.
- 実数パラメータ mmm を置換してみる.
基本的には次の 2 点に尽きる.
- どうすれば mmm を消して xxx, yyy の関係式に落とす.
- mmm の動く範囲に気をつけて除外点がないか調べる.
また受験テクニックっぽくなるが, だいたいは綺麗な図形になることも念頭に置いておくといい. 変な図形になるようだと受験生がさばき切れないからだ. こう思うとよく知っている図形の幾何学的性質を使った解法も考えられるし, むしろそうした知識がしっかりしていないと方針次第では解き切れないこともある.
方針 方針はいくつかある. 一番シンプルなのは, 何はともあれ連立 1 次方程式なのだから力づくで解いてみることだ. 2 つ方向がある.
- 直接パラメータの mmm を消す.
- xxx, yyy を mmm で表してから mmm に関するパラメータ表示と思って数 III 的手法に訴える.
それぞれ本の【解答 2】と【解答 3】にあたる. 本質的には同じだが, 後者で式の形をうまく見ると計算の手間がもっと減らせる. そう思うと【解答 4】も作れる. 力づくなのでかなり厳しい戦いになるかと思いきや, この解答方針は計算も楽なので, この問題に対してはよい方針と言える. 除外点の吟味を忘れないようにすること.
逆に面倒になってしまうが, もう少し一般性のある方針というか, 別の視点・手法に親しむのも大切で, それが本の【解答 1】だ. 本の例題 11 (問題 \ref{univ-entrance-exam128}) でも使った手法, つまりパラメータを含む直線が必ず通る点を見つけてそれを使う. l1l_1l1 は m(x+2)−y=0m(x+2) - y = 0m(x+2)−y=0 と書けるので, 必ず点 A(−2,0)\mathrm{A} (-2, 0)A(−2,0) を通る. さらに方向ベクトルは (m,−1)(m, -1)(m,−1). l2l_2l2 も同じように考えると, 点 B(2,0)\mathrm{B}(2, 0)B(2,0) を通り, 方向ベクトルが (1,m)(1, m)(1,m) だとわかる. 2 つの方向ベクトルが直交しているので, 点 P\mathrm{P}P は 2 定点 A\mathrm{A}A, B\mathrm{B}B を直角に見込むので, P\mathrm{P}P が描く軌跡は円になる. もちろんこれは平面幾何の知識を使っている. これも最後に除外点の吟味をする必要がある.
第 4 章 図形と方程式 例題 13 横浜国立大 典型問題
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam135} (1) 【横浜国立大学】xyzxyzxyz 空間内の球面 SSS は 2 点 A(0,0,1)A (0, 0, 1)A(0,0,1), B(0,1,2)B(0, 1, 2)B(0,1,2) を通り, xyxyxy 平面と接しながら動くとき, SSS と xyxyxy 平面との接点 CCC の軌跡 FFF を求めよ.
(2) 【典型問題】相異なる 3 直線 akx+bky=1a_k x + b_k y = 1akx+bky=1 (k=1k=1k=1, 222, 333) が 1 点で交わるならば, 3 点 (ak,bk)(a_k, b_k)(ak,bk) (k=1,2,3)(k=1,2,3)(k=1,2,3) は同一直線上にあることを示せ. \end{exercise}
ポイント
- 図形の基本的な性質.
- 場合分けなど条件の確認.
- ベクトル.
- 直交・平行のベクトルによる表現.
(2) の背景には 2 次曲線の極と曲線の概念がある. これについて知りたければ例題 37 (問題 \ref{univ-entrance-exam99}) を参考にしてほしい.
方針
方針 (1) 何はともあれ CCC の軌跡 FFF を求めたいのだから C(x,y,0)C(x, y, 0)C(x,y,0) と書く. 球面 (球) は球の中心 MMM と半径 r>0r > 0r>0 で決まるし xyxyxy 平面と接しながら動く. ここから求めるべき CCC の xyxyxy 座標を (x,y)(x, y)(x,y) とすれば M(x,y,r),C(x,y,0)M(x,y,r),C(x,y,0)\begin{align} M(x, y, r), \quad C(x, y, 0) \end{align}M(x,y,r),C(x,y,0)M(x,y,r),C(x,y,0) と書ける. ここで M(x,y,z)M(x,y,z)M(x,y,z) として ∣z∣=r\abs{z} = r∣z∣=r としてもいいのだが, 幾何学的に考えると SSS が xyxyxy 平面に接するという条件から M(x,y,z)M (x,y,z)M(x,y,z) の zzz は z<0z < 0z<0 にはならない. だからはじめから z>0z > 0z>0 として z=rz = rz=r としても一般性を失わない.
球面 SSS は AAA, BBB を通るからそれを素直に書く: 球ではなく球面なので AAA, BBB は表面上にあるわけで AM2=x2+y2+(r−1)2=r2, BM2=x2+(y−1)2+(r−2)2=r2.AM2=x2+y2+(r−1)2=r2, BM2=x2+(y−1)2+(r−2)2=r2.\begin{align} AM^2 &= x^2 + y^2 + (r-1)^2 = r^2, \ BM^2 &= x^2 + (y-1)^2 + (r-2)^2 = r^2. \end{align}AM2=x2+y2+(r−1)2=r2, BM2=x2+(y−1)2+(r−2)2=r2.AM2=x2+y2+(r−1)2=r2, BM2=x2+(y−1)2+(r−2)2=r2. 求めたいのは xxx, yyy の関係式だから rrr が余計だ. rrr を潰すことを考えて計算したい. とりあえずこれを辺々引くと. y=2−r⟹r=2−y≥0y=2−r⟹r=2−y≥0\begin{align} y = 2 - r \Longrightarrow r = 2 - y \geq 0 \end{align}y=2−r⟹r=2−y≥0y=2−r⟹r=2−y≥0 これを AM2AM^2AM2 の式に代入すると x2=−r2+6r+5=−(r−1)(r−5)≥0.x2=−r2+6r+5=−(r−1)(r−5)≥0.\begin{align} x^2 = -r^2 + 6r + 5 = - (r - 1)(r - 5) \geq 0. \end{align}x2=−r2+6r+5=−(r−1)(r−5)≥0.x2=−r2+6r+5=−(r−1)(r−5)≥0. ここから r≥0r \geq 0r≥0 が動く範囲が 1≤r≤51 \leq r \leq 51≤r≤5 だとわかり, −3≤y≤1-3 \leq y \leq 1−3≤y≤1 という条件が出てくる. 改めて xxx と yyy の式にするために代入して x2+(y−1)(y+3)=0⟹x2+(y+1)2=4.x2+(y−1)(y+3)=0⟹x2+(y+1)2=4.\begin{align} x^2 + (y-1)(y+3) = 0 \Longrightarrow x^2 + (y+1)^2 = 4. \end{align}x2+(y−1)(y+3)=0⟹x2+(y+1)2=4.x2+(y−1)(y+3)=0⟹x2+(y+1)2=4. −3≤y≤1-3 \leq y \leq 1−3≤y≤1 という条件があったのでそれと合わせて考えれば答えが出る.
方針 (2) 1 点で交わるといっているので, まずその 1 点を (p,q)≠0(p, q) \neq 0(p,q)=0 としよう. ここで (p,q)≠0(p, q) \neq 0(p,q)=0 としていい理由は 3 直線がこの点を通らないからだ. まずは 3 点が同一直線上にある条件を数学的にどう書けばいいかを考えよう. もちろん 1 番単純なのは適当な直線 ux+vy=wux + vy = wux+vy=w があって, 各点 AiA_iAi がこの直線上にあること, つまり uai+vbi=w,i=1,2,3uai+vbi=w,i=1,2,3\begin{align} u a_i + v b_i = w, \quad i = 1, 2, 3 \end{align}uai+vbi=w,i=1,2,3uai+vbi=w,i=1,2,3 が成立することだ. もう 1 つは A1A2→=kA1A3→\overrightarrow{A_1 A_2} = k \overrightarrow{A_1 A_3}A1A2=kA1A3 というようにベクトルで表現することもできる.
どシンプルなのはこう考えること: (p,q)(p, q)(p,q) は 3 直線を通るから akp+bkq=1(k=1,2,3).akp+bkq=1(k=1,2,3).\begin{align} a_k p + b_k q = 1 \quad (k = 1, 2, 3). \end{align}akp+bkq=1(k=1,2,3).akp+bkq=1(k=1,2,3). ふつうここで止まると思う. ただ上の意識があるなら (ak,bk)(a_k, b_k)(ak,bk) (k=1,2,3k=1,2,3k=1,2,3) は px+by=1px + by = 1px+by=1 と読めばいいとわかる. もう 1 つは p⃗=(p,q)\vec{p} = (p, q)p=(p,q) として 上の式を OAi→⋅p⃗=1\overrightarrow{OA_i} \cdot \vec{p} = 1OAi⋅p=1 と読み替え, A1A2→⋅p⃗=0\overrightarrow{A_1 A_2} \cdot \vec{p} = 0A1A2⋅p=0, A1A3→⋅p⃗=0\overrightarrow{A_1 A_3} \cdot \vec{p} = 0A1A3⋅p=0 などと書き換えていく. 内積 0 なので A1A2→\overrightarrow{A_1 A_2}A1A2 などは p⃗\vec{p}p と直交するわけで, A1A2→\overrightarrow{A_1 A_2}A1A2, A1A3→\overrightarrow{A_1 A_3}A1A3 が平行と読み替えられる.
第 5 章 三角・指数・対数関数 例題 14
問題 1
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam139} 連立方程式 xy=yx,logxy+logyx=52xy=yx,logxy+logyx=52\begin{align} x^y = y^x, \quad \log_x y + \log_{y} x = \frac{5}{2} \end{align}xy=yx,logxy+logyx=25xy=yx,logxy+logyx=25 を解け. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 1 底が揃っていないと対数の計算がうまくいかないので適当に揃える.
問題 2
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam140} 実数 xxx, yyy, zzz が関係式 2x+1+3y−5z=10,2x+3+3y−5z+1=582x+1+3y−5z=10,2x+3+3y−5z+1=58\begin{align} 2^{x+1} + 3^{y} - 5^{z} = 10, \quad 2^{x+3} + 3^{y} - 5^{z+1} = 58 \end{align}2x+1+3y−5z=10,2x+3+3y−5z+1=582x+1+3y−5z=10,2x+3+3y−5z+1=58 をともに満たしながら変わるとき, 2xおよび4x+3y+1+5z2xおよび4x+3y+1+5z\begin{align} 2^{x} \quad \text{および} \quad 4^{x} + 3^{y+1} + 5^{z} \end{align}2xおよび4x+3y+1+5z2xおよび4x+3y+1+5z のとり得る値の範囲を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 2 指数のままだと見づらいし必要以上に難しく見える. まずは 2x=X2^{x} = X2x=X のように書き換えると連立 1 次方程式の問題になる. あとは X>0X > 0X>0 に注意して方程式を解き, 求めるべき式の値を考えていく.
問題 3
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam141} 関数 y=3sinx+1sinx+2y = \frac{3 \sin x + 1}{\sin x + 2}y=sinx+23sinx+1 (0≤x≤2π)(0 \leq x \leq 2 \pi)(0≤x≤2π) のとり得る値の範囲を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 3 sinx\sin xsinx と書かれているのでちょっとどきっとするが, sinx=X\sin x = Xsinx=X と書き換えれば見慣れた式になる. あとは −1≤X≤1-1 \leq X \leq 1−1≤X≤1 という範囲に注意して考えればいい.
問題 4
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam142} {sinx+siny=1, cosx+cosy=1{sinx+siny=1, cosx+cosy=1\begin{align} \begin{cases} \sin x + \sin y = 1, \ \cos x + \cos y = 1 \end{cases} \end{align}{sinx+siny=1, cosx+cosy=1{sinx+siny=1, cosx+cosy=1 のとき, sinx+cosx\sin x + \cos xsinx+cosx および sin(x−y)\sin (x-y)sin(x−y) の値を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 4 三角関数のいろいろな関係式を使う. 値を求めるように言われているので, sin2x+cos2x=1\sin^2 x + \cos^2 x = 1sin2x+cos2x=1 という明確な値を持つ式にはいつも注目しておいてほしい. sin(x−y)\sin (x-y)sin(x−y) とあるので「加法定理を使うと何かありそう」というのもすぐ思いつくべきことだろう.
問題 5
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam143} 連立方程式 sinxsiny=3,tanxtany=3sinxsiny=3,tanxtany=3\begin{align} \frac{\sin x}{\sin y} = \sqrt{3}, \quad \frac{\tan x}{\tan y} = 3 \end{align}sinysinx=3,tanytanx=3sinysinx=3,tanytanx=3 を解け. ただし, −π2<x,y<π2- \frac{\pi}{2} < x, y < \frac{\pi}{2}−2π<x,y<2π とする. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 5 三角関数の関係式を駆使する. まず与えられた式から cosx/cosy\cos x / \cos ycosx/cosy はすぐにわかる. あとは値を決めにいく以上, 絶対に成り立つ等式 (拘束条件) sin2x+cos2x=1\sin^2 x + \cos^2 x = 1sin2x+cos2x=1 を常に意識する.
第 5 章 三角・指数・対数関数 例題 15 (類題頻出)
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam149} α\alphaα, β\betaβ は 0<α<β<2π0 < \alpha < \beta < 2 \pi0<α<β<2π をみたす実数とする. 全ての実数 xxx について, 等式 cosx+cos(x+α)+cos(x+β)=kcosx+cos(x+α)+cos(x+β)=k\begin{align} \cos x + \cos (x + \alpha) + \cos (x + \beta) = k \end{align}cosx+cos(x+α)+cos(x+β)=kcosx+cos(x+α)+cos(x+β)=k が成り立つような定数 α\alphaα, β\betaβ, kkk の値を求めよ. \end{exercise}
ポイント この問題自体のポイントは 全ての実数 xxx に対して成り立つように値を決めるというところ. これを示すためにどんな方法を使うかという話で, 基本的な手法をいくつか仕込んでおきたい. 例えば次のような方法だ.
- 三角関数の合成.
- 必要条件からの絞り込み: 実験してみる.
- 幾何学的な意味付け.
- 微分・積分.
三角関数に特化した話としては 三角関数の加法定理・合成を使った方法はきっちり身につけておくべきだろう. 真ん中 2 つの話題はもちろん問題を選ぶが, 基本的な手法としておさえておきたい. 必要条件からの絞り込みは他でもずっと強調している実験と言ってもいい.
方針 引用を楽にするために f(x)=cosx+cos(x+α)+cos(x+β)f(x) = \cos x + \cos (x + \alpha) + \cos (x + \beta)f(x)=cosx+cos(x+α)+cos(x+β) としておく.
方針 1 全ての xxx に対して成り立つと言っているので, xxx に関して整理してみるという方向性がある. それから見ると, 引数が違う三角関数の足し算であること, x+αx + \alphax+α, x+βx + \betax+β とよけいな要素がくっついているのが鬱陶しい. 加法定理で展開して xxx に関してまとめて合成すると次のようになる. f(x)=(1+cosα+cosβ)2+(sinα+sinβ)2sin(x+γ)=k.f(x)=(1+cosα+cosβ)2+(sinα+sinβ)2sin(x+γ)=k.\begin{align} f(x) = \sqrt{(1 + \cos \alpha + \cos \beta)^2 + (\sin \alpha + \sin \beta)^2} \sin (x + \gamma) = k. \end{align}f(x)=(1+cosα+cosβ)2+(sinα+sinβ)2sin(x+γ)=k.f(x)=(1+cosα+cosβ)2+(sinα+sinβ)2sin(x+γ)=k. γ\gammaγ は適当な定数. 全ての xxx に対して成立させるためには xxx 依存を潰せばいい. そのためには sin(x+γ)\sin (x + \gamma)sin(x+γ) の係数が 0 になればよくて, 係数を 0 にするような α\alphaα, β\betaβ を選べばいい. ここまで来たらあとは計算するだけだ.
このとき, 係数に xxx が入っていたらやりづらくて仕方ないから, xxx を別に切り出すために加法定理による展開に着目することが大切になる. また f(x)=0f(x) = 0f(x)=0 にしろということだから, k=0k = 0k=0 にせざるを得ない. ここから考えると f(x)=0f(x) = 0f(x)=0 となる α\alphaα, β\betaβ を求めよ, という問題ではなく f(x)=kf(x) = kf(x)=k にしたこともこの問題を難しくする原因でもある.
【方針 2】 必要条件から絞り込んでみよう. もちろん実験といってもいい. 基本は関数の引数に注目して計算しやすい, 見やすいのを当てればいい. cosx\cos xcosx に着目すると f(0)f(0)f(0), f(π)f(\pi)f(π) あたりを思いつく. π/2\pi / 2π/2 にしてもいいが, cos(π/2+α)\cos (\pi / 2 + \alpha)cos(π/2+α) などは sin\sinsin になってしまうので, cos\coscos と sin\sinsin が共存する連立方程式になって面倒くさそう, とかそういうことを思ってほしい. もちろん全部 sin\sinsin に移してもいいがさして意味がない. ここから k=0k = 0k=0 が出てくる.
あと何をするかだ. 鬱陶しいのが何かという点から見てみると x+αx + \alphax+α, x+βx + \betax+β を潰しにいきたい. x=−αx = - \alphax=−α, x=−βx = - \betax=−β にするとそれぞれ潰しにいける. f(−α)f(- \alpha)f(−α), f(−β)f(- \beta)f(−β) を計算してみると割と綺麗になる. これらをまとめると必要条件が出る.
最後にこれが十分条件であることを調べる. 実際に f(x)=kf(x) = kf(x)=k に α\alphaα, β\betaβ, k=0k = 0k=0 を叩き込んでみて f(x)=0f(x) = 0f(x)=0 が恒等的に成り立つかを調べればいい.
