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MISC

2023-03-31 fri

「「選択公理 → Zornの補題」の超限帰納法を使わない証明」の文章を改訂しました(証明を前よりも簡略化できたと思います)。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~nuida/m/docs.htm

19世紀の代数幾何の定理とかUrysohnの補題とか

本文

ytb_at_twt さんのツイートをメモしておきたい.

誰かが言ってたけど, ホントに謎なのは, 数学の定理は不死鳥のように蘇ることがあること. 19 世紀の計算で解いた代数幾何学の定理が, ヒルベルト時代に忘れられ, 計算機時代に復活したとか聞くと数学ってなんなのかわからなくなる.

@ytb_at_twt ありますね, 古い定理や手法などの復活. 数学に限らない気がします. アナログ電子回路でも, 昔に廃ってしまった回路方式が復活したのを見て驚いたことがあります.

@tadamago アナログ回路って職人芸的なイメージがあるんですが, そういう分野では復活とかがあるような気がします.

@ytb_at_twt Urysohn の万有距離空間を触っていた時は, 後のかっこいい存在証明よりも Urysohn 自身のごりごりとした構成法のほうが役に立ちました. おかげで, 仏語を読むはめになりましたが.

@kamo_hiroyasu ああ, それはすごく判ります. きたない証明の方が情報量は多いですよね. 「最大不動点が存在」とか言われて何が起こったか輪からにこととかよくありますね.

かもさんのコメントがかなり気になった. Urysohn の論文はどんなことをやっているのだろう.

そもそものやたべさんのコメントにある定理が何なのかも気になる.

何でもランキング「これさえあれば数学を楽しく学べる 20 の娯楽作品」 (日本経済新聞社)

はじめに

数学会のこんなツイートがあった.

何でもランキング「これさえあれば数学を楽しく学べる 20 の娯楽作品」 (日本経済新聞社) http://s.nikkei.com/16s0Iad

実際のランキングで出てきた本などを引用しておこう.

普通の本

1 位 数の悪魔 -算数・数学が楽しくなる 12 夜 230 ポイント

2 位 素数の音楽 190 ポイント

3 位 フェルマーの最終定理 (文庫判) 181 ポイント

4 位 天地明察 (文庫判, 上下) 156 ポイント

5 位 浜村渚の計算ノート (1~5 巻, 以下続刊) 150 ポイント

6 位 シュプリンガー数学クラブ 21 数学が経済を動かす -ドイツ企業編

7 位 ガロアの生涯 神々の愛でし人 (新装版)

8 位 博士の愛した数式 (文庫判)

9 位 すうがく博物誌 (新装版)

10 位 aha!Insight ひらめき思考 (1~2)

漫画

1 位 数学ガール (上下) 470 ポイント

2 位 マンガおはなし数学史 240 ポイント

3 位 Q.E.D. 証明終了 (1~45 巻, 以下続刊) 180 ポイント

4 位 和算に恋した少女 (1 巻, 以下続刊) 170 ポイント

5 位 ニャロメのおもしろ数学教室 100 ポイント

『マンガおはなし数学史』, 凄いつまらなかった. 絵も異常なくらい古くさいし地獄のような「漫談」とかあってどの層に向けて書いているのだろうと不思議で仕方ない. 著者というか原案の 60 オーバーの教官と同年代にはいいのかもしれないが, 私には大変ひどいアレだった.

映画

1 位 博士の愛した数式 (日) 428 ポイント

2 位 ビューティフル・マインド (米) 410 ポイント

3 位 グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち (米) 210 ポイント

3 位 $\pi$ (米) 210 ポイント

5 位 天地明察 (日) 204 ポイント

天地明察は見てみたい. ビューティフルマインド, ナッシュが穀潰しのろくでなしだということだけ知っている.

凸関数

基本的な性質

これはちょっとした共有用に準備したページで, 現代数学探険隊 解析学編には凸関数の基本的な性質に関してまとまった記録があります.

ここでは下に凸な関数を単に凸関数と呼びます.

凸関数族の上限は凸

凸集合$\Omega \subset \mathbb{R}^d$上の凸関数の族$(f_\lambda){\lambda \in \Lambda}$ に対して$f = \sup f_\lambda$とする. この$f$は凸である.

証明

任意の$a \in (0,1)$と$x,y \in \Omega$を取る. 任意の$\lambda \in \Lambda$に対して \begin{align} f_\lambda (ax + (1-a)y) \leq a f_\lambda(x) + (1-a) f_\lambda(y) \leq a f(x) + (1-a)f(y) \end{align} が成り立つ. 左辺の上限を取ると求める凸性が得られる.

凸関数の和は凸

凸集合$\Omega \subset \mathbb{R}^d$上の凸関数$f_1, \dots, f_n \colon \Omega \to \mathbb{R}$に対して$h = \sum_{k=1}^n f_k$は凸である.

証明

任意の$a \in (0,1)$と$x,y \in \Omega$を取る. このとき \begin{align} f(ax + (1-a)y) &= \sum_{k=1}^n f_k(ax + (1-a)y) \leq \sum_{k=1}^n (af_k(x) + (1-a) f_k(y)) \ &= ah(x) + (1-a)h(y) \end{align} が成り立つ.

凸関数族の下限は凸とは限らない

一般には成り立ちません. 具体的には$f(x) = x^2, g(x) = (x-1)^2$として$h = \min (f,g)$が反例です.

具体的な計算が面倒なので数値計算でさぼりました. 凸でないことは次のリンク先のグラフを見てください.

線型写像の場合の事例

このツイートで次の問題が出ています.

問題

以下で定義される関数$f \colon \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}$は凸関数か. \begin{align} f(x) = \sum_{i=1}^n \min (x_i, (Ax + b)_i). \end{align} 先の凸関数の一般論が使えないのは明らかですが, 線型写像なのでうまいこと嫌な現象をくぐり抜ける可能性があります. しかし一般には偽です. 反例を構成しましょう.

反例の構成

一次元で$A = -1$かつ$b = 0$としよう. このとき$f$は次のように書ける. \begin{align} f(x) = \begin{cases} x, & x \leq 0, \ -x, & x > 0. \end{cases} \end{align} これは凹関数(上に凸)である.

念のため確認しておくと$g(x) = \max (x, -x)$に対して \begin{align} g(x) = \begin{cases} -x, & x \leq 0, \ x, & x > 0 \end{cases} \end{align} で確かに凸である.

注意

まだきちんと議論を詰められていないため予想ではありますが, $A > 0$とすると$f$は凸で, $A$が成分を正とする対角行列ならやはり凸であるため, 一般次元でも行列$A$が(半)正定値性や強連結性(エルゴード性)のような強い性質を持つなら, 問題の$f$は凸になる可能性があります.

$p$-進ゲルファント-マズールの定理は成り立たない (否定が常に成り立つ: 常に拡大できる)

結論に関わるp進大好きbotさんからのコメント

以下の Twitter でのやりとりによる.

上で教えてもらったのは次の本.

覚えておこう.

事の発端と関連ツイート

次のやりとりを見て, そもそも位相体の議論はゲルファント-マズールの定理しか知らず, $p$-進ならもっといろいろあるだろうと思ったことによる. まずは事の発端に関するやりとりをまとめよう.

事の発端ツイートまとめ

割り算と言わなくても物理ではスピノルにまつわる話もあり, 回転まわりには面倒な話がいろいろある. それだけ面白いとも言える.

位相体, 特にゲルファント-マズールの定理に関する話

2021-06-19 代数学演習, 群作用に関するやりとり

コメント

ちょっとはまりどころ感があったのでコメントしてみた. 行列は線型代数の基礎であり, 現代数学の基礎であり, もっとシンプルに代数学それ自体に対しても基本的で重要な例だとは思うが, 行列環と言ったり行列代数と言ったり, 行列がなす群と言ったりでいろいろな難しさがある.

前者の行列環・行列代数については基本的に同じ対象を指しはするが, どう違うのか, そして代数は分野としての代数とどう違うのかといったところがはまりどころになる.

後者の行列がなす群については注目する演算にはまりどころがある. ふつうは正方行列に制限した上で積の (2 次以上なら非可換な) 群を考える. 加法の場合は何次でも加法群でだいぶ趣が違う. 割と面倒だ, といったことを思ったのでコメントした次第.

ツイートまとめ

MarriageTheorem さんによるつらい現実の召喚: 「偶数と偶数の和は偶数であることの説明」について

本文

MarriageTheorem さんがまたつらい現実を召喚してきた. 元記事のコメントで これ とごちゃごちゃ書いている人がいるが, そもそも私が必要だと思うのは「わかるまで考えるのをやめないこと」, 「わからないことに耐えること」, 「今すぐできるようになるという幻想を捨てること」だ. 一応上記リンクでのコメントも引用しておこう.

説明(証明)問題の前に,偶数,奇数,3の倍数,連続した2つの偶数,2つの偶数などを,文字を使って表現する方法を徹底指導しました。また,文字は変数であることから,どんな数字でも入る魔法の箱というイメージ作り。1~10程度までを書き出して,偶数と奇数が交互に並んでいること,3の倍数はどうかなど,数字遊びも大切だと思いますよ。 それ以前に,中2の式と計算の単元で,ちがった種類の文字の計算をどのように指導してきたかも大事ですね。 指導は系統性が大事だと思いますから,この問題だけを指導するという考え方が違っていると思います。 わたしは学習塾でバイトをしていたことがあります。これはワークの例題になるような有名な問題なので,研修を受けた記憶があります。 正直私も自分の子には,無料塾には通わせたくないと思いました。お金がかかっても力のある塾は指導をします。無料塾の光景は相談会のような感じですね。指導は授業や講義時間だけの労働で成り立っているわけではないのです。貧困克服のために,準備をしていない指導者がいる塾に通わせるなんて,本末転倒もいいところではないでしょうか。

無料だからといってこういう変な教え方されるとそれが子どもの記憶に残って 将来にわたって悪影響を及ぼすんですよ。 クリティカルな年代の子ども相手にボランティア感覚で気軽に教えないでください。

私が通っていて, 最近また通い出した柔道の道場がいつもこう言っている.

今すぐ試合に勝つとかそんなことを考えて教えているのではない. 5 年, 10 年先の柔道, もっというなら人生のことを考えて指導している. 今はできなくてもいいからとにかく 1 つ 1 つのことをきちんと心を込めてやりなさい.

今はできなくてもいいというの, 元の証明を今は理解できなくてもいいというのと 私の中では繋がっている. 簡単に納得しようとしないできちんとその不快感とも向き合ってほしい.

田崎さんから聞いた, 江沢洋先生の教育スタイルとかそういうのを継承したい. ちなみに江沢先生は学生が質問に来ると, 学生が自分自身でそれに対する回答を考えるのを黙って見守り続けるという対応をしていたらしい. 口出しもしたくなるだろうが, そういうこともせず, じっと学生を待ち続けたと聞いた.

こういう教育, 死ぬ程時間がかかるし, 少なくとも今の大学の教官の忙しさからすればほぼ絶望的なことだろうが, 私はこういうのがやってみたい. 尋常ではないくらいに粘り強く取り組む精神力を身につけてほしい.

宣伝協力: SLACS 2014 / 2014年度超準解析シンポジウム 日時: 5 月 26 日 (月) ~ 5 月 28 日 (水)

本文

宣伝協力.

参加者が少ない理由, 興味があるのは市民ばかりだから平日はお勤めで参加できないという説がある.

tri_iro さん筋の情報: SLACS 2014 2014 年度超準解析シンポジウム 5 月 26 日 (月) ~ 5 月 28 日 (水)

本文

超準解析に関する tri_iro さん情報だ.

SLACS2014 あんど超準解析シンポジウム http://www.jaist.ac.jp/~y-keita/2014SLACS-NSA/index.html そういや, 超準解析シンポジウムに若い人 (30 代以下の人) が全然来ないという 超準解析シンポジウム関係者の嘆きの声を最近聞くので, リンク貼って呼び込みしておこう. みんな超準解析やろう~

平日なので私は行けないが宣伝には協力しておこう.

2014-04-26 数学書房主催の河東泰之先生による超準解析講座に行こうかどうか迷っている

本文

数学書房主催の河東泰之先生による超準解析講座があるという.

[講座:数学の発見 第 15 回] 開催案内

数学に興味を持ち, 取り組んでいる方, 数学を仕事で使っている方, さらに深く理解し自力で数学の世界に入って行きたいという方にとって, この講座が数学との出会いの場となることを願っております. 第 15 回となります今回も, 魅力的な講師をお招きし, 充実した内容をお届け致します. 下記の日程で開催致します. 興味深い内容をお話いただきます.

日 程 2014 年 4 月 26 日 (土) 10:30~17:00 (90 分 3 コマ, 途中昼食 + 休憩)

テーマ 無限大, 無限小と超実数

講 師 河東泰之 (東京大学大学院数理科学研究科教授)

概 要 $1=0.999 \cdots$ で本当によいのか, $1/ \infty=0$ で分母をはらったら $\infty \times 0 = 1$ なのか, $\infty / \infty$ はいくつか, といったことを気にした人は少なくないと思います. こういった極限操作について厳密な手法を与えるのが $\varepsilon\mathchar`-\delta$ 論法ですが, それとは別に無限大や無限小を直接に扱う理論がロビンソンの超準解析です. これについての入門的解説を行います.

行こうかどうしようか迷っている.

高卒社会人の学力問題: あまりの地獄に泣いているがもっとひどいって本当なの

はじめに

Togetter にもまとまっているのだが, 何となく適当に引用した.

他の人のコメントが見られるので一応リンクつけた.

ツイート集

感想

この人どんだけ精神力あるの, というのにまず感銘を受ける. ただ想像したくもない魔界だし, さすがにいくらなんでも絶対相手にしたくない.

黒木さんツイートの引用

最後に引用しておく.

できることはやっていこう.

Aizenman らの論文, Random Currents and Continuity of Ising Model's Spontaneous Magnetization

本文

田崎さんから 11/8 に Aizenman が Ising の磁化の連続性の証明を出したことを教えてもらった.

アブストラクト

Random Currents and Continuity of Ising Model's Spontaneous Magnetization

Michael Aizenman, Hugo Duminil-Copin, Vladas Sidoravicius

The spontaneous magnetization is proved to vanish continuously at the critical temperature for a class of ferromagnetic Ising spin systems which includes the nearest neighbor ferromagnetic Ising spin model on $Z^d$ in $d=3$ dimensions. The analysis applies also to higher dimensions, for which the result is already known, and to systems with interactions of power law decay. It allows to conclude similar continuity results for one dimensional systems provided the decay is slower than $1/r^2$ (at which the transition is known to be discontinuous). The proof employs in an essential way an extension of Ising model's random current representation to the model's infinite volume limit. This extension enables one to reduce the continuity statement to a simple criterion on the decay of correlation in the Gibbs state with free boundary conditions. For reflection positive models, this criterion may be established through the related infrared bound.

今すぐには読めないが, 忘れないようメモしておこう.

Altman-Kleiman の A Term of Commutative Algebra の PDF 版が無料だったので買って (?) みた

本文

かなり恒例感あるが, kyon_math さん経由で本の情報を仕入れた. これこれこれだ.

Our text"A Term of Commutative Algebra"aims to be an updated, improved version of Atiyah and Macdonald's 1969 classic http://bit.ly/12wuOX0

Altman/Kleiman すげー. アティマクを越えると宣言してるのか. http://bit.ly/1dzKTkU

アルトマン・クライマンの可換環論, 電子版は無料だった. すげー. A Term of Commutative Algebra by Altman and Kleiman http://bit.ly/1dzKTkU

PDF なら無料な上, アティマク越えを目指しているとのことなのでとりあえず買ってみた (ダウンロードしてみた). これから読む. 使えそうなら誰かとゼミしてしっかり読み込みたい. 他にも Milnor の Morse 理論も読みたいし, Lieb-Seilinger の Stability of matter も読みたい. あと, 2 年くらい放置している論文もいい加減仕上げたい.

追記

少なくとも 2021 年時点で正式版が出ている. 演習の解答つきで 400 ページを越えている分厚い本になっていた. ただし解答が本当に半分, 200 ページ越えの量があるので, 形式的には本文は 200 ページ程度でアティマク相当の量ではある. まだきちんと読んでいないが読みたくはある.

魔人 Milnor

本文

Milnor 強い.

Milnor の本読みたくなった. 読んだら YouTube の動画講義も作ろう.

最初の画像の Milnor に関する記述も引用しておこう.

ミルナー (J. W. Milnor, 1931-)

とにかくこの人の著作を一冊精読すると, この人は偉いとなぜか自然に思えてくる. そんな不思議な人である. 徹底した明晰さで書いてあることが自然に頭に入ってくる. 難しいはずのことがやさしくなってくる.

あと有名なのは何年か前の数学者主人公のヒット映画「ビューティフルマインド」の 主人公ナッシュの敵役がこの人である. 運命のいたずらで, この人が居たためにナッシュの人生が狂っていき, 巡り巡って, ヒット映画ができたわけである.

Nash も魔人だというのに Milnor やばい.

あと上で言及された本, 卜部東介『一次元代数的特異点とディンキン図形』はこれだ.

解析学とコンパクト性: 特に無限次元空間の単位球の (汎) 弱コンパクト性

本文

ブルブルエンジン兄貴と解析学に関するやりとりをしてきた これとかこれ.

やりとりその 1

ヒルベルト空間は, 閉単位球体が点列コンパクトなら直交基底を持つらしいのですが, これ選択公理要るのってやばいんですか??

@alg_d 誰も気にしていないのでは. 作用素環だとちょっとした汎関数つくるのに選択公理つかうようですし, 使うものと割り切っているか気にしないか, という印象

@phasetr この命題が成り立たないとしたらやばいんですか??

@alg_d 応用上, 大体可分なところしか考えない (ただ, $L^{\infty}$ はよく出てくるのに非可分) (作用素環だと普通可分性を仮定) ので, そもそも現行人類が制御できる世界の外側なのでは, という感覚があります

@phasetr やばいと思った

やりとりその 2

そもそも関数解析で閉単位球体をコンパクトにしたいのってなんかあるんですか

@alg_d 「有界閉集合はコンパクト」の類似が使えてこう色々とはかどるからです. 幾何でよくコンパクト多様体ばかり出てくるのと似たような感じ

@phasetr なんかはかどるイメージがあまりわかないレベルで雑魚でした

@alg_d 解析学だと何かしら収束させないと話が進まないわけですが, 有界列であれば部分列くらいは収束してくれるのでうれしいわけです. そういう感じ

@phasetr はー, なるほど!!

アオイゼミなるネット塾を参考に何かしてみたい

本文

アオイゼミ なるネット塾があることを教えてもらった. 時間的余裕がなかったのであまり見られなかったが, ニコ生などもやっているようだ. 普通の中学生向けの塾らしい.

「ライバル」も多いし, 今のところ普通の中高生向けに何かするつもりはないが, 最近この手の大学生が中高生向けにネットで授業を配信するサービスとか増えているので, 参考にして何かしたい.

この間, 理研が施設公開のときに理論物理学者の展示をしたというのもあって, それなりに反響があったようなので, そういうピーキーなところを狙っていきたい. 理研とかぶったら勝負にならないので, 理研もやらないようなところでニーズがあるマニアックなところで何かする必要がある. 理研で今後もやっていく, という話はこの辺で言っていたのでそれも紹介しておこう.

有難うございます. この手法はまだまだ改善の余地がありますが, 拡げたいです. RT @TeraKen0510: 大盛況だったとのこと, おめでとうございます! アウトリーチの新領域の開拓ですね!

本日の理研の一般公開で「実験」してみた, 理論科学者「理論屋」そのものを展示

基本的に内容は今までやっていたのと同じ感じだが, 対象にする層を広くする感じでとりあえずやってみたい. ひとまず動画を仕上げよう.

数理物理の魅力と相転移の魅力: 数学と物理と数理物理と

Ask.fm での質問

二つの質問になってしまいますが, 主観的なもので結構ですので, 数理物理の (特に物理や数学それ自身と比較しての) 魅力および相転移現象の魅力がどこにあると感じてらっしゃるのか教えていただけませんか.

回答

今考えるとあまりきちんと回答していない気もするが とりあえず回答.

数学と物理, 両方好きで両方やりたいという単純な所です.

もちろんどちらか一方でも死ぬほどきついので, 本当に「研究」しようというなら, どちらも半端な出来損ないになる可能性を視野に入れつつ それでも踏み込む決意と覚悟が必要ですが. もうあまり詳しく覚えていませんが, 相転移は大体田崎さんの影響です.

数学的には「特異性の数理」が非常に好きです. 色々あって学部一年の頃から数学的には超関数だとか ある意味でかなり特異性の強い数学とずっと戦っていて, 結局今でも「場の理論の超関数論」と銘打って研究しているので 三つ子の魂百まで感あります.

話がずれましたが, 興味だけなら代数幾何の特異点論とか, ブラックホールだとか, 特異性が絡む話は大体何でも興味があります. 極限で特異性が出てくる現象がとても好きで, 熱力学的極限とそこからの相転移がとても気にいっています. 相転移をやるなら人類が最大精度で扱えるのが 磁性関係だから磁石を扱う方向に行ったと言う非常に単純な動機です.

もちろん水が凍るとかもやりたいですが, アレは即死レベルだし, シュレディンガーで磁性も即死コンボです.

磁性だととりあえずイジングですが, イジングは (相対論的) 場の量子論の繰り込み処理との関係もあり, 数学的に量子統計と場の理論の相性がいいこともあって, 手始めにやりやすいところから, と思って 場の理論方面の勉強をしていて, 相転移自体とは 大分離れた赤外発散を修士では主に勉強していたのですが, 修論の為のネタ探しで考えたら一応磁性もできるわ, と言う感じで磁性 + 赤外発散みたいな 特異性に特異性が重なって死ぬほど面倒臭い代わりに 趣味ばっちりな所を見つけたのでそこで今も 色々やっています.

物理的には素直な拡張でも数学的には全く 別の話を絡ませたりしなくていけなかったり, 逆に数学的には共通部分が多いのに物理としては ちょっと遠目の所にアプローチできたりするのが 今の分野の面白いところですが, 一旦話が難しくなりすぎて死んだ分野なので, 一般にはお勧めしていません.

ただその分やっている人も少ないので, すぐに世界のトップ 10 くらいに入れますし, 実際に多少しぼるだけでいわゆる オンリーワンでナンバーワンにもなれます.

大学のアカポスゲット的な意味でこのご時世に いい結果がすぐに出る保証は全くできないので, 決しておすすめはしませんが.

数学と現実問題の狭間で: 応用数学や数理工学

本文

このようなやり取りがあった.

うーん, だって論理は教えてませんからねぇ. RT @kagami_hr: Q ちゃんさんや嘉田さんのポストを読むと, 国立大学でも入学した学生さんの基本的な論理や日本語の使い方について, かなり深刻な状態になっているみたいだ. 少し認識が甘かったかも知れない.

@kyon_math 先程の内容については, ある程度の学力がある人ならば特に教わらなくても分かるのではと思っていましたが, かなり認識が甘かったようです.

@kagami_hr @kyon_math 3 流大学で数学をやっていると, マジで絶望しますよ. しかもその中から結構な数の教員が...

@aoeui666 @kagami_hr 絶望してても始まらないので, 高校の先生のスキルアップの必要性を感じてます. 米国数学会などは意欲的な先生を集めて, 少し高度な数学や, おもしろい教材などを紹介する夏期講習会みたいなものをやってますね.

@kyon_math @aoeui666 @kagami_hr 教育学部数学科の学生が, 高度な数学を学ぶことを嫌がるのを, どう教育するかという問題も出てくると思います. 教育実習とかやった後に「もっと数学やっておかなくちゃ」と感じる学生も多い.

@Paul_Painleve @aoeui666 @kagami_hr 最近は, よく「ボクは現実に即したことをやりたいんです」という人がいます. 聞いてみると, パズルとか, ルービックキューブとか, 株価とかですね. 「抽象的な理論はやりたくない」の裏返しだろうなと思ってます.

@kyon_math @aoeui666 @kagami_hr 現実を数学にするというのは, 抽象数学が必要になって, 本当はとても難しいのですけどね. 解析も幾何も嫌いだから, 高校数学程度のイメージで「整数論やりたい」という学生に通じるのかもしれません.

コメント

『「抽象的な理論はやりたくない」の裏返しだろうなと思ってます』というのに対する真偽の程はともかく, 『「ボクは現実に即したことをやりたいんです」』というのは地獄としか思えない. Paul_Painleve さんも言っているが, 数学を現実問題に使っていくのはとても難しい.

他にもいくつか記録しておくべきやりとりがある. まずはこれ.

引用

ルービックキューブにしても, 渋滞問題にしても, 株価にしても, 15 ゲームにさえその背後には深い数学があったりする. しかし, それらの数学は抽象的であり, 抽象的だからこそさまざまな問題に応用できる. ここを飛ばすと, 原因と結果を短絡させることしか残っていない.

@kyon_math ≪卒論要旨≫ ルービックキューブや 15 パズルも, 群論使って最短経路とか解き明かすよりも, さっさと手を動かす方が速く完成するから, 数学なんて役に立たないとわかりました. このことを教えてくれた kyon 先生に感謝します.

@Paul_Painleve それが自分で体得できたらもう卒論の単位なんて 10 倍位してあげます. #教わるだけじゃダメ

@kyon_math わ~い, kyon 先生から 100 単位もらった~ ルービックキューブ流行時, トポロジーの T さん等が凄い研究ノートを作っていて森毅もこりゃかなわんと思っていたら, 野崎さんだか誰かが本書いて売れた. 「あんなしょうもない本が売れるんやったら, 俺が先出すんやった:」

@Paul_Painleve 「もう君に教えることは残っていない. 君は自分の数学を追い求めてゆけばいい」なんてカッコいいセリフを一度言ってみたい. でも実際に言うときは限りなく悔しいだろな.

@Paul_Painleve ルービックキューブは複雑だと言ってもしょせん有限群の一つにしかすぎませんからねー. ルービックキューブが ubiquitos だとかわかるとみんな飛びつくかもしれないが, そんなことありそうもない.

@kyon_math 良いゲームは, 数学的には決して複雑ではないが, 数学として扱おうとすると煩雑で解法が簡単にはわからない, という性質を持っていると思います. 「わかりやすいけど, やってみると難しい」という意味ではフェルマー予想は, 究極かつ至高のゲームだったかも.

@Paul_Painleve 師匠のゲームもありますね. 米国ではコンウェイの名前がついてるようですが. あれは, 単純でいながらある種の有限な決定的ゲームを包括するという意味でも驚きだったかも.

@Paul_Painleve K 先生の著書が待たれる.

@kyon_math K さんは, S.-WELTER のゲームと呼んでますが, WELTER の論文自体は有名でなくて, Conway On Numbers and Games で紹介されたものが知られているようですね.

@kyon_math 確かに, マヤ・ゲームは「単純だけど普遍性をもつ」という意味で凄いゲームですが, ルービックキューブほど一般受けがしないのは, ゲームとしての面白さで及ばないからでしょう. 必要な数学もちょっと難しい.

引用

あと, この kyon_math さんのツイートについた Paul_Painleve さんのリプライがとても大事.

だいたい数学科に入ってきて「現実の問題をやりたい」なんてやつはいなかった. むしろそっちの方が問題だった. 数学とは本来抽象的なもの.

@kyon_math 現実の問題を数理科学として取り組もうとしても, 簡略化しすぎて現実と離れるか, 複雑すぎて扱いきれないか, どちらかになることが多いですし. 後者だと, 普遍化できずにその問題にしか使えない特殊計算になり, 前者だと構造は見やすいが現実とは完全に別物な空論になる.

kyon_math さんが言及した学生がどこまで考えて言っているのか分からないが, 現実問題を議論するのはとても難しい. 第 4 回の関西すうがく徒のつどいでも少し話すが, 現実の問題を考えるのは死ぬ程つらい. 本当に現実的な設定でやろうとすると厳密な数理解析としてはまず手が出ないし, 手が出せるレベルにしたらしたで, 今度は現実とかけ離れているので, どういう風に意味づけするかという部分で非常に苦しくなる.

確率論・数理ファイナンスの話

有名な話らしいのだが, 1 つ確率論・数理ファイナンス周辺で次のような話がある. 高橋陽一郎さんが「数理ファイナンスというのは物理でいうと理想気体を扱っているようなもので, 現実離れしたとても綺麗なところしか扱えない.」と評していた覚えがある. あと小ネタとして, サルコジが「数学 (数理ファイナンス) がリーマンショックを生み出した元凶だ」みたいなことを言ったそうなのだが, そのときにフランスの数学者達が連名で「数学が悪いのではない. 数学的な仮定があてはまらないところにまで無理にあてはめようとした人間達の問題だ」という抗議声明を出したと聞いている.

あの人検索 Spysee

応用数学・数理工学的に現実問題を考えるとき, 色々な意味で普通の数学の感覚からは離れてものを考えないといけないし, 数学外の現実問題も考えている必要がある. 色々あるが, 例えばあの人検索 Spyseeのソーシャルグラフとか. Spysee でどうやっているのかは知らないが, この手のことをしている人 (具体的にはチームラボの猪子寿之さん) に聞いたところによると, 次のようにして計算して表示するらしい.

  • グラフの中の人数に対応する高次元の空間で, 人と人の間に仮想的なバネをつける.
  • バネの「バネ定数」は色々なデータから適宜設定する. (Spysee の場合は web 上から色々調べて設定しているはず. )
  • これを 2 次元に落とす.
  • バネのエネルギーが最小になるような配置をする.

関係性が強い人の間ではバネ定数を大きく設定すれば, 距離が近い方がエネルギーは低くなる. そうしてソーシャルグラフの遠近に意味付けをしていると聞いた.

数学的な問題

ここで現実を考えたときにいくつか問題がある. まず最小値が存在するかだ. 最小値があったとしても問題がある: その解を現実的な時間で計算できるかだ. 「現実問題」として, いつまで経ってもグラフが表示されなければ, ユーザはページ遷移して離れてしまうだろう. 短時間で計算できるアルゴリズムが求められる.

短時間で計算できなかったり, 最小値がない場合, いくつかの対応方法がある. Spysee のようなサイトでは厳密な結果がいらないだろうから, そういう設定で考えよう. もちろん, このとき「厳密な結果がいらない」という判断をすること自体, 数学の意識の枠外であることに注意してほしい. 何となくそれっぽい結果が得られればいいので, 適当に近似計算をすればいい. 「適当に近似計算する」といってもそれをどうするか, という問題はあるがそこまで深いところには触れないことにする. ちなみに適当に近似計算していることは実際の結果を見てみると分かる. アイドルマスターの秋月律子が出ているからだ. これはアイドルマスターのアイドル, 菊地真 (女の子だ) と何かよく分からないが混同されていることから来ているのだろう. ただ, 計算結果というより, その前段の Web から情報を取ってくる段階での問題かもしれないのだが. ちなみに, 以前は菊地さんの画像自体, まこまこりんだったことを付け加えておきたい.

他の方法

他の方法についても書いておこう. 今の場合, そんなに頻繁にソーシャルグラフが変わらないことが予想できる. (もちろん数学以外の知識を使わなければこの判断はできない.) だから時々計算してその結果をデータベースに入れておき, リクエストがあったときだけ結果を呼び出すようにすれば, ユーザの待ち時間が短縮できる. 場合によっては計算機資源の節約にもなる. また, アクセス解析をした結果, ページのリクエストは早朝 3-6 にはほとんどないことが分かっているとしよう. 定期的な再計算をこの時間帯にすることで計算機資源の有効活用することができる. このとき, 近似計算の精度を上げた計算を回すことができるかもしれない. こういう話は Google のページランクの話とも色々関係する. ほとんど数学的な面だけしか議論していないが, 興味がある向きは私が前に作った動画などを参照してほしい.

面倒なのでこのくらいにしておくが, 現実に即した役に立つことをしようと思うと色々なことを考える必要がある. 軽々しく「現実問題をやりたい」「役に立つことを」などと口にしてはいけない. そのためには知らなければいけないことがたくさんあるし, 他の人との協力プレーだって必要になる. 解きたい問題が自分の知っている数学で解ける保証もない. 必要なら勉強するなり新しい数学を作る必要すらある. 第 3 回のつどいでのーてぃさんが発展途上のパーシステントホモロジーと画像処理の話をしていたが, そういうことだ. 自分の無能さに歯を食いしばりながらアタックする覚悟があるのか. 私は色々な面でそうした能力がなかった悲しみに打ちひしがれている.

伊藤哲史さんによる『楕円曲線の数論幾何』の PDF

はじめに

元ツイートがどれだか分からなくなってしまったのだが, 伊藤哲史さんによる楕円曲線の数論幾何という PDF が流れてきた.

次のような話が載っているとのことで, ちょっと読んでみた.

メモ

最近では, ワイルズ以降, 大きな進展があった. この 10 年間だけでも, 重要な未解決問題が数多く解かれた. この講演では, そのうちのいくつかを (雰囲気だけでも) 紹介したい.

  • フェルマーの最終定理
  • 谷山-志村予想
  • 佐藤-テイト予想
  • バーチ-スイナートン・ダイヤー予想 (BSD 予想)

細かいところは興味ある各人が勝手に読むことを期待しているので, 適当に面白いと思ったところだけ抜いていく.

数論幾何: 整数に関する問題を, 幾何学的手法を使って研究.

整数は "目に見える" 素朴な対象. 目に見えている部分だけでは, よく分からないことも多い. より深く理解するために, "幾何学的な視点" を導入して研究する.

数論幾何の醍醐味 『素朴な対象の背後に, 広大な世界が広がっている』 (ただし, 「素朴 $\neq$ やさしい」)

『素朴 $\neq$ やさしい』というの, Feynman の初等幾何を駆使した力学講義を想起させる.

モーデルの定理 (モーデル・ヴェイユの定理)

$E \colon y^2 + x^3 + ax + b$ を楕円曲線とする. このとき, 有限個の有理点 $P_1, P_2, \dots, P_n$ が存在して, $E$ の全ての有理点を $P_1, P_2, \dots, P_n$ から作ることができる.

面倒なので引用を省略したが, この前段にある具体例のあとに出てくるこの定理が凄まじい. 具体的にいうとねじれ点の話.

$P_1, P_2, \dots, P_n$ を生成系という. $Q_1, Q_2, \dots, Q_r$ から, ねじれ点以外の有理点を全て作ることが できるような $r$ の最小値を, $E$ の階数という.

P.19 の Hasse の定理, これ自身はよく分からないが, 言い換えの方を見て凄まじさを把握した.

P.24 の比較画像, 唐突過ぎる.

やはり他分野の問題の面白さの把握, 著しい困難を覚えるということが再確認された.

数学をテーマにした美術: 方程式のある風景

はじめに

「数学をテーマにした美術館展覧会」というネタが上がっていた.

「数学をテーマにした美術館展覧会」って非常に魅力的だが, 何をかざればいいんだろうか.

ここで「証明図はどうか」というリプライがある.

引用

@ytb_at_twt 数学記号満載の計算式を大量に書いていくライブペインティングが見たいです. 計算過程をとても美しいと思うので. 数学わかりませんが.

@noukoknows うーん…ある種の美ですが…結局はよくあるツリー状のデータ型の一つですからねぇ…

@ytb_at_twt はい, さすがに冗談です (笑) とはいえたまに証明図きれいだなと思うことはありますが・・・!

@dot_taigu 外見的には, Unix とか MacOSX のマシンでコンソール・ウィンドウを開きっぱなしにして 記号列がすごい勢いで進んでいくのを眺めるのと似た体験になりそうですね (もしかしたら数学と計算機の中の記号処理は本質的な違いはないのかもしれませんし).

@noukoknows それはたしかに. 大学祭で「数学者百人の選ぶ『美しい証明図展』」とかやれば人が…来ないか….

@ytb_at_twt 数学とアートに関してはこんな国際的なカンファレンス http://bridgesmathart.org/mission-statement/ があるんだそうですね.

コメント

まだ大量に書いていくライブペインティングとまでは行かないが, 数学用タイプライターアプリはここで作成途中のものを公開している. 最近別件で忙しくて開発に手をつけていないのだが. これ, ニコニコにも投下しておこうと思って忘れている程度にアレだ.

あと, 式自体を鑑賞する試みというと大袈裟だが, 次のような本もある.

物理, 特に量子力学関係の式を鑑賞しようという本だ. 上記タイプライターアプリを作った背景には以前これに目を通したことがあるということも大きい. 相変わらずしたいことは色々ある.

Atiyah-Macdonald のゼミ的なアレと参考書として岩永-佐藤の『環と加群のホモロジー代数的理論』がお勧めという話

本文

にゃんにゃんとのやり取りをまとめておきたい. この辺からだ. にゃんにゃんツイートが消えているので私のだけを引いておく. かの有名な Atiyah-Macdonald のゼミ的なアレをしようという話があったのでそれについてのやりとりだ.

メモ

@dingdongbell 前言っていた, にゃんにゃん的アティマクゼミはやるのでしょうか. やるなら参加したいのですが

@dingdongbell ぼなっちさんにも発表してもらうことでしのぐライフハックを提案

@dingdongbell 都合が合うなら呼んであげてもいいのでは, というのは思っています. もちろんあんなもの喋らせるつもりないですが

@dingdongbell ちなみに終わらせるはずだった勉強というのは何なのでしょうか

@dingdongbell 見る限り予備知識はいらない感じします:環のところを眺める限り最初からきちんと書いてあるので. 証明が簡潔なので参照用の控えの本候補や例が書いてある本を探しておくと便利かもしれません

@dingdongbell それ, 一応持っていますがかなり本格的で相当辛かった覚えがあります. http://www.amazon.co.jp/dp/4535783675 は非可換環の話が中心ですが, 例も結構ありつつ, 一般化を敢えて避けた上でかなり丁寧に議論していてかなり良い本だという印象

コメント

にゃんにゃんがお勧めされた本として松村の『可換環論』が挙げられていたが, これは相当つらいのでは, と返した.

上で私がいいと言っているのは岩永-佐藤の『環と加群のホモロジー代数的理論』だ.

李奇人 P にお勧めしてもらったのが非常にいい. この本はあえて過剰な一般化をしないで Noether 環や Artin 環に制限したところで議論している. 特に代数で一般化に抵抗するのは難しいだろうから著者達の熱意と気迫を感じる. 著者達の興味から非可換環への応用を見据えているのだが, 可換環の勉強にも役立つだろう.

普段 Twitter では東大やら京大の学生とばかり話しているので感覚が麻痺しつつあるのだが, 代数専攻の学生であってもその辺の数学科学生では松村などの本格的な本を読むのはしんどいだろう. この本はそうした教育的な配慮も行き届いている. 幾何だとある程度ホモロジーなどが必須なので代数もやらざるを得ないが, 関数解析主体の微分方程式まわりの解析専攻の学生が代数を学ぶには相当いい. 多変数関数論でも Noether 環くらいは山程出てくるが, そうしたところは十分カバーできる. 代数の学生でも一冊目としてこれを読んで, その後に本格的に一般的に勉強してもいい.

上で簡単に触れた教育的配慮としては, Noether レベルで一般化を止めているということの他に例がかなり豊富に書かれていることもある. 例を作ること自体も勉強だが, 初学だとやはりなかなかつらい. そうした点をきちんと埋めてくれている. 面白かったのは, 例えば環の単位元と部分環の単位元は一般には異なることを行列環で説明していることなどだ. 当たり前といえばもちろんそうだが, 身近な例を挙げて丁寧に説明してくれているのが嬉しい.

Atiyah の From Quantum Physics to Number Theory という講演が YouTube に上がっていたので

本文

Atiyah の From Quantum Physics to Number Theory という講演が YouTube に上がっていたようなのでとりあえず見てみた.

From Physics to Number Theory http://youtu.be/I1ftUA17MZg

適当に聞いていたこともあり, どの辺からどう Number Theory が噛んでいるのかとか, 何故 Atiyah が幾何ではなく数論の話をしたのかとか全く分かっていないが, Atiyah の講演を聞いたことがなくミーハー根性を満たすためだけに聞いたのでよしとする. 砂田先生の言かと思ったが Atiyah の英語は日本語でいうところの「べらんめぇ口調」に対応するらしい. 分かるような分からないようなアレだが, Atiyah の英語はかなり聞きやすかったので程よい英語の勉強にもなりそう. 去年くらいに撮った映像のようだが, さすがに Atiyah も 84 なので疲れるということか, 座りながらトークしていた.

あまり真面目に聞いていなかったが, 最後の方でおそらく Hilbert-Polya 予想に関するのであろう話が出ていた. 次のように書かれたスライドがあったのだ.

Zeros of Riemann zeta functions are eigenvalues of gravity Hamiltonian?

Hilbert-Polya 予想というのは Riemann の $\zeta$ が適当な自己共役作用素のスペクトル (固有値の集合) で記述できるという予想だ. 元は重力の Hamiltonian に関する予想だった, ということなのだろうか. あまりきちんと聞いていないので分からないが. 量子力学 (非可換調和振動子) や場の量子論 (Fock 空間からの構成) については, 以前, それぞれ坊ゼミやささくれセミナーで少し触れた. Atiyah もこの辺に期待しているということだろうか.

あと最後に次の一文が出ていたので, 引用しておこう.

Without dreams there is no art, no mathematicians, no life.

Baez-Segal-Zhou の教科書, Introduction to Algebraic and Constructive Quantum Field Theory が無料公開されていた

本文

Baez-Segal-Zhou の有名な本がここで無料で配布されていたので, 一応共有しておこう. 『Introduction to Algebraic and Constructive Quantum Field Theory』という本だ. 時々論文にも引用されるので, 見てみたいとは思っていた.

ただ, 画像取り込みのようになっていて中で傾いているのでかなり見づらい. 検索が効くように配慮されているのは助かるけれども.

前半部分は大体 (場の理論の) どの本にも書いてある内容のようだが, 後半が少し珍しい. 特に最後の非線型場の話は最近の本にあまり書いていないように思う.

場の量子論の数学についてちょっと知りたいが, 本を買うほどの興味はないという向きは, 落としてみて眺めてみるといいかもしれない.

定常状態の熱伝導方程式と楕円型方程式の解の挙動について気になることがあったので

はじめに

ちょっと数学的・物理的に気になるやりとりをしたのでメモ.

やりとりその 1

やりとりその 2

あとこれ.

コメント

時間定常の熱伝導方程式が単純に時間項を落とした式として紹介されているが, 物理的に実験と合うのだろうか. もちろん適切な境界条件などの設定も必要だが, 定常状態は方程式自体は放物型の解で, それの時間無限大の極言を取った状態だと思っていたので, 実際のところどうなのか凄い気になる. 境界条件などが同じだからといって, 放物型の解の極限と楕円型の解は一致するのだろうか.

根本的に私の認識がおかしいということももちろんありうる. 機械工学の人の文章らしいし, 実験的な裏付けはきちんとありそうだけれども.

追記

その筋の数学者にコメントを頂いた.

非線型の同じようなタイプのやつ (何といえばいいのかわからない) だとどうなのだろう. とりあえず安いし買ってみよう.

追記

あとで冷静に考えたらまさに指数定理などの熱核の方法だった.

Bolzano-Weierstrass の定理

はじめに

Bolzano-Weierstrass の定理についてのやりとりがあったので残しておきたい.

ボルツァーノ・ワイエルシュトラの定理って難しいかな?

@bonacci_11235 名前がわからないけど有界な数列は収束部分裂をもつってやつ?

@bonacci_11235 そこまで難しくはないですよ

@dingdongbell そうです

@bonacci_11235 大丈夫だと思う (?)

コメント

そして市民メモ.

ボルツァノ-ワイエルシュトラス, 実数論の要という意味でかなりクリティカルだし, 一般にはコンパクトの話だし, 少し突っ込んだだけで深淵が出てくるのだがどういう意味でそれほど難しくないと言っているのか感ある. 数学が好きな子相手の話だからこそクリティカルという感ある

@phasetr 工学部の人間相手なら「気にしている暇があったら本業やれ. 本業で本当に出くわしたどうにもならなくなった時点で気にかけろ. それでも多分気にする必要はないし, 本当に気にする必要が出てきてしまったときはまず工学が分かる数学者を巻き込め. 話はそれからだ」的なことをいう

『数とは何かそして何であるべきか』 リヒャルト・デデキント 著, 渕野 昌 翻訳, 渕野 昌 解説

本文

ちくまがまた面白そうな本を出したようだ.

数とは何かそして何であるべきか

リヒャルト・デデキント 著 , 渕野 昌 翻訳 , 渕野 昌 解説 待望の新訳 訳者による充実の解説付き!

「数とは何かそして何であるべきか? 」「連続性と無理数」の二論文を収録. 現代の視点から数学の基礎付けを試みた充実の訳者解説を付す. 新訳.

コメント 1

この辺 から ytb_at_twt さんが感想を書いている.

現代的視点から読み直すというのはまあ批判はあるじゃろな. でも, デデキンドの実数論を現代的視点から読み直して位置づけ直すというのでお値打ち (フチノさん曰く名古屋弁) な本だと思います. http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095473/

コメント 2

patho_logic さん分.

「数とは何か, 何であるか」買って来た. フチノ節前回でゲラゲラ笑いながら読んでる. http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095473/

でも, デデキンドの実数論を現代的視点から読み直して位置づけ直すというのでお値打ち (フチノさん曰く名古屋弁) な本だと思います. http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095473/

現代的視点から読み直すというのはまあ批判はあるじゃろな.

コメント 3

ytb_at_twt さん分.

デデキント「数とは何かそして何であるべきか」買ってきたー. デデキントの 2 論文が計 110 ページ程度, ネーターやツェルメロの「関連」論文が 50 ページ程度, 訳者解説が 150 ページ程度, 岩波文庫のゲーデル本と同じく原著者ではなく訳者の本. こういうビジネスモデル流行っているのだろうか.

参考書の紹介で「江田 [ 10 ] と坪井 [ 54 ] はともに不完全性定理を中心とした個性的な教科書である. 両方とも著者を個人的に知っていると十倍楽しめる本である」と書いているが, このデデキント本も (以下略).

「ゲーデルの不完全性定理をなかったかのように振る舞う」ブルバキ派について「大震災での原発事故の起こる前の日本では, 原発事故は『起こらないものである』とされていて…訳者にはこれは『第一不完全性定理はなかったことにする』という一部の数学者の思考パターン…と同型」 (p238)

つーか原稿事前に読んだ誰か, こういうの止めろよ.

で, ところで, そもそも「数学の基礎」って何なのでしょうか. どこかに解説があるのかもしれないけれど見つけられない.

あと, この本, 対象とする読者はどういう人なんでしょうか. 50 ページで命題論理から ZF での選択公理とデデキント有限/ 無限の独立性まで書いてあって, すごい知識がないと読めないような気もします. 香りを楽しむ?

僕が独裁者になったら, 「数学の基礎」とは何かの定義を与えることなく, 「数学の基礎付け」について語ることを禁止したい.

私も読みたい.

2015-01-10 今日のいい話: とにかく「数学大好き」と言葉に出して洗脳していけ

  • 数学, 数学教育, 相転移プロダクション

広めていきたい.

2015-01-12 私も統計学の動画を作っているので: 記事紹介『統計学の初心者が入門として最初に読むべき一冊』

  • 数学, 統計学, 教育, 数学教育

私も一応統計の動画を作ったので宣伝しておこう.

もっと続きを作りたいとは思ってはいる.

2015-01-15 ツイート・書籍紹介: 『数学の言葉づかい100―数学地方のおもしろ方言』数学セミナー編集部

  • 数学, 数学書, 数学教育

記憶にとめておきたい.

2015-01-16 SubfactorとCoxeter群

  • 数学, 作用素環, Coxeter群, 代数, subfactor

Subfactorも恐ろしいが, Coxeter群とかも恐ろしい.

2015-01-19 サイト紹介: Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics

該当ツイートがわからなくなってしまったのだが Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics というサイトがある. 数学の専門用語の初出をわかる限りでまとめたという謎サイトだ.

例えばこんな感じ.

CALCULUS. In Latin calculus means "pebble." It is the diminutive of calx, meaning a piece of limestone. The counters of a Roman abacus were originally made of stone and called calculi. (Smith vol. 2, page 165).

In Latin, persons who did counting were called calculi. Teachers of calculation were known as calculones if slaves, but calculatores or numerarii if of good family (Smith vol. 2, page 166).

The Romans used calculos subducere for "to calculate."

In Late Latin calculare means "to calculate." This word is found in the works of the poet Aurelius Clemens Prudentius, who lived in Spain c. 400 (Smith vol. 2, page 166).

今度じっくり読みたい.

2015-01-23 Bitbucketにあった【ハードルを下げつつ, 本質的なことから逃げない圏論の解説】というの記事の記述が気になったので

  • 数学, 計算機科学, 物理, 圏論, 相転移プロダクション

本文

圏は勉強中で全く酷い理解のままだが, ミスリーディングっぽい箇所を見付けたので記録しておきたい. Bitbucket にコメント的なアレがあればよいのだが見当たらないし, いろいろ書いたら長くなったのでとりあえずブログにまとめた.

「集合の元」はタブー

整数が対象であることから分かるかもしれないが, 対象は集合であることが多い. その集合の中身には言及せずに射の性質を語るのが圏論のやり方だ. 今まで「集合の元」を使って説明していたことと同じ内容を, 対象と射だけで説明するのが圏論だ. 圏論では対象が集合かどうかにはお構い無しにただの抽象的な概念「対象」であるのだが, 慣れるまでは具体的な集合を思い浮かべても良いと思う. ここの解説では, 集合の言葉と圏論の言葉の間を頻繁に行き来しようと思う. 既に知っている何かに引き付けて考えるのが, 何かを知る方法の 1 つではあるに違いない.

ここがミスリーディングではなかろうか.

念のため書いておくと, スタンスとしてはあくまで数学としての視点を重視してコメントする. まず圏でなるべく集合の元を取ろうとしないのはそもそも対象が集合にならないことがあるためだ.

数学としていうなら, 現実問題として対象を直接調べるよりも対象相互の関係を調べることで対象自身への理解を深める手法はよく使う. どういう例を出すといいのかよくわかっていないのだが, 例えば素粒子の性質を調べるとき, 粒子を衝突させてその様子を調べる. いろいろな粒子との衝突を調べてその関係から素粒子の性質を絞り込んでいくので, 正に相互の関係を調べることで対象自身への理解を深めていく形になっている. それで言うなら【その手法も一風変わっている】という記述にも問題がある.

他にもある人の性格を知ろうというとき, どんな人に対しても穏やかに対応するなら穏やかな人なのだと理解するだろうし, 立場の強い人には下手に出るのに立場の弱い人には横柄に対応する人はそういう人だと理解されるだろう. これもいろいろな対象相互の関係を調べることで元の調べたい対象の性質を調べている.

数学も人間の活動なので, 数学でも似たようなことがよくあるわけで, そうした現実に即したアプローチとして圏論が出てきたと理解している.

だから【元を取るのはタブー】なのではなく, 【直接元を見たいのではない】のであり, そもそも集合論的な意味での元がない対象を扱うからであり, そこまで含めてクリアに見通すために元の存在を仮定しない議論を 重視しているのだと理解している.

また計算機科学への応用についてあまりよく知らないが少し調べた限りでは自然変換が使われることがあるようだ.

関手が対象, 自然変換を射とした関手圏は対象が関手なので当然対象が元を持たない. 元を取らないと議論できないのでは, 計算機科学への応用上も使いづらくて仕方ないのでは.

貴様の理解も間違っているなどご批判あればご指摘頂きたい.

Qiita 投稿

自分のブログにも書いたのだが, ほんの少しだけ首を突っ込んだのでこちらにも転記しておきたい.

圏はまだまだ勉強中ではあるものの, ミスリーディングっぽい箇所を見付けたので記録しておきたい. Bitbucket にコメント的なアレがあればよいのだが見当たらないうえ, 対応法があまりよくわからないし,いろいろ書いたら長くなったのでとりあえずここ(と自分のブログ)にまとめた.

「集合の元」はタブー

整数が対象であることから分かるかもしれないが, 対象は集合であることが多い. その集合の中身には言及せずに射の性質を語るのが圏論のやり方だ. 今まで「集合の元」を使って説明していたことと同じ内容を, 対象と射だけで説明するのが圏論だ. 圏論では対象が集合かどうかにはお構い無しにただの抽象的な概念「対象」であるのだが, 慣れるまでは具体的な集合を思い浮かべても良いと思う. ここの解説では, 集合の言葉と圏論の言葉の間を頻繁に行き来しようと思う. 既に知っている何かに引き付けて考えるのが, 何かを知る方法の 1 つではあるに違いない.

ここがミスリーディングではなかろうか.

まず圏でなるべく集合の元を取ろうとしないのは そもそも対象が集合にならないことがあるためだ. これはあとで少し説明する.

そして, 現実問題として, 対象を直接調べるよりもいろいろな対象相互の関係を調べることで 対象自身への理解を深めるのは日常的によくあるのだと 意識することが根本的に大事だろう. 圏の言葉でいうなら, 集合の元を直接取らずに射という 相互関係の取り扱いに着目する理由だ.

数学内でも数学外でも一般にどういう例を出すといいのかよくわかっていないのだが, 日常の例でいうなら, ある人の性格を知ろうというとき, どんな人に対しても穏やかに対応するなら その人は穏やかな性格なのだと理解するだろうし, 立場の強い人には下手に出るのに立場の弱い人には横柄に対応する人は そういう人だと理解されるだろう. いろいろな対象相互の関係を調べることで 元の調べたい対象の性質を調べている. このくらい日常的によく使う研究手法で, その前提で言うなら次の記述【その手法も一風変わっている】にも問題がある.

そもそも圏論について 圏論は比較的新しい数学の分野であり, その手法も一風変わっている.

他には, 素粒子の性質を実験的に調べるとき, 粒子を衝突させてその様子を調べるという物理の例がある. いろいろな粒子との衝突を調べてその関係から素粒子の性質を 絞り込んでいくので, 正に相互の関係を調べることで対象自身への 理解を深めていく形になっている. もう少し具体的にいうと, スピンを持っている中性子を使ったときに どういう散乱データが出てくるかを調べることで, 調べたい物質の磁性を研究するとかそういう感じ.

数学も人間の活動であって, 数学でも似たようなことがよくあるわけで, そうした現実に即したアプローチとして圏論が出てきたのだと理解している. 有名な MacLane の Categories for the Working Mathematician 2nd edition P.18 には自然変換の定式化のために関手を定式化して, 関手の定式化のために圏を定式化したとある. そして応用上決定的に重要なのは自然変換という話だが, この辺は勉強中で全く詳しくないので各自適当に調べてほしい.

話を元に戻すと【元を取るのはタブー】なのではなく, 【直接元を見たいのではない】のであり, そもそも集合論的な意味での元がない対象が重要でそれを扱いたいからであり, そこまで含めてクリアに見通すために元の存在を仮定しない議論を 重視しているのだと理解している.

また, 計算機科学への応用についてあまりよく知らないが 少し調べた限りではやはり自然変換が使われることがあるようだ.

関手が対象, 自然変換を射とした関手圏は 対象が関手なので当然対象が元を持たない. 元を取らないと議論できないのでは, 計算機科学への応用上も使いづらくて仕方ないはずだ.

2015-01-25 数学はずっと苦手だった: 数学・物理に関するツイート小まとめ

  • 数学, 物理, 数理物理, 大学受験

個人的に関係するツイートをまとめてみた.

制限だらけの高校物理, 結構気に入っているのでそのあたり.

数学はずっと苦手だったので.

今日も明日も数学したい.

2015-01-26 ゼルプスト殿下の作った(反)例ツイートまとめ: 連続な全単射は同相写像になるか

面白ネタだったので思わず. あとでhttps://github.com/phasetr/math-textbookの(反)例のところに載せていいか聞いておこう.

2015-01-29 圏論についての記事をQiitaに書いたので

Hormanderを読んだらMac Laneを読もうと思っている.

2015-02-03 選択公理と非有界作用素: 市民なので Hilbert 空間全体で定義された非有界作用素というのをはじめて聞いた

  • 数学, 物理, Hilbert 空間, 非有界作用素, 選択公理, Zorn の補題, Hamel 基底, 量子力学

何だそれ, と思ったらやはり選択公理による構成で, 見たこと・聞いたことないのも当然だった感がある.

p進大好きbotによる謎の現象報告もつけておこう.

2015-02-04 京大・東工大での研究会告知依頼が来たので: 小嶋先生の退官記念と弱値・弱測定の研究会

  • 研究会, 相転移プロダクション, 小嶋泉, 量子情報, 代数的場の量子論, 量子測定

研究会告知依頼が来たので共有しておきたい.

3/5-6 Symposium on Quantum Fields in Dynamical Nature, on the occasion of Professor Izumi Ojima's retirement @京都大学北部キャンパス北部総合教育研究棟内益川ホール

3/19-20 弱値・弱測定に関する国際研究集会 @東京工業大学大岡山キャンパス http://qm.ims.ac.jp/wmwv2015/

量子情報というか測定というかそちらはともかく, 小嶋先生の退官の方は最近小嶋先生関係の研究にも興味が出てきたことも あって行きたいが, 時間というよりお金がなくて本当につらい. 情けなくて泣きたい.

2015-02-05 Perelmanの消息: 最近モスクワからスウェーデンに移住したらしい

Perelman情報だった. 何か切ない.

2015-02-10 Lars Hormander, A History of Existence Theorems for the Cauchy-Riemann Complex in $L^2$ spaces

  • 数学, 相転移プロダクション, 多変数関数論, 複素解析幾何, 複素幾何, 関数解析, 偏微分方程式, 場の量子論

学部 2 年で志賀浩二『複素数 30 講』を読んで岡潔の仕事を知って以来, 多変数関数論にはずっと興味がある.

また場の量子論としても公理的場の量子論や代数的場の量子論で 多変数関数論を使うし, 学部 4 年のときに進む研究室選定とも合わせて AQFT についていろいろ調べていたときに Borchers の自己同型群のスペクトル解析の 仕事に興味を持って以来, 余計に勉強の意欲が湧いてきたものの, 結局まともに勉強できていない.

Translation Group and Particle Representations in Quantum Field Theory (Lecture Notes in Physics Monographs)

ちょこちょこ勉強しようと思って挫折しまくっているのだが, 今回もちょろっと調べものをしていたら Hormander の論文を見つけたので 少し読んでみた: A History of Existence Theorems for the Cauchy-Riemann Complex in $L^2$ spaces.

適当にしか読んでいないが, 面白かった部分だけ簡単に抜いておく.

1 変数関数論は Laplacian と Cauchy-Riemann 作用素の解析が重要だったが, 多変数関数論は 1 次元からの帰納的なアプローチではじまり, 偏微分方程式を使うアプローチは 1960 年代にようやくはじまった. $\bar{\partial}$-Neumann 問題は 1950 年代中頃に Spencer がはじめた.

言われてみれば 1 変数の場合, 初等的な範囲では解析学の色彩がかなり強いが, 多変数になると専門的になってくることもあって, すぐ層だの複素多様体だのという話になるので, 言われてみれば感があった.

Spencer は 小平-Spencer の Spencer だと思うのだが やはり Spencer 恐るべし.

あと PDF P.17 からの Bergman とのやりとりが面白い.

He was a rather special person and had a reputation for cornering people to talk interminably about the kernel function for which his enthusiasm was unbounded. For quite a while I managed to avoid him, but at last I was cornered.

Bergman, 遠くから観察してみたかった.

私に必要な関数論は現代的な関数論ではなく, 場の量子論向けにカリカリにチューンされた, 恐らくかなり古いアプローチである一方, 現代的なアプローチも読んでみたいのでつらい.

2015-02-14 数学教育に関する記録: 代入法の理解の難しさ

これか. 読書リストにいれておきたい.

2015-02-18 風狸けん画・中川真脚本『和算に恋した少女』

  • 数学, 和算, 相転移プロダクション

和算はともかくエンターテインメントというところに興味がある.

2015-02-18 Twitterで頂いた質問への回答: 逆問題と現象数理学

  • 数学, 物理, 現象数理学, 応用数学, 微分方程式, 関西すうがく徒のつどい

きっかけ

先程Twitterでこのような質問を頂いた. 長くなるのでブログにまとめた. 「定義による」というのが正直なところだが自分用のメモも込めて紹介・記録しておこう.

まず私の理解というところから端的に言えば, 逆問題は応用微分方程式論に端を発する命名で「順問題」に対する「逆」だ. 現象数理学もとりあえずやっていること, 目指すことは従来の応用数学の枠内にはまると思うのだが, 応用数学と言っても広いから, 特に名前づけから特色を出していっただけの身も蓋もないアレという感じ. それぞれ独立した営みという理解.

逆問題に関して

順問題と逆問題で対になる. 以前関西すうがく徒のつどいでも拡散方程式の逆問題について話したことがある. その講演原稿はhttp://github.com/phasetr/math-textbookにも収録しているので興味がある向きは参照してほしい.

それはそれとして次のような対応がある.

一般に 具体的に
順問題 入力から出力を求める 微分方程式の初期値から解の振る舞いを調べる
逆問題 出力から入力を求める 複数観測地点での震度データから震源地を調べる

微分方程式で定式化される問題を例にしたが別に何でもいい. 例えば「友達にいつもと同じ感じでちょっかいを出したら物凄く怒られた. 今日は虫の居所が悪いようだ」というとき, 「怒られた」という出力から「今日は虫の居所が悪い」という入力を推測するのも逆問題と言える.

元のコメントにある「数理的な法則」も特に数学で比較的綺麗に書ける・モデル化できるタイプの自然科学・工学的な応用を念頭に置いているのだろうし, 実際に発端もそこにあるが, フレームワークとしては数学で書ける対象に限定する必要はない. その方が「応用」は広い.

現象数理学科

まず三村先生の所属する明治大学現象数理学科のページから引用しよう.

モノ・コトから現れる複雑な現象を、数学で解明する。

動物や植物の美しい模様、心臓の拍動や薬の吸収などの医学・生理学問題、交通渋滞や経済不況などの社会的問題、流行やブームといった社会現象まで、私たちの身の回りは、現象であふれています。そうした現象を、数学を用いて解明していくのが現象数理学です。現象を数式に置き換えていくことを「モデリング」といいます。そして実際に導き出した「数理モデル」を使い、コンピュータで高度なシミュレーションを繰り返していくと、これまで目に見えなかった現象の正体が徐々に明らかになってくるのです。

現象数理学, 要は応用数学だ. モデリングも諸科学・工学で標準的な考え方だし, シミュレーションも特に理論工学ではもはや基本中の基本なのではなかろうか. 理論というともっぱらシミュレーションを指すことすらあると聞いている.

応用数学といってしまうと数学の趣が強過ぎるから, 適当な「現象」を扱うのだ, という姿勢を前に出した名称である種の政治的なスタンス表明という感がある. 特に最近は「役に立つ学問」という流れがあるし, 学科新設という意味でも思惑があるだろう感がある.

2015-02-21 教官陣の渡辺澄夫『すぴんはころぶ』に関する思い出話小まとめ

  • 数学, 物理, 数理物理, 作用素環, 量子統計, 代数的場の量子論, 直積分, 相転移

私も読んでみたが, 何というか判断に困った. Bratteli-RobinsonというよりもIsingの何かを読む前哨戦にはいいかもしれない.

それはそれとしてBratteli-Robinson, 例えば量子統計・代数的場の量子論への直積分の応用に関しては貴重な文献ではあるが, 大事なのにこのパートが死ぬほど読みにくい. そもそも測度論が出てくるのでそこの地獄はあるにせよとにかくつらい.

2015-02-24 書泉グランデMATHからイベント紹介: 3/20-24 明治大学駿河台キャンパス パネル展示 小平邦彦先生の生涯 小平先生とその友人たち

これ行きたい. どうしよう.

2015-03-05 2015/10/3 の久保シンポジウムでは舟木先生が喋るらしいのでぜひ参加したい

  • 数学, 物理, 数理物理, 統計力学, 非平衡統計, 確率論, 研究会

また行きたい研究会ができてしまった.

Tatsuyoshi HamadaさんによるMathLibre道場GeoGebra編: 九大で行われた数学ソフトウェアチュートリアルの資料

  • 数学, プログラミング, 相転移プロダクション

これも遊んでみたいと思いつつ全く手がついていない. つらい.

2015-03-08 Gigazine記事紹介: 数学の数式・記号のあるページを簡単に検索できる「SearchOnMath」

  • 数学, 物理, 相転移プロダクション, プログラミング, サービス

何かの役に立つかもしれないのでメモ.

2015-03-10 「私は素数時計で生きています」という変な人がいた!と思ったら広義知人だった

  • 数学, 素数, 数論, 素数時計, 素数大富豪, 数学者

何かおかしな人がいる! と思ったら広義知人だった事案.

2015-03-12 共形場で代数的場の量子論と頂点作用素代数の対応がついたらしいので

  • 数理物理, 数学, 物理, 代数的場の量子論, 構成的場の量子論

最近忙しくていろいろ滯っているのだが, ちょっと堀田さんとやりとりしたので.

あと立川さんと谷本さんのやりとり.

谷本さんは元々河東研で, 博士から本格的にAQFTやりにイタリアに行ったくらいの人で正にバリバリの識者だ.

あとで論文読んでメルマガにまとめたい.

2015-03-15 応用数学での泥縄式学習: 線型代数・微分積分・確率論の力強さ

  • 数学, 応用数学, 線型代数, 微分積分, 確率論, 代数統計, 代数多様体, 代数幾何

いわゆる狭義の応用数学に限らないが, この徒手空拳で挑む感じがとても好きで, 私の専門でもなるべくこの感じを大事にしたい.

2015-03-16 記事紹介: 「人は簡単に『忘れてはいけない』という。でもね......」外国人歴史家が体験した3.11

  • 歴史学, 東北大震災

歴史家というのがどういう人々なのかよくわかっていないのだが一例として参考にしたい.

2015-03-17 何か最近Lieb-Robinson boundが流行っているらしく夏学でも講義されるらしいという話を聞いたので

  • 数学, 物理, 数理物理, スピン系, Lieb-Robinson bound, 作用素環, 作用素論, 量子統計

詳しいことはさっぱり忘れてしまったが, 最近まるで触れられていないものの, 無限系の Hubbard に集中的に取り組んでいたことがあって, そのときに読んだ記憶がある.

次のような感じで大事そうだと思った記憶がある.

  • まずは無限系でのダイナミクスの存在を言わないといけない.
  • 作用素論的に言うのは大変そう.
  • 作用素環ベースでスピン系ならいろいろある.
  • 証明を捻って転用できると嬉しいな.

私の目下の対象はHubbardモデルでの電子とフォノンの相互作用系だが, Hubbardを無限系にすると相互作用を考えなくても一気に数理物理的な研究が減るので, 嬉しいのか何なのかよくわからないが, とにかく何かやりたい.

あと次の情報も教えて頂いた.

ちなみに夏学の講義の参考文献はhttp://arxiv.org/abs/1102.0835http://arxiv.org/abs/1004.2086の予定です

両方ともNachtergaele-Simsだった.

2015-03-18 【線形写像とベクトルはお互いに一対一対応する。これは随伴関手の例にもなってる。】という個人的によくわからない言明をみかけたので意味がわかる方は教えてほしい

  • 数学, 線型代数, 内積, 内積空間, Hilbert 空間, 線型写像, ベクトル, Riesz の表現定理, 線型汎関数, 有界, 関数解析

よくわからない言明に遭遇したので. 引用しておくとこれ.

これに関してコメントを頂いたので少しお話しした.

こういうのを見ると, 自分も (よく知らないところで) とんでもないことを口走っているのではないかと不安になる. あと圏をフランス語でやってみたい. 何かいい本ないだろうか.

2015-03-19 竹山美宏さんによる新入生向けの数学の良書紹介があったので

物理のための数学講座はこの辺のために作ろうと思った講座だが, 止まったままなので早く再開させたいとはずっと思っている.

『すうがくぶっくす』はこれだけ見るとちょろそうだが, 時々核弾頭クラスの凄まじいのがあるので気を抜いてはいけない. ひどい本というわけではなく, 恐ろしく深く遠いところにまで連れていかれることがあるのだ. 平井先生の群の表現論の本, 堀田先生の代数の本(最後に$D$加群が出てくる), 岡本先生の本(佐藤超関数が出てくる)とか超パンチがきいている. 平井先生の本はじっくり読めばきちんとわかる本だと思うが, 二巻本ということもあり, 話題は豊富だし著者の伝えたいという気迫を感じるとてもよい本.

数学したい.

2015-03-20 れんまさんに作用素環のいい反例を教えて頂いたので

  • 数学, 作用素環, 作用素論, 反例

滅茶苦茶間抜けなことを言っていて死にたくなるが, 行列環値の(連続)関数環をさらっと出してくるあたり, 何となく$C^*$の人の気配を感じたが, 私は作用素環専攻だったというのにろくに作用素環をやっていなかったので単にその地力の差という感じもある.

あとでmath-textbookにも例として取り込んでおこう. よい勉強になった.

2015-03-21 量子力学の数理: 非有界作用素の和や積の定義と notorious domain problem

  • 数学, 物理, 数理物理, 量子力学, 場の量子論, 量子統計力学, 作用素論, 非有界作用素, 定義域

非有界作用素という修羅との戦いだった. あとzenaさんとのやりとり.

あまりにも間抜けで死にたくなった. 仕方がないので粛々と対応していきたい.

あと非有界作用素に関する定理, これはやばい.

2015-03-22 新井仁之先生の『線型代数 基礎と応用』が超面白そうなのに絶版状態らしいので悲しい

  • 数学, 応用数学, 線型代数, 多変量解析, 離散 Fourier 変換, ウェーブレット

これは読みたい. 絶版状態(?)なのをどうにかしてほしい.

追記: いつだか忘れたが絶版状態が解消されたため既に買って手元にある.

2015-03-23 講義ノートリンク: Lurieの謎キャラっぷりがすごいようなので

  • 数学, 講義ノート, 代数トポロジー, 組み合わせ論, 数論, 作用素環, 幾何学, 多様体論, 代数的 K 理論, 多様体のトポロジー

Lurie, ホームページがやばいというか何者なのかよくわからなくてやばい.

2015-03-25 【線型代数で殴る】【数学で殴る】という表現がどこまで一般的なのかを知りたい方の市民だった

私も先日, 小学生の女の子に「数学で殴る」という表現を教えてきたが, この表現がどこまで一般的なのかについて非常に興味がある.

2015-04-02 工学部の専門数学で必要な線型代数・線型空間論が何なのか具体的に知りたい方の市民だった

  • 工学, 数学, 線型代数, 線型空間論, Hilbert 空間論

もはや前後が追い切れないので悲しいが, 現実問題として工学的に抽象論の何をどう使うのだろうか.

2015-04-04 ツイート紹介: 「さんすう刑事ゼロ」というのが教育的に素晴らしいらしいので

近いうちに眺めよう.

2015-04-11 算数教育に関するt2o_yamaさんの連続ツイートが面白かったので

  • 数学, 算数, 理科, 教育, 相転移プロダクション

面白いとか言って済む話ではないのだが.

子供たちの詳しい状況はよくわからないが参考にしたい.

2015-04-16 t2o_yamaさんのツイートから: 処理速度と教育・学習の関係

  • 数学, 教育, 算数, 理科, 物理

言われてみればそうなのかもしれないが, ほとんど考えたことがなかった事案なので, いくつかツイートを転記して記録しておきたい.

こういうのは実際に大量に色々な子供を見ていないとわからない. 参考にしたい.

その1

引用

引用されているのはこれ.

その2

その3

その4

2015-04-17 p進大好きbotから: 「任意の素数pに対してp+1元集合に入る位相全体の集合の濃度はmod pで7」とかいう謎の結果が載っているプレプリントがあるらしいので

  • 数学, 素数, 数論, 位相空間論

やばい. あとで論文きちんと読みたい.

2015-04-28 Elsevierの数学や情報系のジャーナル論文が四年以上前の分が全部無料で公開されるようになったらしいので

  • 数学, 物理, 論文, 相転移プロダクション, Elsevier

本当か. これはありがたい.

2015-04-19 メモ: 一般化Riemann積分としてのKurzweil-Henstock integral

  • 数学, 積分, Lebesgue 積分, Riemann 積分, Denjoy and Perron 積分, Kurzweil-Henstock 積分

Kurzweil-Henstock integral, 名前をずっと忘れていたのでとりあえず記録.

2015-04-20 外注のとき用メモ: 記事紹介 『面倒なデータマイニング作業を時給200円ぐらいでバングラデシュ人に発注してみた』

  • 数学, 物理, 外注, アウトソーシング, 相転移プロダクション

自分の楽しみも合わせて数学名言を集めてつぶやくみたいなアレをやろうと思っていたのだが, こういうのを使うといいのかもしれない. 検討しよう.

2015-04-22 いろぶつ先生の新刊査読募集があったので宣伝協力: ★「ヴィジュアルガイド・自然科学のための数学(仮)」の査読者募集

  • 数学, 物理, 相転移プロダクション, いろぶつ, 書籍, 自然科学のための数学

楽しそうだし私も似たことをやろうと思っているので, 参考にもするべく参加した. 楽しそうなので皆でやろう.

2015-04-23 論説紹介: 斎藤恭司 一般weight系の理論とその周辺 特異点理論, 一般Weyl群とその不変式論等との関係

  • weight 系, 特異点, 一般 Weyl 群, 不変式論, 楕円積分, 周期

いま読んでも面白いということなので私も読んでみたい.

2015-04-27 書籍紹介: Joel David Hamkins, A Mathematician's Year in Japan

これ面白そう. ほしい. 私もこういうの作りたい.

2015-05-07 私もニコニコ学会出てみたい

私もニコニコ学会で話す方やってみたいが何話せばいいだろう. ちょっとネタを考えておきたい. 前に動画も作った女性胸部の話とかアレだがアレっぽいのでアレ.

2015-05-15 ツイート・プログラム紹介: mathjaxのようなtexベースの数式組版ライブラリKaTeX

このサイトもMathJax利用だが, ネットワークが通じない状況でのローカルでの記事執筆時に困ることがないではない. 期待したい.

2015-05-16 SGL (Sheaves in Geometry and Logic: A First Introduction to Topos Theory)の話

少なくとも一部界隈では有名なMacLane and Moedijk, Sheaves in Geometry and Logic: A First Introduction to Topos Theory, 通称SGL関連の話.

次の記述がとても気になる.

古典論理のストーン双対性を圏論的な双対性の有限的/コンパクトな典型的事例として位置付け、無限的/非コンパクトなケースとしては幾何的論理を対比させています。幾何的論理(geometric logic)は、「SGL読書会」のテキストである"Sheaves in Geometry and Logic"の主要なテーマでしょう(たぶん、僕は最終回だけしか出てないので半分憶測)。

古典論理のストーン双対性が、代数幾何の枠組であるスペクトルやスキームと類似であることも詳しく解説されています。ここらへんの話題は、2005, 2006年あたりに僕も取り上げたことがあります。具体的な計算も書いてあるので、多少は参考になるかもしれません。

研究したいこと, 勉強したいことが無限にある.

2015-05-17 鈴木 貴, 新井 仁之, 小林 俊行, 斎藤 毅, 吉田 朋広, 『数理医学入門』が面白そう

執筆陣から言っても超ほしい.

2015-05-25 ツイート・記事紹介: 阪大 植田一石さんの数学科に入る人へのアドヴァイス

印象的な文章があるのでPDFからいくつか引用したい.

直前まで素粒子か物性の分野に進むものだと思っていた私の進路を大きく変えたのは、教員と話をしているうちに抱くようになった、物理学者は数学に対してある種の"敵意"を持っている一方、数学者は物理に敬意を払っているという印象です。物理に進学すると数学の勉強ができなくなる一方、数学に進めば物理も勉強できると思ったので、これは単に決断を先延ばしにするだけのはずだったのですが、今思うと実際にはここが人生の分かれ道でした。

ある種とついているのでアレだが, 敵意というか, 嫌悪感のようなものは時々感じる. 実際, 実験系の教官で「元々理論をやりたかったのだが複素関数論が駄目で諦めた」とかいうのを実際に聞いたことがある. 関係ないが, 物理だとよく複素関数論というが, 数学だと関数論や複素解析という気がする. このギャップがどこで生まれたのかとても気になる. 物理でLie代数と(正式に)呼ぶのに数学ではLie環と呼ぶのも面白いと思っている.

研究者同士の関係はある意味で対等(真理の前では平等、と言ってもいいかも知れません)なので、研究を志して大学院に進学する人は、誰かの弟子になるのではなく、同僚になるのだという気概を持つべきでしょう。

学部の頃はいまひとつ分からなかったが, 修士で実際にいろいろやっているうちに少なくとも理想はこう, というのは掴めた気はする.

何らかの事情で数学ができなかった日の夕方には禁断症状で手が震えるようならなお良いです。

手が震えたことはないがふとしたときに「数学やりたい」と言っていることはよくある.

最初は問題が解けるのか半信半疑なのですが、そういう時には解けません。そのうち、実は解けるんじゃないかと思い始めます。いいアイデアを思いついて天にも舞い上がる心地になったかと思えば、ちゃんと書き下そうとしてギャップに気付いて落ち込むということを繰り返します。気持ちのアップダウンが激しくて、精神衛生上良くありません。後一歩で解けそうなときは特に危険です。こういう時は車の運転などは控えたほうがいいですね。また、そうでなくても運転中に助手席の人と数学の話をするのは、ナビを操作したり電話を掛けたりするよりも明らかに危険なので、法律で禁止すべきです。やがてアップダウンの周期が徐々に短くなってきて、遂に証明を書き下してもギャップが見つからなくなります。

法律で禁止するのはいいとして, その状態をどう判定するのかが難しそう. 法学部の教官に相談して何とかしてほしい.

そして目玉はこれ.

ドラゴンボール現象

少年漫画にしばしば見られる強さのインフレーションは、数学では日常茶飯事です。あるシーズンでは手の届く遥か彼方にある最強の敵だったものが、次のシーズンには一撃で倒せる雑魚キャラになります。典型的な例としてはAtiyah-Singer の指数定理があります。これは Chern-Gauss-Bonnetの定理やHirzebruch-Riemann-Rochの定理などを特別な場合として含み、位相的な指数と解析的な指数が一致することを主張します。証明された当時は代数、幾何、解析に跨って聳え立つ現代数学の到達点と位置付けられましたが、今ではモジュライの幾何を研究する際の出発点に過ぎません。

インフレが進む最大の原因は、何かを最初に成し遂げるのは難しくても、それを学ぶのは遥かに容易であることにあります。スポーツだと、誰かが100mを9秒台で走っても、別の人が9秒台で走るには(たとえ全く同じではないにしろ)はじめの人に近い努力が必要です。数学なら、ある日誰かが9秒台を達成した翌日には皆が9秒台で走っていて、8秒台への到達を競うようになります。

Twitterでいくつか反応があって, スポーツの例示は適切かといった話があったが, 非常にキャッチーでうまいと思ったので特に記録しておきたい. 女性から見るとどういう印象を受けるのかはよくわからない. ちょっと聞いてみたい.

2015-05-26 サイト紹介: 街角の数学 ふくしま 和算の復興をめざして

私の学部時代の友人の父君が街角の数学 ふくしま 和算の復興をめざしてというサイトを運営している 数学と共に生きる男だといういい話を聞いたので宣伝していきたい.

算額にご興味があるとのことで, サイト内に次のような素敵な一文がある.

街角を曲がると、そこには・・・! そんな街づくりに参加してみませんか

その知人にも改めて連絡したのだが, 以前数学をテーマにした美術: 方程式のある風景という記事を書いて, 次の本を紹介した. 現代アート的に数学関係の変なのがある町並みとか異常っぽくてとてもよいのでぜひ実現させたい.

量子の道草―方程式のある風景

数楽カフェというのも福島でやっているとのことだ.

福島近郊, 特に二本松市市民交流センター近くの方でご興味のある方は参加されるとよいと思う.

2015-05-26 数学者の訃報: Nobel経済学賞や映画ビューティフルマインドで有名なNashが亡くなった

Nobel経済学賞や映画ビューティフルマインドで有名なNashがなくなったとのこと.

Twitterで見かけた情報を探っていたら見つからなかったので, 代わりにWikipediaから取ってくる. 見かけたツイートに相当する記述を引用する.

ナッシュは博士課程をプリンストン大学ですごすこととなるが、カーネギー工科大学での指導教官がプリンストン大学へと送った推薦書は「この男は天才である。」と書かれただけの一行の文章であったという。

他にもいくつか引用しよう.

専門分野は微分幾何学でありリーマン多様体の研究に関して大きな功績を残している。

1994年、ラインハルト・ゼルテン、ジョン・ハーサニとともにゲーム理論に関して大きな功績を残したとしてノーベル経済学賞を受賞しており、彼の証明したナッシュ均衡の存在が非常に有名であるため、ゲーム理論がナッシュのライフワークと思われていることもあるが、ナッシュがゲーム理論の研究をしていたのは博士課程在学中とその後のわずか数年間だけである。2015年にはアーベル賞を受賞した。

あとゲーム理論の人とばかり思っていて専門が微分幾何というのを知らなかった.

しかし、ナッシュ自身も「私の業績として特に注目するものではない」と評しているように、ゲーム理論に関する研究はナッシュの数学者としての評価を高めることには余り寄与していない。ナッシュに数学者としての名声をもたらしたのは後のリーマン多様体への埋め込み問題に関する仕事であり、以下の重要な論文を発表している。

  • "Real algebraic manifolds"(1952年、数学雑誌Annals of Mathematicsにて発表)
  • "C1-isometric imbeddings"(1954年、数学雑誌Annals of Mathematicsにて発表)
  • "The imbedding problem for Riemannian manifolds"(1956年、数学雑誌Annals of Mathematicsにて発表)
  • "Analyticity of the solutions of implicit function problem with analytic data"(1966年、数学雑誌Annals of Mathematicsにて発表)

誰かこれの意義について解説してほしい. 自分でやれればいいのだが, 幾何の歴史的流れを理解していないといけない部分もあろうし, そもそも幾何がわからな過ぎるのでつらい.

本当はこういうのをタイムリーに動画にできるといいのだが. 今後の検討課題としよう.

2015-05-29 Kiwamu_Kさんの数学セミナー2015/6【微分積分の質問箱】に関するツイートを見て反省したので

定期購読で買ったまま積読になっている数学セミナー2015/6の該当記事を読んでみた. あとで動画にでもしたいのだが, 確かにきちんと丁寧に議論した方がいいところで, 私も反省した.

自分の理解の杜撰さを指摘されているようで戦慄する.

2015-05-30 IPMUのDysonインタビュー記事が面白かったので

Dyson, 私の分野の魔人である. よくわからないが, 世間的に有名なのはQEDなのだろうか. Dyson-Lenardの物質の安定性やDyson-Lieb-SimonのHeisenberg反強磁性など, 凄まじい結果を持っている数理物理の神々のうちの一人だ.

上記PDFによると元々ケンブリッジの数学科で, それから理論物理に移ったとのこと. この辺の経歴は知らなかった.

PDFを読んでいるとサッチャーの話とか出てきて楽しい.

私はベシコヴィッチのスタイルに影響を受けました。 構成的なスタイルです。 ベシコヴィッチは単純な構成要素から彼の数学的証明に使われた美しい構造を創る能力に長けていました。 私は物理の計算に同じスタイルを用いました。

構成的場の量子論だとかその辺の話を想起する.

ダイソン 子ども達は、学校で、どの国も特に得意とするものが一つあるというイメージを教わります。 ドイツは音楽、フランスは絵画、そしてイギリスは科学です。 イギリスでは才能のある若者がこれに刺激を受けてケンブリッジに入学し、科学者になります。 有名なケンブリッジ大学の最終的な優等学位の試験(トライポス)によって、この傾向が更に高まりました。

こういうのを考えたことなかった. 日本だと何だろう.

私は1948年にバークレーを訪問した時、化学者のメルヴィン・カーヴィンに強い感銘を受けました。 彼は炭素原子の分子間の移動を数秒間追跡することにより、 光合成、すなわちどのようにして二酸化炭素が吸収され、糖に変換されるか、を理解するため、 初めて炭素の短寿命放射性同位元素を利用しました。 1秒毎に化学反応がどのように進むか。 生物学に対して、初めて原子核物理学が応用されたのです。 その時以来、放射性のトレーサーを用いて生物学は急速に発展しました。 オッペンハイマーは、生物学に対する原子核物理学の応用は原爆よりも重要であると述べました。

この辺を生物・化学に対する原子核物理の応用と認識したことなかったので, ちょっと面白かった. 自分もあまり目が見えていないな, という感.

私がプリンストンに行った時、アインシュタインがいました。私は彼がプリンストンに来たのは大間違いだったと思います。 後略

その当時いた人しか言えない話だった. Einsteinだけではなく, 朝永, Pauli, Diracなどの話もある.

私は量子電磁力学の摂動展開の収束について研究していましたが、パウリは発散すると断言しました。 私はその級数が収束することを説得しようとしましたが、彼は同意しませんでした。 結局、今は彼が正しかったことが分かっています。 私はその級数の発散について論文を書くことができたので、パウリの手助けに感謝しており、不満はありませんでした。

魔人同士の会話だ.

福来 ディラックについてはいかがですか?

ダイソン ディラックは頻繁にプリンストンにやってきました。 彼は若い時の寡黙で近寄り難い性格から、 年を取って話し好きで親しみやすくユーモアのセンスにあふれた性格に変わりました。 アインシュタインと同様、彼は自分好みの理論―うまくいかないことが分かった「大数仮説」、 それから私には全く理解できなかった「負計量の場の理論」―に固執しました。 年を取ってからは、何が正しく何が間違っているかを直感的に推測する能力を失ったように見え、 どんどん普通の人になっていきました。

どんどん酷い話が出てきて楽しくなってくる.

ハイゼンベルクもまた晩年には自分の理論である「スピノル場の理論」に打ち込みました。 彼は自分の助手にその研究をするように要求しました。 私の知っている助手はハンス-ペーター・デュールですが、 彼のキャリアはこの仕事で台無しになってしまいました。 ハイゼンベルクは死ぬまでスピノル場の理論をあきらめませんでした。

ダイソン 私がプリンストンに来た直後、 ヘルマン・ワイルはチューリッヒに、カール・ジーゲルはドイツに、それぞれ移りました。 私は有理数による代数的数の近似に関するジーゲルの定理を強めたため、彼は私のことを知っていました。 ヘルマン・ワイルもなぜか私のことを知っていたようで、私が高等研の教授に採用されるように助力してくれました。

この前のヤン・ミルズのところではランダム行列をやっていたという話も出てくる. Dyson, 本当に何やってるんだ感ある.

ハートランド・スナイダーと一緒に彼の学問的成果として最も重要な、ブラックホールを理解する研究をしました。彼らは、内部圧ゼロの重い物体はアインシュタイン方程式の帰結として永久自由落下状態となることを示しました。彼らはアインシュタイン方程式に従う宇宙にはブラックホールが存在することを予言したのです。

中略

アインシュタインは全くブラックホールを信じていませんでした。それどころか、ブラックホールは存在できないという論文を書いたのです。オッペンハイマーも二度とこの問題に立ち戻ることはありませんでした。宇宙でブラックホールの候補が複数個発見された後でさえ、彼はブラックホールについて語ることを拒否しました。私は彼とブラックホールについて話をし、なぜそれが面白いのか説明しようとしましたが、そうすると彼はいつも話題を変えてしまいました。どうしてなのか、私には分かりません。ブラックホールは、その父からも祖父からも嫌われた息子でした。

悲しみのブラックホール.

ツヴィッキーとは違い、ホイーラーは難しい人間ではありませんでした。多くの学生をもち、非常に寛大でした。彼が示唆した問題についてファインマンが上げた研究成果については、完全にファインマンの業績としました。彼は極端な愛国者で、極右で、150%アメリカ人といった人間で、政治的にはオッペンハイマーと正反対の立場でした。

150%アメリカ人という表現に笑う.

福来 数理物理学者として、数学と物理学の関係をどのようにお考えですか?

ダイソン 本当に溝があったのは純粋数学と応用数学の間です。純粋数学者は違う言葉を話していました。ブルバキが流行の純粋数学でしたが、私はそんなに興味はありませんでした。「脆弱層」についての講演を思い出します。誰かが脆弱層とは何なのか質問しました。座長のアンドレ・ヴェイユがこう言いました。「それは既にクラシックな専門用語になっているので、説明する必要はありません。」私はそれが何のことか全然理解していませんでした。私はファイバー束は理解するようになりましたが、そこから先には進みませんでした。どうも純粋数学は極端に抽象的になってしまっていました。私にはそれが稔りの多い方向とは思えません。私は応用数学に留まる方を好みました。

応用数学とは, という感.

ダイソン 物理はスピードが遅くなりました。 60年前は6ヶ月で実験が終わり、結果は6週間で説明されました。 今は実験に20年かかります。 高エネルギー物理以外では、まだすることが数多くあります。 小規模な研究はまだ盛んです。 素粒子物理は特殊なケースです。 素粒子物理でさえ、ハーバード大学のガブリエルスによる電子の電気双極子モーメントの測定のような小規模実験は、最先端研究の一例で、新しい発見のチャンスもあります。

自分が場の理論・量子統計をやっているのにアレだが, 古典論まわりいろいろやることありそうで楽しそう. しかしめっちゃ難しそうなイメージが死ぬほどある.

一般的に実験研究者は予期せぬことが起きることに備えておかなければなりません。 これは理論研究者にも当てはまります。 一つのことに固執するべきではなく、多くの研究テーマを考えるベきです。 一つの研究に飽きたら、さっさと別の研究に取りかかるべきです。 私は長い研究生活でずっとそうしてきました。

早く研究が再開できるようにいろいろ整えているところだ. あと一年で形にしたい.

2015-05-30 ミンネ, メルカリで数学アクセサリの出品をはじめてみたので

ミンネで数学アクセサリの出品をはじめてみた.

露出を増やすべくついでにメルカリでも販売している.

作れる記号一覧もアップしておいた.

ふだん私もつけているし, 高知工科大学での講演時, 出席していた学生さんに無料であげるといったら女性だけでなく男性にも人気があったので, 男女関係なく少なくとも理工系には受けるのだと思っている.

コンセプト「数学を身につける」をどんどん展開していきたい.

2015-06-01 パソコンを買ったらこれを入れておけ 数学・物理編 お役立ちソフト・サイト

お役立ち情報まとめみたいなこともしようと思ったので, ちょっとTwitterで募集してみた.

YouTubeに動画でまとめるが, 教えて頂いたツイート自体はこちらにも転載しておきたい.

動画を作ってYouTubeにも上げよう.

追記: 動画作って上げた.

2015-06-02 とある大学ではコーヒーカップに「注意!これはドーナツではない」と注意書きがあるらしいので

トポロジーよくわからないし, 何かの機会に勉強したいと思っているのだがなかなか機会がない. 動画を作るとかそういうので強制的に学ぶ機会を作りたい.

2015-06-05 終結式メモ: いろいろ教えて頂いたので

これについて二つコメントを頂いたので記録.

Cox-Little-O'sheaは本を持っているというか, ある程度読んで見つけたタイポをお送りして「報奨金」を頂いた. 本やサイトに「タイポを報告してくれた人には一つにつき1ドルあげる」みたいなのがあったのだ. あとでまた見直そう.

もう一つ頂いたコメント.

代数的整数論, 本当に何でも使うなという感がある.

2015-06-06 かわず語録: 『考えればわかることでも記憶するべきことはある、ということと、話を聞いただけでわかった気になるのは非常に危険である』

私も高校の頃, ある数学の先生が「ノートを取らないで授業中に全て理解しなさい」とか何とか言われて物理の授業をノートを取らずにやってみたことがある. よかったのかどうかはよくわからないが, 少なくともいまの時点では記憶すべき点くらいはきちんとメモを取るであるとは思う. 適当に参考にしたい.

2015-06-08 Twitterメモ: 学者的な意味での難読外国人名

私の分野でNachtergaeleという有名人がいるのだが名前の読み方を忘れてしまった. 田崎さんも知っているようなのだが, 前に集中講義で九大の松井先生が名前を呼んでいたときにきちんとメモを残しておくべきだった.

math-textbookの数学・物理の英語パートに数学者・物理学者の名前の読み方と業績などの簡単な紹介をつけているが, そこも拡充したい.

やりたいことがたくさんある.

2015-06-09 業績紹介: 東大数理 小林俊行先生が2015年JMSJ論文賞を受賞

2015/3/20づけで 小林俊行主任研究員が2015年JMSJ論文賞を受賞というニュースがあった. ちょっと気になるところがあったので引用する.

根源的な表現は、「誘導」という既存の手法では構成不可能なところを、本論文では極小表現をシュレディンガー・モデルとして具体的に構成したその統一的手法が評価され、今回の受賞につながりました。

【シュレディンガー・モデルとして具体的に構成】というのが何を言っているのかとても気になる. これっぽいので論文読んでみたい.

同じくメインパートを引用しておこう. 毎度小林先生の多産性には驚かされる. ただ1000ページ書くだけでも大変だというのに, 他の人に伝わるように, 明快になるように工夫を凝らした1000ページを執筆する力も凄まじい.

受賞対象となった論文は、JMSJ 66 巻 2 号に掲載された、J.Hilgert、J.Möllers 両氏との共著による「ベッセル作用素による極小表現の理論」です (JMSJ 66 (2), (2014), pp.349-414: Minimal representations via Bessel operators)。

「無限次元表現」は対称性を代数的に広く捉える数学的概念で、量子力学とも深く関連する一方、解析が難しいことで知られています。近年の代数的表現論の進展により、“根源的な表現”は、無限の次元とはいえども、ある意味で“小さい空間”に実現されることがわかってきました。「極小表現」と呼ばれる無限次元表現が、その最も重要なものです。 小林氏は、「表現の空間が小さい⇔空間から見ると対称性が大きい」と視点を逆転させることによって、極小表現をモチーフとした解析学の豊かな将来性を予言し、新たな数学の道を切り拓いて数学に画期的進展をもたらしました。同氏は、ドイツ、フランス、アメリカ、デンマーク、日本等の研究者グループを主導し、「極小表現の大域解析学」というテーマに関して、2003年以来、1000頁以上の論理の積み重ねによって、表現論のみにとどまらず、共形幾何学、シンプレクティック幾何学、フーリエ変換の変形理論、偏微分方程式の保存量、4階の微分方程式に対する特殊関数論など様々な分野の研究に影響を与えてきました。根源的な表現は、「誘導」という既存の手法では構成不可能なところを、本論文では極小表現をシュレディンガー・モデルとして具体的に構成したその統一的手法が評価され、今回の受賞につながりました。

2015-06-10 ページ・活動紹介: 京都数学グランプリ2015 ~めざせ!国際数学オリンピック入賞~ (第57回IMO香港大会)

知人が関係しているとのことなのでとりあえず宣伝協力.

当面の自分の目標として, やはり数学関係の活動をマネタイズに結びつけるところを強化していきたい.

2015-06-11 2015-7中旬に『数学まなびはじめ3』が出るらしいので皆買おう

購入必須事案だ. 数学まなびはじめについてはいくつか書評を書いている. 例えばここを参照してほしい. 皆も買って「こんなのを求めていた」という要望を形にしていこう.

2015-06-13 ツイート・イベント紹介: 2015年モデル理論夏の学校は8/22-24に法政大学で決行

非専門もはなはだしいが, こういうのも一度は参加してみたい. 都合合うだろうか.

2015-06-15 ツイート紹介: 初学者向けの解析学教材を作ろうメモ

そして黒木さんのツイート.

この辺もきちんと教材作りたい. TODOリストに入れておこう.

2015-06-16 ツイート紹介: 簡単に靴紐がほどけなくなる結び方「イアンノット」

数学的に何か意味あるのだろうか. とりあえず記憶しておきたい.

2015-06-20 ツイート・論文紹介: ドラクエなどのゲームのトーラス世界とその実三次元での実現

論文読めないので悲しい. こういうとき市民であることがとてもつらい.

追記

今見たらリンク先ページのPDFのところから論文ダウンロードできた. ざっとは目を通したのだが, まだあまりよくわかっていない.

読書メモ: 2015/6/5発売予定『プロの数学』松野陽一郎(東京図書)

最近受験まわりもカバーしようと画策しているのでとても気になる. ほしい.

2015-06-25 ツイート紹介: 先日なくなった伝説のNashの推薦状をPrincetonが公開していたので

話は本当だったのか. Facebookに上がっていた画像は保存しておいた.

2015-06-27 【0は自然数】に対するオタ向け説明を思いついたので適切性について諸賢のご判断を仰ぎたい

0は自然数という時々話題になるネタがまた降ってきたので. 適切かどうかわからないのだがオタの人向け回答を思いついたので, 残しておいて諸賢の判断を仰ぎたい. もちろんより良い説明を求めているのでご指摘頂ければ幸い.

そして回答編.

<blockquoue class<"twittes-tweet" lang="ja">

@cornpt@aqn_流派というか、分野や話題によって0を入れるか入れないかで都合の良し悪しがあって、その分野をまたいだ文章を書くとき、変えた方が都合よければ変えるという感じでしょうか

— 相転移P(市民) (@phasetr) 2015, 6月 6

説明する技術の不足を感じるので日々鍛えていきたい.

2015-06-28 ツイート紹介: 位相幾何学型同値変形ゲーム 「ライデマイスター

よくわからないがとりあえずメモしておく.

2015-07-03 ツイート紹介: $n$番目の素数を$n$で表す式はいくらでも見つかっている

単純に知らなかったのでメモ.

あとで動画にしよう.

追記

素数Tシャツ‏@shinchan_primeさんが証明を上げてくれた. あとできちんと見よう. 本当にありがたい.

2015-07-06 ニュース紹介: 「東大など、コバルト酸化物で「悪魔の階段」と呼ばれる磁気構造を解明」というのでついつい Lebesgue 積分論のアレを想起してしまう方の市民

次のニュースを見かけた. 東大など、コバルト酸化物で「悪魔の階段」と呼ばれる磁気構造を解明

私も物理としては磁性(強磁性)の人間なので気にならないこともないが, それ以上に目を引いたのが「悪魔の階段」だ.

数学ではCantorによるCantor関数を「悪魔の階段」と呼ぶ. 測度論・Lebesgue積分論で必ずお目にかかる関数だ. 積分論は私の専門の基礎でもある. その部分について英語版Wikipediaから引用しよう.

In mathematics, the Cantor function is an example of a function that is continuous, but not absolutely continuous. It is also referred to as the Cantor ternary function, the Lebesgue function, Lebesgue's singular function, the Cantor-Vitali function, the Devil's staircase, the Cantor staircase function, and the Cantor-Lebesgue function.

物理での命名者, これを知って命名したのかとかそういう物理としてどうでもいいところが無性に気になった.

2015-07-07 たいちょうさんと宇宙賢者から頂いた評が面白かったので記録する

人からそう見られているのか, というのかちょっと驚きだったのでメモ.

Twitter ではかなり苛烈な物言いをしている自覚があるので, 人当たりが優しいというの, 割と衝撃的だった. 女性と思われていたというのもはじめびっくりしたし, 研究者ではないというのについてはそうではないと何度も言っているので結構驚く.

追加のやりとりもある.

人によって見ているところ, 感じ方は本当に違うのだと改めて認識させられる一件だった.

あと宇宙賢者からの評.

目がよくないというのもあるし眼鏡をするのもめんどいので大体いつも前にいる. あと研究会でもよく質問しているのだが, 実際にこう見られているというのを目にすると, なかなか面白い.

2015-07-09 大学数学いい話: 本格的な数学を学びたいなら足もつかず荒波もある海で泳ぐための練習をしていこう

何というか, この辺で何かできないかと前から思っている. とりあえずは大学受験回りでこの辺に関わる活動をしてみよう.

2015-07-10 素数が無限個存在することのよく知られた「新たな素数を作る」方法に関する未解決問題とその難しさの片鱗を知ったので

ぱっとこれだけのことを返してくる力量, 格好いいことこの上ない.

2015-07-13 ツイート紹介: 周転円とFourier級数

周転円でうまくFourier級数が書けるという話らしいが, 単純に見ていて楽しいのがすごい. こういうのをどんどん作りたいとは思っているがなかなかうまく勉強の時間も取れない. せめて紹介くらいはしていきたい.

2015-07-14 量子力学の連続スペクトル周辺の話: 田崎さんと全さんのトークまとめプラス私の雑感

大枠

別枠1

別枠2

コメント

全さんの話, 滅茶苦茶面白いし何か協力したいくらいなのだが, 量子力学の物理があまりにも何もわかっていないし, Sobolev に耐える力が私にないしであまりにもつらい. 引用されている『Solvable Models In Quantum Mechanics With Appendix Written By Pavel Exner』, Albeverio, Hoegh-Krohn, Exner とバリバリのその筋の人達ではないか. AlbeverioとHoegh-Krohnは相対論的場の量子論の頃からいる重鎮だと思う: 相対論的場の量子論は難しすぎて手に負えなかったのでほとんど名前しか知らないのだが, 面子がすごい.

こういうのを何かのんびり勉強したいとは思うのだがなかなか思うに任せない.

日記から

あと田崎さんの日記. メモがてらいくつか引用しておこう.

その間、物理学者が量子力学の応用の幅を広げ理解を深めているあいだ、数学者たちも量子力学の数学を徹底的に深く追求して行った。 そして、特に自己共役作用素とスペクトル分解についての美しく有用な(ただし、あいかわらずかなり難しい)体系ができあがったのだ。 これは、「量子力学において確定した値をとりうる量とはなんだろうか?」という物理的な問への確固たる解答だと言ってもいい。 物理学者が、有限次元の線形代数とのアナロジーでなんとか作り上げた体系に、きわめてしっかりとした論理的な基盤が与えられたのだ。

ところが、悲しいことに、こうやってせっかく完成した数学の成果が物理のサイドにはほとんど浸透してきていない。 もちろん、量子力学の数学はかなり難しいし(←ぼくも圧倒的に不完全な知識しかない)、数学の定式化を学んだから物理の問題がすらすらと解けるようになるわけでもない。 そうはいっても、人類の文化として考えたとき、量子力学の基礎概念がどこまでしっかりと理解されているかくらいは、やはり多くの人が共有しなくてはいけないと思うのだ。 そこまで大げさにならなくても、「習うより慣れろ」的にいい加減に物事を進める方向に流れないためにも、基礎をしっかりと学ぶのは重要なはずだ。 それは、量子力学の学部での入門的な教育についても(あるいは、入門的な教育についてこそ)言えることではないかと考えている。

量子力学に限らないが, 物理の具体的な問題をきちんと数学的に議論するために必要なハードルの高さは尋常ではないし, 量子力学の数学的基礎だけ特別扱いするのも難しいとは思いつつ, (私個人の思いとしても)物理的な意義が十分あるとは思っているのでつらい.

ていうか、今の場合は露骨に「物理的にやばい」とわかったけれど、もっと複雑な問題になったら、果たして考えている演算子が「やばい」か「やばくないか」など簡単にはわからないではないか。

これはよく感じるのだが, 物理ができない私がいってもまるで説得力ないのでつらい. 「まずはもっと物理やれ」という話になってしまう.

そして、素晴らしいことに、自己共役演算子については(この表現はかなり不正確だけど)

固有状態(および「固有状態もどき」)をすべて集めたものは正規直交完全系をなす

という(本当の)定理が知られているのだ。

きちんと書いてわかる人ははじめから知っている人だけなのでこれがどう不正確かということだけ説明しておこう. 例えば$\mathbb{R}^3$全体での自由粒子のHamiltonianを考えると$H = - \triangle$で, スペクトルは$[0, \infty)$だ.

そしてこれの固有関数もどきは$\psi_k (x) = e^{ikx}$になるが, 今$\mathbb{R}^3$全体で考えているからこの$\psi_k$は規格化できない(無限大になる). 数学的には Hilbert 空間 $L^2$ (または Sobolev 空間 $H^1$) に入っていないということだ. しかし $H \psi_k = k^2 \psi_k$ で形式的に固有関数になっている. 話が少しずれるが, この $\psi_k$ は緩増加超関数ではあり, そこで考えれば確かに固有値なので, 超関数までいけば一般固有値展開という形で正当化できるとか何とかいう話は聞いている. 相対論的場の量子論の人達はこういうことを地道にやっていた人達だ. とてもつらい分野なので常人には決しておすすめしない.

少なくとも数学・物理の双方で私を遥かに越える程度の力はないと無理だろう. やったからといってそのあとの業績に結びつくような展開が あるかどうかも微妙な情勢ということもある. そういう状態ではベテランも若手も, 物理の進展や自分の学者としての生存ににとって どれほど意味があるかも微妙なこの辺の話題に手は出せないだろうな, という気はする. いつもの「気になるなら自分でやるしかない」事案だった.

2015-07-19 数学者の数学史と哲学者・歴史学者の数学史の食い違い: WeilとUnguruの戦い

Paulといい木村さんといい, 数学者は本当に面白い情報を教えてくれる.

読みたい本リストがたまる一方で本当に困っている.

2015-07-21 動画・PDF紹介: 線型圏の導来同値と被覆理論

あとで動画もPDFも見ておこう. 楽しそう.

2015-07-23 イベント宣伝: 2015/11/28-29 第 16 回高木レクチャー @東大数理

イベント告知ということで高木レクチャーだ.

講演者などを引用しておこう.

平成27年11月28日(土)-29日(日) 東京大学大学院数理科学研究科 大講義室 招待講演者: • Fabrizio M. E. Catanese (Universität Bayreuth)

• Jean-Pierre Demailly (Université de Grenoble I)

• 柏原正樹 (京大数理研)

• Shing-Tung Yau (The Chinese University of Hong Kong and Harvard University)

Cataneseは今回はじめて知った. 代数幾何・複素解析の人らしい.

Demaillyは複素解析幾何とかその辺の人だ. その筋で有名な仕事をした人というのだけ知っている. multiplier idealだったか.

柏原先生はあの柏原先生だ. 修論がいまだに引用されるとか何とかいう, 学生の頃から意味不明なクラスの化け物だった人で, SKK(佐藤-柏原-河合)など専門がまるで違う私でも知っている. 結晶基底や表現論の周りで異常なくらいいろいろやっている.

Shing-Tung YauはFieldsを取ったYauだ. 以前東大であった講演会に来ていて, 就活のとき, 面接の日をずらしてもらってまで講演に参加した記憶がある. もちろん何が何だか全くわからなかった. 業績は当然Fields関係のCalabi予想の解決がある. いまCalabi-Yau多様体は物理の超弦理論で 使われるという事情があって, 超絶基礎理論となっていると聞いている. 他にも正質量予想(名前しか知らない)の解決などいろいろやっている. 非線型偏微分方程式の激烈にハードな計算を完遂しきって, 微分幾何の難問を解いていった部分が主要な業績なのだと勝手に思っている.

これも行きたい.

2015-07-28 【必読書】『数学まなびはじめ 第3集』が出たので数学関係者は必ず勝って読もう

問答無用で買う. どの人の文章も本当に面白い. 2集までで終わりではないのは知っていたので他の人の分も読みたいとずっと思っていたが, ようやく出てくれた.

皆も買って読もう. 応援しないとこうした本の第二弾・第三弾が出てこない. 市民との約束だ.

2015-08-05 文献紹介: 導来圏・非可換幾何の基礎文献っぽい Kock, Pitsch, Hochster duality in derived categories and point-free reconstruction of schemes

気になる分野・文献の話だったので.

Joachim KockとWolfgang PitschによるHochster duality in derived categories and point-free reconstruction of schemesのarXivへのリンクはここだ.

非可換幾何・非可換微分幾何, ちゃんと勉強してみたいのだがそもそもどんな本を読めばいいのかからしてよくわからないのでつらい.

まずこれを読んでみたい.

確か前田先生か誰かの非可換幾何の本が出るというのを以前見かけたが, あれはどうなっているのだろう.

2015-08-06 京大, 藤野修さんの【Recent developments in the log minimal model program(対数的極小モデル理論の最近の発展について)】が面白かったので

京大数学の藤野修さんのサイトに置いてある, 第50回代数学シンポジウム報告集 p151--p162 (2005)の【Recent developments in the log minimal model program(対数的極小モデル理論の最近の発展について)】を紹介してもらったので読んでみた. 全体的に教科書や論文のようなかちっとした体裁ではなく, 苦労している部分も含めて数学者が数学している感じがとても楽しい.

直接のリンクはこれだ. ぜひ読んでみてほしい.

2015-08-30 ツイート・論文紹介: 可算パラコンパクトでない正規空間の具体例

覚えておきたい. あと論文はここから落とせる.

2015-09-02 ツイート紹介: 次元論のPDFと位相次元論

とりあえずメモ. 後で読みたい.

2015-09-03 名古屋大学がネットで講義を公開しているらしいので: 梅村浨先生の最終講義PDFを読んでみた

名大が講義をネット上で公開しているらしいのでとりあえずメモ.

多元数理のページはここ.

梅村浩先生の最終講義資料, 『射影極限と帰納極限』が気になったのでとりあえず落としてみた.

最後の方, Paul (Painleve)が出てくるので何故か笑った.

微分Galois理論は人間の 情熱を駆り立てる

という謎の1ページがあった. あと無駄にカラフルに強調された次の名言も紹介しておきたい.

世の中には面白いものが多すぎる.

春の夜は 櫻に明けてしまいけり 芭蕉

最近ろくに数学できていなくてつらく悲しい.

2015-09-05 読書メモ Brezis, Functional Analysis Sobolev Spaces and Partial Differential Equations

HuybrechtsのComplex Geometryに飽きてきたので気分転換に読んでみる. あまりよくないかもしれないが, プロでもないしいいだろうという方向で.

P.92 H\"{o}lder

Youngの不等式の証明をいつも覚えていられないのだが, ここにあるようにlogの凹性なら覚えていられそう. 助かる. Remark 2. に結果の一般化と interpolation も書いてあった. Interpolation 周辺は PDE だと大切らしいのでとりあえずメモ.

P.93 Riesz-Fischer

(L^{p}) は (1 \leq p \leq \infty) で Banach 空間. (L^{1}) と (L^{\infty}) のペア, 特に (L^{\infty}) の双対空間がいまだにあまりよくわかっていない. 特に (L^{\infty}) は可分でもないし, めっちゃ魔界だと思う.

この前後の結果, きちんと証明つきで覚えた方がいいのだろう. 解析学での修士だというのに反省している.

P.97 Riesz representation theorem

愛してやまない.

少し話がずれるが, Sobolev 力が低過ぎるので, Sobolev に行ったときの話が全くわかっていない. 特に自分自身を dual にするかどうかのあたり, そのメリット・デメリット.

P.102 (L^{\infty}) の双対空間

(L^{\infty}) を可換 von Neumann 環と思って Gelfand-Naimark を使う話を説明している. Radon 測度の話をしているが, いまだに Radon 測度の定義を覚えていないし, Borel 測度との区別もついていないのが本当に恥ずかしい.

というわけで復習.

定義: Borel 測度

Borel 集合の (\sigma)-代数上で定義される任意の測度 (\mu) を Borel 測度という. Borel 測度が内部正則かつ外部正則なら正則 Borel 測度と呼ぶ. (\mu) が内部正則かつ局所有限なとき Radon 測度と呼ぶ.

定義: Radon 測度

任意の Borel 集合 (B) の測度 (m(B)) が (B) に含まれるコンパクト集合 (K) の測度 (m(K)) の上限として得られるとき, 測度 (m) は内部正則 (inner regular) もしくは緊密 (tight) であるという. 各点が測度有限な近傍を持つとき, 測度 (m) は局所有限 (locally finite) であるという. 内部正則かつ局所有限な測度 (m) をラドン測度と呼ぶ.

P.103 (L^{\infty}) の非可分性

証明はわかるが気分的にいまだによくわかっていない. (L^{\infty}) と言えば私の魂たる von Neumann 環の可換版でもあるのだが, 考えてみれば von Neumann 環もいまだにまるでわかっていなかった. 酷使するだけして何もわかっていないというの, 本当につらい.

P.104 たたみ込みと正則化

明らかに超大切な節. Young, きちんと証明で使われる式変形の技巧を 覚えておかないと本番で使えない.

P.106 Proposition 4.18.

前, 日本語でこの本読んだのに たたみ込みの台特性をすっぱり忘れていたのでつらい.

P.106 Proposition 4.19.

たたみ込みによる正則化の基礎. とても大切: Proposition 4.20. では実際に (C_{c}^{k}) で証明する. (C_{c}^{\infty}) でたたみ込んで, 滑らかな関数に対して証明してから density argument で全体に持ち上げるのは基本戦略だ.

P.108 Mollifiers

我等が軟化作用素. 幾何でも使うし愛してやまない. 昔, 音だけ聞いて modifier だと思っていた. 意味として大きく外しているわけでもない.

P.111 4.5 Criterion for Strong Compactness in (L^{p})

細かいことは忘れたが, 修士のとき, ゼミで河東先生に Ascoli-Arzela について 何か突っ込まれたときのことを思い出してヒヤっとした.

P.111 Theorem 4.26 (Kolmogorov–M. Riesz–Fréchet)

部分領域への制限は (相対論的) 構成的場の量子論や統計力学での基本戦略だが, 私はその辺ほとんど触っていないのでこの定理の使いどころがよくわかっていない. Corollary 4.27 も使いどころわからない. 多分あとで出てくる感があるので楽しみにしておく. useful と書いてあるが, 判定条件としての Corollary 4.28 は確かに有能感漂う. こういう感触, 【素人】には通じづらいだろうなというのを最近よく感じる.

2015-09-06 暗号と数学と勉強: みどりのらいおんさんとのやり取り用取りまとめ

はじめのメモ

改めて考えをまとめておこうと思ったので, ちょっといろいろ書く. まずは発端のやりとりから.

で, ちょっとやりとり.

とてもつらいところがいくつかある.

素因数分解が理解できれば暗号サイトを一から作れるんだぞ

まず悲しいお知らせだが, 現代的にやるのなら 使う数学は学部上級から大学院レベルの数学科の数学だ. 理工学部の人間にすら忌み嫌われる数学科の数学なので, とてもつらいことになる. もちろん適当に簡略化させれば暗号化することはできるだろうが, その簡略化をするために既に知らないといけないことがたくさんある. 適切な指導者がいればともかく, 暗号の詳しい知見を持つ人が身近にいる環境, そうはないだろう.

サイトを作るというのでどこまで想定しているかによるが, プログラムも組まないといけないので, プログラミングの技術も必要だ. それなりにハードルは高い. サイトを 1 から作ること自体にもハードルは高いだろう.

暗号の歴史を含めた概要については 次のサイモン・シンの『暗号解読』がお勧めだ.

最後にも少し紹介する.

ちょっとは魅力的ですかね…

そしてこれがまた厳しい. 何が魅力的でどう導けばやるかという段になると 個々人の興味・趣味・性向に合わせてやる必要があって, 基本はそれぞれに向けてチューニングがいる. 同じく指導者の力量も問われる.

理学系の『楽しい』『美しい』が好きな勢は放っておけばいい. 私と同族だから扱い方は熟知している: とても簡単で, 適当な専門書でも渡しておけば 勝手にやり続ける. ただし世間から『役立たずで気持ち悪い』と蛇蝎のように嫌われる. 理工系キモオタに育つと思って頂ければいい. それで良ければ, という条件つきになるので社会は厳しい.

数学をやっていて嫌なことはたくさんあるが, 良かったことは数学をやっているときくらいしかない. 学生の頃に何をしていたのかとか, 普段何をしているのか と言われて『数学です』と言うと, 『学生の頃, 数学は大嫌いだった』とばかり言われる. 自分がこよなく愛することに対して否定的な意見ばかり 聞かされるのでただひたすらにうんざりする記憶ばかりだ.

いろいろあってよく『役に立つことを教えてほしい』という人がいるが, これはまだ扱いやすい. 役に立つことを伝えておけば勝手に動いてくれる (はずだ) から.

そして大多数の人が一番扱いが難しい. 『何の役に立つ』と聞いてくるが, 役に立つことは求めていないことが多い. 実際に何を求めているのかは本当にわからないが, 具体例には事欠かない.

まず『英語は役に立つ』と言われるし, 実際にどうかはともかくこの意識は浸透している. かといってきちんとやる人は少ない. むしろ英語を嫌がる人の方が多いくらいではないか. 嫌がるに至る経緯もいろいろあるけれども.

数学が役に立つ系の話だと, Google の検索アルゴリズムのページランクで 連立一次方程式を使うと浪人生に説明したことがある. そしたら返答で『自分は Google のページなんて使わない』と来た. 『これこれこういう理由で貴方も使っています』と言っても 聞きはしなかった.

こういう感じの絶対多数に対してどうするかというと, 個別の話しかない. そもそも結果的に数学的な成果を使っている人というわけではなく, 積極的に数学を使いにいく人, 相当のエリートだろう. 皆が皆必要なわけではないし, 実際に数学よりも優先度が高い学ぶべきことがある人もいるはずだ. その中で数学を頑張らせる理由をどう作るか, 作るべきなのかとかいろいろ面倒なのでとてもつらい.

Twitter でもいろいろな意見が出ているが, 数学を頑張らせる積極的な理由, 私はいまだに見つけられない. むしろ地歴公民をはじめとする人文・社会学系を きちんとやる方が一般にはよほど大切ではないかと ずっと思っている.

サイモン・シンの『暗号解読』がお勧め

いろいろと否定的なことばかり言ってきたが, 歴史を含めて暗号に関していろいろ知りたいなら 次のサイモン・シンの『暗号解読』がお勧めだ.

昔からどんな暗号がどのように使われてきたのかわかる. 簡単な暗号については方式も説明されている. 情報戦への利用もあるから, 第二次世界大戦で本格的に数学が使われはじめたことや, 現代のネットワーク時代の情報セキュリティでも 数学が使われていることも説明されている.

市民の生活の情報保護にも使われていて役には立っているが, 情報戦含めた戦争利用もされていて, 役に立つから嬉しい, 皆もやろうとかはいいづらい. とてもつらい.

追記

そのあとやり取りが追加されたのでそちらもまとめておく.

楽なことはないな, ということで.

2015-09-06 Qiitaの『【統計学】初めての「標準偏差」(統計学に挫折しないために)』という記事読後の覚え書き: 標準偏差, まずは単純に【平均からのずれ】と思えばいいのではないか事案

統計学の基本的な知見に関するとてもつらい記事を見かけたので.

平均に関する話で有名なのは, 例えば【正規分布が二つあった場合】の話.

こういうのもアレだが, ある模試を学力的に大したことがないA高校と灘高の2高だけが受けたとしよう. そのときの得点を見ると, A高校と灘高校とで得点分布がきっぱり別れるはずだ. 両校ともに正規分布で分布しているとすると, 普通の模試とは違ってグラフに山が二つできるはず. こういう状態で全体の平均を取っても意味はなくて, 学校ごとに見ないと意味がないはずだ, という感じの話.

ちなみにこのような評価も頂いている.

2015-09-09 神戸大 渕野昌さんの書評『[[[不完全性定理に挑む]に挑む]に挑む]』

神戸大 渕野昌さんの書評『[[[不完全性定理に挑む]に挑む]に挑む]』

とりあえずダウンロードしておいた. 後で読む.

無限に本が読みたいし, 研究したい. 時間と資金がほしい.

2015-09-15 読書メモ: 『数学セミナー2015-09 号』面白記事メモ: 早く読みたい

買うだけ買ったはいいが, まともに読めていない. さっさと読もう.

2015-09-19 英語とかフランス語の勉強に数学を応用していきたいのでとりあえずメモ: SAT の数学試験を使ってみるのはどうかという話

これ, 今度フランス語でやってみよう. しばらく時間が取れないがフランス語は絶対勉強したい. Serreとか原文で読んでみたい.

2015-09-22 ボルツマン方程式とナビエ・ストークス方程式

物理の話, 基本的に適用限界があるのでただ単にその話というところか.

あとで原文も読んでみよう. とりあえずメモ.

2015-09-22 2015-09-21に武蔵美とドイツのコラボイベントGo publicでパフォーマーデビューしてしまった顛末のまとめ

何と言ったらいいかわからないのだが, 結果的に数学の路上パフォーマンスデビューしてしまったことになったので報告したい.

はじめ武蔵美にいる知人から「イベント来ないかベイベー」的な話が来たので, 時間もあったから行くと答えたところ, 何故か実際に何かやることになっていた.

どういうことなのかよくわからなかったが, 模造紙とマジックを買ってもらい, 谷中墓地の中にある【貸はらっぱ音地】というただの空き地としか形容できない場所で模造紙にマジックで数学の証明とかを書き続けるという謎のパフォーマンスに興じた.

アート系だとこういう路上パフォーマンス的なことはよくやるのだろうか. 本当に全く意味がわからなかったのだが, 模造紙とマジックを買ってもらってしまったので, Brezisの関数解析と偏微分方程式の有名な本の最近新しく出た英語改訂版を元に, Sobolev空間の話としかしていた.

通りすがりのお姉さんと

  • 「何をしているのですか」
  • 「数学です」
  • 「他の方たちは?」
  • 「何かよくわかりませんがアートです」

みたいな会話をしたりした.

この他の人達のアートというのも謎で, 1 人は座りながら落語をやっていた. 「これもアートなの」感溢れる謎のパフォーマンスだった.

他にも光の映像系の人がPCとプロジェクターを使って民家の壁に映像を映していた.

あとまさにパフォーマーという方が何か謎の踊りを踊っていた. 数学していたのでほとんど見ていなかったが, 多分見たらMPを吸い取られていたと思う.

民家とか谷中のお寺がある往来で, 落語・映像作品・ふしぎなおどり・数学が展開される初体験の空間だった.

こういうのよくやるのか, そう思っていたら, 何かこういろいろな方面から混ぜて(路上で?)やること自体は当人的にも割と初の試みらしかった.

どう次に繋げていけばいいのかはわからないが, とりあえずパフォーマーデビューしたということで報告していきたい.

あとその人とも少し話したのだが次に備えて反省をしておきたい.

はじめやる場所や目的などがよくわかっていなかったこともあり, 証明とか見えるように模造紙+マジックで通りすがりの人にも見えるようにした方がいいのだろうかとか思ったが, そもそも18時過ぎで暗くてろくに見えなかった.

あと原っぱというか, 石塊が散乱した地面に模造紙を敷いて書いていたので超書きづらかった.

証明もバンバン書こうと思ったのだが書きづらくて仕方なかったので, 定理のステイトメントだけ書くような形になってしまったのが反省点だ.

これならスケッチブックを買って, ばんばん証明も書いて, 書いたページはその辺に散らかしておく感じの異常な方向にシフトすればよかったのでないかという話になった. 次回はこの方向で行きたい.

とりあえず何か新しいことを模索している. せっかくアート系の人と知り合えたので, またこういうパフォーマンスやってみたい. 次回はスケッチブックを持ち, 座りながら書くのが楽になるよう小さな椅子も持っていきたいと思っている.

2015-09-25 鹿児島県の異常な知事, 伊藤祐一郎大先生の発言を受けて KenSenda さんに語呂のよさや印象に残る言葉の重要性を教えてもらったので

KenSendaさんに思いもがけず大切なことを教わったので記録. 発端はこの辺.

そしてKenSendaさんのこのツイートを受けて少しやりとり.

最近, 受験界隈に本格的に乗り出しているので, 改めて暗記法的なこともいろいろ調べ直したりしているが, 語呂による暗記の威力を改めて思い知らされる結果になった. 語呂による暗記本, もっと徹底的に調べよう.

KenSendaさんはいつもいいことを教えてくれる. それはそれとして, 真面目な話, 鹿児島の異常な県知事 伊藤祐一郎御大は安倍談話

二十一世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいります。

に照らし合わせて厳しく処罰してほしい.

2015-09-26 SEALDsの運動の問題はそのまま数学・物理・学術界隈が抱える問題なのでとても勉強になるし, この不快感を踏まえて今後の活動に活かしたい

安田峰俊さんの「なんかSEALDs感じ悪いよね」の理由を考える ──中国や台湾の学生運動との比較から──という記事が今話題らしい. 明らかに大切なのは次のところで, 数学・物理や大学を取り巻く環境でも大事なことで, 私にとっても他人事ではない.

敗軍の将、兵を語る

そんな王丹氏は、1994年に日本の月刊誌に寄稿した手記(『現代』‘94年7月号。伊藤正氏が編訳)のなかで、天安門の運動が失敗した原因について興味深い考察を残している。王丹氏が述べた「天安門版、失敗の本質」は、大別して以下の4点にまとめられる。

1:思想的基礎の欠如 一人一人の参加者が「民主や民主運動について明確な概念」を欠いていた(つまり、民主主義が何なのかはっきりわからないままデモをおこなっていた)。結果、明確なイシューを打ち出せないまま天安門広場の占拠が長期化。時間とともに運動方針が混乱していった。

2:組織的基礎の欠如 参加者に対するしっかりした指導の中心や指揮系統が存在しないせいで、途中から運動が四分五裂に陥った。

3:大衆的基礎の欠如 学生と知識人だけで盛り上がってしまい、一般国民(労働者や農民)への参加の呼びかけを怠った。また、政府内に存在するはずの改革派と「暗黙の連合」を組む姿勢をとることもできなかった。

4:運動の戦略・戦術の失敗 運動を政治目的を達成するための手段として使うという意識が薄かった。デモ参加者たちは学生運動の“純粋性”をひたすら強調し、当局側への妥協や一時後退といった柔軟な戦術を一貫して否定。結果、ろくな目的もないまま天安門広場の占拠を長期間続け、弾圧を招くことになった。

特に大切なのは次の 2 点だ.

  • 3:大衆的基礎の欠如
  • 4:運動の戦略・戦術の失敗

【いい加減】な記述や説明ができず, かといってきちんとした説明は時間がかかり, 聞いてくれるのは内輪の人だけになってしまう問題, 正確に自分にも跳ね返ってくる.

【いい加減】と言い切った上で薄めのコンテンツを作りつつ, きちんと特濃のコンテンツを作ってみたりとかいろいろ実験してみたいし, むしろやらなければいけない.

これから次のプロジェクトをやろうと思っているし, その運営でも十分にも気をつけたい.

2015-09-26 数学の環の由来, ringがよってたつところに関する数学者トークの収録

記憶しておこう.

2015-09-27 数学の哲学の悲しみ: どんな人達がどんなことをやっているのだろう

とても悲しいことがあった.

Ask.fmから全文を引用してこよう.

数学基礎論と数学の哲学が接続することは今後ないのでしょうか?

昔聞いた「数学の哲学」と称されていたWSでは、フッサールが専門だという発表者が、現代数学において開集合の方が閉集合より基本的な概念だと述べていました。数学の哲学がそういうものであれば、数学基礎論と接続することは今後ないと思います。

数学の哲学, どんな人達がどんなことをやっているのだろう. やはり断片だけでは何もわからない.

2015-09-28 数学をすると格好いいとか, そういうもっと下らない理由から数学をやってほしい: 鹿児島県の異常な知事, 伊藤祐一郎大先生の発言をうけて

先日, 異常な鹿児島県知事が女性に三角関数は不要ではないかという面白発言で盛り上がったが, その辺の話で適当に話題を拾ってきた.

あとせっかくなので少しやりとりしてきた.

役に立つかどうかではなく, もっと格好いいか格好悪いかとかそういう役に立たない理由で選んでいってほしい.

2015-09-30 学校の先生に期待をし過ぎるのはいい加減やめたらどうか: 三角関数教育事案

サインカーブを描いて、円と対応させて、「sinの位相をずらしたものがcosです」って感じで教えるわけですが、これ、教えてる本人も何を言ってるのか解ってないんじゃないの感が半端ないです。

位相なんて言葉, 数学では出ないだろうとかそういうアレはあるがそれはそれとして.

問題は数学の授業がつまらないということです。

私に関していうなら, 皆が「つまらない」「わからない」という先生の授業が 死ぬほど気に入っていた方なので, お互いに「お前の感想など知るか」事案になってしまう.

もういい加減, 学校に期待するのやめた方がいい. 教師に無限の能力を期待し過ぎだろう. 気にいらないならできる範囲で各自の思うことをやった方が自分の精神衛生にもいい. もちろん, 教員がある程度面倒を見た子供の人生を背負わされるように, 自分自身も子供たちの人生に責任を負う覚悟のもとで.

私も私で引き続きやっていこう.

2015-10-01 Euclid『原論』, Hilbert『幾何学の基礎』, そしてTarskiやAvigadによる文献

まずは鴨さんツイート.

黒木さんツイート.

読む機会なさそうだがとりあえずメモだけはしておきたい. それにしても何でみなこんなにいろいろ知っていニのか.

2015-10-02 齊藤毅先生の微分積分の教科書に関して著者自身のコメントPDFがあったので

齋藤毅先生の微分積分の教科書に関して著者自身のコメントPDFがあったので.

先日, 異常な鹿児島県知事が女性に三角関数は不要ではないかという面白発言で盛り上がったが, 三角関数に関するコメントも最後の方にある.

こういろいろと思うことはあるが, うまく言葉にまとまらない. とりあえず私も適当に自分好みの教材とか作っていきたい.

2015-10-07 CoKernelはKernelの普遍性図式を逆にして覚えればいい

CoKernel, いい加減に覚えたいし, コホモロジーもきちんと勉強したい.

2015-10-09 【数学・物理をともに学ぶコミュニティ形成プロジェクト】の動画講義計画の素案を作ってみたので何かご意見あれば頂きたい

やるやる詐欺状態が長く続いていた物理のための数学講座は正式に停止した. 後継プロジェクトとして 数学・物理をともに学ぶコミュニティ形成プロジェクトをはじめる. 無料版として物理のための数学講座でやろうとしていた分をやっていきたい.

物理のための数学講座が頓挫した理由の 1 つは 完全に体系だった内容で作り込もうとしたことにある. 細かいところは気にせず, がんがん動画講義や その講義資料を作っていく中で緩く体系立って学べる感じにする.

がちがちに体系立ててコンテンツを作ることを 放棄するので私としても作りやすくなる.

基礎コンテンツは定評ある本を勧めることにして, その副読本というか副読コンテンツとして いつも通りでぶっぱなしいくことにしよう. 対象は学部の物理で使うレベルの数学だ. 相対論も一般相対論になると微分幾何入門的な話があるが, これをどこまでやるかは結構悩んでいる. 一般相対論も微分幾何も怪しいからだ. 趣味で勉強ついでにゴリゴリの微分幾何をやってもいいのだが. 「一般相対論のこの本のこの程度で十分だ」 みたいな情報があればぜひ教えてほしい.

数学・物理的専門の関係もあるから, 数学としては解析学, 物理としては量子力学系統がメインになってしまうだろうが 再勉強しつついろいろやりたい.

いまのところ動画の講義計画は次のような感じ. 物理もやりたいがとりあえずは数学に集中する. ついでに math-textbook も充実させたい. ただこれやると時間がかかり過ぎるので とりあえずは講義メモ程度にしかならなそう. スピード上げたいというのもある.

イントロ 1 の【講演原稿 線型代数と微積分: 大学数学入門】とか 東工大と津田塾でやったとき 3 時間くらいかかったし, 複素解析のショートコースも 3 時間くらいかかった覚えがある.

いわゆる物理数学の中で複素解析は結構独立している感じはあるし, 留数を使ったテクニカルな計算で使うし, 早めにやってしまいたい.

他にも「これがあった方がいいのでは」というのがあれば ぜひ教えてほしい.

何にしろ超概要なので, そのうちどんどん詰めていく. 適当な手持ちの本のレビュー的な感じに なっていくのではないかと思っている.

普通にやってもつまらないし, 意味もないので がんがん殴りつけていきたい.

  • イントロ 1
  • https://github.com/phasetr/math-textbook の【講演原稿 線型代数と微積分: 大学数学入門】
  • 次の数学と物理の関係.
    • 作用素論, 半群理論, Hilbert 空間論, 変分法.
    • 量子力学, 変分原理.
  • イントロ 2
  • 直交関数系, 具体的な偏微分方程式の解法, Fourier 解析, 複素解析.
  • 静電気学, 量子力学, 適当な学問・現象.
  • イントロ 3
  • 固体物理 (スピン系, Hubbard モデル) の数学的ポイント.
  • 極限の順序交換と線型代数.
  • 熱力学・統計力学, 熱力学的極限.
  • 量子力学の数学的ポイント
  • Fourier 解析
  • 作用素論
  • Hilbert 空間論
  • 群の表現論
  • 電磁気学の数学的ポイント
  • 偏微分方程式論.
  • 線型空間論.
  • Fourier 解析.
  • ベクトル解析.
  • 相対論の数学的ポイント
  • 偏微分方程式論.
  • 群の表現論.
  • 線型代数.
  • 論理, 集合
  • 記号・記法の準備
  • 集合を使った数学的議論の練習
  • 関数論
  • 留数定理までのショートコース
  • https://github.com/phasetr/math-textbook の【講演原稿 1 変数関数論】から.
  • 線型代数から見た微分積分
  • 関数空間
  • 線型写像・線型汎関数
  • 固有値・固有ベクトル
  • 汎関数と積分, 超関数
  • 線型代数群とその表現
  • Hilbert 空間論
  • 無限次元の線型代数
  • 完全正規直交系
  • 群のユニタリ表現
  • 線型代数と偏微分方程式
  • 偏微分方程式から出てくる常微分方程式と特殊関数による解法
  • 群の表現論から見た解法
  • 群上の調和解析としての Fourier 解析
  • ベクトル解析
  • 作用素論

2015-10-12 光の数理物理学徒になりたい: 虹と漸近解析とエアリ関数

後者の記事から一部引用.

真島先生は私がお茶大にいた時に同僚でしたが、公開講座の類でよくこのネタを披露されていて、女子大生に「『虹の数学者』なんてロマンチックですね」と言われてました。

虹の数学者, 無駄に格好いいし, 私もQEDを一応やっているから光の数理物理はやっているし, 光の数理物理学徒を名乗っていきたい.

2015-10-13 Moseleyへの数理物理的挽歌: 2015のNobel賞とはあまり関係のない, 100年前のNobel賞クラスの研究をした物理学者の仕事の簡単な紹介とKEKの個人的思い出

今回, Nobel賞はNobel賞だが大分昔のNobel賞に関わる悲喜こもごもについて書いてみる. 自分でも気になったから調べてみたかったのが一番の理由だ. はじめに書いておくとMoseleyの話だ.

まずブログに2015年のNobel物理学賞についての記事を書いた. ただし業績の紹介はせずにその周辺で起こったこと, 特に科学コミュニケーション的な事件についての所見だ.

量子力学・場の量子論 (の数学) とそこそこ近そうなところを研究しておいて何だが, 素粒子・宇宙論は昔から「皆がやっているから自分がやる必要ないだろうし, 何より世間一般が自動的に興味を持つようなことを誰がやってやるか」と思っていた.

そんなわけで素粒子はほとんど知らない事情もあって, 今回はブログで紹介した記事中にあった科学未来館の記事を紹介するだけにしておく.

それだけというのもあまりにもアレなので多少記憶から素粒子, 特にKEKに関する記憶をさらっておく.

学部二年年の頃にKEKに遊びに行ったことがある. ちょっと変な縁があったのだ.

早稲田の物理の同学年の友人が古美術研に入っていたのだが, そこの先輩がKEKの教官の娘さんだったようで, 娘さんが「自分のサークルに物理の後輩がいる」と言ったら連れてこいという話になったらしい.

それでせっかく行くなら皆で行こうぜ! ということになった. 公開日に行った方がいろいろな施設が見られてお得というので公開日に行ってきた.

思い出深かったのはその展示的なやつで実験班の方々が作ったちょっとしたゲームみたいのがあり, やってみた結果ズタボロだった.

それを見たKEKの方々に「君に実験は無理だ. 理論に行きなさい」と言われたのだ. 実験屋さん何て格好いいんだと明後日の感動とともに今でも覚えている.

実際には理論どころかほぼ数学だが.

あと黒川さんに言われたこととして次のことをよく覚えている.

「ニュートリノ振動は質量のうなりを背景にしている. このうなりは調和振動だ. 調和振動は物理の全てを貫く基礎だ. いま二年だと調和振動のありがたみはわからないかもしれないが, ぜひきちんと勉強しておいてほしい」

こう言われた. 印象深かったので今でも覚えているし, KEK の最前線に立っていた方からのアドバイスとしてここでも紹介しておきたい.

ちなみに進入禁止的な看板が立っていたところに娘さん(である先輩)が堂々突っ込んでいて止められたのだが, その先輩が「私, 娘だから大丈夫です」的なことを言っていてそれでいいのかと思ったことがある.

あと二年年で今どんな勉強をしてるの? と黒川さんに聞かれ, 解析力学と答えたら「二年であんなに難しいことしてるの!」と言われたのだが, もちろん講義で必修で入っているからやらざるを得ない.

解析力学で苦戦している方, 解析力学はKEKの人ですらこう言っている程の難易度を誇るのであまり気にせずのんびりやってほしい.

あと印象深かったのは娘さんの対応だ. 黒川さんが先陣を切って張り切って楽しそうに施設の案内をしてくれたので, 後ろの方で娘さんは超つまらなそうにしていて, サークルの後輩でもある友人が必死に対応していた.

一言どころか長文を費やしても書ける気がしないのだが, この親子の姿にこう色々なことを感じたことを昨日のことのように思い出す.

2015年時点ですでに11年前の話と思うと時の流れに驚く.

ちょっと書くだけのつもりだったKEKトークが大分長くなっているが, 一応Nobel賞の話を続ける.

はじめに書いたようにMoseleyの話だ. 今からすると高校で学ぶレベルの「当たり前の話」なのだが, それが決定的な, まさに世紀の大発見レベルだったというのを改めて思い知ったのだった.

しょっぱい情報源だが, とりあえずWikipediaから引用する.

元素の特性X線の波長との原子核の電荷(原子番号)の関係を見出した。 この発見によって原子番号の物理的意味が明らかになり、 周期表の未発見の元素を予測するなどが可能となった。

原子番号, 高校の化学でやる程度の常識になっているが, これでMoseleyにNobel賞が行くレベルの大発見だったのかと改めて驚かざるを得ない. 今の常識がどれ程非常識だったのか.

別のブログからも引用しよう.

1910年、オックスフォードを卒業すると、 マンチェスター大学のラザフォード研究室の門を叩きます。 ラザフォードと言えば、放射性物質の研究からα線β線を発見し、 その功績から1908年にノーベル化学賞を受賞するなど、 当時この分野で最先端を行く研究室の一つと言えるでしょう。 更に、この2010年と(1910年と:8/11訂正)言えば、 ラザフォードの元でガイガー(あの測定器に名を残すその人です)と マースデンによっていわゆる「ラザフォード散乱」の実験がなされていた時期に当たります。

上の引用部にもあるように, 指導教官のRutherfordも物理学史に名を刻む化け物だ.

しかし、1912年に大きな転機が訪れます。 モーズリーは、ドイツのラウエらによるX線の回折現象の発見を知るや、 これを新たなテーマにすることを決め、 ボスであるラザフォードを説き伏せ実験を始めます。

この記述がどこまで信憑性があるのかわからないが, 先見の明は間違いなくあるのだろう.

そもそも「原子番号」は、 このおよそ半世紀前の1869年にロシアのメンデレーエフによって周期表がまとめられた際に、 単に順番を示す量として登場しました。 メンデレーエフは周期表を化学的性質に基づき作成したため、 所々原子量の大きさが逆になることが分かっていましたが、 半世紀を経てもその理由は不明でした (それでも単純に原子量の順に並べなかったことが、 メンデレーエフの慧眼には違いないのですが)。 モーズリーは、 この実験結果から特性X線の振動数の平方根が原子番号の一次関数で表せるという法則を見出だしました。 これは、現在ではモーズリーの法則と呼ばれています。

期せずしてMendelejevの偉業まで確認してしまった. 化学という基盤を持っていたことが原子量を押し切って適切な周期律を作れたことに効いている(らしい)こともなかなか衝撃的ではある.

一つのことを多角的な視点から見ることの重要性も感じるし, 自分の信じる化学に従う決断の重みも感じる.

この法則は、 ラザフォード並びにボーアによって築かれた原子モデルを説明する上でも、 重要な意味を持つこととなります。 まず、師ラザフォードはガイガー、 マースデンの実験から原子の中心には正の電荷を帯びた核が存在するというモデルを示しました。 そして、モーズリーの法則の示す原子番号こそ、 この正の電荷の数すなわち陽子の数に他なりません。 この結果から、単なる並びの序数に過ぎなかった原子番号に、 はじめて物理的な実体が伴ったとも言えるでしょう。 またラザフォードのモデルに続いてこの1913年に提案されたボーアのモデルでは、 この正の電荷を持つ核の周囲を、 一定の軌道で電子が回っているとしています。 モーズリーの法則は、特性X線の振動数(すなわち波長の逆数)が、 電子の軌道間の遷移に依存することを強く示唆していました。

ちなみにここで出てくるBohrもNobel賞を取っている. Geigerは放射線量を測るガイガーカウンターで一躍嫌な方で有名になってしまったGeigerだ. Moseleyはそういう化け物の名前がポンポン出てくる中で仕事をしていたわけだ.

モーズリーは更に実験を重ね、 より多くの元素から同様な結果を得ます。 この結果は、モーズリーの法則が普遍的法則であることを示す見事な直線を示しただけでなく、 当時未発見であった元素の存在をも示唆していました。 まさに、歴史に残る美しい成果だと言えるでしょう(グラフは次のリンクを)。

「実験を重ね」という記述, それだけの資金力もあったということだろうし, こう色々なことを考えざるを得ない.

当時X線分光学自体も先端装置だったと思うし, 実験, 本当に修羅の道という感じする.

素粒子だとカミオカンデのような馬鹿みたいにでかい施設が必要だし, 実験データの処理にスパコン必要だったりするとかも聞いた記憶ある.

少し話がずれるが, 梶田さんは重力波検出のKAGRAにも関わっているそうで, そこでも相当お金かかるだろうし, 眩暈がする.

うるさいことを言えばもちろん色々あるが, 博士進学を断念して 1 人で勝手気儘にやっている今となっては, 気楽に勉強・研究できる数学または理論物理を専攻していて良かったという感はある.

梶田さんの素粒子とは少し違うが, ミクロ領域の謎に切り込んだ人達の話をちょろっと紹介してみた.

私の専門に少し近い感じでいうと原子の安定性がある.

原子の安定性の確立そのものは量子力学の大きな目標だったが, そこでも出てきたBohrが大きな貢献をしている.

量子統計力学, 物性論にも関わるが, ある意味次の話題として原子集団の安定性の話題がある.

Hamiltonianの単純なオーダー評価をすると 原子集団の安定性には怪しいところがある.

N体系を考えよう. 正のエネルギーを持つ運動量項は当然粒子の数だけ, つまりN項ある.

一方で負にもなりうるCoulombポテンシャルの項は$\frac{1}{2} N(N−1)$項ある.

どういう風に考えるかは結構微妙だが, 原子集団全体としては中性だとしておこう. 各原子で見るなら当然正負の電荷がある.

そうするとオーダー評価でCoulombポテンシャルから 来るエネルギーを見るとどういう振る舞いをするかはかなり非自明だ. Coulombポテンシャルから$N^2$の寄与があるから, これが負になると運動エネルギーだけでは相殺しきれない.

有限粒子系や原子核物理で考えていれば問題にはならないが, 統計力学や物性論では特に相転移の議論で熱力学的極限を取る. そこで (平均) エネルギーが負になってしまって洒落にならない.

エネルギーがいくらでも低くなれるのでは古典論の破綻と同じになるので, 原子集団に対する安定性は別の問題として立ち上るのだ.

そんなこんなでエネルギー評価問題が出るのだが, とても困ったことにboson単独の系だと基底エネルギーが$N^{5/3}$のオーダーになる. 平均エネルギーで見ると$N^{2/3}$になるから, 熱力学的極限で平均エネルギーが負の無限大に発散してくれる.

正確な言明は専門書に譲るが, 系にfermionがあるときちんと$N^1$のオーダーになることが示せる.

物性のレベルで言うなら系に電子がある自明の条件に落として考えていいので, 無事物理としての問題がなくなる, とかそういう話が出てくる.

今回の内容, 大分長くなっているがもう少し書く. ここから一応素粒子に繋がるので.

実際には原子レベルでも確か鉄くらいになると最内殻軌道の電子が相対論化してくるそうだし, 放射性同位体のような不安定な原子の議論もしなければいけない.

その辺の数学的に完全な精密な話はまだできていなかったはずだし, レーザーあたりも視野に入れると量子電磁場とのカップルを考えたりしないといけなくて, そうすると発散の困難の処理も入る.

この辺, いまのふつうの物理がどのくらい気にしているのかは全くわからないが, 数学的にはまるでけりがついていない. 超弦ではけりがついているそうだが, 物理の階層性を考えるなら非相対論的場の量子論のレベルで片をつけたい.

ここまで来ると私の研究目標と素粒子の関係が出てくる. 関係というか, むしろ物性レベル・非相対論的領域の問題は素粒子と無関係に決まるべきという無関係性の証明みたいなところだが.

まとまりは全くないが, ブログに書いたことも含め, そんなこんなを色々思った今回のNobel物理学賞だった.

2015-10-16 小学生時代にゼロ除算ができない理由を誰も説明してくれなかったことから算数への興味を失った検事の話

妙に感銘を受けたので.

$0$の割り算で解がたくさん出てくるとか 面倒な感じが割とわかりやすいのではないかという気がする. 参考にしたい.

2015-10-18 鴨さんの事例紹介: 『高校の数学IIIはとばして数学IIから微分積分学と線形代数学につなぐことは可能です』

あと次のやりとり.

参考にしたい.

2015-10-18 Hamiltonian周りの場の量子論の数理: $p$進大好きbotさんに絡んできたので

またも$p$進大好きbotさんに絡んできたので. もっときちんとまとめたいが後日動画にするときにその辺を丁寧にしよう. まずは忘れたり流れる前にまとめだ.

分岐から戻る.

また戻る.

また戻る.

また戻る.

最後のところ物理だと$\delta$関数の積が出てきても平然と計算して最後丸く収まるならそれでいいや的な発想をするので, 数学の人が見たらどうしてくれるのこれ, みたいな感じになるのだろうか.

だいたい素直な正当化は全然駄目で, 相当紆余曲折していかないといけないか, その上でさらに鬼のような収束の議論が必要になる. 九大の原隆さんのD論は下書きで2000ページ, 提出版で500ページとか言っていたのでそういう話になる. ハードアナリシスもいいところだ.

紆余曲折というところについては, 以前深谷先生が何かの文章で, 「はじめの素直なアイデアはなかなかうまくいかず, 問題に当たっては遠回りしていくから本質的なアイデアはそのままでも, その姿が段々見えなくなってくる」 みたいな話をしていたので, 数学的な議論あるあるなのではないかとは思う.

他の分野の人が数学の本を読むのが嫌になる理由の一つでもあるだろう. 物理なり自分の専門の中心的なアイデアを議論したいのに, 全くそれを許してもらえず専門から見れば瑣末な数学的議論しかできないのでは本末転倒だ.

この辺のギャップ, 教育レベルでは何とかして埋めたいと思っている. その辺は最近本格的にスタートさせた.

興味がある方はぜひ連絡してほしい.

見れば見る程まともに答えられているのか不安になってくるが, こうしたコミュニケーションも地道に積んでいって, 勘所をおさえた展開を少しでもできるようにしていこう. 道は長い.

後で動画にするとき, もう少し細部は詰め直したい.

2015-10-19 動画制作メモ: 四元数は制御系で需要があるらしい

動画作成を検討する.

2015-10-20 記事紹介: 『教材で使えるかも?:25万を超える数学コンテンツ「GeoGebra」』

教材で使えるかも?:25万を超える数学コンテンツ「GeoGebra」という記事を見かけた. いくつか引用する.

YouTubeのMicrosoft in Educationのチャンネルで公開された、「My World My Math!」。SurfaceとGeoGebraを使って、数学をこんなふうに勉強していますよ、という動画です。

これだけの数があれば、自分で制作したいけど時間がかかるな…というものを探せるかもしれませんし、黒板ではなかなか説明しにくいものをわかりやすく見せられるものを探せるかも知れません。  世界共通言語である、数学のすごさを感じます。算数・数学の先生方、「あ、これ使ってみたい」「あ、これおもしろそう」とか、感想をお知らせいただければと思います。

世界共通言語としての数学, やはりこれを基盤にして何かしていきたい. プログラム関係もいろいろやりたいのだが, なかなか力が及ばない.

2015-10-23 機械学習と数学: 本当に年収に直接関係してくる数学, 確率論・統計学, 線形代数, 微分・積分

年収とか殺伐としていて怖い.

2015-10-26 Chebyshev多項式の応用: 弾性体論, 航空力学, 特異積分方程式

こういう話, 物理学科だとほとんどやらない気がする. 難し過ぎて物理の人間には扱いきれないという感じもある. 何にせよ参考になった.

2015-10-29 簡単な問題を難しく解け: 具体と一般と抽象

発言に何か背景があるのだろうがよく意味がわからなかったので.

「[竹崎先生の80歳記念のワークショップに行ってきて, 広義諸先輩方と久し振りに会ってきて楽しかった]」の記述も参考にしてほしい.

2015-11-03 記事紹介: 『(可算性を外した)一次元多様体の分類』

以前山元さんのlong lineの話を聞いたことがあり, 勉強したいと思っていたがこんなところで出てきた.

一次元がこんなに魔界だなんて知らなかった. 二次元だとどうなるのだろう. 一気に面倒になりそうだが.

2015-11-07 数学関係ツイートまとめ:ネットの極限で書いた位相空間論コンテンツ作りたい

いくつか参考になった・なりそうなのでメモ.

あと次のあたりの話は動画作りたい.

具体的な問題を解くところならともかく, 特殊関数を使うところが想像できない.

PDE, もう少し自分の知っているところから何とかできないかとずっと思っている. 興味があるところからPDE自体もきちんとやっていきたいとは思うが. 非線型波動とかBoltzmann方程式とかやりたい.

Analysis Nowかどうかは忘れたが, ネットで書かれた関数解析の本を眺めたことがある. いつもやっている点列スタイルがそのまま使えるし, これで位相空間の動画講義作りたいと思ったが, ネットで位相空間やるときの注意点をあまりよくわかっていない. 勉強しないと.

Riesz-Markov-Kakutaniが好きなのでその方向での証明楽しい. Glimm-JaffeのBochnerの無限次元版であるミンロスの定理の証明に 有限次元のBochnerからネットのリミットで議論するのがあって, ほうほうと思った記憶がある.

この辺, きちんと書いてある本ないだろうか. 数学の普通の開集合のスタイルで書いてある本はたくさんあるが, 非数学向けには多分わかりづらいので, まだ多少は馴染みがあるであろうネットのリミットスタイルで説明した位相空間のコンテンツを作りたい.

2015-11-09 本・動画紹介: Sidney A. Morris, Topology Without Tears

私もこういうことやりたい. 次のプロジェクトでの目標の一つだ. 頑張ろう. やりたいことは無限にたくさんある.

2015-11-10 ツイート紹介: 田崎晴明さんによるメルセンヌ・ツイスター考案者松本眞さん評

松本眞さん, 確か元々広島大で2年くらい東大数理に来てすぐにまた広島大に戻ったとかいう話だった気がする. メルセンヌツイスターも動画作りたい. やりたいことがどんどん増えていく.

2015-11-11 ツイート・記事紹介: 下手に数学を学んでしまうと Taylor 展開の剰余項が求められない場合に死ぬ可能性があることが判明した

ブログからも引用.

ロシアの物理学者でIgor Tamm(イゴール・タム)さんという方がいる。チェレンコフ効果の説明により、ノーベル物理学賞を1958年に取った方。

そのタムさんがロシア革命のさなか、食糧が不足していたので近くの村まで出かけて行って食料調達に出かけた(当時大学の教授だったのにそんな状況、、、)。

その村で、反共産主義者たちにつかまってしまった!特に都会から来たので服が立派だったので疑われた。

絶体絶命、今にも殺されそうとしたときに、そのリーダーが

”何?お前は数学の教授だって?怪しい、、、じゃあ、マクローリン展開をn項で打ち切った時の剰余項を言ってみろ。出来たら放免してやる。出来なければ銃殺だ”

と言われたとのこと。もちろん、タムさんは出来て、生き延びてノーベル賞を獲った。

生きるために数学が役に立つ, と書こうと思ったが何か微妙な感じがしたのでやめた.

あとその当時の状況とかいろいろあるのでよくわからないが, なぜ物理の教授ではなく数学の教授という肩書だったのだろうか. 当時のロシア情勢とかいろいろ気になる.

2015-11-11 東大数理の河東研のセミナー用に使うテキスト紹介ページをメモしておいたので

東大数理の河東先生のセミナーニュースページに 河東研B4用のセミナーの教科書紹介のページが出ていたので, とりあえずメモも兼ねてリンクしておく.

せっかくなので知っている本は簡単に紹介する. まずは実際に第一候補として挙げられている本から.

Analysis Now

  • 書名: "Analysis Now" (Graduate Texts in Mathematics 118)
  • 著者: Gert K. Pedersen
  • 出版社: Springer
  • 発行年: 1989

関数解析の入門書ですが,抽象的アプローチが好きな人向けです.基本的なことからていねいに書いてあります.Conway の本より易しいです.最初の部分はわかっていれば飛ばしてもいいです.

読んだことない.

A Course in Functional Analysis

  • 書名: "A Course in Functional Analysis" (Graduate Texts in Mathematics 96)
  • 著者: John B. Conway
  • 出版社: Springer
  • 発行年: 1990

普通の関数解析入門から始まる本です.工夫して分かりやすく書かれていると思います.いろいろなことが書いてあり, 最後の方では作用素環の話も出てきます.

読んだことない.

Mathematical Theory of Quantum Fields by H. Araki, Oxford University Press, 1999.

代数的場の量子論を全開でやっていて, 作用素環だけの本ではない. ちょろちょろと多変数関数論 (楔の刃の定理) とかも出てくる. 死ぬ程どぎつい本で私は根をあげた本なのだが, 読める人いるのだろうか.

確かこの本, 1950 年代後半から 1960 前半あたりに 荒木先生がスイスの ETH で講義した有名なレクチャーノートの 出版だとか何とか聞いたことがある. 当時の人, これで理解できたということだし, 社会の学力低下はどうなのかは知らないが, 自分の出来の悪さは激烈痛感する.

An Invitation to C*-Algebras by W. Arveson, Springer 1976.

読んだことない.

K-theory for Operator Algebras by B. Blackadar, Cambridge University Press, 1998.

作用素環の K-理論の有名な本. 読んだことない.

Operator Algebras by B. Blackadar, Springer, 2005.

読んだことない.

Wavelets through a Looking Glass: The World of the Spectrum by O. Bratteli and P. E. T. Jorgensen, Birkhauser, 2002.

これ作用素環なのかとずっと思っていたが, さっき目次を見たら一応$C^*$-algebraはあった. O. Bratteliは作用素環と量子統計の本(次の本)で超有名.

Operator Algebras and Quantum Statistical Mechanics, Volumes I, II by O. Bratteli and D. W. Robinson, Springer, 1987-2002. (a pdf file supplied by the author) (a pdf file supplied by the author)

全部ではないが読んだ. 量子統計で使うネタを割と雑多に突っ込んだ本で全部読むような本ではないし, これだけ読んでも作用素環の基礎は身につかない. 私もこの本で勉強しているが, 必要なところのつまみ食いだ. 完全なバージョンではないが, 基礎から冨田-竹崎理論まで速習したいなら役に立つ. あとは作用素環の勉強にはならない.

Noncommutative Geometry by A. Connes, Academic Press, 1995.

ConnesのサイトにPDFが置いてある. 個人的には読めたものではない. 難し過ぎる. 誰か読み切れる人いるのだろうか.

C*-Algebras by Example by K. Davidson, Amer. Math. Soc., 1996.

大学院当時, 先輩に聞いたところ「最初は割と丁寧だったが後半どんどん雑になる」とのことだった. 「基本丁寧だが, 時々めちゃくちゃ雑になる」だったかもしれない.

Quantum Symmerties on Operator Algebras by D. E. Evans and Y. Kawahigashi, Oxford University Press, 1998.

分厚い. ぱらぱらと眺めたことはある.

Local Quantum Physics by R. Haag, Springer, 1996.

河東先生に「これはHaagが哲学を語った本で教科書, 勉強する本ではありません」と言われた記憶がある.

Fundamentals of the Theory of Operator Algebras, Volumes I, II, III, IV by R. V. Kadison and J. R. Ringrose, Amer. Math. Soc., 1997.

学部4年のときとりあえずこれでも読んでおけばいいのでは河東先生にお勧めされて, これの3章から5章までを読んだ. そのあと実用性を考えてBratteli-Robinsonにすぐ行ってしまったのだが, 作用素環としての基礎がほしいならもっと読んだ方がいい. 富山先生いわく「彼らの教育熱心さを反映してとても良く書かれた本」とのこと. 3章の話はBanach環だが割と気にいっている.

An Introduction to K-Theory for C*-Algebras by M. Rordam, F. Larsen and N. Laustsen, Cambrige University Press, 2000.

読んだことない.

Theory of Operator Algebras, Volumes I, II, III by M. Takesaki, Springer, 1979-2003.

Iは1-2度参照したことがある. 作用素環の聖典の1つではある. 興味はあるが大部過ぎてさすがにつらい.

2015-11-11 社団法人作用素環後援会という謎の会ができていたので

ページはここだ. 代表理事が河東泰之先生で, セミナーニュースを久し振りに見たら見つけたので, とりあえず宣伝協力的なアレだ.

法人の目的だとか事業について紹介がてら引用しておこう.

・本法人の目的

当法人は,作用素環論に関する研究・論文の発表を通じて知的財産権の取得を行うと共に,その成果が地域社会の発展に貢献することを目的とする.

・本法人の事業

  • 作用素環論を用いた研究及び論文の発表
  • 作用素環論に関するセミナーの開催
  • 作用素環賞の授与
  • 前各号に掲げるもののほか、当法人の公益目的の達成に必要な事業

小谷元子先生が入っているのが割と謎だが, 以前早稲田で磁場つきHarper作用素の講演を聞いたときに$C^*$の話を出していたので, ご専門の離散幾何解析でそれなりによく使っているということなのだろう.

私ももっとこういうのやりたいし, マネタイズ真剣に頑張らないと.

2015-11-15 自戒せずにはいられないTogetterメモ:『“算数教育が安心できないのだから、理科教育も安心できるはずがない” - 並列回路の表記をめぐって』

とてもつらいまとめがあったのだ.

これ, 自分が専門分野に関してすらゴミのような死にたくなる変な勘違いをしている可能性が高いことを 示唆してくるので, 割と本気で戦慄するし, 全く笑えない.

きちんとJISの規格の記述を確認しきれていないのだが, http://tinyurl.com/neyybx7あたりでは『実務に役立つシーケンス制御入門』という「実務で役立つ」という明確な触れ込みで黒丸なしのシーケンス図を紹介している. ちなみに私はシーケンス図と回路図という言葉をどう使いわければいいのかといった基本的なところから理解ができていない.

また次の高知工科大学の講義資料によると, 十字を書くとき, 交差は黒丸をつけない, 接続は黒丸をつけるとかいう規格(規則?)のようだ.

ここでは表現の統一という目的のため, 「黒丸が不要なところでもつけた方がいい」と推薦する形にはなっている.

十字の接続でない Fig.2.2(b) のような T 字配線型の接続の場合には,黒丸を省略しても問題ないと思われるが,表現を統一するために Fig.2.2(a) のように黒丸をつけたほうが良い.

実務で紛れがなくミスを起こさないようにしたいという現場の要求もあるのはわかるが, 規格でどうかという根本的なところをクリアしているっぽいので, とてもつらい事案だ.

糞ニート@TNCTHaraPanさんはこのまとめを見たっぽいツイートをしているが, いまどういう風に考えているのかが割と知りたかったりする. 規格上問題ないし上で引いた本のように (回路図一般かシーケンス図限定なのか私は判断つかないが)「現場」でも黒丸なしでよく, 大学の工学部教育でも推奨レベルのことをまだ次のように考えているのかどうかはとても気になる.

何にせよ自らへの戒めとしてもきちんと記録しておきたい.

2015-11-15 nolimbreさんプロトタイプの電子数学書の新たな形:自分でもちょっとやってみたい, gitbook もあり?

YouTube講義と合わせてちょっと試しに作ってみるか感もあるので, とりあえずメモ.

ここがやはり気になる. gitbook調べておこう. 何にしろYouTubeの動画講義は作る予定だし, 原稿をどう公開するか考えないといけない.

何というか, 実際に雑な話してから 少しずつ突っ込む的なことをしていきたいので, それに合わせた形としてやっていけばむしろ最適なのかという感じはある.

ちょっとやってみたいことがあって, gitbook 改修してやるのも大変そうだし, まずは適当に元ファイルを変換するスクリプトを組むところから はじめるのが必要か. めんどいが, とりあえずいろいろやってはみよう.

2015-11-21 記事紹介: 『「究極の数学」は驚くほどエレガントで力強い 青木薫が味わうNHK数学ミステリー白熱教室』

東洋経済で『「究極の数学」は驚くほどエレガントで力強い 青木薫が味わうNHK数学ミステリー白熱教室』という青木薫さんの記事があった. 大事なコメントもあったので引用しつつコメントしたい.

11月13日(金)からNHK Eテレで放送の始まった「数学ミステリー白熱教室 ラングランス・プログラムへの招待」。イケメン教授のエドワード・フレンケル氏が、「心も頭もしびれる究極の数学」(ツイッターより)を白熱講義するこの番組は、中学数学を終了程度の知識で、現代数学のもっとも心踊るプロジェクトの神髄にふれさせようという意欲的な試みだ。

よく『美人~』というのが話題になるし, 『ガリレオ』あたりでの『イケメン物理学者』みたいなやつ, どの程度効果があるのか本当に知りたいし, イケメンかどうかはともかく適当な清潔さなどはきちんと気をつけないといけないとは 思っている.

楽譜の読めない人だって、すばらしい音楽には胸を揺さぶられる。油絵なんてただの一度も描いたことがない人だって、ゴッホの「月星夜」の前に立てば、その不思議な迫力に心を捕まれるのではないだろうか。それと同じように、数学の美しさとパワーは、きっとみんなに感じてもらえる、と彼は信じているのだ。

この辺, スポーツとかでもあるし, アニメや漫画でもそうだが, 数学ははじめから強烈なバリアーがある場合が多いので, どう一歩目を踏み出してもらえるかが鍵で, 割とつらい.

「やっぱり、フレンケルってイケメンだわぁ」ということだった。ド・アップに絶える端正な顔立ち。チャーミングな笑顔に思わず引き込まるし、手指の動きにふと目を奪われてしまう。いやあ、静止画像で見るより、動くフレンケルの方がずっと素敵だわぁ……。

こういう感想, 私には書けない.

そのためにフレンケルが持ち出したのは、ありふれたデンタルフロスだ。そして彼は、フロスを指に巻きつけていく。ぐるり、ぐるり、ぐるり、と巻きつけていくと、1回、2回、3回、と巻きの回数を定義でき、それゆえ1、2、3という自然数の概念を把握できる。そればかりが、この方法では、逆向きに巻きつけていくことにより、-1、-2、-3、という負の数の概念が、ごく自然に得られるのだ。

いまだ見ていないのだが, これは面白い.

番組の冒頭に置かれたこの「糸巻き法」のエピソードは、身近な材料を使った、誰にでもわかる、ごく簡単な話である。しかし、このエピソードはきっと、全4回の講義のなかで、通奏低音のように響き続けるのではないだろうか。そんな予感がする。

トポロジーのwinding numberだし, 後でも出てくるだろうと思ってちょろっと見てみたら, Wikipediaで正に次の記述があった.

回転数は代数トポロジーにおいて研究の基本的な対象であり、ベクトル解析、複素解析、幾何学的トポロジー、微分幾何学、弦理論を含む物理、において重要な役割を果たす。

本当に弦理論出てきた.

というのも、もしもそんなつながりがあれば(すでに証明されているものもある)、あちらの領域では超難問だったものが、こちらの領域ではエレガントに解決される、といったことが起こるのだ。そちらの領域では、どんな意味があるのかわからなかった問題が、別の領域で、やおら重要性を発揮することもある。ミステリアスなつながりの存在を明らかにし、「数学の大統一」を目指すことには、現実問題として、途方もなく大きな意義があるのだ。

ミラー対称性とか谷山-志村予想だ.

ところが20世紀の初め頃から半ばを過ぎる頃まで、両者の関係は冷めていた。物理学者は、過去の数学者の仕事から、自分の仕事に使えそうな道具を借りてくるだけ。数学者は、自然相手に苦闘している物理学者を尻目に、我が道を爆走していた。

冷めていたというのはよく聞くが, 科学史的にきちんと調べた上で実際どうなのか非常に気になっている. 実際に 1950 年代からの場の量子論界隈の動きについては 多少知っているが, その前の動きに関してはほとんど知らない.

2015-11-21 川又雄二郎伝説の検証: 学部の複素解析の講義でのエピソード

川又雄二郎伝説が一部検証された.

貴重な情報なので記録しておきたい.

2015-11-22 教育問題の悲しみ: とある方の小二の頃の悲しい記憶

H_Hさんからのタレコミを受けたので.

次の連続ツイートだ.

今考えるとこれこそが生徒の個性を潰し画一化させる義務教育の本質だったんじゃないかって思っている

というのは過剰な一般化で妥当性があるのか全くわからない. この教員の能力の問題とも言えるし, 義務教育というよりも大衆による大衆に向けた教育の限界という感じもある.

教育に湯水のように金と時間をつぎ込めるのなら, メインの教員(クラス担任?)+専門の教員のような配備を していくとか色々方法はあるだろうが, 厳しいだろう.

何度かこのサイトでも取り上げているが, 個々の教員に無限の期待を載せていくのは極めて筋が悪い.

もちろん, 子供が学校であった「嫌なこと」を親なり適切な指導者なりに逐一的確に報告できるのなら いいのだが, 当然そんなことは期待できない. 【適切な指導者】ということになると, そもそも身近にいるかどうか, 身近にいたとして【利用】できるかどうかという問題すらある.

とにかく, 簡単に諦めたり他人や社会のせいにしたりせず, 私は私にできることをやっていく.

やや別件だが次のようなやり取りもあったので 一応記録しておきたい.

2015-11-23 京大RIMSの星裕一郎さんによる宇宙際 Teichmüller 空間論に関する概説が出たので

IUTTはInter-universal Teichmüller theoryの略だ. もちろん望月新一先生の理論. 何はともあれメモしておく.

2015-11-23 ツイート紹介: 梅村浩先生『楕円関数論』の中の代数幾何的記述が面白そうなので

何これ面白そう. 読んでみたい.

わけのわからないコメントと返答

5次方程式の冪根は存在しませんよ 誤謬の流布はやめてくださいね

どういう意味でしょうか. 引用したツイートは「五次方程式の解の公式」としか言っておらず冪根とは言っておらず, ここの五次方程式の解の公式もガロア理論的な四則と根号だけを使った公式ではなく, 許す操作を増やす話なのでは.

2015-11-26 ツイートまとめ: 『$x$の$x$乗の話』最近記事が出て $0^0$ の話題が再燃したようだがきちんと解説ページと本があるので

以前も呟いたのだが$0^0$に問題が再燃したっぽいので.

さて, 『$x$の$x$乗の話』だ.

Amazonのレビューにもある通り, お話として雰囲気を楽しむ本であって, ガチガチに読み込んでいく本ではない. 機会があればぜひ読んでみてほしい. 上にリンクがある著者のページを眺めるだけでもいいだろう.

2015-11-26 (小中高校生向け)学術系イベントの情報収集中

今も絶賛情報収集中だ.

鍵アカウントの方から次のサイトも教えて頂いた.

これも本サイトに転記しておこう.

2015-11-26 ツイートまとめ: 工学に役に立つ微分方程式論, どういう内容になるのか工学関係者に聞いてみたい

工学にとって役に立つことしたいなら, やはり工学者が引き取るしかないと思うのだが, 実際工学部ではどう教育するのだろう. それが無性に気になる.

必要なら自分でもそういう教材を作ってみたいので, 本当にぜひ教えてほしい.

2015-11-27 数学科卒であることを見抜くたった一つの質問の仕方: 巨悪のツイート紹介

相変わらず巨悪が悪いことを言っているので記録.

読めないのではなく使わないから忘れただけなのでは, という気もする.

逆に物理の人間と一発で見抜く質問とか, 化学の人間と一発で見抜く質問とか, 医歯薬理工に限らず, 大学の学科レベルくらいで各分野の専門であることを 見抜ける面白い質問みたいなのが知りたい.

2015-11-28 数学・物理関係でYouTubeに上げる動画を楽に出費を少なく撮る方法の検討

動画を撮るときの参考にしたい.

これから数学・物理関係の動画を撮ろうと思っているが, 他の人にも真似しやすい方法を探している.

今はiPadのアプリを使っている. 次のようなメリット・デメリットがある. - メリット - 書いたページを保存しつつ一気に次のページへ遷移できる. - iPad(とスタイラスペン)さえあれば追加の出費なし. - デメリット - スタイラスペンは書きづらい. - iPadがいる.

iPad(タブレット)がいるというのが 極めてハードルが高いので他にも次のような方法を検討していた.

  • 紙とペンとwebカメラ
    • 知人がやっていた方法.
    • 導入が楽.
    • 紙とペンなので書きやすい.
    • 紙を大量に消費するので継続的に雑費がかかる.
    • カメラの置き方を工夫する必要あり? 追加の光源も必要?
  • 黒板・ホワイトボードと(web)カメラ
    • 黒板だと雰囲気が出る.
    • 小さい黒板(100均で売っている)だとチョークを使う関係であまり一枚に多くの字が入らない.
    • 大きい黒板だと場所をとるし, 顔も入ってしまう可能性があり嫌な人はいるだろう.
    • 黒板に関する初期投資とチョークの継続出費が入る.
    • ホワイトボードでもいいが, ペンの継続出費がチョークより遥かに高い.
  • PCとWacomなどのペンタブレット.
    • 追加の雑費なし.
    • iPadとスタイラスペンよりは書きやすい.
    • タブレット導入のために最初にどかんと出費が出る.
    • 「新たなページ」に行きたい場合に全部消すか新たなファイルを開く必要があって面倒.

このうちの【紙とペンとwebカメラ】のところにカメラとしてスマホ・タブレットを使うイメージで, さらに導入が楽になりそうだ. 光源問題は少し研究する必要がありそうだが. これ, 試してみたい.

2015-12-05 リングさんの関西すうがく徒のつどいでの講演: 楕円関数とおもしろい応用

つどいの講演. 原稿やTogetterへのリンクはここにある.

読みたい.

2015-12-05 掛け算・足し算問題: 子供 (人間) が持つ凄まじい一般化・抽象化能力

大事な話があったので.

算数の難しさと数学の難しさがちょうど重なるところとして まさにこの問題があると思っている. 小学校一年で同じ個数あるものを線で結ぶみたいなことをした記憶があるがまさにそれ.

数という概念は本来めちゃくちゃに抽象的で, 上の線を結ぶことは学部 1 年の集合論でやる集合の個数の定義, 濃度への拡張と直接に繋がる. 数学の本質的なところに触れつつ, 実生活への応用でもよく出てくる凄まじい例で, とてもとても大事.

使うところなんて本当に山程あるどころか 上の例よりももっと凄い形で使う.

例えば三人兄弟におやつあげるときのこんな感じ.

おやつ 3 つあるから仲良く食べなさい. ケーキが 2 つあって, プリンが 1 つ. ケーキはショートケーキとチーズケーキがあるよ.

これ, 抽象度を凄まじいレベルで行き来している. どちらからでもいいが, 下から考えよう.

まずここにはショートケーキ, チーズケーキ, プリンと 三つのおやつがある. それぞれ違うと思っていては数としては足せない.

ここでケーキとプリンとして一般化してまとめる. そうすればケーキが 2 つ, プリンが 1 つとしてケーキに関して足し算できる.

最後, おやつとして一般化してまとめればケーキとプリンを足し算できる.

普段から大人はもちろんのこと, それを見て育つ子供も自然にこの一般化と抽象化, その上での足し算を自然にやっている.

うるさいことをいうなら(切り方のせいで)「大きなケーキ」や「小さなケーキ」もあるのに, それを無視してケーキとくくることだってある.

全く違う対象を適当に一般化・抽象化して足し引きするのは凄まじいことだ. 算数と数学が深く深く繋がっていることを示す事例でもある.

これ, 本当に凄まじい抽象化能力だと思うのだが, 何故子供も自然にできるようになるのか本当に不思議でならない. 教育学とか心理学とかの知見もあるのだろうと思っている. どんな本読むと書いてあるのだろう.

2015-12-08 (数学・物理の)読書はお金を使わないいい趣味であると書こうと思ったがネット代とPDFとか見られる端末が必要だったという話

最後のやつ, 物理の前の数学学習でもやはり数年かかるし, 物理でも永遠に遊べるし, 英語だとPDFとかもバンバン落ちているのでPDFが読める端末があれば, ネット代くらいでかなり遊べる. 永遠にPDFが読める保証がないので, そう思うと紙への印刷も必要なのかな, という気もしてくる.

あとヨハネの福音書, ヘブライ語原文だと思っていたがギリシャ語だったのか. 原典が何語だったのか何でどう調べればいいのかすらわからなくて, 自らの情弱さを感じる.

2015-12-08 コンピュータ上で表現できる数とexactに扱える数の差異を魔法少女が教えてくれたので

次のようなことを呟いたら魔法少女がいろいろ教えてくれた.

鍵アカウントだがとりあえず引用しておく.

@phasetr 代数的数は計算機でexactに表現できて, 四則演算, 大小比較, 原理的には順序環の言葉で書かれた一階の論理式の真偽などがエフェクティヴに計算できる. 幾つかの操作がエフェクティヴにできなくてもよいなら, 計算可能数の成す体も扱える.

@phasetr その意味で「浮動小数点数のような方法では実数をexactに扱えない」「いかなる表現方式でも全ての実数を表現することはできない」は正しいが「コンピュータでは無理数などの実数をexactに扱う方法はない」は正しくない.

@phasetr 記憶領域は可算通りの状態しか取れないので, どれだけ上手い表現方法であっても実数体の可算部分しか尽くせない, という意味では全ての実数を取り扱えるような方法はない.

とりあえずきちんとメモだ.

2015-12-10 数学徒が代数弱者を人助けする様子を記録しておく

非常に間抜けなことを言ったら速攻指摘してもらえて助かったので, 数学徒が人助けをする様子を記録して後世に伝えていきたい.

途中ツイートが消えていて抜けているが, $G$が群にならないだろうとか, $H$が群にならないとかそういう馬鹿みたいな指摘を受けている.

あと別のやりとりも記録しておく.

岩永-佐藤の『>環と加群のホモロジー代数的理論』で環の場合の話があって, それとぐちゃぐちゃになっていた.

どれだけ代数できないのかと絶望的な気分になったが, 不勉強なのは不勉強なので仕方ない. また一つつ賢くなったと思っておこう. 群と環でまた事情がいろいろ違う話的な感じで きちんと認識しておきたい.

2015-12-11 研究者どころか修士くらいの学生であっても身元特定は簡単という話

今日のいい話だ.

最近でこそ名前も出して活動しているが, 出さなくてもほぼ筒抜けレベルの発言ばかりだったので, それはわかる人にはわかるだろう感ある.

あとまた少し別の話だが, 以前東大での田崎さんの集中講義に出て, その後の懇親会で清水研のM1の人に「相転移Pさん知ってます」と言われたこともある.

2015-12-12 (丸善の)分子模型のように数学でも遊べるやつないと思ったがチャートを貼り合わせて多様体を作るとかしか思いつかなかったのでさめざめと泣いた

化学とか物理, こういうので遊べるのが羨ましい. 数学でも手で遊べるの何かないだろうか. パソコンとかタブレット上ならそれなりにある気はするが.

チャートを貼り合わせて多様体を作るとか, そういう無茶なのを真っ先に想起したの, 本当によくない.

2015-12-13 数学科の院生が物理関係者相手に物理の部分がザルな発表をして猛烈に突っ込まれたというがもっとガンガン殴り合ってほしい

hiroki_fさんとSO880さんとの会話録.

ここで書いたこととしてはとりあえず

だろうか. あとは一応次のプロジェクトもだ. - 数学・物理をともに学ぶコミュニティ形成プロジェクト それぞれ地道に頑張ろう.

2015-12-14 教科書紹介: Quantum Information Meets Quantum Matter

気になる. とりあえずメモだ.

2015-12-15 コミケ情報: 3日目東ホ07b「石貫會」量子コンピュータについて理論的側面から解説した「Effective量子コンピュータ」

ちょっとほしい. とりあえずメモ.

2015-12-16 『いまだに人類は微分形式を十分に使いこなしていないと思います』

引用された部分もパンチ力があるが, 最初の問とその回答もなかなか面白い.

2015-12-16 深谷賢治・斎藤恭司対談『現象との関係とか、物理として何が大事かということを見てとるのは、物理学者の一番大事な能力、その人の物理学者としての根源を作っている能力だと思うんです。』

逆もまた然りという感じはあるが, そもそもどのくらいそういうのが必要なのかとかそういうのになるとまた別だ.

私のような数学でも物理でもない半端者は本当につらいことだけは常に感じている.

2015-12-17 Lipschitz連続な関数と$u \in W^{1,p}_{\mathrm{loc}} (U)$のほとんどいたるところの微分可能性

今ちょっと微分方程式をもう少しきっちりやってみよう月間で EvansのPartial Differential Equationsを読んでいる.

流し読みして様子を見ているのだが, P.280 からの Sobolev 空間の元の可微分性の特徴づけのところで メモしておきたいことがあったのでブログにもメモをしておく.

それは P.280 Theorem 5 と P.281 Theorem 6 (Rademacher) だ. 次元 $n$ が十分大きいとき (Sobolev 不等式で決まる定数だったはず), $u \in W^{1,p}_{\mathrm{loc}} (U)$ はほとんどいたるところ微分可能であること,

特に Lipschitz 連続な関数はほとんどいたるところ微分可能であることだ.

いったんメモとして証明は書かずにおくが, そのうち動画にして証明もまとめたい.

2015-12-18 宣伝: 東大数理の動画公開『Grothendieckの学生だったIllusieさんの駒場での講演が視聴できます』

よく算数で「たかしくん」が出てくるが, 世界でも最強レベルの「たかしくん」として著名な坪井俊先生のツイートだ.

動画はYouTubeに上がっている. こういうのも増えてきたがやはり個別の大学とかそういうレベルでしか まとまっていないのがつらいところ.

一応簡単にページから講演について引用しておこう.

Speaker Luc Illusie (Université de Paris-Sud)

Title Grothendieck and algebraic geometry

Abstract Between 1957 and 1970 Grothendieck deeply and durably transformed algebraic geometry. I will discuss some of his revolutionary contributions.

2015-12-19 Uffe Haagerupの訃報を知る方の市民: 数学, 作用素環で著名な研究者

衝撃の事実.

AMS noticeでのPDFは次.

  • http://www.ams.org/publications/journals/notices/201601/rnoti-p48.pdf

PDFでも紹介があるが, 冨田-竹崎理論での貢献はもちろん, Haagerup propertyは私ですら名前を知っているレベルの作用素環まわりの基礎という感じがある.

簡単だがとりあえず記録しておく.

2015-12-19 京大RIMS望月新一さんの宇宙際Teichmüllerの普及の2015-12での現状

数学のわけのわからなさ, どこにあるのかと考えてみるとあまりよくわからない. 抽象的だから, とか何とかいう通り一遍の説明はあるが, それはそれであるにせよ, ならそれだけか, といわれると当然他にもあるはずで.

全く考えはまとまらないがふと思ったのでとりあえずメモ.

2015-12-19 論文紹介: 関数解析を使った有界コホモロジーの研究, Matsumoto-Morita Bounded cohomology of certain groups of homeomorphisms

面白そう. 「有界コホモロジー何ぞ」とかそもそもコホモロジーよくわからないとかいろいろあるが, 興味をそそられる. 動画作るついでに勉強したい.

2015-12-23 Solovayでの解析学: 衝撃的な定理がいろいろ成り立つらしいので

面白そうで少しコメントしたので.

あとこれ.

これ割と衝撃感ある. $W^{1, \infty}$ だとどうなのだろう.

そして面白そうだったのでコメントしたのがこれ.

すごい世界もあるものだ.

2015-12-27 Springerから本が色々無料DLできるようになったらしい: 例えばMacLane-MoerdijkのSheaves in Geometry and Logic (SGL)とMarkerのModel TheoryがSpringerのサイトからPDFダウンロードできるようになっている

MacLane-Moerdijk の Sheaves in Geometry and Logic (SGL)と, MarkerのModel Theoryがダウンロードできるようになっている.

他にもいろいろあるみたいなのでとりあえずツイートはっておく.

いつまでダウンロードできるのかはわからないが, SGL は読んでみたいと思っていたので超嬉しい. 早速ダウンロードした. いつ読めるかは相変わらず不明なのが悲しい.

関係ないが, ありとあらゆる学問分野でマイナー分野世界一決定戦とか開いてほしい. 何で測るといいかが微妙だが, 尺度ごとの世界一が測定できるとなお楽しい.

追加情報

ブルブルエンジン兄貴がまとめてくれた.

そのうちお勧めをまとめたい.

追記その2

汎関数積分系統の構成的場の量子論の論文で, ロシア語の文献が引用されたことがある. 念のためダウンロードしておいた.

2015-12-29 数学アクセサリに関するやり取りメモ: 気に入って頂けているようなので

数学アクセサリはhttps://minne.com/phasetrにこれまでの作品を出しているので, 興味がある方は見てみてほしい. http://math-accessory.com/もあるのだが全然更新していない. これももう少し動かしたい.

2015-12-31 『殴っていいのは殴られる覚悟のある奴だけだ』: 研究者への追憶

研究者であるytb_at_twtさんからご指摘頂いたのでメモ.

最近研究できていないのでつらい.

2016-01-01 数学・物理でも同じことがある気がする件: 『レシピ本じゃなくて、調理用具や食材をどう選んでどう使ってどう管理すれば良いか書いてある本は無いものか』

数学・物理でも似たような話ある気がする. 工学的応用みたいな感じなのかもしれない. よくわからないが.

2016-01-02 女装とイラストレーターの関係に学ぶ数学と物理の活動展開

この話, 数学や物理でも参考になると思うし, とりあえず数学アクセサリ方面ではリアルに参考になるだろう. 最近あまり買っていないが, 一時期本当にセブンティーンあたりは買っていた.

今後はアクセサリ関係も買ってみるか.

2016-01-03 tri_iroさんが小林昭七先生宅に伺ったときのいい話を勝手に記録

羨ましい.

小林昭七先生と言えば, 『数学まなびはじめ』の昭七先生分の感想をブログに上げたら弟でいらっしゃる久志先生から「それは知らなかった. 今, 兄の仕事を取りまとめているのでぜひ詳しく教えてほしい」との問い合わせを頂いたことがある. ブログやっててよかったと思う瞬間だった.

そういえば最近昭七先生のサイトを見ていない.

文献紹介が充実してきているっぽい.

2016-01-05 ツイート紹介: 『Kahle先生達の代数統計の続編』

よくわからないがとりあえずメモ.

2016-01-06 『数学は何の役に立つの?』を Kindle 出版したのでぜひ買ってほしい: 買ってほしい理由は宣伝に協力してほしいから

また新たに本を書いた.

数学は何の役に立つの?---納得して数学を勉強するために: 年収との関係から応用の現場, モチベーションの上げ方, 今後の行動の指針まで (よくわからない数学)

ブログやらサイトやらでいつも言っていることをまとめたので, 私の言動を追いかけている方に目新しい話はないと思うが, きちんとまとめて形にした方がいいと思ったのでやってみた.

比較ということもあって, 今回は無料のキャンペーンをやらず, 値段もちょっと高めだが 500 円にしてみた.

これは先日の Springer 祭りを見ての反省に基づく. あのとき「無料だからといって落とすだけ落としても読まないだろうな」という 声があった. 私もいくつか落としたが, 読む時間が取れそうにない.

変な話, 人は無料のものに価値を感じない. ダウンロード数だけは伸びても読まれないのでは意味がないから, あえて出た直後の無料キャンペーンはやめにした.

ご覧の方はぜひ買ってほしい. これも言っておくと売れたからといって儲けなどほとんどない.

何故買ってほしいかというと, 「これを買った人はこれも買っています」的なアレをもとに Amazon からのメールで宣伝される機会が増えるからだ. 少しでも多くの人に届いてほしくて, そのために Amazon に出している. ぜひ協力してほしい.

Amazon の内容紹介に書いた内容を転記して終わる.

「数学は何の役に立つの?」 数学を苦しみながら勉強している子どもはもちろん, 大人からもよく言われます. 大学で数学を研究していたというと, 「数学なんて全然わからなかったよ」と, 東大卒の方々からも言われます.

実のところ, 似たような本はいくつかあります. ただ値段から言っても語り口からいっても, 中高生自身が探しやすいところに 買いやすい値段帯で売っている本は見つかりません. はじめの疑問に答えつつ中高生がお小遣いで気楽に買える, そんなことを目指してこの本を作りました.