【方針 3】 今度は三角関数の微分に関する周期性に着目する. f(x)=kf(x) = kf(x)=k から f′′(x)=−f(x)=0f''(x) = - f(x) = 0f′′(x)=−f(x)=0 が出るから k=0k = 0k=0 が出る. あと α\alphaα, β\betaβ をどうにかして処理をしたい. そこで式を幾何学的に特徴づける. f(x)=0f(x) = 0f(x)=0, f′(x)=0f'(x) = 0f′(x)=0 は次の点 (ベクトル) の xxx 座標, yyy 座標の和と思えるかが鍵. A(cosx,sinx),B(cos(x+α),sin(x+α)),C(cos(x+β),sin(x+β)).A(cosx,sinx),B(cos(x+α),sin(x+α)),C(cos(x+β),sin(x+β)).\begin{align} \mathrm{A} (\cos x, \sin x), \quad \mathrm{B} (\cos (x + \alpha), \sin (x + \alpha)), \quad \mathrm{C} (\cos (x + \beta), \sin (x + \beta)). \end{align}A(cosx,sinx),B(cos(x+α),sin(x+α)),C(cos(x+β),sin(x+β)).A(cosx,sinx),B(cos(x+α),sin(x+α)),C(cos(x+β),sin(x+β)). f(x)=0f(x) = 0f(x)=0, f′(x)=0f'(x) = 0f′(x)=0 は OA→+OB→+OC→=0\overrightarrow{\mathrm{OA}} + \overrightarrow{\mathrm{OB}} + \overrightarrow{\mathrm{OC}} = 0OA+OB+OC=0 と読み替えられる. これは △ABC\triangle \mathrm{ABC}△ABC の重心が原点であることを意味している. さらに A\mathrm{A}A, B\mathrm{B}B, C\mathrm{C}C は半径 1 の円周上にあるから △ABC\triangle \mathrm{ABC}△ABC の外心は原点だから 外心と重心が一致する. ここから △ABC\triangle \mathrm{ABC}△ABC が正三角形になり, 0<α<β<2π0 < \alpha < \beta < 2 \pi0<α<β<2π と合わせて値が決まる.
念のために書いておくとベクトルの代わりに複素数で処理してもいい. 同じことだから.
第 6 章 微分法 例題 16 類題頻出
\begin{exercise}[類題頻出]\label{univ-entrance-exam44} 曲線 y=x3−xy = x^3 - xy=x3−x に 3 本の接線が引けるような点 (a,b)(a, b)(a,b) の存在範囲を求めて, xyxyxy 平面上に図示せよ. \end{exercise}
ポイント グラフを描いて適当に調べてみるとほとんど自明だが, それを実際に一分の隙もなくきっちり証明するのが大変なところ. 具体的には次の箇所だろう.
- (a,b)(a ,b)(a,b) の条件を求めるためにクッションとして「3 本の接線を持つ」という条件を式に落とす.
- 3 接点の存在条件を (a,b)(a, b)(a,b) の条件に読み替える.
- 3 次関数の特性を使う.
解説 これも実験してみるとだいたいの答えがわかる. 要は実際にグラフを描いて 3 本接線が引けそうな点 (a,b)(a, b)(a,b) を絞り込んでみればいいのだ. 問題はそれをどう示していくか.
話を進める前に実験してみよう. まず (a,b)=(0,0)(a, b) = (0, 0)(a,b)=(0,0) では原点での 1 本しか引けない. そしてグラフが原点対称であることに着目する. この対称性を使えば 0<x0 < x0<x で考えてあとはくるっと回せばいいことがわかる. 考えやすいように, 明らかに接線が引けるところで考えよう. xxx も yyy も大きいところで考えれば次の 3 点を接点とする接線が引けることがすぐわかる. - x>0x > 0x>0 が十分大きいところ. - x>0x > 0x>0 が小さめ (極値を取る x=1/3x = 1/\sqrt{3}x=1/3 の近く) のところ. - x<0x < 0x<0 の極値の近く. 本当は確認が必要なことではあるが, あとは (a,b)(a, b)(a,b) を連続的に動かせば対応する接点も連続に動くことを使って接点の動きをトレースすればいい. 接点が重なってしまって接線がその分少なくなる箇所が見えてくる. これが排除すべき領域だ. この時点で範囲を明確に予測できるなら, はじめに「この思考実験によって求める範囲がどこそこと予測できる. 以下これを示す」と書いてしまってもいい. もしくは実際にメモスペースで解ききったのだが書き写す時間が足りない, という危機に陥ったときに使ってもいい. 適当な説明をつけておけばそれで部分点はくるはずだ. 実験はこのくらいにしておこう.
「接線を引ける」という条件があるので, まずは曲線 y=x3−xy = x^3 - xy=x3−x の接線を求めてみる. 接点を (t,t3−t)(t, t^3 - t)(t,t3−t) として微分を使えばすぐわかる. y=(3t2−1)(x−t)+t3−t=(3t2−1)x−2t3.y=(3t2−1)(x−t)+t3−t=(3t2−1)x−2t3.\begin{align} y = (3t^2 - 1)(x - t) + t^3 - t = (3t^2 - 1) x - 2t^3. \end{align}y=(3t2−1)(x−t)+t3−t=(3t2−1)x−2t3.y=(3t2−1)(x−t)+t3−t=(3t2−1)x−2t3. (a,b)(a, b)(a,b) はこの接線上にあるのだから素直に代入してみる. \begin{align} b = (3t^2 - 1) a - 2t^3. \label{univ-entrance-exam109} \end{align} おそらくここでいったん手が止まるはずだ. 次に何をするか, どう動けばいいかの方針を立てられるかがキモ.
ここで問題文を思い出す: 国語の問題なわけだ. まだ使っていない「接線が 3 本引ける」という条件を使ってみよう. つまりこの式は ttt に関する 3 次方程式と思えばいい.
実際にはさらに 3 次関数の特性を使う必要がある. 3 次関数は接点と接線が 1:1 に対応する. 例えば 4 次関数では複接線を持つ場合があることに注意しよう[^univ-entrance-exam108].
univ-entrance-exam108: 複接線というのはある点での接線が他の点での接線にもなっていることだ. 図を描いてみるとわかる. 極値が 3 つある 4 次関数, 例えば f′(x)=x(x+1)(x−1)f'(x) = x (x+1)(x-1)f′(x)=x(x+1)(x−1) を考えると谷が 2 つできるので, うまいこと複接線が描ける. これもグラフを描くとわかるが, y=x4y=x^4y=x4 は複接線を持たない. 4 次だからといって必ず複接線を持つわけではないこともこれですぐわかる.
ここまでステップを踏むことで, ようやく上の式の使い方がわかる. 最終的には【3 つの相異なる実数解を持つようにする】と読み替えればいいのだ. この辺の言い換えは国語・数学にまたがる問題だ. 国語の訓練にもなっていることを意識しながら勉強すれば, 国語の成績も上がっていく.
次はこれをさらにどう読み替えるかだ. 1 つの実数解を持つことはすぐわかる. 他の問題 (三重大の問題, 例題 \ref{univ-entrance-exam71}) でも出てくるように, 奇数次の多項式だから実数解を 1 つは必ずもつ. 他 2 解が虚数になる可能性をどう排除すればいいかを考えないといけない. ここでようやく (a,b)(a, b)(a,b) の条件に落ちてくる. 適当な (a,b)(a, b)(a,b) なら他 2 解も実数になってくれる. そしてここでまた手が止まるだろう. この条件を具体的に書けばいいかぱっと思い浮かぶだろうか.
手・頭を動かす方法はいくつかあるだろう. 2 次方程式なら実数解を 2 つ持つ条件として判別式による方法がある. このとき, 判別式を不等式として使うのだから, 3 次でも同じようなことができないかと考えてみてもいい. 他にも, 例えば存在範囲を求める問題なのだから「具体的にこれ」というよりも範囲を示す形に落ちるはずで, 高校の範囲でいうならやはり不等式による表現が候補にあがる.
結局不等式で【3 解を持つ】ことを表現すればよさそうだ. これもやはり国語・数学の融合問題といえる. それはそれとして数学としてどう表現するか, だ. ぱっと思いつくならそれでいいが, 例えばこう考えればいい: 逆に【解が 1 つまたは 2 つになってしまうのはどういう状況か】を考えるのだ. 今考えるべき 3 次関数は bbb に関する式から来る y=f(x)=2x3−3ax2+a+by = f(x) = 2x^3 - 3ax^2 + a + by=f(x)=2x3−3ax2+a+b だ. y=x3y= x^3y=x3 のようにこぶがない場合, 3 次関数は明らかに 1 つしか解を持たない. つまりこうなってはいけない. またこぶがある多くの 3 次方程式はどうだろうか. いつだって 1 つは実数解はある. もちろんグラフを描きながら考えた方がいい. ここで分水嶺が極値の値にあることに気付ければ上出来だ. どちらかの極値がちょうど 0 のとき, 解は 2 つしか持たない. 逆にどちらの極値も 0 でないならうまい具合に解を 3 つ持ちそうだ. これで条件がわかった: 極値がどちらも 0 でないことだ.
そうはいってもまだ終わらない. 今考えている関数は f′(x)=6x(x−a)f'(x) = 6x(x- a)f′(x)=6x(x−a) で極値を取る xxx も極値もすぐわかるが f(0)=a+b≠0,f(a)=−a3+a+b≠0f(0)=a+b≠0,f(a)=−a3+a+b≠0\begin{align} f(0) = a + b \neq 0, \quad f(a) = -a^3 + a + b \neq 0 \end{align}f(0)=a+b=0,f(a)=−a3+a+b=0f(0)=a+b=0,f(a)=−a3+a+b=0 というだけではほとんど何もできない. もう少し数学的表現を磨く必要がある. 先程の考察の時点でやってもよかったのだが, あえて分けてやってみた.
注意深い方は気付いたと思うが, 何がまずかったのかというと【逆にどちらの極値も 0 でないならうまい具合に解を 3 つ持ちそうだ】のところ. そもそも【持ちそうだ】としか言っていなくて【持つ】と断言していない. グラフを描けば一発でわかるように, どちらの極値も正または負だと解は 1 つしかないのだ. つまり 3 解持つには単に【どちらの極値も 0 ではない】ではなく, 【どちらの極値も 0 ではなく異符号になっていること】と言うべきだった.
この問題の難しいところはここまでやっても終わらず, さらに最後の詰めが必要なところだ. このワンステップは宿題としよう. もちろん本の解答を見ればわかるので, ちゃんと本を買って読んでみよう.
第 6 章 微分法 例題 17 関西学院大
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam110} 放物線 C :y=x2C \colon y = x^2C:y=x2 上の点 P を通り, かつ P における CCC の接線に垂直な直線と l1l_1l1 とする. 同様に, CCC 上の点 Q を通り, かつ Q における CCC の接線に垂直な直線を l2l_2l2 とする. l1l_1l1 と l2l_2l2 が直交するとき, l1l_1l1 と l2l_2l2 の交点 R の軌跡を求めよ. \end{exercise}
ポイント ある直線に垂直な直線を法線と呼ぶ[^univ-entrance-exam117]ことにする. そうするとポイントは次の点だ.
- 法線の方程式がすんなり書けるか.
- 素直に法線の交点を求められるか.
- 軌跡に範囲制限がつかないかをチェックできるか.
- 解と係数の関係.
軌跡を求めて満足して範囲制限に気づかない・チェックしないようでは部分点しか来ない. ここまで詰めきれるかが勝負所だろう.
univ-entrance-exam117: 一般的な用語なので覚えておくと条件をすっきり書けて便利だ. ベクトルで【法ベクトル】という単語を聞いたことがある人もいるかもしれないが, その【法】と同じ【法】で, 英語では normal vector と書く.
方針 いたずらに変数を増やすとあとで大変なので, まずはそれに注意しながら P と Q の座標を書く. P(p,p2)\mathrm{P}(p, p^2)P(p,p2), Q(q,q2)\mathrm{Q} (q, q^2)Q(q,q2) とすればいい. そして欲しいのが接線ではなく法線なのがちょっと捻ってあるポイントだ. なるべく点と座標のアルファベットを合わせておこう. こういうのも不要なミスや勘違いを防ぐために大切な工夫だ. 問題文に明記されていないが, 接線が直交しないと R 自体存在しないか無限に存在することになってしまう. そのために \begin{align} p \neq 0, \quad q \neq 0, \quad p \neq q \label{univ-entrance-exam119} \end{align} という条件をつける必要がある. これも書かないと減点になりかねないので注意しよう. こういう詰めが甘いようでは後半部の勝負所が乗り切れない.
何はともあれ, 求めるべきは 2 法線の交点だ. 法線の方程式を立てて交点を実際に求めるのがいいだろう. 結果だけ書くと次のようになる. l1 :y=1−2p(x−p)+p2=−12px+p2+12, l2 :y=1−2q(x−q)+q2=−12qx+q2+12.l1 :y=1−2p(x−p)+p2=−12px+p2+12, l2 :y=1−2q(x−q)+q2=−12qx+q2+12.\begin{align} &l_1 \colon y = \frac{1}{-2p} (x-p) + p^2 = - \frac{1}{2p} x + p^2 + \frac{1}{2}, \ &l_2 \colon y = \frac{1}{-2q} (x-q) + q^2 = - \frac{1}{2q} x + q^2 + \frac{1}{2}. \end{align}l1:y=−2p1(x−p)+p2=−2p1x+p2+21, l2:y=−2q1(x−q)+q2=−2q1x+q2+21.l1:y=−2p1(x−p)+p2=−2p1x+p2+21, l2:y=−2q1(x−q)+q2=−2q1x+q2+21. R(x,y)\mathrm{R}(x, y)R(x,y) とし, 法線が実際にこの点を通ることを素直に使って連立方程式を解けばいい. 上 2 式の和を取ると y=4x2+3/4y = 4x^2 + 3/4y=4x2+3/4 という方程式が出るので, これが目的の軌跡の方程式だ.
そしてここで終わってはいけないのがこの問題の勘所で難所だ. ppp と qqq に条件がついていて, その条件つきの接線・法線から作っているから, R は機械的に出した上の方程式の全体を動く保証はない. 全体を動くなら全体を動くこと, 一部しか動けないなら一部しか動けないこととその範囲を明示しなくてはいけない. ここで手が止まるだろう. だから勝負所なのだ.
やってみなければわからないが, R が動く範囲は ppp, qqq に依存するはずだから, R の座標 (x,y)(x, y)(x,y) を ppp, qqq で書ければそこから拘束が見てとれるはず. こう思うと, まず法線の 2 方程式の差を取ることで ppp, qqq と xxx の関係式が出すことは思いつくだろう: p+q=2x.p+q=2x.\begin{align} p + q = 2x. \end{align}p+q=2x.p+q=2x. (\ref{univ-entrance-exam119}) だけ見れば, ここから xxx は全ての実数を動けるはずと思えるがまだ話は終わらない. R は法線が直交する点として定義されているから, この直交条件も盛り込んで考えないといけない. 法線の方程式から結果的に次の条件が出る. pq=−14.pq=−14.\begin{align} pq = - \frac{1}{4}. \end{align}pq=−41.pq=−41. この 2 条件から xxx の動く範囲を決めないといけない. またここで手が止まるだろう. 難所その 2 だ.
結論からいうと, ここで何を思うかといえば 2 次方程式の解と係数の関係だ. 解と係数の関係から ppp, qqq は次の 2 次方程式の解であり, (\ref{univ-entrance-exam119}) からさらに 0 でない相異なる実数解でなければならない. x2−2xt−14=0.x2−2xt−14=0.\begin{align} x^2 - 2x t - \frac{1}{4} = 0. \end{align}x2−2xt−41=0.x2−2xt−41=0. pq=−1/4pq = - 1/4pq=−1/4 から ppp, qqq が 0 でない相異なる 2 解であることはわかる: p=0p = 0p=0 または q=0q = 0q=0 では成り立たないし, p=qp=qp=q とすると p2=−1/4p^2 = -1/4p2=−1/4 と ppp が虚数になってしまう. さらに実数解という条件から判別式が正でなければいけないから, その条件を書くと 0<4x2+10 < 4x^2 + 10<4x2+1 で全ての実数 xxx で成立する. まとめると動くのは y=4x2+3/4y = 4x^2 + 3/4y=4x2+3/4 全体だ. 最終的に全体となるからといってこのチェックを怠ってはいけない. 【確認したら全体でした】というのと【確認もせず勝手に判断する】というのでは全く意味が違う. あとはこれを答案としてまとめればいい.
第 6 章 微分法 例題 18 有名問題
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam120} (1) nnn 次式 f(x)f(x)f(x) は任意の実数 α\alphaα を用いて f(x)=f(α)+f′(α)1!(x−α)+f′′(α)2!(x−α2)+⋯+f(n)(α)n!(x−α)nf(x)=f(α)+f′(α)1!(x−α)+f′′(α)2!(x−α2)+⋯+f(n)(α)n!(x−α)n\begin{align} f(x) = f(\alpha) + \frac{f'(\alpha)}{1!} (x - \alpha) + \frac{f''(\alpha)}{2!} (x - \alpha^2) + \cdots + \frac{f^{(n)} (\alpha)}{n!} (x - \alpha)^n \end{align}f(x)=f(α)+1!f′(α)(x−α)+2!f′′(α)(x−α2)+⋯+n!f(n)(α)(x−α)nf(x)=f(α)+1!f′(α)(x−α)+2!f′′(α)(x−α2)+⋯+n!f(n)(α)(x−α)n と表せることを証明せよ.
(2) nnn 次式 f(x)f(x)f(x) が (x−α)l(x - \alpha)^{l}(x−α)l (lll は nnn 以下の自然数) で割り切れるための条件を求めよ.
(3) (i) 3 次関数 f(x)=ax3+bx2+cx+df(x) = a x^3 + bx^2 + cx + df(x)=ax3+bx2+cx+d (a≠0a \neq 0a=0) のグラフは点対称であることを示し, 点対称の中心を求めよ.
(3) (ii) 4 次関数 f(x)=ax4+bx3+cx2+dx+ef(x) = a x^4 + bx^3 + cx^2 + dx + ef(x)=ax4+bx3+cx2+dx+e (a≠0a \neq 0a=0) のグラフが yyy 軸に並行な対称軸 lll を持つための条件, および lll の方程式を求めよ. \end{exercise}
ポイント まず箇条書きで書いておこう.
- 誘導に乗れるかどうか.
- グラフの対称性を数学的に表現できるか.
- 対称性と偶奇性を理解しているか.
- 計算力.
(2), (3) は (1) を使うだけではあるが, そこでグラフの対称性をどう表現するかをきちんと理解しているかが鍵になる. 多少計算が面倒なところもあるので計算力もないといけない.
覚える必要は全くないが (1) は一般にテイラー展開と呼ばれる. 多項式なら単に平行移動と思えばいい. 大学で悪夢を見るほど使うのでそのときに泣きながら勉強すればいい. 大学 1 年の前期にやる程度の内容ではあるが, 大学の数学の水準できちんとやろうと血を吐くほどつらい.
方針
方針 (1) 関数 fff は nnn 次式だから f(x)=∑k=0nakxkf(x) = \sum_{k=0}^{n} a_k x^kf(x)=∑k=0nakxk と書ける. これを力づくでも何でもいいから f(x)=∑k=0nbk(x−α)kf(x) = \sum_{k=0}^n b_k (x - \alpha)^kf(x)=∑k=0nbk(x−α)k と書き換えればいい. そうすればあとは係数比較に持ち込める. 係数比較のときも問題文であるべき係数が明示されているのだから, 比較法を迷ってはいけない: 当然剰余の定理を使いながら微分で低い方から 1 つずつ潰していく. 問題はそれを本番でどう捻り出すか, 思いつくか, 思い出せるか. 大学以降でも使うレベルの超定型処理だから覚えてしまうのが速い. 強いていうなら 2 次関数や 2 次曲線でやるようにグラフの平行移動を思い出せばいい.
もう 1 つのポイントははじめから f(x)=∑k=0nakxkf(x) = \sum_{k=0}^n a_k x^kf(x)=∑k=0nakxk というように式が書かれていない, 与えられていないことだ. こう書かれていると aka_kak を与えられた条件と思ってしまうと何とかして aka_kak を使ってみようと思ってしまうかもしれないが, そういう具体的な形は一切関係なく係数は微分の情報だけで決まるという事実が大事. こういうのも割とヒントになっているので, 問題文はきちんと読むようにしてほしいし, 読めるようになってほしい. この辺は国語の力だ. 数学をやっていても国語の力は鍛えられるので, 意識して勉強すること.
方針 (2) ほぼ自明な条件ではあるが, 実際にどう証明したらいいか困るタイプの定理だろう. 例題 1 でも使った【微分で叩き落とす】手法が身についているならノーヒントでも解けるかもしれない. そうでもなくても, 剰余の定理が身についている人は f(x)=(x−α)lg(x)f(x) = (x - \alpha)^{l} g(x)f(x)=(x−α)lg(x), ggg は n−ln-ln−l 次式というのまでは書けるだろう. ここで手が止まるはずだ.
時々 (1), (2), (3) はそれぞれ別の話で (4) でまとめて全部使うという問題構成になっていることもあるだろうが, 基本的に前の問題は後の問題のヒントになっている. というわけで, まずは (1) の誘導を使おうとしてほしい. f(x)=(x−α)lg(x)f(x) = (x - \alpha)^{l} g(x)f(x)=(x−α)lg(x) からすれば f(x)f(x)f(x) は l−1l-1l−1 次以下の項を持たないのだから, それが潰れていればよくて, その条件は係数である導関数の値で規定できる.
問題文でははっきり書いていないが, これは必要十分条件になっている.
方針 (3) (i) これも (2) と同じく気分的には既にわかっていることだろうが, きちんと証明しろと言われるとつらい定理だ. 原点での点対称性は f(−x)=−f(x)f(-x) = - f(x)f(−x)=−f(x) で表現できる. nnn 次式なのでこれをさらに深く突っ込むことができて, そこまで使い切らないといけない. 具体的には【f(x)f(x)f(x) は奇数次の項しか持ってはいけない】と表現できる[^univ-entrance-exam121]. 問題文にもあるように対称になる点が原点からずれているから, これをさらに捻る必要があってそれが次のポイント.
univ-entrance-exam121: この辺は国語と数学の融合問題とも言える. 条件の言い換えをきちんとできるようになると国語の力も上がっていく.
ここでは (1) を使って具体的に平行移動させてしまえばいい. 平行移動の量は後から決める. 平行移動させた上で奇数次だけ生き残るようにする, つまり偶数時の項を潰しにいくことを考えればいい. これがまた係数の条件になって, 微分の値で決まる. あとは丁寧に計算していけばいい.
方針 (3) (ii) 原点での yyy 軸対称性は f(−x)=f(x)f(-x) = f(x)f(−x)=f(x) と表せる. こうなるためには奇数次の項が潰れていなければいけない. 軸自体がずれているのでこれを修正して式を書き下していけばいい. 方法は (i) と同じだ.
せっかくなので幾何学的な注意もしておこう. どちらでも同じだが 4 次の係数が正だとしておく. 4 次関数は (最大で 2 つある) 極小値が一般には違うから, この極小値が一致する条件もつけておかないといけない. つまり対称軸が存在するにはこの条件を定式化し, 満足させないといけない. この問題に関してはこれを深く考え過ぎる必要はないのだが, こうした幾何学的な考察力も鍛えておきたい.
第 7 章 積分法 例題 19 広島大
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam122} (1) 4 次関数 f(x)=ax4+bx3+cx2+dx+ef(x)=ax4+bx3+cx2+dx+e\begin{align} f(x) = ax^4 + bx^3 + cx^2 + dx + e \end{align}f(x)=ax4+bx3+cx2+dx+ef(x)=ax4+bx3+cx2+dx+e のグラフが yyy 軸に関して対称な 2 点において極小となるならば, このグラフは yyy 軸に関して対称であることを示せ.
(2) x=−1x=-1x=−1 および x=1x=1x=1 のとき極小値 −1-1−1 をとり, 極大値が 4 であるような xxx の 4 次関数を求めよ. \end{exercise}
ポイント
まず (1) は例題 18 (問題 \ref{univ-entrance-exam120}) の類題なので, 例題 18 をやった人は完答できないといけない. 4 次関数の対称性が極値の対称性から決まるという話で, 別方向から光が当たった形だ. (2) は関数, 特に多項式の決定だ. 各次数の係数を決めれば多項式は決まるが, 4 次だから定数項まで入れて 5 つ条件がいる. この 5 つをきちんとリストアップして式に落とせるかがポイントになる.
方針
(1) 全ては yyy 軸に関する対称性を偶関数と言い換え, その式を書くことからはじまる. つまり f(x)=f(−x)f(x) = f(-x)f(x)=f(−x) と書いて, 偶関数であることを示すと明示する. これでまず部分点は来るはずだ. 苦手な人ほどこういう手で細かく点を稼いでいこう.
問題の条件は 4 次関数を考えている以外に 【yyy 軸に対して対称な 2 点において】しかない. これをどこまで使い切れるかが勝負だ. これを使うしかないのだから, まず式を書いていく. α>0\alpha > 0α>0 として ±α\pm \alpha±α で極値を取るとしよう. α>0\alpha > 0α>0 とまでする必要はないが α≠0\alpha \neq 0α=0 の条件は絶対に必要だ. これがなくては y=x4y = x^4y=x4 も許されてしまい, yyy 軸に対称な 2 点で極値を取れなくなってしまう. もちろんこのときも yyy 軸について対称で【重複を込めて 2 点】という解釈もあるが, それだとこの問題が解けなくなってしまう. f(α)=f(−α),f′(α)=f′(−α)=0.f(α)=f(−α),f′(α)=f′(−α)=0.\begin{align} f(\alpha) = f(- \alpha), \quad f'(\alpha) = f'(- \alpha) = 0. \end{align}f(α)=f(−α),f′(α)=f′(−α)=0.f(α)=f(−α),f′(α)=f′(−α)=0. ここで後者は極値を取ることから来ている. これを α≠0\alpha \neq 0α=0 の条件下で解けばいい.
極値の条件があるから導関数の形がある程度決まっているわけで, そこから攻める手もある. これが本の【解答 2】の戦略だ.
(2) 当然 (1) の結果を使う. まず関数を偶関数にしてしまおう. f(x)=ax4+cx2+e.f(x)=ax4+cx2+e.\begin{align} f(x) = ax^4 + cx^2 + e. \end{align}f(x)=ax4+cx2+e.f(x)=ax4+cx2+e. 3 つの係数を決めないといけないから 3 つ条件が必要だ. x=±1x = \pm 1x=±1 のときの極小値 −1-1−1 から 4 つ出て, 極大値 4 から条件が 1 つ出るから 5 つの条件があるように見えるかもしれないが, 偶関数であることを導くのに 2 つ条件を使っているから, 残る条件はちょうど 3 つだ.
極大値の条件で意外とはまるかもしれない. 極大値 4 はいいとして, どこで取るかが書かれていないからだ. 少し考えれば当たり前ではあるが, この問題の捻ってあるところでもある. 4 次関数の幾何学的特徴にも関わるので, きちんと頭に入れておこう. 極大値の条件さえクリアすればあとは単純な連立 1 次方程式の問題なので, どうとでもなるはず.
極値の値の条件と対称性から関数の形がかなり絞り込めるので, それを使った別解もある. 詳しくは本の【解答 2】を見てほしい. (1) と違って今度は導関数ではなく元の関数の形を絞り込むのがポイント.
第 7 章 積分法 例題 20 名古屋大
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam123} α\alphaα, β\betaβ は, 任意の 1 次関数 g(x)g(x)g(x) に対して, つねに ∫−11(x−α)(x−β)g(x)dx=0∫−11(x−α)(x−β)g(x)dx=0\begin{align} \int_{-1}^{1} (x - \alpha) (x - \beta) g(x) dx = 0 \end{align}∫−11(x−α)(x−β)g(x)dx=0∫−11(x−α)(x−β)g(x)dx=0 が成り立つような実数で, α>β\alpha > \betaα>β とする.
(1) α\alphaα, β\betaβ の値を求めよ.
(2) 任意の 3 次関数 f(x)f(x)f(x) に対して, 次の等式が成り立つことを示せ. ∫−11f(x)dx=f(α)+f(β).∫−11f(x)dx=f(α)+f(β).\begin{align} \int_{-1}^{1} f(x) dx = f(\alpha) + f(\beta). \end{align}∫−11f(x)dx=f(α)+f(β).∫−11f(x)dx=f(α)+f(β). \end{exercise}
ポイント
- 偶関数と奇関数の特性, 特に対称性.
- 対称的な区間上の積分.
- 解と係数の関係.
- 多項式の割り算.
割と力づくでいけるのだが, 【任意の 1 次関数】とか【任意の 3 次関数】をどう処理するかで悩む. なるべく楽にやりたいと思うのが人情なので, その辺でどう踏ん切りをつけるかという話でもある.
問題を解く上では関係ないが, (1) というか, 仮定の α\alphaα, β\betaβ が存在すること自体がかなり衝撃的だ. (2) も割といわくありげな式で気になる. 本を読むとルジャンドルの多項式に対する注意があり, 「ああそれか」という感じ. 知っていても受験では役に立たないのでどうでもいいが, 私の専門に限りなく近い話題の 1 つでもあるから紹介したい.
直交多項式, 直交関数系という概念がある. 細かいことは抜かすが, (線型の) 偏微分方程式を解くときに出てくる. 他にもラゲールの多項式やルジャンドルの陪多項式などいろいろある. 電磁気学や量子力学で出てくる偏微分方程式を解くときに出てくるし, 特殊関数やそれを使った偏微分方程式の解法というところで, もうやめてくれと泣き叫びたくなるほどたくさんの多項式や関数と微分方程式とその解法を覚えさせられる. さらに Hilbert 空間での完全正規直交系に一般化される. Hilbert 空間論は解析学で基本的な空間で, 数学科の解析学専攻なら必ず戦うべき相手であり, 永遠の友人だ. 量子力学の舞台でもあるし, 私のバトルフィールドでもある.
ここでは数学についてもまずは基本的な解法・アプローチを覚えるように言っているが, 大学に入ると大学受験の比ではない量と難度の暗記と酷使を求められる. 受験程度で根を上げるようでは大学に入ってから地獄の毎日になるだろう. 覚悟しておいた方がいい.
方針
(1) ポイントでも書いたように, 【任意の 1 次関数】をどう処理するかだ. 割とこの時点で手が動かない人が多いのではないだろうか.
条件がそれしかないから適当な方法で積分の計算に落とすしかない. 一方, 変なことをすると面倒になりそうなので楽をしたい. そもそも何をどうすればいいのか. この狭間でせめぎあい, 悩むだろう.
結論からいうと g(x)=px+qg(x) = px + qg(x)=px+q として, 任意の ppp, qqq で与えられた等式が成立するように α\alphaα, β\betaβ を決める原始的な方法しかない. 方針が決まったらあとはがんばって計算するだけ. 計算では奇関数・偶関数と区間の対称性を使ってなるべくさぼることを考えよう. さぼるところに頭を使った分だけ計算が楽になり, ミスが減る.
(2) 前問 (1) を誘導として使うのが素直な方法だろうが, これも割と手が動かないかもしれない. 前問 (1) を使いたいなら示した式の形を捻り出すしかないので f(x)=(x−α)(x−β)g(x)+q(x)f(x)=(x−α)(x−β)g(x)+q(x)\begin{align} f(x) = (x - \alpha) (x - \beta) g(x) + q(x) \end{align}f(x)=(x−α)(x−β)g(x)+q(x)f(x)=(x−α)(x−β)g(x)+q(x) とする. つまり f(x)f(x)f(x) を (x−α)(x−β)(x - \alpha) (x - \beta)(x−α)(x−β) で割れば, f(x)f(x)f(x) が 3 次なのだから ggg は 1 次関数になるし, あまりの q(x)q(x)q(x) も 1 次関数で q(x)=mx+nq(x) = mx + nq(x)=mx+n と書ける. 前半部, (x−α)(x−β)g(x)(x - \alpha) (x - \beta) g(x)(x−α)(x−β)g(x) のところは積分すると消えるので, 後ろの q(x)q(x)q(x) の積分だけ見ればいい. 一方 f(α)f(\alpha)f(α) と f(β)f(\beta)f(β) も q(x)q(x)q(x) の値に帰着するから, これなら何とかなりそうだろう. あとは実際に値を比較して等しくなるか確かめればいい.
もう 1 つの解は誘導を無視して, (1) と同じく 3 次関数を具体的に設定した上での直接計算だ. 結論から言うとこちらの方が早い. 本でもこちらの解法をメインに据えている.
第 7 章 積分法 例題 21 立命館大
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam124} 関数 f(x)=x4−2x3−3x2f(x) = x^4 - 2x^3 - 3x^2f(x)=x4−2x3−3x2, g(x)=lx+mg(x) = lx + mg(x)=lx+m (ただし, lll, mmm は実数の定数) がある.
(1) 曲線 y=f(x)y=f(x)y=f(x) と直線 y=g(x)y=g(x)y=g(x) とが相異なる 2 点で接するように, lll, mmm の値を定めよ.
(2) (1) のとき, 曲線 y=f(x)y=f(x)y=f(x) と直線 y=g(x)y=g(x)y=g(x) とによって囲まれる部分の面積を求めよ. \end{exercise}
ポイント
- 曲線と直線の交点が接点になる条件.
- ミスなく定積分を計算する技巧, 計算力.
やっていることはセンターレベルの数 II の問題と大差ない. 曲線と直線の交点を求めて, 曲線と直線で囲まれた図形の面積を出すだけ. もちろん曲線が 4 次関数で, それに合わせて, 単に交点を持つという話ではなく相異なる 2 点で接するという条件がついているのが難しくなっているところ. 次数が上がったことで積分の計算も面倒になっているので, 計算ミスをしない工夫が必要だ.
センターとやっていることは大して変わらないといっても, センターはできる人がこの問題を解こうしたとき, 途端に手が出なくなることも多いだろう. 十分に反復練習をくり返したのにちょっと見た目が変わっただけで問題が解けなくなってしまう人は, 同じくらいのレベルの問題集や志望校の問題を解答を見ずに解いてみる【演習】をやってみるといい. 模試をそういう目的に使ってもいい.
方針
(1) 問題は激烈にシンプルで条件は本質的に【異なる 2 点で接する】しかない. ここを使う以外には打つ手がないのだから, とりあえず 2 接点を α<β\alpha < \betaα<β としてみる. その上でセンターよろしく, おもむろに次の計算をする. f(x)−g(x)=(x−α)2(x−β)2.f(x)−g(x)=(x−α)2(x−β)2.\begin{align} f(x) - g(x) = (x - \alpha)^2 (x - \beta)^2. \end{align}f(x)−g(x)=(x−α)2(x−β)2.f(x)−g(x)=(x−α)2(x−β)2. ここで接点は方程式 f(x)−g(x)=0f(x) - g(x) = 0f(x)−g(x)=0 の重解になることを使っている^univ-entrance-exam125. 右辺の展開自体が面倒だし, 展開し終わったあとの結果も割と鬱陶しく見えるかもしれないが, 結構すっきり解ける. 落ち着いて問題を眺めることが大事だ.