またこれまでの本によくある語り口とはずらして 書くことも考えました. 数学が好きな人にありがちなのは 「数学は楽しい・美しい. だからやろう」という感じの語り口です. 数学を応用する人たち (ほとんど全ての人たち) にありがちなのは 「数学は役に立つ. だからやろう」という感じの語り口です.

これまでいろいろな人と話してきたところ, 前者はともかく後者も論外だとわかりました. 本当に数学したくない人は役に立つかどうかなんてどうでもよくて, とにかく「嫌」なのです. それを考えずに「役に立つからやろう」と言われても, 全然意味がありません.

そうしたことにも配慮しながら書きました. もっとはっきり「数学したくなら無理にしなくてもいい」とまで書いています.

もちろんなるべく興味を持ってもらえるような内容も入れています. 純粋な数学の人だと書きたがらないだろう「数学と収入の関係」も書いています. 応用に興味がある人向けに物理を中心に関係ある分野の話も書きました.

読んだあと数学に興味を持ってくれる方もいるでしょう. そうした方がすぐに次の行動に移れるよう, アクションプランもいくつか提案しています. 購入者特典として, 私が早稲田・東大で学んできた勉強法をまとめたコンテンツをつけてもいます.

読んで「いい話を聞いた」で終わってほしくなくて, 数学をするにしろしないにしろ, 読んで得た知識を活かして 行動に移し, 結果を出してほしいと思っています. ぜひ読んで終わるのではなく, 読んでからあなたの行動を加速させていってください.

2016-01-07 ツイート紹介: H. Hosakaさんによるコホモロジー解説

H. Hosakaさんによるコホモロジー解説というtogetterがあったのでメモ. 今回はそれだけ. 『コホモロジーのこころ』, いまだにきちんと理解しきれていないのでその辺を読みたい. 多変数関数論もやりたい. やりたいことばかりたまっていくの, 本当につらい.

2016-01-08 四元数に関するSkypeやりとりの記録

四元数に関してちょっとSkypeでやりとりしたのでその記録. 多分にプライベートな部分もあるSkypeでのやりとりなので, 適当に編集して内容にフォーカスした形にする.

四元数の動画講義需要あるの, 的な話からはじまって, 意外とその周辺の人のポジショントークっぽくないか, 必修にするほど重要ではないだろうとかいう話.

ついでに他の話もメモ代わりに入れておく.

次の自動ツイートまわりの話だ.

四元数からの幾何, 解析力学

  • 四元数は数学出来ない知人のプログラマー界隈が全員知ってたレベルにメジャーなものではありそう
  • 3D でよく使うらしい.
    • 行列だと特異点周りの挙動がめんどいのが楽に書けて嬉しいとか何とか.
  • 特異点とは
  • http://www015.upp.so-net.ne.jp/notgeld/quaternion.html
    • オイラー角を使うと極での振る舞いが鬱陶しいとかそんな感じのアレ
  • ロールピッチヨーはよく聞く
  • ジンバルロックが起きないのは変数のとりかた (軸方向と回転角) が賢いからでは.
    • 行列でも同じ変数で記述すれば問題は起きないのでは?
  • ちゃんと考えていないがジンバルロックが起きるのは角度の取り方をオイラー角で固定しているのが問題のはず.
    • 本格的な幾何学, 多様体論よろしく適切に座標 (角度の取り方) を考えれば普通の行列でも全く問題ないはずで,
    • 極近くでの振る舞いのロジック (極近くでは角度の取り方を変える) をきちんと組もうと思うとバグの温床にもなるでしょうしかなり面倒っぽい.
    • その辺の面倒な考察なしにすっきり書けるのが四元数の有り難みではなかろうか.
  • 変数のとりかたが問題なら, 四元数はあくまでテクニックに過ぎないので制御系の人にとっても重要ではないのかなとか思うなど
  • 純粋にプログラムとして 3 次正方行列より四元数のほうが占有するメモリ少なそう
  • プログラムに入れる上では四元数のほうが良さそう
  • http://tinyurl.com/otmyox5
    • 【今, 3D モデルやロボット工学で必要な数学なのですが, 各大学で教えていません.】
    • これを見てモニョモニョした.
    • 何かというとテクニック的なものより, 制御系だったらラプラス変換とか線形代数みたいな理解しておかないとコード書く書かない以前の (制御の問題自体に深く関わる) 数学がある
    • そういう意味で四元数はカリキュラムからオミットされているのではないかと
    • 「マトラボにおまかせできる」内容に属しているのではないか
  • そういう観点があったのか
    • 勉強したことないのでアレだが, わざわざレクチャー必要なほど内容があってつらい話なのかという感じもする
  • 制御系だと四元数では足りないのでは
  • 足りないというのはどういう意味?
  • 次元が足りない
    • 剛体一個なら十分.
    • 剛体 n 個を「つなぎ合わせた」系だと多分足りない.
    • 学生当時拘束付の 6n 次元系で計算してたような覚えあり.
  • 発言元の人のポジショントーク的なアレの可能性が示唆されつつある
    • あと剛体だと二次系 (x'' = ax' + bx) なので, 行列式にすると各々「速度 + 位置」がパラメータになる
  • 解析力学きちんとやった方がよほど役に立つのではないか説だ
  • 自分の身の回りだと, 制御系は「非線形」とか「区分的線型」とか「非ホロノミック」とかが数学的にホットなトピックだった.
  • 拘束系の力学は量子重力とかその辺でも必要とか何とか聞いた遠い記憶
  • 四元数はかなり使い方が限定された (特定の場合は有用な) ツールであると思っている.
    • 大学でもそう見られているなら大学で教える優先度は下がる
    • そういうのも補完していくというスタンスならテーマとしてとりあげる意味もあるだろう
  • もともと物理っぽいところしかカバーできないので, 今の所工学ゴリゴリっぽそうなところは優先度低い
  • 工学でもツール以上の意味をもつ数学 (鶏卵さんは微分幾何がそうだと言っていましたが) を狙っていくのが多分相転位 P 的に狙っているところに近いのでは
    • 非ホロノミックとかそうなのかな? と思ったり
  • 非ホロノミック系にしても区分的線型系にしてもそっち方向な気がする.
    • 古典制御系 (+ 初歩の現代制御系) だと, 「とりあえず線形 + ノイズに近似して考えれば何とかなるんじゃね」がまかり通っている () ので
    • まかり通っている=実用的
    • しかしながら, (多分計算機の進歩に伴って), 倒立振子制御などの古典的なヤツについても, 「非線形」なる線形で近似しないアプローチが有力となってきた
    • 数学力が問われる世界になりましたという歴史.
    • 微分幾何の「安定論」とか「多様体論」とかがベースのアプローチ.
  • 山本義隆・中村孔一の解析力学の本に「力学系」として非線形動力学の話が紹介されている.
    • 学部 2 年くらいで初めて読んだとき, 何から何までわからなくてつらかった遠い記憶
    • いっそ解析力学を幾何の復習も兼ねてきちんとやるか熱の高まりを感じる

量子力学関係の動画作りたい

  • 専門家から量子力学・量子情報とかの文献を教えてもらったので勉強して動画作る

ニコナレ

2016-01-11 大学院生YouTuber: arXivの論文レビュー動画とか作ろう

ちょっとテストとして近いうちに一つはやってみる予定だ.

2016-01-11 2016-01新刊: 戸田幸伸 『連接層の導来圏に関わる諸問題』 数学書房 シリーズ 問題・予想・原理の数学

何これ楽しそう. 読みたい. シリーズ名がまたいい.

2016-01-11 小澤徹先生の文章集がなかなか面白かったので

早稲田にいる非線型偏微分方程式がご専門の小澤徹先生の方だ. 今RIMSにいる小澤登高さんではない. ちなみに次のページ.

まず中西賢次氏の日本学術振興会賞受賞を祝うから.

最近ではW. Schlagとの共同研究によって、非線型シュレディンガー方程式や非線型クライン・ゴルドン方程式の基底状態の近傍の初期データのクラスを 9 つに完全分類し、対応する解が、正負の時刻で「散乱」「爆発」「基底状態近傍内の閉じ込め」の三種類の何れも実現し得る事を証明した。これは実に画期的な成果であり、「非線型波動方程式」と称する分野に於いて、数学が物理を真に超越した事を示す金字塔である。その一部は Kenji Nakanishi and Wilhelm Schlag "Invariant Manifolds and Dispersive Hamiltonian Evolution Equation" として European Mathematical Society から出版されている。

【数学が物理を真に超越した事を示す金字塔である】というのが気になる. 本当に不勉強で知らないのだが, 非線型 Klein-Gordon は物理のどんなところで出てくるのだろう. 線型の Klein-Gordon はもちろん相対論的量子力学の基本的な方程式だが.

次は2015年度日本数学会解析学賞授賞報告から.

竹村彰通氏は,統計的多変量解析についてこれまで多くの研究を行ってきた.近年は計算代数統計という新しい分野において,グレブナー基底に基づく計算代数手法の統計学への応用研究に著しい業績をあげてきた.特に,D加群の理論に基づくホロノミック勾配法の提唱は,統計学における標本分布論の新たな手法として特筆すべきものである.

代数統計は @tmaehara さんのツイートや RT で見かけたことがあるから名前くらいは知っていたが, まさか D 加群が統計学に使われているとは思いもよらなかったので衝撃を受けた. 本当, 何がどこで出てくるかわかったものではない.

今回の最後は2013年度物理学及応用物理学専攻修士課程ガイダンス大学院担任挨拶.

私も皆様に「次の並木美喜雄は、次の田崎秀一は誰かね?」と問いかけ、ご挨拶と致します。

並木先生はご縁がなくお会いしたことがないが, 田崎 (もちろん秀一. 学習院の田崎さんではない) 先生は, 熱力学と統計力学を教わった先生であり, 私も微妙に絡んでいないこともない (少なくとも非平衡統計の数理物理の論文くらいは読んだことある) 分野, 非平衡統計をリードする研究者で 極めて優秀だったのに若くして (といっても 50 代だが) 亡くなってしまった. 見た瞬間「あー」という何とも言えない感じになった. 悲しい.

今日からまた数学と物理をがんばろう.

2016-01-15 サイト紹介: 手書きでTeXコマンドをサジェストしてくれるサイト http://detexify.kirelabs.org/classify.html

参考にしたい.

$SO(n)$の連結性を示すお手軽な方法は何?

あまりよくわかっていないがとりあえず記録.

「わたしはついにモース理論がわかりました」:かの有名なWitten・SmaleのBottへの言葉

前にも紹介した記憶があるが, 改めて記事を抜き出し, 引用しておく. 橋本義武さんの回想録みたいなやつ. 元記事はこれ.

まず Bott への Witten・Smale の有名な言葉, 「わたしはついにモース理論がわかりました」

4.印度土産

さて,ADHM とほぼ同時に物理学者の方でも BPST の一人 Schwartz が同様の結果に達していたらしい.Atiyah は物理学者の世界の競争の激しさにとまどいながらも,今自分がおかれている状況にかつてないスリルをおぼえていた.

ちょうどそのころ,そんな Atiyah たちをよそに,所は変わってインドのタタ研究所,木陰にデスクを出してもらってのんびり海をながめる毎日を送りながら,一人の数学者が sabbatical year を満喫していた.われらが Bott 先生である.愉快なインド滞在を終えた Bott はオクスフォードに盟友 Atiyah をたずねた. Bott はこのときのことをふりかえって,「Atiyah はすっかり舞い上がっていて "mathematical high" の状態だったんだ」と述懐している.どうやら知らぬ間に大きな事件がおこっていたらしい.ところが,興奮しながらインスタントンの説明をまくしたてる Atiyah の声が,インドで聞いたリーマン面上の正則ベクトル束のモジュライの謎を語るバラモンの数学者 Ramanan の静かな声に不思議と響きあうのであった.こうして Atiyah-Bott のリーマン面上の Yang-Mills ゲージ理論が生まれる.それは,Bott が若いときから追い求めてきたモース理論の新局面を切り開くものであった.

Bott は各地の物理学者たちの前で,Atiyah と彼とのゲージ理論について講演して回ったのだが,その反応は熱いものではなかった.しかしそんな中にあって一人の男が鷹のように Bott のことばを追ってきた.Witten である.彼は Bott の講演から,後に言う Witten のモース理論を着想する.後日,Bott は彼から一通の手紙を受けとる.そこには,「Bott 先生,わたしはついにモース理論がわかりました!」と記されていた.それは奇しくも,かつての弟子 Smale が直伝のモース理論にさらに磨きをかけついに高次元ポアンカレ予想を解決したときに Bott に告げたのと同じことばだったという.

【Atiyahの子どもたち】というのがなかなかツボなのでこちらも.

5.あれでもなくこれでもなく

DonaldsonやKirwanといった"Atiyahの子どもたち"は, Bottの来訪を毎回サンタを待つように楽しみにしていたという. Donaldsonの論文"An application of gauge theory to four dimensional topology"の題がBottの若い頃の論文の題と似ているところに,そのあたりの雰囲気が表れているように思う.Donaldson のこの論文は,ADHM とも Atiyah-Bott とも違う道を切り開くものであった.すぐ近くで誕生した ADHM も Atiyah-Bott も深い理論であり,また当時できたばかりだからやることはたくさんあったはずである.事実 Donaldson はそれぞれに関連する仕事もしている.しかし彼は,それとは別に 4 次元トポロジーへの応用という思いもよらぬ方向へと一歩を踏み出した.彼の理論は,Rochlin の定理しかなかった 4 次元トポロジーの状況を打開しただけでなく,異種 4 次元ユークリッド空間という存在をわれわれに示してくれた.こんなものがあると知っただけでも数学を勉強した甲斐があったというものではないか.Witten はこう言っている,「Donaldson 理論は時空の幾何を理解する鍵である.」

2016-01-18 奈良女子大の鴨さん筋の情報:数IIIなしでも大学初年次相当の線型代数と微積分に対応できるという現場からの報告

嘉田さんの本これか.

やはり買うか.

2016-01-21 スペクトルが内点を含む非正規作用素の例, その他にもちょっとした作用素とスペクトルの例

あとでhttps://github.com/phasetr/math-textbookにまとめるが, とりあえずツイートメモ.

こういう例も愚直に収集していきたい.

あと内点を含まない作用素の例としてはコンパクト作用素がある. 原点が集積点である以外, 全て離散的で縮退度有限な固有値になっている. コンパクトなRiemann多様体上のLaplacianもこういう性質を持つ. 量子力学で出てくるような例は大概が非有界で自己共役だが 大雑把に言って連続スペクトル部分で内点を持つ.

2016-01-25 ツイートメモ: かつての東大後期の問題はめちゃくちゃ心が踊ったしそういうことをしなければいけないのかという回想録+決意

MarriageTheoremさんと心温まる会話をしたので.

私がするべきこともやはりこの辺なのかと再確認した. 地道に頑張ろう.

2016-01-30 記事紹介, 学習の喜びとは: Paul Lockhart, A mathematician's lament

私の実感に合うことを書いている方がいらっしゃるようで, さらにJunInoueさんそれを適当につまんで解説してくれていたので まとめておく.

メルマガに書くというモチベーションで, あとできちんと読んでまとめたい.

2016-01-31 圏論との付き合い方: infinitytopos.wordpress.com の記事と関連ツイート紹介

http://infinitytopos.wordpress.comは前も紹介した気はするが, ぴあのんさんのツイートが改めて発掘されたので.

現状, 私は仮に使うとしてもライトユーザーなので, Awodeyくらいでいいのだろう感がある. いっそ『コホモロジーのこころ』くらいでいいだろう感もある. 小嶋先生の論文を読めるくらいの圏論がどの程度なのかよくわかっていないが.

あとこんなツイートも.

2016-02-04 論文メモ: Yasuyuki Kawahigashi, A remark on gapped domain walls between topological phases

気になる.

論文タイトルは『A remark on gapped domain walls between topological phases』. 概要は次の通り.

We give a mathematical definition of a gapped domain wall between topological phases and a gapped boundary of a topological phase. We then provide answers to some recent questions studied by Lan, Wang and Wen in condensed matter physics based on works of Davydov, M\"uger, Nikshych and Ostrik. In particular, we identify their tunneling matrix and a coupling matrix of Rehren, and show that their conjecture does not hold.

これ, 後で読もう. ついでにメルマガとかでも配信しよう.

2016-02-12 可積分系で著名な廣田良吾先生の訃報

今さらだが, メールを掘り返していたら見つけたので.

逆散乱法とか可積分系で有名な教官だ. 全くの畑違いの私ですら名前を知っているレベル.

2016-02-14 ツイート紹介: 数の実在について最高の証明, メタ存在論の論文, J. SCHAFFER, On What Grounds What

kentz1 さんのツイートからだ.

写真の言葉を引用しておこう.

the existence of numbers:

  1. There are prime numbers.
  2. Therefore there are numbers.

1 is a mathematical truism.

謎い.

2016-02-19 記事紹介: 時枝正博士(Dr. Tadashi Tokieda)のおもちゃと応用数学

時枝正さんの話.

時枝さん, 田崎晴明さんですら絶賛していたレベルの講演巧者らしいし, ずっと気になっている. とりあえずメモ.

2016-03-07 芝浦工業大学 横田研究室 数理情報研究室 数学・プログラミング学習教材

これは気になる. とりあえずメモ.

2016-03-15 スライド紹介: 素数大富豪に関する自由研究まとめ

ページは次のリンクから.

ちょっと引用.

今最も熱い数学トランプゲーム「素数大富豪」について、簡単なルールを紹介した上で、「ゲームの中で出せる素数の個数」に関する自由研究の成果をまとめました。 54枚のカードの組み合わせから広がる素数の世界。始まりは2から、しかし一歩進むごとにぐんぐんスケールアップしてゆく素数大富豪の可能性に、あなたはどこまで食らいついていけますか? 札幌の科学勉強会での発表用に作成したスライドです。

素数大富豪はちょっとしたサポートアプリを作ったので, 興味がある方は使ってみてほしい.

2016-03-20 教育学部での数学への認識問題: 鹿大教育学部某教授「道徳は,公式を覚える数学のように決まった方法では教えられない(南日本新聞から)」

とてもつらく切ない.

2016-03-22 高校の数学カリキュラム: 初等幾何 (平面幾何) と行列, どちらの方が「大事」?

今見ると話が全く噛み合っていなくて申し訳なくなる. ただ一つだけ思うのは次の二点が前提になっていることだ.

  • 大学に進学すること.
  • 大学で行列を学ぶこと.

行列は入るとしても数学IIIという感じだし, 平面幾何は数学IAIIBだろう. 大学で数学・数学の応用をする場面では行列必須だし, 統計学との関係で人文・社会学でも大切ではある.

高校で何を教えるべきかという問題もある. 無理にあとで役立つことを教えても, その役に立つ場面や有用性が伝わらないのなら意味ないだろう.

ちなみに私は「数学が何の役に立つかどうでもいいし, 勉強するかどうかも勝手にすればいいが, もし必要な場面で使えないなら役に立たないのはお前の方だ」とか言い放つ方なので, その辺に関しては堀畑さんよりも遥かに厳しいだろうと思っている.

他にもいろいろあるが, とりあえずこのあたりで.

2016-03-23 Freeman Dyson自身によるStability of matterに関する動画

以前も紹介したと思ったら紹介した動画は一次元強磁性体の動画だったので, 改めて物質の安定性に関する動画を紹介し直す.

今のマストではないから見る時間を取らないでおくが, そのうちきちんと見たい.

2016-08-15 時枝正さんの講義が大量に投下されている YouTube チャンネル African Institute for Mathematical Sciences (South Africa)

時枝正さん, あの田崎晴明さんですら圧倒されたと言ってしまうほどの 圧倒的に面白い講義・講演をするらしいので, 何はともあれ記録しておく.

2016-03-28 小平邦彦先生の『解析入門』がとても面白そうな本だというのを知ったので

小平先生の『解析入門』, そんな面白そうなこと書いてあるのか.

俄然気になってきた.

ポストモダン解析学は学部の頃から気になっていて全く読んでいない. 幾何解析的なこととか興味あって, Jostもその辺の人らしいので読んでみたいとはずっと思っている.

2016-03-31 関孝和, 建部賢弘, 有馬頼徸, 安島直円の著作を読みたいなら古文漢文きちんとやろうの会

今のところあまり読む気はしないがとりあえずはメモだ.

2016-04-01 とある教育学部の数学での地獄のようなひどいカリキュラム報告事案

つらい報告を見た.

黒木さんのツイートメモ.

いま中高生向けの現代数学講座的なものを考えているのだが, 構成をどうするか迷っている. 抽象論の前の具体的なところで何を設定するべきか. 力学で山程微分積分の具体例を計算するというのも考えている.

2016-04-05 Fields賞と業績と寿命との関係

Fields賞受賞者自体がめっちゃ限られているデータにどの程度の意味があるのかがまずわからない. 記事読めばわかるのだろうが, 「ぎりぎり賞を逃す」概念はどう定義されているのだろうか. 統計に対する深刻な理解力不足を感じている.

勉強するべきことはたくさんある.

2016-04-14 Etale topologyのスライド

全くわからないが, 何となくメモしておく. トポロジーももう少しきちんと勉強したい. あとSGL.

2016-04-16 無限と全単射

久し振りに見た. 学部一年でやることとはいえ難しい. 直観も効かない.

こういうのを圏論ベースでやる話とかありそうだが, 何か参考文献知りたい.

2016-04-17 シオラン『どうやって悲しみで悲しみを打ち消したり、詩で悲しみに対して戦うというのだろう。私は悲しい人間は数学に携わるべきだと言いたい。』

ボードレールもヒュームも, この文脈でのライプニッツもわからないが, 【私は悲しい人間は数学に携わるべきだと言いたい】は 人類史に永久に刻みつけておきたい言葉だ.

ちなみにシオランというのが何者なのか. Wikipedia でちょっと調べた以上のことは何も知らない.

2016-04-18 記事紹介: 『Bayes's Theorem: What's the Big Deal?』

何か面白そうだし後で読む. いつも通りまずはメモ.

2016-04-19 記事紹介: 数学イノベーション戦略

数学イノベーション戦略, これ面白そう. あとでちゃんと読もう.

2016-04-21 Togetterメモ: $\lim$記号と「定義による拡大」その他

まだよくわかっていないのだが, この間でふと思い出したときにy_bontenさんにTogetterを教えてもらったのでとりあえずメモ. ついでに他の気になるTogetterも置いておく.

ここまで基本的なところの勉強不足はさすがに恥ずかしい.

2016-04-25 Fields賞受賞者, 森重文さんの「学問的態度」に関するYouTube動画

森さんが学問的態度に関して話している動画. 1:10しかないし英語だが英語の字幕はあるので, 気になる人は見てみよう.

あと森さんが喋っているところをはじめて見た. 気難しい数学者や堅苦しい数学者, 私の観測範囲では見たことないし, ふだんの状況で話してみて堅苦しいことはないと思っているし, 京大の人ならそれなりに気楽に話しかけられるのだろうと思っているが, やはり今でもFields賞受賞者とかいうと何というか, 壁を感じる.

前に一度, 修士卒業前の東大の講演会にスピーカーで来て, サインももらった広中平祐先生(さんづけの方がいい?)は, 気楽に喋ったこともあってもうあまりそういう感じないのだが. 不思議なものだ.

世間一般だと「数学者」「学者」というだけで相当のハードルを感じるだろう. 出てくるのがだいたい堅苦しい説明をさせられるときばかりで, そういう場面でいい加減なことをいうわけにもいかないから, 割と厳しめな感じになるし, こういろいろな事は思う.

2016-04-27 トイレにもエレベーターにも居酒屋にも黒板がほしい

実際に IHES のトイレやエレベータに黒板があるかどうか忘れてしまったし, どう検索したものかも厳しい. Newton institure だったのを勘違いしている可能性の方が高くなってきた.

とりあえず男性用トイレにあるという情報もあり, 女性用トイレにもちゃんと黒板があるという情報を得た.

トイレはちょっと, という話をしたが, 本当に狂気なのはトイレ以上にエレベーターという気がする.

2016-05-01 ツイート紹介: ABC予想の「今」が分かる良質記事3本

ABCは全く追いかけていないので不明だが, math_jinさんが謎の追跡をしまくっているので宣伝協力していきたい. 私も何かのトピックに関してはこのくらいやりたいところだが.

最近『圏論の歩き方』の西郷甲矢人さんの記事でAQFTに再びはまりつつあるので何かその辺やりたい.

前もツイートしたが, 西郷さん, 小嶋先生を説得してミクロマクロ双対性を学ぶための数学の教科書を書かせてほしい. いまある本, 数学の前提知識多すぎて全く対応できない. できることなら協力は惜しまない.

2016-05-02 廣中平祐先生の御前講義での質疑応答の一コマ: 「標数$p$はどうなんですか?」

こういうのを見るたび陛下への畏敬の念を新たにする. あと【尖点特異点の解消について明瞭な図解】というのを見てみたい.

2016-05-04 加藤文元さんの生物学科の学生時代の感動的エピソード: Henselの補題

感動的すぎる. 私もこういうのやりたい.

2016-05-05 証明の主要部分にコンピューターによる計算が含まれる数学の定理, 計算機援用解析

よくわからないが鴨浩靖さんのブログ・コメント. 冒頭部だけ引用.

証明の主要部分にコンピューターによる計算が含まれる数学の定理としては四色定理[Appel & Halen 1977]が有名ですが、それが最初ではありません。整面凸多面体の分類の完成[Zalgaller 1967]があります。前者が当時話題になったのと比べると、後者はほとんど話題になりませんでした。なぜでしょう?

詳細を全く知らないのだが, 元京大で早稲田も退官されているっぽい西田孝明先生の計算機援用解析, アレは数値計算をどう使っているのだろう. 厳密な証明に援用しているとかいう記憶があるが, 正直よくわかっていないし, この記憶も間違っている可能性がある.

解析学賞ももらっていたはずで, 結構気にはなっているのだが. どなたかご存知の方は教えてほしい. 西田先生ご本人が降臨したら爆笑する.

2016-05-06 数学が苦手苦手と言い募るのはいい加減本当にうんざりするからやめてほしい

数学苦手でも宇宙に行きたくて…JAXA岩田直子さんという記事があったので. 新聞のサイト, すぐにページがなくなるから全文引用したくなる. 悩んだが全文引用することに決めた. 最後にまとめておく.

はじめに気になったのは【数学苦手でも】というタイトル. みな総出で数学苦手苦手と本当にうんざりする. めっちゃネガティブな印象与えるし本当にやめてほしい.

しかしぱらぱらっと読んでいて, 他のセンター試験は成功、でも… 宇宙女子「可能性信じて」も読んで一番気になったのは次の部分.

受験勉強は今しかやれないことです。

受験というか大学で学ぶこと, 大人になったらもうできない社会なのかというあたり. 「大学で」の限定すらつかないのかもしれない. それが何よりつらい.

で, 以下記事の全文引用. 新聞とかのサイト, 本当に記事へのリンクずっと残してほしい.

宇宙飛行士を夢見て理系の大学に入りたいのに、苦手な科目は数学と理科。宇宙航空研究開発機構(JAXA)技術者の岩田直子さん(33)は、1日20時間の猛勉強でその壁を乗り越えました。今は2月に打ち上げられる最先端の天文衛星の設計担当者の一人として、再び追い込みの真っ最中です。

「どうすれば宇宙飛行士になれますか」;

高校2年生のとき、旧・宇宙開発事業団(NASDA)=現・宇宙航空研究開発機構=に電話をかけました。対応した女性職員の方が「大学を出て、宇宙飛行士の募集があったら応募してください。今は、勉強にしっかり励んでくださいね」とやさしく説明してくれたんです。その後、事業団についての資料が自宅に届きました。「勉強を頑張ってください」という手紙も添えられていて、感激しました。

宇宙飛行士を目指すようになったのは、小学生のときです。読書が好きで、宇宙についての本や図鑑を読んで、「宇宙ってどんな所だろう。行ってみたいな」と思っていました。毛利衛さんがスペースシャトルで宇宙に行ったのも、そんな頃です。初めて職業としての宇宙飛行士の存在を知り、目標になりました。中学生のときに宇宙飛行士の応募条件を調べると「自然科学系の大学を卒業」という項目があって、理系の大学に進学しなくちゃと思い定めました。

■国語は学年1番、数学は真ん中より下

高校は、地元の奈良県の公立中学から大阪教育大学付属天王寺高校に進学しました。大学の志望先は航空宇宙工学を学べるところを考えて、前期は京都大学、後期は名古屋大学を受験すると高3の春に決めました。親は「国立大じゃないと学費は出せない」と話していました。3人きょうだいの一番上だったので、もしも受験に失敗したら浪人せずに働いてほしい、とも。何としても現役で国立大の理系に合格しなければなりませんでした。

でも、高校では数学や理科が苦手だったんです。中学までは不得意ということはなかったんですけどね。積分や複素数とかになると、概念もうまく理解できなかった。教科書を読んで何となくわかった気になっても、いざ問題を解こうとすると、理解が足りずにダメでした。高2の学年全員の試験では、数学は下から数えた方が早いくらい。読書が好きだったおかげか、国語は1番ということもあったんですけど。

センター試験の対策を本格的に始めたのは、11月末から。文化祭や音楽祭に一生懸命な学校で、一連の行事が終わってからです。数学は、問題を解くことをひたすらやりました。何で間違えたのかをチェックすることで、理解していなかったことが見えてきました。間違えた問題は、時間が経ってから再び解いてみることを繰り返しました。覚えなくてはいけないことは、読むだけではなくて、ノートに実際に書いて覚えるようにしました。

学校がある天王寺キャンパスの食堂で午後10時ごろまで友達と勉強して、それから家に帰っても勉強していました。焦りはものすごくありました。勉強すればするほど、まだ出来ていないことが浮き彫りになって。「これじゃ終わらない。どうしよう」と思って泣きながら勉強したこともあります。あまりに不安なときは友達に電話して気持ちを落ち着かせていました。

■1日20時間「自分の夢のため」

センター試験の数学は、そんなに悪くない点数をとれました。でも、京大ではセンター試験の結果はあまり反映されません。センター試験が終わった後は、2次試験への追い込みで1日20時間も勉強したことがあります。睡眠時間は1日平均3、4時間。入浴、トイレ、睡眠、ご飯以外はずっと机に向かっていました。体調は崩しませんでしたけど、視力は1・2から0・6に落ちました。問題の字がぼやけて見えなくなってしまい、慌てて眼鏡をつくりに行きました。

「自分の夢のためにやるしかない」という思いが勉強の支えでした。京大の2次試験を受験する前には「やりきった」という思いはありました。京大でも数学が壁になっていました。2日間の試験日の初日に数学があって、出来が良くなくて落ち込みました。「これは厳しいかも」と。京大が終わった後は、気持ちを切り替えて、後期の名大に向けて勉強しました。京大は結局、不合格。私立の併願はありませんから、「落ちたら働くしかない」という、後がない状況に。名大に向けて、1日20時間の勉強を続けました。

名大では、航空宇宙工学科よりも倍率が下がる物理工学科を受けました。勉強する内容はそれほど変わらないだろうと思って。名大の2次試験では手応えがありました。合格発表を名古屋まで見に行って、自分の受験番号を見つけたときは、ほっとしました。もしも落ちたら、働きながらもう1回大学を受験しようかと考えていたので、喜びよりも安心感がありました。

■誰でも宇宙に行ける時代を目指して

大学では、物理工学と航空宇宙工学の両方の授業に出ていました。宇宙飛行士の夢は持ち続けていましたが、自分が宇宙飛行士になるだけでいいのだろうか、という思いもわいてきました。

きっかけは大学2年のときのインド旅行です。長距離列車で乗り合わせた中年の男性客と英語でしゃべるうちに、「宇宙飛行士になりたいと思っている」と話しました。すると、男性は「日本人はうらやましい。自分には非現実的すぎて、夢でも思ったことがない」。その言葉に衝撃を受けました。短絡的かもしれないけど、自分が宇宙に行けるだけではなくて、誰でも宇宙に行ける時代にしなくちゃならないな、と思いました。

スペースシャトルのようなものを日本でもつくることをテーマにした研究室が九州大学にあったので、大学院はそこに進みました。院を出た後も宇宙船の開発をしたいと考えて、就職先にはJAXAを志望しました。エントリーシートには、宇宙船の需要を呼び起こしたいことや太陽光エネルギー以外で発電するような衛星をやりたいことを書きました。

JAXAに入って2年目の2008年から、今年2月に打ち上げるX線天文衛星「ASTRO―H(アストロ・エイチ)」の熱設計を担当しています。人工衛星の表面の温度は、宇宙空間で太陽光の直射を受けると150度、当たらなければマイナス100度にもなります。機器が正常に動くよう、配置などを設計する仕事です。

数学と物理がすべての仕事の基本です。実際に衛星をつくるメーカー側に説明するときも、根拠は数字で示さなければなりません。知識だけじゃなく、数字を使って論理的に説明できることが理系の人間に求められることだと思います。最初の頃は自分が一番未熟で、衛星のプロジェクトと共に成長してきたようなものです。「受験勉強であれだけ集中できた」という自信が支えになりました。

前回の宇宙飛行士の募集があったのは、ASTRO―Hの仕事を始めたころ。「3年以上の実務経験」が求められていたので応募しませんでしたが、また募集があったら、応募するかもしれません。

ずっと担当してきたASTRO―Hの打ち上げがようやく見えてきて、自分が担当したものが本当に宇宙に行くんだな、と感慨深いものがあります。今は、打ち上げ後に後悔しないよう、シミュレーションや衛星の目視を重ねています。

受験勉強は今しかやれないことです。私も、最後まで頑張らなければ、この職場にはいなかったかもしれません。受験生の皆さんには、試験日までという限られた時間を精いっぱい使って、頑張ってほしいと思います。(聞き手・鈴木康朗)

いわた・なおこ1982年生まれ、大阪市出身。2005年に名古屋大工学部卒、07年に九州大学大学院修了後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に就職。2月12日に打ち上げを控えた日本の次世代X線天文衛星「ASTRO―H」の熱設計を担当した。巨大ブラックホールなどを観測するASTRO―Hによって、宇宙の構造の解明が進むことが期待されている。33歳。

スペクトル解析とレゾルベント解析

役に立つことが言えた気がしないが, とりあえずまとめておく.

吉田近似もそれなりに有界性ちゃんと使っていた記憶がある. Hilbert・Banach空間系の枠組みでやっていれば, 微分作用素はたいがい非有界なはずだ. もちろん超関数の空間だと連続になってしまう.

あと有界領域でのLaplacian(もう少し一般に楕円型でも言えたはずだが)は, それ自身非有界でもレゾルベントが有界どころかコンパクトにさえなり, 幾何解析や調和積分でも大事なはず.

2016-05-09 今後のコンテンツメイキングでどうマンガをうまく使っていくか問題

歴史的詳細は全く知らないが, 個人的一番のポイントは最後の「絵がかわいい」というところ.

軽く見た範囲では, 一昔前のはとりあえずおくにしても, 学習マンガの系統は何かやたら微妙な感じの絵が多い.

昔のはもう時代がわからないから何とも言えないし, 学問の発展と突き合わせる必要もあって内容的にも 刷新が必要なのだろうと思うが, それ以前にマンガで読もうとする層に合わせて, 適宜絵というか絵柄も刷新しないといけないのか, というのは感じる.

私もマンガ的なところは何かしたいと思っているので, それなりに参考にしている. もっと資料は収集しないといけない.

2016-05-15 2147483647までの整数のいろいろなことを教えてくれる謎のサイトhttp://www.integernumber.com/

変わったサイトがあるものだ, というか謎の情熱を持つ人がいるものだ, という感じ. 何はともかくメモ.

2016-05-19 現代数学ミニ講座を作ろう: 解析学で代数を学ぶ

いま現代数学観光ツアーの企画を進めている. そろそろ講座作成が一段落するので, 次のミニ講座で何を作るかを考えていて, ちょっと黒木さんに相談してみた記録.

何からはじめよう? 自分自身楽しみでならない.

2016-05-21 メビウスのショーツという悪魔の装備があるらしい

よくわからないがとりあえず記録しておく.

2016-05-22 記事紹介: 『これからのビジネスマンに欠かせないスキルは「数学」だ!』

これからのビジネスマンに欠かせないスキルは「数学」だ!という記事があった. 本当か? という感じが色々な意味であるが, とりあえずいくつか引用.

「多くの人が役に立たないと思っている数式を、新しいサービスに落とし込む発想を生んだ点で彼らは天才的でした」;

数式という表現がどうなの, という気はする.

巨万の富をもたらした検索エンジンの仕組みは、冒頭のように理系学生であれば、誰もが学ぶ数学で成り立っていたのだ。グーグルの慧眼は、急成長するインターネットの世界に、数学が応用できると「ピンときた」点にあるだろう。

ページランク, たくさんある検索の基準のうちの 1 つというだけだし, 最近はページランクどうなの, という話もあると聞いている.

日本ではあまり知られていないが、グーグルは「数学の塊」のような企業だ。まず、社名からして、10の100乗を意味する「グーゴル」をペイジが綴り間違えたことに由来する。

そして、共同創業者であるセルゲイ・ブリンと、ペイジの2人は、共に親族に数学者がいる「数学サラブレッド」であるユダヤ人家系に生まれている。

旧ソ連出身のブリンの父親は数学を教える大学教授、母親は宇宙分野の研究所などで働く科学者だった。米国生まれのペイジも、人工知能を研究する大学教授の父と、コンピュータ分野で教鞭を執っていた母親に育てられている。

幼いころから数学的な素養を培ってきた2人が、IT産業の集積地である米シリコンバレーの大学院で知り合ったことが、数学とビジネスの新しい化学反応を引き起こしたといえるのだ。

そして現在、グーグルは世界中の名門大学の数学人材を雇いまくっている。

本誌の調査によると、米スタンフォード大学や米マサチューセッツ工科大学(MIT)など名門5大学に絞っても、数学を専攻した社員数は少なくとも延べ338人を数える。数学の応用分野であるコンピュータサイエンスも含めると、延べ5000人を超えるもようだ。

そんなグーグルの応用範囲はオンライン広告から自動運転など交通インフラにまで及び、幅広いサービス分野を数学的手法で切り開く頭脳集団になっている。

コンピュータサイエンス, 数学の応用分野なの.

米国では、多くのビジネスで数学者たちが暴れ回る時代が訪れている。それを象徴するのが、米キャリアキャストが毎年発表するベストジョブのランキングだ。

数学者の順位は2000年以降上がり続け、14年にはなんと1位にまで上り詰めた。15年は3位に落ちたが、上位には数学を用いる職種が軒並みランクインしている。

アメリカの事情, どこまで他国に通じるのだろう.

「金融業界の人材を雇っても利益は上がらなかったが、科学者を採用するとうまくいった。それが種明かしです」。天才数学者であり、クオンツの中でも伝説的存在のヘッジファンド、ルネッサンステクノロジーズの創業者であるジム・シモンズは昨年、公の場でこうコメントしている。

天才数学者というの, 本当なのだろうか.

このほか、暗号分野で数学が必要な国防総省や国家安全保障局(NSA)などが、優秀な数学者をこぞって招き入れており、国も数学者の重要性を認識している。

日本のビジネス界でも今、ようやく数学の重要性を認識する動きが見え始めてきた。

日本での認識, 本当なのだろうか.

これは、ハードではなく、ソフトの時代に必須なのが「数学」と言い換えられるかもしれない。

とはいえ、いくら数学が必要といっても、天才の研究者や技術者がやればいいだけ、と思ってしまうかもしれない。だが、ビジネスマンにとっても、数学スキルは間違いなくあった方がいい。

数学者が創業したことでも知られる世界最大のインターネットインフラ会社、米アカマイ・テクノロジーズのマイケル・アファーガン上級副社長はこう指摘する。

「日常的に数学を操らないビジネス側の人材でも、今後は数学の素養が必要になる。なぜなら、デジタル時代には、数学が急速に共通言語となってくるからだ」

これ, どこまで本当なのか.

math_jin さんのコメントも載せておこう.

何にせよ読んでみよう.

2016-05-23 『数の帝国』という数学関係の謎のページを見つけたので

何かよくわからないが, 割とマニアックっぽい. とりあえず記録しておく.

2016-05-26 数学者・物理学者でおとぎ話を書く

『あなたのツイートから桃太郎を書いたらこうなった!』というのをやってみたら, 面白すぎてお腹痛い.

  • http://appli-maker.jp/analytic_apps/36978/results/108264394

記録して残しておきたい.

昔々ある所に立川と伊藤清が住んでいました. 立川は大栗へ量子論しに, 伊藤清は関西へ線型代数しに行きました. 伊藤清が関西で線型代数をしていると, スライドスライドと, 大きな多様体が流れてきました. 伊藤清は良い土産ができたと喜び, それを拾い上げて家に持ち帰りました. そして, 立川と伊藤清が多様体を食べようとすると, なんと中から元気の良い数値計算が飛び出してきました. 「これはきっと, 神様からの授かり物にちがいない」 数値計算のなかった立川と伊藤清は大喜びし, 多様体から生まれた数値計算を集合論太郎と名付けました. 集合論太郎はスクスク育ち, やがて強い選択公理になりました.

そしてある日, 集合論太郎が言いました. 「ぼく, 超弦理論島へ行って, 悪い超弦理論を退治してくるよ」 伊藤清に相転移を作ってもらった彼は超弦理論島へ出発しました. 集合論太郎は旅の途中で黒木に出会いました. 「集合論太郎さん, どちらへ行くのですか? 」 「超弦理論島へ, 超弦理論退治に行くんだ」 「それではお腰に付けた相転移を 1 つ下さいな. お供しますよ」 黒木は相転移をもらい, 集合論太郎のお供になりました. そして今度は濱中裕明に出会いました. 「集合論太郎さん, どこへ行くのですか? 」 「超弦理論島へ, 超弦理論退治に行くんだ」 「それではお腰に付けた相転移を 1 つ下さいな. お供しましょう」 そして今度は立川裕二に出会いました. 「集合論太郎さん, どこへ行くのですか? 」 「超弦理論島へ, 超弦理論退治に行くんだ」 「それではお腰に付けた相転移を 1 つ下さいな. お供します」 こうして仲間を手に入れた集合論太郎はついに超弦理論島へ到着しました.

超弦理論島では超弦理論たちが近くの村から奪ってきた宝物や御馳走を並べて「迷惑メールの宴」をしていました. 「よし, かかれ! 」 黒木は超弦理論に噛み付き, 濱中裕明は超弦理論をひっかき, 立川裕二は超弦理論を突きました. そして集合論太郎も大栗をふり回して大暴れしました. すると, とうとう超弦理論の親分が泣きながら降参を宣言しました. 集合論太郎と黒木と濱中裕明と立川裕二は超弦理論から取り上げた迷惑メールを持って家に帰りました. そして集合論太郎たちは迷惑メールのおかげで幸せに暮らしましたとさ.

めでたしめでたし.

他のやつもやばかった. 花さかじいさんバージョン.

昔々あるところに江沢洋さんと舟木さんが住んでいました. 二人は子供がいなかったので「メ◯マガ」という犬を可愛がっていました. ある日, メルマガが畑でメールメール吠えました. 「ここ掘れメールメール, ここ掘れメールメール」 「どうした, メルマガ? ここを掘れと言うのか. どれどれ」 江沢洋さんが掘ってみると, なんと地面の中から大判小判が出てきました. するとこの話を聞いた隣の欲張り立川裕二さんがメルマガを無理矢理畑に連れて行きました. そして, 嫌がるメルマガに無理やり鳴かせると, そこからは数値計算がたくさん出てきました. 怒った欲張り立川裕二さんは, なんとメルマガを殴り殺してしまったのです. 江沢洋さんと舟木さんは大変悲しみを畑にメルマガを埋めてお墓を作りました.

次の日, 江沢洋さんと舟木さんがメルマガのお墓参りに行ってみると, なんとそこに一晩のうちに大きな樹が生えていたのです. 江沢洋さんと舟木さんは「この樹はメルマガからの贈り物に違いない」と思い, その木で線型代数を作りました. すると不思議な事にその中から宝物がたくさん出てきました. それを聞いた, 欲張り立川裕二さんは線型代数を無理矢理借りていきました. しかし出てくるのはパンルヴェばかりで, 宝物は出てきません. 怒った欲ばり立川裕二さんは線型代数を壊して多様体にしてしまいました. 悲しんだ江沢洋さんは, せめて多様体だけでも持ち帰ろうとしました. その時, 多様体が風に飛ばされて枯れ木に掛かったのです. すると, どうでしょう. 多様体の掛かった枯れ木に小林銅蟲が咲いたのです. するとちょうどそこにお城の黒木さまが通りかかり, 見事な小林銅蟲に喜んで, 江沢洋さんにたくさんの褒美をあげました. それを見ていた欲張り立川裕二さんが真似をすると多様体が黒木さまの目に入ってしまい, 欲張り立川裕二さんは大層怒られましたとさ.

おしまい.

シンデレラバージョン.

昔々とても素敵で遠い娘がいました. 母親は早くに亡くなっていたのですが, お父さんが再婚することになり, 新しいお母さんと二人のお姉さんが出来ました. ところが彼女たちは大変な解析関数だったのです. 彼女たちは娘をいじめ, 「指導者」と呼んで馬鹿にしました.

ある日のことです. 播磨の伊藤清さまがお嫁さん選びの集合論会を開く事になり, 指導者のお姉さんたちにも招待状が届きました. しかしもちろん指導者は一人でお留守番です. 悲しくなった指導者はシクシク泣き出しました. すると指導者の目の前に, 大阪市立自然史博物館のおばあさんが現れました. 「おまえはいつも仕事を頑張っている良い子だね. 見ていたよ. ご褒美に私が集合論会へ行かせてあげるよ」 「本当? 」 「ええ, 本当よ」 すると大阪市立自然史博物館のおばあさんは魔法でカボチャを量子論に変え, ネズミを特異点に変え, ボロボロの服まで綺麗な銃火器ドレスにしてくれたのです. 「いいかい, 指導者. 私の魔法は 12 時までしか続かないから, それを忘れないでおくれ」 「わかりました. 行ってきます」 こうして指導者は播磨に出かけて行きました.

さて, 播磨に指導者が現れると, そのあまりの美しさに皆が息を呑みました. 伊藤清さまは指導者の前に進み出て「一緒に集合論してほしい」と言いました. それから楽しい時間はあっという間に過ぎ, ハッと気がつくともうすぐ 12 時という時間です. 「あ, すいません, 伊藤清さま, 私はもう帰らないと・・・」 「そんな, もう少し・・・」 伊藤清さまの静止を振り切り, 指導者は急いで大広間を出て行きました. しかしあまりに慌てていたために表現論の靴が階段に引っ掛かり脱げてしまいました. 取りに戻る時間がありません. 指導者は待っていた特異点車に飛び乗ると, 急いで家へ帰りました.

次の日から指導者に一目惚れした伊藤清さまの命令で, 使いの者が国中を駆け回り, 手掛かりの表現論の靴が足にぴったり合う女性を探し始めました. やがて彼らは指導者の家にもやって来ました. 解析関数な義姉たちは何とか靴を履こうとしましたがもちろん入りません. ところが指導者が履いてみるとピッタリだったのです. こうして伊藤清さまと結婚した指導者はいつまでも幸せに暮らしましたとさ.

めでたしめでたし.

白雪姫バージョン.

昔々遠いけれど意地悪な伊藤清がいました. 伊藤清は魔法の楕円型を持っていてこう尋ねました. 「楕円型よ楕円型よ, この世で一番遠いのは誰? 」 そうするといつもは楕円型が「あなたが一番遠いです」と答えてくれるのです. ところがその日は違っていました. 楕円型はなんとこう答えたのです. 「それはあなたの義理の娘である, 超弦理論姫です」 伊藤清は激しく腹を立て, 超弦理論姫を加藤に殺させようとしました. でも心の優しい加藤は超弦理論姫を殺すことが出来ず, 森の中に隠して嘘の報告をしたのです.

こうして超弦理論姫は, 森に住む七人の書泉グランデたちと暮らす事になりました.

ところがある日, 楕円型のせいで加藤の裏切りがバレてしまいました. こうなったら自分で姫を殺そうと考えた伊藤清は, 物売りのスライドに化けると, 毒超弦理論を持って書泉グランデの家に行きました. 「遠い娘さん, これをどうぞ」 「まあ, なんて真剣な超弦理論. スライド, ありがとう」

そしてその超弦理論を一口齧った超弦理論姫はバタッと倒れて二度と目を開きませんでした. 超弦理論姫が死んだことを知った書泉グランデたちは悲しみ量子論の棺の中に超弦理論姫を寝かせました. すると偶然ある国の伊藤清がそこを通り掛かったのです. 「なんと遠い姫だ. まるで眠っているようだ」 伊藤清は思わず超弦理論姫にキスをしました. するとキスしたはずみで毒超弦理論の欠片が超弦理論姫の喉から飛び出したのです. 目を覚ました超弦理論姫は伊藤清と結婚し幸せに暮らしましたとさ.

めでたしめでたし.

浦島太郎バージョン.

昔々ある村に優しい性格の生物学太郎という若者がいました. 彼が関西を通りかかった時のことです. 子どもたちが騒いでいるので近寄ってみると, 彼らは大きな黒木を捕まえてみんなでいじめていました. 「可哀想に. 逃がしておやり」 「嫌だよ. やっと捕まえたんだ. どうしようと俺たちの勝手だろ」 見ると黒木は涙をこぼしながら, 生物学さんを見つめています. 生物学さんは懐から研究者を取り出し, 子どもたちに差し出して言いました. 「この研究者をあげるからおじさんに黒木を売っておくれ」 「ホント? それならいいよ」 こうして生物学さんは子どもたちから黒木を受け取るとそっと関西へ逃がしてやりました.

さて, それから数日経ったある日のことです. 生物学さんが関西に出かけて多様体を釣っていると誰かが自分を呼ぶ声がします. 「おや? 誰が私を呼んでいるのだろう? 」 「わたしですよ」 すると関西の上に, ひょっこりと黒木が頭を出していました. 「この間は助けて頂き, ありがとうございました」 「ああ, あの時の黒木さんか」 「はい, おかげで命が助かりました. ところで生物学さんは, 大栗城へ行った事がありますか? 」 「大栗城? それはどこにあるんだい? 」 「関西の底です」 「えっ? そんな所に行けるのかい? 」 「はい. 私がお連れします. さあ, 背中へ乗ってください」 黒木は生物学さんを背中に乗せて関西の中をどんどん潜っていきました. 関西の中にはまっ青な線型代数が差し込み, 参考書がユラユラとゆれ, 赤やピンクの擬人化の林がどこまでも続いています. 「さあ, 着きましたよ. ここが大栗城です. さあ, こちらへどうぞ」 黒木に案内されて進んでいくと, 目の前に色とりどりの魚たちを従えた美しい女性が現れました. 「ようこそ, 生物学さん. 私はこの大栗城の主人のナマモノ姫です. この間はうちの黒木を助けてくださり, ありがとうございます. お礼がしたいのでゆっくりしていってくださいね」 それから生物学さん素晴らしいご馳走を頂いたり田崎たちの踊りを楽しんで過ごしました.

そして, あっという間に三年の月日が経っていたのです.

ふと家族や村の仲間たちのことを思い出した生物学さんはナマモノ姫にそろそろ帰りたいと申し出ました. するとナマモノ姫は寂しそうに言いました. 「お名残惜しいですが, 仕方ありませんね. ではおみやげにこの解析関数箱を差し上げましょう」 「解析関数箱? 」 「はい, でも決して開けてはなりませんよ? 」 「はい, わかりました. ありがとうございます」 姫と別れた生物学さんはまた黒木に送られて地上へ帰りました.

地上に戻った生物学さんは驚きました. そこは自分の知っている村ではなく自分の家も見当たらなかったのです. 生物学さんは近くに居た一人の老人に尋ねてみました. 「すいません. この辺りに生物学という家はありませんか? 」 「生物学? ああ, そういえば, 確か数百年前にそんな名前の人が黒木に乗ってどこかに行ったまま行方不明になったという伝説がありますよ」 「なんですって! そんな・・・, 家族も友達もみんな死んでしまったのか・・・」 がっくりと肩を落とした生物学さんは, ふと持っていた箱を見つめました. 「そう言えば, これには何が入っているんだろう? 」 そう思った生物学さんは, 開けてはいけないと言われていた解析関数箱を開けてしまいました. すると箱の中から真っ白の煙が出てきました. 煙が消えた時, その場に残ったのはなんと数論になった生物学さんだったのです.

おしまい.

2016-05-26 記事紹介: 『数式や方程式を作って保存出来る『Nuten』がすごい』

何だったか忘れたが, 探しものをしていたら次のNutenを見つけた.

ちょっと引用.

数式や方程式はiPhoneではメモ出来ない。そう思っていましたがこんなアプリを見つけました! 代数、幾何、三角法など、なんでも保存出来る『Nuten』です。

三角法って何だ, 三角関数か, とかあるがとりあえず. 手書きのお絵描きアプリで指で書いた方が手っ取り早い感じはあるが, コンセプト自体は面白いのかもしれない. よくわからない. とりあえずメモしておく.

2016-05-27 別冊数理科学がPDF販売されるようになったので

以前サイエンス社の通販サイトから直接本を買ったことがある. そのときのメールアドレス宛てに次のような案内が来た.

この度弊社では, ご好評につき品切れとなっておりました数理科学臨時別冊のバックナンバーを電子書籍化致しました. いずれもしばらくの間, 品切れとなっておりました書目です. ぜひこの機会にお求めの上ご利用頂ければ幸いでございます. 弊社サイトの WEBSHOP よりご注文頂けます. 電子書籍一覧はこちら (http://www.saiensu.co.jp/?page=field_list&field_id=30&field_name=%C5%C5%BB%D2%BD%F1%C0%D2) をご覧くださいませ. ご注文確定後に弊社よりお送りするメールでダウンロード情報をお送りいたします.

なお電子書籍のご利用にあたりましては, 弊社サイトにてご案内しております「電子書籍ご利用のご案内」をご一読の上ご利用頂きますようお願い申し上げます. 「電子書籍ご利用のご案内」:http://www.saiensu.co.jp/?page_id=38197

読みたかった本がいくつもある. これは嬉しい. 買いたくなってしまう. 時間が取れなくて悲しい.

2016-05-29 『数学の実験とは違う気がするが実験数学というのはある』

ちょっと話はずれるが, 数学とプログラミングについて, これからもっといろいろ本格的にやっていきたい. とりあえず決意表明も兼ねてメモ.

2016-06-01 記事紹介: 「史上最大の素数」、更新される

よくわからないが, これまでの最大の素数と今回見つかった素数, その間の素数は全て見つかっているのだろうか.

2016-06-05 記事紹介: 『正規言語と代数と論理の対応:An Introduction to Eilenberg’s Variety Theorem』

正規言語, いわゆる正規表現のことか. いまだに研究するべきことがあるとかいうあたりにまず驚く. とりあえずメモ

2016-06-09 齋藤毅『集合と位相』に出てくる「線」はDVRのSpec

以前せっかく伺ったのにど忘れしたので今度こそちゃんとメモる.

返答はこう.

@phasetr DVRのspecです。閉点が極大イデアルです。

ありがてえありがてえ.

DVRはDiscrete Valuation Ring.

2016-06-09 関これと環これ: 関数これくしょんとか環これくしょんとかやってみたい

前もmonaeさんあたりが環これを話題にしていたが, こういうのをもっとやっていくべきかという気もしている. とりあえず忘れてもいいようにメモ.

2016-06-11 proper射の謎, そして代数と解析, 幾何での有限性のマッチング

何か探していたら次のPDFを見つけた.

あまりよくわかっていないが, proper射はコンパクト性の類似という話だった.

どう言ったらいいのかよくわかっていないものの, 代数でネーター性に代表される適当な有限性の解析学類似はコンパクト性で, $\bbR$や$\bbC$上の微分幾何みたいなところだと, 解析学のコンパクト性からくるいい話をいろいろ使っているのだろうという感じがある.

代数で位相を使わない, 使えない代わりに各種有限性があって, 解析学で代数的な諸性質が使えない代わりに位相からコンパクト性を担ぎ出している感じがあって, 代数幾何だとその両方のマッチングをさせるのに苦労している, そういう感じがある.

全くとりとめもないが, とりあえず書いてまとめておこうと思っていたことだったから, いい機会と思って記録しておく.

2016-06-18 微分作用素と指数写像に関するやりとりまとめ

いろいろと謎で何を言っているのかいまだにわかっていないが, とりあえずやり取りを記録.

その2.

何を言っているのか本当に全然わからない. 局所解と大域解というの, 多様体上でのベクトル場が作る局所一径数部分群の話を想定していると思うのだが, それで正しいならこれは多様体の完備性に関する話だ. 一方で微分作用素 (ベクトル場) の有界・非有界は微分作用素が作用する空間と, その上の線型作用素の集合の位相の話だ.

後者の文脈では局所解とか大域解とかそういう話を見た記憶がない. 前者にしたところで, 指数写像が(時間)局所的な定義しかできないか 全体まで伸びるかという話で, 局所解・大域解という言い方はとりあえず見たことがない.

何かよくわからないし, 私が幾何を知らなすぎる問題もある. 何はともあれとりあえずメモ.

2016-06-21 読書 (論文)メモ: Daniel Murfet, Logic and linear algebra: an introduction

気になる. まずはSGLを読もうと思っているがとりあえずメモだ.

2016-06-25 YouTubeにRuelleとFröhlichとRIMSの岡本久先生の動画があがっていたので

Ruelleのはこれ.

Fröhlichのはこれ.

岡本先生の動画はこれ: 他に6つあってわけてある.

RuelleとFröhlichは数理物理の人間で超人. Ruelleは統計力学の教科書が死ぬほどわかりづらい地雷として有名で, 私も学部3-4年の頃に挑戦したがあっさり撃沈した. 今読んでもわかる気がしない.

Fröhlichは論文を何度か読もうとしたが, それらは長く難しい(ハードな解析)論文ばかりで, あまりまともに読んだ・読めたことがない. Fröhlich は割と近めだからもっときちんと読みたいのだが. 2013だか2014のRIMSの新井朝雄先生の還暦祝いも兼ねた研究会で, 九大の廣島先生が「Pauli-Fierz模型に関してFröhlichが自分に『こんなところまでできている』と嬉しそうに話してきて云々」と言っていた. Pauli-Fierz, いま結局どうなっているのだろう. 最近全く追いかけられていないので.

岡本久先生は数理流体力学の専門家で, 実際Navier-Stokesの話をしている.

3人とも動いているところ・話しているところを見るのははじめてだ. 見る時間ないがとりあえずメモはしておこう.

2016-06-30 『日本数学会 大学院生アンケート結果報告』があがっているので

何と言ったらいいのかよくわかっていないが, とりあえずメモしておく.

2016-07-05 ゼルプスト殿下のツイート+記事: $\aleph_1$は連続体濃度ではなく可算順序数全体の集合の濃度である

殿下がいろいろ書いていたので. とりあえずはじめのところから引用開始.

そしてこれらを殿下自身がまとめたページが次のリンクにある.

個人的に覚えておきたいところを引用しつつコメント.

きょう届いた本のうち坪井俊『幾何学II ホモロジー入門』(東京大学出版会)を見たら、冒頭のp.2に連続体濃度を $\aleph_1$ と書くとあった。これは間違いだ。連続体濃度は書くとすれば $2^{\aleph_0}$ であり、これは定義上は $\aleph_1$ とまったく別物であり、両者が一致するかどうかは数学史上に名高い「連続体仮説」という独立命題である。

思うに、これは $\aleph_1$ が連続体濃度と比較して陰が薄いことに問題がある。「最小の不可算濃度」という定義が理解されていればいいほうで、それがいかなる集合の濃度であるかまでは理解されていないのだろう。可算無限基数 $\aleph_0$ が有限順序数の集合 $\mathbb{N}$ の濃度であったのと類比的に、最小の不可算基数 $\aleph_{1}$ は可算順序数全体の集合の濃度だ。そこが理解されていれば、連続体濃度すなわち実数全体の集合の濃度と簡単に等値されることもないと思うのだが。

この辺, 全く知らなかった. そして $\aleph_1$ を連続体の濃度と習ったくちだ. 講義でもそうだった気がする. 今手元でどこに置いたか忘れて見つからないのだが, 講義の教科書でもあった松坂和夫の『集合・位相入門』ではどうだったろうか.

集合・位相入門

そしてあまりよくわからないがとりあえず大事そうなので引用してメモ.

さてしかし、21世紀の数学には、「整列順序集合」とか「超限帰納法」とかの出る幕がなさそうだ。ゲオルク・カントールは可算な閉集合の分類問題(それ自体は彼の三角級数の研究に起源をもつ)から超限再帰と整列順序の概念に到達したのだが、その可算閉集合の分類問題の成果であるカントール・ベンディクソン定理にしてみても、カントールは孤立点を捨てる操作を超限的に反復して最後に残る完全集合に注目したが、集合論が完成してしまった今日では、同じ結果が、凝集点のなす完全集合と非凝集点のなす可算集合への分割、という形で簡単に証明されてしまうのだ。ボレル集合族だって、再帰的に生成する方法をとらず、すべての区間をメンバーにもつ最小のσ加法族という特徴づけで impredicative に定義すれば、実際上問題ないのだ。逐次近似の代わりに不動点定理を使う解析学の方法論もこれに類する。そういう具合に上から抑え込むように物事を特徴づけることが可能になるのが、集合論の有難みというわけで、数学を集合論に立脚させる試みが大成功を収めたこと自体の皮肉な結果として、超限帰納法には出る幕がなくなった、というわけだ。

2016-07-10 2016/7/15『量子場の数理』新井朝雄・河東泰之・原隆・廣島文生 (数学書房)

本当か. 買わなければ.

2016-07-10 読書メモ: 志村五郎, André Weil As I Knew Him

私が交流したアンドレ・ヴェイユという謎の日記を見つけたので.

AMS(米国数学協会)の"NOTICES OF THE AMS"を暇な時に読んでいましたら、そのバックナンバーに志村五郎博士が"André Weil As I Knew Him"(PDF)という故アンドレ・ヴェイユ博士について回想録を書いていらっしゃるのに出くわしました。

PDF のリンクはここ.

なお、次いでながら、ヴェイユ博士は第一次、第二次世界大戦を経験していて、特に第二次世界大戦においては死刑寸前まで窮地に追い込まれたことは有名な話ですし、志村博士は第二次世界大戦時には中学生だったけれども、本土が制空権を失った後は無差別にグラマン戦闘機から機関銃で攻撃された体験を持っています(私の早くに亡くなった父母も子供なのにもかかわらず、同じ体験をしています。子供だからこそ殺す価値があるんだそうで。つまり親世代の戦意を挫くためだそうです)。こういうことを考えると、修羅場をくぐり抜けた世代と今のふやけた世代とでは隔世の感があります。その志村博士の回想録の私訳を以下に載せておきます。既に和訳があるのかどうか(特に紙ベースで)知りませんが、もしまだ無いなら、和訳されるのはずっと後になると思います。また、回想録のわりには長く、かなり専門的記述があり、特に脚注の節は私も圧倒されるほど詳細なものです。代数的整数論や代数幾何学などを専攻していなければ多分理解困難だと思いますが、それを気にせずに気楽に読んでいただければ幸いです。

こんな本も紹介されていた.

The Map of My Life

読みたい本がどんどん増えていく.

2016-07-12 記事紹介: 大学院入試(他大学大学院への進学)

私も他大の上, 物理から数学と他学科を受けたクチだが, 数学でも参考になるだろう. メモがてら共有.

2016-07-14 PDF紹介: 藤野修『トーリックの世界 -森理論入門-』

トーリック, いまだ名前しか知らない. ちょっと定義を見てみたがSpecとか出てきたので泣いた.

代数解析と代数幾何, 食い合わせいいらしいし, 代数解析が気になる関係で代数幾何も気になる. いつもどおりとりあえずメモ.

2016-07-15 京大RIMS数理解析研究所講究録1698離散力学系の分子細胞生物学への応用数理

離散力学系の分子細胞生物学への応用数理, どの程度意味があるのかは全くわからないがとりあえず記録しておく.

2016-07-16 Togetter紹介: 『勉強の苦手な子はなぜ安易に「わかった」と言うのか』

前も紹介したような気がするがまたTwitterで見かけたので. Togetter名物の異常なコメントがあって地獄ぽかった. 何はともあれ参考にしたい.

PDF紹介: 確率変数の可測性と条件つき期待値の意味

確率も汎関数積分との絡みで参照することがあるのでもっときちんとやりたいと思って幾星霜. Lorinczi-Hiroshima-Betz, もっとちゃんと読みたい.

2016-07-22 sinc関数からなる関数列の定積分に関する謎の挙動

元のツイートがもう発掘できないのだが, ある論文が元ネタになった話があったのだ.

2ページの上の式を見てもらうとわかる. sinc関数の積分に関する話だ.

何といっていいのか全くわからない話題だが, 謎なのでとりあえず記録しておく次第.

2016-07-25: sci-hub.io: 4700万件の研究論文を「科学の発展」のためタダで読めるようにしている海賊版サイト「Sci-Hub」: 記事紹介

話題になっているサイトはこれ.

よくわからないのでatiyahとwittenで検索したら, 単にGoogle Scholarに飛ばされるだけだった.

運営しているのはロシアの神経科学者でカザフスタン出身のAlexandra Elbakyanさん

とのことだが, どの分野の出版論文が多いとかそういう情報ないのだろうか. 数学とか物理でどのくらいあるのか, まずはそれが気になる方の市民だった.

2016-07-26 Halmos, P. R., HOW TO WRITE MATHEMATICS

読んでおきたい. とりあえずダウンロードしておいた.

2016-07-27 最適輸送とRiemann幾何, 測度距離空間

二つともRiemann幾何のPDFだ. 一つめは「測度距離空間のリッチ曲率と熱流」, 二つめは「最適輸送理論とその周辺」で, 両方とも最適輸送に関する話.

Villaniあたりが研究している話を京都の太田慎一さんが解説している. どんな流れでこのツイートが出てきたのか全く覚えていないがとりあえずメモ.

2016-07-28 大田春外『解いてみよう位相空間 改訂版』と関連するwebサイト

本やサイトがかなり気になる. とくに具体例の話が.

位相空間というと先輩から聞いた話で, 東大数理の大島利雄先生が「学生の頃位相空間が一番難しかった」と言って, その理由として「位相空間を勉強していた頃, あるだろう, 作りたいと思った反例を作るのにものすごい苦労した」みたいなことを言っていた, という話がある.

教官陣, 学生の頃からきちんと反例を作るといった大事な基礎基本を 疎かにしていないと知って, 修士なのにまるでできていない自分はどれだけ出来が悪いのかと戦慄したものだ.

2016-07-31 連続関数環の閉かつ素なイデアルは極大イデアル

こんなコメントを頂いた.

とてもつらいしやばい. あとたんじぇイケメンエリート太郎にも教えて頂いたので.

Urysohn, 愛してやまない. そしてたんじぇイケメンエリート太郎が順調に育ってきていて, 感銘を禁じ得ない. ちょっと聞くとぱっと答えてくれるとか素晴らしすぎる.

一応それにすぐ答えてもらえるだけの対応というか, 信頼関係も築けてきている感もある. ありがたい限りだ.

2016-08-01 慶應大学の「数理女子」というサイトがあったので【宣伝協力】

改めてリンクつけておこう.

もう東大に移ってしまっているが, 佐々田さんが頑張って作ったのだろう. 佐々田さんのメッセージを引用しておく

音楽やスポーツにはいろいろな楽しみ方があります。カラオケでわいわい盛り上がる人、コーヒーを飲みながらクラシックを聴く人、日々筋トレに励む人、W杯を見に世界中出かける人etc...。数学も同じです!問題を解くだけが数学ではありません。あなたなりの数学の楽しみ方をぜひ見つけてください。 佐々田 槙子(東京大学・数理科学研究科)

数学女子とかいう言い方じたいがなくなるときが来ることを祈って, とりあえず宣伝協力しておく.

2016-08-04 ytb_at_twtさん筋の情報: ゲーデル警察とコンピュータの歴史から紐解く人工知能

またもやたべさん筋の情報で悲しみに包まれた.

引用元のツイート群も引用しよう.

「身内」の数学界隈からでもひどい目にあうようだし, 数学基礎論, 数理論理の人達, 本当に大変だ.

2016-08-04 選択公理を証明に使う典型的な命題である程度初等的な命題で比較的証明短い命題が知りたい

市民メモ.

これに頂いたコメントを引用しておきたい.

@phasetr k を自然数とする. グラフ G の任意の有限部分グラフが k-彩色可能ならば G も k-彩色可能

@phasetr 群 G の任意の有限生成部分群が順序付け可能(演算と同調する全順序を定めることができる)ならば G も順序付け可能

@phasetr 連結かつ局所有限な無限グラフは無限単純道を持つ

@phasetr 先手も後手も必勝戦略を持たないような長さωのゲームが存在する

教えてもらったのはいいものの.

そしてこう返ってくる.

@phasetr 出てきません

@phasetr 最初の3つはコンパクト性定理(cmpactness theorem, BPIと同値)の典型的な応用例なので, この辺りのワードと一緒に検索すれば出てきます. 私の超準解析ノート(最新版)にも2行くらいの証明が載っています.

@phasetr 最後の例は集合論(の決定性公理)に関する話題なので決定性公理と選択公理で調べたら出てきます.

@phasetr 最初の3つがコンパクト性定理の帰結と書きましたが最初の2つです. 3つ目は(従属)選択公理を使って頂点を選択してパスを伸ばしていくという操作を繰り返すので簡単.

何はともあれ記録しよう.

2016-08-05 京大2次試験数学問題をRで表現する - ryamadaのコンピュータ・数学メモ 【記事紹介】

こういうのでいろいろ遊んでみたいとはずっと思っている. とりあえずメモだ.

2016-08-07 単語習得のためのpicture dictionary: 数学にも転用できないだろうか.

参考にしたい. 数学にも転用したい.

2016-08-08 「数学と芸術」というタイトルの講演が理数教育研究所主催「2014高校数学セミナー」であったそうなので

桜井進事案は不安でしかたないが, 仲島さち子さんの「数学と芸術」は気になる. こういうのもいろいろ調べて情報ださないといけないな, とはずっと思っているのだが全くできていない.

2016-08-09 チャーハニスト鈴木による「ロジックおすすめ本の紹介」ページ【宣伝協力】

何はともあれ記録・宣伝協力しておく.

2016-08-11 カーネギーメロン大学哲学科という魔界: 数理論理学, 科学哲学はもちろんのこと機械学習や統計的因果推論の専門家もいるらしい

話は変わるが, 竹崎先生がUCLAの改革に立ち合ったとき, 人文学の基礎は哲学, 理学の基礎は数学, 的な感じで話が進んでいたらしく, 数学への深い信頼を感じて感動するとともにその信頼に応えるべくやっていかないと, と身が引き締まる思いだったとか伺った.

2016-08-12 チリ出身, 2016五輪女子柔道70kgドイツ代表のラウラ・ヴァルガス=コッホさんは数学科の博士学生らしいので

数学の博士課程に行きながら柔道でメダルとか, あまりにも格好いい. 私も見習いたい.

あといちおうWikipediaへのリンクも.

2016-08-12 斎藤正彦『線型代数学』(東京図書)が出版されたようなので: ツイート紹介

東大出版会の齋藤正彦『線型代数入門』, 私の愛読書でAmazonにレビューも書いたし物理への応用にはかなりいいので, いろいろなところで宣伝しているが新しい方も気になる.

齋藤毅本も佐武本も気になるが読めていない. 勉強したいことは多いし, それに合わせて情報発信したいことも多いが, その時間確保のためにもマネタイズを真剣に考えていきたい.

2016-08-14 デレマスに見る新参・古参のあるべき姿問題: 「だりーなの志を認め憧れを形にしてみせるなつきちの姿は新参に対する古参のあるべき姿を示している」: ツイート紹介

理屈ではわかっているのだが, 現実的になかなかこうは動けていない自分がいる.

節目節目で反省すべく記録しておく.

2016-08-21 Inkscapeを使った立体的な図を作り方メモ

こういう技術ももっと磨きたい. とりあえずメモ.

2016-08-22 昭和15年の小學校の算數の教科書「伸ばす算術の新研究」のまえがきから: ツイート紹介

画像から文章を抜き出しておこう. 旧漢字はめんどいので変換したが「思はない」などの仮名づかいはそのままにした.

算術の成績の思はしくない人は (1) 心におちつきのたりない人. (2) やったらできるといふ自信と元気のたりない人. (3) 人より先に答を出したがつたり, 早がつてんして問題をよく読まない人. (4) 出来ないからといつて, もう一度しつかりと考へながら問題を読んでみない人. (5) 文字をきれいに書かない人. (6) 位取や名のつけ方に注意のたりない人. (7) 自分のための勉強だと思つて, しんけんにならないで, いつも人にやかましく言はれて勉強する人.

引用した 2 つ目のコメントはまるで意味がわからないので引用した. (7) あたりは精神論っぽいが, 問題をよく読まないとか考えながら問題を読まないとか, そういうのも言っているし, 何でいきなり丸暗記とか言い出すのかわからない.

何はともあれ, 大事なところがないでもないので記録しておく.

2016-08-23 $\varepsilon$-$\delta$ 論法のアニメーション: こんなの自分でもきちんと作りたい

こういうのは単純な絵よりも動画の方がいいと改めて思ったので記録. こういうのをもっとさらっと作れるようになりたい.

2016-08-24 妄想カップルの会話がきついし「理系のつぶやき」のどの辺が理系なのか全くわからない事案

冒頭部の妄想会話, 猛烈に難解でいまだに何を言っているのかわからない. これは何だったのだろうか.

2016-08-25 『数学への分野転向の際に行った勉強のこと』 薬学から数学への転向: 記事紹介

Facebook で流れたきたのだが, 数学への分野転向の際に行った勉強のことという記事の記録. 薬学から数学への転向という何となく魔人っぽい経歴の方だ. 学振も取っているので魔人感はさらに高まる.

それはそれとして次の点がとてもいい感じ.

仕事において、新しい分野の勉強をする際には

  • 難しすぎる教科書には手を出さない(適切なレベルから始める)
  • その道のエキスパートに基礎として何を学ぶべきか教えを請う
  • どのようにして仕事に活かすか、領域を慎重に選ぶ
  • 記録をつける
  • ともだちを作る!!!!

が重要なのではないかと思います、というお話しをします。

仕事に活かすかどうかについては微妙なところだが, 「仕事において」とついているから その前提なら外せない要件だ.

いまちょうどこの辺に関して現代数学の通信講座をはじめようとも思っているので, その参考にもしていきたいと思っている. とてもタイムリーだった.

中身はしごくまともなので読むと参考になるはずだ.

2016-08-28 愛からはじまる Coinfinite set と cofinete set の違い

そしてやたべさんが絡む.

あとでいちいち考えなくてもいいように, coinfinite setとcofinete setの例を挙げておこう.

Coinfiniteの例は$I_n = {1,2,\dots,n}$(ただし$n$は自然数)が簡単な例で, cofiniteの例は上の$I_n$の補集合. 自明と言えば自明だし書く必要ない気もするが, 一応.

あとこの辺のいわゆる「余」となるcoの使い方, 結構便利だなと改めて思うなどした.

そして「無限に隙間を広げる」という操作, 割と非直観的で難しい感じがある. そもそも操作と言っていいのかすらよくわからないが.

面白いのでとりあえずメモっておこう.

2016-08-29 2016-03に層コホモロジーとチェックコホモロジーの一致に局所可縮さえあればパラコンパクトは要らないという最新の結果を知ったので

証明が気になる. 論文読んでみたい.

あと局所可縮というのはどのくらいの強さがある条件なのだろう. 局所可縮な例と成立する空間のクラス, そして成立しない例と成立しない空間のクラスが知りたい.

そしてよくよく考えるとパラコンパクトが課す制約の強さ, つまりパラコンパクトになる空間のクラスをほとんど知らない. パラコンパクトにならない例もあまりよくわかっていない.

投げておけば誰か教えてくれるだろうと思ったが, ちょっと調べてみた. Wikipedia先生からいくつか引用する.

まずはコンパクトから.

なお無限次元では有界閉集合はコンパクトとは限らず, 例えばヒルベルト空間内の (縁を含んだ) 単位球体は有界かつ閉集合であるがコンパクトではない (距離位相を入れた場合).

当然の有名な事実だが, 一応メモ.

このようにコンパクト性は, 無限だと起こる問題を有限に落とす事で回避する事に用いる事ができる. 一般的に無限が絡むと議論が複雑になるので, これを回避できるコンパクト性は有益な概念である.

これ, やろうと思って忙しくてできなくなった可換環セミナーでも言及しようとした話だ.

これは以下のように考えれば直観的に理解できる. まず簡単にわかるように一辺の長さが 1 である (縁を含んだ) $n$ 次元超立方体 $I^n$ を 1 辺の長さが $(1/2) + \varepsilon$ の (縁を含まない) $n$ 次元超立方体 $B$ で覆うには どうしても $B$ のコピーが $2^n$ 個必要である. (ここで $\varepsilon$ は小さい値. たとえば $\varepsilon = 0.1$). したがって $n \to \infty$ とすれば分かるように, 1 辺の長さが 1 の無限次元超立方体 $I^{\infty$}$ を覆うには どうしても 1 辺の長さが $(1/2) + \varepsilon$ の 無限次元超立方体が無限個必要になり, 有限個では覆う事ができない. コンパクト性は無限個開被覆は有限部分開被覆を持つ事を要請しているので, これは $I^{\infty$}$ はコンパクトではない事を意味する. しかし有限次元の場合と同様の証明で $I^{\infty$}$ が有界閉集合である事は示せる. 以上の事から $I^{\infty$}$ は有界閉集合であるがコンパクトではない.

同様のアイデアに基づいて $I^{\infty$}$ が (有界ではあるが) 全有界ではない事が示せる. したがって全有界性は有界性よりも真に強い概念である.

これ, パッと見で $\ell^{\infty$}$ に見えたのだが, コピペしたら $I$ だったのでちょっとびっくりした.

で, パラコンパクト.

パラコンパクト空間のすべての閉部分空間はパラコンパクトである。ハウスドルフ空間のコンパクト部分集合は常に閉であるが、これはパラコンパクト部分集合に対しては正しくない。そのすべての部分空間がパラコンパクト空間であるような空間は遺伝的パラコンパクト (hereditarily paracompact) と呼ばれる。これはすべての開部分空間がパラコンパクトであると要求することと同値である。

なんJ位相空間部のつぶやきによって, この辺は何となく頭に入った. 証明などは全く知らないが. 反例もつぶやかれていた気がするが, 覚えていない. 誰かに教えて頂いたら追記したいところ.

チコノフの定理(コンパクト位相空間の任意の集まりの積はコンパクトである)はパラコンパクト空間には一般化されない、つまり、パラコンパクト空間の積はパラコンパクトであるとは限らない。しかしながら、パラコンパクト空間とコンパクト空間の積はつねにパラコンパクトである。

これもやはりなんJ位相空間部のつぶやきによって何となく知っている. そして詳しく知っているわけでもない.

すべての距離空間はパラコンパクトである。位相空間が距離化可能であることとパラコンパクトかつ局所距離化可能なハウスドルフ空間であることは同値である。

(連結な) Riemann 多様体, どうしてもパラコンパクトになるのか. パラコンパクト性から Riemann 計量の存在が言えた気がするが, ある種の逆, という感じがある.

  • すべての正則リンデレーフ空間はパラコンパクトである。とくに、すべての局所コンパクトハウスドルフ第二可算空間はパラコンパクトである。
  • ゾルゲンフライ直線(英語版)は、コンパクト、局所コンパクト、第二可算、距離化可能のいずれでもないが、パラコンパクトである。
  • すべての CW 複体(英語版)はパラコンパクトである[1]。
  • (Theorem of A. H. Stone(英語版)) すべての距離空間はパラコンパクトである[2]。初期の証明は幾分難解であったが、初等的な証明が M. E. Rudin によって発見された[3]。距離空間が非可分の場合は、定理を満たすような細分の存在証明に選択公理を必要とする。ZFも従属選択公理(英語版)つきZFも十分でないことが証明されている[4]。

正則リンデレーフとか全くイメージがつかめない. あとやはりこれ.

パラコンパクトでない空間の例には次のようなものがある。

  • 最も有名な反例は長い直線であり、これはパラコンパクトでない位相多様体(英語版)である。(長い直線は局所コンパクトであるが、第二可算でない。)
  • 別の反例は無限(英語版)個の離散空間の非可算個のコピーの積である。particular point topology(英語版) が入っている任意の無限集合はパラコンパクトでない; 実はメタコンパクト(英語版)ですらない。
  • プリューファー多様体(英語版)は非パラコンパクトな面である。
  • bagpipe theorem(英語版)は非コンパクト面の 2ℵ1 個の同型類があることを示している。

これも大事そう. 使う状況が全く想像できていないが.

パラコンパクト性は弱遺伝的 (weakly hereditary) である、すなわちパラコンパクト空間のすべての閉部分空間はパラコンパクトである。

パラコンパクトハウスドルフ空間上、層係数コホモロジーとチェックコホモロジー(英語版)は等しい[5]。 5. Brylinski, Jean-Luc (2007), Loop Spaces, Characteristic Classes and Geometric Quantization, Progress in Mathematics, 107, Springer, p. 32, ISBN 9780817647308.

実は、T1 空間がハウスドルフかつパラコンパクトであることと任意の開被覆に従属な 1 の分割を持つことは同値である(下記参照)。この性質は(少なくともハウスドルフの場合において)パラコンパクト空間を定義するのに使われることがある。

パラコンパクト性はコンパクト性の概念とほとんど関係がないが、位相空間の構成要素を扱いやすいピースに解体することにむしろもっと関係がある。

最後の方, メタコンパクトとかオルソコンパクトとかでてきて, コンパクト wiki と zena さんを想起した.

zena さん, あんなに無茶な数学の話をしていて 物理学徒を自称するの, さすがに無理がありすぎる, ふだん何やってんの, といつも言っている.

久し振りに長くなった感がある. 引用ばかりなので, 自分で書いたところは少ないが.

こういうのを再勉強すると, 学部一年でやったことがどれだけわかっていないかとか 思い知らされてつらい.

『異色の経歴が異色のセキュリティコンテンツを作る』という記事を見て数学コンテンツ作成の取り組みについて反省したので

異色の経歴が異色のセキュリティコンテンツを作るという記事があった.

東京都が配布する防災の手引き「東京防災」が評判のようだ。黄色い表紙が目を引くハンドブックで、イラストをふんだんに使って防災の備えや被災時の行動について分かりやすく解説しているのが特徴だ。 この東京防災と同じ黄色の表紙のガイドブックが、情報のセキュリティ分野でも登場したのをご存じだろうか。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が16年2月に公開した、「情報セキュリティハンドブック」がそれだ。NISCのWebサイトから無料でダウンロードできる。 こちらも分かりやすさでは負けていない。NISCの女性分析官やその上司、パソコン初心者の子供といったキャラクターが登場し、サイバー攻撃や対策について、丁寧に解説する内容になっている。「ブラックパンプキン」などの悪役キャラまでいる。

数学でもこういう努力しないといけないな, というのを改めて感じている.

2016-09-07 「ムーアって、無限を「語り得ないもの」と定義して、数学的無限を「ホントの無限じゃない」とdisっているウチに、全ての内実が手のひらからこぼれ落ちてしまったような本だよね。」

知らない世界の話は楽しい. そして建設的な批判の難しさを知る.

2016-09-07 標数$p$の方法と有理曲線の存在定理: 森重文教授の最終講義事案

正標数への還元事案だろうか. 名前だけは知っている. とりあえず気になったのでちょっとまとめた.

無限に数学したい.

2016-09-16 重力波検出装置には1980年代に干渉計型検出方式と共振型検出方式の論争があって1988年の小澤正直先生の仕事で解決されたという話

読めていないがまずは記録.

名古屋大の小澤正直先生の研究は数理論理を基礎にして量子測定とかもやっているという話

最後の認識, 小澤先生は実際どう思っているのだろう.

気にならないこともない.

『足立恒雄先生による「幾何学の公理系」と「数学基礎論」に関する連ツイまとめ』: Togetter

ぴあのんさんが足立恒雄先生による「幾何学の公理系」と「数学基礎論」に関する連ツイまとめというのを作っていたので.

よくわからないが, とりあえず気にはなる. メモをしておこう.

『現代数学観光ツアー 応用にも役立つ微分積分の聖地を巡礼しよう』に関する守備範囲のやりとり

あとこれ.

東京ローカルのリアルの教室だと, 濃くなる分, 限られた人にしか届かないのがやっぱり嫌. 薄くなっても, まずはもっと広く取ることを考えたい.

というわけで頑張る.

Jordanの曲線定理の短い証明: Browerの不動点定理利用

まともに勉強したことないのであとでちゃんと読みたい.

それはそれとして不動点定理はけっこう大鉈という感じがあるがどうなのだろう. 関数解析系, とくに微分方程式界隈では基本的な道具という感じはある.

順序数ヴィジュアル化アプレットが全くわからない!

よくわからなかった. 順序数, $\omega + 1$ と $1 + \omega$が別物といった断片だけは覚えているのだが, 何分全く覚えていない.

もうちょっときちんとやりたいとずっと思ったまま, 十年以上経っている感じもある. 悲しい.

ブルブルエンジン兄貴のTwitter圏論講義, 自分用まとめ

とりあえずは結論から.

何を言っているのか全く理解できていないが, とりあえず未来の自分のためにまとめておく.

あと微妙に掴みきれていないが印象的な話をまとめておく.

ということらしいが何となくツイートのまとめを入れておきたい.

あと何かやりとり.

最近全くやれていないが研究用に代数解析を勉強したくて, そのために圏論を勉強をゆるふわスタイルでゆるく勉強している. その辺の参考になるし, ブルブルエンジン兄貴, どんどん謎の人になってきていてすごい.

あの川添愛『白と黒の扉』の続編『精霊の箱』が 2016/10/27 に出るので買わねばならない

前著『白と黒の扉』もものすごい面白かった. 必読だ. 買わねば.

川添愛『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』に続編が出るという

出たら買わなければ. メルマガでも布教しよう. 楽しみでならない.

正則な$L^2$の非存在問題: あとでもっとちゃんとまとめたい

ハーディ空間全く関係なかった. それはそれとして, ‏ derived_kaiさんにコメント頂いたのでそれもメモ.

正則な$L^2$に関してちょっと調べたらこんなの出てきた.

後者の質問はこれ.

One of my homework problems this week is to "characterize all holomorphic functions in $L^2 (\mathbb{C}^n)$". I'm sorry for not being able to provide much work on my progress, but that is because I really don't know where to begin. Any help would be greatly appreciated!

ここにある証明がめっちゃいい. これは自分用にきちんとまとめたい. 正則性と可積分性, ものすごい食い合わせ悪いのか. 一致の定理もあるし.

可積分性から見た$C_{c}$, $C_{c}^{\infty}}$の使いやすさも特筆すべきということもちょっとわかった. 私自身どれだけ積分論わかってないの, という感じも出てとてもつらい.

$p$進を勉強するための本: Koblitz, p-adic Numbers, p-adic Analysis, and Zeta-Functions; Schikhof, Ultrametric calculus An Introduction to p-Adic Analysis

前から気になっていたことに関してTwitterで投げたら教えて頂いたので念のため記録.

これに対して鍵アカウントの方から次の二冊を教えて頂いた.

  • Koblitz, p-adic Numbers, p-adic Analysis, and Zeta-Functions
  • Schikhof, Ultrametric calculus An Introduction to p-Adic Analysis

$p$進もちゃんと勉強したい.

「微分できない関数ってあるんですか?」に対する工学部の学生とやらの返答が衝撃的だったので

現代数学観光ツアーのための調べものをしていたらまたつらいものを発掘してしまったので.

Yahoo! 知恵袋から引用しておこう.

微分できない関数ってあるんですか?

大学の講義の問題で「微分できない関数はあるのか?また、あるとしたらその例を示しないさい」というものがあったのですが、調べてもあんまり出てこず… 書籍などを調べないと無いのかな、とも思ったのですが、知っている方がいたら教えてくださいませんか??

※「0」が微分できるのは知っています

最後のコメント, 凄まじいピント外れ感があって, 凄まじい衝撃を受けている. 何の意味があるコメントなのだろうか.

微分の定義。 lim[f(x+h)-f(x)]/h を計算しても収束しない(ひとつの値や関数にならない)場合は、微分不可能です。

直感的には、連続だがぽきっと折れている関数、たとえばy=|x|はx=0で微分不可能。

他には、連続でない場合、たとえばy=-1 (x<0),y=0(x=0),y=1 (x>0)はx=0で微分不可能 y=1 (xは有理数)y=0(xは無理数)はいたるところで微分不可能

ベストアンサーだがところどころおかしい. 「計算しても収束しない(ひとつの値や関数にならない)」というのがかなり厳しい.

moriinahonさん nakanaka1135negurushikuteさん と hamaguchi_masaru_415さん は× 「微分不可能」ということばはありません(笑)去れ

狂人である.

mieher_maniaさん

ペアノの曲線なんかが有名ですね。

数学を道具とみなす工学部の学生には観念の遊びとしか思えませんが。

道具なら徹底的に使い倒すのが工学の人間では. そして冒頭のツイートで紹介したようにペアノ曲線を応用しようという頭がおかしいちゃんと工学者がいる. 直接には何の応用もなさそうで何の役に立つかわからなそうな素因数分解ですら, 最近の暗号理論の基礎になっているし, 有限体 $\mathbb{F}_{p}$ も符号理論のような応用がバリバリある.

こういう工学部生, もう少し自分の発想の貧困さやら攻撃力不足を本気で反省すべきだろう. 情けない.

というか, ペアノ曲線を工学的に応用しようと思いはじめて 最初に研究した異常な人, どんな人なのだろう. 論文読めばそういうのもちゃんと論文引用してあったりはすると思うが.

実数空間 x∈R で定義された関数 f(x)=0 if x∈Q f(x)=1 if xnot∈Q はいたるところ不連続 => 微分できない

なんて例だと 連続でいたるところ微分できない関数はないのか といわれそうなので ワイエルシュトラス関数 http://tinyurl.com/z57b6b9 なんかのほうがいいかもしれない

それは数学の人間の発想で, ふつうの人, そんなこと気にも留めないだろう.

何にせよ, 自称工学部の学生, あまりにも厳しい. 攻撃力が足りない.

物理や数学の一問一答集を求められたので

やりとりの備忘録ついでのまとめ.

こういうのもアレだが「素人が思いつくことは専門家ならだいたい考え尽くしている」的な事案なのだろうか. この場合はやってみたいが私の能力が追いつかない事案であって, 私が教育については専門家でもなんでもないという話もある. 何にしろ誰かが思いつくことはだいぶ前に誰かがちゃんと思いついているという話ではある. また粛々と頑張ろう.

見かけた本に関して著者にリプライで聞いたら献本してもらえることになったでござるよの巻

何かTwitterしていて見かけた本を著者の2人と相互フォローだったしちょっと聞いてみよう, そう思ったら献本してもらえることになったでござるよの巻.

まずは長谷川さんの方から.

ややネタ的な応答だったが, 予想外に真面目な回答になってしまったので恐縮した. そして堀畑さんからのコメント.

岡村の『常微分方程式』の本は, 著者本人の仕事である岡村の距離とか何とかいう概念を導入し, それを軸に議論されているユニークな本, とかいう話がある. そういう感じで何がしかの類書にない特徴があるのだろうと思って聞いてみたのだが, 何か想像以上にいろいろコメントしてもらえて恐縮した. そのまとめをしておこうというのが以下の話.

このパンルヴェ, いわゆるいつもの Paul でいいのだろうか.

以前数学界で座屈に関する常微分方程式の話を聞いたことがある. ああいうのは工学でも興味がある話なのだろうか, というのはいつも思っている. 工学の感覚ないし, 常微分方程式としての面白さもよくわからないので, どうコメントをつけたらいいかもよくわからない.

この辺は確かに気になった. 参考にしたい.

坂井先生の本は読むべき本リストに突っ込んでいる.

楽しそう. あとで読んだ感想をまたブログにまとめよう. 考えてみると常微分方程式の数学の本はまともに読んだことがない. 学部の頃は講義で正規の常微分方程式の解の存在と一意性の一般論はやったが, 読んだ本は具体的な微分方程式に関する演習系の本を参考署にしていたくらいで, 理論系の本は一冊も持っていないし, 本当に読んだ記憶がない. とても楽しみ.

そういえば大谷先生の本も読みたい. 先日お会いしたとき, 特性曲線の方法, 傾きが無限大になったりするところの扱いが雑な本が多いからそういうのをきちんと書いたとか何とか言っていた. 今になって常微分方程式の勉強をするとは思っていなかったので, 人生わからないものだ.

環として無限集合で素イデアルが有限個しかない環の例

Twitterで募集をかけたらたくさんの例を教えて頂いた方の市民.

その次. ゼリーさんから.

$\mathbb{Z}_p$, もうちょっと勉強したい. 岩澤健吉『代数函数論』も本質的に積読のままだ. 秋月康夫『輓近代数学の展望』も本質的には積読のまま. とても悲しい.

魔法少女から.

のらんぶるさんから.

ちょろっと聞くとたくさん教えてもらえるTwitterと数学関係者, とてもとても素晴らしい.

『Sorgenfrey直線とかいう反例界のレジェンド』 by なんJ位相空間部

なんJ位相空間部はフォロー必須botだと思っている. 「何でそんなの知ってるんだ」としか言えないような面白いお役立ち情報満載で, いつも感心している.

証明まできちんとまとめてmath-textbookにまとめ, 現代数学探険隊にも反映させたい.

2016年度1学期 数学の楽しみ1D: 松本佳彦さんの講義資料

松本さんの講義資料. なかなか面白そう. 現代数学観光ツアーおよび現代数学探険隊でも参考にしたい.

$p$進, それは君が見た光: 結城浩さんのやりとりまとめ

あと何か関連ツイート.

そして我らがp進大好きbot.

p進解析もいつかちゃんとやってみたい.

謎の錯視コンテンツ: 東大名誉教授 杉原厚吉さんの仕事

Twitterで謎の錯視コンテンツが流れてきたので.

ツイート内に出てくる「杉原厚吉」さんは 東大の数理工学の教授だったので広い意味で数学畑の人だ. あと東大の数学の教官で数理視覚科学とかいって, 錯覚の数理・視覚の数理を研究している人もいる.

画像処理みたいな実学への応用もあるそうで.

こういうネタを自分でもやれれば一般へのフックも少しは作れるんだろうな, と思いつつ能力的に追いつかない. とても悲しい.

2016-07-02望月新一さんが115ページの新たなサーベイを出したという

すぐに追いつけないがとりあえずメモしておこう.

Grothendieck流の現代的なGalois理論のPDFをまとめたという話があったので

現代的なGalois理論というあたりが気になる. とりあえずメモだ.

cauchy_schwarzさんとのやりとりがあってそれも記録したいのだが, 鍵アカウントなのでできないので切ない.

組合せ最適化問題としてのぷよぷよの連鎖数判定問題(計算量理論): 能登だでぃ子さん筋の情報

読もうと思ったら有料と言われて読めなくて泣いた. 本当に悲しい. 著者に問い合わせるともらえたりするだろうか.

でもこの論文, 前もTwitterで見かけた気がするし, このサイトのブログの記事のどこかでも紹介というかメモした気はする.

「世界は数式でできている」資生堂作成動画: 数理女子から

資生堂がこんなことをやっているのかとちょっとびっくりしたので.

測度の完備化はLoeb測度の構成に使えるという魔法少女筋の情報を記録する

ちょっとつぶやいたら魔法少女に教えてもらったので.

魔法少女はいつも私に魔界を見せてくれる.

等しいことと同型の違いがくっきりわかるいい例を探している

一つコメント頂いたので記録.

何かいい例をご存知の方はぜひ教えてほしい.

数学から見た解析力学の良書探求の旅: tmiya_さんに教えて頂いたメモ

tmiya_さんに教えて頂いたので.

何となくMarsden, Ratiu の Introduction to Mechanics and Symmetryが良さそう? あとちょろっと探していてFrankel, The Geometry of Physicsが面白そうだった. 特にFrankelのは盛り沢山で面白そう.

あと深川さんに教えてもらったシュッツの本も読んでみたい. 読みたいのがたくさんあって困る. 時間がない.

Christian Lessig, A Primer on Differential Formsがかなり面白かったので: 物理にも使えそう

これだ.

いくつかよさげな記述を引用する.

Differential forms are central to the modern formulation of classical mechanics where manifolds and Lie groups are employed to describe the configuration and time evolution of mechanical systems.

One of the principal applications of differential forms in modern mechanics is the mathematical description of observables: infinitesimal measurements, which, when integrated, yield a value that can be verified through real world experiments, at least in principle.

この指摘, 相当大事な気がする. 前に深川さんが言っていたこと, ようやく感じ取れたような気もする. ベクトル場はフローを生成する的なアレは数学的にはわかるし, 気分的には感じるがまだ腑に落ちていない.

In fact, whenever one encounters a line integral, what one is integrating is a 1-form, even if the computation is classically stated using vectors. For example, any classical physics book will present a Newtonian force as a vector, but more correctly a force should always be considered as a 1-form.

これ, 何となく良さげな記述なので記録しておきたい.

A zero dimensional manifold is a point, and hence ``integration" of such forms amounts to evaluation

この観点はなかった. メモ.

これ良さそうだ. 現代数学観光ツアーでも紹介しとこう.

「Kan拡張の勉強してたらついにLebesgue積分が出てきた」 #全ての概念はKan拡張である

いつ読めるかわからないがとりあえず記録しておく.

PurpleCometという数学コンテストの宣伝協力: 加藤文元さんのツイートから

いつからなのかはわからないが, 私が所属していた中学だとこんな情報全く入ってこなかった. 学業的にあまりよろしくない地域ではあったが, そういうのはとても悲しい.

あと高校も大学に行く生徒の方が多いという意味では進学校だったが, あまり学術関係の情報は入ってこなかった. 高校 2 年のとき, 近所の東大で (当時) 計数工学科のオープンキャンパス的な催しがあり, それには先生から「行ってみる?」と声をかけてもらえた. 大学どころか院くらいになってから数理の翼だとかいろいろな催しがあることを知ったし, 実際に Twitter で交流がある (場合によっては超がつくレベルの進学校所属の) 中高生が そういうイベントを知っていて参加していることを見ると, 中高の頃の自分が本当にかわいそうになる.

というわけで地道に宣伝協力していくのだ.

整数, 有理数, 実数, などなどは数の属性で, 分数・小数は数の表記の属性

恥ずかしながらこの辺真面目に考えたことがなく反省した.

『Π2述語が解読できないとかよりもっと根本的な問題、学生はそもそも数学における変数の扱いを知らない、束縛変数と自由変数の区別も理解できない』嘉田勝さんのツイートまとめ

この辺の数理論理的な話, 正直ほとんど全くわかっていない. とりあえずは嘉田さんの本, もっとちゃんと読まないと駄目か. 菊池誠『不完全性定理』もちゃんと読みたい.

何故単位行列を$E$と書くのか問題

何となくドイツっぽいのとフランスっぽいのはわかる気がする. 何故だろう.

山崎隆雄さんによる多項式版の(やさしい)ABC予想の証明の解説

現代数学観光ツアーのネタにしたい. とりあえずネタを貯めておこう.

森本光生, くさびの刃の定理とマイクロ函数, 数学

「数学」に掲載された森本さんのPDFがあったのでとりあえず記録しておく.

PDF内にも言及があるように, くさびの刃の定理は場の量子論に起源がある. 私が代数解析に興味がある理由の一つでもある. 森本さんの本にも一章割かれている.

これもいまだにきちんと読みこめていない. 代数, 特にホモロジー代数の勉強にもなるし, いい加減ちゃんと読みたいのだが, なかなか時間が取れないままだ.

裳華房の数学者によるウェブ連載コラム「数学者的思考回路-夢と妄想のはざま-」

パラパラと該当記事群を読んだ. 面白そう. 私もこういうの書きたい. 何か考えよう.

数学の証明をメロディに乗せた曲を作ってみたい

Amazon見たらレビューはいろいろあった. もちろん実際聞いてみないことには評価しづらいが, とても気になるのは確か.

高校の頃, 校歌に合わせて古文の助動詞を覚えるというのがあった. いま検索したらmixiのコミュニティにあった.

メロディに載せると口ずさみやすくて覚えやすいので, 一計ではある.

数学の証明をうまいことメロディに載せて暗唱するとかあると面白そうだし, 何かやりたい.

ムーミンさんの$\varepsilon$-$\delta$を笑点スタイルで話すというのもあったし, そういう線もありうる.

Final Fantasy XVの謎の動画を見て考えること

最近数学・物理のコンテンツ制作を再開したので, いいコンテンツのストックとしても参考にしている. どうすると人を惹きつけられるのか, とても参考になる.

数学の可視化, アニメーションも気になるし, アニメーションそれ自体に使われている数学も気になる. やりたいことが増えていく一方だ.

論文メモ: Terence Tao, Finite time blowup for an averaged three-dimensional Navier-Stokes equation

面白そう. いつ読めるかはともかくとりあえず記録. テレンス・タオ, 守備範囲広すぎるしどれだけ魔人なのか.

記事紹介: GIGAZINE『数学を学ぶには計算ドリルではなく「高度な数学」から学び始める方が効果的なわけとは?』

引用されているGIGAZINEのページ中でさらに引用されているのが次のページ.

GIGAZINEからちょっと引用.

アメリカの数学カリキュラムの設計に携わるマリア・ドロクバさんは、数学嫌いを減らすための先進的な数学教育を提唱することで注目を集めています。ドロクバさんは、「数学嫌い」を養成するのは現在行われている段階的な学習スタイルに原因があると考えており、このようなカリキュラムを見直す新しい数学の学習方法として「子どものころから高度な数学的な考え方に触れる」という学習方法を提唱しています。

「高度な数学的な考え方」と聞くと子どもには無理と思わずにはいられませんが、ドロクバさんによると「高度な数学」は「難しい数学」とは似て非なるもの。高度な数学的な考え方とは、物事の根底を支える概念として高度な数学的要素があるものを指し、問題解決の難度とは別であり、子どもが学習するのに難しいものではないとドロクバさんは話しています。

例えば、図形の中に繰り返されるパターンを見つけ出すことは高度な数学的考え方になり得ます。また、立体的な構造を解析することは高度な数学に他ならないとドロクバさんは考えています。この考え方によると、例えば、雪の結晶の形を折り紙で折ることやLEGOブロックを使って家を組み立てることは、高度な数学的学習方法とのこと。

教育学的にどういう知見があるのだろう. そしてどうするとアクセスできるのだろう. 教育学をきちんと勉強しなければ駄目か.

こんなむごい話があるか: 掛け算の順序のせいで数学が苦手になった子どもの話

悲しい話があったのだ.

Togetter のコメントなので途中で切れてしまっている. コメント全文を引用しておこう.

とっても素直に先生の言うことを聞いていたうちの娘さんは交換法則が出て来たときに今迄ダメって言われてたのにどういう事?と大混乱。すっかり自信をなくしてしまい今でも数学は大の苦手。少なくとも私の娘さんにとっては百害あって一利なしでしたよこんなの。もっと早く気づいてあげるべきだった。

こんなひどい話があるか.

ちなみにこの手の話題については以前別の話を Twitter でしたことがあって, それを次の記事でまとめている.

よく「できない子のことを考えて」という話は出る. でも「できる子」のことはほとんど誰も考えてくれない. かもひろやすさんが時々「早熟と天才は違うし, 早熟の子は早熟の子できちんとした対処が必要で, ポキっと折れることだってもちろんある」みたいなことを言っている.

もちろんそもそも「できない子」向けの話としても狂っているというのが掛け算の順序強制問題ではある. ただこういうケースを本当によく見かけるので, 掛け算の順序に意味があるとか発達段階とかいういい加減なことをいう 大人には本当に腹が立つ.

私の活動のメインでもあるまたちょっと違う話もしておきたい. 私は中高の頃, 数学や物理の発展的な話にとても興味があった. でも何をどうしたらいいかわからず, とりあえず学校の勉強をしていた.

図書館に行って司書さんに聞いてみるとか, 学校の先生に相談してみるとか, いろいろやりようはあったはずだがそういう発想はまるで何も浮かんでこなかった. それを訴えなかったのだから当然だが, まわりの大人のサポートもほとんどなかった.

例外は高校二年のときの進路指導の先生が, 近所にあった東大の計数工学科 (当時. いまは数理工学科) のオープンキャンパスに行ってみたらどうか, という案内くらいだった.

教官の研究の内容紹介だった. もちろん何が何だかわからなかったが, 何かごつい式が出てきて無性に格好よかった. 数値計算の誤差の話, J リーグのスケジューリングに数学を使う話があったり, 携帯の漢字変換に関する話があった.

最後の「携帯の漢字変換」は要は確率を使って自然言語処理やってます, みたいな話で正確に何だったかは覚えていない. そういう系統の話だった, というだけだ.

もう 10 年以上も前の話だったが今でも覚えているくらいに楽しかった. こういう体験をもっとしたかったが, 何をどうするとできるのか全くわからなかった.

大学や大学院で早稲田, 東大に進学したら, いわゆる進学校の面々がまわりからこういう情報をふんだんに与えられていたことを知って愕然とした. 本当に「ずるい!」と心の底から思ったのだ. そんな不公平があるのかと.

私ももういい大人だ. 与える側に立たねばならない. そう思って数学や物理に関する情報発信をやっている.

大人相手の話が多くて本当に情報を届けたい中高生には あまり情報を届けられていない.

最近, 現代数学観光ツアーと現代数学探険隊という企画をはじめ, 専門的な方向に関して 1 つ区切りが感じがあり, 本格的に中高数学に関する企画をはじめた.

ご興味がある方はぜひ次のページから登録してほしい. 微分方程式をプログラミングを使って解く, という方向性で中高の数学がどこでどう使われるのかを 議論していく講座の叩き台をつくっていて, そのレビュアー募集中なのだ.

地道に粛々とやっていこう.

フィンランドで数学やアートに関する国際会議Bridgesがあったらしい

フィンランドでの会議らしい. 「Mathematics, Music, Art, Architecture, Education, Culture」とのこと. 楽しそう.

関係ないがskkによるとフィンランドは漢字で芬蘭と書くらしい.

自然言語処理に使う数学: 『自然言語処理を独習したい人のために - 首都大学東京 自然言語処理研究室(小町研)』から

広い意味で数学に関わる部分を軽く引用しておきたい.

数学のところ.

ほとんどの大学の入学試験で微分積分・線形代数が必須となっているので、理工系の学部1年生程度の微分積分・線形代数の知識は身につけましょう。機械学習(最適化数学)を勉強するに当たって、微分積分・線形代数の知識が必要になります。微分積分・線形代数については研究室でフォローアップはしませんし、大学でも基礎講義はない(履修できるが単位にならない、という意味ではなく、そもそも 日野キャンパスでは補習的な授業は開講されていない)ので、大学院入試がきっかけだと思って、入学前に勉強しておいてください。

自然言語処理で用いられる機械学習では高校数学の範囲は全て登場します。よく使うのは「ベクトル(内積)」「連立方程式」「確率(同時確率・条件付 き確率、確率変数・確率分布)」「数列(等差数列・極限)」「微分(対数関数・指数関数の導関数、合成関数の微分、関数の極大・極小および最大・最小)」 「行列(固有値、逆行列)」あたりです。人文系の人は、高校の教科書と大学受験の参考書でよいので、復習しましょう。未習の人は苦しいかもしれませんが、もしこれらの数学を勉強するのがどうしても無理な場合、東大の言語情報科学専攻のように人文系を対象とした大学院に進まれたほうがよいと思います。

機械学習のところ.

内容が難しすぎる、と感じる場合は恐らく数学の基礎知識が不足しているので、入学前に機械学習の勉強を独学でがんばるよりは、数学の勉強をしてみてください(機械学習は、研究室の中で基礎勉強会を行なうので入学後でもよいですが、微分積分や線形代数に関しては、研究室の中でも大学の中でも講義・演習がないので、入学後に勉強することが困難であるためです)。

ページ中にはいろいろな参考ページへのリンクもあるし, プログラミングに関する注意や参考サイトもある. Python関係はけっこう参考になりそう.

「人を積分できるピアス」という素敵な数学アクセサリを見つけたので

$x$の作り方が参考になる. 最近忙しくて数学アクセサリは全く作れていない. http://math-accessory.comも放置したままだ. これも動かしたい.

『「何が分からないのか分からない」と思ったときはだいたい何もわかっていないので、自分への感想であればいちばん最初からやるべき』: かわず語録

後者についてはツイート紹介: 「わけわからない」という拒絶の言葉と解説病というのも前にあった. 微妙なケースもありそうとは思うものの, 前者については改めて自戒としたい.

『ゲンツェンの自然数論の無矛盾性の証明とゲーデルの第二不完全性定理が矛盾しないのはなぜですか?』

気になったので引用する.

  • Q

ゲンツェンの自然数論の無矛盾性の証明とゲーデルの第二不完全性定理が矛盾しないのはなぜですか?

  • A

Gentzenが示したことは PA+TI(ε_0) に於いて Con(PA) が証明可能ということです。Gödelの不完全性定理が述べているのは T から Con(T) が証明できないということですから、これには当てはまりません。系として PA から TI(ε_0) が証明不能であることが分かります。

全くわからなかった. 非専門とはいえさすがに悲しい. この辺も中二心をくすぐるし, いつかはちゃんとやりたいと思ってもう何年経つだろう.

「カントールはフーリエ級数の研究での必要から順序数を発見した」: 現代思想系への悲しみを謳うツイート紹介

『選択公理と数学』はこれ.

学部のときちゃんと読んだのに全く覚えていなくて悲しい. 買わないと.

小平先生のレクチャーノートとか. あとアローの定理

全部前に紹介済みだったと思う. 何度紹介しても別にいいだろうということで.

あとこれ.

とりあえず記録はしておこう.

やたべさん筋の情報: 野矢茂樹の粗雑な論考に関するメモ

あと何かこれ.

よくわからないがあとで読み返したくなる可能性は極めて高い. 保全しておくべきなので記録.

対ごとに素でないときにdisjoint union(無縁和)を考えたくなるときの具体例を教えてもらったので

あと何となくこれも引用しておく.

代数もっとやりたいし幾何ももっとやりたい.

礒田 正美, Maria G.Bartolini Bussi, 田端毅, 讃岐勝, 『曲線の事典 ―性質・歴史・作図法―』

該当リンクからも記述を引用しておこう.

本書は,定木とコンパスを含む機械で作図しえる曲線の歴史的表現を解説した事典である。小学校から高等学校,大学に至るまでの学校数学において知られる曲線の定義や性質を,その曲線を描く道具,変換器,幾何学的計算具の実物写真,作図結果とともに解説している。曲線の来歴を,今は失われた歴史的表現・役割を前提に解説することで,その背後に潜む直観と論理を再現している。 今日では,ソフトウエアを利用してディスプレイ上に描画する曲線は,少し前まではコンピュータ以外の道具を駆使して描かれてきた。作図の困難さもあり,それぞれの曲線の性質を明かすことは数学発展の象徴であり,曲線の表現法が改まる都度,その意味内容も進化した。そうした曲線像を認め,その曲線を描いた人々が生きた時代に思いを馳せることで,人間味溢れる数学像を提供する。 まず,それぞれの曲線に関わる各論を話題にする上で必要な曲線に関する歴史・文化的眺望を記した。その次に,本書の中心的な話題である,様々な曲線とその作図器,その初等幾何学的解説を収めた。そのあとに,変換を表象する機構,透視図法と投影,問題の作図解を表現する機械を収めた。最後には用語集を用意し,本文中で解説しきれなかった用語の解説を収めた。用語集や索引から逆に読めば,辞典として役立てられるようにも工夫されている。

プログラムで比較的楽に遊べる要素ないだろうか.

David Richeson, So-called the Japanese theorem for nonconvex polygons

今は(アカウントが)亡きkyon_mathさん情報.

ニッポン定理,初めて知った. http://bit.ly/1g3ccWU

ページからも引用しておこう.

The Japanese Theorem for Nonconvex Polygons David Richeson (Dickinson College)

Abstract. The so-called "Japanese theorem" dates back over 200 years; in its original form it states that given a quadrilateral inscribed in a circle, the sum of the inradii of the two triangles formed by the addition of a diagonal does not depend on the choice of diagonal. Later it was shown that this invariance holds for any cyclic polygon that is triangulated by diagonals. In this article we examine this theorem closely, discuss some of its consequences, and generalize it further. In particular, we explore its relationship with Carnot's classical theorem on triangles, we look for extreme values for this sum of inradii, we look at the limit of this value as the number of sides goes to infinity, and we generalize the theorem to nonconvex cyclic polygons. We include interactive applets throughout the article to give the theorems a tangible credibility.

「So-calledと言われてもはじめて聞いたわ」感溢れる. そして何はともあれメモ.

俺達の一般化されたヘルダーの不等式: 黒木さんのツイートまとめ

ということで引用されたツイート群を追いかける.

『そもそも普通の人が努力してできないものが高校教育のカリキュラムに組み入れられるわけないじゃないですか』

いろいろとすごいことを言っている人がいたので.

高い公共性を感じる.

人間精神への無限の信頼を感じる. さすがに全く理解できなかった.

で, コメントを頂いた.

こうはいうものの高校での実データはやはり気になる.

何にせよ元のツイート, すごい世界認識をしているのでどういう考えでそれに至ったのか本当に興味がある.

自分は当然努力でき, 努力して解決できたので誰だって必ずできるはずという感じの, いわゆるブラック企業というかブラックな上司の思考とも地続きな感じがする.

群の地図帳, リー群の地図帳

Twitter的な意味で今は亡きkyon_mathさん筋の情報.

群の地図帳ならある。 http://bit.ly/1kBHcmG ついでにリー群の地図帳もある。 http://bit.ly/1dHQ5CA

どう使ったらいいのかわからないがとりあえずメモ.

ルベーグ測度$0$の集合の補集合は$\mathbb{R}^{n}$で稠密か?

本文

答えはYesだ. いまSobolev空間論の本を読んでいて「?」と思ったので証明を確認した. 激烈簡単で自分で自分にがっかりした. 測度論弱者すぎる.

命題2

ルベーグ測度を${\left|\cdot\right|}$とし, 集合$A \subset {\mathbb{R}}^{n}$がルベーグ測度0だとする. このとき補集合$A^{c}$は${\mathbb{R}}^{n}$で稠密である.

証明

$A$が内点を持つとするとある開球$B_r$に対して$B_r \subset A$となる. 考えているのはルベーグ測度だから${\left|B_r\right|} >0$であり矛盾である. したがって$A$は内点を持たないから$A^{i} = \emptyset$である.

この補集合を取ると${\mathbb{R}}^{n} = A^{ic} = \overline{A^{c}}$である. つまり補集合$A^{c}$ は ${\mathbb{R}}^{n}$で稠密である.

補足

ついでにルベーグ測度ではない場合, 特にfull supportではない測度を簡単な反例も記録しておこう.

上のページによるFull supportの定義は次の通り.

It means that the support is the entire space, or equivalently that there is no open subset with 0 measure. 全空間を台とすること, また同値な条件として測度0の開部分集合が存在しないこと.

反例

全測度が$0$になるような測度が明らかに反例. これ以外にもルベーグ可測集合$C \subset {\mathbb{R}}^{n}$に対して, $\mu_{C} (A) = {\left|A \cap C\right|}$ とすれば $\mu_{C}$が反例になる. これは$C$の補集合に含まれる部分集合は内点があろうがなかろうが測度$0$だから.

他にもルベーグ測度に対して特異な測度を考えればいい. 例えばCantor集合上に台を持つCantor測度がある.

測度論はSobolevをやっていてもちょっとしたところですぐに顔を出す. 積分論の中でもうちょっときちんとやり直したい. 確率論だと死ぬほど出てくるからそちらでやり直す手もあるか. 確率論で測度論に関する議論が死ぬ程丁寧な本がほしい.

info

title: ルベーグ測度0の集合の補集合が稠密である証明 description: 結論を言えばYES。証明のポイントはルベーグ測度のfull support性で、ルベーグ測度が0だと内店を持てないところにある。Full supportでない測度に対しては反例が山ほどある。例えばカントル集合上に台を持つカントル測度。

レイコフ, ヌーニェス『数学の認知科学』, ドゥアンヌ『数覚とは何か』, 加藤文元『数学の想像力』: 読書メモ

『数学の認知科学』, 『数覚とは何か』, 『数学の想像力』が面白そう. 読みたい本が増えるのもさることながら, 買ったまま積読な本もガンガン増えていく.

『数覚とは何か』のドゥアンヌ, 黒木さんが何か本を紹介していた気もする.

ある集合$X$に対して$X \cap P(X) \neq \emptyset$となる$X$の例を教えてもらった

いいことを教えてもらえた. とりあえず記録.

Lemma 田, Lemma 曲 by Nobuo Yoneda

このツイートで引用されているツイートも引用.

謎. 海外の人に伝わるのだろうか. さらに強く中国人に伝わるのだろうかとも思っている.

『ウォルフラム・アルファすごい。もう、工学系の研究室で数値計算用PCとか減らしてもいいんちゃうか。』やたべさん筋の情報

よくわからないがとりあえずメモ. 変にプログラミングの勉強するより, Wolfram alphaの使い方勉強した方がいいのかもしれない. 特に中高生向けのことを考えるなら. ちょっとWolfram alphaちゃんと調べよう.

ゆきみPDFのページ

はじめに追記: 2022/8時点ではここにサイトがある.

このページ. PDF のラインナップは次の通り.

  • デルタ関数と超関数
  • Hilbert 空間概要
  • 不動点定理とかんたんな応用
  • Sobolev の埋蔵定理
  • 固有値問題いくつか
  • n 次元球の体積と表面積
  • 関数解析
  • シュレディンガー方程式入門
  • 量子力学で使う線型代数
  • Poisson 方程式
  • 水素原子の安定性
  • ねこでもわかる解析

とりあえず記録.

『哲学者が見るランダムネスの理論』宮部賢志さんの記事紹介

tri_iroさん筋の情報. リンク先は宮部賢志(ミヤベケンシ)さんのサイト. どんなのだったかすぐわかるように冒頭部だけ引用.

私にとって,計算可能性理論,計算量理論,計算可能解析,ランダムネスの理論,情報理論,確率論,統計的予測,時系列解析などは一直線上にある理論たちで,分けることができない.これらは全部ひっくるめて一つのものとして見ている.これらがどういう関係にあってどうつながっているのかというのは,一つの見方であり哲学だろうが,それを論じるためには,これまでの哲学的な議論を一通り学ぶ必要がある.

これまで,哲学者たちによって,計算,情報,確率,予測などの概念について様々に議論がされてきており,それらについては,少し調べれば多くの文献が出てくる.しかし,ランダムの概念やランダムネスの理論についての,哲学者たちの議論はそれほど多くない.ここでは,そういうものをまとめてみたいと思う.こういうまとめ方は,今までにされていないと思うし,私も英語の論文で書くことも無いので,こういう場所しかないように思う.

特に何かコメントする能力はない. 相変わらずのメモ.

境正一郎『作用素環における可分性・非可分性とダイヤモンド原理』

Calkin 環の話とか, 松澤さんの CCR の表現論と記述集合論の絡みとか見てみたいネタはある. とりあえずメモしておこう.

研究者はかくありたい『長年の腐れ縁の某数学者に出くわして、お互い「あ!」と言ったら、何の前置きもなく「最近いい定理が証明出来たんですよ!聞いてください」とはじまって、十分ぐらい説明があってから、ようやく時候の挨拶等をした。』立川裕二さん筋の情報

今日のいい話として記録しておく.

「あのですね できたんですよ あの定理」

先日立川さんの次のツイートがあったのだ.

それを受け何かキャッチコピーを探したくなったのが次のツイートとそこからの流れ.

ななしゃんのがかなりいい. 何となく気分でタイトルでは!を抜いてしまったが, 引用的にはどうなのと思わないでもない. あくまでななしゃんのが元ネタで本歌取り的なアレとして, 次くらいのでもいいと思っている.

  • あのですね すごい定理が できました
  • 聞いてほしい すごい定理が できました
  • 聞いてほしい すごい定理が できたんです
  • この定理 聞いてください すごいでしょ

字余りだがそんなにバランス崩壊していない感じがあるがどうだろう.

何かこう「好きな人ができました」くらいのシンプルで心を打つフレーズがほしい.

こういうキャッチフレーズももっと研究しよう.

何にしろ今回ななしゃんがあまりにもいい仕事をしてくれたので, ただただ感謝の祈りを捧げている.

『創文社潰れてしまうので,今からでも遅く無いので名著,現代数理統計学を買いましょう』ツイート紹介

統計学, ずっときちんとやりたいと思っていて気になっている. 最近Rによる統計の本も出ているようだしそれも気になっていれば, Pythonによる統計も気になっている. 勉強したいことがたくさんある.

Wolfram alphaを導入して子ども達と数学で遊びたい

この前に哲学を半端にかじってしまった異常者の異常な数学観に関する話があるが, それはこの際とりあえずどうでもいいので, 最初から本題に入る.

Wolfram alphaをもっと使いこなしたい. より正確には近所の子どもにその辺を伝えたい. 何かいい事例ないだろうか.

閉曲面の分類定理

きちんと追うのが大変と聞いて衝撃を受けた. トポロジーは有名な結果や古い結果をきちんと追うのが死ぬ程つらい分野というイメージがある.

二次元のトポロジーで複素解析で片がつく的な話があった気がするのだが, いったいそれは何だっただろうか?

『絵が下手な人必見!そっくり上手に描くための観察法と考え方 - MIKINOTE』記事紹介

細かいことはいろいろあるにしても, まず概要をつかむことが大事で, それもいろいろな角度からの概要をつかむことが大事ということを認識した.

とても参考になる. 数学とか物理とかプログラミングのコンテンツを作るときも参考にしよう.

数学的観点から見た『君の名は。』を書いてみたいが何もネタを思いつかず幾星霜

数学的観点から見た『君の名は。』を書いてみたいが, いいネタが何も思いつかないし, こんなときにこそ自分の無知無学無教養ぶりを思い知らされつらくなる.

『子供のころは勉強すると褒められたはずなのに, 大人になるとなぜか怒られるから, 小中学生の皆さんは今のうちに悔いのないくらい勉強したほうがよい.』

語り継いでいきたい.

「数式を並べるんじゃなくて、概念を説明してほしい」に込められた意図の謎

いくつか引用しておこう.

一般化された数式ほど概念を伝えるのに適した表現方法もないのになぁとずっと不思議だったのだけど、就職活動をしている辺りで僕は気づいた。どうやら、「概念を説明して欲しい」というのは、「抽象化された数式は難しくて理解できないので、具体例を上げて説明してほしい」という意味で日本のサラリーマンの中で用いられる隠語だ。

とても大切なことなのでついでに書いておくと、数式の「見た目の難しさ」と「(辞書的な意味での)概念の難しさ」は何の関係もない。特殊相対性理論の質量とエネルギーの等価性を示す、"E=mc^2"の見た目はとても簡単だけれど、その概念を僕は理解できない。

最近も数学や物理の概念を式を使わずに説明できないかという謎の要望を頂いた. いろいろな意味で謎.

$H=W$: 論文紹介, Meyers and Serrin, 1964

$W$は普通のSobolevの定義だった. $H$がちょっと謎というかはじめて見る定義: 最初$H^k = W^{k,2}$のことかと思ったので. 変な境界だと$H \neq W$のようだが, その条件が何かとか具体的な反例を知りたい. Sobolevはあまりきちんとやったことがない. 幾何解析はやってみたい.

とりあえずは記録しておこう.

Set Theory: Constructive and Intuitionistic ZF: 魔法少女筋の情報

大分前のメモなので文脈を全く覚えていない.

そして教えてもらったのはこれ.

最初のページのタイトルが「Set Theory: Constructive and Intuitionistic ZF」なので, 構成的集合論とか直観主義でのZFとかそういう話を聞いたのだろうか.

Péter Ivanics, András I. Stipsicz, Szilárd Szabó, 2016, Two-dimensional moduli spaces of irregular Higgs bundles

リンク先のページは Péter Ivanics, András I. Stipsicz, Szilárd Szabó, 2016, Two-dimensional moduli spaces of irregular Higgs bundles だった. とりあえずメモ.

可算和定理と選択公理

アカウントが凍結になってしまっているようだが, 発端はこのツイート.

みやこくしんヰちろう @AGeometric

「可算和定理の証明には選択公理がいる」「Rの非可測集合はR/Qの完全代表系を上手く取れ」「UFDの極大イデアルの存在から選択公理が言える」「可算な体の代数閉包は選択公理なしで作れる」 #センター試験受験生への数学アドバイス - 1月19日

親切にリプライを頂いて文献を教えて頂けるの, すごいとしか言いようがない.

左逆写像と右逆写像が一致しない例を求めて

結合律を破壞しに行く発想はなかった. 自分の甘さを一番思い知らされたのはここだ. 精進しなければ.

Riehl, Category Theory in Context

Mac Laneの現代版とか読むしかないのでは.

J. P. May, A Concise Course in Algebraic Topology

これっぽい.

目次を見ると序盤から圏を導入しているようだ. とりあえず記録しておく.

『異世界に転生したはいいものの、異世界では英語しか通じないことが発覚し、中1レベルの英語力から徐々に英語力をつけながら無双していく、異世界転生王道ストーリー的な英語教材ください』の数学版を作りたい

コンテンツのネタは尽きない.

L Buhovsky et. al. A $C^0$ counterexample to the Arnold conjecture

とりあえず気になるのでメモしておく.

小平邦彦先生の記憶: 故彌永昌吉博士による回想

コンテンツを作っていて検索していたら引っかかったので記録.

いくつか引用したい.

私が最初に量子力学を勉強したのは、故P.A.M Dirac博士の"The Principles of Quantum Mechanics"でしたが、読んだ人なら御存知の通り、物理実験の話は一切出て来ません。せいぜい、第一章の重ね合わせの原理のところで、光の偏光、すなわち光子の振舞いについて少し触れているだけです。それはそれで、私のような数学科の人間には助かるのです。と言いますのは、実験を長々と説明されても、そうかと思うだけで実感出来ないからです。実験器具なぞ、高校以来触ったこともなければ、見たこともない人間には苦痛以外の何物でもありません。

それはそうか, というのと, それはどうなんだ, というのが交錯する. コンテンツ作りの参考にはなる.

しかし本題はこちら:

それと、もう一つ、こっちの方が重要なのですが、紹介するにも私個人の心が痛むからです。あの時代の日本人(阿呆な政府軍部の人を除く)は今と違って、本当に強い精神力と忍耐力と心優しさを持っていて、(失礼ながら)一見ひ弱な小平博士でも、終戦前後の時、明日の日本(と御自分)がどうなるかも分からない中で、しかも発表する当てもない調和積分論に関する大論文を、病床の幼い御長男(最終的に病死されます)の傍らでお書きなったのは、終戦を見越してのことよりも、今を生きた証し(つまり、遺書)として残そうと思われたのではなかろうかと、私は考えていたからです。

これを検索していたのだ.

邦彦とセイ子の結婚から、彼等はかわいい息子和彦を得たが、残念ながら腎不全を患っており、終戦の数ヶ月後の1946年に諏訪で亡くなった。

あと彌永先生, 長寿だったということはそれだけ多くの, それも自分よりも年下の人が先立つのを見てきたということか, と割と悲しくなった.

私もそんな感慨を覚える年になったのか, というところもある.

モンティホール問題などに関する確率に関するやりとり

モンティホール問題などに関する確率に関するやりとりがまとめられていた. 確率はいまだにさっぱりわからない. 勉強用にとりあえずメモ.

集合の遠近感を入れるための四つの方法

あまり考えたことがなかった. 参考のために記録しておこう.

追記

魔法少女からコメントを頂いた.

久し振りに魔法少女から超準解析系の話を聞いた気がする.

読書の参考: 東大数理, 2017年の学部四年セミナーのテキスト集

参考の記録として張っておこう.

川又雄二郎

  • Algebraic surfaces, Lucian Badescu, Springer, 2001
  • 通年で使用する.

高木寛通

  • グレブナ基底と代数多様体入門 (上・下), コックスその他, 丸善出版, 2000
  • とりあえず半期で使用. 上巻の 3 章:消去理論から読み始める. 上巻の 1, 2 章の内容 (グレブナ基底の定義なども含む) はしっかり自習しておいてください. アルゴリズムにはあまり深入りしないつもりなので代数幾何を勉強したい人を希望します.

寺杣友秀

  • The red book of varieties and schemes(LectureNote in Mathematics 1358), David Mumford, Springer
  • Algebraic Geometry (Graduate Texts in Mathematics), Robin Hartshorne, Springer, 1977

今井直毅

  • Algebraic Number Theory, J. W. S. Cassels, A. Frohlich, Academic Press, 1967
  • S セメスターのみ使用する. London Mathematical Society から 2010 年出版の第 2 版あり.

権業善範

  • 新装版 複素多様体論, 小平邦彦, 岩波書店, 2015

松本久義

  • Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, James E. Humphreys, Springer, 1980
  • (テキスト 1,2 共通) 通年で使用する. 他にも表現論, リー群, リー代数関係の本であれば相談の上変更可能.
  • Lie superalgebras and enveloping algebras, Ian M. Musson, American Mathematical Society, 2012

志甫淳

  • Algebraic Geometry ※所蔵なし (絶版), Lei Fu, Tsinghua University Press, 2006, 通年で使用する.

三枝洋一

  • Automorphic Representations and L-Functions for the General Linear Group, Volume I, Dorian Goldfeld, Joseph Hundley, Cambridge University Press, 2011
  • Abelian Varieties, David Mumford, Oxford University Press 1970

辻雄

  • Local Fields, Jean-Pierre Serre, Springer, 1979

寺田至

  • 古典群の表現論と組合せ論 (上) ・ (下), 岡田聡一, 培風館, 2006,
  • 通年で使用する.

植田一石

  • The Geometry of Four-Manifolds, K. Donaldson P. B. Kronheimer, Oxford University Press, 1990
  • Mirror Symmetry, Hori et al., Amer Mathematical Society, 2003

河野俊丈

  • Lectures on Symplectic Geometry, Ana Cannas da Silva, Springer, 2001

金井雅彦

  • Large Scale Geometry, Piotr W. Nowak & Guoliang Yu,, European Mathematical Society, 2010
  • Discrete Differential Geometry - Integrable Structure, Alexander I. Bobenko & Yuri B. Surism, American Mathematical Society, 2008

二木昭人

  • An Introduction to Extremal K Ä Hler Metrics, G Á Bor Sz é kelyhidi, Graduate Studies in Mathematics, Amer. Math. Soc., 2014

林修平

  • Lectures on Dynamical Systems, Eduard Zehnder, European Mathematical Society, 2010
  • An Introduction to Ergodic Theory, Peter Walters, Springer, 1981

逆井卓也

  • Algebraic Topology from a Homotopical Viewpoint, M. Aguilar,S. Gitler,C. Prieto, Springer, 2002

北山貴裕

  • Lecture Notes in Algebraic Topology, James F. Davis and Paul Kirk, American Mathematical Society, 2001

小林俊行

  • Lectures on the Orbit Method, A. A. Kirillov, Graduate Studies in Mathematics, Volume 64, AMS, 2004
  • The Spectrum of Hyperbolic Surfaces, N. Bergeron, Universitext, Springer, 2016

足助太郎

  • Lectures on Algebraic and Differential Topology (Lecture nots in mathematics 279), R.Bott, S.Gitler, I.M.James, Springer, 1972
  • 通年で使用するが, 読み終わってしまったら別の本・論文等を考える.

古田幹雄

  • Riemann Surfaces(Oxford Graduate Texts in Mathematics), S.K. Donaldson, Oxford Univ Press, 2011
  • 通年で使うかどうかは読み進めながら決めたいと思います.

松尾厚

  • Quantum groups, C. Kassel, Springer Verlag, 1995,
  • 通年で使用する.
  • The Finite Simple Groups, Robert A. Wilson, Springer Verlag, 2009

坂井秀隆

  • 複素領域における線型常微分方程式, 渋谷泰隆, 紀伊國屋書店, 1976
  • 通年で使用

河東泰之

  • A Course in Functional Analysis, John B. Conway, Springer, 1990
  • 通年で使用の予定
  • A short course on spectral theory, William Arveson, Springer, 2002
  • 通年で使用の予定

木田良才

  • Ergodic theory with a view towards number theory, Manfred Einsiedler and Thomas Ward, Springer London Ltd, 2011
  • 通年で使用する.
  • Kazhdan's property (T), Bachir Bekka, Pierre de la Harpe, and Alain Valette, Cambridge University Press, 2008

高山茂晴

  • 多変数複素解析入門, 安達 謙三, 開成出版, 2016
  • 通年で使用する予定.

中村周

  • Introduction to Partial Differential Equations (2nd Ed), Gerald B. Folland, Princeton University Press, 1995
  • Semiclassical Analysis, Maciej Zworski, American Mathematical Society, 2012

儀我美一

  • Partial Differential Equations: Second Edition (Graduate Studies in Mathematics), Lawrence C. Evans, American Mathematical Society, 2010
  • 通年で使用する. どの部分を講読するかは受講者との相談による.
  • Gamma-Convergence for Beginners, Andrea Braides, Oxford University Press, 2002
  • 通年で使用する.

宮本安人

  • ソボレフ空間の基礎と応用, 宮島静雄, 共立出版, 2006
  • 関数解析 -その理論と応用に向けて, ハイム・ブレジス (藤田宏 監訳, 小西芳雄 訳), 産業図書, 1988

緒方芳子

  • Representations of Finite and Compact Groups (Graduate Studies in Mathematics ), Barry Simon, American Mathematical Society, 1995

下村明洋

  • 関数解析, 宮島静雄, 横浜図書, 2005
  • 通年で使用する.
  • 偏微分方程式 (共立数学講座 14), 熊ノ郷準, 共立出版, 1978

関口英子

  • リー群と表現論, 小林俊行--大島利雄, 岩波書店, 2016 第 10 刷
  • 通年で使用します.

新任教員

  • Probability with Martingales, David Williams, Cambridge University Press, 1991
  • 学生の理解度に応じて本の途中から始める可能性があります. また, 早く終わった場合, 他のテキストに移る可能性もあります.

佐々田槙子

  • Probability with Martingales, David Williams, Cambridge University Press, 1991
  • 確率論, 熊谷 隆, 共立出版, 2003

平地健吾

  • Function theory of several complex variables, 2nd ed, Steven G. Krantz, Providence, RI : American Mathematical Society, 2001, c1992

俣野博

  • Nonlinear Analysis and Semilinear Elliptic Problems (Cambridge Studies in Advanced Mathematics), A. Ambrosetti and A. Malchiodi, Cambridge University Press, 2007

稲葉寿

  • An Introduction to Mathematical Epidemiology, Maia Martcheva, Springer, 2015

米田剛

  • Vorticity and Incompressible Flow, Andrew J. Majda and Andrea L. Bertozzi, Cambridge University press, 2001
  • 非線型発展方程式の実解析的方法, 小川卓克(おがわたかよし), 丸善出版, 2013

齊藤宣一

  • 偏微分方程式の数値解析, 田端正久, 岩波, 2010
  • 通年で使用
  • Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Haim Brezis, Springer, 2010

白石潤一

  • 拘束系の力学, 村井信行, 日本評論社, 1998
  • 通年で使用する.

長谷川立

  • Introduction to the Theory of Computation, Michael Sipser, PWS Publishing
  • A Mathematical Introduction to Logic, Herbert B. Enderton, Academic Press

新井仁之

  • 関数解析, 藤田宏, 伊藤清三, 黒田成俊, 岩波書店, 1991
  • A First Course on Wavelets, E. Hernandez and G. Weiss, CRC Press, 1996

ウィロックスラルフ

  • Discrete Systems and Integrability, J. Hietarinta, N. Joshi, F.W. Nijhoff, Cambridge University Press, 2016
  • 通年で行う予定である.
  • Mathematical Models in Population Biology and Epidemiology (Second Edition), Fred Brauer Carlos Castillo-Chavez, Springer, 2012

一井信吾

  • Computer Organization and Design: The Hardware Software Interface: ARM Edition, David Patterson, John Hennessy, Morgan Kaufmann, 2016

吉田朋広

  • Probability and Stochastics, Erhan Ç Inlar, Springer, 2011
  • Statistical Estimation: Asymptotic Theory, Ibragimov, I.A., Has'minskii, R.Z., Springer, 1981
  • Introduction to Stochastic Calculus Applied to Finance, 2nd ed., D. Lamberton, B. Lapeyre, Chapman & Hall, 2008
  • The Malliavin Calculus and Related Topics, David Nualart, Springer, 2006

時弘哲治

  • Methods and Models in Mathematical Biology, Johannes M Ü Ller, Christina Kuttler, Springer, 2015

非アルキメデス体係数線型空間の有限次元性と有界閉集合のコンパクト性に関する問答

もとの命題, $\mathbb{R}$と$\mathbb{C}$なら成り立つと思っていた (証明も読んだはずだがパッと思い出せなかった)ので, かなり驚いて「$\mathbb{R}$と$\mathbb{C}$でも本当に成り立つんだったか」と不安になったので思わず聞いてしまった. 関数解析的にシンプルな議論はどんなのだったか確認しなければいけない. 次のPDFが参考になりそうだ.

あとで必要なところだけ切り出してまとめてメルマガにも書こう.

$\mathbb{C}_{p}$などの非アルキメデス体, 本当に$\mathbb{R}$や$\mathbb{C}$の関数解析の直観がまるで効かないことを改めて実感した.

関数解析の初学にいい本: 量子系の数理の観点から/メルマガから

記事の冒頭にもある通り, 数学・物理系のメルマガと無料の通信講座をやっている. どちらかに登録しておいてもらえれば こちらからプッシュでこの手の濃い話題をお届けできる. ご興味がある方はぜひ登録してほしい.

以下は無料の通信講座, 現代数学観光ツアーに参加されている方からの質問だ. サイトに公開しておく価値もあると思ったので出しておく. ここまでが常体, 以下は敬体で文体が統一されていないけれども, 以下はメルマガが元なのでご容赦願いたい.

はじめに: 今回の背景

読者の方からメール頂いた話で, 多分他の方にも役に立つだろうから いったん全体への返信という形でお返事します.

量子力学を深く勉強するために ヒルベルト空間論, 関数解析をやろうとしていて, それに対する本の選択とかそういう相談です. たぶん.

Twitter というか私のサイト http://phasetr.com に 「Hilbert 空間メインの関数解析の初学には日合•柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい」 という記事を書いていて, その中に『新井先生の『量子力学の数学的構造』があるが, 一般にはあまりお勧めしない』と書いたりしました.

その方がこれを読もうとしていたそうなので, それでどうしようか, という問い合わせです.

ちなみにこの人, 量子力学の数理, 特に量子測定などで知っている人は皆知っている 小澤正直先生に相談して von Neumann の 「量子力学の数学的基礎」を勧められたものの, 古いから新井朝雄先生の「ヒルベルト空間と量子力学」を読もう と思っている, とかいう訳のわからないことを言ってきました.

世界的な研究者に相談しておきながら, そこで勧められた本を無視して ど素人が勝手に自分の趣味で本を選ぶという行為が そもそも全く理解できなくて衝撃を受けました. 世界的な研究者の時間を奪っておいて, その話を聞かないとか何がしたかったのか全くわかりません.

率直に言って, すごいことするな, 何のために小澤先生に相談したんだ, こいつは何を考えているんだ, と.

確かこの人, もともと量子化学の研究者だと 言っていたと思うのですが, ふだんからこんな感じでやってたのでしょうか. 謎です.

小澤先生を無視しつつ, 何で私なんぞの意見あてにするんだ, 重鎮の意見を無視するのにこっちの意見は聞くのか, 何なんだと.

それはともかく, 参考になるところはあると思うので 私の見解をまとめます. いつも言っていることとはいえ, あなたははじめて聞くかもしれませんし, 改めていうことにも意味はあるはずですから.

あなたがしたいのは物理ですか? 数学ですか?

究極的なところからはじめます. 数学をやりたいのか, 物理をやりたいのかをはっきりさせてください.

あくまでも物理がやりたいというなら ルベーグ積分や関数解析をいくらやっても無意味です. 本当に無意味です. 数学はさっさと捨てて物理をやりましょう.

何故無意味かというと, 学部 3 年レベルの量子力学で出てくる話ですら, 数学的に追いきれないことが山程あるからです. これは私やあなたが愚かだから, とかそんなちゃちなレベルではありません. 現実問題として研究マターです.

あなたが研究者なら「そうは言っても 皆がやっていない穴とかあるんじゃないの? そういうところなら何とかなるのでは?」 と思うかもしれません. 残念ながらそんな都合のいい話はありません.

優秀な人が一所懸命やってできるところは たいがい潰されています. 残っているのは本質的な ブレークスルーが 5-10 個ないと進まない, そういう感じと思ってください.

数学的に厳密なスタイルの限界

レーザー, 量子電気力学, 散乱

具体例を挙げましょう. 物理の学部 3-4 年でレーザーに関する話, 量子光学的な話をやります. これを厳格にやろうと思うと 非相対論的量子電気力学が出てきます.

そしてこれは 2017 年現在でも 数理物理の研究最前線です.

もう 4 年も前の話ですが, これよりもう少し簡単な Nelson モデルの散乱理論に関して Dybalski さんからメールを頂いたことがあります. この人はもともと相対論的場の量子論の散乱理論を 研究している人で, 具体的なモデルの研究ということで, 非相対論的場の量子論にも踏み込んできたようです.

多体系の量子論, 量子統計に関するプレプリントを arXiv に上げたときに「自分も多体系に興味があって 研究しているからぜひ論文を読んでほしい」というメールでした.

そのときメールで教えて頂いたのは次の論文です.

これ, 電子と場の相互作用系なのですが, 扱う電子は 2 つですからね. 1 つでも厳しいというのが現状です.

この時点でまともな物理の人なら 「数学的に厳密な話なんて 全く使いものにならないな」と 思うでしょう.

もしかしたらあなたは「これは場の理論だから 厳しいのでは?」と思ったかもしれません. しかしその見込は甘いです.

量子力学の散乱

例えば数学的に厳密な量子力学の散乱理論ですら, 2 体はだいたい何とかなったものの, 3 体で既に研究の最前線のようです.

最後の PDF が一番状況がよくわかるでしょう. 9 年前の話ではありますが, 3 体問題が難しいという絶望的な話をしています. 数学ベースであっても散乱理論の研究は 50 年以上続いているので, 一般の N 体に関する知見が この 8 年程度で爆発的に広がったとは思えません.

数学に厳密な物理の厳しさ

数学的に厳密な話など いくらがんばったところでこの程度です. もちろん数学サイドなら別にいいのです. 数学として面白いならそれでいいし, 実際磯崎先生がそれで数学会の賞を取るほどに 面白い話が展開できているわけですから. もちろん世界的にも認められている業績です.

しかし物理としては 2 体, 3 体の散乱で いくらシャープな結果が出ても, ご利益は何も感じないでしょう.

こんなことしたいですか? という話です.

現代数学観光ツアーで十分

というわけで, 物理がしたいという人はヒルベルト空間論や 関数解析をやっている暇があるなら, さっさと物理にうつりましょう.

現代数学観光ツアーで紹介したレベルの 話がおさえられていれば十二分です. 関数解析というよりも線型代数の適用範囲を もっと積極的に広げたよ, 一度慣れておけばいろいろなことを 統一的に眺められて便利だよ, そのくらいの認識でほぼ完璧です.

あなたは現代数学観光ツアーを知らないかもしれないので, 一応改めて宣伝しておきましょう. 次の URL から登録ページに飛んでください. 講座の説明もしてあります. 無料ですし気に入らなければすぐ登録解除もできます.

長くなってきので, 残りは次に回します. 次回は数学をやると決めた場合の対応です.

最初に: 前回の記事を張り直し

前回, 「Hilbert 空間メインの関数解析の初学には 日合?柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい」 という記事へのリンクを きちんと張っていませんでした.

いちいち検索するので面倒と思うので, 念のため張っておきます.

あと関連する記事ももう 1 つ.

他にも関係する記事はいろいろあるのですが, 思い出せないのでまずはこの 2 つを.

前回の復習

それはさておき, 前回, 量子力学の勉強のために ヒルベルト空間論や関数解析を勉強したいと 思っている方から, 具体的に何をどう読もうか, という相談を受けたという話をしました.

それに対してまずは数学をやりたいのか, 物理をやりたいのかはっきりさせること, そして物理をやりたいなら, 現代数学観光ツアー以上の ヒルベルト空間論はやったところで無意味だから, さっさと物理を勉強しようと言いました.

数学的に厳密にやろうとすると, ちょっとしたことが既に研究最前線マターであることを, いくつか具体例を挙げて紹介しました.

厳しめのことを書きましたが, 私は実際にその方面, つまり数学的に厳密なスタイルで 物理をやる数理物理を専門にしていたので, どれほど大変なのかの実体験があります.

甘くはありません. しかし非常に楽しい分野ではあります. 少なくとも私にとっては.

というわけで書いていたら楽しくなってきて, とんでもないボリュームになりました. 1 回では長すぎるので何回かに分けて配信します.

今回からは数学よりの話をします. 量子系の数理といってもいろいろあります. それは扱いたい物理による話で, 質問された方がどの辺を意図しているのか, それがよくわかっていないので 何とも言えないところはあります.

先に質問者に聞けばいいじゃない, という話でもありますが, ある程度は網羅的に説明しようと思ったので, まあまずは情報を出そうという感じです.

新井先生の本の紹介

まず具体的に書名が挙がっていた 新井先生の『ヒルベルト空間と量子力学』と 『量子力学の数学的構造』に関して.

『ヒルベルト空間と量子力学』はきちんと 目を通していないし, 増補版は余計見切れていないものの, 少なくとも『ヒルベルト空間と量子力学』の旧版には スペクトル定理は使うだけであって, 証明が書かれていなかったはずです. その代わりに水素原子に関する議論が載っている, そういう認識です.

新井先生方面, つまり作用素論的な方面から言うなら, スペクトル定理抜きの議論には魂が入りません. 新井先生の本を読んで量子系の話をするなら, 最初から『量子力学の数学的構造』を読んだ方が早いですね.

水素原子の解析にしても, ハミルトニアンの自己共役性に関して, 続編の『量子現象の数理』で加藤-Rellich の定理からはじめて 1 章まるまる割いて議論されている程度には面倒ですし, 議論するべきこともたくさんあります.

『量子力学の数学的構造』を読む前提なら, 『ヒルベルト空間と量子力学』を読む理由をあまり感じません. 中途半端にやってもね, という感じ.

あともう 1 つ, 一般には『量子力学の数学的構造』を勧めないと書いた理由です. これは単純で, 記事ではヒルベルト空間メインとはいえ 「関数解析」に焦点を当てたからです.

新井先生の本, 特に『量子力学の数学的構造』と 続編にあたる『量子現象の数理』は, 極端なことを言えば, 新井先生の視点から量子力学に関わる数学にフォーカスしています.

関数解析の基本的で大事な定理でも, 本で扱っている範囲で使わないなら解説がありません. 『量子現象の数理』にはハーン-バナッハが載ってはいるものの, 証明抜きでした. 証明にツォルンの補題を使うから省略したのでしょう.

量子系の数理にだけフォーカスを当てるなら わからないでもありません. しかし数学として関数解析にフォーカスがあるのなら, あまりいいことではありません.

日合-柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』

しかし日合-柳の本は, 付録まで含めると関数解析の本として立派に使えます. リース-マルコフ-角谷の定理までありますし, こちらなら関数解析をやったと言える内容です. スペクトル定理の証明もあるし, 量子力学の数理でもときどき出てくる コンパクト作用素の議論もあります.

量子統計やるならある程度トレースクラスの議論も 必要ですし, その意味でも無駄ではありません. そういうわけで日合-柳をお勧めしています.

数学的にもリース-マルコフ-角谷の定理を使って スペクトル定理を証明していてなかなか気分がいいです. リース-マルコフ-角谷の定理も証明も載っていて, 至れり尽くせり感が素晴らしい良書です.

関数解析の基本定理は都度やると 割り切るなら新井先生の本だけでもいいでしょう. きちんと勉強していれば数学力もつきますし, その段階で改めて関数解析のふつうの本を読めば, 苦労なく読めるはずですから, それはそれで一手です.

テーマごとのお勧め

さて, ここからは物理のテーマごとに 合わせた数学という方向で話を進めます.

現代数学探険隊の募集ページで 量子力学がいろいろな数学と関係していることを お伝えしたので, そちらを見た方は何となくはご存知でしょう. 一応募集ページのリンクも張っておきます. 長いので, 読むにしても 必要なところだけ読んでもらえれば結構です.

ここでは詳しい話に踏み込むので, 私が知っている分野・範囲の話しかできません. 幾何は一切抜きにしてゴリゴリの解析方面の話です.

数学から言うと大きくわけて次の通りです.

  • 特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理.
  • シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析.
  • ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析.
  • 作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析.
  • 特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析.

これらは全て独立しているわけではなく, お互いに深く関係しています. 全ての数学をきっちり勉強しきるのは難しいですし, 好き・嫌いまたは得意・不得意があるので, ふつうはどれかをメインにします. 私は作用素論・作用素環論を使う方面で, 量子力学というよりも場の理論・量子統計に重きを置いています.

下の 3 つに関してはヒルベルト空間論を こってりやる意味があるし, その必要もあります.

まずはヒルベルト空間の一般論が それほど必要ないところからやりましょう. 大雑把に言って先のリストで 上から順にヒルベルト空間の一般論や, 関数解析の抽象論が必要になっていきます.

特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理

これは $L^{2}$ やソボレフ空間 $H^{1}$ が主戦場で, 特にそこでの不等式評価がキモです.

本としては Lieb-Loss の Analysis が 突き抜けています.

これはこの分野の世界的権威である Lieb (と Loss) が応用の現場を意識して, とっつきづらい関数解析の抽象論には 一切触れず $L^{p}$ の中で議論しきろうと書かれた本です.

ヒルベルト空間やバナッハ空間上での 基本定理は全て $L^{p}$ で議論されています. ルベーグ積分の定義からはじまってはいますが, 事実上ルベーグ積分は既習が前提です.

この本, Lieb-Loss の「現場の数学」を貫き通しすぎて, 抽象論がないからといっても 全く簡単ではありません.

それは不等式評価が苛烈だからです. 具体的な $L^{p}$ や $H^{k}$ での議論であり, 物質の安定性のように ハードな評価が必要な分野への応用も意図しているため,

ふつうの数学書で滅多に見かけない 最良定数評価もきっちりやっていて そういう部分は本当にきついです.

ただ量子力学への応用を意識して, ソボレフ空間の議論も過度に一般化せず, 詳しい議論はほぼ $H^{1}$ と $H^{1/2}$ に限定しています.

後半で量子力学, 特にシュレディンガー方程式の 解析にも関わる, クーロンポテンシャルの解析や ポアソン方程式などの議論があった上で, シュレディンガー方程式自体の議論もあります.

固有値評価に関する詳しい議論もあれば, 量子化学で重要な密度汎関数でもある トーマス-フェルミ汎関数の議論もあって, そこまで含めて参考になります. まさに量子系の数理という感じです.

ただトーマス-フェルミに関しては 引用されている原論文を読んで方が わかりやすいですね.

以前, 実際にこの辺を専門にしたいと 言っている院生から Lieb-Loss の Analysis のトーマス-フェルミパートが わけわからん! という相談を受けたので, トーマス-フェルミに関する セミナーをやってこともあります.

どうしてもわからないところがあったので, 原論文をあたってみたら その方が遥かにわかりやすかったという話です.

物理として何をやるかは難しいところですが, Lieb-Loss を読み終わったあと Lieb の方面としては物質の安定性や BEC がとっつきやすいでしょうか.

BEC でも議論される Gross-Pitaevski 方程式は 非線型シュレディンガー方程式と呼ばれるタイプの方程式で, 非線型の偏微分方程式論をやるという手もあります.

何はともあれ同じく Lieb が書いた本として, Stability of matter と The Mathematics of the Bose Gas and its Condensation (Oberwolfach Seminars) を勧めておきましょう.

どちらもかなり難しいです. 基本的に使っている数学は $L^p$ や $H^1$ と そこでの不等式評価だけで, 一般論・抽象論の出番はほぼありません.

また長くなってきたのでまた切ります. 残りは次回に回します.

前回の復習

まずは復習.

前々回は物理をやりたいのか, それとも数学をやりたいのか はっきりさせようという話で, 物理を数学的にきちんとやろうと思うと 学部レベルの物理すら厳しいという話をしました.

前回は数学をやろうというなら, という方向で軽く新井先生の本や, 日合-柳の本の紹介をしました.

さらに大雑把に 5 種類の方向性を挙げ, そのうちの最初, ヒルベルト空間の一般論や抽象論が ほぼいらない物理に関する数学を 具体的な本とともに紹介しました.

その 5 種類は次の通りです.

  • 特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理.
  • シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析.
  • ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析.
  • 作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析.
  • 特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析.

今回は後半の 4 つを紹介します. 2 番目, 微分方程式の解析に関して話をしましょう.

シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析

これは何をやるかによって 一般論・抽象論がかなり必要なところも出てきます. 例えば初回に説明した散乱理論は 作用素論に関する抽象論がかなり出てきます.

自己共役作用素の解析も必要になるので, そこで作用素論の一般論が必要になる局面があります.

当然ソボレフ空間論も必要なので, 前回の Lieb-Loss 程度のソボレフ空間論は カバーしておく必要があります.

数学としては非線型シュレディンガー方程式も 視野に入ってくるので, そちらに進んでもいいでしょうね.

非線型シュレディンガーは ソボレフや偏微分方程式の基礎を みっちりやった上での話なので, その基礎部分に関して参考文献を紹介していきます.

関係が深い話も多いですから, 前回紹介した Lieb-Loss の Analysis は 相変わらずお勧めの 1 冊に入れられます.

散乱理論のような作用素論の趣も強いところは ヒルベルト空間の一般論・抽象論が必要です. これに関しては日合-柳は相変わらずお勧めですし, 新井-江沢の『量子力学の数学的構造』もお勧めです.

『量子力学の数学的構造』の II 巻の後半は 基本的に場の理論・量子統計をやるときに 必要な内容なので, 飛ばして構いません.

具体的な作用素の自己共役性や 散乱理論の一般論など, 量子力学の数学に関してもう一歩踏み込んだ本としては 同じく新井先生の『量子現象の数理』がお勧めです.

高いのでおいそれと買えとは言えませんが, 私は専門の関係で読むしかなかったので 買って全部読んでいます. 本質的なものでもないですが, 誤植はいろいろあったので それは新井先生にお送りしています.

研究会で会って自己紹介したとき 「丁寧な誤植訂正を送って頂いて ありがとうございました. とても助かりました」と言って頂いたこと, 今でも覚えています. その程度には新井先生の本や論文を 読み込んで育っています.

Hausdorff-Young の不等式など Lieb-Loss の Analysis レベルの 不等式処理力は前提とした上で, 『量子力学の数学的構造』や 『量子現象の数理』のネタも 1 章で ある程度証明までカバーしつつ 量子力学の散乱理論に深く踏み込んだ本として 磯崎洋先生の「多体系シュレディンガー方程式」は なかなか面白いです.

一般論・抽象論が必要とは書いたものの, 全部 $L^{2}$ 上で考えておいて問題ありません. 基本は全部 $L^{2}$ ですからね.

数学として, 微分方程式としての取り扱いなら, 方程式の解の存在といった議論も視野に入ります. 時間発展を考えるときは発展方程式の議論で, Hille-吉田の定理などはふつう抽象論レベルでやるでしょう.

偏微分方程式も主戦場は $L^{p}$, $W^{k,p}$ だとはいえ, 関数解析の一般論・抽象論は必要です.

これについてはやはり 偏微分方程式関係の本がいいですね. 関数解析の抽象論からカバーしてくれる本としては, もともとフランス語でそれが和訳された ブレジスの本がいいバランスです.

上の URL は日本語版へのリンクです. しかし最近改めて英語で出た バージョンの方をお勧めしておきます.

ページ数が増えているので「ちょっときつい」と思うかもしれません. しかしこれはフランス語の英訳ではなく, 新たに書き直されたバージョンです.

各章末の発展的な話題にも最近の進展が反映されていますし, 実係数しか扱われていなかったのが, 付録で複素係数までカバーするようになりました.

複素係数まで含めた関数解析の本としての 完成度も高まっています. そして分厚くなった理由の 1 つとして, 演習問題の回答がついたことが挙げられます.

もともと関数解析からはじまり, $L^{p}$ の不等式やソボレフ, Hille-吉田など関連する重要な話題もカバーしつつ, 変分を基礎に具体的な線型方程式の解析も やっていて広い範囲をバランスよくおさえた本でした.

その完成度がさらに高まっているので これは本当にお勧めです. その後非線型解析に進むにしろ, 基礎としておさえておくべき内容です.

関数解析の基礎があるなら Evans の本もお勧めです.

この本は次の 3 本立てです.

  • 線型非線型問わず具体的に解ける方程式の解析.
  • 線型方程式の理論.
  • 非線型方程式の理論.

具体的に解けるところで偏微分方程式に親しみ, 線型の理論でソボレフ含め 偏微分方程式の本格的な理論への地ならしをし, 最後に非線型方程式の基礎を見るという, こちらもバランスのいい構成です.

半群理論も線型の Hille-吉田だけでなく 非線型半群も議論していますし, その辺もいたれりつくせり感があります.

非線型方程式を射程に入れているなら, 読んでみていい本でしょう. 東大の偏微分方程式の研究室の 学部 4 年セミナーでも使われている本なので, その意味でも確かな内容です.

ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析

これはばっちり私の専門です. もう少し広げて話すこともできるのでしょうが, 半端な話をするよりは特化させることにしました. 量子統計は微妙ですが, 場の量子論は射程距離に入れて話をします.

私は新井先生の本と論文を読んで育ち, その中で抽象論もバリバリやってきましたし, その方面が基礎です. どうしても $L^2$ の具体的なところを離れた議論, いわゆるヒルベルト空間論が必要不可欠です.

これに関しては新井先生の本が一番です. まずは『量子力学の数学的構造』を読んでから 『量子現象の数理』を読みましょう.

ここからさらに量子力学方面に進むなら Cycon, Froese, Kirsch, Simon の本でしょうか.

新井先生の本は奇蹟のように読みやすいですが, これはそこまで読みやすくはありません. 気合を入れないと読めない部分も増えます.

場の理論に行くならこれもまた新井先生の 『フォック空間と量子場』ですね.

『量子力学の数学的構造』, 『量子現象の数理』と来て 『フォック空間と量子場』を読めば, 作用素論的な方面の場の理論の論文が読めます. 少なくとも新井先生の論文はかなり読めます.

I, II と上下全部合わせるとページとしては 1700 ページくらいあるのでしょうか.

こう思うとかなりのボリュームに 感じるかもしれません. しかし新井先生の本は本当に読みやすいので 体感はもっと軽いです.

他の昔の本で半ページくらいの証明を 3-4 ページ程度に渡って 懇切丁寧に書いてくれているのだと思ってください.

実際に Reed-Simon と新井先生の本で 何かの定理の証明を比較したとき, そういうことがありました.

新井先生の本が読めなければ おそらく他の本は全く読めません. 他の本や論文を読むのは本当につらかったですからね.

ここに来ると一冊一冊がもう専門書のレベルで 1 万円越えたりしますし, 学生で大学の図書館を自由に使えるならともかく, 大人なら事実上本を買うしかありません.

余計なことは考えず新井先生の本を 買った方がお金を無駄にしないですみます.

私の専門が近い話で 書けることが増えてきたせいで またかなりのボリュームになりました.

また残りは次回に回します. 確率論は勉強しきれていないのですが, 最後の作用素環に関しては修士の頃の 研究室レベルでの専門なので, また多少詳しい話になるでしょう.

数学的にもいろいろ関係することが増えるので, 数学をやりたい人には楽しい話になるはずです.

前回までの復習

前回から今回にかけての内容で, 割と最近の成果がまとまった本として 次の本をおすすめしていきます.

私も参加していた Summer School 数理物理 2013 の 講演内容をまとめた本です.

内容の大雑把なところに関しては 当時レポートを書いたので参考にしてください.

でははじめましょう.

作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析

前回少し作用素論方面の話をしました. 関数解析系の量子系の数理の核の 1 つは ハミルトニアンの解析です.

ふつうハミルトニアンは線型作用素だから 作用素を調べることになり, そこで作用素を研究することに特化した 作用素論の出番になるわけです.

その作用素を詳しく調べるために確率論を使う手法があります. 物理としてはいわゆる「経路積分」の厳密解析にあたります. 場の理論では特に超関数を変数とする関数の積分論になるため, 汎関数積分と呼ばれることがあります.

前者の新井先生の本は丁寧でいいんですが, 論文を読むには全く足りません. この方面の 1 冊目には最適だろうと思います. 量子力学だけでなく場の理論の話も書いてあります.

Simon の「Functional Integration And Quantum Physics」もありますが, これに限らず Simon の本は難しいです. 読むにしても新井先生の本で きっちり基礎を固めた後にしましょう.

後者の廣島先生の共著の本は 完全に場の理論の本です. 正確には粒子系と場のカップリングを考えているので, 粒子系, つまり量子力学の話ももちろん書かれてはいます.

ただこれ, 確率論に関するかなりの予備知識が必要です. いきなり Levi 過程の話が出てきます. その確率論や確率過程, そいて確率積分に関しても基本的なことが 新井先生の本にいくらか書いてあります.

この方面に進むにしてもまずは 新井先生の本を読むのをお勧めします.

量子電気力学に関する解析でも 汎関数積分を使った結果に決定的な成果があります. 対応する結果を確率抜きの純粋な作用素論で証明したり, 作用素環で見てみたりといった研究をするにも, ある程度は結果をフォローできないといけません.

研究フェーズの話ではありますが, 楽しいところなのでぜひトライしてみてください.

確率論じたいの参考書もいくつか紹介しておきましょう. まずは舟木先生の本をお勧めします.

例えば分布の収束の定義について 「どうしてこういう定義なのか」という 「気分」についての説明もあり, 初学者が疑問に思うところを丁寧に潰しています. 舟木先生の教育力, 経験が光る本です.

Markov 鎖の場合に限ってはいますが エルゴード性に関する記述もあります. 確率積分は書いていないので, 別の本を読む必要があります.

確率論の基本的なところについては 西尾さんの確率論も証明が丁寧で 読みやすくていい本です.

確率積分に関しては初読は 新井先生の汎関数積分の本を勧めます.

突っ込んだ内容に関しては, 例えば次の本が有名どころです. 読んだ本もあれば きちんと読み込んでいない本もあります. 順に舟木直久, 長井英生, 渡辺信三, エクセンダール, カラザス・シュレーブです.

結論から言うと廣島先生の本が研究に直につながる本です. しかしここにいたるギャップが激しいです. 関数解析だけでは足りず, 確率論に関してもかなりカバーするべきことがあります.

作用素論の定理の確率的証明だとか 確率的解釈のようなことも面白いので, 数学としてもかなり面白いところです.

少なくとも作用素論と確率論という 2 つの分野の交点にあるわけで, 複数の分野をまたがる話に興味があるなら 挑戦するべき価値のある話です.

くり返しになりますが, 専門書と入門のギャップ, 特に関数解析だけではほとんど足りません. そこを埋めるのがかなり大変です.

私が知る限り, 直接量子系の話とはつながらない 部分も含めて確率論をふつうに相当かっちりやった上で 対応していかないといけません.

ダイレクトに絞っているのは 新井先生の本です.

しかしこれでは明白に分量が足りません. そこを埋める, それもダイレクトに埋めてくれる 具体的な本はないと思います. 何かご存知でしたらぜひ教えてください.

特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析

一応, 厳密にはこれが私の専門です. 研究室は作用素環が専門の東大の河東研だったので, 本来はここです. 修士論文では作用素論しか使いませんでしたが, その後の展開では積極的に絡めています.

河東先生は相対論的な場の理論でしたが, 私は非相対論的な場の理論と量子統計方面です. 量子統計は, 河東先生の指導教官である 竹崎先生の巨大な仕事があるので, むしろその血を受け継いだ感じがあります.

学部の頃の指導教官筋で言えば, 私の指導教官のさらに指導教官は黒田成俊先生ですが, そのさらに指導教官が加藤敏夫先生です. 加藤敏夫先生は量子力学の作用素論の大家ですし, 実際に加藤-レリッヒの定理は修論でも使いました.

直接の指導教官よりも先祖返りして, 指導教官の指導教官とか そういう人達の強い影響下にある研究をしています.

ちょっと話がずれました. 具体的に作用素環の話をしましょう.

相対論的場の量子論, 非相対論的場の量子論, 量子統計でそれぞれ微妙に違う趣があります.

しかしどれも基本的なところは同じで, Bratteli-Robinson が聖典です.

全部読む必要はなく, 最低限おさえるべきは次の節です.

  • 2 章
  • ここは全部読む.
  • 2.7 は軽く眺めるだけでもよし.
  • 3 章
  • 3.1 は全部
  • 3.2 はある程度眺めて必要になったときに適宜見るくらいでも可.
  • 4 章
  • 飛ばしていい.
  • 必要になったら泣きながら読む (難しい).
  • 5 章
  • 5.2 は新井先生の「フォック空間と量子場」を読んでから読んだ方がいい.
  • 5.3 は 5.3.1 の KMS 条件のところは特に前半は必ず読み, あとはさっと眺めておく. 必要なところは必要なときに詳しく読めばいい.
  • 5.4 はさっと眺めておく. 概念的には全て重要. 証明の詳細よりもどんな事実が示されているか, 物理として対応することは何かに注目する.
  • 6 章
  • 6.2 は必要になったときに読めばいい. スピン系をやりたいなら必ず読むこと. 具体例で遊んでみたい人は別途読んでみても楽しい.
  • 6.3 は読まなくてもいい: 修羅の世界. 本当に難しい.

少なくとも作用素環の基礎である 2 章と, KMS の 5.3 は必ず読みましょう. KMS に関連して 3 章の半群理論が そこここに出てくるので, 必要なところをピンポイントでやるもよし, 必要だからと全部ガッとやってもいいです.

非相対論的場の量子論だと ほぼ作用素環の基礎だけで事足ります. むしろ作用素環の基本中の基本, GNS construction が魂です. 作用素環的な赤外発散処理のための道具です.

非相対論的場の量子論でも 有限温度との関係がありますし, 量子統計も自然と視野に入ってきます.

有限温度なら平衡状態を議論しないといけないし, そうなると KMS 状態の話になります. Bratteli-Robinson の 5.3 節ですね. KMS は冨田-竹崎理論との関係も極めて深いので, 冨田-竹崎理論は必ずやりましょう. これは 2.5 節です.

2.5 節の冨田-竹崎理論は weight に関する フルの理論ではありませんが, 場の理論への応用上は十分です. 必要になったら weight の場合の理論は 適宜結果だけ使えばいいでしょう.

相対論的場の量子論の散乱理論では weight を使おうという話もあるようで, そういうところでは関係してくるのでしょう. ド専門の話で完全に研究マターです.

Bratteli-Robinson を読んだら 論文がかなり読めます. 私が見ている範囲の作用素環を使う非平衡量子統計では 作用素論もある程度必要だったりはしますが, その辺は新井先生の本を読めば十分です.

論文になってしまいますが, Bratteli-Robinson の話の拡張でもある Derezinski-Jaksic-Pillet の PERTURBATION THEORY OF $W^*$-DYNAMICS, LIOUVILLEANS AND KMS-STATES は楽しいです. 作用素論との絡みもあるので, ぜひ読んでみてください.

あと相対論的場の量子論に関してもう少し補足しましょう. 河東先生がやっている方面の話です. 概要を把握するには最初にも引用した次の本がベストです.

これについて詳しく突っ込むには次の本を読みましょう.

Bratteli-Robinson 程度は知っていないと話になりません. 特に冨田-竹崎理論は全開で使っています. むしろ魂です.

この方面だと実際に河東先生がやっているように, 非可換幾何を介して幾何が絡んできたり, 低次元の話でジョーンズ多項式が出てきたり, それ以外にも共形場が絡むところでは 頂点作用素代数をはじめとして いろいろな数学が関係してきます.

明らかにいろいろな数学が交錯する分野です. あなたが数学に興味があるのならとても楽しい分野です.

あとは私の好みでいうなら $C^*$-力学系の話とスペクトル解析みたいなところですね. 数年前に亡くなってしまったのですが, Borchers がこのあたりをやっていた人です.

これは多変数関数論と超関数論を駆使しつつ, $\mathrm{R}^{d+1}$ の作用素環上への表現として $C^{*}$-力学系を考え, そのスペクトルを調べるという話です.

このスペクトルは粒子の情報も含んでいて, 相対論的場の量子論のやはり基本的な話を 数学的にがっちり議論するテーマです.

あなたが興味があるなら 「Quantum Field Theory as Dynamical System」という 論文を読んでみるのがいいでしょう. これを詳しく解説したのが上記の本です.

作用素論から見た私の専門はスペクトル解析ですし, やはりスペクトル解析好きなんですね. 多変数関数論や超関数論で, その分野じたいではあまり有名ではないし, 古い話を使うのですがそういうところがまたかなり好きで. どなたか興味がある方いれば一緒に勉強しましょう.

あと多変数関数論と超関数論が絡むところとして 楔の刃の定理 (edge of the wedge theorem) があります. これは代数解析への展開があります.

代数解析は全く手が出ていないのですが, 興味だけはずっとあります. これについては次の本に書いてあります.

場の理論関係だと最近そんなに話を見かけません. しかし量子力学に関しては河合隆裕さんが 何かいろいろやっている感じがします. 例えば Borel 総和法だとか, 完全 WKB 解析とかですね.

本もあるのであなたがその辺に興味があるなら 読んでみてはどうでしょうか.

私はこの本はきちんと読んだことがありません. 以前眺めた限りでは 1 次元の話をいろいろやっていて, 代数解析勢は常微分方程式論をいろいろやっているので, その辺の話なのかと勝手に思ってはいます.

代数解析の話は全く追えていませんが, イジングやスピン系の厳密解など 代数解析は昔から量子力学, 場の量子論, 統計力学とある程度の関係があります.

もはや関数解析の初学どころか 関数解析の話ですらなくなっていますが, まあいいでしょう.

最後にまとめ

長くにわたってごちゃごちゃと書いてきました. 数学パートが死ぬほど長くなりましたが, バリバリド専門, お気に入りの話をしたので こんなものでしょう.

量子力学と関わる関数解析の全てとはさすがに言えません. しかしある程度の広さはおさえたとは思っています.

現代数学探険隊の募集ページ, http://m.phasetr.com/l/m/bN5TxolcsyXt4qでもいろいろ書いたように, 幾何や代数, 数論との関係もあります. (このページ, 相当長いので 必要なところだけ適当につまみ読みしてください.)

関数解析以外にも興味がある数学を いろいろやってみてほしいですね. 幾何については最近コンテンツ制作が滯っていますが, 微分幾何・幾何解析関係の話も少しずつやっていく予定です. そちらも楽しみにお待ちください.

物理の話もしたいんですが, 最低限の数学の話を準備できないことには なかなか話ができません.

それに合わせてミニ講座は いくつか準備しようと思っていますし, がっつりやりたい人には 現代数学探険隊 http://m.phasetr.com/l/m/PMpCBo4snaB4n4もあるので ご興味あればぜひどうぞ.

毎度こんなに長い返信はしきれませんが, 何か質問があれば時間がある限り答えますし, みなに共有する価値があることは積極的にシェアします.

こんな講座を開いてほしいというのもあれば, 要望を挙げてみてください. どこかに何かの形で反映させていきます.

「四色問題がゲージ理論を使って解けるんじゃないかという話をKronheimer-Mrowkaがやっているらしい」

動画見ていないのだがとりあえずメモだ.

Dimitrov, Haiden, Katzarkov, Kontsevich, Dynamical systems and categories

Kontsevichも著者の一人になっている. こんな話もあるのか. 分野見たらAlgebraic geometryも入っていたし, 代数幾何と力学系の繋がり考えたこともなかった.

たんじぇメモ: Baireのカテゴリー定理を使った測度論の例

何かのときに役に立つかもしれない. きちんとメモしておこう.

Stability of matterメモ: 参考文献とか

ツイートの写真を見て「まさかLieb亡くなったの」と一瞬驚いたが全く関係なかった.

学部三年くらいからずっと物質の安定性には興味だけあって, 実解析的なことは全くやっていないためにまるで手が出ていない.

現代数学探険隊とかその辺の企画と合わせていい機会だからちゃんとやろうかとも思っている.

勉強したいことたくさんある.

記事紹介: 『「問題文を読んでもそこに何が書かれているのかわからない」子を教えていた時のお話』

新井紀子さんのAI研究に関する報告ももちろんだが, これはこれで割と衝撃を受ける. Twitterなり何なりで「何をどう考えてもこいつ日本語読めてないだろ. 何なんだ」というのを見かける. それが科学系統の知識不足とかそういうところでだけこういろいろと判断できなくておかしいのではなく, 本当に根本的に文章が読めていなかったのかと思うと納得はするが恐ろしい.

とりあえず記録.

悲しみの背理法と否定導入

どこまでどう引用していいものかわからないがとりあえず記録. 結城浩さんのサイトから.

これがフェイスブックで次のように引用されていた.

高校生に背理法の説明をするのに「$\sqrt(2)$は無理数」は定番で、避ける方法も思いつきませんが、もやもやしちゃうんですよね。背理法の形式で書いているだけで、実は否定導入ですから。どうしたものか、ずっと悩んでいます。 次回、ミルカさんが中間値の定理とか証明に背理法が本質的に必要なものの話をしてくれるのを期待します。ちなみに、「証明に背理法が本質的に必要」の定義は「古典数学で証明できてBishop流構成的数学で証明できない」でいいですよね。

これに対して次のようなやりとりがあった.

そういう話はどんな本とか読むときちんとした記述があるのでしょうか? 論理系統の話、初等的な範囲で問題が色々あるっぽいのにそれを説明している記述になかなか巡り会えないので困っています。 基礎論やら数理論理をゴリゴリやるのも大変で。

これへのコメント.

そういえば、構成的証明についてまとめた本は思い当たりません。ほしいですね。

さらにコメント.

http://ameblo.jp/metameta7/entry-11526220719.html 8番目のwd0さんのコメント(の下から5行目を「狭義の排中律」から「狭義の背理法」に直したもの)を読むだけでずいぶん前に進めますね。

コメントも引用しておこう.

まず明快なコメントを.

結論から言えば、安部さんは「背理法を使わない」の定義を明確に定義せずに曖昧な主張をしているために、トンデモな議論になっています。 Pを証明するために、¬Pを仮定して矛盾を導く。 ¬Pを証明するために、Pを仮定して矛盾を導く。 狭義には前者のみが背理法です。後者は否定導入と呼ばれます。

参考のため以降の部分も引用.

高校数学は、狭義の背理法と否定導入をあわせたものを背理法と呼ぶ立場です。高校数学ではそれで困らないのでしょう。

数理論理学では、背理法と否定導入は性質が大きく異なるので、広義の背理法としてまとめて扱うことに何の利点もありません。したがって、通常はそうしません。

構成的論理(別名:直観主義論理)では狭義の背理法は使えませんが、否定導入は許されます。古典論理(通常の数学で用いる論理)で証明できるが、構成的論理では証明できない定理は掃いて捨てるほどあります。

古典論理は構成的論理+狭義の背理法と同値であることが知られています。さらに、構成的論理+排中律とも構成的論理+二重否定除去とも同値であることが知られています。

狭義の背理法は使ってはならないが排中律か二重否定除去は使って良いとするなら、「背理法で証明できることは背理法を使わないで証明できる」は真です。排中律か二重否定除去を使うように書き換えればよいのですから。

狭義の排中律と同値なものも背理法の変種とみなして使ってはよくないとするなら、上記の主張は偽です。古典論理で証明できて構成的論理で証明できないすべての定理が反例となります。中間値の定理もその一例です。

広義の背理法(およびそれと同値なものすべて)を使用不可とするなら、それは構成的論理よりもさらに弱い論理となります。当然、上記の主張は偽となります。

つまり、安部さんの主張は「背理法を使う」を明確に定義しない限り、ナンセンスということです。

今日も脱背理法は厳しい.

「子どもに数学の習い事をさせよう」みたいな親を増やそうの会

記事が消えていた. そういうのは本当にやめてほしい.

それはそれとして面白いやりとりがあったので記録する.

最後の外交力が弱まるというところ, 人文・社会学系の素養がなさすぎてどういうことなのかよく理解できていない.

それはそれとして気になったのは次のやつ.

「数学を習わせようという親」というの, 発想としてあったしそれを目指してはいたが, こういう感じの比較対象を設定した上で言葉にできていなかった.

科学教室みたいなのがあるからそれに対になるというか, そういうのは想定していたが他の習い事との比較検討をしたことがなかった. 記録しておこう.

三輪哲二『物理と数学の出会い-数理解析研究所における可解格子模型の研究』

可解模型をいじりたくなるすごい文章だ. 量子群というと作用素環からの話, そして戸松玲治さんを思い出す.

位相空間での収束理論: フィルタとチコノフの定理

現在は現代数学探険隊PDF版に統一. サーバーのファイル整理で昔張っていたファイルも削除してしまった.

昔の記録

とりあえずコンテンツとしてのPDFを張っておこう.

どんな内容のコンテンツなのか, 何でこんなものを作ったかそのあたりを以下説明する.

ページの冒頭でもリンクを紹介しているように, 最近はいろいろな数学の通信講座, ミニ講座を作って公開している.

その中で要望もいくつかあがったので, 有料の現代数学の通信講座もやっている.

その中で一般の位相空間での収束に関して 作用素環で時々出てくるネットを使った話を何度か紹介する機会があった. 改めてきちんと調べて情報を出そうと思っていたものの, 講座の中でうまくはまるところがなくお蔵入りになっていた.

自分の中でも宿題になっていて, いつまでも残っているのが気持ち悪かったのでいい加減きちんとしようと思い, まとめたのが上の PDF の内容だ. ミニ講座にするほどのボリュームでもないので, 記事にまとめるだけに留める.

まだ自分用のメモレベルなので, 実際にはもっと解説を詳しくしなければならない. 今回のまとめでフィルタに対して一定の感覚を育めたことが一番の収穫だ. 現代数学探険隊に突っ込むときにはまたもう少し視界が広くなっているだろう. 楽しみだ.

フィルタは特に極大フィルタ(超フィルタ)は超準解析でも使う概念だし, やっておいて損はないと思っている. 現代数学探険隊にも適切な形でマージしよう.

最後にもう一度PDFへのリンクを張っておく.

みんな数学をやろう: 他の人文・社会学諸分野は日本語以外の複数言語で論文を書かなければいけないらしい

人文・社会学の話を聞くにつけ, 理工系は本当に気楽という感じしかしない. その中でも数学は他の学問分野を知らなくてもできることが極めて多い印象があるし, みんなも数学をやろう.

「世の中には常識が通じない人がいる」からの「数学者に通じる常識はなにか」議論

そしてこれ.

あとついでにこんなのも見つけたので.

体の乗法群(?)に関する話

緩募 体$k$に対して加法の単位元を除いた集合 $k^$または$k^{\times}$の呼称(があればご教示願いたい). $k^$と$k^{\times}$のどちらをよく使う(印象がある)かもご教示願いたい

これに対して次のようなコメントを頂いた.

群構造を含めて乗法群? $k^*$派.

コメントその 2.

体だったら$0$でない全ての元が積に関する逆元を持つから, 体を環だと思って「単数群」とか呼んだりすればいいのではないでしょうか. なんとなく, 複素数体の場合は$C^*$, 標数$p$の素体の場合は$F_p^{\times}$を使っていることが多い気がします.

コメントその 3.

「加法群・乗法群って語は何のためにあるのか?」という質問をした文脈で, 黒木玄先生から下のような答えを頂いたことがあります. これの「実数」を$k$に置き換えて良いなら, 「$k$の乗法群」となりますね. https://twitter.com/genkuroki/status/251192918491152385

黒木さんツイートをいくつか引用.

もとは廣中先生の代数幾何の本で, 射影空間の定義のために$k^$と$k$-線型空間$V$に対する$V^$が出てきたのだ. 一方で$V^{\times}$などの$\times$表記もよく見るので, どちらの方が標準的か少し気になった.

確率論と統計学の狭間で: 大数の法則とかベイズとか

前にでんまるPとやりとりした記録.

ベイズとかモンティホールはよくわかっていないので嘘を書いている可能性がある. この間黒木さんがその辺適当にまとめていた気がするので, 早くきちんと追いかけたい.

Neumann級数のNeumannはC. Neumannでありvon Neumannではない

Buchholzの論文だったと思ったが, 以前作用素環関係者の論文でC. Neumann級数をvon Neumann級数と書いているのを見たことがある. C. Neumann級数はWikipediaを参照してほしい.

式だけ書いておくとこれ:

\begin{align} (1 - A)^{-1} = \sum_{n=0}^{\infty } A^{n}. \end{align}

大規模固有値問題を観測で解く

このツイートが回ってきた当時に物理系の人とこの話したらこの発想割と普通という話を聞いた. 実際のところどうなのだろう.

「数学で卒業研究やらせても多くはセミナーで読んだ本のできの悪いまとめになりがちです」

今は(Twitter 上に亡き)kyon_mathさんのツイート. もはやPaulしかいない.

メモにあったのでとりあえず記録しておく.

そうでもないっす。私は今のとこに変わってからそれを発見しました。

もちろんマトメになっちゃう子もいる

RT @Paul_Painleve: @MRken_appmath ...数学で、卒業研究やらせても、多くはセミナーで読んだ本の、できの悪いまとめになりがちです。

できが悪くてもまとめるのはそれでそれで意味があることだと思わないでもない. 絶望的なくらいきちんと文章書けないことを知る機会でもあるだろうから.

伊藤清三『ルベーグ積分入門』の難点とその解消: 記事紹介

本はこれ.

何はともあれそうだったのか. 参考にしよう.

現代数学探険隊でもちろんルベーグもやる. そこの進め方はまだいろいろ考えていて, リース流の積分を先にやるスタイルにするか, 測度論からゴリゴリやるかとかいろいろ考えている.

とりあえず参考にしたい.

上野健爾『はじめよう数学①円周率πをめぐって』へのコメントを見てどう人と接すればいいのかふと考えた

数学の展開をしていこうというとき, 何をどうフックにしていけばいいのだろう.

無闇に数学にこだわり過ぎるのもよくないとは思うのだが, 結局数学以外でどう人と接すればいいのかがわかっていないのかもしれない.

困ったものだ.

西原史暁 訳『ダメな統計学』は邦訳が無償で読める

これは. とりあえずダウンロードした. じっくり読んでいこう.

本も興味あるが読みたい本が多過ぎてさばききれない.

粘性解が古典解になるとき: 埼玉大の小池茂昭先生のPDF

既に削除されているツイートなので具体的な言及は控えるが, 私の手元に削除前のメモがあったのだ.

弱解で古典解にならない例に関する質問に対する回答で, その回答で指示されていたPDF自体は次のURLから取れる.

これは埼玉大の小池茂昭先生のやつ. 何度か講演を聞いたことがある. あと数年前, 早稲田の田崎秀一先生の葬儀のとき, 田崎先生と学部で同期 (早稲田の物理) だったということを知った.

物理から数学? と思う方がいらっしゃるかもしれないが, 早稲田の物理学科, 正確には応用物理学科の成り立ちの問題で, 早稲田の応用物理学科(物理学科ではない)に数学, 特に非線型偏微分方程式の専門家が二人いる.

最近プログラムと絡めて数学をやろう企画をはじめようとする中, やはり微分方程式が一番取り組みやすい感があり, 改めて偏微分方程式とか実解析周辺の話を勉強する機運が高まっている.

やりたいやりたいと言ってずっとやってこなかった BECや物質の安定性にも突撃したい.

中高数学とプログラミング系コンテンツを作ろうの会

どなたに聞けばいいかもわからないのだが, かもさんに聞いてみた記録.

数値計算の前にそもそも文字の扱いに慣れていてもらう必要がある. まずはそこからはじめよう. 数値計算は私も遊んでみたいところなのでそこに行くべく導線を頑張って作るのだ.

コースのページに無料の通信講座をまとめているので, ご興味があればぜひこちらから探してみてほしい. この記事を書いた時点でも, 中高数学とプログラミングに関わる講座も既に一つ作ってある.

初等幾何の謎: 補助線が交点をなすことを示さない

高校までの初等幾何, 上手く補助線引いて交点求めたりと色々と弄るのはいいが, 肝心の補助線が交点を成すということの証明は全く気にしないし地獄という感じがある

昔の魔法少女のツイートだ. 確かに言われるまで気付かなかった.

ベクトルには大きさや向きがあるか?

あともう一つ.

ふだん使わないから実数または複素数以外の体の場合の内積についてすぐ忘れる. 前も書いた気がするがどの記事だったか忘れたので改めてまとめておこう.

中間値の定理と実数の連続性は同値である

これに対していくつかコメントもらった.

あともう一つ. 調べておこう.