あと本の【解答 2】のように, 【2 次以上の項しかない】といういわくありげな f(x)f(x)f(x) の形に着目して【平方完成】する方法もある. 試験本番でなかなか思いつける方法ではない感じはするが, 問題の特殊性をフルに使い切った要領のいい解法ではある.
これから 4 次関数はちょうど 2 点で接する接線を持つ (場合がある) ことがわかる. これを複接線という. 4 次関数の複接線が問題に出ることも多いので注意しておく.
(2) これは単純に積分計算するだけだ. 結果は 5 次の計算になるからかなり面倒でミスも起きやすい. 自分なりにミスがないように方法を考えて工夫していってほしい. 本の【解答 1】はよい方法を提案してくれているので, 積極的に取り入れるといいだろう.
第 7 章 積分法 例題 22 名古屋大に類題あり
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam126} xyzxyzxyz 空間内の 3 点 A(1,0,0)\mathrm{A}(1, 0, 0)A(1,0,0), B(0,1,0)\mathrm{B}(0, 1, 0)B(0,1,0), C(0,1,1)\mathrm{C}(0, 1, 1)C(0,1,1) を頂点とする 三角形の周および内部を, zzz 軸のまわりに 1 回転してできる立体の体積を求めよ. \end{exercise}
ポイント
- 回転体の処理.
- 適当な平面による断面を考える.
- 断面積と体積の関係.
- 点と線分の距離.
立体の処理の基本は適当な平面に落とすことだ. 平面の中なら絵も描きやすくイメージもしやすい.
もっと言うなら立体や回転体を イメージできる能力はほとんど特殊能力と言ってもよく, こんなことができる人間自体がそうはいない. 最近の CG や関連技術の発展のおかげで こうした図形も描きやすくなっていて イメージもしやすくなってはいるが, こんな手法は今の受験要項では 試験会場で使えるはずもない. そういうこともあって平面に, 部分の話に叩き落として組み合わせていく問題が中心になるのだ.
少し難しい回転体の問題では ほぼ必ず適当な場合分けが出てくる. それをどう見抜くかもポイントだろう. 幾何学的な考察が大切で, 大抵は平面内に落としたときに見えるはずだ. それを信じてやり抜く気迫も必要になる.
方針 ポイントで【適当な平面に落とせ】とは書いたが, そもそも何のために平面に落とすかを考える必要がある. 回転体自体をできる限り立体として幾何学的に考えてみよう.
わかりやすいところからいけばいいから, まずは zzz 軸まわりに線分 AB\mathrm{AB}AB を回転させてみる. 点 A\mathrm{A}A, B\mathrm{B}B が回るから半径 1 の円を描く. ただしこの円全体を塗り潰すかどうかわからない.. 線分の回転体だから適当に真ん中がすっぽり抜けるはずで, 描く図形は真ん中をくり抜いたドーナツ上になる可能性を考えておく.
一方で点 C\mathrm{C}C を回転させると半径 1 の円を描く. これは真ん中が完全にすっぽり抜けている. 図形全体としてはこのドーナツが連続的に繋がった形になるはずで, zzz が大きくなるのに合わせて真ん中のくり抜かれた円が大きくなっていくはず.
だから見るべきはこのくり抜かれる円の半径で, この動きさえ追えば断面積がわかる. 断面積がわかれば, あとは断面に沿って積分すれば体積が出る. これで全体的な方針が決まった.
ここまで来たら, 回転体の断面を作るべく適当な平面を選ぶ必要がある. どの断面を選べばいけるかは既にわかっていて, 平面 z=tz = tz=t だ. zzz 軸まわりの回転なのだから, 考える平面は z=tz=tz=t とシンプルに考えてもいい.
真ん中のくり抜かれた円の半径は ttt によって代わるはずで, この半径を ttt で表せばいい. 三角形 ABC\mathrm{ABC}ABC の周・内部と平面 z=tz = tz=t の交わりは線分になる. 線分の端点を考える: 線分 AC\mathrm{AC}AC と平面 z=tz=tz=t の交点を Q\mathrm{Q}Q, 線分 BC\mathrm{BC}BC と平面 z=tz=tz=t の交点を R\mathrm{R}R とすると, 線分 RQ\mathrm{RQ}RQ を回転させたのが求める図形の平面 z=tz=tz=t による断面だ.
点 R\mathrm{R}R が常に外側の円を描くことは明らかなので, 再びくり抜かれる円に意識を集中する. もちろんこれがこの問題最大の難所だ. zzz が大きいところから考えよう. 点 R\mathrm{R}R (C\mathrm{C}C) では全体がくり抜かれる. 点 R\mathrm{R}R から少し離れたところでは, もう一方の端点 Q\mathrm{Q}Q が描く円がそのままくり抜かれるだろう.
問題はこれがずっと続くのかという点だ. 今度は zzz が小さい方から考える. 点 R\mathrm{R}R は点 A\mathrm{A}A に一致するから端点 Q\mathrm{Q}Q が描く円がそのままくり抜かれるわけではない. つまり zzz の小さい方から大きい方に向かう間にどこかで Q\mathrm{Q}Q に切り替わる. 切り替わる前の点がどこかを探しに行かなければいけない.
ここでくり抜かれる図形に対する反省が必要だ. 要は三角形 ABC\mathrm{ABC}ABC が回転したときに触れない領域が くり抜かれる領域で, それは線分 QR\mathrm{QR}QR と原点の距離が決める: この距離で決まる半径の円の分だけくり抜かれるわけだ. ここでポイントになるのは点と【線分】の距離. 点と【直線】の距離ではない. 点と直線の距離が使えるときと使えないときがあり, それが上の場合わけに対応している. この場合わけを意識しながらパラメータ ttt の関数としてこの半径を求めればいい. あとは断面積を求めてパラメータで積分して体積を出して終わりだ.
第 7 章 積分法 例題 23
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam127} (1) 放物線 C :y=f(x)=ax2+bx+cC \colon y = f(x) = ax^2 + bx + cC:y=f(x)=ax2+bx+c 上の 2 点 A(α,f(α))\mathrm{A} (\alpha, f(\alpha))A(α,f(α)), B(β,f(β))\mathrm{B} (\beta, f(\beta))B(β,f(β)) (α<β\alpha < \betaα<β) における接線 y=lA(x)y = l_{\mathrm{A}}(x)y=lA(x), y=lB(x)y=l_{\mathrm{B}}(x)y=lB(x) と CCC とで囲まれる図形の面積 S1S_1S1, 直線 AB :y=lAB(x)\mathrm{AB} \colon y = l_{\mathrm{AB}}(x)AB:y=lAB(x) と CCC とで囲まれる図形の面積 S2S_2S2, および面積比 S1 :S2S_1 \colon S_2S1:S2 を求めよ.
(2) 放物線 C :y=ax2+bx+cC \colon y = ax^2 + bx + cC:y=ax2+bx+c と放物線 C′ :y=ax2+b′x+c′C' \colon y = ax^2 + b'x + c'C′:y=ax2+b′x+c′ (b≠b′b \neq b'b=b′) との共通接線を l :y=l(x)l \colon y = l(x)l:y=l(x) とし, lll と CCC, C′C'C′ との 2 接点 A\mathrm{A}A, B\mathrm{B}B の xxx 座標を α\alphaα, β\betaβ (α<β\alpha < \betaα<β) とするとき, CCC, C′C'C′ および lll とで囲まれる図形の面積 SSS を求めよ.
(3) 3 次曲線 C :y=f(x)=ax3+bx2+cx+dC \colon y = f(x) = ax^3 + bx^2 + cx + dC:y=f(x)=ax3+bx2+cx+d 上の点 A(α,f(α))\mathrm{A}(\alpha, f(\alpha))A(α,f(α)) における CCC の接線 y=lA(x)y = l_{\mathrm{A}} (x)y=lA(x) と CCC との交点を B(β,f(β))\mathrm{B} (\beta, f(\beta))B(β,f(β)) とし, B\mathrm{B}B における CCC の接線 y=lB(x)y = l_{\mathrm{B}}(x)y=lB(x) と CCC との交点を C(γ,f(γ))\mathrm{C}(\gamma, f(\gamma))C(γ,f(γ)) とする.
α\alphaα, β\betaβ, γ\gammaγ が相異なるとき, lAl_{\mathrm{A}}lA と CCC とで囲まれる図形の面積 S1S_1S1, lBl_{\mathrm{B}}lB と CCC とで囲まれる図形の面積 S2S_2S2, および面積比 S1 :S2S_1 \colon S_2S1:S2 を求めよ. \end{exercise}
ポイント 素直に計算していくだけなのであまり言うことがない. 強いていうなら, この問題では使わないとはいえ, 問題文の指定から a≠0a \neq 0a=0 を常に意識することくらいか. こういう場合分けはふだんから意識していないと肝心なところで抜けてしまう.
方針
(1) 素直にやっていけばよく, あまり言うことがない. 直線 lAl_{\mathrm{A}}lA と lBl_{\mathrm{B}}lB の交点の座標をきちんと求めること, 積分の計算をミスなくやり抜くことが大切.
(2) (1) と同じ.
(3) これは問題文があまりよくない. 問題文で使われている文字なので, 結果には α\alphaα, β\betaβ, γ\gammaγ が残っていていいはずだが, 実際にはどれか文字を消去しないと綺麗な結果が出ないので【何だこれは】と思ってしまうだろう. α\alphaα, β\betaβ, γ\gammaγ の間に関係を見つけ, それで文字を 1 文字消去すると結果が綺麗になる. この関係式をどう見つけるかが鍵だ.
第 8 章 数列 例題 24
問題 1, 2
教科書レベルなので省略.
問題 3
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam150} (1) 不等式 2n+2>n22^{n+2} > n^22n+2>n2 (n=1,2,3,⋯n = 1, 2, 3, \cdotsn=1,2,3,⋯) が成り立つことを証明せよ.
(2) 32n−8n−13^{2n} -8n - 132n−8n−1 (n=1,2,3,⋯n = 1, 2, 3, \cdotsn=1,2,3,⋯) は 64 の倍数であることを証明せよ. \end{exercise}
ポイント: 問題3
やはり実験が一番大切だろう. 小さい nnn で試して様子を調べる. それからどうすると一般化できるかを調べていく. この一般化がそのまま帰納法になる. また特に 2n2^{n}2n については, これを見た瞬間 (1+1)n(1+1)^n(1+1)n として二項定理が使えないかを検討することが大事.
方針: 問題3
(1) f(x)=2x+2−x2f(x) = 2^{x+2} - x^2f(x)=2x+2−x2 として微分で処理してもいいが, ここでは数列の問題としてやってみよう. 2n2^n2n を見たら二項定理を思いつけば, \begin{align} 2^n = (1+1)^{n} = \sum_{k=0}^{n} \comb{n}{k} 1^k
\comb{n}{k} \end{align} が出る. これと示すべき不等式を結びつけてみるとうまくいく. これは一気に示す方法だが, 思いつけなければ実験+帰納法で地道にやっていこう.
(2) これもやはり実験と数学的帰納法が大事だ. 本にもある通り帰納法のやり方が 3 通りはある. それぞれ実験結果に対していろいろな見方をして, 帰納法に繋げていく. もちろん二項定理を使っていく方法もある. それぞれきちんと検討してほしい.
第 8 章 数列 例題 25
教科書レベルの問題なので省略.
第 8 章 数列 例題 26 津田塾大
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam151} xyzxyzxyz 空間において, 座標成分が全て整数であるような点を格子点と呼ぶことにする. この空間における領域 DDD を, 次の不等式をみたす部分として定める. x≥0,y≥0,z≥0,x+y+z≤n.(n :正の整数)x≥0,y≥0,z≥0,x+y+z≤n.(n :正の整数)\begin{align} x \geq 0, \quad y \geq 0, \quad z \geq 0, \quad x+y+z \leq n. \quad (n \colon \text{正の整数}) \end{align}x≥0,y≥0,z≥0,x+y+z≤n.(n:正の整数)x≥0,y≥0,z≥0,x+y+z≤n.(n:正の整数)
(1) 領域 DDD を平面 x=ix = ix=i (0≤i≤n0 \leq i \leq n0≤i≤n, iii は整数) で 切った切り口にある格子点の個数を iii と nnn を用いて表せ.
(2) 領域 DDD に含まれる格子点の個数を nnn を用いて表せ. \end{exercise}
ポイント
- 空間図形の処理.
- 適切な平面で切ってその切断面上で考える.
- 整数の処理, 格子点の処理.
- 特に実験.
- 直接の計算, 計算法の工夫.
- 不等式から直接数え上げていくか, 幾何学的な特徴を使って数え上げるか.
切るべき平面を指定してくれているのでその分は楽になる. 断面をきちんと図示することも大切だ. あとは実験をしてみるといろいろ様子が見えてくるだろう. nnn が大きいとやりづらいから nnn を小さくして実験するといい.
方針
【方針 1】 x=ix = ix=i で切れと言われているのだからその上で考える. 特に直接不等式で数え上げていくと x=ix = ix=i のとき y+z≤n−iy + z \leq n - iy+z≤n−i となる. 2 変数あって面倒だが実験してみればいい.
- y=0y = 0y=0 のときに zzz はどうなるか,
- y=1y = 1y=1 のときに zzz はどうなるか,
- ⋮\vdots⋮
- y=n−iy = n - iy=n−i のとき zzz はどうなるか.
これを考えていけば答えが出る. (2) は (1) を使って直接計算すればいい.
【方針 2】 切り取った平面上で幾何学的な特徴を掴む. 領域 DDD の平面 x=ix=ix=i による切り口は次の 3 点 P(i,0,0),Q(i,n−i,0),R(i,0,n−i)P(i,0,0),Q(i,n−i,0),R(i,0,n−i)\begin{align} \mathrm{P} (i, 0, 0), \quad \mathrm{Q} (i, n-i, 0), \quad \mathrm{R} (i, 0, n-i) \end{align}P(i,0,0),Q(i,n−i,0),R(i,0,n−i)P(i,0,0),Q(i,n−i,0),R(i,0,n−i) を頂点とする三角形 PQR\mathrm{PQR}PQR だから, その内部の格子点の個数を数えればいい. このとききちんと図形を描いて考えた方が間違いが少なくなる. (2) の和の計算は少し工夫して計算できる. 本の解答ではそれが紹介されている.
【方針 3】 【方針 2】と同じく幾何学を使うが, 三角形 PQR\mathrm{PQR}PQR を直接考えるのではなく, PR\mathrm{PR}PR, PQ\mathrm{PQ}PQ を 2 辺とする正方形に注目する. これは対角線 QR\mathrm{QR}QR に対して対称だから, 三角形 PQR\mathrm{PQR}PQR 内部と周上の格子点の個数が, 正方形の内部と周上にある格子点の個数から計算できる. (2) は組み合わせ論的にも計算できるので, 本ではその方法が紹介されている.
第 9 章 ベクトル 例題 28
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam153} 平面上に平行四辺形 □OACB\Box \mathrm{OACB}□OACB があり, この平面上の点 P\mathrm{P}P に対して, OP→=sOA→+tOB→OP→=sOA→+tOB→\begin{align} \overrightarrow{\mathrm{OP}} = s \overrightarrow{\mathrm{OA}} + t \overrightarrow{\mathrm{OB}} \end{align}OP=sOA+tOBOP=sOA+tOB の形に表す.
(1) sss, ttt 関係式 5s+2t=35s + 2t =35s+2t=3 をみたしながら変わるとき, P\mathrm{P}P はある定直線上を動く. その直線と 2 辺 OA\mathrm{OA}OA, OB\mathrm{OB}OB との交点をそれぞれ A′\mathrm{A}'A′, B′\mathrm{B}'B′ とするとき, OA′→\overrightarrow{\mathrm{OA'}}OA′, OB′→\overrightarrow{\mathrm{OB'}}OB′ を OA→\overrightarrow{\mathrm{OA}}OA, OB→\overrightarrow{\mathrm{OB}}OB を用いて表せ.
(2) P\mathrm{P}P が平行四辺形 □OACB\Box \mathrm{OACB}□OACB の周上または内部にあって, 5s+2t≤35s + 2t \leq 35s+2t≤3 をみたしながら動くとき, P\mathrm{P}P が動く領域の面積は, 平行四辺形 □OACB\Box \mathrm{OACB}□OACB の面積の何倍か.
(3) 線分 A′B′\mathrm{A'B'}A′B′ 上の点 P\mathrm{P}P を通り, 2 辺 OA\mathrm{OA}OA, OB\mathrm{OB}OB のそれぞれに平行な 2 直線を lll, mmm とし, lll, mmm, OA\mathrm{OA}OA, OB\mathrm{OB}OB で定まる平行四辺形の面積を SSS とする. 点 P\mathrm{P}P が線分 A′B′\mathrm{A'B'}A′B′ 上を動くとき, SSS を最大にするような点 P\mathrm{P}P について, OP→\overrightarrow{\mathrm{OP}}OP を OA→\overrightarrow{\mathrm{OA}}OA と OB→\overrightarrow{\mathrm{OB}}OB を用いて表せ. \end{exercise}
ポイント
- 点が同一直線上にある条件.
- 点が動く範囲の決定.
- 平面幾何.
方針 教科書レベルの知識を丁寧に運用していくだけ. 最大最小を議論するときにはいつだって変域に注意すること. 基礎基本がどれだけ大事で, きちんとやりきる・身につけるのがどれだけ大変なことかわかる問題だ.
第 12 章 式と曲線 例題 37 有名問題
問題 1
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam99} xxx の分数関数 f(x)=ax−3x+1f(x) = \frac{ax - 3}{x + 1}f(x)=x+1ax−3 に対して, f2(x)=f(f(x)),f3(x)=f(f2(x)),⋯ ,fn(x)=f(fn−1(x)), ただし, nは整数で n≥2,f1(x)=f(x)f2(x)=f(f(x)),f3(x)=f(f2(x)),⋯ ,fn(x)=f(fn−1(x)), ただし, nは整数で n≥2,f1(x)=f(x)\begin{gather} f_2(x) = f(f(x)), \quad f_3(x) = f(f_2(x)), \quad \cdots, f_n(x) = f(f_{n-1}(x)), \ \text{ただし, } n \text{は整数で } n \geq 2, \quad f_1(x) = f(x) \end{gather}f2(x)=f(f(x)),f3(x)=f(f2(x)),⋯,fn(x)=f(fn−1(x)), ただし, nは整数で n≥2,f1(x)=f(x)f2(x)=f(f(x)),f3(x)=f(f2(x)),⋯,fn(x)=f(fn−1(x)), ただし, nは整数で n≥2,f1(x)=f(x) を考える.
(1) f(x)f(x)f(x) の逆関数 f−1(x)f^{-1}(x)f−1(x) を求めよ.
(2) f−1(x)=f2(x)f^{-1}(x) = f_2 (x)f−1(x)=f2(x) となるような aaa の値を求めよ.
(3) a=1a = 1a=1 のとき, f2(x)f_2(x)f2(x), f3(x)f_3(x)f3(x), fn(x)f_n(x)fn(x) を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 1 これは逆関数と関数の合成に関する典型的な問題だ. やはり定型処理をきちんと覚えておかないといけない. (1) は素直に逆関数を求めればいい. 定義を知らないとどうしようもないのできちんと定義を確認すること. 複雑な関数で出すと計算が異常なくらい大変になるし, そもそも逆があるかどうかの確認から必要になるので, 分母・分子が 1 次の分数関数での出題が多いだろう. その意味でもこの問題の演習価値は高い.
結果からいうと (2) は (3) のヒント・誘導だが, 逆に (3) を見ておくと「(2) は (3) の誘導のはずだから (3) 自体も (2) を解く上のヒントになるはずだ」と思えると結果の検算に使える. 実際に解けばわかるが, aaa の値として a=1a=1a=1 が本当に出てくるからだ. a=1a=1a=1 が出てこなかったから計算をミスした可能性があると判断できる. こういう「テクニック」は国語や英語ではよく言われるはずだ: 特にセンターやマーク式試験で先に設問と選択肢を見てから問題文を読みはじめる手法があるが, 数学の試験でも使える. 小手先のことだが, 得点を取りにいかないといけない試験だから使える技術は積極的に使っていこう. 方針としては直接計算してからの比較しかない単調な道だ. 考え抜いた上での発想とかそういうレベルの話ではない.
最後, (3) は (2) の誘導をうまく使うと計算が減らせる. 計算が減らせるということはミスも減らせるということだ. 何度も言っているが, こういう基本を馬鹿にしてはいけない. 愚直に計算するしかなく, 方針については特に言うことはない. 他の問題でいっている「実験」という手法が身についていれば, 何はともあれ計算してみようと思うはずだ. 「数学実験」も確実に身につけてほしい.
問題 2 (有名問題)
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam101} xyxyxy 平面上において, 不等式 y2>2xy^2 > 2xy2>2x で表される領域を DDD とし, DDD 内の点 (a,b)(a, b)(a,b) から放物線 C :y2=2xC \colon y^2 = 2xC:y2=2x に引いた 2 接線の 2 接点を通る直線 (これを点 (a,b)(a,b)(a,b) の CCC に関する極線という) を lll とする.
lll 上の DDD 内にある任意の点の CCC に関する極線はつねにある定点を通ることを示し, その定点を求めよ. \end{exercise}
ポイント・解説: 問題 2 図形の問題なので, とりあえず絵を描いて「実験」してみよう. 実際に通る定点があるのか, あったとしたらどこになりそうかを調べてみるのだ. もちろん手では正確な図は描きようがないのだが, 何となく検討がつけば儲けものだし, 検討がつかなければつかないで別にいい. 特に「極線」というここで定義された概念があるのでそれが何かを把握すること, 問題の設定を理解する役にも立つからだ.
問題文中で定義された極線をどこまで理解できているかという国語の問題でもある. 何がどの図形の上にあるかを意識しながら議論を進める必要があり, 頭が混乱してくるだろう. かなりの難問だ.
「y2>2xy^2 > 2xy2>2x で表わされる領域」というのにびびってはいけない. 「2y<x22y < x^22y<x2 で表わされる領域」と言われればすぐわかるように, 単に放物線の「外側」の領域だ. 「そんなのは当たり前だろう」と思う人もいるだろうが, 演習が足りていないとこれだけでも惑わされるのだ.
中学以来やってきているはずだが, 通る 2 点を決めるとそれを通る直線はただ 1 つに決まる. 満たす関係式から新たに直線をひねり出すアクロバティックな部分があり, ここがこの問題の最大の山場で面白いところだ. 面白い問題なので解答を見て楽しんでもらいたい.
基本的なことだが, 一般の 2 次曲線の接線の方程式の公式もこの機会に復習しておこう. この問題では単純な放物線の接線なので微分でも簡単に出せるが, 他の場合, 微分からでは面倒になることも多い.
第 12 章 式と曲線 例題 38
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam102} O を原点とする座標平面上において, 2 定点 F(c,0)\mathrm{F}(c, 0)F(c,0), F′(−c,0)\mathrm{F}'(-c, 0)F′(−c,0) からの距離の和が 2a2a2a (ただし, a>c>0a > c > 0a>c>0) であるような 点 P の軌跡を EEE とする.
(1) EEE の標準形 :x2a2+y2b2=1\colon \frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} = 1:a2x2+b2y2=1 (ただし, b=a2−c2b = \sqrt{a^2 - c^2}b=a2−c2) を導け.
(2) EEE 上の任意の点 P から 2 定直線 L :x=ae,L′ :x=−ae(ただし, e=ca)\begin{align} L \colon x = \frac{a}{e}, \quad L' \colon x = - \frac{a}{e} \quad \rbk{\text{ただし, } e = \frac{c}{a}} \end{align}L:x=ea,L′:x=−ea(ただし, e=ac) に下ろした垂線の足をそれぞれ H, H' とすると PFPH=PF′PH′=e(一定)PFPH=PF′PH′=e(一定)\begin{align} \frac{\mathrm{PF}}{\mathrm{PH}} = \frac{\mathrm{PF}'}{\mathrm{PH}'} = e \quad (\text{一定}) \end{align}PHPF=PH′PF′=e(一定)PHPF=PH′PF′=e(一定) であることを示せ.
(3) F\mathrm{F}F, F′\mathrm{F}'F′ から, EEE 上の任意の点 PPP における EEE の接線 lll に下ろした垂線の足をそれぞれ H1\mathrm{H}_1H1, H2\mathrm{H}_2H2 とするとき,
(i) P で lll に垂直な直線 (法線) nnn は ∠FPF′\angle \mathrm{FPF}'∠FPF′ を 2 等分することを示せ.
(ii) H1\mathrm{H}_1H1, H2\mathrm{H}_2H2 は O を中心とする定円周上にあることを示せ.
(4) F を極, xxx 軸の正の部分を始線とする EEE の極方程式を求めよ. また, EEE の 2 つの弦 AB, CD がともに F を通り, 互いに直交するとき, 1AB+1CD\frac{1}{\mathrm{AB}} + \frac{1}{\mathrm{CD}}AB1+CD1 の値は一定であることを示し, その値を求めよ. \end{exercise}
ポイント 2 次曲線の中でも特に楕円にフォーカスして幾何学的な定義 PF+PF′=2a\mathrm{PF} + \mathrm{PF'} = 2aPF+PF′=2a から楕円の方程式や極方程式を導く, 教科書や基本レベルの参考書にも書いてあるような問題が含まれている. これらは本を読んでいたら「うん, そうだよね」と素通りするような箇所だろうが, 1 から自分でやれと言われたら戸惑う人も多いはずだ. 結果を覚える必要はないが, 焦点・準線・離心率は 2 次曲線に対して共通の概念だし, この問題以外にも共通に使える計算法も多いから, この手法を身につけておくといろいろな 2 次曲線の問題に対応していける. 基本中の基本だし (受験では) 超使えて役に立つので, 「教科書レベル」と思って馬鹿にせずきっちり身につけてほしい.
こういうと「教科書にある証明はきちんと覚えておいた方がいいのだろうか」と思う人がいるだろう. まず, 大多数の受験生には不要だと言っておこう. 東大で三角関数の定義から加法定理を証明させる問題や, 「円周率の値が 3.05 より大きいことを示せ」という問題が出た影響で, 東大以外でもこうした教科書に書いてある定理を実際に証明させる出題もあるようだが, 多くの大学受験生はそこまで手が出せていない. そういう問題を解ける人間は少ないだろうから多分その問題では差がつかない. それよりもよく出る問題の解法を覚えた方が得点に, 合格に結びつく. もちろんやっておくべき受験生もいる: 東大京大レベルの受験生, 特に東大の受験生はやっておくべきだろう. 教科書を全て丸暗記してもいいくらいだ. 一定以上数学をやり込んでいる生徒なら, 証明を覚えてしまうのは苦ではないだろう. 覚えるべきポイントが見えるはずで, そこだけおさえればあとは自動で計算が進むこともわかっているはず.
応用問題は丁寧な幾何学的考察がポイントになる. 計算でごり押すところ, 平面幾何に訴えるところ, 両方をミックスして攻めるところと見所がたくさんあるいい問題で演習効果も高い. 徹底して復習する価値は十二分にある.
ちなみに「円周率 3.05」問題が出題されたのはちょうど私が一浪した年だった. 試験会場で思わず笑ってしまった. 有名な話だがちょうどその年「小学校で円周率は 3 として計算する」という (一部誤解もあった) 問題があり, 「東大が文科省にけんか売ってる!」と話題になった. 「こんな無茶な出題してくる大学がつまらないはずがないので何としても入りたい」と思ったが落ちてしまった. 今思い出しても悲しい.
方針
(1) ごりごり計算するだけだ. ルートが入るので下手な計算をすると綺麗にまとまらない. 教科書にも書いてあるレベルの内容だが, 計算力・複雑な計算の先を見通す力・方針を立てる力が問われる.
(2) 示すべき結果 (式の値) がわかっているのでそれを目指して計算していくだけだ. 焦点と準線に関する定義でもある基本的な話だから定型処理であり, 定義通りに処理していくタイプの議論に慣れているかが問われる. やはり馬鹿にしてはいけない.
(3)
(i) これはまず実験してみるといい. 特にわかりやすい特殊値で実験するとよくて, P=(0,±b)\mathrm{P} = (0, \pm b)P=(0,±b) では明らかに法線 nnn が ∠FPF′\angle \mathrm{FPF'}∠FPF′ を 2 等分する. 一般の場合が問題で, なかなか難しい. 具体的に角度を設定できるなら三角関数やベクトルの内積でアタックできるかもしれないが, どうもそんな気配はない. 大学受験生が角度まわりで使える手法は平面幾何くらいしかないので, 平面幾何で攻める決断ができるかがポイントだろう. 座標も設定してあるから, 単純な平面幾何ではなくいろいろな辺の長さを求めるのに座標を使う.
まとめると, 平面幾何的な考察と座標による長さの計算をミックスしてアタックすることになる. 辺の長さを見るのに (2) の計算結果も使うので, そこに気づけるかどうかも鍵になり, 割と難しい. 融合・混合問題で, やっていて楽しく演習効果も高い問題ではある.
(ii) 平面幾何の問題. 方針は (i) の証明の最中で使う事実に思いを馳せれば思いつけるかもしれない. lll に関する FFF の対称点 SSS を取れるかがポイント. 結果からいうと, 定円は楕円を yyy 軸方向に縮小する前の円になる. 解答方針とは関係ないことだが, そうした幾何学的事実も楽しい問題ではある.
(4) 極方程式は教科書通りにやればいい. 後半は極方程式を使って素直に計算するだけで難しいことはない. 解答方針とは関係ないことだが, よくこんな事実を見つけたものだと驚く.
第 13 章 関数と数列の極限 例題 39
まず数 III・C は定型的な問題が多く, 取りこぼしは決して許されないことを肝に命じておこう. 数 III・C が本質的に難しくなるのは計算量が多い場合と他の分野と融合してきた場合だ. 前者のためには計算力強化が欠かせない. 後者は試験本番で出くわすとつらいが, 問題演習としてはいろいろな分野の高度な復習にもなるからむしろ有効活用したい. 何をどうすればそんなのを思いつけるのかと思う手法も多いが, やればやっただけ身になる分野だしどれだけきっちり詰められるかが勝負. 高 3 の人は授業の進展など待たず, 早い内から積極的に勉強を進めて足場を固めてほしい.
問題 1
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam32} (1) 次の極限値を求めよ. \begin{align} &\lim_{n \to \infty} \rbk{1 - \frac{1}{n}}^n, \label{univ-entrance-exam33} \ &\lim_{n \to \infty} \rbk{\sqrt{1 + 2 + \cdots + n} - \sqrt{1 + 2 + \cdots + (n-1)}}, \label{univ-entrance-exam34} \ &\lim_{n \to \infty}\frac{n^2}{2^{n}}. \label{univ-entrance-exam35} \end{align}
(2) a>0a > 0a>0, b>0b>0b>0 として, 次の極限値を求めよ. \begin{align} &\lim_{n \to \infty} \frac{a^{n+1} + b^{n+1}}{a^n + b^n}, \label{univ-entrance-exam36} \ &\lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{a^n + b^n}. \label{univ-entrance-exam37} \end{align}
(3) 次の極限値を求めよ. \begin{align} &\lim_{n \to \infty} \rbk{\frac{1}{n^2 + 1} + \frac{1}{n^2+2} + \frac{1}{n^2+3} + \cdots + \frac{1}{n^2+n}}, \label{univ-entrance-exam38} \ &\lim_{n \to \infty} \cbk{\frac{1}{2} \rbk{1 + \frac{1}{n}} \rbk{1 + \frac{1}{n+1}} \rbk{1 + \frac{1}{n+2}} \cdots \rbk{1 + \frac{1}{2n}}}^n. \label{univ-entrance-exam39} \end{align} \end{exercise}
ポイント: 問題 1 n→∞n \to \inftyn→∞ のときの次の増大度の順番は覚えてしまおう. nnn の次数をオーダー (桁) と呼んで, この式を元に考えることを「オーダーを見る」ともいう. \begin{prop} n→∞n \to \inftyn→∞ の極限を考えるとき, 次の大小関係が成り立つ. \begin{align} \text{定数} < \log n < n < n^2 < \cdots < n^{k} < e^{n}. \label{univ-entrance-exam55} \end{align} \end{prop} 問題 \ref{univ-entrance-exam46} では証明を求められているし, この評価式は証明まできちんと覚えておくといい.
教科書にも一部は書いてあると思うが, 参考までに x≥0x \geq 0x≥0 のときの次の不等式群も紹介しておく. \begin{prop} x>0x > 0x>0 のとき次の不等式が成り立つ. \begin{align} e^x &\geq 1 + x, \ e^{x} &\geq 1 + x + \frac{1}{2!} x^2, \ &\vdots \ e^{x} &\geq \sum_{k=0}^n \frac{1}{k!} x^{k} \geq \frac{1}{k!} x^k, \quad (k= 1, 2, \dots, n). \label{univ-entrance-exam56} \end{align} \end{prop} x<0x < 0x<0 で成立しないのは x2x^2x2 の項の挙動を考えてみればすぐわかる. 証明は辺々引き算した関数を必要な次数まで微分して増減表を地道に書いて考えればいいし, 微分積分学の基本定理を使って次のようにやってもいい. \begin{align} e^x - 1 &= \int_{0}^{x} \frac{d}{dt} e^t dt = \int_{0}^{x} (x - t)^{0} e^t dt \ &= \sqbk{- (x - t) e^t}{0}^{x} + \int^{x} (x - t) e^t dt \ &= x + \sqbk{\frac{(x-t)^2}{2} e^t}{0}^{x} + \int^{x} \frac{(x-t)^2}{2} e^t dt \ &= x + \frac{x^2}{2!} + \int_{0}^{x} \frac{(x-t)^2}{2} e^t dt
x + \frac{x^2}{2!}. \end{align} 一般的にやるには帰納法でやってもいいし, そのまま逐次的にやってもいい.
方針: 問題 1
最初の式から順に見ていこう. 最初の式 \ref{univ-entrance-exam34}** は典型的な「知っていることに落とし込めるか」という問題だ. 自然対数の底の定義は limn→∞(1+1n)n\begin{align} \lim_{n \to \infty}\rbk{1 + \frac{1}{n}}^{n} \end{align}n→∞lim(1+n1)n で, それとよく形は似ている. さらに xa=1/x−ax^{a} = 1/x^{-a}xa=1/x−a も当然知っているだろう. こうした基礎知識からギャップをどう埋めていくのかという問題で, 処理としては定型的だ.
次の式 \ref{univ-entrance-exam34} もやはり定型的な問題. ルートのままでは計算しづらいというか, 計算できないのだから計算できるように変形していくことを考える. そこでルートが出てきたら「有理化」してみるのだ. これはこの章で繰り返し出てくるので完璧に身につけること. 収束しそうかどうかという勘も磨いておこう. これは(無限大 −-− 無限大)の形なので一般的にはどう振る舞うかわからない. ルートの中身は nnn だけしかずれていないから何となくうまいこと収束してくれそうな気はするものの, 予断を許さない形とも言える. 特に収束するとしてもその値について直観的に見通すのは難しい. ぱっと見ルートの中身のオーダーは nnn に見えるが, 和になっているから n2n^2n2 のオーダーになっていることも注意してほしい.
次の式 \ref{univ-entrance-exam35}は理工系の必須教養だ. 上で引用した命題はとても大事なので証明つきできちんと覚えておくこと. \ref{univ-entrance-exam44} も参考にしてほしい. 本[@KazuhiroMitsuya1]では指数関数の評価に二項展開を使っている.