コメント

実数の連続性から中間値の定理を示すのは高木貞治の解析概論のp26に載ってますが、その逆はなさそうです。

ありがとうございます。 英語で検索して適当に情報を見つけました。 数学に関する話、mathstackoverflow あたりにどマニアックな話がたくさんあって、 すぐに引っかかるので非常に便利でした

英語のつぶやきだと、mathstackoverflowネタが結構流れてきますね。

数論の学習と線型代数・解析学

どちらかと言わずとも線型代数と微積分だけでやるようなタイプの議論しかしたことがない. そういうのが好きといえば確かにそうなのだが, それしかできないという現状もそれはそれで無視できない. やってみたい数学はたくさんある.

自己共役2階楕円型微分作用素の固有値の発散オーダーをどう調べるか?

何ら役に立つ情報を出せた気はしないが, かつての自分がこんなことをさらっと言っていたことに割と衝撃を受けている. きちんと記録しておこう.

コメント1

ラプラシアンの固有値の振る舞いについてはWeyl’s lawが知られてます。 以下はwikipediaより

In mathematics, especially spectral teory, Weyl’s law describes the asymptotic behavior of eigenvalues of the Laplace–Beltrami operator. https://en.wikipedia.org/wiki/Weyl_law

コメント2

あとこんな記事が

コメント3

これの非可換幾何・共形場理論版が「量子現象の数理」の河東先生のところにも書いてあります。

非可換幾何版との比較のところでリーマン多様体版もちょろっと書いてあります。

求む: 無理数の存在に関する(数理)哲学的な議論を知るための書物

何といったらいいのかよくわかっていないが, そもそも正方形の存在自体が人工的 (まずそれが存在するの的な意味) な感じがする. 長さぴったりももちろんのこと, 角度90度を実現できるのか的な感じ.

あといまここで問題なのは, 実数の存在というよりも無理数の存在なのだろう. 無理数が見えるかどうかという問題, 哲学 (数理哲学) 的に何か議論があるのではないかと思っているが, それはどうすれば見つけられるだろうか.

結局無学を晒す羽目になった.

つらいときにはたたみ込み: 東北工業大学 中川朋子さんによる解説

元のページは次のURL.

とりあえずメモしておこう.

Bernhard-Jablan unknotting conjectureの否定的解決(?)

私は真偽判定する能力を持たないが, ツイートを見かけたのでとりあえず張っておく.

二つ目のツイートで「結び目理論の未解決問題10」に関する Naverまとめが張られていて「何でそんなにまとめがNaverにあるのだろう」と思ったら, musubimerironさん自身のまとめだった.

私の結び目理論への知識は, 学部四年のときにちょっと講義にもぐった程度でほとんど何も知らない. Jones多項式関係で院のときの専門だった作用素環とこう割といろいろ関係があるとか, 三次元時空での代数的場の量子論でのDHR-DR的な話でも組み紐群が出てくる(はず)だとか, その程度しかない.

ただツイートの中にある反例を挙げる形での 否定的解決というのがかなりツボ. 私が運営している通信講座, 現代数学探険隊は, 例や反例を自分で作っていくことを重視して 数学学習していこうという趣旨で内容を構成しているので, 反例を作ることで本当に論文になる話としてメルマガでも流そう.

あとプレプリントをパラっと眺めて気になった点を挙げておこう.

The bulk of the work needed to reach these conclusions was carried out by computer.

ある意味四色定理とも似通っているのだろうか, プログラムで片をつけた部分も大きいとのこと. 最近中高数学駆け込み寺という中高数学復習のための無料のミニ講座で, 多少のプログラムもつけて講座を展開している.

数学とプログラムの遊び方みたいなところは最近かなり気にしているので, その点でもとても気になる.

SnapPyというPythonによるソフトもあるようなので, やはりPythonをもっときちんとやらねばならないかという気になっている. 個人的にはHaskellをやってみたいのだが, グラフを手軽に書く, 数値計算も手軽にやる, そういったところからすると資料が少なく(というか観測範囲でほぼない)Haskellでやるのは極めてハードルが高い. となるとやはりPythonかという感じ. これも頑張らないといけない.

「歴史学者は教育の専門家ではないから学校では偽史を教えても良い」

2016-12-25 の「林先生が驚く初耳学」で掛け算の順序問題が取り上げられたようだ. これは東北大助教の黒木玄さんが継続的に取り上げている話題で, 詳しくはかけ算の式の順序にこだわってバツを付ける教え方は止めるべきであるなどを見てほしい.

それはそれとして上で引用したツイートだ. 特にこれ.

数学者は教育の専門家ではないから、学校教育では数学的に正しくても×にして良い。

これがどれだけおかしいのかうまく言語化できずにいたが, こう言えばいいのか, というのがようやくわかった.

歴史学者は教育の専門家ではないから、学校では偽史を教えても良い。

これ以外にも医療情報に関して, 小学校の保健の授業では医学的に否定された瀉血を教えてもいい, とかその他もろもろの異常な話が導出される.

何でこんなひどい話を堂々とできるのだろう.

それはそれとして, 人文・社会学系では学会の合意というか ある種の「政治」的な問題で, 学会内ではとうに否定された話が延々と中高の教科書に載り続けるとかいう問題があるらしい. それはそれでどうなのだ, とは思うが, 割とすっぱりきれいに決まりやすい理工系の常識ではかっていいものか, という気もする.

実証や実験がしづらいところだと 理工系でも似たような問題は起きると思うが, そういう場合理工系だとどういう扱いをしているのだろうか.

話がずれてきたのでこの辺にしておこう. しかし本当にあまりのひどさに目を覆いたくなる.

alg_d兄貴のtogetter数学講座

次のやつが割と楽しそう.

ベルフェゴール素数

元ネタを追いきれないがとりあえず記事を二つつはっておく.

二つめの記事に張ってあるが, メガテンでも便器に座っているあのアレだ. もう便器のイメージしかない.

AMS Open Math Notes: Terence Tao のノートもある

ぱっと見て気になったやつを記録.

とりあえず優先して測度論だけは目を通してみよう.

森重文語録『やっていることは単純なことだけど、繰り返し手で動かすことで式の奥深さが見えてきた。繰り返しは大切。』

メルマガとかでも流そう.

数学をやり直すのに中学からやりはじめた方がいいのか?

簡単なまとめ

大人が数学を勉強し直したいという相談をよく頂きます。そのとき中学数学からやり直すべきか、とよく聞かれます。その人が何をしたいかによるので一概には言えません。中高の数学へのリベンジがしたいなら中高の数学をじっくりやるのがいいです。でも大学の数学にチャレンジしてみたい人だとまた対処が変わります。その方法を案内します。

本文

Twitterで質問を受けたのでそのやりとりをまとめている. 結論から言うと何をやりたいかによるので一概に何とも言えない. 詳しい話も書いているので以下のTwitterでのやりとりを見てほしい.

上でリアルの大人向け数学教室もあると書いた. 私の知る限りではあるが, 東京と大阪にしかない. そして以前そこに通っていたが遠いので通いきれなくなったから同じくらいの内容の 通信講座をやってくれないか, という要望を頂いたこともある.

そうした要望に応えるべく2016-12時点では次の三つの講座を用意している.

無料の通信講座もあるので気軽に登録してほしい.

「数学は発見されるものか、発明されるものか?」

その他やりとり.

その他にもあったが省略.

「数学は発見されるが複数存在する」みたいなのないのだろうか. あと数学の存在証明以前に数学の定義はどうしているのだろう. 哲学的にはもっとうるさい基本的なところから議論しているとも思う.

部活と数学問題に見る『「その業界に愛のない人」「その業界の特に利害関係者でもない人」の批判というのは、残酷なまでに美しく、正しい』話

これがかなりクリティカルな印象.

この間微妙な怒られが発生した.

学と学問分野で何が違うのかはわからないが(定義による), 適当な意味で広めたいと思うのなら, マーケティング・コピーライティング的なところが重要なのは論を待たない. 不純というのも表層的というのもよくわからない.

そもそも焦点がどこにあるのかよくわかっていないものの, どんな表現を使おうと真理は真理, これ自体は多分伝わるのではないか. むしろ「真理だろうが何だろうがお前の言うことは気にくわない」に対する話だろう. そこがずれていると見ている.

何の役にも立たないような学術的な話は, ギリシャの奴隷制の元で暇な貴族階級の思索からはじまったとか何とかいう話を 高校で勉強した. それが正しいのなら, 単にそれだけだし, 社会や俗なところから離れてはいたとしても, 金からは離れられないのはもう by definition レベルの話という気はする.

むしろだからこそ, 私はその手のきちんと数学でお金が稼げるようにしましょうという活動をやっている.

観測範囲の問題が気になっている. 他の学問だとどうなのだろう. 例えば私の観測範囲では科学技術社会論 (STS) や経済学者のイメージは最悪な印象がある. こちらは言葉遣いの問題ではなくイメージが悪い. 数学とどちらの方がよりひどいだろうか, ということを考えないでもない.

ある程度まとまって人がいれば異常なくらい口が悪く, かつ適当な意味でうるさいのも一定の割合で存在するだろうし, 単に数学者に興味関心があって, 注意を払っているからそう見えているだけ, という気もしている. 実際, 化学者で口が悪いのがいるかどうかとか, 医学生理学で口が悪いのがいるかどうかとか, そもそも気にしたことがない.

ちょっとだけコメントしたやつ.

生物と道具としての数学, そしてプログラミング

そもそも遺伝学と集団遺伝学で何が違うのかすらまるでわからないほど, 生物の素養がない.

何も知らないので泣きたくなる.

数学と物理とプログラミング: 学部2-3年レベルとは何か

以下のツイートが発端です.

(自分にとって)見やすいように編集しつつ引用します.

発端

ずっと前から思っているが, 数学と物理とプログラミングにまたがる話で, 数学とプログラミング, 物理とプログラミング, 数学と物理ができる人はいても, 数学と物理双方学部二-三年程度をふんわり知っていてプログラミングもギリギリできる, みたいな人が社会に出てこない (コンテンツを作ってくれない). アカデミアに引きこもっている層なら数は増えるだろうが, 数学と物理周りの話はしてくれてもプログラミングに関わる話をろくにしてくれないイメージがある. その辺を突けばまだ市民にもできることがあると思って今いろいろやり始めている. 誰かもっといいの作って欲しい. 機械学習とかよりも.

電波猫さんとのやりとり

数学と物理とプログラミングをどれも齧ってるつもりだけど, 学部 2-3 年程度がどれくらいのものかよく分からないし, 多分できてない.

数学に関してかなり使える基準だと思っているのは多様体の本が難なく読めるかどうかです. 線型代数の抽象論が必要で, 陰関数定理・逆写像定理・常微分方程式の解の一意性存在定理を使いこなせ, テンソル代数のイデアルによる商代数の構成がわかるなら相当確固たる基礎があります.

物理だと解析力学・電磁気・熱力学・量子力学・統計力学あたりを「よくはわからなくても何となく一通りは聞いたことがある」「一通り専門用語を知っていて関連する計算ができる」レベルですでにかなり厳しいと思います.

物理はまだしも数学については, 知識としては学部 2-3 年でも, 運用できるレベルに至るのが下手をすると学部四年のゼミで鍛えられて大学院でようやく何とか最低限の運用技術習得くらいな感触があり, 実際は相当高い水準です. 少なくとも解析系市民としてはかなりのハードルを感じる事案でした.

きびしい.

線型代数の抽象論は明らかにやばくわかっていない・そもそも知らないことがはっきり認識できますが, 微分積分と微分方程式は理解はともかく使えている感を感じている人は多そうな一方, 多様体で必要なのは息切れして教養数学で手薄になる陰関数定理・逆写像定理こそクリティカルに効くこと, これらが直観的にはかなり明確ではあるものの, 証明が長く厳しく多変数で記号もつらく, そもそも直観的な理解さえほとんどされていないであろうことがまず厳しさ第一ポイントです. 常微分方程式のハードルはある意味さらに厳しく, 普段散々微分方程式を解いている・解けていると思う人ほどおそらくつらい. 具体的な方程式を解けるかどうかではなく, 一般の正規系の非線型常微分方程式系の局所解の一意性存在定理こそが問題で, そもそも解の一意性と存在定理自体に興味を持たない応用勢を軒並み焼き尽くしていくハードルです.

強い人だとそれらを何となくパワーまたは「そんなもん知るか」で乗り越えていくのですが, 半端に数学をわかった・使える気になっている人だけを特異的に綺麗に粉々に破壊していく要素が多様体論に詰まっています. 自動的に学部の数学をかなり広く勉強できてお得と言えばお得です.

解析はかなり苦手意識がありますが, 沼が深そうですね.

沼とかではなく, 現行の非数学科ではたいてい全く必要なくて, 数学科の数学で必要になるだけの話です. いらないからやらないし知らないし知らないままで物理・工学できるのです. ミュージシャンが何かの機会を「クールなこれを何か知らないが問題ない」という例のアレです. 無理に知ろうとするからつらい.

数学と違って物理はある程度計算できればそれなりにレベルアップした感が持てるのがいいところという感じがある. 数学だともう何をどうやっても駄目なものは駄目で何一つわかって気がしないだけではなく, 実際に本当に何もわかっていないし, 計算さえ何もできない.

物理は「何もわかっていなくてもとりあえず計算できる」があり得るし, 逆に「計算はよくわからないが (実験を通じて) 多少なりとも物理を知った気になれる (わかったかどうかは別の問題)」があり得る. 人によってはあるのかもしれないが, 数学で物理に対応するこの事象に出会ったことがない.

番外編: 数学科の本を物理関係者が読む

とりわけ物理の人間が勘違いしているのだが, 数学科向けの数学の本は適切な水準の数学科の学生に向けて書かれていて, 他の誰をも対象にしていない. 他学科の身で「わかりづらい」というのはそもそも「お前は対象ではない」事案なので, あるなら物理の人が書いた本を読むか, 我慢するしかない.

数学科の学生が物理の本なり工学の本を読んでいて「数学的に厳密ではない」と言い出したら「国に帰れ」と言わざるを得ないだろう. 「お前のための本ではない」と. それと同じなのでさっさと諦めて欲しい. 諦めて読むのをやめるか, 数学科の数学とダイレクトに戦うしかない.

もちろんいつだって最終手段である「専門家・友人との議論」と, 「自分で本を書く」手段は残っている. 私のような市民ならともかく, 大学生ならもう最終手段を取るしか, ほぼ全ての場合に道はない. はやく諦めて本を書け.

それに合わせて具体例が欲しいとかいう話, どのくらいの本をどう読んできてどのくらい数学ができてどんな本を読んでいるかがまず真っ先に問題になる. 例えばこのツイートの話. 適切な具体例がたくさん書かれていても「抽象的で意味がわからない」となっている可能性がある.

数学で具体例が必要事案, 何をもって具体例とみなすかがまず大問題で, 多分初めのうちは線型空間に具体例がいるはずなのだが, そのうち別の概念の具体例として (抽象的な) 線型空間が出てくるし, 初学者にとって抽象的な例がある程度知っている人には手触りのある最高に具体的な例になったりする.

当然, 多段階で具体例を山ほど知っていることが前提になっている. 数学的な段階を吹っ飛ばして本を読むと「この本を読む数学の人間ならこのくらい知っているだろう. そうしないとまともなページ数で本かけない」問題もあり, そこを飛ばしてアタックした他学科の学生は地獄を見るだろう.

それを読むための基礎体力がないので, 諦めて暴力的な基礎体力作りに励むしかない. 基礎体力がなければもちろん数学科学生であっても読めない. 物理の本でも最低限の計算力を少しずつ鍛えるのであって, いきなり量子力学や電磁波をやると計算量で圧死する. 社会は厳しいのでもうどうしようもない.

このような具体例が構成されている. 「線型空間のテンソル積と本質的に同じなので詳細は省略する」と環や加群のテンソルでやられるし, そこから同値条件だと言って普遍性に飛ばされたりする. 「集合と写像という数学の基礎だから」と言われても応用系でやらないから即死もある

「この証明ではテンソル積の具体的な構成を用いています」 (そして現れる, バカでかい線型空間のバカでかい部分空間による商空間)

中学での多項式の因数分解の「採点」を巡る問題: 黒木さんのツイートまとめ

次のツイートからなるツリーを勝手にTeX化・PDF化した.

学部は数学科ではなく, 院も解析系だったので極端に代数の素養がない. その懦弱さがこの手の議論で効いてくるのを痛感しているので, あとで見やすく・参照しやすくするために適当に編集して TeX 化した.

これから本格的に中高生に対する数学の教育に関わっていこうと思っているので冗談では済まされない. 粛々とやっていく.

数学者による数学教師への推薦図書の小リスト

鴨さんのツイートまとめ

黒木さんの批判コメント

市民感覚の無料コンテンツ

せっかくなので私が作ったコンテンツも紹介しておこう. 次のページにまとめてあり, 随時追加している.

特に次の講座を勧めておこう.

愛された単位元のない可換環$L^1(\mathbb{R}^d)$

先日埼玉大の坊ゼミでブルブルエンジン兄貴が単位元がない環に対する極大イデアルの存在定理についてトークしていた. 単位元がない可換環で我らがBanach環, $L^1(\mathbb{R}^d)$でどうなるのか考えている. 時間がなくてサボりっぱなしなのだが, 書いておけば誰か教えてくれるかもしれないという甘い期待を抱いて記事を書く.

ちなみに局所コンパクトHausdorff空間$X$上, 無限遠で消える連続関数がなす環$C_0(X)$も単位元がない可換環になる.

つどいの話の動画化したやつの付録でも簡単に触れるが, $L^1(\mathbb{R}^d)$の積は畳み込みで入れる. これは例えばKadison-Ringroseの本の3章に書いてある.

ここでちょっとした表現論をやってFourier変換を導出するという話もあって結構楽しい.

それはそうと, 畳み込みで積を入れるという話だった. まず積がwell-definedになるかという話で, これはLebesgue積分では基本的な議論で確かめられる. 例えば巾等元, または射影があれば極大イデアルがあるのだが, まだこれが作れていない. 頑張ろう.

知っている・またはすぐ作れるという方は教えて頂けると有り難い.

記事紹介: 【ドラクエから類体論】

ブルブルエンジン兄貴のツイートで紹介されていたのだが,  ドラクエから類体論という際物の解説があった. 不勉強なところなので正直細かい所は把握しきれていないのだが, こう無駄な迫力があり無駄に読ませるという点で優れた解説だと思う. タイトルからしてドラクエということで読者を選んでしまうのだが, むしろ読者を限定することでその層に向けた強いメッセージを発することができている. この辺は私のニコマスの動画と同じコンセプトであると言える.

内容に関してははじめの目次のところを見てほしい. そこで大体分かる.

  • ドラクエ世界の形
  • パラレルワールドと被覆
  • 被覆変換と被覆空間の住人たち
  • 被覆のガロア対応
  • 体のガロア理論
  • 普遍被覆と基本群
  • ヒルベルトの類体論

ドラクエ世界の形から始まり, なぜか唐突にパラレルワールドの話になり, そして唐突に被覆が出てくる. Galois被覆という大事なキーワードを出しつつ部分群と空間の対応を論じるのだが, 実はこんな話もある, といって体のGalois理論に入る. あれよあれよという間になぜか類体論の話になるという不思議な記事だった.

不勉強なせいで上手く説明できないので, 興味がある向きはとりあえず読んでみてほしい. 何か不思議な感覚を味わう不思議な文章だった.

ところでこの記事書いた人, 何者なのだろう.

Ask.fmの紹介: 論理学を勉強すると何の役に立ちますか?

本文

yuuki_with2usさんのAsk.fmなのだがちょっと気になったので.

論理学を勉強すると何の役に立ちますか?

ストア派の哲学者エピクテトスの説話集に次のようなエピソードがあります。

彼の聴衆の一人が言った。 「論理学が有用で必要なものだと私を説得してみせろ」 そこで彼は言った。 「私にそれを証明してほしいということですか」 「そうだ」 「なるほど、そういうことなら、私は証明による論証を使わなければなりませんね?」 そして、この聴衆がこれに同意したのを見て、彼は言った。 「ではあなたは、私がその論証であなたを騙していないということをどうやって知るのでしょう?」聴衆が返答に窮するのを見て彼は続けた。 「ご覧なさい、あなたはご自分で論理学が必要であると認めているのです。それなしでは、果たしてそれが必要かどうかさえも知りえないというのでは」 (The Discourses of Epictetus, Bk. 2, Ch. 25; 拙訳)

はたしてエピクテトスがここで展開している物言いは説得力のあるものでしょうか、それとも詭弁でしょうか。そうだとしたら、どこにどのような問題があるのでしょうか。このような物言いは日常的な会話や物言いの中で見られるでしょうか。そのような物言いには何か共通のパターンがあるのでしょうか。どのようにそれを見分け、評価すればよいのでしょうか。学部生が初めに学ぶくらいの論理学を勉強すると、このようなことを良く考えられるようになるはずです。

いまひとつよく分からないが, 気にはなるので忘れないようにメモ.

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論理学, 教育

記事紹介: SIGGRAPHでの離散微分幾何レクチャーPDF

本文

離散 (デジタル) 微分幾何 というのがあるという. ちょっと引用してみる.

今年のSIGGRAPHのレクチャーで,こんなのがあったようです. Discrete Differential Geometry: An Applied Introduction

これ,幾何学のとても良いレクチャーになってます.幾何学で言う曲率やホモロジーの概念は,空間を離散化して定義して,離散化幅を→1/∞にすると分かりやすい(というか,元々,それが定義)なので,連続的な幾何学を離散的な多角形で扱っているこの論文集はとても良いです.

講義録は多分このPDFだ. 数学・物理とプログラミングというのは前から興味があるので, 目を通してみたい.

やりたいことが日々増えていく. もっと真剣にこうした活動をお金に替えることを考えないといけない. 東北大の小谷さんの専門関係の話も追ってみるか.

本文

第5問題についてWikipediaから引用しておこう.

第5問題

位相群がリー群となるための条件

「関数の微分可能性を仮定しないとき、リーによる連続変換群(リー群)の概念は成立するか。」

この問題は1930年にノイマンによって証明されたのを皮切りに、 ポントリャーギン、シェヴァレー、マルツェフ等により局所ビコンパクト群の理論が発展されていった。 その後1952年にはグリースン、以降モントゴメリ、ズイッピンらによっても解かれた。 最終的には1957年にグラスコフが完全な形での証明を発表した。

第 5 問題は岩澤先生も貢献している. 岩澤先生が何をしたのかとても興味があるので, 読んでみたい.

ちなみに永田先生が解決したのは第 14 問題だ.

記事紹介: 保育園のころ、魔法を使える先生がいた。

本文

ネタばれになるが, 大事なところを引用しておこう.

まこ先生は目を伏せる。 「気づいてほしかったけれど……。きく先生は気づいてなかったのかもしれないわね」 「気づくって、何に?」 「子供は考えるのが好きだってことに」 昔のように、まこ先生はニコッと笑った。

子供達にも数学をガンガン叩き込んでいこう.

あとで読む用メモ: Twitterで見かけたFields賞関係の話

本文

Fields 賞が発表になった. Twitter では早速各所で情報が飛び交っていたので, 自分用にまとめたい.

大栗さん筋からまず1つ. ところで大栗さん, どこからファッション関係での取り上げを見つけてきたのだろう. 謎の調査力, さすが教官だと感銘を受ける.

大事だと思った部分を抜き出しておこう.

Like many girls, I wasn't encouraged to pursue careers in technical fields like math or science. Mirzakhani hopes her award motivates young girls to pursue STEM (science, technology, engineering, math) subjects. "I will be happy if it encourages young female scientists and mathematicians," Mirzakhani told the Stanford Report. "I am sure there will be many more women winning this kind of award in coming years."

大栗さん筋の情報その2. サイモンズ財団強い. まだ全く様子が掴めていないので, おいおい読み込もう. 自分用の日本語まとめとしてメルマガに書くことにしたい.

Terence Tao のブログ. これも後で読んで日本語でまとめたのをメルマガに流そう.

この間買ったばかりだというのに『佐藤幹夫の数学 増補版』が出るというのでつらい

本文

前に書評も書いた『佐藤幹夫の数学』だが, 新章が追加された増補版が出るという. ほしいがお金ない. つらい. 数学アクセサリとか早く軌道に載せたい. DVD も新しいの作るか.

あまりにもつらいコラム紹介: カワイイ数学コラムVol.1「誰かに好かれてる確率は?」

本文

カワイイ数学コラムVol.1「誰かに好かれてる確率は?」 というつらいコラムを見かけた. 「誰か」に好かれていて嬉しいのだろうか.

最近ストーカーという名づけられた変質者による殺人事件も目立って報道され, 社会問題としてはっきり認識されてきているような状況もあるので, むしろ不安になる.

これはむしろ防犯的な利用の方が役に立つのでは, とも思ったが, 女性側がそんなことを気にしないといけないというのもひどい話だ.

総評: とてもつらい.

書泉グランデMATHがまた面白そうな本を大量に呟いていたので

本文

また書泉グランデMATHが面白そうな本ばかり呟いているので.

つむじの本と音楽の本ほしい. 小中学生向けに何かできないだろうか. 折り紙 (の数学) はよさそうだと思っているのだが.

嘉田さんと結城さんのやりとり: 「述語論理の構文論と意味論」とかその辺

本文

やはりプロは違うな, と感嘆する.

数学 今日のいい話: 数学的対象の実在性

本文

数学 今日のいい話シリーズ.

数学に限らないが, よく知っているものの実在性, 言葉では何とも言えないところがある.

A. Weil 恐怖の言行録

本文

Weil 恐るべし.

『幾何学と代数系』金谷健一(森北出版): 書泉グランデMATHが面白そうな本を紹介していたので

本文

書泉グランデMATH, 面白そうな本をたくさんツイートしてくるのでつらい.

Youtube の講義動画: 自分でYouTube にあげる動画の参考にしていきたい

本文

最近とんとご無沙汰だが, YouTube で動画をいろいろ上げていこうという計画を立てている. その参考にしたい.

魔法少女から: 相転移Pについては超関数論の超準化みたいなのプロデュースしていただきたい

本文

魔法少女はすぐツイートを消すから困る.

相転移Pについては超関数論の超準化みたいなのプロデュースしていただきたい

@phasetr http://www.sciencedirect.com/science/book/9781898563990 http://t.co/VbJUqiRYJf

PDF の方は気長に読む予定なのでしばらくお待ち頂きたい.

数学教育とプログラミング: 数式処理ソフトをうまく使えるようになりたい

本文

これ, この間立川さんのYouTube講義で立川さんが ちゃかちゃかと mathematica 使ってシミュレーションしていたのを見て, うまく使ったらこれ面白そうだなと今更ながらに思った.

教育での数式処理ソフトの使い方, 少なくとも日本では確立されていない印象があるので, ちょっといろいろ試してみたい.

防衛に役立つ数学研究がしたい

本文

いい話っぽかったので記録を残したい. 適当なことを言っているだけでいいことを教えてくれる Twitter, 実に尊い.

追記

非常にいい話だった.

記事紹介: 数学をゲーム感覚で学べる「Primo」

本文

だいぶリアクションが遅れたがタレコミを頂いたので.

すいません、毎度毎度gigazineからタレコミます。

http://gigazine.net/news/20140516-primo/

gigazine からも引用しておく.

「数学が苦手」は生まれつきではなく努力によって克服可能であるという意見がありますが、 一度苦手意識を抱いてしまった数学を好きになるにはそれ相応の努力が必要になるはずです。 しかし、数学をゲーム感覚で学べる「Primo」ならば、 友達や家族と遊びながら楽しく苦手を克服したり、数学に対する興味関心を高めることができそうです。

面白そう.

ゼルプスト殿下のブログから: ホーキング博士の道案内で数学史の世界を探訪

本文

ホーキング博士の道案内で数学史の世界を探訪 というゼルプスト殿下のブログの記事で, Hawking の本, 『God Created The Integers』の紹介記事だ.

数学の歴史に一時代を画した重要な業績を、作者である数学者のプロフィールと、 論文の英訳によって紹介したアンソロジーで、古代ヘレニズム時代のユークリッドから現代のアラン・チューリングまでをカバーしています。

安いしほしい.

読んでみたい本メモ: 山口昌哉『数学がわかるということ』

本文

この本, 読んでみたい.

明石写像の由来と日本文学

本文

何ですと.

これ, 本当なのだろうか. あまりにもいい話すぎる.

追記

次のような情報を得た.

あとで読みたい.

『大学数学基礎ゼミナール—論理と集合 「数学女子」まなちゃんの (KS理工学専門書)』という本が出るらしいので

本文

これはほしい.

そういえば宇宙賢者に数学女子を貸しっぱなしだった. 返ってくるときには宇宙女子とかになっていそう.

素晴らしい記法が発明されたので

本文

これは, という記法だったので.

今後板書など手書きのときに使っていきたい.

あまりにも悲しい現実だった: 「「反転授業」はモチベーションのある生徒にしか使えません。」

本文

あまりにもつらい現実だった.

最近, 中学まで行っていた柔道を再開して道場に行っているのだが, そこの小中学生と一緒に何か「お勉強」をしようと画策している. 何か具体的なことを何かするというより, モチベーションを高める方向で何かしたい. もちろんその方がハードルが高いし, だからこそやりたいのだ.

数学アクセサリを作りたい

本文

蝉丸P に教えてもらったことを記録.

別のラインから根付もいいぞ, という話を伺う. 自分用からはじめるのがいいか, と思って和装に限定したが, 一般向けには洋装に合うのもいい. 特に女性用のアクセサリは真剣に検討したい.

適度で適切な「初心者歓迎」の空気は大事だな, と

本文

【オープンソースコミュニティは閉鎖的。オフ会はオープンであるべき】という記事, 参考になる.

特にオープンソースのコミュニティのオフ会って、 オープンソースの中身がどうこうよりも、OracleやWindowsの悪口であったり、 誰々さんが何々をして盛り上がったとか、内輪ネタの話が多い。 私はある程度会話には付いていけるけど、初心者がオフ会に参加したら間違いなく孤立するだろうな。 内輪ネタがまず意味不明だろう。

同じことはオープンソースのメーリングリストやコミュニティにも言えて、 たまに初心者が雲をつかむような話を投稿すると、熟練の怖い人から「まず検索しましょう」「自分で調べましょう」と返ってきたり、スルーされたりする。

だんだんその雰囲気が重苦しくなって、 MLには誰も投稿しなくなる(たまにバージョンが新しくなったアナウンスが投稿される)。 そういうオープンソース系のMLを沢山見てきた。 IRCもそう。

perl-casual とかは多分カジュアルにPerlの話をしましょうっていうチャネルだと思うけれど、誰か投稿したのを見たことがない。

もっと敷居を下げて誰にでも簡単な敷居で参加できる会がないと、 そのうち会のメンバーの固定化が起きて後継者問題が発生してくる。 これは遠からぬ話、はてなブックマーク界隈でも問題になることだろう。 内輪ネタで盛り上がるのではなく、それも肴の一つにしながら、誰でも参加可能な残飯処理係のいない会を開いていきたい。

参考にしたい. というか数学カフェはこんな感じを大事にしないといけなさそう.

黒木さん発言録: 「【数学の教師って、数学得意だったから数学苦手な生徒の気持ち理解できないから、数学教えるのは向いてないんだって。】これは数学をきちんと勉強したことがない人の発言か?」

本文

さすが黒木さんがとてもいいことを言っていた.

「わかる人はわからない人の気持ちがわからない」という妄言, 本当にどうにかしてほしい. もっと言葉を大事にしてほしい.

数学のアクセサリを身につけていきたい

本文

数学アクセサリを身につけてみたい. そうしたら次のようなコメントを頂いた.

こういうのもある.

何かよいものをご存知の方は教えて頂きたい.

機械学習で関数論を使う機会, 本当にあるのだろうか

本文

面白そうな呟きを見つけたので.

競技プログラミング勢, 「複素関数論は役に立たない」って言われたらどれくらいの人が同意するのか, 少し興味ある.

(複素関数論をセレクトしたのは, (ほぼ) 必修だった数学が「線型代数・微分積分・複素関数論」で, 最初の 2 つの重要性を主張するのはよく見るけど, 最後の重要性の主張はあんまり見ないから)

機械学習で複素関数論! とか, もっと主張していいんじゃないのか. 留数定理くらいなら使いどころも多かろうて.

@tmaehara 古典解析的には「複素解析までやって微積は完成する」ですけどね. 解析概論もそうですが, 初等函数の理解には複素解析が必須ですから. 確かに, 線型代数・複素解析を含めた微積の機械学習はあってもいいし, また, 競技化しても面白いかもしれません.

機械学習で関数論, 本当に使いどころあるのだろうか. それはそうと, 前にやった関数論のセミナー, いい加減 DVD 化したい.

コメント

関数標本なる書物があるらしい

本文

自分でやる気はしないけれども.

関数を飾って楽しむものらしい. 1,620 円. https://pic.twitter.com/cQQKMlzklA

@pika21pika 5 個セットで買っても安くならない?

@inoshoji 価格曲線は $y=1620x$ らしいよ. ちなみに 4 種類あった・・ http://www.kamigu.jp/category/select/cid/355/pid/9509

関数標本というのがあるらしい. 飾って楽しむというのは確かによい発想ではある. でも, 何かこういう誰でも思いつきはするものよりも何か変なことしたい.

新しい子守の形: 子守唄としての数学

本文

感動のツイートを収録.

乳児時代の長男があまりに寝ないので「こいつに何言っても同じじゃん? 」と思い余って R 上のフーリエ展開の理論展開を聞かせてやったこともあったのだが, 急減少関数だのコンパクトサポートだの $L^1$ と $L^2$ の関係だのリーマン・ルベーグの定理だの全部マジメに話したのに最後まで寝なかった.

こういう勉強の仕方もあるのか, と非常に参考になった.

tri_iro さん筋の情報:無限チェスという魔界があるらしい

本文

tri_iro さん情報.

無限チェス, ハムキンスさんのサイトに概要あるのか http://jdh.hamkins.org/game-values-in-infinite-chess/ なかなかカオスな図が多くて壮観ですね.

頭おかしい感じで格好いい.

「哲学の先生が国防総省から 750 万ドルのグラントを獲得ですってよ, 奥様 (ただし, やってるのは数学だそうな)」

本文

ytb_at_twt さん筋の情報.

哲学の先生が国防総省から 750 万ドルのグラントを獲得ですってよ, 奥様 (ただし, やってるのは数学だそうな) https://www.cmu.edu/news/stories/archives/2014/april/april28_awodeygrant.html

Awodey が圏論 +HoTT で国防総省から 750 万ドル! 数学の基礎は金になる! QT @optical_frog: 哲学の先生が国防総省から 750 万ドルのグラントを獲得ですってよ, 奥様 (ただし, やってるのは数学だそうな) https://www.cmu.edu/news/stories/archives/2014/april/april28_awodeygrant.html

感動のストーリー.

みんなで Jean-Pierre に改名していい数学者になろうの会

本文

Paul 筋の情報.

昔, 会話形式で学ぶ「数学者のためのフランス語」という文章を (半ばジョークで) 書きかけていて, そのときの登場人物が Jean と Pierre と Serre の 3 人だった.

.@nolimbre 現在, フランス科学アカデミー数学部門には, Demailly, Kahane, Ramis, Serre という「Jean-Pierre 四天王」がいる. http://www.academie-sciences.fr/academie/membre/section_math.htm

@Paul_Painleve IHES の理事 (?) が少し前まで Jean-Pierre Bourguignon でしたね.

@nolimbre みんなで, Jean-Pierre に改名しよう! いい数学者になれる!! 今日から「 Jean-Pierre のらんぶる」と名乗るんだ!!

Jean-Pierre 相転移.

「ポスドクは誰でも ポストをさがす 旅人のようなもの 希望の大学に めぐりあうまで 応募し続けるだろう きっといつかは 君も出会うさ テニュアポストに」

本文

かわずさんの次のツイートに触発された.

ひとわだれでも!!!!! しあわせさがす!!!!!!! たびびとのようなもの!!!!!!!!!!!!!!!

ささきいさおになりたい

そしてこれ.

人は誰でも 研究テーマをさがす ポスドクのようなもの 希望のテーマに めぐりあうまで 歩き続けるだろう きっといつかは 君も出会うさ 青いテーマに

学生は博士課程をぬけて 学術界の闇へ 先人の屍の山と血の池地獄が散らばる無限の宇宙さ 星の架け橋 わたってゆこう

ポスドクは誰でも ポストをさがす 旅人のようなもの 希望の大学に めぐりあうまで 応募し続けるだろう きっといつかは 君も出会うさ テニュアポストに

@phasetr ポスドクは銀河をこえ さいはてめざす テニュアポストは宇宙の 停車場なんだ 君を招くよ 無限の事務作業が

むしょくはかせの 澄んだ瞳に 生命 (いのち) が燃えているよ

@phasetr 素数の歌を くちずさむように 歩き続けるだろう 泣いてるような 星のかなたに テニュアポストが

@phasetr 人は誰でも ポストをさがす ポスドクのようなもの 希望のポストに めぐりあうまで 歩き続けるだろう きっといつかは 君も出会うさ テニュアポストに

chibaf さんに「いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか」に関する参考文献を教えてもらったので

本文

いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか執筆に関し, Twitter で chibaf さんに質問してみたらいろいろサイトを教えてもらった. あとでそちらの参考文献一覧にも記録するが, いったんこちらにもまとめる.

(1) @phasetr 人体の 3D CG 表現がどんな様子かは「ニコニ立体」を眺めてみると良いと思います. 紹介記事 $\to$ http://gigazine.net/news/20140502-3d-niconico/

(2) @phasetr ゲームでの人体表現を特に意識されていると思います. ゲーム関連の記事 $\to$ http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20110908045/

(3) @phasetr 解剖学的な人体の見方 - teamLabBody-3D Motion Human Anatomy- 世界初, 生きた人間の動き・形態を再現した 3D 人体解剖アプリ http://www.teamlabbody.com/3dnote-jp/

(4) @phasetr CG クリエイターのための人体模型コンテンツ開発 金 尚泰 http://www.slis.tsukuba.ac.jp/grad/assets/files/kenkyukiyou/10-2.3.pdf

(5) @phasetr An example-based approach to human body manipulation http://icube-publis.unistra.fr/papr/docs/files/2684/An%20example-based%20approach%20to%20human%20body%20manipulation.pdf/ generating realistic human whole-body models

(6) @phasetr Lie Bodies: A Manifold Representation of 3D Human Shape http://people.csail.mit.edu/freifeld/LieBodies/FreifeldAndBlack2012LieBodies.pdf

(7) @phasetr 以上です. 他にあったら, また報告します

解剖学まで持ってくるとか, 自分では絶対に考えつかないところまで出てきている. 聞いてみてよかった.

やたべさん筋の情報: 論理学を学ぶのに大事なこと

本文

今日のやたべさん情報.

「論理学の一般向け本はカントールが発狂したとかゲーデルが餓死したとかそんな話ばかりだ. それでは肝心な話が書けなくなってしまう」 「『肝心な話』とは? 」 「タルスキがセクハラパワハラ大魔王であったこととか, モンタギューが浴室で絞殺死体で発見されたこととか, クリプキが超変人なこととかだ」

やたべさん情報, 本当に役に立つ.

「全国のやる気と活気のあるアマチュア研究者 (アカデミックなポストには就けていないが, 論文作成に励んでいる人たち) が集まるトキワ荘的アパートを誰か建ててください」

本文

これは作りたい.

全国のやる気と活気のあるアマチュア研究者 (アカデミックなポストには就けていないが, 論文作成に励んでいる人たち) が集まるトキワ荘的アパートを誰か建ててください

頑張ろう.

書泉グランデ MATH から: 5 月上旬新刊予定『確率パズルの迷宮』岩沢宏和 (日本評論社)

本文

また書泉グランデ MATH が面白そうな本を紹介してきた.

5 月上旬新刊予定 『確率パズルの迷宮』岩沢宏和 (日本評論社) 親しみやすいが一筋縄ではいかない確率パズルを多数収録. 不思議な迷宮を散策しながら確率を扱う技術や思考法が身につきます.

お金も読む時間もなかなか取れないのに欲しくなるのでつらい.

「いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか」というタイトルで Amazon Kindle のアダルトで本を出したいので関連する情報提供を求む

本文

Facebook で実験をしている人がいて, 自分もやってみたくなったので.

Amazon のアダルトで表紙がこんな感じの「微分可能なおっぱいの探究」とか 「いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか」みたいな数学書を 20 ページくらいで 100 円くらいで出してアダルト一位取れるか実験をしたいが買ってくれる方 https://pic.twitter.com/K8s5xwLxsq

@phasetr 何, ふぁぼっているちょまどさんは買ってくれるということなの

@phasetr ウケる

@mitsuomi_miyata 私はいつだって真面目です

@phasetr 見付けたら買ってみせましょう w

@phasetr それでいい

@hafucco 出した時には連絡します

@phasetr ありがとうございます. よろしくお願いしますね.

@phasetr ちなみにこれ, 服部さんの研究も参考にすると瞬間最大風速が問題なので, 出て比較的すぐにに多くの人が買ってくれないと一位取れないので, 発火タイミングの調整も大事

@phasetr 買います!

@Taqa_ プログラミング関係の話を調べてからになるので, しばらくまっていてください. 頑張ります

ゲーム用の 3D 画像処理技術や背景となる数学, アルゴリズムなどを学べる本やサイト, どなたかご存知の方がいらっしゃれば教えて頂けないだろうか. 誠心誠意頑張る所存.

統計学学習のための実データとその解析も含めた基礎教材を皆で作ろう

本文

統計学関係もいろいろやってみたいと思っているので.

R (でもなんでもいいんだけど) の初心者向けチュートリアルが各地で行なわれているけど, 発表者がその度に新しい資料を準備するのって「車輪の再生産からの大量生産」で無意味だと思うんだ. 標準的導入スライドをつくってクリエイティブ・コモンズとしてどこかで共有できればいいのに.

こういうのを数学・物理でやりたくて ここ に TeX ソースを置いている. 統計学ももちろんやっていきたい. あとこんなのもあった.

統計学習の指導のために: このサイトは, 小学校, 中学校及び高等学校の新しい学習指導要領で内容の充実が図られた統計教育をサポートするために総務省統計局が設けたものです. http://www.stat.go.jp/teacher/index.htm

国勢調査のデータへのリンクや多少の使い方の説明がある. 今後実データ解析で実際に統計学用の文章を書くとき, データとして採用することも考えたい.

豊富な実データつきの統計学の本がほしい

本文

Mochimasa さん情報.

「アニメや声優など二次元を対象に, 統計解析をした事例を紹介する」. ?! / "R で始めた医学・統計学・ Bioinformatics - とらのあなダウンロードストア" http://htn.to/rLSYY2

@Mochimasa 目次が何度か RT されてました. (元ツイ失念) https://pbs.twimg.com/media/Bjdw9bKCAAER5cJ.png:large

@2sure781 限りなく"タイトル詐欺"に近い内容のようですね. アニメキャラで考える遺伝学って一体. . .

実データを使ってきちんと計算しつつの統計学の勉強したいのだが, 何かいいのないだろうか. 単なる理論の勉強ならいくらでもできるが実データの収集がなかなかつらい. 解析したいデータがあるとかいうわけでもないから.

今見たら作品エラーと言われてしまったし, いいのがあればどなたか教えてほしい.

【NHK 高校講座 | ロンリのちから】が参考になりそうなので

本文

長門さんからの RT.

ふつうに面白いし緒川たまき / "NHK 高校講座 | ロンリのちから | 第 1 回 ロンリのちから (1) 三段論法" http://htn.to/BmqHNc

ああいう感じの動画の使い方, 参考にしたい.

東大数理の小林俊行先生が紫綬褒章を受賞されるという

本文

坪井先生筋の情報.

小林俊行さんが紫綬褒章を受章されます. おめでとうございます. http://www.asahi.com/articles/ASG4R04P9G4QUTFK01J.html

そういう章を取ったからとか取らない, 取れないからどうというのもアレだが, 世間的に数学者が認められるのはやはり素直に嬉しいところがある.

「かようにサイエンスコミュニケーションを対メディアで成り立たせることは難しい.」

本文

あっ.

泣いている.

『「わたしはこれからは編み物ブロガーとして生きていく!」という謎の文章を残して数学者を辞めてて衝撃を受けた.』

本文

tri_iro さん筋の情報だ.

およそ 5 年前にアメリカの某女性数学者と共著論文を書いたことがあって, 彼女は米国アイビーリーグの某校で准教授をしてたはずなんだけど, 久しぶりに彼女のサイトを見てみたら, 「わたしはこれからは編み物ブロガーとして生きていく!」という謎の文章を残して数学者を辞めてて衝撃を受けた.

世界を感じる.

産業数学の取り組み

本文

いわゆる産業数学の話だ.

Japanese mathematicians are boosting their ties to industry, solving real-world problems. In @JapanTimes http://bit.ly/1gPpWn2

リンク先のページで九大の若山先生 (だと思う) がいる. 九大は Math for industry というのでいろいろ頑張ってやっているようだ. 東大でも逆問題絡みで山本先生が頑張っている. 私も第 4 回のつどいでは拡散方程式の逆問題を扱ってみた.

役に立つのがいいとは特に思っていないが, 従来の数学科数学に馴染めない人の道として こういうのがあってもいいとは思っている. とにかくいろいろやってみてほしい.

「2 つのボールをぶつけると円周率がわかる」

本文

俺達の円周率.

2 つのボールをぶつけると円周率がわかる - 大人になってからの再学習 (id:Zellij) http://d.hatena.ne.jp/Zellij/20140409/p1

詳しくは上記リンク先を直接見に行ってほしい. 円周率というと, 円周率が 3.05 より大きいことを示せと出題した東大入試を想起する方の市民だった.

楕円な乙女のポリシーを作って楕円な乙女をプロデュースしよう

本文

かもさんにいいことを教えて頂いたので.

楕円な乙女とかどこかにいないの. いないならプロデュースするしかない

@phasetr M87 http://www.astroarts.com/alacarte/messier/html/m87-j.shtml

@kamo_hiroyasu 参考になります

上記ページから引用.

解説

かみのけ座, おとめ座付近の星図には, 銀河のマークがびっしりとあって驚かされます. この空域にはメシエ天体を含む多くの銀河がありますが, いずれも淡く, 小口径では存在がわかる程度です. M87 は E0 型の楕円銀河ですが, その中心から星のジェット噴流が吹き出していることで有名です. 噴流は直線状に 5,000 光年も伸びています. 実直径は約 13 万光年, 質量は太陽の 7,900 億倍という巨大な銀河で, パロマ天文台の写真から周囲を約 1,000 個の球状星団が取り囲んでいることが分かりました. また強い電波天体でもあります. 1922 年には 11.5 等の超新星が出現しています.

かみの毛座というのに衝撃を受けた.

tri_iro さん筋の情報「今日ギリシャ人と数学の議論をしていて, ギリシャ文字の $\xi$ のことを「グザイ」と発音していたら, 「グザイってなんだよー, クシイだろー」というお叱りを受けた.」

本文

tri_iro さんによる有益な情報だ.

今日ギリシャ人と数学の議論をしていて, ギリシャ文字の $\xi$ のことを「グザイ」と発音していたら, 「グザイってなんだよー, クシイだろー」というお叱りを受けた.

@tri_iro 私は $\xi$ も $\phi$ もサィって発音してます

@MathHaru $\xi$ と $\phi$ が両方同時に出てきたときにどう言い分けるんでしょうか. ちなみにギリシャの現代っ子は, クシィ, プシィ, のように全体的に「イィ」っぽい感じに発音するそうです.

本日のギリシャ人と数学の議論の成果というと, そもそも $\mu$ や $\nu$ や $\chi$ を「ミュー」や「ニュー」や「カイ」と発音するのは古い流儀で, ナウでヤングなギリシャ人の発音だと, $\mu$ や $\nu$ や $\chi$ は「ミィ」「ニィ」「ヒィ」という感じになるということであった.

ガンダム的な意味で $\xi$ は「クシー」とか「クスィー」と読んでいたが, 他は衝撃だ.

「世界を変えた 17 の方程式」というのが GIGAZINE であったのだが方程式以外のがあるので記事を書いた人, 数学とかいう前にまず日本語を勉強してほしい

本文

タレコミを頂いたので.

すいません, また関係ないネタでタレ込みです. http://gigazine.net/news/20140401-17-best-equation/

後, 劇場版新編を観て, さやかと杏子の一時の幸せなやりとりもご堪能下さい.

劇場版のさやかパイセンと杏子はよかった. それはそれとして上記記事を少し引用しておく. 方程式以外のがあってやばい.

世界を変えた 17 の方程式

  • ◆ 01:ピタゴラスの定理 (三平方の定理)
  • ◆ 02:対数における真数の積と対数の和
  • ◆ 03:微分・積分
  • ◆ 04:万有引力
  • ◆ 05:複素数 (虚数単位)
  • ◆ 06:オイラーの多面体定理
  • ◆ 07:正規分布 (確率密度関数)
  • ◆ 08:波動方程式
  • ◆ 09:フーリエ変換
  • ◆ 10:ナビエ-ストークス方程式
  • ◆ 11:マクスウェルの方程式
  • ◆ 12:熱力学第二法則 (エントロピー増大則)
  • ◆ 13:特殊相対性理論 (質量とエネルギーの等価性)
  • ◆ 14:シュレディンガー方程式
  • ◆ 15:情報理論
  • ◆ 16:カオス理論
  • ◆ 17:ブラック-ショールズ方程式

記事書いた人は数学とか何とかいう前に日本語を勉強してほしい.

書泉グランデ MATH, 【『解析力学講義』齋藤 利弥著】とか面白そうな本を推薦しまくってくるのでつらい

本文

書泉グランデ MATH, 面白そうな本をがんがん宣伝してくるのでつらい.

復刊入荷しました 『解析力学講義』齋藤 利弥著 4000 円外税 (日本評論社) 名著『解析力学入門』を全面的に改め, 書き下した本書は, 数学的側面に力点がおかれた力学の解説書である. 類書では, あまり扱っていない"制限三体問題""ポアンカレの定理"などを懇切ていねいに解き明かす.

これほしい. 制限三体問題と Poincare, 一度きちんと勉強してみたい.

関数体操と微分幾何体操

本文

こんなのもあるのかと感銘を受けた.

関数体操うけるwww RT @PhilipsShiu: 函數操 http://pic.twitter.com/mMuxpuoJ0I

リンクの画像はこれだ.

何かこういうのも面白そう. 小学生とかとやりたい.

そしてふと微分幾何体操を想起した.

「心配すんなよさやか. 独りぼっちは, 寂しいもんな……. いいよ, 一緒にいてやるよ……さやか……」

Ask.fm からは質問

世界中にいるであろう数学・物理にその人生を燃やしている人達へのエールを一つお願いします.

回答

学問が何より一番大事なのでまともな人生は諦めて下さい. あと「心配すんなよさやか. 独りぼっちは, 寂しいもんな……. いいよ, 一緒にいてやるよ……さやか……」. ということで 私もまっとうな人生は諦める方向で進むのでどうぞよろしく

『数学通信』バックナンバー

本文

kyon_math さんはいつも本当に役に立つ情報を提供してくれる.

というわけで「数学通信」バックナンバー http://bit.ly/N2SLW0

これをのんびり読む時間がほしい.

ゆずらじと統計学と線型代数とあと何か

本文

ゆずらじを正座待機.

@yuzukosho ところで柚子胡椒姐さんのゆずらじはいつですか

@mitsuomi_miyata 話す内容がありません! トースターにゃんの「中年でも分かる有機化学講座」を受講するスタイルでお願いします!

@yuzukosho 高いで

@mitsuomi_miyata @yuzukosho 美少女に分からせる数学で柚子胡椒さんがラジオ出演してくれるということなので是非やりましょう. 何とかして手配しておくので

@phasetr @mitsuomi_miyata もっと若い女性を使ってください!!! 美少女の親でもおかしくない中年です!!!

@yuzukosho @phasetr 姪

@mitsuomi_miyata @phasetr 姪を巻き込んだら私には死が待っている

@yuzukosho @phasetr 一緒に, 逝きましょう.

@mitsuomi_miyata @phasetr まだ旅立ちたくないです…妹怖い…

@yuzukosho @phasetr この世への未練を断ち切りましょう

@mitsuomi_miyata @phasetr 数学を志す事は死を覚悟することですか

@yuzukosho @mitsuomi_miyata 数学のためにギリギリ限界まで振り絞って生きる必要があり楽に死ねると思って頂いては困ります

@phasetr @mitsuomi_miyata 数学アレルギーのある一般市民に布教しようというなか, そのスタンスを求めるのは酷かと

@yuzukosho @mitsuomi_miyata 柚子胡椒さんなら出来ると信じてこそ

@phasetr @mitsuomi_miyata マジレスしますと, 2 年前にこの先生の授業で途中まで勉強しました. http://manavee.com/teachers/profile?teacher_id=25 伸び悩んでいる人のための数学基礎講座~試行錯誤する方程式~ http://manavee.com/classroom?cur_id=68

@yuzukosho @mitsuomi_miyata それだけ出来れば十分では

@phasetr @mitsuomi_miyata いえいえ, 自分が勉強したのはこの中の一部だけです. どれも中途半端になっています.

@yuzukosho 一次方程式だけで一生遊べるレベルの数学です. 実際に私の興味に近い方の強磁性相転移は一次方程式の取り扱いに使う数学だけしか使いません

@phasetr @mitsuomi_miyata 「誰でも無料で大学受験のための勉強ができる」をモットーに作られた無料サイトです. http://manavee.com/info/about すべての教科の中で数学が最も多い講座数となっています.

@phasetr そんなに奥が深いのですか…

@phasetr 先ほど紹介した「試行錯誤する方程式」は線形代数ができるようになるのを最終目標に作られています. 「実際は受験より, 大学入学後の数学に合わせて作っている」とこの方に直接伺ったことがあります. http://manavee.com/classroom?cur_id=68

@phasetr 基礎をつくるための講座なのでお手軽ではありませんが, かなり丁寧な作りで非常に勉強になるものでした. それでも挫折するような人間ですので, 相転移 P さんのお役に立てるのか不安です.

@yuzukosho @phasetr "柚子胡椒さんに数学を叩き込むセミナー"でもしたらどうでしょう?

@eszett66 @phasetr しゅそくん…

@eszett66 @yuzukosho 「女性向け」と言うので何かしたいとは思っているのでそれは本当に検討しています. 折角なので 2-4 人くらいは集めたいのですが. これを元にまた色々 (適当な感じの有料コンテンツを) 展開させていく所まで込めて何かしたい

@phasetr そろそろ春ですし, 新しく大学入ってくる娘向けにやる感じとかもありですよね. どう集めるのが良いのかわからんけども.

@phasetr @eszett66 数学ができない一生徒として, ボケ役にでも使って下さい

@eszett66 文系数学で統計学とか結構需要あると思っていて. ネタも必要な数学も色々ある上, 突っ込み具合によって必要な数学の加減もでき, しかも実用性もあるので結構いいのはいいとは思っています. 最大の問題は数学パートは何とかなるとして, 統計学の実践部分をよく知らないことです

@phasetr なるほどなるほど. モチベーションの部分は実際に使ってらっしゃる方をツイッターでゆるぼかけて, 喋ってもらうのでもよいのでは. その方の研究の紹介もついでにしてもらったり.

したいこととしなければいけないこと, 死ぬほどたくさんある.

「グラフ理論でトポロジーってことは一次元トポロジーってことですよね」

本文

低次元トポロジーとは何だったのか.

そういえば九州大学の先生に「低次元トポロジーの集会するから, 発表してください」って言われて, 「自分は低次元トポロジーやってないですけど大丈夫ですか」って尋ねたところ「グラフ理論でトポロジーってことは一次元トポロジーってことですよね」って言われた.

その発想はなかった.

目から鱗というアレだ.

好きこそものの上手なれが本当だったらいいなというのを科学コミュニケーション的な文脈で考えた

本文

好きこそものの上手なれ.

もうひとつ, 日本の漫画が海外での日本語教材として優れてる点 (これが私にとっては最大の理由なんだけど), それは子供たちが「好き」で読んでるってこと. これはデカい. 物凄くデカい. 子供が何かが「好き」でやるときの学習効率って, そりゃもう大変よ. イヤイヤやるときの何百倍の効率なんだから.

@nynuts 思いっきり, 賛成! です. 好きこそものの上手なり. って, 本当だから.

いわゆる科学コミュニケーションだと「下手の横好き」になる傾向が高い印象があるので気をつけたい. あと, この方向の活動, もっと増やさないとまずいなというのを改めて注意したい.

長尾健太郎さんの話と佐々田槙子さん, 權業善範さん, 谷本溶さんの話

本文

立川さんのツイートである.

長尾健太郎君の業績が数学会で紹介されています. http://mathsoc.jp/publication/tushin/1804/2013takebe_yokogao.pdf

知り合いだったというわけでもないのに呆然と見入ってしまう.

別件だが, PDF に佐々田さん, 權業さん, 谷本さんの名前を見つけた. 少なくとも一方的には顔と名前を両方知っている人なので感慨深い. 谷本さんのコメントははっとさせられる.

作用素環を使って場の量子論を研究しています. 学振の DC1, DC2 ともに不採用になりましたが, イタリアとドイツは奨学金をくれたので留学しました. 修士の時に結果が出ない人にもチャンスが与えられてほしいと思います.

こういうの, 本気でサポートを考えなければいけない. 気合を入れ直した.

東大数理で 3/8 (土) に「数学の魅力 3」 - 女子中高生のために - が開催されるそうなので

本文

坪井先生が宣伝していたので.

「数学の魅力 3 」 - 女子中高生のためにー が開催されます. 2014 年 3 月 8 日 (土) 13:20~17:30 東京大学大学院数理科学研究科 大講義室 http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/users/rikei/

興味がある向きは積極的に参加されたい. あと関係各位は積極的に宣伝に協力されたい.

数学チョコで君だけの多様体を作れ

本文

数学チョコで君だけの多様体を作れ.

数学チョコで君だけの多様体を作れ

@phasetr 苺でオイラーの等式を作りましたw

@RainbowGirl_aoi まずはオイラー苺の写真をあげて世界に高らかに宣言をしましょう

@RainbowGirl_aoi 苺によるオイラーの等式, 本当に見てみたいのですが写真ないですか?

@phasetr 少し前に作ったものですけど一応これです http://pic.twitter.com/MJDmv7lLIC

@RainbowGirl_aoi 世界平和への第一歩

苺による Euler の写真へのリンク, とりあえず皆見に行っておくように.

東大数理の環体これくしょん

本文

環体これくしょん.

東大の数学科が駒場祭で環体コレクションしてた. http://twitpic.com/dm9bpz @TwitPic さんから

こういうのを作れる腕を身につけなければいけない.

統計関係の書籍が無料配布されているので関係各位は有効利用するように

本文

統計関係の書籍が無料配布されているようなので.

統数研 web site で統計学本 PDF 版を無料配布している EBSA http://ebsa.ism.ac.jp/ebooks/ebook/ たとえば 2012 年出版 5600 円の「 21 世紀の統計科学< Vol. III >数理・計算の統計科学」 http://ebsa.ism.ac.jp/ebooks/ebook/1881

自分がこれをどう使っていくかと言われるとよく分からない. ただほしい人の手に届くよう宣伝に協力しておいた方がよさそうだ.

共立出版の人が表紙がかわいい早川書房の本『はじめての現代数学』と『数学と算数の遠近法』を宣伝していたので

本文

共立出版の人が何か宣伝していたので私ものっかる方の市民だ.

表紙が可愛い早川書房さん発行の『はじめての現代数学』と『数学と算数の遠近法』こちらです. http://bit.ly/1goq1UI http://bit.ly/1ew5Tcp

本は次の 2 つ. ちょっと読んでみたいと思わないでもない.

ひさこさんに確率論の反例集を読むセミナーを開いてもらおう

本文

イケメンエリートの SO880 御大から本を紹介されたので.

@phasetr @greengrimghost DVD …研究室で上映会して, 新四回生や新 M1 生の教育目的とするなら公費で買えるのだろうか? 確率論の反例集が近々リニューアルされてペーパーバックで安価で発売されるとか…

@SO880 @greengrimghost 反例集出たら教えて下さい. 普段なかなかその辺をチェックしにいかないので

@phasetr @greengrimghost 密林にいつ頃出るとかありませんでした?

調べてみたら これのようだ.

とりあえず買っておいた. 読める日がいつ来るだろう. ひさこさんに教えてもらうまである.

Antonio Cordoba, et. al., All that Math - Portraits of mathematicians as young readers

本文

kai さんが面白そうな本を上げていたので.

"All that Math - Protraits of mathematicians as young readers" おもしろそう. 『この論文に出会えてよかった』みたいな本. http://www.amazon.com/All-That-Math-Portraits-Mathematicians/dp/8461529006

誰が何を書いているのかよく分からない. ただ読んではみたい. そして小市民には高くて泣いている.

John Ludvig Pirl, The Momentum Map, Symplectic Reduction and an Introduction to Brownian Motion

本文

全く分からないが kyon_math さんが宣伝していたので.

風呂から上がって調べてみるとこんな修士論文が... http://bit.ly/1f6o369 これ, 始めの 30 ページほどでシンプレクティックリダクションの解説を証明付きでやってくれてるのでお勧めです. 丁寧に書いてあるし, good job.

この修論, タイトルが「The Momentum Map, Symplectic Reduction and an Introduction to Brownian Motion」とかで凄い. 中身, はじめが Lie 群で最後が Brown 運動になっていて, 「the foundations for later work in Geometric Stochastic Mechanics」を目指しているらしい. Geometric Stochastic Mechanics とは何だろう. 量子力学関係で E. Nelson が言い出して色々とアレで廃れた Stochastic Mechanics というのがあるのは知っているが, その辺の話か. 実に謎い.

ぞみさんが Kunen の『集合論-独立性証明への案内』をおすすめしていたので

本文

ぞみさんが本についてツイートしていたので.

『集合論-独立性証明への案内』 http://www.amazon.co.jp/dp/4535783829 これ, 引っかかりそうな落とし穴を丁寧にフォローしてて捗るんだよなあ… (捗るという単語が試験期間には悪い方に作用する珍しい例だ).

Kunen の本だった. 覚えておこう.

数学ができる女性が世界で一番かっこかわいいに決まっている

本文

「【女子学生必見】女性は偽名を使うと数学の点数がアップするという研究結果」というニュースを目にした.

昔から「女性は数学が苦手」だといわれている. 実際, 日本では大学の理系学部に女性が数人しかいないということもある. 「女性は数学が苦手」の原因は, 脳構造に多少の男女差があるためではないかという説もある.

だが, この考えを見直す新しい研究結果が発表された. なんでも「女性は偽名を使って数学のテストを受けると, 男性と同じくらい良い成績を出すことができる」というのである. そう, 女性はもともと男性と同じくらい数学の才能があったのだ!

どういうカウントの仕方をしているか知らないが, 「学部で女性数人」は確かに異常に少ない感ある. あと【女性はもともと男性と同じくらい数学の才能があったのだ】というのが地獄っぽい.

どこまで本当か知らないが, とある男性の教官が「男は若い頃に爆発的に業績を上げるような感じだが, 女性はコンスタントに良い業績を上げている, という感覚がある.」みたいなことを言っていた記憶がある. 性差はあるかもしれないし業績の評価をどうするかという問題はあるが, 一番不可解で頭に来るのは「頭のいい女性はかわいくない」とかいう風潮だ.

頭のいい女性, 特に数学が出来る女性は格好いいに決まっているので, 上記のようなことをいう異常者は全員問答無用で殴り倒していきたい. こういう馬鹿者共を殲滅していくことを 相転移プロダクションのミッションとしてかかげていきたい.

追記

次のようなコメントを頂いた.

オタクとリア充の壁なのかどうかは知らないが, 同じ感覚世界に生きていない感じはある.

四谷大塚の予習シリーズなる教材の存在を知る方の市民

本文

普遍市民 Im_Weltkriege 師が予習シリーズなるものの存在を示唆していたので記録しておく. 元はお前の敵さんの家庭教師用教材に関する話だった.

予習シリーズを知らないとは, 我々インテリには考えられないことでしたな. (葉巻を燻らせながら)

@Im_Weltkriege 予習シリーズ, そんなに有名なのですか. 全く知らなかった

@phasetr 主に中高生にやらせるテキストとして有名です.

@Im_Weltkriege 今後のプロデュースの参考にする所存

@phasetr よくわからない算数

@Im_Weltkriege Principia Mathematica

@phasetr よくわからない数学の基礎付け

@Im_Weltkriege よく分からない岩波基礎数学

@phasetr よくわかる可積分系の本おしえてください

@Im_Weltkriege 専門ではないのでよく知りませんが, 東大数理のウィロックス先生の B4 セミナーで「ソリトンの数理」三輪哲二, 神保道夫, 伊達悦朗が使われているらしいので, これはそれなりによい本なのではないでしょうか

@phasetr なるほど

予習シリーズとはこれのことらしい. あと神保先生たちの本はこれだ.

今探したら家にあった. 黒木さんにもお勧めしてもらっていたのだった.

サイト紹介: 【伝わるデザイン 研究発表のユニバーサルデザイン】

本文

【伝わるデザイン 研究発表のユニバーサルデザイン】というサイトが紹介されていたので.

http://tsutawarudesign.web.fc2.com/index.html を見ながら, 自分のスライドをチェックした. 駄目だと書かれていることをことごとく行っていた.

@nohzen このサイト, お薦め.

@aki_room すごく分かりやすかったです. スライド作りたくなってきました!

同じものでも適切な対象に対して適切な配慮をすることはとても大事だ. 今後, 相転移プロダクションとしても重要度は増す一方の大切なことなので, あとできちんと見よう.

岩波から藤木明編『倉西数学への誘い』が出るらしいので欲しい

本文

岩波から藤木明編で『倉西数学への誘い』が出るらしい.

[2F] 好評発売中! 『倉西数学への誘い』藤木明 編 3045 円 (岩波書店) 倉西数学とは, 倉西正武によって築かれた現代数学理論をさす. 「いかに数学者となりえたか」の聞書きに始まり, 幾何・代数・解析にとどまらない倉西数学の全体像を複数の著者による解説で描いた異色の本.

毎度のことながら書泉グランデ MATH, 面白そうな本をたくさんツイートしてくるので侮れない.

学会発表のドレスコード

本文

やたべさんや鴨さんとお話した方の市民. ちなみに発端のツイートはこれ.

学会発表でなんでスーツ着るんってつぶやいたら, 同じ専攻の B4 と思われる方々に「学会でスーツ着ないとか常識外れにも程がある」ってつぶやかれてました (憤怒)

そしてやたべさん, 鴨さんとのやり取りメモ.

https://twitter.com/ag_smith/status/423042394464870400 そんな時は数学に転向

@phasetr 国際会議でスーツを着るなんて非常識な人はここにはいません→ http://cca-net.de/cca2005/

数学科ではスーツを着る人間は二流の研究者扱いされます. あれほどドレスコードが厳しい学会を知りません. 何着ようがいいじゃないか. QT @phasetr: https://twitter.com/ag_smith/status/423042394464870400そんな時は数学に転向

@kamo_hiroyasu 私が知る限りラフでなる Jones ですら, フィールズ賞の授賞式ではシャツ・短パン的な格好にネクタイくらいはしていたと聞きます https://www.google.co.jp/search?q=vaughan+jones&safe=off&client=firefox-a&hs=I8O&rls=org.mozilla:ja-JP-mac:official&hl=ja&channel=fflb&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=VynVUr-uLIWfkAWg44G4Ag&ved=0CAkQ_AUoAQ&biw=1006&bih=710 河東先生の文章でそういう記述があったのですがどこにあったか

@ytb_at_twt やはり半裸で行きましょう

@phasetr 半裸なんて数学会的ドレスコードど真ん中やんけ. もっと若い者はアナーキーに, 冒険して, ジャケットとネクタイとかしてみるべきだ.

@ytb_at_twt 学会会場に到達するまでが学会です

河東先生による Jones の Fields 賞授賞式の様子の話, 河東先生のサイトにあった記憶があるので, どなたかご存知の方は教えてほしい.

長尾健太郎さんと碁の記事

本文

大栗さんが先日若くして亡くなった長尾健太郎さんの記事を紹介していた.

昨年お亡くなりになった数学者の長尾健太郎さんについての記事が, 2 つ, 掲載されていた. http://www.news-postseven.com/archives/20140106_233776.html http://www.news-postseven.com/archives/20140105_233774.html

長尾さんの奥様が登場していて, 碁に関する話とか色々している. 15 歳から難病を患っていたとのこと. 数学者エピソード好きなので, 良いのも悪いのも含めこういう話は記録していきたい.

数学系魔法少女アニメ, プロデュースしたい

本文

ark184 さんが数学系魔法少女アニメについて呟いていた.

このアニメ, 見たい.

omelette_philos さんの【よく分からない数学 色々な反例で遊ぼう】の感想まとめ

本文

omelette_philos さんがツイートで感想を書いてくれたのでまとめておこう. できれば Amazon のカスタマーレビューに書いてほしいのだが.

相転移 P のよく分からない数学 DVD を見たので感想を書く.

以前何かのオフ会で相転移 P にお会いしたときは仕事帰りでスーツ姿でしたが DVD では数学的正装だったので新鮮でした. $F (I)$ は区間 $I$ 上の実数値関数の全体という意味ですよね? そう思って見てて違和感を覚えなかったので.

代数的な話をしながらもちゃんと解析に導いていると感じました. 関数空間論や測度論に興味がわくように話ができていると私は勝手に解釈しました. 「途中」の「途」を「と」と書いて「ひらがなにしちゃった」と言うところは相転移 P の萌ポイントでしょう.

解析概論をまた読みたいなと感じつつ, 超関数のお勉強も今更ながらした方がいいのかなと反省. まどマギは不勉強なので相転移の事はよく分からないのも仕方ない. 4. の $C_p$ は $p$ 進の話ですかね? 興味はあるのにちゃんと勉強してないので詳しくないですが.

$\mathbb{Q} \cap [0,2]$ 上の $\mathbb{Q}$ 値連続関数の例はとても面白いし初等的でよいと思う. 所々出てくる超関数の話はシュワルツの超関数だと思うのですが, ちなみに佐藤超関数とはなにかリンクするところとかあるんでしょうか (素人意見).

総合して教育的だと思いました. 冒頭の導入の「自分で問題を作って自分で解く」というのは研究の基本だと思いますが, 高校生や学部教養の学年の人たちが実践できたら素晴らしいことですねと思いました. その意味でも高 2~B2 くらいの方に見てほしいなと感じた.

段ティンの兄貴による『よく分からない数学 色々な反例で遊ぼう』の感想

本文

我が DVD 『よく分からない数学 色々な反例で遊ぼう』について, 段ティンの兄貴の感想連続ツイートがあったので記録しておく.

引用

相転移 P の DVD を頂いた

相転移 P の DVD を頂いたので見てみた感想だけど, 凄く教育的な DVD だったので大学 1 年のうちとかに見ておきたかった. 微積で例とか証明を見ても僕は雰囲気があんまりつかめないので式変形って感じが嫌だったけど感じだけ説明してくれてたので気軽に見れるよい説明だった気がする. 【続く】

んで本格的にやりたかったら相転移 P が多分フォローしてくれると思うので初心者におすすめという感じなのかな. 個人的にはワイエルシュトラスの例とか今度詳しく教えて欲しい. 超関数の話も軽く触れてくれてるのでそこら辺詳しく聞きたかった. 例を通して定理の確認にもなるので何かそこら辺も教育的.

あと相転移 P がイケメンだった.

なんていうか相転移 P のプロモーションビデオって感じだった

数学をプロデュースする方の市民だ.

『ネクタイの数学-ケンブリッジのダンディな物理学者たち 男性の首に一枚の布を結ぶ 85 の方法』

本文

Twitter で『ネクタイの数学-ケンブリッジのダンディな物理学者たち 男性の首に一枚の布を結ぶ 85 の方法』なる本の存在を知った. 面白そう. 絶版のようだが, 原著はどうだろうか. 今度調べてみよう.

数式処理ソフト Tetra を作ろう

本文

ちょっとびっくりしたので.

複雑な数式の変形をするときって, 手書きよりも LaTeX でやった方が正確なときがある. ※個人の感想です.

なぜかというと, 数式を少しずつ変形させていくとき, 「上の行のコピペ」ができるから. 手書きだと途中でめんどい! (ユーリ) ってなって, はしょって失敗.

秘書としてテトラちゃんが常時そばにいればいいけど, そうもいかないし.

@hyuki 携帯テトラちゃんを開発しましょう. ビジネスチャンス発見!

@kamo_hiroyasu Tetra という数式処理ソフトを開発しましょう

「正確なときがある」というアレなので, そういうこともあるか, という話だが, 式変形を手書き以外でやる気にはなれないので, そういう人もいるのかと単純に驚いた.

あとこれ.

https://twitter.com/hyuki/status/420136857544835072数式処理ソフトの方が良いのではないか説

@phasetr LaTeX の数式の美しさはそこいらの数式処理ソフトの比ではない説

@math_neko 式変形を「等式の変形」と思っていますが, それなら数式処理が一番信頼がおけるのでは, という程度の意味です. もちろんどんな対象をどう変形するかによるので何ともいえないところは当然あります

@phasetr なるほど. Maxima だと数式処理の結果を TeX のコードに変換する機能もあるし, その方が楽かも知れませんね.

数学とプログラミングについては色々考えたいことがあり, 数式処理とかその辺はとても気になっている.

『やわらかな思考を育てる数学問題集』 (全 3 冊セット) (岩波現代文庫) が Amazon で出るので注文した

本文

本のお勧めを見かけたので.

数学者の間からも, ちらほら好評の声を聞きます. お薦め. RT @hamakado_mamiko: ご好評につき箱入りセット出来: 『やわらかな思考を育てる数学問題集』 (全 3 冊セット) (岩波現代文庫) http://www.amazon.co.jp/dp/400205229X/ 数量限定です.

@takey_y 紹介リツイートありがとうございます!

.@hamakado_mamiko とても良い本だと思います. 仲間を集めて読むのに最適ですね. 高校生の頃に読んでおきたかったです (笑

とりあえず注文した. 楽しみにしている. 読んだら感想も書こう.

青木薫訳『ネクタイの数学-ケンブリッジのダンディな物理学者たち 男性の首に一枚の布を結ぶ 85 の方法』

本文

とある筋から『ネクタイの数学-ケンブリッジのダンディな物理学者たち 男性の首に一枚の布を結ぶ 85 の方法』という本があることを知った.

とりあえずメモ.

初等幾何の証明とアニメーション

本文

mathpico さんのツイートを見た.

接弦定理をモノで見せたい. 画用紙で円周角を動かしていく教材はうまく作れず, ボツ. 前回の釘打ち板も接線の表現がイマイチ. すごく面白い定理なのに, なかなか生徒がピンとこないみたいだ…. やっぱ, ここでパソコン登場かなぁ.

そもそも, 接線というのが, イメージしづらいのかもなぁ.

ふと思い出したが, KSEG という初等幾何関係のソフトがある. これなどを使えばいいのではなかろうか. あと Geogebra はどうなのだろう. 初等幾何の証明のアニメーションも面白そうだとは思うが, それよりも一般の数学の証明それ自体をアートとして表現してみたい方の市民だった.

Cremona による楕円曲線のデータベースがあるらしいとの情報を得る方の市民

本文

Cremona による楕円曲線のデータベースがあるらしいとの情報を得る.

Cremona による楕円曲線の各種データベース. 導手 (conductor) 300,000 以下の楕円曲線を網羅. http://bit.ly/J6lHdA

@kyon_math 有名な Cremona と関係があるのか? と気になってしまいました. クレモナ変換の Cremona の名前は Luigi で, お兄さんが Mario かどうかは定かではない.

Paul による余計な情報まで付いてきた. 楕円曲線のデータベース, 何に使うのだろうと思ったが楕円曲線暗号とかあるし実用面で何かあるのかという気はする. いわゆる純粋数学的な話でこれはどういう方向に使うのだろう.

スウガクマスターがコミケで頒布されるらしいという情報を手に入れた

本文

スウガクマスターがコミケで頒布されるらしいという情報を手に入れた.

【C85】スウガクマスター【PV】: http://youtu.be/8LCf4HJnYmA @youtube さんから youtube にも動画をアップロードしました.

今回もコミケに出陣せねばならないようだ. 時間あるだろうか. 作るしかないか.

ブルブルエンジン兄貴の業績

本文

ブルブルエンジン兄貴が偉大な仕事を成し遂げていた.

.@alg_d 氏が楽しそうに数学をやっている様子を高校生のとき Twitter を通してみて, 数学科に来たという若者に出会って, @alg_d さん偉大だと思った

私も泣いている場合ではない.

相転移関連の論文「More is the Same; Phase Transitions and Mean Field Theories」

本文

相転移関連の論文らしいので読みたい.

「More is the Same; Phase Transitions and Mean Field Theories」 初期の相転移の理論について注目した論文らしい

http://arxiv.org/pdf/0906.0653v2.pdf

平均場なので微妙な感もあるが, 初期の相転移の理論をあまりよく知らないので, 歴史的な興味もある.

manavee 「伸び悩んでいる人のための数学基礎講座~試行錯誤する方程式~」受験のための導入 が面白いらしい

本文

以前も紹介した覚えがあるのだが. manavee の数学の講義で面白いのがあるらしい. 直近見る暇ないがメモ.

高校生以上, ちゃんと数学を学びたい方へ. 「伸び悩んでいる人のための数学基礎講座~試行錯誤する方程式~」受験のための導入 http://t.co/h3xKXaw6 数学の基礎から学んで線形計画問題が解けるまでの講義. これ無料でいいの? と思う質です. @news_manavee

参考にしたい.

mr_konn さんの PDF: 『 Measure Problem と可測基数』

本文

こんさんが PDF 的なものを上げている.

Measure Problem と可測基数 http://konn-san.com/math/measurable-cardinals.html レポートで書いた可測基数とか連続体仮説のはなしを加筆修正して公開しました. PDF 版はこちら

時間をひねり出して読みたい.

動画制作ツールメモ: 紙クリと AviUtl

本文

ニコニコのブロマガで『紙クリと AviUtl~能書き』という記事があった. 私は紙クリユーザで, 今のところ AviUtl を使う予定はないが, 何かのときのため, 自分用参考情報として残しておきたい.

ツールに関していうなら, むしろ, Youtube やニコニコにも上げておいた JavaScript+MathJax のツールを開発したい. 自分が面白いと思ったもの, 万人に受けるとは全く思わないが, 100 人には面白いと思ってもらえるのはまず間違いないし, 実際何人かにアレを早く完成させろと言われている. 作りたいもの色々あって困る. 時間と才能が死ぬ程たくさんほしい.

井草準一先生の訃報を知る方の市民

本文

井草準一先生が亡くなられたとのこと.

井草準一先生が亡くなられたとの報 http://krieger.jhu.edu/blog/2013/11/27/jun-ichi-igusa-noted-mathematician-and-researcher-died-at-89/ だが, 真っ先に浮かんだのは岩澤健吉氏の思い出を綴られた文章での語り口. ご冥福をお祈りします.

井草先生と言えば, 『数学まなびはじめ』第 2 集が思い起こされる.

私も次世代の数学アイドルをプロデュースしていけるよう精進したい.

小林銅蟲による裏サンデーの漫画「寿司 虚空編」と数学

はじめに

【なんでずっと数学の話なんだよ! 裏サンデーの漫画「寿司 虚空編」がシュールすぎる】ということで話題になっている漫画があるようだ.

[ねとらぼ] なんでずっと数学の話なんだよ! 裏サンデーの漫画「寿司 虚空編」がシュールすぎる http://bit.ly/16c8zfr

元の記事も引用しておこう.

引用

寿司屋が延々と数学の話をし続けるというシュールすぎる漫画がネット上で話題になっています.

話題になっているのは, 小林銅蟲さんが裏サンデーで連載中の「寿司虚空編」. お寿司をテーマにした漫画かと思いきや, 板前たちが 2 ページ目から突然「グラハム数」という数学の話を始め, 以後ずっとその話が続きます. 中略.

小林銅蟲さんは Web 漫画「ねぎ姉さん」でもシュールさや難解な数学用語の導入が話題を呼んだ作者.

小林銅蟲, 名前を覚えておこう.

東大の本郷で 12/7 (土) に Science Front なるイベントというか講演会というか何かが数学・物理をテーマとして開かれるらしいので

本文

ymatz さんが Science Front の宣伝をしていたので.

Science Front の講演者 @sin_forest と打ち合わせをしてきた. 12 月 7 日, 現代の数学ってこんな世界なのかー! って体験ができますよ. あとの 2 人は物理の人で, そちらの内容については僕も当日のお楽しみ. https://sites.google.com/site/0to1sciencecommunication/science-front

発表概要

転載しておこう.

発表概要

「光電子分光法を通して観た"物性物理学"が見据える未来」

物質の性質を研究する分野である物性物理学は, 数 10 年~100 年後の応用 (=人類社会への貢献・還元) を念頭に研究を行っています. 実例を挙げると, 1989 年に論文発表された巨大磁気抵抗効果は, 10 年足らずでハードディスク (HDD) の再生ヘッドに実用化され, HDD の容量を飛躍的に増大させました.

現在の人類社会が解決すべき課題の 1 つに, エネルギー問題が挙げられます. 持続可能な社会を実現するためには, 省エネルギー化・クリーンエネルギー源を開発することが急務です. 物性物理学は, そのような革新的なエネルギーシステムを構築可能な材料・物質を探求することを目標とし, 熱電材料, 室温超伝導物質, スピントロニクスデバイス材料, 太陽電池などの開発・研究が日進月歩で進められています.

本発表では, 光電子分光法を主な実験手法とする登壇者の立場・研究内容から観た, 物性物理学が見え据える"未来"と"現状"について簡単に話そうと考えています. 未来を変えるかもしれない物質を"実際に手に取って実験できる"という物性実験の魅力を, 少しでもお伝えできれば, と思います.

「図形の大域不変量とその局所化ー Spinc 多様体上の Dirac 作用素について」

図形 (空間) について研究する一つの方法に, その大域的な位相不変量を計算する, という方法があります. 例えば球面の上に三角形を書いてその表面を埋め尽くしたとき, その (頂点の数)-(辺の数) + (面の数) という数を計算すると, その数は必ず 2 になります. この数は Euler 数と呼ばれる不変量の一種で, 球面を曲げたり潰したりしてもその値が変わらないことから, 位相 (トポロジー的な) 不変量と呼ばれています.

1960 年代に指数定理と呼ばれる大定理が証明されました. これは図形の上のある種の微分作用素から定まる数と, 上のようにトポロジー的に定まる数が一致する, というもので, Euler 数のような位相不変量の研究に (図形の研究に) 解析的な手法が有用であることがはっきりと示されました.

私は図形の上のある種の微分作用素を図形の一部に局所化する手法について研究しています. これによって図形の大域的な不変量の情報がその一部の情報に局所化されるため, 不変量の研究に新たな道が開かれることが期待されます. 今回は図形の不変量の研究について, 古典的な話題から現在行われている様々な研究まで, 私自身の研究も含めてお話しできればと考えています.

「新粒子探索ーヒッグス粒子のその先にー」

最近「ヒッグス粒子発見」「ノーベル章はヒッグス粒子」というニュースで話題になった「ヒッグス粒子」.

ヒッグス粒子とは, 物質の最小単位であると考えられている「素粒子」のうちの一つで, ヨーロッパで行われている LHC 実験で発見されました. では, そのヒッグス粒子はどのようにして発見されたのでしょうか? またヒッグス粒子を発見したら素粒子物理学は終わりでしょうか?

LHC 実験では陽子と陽子を加速して衝突させ, 衝突後に出てくる素粒子の種類やエネルギーを見ています. これにより, ヒッグス粒子が生成されたのか, 未知の粒子が生成されたのかなどを調べています.

また, ヒッグス粒子の発見で素粒子物理学の全てがわかった事にはなりません. 理論的な研究から, 未だ発見されていない「新粒子」が予言されています. LHC 実験では更なる新粒子の発見に向けた実験と, 多くの理論的な研究が行われています. 新粒子を発見するには闇雲に探すだけではダメで, 多くのゴミとなるような事象から, 新粒子に値する事象を選び抜かなければいけません.

これらの「新粒子探索」という素粒子物理学の最先端について, 理論的側面から最新の結果を交えつつお話したいと思います.

物理としては物性理論専攻に相当する研究をしているが, 上記のような殊勝なことなど一度も考えたことがない方の市民だった. 面白そうだし時間があったら行ってみよう.

松崎拓也, 岩根秀直, 穴井宏和, 相澤彰子, 新井紀子諸氏による論文『深い言語理解と数式処理の接合による入試数学問題解答システム』

本文

松崎拓也, 岩根秀直, 穴井宏和, 相澤彰子, 新井紀子諸氏による『深い言語理解と数式処理の接合による入試数学問題解答システム』という論文が出たとのこと. 冒頭部を引用してみよう.

あらゆる数学のオブジェクトは Zermelo-Fraenkel の公理的集合論 (ZF) の (保存拡大の) 項だと考えることだできるので, ここでいう「計算」とは ZF の項の書き換えだと見做せよう. では, その計算をどこえめるべきか. 即ち, 問題文の直訳である項を, それと同等であるような無数の項のうちから, どのようなものに書き換えれば問題が「解けた」ことになるのだろうか. それを考えるヒントは, 解答群の中に見いだすことができる. 大学入試を例にとると, 証明問題以外では, 解答に現れるのは, $y = 2ax - a2,(x < 0 \to a = 3) \wedge (x ≥ 0 \to a = 5)$, $a_1 + · · · + a_n >0$ のような限量記号をひとつも含まないような式である. しかも, その式は, 実閉体の理論に三角関数や指数関数などの超越関数をシンボリックにしか利用しないような拡張を行った実閉体の体系 (拡張 RCF) に弱いペアノ算術の体系を加えた体系 ($\mathrm{RCF}^{+ }+\mathrm{PA}$) で表現されるようなものにほぼ限られる. また, 模範解答に現れる式も, 実は $\mathrm{RCF}^{+ }+\mathrm{PA}$ で記述可能な式が圧倒的に多いことに気づく. となれば, 問題文を同等の $\mathrm{RCF}^{+ }+\mathrm{PA}$ の式に変換し, その式から限量記号を消去することが, 大学入試の数学問題を「解く」ことだと考えてもよいだろう.

この先の細かい部分はほぼ何を言っているのか分からないが, 試み自体がとても面白い. こんなこともやっている人がいるのか. 楽しい.

Leray の Biographical Memories

本文

Leray の Biographical Memories というのを見つけた. あとで読むのと適当に共有するため, とりあえず記事にする.

自然言語処理は独習が難しいらしいが数学は気楽っぽい印象があるので皆も数学をしよう

本文

人文系の方が計量言語学とか自然言語処理的なアレをやるのは結構大変らしいという情報を小耳に挟んだ. これとかこれとかこれとか.

む, 人文系の 4 年生の方から, うちの研究室を受けたいという相談. NAIST と違ってうちは基礎科目がなく, プログラミングができないとどれくらいきついかよく分かってきたので, ちょっと悩む. . . 来年は, 相当簡単なところからプログラミング勉強会をやり, 毎回提出してもらえばなんとかなるかなぁ

人文系でなくても, 情報科学の基礎知識がなく, 一から勉強したいと思っている人は, NAIST をお勧めしますよ. 他の大学は, 一から勉強するシステムになっていないので, 自分でなんとかできる人でないと, 正直厳しいと思います. NAIST は同じ境遇の人も多いので, 同期に助けられますし. . .

いわゆる文系出身で NAIST に進学した同期たちと, 軽々と宿題をこなす理工系出身の同期を横目に文字通り泣きながらみんなで徹夜して課題を解いたり, 励ましあってなんとかあの 1 年を乗り切ったので, 正直一人であれが乗り越えられるとは思えない. . . 吐き気がするくらい, 毎日勉強したし. . .

自然言語処理は独習が難しいということらしい. 何を以ってして「独習が難しい」とするかによると思うのだが, 数学は結構気楽な感あるので皆も数学をしよう.

GeoGebra で遊んでみたい

本文

GeoGebra の話がまた出ていた. 前も紹介した覚えがあるが, こういうのは何度紹介してもいいだろう.

こういう使い方もあるんですね. 「 GeoGebra がすばらしい」 http://kyane.net/2013/11/geogebra/

私も遊んでみたいとは思っているのだが.

「科研費, まだ良く分からないけど, これが落とせるか落とせないかのボーダーだと考えている」

本文

何かと思ったが爆笑した.

科研費, まだ良く分からないけど, これが落とせるか落とせないかのボーダーだと考えている http://p.tl/fTn1

@tsurunokaraage 無理じゃね…

@SO880 #はい

科研費で落ちる作品をプロデュースする方の P になれるよう, 粉骨砕身していきたい.

研究室を選ぶ基準としての研究費問題とか学振とか

本文

研究室を選ぶ基準としての研究費という問題が指摘されていた.

これから研究室を選ぶ学部生のみなさん. 知ってるかもだけど, 科研費データベースというのがあって, 教員の名前で検索かければ, 研究費がどれだけあるか, どのような研究で研究費を取得しているかがよくわかります. 参考にしてください. http://kaken.nii.ac.jp/

特にドクターに行く学生には学振も問題だろう. そうした所も見ると楽しそう.

今年うちで出していた学振特別研究員 DC1 三人, DC2 一人の申請は 全勝で通りました. (10/17/2013)

河東研, やばくて爆笑する.

読み方が分からない外国人名の発音を検索できるウェブサービス「Pronounce Names」: まだ Nachtergaele の発音はない

本文

読み方が分からない外国人名の発音を検索できる「Pronounce Names」というサービスが始まったらしい.

[ウェブサービスレビュー] 読み方が分からない外国人名の発音を検索できる「Pronounce Names」 http://japan.cnet.com/news/society/35040025/ @cnet_japan さんから

記事からも引用しておこう.

また, ユーザー自身が音声ファイルをアップしたり, マイクで録音するためのインターフェースも用意されており, これらの正誤についてユーザーから報告できる仕組みも整えられている. それゆえ人名によっては異なる発音が複数収録されている場合もあるが, 幅広い名前を考えうるだけのパターンで網羅し, なるべく正しい発音を収録しようとするコンセプトが伝わってくる.

対応しているのはおもに英語圏の人名だが, 掲載されているリクエストを見る限りではラテン系やアラブ系の人名も多く, 実際に検索してみてもきちんと対応しているケースが多い. リクエストがあった人名をユーザー同士で補った結果, ボリュームが膨らんで現在に至ったようだが, それゆえデータベースとしては価値が高い. プレゼンテーションやスピーチ, 商談, 会食など, 外国人の名前を発音する必要があるさまざまなシチュエーションにおいて, 強い味方となってくれるであろうサービスだ.

いつも発音を忘れてしまう Nachtergaele を検索してみたが, なかったので号泣している.

追記

dif_engine さんに別の方法を教えて頂いた.

土屋昭博述, 中井洋史記, 近代ホモトピー論 (1940 年代から 1960 年代まで)

本文

立川さんのツイート越しに美少女でなる小泉さんによる土屋昭博先生のホモトピー論講義のアレがあったので共有しておく.

こんな講義録があったんですね: http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/publication/documents/2008tsuchiya.pdf RT @koizumi_fifty 土屋先生のご講演『近代ホモトピー論 (1940 年代から 1960 年代まで) 』の pdf が非常に面白いので, 某氏や某氏はぜひ一度読んでおくのがよいと思います.

どこだか忘れたが, 深谷賢治先生の何かの共形場に関する文章で「以前ホモトピー論を専門にしていた土屋と A (名前を忘れた) が, その後 20 年を経て共形場で再び出会ったことは偶然ではない」みたいなのがあった. ホモトピー論と共形場の結び付きが云々みたいな話があるのか, と思った覚えがある.

この深谷先生の発言 (文章) について何かご存知の方は是非教えてほしい.

追記

コメントで教えて頂いた.

初出:『数学のたのしみ』第 2 号 (1997 年 8 月), 上野健爾・砂田利一・志賀 浩二編 『現代数学の土壌-数学をささえる基本概念』に 収録の「ホモロジー」の論説の脚注 (22) でしょうか?

引用: かつてともに代数的位相幾何学を研究した, G. Segal と土屋昭博が, 20 年後の ICM 京都で 今度は, 共形場理論の専門家としてまみえたのは, 理由があることであろう.

有り難いことこの上ない.

超準解析のプロである魔法少女に超準解析で超関数がどうなるかについて聞いてみた

本文

超準解析のプロである魔法少女とのやりとりを記録していきたい.

大学入ってから運動量は酷使するものの力積使ったことないのだがアレはいったい何だったのだろう

@phasetr デルタ関数の近似ということにしておこう

@functional_yy ふと思ったのですが超準解析でδ関数はどういう扱いになるのでしょうか. 超準解析的には普通の関数と思えるのか的なアレです

@phasetr この辺り詳しくはないのでよく知りませんが, 例えば幅無限小高さ無限大で掛け合わすと 1 のパルスを考えれば望みの性質は得らます. http://planetmath.org/constructionofdiracdeltafunction

場の量子論で赤外発散という現象があるが, その数学的解決には「場の量子論版の超関数」が必要だと思っている. 作用素環上の状態の空間でとりあえず定義はできるのだが, それを確率論 (経路積分) でいうとどうなるか, 最近は特に表現論的にもう少し突っ込むとどうなるかというあたりをスピン-ボソンモデルで計算している. 代数解析的なアプローチではどうなるかというのは考えていたが, 超準解析的にどう見えるか考えてもいいかもしれない.

『古都がはぐくむ現代数学 京大数理研につどう人びと』なる本が出版されるらしいので出たら買う

本文

『古都がはぐくむ現代数学 京大数理研につどう人びと』なる本が出版されるらしい.

「超函数の理論, abc 予想, ……京都の数学研究所を舞台に, 日本の数学者たちが新たな数学を生み出す現場を生き生きと描く」 →内村直之『古都がはぐくむ現代数学 京大数理研につどう人びと』日本評論社 http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784535787445.html

何これ. 超ほしい. 出たら買う. まだ買っていなが, IHES のもほしい. アレ, 確か Frohlich がいるのだ.

美少女であるところのひさこさんを確率的な意味で善導してきた

本文

これは美少女であるところのひさこさんを善導したその記録である.

確率論とそれる方向に向かっている方のひさこさん.

@ml_hisako 何やってるんですか

@crobert_z フーリエ解析です.

@ml_hisako 測度のフーリエ変換とかあり, 分布周りの大事な話があり, ガウシアンとの関わりも強いのでそれていない説

@phasetr なるほど. ありがとうございます!

@ml_hisako http://ja.wikipedia.org/wiki/特性関数_(確率論) この辺見ると, 特性関数は定義そのものにフーリエ変換を使っているのが分かります. また確率論の基本的な対象, ガウシアンはフーリエ変換と相性がいいのですが, そういうところで陰に陽に使います

@ml_hisako さらに言えば, ブラウン運動を基礎にした確率積分でもやはりフーリエ変換は適宜使いますし, フーリエ変換発祥の地, 熱方程式を解析するときにも Feynman-Kac の公式という確率論の金字塔もあるので, フーリエはやっておいて全く損はない話です

@ml_hisako むしろ, 色々なものが色々に絡んでいくところこそ面白いところなので, あまり確率論に関係なさそう, という理由で他の数学を避けたりしないようにしてほしいくらいです. 確率論からの共形場理論でウェルナーにフィールズ賞が出ていますが共形場は他の数学との相互作用があります

@ml_hisako 前ブログにも少し書きましたが, 数論と関係ある部分もありますし, 確率論の射程も広く深いです

@phasetr なるほど…最近, 勉強してるうちに違う事もやりたいけれど確率論をやりたい気持ちが強いのでやっぱりそれに基軸を定めてやるなのかと疑問に感じました. でも市民さんからアドバイスをいただき, ほかの数学も避けずに学びたいと思いました. (続く)

@phasetr 伊藤清の確率論の 1 巻を調べてみたら特性関数の章でフーリエ変換を定義してました. Poisson 分布を考える際にも必要なんですね. この章をまだ勉強してませんでしたがフーリエ解析の大切さも理解できました. http://pic.twitter.com/0iobVWGWmf

@ml_hisako ついでなのでもう少し色々書いておくと, 例えばフーリエ解析は表現論と深い関係がありますが, 大雑把に表現論とフーリエの交点に調和解析という分野があります. この分野に確率解析を持ち込んで画期的な仕事をしたのが東大数理の新井仁之先生です

@ml_hisako また伊藤清自身がはじめた分野として確率微分幾何というのもあります. ささくれパイセンがこの辺に進もうとしているようですが, 20 世紀数学の金字塔の 1 つ, Atiyah-Singer の指数定理の確率論的証明という話題もあります

@ml_hisako これや量子力学・場の量子論と深い関係がある話ですが, (偏微分) 作用素を積分核を使って表示することで作用素を詳しく解析する手法としての経路積分 (Feynman-Kac 公式) というのがあり, 作用素論との関わりもあります

@ml_hisako 私が知っている範囲で考えるだけでもこれだけの広がりがある分野です. 元々応用から出てきた分野なので, 統計学まで含めて応用向きの話も数限りなくあります. 確率に限りませんが, 何をやっていてもそれる方が難しいでしょう

@phasetr 確率論がこんなに広がりがあると知り, 改めて学びたいなと思いました. 貴重なお話ありがとうございます! また色々教えてください!! 私も勉強して身につけたいです.

数年したら逆に色々教えてもらえるようになるはずだ. 楽しみに待っていたい.

男性・理系が論理的とかいう妄言はどこから湧いて出てくるのだろう

本文

何か時々男性理性的で女性は感情的であり, 理系は論理的文系は情緒的でありとかいう異常者を見かけるのだが, 私の感覚で言えば理学部, 特に物理学科・数学科の人間の方がよほど感性だけで生きている. その様子をまとめておいた.

理系が論理的とかいう妄言, どこから湧いて出てくるのだろう.

追記

感性の赴くままに生きていると思っていたので, 非常に衝撃的なコメントだった.

数学のできるイケメンエリートの育成は急務である

本文

女性の望みと男性の対応, それに対するさらなる女性の対応というのが Twitter でネタになっていたので便乗した.

■女子の望み 数学のできるイケメンエリートを出せ ■男子の対応 数学が出来ないので曖昧な笑顔でごまかす ■女子の反応 人人人 人人人人

線型代数で殴打< YYYYYYYYYYYYY

数学のできるイケメンエリートの育成は急務である.

愛情の表現論とは

本文

しょうもない話だが, 愛情表現というツイートを見かけて次のようなことを想起した.

愛情表現, 何のというかどんな表現なのだろう

@phasetr ほしい物リストの中からプレゼント

@sulaymanhakiym すみません. 私が言っていたのはこの意味での表現です

@phasetr この手の文章は漢字の読みなどは問題なく読めるところから, 確実に素人を殺しにきます.

@sulaymanhakiym @phasetr 表現論は誰でもわかる!

もちろん群の表現とかの意味での表現を考えていた.

コンパクトの訳語, 完閉やら緊密というのがあったようだが何故使われなくなってしまったのだろう

本文

コンパクトの訳語は何かあるのだろうかというツイートをしたら色々教えて頂いた.

いまふと思ったのだが, コンパクト, 日本語に無理やり訳すとするとどうなるのだろう. 昔何か無理やり訳していたりしてそのときの訳語とか何かないの

@phasetr 完閉と読んでいたという話を何人かの先生から聞いたことが

@ysgr_sasakure !!!感謝感激雨霰!!!

@phasetr 緊密と言う訳もありますね

鍵アカウントなので直接の引用は控えるが, 「立花俊一, リーマン幾何学, 朝倉書店では実際に完閉と書かれている」という事も教えて頂いた. 何で使われなくなったのだろう, というのも気になる. どう調べればいいのかよく分からないが数学史でこういう言葉の定義や変遷とか調べるのも面白そう.

Ian G. Macdonald の Hypergeometric Functions I, II が arXiv に出た: II は q-analog

本文

私は全く知らなかったが, その筋では有名だったらしい Ian G. Macdonald の Hypergeometric Functions I, II が arXiv に出たとのこと. これこれだ. II は q-analog でその筋にはとても貴重な文献らしい.

本文が 3 行, 5 行の論文があるという

本文

かもさんのファンキーなツイートを見た.

本文がたったの 5 行の論文. http://forumgeom.fau.edu/FG2011volume11/FG201105.pdf

本文がたった 3 行 (参考文献を除く) の論文. http://forumgeom.fau.edu/FG2011volume11/FG201106.pdf

それぞれ, Jo Niemeyer の A Simple Construction of the Golden Section, Michel Bataille の Another Simple Construction of the Golden Section だ. 大体からしてこんなのが論文になるの, という感じすらあって衝撃を受ける.

「いい数学書とは, 初等的な例が多く載っている本である」なんて聞いたことがない

本文

Amazon 書評で衝撃の意見を見た.

http://www.amazon.co.jp/review/RN778JMC1RCXH/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8&ASIN=4785314044&channel=detail-glance&nodeID=465392&store=books 【どこかの文献で, 「いい数学書とは, 初等的な例が多く載っている本である」と読んだことがあるが】聞いたことがない

特に初学者向けの本ということなら初等的な例もある程度載せた方がいいが, 大事なのは面白い例やきわどい反例を議論することだろう. 大事な例に関しては 1 章まるまる割いて議論してもいいくらいだし, 実際そういう本もよくある.

とにかくこんな話は聞いたことがないのだが, どの文献にどういった形で書いてあったのか非常に気になる.

Twitter で辻元先生の複素多様体論講義の言及があったので

本文

Twitter で辻元先生の複素多様体論講義の言及があったのでちょっと呟いてみた.

辻先生の複素多様体論講義, 進度自体もめちゃくちゃだが話題の豊富さもやばい. きちんと読んではいないが. 勉強する本ではなくこんな進展があるのか, という感じで概観するのにはよさそうなというかそれしかない感. 引用されている Demaily の PDF とか読んだ方がいいのでは説

@phasetr なんのシリーズですか…??

@waheyhey サイエンス社のやつです http://www.amazon.co.jp/dp/B009M8UX94 Demaily のはこれ

@eszett66 @phasetr 小林複素幾何とはまた別のことが書いてある感じですか?

@waheyhey @eszett66 アレよりももっと解析的です. たとえば調和積分の楕円型作用素の話が書いてあったり L^2 評価式とか書いてあります

@eszett66 なるほどー. 今度書店か図書館でみてみます!

@phasetr か, 解析…

@eszett66 よ, 読んでみます

この本は複素幾何のトピック集みたいな感じもある. 分量の割にトピックが豊富なのでその分 1 つ 1 つの記述は薄いのでこれで勉強するのはかなりつらそう.

H. M. エンツェンスベルガー, 岡本和夫著『数学者は城の中?』

本文

『数学者は城の中?』に関する書評があった.

H. M. エンツェンスベルガー, 岡本和夫著『数学者は城の中? 』読了. 1998 年の国際数学者会議で行われたエンツェンスベルガーの講演と, 岡本先生のエッセイ. 数学関係者はうなずく内容なのではないでしょうか. 数学嫌いの人にも面白いはず. なんて思っていたら, あれ, 岡本先生? (S)

Amazon を見てみると, オリジナルは独英対訳本らしい. ドイツ語の復習も兼ねてそちらも読んでみたいところだが, 和訳の方は岡本先生の文章もあるという. どちらを買おうか悩む方の市民だった. ちなみにこの岡本先生は以前 Paul が「月光仮面世代の和夫ちゃんは, その辺はわからないっす.」と言っていた岡本先生だ.

加藤文元, 廣中クローン説

本文

加藤文元さん, 廣中先生のクローン説があるらしい.

ブンゲン先生は広中先生のクローン説は良い思い出 http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/ikite/ik091215.html

@yagi2013 3 つ比べると モリキ~ヒロナカ~~~ブソゲソ という位置づけのような気がします

"@yagi2013: ブンゲン先生は広中先生のクローン説は良い思い出 http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/ikite/ik091215.html" 比較の対象がスゴい人過ぎる…森毅先生も…

写真が見当たらないのだが, 早稲田の小松啓一先生も廣中先生に似ている気がする. 特に私が把握している限りの廣中先生の昔の髪型と小松先生の髪型が.

全く関係ないが, 学生時代に廣中先生からサインをもらったことを想起した. ちょうど先日整理していたら発掘した.

ドイツで数学したい

はじめに

8 月はドイツにいたいというアレを見つけたのでちょっとお話した.

引用

8 月はずっとドイツとかで過ごしていたいのだけど, そういう都合の良い研究会はないだろうか?

@AHD21 オーベルヴォルバッハとか. 何があるのか, やっているのか全く知りませんが

@phasetr 初めて聞きました. 調べみましたが, 滞在型研究施設という感じの所でしょうか. 自然に囲まれていて良いですね.

@AHD21 数学の方では有名です. 当然私は行った事無いですが, 環境的にお知り合いにそこに行った方をたくさん見つけられると思うので, そちらに相談してみるといいでしょう. 私も行ってみたかった

@phasetr ありがとうございます. 僕の興味に近い研究会も行われているようなので, 今後アンテナを張っておく事にします.

今ツイート見たら派手にタイポしていて泣いているが, Oberwolfach というのはこれだ. 一度は行ってみたかった.

3 ヶ月ごとに論文書かないと

本文

号泣した.

論文の謝辞が, アニメキャラになる時代か. 3 か月ごとに論文書かないといけないなあ.

論文: Garity-Repovš の Inequivalent Cantor Sets in $R^{3}$ Whose Complements Have the Same Fundamental Group

本文

まだ読んでいないのだが Cantor 集合の補集合の基本群を計算してガチャガチャやる論文が出たそうだ. 相変わらずの kyon_math さん情報であった.

Inequivalent Cantor Sets in $R^{3}$ Whose Complements Have the Same Fundamental Group. http://arxiv.org/abs/1307.8111

えー? カントール集合の補集合の基本群だと? そんなの考えたこともなかった. すげー. http://bit.ly/15aQCyh

これを読む時間, いつ取れるだろうか.

東大の Todai Research なるページがあった

本文

寡聞にして知らなかったのだが, Todai Research というページがあった. 未発見の素粒子がトポロジカル絶縁体で活躍, 強磁性を保ったまま金属から絶縁体に相転移するしくみを解明などはかなり気になる. 数学のネタもある, または上がってくるはずなので, 注視したい.

他の大学でもあるはずだし, 個人的に北大数学, さらに強く新井先生の動向は気になるのでこう色々とアレ.

2021-06-14 台湾人の謎の数学動画

『不完全性定理は, 一体, どんな成果をあげてきたのだろうか? と素朴な疑問が浮かんでしまう』

本文

号泣した.

【しかしながら, 技術者である私には, 華々しい成果をあげた量子力学と相対性理論に比べてみると, 不完全性定理は, 一体, どんな成果をあげてきたのだろうか? と素朴な疑問が浮かんでしまう】 http://sakuraimac.exblog.jp/19237670

何で数学と物理比べているの, とか地獄の底から這い上がってきたような意見に目も眩む方の市民だった.

江田 bot

本文

patho_logic さんによる次のようなツイートがあった.

本人知ってると破壊力がすごい.

これは江田 bot のツイートを受けての呟きだ.

私は背理法は大好きですよ.

江田先生を良く知らないのでアレなのだが, どう面白いのかすごい興味ある.

やっぱ特異点だべした!

感動した.

一ノ瀬さんからのご要望に応えて: 数理物理って何?

数学から見た数理物理

本文

一ノ瀬さんから次のようなご要望を頂いた.

@phasetr 最近少し数理物理に興味があります. 具体的にどんなことしてるのか知りたいです… あと解析力学と量子力学とか, 分野間にどんなつながりがあるのかとか知りたいです. と, 注文が多くてすみません (~_~;)

コメント

ということで色々書いてみる. まずは数理物理について適当に色々書いて, その後, 知る限りの物理の分野間の繋がりについて書いていきたい.

まず数理物理だが, あまりかっちりした意味があるわけではなく, 結構適当な使い方をされていることに注意してほしい. 人によって意味が大きく変わるので, まずをそこを説明する. 私が見た範囲での話であって, 人によって大きく意味が変わると言った以上他の使い方をしている人もいるかもしれないので, その辺も考えて読んでほしい. むしろ違う使い方などあれば教えてほしい.

大きく分けると次のような感じになる.

言っている人 実際の意味
数学者 (物理が元ネタの) 数学
-------------- ----------------------------------------------------
物理学者 (物理が元ネタの) 数学
当人は物理と思っているが傍から見ると数学
数学者も認めるレベルで数学的にきちんとした理論物理
数学色が強い理論物理 (数学的に厳密ではない)

数学者が「数理物理」と言っていたらそれはただの数学だ. いいとか悪いとかそういう話とは関係ない. 物理学者が考えている問題を数学的にきちんと考えてみたら数学的にも面白い, という程度. 神保道夫先生のソリトンの本に「専門は数理物理」と書いてあったが, こういう意味だと考えていい.

物理学者と興味がかぶる部分はもちろんあるが, かと言って完全に重なることは基本的にない. 数学者は数学者だからだ. 最近は超弦関係でこういう話が多いが, もう少し古い話では微分方程式関係がこの感じ強い気がする.

よく「現象が実際にあるから微分方程式に解があるのは当たり前で下らない」とかいう, 物理として考えて気が狂っている発言をする社会性溢れる者がいるが, 極端なことをいうとこの辺: 物理学者からしたらあまり興味のない話でも数理「物理」と言ったりするし, むしろ大抵これ, と印象. 興味の向きがあくまで数学なので, 基本的に数学者の言う数理物理は数学であって物理ではない. ちなみに, 以前河東先生が「物理の人に『数理物理と物理を名乗るなら何か意味のある数字出してみろ』と言われて凄く困りました」と言っていた.

念のために何故「現象が実際にあるから微分方程式に解があるのは当たり前で下らない」が物理として狂っているかを書いておく. 微分方程式を立てた (現象をモデル化した) からといって, そのモデルが本当に自然を適切に表現できている保証はない. 例えば現象として明らかに拡散なのに波動方程式が出てきたらそのモデル化はおかしい. 素粒子で適切な対称性を持つべきモデルなのにはじめから Lagrangian の対称性が壊れていてもいけない.

単に方程式を見ただけではそれが現象を記述できている保証がどこにもない. 数学的に解があるとかないとかいう以前の問題で, 特に研究フェーズなら物理として真剣に考えるべき問題だ. また, 仮に物理として適切なモデル化であったとしても, 解を持つかといった純粋に数学的な話とは何の関係もない. 少なくとも一時期, 場の理論で発散の困難などと言われていた話では, 解 (基底状態) の存在が本当に問題になっていたので, 物理として解の存在が非自明なことは実際にある.

こういうこと言う人, 自分の立てたモデルはいつも必ず現実を適切に説明できているという全幅の信頼を置いているのだろうか. 頭おかしいとしか思えないし, 実際おかしい. 「物理ではいちいち解の存在まで考えない」ということなら分かるが, それならそう適切な表現を使うべき.

別件だが, 以前宇宙論をやっていた友人が「論文読んで研究室のゼミで発表したら『そのモデル, 解がないこと分かっているからやっても意味ないよ』って言われて愕然とした」というようなことを言っていた. この辺の意味や真偽について久徳先生に聞こうと思っていてずっと忘れている.

脱線しまくっているが, 数学者のいう数理物理は数学ということだ. 一方で物理学者のいう数理物理はバリエーションがある. 次回はそれについて書こう.

ラベル

数学, 物理, 数理物理

物理から見た数理物理

本文

まずは分類を再掲しよう.

言っている人 実際の意味
数学者 (物理が元ネタの) 数学
-------------- ----------------------------------------------------
物理学者 (物理が元ネタの) 数学
当人は物理と思っているが傍から見ると数学
数学者も認めるレベルで数学的にきちんとした理論物理
数学色が強い理論物理 (数学的に厳密ではない)

今回は物理学者のいう数理物理について書いていきたい.

まず数学者と同じで「物理が元ネタになっている数学」という程度の意味で使う場合がある. 何となく超弦関係で「 (現時点で) ほとんど実験にかけられないような話で, 物理的な正当性を確かめづらいところで物理というのはどうなの」的な文脈で多少否定的な用法が多い印象. あと「物理ではないが (数学としては) 面白い問題ではある」という物理学者の意見表明にも使われることがある印象.

思い出したが, Gottingen の物理にいる Buchholz という代数的場の量子論という数理物理分野の有名人がいる. 河東先生が「彼は『お前のやっていることは物理ではないと言われて, 自分は物理学科ではいじめられている』と言っていましたが, それはそうでしょう. 彼がやっていることはスタイルから中身まで数学ですよ」と言っていたので爆笑した. そういうレベルで数学的にガチガチにやっていても物理を自称する人もいる. この辺は「当人は物理と思っているが傍から見ると数学」と言えそう. Buchholz と並べると即死レベルのアレだが, 私も多分この辺.

「数学者も認めるレベルで数学的にきちんとした理論物理」だが, Lieb や学習院の田崎さんあたりは比較的この辺ではないだろうか. 物理としても面白い結果をきちんと出している (であろう) ことを前提にしている. Lieb くらいでも数学の人で「彼は修士くらいの学生でも知っていることを知らなかったりする」という発言を聞いたことはある. 私は Lieb の興味は基本的に物理だとは思っているが. 物理としても意味があって数学的に制御できることというの, 私が近い分野では非常につらくて, 強磁性の Hubbard モデル関係くらいならぎりぎり何とかなるのでは, という感覚. 田崎さんを挙げたのもその辺の兼ね合いがある. スピン系だと物理の方が遥かに進んでいる印象はあるが, スピン系の連続極限からの共形場ということになると, むしろ数学的色彩が極めて強くなるという印象はあるもののその辺の物理自体をよく知らず数学からの話ばかり目にする方の市民だったので詳細不明.

数学的に厳密ではないが数学色が強い理論物理, 大体超弦を想定している. 他に何かあるだろうか. よく考えたら「数学的に厳密ではないが数学色が強い理論物理」という一文自体よく分からない.

前もつどいのときに少しお話したのだが, 物理を数学的にきちんとやるというのはもの凄く大変で, 分野によっては本当に何もできない. もちろん私が近いところしか知らないが, 何とかなるところはスピン系とか Hubbard など格子系での相転移くらいではなかろうか. 量子力学・量子統計力学からの物質の安定性は数理物理というか Lieb 周辺しかやっていないようで, その辺は私は物理的にも極めて大事な研究だと思っているが, 純粋な物理の人がどう思うかはよく分からない.

あまりろくな話を書いていない気がするがとりあえずこんなところで.

追記

次のようなご感想を頂いた.

数理物理って物理から逃避したくなった時にやる数学のことじゃないの? http://phasetr.blogspot.jp/2013/12/blog-post_19.html

いいとか悪いとかそういう話ではなく「数理物理」というのはこういう (否定的な?) 使い方もされることがある. 数学だからといっていつもいつでも厳密な言葉の使い分けをしているわけではない. 「可積分系」などもかなりふわっとした使い方をする. グレンラガンのカミナの兄貴のように「お前の信じる数理物理を信じろ」という感ある.

ラベル

数学, 物理, 数理物理

数学は何故役に立つように見えないのか? 動画つき

概要

はじめの注意

吃音があるので聞き取りづらいと思います. 予めご了承ください. 最低限話したいことはスライドに書いています.

軽く自己紹介

  • ふだんは会社員.
  • 学部で物理, 修士で数学をやっていた.
  • 大学を出てからも数学や物理の勉強・研究, 情報発信を続けている.
  • DVD や本を書いて Amazon で売ってみたり,
  • 無料・有料含めて通信講座作ったり.
  • お坊さんではない.

設定

  • この場にいる人, メルマガ読者のうちで数学に対してゆるめの人たち向け.
  • この場じたいはビジネスのコンテンツ制作実践会: 数学嫌いな人さえいる場.
  • こんな人達を相手にこんなコミュニケーションを取っていますよ, という事例紹介・自己紹介.

ポイント

  • 数学はふつうの感覚だと「見えない」し「感じられない」.
  • ならば何を見せ, 何を感じてもらうのか?
  • 実際に私が何を考えどう行動しているのか?
  • 私という人間の行動を通じて数学を見て・感じてもらう.
  • 数学という異世界を私のフィルターを通して見せていく.

数学を役に立たないように見せているモノ

「数学が何の役に立つんですか?」

  • 注目したいのは, 何の役に立つかを説明することよりも, なぜ役に立つように見えないのかという問題.
  • 私の世界観からすると, いちいち説明する必要もないほど現代社会は数学に満ち満ちているから.
  • そこのギャップを何をしてどう埋めていくか?

社会の雰囲気

  • よく知らないのになぜか役に立つと思われているモノはある.
  • 直接見えないし感じられるわけでもない.
  • 何か思いつきますか?

これを見たことありますか?

  • プログラム.
  • 数学同様, 理解している人は少ない.
  • 一方で役に立つモノという認識はあるっぽい.

注意

  • ここでの「プログラム」はソフトやアプリのように見えたり感じたりするモノではない.
  • その裏側で動いている存在.
  • プログラマがカチャカチャ作っている.

単なる雰囲気

  • 「みんなそう言っているから何となくそう思っている」.
  • 気分の問題, 認知の問題.
  • 「プログラマという職業があってプログラムを書いて役に立つことをしているらしい.」という社会の空気感.

雰囲気その2

  • おそらく, プログラマという技術者の有用性とは別に, 目に見えないプログラムやプログラミングスキルも役に立つと思われている.
  • ソフトやアプリではなく, 目に見えない裏側の存在としての「プログラム」.
  • 数学に対してはこういう認識がほとんどない.
  • プログラマが割とたくさんいることもポイント高そう.

1 つだけ例を

  • 電気で動いているものが身の回りに山程ある.
  • その裏にある電気やそれを作り出した電気工学の議論,
  • 物理, さらには数学が役に立っていると感じられるか?
  • この話にリアリティを感じるか?
  • 電気を見たときにその裏にある物理や数学を感じられるか?

感覚や雰囲気をなめてはいけない

  • 感覚が伝わっていないと全くコミュニケーションできない.
  • 見えている・感じている世界そのものが全く違うから真っ向から噛み合わない.
  • パソコンやスマホを触っているときに物理や数学を感じますか?
  • 実際に私はそういう感覚を持って世界と対峙している.
  • 「何の役に立つ?」とか言われても「遍く存在している」としか答えようがない.

何となくでも感じさせることの重要性

  • 筋トレしたら筋肉痛になる, 食を変えたら調子が良くなる.
  • 明らかな変化を感じてもらえる.
  • 数学はこういうのやりづらい.
  • どちらかというと精神世界の存在だから.
  • ではどうするか? どう感情にアクセスするか?

プログラムの実在感

  • プログラムはプログラマがカチャカチャ作っているイメージがある.
  • 人の動きとして見せている感じ.
  • ソフトやアプリのような形もある.
  • では数学ではどうするか?

「知らない世界を見せてほしい」

数学は見えづらいし見せづらい

  • だいたい目に見える世界の裏や裏の裏, さらにまたその裏くらいにいる.

パソコンでの例

  • パソコンは電気で動く.
  • 特に電気回路がある.
  • 電気回路に関する理論がある.
  • この理論が数学で書かれている.
  • 理論の式を見せればいいわけでもない: それだけで何がわかるわけでもないし何も感じられない.
  • 見せられても困るでしょう?

方向性は2つ

  • ドストレートな選択肢しかない.
  • クライアントの要望を聞くこと, 自分の趣味に突っ走ること.
  • 役に立つ実利系, 精神的充足を求める系.
  • もちろん適当な落とし所を狙う.

最近頂いたご意見

  • 中高数学の復習講座のアンケート回答: 子持ちの40代女性から.

『今回のコンテンツを見てどんなことを感じましたか?』

いろいろなところで数学が使われているのは普段目にすることはありません. 実際にこんなところでも使われているんだということがわかれば数学に対する意識が変わると思います. うちの子たちにも見せようと思います.

  • まずは相手の懐に入ってみる.

最近頂いたご意見その2

  • 50 代, 経済学部卒の男性: 「これに期待することを教えてください: 人類の叡智に触れることができるようになること.」
  • 60 代の方からのコメント: 「数学や物理を勉強したい理由: 真理の追究」
  • 数学・物理を扱っていると本当に「人類の叡智に触れる」とか「真理の探求」とかそういう目的が出てくる.
  • 生まれてこのかた「人類の叡智」とか「真理の探求」という言葉をど真面目に口にしたことありますか?

これを受けて何をしますか?

  • 実利系は素直に役に立つことをやればいい.
  • いろいろなところで数学が使われているから片っ端から全部コンテンツのラインナップを作ればいい.
  • 工学系は特にこのタイプ.
  • 問題は数学に対して精神充足を求めている人に何を提供するか?

再びアンケートコメント

  • 子持ちの40代女性から

「しかし, 小川洋子さんの書いた博士の愛した数式を読んで, 数学って美しいのかも, と興味を持ちました. だから, このような私でも数学がおもしろい, と思えるようなことを発信してもらえるとうれしいです.」

  • 50代, 経済学部卒の男性

「知れば知るほど知らないことが増えてくる世界を垣間見ている気分です.」

何となく期待されていること

  • 自分のいまの感覚を変えてほしい, 知らない世界を見てみたいという気持ち.
  • 「素人」サイドからすると「数学, やっぱり面白いんですよね?」というのを伝えてほしいらしい.
  • わかりやすさ, とっつきやすさは引き込むためのフック: 本丸はこの気持ちに答えること.
  • もちろんフックを馬鹿にしてはいけない.

私がずっとやっていること

  • 一つの方向性は「男の子の夢」.
  • 「人類の叡智」とか「真理の探求」とか一度は言ってみたい言葉の上位にランクインする.
  • 大事なこと: 人への憧れ.
  • 学者という存在は憧れになりうる.
  • ゲームでも味方で重要な情報を調べてくれたり何か作ってくれたりする.
  • 悪のマッドサイエンティストがいたりする.
  • 独特の世界観を持っていることもある.
  • 社会にこういう雰囲気がある.

現実感のなさと超越性

  • たいていの人にとって数学は感情を揺らす存在ではある.
  • それが嫌いという形であったとしても.
  • わかりやすく「意味がわからない」存在としての数学.
  • 「数学をやっている人は世界をどんな風に見て何を感じているのだろう?」
  • コンテンツとして具体的に自分の数学的世界観を見せてあげて, 世界観の変化を感じてもらう.

数学の世界を探険しよう

  • いま作っている通信講座も数学世界の観光や探険という視点を取り入れて作っている.
  • 私自身がそうやって数学や物理と向き合っているから.
  • わかりやすさとか役に立つとか, そういうフィールドで戦わない.
  • ただしクライアントに見つけてもらえるよう美味しそうにアジャストしよう.

かがく徒のつどいがあるのなら点群の話とかしたい

本文

化学徒のつどいなるものをやりたいという動きがあるようだ. この辺. MM2P と少しやり取りして, 私が敢えて参加するなら点群の話とかすればいいのでは, 的な話をした.

ただ, 困るのは数学部分はよくてもその化学への応用部分がさっぱり, というところだ. その話をしないと抽象論でだだ滑りする. MM2P に聞いたところ, そもそも化学方面でもろくな本がないことが問題らしい. 既約表現なども出てくるようだが, その応用上の意味もろくに説明がないような, 惨憺たる状況のようだ. その辺を埋めるべく何とかしたいとは思うのだが, どうしよう.

とりあえず何か本を読んでみて, どんなところでどう応用するかは化学の人に聞いてみて, こちらで整理をかけていくという感じしかないだろうか.

やはりこう, あまり誰もやらないようなところを突っ込んでいく異常者のメンタリティでやっていきたい.

ラベル

化学, 数学, 代数学

単位的環とその部分群に関する命題の (反) 例を作ろう

本文

やりとりが面白かったので.

去年の環論の演習で「単位的環 $R$ とその加法についての部分群 $S$ で, $S$ が $R$ の乗法で閉じていて単位的環となるが $R$ と $S$ の単位元が異なる例を挙げよ」という 問題を考えて少し悦に入っていたが零環でない環 $R$ と $S={0}$ をとれば明らかだった.

(昔, $R \to R \times R$, $x \mapsto (x, 0)$ について $\mathrm{Spec} \, (R \times R) \to \mathrm{Spec} \, R$ を とってしまうような間違いを 1 時間くらいしていて悩んだことがあったので……)

@nolimbre 2 次正方行列の環 $R$ と, $(1, 1)$ 成分以外 0 な部分加群 $S$ とか.

@nolimbre 「単位的環においては単位元と零元は異なるものとする」と 断ってあるのをなんかの教科書で見たような気がします.

@kyon_math @nolimbre そういう流儀もあると思いますが, 零環を許さないと, 空集合が affine scheme で無くなってしまう気もするのです.

@atomotheart @nolimbre いや, 単に「呼び方の便宜上の話」だと思います. 「本書では環と言えば単位的な可換環のことをさす」とか, その手の類いで, 定義として採用しているわけではない.

誤解を招くつぶやきだった

@kyon_math @atomotheart 零環を排除すれば一見楽に見えますが, 終対象なので, ないといろいろ不便ですよね. (テンソル積が一般にとれなくなる, それに伴ってスキームのファイバー積がとれなくなるなど) 僕は以前零環を軽視していて総ツッコミを受けました

@iwaokimura そういうのもありますね. (あまり関係ないですが, 初めて代数群の定義を見たとき「なるほど, 体を加法群とみたものなんかは代数群ではないんだな」と思ってしまいました).

@nolimbre @atomotheart 私が勤めはじめた頃, かなりお年を召した代数学の教授が 「零次元のベクトル空間なんて, そんなものありゃあせん」と主張して, 困ったことを思い出しました.

いまは何もかも懐かしい

@kyon_math @atomotheart そ, それは過激ですね…… ww

名前しか知らないが, 代数群恐るべし.

ラベル

数学, 代数学, 環論, 代数幾何

線型代数と表現論・圏論

はじめに

Twitter で保型表現と Galois 表現という PDF を見かけた. 中身は数論なのだが, その中で表現論や圏論, 線型代数に関する部分が面白かったのでそこだけメモしておきたい. 数論部分については分からないので, 触れない.

引用

長くなるが, 個人的に面白いと思った部分を引用しておこう. 面倒になったので引用しないが, 3.2 節にも線型代数と表現論ということで大事な記述がある. 興味のある向きはそちらも参照されたい.

引用その 1

より現代的な視点からは, 表現論の重要性は何と言っても理論の線形化にある. ブルバキはかなり早くから線形代数の重要性を強調したが, もちろん, 必ず体系的に解ける唯一の問題としての連立一次方程式, すなわち完全に信頼できる方法論としての 線形代数の強みは周知の通りであろうから, ここでは圏論的な視点を強調しておく. 線形代数 (体 $K$ 上の有限次元ベクトル空間の理論) は, 代数的構造の見通しのよい理解と操作のひな型となった. 圏論の方法は, ここの数学的対象 (集合とその元) を直接分析するよりも, それらの間の相互関係, つまり構造射の集合を理解しようとする. 共通の構造を持った対象の全体 (圏) という文脈の中に置くことによって, 個々の対象の役割, ひいては本質がよく見える, という考え方である. 古典的な数学的結果も, それが対象の具体的な表示の仕方に依存しない結果であれば, 圏の性質, あるいは圏と圏の間の関手の性質として表現することができる.

引用その 2

体 $K$ を固定し, $K$ 上のあらゆる有限次元ベクトル空間のなす圏を $(\mathrm{Vect}/K)$ で表すことにしよう. 圏 $(\mathrm{Vect}/K)$ の対象は $K$ 上の有限次元ベクトル空間であり, それらの間の射 (構造射) は $K$ 線形写像である. この圏の対象の同型類は, 次元という自然数の不変量で完全に決まる. つまり, 同型類の集合から自然数の集合 $N$ (0 を含む) への全単射がある. 各 $n \in N$ に対して $K^n$ (数ベクトル空間) という具体的な対象を構成でき, これらの対象への同型を決める (基底を選ぶ) ことで任意の対象・射の具体的な表示が得られる. 対象 $V$ から $W$ への集合は加法群の構造を持ち, 部分対象・商対象・核・像・余核・余像・準同型定理・直和・完全系列が定式化できる Abel 圏になる. さらに任意の短完全系列は分解し, 実際あらゆる対象は 1 次元の対象の有限個の直和に分解される (半単純性) . $K$ が代数的閉体ならば, 自己準同型射も直和分解 (対角化) されたものと簡単なベキ零元の和に書ける (標準形) . さらに内部テンソル積・内部 Hom ・双対対象が定義されるのでテンソル圏, とくに淡中圏になっている. これらの操作 ($\otimes$, $\otimes$, Hom, *) の他に, 対称積 $\mathrm{Sym}^n$ ・外積 $\wedge$ など, 対象から新しい対象を構成する標準的な操作がいくつか定義できる (強いて言えば, 対称群 $S_n$ の各表現に対応するベキ等元に応じて作られる) . 各対象 $V$ の自己同型群は一般線形群 $GL (V)$ であり, さらに各対象に最高次形式 $\wedge^{\mathrm{dim} V} V \cong K$ (行列式) ・内積・交代形式・エルミート形式などの付加構造を定義した圏を定義することもでき, それらの圏での自己同型群は特殊線形群・直交群・斜交群・ユニタリ群などの古典群になる. だいたいこの程度が, 数学科で学ぶ線形代数の全体であり, これで l $(\mathrm{Vect}/K)$ は完全に理解されたと感じられる. つまり, これ以上 $(\mathrm{Vect}/K)$ に関して解かれるべき問題はないようだ (これは驚くべきことかもしれない) . この $(\mathrm{Vect}/K)$ の理論 (線形代数) の, 数学を記述する方法論としての威力は絶大であった. 幾何学では位相空間や多様体の圏から $(\mathrm{Vect}/K)$ への関手 (コホモロジー理論) がいくつもの深い結果をもたらし, 空間上の関数の貼り合わせ (局所・大域原理) やベクトルバンドルの理論は, 開集合の圏から $(\mathrm{Vect}/K)$ への関手 (層) として記述され, 微分形式や多様体上の調和解析 (Hodge 理論) などの理論が見通しよく理解された.

引用その 3

さて, われわれのテーマの視点からは, $(\mathrm{Vect}/K)$ とは, 自明な群 $G = {1}$ の 有限次元表現のなす圏に他ならない. その意味では, 表現論とは線形代数の一般化である. 表現論が, 数学的理論を記述し理解するための言語として機能する所以がここにある. 一般に, 群 $G$ の, 体 $K$ 上の有限次元ベクトル空間への表現, すなわち $G$ の作用が定義された $( \mathrm{Vect} / K )$ の 対象のなす圏を $(G-\mathrm{Rep}/K)$ と表そう. この圏の射は, $G$ の作用と整合的な $K$ 線形写像 (表現の間の準同型写像) である. 繰り返すが, 自明な群は自明にしか作用できないから, 自然に圏同値 $({1}-\mathrm{Rep}/K) \cong \mathrm{Vect}/K)$ がある. そして, $G$ が有限群で $K$ が標数 0 の代数的閉体の場合, 上に素描した $\mathrm{Vect}/K$ の理論がほぼそのまま $(G - \mathrm{Rep}/K)$ の理論に一般化される, というのが, 有限群の表現論の基礎である. とくに, 0 と自分自身以外に部分対象を持たない既約な対象 (既約表現) が 既約指標 (共役類の集合の上の関数の空間の直交基底をなす) によって分類され, 任意の対象は既約対象の直和に分解すること (半単純性, あるいは完全可約性) が基本定理になる. 既約な対象はもはや 1 次元とは限らないが, その自己準同型は $\mathrm{Vect}/K)$ の既約対象 (1 次元ベクトル空間) と同じく定数倍のみである (Schur の補題) . しかし, この $\mathrm{Vect}/K)$ から $(G-\mathrm{Rep}/K)$ への一般化によって, 理論の構造的な操作に新たな自由度が加わる. すなわち, 群 $G$ を変えるという自由度である. 群準同型 $f : G \to H$ が与えられると, $H$ の表現は $f$ で引き戻すことで自然に $G$ の表現になるから, Abel 圏の間の加法的関手 $f^ : (H-\mathrm{Rep}/K) \to (G-\mathrm{Rep}/K)$ ができる. とくに $G$ が $H$ の部分群で $f$ が包含写像の場合は $f^$ は表現の制限 $\mathrm{Res}^H_G$ であり, その左随伴関手は表現の誘導 $\mathrm{Ind}^H_G$ である (Frobenius 相互律) . 単に一つ一つの準同型 $f$ による引き戻しを考えるだけでなく, あらゆる準同型 $f$, さらには剰余群 $G/H$, 直積群 $G \times H$ など群の圏におけるあらゆる操作に付随して, 異なる圏$(G-\mathrm{Rep}/K)$ たちの間の関手を考えることができる. このようにして, 群の理論が線形化される, すなわち線形代数の言語で記述される, いや線形代数という理論そのものの一般化として理解される. これが表現論の考え方である. 理論のパースペクティブがより高次になっているという意味で, 表現論は群論に従属するものではなく, 群論を発展させた理論であるという面がある. これから, 表現論による理論の記述の強みを解説していきたいが, その前にわれわれの興味 (代数的整数論) に 沿った具体的な対象を導入していくことにしよう.

追記: kyon_math からのご指摘

kyon_math さんから次のようなご指摘を頂いた. 触れたことがない正標数の話なので正直全く勘が働かなくて分からないが, 他の方には即参考になる可能性もあるのでメモしておく. ちなみにこれこれ.

@phasetr K が代数閉体でない場合でも, 半単純元と冪零元は定義できてジョルダン分解が成り立ちますね.

@kyon_math @phasetr 群の表現の既約分解については, 有限群であることを仮定した方がいいかも. 有限群の場合, 表現の既約分解は代数閉よりも標数の制約の方が大きい (マシュケの定理). 代数閉でも標数が正だとその表現論は難しい. (still in progress)

あと Maschke の定理はこれ. 恐るべし正標数.

2013/02/02 追記: kyon_math さんからのさらなるご指摘

kyon_math さんからさらに教えて頂いた. あとで読もう.

@phasetr ああ, 吉田さんのだったんですね. 吉田さん, かなりぶっ飛んでるからなぁ (もちろんいい意味で) 駒場中高等部向けのガロア理論の講義録も見っけた. http://bit.ly/XsPy0U あわせてガロア理論の基本定理について http://bit.ly/Xcw2E5

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数学,線型代数,表現論,圏論

本当は怖い Banach 空間

引用

Banach 空間がやばい的なツイートを見かけてこう色々と感銘を受けた.

Banach 空間病的すぎるだろ…

@Lyirth あまりよく知らないのですが, バナッハ空間は多様な微分方程式を制御するために出てきた, 多様なものを許容する空間とかいう話を聞いたことがあります. 作用素環もバナッハ空間ですが, 環構造と対合と特殊なノルムをつけてすらどうにもならないヤバい空間で小粋という理解

@Lyirth 何に書いてあるか思い出したので調べたのですが, $\ell^2$ の原点にあった積分方程式とそのための関数空間, 線型作用素論を展開するためにバナッハが導入した, という話のようです. 志賀先生の「無限からの光芒」 p116-117 に書いてあります

@Lyirth この本, 竹崎先生も名著と呼ぶスーパーよい本で, 私も学部 1 年で細部が全く訳分からないのに読んで感銘を受け, 院で数学に行ったというところで深い影響を受けているスーパー面白い本なので, 未読なら是非読んで下さい

@Lyirth 昨日からやっているサマースクール数理物理でちょうど議論しているところですが, フラットな時空上での相対論的な方だと収束評価が死ぬほどつらくてどうにもなっていないというのが率直なところです. 非相対論ならある程度は制御できています. あくまである程度は

@phasetr 実をいうと覚えてないと思いますが $C^$ 環を始めたのは「ユニタリ化と局所コンパクト空間の一点コンパクト化」が対応しているということを 市民さんから一年以上前に聞いたのが Cに興味を持ったきっかけで C*の門を叩いたこのタイミングでもう一度お話を聞けるのは幸せです.

@Lyirth それ覚えています. 今日河東先生が AQFT の共形場周辺をやっているのは河東先生の他, Longo とその学生くらいしかいないのでもっと増えてほしい的なことを言っていました. 場の理論であるのはもちろん, 頂点代数作用素等色々な数学が絡む面白い所なので目指されては

@phasetr 読みます. ありがとうございます! (ところでもし面倒でなければ教えて頂きたいのですが (基本的な内容で申し訳ありせん) Banach 空間 A=B+C (直和) と書けるときに B が閉→ C は閉って反例あるのでしょうか?)

@Lyirth ちなみにこの本, 前半でカントル集合とか他にもこう色々一見関数解析と関係なさげで基礎的な話が出てきますが, 作用素環だと意外とその辺かなりクリティカルで, カントルに関しては千葉大の松井さんの研究対象にもなっている程度です http://www.math.s.chiba-u.ac.jp/~matui/

@phasetr 嬉しいです! 最近楽しいなと思っていたのですがますます心惹かれた気がします. とりあえず, Murphy の $C^*$ algebra を読んでみようと思います. もし読み終えることができたらオススメの本をお聞きするかもしれませんがそのときはお願いします.

@Lyirth まだ証明つけていないのですが, 日合-柳の「ヒルベルト空間と線型作用素」 P29, 演習問題 12 として【直和ノルム空間 X+Y がバナッハである必要十分条件が X,Y ともにバナッハである】とあるので, 反例ないのではないでしょうか

@phasetr 直和ノルムではなく, $X+Y$ にノルムを入れてそれを $X$ 上 $Y$ 上に制限するときに元のノルムと制限から作られた直和ノルムが同型ならそうだと思います. もしそうでないなら一般の場合にも言えるのでしょうか? (続け様にすみません汗

@Lyirth まだ同型になる場合の証明をつけていないのでアレですが, まずは同型になってしまう理由からきちんと調べたいところです. あとは一般の位相空間や位相群でも類似の問題を考えて様子見したいところです. ノルム空間だと半端に知っているところにひきづられてしまうので

@phasetr 昨日の問題, 否定的に解決されまして人から教えて頂いたのですが, 例えばまず稠密な基底を取ったあとにそれを延長して代数的な基底を作り延長した元から一元除くと, codim1 の閉でない空間と一次元 (すなわち閉) 部分空間の直和になり反例になるようです.

@Lyirth ありがとうございます. 代数的なきていというの, いまだに感覚が掴めないですね. そもそもバナッハで基底を使わないので

@phasetr たしかにまだゲルファント表現あたりまでしか読んでないのですが, 一度も基底を取ってないです笑 一応線形空間なのに基底を取らないというのは変わった感じがします (無限からの光芒買ってきました←

コメント

志賀先生の本はこれだ. ハイパー面白いのでとにかく買って読むべき.

上掲書にもあるが, Banach での基底を Schaudar 基底とか言ったりもするらしい. ただ, 使ったことはない. 作用素環だと, 各作用素の成分表示をするときがないわけでもなく, そのときは「行列単位」という形での基底を取ることはある. 少なくともイメージのレベルではよく行列形式の書き方はするし, von Neumann 環だと本当に必ず射影があるので, それに合わせて「コーナーを取る」とかいう形で作用素を行列表示することもある.

あと, 作用素環専攻だったにも関わらず, 物理への応用まわりと作用素論の勉強にかなり時間を割いたせいで, 本当に作用素環の基礎事項を知らない. GNS とか本当の基礎の基礎と, 物理で使う関係上, 冨田-竹崎理論を (私の物理に必要な範囲内の state レベルで) やった程度. (ただ, たまたま竹崎先生の集中講義があって, weight での定式化も一度やったことにはなっている. ) ICC とか II_1 factor とか, K-理論とか知らないのはかなりやばいのでどうにかしたいとは思うが, なかなか思うに任せない. 先日のつどいで関さんの 290 定理にも興味があったにも関わらず, パン耳パイセンの作用素環入門を聞きにいった理由もここにある. これはこれで十分に楽しかったのでいいのだが, 私の作用素環がズタズタなのは変わらない.

それはそれとして, 初めて邂逅したときは学部初年度でひいひい言っていた学生達が, あっという間に学部 3-4 年になり, 院に行き, とんでもないレベル, 世界最先端にアタックしていくようになるのを見るのはとても楽しい. るの人も 1 年くらいすれば当然私を凌駕するようになるだろう. 何か面白い話を聞かせてほしい.

その他

発端となった Banach 空間のアレの PDF の話とかもある. あとこんなマイコメントもつけておこう.

http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1100-12.pdf 近寄りたくないw

ちょっとるの人がバナッハ空間に関する, 感銘を受けざるを得ない PDF を張っているのであとできちんと読む

@phasetr 私の心はむしろヒルベルト空間と共にあるのだが, もう 1 つの心の故郷として作用素環があり, 一般にはノルム空間 (ノルム環) であってバナッハ空間なので要はバナッハ空間は祈りの対象

その他

あとこの辺も面白い.

@phasetr 読みます. ありがとうございます! (ところでもし面倒でなければ教えて頂きたいのですが (基本的な内容で申し訳ありせん) Banach 空間 A=B+C (直和) と書けるときに B が閉→ C は閉って反例あるのでしょうか?)

@Lyirth 横槍失礼, 直和が単に algebraic な直和の閉包になるというだけの意味なら, closed でない codim 1 subspace はたくさんあるが, dim 1 subspace は常に閉. これらを complementary に取ることは難しくないよね.

@Lyirth 閉包とったほうが安全だけど, この例は片方 dim 1 だし閉包とってないよ. Hilbert でもできるけど, ミソはあえて orthogonal じゃなくとるところさね.

@Lyirth 可算次元 dense subspace をはる基底をとってから, それを延長して代数的な基底を作り, 最後一個以外からはられる subspace は codim 1 だが dense だね. これでどんな Banach 空間でもできる.

@Ara_1729 お風呂で気づきました! 代数的な操作については"いつでも基底が取れる"んですもんね! そこで最初に可算 subspace を貼るのはなぜですか?

@Lyirth 適当に基底とって一個残して subspace 作る時に, closed にならないようにすれば他の方法でも大丈夫

@Ara_1729 なるほど, すっごく納得しました. ありがとうございます, 勉強になりました.

さらっと例が作れるの, 格好いい.

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数学, 関数解析

数学用タイプライターアプリを作ってみた

本文

typist-jqueryを元に, 理工学 M@ster 用の数学タイプライターアプリを作ってみた. ここに上げておいたので, 御興味のある方はご覧頂き, ご意見など頂きたい.

紙芝居クリエータもいいのだが, アレだと「黒板」と下の台詞を行き来しなければならず, 結構負担があるとかいうご意見を頂いたことがあり, ならば全部「黒板」内でやればいいのでは, という所から着想した.

Github の生態系が分かっていないが, fork とかきちんとした方がいいと思うので, これから色々調べてやってみる. そもそも Git 自体あまりよく分かっていない. バージョン管理というか, 自宅と会社の HOME ディレクトリの共有に使っている感じであって, まずはそこからもう少し何とかしないといけない感ある.

勉強しないといけないこといっぱい. 備忘録としてプログラミング関係の話も書いていこう. 数学関係の人の役に立つことも期待したい.

追記: 2021-06-13

いまとなっては jquery も厳しい. 大量生産できるように, かつ簡単に動画を作り直せるようなプログラムを作りたいが, どうするといいだろうか? 詳しい人に頼んだ方が早いとは思う. 依頼できるだけの資金がほしい.

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数学, プログラミング, 動画制作

河東泰之先生ネタ

古田彩さんが河東先生の超準解析講演の様子をツイートしていたので

本文

古田さんが河東先生の講演の様子を呟いていたので.

今日の河東泰之先生の超準解析の講座, 90 分を 3 コマ, 計 270 分を, ノートを一切見ず, スライドも使わず, すべて板書だけで進め, 完璧な時間配分で, 終了時刻を 1 分も違えず着地した.

.@ayafuruta ノートを見ない講義スタイルは, ゲッチンゲンでフロベニウスの講義を高木貞治が見たのが, 日本に伝わったのだと思います. 高木の講義スタイルがどうだったか, 小平さんの自伝などに書いてそうですが私は知りません. 京大では, 園正造がチョーク一本スタイルの講義でした.

@Paul_Painleve @ayafuruta 高木貞二の講義ノートが残ってるようです. http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/takagi/takagi.html でも, 構想を練る時だけ使って講義の時には見てないかもしれないか.

@Paul_Painleve @ayafuruta 「数学まなびはじめ」の弥永先生の所に「大抵の場合原稿をもたれず」と言う記述があります. 現東大の小林俊行先生も基本チョーク一本で講義ですね

@phasetr @ayafuruta ありがとうございます. フロベニウスの講義は高木貞治にも印象に残って, 自らの講義のスタイルにされたのでしょう.

@gejikeiji @ayafuruta ありがとうございます. おそらく, 講義によってノートの有無を変えていたかもしれません. 楠さんも, 3 年生向き函数論はチョーク一本でしたが, 擬等角写像の特論ではさすがにノートを見ていました.

そんなのがあるんだったら聞きに行けばよかったなあ @ayafuruta: 今日の河東泰之先生の超準解析の講座, 90 分を 3 コマ, 計 270 分を, ノートを一切見ず, スライドも使わず, すべて板書だけで進め, 完璧な時間配分で, 終了時刻を 1 分も違えず着地した.

@Historyoflife @ayafuruta 学生に要求していることは当然できるということですね. http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/sem.htm

完璧にするのはすごいですね. これは数学やってる人には有名なページ. @mkuze: @H @ayafuruta 学生に要求していることは当然できるということですね. http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/sem.htm

@Historyoflife 彼は駒場の同級生 (京大の中島さんも).

浅野さんとおっしゃった頃ですね. 僕も坪井さんが同級生. 数学人間は一味も二味も違うなあ. @mkuze: @Historyoflife 彼は駒場の同級生 (京大の中島さんも).

@Historyoflife @mkuze ページを見て, 一度読んだことを思い出しました. 「凄いことを要求するなあ」と思いましたが, 講義を聴いて納得. 数学者って皆さんこうなのでしょうか. 物理だとこんな感じで https://twitter.com/ayafuruta/status/460076640161497088 それも許容されてますが

@ayafuruta @Historyoflife @mkuze 学習院の方ではなくて, 数年前に亡くなられた早稲田の田崎先生もノートは準備しつつもあまり見ずにハードな計算までやり遂げる講義スタイルでした. ブログか何かで早川さんのコメントがあったと思います

@phasetr このページ, そういえばかつて相転移 P さんに教えて頂いたような.

河東さんの講演は何回か聴きましたが, やはりチョークと黒板の数学者スタイルの講演が圧巻. 激烈な印象を受けました (もちろん研究成果も物凄い). @Historyoflife @mkuze @h @ayafuruta

私は去年の Summer School 数理物理の場の理論回で初めて河東トークを実際に聞いた. 確かにテクニカルな部分は控えつつポイントはおさえて面白いところを的確に拾っていく腕は並大抵のものではない.

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数学, 数学者, 超準解析

ちゃんとこのページにリンクが張られているのはなぜでしょうか

本文

河東セミナーニュース (2013 年)なのだが爆笑した.

コンピュータ将棋の初期の開発者として有名であった 森田和郎氏がお亡くなりになったということです. 森田氏は最初 ASCII のオセロプログラムリーグで有名になり, 私も当時 (大学生時代) ASCII でオセロプログラムを書いていたので直接の面識はありませんが, いろいろな接点がありました. ご冥福をお祈りします. なお高校 3 年生当時の私の作品の画面がこちらにあります. しかし旧姓表示なのにちゃんとこのページにリンクが張られているのはなぜでしょうか. (6/4/2013)

経済や物理で必要な数学についてのやりとりまとめ: 微積分と線型代数をきちんとやろう

はじめに

Twitter でこれとかこれみたいな呟きしたら教官含めいくつか反応があったので, 折角だから記録しておく. まず上の元呟きを転記しておこう.

ツイート

https://twitter.com/gametheory4/status/324829386643763200 よく分からないのだが経済, 本当に数学必要なの

数学関係者, 経済の数学というと無駄に確率微分方程式を押してくるが, そんなのを使っている経済の人, 実は経済学内部では異常者だったりしないの

適当にやりとりをまとめておこう.

やりとり

https://twitter.com/gametheory4/status/324829386643763200 よく分からないのだが経済, 本当に数学必要なの

【経済学部生間の数学力格差についてっていう論文かきたい】

@phasetr ゲーム理論とか必要では.

@phasetr 勉強するのにも高校 + αの微積分と線形代数は必要なのでは? 後, 確率微分方程式とかゲーム理論とか使う分野もありますし.

@functional_yy ゲーム理論の難しさ, 数学の難しさというより現実とすりあわせた仮定を設定する難しさという印象ですが素人なのでよく知らないというアレ. あと皆が皆ゲーム理論必要なのでしょうか. これもよく知らないので

@hymathlogic 統計学ができる程度の能力を持たない大学生は一人残らず射殺すべきという見解です

@hymathlogic 正確には統計学が必要な学部学科, という条件下で

@phasetr 統計学ができる程度の数学力, と書いた方が良かった

@phasetr 分野により使う数学も変わってきますね. 統計, 確率, 微分方程式, ゲーム理論, 認識論理 (論理学) など.

やりとりその 2

@hymathlogic 統計学ができる程度の能力を持たない大学生は一人残らず射殺すべきという見解です

@phasetr 統計学ができる程度の数学力 #とは

@greengrimghost 教養程度の微分積分と線型代数が使える. 「理解」は問わない

@phasetr なるほどその程度なら

やりとりその 3: 教官陣と.

@phasetr https://twitter.com/phasetr/status/324845187148943361https://twitter.com/phasetr/status/324838051627032576 と見比べると, 相転移 P さんは, 物理学も経済学も異常な一部を除けば数学はいらん, という主張 (もしくはそういう数学の定義) という理解で良い?

@tetshattori 経済の方は確率微分方程式とか無茶なのばかりよく出てきますがそこまで無茶なことしないと経済できないの, という話です. 物理に関しては微分積分と線型代数の守備範囲なめてんのか, という話です. この辺を極端な形で表現しました

数学以外の数学はとても難しいのです. RT @phasetr: @tetshattori 経済の方は確率微分方程式とか無茶なのばかりよく出てきますが そこまで無茶なことしないと経済できないの, という話です

@tetshattori 社会学にとって最低限必要な範囲の統計学が処理できる程度の数学力を持っていない学生は 問答無用で殴り倒すことを前提にしています

@phasetr つまんないこといっちゃうけど, 「何が数学か」とか「どのように使ったら使ったと言えるか」とか, その手の問いは (研究においては) してもしゃあない気がします @kyon_math

@tetshattori @kyon_math 一応, 背景としては新入生が線型代数は何に使うの, という感じで苦しんでいるのでとりあえず物理 (と物理を使う工学) では大事だし, 教養の線型代数と微積分できれば相当範囲の物理できますよ, みたいなことを言っておこう, という感じです

@tetshattori @kyon_math 細かいこといえばきりがないというのはいつもの話で, 細かい話が気になる人たちから突っ込みが来るのは当然として, そういう層に向けたメッセージではないので, 今回のような分かっている人からの突っ込みは別途処理ということで

@tetshattori @phasetr 「数学をどのように使ったら」と言うのはとても大切で, そのような視点からの発言です. 誤解のないように.

@phasetr その文脈ならば経済学は, 微積線形に凸解析 (分離定理) を加えておけばかなり, かと (それでゲームとファイナンスが少しやりやすくなる)

余談

余談として これとかこれも足しておこう.

数学から工学に移ったときは都落ちしたような悲哀を少し感じていたものですが 「工学の問題にどうやって数学を使うか」という問題はやってみると中々面白いです. ノイズ, 精度, 計算コストの制約があるので単に数学的に解けば良いわけでもない. そういう事がわからず, 最初はかなり空回りしました.

@各位 Twitter で極端な話をすると教官陣から突っ込みを受けるし現在進行形で私が突っ込みを受けているので, それが怖い向きは十分に注意するように. あと RT で回ることまで念頭に置くように

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数学, 物理, 経済, 数学教育, 解析学, 線型代数

日本数学会による大学入試数学問題の解答例および採点基準の開示の是非に関する見解が面白い

本文

日本数学会の声明が結構面白かったので共有する.

大学入試数学問題の解答例および採点基準の開示の是非については日本数学会が見解を公表しています. http://mathsoc.jp/publication/tushin/0402/21-23.pdf

特に面白かったのは次の箇所.

  • 記述式試験の採点は「主観的」なものである.

記述式解答の採点者は, 場合によっては下書きまでも参考にしながら, 受験生の意図を忖度し, その理解の程度を量って, 1) に挙げた能力の判定を行う. 従って, 判断は総合的かつ主観的にならざるを得ない.

数学の記述解答とその採点を「主観」と言い切っているのが凄い面白い. 論文や教科書に表れる著者の個性のようなものか. 採点やったことないから分からないのだが, 採点するの面白そうだと初めて思った. 入試のような面倒な場で経験するのは死んでも御免だが.

ラベル

数学, 数学教育, 試験の採点

小林俊行先生のインタビューページ: インタビュー・井上学術賞受賞・小林俊行教授 無限次元の対称性の数学 ~根源から湧き出す泉の豊かさ~

本文

インタビュー・井上学術賞受賞・小林俊行教授 無限次元の対称性の数学 ~根源から湧き出す泉の豊かさ~という記事だ.

興味がある人はとりあえず読んでみよう. 極小表現について小林先生がいろいろ話している.

この辺からが本領発揮だ.

これ以上分解できない最小のものと言いましたけれども、 実は、重ね合せによる分解という古典的な考え方だけを用いるのではありません。 より単純なものから複雑なものを構成する、表現のインダクションという仕組みがあります。 その仕組みを逆にたどると、単に分解するだけより、もっと根源的なものに行き着きます。 実は、本当に根源的なものは非常に種類が少ないのです。 実際、対称性のほとんどは一次元のものに端を発していることがわかります。 根源的なのに無限次元のものもごく少数存在します。 この例外的な無限次元の対称性の代表格といえるのが極小表現です。

あとこれ.

教えるのが上手とか字がきれいとかというのと全然違うんだけど、 本物の数学の息吹を感じてもらう手助けなら少しできるかなあと。 一・二年生を教えたいという気持ちは、そういうところにあります。

自分の中のものが人に伝わる、あるいは人のものが自分に伝わるという、 空気中に飛び交うもの、目には見えない何かがあるでしょう。 ぼくは、こういう空気を大切にしたいのです。 ついさっきまで研究していた先生がパッと教室に行って講義する。 研究に没頭していた空気がまだ服にもついてるし、 体の中からも出ているかもしれない、それを伝えて、 また学生さんは学生さんで日々研鑽して伸びている空気を出してそれを一つの教室で共有するっていうのが、 何かすごく素敵なものだなあと思う。 それが教えることが好きな理由の一つかなあと思います。

これが凄く大事で, 私もやってみたいと思うことだ. 大したことができなかろうが何だろうが, 研究する気持ち・挑戦する気持ちを捨てずにいること, それを示し続けること, それが大事と信じている.

ちなみに小林先生について以前 この記事でも滅茶苦茶格好いい姿を紹介している. ぜひ読んでほしい. あと『数学まなびはじめ』は必読なので買っていない人はさっさと買ってほしい.

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数学, 数学者, 表現論

鴨さんツイート

結城さんとかもさんのやり取りが面白かったので: 距離空間と位相空間, 距離空間へ距離以外の位相を入れてみる

本文

結城さんとかもさんの話が面白かったので.

大きさと距離はともかく, 向きと次元は関係ないのでは. どういう意味だろう.

これが凄まじい. 何だこれは. 論文読めない (取れない) からアレだが, 超読みたい.

専門家, やはり凄い. こういうやりとりを見ているだけで感銘を受ける.

ラベル

数学, 計算機科学, 位相空間論, 距離空間論

背理法と対偶と脱背理法教育の悲しみ: かもさんのツイートまとめ

本文

本当によくわからないが面白そうなのでまとめておいた.

あまりにも悲しい. 最後に祈りのような一文で締めておこう.

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数学, 数理論理学, 数学教育

人生は組み合わせ爆発だ

本文

前も紹介したかもしれないが改めてこう色々参考になると思ったので.

おねぇさぁぁぁぁぁん! 日本科学未来館のアニメに狂気が宿っていると話題に - ねとらぼ http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1209/11/news104.html これ, 純粋に滅茶苦茶面白いけど教育効果も高いんじゃないの? 子供たちにアルゴリズム技術への興味をもたらし, 現在のスパコン性能もアバウトに伝えてる.

ガチガチにアカデミックな内容でも見せ方を工夫すれば結構興味は引けるはずだと確信を深めるアレだと感心する. 超参考にする.

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数学, 計算機科学, アルゴリズム, スパコン

Twitter まとめ: 受験レベルで数学が苦手だからといって大学進学時に数学科を諦める必要はない

本文

Twitter で sulaymanhakiym さんと心温まるハートフルなやり取りをしてきた. 毎年受験が近づくと呟いているのだが, 折角なのでまとめておこう. やりとりはここから始まる.

@phasetr センター国語何点でしたか?

@sulaymanhakiym センターの点数, 数学が悪かったということくらいしか覚えていないですね

@phasetr m9(^Д^)プギャーーーッ

@sulaymanhakiym 数学が苦手だったことが受験時代の一番の思い出です. 一浪したとき, センターの数 2B で大失敗したのですがその帰りに高校の友人 (女の子) が彼氏と歩いているところに出くわして「自分は浪人してまで何をしているのか」泣きたくなったところまでがセットです

@phasetr (泣いている)

@phasetr 悲しいことを思い出せてしまってごめんなさい.

@sulaymanhakiym 受験の時期にはいつもこれをツイートして受験生を勇気づけています. 数学科の大学院に進学するような人間であってもセンターずるずるだったので, 受験レベルで苦手だからといって数学科を諦める必要はないと

というわけでみんなも数学をしよう.

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数学, 受験

数学と家庭科と料理とあと何とか色々

はじめに

柚子胡椒先生トークの記録.

引用

@yuzukosho ぐぐって納得したところで終わりました #すでにあきらめてる

@rusk_ 気持は良くわかります…学生時代は数学死ね死ね団でしたし #でもあきらめきれない

@yuzukosho @rusk_ ただ数字並べられても・・・という感じでしたが, お菓子のレシピをいじる時とかに, 割合だったりはものすごく大事なので, 食べ物に絡めて教えてもらえばもっとやる気が出たのかと. . . 体積だったりは, オーブンにどのくらいの塊肉が入るかとか.

@hiyokomame_soup @rusk_ わかる気がします. 家庭科と数学は全然絡まないですもんね… Twitter では化学畑で料理上手な方とか見かけます. そういう工夫が上手くハマれば, (数学嫌いで) 料理上手な方がそちらの道に進む可能性が広がるのでは…

@yuzukosho @rusk_ どこぞの国では小学校の低学年は, 学科の区別無く, すべてが関連してる本をどんどん読ませてから, 次のお勉強するらしいので, そんな方法もうらやましいなあと思ったり.

@hiyokomame_soup @rusk_ へー. 型にはまらず伸びそうですね. 面白い. どこの国でしょうねー

@yuzukosho @rusk_ ロシアというか旧ソ連になるのかな. 米原万理さんがエッセイに書いていたのです. ちょっと調べたら, むかしのほぼ日に同じような事がのってました http://www.1101.com/education_yonehara/2002-11-11.html

@hiyokomame_soup @rusk_ ありがとうございます. こういう教え方, いいですね…脳にサボり機能があるのは実感します. 明日もう一度読みます.

参考にしたい.

追記

このようなコメントを頂いた.

家庭科と数学は全然絡むはず. ブログ読んでね☆ (ステマ

数学というより化学や生物, 物理だと思うが, URLはこれだ. 参考にしたい.

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数学, 家庭科, 料理, 相転移プロダクション

Nik Weaver, Forcing for Mathematicians に集合論的手法の $C^*$-代数への応用みたいな話が載っているらしい

本文

tri_iro さん筋の情報だ.

6 月に出版予定らしい Weaver の "Forcing for Mathematicians" http://www.amazon.co.jp/gp/product/9814566004/ が気になる. 集合論的手法の $C^*$-代数への応用みたいな話が載ってるっぽい.

@tri_iro Calkin 環とかの話でしょうか. 学会で何かそんな話を超楽しそうに話していた講演を軽く聞いたことがあるだけなのですが

@phasetr 本の中身の詳細は知らないのですが, 著者が Nik Weaver なので, Calkin algebra 関係の話は入ってくると思います (たぶん)

Calkin 環の話, 一度きちんとやってみたいとは思っているものの何もしていない. Calkin 環, 定義はかなり簡単 (学部 4 年で十分に分かる) のに, 結構最近解かれた未解決問題があったりと結構面白そうな対象なのだが.

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数学, 数学基礎論, 作用素環, 数理論理

市民メモ: この間, 構成的場の量子論や代数的場の量子論, 超弦理論について宇宙賢者と話したことを記録する

はじめに

この間とある機会に宇宙賢者と話すことがあって, 少し言われたことや話したことがあったので, それをついでにここにまとめておく.

細かい部分を覚えていないこともあり大幅に細部を省くが, 立川さんの話として, (Araki-) Haag-Kastler の代数的場の量子論はやや古い内容であること, ストリングの方でも物理として基本的な所が結構抜けていてやっている人もいないので むしろそういう方をやってくれる人がいないか, というような話があった.

直接関係ない部分もあるが, 代数的場の量子論や構成的場の量子論で私が興味ある部分について改めて書いておきたい. 素粒子の方はさっぱりなので間違っている公算も高いが, 特に超弦の方は相対論的場の量子論の適用範囲外のことをしていると思っている. ここでポイントになるのは, 例えば QED で普通の理論物理の話では, 超弦レベルのエネルギースケールの話と全く関係なく成立しているということだ. 他にも非相対論的場の量子論, 統計力学の結果は非相対論近似が高い精度で成り立っている. こういうのを「物理の階層性」と言ったりする. 興味がある向きは清水さんの熱力学の本などを読んでみよう.

物理の階層性からすれば, 超弦に頼らず相対論的場の量子論や非相対論的場の量子論が展開できるはずで, そこを正確に把握したい, というモチベーションがある. 相対論的場の量子論からいうと, QED は数学的には存在しない (物理的には漸近的自由ではないから) と言われているが, 一方で QCD のレベルならゲージ理論は閉じるだろう, という物理的見立てがあると聞いている. QED では理論が絶対に閉じないか, というのも私には興味ある問題だし, QCD に行けば本当に閉じるか, という問題も物理の階層性からすれば大事な問題だ.

また非相対論的場の量子論からすると, 紫外切断にまつわる問題がある. 普通, 非相対論領域だと紫外の対象になるような高エネルギー領域は人工的にカットして構わない, ということになっている. ただ, 紫外のカットを外したときに非相対論で理論が閉じるか, というのは大きな問題で, こういう観点から研究をしている人もいる. 例えば物質の安定性などは古典論では議論できず, 量子論で議論しなければならない問題だが, そもそも量子論だからといって本当に証明できるかは全く分からない. これについては本当に数理物理が先行している話で, しかも Lieb 周辺の数理物理の人間しか研究していないと聞いている.

知らないのだが, この辺を物理として真っ向から議論している人, どのくらいいるのだろうか. 素粒子なんて放っておいても勝手に興味を持つ人間たくさんいるのだし, こちらに人をよこせ, と思っているくらいだ.

素粒子は大勢の人間が切磋琢磨して 1 つの目標に向かって進んでいくというイメージがある. 一方, 代数的場の量子論・構成的場の量子論界隈は物理としては圧倒的に地味だ. 代数的場の量子論は数学的にはかなり格好いい話だが, 構成的場の量子論に至っては数学としても死ぬ程地味で, 私が興味ある統計力学の問題も負けず劣らず地味だ. 地味だが (学術的には) とても深い意味のあることなので, 少人数であろうともこの血脈を絶やしてはいけない.

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数学, 物理, 数理物理, 場の量子論, 超弦理論, 統計力学

Twitter まとめ: 解析力学, 電磁気学, 相対論と幾何学の関係などを簡単にまとめてみた

はじめに

ぼんてんぴょんさんと力学, 解析力学まわりで少し話をした. 参考になる向きもあろうかと思うのでまとめておく. この辺からはじまる.

応答その1

ふと思いついたが, 剛体を考えるとき, 質量のあるところだけに質点があるのでなく, 剛体の外側にも質量ゼロの質点が (空間全体に) 分布していて, これらが剛体との位置関係を保ちながら動くと考えれば, 「そこに質点があるか」を気にしたくないときに記述しやすくなるのではないだろうか.

@y_bonten 状況良くわかっていないのですが, いわゆる場の理論はその感覚近い気がします. 電荷がなくても電場なりが空間にきちんとあるみたいなそんな感じ

@phasetr ありがとうございます. 確かに, 電荷から解説が始まっても, いつの間にか電場のほうが主役に躍り出ていきますよね.

応答その 2

あと この辺.

座標系にまつわる問題が古典力学の理解の大きな壁になっていることは間違いないと思う. 「ある座標系で考えると煩雑になりすぎて実質無理」という状況はともかく, 同じ現象をどの座標系で考えたって, 表現が異なるだけで辻褄が合わないといけない. それを確認するのが勉強だと思うのだが (以下略

@y_bonten それ, 正に解析力学です. 相対論でも大事で, 多様体論の基礎にある思考でもあります

@phasetr なるほど, では同じ心がけでそのあたりの分野も勉強してゆけば良いわけですね. 意を強くしました.

@y_bonten 多様体論自体が解析力学を起源にしています. シンプレクティックのあたりです. 相対論も座標変換による方程式の変換の問題という面があるので

@phasetr そうなのですか! こういうロードマップを示していただけるのは本当にありがたいです.

@y_bonten その辺をもっと積極的にやろうと思ってブログ始めました. Twitter でもときどきやっていましたが

@phasetr よく読ませていただいています. 今後も期待しております.

解析力学と多様体

こういうと嫌がる数学の人もいるのだが, 解析力学と電磁気学は数学に影響を与えている. 上で書いた通り, 解析力学は多様体論の母体になっている. 電磁気学は物理のゲージ理論の一番簡単な例だが, このゲージ理論は数学のゲージ理論につながっている. またベクトル解析は電磁気学を整備する中で発展した数学で, ベクトル解析は多変数の解析学で大事だが, より強く幾何学でも de Rham 関連でとても大事.

あまりまともに物理の本を読んでいないのであまり詳しく参考書を挙げられないが, 一応知っているものは挙げておこう. 有名なだけで読んでいない本も挙げるので, ご注意頂きたい.

簡単なコメント

山本義隆の解析力学は物理の本だが, 物理の初学者が読むと間違いなくつらいので, もう少し物理として簡単な本を読んでからにした方がいい. 実際, 学部 2 年時の私にはつらかった. ただ内容が豊富なので面白いのは間違いない. また, 素粒子など幾何学が必要な人が手始めに読む本としてもいいのかもしれない. そちらはよく分からないので何とも言えないが.

深谷先生の本は読んだことがない. 評判はよいのでとりあえず挙げておいた.

太田浩一の電磁気学だけ読んだ. マクスウェルは読んでいない. 電磁気学の方は相対論や量子力学との関係についての話題があり, 色々なつながりが見えて読んでいて楽しい. ベクトル解析や Fourier なども適宜解説されている. 物理の中で数学を学ぶ, という点でもそれなりに使えるだろう. ただ, それなりにハードな本なので読みこなすのはしんどい.

理論電磁気学は計算が丁寧なのがいい. 特に電磁波や散乱周りは計算が物凄い面倒なのだが, そういうところで参考になる. 計算できないなんて軟弱な, と思う向きもあるだろうが, 専門というわけではなく速習が必要だったり, 久し振りに復習するときにさっと計算を確かめたい場合などには重宝するだろう. また, 物理を楽しみたい, という向きで計算も頑張りたいが一人はきつい, という向きもあろう. そういうところにとってもこういう本があるのはいいことだと思う. 実際に色々書いてみると分かるが, 細かいところは面倒なので飛ばしたくなるので, 結構こういうところは適当になりがちだ. 専門書だと計算をきちんと追い切らせることも大事な訓練なので, 余計に省かれる傾向にあるから.

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数学, 物理, 数理物理, 力学, 幾何学, 電磁気学, 相対論

現代数学探険隊でのセルフコンテインドネス: 「現代数学が難しいnつの理由 - はじまりはKan拡張」へのコメント

infinity_topoi さんによる次のような記事が出た.

項目だけ挙げておこう. 詳しくは上記リンクから記事を見に行ってほしい.

  • その1:まず、そもそも数学の厳密さは難しい
  • その2:高校数学とはスタイルが大きく異なる
  • その3:実はSelf-Containedな教科書は少ない
  • その4:勉強することが膨大な一方で全体の見通しが悪い
  • その5:大学コミュニティと外部の間の情報格差が大きい
  • その6:現代数学を学ぶことがなかなか仕事にならない

このうちその 3 は特に現代数学探険隊で, その 4 はここにある無料講座をはじめとした各種コンテンツとしてまさに対応するコンテンツを作っている. その 5 に関しては例えばここで参考文献集を公開している.

私自身, 幾何の勉強で日々死ぬ程苦労している. 特にその 3, 現代数学探険隊に関する思いのようなものを改めていろいろ書いたのでまとめておく.

ツイートまとめ

これ、幾何の話があったのでこれまで幾何で苦労した話を書くと、ホイットニーの埋め込みやらサードの定理やらホッジやら、幾何は基本的な定理が示されないケースがやたら多い印象があり、幾何の人はどう勉強しているのか不思議でならない。名著と名高いミルナーのモース理論もちょっと面倒そうな命題は全部当時の文献にぶん投げられていてあの本は読めたものではないと思うのだが、読める人今いるの?微分幾何に関してまたセルフコンテインドなやつを作ろうと思っていて、今作っている力学・微分幾何の計算コンテンツもその一環であった。

全く知らないので適当な話だが、何となく代数幾何は準備が膨大な分、証明抜きで紹介されるだけの定理なさそうな気がするが、微分多様体・微分幾何はとにかく証明抜きで認める感じの定理が多く、何でああなったのか全くわからない。調和積分論の証明が書かれた、多様体の基本から書いてある幾何の本、ドラームの本とワーナーの本しか知らない。調和積分自体がテーマの本はあるが、ベクトル束の議論を突っ込んでいたり、ちょっとレベルが上がる印象がある。もちろん解析学上の議論のレベル・ハードルがかなり上がるから、それ相応のバックグラウンドが仮定されるのはわからないではない。多様体上のソボレフ空間またはカレントの議論がいるわけだが、多様体上のソボレフ自体がまた難しい。解析学専攻でも学部三から四年の内容をさらに面倒にしていて、非コンパクトの場合はソボレフ空間が一の分割に依存するとかいう話もある。

何故(物理の色彩が強く近似の議論などもある)力学?と思う人がいるかもしれないので書いておくと、解析力学はシンプレクティック幾何の母体とよく言われるし、それ以前に力学で出てくる常微分方程式の解法それ自体が多様体論の母体だったりもする(少なくともそういわれている)からだ。数学サイドで何らかの形で物理に触れたいという場合、解析力学は1つの軸になるという気分があるが、その前段のふつうの力学がどれだけカバーされているのかよく知らない。そういった部分も意識して、近似も何をどうやっているのか多少なりとも埋める目的で力学をやっている。もちろん他のもっと面倒な物理の前哨戦でもある。運動学に関して言えばそのまま古典的な、3次元空間内の曲線論で、フルネー-セレなども途上で出てくる。具体的な常微分方程式の処理もあるし、幾何学的変分問題と測地線なども当然物理、力学と関係がある。

ちょっとしたやりとり

  • 全く知らないので適当な話だが、何となく代数幾何は準備が膨大な分、証明抜きで紹介されるだけの定理なさそうな気がするが、微分多様体・微分幾何はとにかく証明抜きで認める感じの定理が多く、何でああなったのか全くわからない。調和積分論の証明が書かれた、多様体の基本から書いてある幾何の本、

いや、多いと思いますよ。記事にも書きましたが、Mitchellの埋め込み定理とかも志保先生の本が出るまではロストテクノロジー扱いだったと思います。あとは「これはEGA/SGAに書いてる」みたいなのも多いです。やっぱり一時代前の「基礎数学」の整理は完全に欠如してるんだと思うんですよね。

幾何の人、ブラックボックスをどう処理しているのか不思議でなりません。

実際のところ、ブラックボックスを丁寧にフォローしている人も少ない気がします。僕もその辺のブラックボックスを綺麗にしたいという思いはありますね。現代的に整備すれば、意外とそんなに難しくないこともあると思います。

ちなみに私なりに数学の勉強がつらい理由、https://phasetr.com/mtexpdf1/https://phasetr.com/mtex1/https://phasetr.com/mrlp1/https://phasetr.com/mthlp1/などに書いていて、それぞれその問題を解決することを意図してコンテンツを作っています。

微妙に関連する話題

井ノ口さんの本, 『リッカチのひ・み・つ』と『曲面と可積分系』を持っていて, 2 冊とも非常に教育的でしかも面白かった. 後者は献本して頂いてここに書評も書いた. この記事をご覧になった方はぜひ買って読んでみてほしい. 2 冊とも上の「その4:勉強することが膨大な一方で全体の見通しが悪い」の気分で書かれた本で, 全体の見通しという点に関して書評の形でさらにいろいろコメントした. 私もこんなコンテンツを作ってみたいものだ. 専門家・研究者としての知見を活かした非常によい教科書だった. 今回の『初学者のための偏微分』もきっといい本だと思う. 買う.

やりとり追加

この件なのですが、P氏の知見では結局調和積分論を学ぶのに最も良い本は何なのでしょう。結局学生時代は北原などをパラパラ見て深追いしなかったのですが、de Rhamは(入手困難ですが!)読み応えのある非常に良い本だろうなという印象を受けました。

そもそも多様体上の解析にまで踏み込めるほど幾何を理解できていないのでわかりません。調和積分論と微分幾何は憧れがあるので今まさにそのための基礎固めを兼ねてコンテンツを作っている状態です。PDE自体も専門ではないので、そこも適宜補う必要がある状況です。解析系を基準にするなら、ドラームの本のカレント方向よりも素直にソボレフ空間の定式化を使いたいのですが、幾何の人々に定評があるWarnerはソボレフの一般論ではなくフーリエ級数を経由してソボレフの議論をやっています。

あと気になるのは普通の幾何の本だとコンパクト多様体に限定してシャープな結果を出す形ですが、解析からするとごく単純に非コンパクトのときにどうするかも気になります。非コンパクトな場合は少なくとも2000年代レベルで論文がいくつかあります。熱核方向、そしてそれを前提にした確率論応用など。解析的には(非コンパクト)多様体上のソボレフ空間論にいろいろ難しいことがあり、それ自体が興味関心の対象です。純粋な幾何の人ならとりあえずコンパクトだけでも十二分に楽しめるのでしょうが、解析方面からするともう少し突っ込みたかったりします。

その塩梅まで考えて解析サイドから見たときのいい本・いいコンテンツというのが私が求める対象です。当面、ユークリッド空間上のソボレフ空間論は前提にしていいので、Warnerのようなフーリエ級数論を経由しない解析的にダイレクトなアプローチ、多様体の初歩からきちんとカバーしたコンテンツがほしい

今気になっているのは Nicolaescu の本(の著者無料公開版です。多様体の基礎からコンパクト多様体上のホッジ、ディラック作用素の議論まで入っているので、項目のラインナップとしては私が理想としている内容という印象です。あとは私の幾何耐性を強化して読みこなしたいという状況。

酒と泪と数学者と業績: 富山先生と竹崎先生と河東先生

本文

Twitter でときどき大学生の飲み会がらみのしょうもないネタが出てくるがそれについての話.

https://twitter.com/momongams/status/68881985375977472 https://twitter.com/Jelly_in_a_tank/status/380683596396101632 【そもそも数学科に飲み会ねえから. >RT】 私が作用素環の富山先生に聞いたところによると「竹崎君は昔酒が飲めなかったが, 酒が飲めるようになったおかげで一流の数学者になった」という話がある

上記 2 ツイートも引用しておこう.

数学科「n 杯飲めてー, (n+1) 杯飲めないわけがなーい」 とかいうコールが出回っていますが, n 杯飲めて n+1 杯飲めるとは限りません.

「 n=1, n=k が成立すると仮定した時, 数学的帰納法を用いて証明すれば, n 杯飲めてー, (n+1) 杯飲めないわけがなーい」 と言わないとダメです.

あとこれ.

そもそも数学科に飲み会ねえから. >RT

Twitter では何度か呟いたことがある富山-竹崎ネタでブログにも既に書いたかもしれないが, まあ何度書いてもいいだろう. 数学者ネタ好きなのだが, 他にも好きな人がいるだろうし.

これも前に書いた気がするが, 同じ作用素環で竹崎先生と師弟関係にある東大の河東先生はお酒が全く飲めないが立派な仕事をしている. 酒が飲めないと数学できない訳ではないので心配しないでほしい.

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数学, 数学者

次世代の数学書は定理の証明や例・反例は追加パックで買う

本文

Paul 的な何かと nolimbre さんの対話を見た.

先日の飲み会での話. DeNA やグリーがもし数学書を電子出版すれば, 「証明は自明」と書いてるところで「100 円課金で詳細を解説!」と出てくる. 演習問題の解答も全て課金システム. Web3.0 時代の数学書はこうなっちゃうな.

@nolimbre 課金のバランスをうまく考えれば, DeNA 数学シリーズ・全巻無料! (でも, すべて課金すれば一冊 20 万円) とかで大儲けできるかもしれません. 演習問題を試験に出すことにすれば, 7 月と 1 月にはサーバーが落ちる「バルス」本まで生まれることでしょう.

今鍵がかかっているのでアレだが, 以前 nolimbre さんが言っていたのは, 上記のようなタイプのような数学書について「定理の証明パック」とか「例や反例の追加パック」つけよう的なアレだった.

例と反例の追加パックは本当にほしいし, 自分でも何とかしたいと思っている. 単位元のない環に関する話を繰り返し書いているのもその辺を何とか埋めようと思ってのことだ. つどいでの講演もこの辺の話に端を発している.

前, Euclid の幾何アプリとかどうだろうというのを考えたことがある. 定理を武器というか鍵というか, とにかくその辺の何かに見立てて, はじめは公準しか使えないところに定理という鍵をどんどん見つけていって, 合う鍵を上手く見つけて定理という閉じた扉を開けていく, みたいなゲーム. 初等幾何で「直観的に明らかなことなのに何故使ってはいけないのか」というのを, 鍵とかで適当に表現してゲームとして身につけさせる感じ.

これの最大の問題は, 証明の自動採点部分だ. ゲームにするなら人力は無理だから. Euclid の原論の流れに沿った形にすれば多少は何とかなるか, とか思ったが, それを実装する腕, 少なくとも私にはない. 一般の数学でやると, 証明の経路が凄まじく多種多様になるため追いつかないので, 今の時点で本当にゲーム化するなら, 適当に制限を入れないと無理だろう.

IT が進歩したといっても, この程度も実現できていないし, 乙女回路などもいまだ開発されていないし, こういうのを少し考えただけでも科学万能主義とかいうのが異常者の戯言というのが分かる.

最後に これを引用して終わりとする.

.@wingcloud 各節末の演習問題を解くと, ビブンタンやコユーチタンなどの素敵な萌えキャラカードが集められるんです. 後半になると着てる服がしだいに (略

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数学, ゲーム

ある環が可換環になる十分条件: Jacobson's Commutativity Theorem

本文

何かよく分からないが, 環が可換環になる十分条件的なアレで Jacobson's Commutativity Theorem という面白そうな話があるらしい. これだ.

x^4=x 以外にも 2,3 で似た様に示せて, 条件が付けば n でもいけるっぽい事示せて何これとか思ったらもっと強い結果が割と普通の証明付きで知られているようだ http://www.mateforum.ro/articole/jacobson.pdf

これは一般の環で言えるらしい. まず $n=2$ の場合の定理の言明を書いておこう.

Lemma 1.1

If $x^2 = x$ for all $x \in R$, then $R$ is commutative.

この 2 を $n$ に一般化できるか, という問題で, 流れとして division ring (和訳忘れた) で示してから一般に示すことになっている. 長くない上にそう難しくもないので, 興味がある向きは自分で PDF を追ってほしい.

ところでこんな記述があった.

We can think of this as a generalization of the well-known fact that every finite division ring is a field.

これを知らない程度に代数弱者の市民である.

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数学, 代数学, 可換環論

背理法と対偶の違い

ツイートまとめ

英語での検索結果

日本語だと高校の話が大量に引っかかるので英語で探した. 案の定 mathoverflow が出てきた. 追加で Reductio ad absurdum or the contrapositive? から翻訳しつつ引用する.

まずはふだん使わないからすぐ忘れるので, 参考までに背理法と対偶の英語をメモしておく.

  • 背理法: reductio ad absurdum
  • 対偶: contraposition

翻訳・引用開始

記事中段あたりに出てくる議論

このコメントが良さそう. よく混同される気分を説明してくれていそうな気がする. Twitter でもらったコメントでもある模様.

it is certainly true that every proof by contrapositive can be phrased as a proof by contradiction. Indeed, since the latter is perhaps a bit more intuitive,

We wish to show $A \implies B$. Suppose we know that $\lnot B \implies \lnot A$. Suppose further that $B$ is false. Then $\not B$ is true, so $\lnot A$ is true, so $A$ is false, contrary to our assumption.

これが対偶+背理法のよくある「わかりやすい」証明.

Suppose a proposition can be proved by contraposition. As above, there is then a standard recipe for modifying the proof to give a proof by contradiction.

上のレシピで対偶の議論が背理法のように変換されてしまう.

However, proof by contradiction is a more powerful technique in the informal sense that some proofs are more difficult to phrase using contraposition. (I don't want to say impossible, because as above, both "techniques" are simply logically valid arguments, so may be inserted in a proof at any point.)

インフォーマルな意味での背理法による証明の利点は, 対偶として綺麗にリフレーズするのが難しい場合にも雑に使えることにある.

What makes contradiction potentially more powerful? (This is a question that you have to face when you teach introduction to proofs classes, as I have. I wouldn't have had as ready an answer before.) I think it is because we get to assume two things rather than one. Namely, instead of just assuming $\lnot B$ and using that one assumption to work our way to $\lnot A$, we get to assume both $A$ and $\lnot B$ and play them off one another in order to derive a contradiction.

対偶証明と背理法の比較で背理法が強力に見えるのは 2 つ仮定できることによる. つまり対偶では $\lnot B$ しか仮定できないが, 背理法では $A$ と $\lnot B$ が仮定できて使える条件が増える. このあとによくある $\sqrt{2}$ の無理性に関して具体的な説明がある.

but in many cases that would amount to inserting a tiresome rigamarole

rigamarole という単語, はじめて見た. 「長く複雑で困惑させる手続き、一連の混乱して無意味な話」とのこと.

記録 1

Proof by contradiction (, i.e. derive $\Delta \vdash \varphi$ from $\Delta, \lnot \varphi \vdash \bot$) is not valid in intuitionistic logic. Proof by contrapositive (, i.e. derive $\Delta \vdash \psi \rightarrow \varphi$ from $\Delta \vdash \lnot \varphi \rightarrow \lnot \psi$) is neither.

はじめのツイートと同じ事案.

英語メモ

The reason is the fecundity of the proof

fecundity は繁殖力、生殖能力の意味らしい. はじめて知ったので記録.

素数の無限性メモ

For an example of a proof where we are led to false expectations in a proof by contradiction, consider Euclid's proof that there are infinitely many primes. In a common proof by contradiction, one assumes that p1, ..., pn are all the primes. It follows that since none of them divide the product-plus-one p1...pn+1, that this product-plus-one is also prime. This contradicts that the list was exhaustive. Now, many beginners falsely expect after this argument that whenever p1, ..., pn are prime, then the product-plus-one is also prime. But of course, this isn't true, and this would be a misplaced instance of attempting to extract greater information from the proof, misplaced because this is a proof by contradiction, and that conclusion relied on the assumption that p1, ..., pn were all the primes. If one organizes the proof, however, as a direct argument showing that whenever p1, ..., pn are prime, then there is yet another prime not on the list, then one is led to the true conclusion, that p1...pn+1 has merely a prime divisor not on the original list.

ユークリッドの証明で $\prod_{k=1}^n p_k + 1$ が素数であるように感じてしまう初心者がいるが, これ自体は一般には間違いだというよくある話.

証明の質

proofs by contraposition are more satisfying than proofs by contradiction, because they give you more information beyond just knowing that the desired result is true. For instance, in analysis, proofs by contraposition tend to be finitary in nature and yield effective bounds, whereas proofs by contradiction (especially when combined with compactness arguments) tend to be infinitary in nature and do not easily yield such bounds (unless one very painstakingly converts each step of the infinitary contradiction argument into a finitary contrapositive argument).

対偶で示す方が背理法で示すよりもいいという話でユークリッドの素数の無限性とも関係する. 対偶を示すのはいわばふつうの証明で, その中で示したことは正しいものの, 背理法の中で示したことは正しいとは限らない.

背理法と対偶についてふと思ったことをつらつらと書いた

この節についての

ここは上のメモを書く遥か前に書いた文章. まとめた方がよさそうなのでまとめた.

本文

2013 年の理科大の数学入試問題的なアレでこう色々と話題になった背理法だが, 例のあの HP に書いてあることが寸分の狂いもなく 社会的という訳でもないというのをふと思ったので, それについて書く.