その次の 2 式 \ref{univ-entrance-exam36} \ref{univ-entrance-exam37}は見ればすぐ予測はつくだろう. 今すぐできなくても気にすることはない. 焦らず地道に復習していって, そこまで丁寧に感覚を磨き上げていってほしい. 方針としては丁寧に場合分けすればいいだけだ. 後者 \ref{univ-entrance-exam37} ははさみうちの原理を使えるかがポイント. 要は不等式による処理をきちんと身につける必要がある. 不等式の処理は高校だとあまりやらないので, 意識して取り組まないといけない.
その次の式 \ref{univ-entrance-exam38}は, はさみうちの原理で上下からどうおさえるかがポイントだ. この問題だと「極限値を求めよ」となっているが次の問題では「収束か発散か」も決定しないといけないし, 収束するかしないか見抜く力を鍛えることも大事. 和で書き直しつつ収束・発散を考えていこう. 数列ではなく級数の収束を考える場合, 一般項の分水嶺は 1/n11/n^{1}1/n1 であることを証明つきで覚えておいてほしい. 参照しやすいように命題の形でまとめておこう. \begin{prop}\label{univ-entrance-exam45} ∑n=1∞1/nk\sum_{n=1}^{\infty} 1/n^{k}∑n=1∞1/nk の収束・発散を考えると, c>0c > 0c>0 として一般項が 1/n1+c1/n^{1+c}1/n1+c なら収束するが, 1/n1/n1/n または 1/n1−c1/n^{1-c}1/n1−c のときは発散する. \end{prop}
最後の式 \ref{univ-entrance-exam39}もやはり定型的な問題だが, 1 度見ておかないと変形法が思いつかないだろう. 積の各項の分母が 1 つ大きくなっていくのをどう処理するかがポイントで, わざと 1 を切り分けているところが嫌らしいのだが, それがないと超がつくほど簡単な問題になってしまうというのも面白い. これの和のバージョンもあって telescope method (日本語訳は知らない) と言うことがある. また指数と対数にのせることで和を積に, 積を和に変換できることも覚えておこう.
問題 2
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam46} (1) 次の無限級数の収束, 発散を調べ, 収束するものについてはその和を求めよ. \begin{align} &\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(n+1) (n+2)}, \label{univ-entrance-exam47}\ &\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}}, \label{univ-entrance-exam48}\ &\sum_{n=1}^{\infty} \frac{n}{2n - 1}. \label{univ-entrance-exam49} \end{align}
(2) 次の無限級数の和を求めよ. \begin{align} &\sum_{n=1}^{\infty} \frac{x}{(1+x^2)^n}, \label{univ-entrance-exam50} \ &\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1 + r + r^2 + \cdots + r^n}{(1+r)^n}, \quad (r>1). \label{univ-entrance-exam51} \end{align}
(3) 0<a<10<a<10<a<1 のとき, limn→∞nran=0\lim_{n \to \infty} n^r a^n = 0limn→∞nran=0, r=1r=1r=1, 222 を示し, 次の無限級数の和を求めよ. \begin{align} &\sum_{n=1}^{\infty} n a^n, \label{univ-entrance-exam52} \ &\sum_{n=1}^{\infty} n (n-1) a^n. \label{univ-entrance-exam53} \end{align} \end{exercise}
ポイント: 問題 2 級数の収束・発散に関しては命題 \ref{univ-entrance-exam45} が基本なので完璧にしておくこと. あとは無限等比級数など基本的なところも意外と出てくる. 基礎・基本をなめてはいけない. 極限関係だからはさみうちの原理をいつだって考えないといけないので, その基礎となる不等式処理には習熟しておくこと.
方針: 問題 2
最初の式 \ref{univ-entrance-exam47}は上の判断基準, 命題 \ref{univ-entrance-exam45} がそのまま使えるから収束することはわかる. 極限値もきちんと計算しないといけなくて, そこで telescope method が出てくる. 今の場合, 具体的には部分分数分解だ. 次の 2 つの問題もそうだが, 一般項のオーダー, 和のオーダーを調べて収束するかどうかは見てすぐわかるようにしてほしい.
次の式 \ref{univ-entrance-exam48}は命題 \ref{univ-entrance-exam45} がそのまま使えるから発散することはわかる. どう発散を示すかで, いつもは分子の有理化が基本だが, 今度は普通の有理化をすればいい. あとは勝手に telescope になる.
次の式 \ref{univ-entrance-exam49}も命題 \ref{univ-entrance-exam45} がそのまま使えるから発散することはわかる. 解法は 2 つあって, 和が収束するなら一般項は 0 に収束するという定理があるから, そちらに落としてもいい. 和をダイレクトに計算するなら不等式処理をうまく使う. 難しくはないが, やはり慣れていないと大変だろう.
次の式 \ref{univ-entrance-exam50}は試験本番だと勝負になる問題だ. 単純な無限等比級数の問題と思いきや, 割と面倒. 単純な無限等比級数と思って計算したあとに「このままではまずい」と思えるかどうかが分水嶺. 場合分けをなめてはいけない.
次の式 \ref{univ-entrance-exam51}は一般項の分子が和になっているので, 分子・分母の 1 セットの処理でミスしない計算力が大事になる.
次の 2 式 \ref{univ-entrance-exam52} \ref{univ-entrance-exam53}について, まず nran→0n^r a^n \to 0nran→0 の証明は完璧に覚えてしまってほしい. 不等式処理への慣れという点でも参考になるだろう. あとは等比級数の微分から求める和が計算できることに気付けるかだ. 一般項が nan−1n a^{n-1}nan−1, n(n−1)an−2n(n-1)a^{n-2}n(n−1)an−2 だったらもっとわかりやすいのだが, そこをひねっているのが難しくなるポイントだ. これも「よくわかっている級数を微分・積分して新しい級数の和を得る」というよく出てくる話なのでやはり覚えてしまうのがいい. 特に最後の式 \ref{univ-entrance-exam53} は計算が割と面倒なのでミスしない計算力が必要.
問題 3
\begin{exercise} 次の極限値を求めよ.
(1) \begin{align} & \lim_{x \to 1} \frac{\sqrt{x} - 1}{x^3 - 1}, \label{univ-entrance-exam57} \ & \lim_{x \to - \infty} \frac{\sqrt{x^2 - 2x -3} - x}{x+1}. \label{univ-entrance-exam58} \end{align} (2) \begin{align} & \lim_{x \to 0} \frac{e^{x} - e^{-x}}{x}, \label{univ-entrance-exam59} \ & \lim_{x \to \infty} x \cbk{\log (x+2) - \log x}. \label{univ-entrance-exam60} \end{align} (3) \begin{align} & \lim_{x \to 0} \frac{\tan x - \sin x}{x^3}, \label{univ-entrance-exam61} \ & \lim_{x \to \frac{\pi}{2}} \cos 3x \tan 5x. \label{univ-entrance-exam62} \end{align} \end{exercise}
ポイント: 問題 3 これも定型処理だ. ルートがあったら有理化, 命題 \ref{univ-entrance-exam45} を元にオーダーを見る, 微分係数の計算に落としてみる, 関数の特殊値を補助する, といったあたりを完璧に身につける.
方針: 問題 3
最初の式 \ref{univ-entrance-exam57} 分子の有理化と因数分解の処理だけだ. x=1x = 1x=1 の振る舞いが問題なのだから x−1x-1x−1 を括ることを考える. 分母は因数分解, 分子は有理化による.
次の式 \ref{univ-entrance-exam58}はオーダーを見ると収束することはすぐわかる. ルートの中の x2x^2x2 の処理が問題で x→−∞x \to - \inftyx→−∞ の極限だから x2=−x\sqrt{x^2} = - xx2=−x になることに注意する.
次の式 \ref{univ-entrance-exam59}は微分係数の定義に落とせばいい. 解法はいくつかあるが, ここでも telescope を使う方法で解ける.
次の式 \ref{univ-entrance-exam60}は log\loglog の差は引数の割り算に落ちるので, まずはそこまで落とせるかが鍵. 次は微分係数に落とせばいい. 自然対数の底の定義に落とし込んでもいい.
次の式 \ref{univ-entrance-exam61} は三角関数のいろいろな式を使いこなせるかがポイントだ. また分母に x3x^3x3 があって sinx/x→1\sin x / x \to 1sinx/x→1 (x→0)(x \to 0)(x→0) なのでここに落とし込もうと思えるかが鍵になる.
ちょっと高級な視点から見ると, 分母が x3x^3x3 のオーダーになることはわかる. xxx が小さいと tanx∼sinx∼x\tan x \sim \sin x \sim xtanx∼sinx∼x になること, tan\tantan と sin\sinsin は奇関数だから多項式で見るなら奇数次の項しか出てこないことを考えると, うまいこと x3x^3x3 の項がキャンセルしあってくれると期待できる. これは最後の式 \ref{univ-entrance-exam62} の処理でも共通する視点だ.
最後の式 \ref{univ-entrance-exam62}は三角関数の式変形をした上で微分係数の議論に落とし込むことがポイントだ. θ=x−π/2\theta = x - \pi / 2θ=x−π/2 と変数変換した方がやりやすいだろう.
第 13 章 関数と数列の極限 例題 40
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam63} 関数 f(x)=limn→∞xn+1+(x2−1)sinaxxn+x2−1f(x)=limn→∞xn+1+(x2−1)sinaxxn+x2−1\begin{align} f(x) = \lim_{n \to \infty}\frac{x^{n+1} + (x^2 - 1) \sin ax}{x^n + x^2 - 1} \end{align}f(x)=n→∞limxn+x2−1xn+1+(x2−1)sinaxf(x)=n→∞limxn+x2−1xn+1+(x2−1)sinax が全ての xxx に対して連続となるような正の定数 aaa の最小値を求め, そのときの y=f(x)y=f(x)y=f(x) のグラフを描け. \end{exercise}
ポイント ポイントは極限関数を求めるための場合分けだ. ここがいい加減だと aaa が決まらなくなるか間違う. 必ずしも難しくないが丁寧な議論を時間内にやりきれるか, 着想の方向が適切かを求められる問題だ.
方針 極限で得られる関数をまず求める必要があり, そのための場合分けがきちんとできる必要がある. はじめから aaa に見当がつくはずもないし, 地道な第 1 歩として極限関数が求められるかが勝負だ.
割と鬱陶しいのは分子に xn+1x^{n+1}xn+1 があり分母に xnx^{n}xn がいることだ. 分子の方がオーダーが大きいので n3/n2n^3 / n^2n3/n2 のように n→∞n \to \inftyn→∞ で発散しそうな気がしないでもない. もちろんそんなことはないのだが, 本番の普通ではない精神状態では混乱するかもしれない. ぱっと見で不安になったらまずは落ち着くこと. 何にせよ nnn が絡むのは xnx^{n}xn のところなので, xxx の値によって場合分けしていく必要がある. ここで x2−1x^2 - 1x2−1 がヒントになっている: 要は x=±1x = \pm 1x=±1 を両方きちんと見るようにというメッセージなのだ. 真っ先に思うのは ∣x∣>1\abs{x} > 1∣x∣>1 と ∣x∣<1\abs{x} < 1∣x∣<1 の場合分けだろう. ∣x∣>1\abs{x} > 1∣x∣>1 なら xnx^nxn がリーディングタームになるから f(x)=xf(x) = xf(x)=x, ∣x∣<1\abs{x} < 1∣x∣<1 なら xnx^nxn が消えるから f(x)=sinaxf(x) = \sin axf(x)=sinax になる.
試験本番の精神状態で勝負をわけるのは x=±1x = \pm 1x=±1 の処理だろう. 冷静ならきちんとそれぞれの計算をしにいけるだろうが, どちらも一緒だと思って処理してしまうとひどいことになる. きちんと f(1)=1f(1) = 1f(1)=1, f(−1)=lim(−1)n+1/(−1)n=−1f(-1) = \lim (-1)^{n+1} / (-1)^{n} = -1f(−1)=lim(−1)n+1/(−1)n=−1 を導く.
これで f(x)f(x)f(x) が完全にわかったので, あとは連続になるように aaa を決めればいい. x=±1x = \pm 1x=±1 の接続問題になるからそこをきちんとおさえる. aaa は「正の定数」でそのうちの最小値を求めよと言っているので, そこも踏まえないと aaa がたくさんあると答えてしまう. 冷静ならそんなことはしなくても試験本番でやらないよう, 普段から問題文はきちんと読む癖をつけること.
第 13 章 関数と数列の極限 例題 41
\begin{exercise}[京都工芸繊維大]\label{univ-entrance-exam64} 定数 1<a<21 < a < 21<a<2 に対して, 数列 {xn}\cbk{x_n}{xn} を x1=a,xn+1=3xn−2(n=1,2,3,⋯ )x1=a,xn+1=3xn−2(n=1,2,3,⋯ )\begin{align} x_1 = a, \quad x_{n+1} = \sqrt{3 x_n - 2} \quad (n=1, 2, 3, \cdots) \end{align}x1=a,xn+1=3xn−2(n=1,2,3,⋯)x1=a,xn+1=3xn−2(n=1,2,3,⋯) で定める.
(1) a≤xn<2a \leq x_n < 2a≤xn<2 (n=1n=1n=1, 222, 333, ⋯\cdots⋯) を示せ.
(2) 不等式 \begin{align} 0 < 2 - x_{n+1} \leq \frac{3}{2 + \sqrt{3a - 2}}(2 - x_n) \quad (n=1, 2, 3, \cdots) \label{univ-entrance-exam65} \end{align} が成り立つことを示し, limn→∞xn\lim_{n \to \infty} x_nlimn→∞xn を求めよ. \end{exercise}
ポイント (1) は不等式の処理, 分子にルートが出てきたら有理化が大事だ. n=1,2,3,⋯n=1, 2, 3, \cdotsn=1,2,3,⋯ とあるので帰納法を使うことも思いついてほしい. 帰納法も実験の一種なので, 実験の習慣がついていれば乗り越えられる. (2) は誘導をきちんと使い切ることだ.
方針
(1) まずは実験してみよう. n=1n=1n=1 では x1=ax_1 = ax1=a なので特に何かいうことはない. n=2n=2n=2 では x2=3a−2x_2 = \sqrt{3a - 2}x2=3a−2 なのですぐに 1≤x2<21 \leq x_2 < 21≤x2<2 は aaa の不等式からすぐわかる: 1<a<2⇒3<3a<6⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2.1<a<2⇒3<3a<6⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2.\begin{align} 1 < a < 2 \Rightarrow 3 < 3a < 6 \Rightarrow 1 < 3a - 2 < 4 \Rightarrow 1 < \sqrt{3a - 2} < 2. \end{align}1<a<2⇒3<3a<6⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2.1<a<2⇒3<3a<6⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2. また \begin{align} x_2 - a^2 = (3a - 2) - a^2 = - (a - 1)(a - 2)
0. \end{align} これらを合わせて a≤x2<2a \leq x_2 < 2a≤x2<2 となる. あとは同じ感じでやっていけばいい. 帰納法でやればそのまま正式な形になる. 一般的にやるには「分子のルートは有理化して計算できるようにする」手法を使えばいいだろう.
(2) まず示すべき式 (\ref{univ-entrance-exam65}) を捻り出すにはどうしたらいいかを考える. これも愚直に実験してみるといいが, まずは形を眺める. 最右辺に xnx_nxn があるから漸化式で xn+1x_{n+1}xn+1 を xnx_nxn で書き直そう. あとは「分子のルートは有理化して計算」という標準的な手法で 2−xn+1=2−3xn−2=4−(3xn−2)2+3xn−2=3(2−xn)2+3xn−2.2−xn+1=2−3xn−2=4−(3xn−2)2+3xn−2=3(2−xn)2+3xn−2.\begin{align} 2 - x_{n+1} = 2 - \sqrt{3x_n - 2} = \frac{4 - (3x_n - 2)}{2 + \sqrt{3x_n - 2}} = \frac{3(2 - x_n)}{2 + \sqrt{3x_n - 2}}. \end{align}2−xn+1=2−3xn−2=2+3xn−24−(3xn−2)=2+3xn−23(2−xn).2−xn+1=2−3xn−2=2+3xn−24−(3xn−2)=2+3xn−23(2−xn). 次は分子の xnx_nxn を aaa に書き換えればいい. a≤xna \leq x_na≤xn があるので素直に書き換えられる: もちろん不等式の処理に習熟していれば. 一般的にいうなら xnx_nxn は nnn によって変わるから評価に使いづらいので, やはり定数で挙動をおさえたくなる, という流れでこの誘導に行き着く.
次はこの式を使って極限を出す. limn→∞xn=2\lim_{n \to \infty} x_n = 2limn→∞xn=2 となることをまず予想できるようになってほしい. また最右辺は r=3/(2+3a−2)r = 3/(2 + \sqrt{3a - 2})r=3/(2+3a−2) とすると r(2−xn)<r2(2−xn−1)<⋯rn(2−x1)r(2−xn)<r2(2−xn−1)<⋯rn(2−x1)\begin{align} r(2 - x_n) < r^2 (2 - x_{n-1}) < \cdots r^n (2 - x_1) \end{align}r(2−xn)<r2(2−xn−1)<⋯rn(2−x1)r(2−xn)<r2(2−xn−1)<⋯rn(2−x1) で nnn が落ちていく. r<1r < 1r<1 なら rn→0r^n \to 0rn→0 になるからはさみうちの原理で 0 になる. だから r<1r < 1r<1 を示せばいい. あとは aaa の変域が指定されているから r<1r < 1r<1 となるようにがんがん変形していけばいい.
解答
(1) 数学的帰納法で示す. n=1n=1n=1 のとき x1=ax_1 = ax1=a かつ 1<a<21 < a < 21<a<2 なので a≤x1<2a \leq x_1 < 2a≤x1<2 が成り立つ. n=k≥1n=k \geq 1n=k≥1 のとき, a≤xn<2a \leq x_n < 2a≤xn<2 と仮定すると, xk+1−a=3xk−2−a=3xk−2−a23xk−2+a>0.xk+1−a=3xk−2−a=3xk−2−a23xk−2+a>0.\begin{align} x_{k+1} - a = \sqrt{3x_k - 2} - a = \frac{3x_k - 2 - a^2}{\sqrt{3 x_k - 2 + a}} > 0. \end{align}xk+1−a=3xk−2−a=3xk−2+a3xk−2−a2>0.xk+1−a=3xk−2−a=3xk−2+a3xk−2−a2>0. ここで 1<a<21 < a < 21<a<2 なので分子が 3xk−2−a2≥3a−2−a2=(a−1)(2−a)>03xk−2−a2≥3a−2−a2=(a−1)(2−a)>0\begin{align} 3x_k - 2 - a^2 \geq 3a - 2 - a^2 = (a-1)(2-a) > 0 \end{align}3xk−2−a2≥3a−2−a2=(a−1)(2−a)>03xk−2−a2≥3a−2−a2=(a−1)(2−a)>0 となることを使った. さらに \begin{align} 2 - x_{k+1} = 2 - \sqrt{3 x_k - 2} = \frac{3 (2 - x_k)}{2 + \sqrt{3 x_k - 2}}
0 \end{align} だから a≤xk+1<2a \leq x_{k+1} < 2a≤xk+1<2 となり n=k+1n=k+1n=k+1 でも a≤xn<2a \leq x_n < 2a≤xn<2 が成立する.
(2) (1) の結果から 0<2−xn+1=32+3xn−2(2−xn)≤32+3a−2(2−xn).0<2−xn+1=32+3xn−2(2−xn)≤32+3a−2(2−xn).\begin{align} 0 < 2 - x_{n+1} = \frac{3}{2 + \sqrt{3x_n - 2}} (2 - x_n) \leq \frac{3}{2 + \sqrt{3a - 2}}(2 - x_n). \end{align}0<2−xn+1=2+3xn−23(2−xn)≤2+3a−23(2−xn).0<2−xn+1=2+3xn−23(2−xn)≤2+3a−23(2−xn). r=3/(2+3a−2)r = 3/(2 + \sqrt{3a - 2})r=3/(2+3a−2) とすると 1<a<2⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2 ⇒3<2+3a−2<4⇒34<r<1.1<a<2⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2 ⇒3<2+3a−2<4⇒34<r<1.\begin{align} 1 < a < 2 &\Rightarrow 1 < 3a - 2 < 4 \Rightarrow 1 < \sqrt{3a - 2} < 2 \ &\Rightarrow 3 < 2 + \sqrt{3a - 2} < 4 \Rightarrow \frac{3}{4} < r < 1. \end{align}1<a<2⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2 ⇒3<2+3a−2<4⇒43<r<1.1<a<2⇒1<3a−2<4⇒1<3a−2<2 ⇒3<2+3a−2<4⇒43<r<1. したがって 0<2−xn+1≤r(2−xn)≤rn(2−x1)→0(n→∞).0<2−xn+1≤r(2−xn)≤rn(2−x1)→0(n→∞).\begin{align} 0 < 2 - x_{n+1} \leq r (2 - x_n) \leq r^n (2 - x_1) \to 0 \quad (n \to \infty). \end{align}0<2−xn+1≤r(2−xn)≤rn(2−x1)→0(n→∞).0<2−xn+1≤r(2−xn)≤rn(2−x1)→0(n→∞). したがって limn→∞xn=2\lim_{n \to \infty} x_n = 2limn→∞xn=2.
第 14 章 微分法とその応用 例題 42
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam66} 次の曲線の概形を描け. \begin{align} &C_1: y = \frac{x}{x^2 + 2x + \frac{3}{4}}. \label{univ-entrance-exam67} \ &C_2: x = \frac{2}{1 - t^2}, \quad y = \frac{2t}{1-t^2}. \quad (- \infty < t < \infty) \label{univ-entrance-exam68} \ &C_3: x = \sin \theta, \quad y = \sin 2 \theta. \quad (0 \leq \theta \leq \pi) \label{univ-entrance-exam69} \end{align} \end{exercise}
ポイント 基本的には頑張って微分して増減を丁寧に追いかけるだけ. パラメータ表示されている場合, パラメータの変化から xxx, yyy 両方を追いかけないといけないので慣れが必要だろう. さらにパラメータの取り得る範囲によっては, 図形の一部しか描かないことがあるので, その条件をきちんと考え抜く必要がある. 最後の詰めまで気を抜いてはいけない. 双曲線 y=1/xy = 1/xy=1/x を考えればわかるように, 有理関数では分母が 0 になるところでは値が ±∞\pm \infty±∞ になる. どちらから近付くかによって正負が変わる場合も多い.
小手先の知識ではあるが, 自然数 mmm, nnn に対して xxx, yyy が両方とも適当な sinmθ\sin m \thetasinmθ, cosnθ\cos n \thetacosnθ で与えられる曲線を リサージュ (Lissajous) 曲線と呼ぶ. θ\thetaθ に関して明らかな周期性があるので, それをうまく使ってグラフを描くとミスが減る.
方針 あまり言うことがない. ポイントにも書いたように最後の詰めまできっちりこなすこと.
第 14 章 微分法とその応用 例題 43 山梨大
\begin{exercise}[山梨大]\label{univ-entrance-exam70} 関数 f(x)f(x)f(x) が次のように定義されている. f(x)={1−cosxx,(x≠0) a,(x=0).f(x)={1−cosxx,(x≠0) a,(x=0).\begin{align} f(x) = \begin{cases} \frac{1 - \cos x}{x}, \quad (x \neq 0) \ a, \quad (x = 0). \end{cases} \end{align}f(x)={x1−cosx,(x=0) a,(x=0).f(x)={x1−cosx,(x=0) a,(x=0).
(1) f(x)f(x)f(x) が ∞<x<∞\infty < x < \infty∞<x<∞ で連続となるように定数 aaa の値を求めよ.
(2) (1) のとき, 微分係数の定義にしたがって f′(0)f'(0)f′(0) を求めよ.
(3) f(x)f(x)f(x) は −π/2≤x≤π/2- \pi / 2 \leq x \leq \pi / 2−π/2≤x≤π/2 で増加関数であることを示せ. \end{exercise}
ポイント 問題 \ref{univ-entrance-exam63} にもあるような連続になるように値を設定する問題だ. 最後まで x≠0x \neq 0x=0 と x=0x = 0x=0 で丁寧に場合分けしていく集中力が求められる. その意味では (3) は完答が難しくその意味で難問といえる. (2) の誘導をきちんと使える余裕が必要だ. もちろんこの手の連続性・微分可能性チェックの問題にも十分慣れておくこと.
方針 前半の (1), (2) は問題ないだろう. 三角関数の極限処理では色々な関係式を使いこなせるようになっている必要があるが, 三角関数のいい復習にもなると思ってやってほしい. (3) が本論だが方針は微分で問題ないし, 特別に言うことはない. 強いていうなら有理関数の増減を見る場合に分母が正なら分子だけ見るようにして, 処理を減らし計算ミスをなくすいつもの手続きを愚直に取るだけだ. 最後の場合分けをきっちりやりきれるかどうかがこの問題の最大のポイントになる.
場合分けについて抜き出して説明しておこう. x≠0x \neq 0x=0 のときの f′(x)f'(x)f′(x) を外挿して形式的に f′(0)f'(0)f′(0) を求めるとf′(0)=3/2f'(0) = 3/2f′(0)=3/2 になる. これは (2) で定義から求めた値と食い違うのだが, もちろん定義から求めた値の方が正しい. 試験本番で値が食い違うことにまで気付く必要はないが, (2) の計算をきちんと使わないと減点になることは間違いない.
第 14 章 微分法とその応用 例題 44 三重大
\begin{exercise}[三重大]\label{univ-entrance-exam71} f(x)=12cosxf(x) = \frac{1}{2} \cos xf(x)=21cosx とする.
(1) 方程式 f(x)=xf(x) = xf(x)=x はただ 1 つの解をもつことを示せ.
(2) 任意の実数 xxx, yyy に対して, ∣f(x)−f(y)∣≤12∣x−y∣\abs{f(x) - f(y)} \leq \frac{1}{2} \abs{x - y}∣f(x)−f(y)∣≤21∣x−y∣ が成り立つことを示せ.
(3) 任意の実数 aaa に対して, a0=aa_0 = aa0=a, an=f(an−1)a_n = f(a_{n-1})an=f(an−1) (n=1n= 1n=1, 2, 3, ⋯\cdots⋯) で定められる数列 {an}\cbk{a_n}{an} は f(x)=xf(x) = xf(x)=x の解に収束することを示せ. \end{exercise}
ポイント
(1) 解があってしかも 1 つだけというのをどう示すかが大事. f(x)=xf(x) = xf(x)=x ときたら g(x)=x−f(x)g(x) = x - f(x)g(x)=x−f(x) と変換するのは標準的なので確実におさえる. 最高次の項の係数が正のとき, 奇数次多項式 p(x)p(x)p(x) は x→±∞x \to \pm \inftyx→±∞ で p(x)→±∞p(x) \to \pm \inftyp(x)→±∞ となること, 偶数次多項式 q(x)q(x)q(x) は q(x)→∞q(x) \to \inftyq(x)→∞ となることは当たり前だがここで威力を発揮する. 解の存在は中間値の定理が保証してくれるのでこれも使い方をおさえる.
(2) 勘所は不等式処理だ. 平均値の定理, (区分求積法からの) 積分不等式, 三角関数の式変形と方法はいくつかある. 不等式にどれだけ親しめているかが数 III の分水嶺なので, いろいろな処理の仕方を確実におさえること.
(3) 問題 \ref{univ-entrance-exam64} と同じで, 極限を求めるのにはさみうちを使う. これも標準的な手法なので絶対に落としてはいけない.
方針
(1) こうきたら g(x)=x−f(x)g(x) = x - f(x)g(x)=x−f(x) として挙動を調べるのが基本中の基本. まずは関数の全体的な挙動に気を配る. f(x)f(x)f(x) は三角関数なのでがちゃがちゃ揺れるだけだから, 奇数次多項式としての xxx に注目すると x→±∞x \to \pm \inftyx→±∞ で g(x)→±∞g(x) \to \pm \inftyg(x)→±∞ になる. g(x)g(x)g(x) は連続だから中間値の定理が使えて g(x)g(x)g(x) は解を少なくとも 1 つ持つ. あとは解が 1 つだけというのをどう示すかだ.
もちろんいくつか候補はあるが, 素直なのは (狭義) 単調増加性を調べることだろう. 単調増加性がいえれば x→±∞x \to \pm \inftyx→±∞ の振る舞いから g(x)g(x)g(x) はただ 1 つしか解を持てない. 単調増加性を見たいなら導関数の振る舞いを調べればいい, と来るのであまり悩むことはないだろう. 悩むようでは演習が足りない. ∣sinx∣≤1\abs{\sin x} \leq 1∣sinx∣≤1, ∣cosx∣≤1\abs{\cos x} \leq 1∣cosx∣≤1 という自明な不等式は (2) でも使う.
本番では「これが数 III 範囲の問題です」と言われて出題されるわけではない. そこまで踏まえた上でふだんからすぐに方針を決められるように鍛えておかないといけない.
(2) 問題の全体を眺めれば (3) の誘導であることは明白. 一方で受験生がこの不等式を示すのは慣れていないと大変だろう. 数 III の範囲でいうなら, 受験生の解答らしいのは平均値の定理を使う解答が標準的か. この場合, 平均値の定理は不等式を導くための道具であるという認識を普段から育てておく必要がある. 平均値の定理は見かけ上等式に関する定理なので, 相当訓練しておかないといけない.
∣sinx∣≤1\abs{\sin x} \leq 1∣sinx∣≤1, ∣cosx∣≤1\abs{\cos x} \leq 1∣cosx∣≤1 という自明な不等式は数 III ではよく使う. 確実におさえておかないと最後の最後でどうしたらいいかわからなくなる.
本 \cite{KazuhiroMitsuya1} では三角関数の和積公式を使った別解もあるが, それでもやはり最後は三角関数の不等式に落とし込む必要がある.
私のお気に入りは微分積分学の基本定理から積分不等式に叩き落とす方法だ. 区分求積法にまで戻れば三角不等式を使っていることになるので, 三角不等式の訓練にもなる.
(3) 本質的に問題 \ref{univ-entrance-exam64} と同じなので, その部分は完璧にしておかなければいけない. (2) の誘導があるとはいえ, はじめの 1 ステップを踏めるかが勝負を決する.
この問題は割と面倒なことに気付く必要がある. 数列 {an}\cbk{a_n}{an} が収束するかどうか自体の判定, 収束するとしてそれがただ 1 つかどうか自体を判定する必要があるからだ^univ-entrance-exam72. そして普段は「(1/21/21/2 などの具体的な値) に収束することを示せ」というような問題が多いが, ここではそれが f(x)=xf(x) = xf(x)=x の解という表現にしかなっていない. だからこの (ただ 1 つの) 解を α\alphaα として仮置きする第 1 ステップを踏めるかがまず難所. 次に (2) を誘導と思ってそれを使う方向に頭を持っていけるかが次の難所. an=f(an−1)a_n = f(a_{n-1})an=f(an−1) としてくれていて, α=f(α)\alpha = f(\alpha)α=f(α) と重なるからそこを見抜けるかも大事だ. 問題 \ref{univ-entrance-exam64} でも使った, (2) の不等式を繰り返し使う定型処理が身についていればあとは問題ないだろう.
(1) で「ただ 1 つの解をもつことを示せ」と言っているので出題側は気にしていることが見てとれる. 実際ここを証明しておかないと「f(x)=xf(x) = xf(x)=x の解のどれかに収束する」といった表現が必要になり, 証明すべきことも増えていって恐ろしく難しい問題になる.
第 15 章 積分法とその応用 例題 45
問題 1-1
\begin{exercise} 次の不定積分を求めよ. \begin{align} &\int \tan x dx, \label{univ-entrance-exam73} \ &\int e^{\sqrt{x}} dx, \label{univ-entrance-exam74} \ &\int \frac{1}{e^{x} - e^{-x}} dx, \label{univ-entrance-exam75} \ &\int \frac{x}{x^2 - 2x - 3} dx. \label{univ-entrance-exam76} \end{align} \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 1-1 微分と同じくここは全て定型処理. 四の五の言わずにまずは部分分数分解, 置換積分, 部分積分といった手法を覚える (使いこなせるようにする). 置換積分した場合は最後, 置換した変数を元に戻すのを忘れてはいけない. 具体例としてもこのくらいを覚えておけばある程度の応用も効くはずだ. 本質的に難しい (どうやっても試験本番で思いつかない) 置換を使う場合は適当に誘導が出る. 不定積分で置換した場合, 最後に変換した変数を元に戻すのを忘れないよう気をつけてほしい.
計算が重たいことも多いから, 計算ミスをどうやってなくすかを考えるのも大事. 自分がやりがちなミスをきちんとメモしてそれをどう潰すか考えること.
問題 1-2
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam77} 次の定積分を求めよ. \begin{align} &\int_{- \pi}^{\pi} (\pi - \abs{x}) \cos x dx, \label{univ-entrance-exam78} \ &\int_{-1}^{1} \frac{x^2}{1 + e^x} dx, \label{univ-entrance-exam79} \ &\int_{a}^{b} \sqrt{(x-a)(b-x)} dx \quad (a < b). \label{univ-entrance-exam80} \end{align} \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 1-2 問題 1-1 と同じく定型処理. 不定積分と同じく部分分数分解, 置換積分, 部分積分はもちろん使う. 区間の情報が入ってくるので, 偶関数・奇関数であることを使う, 対称性に注目して区間をいじる, 図形の面積と絡めて計算を省くといったことも追加で覚えよう.
不定積分と同じく計算が重たいことも多いから, 計算ミスをどうやってなくすかを考えるのも大事. 定積分では具体的な数を代入して計算することも多く, 代入するのが分数の場合は特に計算ミスの可能性が高くなる. 自分がやりがちなミスをきちんとメモしてそれをどう潰すか考えること.
次の式 \ref{univ-entrance-exam78} は偶関数であることに着目すればいい. 絶対値のおかげで偶関数になってくれるが, 計算上鬱陶しいところでもある. その特殊性を使って絶対値を外しつつ楽に計算する方法を探そう.
次の式 \ref{univ-entrance-exam79} は区間が対称的なので偶関数・奇関数だったらよかったのだが, 被積分関数はそうなっていない. つらいのは exe^{x}ex の処理だ. これをどうするかがポイントだろう. 区間の対称性もそれはそれとしてうまく使うことが大事になる. これは割と難しい.
問題 2-1, 2-2 (高知大)
\begin{exercise}[高知大]\label{univ-entrance-exam81} (1) 連続関数 f(x)f(x)f(x) および実数 aaa について, 等式 \begin{align} \int_{0}^{a} f(x) dx = \int_{0}^{a/2} \cbk{f(x) + f(a-x)} dx \label{univ-entrance-exam82} \end{align} が成り立つことを証明せよ.