時々, 対偶を示すべきところで背理法を使って文章を書いている人がいる. 対偶使った方が話の流れとして素直に書きやすくなると思うし, そもそも議論が見えていないということなので, 意識して直した方がいい. 実際問題, 背理法は結構扱うの難しいときがある.

名古屋の小林亮一先生だかに聞いたところによると, Poincare 予想の解決で有名な Perelman の論文は 5 段くらいの多段で背理法を使っているそうだ. 何が仮定で何を示したくて何を否定しているのか混乱してきて, 読むのが大変だったという.

あとあまり関係なく例の HP にある $\sqrt{2}$ の無理性証明だが, あれ, 私にはすごく読みづらいのだが他の人はどう思っているのだろうか. 単に慣れないだけかもしれないのだが, $\neq$ で式が繋がっていくのがすごく見づらくやりづらい.

特別何かが言いたいというわけではなく, 備忘録的に残しておく感じのアレだった.

上記内容への反応

追記

上記内容に関して次のようなコメントを頂いた.

あとあまり関係なく例の HP にある $\sqrt{2}$ の無理性証明だが, あれ, 私にはすごく読みづらいのだが他の人はどう思っているのだろうか. 単に慣れないだけかもしれないのだが, $\neq$ で式が繋がっていくのがすごく見づらくやりづらい.

私もアレはアレだと思うのでナニしてみた (http://animaleconomicus.blog106.fc2.com/blog-entry-878.html). ソレもアレだという意見は歓迎する.

コメント

そちらにつけたコメントも一応再掲しておく.

証明自体は正しいと思うのですが, 気分的にまだすっきりしていなくて, ずっとそのところを考えていました.

それはそれとして, 細かいところがいくつか気になります.

ある, 0 より大きい有理数 S があるとする. (仮定) これは仮定ではなく事実でしょう.

ある数が 0 より大きい有理数であるとき, その数は一意に素因数分解されて, もちろん言いたいことは分かりますが, 有理数に対して素因数分解という言葉, 普通は使わないでしょう.

単純に見慣れない証明だからなのか何なのか分かりませんが, 異様なくらい気分的にすっきりきません. 初等的な命題の初等的な証明でここまで腑に落ちないのがすごく面白いので もう少し考えてみます. コメントありがとうございました.

元のサイトの証明

これも引用しておく.

$\sqrt{2}$ は有理数ではないことを証明する.

ある, 0 より大きい有理数 $S$ があるとする. (仮定)

ある数が 0 より大きい有理数であるとき, その数は一意に素因数分解されて, そのすべての指数は (0 を含み, 負の整数を含む) 整数である. (正しい)

例 1) $2/3 = 2^1 \cdot 3^{-1}$ 例 2) $4/9 = 2^2 \cdot 3^{-1}$

$S$ を $\sqrt{S} \times \sqrt{S}$ と表わす. すなわち, $S = \sqrt{S} \times \sqrt{S}$ であり, $\sqrt{S} = \sqrt{S}$ である. $\sqrt{S}$ が有理数であるならば, $\sqrt{S}$ は一意に素因数分解される. ゆえに, $S$ を素因数分解した場合, おのおのの素数の指数が (0 を含めた) 偶数でなければ, $\sqrt{S}$ は有理数にならない. (正しい) ここで, 2 を素因数分解すると, 2 の指数は 1 であって偶数ではない. (正しい) ゆえに, 2 は「"二つの同一の有理数"の積」では表わせない. ゆえに, $\sqrt{S}$ は有理数ではない.

これが提示しようとしたものである. Q.E.D.

初等的な命題の初等的な証明に何故ここまで腑に落ちないものを感じるのか, それが面白い.

第二可算公理を満たさない多様体の例を教えて頂いたので

本文

呟いたら教えて頂いたので.

パラコンパクトでない多様体の例とか第 2 加算公理を満たさない多様体の例とか知りたい

@phasetr http://www.ams.org/journals/proc/1953-004-03/S0002-9939-1953-0058293-X/S0002-9939-1953-0058293-X.pdf

@eszett66 代数幾何恐るべし

代数幾何のかなりシンプルな構成で第 2 可算公理を満たさない例が作れるというの, かなりリアルに戦慄した. 代数幾何, もうすこしきちんと勉強した方がいい感ある.

あと今回の例に限らず, ちょっとした例を例の本に入れてためていく. https://github.com/phasetr/math-textbook 今回のももちろん文献と共に突っ込んでおいた. いろいろな例を充実させるというの, 前からやりたかったことなので 今回のように教えて頂けるととても助かる. 実にありがたい.

ラベル

数学, 幾何学, 代数幾何, 複素幾何

宣伝: 坊ゼミ@埼玉大

本文

Twiplaで参加募集がかけられている. 私も話す方で参加してくる予定だ.

関西すうがく徒のつどいもあるので, さらりと話せる内容ということで専門に近いこと, 特に量子力学関係の数学についてゆるりと話す予定. 今のところ線型作用素の摂動論あたりを考えている.

ご興味ある向きはぜひ参加されたい. またできる範囲でなら「こんなこと話せ」という要望にもお答えするので, 何か Twitter ででもコメントされたい.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, イベント

世界樹ポエム御大とのやりとりの私的まとめ

本文

先日 Twitter で次のツイートから一部で盛り上がりを見せた問題について, 私の雑感をまとめておきたい. 問題のツイートは これ だ.

物理が解らない人って理系のセンスないですよね. 数学が得意で物理が解らない人って, 実は数学が得意なのではなかったんですよね. 数学が得意だと思い込んでただけで, 実は算数が得意なだけだったんですよ. 算数に毛が生えた程度の中学レベルの数学しか触ってないってことじゃないのかな.

端的に言って「何だそれ」の一言に尽きるのだが, それで終わってはあまりにアレなのでもう少し書いておきたい. はじめにまとめておくと, 「やりたいなら自分でやればいい. お前の信じる数学を信じろ」という感じ. 突っ込みは勝手に入れたらいいと思うが, 自分の数学を他人に強制するものではない. いわゆる煽りではない.

Twitter を見ていた方は分かるだろうが, 私は主に出身大学と専攻についてしか質問していない. それは 次の私のリプライに対してこのようにに対して返ってきたからだ.

@Seka_iki 私は学部が物理で院が数学ですが, お話のようなことは私の実感とも, 聞いた限りの数学・物理の人達の感覚とも合いません. これまでどのように数学・物理を学んでこられてそういった印象にいたったのでしょうか. それぞれの学部の専門課程程度は学んだ上での感覚でしょうか

@phasetr @Seka_iki 失礼ですが, どちらの大学でしょうか? >>聞いた限りの数学・物理の人達の感覚とも合いません.

コメント

まず, 相手の発言意図が確認したかっただけなので出身大学に関する話はどうでもいい. 専攻についてはかなり気になっている. Twitter 上または実空間で付き合いがある (東大や京大関係者を含めた) 物理, 数学の人にこんなことを言う人を見たことがないが, 以前 Twitter で「本質を知る工学徒」として知られる方が似たような発言をしていたので, 物理や数学以外の人の方が無駄に「真の物理」とか「真の数学」とか言い出す可能性が高そうだという予想を立てているため, それを確認してみたいというところがある.

理系のセンス

あとついでに書いておくと, 「理系のセンス」とやらを物理だけで測っているあたりに色々なものが見える. 物理学科出身者としては, 彼または彼女が物理出身者がこんなことを言っているというのなら, 身内の恥は社会に出す前にきちんと内部で粛清しにいきたい. 化学や生物, その他のいわゆる理系の方で各専門はきちんと身につけていても, 物理や数学はそんなにできないという方はたくさんいるわけで, 理系のセンスとやらと物理への理解とやらは全く別の話だ. また数学と物理を無駄に強く結び付けたいようだが, このあたりにも色々なものが見え隠れして, 深い悲しみに包まれている.

適当なまとめ

で, 正直 Seka_iki 御大はどうでもいいのだが, 私のフォロワーには受験生もいるし, Seka_iki 御大がお望みであろう物理と数学の両方にまたがる数理物理を専門にしていることもあるし, 数理物理方面に興味自体はあるだろう数学や物理関係のフォロワー諸氏もいることだろうし, 私の雑感をまとめるときっと楽しんでもらえる向きもあろうかと思い, 色々書きたい.

コメント返し

せっかくだから御大の個別のツイートについてもここでコメントをつけておこう. まずは これ.

@phasetr @Seka_iki 数学が発展してきた歴史をご存知ですか? リーマン予想がなぜミレニアム懸賞問題で未だに証明されないと思いますか? あなたの周りにそんなことを考えてる人がいなければ, それはあなたの周りの人達の感覚とは合わないでしょうね.

とりあえず「なぜリーマン予想がミレニアム懸賞問題で未だに証明されないと思うか」と言われても「難しいから」以外に何があるのだろう. ここでどこかで聞きかじったのだろう物理と数学の関係とか言いたいのだろうが, 「私の周辺」にこの辺を研究している人や関係する論文はあるので興味がある向きのために紹介しておこう. あと別件だが, どうしてここで Riemann 予想なのかというのも気になる. Navier-Stokes と Yang-Mills だとそもそも問題の起源として物理でしかも数学的な意義もある問題なのだから, 物理の問題解決モチベーションは大事だろうというのが言いやすいと思うのだが. Navier-Stokes は物理の役に立たなさそうなので, そういう意味で挙げなかったのだろうか. また全然知らないのだが, BSD 予想の数理物理というのを聞いたことがないので, もしご存知の方がいたら是非教えてほしい.

「私の周辺」としてまずはフィールズ賞を取った Connes だ. これは私の学生時代の数学方面での専門が作用素環であることから「私の周囲」と強弁している. リーマン予想に関することを直接書いている文献もあるのだが, 具体的な論文は知らないので数論に関する論文, Hecke algebras, type III factors and phase transitions with spontaneous symmetry breaking in number theory (PDF) だけ紹介する. 難しくて全く分からなかったので, 内容には触れられない.

あとは新井先生の Infinite-Dimensional Analysis and Analytic Number Theory だ. ここ (PDF) でも読める. これは実際に読んだ. 簡単に内容を説明しておくと, 構成的場の量子論 (数学的には作用素論) を使って場の量子論を考えたとき, あるハミルトニアン (第 2 量子化作用素) を作るとそこから Riemann の $\zeta$ が出てくる. また, この論文ではボソンの分配関数とフェルミオンの分配関数の双対性もうまく使いつつ様々な数論的関数を構成したり, その (古典的な) 関係式を導出している.

Riemann の $\zeta$ の零点問題には「零点は適当な自己共役作用素のスペクトルで表わされる」みたいな予想というか方針があり, ヒルベルト・ポリア予想と呼ばれている. そうした話とも関係しているのではないかと思っているが, そこまで詳しいことは知らない.

次のコメント

次は これ.

数学の研究より, 物理も含め科学の発展の方が先なのではないですかね. たとえば物理が解らないのであれば, 何の為に数学を研究しているのでしょうか. 数学者とやり合うつもりはありませんが, その問題を解いて笑顔になるのは誰なんでしょうかね. あなた以外で

「数学の研究より, 物理も含め科学の発展の方が先なのではないですかね」とのことだが, 確かに歴史を紐解くならNewton や Leibniz の微分積分はある意味科学の発展が後についてきたことはあるといえる. 少なくとも Newton は物理のために微分積分を作ったのだろうし, 数学の後追いと言えるだろうが, この表現形式を得たことが契機になって様々な科学の研究が進展しただろう. ちなみに表現形式を整えるというのは大事なことで, ベクトル解析と電磁気学でも, 最早ベクトル解析抜きの電磁気学は考えられないレベルで大事だ. 物理に限らないが, 簡明な表現それ自体が物事をクリアに見せてくれるおかげで開かれる世界がある. 視点そのものすら提供してくれる.

多少話は変わるが, 先日の記事 の小林双曲性などはその例だろう. 小林擬距離という簡明な概念自体が大きく世界を切り開いたとのことだ.

念のために言っておくと, 数学というか数理物理が理論物理に先行したという事例はあるのであって, 例えば場の量子論における散乱問題だ. 簡単にいうと計算のために必要な極限があるかどうか, というところが問題で, うまく取れなくてどうしようと困っていた. 場の量子論の実験では何かの散乱を見るのが基本的なので散乱理論がきちんとしていないと困るのだが, 正にそれが整備できていなくて困っていたというのが 1940-50 年代くらい. そしてそれを解決したのが Lehmann-Symmnzik-Zimmermann の LSZ reduction formula だ. 収束を考えるときの位相 (作用素ノルムの位相ではなく行列要素の収束, 弱収束) が大事という話.

次に「たとえば物理が解らないのであれば, 何の為に数学を研究しているのでしょうか」とのことだが, そもそも「数学を研究」ということ自体が怪しくなることもあるようだ. 以前普遍市民 Im_Weltkriege 師が言っていたのだが, 東大数理の院試で「先生, 私は数学が好きなのではありません. 有限群が好きなのです」と言ってのけた方がいたとのこと. 実際 (有限群論については) かなり優秀な方だったと聞いている. 実際に確認したわけではないので真偽の程は分からないが, 私が知る数学者像からすればいても不思議ではない.

あと根本的に何のため, というところだが「自分の数学のため」だろう. 上でも出てきた Connes だが, 彼の作用素環上の数学的業績の 1 つに III 型 von Neumann 環の分類に関する仕事がある. 元々物理で出てくる von Neumann 環は原則として III 型環だという問題が出た (量子統計については自分で示した) とき, 荒木先生と Woods が別口で示していた III 型環の分類があるのだが, Connes の仕事には III 型環特有の理論である冨田-竹崎理論を使って III 型環の分類に挑んだという分がある. もちろんそれ以外の結果もあるが, 既に分かっていることであっても, 自分なりにやり直すことも大事なことだ. 実際, 証明の仕方が気にくわないとか, 「哲学的に」ある証明法を使うのは御法度というケースはある. 作用素環の講演でそう言っているのを聞いたことがある. 細部を覚えていないが,「超積を使えば処理できるがそれは駄目です. 何か別の方法を考えたい」ということを言っていた. ちなみに作用素環に超積のテクニックを持ち込んだのは上記の Connes だ.

この辺の話は数学を専門的に学んだ者なら当たり前だろうから, 彼または彼女は数学を専門にしていないのでないか, という感覚がある. Twitter で見た限り, 例えば工学には「世界が不便だからこうしたい」といった, ある意味外的なモチベーションがあるらしいので, 何というかそういうバックグラウンドがあるのだろうか, と思った次第だ. 物理でもそういった外的なモチベーションないだろう. もちろん, 別に数学は数学を専門に学んだ者だけのものではないので専門などどうでもいいのだが, 外部から数学者のモチベーションについて色々言われても, 究極的には「数学のため」というのすら飛び越えて「自分のため」としかならないだろうから.

色々書いていて思ったが, 物理に対するある種異常にも見える「神聖視」みたいなのは何なのだろう. 研究について, ということなら物理の人間は「数学は道具」ときっぱり割り切っている人の方が多い印象がある.

次のコメント

次は これ.

@phasetr @Seka_iki 数学をやるのであれば, その必要性と, 目的, そういうものの志を明確に備え, 問題に望むべきではないでしょうか. 数学しか解らない人ってそういう意味で真の数学を理解していないんだと思う. 私はそういうことが言いたかったんですよ.

暗号と数論の関係だとか, 具体的に色々いうことはできるが, 根本的なところは「自分でやれば」というところに尽きる. 念を押しておくが, いわゆるネット上での煽りということではなく, 本当にそう思っている. グレンラガンのカミナ兄貴のように「お前の信じる数学を信じろ」ということだ. Twitter にいる JosephYoiko さんはあまり純粋数学には興味がなくて, 学生時代, 教官と喧嘩になったというのを聞いたことがある. 実際に今も応用数学を研究しつつ, 実際に技術検証も含めて会社をしているとのことだ. 「自分でやれば」と言われたら「じゃあやるー」といって本当にやりだす無駄で迷惑な行動力があるのは, 「真の数学」とかいう訳の分からない抽象物ではなく「自分の数学」という具体物があるからだと思う.

次のコメント

次は これ.

@kentosho @Seka_iki @phasetr 真の数学というものが, 数学の全集合だとすれば, 物理の解る数学者も数学者の部分集合ですので, 物理の解らない数学者⇒, 真の数学を知らない, は真だと思いますね. あなたはまったく思いませんと仰っていますが, どうですか?

まず第一文, 「数学」なのか「数学者」なのかはっきりしろ, と言いたいが, 個人的な感覚 (他の人がどういうかは知らないし責任も持たない) からすればどうでもいいとしか言い様がない. ついでに言えば, 私はおそらく「物理の分かる数学関係者」という方に入るだろうが, 物理が分からない, より強く興味ない人に対して特に何とも思わないし, むしろ興味があるおそらく少数派としての自分を大切にしている. 多分それが私の数学であり, 物理であり, 数理物理だからだ.

この辺, もう少し書きたいところだが, 疲れたので今回はこの辺にしておきたい. しばらくブログは続ける予定なので, どこかで書くこともあるだろう.

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数学, 物理, 数理物理

境界がある $\mathbb{R}^n$ の領域上の微分疹程式論と多様体上の微分方程式論⁧でふと思ったこと

本文

全くの専門外なので全く知らないのだが, ふと思ったので適当に書いておく. 運が良ければ専門家が何か教えてくれる可能性もある.

詳しいことは忘れたのだが, 以前東大数理の儀我先生が次のように言っているのを聞いた.

ときどき $\mathbb{R}^n$ 上の解析よりも多様体上の解析の方が難しいと思っている人がいるようですが, $\mathbb{R}^n$ の方が難しいことだってあります.

何か具体的に変な領域を考えて, その上だと何か面倒なことが起きるという話だった. 詳しいことを覚えていないため, 今から考えるとそれに対応するような変な多様体上で考えれば, 同じように困ったこと起きるのでは, という気もするが, 儀我先生がその程度のつまらないミスを犯すはずもないので, 多分本当に難しい話なのだろうと思っている.

今回の本筋はそこではなく, 境界がある領域・多様体上の微分方程式の解析についてだ. 定義によってふつうの多様体には境界がない. 境界があるのは境界つき多様体と言わなければならない. 例えば次の本の書名, 『境界つき多様体のディラック作用素』にもある.

$\mathbb{R}^n$ の領域での楕円型の偏微分方程式だと, 解の存在が考えている領域の境界の滑らかさに強く依存するとかいう話を聞いたことがある. 方程式にもよるはずだが, 境界が区分的に $C^2$ くらいでないとそもそも解がないため, どうしでもそれだけは仮定しないといけない, とか聞いた覚えがある.

多榘体 (manifold) だと多分境界まで込めて滑らかなのを仮定していると思うので, 上の条件での議論はあまりしないような気がする. その辺どうなのだろうか 幾何解析の本, Aubin の『 Nonlinear Analysis on Manifolds. Monge-Ampere Equations 』を見ると, 例えば Kahler 多様体の上での $C^5$ 級の解の話があったりする. 境界の話が出てきたと思ったら有界な $\mathbb{R}^n$ の領域の話だった.

幾何解析で変な境界を設定して議論することあるのだろうか, というのが私の素朴な疑問だ.

話はずれるが, 確率論を駆使したり実解析的な方だと境界がフラクタルの場合とかゴリっと出てくるはずなので, $\mathbb{R}^n$ ではもっとすさまじい境界を出してこられる.

あと本当に特異性がある代数多様体 (variety) で微分方程式を議論するとどうなるのだろう. 必ずしも境界の話ではなくなるのでアレだが. さらに, 私の無理解のため本当にピント外れの話をしている可能性もある.

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数学, 幾何学, 幾何解析, 微分方程式

Twitter まとめ:統計力学の数学

本文

統計力学の数学と言っても色々な数学がある. 極端な例だが, 物理ではほぼ死んでいる (意味がない) エルゴード問題について, 数学ではむしろ非常に重要な概念として一部分野ではよく出てくる. もちろん, 元が物理と関係が深かったりする確率論や作用素環ではある意味当然といえば当然なのかもしれないが. このツイートこのツイートを見て色々なことを思った. 作用素環だと centrally ergodic とか, 物理と関係ない状況でも出てくる, ということくらいは書いておきたい.

転載

以下 Twitter のまとめ.

Ergodic theory のゼミはやることになりそうだな. 数学での発展でこんな感じだったんだと google books で軽く確認. 田崎さんの本の注まで読んでいない人は「エルゴード仮説」と一緒にして軽視しそう.

@forest8810 実は, 僕は, 君とエルゴード理論のゼミをする予定になっている者です. 提案なのですが, 統計力学の数学的構造の本も一緒に読むと, エルゴード理論の本の理解が深まるようなのですが, 興味は有りますか? また, 興味を持ちそうな人は周りにいますか?

@koplpynwa そうなのですか. 興味はあるのですが時間がないかもしれませんね. 僕は来年度から物理系に進むものなのですが, ゼミの本も, 最終的に岩波の『力学系』に落ち着いたみたいなので今の段階では十分かなと思っています. 確かに物理との対応はみていくつもりですが.

@koplpynwa 統計力学の数学的構造の本とは具体的にどんな本なのですか? 時間はとれそうにないですが, 興味があります.

@forest8810 Ruelle という人の, statistical mechanics という本です. あと, 僕は君をエルゴード理論のゼミに誘った張本人です. はい, 誰かわかりましたね.

@koplpynwa そうなんですね (笑). ちょっとびっくりしました. 世間は狭いなあ. 関心のある子はいますがゼミ死しそうなので時間がなさそうですね. 本は google book で見ました. まとまってはいそうですが, おそらく量子統計ですね.

@koplpynwa 作用素環論につながるにおいを感じますが. 統計力学というよりは, 多体系 (多粒子) の量子力学というイメージがあります.

@koplpynwa どちらにしても別に日をとってゼミをする時間はなさそうです. 最適輸送も結局, 時間が多くは予習にとれないので今日断ったりした感じなので

@forest8810 あと悪いんだけど, ゼミの連絡とか DM でやりたいから, フォローしてもらえますか?

@koplpynwa 了解しました.

@koplpynwa @forest8810 その本は滅茶苦茶読みにくいのでやめた方がよいです. 目的によりますがあまり物理っぽくなくエルゴードも全くないですが, 量子統計なら新井先生の量子統計力学の数理, 古典統計なら場の量子論と統計力学 (のイジング周り) の方がもう少し読みやすいです

@koplpynwa @forest8810 目的に応じて他の選択肢もありますし, 適当な本のこの部分を読むとこんなことは分かる, くらいのことは言えます. http://www.nicovideo.jp/watch/sm10262952http://www.nicovideo.jp/watch/sm15366896 で雰囲気を掴めるかもしれません

@phasetr 和書で, 薄い本があるのを前にみたのですが, それはどうなんでしょう? たしか樋口さんという方が書いていたと思います.

@phasetr @koplpynwa ありがとうございます. とりあえず, ゼミでは岩波の現代数学の基礎の『力学系』でやっていくもようなので関連でまた考えていきます.

@koplpynwa http://www.amazon.co.jp/dp/4795268703 でしょうか. これは読んだことないので詳しくは分かりませんが, 古典統計の本です. 何を持って統計力学の数学とするかによりますが, 話題としては多少の偏りはあるでしょう

@phasetr それではなく, 「統計力学」 というタイトルの本のことをいったのですが, 自分で調べてみます. percolation や self-avoiding walk に興味があるのですが, 最近はどのような研究がされているのでしょうか?

@koplpynwa 勘違いしていてすみません. そちらもみていませんが, スピン系でやはり相転移周りの話です. 確率周りは詳しくないのですが, tetshattori さんがその辺近い人なので聞いてみると早いかもしれません

@koplpynwa @forest8810 横レスすみません (相転移 P さんの呟きを偶然見たので). お探しの樋口さんの統計力学は http://ow.ly/jyLSG の 3 冊目かと. 樋口さんの和書はそれぞれ表題どおりの教科書で, 読みやすくかつ良書で, どれもお薦めです

服部さんとの対話

この辺から私と服部さんの対話に移る.

@tetshattori ふと思ったのですが, 古典連続系の統計力学だとどんな本があるのでしょうか. 量子連続系だととりあえず Bratteli-Robinson と Stability of matter 関係の文献かと思うのですが, 古典連続系はぱっと思い浮かばないもので

@phasetr あ, もちろん昨日今日話題になっていた樋口さんの統計力学とかも基礎的なことを抑えてあったはずですが (どういう水準のものを求めているかにも依ってきますが…)

@tetshattori このくらいを知っていればある程度を論文を読めるようになる, という程度の感じです. Bratteli-Robinson も Stability of matter も論文ある程度読めるようになる感じの本だと思うので, 対応する古典系の本は何かあるのだろうか, という

@phasetr それは難しい注文ですねえ, 原著論文遡って何とかした世代 (というか, 出自が統計力学じゃ無いので, そうやって間に合わせた, というべきかもしれない) なので, もうちょっと要領の良い方法があるはずですが…参考にならずですみません

@tetshattori 私も勉強が偏っているので何とも言えませんが, イジングや関連する確率幾何と相転移関係のものは充実しているのに, どんな文献があるかすら知らないのも情けないと思ったので, せっかくの機会なので少し伺ってみようと思いまして. ありがとうございました

古典統計, 結局あまりよく知らない. 量子統計だからといって分かっているわけでもないのだが. 世界は広い.

追記

Ruelle の本は Statistical Mechanics ではなく Thermodynamic Formalism ではないかという, とある専門家のタレコミがあった.

タレコミで教えてもらったこのレビューによると Thermodynamic Formalism はエルゴード理論の話が中心のようで, Statistical Mechanics 以上の地雷という可能性があるようだ. 少なくとも初学者が読む本ではない模様. 初学者というのは曖昧な言い方だが, 統計力学の数理物理のバリバリの専門家にしか読めないという程度の意味を想定してほしい. とりあえず私は Ruelle の Statistical Mechanics がほぼ全く読めなかったし, 今でも読める自信はないので, 数学・物理共に私を明白に越える力があると思えない人は読まない方がいい.

エルゴード関係なら多分素直に数学で定評のある本を読んだ方がいいだろう. ある程度物理にも配慮しながら相転移方面の数学を学びたいという方は, 原・田崎の Ising 本を待とう. 今は査読状態なのでここからメールすれば草稿は読めるが, あの状態ではまだ非専門家が読めたものではないので, 査読ついでに勉強したい, という向きには勧められない.

関東近郊の方でサポートを受けつつ読みたいという方がいらっしゃれば, Twitter かプロフィールのところにあるメールアドレスまでご連絡を頂ければ, 私の方である程度はサポートすることはできる. より良い本にするためにも相転移の数理物理の非専門家からの意見は貴重だと思うので, できる限りのサポートはしたい.

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数学, 物理, 数理物理, 統計力学

Twitter まとめ: 百合数理についての雑感

本文

百合漫画について先日少しツイートした分をまとめておこう.

そういえば百合キチババアから少女セクトの感想も書くように言われているが, GIRL FRIENDS, クローバーなどと比較しつつの少女セクトの感想は 「裸が頻出する本でなぜ女性は巨乳として描かれるのか」という部分に今のところ集約される. 全くとまでは言わないが, クローバーと最後の制服はほぼ裸体が出て来ず, 胸は何と言うかすとんとしている女性ばかりだが, ほぼそれ方向の少女セクトと時折裸体が登場する GIRL FRIENDS では女性陣, 胸が大きく描かれている.

りぼん, なかよし周辺しか知らないが, あの辺の少女漫画では, 登場人物が小学生の場合もあるが, あまり胸が大きく描かれている印象はない.

セーラームーンなど「お色気」シーンがあるものだと 何となく大きかったような気もするが, Google 画像検索で簡単に見た限りでは何となくそんな印象. 封印しているのですぐ取り出せないのだが, ふしぎ遊戯や妖しのセレスなど裸が時折出てくる漫画だとやはり女性の巨乳率高い印象がある. これは漫画家同じなのでアレだが, 今画像検索で確認したら天使禁猟区のアレクは胸大きい. 九雷とか沙羅はどうだったろうか. イラスト集も封印してしまったようですぐ出せないので確認できていないのだが.

無論ここで気にしているのは巨乳と貧乳の数理だ. 貧乳の数理解析については私の動画の他, 流体力学の観点からのてとろで P の動画もある. ここで裸が多い場合にはそれなりに胸を大きく描く傾向がある (これが真であることはとりあえず仮定) ということはこれを前提に議論を展開しなければいけない印象.

まず気になるのは裸を描くときになぜ胸を大きく描きたくなるのか, というところ. 著者の性別なり色々な問題があるが, (現代) 女性の願望なのか, (現代) 男性の願望 (ある意味現代社会の願望) なのか, という別の問題があるにせよ, 何となく胸は大きい方がいい的なアレを感じる.

さらに気になるのは, 裸そのものの意味だ. 数学としては余計な構造を取り除きぎりぎりまで研ぎすませた世界で生まれる美というのは一つの理想と言える. こうした観点から考えたとき, 裸体はやはり余計な構造を取り除いた美しい姿といっていいか. いいとした場合, 何故その美しい姿に巨乳を当てるのか. ぎりぎりまで研ぎすませた上でまだなお必要とされるものは豊かなものを含んでいると思えるだろうが, 何と言うかそういう話か. この辺がうまくまとまっていないのが少女セクトの感想が書けない理由の一つになっている. 最後の制服は数学的にはさらに難解な印象をうける. どう料理するべきか試されている.

百合の世界, 複素多様体のような選り抜きのエリートよりも可微分多様体や位相多様体のように, 色々あってそれぞれいい的な多様な世界を愛するということなのかと思っている.

ラベル

数学, 百合

Twitter まとめ: 高校生とのハートフルなやりとり 数学あるある 2000 年の恋編

本文

先日こんなネタを呟いた.

数学あるある 2000 年越しの恋

これが高校生に RT されていたため, 数学ガールの読者のようで, その辺を関係づけるときっと楽しいだろうと思い, 折角なのでちょっと話しかけてみた. 今回はそのハートフルなやり取りをまとめておきたい. 大体この辺から始まる.

やりとり

@lovemath0218 http://https://twitter.com/phasetr/status/307862438148206592 の元ネタが何だか分かりますか?

@phasetr ごめんなさい, 元ネタは分かんないです

@lovemath0218 http://http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9A%E8%A6%8F%E3%81%A8%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%B9%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%BD%9C%E5%9B%B3#.E4.B8.8D.E5.8F.AF.E8.83.BD.E3.81.AA.E4.BD.9C.E5.9B.B3 数学ガールのガロア理論の巻に角の三等分問題がありましたが, その辺です. 古代ギリシャの頃からあった問題で解決が 1837 年なので, だいたい 2000 年です.

@lovemath0218 2000 年経って解決されたのをもって 2000 年越しの恋が成就, という感じで適当に呟きました. さらにいえば恋は実ったところからこそが始まりとも言えるわけで, その後のガロア理論の深い展開は色々あります. 専門ではないので私は詳しくないですが

@lovemath0218 あと, 純粋な数学ですぐには思いつかないのですが, 他に, 例えば物理で 2000 年かかってまだ解決されていない問題があったりもします

@phasetr 2000 年経っての解決を意味してるのは予想出来たんですが, さすがに角の三等分問題まではたどり着かなかったですね

@phasetr 色々教えてくださってありがとうございます ('▽`) 2000 年かけても解決されない問題, 何だかワクワクしますね (笑)

@lovemath0218 超我田引水ですが, 磁石が何故存在するか, というのも 2000 年レベルで未解決の問題です. 私はこれに関する数学を研究していました. そういう問題, 意外とその辺に散らばっています

@phasetr そうなんですか!? また色々調べてみます ((((゜▽゜))))

記録

Galois 関係というか代数をほとんど知らない (分かる分からない以前の問題) なので何ともいえないのだが, 微分 Galois 理論といった議論もあるし, 代数幾何などとも関連する方向での展開も色々あると聞いている. その辺は Twitter で代数または代数幾何系の人に聞くときっと色々教えてくれる.

物理での話

天文だの何だの色々あるだろうが, 物理関係でも 2000 年クラスの問題はある. 上にも書いた通り, 磁石の問題は 2000 年の時を経てもいまだに解決されていない. 興味がある向きは【シリ*MAD 支援】線型代数と多体電子系【アイマス教養講座】などをご覧頂きたい. Hubbard モデルという磁性体の簡単なモデルについて説明している.

また Bohr-van Leeuwen の定理というのがある. 古典論の範囲では磁性体が存在しないというように (適当に) まとめられる. どうでもいいが, 上記 Wikipedia の記事中, 次のような記述があったが相対論をどう思っているのかとても気になる. 普通, 相対論は古典論に入れる. 古典論というのは非量子論という意味で使うのが普通で, 相対論は量子論とは別枠だ. 相対論的量子力学とか相対論的場の量子論というのがあるので, マッチする部分があるけれども.

この定理の発見の重要な点は, 古典力学の範囲では反磁性, 常磁性, 強磁性などの磁性を説明できず, それらを説明するには量子力学と相対性理論が必要不可欠であるということである.

量子論の物理入門というのは明らかに私の能力を越えているが, 量子力学というか場の量子論と量子統計の数学なら私の専門だ. ここについてもいくつか動画を作ったので, 興味がある向きはご覧頂ければ幸いだ. まず量子統計だが 春香誕生祭 + 緑な P ・実解析 P ・パラ P リスペクト 1/5 量子統計の数学的基礎から続く 5 連作がある. 全部で 90 分程度あった気がする. 作りかけでアレだが 【理工学 M@ster 祭り 2nd 】量子力学の数学的基礎 1-1.概論というのもある.

また, 量子電気力学入門として 【シリ*MAD 】レーザー:電子がうたう歌というのも作った. レーザーという「身の回り」にあるものだが, 原理的には場の理論が必要になる. こちらは数学分はほとんどない (つもり). アイドルとレーザーの感じをうまく絡められた感があり, 個人的にはかなり気に入っている.

ラベル

数学, 物理学, 量子力学, 量子統計, 場の量子論

Ruby に超準解析のライブラリがあって激しい衝撃を受けた

本題

HTML5+JavaScript で高校生向けの数学・物理の簡単なアニメーションが作れるので, その関係もあって最近プログラミングを本格的に勉強したいと思っている.

そして全く別件で今色々あって Ruby の勉強を迫られている. そしてまた色々あってるびきちさんに 何かいい本がないか伺ってみたら次の本をおすすめされた.

読んでいたら, 数値の章のラストに超準解析のライブラリがあるとかいう衝撃的な話が出てきたので早速検索した. それがこれだ.

今のところインストールしても使う用途がないので 何もしていないが, びっくりした. ライブラリなら複素数やら行列はいくらでもあるだろうが, 超準解析ライブラリがある言語, 他にあるだろうか. Haskell 勢とか頑張ってほしい.

追記

別記事にしてしまったが, dif_engine さんからご指摘を頂いている.

こちらも参考にしてほしい.

追記 2

上の指摘をこちらに追記しないままにしていたら, dif_engine さんから再度指摘を頂いた.

で, これ.

とりあえず, こちらにもきちんと記録・引用しておく.

追記 3

2021 年時点では数学+プログラミングは Julia を使うのがよさそう. Python ももちろん役に立つ.

追記 4

この間 Ruby に超準解析ライブラリがあるのを知って衝撃を受けた話をしたが, それについて dif_engine さんにちょっと教えてもらったことがある. 少なくとも今の私にはあまりよく分かる話ではないが, 面白いと思う人はいるだろうから転記しておこう.

この辺のツイートからはじまる.

Ruby に超準解析のライブラリがあって激しい衝撃を受けた http://goo.gl/fb/mReIe よく分からない数学

@phasetr tar.gz が落とせなかったのでソースを見ていませんが内部計算に RationalPoly を使ってるとあるので, 1+epsilon の処理のときには形式的に epsilon の有理式として計算してから epsilon=0 と代入してるのではないかと想像します.

@dif_engine ありがとうございます. 超準解析全く知らないのですが, 修羅っぽい印象を受けました

@phasetr 順序体 K の正の部分 P に対して, ∀ p ∈ P p < T として, それと整合するように多項式環 K[T] を順序環とみなし, その商体を考えると t := 1/T が無限小とみなせて…というような話が昔からあるようです. (超準解析の前から)

適当にネタを投下しておくと色々教えてくれる人がいる. いい時代だ.

追記 5

Twitter で詳しい方から次のような情報を頂いた. 鍵アカウントだったので許可を頂いた上で転載する.

実数体の任意の拡大順序体は無限大元と無限小元を持ちます. 既に説明されているように, このライブラリでは, 有理式体 R(X) が R の拡大順序体と見做せるので, それを利用しています.

これは超実数体(もう少し正確にいえば計算機で表現できるような実数体の部分環の超準化)とは全く異なるものです. ですから超準解析ライブラリやちょう実数のライブラリという説明は(開発者がそのように説明しているものの)不適切です.

定義をはっきりさせないといけないが, 【実数体の任意の拡大順序体は無限大元と無限小元を持ちます】というのがやばい. 他の (順序?) 体でも同じことは起きるのだろうか. 実数の魔界ぶりを改めて認識させられる.

追記 6

編集したらさらに情報を教えてもらったので.

なお無限大と無限小の定義は次の通り: 任意の正の実数よりも絶対値が大きい元を無限大元, 任意の正の実数よりも絶対値が小さい元を無限小元という.

あともう 1 つ.

あの日見た数体系の名前を僕達はまだ知らない。

追記 7

どんどん情報が集まってくる.

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数学, 数学教育, 物理, プログラミング

Twitter まとめ: 絶対に座標を取ってはいけない幾何学

本文

mr_konn さんとのハートフルなやり取りをまとめておく. この辺から始まる.

「絶対に元を取ってはいけない幾何学」だったかを思い出した

@mr_konn 何かそういう文章あるのですか. 読んでみたい

@phasetr いえ, ネタとして出てきたフレーズでした.

@mr_konn 無念

@phasetr 相転移 P が書いてください!

@mr_konn 幾何, 本当に知らない (分かるとかいう前にろくに勉強していない) ので何ともならないですね. 何とかしようとは思っていますが

雑感

「元を取ってはいけない」だと圏のあたりで代数のはずなのでブログタイトルは少し変えておいたが, 要は数学人には分かるネタだ. 幾何だとタイトル通り, 「絶対に座標を取ってはいけない幾何学」になるだろう.

このあたり本当に不勉強で詳しくないのだが, 聞く限りではとても大事な考え方ではある. 「元を取ってはいけない」については, 圏や関手の話になる. 具体的な元を取らずに関係性だけで考えていくことで議論をクリアにしていけるのが御利益なので, 元を取らずに頑張ることが大事, とかいう話だ.

幾何に関してもそうで, 何でもかんでも座標を入れて計算していくのはよくない, とのことだ. こちらもやはり具体的な対象に目を奪われて本質的な部分が見えなくなるおそれがあり, それを避けるためにも常に意識しておくことが大事らしい. 聞くところによると, 本質的で難しいことをしているときこそ視界をクリアにするために座標を使うことを避けた方がよいようだ.

知らないこと, 聞きかじりでしかないことをぐだぐだと書いたのは, 言葉の響きがキャッチーなのでこういう感じで何かできたら面白いだろうなと思ったからだ. どちらかといえば数学は重々しい感じが付き纏うかと思うので, こういう言語感覚は大事にしたい.

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数学, 幾何学, 代数学

Cox, Hyde の『THE GALOIS THEORY OF THE LEMNISCATE』

はじめに

誰が話していたのか忘れたが, Cox, Hyde の『 THE GALOIS THEORY OF THE LEMNISCATE 』という論文が出ていたのでメモしておく. Abstract を引用しておく.

Abstract

This article studies the Galois groups that arise from division points of the lemniscate. We compute these Galois groups two ways: first, by class field theory, and second, by proving the irreducibility of lemnatomic polynomials, which are analogs of cyclotomic polynomials. We also discuss Abel's theorem on the lemniscate and explain how lemnatomic polynomials relate to Chebyshev polynomials.

コメント

題名にある通りの Galois 理論は当然として, 類体論との関係とかも色々あるようなので面白そう. Cox は結構有名な (和訳もある) 代数幾何の入門書を書いている人で, 共形場とかもやっている人だったという記憶. 以前符号理論と代数幾何の動画を作ったとき, 代数幾何自体にはほぼ触れなかったが, さすがに勉強しないとまずいと思って, Cox らによる代数幾何の本を買って一応一通り眺めた.

全く身についていないが, いくつかあった誤植を報告した. 誤植を報告すると, それが新たに見つかった誤植の場合, 1 箇所 1 ドルくれるとか何とかいう話があって, それでいくらか送ってもらった覚えがある.

ちなみに特に自分が専門とするところの本なら, 一生懸命読んで誤植を報告したりすると, 名前とか覚えてもられる可能性が高い. 色々な研究者と仲良くなっていて損なことはないと思うので, 興味のあるところなら特にその辺を意識してやってみるといいかもしれない. 私の場合, 新井先生の本の誤植をたくさん指摘して興味があるという姿勢を示しておいたので, 修士くらいで研究に関して聞きたいことなどあったとき, (メールで) 色々相談に乗ってもらえたりした. 最近特に, 教官は研究と関係ない雑務で無駄に忙しいのであまり無茶なことを期待するのはアレだが, やっておくといいことがないでもないので, 興味がある向きはそういうのも考えてみよう.

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数学, 代数幾何, 数論

$\mathbb{Q}$ 上連続だが $\mathbb{R}$ に連続拡張できない関数の例: 指数関数の定義域の拡張に関連して

本文

教育的な非常によい例だと思ったので.

$\mathbb{Q}$ 上連続になるが $\mathbb{R}$ に連続拡張できない関数, DVD で取り上げたにも関わらずこういう場合の例にも使えることを理解していなかった.

実に恥ずかしいが, よい勉強になってしまった.

コメントの転載

匿名コメント

簡単ではないってのは嘘なのでは?

自分: 匿名への返信

かもさんの【指数関数でそれが起きないことを示すのは、簡単ではありません。】に関してでしょうか。 どういう視座に立っているのか全く分かりませんが、 高校数学からの話なので全然簡単ではないのでは。

暇つ虫さんからのコメント

ここに書き込んだことを忘れてて返答遅くなりました。申し訳ないのです

連続性から定義ということで e^r := lim[q∈Q → r]e^q とします これが連続なのは明らかです

では上の極限が収束することを示せばいいわけですが右極限と左極限が一致することを示そうとすると e^a/e^b = e^(a-b) → 1 (a→r, b→r) ですから一致します

自分: 暇つ虫 への返信

高校レベルでは実数の完備性もよくわかっていないですし、 そこからして苦行であって簡単ではないのでは

鴨浩靖さんからのコメント

冪根を使って有理数に対して定義された指数関数がQ上で連続であることが、全然、明らかなことではありません。

ちなみに、赤攝也『実数論講義』も、冪根を使ってQ上で定義した指数関数をRに拡張する方法でR上の指数関数を定義していますが、凸関数の性質を使った長い議論でR上の連続性を証明しています。

自分

kamo_hiroyasu への返信。

コメントありがとうございます。 思えば、そもそも $\mathbb{Q}$ 上での証明からしてやったことがなかったので、 確かめもせずに適当なことを言ってはいけないと反省しました。

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数学, 数学教育, 反例, 解析学

何度も言っている線型代数と量子力学と関数解析と数理物理的なアレ

本文

イケメンエリート野郎のオペのコン P が 次のようなことを言っていた. それに対していつも言っていることをまた言ってきた. オペのコン P にももう何度も言っている気がして申し訳無く感じてアレだった.

量子論を物理として理解するなら, 連続な場合は離散的な場合のアナロジーでいいので線形代数で十分では?

@kbl_30 大分前に Amazon の線型代数入門の書評にそれ書いておきました

@phasetr ねくちゃんが関数解析から攻めようとしていたので

@kbl_30 @phasetr アナロジーではなく関数解析でないとこまる, という場面はやはり出て来るのでしょうか.

@Yonus_Mendox @kbl_30 困るときは物理が悪い (物理的考察が甘い) と判断するべきです. むしろ関数解析をきちんと使って物理的に満足いく議論が出来る方が珍しいくらいなので, その意味でも数学的にどうこうというのはおすすめできることではありません

@Yonus_Mendox @kbl_30 ただ無限次元の線型代数として把握していれば色々なことを 統一的に理解できて楽な部分はあると思っているので, その辺について今度東大かどこかで話したい (そして動画化したい) とは思っています. 忙しくてそちらの話は全く進められていないのですが

@phasetr なるほど. 言い換えれば, 物理にとって関数解析は「無限次元の線型代数」に過ぎないので, 大抵はアナロジーで充分, ということになりますか.

物理を数学的に厳密に, とか息まく新入生などがいるかもしれないが, そういう人はとりあえず私を見よう. 物理も数学も中途半端な出来損ないの醜いキメラだ. こうなる覚悟がある者だけ数理物理に来よう. 来るなら歓迎はするが勧めることはできない.

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数学, 物理, 数理物理, 量子力学, 線型代数, 関数解析

Riemann 積分と Lebesgue 積分: 特に定義

やり取り

先日, Twitter で次のようなやり取りをした.

@kenkonD リーマン積分は定義は分かりやすく技術的にも簡単ですが, そのあとの議論が恐ろしく面倒です. ルベーグは定義からして面倒ですが, 定義したあとの議論がクリアです. 何かリーマン積分をやらなければいけない理由がない限り直接ルベーグでも良いと思っています

リーマン積分とルベーグ積分, 勉強について色々思うところはあるが, うまくまとまらない. 定義の簡明さと関連する定理の議論の簡明さが恐ろしいくらいに反転するので, どうするといいものかがとても悩ましい. 使うならルベーグがやはり楽で, 具体的な計算練習にはリーマンの「本」が参考になる

@crobert_z わたしもまさにそれを思っているのですが, 具体的な計算は別途関連する計算のところだけ読めば良くて, 理論はそんなに頑張ってやることないな, という感じ. 問題は初学者が自分でそこの切り分けができるかというところで, それが悩ましい

一応言っておくと広義積分に関するところでリーマン積分とルベーグ積分の違いがあるのでそこは注意する必要がある.

やはりあれだ, ルベーグの定義までの面倒くささが初学者に勧めるときのハードルになるので, そこを埋めるコンテンツを何か作るしかない. 厳密なのはいくらでもあるから, 気分だけきっちり感じられるものを

リーマン積分

色々と思うところもやりたいこともあるが, とりあえず今回は Riemann 積分と Lebesgue 積分の定義について考えたい. 一言でいうと, Riemann 積分は定義が簡単だが後の議論が煩雑で, Lebesgue 積分は定義が面倒だが後の議論がクリアになる. まず技術的にいえば, これは面倒な部分を定義に押しつけるかその後の議論に押しつけるかの差にあたる.

ルベーグ積分の定義

基本

Lebesgue 積分がすぐれているというか応用上便利なのは, 面倒な部分を事前に定義に押しつけているからだ. 具体的にどう便利かというと, 極限に関する議論, 特に関数列が扱いやすい. Lebesgue の単調収束定理と Lebesgue の優収束定理が魂といっていい. この 2 定理の簡明な定式化が許されることがとても大事. Riemann 積分で対応する定理を見てみると良く分かる.

モチベーション

Lebesgue 積分のモチベーションを考える上では応用から入るのがいい. そこで具体的な状況を考えよう. 一番シンプルで直接的な応用はおそらく微分方程式だろう. このとき定義とも合わせて鍵になるのは「真の解」を近似する関数列だ. さらに数値計算など実際問題としても大事だ.

折れ線近似でも何でもいいが, とにかく適当な手段で近似関数列を作り, その収束を議論する. つまり関数列の極限を扱いやすくしたい. 積分の定義自体もここに照準を合わせて改良すると Lebesgue 積分になると思えばいい.

適当な本で Lebesgue 積分の定義を確認してほしいが, 実際に積分したい関数を (単関数の) 関数列で近似し, それの極限として積分を定義している. つまり定義そのものから関数列を導入している. 分かりづらさもまずここからはじまる.

リーマン積分とルベーグ積分

Riemann 積分は関数それ自身とその値だけで定義できるので, 面倒がないが, Lebesgue 積分では関数列という余計な概念が出てくる.

また, Riemann 積分 (の定義) では本質的に区間しか出てこないが, Lebesgue 積分だと極限の取り方を柔軟にするため区間の極限を始めから考えておかないといけない. それが可測集合だ. ここで, 集合の演算は可算なところでおさえておかないとまた変なことが起きる, とかいう話もある. 技術面で面倒なことだけならまだいいのだが, 非可測集合など数学として本質的に問題になることも出てきてしまうため, 何となくきちんと勉強しなければいけない気にさせるあたりがまた鬱陶しい. もちろん数学科の学生ならきちんとやってほしいけれども.

まだあまり整理できていないが, そのうちもう少し膨らませて何か作ろう.

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数学, 解析学, 積分論

Twitter まとめ:汎関数と積分 Riesz-Markov-Kakutani の定理

はじめに

積分は汎関数と思えるか, みたいな話をした. 前にも何回か書いたような気はするが, これは面白い話なので何度書いてもいいだろう. この辺とかこの辺.

ツイート引用

「積分」を特定の関数空間に対する線型汎関数と定義するなら積分なんじゃないすかね (適当)

@crobert_z 作用素環, 特に von Neumann 環だと実際に汎関数を積分のように見ます. 可換だと本当に積分になりますし. 特に【単調収束定理が成立する汎関数 (正確には状態:作用素環の用語) 】を正規状態と呼びます

@phasetr やはりそうでしたか. 可換だと関数環 (でしたよね) になるから当然ですかね. ありがとうございます.

State=積分ってのは知らなかったな. 授業中聞いてなかっただけかも知れないけど ()

@crobert_z 状態は勝手に有界になってくれるのですが, (局所コンパクト) ハウスドルフ空間上の 連続関数環の正値有界線型汎関数は Riesz-Markov-Kakutani で積分と思えるというのを使います http://en.wikipedia.org/wiki/Riesz%E2%80%93Markov%E2%80%93Kakutani_representation_theorem

@crobert_z あと正規状態とか非可換確率論とかで http://kaken.nii.ac.jp/d/p/61540138.en.html あたりも多少参考になるかと思います

@phasetr Riesz-Markov 定理は知ってましたが Kakutani の名前も付いてたんですね

コメント

詳しい話は Wikipedia を見てもらうこととして, Riesz-Markov-Kakutani はハイパー格好いい定理で, 関数解析のハイライトの 1 つなので, 関数解析を学ぼうという人は必ず勉強してほしい. 証明は例えば「ヒルベルト空間と線型作用素」の付録に書いてある.

証明は長いのだが, ポイントは連続関数と開集合に対する議論を緻密な解析で可測関数と可測集合に持ち上げていくところにある. 測度と位相の絡み合いが織り成す美しい定理であり, 証明だ. 実は「正値 (Schwartz) 超関数は測度である」という定理も同じように証明できる. こちらは例えば Lieb-Loss の本がある.

引用

正規状態あたりの話も簡単に触れておこう. 上記 URL から引用しよう.

本研究は作用素環上の非可換確率論と非可換力学系を解明することを目的とした. 非可換の確率論・積分論は通常 Von Neumann 環 (以下, V.N.環) 上で定式化され, 確率測度または測度に相当するものとして正規な状態または荷重が用いられる. 状態または荷重がトレースとなる場合は従来より盛んに研究されている. 通常の古典的確率論は V.N.環が可換な場合として非可換確率論に包含される.

作用素環の話

これも何度か書いている気がするが, 可換 von Neumann 環は $L^{\infty}$ と同型になるので, 要は $L^{\infty}$ だ. $L^{\infty}$ は可測集合の情報を持っているので, そこから大体測度論やら確率論ができることになる. 一般の von Neumann 環は非可換なので, そこから単純に非可換確率論と言っている. 状態はノルム 1 の正値線型汎関数のことだが, 荷重は非負の元から $[0, \infty]$ への線型写像だ. むしろ状態はノルム 1 の荷重とも言える.

大体状態 (von Neumann 環の場合は正規状態) を考えていれば事足りるのだが, 冨田-竹崎理論などは荷重のレベルで議論できる. むしろ荷重での冨田-竹崎理論は, それで展開されていた竹崎先生の集中講義で聞いたきり使ったことがない. ただ, 比較的最近の代数的場の量子論では infraparticle の解析で荷重を使うらしい. 興味がある向きは Spectral Theory of Automorphism Groups and Particle Structures in Quantum Field Theory などを読んでほしい. 私はきちんと読んでいないので, 聞かれても困る. 教えてほしいくらいだ.

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数学, 数理物理, 作用素環, 関数解析, 確率論, 代数的場の量子論

女子中高生向けに情報科学の話をするとき数学をどう扱うべきか

本文

えふわらさん経由で色々とつらい情報が流れてきた.

最近, 女子中高生に情報科学を紹介するイベントをしてるのですが, 理系への心理的障壁を払いたい余り「数学は三角関数で全くわからなくなった」とか 「英語は常に平均点以下」とか「最後まで化学の偏差値 50 だった」とか, 単なる駄目な私暴露大会となっている

で, でも, 簡単に今のお仕事につけたわけじゃないんだよ…… いろいろそれなりにやったんだよ……

実際の問題として「数学だめだった」というのと 「こういう風に数学を使っている」, どちらの方が受けがいいのか実験してみてほしい.

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数学, 工学, 情報工学

物理抜きのベクトル解析, どういう感じなのだろう

はじめに

物理学科だったので私のベクトル解析は電磁気やら何やらで物理まみれだ. 悪いとも思わないし, 杉浦の解析入門でも物理での使い方の紹介みたいなのがあるので, 多分数学としてやる上でも参考になるのだろうとは思う.

私が気になるのは, そういう物理などの応用を全く見ないで数学として学んだ人たちが, ベクトル解析の諸定理に対してどういう感覚を持っているのだろう, というところ. 純粋な数学としての理解, もう私にはできないのでどういう感覚なのだろうかというの, とても気になる.

あとついでに思ったのだが, 多様体での Stokes の定理をダイレクトに学んだ人なら, 物理抜きの勉強になるような気がする. こういう人はどういう感覚を持っているのだろう. 多様体論で Stokes をやるとき物理がどうの, みたいなことは全くやらないから. もっというならここまで来ると解析というより多様体, 幾何の話になるので, そこも何か感覚違う気がする. むしろ, 物理で使うときも解析というより幾何的な見方をすることになるので, 本道という気もする.

関係ないが, 実多様体, 1 の分割とか関連する面倒な話が多過ぎて勉強するのつらい. つどいで宇宙賢者も言っていたが, 複素多様体から入った方が何となくすっきり幾何に入れる気がする. この辺, 学生時代ほとんど勉強していなかったのでもう少しきちんとやりたいとずっと思ってはいる.

追記

この間も少し書いたことだが, 私の数学は物理まみれで時々困る. 何が困るかというと, 純粋に数学に興味がある人に対して数学の話をしようというときであっても, ある程度物理の話をしないとモチベーションの話などがしづらいからだ. 純粋に数学的なモチベーションというのを上手く説明できないといった方がいいのかもしれない. 勉強する上では, 今の自分なら何であっても純粋に数学だけのモチベーションでも動ける.

最近人前で話をする機会を増やそうキャンペーン中なのだが, 時間があれば 1 から勉強してそれを話すとかいう風にするのもいいのだが, 悲しいことにあまりのんびり勉強している時間も取れないので, やはり人に話せる話は自分が勉強してきたことが中心になる. このとき, 何だかんだ言って物理学科卒というのがボディブローのように効いていて, そういう方向からしか数学の話を展開できない. 幾何なら最近物理と数学の交流が多いため人がたくさんいるので, 解析学方面, それも微分方程式でない部分で話ができるのはむしろ私のよい所といってもいいのだろうが, 前提としている物理が量子力学と統計力学というのが辛いところ.

興味関心のマイナーさこそをうまく良さに転換する方法が求められる.

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数学, 物理, ベクトル解析, 幾何学

覚書: Cantor集合が連続体濃度である証明

本文

色々あってこの間Cantor集合が話題になった. 連続体濃度を持つというのは知っていたし 三進展開を使うとうまくいく的なことも知ってはいたが, 証明をきちんと追ったことがなかった. いい機会なので証明を記録しておきたい. 参考PDFをもとに証明を書いておこう.

まずCantor集合を定義しておく. $I = [0, 1]$ としよう. ここから開区間 $I_n$ をがんがん抜いていって作る集合がCantor集合だ. この $I_n$ を定義していく.

$I_1$ は $I$ を 3 等分したときの真ん中の (開) 区間 $I_1 = (1/3, 2/3)$ だ. $I_2$ は $I \setminus I_1$ の 2 つの区間をそれぞれ 3 等分した集合の真ん中の区間の合併となる. つまり $I_2 = (1/3^2, 2/3^2) \cup (7/3^2, 8/3^2)$ だ. これを無限回繰り返すと Cantor 集合 $C$ になる. つまり $C = I \setminus \cup_n I_n$ だ.

性質のその 1: $C$ の Lebesgue 測度は $0$ になる

$[0, 1] \setminus C = \cup_n I_n$ の測度が 1 であることを示せばいい. $\left| I_n \right| = (1/3) (2/3)^n$ で $I_n$ が互いに素なので, これを素直に足し上げて $\left| I_n \right| = 1$ で終わり.

性質その 2: Cantor 集合は閉で nowhere dense.

nowhere dense の定義は $\mathrm{Int} \, \overline (C) = \emptyset$. では証明.

$C$ が閉なのは自明. $C$ が Lebesgue 測度 0 なので, $C$ は測度正の (開) 区間を含まない. したがって $C$ は nowhere dense.

性質その 3: Cantor 集合は非可算集合.

全射 $f \colon C \to [0, 1]$ を作る. $x \in [0, 1]$ を 3 進展開する. これに合わせて $1/3 = 0.1$, $2/3 = 0.2$ と書く. 最初に除いた集合 $I_1$ は $0.1$ と $0.2$ の間にある. これを繰り返すと $C$ に現れる数を 3 進展開したときに 1 は決して出てこないことが分かる.

全射を実際に構成しよう. $x \in C$ とし, これを 3 進展開したときの 2 を全て $1$ に変え, それを 2 進展開に読み替える写像を $f$ とすればいい. 全射性は自明.

ラベル

数学, 集合論, 位相空間論

数学書の読み方簡易版

質問

Ask.fm まとめ祭りだ. まず質問.

既出かもしれないのですが, 数学書の読み方というのが今ひとつつかめないのですが, なにか一般的な指針というものはないでしょうか.

回答

心から分かったと思えるまで頑張って読むだけです. 1 週間くらい考えても分からない所があったら, 分からないことをはっきり意識しながら飛ばしたりしても とりあえずは問題ないです. もちろんあまりにも飛ばす箇所が多すぎるとアレですが. 誠実なのが一番です.

ラベル

数学

Thomas-Fermi 汎関数周りの量子力学と関数解析・変分原理的なセミナーをしよう

本文

ゆきみさんとやりとりしたので記録.

やりとり

「量子現象の数理」ぱらぱらながめてたらめちゃくちゃ高まったので勉強追いついたら買おうと思った

@yuki_migo セミナーしましょう

@phasetr 作用素論で死にそうになってるので量子現象まではまだちょっとかかりそうです. 二章は加藤 Rellich あたりまでちょっと眺めたんですが

@yuki_migo 作用素論は何をやっているのでしょうか. 量子力学系の作用素論, あまり数学的に標準的な作用素論ではないと思うので. (標準的な方は hypo normal な作用素とか行列不等式とかそういうのやっているイメージ)

@phasetr 最近変分法まわりしか勉強してないのでアレですが詳し目の関数解析の本に書いてあるような基本的なことですよ. 半群とかあんまりやってなかったので.

@yuki_migo 何するかによりますが, 新井先生の本関係の量子力学なら, ユニタリ群の話がメインです. 半群のかちっとした話はあまり使いません. 基底状態の解析関係で熱半群は少し使いますが, 一般論かちっとと言う感じではないので

@phasetr 数学的に興味が向いてるのが PDE 方面なので新井先生とはちょっとちがうかもしれないことは最近気づきはじめています

@yuki_migo PDE ならもっとシュレディンガーかっちりやった方がいいのではないか感. 散乱理論だともう少し作用素論っぽいこともあるとは思います. 実解析的な方向なら Lieb っぽい方向でしょう

@phasetr なるほど. Schrodinger かっちりやってる本ってどんなのでしょう. Lieb の Analysis だと触り程度な感じがしますが

@yuki_migo 数学でのシュレディンガーは時間依存の方程式を扱うので, Lieb の方向と全然違う印象があります. 数学方面のシュレディンガーは全然知りません. その方向だと東大の中村先生とか早稲田の小澤先生とかいるので, 本当に興味があるなら相談してみてはどうでしょう

@yuki_migo あと非線型シュレディンガーと線型シュレディンガーとで大分変わると思います. Ginzburg-Landau とか GP とか, 関係する方程式も色々ありますし, ランダム磁場付きシュレディンガーとか何とか色々

@yuki_migo 読んでないからよく分からないのですが, 中村先生の http://www.amazon.co.jp/dp/4320015789 とか? あとはその参考文献から調べてみるとか

@phasetr ふむふむ. とりあえずつぎ大学行ったとき図書館あさりますかね. ありがとうございます

@yuki_migo 思い出したのですが, シュレディンガーと言うか実際に研究がある量子力学関係の PDE として, BCS だとか Ginzburg-Landau, Gross-Pitaevski などあるので, その辺参照すればいいのでは説もあります

@yuki_migo GL は北大の神保先生などがやっています http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/sympo/090113/program.html あと GP は http://arxiv.org/abs/cond-mat/0610117 にも記述があります

@yuki_migo PDE 的なことしたいなら, 何と言うか, 実解析的なことをやった方が多分良くて, 新井先生方面の作用素論をやっていてもあまり役に立たないのでは感. 雰囲気知りたいと言う話なら, 何かセミナー的なアレやってもよいです

@phasetr 実解析的なのっていまいちどういうことかわかってないのでセミナーしてもらいたいです

@yuki_migo それっぽい方向で知っていて簡単な文献もっているのは Lieb-Loss Analysis での TF functional まわりとか物質の安定性位なのですがその周囲でいいですか. 能力的に出来るの恐らく TF がギリで, あまり PDE っぽい話ではなくて申し訳ないのですが

@phasetr 実際そのあたり読んでておもしろいのでおねがいしたいにゃんです

@yuki_migo ならばひとまず TF で. この辺, 微分幾何とかでも出てくるようなアレで, 要は変分的にエネルギー汎関数の値が基底エネルギーだとか物理的に大事なアレになっていて, その停留点 (とそこでの値) を調べるのに (非線型の) 微分方程式を解く必要が, とかそんなやつです

@phasetr 微分幾何の知識がないほうのゆきみんでした. このごろ Lieb-Loss の Ch11 読んでてそのあたり変分変分してておもしろいですね. せいぜい教養レベルの量子の知識しかないので物理的なことがよくわかってないんですが. 場所どうしましょ

@yuki_migo 誰かを適当に巻き込んで適当な大学でやりましょう. 微分幾何関係は解析力学と変分と言ってもいいです. 幾何学的変分問題の 1 章見るといいです. 物理知らなくてもとりあえず数学できると思いますが, ある程度保補足する予定の市民

Thomas-Fermi, 一応やろうとは思っていたのをずっとサボっていたのでこの機会に勉強しよう. いつどこでセミナーするかとか全く決めていないが興味ある向きはご連絡頂きたい.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 関数解析, 作用素論, 微分方程式, 実解析, 量子力学, 変分

無限次元トポロジーという魔界

はじめに

tri_iro さんの連続ツイートが面白かったので張っておく.

引用

van Mill の "Infinite-Dimensional Topology" http://www.amazon.co.jp/dp/0444871330/ 読んでたら強無限次元の完備な全不連結空間とか超限次元を持たないけど弱無限次元のコンパクト空間の例とか載ってたのでしっかり理解しとこう.

【疑問】アレクサンドロフの問題 (1951) の一般化:コンパクト可分距離空間が遺伝的弱無限次元ならば必ず零次元部分空間の可算和となるか? いや, どちらかといえば反例が欲しいんですが.

ってかヒルベルト・キューブを可算個の全不連結空間の和として分解するのって無理だと勝手に思ってたんですが可能なのかなー. いや, 零次元空間の可算和にするのが無理ってことは簡単に分かるんですが, 無限次元トポロジー本読んでたら, 無限次元の全不連結空間とか出て来るし自信なくなってきた.

アレクサンドロフの問題の Pol による反例は, 変な強無限次元空間のコンパクト化として作るから, 当然, 強無限次元空間を部分空間として含むわけで, 遺伝的弱無限次元にならないんですよねー

E. Pol "高次元遺伝的分解不可能連続体の比較不可能なフレシェ型を持つ族" http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166864104001695 遺伝的強無限次元カントール多様体の非可算族で, フレシェ次元型が反鎖になっているものの作り方がここに載ってた.

「ヒルベルト・キューブを埋め込めない非可算次元ポーランド空間ってどうやって作るんだよ! 」という疑問から始まり, 自力では構成を思いつかず, 「非可算次元ポーランド空間のフレシェ次元型は唯一なんじゃないか」という楽観的な予想をして色々調べていたけど, 無限次元トポロジーの闇は深かった.

無限次元トポロジー, 魔界.

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数学, トポロジー, 関数解析

河東研の学部 4 年セミナーに使われる本の紹介ページが出ていたので

本文

勝手に例年楽しみにしている河東研の学部 4 年セミナーに使われている本の紹介ページが出ていた.

  • 書名: "A Short Course on Spectral Theory" (Graduate Texts in Mathematics 209)
  • 著者: W. Arveson
  • 出版社: Springer
  • 発行年: 2002 作用素のスペクトルの理論を扱いますが, 関数解析の基本的な内容は ある程度知っている必要があります. 作用素環的な雰囲気があちこちに 出ています.

  • 書名: "A Course in Functional Analysis" (Graduate Texts in Mathematics 96)

  • 著者: John B. Conway
  • 出版社: Springer
  • 発行年: 1990 普通の関数解析から始まります. いろいろなことが書いてあり, 最後の方では C*環の話も出てきます.

もっと専門的な本はこちら.

Currently Available Books on Operator Algebras - Mathematical Theory of Quantum Fields by H. Araki, Oxford University Press, 1999. - An Invitation to C*-Algebras by W. Arveson, Springer 1976. - K-theory for Operator Algebras by B. Blackadar, Cambridge University Press, 1998. - Operator Algebras by B. Blackadar, Springer, 2005. - Wavelets through a Looking Glass: The World of the Spectrum by O. Bratteli and P. E. T. Jorgensen, Birkhauser, 2002. - Operator Algebras and Quantum Statistical Mechanics, Volumes a pdf file supplied by the author - Noncommutative Geometry by A. Connes, Academic Press, 1995. - C*-Algebras by Example by K. Davidson, Amer. Math. Soc., 1996. - Quantum Symmerties on Operator Algebras by D. E. Evans and Y. Kawahigashi, Oxford University Press, 1998. - Local Quantum Physics by R. Haag, Springer, 1996. - Fundamentals of the Theory of Operator Algebras, Volumes IV by R. V. Kadison and J. R. Ringrose, Amer. Math. Soc., 1997. - An Introduction to K-Theory for C*-Algebras by M. Rordam, F. Larsen and N. Laustsen, Cambrige University Press, 2000. - Theory of Operator Algebras, Volumes III by M. Takesaki, Springer, 1979-2003.

コメント

Wavelet の本, あれは本当に作用素環の本だったのか. Bratteli のページにあったので名前だけは知っていたが, 分野を変えたという話で, 作用素環ではない話なのかと思っていた. あと, 以前河東先生から「 Local Quantum Physics は Haag の哲学を書いた本で勉強用に読む本ではありません」というのを直接聞いた. 実際ある程度読んでみようとしたことがあるが, さっぱり分からなかった. 多分今読んでも無理だろう. 荒木先生の本も省略が多くて読めたものではない. その分短いので, 大体どんな話があるかだけ知りたい場合に眺めるのにはいいだろう. 勉強に使える本ではない.

Davidson の本は例がたくさんあって比較的良いらしいが, 内容にムラがあってやたら適当なところややたら詳しいところがあったりすると, いま東北の助教をしている三村さんに伺ったことがある.

Bratteli-Robinson は作用素環の量子統計におけるバイブルなのでその方面の人は読まざるを得ない. ただ, 必要なことが大体全部書いてある分, 雑多と言ってもよく純粋に作用素環を学びたいという人が読む本ではないだろう. 私も全部は読んでいない.

Connes の本もあれで勉強するのはしんどそう. 色々書いてあるので眺めていると楽しいのは間違いない.

Kadison-Ringrose は私も多少読んだ. 普通の関数解析から始まり, Banach 環の話などをしたあと, 作用素環の話題に入る. 作用素環としては標準的だろう. もう少ししっかり読むべきだったとは思っているが, 早く論文読みたかったので適当に切り上げて Bratteli-Robinson に移った. 富山先生に「教育熱心な彼等が書いた良い本だ」と言われた覚えがある.

一番基礎から本格的なのはやはり我らが竹崎先生の書いた三部作だろう. 私は何かの参考で 1-2 度参照しただけで, 全く読んでいない. 以前九大の増田さんの書評で「良い本だが具体例の扱いがかなり後回しになってしまっているので, 詳しい人の指導を受けて適宜例を補いながら読むととてもとてもよい」というのがあった覚えがある. 同じく増田さんの書評で, 竹崎先生の「作用素環の構造」は滅法面白いというのがあった. こちらも読んでみたい. これは軽く眺めたとき, 零れ話的な話で竹崎先生が大発見を逃がして Connes に先にやられてしまった話などが書いてあったり, そういう部分が楽しかった. 何十年も前の話なのにやはり余程悔しかったようで, ちょっとしたスピーチでも良く話を取り上げるようだ. 同じ話を 3 回くらい聞いたことがある. ちなみに今になっても悔しくなるだろう, というくらい作用素環には決定的な話で, Connes コサイクルとか何かその辺の話.

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数学, 数理物理, 作用素環, 竹崎先生, 数学書

Twitter まとめ: 単位元のない環

はじめに

Twitter だけだったかブログにもまとめたか既に記憶にないのだが, Twitter でまた単位元のない環に関する話が出ていた.

引用

単位元の存在しない環の例をパッと思いつかない

@supernova3024 なんか重要な例があるそうなのですがわたしは知りません

@primenumber 重要な例があるのか……

@supernova3024 作用素環とかの分野だと結構あるっぽい (あんまり知らない)

@Asabokujo そうだったのか……

@dingdongbell あっ…………

@dingdongbell ありがとう

@Asabokujo @supernova3024 $L^1 (\mathbb{R})$ が畳み込み積に関してなす可換環は単位元を持たないよ

@bean_paste そうなんですか…… (よく知らないです…)

@Asabokujo @bean_paste 0 に収束する数列全体 (演算は項別) という例もあります.

@LT_shu なるほど, lim の分配則 (っていうんでしたっけ) から環になるんですね で{1,1,1,…}はこの元ではないと

@Asabokujo はい. ちなみに, 単位元の存在を要求しなければ, 一般に環のイデアルは環になります. さっきの環は, 収束する数列全体の環 (これは単位元をもつ) のイデアル (lim が環準同型で, その核) ですね.

コメント

私が良く出す例は 2 つある. 1 つは局所コンパクト Hausdorff 空間 $\Omega$ 上, 無限遠で 0 になる連続関数のなす可換環だ. もう 1 つは無限次元 Hilbert 空間上のコンパクト作用素のなす非可換環だ. 両方とも $C^$ 環になっている. 作用素環 ($C^$ または von Neumann) は一般に単位元を持たなくてもいい. 私が実際に触るのはほぼ von Neumann 環 で, 大体単位元の存在を仮定しているし, 具体例だと本当に持っている.

$C^*$ だと単位元の存在を仮定しないことがよくあるようだがあまり触ったことはない. von Neumann 環の場合, 単位元がなくても中心極大射影が単位元の代わりになってくれるため, 単位元の存在を仮定しても一般性が失われないということはある. Kadison-Ringrose にその辺のことが書いてあるため, 興味がある向きは読んでみよう.

追記

コメントを頂いた. まずは dif_engine さんからのコメント.

コメント 1

@phasetr $C[0,\infty)$ 上の積 $f (*) g (x) := \int_{[0, x]} f (x - t) g (t) dt$ を入れたものも単位元のない環です. これが整域である (ティッチマーシュの定理) ことが Mikusinski の演算子法の基礎になっています.

コメント 2

魔法少女からのコメントはこの辺から.

@phasetr 関数 $t \to f (t)$ のことを ${f (t)}$ と書けば, $({1}*f) (t)=\int_{[0, t]}f (\tau) d\tau$. すなわち {1} は積分演算子になっているわけです. この逆元が微分演算子というわけですが, $C[0, \infty)$ にそのような元はありません.

@phasetr $C[0, \infty)$ には単位元がありません. ところが, デルタ関数 $\delta$ を導入し, 形式的に $f\delta$ を計算すると, $(f\delta) (t)=\int_{[0, t]}f (t-\tau) \delta (\tau) d\tau=f (t)$. すなわち $\delta$ は (形式的には) 単位元になるわけです.

@phasetr もちろん $C[0, \infty)$ の中に $\delta$ のような元は存在しません. ところで, 任意の可換整域 (単位元の存在は仮定しない) について, それを含む最小の可換体が存在します. 整数環の直積から有理数体を構成するのと同様にすればいいわけです.

@phasetr $C[0, \infty)$ を含む最小の可換体 $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$ を考えてみましょう. 今や微分演算子やデルタ関数はすべて $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$ の中に入っています. 所謂 D-法 (微分演算子法) を Fourier 変換などを用いずに実現したことになります.

微分作用素やデルタが本当に $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$ に入っているかの確認が必要だとは思うが, 演算子法の概略というレベルで把握した. 知らなかったので助かる. $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$, 定義域固定なのが微妙に気になるが, これはどこまで一般性があるのかというのは気になる.

何か書いておくと勝手に色々教えてくれるという実に楽しい Twitter ライフを堪能している.

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数学, 作用素環, 環論

金城克哉さんによる論文, 「槇原敬之の歌詞の数量的分析 : 『君が笑うとき君の胸が痛まないように』から『 Heart to Heart 』まで」

はじめに・引用

金城克哉さんによる槇原敬之の歌詞の数量的分析 : 『君が笑うとき君の胸が痛まないように』から『 Heart to Heart 』まで という論文の話が出ていた.

なんという論文…‼ / 槇原敬之の歌詞の数量的分析 : 『君が笑うとき君の胸が痛まないように』から『 Heart to Heart 』まで http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/20.500.12000/26375

掲載誌としては「琉球大学欧米文化論集」という紀要で, 分野としては計量言語学になるのだろうか. 論文の「はじめに」を引用しておこう.

論文の「はじめに」

近年ではインターネットで音楽が購入でき, 超小型音楽再生機器の登場によって, そのように購入した楽曲を文字通り「もって歩ける j 時代となった. これまでにないほど, 我々の生活の中には音楽が溶け込んでいる. それを反映するように, 我々が親しんでいる楽曲の歌詞が言語研究の対象として取り上げられことも少なくない (『日本語学』 (1996,15 号) 所収の諸論文参照). 一人のシンガーソングライターの歌詞を分析した代表的な研究として伊藤雅光による松任谷由美の歌詞の一連の分析がある. しかしながらそれ以降, 自ら作詞・作曲をし, なおかつ自分が作った歌を歌うシンガーソングライターの一連の歌詞を数量的に分析した研究は多くない (細谷・鈴木 2010). 本稿では 2012 年でデビュー 22 周年を迎える日本の代表的なシンガーソングライター棋原敬之のオリジナルアルバムの歌詞を数量的に分析することを目的とする.

雑感

研究の目的が今一つ分かっていない. 欧米文化という観点から見た比較なども気になる. 論文の最後に「評論家の評価・本人の発言が実際の歌詞研究からも裏付けられた」というような記述はあったが, そこからどう話を持っていくのだろう. 私から見て他分野もいいところなので, 研究のモチベーションが分からないというよくある話ではある.

時々見かける「数学は何の役に立つの」というアレに関して, 人によっては「文学部国際言語文化学科」という学部学科であっても統計学という形で数学を使わざるをえないというところの紹介だ. 経済を筆頭に社会学系統だけでなく, 文学部でさえも数学を使わざるをえないこともある. ただ「こともある」という程度だと思うので, 皆が皆無理にやることもないだろうとも思っている.

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数学, 文学, 統計学

コンパクト性の諸相を探る対談を聞きたい方の市民

はじめに

我らが Dr 谷村のツイートを受けて次のようなツイートをした.

これ, 私だと全く他人への影響力がないので, 他力本願的に我らが数学市民に何かお願いしていきたい. どんな感じの話があると嬉しいか, 面白いか的な意図で関数解析系の解析学に関する私の趣味嗜好, そして Dr 谷村的な気分のツイートを記録しておく. Dr 谷村は鍵アカウントなのでツイート引用についてどうしようかという気分はあるが, 怒られないことを期待して適当にツイートを引くことにする. もとは一般位相空間に関わる話に端を発しているようなのでそこからのツイート引用もしよう.

私の趣味志向

最初に引用したように私の気分だととにかく収束に関わる話が一番で, それ以外は連続関数の可積分性などを思う. 実数論のボルツァノ-ワイエルシュトラスがアラオグルの定理として無限次元拡張を持つことへの拡張が全ての感覚の基礎にある. 物理学科所属としてはかなりのレアケースのようだが, 学部 1 年の必修で実数論・集合論・位相空間論があり, 実数論・解析学は私の数学認識の基礎基本になっている. 関数解析方面からは (局所) コンパクトハウスドルフ空間上のリース-マルコフ-角谷の定理など積分論・測度論とコンパクト性に関わる議論もある. 現代数学探険隊では可分なバナッハ空間上の汎弱点列コンパクト性やクレイン-ミルマンの端点定理, ストーン-ワイエルシュトラスの定理, ビショップの定理なども紹介している.

それぞれ簡単に言明を書いておこう.

  • クレイン-ミルマンの端点定理: $X$ を局所凸線型位相空間とし, $C$ を $X$ の空でないコンパクトな凸部分集合とする. このとき $\mathrm{ex} C \neq \emptyset$ であり, $C = \overline{\mathrm{conv}} (\mathrm{ex} C)$ である.
  • ストーン-ワイエルシュトラスの定理: 局所コンパクト空間 $X$ に対して $A$ を $C_c(X)$ の部分環とする. $A$ が $X$ の全ての点を分離し, 全ての点に対して $A$ の元であってそこで消えない元が存在するとき, およびその時に限り $A$ は 上限ノルムに関して稠密である.
  • ビショップの定理: コンパクトハウスドルフ空間 $X$ 上の関数環 $\mathcal{A}$ が単位元を含む閉部分環で $X$ の全ての 2 点を分離するし, $\mathcal{K}$ が $\mathcal{A}$ の反対称集合の全体だとする. このときいろいろなよい性質が成り立つ.

コンパクト集合または局所コンパクト集合の上でいろいろないい定理が成り立ち, 特に収束周りのいい定理 (閉集合性) が成り立つ気分が大事. あとは物理まわりで局所コンパクト群とハール測度の存在のような群上の積分論に関するよい性質もある.

既に言及があるように, やはりコンパクトハウスドルフ空間まわりの議論も基本中の基本で, 作用素環でのゲルファント-ナイマルクの定理は決定的だ. 単位元つきの作用素環上の状態の空間はコンパクトなので, そこで状態の列を考えればとにかく部分列が収束する. ヒルベルト空間の単位ベクトル列だと赤外発散が原因で 0 にしか収束しないのだが, 単位元つきの作用素環の状態空間上での収束なら $\omega(1) = 1$ だから 0 には収束しない. 赤外発散処理の基本定理だと思っていて, こういうところで常にお世話になる.

他に幾何でも, ベクトル場の完備性の十分条件として多様体のコンパクト性がいるあたり, やはり解析の趣を感じるし, リーマン幾何のホップ-リノウもリーマン多様体がユークリッド空間の拡張である気分を感じさせてくれていい気分.

解析系だとほぼハウスドルフ空間しか見ないので, ハウスドルフ空間ではコンパクト集合が閉集合という意識さえしなくなる定理がある一方, 非ハウスドルフなザリスキ位相などを扱う代数幾何だとコンパクト開集合が出てくる. 代数幾何の気分は全くわからないので前から気になっている. quasi-compact という用語を準備したくなるほど違うらしいのでどういう事情が出てくるのか聞いてみたい気分がある. あと $p$-進は超距離から来る連結性まわりの位相的な特徴の違いもあり, コンパクト性にどういう影響があるかは聞いてみたい.

他にも探せば出てくるが, とりあえずこんなところで. 以下, 数学市民と Dr 谷村のツイートをいくつか引用して終える.

数学市民のツイート引用

Dr 谷村のツイート引用

何冊もは知らないけどケリーはいいと思う。

まああとはブルバキ

アマチュア数学勢、「いや、自分にはまだ多様体は早いすから」って言いながらものすごく凶悪な位相空間論を繰り出してくるイメージ。 ぼくとしてはむしろ、多様体をやらずに位相空間論だけ直観に落とし込むってものすごいことだと思う。 多様体やるまでマジでコンパクト性ってなんなのか全くわからなかったし、普遍性やベクトル束に至ってはB4でセミナーやっててやっと理解出来た。

これはえなじーさんの言なのですが、ペットボトルを回してみると、ペットボトルは変な形になったりせずに有界なパターンで動きます。これはSO(3)がコンパクトだからです。コンパクトとは「遠くに逃げない」状態です。 「こういうのの証明ってちゃんと書いてる本知らない気がする」を網羅している同人誌。

最後に

何にせよいろいろなコンテンツ作りはしていきたい. 連携できるならいろいろな人とも連携しつつ.

量子力学での非線型何とかの扱いと自己共役性と原子核的なアレ

本文

元発言の人が鍵つきなのでこう引用が色々とアレだが, こんなやりとりをした. 問題ないと思われる範囲で引用する.

元は「量子力学でのオブザーバブルを非線型作用素で書くことがあるか」という話で次が続く.

引用

@sazanka_kamelie どうなんでしょう. 観測可能な物理量だったらスペクトル分解できて欲しいので, 線型作用素であることは要請しそうですが…

「量子力学での非線型 Schrodinger とかの扱いはどうなの」という話が来てこうなる.

@sazanka_kamelie あまり詳しくないですが一次元系の BEC が非線形シュレーディンガー方程式で近似できるという話はちらっと聞いたことがあります.

中略

@sazanka_kamelie 良く知らないですが, 多分解きたい方程式が非線形シュレーディンガー方程式で近似できるみたいな話だと想像してます. ちなみにですが相転移 P にも聞いてみたらどうでしょう.

ここで話を振られたので知っていることを答えてみた. 詳しくないのでつらいところだが.

@wr_r @sazanka_kamelie 詳しい人に聞いた方がいいですが, GP のことなら, アレは物理量というより基底状態を求めるための近似式のはずなので違うのではないか説

@wr_r @sazanka_kamelie 別件ですが, 原子核だと (近似として) 非エルミートの物理量 (ポテンシャル) を使うことがあるそうなので http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/yakou/gensan.pdf, あまり杓子定規な扱いはよくないのではないか説

@sazanka_kamelie それはお役に立てて良かったです. 今日みたいにおもしろい話があればめた聞かせてください @phasetr ご丁寧にお教えいただきありがとうございます. GP というのですね. 僕ももっと守備範囲を広げていきたいものです.

@wr_r 私の守備範囲の狭さは危険水準なので涙を禁じ得ません

@phasetr たまにツイッターで物理 or 数学を教えて欲しいと話されてますよね. 僕も守備範囲狭いので涙を禁じ得ません.

本当に正確に理解できているのか不確かなのだが, 原子核で Schrodinger が Hermite (自己共役) にならない形のポテンシャルを使う, と聞いたときはびっくりした覚えがある. それ以来, 原子核の理論をちょっと見てみたいと思っているが手が出ない, という以前に何を読んだものかというレベルで止まっている.

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数学, 物理, 量子力学, 原子核

構成的場の量子論と Levi 過程と Gauss 超過程

はじめに

先日, Twitter でくるくるさんに読んでほしい本特集をしていたのだが, その中でささくれパイセン方面にぶっこもうという自然な流れができた. それを記録しておきたい. 他の人も何か言っていたと思うが, 追跡しきれないので自分の分だけまとめる. この辺からはじまる.

やりとり

ささくれ先輩には汎関数積分を教わりたい. Levi 過程とか微妙に確率的に多少突っ込んだ話が必要で, かなりつらくて読みこなせない

今書いている論文, さっさとまとめてちょっと違うことしてみたい気分になっている. 動画作る上で幅を広げたいという目的もあり

(作用素論・) 作用素環・確率論でそれぞれ同じ物理がどういう風に数学的に表されるか, とかそういうのも鑓田違法の市民だったが, 確率には挫折しっぱなしな方の市民だった

よく知らないのだが, ブラウン運動と大偏差原理, 何か関係あるの

ささくれ先輩にガウス超過程を教わるオフの開催が決まった

ささくれパイセンとパン耳パイセンに可換, 非可換確率論の集中講義をしてもらおう

構成的場の理論, 本当にレビとガウス超過程出てくるということだけは言っておきたい

学部一年の時, ブラウン運動の物理について調べて発表しろという講義があり, その時何も知らずに飛田ブラウンを手に取ったり, 初期値δ関数の拡散を考えるのにシュワルツの超関数とか手に取ってしまって絶望に叩き落とされた私の話はやめるんだ

コメント

Levi 過程にまで踏み込んだ本格的な汎関数積分の本は廣島先生達による次の本, 『 Feynman-Kac-Type Theorems and Gibbs Measures on Path Space: With Applications to Rigorous Quantum Field Theory 』がいいだろう. 場の理論で作用素論・作用素環で証明したことを汎関数積分で見てみたい, と思って汎関数積分を勉強しようと思って読んだところ, 確率弱者に読める本ではないことが判明して号泣した本だ.

Gauss 超過程は上記の本にもあるが, 新井先生の『量子数理物理学における汎関数積分法』が読みやすい.

場の理論だと, 基本的に Gauss 超過程は「敗北」を意味する. Gauss 超過程は自由場に対応するからだ. 物理として面白い (意味がある) のは相互作用場だが, 上記注意からこれは非 Gaussian である必要がある. これが実につらい. Gaussian だからといって超関数を変数とする関数の積分を考えないといけない時点で解析的にかなりハードだが, それをさらに越える制御の面倒さが出てくる. Curved spacetime でしようと思うと最早現行人類の手を離れるといってもいいだろう.

途中で非可換確率論の話が出てきているが, それについてはこれでも見てほしい. (このページの「Twitter まとめ: 非可換確率論と自由確率論」).

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数学, 数理物理, 場の量子論, 確率論

数学徒と物理アレルギー

本文

チャーハニスト鈴木による次のような呟きがあった.

PDE の話が書かれた pdf を読んでいたのだけど, どうしても物理っぽい話が出てきてしまって, その辺りから急激に興味が薄れて読むのをやめてしまう. 物理アレルギーが今日も勉強をジャマしている.

数学の人, そもそも物理が嫌いという場合があるのだが, そういう人にどう話をすればいいかというのはいつも気になっている. 私の場合, やっていることの数学的意義の存在がかなり微妙なところにあり, 物理的なモチベーションを抜いたらほぼ何の意味もない話になったり, さらに各種定義の意味が全く分からなくなるということもあってかなり困ることがある.

あと, 物理絡みの話に興味はあるが読んでいる文献で仮定されている素養とのギャップがあってつらい, という状況もあるかと思うが, そういう場合はどう処理するのだろうか. 私は平衡統計・場の理論関連の話がメインだが, モデルが被っているために非平衡の人も参入していたり, 非平衡の論文が参照されていて, 実際に困ることがある. 今まで触った範囲では非平衡といえどもあまり大きく意識を変えずに済んではいるが, はじめは何を言っているか分からずつらかったことなどを想起した.

この辺も何か考えよう.

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数学, 物理, 数理物理, 偏微分方程式

数学カフェ

数学カフェ的なアレを始めたのでその第 1 回の記録

本文

まとめて頂いたので.

今日の数学カフェについてまとめておく.

相転移 P さんからお誘いを受けて, 今日数学カフェに参加してきた. 参加者は相転移 P さん (phasetr), 24 歳 OL の光佳さん (anmitsu_0602), 私の 3 人だ. 吉祥寺のカフェで飲み物やケーキを頼み, ゆるゆると始まった.

数学カフェは相転移 P さんが「数学に興味がある人を増やしたい, 普段数学に馴染みがない一般の方に数学を楽しんでもらって, もっと裾野を広げていきたい」という思いから始まった試みである. 光佳さんも私も, 社会人になってから数学に興味をもったクチだ.

数学カフェにはテキストとして「語りかける中学数学」を購入し, 各自持参した. この参考書, 数学が苦手な人に向けてわかりやすく記載が受け, ベストセラーになっているが, 相転移 P さん曰く間違いが多いらしい. 詳細は彼のブログで述べている. http://phasetr.blogspot.jp/2014/03/blog-post.html

ただ, 初学者が勉強するには使いやすそうだということで, 今回のテキストに決まった. 今回は顔見世ということもあるし, そもそも数学カフェでどこを勉強しようという決まりもない. わからない所があれば質問を受けますよ, と言う気楽なスタンス. 実際, 今日は j 本を見せ合っただけで, 雑談に終始した.

雑談の内容は様々だった. 数学に興味を持ったきっかけや, どんな本を読んでいるか. ふだんの仕事の話. 理工系の女子率の低さ. 極端に少ないとパワハラやセクハラを受けやすい気がするけど, どうやったら増えるんだろう. 理系チェックシャツの謎からの相転移 P さんの着物の理由, など

置物帰国オフ (昨年末に行った, 大学生・院生・ポスドク等 22 名のオフ会) で私が相転移 P さんに絡み酒をした話もしました. 相転移 P さんの繰り出すネタに, 光佳さんも私も涙が出るほど爆笑する場面もありました. 数学どこいった

数学カフェ, 面白かったので第 2 回もやりたい. 光佳さん華やかで大変かわいい女性で, 実は最初激しく動揺した. でも, 機転が利いて話しやすい方で, カフェで和やかに過ごせた. のんびりした会なので, 他の参加者も増えるといいな. どなたか, 一緒にやりませんか.

子供の理科離れとか言っている異常者がいるが, 実際に一番やばいのは大人の理科離れだと思っている. よく日本科学未来館の展示などで親が「子供が興味を持ってくれたら」とか言っているが, お前ら親は興味持たんのか, という話だ.

そして文句いうならお前も何かしろという話になるわけで, 大人向けの何かをしよう, ということでとりあえず始めた. 柚子胡椒さんにも当然のように突っ込まれたのだが, 今回のような話が一般の大人, もっと言うと女性に受けるなどとは全く思っていない. ただ, 何かしていることを積極的に前に出しておけば, そこからの展開や, 「じゃあこんなことお願いできますか? 」的な 何かがあるかもしれない, と思ってやっている.

何度も言っているが誰もやらない世界に行くための人柱はいつだって必要で, 自ら人柱になりにいこうという話. どうせ一発ではうまくいかないので, 私が無為に流した血と屍を参考に他の方も活動して頂きたい.

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数学, 相転移プロダクション, 数学カフェ

いま野口潤次郎『多変数解析関数論』を読んでいる

本文

最近野口潤次郎先生の『多変数解析関数論』を読んでいる. 以前 pekemath2 さんが面白そうと言っていたのと, 昔から憧れであった岡理論を勉強したいというこ, あと一応微妙に実益がないでもないのでずっとやりたいと思っていたのをようやく思い立ってやっている感じ. 代数的場の量子論の方でも私が興味あるところでよく多変数関数論を使っているようだし, 名前が既にスーパー格好いい楔の刃の定理の証明でも大事: これは量子統計でも使うのだ. あと研究上ちょっと興味がある代数解析でも基本になっているということがある. まずは全体像を掴もうということで粗っぽく全体を眺めている.

やりとりメモ

この間少し色々書いてやりとりもしたので記録を残しておこう. まずはこの辺か.

多変数関数論, 代数弱者にはかなりつらい印象を受けた

@phasetr かなり代数的に定式化してましたねぇ

@pekemath2 層やコホモロジーや代数の諸概念の勉強にはなってくれそうなのでそれはそれで嬉しいのですが

@phasetr そういう読み方も出来そうですね

@CFT_math そうです. 前々から岡の話をやりたかったというのと微妙な実益を兼ねて, 思い立ってやろうということで

その 2

あとこの辺からも.

関数論でルートを取るときの「分枝を取る」というアレ, 未だによく分かっていない

関数論というより複素数自体よく分かっていない感ある

複素数のことがよく分かっておらず関数論をろくに理解していなくても複素数体上の線型空間論は何とかなるし関数解析, ヒルベルト空間論も何とかごまかせるので, 関数解析, 一番素人向けなのでは感ある

野口先生の多変数関数論の本, ちょっとした具体例がだいたい全て代数幾何由来 (多変数多項式が例) なので, 何かその辺を徹底的に具体例をメインに関数論的に論じた代数幾何の本とかほしい

その 3

あと dif_engine さんとのやり取り.

関数論でルートを取るときの「分枝を取る」というアレ, 未だによく分かっていない

@phasetr 複素関数として考えるとリーマン面になっていて, この場合は原点から伸ばした半直線沿いに切れ目を入れると二枚になるのでその片方を取る, ということでしょう.

@dif_engine ちょっと複雑になると何かもうよく分からなくなるのです. log とかも今ひとつ腑に落ちていない感じで. 1 月くらい浴びるほどやれば何とかなるとは思いますが, ひたすら分枝を取るところやリーマン面の具体例とか書いてある本が欲しい

@phasetr $\sqrt{z}$ は一般論を持ちださなくても, $\left| z \right| = 1$ となる引数を考えて $\exp (it) \to \exp (it/2)$ を考えて $t$ をどんどん大きくしてくと $t=\pi$, $t= 1.5 \pi$ のときに $z$ が同じなのに関数値が違う現象が起きるのが見やすいと思います.

@phasetr あまり一般論にいかず, $\sqrt{z}$ とか $\sqrt{z (z-1)}$ みたいなのを考えて, 引数側の平面で閉曲線をぐるぐるやって実感してみるのがいいんじゃないかなと思います. (僕は $\sqrt{z}$ で力尽きて続きやってないので偉そうなこと言えませんが).

@dif_engine 実際に多変数関数論の本でよく例で出てくるのもそのくらいの簡単なものばかりなので, それをきちんとやるべきなのをずっとさぼっていたつけが回ってきている方の市民です. いい加減きちんとやりたい

@phasetr 私は, 局所凸関数論真面目にやってる俺 TUEEE などと軽薄な事を考えず真面目に藤本坦孝先生の複素解析を真面目にやっていたら, シュワルツ超関数をもっとよく理解できただろうと思うとちょっと悔しいです.

ラベル

数学, 関数論, コホモロジー, 層

Twitter まとめ: 零空間 $N$ は (線型) 写像の核 ker だった悲しみ

本文

ささくれ先輩がセミナーで喋っていたようなのだが, それについてブルブルエンジン兄貴と梵さんが Twitter 上で会話していた. 困っている人がいるかもしれないし, 折角なのでメモしておきたい. この辺から始まる.

引用

私は ker と書く

私自身は核を ker と書く. これは新井先生の本の影響だ.

im は ran

ついでにいうと, 像の方も Im や im ではなく ran と書く. ホモロジーあたりをやるとき時々こっそりと Im ではなく ran と書くのだが, これはこれで気持ち悪くて結局 Im とか書きつつ, 核だけは ker と先頭を小文字にしていたりする.

追記

Twitter で次のようなコメントを頂いた.

よく分からないが確かにフランス語由来かもしれない. 実際, 整数の $\mathbb{Z}$ はドイツ語の Zahlen が由来だったはずだ. 何か文章にしておくと指摘をしてもらえるのは実にありがたい.

数学

数学, 関数解析, 線型代数

Thurston によるコンパクト・シンプレクティックだが Kaehler ではない多様体の例

本文

TL を見ていたら Thurston の論文が引用されていて, ちょっと「おお」と思ったのでとりあえず読んでみた. これだ. シンプレクティック多様体は解析力学でも出てくる多様体で, 最近は超弦とかその辺との兼ね合いもあって精力的に研究されているという話を聞いている. Kaehler ももちろん非常に筋のよい対象で, 複素幾何の中心的な対象だと聞いている.

シンプレクティックは実多様体, Kaehler は複素多様体だが, 両方とも実次元は偶数なのでこういう比較にはきちんと意味がある. またこれで始めて知った程度に幾何弱者なのだが, 「多様体 $M$ が閉でシンプレクティックなら概複素構造を持つ」ということなので, こう何となく複素構造とかも持ってくれる可能性はある. その辺から「全ての閉シンプレクティック多様体が Kaehler になるか」というのは結構大事な問題だったようだ. ちなみに逆はすぐ分かる. 例えば Wikipedia を見てみよう.

で, 結局反例があるということを Thurston が言った, というのがこの論文のようだ. 2 次元トーラスの微分同相群, $\mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}$ の表現からファイバーバンドルを作って, そのコホモロジーを見るとアウト, という話だった. もう滅茶苦茶に不勉強なためコホモロジーが大体さっぱりなのだが, 反例を作る前に Kaehler の奇次元 Betti 数が偶数になる, という事実が紹介されているので, そこから分かるという寸法.

1 つだけではなくもっとたくさん反例が作れることを注意した上で, 別の予想を立てて論文は終わっている.

この論文が面白いというか紹介したい理由の 1 つとして, Guggenheimer の論文が出たがそれが間違いだった, ということを反例を使って示したところがある. 教科書でも時々あるが, 論文 (研究) レベルになると当然間違いがある可能性があるということ. Fermat 予想が何度も「証明」されたとか「立方体倍積問題の証明」などそういう話を耳にすることはよくあるかもしれないが, 結構色々なところで実際にあるということはもっと注意してもいいかと思った的なアレだった.

あと, 関西のつどいでも話した反例が大事的な話だが, Thurston が反例を作ったのを論文にしているということで, 面白い反例を作ったらそれ自体論文にできるのだ, ということも言いたい.

追記

Kaehler の 奇次元 Betti 数の話は Wikipedia の Laplace 作用素のところから来ることを教えて頂いた. あと森の未知さんのツイートも引用しておこう.

引用

これは学部生や修士課程学生が読むには非常にいい文章だと思う. >RT

件の Thurston の論文, とにかく短くて, 私の記憶だとたったの 2 ページ. すごい結果なら 2 ページで済むというのも知っていていいだろう.

手法も胞体分割でコホモロジー (ホモロジーだったかも) を計算するという, かなりのローテクノロジー. それで 2 ページで本質的に重要な結果を導いたわけでやっぱり Thurston はすごい.

私も低次元トポロジーには疎い人間で Thurston の論文はあれくらいしか読んだことないのだが, あれだけ読んでも Thurston の偉大さは分かる.

Godbillon-Vey 類の連続変化の話も森田先生の本で少しフォローしたことがあるが, あれもローテクノロジーだったと思う. それでかなり本質的な例を構成したんだよなぁ….

三次元多様体論で Thurston の業績が決定的なのはよく聞くし実際そうなんだろうと思うけど, 具体的に何をしたかは結局今も理解できていないような.

ということで皆も読んでみよう. そして基礎知識から私にレクチャーしてほしい.

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数学, 数理物理, 反例, 論文紹介

専門家による素朴集合論の定義をはじめて知ったので

結論

鴨浩靖さんによる次のツイート.

ツイートでのやりとりメモ

鴨さんによる補足

雑感

この手の指摘をもらうためにはコンテンツをオープンにした方がいいというのはある. 先日の記事, 「理論物理学者に数学を教えようの会」の内容や開催にいたる経緯でも書いたように, そのうち「コンテンツは無料, コミュニティ参加が有料」というタイプの「オンラインサロン」をやってみたいと思っているので, そこを目指してコンテンツを公開する方向で進めたい気持ちはある. もちろん高いお金を出して買ってもらった人達への適当な保証も必要だろう. 既に買った人は月額課金の金額を安くするとか, そもそも無料にするとか. 「オンラインサロン」内で適当な有料イベントなどを開催する前提で, そこでまた必要なら課金することにすれば, コンテンツを購入した人はサロン参加自体は完全無料でも問題ない. あとは金額設定と規模がどこまで出せるかだ. この辺, できればこのモデルを改めて出版社などに持ち込んだりもできる.

もちろん既に完全に一般化したモデルだとも思うので出版社などは勝手にやってほしいのだが, 成功事例などがないと現在の学術系出版社は動けないだろうから, その辺の実験はこちらでやる必要があるのだろう. 様子を見ながら少しずつ進めたい.

今の時代の勉強の仕方

本文

Twitter でこんなつぶやきを見つけた.

もっと数学したいけど, 一緒にする友達も居ないのでなかなかやる気が出なくて, サークルに入り浸り, 後悔して死にたくなるんですよね…

実際に Skype を使って数学の勉強をしている人達がいるようなので, そういうのもありなのかもしれない. idroo なるツールを併用しているとのことだった.

前, 高校生達が Skype で勉強会開いているのに参加したこともあれば, その他, 適当な院生や学部生達と pixiv のお絵描きチャットで勉強会という荒技も繰り出してみたことがある.

(これは古い記事の移行なので, 2021 年時点では zoom など学校の授業でさえ使われているからまた事情は変わっているだろう.)

高校生 Skype のは使えるデバイスが iPhone くらいしかない, というので, 発表者はタイプだけで何とかせねばならず, かなりきつそうだった.

pixiv チャットの方は大学生メインだったから, PC とペンタブレットを上手く使い回すことで何とかなった面があるが, ペンタブレットがないとほぼ発表ができない感じなので, それがきつい.

ツールに左右されるのがかなりきつい. 中高生だと PC を前提にすることすらきつい.

ジョブスは iPad を勉強に使う道を模索していたようだが, まだまだタブレット端末は普及していない. 問題がないこともないが, やはり現状, 数学や物理を勉強するには実際に物理的に集合する方法が一番楽という感じがあってつらい.

何かいいのないかなと思っていて, かつそこをどうにかしたいとは思っているが, 今のところいい案が浮かばない. そういうコミュニティをうまいこと組織したい.

子供の頃そういうのあったらいいなとずっと思っていたので, 子供の頃の自分が喜ぶような何かを追い求めたい.

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勉強法

信じられた自然数 0

patho_logic さんのツイートから

Twitter では時々話題になるが, patho_logic さんがまた釣り上げてきたようだ. 一応ブログにも関係することをまとめておきたい. patho_logic さんのツイートはこれだ.

0 は自然数とする皆様へ.< http://bit.ly/W27stm>

URL の参照先では次のような異常な文章が書かれている.

Q. 中 1 の数学の問題がわかりません>< 正しいか, 正しくないかの問題なんですが,

自然数でない整数で最も大きい数は 0 である.

というのは, なぜ正しいのかわかりません>< それに文章の意味もわかりません・・・

A. 結論から言うとその文章は正しいです. 説明すると 自然数というのは 0 より大きい (0 は含まない) 整数のことです. 1 とか 2 とか 100 とかとにかく 1 以上の整数です. 自然数でない整数は 0 と-1 や-2 などの負の数の整数です. 自然数でない整数→ 1 未満の整数=0 以下の整数 なので自然数でない整数で最も大きい数は 0 であるとなります.

t_uda さんコメント

Twitter の私の観測範囲内では, この辺について t_uda (0_uda) さんが「0 は自然数」を謳って活動している. いくつかあるが, 0 は自然数 FAQや, #0 は自然数 にしたい理由が参考になるだろう. 特に FAQ の方は軽いネタのような突っ込みや, 真っ先に武力解決を模索したくなるようなコメントに対しても回答が与えられていて面白い.

私のスタンスだが基本的に 0 は自然数に含める. 見てきた本が大体自然数に 0 を含めてきたから, というのがおそらく 1 番の理由だ. それ以外には関数環 $C^k (\Omega)$ について $k=0$ を連続関数の環としたい場合, $k$ は自然数と言っておくと楽だからというのもある. 「$k$ は非負整数」と言ってもいいが何となくめんどい, という程度でそこまで積極的というわけでもない.

上記ページにもあるように, 大学受験で問題を解くときに 0 は自然数としないとまずいことがある. Twitter だと受験生もツイートを見ているのでそこの影響は考えないでもないが, その場その場に応じて適切に定義しておけばよく, きちんと通じる範囲で人によって変わっても構わないというのを伝えることも大事だろう. 程良い適当さ, 寛容な心は大事なのだ. 寛容な心というの, あまり実践できていないがそれはそれとして積極的に棚に上げていきたい.

追記

大学受験というかセンターで実際に問題があったというのはこれの第 1 問〔 2 〕. ブルブルエンジン兄貴による Twiitter での反応まとめがこれ.

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数学, 自然数

埼玉大で埋蔵固有値に関する摂動論のトークをしてきた

私のトークメモ

3/24 に埼玉大で「Friedrichs モデルの解析」と題して埋蔵固有値の摂動論について入門的な話をしてきた. Evabow1 さんのリクエストとしてのスペクトル解析と, ゆきみさんのリクエストとしての作用素論と摂動論として丁度いい話題だろうということで. 今回の議論の詳細はあまり作用素論っぽくないのだが, 数学としては簡単な線型代数と微積分, 複素解析を知っていれば十分で, 物理よりのスペクトル解析の話題の面白いところは見られる良いモデルだ.

メインターゲットの一人, ゆきみさんが来ないという非常事態が勃発したが, とりあえず話してきた. 時間があまっているから, という理由でのんびり + 物理の話を予定以上に入れたとはいえ, 最初の講演予定時間の 90 分を 1 時間オーバーというのは極めてよくないことなので反省している.

数学上の色々な概念や言葉の定義に物理のモチベーションがあるので, そこをどううまく伝えるかが非常に悩ましい. そこの間隙こそが一番好きなところなのだが, 伝えるときにはむしろ一番苦労する.

ゆきみさん向けにまたどこかで同じ話をしようという企画は持ち上がっているので, 次回はもう少し色々配慮したい.

また今回の講演もつどい同様動画にしたい.

ある意味で 1 つネタを使ってしまったので新たなネタを補充する必要もある.

あと, 私に何か話をしてほしいという奇特な方がいらっしゃれば, 適当な手段でコンタクトを取って頂ければ前向きに検討していくので遠慮なくご連絡頂きたい. 数学, 物理, 数理物理で社会を善導するために粉骨砕身していく所存. 話せるネタには様々な制約があるので, そこにはご配慮頂きたい.

Evabow1 さんとブルブルエンジン兄貴のトーク内容のまとめ

坊ゼミでの他の講演者のトーク内容も記録しておく. Evabow1 さんとブルブルエンジン兄貴がトークした. パン耳パイセンはまさかのスピーカーの欠席という非常事態であった. 何の話をするか楽しみだったのだが.

Evabow1 さん分

それはそれとトークの内容である. Evabow1 さんは 1 階の偏微分方程式についての話だった. 前半で特性曲線による解法について話し, 後半でそれを非粘性 Burgers 方程式に応用するという構成だった.

1 階の偏微分不等式 (偏微分方程式ではない) に関する議論が原・田崎の Ising 本でも出てきたが, まともに学んだことがない話だったので実にためになった. 一般論は何がなんだかよく分からないが具体的な話だと何をやっているか分かりやすくなるといういつものアレだった. 自分が話すときにも気をつけたいと改めて思う.

Burgers 方程式の話は最後に衝撃波の話が出てきて, これが面白かった. あまり流体の話をまともにやったことがなく, 衝撃波も名前だけでよく知らなかったので, 勉強になる. 具体的に解けてその解の様子がはっきり見られるというのはやはり面白い. このくらいの目に見えることについては, もっと数値計算やシミュレーションの話を数学科でもやっていいと思う.

alg-d さん分

もう一つ, ブルブルエンジン兄貴のパン耳パイセン向けであったという, 非単位的非可換環に対する極大イデアルの存在条件に関する話だった. 選択公理と同値なことで高名な Krull の定理から始まり, 単位元の存在と可換性を落としつつ, 単位元的なものはある状況からどこまでそれを落とせるか, という感じで進んでいく. 最後, left semicentral idempotent (lsi) が存在するところでの極大両側イデアルの存在定理でしめくくられた.

「代数の話だが作用素環に使えるから解析と強弁する」という兄貴の話だったが, 結局, 非単位的で factor でない非可換 von Neumann 環なら中心の射影が lsi になるから確かに作用素環への応用を持つことが分かった. Factor (中心が自明な von Neumann 環. 歴史的な事情によって von Neumann 環論では factor, 因子と呼ぶ) のときにどうなるか, また一般に射影を持つとは限らない $C^*$ 環ではどうか, という問題が残る. 一般の環というわけではないのでどうにかなりそうだとは思っているのだが, 適当なことを言っていると足をすくわれるし, それ以前に関係各所から致死量の攻撃を受けるので気をつけていきたい.

しゅそくさんいわく, パン耳パイセンは優秀な学生だと聞いているので, パン耳パイセンの調査を待ちたい.

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数学, 物理, 数理物理, イベント

Lieb-Loss Analysis の 11 章を読むセミナーを東京近郊の大学で 2 月頃にやるので興味がある向きは問い合わされたい

本文

yuki_migo さんとセミナーをしようという話があるので, とりあえず告知的なことをしていきたい. 下記の本, Lieb-Loss の Analysis, 11 章の始めから 11.14 くらいまでをやる予定. 2 月のどこかで東京近郊のどこかの大学でやる予定なので, 興味がある向きは問い合わされたい.

Schrodinger 周辺の話だが, 量子力学の知識は特に仮定しない. 物理に関して必要なところは補足する.

解析系の数学科学部 4 年くらいなら十分理解できる内容で, 本来の想定としてはそこに向けて話す. ただ, 本質的に使うのは微積分の計算であってあと大事なスパイスとして関数解析の基本定理を酷使する. 参加者の学年次第だが, 学部 1-2 年の学生が Lebesgue 積分や関数解析の応用面を知り, そこへの学習のモチベーションになるようにもしたいと思っている. ちなみに Lebesgue と関数解析と作用素論のセミナーを 3 月にやる予定なので, その前哨戦と言ってもいい. こちらについても参加されたい方は問い合わされたい.

基本的には本に沿って話をするが, 私の専門が作用素論方面ということもあり, 量子力学に関する作用素論展開と実解析的展開の物理的な見方的なところも多少話す. イントロでは, 確率論との関係や, 量子力学の他の話題, 幾何との関係なども多少話して, 分野的にこの辺の宣伝もする予定だ. 本には書かれていない点でいくつか面白いところは適宜補足していくので, 量子力学周辺の数学に興味がある向きは是非参加してほしい.

追記

先日もアナウンスした Lieb-Loss Analysis のセミナーの日程が決まった. 2/14 15:00 から, 東工大で 3-4 時間程度話す予定. 話す予定の内容はここにおいておき, 順次更新していく.

数学科学部 4 年の学生がメインターゲット (はじめにやろうといった相手) なので, 本当にきっちり知りたいなら学部 4 年程度の数学の知識は必要になる. ただ, 参加者として学部 1-2 年が実際にいるので, その辺にも雰囲気が掴めるようにはする. 微分積分や線型代数の展開, 具体的には Lebesgue や関数解析の使い方を見せて, 今後の勉強のモチベーションアップに使ってもらいたいと思っている.

ご興味のある向きは是非参加されたい. こちらのコメントでもいいし, Twitter でリプライを飛ばしてくれても⁄い. サイトにはメールアドレスも載せてあるはで, ぜちらに投げて頂いても構わない.

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数学, 物理, 数理物理, 量子力学, 作用素論, 関数解析, Lebesgue 積分, 確率論, 幾何学, 相転移プロダクション

「数論研究者のための Sage」

本文

のらんぶるさん筋の情報.

Sage で数表を作って保存しとく手法をどっかで見たような, と思って探したら @iwaokimura 先生の RIMS 講究録別冊の記事だった.

Dirichlet 指標のガウス和は標準装備されてるけど有限体の乗法群の指標のガウス和がない気がしたので作った.

. @nolimbre ありがとうございます. 何かのお役に立っていれば幸いです: 「数論研究者のための Sage」 http://hdl.handle.net/10110/8946

よくわからないのだが, まだ Python 2 系しかサポートしていないのだろうか. Python, 日本語の扱いが面倒で嫌になったので最近基本的に Ruby を使うように切り替えたが, 科学技術計算の文脈だと scipy とか numby とか充実していい印象がある. これらを普段使わないということもあって, Ruby 移行でいいかと思ったのだが.

ただ, Sage 自体は頭に入れておこう.

追記

著者からコメント頂いたので記録. 本格的に使うならこういうライブラリ利用の方がいいだろうが, 最近は Haskell の勉強にはまっているので, プログラムの勉強もかねて Haskell で遊ぶ方向でいろいろ考えている.

追記: 2021-08-19

最近, 数学+プログラミングでは Julia コミュニティが非常に活発になっている. 数値計算とそれに関わる情報という意味では Python なのだろうが, Julia は Julia で Python の資源をある程度取り込めるようになっている. とりあえずは Julia で遊ぼう. あとは個人的な趣味から F#.

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数学, プログラミング, Sage

黒木さんのツイート

2015-04-15 黒木さんおすすめ, 大学新入生向け数学アプリ: Wolfram Alpha (のアプリ)

  • 数学, Wolfram Alpha, アプリ, 数値計算, シミュレーション

参考にしたい.

追記

Quick Graph という新たなお勧めが増えたので追記.

2015-07-26 大学数学の理解度を測りたければ「簡単な例を 3 つ挙げられるか」自問自答すればいい

黒木さんのツイートまとめ+感想ということで.

=p lang="ja" dir="ltr">@genkuroki数学科での教え方と学び方の両方には伝統的に大きな欠陥があるのではないかと感じることがある。この問題意識と「ノ⃼タゥムで籡単な(反)例を挙げられるか?」という理解度の測り方は直接に関係がある。簡単な(反)例を知らないままで小難しい定義を理解するのは無理。

— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2015, 7月 21

順に雑感を書きたい.

数学の理解度を数学を教える側がどのように判断することがあるか? 一つの判断基準は「簡単な(反)例をノータイムで挙げられるかどうか?」 小難しい証明を黒板に書けていても、ノータイムで簡単な(反)例が出て来ない学生は実質的に何も理解していないことが多い。数学もまた厳しい世界。

— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki)
2015, 7月 21

【実質的に何も理解していない】というところがかなり気になる. 受験生向けの話もいろいろ書いていたときに改めて思った点として, そもそも「理解とは何か」自体がかなり定義の難しい概念という感じがある.

定理の証瘎がまるで追えなかった, または一邨どう⁗てもギャップが埋められなかったところを埋められたというのも理解が進んでいる証なのは間違いない.

五里霧中状態だと(後で見れば)簡単な例も本当に作れないことがあってとてもつらい. もちろん五里霧中なので, 少なくともcrystal-clearな理解に至っていないのは自明ではある. うまいこと言葉にできないのだが, ただ一言つらいとだけは言っておきたい.

越えるべき壁であることは間違いないので, 簡単な例を作る修行をすべきことに異論はない.

そもそも修士の二年しか数学科にいなかった上, 教える方の経験が段違いなのでいろいろアレだが, 教え方と学び方のギャップは感じないこともない. (反)例を作る大切さに関しては次のDVDを作ったくらいだ.

これも受験生向け情報発信で思ったことだが, 自分自身, 大学に入るまで, 根本的に「学ぶことは誰かに教えてもらうことだ」という姿勢があった. この辺からして既に問題だと認識している. 早いうちから, それも嫌でも本格的に勉強せざるを得ない機会である大学受験からそういう姿勢を学んでほしいし, そのためにブログにまとめた記事をKindleにもまとめたくらいだ.

最後にこれ.

口伝で「三つ以上例を作れ」というのを聞いた記憶はないが, 院でのゼミ中, 定理の言明に関して「そういう例は何かありますか」と聞かれて例を挙げられなくてつらかったことはある. 閉作用素に関する話でもう言明が何だったかも覚えていないが, いまだに例が作れていないことだけは覚えている.

次週のゼミの準備で手一杯で, という言い訳で結局さぼって例を作らなかった苦い記憶がある. 一言でまとめると【つらい】.

2015-10-08 黒木さん発言録: 佐武『線形代数学』と長谷川浩『線形代数』が面白いという話をまとめた

私の場合, 学部 1 年で実数論, 集合論, 位相空間論の本格的な講義に出会ったことが 今の私を決定づけている感がある.

同じく 1 年のときにあった物理学研究ゼミナールというやつで Brown 運動の数学パートを担当させられて, そこでいろいろ発表するために わけもわからず手に取ったブラウン運動のしっかりしていそうな本が 飛田武幸『ブラウン運動』だったり, 数学の関数解析バリバリの偏微分方程式の本を読んで挫折しまくったり, Hilbert 空間論の本に手を出してみたりしたことも かなり強く効いている.

あと線型代数については次の企画でもちょろっとまとめているが, 関数解析・半群理論を意識したような構成でいろいろ書いてみたい.

Hubbard・Heisenberg あたりとか, 学部 3 年の量子力学のトンネル効果周辺の練習問題で $2 \times 2$ 行列で遊んだことがあるので, そういうネタも突っ込んでみたい. あとやはり量子情報まわりだと行列で本質的に遊べそうな 気配を感じるので, その辺も気になって仕方ない.

2015-10-09 黒木さんツイートと飯高茂先生のページから: 飯高先生自身の学業・研究の記録

飯高先生ページのPDFは学生の頃に読んだ記憶がある. 代数幾何も一度はそれなりにやってみたい. 特に小平先生の論文はいろいろ読んでみたい.

2015-10-10 黒木さんツイートまとめ: 数学とプログラミング的なところで Singular, REDUCE

数学とプログラミング的なアレで参考になりそうだったので.

中高の数学, 大学入試あたりをネタにして いろいろプログラミングやりたいのだが時間がない. つらい.

2015-10-25 黒木さんツイートまとめ: ベクトルの内積の話

あとで読む.

2015-10-31 ツイートまとめ: 数学系魔法少女アニメセリフ集

これは一体何だったのだろう.

2015-11-14 『NHK数学ミステリー白熱教室 ラングランズプログラムへの招待』第1回に関する東北大助教 黒木玄さんの感想・コメントツイートまとめ+私のコメント少々

先日とりあえず緊急速報を出したが, 時間が取れなくてまだ見られていない. とりあえず東北大数学の黒木さんが色々言っていたので, それをいったんまとめておく. 何となくまだ追記されていきそうな感じもするが.

数学者からどう見えているのか, どんな風に突っ込んでいくと純数学的に面白いのかといったことが 見えて楽しい人には楽しいだろう. 私が子供の頃に知りたかったことでもあるし, この記事更新を流す Twitter には同じような気持ちを持つ中高生もいる. 少しでも楽しんでもらえれば, ということで.

前書きはこのくらいにして, バンバン張っていく.

こういうのかなり大事で, もっと前面に出す機会があった方がいいとは思う. 他はどうかは本当にわからないが, 数学者, 異常なくらいフランクな感じがある. すぐに探し出せないがJonesのFields賞の授賞式に関する河東先生の記録で, 「普段は半袖短パンのJonesがさすがにそれではまずいと思ったのか, 授賞式のときは(半袖短パンで)ネクタイをつけていた」 というのがあった気がする. これ, 私が見たときは河東先生のホームページに置いてあった記録なので, 興味がある人は探してみてほしい. そして私に教えてほしい.

頂点作用素代数の話が(も)書いてあった気がするが, 頂点作用素代数は作用素環での代数的場の量子論とも深い関係があり, 上記の河東泰之先生 (私の指導教官) も研究している. 時々「頂点作用素代数の研究集会に行きましたが, 作用素環の研究者は私だけでした」 みたいなことも言っている.

共形場とその周辺は数学だとホットな話題で Fields 賞も割とよく出ている魔界. Borcherds はまさに頂点作用素代数関係で仕事をしているし, 代数幾何まわりでもいろいろな話題があると聞いている. Wernerも確率論と共形場という話題で重要な仕事があり, それも含めてFields賞を取っている.

頂点作用素代数は恐ろしく複雑な公理を持つ代数系で, 勉強・研究するうちに勝手に覚えるのだろうが激烈うんざりする.

もちろん共形場は物理の方でも大事(らしい). 超弦理論でのAdS/CFTとかある(名前しか知らない)し, 相転移でもIsingからの接続とかいろいろある. 超弦理論の物理がまだいろいろ議論があるとかそういうのはいったん置いておく. そもそも全く知らないので触れようがない.

ここの話とはあまり関係がないが, 場の理論から数論の中心的なテーマの一つ, Riemannの$\zeta$を導出していろいろ調べるという話がある. 北大の新井朝雄先生の次の論文はとても読みやすい.

読みやすいとは言っても無限次元Hilbert空間のテンソル積からなる 無限直和とその上の第二量子化作用素とかそういう数学に耐えられる必要はある. 収束とかその辺はあまり気にしなくてもいいのだが, こういうのを見て「ウッ」と思うようだとかなりつらい. 要望があるようならYouTubeに動画でも出そうとは思っている. 優先順位の問題があるのでずっと上がってこなかったのだが, 要望があるならもちろん優先度をあげていく.

全く関係ないが, 以前東大の数学科に論文だか教科書を読んでいてわからないことがあったとかでWeilに電話した人がいると聞いた. それも(確か)大学院くらいのときの話と聞いた気がする. 時代もあるので手紙やメールならわかるが, 電話とかパンチ力高い.

この辺で有名な話だと, やはり徴税人をしていたからという理由で フランス革命でギロチンで処刑された話題がある. 最近嫌な方向で話題に挙がることも多い La Marseillaise をも想起する.

少し話がずれるが, von Neumannが有名な『量子力学の数学的基礎』で, わざわざ$\delta$関数は関数として存在しないことを示した (いま早稲田の小澤徹先生が言っていた) という話を聞いた. (その当時の)数学では異常にしか見えないところが物理では普通に出てくるところで, そこに切り込んでいくタイプの話, 超好きなのでそういうのがやりたい.

あとWeilに関しても, 相対論的場の量子論での表現論で, 数学的に難し過ぎてWeilですら太刀打ちできなかったところを 物理でどうしても必要だからということで Wignerが先鞭をつけDiracがさらに切り開いた Lorenz群の無限次元ユニタリ表現とかの話も凄く好き. これについては平井武先生の『線形代数と群の表現 II』P.453-454 とかを読んでみよう.

こういう真っ当な数学者が近寄ってくれなくて, 業を煮やした物理学者が自分達で何とかしたみたいな話がすごく好き. 出てくる名前がNobel賞, Fields賞クラスなので, 爆笑するが, かといって夢は夢だし小さくても自分でも何かしたいし, 大人のそういう姿を子供達にも見せたいとずっと思っている. (正しい)努力をやめてはいけない.

トポロジーも数論に負けず劣らずいろいろな数学が交錯する分野という印象がある. 非線型偏微分方程式までぶっこめるとか尋常ではない. 微分幾何関係であるのはそれは普通だろうが, 位相的な性質まで微分方程式で議論するとか無茶にもほどがあると思っている.

全くお勧めしないが, 数学的に何とかなっているFeynman積分(経路積分, 汎関数積分)については, 例えばLörinczi-Hiroshima-Betzの『Feynman-Kac-Type Theorems and Gibbs Measures on Path Space: With Applications to Rigorous Quantum Field Theory』とか新井-江沢の『場の量子論と統計力学』あたりがある.

前者は非相対論的場の量子論に関する割と最近の発展までをカバーしている. 後者はちょっと古いが相対論的場の量子論レベルの話をカバーしている. ここで関係のある超弦理論レベルの話には全く追いついていなくて, その意味では使いものにならない. 両方とも私より数学ができるなら読めるだろう.

上の本で厳しいがもう少し簡単なところを数学的に厳密に見てみたいという 奇特な方は新井朝雄先生の『量子数理物理学における汎関数積分法』を勧めておく. これなら私と同程度にしか数学ができなくても読める.

何かいかにも後が続きそうだが, あったらあとで追加する.

2015-11-21 『NHK数学ミステリー白熱教室 ラングランズプログラムへの招待 第2回 数の世界に隠された美しさ ~数論の対称性~』に関する東北大助教 黒木玄さんのコメントツイートまとめその 2 Galois 理論

やはりまだ番組を見られていないが, とりあえず黒木さんのツイートまとめ.

この辺YouTubeに補講的な動画とか上げるの需要あるだろうかとふと思う.

2015-11-26 『NHK数学ミステリー白熱教室 ラングランズプログラムへの招待 第2回 数の世界に隠された美しさ ~数論の対称性~』に関する東北大助教 黒木玄さんの数学的に突っ込んだコメントツイートまとめ+私のコメント

第二回どころか第一回もまだ見ていないが, 黒木さんのツイートがあったので, 数学者サイドからの数学的面白さへのコメントとしてまとめておく. 文献もいろいろ紹介されているので興味がある人はぜひアタックしてほしい.

まるで畑違いなので答えられることは絶望的に少ないだろうが, 何か疑問があれば私で答えられることは答えていきたいとも思う.

この本, 有名だが読んだことがない.

いろいろなしがらみで難しいっぽい感じもするが, PDFでの販売とかできないのだろうか. 印刷だとか取次だとか流通の分を考えなくてもいいから, その辺のコストは切れると思うのだが, 素人の浅慮は当然あるだろう.

サイエンス社が別冊数理科学でPDF販売しているし, できないことはないと思っている.

この話, 『佐藤幹夫の数学』にも載っている.

具体的な内容わからないのでアレだが, コホモロジーの(面倒そうな)計算を楽な方法に叩き落とせるの凄そう.

自由boson場, 物理的にはほとんど何も起こらないからあまり面白そうに感じないが共形場まわりの数学だと何か面白いことがあるのだろう.

上のように書くとアレなので補足しておくと, (非相対論的)統計力学では自由bosonでのBose-Einstein凝縮(BEC)があるので, その範囲ではめちゃくちゃ面白い. 相対論的bosonを議論するときのBECというのを聞いたことがないが, 統計力学の文脈でこういう話しないのだろうか. 今回の話と多分全く関係ないが, 専門に近い話なのでこういうところが自然と気になる.

解析数論と場の量子論関係に関して去年のRIMSの構成的場の量子論の会議の休憩中にも少し話題が出たが, 自由bosonでこれだけ面白いことがあるなら 相互作用がついたときにはどうなのだろう, という問題がある. 共形場まわりの相対論界隈ではどういう話があるのだろうか. 少なくとも物理の人が自由bosonで満足するとは思えない.

全然関係ないが, 連接層に関しては日本人数学者の岡潔の大きな業績がある. そもそも定義して使い込んで, 多変数関数論の大きな問題を解決したというレベルの根本的な業績だ. 読みたいと思って細部まで読み切れていない, 野口先生の本『多変数解析関数論 学部生へおくる岡の連接定理』がある. ハードなところまできっちり解説されていつつ, 複素多様体の話もところどころで盛り込まれていて, 学部生が読めば好奇心をかきたてられるだろう.

2015-12-06 『NHK数学ミステリー白熱教室 ラングランズプログラムへの招待』黒木玄さんのツイートを主に適当にまとめ

いまだに番組見られていない. あとさぼっていたらもうどれがどれやらよくわからないので 適当にまとめる. 数学的には専門から遠過ぎてよくわからない・知らない話題も多いので, 私自身勉強になるから.

まず一番気になっているところといえばこの辺.

私もニコニコで大概無茶苦茶な動画を作っているが, かなり研究界隈の人々とはいえ 非数学・物理の系の人でも学部どころか院レベルの内容を 楽しんでくれているっぽいし, 子供の頃そういうのに触れたくて仕方なかった過去もある.

こういうのを私ももっとやりたい.

イケメンとかアートとしての数学とか, そういうのも大事だなと思うが, どうしようというところ.

あとメモ. - http://sci.tea-nifty.com/blog/2015/11/nhk-1127-41d4.html

以前のと被っているツイートもあるかもしれないし, 漏れもあるかもしれないがもう気にせずガンガンやる.

その他の連続ツイートその 1.

場の理論といっても相対論的で綺麗な世界だと思うし, 私や物性の人達がやっているような 対称性も微妙な汚いところ (深谷先生ならダーティーな物理とでもいうだろうか) を 繋いでくれそうな数学あるだろうか.

この辺をどこまでどう頑張るか, 今後それが試される感がある.

仕方ないといえばそうだが, 順番に読まないといけないのはかなりストレスになるという感じもある. 本当にどうしよう.

話ずれるがいま企画を練り直している『物理のための数学』では, そういうところをきっちりやりたい.

その細かい分類が涙が出るほどつらい.

話めっちゃずれるが, 構成的場の量子論, 具体例を作ることそれ自体を目的とする分野なので, 具体例で遊べる分野, 本当に羨ましい. 私も遊べる具体例がたくさんほしかった.

連続ツイートその 2.

最近そういう健全な直観を作ることを「器を作る」と呼ぶことにしている. 正しい器を作るの, 大変だがとても大事.

勉強不足というのもあるが, 多項式だと簡単なことが整数で難しくなるの, 本当に謎.

回転群, 数学が詰まりすぎて消化不良を起こすこと, かなりよくあるのではないか感がある. Lie 群で代数多様体で群上の調和解析できて無限次元表現あって, とか魔界以外の何者でもない. 私がぎりぎり知っているところを上げただけで, もっと色々なことが詰まっているだろう.

いきなり $D$ 加群ぶっ込んでこられたので びっくりした. 柏原さんの Riemann-Hilbert 対応とかやはり何か関係あるのだろうか.

数値実験で遊ぶの, 私ももっとやってみたいし, コンテンツも作りたい.

あと黒木さんが RT していたいろいろな人の感想を.

知的興奮はあっても何も身にならないこと, 実際の講義やら何やらで対応するのは極めて難しい感じがある. その辺何とかしたいと思ってやってはいるが.

引き続きいろいろ頑張ろう.

2016-03-25 応用数学・数学史メモ: 第二次世界大戦期に於ける日本人数学者の戦時研究

細かいことを全く覚えていないが, 何かを探しているときに見つけたのだ.

しょっぱなの表の一部だけとりあえず引用しておく.

No 課題と科学研究費 研究目的
1 統計数学 製品の統計学的制御
保存と配給の数学的計画
軍使用の見積もり
特性検査と人的配置
統計学の原理
統計表と特殊関数表の準備と作成
2 特殊な統計学 陸軍により要求される特殊課題の統計学的研究
3 家庭経済の数学的研究 家庭の生活費と栄養との調査による国民の生活水準の決定のための研究
4 特殊な代数解析 主として暗号法の研究
5 等角写像 飛行機の珍しい形の研究
6 特殊な微分方程式 振動と電波回折の現象についての研究
7 航空方程式の再考察 各種の航空方程式の再調査
8 特殊な機械と道具の幾何学的研究 伝動論その他の幾何学的研究
9 視覚 武装機械その他の幾何学的研究

当然だがここでの「代数解析」は佐藤幹夫や柏原正樹たちによる現代的なalgebraic analysisではない. 特殊関数表の準備・作成という時代を感じる項目もある.

当たり前といえば当たり前だが, 統計はともかく数学というより工学的応用の感じが強い.

ひとまずメモ.

2016-03-26 ツイートまとめ: 東北大に佐藤幹夫が来たときの市民講演会に関する黒木さんの記憶を記録

羨ましい黒木さんの記憶を記録.

めっちゃ無理筋の市民講演会ですごい. さすが Tohoku は格が違った.

田崎さんの日記で, 飯高先生のスイッチを押してしまったという話があった記憶がある.

「さっぱりわからない」が「じつに、興味深い」の別の表現かどうかは微妙なところだが, 少なくとも質問が出たら相手を興味深いと思わせたと一応思ってもいい. 変に意地悪な質問をネチネチとしてくるのもいるが, 全く興味がなければ無視するのが普通だし, 一応興味を引いたといえば引いた形にはなっている.

よく考えてほしいのだが, 興味が持てなければ聞いていても話は右から左へ通り過ぎるだけで, 頭には全く何も入ってこない. 引っかかることがないから当然質問も浮かばない.

何度もしつこく聞いてくるということは, それだけそれについて聞きたい・知りたいということだ.

時々その辺が全く通じなくて, 質問を嫌がらせと勘違いされることがあって衝撃を受けたことがあるので あえて特記しておきたい.

2016-08-13 平坦加群などの平坦(flat)という名前の由来

まだきちんと読み切れていないが, 1 つだけ引用しておこう.

A lot of people will tell you that flatness means "continuously varying fibres" in some sense, and that flatness was invented to have correspondingly nice consequences, which is true. But there is a way to expect this (vague) interpretation a priori from an alternative, equivalent definition:

軽く眺めた限りではflatという感じは全くしなくてそれ自体はさっぱりわからない. 量子力学の「波動関数」のように名前に固執すること自体がよくないのだろうとも思う.

とりあえず教えて頂いのでメモだけはしておく.

2016-08-31 堀田良之『線型代数群の基礎』に関する黒木さん雑感のまとめ

参考になると思ったので.

これだ.

続きも引用する.

だいぶ対象というか何というか変わる感じするが, これ, 本当に感じる. 自分で何か作るときもきちんと意識しなければ.

引用を続けよう.

楽しそう.

2016-09-05 無限可積分系に関係する代数幾何や代数解析に関する黒木さんの数楽メモ

よくわからないが何となく気になるのでメモしておく. 他の人もこういうのをどんどん出してくれると嬉しいが, こういろいろ厳しいのだろうとも思う.

ソリトン系の時間変数m t_m=Σx_i^mは中学校ですでに出会っている2変数の場合のベキ和x+y,x^2+y^2を「少し」一般化したものでしかない。ソリトン系の佐藤理論は高校数学の続きとしてもとてもよい教材だと思う。良い数学には色々出て来る。

こういう話, 適当に開いて 中高生向けの現代数学入門みたいな小冊子にまとめてKindleとかに載せていきたい.

一般の中高生はもちろん受け付けないだろうが, 受け付けるというか大喜びする中高生, 存在はするはずだから.

引用は続く.

長くて途中で心が折れそうになった. つらい.

2016-09-11 かけ算順序固定派先生に教育目標を確認する質問チャート: 大事なので画像も転載

チャートが激烈大事なので転載させてもらうことにしよう.

ちなみに私の掛け算に対するスタンスは次の記事にまとめている.

  • 【掛け算問題の悲しみ: 嘘は後々禍根を残す】: TODO あとでリンク張り直し

嘘を教えるのは人間関係にひどく悪い影響を残すから, 本当にやめた方がいい.

数学の理解のためにできること: 黒木メモ

以前, 「特異点解消ってどんな感じなんですか?」, 「こんな感じでぐるっと回しながら持ち上げる」みたいな感じで, ジェスチャーを交えて説明している姿を見かけたことがある.

何ヶ月かしてたまたまそれっぽい図をネットで見かけて「あのとき言っていたのはこれか」という感慨を覚えたことがある.

特にどうということもないがそんなことを思い出した.

『無料で入手できる本格的(紙なら高額)な理数系専門書15選』からの共形場理論: 黒木さんのツイートメモ

共形場だから当然なのかもしれないが, 作用素環での共形場のフォーミュレーションでもbraid群が出てくるようなので, braid群やばいという感じがある.

よくわからないが山田泰彦さんの『共形場理論入門』, 英訳した方がいいのではないかという気がする.

層とコホモロジーとRiemann面: 黒木さんツイートまとめ

参考にしたい.

「y.さんのLaTeX解説が非常に良い」黒木メモ

私もy.さんのPDFを読んだ. 確かにかなりよく書けているし, 早速反映した内容もある.

これは初学者必読感ある.

代数統計: 黒木玄さんのツイートまとめ

代数解析勉強したい. したいしたい言っていまだに全くできていないし, ミニ講座を作る体で勉強するしかないのかもしれない.

黒木さんのツイートまとめ: 熱浴と数学

発端のツイート.

これの解説ツイート群.

他にやりたいことがガンガン増えてきて全く触れられていない話題として, 大偏差原理の勉強がある. 統計力学でいろいろ関係あるらしいし, 前からずっとやりたいとは思ってはいるが全く何もできていない.

準素イデアルの定義と代数幾何・代数解析への誘い: 黒木さんツイートまとめ

見やすくするため勝手にPDFにもまとめた.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/kuroki_primary_ideal.pdf

以下ツイート引用.

これ相当参考になるのでは.

イデアルについている形容詞の定義を理解するためには、そのイデアルで割ってできる剰余環について考えてみるとよいです。

そしてこれ.

Iは可換環Aの真のイデアルとします。A/Iが体、整域、「その零因子はすべて冪零」であることのそれぞれとIが極大、素、準素であることは同値。

途中, 代数解析的な話も出てくる. ふつうは代数幾何の範疇なのだろうか? 私は代数解析の文脈で先に見たのでそう思ってしまうけれども.

黒木さん筋の情報: 佐藤の$b$函数(Bernstein-Sato多項式)が学習理論に応用される様相

全部載せるの面倒だったので一部だけ. 代数解析と統計を勉強する取っ掛かりになれば, と思いとりあえずシコシコ記録していく.

黒木さんツイートまとめ: 割合概念の理解と質, そして教授法: 吉田甫『学力低下をどう克服するか―子どもの目線から考える』

長くて面倒になってきたのでここで切る. 上のツイートからTwitterに飛んでリプライツリーを追えば読めるので, ご興味のある方は読みに行ってほしい.

あと本を改めて張っておこう. そのうち買って読みたい.

掛け算順序固定メモ: 1993 年のある数学者のコメントと黒木元さんの指摘

「批判が検討違いというかその人に言ってどうするの」感がある. そして黒木さんがアタックする.

その前に.

???????????????????????????????????

何はともあれ黒木さんのツイート.

先日もそれで混乱して算数が大の苦手になったというあまりにもむごい話があった.

掛け算順序固定, こういう子をどう救うのかの対策を示してほしい.

大学新入生向け解析学はどのように進めるべきか: 黒木玄さんツイートから

私もこういろいろと遊んでみよう. とりあえずは中高数学駆け込み寺からだ.

黒木さん発言録: 掛け算にみる数学探求

本文

黒木さんが今回もいいことを言っている.

参考にしたい.

ラベル

数学, 算数, 数学教育

線型代数は体上の加群を越えた何かである: 黒木さんツイートまとめ

はじめに

次のツイートに対する Paul のコメントに引き続き黒木さんコメント.

黒木さんツイート

佐武一郎『線型代数学』

次のツイートを見ると佐武一郎『線型代数学』を読んでみたくなる.

線型代数の攻撃力は高い.

黒木さんによる某 S 先生の追憶と量子化された $\tau$ 関数とかけ算と

はじめに

黒木さんによる某 S 先生の追憶の記録.

引用

学部 3 年~4 年のときに某 S 先生が二年続けて集中講義に来たのだが, $1,2,...,n$ ではなく常に $0,1,...,n-1$ とする主義を徹底していることにびっくりした. ぼくは $1,2,...,n$ がいいと思う. ぼくはいまだに $\tau$ 函数 (ただし量子化 (←超重要) されたやつ) を研究している.

無限自由度可積分系 (ソリトン系) の $\tau$ 函数の量子化は場の量子化なのでを現時点では大変過ぎに感じる. しかし, ソリトン系の有限自由度への簡約のいちパターンであるパンルヴェ系の $\tau$ 函数であればとても綺麗に量子化できる場合がある. (俺しかやっていないのでできていない場合も多い. 謎だらけ!)

現時点で量子化できているパンルヴェ系の $\tau$ 函数は対称化可能 GCM に付随する野海・山田 arXiv:math/0012028 の $\tau$ 変数への Weyl 群作用の量子化. $\tau$ 変数への Weyl 群作用の結果の正則性 (従属変数 $f_i$ について多項式になること) の量子化も証明できている.

パンルヴェ系のパラメーターはコルート $\alpha_i^{\vee}$ に, $\tau$ 変数 $\tau_i$ は基本ウェイトの指数函数 $\exp (\Lambda_i)$ に, 従属変数はシュバレー生成元 $f_i$ に対応している. 量子化するためには全部適切に非可換にしなければいけない. シュバレー生成元の非可換性はセール関係式. 続く

続き. 問題は基本ウェイトの指数函数 $\exp (\Lambda_i)$ に対応する $\tau$ 変数 $\tau_i$ にどのような非可換性を入れるのが正しいのか. これがなかなかわからなかった. わからなかった理由はパラメーター $\alpha_i{\vee}$ たちがすべてと可換 (中心元) だという先入観である. 続く

続き. 基本ウェイトはコルートの双対基底である: $\Lambda_i, \alpha_j^{\vee} = \delta_{ij}$. 普通の量子力学ではこういう場合は $\Lambda_i$ は $\alpha_i^{\vee}$ の共役運動量だということになる. 素直に考えれば $\Lambda_i$ の量子化は $\partial / \partial \alpha_{i}^{\vee}$ である. これで正解. 続く

中略

続き. ある種の $q$ 差分版の Weyl 群双有理作用の量子化は長谷川さんの http://arxiv.org/abs/math/0703036 で構成されている ($q$ 差分化と量子化を厳密に区別していることに注意). ぼくの量子展開環版の Weyl 群双有理作用は長谷川さんの作用をそのままでは再現しない. しかし, 続く

中略

続き. なんとなく, ツイッターでするべきではない話をがんがん大量に書いてしまっているような気がしないでもない. ぼくのツイートを掛算順序関係の話題しか読んでいない人は, ぼくが掛算が交換不可能な場合の専門家であることは知っておいた方がいいかも. 分数の計算が死ぬほど大変. 続く

中略

続き. 以上のような話を来週の 2/15 (土) にする予定です. 詳しい情報はリンク先にあります. https://sites.google.com/site/seminaratkomaba/ …

かけ算

途中の記述に号泣した.

続き. なんとなく, ツイッターでするべきではない話をがんがん大量に書いてしまっているような気がしないでもない. ぼくのツイートを掛算順序関係の話題しか読んでいない人は, ぼくが掛算が交換不可能な場合の専門家であることは知っておいた方がいいかも. 分数の計算が死ぬほど大変. 続く

ラベル

数学, 数学者, 可積分系

作用素環周辺の数学・物理・数理物理の話:表現論とか何とか

本文

久々に物理に近いところの話をしたので.

$p$ 進大好き bot と.

純粋状態って言うと, 「物理の純粋状態」と「物理の純粋状態 2 つの pairing で表される作用素環の純粋状態」のどっちのことか分からんな. 両者は違うものだよね?

@non_archimedean よくわかっていないのですが後者, 必ず作用素環的な純粋状態になるのでしょうか. 「物理の純粋状態」の定義も気になるところですが

@phasetr 物理の方は物理量を表現する作用素が作用しているヒルベルト空間の正規ケットベクトルのつもりでした. それのコピーの (と書き忘れました) 2 つのブラケットで表される作用素環の純粋状態とどう対応するのか, という話ですが, 冷静に考えて GNS 構成がありましたね.

@phasetr 暗に「物理のヒルベルト空間は可分である」ことを課して書きました. 非可分なときも純粋状態が正規ケットベクトルだと思っていいのかよく知りません.

@non_archimedean 適切な回答になっているかよくわからないのですが考えをブログにまとめておきました http://phasetr.blogspot.jp/2014/05/p-bot.html

@phasetr どうもありがとうございます! また言葉足らずだったのですが, 僕が作用素環論と比較したのは, 物理量が有界な領域でしか値を持たない状況のみを考えていたからでした. つまりここで対応する作用素環は物理量が表現する有界作用素が生成する最小の C*環の意味でした.

@phasetr 量子論的には非有界な物理量のほうが自然だと思われますが, 非有界物理量を集めても作用素環にはならないため作用素環的な純粋状態が定義できるかよく分からなかったです.

@non_archimedean 代数的場の量子論の物理サイドの定式化からすると, 実際には有界な範囲でしか観測できないのでその現実を取り入れた理論, と言う言い方をします. 数学的実対応としては $e^{itA}$ とかレゾルベントを考えることで非有界 (自己共役) 作用素を有界にします

@non_archimedean レゾルベントの方は数年前に Bucholz が少しやり始めましたがやっている人はほぼいません. 指数に載せる方を Weyl 代数といって, いわば代数解析にもある Weyl 代数の無限変数版です. 表現論的に微妙な問題があって同じとは言いづらいですが

@non_archimedean あまり多くはないですが, 定義域などを適当に制御した非有界作用素がなす環それ自体を研究している人もいます http://kaken.nii.ac.jp/d/r/00161795.ja.html

@phasetr 定義域を制限する定式化もあるのですね! レゾルベントで非有界作用素を見るのは古典的なボレル関数解析がそうなので結構歴史が深そうですね. Weyl 代数というのは初めて聞きました.

@non_archimedean 定義域の制限は, 量子力学で言うなら $C_c^{\infty}$ が大体の作用素の共通の定義域に取れることをイメージしつつ, 場の理論でもある程度そういう風にできる話はあるからそれを使ってやってみようという感じです

@phasetr 「大体の」というところがどことなく深いですね. 物理量はおおよそ可微分緩増加関数や微分作用素の組み合わせになるといった感じの経験則がありそうですね. (フラクタルのように各点微分不可能な関数に対応するような物理量があっても面白そうですが)

@non_archimedean クーロンポテンシャル $1/r$ とかレナード=ジョーンズ・ポテンシャル $r^{-12}-r^{-6}$, 2 体系のクーロン相互作用 $1/|r_1 - r_2|$ などがあるので微分可能性が必ずしも期待できず適当な特異性を持つことはよくあります

@phasetr あ, それくらいの特異性についてはあまり気にしていませんでした. 実は最近, スピン構造付きリーマン多様体 (≒重力場 + スピン場) を量子化して $Z_p$ が得られる的な論文を読んでいて, そこでは可微分関数に類するものがないので物理量が激しくガタガタ動く感じだったので.

@non_archimedean 私の分野だと非有界作用素のさらに無限和 (粒子が無限個あるのでクーロンだとしてもその無限和が出てくる) とかそういう部分の制御で手一杯で, そこまで突っ込んだことができていません. あまり面白い方向の話に乗れず申し訳ないのですが

@phasetr さらに無限和ですか・・かなりハードな解析ですね. それでもとても参考になりました. ありがとうございます.

あなちゃんと.

そういえば Entanglement Entropy って $C^*$ 環の言葉で定義されてるの

@anairetta 調べといて教えてね

@ad_s_c 数学的にも面白そうな気がしますよね. とうことでよろしくお願いします.

@anairetta @ad_s_c http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1859-05.pdf 量子スピン系くらいなら一応あるにはあるらしいですが, 物理で期待されるレベルの理論が展開できているかはかなり怪しいのではないでしょうか. いつもの話ですが

あなちゃんその 2.

え, 難しいんですか. . .

@anairetta かなり雑ですが少し書いておきました http://phasetr.blogspot.jp/2014/05/p-bot.html 難しいと言うより物理の定義をきちんとうまく吸い上げられる純粋状態の数学的な定義がよくわからないと言う感じなのではないかと

@anairetta 最近, 田崎さんも論文を書いていたりしますが, 量子統計で純粋な平衡状態とかあるのでそういうのもきちんと勉強しないとアレっぽいと思いつつ全く出来ていないのでうまく説明出来ないのですが

@phasetr 量子統計の方では, 考える環を「マクロ物理量のなす環」に制限すると熱平衡状態が純粋状態として表せる, という話があると聞き及んでいますが, その時の純粋状態というのはヒルベルト空間の元に対応するもののことをいっているはずで, (つづく)

@phasetr このときは 環が小さすぎるせいで熱平衡状態と区別できない純粋状態を構成できてしまう, ということですね.

@phasetr 数学的にどうなっているのかよくわかりませんが, たぶん環 $A$ の $B (H)$ への表現をとってきたときに, 等価なものの間で $A$ の純粋状態が $H$ のベクトル一つでかけたりかけなかったりする, ということだと思います. たしかに一般の $A$ にここらへん状況を調べるのは難しいでしょう.

@phasetr 僕が気にしていたのはたぶん環が $B (H)$ そのものである場合なんだと思います. その場合には by def な気がするのであのような発言をしてしまいました.

@anairetta ありがとうございます. 量子力学の場合だと環が $B (H)$ 全体と思ってやってもある程度どうにかなる部分はあるらしいのですが, 場の理論だとそれがまずいとか言う話で, いまだに (私が) あまりきちんとわかっていないと言う状態です

@anairetta 私はあまり一般の環には興味なくて, 具体例に対する環というか表現と言うかもっと強く作用素論に興味があるのですが, まず最低限必要な基底状態・平衡状態きちんとありますかレベルの研究なので, そんな詳しい所まで研究進んでいないと言うイメージです

@phasetr 場の量子論だと赤外紫外の正則化がいるので, 簡単にいかないことは想像がつきます. エンタングルメントエントロピーのほう, 資料ありがとうございます. こちらは場の量子論の場合は物理レベルでも満足の行く定義がない状態なので数学としてはどうしようもないだろうと.

いろいろ思うところはあるが結局これなのだ.

数論方面と言うか他の分野の数学, 格好いい話がいろいろ出てくるようで羨ましい. それでも一番知りたい, やりたいのはあくまでも今やっている死ぬほど地味なことだが. 一度気になってしまったらもう駄目なのだ. そういうものらしいのだ

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 作用素環, 作用素論, 数論, 量子統計, 場の量子論, 量子力学

表現論 (文学ではない) と解析学: 入門的なアレ

はじめに

解析系の学生が表現論をちょっとやってみたいとかいうので, いくつかアタックしやすそうなラインを勧めておいた. この辺だ.

ツイート引用

@yukimi_go まずはストーンの定理とか半群理論とかやるといいのでは

@yukimi_go フーリエ解析も表現論なのでその辺からやって行く手もある説

@yukimi_go 色々ありますが, PDF だと http://web.sfc.keio.ac.jp/~kawazoe/SK%20awazoe.pdf とか http://krishna.th.phy.saitama-u.ac.jp/joe/sotsu/Yoshnaga2009.pdf. はじめから調和解析と言えばよかった説. あとこれも参考に http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c147f6ab740cf0c0968882d347f3bb0

コメント

表現論は私自身もよく知らないのだが, 専門は $C^*$ 環論の表現論と強弁することがある. また対称群周りの表現論はボソン, フェルミオンとの関係で使うし, $\mathbb{R}$ のユニタリ表現は時間発展との関係で出てくる. Lorenz 群や Poincare 群も相対論的場の量子論で使う. Haar 測度などもまともに勉強したことないが, 勝手に使っている. どこかで勉強したいとはずっと思っているのだが.

参考文献

文献へのコメント

小林, 大島先生のは東大数理でも使うレベルの本格的な本だ. 第一分厚い.

色々書いてあるので眺めていて面白いのは間違いない. 杉浦, 山ノ内本は数学というより物理向けの本だろう. 数学的にきちんとした本だが, 山ノ内先生が物理の人で, 表現論周りのことをしていて物理の人でも読める本を, ということで書かれた本だった気がする. 読んだことはないのだが, 読んでみたいということで入れておいた. あとは新井先生の本で, 量子力学, 場の理論周りの話が書いてあるので入れておいた.

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数学, 物理, 数理物理, 表現論, 解析学, 量子力学, 場の量子論, 量子統計

(楕円型) 非線型偏微分方程式という言葉が通じずに衝撃を覚えた記録

はじめに

ここで次のようなしょうもないことを呟いたら RT 経由で個人的に衝撃的なリアクションを頂いた.

図解雑学 楕円型非線型偏微分方程式

リアクション

リアクションというのは これだ.

非線形楕円型偏微分方程式とは

語順が変えられている上に線型の字も変わっているが, とりあえず次のやり取りをした.

やりとり

@_handyfox 楕円型の偏微分方程式と非線型偏微分方程式を両方調べて頂ければ良いのですが, とりあえずこんなサイトとか

@phasetr ありがとうございます. 何だかとっても特殊なものかと思ってました 組み合わせなのですね, こんなサイトがあるのも, 知りませんでした

@_handyfox 楕円型はともかく, 非線型の「線型」は線型代数の線型なので, 特に難しいことないと思ったのですがそれはともかく, 流体のナビエストークスだとか応用上大事な方程式がたくさんあります. 学部くらいで出る方程式は, 非線型だと扱うのが大変なので線型化した物を扱うのが主です

@phasetr はい, 私ら電気系学科の出身だと, 電磁気学で習うような代物だと思います. 非線形は記憶にないだけかもしれませんが, やらなかったような気がいたします. 「楕円形」がよくわかりませんでしたが, 式でわかりました w

@_handyfox 一応書いておくと, 楕円型 (楕円形だと意味が変わってしまいます. form ではなく type の意味なので) というのはラプラシアンみたいなものです

@phasetr メモメモ 気を付けます. ラプラシアンですか, 感覚的になんとなくつかめます.

コメント

正直, ありとあらゆる意味で分かってもらえていないと思っているのだが, それはともかく, 電気系の方に楕円型はともかく「非線型」が通じないというのは衝撃的だった. 楕円型も勝手に字を変えられていること, それはそれで衝撃なのだが.

非線型光学というのがあり, レーザー, 結晶や光ファイバーなども関係があるし, 非線型素子という言葉もあるくらいなので電気の人なら馴染みがあると勝手に思っていたのだが, そうでもないようだ.

別にリプライ先の方が不勉強だとか愚かだとか言いたいのではなく, 他学科における (非線型の裏にある) 線型性に関する認識, 想像以上に低いのでは, という危惧を抱いたからだ. 例えば機械工学周りの人なら流体などで非線型の方程式をがんがんぶん回すので, 同じ感じで線型・非線型という言葉はある範囲の工学系の人にはかなり自由に使ってよさそうと思っていたが, 結構まずそうだ. ある範囲には電気系も入っていると思っていたので想定外である. 電気系と言っても広いと言ってしまえばそれまで, とも言える.

だからどう, というのもあまりないのだが, 何かどこかでやるときの参考になるかもしれないと思い, メモを残しておきたい.

ラベル

数学, 物理, 工学, 線型代数, 解析学

原始, 数学は人文学であった

はじめに

我らが伊藤ベクさんが次のようなツイートをしていた.

数学系の人らの反応待ちみたいな所はありますね http://mojix.org/2013/03/02/suugaku-jinbun

一言でいうと「どうでもいい」というのに尽きるのだが, やはり折角なので何か書いておきたい.

コメントその 1

学問はしばしば, 「自然科学 (natural science) 」, 「社会科学 (social science) 」, 「人文科学 (humanities) 」の 3 つに分けられる. この 3 つのなかで, 数学はどこに属するだろうか.

はじめに書いた通り, どうでもいい. 強いていうなら人文学と思ってはいるが, 引用している文章の著者とはまるで違う理由でそう思っている.

コメントその 2

「もちろん自然科学でしょ」と答える人が, おそらく多いだろう. しかし, これは間違いである. 数学は, 自然科学には欠かせないものだが, 数学自体は自然科学ではない. 自然科学は, 人間が作ったものではない「自然」というものについて, その性質や規則性をさぐるものである.

数学は自然科学に欠かせないというの, どういう意味なのだろうか.

詳しくないので実にアレだが, 特に古い時代の博物学には数学を 必要としない結果もあるような気がするが, そういうのはどう思っているのだろう.

自然科学という言葉自体が粗すぎるのと「数学は, 自然科学には欠かせないものだが, 数学自体は自然科学ではない.」という言葉が 陳腐過ぎるのとで大分アレな印象を受ける.

次の文で「その性質や規則性をさぐる」とあり, 規則性という部分では数学が役に立ちそうな気がしないでもないが, 性質の部分では数学いらないことたくさんあるのでは感があり, そこにも世界の悲しみを感じる.

人によっては, 数学の人でも 「数学は自然科学」という人がいることは付け足しておこう.

あと第 4 文, 何となく 科学哲学の人達 (の一部) が怒りそうな気がするがいいのだろうか.

そもそも自然科学自体が自然哲学の出来損ないという観点から 人文学と強弁したいのだがそれは駄目なのだろうか. 気になって仕方がない.

コメントその 3

いっぽう, 数学はすべて人間が作ったものであり, 一種の言語体系である. 数学は自然に属してはいないのだ. よって, 数学は自然科学ではない.

これは人によっては猛反発しそうな印象を受けた. この文章内では【自然科学は, 人間が作ったものではない「自然」というものについて, その性質や規則性をさぐるものである.】としか規定していない.

自然という言葉の使い方の問題になるが, 自然科学の対象としての自然より 数学の対象としての自然の方が自然に感じる人にとって, 「数学は自然に属していない」というのをどう取るだろうか.

「【よって】じゃねえ」感ある.

「一種の言語体系」というのはどういう意味で使っているのだろう. 私は数学に対して気持を表現するもの, という一面を感じているのでその意味では一種の言語という感覚はあるが, この感覚が共有できている気がしない.

他人の話しかしていないので 私の感想をいうなら「うるせえ」の一言に尽きる.

私にとって数学は『マリア様がみてる』の蓉子様のプティスール見解的な意味で心の支えなのであって, 自然かどうかなど知ったことではない.

あと私にとって, 研究する上での「数学」は むしろ「数理物理学」であって自然科学の色彩が極めて強い一方, 上記「心の支え」としての「数学」は, 何というか「数学」で数学の世界, 数学的自然の中を旅しているような感覚がある. この辺, 自分でもよく分からないので正に「よく分からない数学」という感じ.

さらによく分からないのだが, 『数学は自然に属してはいないのだ. よって, 数学は自然科学ではない.』の 2 文で, 前者では「数学」という言葉が研究対象を指す言葉として使われていて, 後者では『その性質や規則性をさぐるもの』という学問の内容として使われている. その辺の二義性みたいなのはどうなっているのだろう. せめてそのくらいははっきりさせてほしい.

コメントその 4

数学が自然科学ではなく, また社会科学でもないとすれば, あとは人文科学しかない.

人文学ですらなく数学は数学と言うのは駄目なのか. 無理に既存の分類に入れる必要ないと思うのだが. 「自然」の定義がよく分からないので, 定義次第で私は数学を自然科学に入れていいとも思う. もっと言うなら自然科学は人文学に入れるよう強弁したいところだが.

コメントその 5

じっさい, 数学は一種の言語体系なのだから, 哲学や言語学といっしょに人文科学に含めても, それほどおかしくはない. 数学と同じく, 論理学やコンピュータ科学なども, 自然科学ではない. よって, これらも人文科学に入れるしかない. しかし, こういうものを人文科学に入れるのはちょっと違う気がする, ということで, 「形式科学」という分類があるようだ. 私はこの分類があまり好きではないが (関連:「「形式科学」なる概念があるそうだが, 数学は科学なのか? 」), 人文科学のうち, 論理的整合性を重視するものをそう呼ぶのであれば, わりと納得できる.

とりあえず, 数学が一種の言語体系という合意はどこで取ったのか. 論理学, もともと哲学の一分科だと思っていたので, 自然科学と言われた方が衝撃的だし, 人文学に入れるのは違う気がすると言われる方がもっと衝撃的だ. あと, 上記引用中の最終文を読んだときに世界の嘆きが聞こえたことをお伝えしておきたい.

疲れたので, いつも通り適当なところで切り上げよう. ぱっと読んでざっと書いたのでそこまで含めて 実に適当である, という予防線を張っていく社会人の態度で臨んでいきたい.

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数学, 数理物理

$\varepsilon$-$\delta$ と無限と極限と

本文

ちょまどさんにリプライしたのをひさこさんがふぁぼっていて爆笑したのでそのツイートを記録しておこう. このツイートこのツイートだ.

とりあえず, $\varepsilon$- $\delta$ 論法は「高校までの lim より詳しく極限を表す方法」という理解で先に進むことにした 詳細

市民 (相転移 P) ‏@phasetr @chomado $\varepsilon$- $\delta$ ($\varepsilon$-$N$), 基本的には出力から入力を絞り込むという発想です. 試験で 100 点取りたければたくさん勉強しなければいけない ($N$ 大きい) が, 40 点でよければ少しでいい ($N$ 小さい) とかそういう感じ. 普通の人には地雷らしいので気にすること無いと思いますが

そしたら無限にそうめんを食べ続けられてしまう

@chomado http://ja.wikipedia.org/wiki/ゼノンのパラドックス 古代からゼノンのパラドクスとして有名な話がありますが, 時間的な無限と長さとしての無限を混同していないでしょうか

そうめんの話の発端はこれだ.

$1 + 1/2 + 1/4 + 1/8 + 1/16 + \dots = 2$ (に収束) ってやつを見て, それは 2 メートルの素麺を半分ずつ分けて食べていったら (最初 1m, 次は 0.5m, その次は 0.25m) うまく説明できる, って話を思い出しました. でもなんかしっくりこないなあ

深谷先生の『数学者の視点』にもこの辺の無限に関する話が少し書いてある.

「ここで言いたいのは昔の人が愚かだったという話ではなく, 無限というのはそれだけ難しいということだ」という感じのことが書いてある. 前にもこの本の感想を書いた {target=_blank}が, 興味がある向きは読んでみてほしい. というより, むしろこの本を買って読んでほしい.

念の為に書いておくが, この本を読んでも無限のことが分かるようになるわけではない.

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数学, 無限, 極限

Alan Sokal による Baire のカテゴリ定理抜きの Banach-Steinhaus の定理の証明

本文

このような呟きを見つけた.

Baire のカテゴリ定理を使わずに一様有界性原理を証明してる人がいた (http://arxiv.org/abs/1005.1585). やばそう

誰かと思ったら Alan Sokal だった. これは ソーカル事件, 『「知」の欺瞞』の Socal だ.

証明について

5 ページしかないので興味がある向きは直接確認してほしいが, 対偶を示す形で証明している. ちなみに歴史的経緯を含め, 証明まで 1 ページしか使っておらず, 証明本体は半ページしかない. Hahn と Banach によるオリジナル論文ではこの線で証明しているらしいが, もたついている部分があるとのこと. また標準的な Baire のカテゴリー定理を使う証明では仮定自体をもう少し緩められることを注意している.

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数学, 関数解析

茂木健一郎御大の衝撃的なほど下らない見解を見た

はじめに

本当にしょうもない見解があった.

ツイート

らぞ (6) ネットがあれば, 大学は要らないか. よっぴーとの間で, あっという間に「いらない」と結論が出ちゃった. OCW を見て, ネット上で議論し, google scholar で論文を読み, 動画で上がっている lecture を見れば, へぼ大学の授業よりもよほど密度の高い学びができる.

コメント

数学なら一応 arXiv があるとはいえ, 現実問題としてアクセスできない論文はたくさんある. それはそれとして, こういう意見がついていた.

@kenichiromogi (1) 知識はウェッブ上で充分得ることができると実感します. ですが, 学問・研究のトップアスリートの本気レクチャーを生で受け取る「質感」と 自分が揺り動かされる「衝撃」はウェッブで得られるのでしょうか? レクチャーの内容自体はウェッブ上でむろん視聴できる.

@kenichiromogi (2) 先日 6/13, 望月新ー教授 (ABC 予想を解決したと言う論文をウェッブ上に発表した数学者) の講演を生で聞き, 内容はほとんど理解できない (私は実験物理系の企業技術屋) にも関わらず, 「強烈な質感」を感じて, 私も自分の勉強をさらに深めようと決意.

@kenichiromogi (3) 望月先生の講演は, 訥々淡々としながらも「磁力」がありました. この体験の場となった東大 (駒場) と, 京大 (望月先生の所属) に感謝しています. 話し手の持つ「強い磁力」は, 現状の技術では, ウェッブより「生の出会い」がはるかに影響力を持つと実感.

正にこれで, 現状の技術では場の空気が共有できない. 何でもいいが, スポーツ観戦や音楽のライブがいいのだろうか. 確かにこれらは家でも見られるが, 会場で一体となる臨場感は違う. あと, 気持の上で「わざわざお金を払って見に行った」というのものめりこむのに大きく効くのだろう.

こういうしょうもない Web 万能論, 本当に下らない. 少なくとも現状の Web, 満足できるレベルの講演録とかあまり置いていない印象ある. 私が学生の頃, たまたま就職の面接がある日に Fields 賞を取った Yau が講演に来ることが分かり, 分野は全然関係ないが生で Yau を見てみたかったから, という理由で交渉して面接日ずらしてもらったことがある. この間, 理研で理論物理学者の展示をやったという話があったが, それと同じで現状, 生というのは気持の上でまるで違う.

茂木御大は「自分はそう思わない」というのならそれはそれでいいが, こういう部分に気が配れないというのでは web 上の学習に未来はない. 最近企業でも e ラーニングというのが浸透してきているが, ここでも 1 人で黙々と画面に向かった学習をするということで, モチベーション維持がかなり問題になっていると聞いている.

強烈なモチベーションが勝手に湧いてくるタイプの人間ならいいが, 一般ではそうもいかない. 数学は心でやるものだと何度だって言い返せる.

大学のいいところは個人で頑張らなくても, 専門家が本や人, 環境が揃えてくれるのがいい所. 金と時間をかけてでも整備する価値がある.

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数学, 数学教育

Hahn-Banach を使った Markov-Kakutani の不動点定理の簡単な証明

本文

チャーハニスト鈴木と次のようなやりとりをしたのでその記録をしておきたい.

あそうだ, セミナーのノート整理してて思い出した. 【ゆるぼ】 Markov-Kakutani の不動点定理の主張が書いてある pdf (和洋文問わず)

@mszk_p きちんと読んでおらずさっと見つけただけですが http://page.mi.fu-berlin.de/werner99/preprints/markkaku.pdf などはどうでしょうか. ちなみに filetype:pdf として検索すると pdf だけ引っかかるようになります

@phasetr そのオプション知りませんでした. どうもありがとうございます.

PDF は Dirk Werner による『A proof of the Markov-Kakutani fixed point theorem via the Hahn-Banach theorem』というタイトルの文章だ. 2 ページしかなく難しくもないので興味がある向きは読んでみてほしい. 定理も引用しておこう.

引用

Theorem

Let $K$ be a compact convex set in a locally convex Hausdorff space $E$. Then every commuting family $(T_i)_{i \in I}$ of continuous affine endomorphisms on $K$ has a common fixed point.

次の補題を挟んで証明する. この補題を Hahn-Banach を使って鮮やかに示すというのがポイントだ.

Lemma

Let $K$ be a compact convex set in a locally convex Hausdorff space $E$, and let $T \colon K \to K$ be a continuous affine transformation. Then $T$ has a fixed point.

不動点定理, 楽しい.

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数学, 解析学, 不動点定理

色々な解析学

はじめに

先日, 数学専攻で解析系に進もうとしている学部 3 年生に会ったのだが, そのときに少し話したことをまとめておこう. 何か色々あって指数定理に関する話として擬微分作用素の本を読んでいるとのことだった. 勉強ということに制限していうなら, full general なところからではなくもっと簡単な多様体上の楕円型作用素, とくにラプラシアンからやればいいのでは, というところから始まったのだが, 専門との関係で何をしようかという話にもなったのでその辺について知っている限りのことを話してきた. 適当な連想ゲーム感覚で適当に話した. もっとこんなのもある, という話もあるだろうが, とりあえず私が知っている範囲ということで.

擬微分作用素

まず擬微分作用素自体だが, 関数解析的な方からのアプローチもあるが代数解析的なアプローチもある. 指数定理の話が出たが, このラインで Atiyah が K-theory の方で von Neumann 環レベルで議論していることもあり, その辺から作用素環と作用素環的 K 理論も紹介した. ごく最近だとどうなのかは知らないが, Blackadar の有名な本がある.

作用素環・作用素論

そうなるとそもそも作用素環自体が解析学として浮上してくる. 非可換幾何や葉層構造, 結び目など幾何への応用は他にもある. 量子統計や場の量子論など物理との関係もあるし, むしろ私がこの辺にいる.

物理との関係ということでは色々あるが, まずは作用素論を出した. 量子力学方面でスペクトル解析などがある. 他にも有界線型作用素に関して正規作用素周辺の話でまだまだ研究がされている.

作用素不等式

作用素不等式という話題もある. これは行列レベルでも難しい話がある. 物理関係の話もあるが, 数学的にも大事なところがある. 実は竹崎先生にも言われたことがあるのだが, 作用素環で難しい部分というのは無限次元性と非可換性に関する部分があり, 非可換性に関することは有限次元で既に難しい. $2 \times 2$ 行列くらいだと特殊すぎるが, $3 \times 3$ 行列で起きる現象はかなり大事だというご指摘を頂いたことがあることをここでお伝えしておきたい. また東北大にいる日合先生は確か作用素環にもこうした作用素論, 特に有限次元行列の話題は重要だと強調されていた記憶がある. 最近行列解析の本も出た. まだ読んでいないが, 売り切れになる前に購入しておいた.

有限次元の行列という素朴な対象であってもまだまだ研究することはたくさんある. 遊びやすかろうと思うので, ちょっと調べてみたい.

偏微分方程式

量子力学ということならそもそも Schrodinger 方程式という偏微分方程式の話題がある. Schrodinger の偏微分方程式と作用素論で同じ対象を扱う部分があるが, 大分気分が違う印象がある. 偏微分方程式の人達はやはり解に興味がある印象がある. 物理方面の作用素論の人は解よりもスペクトル (その他作用素そのものが持つ情報) に興味がある印象. 自分の趣味に合わせてやればいいのだが, 同じ対象でも切り口が違うことは一応伝えておいた.

超局所解析

詳しくないのだが, 偏微分方程式, 作用素論ともに超局所解析を使ったりすることもあるようだ. (おそらく) 作用素論の色彩が強い方では [[http://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/jusho7-2.html ][田村先生がそんなことをしている]] らしい. 超局所解析というと代数解析の話題もある.

偏微分方程式

あともちろん ($\mathbb{R}^n$ 上の) 偏微分方程式論もある. 楕円型なり放物型なり双曲型なり色々ある. 関係ないが, 高校の頃勉強していたシグマベストという参考書で勉強していたが, その編集の藤田宏先生がいるが, 物理学科卒と書いてあったので, 当時, なぜ物理の人が数学の本を書いているのだろうと思っていたが, 学部 4 年だか院くらいで数学者として高名で, 私の専門の方で超がつく程有名な加藤敏夫先生の学生だったことを知り, 色々な感慨を覚えた. 微分方程式は専門外なので不確かだが, 放物型の方程式で Fujita's critical exponent という大事な話があるとか聞いている.

複素領域の常微分方程式

複素領域の常微分方程式もまだまだ研究がある. 例えば東大の大島先生はやっていたような覚えがある. 確定型特異点やらモノドロミーやらでまだまだ汲めども尽きぬ話題がある模様.

多様体上の解析学

多様体上の解析学, 微分方程式論も大事だ. Donaldson の仕事など, トポロジーと関わる部分もある. 実解析, 不等式の研究, 確率論, 確率微分方程式など他にもまだまだある.

他にも話したことがある気がするが, 忘れたので今回はこのくらいにしておく.

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数学, 解析学

読んでいて楽しい数学の本

本文

(数学科の学生が) 読んでいて楽しい本というのが紹介されているページがあった. 名前だけ知っているが読んだことない本やそもそも全く知らない本など色々あった. 和訳がある本もいくつかあるし, PDF の参照がある本もある. 興味がある向きもあろうから, とりあえず共有しておこう. 本だけ抜き出しておこう.

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数学

Twitter まとめ: 病的な数学と美しく健全な数学と

はじめに

あとでご自身でまとめるようだが, ゼルプスト殿下が次のような呟きをしていた. この辺から始まる.

ツイート引用

昨日盛り上っていた「パソい位相空間」の話だけど, 公的見解としては「本当はパソろじい位相空間」という言葉を提案する. いっぽう,

私的には, 俺は「病的」という表現が好きになれないし, 例としての異常さを主眼とした研究プロジェクトには乗る気はない. いわゆる「メンヘラ」流行りも好きではない. 「心身の不健康」を売りにするのは, 「心身の健康」を売りにするのと同じくらいくだらない.

その一方で俺はカントール集合をはじめとするフラクタル図形が大好きだ. それらは最初はたしかに病的な異常な例として提案されたものだが, 俺はそういうものとして愛好しているのではなく, あくまで理論的に有意義でおまけに美しい対象として追求しているつもりだ.

「選択公理のない数学に含まれる意外な結果」や「選択公理から導かれる意外な結果」についても同様.

カントール集合がカントールとスミスによって独立に発見されるまで, いまの言葉でいう「至る所非稠密」と「外容量ゼロ」と「カントール・ベンディクソン階数が有限」という概念を デュボアレイモンやディリクレといった一流の数学者といえども区別できていなかった.

つまり「どんな小さな区間においても稠密ではない」けれども「孤立点がない」ような点の配置は, 1870 年代前半までは, 数学者の「健康な数学的直観」の射程にはなかったし, 論理的可能性としても検討されていなかった.

そして, 不連続点の配置が, これら曖昧に同一視された「点の小さい集まり」に含まれるような有界函数はリーマン積分可能と信じられていた. (以上は T.Hawkins の本「 Lebesgue's Theory of Integrals 」による)

そこへスミスとカントールがカントール集合すなわち「至る所非稠密な完全集合」をもって登場した. そういう背景を考えれば, 当時, カントール集合が「病的な例」とされただろうことは容易に想像がつく.

しかし, スミスはたしか「小数点下に 4 が出てこないように 10 進展開できる実数の全体」を考えたのだから, 後知恵で振り返ると, それに先立つ世代の「健康な数覚による実在する数学的現象の直観的把握」のほうが片手落ちだったと言わざるをえない.

まとめれば, カントールの「単位閉区間上の 1 が出てこないように三進展開できる実数の全体」が病的な例であったのは, それ以前の「健康な数学的直観」にとってのみであり, その後発展をみた測度論や位相空間論や力学系理論においては, カントール集合にはいたるところで出会うことになる.

これ, あとでまとめて「昨日のて日々」に書くだ.

「病的な例」のホームラン王たるバナッハ=タルスキの定理にしても, 測度問題の発展史という背景において見るべきだと思う. たしかに驚くべき例なのだが.

つどいで市民の話を聴けなかったのは残念だが, それにはやむを得ぬ事情があったのだ.

@phasetr そのファインマンの「経路積分」もその当時の数学の文脈ではトンデモあつかいだった. けどそれを言ったらニュートンやライプニッツだってそうだし, むしろそういうものこそ数学の発展をリードするわけですからね.

ニュートン vs バークリとかライプニッツ vs ニイエンティイト (と読むのか?) とか, あるいはカントール vs クローネッカーだってそうだけど, 批判者のほうが論理的に首尾一貫した堂々たる理論を展開できるのは, 新しい理論の創造性のいわば代償のようなものなんだろう.

私のツイート

これに対して私の方からも適当に呟いておいたのをまとめてきたい.

ツイートまとめ

私が好きなのは, 普通に数学をやっているとなかなか出くわさない, またはある種異常な振る舞いをしてくる (物理由来の) 対象, またはある時点での「美しい数学」では捉えることのできない物理由来の変な現象が好き. 病的な例というより適当な意味で特異性のある話が好き. つどいでも少し話したが

@phasetr つどいで少し触れたし, 多分そのうちどこかで詳しく話すが, 殿下の話, 物理関係だと時々出てくる. フォンノイマンはデルタ関数が嫌で関数ではないことの証明を本の中でわざわざ付けたらしいし, III 型フォンノイマン環の物理でも大雑把に言って似た話がある

@phasetr デルタ関数からは超関数論が花開いたし, 日本からはさらに代数解析という最高レベルに貴族的で美しい数学が生まれた. 三型環には冨田竹崎という作用素環の至宝が生まれ, 非可換幾何やそこと数論の関係でも使われる.

@phasetr その辺の「病的」なところを「綺麗」な数学にするみたいなことが私の数学的な部分のモチベーションの大きな部分になっている

@phasetr 三型環だと極端な話がある. 存在自体は分類がされた当初から分かっていたようだが, 具体例が作れなかった. 具体例は相対論的場の理論と量子統計への応用で出てくるほぼ全ての環が三型だ, という形ではじめて構成された. こういう話がすごい好き

@phasetr フォンノイマンの論文に本当に書いてあるが, 作用素環自体が量子力学への応用を念頭に見つけた理論だ. あと作用素環で重要な線型汎関数に状態 (状態空間というのもきちんとある) というのがあるが, この名前の由来も物理だ. 荒木先生だとか有名な人で物理出身の人も多い

コメント

超関数の話については Fourier との関係でこんな動画を作ったことがある. また冨田-竹崎理論についてもこんな動画を作った. そのうち何かのつどいで経路積分の話などもしたい.

追記

knyokoyama さんから次のような補足ツイートを頂いたので載せておく.

ご参考: http://bitly.com/11yeIBJ. 数学会誌に, 河東先生の「荒木不二洋先生のフンボルト研究賞受賞に寄せて」という作用素環の話が書かれてます. 引っ張り出しました.

実際に III 型環の具体例が相対論的場の理論を使ってはじめて作られたという話が書いてある.

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数学, 物理, 数理物理, 作用素環, 関数解析, 汎関数積分

講談社が大栗博司さんの新刊『超弦理論入門』のモニターを募集しているのでここでも宣伝しておく

本文

時間的にかなり厳しくなっているが, 大栗さんがまた本を出すようでそのモニターを募集している.

8 月 20 日にブルーバックスから『超弦理論入門』を出版することになりました. これに先立ち, 講談社では読者モニターを募集しているそうです. 募集締め切りは日本時間で今週の 8 月 2 日正午で, 感想文の締め切りは 8 月 18 日だそうです. https://eq.kds.jp/bookclub/3526/

とりあえず私も応募してきた. 大栗さん, 村山さんが最近頑張っているので, 超弦周りは色々本があるが, 物性周りで何かこういう動きないだろうか. 数学でももっとやってほしい.

例えば秋月康夫の『輓近代数学の展望』などがある.

古い本だが, 一般向け書籍なのに付値論やら調和積分やらで全力で殴りかかってくる. こういう無茶をしてほしい.

無茶してもある程度売れることを示すべく, 私も動画などでどんどん実績作りしていきたい. 早く色々動かないと.

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物理, 数学, 超弦理論, 代数幾何

よく分からない数学「色々な反例で遊ぼう」のプレゼントページ

本文

DVD を作って Amazon に出す, という話をしているが詳しい人に相談したところ, 適当なタイミングでプレゼントをあげるとよいという話を伺った. そのプレゼント用のページとしてこれから随時していく.

プレゼントでやるかはともかく, こんな内容の話をしてほしいとかいうのがあれば色々コメント頂きたい. 何も言われなくても自分が中高生の頃に聞いたら楽しいと思ったであろうことをどんどんやっていく. 目標はかっこかわいい女子数学徒を大量生産することだ.

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数学, 数学教育

「杉浦光夫先生と表現論」という PDF を発見した方の市民

本文

どうしようもない理由で表現論について検索していたら, 杉浦光夫先生と表現論という PDF を見つけた. 無論解析門前払いこと『解析入門』や山内先生との共著の『連続群論入門』で名高いあの杉浦先生だ. 1 ページの写真, 何となく『解析入門』から想像していたのとは違う, 何というか温和な感じでちょっと驚く.

いきなり本題からずれるが, 『解析入門』はとてもよい本だ. 通読するのは確かにしんどいが, 証明がきっちり書かれているので辞書として調べものに使う分には本当に役に立つ. まえがきによると『解析概論』の現代化を目指して書いたとのことだが, 中途半端に Lebesgue を盛り込まずに切って捨てたのはよかったのだと思う. そこまできちんとあればそれはそれで助かるが, over-kill だろう. ただ, 関数論パートはもっと膨らませてもいいのではないか, とは思う.

それはそれとして PDF では業績とか次世代の教育に果たした役割とかそんなことが書かれている. 群の表現論, 極一部とはいえハードユーザではあろうから, 私も恩恵を受けているのだろう. 多少は知っている大島利雄先生が, 表現論上の大きな仕事だけでなく, 後を継いで東大での表現論研究者育成に励んだというお話などは感銘を受けた. 一般的な表現論というかその研究者達はよく知らないが, 小林先生あたり化け物が生まれているのは間違いないので, こう色々なことを思う.

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数学, 表現論, 数学者

あの人に対して恥ずかしくない力を身につけているだろうか: 代数的確率論に関する対話

はじめに

こんなやりとりをしてきた. 全く役に立てた気がしない.

ツイートまとめ

[ガチ募] お客様の中に非可換確率論に詳しい方はいらっしゃいませんか.

@tmaehara 非可換確率論を http://phasetr.blogspot.jp/2013/03/twitter_15.html 位の意味でつかっているなら, 詳しくはないですが関連する数学を多少知ってはいます

@phasetr だいたいこの意味です. 用語に自信が無いですが, 代数的確率空間 (A,φ) が与えられたとき, これに近い行列表現を求めたいと思ってます. 「近い」の意味はちゃんと決めていないですが, 「表現の前後で状態の値があまり変わらない」とかができるとハッピーです.

@tmaehara http://en.wikipedia.org/wiki/Gelfand%E2%80%93Naimark%E2%80%93Segal_construction GNS 構成定理というのがあって, 正確に (無限次の) 行列に落とすことはいつでも出来ます. 状態の値も完全に保てる構成法です

@tmaehara 次元については元のデータに依存します. 有限次元ならきちんと同じ次元の有限次元行列で書けます

@phasetr もともと無限次元のものを有限次元に丸めた場合, どの程度損するか, とかはありますか?

@tmaehara 私自身は数理物理でダイレクトに無限次元を触る方なので全くわかりません. ただ応用上は大事な話ですし量子情報など関連研究でその辺をやっている人はいるとは思っています. 数学的にも有限次元近似の話題はありますが, 情報的な損得という議論はなさそうです

@tmaehara 少しググっただけですが, 量子情報関係で何となくそれっぽい論文はありました http://www.mi.ras.ru/~msh/download/ppi-2-e.pdf この論文でお望みの感じの損得の議論までやっているかは分からないのですが

@tmaehara 必要な所しか読んだ事ないので, 有限次元近似の損得問題がどこまで描いてあるか分からないのですが, http://www.amazon.com/Quantum-Entropy-Theoretical-Mathematical-Physics/dp/3540208062 は量子情報で有名な本です

@phasetr 紹介ありがとうございます, 読んでみます.

@tmaehara たびたびすみません. 数学的な議論をしていそうな人しか知らないのですが, 電通大の小川さん http://www.quest.is.uec.ac.jp/ は一時期 JST の研究員として東大数理で勉強していた人です. あと本の著者の理科大の大矢先生のグループもあります.

@phasetr ありがとうございます. さすがにまとまってない段階でコンタクトをとるのはアレなので, とりあえず名前だけ覚えておきます.

こういうときに役に立てなくてどうするのか. 学部 1 年に対してさえ最大限の敬意を払って接してくれたあの人に恥ずかしくない力を持てているだろうか.

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数学, 物理, 情報理論, 作用素環, 確率論

数学と計算機援用証明

はじめに

古田彩さんのこんな呟きがあり, そこに反応したら鴨さんからのリアクションまで返ってきて戦慄したのでメモしておく.

引用

Kepler 予想

Kepler 予想の本はこれだ.

鴨さんからご紹介頂いた文献も読みたいが, 積読がたまる一方でつらい.

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数学, 計算機援用証明, 数式処理, 精度保証, 有限射影平面, Kepler 予想

三角級数は魔界

本文

ちょっと気になったので.

あるオタクの放った一言から延々と tan (x) を書くはめになっている

@FMbunk すまない $\tan x= \sin x / (1-(1-\cos x))$ だから初項 $\sin x$ で公比 $(1- \cos x)$ の無限等比級数と思えばいい

@Junkyo_Sutaro 状況よくわかりませんが, 全ての x でその形でべき級数展開できるわけでもないので結構つらいのでは. あと関数項の級数なのできちんと考えないと結構取り扱い注意感あります

@phasetr 厳密にやろうというわけではなくとりあえず計算してみようと思っただけなので $|x| < \pi < 2$ までで形式的に展開できればいいかなと. このやり方しか知らないというのもあるので. そこらへんは僕の説明が悪いです, すみません.

@Junkyo_Sutaro 少し話が違うのでアレですが, $\sum {\cos kx}$ は超関数の意味で Dirac の $\delta$ 関数に収束するとか三角級数は結構魔界なので気をつけて下さい. 元の話は今言った意味での三角級数ではないのでアレというところですけれども

@phasetr はい

三角級数, 要は Fourier だがかなりの佐藤超関数まで出てくる (出してこられる) かなりの魔界なので恐ろしい. あと上記の展開, きちんと調べていないのだが一様収束してくれるのだろうか. 各点収束している範囲では確かに問題ないだろうが, ベキ級数と思うのならそういうのが気になる.

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数学, 解析学, Fourier 解析, 超関数論, 代数解析

有限次元線型位相空間の位相の入れ方: $T_2$ なら一意的

やりとり

線型位相空間としての $\mathbb{R}^n$ に入る位相について次のようなやりとりをし, 文献を教わった.

@phasetr @ilovegalois R^n に対しては実位相線形空間としての位相の入れ方は一意的です. 無限次元の時のみ問題になります.

@hymathlogic 証明どこにあるでしょうか. 読んでみたい

@phasetr 帰ったら返信します. (一意というのは正確には間違いで T_0 なら一意です)

@phasetr http://www.math.ksu.edu/~nagy/func-an-2007-2008/top-vs-3.pdf これなんてどうでしょう

コメント

$T_0$ とはいえ分離公理が効いているというの, なかなか戦慄させてくれる. というわけで Gabriel Nagy による Topological Vector Spaces III: Finite Dimensional Spaces を読み進める.

$\mathbb{K}$ を $\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$ とした線型空間での議論をしている. 線型写像を基礎にして位相を議論していく.

In this section we take a closer look at finite dimensional topological vector spaces, and we will learn that they are uninteresting from the topological point of view.

そうだったのか.

Exercise 1. Show that the only other linear (non-Hausdorff) topology on $\mathbb{K}$ is the trivial topology $\mathfrak{T} = \left{ \emptyset, \mathbb{K} \right}$.

何だと.

Theorem 2. For a topological vector space $\mathcal{X}$, the following are equivalent: (i) $\mathcal{X}$ is finite dimensional; (ii) $\mathcal{X}$ is locally compact.

Hilbert 空間ですら弱位相でないと単位球がコンパクトにならないのでその意味では関数解析を学んでいれば「自明」に近い事実だが, 改めて見ると衝撃的だ.

それはそうと, 山元さん, $T_0$ という風に書いているが, この文献では $T_2$ の枠内での議論だ. $T_0$ で言えるのだろうか. あと, 線型位相は必ず $T_2$ とかいう話だったろうか. 今すぐチェックする気力が出ないので, 今度確かめたいが, いつになることやらということで悲しみ.

$T_2$ というと我らが zena_mp さんに怒られそうな気もする.

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数学, 関数解析, 位相空間論

sinc 関数と信号処理と数理物理と工学と何か色々

本文

sinc 関数トーク, 念の為記録しておく.

sinc 関数の不定積分は特殊関数だった

@route16xatu sinc 関数ってなんですか

@vb_yc $\sin (x)/x$

@route16xatu そんな名前ついてたんですかー. はつみみでした

@vb_yc 信号処理とかの人はこの名前で読んでるイメージある

@route16xatu この子に, そんなまともな使い方があることも初耳です w

@vb_yc @route16xatu むしろ工学系だと超有名関数かもしれないと想像するなど.

@aki_room @route16xatu へえ~, どんなとこ読むといいですか? 変な例作るとか, ちょっとトリッキーな構成をする時くらいしか利用したことないです.

@vb_yc @route16xatu 信号処理とか…ウェーブレット変換とか…?

@aki_room @route16xatu ありがとうございます. 探してみます

@vb_yc パルス関数のフーリエ変換だからめっちゃよく出てくる

@the_TQFT 今度教えてください

使ったことはない方の市民だった.

ラベル

数学, 物理, 信号処理, 数理物理

「プログラマのための圏論の基礎」なるページがあったのでとりあえず共有

本文

まろやかな人ことホモト P が「プログラマのための圏論の基礎」なるものを発見していた.

たぶん読めない / "プログラマのための圏論の基礎 (仮題)" http://htn.to/ueTycU

該当記事を見ると次のような説明があった.

この記事は, プログラマに向けた圏論の入門記事です. 通常の圏論の教科書より解説を多く, プログラマにとって必要ない概念を削って書いています. 圏論とは何かから始まり, アルゴリズム設計, プログラム意味論および Haskell の free-operational パッケージと圏論との関連について解説していきます.

前提知識として必須ではありませんが, 何かしらの関数型言語に慣れ親しんでいると読みやすいと思います. 本記事では Haskell に特化した話題を出すこともありますが, 多くは Haskell の知識がなくても大丈夫です.

そもそもプログラマに圏論必要なの, というところからよく分からないが.

プログラミング Coq というのもあった. 一応メモしておきたい.

プログラミング Coq

〜絶対にバグのないプログラムの書き方 〜

はじめまして. 今回, Coq のチュートリアルを執筆させていただくことになった池渕未来 (いけぶちみらい) です. IIJ-II のアルバイトとして, 山本和彦先生のもとで, この連載を書きます.

私はこの春から女子大生になります. Coq のエライ人でもスゴイ人でもありません. そうであるからこそ, 読者の皆さんと同じ視線に立って一緒に楽しく Coq を学んでいけるのではないかな? と思います.

ラベル

数学, プログラミング, 圏論

Twitter まとめ: 高校生との対話 物理に必要な数学的なアレ

はじめに

いつもの通り, 数学がどこで必要なのか分からないとなかなかつらいだろうから, まずは物理をやったら, という話をしてきた. あと, 自分の手持ちでどこまで戦えるか挑戦してみる機会でもある. 人によっては既存の数学で解決できないなら自分で数学を作る必要だってあるから. また, 大学に行くと嫌でも先に数学やらされる羽目になる (こともある) ので, 見られる部分は見ておいたら, というのもある. この辺からはじまる.

ツイート引用

テンソル解析って数学的にはどこに繋がっていくんだろう

@qpnv 多様体上の解析学, 微分方程式とかでは

@phasetr そうなのですか. 物理への応用みたいな本をパラパラ見ていただけなので数学的な繋がりがよく分かっていませんでした.

@qpnv 解析力学や一般相対論方面だと正に多様体上の解析学という感じになるでしょう. その辺あまり詳しくないのですが. 流体とか言う方なら単純に (非線型の) 偏微分方程式かと思いますけれども

@phasetr 一般相対性理論も興味があるのですが, 多様体も学ぶ必要があるのですね. 多様体についても調べてみます.

@qpnv いわゆる曲がった時空というのが擬リーマン多様体という多様体なのですが, 少なくとも入門段階ではその辺の数学的なことはいりません. あまり数学に気を取られずに, 必要になったらその都度やって行く方がいいです. 物理に興味があるならまずは物理からやりましょう

@phasetr 必要になったら学ぶ, というスタンスの方がいいのですね. 分かりました. バリバリ物理をやっていきます.

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数学, 物理, 多様体論, 幾何学, 解析学

大数の法則の気分がいまだによく分からない方の市民だった

本文

確率論がつらい.

大数の法則と中心極限定理のいわゆる「直観的な意味」というのがよく分からなくなってきた方の市民

@phasetr 真面目に言うと, 直感的な意味で「確率」が既に意味不明ではないかと思います

@omelette_philos wikipedia 見ていたら何か説明が循環論法っぽくてどんどん訳が分からなくなってきたと言う状態です. 数学的な言明は別にいいのですが

@phasetr 循環的に感じるというのであれば, 私は事象の独立性のとこで感じますね

@omelette_philos 確率論の基礎につまづいた先人の苦労とそれを克服してきた先人の偉大さを思う方の市民

数学的な言明と証明はとりあえず把握しているが, 確率論そのものにピントが合っていないという感じだろうか. 勉強しよう. あとささくれ先輩が何度か言っているが, 確率論は舟木直久先生の本がとてもよいのでお勧め.

あと最近はちょっと変わった確率論入門ということで, Mark Kac の本を読んでいる.

これは Kac のスパイスが滅茶苦茶に聞いていてとても面白い. Can one hear the shape of a drum? の Mark Kac で, Feynman-Kac の Kac だ. 教育に関しての一流の腕を見せてくれる. 面白いので是非読んでみてほしい.

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数学, 確率論

不等式, 代数的不等式

本文

Twitter でこのような呟きを見つけた.

不等式, 極めるためには Hölder やら Karamata やら Minkowski やら Shapiro やら Young やら, 全部ある程度知っておいた方が良さそうだしそれでも変な問題は解けない感じがあるので死

彼 / 彼女 (以下では「彼」で統一) は高校生 (のはず) なのだがなかなかマニアックなことを知っている. Young, Holder, Minkowski は解析学を学んだ者なら誰でも知っているが, 少なくとも他の 2 つは私は本当につい最近知った. 上記不等式群は例えば次の本に書いてある.

最近「数学で遊ぶ」をコンセプトに, 不等式 (の証明) に関する動画を作ろうと思ったので参考のために買ったのだが, まだ一度ざっと目を通しただけだ.

彼は受験に関して言っているのだと思うが, 受験にはあまり関係ないだろう. 動画を作ろうといったことにも関係するが, 証明の技術的にも大事だし何より面白いので勉強しておいて損はない. 遠い受験の記憶を掘り起こすと, 東工大だかどこかで Minkowski の等号成立条件を調べる問題はあった気がするので, 受験的にも出てくることがないわけでもないはず.

念の為に書いておくと, Holder と Minkowski は $L^p$ (または $\ell^p$) に関する三角不等式を示すのに使う. Young も実解析的な方向で基本的な不等式だ. Karamata や Shapiro は代数的不等式 (あえて言えば有限集合上の $\ell^p$ に関する不等式) では基本的で大事な不等式のようだ. 彼のツイートを見てから上記の本が気になって仕方がない.

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数学, 解析学, 不等式

相変わらず $\mathbb{R}$ と $\mathbb{R} / \mathbb{Q}$ が魔境だったので

本文

よく分からないがゼルプスト殿下が魔境の入口のようなことを言っていたので, とりあえず記録しておく. これこれだ.

連続函数についての演習でたまに出てくる, 無理数にゼロ, 有理数に既約分母の逆数を対応させる函数を $g (x)$ とするなら, $f (x) = x + \sqrt{2} g (x)$ で決まる函数 $f (x)$ は $\mathbb{R}$ から $\mathbb{R} / \mathbb{Q}$ へのベール 1 級の全射の例になる. むろん全単射ではない.

$\mathbb{R}$ から $\mathbb{R} / \mathbb{Q}$ への単射を具体的に構成するのがひと苦労やね. 例えば 10 進展開を 16 進読みしてしかもところどころに (平方数ケタ目とか) に 16 進の $A$ とか $B$ を挿入して非循環少数にするとか. どのみち連続写像でないのできれいな閉じた式では書けない.

連続写像だからといって綺麗に書ける保証もないのでそこはアレだが, 比較的「分かりやすい」ところで地獄っぽく, こういうのはかなり気にいっている. 自分でも色々作れるようになりたい.

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数学

Ask.fm で「作品作成の上でこれだけはゆずれないものってあります? あったとしたらそれを実現させるために何をしていますか? 」という質問が来たので

はじめに

Ask.fm で「作品作成の上でこれだけはゆずれないものってあります? あったとしたらそれを実現させるために何をしていますか? 」という質問が来た. せっかくなので転載しておく.

引用

作品作成の上でこれだけはゆずれないものってあります? あったとしたらそれを実現させるために何をしていますか?

子供の頃の自分がほしかった, 絶対に面白がって見たはずだ, と思える作品を作ります. 実現のために何をするか, ということなら話したいことを話し切るようにしています. 視聴者数, どんなにいいところでも 100 人いれば十二分と思うような, 物理・数学ともに学部卒程度を仮定する内容の動画でも (のべで) 数百人が見ていたりするので, 自分と同じような趣味を持った人, もっといるはずだと思っています. 実際にはこの 10 倍位はいるはずだと思っていて, 大人も子供ももっとたくさんの人に無茶を届けたいので露出を増やすべく色々考えています. アイマスとはほぼ関係ない形で DVD とか出し始めたのも露出を増やすためです.

子供のころの自分が「もっと面白い変なの見せて! 」と隣でずっと言っているので, もっと無茶をやってもっと子供のころの自分が喜ぶようにしたい. 中 2 どころか小 2 の気持ちくらいで. もっと世界が見たい

コメント

博士・ポスドクは知人にも多いが, やはり経済的な自立が非常に大きな問題になっている. その一助としても色々手を打つべく, 数学・物理のマネタイズについても真剣に考えるべきときが来たと思っている.

ビジネスプランを本当に真剣に考えているので, その辺も適宜公開し, そして実践していきたい. 研究と同じで大体上手くいくはずがない. 失敗例を山程積み上げていくので皆さんも是非参考にしてほしい. 屍の山と血の池地獄のほとりで一輪美しい花が咲けばよく, その屍を真っ先に積み上げていく所存.

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数学, 物理, ビジネス

数学が役に立つ状況を真剣に検討したところ深い悲しみに包まれた

はじめに

数学が何の役に立つかとはよく言われるし, この間も記事にした. 社会とか世間の役に立つか, というのがよくある (下らない) 回答だが, 質問者にとって何の役に立つかという疑問であって的外れでは, という話もよくある. そうなると個々人の状況にもよるので一般には何ともいえないので, 個別に論じる必要がある. その辺を適当に書いてみた. この辺からはじまる.

引用

数学が何の役に立つかということについて真面目にいうなら, 状況によるとしか言えない. 例えば適当な恋愛対象にモテたいと思ったとしよう. 基本的には数学がモテるのに役に立つかと言われたら, むしろ悪影響しか与えないと思っていい. この辺は加藤先生などを参照してほしい

@phasetr ただし, 何かの間違いで福山雅治のようなアレな人が何かの間違いで物理学科に進学してしまい何かの間違いで真剣に物理を学んでしまい果ては准教授になってしまうなどの不幸が重なったとしよう. そしてさらなる悲劇としてそのような異常者に恋をしてしまったとしよう

@phasetr ガリレオを見ていないので湯川学御大の嗜好は分からないが, 物理とか数学に興味なさそうな人には何の興味も示さなそうな異常者の趣があるので, こういう場合には数学が役に立つ可能性があるが, 今のケースはむしろ物理をやった方がいい

@phasetr とはいえ, 色々な人がいるので物理学科や数学科の人間といえど全員が全員異常者というわけでもなく, 社会性に溢れる人間もいるし, 物理とかやってそうな人はちょっと, と言いそうなのもいる. したがって状況によるとしか言えない

@phasetr 他にも明日にも死にそうな母を助けたい, とかいう状況で Kasparov の KK theory が何の役に立つ, とか言われてもかなり困るし, 結局悲しみしか呼ばないことが分かる

今日も社会は悲しい.

ラベル

数学

Twitter まとめ: 数学での証明の大枠は示したい命題のもつ形式から決まる

嘉田さんのツイート

山下さんのツイート

嘉田さんのツイートで引用されている山下さんのツイートを引用しておきます.

「わかりやすい」全射・単射の定義とは何か: ある定義とそれへの応答

最初にまとめ

結局そもそも「わかりやすい」の定義が問題になってくる話だと思っている.

発端は次のツイート.

元の記事の引用と批判

いくつか引用する.

普通の全射の定義はわかりやすいのに対し、単射の定義は初心者には不自然に見えます。また、全射と単射は互いに密接な関係があるのですが、定義を眺めているだけではそのように感じれられません。今回提案する方法はこれらを解消する利点があるような気がします。

まず全射の定義が本当にわかりやすいのかという気分がある. 単射が (初心者にとって?) 不自然かどうかもわからない. 少なくともはじめて触れたときに私はそうした違和感は感じなかった.

[今回思いついた定義] (写像fが)全射:任意のBの要素yに対し,f(x)=yとなるAの要素xの個数は1以上 つまり, ∀y∈B, *({x∈A|f(x)=y})≧1. ただし,「*( )」は集合の濃度(個数)を表しています.

(写像fが)単射:任意のBの要素yに対し,f(x)=yとなるAの要素xの個数は1以下.

つまり,

∀y∈B, *({x∈A|f(x)=y})≦1.

この定義を思いつくまではこれらの関連性にもやもやしていましたが、今は

・全射 ~ (定義域の要素の個数が)1以上 ~ 「存在」

・単射 ~ (定義域の要素の個数が)1以下 ~ 「一意」

と明快なイメージを持てるようになりました。

全射との比較でいうなら単射は非存在または一意だろうから, これだとおかしいのではないだろうか. 当人はわかっているかもしれないが, 少なくともこう書いてしまった時点でミスリーディングを誘発するような表現という意味であとで引用する私のリプライにもあるように, わかりにくく教育的でもないのではないかという気分がある.

改めて「証明」とやらを見てみたが, そこでもこの非存在ケースを書いていないから, この人, 本当にそれに気付いていないようだ.

*追記・注意: ここについて私の指摘が不当であるという指摘が入り, もっともな指摘だったので上のコメントは撤回する. ただしかえってこの記事がよけいに気に入らないという感を深めるやり取りになった. そのやりとりはリプライツリーに追加している.

思いついた定義⇒一般的な定義 x1≠x2 とおく。このときf(x1)=f(x2)とであると仮定すると

#( { x∈A| f(x)=f(x1) } ) ≧ *( { x1 , x2 } ) = 2

となって前提条件と矛盾する. (∵集合S, TがS⊃Tならば*(S)≧*(T).) ゆえにf(x1)≠f(x2)といえる.

こう思うと全射の定義のシンプルさは場合分けがいらないことによっていて, 単射の定義の難しさは本質的に場合分けが必要な点で, それを回避していて, しかも意識さえさせない点が優れていて教育的と言えるだろう. ふつうの単射の定義で「全射から見た定義域に対応する元がない場合の対処」が書かれていたら上記の証明のミスもないはずだ.

*追記・注意: ここについて私の指摘が不当であるという指摘が入り, もっともな指摘だったので上のコメントは撤回する. ただしかえってこの記事がよけいに気に入らないという感を深めるやり取りになった. そのやりとりはリプライツリーに追加している.

(おそらく)証明で使い辛いという欠点はありますが、初学者用にいかがでしょうか。

あとのリプライツリーにあるように, むしろ入念な注意をしないと初学者殺しになるのではないか. 「非存在または一意」のような場合分けを見逃していくような不注意さは後々, 真綿で首を絞めるように効いてくる.

リプライツリー

大元

私のコメント

川井新さんのコメント

空集合とシングルトンについては次の嘉田さんのコメントを見よう.

嘉田勝さんのコメント

これ, 自由なのか?

追記

追記: 私のコメントに対するぼんてんぴょんさんのコメント

本筋ではないがこの「0 個または 1 個で一意を表す」というの, 用例あるだろうか. いまだに気になっているが思い浮かばない. ぼんてんぴょんさんは細かい用語の定義にうるさい人なので, そういう人が言っているということは何かしらそういう用例なりそう書いてある本があるのではないかと思っている. 何か情報を持っている方は教えてほしい.

九州大学のキャンパスが舞台と思しきゲームがあるという

本文

Twitter で九大がゲームの舞台に使われているという情報を得た. こちらが実際の九大だ.

ゲーム自体はよく知らないし何とも言えないのだが, 九大キャンパス格好いい. 九大数理と言えば廣島先生と松井先生がいるし, 遊びに行ってみたい大学の筆頭に入る. 北大も行きたい.

ラベル

数学

tri_iro さんが古典解析にロジックで殴りかかって地獄を噴出させるらしいので

本文

tri_iro さんツイート.

あの辺はもともと 100 年前の古典実解析っぽい話なのに, ネガティブ方向からは Steprans 強制法, ポジティブ方向からはガンディ-ハーリントン強制法と隈部-スレイマン強制法で挟み撃ちという地獄絵図になっていて楽しい. みんなももっと古典解析にロジックで殴りかかって地獄を噴出させよう

あの辺というのはこの辺だろうか.

今日はこちらを訪問中のポールと弱いモデルで Laver 強制法が Laver property を満たさないのではないかという議論をしていた. Miller 強制法なら $L_{\omega 1 ck}$ でも Laver property を満たすのに, Laver 強制法ときたら……

何はともあれ正座待機だ.

ラベル

数学, 数理論理, 数学基礎論

記事紹介: 【Rubyが好き】微積分や統計解析を快適に扱う言語(DSL) rubyで作ったヨ!

本文

【Rubyが好き】微積分や統計解析を快適に扱う言語(DSL) rubyで作ったヨ! という Qiita の記事があった.

ページから少し引用してみると, こういう想いからライブラリを作っているとのこと.

少しマジレスすると僕の大好きなRubyは数学色が薄いのが少し悲しかったのです. (蛇足ですが、この想いからrubyのMatrixクラスにシコシコcommit してます. ex. https://github.com/ruby/ruby/pull/568 Matrixを成長させ組み合わせれば、線形微分方程式や各種統計解析など夢ヒロガリング) ひとまず、ご覧になって雰囲気を掴んで頂くのが良いと思います.

何だかんだでちょっとしたプログラムを書くのに Ruby はすごくよい感じがしたので, 最近 python から乗り換えた.

python を使っていたのはいくつか理由があるが, 何となく GAE で使えるし科学技術計算関係で numpy とか scipy とかあるし, というので勉強がてら使っていた. 結局, GAE も触らないし数値計算などもしないので, これも勉強がてらちょっと Ruby 触ってみたら少なくとも軽く書く分には 非常によかったので, 移行した感じだ.

最近, 小中高生向けにプログラミング+数学・物理みたいなことを考えているし, それに Ruby なり (シミュレーション用途に) JavaScript を使うことを 考えてもいるので, ちょっと動きは注視したい.

ラベル

数学, 物理, プログラミング, 相転移プロダクション, 数学教育

誤報発見時

はじめに

ミレニアム問題にもなっている Navier-Stokes 方程式問題の解決がアナウンスされたようだ.

カザフスタンの学者 数学における七大難問の一つを解明 http://japanese.ruvr.ru/2014_01_11/127091047/

この辺の有名問題の常として, 本当に解決されたかは今のところ不明だ. とりあえずこれについては解決それ自体よりも, これが解決されると何が嬉しいのかとかそういうことが知りたい. これの証明に使われた技術が凄い役に立つとかそういうロマンのある話が聞きたい.

FN365 さんが東北大の小園英雄先生による 2010 年時点での解説 PDF を紹介していた.

Navier-Stokes 方程式に関するクレイ研究所のミレニアム問題の解説 2010 年 (東北大学小薗先生) http://www.fluid.sci.waseda.ac.jp/crest/KozonoSeminar.pdf

URL が早稲田になっているが, 早稲田は流体力学の数理のスタッフが充実していて世界的な拠点を形成していると聞いている. 上記 PDF からいくつか引用しておこう. 興味がある向きは詳細を直接 PDF を参照されたい.

コメント

ミレニアム問題. 任意に与えられた初期値 $a$ に対して, (N-S) は時間大域的な一意正則な解 ${u, p}$ を有するか?

P2 最後に記述があるが, 弱解は Leray が示していたらしい.

弱解の一意性と正則性が成り立つことを保証するものとして次の定理がある. (中略) 関数空間 (2.3) はセリンのクラスと呼ばれている ([22]). 残念ながら, (2.3) は弱解のクラス (2.2) よりは狭い.

弱解も一応一意性と正則性が示せているらしい. 弱解からのアプローチ, 問題は弱解が (2.3) に本当に入るかどうか, というところになっているのか.

(N-S) に限らず, 一般に非線形偏微分方程式が与えられたとき, その方程式に固有のスケール不変な関数空間で解を考察することの重要性が経験的に知られている. これを藤田・加藤の原理という.

このような $X$ として,藤田–加藤 [8] は $X = \dot{H}^{1/2}$ ととり, $a \in \dot{H}^{1/2}$ であれば (N-S) に時間局所的な強解が一意的に存在することを示した. (中略) 藤田, 加藤両博士のナヴィエーストークス方程式に関する造詣の深さを物語っている. 実際, この論文 [8] が 20 世紀後半から今日に至るまでに非線形偏微分方程式の研究に与えた影響は計り知れない. ここではまず, その後に改良された以下の定理を紹介しておこう.

藤田・加藤, 凄まじい. 加藤先生は我らが加藤敏夫先生だろう. 物理出身の人らしい発想とも言える.

従って, 工学などの現場の要求に応えるためには, 境界のある領域の内部または外部でナヴィエーストークス方程式を考察することを余儀なくされる. たとえば, 多重連結領域における非斉次境界値条件下の定常ナヴィエーストークス方程式の可解性は未解決問題である. 領域の位相幾何的な条件と方程式の可解性の問題は, 非線形偏微分方程式の主要な研究テーマであるが, この方面においても課題が山積していると思われる. このことについては, 次回に述べることができれば幸いである.

領域の位相幾何的特徴とその上の方程式や作用素の特性というのは確かに面白く, 私も興味がある. 私が近いところに関していうなら, Aharonov-Bohm 関係の話がある.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, ミレニアム問題, 偏微分方程式, 量子力学, 作用素論, 流体力学

今回もやはり駄目だった?

本文

Navier-Stokes の話, やはり間違っていた?

例のナビエ-ストークス論文は普通に間違ってたっぽいですね (修正可能かはともかく) http://math.stackexchange.com/questions/634890/has-prof-otelbaev-shown-existence-of-strong-solutions-for-navier-stokes-equatio

monae さん, 解析専攻というわけではなかったと思う. こういう情報を探しているのか知人から入ってくるのか分からないが, そういう環境はやはり羨ましい.

ラベル

数学, 数理物理, 偏微分方程式, 流体力学

多面体の折り紙--正多面体・準正多面体およびその双対

本文

多面体の折紙-正多面体・準正多面体およびその双対という修羅のような本があるらしい.

多面体の折紙-正多面体・準正多面体およびその双対

折り紙というと兵庫教育大学院大学の和田宗士さんによる折り紙の作図可能性に関する論文も想起される. 折り紙, Origami とか言って世界的にも認知されつつあるとかいう話を聞くのであなどれない. 上記の本も読んでみたい.

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数学

るのひとによる Gowers の仕事紹介 PDF の発掘

本文

るのひとが, この間 フィールズ賞を取った Gowers の業績紹介 PDF を発掘していた.

http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1100-12.pdf 近寄りたくないw

はじめて Gowers の話を聞いたとき, まず一般の Banach 空間論の研究をやっている人がまだいるということに衝撃を受けた. $C^*$ や von Neumann 環も Banach 空間ではあるが, 作用素環というまた別のラインの話であり, こう色々と衝撃を受ける.

フィールズのときの紹介で, 証明も組み合わせ論など純関数解析的な話以外も駆使したとか書いてあって, 何をやっているのだ的な感じがあり, 戦慄した. 関数解析怖い.

ラベル

数学, 関数解析, Fields 賞, Banach 空間

数学抜きで論理的思考を身につけるためのたった一つのポイント

自己紹介

よく「論理的思考を身につけるために数学を勉強しよう」と言われる. この記事はその言説に対するカウンターだ. もちろん適当に言っているのではなくきちんと理由がある. それを順に説明していく.

話に入る前に簡単に自己紹介しておこう. 私は学部では物理学科, 修士では数学科に進学している. 世間的にはバリバリの理系だし, 数学への耐性も極めて高い方だろう.

しかしそれでも社会に出てから 「論理的思考力が足りない」と 言われることがあった. 企画書をはじめとした文書を書くと 「ここに穴がある」とボロボロ指摘を受ける.

数学でも物理でも「論理的思考が大事」と言われる. 実際に社会に出たての私も論理的思考ができないわけではなかったはずだ. しかし現実には上のような指摘を受けた.

*それは何故なのか? それを追求する過程で得た結論をこの記事で解説する. 数学の細かな話が必要になるところは 1 つもないので安心して読み進めてほしい.

はじめに

まずは結論

まず端的に書こう. ポイントはツッこむ力を身につける, この一言に尽きる.

ツッこむ力とは何か, そもそもツッコミとは何なのか, あなたはそれが気になっているだろう.

しかしその話の前になぜ数学をやっていても論理的思考が身につかないのか, この点について明らかにしたい. ごくごく簡単で当たり前のことだ.

なぜ数学で論理的思考は身につかないのか?

理由はごく単純: 数学をやること自体苦行だからだ. 数学という果てしない苦行の先にあるものを身につけようというのは, はじめから無茶でしかない. つまり「数学で論理的思考は身につかない」ではなく, 「数学を勉強すること自体に論理的思考が身につける以上の高いハードルがあって, それを乗り越えられる人はまずいない」ということだ.

どうしてわざわざ苦行を勧めるのか. 新手の嫌がらせか. *そんなつらいことはもうやめよう.

他の突っ込み

そもそも数学と論理的思考にどんな関係があるのか? それ自体ろくに議論されているのを見たことがない.

そして何より論理的思考は 数学以外では身につけられないのか? そんなことがあるはずがない.

最初に書いたように, 物理であっても論理的思考は大事と言われる. 私が知る限り文学であっても学術的な状況では 論理性が重要視される. 文系や理系という区分にも意味はない.

無駄な苦行に時間を使うはもうやめよう. 私の立場からすると, 論理的思考を身につけるために数学をしようという言説は, よけいな数学嫌いを増やすだけで本当に迷惑な話だ.

そもそもおかしいこと

もう少し冷静になって考えてみてほしい. ふつう何かを身につけたいならそれと直接関係あることをやる. 例えばダイエットしたいのに数学やる馬鹿はいない.

論理 (的思考) の勉強したいならやるべきは論理学ではなかろうか. なぜ数学という回りくどいことをするのか. 謎以外にいいようがない.

ちなみにもっと適切なのは議論学だろう. この辺, もう少しきちんと書いた方がいいのかもしれない. しかし今回のキモは数学に限らず, 何か特殊な訓練をしなければならない, という思い込みを潰してもらうことにある. その目的からすると意味がない話なのでここではこれ以上触れない.

論理的思考とは何か

よくある話

論理的思考, または論理的思考力という言葉で よく出てくるのは次の 2 つだろう.

  • 物事を筋道立てて考える能力.
  • 一貫して筋が通っている考え方, あるいは説明の仕方.

こういうと小難しく聞こえるかもしれない. しかし次のように考えてもらえれば十分だ. 要はツッコミを受けない考え方が論理的思考である.

ツッコミを受けるのはわからないことがあってつまづくからだ. 相手がつまづかないようにコミュニケーション上の配慮をする, 論理的思考とはただそれだけのことなのだ.

どうしてツッコまれるのか

どちらも同じなので, 「物事を筋道立てて考える」について見てみよう.

先程説明したように穴があるとツッコミを受ける. 例えば知人に会ったときこう言われたとしよう.

「きょう傘を持ってきた」

このときあなたは次のように思うはずだ.

  • 「天気予報で雨の確率高かった?」
  • 「もう雨が降っている?」
  • 「室内にずっといたからわからなかったが, 今日は日射しが強くて日傘を持ってきたのか?」

こういうのを単純に「ツッコミ」と呼んでいる. 実際に上のようなことを言われたら, そのときに思ったことを口にするだろう.

「論理に飛躍がある」, こういう指摘を受けたことがある人は多いはずだ. それは単に上のようなツッコミポイントがあった, それだけのことなのだ.

「こういうツッコミを受けないようにしよう」, そういう守りの姿勢ではなく, 「相手がつまづかないようにきちんと配慮しよう」, そういう攻めの姿勢を論理的思考と呼んでいるだけだ.

こうやって勉強しよう

どこからどうはじめるの?

論理的思考が何なのか, とりあえずわかってもらえたと思うし, 当たり前のことに過ぎないこともわかってもらえたと思う.

問題はどうやってそれを鍛えればいいかだ. 単にいつものコミュニケーションだ, ツッコミを入れればいいだけだ, そう思ってうまく行くなら何の苦労もいらない.

答えは簡単だ: 日常のシーンの中で小さくツッコミを入れていけばいい.

ここで「ああそうか, それでいいのか」と思ってもらえたなら もうこの先を読む必要はない. 毎日少しずつツッコミの練習をしてくれればいい.

そうは言っても, というのが本音だろう. そこでここからはツッコミ方の学習法をお伝えしていく.

ポイントとしては他人のツッコミ方を学ぶことだ. そして数学などやらずに日常から取り込もう. 議論学とか堅苦しいのもやめよう: そんなものは続かない.

お勧め書籍

具体的に本をお勧めする. 次の 2 冊だ.

「論理トレーニング」の本編はいわば教科書で, 説明も多くて飽きてしまうかもしれない. 「論理トレーニング 101 題」で「問題演習」した方が 楽しく続けられると思う.

これを読め, というのだけでは明らかに不親切だ. どんな感じで読んでみればいいか, もう少し補足説明しよう.

例: 新聞の記事から

どれでもいいのだが, 「論理トレーニング 101 題」の問 1 を眺めてみよう. そこでは次のような「事実」が紹介されている.

  • 便器に座って小便する男性が増えた.
  • 立つと小便のしぶきが飛んで汚いから.

この「小便が汚いから」に対する専門家のコメントが記事になっていて, それに対してツッコめ, というのが 「論理トレーニング 101 題」の問 1 だ.

その専門家コメントを引用しておこう.

「清潔はビョーキだ」の著書がある東京医科歯科大の藤田紘一教授 (寄生虫学) も, 座り派の増加について「清潔思志向が生きすぎてアンバランスになってしまっている」と指摘する. 「出たばかりの小便は雑菌もほとんどいない. その意味では水を同じくらいきれいだ. なんで小便を毛嫌いするのか. ばい菌やにおいを退けすぎて, 逆に生物としての人間本来の力を失いかけている一つの表れでないといいのですが」

この専門家コメントにツッコミを入れよう.

ツッコミ その 1: 論理展開

まずは「論理トレーニング 101 題」から引用する.

藤田氏はまず「清潔志向が行きすぎてアンバランスになってしまっている」と, 「清潔志向の行きすぎ」を指摘する. そうだとすれば, 「多少不潔でも気にすべきじゃない」と議論が展開すべきである. ところが, 「小便は汚くない」と続けてしまう. 方向がばらばらである. 「小便は汚くない. だから, 立っておしっこしてもいいじゃないか」という議論は, あくまで清潔志向を認めた上で為されるものにほかならない.

要は「話の流れがおかしい」という指摘だ. 「非論理的」というほどでもないが「論理の欠如」がある. そういうツッコミだ.

ツッコミ その 2: ピント外れ

もう 1 つ説明を引用する.

もう一点. 「出たばかりの小便は雑菌もほとんどいない」と書いてある. この主張は, 便器に付着して放置された, 「出たばかり」でない小便が汚いのか汚くないのかについては何も述べていない. しかし, いま問題なっているのは出たてのおしっこではなくて, 飛び散ってそのままにされたおしっこなのである. ということは, 出たばかりの小便についてのこのコメントは方向違いどころか, 議論に無関係と言わざるを得ない.

ここでのポイントは「出たばかりの小便は綺麗なのは認めたとして, 放置した小便がどうなのか」だ. 今度は方向違いどころか無関係な話をしていると断じている. 大学教授であろうとも非論理的な指摘をしている, そういうわけだ.

ツッコミ その 3: マナー違反

私が先のコメントを読んだときに思ったことを書いておこう. どうやら本には書いていないポイントのようなので. 上の記述のあと「汚れは雑菌だけでなく見た目の汚れも含んでいる」という記述がある.

ここで私が思ったのは服に小便がかかったときの話だ. 汚い話だが小便をしていて, 小便が指についてしまうことがあった. 急いでいたので適当に手を洗って済ませてしまったことがあり, 何となく気になって指のにおいをかいでみたら, 小便のにおいが残っていたことがあった.

そこからすると飛び散ったのを放置したままにすると, においが悪化したりはしないのか? そういう疑問もある. そして小便のにおいがしているのはマナー違反ではないか? そういう観点から小便が飛び散らないように 気をつけているという場合もある.

本に書いてある以外にもツッコミポイントはあるのだ. もっというなら本の記述に対して さらにツッコミを入れていると言ってもいい.

小まとめ

ここまでのまとめをしておこう. 一番大事なことは小さくツッコミを入れていくことだ. そしてやりやすい日常のシーンにツッコミを入れるのがいい.

そうはいってもなかなか難しい, そういう場合は他の人のツッコミの仕方を参考にすればいい. とりあえず野矢茂樹『論理トレーニング 101 題』を読んでみよう.

この本の記述を鵜呑みにする必要はない. もっと言うなら本の記述にも「うん?」と疑問に思うところはある. そういう小さなツッコミを丁寧に積んでいくのが大事だ. 数学のような苦行を重ねてもこの手のツッコミができるようになる保証はない.

実社会で必要な「論理」

前提にツッコミを入れる

日常のシーンへのツッコミということで, もう 1 つ例を挙げておこう.

例えば 50-60 代の話は参考になるか?

すでに終身雇用制は崩れている. 大手の会社でも副業を勧めるところが出てきていたりもする. つまり前提じたいが大きく変わっているし, そしていまも変わり続けている. そのような状況で 50-60 代の話が参考になるか?

こういう話はよく目にするだろう. これもツッコミだ.

論理的志向でよく言われるのは次の 2 点だ, という話を先にした.

  • 物事を筋道立てて考える能力.
  • 一貫して筋が通っている考え方, あるいは説明の仕方.

これのチェックポイントとして 「前提をはっきりさせる」ということがある. 先程の話を思い出そう.

「きょう傘を持ってきた」

このときあなたは次のように思うはずだ.

  • 「天気予報で雨の確率高かった?」
  • 「もう雨が降っている?」
  • 「室内にずっといたからわからなかったが, 今日は日射しが強くて日傘を持ってきたのか?」

ここでのポイントは「傘を持ってきた」という行動の前提だ. 天気予報で雨の確率が高かったからなのか, いま既に雨が降っているのか, さらには傘と言っても日傘なのか, こういう前提を問うツッコミだ.

あなたはよく「何でそう思ったの?」という ツッコミを受けているかもしれない. それはまさにこれ.

数学にみる前提へのツッコミ

一応, 数学でこういう話をやってみることもできる. 詳しい話は全くしないが, 数学での感じだけはお伝えしておこう.

例えば次のようなツッコミができる.

  • $1+1$ はいつでも本当に $2$?
  • 方程式の答えは本当に $1$ つだけ? そもそも答えはいつでもあるの?

これはどちらも違う. $1+1$ が $2$ であるとは限らないし, 方程式の答えが 1 つとも限らなければ, いつでも答えがあるわけでもない.

これはいわゆる「役に立つ話」とも関係しているし, 中高の数学でも出てくることだ.

できることはできる. しかしこれで学ぶのはつらくないか? といつも思う. 無理に数学でやることもないだろう.

実地で前提を疑ってみよう

もう少しツッコミをしてみよう.

例えば「数学のやり直しで論理的思考を身につけられるか?」という話に対しては 「そもそも数学自体が続かない」というツッコミが返せる.

数学が何の役に立つ?」という話に対しては, 次のように返せる: これはパソコンや機械と同じなのだ. 詳しいメカニズムを知らなくても使えるように配慮されている. 役に立っていることを感じさせないようにしている. だから数学が役に立つことを見たければ裏の裏に見に行かなければいけないし, それは理工系の大学生が苦しみながら勉強していることだ.

数学の話がしたいわけではないからここでは省略するが, もし興味があるなら次の本を読んでみてほしい.

中高の数学が何の役に立つか何度となく言われるので, いい加減何か資料を作ろうと思ってまとめた本だ. 論理的思考とは全く関係ないが, 役に立つ数学に興味があるなら眺めてみてほしい.

ビジネスでの前提を疑う

今度は社会人向けの話としてビジネスでの例を挙げよう.

例えば「顧客への訴求力を上げるために映像コンテンツを 作りたいがプロに頼まないとダメか?」という話では スマホでもけっこうできるし, スマホアプリで簡単な編集もやれてそこそこのモノが作れるという ツッコミができる. 最近は「なんちゃってクリエーター」という流れもある.

他にも「プログラミングや IT に詳しくないと自分でサイト作れない?」という話に対しては, 初心者でも WordPress でサイトを簡単に作れるし, ほしい機能はだいたい無料のプラグインがあるとツッコミ返せる. 実際このサイトも WordPress で作っている. デザインについても出来合いのものを使っていて, 私が自分でデザインしたわけではない. 私は Web デザイナーでも何でもないが, このくらいのサイトなら自分だけで作れるのだ.

前提はどんどん変わる

ビジネスの観点から話をまとめよう.

最近のビジネスは流れの移り変わりが早い. 前提の正しさがどんどん変わる中での素早く意思決定していくことが大事になってきている. 前提を常に疑い続ける姿勢が大事だ. 今は無理なことでも近い将来できるようになっているかもしれない.

こういうビジネス思考にも論理的思考は活かせるし, それは何ということはなく, 単に丁寧にツッコミを入れていくだけなのだ.

いろいろな可能性を知る

うまくツッコミができる人の特徴もお伝えしておこう. それはいろいろな世界を知っていて, いろいろなモノの見方ができることだ.

だからツッコミが入れられる. 新人時代, 上司や先輩から何度となく仕事に関してツッコミを受けただろう. 何故かというとあなたが知らない世界や モノの見方を知っているからだ. その観点から見るとあなたの行動が穴だらけ, だからツッコミを受けたのだ.

例えばあなたが経理の人間だとして, 営業の人間に対して経理の観点から見てよくないことがあれば, そういう指摘をするだろう. そして指摘を受けた営業の人間はびっくりしたかもしれない. 「そんなことは考えたこともなかった」と. これもツッコミだ.

営業から見ると穴がなくても, 経理から見ると穴がある, そしてそれをツッコむ. こういうのも論理的思考なのだ.

  • 他人と話してみて他人の世界の見方を知る.
  • 他人のツッコミを受ける.

これを積み重ねるとツッコミ力が上がる. このツッコミ力が上がることが論理的思考力が上がることなのだ.

別に他人の意見を受け入れなくてもいい. ありうる可能性を知り, そして探ること. それがツッコミ力向上のポイントだ.

まとめ

最後に箇条書きでまとめよう.

  • 論理的とはツッコミを受けないこと.
  • ツッコミを受けるのは相手の理解がそこでつまづくから.
  • 論理的思考とは相手をつまづかせないようにする配慮の問題.
  • 日常生活の中でいくらでも磨ける.

これをいきなりやろうとしても難しいだろう. そういう場合は野矢茂樹「論理トレーニング 101 題」を読んでみてほしい.

他人のツッコミ方を学ぶのも勉強になるし, 自分なりのツッコミ方を考えてみるのもまた勉強になる. 無理に数学を勉強することはないのだ.

おまけ: どうしても数学を勉強したいあなたへ

最初に書いたように私は大学で物理と数学を学んだ. そしてページの先頭と最後にも載せているように, ふだんは物理や数学の情報発信をしている.

中高数学に関しても無料の通信講座を作っている. 興味があればぜひ登録してみてほしい. 特に論理的思考がどうの, という話はしていないが, 私なりの世界の見方を紹介している.

あなたが数学関係者がどう世界を見ているのか, どう世界とつき合っているのかに興味があるなら, 楽しんでもらえるだろう.

満渊俊樹先生の『 Kahler-Einstein 幾何の問題; Donaldson-Tian-Yau の予想の解決に向けて』という PDF が流れてきたので

本文

Twitter で 満渊俊樹先生の Kahler-Einstein 幾何の問題; Donaldson-Tian-Yau の予想の解決に向けてという PDF が流れてきた. Kahler 幾何はスーパー格好いいと思っているのでとりあえず読んだ. 意味は良く分からない.

我らが小林昭七先生も深く関与している Kobayashi-Hitchin 対応, コンパクト Kahler というかなり限定された状況の話だろうにいまだによく分かっていない部分があるというの, かなり凄まじいと思う.

Ricci 曲率が正の場合の Calabi 予想が未解決というのも結構凄い. もちろん詳しいことは全く知らないのだが, 非負のところが比較的簡単 (解決済み) なのに正ができていないというの, どこが難しいのだろう.

Donaldson-Tian-Yau 予想, (偏極) 代数多様体なのに幾何解析系の人間の名前がついているというの, 代数幾何の闇を感じる.

幾何を全然知らないので何でも格好よく見えた, という感想を抱いて今回の記事を終える.

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数学, 幾何, 代数幾何, 幾何解析, 複素幾何

【不完全性定理のキモは帰納法でも自己言及でもなく「掛け算」なんだ!】

本文

な, なんだってー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!.

某不完全性定理に関するエッセイ読んだけど, ところどころもにょもにょする. 妙に背理法強調してたり (関係あるのか?), 「ペアノの公理系に不完全性定理があてはまる理由は数学的帰納法を含んでいるから」とか (ロンビンソン算術の立場は…)

あああぁ, ロンビンソン算術ってなんだよいったい. ロビンソン算術だよ.

足し算と掛け算をもつロビンソン算術は不完全定理が適用できて, 足し算のみのプレスバーガー算術には適用できず実際完全. ということは不完全性定理のキモは帰納法でも自己言及でもなく「掛け算」なんだ! と言ってみるテスト.

かけ算, つらい.

追記

コメントを頂いたので.

何はともあれメモをする.

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数学, 数理論理学, 数学基礎論

数論と相転移に付随する自発的対称性の破れ:Connes 論文と新井論文の紹介

はじめに

この辺からの mr_konn さんとブルブルエンジン兄貴のやり取りで, 数論 (代数的整数論) での両側剰余類の話が出てきた.

私自身は使ったことないが, Connes の数論での相転移論文にも出てきたことを思い出した. Hecke algebras, type III factors and phase transitions with spontaneous symmetry breaking in number theory という論文.

学生時代は学生時代できちんと読もうとして訳が分からず挫折した経緯があり, 結局あまり内容を把握していない. 時々 Twitter でネタにするので, この機会に軽く眺めてみようと思い, 自分用メモとして残しておく.

新井先生の論文の話

あと, 関係する話として新井先生の Infinite dimensional analysis and analytic number theory という話もある. 両方とも量子統計と数論の関係がテーマで, 分配関数が Riemann の $\zeta$ になる, という話.

新井先生の論文の方は直接的に Fock 空間と第 2 量子化作用素の話をしていて, 数学的にはこちらの方が簡単で読みやすい. ただ, 基本的には全く違う話だ. 両方読み比べた方が楽しいだろう.

論文のメモ

では Bost-Connes 論文のメモに入る. 念のため先に書いておくと, (量子) 統計や相転移の物理については田崎さんの本がいいだろう.

作用素環で相転移を扱うという場合, とりあえず量子統計のセッティングで話をする. 特に $C^{}$ 力学系, または $W^{}$ 力学系の話になる. そこで分配関数が $\zeta$ になる, という方向に持っていく.

イントロで相転移や自発的対称性の破れについても直観的な説明が書いてあるので, 興味がある向きはそれも参考にされたい. この論文では素数の分布と自発的対称性の破れの関係を論じている.

$C^{}$ 力学系は, $C^{}$ 環 $A$ と $A$ 上の強連続な自己同型群 $(\sigma_t)$ の組のことをいう. (もちろん $W^{*}$ 力学系でもいい.)

Hilbert 空間上の連続なユニタリ群は (半群理論からでもいい) Stone の定理 によって, 自己共役作用素 $H$ を使って $U_t = e^{itH}$ と書ける.

GNS 表現にして考えてもいいが, $C^*$ 環上でも (半群理論から) 直接 $\sigma_t = \mathrm{Ad} \, e^{itH}$ のように書ける. この Hamiltonian $H$ のスペクトルが色々大事な情報を持っている. 新井論文では実際に適当な Hamiltonian を構成して, Riemann の $\zeta$ を作っている. von Neumann 環でいうと, KMS 状態が意味を持つのは III 型環だけだ, というのもメモしておこう.

KMS 状態とその端点分解の一般論が出てくる. まず状態の空間が定義から凸集合になり, さらに KMS 状態の集合自体も凸集合になる. そうすると KMS 状態による端点分解ができてそれ自体が熱力学的な純粋相を表す, という話があるが, この論文ではそれが数論の数学としても大事なようだ.

P413 あたりから今回のターゲットの $C^*$ 環が Hecke 環だという話になってくる. $\mathbb{C}$ の格子の Hecke 対応とか何とか出てくるがよく知らない. ここで double coset $GL (2, \mathbb{Z}) \setminus GL (2, \mathbb{Q}) / GL (2, \mathbb{Z})$ が出てくる.

適当な条件下で離散群 $\Gamma$ とその部分群 $\Gamma_0$ から convolution algebra として Hecke 環ができるらしく, $\ell^2 (\Gamma_0 \setminus \Gamma)$ への Hecke 環の正則表現の閉包として $C^*$ 環を作る.

また脱線するが, 群のユニタリ表現から作用素環を作るというのは標準的な方法だ. 一般に $C^$ 環内での functional calculus から $C^$ 環の全ての元はユニタリ作用素で書ける. したがってユニタリを指定すれば作用素環が決まると言っていい. von Neumann 環だと射影でもいい.

Prop 4. では自己同型群を作っている. 記号からしても KMS のモジュラー自己同型群だろう.

P415 で力学系の相転移に付随する自発的対称性の破れの記述がはじまる. $\mathbb{Q} / \mathbb{Z}$ 上の関数 $\psi_{\beta}$ を適当な素因数分解を使いつつ定義する. 面倒なので $P$ の定義は論文を見てもらうことにして, $\Gamma = P_{\mathbb{Q}}^+$, $\Gamma_0 = P_{\mathbb{Z}}^+$ とすると, $\mathbb{Q} / \mathbb{Z} \subset \Gamma_0 \setminus \Gamma / \Gamma_0$ になり, ここから Hecke 環や $C^*$ 環の包含も出る. この辺をうまく解析すると主定理の Theorem 5. になって, Riemann の $\zeta$ が出てくる. $\mathbb{Q}^{\mathrm{cycl}}$ とか数論っぽいのが色々出てくる. また Galois 群 $G = \mathrm{Gal} (\mathbb{Q}^{\mathbb{cycl}} / \mathbb{Q})$ が自己同型群として作用して, しかも時間発展 (KMS のモジュラー自己同型) と可換になり, これが自発的対称性の破れを記述する, とのこと. Theorem 5. の証明の前に力学系と素数の分布の関係の説明をしよう, といって節が変わり 2 節になる.

2 節の冒頭で E. Nelson の「第二量子化は functor である」という言葉が引用される. この Nelson は 2011 年に The Inconsistency of Arithmetic で話題になった Nelson だ. 今は基礎論あたりにいるが, 元々構成的場の量子論にいた人だ, という小ネタをはさんでおこう. 第二量子化周辺の話が簡単に説明される.

今はじめて知ったのだが P417 の Lemma 6. がハイパー強烈だった. 冷静になって考えて見れば当然という感はあるのだが. $\mathcal{P}$ を素数の集合とし, $T$ が Hilbert 空間 $H$ 上の自己共役作用素として, $T$ の第 2 量子化作用素を $\mathbf{S} T$ としよう. このとき, $\sigma (T) = \mathcal{P}$ と $\sigma (\mathbf{S} T) = \mathbb{N}^*$ が同値という命題だ. ここで $\sigma (T)$ は $T$ のスペクトルを表す. 第 2 量子化作用素の定義を省いているのでアレだが, 単なる素因数分解だ. 証明は論文に書いてあるので, 興味がある向きは参考にされたい. というか, どこかで話してもいいかもしれない.

それで上の $T$ を使って次のように Riemann の $\zeta$ が定義できる: \begin{align} \mathrm{Tr} \left[ (\mathbf{S} T)^s \right] = \frac{1}{ \det (1 - T^s)}. \end{align} ここまで来て分かったが, 上記の新井先生はこの命題を基礎にして Fock 空間上で直接色々やっている. 以前はここまですら読んでいなかったという個人的衝撃の事実が発覚した. もう少し読んでおけばよかった. 要はボソンの場の量子論と数論に関係があるという話だ. 一応書いておくと, 当然フェルミオンとも関係があって双対性だとか超対称性うんぬん, という話が新井先生の論文に書いてある. 2 節, 単独で読んでも面白そうだ. 今度どこかで話してみたい.

3 節では 2 節で作った $C^*$ 力学系と数論の概念を関係づけ, Theorem 5. の Hecke 力学系を作っている. 局所コンパクト群とか Haar 測度だとかも出てくるので, 色々な数学が交錯する姿を見てみたい学部生が読んでも面白いだろう. 当然ながら $p$ -進数や付値なども出てくる. アデールだとか, 学生時代, 非可換幾何をやっていた先輩の話で出てきたな, という程度の知識しかないので適当に読み飛ばした.

派手に飛ばして 6 節で $\beta > 1$ KMS の分類をし, 7 節で $\beta \in (0, 1]$ での KMS 状態の一意性を議論している. III 型環とかがちゃがちゃ出てくるので面白そうだが手に負えない.

最後, 参考文献に Araki-Woods や Connes-Takesaki, Bratteli-Robinson, Haag, Pedersen の有名な論文や教科書がある中, Dirac, Serre, Shimura, Tate, Weil があるのに爆笑した. 色々な数学が交錯する姿が見られる論文なので, 興味がある向きはアタックされたい.

追記

ご興味を持って頂けそうだったので, knyokoyama さんにこの記事を読むように強要した. その辺のやりとりがここからはじまる.

@knyokoyama あまり細かいところには触れていませんが, ご興味があるかと思ったので, 自分で書いたものですが, ご興味があれば. 数論と相転移に付随する自発的対称性の破れ:Connes 論文と新井論文の紹介 http://goo.gl/fb/XEsEh よく分からない数学

.@phasetr BostConnes と新井先生の論文を読み比べるに同意

@phasetr 読み比べようとするも, BostConnes と新井先生の論文は, 全く別の話です (phasetr さんのブログに別ものと記載あり). *比べられない.*

@knyokoyama もちろん全く違うのですが, ゼータと量子統計という大きなくくりで見て色々な展開が想像できるので, それを考えると楽しいだろうという話です. 解析数論と数論的関数, 超対称性や双対性の数論的反映と, 数論での相転移など, 量子統計・場の理論の多彩な展開がみられるので

@phasetr おっしゃるとおりです. ご紹介, 感謝いたします.

@knyokoyama 比べる, という言い方がまずかったか, という気はします

@phasetr ありがとうございます. 結構, 楽しく読ませていただきました. リーマンゼータの導出や, 驚きの lemma6, (素因数分解定理の言い換え)?!, 時間発展までは, 共通, , , その後は, 全く別モン. かたや KMS 条件から円分体, かたや数論的函数と SUSY. 双方素晴らしい

@knyokoyama 書こうと思って忘れていたのであとで追記しようと思いますが, あの補題 (とそのあとの分配関数) がゼータの零点が自己共役作用素の固有値問題に結びつくという Hilbert-Polya の話なのでしょう. 最近は若山先生の非可換調和振動子などもあるようですが

Hilbert-Polya 予想についてはここなどを見てほしい: 英語版の Wikipedia だ.

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数学, 物理, 数理物理, 作用素環, 数論, 作用素論, 統計力学, 場の量子論, 相転移, 自発的対称性の破れ, 表現論

gejiqmq さんの情報幾何ツイートまとめ: 自分用備忘録

メモ

全く理解できていないが自分用備忘録として残しておく. このツリーをまとめた.

ツイートまとめ

今後, きちんと勉強したい

情報幾何も勉強の記録として YouTube 動画を投稿していきたい. 他にもやりたいことがあるので優先度低めになってしまうが.

追記

2021 年, 藤岡さんによる数学向けの情報幾何の本が出た. これを読みたい.

「方程式を解く」というときの「解く」の意味的なアレ

本文

イケメンエリートのあさみさんとの対話が面白かったので記録しておく.

といいつつそもそも「ナビエ-ストークス方程式に一般解がある」という状態がピンとこないというか, あったら逆に困るような気がする程度には数学が不自由

@adonis_fish 「ナビエ-ストークス方程式に一般解がある」というのはどういう意味で使っていらっしゃるのでしょうか

@phasetr 失礼しました, ミレニアム問題的な意味です. 困るという言葉もアレだったと思いますが, どうも水とか大気とか物理的な流体でしか捉えられないせいか近似で解くほうがしっくりくるといいますか, えっ解けるの, みたいな感覚がぬぐえませんで, 存在して全然構わないのは承知しています

@adonis_fish はじめの言明で気になったのは「一般解」というところです. 「解ける」と言う言葉の使い方も気になります. 解の存在・一意性証明を「解く」とは (特に非数学関係者は) あまり言わない気がすると言う程度の感覚的な話です.

@phasetr なるほど. 個人的には非数学関係者のほうが「解の存在・一意性証明」という (一見して) 難解な言葉遣いを避けてたんに「解く」と言い下してしまっているような (特にミレニアム問題の文脈では). これもただの印象ですが…普段接している言葉の領域が違うのかもしれませんね.

@adonis_fish 「解く」というと厳密解・近似解に限らず, 数値計算含めて適当に具体形を求める・求めようとすると言う感じで使われる印象がります. 数学で存在や一意性問題を考える場合「解の存在問題を解く」と言う感じで適当に限定するような印象です

@phasetr 仰る意味は理解しますが, こう, いわゆる「社会的」にはかなり厳密な使い分けかもしれません… 方程式を解いて具体形を手に入れる必要のない人にとっては, 解が存在するかどうか, ということとそれを具体形で手に入れられるかどうか, ということの区別にあまり意味はないので

@phasetr なんかあんまり上手く説明できていませんが, その程度の非常に分解能の悪い意味で「解く」を使ったとお考え頂ければと思います. 今後はより精確な言葉遣いに努めさせていただきます. .

@adonis_fish それは初めて知りました. そして衝撃です

@phasetr たぶん, これが使ってる言葉のフェーズが違うということだと思います. 方程式, うんあの $x$ とか $y$ とか出てくるやつね, というレベルを引き合いに出すのは妥当ではないかもしれませんが.

@adonis_fish 単純な疑問で, あさみさんも同じ感覚で「解く」という言葉を使っているという事でしょうか. あとその感覚, おつきあいのあるどんな人たちで見られる感覚でしょうか. 理工系の人間の感覚ではない, という漠然としたアレはあるのですが証拠は何もないので私, 気になります!

@phasetr まず 1 つ目のご質問ですが, 私は文脈や媒体, 話している相手によって言葉の意味, 定義の厳密さ (分解能という単語を先ほどは使いました) を変える, ということを日常的にやっている人間ですので, 簡便のために区別しない使い方をすることはあります (続く)

@phasetr 「同じ感覚で使うこともできるし, 使わないこともできる」というのがお答えですが, 数学に限らずツイッターにおける私の言葉の選び方はかなり感覚的なものなので, もしかしたらそっちがべースなのかもしれません. 理屈で区別しているだけなのかも.

@phasetr あと「その感覚はどんな人たちのものか」というご質問については, 仰るとおり理工系の方にはないですし, 文系ですらないというか, そもそも抽象的な思考をする習慣がないような方です. 結構います.

抽象的な思考というの, どんなものなのか今一つ分かっていない. 一般論と抽象論の区別もいまだにつかないしよく分からない.

追記

かもひろやすさんから次のようなコメントを頂いた.

距離空間上の点列 $(a_n)_{n \in \mathbb{N}}$ が $\alpha$ に収束することは、 $\forall \varepsilon >0 \exists N \forall n \geq N [d(a_n, \alpha) < \varepsilon]$ で定義されます。これを離散化してスコーレム化すると、 $\exists \phi \colon \mathbb{N} \to \mathbb{N} \forall k \in \mathbb{N} \forall n \geq \phi(k) [d(a_n, \alpha) < \varepsilon]$ と同値になります。ここで、 $\phi$ として計算可能関数が存在するとき、$a_n$ は $\alpha$ に実効的に収束するといいます。

当然、実効的な収束は単なる収束よりは強い条件になります。

私が知らない収束概念がまた 1 つ増えてしまった. 楽しい.

ラベル

数学, 物理, 微分方程式, 流体力学

数学メモアール電子版の光

はじめに

数学会が大変な英断を下しているので広めなければいけない. 「数学メモアール電子版の公開について」としてここで第 1-2 巻について出ている. リンク先では第 3-4 巻もダウンロードできる. それぞれ「 3 次元接触構造のトポロジー」「作用素環と幾何学」「リーマン多様体とその極限」「共形場理論入門」で, 専門的で比較的最近の内容だが, 学部生くらいが背伸びして読んでみると研究の雰囲気が感じられて面白いだろう.

作用素環と幾何学

「作用素環と幾何学」は専門が近いので目を通してみた. 夏目先生パートの作用素環はかなりよくまとまっているので, 作用素環の雰囲気を掴むのに良い. 第 3 巻は Riemann 幾何周辺の学生が勧めていたようなので, これもそれなりの内容なのだろうと思っている.

上記ページから各巻の内容を抜き出しておくので, 興味が湧いた向きは目を通してみよう.

各巻の内容の引用

第 1 巻 3 次元接触構造のトポロジー, 三松 佳彦 (付:Hamilton 系の周期 解の存在問題と J-正則曲線 小野 薫), 2001, 131p, 品切れ, [PDF] 本書は, 接触幾何学の 3 次元の場合を中心とした概説である. 力学系や葉層構造, 3 次元多様体論などの視点からの解説が三松氏によってなされ, 概複素曲線の方法が 小野氏によって解説されている. 接触幾何学, シンプレクティック幾何学, 低次元多様体論, 力学系, 数理物理学などに興味を持つ人に最適である.

第 2 巻 作用素環と幾何学, 夏目 利一; 森吉 仁志, 2001, 230p, 品切れ, [PDF] 作用素環の理論の基礎および指数定理との関わりについての優れた概説である. 一応幾何学者を念頭に置いてかかれているが, 作用素環の理論に興味を持つ広い範囲の読者に興味のもてる内容になっている.

第 3 巻 リーマン多様体とその極限, 大津 幸男; 山口 孝男; 塩谷 隆; 加須栄 篤; 深谷 賢治, 2004, 384p, 税込価格 4,900 円 (送料 340 円) [PDF] 本書は, 多様体論の基礎的な素養を持つ読者を対象に, 大域リーマン幾何学の最近 20 年くらいの発展の主要部分を専門家が解説したものである. 本書に収められた内容を解説した成書は欧文のものでも見あたらない. 本書は微分幾何学の主要な分野の一つであるリーマン幾何学を基本的な文献であるといえよう.

第 4 巻 共形場理論入門, 土屋 昭博 述; 桑原 敏郎 記, 2004, 117p, 税込価格 1,900 円 (送料 290 円) [PDF] 共形場理論に関心をもつ人のために, その手法と考え方を初歩から解説する入門書. 京都大学で行なった集中講義『共形場理論入門 --- 作用素積展開のしかた教えます』をもとに, 共形場理論における基本的手法, 考え方である作用素積展開, 共形場ブロック, N 点関数系とそれが従う確定特異点型微分方程式等について 丁寧に説明する. そのために Boson 場を扱い, Wick の定理を証明したあと, $sl_2 (C)$ 型 アフィンリー環の可積分表現に従う$P^1$上の共形場理論を展開する.

ラベル

数学, 数理物理, 幾何学, 作用素環

小澤先生のアロハ装の真相についての当人の発言動画を紹介しておきたい

コメント

先日, 京都の RIMS にいる小澤先生のアロハ装について TL の一部で話題になっていた. 当人がそれについて語っている動画があるので, それを紹介しておきたい.

東大数理ビデオアーカイブスというのがあるのだが, その中に動画がある. 具体的にはここ, ビデオゲストブック, 2009 年度のビデオの 3:40 くらいからご自身で理由を語っている.

小澤先生自体がこう色々と見た目的に特殊なキャラ立ちをしているので, 興味がある向きは動画で実際に確認されたい.

ちなみに冬でも本当にアロハ一枚で動いている. 最近は時々ジャンパー一枚くらいはおるようだが, それでも基本的にアロハ一枚で本当に過ごしている. 歩くのがめちゃくちゃ速いのだが, 何故かを周囲の人に聞いたところ, 「寒いから速く動いて体温を上げようとしていると言っていた」という情報を得たことがある.

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数学, 数学者

北大, 戸松玲治さんの安藤-Haagerup 理論入門の講演を聞きたかった

本文

既に終わってしまっているが東大での戸松さんの作用素環の講演は面白そうなので行きたかった.

連続講演

講演者: 戸松玲治 (北海道大学)

題目: 安藤-Haagerup 理論入門

日時/ 部屋

2013 年 11 月 5 日 (火) 午後 3 時 30 分~5 時 30 分 数理科学研究棟 118 号室

2013 年 11 月 6 日 (水) 午前 10 時~12 時 数理科学研究棟 122 号室

2013 年 11 月 7 日 (木) 午後 3 時 30 分~5 時 30 分 数理科学研究棟 123 号室

2013 年 11 月 8 日 (金) 午前 10 時~12 時 数理科学研究棟 122 号室

アブストラクト: 作用素環の超積 ($M_{\omega}$ や $M^{\omega}$) は von Neumann 環の性質の特徴付けや 群作用の分類において重要な役割を果たします. 安藤浩志, Uffe Haagerup 両氏による仕事 (2012 年) は 超積 von Neumann 環についての理解をそれまでよりさらに深めるものです. とくに, 主定理 「超積状態の modular 自己同型群が, modular 自己同型群の超積と一致する」によって, III 型環の超積をようやく「正しく」扱えるようになった, といっても過言ではないでしょう.

講演では, 安藤-Haagerup の論文から, 以下の 3 つを含むいくつかのトピックスを抜粋して, なるべく self-contained に証明をつけます.

  1. Groh-Raynaud 型の超積と Ocneanu 型超積の関係.
  2. 超積状態の modular 自己同型群 = modular 自己同型群の超積
  3. 植田好道氏による問題 ($M$ が full 因子環ならば $M' \cap M^{\omega} = \mathbb{C}$ か?) の解決.

予備知識として, 冨田-竹崎理論, 標準型の理論をあげておきます.

確か作用素環に超積を持ちこんだのは Connes で, Connes 自体元々集合論というか, 超準解析的なことをしていたとか聞いたことがある. 冨田-竹崎理論は量子統計を作用素環的に扱う上での魂だし, 相対論的場の量子論を研究する上でも必須の道具だ. III 型環だし, 何かその辺を駆使する話ということで凄い楽しそう. 超積自体もよく知らないので, その辺も楽しそう.

聞きたかったので残念でならない.

ラベル

数学, 作用素環, 超準解析

1 文字の記号から展開される世界が見てみたい

本文

瀬山士郎さんによる『数学記号を読む辞典 数学のキャラクターたち』というのが出るらしい.

[2F] 好評発売中 『数学記号を読む辞典 数学のキャラクターたち』瀬山士郎著 1580 円 (技術評論社) これで数学記号の意味・読み・使い方がわかる! 小学校からはじめて, 大学までの数式が読めるようになる, 読み通せる辞典風数学エッセイ. http://pic.twitter.com/K9Rqd807VR

数学やら物理やらをやっていて思うのだが, 文字を 1 文字見ただけでそこから色々な世界が想起される. 例えば, $E$ は次のような色々な意味で現われる.

  • エネルギー.
  • 電場.
  • ベクトル束.
  • 射影.
  • 射影値測度 (スペクトル測度).

これはぱっと思いついたものを挙げただけで, 実際にはもっとある. さらにここから関連する色々な数学や物理の話がある. エネルギーは物理全体で大事な概念だし, 電場というところから電磁気での諸々が想起される. ベクトル束からは幾何の色々の話が想起されるし, ベクトル束上の話として Chern 類やら接続やら, 指数定理やら K 理論やら. 射影とくると作用素論, スペクトル分解を想起するし, 私ならさらにそこから量子力学や場の量子論での色々な話が頭の中を駆け巡る.

記号 1 つ見て何を思うのか, という話, 何かどこかでやりたい. DVD 用の小ネタとしても面白いと思っている. 数学・物理以外でも専門的に学んだ人にとって 1 文字でもそれだけから色々な世界が展開できると思う. その辺を喚起するような作品も作ってみたい. したいこと, たくさんある.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, DVD

「数式の書き方・読み方の約束事をあたりまえと思わず根気強く教える必要がある.自然にわかるものではない」

本文

何かこういろいろなことを考えたのでメモ.

記憶しておきたい.

ラベル

数学, 数学教育

「文系」への理系科目教育は知的虐待なのでやめてあげてほしい

全さんのツイート

STEM抜きの純粋文系で生きていける人なんて、中長期で見たら極小になっちゃうと予想できますもんね。

「純粋文系で生きていける」の定義があまりよくわかっていないが, それ本当? というのを真っ先に思う. 社会はそんなにやわなのかという気分がある. まずは全さんのツイート周辺を載せてから少し私の考えを書く.

ちょっと別の流れ.

とりあえず私の結論

まず「文系」の人に数学・理科をやらせるのは知的虐待なのでやめてあげてほしい. むしろほんやくコンニャクのように蒟蒻を食べると数学・理科がわかるとかいうような食品を開発できていない懦弱な理工系に猛省を促すべきだろう. 私はふだんこれを「工学は本当に使えない」と工学に対する不当な暴言という認識のもとで発言している. 理学の人間はどうにもならないので, 役に立つことが大好きらしい工学関係者に全てを押しつけている.

以下でおおもとの小町さんのツイートとリプライ集を載せるが, 上の umedam さんのコメントにもあるように, 理系の人間が「文系の知識・教養がない」と言われるのは文系と全く同水準の知識・知見がないことを罵倒されているわけで, 講義や世になるコンテンツなどでも配慮されている気配はない. 特に気にせず中高大では理系と同じようにやればいいだろう. 理系と違って「文系のための」みたいなコンテンツは世にたくさんあるし, 学校以外の部分での補填に任せればいい.

ちなみに理系のための語学みたいなのがないのはそれはそれで腹立たしいので, 一市民として浅学非才の身をかえりみず, 次のようなコンテンツを作るべく勉強会をしている.

市民なので気に入らないなら自作するまでだ.

小町さんのツイートとリプライ集

発端

観測範囲では人文・社会学系教員がどう考えても知らないようなことだと思うので, そういう内容を学生に教えるのもどうなのかという気がする. 勉強しなければならないこと, 専門としてカリキュラムに組み込まないといけないことが多いなかで全く役に立っていない知識・知見を教育する意味がどの程度あるのだろうか. 理系の場合, 技術倫理や関連法規などは社会によって課されていて役に立つというか知らない者・使いこなせない者は反社会的存在として様々な形の罰を与えられるため勉強する必要があり, さっさと諦める必要がある.

本質とは何か

中高の数学と理科, むしろガチガチの本質しかないせいで死ぬほど難しくてわかりにくいという印象がある. 「よくわからないがこのような事実がある」という剥き出しの博物学とでもいうか, お前の興味関心やどうすれば理解できるかといった話は知らない. 車は急には止まれないので諦めろという問答無用感はどうしようもなく自然科学理解の本質だろう.

よくわからないがとにかく知識を集積しておくというのもかなり人間の本質のようだし, とにかく知識を叩き込むという方向性もそれはそれで十二分に本質という気分もある. 何にせよ本質がきちんと定義されていないので具体的な話は何もできないし通じなさそう感にあふれる. 安っぽいといってもいいだろう.

文系科目, 理工系人の興味関心に沿って話してもらった記憶がないが, なぜ「文系」にはこの手の「甘え」が許されるのだろうか?

抽象的?

こういう大人, 知らなくても・わからなくても困っていないということを全力で訴えていて, この状況下で子ども達に数学・理科を勉強しろといっても絶対にやる気など出ないとしか思えない.

本質と楽しさ

楽しさは主観的で, 誰にとってどう楽しいかがそもそも難しい. あと上の本質の問題. メビウスの輪の議論がどんな本質につながって, さらなる勉強を円滑に進められるかという問題もあり, それは解決策なのかという気分がある. そして「わかった (気になった)」から何なのか問題がある. 先程のようにメビウスの輪は本質的 (未定義語) なのか, 役に立てられるのかと問うてくる人間もいるので講義計画がどんどん難しくなり, 対応できる人類がいなくなっていく.

本格的に知る

勉強する量がどんどん増やされていくの, 高校生も教員も大変だという気分がある.

大学受験に絞ると遠回り

黒木さんなど数学者のコメントを聞く限りむしろ急がば回れだそうだが, いまだに数学はよくわからないし, 受験の数学は思い出したくないくらい嫌な記憶しかないほどに苦手だったので何も言えない.

文系プログラマー?

プログラマー, 数学が必要な人はどのくらいいるのだろうか? そういうごく一部のエリートのことを考えるよりももっといろいろやることあると思う.

現実大好き人間

こういう現実大好き人間こそ理科をやるといいと思う.

文理分け

大学教員, よく学問的な訓練によって得られる思考力や問題解決力が社会に役立つというし, それを実践してもらえればいいと思うのだが, こういう方面で大学教員自身がその力を発揮しているのを見たことがないとも良く思う.

好き嫌い

社会科系で文系理系みたいな配慮があった記憶もないので, さっさと諦めたらいいのという気分がある. 結果苦労しているというが, 多少苦労する程度で, それできちんと生きていけるのだろうし, こういう大人の発言はむしろ学習意欲を減退させる原因ではないだろうか. 何かそういう社会学的・教育学的な調査がないだろうか.

あと小林俊行先生など教員の説明がクリアですごいと思ったことはあるが, だからといって内容がわかったわけでもなく, わかりやすい授業とかいうのがいまだにわからない.

単位取得?

知的好奇心を別の分野に向けるべきかどうかという問題がある.

よくある例外つき一般論らしき何か

文系よりも人が死んだ事件もあったからアート系の必修に組み込んでほしい

本来の専攻を学ぶ上でプラスになるとかいうの, よく聞くがどういう根拠があるのだろうか.

とりあえず坂本龍一には工学をやらせた方がよかったと思う.

科学哲学

単位

単位が取れたところで理解とは一切の関係がなく, 生兵法は怪我のもとと昔から言われているので, 逆に問題になるのではないかという気しかしない.

データサイエンス

データサイエンスとかいうの, やっていることはどう見てもエンジニアリングだしもっと誇りを持ってエンジニアリングを名乗ってほしい.

雑多な反応らしきもの

理系の倫理, むしろ社会で 1 番必要な科目だ.

ymatz さんも参加しているという Science Front に参加して適当に色々質問とかしてきて超楽しかった

本文

ymatz さんも参加しているという Science Front に参加してきたが超楽しかった. ネタは次の 3 つだった.

  • 「光電子分光法を通して観た"物性物理学"が見据える未来」
  • 「図形の大域不変量とその局所化ー $\mathrm{Spin}^c$ 多様体上の Dirac 作用素について」
  • 「新粒子探索ーヒッグス粒子のその先にー」

光電子分光法の話, あまり光電子分光自体には触れなかったような感じがするが, 超楽しい. やはり何だかんだ言って物性が好きなことを再認識した. 熱電関係の話, ペルティエ効果と言ったと思ったが実際に装置を作ってきていて比較的すぐに効果が分かった. 「ペルティエ効果の実感が湧かないという人向けに昨日秋葉原で買い物してきました」とか言って装置を出してくるの, 超格好いい. あれ見習いたい.

幾何の話, Witten がやばい. タイトルから言っても分かる通り指数定理の話で, 指数を調べるのに Dirac 作用素を直接調べるという協力な方法についての話だった. Confined potential (ベクトル束上の section らしい) をうまく使って情報を potential が 0 のところに局所化して調べるとかいう豪快な方法を紹介していた. 格好よくて興奮した.

素粒子トーク, ヒッグスを実際に使って何かやろうという話だった. 標準模型でも説明できないダークマターなどがあるので, まだまだ未知の粒子があるはずだからそういうところにも Higgs をどんどん使っていこうということだったというように理解している. Higgs, 一旦あるというのは分かったが新規な実験に使っていける程度に扱いやすい粒子なのだろうか, というようなことを今さらながらに思った.

皆, ぎりぎり研究の話にも触れていて, 話を作るの大変だろうなと思う. 自分もまた何かやりたい. DVD もそろそろ第 2 弾作りたいし, 研究もしたい. したいことはたくさんある.

あと, 当日このブログを見ているという数学の人に出会った. 量子力学とか場の理論関係で参考にしているとかいうこと. 役に立っているなら嬉しい限りだ.

数学科内で話していると「物理で出てくる Hilbert 空間は必ず可分なのか」というような話もするらしい. そういえば「可分性とか使わない証明をつけたい」とか言っていた後輩がいたが, なかなかパンチ力ある. そもそも Hilbert 空間自体は可分なところしか触っていないので, 非可分だとどんな面倒事が起きるのかよく知らない. ただ, Hilbert 空間自体は可分でもその上の $C^*$ 環 (特に CCR algebra, Weyl algebra) は非可分だったりはする. 作用素環だと普通, 基礎となる Hilbert 空間自体には可分性を仮定するので, Hilbert 空間自体を非可分にするととにかく面倒そうでやりたくないという程度の理解しかない.

ちなみに私が知る範囲の相対論を含めた場の理論ですら可分な Hilbert 空間しか出てこないので, 非可分なところ, 魔界というイメージある.

ラベル

数学, 物理, 物性物理, 幾何, 指数定理, 素粒子

Twitter まとめ: 慶應 SFC は社会のことなど気にせずもっと面白いことをしろ

本文

大した話ではないが, 折角いくつか呟いたのでこちらにもまとめておこう. 一言で私の希望をいうと, 「社会をどれだけ傷だらけにしようが お前らが腹の底から面白いと思うことを貫き通せ」となる.

まずこのようなニュースがあった. すごくどうでもいいのだが, 次の文章には驚いた.

最近は入試問題の「マンネリ化」により, 受験勉強が問題パターンの暗記一辺倒になってしまっていると指摘されている. そんな中で「目新しさを狙って暴走してしまったのでしょう」といい, 受験生の努力がむくわれる出題をしてほしいと話していた.

私は「お決まりの努力だけをしてきた受験生なんていらないよ. 触れたことがなかろうが瞬発力を見せろ」という SFC のメッセージだと素直に受け取っている. あとで『数学まなびはじめ (第 1 集)』の 小林昭七先生の分から淡中先生の記述を引用するが, 頭の回転速度 (だけ) で頭の良さを測ろうとするのは 愚の骨頂であると思っている. 無論私が頭の回転が遅いため死ぬ程頭に来るからだが, しかしそういうタイプの人でないと捌けない問題はあるはずで, SFC のそういう学生を最優先で仲間に入れたいという メッセージについては一切文句はない. 色々な人がいればいい.

これを受けて 次のようなツイート をした.

そしてこれに y_bonten さんから 次のような反応 があった.

私の返しは次の通り.

@y_bonten そんなに SFC に含むところがあるわけではないのですが, 思っているのは, SFC の理念です. 問題解決のプロを育てるといっています. 既存の枠にとらわれず入試における問題もきちんと解決していく様子を見せればそれだけでもかなりクールなことですが, そういう姿勢が見られない

@y_bonten 数独というのは確かに今までにないソリーションと言えないことはないですが, 流行り物という一面があります. たとえスベってでも自分たちが理想とする入試, 自分たちが育てたい, 共に歩んで行きたい学生はこんな人たちだ, というのを打ち出せばすごくいいと思うのですが

@y_bonten そこで, そういう気概が感じられない, 気をてらったようにしか見えないものを出してくるのはどうなのかと. ここで私が思いだしたのは東大の数学の入試です. 以前三角関数の加法定理の証明が出たことがあります. まさに教科書に書いてあるわけですが, これを東大が出すことに意味が

@y_bonten あります. 何を身につけていて欲しいのか, どういう姿勢で取り組む学生が欲しいのか (少なくとも数学関係者には) 明確に分かります. また, 小学校での円周率の問題がでたとき, 東大で円周率が 3.05 より大きいことを示せという問題が出ました.

@y_bonten 既存の問題形式でもそれなりの意味や社会的影響を出せることはあるわけで, 円周率は実際ニュースにもなりました. SFC も慶応の名を関するわけでそれだけでも社会的影響があるので, 何かもっと面白い社会実験すればいいのに腰砕け感溢れるのが情けないな, と

y_bonten さんからまたもう少し反応があり, さらにそれに私が返す.

@y_bonten そこをむしろ色々実験やってほしいですね. 既存の形態も織り交ぜつつ時々変なのも出すとか. ある年は全ては健全で盤石な基礎の上に作られるという信念に基づき標準的なものばかりにしたり, ある年は既存の道具は何も使えない, さあどうする? と言った趣向でやってみるとか

@y_bonten SFC の学生も当然大なり小なり失敗をしていくわけですが, それをいい年した大人が試行錯誤の過程を見せながらより良いものを目指していく姿を見せられればそれだけで面白いと思うのですが, 奇を衒っただけとしか思えないようなものを出すのに何の意味があるのと.

@y_bonten 究極的には半端でつまらないからもっと徹底的にやれという私の単なる願望というか一方的な期待です

もっと大人が手本を見せろ, 恥ずかしくないの SFC の教官陣は, というところだ. 東大数学のように, 「うちの大学は加法定理の証明もできないようなへっぽこはいらない」くらいの 強烈なメッセージを出してほしい.

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大学入試, Twitter まとめ

楕円曲線暗号のサーバー証明書, 導入第 1 号とのことだが, 楕円曲線暗号のサーバ証明書が日本で出ていなかったことを知る無学な市民だった

本文

楕円曲線暗号のサーバー証明書, 導入第 1 号は「小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記」という記事を見つけた. もちろん小悪魔女子大生とかはどうでもよく, 楕円曲線暗号というところが大事.

楕円曲線暗号のサーバー証明書, 導入第 1 号は「小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記」 (2013/6/7 14:48)

株式会社シマンテックは 6 日, 楕円曲線暗号 (ECC) 対応版 SSL サーバー証明書が, 株式会社ディレクターズの運営する商用 Web サイトとブログに導入されたと発表した. シマンテックは 2 月に商用の ECC 対応版 SSL サーバー証明書の提供を開始したが, 今回が導入第 1 号となる.

恥ずかしながら不勉強で知らなかったのだが, 楕円曲線暗号のサーバ証明書, (日本では) まだ稼動していなかったようだ. 楕円曲線暗号, 理論的には結構前だと思うのだが, どのくらい実装されているのだろう. ググれば Wikipedia とかに書いてありそうだが, そこをさぼる市民クオリティを発揮していきたい.

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数学, 応用数学, 暗号, 楕円曲線

(おそらく) 数学教育に関する takey_y さんの発言を記録しておく

本文

この辺からはじまる takey_y さんの発言を備忘録として記録しておく. ちなみにまとめるにしても Togetter の方が楽とか view も多いとか色々あるが, それでもブログに残しておくのはあとで自分で読み返すときに楽だからだ.

昨夜ちょっとだけ話題になってたことに参加すると, 今年の阪大数学の第一問. 僕は, あの感じの問題が増えるのは良いことだと思っています. この辺りの話は, だいぶ前にブログに書きました. → http://bit.ly/14NhoY0

承前) 昔の文章はこっぱずかしくて読み直すのが辛いのだけど (笑), 考え方はあまり変わってない. (というか同じ話をずっとしてるなあ・・・

承前) 昔の東大の加法定理の問題にせよ, 今年の阪大の第一問にせよ, 定義を聞いて証明させる問題というのは, 数学に携る人々の内部からも外部からも非難の声が上がる可能性が高い. 高校数学は所詮ニセモノなんだから, 論理体系のあり方に抵触するような出題はすべきでない, という声もあると思う.

承前) そういう非難の声を受けるリスクを背負ってでも出題してるわけで, どうしてそういう出題をするのか, という点が大事だと思う.

承前) 大学入試の数学の問題を「小論文」のようにする可能性はあるだろうかな, ということを少し前から考えていたのだけど, ちょうど「数学文化」の最新号では巻頭で宇野先生がこのことを論じられてた. http://bit.ly/14NjfMB

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数学, 数学教育

Twitter まとめ: 数学と共に潔くカッコ良く生きて行こう (It's a long long time)

本文

何かよく分からないが, Twitter でまだ 2 年くらいなのに院試のことを話している人がいたので, 思ったことをまとめてみた. 要は潔くカッコ良く生きて行こう (It's a long long time) ということだ. この辺 からはじまる.

まともに勉強していれば院試なんて四年からでも十分間に合うはずなのに何でそんなに気にしているのか分からない

@phasetr まともに, といっても物理学科での数学, という程度にいい加減なアレでも大学生の学業という意味で真剣に取り組んでいれば大丈夫的なアレだ

アレだ, 大学に入ってまで試験のための勉強とかしたくない的なアレもある. 適当なタイミングでの強制的知見整理としてのテストやレポートは助かる, という側面はあるし, 有効活用したいが

まずアレだ, 数学できる人間が格好いい, なので, それが第一であって知識量とかどこまで知っているかとかどうでもいい. それ格好いいの? と言われて格好いいと言えるかどうかこそが問題だ

例えば先走ってやりつつも全く身についていないという状態でも, 何かよく分からないが私の心が震える, 意味が全く分からないが定理の名前がとにかく格好いいとかでもいいから, こう, 格好いいと言える状態なら健全な勉強をしていると思っている

@phasetr 本当に格好良くなるために, というか格好良さを理解するためには どこかで必ず真っ正面からの打ち合いになって滅多打ちにされて立ち上がるところがまた格好いいのだ. 男の戦い (別に数学女子の戦いとかでもいいが) という感じ. クールにかっこかわいく数学しよう感

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数学

「どの分野にも非専門家に広く信じられている間違いがあります. リストを作っておくと啓蒙書を選ぶ時に便利です.」

本文

かもさんの指摘があったのでメモ.

どの分野にも非専門家に広く信じられている間違いがあります. リストを作っておくと啓蒙書を選ぶ時に便利です.

数理論理学で非専門家に広く信じられている間違いのリストの作りかけです. http://taurus.ics.nara-wu.ac.jp/staff/kamo/shohyo/logic-b.html まだ三つしかありません. 不完全性定理と数学的帰納法の項目を追加しなくては.

間違いを引用しておこう. 正確な記述は上記ページを直接参照してほしい.

  • よくある間違い 1 「一階述語論理は弱いので完全だが自然数論ぐらい強くなると不完全になる」
  • よくある間違い 2 「正則性公理 (基礎の公理) はパラドックスを排除するために導入された」
  • よくある間違い 3 「直観主義論理では, ラッセルのパラドックスは生じない」

ラベル

数学, 数理論理学, 数学基礎論

「女性にしかわからない科学がある」らしく号泣した

本文

何か山形大が地獄の底から湧き上がってきたような企画をやっているらしい.

「女性にしかわからない科学がある」 http://www.tus.ac.jp/madonna/kagu/event.html という標語は愚かで, かつ危険. この問題の歴史を学べ! 「男性にしか…」「若者にしか…」「日本人にしか…」「プロレタリアートにしか…」「マイノリティにしかわからない科学」等々は, 科学ではありません.

@hori_shigeki なので, 「そんなもん」なんですね. この国では.

@hori_shigeki 「女性にしかわからない科学がある」我の強い女性が好みそうな表題です. 単に女性の興味を引く為のキャッチコピーに過ぎないと思います. あまりいきり立つ程のことではないのでは?

いや, ちょっと…, やっぱり驚きました. RT @Mihoko_Nojiri なので, 「そんなもん」なんですね. この国では.

@hori_shigeki しかもこれだけじゃないんですよね. "カワイイ!! ステキ! 理系女子研究生活の魅力とは" http://unicon.kj.yamagata-u.ac.jp/modules/pico/index.php/content0385.html

@hori_shigeki 一つ一つクレームとか無理なんですよ.

センスの悪い中年男が, 若い女性にウケるのはこういう感じだろう! と勝手に想像して作り上げた惹き文句でしょうね. RT @Mihoko_Nojiri しかもこれだけじゃないんですよね. "カワイイ!! ステキ! 理系女子研究生活の魅力とは" http://unicon.kj.yamagata-u.ac.jp/modules/pico/index.php/content0385.html

@hori_shigeki これは背景のイラストもまずいんですよ. (なにこれスーツで実験するの) 工学部がやるとこういうことがおこる. 山形大学の男女共同参画室はごく普通なんですが.

@Mihoko_Nojiri @hori_shigeki 工学部…… orz

確かに. こういう傾向を正すのは科学者の仕事ではなく, 中高等教育や教養教育の関係者の仕事. ただ, こうした講座へ講演に行く科学者には, その度に厳しく言っていただきたいですね. RT @Mihoko_Nojiri 一つ一つクレームとか無理なんですよ.

@apj 先生のとこですね w これはねぇ, なんかやろうとして工学部だけで企画たてちゃったっぽい. あと, 院生がかんでる.

@Mihoko_Nojiri 女子高から受けてる相談だと, 手に職系の理系ということでみんなが医療系をめざしたがるけど医療系は接客業で向いてない人は向いてないから, 理工系でも将来食べていけるということを教えて欲しい, って話になってますね.

@hori_shigeki ただ, 続けてやってるとマシになるというか, リケジョとかいう講談社の始めた就職支援サイトも最初は「理系女子のおしゃれ」とはみたいなやつだったけど, 3 年たったらさすがにマシになった. http://www.rikejo.jp/

@Mihoko_Nojiri 大学や研究機関の人を連れてきてもそれは少数派なのであんまりロールモデルにならない気が. 企業に技術者として就職して活躍している人の話の方が理系進学の動機付けになりそうです. 今の高校生って, 卒業後の仕事がどうなるかかなり気にしてるようですし.

こういうコピーで女性の興味を惹こう, 惹けると思うのがそもそも, 女性なるものをナメていますよ. (続く) RT @ATOM929 「女性にしかわからない科学がある」我の強い女性が好みそうな表題…. 単に女性の興味を引く為のキャッチコピーに過ぎない…. あまりいきり立つ程のことではないのでは?

@apj そうなんですよ. それで, うちの理系女子キャンプ http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Highlights/20130412110000/ でも, 大学院生のセッションを作って, ほら修士の人のほうが, 就職状況に詳しいから.

(承前) 科学へのアクセスの普遍性の否定には暗澹たる歴史があります. 「女性にしかわからない科学がある」としたら, 真実を知る可能性に恵まれているのは人類のある特定のカテゴリに属する者だけだという結論になる. 重大な問題なのです. RT @ATOM929 いきり立つ程のことではないのでは?

@hori_shigeki タイトルを付けた人は残念ながらそこまでの深慮はないと思います. 注目を浴びればそれで良いとしか思っていないでしょう. 浅慮です. それは危険だと言われれば確かにそうなんですけどね. @hori_shigeki 重大な問題なのです.

インタラクティブにやると当事者の感覚が分かっていくのかと. RT @Mihoko_Nojiri 続けてやってるとマシになる…, リケジョとかいう講談社の始めた就職支援サイトも最初は「理系女子のおしゃれ」…, 3 年たったらさすがにマシになった. http://www.rikejo.jp

尚, リケジョは大学のサイトではないですね. (リケジョ作ったのは準「教え子」の一人で, 多分今も担当してると思います). RT @Mihoko_Nojiri リケジョとかいう講談社の始めた就職支援サイトも… 3 年たったらさすがにマシになった. http://www.rikejo.jp

@hori_shigeki これは講談社です.

はい. 逆に「男性にしかわからない科学がある」と言ってよいかどうかくらいは, 考えてほしいと思います. 責任は採用した大学にあります. RT @ATOM929 タイトルを付けた人は…注目を浴びればそれで良いとしか思っていないでしょう. 浅慮です. …危険だと言われれば確かにそうなんですけどね.

@Mihoko_Nojiri はい, 創設時にアイデアを聞いて, ちょい励ましたので講談社と存じています. その後の推移は知りません.

潰れたとはいうものの, 阪大の物理といいキモいおっさん達のセンスはいかにも地獄で社会性が高く大変に素晴らしかった (完). 私も適宜頑張ろう.

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工学, 相転移プロダクション

kyon_math さん筋の色々なツイート・やりとり

kyon_math さん筋の情報: 齋藤毅先生の Grothendieck に関する PDF

本文

みんな大好き kyon_math さんからの情報だ.

「エタール・コホモロジーの定義への道を開いたのは, セールによる, 代数幾何におけるファイバー束の定義だったらしい」. グロタンディーク by 斎藤毅 http://bit.ly/1i7eA2P

前もこの PDF を読んだことがあるのを思い出した. 細かいところ, ほとんど意味がわからないが, 代数幾何でいろいろ凄まじいことが起こったという雑な理解をしている. 代数幾何, 応用含めた守備範囲が尋常ではないくらい広いし, その空間認識が何より非常に気になるのできちんと勉強してみたいとはずっと思っている.

ラベル

数学, 代数幾何, 数論幾何, 数学者

Fibonacci 数列と解析数論の魔界

本文

今回は皆大好き kyon_math さん筋の情報だ.

Wikipedia 役に立つなぁ. フィボナッチ数列でこんなことが成り立っていたとは... http://bit.ly/1gSJAOX http://pic.twitter.com/R4NO5tu3E9

@kyon_math 西岡はデフォルトで (久) なんでしょうね

@Paul_Painleve お母さんですね.

@kyon_math 私, 父と子はよく知ってるけど, 母と話したことがないんですよ

@Paul_Painleve ああ, もしかするとお父さんかも. 今すぐには分かりません.

すみません>お父さん

@kyon_math そうそう, あの二人の研究は, 最初は違ったのに次第に惹かれ合ってどっちがやったか分らなくなってるから.

Wikipedia というより Fibonacci の魔界ぶりがやばい.

ラベル

数学, 数学者, 解析数論

Terence Tao に線型代数で殴り続けられる夢を見た

はじめに

線型代数トークで kyon_math さんのこの辺からの話が面白かったので記録しておく.

引用その 1

「理解する」のと「研究する」のはかなり違うと思う. (自分も含めて) 理解するだけの人なら世の中にはたくさんいるが, 数学が究極的に目指していることは, 難解で複雑に見えることを単純かつ簡明に, 誰でも理解できるレベルにすることにある.

難解かつ複雑なことでも, 技術が進み, 社会的な理解が進むと簡単になる (ものもある). 例えば複素数. 大昔は複素数そのものが難解で, しかも一流の数学者の研究対象であったが, いまや高校の教科書に載っているレベル. これは社会的な理解が進んだ例.

リー群やリー環だって, ここまで一般的になるとは思われていなかっただろう. リーマン多様体なんかもそうだ. いまや空気のごとき存在. ガロア理論は学部で習う.

しかし, 理解にはたくさんのレベルがある.

例えば, 学生時代に学んだ線形代数. その時は「それなりに」理解していたはずだが, その後, 研究者の卵→教師→中堅研究者と進むにしたがって, 見えている地平線はまったく異なってきた. そして, これからも異なって見え続けるだろう.

まぁ, 理解が進んで見えてる地平が異なってこないとすると, それはあまり深くないってことだし, そんなの一生かけて研究しようとは思わないよな.

線形代数の帝王になる

線形代数じゃなくって岩澤理論とか類体論とか書けばかっこ良かったなぁ. #誇大表示 とはいえ, 線形代数の帝王になるのでさえもかなり狭き門だが.

むかしハウ先生の研究室にお邪魔してた時, いまは亡きラングが闖入してきて「きみ, ロジャーは線形代数の帝王なんだよ, 知ってるかい? 」「もちろんよく知ってますよ」と答えておいた.

学生だと思われたんだと思う

線形代数がどれ位深いかというと, 最近のものではホーン予想. http://bit.ly/1aj4SlV http://bit.ly/1aApSpG

ホーン予想: エルミート行列の和 $C = A + B$ を考えたとき, $A, B$ の固有値から $C$ の固有値の範囲が線形不等式で書けるという単純なもの. ワイルが問題提起, 1962 年に予想されて, 解けたのが 1998 年.

ホーン予想の解決は Klyachko と Knutson-Tao によって独立に得られた.

ホーン予想 1

で, ジャグラーの Knutoson と紅顔の天才 (だった) Tao の解法はハニカムモデルと呼ばれ, リトルウッド・リチャードソン係数の計算などに幅広い応用を持つ画期的解法だった. http://bit.ly/1aApSpG

ホーン予想 2

ま, みんなよく知ってるはずのエルミート行列の固有値問題でさえこれほどの深みを持っていた. そして, その深さを見抜くには特殊の才能が必要である

よく知っているはずのなんでもない事実の裏側を, ほんの少し覗くととてつもない深淵が待ち受けている. それを見抜く目を持っているかどうか. 理解のレベルとはそういうものだ.

引用その 2

あとこの辺.

いやいや私のような若輩者には勤まりません. RT @Paul_Painleve: 線形代数雑誌の編集者はいかがでしょうか? NLAA http://onlinelibrary.wiley.com/journal/10.1002/ (ISSN) 1099-1506 LAA http://www.journals.elsevier.com/linear-algebra-and-its-applications/

@kyon_math 若輩って言っちゃあアカン立場でしょうに笑 線型代数の専門誌は数値解析やグラフ理論といった応用数学の話題が多いのですが, 表現論的にも面白いのではないでしょうか? 微積分のほうは微分方程式の中で普通に使われてて, 雑誌の形で切り分けられないのでしょうね.

@Paul_Painleve 線形代数たっていろいろありますからね. 0 と 1 のみの行列で各行各列にある 1 の和がある一定の値になるものの総数というと, 行列の問題ですが, 本質は組合せ論. それを組合せ論の手法でなく線形代数で解けるかというのが面白いと感じます.

とりあえず線型代数をなめている学生はこの辺で殴打していきたい.

ラベル

数学, 数学教育, 線型代数

個性的な数学・物理の教材を作って適当に狼藉を働きまくりたい

本文

kyon_math さんが面白いことを言っていたので記録しておく.

引用

本書いてると 「あ, コレを証明するためには, アレが必要なのか. そうするとアレも要るな. あ〜〜全部書き換えだぁ」 てなことになって, 結局古典的名著の構成は神という結論に.

@kyon_math 論理的に必要な順序, 歴史的な順序, 自分の頭の中での理解の順序がみんな違いますからね. 「自分の頭の中」がスパゲッティだから, 最初はそれが前に出て, 直すとますます悪くなる.

@kyon_math 自分にとっての頭の中の順番で書いていく本, 個性的で面白いのではないでしょうか. 「こう考えていくと次の命題が必要になることが分かる」ここから「今はこれを認めて進もう」となるか「なのでこれを示そう」と行くか, 後者はそこからまたさらに降下していくかとか, 個性が出る

コメント

上記の発言を読んで, 江沢先生の『理科が危ない 明日のために』の記述を思い出した.

すぐにどこにあるか見つけられなかったのだが, 大意は次の通り.

昔読んだ本で延々とある議論が進んだあと「ここまで来れば別の方針も考えられる」と言って今までの方針とは全く別の方針で議論をはじめた. 原稿を破り捨てて書き直しても良さそうなものを敢えて残して別の方針での議論を続ける. これが科学というものか, と思った.

普通教科書や論文は整理されきった記述しか残らず, 著者の苦闘の印などはなかなか見えない. もちろん専門的に学んだあとで見れば苦労が分かるということはあるが, やはり初学者では難しい. そうした苦闘の後をそのまま残す, 等身大の著者を見せてくれる文献はもっとあっていいと思う. 完璧主義者の人もいるだろうし, そうした記述を「手抜き」といって怒る読者もいるだろう. ただ, 普通の本, 定評ある本はたくさんあるのだから, 余程革命的な大発展があって基礎が大きく書き換えられたとかいう事情があるならともかく, 院レベルのゴリゴリの専門書ならともかく, その辺の教科書でそうした個性の輝きを見ることは難しい.

丁度こういう方面での間隙を埋める方向で色々考えている. 反例に関する DVD を出したのもこうした「趣味」と関係している. 教官が「冒険」するのもなかなか難しいだろうから, その辺の市民として適当に狼藉を働きまくりたい.

ラベル

数学, 物理, 数学教育

kyon_math さんから数理生物学の研究室の適当なリストを教えて頂いたので

本文

しょうもないことを言っていたら kyon_math さんに教えてもらったので.

数理生物学を学ぶことのできる研究室 http://bit.ly/MLPaf7

生命じゃないけど

RT @phasetr: @kyon_math 明大あたりに頑張ってもらいましょう

これらの研究室や研究者は「数理生物学」をキーワードに含む, あるいは, 関連する分野として「数理生物学」が含まれる研究活動をされておられます. 上記のリスト中, 同じ大学であっても一つの研究グループとして活動していらっしゃるとは限らず, 個別に研究活動されておられる場合もありますので注意してください. もちろん, 他にも数理生物学的な研究をされている研究者や研究に数理モデルを応用される研究者はあちこちにおられます. ネットの検索でも, 検索語をうまく選べば, 他の研究者も検索できることと思います.

ラベル

数学, 生物学, 数理生物学

kyon_math さんと Paul_Painleve さんによる『佐藤幹夫の数学』周辺の話を個人的に記録していきたい

本文

この間も『佐藤幹夫の数学』について思ったことをつらつらと書いたが, kyon_math さんも呟いていた.

数学者の話, とても好きなので読んでいて楽しいのでメモとして残しておこう. この辺からはじまる.

ツイート転載

冗談はさておき「佐藤幹夫の数学」のインタビュー読んでると D 加群がどのようにして考えられたのか, というか, どのようにして最初から佐藤先生の心の中にあったのかがわかります. http://bit.ly/14hXl3N

あれは考えたんじゃないよね. 始めから頭の中にあったんだよね. そういうもん.

リンク張り間違った: 冗談はさておき「佐藤幹夫の数学」のインタビュー読んでると D 加群がどのようにして考えられたのか, というか, どのようにして最初から佐藤先生の心の中にあったのかがわかります. http://bit.ly/18FYN4a

そんな失礼なこと書いたかなぁ. 覚えてない. 物理は「現実」宇宙を相手にしてるだけで, 不完全なんて畏れ多い. 数学には不完全性定理がありますが... #そりゃチガウ RT @ayafuruta: ...数学の人は勿論「数学が先」で, 物理はその不完全な解釈の 1 つ.

ある意味で物理の人の方が過激ですよね. 数学者がせっかく論理で攻めてるのに, 「現実がこうなんだから, こうなるはずだ〜〜!!!! 」とか言って突撃して, しかもそれが正しいんだから参っちゃう.

その意味でも数学者は確固たる「現実」を築く必要がありますよね. 負けてられないので. まぁとりあえずアデリックな宇宙から行くのかな.

@Paul_Painleve ああ, いやいや, 超関数じゃなくて D 加群の方. 方程式を解こうとしないで, ほんとうに方程式だけを正直に考える. 解はその後に勝手についてくる.

@Paul_Painleve 超関数にしても「どういう具合に定式化するべきか」で悩んでコホモロジーで行けると思ったんじゃないんですかね? 超関数は在って, それを記述する言語を求めた, と思えませんか?

木村「だけど,何で双対を考えるんですか? 」 佐藤「だからさ,説明するからね.何べんでも,今日わからなかったら,また次に説明 するからね.僕はいつもだいたいくどいって言われるくらいだから,ね. そんな話は前に聞いているっていうことをよく言われるよ.」 で笑撃の (続

木村「僕にはちょうどいいです」 佐藤「それは,ちょうどいいや,君には説明しやすい.(笑) 」 http://bit.ly/18FYN4a 大野さんの書評よりとらせていただきました→ http://bit.ly/17IXh4n

この師弟の対話, なんど読んでもほのぼのとしてていいな. 好きです. 木村さん, 突っ込みといい, 同時に演じるボケといい, 深い味わいだしてる. 関東人にしておくのもったいない.

やりとりメモ

あと Paul_Painleve さんとのやりとりメモ. まずはここからのやつ.

この師弟の対話, なんど読んでもほのぼのとしてていいな. 好きです. 木村さん, 突っ込みといい, 同時に演じるボケといい, 深い味わいだしてる. 関東人にしておくのもったいない.

@kyon_math 本には書いてないと思いますが, その前に, S 「だから神保君」 K 「僕は木村です」 S 「なかなか人の名前を憶えられなくて」が, 実はついているのですよ

そしてこれ.

あれは考えたんじゃないよね. 始めから頭の中にあったんだよね. そういうもん.

@kyon_math 一高時代に, 岩波講座の竹田清「不変式論」の文献にあったヒルベルトの syzygy の論文 (たぶん http://www.digizeitschriften.de/dms/img/?PPN=PPN235181684_0036&DMDID=dmdlog45) を読まれて, 「これが数学というものか」と思われたそうですから, 始めからじゃなくてその後だとは思います.

@Paul_Painleve ああ, いやいや, 超関数じゃなくて D 加群の方. 方程式を解こうとしないで, ほんとうに方程式だけを正直に考える. 解はその後に勝手についてくる.

@Paul_Painleve 超関数にしても「どういう具合に定式化するべきか」で悩んでコホモロジーで行けると思ったんじゃないんですかね? 超関数は在って, それを記述する言語を求めた, と思えませんか?

@kyon_math その種の intrinsic な視点は, おそらく syzygy やワイルの Classical group 辺りがベースだとは予想してます. 昔から講演でよく紹介される Tschirnhaus 変換とか何で勉強したのか, 私にはわかりません.

@kyon_math それはそうだと思います. 一変数はすぐできたけど, 多変数にするのに夏休み全部かかったそうですから. Cartan-Eilenberg が出たばかりで, 局所コホモロジーもまだなく, それを $C^n$ の中の $R^n$ に適用するのに道具を自分で作らないといけなかった.

ラベル

数学, 数学者, 代数解析

数学初年時教育に関する kyon_math さんと Paul_Painleve さんと suzukit216 さんあたりの会話を備忘録として記録しておく

その 1

この間 Twitter 上で kyon_math さん周辺が高校数学から大学数学への接続みたいな話を色々していた. 自分の備忘録として目についた範囲で適当に記録を残しておく.

とりあえずこれ.

数学教育において, 大学入学直後に高校までとの違いを実感させる派と, 高校→大学へシームレスにつなげる派の争いは, 大昔からずっとあるが未だに結論は出ていない. ただ, 10 年単位でみて昔よりは「大学の壁」を下げているのは事実である.

自分が在学していた頃しか知らないので何とも言えないが, 「大学の壁」というのは何を指すのだろう. あと別件だが, 数学科は数学だけ, 物理学科が物理と (必要な) 数学だけしていればいいから楽だが, 他学科だと他にも色々しなければならず, 本当に大変だろうと前からずっと思っている.

以前, 「物理や数学が難しいから」という私には不可解な理由で工学部に進学したとか言っている人を見かけたが, どう考えても工学の方が苛烈. しなければいけないことは多く時間は限られているとなると, 破滅的な詰め込みと大概の人間の理解力を越えたペースで進まざるを得ず, これを乗り越えられる人間はもはや修羅しかいない.

つらい.

その 2

次はこれ.

いや, やっぱりシームレスにつなげた上で, ガーンと一発お見舞いしとかないと... RT @Paul_Painleve: 数学教育において, 大学入学直後に高校までとの違いを実感させる派と, 高校→大学へシームレスにつなげる派の争いは...

@kyon_math 線型は佐武, 微積は杉浦あたりを使えば, 一応は「シームレスにガーン」になってますよね. たぶん学生側は, 大学の巨大な壁を感じまくるでしょうけど. 今は, 線型性や $\epsilon \mathchar`- \delta$ の細かい話を 1 年の中でも少し遅らせる傾向が強いと思います.

@kyon_math @Paul_Painleve 高校数学の内容を「より深く」考えるのであって, そもそも「違う」はずはないんですよね.

学部が数学科ではなかったので純粋に数学科だとどうするべきなのか, またはどうなっているのかは全く分からないが, 他学科だと何故そんなことを考えるのか, 自分の学問でどう使うのかというイメージが全く持てないとつらいと思う. 私は比較的数学を数学のまま扱える方ではあるが, 数学として何がどう展開していくか, という部分は数学科でも大事だろう.

前にも書いたが, 私の場合は一浪してようやく大学に入ってはじめの一週間, ずっと高校でもやったような話でがっかりしていた中, 一週間最後の金曜に実数論で全力で殴られ, 「こんな訳の分からないのをやるために一浪してまで大学に来たのだ」と感動した方の市民なので, 多分こうアレな方なのだろうという気がしないでもない.

ふと思い出したのだが, この間『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』というのを読んでみた.

面白かったのでそのうち備忘録的書評を書くが, この中で先生が「私は意味のあることしか教えていない. お前がその意義を理解できるかどうかは別だ.」という台詞があった. こういう話はよくあるので, 上記のような「数学として何がどう展開していくか, 今していることの意義」みたいなことは, 言ったところで分からないからわざわざ言わないという選択肢, かなり真剣に検討すべき事項だと思う.

この間, Twitter でも「名著と言われる本を読んで, 分からなかったところがあり自分で説明を考えたが, あとで良く読み返したら自分で考えたのと同じ説明が書いてあった.」という呟きを見かけた. 真面目な人が真面目に勉強していてもこういう話が本当にあり, これはそのまま上記の話につながる. 教える方も頑張って気を配って言って, 学ぶ方も真剣に聞いていても起こる面白い現象だ.

詳細は忘れたが, 前に irobutsu 先生が「もっと早く教えてくれればよかったのに, と皆いうが, 早く教えても意味全然分からないと思うよ」みたいなことを言っていたことも想起した.

その 3

次はこれこれ.

まぁ基本, 数学は誰でも理解できて使えるはずですから. 究極的には人類がしっかり進歩して幼稚園児にも使えるようになって欲しい. #まだ進化の途中ですな RT @quasiac: 「高校数学は幼稚園児でもできる」っと…

一方で数学を生み出すことはまったく異なるのではないかと.

世界が悲しみに包まれた.

その 4

そしてこれ.

グローバル大学につながらない苦しみはいずこへ...? RT @On_Absolute: 加藤先生は, "Global につながらない苦しみが cohomologie になるのだ" と説かれます.

@kyon_math @On_Absolute そうか, 英語ができなければ, 層係数コホモロジーや導来圏を勉強すれば, グローバル化できるのだ

@Paul_Painleve @On_Absolute 数学はユニバーサルな言語ですからね.

そろそろ京大は宇宙際大学を名乗り始めるべきだ. あと global analysis の研究で何かそういう予算とれないの.

その 5

そしてこれ.

わたしは最近「違う」のではないかと思っています. いまの高校数学は昔より算数化していて, 教え方は特に算数化している. RT @suzukit216: @Paul_Painleve 高校数学の内容を「より深く」考えるのであって, そもそも「違う」はずはないんですよね.

@kyon_math @Paul_Painleve それを言うなら大学初年度の微積と線形も…

@kyon_math それはここ 20 年以上かけて, 高校数学とのギャップをなくそうとしてきたから. 私よりも実体験として理解してると思う@suzukit216 さんに言うことではないですが, 理工系大学の多くは最底辺でなくても, 大学 1 年で数 III の復習をやらないと講義が成り立たない.

@Paul_Painleve @kyon_math 数学科以外の理系学部でε-δ論法とか位相集合論をやらなくなったのはいつ頃からなんでしょうか?

@Paul_Painleve @suzukit216 まぁ工夫しているのはわからんでもないのですが, 一度連続性や微分可能性を通過してから $\epsilon \mathchar`- \delta$ やれったって困りますよね. 数学って論理のつながりだから, やっぱり破綻する.

@suzukit216 @kyon_math 大学によって, 人によって差があり過ぎるので一概に言えませんが, 阪大だと 90 年代は難波さんの本 http://www.amazon.co.jp/dp/4785314087 が一つの標準と思われてましたが, 2000 年代に入って諦めた人がしだいに増えたと思います.

その 6

次はこれ.

その傾向は大学にも及んでいて, 現在, 多数の大学で初年度は計算方法しか教えていないのではないかと危惧します.

その 7

そしてこれ.

微積では $\epsilon \mathchar`- \delta$ 抜き, 一様収束抜き. 線形では抽象ベクトル空間には触れない. 次元公式はやるが, あくまでも行列版で, 商空間はやらない. 次元公式より準同型定理の方がよほど簡単なのに.

@kyon_math いやいや, 深谷圏でも理論ができる前, かなり初期の頃は, ベクトル空間としての次元が同じだから圏同値になるはずみたいに言ってたような. 全てわかってしまえば笑い話.

@kyon_math あ, あれ, 後期一年生の線形代数の準備中で, とりあえずベクトル空間の定義をノートを書いたのですが……

@kyon_math 易しい教科書でも, 連続函数の積分可能性を言うためだけに一様連続の定義が書いてあったりするんですよね. で, 一様収束はない.

@abenori いや, H 大はいいの. ちゃんとやって下さい. しかし, 東北大の昔の教養のテキストは最初にいきなり抽象ベクトル空間. そしてそれから数ベクトルですね. 理論の流れはこちらの方が自然.

@abenori あ, 目次見ると私の記憶が間違っていたようである. やっぱり, 数ベクトルからだな. いきなり基底と次元をやるのが心に残ってたと見える. 訂正します.

@cocycle @abenori @kyon_math 1 年次は数ベクトルだけに留める, というのも一つの見識だとは思うのですが, 数学科は 2 年に教え直さないといけないのはもちろんとして, 1 年次は行列計算をちゃんと学生に演習させないといけないのですが, そこが難しいですね.

@Paul_Painleve @cocycle @abenori 線形代数つまらんという感想が多いのですが, やはり単なる数値演算に終始するのが元凶なんではないかと. しかも出てくる数値がことごとく「整数」ときどき「有理数」, 後期に入ってルート 2 か i くらい.

他はどうか知らないが, 物理だと量子力学でどうしても線型空間が分かっていないと困る. おそらく, 限りなくユーザ側に近い立場で使うだけなら具体的な微分方程式としての Schrodinger 方程式が扱えればいいのだろう. ただ, せっかく物理学科に来て物理学科の学生として量子力学を学ぼうというのなら, やはり抽象論は知っておきたい.

最近忙しさにかまけて Hilbert 空間論のセミナーの準備全くしていない. 申し訳ない @ぞみさん.

その 8

そしてこれ.

わたしは最近「違う」のではないかと思っています. いまの高校数学は昔より算数化していて, 教え方は特に算数化している. RT @suzukit216: @Paul_Painleve 高校数学の内容を「より深く」考えるのであって, そもそも「違う」はずはないんですよね.

@kyon_math @Paul_Painleve それを言うなら大学初年度の微積と線形も…

@kyon_math それはここ 20 年以上かけて, 高校数学とのギャップをなくそうとしてきたから. 私よりも実体験として理解してると思う@suzukit216 さんに言うことではないですが, 理工系大学の多くは最底辺でなくても, 大学 1 年で数 III の復習をやらないと講義が成り立たない.

@Paul_Painleve @suzukit216 まぁ工夫しているのはわからんでもないのですが, 一度連続性や微分可能性を通過してから $\epsilon \mathchar`- \delta$ やれったって困りますよね. 数学って論理のつながりだから, やっぱり破綻する.

@kyon_math @Paul_Painleve 全部逆に辿れば不可能ではないとは思いますが, 連続性も $\epsilon \mathchar`- \delta$ を使った方が, 確かにずっと楽ではありますね.

@suzukit216 @kyon_math $\epsilon \mathchar`- \delta$ なり実数論をちゃんとやらないから, 中間値の定理と閉区間の最大値定理が証明できない. 平均値の定理もできない. 一様収束も無理なので函数列の極限とか微分・積分の交換可能性も無理. なのに, 一様連続だけは言葉だけ教える.

@Paul_Painleve @kyon_math 中間値の定理と最大値定理の証明は $\epsilon \mathchar- \delta$ やらないと無理ですね. ロルの定理は極限を使った実数の連続性から言えそうですが. もちろん順序の問題だけで, 最終的には $\epsilon \mathchar- \delta$ に行き着くわけですが.

調子に乗って超準解析は, とかいうと TL 上の修羅から殴打される.

その 9

そしてこれ.

ですね. 連続関数なんて超難しいのを扱うからそうなる. 高校と同じく原始関数を持つものだけ扱えばよいのではないかと. RT @Paul_Painleve: 易しい教科書でも, 連続函数の積分可能性を言うためだけに一様連続の定義が書いてあったりするんですよね. で, 一様収束はない.

連続関数という修羅.

その 10

次はこれ.

その意味では高校の教科書ってよくできてるんだよなぁ. ああも難しいところをきっちり隠蔽した上で計算上なんの支障もないように, 表面的には論理に破綻をきたさず... すごいと思う.

@kyon_math 全くもって同感です. あれは本当にすごいと思います.

そういえば前, 何か色々な人と話をしていたとき高校の教科書の話になり, 松尾先生が「ベクトルのところで『ベクトル方程式』というのが出てくるがアレはいかん」とかいう話になって, たまたまいて高校の教科書の作成者的なアレに名前が載っていた坪井先生にそれを言ったところ, 「私もそう思いますが色々あるのです」とか言って苦笑いしていたのを想起した.

その 11

そして これ.

数年前に K 中先生に, 教科書の執筆者として F 谷先生を迎えたんだが, あの積分の定義に激怒して, あんないい加減なことやってちゃイカン, 定義をしっかりせよと主張. しかし K 中先生, 少しも慌てず「では, その定義は F 谷先生にお任せします」

@kyon_math いい加減なことをやってるんですが, 全体を見ると, そのいい加減さが, いい加減になっていて, よくできてるな, と (何を言ってるんだ, 私はいい加減な人間だな)

@Paul_Painleve 高校の教科書は, あれは相当考えて作ってますよ. ひるがえって, 大学の教科書の方があまり考えてないかも.

@kyon_math 厳密性が高い方が, 理論を組み立てるのが楽ですからね. つまり, 微積はちゃんと $\epsilon \mathchar`- \delta$ や実数の連続性から勉強するのが, 大学生にとっても一番楽なんだよ, という話に.

"@Paul_Painleve: @kyon_math 厳密性が高い方が, 理論を組み立てるのが楽ですからね. つまり, 微積はちゃんと $\epsilon \mathchar`- \delta$ や実数の連続性から勉強するのが, 大学生にとっても一番楽なんだよ, という話に. " 僕の学生は必見ね.

ふと思い出したのだが, 前から物理でエネルギーをどう定義したらいいか分からなくて困っている. とりあえず Wikipedia 先生にお伺いを立てるとこうある.

(物理学) 仕事をすることのできる能力のこと. 物体や系が持っている仕事をする能力の総称.

一方, 仕事の定義はこう.

物理学 (力学, 熱力学) において仕事 (しごと) とは, 物体に加えた力と, それによる物体の位置の変位の内積 (スカラー積) によって定義される物理量である. 熱と同様にエネルギーの移動形態の一つで, MKS 単位系での単位は N · m もしくは J である.

言葉の濫用という可能性もあるが, 量子力学での基底エネルギーとか束縛エネルギーというときのエネルギーと整合性が取れるような定義, どうすればいいのだろう. 基底エネルギーのエネルギー, 上記の意味で使われているとは思えないのだが.

今回もとりとめのない話に終始した.

追記

他のところでも書いているが, 鴨浩靖さんからのコメント.

とても参考になる.

ラベル

数学, 数学教育

東大数理の小林先生があまりに格好よかったのでついでにいくつか話題を紹介する

はじめに

小林俊行先生に関するスーパー格好いい紹介記事が Twitter で流れてきて深い感銘を受けた. ツイート自体はこれだ.

「心に残る最高の先生」 http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews/news2006-2.html#essay

サルマ ナスリンさんによる小林先生の紹介記事自体はこれだ. 文章がバングラディッシュの悲惨な様子から始まるためそこで精神的にくるものがあるが, とりあえずそれはおいておこう.

引用その 1

まずここからして格好いい.

そこで今度は数学科の事務室へ連れていってもらい, そこにいた男性に声をかけた. その人はピンク色のシャツを着た若い男性で, 大学 4 年生あたりか, その事務室の新米スタッフのように思われた. 夫はおとなしく 待っていた. しばらくすると若い男性が笑顔で夫の方を向き, 英語で「どんなご用件ですか? 」と話しかけてくれた. 私の夫は, 数学科の先生に会いたい旨を伝えた. するとなんとその若い男性が「オーケー. 私でよかったらお話ください」といったので, 私の夫は驚き, 「あなたが先生? 」と尋ねた. 彼は「はい. 小林俊行と申します」. と答えた. 夫はそのとき, 自分はからかわれているんじゃないかと思って心配になり, 体が震えてきてしまったそうである. しかし私の夫はなんとか落ち着きはらって, 小林先生に自己紹介をし, 何のために東大に来たかを告げた. すると先生は, 当然のように然るべき手続きをはじめられ, 私を東大の修士課程に留学できるようにしてくださったのである.

何でこんなに格好いいのか.

引用その 2

講義中の小林先生は, たとえば問題の解き方にしても, 説明にしても, 数学の問題を出すのでも, それこそ何をやっても素晴らしくて, その素晴らしさがまた, ほかのどの教授とも似ていなかった. 小林先生は, 心底学生を信じていてくださっていた. 先生の異常なまでの忍耐づよさと, 学生に対する海のような懐の深さを私は決して忘れないと思う. 先生はどんな学生のためにも, その学生が必要なだけ時間をさくようにされ, 学生が数学の問題に悩んでいると, 解けるまで一緒に考えてくださった. 私は先生が学生にプレッシャーを与えたり, 自分の大学院生に問題を解くよう強制したりするのを見たことがない. 先生は学生にいつもこうおっしゃった. 「数学の問題を解くためには「ゆっくり」「しっかりと」「おちついて」が大事です」. と. そして「数学の問題を解いたり, 考えるのに決して急いではいけない」とも. 先生の教えはシンプルそのものだけれど, 私には普遍的なことに思われた. 数学のほかにも先生から学んだことはたくさんある. 時がすぎたら, 私の記憶の中の先生の姿も薄れることがあるのかもしれない. しかし私の心の中にいつも輝いている先生の言葉がある. それは「正直なのが一番」. 研究生活でも私生活でも常に実践するように, 先生が私に授けてくださった言葉である.

私も小林先生の講義を受けたことがあるが, 何も持たずに教室に現れ, 非常に明快な講義をしていた. 質問への応答も素晴らしく, 講義が終わると颯爽と去っていく. あれは真似したいと思ったものだ.

大学がやるべき国際交流

あと, こういうのこそ大学がするべきで, しかもおそらく大学にしかできない国際関係の構築だと思う. 他の国でもあるのだろうが, 例えばドイツでは留学生には自分の国を好きになってもらうことを第一にして, とにかくおもてなしをすると聞いたことがある. 留学生は基本的にその国のエリートだろう. エリートに良く思ってもらえれば当然それだけの見返りがある. 味方を増やすのは大事だ.

学生時代のエピソード

ちなみに小林先生は学生時代から頭角を表していた大概な化け物であり, しかも教育熱心でもあったことは『数学まなびはじめ 第 2 集』から分かる.

本からの引用

凄まじい記述を 1 つ抜き出しておこう. 学部 4 年のときのセミナーの様子だ. 以下に出る大島先生は大島利雄先生で, 小林先生の指導教官である.

秋の第 1 回目のセミナーでは, ゲルファント流の積分幾何について, それまでに勉強したことを私なりにまとめて発表することにしました. 私が話をはじめてしばらくすると, 大島先生は「ちょっと待って」とおっしゃって部屋を出られ, 研究室からノートを持ってこられました. そして, 私の話をノートに取りながらきいてくださったのです. このとき私はとても感激し, 「よぉし, 頑張ろう」という気持になりました.

学部 4 年の時点で大島先生がノートを取るようなセミナーができるとか, 化け物以外の何者でもない. 教官にノートを取らせるレベルのセミナーができる, というのは実際に指導教官にセミナーを見てもらったことがある者ならどれだけ凄いことか分かるはずだ.

また, 小林先生が数学会の章を取ったときの大島先生の業績紹介の文章だったような気がするが, 小林先生の仕事は非常に斬新で, はじめは理解できる者が非常に少ないらしい. しかしいったん理解されるとすごい勢いで広まっていく, みたいなことが書いてあった記憶がある. 小林先生レベルに明快に議論できる人ですらうまく伝わりきらない斬新さ, 恐ろしい.

あとこれは確か河東先生から聞いた気がするのだが, 事務的な能力も極めて高いらしい. 小林先生, 今の所属は東大だが, しばらく京都の RIMS にいた. そのとき, 毎週だか毎月のように東京に出張してきて学会関連の仕事などを精力的にこなしていたと聞いた. 超人だと思う.

大島利雄先生の逸話

あと, 大島先生の逸話も折角なので紹介しておこう. 大島先生, 業績についてはもちろん申し分ないのだが, 講義はあまりうまくないようだ. 東大の人に聞いたところによると, 同じく東大に息子さんがいたようなのだが, この息子さんもまた優秀でしかも非常に明快な説明ができるらしい. 「--君 (息子さんの名前:名前忘れた), お父様と講義代わってほしい」と言っていたのを思い出す.

あと無茶苦茶な話として次のような話も聞いた. 大島先生は東大数理の研究科長をしていたのだが, 研究科長というのはもちろん忙しく, 色々な仕事が増えるわけで, 普通は数学の仕事量 (とりあえず論文数) が減るだろう. ただ, 大島先生は研究科長のときにむしろ論文数増えたらしい. 大島先生から直接聞いたわけではないのだが, その理由が凄まじかった:時間がなくなったのでライブラリを作らなくなって, その分速くなった.

大島先生は TeX の dviout を開発しているくらいなので, プログラミングもできる. 研究するときにはまずライブラリを作るらしいのだが, 時間がないのでこれを省いたそうだ. その分速く結果が出るようになって, 論文数が増えたとのこと. 聞いた話なので多少誇張があるのかもしれないが, 事実の部分があるのは間違いない.

師弟揃って凄まじい.

サルマさんの本

あとこれによるとどうやらこのサルマさんによる本が出るらしい. 買うしかない.

[2F] 7 月発売予定 『日本で数学の博士をとるまで』ナスリン・サルマ 1800 円 (丸善出版) 科学者への道 (特に数学研究) を志す全ての人に勇気と元気を与える本. 数学課で博士をとるまでのノウハウ, 心得も知ることができる.

あとで所詮グランデMATHの人に聞いたら, 出版の話を聞かなくなったとか何とか聞いた. 悲しい. ぜひ出してほしい.

ラベル

数学, 数学者

モデル理論での記号の読み方と Mathpedia の宣伝

とりあえず Mathpedia

バチバチと記事が追加されている. 私がやりたい方向とは必ずしも一致しない感じで進められている. この方面は Mathpedia に任せてよく, かえって私は私のやりたいことに集中して大丈夫そうな気がしていて, 応援しているサイトでもある. とりあえず見に行くといいだろう.

発端と結論

発端

結論

その他

あとは気になったことを備忘録としてまとめる.

嘉田さんのツイート

こういうのまで含めて知りたかった. 現代数学探険隊でも記号の (英語での) 読み方などは書いているが, コンテンツ置き場をいろいろ変えたくなることがあり, そして古い情報を残してよけいな混乱と失望を与えないためにもその辺はメルマガ登録特典的な方法で公開する方向にしている. その辺, 改めてきちんとやらないといけないな, という気分になっている. それこそ YouTube 動画で日々コンテンツを作る過程で整備すればいいのか, という気分になっている. 毎日の YouTube 投稿習慣を作ったのがいい方向に来ている気分がある.

それはそれとして, このサイトももっと整理したいと思いつつ時間が取れていない. できることと大事なことを考えていてやっていく方の市民

嘉田さんのツイートへの反応 その 1

嘉田さんのツイートへの反応 その 2

量子力学の数学に関する文献など: あとセミナーもしよう

本文

また Ask.fm. 質問はこれ.

量子力学の数学的な基礎を勉強したいのですが, どのような分野を勉強すれば良いのか教えてください. ご面倒でなければ参考になる本についても教えていただきたいです.

色々なところで言っていたりするのだから それ見てよ, という気もするが, 一応回答.

量子力学の数学的基礎も超大雑把に言って, 作用素論系と偏微分方程式系に別れるような感じがあります.

私がやっているのは作用素論・作用素環系ですが, それについては例えばニコ動に置いてある http://phasetr.com/services/niconico/ の 量子力学・量子統計周りの話を眺めてみて下さい.

参考文献ですが, 作用素論系では参考文献集にある新井朝雄先生の本がベストです.

微分方程式関係だと Lieb がリーダーです. Lieb-Loss の Analysis が基本的な文献と言っていいでしょう. 量子力学というより量子多体系, 量子統計の色彩が強いですが, The Stability of Matter in Quantum Mechanics もお勧めです. ちなみに両方とも新井先生の本ほど簡単ではありません. とくに Analysis は関数解析くらい知っている, と思って 読んでいると痛い目を見ます.

色々な不等式の最良定数評価がかなり早い段階から出てきて, 前から順番にきちんと読もうと思うと 3 章が 最良定数含め, とてもきついです. 面白い本ではあります.

あと, 作用素論との関係が強い (作用素論的性質の解析に使う) という イメージがあるのですが, 確率論からのアプローチもあります. これも新井先生の本をまず読むのがいいです. その次は Simon の本あたりでしょうか.

場の理論に行くなら Betz-Lorinczi-Hiroshima を読まねばなりませんが, これはかなりきついです. 確率弱者の私は読めません.

関東近郊の方なら適当にゼミやるのに誘って頂ければ, 話す方含め相談のります.

Twitter でもいいですが, 適当にメール・問い合わせからご連絡・ご相談頂ければ.

メルマガの方で時々触れることを考えているので, ご興味ある向きは ここから 登録されたい.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 量子力学, 作用素論, 作用素環, 確率論, 実解析, 物質の安定性, 量子統計

小林昭七先生の『顔をなくした数学者』というエッセイが出るので積読を消化して読みたい

本文

書泉グランデ MATH が小林昭七先生の随筆の宣伝をしていたので私も宣伝しておく.

[2F] 新刊入荷! 『顔をなくした数学者 数学つれづれ』小林昭七著 (岩波書店) 50 余年米国の大学で教鞭をとり, 世界的な業績を挙げた著者初エッセイ集♪

ちょうどこの間, 昭七先生の記事を書いたのをググって見つけたという昭七先生の弟君であるところの 久志先生からお問い合わせを受けて久し振りに昭七先生の文章を読んでみたいフェーズにあることもあり, 積読を消化したら買って読みたいと思っている.

ラベル

数学

第 2 外国語と数学と物理

はじめに

これのもとの文章は 2013 年に書いていて, 2021 年時点はむしろ数学・物理・プログラミング・語学を軸に, 「理系のためのリベラルアーツ・総合語学」という視点で活動している. 関連するコンテンツもいろいろ載せているのでぜひこのサイトを眺めてほしい. アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会などもある.

本文

ロシア語という修羅の道を踏破せんとする若き鬼が跋扈しているようだが, 私の第 2 外国語はドイツ語だった. 理由は単純で, ヘルシングで出てきた Freulein という言葉が使いたかったからというその一点に尽きる. 今からすればフランス語にすれば良かったと思わなくもない.

何故フランス語かというと, 数学の文献 (論文・教科書) は時々フランス語のがあるからだ. 特に代数幾何・数論幾何だとフランス語読めないと話にならない面もあるとか何とか聞いている. Bourbaki 周辺の悪魔が暗躍しているせいなので, フランス人倒したい. 幸運なのかどうなのかよく分からないが, 私自身はフランス語の文献を読まなければならなくなったことはない.

ロシア語

ただ, 実際読んではいないが, 論文でロシア語の文献が引用されていて困ったことがある. 構成的場の量子論の論文だったが, 汎関数積分 (確率論) を使っていて, 関係する確率論の参考文献としてロシア語の文献が出ていた. せっかくだから少し基本的なところを勉強するか, と思って見たところ in Russia と出ていたので, ひどく憤慨した. 多分 Lorinczi が主犯だと思う. 倒したい. ドイツ人のはずの Spohn も共著者にいたと思うのだが, ロシア語読めるのだろうか.

ロシアは冷戦の時代に西側と学術のやりとりもかなり途絶えていた関係で, ときどき文献として挙がってきて怒りに震える諸氏もいると聞いている. ただ, 数学ならフランス語しておいた方がいいのではないか, という感覚はある.

2 外ではないが, 無駄にラテン語をやったりもしていた. こう何となく, QED 的なアレをきちんと勉強してみたかった, というのもある. そういえば, QED に関して, 物理も数学も全然関係ない知人が「 QED, QED 」と言っていて, 「何故急に量子電気力学 (Quantum Electrodynamics) と連呼しはじめたのか」と訝しんでいたところ, 実際には漫画の話だったというどうでもいい話がある.

物理だとドイツ語の方がいい, とかいう話を聞いたこともあるのだが, 理由は全く知らない.

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数学, 物理, 量子電気力学

Milnor とか Bott-Tu でトポロジーのセミナーをしよう

本文

また Ask.fm から. まず質問.

学部で物理を学んでいるのですが 近頃数学の特にトポロジーに興味を持ち始めて 自分で勉強しようと思いたったのですが何から始めれば良いでしょうか. 線形代数と解析学に関しては学部一年生程度のレベルで履修はしています.

とりあえず回答.

トポロジーというのは位相幾何でしょうか. アレも意外と魔界で, 東大の古田先生のように非線型偏微分方程式を使うような部分すらあり, 何とも言いづらい面があります.

Bott-Tu や Milnor のが有名です. 私はきちんと読んだこと無いのでアレですが, 非常に明快だと言う評判です. 関東圏の方なら, むしろ一緒にセミナーとかしましょう. 個人的にはまず Milnor を読んでみたいです.

Bott-Tu のがこれ.

Milnor のがこれ.

一緒にセミナーしたいので質問された方はぜひメールされたい.

ラベル

数学, 相転移プロダクション, 位相幾何

不完全性定理という人間知性に深く埋めこまれた地雷除去に携わる方々に敬礼

はじめに

Twitter で何かあったらしく, 不完全性定理が話題になっていたので次のようなツイートをした. これこれ だ.

専門家でもないのに不完全性定理という言葉を使っている人間は知性を放棄した人間ととらえてまず間違いない

不完全性定理, うかつに言及すると各方面の専門家からの苛烈なアタックを受けるので常に細心の注意を払っている. ネタでの利用すら危険だ

やりとりその 1

関連して次のようなやりとりもした.

専門家でもないのに不完全性定理という言葉を使っている人間は知性を放棄した人間ととらえてまず間違いない

現代思想系全滅 ww "@phasetr: 専門家でもないのに不完全性定理という言葉を使っている人間は知性を放棄した人間ととらえてまず間違いない"

@gakeau 現代思想, 不完全性定理の話がなくても知性の敗北ではないでしょうか

やりとりその 2

より困惑したのはこちらのやりとりだ.

不完全性定理, うかつに言及すると各方面の専門家からの苛烈なアタックを受けるので常に細心の注意を払っている. ネタでの利用すら危険だ

@phasetr 相転移さんですらそうなのか. アタックを蹴散らしてるもんだとばかり思ってたのだが...

ああ不完全性定理に言及してしまった.

自己減給だ.

@kyon_math どこにでもいる平凡な市民ですので

kyon_math さん, 発言を見る限りどう考えても数学者である一方私はただの市民なのだが, 私はどういう評価を得ているのか.

鴨さん (kamo_hiroyasu) ややたべさん (ytb_at_twt) さんに監視 (フォロー) されているので, 迂闊なことはいえない. 数学ガールの不完全性定理も, 現実には起こりえなかったラノベパートを楽しんだだけで数学部分はあまり真面目に追っていない.

もう少し勉強するか. でも多変数関数論とかやりたいし, その他にもこう色々と勉強したいこと, しなければいけないことが多くてつらい.

ラベル

数学, 数学基礎論, 不完全性定理

筑波の竹山美宏先生によるセミナーについての注意書きページ

本文

Twitter での元つぶやきを見つけられなくなってしまったが, 筑波の竹山美宏先生によるセミナーについての注意書きページがあった. いつも通りというか, 河東先生のページへのリンクも張られている.

セミナーの進め方については各自飛んでいって読んでもらうことにして, ここではメモがてら参考文献とその説明に関する記述を転記しておきたい.

参考文献とその説明

卒業予備研究・卒業研究でのテキストの候補 (advanced なもの・竹山自身が読んでみたいものも含む) 以下に無いものでも, なるべく希望に沿うようにしますが, 竹山の専門と大きく離れたものについては対応できません. 以下には文献についての簡単な説明をしてありますが, 全部をきちんと読んだわけではないので, 鵜呑みにしないように. (内容の紹介として不適切なところがあったらご教示下さい)

ソリトン

ソリトンとはどのようなものかを感覚的に知りたければ, 高崎先生によるソリトン工房内の「ソリトンのさまざまな顔」にあるアニメを見るとよい.

  • 戸田盛和「波動と非線形問題 30 講」 (朝倉書店)
  • 三輪哲二・神保道夫・ 伊達悦朗「ソリトンの数理」 (岩波書店)
  • 広田良吾「直接法によるソリトンの数理」 (岩波書店)
  • 戸田盛和「非線形格子力学」 (岩波書店)
  • 高崎金久「可積分系の世界」 (共立出版)

戸田先生の「 30 講」の始めの方に, KdV/KP 方程式についての基本的な事項が解説されている. とりあえずこれを読んで, 広田先生の神業に酔いしれる (「直接法によるソリトンの数理」) か, 伊達-神保-柏原-三輪 (通称 DJKM) の一連の仕事をきちんと勉強する (「ソリトンの数理」). 「 30 講」の中盤は, いわゆる戸田格子の話になっていて, これについては「非線形格子力学」にもっと詳しく書いてある. 戸田格子について, DJKM の仕事を踏まえて, その後の進展などなども含めて幅広く解説されているのが高崎先生の本.

量子可積分系

竹山の専門分野. 「量子可積分系」の数学的な定義があるわけではないので, 感覚的に分かりやすく説明するのは難しいが, 以下に挙げる本をパラパラ眺めて雰囲気を感じてほしい.

  • 白石潤一「量子可積分系入門」 (サイエンス社)
  • 神保道夫「ホロノミック量子場」 (岩波講座・現代数学の展開) (もしくは佐藤・三輪・神保による原論文 I--V )
  • 土屋昭博 (述) ・桑原敏郎 (記) 「共形場理論入門」 (日本数学会メモアール)
  • 山田泰彦「共形場理論入門」 (培風館)
  • 鈴木淳史「現代物理数学への招待」 (サイエンス社)

白石さんの本は有限多体系 (Calogero-Sutherland model) を主たる対象として, 量子可積分系の研究に現われる様々な手法と考え方を紹介したもの. 解析力学のことから書いてあるから, とても親切で良い本 (のはず). 卒業研究ではこの本を読むことになるでしょう. 他のものは, その次に読むべき本として候補に挙げるもの. 神保先生の本は二次元の Ising 模型・ Ising 場の理論についての概説. 下に述べるパンルヴェ方程式の「復活」のきっかけともなったお仕事の話. せっかくだから, 時間と実力があれば, 原論文を読破してみたい. この話で構成される Ising 場の理論は有質量と呼ばれるクラスで, 共形場理論というのは質量ゼロの二次元の場の理論. 様々な無限次元リー代数の表現論や代数曲線なども関係してきて, 共形場理論から生まれ出た数学は, いまなお盛んに研究されている. 鈴木淳史さんの本は, ランダムウォークと量子可積分系の関係について解説したもの. まだきちんと勉強したことはないけど, 竹山が興味ある話の一つ.

超幾何関数

ガウスの超幾何関数, およびその多変数化.

  • 犬井鉄郎「特殊関数」 (岩波全書)
  • 原岡喜重「超幾何関数」 (朝倉書店)
  • 木村弘信「超幾何関数入門」 (サイエンス社)

「特殊関数」は, 直交多項式などの様々な特殊関数を, ガウスの超幾何微分方程式を軸に統一的に論じたもの. 二階に限定しても, これだけの話があるのだから超幾何というのは深いのだ. 原岡先生の本は, ガウスの超幾何から出発して, 超幾何関数という対象に対する現代数学の見方を, 各方面から紹介するもの. twisted cohomology/cycle, グラスマン多様体, GKZ も登場する. 木村先生の本では, グラスマン多様体を中心に据えて, 多変数超幾何関数を統一的に論じている. 面白そう.

楕円関数

関数論の続きとしての楕円関数論.

  • フルヴィッツ, クーラント「楕円関数論」 (シュプリンガー)
  • 梅村浩「楕円関数論-楕円曲線の解析学」 (東京大学出版会)

フルヴィッツ・クーラントは楕円関数についてコンパクトにまとめられた本. 楕円関数は他の様々な数学と関係していて, そこが非常に面白いのだけれども, この本では敢えてストイックに楕円関数の基本事項を一直線にまとめている (のだと思う). 梅村先生の本では, フルヴィッツ・クーラントではあまり述べられていない, 楕円関数論の背後にある幾何についても言及している.

梅村先生の本, 前から読んでみたいと思っている.

パンルヴェ方程式

竹山はパンルヴェ方程式に関しては素人なのだけれども, ここ十数年でその世界が随分と広がったような印象と持っている. パンルヴェ方程式については, その歴史を紐解くだけでも結構面白い. これについては, やはり岡本和夫先生の「パンルヴェ方程式序説」をパラパラと見てもらいたい, のだけれど, 筑波の数学の資料室にはあるのだろうか・・・? 最近絶版になってしまったので購入はできませんが, どうしても見たければ, 竹山の部屋に一冊あります. (貴重な本を譲ってくれた O 君に感謝)

  • 野海正俊「パンルヴェ方程式」 (朝倉書店)
  • K. Iwasaki, H. Kimura, S. Shimomura and M. Yoshida, "From Gauss to Painleve" (Viewig)

野海先生の本は, パンルヴェ方程式についてその対称性を軸に論じたもの. 計算はそれなりの重量があるが, 行列式の計算ができれば読めてしまう. 野海先生の本が出るまでは, パンルヴェについて書かれた本で入手可能なものとしては, 「序説」と "From Gauss to Painleve" しかなかった. その名の通り, ガウスの超幾何の話から始まって, モノドロミー保存の方程式としてパンルヴェ (を一般化した Garnier 系) が出てくるまでを解説したもの. パンルヴェの専門家になるためには, 野海先生の本の話だけではなく, こっちの方の話も知っていなければならない (はず). ちなみに, 阪大の大山先生の本が出たら, すぐにでもこのリストに加えたいのだけれども, まだ出版されてない.

Painleve というと Twitter の Paul_Painleve さんを想起する.

常微分方程式

常微分方程式について基礎理論からきちんと学ぶ. 偏微分方程式をやりたい人は, 偏微分方程式を研究されている先生に指導を受けて下さい.

  • 高橋陽一郎「力学と微分方程式」 (岩波書店)
  • 高橋陽一郎「微分方程式入門」 (東京大学出版会)
  • 高野恭一「常微分方程式」 (朝倉書店)
  • E. Coddington and N. Levinson, "Theory of Ordinary Differential Equations" (Krieger, 和訳は吉岡書店)

高橋先生の「力学と微分方程式」は, 前半で定数係数線形常微分方程式の解き方がきちんと解説してあって, 後半は力学系の安定性の問題や変分法の入門的な内容となっている. 大学初年級向けとして書かれた本だけど, 扱っている例などはもう少し高級なところから取ってきてるので, 4 年生で読んでも十分かも知れない. 易しすぎるようであれば「微分方程式入門」の方を問題も解きながら読みましょう. こちらの方が数学の教科書としては硬派な感じがする. 高野先生の本は, 微分方程式の基礎理論から始まって, ガウスの超幾何のモノドロミーの計算, フックス型方程式, 不確定特異点とストークス現象の解説まであって, とても内容が豊富. 複素領域上の常微分方程式を学ぶための入門書としては最適なものだと思う. Coddington-Levinson は少し古い本だが, 有名な教科書. 自己共役作用素の固有値問題についても詳しく論じてある. こういう古典的かつ本格的な教科書をじっくり読むのも面白いのではないかと.

表現論

表現論とは何か? については, 京大の西山先生による表現論 WEB を見てもらいたい.

  • 平井武「線形代数と群の表現 I ・ II 」 (朝倉書店)
  • 神保道夫「量子群とヤン・バクスター方程式」 (シュプリンガー)
  • 谷崎俊之「リー代数と量子群」 (共立出版)
  • 草場公邦「行列特論」 (裳華房)

表現論はいろんなアプローチの仕方があって, 抽象代数的な表現論を学ぶのであれば, そういう感じの本から入るのが良いと思う (セールの教科書とか). 表現論の入門書はいろいろあるので, ゼミで実際に何を読むのかは相談して決めます. ここでは, 解析っぽい表現論の入門書ということで, 平井先生の教科書を挙げておく. 易しいところから出発して, かつとても教養に溢れた楽しそうな本. ちなみに竹山は, 学生時代に平井先生の函数解析の講義に出ていたが, その試験の問題 1 は, 「数列空間 l^{2} は完備であることを示せ. ただし鶏肉を切るに牛刀を用いるが如き証明は不可」. だった. これ以上にカッコいい試験の問題文というのを見たことがない. 神保先生の本は量子群とその表現の入門書. 最後に Face 模型が出てくるところが嬉しい. 谷崎先生の本は無限次元のリー代数である Kac-Moody 代数の入門書. Kac-Moody の日本語の入門書としては, 他に脇本先生の岩波講座があるのだが, こっちはまだ (日本語では) 単行本化されていない. (追記:2008 年 7 月に単行本化されました) 「行列特論」を表現論の本だというのは少しズレてるような気がしないでもないけど, 第二部は quiver の表現論だ, ということで許して下さい. 線形代数だけを使って三つの面白い問題を論じている名著. ここで紹介するにあたって, パラパラと眺め直してみたのだけれども, やはりとても面白そうなので, 誰か読みませんか?

平井先生のこれ, 格好いい.

ちなみに竹山は, 学生時代に平井先生の函数解析の講義に出ていたが, その試験の問題 1 は, 「数列空間 l^{2} は完備であることを示せ. ただし鶏肉を切るに牛刀を用いるが如き証明は不可」.

母関数~組み合わせ論・整数論

もしくは「組み合わせ論や整数論と関係する q-解析」.

  • アンドリュース, エリクソン「整数の分割」 (数学書房)
  • G. Andrews, "The Theory of Partitions" (Cambridge Univ. Press)
  • D. M. Bressoud, "Proofs and Confirmations" (Cambridge Univ. Press)
  • B. Berndt, "Number Theory in the Spirit of Ramanujan" (AMS)

最初の二冊は整数の分割 (partition) についての本. partition というのは, 非負整数を非負整数の和で書くことで, 例えば 6 の分割は, 6=5+1=4+2=4+1+1=3+3=3+2+1=3+1+1+1=2+2+2=2+2+1+1=2+1+1+1+1=1+1+1+1+1+1 となる. このような分割が何通りあるか, というのが partition number と呼ばれるもので, その性質についていろいろと論じられているのが最初の二冊. "The Theory of Partitions" は関数論の続きとしても読める (たぶん). "Proofs and Confirmations" は, alternating sign matrix の数え上げという組合せ論の問題が, 二次元の可解格子模型の話 (物理の問題!) を使って解けてしまった, という話の解説. "Number Theory in the Spirit of Ramanujan" は, ラマヌジャンの数学の易しい入門書. ラマヌジャンはインドの天才数学者. 詳しいことはネットで調べればいくらでも出てくるだろう.

古典的な数理物理

大学院数理物質科学研究科数学専攻に進学希望の学生さんは対象外. 大学で学ぶ数学が, 物理でどのように使われているかを学ぶ. もしくは, 物理に出てくる数学を, きちんと扱うとどうなるかを学ぶ. 一年生の微積分の内容を仮定する.

  • アーノルド「古典力学における数学的方法」 (岩波書店)
  • 深谷賢治「電磁場とベクトル解析」 (岩波書店)
  • 深谷賢治「解析力学と微分形式」 (岩波書店)

こういう本を紹介するときにアーノルドの本は外せないのだけど, 学生さんにとっては本格的すぎで手が出しづらいかも知れない. 実は竹山は未読なのだけど, とても面白そうで, いつか時間をとって読んでみたいと思っている. ちなみにロシアの数学科の学生はみんなこの本を読んでいるという噂がある. (あくまでも噂) 最近の本では, 深谷先生の上の二冊が挙げられる. 深谷先生の「電磁場と電磁気学」では, 二次元・三次元のベクトル解析の話がまずあって, これを踏まえて最後の三分の一で電磁気学の理論が展開される. 「解析力学と微分形式」は, ハミルトン系の幾何学的な理論を紹介したもの. ここで紹介する文献は, 内容が古典力学と電磁気学に偏ってしまっているけど, 流体力学や量子力学の解析学的アプローチに興味がある人は, 偏微分方程式を研究している解析の先生に指導を受ける方が良いでしょう.

大学の解析をきちんと勉強して卒業する

大学院数理物質科学研究科数学専攻に進学希望の学生さんは対象外. 大学を卒業するまでに, 一度は本気で自力で数学と格闘するためのコース. 必要が生じたら面倒がらずに微積分の復習をする覚悟を持っていて, かつ自分が理解できるまでしつこく考える意欲があって, かつ十分たくさんの時間を卒業研究の勉強のために費す決意のあることが必要条件. テキストの練習問題もきちんと解きながら読み進める.

  • 斎藤正彦「微分積分学」 (東京図書)
  • ケッヒャー「数論的古典解析」 (シュプリンガー)
  • ポントリャーギン「常微分方程式 新版」 (共立出版)
  • スピヴァック「多変数の解析学」 (東京図書)
  • 原岡喜重「多変数の微分積分」 (日本評論社)

斎藤先生の本は微積の教科書. 一年生の微積の知識が不十分な場合には, このレベルから (相当のスパルタで) 勉強してもらう. 高校の微積の復習から出発して, ベクトル解析の概説まで. これはブルバキスタイルを身につける練習として使う. ただし, この本の内容で卒業研究発表をするわけにはいかないので, 発表用に何かしら古典的な題材について学んでもらうことになるでしょう. 「数論的古典解析」は, 一変数の微積分が, 解析数論に現われる問題にどのように応用されるのかを紹介したもの. ポントリャーギン「常微分方程式」は, 常微分方程式の有名な教科書. 工学の問題への応用など, ポントリャーギン先生の教育的配慮に満ちている本. それだけでも十分感動的である. 内容はそれなりに本格的. 頑張ってきちんと読んでみましょう. 「多変数の解析学」は, 竹山が学生時代に多変数の微積分を勉強した本. 最近復刊された. 多変数の微分の概念から始まって, 一般次元のストークスの定理の証明まで, 無駄なくスッキリと話が進んでいく. 薄い本ではあるが読みごたえがある. スピヴァックが難しすぎるようであれば, 微積分の復習をしながら原岡先生の本をきちんと読む.

数論的古典解析, 前から読んでみたいと思っているが手を出せていない.

ラベル

数学, 可積分系, 表現論

Publications of MSJ 第 13 巻 Gaisi Takeuti, Two Applications of Logic to Mathematics の電子版が一般公開された

本文

日本数学会の次のようなツイートがあった.

Publications of MSJ 第 13 巻 Gaisi Takeuti, Two Applications of Logic to Mathematics の電子版を一般公開しました http://bit.ly/12IITSs

竹内外史の本 (?) だが, 地雷だったりしないのだろうか. まだ目を通していないのだが, ご存知の方がいれば内容についてご教示頂きたい.

それはそうとして, Publications of MSJ のページを見るといくつか文献があるが, 次の 2 冊が気になる.

No.15 Shoshichi Kobayashi, Differential Geometry of Complex Vector Bundles, 1987, xii+305 pp. No.11 Goro Shimura, Introduction to the Arithmetic Theory of Automorphic Functions, 1971, xiv+267 pp.

これ読んでみたい. 数学会, 何とか頑張ってこれを公開してほしい.

ラベル

数学, 数理論理

偏微分方程式まわりの物理の数理: グリーン関数に関わる数学の難しさ

はじめに

次のツイートにいろいろ反応したのをまとめておく.

以下, まるまるさんのツイートは引用にして私のツイートを適当に編集しつつまとめる.

本文

私の観測範囲だとそういう具体的な話を議論している本を見かけたことがありません.

リプライありがとうございます. デルタ関数等は超関数の意味で微分はできるが, 普通の微分はできないと習ったので超関数が偏微分方程式の特解になることに疑問がありましたが, 具体的に議論しなくても一般論から数学的に正統化できるという感じなのでしょうか.

だいぶ長くなると思いますが, 基本的には全て修羅の道です. 一般的な話をいくつかしたあと多少具体的な話をします. まず物理では解があることを前提にその性質を調べるのが普通なわけですが, 数学的にはその前段階の解の存在と一意性がすでに大問題です. そして物理の研究フェーズのはるか手前です. 例えば, 学部三年くらいでやる連続体の力学, 流体力学でのナビエ-ストークスは解の存在と一意性が言えたらフィールズ賞をあげます事案な訳で, 一事が万事こうだと思ってください. 物理として嬉しいことが何かできている方が珍しい, そういう気分です.

私の学部の頃の教官 (専門は数学としての非線型偏微分方程式) が言っていたのは, マクスウェルのような線型の方程式でも, レイリージーンズ (だったか何か) では境界条件で非線型性が出てきて, そこで問題が一気に難しくなると言っていました. その程度に何もできていません.

一般に超関数の積は定義できません. 関数解析的なシュワルツの超関数はもちろん, 佐藤超関数でもダメだったはずです. 最終的に頑張ればそれっぽいことは数学的にもできるのかもしれませんが, かなり紆余曲折を経た議論になるでしょう. コロンボーの一般化関数という理論があり, これは「超関数の積が取れる」体系だそうで, これを使って一般相対論をやっている人たちがいるようで, 本もあって持っているのですが, 専門違いなのもあって全くわかりませんでした. 超関数の積自体は数学的に正当化できる理論はあるようですが, 具体的な PDE で物理の人が満足するような話は何一つないでしょう. そんなのができたところで物理にとって何の役に立つ, と失望するだけと思います. それこそ今日話題の愚鈍な狂人石井晃事案です. ああ言いたくなる気持ちはわからないではありません. 私はその辺の数学に首を突っ込んで数学科にまでいったくちで, むしろ無力さを噛みしめながらそれでも自分の興味ある「物理」がそこにあると思ってしまったので歯を食いしばってやっていたわけで.

グリーン関数自体は数学でも普通に議論はあります. ふつうの PDE であまり見かけたことはないのですが, 幾何解析の文献では見かけます. グリーン関数というよりはグリーン作用素とかレゾルベントという言葉で出てきます. レゾルベントに関しては, 私の専門の作用素論では基本的な対象です. ただ, PDE の視点からレゾルベントを見た経験があまりなく, PDE 方面での意義や扱いは私はよくわかっていません.

私の知る限りの範囲で数学と物理での扱いの違いを書くとこんな感じです. 物理だと拡散方程式を初期値が点源 (デルタ関数) の場合を解く, みたいな形でグリーン関数が出てきます. あとは畳み込みで重ね合わせて一般的な解を得る, みたいな. これ, 初期値が超関数の超関数方程式で死ぬほど扱いづらいです. 数学では点源の方程式よりも初めから「一般の (可積分な) 初期値関数で考える」みたいな形にして, 初期値が超関数の鬱陶しい形自体を回避します. 数学的にはそれで「一般的』だから構わない, みたいな感じです. ここで物理との意識の違いも出てきます. 物理でのグリーン関数というか初期値が超関数の時の解は, 一般解を得るための道具というだけではなく, 点源のもとでも解というそれなりに物理的な意義を持つ対象で, これはこれで物理として本当に大事です. しかし数学的にはピーキーでやりづらい. こういう意識のギャップもあり, 物理で欲しい状況が数学的にきちんと議論してある本は必ずしも多くありません. 何か合理化はできるかもしれませんがそういう風に書いてある本を見たことがないので専門外なことも手伝って私はよく知らない, という話がいろいろあります. 全空間での拡散方程式の初期値がデルタ関数の解くらいなら簡単なのでいくらでもどうにでもなりますが, 数学でよくやる一般の領域内での初期値・境界値問題が同じ難易度でできるのか, そういうことを書いてくれている本があるかどうかは全く知らない, とかそういう感じです.

PDE とは少し離れますが, 量子力学での摂動はきちんと収束するのかを気にして最終的に数学者として世界をリードした加藤敏夫という人もいます. これは私の専門から見て完全に先達です. 気にし始めたら数学者にならざるを得なかったとかいうレベルで数学マターなので気にしても物理にいいことないという社会の厳しさ. この辺を実体験ともに思い知らされたので「物理をやりたければ物理をやれ, 数学をしたいなら数学科に行け, 半端者はどこにも何にも届かない」みたいなことをいつも言っています. 本当に物理のはるか手前の問題解決で数学的にフィールズ賞, みたいな話がよくあります.

Twitter まとめ: 数論についての簡単な紹介

はじめに

先日, 次のようなあまりにもアレな RT が流れてきた.

数論って初心者がやるにしてはハードル高いと思うし, マイナーすぎると思う

最初「また頭がおかしい人か」と思って次のようなツイートをしたが, どうやらそこまでアレでもなかったようなので, 簡単にプロデュースしてきた. これはその記録である.

http://tinyurl.com/bz88vkr 【数論って初心者がやるにしてはハードル高いと思うし, マイナーすぎると思う】 前者については話題の選択で十分どうにでもなる (と思っている) し, 後者に至っては気が狂っているとしか思えない

リプライ

@KleinSurface 色々コメントがきているかもしれませんが, 数論は数学の中でも最高に有名な部類で, 研究者もファンも多いです. また応用に乏しいというのも致命的に間違いで, 例えば暗号理論で活躍しています. 暗号は通信の安全性にも深く関わるのでネットに触る人は日々使っています

@KleinSurface 念のため言っておきますが, 暗号に使う部分の数学は非常に専門的です

https://twitter.com/KleinSurface 数学科志望でこの ID の人でも数論がマイナーに見えているというの, 凄く面白い. 何というか内部から見ている世界と外部から見える世界は違うのか, と思ったが物理学科の頃から数論の地位みたいなものは知っていたことを想起した

何も見ないで脊髄反射で RT してしまったが, 何となくまともな人っぽいので反省している

@KleinSurface 鬱陶しいかと思いますが, 数論がどういうものかいくつか説明します. まずガウスの言葉で「数論は数学の女王」という言葉があります. とりあえずそういう感じだと思って下さい. あと東大数理は高木貞治の類体論以来, 基本的に数論が強いです

@KleinSurface ご存知か分かりませんが, 先日京大の望月さんの ABC 予想の話が Twitter でも話題になりましたが, ABC 予想も数論の話です. フェルマーの最終定理も見かけは数論関係なさそうですが, 数論との関わりが極めて深いです. また見かけ簡単でかつ未解決の問題も多いです

@KleinSurface あと関連する数学が極めて広いことも特徴です. 細かく言うとあまり関係ない分野もあるでしょうが, いわゆる代数, 幾何, 解析すべて関係あります. 名前からして解析数論, 数論幾何, 代数的整数論というのがあります.

@KleinSurface 最後のは「代数的 (整) 数」に関する理論であって代数的な整数論ではない, という話もありますが. 関連する分野まで少なくとも後一つ応用があります. 数論幾何は代数幾何という数学 (のある種の拡張) を使うのですが, 代数幾何は符号理論という応用があります

@KleinSurface 符号理論については前簡単な動画を作ったので, ご興味あればどうぞ http://www.nicovideo.jp/watch/sm10684363 この動画自体では線型代数しか使っていませんが, 代数幾何を使い始めると死ぬほどハードです

追記

「数論が初心者向きでない」という部分が弱いのでいくつか追記しておこう. 異論もあるだろうが, 非常に大雑把にいって「数論」といったとき, 本当に初等的な意味で「数」といった場合には 2 つの大きなテーマがある. それは素数の理論と超越数の理論だ. 「数論」というと大体素数の方の話になり, 超越数の理論は主に解析数論の話題になる. 解析数論は超越数の話ばかりしているわけではないのだが, 大事な分野だ.

代数的整数だとか $p$ 進数など色々な「数」があるので, あまり適当なことをいうと怒られてしまう.

素数の理論についていうと, 時々「今知られている中で最大の素数」と言った話題が出てくるが, 例えばこんなのは分かりやすかろう. ちなみに素数が無限個あること自体は古く Euclid の頃から知られている. ただ, 知られている中で最大の素数を見つける (記録を更新する) というところで, 永遠にアタックできる, 誰にでも分かる問題になる. また現代の暗号理論は適当に大きい素数をうまく使うという話なので, 大きな素数を見つけることは応用上も大事なのかもしれない. この辺は詳しくない.

他には有名な理論について具体的に計算しまくることができたりする. そういうのをひたすら計算するだけでもかなり楽しいという人もいる. 興味がある向きは次の本を読んでみると楽しいかもしれない.

超越数論

超越数論については, ある数が超越数であるかを調べる理論だ. 超越数というのは整係数代数方程式の根とならない数のことだ. ここで整数 (または有理数) 係数というのがとても大事.

超越数の例としては $\pi$, $e$, $2^{\sqrt{2}}$ などがあるが, 証明はどれも簡単ではない. $2^{\sqrt{2}}$ に至っては Fields 賞クラスの問題だ. いまだに $\pi + e$ や $\pi^{e}$ が超越数かどうかということも分かっていない.

もう少し単純な「ある数が有理数か無理数か」という問題もある. こちらは比較的簡単に証明できる数もいくつかある. 有名なのは「$\sqrt{2}$ は無理数になる」という話だろうか.

snufkin26 さんから頂いたコメント

本文

@phasetr ええと, さしでがましいこと, ヘンテコなことを言うかもしれないので, 申し訳ないのですが,初等的な数論と言って, 「素数について」と「無理数・超越数論」を挙げていらっしゃるのに違和感があります. (続く)

@snufkin26 @phasetr というのは, 「現代の初等整数論」とも呼べる分野がいくつかある気がいたします. ひとつには, 整除性を扱う分野 (完全数について, 数論的関数について, 等). ふたつめには, 整数列論 (Schnirelman 密度に始まるような) (続く).

@snufkin26 @phasetr あと, 古典的でない新しい加法的数論や, 組み合わせ数論も初等的な気がします. これらは時に強力な (初等的とはいえないような) 武器を用いますが, 問題も手法も初等的であることが多いです. (続く)

@snufkin26 @phasetr 研究者としては, Carl Pomerance 先生, Paul Pollack 先生などがそうかと. えっと, 素数分布論・無理数論にも初等的に考えられる部分はあると思いますが, それを筆頭にあげてしまうと, (続く)

@snufkin26 @phasetr 初等的な数論について知りたい方が「これだけか」と幻滅してしまうかと思いました. まとまりがなく, 長ったらしいツイートで申し訳ございませんでした.

言い訳

Twitter にも書いた記憶があるが, 最初に記事を書いたとき, 私が念頭に置いたのは高校で学ぶ内容だ. 素数というか整数がらみの受験で出てくるタイプの問題や, $\sqrt{2}$ の無理性を想定した. 昔から皆がやっていることは死んでもやってやるか, といったところがあり, 意識的に勉強を避けてきたので, 例えば物理でいうなら宇宙や素粒子, 数学についても数論などは, 興味があって勉強している中高生以下の知識しかないと思う. 勉強不足のところを教えて頂いたので実にありがたい.

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数学, 数論, Twitter まとめ

「天書の証明」を集めた悪魔のような論文誌

はじめに

天書の証明を想起した.

引用

レフェリーから「この証明は長過ぎる」とか指摘されても, 10 行程度の証明って長いですか? と言いたくなる.

@kyon_math 証明もすべて 140 字以内でお願いします.

@Paul_Painleve どこの雑誌ですか, それ?

@kyon_math 最近できた, Journal of Mathematical Twitter です. 引用が 1 万超えるのもありますぜ, 旦那.

@Paul_Painleve まぁ 2 文字で証明せよと言われると「自明」ですね. 制約がきつくなればなるほど簡単に.

@kyon_math 「自明」をたくみに操って, 永田さんの域にまで達すれば・・・ #ただし講義中につまって自分の教科書を見ても自明としか書いてない

@Paul_Painleve むかしのノートに「自明」と書いてあっても, もはやなぜそれが自明なのか分からない #恍惚の人 ただノートに見とれてる

永田さん, そんなにやばいアレだったのか.

ラベル

数学

特異点解消についてちょっとやりとりしたので

本文

特異点解消関係の話が出ていて廣中先生のことを思い出したので.

特異点解消とかってどういうモチベーションでやってんだろ. 全然知らないけど.

@Maleic1618 私が知る限りでは, 特異点には大事な情報がたくさんあるものの, 特異点はその名の通り特異性があって扱いづらいので扱いやすくするためにやる処理が特異点解消です. 例えば筆跡鑑定で大事になるのは尖った所だったりするようですが, そういう所をきちんと調べる的な

@Maleic1618 ちなみに筆跡鑑定の話は実際に廣中先生の話で例として出てきました

@phasetr なるほどです. その話は関数論の方とも関係があるのでしょうか? 多変数の関数論では極や不定点が孤立しなくて 1 変数と同じ議論が出来ないので, 特異点を扱う話とつながるのかなと勝手に想像しているのですが.

@Maleic1618 私も私で専門外もいいところなので専門の人にあとできちんと確認した方が良いとは思いますが, 関数論は複素係数の代数幾何は含むはずで, 解析空間関係の話で処理するのだとおもいます

@Maleic1618 廣中先生自身, 解析空間の本を書いていますし http://www.amazon.co.jp/dp/4254111347 大雑把に言って「特異点を含む複素多様体」が解析空間だったはずなので, 当然色々関係する話があるだろうと

@phasetr なるほどです. 近いうちに図書館でのぞいてみますね. ご丁寧にありがとうございます.

修士修了近くに廣中先生の話を聞く機会があって, そのときたまたまもう一人筑波かどこかの大学の方が, 「自分はこれから博士を出て数学とは関係ない仕事につく. それでも研究は続けたいのだが出来るだろうか」みたいなことを質問していた. そのときに「研究? 続けたらいいじゃないか」と廣中先生が超気楽に笑顔で言っていたので, それなら自分も続けてみるか, と私も超お気楽に思ったことを思い出した.

あとそのときに廣中先生からサインもらった.

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数学, 代数幾何, 関数論, 数学者

「使う定理は全て証明する」という数学徒の主張について思ったことをつらつらと

本文

時々「自分が研究で使う定理は全て証明する. そうしないと怖くて使えない」という人がいるようだ. それはそれで素晴らしいことだが, 例えば強く分野に依存することではないかという気がしたので, 思ったことをメモしておきたい.

私の周辺の解析学はかなり上記の行動は徹底できると思うが, 例えば代数幾何などはどうだろう. 気になったのは特異点解消定理の扱いだ. ここによると廣中先生の原論文は 400 ページあるようだ. 今では証明が改良されてもっとすっきりしているかもしれないが, その辺りは分からない.

具体的な多様体に対して具体的な特異点解消を考える上では, むしろ上記定理によらずにきちんと構成した方が便利だろうから その意味で特異点解消定理のお世話にならずとも済むだろうが, 一般論を展開するときはどうしてもお世話にならざるをえないだろう. そういうときにきちんと証明を追いかけるのだろうか.

より極端なケースは未証明の予想の成立を仮定して議論する場合だ. 谷山-志村予想 (Wiles の定理) は志村が虚数乗法を持つときに予想が正しいことを 証明して予想の正しさをある程度確立したあと, どんどん数論界隈では信頼性が高まっていったようだが, 完全に証明されていない状態でそれ仮定した場合を問題にしている. 最初に挙げたケースは「証明されている命題は自分でもきちんと証明を確認する」という話だが, この場合はやはり絶対に使わないのだろうか. もちろんそういうスタンスはありうるし, もっといえば谷山-志村予想を正しいと思っていても 証明されるまで自分の仕事には使わないというスタンスもありうる.

全くまとまらないまま今回はここで終えるが, まあ色々あるということでご勘弁頂きたい.

追記

次のコメントがあったので追記しておく.

雑感

少し話がずれるが, 個人的に証明読んだこともないのにものすごい実感がある定理として Haar 測度の存在がある. 以前はよく使うのだし証明読まないと, と結構真剣に思っていたが, 適当な位相群には存在するというのを何度となく聞き, しかもずっと使っているうちに当たり前のものになってしまった. もはや疑うべくもない実感としてある. 使ったのは相対論的場の量子論界隈での Poincare 群とか Lorenz 群あたりの本当に少ない具体例でだけなのだが, 不思議なものだ.

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数学,代数幾何,数論

竹崎先生の80歳記念のワークショップに行ってきて, 広義諸先輩方と久し振りに会ってきて楽しかった

はじめに

先日竹崎先生の 80 歳記念のワークショップがあった. 時間があったので 2 日目だけ参加してきた. 河東先生をはじめ, 広義諸先輩方に久し振りにお会いしてきた. やはり数学者と話するの超楽しい.

下記動画でしているのと同じ格好をして行ったら小澤先生に「出家したの? 」と言われた他, 海老蔵に似ている, という心無い罵倒を受けてきて深い悲しみに包まれた.

二日目の話

2 日目の話を一応抜き出しておこう. 基本的に作用素論・作用素環の量子統計, 場の量子論への応用というところで勉強していたので, 作用素環の基礎知識がほとんど無く, 正直ほとんど全く分からなかったが, ハイパー楽しかった.

講演者 演題
Yoshiko Ogata Normal states of type III factors
Reiji Tomatsu On product type actions of Gq
Toshihiko Masuda Classification of group actions on von Neumann algebras
Yoshimichi Ueda Free product von Neumann algebras with emphasis on structure theory for type III factors
Paul Muhly Homogeneous C*-algebras and noncommutative function theory (abstract)

緒方さん

緒方さんの話は非可換中心極限定理に関わる話で, 緒方さんとしてはやはり量子スピン系への応用を考えているとのことだった. 情けないことだが, 物理的背景の説明があったにも関わらずろくに分からず, 勉強不足を痛感した. 竹崎先生が「これはすごく面白い結果だ」と仰っていたのだが, 数学的な意義もよく分からず悲しい思いをした.

増田さん

増田さんの話は群作用があるときの分類だが, 大事な結果を引用するところで, Jones-Takesaki の結果を引用し忘れて, 竹崎先生から突っ込まれていて場が笑いに包まれた. 「その後の分類証明の方向性を決定づけた大事な仕事です」みたいなコメントをつけていて, 増田さんが講演中に「大失敗した」という感じで恐縮しきっていて笑った.

植田さん

植田さんも相変わらず楽しそうに講演していて, 聞いているこちらも楽しくなってくる. 楽しそうに話すのは大事だな, と改めて思う. 自分も気をつけたい.

その後のパーティ

その後パーティがあったのだが, 何の連絡もせずに当日突然参加したので, ご担当の山ノ内先生にはご迷惑をおかけしたようで申し訳ない限りだった.

色々と裏話的なアレも聞いた. もとは特に問題ない行動だったのに面白おかしく尾鰭をつけて話されて困る, という話のあと, 河東先生が「こうして伝説が作られていくのです」とか言っていて爆笑した.

他はどうだか知らないが, 数学では抽象的な説明をされないと分からないというタイプの人がいる. そういう人が指導する側に回ると学生が死ぬ程困る, という例を聞いて爆笑した. 写像をグラフで定義するという荒技を披露したせいで, 学生が有限集合間の写像の問題すら解けない, ということでその人の指導教官含め, 必死の説得に回ったが聞き入れず, 最近海外での講演などを重ねる中でようやく自覚を始めたらしい, とかいうひどい話を聞きしこたま笑ってきた.

竹崎先生の話

パーティの最後, 竹崎先生からの言葉があったが, 作用素環の入口でも語られていた話をしていた. 簡単にいうと, 修士の学生の頃からたびたび「作用素環は終わった」と言われていたが, そのたびに面白い話題が, それも思わぬところから継続的に出てきて, 驚きの連続の数学人生だったこと, とてもいい分野に出会えて本当に幸せだったこと, 死んだと言われた分野で日本全国で専門家が 10 人くらいしかいない頃から頑張ってきて, 今となって日本中からこんなにもたくさんの専門家が継続的に育っていること, 自分もその育成に携われたなどなど, 実に楽しそうに話していた.

修士の頃の話として, 数学界の様子は全く分からない学生が指導教官からすら「作用素環は終わった」と言われ, どうしようか途方に暮れていたときに出た Kadison の既約性に関する論文の話をしていた. これは「$C^*$ 観の表現で代数的既約性と位相まで込めた既約性が同値である」という凄まじい結果だ. 作用素環の教科書では始めの方に出てくる基本定理で, ややもするとさらりと通り過ぎてしまう定理だが, もちろん恐ろしく非自明で強烈な定理だ. こんな深い結果が出る分野が死んでいるはずがない, 元気がないのはやっている人達の気持だけで, 分野自体は決して死んでいない, と確信し, 作用素環の研究に邁進しようと決意した, という話. 既に上記文献で読んで知っていた話だが, 当人の口から直接聞くとそれは感慨深いものがある.

数論幾何なども衝撃的な結果が 10 年くらいずつ出てきてとんでもない分野だが, こちらはどちらかと言えば有名な予想が解決された, という形での衝撃性という (非専門から見た私の勝手な) イメージがあるが, 竹崎先生いわく, 作用素環は予想もしないところからの衝撃的な結果が出てくる, という意味での驚きが強く, とても楽しいとのこと. 作用素環に進もうという向きは楽しみにしていていい, ということなのでここでも宣伝しておきたい. 不肖の竹崎先生の孫弟子であった.

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数学, 数理物理, 作用素環

問題: 双対空間の塔が無限に生成できる空間の具体例の構成, $L^{\infty}$ の双対空間の双対空間は何か

本文

ふと思い立ってこんなツイートをしてみた.

【緩募】 (無限次元の非回帰的な空間で) 双対空間の双対空間, という系列が無限に続いていき, しかも具体的にそれが書き表せるような例

【緩募】$L^{\infty}$ の双対は Radon 測度の空間だが, この Radon 測度の空間自体の双対空間が何者か

この間床の中でこれらがふと気になって寝付けなくなって困った. 関数解析を学べば誰でも知ることだが, 具体例を作ったことがなくてこれはまずい, と思ったのだ. 前者については山元さんから次のようなコメントを頂いた.

やりとり

@phasetr 考えるのはノルム空間ですか?

@hymathlogic 何でもいいです. 単純に例がたくさん知りたいのでむしろノルム空間の例もそうでない例も知りたいです

@phasetr $\ell^1$ はその例になっているようです. ($\ell^\infty$ より先の双対空間が) 具体的か分かりませんが.

@hymathlogic 何かに証明書いてあり⁾すか?

@phasetr kunen の「set theory ‍の漕習問頌です (証明分かりません汗).

@hymathlogic 悲しみ. 何はともあれありがとうございます

自分で作れ, という話ではあるのだが, 何かご存知の方は教えて頂けると私がとても喜ぶ.

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数学, 関数解析

場の量子論と解析数論: p 進大好き bot からの質問に答える方の市民

はじめに

我らが p 進大好き bot から質問を受けた方の市民だ. 私は Fock 空間上, 非相対論的場の量子論や量子統計をやっているので物理として相対論が絡む話はあまりよく知らないし, 数論方面もさっぱりなのだが, 多少知っていることはあるのでまとめてみた.

@phasetr なるほど. ボゾンとフェルミオンに対応する Fock 空間の有界作用素のスペクトルに強い離散性を課しているのは量子論からくる妥当な制約なのでしょうか? 固有値の整列性から総和的概念と相性がよくなって数論につながっているように見えるので少しその仮定の意味が気になりました.

コメント

まず強い離散性 (トレースクラスの仮定) だが, 物理的には不十分なことこの上ない. 「物理はともかく (今の数学の水準で) 数学的に面白い話ができるのはこの場合」という割り切りと思ってもいい. 物理としてスペクトルが離散的になるのは 2 つの場合がある.

  • $\mathbb{R}^d$ 上, 調和振動子などの特別な場合 (confined system).
  • 有界領域上での Hamiltonian.

$\mathbb{R}^d$ 上, 調和振動子などの特別な場合 (confined system)

調和振動子など大事な系はあるものの物理としては本当に特殊な場合だ. 場の理論でも調和振動子が一番の基本だし, 調和振動子は決定的に重要な系ではあるけれども. 若山先生の非可換調和振動子など, 「調和振動子」は数学的に数論との関係がかなり深いようなので面白い. ただし, 物理的には散乱がないという決定的な欠点がある. すごく大雑把にいって, 散乱は Hamiltonian の連続スペクトルの部分に対応する. 非破壊検査など散乱を基礎にした応用はたくさんあるし, ミクロな系, 特に素粒子を実験で見るときは散乱で見るため, 散乱がないのは物理としては困ると言ってもいい.

ちなみに調和振動子のように (原点から) 距離が離れるとポテンシャルが大きくなる (ので粒子があまり遠くに行かない) 系を confined system と言う. 数学的な一般論として, 「 Laplacian + 最高次が偶数の多項式ポテンシャルが入った Hamiltonian 」のスペクトルは離散的になる. (新井先生の『量子現象の数理』にも証明がある. ) Confined system を「Hamiltonian のレゾルベントがコンパクト作用素になる」と定義している文献もある.

有界領域上での Hamiltonian

証明や条件を忘れたものの, 有限系ならそれなりに一般的に言えたはずだ. コンパクトな Riemann 多様体の Laplacian は離散的という一般論があるが, 大体そういう感じ.

もちろん一般には Laplacian に適当な摂動を入れるので離散性が保たれるかは自明ではないが, 頑張るとそれなりに一般に言える. 量子統計や場の理論でも, いったん有界系でトレースを使いながら理論を作っておいて, 最後に物理として標準的な $\mathbb{R}^d$ への極限 (熱力学的極限) を取る.

後者についてはもう 1 つ決定的な事実がある. 前者とも関係するが, 一般に無限系の Hamiltonian には連続スペクトルがあるのでトレースは取れない. 物理だと平衡状態は $\mathrm{Tr} (A e^{- \beta H}) / \mathrm{Tr} (e^{- \beta H})$ で定義するが, これは無限系では意味をもたない. つまり数理物理としては無限系の平衡状態を定義するところから始める必要があるが, これがなかなか大変だった. ここをきちんと議論するために Haag-Hugenholtz-Winnink の有名な仕事が出たのであって, 量子統計の数理物理に対する冨田-竹崎理論の重要性が出てくる. 冨田-竹崎理論というか平衡状態周りでも数論における相転移とかいう Bost-Connes の結果 があるので, それはそれで数論的にも大事なようだが, こちらは難しくて読めなかった. p 新大好き bot はセミナーで読んだらしいので, 興味がある向きは p 進大好き bot に聞こう.

地下コメント

もう一個.

@phasetr ついでに 4 章で $L_S$ と $Q_{S,+}$ に対する指数定理のようなものが示されているのも興味深く感じました. フレドホルム作用素 $S$ に対して $L_S$ や $Q_{S,+}$ (そして $d_S$) に何らかの物理的意味付けがあるのでしょうか?

こちらについてはあまり知らない. $L_S$ は (自由場の) 超対称的 Hamiltonian, $Q_{S,+}$ は超対称荷 $Q_S$ の分解ということくらいは知っているが, この辺の物理自体には詳しくない. 超対称荷自体何なのかあまりよく分かっていないが, 「荷」とつくのは大体保存量であって, 物理的には普通とても大事な量に対してその名前をつける. だから大事なのだろう, くらいにしか分からない. $d_S$ については, Proposition 4.1-4.2 にあるように「ボソンを消してフェルミオンを作る」というそのままの意味があるが, これ以上の詳しいことは知らない. 超対称性はボソンとフェルミオンの対称性なので, 正に超対称性を司る作用素が $d_S$ という話ではある. それが幾何学的にも大切な外微分になっているというのは確かに面白い.

これとかこれとかこれとかこれとか, 量子力学のレベルでは超対称性と指数定理というのは大きなテーマになっている. その場の理論版としてこの辺の話があり, さらに数論的な要素すら持っていたという感じなのだと思っている. 量子力学での話からすれば多様体上で何か議論したいところだが, 無限次元多様体の議論をいきなりやるのはつらいので, まっすぐなところで下調べしよう, というのが新井先生のこの辺の研究の動機の 1 つでもある. 『Fock 空間と量子場 上』の 6 章のまとめのところにその辺の話が書いてある.

物理としてはむしろ, この辺の兼ね合いから超対称的な理論が数学として幾何学的な拘束を受ける (はずな) ので, 数学 (幾何学) 的に意味が明快なところから逆に物理を見つけていくときの指針として使うのだろう. とくに素粒子では数学的な制約からあるべき物理 (モデル) をしぼっていくというのはよくある. 例えば「理論は Lorenz 対称性を持たねばならない」とか「繰り込み可能でなければならない」とか「漸近的自由でなければならない」とか. 素粒子物理として数学的指針は決定的に重要らしいのだが, 数学的にはそこを逆に使って物理的な洞察から衝撃的な数学的関係を見つけてくるのが楽しいということで色々な交流があるという認識だ. ミラー対称性とか何とかそのあたりもそう.

知っているのは大体このくらい.

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数学, 物理, 数理物理, 場の量子論, 量子統計, スペクトル理論, 数論, 解析数論, 素粒子, 超対称性, ミラー対称性, 幾何学

理研で理論物理学者の展示をしたらしいが, 私も何か似たようなことしたい

本文

理研で理論物理学者の展示をしたらしい.

行っていないので詳細は不明だが, Twitter で見る限り評判は良かったようだ. こういう感じのこと, 前からやってみたかったのだが実際に評判が良かったとのことなので, 私の見立ては間違っていなかった. 前に少し先生に相談したこともあり, そのときは色々難しいと言われたのだが, こういう研究所単位でやってくれることがあるようなので, 私としては個人のレベルで何かできることをしよう.

基本的に (子供の頃の) 自分が見たい・触れたいと思ったことに対しては, そこに興味を持つ人が一定以上いるということを大学ではっきり分かったので, そこに向けたことをどんどんやっていきたい.

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物理, 数学, 数学教育

実数論やフーリエ変換に関わる基礎数理のモチベーション・歴史的経緯

はじめに

次のツイートを受けて, 実数論やフーリエ解析に関わる歴史的な経緯や数学的なモチベーションの話をした.

発端

参考になる人もいるだろうから連続ツイートをまとめておく. 発端は次のツイート.

以下, 自分のツイートを中心に編集して転載. たりちぱさんのツイートは引用系にしておく.

本論

教科書を下手に改変したせいで、かえってわかりにくくなっている講義は、それによってわかりやすくなっている講義よりもきっと多いと思われる。それはそれとして、数学の教科書のわかりにくさは異常。あれはきっと数学科では異常者のみを選別するためにやっているのだと思う。

数学の教科書を書く人は、なんらかの定義を導入する際に、なんのためにその定義を導入する必要があるのかという動機を説明したら死ぬ病に罹っている。後の方まで学習が進めば自然とその定義を導入する意味が理解できるらしいのだが、その内容は絶対に教科書に書かれることがない。本当に意味わからん。

動機のような「夾雑物」を混ぜるとわからなくなるタイプが本当にいるらしいのと、前書きなり何なりに書いてある範囲で大丈夫タイプもいるようです。あと、こんな定理が成り立つような定義はとても嬉しいので、成り立つ定理を見れば動機は自明にわかる派もいる模様です。 他にもパッと見で(当人から見て)意味不明な近似などもなく「きちんと論理的に話が進んで嬉しい」派もいるようですし、気に入る点が根底から違うのはそうで、非数学関係者から見てそれが好きなのは異常者と認識されるのもそれはそうなのでしょう。本当に単純に向き不向きその一点で諸々決まる気分です.

おそらく「~のため」という概念自体が数学界にとっては夾雑物なんでしょうね。物理や生物に限らずすべての自然科学にとって教科書の記述はすべて「自然を理解するために」記述されているので、なんらかの動機が必ずあることが前提になっているし、それを知ってからのほうが学習しやすい。

多分大事なところなのであえて書くのですが、「(やっている当人にとって嬉しい数学に対する)数学のため」以外が各数学者にとって夾雑物っぽいです。数学科向けの本は数学科の学生が読むためのものなのでそれ以外を求めること自体が初めから間違いでしょう。物理の本がわからないと嘆く数学科学生的な.

私が知りたい数学の動機ってのは、「実数を理解するためにコーシー列を導入する」だとか、「フーリエ変換を厳密にするために関数の連続をちゃんと定義する」だとか、そういうレベルの話なので…

「そういう話ではない」のと「鶏が先か卵が先か」的なところもありつつピント外れのことを書くと, 実数の位相的側面 (完備性) の定式化としてコーシー列が必要なのは単に完備性の by definition だとか, フーリエ変換の厳密な定義を知るために普通の関数の連続性の議論していてもほとんど何もわからない (連続性のくびきを外したルベーグ積分または汎関数の空間の汎弱位相での連続性) とかなので, 問題意識の方向性が数学的に噛み合っていません. その動機で数学を見ていても確かに何もわからないし見えないという感じです.

勘所が噛み合っていないので微妙なのですが, 一応いくつか書いておきます. まずコーシー列は距離空間 (たぶん点列とその収束で位相が決められる空間まで一般化できる:一般の位相空間だと点列の一般化であるネット・フィルターの収束の議論が必要で, 最近の普通の位相空間の本にはまず書いていない) の重要な性質, 完備性を定式化するときに出てくる概念です. 実数には代数・測度・位相などの多彩な性質があります. そのうち完備性は実数の位相に関する決定的な条件です:小学校以来の直観的な数体系に「ふつうの距離 (ユークリッド距離) 」を入れた時, 自然数と整数は完備ですが, 有理数は非完備です. 有理数の完備化として実数が立ち現れるというのが数の構成の議論の 1 つのハイライトであり, これが数学的に重要です. そしてフーリエ解析とも関わる議論ですし, コーシーによる極限の $\varepsilon$-$\delta$ による定式化とも関わります.

連続とかいう以前に極限が魔界です. 確かアーベルが反例を出すまで級数周りの議論で今は間違っているとわかっている議論が成り立つと思われていたりしました (詳細忘れた:こういうの とかいろいろあります. アーベルは天才なので). コーシー・アーベル・極限周りではほかにもいろいろなエピソード・登場人物がたくさんあります. こういうの のとか: Analysis by Its History.

何はともあれ極限周りの話をすると, 結局極限周りのいろいろな議論は実数の性質に帰着します. 例えば連続関数の一様収束先が連続というのを示すのに, まず収束先の存在証明のために各点での収束を議論しますが, そこで実数の完備性を使います. 関数の議論をするのにも実数論がないと話になりません. そもそも関数の議論がなぜ必要かというところでフーリエが出てきます. これも有名な話で, フーリエは「任意の関数がフーリエ展開できる」と主張しました. ここで問題になったのは「そもそも関数とは何ぞ? 」というところからです. 関数の定義自体がずるずるだったので議論することさえままならない状況です. 実数の完備性などを議論しなければならなくなったのも関数・関数列の極限処理が 1 つの強い理由です. (この辺の話, 現代数学観光ツアーにも書いたので, 興味があれば読んでみてください).