(2) 次の定積分を求めよ. ∫0π/2cosxsinx+cosxdx, ∫0π/2cos3xsinx+cosxdx.∫0π/2cosxsinx+cosxdx, ∫0π/2cos3xsinx+cosxdx.\begin{align} &\int_{0}^{\pi / 2} \frac{\cos x}{\sin x + \cos x} dx, \ &\int_{0}^{\pi / 2} \frac{\cos^3 x}{\sin x + \cos x} dx. \end{align}∫0π/2sinx+cosxcosxdx, ∫0π/2sinx+cosxcos3xdx.∫0π/2sinx+cosxcosxdx, ∫0π/2sinx+cosxcos3xdx. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 2-1, 2-2 等式変形なので, 力づくでも何でもいいから左辺から右辺, または右辺から左辺を導くか, 辺々引いて差が 0 であることを示してもいい. 具体的には積分区間が違うことに着目する. 違う部分を同じにしてもまとめていくようにすればいい. (2) は (1) の誘導をうまく使う. 分母に sin\sinsin と cos\coscos が出てくるので, 分子からも これらをひねり出せれば処理が楽になる. それを思いながら工夫して変形していくことになる.
問題 2-3
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam84} 次の不定積分を求めよ. \begin{align} &\int \frac{1}{\sin^2 x \cdot \cos^2 x} dx, \label{univ-entrance-exam85} \ &\int \frac{1 - \tan x}{1 + \tan x} dx. \label{univ-entrance-exam86} \end{align} \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 2-3 三角関数のいろいろな関係式を使いこなせるかどうかだ. 三角関数の実戦的な復習にもなるのでうまく使ってほしい. はじめは全く思いつかないだろうがそれが普通だ. ある程度数をこなせば, はじめて見る問題でも何となく方針は浮かぶようになる.
最初の式 \ref{univ-entrance-exam85} は 1/cos2x1 / \cos^2 x1/cos2x や 1/sin2x1 / \sin^2 x1/sin2x の処理がポイントだろう. 次の式 \ref{univ-entrance-exam86} は tanx\tan xtanx を sinx/cosx\sin x / \cos xsinx/cosx に分解してみるのがポイントだ. 逆の変形はよくやるだろうが, その逆がここでできるかどうかというところ.
問題 3
\begin{exercise} 次の極限値を求めよ. \begin{align} &\lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n \frac{k}{n^2 + k^2}, \label{univ-entrance-exam87} \ &\lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n \frac{(n+k)^2}{n^3}, \label{univ-entrance-exam88} \ &\lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n \frac{1}{\sqrt{n} \sqrt{n + k}}, \label{univ-entrance-exam89} \ &\lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n \frac{k}{n^2} \sin \frac{k \pi}{n}, \label{univ-entrance-exam90} \ &\lim_{n \to \infty} \log \frac{\sqrt[n]{(n+1)(n+2) \cdots (n + n)}}{n}. \label{univ-entrance-exam91} \end{align} \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 3 区分求積法の問題だ. xxx に化けるのは k/nk/nk/n の項だがぱっと見 kkk だけしかないことがある. dxdxdx に化ける 1/n1/n1/n を括り出すこと, k/nk/nk/n が出てくることを考えよう. どちらかやってみると勝手に一方が出てくることもある. 難しくなってくると, 積分にした後に置換積分や部分積分などの手法を使って処理しないといけないことも多いだろう. この中では最後の式 \ref{univ-entrance-exam91} が多分一番難しい. ぱっと見和の形ではなく, 区分求積法の問題と気づけるかが勝負になる. もちろん数 III 自体が勝負を分ける分野だが, 数 III に慣れていないとき, もっというと初見だとかなり厳しい一方で, 十分演習している人には軽く取れる問題でもあるから, 勝負を分ける問題になる可能性がある. 数列の極限の処理の中で最後に出てくる可能性もある. 指数・対数の復習にもなるし, やはり一度やってきちんと覚えておくのが大事だろう.
問題 4
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam92} 次のように InI_nIn を定める. In=∫0π/2sinnx dx(n=0,1,2,⋯ ).In=∫0π/2sinnx dx(n=0,1,2,⋯ ).\begin{align} I_n = \int_{0}^{\pi / 2} \sin^n x \, dx \quad (n = 0, 1, 2, \cdots). \end{align}In=∫0π/2sinnxdx(n=0,1,2,⋯).In=∫0π/2sinnxdx(n=0,1,2,⋯).
(1) In=n−1nIn−2I_n = \frac{n-1}{n} I_{n-2}In=nn−1In−2 (n≥2)(n \geq 2)(n≥2) を示せ.
(2) InI_nIn を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 4 超がつく程の定型問題. 高校での数学に限らず nnn 乗を部分積分で処理するのは標準的な手法だ. 大学の教科書にも演習問題として載っていることがある. 場合分けまで含めて完璧に覚えておこう. この問題でいうなら注目すべき点は InI_nIn と In−2I_{n-2}In−2 を結びつけているところだ. (1) から (2) への誘導にきちんと乗ること. InI_nIn からどうすれば n−2n-2n−2 の項を引きずり出せるか, そこに気づけるかが大事だ. また nnn と n−2n-2n−2 を繋いでいることから nnn の偶奇での場合分けに気付けるか.
問題 5
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam93} mmm, nnn を 0 以上の整数とし, I(m,n)I(m, n)I(m,n) を I(m,n)=∫αβ(x−α)m(β−x)ndx(α<β)I(m,n)=∫αβ(x−α)m(β−x)ndx(α<β)\begin{align} I(m, n) = \int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)^{m} (\beta - x)^{n} dx \quad (\alpha < \beta) \end{align}I(m,n)=∫αβ(x−α)m(β−x)ndx(α<β)I(m,n)=∫αβ(x−α)m(β−x)ndx(α<β) によって定める.
(1) n≥1n \geq 1n≥1 のとき, I(m,n)I(m, n)I(m,n) を I(m+1,n−1)I(m+1, n-1)I(m+1,n−1) を用いて表せ.
(2) I(m,n)I(m, n)I(m,n) を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針: 問題 5 これも超がつく程の定型問題. nnn 乗を部分積分で処理する. 大学の教科書にも演習問題として載っているどころか, BBB 関数 (ベータ関数) として章立てされていることもある. 結果はセンターで裏技, 1/61/61/6 公式などと呼ばれて紹介されることもある有名な結果だ. 2 次, 3 次の多項式くらいなら結果も覚えやすい. 特にセンターでは計算量・時間の節約・計算ミス撲滅のためにどんどん使っていこう.
第 15 章 積分法とその応用 例題 46 名古屋大
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam94} 関数 f(x)f(x)f(x) (a≤x≤ba \leq x \leq ba≤x≤b) が正の第 2 次導関数をもつとき, 曲線 C :y=f(x)C \colon y = f(x)C:y=f(x) の上に点 P をとって, P における接線 lll とこの曲線 CCC および 2 直線 x=ax=ax=a と x=bx=bx=b で囲まれた部分の面積を最小にするには, 点 PPP をどのように取ればよいか. \end{exercise}
ポイント・方針 面積で最大最小問題だから当然微分と積分が基本だ. 2 階の導関数の条件をどう使うか, すぐには見えないので頑張って計算を進めていくしかない.
面積に限らず弧長や体積でも幾何学的に考えて計算量を減らす工夫が大事だ. 幾何学的に言うなら 2 階導関数の条件から凸性が言えるのでそれを使う方針もある. 本の解答に不備というか議論が甘いところがあった. それを補うためにここでは解答もつけておこう.
解答
【解 1】 定義域で f(x)>0f(x) > 0f(x)>0 として一般性を失わない. P(t,f(t))\mathrm{P} (t, f(t))P(t,f(t)) として問題の面積を SSS とすると, P での接線の方程式は y=f′(t)(x−t)+f(t)y = f'(t) (x-t) + f(t)y=f′(t)(x−t)+f(t) だから \begin{align} S &= \int_{a}^{b} \sqbk{f(x) - \cbk{f'(t) (x-t) + f(t)}} dx = \int_{a}^{b} f(x) dx - \sqbk{\frac{x^2}{2} f'(t) - x \cbk{t f'(t) - f(t)}}{a}^{b} \ &= \int^{b} f(x) dx - (b-a) \cbk{\rbk{\frac{a + b}{2} - t} f'(t) + f(t)}. \end{align} SSS を最小化するためには上の式の後ろの中括弧内を最大にすればいい. 中括弧内を F(t)F(t)F(t) とすると F′(t)=(a+b2−t)f′′(t)−f′(t)+f′(t)=(a+b2−t)f′′(t).\begin{align} F'(t) = \rbk{\frac{a + b}{2} - t} f''(t) - f'(t) + f'(t) = \rbk{\frac{a+b}{2} - t} f''(t). \end{align}F′(t)=(2a+b−t)f′′(t)−f′(t)+f′(t)=(2a+b−t)f′′(t). 仮定から任意の ttt (a≤t≤ba \leq t \leq ba≤t≤b) に対して f′′(t)>0f''(t) > 0f′′(t)>0 だから, F′(t)F'(t)F′(t) は t=(a+b)/2t = (a+b) / 2t=(a+b)/2 の前後で 1 度だけ正から負に符号を変える. したがって F(t)F(t)F(t) は t=(a+b)/2t = (a+b) / 2t=(a+b)/2 で最大値を取る. SSS でいえば t=(a+b)/2t = (a+b) / 2t=(a+b)/2 で最小値になる. 以上から P は P(a+b2,f(a+b2)).\begin{align} \mathrm{P} \rbk{\frac{a + b}{2}, f \rbk{\frac{a+b}{2}}}. \end{align}P(2a+b,f(2a+b)).
【解 2】 接点を P(t,f(t))\mathrm{P} (t, f(t))P(t,f(t)) とする. 直線 x=ax=ax=a, x=bx=bx=b と P での接線 lt :y=lt(x)l_{t} \colon y = l_{t} (x)lt:y=lt(x) との交点を A, B とし, xxx 軸との交点を C, D とすると, 求める面積 SSS は \begin{align} S &= \int_{a}^{b} \cbk{f(x) - l_{t} (x)} dx = \int_{a}^{b} f(x) dx - \int_{a}^{b} l_{t} (x) dx \ &= \int_{a}^{b} f(x) dx - \frac{1}{2}(b - a) (l_{t} (a) + l_{t} (b)) \label{univ-entrance-exam95} \ &= \int_{a}^{b} f(x) dx - (b-a) \cdot l_{t} \rbk{\frac{a+b}{2}}. \label{univ-entrance-exam96} \end{align} ここで下から 2 番目の式 \ref{univ-entrance-exam95} は幾何学的に積分が台形 ACDB の面積であることを使っていて, 最後の式 \ref{univ-entrance-exam96} では lt(x)l_{t}(x)lt(x) が直線の方程式だから次のようになることを使っている. lt(a)+lt(b)2=lt(a+b2).\begin{align} \frac{l_{t} (a) + l_{t} (b)}{2} = l_{t} \rbk{\frac{a+b}{2}}. \end{align}2lt(a)+lt(b)=lt(2a+b). また求めるべき面積が上のよう綺麗に分けられることは関数の凸性 (2 階の導関数が正) を使っている. 以上から lt((a+b)/2)l_{t} ((a+b)/2)lt((a+b)/2) を最大にすれば SSS が最小になる.
ここから lt((a+b)/2)l_{t} ((a+b) / 2)lt((a+b)/2) を最大化することを考える. 図を描けばわかるように, y=f(x)y = f(x)y=f(x) の凸性から t≠(a+b)/2t \neq (a+b)/2t=(a+b)/2 のとき必ず lt((a+b)/2)<f((a+b)/2)l_{t} ((a+b)/2) < f((a+b)/2)lt((a+b)/2)<f((a+b)/2) になり, t=(a+b)/2t = (a+b)/2t=(a+b)/2 のとき lt((a+b)/2)=f((a+b)/2)l_{t} ((a+b)/2) = f((a+b)/2)lt((a+b)/2)=f((a+b)/2) になる. したがって lt((a+b)/2)l_{t} ((a+b)/2)lt((a+b)/2) が最大のとき, つまり t=(a+b)/2t = (a+b)/2t=(a+b)/2 のとき, AB の中点が C :y=f(x)C \colon y = f(x)C:y=f(x) の接点のとき SSS が最小になり, P は P(a+b2,l(a+b2)).\begin{align} \mathrm{P} \rbk{\frac{a+b}{2}, l \rbk{\frac{a+b}{2}}}. \end{align}P(2a+b,l(2a+b)).
第 15 章 積分法とその応用 例題 47 信州大
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam97} (1) xxx の方程式 ax=xa^x = xax=x (ただし, a>1a > 1a>1) がただ 1 つの実数解をもつとき, aaa の値との解を求めよ.
(2) (1) のとき, 曲線 y=axy = a^xy=ax, 直線 y=xy=xy=x および yyy 軸とで囲まれる部分を yyy 軸のまわりに 1 回転してできる回転体の体積を求めよ \end{exercise}
ポイント・方針 (1) は問題 \ref{univ-entrance-exam71} と同じタイプの問題だ. 処理しやすくなるように計算を進めればいい. (2) も回転体の体積を求める公式を素直に使っていけばいい. 計算が面倒なので計算ミスをしないように普段から自分で工夫をしていってほしい.
計算ミスに関しては次の公式もポイントの 1 つだろう. ごちゃごちゃ計算しているとミスの元だ. この式自体を無理に覚える必要はないが, まずはその都度落ち着いてこの一般的な形を書き下し, 計算すべき式を代入していくことで計算ミスを減らすのには使える. 自分にとって便利な覚え方・使い方を考えてほしい. \begin{prop}[積分公式] f(x)f(x)f(x) を nnn 次多項式とし, CCC を積分定数とする. 部分積分を nnn 回繰り返すことで次の式が得られる. ∫f(x)exdx=(f(x)−f′(x)+f′′(x)−⋯+(−1)nf(n)(x))ex+C, ∫f(x)e−xdx=(f(x)+f′(x)+f′′(x)+⋯+f(n)(x))e−x+C. \begin{align} \int f(x) e^{x} dx &= \rbk{f(x) - f'(x) + f''(x) - \cdots + (-1)^{n} f^{(n)} (x)} e^{x} + C, \ \int f(x) e^{- x} dx &= \rbk{f(x) + f'(x) + f''(x) + \cdots + f^{(n)} (x)} e^{- x} + C. \ \end{align}∫f(x)exdx=(f(x)−f′(x)+f′′(x)−⋯+(−1)nf(n)(x))ex+C, ∫f(x)e−xdx=(f(x)+f′(x)+f′′(x)+⋯+f(n)(x))e−x+C. \end{prop}
第 15 章 積分法とその応用 例題 48 頻出問題
\begin{exercise}\label{univ-entrance-exam98} 原点を中心とする半径 4 の円 CCC に, 半径 1 の円 C′C'C′ が内接しながらすべることなく 4 回転して元の位置に戻るとき, C′C'C′ 状の点 P(x,y)\mathrm{P}(x, y)P(x,y) が描く軌跡を KKK とする. ただし, 点 P は最初, 点 (4, 0) にあるものとする.
(1) 曲線 KKK の方程式は K :{x=4cos3θ, y=4sin3θ(0≤θ≤2π)K :{x=4cos3θ, y=4sin3θ(0≤θ≤2π)\begin{align} K \colon \begin{cases} x = 4 \cos^3 \theta, \ y = 4 \sin^3 \theta \end{cases} \quad (0 \leq \theta \leq 2 \pi) \end{align}K:{x=4cos3θ, y=4sin3θ(0≤θ≤2π)K:{x=4cos3θ, y=4sin3θ(0≤θ≤2π) で与えられることを示せ.
(2) KKK 上の点 P0(x0,y0)\mathrm{P}_0 (x_0, y_0)P0(x0,y0) における接線が, xxx 軸と yyy 軸により切り取られる線分の流さは, P0\mathrm{P}_0P0 の位置によらず一定であることを示せ. ただし, x0y0≠0x_0 y_0 \neq 0x0y0=0 とする.
(3) 曲線 KKK の弧長を求めよ.
(4) 曲線 KKK で囲まれる部分の面積 SSS を求めよ.
(5) 曲線 KKK で囲まれる部分を xxx 軸のまわりに 1 回転して得られる立体の体積 VVV を求めよ. \end{exercise}
ポイント・方針 幾何学的な考察やベクトルとの融合問題でよくある問題なので, 絶対に取りこぼしてはいけないタイプの問題だ. (1) を落としたら洒落にならないのだが, この手の問題をやった経験が少なかったり復習が足りていないと落とすだろう. 「すべらない」という条件をきちんと使えるかが勝負だ. (2) はパラメータ表示の曲線の接線を求められさえすれば問題ない. 計算が少し面倒になるので, その人ごとに計算ミスしないようにする工夫がほしい. (3) は完璧に定型処理だ. パラメータ表示のときの弧長を素直に計算すればいい. ルートの処理だけ少し問題になる. (4) (5) はおまけなのでやらなくてもいい. 本には補足の解説で入っている. 積分の計算が面倒だし普通は出ないだろうが, せっかくの応用問題なので入れておいた.
今回の KKK は特にアステロイドと呼ばれる曲線だが, 一般にはハイポサイクロイドと呼ばれる曲線になる. C′C'C′ が外接して動くときはエピサイクロイドと呼ばれる. この場合, 特に円の半径が同じだとカージオイドになる.
著者略歴
幼い頃から吃音 (言語障害) があり, 中学 3 年では白血病を発病し, 体がうまく動かないなら頭を使うしかないと高校入学してから一念発起, 学業に励む. しかし現役・浪人と東大には落ちてしまい, 失意の中で早稲田の物理学科に進学する. その後, たまたま専門の数理物理にとっても最適な環境でもあったため, 東大数学科の大学院に進学し河東泰之研究室に所属する. 修士終了後は一般企業に勤務する傍ら, 数学・物理に関わる情報発信をはじめる. ニコニコ動画や Youtube, Kindle, Amazon での DVD 販売など 多角的なコンテンツ発信をしつつ, Twitter やブログで大学関係者や研究者をはじめとする 数学・物理を愛する人達と交流しながら学問の今後について考え, 活動を展開している.