経緯にあまり詳しくないので大幅にはしょると, 何やかんやで 19 世紀の数学では三角級数論の研究が盛んになったようです. (解析?) 数論関係の話もいろいろあったとか. 実際, 集合論で有名なカントールは (解析?) 数論がらみの三角関数論の収束の挙動の研究から集合論に入ったと聞いています. 集合論の研究の中で「$\mathbb{R}$ と $\mathbb{R}^2$ の間の全単射の発見」という出来事に関してカントールは「これらの間の区別がないことがわかった」と言ったのに対し, デデキントが何か印象的かつ数学的に正しいコメントをしたみたいな話があります. 参考. この辺, デデキントの詳しいコメントを忘れた上にすぐ思い出せませんが, 位相幾何での $\mathbb{R}^n$ と $\mathbb{R}^m$ が同相と $n=m$ は同値とか, 線型空間として同型なのと $n=m$ が同値みたいな話で, 全単射があるだけで「同じ」とみなすのはよくない, とかいうタイプの指摘だったはずです. この辺, 初めの方に書いた「実数は代数・測度・位相に関する多彩な性質がある」という部分の捕捉でもあります. このくらいの知識の射程距離がないと多分実数論の何が面白いのか, 数学関係者がどこに興味を持っているのか見たいなことはおそらく全く分からないはずです. というわけでいろいろ書いてみました.

フーリエに戻ると, フーリエ級数の議論は高木貞二「解析概論」になるような連続関数に関わる議論と, ゴリゴリの関数解析方面のルベーグ積分が絡む議論が初等的な範囲ではよく出てくるように思います. 物理向けだとヒルベルト空間論でルベーグで, だと思うので後者の話をしましょう (前者をよく知らない). そろそろ話が元からだいぶずれてきているような気もするので, せっかくなので適当に. こちらの話も結局完備性の話であり, 関数列の極限であり, 最初の方に書いたアーベルの級数まわりの話 (これも関数列の極限) と似た趣があります. なので連続にフォーカスが行く時点で何か数学的な軸がずれています.

まず多少は数学的に扱いやすい方でのフーリエ変換の定義は, $L^2$ での収束でしょう. 連続からはかけ離れた関数なのでいわゆるふつうの関数の連続性をいくら頑張って勉強してもあまりご利益ありません. そのうえでフーリエ変換の厳密な定義をするにはいくつかのステップがあります. 一番最初に出てくる問題は, フーリエ変換を定義することになっている積分が, $L^2$ の関数に対して $L^2$ の位相でそのまま素直に収束しないことです. $L^1$ なら自明に収束するので, まず $L^1$ で考えます. 次に $L^1 \cap L^2$ の関数に対して収束するという自明な議論にもっていきます. 有理数は実数の中で稠密というのと同じく, $L^1 \cap L^2$ は $L^2$ の中で稠密です. さらに急減少関数はこの共通部分に入っていて $L^2$ のなかで $L^2$ の位相で稠密です. 急減少関数は直観的にフーリエ変換の議論でやるありとあらゆる乱暴な計算が成り立つ空間なのでまず急減少関数の空間でいろいろ議論します. 最後に稠密性で持ち上げます. これは実数論および実数論を基礎にした微分積分学の基本的な議論で出てくる完備性周りの議論, 暗黙の裡に出てくる (連続関数の空間に対する) 関数空間論の議論がキーになっています. あの辺をゴリゴリ数学科でやるのは実際にこういうところで議論のアーキタイプだからです.

あとここでいう関数空間は全て線型空間なので, 線型代数, 特に抽象線型空間論, そしてユニタリ空間論を知っていないと多分何もかもわかりません. その辺の理解があいまいだとその隙を正確無比に突いてきて, 我々の理解を破壊してきます. この辺の話, $L^2$ が実数と同じく完備であることが極めて強く効いてきます. そんなこんなで実数論・コーシー列 (完備性) ・フーリエみたいなのはほぼセットです. 実数の完備性は「実数の連続性」とも呼ぶので, その意味では連続ですが, 関数の連続性と混ぜると何もわからなくなるでしょう. 実数とフーリエ解析は, 線型代数・微分積分・集合・位相・収束処理の技術あたりがキーポイントで, 収束処理の技術以外は知識 (講義されて無理やり知っていることにされるという意味) ベースでは大体数学科の学部一年程度です. ただすべて知っていて収束制御技術を身に着けるとなると相応の苦労があります.

動機という視点からまとめると, 実数・完備性・収束の議論は級数論などで間違いまくった結果, 反省としてきちんと議論しないと駄目なことが分かった, という強烈な動機がないと多分何も気分が取れません. 非数学で収束の議論を頑張ることはないはずで, 他学科で触れられない「聖域」だろうとは思います. この辺, 極微の世界やら何やらで量子力学なり相対論が必要になって物理が反省を迫られた, みたいなところがないとご利益が分からない, みたいな気分で私は見ています. (偶然でしょうが時代的にもいろいろ重なっています).

フーリエの厳密化の動機については, 「そもそも任意の関数とは?」やら「関数列の収束とは (ゴリゴリの位相空間論)」やら「(可算) 無限個を除いた点 (ほとんどいたるところ) で関数列がある関数に収束するのだが」みたいなところに興味関心が持てていないと何もわからないし見えないはずです.

応用を考えるなら超関数のフーリエ変換やら何やらも出てくるのでしょうが, これはごく単純な三角級数が超関数にまでぶっ飛んでいく数学社会の厳しさを意識しないと動機がつかめない感じはあります. 例は簡単で $\sum e^{ikx}$ があります. 単純な三角関数の和がディラックの $\delta$ に収束します. 関数解析やら関数の収束やらその位相やらになぜ面倒な話がいろいろ出てくるかというと, 究極的に筋がいい複素解析関数である $e^{ikx}$ の単純和 (級数・関数列) が超関数という関数ならざる何かにぶっとんでいくからです. 物理や工学でよく出てくるおなじみの関数が地獄なので, 初手地獄です. こういうの, 物理などでは日常的な存在なので誰でも知っている例ですが, この時点ですでに数学的な地獄が顕現していることを明確に意識して数学のモチベーション向上に使っている非数学の人をあまり見かけない気分があります. 私はこの辺, 学部 1 年でいろいろ調べさせられて煮え湯を飲み強烈な動機があります. あと, フーリエでも出てくる解析関数列の極限が (超関数という) 特異な存在になるというのは, 相転移などでも大事な話です. あれも (イジングの) 有限系での解析的な分配関数が極限で特異性を持ち, それが相転移として現れるという話で, 私にとっては同じ構造で, その辺を調べたくなる強烈な動機です.

だいぶ長くなってまとまりもなくなってきたのでこの辺で打ち止めにしますが, 私にとっての実数やらフーリエやらの動機はこの辺です. 現代数学観光ツアーに書いた部分もあります.

いやはや, 勉強になります. あやふやな理解で適当なことを書いてしまって申し訳ないです. そういった, 数学の世界の中での定義や概念の導入された経緯みたいなものが, 少しでも教科書に書いてもらえるとより読み進めやすくなると, やっぱり数学外の人間は思います.

紹介された「現代数学観光ツアー」というのも機会があれば読んでみますね. ありがとうございます

物理やら何やらでもそれ自身の話についたは概念の導入経緯みたいなやつ「自然がそうあるから仕方ない」みたいな感じで経緯の説明ないのはふつうな気分があり, 何で数学だけことさら気になるのか感はあります. あと探せば数学史なり何なりあるので非専門の話に労力割きたくない事案なのはわかりますが.

数学の場合は, 自然科学でいうところの「自然がそうであるから」に対応する目的がないので途方にくれるんですね. 数学の定義や概念はすべて (自然ではなくて) 人間が導入するものなので, 最初にそれを導入した人間にとってはなんらかの意図や目的があったはずです. コーシーのそれのように.

高木貞治の近世数学史談だか何かに「数学は帰納の学問である」という話があり, 群やら何やらの抽象物も大抵何らかの具体例をゴリゴリにすり下ろして抽象化していたり, 物理から生まれていたり何なりするので, 物理をやっていればかなりの程度カバーできるのでは, というのが私の学習履歴でもあります.

それはわかります. ニュートンが運動を考えるために微分を生み出したという逸話を知っているから, 微分を勉強する意味もわかりますが, そうでない人 (たとえば物理に興味のない高校生) にとっては苦行でしかないだろうというのもわかってしまいます. 必要がないといえばそれまでですが.

楕円型正則性と水素原子の量子力学

本文

こんな下らないことを呟いていた.

地味で清楚系と思っていた楕円型非線型偏微分方程式の解が実は解析的にめちゃくちゃ特異的で騙された

よく知らないが, はてなの匿名ダイアリーとか何とかいうのでまた異常者が湧いていたらしく, それに憤慨している方々がいた. そこの流れを見てのことだ.

それについてこんなコメントがついたので.

いや, それ自明…

@world_fantasia http://en.wikipedia.org/wiki/Elliptic_operator#Elliptic_regularity_theorem 楕円型正則性を背景にしたネタです. 私が知っているのは線型の方の楕円型正則性で非線型の方はよく知らないのですが

@phasetr なるほど, 分からん. かいつまんで言えばある物理的条件のもとで連立非線形偏微分方程式を解くというのが私の修論だったんですが, 解析解が出そうででなくて苦しかった

@world_fantasia 簡単にいうと, 楕円型の方程式の解は 2 回微分可能であれば十分なわけですが, 実際に解の性質を調べてみると 2 回よりも多く微分出来て, 場合によっては無限回微分可能, さらには実・複素解析的になることすらあると言う話です

@world_fantasia 具体例としては複素解析関数です. コーシー・リーマンの方程式からラプラス方程式 (一番単純な楕円型) の解になることが分かりますが, コーシー・リーマンがバックにあるならこれが複素解析的 (実部・虚部だけならそれぞれ実解析的) なのでそんな感じの話です

@phasetr あ~, なるほど. わざわざ具体例まで挙げていただいてどうもありがとうございました

@world_fantasia あと全くの別件ですが, 解析解というの, 多分物理ジャーゴンで数学の人には通じないです

@phasetr それは興味深い. まさか解析解が物理語だったなんて今の今まで全く知りませんでした

@world_fantasia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%A3%E6%9E%90%E7%9A%84 【解析解: 問題が「解析的に解ける」とはその解が既知の函数や定数などを用いて閉じた形の式に表せることを言う】と言う感じの使い方と思いますが, 数学でこういう使い方見たこと聞いたことないですね

@world_fantasia 【解が (実・複素) 解析的である】とかいうのはもちろんしょっちゅう使いますが

@world_fantasia もう一つついでに楕円型正則性についていうと, 水素原子のシュレディンガーが特徴的です. 楕円型正則性を議論するのには係数関数 (今はポテンシャル) の正則性も効いてきます.

@phasetr 言われてみれば確かに物理数学の教科書でも解が解析的あるって表現はよく見かけますが「解析解を求める」なんて文章は読んだ覚えがないな…なるほどなるほど

@world_fantasia 水素原子は厳密解が出ますが, ポテンシャルの原点特異性を解も引き継いでいます. 一方でポテンシャルは原点以外で滑らかですが, 解も同じく滑らかになります. もちろん一般にはラプラシアンの係数関数 (実際は定数) の滑らかさも当然効きます. そういう話です

@phasetr うおー, 段々私の学力じゃついていけなくなってきたぞ. 水素原子のシュレーディンガー方程式とか厳密に解ける唯一の例っていう程度の認識しかなかった…. 数物は難しいのう

@phasetr とりあえず貴方様が何故「楕円型」を連呼するのか何となく分かった気がします

ちなみに, 楕円楕円と言い出したのは宇宙賢者だ.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 楕円型正則性, 偏微分方程式, 量子力学, 水素原子

Twitter まとめ: 数学の作用素論と数理物理の作用素論

Twitter

数学の人がいう作用素論と数理物理というか量子力学周辺の作用素論は少し違う. 知っていることについて少しまとめておこう. 私は数理物理というか量子力学, 場の量子論周辺の作用素論の人間であり, 数学側の動きを完全に知っているわけではない. 実際にはもっと色々あるだろうから, 参考程度に思ってほしい. このあたりからはじまる.

作用素論っておもしろそうなにおいするけどいまいちどんなのかわからんぽん

@yuki_migo 数学の人がいうところの作用素論は有界作用素の話のようですね. 正規作用素というのがありますが, それを一般化した hyponormal とかそんなのを議論したりする模様. 日合-柳の本に多少書いてあります. その他には行列不等式とかその辺も多分作用素論

@yuki_migo 物理系というか私の周辺の作用素論だと, 量子力学とかその辺の具体的なハミルトニアンの解析をします. 坊ゼミではその辺の話をします

日合-柳本

上に引用した日合-柳の本はこれだ.

4 章までしか真面目に読んでいないのだが, 非常にいい本でそこまででも十分に価値がある本だ. 証明も丁寧に書いてあり, とても良い本なので紹介しておきたい.

前書きにもある通り, 作用素環関係の話題はほとんどないがその方面にいくとしても役に立つことはあるだろう. 日合先生の方は実際に作用素環もやっている. Hilbert 空間中心なのだが, 1 章では Banach 空間のこともきちんと書いてある. 関数解析の基本的な定理は全ておさえてあるので, これで関数解析の勉強もできる. その場合は付録もきちんと読む必要があるけれども. あとで書くが, この付録がまた良くできているので付録も絶対に読んでほしい.

2 章から作用素の話に入る. ここからは特に『量子力学の数学的構造』の 1 と重なる部分が増える.

「量子力学の数学的構造」との比較

上掲書よりも議論がすっきりしているので, 読みやすいと感じる人もいるだろう. ただポイントとなるスペクトル定理が『量子力学の数学的構造』と『ヒルベルト空間と線型作用素』で違う証明になっている. どちらとも味があるが, 私は『ヒルベルト空間と線型作用素』の, Riesz-Markov-Kakutani の定理を使う証明方が気に入っている. 『量子力学の数学的構造』の方は余計な道具を持ち出さないストイックな感じで, それはそれで良い. 両方勉強しておくとなおいい. あと『ヒルベルト空間と線型作用素』の方は有界作用素の functional calculus に関する議論が役に立つ. これは作用素環でも非常に役に立つ議論なので, これで慣れておくと便利だ.

日合柳の 3 章

3 章はスペクトル定理だ. 作用素論の至宝であり, 量子力学への応用上も決定的に重要なのできちんとやってほしい. 『量子力学の数学的構造』では 2 巻にまわっている Stone の定理も一緒に証明されているところがまたいい.

日合柳の 4 章

4 章はコンパクト作用素の話だ. 量子統計などで形式的に使うことはあるが, 実際にはあまり使えない. ただ, 一度はきちんとやっておくべき内容ではある. Fredholm 理論は応用上色々なところで出てくるようだが, そういうところでも使える. 超対称性とかそういうところで出てくると聞いている.

日合柳の 5-6 章

5-6 章は作用素論の進んだ話になる. あまり真面目に読んでいないので書けることはない. ただ, 今, 作用素論で研究されていることの基礎的なところに触れているようなので, そこに興味がある人は学んでおくときっと役に立つのだろう.

日合柳本の付録: とてもいい

そして付録だが, これが恐ろしくいい. Hahn-Banach, Riesz-Markov-Kakutani, Krein-Milman, Stone-Weierstass, Gelfand-Naimark の定理という, 関数解析の至宝とも言える定理が非常に丁寧に議論されている. Riesz-Markov-Kakutani の定理は汎関数が積分で書けるという一連の定理の基礎となる話であり, 証明も込めてきちんと学んでおくべきだ. 「正値超関数は測度である」という超関数論の有名な定理もこれとほぼ同じ証明だ. 他にも確率論で Brown 運動を構成するときにも使える. Krein-Milman は端点集合に関する話で, 作用素環で純粋状態の議論をするときに魂となる.

話がずれまくって『ヒルベルト空間と線型作用素』の書評になってしまったが, よい本なので関数解析の初学者にも最適なので, 興味がある人は是非参考にしてほしい本だ.

作用素論

それで作用素論だが, 微分方程式関係でも多少「作用素論の結果」として出てくることがある話がある. Sobolev 空間の埋め込み関係で埋め込み写像がコンパクト作用素になるという話があるが, それは上でも少し書いたコンパクト作用素の話になる. 微分方程式で定評のある本, Brezis の本でも Fredholm の択一定理が載っていたので, 使うことはあるのだろう. 微分方程式は不勉強なのであまり言えることはないのだが.

行列不等式

数学の作用素論で行列不等式がある, と書いたが, これは専門書がいくつかある. 和書だと最近出た本で面白そうなのがあったので紹介したい. 買うだけ買ってまだきちんと読んでいないのだが.

行列不等式は量子統計, エントロピー関係でも時々出てくる. 作用素環レベルで無限次元版があったりするのであなどれない.

量子系の作用素論

数理物理というか量子力学の作用素論だが, こちらは具体的な非有界作用素の解析をするのが中心になる. これはやはり新井先生の本を勧めるしかない.

議論は恐ろしい程丁寧で内容もしっかりしているのだが, 正直, Hilbert 空間論や関数解析の数学としての入門には向かない. 少なくとも上記 3 冊全部読めば基礎はカバーできるのだが, 関数解析として体系だった紹介はされていないので, 要領が悪い. あくまで量子力学用に特化した内容で, 量子力学のために必要なことをある程度具体的な問題を通して学ぶ本と言った方がいい.

はじめに書こうと思っていたことと大分違ってしまったが, まあいいだろう. 量子力学関係の話については, 3/24 の埼玉大でのゼミで話す予定なので興味がある方は参加されたい.

ラベル

数学, 物理, 量子力学, 量子統計, 作用素論, 作用素環, 微分方程式, 関数解析, 書評

「選択公理で極大無矛盾な理論に拡張すれば不完全性定理と矛盾しないか?」

本文

こんさんと p 進大好き bot の基礎論というかロジック関係のトーク.

しかし「選択公理で極大無矛盾な理論に拡張すれば不完全性定理と矛盾しないか?」というのは一瞬悩んだしよい練習問題ではある.

@mr_konn 理論っていうものよく知らないんですけど, 理論全体のなす何かは集合として定式化できる感じですか? (そして選択公理ってここではメタ言語なんでしょうか. 選択公理が成り立つ集合理論の中で更に理論の全体を・・高階の論理や高階の圏論みたいで頭が痛くなりそうですね).

@non_archimedean 理論とは論理式の集合のことだと思えばよいです. 言語 L を固定すれば, 論理式の長さは有限ですから言語 L に含まれる記号の全体が集合なのなら L の論理式全体は集合をなし, ひいては L の理論の全体も集合になりますね.

@non_archimedean で, メタ理論云々の話ですが. この辺りは入り組んでいてパッと説明するのは難しいのですが ナイーブには選択公理が成り立つような集合論の中で論理式をエンコードして, それを自然数とかほかの数学的対象を集合論の中で扱うのと同じようにしていると思ってよいです.

@mr_konn なるほどー. この場合「理論」=「論理式の集合」は「原始命題系」で, それとは別に公理や演繹規則が既に固定されているという感じでしょうか? (それとも動くのは公理や演繹規則・・?)

@non_archimedean むしろ理論が公理系 (やそれに帰結を足したものでもよいですが) になっています. 論理的な公理や推論規則については, 基盤とする論理体系によって決まっていて, その上に理論を載せて数学をする感じです

@mr_konn 言語 L を集合と見るのはあくまで記号の問題ということでモデルをとっているわけではないと解釈すると, ここで公理系の「帰結」というのは「証明可能命題」よりむしろ「恒真命題」のことでしょうか. (その無矛盾公理系を充足するモデルが存在しない時どうなるのか分かりませんが).

@non_archimedean あぁ, たんに「理論に (集合として) 含まれる命題どうしが互いに独立でなくてもよい」くらいの意味です. ちなみに無矛盾な公理系には必ずモデルが存在し, 逆もまたしかりというのがゲーデルの「完全性」定理です.

@mr_konn 論理は 1 階なのですね・・

@non_archimedean はい. 集合論の内部なので一階で不自由ないですし, モデル理論はもっぱら一階の理論を扱います.

@mr_konn なるほど. しかし僕は論理弱者なようで結局 (排中律と自然数論を含んだ上で) どう矛盾が解消されるのか分かりませんでした・・. 答え (?) のようなものはございますでしょうか. ご教授していただけたら助かります.

@non_archimedean 不完全性定理の前提として, 理論が再帰的公理化可能であるという条件があります. つまり, 論理式が与えられた時に, それが公理であるかどうかをチューリングマシンなどで機械的に判定出来る必要があります. 選択公理で膨らませたら, 当然この条件は満たしません.

@non_archimedean 感覚としては「だったら実数に具体的な順序を入れて整列して見せてよ! 」「 W ・ O ・ T!W ・ O ・ T! 」とおなじ状況です

@mr_konn なるほど! そもそも不完全性定理を「自然数論を含む無矛盾な公理系」に対する主張だと思い込んで生きてきていました! 演習を解く舞台にも立てていませんでした・・. どうもありがとうございます.

この辺, 一度はきちんと勉強したいと思っているがなかなか機会がない. 数学ガールもラノベとしての楽しみ方しかしていなくてあまり数学を追っていない.

ラベル

数学, 数学基礎論, 数理論理

軍服イメージのワンピースとサーストンの幾何化予想とパリコレと

はじめに

軍服イメージのワンピースなるものがあるらしい.

軍服イメージのワンピースほんとに可愛いなぁ♡ 欲しい http://pic.twitter.com/ZxPlOj9GQ4

@felisi28 これは どこのブランドですか? とってもかわいいですね

@57mainichi 可愛いですよね

@felisi28 なぜ haco のものと仰っているかは分かりませんが, 全く別のブランドの商品です. 画像もこちらのものですよね? http://yaplog.jp/f_l_a_s_c_o/archive/687

@felisi28 まだ買えるもの なんですかね? 探してみます♪ ありがとうございました

@veck228 EXCENTRIQUE のものですね! ご指摘ありがとうございました

@felisi28 こちらこそきつい言い方をして申し訳ありませんでした. エクサントリークもハコも好きなので, ツイートを見て混乱してしまいました. 訂正いただきありがとうございました.

@veck228 ありがとうございます エクサントリークのファンの方にはとても失礼なことをしました… 私も haco.が好きで, 以前見たワンピースに似ていた物があったので勘違いしていたんです

幾何化予想とパリコレ

幾何化予想とパリコレというのもあるし, 何かこういうのほしい.

イッセイ・ミヤケの 2010 秋冬パリコレのこと その 2

さて, N スペのポアンカレ予想の番組は広く一般に好評を得たようですが, その中で「サーストンの提唱した 8 つの宇宙の形」という話があります.

数学のほうからざっくり言うと, 3 次元幾何学には 8 種類あって, 3 次元多様体はそれらの合体したものになっている・・・というのがサーストンの幾何化予想なわけです. 幾何化予想はペリルマンによって証明されました. ポアンカレ予想は幾何化予想の簡単な系として得られます.

こういう話をテーマとしてファッション (デザイン) に盛り込ませて, 次回のコレクションをやってみたい, という壮大な計画です.

藤原さんは, 僕のところに来る前に, サーストンに会いにアメリカまで行って, また小島定吉先生 (東工大) のワークショップをやっていたとのことでした. いうまでもなくお二人とも双曲幾何, 3 次元幾何の世界的数学者です. サーストンからはみかんを剥いた皮の形や銀杏の葉っぱの形から (2 次元の) 幾何学 (等質な曲面) が得られることを聞いてきたということでした. 小島先生からは双曲タイリングで作る閉曲面を布のパッチで作るスタディ (=ためしに造形してみること) をやったそうです.

ラベル

数学, 幾何学, 位相幾何, ファッション

「数学的」という言葉を「格好いい」の意味で使っていこう

本文

「数学的」という言葉を「格好いい」の意味で使っていこうと提言したあとのくぼたさんの反応が面白かったのだが, くぼたさんがアレな人に絡まれていて号泣した. まずは自分の発言をメモしておこう.

@各位 何か「格好いい」的アレの表現として「ロック」「クール」みたいなのを良く使うのがこう色々気に食わなかったのでいい表現がないかと模索していたところ, 「数学的」と言う表現が良さそうだと思ったので, 今後「数学的」と言う言葉を上記の意味で濫用していく予定なのでそのつもりで

@phasetr もう少し正確に言うと, 数学的というのは普通の意味でも使うが, 「社会的」とか「公共的」のようにそれ以外の意味でも平行して使って行くのでこう色々と注意してほしい程度の意味だ

@phasetr どうしてかわいいにしなかったのか

@mitsuomi_miyata アレは本当にかわいい本来の意味で使いたいので

@phasetr 相転移 P のかわいいの範囲の広さに太平洋を感じますね.

@mitsuomi_miyata 所詮有限の広さ

@phasetr はい

@phasetr 数学的ジャパン

@MarriageTheorem それはあまり数学的ではないのでは

@phasetr すみません, 勢いだけでした

くぼたさんの発言

そしてくぼたさんの発言からのアレはこちら.

現代美術とか現代音楽で「数学的美」とか評されてるのを見ると「数学をすればいいのでは・・・」感はある

@kbtysk33 数学をする能力がないんです. かんべんしてください.

@toltaroppo でも別の言い方を探したほうがいいような気がしますけどね・・・

@kbtysk33 憧れなんだよ (〓〓;)

@kbtysk33 実際, ほかの言い方探せよって思いますけどね…

@toltaroppo それは僕もです・・・.

@kbtysk33 物理学やってる人間としても安易にその言葉を使いたくないので別の言い方探してますが, なかなか見つからないんですよね….

@kbtysk33 それは勘違いですよ. 分かり易いのが Bach の曲で, 数学的というより「数列」「漸化式」に変換できるのが特徴です. 高校数学の範囲でも十分にモデル化できますよ. 数学をする能力と言うけど, そんなの「高数」「大数」で復習すれば良いだけですよん♪♪

@howtodominate バッハの話ではないですよ

@kbtysk33 例えば liberal arts の語源は, かつて中世 (正確には古代ローマ) に作られた一般教養と専門教育なんです. 一般教養ではラテン語の文法・修辞 (作文) ・論理学が教えられ, それを通過した者だけが後期の算術・幾何学・天文学・音楽を教えられていたという歴史が

@howtodominate 現代の芸術の話ですからそれをいまシンプルにうつすのは素朴ではないかと

@kbtysk33 長く書けないのが Twitter の欠点だな (笑) 要するにラテン語 3 学科が「三科」と呼ばれ (実は院生つまり研修医にはこれを毎週叩き込んでいる), 後期の「四科」は全て数学の基礎と応用だったんですわ. septem artes liberales 「自由七科」という,

@kbtysk33 7 つの学問は「奴隷の技術」ではなく, 「自由人にふさわしい学問」ということです. そしてこの教養部で 7 科目を履修しないと, 神学部・法学部・医学部へ進学できなかったのよ. コペルニクスとか昔の偉い学者はこの 3 つの学部で博士号取ってたのが普通なんです.

@howtodominate さすがにその程度のことは知っていますが…

@kbtysk33 とりあえず, 基礎的な科学史や科学哲学について書かれた, ブルーバックスでも読まれたらどでしょうか. Ph.D を数学で取ったからじゃないけど, あんまり毛嫌いしないで欲しい. 実は患者にできる高 1 の女の子がいて, 今度数学オリンピック受験します. 特訓中.

@kbtysk33 でも, 現代芸術も「数学的直感」が必要なのは事実じゃないですか. 基本は同じです. 私もそれなりに音楽や美術やってた人間なんで. 一応, 一級構造建築士とか持ってますよ. これこそ, 数学・物理とアートのユーゴーです. 前のツリーを見ていて, 偏見多いなと思って.

@kbtysk33 その程度って, どの程度? 私, わざとラテン語で書いてないんですけど. つまり日本語で書いたこの用語は翻訳としては不適格だけど, しゃーないかなと思って書いてるだけです.

@howtodominate 芸術学には蓄積もそれなりにあるのでそんな単純なものではないです

@howtodominate いや歴史認識がです.

@kbtysk33 そんな単純なもの, と言い切れるのでしょうか. ずっとツリーを見ていて, 気になったんだけど. 何だか, 議論するだけ無駄のような気もしている. 知ったかぶりだから.

@kbtysk33 ところで, 芸術学とは何の事でしょうか (笑) 仏文だと例えば記号学とか美学・美術史のような哲学の一分野がありますよね. 例えば Umberto Eco とか読んだことある? イタリア語だから無理かも知れないけれど. 岩波から和訳が出てなかったかな. いくつか

@kbtysk33 じゃ, 聴くけど, あなたの「歴史認識」って, 具体的にどういうものなの? 仏文でいいから書いたものがあれば url 教えて欲しいな. 大ていの言語は読み書きできるので, ロシア語でもアラビア語でも構いません

そんな話していない感満載で社会性溢れるやり取りだった. あと【大ていの言語は読み書きできるので, ロシア語でもアラビア語でも構いません】はやばい. 文学やっている人間に対してここまで言えるの, 各言語が持つ文化や歴史に対して相当深い理解がないと言えないはずだが. 何なのこの人.

ラベル

数学, 文学, 芸術, 社会

Gaussian superprocess and its application to Quantum Field Theory: Sasakure Seminar

本文

先日, 東工大でささくれパイセンを主な対象として開催した小セミナーで, 「Gaussian superprocess and its application to Quantum Field Theory: Sasakure Seminar」というタイトルでお話してきた. Gauss 超過程は場の理論へ応用できるのだが, そこに関する話.

難しい話はせず, ボソン Fock 空間と緩増加超関数空間上の $L^2$ (確率空間) のユニタリ同値性について話してきた. 幾何や数論への応用へもあるのでそこまでどうしようもないほどマニアックで孤立した話題でもない, ということも説明. これから研究でも使う予定なので, それに合わせて復習にもなった.

証明は飛ばし飛ばしだが, (可換) von Neumann 環を援用する, 確率論ではあまり見ないであろう話や, Gauss 超過程の存在証明などポイントポイントはおさえた話をした. Gauss 超過程の存在証明は Tychonoff から Hahn-Banach, Stone-Weierstrass を介し, 最後 Riesz-Markov-Kakutani で締めるという関数解析の至宝を並べた証明で, 解析陣の心を掴んだ.

まだ一本目すら出ていないが, これも動画 (DVD) にしたい. やりたいことがたくさんある. ご興味があるという向きはご連絡頂ければ適当にお話に行くことはできる.

ラベル

数学, 数理物理, 確率論, 場の量子論, 超関数論, 作用素環, 関数解析

売れているというので『語りかける中学数学』を買ってみたがちょっとまずそうなので対応を考えたい

本文

ちょっとした地獄を発見してしまったので.

10 万部売れているからというので【語りかける中学数学】を買ってきた. この本というか著者, 「 0 は自然数ではない」と言い切っていたり, 高校数学版の本ではじめのページから素数の定義を間違えていたり循環小数と有理数を明らかに別物と認識しているようだ. 著者の数学理解, 相当やばいのでは

@phasetr いまもう少し進んだ箇所を読んだら一応「注:1 は素数ではない」と言う記述があった. 定義そのものにその旨書いておかないとまずいだろう. あと「小数点以下は無限小数ゆえ」みたいな「高校数学方言」どうにかならないのだろうか. この日本語本当に気持ち悪い.

@phasetr こういうのが求められているというのはとりあえず認識した. 折角買ったこともあるしきちんと読もう

@phasetr 高校数学界で暮らしていますが, その方言は聞いたことがありません (私が教科書をほぼ使わないからかも). いずれにせよ, その本はヤバそうですね.

@phasetr ただ「 0 は自然数ではない」の説明, 日本語主観の感覚 (「日本語で鉛筆が 0 本あると言いますか? 」というよくあるアレな説明) でしか説明しておらず, 明らかに認識不足. ここだけは本当に訂正を要求したい

@anbyk 「〜より」とか「〜ゆえ」と言う表現, 私が高校の頃にもよく見かけましたがずっと気持ち悪い言い回しでした. 「〜となることより」くらいなら分かりますが普通の日本語文章では (私は) 見たことがない表現, よく見ます. あと put や set の直訳の「〜とおく」, ずっと気に入らないです

@anbyk かなりやばいと思いますが, 10 万部売れているとのことで数学の本としては相当な売り上げではないでしょうか. これ, 結構怖いです. 10 万部売れているのだからマーケティングの勉強として読んでおけと言われたから買ってみたのですが

@phasetr 何か本当に怖くなってきた. 黒木さんの恐怖の片鱗を味わっていると思って本当に震えている

@phasetr スラムダンクの山王戦で晴子が「何だか怖くなってきた. 今までお兄ちゃんが積み上げてきたものが全部壊れちゃうんじゃないかって」と言いながら泣いている情景を思い出して思わず涙が頬をこぼれた

追加で少しやりとりしたのでそれも記録しておこう.

私, この参考書持ってるけどなんか読みたくなくなってきた. .

@anmitsu_0602 まだはじめの 10 ページ程度までしか読んでいませんが, 問題の解説自体は丁寧なようなので使いようでしょう. 適切に使うにはそれなりにしっかりした人に聞ける環境が必要などと言われたらそれまでなのですが

@phasetr 私もまだ全然読んでないんですよ! 売れてる参考書? だから買ってみたけど…ちょっと目を通してみますね

@anmitsu_0602 恋人の方がそれなりにカバーしてくれるかもしれないようなので, あまり心配しないでも良い環境だと思います. 分からなくても死ぬわけではないのでのんびり適当にやって頂ければ

あとこれ.

えっと, 数学苦手な私からしたらこの参考書は非常に丁寧で分かりやすくて面白くて重宝しています. 多分この参考書は数学が得意な人向けではなく苦手な人向けなのだと思うのです だから, 曖昧なところをはっきりとおっしゃっているのではと考えます

@sixyakutorimusi 書いた範囲でもおかしいポイントが違う事項がありますが「曖昧なところをはっきり」というのは違います. 特に素数の定義は「はっきりさせるべき所が曖昧」です. 循環小数と有理数は見かけだけが違うのを違うと言い切っている形なのではっきりと間違いです

@sixyakutorimusi 「 0 は自然数ではない」の説明にあった「日本語で鉛筆が 0 本とは言わない」は英語で「 There is a no pen.」と言う表現があり, これは正に 0 本と言う表現です. 英語では地上階 (日本語の 1 階) を 0 階 (ground floor) といいます

@sixyakutorimusi 何から何までまずいと言っているのではありません. 問題の解説は軽く見た限りでも非常に丁寧ですし, 誤答を中心に分析・解説するというのはかなり優れた方法で, 私も実際の講演や作成した教材で使っている手法です

@sixyakutorimusi 表面的な部分では恐らく非常に強力です. だからこそそれでしっかり勉強した人たちが変な部分まで身につけてしまうことを恐れています.

@sixyakutorimusi ついでなので書いておくと, 素数の定義に「 1 以外の自然数とする」というのはかなり本質的です. 「素因数分解の一意性定理」は陰に色々な所で使いますが, 1 を素数にしてしまうとそれが崩れます. もちろん工夫すればきちんと使えますが,

@phasetr さんへ 長文解説ありがとうございます! 私の理解力が足らず完全には理解できてはいないと思いますが, ひとつの参考書を鵜呑みにしたりしないよう心がけたいと思います

@sixyakutorimusi 結局それが凄く大変なので定義レベルで 1 を素数にしないのが普通です. その辺の面倒さを説明するといやがる人もいるだろうから初学者向けには適当に済ませた方がいいかもしれないというのは想像つきますが, 曖昧なので注のレベルではなくやはり明示的に書くべきです

@phasetr さんへ なるほど

@sixyakutorimusi 解説が丁寧な本が少ない (らしい) というのは間違いなく, それを埋める本当に非常に意欲的な本で素晴らしい取り組みだと心から思っています. 実際売れている分それだけ影響も強く, 明らかでしかも根本的な間違いの影響が強くなってしまうのを心配しています

@sixyakutorimusi 1 人でやる (数学は皆嫌いなようなのでおそらく 1 人でやらざるをえない) 状況ではかなり頼りになるはずです. 「それ大丈夫? 」みたいなことがあったときに本ばかり信用しないで自分の感覚の方にも信を置いて確認するようにしてください

@sixyakutorimusi 私も本を持っていますし, 何かあれば出来る範囲でお手伝い橋帯と思っています. そのときの状況によるのですぐに返せるかは分かりませんが, 質問なり何なりして頂いて構いませんので

@phasetr さんへ おかげさまでこの参考書の良い点悪い点が非常によく分かりました! これからはこの参考書をできるだけ自分のためになるように使っていきたいと思います

@phasetr さんへ わかりました!

@phasetr さんへ あ, ありがとうございます!

私も私で頑張ろう.

ラベル

数学

数学, 物理, 数理物理での内積関係の記法, 記号

はじめに

Twitter で少しやりとりしたので簡単にまとめておこう. どういう意味で取るかはかなり微妙なところだが「初学者」には分かりづらいようだから.

動画

前提

面倒なので全部関数空間で考える. 定義域は適当に $\Omega$ にして, 関数は $f$, $g$ あたり. 作用素 (演算子) は $A$ にする.

数学での記法

複素共役を $\bar{f}$ として, 内積は次で定義する. \begin{align} \langle f, g \rangle := \int_{\Omega} f (x) \overline{g (x)} dx. \end{align} 左の引数 (第一引数) を線型にして右の第二引数を反線型にしたい, という人情を表す. 内積自体には次のような記号を使う: $(f, g)$ , $(f|g)$ , $\langle f, g \rangle$ , $\langle f | g \rangle$ . 多分一番最初の記号が一番一般的だろう. 私自身は $\langle f, g \rangle$ を使っているが, これは勉強した本である 量子力学の数学的構造 と Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 作用素の共役は $A^*$ のようにスターで書く.

全く関係無いが大学一年の頃, 演習の質問でスターを「雪印」と呼んだ友人がいて, 「これはスターと読みます. 」と突っ込まれていたことを想起した.

物理での記法

複素共役を $f^$ として, 内積は次で定義する. \begin{align} \langle f | g \rangle := \int_{\Omega} f (x)^{} g (x) dx. \end{align} 演算子の共役は $A^{\dag}$ と, ダガーで書く.

数理物理での記法

端的に言って滅茶苦茶だ: 数学の記法と物理の記法のチャンポンになっている. 同じ人でも時と場合によって記法を変えることがある. 例えば新井先生は数学系の論文では $(f,A^* g)$ で複素共役もバーを使う数学よりの記号だと思うが, 物理の人が多そうな文献では物理の記法を使う. 分類の仕方が微妙なところだが, 数理物理の文献では大体数学の記法である中, 内積の第一引数を反線型に取ったりする.

ちなみに私自身はチャンポンの記号を使っている. これは Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 内積は第二引数を線型に取る物理の記法だが, 複素共役と作用素の共役は数学の記法だ. 見ると分かるが, 量子力学の数学的構造 と Bratteli-Robinson でも記号が違う.

ラベル

数学,物理,線型代数,関数解析,量子力学

Turing 次数理論の Martin 予想をめぐる対話

本文

ゼルプスト殿下による Turing 次数理論の Martin 予想をめぐる対話という Togetter があった. さっぱり分からないが, 興味を持つ向きがいる可能性があるのでとりあえずリンクだけつけておきたい.

またまた, 集合論家 DIke さんと計算論家トリイロさんの対話です. 往年のヴィクトリア・デルフィノ問題について. S.Jackson による Projective Ordinals の計算の話題から, Turing Degrees のグローバルな構造に関する Martin 予想の話へと進みます.

集合論界隈, 本当に魔境という感ある.

ラベル

数学, 集合論, 計算論

確率論的な $\zeta$ の特殊値の導出法

ツイート

不勉強と言われたら返す言葉はないのだが, 聞いたことない $\zeta (2)$ の導出の方法が言及されていたのでちょっと聞いてみた.

引用

先週は測度論による $\zeta (2) = \pi^2 / 6$ の証明 今週はガロア理論による角の三等分問題 完全に趣味の領域です.

@sesiru8 測度論によるゼータの特殊値の証明, どんなことをするのでしょうか. 測度論からというのは聞いたこと無いので気になります

@phasetr ルベーグ積分でやりました. 殆ど広義リーマン積分でしたが

@phasetr こんな問題です https://twitter.com/sesiru8/status/359443578470137856/photo/1

@sesiru8 ありがとうございます. このやり方, 知りませんでした. ただ, これを測度論とは言わないのでは, という感じはします

@phasetr 最後の方で無限級数を考え, 積分と極限の交換を利用するためにはルベーグの意味での積分が必要になるのでしょうか. (これを測度論というかは…分かりません. ご指摘ありがとうございます).

@sesiru8 ルベーグ積分なら級数も積分と思えるので単に積分でしょう. 測度論と言うともっと集合演算とか駆使するイメージです. 何か確率論的にぎろんするのか, と思ったのですがそうではないようで. あと, 積分と級数の交換はリーマンでもできます

@phasetr なるほどです.

@sesiru8 具体的なやり方をすぐには見つけられなかったのですが, 確率論的にζの特殊値を出す方法はあるようです http://gcoe.math.kyoto-u.ac.jp/cgi-bin/seminars/.ja.php?type=view&id=770&ca=seminar 挙げられた言葉を見た感じ, 測度論的色彩が強いのかはどうかは分かりませんが確率という感じはします

@phasetr ありがとうございます.

コメント

問題についてはこちらにも書き写しておこう.

函数 $f (t)$ を $f (t) = \left ( \frac{2}{\pi} \right)^2 \int_{0}^{\infty} \frac{1}{1 + x^2} \frac{1}{1 + (t/x)^2} \frac{1}{x} dx$ と定めるとき $\int_{0}^{\infty} f (t) dt = 1$ が成り立つことを示せ. 関係式 $\frac{1}{1 + x^2} \frac{1}{1 + (t/x)^2} \frac{1}{x} = \frac{1}{t^2 - 1} \left ( \frac{x}{1 + x^2} - \frac{x}{t^2 + x^2} \right)$ を用いて $f (t) = \left ( \frac{2}{\pi} \right)^2 \frac{\log t}{t^2 - 1}$ を示せ. 次を示せ. \begin{align} \int_{0}^{\infty} \frac{\log t}{t^2 - 1} dt = 2 \int_{0}^{1} \frac{\log t}{t^2 - 1} dt = 2 \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(2n+1)^2}. \end{align} 以上の計算より \begin{align} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(2n+1)^2} = \frac{\pi^2}{8}. \end{align}

計算すればすぐ分かるのだろうが, 3 の左 2 つの式, 正の実軸上の積分が $[0,1]$ の積分に落ちているのでなかなか凄い.

あと確率論的に特殊値を出す方についても記述を引用しておこう.

リーマンゼータ関数の特殊値 (特にバーゼル問題 $\zeta (2) = \pi^2 / 6$) を初等確率論の手法で求める. 2 つの独立なコーシー分布の商, 逆正弦分布の商, 指数分布の商, ウィグナー半円分布の商のすべてでバーゼル問題, リーマンゼータ関数に関するオイラー公式が導き出せる. また, ルジャンドル展開の手法でもバーゼル問題が解けることや, チェビシェフ多項式との関連なども論じる.

追記

pekemath2 さんが A probabilistic approach to special values of the Riemann zeta functionという論文を引いていた.

@ftksr_sakamuke ちなみにこういうのもあります

http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1590-01.pdf

まだ詳細を追っていないが, これも面白そう.

ラベル

数学, ゼータ, 確率論

tri_iro さん筋の情報: チャイティンの不完全性定理の方を使って人を騙そうという行為が横行しているようである

本文

tri_iro さんはいつも本当に面白い.

この辺, 詳しい話を聞きたい.

追記

魔法少女から次のタレコミを頂いた.

どんな地獄だ.

ラベル

数学, 数理論理学, 数学基礎論, 不完全性定理

フィナンシャルタイムズの記事: オンライン大学は米国の教育危機を救えない

本文

『オンライン大学は米国の教育危機を救えない』という記事があった.

元スタンフォード大学教授のスラン氏が立ち上げた「ユダシティー」でオンライン講座を受講していた学生は, 生身の人間による講義を受講していた学生よりはるかに成績が悪く, ドロップアウトする数も大幅に多かった.

中略

そこでオンライン教育の出番, となったわけだ. MOOC を使えば, コストはほぼゼロになる. だが大きな注目を集めたユダシティーの実験のように, 受講者の 90%以上が学習に興味を失ってしまうのであれば, コスト問題への対処を迫られることになるだろう. 興味を失う学生の割合は, 一般の学生の 2 倍である.

中略

■大多数に意欲を持たせることが課題

ここから MOOC について何が言えるのか. テクノ楽観主義者が好んで指摘するように, 今では米議会図書館の蔵書や名門大学の講義を無料でダウンロードできるようになった. 時代に取り残されまいとする年配の従業員, 米軍の予備兵, インドのような国の野心あふれる若者など, いくつかの意欲の高い層ではオンライン講座を修了する割合が高い. だがスラン氏の受講生をはじめ, たいていの人は急速に興味を失ってしまう. 要するに, 米国の教育者が直面している本当の課題は, 熱意の乏しい大多数の人にいかに意欲を持たせるかなのだ. 言うは易く, 行うは難し. 馬を水辺に引いていくことはできても, 水を飲ませることはできない.

このような厳しい世界で成功するのは, MOOC を筆頭にインターネット全般がもたらす無限のリソースを活用する才覚を持ち合わせた者だろう. 残念ながらユダシティーの挫折は, そんな人材が間違いなく少数派であるという現実を突きつけている. 米国の教育危機について, コンピューターで解決できる部分はせいぜいごく一部だろう. コンピューターに比べてカネがかかるとはいえ, それ以外はわれわれ人間が引き受けるしかない.

あまり具体的な数値がないので突っ込んだ話はできないしするつもりもないが, 少なくとも現状, 人の影響力は絶対的で無視できない. 「良い教師」的なアレ, どうしても必要だというただそれだけのことだろう. 道具に遊ばれている感あって, ひどく間抜けという印象.

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教育

Twitter まとめ: プロデュースに関するかとうさんとの深刻な討論

本文

医学部生プロデュースに関する深刻な討論をかとうさんと交わしたので, それについて記録しておきたい. この辺 から始まる.

ってか, 元の話は法学部卒ったって, 政治学科じゃねーか. 理学部出たつっても生物屋さんに, ワインバーグも知らないんですかあ, って言ったら逆切れされるよ

@katot1970 教養の微分積分, 線型代数の話すら「理系」に通じない悲しみ

初回講義のεδを見て回れ右した医学部生が居た. 世界には悲しみしかない RT @phasetr: 教養の微分積分, 線型代数の話すら「理系」に通じない悲しみ

@katot1970 レクチャーする代わりに数学ができる女性を紹介してもらいましょう

数学が出来る女性は相手陣地 (医学部) には居ないと思ふ. RT @phasetr: レクチャーする代わりに数学ができる女性を紹介してもらいましょう

@katot1970 とりあえず受験的な意味でできればいいという方向で. あとはこちらで教育すれば

でも, ここの blog によると, 大学までの数学と大学の数学は違うらしいよ http://phasetr.blogspot.jp/2013/03/blog-post_14.html RT @phasetr: とりあえず受験的な意味でできればいいという方向で. あとはこちらで教育すれば

@katot1970 だからこそのプロデューサー

この場合のプロデューサーがつんく♂的なものか, 秋元的なものかが重要 RT @phasetr: だからこそのプロデューサー

@katot1970 市民的なものです

小室哲也的なものだったか RT @phasetr: 市民的なものです

割と真剣にプロデュースについて検討しているので, ご興味のある方は是非御一報を.

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数学

研究室で昼寝をしていたら幽体離脱してしまったので Hilbert 空間に行ってきた

本文

この間 RT で次のような文章が書かれた写真が回ってきた.

いつもどおり, 研究室で心地よい昼寝を楽しんでいた数学者のぼくに驚愕すべきことが起こった. なんと, 無意識に幽体離脱をやってしまったのだ! 肉体を離れて意識だけになったぼくは, 一冊の案内書に導かれ, ヒルベルト空間を-. 数学の概念が文字どおり実体化した奇妙奇天烈な世界を目指した…. "無限"の実像を探求するため. 鬼才の名に値する真の鬼才が怒涛のアイデアで SF と数学の極北を探求する超絶マッド SF.

調べたところ, ルーディ・ラッカーの『ホワイト・ラッカー』というハヤカワ文庫 SF の作品らしい.

最近積読が多過ぎてつらいのだが, これはちょっと読んでみたい. 本当に Hilbert 空間に行けたのだろうか.

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数学, 小説, SF, Hilbert 空間

1 文字 1 文字に万感の思いを込めて式を書こう:不等式の記号に思いを寄せて

本文

高校までは不等号というと $\leqq$ 一択だったが, 大学に入ると $\leq$ や $\leqslant$ という不等号が出てくる. 特に $\leqslant$ は大 2 病的な感じで使いはじめる者もいたことだろう.

また書く量が減るから, ということで $\leq$ を使う人もいる. $\leqslant$ も斜めにシャシャッと書く感じで書きやすそうだし, そういう意味で $\leqslant$ を使う人もいそうだ.

だからどうということも特にないのだが, 私は $\leqq$ を愛用している. ご多分に漏れず $\leqslant$ を使ってみようと思ったこともあるのだが, 癖でずっと $\leqq$ を使い続け, 結局そのままだ.

今になって思うと画数も多いこの不等号 $\leqq$ がとても気に入っている. 基本的に記号や式は万感の思いを込めて書くものだ. 苦闘の末得られた結果を綺麗にまとめているときにはなおさら. わざわざ下に棒を 2 本つける感じが, 私の心の底に深くたゆたう不等号への愛情を表現しているような気さえしてくる.

あと, 少なくとも物理と数学では 1 つ 1 つの記号をとても大事にする. 記号 1 つとってもそこから読み取れるメッセージというのがある. 例えば物理で $E$ と出てきたらエネルギーなり電場なりに良く使うが, そこから一気に関連する諸概念, Hamiltonian や Lagrangian, 磁場や Maxwell 方程式やらが頭の中を駆け巡る. 数学でも同じ $E$ で射影なりベクトルバンドルなり, 色々ある.

関連性を意識させるべく, 何となく似ている概念には同じ (ような) 文字を使うことだってある. あまりいい例ではないが, 時間を表す変数 $t$ に対し, 量子力学では虚時間 $it$ に $\tau$ を使ったりする.

記号 1 つで簡単に聴衆を混乱させることだってできる. 1 文字 1 文字に万感の思いを込めて文章を書こう.

最後に解析学徒の心の故郷, 不等式の園への誘いとして我等が Hardy-Littlewood の『不等式』を紹介して終わろう.

追記

黒木さんからコメントをもらった. せっかくなのでこちらにも転記しておこう.

@phasetr http://phasetr.blogspot.jp/2013/06/1-1.html ぼくも「≦」派 (「<」の下に「=」をしっかり書く派) です. 手が勝手に書いてくれるのに無理して略す必要はない感じ.

ラベル

数学, 不等式, 解析学

ぞみさんツイートから: 量子力学と作用素論, 特にスペクトル理論と自己共役性

はじめに

ぞみさんのツイートを見たので.

ラプラシアン作用は座標に依存しないはずなのに, シュレーディンガー方程式を解くと 2p 軌道で軸が出てくる. これは求解過程で (特に変数分離?) 適当な回転変換を施しているということかな.

@zomi1202 どんなポテンシャルを仮定しているかによりますが, ハミルトニアンの対称性が解にも反映されます. http://www.amazon.co.jp/gp/product/4535784663/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4535784663&linkCnde=as2&uag=phasetr-22 が参考になるでしょう. 2/14 はセミナー自当でのあまり触れる余裕はなさそうですが, 何かあれば直接でも聞いて下さい

@phasetr 突然解に対称性が消えて驚いてしまったので, どこで置き忘れてしまったのか探してみます. ありがとうございます.

紹介した本

追加

追加の疑問があった. Twitter だと細切れになるので, ブログにまとめておこう.

ハミルトニアンって固有方程式解いてみたら固有空間同士が直交してる (よね?) けど, 何かユニタリーとかエルミートとか内積と相性の良い性質でもあるの?

@zomi1202 演算子は全部エルミート (じゃないと観測値で実数以外がでる)

@dream_taro それって固有値が実数だからということ? 関数空間の内積の定義である, 積分から直接示せるのかな?

@zomi1202 量子力学の公理で固有値が観測される, っていうのがあるので固有値実数じゃないとまずいよねということ.

コメント

どこを話の基点にするかという話がまずある. やりはじめると大変なことになるので, 適当に単純化したうえでうるさいことも書いていく.

ハミルトニアンって固有方程式解いてみたら固有空間同士が直交してる (よね?) けど, 何かユニタリーとかエルミートとか内積と相性の良い性質でもあるの?

今度の 2/14 Lieb-Loss の Analysis セミナーでも少し話すが, うるさいことをいうと固有値があるとは限らない. 例えば全空間 $\mathbb{R}^n$ で考えたときの Laplacian は固有値がない. 固有値が複数あるときにそれぞれの固有関数自体は直交している. (固有空間が直交とはあまり言わない. ) Hamiltonian の Hermite 性についても面倒な話がある.

コメント

@zomi1202 演算子は全部エルミート (じゃないと観測値で実数以外がでる)

@dream_taro それって固有値が実数だからということ? 関数空間の内積の定義である, 積分から直接示せるのかな?

@zomi1202 量子力学の公理で固有値が観測される, っていうのがあるので固有値実数じゃないとまずいよねということ.

数学的には線型作用素には Hermite 性, 対称性, 自己共役性という分類がある. 線型代数だと対称作用素は「実係数のときの Hermite に対応する性質」という感じの定義だが, ここではそういう使い方はしていないことに注意してほしい. ちなみに関数解析 (作用素論) でも文献によって微妙に定義が変わる場合がある. 私の使い方は新井先生の本の定義を使っている.

その上で, 対称作用素ではなく自己共役作用素である必要がある. 固有値という言い方も不正確で, 実際には「スペクトル」という概念の中で話す. 固有値は固有値で当然大事なのだが, 「固有値に対応する固有関数で表わされる状態は安定」という物理的な解釈がある. 不安定な状態はともかく, その Hamiltonian に従う散乱状態をどう見るかというところで, 固有値以外のスペクトルに属する (言い方不正確) 状態を考える必要があり, その部分まで考えたいので固有値を一般化したスペクトルという概念を準備する必要があるのだ. この辺, 量子力学まで突っ込んだ話は無理にせよ, 3 月の Lebesgue ・関数解析・作用素論セミナー (予定) で少しは触れたい. 次の本を参考にしてほしい.

コメント

あと, (閉) 対称作用素と自己共役作用素はスペクトルに決定的な違いがある. 閉対称作用素のスペクトルは次の 4 つのどれかになる. (証明は新井先生の『量子現象の数理』を見よう. ) - 上半平面全体. - 下半平面全体. - $\mathbb{C}$ 全体. - 実数の閉部分集合 (自己共役). 最後のはともかく, 上の 3 つが凄まじい.

コメント

@dream_taro それって固有値が実数だからということ? 関数空間の内積の定義である, 積分から直接示せるのかな?

これが数学的には微妙で, 積分から示せる範囲の話ではいいところ対称性までしか言えない. 自己共役まで示したいとき, 論文レベルの対応が必要になると思ってほしい. 既に分かっている作用素, 有名な作用素については上記の本にも証明がある. 結構大変だ.

この辺もきちんとやるととても面倒.

コメント

$\int \phi \phi^* dV$ が収束することから無限遠方で $\phi$ は 0 で, これと部分積分を使えばハミルトニアンがエルミートなのは示せそうだな.

積分が収束しても無限遠で $\phi \to 0$ は言えない. $x = n$ のところで幅 $1 / n^4$ で高さ $n$ を考えると, これは 2 乗可積分だが $x = n$ のところではどんどん高さが高くなる. 私が学生時代, 先輩に指摘された例だ. 頑張って反例を作ろう.

Hamiltonian が「 Hermite 」であることをいうのは大体できる. 物理の本ではふつうそういう議論をしている. 数学的には死ぬ程面倒だが.

需要があるなら今度セミナーしよう.

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数学, 物理, 数理物理, 量子力学, 作用素論, スペクトル理論

Euler の公式と関数論: 1 変数関数論と多変数関数論の深い溝の狭間で

やりとり

こんな会話をしたのでメモ代わりも込めて記録しておく.

TL がおおかみこどもだけでなんかつまんね

@1112345678999 そんなときこそ数学

@phasetr あまり詳しくないので大きな声で言えませんが, オイラーの公式は三角指数が絶妙に組合わさっているこの世で一番綺麗な数式だと思ってます

@1112345678999 オイラーはむしろ, 指数関数を複素領域にまで拡張する時のキーである一致の定理の破壊力に思いを馳せます. また, 一変数での一致の定理は集積点を含む集合上の一致だけみればいいのですが, これは多変数では成立しないので一変数と多変数の差異も際立つ深い定理です

@phasetr (理系学院生なのにピンとこないヤバイ……)

@1112345678999 この間で早稲田で数学科学生向けに関数論セミナーをしたときからずっと書こうと思っていた話なので後でブログにまとめます. そして DVD にもする予定がある方の市民

コメント

一変数での一致の定理

まず 1 変数の一致の定理を書いておこう.

一致の定理 (1 変数)

$U \subset \mathbb{C}$ を領域とする. 関数 $f, g \colon U \to \mathbb{C}$ が正則で $C \subset U$ が $U$ の中に集積点を持つとする. このとき $C$ 上で $f = g$ なら $U$ 上で $f=g$ となる.

この定理は次の 1 変数関数の零点の振る舞いによっている.

一変数での零点の孤立性

定理 (1 変数での零点の孤立性)

関数 $f \colon U \to \mathbb{C}$ が正則で恒等的には 0 でないとする. このとき $f$ の零点は孤立している.

一致の定理の証明

1 変数での一致の定理の証明は次の通り.

$h = f - g$ を定義したとき, $h$ はもちろん正則だが $C$ 上 $h = 0$ となるが, $C$ は $U$ 内に集積点を持つため零点は孤立しない. したがって $U$ 上全体で $h = 0$ となる必要がある.

孤立性さえ認めるなら証明は簡単だが, 当然零点の孤立性に強く依存している.

多変数での零点集合

これが多変数でどうなるか. 次のように変わるのだ.

定理 (多変数. 零点集合の性質.)

$n \geq 2$ とし, $U \subset \mathbb{C}^n$ を領域とする. 関数 $f \colon U \to \mathbb{C}$ が正則なとき, $U$ のある開部分集合上 $C$ で $f$ が恒等的に 0 になるなら, $f$ は $U$ 内で恒等的に 0 になる.

1 変数のときは $C$ が閉集合でも良かったのだが, 多変数では開集合に限定される. これがポイントで, 一致の定理の $C$ の条件として決定的に効いてくる.

1 変数のとき, 閉集合でもいいというのは決定的に大事だ. 上にも書いたとおり, 閉集合上での一致さえ言えればいいのだが, 複素平面の中で実数全体は閉集合にはなるが開集合にはならないことに注意しよう. 実数上での一致から全体の一致が結論でき, これが指数関数の複素拡張の一意性を生み出す. これが Euler の公式に正当性を持たせる根拠になっている.

また, 多変数の場合は多変数の場合で開集合に限定した一致の定理というか, 零点の振る舞いが決定的だ. セミナーのとき, ヘイヘイにも問題を出し (て即答が得られ) たのだが, 閉集合上で $f=g$ になったとしても全体で $f \neq g$ という例が簡単に作れる. これは (1 変数のときの) 一致の定理の証明からも反例が作れるし, もっと大事なこととして代数幾何から反例が作れる. だからこそヘイヘイに問題を出したのだが.

もっと強くいうと, 代数幾何から反例が作れるというより, 代数幾何学の成立そのものが反例となっているといっていい. (Affine) 代数多様体は複数の多項式の共通零点として定義されるが, 多項式は連続で零点集合なので, 代数多様体は ($\mathbb{C}^n$ の Euclid 位相で) 閉になる. このとき, 多変数でも 1 変数のときと同じく閉集合上の一致で全体が一致を導いてしまったら, 上述の定義多項式は全て 0 にならねばならず, 代数多様体が $\mathbb{C}^n$ 全体にしかなりえない. 当然こんなことは起きない.

1 変数と多変数の関数論の決定的な違いになっているし, 1 変数の時の特殊事情はそれはそれで圧倒的な結果を生み出す. こうした背景があるからこその Euler であり, ただ式だけ見て美しいというのはそれはそれで構わないが, 私の興味関心はそこで終わらないしここまで詳しく喋らせろ, という話になるが, これはこれで鬱陶しいと思われるから Euler は原義マスハラである, という主張をしているという話だった.

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数学, 関数論, 代数幾何, Euler の公式

作用素環と構成的場の量子論: 場の量子論の超関数論

はじめに

作用素環を使う場の量子論となると, 最近本を出した小嶋先生 (と岡村和弥さん) や河東先生がやっているような, 代数的場の量子論の方が有名な気がする でも私がやっているのは構成的場の量子論だからそちらの話をする. 後者の本は以前河東先生に教えてもらった本だ.

小嶋先生と岡村さんの本『無限量子系の物理と数理』についてちょっとした裏話を この間の竹崎先生 80 歳記念ワークショップで聞いてきた. これは秘密だが大した話ではない. あと近いうちに小嶋-岡村本の簡単な紹介もしたい.

むしろ緒方芳子や九大の松井先生や荒木先生がやっている量子統計の方が有名かもしれない. そちらはそちらで一応私の守備範囲だ. でも一応別件としておく. 後で少し触れはする.

作用素環と構成的場の量子論

それはそれとして作用素環と構成的場の量子論だ. 構成的場の量子論の初期では実際に作用素環を使った議論が中心だったようだ. ある時期から Ising モデルと $\phi^4$ モデルの関係を使い, 確率論と経路積分を駆使した議論が中心になっていったと聞いている. ここではその古い形を紹介する形になる. 古いとは言っても非常に基本的なフレームワークでしかも特に量子統計では現役で動いている. 構成的場の量子論の文脈で一時期あまり使われなくなったというだけの話.

はじめに簡単に概要を言っておくと, 場の量子論で (Schwartz 流の) 超関数論をやろうという話だ. 簡単に超関数論を復習してそれから本題に入る.

やや別件で佐藤超関数論の方が通常の超関数論としてはより自然という話がある. 佐藤超関数の場の量子論版みたいな話は今のところあまり想像できない. 何か面白く役に立つ話があれば面白いとは思ってはいる.

(Schwartz の) 超関数論は適当な関数空間を作っておき, その位相的双対空間として超関数の空間を定義する. 具体的にはコンパクト台を持つ無限回微分可能な関数の空間 $C_{\mathrm{c}}^{\infty}$ や急減少関数の空間 $\mathcal{S}$ の双対空間とする. 特に $\mathcal{S}$ の双対となる超関数の空間の元は緩増加超関数と言われる.

場の量子論への応用という面で大事なのは適当な関数の極限が超関数になってしまう現象の理解だ. 熱核 $f_t (x) = e^{-x^2/2t} / \sqrt{2 \pi t}$ を取る. これは無限回微分可能どころか解析的な関数だ. しかし, $t \to 0$ の極限で Dirac の $\delta$ に収束する. この極限をつかまえるには考える集合を大きく取る必要がある. この大きな集合が双対空間になる, というのを発見したのが Schwartz の偉いところだ.

場の量子論

ここで場の量子論に戻ろう. 場の量子論は数学的な特異性が強いので, 生の形 (物理的にあるべき形) で数学的な議論をいきなり始めるのは難しい. そこで一旦適当に扱いやすくする処理をする. 非相対論的な文脈ではそれを赤外正則化とか赤外切断と呼ぶ. 切断つきで議論をしておいて最後に切断を外す極限を取って物理的にあるべき理論とする.

ここでちょうど上の熱核の $t \to 0$ と同じ現象が起きる. 特に基底状態について考えよう. 赤外切断つきのモデルでの基底状態を $\Psi_{\kappa}$ とする. $\kappa \to 0$ の極限を取るとこれが元の Hilbert 空間からいなくなってしまう. 正確には任意の部分列を取っても $\Psi_{\kappa}$ が 0 に弱収束してしまう (ことがある). 熱核 $f_t$ の極限が $L^2$ では 0 になってしまうのと同じことだ. これを 0 にしないためにはどうするか, 大きな空間をどう準備するか. ここで作用素環を使う. 確率論 (経路積分, 汎関数積分) を使う議論は私の手に負えないのでここでは省略する.

大きな空間についてはこう考える. 場の量子論にしても Hilbert 空間を使っているからそこを基本にする. 基底状態の極限を考えることにしているのでまず Hilbert 空間のベクトル $\Psi$ を取る. ここから $\psi (A) := \langle \Psi, A \Psi \rangle$, $A \in \mathcal{B} (\mathfrak{H})$ として汎関数を取る. ここで $\mathfrak{H}$ は場の量子論の Hilbert 空間で, $\mathcal{B} (\mathfrak{H})$ は $\mathfrak{H}$ 上の有界線型作用素全体を指す. これはもちろん $C^*$ 環だ. 普通の超関数と違って元の Hilbert 空間を線型に含んでいるわけではない. しかし形式的に含んでいるとみなせるような線型空間が作用素環上の汎関数として構成できた. 実際にこの作用素環上の汎関数としての汎弱収束で意味のある極限を取り出すことが作用素環を使った議論の魂となる.

本当はここからの GNS 構成定理による表現論までセットにして考えることが大事で, しかも量子統計的にも決定的に大事なのだがそれは置いておこう. ちなみに私の修論もこれで書いたくらいで本当に大事. 今書いている修論の有限温度の発展版も GNS でさらに Araki-Woods 表現を持ち込むというところをやっている.

代数的場の量子論

代数的場の量子論だと作用素環的にもっと難しく, そして作用素環的にももっと意味のある議論をしている. 今の構成的場の量子論では作用素環に貢献することはあまりできなさそうだが, 議論の核としてなくてはならない存在ということはできる. 構成的場の量子論に作用素環を使うのは, 確率論を使った議論よりも数学的な予備知識がいらず, かなり速いタイミングで研究を始められるのがいい. 作用素論の基礎は当然必要だがそれは確率論を使った議論でも同じだ.

正直, 代数的場の量子論と違い人にお勧めできるような分野ではないし大勢で取り組むような分野でもなく, さらに地味で派手な結果が出るような分野でもないが, 細く長く続けていくべき分野であると思ってもいる.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 作用素環

マッチング理論関係の文献を教えて頂いたので

本文

数学セミナーの書評というか感想を書いたが, それで言及したマッチング理論の本について教えてもらったので記録. 元ツイートは消えていたので, 教えて頂いたブログの情報を抜いておきたい.

【書評または感想: 数学セミナー 2014 年 01 月号 グラフ理論の新展開 】よく分からない数学

教えて頂いたブログ記事はこれ.

安定結婚問題が一部で話題になっていたみたいですが, 一昔前は安定結婚問題を勉強すると言ったらここら辺の本を読むこととほとんど等価だったような気がします. Tamas Fleiner が組合せ論的な不動点定理を駆使して安定結婚問題の構造を解きほぐしていったところも (個人的に) 懐かしいところです (当時は私も束や選択関数のことをよく考えていたので, Fleiner の論文を眺めることが多かったです).

日本語ではまとまった書籍はないような気がしますが, 次のハンドブックの 14.2 節に根本先生による詳しい解説があります. 応用数理計画ハンドブック

もちろん rotation poset や stable marriage polytope の話もでています.

挙げられていたのは次の本たち.

ラベル

数学, グラフ理論, 経済学, アルゴリズム

確率論と偏微分方程式論: Feynman-Kac, 流体力学極限, Stochastic Loewner equation

本文

ちょっとひさこさんと話したのでせっかくだからメモしておこう. 確率論と PDE という感じのところの話をしたのだ.

Feynman-Kac という伝統的な話題もあるが, 最近は日本だと舟木先生が特に精力的に研究している内容として流体力学極限という話題がある. 慶應理工(当時)の佐々田さんによる PDF を張っておこう. これ自体はよく知らないので興味がある向きは色々調べてみてほしい. 舟木先生が本を書いてもいるので, それを見るのもいいだろう.

起源が流体にあるだけで放物型など色々な PDE との関係があるということくらいは調べた. ちなみに上記 PDF を書いている佐々田さんは博士を 1 年で終わらせて即ポストも取った優秀な研究者で確率論の若手のホープだ. PDE と確率という話では, SLE と共形場 (Werner の Fields 賞) など, 相対論的場の量子論や統計力学などの物理を絡めた展開もある. 立役者は Werner というよりも Schramm なのかもしれないが, Schramm はとりあえず Fields 時には年齢に引っかかっていたはずだ. Poincare 賞はもらっている. あと Schramm は山岳事故で亡くなっている.

全然関係ないが, 東大数理で Werner の講演会があったので聞きに行ったことがあり, そのときのエピソードを記録しておこう. 休憩時間にコーヒーを飲んでいたら, たまたま傍に現在京大でその当時東大に行た吉川謙一先生が, 「Werner の書くランダムっぽい曲線は正にランダムっぽくて, さすが確率論の人ですね」と言っていた.

ラベル

数学, 物理, 確率論, 統計力学, 場の量子論, 共形場理論, 流体力学極限, 数学者

田崎さんと原さんは早く Ising の本をまとめた方がいいのでは, と思った方の市民

はじめに

数学的な統計力学の本とかいうアレがあったので.

引用

数学的に書かれた統計力学の本読みたみ

@slip001 このツイートしばらくしたら相転移 P のリプライが来そうな気がする笑

@wr_r イケメン相転移 P さんからのリプレイとかうれしい

@slip001 @wr_r 学生のころ田崎さんに聞いたことがありますが, 最低限私よりも数学できないと読めないような本で, しかもめちゃくちゃ読みにくい本しかないです. 強いていうなら新井先生の本ですが, あれは「量子統計の数学」であって「数学的な色彩の強い物理の本」ではないので

@slip001 @wr_r 滅茶苦茶読みづらいといったのが http://www.amazon.co.jp/dp/9810238622 です. 田崎さんが若い頃からある本ですが, 碌なものではないのでお勧めはしません.

@slip001 @wr_r http://phasetr.blogspot.jp/2013/11/4.html にある Bratteli-Robinson が量子統計の数学で一番有名でかつ読みやすい本です. ただ数学科レベルで関数解析できないとだめで, 量も膨大なので拾い読みできるだけのモノがないとつらいです

@slip001 @wr_r 近刊とうわさの田崎・原のイジングが一番読みやすい (読みやすくなる) はずです. もちろんイジングに特化した話になりますが, 相転移・臨界現象を学ぶにはいいはず (と信じている)

@slip001 @wr_r Bratteli-Robinson は私も必要なところしか読んでおらず, それも本当に適宜つまみ食いという感じが強いです. 必要なのである程度はまとめて読んだところとそうでないところの差が激しいので. 原・田崎の完成を待つのが一番無難という感

@slip001 @wr_r あとおそらく一番根本的な問題として, 基礎的な部分で色々な数学的困難を抱えていて数学的にきちんと議論できる統計力学の話題自体ほとんどないので, 最低限の勉強をした後はもうほぼ研究ベースの話になってしまうでしょう. それも物理としては無残なのに数学的に辛い話

新井先生の量子統計の本はこれ.

Ruelle のがこれ. ただ, 読むのはやめた方がいい.

以前関連する動画も作ったので, 興味がある向きはご覧頂きたい.

コメント

あとこの辺.

(量子) 統計がどれだけつらいかというと, 平衡状態の定義をするだけで作用素環の至宝, 冨田-竹崎理論が必要になるというところ. 今となってはそこまで絶望的に学習が困難という話ではないが, 物理的にあって当然の概念のために作用素環の基礎理論を 1 つ用意する必要がある程度に処理が面倒というアレ

@phasetr あと修士修了後しばらくやっていて全然できなくていったん止めた話だが, ハバードモデルの基底状態の存在とかもかなりきつい. 要は具体的なモデルを何か取ってそれを詳しく調べましょうみたいな話も格子模型のレベルでほぼ絶望. スピン系が扱えることが既に奇跡と言っていいのでは感

@phasetr 基底状態の存在という話では, 場の理論での【発散の困難】的な話題も絡んでくるし, 物質の安定性の観点からの基底エネルギーの評価 (エネルギーの示量性とも関係) とか, 基本的なところで問題山積みでどうにもならない

@phasetr 「基礎が分からなくても応用はできる」というアレがあるかもしれない, と思われても, 具体的なモデルの解析はもっと難しいので手がつけられる簡単なところから, というそこの段階で詰まっているのが現状なのでどうにもならない

@phasetr むしろ問題をいくつかあげるから研究してほしい

コメント

本当, 誰か研究に協力してほしい.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 量子統計, 作用素環, 関数解析

『俺が一番気に入らない定理』とか見てみたい

本文

Twitter でこんなツイートを見かけた.

『世界で最も美しい 10 個の物理方程式』みたいなタイトルの本はよく見かけるので 『世界で最もきたない 10 個の物理方程式』みたいな本もバランスをとるためにも出してほしい

前, ブログだか何だかで早川尚男さんが「非平衡は魔境で, 到底美しいとは思えない変な話ばかりだ」みたいなことを書いていた覚えがある. 色々な人に聞いても分野ごとにとびきり綺麗なのが出てくるばかりだろうから, やはり汚い方で色々聞いてみたい.

あと, 『世界で最も美しい~』は正直食傷気味なので, 『俺が一番気に入っている方程式・定理』とか, そういう個人の感慨を前面に押し出す方向で何かやりたい. 前, 数学徒が愛した定理というのをまとめたが, 『俺が気に入らない定理』というのもいいかもしれない.

逆に, 一番お気に入りの 1 つの定理を延々と語り続けるというのも面白そう. こんな拡張があるとか, 数学の進むべき方向を示したとか何とかを 5 時間くらい話し続ける動画とか.

追記

早速このようなご意見を頂いた.

涙を禁じ得ない.

追記 2

数学書房から『この定理が美しい』という本が出ている.

ラベル

数学, 物理

Twitter まとめ: 物理的な見通しの良さと数学的な見通しの良さの狭間で儚く揺れる恋心

はじめに

Twitter では度々言っているし, 特に「数学をしたいなら数学科に行け」と言っているくらいだが, 数学的にきちんと物理をやるのは修羅の道と言える. その辺についてちょっとやりとりしたのでこちらにも転記しておきたい. この辺からはじまる.

引用

物理してないけど興味はある, でも誤魔化されてるの嫌いなので 数学でちゃんと厳密にやるために数学しかしてない私の進路を決める面談誰かしてほしみ

@t_iru ごまかしと思うからまずいのでは. 物理がやっているのは物理であって数学ではないので

@phasetr そうですね, 誤魔化しというのは少々語弊がありますね 例えば普通に物理やっているだけでは使わないような数学的な手法を用いると見通しが良くなったりすることがあるじゃないですか そういうのが非常に気になります

@t_iru 数学上の見通しと物理上の見通しというのもあるにはあり, また少し凝った数学使うとクリアになるとしてもその学習コストが高いなら手持ちの道具で処理できる方がいい, というのもあります. 何でもかんでもいい数学使えば綺麗になるというわけでもなく, 泥臭い計算厭うのも良くないので

@t_iru 結局程度問題というところではありますが

@phasetr そうですね, どこかで線引きしなくちゃいけない以上程度問題ではあるのでしょうが まだまだ勉強不足なために先が見えなくてやりたいことの焦点を定められないでいるという感じです

@t_iru いつも言っていますが, 少なくとも数学的に厳密に, といい出すと学部三年の時点ではもう確実に数学が物理に追いつかなくなります. 研究ベースの話になるので, 物理のためには数学にこだわっていられなくなります. 最後は趣味なので

@phasetr そうなりますか…今年中にはある程度進路を決めてしまいたいので, 一年間勉強してみて自分に合ったやり方をゆっくり考えることにします 貴重なお言葉ありがとうございました

@t_iru 物理的な明快さと数学的な明快さ, あまりいい例えではないですがこんな感じ: 数学でもすっきりした証明だが何をしているのか分かりづらいので, 意味がはっきりする別証明をつけてみよう, とかあるでしょう. 数学的にクリアでも物理として気分が分からない議論, 物理だとやはり嫌ですね

@phasetr 物理的な意味付けができないと困るというのはなんとなく分かります 確かにそういうところを大切にするスタンスは物理では重要になってきますね

ラベル

数学, 物理, 数理物理

部分集合の連結性の定義は割と面倒である

魔法少女に教えてもらったので.

こういうのが甘いの, 本当によくない. 反省することばかりだ.

0 の 0 乗から $x$ の $x$ 乗まで

本文

0 の 0 乗に関する話があったので.

そうだったのか http://pic.twitter.com/bDO9EOWZK8

@kawazu1147 な, なんだってー!

@yan_tyabouzu 驚きを隠しきれなかったですね

@kawazu1147 0 の 0 乗は通常定義しないのではないでしょうか….

@oddest_2 えっと, 「通常」というのをどういう意味で言ってるかによるのですが, 定義しないのが自然な場合もあるし, 順序数の (そういう概念が数学にあるのですが, その) 話をしているときなどは 1 と定義するのが自然だったりもします.

@kawazu1147 ほへー. そうなのですか. ありがとうございます. 本で定義したりしなかったりするって書いてあったのですが, 新聞ではっきり定義するって書いてあってなんだか妙な気持ちになりまして

@oddest_2 妙に思うのが正しいと思います. 自然にそう計算される場合もあるし, そう定義したほうが便利な場合もあるし, 間違ってるとは言い切れないですが, 不親切というか, 不用意ですね.

@oddest_2 @kawazu1147 http://www.amazon.co.jp/dp/453560844X こんな本があるのでご覧頂くと楽しいかもしれません

@phasetr 相転移 P が適切なのかどうかよくわからない誘導をしている

@kawazu1147 とりあえず適当にまとまった文献は示した方がいいのではないかと判断した方の市民です

紹介した本はこれだ.

あっさりしているので何となく何が問題でどんな世界が展開されていくかを知るのには都合がよく, そういう読み方をするなら非常に面白い. もちろん, かっちり読むのにはつらいがそういう本ではない.

ラベル

数学, 関数論

東大の古田幹雄先生による『大学院で幾何の勉強を目指す学部生の方たちへ』という PDF を発見したので共有しておきたい

本文

東大の古田幹雄先生による『大学院で幾何の勉強を目指す学部生の方たちへ』という PDF を発見したので共有しておきたい. これだ. 色々なところで再三言っているように, 幾何がさっぱりなのは恥ずかしい限りなので, 私も参考にしたい.

他にもBernstein の定理, Zorn の補題, 濃度の演算, Tychonoff の定理の二つの直接証明, 正規, パラコンパクト Hausdorff, 1 の分割なども PDF があった. 興味がある向きは読んでみるといい.

ちなみに東大数理の教官というご多分に漏れず, 古田先生も (業績的な意味で) 凶悪な教官だ. 4 次元多様体での 11/8 予想というのがあるのだが, そこでも非常に顕著な仕事をしているようだ. ここで紹介されているが, 10/8 不等式というのがある. 正直私は評価能力ないのだが, 『数学の 50 年』で松本先生が滑らかな 4 次元多様体での 3 大定理の 1 つと言っている.

11/8 予想は今の 4 次元トポロジーでの 2 大問題とのこと. そこに関して現在最強の結果を持つのが古田先生だ. その他にもゲージ理論に関していい仕事がたくさんあると聞いている.

ラベル

数学, 幾何学, 数学者

加藤和也, 『$p$ 進 Hodge 理論とゼータの値』

はじめに

我らが加藤先生の PDF があったので共有しておきたい. 『$p$ 進 Hodge 理論とゼータの値』と題された文章だ. 手書きで味わい深い.

1 章 城崎と宇宙

1 章がいきなり「城崎と宇宙」となっていて攻撃力高い.

P.1

仏教の法のことは全く理解していない筆者であるが, $p$ 進 Hodge 理論のような数学の深い法もまた, この温泉寺の大気の中に, 千年も億年もきらきらまじり入って, 人間や生物の生活とともにあったにちがいない.

このあとにも破壊力の高い文言が並ぶ. 是非読んでみてほしい.

P.1-2

筆者は [ 4 ] において, 鶴の恩返しの鶴の思いが, 宇宙の期限を考える鍵であることを書いた. そこには, 鶴女房のみならず, 蛇女房や雪女もあらわれたのであった. (その後こぶとりじいさんまであらわれた時は筆者もさすがにうろたえたが, こぶとりじいさんについてはまだ論ずるに至っていない. ) それらを書きながら, 当時の筆者は自分でもちょっとついてゆけないものを感じたが, 今はちゃんとついてゆけるし, 実に自然なことのように思える.

もうどうしたらいいのか分からない. 上記引用後も実に味わい深い一文があるのだが, 書き写すのが面倒なため省略する.

P.2

筆者は狂ってしまったのであろうか. いまだ狂い足らざることを恥ずるのみである.

15 ページある中の 2 ページ真ん中あたりなのだが, もう全文引用したい気分にかられる. Fontaine が「グルノーブルの狂人」と言われていたらしいことを知る夏だった.

最近, 息子とディズニー映画「美女と野獣」を見た. この漫画映画を「原作の味をそこなった」と嫌うかたもおられるけれども, 私はすばらしいと思う理由は, 主人公の娘さんもその父親もいかれていて, 映画はそれを力強く支持していることである.

城崎がどこにいったのかよく分からないし大宇宙を感じた.

2 章 $p$ 進 Hodge 理論とゼータの値

P.3

数論は, ある数が有理数か無理数か, ある素数で割り切れるかどうか, とか, 非常に微妙な話をとうとぶのであるが, $p$ 進 Hodge 理論の方は, 代数多様体なら何でも持ってこいという, 細かい所は気にしない性格である.

だそうだ.

3 章 宇宙は心?

タイトルからしてパンチ力が高すぎてすごい.

複素関数として定義されるゼータにとって, 大変苦手な, $p$ 進 Hodge の山道を, ゼータは与ひょうに会うために切ない思いをもって, 必ず越えてくる. (鶴が娘に姿を変えたように) $K_2$ の中の「ゼータの化身」に姿を変えて.

ゼータに心を感ずるのは, 単に我々の心を投影しているだけだという人もあるかもしれないが, 実は逆に我々の心が, ゼータの心の投影かもしれないことはいうまでもない.

いうまでもなかった.

上野健爾さんに, 「宇宙は物質だから…」と筆者が話しかけたとき, 「宇宙は物質ですか? 」と疑問を投げかけられてしまったことがあった. 上野さんのお考えは, 筆者ごときの推しはかれるところではないが, すると宇宙は「心」なのであろうか.

数学を学ぶとこんなに論理的になれるので, 論理力の涵養に役立つ.

P.5

宇宙 = 心 = ゼータ

なのであろうか.

中略

………… = モスラ

とさっきの等式は続くのであろうか.

ちょっともう全文引用になってしまって色々とアレなのだが, とにかく胸を打つ言葉, 文章が並び続ける.

4 章 ワープ航法の発見

各位は P.7 のワープ航法の図を見ておくように. もう記録しながら読むような精神状態にないゆえ.

P.7

この, 複素平面の中を通っていかない $s=0$ から $s=1$ への移動こそは, explicit reciprocity law によるワープ航法であり, 千年のうちには宇宙旅行に実用化されるように思える.

宇宙工学を学んでおくべきだったと悔やまれてならない.

引用文献にモスラの歌がある文献をはじめて見た.

最後に童話が引用されて終わる.

少し余白があるので, 小学校 1 年の息子の国語の教科書にある, 感銘を受けた童話のあらすじを紹介する. (松谷みよ子作. )

中略

(原文はとても美しい. 昔の国語の教科書には, こんな良い話はのってなかったような気がする. )

これが数学だった.

ラベル

数学, 数論, 数論幾何, 代数幾何, 加藤和也

結城浩さんの『「何でわかるの?」と聞かれたときに』

元ツイートへのリンク

自分用覚書・感想

丁寧に説明されていて内容も面白かったし参考になる. それ以上に気になるのは, このページをどうやって作っているのか. こういうのをさらっと作れるようになりたい気分がある.

自分のまとめとしてシンプルなテキストでまとめられたページを引用しておく.

引用

質問(「何でわかるの?」と聞かれたときに)

ご質問ありがとうございます。あなたの質問に対する直接的な回答ではありませんが、質問を読んで私の思ったことを書きますね。(続く)

結城浩に聞いてみよう https://ask.hyuki.net/q/20201214193853 https://t.co/6dOgNzrh0S

お友達から「何でわかるの?」のように聞かれたときには、あなたがやっていることをできるだけ言語化して伝える努力をしてみることをお勧めします。それは、必ずしもそのお友達のためではなく、むしろあなたのためです。

あなたは特別なことをしているわけではなく「自然にわかる」のかもしれませんし、もちろん「一晩寝ていたら解けている」ということもあるでしょう。それでも、あなたが普段から何をどのように見ているか、ある特定の問題に触れたときに何をどのように考えたかを言語化してみるのです。

もしもそのようなことの言語化が難しいとしたならば、ぜひ「それ」をあなたに与えられた問題として解いてみてください。私はそれが、あなたの能力をさらに高める助けになると想像します。

ここから、もしかしたらあなたにはあてはまらない話になるかもしれません。こういっちゃなんですけれど、そこそこ利発な方ならば、たとえば高校三年までに学校などで出会う問題を自然に解いちゃうのは珍しくありません。

(ちょっと言い過ぎたかもしれないけど……まあ続けます)

でも、どんな人でも無限に難しくなっていく問題は解けませんから、どこかでは壁にぶつかることになります。そして、ある意味の「勝負」はそこから始まります。そのときに、他の人には難しい問題で自分には易しい問題を「どのように」解いてきたのかは重要な武器となります。

私があなたに「言語化」を勧めるのは、主にその「武器」をいまのうちから整備しておくのは決して無駄ではないと思うからです。(と言いつつも、私自身は凡人ですから、的外れなことを言っている可能性も高いのですが……)

小学校時代、非常に多くの子が「神童」や「天才」扱いされます。学校で教えることなんか話半分に聞いていても(へたしたら聞かなくても)理解できるし、試験も申し分ない状態で進み……中学・高校で失速します。

でもなかなか失速に気がつかず、段階を踏んで学ぶことの大事さに気がつかず、結果的にいつのまにか同学年の人たちから大幅に遅れてしまうことがあります。

いま書いたのは小学校から中学・高校ですが、それは学びのどの段階でも起きうることです。あなたがそうだと決めつけるわけではありませんし、私には判断ができませんが、ちょっとそれが引っかかったのでした。

高校くらいまでの問題は、うまく解けるように段取りがなされている問題がほとんどです。ですから、身も蓋もない言い方をすれば、解けても不思議ではありません。そのような問題に向かっている間に、ぜひ「自分は何をどのように考えて解いているのか」というreflectiveな発想も身につけてほしいです。

そのための活動として非常にいいのは、友達の質問に答えることです。自分の思考の方法を答えるだけではなく、友達がそれを理解できるように伝えることを試みてください。それはあなたの能力を広く、深くしてくれるはずです。

あなたの質問を読んで、私はそんなことを考えていました。的外れな回答だったらごめんなさい。あなたの学びがますます豊かなものになることを願っています。

ご質問ありがとうございました。

「何でわかるの?」と聞かれたときに https://rentwi.hyuki.net/?1338433669145317377

学ぶこと。教えること。伝えること。楽しく読めて元気が出る結城浩のメールマガジン「結城メルマガ」は毎週火曜日配信。単体の記事購入もできますし、定期購読もできます。登録初月は無料です。 https://link.hyuki.net/mm

(余談)考えてみますと「数学ガール」に出てくる「僕」は、「教える」ことを通して多大な学びをしていることになりますね。 https://note12.hyuki.net/

東大数理, 平成24年度, 平成25年度, 平成27年度数学講究XAテキスト一覧

手元にあった東大数理の平成24年度, 平成25年度数学講究XAテキスト一覧に加えて, 平成27年度の一覧を重複を除いてまとめておこう. まず学部低学年の学生の参考になるだろうし, その他にもこう色々と参考になるだろうから. 私自身, あまりよく知らない分野の勉強をするときに参考にしたいというのもある. 簡単な書評もあるからそれも参考になる.

専門との関係もあるから教官名も添えておく.

石井志保子 教授

  • Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer-Verlag
  • 代数幾何は代数方程式の零点で定義された図形で, これを研究するのが代数幾何学です. このテキストは代数幾何学の標準的な教科書で, 世界中で使われています.

中村周 教授

  • Gerald B. Folland, Introduction to Partial Differential Equations (Second Edition)
  • 偏微分方程式論に関する, 比較的レベルの高い入門書. 一般的な局所解の存在定理から始まって, 古典的方程式, つまり, ラプラス作用素, 楕円型の境界値問題, 熱方程式, 波動方程式を説明し, 関数解析的手法, 擬微分作用素の導入までを扱っている. 偏微分方程式に関する予備知識は必要ないが, 積分論, フーリエ解析の知識は必要.
  • Methods of Modern Mathematical Physics I. Functional Analysis
  • Reed, B. Simon, Academic Press
  • 関数解析的数理物理の標準的な教科書. 全 4 巻であるが, 第 1 巻の関数解析の後半から始めて, 第 2 巻のフーリエ解析の部分までをセミナーで行いたい. 基礎知識は, 数学科 3 年生の講義の積分論, フーリエ解析があればよい.

儀我美一 教授

  • C. Evans, Partial Differential Equations (2nd Edition), American Mathematical Society
  • 非線形偏微分方程式の数学解析を目指した良書. 偏微分方程式に対するさまざまな扱いに対して, そのエッセンスのみに絞って解説したもので, アメリカのさまざまな大学の偏微分方程式の入門の講義で行われている.
  • Villani, Topics in Optimal Transportation, American Mathematical Society
  • 2010 年フィールズ賞受賞者の Villani 氏による最適輸送問題の入門書. ある地域に分布している集団を別の地域に移動させたいとす る. このときの輸送コストを最小にするという問題が最適輸送問題である. この最小輸送コストを距離とすることによりできる距離空間を Wasserstein 距離空間といい, 幾何学的に大変重要な構造を持つ. 一方, 近年流体力学の非圧縮流体また拡散方程式等の偏微分方程式への応用も進ん でいる. 本書は, このように変分解析, 微分幾何学, 偏微分方程式といったさまざまな数学の結びつきを知るうえでも大変興味深い.
  • Qing Han, Fanghua Lin, Elliptic Partial Differential Equations (Second Edition), American Mathematical Society
  • 調和関数を出発点に, 2 階単独楕円型方程式のハルナックの不等式や, アレキサンドルフの最大値原理の基礎について触れる. 楕円型方程式の入門書.
  • Giovanni Bellettini, Edizioni della Normale, Lecture Notes on Mean Curvature Flow: Barriers and Singular Perturbations, 2014
  • 平均曲率流方程式は, 微分幾何学で重要な非線形放物型偏微分方程式の典型例であるだけでなく, 材料科学の焼きなまし時の粒界の動きを記述するといった豊かな応用を持つ. 現在さまざまな書籍があるが, 本書は比較的解析学的な立場で書かれた入門書であり, 少ない予備知識で読めるように配慮されている. 平均曲率流方程式を通じて微分幾何学, 偏微分方程式論を俯瞰するのにも便利である.

坪井俊 教授

  • Danny Calegari, scl, Mathematical Society of Japan, MSJ Memoirs 20
  • 群の交換子群の元が, いくつの交換子の書かれるかという素朴な疑問から, 様々な群に対する重要な研究が数多く行われるようになった. このテキストは, この問題の起源から, 現在の研究に至るまでを解説している.
  • Brian Bowditch, A course on geometric group theory, Mathematical Society of Japan, MSJ Memoirs 16
  • 幾何学的群論と言う現在非常に広く研究されている理論の入門書である. 無限群の性質を考えるときに, その群がどのような作用を持つかを考えることが重要になる. 最も重要な例は定負曲率を持つ双曲空間に等長変換として作用する群である. 有限生成群に対しては, ケイレイグラフへの作用が自然に考えられ, ケイレイグラフが双曲的であると考えられる場合は群の作用の性質は, 双曲空間への作用と非常に似たものになることなどを示す.

吉野太郎 准教授

  • Joseph A. Wolf, Spaces of Constant Curvature, AMS Chelsea Publishing
  • 曲率とは空間の曲がり具合を記述する量である. 空間が定曲率, 即ち各点での曲率が等しいと仮定すると, その大域構造は大きな制約を受ける. この本では, そのような制約について古い結果から最新の結果まで触れている.
  • Sigurdur Helgason, Differential Geometry and Symmetric Spaces, AMS Chelsea Publishing, 2001
  • 空間内の点 $p$ に対し, $p$ を通る測地線を $p$ で一斉に折り返す変換を「 $p$ における対称変換」という. 任意の点において, その点における対称変換を持つ空間を対称空間という. この本では, このような対称空間の分類を行う. 本書は対称空間に関する入門的な書である. 対称空間のうち既約なものは既に分類されており,その構造もリー群を用いて精密に調べることが出来る. また, 応用上重要な多様体は対称空間の構造を持っていることが多い.
  • 大島利雄・小林俊行, リー群と表現論, 岩波書店, 2005
  • 群構造を持った多様体をリー群という. リー群は, 上に挙げた定曲率空間や対称空間, その他多くの研究において重要な役割を果たす. この本では, リー群について基礎から応用まで広く解説している.

片岡清臣 教授

  • Akira KANEKO, Introduction to Hyperfunctions, Kluwer Academic Publishers, 1985
  • 1 変数関数論の知識に基づき, 1 変数佐藤超関数の定義から始めて多変数佐藤超関数の性質と演算, および解析的特異性, 特異スペクトラムの基本的性質を解説している. 多変数関数論の基本定理やコホモロジー論を使わずある種の積分変換 (デルタ関数の曲面波展開といわれる) だけを使ってほぼセルフコンテインドに解説しているところが特長的である.

松本眞 教授

  • David A. Cox,John Little, Donal O'Shea, Ideals, Varieties, and Algorithms: An Introduction to Computational Algebraic Geometry and Commutative Algebra (Undergraduate Texts in Mathematics), Springer New York; 3 版, 2007
  • 代数幾何における計算機アルゴリズム (特にグレブナー基底) の標準教科書.
  • J. P. Serre, Local Fields, Springer, 1995
  • 局所類体論の有名なテキスト.

舟木直久 教授

  • Williams, D., Probability with Martingales, Cambridge Mathematical Textbooks, 1991
  • まず Part A で, 測度論を用いた確率論の基礎付けを行う. この部分は 3 年冬学期の講義と重なる. その上で Part B で, マルチンゲールの理論を学ぶ. マルチンゲールは, 今日では確率解析を使いこなす上で欠かせない道具となっている. 最後に Part C では特性関数と中心極限定理を扱う. 随所に多くの例や応用が書かれている.
  • S.R.S. Varadhan, Probability Theory (Courant Lecture Notes 7), American Mathematical Society, 2001
  • 特性関数, 確率分布の弱収束, 大数の法則, 中心極限定理など, 3 年の講義で習ったことを復習した後に, マルコフ連鎖, マルチンゲール, 定常過程などの基本的な確率過程について学ぶ.

ウィロックス ラルフ 准教授

  • Richard Beals & Roderick Wong, Special Functions -- A Graduate Text, Cambridge University Press, 2010
  • 特殊関数についての入門書. 前半では, gamma 関数や zeta 関数の基本的な性質や 2 階の常微分方程式論が復習され, それらの方程式と物理との関係が論じられている. その後, 直交多項式と離散的な直交多項式の理論が説明され, 後半では, 超幾何関数の様々な性質が丁寧に解説されている. 少なくとも第 6 章〜 7 章まで読む予定である.
  • 三輪哲二, 神保道夫, 伊達悦朗, ソリトンの数理, 岩波書店, 2007
  • 著者らによって開発された, ソリトン解を持つ非線形偏微分方程式を統一的に解くための自由フェルミオン場という方法を用いて, ソリトン方程式の数学的構造が論じられている. 数学的準備から始め, 広田の直接法, KdV 方程式や KP 方程式の性質, ソリトン方程式の対称性とそれらの代数的な構造を解説する.
  • Saber Elaydi, An Introduction to Difference Equations, Springer, 2005
  • 差分方程式についての入門書. 前半では, 1 階の漸化式の一般論から出発し, 一般の高階の線形差分方程式の理論が展開されている. 後半では, 線形の差分方程式だけではなく, 非線形の差分方程式の解の安定性又は漸近的挙動を解析するための数学的手法がいくつか説明されている. 少なくとも第 8 章まで読む予定である.

松本久義 准教授

  • James E. Humphreys, Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Springer, 1980
  • 表現論に関しては, 複素半単純リー環の基礎 (ルート系,ワイル群, 最高ウエイトなど) が基本的な予備知識であり, 現実問題としてこういったことを知ってないと大抵の文献は読めないし,表現論の多くの理論はこう言った古典的な理論をお手本としている. この本はリー代数の教科書としてはもっともオーソドックスなもの. 通年のセミナーで読みきるには丁度よい分量で, 内容も標準的. 予備知識は線形代数だけで読める. ただし, リー群との関係は触れられていない. 標準的なテキストの選択.
  • Humphreys, James E., Representations of semisimple Lie algebras in the BGG category $\scr{O}$., American Mathematical Society, 2008
  • 上記 Humphreys のリー代数の教科書の続編的な専門書, BGG category とは最高ウエイトを持つリー代数の加群を自然に含むリー代数の加群からなる圏であり, 深い研究がなされている. この本の後半は証明抜きでの概観を与えるものになっているが, セミナーでは前期で前半だけよんで後期は証明の書かれたより専門的な文献をとりあげることも考えられる. 上級者むけ.
  • Victor G. Kac, Infinite-Dimensional Lie Algebras, Cambridge University Press, 1994
  • 有限次元の複素半単純リー代数の自然な無限次元への拡張として名高い Kac-Moody リー代数の定番的教科書. この本自体は予備知識はあまり必要ないのだが, 何をやっているのかわかるためには, 上記の Humphreys の Introduction to Lie Algebras and Representation Theory などを読んでからの方がよいだろう. 上級者むけ.
  • N. Chriss and V. Ginzburg, Representation Theory and Complex Geometry, Birkhauser, 2000
  • 幾何学的表現論の教科書である. 夏学期から引き続き使用する. 原則として新規に学生は受け入れないがどうしてもという人はすみやかに私と面談すること.

高山茂晴 教授

  • Huybrechts, Complex Geometry, Springer, 2005
  • コンパクトな複素多様体の基本的な性質について書かれてある. 特にケーラー多様体と正則ベクトルの性質を, 計量を用いて記述してある. 予備知識として関数論, 多様体論, 層の理論の初歩を仮定する.
  • R. O. Wells, Differential analysis on complex manifolds, GTM 65, Springer, 1979
  • コンパクトな複素多様体の標準的な教科書として良く知られている. 前半では, 層とコホモロジー, エルミートベクトル束, 楕円型作用素などの基本的事項が説明されている. 後半では特にケーラー多様体の場合の調和積分論, ホッジ・小平の分解定理などが詳しく説明され, それらを用いて小平消滅定理, 小平埋込み定理の証明が与えられている. 3 年生の知識があれば十分に読み進むことができる.

齊藤宣一 准教授

  • 田端正久, 偏微分方程式の数値解析, 岩波書店, 2010
  • 本書は, 偏微分方程式の代表的な数値的解法である, 差分法, 有限要素法, 境界要素法に対する数学的な理論の, 基礎の導入から, 収束証明にいたるまでを, 丁寧かつ明快に解説した, 数値解析の入門書である. 計算方法そのものよりは, 偏微分方程式の離散化によって生じる数学的問題の解析に焦点が絞られている.
  • 増田久弥, 非線型数学, 朝倉書店, 1985
  • 様々な物理現象の記述に現れる非線形微分方程式の, 解の存在・一意性・多重性などを研究する際の基本的な方法である, 不動点定理, 変分法, 写像度理論, 分岐理論を, 具体的な微分方程式を対象に解説した本です.

河野俊丈 教授

  • James F. Davis, Paul Kirk, Lecture Notes in Algebraic Topology, American Mathematical Society Graduate Studies in Mathematics Volume 35, 2001
  • 代数的位相幾何学の基礎である, ホモロジー代数, ホモトピー群, ファイバー束, 障害理論, スペクトル系列などが解説されている. 本書によって位相幾何学を研究する上で必要な代数的な基礎について系統的に学ぶことができる.
  • Augustin Banyaga, David Hurtubise, Lectures on Morse Homology, Springer, 2005
  • Morse 理論は Morse 関数から多様体の幾何学的情報を抽出する手法である. この本では, Morse 関数の臨界点で生成され, 勾配ベクトル場によって境界作用素を定義する Bott, Witten らによる Morse 複体の手法が解説されている. シンプレクティック幾何学などで重要な役割をはたす Floer ホモロジー理論を学ぶことを目標とする.
  • James F. Davis, Paul Kirk, Lecture Notes in Algebraic Topology, American Mathematical Society Graduate Studies in Mathematics Volume 35, 2001
  • 夏学期からの継続である. 冬学期は, ファイバー束の幾何学, 障害理論, 一般コホモロジー, スペクトル系列などを扱う. 本書によって位相幾何学を研究する上で必要な代数的な基礎について系統的に学ぶことができる.
  • Hansjorg Geiges, An Introduction to Contact Topology, Cambridge University Press, Cambridge studies in advanced mathematics 109, 2008
  • 接触幾何学の基礎的な話題と位相幾何学へのさまざまな応用が述べられている. とくに, 3 次元多様体の接触構造の分類に関する Eliashberg の結果, open book 構造などについて詳しく学ぶことができる.
  • Helmut Hofer, Eduard Zehnder, Symplectic Invariants and Hamilton Dynamics (Advanced Texts), Birkhauser, 1994
  • シンプレクティック幾何学は, 解析力学に由来するが, 現在大域的解析学と関連して, 最も活発に研究されている幾何学の分野の一つである. 本書では, ハミルトン力学系の基礎から始めて, シンプレクティック多様体の概念, さらには, キャパシティ, 周期的ハミルトン系とモース理論などを学ぶことができる.

下村明洋 准教授

  • Gerald B. Folland, Real Analysis, (Second Edition), Wiley-Interscience, 1999
  • このセミナーでは, 実解析の基礎を学ぶ. この本では, 実解析及び関数解析的手法による解析学の基礎となる内容が扱われている. 3 年生の講義「解析学 IV 」 (ルベーグ積分論の基礎) と「解析学 VI 」 (フーリエ解析の基礎) の続きに相当する. 4 年生の講義「解析学 VII 」 (関数解析の基礎) や「解析学 XB 」 (実解析の基礎) とも関係が深い. セミナーは 3 章から始める予定である.
  • 宮島静雄, 関数解析, 横浜図書, 2005
  • このセミナーでは, 関数解析の基礎を学ぶ. 関数解析を丁寧に学ぶ事が出来ると思われる. 3 年生の講義「解析学 IV 」 (ルベーグ積分論の基礎) と「解析学 VI 」 (フーリエ解析の基礎) の基本事項を理解している事が望ましい. 4 年生の講義「解析学 VII 」 (関数解析の基礎) や「解析学 XD 」 (スペクトル理論の基礎) との関係が深い. セミナーは第 2 章から始める予定である.
  • Lawrence C. Evance, Partial Differential Equations, (Second Edition), American Mathematical Society, (Graduate Studies in Mathematics 19), 2010
  • 偏微分方程式の様々な基本的話題について, 初歩的な事から丁寧に書かれている本である. この本を読む事によって, 3 年生までに学んできた解析系の科目の内容が偏微分方程式へ応用されていく様子を体験できると思われる. 特に, 数学・数理科学の分野の大学院 (修士課程) への進学を志望していない人に, 4 年生のセミナーでのテキストとして推薦したい.
  • Loukas Grafakos, Classical Fourier analysis, (Second Edition), Springer, (Graduate Texts in Mathematics 249), 2008
  • このセミナーでは, フーリエ解析・実解析について学ぶ. 概ね 3 年生の講義「解析学 VI (フーリエ解析の歩) 」の続きに位置付けられる. このセミナーに参加を希望する人は, 希望調査票を提出する前に, テキストを見て, 面談に来て下さい.
  • 儀我美一, 儀我美保, 非線形偏微分方程式 (共立講座 21 世紀の数学 25), 共立出版, 1999
  • 線型及び非線型の偏微分方程式と, それに必要な解析学の基本事項について学ぶ. この本では, 偏微分方程式の学習を通して, 解析学の基礎も身に付く様に, 十分な配慮がなされている様に思う. この本を読む事によって, 3 年生や 4 年生で学ぶ解析学の基礎理論がどの様に役立っているのかを体験できると思われる.
  • Gerald B. Folland, Real Analysis, (Second Edition), Wiley-Interscience, 1999
  • 実解析の基礎を学ぶ. この本では, 実解析及び関数解析的手法による解析学の基礎となる内容が扱われている. 3 年生の講義で学ぶルベーグ積分論とフーリエ解析の続きに相当する. セミナーは 3 章から始める予定である.

林修平 准教授

  • Eduard Zehnder, Lectures on Dynamical Systems, European Mathematical Society, 2010
  • 副題に Hamiltonian Vector Fields and Symplectic Capacities とありますが前半は一般的な力学系入門です. とりあえずは通年で前半を読了することが目標です. 前半がエルゴード理論も含めた力学系理論入門になっている.
  • Morris W. Hirsch, Stephen Smale, Robert L. Devaney, Differential Equations, Dynamical Systems, and an Introduction to Chaos, Academic Press, 2004
  • 前半は準備的内容なので, 後半の 7 章から始めて半年で読了することを目標とする. 読了後は相談の上, 次のテキストを決める.

関口英子 准教授

  • 小林俊行--大島利雄, リー群と表現論, 岩波書店, 2005
  • リー群と表現論に関する本格的な教科書です. 数多くある代数的な表現論の本と異なり, 幾何および解析的な考え方を重視して書かれています. 前半ではフーリエ級数論を拡張して, 非可換なコンパクト群の表現論が扱われ, 後半では古典群の表現論, ファイバー束と群作用, 幾何的な表現の構成 (有限次元・無限次元) が順を追って詳しく説明されています. 深い洞察によって, 本質的なことを掘り下げた名著です.

小林俊行 教授

  • N. M. J. Woodhouse, Geometric Quantization, Oxford Mathematical Monographs, 1997
  • シンプレクティック多様体と幾何的量子化に関する入門書である. 幾何的量子化は, 古典力学から量子力学に移行する手法に洞察を与えるだけでなく, 群作用をもつシンプレクティック多様体から, 群の表現を生み出す大きな枠組みに拡張される. 予備知識としては, 多様体の基礎, 微分形式についての正確な理解が必要である. リー群に関しては読みながら知識をつければよい.
  • D. Goldfeld, Automorphic forms and L -functions for the group GL (n,R), Cambridge University Press, 2006
  • 一般線形群の保型形式に関する入門書.
  • G. B. Folland, Harmonic analysis in phase space, Princeton, 1989
  • $R^n$ 上の二乗可積分関数のなすヒルベルト空間には, フーリエ変換をはじめ, 重要なユニタリ作用素がたくさんあり, それらの総体は非常に大きな対称性 (ヴェイユ表現, シュレーディンガー表現) として捉える事ができる. この対称性は, フーリエ解析, 偏微分方程式, 無限次元表現論, 数理物理, 保型形式の整数論の基礎としても用いられる. 本書は関数解析やフーリエ解析を基本的な手法としており, 3 年生の必修科目, 特に, 解析系の科目のすべてと多様体論を理解していることが予備知識として必要である.
  • 木村達雄, 概均質ベクトル空間, 岩波書店, 1998
  • ゼータ関数などが満たす, 美しい関数等式の背後にある「代数群の有限次元の大きな作用」を理論化した概均質ベクトル空間の唯一の教科書であり, 代数や解析に関する入門的な準備の後, 概均質ベクトル空間のゼータ関数の一般論や分類理論まで解説されている.
  • R. Berndt, An Introduction to Symplectic Geometry, American Mathematical Society, 2000
  • シンプレクティック幾何の入門書.
  • Nicole Berline, Ezra Getzler, Michele, Heat Kernels and Dirac Operators (Grundlehren Text Editions), Springer, 2013
  • コンパクトリーマン多様体上のディラク作用素に対する Atiyah-Singer の指数定理およびその一般化をテーマとする. これに必要な幾何学および解析学の基礎知識を学びながら, 熱核を幾何的に構成することによって, 大定理の簡単な証明を与えるのが本書の目標である.
  • Daniel Bump, Automorphic Forms and Representations (Cambridge Studies in Advanced Mathematics 55), CUP, 1998
  • 表現論的な観点からの保型形式の数論をテーマとした定評ある教科書.

寺杣友秀 教授

  • Hartshorn, Algebraic Geometry, Springer, 1977
  • 現代の代数幾何はイデアル論を中心とする可換環を基礎として構成されている. 幾何学的直感を重視しつつ, 可換環論とコホモロジー論を使うことにより, 従来の代数幾何より強力な理論が展開される. この本はそのために必要はことが普くかかれている.
  • F. Hirzeburch, Topological Methodes in Algebraic Geometry, Springer, 1962
  • 一般次元の代数多様体のリーマンロッホの定理は指数定理群と呼ばれる一連の定理のもっとも典型的な雛形となっている. トポロジー, 複素多様体, 代数幾何が様々な形で交錯した数学的対象の豊かさを感じることのできる一冊である.
  • P. Deligne, SGA 4+1/2, Lecture Note in Mathematics, 569, Springer, 1977
  • エタールコホモロジーの理論の主なトピックスをまとめたもの.
  • D. Mumford, Curves and their Jacobian, University of Michigan Press, 1975
  • 曲線のヤコビ多様体についての古典的理論を扱った定本.

河東泰之 教授

  • William Arveson, A short course on spectral theory, Springer, 2002
  • 作用素のスペクトルの理論を扱いますが, 関数解析の基本的な内容はある程度知っている必要があります. 作用素環的な雰囲気があちこちに出ています.
  • John B. Conway, A course in Functional Analysis, Springer, 1990
  • 関数解析の基本的な内容から始まります. あとの方に $C^*$ 環の話も出てきます.
  • Gert K. Pedersen, Analysis Now, Springer, 1995
  • 関数解析の本ですが, 抽象的理論展開が好きな人向けです.
  • Voiculescu, K.J. Dykema and A. Nica, Free Random Variables, Amer. Math. Soc., 1992
  • 自由確率論の基本的教科書. 現在でも使われている重要な技法が初歩から解説されている.
  • John B. Conway, A Course in Operator Theory, Amer. Math. Soc., 1992
  • 作用素論, 作用素環論の基礎的な教科書. 十分初歩的なところから解説してある.
  • W. Arveson, A short course on spectral theory, Springer, 2003
  • 抽象的作用素論の教科書. 作用素環のことも少し書いてある.

緒方芳子 准教授

  • 黒田耕嗣, 樋口保成, 統計力学, 陪風館, 2006
  • 古典スピン系とよばれる物理モデルの数学的解析について分かりやすく説明した本です.
  • 松井卓, 作用素環と無限量子系, サイエンス社, 2014
  • 場の量子論と量子多体系の統計力学, すなわち無限自由度量子系と作用素環という数学との多岐にわたる関わりを紹介した本. 数学的に曖昧さなく扱える無限格子上の量子系の統計力学に関しての基本的な事項, 統計力学, 場の理論を扱う数学的な枠組みから最近の話題についてまで述べている.

足助太郎 准教授

  • S. Morosawa, Y. Nishimura, M. Taniguch, T. Ueda, Holomorphic Dynamics (revised), Cambridge University Press, 2000
  • 複素力学系の入門書.
  • Tatsuo Suwa, Indices of vector fields and residues of singular holomorphic foliations, Hermann, 1998
  • 特性類の局所化 (localization) に関する入門書である.

斉藤義久 准教授

  • P. Etingof, O. Golberg, S. Hensel, T. Liu, A., Schwender, D. Vaintrob, Introduction to representation theory, Student Mathematical Library 59 (American Mathematical, 2011
  • 表現論に関する基礎的事項を解説した教科書です. 内容は多岐に渡っていますが, リクエストがあれば, 特定の箇所を抜き出してセミナーを行うことも可能です.
  • I. Assem, D. Simson, A. Skowronski, Elements of representation theory of associative algebras. Vol.1., London Math. Soc. Student Texts 65 (Cambridge University Press), 2006
  • 3 年の輪講のテキストにも挙がっていますが, 有限次元代数の表現論に関する基本的な教科書です. Vol.1 とあるのは, この本がシリーズものの第 1 巻 (2, 3 巻もある) だからで, 場合によっては 2 巻や 3 巻を取りあげることも可能です (要相談).
  • I. G. Macdonald, Affine Hecke algebras and orthogonal polynomials, Cambridge, 2003
  • その名の通り, affine Hecke algebra の (多変数) 直交多項式の理論への応用を論じた本です. affine root system と affine Weyl group の理論から話が始まっており, セミナーでは最初から読むつもりですが, affine Hecke algebra に関してすでに知っている場合には, 直交多項式への応用の部分を中心にセミナーをすることも可能です.
  • Roger Carter, Lie algebras of Finite and Affine type, Cambrigde University Press, 2005
  • 主に前半部分 (simple Lie algbera とその表現論, ルート系の理論等) を取り上げる予定ですが, 余裕があれば後半の affine Lie algbera の部分を扱うことも可能です.
  • Jens Carsten Jantzen, Lectures on quantum groups, AMS, 1996
  • 量子群 (量子包絡環) の表現論に関して, 基礎的な部分から解説してある定評ある教科書です. 行間は少ないので, 何も知らなくても読み進めることは出来ますが, simple Lie algbera に関する知識がないと何をやっているのかがわかりにくいかも知れません. simple Lie algbera に関する知識がない場合は, 適宜それを補いながら読み進んでいくことになると思います.
  • S. K. Donaldson and P. B. Kronheimer, The Geometry of Four-Manifolds, Oxford University Press, 1990 年 (ペーパーバック版のリプリントは 1997 年)
  • 言わずと知れたゲージ理論の古典的名著. 出版から 20 年以上が経つが, 未だにこの本を超える教科書はない. 通読には時間がかかりすぎるかも知れないので, 途中からより新しい論文やレビューに切り替えることも視野に入れる.

斎藤 毅 教授

  • Jean-Pierre Serre, Corps Locaux, Hermann, 1997
  • 整数論で問題を局所化して考えるとは, p 進体上で考えることになります. 多少詳しすぎるところもありますが局所体についての標準的な教科書です. 基礎理論, 分岐, ガロワ・コホモロジー, 局所類体論が主な内容です. 可換環についてのある程度の知識は前提とされてます.

白石潤一 准教授

  • 国場敦夫, ベーテ仮説と組合わせ論, 朝倉書店, 2011
  • ベーテ仮説法とは, ある種の線形演算子のスペクトルを決定するためにベーテが 1931 年に導入した考え方である. このテキストでは, 非常に強力なベーテ仮説法に立脚し, リー代数の表現論やさまざまな組合わせ論的手法を駆使して可積分系の解析を行う.
  • William Fulton, Young Tableaux, Cambridge University Press, 1997
  • Part I, II では, Robinson-Schensted-Knuth 対応, Littlewood-Richardson 規則等の表現論の組合わせ論的側面に関する事項を学ぶ. Part III では, Falg varieties, Schubert varieties 等の幾何学について学ぶ.
  • 岡田聡一, 古典群の表現論と組合わせ論 (上下), 培風館, 2006
  • 複素数体上の古典群及び対称群の表現論を組合わせ的側面とともに紹介した本である. 題材に対する著者の思い入れと深い配慮により, 読者は最小限の準備で古典群の表現論とその組合わせ的美しさへ導かれる.

金井雅彦 教授

  • Cheeger, Jeff & Ebin, David G., Comparison theorems in Riemannian geometry Revised reprint of the 1975 original., AMS Chelsea Publishing, Providence, RI, 2008
  • リーマン幾何に関する古典的な教科書. 記述が密な分すぐに見晴らしが良く感じられるレベルにまで達することができます. それがこの本の最大の特徴でしょう. 長らく絶版でしたが, 最近ようやく再版されました.
  • Navas, Andr é s, Groups of circle diffeomorphisms, University of Chicago Press, Chicago, IL, 2011
  • 円周への微分可能な群作用に関するモノグラフ. 力学系的要素が比較的強いと言えるでしょう. 英訳が出版されたのはごく最近のこと. お勧めの 1 冊です.
  • Bowditch, Brian H., A course on geometric group theory, , Mathematical Society of Japan, Tokyo, 2006
  • 幾何学群論の教科書の中でもっとも簡単なのが恐らくこれ. ページ数も百少々, これならば, 半年で最後まで読み切れるかも知れません.
  • Peter Frankl, 前原濶, 幾何学の散歩道, 共立出版, 1991
  • 幾何学的な味わいに富んだ「短編集」. 好みの章を読み終えたら, テキストから離れ, 関連した他の文献に進んで欲しいと願っている. 詳細に関しては, 面談の際に説明する.

一井信吾 准教授

  • David A. Patterson and John L. Hennessy, Morgan Kaufmann, Computer Organization and Design: The Hardware/Software Interface, Revised Fourth Edition, 2011
  • コンピュータの基本的な構造や動作を基礎から解説したものとして, 世界的に定評がある本です.
  • Kevin R. Fall and W. Richard Stevens, TCP/IP Illustrated, Volume 1. Second Edition, Addison-Wesley, 2012
  • インターネットの基礎技術である TCP/IP の定番教科書の新版. 書いてあることは読めば分るが, 「なぜそのように作られているのか」を考えたい. 本を読むだけではなく, データを解析したり, プログラムを書くことで内容を自ら確かめることをすすめる.

時弘哲治 教授

  • W.H.Schikhof, Ultrametric calculus --An introduction to p-adic analysis, Cambridge University Press, 1984
  • $p$ 進数を用いた解析の入門書. $p$ 進数体は有理数体のある拡大体であるが, $p$ 進付値により距離が定義されるため, 数列や級数は有理数や実数とは異なる収束性を示す. そのため, 例えば, 整数上での微分を定義できるなど興味深い性質を持つ. p 進数は数論において重要な役割を果たしているが, 最近, 離散可積分系に関連して応用数学上でも注目を集めてきており, 本年度はこのテキストをとりあげた.
  • J.D.Murray, Mathematical Biology: I An Introduction (3rd edition), Springer, 2007
  • 数理生物学の入門的な著書. 簡単な人口論の問題から始めて, BZ 反応や生化学反応, 伝染病の数理, 生物界におけるパターン形成の数学的モデル を扱っている. FitzHugh-Magumo 方程式などの非線形方程式系の定性的な性質によって, どのようにパターン形成, 自己組織化を生じるかをわかりやすく解説している.

古田幹雄 教授

  • S.K. Donaldson, Riemann Surfaces (Oxford Graduate Texts in Mathematics), Oxford Univ Pr, 2011
  • 近年のトポロジーの観点を踏まえた Riemann 面の教科書. このテキストを取り上げた第一の理由は, 幾何のどんな分野に進むためにも有用な, 具体的なものを扱う経験をくぐるためである. 第二の理由は著者のものの見方に触れるためである. 行間と見える者を埋めることが勉強になると思われる.
  • B. Booss, D.D. Bleecker, Topology and analysis: the Atiyah-Singer index formula and gauge-theoretic physics, Springer, 1984
  • Atiyah-Singer の指数定理のひとつの証明を紹介してある本

坂井秀隆 准教授

  • 西岡久美子, 微分体の理論, 共立出版, 2010
  • 微分方程式が解けるかどうかを代数を使って判定する. 解けるということに関してもいろいろな意味がある. とくに, 線型の方程式だけでなく, 非線型の方程式も扱っているのが特色.
  • 渋谷泰隆, 複素領域における線型常微分方程式, 紀伊国屋書店, 1976
  • 変数係数常微分方程式の解の構成や解の解析接続に関する Riemann の問題などが述べられる. 古典的かつ標準的な内容も, 20 世紀の数学の言葉を使って整理されている. 後半は不確定特異点を持つ場合に問題が拡張されていて, 最近の研究においても議論される重要なものを含んでいる.
  • David Mumford, Tata Lectures on Theta I, II, Birkhauser, 1983
  • テータ関数に関する基本的な文献.
  • 渋谷泰隆, 複素領域における線型常微分方程式, 紀伊国屋書店, 1976
  • 変数係数常微分方程式の解の構成や解の解析接続に関する Riemann の問題などが述べられる. 古典的かつ標準的な内容も, 20 世紀の数学の言葉を使って整理されている. 後半は不確定特異点を持つ場合に問題が拡張されていて, 最近の研究においても議論される重要なものを含んでいる.

宮岡洋一 教授

  • Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer-Verlag, 1977
  • 代数幾何の標準的教科書. Atiyah-McDonald 程度の環論を勉強しておくとよい.
  • 渡辺敬一, 後藤四郎, 可換環論, 日本評論社, 2011
  • Cohen-Macauley 環に焦点を定めた可換環論の本格的な教科書であり, 代数幾何, 特に特異点論に興味のある人に薦める.

平地健吾 教授

  • Lars Hormander, An introduction to complex analysis in several variables, North-Holland Publishing Co., 1990
  • 多変数複素解析の入門書. 多変数の正則関数は一変数のときとは異なる性質をもち, その解析には偏微分方程式や層の理論が必要になる. この教科書ではこれらの基本事項を全て学ぶことができる (が行間を埋めるのは難しい).
  • 多変数複素解析の代表的な入門書です. 多変数の正則関数が存在する自然な領域 (正則領域とよばれる) の幾何的な特徴づけを与えるレビ問題の解決を目標とします. 擬凸性などの複素解析の基本的な道具を学んだあと, 偏微分方程式の理論を用いてレビ問題の解を与えます.
  • Klaus Fritzsche and Hans Grauer, From Holomorphic Functions to Complex Manifolds, Springer, 2002
  • Hormander の教科書と同じく多変数関数論の入門書であるが, こちらはより幾何学的な側面を詳しく解説している. 複素解析だけでなく微分幾何の基礎も学べる上に Hormander より読みやすい.
  • Steven Rosenberg, The Laplacian on a Riemannian Manifold: An Introduction to Analysis on Manifolds London Mathematical Society Student Texts, Cambridge University Press, 1997
  • リーマン多様体の上で定義されるラプラス作用素と幾何的な不変量との関係を調べる, 幾何解析学の入門書. ラプラス作用素を用いて定義される熱方程式の解析をとおしてガウス・ボンネの定理を証明するのが一つの目標である.
  • William Fulton, Joe Harris, Representation theory: a first course,
  • リー群の有限次元表現の入門書. 有限群の表現の具体的な構成からはじめて半単純群とよばれる非常によい性質を満たすリー群の表現までを学ぶことができます. 沢山の例を通して自然に一般論を理解できるよう工夫されています. 読んでいて楽しい本です.
  • 大沢健夫, 多変数複素解析, 岩波書店, 2008
  • 多変数の正則函数の理論の現代的な入門書. 偏微分方程式を解いて正則函数を作る手法を学ぶことができる.
  • Shoshichi Kobayashi, Transformation Groups in Differential Geometry, Springer, 1972
  • この本ではリーマン幾何, 複素幾何, 射影幾何, 共形幾何などの幾何構造の自己同型群を微分形式を用いて統一的に調べる. 一冊で色々な幾何を勉強することができ, 微分幾何の基本的なテクニックも身につく.

逆井卓也 准教授

  • Raoul Bott, Lorinng W. Tu, Differential Forms in Algebraic Topology, Springer, Graduate Texts in Mathematics, 1995
  • 代数的トポロジーの有名な教科書. 前半は de Rham 理論を軸として多様体のコホモロジーに関する基本事項を学び, 後半は代数的トポロジーで用いられる道具を一通り学ぶ.
  • John Hempel, 3-Manifolds, Princeton University Press, 1976
  • 3 次元多様体に関する古典的な教科書. Thurston 以降の双曲幾何的なアプローチは含まれていないが, 3 次元多様体論の基本的な事項を一通り学ぶことができる.
  • Jurgen Jost, Compact Riemann Surfaces: An Introduction to Contemporary Mathematics (3rd edition), Springer, Universitext, 2006
  • 基本群や被覆空間に関する基本的事項の説明から始まり, 曲面の微分幾何, 調和写像, タイヒミュラー空間の基礎へと続いていく. リーマン面を軸に, 代数, 幾何, 解析が絡み合っていく様子を学ぶことができる.
  • Nikolai Saveliev, Lectures on the Topology of 3-Manifolds: An Introduction to the Casson Invariant (2nd Edition, 1st Edition でも可), Walter De Gruyter, 2011
  • Casson 不変量を主なテーマとして, 3 次元多様体論, 4 次元多様体論に関する基本的事項が多くの具体例とともに手際よくまとめられている.
  • 今吉洋一, 谷口雅彦, タイヒミュラー空間論 (新版), 日本評論社, 2004
  • タイヒミュラー空間とは曲面上の種々の幾何構造を「上手に」パラメトライズする空間であり, 現在でも様々な手法を用いて研究が進められている. この本はタイヒミュラー空間に関する代表的な教科書であり, 双曲幾何と離散群, 複素函数論, 微分幾何などを総合的に用いて, タイヒミュラー空間やそのモジュラー群 (曲面の写像類群) の構造を明らかにしていく.

俣野博 教授

  • Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations (Universitext), Springer, 2010
  • 関数解析の基礎からソボレフ空間, 偏微分方程式の理論にいたるまでを系統的ににカバーした教科書である. 1983 年に同じ著者が出版した関数解析の教科書 (フランス語) は, 世界各国の言語に翻訳されて広く読まれていたが, 今回は全面的な改訂が加えられており, 扱われている題材も最新のものが増えている.
  • Applied Functional Analysis: Applications to Mathematical Physics (Applied Mathematical Sciences) (volume 108)
  • Eberhard Zeidler, Applied Functional Analysis: Main Principles and Their Applications (Applied Mathematical Sciences, volume 109), Springer-Verlag,
  • 関数解析学の基礎理論を, 豊富な具体例や応用問題を通してわかりやすく解説.
  • John L. Troutman, Variational Calculus and Optimal Control, Springer, 1995 (second edition)
  • 変分法の入門的教科書である. 主として 1 変数の問題を対象としているが, フェルマの原理や等周問題をはじめ多くの重要な古典的問題をカバーしており, 最適制御問題も扱っている. 本書では, 汎関数が凸である場合に焦点を絞ることにより, 関数解析の高度な知識を用いなくても最小化問題を厳密に論じることができるように配慮されている. 具体例を通して背景の理論を学ぶスタイルなので読みやすく, また, 変分法の発展の歴史に関する記述も充実している.

河澄響矢 准教授

  • J.-P. Serre, Oeuvres - Collected Papers, Vol.1, Springer, 1986, 2003,
  • Serre の初期の代数トポロジーの論文を順番に読む. トポロジーの基本的な道具であるスペクトル系列の習得を目的とする. 学内の PC から原論文の pdf が取得可能なので, テキストを購入する必要は全くない.
  • 荒木捷朗, 一般コホモロジー, 紀伊國屋書店, 1975
  • かなり古い本である. それにもかかわらず本書を推薦する理由は Brown 函手, K コホモロジー, ボルディズム, スペクトル系列, 一般コホモロジーなどの位相幾何学の一般教養を身につけておくことが, 将来, 役に立つだろうと思うからである.
  • Francois Labourie, Lectures on Representations of Surface Groups, European Mathematical Society, 2013
  • 曲面の基本群からリー群への準同型の全体の空間は, 低次元多様体を研究するための基本的な道具となっている. 本書では, 曲面, ベクトル束, ねじれ係数コホモロジーなどの基本的な事柄の学習からはじめて, 曲面の基本群からリー群への準同型の全体の空間についての概観をうるところまでを扱っている. なお, テキストは著者本人の website http://www.math.u-psud.fr/~labourie/preprints/pdf/surfaces.pdf からも入手可能.

新井仁之 教授

  • 藤田宏, 黒田成俊, 伊藤清三, 関数解析, 岩波書店, 1992
  • 関数解析学の基礎事項が丁寧に解説されている. その応用として偏微分方程式が取り上げられている. セミナーではこの本の前半を読むことを目標とする.
  • Walter Rudin, Functional Analysis, 2nd edition, McGraw-Hill, 1991
  • 関数解析学の入門書. 多くの話題がコンパクトにまとめられ, 関数解析に関する基礎事項が組織的に学べる. 主な内容は位相線形空間, 超関数, フーリエ変換, 線形偏微分方程式への応用, タウバー理論, バナッハ環とスペクトル理論, 作用素半群の基礎などである.
  • I. ドブシー, ウェーブレット 10 講, 丸善出版, 2012
  • ウェーブレットの著名な研究者による有名な教科書. 入門書の決定版といっても過言ではない. ウェーブレットは 20 世紀末期に現れた新しい数学で, 関連応用分野に革命的な進展をもたらせた. たとえばディジタル信号処理などはその典型例である. 本書ではウェーブレットの数学的基礎をしっかりと学べる.

辻雄 教授

  • A. Weil, Basic Number Theory, Springer, 1992
  • 前半は adele, idele の観点からの代数体および有限体上の 1 変数関数体の理論, 後半は局所類体論, 大域類体論を扱っている.

寺田至 教授

  • 岡田聡一, 古典群の表現論と組合せ論 上・下, 培風館, 2006
  • 複素数体上の古典群 (一般線型群・特殊線型群・直交群・シンプレクティック群) の表現, およびその構成に深く関係する対称群の表現と, さらにそれらに関する組合せ論的な結果などを総合的に扱った本. リー環の一般論から入るのではなく, 具体的な群 (やりー環) の特性を生かして表現を考察する視点をとっている.

松尾厚 准教授

  • Pavel Etigof and Olivier Schiffman, Lectures on quantum groups, Internatinal Press, 2002
  • 量子群と関連する様々な話題の概略を広く網羅した講義録である. 主なトピックスとしては, ポアソン代数, ホップ代数とテンソル圏, 量子展開環, ドリンフェルト・ダブル構成法・ KZ 方程式, 擬ホップ代数, ポアソン・リー群の量子化, 多重ゼータ関数などがあり, どれも興味深い. 気に入ったトピックスについては, 本書を離れて原論文等にあたり, 詳しく学ぶのも良いだろう.
  • Frenkel-Lepowsky-Meurman, Vertex operator algebras and the Monster., Academic Press, 1988
  • Lie 代数への入門から書き起こして頂点作用素代数とモンスターについて詳細に論じている.
  • Kassel, Quantum Groups, Springer, 1995
  • 量子群と関連するホップ代数・テンソル圏・ KZ 方程式などの豊富な話題について丁寧に解説している.
  • W. Ebeling, Lattices and codes, Springer, 2013
  • 格子 (lattice) と符号 (code) は代数的組合せ論に位置づけられる概念だが, 有限群論・リー環論・代数幾何・位相幾何などの様々な分野に様々な形で登場し, 非常に興味深い研究対象である. 本書は, 格子と符号について読みやすく丁寧に書かれた定評のある入門書である.

長谷川立 准教授

  • Herbert B. Enderton, A Mathematical Introduction to Logic, Academic Press, 2001
  • 標準的な数理論理学の教科書です. 読みやすく丁寧に書かれていると評価されています. 基本的なところから書かれているので, 初学者であっても読めると思います. 基本的な事項をすでにマスターしている学生であれば, 途中から読むのもよいと思います.
  • Saunders Mac Lane and Ieke Moerdijk, Sheaves in Geometry and Logic, Springer, 1992
  • 層の概念は, 幾何などではポピュラーですが, 論理学にも緊密な関連があります. また, プログラミング言語のモデルの構成にも用いられたりして, 計算機科学での素養にもなっています. 丁寧に書かれていて, 読みやすいテキストだと思います.

宮本安人 准教授

  • A. Ambrosetti and G. Prodi, A Primer of Nonlinear Analysis (Cambridge studies in advanced mathematics 34), Cambridge University Press, 1993, (Paperback 1995)
  • 非線形楕円型偏微分方程式に関する入門書. 関数解析に関する基礎事項から始まり, 陰関数定理を利用した解の存在証明, 解の個数, 分岐現象の一般論とその応用等を扱っている.

川又雄二郎 教授

  • Arnaud Beauville, Complex Algebraic Surfaces, Cambridge University Press, 1996
  • 代数曲面論は幾何学的代数多様体論の故郷である. 双有理変換, 交差理論, 層の完全列などの基本的手段を通して代数曲面の分類理論を学ぶ. Hartshorne などの教科書で展開されている代数幾何学の抽象論だけではその意味がよくわからないという人に最適.
  • Lucian Badescu, Algebraic surfaces, Springer, 2001
  • 代数曲面論は代数幾何学の故郷である. エンリケス=小平の曲面論を基礎体の標数に依存しない形に拡張したマンフォード=ボンビエリ理論の解説. 現在欧米で活躍しているルーマニア人中堅研究者は著者の弟子が多い. ルーマニア語からの翻訳.

稲葉寿 准教授

  • H.L.Smith and H.R.Thieme, Dynamical Systems and Population Persistence, AMS, 2011
  • 人口学や生態学, 疫学における数理モデルの多くは個体群の自己再生産と非線形相互作用を表現する力学系として定式化される. そこで基本的な問題は, 個体群が絶滅するか, 存続するかということである. 本書はそこで基本的に重要となるパーシステンスという概念の理論と応用を述べている.
  • Hal L. Smith and Horst R. Thieme, Dynamical Systems and Population Persistence, Amarican Mathematical Society, 2011
  • 生物個体群モデルの基礎概念に, 存続可能性 (persistence) がある. これは通常の安定性などよりはずっと広い概念で, 最近の個体群力学系研究におけるキー概念になってきている. 本書は個体群力学系理論と persistene theory に関する厳密な数学的解説で, 本格的な数理生物学研究の基礎として非常に有効であろう.

野口潤次郎 教授

  • L. Hoermander., Introduction to Complex Analysis in Several Variables. (Third Edition), North-Holland, 1990
  • $\bar{\partial}$- $L^2$ 法による多変数解析関数論の名著.

志甫淳 准教授

  • Qing Liu, Algebraic geometry and arithmetic curves, Oxford University Press, 2006
  • 代数幾何学, 数論幾何学において必須であるスキーム理論について書かれた本である. 可換環論および位相空間論の基礎的な知識が必要である.
  • J.W.S Cassels and A. Frohlich, Algebraic Number Theory, Academic Press, 1967, London Mathematical Society から出版の 2nd Edition (2010 発行) もあり.
  • 局所体, 大域体についての基礎から始まり, 群のコホモロジーを通じて局所及び大域類体論を証明している本.

今野宏 准教授

  • Ana Cannas da Silva, Lectures on Symplectic Geometry, Springer, Lecture Notes in Mathematics 1764, 2001
  • シンプレクティック幾何学の入門書です. 前半では基本的な概念, 性質が解説されています. 後半では, モーメント写像の幾何がさまざまな例とともに解説されています. 幾何学 I (多様体), 幾何学 III (微分形式) の基礎的な部分を理解していれば, 無理なく読み進められると思います.

織田孝幸 教授

  • Marc Hindry and Joseph H. Silverman, Diophantine Geometry. An Introduction (GTM 201), Springer, 2000
  • 不定方程式に関する現代的な研究手法の入門書. もちろん, 全部をやろうなどとは思っていない. 同種の別のもっと薄いものに変えることも可能です.
  • Branko Grünbaum, Convex Polytopes (GTM 221), Springer, 1967 John Wiley and Sons, 2003 Springer
  • Euclid 空間内の凸体に関する古典的なよく知られた本である. 織田の専門とは少し違うが, 現在の研究に使えるかもと読んでみる気になる. 付き合ってくれる人を歓迎します.

高木俊輔 准教授

  • 宮西正宜, 代数幾何学, 裳華房, 1990
  • スキーム論から代数曲面論までの基本的な事項が解説してある, 代数幾何学の標準的な入門書. 学部 3 年生までの知識で読み進められるように配慮されている.
  • 樋口禎一, 吉永悦男, 渡辺公夫, 多変数複素解析入門, 森北出版 1980
  • 解析空間・解析的特異点論の入門書. 2 次元正規特異点について詳しく述べられている. Riemann 面の知識があることが望ましい.
  • Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer-Verlag, 1977
  • 世界的に有名な, 代数幾何学の標準的な入門書. 可換環論の基礎知識 (Atiyah-Macdonald"Introduction to Commutative Algebra" 程度) があることが望ましい.

大島利雄 教授

  • 柏原正樹, 河合隆裕, 木村達雄, 代数解析学の基礎, 紀伊國屋書店, 1980

吉田朋広 教授

  • D. W. Stroock, Probability Theory, Cambridge, 1993
  • 確率論の基本的な題材を扱っている.
  • I.A. Ibragimov, R.Z. Has'minnskii (S. Kotz 訳), Statistical estimation: asymptotic theory, Springer, 1981
  • I-H 理論を確立した著者による教科書.
  • Patrick Billingsley, Convergence of Probability Measures (Wiley Series in Probability and Statistics) 2 版, Wiley-Interscience, 1999
  • 確率測度の収束の基礎理論とその応用に関して平易に解説している. 本書の主なテーマである C 空間, D 空間の理解は確率統計分野に進む場合は必須である.

寺田至 准教授

  • 岡田聡一, 古典群の表現論と組合せ論 上・下, 培風館, 2006
  • 複素数体上の古典群 (一般線型群・特殊線型群・直交群・シンプレクティック群) の表現, およびその構成に深く関係する対称群の表現と, さらにそれらに関する組合せ論的な結果などを総合的に扱った本. リー環の一般論から入るのではなく, 具体的な群 (やリー環) の特性を生かして表現を考察する視点をとっている.

山本昌宏 教授

  • L. Evans, Partial Differential Equations, American Mathematical Society, Providence, RI., 2000
  • 英語ではあるが, 古典的な偏微分方程式についての包括的な解説であり, 研究者として必要な偏微分方程式の知識を得ることができる.

髙木寛通 教授

  • Hartshorne, Algebraic Geometry (Springer GTM 52) Springer 1st ed. 1977. Corr. 8th printing 1997 版 (1997/4/1) (日本語版を参照しても構わないが, 英語版で読むのが望ましい).
  • 1 章は 4 年生に進学するまでに自習しておくこと. その際, 必要な可換環論の知識も補っておくこと.
  • 言わずと知れた代数幾何学の有名な教科書. たぶん, これを志望してくる人に説明は無用と思う.
  • デビッド コックス, ドナル オシー, ジョン リトル, グレブナ基底と代数多様体入門, 丸善出版, 2012
  • イデアルの生成元を実際に求めるときなどに有効なグレブナ基底という概念を通して, 代数幾何の初歩を, 実際に手を動かしながら学べる. 予備知識はほとんど必要としない. 可換環論についても丁寧に説明してある.

三枝洋一

  • Ulrich Görtz and Torsten Wedhorn, Algebraic geometry I. Schemes with examples and exercises, Vieweg + Teubner, 2010
  • 志村多様体論などで活躍中の数論幾何の研究者によるスキーム論の本. 丁寧な説明と豊富な例が特徴である.
  • Armand Borel, Automorphic forms on $SL_2 (\mathbb{R})$, Cambridge University Press, 1997
  • 保型形式の現代的な扱い方である保型表現についての入門書.

二木 昭人

  • 小林昭七, 複素幾何, 岩波書店, 2005
  • 複素幾何の標準的教科書. 層, ベクトル束の接続, チャーン類, ホッジ理論, 小平消滅定理など. 調和積分論の証明はないので, Griffiths-Harris で補うと良い.
  • Gang Tian, Canonical metrics in Kahler Geometry (Lectures in Mathematics, ETH Zurich), Birkhauser, 2000
  • ケーラー多様体に標準計量を与える問題を扱う. 標準計量とはカラビ・ヤウ計量, ケーラー・アインシュタイン計量などのこと.

宮本安人

  • A. Ambrosetti and A Malchiodi, Nonlinear Analysis and Semilinear Elliptic Problems (Cambridge studies in advanced mathematics 104), Cambridge University Press, 2007
  • 半線形楕円型方程式の解析に有効な手法のうち, 位相的方法 (写像度の理論) と変分法について, この方面の研究で著名な Ambrosetti 氏と Malchiodi 氏自身で解説している. 具体例が豊富で記述も明快である. 後半は最前線に近いトピックスも扱われている.
  • 宮島静雄, ソボレフ空間の基礎と応用, 共立出版, 2006
  • 偏微分方程式の研究で欠くことのできないソボレフ空間を扱った和書. ソボレフの埋め込み定理, 拡張定理, レリッヒの定理, 補完定理, トレース作用素など基本的な定理が解説されている. 応用として楕円型方程式の解の存在や正則性なども扱われている.

不明

  • Manfred Einsiedler and Thomas Ward, Ergodic theory with a view towards number theory, Springer-Verlag London, Ltd, 2011
  • タイトル通り, 整数論への応用を意識したエルゴード理論への入門書です. Chapter 1 で応用例を概観できます. エルゴード理論の抽象的側面についても充実しています.
  • Bachir Bekka, Pierre de la Harpe, and Alain Valette, Kazhdan's property (T), Cambridge University Press, 2008
  • 群の解析的性質の一つである Kazhdan の性質 (T) についての入門書です. 本の後半では, ユニタリ表現の基礎的事項がまとめられています.

加藤晃史

  • Pierre Deligne, Pavel Etingof, Daniel S. Freed, Lisa C. Jeffrey, David Kazhdan, John W. Morgan, David R. Morrison, Edward Witten, Quantum Fields and Strings: A Course for Mathematicians, Vol 1 & 2, American Mathematical Society, 1999
  • 1996-97 年に米国プリンストン高等研究所で行われた 数学者向けの場の量子論や弦理論の勉強会の報告集. いろいろな話題について, 長短さまざまな講義録や演習問題が集められている. 全部で 1500 ページもあるので, セミナーではいくつかの章を選んで読むことになるだろう.

Can one hear the shape of a drum?

本文

yuki_migo さんをメインの対象とした実解析関係のセミナーの内容を作っているが, その中で関連する数学の紹介として Marc Kac の有名な【Can one hear the shape of a drum?】を出す予定だ. 折角なので原論文をきちんと読んでみようと思い立ち実行に移した方の市民だった. ここに論文が置いてあったのでそこから取った. まずいのではないかと思うのだが大丈夫なのか.

P.3 Of special interest (both to the mathematician and to the musician) are solutions of the form \begin{align} F (\vec{\rho}; t) = U (\vec{\rho}) e^{i \omega t}, \end{align} for, being harmonic in time, they represent the pure tones the membrane is capable of producing.

単音 (と呼んでいいのか?), 音楽にとっても重要というの, 面白かった. 言われてみればそうなのか.

P.3 終わりから P.4 冒頭部で, 有名な「 Laplacian のスペクトルから領域の Euclid 幾何的合同性が証明できるか」という問題が提出される. 元々 10 年程度前に Bochner が言い出した問題らしい. そして Bers が次のように言ったという.

"You mean, if you had perfect pitch could you find the shape of a drum."

Laplacian のスペクトルに領域の情報が埋まっているというの, 応用上 (?) はそれなりに分かる話と言ってもいいのかもしれないが, 数学的には結構衝撃的な印象ある: 少なくとも初めて聞いたときの私には. そして今でも新鮮な驚きがある.

P.4 で Milnor の結果, 「 Laplacian が全く同じ固有値を持つにも関わらず合同でない 2 つの 6 次元トーラスの構成」を引用している. Milnor も無茶やるな, という感覚がある.

P.4 Section 4 で物理学者 Lorentz の講演からの引用がある. 要は黒体輻射の話だが, 今まで黒体輻射とスペクトル幾何を結びつけて考えたことがなかった. 専門に限りなく近いにも関わらず. ちなみに Lorentz が提出したこの問題はその場にいた Hermann Weyl (もちろんあの有名なワイル) が, その少し前に Hilbert が作りあげた積分方程式の理論を使って解いたらしい.

そのあと, 統計力学というか確率論というか, その辺の定式化を使った議論をはじめ, 直観的な結論を出す. このあたり, 確率論の人なのだなという感じある.

P.8 Section 6 では次のように語っている.

It would seem that the physical intuition ought not only provide the mathematician with interesting and challenging conjectures, but also show him the way toward a proof and toward possible generalizations.

P.14 で Brown 運動が出てきた. 確率っぽい話になるのか. 確率論を使って wild な境界でも議論でき, 一般化された解の自然な定義ができるという話だった.

何かもっと確率っぽい話をするのかと思ったらそうでもなかったが, 確率の人から見るとどうなのだろう. 確率論, それなりに漸近解析を使うイメージがあり, 漸近解析が議論の基本だったから, その意味では確率論で培った技術を全面的に使っていると言えるのかもしれない. ただし確率論には詳しくないのでこの見方が正しいのか不明.

幾何と解析が密接に結び付いていること, 特に個人的には作用素・スペクトルの解析をしているというのがとてもとても楽しい. ふんわり雰囲気を楽しむ感じの論文 (元が講義録のようだ) ということもあり, そんなに堅苦しくもなく, 物理と数学の相互作用的なところも強調されていて, 学部低学年で解析/ 幾何に興味がある向きはちょうどよく刺激を受けられる内容だという印象. こういうのを私もやらなくてはいけない. これをネタにしてセミナーするのもいいかもしれない. 検討しよう.

ラベル

数学, 幾何学, スペクトル幾何, 漸近解析, 数理物理, 統計力学, 積分方程式

大学によるオンライン無料講義が出たとしても大学含めしばらく「学校」の意味は失われない

本文

我らが Paul による教育に関するこんなツイートがあった. ちなみに 以前当人から Paul と呼ぶように言われたのでそうした.

オンラインの無料講義はどんどん公開すればよい. もっとも効率化できると思われる大学低学年教育を考えても, これだけ微積や線型代数のわかりやすい教科書・問題集が世にあふれているのに, 独習できてる学生が少ない. その現状を思えば, オンラインですべてが置き換わるはずがないのだ.

かなり前だが MIT かどこかが全講義をオンラインで動画配信しているとかいうニュースを見たことがある. 動画配信にしろ PDF などの配布にしろ, オンラインの教材がいくら充実しても, 少なくともしばらくは従来通りの学校での教育に完全に置き換わることはないだろう. 理由は簡単で, 一人での孤独な学習に耐え切れる人間はそうはいないからだ. また, 従来通りの対面の学習は時間・空間的な強制力が強い. この強制力に代わる何かがオンラインで実現できない限り, 怠惰な人は勉強が進まない. そしてほぼ全ての人間は怠惰なので要はどうにもならない.

後者とも関わるが, 「一人での孤独な学習に耐え切れる人間はそうはいない」という点がおそらく決定的に大事. 友人などと「やはりお前もここは分からないか. 自分も分からなくて困っている」などなど, 色々な形で具体的に共感しつつ共に学べる人が近くにいるのといないのでは精神衛生上大きな違いがある.

やり方にもよるが, オンライン教育だとやりたいところだけやるということにもなりがちな印象があるが, これはあまり良くない. 先々で何が役に立つかは分からない. 現状の専門家が将来に渡って役に立つだろうと思った内容を, とにかく強制で一通り学ぶというのは意味のあることだろう. 情報関係など移り変わりの激しい分野はあるだろうが, 基礎体力として身につけたことはそう無駄にはなるまい.

頭がおかしい人による相当にアレなものもネットには落ちているし, 玉石混交で結構怖いところはある. 大学教員にも時々アレな人はいる. 元はまともだったのに時とともにアレになってしまう人もいる. 大学から出ている教材だからといって無条件に信頼できるものでもない, とか言い出すとまた大変なことになるが, 要は自分の目も磨きつつ一所懸命勉強するしかないということでお茶を濁しつつ無責任に終わりたい.

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数学, 教育

YouTube にある数学講義: 筑波の照井先生による線型代数の講義

本文

筑波の照井章先生による化学類対象の講義が YouTube に上がっていた. 線形代数 I (2013) (9) 特殊な行列 (1) (Linear Algebra I (2013), Lecture 9)という動画だ.

軽く見た程度だが, 他にも慶應の統計学の講義はあった. Fields 賞受賞者である Connes の動画もあったりするし, 英語でも色々な動画がある. 興味がある人は色々探してみると面白いだろう. 私はとりあえず日本語での配信で, 普通の講義では触れないようなラインを狙っていくつもりだ.

ラベル

数学, 数学教育

第4回関西すうがく徒のつどい

第 4 回関西すうがく徒のつどいに向けて逆問題の勉強を始めたので

勉強の記録

はじめに

夏のつどいに向けてちびちび勉強を始めている. のーてぃさんの話を聞いて応用向けの話がもう少しあった方がよいのではないかと思ったので, 逆問題というところで話をしようと思い, 本も買ってみた.

元々「逆問題の数理と解法-偏微分方程式の逆解析」は持っていたのだが, 今回「熱方程式で学ぶ逆問題」を買ってみた. 前者は双曲型と楕円型が主で放物型があまりない感じだったので.

逆問題について

逆問題は講義を受けたことがあるので多少は知っているのだが, 改めて勉強という感じ. 講義の担当教官が実際に企業との共同研究をしている人だったので, 応用上の意味などの解説もあって楽しい講義だった. 物理として当然成り立ってほしいことが定理として出てくるとニヤニヤしてしまうので, 周りにいた人は実に気持ち悪かっただろう. 申し訳なかったと虚空に向けて祈りを捧げている.

ちなみに山本先生については web 記事などもあるのでそれを紹介して終わりたい. 新日本製鐵の溶鉱炉に関する記事 だ. 山本先生主催の逆問題のワークショップなどにも出たことがあるのだが, そこでは数学側とその他 (ととりあえず大雑把にくくっておく) でコミュニケーションが非常に難しく, 言葉遣いを合わせるだけでも 1 年くらいかかったという話も聞けた. 第 3 回のつどいでののーてぃさんの話はおそらく一番質疑応答が活発だったと思うが, 応用側はお金もかかっていて必死だろうから, さらに大変だったろう. 社会や工学に役に立つ話をしろと言われると途端に「何だとこの野郎」という感じになるが, この辺の数学は私が好きな感じの特異性のある話が出てくるので結構好き. 数学的な焦点はその辺に合わせつつ, つどいが対象にしている幅広い層に訴えるような内容にもしていきたい.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 逆問題, イベント

第 4 回関西すうがく徒のつどいのアブストが出揃った

本文

第 4 回の関西すうがく徒のつどい の講演概要が出揃ったようだ. 1 日目がこれ, 2 日目がこれだ. 8/7 から一般参加者の募集がはじまるので, 興味がある向きは注視されたい.

まだ中身を見ていない. これからゆっくり見よう. 私は『偏微分方程式の逆問題–拡散方程式の数学と物理と工学』というタイトルで話す. 専門外の話なのに結構突っ込んだ話が必要なので, 準備がとても大変で戦慄している. 頑張ろう.

ラベル

数学, イベント

第 4 回の関西すうがく徒のつどいに参加してきた

本文

9/21-9/22 と第 4 回関西すうがく徒のつどいに行ってきた. 端的にいうと「楽しかったです. 終わり」なのだが, どうしようもないのでもう少し書く. 基本的に普段自分が自覚的に触らないのを中心に聞いてきた.

『代数学における選択公理』

1 日目の 1 発目ではブルブルエンジン兄貴の『代数学における選択公理』を聞いてきた. まとめはこの辺. 代数弱者なので細部がさっぱりだし, 有限生成な (可換) 環なんて普段使わないのでそれ困るの? というところからこう色々とアレなのだが, まあそんなものなのだろうということで適当に脳内処理した. 3 つテーマがあって, 環これと変な $\mathbb{Q}$ の代数閉包と入射性・射影性の話. エンジン兄貴のホームページに PDF が出るそうなので, 興味がある向きは確認してみよう.

まずは話題の「環これ」から始まった. 選択公理なしで変な環 (の存在を許すモデル?) を作ることで, 選択公理ないとやばいという話. Noether と Artin が一致しないとか何とかそういう話. 少なくとも加群については Artin 性と Noether 性が一致しない例があるので, それが一致しないことはそんなに重大なのだろうかとか色々気になるところはあるが, もう少し代数をきちんとやらないと何ともいえない.

その 2 として変な代数閉包の話. 選択公理がないと代数閉包の (一意性) 存在が言えないらしいが, 何かその辺. ZF で変なサポートを持つ $\mathbb{Q}$ の代数閉包 $L$ が作れる (モデルがある?) らしく, そういう話. この $L$, 非自明な絶対値がないとか Galois 群が自明とか相当やばい. 議論の主軸は上記の変なサポートがあるということのようだ.

その 3 は入射性と射影性の話. 一番印象的だったのは, 入射と射影は双対的な概念なのに射影の方が同値条件など何か面倒なことになっているということ. 入射のときと射影のときで, 証明自体かなり違うようで, 単純に双対で写せば簡単に終わるというわけでもなく, 証明自体も射影の方が何か面倒だという話だった. 選択公理についても双対的な概念を導入すればひょっとしたら綺麗になるかもしれないがよく分からないね, ということでその場はまとまったのだが.

ブルブルエンジン兄貴が PDF をアップした. 興味がある向きは確認しておこう.

つどいの発表内容をアップロードしました. http://alg-d.com/math/tsudoi4.pdf

@alg_d 関連ページ

1 発目の裏番組でぞみさんが『外から数学を眺めてみよう』というテーマで話をしていた. もちろん聞けていないのだが, 1 年生なのに積極的に発表をしていて素晴らしい. 今度何か教えてもらおう.

『偏微分方程式の逆問題–拡散方程式の数学と物理と工学』

お昼を挟んで 2 つ目の話は市民講演枠と勝手に自称した市民トークだった. どなただったか失念したが, あとで直接コメントを伺ったところ「あまり逆問題の話はなかった」という実に真っ当なご指摘を頂いた. 申し訳なかった. これもあとで DVD にする予定だが, そのときにはもう少し突っ込んで内容を増やす予定.

数学として突っ込んだ話よりも, 物理や工学で数学を使っていく上で何が難しいかといった話や, 物理・工学的に考えてどうかという部分を中心にしてきた. 例えばシミュレーションに関わる問題として, 解の存在や一意性, 安定性が現実的に決定的に大事になる. 本当にお話だけだが, シミュレーションする上でまともな時間内で計算結果を出すことをも大事であって, プログラミングや計算効率・収束速度についても真剣に検討する必要がある, みたいなことにも触れておいた. あと拡散方程式自体, 本当に現象をきちんと表現しきれているのかという問題とか.

目的としては次のような感じ. つどいで物理・工学系の話題が少ないため, どういうリアクションが返ってくるかまで含めて試験的にやってみたい. 物理の学部生が当たり前と思っているくらいのことで, どこまでが本当に当たり前として通じるかというところを知りたい. 少なくとも超弦関係では物理と数学の交流が活発になっているので, そうした業界に足を踏み込もうという数学の人にとっては物理の人間の感覚を把握しておくと, 交流しやすくなるだろう. 必ずしも伝統的な数学の意識下にない話題でもあり, そうした数学に馴染めない人がこうした境界分野に活路を見出せるかもしれない. また, つどいに来る人の中で数は少ないだろうが, 物理や工学など非数学の人が数学の人と交流するとき, 自分の常識について自覚的に話せるようになれば交流がスムーズにいくようになるだろう, ということもある.

まずは逆問題というのが何かというのを具体例を挙げていくつか説明した. 数値計算を数学方面からやっているうださんが, 話は大雑把には知っているが具体例をあまり知らなかった, と言っていたので, いくつか挙げておいて良かったのだろうと思っている.

拡散に関する物理的な問題の説明とか, 「物理として」何が難しいのかとかそういう話を展開したあと, 解の存在・一意性・安定性が応用上どういう意味があるのかを数値計算を例に説明し, 最後に拡散方程式の解の非現実性とその解釈について話してきた. 物理の人にとっては当たり前なことしか言っていないが, 数学の人にとっては当たり前ではないのだろうと想定した話.

実際に全体的にどうなのかはまだ良く分からないが, 数学の人からも「面白かった」という反応を得られたのでとりあえずよしとする.

あまり突っ込んで感想聞かなかったので, アンケートの内容で反省しつつそれを活かして DVD でブラッシュアップする予定. あと, ばんぬさんとかに必要なら数学的に突っ込んだ話をセミナー的に何かやるので, 必要なら呼んで, という話とかしてきた. あと, ひさこさんに「今回はほとんど数学の話をしなかったが, もっと数学チックなアレについてはリクエストがあれば, できる範囲で答える」的な話もした.

ちょっと話はずれるが, 休憩のとき, 数理物理的なアレをやろうと思っているという学生さんと話した. 構成的場の量子論は基底状態の存在とか物理としてはどうしようもないことをやっていて, 赤外発散などを数学的にきちんとしていきたいという強い数学的モチベーションがあればいいかもしれないが, 「物理」をガンガンやっていきたいという人にはつらいということ, 物理, 特に研究がやりたいなら素直に物理学科に行った方が楽しいはずだということを話してきた. もちろん人が来てくれた方が嬉しいが, やりたいことが何かを考えてそれをきちんとやった方が精神衛生上もいいだろうから.

圏論における再帰的関数

3 限目はうださんの『圏論における再帰的関数』の話を聞いてきた. まとめはこれ. 始対象とか圏論の基本的な概念を全く把握していないので, その辺は結構つらかったが, プログラミング周りで何か理解のとっかかりは掴める的なところを把握してきた. fold と banana が同じものと聞いたのが一番の収穫だったと思う. つどい, 何故か圏の話多い印象を受けるので, もうちょっと勉強したい. 参考文献の本を買おうと思ったが 16,000 とかハイパー高いので泣いた.

何か普通の数学の圏の本を読もう.

懇親会とそのあと

コミュ力低いのであまり色々な人と話せなかった. 2 日目は参加しないというのを後で知った一ノ瀬さんとはもう少し話しておくべきだったと反省している. 講演中に受けたもの含め, いくつか質問も頂いたのだがあまりまともに答えられなかったのも猛省している. あと, 実際に企業で数値解析している方ともお話したのだが, やはり話に力がある. 専門でもなければ実際に数値計算したこともないので, そういう人間の話にはどうしても限界があるというのを思い知った. 次回話をしたらどうかと勧めてきた.

夜, こう講演について色々と反省したし早めに反省点をまとめておかないと忘れてしまう, と思いつつ早く寝ないと明日がつらいというので無理矢理寝たが, 0 時頃に起きたあとに反省をやってしまい, 2 時間くらい寝られなくなったのでつらい.

食パンの耳『作用素環論入門』

2 日目 1 つ目はパン耳パイセンのやつを聞きに行った. まがりなりにも作用素環専攻だったのに何も知らないのもまずいな, と思っていたので. 「入門詐欺だ」という話が Twitter で出ていたが, ぎりぎりまで配慮はできていたと思っている. AF 環だったし「1-2 年でも雰囲気が掴めるように」と思うと本質的にこのくらいのところしかやりようもない気はする. (本質的に) 行列環くらいでもかなり凄まじい話が展開できるということは分かるだろうし, 学部 1 年で学ぶ線型代数だがなめてはいけないということくらいはきちんと伝わっているだろうと思いたい. 幾何でも出てくる (はずの) $K$ 群とか Grothendieck 構成とか, 出てきたキーワードも覚えておいて損はない.

ちなみにこれの裏番組で関真一朗さんの『290 定理』というのがあったのだが, これが評判よかったので是非聞いてみたかった. 実際どちらに行こうか迷っていた. 後で PDF とか読んでも講演者の語り口や雰囲気というのは完全に再現できるものではないので, かなり残念. 休憩時間に少し話を聞いたのだが, とても面白い話をする人だったので, 余計に残念感が高まる. 証明もかなり泥臭く楽しい感じだったらしい. 楽しそう.

なゆた『有限オートマトンの基礎』

2 つ目は『有限オートマトンの基礎』の話を聞いてきた. この間川添愛さんの『白と黒のとびら オートマトンと形式言語をめぐる冒険』というのを読んだのだが, かなり面白かった. その抽象版に触れてみようということで聞いてみた.

正規表現との関係やらプログラミングとの関連が楽しい. その辺結構好きらしいということに気付いた.

eno『カウンターパーティ・リスクと CVA』

最後の話は eno さんの話を聞いてきた. 金融工学とかその辺の話. 一番心に殘ったのは数値計算に関する時間感覚の話だった. 1 分どころか 1 秒すら問題になる状況で, 計算が終わるのに数分かかるのはもはや死刑宣告に等しいとのことで, 実務に携わる人の言葉の重みを感じる. 数学を使う実務経験などは全くないので, その辺の味, 私には出せない.

次回何を話そうかというところを早速考えている. 一応, ニコニコで動画にもしたページランクの話を考えてはいる. 今回横田さんがグラフ理論の話をしていて一応その周りだし, これで使う Perron-Frobenius の物理への応用もある. 90 分講演にして最後, Hubbard の話につなげるという線で物理まで絡める線も検討している. あと, これまた関西だがぶつりがく徒のつどいでも何か話してみたい. DVD とかでこの交通費・宿泊費くらいは軽く賄えるようにしていきたい.

ラベル

数学, イベント

Twitter まとめ: 非可換確率論と自由確率論

非可換確率論

この世界には非可換確率論というよく分からない確率論がある. 代数的確率論という言い方もある. その昔「確率論は代数ではないのですか」という人もいた (数学まなびはじめにそういうエピソードがあった) ようなので, わざわざ「代数的」というのをつけるというのも隔世の感があるのかもしれない. (ちなみに代数的というのはいわゆる高校でやるような内容を想定してそういう発言になったようだ. 詳しくは数学まなびはじめ参照.)

Twitter でそれについて少し話をしたので簡単にまとめておきたい.

やり取り

確率論モチベを高める必要がある.

@ccccccccandy そこで非可換確率論

@alg_d @ccccccccandy 代数的確率論の地平

非可換確率論って, 確率変数のなす環を非可換にするやつ?

@LT_shu 私が知っているのは, 可換なフォンノイマン環は大体 $L^\infty$ になり, 可測集合の情報を持っているという所から非可換なフォンノイマン環あたりを基礎に議論する話です. 実際非可換ラドンニコディムとか非可換条件付き期待値というのがあります

@phasetr 自由確率論というやつですよね. お話として聞いたことはあります.

@LT_shu 自由確率論はまた少し違います. 自由もフォンノイマン環使いますが, 非可換確率論といった時には, 極端にいえばフォンノイマン環論そのものを指すことすらあります. 私が知っている範囲では結構大雑把な言葉です

@phasetr ああ, 違うのですか. 勘違いしていました. ありがとうございます. フォンノイマン環論全体を指すというのは確かに大雑把ですね. C*環論全体を非可換幾何学と呼ぶようなものでしょうか.

@LT_shu そんな感じです. 非可換な位相幾何学とか本当にいうことがあります http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/msj02.pdf

非可換確率論

まず非可換確率論だが, 基本的にはあまり厳密な意味付けはない. ひどい場合 von Neumann 環論全体を指すことすらある. ここで何故 von Neumann 環なのか, というところだ. 上にも簡単に書いてあるがもう少し説明しよう.

フォン・ノイマン環は $C^*$ でもある

まず von Neumann 環は $C^$ 環になる. 可換な $C^$ 環は局所コンパクト Hausdorff 空間上の連続関数環と同型になる. $C^*$ 環はノルム位相を入れてあるが, von Neumann 環には弱位相 (可換なら気分的に各点収束) の位相が入っている. von Neumann 環は連続関数の各点極限になるので, 大体可測関数くらいになる.

本当に $L^{\infty}$ (と同型) と言いたいなら測度の選択も大事だが, Riesz-Markov-Kakutani の定理があり, 測度がたくさんあること自体は分かっているので, 頑張って適当に選んでくれば, めでたく可換な von Neumann 環が $L^{\infty}$ と言える.

自由確率論は Voiculescu が自由群因子環の分類をするために考えた理論だ. 自由群の生成子の数とその自由群から構成される von Neumann 環の同型問題が昔からあるので, そこへのアタックのために考えられた.

適当な意味で非可換な確率論を考えてはいるのでこれも非可換確率論なのだが, 大雑把な言葉である非可換確率論よりは指す対象が遥かにはっきりしている. 今はどうなのか知らないが, 数年前に聞いた限りでは解析的にかなりえげつない議論をしていた. 名前などは忘れたが, 理論上重要な量が極限を使って定義される. その極限自体の存在はまだ分かっておらず, 暫定的に limsup を使って議論していた. 大偏差原理のレート関数としてエントロピーが出てくるとかいう話もある. 楽しそう.

「自由確率論を使った統計力学」というネタもあるらしい. あくまで数学としてそれっぽいことやってみよう, という話で物理の話ではないという認識.

ラベル

数学, 作用素環

九大の原隆さんとの初邂逅を果たした一方で論文投稿を勧められる方の市民

本文

Summer School 数理物理で原さんとの初邂逅を果たしたことなどは先日まとめたが, 呟きの方をまとめておきたい. これとかこれ.

明日, 原さんの講義を録音したいくらい原さんの語り口が気に入った方の市民

腹さんについては田崎さんのようなパンチャーを想定していた

@phasetr 腹→原. 数理物理で育ったはずの相転移 P 氏が柔らかいと感じるとは意外

@tetshattori これはひどいタイポ. それはともかく, 何と言うかこう, 田崎さんがかなり攻撃的な感じなので, どういう人なのだろうと思っていて, 語り口が凄く柔らかくて穏やかなかんじだったという程度の意味です. 講義内容についてはきちんとやるなら激烈ハードな内容です

@phasetr 田崎氏と長くコンビを組んでいる時点でおわかりと思いますが. ところでもう投稿しましたか

@tetshattori 投稿まだです. 先週関西すうがく徒のつどいのトークの準備があったのと今の Summer School 数理物理でブラッシュアップされるであろう状勢を見てからきちんと序文を書き直そうと思っていたもので. 新井先生からも是非出版するようにというご意見を頂きました

@phasetr 新井先生にも推奨されましたか. それは心強い

@tetshattori @phasetr 「田崎氏と長くコンビを組んでいる時点でおわかり」というと, 何が? (a) 原氏は温厚な人に決まっている (b) 原氏は温厚そうでも中身は攻撃的だとわかる (c) 田崎も攻撃的に見えて実は温厚 ← これか!

@HalTasaki_Sdot ああ, 悪いけど, どれも違ってて, @phasetr へのリプなので, 原・田崎についての何かではなく, 相転移 P さんの感想についてのある statement を示唆したのです

@tetshattori @HalTasaki_Sdot 何はともあれ, 以前も直接言いましたが, できることはやるのでイジング本で何かあれば適当に声をかけてください. イジング周りはともかく, 現状の非相対論的構成的場の理論周りなら私の知見と能力はまだ使い物になるようだと分かったので

@phasetr その前に論文を投稿することを勧めます

@tetshattori 頑張ります

論文投稿を勧められる方の市民だった. 頑張ろう.

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数学, 物理, 数理物理, 数学者, 物理学者, 数理物理学者

小林昭七先生についての記事を書いていたら小林久志先生からお問い合わせを頂いたでござるよの巻. あと http://www.shoshichikobayashi.com

はじめに

先日, 数学セミナーの小林昭七先生特集号を読んで, それに合わせて書評:数学まなびはじめ 第 1 集 小林昭七という記事を書いたが, これを検索で見つけたという小林先生の弟君であるところの小林久志先生からご連絡を頂き驚いた.

数学まなびはじめ〈第1集〉 数学まなびはじめ〈第2集〉

やりとりの記録

昭七先生の随筆などを探していて, このサイトを見つけたという. 該当記事のコピーを送ってほしいとのことだったのでお送りした. あと昭七先生の方のサイトがあることを教えて頂いた. 英語版がこれ, 日本語版がこれだ. メルマガでニュースを配信してくれるとのことなので, 興味がある向きは是非登録しよう. サイト右上に登録リンクがある.

久志先生の方, 数学セミナーの昭七先生特集号にも 寄稿していたし, その記事でだったか, 「大学生の頃の昭七先生が弟の勉強の面倒を見ていた」とかいう記述を見たことがあったので, こう中高生くらいのままのイメージだったのが 突如プリンストンの名誉教授として自分の目の前に現れた感があり, 何かこう色々なものを感じて楽しかった.

こうアレだ, ブログやニコニコの動画は数学または物理で頭がどうにかしてしまった人向けに書いてはいるという名目ではあるものの, 「子供の頃の自分がこんなのがあったら喜んだ」というラインで作っているため, 広い意味では純粋に自分のためと言える. 今回このような面白い体験ができたのもブログを書くようにしたからなので, 皆も適当に自分が面白いと思ったことを世に出していくとこう色々と楽しくなるから皆もやって私を楽しませてほしい, というようなことを言いたい. 黒歴史にもなりうるので用法用量に気をつける必要はあるものの, 小さいことを気にしていると大きくなれないと社会が言っているので, それを真に受けていきたい.

ラベル

数学, 数学者, 小林昭七

ささくれパイセンの確率的善導

はじめに

ひさこさんにささくれパイセンの善導が入ったので記録しておこう.

やり取り

もちろんその先も勉強し続けたいし知りたいけど今自分がもっとも勉強したい分野って確率微分方程式だけどはるか先‥‥

@ml_hisako ルベーグやったあと比較的すぐ突撃出来る感あります

@phasetr そうなんですか! 調べたら確率論の本は一冊読んでおかないと厳しいとも書いてあったんですが, "確率"微分方程式と言うとおり, 確率論はやってから進めるべきですよね??

@ml_hisako 最短, ブラウン運動を知っていればとりあえずはどうにかなって, ブラウン運動は連続関数の関数空間論とルベーグ知っていれば出来る感あります. もちろん確率論的に最大に一般的にきっちりやりたいならそれなりに準備いると思いますが. 確かセミマルチンゲールとかいるはずなので

@phasetr なるほど‥‥ワヘイヘイから誕生日プレゼントで probabity with martingales を貰ったのですが索引調べてみたら semimartingale は出てなかったのを見たりするとしっかりやるなら確率論の本や他の分野を勉強しないとならないなと思いました.

@phasetr セミマルチンゲールとか全然知らないです‥‥本当に奥が深いんですね‥‥詳しく色々聞きたいです!! セミナーの際に教えてくださいますか?

@ml_hisako probablity with martingales は和訳の方を持っていますが, あれはあれでブラウン運動とか確率微分方程式系のことにはあえて踏み込んでいない感じ印象です. 扱いやすいブラウン運動で色々遊んでおいてから一般論きっちりというのもあるはずなので

@ml_hisako ちょっと今研究的なアレが楽しくて時間を奪われていて 12 月にやる予定を勝手に立てていたルベーグのアレができず, 多分学生陣のテストを避けて 2-3 月くらいになる予定ですが, その辺りで個人的確率論の復習をかねたアレを何かやりましょう

@ml_hisako セミマルチンゲールとかは全く知らないです. 自分で使う所しか知らなくて, 確率論専攻の人からしたら本当にめちゃくちゃに虫食いです. ただブラウン運動と伊藤積分, Feynman-Kac は酷使するのでやる予定です

@phasetr 確率論のですか!? ありがとうございます!!! 今は貰った本をきちんと読み進めて行きたいとおもいます!! 少しでも確率論ができるように頑張ります.

@phasetr @ml_hisako 横から失礼します. (いちおう) 確率論専攻の者です. セミマルチンゲールの話は (要するにマルチンゲールを用いた確率積分の理論) 確かに綺麗ですが最初はブラウン運動を用いた確率積分の理論で感じを掴むのもいいと思います

@ysgr_sasakure @phasetr リプありがとうございます! 今はルベーグ積分入門という本と probabity with martingales という本を並行して読んでます (始めたばかりですが) 2 つの本を読み終えたら色々相談したいです! よろしくお願いします!

@ml_hisako @phasetr 伊藤清三とウィリアムズですか! 後者は代数の申し子ワヘイヘイからプレゼントされたそうで. あの本のマルチンゲールと一様可積分のところをしっかりとやっておけばセミマルチンゲール (というよりは局所マルチンゲール) についてやるときに非常に楽ですよ

@ysgr_sasakure @phasetr ブラウン運動の確率積分ということは確率過程の話もやらないとということですか? (知識がなくてごめんなさい) やるとなると本当にやること膨大ですが, 知りたい欲が掻き立てられます.

@ml_hisako @phasetr 多分ここで言っている確率過程の話は, マルコフ過程やレヴィ過程の知識は必要なのか, ということだと思うけど, 特にそんなことはないです. ブラウン運動を使う場合は正規分布や独立性が非常に大事ですが, その際特性関数が非常に役立ちます

@ysgr_sasakure @phasetr アドバイスありがとうございます! そこをやる際には注意したいと思います. 全然わからないことだらけですが, よろしくお願いします.

コメント

ふと思ったが, 確率微分方程式, そういうのが本当にあるのかと思っていたら実は確率積分方程式を印象的な記法で書いているだけのもの, というのではじめて聞いたときびっくりした. 確率偏微分方程式は何なのか全く知らないが. 確率積分方程式とはいうがそれならそもそも確率積分とは何ぞ? というところで確率積分, 伊藤の公式やらが出てくる.

確率積分は確率過程に関する積分論だが, ここで確率過程の特性としてマルチンゲールだの何だのと出てくる. セミマルチンゲールのレベルが (私が知る限り) 一番一般的だが, もっと簡単・具体的でかつ大事な例として Brown 運動がある. これと $P (\varphi_1)$ 過程や Ornstein-Uhlenbeck 過程, Gauss 超過程のあたりが私にとっての基本だ.

学生時代, 作用素論と作用素環で手一杯だったとはいえ, 少し講義に出たくらいで全く身についていなかったつけが今来ていて, 泣きながら確率論を勉強している. 確率論というか確率過程を基礎からきっちり勉強した方がいい気もしていて, 適宜何かいい本を探してもいる.

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数学, 数理物理, 物理, 確率論, 場の量子論, 統計力学

Wikipedia としては超関数と超函数は別物らしい

Wikipedia で実にファンキーな項目があることをゆいしさんのこの呟きで知った.

超関数 - Wikipedia 超函数 - Wikipedia

前者は知っている人も多いだろう, Schwartz の超関数の話だ. 後者では佐藤超関数ともまた少し違うようで, むしろ超関数に環構造を持たせようという動機からの超関数論が展開されていた. 全く知らないのだが, ロシアとかその辺の人達だろうか. Colombeau による定式化については, 東大の片岡先生の, 自分の研究室を志望する学生に向けたメッセージのところで名前を見かけたことがあったので, 名前だけは知っていたが, もちろんそれ以上は何も知らない.

Schwartz の超関数の定式化だと, 確かに一般に積が定義できない. これはもちろん知っていたが, 逆に環にしたいというモチベーションでの定式化というのは言われてみればそうだが, とても面白い着眼点だった. 佐藤超関数の「自然さ」を求めた定式化とも, 少なくとも意識の上では違うのだろう. 世界は広い.

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数学, 超関数論, 代数解析

素敵な証明だった: 代数学の基本定理をBrown運動の再帰性から出す

本文

これは面白い. Brown 運動とマルチンゲール性を知らないといけないが, 証明自体はすっきりシンプル. またこうした証明を許す, 代数学の基本定理の懐の深さも伺える. よい証明だった.

証明は上記ブログに書いてあるので, ぜひ見に行ってほしい. また Rogers and Williams に書いてあるらしいので, この本にも改めて興味が出てきた.

ラベル

数学, 確率論, 代数学の基本定理, 代数学

@教官陣 もう少し理工系教養の線型代数のイントロをきっちりやれ

はじめに

線型代数で苦しむ工学徒を 1 人救ってきた. あとでも役に立ちそうだからまとめておきたい. きっかけはかわずさんのこれを見て, 線型代数で Twitter 検索したことにはじまる.

"要するに線形代数とは「連立一次方程式」についての学問なのである. "というのを見たのだけど, 数学知らないしそんなに興味もないような人が言ってたら「う---ん, まあ, そうですね」で済ませる程度には正しいと思うのだけど, うううううううってなっている

そしてこのようなツイートを見つけた.

線形代数って将来何に使うんですか 目的わからんから全然やる気起きない

そして この辺からやり取りがはじまる.

@puentu http://phasetr.blogspot.jp/2013/04/hilbert_9.html 例えば (線型の) 微分方程式を解くときに使います. 電気回路で出てくるフーリエ級数も線型代数として理解できます. グーグルの検索アルゴリズムのページランクへの応用もあります http://www.nicovideo.jp/watch/sm7599426

@drizzt1233 @puentu 正確には土木とかなのかもしれませんが, 建築でも構造計算用の (大規模) 数値計算で線型代数を使います. 数値計算でかなり線型代数を使うはずなので, 数値計算やる人には必須教養という印象です. 私は物理への応用がメインなので, それ以外はあまり詳しくない

!! 線型代数とかで検索してプロデュースしまくる Twitter 活用術というのを思いついた!!

線型代数はありとあらゆる対象を殴るための道具である

@phasetr ほう難しそう...機械系に進むとしても結構使うものです?

@puentu シミュレーションや機械制御で微分方程式を数値的に解く (コンピュータでシミュレーションする) ことになるかと思いますが, そういうときに使うはずです. http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_deail/q1316803553 やはり大規模計算で出てくるようですね

@phasetr 参考 URL までありがとうございます! 納得できました

@puentu 理論面でも連続体の力学 (流体や弾性体) で大事な応力がテンソルとして出てくるのですが, これもやはり数学としては線型代数の範疇です. 理論の独学はつらいでしょうから, 専門課程の教官に数値計算あたりでどう使っているかを知るために参考書を紹介してもらってはどうでしょう

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_deail/q1316803553 … (笑) が割と真剣に泣ける

一人, 線型代数に苦しむ工学徒を救ってきた

とりあえず理工系大学の教養の講義に限定しておくが, 微分積分はともかく, 各学科用に線型代数がどこでどう使うのかくらいは初回の講義でフォローしてあげることをもう少し真剣に考えた方がいい. あとそのくらい情報共有しろ @教官陣

コメント

言いたいことは上の引用の最後の部分に尽きるが, 単に物理や工学に迎合しろというのではない. むしろ数学としての線型代数, 線型空間論を全力でぶん回してほしいと思っているくらいだ. もちろん役に立つから, というのもあるがもっと強調したい理由がある. それは数学としての線型代数は数学科以外だと独習が難しいだろうからだ.

具体的な行列式の計算などは確かに直近で役に立つことで, 必要なことではあるが, むしろ必要だからこれは各専門で嫌でもやる. だが, 線型空間論は必修などの強制力がない限りなかなか出来るものではない. 一回, 何らかの形で触れておけば記憶にフックができる. 一生使わなければそれでいいが, 使うことがあったときに何もない状態から該当する数学を引っ張るのはかなりつらい. そこに対する救済策だ. だからこその必修であって教養の講義なのだと思っている.

あと「よくわからないヒルベルト空間論」で何とかしようとしているのは, この辺を補うためであって, 逆にいうなら個人的にはその辺に活路があるという感じもする. また色々考えよう.

追記

記述不足で kururu_goedel さんから突っ込みを頂いてしまった. この辺この辺から辿れる. 当然のご指摘であり, 大変申し訳無い.

ツイート収録

@phasetr 相転移 P さんはなかなか厳しいなぁ, 今更だけど. 応用の一覧表とかあればそれなりにフォローできるけれども, 一つ一つ調べていくのは時間的に辛いです. それに, そういうテストにでないことって言ってもガンスルーされることが多い気が.

@phasetr ガンスルーされた上で, 既に触れたことを「こういうことを言って欲しかった」とか言われるのはなかなか悲しい. まあ時期が来ないとわからないことってあるのでしかたないんですけど.

@phasetr それと, 「計算は各学科でやるから」は, 多分そういう方針でやると他学科の人たちに怒られるだろうなぁ. もし本当に計算練習は自分でやってねってつもりでやっていいなら随分と楽なんですけど.

@kururu_goedel 中で一応きちんと書いたつもりですが, 数学側での完全カバーは無理なのでその他も協力しろ, というのと, 教官側に押し付けるのも無理があるので, それ以外も何か考えろ, という話です. そして自分も何かしようと

@kururu_goedel 教官でもないのでアレな学生まで対応していられませんし, 大勢へのアクションも難しいですが, できる範囲でできることはします. あとタイトルは色々考えて, 品がなくて嫌だなと思いつつも強い感じの釣りっぽくしました. これについては人任せにばかりする気はないですし

@phasetr ああ, そこ完全に読み落としてました. 教官の情報交換が足りないのは確かでなんとかなって欲しいですね. 自分の学科での使われ方をちょっとでも紹介してくれるとかなり違うかと.

@kururu_goedel 勘違いしていました. 別の記事か twitter で言ったことを今回の記事にも書いたつもりで, ろくに書いていませんでした. ただ, 何にしろ数学の教官にだけ押し付けるのは無理に決まっているので, その辺は多少なりとも自分でやれることはするという話. 追記します

応用の一覧表

応用の一覧表はあまりにも辛いが, 物理と物理を一定以上基礎にしている工学についてはちょろちょろまとめていきたい. 上で書いたように, 数学の教官に任せるには無理がありすぎるので, できることはこちらでも随時やっていく.

線型代数と量子力学はAmazon のこれTogetter のこれ]などはまとめてある. そのうちまた統計学まわりでのまとめなどもしたいが, そのためには統計学を学び直す必要もありつらい.

時期が来ないと分からないことがスルーされる, というのは分かる. 今ちょうど, 大学 1 年に通じるかは不明だが, それでもやってみようと思って Hilbert 空間論のセミナーの内容を考えている. 私も講義で言われたことに全く気付かず, あとで独自に到達したことというのは多分たくさんある. 意識にすら登らないから全く覚えていないが, 私が受けてきた教育を思えば, その辺はきっちり伝えてくれていたはずだから.

最後には学生が気合を入れる必要がある

計算はある程度はやらないとそもそも身につかないから, 数学の講義でも触れる必要はあるだろうが, 最後は学生自身が頑張るしかない部分がある. やはり各専門への接続を意識した計算を出す工夫は必要だとは思うが. 大規模な計算や数値シミュレーションの話自体は手計算できる範囲を越えるので講義やレポートで触れられるレベルではないが, ただ実際に将来使うことは伝える必要がある. 大体の学科では実験の処理で統計学を使うだろうし, そこでの固有値の話などはきちんとする必要はあろう.

学部 4 年から修士くらいで, 実際に数学で困っていることについてアンケート取ったりしてほしい. それを学科内で学部生に伝えるくらいのこと, 各学科でやってもいいのではないかと思う.

問題は色々ある. 私にも手助けできることはある.

ラベル

数学, 物理, 工学, 線型代数, 数学教育

アンドレ・ヴェイユ 『ゼータ函数の育成について』

はじめに

素数の歌はとんからり bot が非常にアグレッシブな PDF を紹介していた.

私が, Riemann の $\zeta$ -函数と性質を共有する函数を "育成" するときに使って来た一つの特別なトリックをお話しよう.

── アンドレ・ヴェイユ 『ゼータ函数の育成について』 http://goo.gl/p1mR1

引用

まず衝撃的な冒頭の一文を引こう.

今日のような蒸暑い日には, 竪苦しい話より, 動物や植物' を `育成 でもするような話の方がよいであろう. $\zeta$-函数についていえば, 本質的な点は第一に $\zeta$ がギリシヤ語のアルファベットの一つであることで, 第二にその変数が普通 $s$ と書かれることである: $\zeta (s)$.

これが育成に関わることも衝撃的だし, $\zeta$ の本質がこんなところにあることも知らなかった. ただ, 先日の第 4 回関西すうがく徒のつどいで「数論は $\zeta$ が綺麗に書けるようになることからはじまる」という, 数論専攻の方の有り難い話も聞いたので要はそういうこと感ある. 「 Weierstrass の最大の仕事はペー関数に $\wp$ の字を当てたことだという説がある」などの貴重な話も聞いてきた.

ところでこの動物について, Euler の最も重要な発見は, $\zeta$-函 数の函数等式である.

$\zeta$, 動物だったのか.

次の step をなし遂げたのは Dedekind である. これが, bigger and better zeta-function の育成の始まりである. 私自身も近頃は, その育成に, 私の数学的な努力の一部を捧げているのである.

もう 1 つ引用.

Riemann の $\zeta$ とこの Dedekind の $\zeta$ の定義との主要なちがいは, ローマ字とドイツ文字とのちがいであることがわかるであろう. ここでドイツ文字が使われているのは, 長い間ドイツ人だけしか数論をやらなかつたので, 数論の記号にはドイツ文字を使うのが習慣になつているからである.

引用が面倒なので省略するが, Riemann の $\zeta$ の零点に対して, 確率論による大雑把な推測法を説明しているのが目を引く. 確率論と数論の接点, Weil は強く意識していたということか.

次の step は, 非常に面白いものであることがわかり, 現在, 数学的植物学者に対し, 非常に大きな研究分野を繰り拡げているものであるが, それは次のようなものである

数学的植物学者とか, 先程から衝撃的な言葉が連発されまくっているので Weil の偉大さを感じる.

それにしても, $\zeta$, 育成するものだとは知らなかった. $\zeta$ をアイドルと思ってプロデュースすることも考えなければいけない時代なのかもしれない.

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数学, 数学者, 数論, 確率論, ゼータ

Ricci フローと Poincare 予想を議論した Tian と Morgan のプレプリント, Ricci Flow and the Poincare Conjecture

本文

比較的新しめの Ricci フロー勉強用のアレとしてこんなのがあるらしい.

Ricci Flow and the Poincare Conjecture

John W. Morgan, Gang Tian

This manuscript contains a detailed proof of the Poincare Conjecture. The arguments we present here are expanded versions of the ones given by Perelman in his three preprints posted in 2002 and 2003. This is a revised version taking in account the comments of the referees and others. It has been reformatted in the AMS book style.

本来の話として Poincare 予想の証明の詳述ということらしいが, Ricci フローに関する革命的な洞察が含まれているので結果的に Ricci フローの勉強にもなるらしい.

幾何やりたい.

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数学, 幾何, 微分幾何

数学の人に「わかりやすく数学教えろ」というアレはよく聞くが逆に社会も数学者にやさしいコンテンツを作れ

本文

エソテリカさんにいろいろ教えてもらったので.

よくわかっていないのだが, 数学関係者が読める (理解しやすい) 形で, 物理 (なり色々な工学なり) の話がきちんと論じられている物理の本とかそれなりに需要あるのではないかと思うが, そもそもパイが尋常ではないくらいに小さいので, やはりゲリラ的にやらざるを得ない感ある

@phasetr 良著でした. (その趣旨かどうかは正確には判断はできかねますが).

@phasetr http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0925/high43.htm これの「ネットが人々の無知を促進する可能性がある」を読むと, 工学のひとが数学に興味を持たないひとつの事例を知ることができますけど, なんか壁をこえるべく興味もたせるのが先かなって感じしますね

@esotericaone 私個人としてはバイオインフォマティクスだとか その他色々な文脈で「生物の人間に数学をやらせるより数学の人間に生物を学ばせる方が余程早い」とかよく聞くので, 数学の人間に暴れさせるのがいいと適当に考えています. そういう方向の講演的な活動もやりはじめたので

@phasetr ソフトウェアだと, ものづくりやビジネス界隈の方々が「理論のためにやってるんじゃない」とか言いだすのでつらい. 理論計算機科学のひとたちが「理論という力を使え」みたいなこと言ってビジネス的に成功してたりもするので, ぜひとも前者を殴り殺して駆逐してほしいところです

@esotericaone 世界はどうか知りませんが, 日本のソフトウェアのものづくり・ビジネス界隈はどうせデスマーチで死ぬか他のことする余裕なくなるか, ゴミみたいなのしか作れずビジネス的に死ぬかなので放っておけば良くて, 撲殺する努力を彼らの教育と支援に充てるべきだと強弁しましょう

@phasetr このアカウントで詳細は書けませんが, 経営者にメリットを説いて理論寄りの方々 (コンパイラ作者など) の支援がある程度実現できているのが救いです. ソフトウェアはコピーが容易で人類からするとコスパが高い側面があり, 相対的に理論提供側の声が小さいだけかもしれません

コンパイラ作者とか格好いいのでどんどんやってほしい.

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数学, 計算機科学, プログラミング

単連結と連結について間抜けなことを呟いていたらいろいろ教えて頂いたので

本文

間抜けなことを呟いていたらいろいろ教えて頂いた.

幾何弱者過ぎて連結だが単連結でない例がすぐ思いつけなかった

@phasetr 単連結なら連結とか言える? すぐに分からないとか弱者過ぎて死にたい

@phasetr ちょっと何か勉強すると基礎部分がザルなことが即分かり涙を禁じ得ない

@phasetr 単連結の定義ご存じですか?

@eszett66 「基本群が自明」

@phasetr http://en.wikipedia.org/wiki/Simply_connected_space 曲面だと単連結と「連結でかつ種数 0」が同値だから, やはり一般で反例つくれるはずだ

@phasetr 基本群っていうのは基点を決めないといけないんですけど, あなたの定義では基点はどこに取ってるんですか? もしかして「各弧状連結成分の $\pi_1$ が自明」の間違いですか?

@eszett66 その辺を雑に考えて混乱していますね. ありがとうございます. 今読んでいる本, はじめから空間が連結であることを仮定していて, その上での定義をしていてその辺も見落としていました

@phasetr だと思いました. 「基本群が自明」というのはフレーズとしては覚えやすいんですが, そればっかりだと危ないですね.

鍵アカウントからの情報

慣れない分野ほど, 定義はきちんと一句一語のレベルで確認しなければいけないという教訓を得た. ちなみに, 鍵アカウントの方から次のような情報を頂いた.

単連結であって連結でない例として $S^2$ を二つ並べた集合がある.

通常の幾何学の分野では単連結の定義に連結を仮定するが, Lie 群界隈では $O (n)$ のような非連結な対象にも普遍被覆を考えるので, 単連結の定義から連結を外すことが多い. どちらの場合でも 1-連結と言えば連結かつ単連結を指す.

非常に助かる.

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数学, 幾何学, Lie 群, 位相空間論

無理数の空間は完備な距離付可能な空間である

現代数学観光ツアーと並行して, 通信講座として現代数学探険隊を展開している. そのために集合論や位相空間論を今の視野と力量でいろいろ調べ直していると「そんな数学的現象が起きているのか」ということがよくある.

そして表題の命題はその再勉強の中で知った話だ. 実際けっこう面倒な話だった. ゼルプスト殿下に教えてもらったので記録しておく.

もはや感覚的に「自明」と思っていることでもはじめからきちんと書いていくと命題の連鎖の中に置いてあることがあり, 「あの命題は証明していないからこれ証明できないな」とよく思う.

コンセプトとして先々を見通しながら講座を展開することを考えていて, そこまでに示したことしか使わない「本編」と, そこまでに議論していないことでもバンバン使ったり紹介したりする 「探険パート」がある.

探険パートはぶっ飛ばして書く前提なので別にいいのだが, 本編で時々これが起こる. 当然いくつかの本を参照しながら講座を作っていて, 「これはここでやらなくても大丈夫か」と思って飛ばしたのが 後で「これは盛り込みたい」と思った命題で使ったりする.

必要な命題は必要なところで追加すればいいし, そこまで気にしているわけでもないが, 「この命題の証明にこれ使うのか」と改めて認識して驚くことはある. 特に「これはちょっとマニアックだしあまり使わないだろう」と 思った命題を複数回使うことがあると自分の認識の甘さを痛感する.

集合や位相の再勉強を進めていると, 変な例を作るのに順序数がかなりよく動いてくれそうで, 改めて再勉強したいと思っている. 講座の流れではほとんど使わないので, 優先度は低くなっているとはいえ, 時間が取れたら変な反例探訪の旅に出たい.

つむじとベクトル場と特異点と

本文

いろいろ教えてもらったのでメモ.

毎度のことだが適当に投げておくといろいろ情報が入ってくる Twitter, 実に尊い.

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数学, 幾何学, ベクトル場

動画紹介: 千早誕生祭 [貧乳はステータスだ! 希少価値だ!] の数学的解釈について

はじめに

以前作った動画の感想を呟いて下さった方がいたので, アピールを兼ねてその反応を紹介したい. 動画名は「千早誕生祭 [貧乳はステータスだ! 希少価値だ!] の数学的解釈について」で, 動画は これこれこれ だ.

タイトルと内容の一部がアレなので大半の女性には極めて受けが悪いだろうが, アイドルマスターで作っている時点で視聴者を絞り込んでいるわけで, 男性に視聴者層を絞り込む代わりにたくさんの男性に見てもらおうと思い, この内容, タイトルで作った.

とりあえず感想とその後の極めてハートフルないくつかのやり取りをここにもまとめておこう.

Twitterでのやりとり

該当ツイートは次の通り.

ふとニコニコ動画で彼の動画を探してみようと思い立ち検索してみたら『微分ヤクザ』というタグがついていて怖い.

怖すぎる動画を見終えた. 貧乳教の私は美香さん複素多様体説に感動したが『実連続函数は整函数で一様に近似できる 1D T.Carleman 1927, d ≧ 2 A.Sakai 1982 』を 思い出して絶望している.

自分の昔の専攻がまさか貧乳教の悦びを砕くとは思ってもみなかった.

どんな巨乳も少し熱方程式の時間変化を加えれば貧乳と同じクラスに入れるのかと思うと落涙するばかりである.

実際にやりとりをした部分は以下の通り.

@phasetr 斬新さに腹抱えて大笑いはしたのは事実ですが, 嘲笑はしてません. 気を悪くさせた事を謝罪します. 申し訳ありません.

@yan_tyabouzu こちらこそすみません. 普段嘲笑という言葉を「暖かく見守る」くらいの意味で使っていて, 今回もそういう使い方です. むしろ喜んで頂けたようで何よりです. そういうリアクションをしてもらうためにあれを作ったので

@phasetr とても楽しく見させて貰いました. 何故これほどの函数論の理解をこの方法で表現したのかと考えたら笑いが止まらず, 昔の専攻が函数論だった事もありネタに勝手に乗りました. 調子に乗り過ぎたかとびくびくしてたところです. 寛大さに感謝します.

@yan_tyabouzu あと近似定理の話ですが, あくまで exact だからこそ尊いので精度の良い近似はあくまでまがいものというスタンスです. 動画でも言いましたが, 解析関数では触れられない広い世界を生きる連続関数にもそれ自体の深い意味があると思っていますので, そこは死守したい

@phasetr なるほど. 道理ですね. 私は『稠密な部分空間で十分』の堕落にはまっていたようです. 精進します.

どうでもいいのだが, 上記の「美香さん」は「千早」だろうか. それとも「美香さんの複素多様体説」だろうか. 何はともあれ, 春香さんと美希の共同研究なので, 春香と美希が交じった説がある.

動画の解説

まずは動画自体の解説をしておこう. 3 つ合わせて 50 分近くと結構長いので視聴時は十分注意されたい. 第 1 部では講演の常道として研究のモチベーションの話から入る. 数学的には微分の復習から入り関数論への接続で終わる. 第 2 部は 1 変数関数論ショートコースであり, 貧乳と複素多様体の類似について議論がなされる. ちなみに動画投稿直後, 第 1 部から第 2 部で視聴者が 9 割減っていた (今も大体そのくらいだが). タイトルホイホイの意味を知る冬だった. 第 3 部は今回の研究としてはおまけの部分で, 資金的に研究を支えた伊織への感謝を込めた内容になっている. 数学的には多変数関数論で, 岡潔の業績に深く関わる正則領域の議論の魔解釈について論じている.

ここで少し (分かる範囲で) コメント, やり取りについて補足をしておこう.

補足 1

怖すぎる動画を見終えた.

貧乳教の私は美香さん複素多様体説に感動したが『実連続函数は整函数で一様に近似できる 1D T.Carleman 1927, d ≧ 2 A.Sakai 1982 』を 思い出して絶望している.

自分の昔の専攻がまさか貧乳教の悦びを砕くとは思ってもみなかった.

どんな巨乳も少し熱方程式の時間変化を加えれば貧乳と同じクラスに入れるのかと思うと落涙するばかりである.

この定理は知らなかったのだが, ものすごく大きく言えば類似の定理として「任意の連続関数は多項式はいくらでも精度良く近似できる」という, Weierstrass の多項式近似定理というのがある. 証明はいくつかあるのだが, 例えば伊藤清三『ルベーグ積分入門』に熱核を使った証明が書いてある.

また, Stone-Weierstrass の定理という抽象版もある. 関数環, または作用素環の文脈での証明がある. 関数環的な証明は吉田耕作『 Functional Analysis 』に, 作用素環的な証明は Kadison-Ringrose の『 Fundamentals of the Theory of Operator Algebras 』に書いてある.

熱方程式の時間変化云々という記述があるので, 『ルベーグ積分入門』の熱核を使った証明のように, 適当に熱核と畳み込みを考えるとか何とかするのだろうと勝手に思っている. 詳細については yantyabouzu さんに問い合わされたい.

補足 2

@phasetr とても楽しく見させて貰いました. 何故これほどの函数論の理解をこの方法で表現したのかと考えたら笑いが止まらず, 昔の専攻が函数論だった事もありネタに勝手に乗りました. 調子に乗り過ぎたかとびくびくしてたところです. 寛大さに感謝します.

1 変数もいまだに解析接続や Riemann 面を理解できていないし, 特に多変数の方はほとんど勉強すらしていないので, 何か申し訳ない気分になった.

@yan_tyabouzu あと近似定理の話ですが, あくまで exact だからこそ尊いので精度の良い近似はあくまでまがいものというスタンスです. 動画でも言いましたが, 解析関数では触れられない広い世界を生きる連続関数にもそれ自体の深い意味があると思っていますので, そこは死守したい

@phasetr なるほど. 道理ですね. 私は『稠密な部分空間で十分』の堕落にはまっていたようです. 精進します.

この辺は言葉通りだ. 動画でも言っているが, 連続関数の世界, 可微分関数の世界, 解析関数の世界それぞれに味があり, 意味があるので全てに遠く思いを馳せたい.

補足 3

最後に私の (多変数) 関数論との関係を書いておこう. 1 変数については, 物理学科で嫌でもやるのでそれはそれ. 全くの別件だが近々これについて東大でのイジングゼミで復習的にやった内容を Amazon で DVD にして販売する予定だ. 今まで通りニコニコや YouTube での無料配布の方がいいのではないだろうかとは今でも思っているが, Amazon の流通に載せて広めること, リーチできる範囲を増やすことを第一の目的としている. またアイマスのようにマニア向けのものとしての内容はそれはそれでいいのだが, やはり一般に何かしたいと思うと著作権的なアレもある. そこをうまく回避すべく自録りの DVD にしよう的なアレもある. 超話が脱線したが, 1 変数については物理学科必修というところ. 多変数について, 一番最初はやはり岡先生の話を聞いたときだ. 学部 2 年の頃かと思うが, 志賀浩二『複素数 30 講』の記述だ. この中で多変数関数論についての岡潔の業績についての小話があって, そんな凄い人がいたのか, と感心した記憶がある. 結局ろくに勉強できていないのだが, 多変数関数論への興味はこの時に湧いた.

その後, 学部 4 年になって修士課程で何をどうするか考え, 色々勉強なり調査なりしていたときに第 2 の出会いが出てくる. 場の量子論か量子統計をやろうとは思っていたのだが, とりあえず基本だろうと思って, (今ではほぼ廃れている) 公理的場の量子論の勉強をしていた. これは主力兵器が関数解析と多変数関数論になる. 他にも色々あるのだが, Edge of the wedge theorem (楔の刃の定理) という多変数関数論の定理があり, これが基本的な道具なので, 勉強しないといけないな, ということで少し勉強してみようとした. 実際には Streater-Wightman の『 Pct, Spin and Statistics, and All That (Landmarks in Physics) 』でまとめて出てきたのだが.

別件だが楔の刃の定理など, 格好いい名前の定理はそれだけで勉強する意欲をそそることは強く主張しておきたい.

本についてのコメント

あと上記の本は死ぬ程難しかったので誰にもお勧めしない. 私を遥かに越えるレベルで数学ができるなら問題ないだろうが, そもそもこんなイレギュラーな本は数学の人は読まないだろうし, 物理の人だって, わざわざ PCT やスピン-統計定理の厳密な証明など読まないだろう. 基本的に物理の人間として数理物理を志してしまった異常者だけが読む本だ. 少なくとも昔の人はこの本で勉強していたようだし, この本が読みこなせるとか想像を絶する. 時々「本書を読む上で予備知識は必要ない. 最低限の数学力があればいい」とかいう記述があって, そんなわけあるか, という突っ込みまでセットで言われることがある. この本では関数解析の予備知識は確かにいるが, おそらくそれ以外の予備知識は本当に仮定されていない. 本当に気でも狂ったかのように数学力に満ち溢れた物理の人間が読んでいたのだろうし, 実際にそういう人間が私の分野での重鎮として今も君臨しているので戦慄する. 一昔前の構成的場の量子論や厳密統計力学の本はふざけているのかと思う程読むのがつらいのだが, 昔の人はアレを読みこなせたのだろうし, そうした観点からすると「最近は学生の力が落ちた」と言われるのもむべなるかな感ある. どれくらいつらいかを具体的にいうと, 例えば Reed-Simon の本で証明が半ページくらいで終わっている定理が, 新井先生の本では 4 ページくらい使っていることがある. 新井先生の本が丁寧すぎるという話もあるが, 何にしても Reed-Simon はつらい. 私の分野では論文で引用される標準的な本 (多分代数幾何での Hartshorne みたいな感じ) なので実につらい.

折角なので Twitter でこういう感じの物理の人を挙げておくと, 大栗さんや村山さんがおそらくそういう感じ. 確か桂先生だったと思うが「大栗さんも村山さんも数学むちゃくちゃできる」と言っていた. 一流の数学者にこう言わせるとかリアルに戦慄する.

公理的場の量子論

話を元に戻そう. 公理的場の量子論で edge of the wedge がある, というところだったが, 面倒なので適当に済ますけれども, これは解析関数の解析接続に関する定理だ. 詳細は Wikipedia 先生にぶん投げておくが, 見てもらうと分かるように物理の人間が発見し証明した定理だ. 公理的場の量子論に限らないが, 物理的に意味がある特殊な状況に特化した定理というのが時々でてくる. Streater-Wightman の本などを参照してほしいが, 公理的場の量子論だと他には JLD domain の話などもある. ちなみにこの定理は量子統計でも出てくる. ハミルトニアンの摂動に対する安定性の議論をするところで使ったりする. 簡単にいうと, 物理的に言って (有限温度, 特に高温では) 少しゴミが入ったくらいで平衡状態が大きく変わることはないだろうと思える. 数学としては, ゴミを本来のハミルトニアンに対する (小さな) 摂動だと思って, その摂動論がうまいこと作れるかという話になる. ここでガチャガチャやっていると楔の刃の定理が出てくる. 折角なのでこれも言っておくと, ここでの議論での基本的な道具は何よりもまず冨田-竹崎理論だ. 「竹崎」は当然, 先日「数学まなびはじめ」の書評で言及した竹崎先生.

歴史的なところはあまり知らないのだが, 少なくとも関連する議論の中で RIMS にいた荒木先生の功績も大きいと聞いている. 荒木先生は直接話をしたことが 1-2 度はあるが, 竹崎先生ほど面白い話は紹介できない. 荒木先生がよくいうらしいジョークとして「物理学者は証明がたくさんないと理論 (?) を信頼しないが, 数学者はもちろん証明 1 つで十分」というものがある. 分かる人には分かるジョークなので良い子は身近な数学者か物理学者に聞いてみよう.

その他ネタ

あとこんな話も聞いたことがある. 学者はその専攻した学問と結婚しているので, 伴侶はその辺覚悟しておかないと色々とアレ, という話がある. 荒木先生の奥様が正にそうなようで, 旦那が研究ばかりしているのでその穴埋め的なアレで, 作用素環の若手で結婚していない人を見つけるとお見合いを持ちかけにいくと聞いた. これはどこまで本当なのかは確認していないため良く分からないので, 取り扱いには注意されたい.

あと楔の刃の定理は代数解析でも理解できるらしい. まだそこまで勉強できていないのだが, ほぼ自明なレベルでクリアな理解ができると聞いた. 例えば森本光生『佐藤超関数入門』の最終章で 1 節割かれている.

代数解析に興味を持った理由の 1 つでもある.

深谷先生の集中講義での一節: 上空移行の原理

もう楔の刃の定理の話はいいか, という気分になったので別の話をしたい. 全然別の話だが, 多変数関数論の話として, 深谷先生の集中講義がある. 深谷先生が近くの大学で集中講義をするというので, 専門が全く違うにも関わらず聞きにいったことがある. 分かったのは整係数のホモロジーが出てきた, とかそのくらいのどうしようもないアレだが, 講義中「これは上空移行の原理で示せます」という発言があった. 上空移行の原理は岡潔が発見した原理だ. 本が家にあるのだから調べればいいのだが, 面倒なのでさぼって記憶で書くと, 上空移行の原理は正則性を調べるべき問題を次元を上げることで連続性の問題に帰着させる手法だったと思う. 正則な世界でやった方が縛りがきつくなるので逆に考えやすくなることもあるので, (勉強していないだけだが) どういうことなのかいまだに分からないが, とにかく名前が異常なくらい格好いいので見たその瞬間に (名前を) 覚えた定理だ.

何の話かもはや分からなくなってきているが, 疲れたので今回はここで終わろう.

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数学, 物理, 多変数関数論, 代数解析, 超関数論, 場の量子論, 統計力学

「0 は自然数か?」というのも意外な魔界であること, 「1 $\neq$ 1.0」という魔界もあることを知る市民

本文

深い悲しみに包まれている.

そしてこの辺.

あまり意識していなかったが, 人によって意味が大きく変わる「自然」という言葉, 実は非常に使いどころ難しいのだということを認識した.

そしてこれ.

面白いので上記ツイートも引用しておこう.

Temmusu Nagoya さんから頂いた指摘も面白かったので引用.

「鉛筆が 0 本」はおかしい, だから 0 は自然数ではないという説明が間違っていることには同意です. これは国語レベルで論外な駄洒落に過ぎません. 交番でよく見る掲示に, 昨日管内で起きた交通事故は 0 件, というのがあります. この意図が理解できない人はさすがにいないでしょう.

これは意識したことがなかった. 今後ぜひ使わせてもらいたい.

いろいろな人からコメントをもらえて楽しかった (完).

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数学, 算数, 数学教育

摂動論の数理物理: 小まとめ

はじめに

以前からたびたび話題にしている原・田崎の『相転移と臨界現象の数理』だが, 「摂動」という言葉の使い方に関してコメントした内容について田崎さんからコメントが返ってきた. その時に返信した内容について折角だから共有しておこう. 具体的には「摂動という言葉は数学と物理で微妙に使い方が違うことがある」という話だ.

私の業界 (数学的には作用素論) だと「必ずしも小さくない摂動」が出てくる. 新井先生の『量子現象の数理』 2.4 節が正に「必ずしも小さくない摂動」と言うタイトルで, こうした所を指して言っている.

詳しくは本を見てほしいが, 例えば多項式はラプラシアンに対して相対的に有界ではない. そしてこのとき, パラメータが小さくなくとも扱える範囲がある. 作用素 $T$ に対して摂動した演算子が $T_{\lambda}$ だとして, 「$T$ がよく分かっている場合に $T_{\lambda}$ を $T$ との関連を見ながら考える」 位の意味で使うことがある.

これは著しく狭い業界での語法だろうという自覚はあるが, 上でも書いたように, 初等的な量子力学の話題, 特に調和振動子が「小さくない摂動」の範囲に入るため, 念の為指摘しておいた.

ちなみに摂動に関する諸々は私の研究テーマでもある. 色々あるのだが, いくつか簡単に挙げておこう.

スペクトル解析

物理では作用素 (演算子) のスペクトル (固有値) と観測量が対応しているので, スペクトルを調べることは基本的な意味を持つ. このスペクトルが摂動でかなり非自明で不可解な振舞いをするのが非常に気持ち悪い. よく「摂動級数が収束するか」とかどうでもいいことを気にする人がいるが, そんな程度の話ではない.

学部 3 年の量子力学の演習で 4 次の非調和項を入れた非調和振動子に関する摂動の問題が出たのだが, そのとき演習を担当していた助手さんが「この例は固有値が厳密に分かるるからそれと比較してみよう. 一次までの摂動を計算してみるとこの厳密解とぴったりあう. 厳密に求めるのは大変だが摂動で簡単に値が出るのが嬉しい」とか言っていて衝撃を受けたことを覚えている. 1 次の摂動で合ってしまうということはそれ以降の計算ではただただずれていくということだ. (摂動が収束するとすれば) 高次項は minor correction のはずであって, つまり元の厳密な値へは絶対に復帰しない. 厳密解が分かっているから 1 次で止めればいいと分かっているが, 一般にはそれができないから摂動計算するのであって, 何をどうしたいのだ, と.

他にもある. 摂動前後で固有値はともかく, その固有関数まで適当な意味で近いと思ってやっているのだが, これが (物理として) 真っ当か, という問題だ. 例えば, Laplacian からみて調和振動子と水素原子の系は (結合定数が小さければ) それぞれ近いと思っているが, そうかといって Laplacian の基底状態 ($L^2$ にはないが) と, 調和振動子および水素原子の解 (固有関数) が近いと思えるだろうか. 水素原子は Coulomb ポテンシャルの原点での特異性を反映して解にも特異性が出る. これは電荷の存在を表す物理的に大事な特異性だから意味があるが, 調和振動子や自由粒子にはもちろんない. これは近いと言っていいものか.

平衡状態と基底状態

物理でどう思っているのかはよく分からないが, 平衡状態と基底状態で摂動論の趣が大分違うことは, 少なくとも作用素環を使う数理物理業界ではよく知られている. 物理的な気分が大体そのまま反映されていると思っていい. 要はこういう感じ. - 平衡状態にゴミを少し入れたくらいでそんなに大きく性質は変わらないだろう. - 基底状態にゴミを少し入れると準粒子の雲がまとわりついて赤外発散を起こして, こう色々な面倒が起きる. この辺をきちんと追求しようというのは私の研究テーマの 1 つでもある.

半導体の場合少しでもゴミが入ると問題だという話もあるが, これは, ナノデバイスにしたときに大きく見れば少しのゴミでもナノデバイスレベルでは巨大なゴミになりうる, という話でもあって少し話が面倒だという理解をしている. ただ少し他の物質をドープする (少しのゴミと思える?) ことはあって, そこをどう読むかというのはある. 半導体は学部 3 年でデバイスまわりでの基礎を少しやったきりほとんど勉強していないのでこれ以上踏み込んだことは言えないが.

「摂動」もそんなに単純な話ではないということで.

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数学, 物理, 数理物理, 物性論, 半導体, 平衡状態, 基底状態, スペクトル解析, 作用素論, 作用素環, 摂動論

岩澤先生の業績紹介を読んで

本文

理学博士岩澤健吉君の「群論及び整数論における研究」に対する受賞審査要旨という PDF を Twitter で見かけたので読んでみた. 学士院の文章で大分古い文章だが, 面白いので読書メモとして残しておきたい.

岩澤先生とは

数学では知らない者はいないと思うが, 岩澤先生は数論の大家だ. 群論の方では岩澤分解がとても有名で, どんなものか具体的には知らないが名前だけは私でも知っている. Hilbert の第 5 問題の解決への大きな貢献がある.

初期の業績

少なくとも数論での初期の業績は位相群を上手く使った仕事らしい. Haar 測度や Fourier 解析など解析学も上手に使っているようで, かなりパンチの効いた研究をしている. 詳細は忘れたが, 高木貞治の類体論といい, 岩澤先生のこの辺の話といい, この二人は数論に 上手く解析学を絡めて議論する卓越した技術を持っていて凄い, という話をどこかで見かけた. それがこの話なのだと思う.

岩澤・高木貞治雑感

関係ないが, 高木貞治は呼び捨てにできるが, 岩澤先生が呼び捨てにできないというこの感覚, 非常に面白い. 一般に偉い人は呼び捨てにできるもので, 岩澤先生も十分に偉いのだが, 存命時の岩澤先生を知る人達がまだまだたくさんいて, その人達が先生づけしているので それが移っているのではあるけれども.

数論上の業績

円分体や岩澤主予想, 岩澤の $\mathbb{Z}_p$ 拡大など, 私は名前しか知らないが, 数論上の業績がたくさんあるのが岩澤先生である. 数学の楽しみか何かで岩澤先生の追悼記念号があった気がしたので, 今度それも読んでみたい.

あと代数函数論を買ったきりまともに読んでいなくて積読状態になっているからこれも消化したい.

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数学,数論

YouTube 動画: Prof. Jean Dieudonné: "The Historical Development of Algebraic Geometry"

YouTube に次の動画が置いてあることを鍵アカウントの方のツイートで知った.

  • Prof. Jean Dieudonné: "The Historical Development of Algebraic Geometry"
  • UW-Milwaukee Department of Mathematical Sciences

チャンネル登録もしておいた.

数学会の『数学通信』の書評をまとめたページがある

本文

数学会が出している『数学通信』という冊子があり, 学生時代は良く読んでいた. 今でも読みたいと思っているのだが, こう色々とアレで遠ざかっている. ただ, 書評の他いくつかは web 上で PDF で公開されているので, 自分用のメモも含めて記録しておきたい. これだ.

最近また数学をさぼっていてアレなので何とかしたい.

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数学

「分かってしまえば当たり前」のギャップを埋める努力は大事だった: 嘉田さん (kadamasaru) の「証明を理解するための考え方」というよい文章が回ってきたので

その1

嘉田さんのよい文章が回ってきたので.

http://www.mi.s.osakafu-u.ac.jp/~kada/susemi0905/index.html きょう高校生に双対空間教えたときに どうも証明が通じない気がしたが, こういうことだったのだろうか. さすが kada 先生.

リンク先も引用しよう.

証明を理解するための考え方

嘉田 勝 数学セミナー (日本評論社) 2009 年 5 月号 数学セミナー (日本評論社) 2009 年 5 月号の特集「大学で身につけたい数学リテラシー」の記事のひとつとして, 「証明を理解するための考え方」という題目で記事を掲載していただきました (20-23 ページ). 記事原稿の PDF ファイルを掲載します (数学セミナー編集部許可済み). ご高覧いただければ幸いです.

証明を理解するための考え方 (嘉田 勝) (数学セミナー 2009 年 5 月号掲載記事)

これはよい文章なので, 特に新入生の方々はぜひ読んでほしい. 私も学部 1 年のとき, $\varepsilon$ - $\delta$ の証明で 何か $1/2$ のような定数が出てきたときに「これはどこから出てきたの? 」と思った記憶がある. 今となっては当たり前だが, やはり一度はどこかで説明した方がいいとは思う.

「当たり前」のギャップを埋めるのは大変だが, だからこそやることに意義がある.

その2: 数理論理学の講義ノート情報

嘉田さんの講義ノート情報が回ってきたので.

嘉田さんの数理論理学講義ノート http://researchmap.jp/mu3y30bsf-1782995/ 適当に本買うくらいならこっち読んだ方が良い気もする

読む時間がいつ取れるだろうか.

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数学, 数学教育, 数理論理学

物理の一般と数学の一般と, その狭間の数理物理と

はじめに

あまり見かけない話だが, 私にとっては大事なことなのでここに記録しておきたい. 一言でいうと, 物理として一般的な数学的設定は数学としては具体的または特殊な設定で, そこから出てくる変な数学的問題を適当な意味でどうにかするのが数理物理, とかいう感じの話をしたい. ここでは超弦理論と幾何みたいな方向の話は一旦おさえたい. あまりよく知らないから, という理由もある.

物理の一般

まず具体的にいうと, 物理として一般的な数学的設定というのはこういう感じ: 量子力学を考えよう. 電子と原子 (原子核) からなる系を考えると次のような Hamiltonian からなる系を考えることになる. 一応現実的に, 3 次元にしておこう.

\begin{align} H = -\sum_{i=1}^{N_{\mathrm{e}}} \triangle_i - \sum_{i < j} \frac{e^2} {\left| x_i - x_j \right|} -\sum_{i,j} \frac{e e_j} {\left| x_i - R_j \right|} -\sum_{i,j} \frac{e_i e_j} {\left| R_i - R_j \right|}. \end{align} ここで $x$ が電子で $R$ が原子核の方を表している. $e$ が素電荷で, $e_i$ が原子核の電荷だ. 細かい話は別にどうでもいいのだが.

ここで問題にしたいのは, 上の設定は物理としてはかなり一般的な設定ということだ. (もう少し一般にしたければ量子電磁場を入れるとかいう方向もあるし, それが最近の数理物理での話で, しかも Summer School 数理物理 2013 での特に廣島先生の話と関係が深いところだが, それは置いておく.) そして数学としては特殊な (具体的な) 作用素の作用素解析に対応する.

数学としては具体例

数学としては単なる具体例をやっているだけと言えるのだが, この例が数学的にかなり鬱陶しいことが問題だ. まず Coulomb ポテンシャルだが「原点まわり」での発散がある. 無限遠でも積分が発散する: $\int_{\mathbb{R}^3} \left| x \right|^{-1} dx$ を極座標で書くと分かる. 関数自体は簡単だがかなり鬱陶しい挙動をする. そのために起こる面倒くささの処理に面白さを感じて積極的にやっていくというのがとりあえず数理物理だ. 物理的なモチベーションや物理的な興味がない限り, そもそも面白さを感じることが難しく, 真っ当な数学の人がなかなかやろうとしないラインで数学をすること, と言ってもいいかもしれない.

ちなみに, こうした性質を持つという範囲でポテンシャルを一般化するという方向の研究はないでもない. 特に自己共役性に関する部分ではそれにも意味がある. だが, 私の趣味に関する部分でいうなら, あくまで Coulomb ポテンシャルに限定して議論することに意味がある. この関数に特化してぎりぎりまでシャープな結果を出すことが物理として大事だからだ. 物理として意味があるなら, 数学としては特殊で構わない. 大事なことは最後に物理としてシャープな結果を出すことにある.

物質の安定性

ここで物質の安定性を考えてみたい. 物質の安定性というのは量子力学の起源としてとても大事な話だ. 量子力学の起源にもいくつかあるが, ここでは電磁気学的なところを出そう. 加速運動をする荷電粒子は電磁波を出すという議論がある. 電子は原子核のまわりを円運動するという素朴な描像があるが, 等速円運動と思っても, 円運動である限り加速度がある. つまり電磁波を出すのだが, 電磁波を出すとその分荷電粒子のエネルギーが減る. エネルギーが減ると速度が減り, 軌道半径も小さくなる. 軌道半径が小さくなると電子が原子核に落ち込んでしまい, 原子が不安定になる, という話だ. これをおさえるために量子力学が登場した, という側面がある.

普通の理論物理の文献ではあまり出てこないようだが, これを基準に考えると, 量子多体系が安定に存在することも自明ではなくなる. ここにメスを入れようというのが物質の安定性の問題だ. 実際, ここを真面目にやっているのは Lieb を筆頭とする数理物理の人々しかいないらしい. 「物理的」な議論も, 数理物理的な証明ができたあとにその物理として大事な部分を抽出した形で出てくると聞いている. あまり数学を知らない人向けに一応言っておくと, 数学をしているときちんと穴のない議論をするために, 「技術的に面倒なこと」をする必要が出てくる. 何かごちゃごちゃと収束やら極限の順序交換ができるか, とかの話をしなければいけないとでも思っておいてくれればいい. その辺を抜いて「物理的な議論」を作る, という話なので, この分野は完全に数学というか数理物理先行の話題といえる.

話が飛んでしまったので, 物理としてシャープな結果と数学としての特殊性という話に戻そう. 何がいいたいかというと, ここでは電子がフェルミオンであるという性質を使わないといけないということだ. 詳しくは Lieb-Seiringer の本を読んでもらいたいが, 基底エネルギーが粒子数に比例する形で下からおさえられないといけない.

ここで系がボソンだけだと基底エネルギーが粒子数の 7/5 乗に比例してしまうことが分かっている. つまりボソンだけの系は不安定なのだ. 系がフェルミオンだけなら問題ないか, もしくはもっと強くフェルミオンを含めば問題ないか (系に電子があるか), というのは非自明な問題だが, 現実的な設定としては後者の設定下で証明をつける必要がある. そしてそれは実際できている. このときに系にフェルミオンがいるという設定は, Hilbert 空間にすると次のようになる. 現実に合わせて多成分系を考えると $L^2 (\mathbb{R}^{d_1}, \mathbb{R}^{d_2}, \cdots)$ という空間で考える必要がある. フェルミオンが電子だけで $\mathbb{R}^d_1$ 部分に対応しているとすると, ここの成分だけ座標について反可換, 他の座標については各粒子系の成分ごとに可換, という変な空間で作業する必要があるということだ. $L^2$ を使う分野はたくさんあるが, 少なくとも私が知る限りでの微分方程式論でこういう空間を扱っているのは見たことがない. 幾何では微分形式に合わせて反可換な関数を扱うというのは考えられるし, 一般のテンソル上で議論するときに形式的には現れるが, どこまで本格的に扱っているのかは知らないので分からない. ただ物理的な設定をそのまま素直にやろうと思うと, $\mathbb{R}^d$ 上での微分方程式論ではほぼ触らない空間上での議論が必要になる. そしてそういう空間上での議論が物理として本質的になるというのもまた大事.

数理物理

究極的にはやはり物理にも数学にもインパクトを与えられるようなことをしてみたい, というのはあるが, 今のところ私が関わっている部分の構成的場の量子論, 厳密統計力学は物理としては時代遅れ, 数学としては特殊で面白いかのかどうかよく分からず, 「数理物理として面白い」という話しかない印象がある. 物理でもなく数学でもない数理物理という分野があるのだ, と思えば, むしろここにこそ存在意義を見出すべきで, 最近は特にそう思っている. 市民であってプロの研究者ではないから, 物理も数学も最先端にはついていきづらいという状況下で, それでも自分が最先端にいられるところというと結局そういうあまり人がいないところでふんばるしかないというところもある.

ここで何であろうとも最先端にいなければならない, というのは大事にしたい. ニコマスなり何なりでいわゆる「プロデュース業」をしようと思っているわけだが, そこでのモチベーションの大きな部分は「子供の頃の自分が見たかった世界を見せる」ということだ. これは「天才達が見ている世界, 世界トップの人が見ている世界」といってもいい. どれだけマニアックであろうとも, 世界トップであることは (子供の頃の私にとって) 決定的に大事なので, そこは愚直に守りたい. これが一般的な感覚ではない (らしい) ことは承知しているが, 大学で自分と同じような趣味をしている人間に出会い, またニコニコで数百名であろうとも確実にそういう層が存在することも理解した. だからその層に向けて何かするのだ.

あとついでにいうと, 数学ができる人間が世界で一番格好いいと思っていて, また人並に格好よくなりたいという希望もあるので, そこの欲求を満たしたいというのもある. 世間と格好いいと思うことが決定的にずれているだけで, 気分の上では格好つけたいというのはほとんど変わらないと思っている. さらにこの間 Twitter でも言ったが, 女性一般はまあどうでもいいのだが, 数学ができる女性にはもてたいとは思うが, そもそも数学できる以前にしようと思う女性自体がいなくて困るので, そこを増やすべくプロデュース業に勤しまねば的なアレもある.

いつも通りよく分からない文章になった.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 統計力学, 物質の安定性

実数の実在とか何とかに見る悲しみ

本文

darkjojonjon さんのツイートが面白かったので.

一昨日くらいの茂木健一郎の「無理数の実在性を大学受験の面接で議論すべき」というツイート, 前後のツイートから考えると「一辺 1 の正方形の対角線の長さは $\sqrt{2}$ だから無理数は存在する」 みたいな議論を想定しているっぽい.

でも現代の数学では長さの定義に平方根の関数使ってるから, 長さって言っている時点で「非負実数の平方根が実数に存在すること」はあらかじめ証明しておかないといけないこと.

「$x^2 = 2$」となる実数 $x$ の存在は, 実数体の公理を満たす順序体の存在を認めても公理から自明に出てくることではないし, 中間値の定理の応用として扱うような話.

だから茂木健一郎の主張は数学科の人が見ると「やばい」ってなると思うんだけど, 他の分野の人が見るとそうでもないのかもしれない.

例えば, 「線分の長さ」というものが無定義語として受け入れられて, 「これこれの性質を満たす何か」と認識している人にとっては, 「一辺の長さが 1 の正方形の対角線の長さは $\sqrt{2}$ だから $\sqrt{2}$ は存在する」 という議論は論理的に意味が通るかもしれない.

これについてあとでメルマガ書こう. あと, これに関係するやりとり.

一昨日くらいの茂木健一郎の「無理数の実在性を大学受験の面接で議論すべき」というツイート, 前後のツイートから考えると「一辺 1 の正方形の対角線の長さは√ 2 だから無理数は存在する」みたいな議論を想定しているっぽい.

@darkjojonjon 自分はよく分かりませんが, そこで言う実在性って, 数学で言う存在と違う意味だと思います.

@darkjojonjon 実際に tweet は見ていないので, よくわかりませんけども…

@Kuro_topo そうかもしれないんですが, そうなると「数の実在性」という問題は数学の人からはどうしようもない問題ですね. というか, そうなると哲学的な問題になってくるように感じます.

@darkjojonjon そうですね. そう思います.

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数学, 実数, 無理数

RIMS の岡本久先生による『流体力学と数学』

はじめに

RIMS の岡本久先生による『流体力学と数学』という文章を読んだ. 岡本先生自身にもお会いしたことはなく色々な意味であまり詳しくはないが, 専門は非圧縮性流体とのこと.

引用とコメント

連続体であるという仮定のもとに, 温度, 質量密度, 圧力, 速度, といったマクロな量が定義可能になる. そして, それらを支配する微分方程式が導かれる. こうした事実に最初に気づいたのはオイラーであろう. ニュートンは流体力学を粒子の力学に還元できると信じきっており, 連続体を使うことはなかった. かれのプリンキピアの Book II には流体現象の様々な理論が展開されているが, ほとんどすべてが間違いである. 「流体の運動を極微の粒子の運動に厳密な意味で帰着させるということは諦めて, 連続体であるという近似から出発する」と, いわゆる流体力学になる. 言い換えれば, 本稿では「粒子の力学原理主義」は放棄するのである. ニュートンが考えたように, 基本粒子に関する最小限の仮定のみから出発してすべての流れ現象を演繹する, というプログラムは数学者には魅力的であろうし, 未完であるわけだから数学者にはひとつの重要な挑戦である. 筆者はこれを重々承知しているけれども, 流体力学の具体的な問題を解くためには, これはあまり生産的ではないので, 本稿では関知しない. 逆に言えば, 連続体の仮定はそれだけで十分に実り多いものであり, 未解決問題は多いのである.

ニュートンが連続体関連のことを議論していたというのはそうだろうが, プリンキピアで議論してしかもほぼ全て間違いというのは知らなかった. また, 後半部の「基本粒子に関する最小限の仮定のみから出発してすべての流れ現象を演繹する」は, 今でいうなら東大数理の舟木先生あたりがやっている流体力学極限のあたりだろうと思う.

さて, ナヴィエの理論はどのようなものであるのか? ナヴィエはニュートンやラプラスと同じく, 最小単位の粒子を多数 (しかし離散的に) 考える. そしてその相互作用を適当に仮定してナヴィエ-ストークス方程式を導く. 分子動力学原理主義者にはたまらない論文であろうが, 読んでみても何も納得できないというのが筆者の感想である. 実際, 彼の論法だと, 液体も固体も区別が付きそうにない. 固体の弾性体に対するナヴィエの理論は問題なかろうが, 全く同じ論法で流れの基礎方程式を出したとしても, 結果が正しいだけであって, そのプロセスは正当化できない.

  1. ストークス

ナヴィエの論文を読んだ後でストークスを読むと爽やかな気分になるのは筆者だけではあるまい. ストークスは何を仮定し, 何を導くべきかがわかっている. ナヴィエと違って, 連続体を使うことに何のためらいもないから, 論旨は極めて明快である. こうして, 非圧縮粘性流体の基礎方程式が由緒あるものとして定まったのが 1849 年である. というふうに考えるのは現代人である. 実際にはナヴィエ-ストークス方程式がどの程度正確に物理現象を再現できるのか, 疑問に思う人は多かった. ラムの流体力学の教科書である Hydrodynamics はこの道の定番ということになっているが, この教科書の初版 (1879 年) では, ナヴィエ-ストークス方程式に全幅の信頼を置いているようには見えない. 実験と比較できるようなデータがまだ出ていなかったのであろう. 流れの安定性に関するレイノルズの有名な実験の報告が公表されたのは 1883 年である.

このへんの経緯, 知らなかった.

ストークスは物理学者であるとみなされており, それはそれで間違いではないのだが, 数学的な才能もふんだんに持っていた (文献 [9]). 名だたる数学者に先駆けて関数列の一様収束の概念にほぼ到達していたのは有名な話であるし, 水面波に 120 度の角がおき得ることを示した論文など, 実にエレガントである.

Stokes, ベクトル解析というか多様体論の Stokes の定理の Stokes だろうか. そんなことまでやっていたのか感ある.

最後, 物理と数学の交錯するところに関する記述もある. あまり引用し過ぎると今度は全文引用という酷いことになるのでやめておくが, 興味がある向きは是非読んでみてほしい.

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数学, 物理, 数理物理, 流体力学, 偏微分方程式

Lebesgue 積分がよくわからなくて困った話を思い出した

はじめに

どのツイートか忘れたが, Twitter で誰かが Lebesgue 積分の話をしていた. 学部 3 年くらいで独学で勉強したのだが (物理学科にも関わらず Lebesgue 積分の講義があったが, 結局身につけるためには自分できちんとフォローしなおさないといけない), そのときに困っていたことを思い出した. こんなところで困った人がいる, というのを記しておくのも意味があることだろうと思うので, 我が身の恥をさらしておきたい.

なぜルベーグ積分をやろうと思ったか

ちなみに何故 Lebesgue 積分をやろうと思ったかというと, 量子力学の数学をきちんとやろうと思って, 量子力学の数学的構造を読んだら Lebesgue 積分をきちんと勉強した方がよさそうな印象を受けたからだ. はっきりと言っておきたいが, Hilbert 空間論を学んだところで量子力学が分かるようになるということはない. 理論面をクリアに理解する上では確かに大事なのだが, それなら線型代数を勉強すれば十分だ.

はじめに読んだ本: Kolmogorov-Fomin

Lebesgue 積分というか関数解析全体として, はじめは Kolmogorov-Fomin を読んでいた. 安かったし, 洋書を読んでみたいというのがあったからだ. 詳しいことは覚えていないし, 他にも吉田耕作の Functional Analysis を読んで挫折したり色々な経緯を辿りながら, 結局一番きちんと読んだのは伊藤清三の本だった.

伊藤清三本の記憶

今になって思うとかなり間抜けな感じもあるが, この本を読んでいて, Lebesgue 測度以外での議論がどうなるのかよく分からなかった. 測度を取り替えたときどの議論がどう変わるのか, 本のメインの部分はきちんと使えるのかというのが分からなかった. こう書いてしまうと当時の自分の疑問をきちんと表現できていないので, 色々アレだが, 色々な測度に変えたときにどうなるのかという部分で色々ともにょっていたのは間違いない. そこで色々な測度を持ち出して議論するということなので丁度いいかと思って, 確率の本を読んでみた.

Williams

読んでいた本はこれだ.

(確率の本として) いい本なのかどうかは今でもよく分からないが, かなりすっきりした本であることは間違いない. 確率への応用が主眼なので, 位相と測度みたいな話はほとんどない. 単調収束定理に主眼を置いた積分論の構成・展開はなかなかいい. 正直なところ, この本を読んでみても結局のところ当時は疑問が解消されなかった. 実際に使いつつ慣れていくことで, いつの間にか疑問は解消されていた, という感じ. 解消された疑問について分からなかった当時のことを思い出すのはなかなか難しい. そもそも疑問自体を曖昧で感覚的なレベルに留めていて, はっきりとさせていなかったことが拍車をかける. 何がいいたいのかよく分からなくなってくるが, 要は分からなくてもずっとやっていると自然と疑問が解消されることがあるので, 「この辺が何かよく分からない」というレベルでもいいから, 分からないことがあるということだけきちんと意識して先に進んでしまうことも大事, というようなことがいいたい.

伊藤清三の本はよい

最後だが, 伊藤清三の本はとてもよい. Amazon の書評では古臭いとか書かれているが, その部分がよいのだ. 昭和の古い教官が「まあそんなあくせくせずに, お茶でも飲みながらのんびりやってみたらどうですか. ところで Lebesgue 積分にはこんな素敵な話があるのですよ. 焦って急ぐことはない. ゆったりやろうじゃありませんか」みたいな感じがある.

また議論自体は非常に丁寧で, これで Lebesgue 積分が分からないなら多分何を読んでも駄目なのではないか感ある. 問題はある意味でその丁寧さで, 上に書いたのんびり部分だ. そのせいで本題の Lebesgue 積分の定義に辿り着くまでが長い. ただ, 川又先生の代数多様体論も, 代数多様体の定義に辿り着くまでに 60 ページくらいかかっていた覚えがあるので, ある程度になると定義するだけでも大変になるのも仕方がないのだが.

伊藤清三本のよいところ

ただ, 測度と位相の絡みなど, 古典的な数学の綺麗なよくできた部分が書かれているのが, 正に Lebesgue 積分の定義までが長くなる原因で, そして私が思うよいところになる. 私としてはこの辺の話が好きなので, のんびりやってほしいと思うのだが, 昨今の風潮を見ると数学でまで効率を求める雰囲気があるようだ. 確かに無駄に非効率な勉強をさせるのは最悪でそれは断固として反対したいが, ここでの「非効率」はむしろそれが美点となるのだ. 逆に最近の本だとあまり触れられていない印象があるので, 余計にそう思う. 数学科の学生くらいはもっとのんびり数学やってほしい.

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数学, 数理物理, Lebesgue 積分, 書評

本当に悪いのは時空に魂を引かれた人間達だ

本文

ステパノ大王が次のようなことを言っていた.

僕はそうでもなかったのですが, 大学で遊んでやる, と高校で言っている人がいたのですが, 何だったんでしょうか. 今遊べよ, と僕は思ってました.

それに対して悪質 RT するのが面倒だったので適当にエアリプで次にように応答した.

大学に入ってからは (理論) 物理および数学で時空に束縛されずに遊べるようになったので「遊びに行く」とかいう感覚, 本当に分からない. 私はいつでもどこでも遊べる

@phasetr 加藤先生など秩父の山奥までハイキングしながらのゼミという悪魔のような方法で斎藤秀司先生を鍛えたという. こういうのを遊びに行くというのなら納得もしよう

時空ごときに束縛されるの, 嫌ではないのだろうかと素朴に疑問. . 実験屋さん, 最終的に装置で遊ぶのだと思っているが, 各種装置を準備するのに結構お金かかるはずなので大変だろうな, といつも思っている. 理論物理は理論物理で最終的には実験というか現実との整合性ないと駄目で, そこでモノがいるし, 人文・社会学も人間とか社会とか適宜実物を見ないと駄目で面倒だし, やはり数学だな, といういつもの結論に逹した.

社会は実在か, といった議論は一旦封殺する.

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数学, 物理

『無限量子系の物理と数理』に続き, 小嶋先生が新たに『量子場とミクロ・マクロ双対性』なる本を出すらしい

本文

このツイートによると小嶋先生がまた新しい本を出すらしい.

小嶋泉氏の『無限量子系の物理と数理』読むなら, 年内に丸善から出版予定の同著者の本命『量子場とミクロ・マクロ双対性』も要チェック. サイエンス社のサポートページ参考文献 108 http://www.saiensu.co.jp/?page=support_details&sup_id=348

今年は Summer School 数理物理のテーマが (構成的場の理論を中心に) 量子場の数理だし, 小嶋先生の本が 2 冊出るしと, 場の理論づいている. このタイミングに乗じて, ブログの方でもこの分野を宣伝していこう.

ラベル

数学, 物理, 数理物理, 場の量子論

論文紹介: Buchholz-Grundling の Quantum Systems and Resolvent Algebras

はじめに

Buchholz-Grundling による survey, Quantum Systems and Resolvent Algebras が arXiv に出ていた. これだ. 以前から resolvent algebra の論文は出ていたが, それに関するまとめらしい. Resolvent algebra を使うと何となく計算がうまくいきそうな感がするので, 使ってみたいと思っている. また Araki-Woods algebra の代わりに resolvent algebra を使った場合の自由場の BEC を調べることで親しんでみようとか思っているのだが, 滞りまくっている.

Resolvent algebra というのは大雑把にいえば非有界作用素のレゾルベントを取ることで有界作用素にし, その有界作用素から作用素環を作るという話. Araki-Woods algebra は非有界 (自己共役) 作用素 $A$ からスペクトル理論を使って $e^{iA}$ (有界作用素) を作り, これから作用素環を作るという話. レゾルベントの方が色々振舞いがいいのに何故かほとんど研究されてこなかったが, 何か色々な性質がよくて嬉しいから皆もやろう, ということで論文になっている.

アブストを見るとすぐ出てくるが, 量子系の運動学的な構造をモデル化するのによいらしい. この辺まだあまりよく分かっていない.

Introduction

Introduction では Segal の場の作用紡の話からはじまる.

作用素 $\phi (f)$ から作る多項式代数は自己同型による意味のあるダイナミクスをあまり持っていない. 実際それを不変にするのは多項式 Hamiltonian だけだ.

ということらしい. 知らなかった.

非有界作用素だと扱いが面倒なので, 指数の肩に乗せて有界にする. これは良く知られた Weyl algebra だ.

実は有界作用素にして Weyl 環にすると, 表現論的に元の CCR algebra とは違う環になる. 新井先生の本, 『量子現象の数理』の 3 章では量子力学のときに Aharonov-Bohm に即してこれが議論される. 興味がある向きは見てほしい.

幾何に関しても一応多様体論の教科書は松本先生の本を 1 冊読んだが, 身についている気はしない. 困ったものだ. ### ラベル 数学, 数学教育 ## 【【数学科の人間はこう落とせ】これが噂の「数学的告白テクニック」7選】を解析系数理物理学徒の視点から検証する ### 本文 Twitter で見かけたので. せっかくなので 1 つ 1 つコメントしたい. 物理学科から数学科に進学した解析学徒のコメントなので, その偏りについては注意して読んでほしい. #### その1 >1.数式を送ってみる。 > >女子「$x^2+(y-\sqrt[3]{x^2})^2=1$ を図化してください。返事まってます。」 >男子「おっと」 図化というの始めて聞いた. 「グラフを描け」とか図示なら聞くが. 私ならまずそこで戸惑う. そして図示するのめんどい. 何か簡単に図にしてくれるソフトもあるが, 使い方を調べるのもめんどい. あと, 代数曲線っぽい感じが恐怖を感じるので本当にやめてほしい. #### その2 >2.限りなく近づいてみる。 > >女子「あなたに限りなく近づきたい。」 >男子「収束は僕の家でいいのかな?」 位相がわからないから収束先が一意かもわからない. 接近速度 (の時間変化) も気になる. #### その3 >3.幾何学は目視から > >女子「直感で相似だと思いました。」 >男子「互いにね。」 まず「幾何学は目視」というのがまずやばそう. 何が相似で、そして互いに相似だと (恋愛的に) どうよいのかが全く分からないので 各種定義がほしい. 数理物理学徒に対しては極めて難解で優しくない表現であり, 非常に印象が悪い. #### その4 >4.誰でもわかる高校数学でも喜びます。 > >女子「何度やってもあなたと私の2次方程式の判別式は負になってしまうんです。」 >男子「愛があるからだね。」 「誰でもわかる」というのが真実なら嬉しかったのだが, そういう嘘はよくない. 極めて心象が悪い一言だ. 「あなたと私の2次方程式」というのも意味がわからないし, 何より計算のたびに結果が変わることを暗に主著している気もするが, それ, 非常に困るのでは. 径数に乱数でも仕込んでいるのか. それ, 高校の範囲か. #### その5 >5.ダイレクトに伝えてみる。 > >女子「私とeのx乗を不定積分しませんか?」 >男子「喜んで」 > >※ >[eのx乗を不定積分] >↓ >スクリーンショット 2014-06-21 16.25.56 >スクリーンショット 2014-06-21 16.26.54 >↓ >[Sex] > >スクリーンショット 2014-06-21 16.27.05 >↓ >「いーえっくすたすしー」 >↓ >「えくすたしー」 我々は英語や国語をやっているのではない. 数学をやっている. #### その6 >6.果敢に新定理にチャレンジしてみる > >女子「どんなに大きな数になろうと、600の区間に2つの素数が含まれている場合があるんですって。いつもは一緒にはいれないけど、いつまでも一緒んいたいです。」 >男子「互いに素でもよろしければお願いします。」 >※素数の間隔で新定理発見 極端な偏りなく分布 誰もかれも数論に興味があると思わないでほしい. 私自身, この辺はよくわからないのでまず定理の説明をきちんとしてほしい. そして女子の発言, 前半から後半にどう繋がるのかわからない. この女子, どこまでも数理物理学徒には優しくないらしい. 世界の厳しさを痛感する. #### その7 >7.素数の組み合わせで思いを気づかせる。 > >女子「私が5ならあなたは11。私が7ならあなたは13。では私が191ならあなたは?」 >男子「197でお願いします。」 >※差が6の素数の組をセクシー素数と呼びます。(ラテン語で6は「sex」) だから誰も彼も数論に興味があると思うなと何度言えばいいのか. 今日も社会は厳しかった. ### 追記 関係あるかどうか知らないが次のようなご意見を見かけた. 割と真剣に, 数学よりもっと役に立つこと, 法律や経済などを勉強した方がよいと思っている. ### 追記その2 Twitter で鍵アカウントの幾何専攻の方からいい話を聞いてしまった. 低次元の図を描いてみて直感でホモトピー同値だと思ったというのは意外とあるかもしれないこと, そして東大数理に古田幹雄先生という幾何の教官がいるのだが, 古田先生も低次元でもまずはなんとか絵を描いて見ることをよく推奨していたとのこと. ホモトピー同値を相似というのも無茶苦茶だが, 一般向けに語ることを考えれば仕方ないのかもしれない. ### ラベル 数学, 数理物理, 幾何, 数論, 位相空間論 ## 今まであまり触れたことない数学やりたい ### 本文 どう言ったらいいのか分からないのだが, 何か新しい数学を勉強したい. 超我侭に適当にいうと, 代数と幾何と解析が渾然一体となった感じのお得感あふるるやつがやりたい. あと何となく微分方程式がやりたいお年頃なので, 何かその辺でやりたい. 1 つの目的は素人向けの数学で何か動画作りたいからだ. 素人と言ってもいつも通り, 一定以上の数学力を既に備えている層に向けている. 何となく東大の大島先生がやっているような感じの数学は素朴な割に尋常ではないくらいやばい雰囲気も感じるので, 面白そうだからその辺で適当にググったら[曲面と超幾何関数](http://www.math.kobe-u.ac.jp/HOME/sasaki/saplec.pdf){target=_blank}という PDF を見つけた. 面白そうだったのでとりあえず共有しておきたい. 少し書いてあったが, 射影空間で何かやるの面白そう. あと一応関係がある話として, 直交多項式入門がほしくなった. 代数と幾何の知識があまりにもないので, 悲しい. こういうとき, 数学科を出ておらず中途半端にしか数学知らないのが悲しい. ### ラベル 数学, 微分方程式 ## 「色々な反例で遊ぼう」動画化の告知 ### はじめに 第 3 回の関西すうがく徒のつどいで話した内容を動画にすると言っていたが, 撮影したのを編集中だ. 一部をカットしただけで他に何もしていないが実際に動いているというのを示すため Youtube に上げてみた. 既に Fourier の話が聞いてみたいなどの要望を頂いているが, 何かご要望のある向きは適当にリプライなど飛ばして頂きたい. ### コメント 投稿したつどいの講演内容の動画だが, Twitter や Youtube でいくつかコメントを頂いた. 忘れる前にメモしておこう. #### lunatic_sonshi さんから lunatic_sonshi さんからは[この辺](https://twitter.com/lunatic_sonshi/status/325508926923739136){target=_blank}から. > 見せ方はあまり上手くないなとは思った > > @lunatic_sonshi そういうことまで気にしているといつまで経つても何もできないので, とりあえず何かやろうと. > もちろん改善はしていく予定ですが > > @phasetr 撮影はお一人でされてるんですか? > > @lunatic_sonshi そうです > > @phasetr なるほど, お疲れ様でした. できればカメラの向こうに一人おいて, その人に向けて喋るようにすると良くなると思います. > がんばって下さい. #### お前の敵さんから お前の敵さんは[この辺](https://twitter.com/omaenoteki/status/325303986716553217){target=_blank}から. > 黒板になんか書いてる暇あったら顔をこっちに向けろ > > 市川海老蔵ファンのつどいに潜入してパニックを起こしてほしい #### 侯爵 侯爵は[この辺](https://twitter.com/MValdegamas/status/325589229021327360){target=_blank}から. > 相転移 P の動画「よく分からない数学」, 拝見しましたが, 黒板にカツカツと叩きつけられるチョークの音を懐かしく感じました. > ただ声が聴きとれないので, その辺をもう少し改善していただけると, 内容が少しはわかるようになるのかもしれません. #### YouTube 動画への直接のコメント あと Youtube の動画への直接のコメントがこれ. > 声が反響し過ぎて聞き取り辛い. > 字幕が欲しい.  今回はもう録ってしまったからどうしようもないが, とりあえず声というか音とカメラに顔を向けることに気をつけるところからはじめよう. コメント頂けてありがたい限りだ. #### その他 [眼鏡萌え属性の人に眼鏡をかけて撮れと言われた](https://twitter.com/Hornet_B/status/325411518063730688){target=_blank}. 頭がいいように見えるだろうから, 本当は眼鏡をつけて撮ろうと思っていたのだがすっかり忘れていた. 次は気をつけたい. > @phasetr わたくしは贅沢申しませんので, めがねだけで結構ですよ! 待機します! ### 動画の展開の仕方 あと, [動画の展開の仕方について少し書いた](https://twitter.com/phasetr/status/325406020442669056){target=_blank}のでそれも転記しておこう. > それはそうとこの動画, 編集したら Amazon に出す予定. > Youtube の方が無料で出せるという利点があって主対象の中高生, > 大学生が手に入れられやすいが, 検索で見つけないといけないので届けにくい > > @phasetr そこで Amazon の流通の力を借りて遠くまで届けられるようにすることを優先した. > 様子を見て他の方法も考えるが, どこかの大学でセミナーやるとかして学生向けにある程度無料的な感じで見せることはできるので. > あと親とかに買ってもらうとかないでもないと期待 > > @phasetr あと Amazon で (DVD だが) 出版している, とかいうと世間的に箔がつくというか「ハッタリ」が効くようにもなるらしいので, > その辺の効果も期待している. > 何にしろ今までとは違う層, 広い層に届けることを主目的にしている > > @phasetr とりあえず値段は 3000 円程度を予定している. > 色々聞いたらこれより下げると足が出かねないようなので. 何はともあれ流通させてみてもらうこと, > できれば (親に買ってもらえる値段という意味まで含め) 中高生にも手が届くように, というラインには乗せたい とにかくアクションを起こすことを最優先にしたい. ### イントロを YouTube で公開した #### 本文 関西すうがく徒のつどいでも話した「色々な反例で遊ぼう」について, 以前告知動画を YouTube に挙げたが, そのイントロ部分を公開した. 映像の選択をミスったようで, サムネが間抜けな顔になっていてつらい. 関西すうがく徒のつどいでも話したことだが, 何故この題材を選んだか, これで何をどうしたかったのかということを話した. あとで Amazon で DVD を出すので, 買うかどうかの判断に使ってほしい. 本編で紹介した問題 (反例) は次の通りだ. - 環から部分環を除いた集合が環になるか. - 絶対値を取ると関数の滑らかさは下がるか. - 連続だが至る所微分できない関数が存在するか. - 有界閉集合 $\Omega$ 上で連続な関数 $f$ は一様連続になるか. - 各点で関数列が収束するなら積分も収束するか. まだ全部作っていないが, 時間の関係で説明しなかった基本的な概念などを購入者特典の付録にして配る予定だ. 付録について, つどいに参加した方限定で購入しなくとも適当な手段で見られるように配慮したいと思うので, Twitter なりこのブログで公開しているメールアドレスなりにご連絡頂きたい. また, 今のところ DVD は 3,000 円程度で出す予定だが, 中高生だとちょっと高くて手が出ないかもしれない. 買うのはつらいがどうしても見てみたい, という向きも Twitter なりメールアドレスまでご連絡頂きたい. 人数が多いなら何か対処を考える. 適当な手段で動画を見られるようにしたり, またはどこかに場所を借りて, セミナーをするという手もある. 他にも何か手段があるかもしれないが, それは問い合わせ数と内容に応じて考える. 今やっているように YouTube で流すだけなら無料で配れるから上記の中高生向け問題は起きないが, それでもなお Amazon を使うのは, Amazon の流通網を使って今までアプローチできなかった層に アプローチしたいからだ. ただ動画サイトに出すだけなら今まで通りニコニコにでも出しておけばいい. 吉となるか凶となるか全く不明だが, やってみないと分からないのでとりあえずやってみようという所. #### ラベル 数学 ### ラベル 数学 ## 東大数学科名誉教授, 藤田宏先生が送る言葉:加藤敏夫先生のお言葉「悩んだときは上野の動物園に行ってオランウータンを見るとよい. 彼等の哲学的な表情を見つめると気が休まる.」大学受験勉強法 ### はじめに 掃除をしていたら次の文章を発掘しました. - [リンク切れ: 東大数理](http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews/06shukuji.pdf) 久し振りに読んだらあまりにも無茶苦茶で感動する一文がありました. ついでにあとで簡単に藤田宏先生の紹介もします. 受験生とも重なる部分が多いのは【3. 数学の研究をするのも生身の人間】の内容です. お気に入りの部分がありますが, それだけでは味気ないのでいくつか引用します. ### 引用 >数学の研究は怠けていてできることではありません. >とくにその出発点である大学院での学びには精励・精進が必要です. >必要な知識の需要は勿論大切です. >それにもまして深く考え抜く修行が大切です. > >(中略) > >ところが, 高校時代から数学に熱心であったはずの >皆さんがすでに経験しておられると思いますが, >勤勉に頑張るだけでは, 「ひらめく」と限りません. >とくに焦りは禁物です. >この切なさは独創性が問われる研究において極まります. > >そこへ向けての心構えとして, >西洋格言を一つ呈しましょう. >それは, 「ゆっくりいそげ」 (Festina Lente: ラテン語) です. >「いそげ, ゆったりと」と訳してもよいでしょうか. > >(中略) > >それにしても, 生身の人間ですから, >研究が停滞したり, 人に後れをとったりして, >気が落ち込むときがあるでしょう. >そのようなときの元気回復に役立つかと >思われる言葉をいくつか付け加えておきましょう. > >>私自身は, 何故か, 旧制高校生の時にドイツ語のテキストの例文に出て来た, >>ツルゲネーフの次の言葉をよく思い出しました: >>「疲れたときは休むがよい. >>他人もそんなに遠くは行くまい.」 >>私の恩師の加藤敏夫先生が弟子たちにすすめられました: >>「悩んだときは上野の動物園に行ってオランウータンを見るとよい. >>彼等の哲学的な表情を見つめると気が休まる.」 >>角谷静夫先生は, 太平洋戦争後に早々に渡米して活躍された関数解析創始者のお一人ですが, >>私が 1967 年頃にエール大学を訪ねたときに言われました. >>「学位のための論文が停滞して学生が悩んでいるときは, >>恐竜の骨格 (エール大学の学内博物館?に巨大なそれがある)を見に行くことをすすめます. >>恐竜の雄大さ, また, それが生きた頃からの時間の長さを実感すると自分の抱えている悩みなどは小さい, >>小さい……という思いが湧いて院生達は元気が出るのです」 ### コメント 東大の院生や教官も日々このくらい追い詰められながら教育や研究に励んでいます. もちろん, 世界・人類最高峰の知性を持った人達との戦いであり, 受験とは比較にならない厳しい世界でもあります. そんな人達が心を静め, パフォーマンスを高めるために日々苦労しています. 全く同じことをする必要はありませんが, 心を休めて活力を取り戻すことは必要です. 自分の生活にも取り入れてみてください. 加藤敏夫先生のオランウータンの話などは, 疲れ過ぎて頭がどうにかしきってしまったのではと心配になるくらいの話ですが, そのくらい集中して長期間研究に取り組んでいます. 2008年度版もあります. あなたも興味があればぜひじっくりと読んでみてください. - [リンク切れ: 東大数理](http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews/08fujita.pdf) ### 簡単な教員紹介 最後に藤田宏先生, 加藤敏夫先生, 角谷静夫先生について簡単に紹介しておきます. 興味ない方は読み飛ばして構いません. #### 藤田宏先生 私が藤田宏先生をはじめて知ったのは, 数学の参考書, シグマベストの編者としてでした. 巻末に「東大物理学科卒」とあって「何で物理の人が数学の参考書書いているのだろう」と思っていました. 大学に入ってからそのあと数学に転向して数学者として世界的に有名な人なのだと知りました. 放物型の非線型偏微分方程式に対する爆発現象とそれに関する藤田の臨界べき (critical exponent)で世界的に有名な数学者です. (下の論文はFujita exponentで適当に調べて出て来た論文で, これが重要というわけではありません.) - [Critical Exponents of Fujita Type for Inhomogeneous Parabolic Equations and Systems](https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022247X00970355) 自分の名前を冠する概念がある程度には優秀で有名な方です. 私も2008年度の修士の入学式の祝辞のときにはじめてお目にかかって, 「高校でお世話になったシグマベストの編者とこんなところで出会うとは」との感慨を今でも覚えています. ちょっと話がずれますが, シグマベストは学校の指定参考書でした. 入学時, このくらいができれば, 中堅くらいの大学には入れますと言われて「こんなに難しいのに中堅レベルか」と驚いたことを今でも覚えています. それでも馬鹿みたいにこれをくり返しやって, 普通の模試では偏差値60くらい, 東大を受験してみたいと思えるくらいの成績を叩き出せました. この本がいいとお勧めしているわけではありません. これと決めた本を馬鹿みたいに徹底的にやり込むことが大事です. #### 加藤敏夫 次に加藤敏夫先生. 加藤先生は直接的に私の専門の先達です. 学部のときの指導教官の指導教官の指導教官です. (早稲田の応用物理の大谷光春先生の指導教官が黒田成俊先生で, その指導教官が加藤敏夫先生.) 量子力学の数学に関して世界的に有名な仕事があります. ノイマン型コンピュータなどでも有名なフォンノイマンの指摘を受けた仕事をしています. 水素原子のシュレディンガー作用素の自己共役性の証明, その証明に使った加藤-Rellichの定理があります. その他にも掃いて捨てるほどいい仕事があります. 超関数微分にも関わる加藤の不等式, 解析的摂動論の創始・完成, 線型・非線型のシュレディンガー方程式の研究を自身の研究で世界的にリードし, さらに後に世界的なリーダーになる学生をたくさん育ててもいます. #### 角谷静夫先生 最後に角谷静夫先生の紹介です. 関数解析や確率論に著名な仕事があります. 特にリース・マルコフ・角谷の定理はバリエーションも多く, 私もお気に入りの定理です. 関数解析・測度論の基本定理で大定理であり, 各所で使われる応用性も広い強烈な定理です. 確率論の仕事に関しては経済学へのインパクトもあり, 畑違いの経済学で名前がよく知られていて非常に戸惑ったことがある, というエピソードもあるくらいです. こういう世界で活躍した人達ですら日々苦しみながら仕事をしています. そうした人達がどうやって高いパフォーマンスを維持しているかは あなたの参考にもなるはずです. 心を静め, 軽くすることが大切とくり返し語られています. 自分にはどんな方法があっているのか, それを探して生活に取り入れていってください. ## alg-d ツイート集 ### 【選択公理が証明できないこと】2013年数学徒アドベントカレンダー(26日目) とりあえずブルブルエンジン兄貴のページの記述を引用. >元々は「選択公理の独立性」とするつもりでしたが、これをやろうとすると開始数ページでGödelのLを構成し終えるという誰も分からない記事になりそうだったので、半分諦めることにしました。最初に書いてあることを認めてもらえれば特に数学基礎論を知らなくても雰囲気は伝わるのではと思います。ZFCの定義くらいは知ってたほうが読みやすいとは思いますが。本当は強制法も入れようかと思ってたんですがわけが分からなくなりそうだったのでやめました。 >ちなみに全部ちゃんと証明をつけたバージョンのPDFを書くプロジェクトも進行しています。そっちはトポスまで書くつもりですが…あれよくわかんないので #つらい これは2013年の記事だがトポスまで書いたバージョンできているのだろうか. ### 『超準解析を代数的に』の Togetter #### 本文 古い Togetter だが, 「[超準解析を代数的に](http://togetter.com/li/78897)」というのを久し振りにみかけた. 相変わらずあまりきちんと読んでいないが, 楽しい話ではあるのでここでも記録がてら書いておく. まず evinlatie さんの説明を引いておこう. >代数のみの知識で超準解析を理解してもらおうと, >実数体 $\mathbb{R}$ から超実数体 $\mathbb{R}^*$ を代数的に構成する方法をまとめました. >予備知識は代数学の可換環や体の基本的な性質のみです >(少なくとも代数学の入門的な教科書には書いてある知識のみだと思います). >ただ, だいぶコンパクトに記述してありますので, >読む際には [Wikipedia](http://ja.wikipedia.org/wiki/超準解析) も参考にしたほうがいいかと思います. > >※@alg_d さんのご協力により, 補足に加えて直感的な説明も追加されました. $m'$ が選択公理でしか作れない狂気の対象というの, これはなかなか楽しい. #### ラベル 数学, 超準解析 ### ブルブルエンジン兄貴の「選択公理は直感に反さないだろいい加減にしろ! 」という記事の紹介:Banach-Tarski の定理 #### はじめに Twitter でブルブルエンジン兄貴が[次のようなツイート](https://twitter.com/alg_d/status/333483528949997568){target=_blank}をしていた. > > ツイッターのニュースってなんだよいい加減にしろ! ブルブルエンジン兄貴のブログ記事, [選択公理は直感に反さないだろいい加減にしろ!](http://alg-d.com/blog/2013/05/12.shtml) へのリンクが張られている. コメント欄に社会の悲しみが現出しているが, それは置いておこう. これはもちろん, ブルブルエンジン兄貴の真骨頂である選択公理の話だ. 選択公理と直観という意味不明な話が時々出てくるが, そこでよく, 選択公理から Banach-Tarski の逆理など変なのが出てきて嫌ね, という話がされる. そんなことはなく, 選択公理を認めないとひどい現象が起きる. 逆に選択公理から非常に自然でこれを認めないことには何もできない, という定理も色々あるので認めないでどうするの, という話をしている. ちなみに第 3 回の関西すうがく徒のつどいでのブルブルエンジン兄貴の話は関数の連続性まわりでそうした話をしていた. #### バナッハ-タルスキの定理 そしてブログでは Banach-Tarski だ. 詳しくはブログを見てほしいが, Banach-Tarski でいう有限分割は現実には実行不可能な恐ろしい分割も含んでいる. そうした無茶な分割をした上で「直観に反する」結果が出てくる, という話なので, むしろ直観的に捉えきれない分割の方にこそ異常性を感じるべきで, 選択公理に責を押し付けるべきではない, という主張を展開している. これもブログで触れられているが, 証明中, 選択公理はある一箇所で使われているだけだ. 証明中大事なのはむしろ自由群の性質であって, 選択公理ではない. 数学としてはむしろ, 図形の分割と体積の話をしているのにそれを制御しているのが自由群という群の性質である, という部分に思いを馳せるべきだ. これこそ直観を越えた緻密な論証のなせる技であり, 途方もなく豪快で自由な数学の姿と言える. とてもとても楽しい. 証明は本もあるし, ネット上に色々文献も落ちている. 色々探してみてほしい. そして証明をきちんと味わってほしい. #### ラベル 数学, 選択公理 ## 文系理系についてまだ下らない話があった ### 自称理系の厳しさ 「理系の人はお金持ちになれない?」というごみのような記事があった. [これ](http://kanemochi.kyokasho.biz/archives/1216){target=_blank}だ. 自称理工系の極めて粗雑な議論だったのでうんざりしている. 私の高校の頃の国語教員が「この新聞 (明治か大正の新聞) の記事を見てみなさい. (最後に『下らなかった』と書いてある. ) 下らないものは下らないと言いたいからこういう記事を書いている. これがジャーナリズムです.」みたいなことを言っていた. いまだに訳が分からないが, 書きたいことをきちんと書き抜け, ということだと勝手に解釈して私も書きたいことを書く. ### コメントその 1 > 前回は右脳, 左脳の話題を取り上げたが, 今回は理科系と文科系の違いに関する話題である. 右脳, 左脳という時点で既にもの凄い地雷臭がする. ### コメントその 2 > 文系であってもいわゆる「理系」の人は存在するし, 逆もある. > ちなみに筆者も理工系の学部の卒業である. いわゆる「理系」というのは何だ. ### コメントその 3 > 理系の人は数字が苦手 > まず「理系」の人の最大の欠点は「数字」が苦手なことである. > 意外な感じがするかもしれないが, これは本当である. > 理系の人は「数学」は得意だが, 「数字」には弱いのである. 理系の人に本当に「数学」が得意かどうか問い詰めてみるといい. 特に数学科の学生に聞いてみよう. あと私の知る限り, 理系の人間, 数字に強いというか, 基本的な物理定数とか大事な数値, オーダーの感覚はとても大事にしている. 友人は学部 3 年の研究室配属のイントロゼミのとき, いろいろな定数の値を聞かれて答えられず, 「いまはまだ仕方ないが, こういう数値が頭に入っていないの, 本当に論外ですよ.」みたいなことを言われたそうだ. ### コメントその 4 > 小中学校の算数ならともかく, 高等数学以上になってくると, ほとんどが抽象的な「数式」を用いるため, > 数字そのものを扱うことはほどんどなくなってしまう (数字を扱うのは数値演算などを行うごく一部の理科系の学問分野だけである). > このため理系の人は数字に弱い人が多い. ここが本当に一番ごみみたいなところ. 各専門に関する数値 (引用元の「数字」という言い方に闇を感じている) に弱いと何もできない. 何でもいいが, 例えば量子力学なら Planck 定数など大事な定数はその値まで, 関連する数値についてもそのオーダーくらいは色々把握しておかないと感覚が掴めない. 宇宙論なら宇宙論で, 関連する値についての感覚をきちんと把握しておくことが大事だ. 他の分野でもそう. 有機化学専門の MM2P の話を聞いていると良く思う. 極端に言うなら研究費の兼ね合いもあるので, 使っている試薬の値段などにも詳しい. 特に応用系の人は実際に工業などで使うときに値段が安い物質で作れないと困るので, そういった部分にもシビアだ. ### コメントその 5 > これに対して文系は数字に強い人が多い. > 会社の売上げや利益, 利回りなどの数値をスラスラといえる人が結構いる. > このような人は, 回転寿司のお店に入っても, その日の売上げがいくらくらいなのか, 数字でイメージすることができる. > 売上げや利益の伸びがどのような微分方程式に沿って動くのかは分からなくも, 数字そのものは直接イメージできる. 売り上げや利益の伸びの微分方程式というのに失笑せざるを得ないが, それ以上に全体的にごみでしかない. 要は利益や売上に関する数値感覚があるかないかということだろう. この人が指す理系の人間, 研究開発まわりに多いはずで, 自分の守備範囲から遠い数字に弱くても当然だろう. その意味でいうなら, 「理系」とやらがそういう感覚に乏しいというのは分からないでもない. これ以降も失笑せざるをえないようなろくでもない文章が並ぶ. この筆者はそういう馬鹿しかいないような環境にいたか, そう勘違いしてしまうほど不勉強なろくでもない学生だったのだろう. 見るだけでもうんざりするようなひどく粗雑な文章だったし, いつもの下らない文系理系評だった. 自称理系ならせめて「理系」についてもう少しまともな評をしてほしい. ### ラベル 文系理系, ごみ ### 加藤文元さんの Foundations of Rigid Geometry Vol.I が arXiv で出たので #### 本文 [加藤文元さんがご自身の Foundations of Rigid Geometry を宣伝していた](https://twitter.com/FumiharuKato/status/370710240053829633){target=_blank}. > 『Foundations of Rigid Geometry』 (Vol. I) がついに arXiv からリリースされました. > ここまで来るのに 10 年かかりました. > 今の代数幾何・数論界隈で 10 年もかかったら基礎の部分から大きく書き直しが発生したことも何度かあるだろうし, 凄まじい. さらに Vol. I というのがやばい. これ, あと何巻続く予定なのだろう. #### ラベル 数学, 数論, 代数幾何 ## 応用数学・数理工学と数学のギャップ ### 本文 経済とか物理について Twitter で[これ](https://twitter.com/phasetr/status/324830632125534208][これ]] とか [[https://twitter.com/phasetr/status/324838051627032576){target=_blank}みたいな呟きしていたら, [こんなツイート](https://twitter.com/dif_engine/statuses/324885869251153920){target=_blank}を見つけた. >数学から工学に移ったときは都落ちしたような悲哀を少し感じていたものですが >「工学の問題にどうやって数学を使うか」という問題はやってみると中々面白いです. >ノイズ, 精度, 計算コストの制約があるので単に数学的に解けば良いわけでもない. >そういう事がわからず, 最初はかなり空回りしました. 前にも書いたが, 応用数学というべきか数理工学というべきか, 工学での数学というべきかよく分からないが, つどいあたりでこの辺, 紹介してみたいと思っている. 参考にしたいのはこの辺. あと Google のページランクや符号理論の話とかしてもいいのか, とふと思った. 興味がある向きはページランクは[この動画](http://www.nicovideo.jp/watch/sm7599426){target=_blank}, 符号理論は[この動画](http://www.nicovideo.jp/watch/sm10684363)を参考にしてほしい. 次のような本もある. 折角だしこの辺もどこかで話そう. 動画も改めて作りたい. ### 追記 chibaf さんからコメントを頂いた. 楽しそう. 私もこういうのやりたい. ### ラベル 数学, 工学, 応用数学, 数理工学, 線型代数, 符号理論, 線型代数, 代数幾何, 微分方程式, 数値解析 ## IT 教育, 特にプログラミング教育と数学と物理の教育 ### 本文 [俺達の Matz がこんなことを言っていた](https://twitter.com/yukihiro_matz/status/395564803441188864){target=_blank}. >政府 CIO や文科省や経産省や総務省の偉い人がいる前で, 「必修のプログラミング教育なんかムダ」, >「教育の IT 化もおおむねムダ」, 「 IT 人材は育成なんかできない」などと言って会議の空気を凍りつかせた人のアカウントがこちらです. > >@yukihiro_matz プログラミングの必修化は, 今まで接点が無かった生徒でも興味を持つきっかけになるのではと思いますが, >その程度で始めるようではやってもムダということでしょうか? > >@awazuhours 必修だと興味がない子には苦痛だし, 興味がある子にはレベルが低くてつまらないので効果薄です. >きっかけならプログラマーが主人公の漫画をジャンプで連載する方が 100 万倍効果的. >バクマンの IT 版 数学 (と物理) だとどうなのだろう, ということを色々考える. ### ラベル 数学, プログラミング, 数学教育 ## 駒場幾何学的表現論と量子可積分系のセミナー ### 本文 [駒場幾何学的表現論と量子可積分系のセミナー](https://sites.google.com/site/seminaratkomaba){target=_blank}が定期的に開かれているらしい. > 駒場幾何学的表現論と量子可積分系のセミナー > > セミナーの目的, 対象者, 講演方法: > 幾何学的表現論や可積分系の分野の周辺で現在活発に研究している方々をお招きし, > 最先端の結果, というより問題意識からはじめて 3 時間ゆっくりと講演していただくセミナーです. > 対象者としては, これらの方面の専門家のみならず, 表現論, 代数解析, > 数理物理学, 幾何学, トポロジー等の専門家や専門家を目指している若い方々で, > 幾何学的表現論や量子可積分系に興味を持っている方を対象としています. > このため, 講演者には例と具体的計算, 問題設定, 動機付け, 基本的結果, 基本概念等についてゆっくり丁寧にお話ししていただけるようにお願いしています. > このため, 証明には深入りする必要ないと考えております. > > 世話人:岩尾慎介 (青山学院大) 白石潤一 (東大・数理) 土屋昭博 (IPMU) 山田裕二 (立教大). > 連絡先 (岩尾) 9/17-19 には国場敦夫さんの「転送行列, Yang-Baxter 方程式, Bethe 仮説」という話, 10/26 には河澄響矢先生の「(I) The Goldman-Turaev Lie bialgebra and the mapping class group. (II) Various infinitesimal approaches to the moduli space of Riemann surfaces.」があるそうなので, 興味がある向きは参加されてはどうか. ### 追記 [関係筋から「不定期開催だ」という情報を得た](https://twitter.com/myfavoritescene/status/375677614385401856){target=_blank}. > @phasetr 関係者です. 不定期です. 申し訳ないです. ### ラベル 数学, 幾何学, 表現論, 可積分系 ## 記事紹介, みずほ情報総研: 見直される数学 ### はじめに [みずほ総研の【見直される数学】とかいうレポートがあるらしい](https://twitter.com/marriagetheorem/status/436080211474386944){target=_blank}. >みずほ情報総研:見直される数学 > 最初を少しだけ引用しておく ### 引用 >数学は美しい. > >最近, 関数標本 (*1) なるものを購入し, >我が家に飾ってあるのだが, 見るほどに, なるほど美しいと思わせる. >標本にしたくなったのも頷ける. >江戸時代には, 美しい図形を扱った問題が神社に奉納されるなど, >数学が神への感謝のしるしとしても用いられていた. >しかし, 役に立たない, つまらない, 嫌い, と思われる方もいるかもしれない. >そこで, 本稿では, 数学に対する先入観を捨てていただくために, >今見直されつつある数学の面白い応用例を紹介する. >そして, 少しでも興味を持っていただければと思う. 応用例だすと本当に面白いと思ってもらえるのだろうか. そう思う人がいるらしいというのは知っているが. ### ラベル 数学, 応用数学 ## 常微分方程式論の Picard-Lindelof の定理 ### はじめに [常微分方程式についてたんじぇさんとやりとりした内容を記録しておきたい](https://twitter.com/f_tangent/status/393740592007483392){target=_blank}. ### 引用 > Picard-Lindelof の定理ってリプシッツ連続性を仮定してるけど, > この条件外したときに解が一意に定まらない例とか解が存在しない例ってどんなかなーとゆるふわに考えてる > > @f_tangent 教えてください ! > > @alg_d 分からないから考えてるんです > > @f_tangent 早く考えろ > > @alg_d 数学ビーム > > @f_tangent ありがとうございます ! ありがとうございます ! > > @f_tangent 余計なお世話かもしんないけど, これに確か解がユニークでない例が載ってた◎ > > > @matsumoring ありがとうございます! 近日中に見てみます! > > @f_tangent 今手元にないのでどのページか分からないのですが, > > の定理が証明されている所のそばに反例があったような記憶があります > > @phasetr ありがとうございます! 近日中に確認します. > > @f_tangent 今, ちょっと本を確認したら見当たりませんでした. > 何かの本で見た覚えはあるのですが. 少し検索したら > というので局所解はあっても大域解が無い例というのが書いてありました > > @f_tangent あとついでにいうと, $C^1$ 級の関数は必ず局所リプシッツになるので, > それについて局所解は必ずあることになります. > どんな例を作りたいかによりますが, 自分で例を作るなら本当に微分出来ない関数から探してこないとあまり嬉しいことができない可能性があります > > @phasetr 結構アレな反例になりそうですね...自分で考えてみます. > > @f_tangent $x''(t)=x^{2/3}$ ですか? > > @ano_KTOK_ 2 階だとまだ扱ってないのでよく分からないのですが, > 右辺がリプシッツ連続でないので解の一意性は保証されなそうですね > > @f_tangent ごめん, $x'(t)=x^{2/3},x (0)=0$ の間違えやw > この時, $x (t)=t^3,x (t)=0$ が解になる w > > @ano_KTOK_ 追記ですが, お身体は大丈夫なのですか... > > @ano_KTOK_ あ, 本当ですね, ありがとうございます. > 多分初めてこういうの見ました > > @f_tangent いま w ちょうどご飯食い終わって, TL みたら面白そうなこと書いていたのでつぶやいてみた w > マシにはなったが, 頭はクラクラしている w やることやったらもう寝る w > > @ano_KTOK_ 善導はとてもありがたいです. お身体にもお気をつけください... > > @phasetr @f_tangent $y'=2 \sqrt{y}$ は連続関数 $f (t,y)=2 \sqrt{y}$ に対する正規型一階常微分方程式ですが, > $y_1 (t)=0$ は初期条件 $y (c)=0$ の解で, > $t > @derived_kai @phasetr 意外とあるもんですね...参考にさせていただきます 確か上で「見た覚えがある」書いた例では, この辺のルートを使っていたような覚えがある. 自分で例が作れないというのも情けない限りだが. ### ラベル 数学, 微分方程式, 解の一意性 ## Twitter まとめ: 抽象的な内積の定義のモチベーション ### Twitter でのやり取り 内積について少しやりとりをしたのでまとめておきたい. [この辺](https://twitter.com/wa_ta_si_/status/309307776151199745){target=_blank}からはじまる. > 内積の定義で複素共役を取ったら順序が入れ替わる, みたいなやつなんで要請されるんですか > > こーしーしゅわるつ, 三角不等式が成り立つために必要とか? > > @wa_ta_si_ コーシー・シュワルツをどう思うかによりますが, ||のように絶対値をつけるなら > コーシー・シュワルツも三角不等式も複素共役は必要ありません. > 内積の片方に複素共役をつけるのは≧ 0 にしたいからです. > 同じベクトルの内積をベクトルの長さにしたいので > > @phasetr C^n の場合にベクトルの長さを定義できるように内積を考えると一方を複素共役にすることになる. > そうすると R^n の内積で=なのが C^n では=*になる. > それを一般の内積の定義に要請するということなんですね…. ありがとうございます > > @wa_ta_si_ 変なこと書いた気がするので念のため言っておくと, 三角不等式と内積の複素共役は関係ありません. > 内積から長さを定義したいと思えば確かに関係はあるのですが, > 三角不等式自体は長さに関係する話であって, 一応内積とは別です > > 内積というやつがわからなくなってきて泣いてる > > まず, 内積というのは距離とか直交とかを定義するために導入する. > だから少なくとも正定値性は必要として, まあ線型性も必要だろう. > 実数の場合なら対称性も必須か. 複素数ならそれがエルミート対称性になるのも自然? ### コメント 内積はベクトルの長さと 2 つのベクトルがなす角度を定義するために使う. 係数体が複素数のときに長さを決めたい場合, $\langle a, a \rangle = \Vert a \Vert^2$ にしたいので, 実数では必要なかった複素共役をつける. こうすると一般に内積の値が複素数になる. 複素数でも $\cos \theta = \langle a, b \rangle / \Vert a \Vert \cdot \Vert b \Vert$ として角度は定義できるが, 三角関数の角度が複素数になってしまい, 実数のときと同じように「 2 つのベクトルがなす角度」というのを考えるのは難しくはなる. ただ直交というだけなら内積 0 と言えばいいので直交性だけはきちんと定義できるし, 意味がある. ### 正定値性と半正定値性 正定値性だが, 時々半正定値の内積を考えることはある. そういう場合でも半正定値内積の値が 0 になるベクトル全体で商空間を取ってしまえば 正定値内積を考えることはできるので, 普通はこの処理をするだろう. 作用素環での GNS 構成定理では実際にこういう処理をして内積空間を作る. ### 不定値内積 あともう少しいえば, 不定値の内積を使うこともある. 物理でいうと相対論が関係するところだ. 対応する数学としては Lorenz 多様体とかそんな話になる. 実のときの対称性, 複素のときのエルミート性については, 一番単純なユークリッド空間での内積がこの性質を持っていて そこをモデルにしているから, というのが答えだろう. 何にせよ, 具体的な話を抽象化したその先で得られた結論だけを学ぶ形になってしまうので, 初学者にとってはそう簡単な話ではない. 誰かの何かの参考になるかと思い, ここに記録しておく. ### ラベル 数学, 線型代数, 相対論 ## 物理の純粋状態と作用素環の純粋状態: $p$ 進大好き bot とのやり取り ### 本文 [長くなりそうなので返答というか考えをブログにまとめる方の市民](https://twitter.com/non_archimedean/status/462891432705941504){target=_blank}. 次の $p$ 進大好き bot とのやりとりなのだが. >純粋状態って言うと, 「物理の純粋状態」と「物理の純粋状態 2 つの >pairing で表される作用素環の純粋状態」のどっちのことか分からんな. >両者は違うものだよね? > >@non_archimedean よくわかっていないのですが後者, 必ず作用素環的な純粋状態になるのでしょうか. >「物理の純粋状態」の定義も気になるところですが > >@phasetr 物理の方は物理量を表現する作用素が作用しているヒルベルト空間の正規ケットベクトルのつもりでした. >それのコピーの (と書き忘れました) 2 つのブラケットで表される作用素環の純粋状態とどう対応するのか, >という話ですが, 冷静に考えて GNS 構成がありましたね. > >@phasetr 暗に「物理のヒルベルト空間は可分である」ことを課して書きました. >非可分なときも純粋状態が正規ケットベクトルだと思っていいのかよく知りません. 私が知っている $\mathbb{C}$ 係数の作用素環では基礎となる Hilbert 空間に可分性を課すのでここでもそれを仮定しよう. むしろそこでしか考えたことがないので, 外れたときに起きる現象は全くわからない. その上で, 一般的には両者は違うはずだが, ではどう違うのかというのが (私は) 全くわかっていないという話をこれからする. 特に後者は言明「物理の純粋状態 2 つの pairing で表される作用素環の純粋状態」自体が 正しいのかもよくわかっていない. それでまず作用素環の純粋状態だが, 作用素環を指定した上でその状態空間の端点という定義なので, 作用素環自体を指定しないと始まらない. 物理の純粋状態, この意味だと数学的な定義は不明といっていい. ある Hilbert 空間でのケットが「純粋状態」 (線型結合でない 1 つのベクトルとして書ける) だからといって, それが別の Hilbert 空間で「純粋状態」になっているとは限らない. 有名な例がある. 何でもいいが, 可分な Hilbert 空間 $\mathcal{H}$ 上のトレース $\mathrm{Tr}$ を考える. (いわゆる「有限温度での平衡状態」を考えているといってもいい. ) これは Hilbert-Schmidt 作用素の空間 $C^2 (\mathcal{H})$ では「純粋状態」として書ける. もちろん GNS だといってもいい. そして $\mathrm{Tr}$ は正規直交系の線型結合になっているベクトルから作れるから, 物理の意味 (先程書いた通り数学的に正確な定義はよくわからない) では「純粋状態」ではない. ただ, GNS で移った先では物理の「純粋状態」から作れる. こういう場合の処理のため, 作用素環的な純粋状態は環 (正確には表現か?) をきちんと指定することになっている. あまりきちんと考えたことがないので, 物理の「純粋状態」から作用素環の純粋状態を構成するためのきちんとした条件と, その具体例をあまりよく知らない. Bratteli-Robinson の定理 2.3.19 など, 状態が純粋であることとその GNS 表現の既約性が同値であることくらいは知っているが, 具体的な例できちんと調べたことがない. 物理の「純粋状態」は作用素環の指定なしでやっているので, その辺をどう思うのかがよくわからない. これも具体的にきちんと調べたことがないのだが, 平衡状態 (正確には KMS 状態) に関する「端点分解」もよくわかっていない. 通常通り考えている von Neumann 環が単位元を持つことを仮定しておくが, そのとき KMS 状態全体も凸集合で weak*-compact になる. つまり KMS 状態内で端点分解できる. Haag の Local Quantum Physics ではこの端点への分解を pure phase decomposition と呼んでいるが, これの具体例での検証 (どういう現象が起きるか調べる) をやったことがない. 今更ながらだが, 問題としてどう正確に定式化したらいいのかという部分からして そもそも難しいのかもしれないし, 問題の立て方もどう立てるといいのかがよくわかっていない. 何というか, 「物理×数学」という非可換代数を想起した. #### 追記 基本的には別件だが, 最近 thermal pure quantum (TPQ) state という話が出ている. - 清水さんの論文, [Canonical Thermal Pure Quantum State, Sho Sugiura, Akira Shimizu](http://arxiv.org/abs/1302.3138) - 田崎さんの論文 [論文メモ: Hal Tasaki, 2015, Typicality of thermal equilibrium and thermalization in isolated macroscopic quantum systems](http://phasetr.com/2015/08/10/論文メモ-hal-tasaki-2015-typicality-of-thermal-equilibrium-and-thermalization-in-isolated-macroscopic-quantum-systems/) この辺も結局きちんと勉強できていない. 時間が無限にほしい. ### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 作用素環, 統計力学, 場の量子論, 量子力学 ## 「動く特異点を持たない方程式」がなぜ大事なのか ### 本文 [Paul の『「動く特異点を持たない方程式」がなぜ大事なのか』に関するツイートを dif_engine さんがまとめていた](http://togetter.com/li/568436){target=_blank}. 遷移しなくても見られるよう, 引用しておく. ### 引用 >そうか, 数式の意味は作者にあるわけではなく, 鑑賞者にまかされているのか. > >.@kyon_math 私も, 動く分岐点を持たない方程式を分類したと思ったら, >フックスの子倅が「モノドロミ保存変形だよー」と言い出してびっくりしました. >リハルトが P6 見つけたときは, こっちは最初の 3 つしか見つけてなくて, 冷や汗かきました. > >動く分岐点を持たない方程式を分類するモチベがわからなくて入り口に行かなかった人生だった. > >動く分岐点を持たない方程式がなぜ重要か, パンルヴェ本人による連ツイをはじめます. > >遡ると, Briot^Bouquet の楕円函数の特徴づけになるでしょう (1856). >F を有理函数として, 加法公式 f (u+v)=F (f (u),f (v)) を持つ函数 f (u) は何か? (続く > >続 2) BB の答えは「有理函数・指数函数・楕円函数に限る」です (竹内端三・楕円函数など参照) が, >加法公式があれば f'(u)=G (f (u)) という一階自励系の解でもあり, 加法公式を持てば, 動く分岐点がないことは自明です. (続く > >続 3) BB の定理は「 G を有理函数として 1 階 ODE f'(u)=G (f (u)) が動く分岐点を持たないなら, >解は有理函数・指数函数・楕円函数に限る」という形にもなります. >では, 自励系ではなく一般の ODE にしたらどうか? >この問題は 1870 年頃に Fuchs と Poincare が考えた > >続 4) F-P の定理「一階微分方程式 F (u,f (u),f'(u))=0 が動く分岐点を持たなければ, リッカチか楕円函数か初等函数で解ける」. >一般の点 u に対して F_u (f (u),f'(u))=F (u,f (u),f'(u)) とおくと, リーマン面 F_u (x,y)=0 の種数は一定. > >続 5) F_u (x,y)=0 の種数が 0 ならリッカチ, 1 なら楕円函数, 種数 2 以上でも, 初等函数で解ける場合は, 動く特異点を持たない. >この証明は易しくはないが, 古典的には Forsyth の 6 巻本に書いてある. >なお, 一階方程式は動く真性特異点を持たないことを示したのが私の学位論文. > >続 6) 1 階の次は 2 階だということになりますが, >ピカールは 1889 年に今でいう第 6 パンルヴェ方程式の特殊な場合「ピカールの解」を楕円曲線の不完全周期の満たす微分方程式として導出しています. >同年, パンルヴェ性を可積分系に最初に適用した「コワレフスカヤのコマ」の論文も出た. > >続 7) ということで, 1890 年ごろは「動く分岐点を持たない 2 階方程式の研究」をしようという動きは, >方程式論からも, 剛体の運動方程式の可積分性 (第一積分の発見) からも, まだ代数曲面の周期という観点からも起こっており, 自然な問題意識であった. > >続 8) さらに三体問題で, 三体同時衝突の場合は衝突時間で代数的特異点になる (私の結果, のちに Sundman が拡張) ことからも, >すでにパンルヴェ性と可積分性の関連は意識されており, そういう流れの中で 1898 年に私が最初の (間違った) 分類定理を出した. >これは 1906 年には修正された. > >続 8) というわけで, 現代の皆さんは忘れてしまったかもしれませんが, >「動く分岐点を持たない方程式」は 19 世紀後半には, 数学全体の中でも決して特殊な問題ではありませんでした. >1905 年の R.Fuchs のモノドロミ保存変形との関係ありますが, 可積分系や周期積分とも関係します (終) 「私」というのがどの「私」なのか時々判然とせず非常にややこしい方の Paul だった. ### ラベル 数学, 微分方程式, 特異点, 可積分系, Painleve 方程式 ## RIMS 2014 「量子場の数理とその周辺」 ### RIMS での「量子場の数理とその周辺」という研究会, 超行きたい #### 本文 [量子場の数理とその周辺という研究会があるという](http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/workshop-ja.html){target=_blank}. >量子場の数理とその周辺 >部屋:111 期間:2014-10-06~2014-10-08 >代表者:新井 朝雄 (北海道大学理学研究院 ) 超行きたい. 参加したことないからわからないのだが, こういうの参加登録とかいるのだろうか. 新井先生に相談してみるか. あといい加減計算というか研究を進めたい. #### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 場の量子論 ### 万難排して「量子場の数理とその周辺」に参加するのだ #### 本文 [RIMS での「量子場の数理とその周辺」という研究会に参加することにした](http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/workshop-ja.html){target=_blank}. もちろん平日なので事前の調整がつけば, だが. 何とかして研究成果を携えて参加したい. #### ラベル 数学, 数理物理, 物理 ## 東大数理の教育事情と私の雑感 ### はじめに [一部界隈による東大数理の講義・演習に関しての話がまとまるなり何なりしていた](https://twitter.com/paul_painleve/status/387600149016346625){target=_blank}. 話題になっている松尾先生からするとやめてほしいのかもしれないが, 東大での実際の教育内容というの, 高校生には参考になると思うし私も非常に興味があるところなので, 備忘録も込めて記録しておきたい. ### 引用 > 駒場は楽しそうでいいなあ~ そういえばここしばらく委員長に会ってない. > > [とある「集合と位相」に対する反応](http://togetter.com/li/574477){target=_blank} > > @Paul_Painleve すごいですねw > > @myfavoritescene やる以上は徹底してやる, ということなのでしょう. > 学生を一度どこかでこういう形で鍛え上げるのも大切かもしれませんが, 私にはできません. > こういう形式でやるなら「集合と位相」だろうとは思います. > > @Paul_Painleve @myfavoritescene 厳しくするのは教員側も大変な労力がいりますからねえ.... > > @Paul_Painleve なかなかできませんよね. > プリントを本にして欲しいです. > > @ken_math @Paul_Painleve 必修でやると大変なことになりますし. . (などというと怒られそうですが) > > @myfavoritescene @ken_math まあ, 昔永田さんは京大の代数が必修だった時代に 3 年生全員を落としたり, > たいてい何度も何度も追試をやりましたから. 4 月まで追試やった年もあったんじゃないかな. > そういう意味では, 永田 DNA が違う形で受け継がれているのかも. > > @myfavoritescene 「集合と位相」は, 数学科でしか教えないこともあって, > 日本語の本の種類も豊富とはいえませんし, 演習込みで本になると, 案外と一気に定番になるかもしれません. 永田さん, そんなに凶悪な人だったのかと衝撃を受ける. 私は学部が物理だったので数学の学部教育のスタイルはよく分かっていない. 人にも学校にもよるのだろうとは思う (東大やら京大やらいわゆる旧帝大以外でやったら阿鼻叫喚の様しか想像できない) が, やはりいい大学ではきちんとしたことをやっているのだな, という気はする. 講義に関しては, 東大だと斉藤 (確か恭二) 先生が学部 2 年の代数で「加群というのはベクトルバンドルみたいなものです」とかぶっぱなしたり, 川又先生が関数論で Riemann-Roch まで進むとか, 本質を突きすぎて一致の定理の言明の板書が $f=g$ だけだったとかいう逸話を仕入れている. さすがにここまで無茶をしてそれでまともに人が育つのは東大や京大くらいしかいないとは思うが, 逆にこんな無茶をしても人が育つというのが凄まじい. セミナーなり何なり, きちんと教育すべきところではしているのだとは思うが. 全くの別件だが, 何かの研究集会で川又先生と東北の小谷先生が次のような会話をしていたのを覚えている. 川又先生が「学生が (修論の) 発表をするときには黒板に書いて話すように指導している. 時間が足りないという声も聞くがそれは本質的なところをおさえきれていないからだ. きちんと勘所を押さえておけば板書をしても時間内に収まるはずだし, そこまできちんと準備すべきだ」とか何とか. 小谷先生は「学生は社会に出てからスライドを使った話をする機会は多いだろうし, 学生のうちにそういうのをきっちり練習する機会があった方がいいと思うから, 自分はスライドでもいいと思う」みたいなことを言っていたという記憶. それはそれとして, スライドで講演されるとメモしきれないし量が多くなりすぎて消化不良にもなるから, できるならスライドやめてほしいとはよく思う. あとで配布する用途には便利だろうけれども. 物理で実験の話だったりすると図なりデータなりがあるからスライドの方が話しやすく聞きやすい面もあるのかもしれない, とか何とかどんどん話がずれてきたのでこの辺で終わろう. ### ラベル 数学, 数学教育 ## $X,Y$がHausdorffで$f \colon X \to Y$が連続な全単射のとき$f$は同相 ### 本文 「$X$, $Y$ を Hausdorff な位相空間とし, $f \colon X \to Y$ を連続な全単射とする. このとき $f$ が同相になる」という命題があるが, 証明を忘れてしまった. $X$ がコンパクトならすぐ分かるが, このコンパクト性は必要なのだろうか, というしょうもないところではまりまくっている方の市民だった. なさそうなら反例を自分で作れ, という話なのだが. とりあえず, 備忘録としてコンパクトのときの証明はつけておこう: 逆写像が連続であることを言えばいい. $A \subset X$ を $X$ の閉集合とすると, $X$ がコンパクトなので $A$ もコンパクト. Hausdorff 空間では連続写像によるコンパクト集合の像はコンパクトなので, $(f^{-1})^{-1} (A) = f (A)$ はコンパクトになる. $Y$ は Hausdorff なので $f (A)$ も閉集合になる. これ, $Y$ の方の Hausdorff 性もやはり必要なのだろうか. 位相空間論弱者な方の市民だったのでつらみ高まる. ### 追記 しゅそくさんから反例があることを教えて頂いた. [参考ページはここ](http://nazolab.net/users/qa/221/page:1). 転記しておこう. >$X$ を位相空間とし, $f \colon X \to X$ を連続全単射とします. >また, 両方の $X$ には同じ位相が入っているものとします. >このとき $f^{-1}$ は連続になるでしょうか? >何となく反例がありそうだ, との予想が立っていますが, どうでしょうか? > >二元以上含む集合 $A$ の整数で添字付けられた可算個のコピー $A_n$ たちを考え, >負の $n$ に対しては $A_n$ に離散位相を, 非負の $n$ に対しては $A_n$ に密着位相を入れて, $X$ を $A_n$ たちの直和とする. >$f \colon X \to X$ を $A_n$ から $A_{n+1}$ への恒等写像たちをつなぎあわせてできる写像とすれば, >$f$ は全単射連続写像ですが $f^{-1}$ は連続ではありません. > >これは上手い反例ですね ! 他の反例も見てみたいので引き続き回答を募集したいと思います. > >K.George さんの例を少し変更すると Hausdorff 空間で反例が作れるようです. >$g : A \rightarrow B$ を Hausdorff 空間間の全単射連続写像で $f^{-1}$ が連続でないものとします. >(たとえば $g : [0,1) \rightarrow \Bbb{R}/\Bbb{Z}, g (x)=[x]$.) >$A_n (n \in \Bbb{N})$ を >\begin{align} > A_n=\left\{ > \begin{array}{lr} > A & (n \leq 0) \\ > B & (n \geq 1) > \end{array} > \right. >\end{align} >と定め K.George さんと同じように $X$ を $A_n$ たちの直和とし $f \colon X \rightarrow X$ を >$f (A_n)=A_{n+1}$ で >\begin{align} > f|A_n= \left\{ > \begin{array}{cc} > id_A & n \leq -1 \\ > g & n=0 \\ > id_B & n \geq 1 > \end{array} > \right. >\end{align} >となるものとして定めればいいです. > > >やはり K.George さんの例を少し変更すると compact 空間で反例が作れるようです. >compact かつ Hausdorff なら同相になりますが, このどちらの条件もはずせないということのようです. > >K.George さんの例で特に $A$ を有限集合と取ります. >今度は直和でなく直積 $Y=\prod_{n=-\infty}^{\infty}A_n$ を考え $h : Y \rightarrow Y$ を >$h (\{a_n\}_{n=-\infty}^\infty) = \{a_{n-1}\}_{n=-\infty}^\infty$ と定めます. >すると $Y$ は compact で $h$ は全単射かつ連続ですが $h^{-1}$ は連続ではありません. > >できるだけ簡単な平面集合ということで考えてみました. >$X=\{(x,y)\,|\, y \geq 0 \,\, \mathrm{or}\,\,y全単射となる連続な $f : X \rightarrow X$ で, $f^{-1}$ が連続でないものが, 以下のようにして作れるようです. >$X$ は位相的には境界の一部を含む円板です. >基本的には, やはり K.George さんの例の焼き直しです. >\begin{align} > g (x)=\left\{ > \begin{array}{ll} > 0 & (x \geq 0) \\ > x & (x<0) > \end{array} > \right. >\end{align} >として >\begin{align} > f (x,y)=\left\{ > \begin{array}{ll} > (x+1,y) & (y \geq 0) \\ > (x+1,y+g (x+1)-g (x)) & (y<0) > \end{array} > \right. >\end{align} >と定めればいいです. >$f$ は, $x$ 軸を境と見てファスナーを少し閉じる写像となっています. 位相空間の闇は深い. ### さらに追記 Twitter で呟いたところ, 続々と反例とその作り方が集まりつつある. 「このくらいも自分で気付かないのか」という点で死ぬ程恥ずかしいが, それはそれとして有り難い限りだ. [こいずみさんからのご意見はこちら](https://twitter.com/koizumi_fifty/status/387940857258577920). >@phasetr 大体の Hausdorff 空間 $X$ に対して id:($X$ に離散位相を入れたもの) $\to X$ は同相でない連続全単射なのでは…… > >@koizumi_fifty !!! 死にたい!!! > >@phasetr (ごめんなさい) > >@koizumi_fifty 死ぬほど恥ずかしいですが, >下手に指導教官の前とかで無くてよかったと積極的に前向きに捉えて今後の人生を生きていこうと思います [山元さんからのご意見はこちら](https://twitter.com/hymathlogic/status/387944100252483585) >@koizumi_fifty @phasetr ついでに (?) >大体の compact 空間 $X$ に対して id: $X \to$ ($X$ に密着位相を入れたもの) は compact 集合間の同相でない連続全単射 [MarriageTheorem さんからのご意見はこちら](https://twitter.com/MarriageTheorem/status/387946506906791936). >@phasetr 既出かもしれないと思いますが, >この手の命題については $X$ に離散位相を入れたり $Y$ に密着位相を入れたりする (後者は表題とは無関係ですが) と色々と捗ることが多いです. ### さらに追記: 本サイトのコメント >普通の空間だと$[0,1)$の両側くっつけて$S^1$にするのが一番簡単ではないでしょうか ### ラベル 数学, 位相空間 ## Twitter まとめ: 加塩さんによる定義や定理の典型的な使い方 ## 「はるか彼方からの光芒を信じ, 膨大な計算を遂行し尽したときに初めて地平が見えてくるようなハードな解析は解析学の真骨頂であろう」 ### 本文 [格好いい](https://twitter.com/2nloglogn/status/455330873336795136){target=_blank}. >ここで高橋陽一郎氏によるクッソかっこいいメッセージをお読みください > 遥かなるハードアナリシスに対する憧憬を謳っている. 皆, とにかく上記 PDF を読むように. いくつかウルトラ格好いい文章を引用しておこう. >はるか彼方からの光芒を信じ, >膨大な計算を遂行し尽したときに初めて地平が見えてくるようなハードな解析は解析学の真骨頂であろう. >ハード・アナライザーたちの数ヶ月からときには数年に及び, >岩に穴を穿つような計算を続行するその強靱な精神力と体力には畏敬の念を覚える. >不幸にしてその途上で力尽き果てた人もいた. >畏敬とともに深い哀悼の念を表する. >しかし, 例えば, モーメントの評価や相関関数の評価などのようなわずかな手掛りを頼りに必ず道が拓けるとの信念のもと, >恐ろしいほどのハードな計算を遂行し切って, 数学に新たな地平を切り拓くハードな解析はやはり解析学の真骨頂である. どれだけハードアナリシス格好いいの, という感じ. ここで出てくる T. Hara は九大の腹隆さんで, 田崎さんの共同研究者というか知人というか大学時代の友人的なアレだ. 田崎さん, 原さんともに私が所属している分野, 厳密統計力学・構成的場の量子論の先達だ. この間ブログにもまとめたが, 原さんは 2013 年の Summer School 数理物理で講師になっていて, そのときの話で提出した D 論は 500 ページ, 証明の細部まで書いた分は 2000 ページになったと言っていた. 今の私としては, ハードでもソフトでも何でもいいから, とにかくきちんと論文を書いていくことを目標にしたい. ### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 解析学, 確率論, 数学者, 場の量子論, 統計力学 ## ymatz さんが『ある数学者の弁明』のフリー翻訳をはじめるらしいので応援するアレ ### はじめに [このツイート](https://twitter.com/ymatz/status/328509251079262208){target=_blank}だ. ### 翻訳のページ 今翻訳のページは[ここ](http://ymatz.net/hardy){target=_blank}になっている. ページ冒頭から引用. > 20 世紀前半のイギリスの数学者 G. H. ハーディ (1877 – 1947) がその晩年に書いた『ある数学者の弁明』という本があります. > すでに出版されている日本語訳もあるのですが, もう著作権保護期間が終わっているようなので, フリーの翻訳をつくりはじめてみました. 数学関係者なら多くの人がこの本を知っているだろう. もちろん, Hardy は数学者として非常に優秀なので, 実績方面で知っている人も多いはずだ. それ以外にも優れた著書があり, それを知っている人も多いだろう. Hardy-Littlewood-Polya の『不等式』などはときどき論文にも引用されているのを見る. Hardy は Ramanujan を見出した人としても有名だ. 詳しくは Wikipedia を見てみるといいだろう. 英語版は[これ](http://en.wikipedia.org/wiki/G._H._Hardy){target=_blank}で日本語版は[これ](http://ja.wikipedia.org/wiki/ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ){target=_blank}だ. いい機会なので, 『ある数学者の弁明』を読んでみたいと思っている. 積読がたまっていく. ### 追記 翻訳終わったそうなので. あと Ramanujan (と Hardy) に関する映画, 「奇蹟がくれた数式」というのも 2016-10-22 に全国で公開されていて, そういう意味でもタイミングいい感がある. 私も頑張らねば. ### ラベル 数学 ## 数学教育とプログラミング: 何を使って何をしよう? ### 本文 いろいろ教えて頂いたので. 実際に小学生と勉強的なことをしようという話があるので, そこでどうしようか, というところ. やるなら PC いくつか用意しないといけないとかこれまたいろいろな問題はあるのだが. とりあえずは教えて頂いた本を読んでみよう. ### ラベル 数学, 数学教育, プログラミング ## 城西大の大島利雄先生が見た数学教員志望学生の状況を見て思い出した大島先生エピソード ### はじめに 元ネタは次の文献による. - [大島利雄, 大学における数学教育の問題点と工夫](https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~oshima/paper/rims1802.pdf){target=_blank} PDFのタイトルを見ると2018年のRIMSでの講演のようだ. これを見てふと思った大島利雄先生の思い出をツイートしたので, 備忘録的にまとめておく. - [ツイート](https://twitter.com/phasetrbot/status/1351739906612072451){target=_blank} ### ツイート引用 > いま話題の城西大関連での大島利雄先生、大学院での講義はシラバスではリー群だったのに常微分方程式のアクセサリーパラメータの話を始めたりして本当に意味がわからなかったが、必要あらばプログラムも書ける超人的な能力を持つ人格者なのだろうという感慨を得た。 > 確か「最近研究がまとまったので内容を変えてこの話をします】とか言っていたし、いい感じにまとまってよっぽど嬉しかったのだろうとは思うし、その辺の素朴な感情を見られたのは得難い機会だったのだろうとは思う。あと、常微分方程式がこんなに意味わからないのかというのも衝撃といえばそう。 > もっというと、ここでリー群の講義に出会えなかったために小林俊之先生の講義に出て、何も持たずに颯爽を講義をしていく様子が見られて感銘を受けたというのもあるので、総合的にいい経験だったと思う。なにせ未だにリー群は何もわかっていないので、何の講義でも関係はなかった。 小林俊行先生についてはぜひ次の記事を見てほしい. こんなに格好いい数学者はそう見たことがない. - [東大数理の小林先生があまりに格好よかったのでついでにいくつか話題を紹介する](https://phasetr.com/blog/2013/05/29/東大数理の小林先生があまりに格好よかったので){target=_blank} - [小林俊行先生のインタビューページ: インタビュー・井上学術賞受賞・小林俊行教授 無限次元の対称性の数学 ~根源から湧き出す泉の豊かさ~](https://phasetr.com/blog/2014/07/20/小林俊行先生のインタビューページ-インタビュー){target=_blank} ちなみにひとつめの記事にも小林先生の指導教員としても大島先生が出てくる. ### 大島先生のいい話 > 大島先生のいい話といえば、研究科長になって研究の時間が取れなくなったため、それまでライブラリ作成に使っていた時間を削ったところ論文数は増えたみたいな頭のおかしいことを言っていたので、東大数理にはこういう人がたくさんいるのかと言う経験を得たのも深い感銘を受けたポイントではある。 >これ、大島先生から直接聞いたのではなく確か松尾先生あたりが言っていたのだと思う。本当なのか当人に確認したわけではないし、本当でも嘘でもどちらでもいいのだが、本当っぽそうと思えるあたりが本当に意味がわからない。 >あとどうでもいい話として、キャンパスを歩いていたら大島先生も歩いていて、何か落とし物をしたので拾って「落としましたよ」と言ってあげたという個人的な小さな思い出がある。 ### 大島先生とは無関係に「白頭絡的超幾何又黒写像」 >全く関係ないのだが、大島先生のことを思い出すと自動的に常微分方程式を思い出すし、[白頭絡的超幾何又黒写像](http://kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1660-05.pdf){target=_blank}も何故か思い出す。 >これ「晴矢は光 $\circ(Picard)$」とかいう「それはいいのか」という翻訳的な何かがたくさん出てくるので、周囲の人、本当に困ったと思う。(英語での)論文はどうしていたのだろうという気分もある。 こういういい話は「数学まなびはじめ」などにいろいろまとまっている. もっとそういう記事や本を出してほしい. ## かけ算順序 ### 算数教育の悲しみ: 黒木さんのツイートを一部取ってきた #### 本文 面白いといっていいか困るところではあるが, 記憶しておきたいことだったので. あまりにも悲しい. #### ラベル 数学, 数学教育 ### 掛け算問題の悲しみ: 嘘は後々禍根を残す #### 本文 つぶやいたら多少の反応があったので. RT 先で似た経験の報告をいくつか見つけたのでちょっとメモ. 「理不尽」な体験, 本当に尾を引くからそれだけでも 明らかな嘘を教えるのはやめた方がいいと思うのだが一体何なのか. #### 追記 追加コメントがあったので一応記録しておく. 本当に何なのだろう. #### ラベル 数学, 数学教育 ## 統計科学のための電子図書システム ### 本文 [こんなツイート](https://twitter.com/AntiBayesian/status/316348969615773696){target=_blank}を見つけた. > "統計科学のための電子図書システム" > > 絶版になった統計関連の書籍を電子化し, 誰でも閲覧可能にしたもの. マジかよ…有り難すぎる… 以前動画を作るためもあって, 統計学の本はいくつか買ったし当面は必要にはならなさそうだが, そのうち何かのお世話になるかもしれないので, メモっておく. また, [ここ](http://miterew.com/Kiterew/f/TAG:2804519){target=_blank} に前に作った統計動画へのリンクもあるので, 御興味のある方は参考にされたい. ### ラベル 数学, 統計学 ## 作用素環と作用素論: スペクトル解析への応用 ### はじめに Evabow さんとちょっとしたやりとりをしたのでせっかくなので記録しておく. 私のツイートは [これ](https://twitter.com/phasetr/status/334647072487788545){target=_blank} だ. > @Evabow1 @bread_crust http://arxiv.org/abs/0911.5126 など, > Schrodinger のスペクトル解析に作用素環を使うというような話はあります. > 微分方程式でも調和解析でもなく作用素論の方面なので大分ずれはしますけれども ### 引用 はじまる部分はもっとあとの方だが, 面白い内容なので [元ツイート](https://twitter.com/Evabow1/status/334341927862431745){target=_blank} からはじめる. > 本ゼミの前提知識に作用素環も増えた. > > @Evabow1 ヤバいのでは・・・ > > @Evabow1 !?!? > > @Manaka0501 理解を深めるには必要になった. まだ初歩的なとこしか使わないが > > @bread_crust Banach*環のいい本教えてください!! > > @Evabow1 頑張ってください! > > @Evabow1 何が知りたいの? > > @bread_crust Banach*環, C*環と表現論つながりのことが知りたいです. > > @Evabow1 それは群 C*環の表現のことを言ってるの? > > @bread_crust そうです. > > @Evabow1 微分方程式でそんなん使うのか… > > @bread_crust 微分方程式←調和解析 $\leftrightarrow$ 表現論 $\leftrightarrow$ 作用素環 みたいな感じだと思っています. > > @Evabow1 ちなみに, それは一般論を知りたいの? 有限群を知りたいの?Lie 群を知りたいの? 無限次元 Lie 群を知りたいの? > > @Evabow1 えーっと他にもあるのかな… > > @Evabow1 なんつーか群 C*環で俺が知ってるのって, 今読んでる Davidson しかないんだけど (本当はもっとある), > それって本当に今必要なのかなって感じはある. > もちろん C*のことをある程度知ってるなら十分に読める. > > @Evabow1 そして非有界作用素のことを言ってるなら竹崎でも読めばいいんじゃないかと思うんだけど, それこそ本当に必要なの? > > @Evabow1 というわけで Davidson と竹崎を読んで俺に教えてください > > @bread_crust 3 時前に寝てしまって返信が遅れました. > C*環まわりの表現論の一般論と非有界作用素が知りたいです. > 作用素環が本当に必要なのかどうか現時点ではよく分かりませんが, > 微分方程式を別の角度から見ようと思ったときにどこかで使うと思うので > > @bread_crust 何かと忙しい院はなく学部のうちに手がつけられる所はやっておきたいなと思っています. > いろいろ助言をしてくださってありがとうございました. > > @Evabow1 ごめん, C*環のまわりの表現論の一般論ってなにを指してるのかがわからないんだけど, > 単に作用素解析とか GNS を指してるわけではなくて, 群の (ユニタリとかの) 表現のことでいいんだよね? > > @bread_crust 群の表現です, すみません. > > @Evabow1 @bread_crust など, Schrodinger のスペクトル解析に作用素環を使うというような話はあります. > 微分方程式でも調和解析でもなく作用素論の方面なので大分ずれはしますけれども > > @phasetr ありがとうございます! 数理物理方面も少し興味があるので, 挑戦してみたいと思います. ### コメント 作用素環専攻だったのに普通の作用素環の常識的なところも知らない自分, かなりまずいという意識だけはある. 最近だとどんな本で勉強するのだろう. 最近も何も, 数理物理に特化した本しか読んだことないので, 昔の本もろくに知らないが. ### ラベル 数学, 数理物理, 作用素論, 表現論, 作用素環, 微分方程式, スペクトル解析 ## 確率論と数論: 数論の闇 ### はじめに mr_konn さんとブルブルエンジン兄貴が確率論, 特にエルゴード理論と数論について話していた. [この辺](https://twitter.com/mr_konn/status/321608987558699009){target=_blank}だ. Kac の有名な小冊子にその辺の話があるのを知っていたので簡単に紹介しておいたので, それをこちらにも転記しておきたい. ### ツイート引用 > 確率論の講義, エルゴード理論の「おはなし」をしていくらしいのでこれから楽しみにしている > > @mr_konn もしかして: 整数論 > > @alg_d #いいえ > > @mr_konn 俺の時整数論だったよ. > > @alg_d @mr_konn の最後にエルゴード理論と連分数の話が書いてあります. > 他にも確率論と数論の話として素数定理についても触れられていたりします > > @phasetr 情報ありがとうございます! > 素数定理とも関連してくるんですか……すごい…… ### コメント 別件だが, エルゴード理論は作用素環でも大事だし, 応用でもそれなりに出てくる. 確率論, 作用素環ともに統計力学との関係があるが, その辺で両方に現れる. 物理としてエルゴード理論はほとんど意味がないが, 数学では非常に面白いテーマとして独自に発展している. 数学としての面白さとも関係するところだが, 応用でも出てくる. 例えば前に作った動画, Google ページランクの数理の確か[この辺](http://www.nicovideo.jp/watch/sm8282178){target=_blank}で紹介したと思うが, 原始性というのが確率論でいうとエルゴード性に対応したはずだ. 舟木先生の本では「有限状態空間上のマルコフ連鎖」のところで議論されている. 定理 7.22 が Google のページランクでも大事になっていたという記憶がある. 調べ直して書いているわけではないので, 間違っているかもしれないが, Google のページランクは数学として確率論と線型代数にまたがる, しかもとても面白いところを使っている話なので, 興味がある向きはぜひ勉強してみてほしい. 私の動画含め, Web 上にも勉強の資料はあるが本があるのでそれを紹介して終わりにしたい. ### ラベル 数学, 数理物理, 作用素環, 確率論, 応用数学 ## 乱数の数理 ### 本文 [美少女のちょまどさんが何やら呟いていたので](https://twitter.com/chomado/status/432358895235784704){target=_blank}. > >初学者丸出しで恥ずかしいけど日記を書きました > >@chomado 線形合同法とか疑似乱数を生成する方法とかで関数とか作ってみると入れる値の必要性が良く分るのかにゃ? > >@emaxser ! なんだか高度そうな話ですね > >@chomado ぜんぜん, 普通に作れちゃうので作っちゃえば良いと思います!w > >@emaxser 「擬似乱数を生成する方法で関数を作る」とは, つまり rand () のようなものを自作する, ということですか? > >@chomado そうそう, 線形合同法って漸化式一個だけだから簡単に関数作くれるお > >@emaxser 調べてみます…ありがとうございます! > >@chomado 詳しい人に聞いてみてもらいたいのですが, >「熱雑音」を利用した現実的な乱数生成法とかいうのもあるようです > >@chomado また疑似乱数生成アルゴリズムとしてメルセンヌツイスターというのがあります > >これにはそこそこ大変な数学を使っていますがひさこさんに聞けばきっと教えてくれるはず > >@phasetr !! さすが数学にお詳しい…! ありがとうございます! > >@chomado 「数学が何の役に立つ」と言われるのが本当に頭に来るので色々な役に立つ場面を調べてきたと言うアレです. >以前受験生にページランクの話をしたら「私は Google のページなんて使わない」と恐ろしく愚かな返事をもらって「あっこんなの調べても意味なかったのか」と気づきました > >@phasetr かなしみ > >@ka9e これが社会です > >@chomado 逆に, seed を保存しとけば, 何度も同じ乱数を得られますね. >また, seed がバレたら, 乱数じゃんけん必勝プログラムを作られる可能性もあります. > >@dempacat !! たしかに! それはとても興味深いです!! ありがとうございます! ひさこさんにぶっこんでおいたので後でメルセンヌ・ツイスター教えてもらおう. ### ラベル 数学, プログラミング, 乱数, 代数幾何 ## お前の的 ### メモ: お前の敵さんの家庭教師録 #### 本文 お前の敵さんツイートが面白かったので. [この辺](https://twitter.com/omaenoteki/status/420849343315193856){target=_blank}から始まる. #### 引用 > 学研のドリルの出来がとても良い (中卒なので今知った). > > ほとんどの参考書は解説に枚数を使いまくってるんだけど, > 成績悪い中学生に解説を読んでわからない箇所を理解するとかいう高度な学習行動取れるはずがないので, > 基本事項暗記させてモリモリ問題解かせる学研のシステムは大変助かる. > > 成績悪い中学生教えるのほぼ始めてなのでスタンダード教材が全くわからんしそもそもスタンダード教材があるのかすらわからん. > > かけ算の順序の話とか昔流行ったけど, ああいうことする教員の気持ちは本当にわかる. > 交換法則小学生に理解させるのクソ難しいし一連のプロトコルとして暗記させた方が脱落者が少ない. > そしてそれをインテリが批判する. > 教員が死ぬ. > > インテリは「暗記ではない本当の理解」みたいな教育を望むけど, > 我々の眼前にはかけ算や一桁の暗算ができない子供が大量に存在し, > 我々は限られた時間で彼らをなんとかしないといけないんですよ. > > 難しいことは君たちが私塾でやってくれ. > 公教育の現場は地獄なんだ. > > 2 時間かけてドリルの使い方を教えた (疲れた) > > 問題を解く, 丸付けをする, 間違った問題に印をつける, 解説を読み答えを覚える, 間違った問題をもう一度解く. > このプロセスを叩き込むのだって骨が折れるのにいきなりエヴァに乗って戦えとか無茶にもほどがある (生徒も 14 歳です). > > 家庭教師地獄ツイート妙に RT 伸びるけど, そんなに勉強できない子供のエピソード珍しいんですか…. #### コメント 私が通っていた公立の小学校・中学校もあまり学力的にはよろしくなかったのだが, こういう話あったのだろうか. 周り (の学力) にあまり興味なかったのでよく分からない. 塾的なものに行ったのも浪人中の予備校だけだし, その辺のこともよく分からない. 単純にへー, ほーと思ったので記録. あとかけ算の話があるがあれで問題になっているのは, 交換法則を小学生に理解させることではなく, 理解している (と思しき) 子が特に順番を気にせず書いた 計算式を不正解とするところが問題にされていると認識している. 話題にしている人がピンからキリまでいるし 全体を把握しているわけでもないのでアレだが, 私の知る限りのまともな人は交換法則が理解できるかどうかは議論していないと思う. もっというなら, 交換法則自体は既に学んでいるという前提 (カリキュラムがそうなっている) で, 文章題から式を立てて計算というフェーズでの変な話が問題になっているという認識. 誰か交換法則を小学生に理解させることを問題にしている人いるのだろうか. あとやっているのは家庭教師なのだと思ったが, そこから一足飛びに公教育を語っているのがよく分からない. 指摘されている「インテリ」陣のうち, (大学の) 教官が携わっているのもかなりの程度公教育だろうし. 人によっては本当に「私塾」 (慶應なども含めている) でやっている人もいるだろう. 言論の守備範囲, よく分からない. #### ラベル 数学, 数学教育 ### 算数の伝道師 お前の敵 #### 本文 お前の敵さんのツイートに深い感銘を受けたので忘れる前に記録する. [この辺](https://twitter.com/omaenoteki/status/425965366964002817){target=_blank}から始まるいくつかのツイートだ. >【速報】一桁の暗算ができなかった生徒, 小 1 の算数ドリルをやらせたら普通にできるようになる > >いや当たり前なんだけどさ…なんで誰もこれをやらせなかったのというかさ… > >俺「 2 たす 2 は? 」生徒「よん! 」俺「 3 たす 7 は? 」生徒「じゅう! 」親 (預言者を仰ぎ見るような顔でこちらを見ている) > >小 1 レベルの算数ができない子にはですね, 小 1 の参考書をやらせるんですよ. >するとできるようになるんですよ. >僕はせんもんかなのでくわしい. > >一桁の暗算ができない生徒, 方々の塾や家庭教師を練り歩いたあげく僕に当たったらしく, そいつらは今まで何をしていたのかマジで理解に苦しむ 関係するやり取りもまとめておこう. こちらは nekohaus さんとのやり取り. >【速報】一桁の暗算ができなかった生徒, 小 1 の算数ドリルをやらせたら普通にできるようになる > >@omaenoteki 大きな一歩ですぅ. > >@nekohaus 人間の可能性を垣間見ました こちらは sulaymanhakiym さんとのやり取り. >【速報】一桁の暗算ができなかった生徒, 小 1 の算数ドリルをやらせたら普通にできるようになる > >@omaenoteki その彼氏は何歳ですか? > >@sulaymanhakiym 聞いてないしわかんないです…いるのかな… > >@omaenoteki いや彼氏ってミスター・ヒーの意味であって恋人の義ではない. >分かり難い言葉を使って済みません. > >@sulaymanhakiym あぁ, 生徒が女子だったもので. >15 歳です. > >@omaenoteki 我が高校の世界史教師は東大を出ているくせに「中学の時たまたま学校を休んだせいで今でも漢和辞典が使えない」などと言っていたので, >頭の良し悪しとは無関係な所謂ボタンの掛け違いということはありますよね. > >@sulaymanhakiym 所謂落ちこぼれの中にどれだけそういうのが混ざってるのかと思うと暗澹たる気持ちになりますね… あと私とのやり取り. >俺「2 たす 2 は?」生徒「よん!」俺「3 たす 7 は?」生徒「じゅう!」親 (預言者を仰ぎ見るような顔でこちらを見ている) > >@omaenoteki 深い感動 > >@phasetr 引き続き算数の伝道を続けて行きたい所存 > >@omaenoteki ちょっと本当に感動したので超注目しています > >@phasetr ありがとうございます. >簡単な算数程度はどの子供にも身につけて欲しいと思ってるので, >自分の能力の許す限りがんばって教えて行きたいです. これ, 感動しない人類存在するのだろうか. #### ラベル 数学, 算数, 数学教育 ## Summer School 数理物理 2013 量子場の数理 ### アナウンス #### はじめに 今年の分の Summer School 数理物理のプログラムがアナウンスされた. [これ](https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/mp2013.htm)だ. メンバーが個人的に超豪華なので絶対に行く. むしろ速攻で参加申し込みしてきた. #### 講師・講演題目 | 講師 | 講演題目 | |---------------------|---------------------------------------| | 新井朝雄 (北大数学) | 相対論的量子電磁力学の数理 | | 河東泰之 (東大数理) | 共形場理論と作用素環 | | 原隆 (九大数理) | 構成的場の量子論---古典的な問題の紹介 | | 廣島文生 (九大数理) | 非相対論的量子場とギブス測度 | #### 概要 知り得る限りで大雑把な内容を書いておこう. まずは新井先生から. ##### 新井先生 河東先生以外の 3 人は構成的場の量子論の話だ. 最近の展開はあまり追えていないので良く分からないのだが, QED は少しずつ相対論的な方に流れてつつあるようだ. 今日も arXiv に佐々木さんの論文, [One Particle Binding of Many-Particle Semi-Relativistic Pauli-Fierz Model](https://arxiv.org/abs/1303.5025){target=_blank}が上がっていた. 個人的には物質の安定性含め, 非相対論的量子電気力学はまだまだ開拓の余地がたくさんあるし, 粒子系を電子場に拡張してさらにフォノンも足して物性をやるとか, 特にそういう方向に興味があるが, 最近の展開として相対論の方を出してこようということなのだろう. 新井先生は一度講演を聞いたことがあるだけだが, 修士のときに本や論文に関して色々と誤植訂正表を送ったり, メールで相談にのって頂いたりと非常にお世話になった. さぼりっぱなしの論文, 夏までに書き上げて新井先生とお話したいところだ. ##### 河東先生 共形場は代数幾何, 頂点作用素代数, 確率論など色々な数学が交錯する対象で, 場の量子論が記述できる作用素環にも当然対応する話がある. その辺を話すのだろう. ちなみに私が知る限り共形場理論は, 構成的場の量子論での (phi^4) 以外で存在証明がきちんとできた貴重な相互作用つきの理論だ. 作用素環専攻であったにも関わらずあまりまともに作用素環を勉強しておらず, 代数的場の量子論についても難しくて手が出せずに終わったので, あまり具体的なことを知らない. これも楽しみにしている. ##### 原さん 原さんは東大物理の人達と査読しているイジング本の著者だ. 何となく相対論的場の量子論での $\phi^4$ の話をするのではないかと思っている. 基本的な所は多少触れたのだが, 難しくて手に負えなかったところばかりだった. いい機会なのできちんと勉強しておきたいのでこれもまた楽しみ. あとイジング本の査読をしていて田崎さんには何度か会ったことがあるが, 原さんにはお会いしたことがないので挨拶したい. ##### 廣島先生 廣島先生はもともと北大での新井先生の学生だったと聞いている. 汎関数積分 (経路積分) を使った場の理論の研究では日本でほぼ唯一の人だ. 2 年くらい前に次のような本を書いていて, これが汎関数積分による結果をかなり包括的にまとめている (はず). 「はず」というのは, 確率論の知識不足でそもそも汎関数積分による結果が追い切れていないということと, 本自体も一部追い切れていないからだ. 量子統計方面も同時処理したいということもあって私のメインは作用素環だが, 汎関数積分も当然強力な武器としてずっと気になっている. 構成的場の量子論の結果自体も含め, 知識の整理にも役立ちそうで, これまた期待している. 今から楽しみで仕方ない. 最終日が平日なので, きちんと行けるよう万難を排して臨みたい. ### Summer School 数理物理 2013 のスピーカーの 1 人, 九大の廣島先生の Nelson モデルの紫外繰り込み論文を眺めてみた #### はじめに 何度か話題にしている Summer School 数理物理 2013 だが, そのスピーカーの 1 人, 廣島先生の論文が arXiv に出ていたので軽く眺めてみた. Gubinelli-Hiroshima-Lorinczi の [Ultraviolet Renormalization of the Nelson Hamiltonian through Functional Integration](http://arxiv.org/abs/1304.6662) だ. Lorinczi は汎関数積分による構成的場の量子論で有名な人だ. Gubinelli は知らない人だが, Lorinczi の学生だろうか. 何はともあれこの論文を軽く眺めよう, という話だ. 専門の話題とはいえ, 詳しく読み込んではいないので興味がある向きは自分で追ってみてほしい. 参考文献として Lorinczi-Hiroshima-Betz による本を挙げておこう. 当たった文献を全て細かいところまで読み切れていないので. 実際どうなのか分からないのだが, 時々 1 体だけしか扱わない論文もある中, $N$ 体系に正面から取り組むようだ. 前, QED の繰り込みでは $N$ 体を扱うの大変とか見た覚えがあるので, 場合によっては多体系にするのがまだ本質的に難しいこともあるとぼんやり思っている. #### ネルソンモデル 扱っている Nelson モデルだが, これはスカラー中性子とボソンの結合系をモデル化していることになっている. スカラー中性子って何だ, という向きがあろうが, とりあえずそういう人工物を扱っていると思ってほしい. こういう人工的な系を考える理由として 1 番は数学的な単純化のためだ, スピンが効かないところだけを見るのだ, と強弁する. もっと積極的には, 今回のように発散処理にだけ集中したいから. 余計な要素があるとそこの処理までしなければいけなくなって, ただでさえきつい話がさらにきつくなる. そして読む方の負担も飛躍的に増える. 実はこの Nelson モデルの Nelson は 2011 年に [The Inconsistency of Arithmetic](http://golem.ph.utexas.edu/category/2011/09/the_inconsistency_of_arithmeti.html){target=_blank}で話題になった Nelson だ. 今は基礎論あたりにいるが, 元々構成的場の量子論にいた人だ, という小ネタをはさんでおこう. #### ネルソンモデルの別の由来 またこのモデルの別の由来も挙げておこう. 例えば, QED でポテンシャルの 2 次を落としたモデルはこれになる. (もちろん正確には電子のスピンを無視している. ) QED の 2 次を落としたモデルは Lamb シフトを摂動ではじめて説明した論文で使われたので, QED からの意味もある. また, 電子-フォノン系と思ってもいい. この観点から Nelson モデルを見る, というのが私の主戦場だ. 正確には連続系は扱わないで格子系, Hubbard を扱っているのだが, それはもちろん相転移が見たいからだ. 念の為に言っておくと, この時点で上に書いた, 物理として QED の近似だというのがかなりつらい話になる. なぜかというと, 電子-フォノン系だと電子間に実効的な引力が発生する場合がある. QED ではこんなことは起きないので, 引力が発生しているとすると, 本来の QED では起きない現象が起きる可能性があって, モデル化がまずいという話になる. もちろん色々な系に適用するためには, 電子-フォノン系での結合定数はある程度一般にしておく必要がある一方で, QED なら結合定数は定数なのでその辺も色々あるが, その辺は純粋な物理の人の方が遥かに詳しいのでそちらに任せる. あと, 実は非平衡統計のモデルとしても使われる. 小さな系と熱浴の相互作用のモデル化に相当する. この線だとよく平衡への回帰 (return to equilibrium) という問題を議論する. 一部物理的にどうなのそれ, という話もあるが, 物理としては QED , 物性, 非平衡が, 数学としては作用素論, 作用素環, 確率論が交錯する面白い分野だ. 物理として問題を少し変えただけで対応する数学を変える必要があったり, 逆に全く違う物理に同じ数学が使えたり, さらには物理として同じ現象が違う数学ではどう見えるかを調べるなど, 数学, 物理, 数理物理としての見方, 研究ができて面白い. #### モデルの定義 脱線しまくったので本題に戻そう. 1 章ではモデルを定義している. Hamiltonian の定義などは, 比較的物理の人にも見やすい形式的な書き方も出している. 数学的に正確な書き方については新井先生の本の 12-13 章を参照してほしい. (1.3) で $\phi$ を実にするのを疑問に思う数学の人がいるかもしれないが, これは汎関数積分を使うときにはよく課す条件だ. こうすると Segal の場の作用素が可換になって色々と扱いやすくなる. 詳しくは上の本なり新井先生の本を読もう. 今回の論文の目玉は「電荷」分布の $\phi$ を $\delta$ 関数にする, つまり点電荷極限を扱うことにあるようだ. これは物理として自然な設定なのだが, 数学的に言うと死ぬ程扱いづらい設定になる. 物理として自然な設定が数学として死ぬ程扱いづらいというのはよくある話で, ここの戦いが数理物理本陣となる. 物理の人は当然数学としては適当に処理するが, かといって数学の人はやるモチベーションがない. そもそも数学的に本当に面白い保証もない. 面白い現象があることを示し数学者を巻き込むには数理物理の人間が実際にそれを示すしかなく, つまり我々の戦いはここからはじまる. P3 に主結果が (1), (2), (3) としてまとまっている. UV カット (女性用化粧品の話ではない) をどうつけて, それをどう外して紫外発散を制御するか, 繰り込み処理するか, また抽象的な存在問題で終わらせず具体的にどう書くか, というところが問題だ. そこで汎関数積分を使う, というのがこの論文. ちなみに, 赤外発散しかまだやっていないが, 私はここで数学として作用素環を使っている. 論文にあるように, 単なる紫外発散だけなら, 1964 年に既に Nelson が処理している. 紫外発散処理は一応できることが分かっていたので, 赤外発散に集中していた (そして恐しく難しかった) というのが歴史的経緯になる. ここでは数学としては作用素論的に処理している. Nelson は Gross 変換というのを使っているのだが, これは私も修論でお世話になった. そしてこの論文では Gross 変換を使わないらしい. 前, Nelson タイプのモデルの紫外発散に関する [HHS05] の論文では, 作用素論的な手法で Gross 変換を使っていたはずだが, 今回はかなり違うらしい. この論文も読むのつらくて途中で投げた. P4 (1.6) がこの論文でのキーになる (とはっきり書かれてている). 正確にはこの経路測度表示. 汎関数積分表示の何が大事かというと, 作用素の情報が具体的な関数で書けることにある. 作用素を直接扱うのは骨が折れる:ベクトル (関数) に対する作用しか見れず, その作用にしても作用前後で関数が大きく変わるからだ. 微分を考えると分かるが, 作用前に関数の大小関係が $f < g$ だったとしても, 微分した後にどうなるかは一切分からない:反転することもあるし, 各点ごとに振る舞いが変わることもある. そういう作用素の特性を調べるのに, 具体的な関数を使えるというのは非常に大きい. ここでは内積の積分表示だが, 作用素そのものを直接積分表示で書く場合もある. 例えば反磁性不等式などが強力になる. 反磁性不等式は単純な作用素論では期待値を取ったあとの関係式になるが, 汎関数積分表示を使うと積分核による各点の評価に持ち込むことができ, 強い評価ができる. 次の (2) に関しては技術的な話っぽいので省略. 確率積分がどうの, とかそんな話. ここで (3) が個人的に面白い. 弱結合の極限で湯川ポテンシャルが出てくるという話. 実効ポテンシャルの評価がきちんとできる. 論文全体で 3 次元を仮定しているが, 結果自体はどの次元でも成り立つとのこと. 時々, 3 次元に特化する代わりに最大限シャープな結果を出す, という論文もあるので, こういう部分は注意して読みたい. #### 2 章 2 章に進もう. はじめにポテンシャルに関する制限 (仮定) が出てくる. $V$ は有界連続とのことで, Coulomb ポテンシャルが含まれない. 特異性があるからやるとしんどいのだろうが, やはりこの拡張はほしい. 定理 2.2 で Hamiltonian を繰り込む. あとは定理の証明に向けてごりごり頑張る, という感じで章が終わる. さらっと書いたが論文の本体で P22 まで続くハードな解析だ. #### 3 章 3 章で実効ポテンシャルの話になる. ここでは分散関係を $\omega_{\nu} (k) = \sqrt{k^2 + \nu^2}$ と仮定している. ここは既存の結果も使いつつ, 比較的さらりと終わる. 途中で Euclid 場の話も出るが, 付録に簡単な解説がある. 興味がある向きは Lorinczi-Hiroshima-Betz の本か, 新井先生の本を読むといい. #### 論文の本体 論文の本体はハードアナリシスで私が知らない (そして勉強したいとずっと思っている) 確率解析なので, あまり何もコメントできない. よく分かっていないのだが, 電荷分布を点極限にしているから紫外だけでなく赤外切断も外していると思っていいのだろうか. それならかなり強力な結果と言える. ハードパートを追っていないのでどこで有界連続性が本質的に使われているのか分からないが, これを完全に加藤クラスに持ち上げられると嬉しい. 加藤クラスには当然 Coulomb が入っている. あと別件というか私がやるべきタスクだが, Hubbard-フォノン系で同じ結果を出したい. これは特に無限体積 Hubbard で確立したい. あとは温度を入れたときの振舞いか. Nelson でも平衡への回帰が大事だが, Hubbard では平衡統計というか物性としての意義がある. というか, 最近研究さっぱりやっていないし, Summer School 数理物理の前に 1 年以上放ったままの論文書き上げたい. 動画も作りたいし, したいことたくさんある. #### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 構成的場の量子論, 確率論 ### Summer School 数理物理 2013 量子場の数理に参加してきたがスーパー楽しかった #### 本文 [Summer School 数理物理](http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/mp2013.htm){target=_blank}に参加してきた. とりあえずスーパー楽しかった. 河東先生のは微妙なところだが, 大体全ての講演の内容にピントが合いまくっているので, 大分景色が広がった. 入門的な話を議論するということで面倒なところに触れていないからということもあるが, 人の話が これだけクリアに分かった経験もなく, 楽しかった. 順に感想を書いていこう. ##### 新井先生: 相対論的量子電気力学 新井先生の話は 2 日使って相対論的 QED の 発見法的な (数学的に厳密でない) 議論をした上で, 最終日にきちんと定義できる部分の話をした. Hamiltonian を定義してその詳しい性質を調べたいわけだが, 今のところ運動量・空間の切断をつけないとうまくいかないということで難しいが, それでも議論は進んできている, という夢のある話が展開された. 切断つきとはいえ, 思った以上に議論が進んでいたのでびっくりした. 最近の新井研は相対論の人が多いらしく, 会場内でも学生さん達がその辺の議論をしていて楽しそうだった. 最終日のお昼, たまたま新井先生と新井研の学生さん達と食事しながらお話したのだが, 散乱理論さえ構成できれば基底状態の存在などはとりあえず言えなくてもいい, とか「それはそうだ」という話を色々した. とにかく本当に物理的な, カットオフなしの理論は何も言えていないから, やるべきこと・知りたいことは色々ある. QCD やその格子正則化の議論もしたいが難しい, という話とか色々. 論文タイトルだけは QCD を示唆しているが, 実際にはヒッグスが起きたあとの massive theory であって, ある意味こけおどしのような論文もあるからそんなに難しいと思わずとりあえず目を通して比較してみたら, とかいうコメントもあったりして実に楽しそう. 活発に研究されているようで見ているだけでも楽しい. あと, 学生の頃からずっと新井先生にはメール上で本の誤植を送ったり論文をお送りしたりと交流があったのだが, 今回ようやく始めてお話する機会を得た. きちんと覚えて頂けていたようで, 何よりであった. 非同値表現など CAR ・ CCR の表現論周りで, 簡単過ぎるかもしれないがやらなければいけないことなどを考えていて, それについても少しお話したところ, Derezinski がきちんとやらないといけないと言い始めているようで, 実際に大事だろうから是非やるといい, 的な話もした. 考えていることが無意味ということはないようなので, 少し安心した. その方面も基礎的なところをきちんと固めていきたい. 「やろうと思っているがなかなか時間が取れないところをやってくれているので嬉しい」的なことも言われたので, 地味な研究だが粛々と議論を進めていきたい. 今回有限温度の話は全くなかったが, その辺も絡めてやっていく必要がある. ##### 河東先生: 代数的場の量子論における各種共形場理論 作用素環専攻で比較的近い分野であったにも関わらず, 河東先生の話は一度も聞いたことがなかったが今回はじめて聞いた. 物理的に何かあるのかは全く分からないが, 単純に数学として非常に面白い内容だった. パン耳パイセンとか Twitter 上の作用素環の人, この辺やって私にレクチャーしてほしい. 冨田-竹崎理論とか多変数関数論とか, その辺のサポートならとりあえずある程度はできるのだが. 「この辺やっているのは私と Longo と Longo の学生くらいしかいないので人が増えてほしいのですが」的な話をしていた. 本当に面白いのでここも人が増えてほしいのだが, 冨田-竹崎理論やら多変数関数論が必要やらで参入障壁が高く感じられてしまうようで, 全然人が増えません, とのこと. その辺の詳細をうまいこと回避していたためとはいえ, かなり良く分野の様子が見えてこれも本当に楽しかった. むしろ, その辺をうまく回避しつつ面白いところを的確に時間内に盛り込んでいった河東先生の力量が凄まじいとも言える. Twitter でも河東先生のトークが凄かったという呟きを見かけたが, 確かに圧巻だった. 初日のトークで「私は数学者なので演算子ではなく作用素といいます」という話があったのだが, これを受けてその後, 原さんは「僕は物理屋なので, 演算子, といいます」といい, その後さらに廣島先生が「僕は数学者なので作用素といいます」と言っていた. 原さんが物理学者に物理学者と認識されているのか非常に気になるところだがそれはともかく, 原さんが自分を物理「屋」といい, 河東・廣島先生が自分を数学「者」と言っていたのが面白かった. 講演自体だが, 初日は場の量子論と Wightman 場, 作用素値超関数が必要というところから非有界で鬱陶しいので有界作用素に移るという話から始まった. 物理としては 4 次元 Minkowski 時空で Poincare 対称性を考えるが, これだと例が作れないしよく分からないので, - 数学としてきちんとできて面白い共形場に移ること, - フルの共形場ではなくカイラルに移って議論しよう, - 時空としては $x=t$ の直線上, しかもコンパクト化して $S^1$で対称性としては $\mathrm{Diff} (S^1)$ という巨大な群を考えよう, - そしてその公理系を簡単に説明した, というところで話が終わった. 設定に関する気持の部分なので特筆すべきことはない. 2 日目からが本番で, 数学的な話がはじまった. これが面白い. Haag duality やら Reeh-Schlieder やらあるが, 特に Haag duality は話の中で拡大の極大性や locality との兼ね合いで酷使されるととても大事なのだが, 結構難しいがそれは公理として認めてしまってとにかくやってしまえばいい, みたいな話をしていて笑った. さすがに自分の学生がこの辺したいと言い出したらきちんとやるようにはいうようだし, それはそうだと思うが, それも含めて笑った. Haag duality は単なる便利なコンベンションくらいに思っていたのだが, 実際の議論では本質的に効いてくるようだった. 例を作ることと合わせて, 共形場の定式化の 1 つである頂点作用素代数やそれが発展する契機になった Moonshine 予想の話を噛ませたあとに作用素環的な議論が進んだ. 頂点作用素代数の結果を使いつつ議論するのは 3 日目の最後までずっと出てきたので, 相当大事なようだ. 共形場の定式化として適当に対応があることを使って, 頂点作用素代数で議論されていることを作用素環でトレースすることやその逆についてもかなり活発に議論されている模様. 同じ理論を記述しているのだからお互いの対応があるはずだが, 頂点作用素代数も代数的場の量子論もそのままでは一般的過ぎるから, 適当に制限をしたところでないと完全対応はないだろうという話, そしてそれは作用素環では完全有理性という条件で良さそうだ, ということだった. 完全有理性は本質的に面白い結果を出すところでは大体仮定されるらしい. きちんと確認していないが, 完全有理性は河東先生達が定義した概念のようだ. この辺もかなり凄い. 頂点作用素代数というか, 物理的に同じ理論を研究しているのだから別の数学を使ってできたことは作用素環でもできるはずだしその逆だってできるはず, というのは構成的場の量子論でも同じで, 作用素論・作用素環でできたことは確率論 (汎関数積分) でもできるはず, というのは私も思っているし実際にやりたいことでもある. そういう意味でも河東トークはとても楽しかった. 頂点作用素代数と作用素環は一方は純代数, 一方は解析学と本当に本来の興味感心がかなり違うはずなのだが, そこに対応する議論が展開できるというのはひどく非自明で楽しい. 河東先生も「昔は考えることもできなかったような分野の数学者とも話が通じるようになってとても楽しい」的なことを言っていた. 何かの文章でもあったが「昔は operator algebra で検索すると vertex operator algebra も引っかかって鬱陶しいと思っていたが, 今ではきちんと関係があることが分かった」みたいな話をして笑いを誘っていた. 3 日目はカイラルから発展してフルの共形場, 境界共形場の話をして非可換幾何の話をして終わった. 公理の設定があること, 共形場を全く知らないのでどういう話が常識なのかも知らないこともあるが, カイラルから共形場が復元できるというのはなかなか凄い. 境界つき理論との関係もなかなか無茶で, 境界の追加・削除の議論というのも凄まじい. 最後, 非可換幾何の話をするときに非可換幾何の Dirac 作用素を見つけるのに, 頂点作用素代数の構成を媒介して見つけてくるというのがかなり心に響いた. 思いもしない異分野の相互作用として相当に格好いい. 何かさらっと話していたし発見者が誰なのか確認してこなかったが, 発見者, 相当興奮したのではなかろうか. やや別件だが, 非可換多様体は実際には非可換スピン多様体であるという話がされた. 前から普通の多様体の話をしているはずなのに何故 Dirac 作用素が出てくるのか不思議だったが, 実際, 非可換多様体の定義として今使われている spectral triple は非可換 Riemann 多様体, 特にスピン多様体であると直接確認できたので, その辺の胸のつかえが取れた感もある. 立川さん (後で名前を把握したというか顔と名前を一致させた) が色々面白げな質問をしていて, 超弦周りの話と何か絡んでいくのかもしれない. そもそも AdS/CFT とかある. 物理がどうなのかは全く分からないが, 数学としてはとても楽しいのでどんどんやっていってほしい. よい話だった. ##### 原さん: 構成的場の量子論, $\phi^4$ の話 田崎さんからの影響で何となく「さん」づけで呼ぶのが自然な印象がある原さんであった. 田崎さんとの共著で出る予定の Ising 本の査読をしていることもあり, 一応構成的場の量子論にいる人間として先達でもあり, 名前はずっと前から認識していたが, 今回初観測に成功した. 何か凄いかわいいというか穏やかな感じの人だった. 3 日目, ホテルの隣の部屋の人が変なことをして鳴らして警報機で起こされるなど, 今回は散々だったらしい. 体調が万全であればもっと色々な話が聞けたかと思うと残念だ. これはこれで, 今までふんわりしたことを知っていただけでもう少しきちんと知りたいけれどもなかなか勉強の時間が取れず, 解析が死ぬ程つらい分野のため精神的負担も大きかった triviality に関してある程度具体的に状況を把握できたので, とても有意義で楽しかったのだが. Ising 本を読んでいたこともあり, スピン系に関する議論にピントがあっていたので滅茶苦茶面白かった. 「どんな汚い手を使ってでも OS の公理系を満たす例を作ればこちらの勝ち」という台詞, 非常に気に入っているというか, 私も基本的にこのスタンスというか, こういう風に言っている人達の背中を見て育った結果というか, こう色々なものを想起して感慨深く楽しい. Ising で古典スピン系の様子を一定以上把握できていたので, ハードアナリシス部分はともかく, 今まで以上に景色を見渡せるようになった感がある. もちろんハードアナリシスパートこそが命なので, 全然何も分かったことにはなっていないけれども. Ising 本を読んだとはいえ, あまり真面目に 13 章を読んでいなかったので相転移・臨界現象と $\phi^4$ がどう関係するのか全く理解していなかったのだが, スケール変換に関する繰り込みで使うこと, その使い方というのをようやく把握できたので, 胸のつかえが取れた感ある. あれは本当に格好いい. スペクトル表示や鏡映正値性の話をもっときちんと聞きたかったが, 仕方ない. Frohlich から Hubbard 強磁性の解析にも鏡映正値性が使える可能性があるからちょっとやっておけ的なことを言われているし, もう少し真面目に勉強したい. Ising 本の付録, あまりきちんと読んでいないので, もう一度読み直したい. $\phi^4$ の triviality について, 原さんは相当思い入れがあるようで, 小話をしていた. 学部から院にかけて素粒子をやろうとしていたから場の理論を頑張って勉強していて $\phi^4$ ももちろん頑張って計算したが, 院に入ったくらいだかに triviality 周辺の結果が出てきて, 自分の 2 年間は何だったのかと思った, みたいな話をしていた. 折角相関不等式のプロに会ったので, Hubbard でそういう話がないか聞いてみた. 凄い便利だからあったら誰かやっているだろうけれどもあまり聞かないなら難しいのではないか, とか実に真っ当なコメントを頂いた. あったらいいな, くらいだし, あろうがなかろうが無限系 Hubbard はやるしかないので粛々と進めるだけの市民だった. あと Ising 本を催促してきた. もう少しでできるとしか言えないとのことだったが. このブログなど見ているかはどうかというのは積極的に棚に上げ, とりあえずここでも催促していきたい. ##### 廣島先生: 汎関数積分による Nelson モデルの話 廣島先生も一方的に名前だけ把握していたが今回初観測に成功した. ほぼ一環して経路積分と言っていたが, 要は確率論を使って場の理論を記述していこうという話だ. ずっと興味はあったがあまり真面目にやっておらず, というか粒子系の方で確率解析やら何やら色々必要でしんどくて全く手がついていない分野だったため, とても (おそらく一番) 楽しみにしていた. 先日ささくれパイセン向けセミナーとして場の方の経路積分は復習していたので, 大体はついていけた. もちろんありとあらゆる意味でハードアナリシスこそ本道でそこについては全くフォローできていないが, 以前よりも親しみは増したので大変に有意義であった. 赤外正則化の元での個数期待値の指数減衰や (confined potential の場合の) 位置の指数減衰に関する詳細な評価ができるというのは, やはり圧倒的に力強い. 非 Fock 表現での Nelson (正確には私が知りたいのは van Hove) の基底状態について, 汎関数積分で見るとどうなるかが知りたいのでちょっと時間を取って取り組みたい. 物理での赤外発散の位置づけを全く理解できていないのがつらいところだが, とりあえず数学というか数理物理として処理しきりたいと前から思っている. Pauli-Fierz は 3 日に 1 回夢に見ると言っていた. うらやましい. ##### 小嶋先生との話 廣島先生の 2 日目, 基底状態の非存在に関する議論が出たときに「数学者である廣島先生に聞くのは筋違いかもしれないが」との前置きのあと, 基底状態の非存在に関する物理について質問されていた. 鹿野さんとのやり取りなどほとんどフォローできていないのだが, そもそも赤外発散とは何か, 赤外正則化と実際の物理とは何か, 赤外発散があるときの基底状態とは何か, といったところの物理, 私はよく把握できていないことを改めて認識した. 物性や有限温度への応用で冨田-竹崎理論を使えばいい, という話もあったのだが, それはそれでまず数学として色々難しくてあまり進んでいないというコメントをした. 一応 BEC の存在を言えている系はあるので, その辺の話なども少ししたら, 興味を持って頂けたようで, とりあえずプレプリントを見てみたいというお話になったので, プレプリントをお送りしておいた. 以前の Summer School 数理物理の BEC 回のとき, 小嶋先生もスピーカーとして話していて, 色々考えないといけないことはあるということなので, 多少なりとも参考になれば嬉しい. ##### 総評 超楽しかった. #### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 作用素環, 作用素論, 確率論, 場の量子論, 統計力学, 物性論 ## 数理論理での命題の定義 ### 自分のツイート - [URL](https://twitter.com/phasetrbot/status/1441648950633582596){target=_blank} 数理論理(?)で命題はどう定義されているのだろうか. 命題論理というときの命題の定義. 手元にある菊池誠「不完全性定理」を見たら, 「真偽が確定し得る数学的な主張」とあるのだが, これだけだと「し得る」がよくわからないのと, 索引に命題変数だとか関連用語はあってもそのものずばりがないようで, 探し方さえよくわからない. きちんとした本一冊買った方がいいと思うのだが何を買うか. ### コメント それは命題という言葉の数学内での使われ方であって数学的定義ではない. 数学と物理の関係でいうところの物理現象の側であって数理モデルの側ではない. これからそのような「命題」というものを数理モデル化して数学的に研究していくということを言っているだけです. 数理モデル化されたものは大体次のような感じで定義される. >(命題論理の場合)記号からなる可算集合(多変数多項式環でいうところの不定元の集合)$P$を固定する. >$P$の元を命題変数と呼ぶ. >$P$の元から始めて$\phi \land \psi$, >$\phi \lor \psi$, >$\lnot \phi$などの構成を繰り返して得られる文字列を様相命題論理式と呼ぶ. 物体の位置や運動という物理的な対象を数理モデル化したものとして座標や微分方程式といった数学的概念が得られるように, 数学の命題や証明といったものを数理モデル化したものが論理式や証明図という概念です. その教科書の定義もどきは数理モデル化する前の対象について語っている. ## 千葉大の渚勝先生のコンパクト作用素に関する PDF, 非可換幾何の香りがして面白い ### 本文 [千葉大の渚勝先生によるコンパクト作用素に関する PDF を見つけた](http://www.math.s.chiba-u.ac.jp/~nagisa/lecture04/fa8.pdf){target=_blank}. 標準的な説明の中にちょっと面白い説明があったので取り上げたい. > もう少し一般化して, 有界線形作用素 $T \colon H \to H$ がコンパクトであれば, > 集合 > \begin{align} > \left\{ x \in H \colon \Vert Tx \Vert \geq \alpha \Vert x \Vert \right\} > \quad (\alpha > 0) > \end{align} > に含まれる $H$ の部分空間は有限次元である. > 実際, もし無限次元であるとすると正規直交列 $\left\{ x_n \right\}$ がとれて, > $\Vert Tx_n \Vert \geq \alpha$ となる. > $x_n$ は 0 に弱収束するから, $T x_n$ は 0 に強収束することになり矛盾する. 言われてみれば当たり前だが, この集合が有限次元にあるというのは知らなかった. この直後にコンパクト作用素の代数的な性質が議論されているが, これはコンパクト作用素のなす $*$-代数が有界線型作用素全体が作る $C^*$ 環の中で両側 **-イデアルになっていることを表している. ちなみにコンパクト作用素は非可換幾何の定式化の中で「無限小」に対応している. 書き写すのが面倒なので省略するが, P.2 後半からの極分解の話が面白い. > $|T|$ は $T^*T$ の平方根, つまり多項式近似 これを多項式近似とみなすのが面白い. $C^*$-環は非可換連続関数環とみなせるというのが非可換幾何の基本だが, それから考えれば確かにコンパクト作用素は多項式近似のような感じになる. これも非可換 Stone-Weisrstrass とかあるのだから当たり前のことではあったが, 改めて聞くととても新鮮で面白かった. ### ラベル 数学, 作用素論, 作用素環, 非可換幾何 ## 数学科および物理学科での数学教育についての雑感:数学者 Hans Freudenthal (1905 - 1990) の紹介文を見て ### Twitter で発見 Twitter を色々見ていたら[こんなの](https://twitter.com/paul_painleve/status/302347944500273152){target=_blank}を見つけた. Freudenthal, 名前だけは聞いたことがあるので [Wikipedia](http://en.wikipedia.org/wiki/Hans_Freudenthal){target=_blank} で少し調べてみたが何をやっていたのか正直なところよく分からなかった. 20 世紀前半の仕事だというのに今一つよく分からないというの, 何となく衝撃的だったが, 例えば量子力学も一応成立は 1925 年と 20 世紀前半の話なので, 20 世紀前半の話が既に破滅的に難しいというのを再認識した. 最近『数学まなびはじめ』を読んで時代的に数学者に落ちる戦争の影を見たので, 上記 URL にはその点からも感慨深い文がある. ### 教育に関わる話 面白かったのはむしろ教育に関わる部分だ. > As a teacher he acquired international fame and significance as the founder of realistic mathematics education, > which is based on problems taken from day-to-day experiences rather than on abstract math rules. > Single-handedly Freudenthal saved Dutch education from the American teaching method of New Math, > which was introduced in many countries from 1960 onwards. > This formal, logic-based method turned out to be unsuitable for most students. > > Freudenthal preferred to send his students on a tour of discovery. > His motto was that you learn mathematics best by re-inventing it. > His students were not given abstract bare problems to do but well chosen practical problems from daily life, > and in solving these they gradually developed mathematical understanding. > In addition, Freudenthal thought the recognizability of the problems would lead to the students automatically becoming more interested in mathematics. 独力でアメリカの New Math 運動からオランダの教育を救ったという猛烈に格好いい話に目が向く. 何の本だったか忘れたが, 小平先生は娘さんが New Math に巻き込まれて酷い目にあったとかで批判的な文章を書かれていた覚えがある. 学部は物理学科であって正規の数学教育 (?) を受けたのは修士からであり, 修士ではある程度具体的な問題を念頭に置いて勉強していたので, 学部レベルの数学科の数学についてはよく分からないこともあるが, 物理学科で数学を学ぶときの苦労ぐらいは書いておきたい. ### 物理学科 物理学科はあくまで物理をやるところなので, カリキュラムに組み込まれた数学も物理のための数学に集中する. (歴史的な経緯もあり私の大学の物理学科では実数論, 集合論, 位相空間が必修だったが, とりあえずこれは抜かす.) 物理のための数学とはいうが, 正直, 具体的にどういう数学をどこでどう使うという話はあまりされず, 結構雑だった気がする. 私が単純に聞き落としていた, 聞いてはいたが全く実感が持てなかった, 本当に話されていなかった, 物理で出てくる数学的問題を解決するための数学なのでその元の数学の話が分かっていないといけないためそもそも物理・数学ともにある程度まで進まないと話すのは不可能, などいくつか原因はあろうが, 今になって考えるとかなりつらい思いをした学生もいたのではないかと思う. 私に関していうなら, 数学を数学として楽しめたという理由以上に毎日訳が分からず目の前の勉強を必死になってやっていて, そんなことを考える余裕もなかった, というのが実情という感じがある. 通じづらいと思うので「物理で出てくる数学的問題を解決するための数学~」という部分について簡単に触れておこう. いくらでもあるのだが, 一つは私の専門でもある線型代数だ. 大雑把過ぎるので, さらに具体的なものとして線型空間論を挙げておこう. 少なくとも初等物理では線型の微分方程式がたくさん出てくる. 「線型の」と言っているくらいなのだから当然線型代数が関係しているのだが, これに気付いたのは学部 3 年くらいだった気がする. 量子力学でも重要なので講義でも多少触れたのではないかと思うが, 全く記憶にない. 量子力学は学部 3 年のとき本当にやばいくらいに何も分からず, 学部 4 年で新井先生の本で数学的に復習しつつ整理してやり直したという感じであって, 講義で何かを身に付けたという覚えすらない. ### 線型代数 話がずれたが, 線型代数だ. 力学の講義でも出てくる方程式 (運動方程式) は大体線型で重ね合わせが成り立つことを使っているので, その時点で死ぬ程線型代数を使っているのだが, これも気付いたのは大分あとのはずだ. 無論線型代数の講義で学んだ記憶はない. ちなみに多体系の安定性みたいな話をするときにポテンシャルを Taylor 展開して Jacobian の行列の正値性に帰着させる話も線型代数だが, これも学部 1 年当時に本当に線型代数だと認識できていた自信はない. 話がずれっぱなしなのでさらに戻して「物理で出てくる数学的問題を解決するための数学~」のところだ. 上記の例では (偏) 微分方程式の線型性という話をしている. 微分方程式自体あまり馴染みがないので, 微分方程式と言われてもあまりピンと来ない. 運動方程式は学部 1 年の力学でも嫌でも出てくるのでまだいいが, 偏微分方程式となるとつらい. 物理で偏微分方程式を使うというと当然色々あるが, 電磁気学を例に, と言ってもその電磁気 (の数学的取り扱い) が分からない. 電磁気となるとベクトル解析も必要だが, こうやって線型代数の必要性を感じるために他の数学, さらには物理 (の数学的取り扱い) まで知っていないといけない (ご利益が感じられない) ので, 結局学び始めの段階で具体的な応用の話がしづらくて困る, という話がしたかった. 他の大学は知らないが, 私の大学では学部 1 年次に物理学演習だか何か (講義名を忘れた) という名の数学の演習の講義が必修であり, そこで通年の (教養の) 線型代数や微分積分の講義とは別に必要な数学をトピックごとにやっていた. そこでも実際の応用はあまり話された覚えはない. ただ「とにかく使うことだけははっきりしているから, 泣こうが喚こうがやれ」という雰囲気はあった覚えがある. 色々書いていたら何が書きたかったのか分からなくなってきたのだが, 数学を学ぶことに具体的なモチベーションがあるはずの物理学科ですら, 「必要だからやりなさい」という感じで学習段階であまり具体的な応用の仕方を伝えられることはなく, 結構つらかったという感じのことが言いたかった. Twitter で言ったのだかブログにも書いたのか忘れたが, 物理ですら道具とする工学部だともっとつらいのだろうな, と思っている. ### 数学科での教育 そして更に元に戻ると, 学部の数学科ではどういう問題意識で進めていくのかよく分からないという話になる. Freudenthal は抽象的な問題よりも日々出くわす実際的な問題を出題し, それを解くことで数学に慣れ親しませたとあるが, これはどういうことなのだろう. この辺, 数学者は数学的自然の中に生きている感があって何となく羨しく感じた. もちろん今となっては「日々出くわす実際的な問題」みたいな感じはある程度分かる気はするのだが, 必ずしも大学の数学に親しんでいない, 特に学部 1 年生をどう励ましていくのかというところに興味がある. ある程度慣れた学部 3 年とか, 研究を目指す修士の学生にそういう感じで学ばせていくところにはイメージが湧くのだが. 数学科の修士を出たにも関わらず, (学部の) 数学科は不思議なところだという感覚がいまだにある. あとこれも前から思っているのだが, 微積分やベクトル解析に関し, 純粋な数学の人の物理抜きの理解の仕方というのがとても気になる. ベクトル解析だと多様体上の解析というか, Stokes の定理とそこからの展開というイメージの仕方はあると思うが, 私は 2-3 次元でのベクトル解析は物理というか電磁気のイメージなしには最早理解できない. 理解できないというか, 真っ先に電磁気的なイメージが広がってしまうので, 何というか「純粋な数学」として感知できない. こういうの, 数学の人はどう思っているのだろう. それはそうと, 3/16-17 の関西すうがく徒のつどいでは正にこの辺の「具体的な問題を通した数学学習」というイメージで, 色々な (反) 例を紹介する講演をする. それで Freudenthal の話が気になった次第であった. ついでにいえば, 数学科に限らず, 物理でも結構「具体的な数学」というのが結構穴になっている感じがあるので, その間隙を縫うことがしたいなとはずっと思っている. ニコニコでの動画での目的の一つはそこにあるのだが, 数学的に極端過ぎるので, もう少しクッションになれるのを作りたい. ### ラベル 数学, 線型代数, 解析学, ベクトル解析, 電磁気学, 偏微分方程式,微分方程式 ## 物理と関数解析: LSZ やら物質の安定性やら ### 引用 時々話題にするが[物理と数学, とくに関数解析というネタについてまたやりとりしたので, 記録しておく](https://twitter.com/wr_r/status/384639166681595904){target=_blank}. > ある物理については関数解析の知見が本質的だったとかそういうシーンって何かないのかな > > @wr_r LSZ は弱収束が大事で数理物理が先行した, 世にも珍しい例です > > @phasetr どういうことでしょう. > > @wr_r 場の理論の散乱をみるには演算子の収束ではなく行列要素の収束を見ないと駄目, という話です > > @phasetr なるほど, それはおもしろいですね. > ちょっと調べてみたら, 相転移 P のブログで今年の 2 月 7 日に取り上げていたんですね. > 他に数理物理が先攻したような話ってどんなものがありますか. > > @wr_r 最近というか現代的なところではそれ以外ないという理解です. > 数理物理勢しかしていないこととしては物質の安定性があるでしょうが, あとはよく分かりません > > @phasetr 少なそうとは思っていたのですが, そこまででしたか……. > 数理物理は今研究されてる物理の手前の数学をやっているということなのでしょうか. > それと, 質問ばかりになりますが, 物質の安定性というのは例えば基底状態がちゃんと存在するかとかそういう話でしょうか. > > @wr_r 私が今やっているところだと, 学部三年の量子力学てやるような話をやっています. > 物質の安定性は, 多体系のハミルトニアンの基底エネルギーが粒子数で下から抑えられるかという話で, 量子論のはじまり, 電子軌道の安定性の一般版です > > @phasetr なるほど〜, それでは物理の人間は数学やる前に物理やってという話になるわけですね. > 物質の安定性については, 確かにそういう問題は聞きませんでした. > 面白い話をどうもありがとうございます. > > @wr_r 物質の安定性はとりあえず である程度様子が掴めます. > あと とか > > @phasetr リプライに今気付きました. > ありがとうございます! > 時間見つけて読んでみますね. ### コメント 物質の安定性については物理的にもとても大事だと思っていて, 研究したいとも思っている. 物理的にはこれ以上ないほど簡潔明瞭な上に fundamental の方の意味で基本的で本当に気にいっている問題だが, 数学面でかなりきつい. 難しい数学を使うというわけではなく, 評価のための不等式の技巧が死ぬ程きついというタイプ. 微積分しか使わないと言い切ってもいい程度ではある. こういうと Lieb や周辺の人達がこう色々と言ってくる可能性はあるが, とりあえずいいだろう. 原さんなどは納得してくれると理解している. arXiv にもあるが, Buchholz の散乱に関するレビューで LSZ の経緯とか色々書いてあった記憶がある. 興味がある向きは探して読んでみよう. ### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 物質の安定性, 量子統計, 解析学, 不等式, 場の量子論, 散乱理論 ## 『伊藤清の数学』がほしい: 舟木先生による『伊藤清の数学』の書評 ### はじめに この間ネットをさまよっていたら, 舟木先生による『伊藤清の数学』の書評があった. [これ](http://mathsoc.jp/publication/tushin/1602/1602funaki.pdf){target=_blank}だ. 今度買おうと思うが, とりあえず舟木先生の書評で期待値を高めておきたい. 個人的に特筆すべきは冒頭部の次の記述だ. ### 引用 > ガウス賞は「数学の応用」を対象に ICM2006 において創設された賞であるが, > 先生の受賞理由として「確率解析・確率微分方程式の理論の創始, その後の数理ファイナン スや数理生物学への応用」が挙げられている. > その最後の部分を引用しておく: > 『stochastic analysis is a rich, important and fruitful branch of mathematics with a formidable impact to "technology, > business, or simply people's everyday lives"』 > ただし, ここで言う応用は, 先生ご自身の研究という訳ではない. > 先生は, むしろ「私が想像もしなかった「金融の世界」において「伊藤理論が使われることが常識化した」 という報せを受けたときには, > 喜びより, むしろ大きな不安に捉えられました.」 ([1], p.135) あるいは「私はこれまでの人生において, > 株やデリバティヴはおろか, 銀行預金も, 定期預金は面倒なので, > 普通預金しか利用したことがない「非金融国民」なのです.」 ([1], p.137) と述べられ, > 応用は必ずしも本意でなかったことを表明されている. ### コメント 人伝に聞いたことはあったのだが, 実際の文章が殘っているとのことなので, これだけでも本がほしくなる. 私が聞いたのは「経済戦争の道具にされて悲しい」という言葉だが, その辺を確認してみたい. また次のような記述もあるので, 今度その文献も読んでみよう. 楽しみだ. > 先生は, 数理解析研究所講究録に 3 篇執筆されている. > それらは本書には収録されていないが, 現在では同研究所のウェブから簡単にダウンロードできる. > 特に [2] は若い 方々に一読を勧めたい. > また, 先生の追悼号として, [3] をあげておく. ### ラベル 数学, 確率論 ## 『数学の証明というのは「なにをもって正しいと言えるか」って概念を身に着けるために死ぬほど役に立つ』らしいが実感としてよく分からなかった ### 本文 [実感としてよく分からないのだがこういうことらしい](https://twitter.com/kanju/status/357302918820536320){target=_blank}. > 数学の証明というのは「なにをもって正しいと言えるか」って概念を身に着けるために死ぬほど役に立つ. > というのを, そういうのを理解してない人を見ると思う. > しかし, そこが不足してる人は「なにをもって正しいと言えるか」という概念がないため「数学なんて役に立たない」っていう. > > @kanju そうなんですよ, ほんとに. > 「数学が役立つか」じゃなくて「数学を役立たせられるか」なのに. > 数学を専攻している身としては悲しいことです. [ytb_at_twt さんの涙なしには読めないツイート](https://twitter.com/phasetr/status/357814088140734465){target=_blank}が続く. > 【数学の証明というのは「なにをもって正しいと言えるか」って概念を身に着けるために死ぬほど役に立つ】はずなのだが, > 肝心の数学者は「この命題は数学的直観により正しい」とか言い出しやがる. > 深い悲しみを感じる. とりあえず ytb_at_twt さんに, あまり社会的にお勧めできない私のツイートスタイルが伝染している印章を受けたので, 「それ以上, いけない」ということはお伝えしていきたいが, それはそれとして. > 数学の証明というのは「なにをもって正しいと言えるか」って概念を身に着けるために死ぬほど役に立つ. > というのを, そういうのを理解してない人を見ると思う. > しかし, そこが不足してる人は「なにをもって正しいと言えるか」という概念がないため「数学なんて役に立たない」っていう. 全体として証明の話がいつの間にか数学の話になっていてよく分からないのだが, そうなのか, という感じで全然実感が湧かない. 後半 2 行は何を言っているのか本当に分からない. 個人的な感覚としては, 数学できちんと議論するのは適当にやっていると変なことが起きかねないから, その可能性を潰すためという感じ. 物理などではある程度実験でその可能性を潰すこともできるが, 数学だとそういうのは基本無理で, しかも本当にそういう例を作れたりする. 突っ込まれて戦慄することがあるので, その恐怖感に押されてきちんと考えざるを得ないという感じ. そこで細かいところまできちんとやるのを世間では「論理的」と呼んでいるだけであって, 私個人の感覚としては恐怖感に彩られた心の叫びだ. あと, 時々「数学は論理的に厳密な学問で…」みたいなのを見るが, 同じ人が「数学は厳密にやれるのが好き」と言っていることも良くあるから, 結局好き嫌いという感覚でしか動いていないのではないの, と思っている. > @kanju そうなんですよ, ほんとに. > 「数学が役立つか」じゃなくて「数学を役立たせられるか」なのに. > 数学を専攻している身としては悲しいことです. これ, 超クリティカルに自分に跳ね返ってくると思うのだが, 大丈夫なのだろうが. 私個人としては何度も言っているし何度でも言っていくが, 数学は役に立つこともあるが, それとは一切とは無関係に私は無能で役立たずだ. 学生の頃, 「数学は役に立たない」と物理学科で何度も言われて頭に来たので, 数学が役に立つ場面というのを色々調べたりしたが, そのたび「こういうのを自分で考えついて実現させていくことこそ大事であって, 調べないと思いつかない自分, 死ぬ程無能で役立たずだし, こんなことをしている暇があるなら普通に勉強したりした方がいいのでは」, と思って陰鬱な気分になった. 数学が何の役に立つか調べると精神衛生に極めて悪いのでお勧めできない. あと, 何かをしていく上では結構大事になる社会性とかそういう面まで含めて無能すぎて, 数学を役に立たせられる方面に進むことはできなかった. 数学を役立たせられない自分, 死ぬ程無能で役立たずといつも思っている. 時々, 上の記述をさらに過激にして「数学が役に立たないというお前が役に立たない」という人もいるが, これがまた自分にクリティカルに効いてくる. 世の中, 数学を役に立てられる優秀な人が多いのか, ということでまた陰鬱な気分になる. 最後に, 数学が役に立つどうかというの, 私は心の底からどうでもいい. 大事なのは自分が数学の役に立てるかどうかであって, 何の貢献もできていないのでただひたすらに無能だというところだ. ### ラベル 数学 ## Longo の 60 歳記念コンファレンスのスピーカーが豪華だが参加できない悲しみを謳う方の市民 ### 本文 Twitter でも流れていたが, [河東セミナーニュース (2013 年)](http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/news.htm){target=_blank}でも富山のダークマターのポスターが話題になっていて笑った. > 3 つ下にコンファレンスポスターのことを書きましたが, > 富山での物理のコンファレンスポスターはこれであることを知りました. > なかなか強烈ですね. (5/31/2013) そのポスターは[これ](http://ppwww.phys.sci.kobe-u.ac.jp/~newage/cygnus2013/poster.pdf){target=_blank}だ. PDF で 50 MB 程度あるので閲覧には注意されたい. いわゆる実 2 次元美少女が前面に出ている. 最近の素粒子やら宇宙論では 3 次元複素多様体が出てくるので, 一応実 2 次元と断りを入れておいた. 河東先生のコメントで出ている 3 つ下の Longo の 60 歳記念コンファレンスのポスターは [これ](http://cmtp.uniroma2.it/13MQP/poster.pdf){target=_blank}なのだが, Invited speaters が豪華で羨ましい. 覚えているかどうか分からないが, 一応知人と一方的に思っている谷本さんが入っていてさらりとやばい. 博士でイタリアに行って多分 Longo についたのだと思うので, その縁だとは思うが. Haag が入っていて, まだ現役なの, という感じでスーパー怖い. 荒木先生や竹崎先生もまだ現役とはいえ, 一応 Haag は荒木先生の指導教官だ. 名前知らない人も何人かいて専門が何なのか分からないのだが, S. T. Yau が入っていてちょっと不思議な感覚がある. Longo はもう 60 なのか, とちょっとびっくりした. Longo が日本に来ているときにセミナーがあり, その後の食事会でご家族とも一緒に寿司か何か食べたことを想起した. Longo の奥方の隣の席だったのだが, 英語ができなかったので困ったこともよく覚えている. 英語やらないと, 思いつつ結局ずるずる来ている. ### ラベル 数学, 数学者, 数理物理 ## 量子力学と群の表現論: エネルギー固有状態と群のユニタリ表現の表現空間 ### はじめに [Twitter で石塚さんとこんなやりとりをしてきた](https://twitter.com/Yusuke_Ishizuka/status/394349804228050944){target=_blank}. ### まとめ というわけで簡単にまとめる. 参考文献としてはいつも通り新井先生の本で, 『物理の中の対称性』だ. 7.8 節【物理量の時間発展と保存量】が大体それだ. 正確にいうとこの節ではちょっと違うことをしているが, 次に書くようにすぐ直せる. Hamiltonian $H$ がある (連続) 群 $G$ で不変だというのは, $G$ のユニタリ表現 $(U_g)_{g \in G}$ を取って, $U_g H U_g^* = H$ が成立することとする. 書いていて私がやりづらいので, $G = \mathbb{R}$ としよう. ここで Stone の定理から無限小生成子 $T$ があって $U_x = e^{i x T}$ と書ける. (一般の場合は [SNAG 定理](http://ncatlab.org/nlab/show/spectral+measure) を使う.) ここで不変性の定義式を $x \in \mathbb{R}$ で微分した上で $x = 0$ とし, 生成子同士の関係式に変えてみよう. (念のため書いておくと, 定義から Hamiltonian $H$ は時間並進の生成子だ. ) \begin{align} \frac{d}{dx} U_x H U_x^* |_{x=0} = \left\{i T U_x H U_x^* - U_x H U_x^* (-i T) \right\} |_{x=0} = TH - HT = 0. \end{align} 元の不変性から「生成子同士が交換する」という条件が導かれた. ここで $H$ はもちろんのこと, Stone の定理から $T$ も自己共役であることに注意する. 自己共役というのは要は Hermite 行列ということであって, 交換する Hermite 行列は同時対角化可能という線型代数の定理によって $H$ の固有空間が $T$ の固有空間でもあることが分かる. 元の表現をここに制限すれば表現空間ができたことになる. 以上, 大雑把な説明だ. ### 線型代数と量子力学 これを見れば分かるように線型代数は量子力学の基本的な認識を形作る上で数学的に大事な役割を果たす. 学部 1 年で学ぶ線型代数で十分だが, その代わり学部 1 年を学ぶことは完璧に分かっていなければいけない. 数学科水準で理解するくらいでないと多分量子力学の理論にはついていけない. 少なくとも物理学科に来る人間なら量子力学を単なる計算の道具ではなく, きちんと学びたいと思っているだろう. そういう人は本当にきっちり線型代数を詰めておく必要がある. 大雑把と言った以上, 細かいこと, そして普通の Schr\"odinger を扱っているときに実際に数学的に起きる問題がある. それを簡単に書いて終わりにしよう. まず本の『注意 7.34 』に書いてあることだが, 普通の意味で可換 ($TH - HT = 0$) だからと言って $H$ が $T$ の保存量になる保証はない. これは大抵の場合 $H$ と $T$ の少なくともどちらかは非有界になるからだ. 非有界作用素については「強可換」という概念があり, 強可換なら問題ない. この辺は『量子力学の数学的構造』や『量子現象の数理』を読んでほしい. 興味があるという向きにはセミナーを開いてもいい. 関東近郊なら何とか出向けるのでご相談頂きたい. ### 赤外発散の困難 他の問題だが, 物理としては瑣末と言ってもいいのだけれども, 数学的に根本的な問題として $H$ が固有値を持っているかという問題がある. 期待としては「スペクトルの下限である基底エネルギーは固有値であってほしい」が, これが怪しくなる物理現象を (赤外) 発散という. ちなみに私の専門だ. $T$ も同じで, 固有値を持つかどうかが問題になる. 一応, 「固有空間」があることを前提にしているから. 上の問題と同じく物理というより数学の問題になるが, 非有界作用素の取り扱いが必要になるために色々数学的に面倒くさい. ついでなので書いておこう. 「これは大抵の場合 $H$ と $T$ のどちらかが非有界になるからだ」と書いたが, では両方とも有界になることがあるか, という話がある. それはある意味で山程ある. 量子スピン系を考えるとき, 作用素環的に初めから無限系を考える場合もあるが有限系から熱力学的極限を取る場合もある. 有限系は有限次元なので, そもそも非有界作用素の出番はない. ### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 量子力学, 表現論, 赤外発散, 場の量子論, 固有値問題, 線型代数 ## 確率論: テイラーの定理による初等的な中心極限定理の証明 ### はじめに 次のツイートからなるツリーを勝手に TeX 化・PDF 化した. - [連続ツイートへのリンク](https://twitter.com/genkuroki/status/1259365460774023168) ツイートにもあるように, 中心極限定理の証明を, モーメント母函数や特性函数を経由する方法でやっていることが多いです. そうすると証明の本質的部分が Fourier 解析に当たる事柄になってしまいます. 少し仮定を強めた上でその辺をカバーした議論です. ちなみにウィリアムズの『マルチンゲールによる確率論』 P.74, 7.2 強大数の法則は 4 次のモーメントの存在を仮定するかわりに iid を仮定していません. 仮定を強める代わりに初等的に示すという意味で PDF の議論と似ています. このあたりを工夫できるようになると数学の地力がついてきたと思ってもいいでしょう. 数学が楽しくなってくるとも思います. マルチンゲールによる確率論 何をどうゆさぶってみるかという具体的でもあるので, 紹介しておきました. ### PDF PDF が読み込まれない場合はリロードしてください. ## 東大数理の儀我美一先生は中学の頃からアイドルだったという貴重なお話を伺った ### はじめに 昨日, 現東大数理の儀我美一先生と 中学から同級生であったという女性にお会いしたのだが, 「儀我君は中学の頃から私達のアイドルだった」という 実に感動的なお話を伺ったので積極的に共有していきたい. 知らない人に向けて書いておくと, 儀我先生は[紫綬褒章](http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/topics/2011/01/04.html){target=_blank}を受けているし, 実際に非常に優秀な研究者だ. ### 本題 まず前提知識として儀我先生の身長が低いことに注意しておこう. 儀我先生は (少なくとも) 中学の頃は教室の先頭に座っていて, 授業後, 自発的に黒板消しなどをかって出ていたという. そのとき, 背が低いため上の方の字は飛び上がって消していて, 「儀我君かわいい!」と女生徒の間で アイドルのようになっていたというのだ. これには深い感銘を受けざるを得ない. ちなみに私も集中講義だか何かで 儀我先生の講義を受けたことがあるのだが, 黒板が上下 2 枚になっている教室で, 話に夢中になりながら上の黒板を降ろそうとして, 手が届かずひょいひょいと 3 回くらい空振り, はにかみながら「背が低いもので」みたいなことを 仰っていた光景を見たことはある. 「あっかわいい」と思った. それを説明した「あ, やっぱりそう思いますか!」みたいな感じで話が盛り上がった. ### 講義の体験 また, 上記黒板消しのエピソードのように 昔からホスピタリティ溢れる人格者である旨, 強調されていた. これまた自分の経験からいうと, 上記の講義のとき, 非常に丁寧に準備されていて講義自体も丁寧で熱心だった. 当然微分方程式の講義だったので Poincare の不等式の話などは当然でてくる. 解析系とはいえ作用素環だったので, あまりその方面の不等式に詳しくなく, 「Poincare の不等式は皆さん知っていますよね. 知らない人はいますか」という流れになったとき, 名前くらいしか知らないので素直に知らないと手を挙げたら, 「なら最良定数のは大変ですが, 簡単に証明をつけましょう」と 証明をつけてくれたことを覚えている. 証明後「これでいいですか?」と確認までして頂けた. あと, その講義で褒めてもらえたというか覚えていることがある. Sobolev 空間が出てきたとき, Sobolev の集合的な特徴だけ紹介して, 内積やノルムの定義をしなかったことがあった. 学部 4 年から院くらいの学生向けの講義だったし, 出席者もそのくらいは知っているだろうというということで省いたのかと思うが, 入門的な講義だったし, 知ってはいたが一応「ノルムの定義は何か」と質問した. そうしたら「いい質問ですね. 大事なことです.」とお褒めの言葉を頂いた. 大したことでもないが, ちょっと嬉しかった. ### ラベル 数学, 数学者 ## An Introduction to Smooth Infinitesimal Analysis ### はじめに [魔法少女と次のような会話を交わし](https://twitter.com/phasetr/status/356085176805244928){target=_blank}, 参考文献を教わってきた. > つどい, 一人で複数個発表してもいいの > > @functional_yy 集合論とロジックで制圧説 > > @phasetr 楽園 > > @functional_yy 超準解析と物理学で殴られる > > @phasetr 直観主義者として smooth infinitesimal analysis を推してゆきたい > > @functional_yy 参考文献教えてください > > @phasetr > > @functional_yy ありがとうございます. あとで読みます というわけで参考文献を読んでみた. ### コメント > Axiom 1. 略 > > Furthermore, we have that $\forall x ((x \neq 0) \Longrightarrow (\exists y xy=1))$, > but I don't want to call $R$ a field for a reason I'll discuss in a moment. $R$ を体と言わない (そもそも $F$ とか $K$ と書かない) らしい. 行方を注視しよう. > Axiom 2. 略 > > but I don't want to call $<$ total, for a reason I'll discuss in a moment. 無限小とか出てくると色々アレなのだろう, という話なのだろうが, 割と戦慄する. Axiom 4. がやばい. 初見, 意味が分からなかったがその後の説明を読んで戦慄. 興味がある向きは実際に P.2 をご覧頂きたい. 無論, 直観主義の話であって, 排中律が使えない (採用しない) というその辺の話だ. > Fact. > > There is a form of set theory (called a local set theory, or topos logic) > which has its underlying logic restricted (to a logic called intuitionistic logic) > under which Axioms 1 through 4 (and also the axioms to be presented later in this paper) taken together are consistent. topos logic, 名前だけで修羅っぽい. 2 節ラストで Axiom 1, 2 での注意も明かされる. 引用が面倒なので各自確認されたい. Proposition 1. は全ての $f \in R^R$ で成り立つの. やばいのでは. Proposition 3. の curve というの, 何を言っているの. 「連続関数」とかいうのは入っているの. ただの関数と思っていいのこれ. Straight の意味が分からない. P.5 で積分が出てくるが, これ定義何なの. $D$ が抽象的にしか与えられていないが, これ, そもそも具体的に書けるのだろうか. 参考文献, Sheaves in geometry and logic とかある. 何かよく分からないがやばそうだということだけ把握し, 一旦撤退する. 微分幾何やりたい. あと超準解析と物理学読みたい. ### ラベル 数学, 数学基礎論, 論理学 ## 「お願いですから憲法の話の時にゲーデルの名前出すのやめてください」 ### 本文 [myfavoritescene さんが世界の悲しみを歌っていた](https://twitter.com/myfavoritescene/status/439681874357534721){target=_blank}. >数学ですら自己完結できないのに穴がないわけはなくて (そんなことはゲーデルが一番分かっていたはず), >その精神を発揮してみたんだろうけど, 周囲の大人の対応がすばらしいw >まあ法の精神 (と言って良いのかしらないが) を根本から認めなければ, いろんなことが法に則って出来てしまうだろう. > >お願いですから憲法の話の時にゲーデルの名前出すのやめてください. @myfavoritescene > >@ytb_at_twt わかりました. もうしません. あと[これ](https://twitter.com/tyk97/status/439677175168368640){target=_blank}と[これ](https://twitter.com/myfavoritescene/status/439680806496137217){target=_blank}. >そういえばこんなエピソードを思い出した. >アメリカ合衆国憲法には論理的矛盾・欠陥があってそれを突くと独裁者が現れる可能性があるということをゲーテルは発見したらしい. >>「憲法自体が"憲法違反の存在"」し #BLOGOS >これか >まあ, さもありなん. やたべさんのブログは観測していきたい. ### ラベル 数学, 数理論理, 数学者 ## 『天才数学者がどうの』とかいう地獄のような記事を見た数学者の反応を記録する ### はじめに 日経か何かの「天才数学者がどうの」とかいう地獄の底から這い上がってような記事があったが, それに対する数学者の反応を記録しておきたい. もちろん一部界隈の話だが. とりあえず見かけた反応を引用していく (リンクはわからなくなってしまった). ### 引用 >まじで天才数学者のこと記事にするならテレンス・タオを取材すればいいのにな. > >@ken_m123 タオでなくても, 堀川穎二さんの「俺は日本で一番頭がいいと思ったら上がいた. 柏原正樹だ」程度のネタで十分だと思います. >が, 堀川さん早く亡くなられましたからね. #今回は実名にする > >.@Paul_Painleve こっちのほうがどうみても 100 倍は凄い話なのですが, メディアの人は興味がない? > >@ken_m123 柏原さんのどこがどう凄いか, メディアの人も分からないでしょう. >うーん, エスプレッソの作り方かなあ?? > >@Paul_Painleve たしかに記事にしにくいかも....w > >@ken_m123 即位の礼の時だったかな, 自宅から RIMS まで自転車で通勤してたら途中で何回も警官に呼び止められたとかなら・・・ > >@Paul_Painleve そういえば, 3 月に京大に行った時に, 僕はすれ違っていたらしいのですが, まったく気がつきませんでした..... > >@ken_m123 警官でも一目でアヤシイとわかるのに, ご主人さまはもう勘が鈍いんだからぁ~ > >@Paul_Painleve 怪しいおっさんがいるなあとは思っておりましたが.....それがまさか大数学者だとは.....スミマセン.... ### コメント 柏原先生, 小平先生と飯高先生とか何かその辺の対談みたいなやつで, 「レポートで何か凄まじいの出してきた学生がいたが, その学生が柏原君だった. 」, 「あまりに凄いから柏原君に優を出すのは当然として, その他の学生を優にするわけにはいかないから他の学生の成績下げちゃった」みたいな話があったように記憶している. 柏原先生, その他にも修論がいまだに引用されるとか何とかで本当にやばい. 意味が分からない. あと, 始めて RIMS の柏原先生のページで写真を見たとき, 妖怪か何かかと思った. 今探したらあった. [これ](http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kenkyubu/kashiwara){target=_blank}だ. 怖い. ### ラベル 数学, 数学者 ## 俵万智の息子さんが素晴らしい洞察を見せており深い感銘を受けたことを記録する ### はじめに RT で[このように感動的なツイート](https://twitter.com/tawara_machi/status/346191681357484032){target=_blank}が回ってきた. > また算数の問題で息子が考えこんでいる. > 「416 さつの本を, 同じ数ずつ 8 箱につめます. 1 箱に何さつずつつめればよいでしょう」… > 「同じ数っていってもさあ, ぶ厚いのと薄いのがあるじゃん. オレの予想だと, 入りきらない箱も出てくるな」 > だから, 悩むとこ, そこじゃないって! ### コメント 悩むとこはそこだ. 算数の問題をただの計算と思わず, 現実の問題として正しく対峙し, 批判的に考えている. 世間ではこういう子を育てたいのだろう. 私なら一緒になって考え込んでしまうだろう. 問題では箱の大きさは全て同じとは言っていないし, むしろスカスカで場所ばかり取って仕方ないかもしれない. その辺をきちんと考えていけば自然とロジスクティスの問題になるし, 引越しするときには子供自身の身にもふりかかる現実的な問題だ. ただ学校でいちいちやっていたらきりがないので, こういうところこそ家でカバーしていきたい. Twitter 上では[このように反応した](https://twitter.com/phasetr/status/348233609452331008){target=_blank}のだが, この息子さん, 実にしなやかな感性を持っているし, 俵万智さんは大事に育てられたい. 将来を期待せざるを得ない. > 現実的で役に立つ算数を独力で展開するこの力, 実に尊く深い感銘を受けた 俵万智, むしろこの状況を短歌にしたらいいのに, というようなことも想起した. ### ラベル 数学, 算数, 数学教育 ## Twitter まとめ: 有限部分体を含まない無限体があることを知る冬 ### Twitterでのやり取り 先日 Twitter でやり取りしたことをこちらにまとめておこう. [この辺](https://twitter.com/HiroMessAround/status/308449905846927362){target=_blank}から始まる. > 有限体のなかに無限体が含まれるなんてのは無理なのかなあ > > @HiroMessAround どういう定義を採用しているのか分かりませんが, > 私の知っている定義からすると定義からあり得ません > > @hiromessaround 元々どういう問題を考えていたのでしょうか. > むしろそちらをきちんと意識することが大事です > > @phasetr 有限のもののなかに無限のものが包まれるようなことってあるのかなあと思ったもので・・・ > 特に具体的に考えてたわけではないのですが. > > @HiroMessAround HiroMessAround さんの想定とは (大幅に) 違うかもしれませんが > 問題の立て方次第では類似 (?) の問題が考えられます. > 例えば, 有限部分体全体がいくつあるか, という問題です. > 元の体が何かによりますが, 無限個ある場合はあります > > @HiroMessAround 一般にある無限集合の有限部分集合がいくつあるか, > という問題も立てられます. 有限生成の問題というのも考えられます. > 有限集合から無限集合を適当な意味で復元できるか, という問題で, > 有限次元線型空間は基底 (有限個) から無限集合が復元できます > > @HiroMessAround また逆に無限体が必ず有限体を含むか, という形の定式化も考えられます. > 例えば有理数体には部分体が自分自身しかないことが証明できるので, > 有限部分体を含まない無限体が存在することが分かります. > > @HiroMessAround となると有限部分体を持つ無限体自体がそれ程当たり前の存在でもなくなるので, > 元の問題に別の光が当たります. > 何を意図してそう思ったのか私には分かりませんが, > 非自明な問いも作れる話題に転換することはできるので色々考えると楽しいかもしれないということで この辺, この間の Freudenthal の話を思い出した. 日々の経験の中から出てくる数学というか, 例を元に問題を作っていき, それを解くことで数学的な理解を深めていくという 話の参考になるかと思い, ちょっと自分でもやってみたというところだ. これを考えていて, 代数のことが全く分かっていないことが またも明らかになったので 思わず自らの理解に浅さに落涙した. 忘れる前にいくつかメモをしておきたい. ### 有限部分体を持つ (無限) 体の例 $F_p$ を含む体を適当に考えればいい. $F_p$ 係数の代数関数体とか? ### 有限生成関係 ベクトル空間の基底とか何とか. 加群だと色々面倒なことがあるということだけ知っている. 群の生成元というラインもある. ### 有理数は部分体が自分自身しかないことの略証 部分体 $K$ が空でないとすれば $a \in K \setminus \{0\}$ がある. 体なので $1 = a / a \in K$ となる. ここから $\mathbb{Z} \in K$ が分かるので, $\mathbb{Q} \subset K$ になる. ### 実数は有理数以外にも非自明な部分体を持つ $\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ とか. Galois 関係で山程作れる. ### その他 他にも調べていたら色々あった. 見つけたものはメモしておこう. - - - - それぞれ適当に面白い部分を抜いておく. > <問題 A>実数体 $\mathbb{R}$ の真部分体で, $\mathbb{R}$ と体同型となるものは存在するや否や? > > No proper subfield of $\mathbb{R}$ is isomorphic to $\mathbb{R}$. > Suppose that $K$ is contained in $\mathbb{R}$ and $f \colon \mathbb{R} \to K$ is an isomorphism. > As each positive number is a square in $\mathbb{R}$, the map $f$ is order preserving. > Also $f$ is trivial on $\mathbb{Q}$. > Hence $f$ is the identity map, and $K = \mathbb{R}$. > 有理数体と実数体の間にそれらとは異なる群は無いと思うんですが, あるのでしょうか? 教えてください. > いいえ, とても, 数え切れないほど, たくさんありますよ. $\mathbb{Q} (\sqrt{2})$ もそうですし, まだまだ, たくさんあります. > (問題) (1) 有理整数環 $\mathbbb{Z}$ の部分環の個数を求めよ. > (2) 有理数体 $\mathbb{Q}$ の部分体の個数を求めよ. > (3) 有理数体 $\mathbb{Q}$ の部分環の個数を求めよ. > > (解答) > (1) 1 個. > (2) 1 個. > (3) 無限個. ### ラベル 数学, 代数学 ## 「順序数解析という魔境」について tri_iro さんに悪魔のような文献を教わったので共有したい ### はじめに 最近忙しくて Twitter 上で応答できなかったのだが, いつも通り覚書としてこちらに書いて残しておこう. [tri_iro さんから次のような情報を頂いた](https://twitter.com/phasetr/status/344788532516253697){target=_blank}. ありがたい限りだ. お願いしたわけでもないのに色々と教えてくれるというの, 最高に楽しい. ### 転載 > 宣伝:2013 年 8 月 5 日 (月)-7 日 (水) に慶応の三田キャンパスで数学基礎論サマースクール 2013 > が開かれる よく分からない数学 > > @phasetr 言及されていることに今更気づいたのですが, 順序数解析は, > なんというかもはや順序数云々を越えたもっとやばい魔境ですね. > > > @phasetr ゲンツェンによる「順序数 $\epsilon_0$ の下での」 > ペアノ算術の無矛盾性証明は聞いたことがあるかもしれませんが, > それをスタート地点とする話で, このあらい先生の解説 > を見ると, > その魔境具合を体感できます. ### メモ ゲンツェンやばい. そして折角なので後者のを軽く眺めてみた. > 事実, 後に Hilbert の 第 10 問 題 (Di0phantus 方程式の可解性の決定) の > Matijasevic-Robinson-Davis-Putnam による否定的解決により, CON (T) は > Diophantus 方程式が自然数解を持たない $\forall \vec{x} \in \mathbb{N} \left[ p (\vec{x}) \neq 0 \right]$ という命題と同値である. P.2 の記述なのだが, Diophantus, そんなにやばい問題だとは知らなかったので, まずそこで驚いた. 同じく P.2 の無限降下法, 名前が格好いいので一度は使いたいと思いつつ使ったことがない学生生活だった. > ひとは詩しく思うかもしれない:ここで言う**構成的**とはいかなる謂か? > 数学的に正確に定義されているか? > 例えばある公理系 T で形式化できることが**構成的**てあるための必要十分条件となるような T があるのか? > これに答えて曰く:Hi1bert'spr0gram のような grandprogram において, > その開始以前にこのようなことを問うことは単なる怯儒というべきである. > 何が構成的か, あるいは得られた証明が構成的か否かは, 証明が得られてから吟味すればよいし, > その価値は得られた洞察から判断するほうが生産的である. それはそうなのだろうが, (基礎論の) 素人の素朴な感覚としては, やはり真っ先に考える. P.3 の次の記述がよく分からなかった. 明らかなのか. > この**簡易化**のステップが終了して $0=1$ の数学的帰納法なしの証明が得られたら, 矛盾. > なぜなら数学的帰納法なしの矛盾に至る証明があり得ないことは明らかだから. あと, 次の一文, かなり切れていると思う. > このステップの有限性を保証するのに超限順序数を導入する. 有限性を保証するのに超限何とかを担ぎ出すとか並大抵の発想ではない. もちろん, 言葉の上で有限の対として無限があるのだから当たり前といえば当たり前ではあるが, 改めて言われると衝撃を受ける. > P.6 > > 直感を欠いたままで組合せ論的につくられたものが, > 後に発見された集合論的直観を先取りしていたのは驚きである. 何かびびっと来るものを感じたので抜き出しておく. > P.7 > > ところで, このような集合の定義の仕方は, > 数学では Borel 集合族 $\mathscr{B}$ の定義が典型的である. 戦慄した. あと. この辺からもう何を言っているのかほぼ完全に分からなくなっている. > P.9 > > 竹内外史の (brutal な) テーゼに従おう これ, 無駄に格好いい一文だ > P.12 > > 6 結 語 > しかしなにより謎なのは, 何故 Gentzen (そして竹内外史) は, > 不完全性定理の後に無矛盾性証明に挑んだのか, ということだ. > 不完全性定理のために, そのような証明がいかなるものであれ, > その認識論的価値は大幅に減じたことが確かなのに. 胸に来る一文だ. 結論からいうと, 新井敏康先生は面白い文章を書く人だったということが分かった. ### ラベル 数学, 数学基礎論, 証明論, 順序数 ## 線型系の数学的処理と非線型系の数学的処理: 複素数の利用 ### はじめに 議長さんが[次のようなこと](https://twitter.com/hisen_kei/status/341202290511839232){target=_blank}を言っていた. > 交流回路とかでよくあるけど, 物理量 (というか実数値しかとらないもの) に複素数値をとることを認めて > 微分方程式を立式して求解した上で改めて実部をとる, みたいなのあるけど, > あれの前提となる「微分方程式が関数の実部と虚部でそれぞれなりたってる」のって線形系だけだよね, たぶん… あと[これ](https://twitter.com/hisen_kei/status/341203075597484033){target=_blank}. > 例えば安直な例ですが, $df/dx= \sqrt{1-f^2}$ みたいな非線形微分方程式, > $f=\sin x+c$ なのはいいとして右辺が必ず実数値をとるであろうことを考えると f の虚部に関して恒等的にゼロ, > 以外の解がなさそうに見えるけど $\sin (ix) = i \sinh (x)$ でもいいんじゃね, とか そして[ここ](https://twitter.com/phasetr/status/341556118511828992){target=_blank}からはじまるやりとりをした. ### やりとり > @hisen_kei あまりきちんと覚えていませんが, > 非線型光学では本当にはじめから実の解だけを考えてそこで処理をしないといけないとかいう話を聞いたことがあります. > Maxwell は線型ですが, 確か境界条件で非線型性が入るとかいう話だったはず > > @phasetr ていうか自分で例を出してなんですが, これ左右で i 倍の差が残るような… > > @hisen_kei 元の方程式, 真面目に考えていないのですが右辺が複素数を取ってはいけない理由がない > ($f^2$ であって $|f|^2$ とかではない) ので, それだとまだ変な解出せるような印象 例に挙がった方程式の方は別にいいのだが, 線型の方程式に非線型の境界条件を入れるというのは数学としても面白いらしい. Rayleigh-Jeans だかでも境界条件として非線型性が入ってきて, 非線型偏微分方程式の問題として面白くなりそうだ, という話を聞いたことがある. 特に何かを主張したいということはなく, ただそう聞いただけの話だった. ### ラベル 数学, 物理, 微分方程式, 電磁気学 ## 統計学を学ぶのに Lebesgue 積分必要なのだろうか-leeswijzer さんの呟きを眺めて ### はじめに [以前の記事「Lebesgue 積分がよくわからなくて困った話を思い出した」(2013 年 4 月 7 日) に言及があったので](https://twitter.com/leeswijzer/status/422165998616465408){target=_blank}. ### 引用 > [欹耳袋] よく分からない数学「Lebesgue 積分がよくわからなくて困った話を思い出した」 (2013 年 4 月 7 日) > http://ow.ly/suF4k > ※「分からなくてもずっとやっていると自然と疑問が解消される」「昨今の風潮を見ると数学でまで効率を求める雰囲気がある」 > > @leeswijzer (承前) 中塚利直『応用のための確率論入門』 (2010 年 6 月, 岩波書店 ) > にはリーマン積分ではなくルベーグ積分に慣れよう (p. 67) と書かれていた. > 測度論をきっちり勉強するのは, 確率論と統計学には必須かも. > > @leeswijzer (承前) しかし, どこまで突き詰めるかは別問題. > かつて輪読した『 Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory 』の数学的序論 (第 1 章) の積分論には別の指針あり. > > @leeswijzer (承前) このバイブルでは通常のコーシー積分を一般化したリーマン-スチュルチュス積分が多用されている. > 離散変量と連続変量の双方に同一の記法が使えるからとのこと. > より一般的なルベーグ積分は時系列解析のようなかぎられた場合以外は数理統計学には必要ないと. > > @leeswijzer (承前) 数理統計学の基礎の部分はもちろん「数学」であることは承知している. > しかし, ユーザーがどこまでそれを (苦労して) 学ぶ必要があるのかについては明快な答えがあるとは思えない. > 教えるときにはいつもそのことが気にかかる. > > @leeswijzer (承前) もう一歩つっこんで解説した方がいい場合でも, > それによって受講生側の "死亡率" が増えるかもという主観的確率が高まるときはあえて教えない. > そういうトレードオフあるいは損得の計算をそのつどする必要あり ### コメント 数理統計学というと東大数理にいる吉田朋広先生しか知らないので, 上記の「数理統計学」がどの程度のものを指しているのかよく分からないのだが, ガチガチの統計の専門家ならともかく, 普通の応用時に Lebesgue なんて必要なのだろうか. 私の元記事はあくまで数学科学生に対するコメントであって, それ以外については対象としていないので. 世間的に一番数学に近いことにされている印象を受ける物理学科ですら Lebesgue いらないと思う. Lebesgue が必要なんて余程のことだろう. 集合論と測度論のハードルが高過ぎるし, そもそも他学部・他学科での取り扱いが必要な場面が想像できない. むしろやらなければいけない状況を教えてほしいくらいだ. 時系列解析の応用上, 本当に必要なのだろうか. 必要だとしたら大変だな, と単純に思う. 3 月にくらいやる予定のセミナーでは少し話すつもりだが, Lebesgue, 議論はともかく結果は非常に簡明で覚えやすい. Riemann 積分の定理, 正直言明を正確に言える定理ほとんど何もないのだが Lebesgue なら色々言える. よく使っているからというのもあるが, それ以上に実数論に対応する定理があって記憶が楽というのがある. ### その他 [あと何か関係していそうな連続ツイートも折角なので引用しておく](https://twitter.com/leeswijzer/status/422171793072209920){target=_blank}. > [欹耳袋]WC 「学びの面白さの伝え方」 (2014 年 1 月 11 日) > ※「多くの人は, 何が面白いのかもわからず必死に山を登り続けるようなことはしない」 > > @leeswijzer (承前) 「授業でいうと, 最初の数時間がすべて. > 学習者が少しは前向きに席に座っているあいだに, 新しい世界の片鱗を早くチラ見せしてあげる, > 自分に関係のあることなんだと感じてもらう. それが理想」– この点はワタクシ自身もいつも気をつけている. > > @leeswijzer (承前) 「教育者として果たすべき役割が, > 世界の入り口に近い位置で演出に力を入れることなのか, > それともプロの研究者仲間として切磋琢磨することなのか」– 評価されるのはいつも後者ばかりだしね. > > @leeswijzer (承前) 「前者に必要な姿勢と能力を持った人が全体的に少なくて, > それが良質な教育コンテンツを世に十分に輩出できていないこと, > そのことに十分な危機感を持っていない人が多い」– 教えるワザがパーソナライズされていてうまく共有されない問題. この辺はとても気になっているところで, 現状, DVD なりセミナーなりでやっていきたいことでもある. ゆるりゆるりとやっていきたい. #### 追記 前提をはっきりさせなかった私が完全に悪いので反省した. ### ラベル 数学, 数学教育, 相転移プロダクション ## Hilbert 空間から始めるよく分からない数学 ### 2021 年時点 拡充して[現代数学観光ツアー](../bm/tour)にまとめている. これはこれで改めていろいろ書きたい気分もある. ### 導入 #### はじめに Twitter なりなんなりで何かいうとき, 特に初学者相手に何かまとまっているのないかな, と思っていたが, 当然ながら完璧に自分の気に入る教材はない. なのでとりあえず文章でまとめていこう, ということでちょろちょろと気に入る教材的なものをまとめていきたい. 私の数学は Hilbert 空間にはじまるので, やはりここからはじめたい. 関数解析につながるし応用上も大事で, さらに線型代数と微分積分の融合というかほぼ直接の拡張でもある. ひとまず数学, 物理, 物理系の工学関係の人に響く感じにしていきたい. ニコマス P らしく動画でもいいのだが, 動画は作るのがちょっとしんどい. さらっと書ける文章にしておいて, 適当なときに動画にしたい. いきなり Hilbert 空間に入ってもモチベーションがなくてつらいだろうから, 数回に渡って線型代数と微分積分の関係, 無限次元線型空間の導入と物理的なモチベーションについて書きたい. Togetter の「[相転移P(@phase_tr)による「量子力学を理解するために斎藤正彦『線型代数入門』を読む人が注目すべき点」](http://togetter.com/li/108307){target=_blank} にまとめられていることをもう少し物理上の応用もまじえながら書く感じで考えている. 量子力学でもいいのだが, もう少し読者対象に幅を持たせたいので電磁気と線型代数あたりでやっていく. (線型の) 偏微分方程式の解法からネタを取ってくるので, 関係する話なら何でもいい. 適当な微分方程式とその解法で考えてくれればいい. 何かこんなところは関係ないの, とかこんなところについて知りたいとかいうのがあれば, コメントなり Twitter でリプライとばしてくるなどされたい. #### Togetter の転載 私の昔のツイートまとめでもあり, ついでにこちらにもまとめておこう. [齋藤正彦, 線型代数入門](http://amzn.to/hHU8q7){target=_blank}について見るべき所を挙げておきたい. まずp120からが決定的に重要. 例3で関数空間(多項式空間)に内積を叩き込んでいる. 量子力学で出てくる線型空間は原則関数空間なので, 正にここを使う. ヒルベルトとか鬱陶しいのはひとまずいい. p122 例5:ルジャンドル多項式. 多項式空間での基底としてのルジャンドルを出してきている. 関数のノルム(ベクトルの「長さ」)も出している. ルジャンドルは電磁気でも出てくる. マクスウェルは電磁場の「線型」方程式なので上手くはまってくれる p126例7,有限フーリエ級数. フーリエは知っていると仮定するが, 正にフーリエが線型代数の枠内で議論出来る(部分もある)事を明示している. 三角関数が(適当な内積空間での)「正規直交基底」になる. これは高校の教科書にも計算問題としては書いてある 問題7. これは量子統計で使う. (平衡)状態はオブザーバブルAに対して適当な複素数を返す関数だが, これは必ず(密度)行列を使ってトレースで書けることを言っている. ただしうるさいことを言うと原則有限次元でしか使えないので, 物理としては役に立たないと言い切ってもいいのだが p128問題8:ある種の変分とか何とか. 問題10: 色々な内積とラゲール多項式:他にもこの系で電磁気・量子力学で出てくる「~多項式」が再現される. 問題12: 双対空間:初学者にとって直接どうというのが言いづらいが, 少し進んだ話をするとそれなりに使うはず. 数学としては大事 第5章:量子力学の魂. p137例8, 数列空間:数列も線型代数の枠内で議論できる(部分がある)ということ. p138例9. 線型常微分方程式. 先程から電磁気などそれっぽいのを挙げているが, 微分方程式論を応用先に持つことがここではっきりと分かる. p144:スペクトル分解. 要するに対角化だが, スペクトル分解は無限次元化出来て量子力学で直接使える. 射影の値域がその固有値の固有空間で, 縮退度が固有空間の次元に対応したりとか何とか. 定理2.10:行列の極分解. 量子力学的な解釈としては行列は大体複素数と思える. 複素数ならば極形式で表現出来るか考えたくなるのが人情らしいのでそれをやってみた. 定理2.11:変分原理. 量子力学で基底エネルギーを評価するときに使う. 第7章. 行列の関数を定義するという荒業. ハミルトニアンをHとすると, その系の時間発展はU_t=e^{itH}となる. ここで行列の指数関数が出てくる. あと量子光学でコヒーレンス扱うときもこの辺が出てくる. 量子力学ではより激しく微分作用素の指数関数も出てくる:運動量作用素をp=-id/dxとしてe^{itp}が出てくる. この場合, 数学的に正確な定義は面倒だが, とりあえず指数のテイラー展開に直接代入で「納得」されたい. ついでに言うとこれは本当にテイラー展開になる. ペロン・フロベニウスの定理. 正確に言うと別のバージョンだが, 固体物性, 磁性のモデルで使うハバードモデルの「研究」で本当に使う. 例えば田崎さんの「[数学:物理を学び楽しむために](http://bit.ly/368vRy)」を参考にされたい. Googleのページランクでも使う定理で応用は広い. ### Hilbert 空間の定義 #### はじめに とりあえず Hilbert 空間自体何か, というのをまず言わないといけない気がしたので, 天下りに定義だけしておこう. 次回以降で物理のどこでどういう風に出てくるか, これがあるとどう嬉しいかというのは説明するので, 今回は辛抱してほしい. 読み飛ばして必要になったら参照, というのでも構わない. メインターゲットに据えるのは無限次元の Hilbert 空間なのだが, 有限次元も同じくらいに大事だ. 有限次元の Hilbert 空間は実数または複素数係数の Euclid 空間, $\mathbb{R}^d$ や $\mathbb{C}^d$ だ. これをもとに無限次元まで含めた定義をしているので, それを頭において次の定義を読んでほしい. まず内積空間からはじめよう. と思ったが, 念の為に線型空間から定義しておこう. #### 定義: 線型空間. $\mathbb{F}$ を (可換) 体とする. $\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$ と思っておけばいい. $\mathcal{H}$ が次の条件を満たすとき, $\mathcal{H}$ を $\mathbb{F}$ 上の線型空間であるという. 以下では $\Psi, \Phi, \Theta \in \mathcal{H}$, $\alpha, \beta \in \mathbb{F}$ とする. 1. (交換則) $\Psi + \Phi = \Phi + \Psi$. 2. (結合則) $\Psi + (\Phi + \Theta) = (\Psi + \Phi) + \Theta$. 3. すべての $\Psi \in \mathcal{H}$ に対し, $\Psi + 0 = \Psi$ が成り立つベクトル 0 がただ一つ存在する. 4. すべての $\Psi \in \mathcal{H}$ に対し, $\Psi + \Psi' = 0$ が成り立つベクトル $\Psi'$ がただ一つ存在する. この $\Psi'$ を $- \Psi$ と書く. 5. $1\Psi = \Psi$. 6. $\alpha (\beta \Psi) = (\alpha \beta )\Psi$. 7. $\alpha (\Psi + \Phi) = \alpha \Psi + \alpha \Phi$. 8. $(\alpha + \beta )\Psi = \alpha \Psi + \beta \Psi$. $\blacksquare$ ややこしく色々書いてあるが, いわゆる「足し算とスカラー倍ができる」と思っておけばいい. 私もすぐ忘れる. では内積空間を定義しよう. #### 定義: 内積空間. $\mathbb{F}$ を $\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$ とし, $\mathcal{H}$ を $\mathbb{F}$ 上の線型空間とする. $\Psi$, $\Phi \in \mathcal{H}$ に対し, 次の 4 つの性質を持ち, $\mathbb{F}$ に値を持つ 2 変数関数 $\langle \cdot, \cdot \rangle$ を $\mathcal{H}$ の内積と呼び, $\mathcal{H}$ を $\mathbb{F}$ 上の内積空間または前 Hilbert 空間と呼ぶ. - (H.1) (線型性) 任意の $\Psi, \Phi_1, \Phi_2 \in \mathcal{H}$ と $\alpha, \beta \in \mathbb{F}$ に対して \begin{align} \langle \Psi, \alpha \Phi_1 + \beta \Phi_2 \rangle = \alpha \langle \Psi, \Phi_1 \rangle + \beta \langle \Psi, \Phi_2 \rangle. \end{align} - (H.2) (対称性) 任意の $\Psi, \Phi_\in \mathcal{H}$ に対して \begin{align} \langle \Psi, \Phi \rangle = \overline{\langle \Phi, \Psi \rangle}. \end{align} ここで複素数 $\alpha$ に対し $\overline{\alpha}$ は複素共役を表す. $\mathbb{F}$ が実数の場合は複素共役は不要. - (H.3) (正値性) 任意の $\Psi \in \mathcal{H}$ に対して $\langle \Psi, \Psi \rangle \geq 0$. - (H.4) (正定値性) $\langle \Psi, \Psi \rangle = 0$ ならば $\Psi = 0_{\mathcal{H}}$. ここで $0_{\mathcal{H}}$ は $\mathcal{H}$ の零ベクトルを表す. 以下, 面倒なので $0_{\mathcal{H}}$ も 0 と書く. これもいちいち書くと鬱陶しいが, $\mathbb{C}^d$ の内積を考えて, それが満たす性質だと思えばいい. $\mathbb{R}^d$ だと複素共役がなくなるだけだ. ようやくだが Hilbert 空間の定義をしよう. #### 定義: Hilbert 空間. 内積空間 $\mathcal{H}$ がその内積から決まる距離に関して完備となるとき, $\mathcal{H}$ を Hilbert 空間という. 完備というのが出てきたが, とりあえずどうでもいい. 数学的な性質の良さをつけただけだ. 気になる向きは調べてほしいが, 実数の完備性 (連続性) の完備と同じで「任意の Cauchy 列は収束する」ということだ. あと「内積から決まる距離」というのが出てきたが, 一応これも定義しよう. どんどん面倒になっていくが, まずはノルムを定義する. #### 定義: (内積から決まる) ノルム $\Vert \Psi \Vert := \sqrt{\langle \Psi, \Psi \rangle} (\geq 0)$ で定義される関数 $\Vert \cdot \Vert$ を内積から定まるノルムという. これは要はベクトルの長さに対応する. 同じ線型空間に対して色々な「長さ」を考えることができるし, またそれを考える必要もあるので, わざわざ長さと言わずノルムと呼ぶ. 当面はあまりご利益を感じられるような話をしない予定なので意味が分からないだろうが, とりあえず言葉自体はよく使うので覚えておいてほしい. #### 定義: 内積から決まる距離. $d (\Psi, \Phi) := \Vert \Psi - \Phi \Vert$ で定義される 2 変数関数 $d (\cdot, \cdot)$ をノルムから定まる距離という. 特にノルムが内積から定まるとき, この距離は内積から定まる距離という. これも距離空間というのがあって, そこの一般論がきちんと使えますよ, というポーズのために導入しておいた言葉なので, これも今は詳細はどうでもいい. $\mathbb{R}^d$ と $\mathbb{C}^d$ がそれぞれ実または複素係数の Hilbert 空間というのは言ったが, それ以外の例を出さないといけないだろう. 量子力学以外でも Fourier 変換やら電磁気やらでも使うのだが, とりあえず数列空間 ($\ell^2$ と書く) と Lebesgue の意味で 2 乗可積分な関数の空間 ($L^2 (\mathbb{R}^d)$ と書く) を紹介したい. ただ, もう大分長くなってきたのでこれは次回に回そう. ### 無限次元 Hilbert 空間の例 #### はじめに 前回は Hilbert 空間の定義をした. 具体例として $\mathbb{R}^d$ や $\mathbb{C}^d$ があるという話をしたが, (工学的) 応用上, 無限次元の空間がどうしてもほしい. 次元の定義や実際にそれに則っているかは今はやらない. 次回, 実際どういうところに出てくるかを説明するので, もう少しだけ辛抱してほしい. 先に言葉だけ出しておくと, Legendre 多項式や Laguarre 多項式といった直交多項式, Fourier 解析で出てくる. 早速例を出そう. 2 つ覚えておけばよくて, 普通それで事足りる. #### 例 1: 数列空間 $\ell^2$. これはほぼ直接的な無限次元化といっていい. $f = (f (n))$, $g = (g (n)) \in \ell^2$ とする. $f (n)$ は $f_n$ と書くと数列っぽくなるが, 次のことを考えて敢えてこう書いた. 和は $n$ 番目同士を足すことで定義する. 普通のベクトルと同じだ. 内積も有限次元と同じ:ただ和を無限級数にすればいい. 一応書いておこう. \begin{align} \langle f, g \rangle := \sum_{n=0}^{\infty} \overline{f (n)} g (n). \end{align} 最後になったが無限級数が収束しないと鬱陶しいので, 収束するための条件として $\ell^2$ の元は全てノルムが有限だとする. つまり次が成り立つ. \begin{align} \Vert f \Vert := \sqrt{\langle f, f \rangle} = \sqrt{\sum_{n=0}^{\infty} |f (n)|^2} < \infty. \end{align} このとき内積も絶対収束する. それは Cauchy-Schwarz の不等式から分かる. 色々な意味で大事なので, Cauchy-Schwarz は次回証明までつけよう. 次の例を出そう. #### 例 2: Lebesgue の意味で 2 乗可積分な関数全体. あとで実際に使うので, $\Omega \subset \mathbb{R}^d$ としておこう. 開集合くらいにした方がいいのだが, うるさいことはひとまずおいておく. 数列では添字を有限から無限に変えたわけだが, こちらは離散的にぽつぽつと足していたので連続的にべったり足したと思えばいい. 内積もきちんと書いておこう. \begin{align} \langle f, g \rangle := \int_{\Omega} \overline{f (x)} g (x) \, dx. \end{align} こちらも $\ell^2$ と同じように積分の収束性は仮定する. 最後に, 念の為 $L^2$ を考えることに物理的な意味があることも言っておこう. 量子力学でもいいし一般に振動, 波動などでもいいが, 適当な関数の (微分の) 2 乗の積分にはエネルギーという意味がある. 物理としては, $L^2$ の中で議論しようというのはエネルギーが有限な関数だけ考えよう, というメッセージと思える. 量子力学では波動関数の 2 乗には確率という意味をつけている. この辺の物理については説明しない. 適当に物理を勉強してほしい. 次回は Cauchy-Schwarz の不等式を証明しよう. ### Cauchy-Schwarz の不等式 #### はじめに 今回は Cauchy-Schwarz の不等式の証明をする. この段階でいきなり一般的にこの不等式の証明をつけるのはどうしようかと思ったのだが, それでもつけることに意味があると思ったのは次の理由による. これから Legendre 多項式や Laguarre 多項式といった直交多項式と Hilbert 空間の関係を紹介していくが, そのときに前回紹介したのとはまた少し違う内積を使う. 少し違う場合であっても, 内積の公理を満たすのであればいつでも成り立つということを伝えたいからだ. Cauchy-Schwarz の不等式は内積の公理から直接証明できることであって, 内積の具体的な取り方にはよらないということは, 証明を見ればはっきりするから. あとで使うということもあって, Cauchy-Schwarz の不等式の証明の前にいくつか概念や予備定理を準備しよう. 有限次元と同じことだが, 念の為きちんと定義しておきたい. 以下, $\mathcal{H}$ を Hilbert 空間とする. #### 定義: 規格化 零でない任意のベクトル $\Psi \in \mathcal{H}$ に対して次の単位ベクトル $\tilde{\Psi}$ を作る手続きを規格化という. \begin{align} \tilde{\Psi} := \frac{\Psi}{\Vert \Psi \Vert}. \end{align} #### 定義: ベクトルの直交 ベクトル $\Psi$, $\Phi \in \mathcal{H}$ が $\langle \Psi, \Phi \rangle = 0$ を満たすとき, $\Psi$ と $\Phi$ は直交するといい, $\Psi \perp \Phi$ と書く. #### 定理. (Pythagoras の定理) $\Psi$, $\Phi \in \mathcal{H}$ が直交するならば \begin{align} \Vert \Psi + \Phi \Vert^2 = \Vert \Psi \Vert^2 + \Vert \Phi \Vert^{2}. \end{align} ##### 証明 定義に従って左辺を直接計算すればいい. \begin{align} \Vert \Psi + \Phi \Vert^2 = \Vert \Psi \Vert^2 + 2 \Re \langle \Psi, \Phi \rangle+ \Vert \Phi \Vert^2. = \Vert \Psi \Vert^2 + \Vert \Phi \Vert^{2}. \end{align} ここで $\Re z$ は複素数 $z$ の実部を表す. $\blacksquare$ もちろん, これはいわゆる「三平方の定理」だ. Pythagoras の定理も内積の公理から直接出てくることが分かる. こういう感じで Cauchy-Schwarz の不等式も証明できる. #### 定理. (Cauchy-Schwarz の不等式) 任意の $\Psi$, $\Phi \in \mathcal{H}$ に対して \begin{align} \| \langle \Psi, \Phi \rangle \| \leq \Vert \Psi \Vert \, \Vert \Phi \Vert. \end{align} 上式で等号が成り立つのは $\Psi$ と $\Phi$ が一次従属のときに限る. ##### 証明 場合分けして考える. $\Phi = 0$ のとき, 成立は自明. $\Phi \neq 0$ のとき, $\Phi' := \Phi / \Vert \Phi \Vert$ とすると, \begin{align} 0 \leq \Vert \Psi - \langle \Psi, \Phi' \rangle \Phi' \Vert = \Vert \Psi \Vert^{2} - \left| \langle \Psi, \Phi' \rangle \right|^{2}. \end{align} したがって $\left| \langle \Psi, \Phi' \rangle \right|^{2} \leq \Vert \Psi \Vert^{2}$ となり, $\Phi'$ を $\Phi$ に戻して Cauchy-Schwarz の不等式が成り立つ. 等号成立時の条件について考えよう. 等号が成り立つとき, 上の導出から $\Psi - \langle \Psi, \Phi' \rangle \Phi' = 0$ だから一次従属性が分かる. 逆, つまり一次従属なら等号が成り立つことは明らか. $\blacksquare$ このとおり, Cauchy-Schwarz の不等式は内積の性質しか使っていない. ついでに Pythagoras の定理も内積の性質から導けることが分かった. 次回はこの認識に立って色々な $L^2$ 空間, 内積とそこから出てくる直交多項式を紹介したい. 具体的には色々な線型の偏微分方程式の解法で出てくることを紹介して, それらの背後に Hilbert 空間があること, Hilbert 空間で統一的に数学的な部分を把握できることを紹介する. ### やや番外編 何で線型代数で連立一次方程式扱うの? #### はじめに 先日, 数学科 (志望の) 大学新入生が線型代数で連立一次方程式扱うの, あれ何なの, 何の意味あるの, という風なことを呟いていた. 究極的には「数学を学んでいくうちに分かる. むしろある程度やらないとどうしても大事だ, という感覚は掴めない」と言わざるを得ない部分がある. ただ, そう言って初学者が持つ当然の疑問に (できる範囲で) 答えないのも問題だ. それも数学科の学生ともなれば尚更. というわけでできる範囲の返答をしてみよう. 次の二本立てとしよう. - 連立一次方程式. - 線型性という視点の獲得. まず私の知る範囲ということでだが, 前者は応用向き, 後者は数学としても大事だが, 数学以外にとっても決定的に大事だ. 少なくとも数学科としては 2 を学ぶために取っ付きがいい題材として連立一次方程式を選んでいるというのが一番ではないかという気がする. Hilbert 空間から始めるよく分からない数学に組み込んだのは, この 2 の部分の役割の説明にもなるからだ. #### 当初の疑問に対して 連立一次方程式についてだが, これについて私が直接知っているのは例えば微分方程式の数値解法との関係だ. コンピュータはダイレクトに連続量を扱えない (らしい) ので, 微分方程式という連続的な対象を適当に離散化して数値計算に落とし込むようだ. 全てかどうかまでは勉強不足で知らないのだが, 少なくとも線型の方程式なら連立一次方程式に帰着する. 応用上, シミュレーションなどは大事なので, そこで微分方程式を解く必要があり, そういうところで基本的な役割を担う. あと数学的なところでいうなら, 取っ付きの良さが挙げられるだろうか. 連立一次方程式という「簡単な」対象を題材に線型代数の基本的なところを学ぶというのは, 1 つの見識と言えないことはない. 抽象論に行く前に具体的なところで感覚を掴むことは大事だから. 連立一次方程式を解く中で色々な代数的特徴の幾何的な解釈も交じえながらやると, またもう少し視野も広がる. ただ, これだとあまり何の意味があるの, というところに答えられている気はしない. #### 閑話 少し話は変わるが, この辺, 私が半端に物理から数学に行ったためにあまり数学科の教育事情を知らないので困るのだが, 実際のところ数学科での数値計算やシミュレーションの教育はどうなっているのだろうか. 組み合わせ論や計算代数などコンピュータ上でも厳密な計算ができる対象については, 実際に研究でも使われることはあるようだが, 微分方程式などの近似計算としての利用の場合はどうか. 元京大で早稲田に移った西田先生 (衝撃波の専門家と聞いている) は数値計算援用証明の開拓という部分もこめて, 数年前に解析学賞をもらっていたので, この辺の教育も充実しつつあるのかもしれない. ちなみに私はといえば, 学生時代全くプログラミングはやっていなかった. #### 線型性という視点の獲得 2 の線型性という視点の獲得というところについて考えよう. 上で「線型の」微分方程式という話をしたが, 微分方程式という「代数」とは一見全く関係ないところにその名前が出ているところからして既にやばい. 解析学の話題の中にも線型性という視点が自然に入り込んでいる. このように数学を学ぶ上で線型性というのは基本的な見方, 言葉として決定的に重要なのだ. 例えば私の数学上の専門だが, 微分作用素 (d/dx) は線型写像 (普通線型作用素という. 物理だと線型演算子という) だし, 積分も線型写像と思える. この辺を徹底的にやろうというのが作用素論だ. 量子力学との深い関係もあり, 正にそこが私の専門になっている. #### 他の例 色々あって簡単に話しきれることではないのだが, 他にもいくつか例を挙げておこう. 線型代数の対象は線型空間とその上の線型写像だが, 群の表現論では群を線型写像に写し取って研究する. 群という別の代数的対象を線型代数を使って調べるということがある. 線型代数をフックにしているので, 線型代数の理解は前提としてある. また, 群が特に Lie 群になっているとき, この Lie 群を線型化した対象としての Lie 環という対象がある. 「線型化」という手法があると言ってもいい. 触れていると大変なことになるが, 群の表現論も物理への応用がある. 無限次元ユニタリ表現論は量子力学の基本と言ってもいい. これ自体は知らなくても物理は余裕でできるが, 一応使ってはいるので言葉くらいは紹介しておこう. また, 線型代数の発展として加群というのもある. 加群も色々なところで出てくる. 大学 1 年には無茶な要求だが, 線型代数は係数が体になっているのだが, 加群は係数を環にしている. これのおかげで (数学内部での) 応用の幅が大きく広がる. 第 3 回の関西すうがく徒のつどいで聞いたが, ホモロジー代数への応用ということでいうなら, 最近は画像処理などへの工学的な応用もあるようだ. #### 加群 加群の話はありとあらゆる意味で全く知らないのだが, 聞いたところによると射影加群はベクトルバンドルと言った幾何の話とも深い関係があったり, (D) 加群という代数解析での大事な対象が正に加群だったりする. うまく答えられている気は全くしないのだが, まとめると, 線型代数は線型性という視点の獲得が一番大事なことで, 連立一次方程式という慣れ親しんだ題材でそれを学ぶことができるということだ. ### 悩むこと 定義だらけで退屈になるということだ. それはこの間, 次の本を読んでいて強く思った. この間つどいでも反例関係の話をしたし, その他 Twitter でも位相空間の反例本に関する話もしたので, 折角だからちょっと読んでみようと思って買ったのだが, はじめが定義ばかりで閉口した. そこで翻って Hilbert 空間から始めるよく分からない数学での展開を思って反省した. 普通の数学のようにすると, 目的の定理や定義に向かってきちんと議論するためにはこういう定義や定理が必要で, そう思うとまずここから始めないと, という構成になる. それがまずいと思ってああいうタイトルで話をしようと思ったのに, 同じことをしていたら世話はない. 何かもう少し考えないといけない. どうせ試しにやっていることなので, 色々やってみたい. ### 過去にセミナーをやろうと思っていたときのメモ書き #### はじめに この間 TL で新入生が線型代数何ぞ的なこと言っていたのもあるので, 新入生向けに線型代数の世界を見せたい. 私が話せるのは解析学周辺しかないが, ないよりはましだろう, ということで. 大体, Hilbert 空間と線型作用素を基本に話す予定. モチベーションを高めることを目的に概論的な話で 4-5 回くらいに収めたい. #### (当時の) 予定 やる予定の内容を書いておきたい. 基本的には抽象論をやる. 作用素論方面の話に行ってスペクトル定理くらいまでやりたい. 作用素環などで大事になる方向だ. 非可換幾何への展開でまた $L^2$ などとの関係が返ってくる. あと, $L^2$ のような話は具体的な話はもちろん大事だが, これはイントロで少し触れるだけにする. #### イントロ ##### 線型代数・微分方程式との関係 まずイントロでする予定の話. 線型代数は (数学内部または少なくとも物理と物理に近い工学で) 役に立つという話はされるだろうが, あまり具体的な話はされない (時間がない) だろうから, その辺の話から入る. 新入生向けなので, まず Hilbert 空間は何ぞというところを話す. 高校でもやった三角関数の積分が実は Hilbert 空間で意味を持つというところ, 微分積分と線型代数の交点というか親玉みたいな話としての関数解析で大事な空間という話をする. また, 物理でそれなりに色々な数学が出てくるが, 線型代数という視点でクリアで統一的な理解ができるから大事だよ, 的な話をする. 微分作用素, 積分作用素の線型性とかも話す必要がある. 物理または工学上大事な数学的道具立てとして大事な微分方程式があるが, 初等的な方程式なら具体的に解ける. 「線型の微分方程式」という中で既に線型性が出ているので, そういうところで解析と線型代数の関わりみたいな話がしたい. これを解く中で現われる直交多項式の話の「直交」も線型代数由来の話で, これが Hilbert 空間の話という感じで. 量子力学の数学的構造 I の 1 章の演習問題にいくつか書いてあるので, 一応参考文献として挙げておこう. ##### テイラー展開と作用素論 また, Taylor 展開と作用素論ということで $e^{ipx}$ の話もしよう. 簡単に説明しておくとこんな感じ. $f (x)$ を原点周りで Taylor 展開するとこうなる: \begin{align} f (x) = \sum_{n=0}^{\infty} \left ( \frac{d}{dx} \right)^n f (0). \end{align} どうでもいいが, 量子力学っぽく $p = -i d/dx$ と書こう: \begin{align} f (x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} \left ( i p \right)^n f (0). \end{align} ここで指数関数の Taylor 展開は \begin{align} e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} x^n \end{align} となる. ここで Taylor 展開の $\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} \left ( i p \right)^n$ は $x$ に $ip$ を代入したものと同じ形をしていることに注意して次のように書き換えてみる. \begin{align} f (x) = \left ( e^{ipx}f \right) (0). \end{align} 指数関数に微分作用素を叩き込むという荒技を披露したが, 作用素論を使ってこれが正当化できます, みたいなことも言いたい. また, 作用素の指数関数 $e^{ipx}$ は Taylor 展開で定義してしまうと解析関数に対してしか定義できないが, $x$ だけずらす作用素と思えば一般の関数に対して定義できる. ここでユニタリ作用素とかそういう話になる. あと $x$ だけずらす作用素 $e^{ipx}$ の無限小生成子としての運動量という所から, 解析力学と量子力学の関係がどうの, みたいな話もちょろっと触れたい. #### 2 回目からの内容 以上大体イントロで話す予定のこと. 2 回目から実際にもう少し踏み込んだ話をしていく. まずは Hilbert 空間自体の話をする. 「ヒルベルト空間と線型作用素」には Banach 空間の話もあるが, 時間的に多分カットだろう. 演習問題になっている定理にも少し触れたい. 完備性の話などもあるので, 証明もポイントをおさえて触れていきたい. 引き続き 2, 3 章を力づくでやっていく. 非有界作用素はゴツ過ぎて触れられないが, スペクトル定理はやりたい. スペクトル定理は無限次元版の対角化だ. スペクトル測度や解析関数カルキュラスとか出てきてやばいのだが, むしろ色々な数学との関係を話す機会として採り上げたい. Stone の定理と量子力学の話とかも一応入れる予定. #### 参考文献 参考文献をまとめておこう. 1 つの展開としての作用素環方面, 特に (非可換) 幾何方面ということで, 数学会で PDF が公開されている [夏目-森吉](http://mathsoc.jp/comm/shuppan/news20130301.html) の「作用素環と幾何学」も紹介しておこう. 触れる予定はないが, 微分方程式関係と共に関数解析をやろうという感じの本も紹介だけはしておこう. こういう具体的な方から学ぶのが好きな人は頑張ってアタックしてみてほしい. また, こちらに興味があるという人は声をかけてほしい. トークしろと言われると困る部分はあるが, 一緒に勉強しようというなら時間さえ合えば付き合いたい. そしてプロデュースしたい. ### セミナー初回の内容をもう少し詳しくした #### はじめに なかなか時間が取れなくて非常にアレなのだが, 大体話したいことはピックアップした. Twitter で[この辺](https://twitter.com/phasetr/status/326705024849825792){target=_blank}から適当に呟いたのは下にまとめる. その他, あとで動画にもする予定で, そこではさらに詳しく話す予定なので, それに合わせて今から詳しい内容も作っておきたい. 特に特殊関数周りの具体例を色々あげておきたいと思っている. 今すぐに見たいという向きもあろうから, 参考文献を軽くあげておこう. #### 直交多項式 全体的な話として, まだ買っていないのだが「直交多項式入門」がかなり気になっている. とりあえず触れようと思っているのは, Legendre 多項式, Legendre 陪関数, Hermite 多項式, Laguerre 多項式, Fourier 級数のあたりだ. ちなみに今はじめて知ったのだが, Chebyshev 多項式は[この PDF](http://www.phys.shimane-u.ac.jp/tanaka_lab/lecture/math1/math1.pdf){target=_blank}によると計算機の中での応用があるらしい. Legendre や球 Bessel については[この PDF](http://www.g-munu.t.u-tokyo.ac.jp/mio/note/elemag/specialf.pdf){target=_blank}が参考になるかと思う. 自分が知っている話として物理への応用について話す予定で, 正にそういう話だ. Laguerre は例えば[この PDF](http://physics.s.chiba-u.ac.jp/~kurasawa/qm_a.pdf){target=_blank}を検討している. 上記多項式もそうだが, Hermite についても手元にある本含め, まだ資料をあさっている. 今すぐ参考文献を知りたい向きは, 基本的には偏微分方程式を解くところで使うので, その辺で探すといい. 「物理数学 Legendre 多項式」などで探せば色々出てくる. #### フーリエ解析 Fourier は熱方程式, 波動方程式, 電磁気学あたりで探すといいだろう, 数学の本ではあるが, 逆問題を通じた応用的な色彩が強い本として, 波動方程式への応用については下記の本の前者を, 熱方程式への応用については後者を参考にすると楽しいだろう. 物理への応用に関してよい参考書は今探しているところだ. 波動の本でもいいが, 電磁気 (電磁波) からの話が個人的に気に入っているというか感覚が掴みやすかったので, その辺で探すといい. もちろん, 自分の専門に近いところ, 自分にとって分かりやすいところで探すのが一番いい. いいのがあったら教えてほしい. #### 変分 多項式から話題を変えるが, 例えば変分というのがある. 変分原理として物理の各所で現われるが, 量子力学で基底エネルギーを出すのに使うこともある. 実係数の微分方程式への数学的応用ということでは Brezis の本が定評がある. もちろんかっちりとした数学の本だ. Hilbert 空間を中心に議論されている. 最近演習問題も追加された英語版も出版されたので, 買うならそちらを買った方がいいかもしれない. 東大の微分方程式系の研究室での学部 4 年のセミナーでも使われることがあるようなので, そのくらいきちんとした本だ. #### 変分 また, 何度も紹介しているが, 解析力学というか幾何学での変分ということで次の本が比較的分かりやすく, しかも面白い. 読んだことはないのだが, 物理での変分原理については次のような本もある. #### 作用素論: 量子力学とスペクトル これまでの微分方程式の話とは大分変わるが, 作用素論につなげるので, 量子力学とスペクトルの話もしたいと思っている. これについては日合-柳本はもちろんのこと, 数理物理としては新井先生の本がいい. 量子力学での変分に関する数学的に精密な話も書いてある. 他には, 作用素の関数やユニタリ表現に関する話も大事だ. 作用素の関数については先日ワヘイヘイオフで詳しい話を聞かせろ, という要望を受けたので, 別途早めにまとめようと思っている. #### Twitter の引用 では以下, Twitter での発言を抜き出しておく. > Hilbert 空間から始めるよく分からない数学のセミナー的なアレの原稿, いい加減作ろう. > イントロでずっと固まっているが, そろそろ具体化したい. > イントロだけはもう少し線型代数全般について話をしたい > > まず超大雑把に言って教養でやる線型代数らしい線型代数と, > 微分方程式方面と関わる方面の話と, 関数解析または作用素論的な抽象論みたいな感じの話がある的な話をする > > 加群への展開とか, Lie 群への展開とか数学として取り逃すところは色々出てくるが, > この辺は私の数学力的に手に負えないところが出てくるので色々ある, とだけ言って逃げる. > ただ表現論と Fourier と, みたいなところと量子力学とかは少し触れたい > > Hilbert 空間の抽象論と作用素論的な展開と量子力学との関係的なアレはあとで詳しくやるから, 軽くこなす. > まずは有限次元の方か > > 有限次元と言ったところで専門に近い所で見ても色々あるし困る. > とりあえずハバードだとか, 直接的に研究に結び付くくらいやばい, という話はしよう > > あとは数値計算でも使う的な話は入れよう. > 微積分との絡みで平衡点近傍の安定性とかそんな話もしよう > > 脱線するが, 平衡点近傍の話, 多分力学系とかそういうところでも使う. > あまりきちんと勉強していないが, 山本義隆の解析力学にも解説あるし, ゆきみさんいわく常微分方程式と解析力学にも解説あるらしい > > これは適当な線型化から系の性質を調べるとかいう話で, 微分積分や力学とも深い関係がある. > 機械工学とかその辺でも確か出てくるはずとかそんな話をしたい > > あと標準的なコースの重要性はきちんと言わないといけない. > 行列式と固有値, 固有ベクトルあたりは何をネタにしよう. > 物理の各所で出てくるが. 固体物理というか連成振動とかその辺か. > あと統計学での主成分分析とかそういう話か. > この辺, 具体例を仕入れる必要がある > > 固有値, 固有ベクトルは量子力学とかその他物理でも色々展開があるという話はしよう. > 物理の話ばかりしているのもどうかという気はするが, 応用はそれしか知らない無学な市民だった > > Google のページランクみたいな話もしよう. > 確率との関係とかエルゴードとか言っておくと響く向きには響くだろう. > これ, 数値計算とも関係するかなりクールな話なので盛り込みたい > > とりあえず有限次元はこんなものか. > 無限次元というか微分積分への接続として平衡点近傍の話をもってくる方がいいか. > あとは微分作用素と積分作用素の線型性は必ず触れる. > 我が魂 > > @aki_room 毎回 2 時間くらいのを 4 回くらいの予定です. > ヒルベルト空間とその上の作用素論を 3 回でスペクトル分解までやろうという無茶な企画. > まともに回るか分かりませんが, とにかく一度やってみようという無茶企画です > > 【phasetr【参考】 】 > > @JosephYoiko ありがとうございます. 例を作って図示まで自分でやるのは結構手間なので助かります > > 関数解析的な意味での無限次元の線型代数, 何を話そう. > 時間があるから適当に抜粋するが, ネタとしては色々書いてためておこう. > まずはブログの方にも書いた Taylor と微分作用素の関数と並進とかその辺か > > あと微分作用素の固有値展開からの Fourier か. > Fourier は高校でやった三角の積分が直交関係を表す的な話は入れないといけないだろう > > 今回, 個別の話をやっている余裕はなかろうが Legendre やら Bessel やら, > 量子力学とか電磁気周りでの微分方程式を解くときにも出てくるという話も盛り込みたい > > これは個別の関数の相手もそれはそれで大事なのだが, 理屈としては線型空間論で一括処理できるのだ, > という認識を持つことで数学的, 精神的な負担を減らすことを目的に, 必ず触れるようにしたい > > あとアレだ, モノによっては多重極展開とか応用上の意味があったりもするから, > 単なる数学ではない部分もある的なアレ. > 変分とか無限次元の微分とかいう話はすると楽しいかよくわからないが, ネタとして書いておこう > > イントロはこんなものか. > ネタ多すぎるので確実に削るが, 他にもどこかで話すなり, 最終的に動画にするときには盛り込むからいいか. > あとスペクトルの話はきちんと触れ直そう > > 関係ないが, 今日の math-phys の arXiv に非可換調和振動子に関する廣島先生と佐々木さんの論文が出ていた. > これはこの間の埼玉大のセミナーでも少し話したが, 若山先生が最近やっているやつで数論というかゼータと関係があるやつ #### 以前作った動画 考えてみれば, Hubbard や Google のページランクについては動画を作ったのだった. それも紹介しておこう. #### ラベル 数学, 物理, 数理物理, Hilbert 空間から始めるよく分からない数学, 線型代数, 微分積分, 作用素論, 微分方程式 ### Hilbert 空間メインの関数解析の初学には日合・柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい #### はじめに [イケメンエリートのよぬすさんが線型代数のテキスト選定をしていたのでちょっと話してみた](https://twitter.com/Yonus_Mendox/status/380630124615307264){target=_blank}. #### メモ > 線形代数だとすると, テキストは何にすべきなのだろう...... > > @Yonus_Mendox ヒルベルト空間論とか読めばいいのでは > > @phasetr いえ, 初めて学ぶひとと読むための本なので...... > やっぱり一周して齋藤正彦でしょうかねえ. > ──ところで, ヒルベルト空間論としては何を読めばよろしいのでしょうか. > > @Yonus_Mendox 日合•柳のがすっきりしていて良い本です > > @phasetr ありがとうございます. 作用素かあ...... > > @Yonus_Mendox ヒルベルト空間自体は簡単なので一般論としてはあまりやることないのです. > 具体的なソボレフがどうの, とかいうことになると微分方程式などと絡めて色々やることありますが. > 分かりやすい空間だからこそその上で作用素論などがうまく展開できます #### コメント 日合・柳の本というのは『ヒルベルト空間と線型作用素』だ. Hilbert 空間だけでなく Banach 空間の議論も少しある. 関数解析の基本定理が網羅されているので, 関数解析の本としても使える. 巻末の付録が尋常ではない程充実していて, Krein-Milman の端点定理や Riesz-Markov-Kakutani なども丁寧な証明つきで書いてある. Lebesgue が分かっていないとスペクトル定理の証明で少し詰まるかもしれない. 本のはしがきでも説明されているが, あえて作用素環には踏み込まずに基礎となる作用素論について説明している感じ. ただ, ところどころ, functional calculus や非可換 $\ell^p$ としてのコンパクト作用素・ Schatten クラスなど作用素環でも大事な話は書いてある. 3 章のスペクトル定理と 4 章のコンパクト作用素, 付録をきちんと読めば元が取れる. 作用素論を専門にしようという人は作用素論の話題に特化した 5 章以降も読むといいだろう. 私は 4 章までしか読んでいないが, すっきりとまとまっていて非常によい本といえる. Hilbert 空間と言えば我らが新井先生の『量子力学の数学的構造』があるが, 一般にはあまりお勧めしない. I では Hilbert 空間の基礎からはじめて非有界作用素, 自己共役作用素, スペクトル分解まで議論する. II ではある程度具体的な量子系の解析と場の理論・量子統計で必要な Fock 空間の話をする. 関数解析入門にも使えるが, Banach 空間論はほとんど触れられていないのでそこについては本当に入門の入門くらいにしか使えない. 量子力学への応用に特化しているので非有界作用素の話が中心になるが, 必ずしも一般の数学でその作用素論をよく使うわけではない. 非有界作用素の議論はがかなり面倒なので, その辺を使わない人にはあまりお勧めしない. 一般の数学向けには用途には日合-柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』がよい. Twitter ではよく言っているが, 線型代数なら私は齋藤正彦の本が好きだ. #### Amazon の書評 [Amazon のこの書評は以前私が書いたものだ](http://www.amazon.co.jp/review/R1KKQ5EX6N3T7T/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8){target=_blank}. こちらにも引用しておこう. > 数学や他の分野の方々には申し訳ないですが, 物理の人間として書きます. > 経験に照らしてみても, (非数学の) 初学者が気楽に読めるような本とはいえませんが, 非常に良い本であることは間違いありません. > > (初等) 物理の中で線型性は非常に重要な概念です. > まず, 数々の物理法則は微分方程式の形で書かれますが, 大抵は線型の微分方程式です. > 例えば, 大抵の電磁気学の本は, 静電場を記述するクーロンの法則からはじまると思いますが, 重ね合わせの原理を用いて, 多電荷の系へ拡張し, さらに電荷が連続分布した系へと拡張していきます. > このとき用いる重ね合わせの原理を数学的に述べると, 微分方程式の線型性です. > また線型空間の理論は座標による表示を離れる, という幾何学的な面もありますが, これは物理法則の共変性を定式化する際に大事になってきます. > > もっと本質的に線型性が出てくるのは現代物理の要たる量子力学です. > 正確には量子力学で用いるのは無限次元の線型代数 (関数解析) ではありますが, 基本的な思想を学ぶには有限次元の線型代数 (本書の程度!) で十分です. > 応用上も大事な正規作用素のスペクトル分解 (対角化と同値) について触れてあるのも嬉しいところです. > > 最後に行列の解析的な取り扱いがありますが, これには, そもそも行列の関数 (指数関数や対数関数) を定義する, という応用上も大事な議論が含まれています. > たとえば, 量子光学で現れるコヒーレンスを扱うときなどに, これを知っていると, 戸惑いがなくなると思います. > > かなりマニアックな話 (数理物理的観点) で恐縮ですが, Perron-Frobenius の定理の前に「工学や経済学への応用上重要」という説明がありますが, この定理は厳密統計力学への多数の応用があります. > この定理には正値性保存 (または改良) 作用素の理論という無限次元版がありますが, これはたとえば, 汎関数積分 (経路積分) 法の威力を高めてくれます. > > 学部の 4 年にもなれば, 物理で線型代数が重要なことは身にしみて分かります. > 特に量子力学においては決定的です. > ある程度線型代数に慣れたら, 物理の人にはぜひともアタックしてもらいたい本です. #### ラベル 数学, 数理物理, 線型代数, Hilbert 空間, 関数解析 ### ラベル 数学, 物理, 数理物理, Hilbert 空間から始めるよく分からない数学 ## 衝撃の彌永昌吉エピソード ### 本文 [彌永先生に関するウルトラ格好いいツイートがあった](https://twitter.com/follow_against/status/387615005975134209){target=_blank}. >私の指導教官が駒場の学生だったとき, 教養の数学を彌永昌吉さんが担当していたそうな. >板書やプリントすべてフランス語であったため, 困った学生たちが抗議したところ, >「君たちフランス語を勉強したまえ」と一言日本語で答え, >そのまま平然と講義を続けたそうな. これ, 講義自体はフランス語だったのだろうか. それが気になる. 昔はこんな無茶を言っても教育になったのだろうし, 昔の大学凄まじい. その時代のエリートしか行かない所の教育, こんな感じだったのかと衝撃を受ける. これでも人が育つのだろうから. ### ラベル 数学, 数学者 ## チャーハニスト鈴木と tri_iro さんによるランダムネス対話の記録 ### 本文 [チャーハニスト鈴木と tri_iro さんによる対話を記録しておく](https://twitter.com/mszk_p/status/363184889002082304){target=_blank}. > Schnorr ランダムとか Martin-L Ö F ランダムの話というかランダムネスの話, > なんべんも聴いてるのに, 未だにぜんぜんわからない… > > @mszk_p コーエン強制法とランダム強制法を recursive な世界に落とし込んだ位相と測度の対比からランダムネスを理解すると, 次数絡みのランダムネス研究が何をやりたいのかは分かりやすいと思います (超遠回りルート) > > @tri_iro いやなんというか, もっと低いレベルの話でわかってないんですよね… > たぶん一番の原因はちゃんと勉強していないからということなのだと思いますが… > > @mszk_p 定義とかの話なら, 漠然と「ランダム=ある種の確率 1 の事象全て満たす点」くらいに思っておけばお k ですよ. > Martin-L Ö F とか Schnorr とか weak-2 とかはこの「ある種」の部分, > つまり「確率 1 事象の部分クラス」を規定する形容詞であって, 枝葉の部分なので. > > @tri_iro あぁ, そういうことだったんですか. > ランダムの概念をいろんなアプローチで定義することを試みているのだと勘違いしていました… > > @mszk_p ある意味では, 「ランダムの概念」をいろんなアプローチで定義しようと試みているという一面もある, > というのは正しいのですが, 結局は, 数学的には, > それは「確率 1 事象の部分クラス」を色んなアプローチで定義するということに落ち着くという感じです. > > @mszk_p たとえば, 「チューリング機械では圧縮不可能である」確率は 1 なので, > 圧縮不可能性はある種の確率 1 の事象を表しますし, > 「マルチンゲールで予測不可能である」確率は 1 なので, > 予測不可能性はある種の確率 1 の事象を表しますし, などなど. > > @tri_iro あぁ, そういうところでコルモゴロフ複雑性とかが出てくるのですね. > > @mszk_p はい, 「構成的に確率 1 」「コルモゴロフ複雑性の意味で圧縮不可能」「構成的なマルチンゲールでは予測不可能」が全て同値条件であるというのが, > いわばランダムネスの基本定理なわけです. > 興味あれば去年の僕の講義ノートとかもどうぞ > > > @tri_iro ありがとうございます. > 去年は勉強する余裕がなかったので今年の夏休みで再チャレンジしてみます. 基本的に何を言っているのか全く把握していないが, 興味を持つ向きもいるだろうし, 何かあったときにメモを残しておくと私にとって有用になる可能性があるので, こういったことは積極的にメモっておく所存. ### ラベル 数学, ランダムネス ## RIMS の小嶋先生の論文 Derivation of Born Rule from Algebraic and Statistical Axioms を眺めてみた ### 本文 別冊数理科学で小嶋先生が「無限量子系の物理と数学」というのを出すようだが, その小嶋先生の共著論文である. Ojima-Okamura-Saigo の [Derivation of Born Rule from Algebraic and Statistical Axioms](Derivation of Born Rule from Algebraic and Statistical Axioms) だ. 小嶋先生の論文, モチベーション自体は強く物理に根ざしているが中身は完全に数学で, 読むのは死ぬ程つらい. 院で数学科に進学して, 数学上の専門は作用素環で同じはずの私ですらつらいので, 大抵の物理の人には読めたものではないだろう. 小嶋先生, たいがい滅茶苦茶に一般的な状況を扱うのが特徴だ. イントロで dually とかすぐに出てくるので, またそれか感ある. 12 ページと短かいので, 興味がある向きは直接読まれたい. ここでは私のメモとして残しておく:内容にあまり責任持てないので, 専門家はきちんと自分で読んでほしい. ### 概要 アブストを読むと, Born ルールが出てくるような新たな作業仮説 (公理系) を提案したというのが主旨だ. いつも通り代数的場の量子論の枠で議論される. セクターと因子状態 (factor state) が大事という話. 因子は中心が自明な (von Neumann) 環のことで, 状態はその上の特殊な線型汎関数だ. 統計的な話を何とかしようというところで, Kolmogorov 流の定式化だと, 確率変数として関数を取らなければならないからうまくない, という話が出てくる. 量子力学ではこう色々と非可換な量を扱いたいから, ということだ. 2 節では代数的場の量子論の基礎となる数学を解説する. 3 節ではセクターが出てくる. セクターは一般化された相を表す概念で, ミクロな構造のマクロな特徴付けを表す量だ. 4 節で測定の話になり, 5 節で Born のルールを導出する. ### 2 節: 量子確率論 2 節の題名は量子確率論だ. 数学だと可換だったのを非可換にしたときによく「量子--」と呼んだりする. 相当の濫用だと思うが, 深く気にしてはいけない. 必ずしも物理と関係しているわけではない, ということも強調しておこう. ここでは単位つきの *-環を考える. Twitter ではよく「単位元は甘え」とか言っているが, von Neumann 環なら単位元がなくても中心極大射影を単位元と思ってよくなるので, von Neumann 環の場合は普通単位元の存在を仮定する. あと状態 (state) の定義だとか代数的確率空間の定義などをする. 代数的確率空間というのは, 単に単位元つきの *-環と状態の組を指している. Riesz-Markov-Kakutani の定理から, 可換な $C^*$ 環上の状態は確率測度と思える. これの非可換版を考えているというだけだ. 代数的場の量子論でどうやって物理での普通のアプローチ, つまり Hilbert 空間を基礎にした定式化を復元するか, という話が GNS 構成定理・ GNS 表現という話になる. これが定理 2.1 だ. von Neumann 環上の正規状態 (normal state) というのが出てくるが, これは Lebesgue の単調収束定理が成り立つような状態だ. 可換な設定ではないので, 状態から本当に積分論が復元できるかが分からない. もちろん復元できた方が色々とアナロジーも使えて便利なので, 復元できるような設定として von Neumann 環では大体正規状態を考える. ### 3 節: セクター理論 3 節でセクターの解説が始まる. quasi-equivalence (準同値) という概念が定義され, これを使って表現が disjointness を定義する. そして因子状態の準同値類としてセクターが定義される. 因子状態は単純にその状態の GNS 表現 (から作る von Neumann 環) が因子であることだ. 因子状態は準同値でないなら disjoint という強烈な定理があるので, それも併用している. 準同値を考えるのは, 代数的場の量子論が表現論を主軸に据える理論だからだ. 普通量子力学だとユニタリ同値で議論するが, 場の理論はこれでは足りない. 表現を取り替えて議論する必要がある. そこで表現をまたぐような概念として準同値が必要になる. 興味がある向きには物理的な議論として高橋先生の本の第 5 章の fixed source model を読んでほしい. ちなみに新井先生の「フォック空間と量子場」の 12 章がこれの数学的な解析で, 物理的に期待されるのと同じ現象を示す. さらについでにいうと, 13 章で議論される Nelson モデルも同じような振舞いをする. これは赤外発散が原因だ. 状態 (またはその GNS 表現) の disjointness はマクロな識別可能性を表すことになっていて, そこでセクターはマクロな分類の指標となっている. 作用素環をフルに使った文脈で相転移を議論するとこの辺が良く分かるのだろうが, 私自身は不勉強で全然分かっていない. Subcentral measure とか色々出てくるのだが, この辺はさっぱりだ. 慣れで何となく気分的に納得してしまっているのはよくない. 中心が古典的な話に対応しているという話をしたあと, 測定の話が出てくる. ### 4 節: 測定 4 節の測定の話は全く分からないのでお手上げという悲しみ. ### 6 節 6 節で上記の「無限量子系の物理と数学」が引用されていた. 日本人以外のアクセス, 死ぬ程悪いな, という印象を受けた. 汎関数積分 (経路積分) の方の構成的場の量子論の論文で, 時々ロシア人 (多分) がロシアの教科書を引用してきたりして悲しみに包まれることがあるが, それを想起した. 何かもうさっぱり分からないが, 先日話題になった小澤先生の測定の文献も参照されていたりしたことだけメモしておこう. 代数的場の量子論で (とりあえず) 有界作用素だけ扱っていればいいのか, とかそういう疑問もあろうが, それは別の機会にやろう. Summer School 数理物理 2013 量子場の数理の予備知識みたいな感じでやれば, タイムリーでいいかもしれない. ### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 作用素環, 代数的場の量子論, 量子統計, 測定の理論 ## Imira と Linares による Gelfand-Mazur の定理を使った代数学の基本定理の証明 ### 本文 [An Application of the Gelfand-Mazur Theorem: the Fundamental Theorem of Algebra Revisited](http://www.emis.de/journals/DM/v13-2/art5.pdf) という論文を見つけたので紹介する. まず Gelfand-Mazur の定理の紹介をしよう. 次のような簡明な定理だ. > 係数を複素とする単位元つき Banach 環 $A$ の全ての元が可逆だとする. > このとき $A$ は複素数体に等距離同型である. 実係数のときは実数と等距離同型になるようだ. Gelfand-Mazur の証明自体は例えば次の本に書いてある. 代数学の基本定理は「代数学の」と銘打っておきながら代数というより むしろ 1 変数多項式の基本定理と言った方が正確だったり, 複素解析など 証明に解析学を援用するという特徴がある. 実数の完備性を使うようなので, どこかしらで解析学の結果を使う必要はあるようだ. [kyon_math と Paul_Painleve さんのツイート](https://twitter.com/kyon_math/status/296190541501198336){target=_blank}を引用しておこう. >@Paul_Painleve 堀田先生の「可換環と体」の第 2 部§ 2.3 には中間値の定理を一回だけ使い, >あとはガロア理論に訴えるという証明がありますね. >証明のあとの注意も味わい深い. >@kyon_math 今度見てみます. >結局は中間値の定理なり BW の定理なり, 実数の連続性を使わないといけない. >私個人は, Winding number を使う証明が本質をみせてるような気がして好きですが, >140 字以内では紹介できそうもない. >@Paul_Painleve 私も同意します. >堀田先生のは代数的手法で行けるとこまで行き, 最後の最後に中間値の定理を使う. >それにより「代数学の基本定理」の解析性がどの部分に集約されるかを問うものです. >結局「実係数の奇数次方程式は実数解を持つ」に帰着する. これはラプラスも同じ. ### 証明 本題に戻ろう. 3 ページしかない論文なので直接読んだ方が速いだろうが, 証明のアイデアは $\mathbb{C}[z]$ の既約多項式が 1 次式しかないことを示すことだ. 既約多項式による商環を取ると, 既約性からこれが体になる. この商環に適切なノルムを入れることができ, ここから Gelfand-Mazur で証明が終わる. 大した話ではないと言ってしまえばそれまでだが, 18-19 世紀から知られている定理であっても, 特に大事な定理は証明の改良や新たな証明が提案されることがあるということはあまり知られていない気がしたので, 紹介した次第だ. 堀田さんの本も読んでみたい. ### ラベル 数学,代数,関数解析 ## ytb_at_twt さんから Tarski 情報のタレコミがあったので ### 本文 [やたべさんからの Tarski 情報があったので](http://ask.fm/ytb_at_twt/answer/107704680010){target=_blank}. >Tarski についてのお気に入りの逸話はなんですか? > >タルスキは, バークレーの木造校舎の教室で講義に熱中するあまり, >紙の詰まったくずかごにタバコを投げ捨て, その結果くずかごが燃えだし, >タルスキが燃えるくずかごの上でジャンプして火を消し止めたそうですが, いかにもやりそうな話ですね. >魅力的な人だったのだろうと思います. 沈みいくタイタニックの中で最後まで演奏し続けていた人達のように, バークレーの校舎が全焼しつつも校舎の中で最後まで講義をし続け聴講生もろとも全員死んだとかいう話ならもっと良かった. ### ラベル 数学, 数学者 ## 微分と積分は逆の演算という説明は (応用上) よろしくないし教育上不適切 ### はじめに 全く関係ない事を調べていて, [微分積分に関する地獄のような回答](http://okwave.jp/qa/q831872.html)を見つけた. 質問については知恵袋に書くなら普通にググればいいのでは, と思うのだがそれはそれとして, 質問と回答 (ベストアンサー) は次の通り. ### 質問 > 微分積分の定義を教えて下さい! > あとその内容が載っているサイトなどもありましたら教えて下さい! お願いします! ### 解答 > 微分の定義は, > dy/dx=lim[Δ X → 0]{y (x+ Δ X)-y (x)}/ Δ X > 積分の定義は, > int (dy/dx) dx=y (微分の積分は元の関数) > となっています. > 微分と積分は互いに逆のことを行っているので, ここさえわかれば簡単になると思います. ### コメント 「教科書を読もう」という他の方の回答があったが, 質問者がどういう背景を持っているか分からないので微妙なところとはいえ, 確かにまずはそこをおさえてほしいとは思う. しかしそれ以上に回答者がやばすぎる. ### 一番の問題 専門的な問題はさておき, 「高校での数学」として一番の問題は, 「微分と積分が逆」と言ってしまうと「微分が分からないと積分が分からない」という誤解を招きかねない点だ. よく数学は積み上げ型みたいなことが言われるので、 「微分が分からなくても積分は独立にカバーできる」と強調することは大事だろう. また全くもって嬉しい話ではないが, 最近は放射線関連で積分を使った量が出てくることがある. 積分単体での意義がここで問われるし, そこと関係が深い積分と面積の結び付きが弱くなりかねないことも大きな問題だ. 高校での積分の導入は最初確かに微分の逆 (不定積分) で出てくるが, そのちょっとあとに面積との関係が出てくる. それもあって, 標語的なところとしてよく「微分は接線を求めること」「積分は面積を求めること」という感じで出てくる. この 2 つが逆というのは (私には) 感覚的に受け入れがたい. 接線を求める方法と面積を求める方法が逆の手続き (?) だというの, 相当無茶なのではないか, よけいな混乱を招くのではないか, というところもある. 何を言いたいのか, あまり綺麗に書き表せなかったが, 何となく雰囲気は伝わると信じておく. これについてはいわゆる文系の方や数学で挫折した方などにご意見を伺いたい. ### Twitterから Twitter での関連する kyon_math さんのコメントも引用しておこう. [これ](https://twitter.com/kyon_math/status/295357007362400256)と[これ](https://twitter.com/kyon_math/status/295357480685412353)だ. >@phasetr 「微分と積分が (ある理想的な状態で) ほとんど逆」っていうのは「微積分学の基本定理」の内容なので, >やっぱり, 微分と積分には独自路線を行っていただくのが正しいのでは? >積分の方が何となく primitive な概念であるような印象はある. >実際, 積分の方はギリシャ数学の時代から, 面積や体積というフレーズで論じられて来た. >微分は Newton & Leibniz で相当新しい. ### 突っ込んだ話 ここからは数学的にある程度専門的な部分について考える. >微分と積分は互いに逆のことを行っているので, ここさえわかれば簡単になると思います. これは高次元に行くとかなり面倒になる問題なので, いい説明だと思えない. もちろん Stokes の定理という大事な高次元版があるから, 高次元でも適当な条件下ではこれ以上ないほど適切で大事な指摘ではある. だがまず上に書いた問題, つまり接線と面積といったときの気分的な問題がある. ### 微分の逆が積分か? その他, $f \colon \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m$ の微分の逆が「積分」と思っていいか, それで理解できるかというと相当苦しい. 多変数の扱いは (物理的・工学的) 応用上決定的に大事だが, こういうところで変な尾を引く説明という気もする. むしろこのあたりの応用を見越した話ということでいえば, 微分と積分を別個に教えた方がいいくらい. ### 微分積分学の基本定理 また完全に数学的な話なので (高校水準の話としては) どうでもいいのだが, こういう形で微分と積分を学んだとき, 微積分学の基本定理の意義が全く感じられないのはどうしたらいいのだろう, ということも考えた. kyon_math さんの指摘と重なるところでもある. ### とりあえずの参考文献 程よい初等解析学の本を知らないのでいつも苦慮するのだが, 私が良く参照するのは杉浦光夫の『解析入門』だ. 証明が尋常ではないほど丁寧なので困ったときにはとても助かる. 逆に詳しすぎるから通読には向かない. 辞書として分からないことがあったときにあたるととても便利なので, そういう用途には積極的に勧めている. 教科書として通読するのに良い本があれば是非教えてほしい. ### ラベル 数学,解析学,数学教育 ## 気持を伝える数学教材がほしい ### 本文 他はどうか分からないので何ともいえないが, 今まで数学を学んできて数学関係の (専門) 教育に必要なのは, 厳密なことを敢えて言わずに気持ちの部分だけきっちり説明する解説なのでは, という気がしているので何かそういうことしたい. ここで私がやりたいのはあくまで大学の数学に関する話だ. これをド専門の数学者が自分の分野に対してやるのがおそらく決定的に大事. そこで「気分的にはこうなのだが, 実際にはこういう問題や例があるので, こういう部分が上手くいかないので普通の本では迂回した面倒な議論が必要 (といって詳しい本を参照) 」みたいなのが, 凄く読みたい. 自分が知っている範囲の解析学だと評価を頑張ったり, 近似の精度を上げていく部分にこそ魂があったりするので 難しいところもあるのだが, あえてそこを流して全体の気分を感じるのが大事だと, ちょっと違うところの (解析学の) 分野を勉強するとよく思うので. 幾何は結構良くある気がするが, 代数や解析ではあまり見かけない. 何か良い本をご存知の方は教えて頂ければこれ幸い. また JosephYoiko さんから次のようなコメントを頂いたのでそれも載せておきたい. [これ](http://twitter.com/JosephYoiko/status/295310710362230784){target=_blank}と[これ](https://twitter.com/JosephYoiko/status/295338214913372160){target=_blank}だ. > 大事なことですね. 8 割方は手抜き議論で大丈夫なんだけど, こういう厄介なケースもあるよと分けて議論するのは大事. 統合は後からでも出来るわけですからね. RT @phasetr: @phasetr 「気分的にはこうなのだが, 実際にはこういう問題や例があるので…」 > 僕は応用数学者なので, 計算機に載せる時に「手を抜いていいところ」と「真面目に考えないといけないところ」を明確にしたいと常々考えています. RT @phasetr: @JosephYoiko そこを流して全体の気分を感じるのが大事だと… ### ラベル 数学,数学教育 ## patho_logic さんの悲しみと大阪府立大学の嘉田勝先生による『連続体仮説が実数の解析的性質に与える影響』に関する PDF ### はじめに 大分前の話で既に周辺情報を辿るのを断念しているのだが, [何か連続体仮説の周辺で地獄の底から湧き上がってくるタイプの話が出たようで patho_logic さんが泣いていた](https://twitter.com/patho_logic/status/360554817178959872){target=_blank}. ### 引用 > 連続体仮説と数学のかかわりをまとまった情報を発信する必要があるんでないかい. > > @patho_logic 連続体仮説に限らず, ロジック全般について**普通の数学とは無関係**と思われている感じある. > > @patho_logic 関係者はみんな思ってるんですが藪から蛇が出るのを恐れて言えないでいるのです. > 蛙さん蛇好きですか (キラリ > > @tenapi 蟾蜍「ヤマカガシ以外なら撃退できそうですが…」まずは話題を集めるところから. > > @functional_yy 「お前も普通じゃなくしてやろうか? 」とか喚きつつ他分野を荒らしたいです. > > @patho_logic 全然「まとまった情報」でないですが微力ながらの貢献のつもり→ とりあえず patho_logic さんの悲しみは御自分で処理して頂くことにし, とりあえず嘉田先生の PDF を読んでみた. 上記リンクから情報を抜き出しておこう. 4 ページしかないし, 興味がある向きは実際に PDF を読んでみよう. ### PDF 情報 > タイトル > 連続体仮説が実数の解析的性質に与える影響 > > カテゴリ > 講義資料 > > 概要 > 大学院講義用に作った資料です. > 連続体仮説を仮定すると累次積分順序交換で値が変わる関数を構成できるという Sierpinski の結果の紹介. またポーランド学派か, というアレだ. ひとまず耐ショック体制を取っておく. またもや冒頭部から抜き出そう. ### PDF からの引用 > ZFC は伝統的な数学諸分野をすべて包摂する公理系なので, 「ZFC で真偽を決定できない」とは, > すなわち「伝統的な数学の証明能力を超越した問題である」ことを意味する. > > それでは, CH の真偽はどれほど「伝統的な数学」に影響を及ぼしうるだろうか. > 「 CH が真であろうが偽であろうが, 伝統的な数学では手が届かないところで起こっている現象なのだから, > それが伝統的な数学に影響を及ぼすとは思えない」という考えは一理ある. > 本稿では, この疑問へのひとつの答として, 連続体仮説の真偽が実数の解析的性質に影響を与えるひとつの例を紹介する. 当然だがのっけから殺傷力が高い. ### 引用その 2 > P.2 > > すなわち, ルベーグ測度が定まらない実数集合 (ルベーグ不可測集合) が存在する. 「非可測」ではなく「不可測」と書かれている. 何かのこだわりを感じる方の市民だ. ### 引用その 3 > P.3 > > 実数直線の単位閉区間 $I = [0,1]$ は実数全体の集合 $R$ と対等なので, $|I| = 2^{\aleph_0}$ である. > したがって, 連続体仮説 $2^{\aleph_0} = \aleph^{1}$ は, $I$ に属する実数全体を順序型 $\omega_1$ で整列順序に並べて > $I = \left\{ r_{\alpha} | \alpha < \omega_1 \right\}$ と表せるという主張と同値である. ということらしい. 書き写すのが面倒なので省略するが, 次の定理 3.1 から Sierpinski の結果になる. 定理 3.2 で件の関数の存在を示している. 最後の定理 3.3. (ラスコビッチ・フリードマン・フライリンク) がまた凄かった. ### ラベル 数学, 連続体仮説, ZFC, 数学基礎論 ## 基礎研究を愉しむ方法 ### はじめに メルマガで次のようなコメントが来たので, それへの返答です. >物理学での使う愉しみも愉しそうなのですが、応用研究ほど役に立ちそうにないことfを愉しむ方法というか、基礎研究を愉しむ動機づけの方法があれば知りたいです。 ### コメントその 1 究極的な結論だけ書けば, 議論されているテーマに広義オタクとして興味が持てるかどうかです. こちらの数学・物理メルマガに登録して語学メルマガに登録していない人はたくさんいると思いますが, 興味が持てないならどうにもなりません. きちんとテーマを分けた以上, このメルマガで語学の話をされても迷惑でしょう. これと同じです. 無理に興味を持つ必要もありません. もちろん興味が持つような語り口に触れられるかという話もありますが, その語り口に反応できるかどうかは自分次第です. ### コメントその 2 この間来たアンケートの内容についてもう少し書いておきます. 理工系のためのリベラルアーツと称して企画を立ち上げていろいろ勉強もしているいまの私にとって他人事ではないからです. もしあなたがこのテーマに興味がないなら, 飛ばして一足飛びにリーマン面のところに行ってしまってください. ### 私の場合の事例 何かというと, 例えば比較的近いとされる化学, そして生物で基礎研究に興味を持てるかと言われると私は厳しいです. 応用研究だからといって興味を持てるわけでもありません. もっと言えば神学や宗教学の基礎に興味が持てるかと言われても厳しいです. ちなみに応用神学 (実践神学) というのもありますが, これも名目上応用だからといって興味が持てるかと言われると極度に人によるでしょう. ### 大事な二点 このとき大事なのは次の二点だと思っています. - 何かしらの形で興味を持つための糸口を見つける. - 自分自身の興味関心の持ち方を変える. ### 何かしらの形で興味を持つための糸口を見つける 前者はいわゆる面白く教えてもらう方向も含みます. 他には私がいままさに理系のための総合語学・リベラルアーツ, 大人の高校と称してやっている・やろうとしている方向です. 中高生向けの文系科目への導入としていろいろな形で理系科目を使う方向です. ### 自分自身の興味関心の持ち方を変える もう一つの興味の持ち方を変える方は, どちらかというと長時間にわたる活動の中での自然な変化の趣があります. 例えば研究者が研究分野を変えるとき, 工学的に技術革新が起きて従来の自分の研究が廃れてしまう外圧にさらされて無理やり他の研究をしないといけなくなったというのもありますし, もとのテーマから派生したテーマが面白くなってきたというのもあるでしょう. 私自身に関していえば, プログラミングと語学を明示的に活動に盛り込むようになったのがまさに興味関心の持ち方の変更にあたります. ### 自分で作ろう 一応, 私もいろいろな人に興味を持ってもらえるように, 自分なりにいろいろな切り口を用意しますが, これだとやはり他人任せにしかなりません. 自分で調べてみるか自分を変えるか, これらも試してみてください. 何にせよ大の大人が口を開けて待っているだけではいけないでしょう. ## 関数解析や作用素環の分野の反例集ページがあるというので作成者の教官にメールしてみて OK をもらった方の市民 ### 本文 これは面白そう. 私が書いている [数学の教科書](https://github.com/phasetr/math-textbook) の反例の所にもこれを突っ込みたい. イランの教官らしいが, ちょっとメールしてみたら OK を頂けた. とてもありがたい. それはそうと, この教官の [ホームページ](http://profsite.um.ac.ir/~moslehian/) から Facebook に飛べるのだが, 飛んでみたら友達の欄に河東先生がいて割と真剣にびっくりした. 作用素環の反例も入れているくらいだし, 専門のところにも作用素環系のことが書いてあるのだから当然といえば当然だが. ### ラベル 数学, 反例, 作用素環, 関数解析, 相転移プロダクション ## Twitter まとめ:微分積分と線型代数からの突然の幾何学と解析力学 ### 本文 「自然な---」「自然に---が定義できる」というのは本などでよく見かける言葉だが, 初学の段階では何がどう自然なのか全く分からないこともよくあり, 大変腹立たしい. 今回, [ここ](https://twitter.com/dream_taro/status/323081282907156480){target=_blank} で「自然な直交座標」というので悩む若人がいたので, 図々しくも老人が出しゃばった話をまとめたい. 今見たら流れを把握せずに変なことを言っている部分があったので猛省している. ### ツイート引用 > 自然な直交座標っていうけど逆に不自然な直交座標ってなに? 私の発想力じゃ思いつかん > > @dream_taro 正規じゃない場合とか? > > @zomi1202 あー, なるほど. でもそれだったら正規直交座標って書いてくれればいいのにね > > @dream_taro あるいは違うかも. どういう文脈? > > @zomi1202 重積分するよー, 暗黙のうちに自然な直交座標が入ってるのを仮定してるよー. って感じ > > @dream_taro んん?? 座標入ってるってベクトル空間に入れる, ということを想定してるのかな?? > > @zomi1202 文脈みたらやっぱり正規直交座標ってことっぽいと解決した > > @dream_taro @zomi1202 微妙なところですが, 普通 (1,1)/ √ 2,(1,-1)/ √ 2 みたいなのが「自然でない直交座標」ですね. > むしろ (1,0),(0,1) みたいなのを指して「自然な」というのであって, それ以外が全部「不自然」ですが, 微妙な点があってアレです > > @phasetr @dream_taro んーと, よく理解できてないのですけど, > その"不自然"という用語は既に別の座標 (基底) が定まってる事を前提としてるのでしょうか? > > @zomi1202 そうです. 既に基底を取っているところに別のを取ってくるから不自然に見える, という感じ. > 基底を取り替えれば不自然だった方が自然になるので「微妙なところ」と表現しました. > はじめから座標を入れていなければ出てこない話です. > きちんとやると幾何の話になって大変で面白い > > @phasetr 幾何というと全然分からないのですが, 微分形式の周辺のお話ですか? > > @zomi1202 座標に依存しないで議論を展開するという根本的なところです. > 微分法に関しては, 直接的には微分形式というよりベクトル場かと思いますが > > @phasetr ふむふむ. > ベクトルって早々と座標導入しちゃう本多いですけど, あえて入れずに論じるの楽しいですね. > (今読んでるベクトル解析の本がちょうどそういうのでした) > > @zomi1202 座標に依存したくない, という気持ちが分からないとつらいので難しいところです. > 物理でも大事な話ですが ### コメント 自然な直交座標系については上で書いた通りだ. 線型代数の話になる. この辺で既に微分積分と線型代数の根本的な結び付きが出てきているのだが, その辺は適宜勉強されたい. ### 幾何の話 それはそれとして, 座標系に依存しないで解析学を展開しようと思うと幾何学が出てくる, という話だ. 初学者にとっては出てきた結果が取った座標系に依存するかどうか, という話そのものがよく分からないと思う. 具体的に考えてみるとこういう感じだ. 3 次元の Laplacian を自然な直交座標系と極座標系で書いてみると次のようになる. \begin{align} \triangle_{\mathrm{o}} &= \frac{\partial^2}{\partial x^2} + \frac{\partial^2}{\partial y^2} + \frac{\partial^2}{\partial z^2}, \\ \triangle_{\mathrm{p}} &= \frac{\partial^2}{\partial r^2} + \frac{2}{r} \frac{\partial^2}{\partial \theta^2} + \frac{\cos \theta}{r^2 \sin \theta} \frac{\partial}{\partial \theta} + \frac{1}{r^2 \sin^2 \theta} \frac{\partial^2}{\partial \phi^2} . \end{align} 引用のために添字をつけたが, 当然同じ作用素だ. 何も知らずに $\triangle_{\mathrm{o}}$ と $\triangle_{\mathrm{p}}$ を見て同じ作用素と思えるか, という話. 化け物ならいざ知らず, 普通は無理だろう. 「見かけに騙されずに同じものは同じと思いたい」という欲求が「出てきた結果が取った座標系に依存するかどうか」という問題だと思ってほしい. Laplacian の定義については Riemann 多様体上での定義を参照されたい. Riemann 多様体自体の定義を把握するだけでも死ぬ程辛いだろうから初学者にはお勧めしないが. ### 微分方程式 上で微分作用素の話にしたが, 当然微分方程式も関係してくる. 物理でも同じような要求は出てきていて, それが解析力学の基本的な発想にもなっている. 「見かけに騙されずに大事なことを見抜く」というのも大事だが, もう 1 つ, 面倒くさそうな (見かけの) 方程式を上手く変換していって解きやすくする, という方向もある. 変換していった先と元の方程式が同じなら簡単な方で解けばいい, となって無事に話が終わるのだが, 本当にそうやっても大丈夫か, という保証を与えるのが解析力学の要点で幾何学的に大事なことでもある. ### 量子力学から 詳しくは解析力学で学んでほしいが, 量子力学で簡単な例を出そう. 水素原子の Schrodinger 方程式を考える. \begin{align} H = \triangle - \frac{e}{r}. \end{align} 詳しい部分は省くが, Coulomb ポテンシャルは球対称性を持っているし, Laplacian も球対称性を持っている. (本当は考えている空間の対称性も大事だが, 今は $\mathbb{R}^3$ 全体で考えていることにしてとりあえず不問にする.) したがって球対称性を重視した座標系で書いた方が記述がすっきりする (だろうと思える). そこで Laplacian は極座標系で書いた方がいいのではないの, という発想が出てくる. これをやっても大丈夫, という保証をつけるのが解析力学・幾何学的発想だ. 解析力学は機械工学などでも大事になると聞いているので, 関係各位は頑張って勉強されたい. ### 本のお勧め #### リスト 工学の人でも読めるような本は知らないので, 関係各位はお勧めがあれば教えてほしいのだが, とりあえず物理の理論系や数学の人向けに読んで面白い本だけは紹介しておこう. どの本だったか忘れたし内容も忘れたのだが, 坪井先生の本のどれかに, 「現代的な幾何学ではベクトル場と微分形式を概念的に分離したことが画期的な成果だ」という一文があった記憶がある. どう大事なのかいまだに全く把握できていないので分かる人は教えてほしい. #### 本の紹介 新井先生の本は物理を元ネタに対称性の数学を議論している. 最後に超対称性まで出てきて無茶苦茶と言えば無茶苦茶だが, かなりアドバンストな所まで扱っているとも言えるので, 読んでいて楽しい本ではなかろうか. 山本義隆本は物理の人から見た解析力学の本だが, 数学的にもある程度のレベルまできちんと書いた本だ. 多様体論をきちんと使っているので, 物理の人の多様体論入門にもいいかもしれない. はじめて解析力学を学ぶのには死ぬ程きついと思うが, 私が幾何学できなさすぎるだけかもしれない. 読んだことはないが評判はいいので深谷先生のベクトル解析と解析力学の本を入れておいた. 読んだ人は感想教えてほしい. 上で少し書いた坪井先生の本, どれだか忘れてしまったので, それっぽいのを全部挙げておいた. 前書きに書いてあったはずなのだが, 本を持っていないし近くに置いてあるところもないので確認できていない. 多様体論自体でも丁寧な本として松本先生のも挙げておこう. まだるっこしいと言えばまだるっこしいと言える. 以前宇宙賢者とも少し話したが, 実多様体論は 1 の分割だとかで技術的なところがとても面倒くさい. 複素多様体をやった方がストレートに幾何幾何したところに行ける感じはあるが, よく分からない. ただ, 複素多様体だと多変数関数論がはじめに出てきて, そこでちょっとアレ感がないでもない. あと層係数のコホモロジーも微妙にアレ, という気もする. 結局何にしろつらかった. Riemann 多様体のいい本, よく知らないのだが, 幾何学的変分問題はかなり読みやすい本なのでこれはお勧めしておこう. Riemann 多様体の勉強にもなるだろう, と前書き的なところにも書いてあったので, Riemann 多様体の基本的なところは多分おさえてあると思っている. 変分は解析力学でも出てくるし, 変分自体, 物理でとても大事な切り口なので, 数学的にきちんとやってみたいと思ってしまった人はやってみると面白いかもしれない. ### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 幾何学, 解析学, 線型代数, 量子力学 ## 塩崎勝彦さんの還暦記念本『数楽しませんか?』が公開されているとのことなので ### 本文 [塩崎勝彦さんの還暦記念本『数楽しませんか? 』が公開されている](https://twitter.com/otakehiko/status/365321178061086721){target=_blank}という情報を得た. ### 引用 > すばらしい. > 公開して下さって有難い. > ご意志を大事にしたい. > RT @y_bonten: 塩崎勝彦先生の還暦記念本『数楽しませんか? 』が公開されている. > 上記リンクにある文章も転記しておこう. ### 引用 > 電子書籍版刊行に寄せて > > 夫, 塩﨑勝彦が算数・数学教育研究 (山梨) 大会へ向かう途中に亡くなったことは, > まだまだしたい事があるはずなのに志半ばで倒れて無念であったろうと思いますが, > 「数学に永久に到達点はないので, いつまでも志半ばのはずだよ」という子供の言葉に救われました. > > この度, 私にとっては懐かしい, 夫の還暦記念の書籍「数楽しませんか? 」を, > 子供の助けを借りて電子書籍版として再刊することができました. > これを機により多くの方々が手にとって, 夫の仕事や人となりを知り, また思い出してくださるきっかけになればと思います. > > なお, この本の内容のうち夫の著作によるもの, つまり問題の選択とその解法については, > 「常に他の人達と学びを共有したい」という夫の考えに沿って, > クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「 CC BY 2.1 JP 」 > の下に提供します. > > 皆様が, 夫の志を継いで, それぞれの道でさらに豊かな実りをもたらしてくだされば, これに勝る喜びはありません. > > 平成 25 年 8 月 塩﨑慶子 ### コメント この方自体はじめて知った. 中身を眺めたところ, 数学の大学受験の問題を楽しく解いていこうという感じの本らしい. しばらく読む時間を取れそうにないが, ネタのストックがあるにこしたことはないので備忘録としておきたい. ### ラベル 数学, 数学教育 ## 数学するときにはいつも非自明な例を作ろう: 悲しみをこれ以上生み出さないために ### 本文 実話かどうかは怪しいようだがあまりにもつらい. あと面白かったので, ついでに関連する話題を集めておく. えみーさんと H_H さん. あともう 1 つの悲しみ. ちなみに私の分野は非自明な例を作ることそれ自体が研究テーマだとも言える. ### ラベル 数学, 物理, 数理物理 ## Paul筋の色々なツイート・やりとり ### 2015-01-09 10歳のTaoと72歳のErdosが数学をしているツーショットという奇跡の画像 - 数学, 物理, 数学教育, 数学者 またもPaul筋の情報だ. 私もできる限りでこれを全力でやりたい. ### 2015-01-27 Painleve方程式の射程: 偏微分方程式系, 自己双対 Yang-Mills, 2次元Ising, ランダム行列, 量子重力との関係などなど - 数学, 物理, 数理物理, 微分方程式, 常微分方程式, 偏微分方程式, 特殊関数, 幾何学, 確率論, 統計力学, ランダム行列, 量子重力 Paul の RT から. Wikipediaから凄まじいのを引用. >他分野との関係編集 > >求積可能な偏微分方程式系はすべてパンルベ方程式に帰着できる((M. J. Ablowitz & P. A. Clarkson 1991)を見よ)。 > >自己双対ヤン-ミルズ方程式はすべてパンルベ方程式に帰着される。 > >パンルベ方程式は、非対称単純排他過程、二次元イジング模型、トレイシー・ウィドム分布の定式化におけるランダム行列理論や、二次元の量子重力論などにも現れる。 【求積可能な偏微分方程式系~】のくだり, 引用が【Ablowitz, M. J.; Clarkson, P. A. (1991), Solitons, nonlinear evolution equations and inverse scattering, London Mathematical Society Lecture Note Series, 149, Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-38730-9, MR:1149378】 となっているから非線型であっても成立するのだろうが, そうなると【求積可能】の定義や分類が当然死ぬ程気になってくる. Yang-Millsのもやばい. Painleve恐るべし. #### 追記 Paul本人からコメントを頂いたので記録しておきたい. Paulに教えて頂いたサイトから予想を翻訳して引用してこう. >非線型偏微分方程式が逆散乱法で解けるならば厳密な簡約 (reduction) で得られる全ての非線型常微分方程式は Painlevé 性を持つ. またいいことを教えてもらってしまった. ### 2015-03-02 線型代数教育に関するPaulのコメントを読んでいろいろ思ったので - 数学, 物理, 数理物理, 工学, 線型代数, 線型空間論, 物理のための数学講座 (抽象)線型空間論, 応用上も使える具体例が山程あるのにうまく接続できるような教育ができないのはそれだけ大変なことがあるのだと思っているが, その辺はどう解消したらいいものかと思う. とりあえず[物理のための数学講座](http://phasetr.com/services/mathphysschool/), 作って世に出してみたい. 今年は頑張ろう. ### 2015-03-27 環論の研究で知られるIrving Kaplanskyが作った「$\pi$の歌」を歌手である娘のLucyが歌ったビデオ - 数学, 環, 円周率, Irving Kaplansky 歌とか参考にしたい. プロデューサーとしても大事なことだと理解している. ### 2015-03-30 今日のPaul情報: リケジーのVietoris, Struik - 数学, リケジー, Vietoris, 数学史, 微分幾何 今日もPaulのお役立ち情報だ. 上のツイートで引用されているツイートも引いておこう. リケジーというのが何なのかはじめさっぱりわからなかったが, 理系の爺さんのことかと10分くらいしてからわかった. ### 2015-03-30 数学は体力だと聞くので筋トレとか頑張りたい 最近柔道をはじめたが体がなまっているどころの騒ぎではなく, 筋トレも少しずつはじめたところだ. 数学は体力だとも聞いている. いいことを聞いたので筋トレも粛々とやっていきたい. ### 2015-03-31 国会図書館のWeb閲覧ページから全文PDFをダウンロードできるらしいが数学・物理でどうなのかが気になる方の市民 - 数学, 物理, 論文, 国会図書館 少し見てみたのだが, 数学や物理でもできるのだろうか. JMP, CMP, JFAが読めれば超がつくほど有り難くはある. ### 2015-04-01 「数学者=全裸」説は太宰の『乞食学生』が原点の可能性あり: フランスでの起源が知りたくなる方の市民 - 数学, 太宰治, 文学, 解析概論, 解の公式, 代数学, 楕円関数, 全裸, 数学者 Paul, フランスの古い文献とか漁ってきて, フランス数学における全裸と数学の関係について何かいろいろ教えてほしい. ### 2015-04-24 大島利雄先生の講義録「確定特異点型の境界値問題と表現論」や佐藤幹夫述・野海正俊記「ソリトン方程式と普遍グラスマン多様体」 - 数学, 確定特異点, 境界値問題, 表現論, ソリトン, 普遍グラスマン多様体, 佐藤幹夫, 数理解析レクチャーノートシリーズ レクチャーノートに限らないが, 特に創始者自身の講義のような貴重な文献については保存と容易なアクセスを真剣に検討すべきだと思う. あとできるなら市民にも触れられるようにしてほしい. ### 2015-05-14 新刊, マーティン・ガードナー『数学ゲーム』の情報 我らが Paul 筋の情報だ. また欲しい本が増えて困る. ### 2015-06-23 ベクトル解析, 特にgrad, div, rotの応用と数学的理解の狭間で 最後のツイート, なかなか頭が痛い. あと少しずれる話だが, 私がいた大学だと化学科では一年次に前期から電磁気をやるカリキュラムになっていて, シラバスでは電磁気の講義のはじめにベクトル解析をやるというのが書かれていた. そして物理学科では一年後期に物理学科の講義として数学の教養の講義とは無関係にベクトル解析の講義があり, 二年から三年にかけてじっくり電磁気をやるカリキュラムだった. 入学していきなり多変数の微積分をぶっこまれるとか化学科は大変だなと思ったし, 応用化学科にいたっては一年前期に量子化学があったりしたので地獄ではないかと思った記憶がある. ### 2015-12-03 書泉グランデMATH: 倉田令二朗『多変数複素関数論を学ぶ』 多変数関数論なので. 作りたいものがたくさんあって困るくらいだが動画を作る体で改めて勉強したい. $\overline{\partial}$問題とか多変数関数論関係の解析をもっと勉強したいし, 作用素環, 代数的場の量子論でのスペクトル解析への応用とかもっと研究したい. ### 2015-12-04 Paul筋の情報: 坂井秀隆「常微分方程式」と原岡喜重「複素領域における線形微分方程式」 久しぶりの皆大好きPaul筋の情報だ. 何はともあれとりあえずメモしておくべき情報. ### 2015-12-28 Paul筋の情報: 俺達の一億総活躍 老人含め国民全体に数学を強要してガンガンやらせていこう. ### 2016-01-04 一部Paul筋の情報: 和田の湖という魔集合と米山國蔵・和田健雄 和田の湖とかいう魔集合をはじめて知ったので. とりあえず[Wikipedia先生](https://en.wikipedia.org/wiki/Lakes_of_Wada)に御登場頂く. >In mathematics, the lakes of Wada (和田の湖 Wada no mizuumi?) are three disjoint connected open sets of the plane or open unit square with the counterintuitive property that they all have the same boundary. その他のすぐに見つかったリンク. - [高次元複素力学系と「和田の湖」](http://ci.nii.ac.jp/naid/40006457763) - [五色問題](http://horibe.jp/PDFBOX/5colors.pdf) 五色問題のPDFから. >注意 ※1 「和田の湖」のような境界を持っていないとします。 >「和田の湖」とは,無限回の操作を含む方法で境界を定める病的な境界線 ツイートから. Paulが和田タケオがどういう人かわからないと言っているのはどういう意味だろう. 一応[英語の Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Takeo_Wada) では次のようにある. >Takeo Wada (和田健雄?) (1882–1944) was a Japanese mathematician at Kyoto university working in analysis and topology. He suggested the Lakes of Wada to Kunizo Yoneyama, who wrote about them and named them after Wada. > >Publications >Wada, Takeo (1912), "The conception of a curve", The memoirs of the College of Science and Engineering, Kyoto Imperial University 3 (9): 265–275 > >R4eferences >*1 Neoi, Makoto (2004), [A Study on Educational Viewpoints of a Mathematician Kunizo Yoneyama (in Japanese)](http://ci.nii.ac.jp/naid/110004496935), Tokyo: Tokai University, p. 12 根生さんの文章によると次のようにある. >京都帝国大理工科大に進み,和田健雄から一般位相幾何学等の研究指導を受け 米山さんの指導教官だったのではないかと思うが, まさかPaulがこの程度も調べていないはずはないので, 何かあるのだろうと思っている. ### 2016-01-28 Paul筋の情報: Cayley-Hamiltonの定理の証明に関するCayleyの豪快なコメント またみんな大好きPaul筋の情報だ. これも確かPaul筋の情報だった気がするが, l'Hôpitalの定理も原論文では具体例が書かれていただけで 今でいう証明抜きだった記憶がある. もちろんこちらはさらに歴史が古いから 今の文化で見るべきことではない. Paul, さすが歴史上の人物だけあって いろいろな事を知っている. ### 2016-02-03 Paul筋の情報: 「パンルヴェ6型方程式はp進の時代である」 タイトルで(嘘)は意図的に省略した. 全くわからないが見かけたPaul筋の情報はとりあえずメモすることにしているので記録. 黒木さんのツイートで魔人Maninの名前を目にしたのもある. ### 2016-02-10 Paul筋の情報: S Mahajan, "Street-Fighting Mathematics" みんな大好きPaul筋の情報だ. 読みたい. ### 2016-03-12 Paul筋の情報: 数学での「自明」と「半年ROMってろ」のアナロジー またもPaul筋の情報だ. 「半年ROMってろ」というの, どこが起源なのだろうか. 勝手に2chと思っているがきちんと調べたわけでもない. もっと古い時代からかもしれない. しかし数学の「自明」という文脈で「半年ROMってろ」をあてるの, それなりに的を射ている感はある. ### 2016-08-20 Paul筋の情報: 和算書アーカイブ Paulに限らずいろいろな人, 本当にいろいろなことを知っている. こういう情報, きちんととりまとめて中高生とかに伝えたい. すごいめんどくさいが, 子どもの頃の自分がきっと喜んでくれるはずだから. ### 2016-05-19 Paul筋の情報: 『培風館の三宅さんの微積、線形はほとんど準備いらないのでほんと楽ですよ』 どんなのだろう. ちょっと気になる. とりあえずメモはしておこう. ### 2016-05-24 Paul筋の情報: $\zeta$関数とEulerの解析接続の方法の正当化 とりあえずメモ. ### 2016-06-08 Paul筋の情報: 『代数方程式の解について、R. Bruce King "Beyond the Quartic Equation" という本もある』 よくわからないがとりあえずメモだ. ### 2016-06-10 Paul筋の情報: 超幾何関数で代数方程式を解く: 立川裕二さんとPaulのやりとり 全く消化できていないがとりあえずメモ. ### 2016-08-03 Paul筋の情報: Jackson積分と$q$-超幾何関数と$q$-差分方程式, そして微分と積分の計算とか何とか 発端はこれなのだが, ツイートの引用元を見たらすごい長かった. それも引用しておこう. あとでちゃんと読む. ### 2016-08-26 Paul筋の情報とやりとり: 作用素環初期の歴史とvon Neumann, Gelfand-Naimark まずは適当に最初の方の枝を. まずは個人的メインの流れで本題を. #### 分枝 そしてこの記事としてはちょっと枝の流れを. 別の面白い話題のTogetterへのリンクがある. とりあえず自分のサイトにも書いたことへの記録を残しておこう. 他のサイトだと手元に残らなくなる可能性があるから. ### 2016-09-14 Paul筋の情報: ラマヌジャンの実話に基づく映画The Man Who Knew Infinity予告編 Paulの数学に関するネタ収集力の高さには舌を巻く. 私もそのくらいの情報収集力がほしいし, 今後とも鍛えていきたい. ### Paul筋の情報: コンウエイのコンテスト問題 いつも通り楽しいPaul筋の情報. ガンガンメモっていく. ### 角運動量が「運動量」と呼ばれる理由は何だろう? H_Hさんと話していたらPaulが切り込んできたので記録しておく. その前にH_Hさんのコメントから. いまはじめてこのやりとりを見たがめっちゃ無価値そう. それはそれはとして私のリプライからのPaulへの流れ. ### $(a)_{n}$をPochhammer記号と呼ばないことに関するPaul筋の情報 Pochhammer記号というと [書評 堀畑和弘・長谷川浩司『常微分方程式の新しい教科書』](http://wp.me/p4PcgX-19f)にもメモしたことを想起する. 特にどうということはないが思い出したことなので記録しておく. ### Paul筋の情報: 佐藤文広『数学ビギナーズマニュアル 第2版』 これか. 参考にしよう. ### 数学の電子書籍に関する話: 特にiwaokmuraさんとPaul 次のnolimbreさんの試みも眺めつつ何かやりたいとは思っている. 定理をsubsectionにすることについては, Aubinの本がそうなっていた気がする. これはこれで知見だろうと思っている. みなが思っているはずのtexとhtmlまたはepubの相互変換的なことができるといいのだが. とりあえずメモだけはしておこう. ### Paul筋の情報: 『全ての三角形は二等辺三角形?』 引用先のコメントも軽く引用する. >「全ての三角形は二等辺三角形である」 > >こんなことを書くと、「そんな馬鹿な」と思われてしまうだろう。 > >勿論、全ての三角形が二等辺三角形だなんて馬鹿なことはある筈が無い。 >しかし乍ら、世の中には「全ての三角形は二等辺三角形である」とする「証明」が存在するのである。 > >「証明」自体は大して難しくはない。 >中学校程度の論証でできてしまう。 > >勿論この証明にはウソが含まれる訳であるが、あなたはこの「ウソ」を見破ることができるだろうか? 解説ページは[こちら](http://nue2004.info/essay/essay9_2.htm){target=_blank}. 証明のときに描く図が問題なのだ. 適当な図を描いてしまうとその図に引っ張られ間違った推論をしてしまう. しかも先入観は強いからなかなかその誤解にも気付けない. この点に関しては次の MarriageTheorem さんのコメントも参考になる. [現代数学観光ツアー](http://phasetr.com/mtlp1)でも「図を描いてほしい」という要望がかなりたくさん出た. 無限次元の線型空間に関する図じたい描くのが難しい状況があるし, 図を見たところでそれを読み解く力も相当鍛えなければならない. これは例えばレントゲンを考えればいい. 医者に「ほら, この辺にヒビがある」とか言われても 「ああそうですか」くらいしか答えられなかったことがないだろうか. 仮に図を描いたとしてもそれを読み解く力がなければ宝の持ち腐れだし, そもそも図を描き切れないことだってある. もっとひどいのは図を描いたせいで誤解してしまうことで, それが最初に挙げた事例だ. 正しい図の運用について何かコンテンツを作るべきなのかもしれない. これ, メルマガでも紹介しよう. ### Paul筋の情報: 『私が河合隆裕さんから教わったことは「先輩や大家の否定的な意見は聞かないようにしなさい」ということ』フランスではどうなのか Paulならきちんとフランス筋の情報を紹介してほしい. ### Paul筋の情報: ガブリエルのパラドックス 俺達のPaul. そしてやりとり. Paulはいつも楽しいネタを提供してくれる. ### Paul筋の情報『フーリエ変換で熱方程式を解いた、フーリエの記念碑的論文『熱の解析的理論』(1822)p334』 俺達のPaul. 大学の教官, 本当にいろいろなことを深く知っていてすごいし楽しい. 私もこうなりたい. ### 作った数学画像を共有してみんなで遊ぼう: あと代数幾何は魔界 これに関係すると勝手に判断したツイートを収集しておく. 大元のPaulのツイート. 冒頭のPaulのツイートに対する黒木さんの反応. こういうのでもっと遊びたい. 工夫しないとな, とずっと思ってはいる. あとこれ, 代数幾何の世界でいろいろやっているわけで, 代数幾何やばいというのを改めて感じた. ### 『シンゴジラを見終わった後の感覚に似た様な読後感を持つ数学書を挙げよ』『佐藤幹夫講義録』 Paulが謎の食いつきを見せている. 楽しいので記録. ### Paul筋の情報『低学年教育で複数の分野にまたがった話題を出すと他分野に興味のない学生は理解しようともしない』 とりあえず記録. ### Paul筋の情報: Painleve方程式の研究小史 大島先生, 頭おかしいんじゃないかな? 的エピソード感がある. >(研究科長になって忙しくなったので新しい研究を始めることにした)大島が分類したことが大きい この時期の大島先生の話として, 「研究科長で忙しくなったのでふだんやっている『ライブラリを作ってから研究する』のをやめたら論文を書くスピードが上がった」とかいう謎の話がある. もう何なのこの人達, という感じしかない. ### Paul筋の情報: 層の脆弱性のイメージ 脆弱性のイメージがまるで何もなかったのでとりあえず記録. ### Paul筋の情報: 「A. Renyiが『数学者はコーヒーを定理に変える機械である』と言った」というエルデシュ本人による文章 Paulの情報網, 本当に何なの. ### Paul筋の情報: 微分ガロア理論に関する書籍や文献 フランス語の文献, フランス語の勉強にもいいかもしれない. ### Paul筋の情報: 「数学者ガロアはもともと偉大だったが、今に偉大と伝わっている理由はひとえにリブリとリゥーヴィルが喧嘩したからである。」 Paul筋の情報とまとめたが別に構わないだろう. ### Paul筋の情報: George Blumanの話 アカウントが消えているがメールに残っていたので引用する. >両親救った奇跡に感謝 カナダの大学教授 出港の地 横浜で >http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013122802000230.html >カナダ在住の大学教授ジョージ・ブルマンさん(70)リー•シンメトリーの大家。 リンク先も消えていた. (日本の?)ニュースサイト, 本当にすぐ記事を消すのが本当に意味わからない. 本当に使えない. いろいろアレだがやはりニュース系は全文引用することにしよう. そしてこれにPaulのコメントがついている. 以前のツイートメモを忘れないようにサイトに上げている形なのだが, 消えてしまっていると本当にがっかりする. ### Paul筋の情報: 「数学会はコミケなんです」 流れが全くわからないがPaulのツイートなのでとりあえずメモ. これどんな流れだったのだろう. ### Paul筋の情報: 数学に表れる定数を小数表示したときほぼランダムになるという予想 Paul, 今日も行く. ### Paul筋の情報: コーヒーの漸近解析 またPaulはこういうわけのわからないのを見つけてくる. de Rhamは超高名な数学者かつアルピニストだったようだし, 数学とコーヒーに秀でた数学者の養成が急がれる. de Rhamアルピニスト説に関して以下参照. ### Paul筋の情報: 『大学で数学を教えている場合も、研究できないと教えられない』 これ, 教わる側としても大事なことだと思っている. 少なくとも数学と物理ではピンポイントの細かい議論や 理論全体を詳説するタイプのコンテンツはたくさんあっても, 理論の全体像を見せてくれるタイプのコンテンツがなかなかない. 学部1-4年の数学を適当な視点で串刺しにしてくれて, 何がしかの数学世界を垣間見せてくれるようなコンテンツだ. とりあえず量子力学メインの物理の数理という視点で 関数解析を眺めたコンテンツとして[現代数学観光ツアー](http://phasetr.com/mtlp1/)というのを作ってみたが, ボリューミーすぎるのでもっとすっきりまとめたいと思っているし, 何よりもっといろいろな視点から数学を見たコンテンツがほしい. シコシコ頑張って作っていこう. ### Paul筋の情報: 解が存在しない幸せの方程式を求めて--代数解析の戦い #### 本文 またPaul筋の情報だ. Paulは本当にいつも素敵なことを教えてくれる. この論文, あとで読んでみよう. そしてあとでメルマガに書く. 非線型まで入れればもっと魔界が出てくると思うので, 確か非線型まで射程に入れている東大の片岡先生は頑張ってほしい. #### ラベル 数学, 代数解析, 偏微分方程式 ### Paul筋の情報: Galoisの連分数に関する論文 #### 本文 またも Paul のお役立ち情報だ. フランス語の勉強に役立てたい. #### ラベル 数学, 数学者, 連分数 ### Paul筋の情報: Erdosの論文集ページ #### 本文 Paul からの有益な情報だった. #### ラベル ### 田崎さんの記事: 【どうして飛行機は飛べるの?田崎晴明+真理子】 #### 本文 いきなり Paul が出てきたので爆笑した. #### ラベル 物理, 数学, 流体力学, 統計力学, 代数解析 ### 数学いい話シリーズ: 数学は体力だ #### 本文 またもや Paul筋のいい話だ. 身体を鍛えるといえば [こんないい話](http://nc.math.tsukuba.ac.jp/column/emeritus/Kimurata/) もある. >2. 数学は体力だ (ヴェイユの言葉) >(前略) >1955 年の秋に日光で代数的整数論の国際シンポジウムが開かれたとき, >久賀先生たちは来日したヴェイユ (シモーヌ・ヴェイユの兄で日本の数学に多大な影響を与えた大数学者, 当時 50 才) や >セ一ル (26 才で小平邦彦先生と共にフィールズ賞を受賞. 当時 30 才位) を中禅寺湖へ案内した. >ところがヴェイユは裸になって湖に飛び込み, 泳ぎ出した. >セールもそのあとに続いた. >負けてなるかと何人かの日本人数学者たちも続いて飛び込んたが, 余りの水の冷たさに驚いてすぐ上がってしまった. >やがて湖から上がってきたヴェイユとセールは今度は走り出した. >日本人数学者たちは「陸の上なら我々も出来る」とばかり, >二人のあとに続いて走り出したが, すぐ息切れして走れなくなってしまった. >そのうちヴェイユが戻ってきて休んでいる久賀先生を見て二ヤッと笑って「数学は体力だ」と, 言ったというのです. > >3.数学は体力だ (その 2, パリの興番) >数学と体力については, もう一つ印象に残ってる話があります. >あるときパリの喫茶店でコーヒーを飲んでいたら, そこへ若い日本人数学者が 6 人, >興奮しながらやってきて「数学は一に体力, 二に体力, 三, 四なくて五に体力だ」と口々に話していました. >全員, ルレイ先生の講義を聞いてきた直後で, >70 才になるルレイが熊のようにノシノシと教壇を行ったり来たりしながら, >すごい迫力で講義する姿に, すっかり感動して, つくづく数学は体力だと思ったそうです. 数学いい話シリーズ, まとめて Kindle とかに出したい. #### ラベル 数学, 数学者 ### Paul筋の情報: まどか☆マギカと $q$-超幾何 #### 本文 またも Paul筋の情報だ. Paul の視点, いつも感心する. #### 追記 Paul からコメントを頂いた. 今日のいい話認定とする. #### ラベル 数学, 代数解析 ### Paul筋の情報: 教員の招聘 #### 本文 [われらが Paul](https://twitter.com/paul_painleve/status/407356462386528256){target=_blank}. >@MRken_appmath @Paul_Painleve 万一すっかり逃げられてしまっても少し恩返しができたと思えばいいんじゃないですかね. >学術界も欧米にはさんざんお世話になってきたわけですし. > >@wingcloud @MRken_appmath 阪大に招聘された松島与三が数学教室をリードするようになった頃. >若手教授に志村五郎, 佐藤幹夫の二人を呼んだ. >「偉い人を呼ぶとすぐ出ていかれませんか?」と問われて「少しでもいてくれれば, >阪大のためになる」と答えたそうです. 少し古いツイートなのでもう流れを追うのがつらくて追っていないのだが, 多分外国人教員の招聘とかその辺だろう. 少し話がずれるものの, 記事「 [東大数理の小林先生があまりに格好よかったのでついでにいくつか話題を紹介する](../toshiyuki-kobayashi-and-his-episodes/)」で少し書いたが, こういう形の国際交流こそ大学が頑張ってやってほしい. #### ラベル 数学, 数学者 ### Paul筋の情報: 自然対数の底を体感する方法 #### 本文 [またも Paul筋の情報だ](https://twitter.com/e_rubik/status/454476241198804992){target=_blank}. >自然対数の底を体感する方法, モンモールが出題した出会いの問題くらいしか知らない | >参考 : > >@E_Rubik @ mod_p 何かの確率が $1/e$ となる現象なら, 他にもいろいろ考えられるような気がしますね. >簡単に実験できるものであれば, 面白いと思います. >ありがとうございます. >そうか, 受験でも有名なのか. . . > >@Paul_Painleve 調べてみたところ似たような問題に, 「秘書問題」というものもあるようです. >こちらの方が実験に向いているかもしれません. | >秘書問題 - Wikipedia : > >@E_Rubik 「秘書問題」じたいの研究は, 今もいろいろ条件を変えて考察されているようですね. >かつて, あの鳩山由紀夫先生も「見合いの数理」として研究され, >「嫁さんを既婚者を含めて探すのが正解」というのが鳩山さんの結論. > >@Paul_Painleve なるほど. >なかなか問題としても応用含めて面白そうですね. >そして意外なところで意外な名前が出てきてびっくりです 皆も Paul をフォローして楽しい情報を引き摺りだそう. #### ラベル 数学 ### 岡村博「微分方程式序説」の書評が感動的だったので #### 本文 [またしても Paul筋の情報だ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/459575170319933440){target=_blank}. >岡村博「微分方程式序説」も, 死語すぐに出版された河出書房 (1950) に加え, >森北出版 (1969), と現行の共立出版 (2003) の 3 種ある. >解の一意性に詳しい. >河出書房版には, 岡村博氏の生前の写真がある. >井川さんの書評 書評が非常に感動的で, この本を読んでみたくなる. ぜひ PDF を読んでほしい. #### ラベル 数学, 数学者, 解析学, 微分方程式 ### Paul筋の情報: $\sqrt{2}$ の $\sqrt{2}$ 乗の話 #### 本文 [また Paul筋の情報だ](https://twitter.com/ta_shim_at_nhn/status/442291836380405760){target=_blank}. >$\sqrt{2}$ の $\sqrt{2}$ 乗の話で一番気になるのは, この証明を最初に考えたのは誰かということ. >Elements of Intuitionism にはこの証明が紹介されているが, 出典は書いていない. >出典らしき文献を載せている本は 1 冊だけ見たことがあるが, 自分にはそれ以上の調査ができていない. > >.@ta_shim_at_nhn $\sqrt{2}$ の $\sqrt{2}$ 乗が無理数であること (一般に $a>0$ が代数的数, $b$ が二次の実無理数なら $a^b$ は無理数) を最初に示した >R.Kuzmin (1930) の論文 より先か後かは気になりますね. > >@ta_shim_at_nhn D.Jarden, A simple proof that a power of an irrational number to an (中略) may be rational. >Scripta Mathematica 19 (1953), 229. > >@ta_shim_at_nhn とありました. >これが最初の証明ならば, ゲルフォント=シュナイダーの定理よりもだいぶ後のことになります. > >.@ta_shim_at_nhn お目を通されていると思いますが, >に, >1970 年前後の事情が文献と合わせてまとめられていますね. > >@Paul_Painleve ありがとうございます. >全然気づいていませんでした. >自分がこの証明を初めて見たのは「リットン数学パズル-266 題」という本で, 原著は 1971 年発行です. >普通のパズルの中でこの問題だけが異質の存在でした. > Paul は本当に楽しいことを教えてくれる. #### ラベル 数学, 解析数論 ### 佐藤幹夫誕生日を記念した講演録: Paul筋の情報 #### 本文 [また Paul筋の情報だ](https://twitter.com/paul_painleve/status/457006726944808960). >佐藤幹夫の誕生日だそうなので, 再掲 > >ソリトンと無限次元グラスマン多様体なら > >概均質ベクトル空間なら, あゆみの英訳がオープンアクセス >b-函数の前に a-函数があったんだよ! >決して, Bernstein の b じゃないからね!! > >佐藤幹夫最終講義と, 最終講義の 2 ヶ月後の談話会 > >どこぞのアニメ監督のように「これが私の最後の講演です」とか言いつつ 20 年くらい頑張って欲しい. Paul は本当にいつも役に立つ情報を提供してくれる. #### ラベル 数学, 代数解析, 可積分系 ### 【その昔, 佐藤幹夫とかいう人がおってな, 黒板に一文字スクリプト体で「D」とだけ書いて一時間しゃべり続けたんじゃ. . .】 #### 本文 [また Paul筋の情報だ](https://twitter.com/nolimbre/status/453936707499327488){target=_blank}. >板書もスライドもない「漫談型講演」が待たれる (待たれない) > >@nolimbre その昔, 佐藤幹夫とかいう人がおってな, 黒板に一文字スクリプト体で「 D 」とだけ書いて一時間しゃべり続けたんじゃ. . . > >@Paul_Painleve かっこいい……!!!!! > >.@nolimbre よい子のみんな! >佐藤幹夫とライダーキックはまねをしちゃいけないよ! >どちらも, 特別な訓練をしないでやると危ないからね. > >@Paul_Painleve @nolimbre もっと詳しくお願いします. > >@fujiwaratks @nolimbre に, >当時の講演が再現されています. >どっかにテープがまだあるはずなので, 聞けるうちに電子化したほうがいいかも. >181 ページのスクリプトの D くらいで 1 時間くらいだったと記憶します. > >@Paul_Painleve @nolimbre あっ! これ僕も読みました. >京都スクールの雰囲気が伝わってきて良かったです. >蛇足ですが, 河合先生と柏原正樹先生の最終講義を見に行きました. >僕も代数解析やりたいなぁって, 幼児がライダーキックやりたいって感じで思いました. > >@fujiwaratks @nolimbre 私, マサキちゃんのは出張で行けなかったんで, 代りに? お酒を贈ったんです. >佐藤さんの講義は普段は 2~3 時間あって, 後半どんどんと数学が展開していきます. >ライダーキックはさすがに大変だから, 一緒に戦闘員でもやりましょう イーーー! > >@Paul_Painleve @nolimbre 受けたかったなぁ…. >佐藤幹夫先生の講義. >伝説化してますけど! > >@fujiwaratks @nolimbre ご存じでしょうが, あとは 梅田亨記「佐藤幹夫講義録」数理解析レクチャーノート が, >講義の雰囲気をよく伝えたものになってますね. >上智の講究録は, 野海さんが数学的に整理された立派なものですが, 元の講義の雰囲気はさほど出てないと思います > >@Paul_Painleve @nolimbre はい. >ただ修士のとき眺めただけで, 精読はしてないです. >KP 階層の話は「可積分系の応用数理」や「箱玉系の数理」で見ただけです. >修論の導入部も戸田格子からで KP は触れていません. >いつの日にかノート作りたいんですけど. #### ラベル 数学, 代数解析, 数学者 ### 「リーマンの原論文を読むだけなら, 主要論文は TeX になってます」 #### 本文 [Paul筋の情報だった](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/445938688519061504){target=_blank}. >リーマンの原論文を読むだけなら, 主要論文は TeX になってます: > >その労力には感謝いたしますが, この時代のは, なんか TeX になると味気ないんですよね Paul はいつも素敵な情報を教えてくれる. TeX になると味気ないというのもわかるし もうドイツ語読めないとかいうのもあるが, 何となくいい気分になる. あといつも Paul Paul 言っているが, これはそう呼ぶようにと Twitter でリプライもらったからだ. #### ラベル 数学 ### Paul筋の情報: l'Hopital のフルネーム #### 本文 [Paul による de Hopital 情報だ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/432161264215678976){target=_blank}. >ロピタルの正しいフルネーム: Guillaume-Fran cois-Antoine Marquis de l'HoPital, Marquis de Sainte-Mesme, Comte d'Entremont and Seigneur d'Ouques-la-Chaise > >出典は D. J. Sturdy, "Science and Social Status: The Members of the Academie Des Sciences 1666-1750", >Boydell&Brewer 1995 #### ラベル 数学, 数学者 ### Paul筋の情報: フーリエの記念碑的論文『熱の解析的理論』 (1822) #### 本文 [今回は Paul筋の情報だ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/430304163088457729){target=_blank}. >フーリエ変換で熱方程式を解いた, フーリエの記念碑的論文『熱の解析的理論』 (1822) p334 > >定積分で積分記号の上下に積分区間 $[a,b]$ を書いた流儀を始めたのもフーリエ. よく知らないがそうだったのか的なアレがある. とりあえずメモして共有だ. #### ラベル 数学, 物理, 数理物理, Fourier 解析, 関数解析 ### 代数解析と S-行列とか何とかと柏原-河合の Feynman 積分に関する PDF: Paul と kyon_math さんの対話から #### 本文 [Navier-Stokes 関係の話から kyon_math さんと Paul が何か話をしていたので](https://twitter.com/kyon_math/status/422033591799779328){target=_blank}. > しかも最近の問題や予想は 100 年以上長生きするものはほとんどない. > リーマン予想は 160 年くらい, 双子素数やゴールドバッハ予想は 250 年くらいか. > ヤコビアン予想はどうだろ? > リーマン予想さんには, がんばって長生きしてほしいものですね. > > @kyon_math なんて, > 解けたらけっこうインパクトありますが, しばらく解けそうもないです. > > @Paul_Painleve 確かにすごそう: 佐藤氏の夢みる方向で, すなわち, > すべての量を古典解析的手法のみによって calcu1able なものにしよう, > という方向で, S-行列の解析が完成したとすれば, それは人類の精神史において燦然と輝く金字塔となることは疑いないであろう. > > @kyon_math あの頃は, 著者の二人も青臭い中二病にかかっていただけでしょう, ははは. #### コメント 上記 PDF の話とはあまり関係ないが, 代数解析的に発散の困難とユニタリ非同値問題がどう捉えられるかというのは大分前から気になっていて, 代数解析を勉強しようと思った原動力になっている. 多変数関数論やらコホモロジーという障害があって全く勉強が進んでいないのだが. 最近, 「場の理論の超関数論」とか, 「場の理論の超関数論としての作用素環 (上の状態空間) 」とか銘打って研究をしているが, 「場の理論の佐藤超関数」がどうなるのかというのが非常に気になっているので誰かやってほしい. 柏原-河合クラスの人間がもっと massless の方とかにも突っ込んできてほしい. あといいのか悪いのか分からないが, 相対論方面は対称性がかなり強く出てくるおかげで数学的に格好いい話も絡めやすいのだという感じがあるが, 非相対論方面だとなかなかそういう話がない感じもある. だからこそこの辺の人達がリードしてやってほしい感ある. 河合先生も, 1 次元の Schrodinger で WKB とかやってくれるのもいいのだが, 3 次元で Aharonov-Bohm とかもやってみてほしい. もっというなら場の理論に本格的に突っ込んできてほしい. #### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 代数解析, 作用素環, 素粒子, 場の量子論, 経路積分, 相対論, 古典解析 ### Paul の院試にまつわる感動的な話を積極的に共有したい #### 本文 [Paul が自身の感動的な話を呟いていたので記録していきたい](https://twitter.com/paul_painleve/status/402303289510727680){target=_blank}. こんな感動的ないい話, そうそうあるものではない. #### ラベル 数学, 数学者, SKK ### 大学水準の勉強の仕方の参考: 固有値・固有ベクトルや解の公式を題材に #### はじめに またもや Paul 的なアレだ. [これ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/380255750066434048){target=_blank}や[これ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/380256388124925952){target=_blank}. #### 引用 >3x3 行列 A を具体的に与えて「この行列の固有値, 固有ベクトルを計算しなさい」というとできるのに, >A とその固有ベクトル v を具体的に与えて「v が A の固有ベクトルであることを示し, >その固有値を求めよ」というとできない学生がいる. >これは教育でどう改善できるのか? > >(続き) その学生は, 「固有ベクトルの求め方」だけは覚えて期末試験に臨んだが, >固有値・固有ベクトルの定義は知らないまま. >それでも期末試験くらいは何とかなる. >中高からずっと, こんな調子で勉強して, >すっかり「勉強の仕方」が歪んでしまったのを再教育しないといけないのでしょう. > >@online_checker @seki 「学ぶ姿勢」まで突き詰めた深いところまでどう直すのか, >大学生・院生が相手となると答えが見いだせません. >学生も (勤勉でないにしろ) さぼってるわけでなく, >(言い方は悪いですが) 頭が悪いわけでもないので, >どこかでの教育の問題なのでしょうけれど #### その 2 あと[ここからのやり取りも面白かった](https://twitter.com/hoga_hoga/status/380284293693448193){target=_blank}. 面白いとか言っている場合ではないのだが. >大学生における, 固有値わかってなくても求められる率と, >中学生における, 「解」が何かわかってなくて方程式解ける率を比べたら後者のがヤバいでしょうね. > >@hoga_hoga 中学生に「x=2 は方程式 x^2-3x+2=0 の解になることを示しなさい」という問題を出すと, >かなりが「二次方程式を因数分解すると x=1,2 が解になるので, x=2 も解」という形で答えてしまうとは思います. >答案としては間違ってませんが, 理解の仕方はおかしい. > >@Paul_Painleve 「解空間」とひとつひとつの「解」が同じ用語なのが混乱の原因とおもいますが, >なかなか中学校では厳密にはしにくいでしょうね. >大学では, きちんと区別すべきと思いますが. > >@hoga_hoga 今の問題では混乱はないと思いますし, 大元の私のツイでも用語の問題が主ではありません. >今の場合, 「 x=a が方程式の『解』になることを示せ」なら「解=一つの解」であるし, >「方程式の『解』を求めよ」と問う場合, 「解=全ての解」ですが, 普通は混乱しないと思います. > >@Paul_Painleve わかりにくいリプすみません, 自動的にアルゴリズムを適用することに留まってしまっている, という問題点は理解しています. >その上で, 「ことば」に引っ張られてしまうのを防ぐ為に「解」というのはひとつひとつの数だというのを強調すべきでは, の意でした. > >@hoga_hoga おっしゃる通り, 中学, 高校の数学では解をもっと丁寧に扱うことが大切だと思います. >大学の数学では, 重解の扱いや不定の場合を含めて「方程式の解」の意味を拡張解釈していきますので, しだいに「解=解空間」になる傾向が強くなります. > >@Paul_Painleve はい. 数学とか方程式に限らず, 認知の発達の過程の「つまづき」を, >道が間違ってるとして「方向」を矯正しようとしたり, ましてや誤答としてはじいたりしないようにしたいとは思っています. > >@hoga_hoga 大変良いことだと思いますが, 難しい問題でもあります. >「 x=2 は方程式 x^2-3x+2=0 の解になることを示せ」に対して, >因数分解なり解の公式を使って解いてきた生徒に対しては「解かなくても代入すると方程式を満たすでしょ」と教える必要はあると思います. > >@hoga_hoga 一つには「方程式を解いたら検算する習慣をつけさせる」というのは, >少なくとも代数方程式, 微分方程式や固有値・固有ベクトルの計算に対しては有効でしょう. >検算は単に計算チェックのためだけではなく, 概念の理解にも役立ちます. >受験勉強で先を急ぐのか, 検算の習慣がない. > >@Paul_Painleve 解を評価したり検討したりというのは, とてもエネルギーの要ることですからね. >解決策としては, 検算自体を求解の手続きの中に組み込んでしまう, >というのもありますが, 結局パターンマッチングな解き方から脱してはいないですし, 難しいですね. > >@hoga_hoga 「数学を習うというのは, >問題を解く技術を身に着けるのではなく概念を理解していくことである」と理解できるようになるのは大学になってからですが, >中高のレベルでももう少し生徒に「理解する」意識を持たせていただければ, というのが私の最初の問題提起です. #### ラベル 数学, 数学教育 ### 市民論文メモ: 坂井秀隆, Ordinary Differential Equations on Rational Elliptic Surfaces #### 本文 Paul ツイートで面白いらしい結果の話があった. [これ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/380253710217011200){target=_blank}とか[これ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/380254601955377152){target=_blank}. #### 引用 >Hidetaka Sakai, Ordinary Differential Equations on Rational Elliptic Surfaces, > > >坂井君の ODE on RES は, 例によってすごい結果なんだけど, >あの凄さを外人さんが理解するには数年かかりそうなので, >日本人ががんばればチャンスある. >本人も, 例によってあの続きはしばらく放置するだろうから, >遠慮なく食いつけばよいと思う. 全然分野違うしそもそも論文取れないが, 興味がある人もいるだろうからとりあえずメモ的に. #### ラベル 数学, 常微分方程式 ### 白頭絡的超幾何又黒写像と Hypergeometric functions, my love #### ツイート [また何か変なのを見つけた](https://twitter.com/hashimotostring/status/371826061916385280){target=_blank}. > Edward Frenkel と数学への愛 -- Wall street journal -- > > > @hashimotostring @AHD21 数学にはこういう本もございます > 「Hypergeometric functions, my love」 Masaaki Yoshida (1997) > > > @Paul_Painleve @hashimotostring 情報ありがとうございます. > これはネタとしても面白いですし w, 自分の研究にも役立つかもしれません. > 図書館で借りてきます. > > @AHD21 @hashimotostring トポロジーだったかの有名な外国人研究者の記念研究会を東京でやることになり, > そのご本人の希望で, 分野違いながらマチャアキが講演しました. > 指名理由は「あんな本を書いた奴の顔を一度見ておきたかった」そうで, 十分ネタになっているようです. > > @Paul_Painleve @AHD21 @hashimotostring Fred Cohen の還暦ですね > > > @cocycle @AHD21 @hashimotostring あ, それですね! ありがとうございます. > そういや, 一時期「白頭絡的超幾何又黒写像」とかやってましたねえ > > > @Paul_Painleve @AHD21 @hashimotostring helpful in physics #### コメント Frenkel のも目を通しておきたいが, 「白頭絡的超幾何又黒写像」が大体頭おかしい. 上記は英訳すると Whitehead link-like hypergeometric Schwarz map だろうか. 本文を見ると白頭絡は Whitehead link, 又は hyperbolic, 黒は Schwarz に対応する. 何故 hyperbolic が 又なのかは引用されている PDF を読んでほしい. ひとまず冒頭部を引用しておこう. #### PDF の引用 > 小学校か中学校で習う反比例のグラフは双曲線ではありません. > 負の数を習って, グラフを第 3 象限にも描いて初めて双曲線になるのです. > 双曲の双とは 2 つという意味です. > ですから反比例のグラフのように一方しか考えないときには「又曲線」 が正しい. > 用語の趣味の問題でなく 「双曲空間, 双曲幾何」は間違いなのです, 「又曲空間, 又曲幾何」でなくてはいけない. > このことはこの会の世話役の藤井氏には何度も言っているのですが, > この度も集会の名前は改められなかった. > hyperbolic は, わあっと大きくなると言う位の意味だろうから, このことからも, > 股をおっぴろげたという感じのする又が相応しい様な気がする. どんな言葉をかけたらいいのか分からない. #### ラベル 数学, 超幾何関数 ### 我等が Paul によるニコニコ・アーカイブ案 #### 本文 [我等が Paul によるニコニコ・アーカイブなるコメントがあった](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/376210428411408385){target=_blank}. > ニコ動の小林幸子による宣伝動画が話題になってるようだが, > 画面表示した pdf にコメントをつけられる「ニコニコ・アーカイブ」があれば, > 狭い範囲で盛り上がれるかもしれない. > 「ABC 予想キターーーwww」とか > > @Paul_Painleve @thinkeroid 任意の PDF ではないのだけど, > 電子書籍にコメント貼り付けていけるものならあります. > > > @Dominion525 @thinkeroid これは! ありがとうございます. > まだコメント数はほとんどないですが, > をみると, > コメントにフォロウできるようで, ニコニコ・アーカイブを目指すなら参考になりそうですね. > > @Paul_Painleve @thinkeroid 輪読とかも全国規模で出来るし, すごい期待のサービスなんですけど, ちょっと出足遅いなあ><と. > 中の人は頑張って欲しいです♪ > > @Dominion525 @thinkeroid arXiv の pdf をリンクして, 参加者不定の輪講ができると面白そうですね. > 中心になる人が最初はよほど頑張らないと難しいとは思います. 何かにつけて数学を絡めた発想しかしないのは本当に異常としかいいようがないし, どんどんやってほしい. #### ラベル 数学, サービス ### 『昔の6人ライダーよりも「ウルトラ6兄弟のほうがパンルヴェの6つの方程式との対応関係がつく」というのは, 業界では定説である』 #### 本文 [業界人による衝撃の発言を見た](https://twitter.com/paul_painleve/status/362976791238938627)l{target=_blank}. >あまり仮面ライダーは見てなかったが, 昔の 6 人ライダーよりも「ウルトラ 6 兄弟のほうがパンルヴェの 6 つの方程式との対応関係がつく」というのは, 業界では定説である. >第 1 がゾフィー, 第 2, 4 がマンと帰りマン, 特に第 3 がセブンという感覚が理解できると, パンルヴェ中級者と言って良い. どこの業界だ. 岡本和夫先生とかに聞くと確認できるだろうか. またお会いする機会があれば聞いてみよう. 神保先生も少し業界違う気がするし, そもそもお会いする機会があるかも不明. 市民には確認の術がない印象を受けた. #### 追記 [我等が Paul_Painleve 先生よりこのような返答を頂いた](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/367643058055036928){target=_blank}. > @phasetr 月光仮面世代の和夫ちゃんは, その辺はわからないっす. > > @Paul_Painleve 深い悲しみに包まれています, というのはともかく私が会う機会があるかという問題はさておき, > どなたに確認すればその業界情報の真偽を確かめられるでしょうか > > @phasetr この感覚がわかるのは, 今 30 代後半から 50 代半ばくらいまでの業界人でしょうね. > 私も平成のライダー・ウルトラはちょっと区別がつきません. > q-パンルヴェが対応するはずと言われてます (笑) おとぎ話とゼータの対応のように, ウルトラマンと Painleve の対応付けの数学を開拓することが求められている. #### ラベル 数学, 古典解析 ### 悲しみの数学公式集 #### 本文 [Paul_Painleve さんのツイート](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/358237870839967744){target=_blank}をこう色々と引用する. 最近こういうのが多い気がするが, 面白いし記録しておかないとあとで引き出せないから. > 院生から数学公式集について聞かれた. 「今は何を使っている? 」「・・・」「まさか岩波か? 」 > 「ええ, あれの 3 巻を」「ど素人め! 」「 (絶対そう言われると思った) でも, あれ軽いしぃ」というやり取りは, > どう思い直してもマスハラだが, 特殊函数を専門にしてる学生なんだから反省はしない. > > プロ向きの数学公式集なら, 何はなくても Erdelyi, Higher Transcendental Functions の 3 巻本. > 今は から pdf がダウンロードできる. > 古典解析やるなら必須でしょう. > > やや応用向きなら, Abramowitz-Stegun が定番で, 合衆国政府印刷局が出していたこともあり, コピーは自由である. > > 今では NIST Digital Library に進化: > > 正直, Bateman Manuscript3 冊を持っていて, をブックマークしてて, > それでも足りないという専門家は, もう特殊函数ヲタクくらいである. > しかし, そんなヲタク心をくすぐるのが例によってロシア人である (続く) > > @dif_engine ペーパーバックなので, 殴っても案外大したことは・・・ > > @aleo724 元々出版局が出した理由も, 公式集を安く刷って全米の科学の発展に貢献したいというものでした. > 今の日本政府にも見習ってもらいたいのです, 無理だろうけど (笑). > 詳しい説明は > > ロシア語公式集と言えば, 大槻プラズマ教授が翻訳した丸善・数学大公式集. > その後, 室谷義昭・翻訳, 大槻義彦・監修「新数学公式集」もあるが, いちおう別物である. > 前者は Ryzhik-Gradshteyn の古い版の翻訳と思われる. > > 室谷訳のほうは, Prudnikov-Brychkov-Marichev "Integrals and series"5 または 6 巻本 (?) の最初の 2 冊を翻訳したものでしょう. > 現物を全部見たわけではなく, 第 6 巻は多重積分らしいが未見. > > ロシア系の公式集で, 数学者にとって役に立ちそうなのは, Brychkov, Handbook of Special Functions http://www.amazon.co.jp/dp/158488956X のように思う. > 以前, 城西大に異動された O 島さんに教えていただいた. 変な公式がたくさんある. > > 日本語の数学公式集は, 岩波の 3 冊以外にも, 共立や朝倉からも出ているが, 専門家向けというよりも, 大学生や技術者向けのように思う. > Jeffrey の翻訳も非専門家を意識したものである. > でも, 共立数学公式 (泉信一ら) はほとんど役に立たないが, 嫌いじゃないんで手元にはある. > > @OTgeek 昔の Morse-Feshbach とか, 物理系の公式集はたくさんあるようですが, 私の関心からはややはずれることが多いようです. > 分野ごとに使える式が違うので, 違う立場から公式集が作られるのでしょう. > Erdelyi はあんまり役に立たないという人も多いと思います. ただで手に入れられる文献もあるようだから, 興味がある向きは保存しておいてはどうか. #### ラベル 数学, 可積分系, 古典解析, 特殊関数 ### 数学で分かる「学校で学んだことだけでは・・・」という厳しい現実 #### 本文 [社会は厳しい](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/351957165201833985){target=_blank}. > 「学校で学んだことだけでは・・・」という厳しい現実は, > 数学専攻の場合は修士課程に進んだ時すでに, 学部で習いもしなかったホモロジー代数, > リー環, 代数曲線とテータ函数, 多変数函数論, 導来圏などなど「知ってて当然でしょ」という雰囲気になってて, > 肌身にしみて感じさせられる. #### ラベル 数学 ### 「あなたの好きなようにやってください」 #### 本文 [Paul_Painleve さんのツイート](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/353911003467091971){target=_blank}で, 何というか, 時々不思議に思うことに触れられていたのでちょっと書いておきたい. #### 引用 >「ブラック大学の内部からみた現状」みたいな話を聞くたびに, >数学の場合はむしろフリーダム過ぎて, >それが逆に学生にとってプレッシャーになってるように感じる. >理系でブラック要素のある研究室の嫌いな学生はぜひ数学専攻にどうぞ. >「あなたの好きなようにやってください」 #### コメント 確かに数学科では週一のゼミ以外全く拘束なかったので好き放題やっていた. 修士で大学を移ったのだが, 研究柄物理の勉強が必要なので, 元いた大学の物理学科の (所属とは違う) 研究室の学部 4 年のゼミにお邪魔したりしていた. 物理だった学部の頃にしても, いわゆる理論だったためか, ほぼ拘束なかった. 「あなたの好きなようにやってください」に関しても本当に好き勝手やっていた. 教官の趣味とあまり合わない感じのことをゼミでもやっていたためか, よく先生は寝ていた. 世間的に考えれば「授業料も払っているのに指導をしていないとは何たることか」的な話になるのかもしれないが, 指導教官を寝させてしまうようなつまらない話しかできないこと, また世界に名立たる教官の貴重な研究時間を奪っていることが申し訳なく思う方の市民だった. 研究に関しては指導教官でも何でもないのに北大の新井先生や岡山大の廣川先生にお世話になっていた. これも今思うと優秀な研究者の時間を浪費させていた感あるので戦慄してはいるのだが, 新井先生に関しては本気度を示すために『フォック空間と量子場』の 4 ページ程度に渡る誤植訂正表を送ったりしていて, それなりに貢献したので許して頂きたく思う. あとで重版のときに新井先生から「あなたの訂正表が役に立ちました」的なメールも頂いたので, とりあえず個人的には良しとする. 全くの別件だが, 私の学部のときの指導教官は高木貞治の孫の黒田先生 (Schrodinger やスペクトル理論などで有名) が指導教官だったそうだけれども, 線型の微分方程式が盛んな時代に黒田研では唯一人非線型の話をしていたそうで, 「先生に研究報告するたび『よく分かりませんが頑張って下さい』としか言われなかった」と言っていた. 私はそちらの指導教官の血を色濃く受け継いだようだ. 理系でブラックとかいうの, 実験が入るところだけというイメージあるのだがどうなのだろう. 情報系だとか, その他でも理論のところは原理的にブラックになりづらいと思うのだが. よく知らないので何ともいえないところだ. 詳しい方々の体験談を伺いたいところ. あと多少別件なのだが, 以前どなたか忘れたが, 生物や化学に進む女性が多いけれども, これらはやはり拘束が多くて厳しく実際に博士などに行っても妊娠・出産などまで厳しくなることも多々あるので, そうした拘束が緩いというかほぼない数学は女性にも良い学科・学問ではないか, という話をしたことがある. 興味がある向きは色々な向きにご確認頂きたい. #### ラベル 数学, 数理物理 ### 現代数学であっても結構簡単に世界で 2-3 番目くらいに詳しくなれるテーマは結構ある #### 本文 Paul_Painleve さんのちょっと心を打つツイートがあったので共有したい. [これ](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/354580792707514369){target=_blank}だ. #### ツイート引用 > 意外に, 現代数学であっても, 今からあれとそれを読めば修士でも日本で二番目か三番目くらいに詳しくなれるようなテーマはけっこうある. > 私も学生にはそういうテーマを与えることが多い. > 世界に追いつくまではたやすいが, 問題は世界を超えられるかどうか. > > @Paul_Painleve パンルヴェ方程式を研究テーマに希望されるなら, > 4 年の時に岡本さんの本と野海さんの本と 2 冊読んできてくれればと思っているが, > あの 2 冊 (昔なら岡本の序説) をある程度学部の時に読んでたのは金子さんくらいだな. #### コメント 「現代数学」ではなく数理物理になるけれども, 場の量子論, 量子統計界隈では日本どころか世界でもトップクラスになれる. もちろん, 世界を越えられるかどうかというところが同じように問題になる. 物性まわりだと, 物理的にはほぼ確定しているが数学的には全く手が出せていない, という問題ばかりなので, その辺に突っ込めば, 人口の少なさも相まって世界でオンリーワンでナンバーワンになれる. ただ, 難して手が出なくて誰も出来ていないという問題ばかりなので, つまり世界を越えられるかが問題になる. あと[ここからはじまる分](https://twitter.com/kyon_math/status/354591718844268545){target=_blank}も引いておこう. #### 引用その 2 > それは要するにあの 2 冊を読むくらいの基礎的な実力はつけてこいという意味ですね. > RT @Paul_Painleve: @Paul_Painleve パンルヴェ方程式を研究テーマに希望されるなら, 4 年の時に岡本さんの本と野海さんの本と 2 冊読んできてくれれば... > > @kyon_math あの 2 冊を読めるだけの函数論なり常微分方程式論なり, > 群論 (というほどではないが) なりをどれも 4 年の前半くらいでわかってる学生は, 実際のところさほど多くないですからね. > その上であの 2 冊を読もうとする学生は貴重なんです. > > @kyon_math ただね, 「今まで見てきた漫画家になれない人たちの言い訳」 http://togetter.com/li/298110 じゃないですが, > 「僕は○○をやりたいです」と熱心に語る反面, その○○に関する勉強を全然してないで院に来る学生は困る. > 書いた論文の一本でも見せろとまでは言わない > > @Paul_Painleve 確かに, ぜんぜん勉強しないで「これやりたい」と言っても, > 本人が何をやりたいのか分かってるかどうか不明ですね. > 分かってないものに賭けることができるってのも若さの特権ではあるが. > > @kyon_math 歳とって下手にものを知り過ぎる (実は知ったつもりになってるだけの老人) と, > 先が見えた気がして手を出さなかったりしますしね. > 実際に飛び込んでみると深くて面白かったり. > ただ「僕は○○をやりたいです」と口で言うだけなら, 知ったかぶってる老人と精神が変わらない. #### コメント 数理物理で言うなら, 物理と数学をピンポイントでもいいから修士程度のことを知っている必要が出てくる. 物理に関してもは学部程度でいいこともよくあるが, 物理の人と議論しようと思うと, やはり修士くらいはあった方がいい気がする. 当然, 私自身はそこまでできておらず涙を禁じ得ない. あと, 私に関していうなら, 興味があった相対論的 QED の代数的場の量子論について, 物理サイドから AQFT をしていることを知っていた Gottingen の Buchholz にどんなのを読んだらいいか, とメールを投げたことがある. 実際に文献を教えてくれた. こんなことを書くと Buchholz に失礼な気もするのだが, 頑張って読んだのだが教えてもらった論文 3 本, どれもさっぱり分からなかった. 一応卒論が終わったあとの 2 ヶ月くらい, 修士が始まるまでの間くらいは頑張って読もうとしたことをお伝えしておく. ここであまりに基礎的な数学力が足りていないことを痛感したのでもう少し読みやすい文献を読み進めて力をつけよう, ということで新井先生の本への本格的なアタックを始めた. 何かあるたび AQFT にアタックしようとしてそのたびに跳ね返され, というのを繰り返して AQFT はほとんどやれずに学生生活が終わった. 元々量子統計にするか場の理論にするかはずっと悩んでいて, そちらとより繋がりが深い CQFT (Conformal ではなく Constructive) に行ったのは良かったとは思っているが, 苦い思い出と言えないこともない. 実際 AQFT, (私には) とても面白いので勉強はしてみたいとは思っている. 冨田-竹崎理論が始めから空気のように現われつつ獅子奮迅の活躍をするというハイパー素敵な領域だ. あと何度聞いても Reeh-Schlieder property とか名前も格好よければ性質的にも超クールな話もある. #### ラベル 数学, 数理物理 ### 小ネタからの数学 #### はじめに ものすごいしょうもないやりとりと真面目な話が同居していて爆笑したので記録しておきたい. [ここ](https://twitter.com/nagoyahajime/status/345938396130193408){target=_blank}から始まる. #### ツイートのやりとり > ある大学の研究費の使用条件に同一の本は三冊まで購入可能というのがあることを思い出した. > > @nagoyahajime 科研費まで, 保存用・観賞用・布教用とヲタク文化に毒されているのか. でも, 自分で読むのがないなあ > > @Paul_Painleve @nagoyahajime 絶対違う w > > @suzukit216 あ, とりあえず, Osgood, Bromwich, Knopp と > 3 冊級数論の本を見ましたが, いずれも条件収束の例は log 2 がらみでした. > $1+1/2-2/3+ \cdots + (1/ (3k-2) +1/ (3k-1)-2/ (3k) + \cdots = \log 3$ というのはありました. > > @Paul_Painleve 自然数の和が-1/12 ってのは, 結合律とはまた違いますよね. > それにそもそも収束しない場所かな? > > @suzukit216 解析概論でも log 2 の順序交換 (+ を p 個, マイナスを q 個と足していく一般型) でした. > 1-1/3+1/5+...=π/4 だと順序交換して値が決まるかどうか. > > @Paul_Painleve 逆三角関数で出来ても不思議は無いんですけどね. ただやっぱり log の方が微分したら 1/x になる分簡単なのでしょうか? > > @suzukit216 $\zeta (z)$の負の奇数での特殊値は発散級数なので, > 今回の条件収束の順序交換「条件収束列 S=a1-a2+a3+...は $a_n$ が単調の 0 に収束する整数列の時は収束する. > 和の順序交換によって任意の実数値に収束させうる」とは別の話と考えるべきでしょう. > > @suzukit216 横に p 倍したりする場合, y=1/x は考えやすいけど Arctan の 1/ (1+x^2) だと難しいのだと思います. > > @Paul_Painleve なるほど. その線で行けば arcsin は論外でしょうし. > > あ, 日本語が目茶苦茶でした. > @suzukit216 先生はわかるけど学生が誤解しないように「条件収束列 S=a1-a2+a3+...は $a_n$ が単調に 0 に収束する正数列 > a_1>a_2>…>a_n>…→ 0 の時は収束する. > また, 和の順序交換によって任意の実数値に収束させうる」 この流れのこの味, 教官にしか出せない. ### 群論愛護協会という奥深い名言が生まれた #### はじめに とりあえず[これ](https://twitter.com/kyon_math/status/345915049296142336){target=_blank}を読んでほしい. #### ツイート収録 > クラインの 19 世紀の数学なんか読んでると, 群とは置換の集合であり, > ってな感じでもう明らかに変換群. > しかし, 変換群を離れて単純群の分類とか抽象的になりすぎたきらいもあるかな. > やはり「変換群」というのは群の本質をついていると思う. > > @kyon_math いったん抽象化したところで, > 結局は「モンスター群を Aut にもつ多様体を具体的に作れ」という幾何的構成に戻りますからね. > でも, もし「群論愛護協会」があれば, 生成元と関係式による定義にも, 幾何的構成にも反対するでしょうか?? > > @Paul_Painleve 群て確か指標表が先に出てきたんですよね. > モンスターもそうだった. > バカでかいのにやけに簡単な (きれいな?) 指標表を持つというのが最初だったような... 純代数の人達, 群論愛護協会作った方がいいのでは. ### 多変数関数論と Riemann 面やりたいと思っていて結局まともにやれていないので泣いている #### はじめに [泣いた](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/345845735721426944){target=_blank}. #### ツイート収録 >群論や函数論に関しては, 近年の出版事情はお寒いが, >ルベーグは不動の清三に加えて, 吉田伸夫, 盛田, 柴田, 新井, 志賀, 折原など教科書的な本が 90 年代後半から 2006 年くらいまで一気に出版された. >河田, 小松, 井上の復刊もあった. > >「昔は函数論の良い本がたくさんあったが, 最近はあんまりない」と野口 J さん >ご本人の前で言ってしまったことは, 今もたいへん申し訳なく思っている・・・ > >とか, 理工系全般向けの複素解析入門なら >最近もそれなりに出ているようだなあ. >「古典解析」の大宮さん, フーリエラプラスも今年出してるのか > > >ざっと, アマゾンを眺めたが, >ここ 20 年の函数論のテキストで気になったのは, 野口潤次郎 (裳華房), 藤本坦孝, 神保 (以上岩波), >スタイン (プリンストン解析学講義), 山口博史 (朝倉), 新井朝雄 (共立) かな. > >野口さん, 新井さんとスタインのは, 3 年生の函数論を想定してると思われる. 神保さんのは 2 年後期くらい. 藤本さんのと山口さんのは, やや特論っぽい話. なお, アマゾンや出版社のサイトでなどっただけなので, 実際の本を手に取って言ってるわけではない. 野口先生, 最近多変数の本を出した. 多変数関数論, 学部 2 年からやりたいやりたいと思っていて結局全然できていない. 院で一応講義は受けたのだが全く身についていなくて悲しい. Riemann 面もやりたい. #### ラベル 数学, 関数論 ### Steven G. Krantz の (書きかけの) 本『A Guide to Complex Variables』 via Paul_Painleve #### 本文 [こんなツイート](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/350858537733341187){target=_blank}があった. > Steven G. Krantz の web draft と思われる「A Guide to Complex Variables」 > には私への謝辞が書かれている. > 函数論入門としてコンパクトだが, リーマンの写像定理や調和函数にも触れている. 読んでいる暇は多分ないが, 必要な人もいるかもしれないのでとりあえず共有的な意味で. ### 自然科学の基礎としての数学と人文学の基礎としての哲学 Paul_Painleve 先生がとある人 (よく知らない) とやり取りをしていたので記録しておく. [この辺](https://twitter.com/Paul_Painleve/status/347319391295250434){target=_blank}. > もし物理でも生物学でも, 数学者がヲタク的にやってる研究など不要で, > 必要な数学は自分たちで作った方が速いとなれば, 自然科学の基礎としての数学の立場がなくなろう. > しかし, 現実はそうはなっておらず, 今なお, > そして将来も数学は自然科学の基礎学問であると信じている. > > @Paul_Painleve 哲学を空論, と放棄や軽視してしまえば生命倫理は誰が介錯するのか, > と似た要件で哲学科を尊命させて頂きたい. > > @i62x0410dellla その点は強く支持したいです. > ただ, 数学が自然科学の基礎たらしめているのは長年にわたる > 数学者たちの努力の賜物とも思っていますので, > 外の人の力だけではできないとも思います. > 他方, 中からの努力だけでは厳しい時代になりつつあるのも間違いないでしょう. 昔の人, 数学者だか科学者だかよく分からないというか, 区別する必要もなかったりするので, この辺どうかな, と思っている. あと, 少なくとも日本ではあまり他分野に興味持っている数学の人, 少なそうなイメージあるが, 実際のところはどうなのだろう. 自然科学というところで超弦だとかのごく限られた物理以外に何を想定しているかも気になる. 微分方程式にしても工学的な取り扱いについてはどうだろう. 自然科学の基礎, といいつつ人文・社会学にとっても大事な統計学の扱いが極めて低いように見えるのも結構気になっている. 少し話はずれるが, 以前竹崎先生から次のような話を伺った. 知らない人に向けていうと, 竹崎先生は作用素環の人で, 冨田-竹崎理論が世界的に有名だ. 私の指導教官の指導教官でもある. UCLA にずっといた. 竹崎先生在任中, その UCLA で大学を根本的に立て直そうという議論が起きたらしく, そのときの話として「人文の基礎として哲学を, 理工学の基礎として数学を基礎に据えた体制を作ろう」という話になったそうだ. 数学をとても大事に扱ってくれて嬉しいとともに責任を感じた, みたいなことを言われた記憶がある. とりあえず私は私でできることとしたいことをしよう. 早く DVD 出さないと. #### ラベル 数学, 自然科学, 工学 ### Paul筋の情報: 代数解析の基本文献をご教示頂く: 佐藤幹夫本人の文章が読みやすくていいらしい #### 本文 また皆大好き Paul筋の情報だ. 何はともあれ専門家から読みやすいという情報を頂いたのでこれを読んでみよう. 原典にあたれるという意味もある. #### ラベル 数学, 代数解析 ### Paul筋の情報: 日本の数学と教官の推薦書の意味 in 2014 #### 本文 また Paul筋のいい話だ. 岡本先生の仕事で Garnier 系とか聞いたことがあるが, やはり大仕事だったのか. #### ラベル 数学, 代数解析, 常微分方程式 ## 軍事と数学: とりあえず衛生と統計学とナイチンゲール ### 本文 [こんな呟き](https://twitter.com/ml_hisako/status/353771919331438593){target=_blank}を発見した. > 戦時数学? という本が図書館にあったことを思い出しどんなものなのか気になった. > 確か出版年が WW Ⅱ前だし, 統計学を言い換えた本のような気がする. > そういえば, 戦争を数学的に表現し, モデル化してこのモデルの方程式を解いて予想される戦争の結果を計算で導き出す事ができる話があったような… あと[これ](https://twitter.com/ml_hisako/status/354501229268856832){target=_blank}とか > これこれ!? 戦時数学じゃないわ. 軍事数学 > > 書いてあるのは距離と時間と速さについてのグラフや弧度法についてなどなど. 軍事というだけあって乗馬兵とか戦車が具体例として使われている. > > @ meldine 確率統計の本を図書館で探したら偶然見つけた w > 書いてある内容は距離と速さと時間の関係についてのグラフの読み取り方だったり, > 弧度法だったり, 歯車や戦車の内部の動力の構造を数学的に書いてあるものだよ! 具体例とかで戦車や騎兵隊を挙げてるあたり戦時色が濃いな〜! 分類ミスの可能性もあり中身を読まないと分からないが, 軍事といっても色々ある中, 例えば衛生の話は統計学が色々出てくる. 看護師で有名なナイチンゲールは当時の女性としては本当に異例で, 王立統計学会の初の女性会員になっている. 他にもナイチンゲールがクリミア戦争後に成し遂げた色々な業績があり, 統計学に関する業績は特に抜きん出ている. 例えばグラフを駆使した資料とその説明はナイチンゲールが初めて組織的に展開したとされている. ナイチンゲールの統計学的業績については [Wikipedia](http://ja.wikipedia.org/wiki/フローレンス・ナイチンゲール){target=_blank} を調べると色々出てくるので, 興味があればぜひ調べてみよう. ### ラベル 数学, 統計学, 軍事, 数学者, ## 第 3 回関西すうがく徒のつどいに「色々な反例を作って遊ぼう」という講演で参加することになった ### 予告 [第 3 回関西すうがく徒のつどい](http://kansaimath.tenasaku.com) の [プログラム](http://kansaimath.tenasaku.com/wp/wp-content/uploads/2012/09/program_sankahshayou.pdf) が発表されたようだ. 私も講演者として参加する. 私のアブストは [これ](http://kansaimath.tenasaku.com/wp/wp-content/uploads/2013/01/abst_phasetr.pdf) :「色々な反例を作って遊ぼう」というタイトルで話す. リンク先の PDF に書いてあるが, 学部 1-2 年と非数学科の方をメインターゲットにしている. 他の講演との絡みも合わせて具体例を作っていく予定だ. 詳細は各講演に盛大にぶん投げていきたい. それ自体が面白い具体例と, 背後にある理論と絡めて面白い例をどういう塩梅で入れていこうかと思っている. どうでもいいが, アブストのタイポを見つけてげんなりした. 基本的に全部気になるのだが, みややさんの「数論幾何への誘い」, 宇宙賢者の「古典的ミラー対称性入門」, alg_d さんの「数学の諸定理と選択公理の関係」が特に気になる. 遊ぶということで思ったのだが, alg_d さんの話は証明中に選択公理を使うところを探すという「遊び方」の提案と言える. 今回の講演で一番キレた内容なので, とても楽しみだ. 今からとても楽しみ. ### 第 3 回関西すうがく徒のつどい 1 日目の個人的まとめ #### はじめに 3/16-17 の [関西すうがく徒のつどい](http://kansaimath.tenasaku.com){target=_blank}の第 3 回に参加してきた. 関西のつどいには初参加だが, 折角なので講演の方もしようということで講演もしてきた. つどいの Togetter は[これが一日目](http://togetter.com/li/472677){target=_blank}で[これが二日目](http://togetter.com/li/473280){target=_blank}だ. Twitter 上でのやりとりだけで会ったことがない人にも会ってきて, 非常に楽しく, その辺の記憶もあるが個人情報的なアレもあろうから講演の方の感想だけまとめておく. 今回は一日目の分の感想を書いておく. 聞いた講演, 基本的に全て面白かったのでその辺もうまく調節されているイベントだった. #### 聞いた講演 私が聞いた講演は次の通り. - 講演者:みややわぎょー (@nolimbre) Title:「数論幾何への誘い」 - (自分のトーク) 講演者:市民 (相転移 P) (@phasetr) Title:「色々な反例を作って遊ぼう」 - 講演者: 横田真秀 (@ark184) Title:「人はどうして協力するのか? 」 - 講演者: 宇宙賢者 (@the_TQFT) Title:「古典的ミラー対称性入門」 - 講演者: 田尻翔平 Title:「 meager set や null set を知ろう」 #### 数論幾何 まず nolimbre さんの数論幾何への誘いだ. Weil 予想の話で, 興味だけはあったが面倒くさそうなので全く触れていなかった Weil 予想の気分は何となく掴めた印象を受けた. もともと数学科 3-4 年向けの話なので数学科でない人にはつらい内容だろうが, 3-4 年なら把握できるレベルにまで上手く落としこんでいるあたりにみややさんの力量を感じる. 有限体上の多項式の根の個数が代数的整数と関係があって, さらに複素多様体のコホモロジーと関係があるだとか, Weil, 頭おかしい. 合同ゼータが何者なのか全く知らなかったが, これはやばい, ということは十分に分かった. それはゼータも数論で中心的な話題になるわ, と思わされる. 数論的コホモロジーだが, 「何となくこんなのがあったらいいな」というのを実際に作ってしまう Grothendieck やばい, という話も盛り上がった. 「予定通りの話はできないという」予定通りの話だったようで, $p$ 進の話はカットされた. あとになってどんどん興味が出てきたので, これが聞けなかったのは残念だったが, 面白かったのは間違いない. 宇宙賢者ともども, 数学科学生向けの話としてはかなり配慮された講演で圧巻. #### 自分のトーク 次は自分のトーク, 「色々な反例を作って遊ぼう」だ. 1-2 年と非専門家を対象として反例の作り方やその背景について説明した. 学生としてとりあえずは卒論, 修論, D 論を目指す必要があるが, そこでは自分で問題を作ってそれを解かねばならなくなる. それを今から少しずつやっていってほしいが, まずは手始めに問題作成として反例を作ってみてはどうか, という話だ. 下記の本にある例をいくつか紹介し, さらに背景説明をつけ足した講演をした. 何人か来ていることは分かっている高校生にも分かるようにと思ったのだが, ある程度目的は達成したようだ. 非数学の人にも感想を聞きたかったが, 聞きそびれたので私の話を聞いた人は感想を Twitter なりなんなりで伝えにくるように. あとで動画にするのでその参考にする. また, 2 日目の昼にみややさんに 4 番目の例について $\mathbb{C}_p$ の球は有界だが全有界ではないため, コンパクトではないということを教えてもらった. これを基礎にして例が考えられるはずだが, $\mathbb{C}_p$ が全く分からないのでまずはそこからだ. #### 横田さんの話 横田さんの話は素人向けにふんわりうまいことまとまっていた. 具体例に沿った話だったのも良かったのだろう. ただ一番印象的だったのは程良いジョークとやわらかな関西弁による語り口だ. アレはそう簡単に真似できるものではない. 講演側として何をどうやって取り込んでいこうかずっと考えている. 結局それが一番参考になったところと言える. 気楽に聞けて程良く息抜きもできる, よい講演だった. #### 宇宙賢者 みややさん同様, 宇宙賢者の「古典的ミラー対称性入門」は数学科の人間向けではあるが, 初学者への配慮に満ちたよい講演だった. 当人は「ゆとり向けトーク」と言っていたが, $\mathbb{C} \mathbb{P}^1$ に限って, 難しいところは避けつつ, おそらく大事なところには大体触れていたのだろうと思う. 何より当人が楽しそうに話していたので勉強意欲をそそる. いくつか参考文献も聞いたのでちょっとやってみたい. #### 田尻さん 1 日目最後は田尻さんの「meager set や null set を知ろう」だった. 両方とも知ってはいる話だが, そこまで突っ込んでやったことはなかったので復習にもなった. meager と null の双対性, かなりやばいのでは感ある. 講演後, ゼルプスト殿下が田尻さんに問題を出していたのもメモっておいた. ### 第 3 回関西すうがく徒のつどい 2 日目の個人的まとめ #### はじめに 3/16-17 の [関西すうがく徒のつどい](http://kansaimath.tenasaku.com){target=_blank}の第 3 回に参加してきた. 関西のつどいには初参加だが, 折角なので講演の方もしようということで講演もしてきた. つどいの Togetter は[これが一日目](http://togetter.com/li/472677){target=_blank}で[これが二日目](http://togetter.com/li/473280){target=_blank}だ. 今回は二日目の分の感想を書いておく. 私が聞いた講演は次の通り. 一日目もそうだが, 聞かなかった方の講演がどれも面白そうで全部聞きたかった. #### 二日目で聞いた講演 - アルゴドゥー (@alg_d) Title:「数学の諸定理と選択公理の関係」 - のうこ (@noukoknows) Title:「つくってあそぼう! うごく数学のもけい -A Very Natural Introduction to Gentzen's Natural Deduction-」 - 福本佳泰 @PillagedVillage) Title :「楕円型作用素のパラメトリックス」 - のーてぃ (@conoughty) Title:「産業のための数学」 #### alg_dさん まずブルブルエンジン兄貴の「数学の諸定理と選択公理の関係」だ. 相変わらず話が上手い. 今回は 1 点での連続性に関する重要な定理の同値を証明するのに選択公理を使っているという話で, 単に使っているというだけではなく, 選択公理なしでは「非常識」な結果を認めざるを得ないという話だった. ネタの選択も非常に上手い. いつも使っている $\mathbb{R} / \mathbb{Q}$ を上手く絡めてくるなど, 「またこれか」「こんなところにも出てくるのか」と一々新鮮な驚きを与えてくれる. 講演者自体, 講演が上手く聞かせる話し方をしてくる. 話し手としても参考になるよい講演だった. こればかりだが, 本当によい話だったので仕方がない. #### のうこさん のうこさんの「つくってあそぼう! うごく数学のもけい -A Very Natural Introduction to Gentzen's Natural Deduction-」だが, 入門者向けにどう話を組むか, 相当苦心したようだ. あとでゼルプスト殿下もロジックが数学科の正規の過程にない中, 入門的な話をどうするのかいつも悩ましいというようなことを言っていたので, 準備は大変だったのだろう. 自分で証明図を書いたことがなかったので, 何となく入門には入門したくらいの感覚でいる. 山元さんとみややさんのやりとりが面白かった. みややさん, 大体全部の講演でコメントなり質問をしている感じだったのでなかなか凄い. 適切にコメントできるというのは相手の話をきちんと理解した上で疑問を持ちながら講演を聞くことが必要になる. できないからといってどうというわけではないが, なかなか凄い能力だし, 何より講演側としては質問があると嬉しいので, そういう点からもありがたい聴講者だ. #### 福本さん 福本さんの「楕円型作用素のパラメトリックス」はものすごい面白かった. やろうと思ってずっとさぼっていた Sobolev の埋め込みとその応用がためになったが, それ以外にも議論のメインとなっていた擬微分作用素の基礎と応用もまた面白い. Fourier 級数の議論の一般化の話にもつながるなど, 最後にびっくりさせる展開もあったのが心憎い. 目的に向かって美しく一本道で進む構成も素晴らしい. また, Twitter でも少し書いたのだが, この講演は高校生に聞いてほしかったし, 何より高校の頃の私に聞かせたかった. 東大・京大をはじめとする国公立トップ校の学部 4 年, 修士, 博士の学生が超内輪のノリで専門的な議論をしている姿を見せたかった. 正に飾らない, 普段の数学をしている姿だった. 特に京大勢がおそらくいつもの感じでやりとりしていたのがとても面白い. 「あそこに $i$, $j$ いらんの」「どれやねん」「いや心眼で見れば分かるからいいんだけど」 「そういう時間だけ食う質問やめろっていうてるやろ! 」みたいな軽いやりとり, 知らない人がたくさんいる講演ではやりにくいので, そういう普段の姿を高校生にも見せてあげたかった. これを高校生に見せてあげられなかったことが今回一番の心残りといってもいい. #### のーてぃさん のーてぃさんの「産業のための数学」は発表者と聴衆で交わされたやりとりが何より貴重だった. 応用数学の話で, 知らない話だったので今後どこかでも紹介したくなるネタであり, 講演者が何とかして分野のことを伝えようと奮闘している姿が実に感動的だった. 発表者と聴衆で交わされたやりとりということでは, 一番感動的だったのは本当に工学系の参加者のばんぬさんが, 「この講演は自分の研究にも使えそうなので, 質疑応答後, もっと詳しく話を聞かせてほしい」といいだしたことだ. かなり本質的な形で (応用) 数学系の人と工学の人との交流ができたの, つどいにとって非常に貴重な機会だろう. ばんぬさんは流体系の人だということだったので, 講演後, 私ものーてぃさんとばんぬさんが話しているところに行って, 同じく産業数学として話を盛り上げようとしている東大の山本先生を紹介したりした. 山本先生は微分方程式, 逆問題の数理とシミュレーション関係の人なので, ばんぬさんとも近かろうと思ったので. また山本先生主催のワークショップに出たことがあるのだが, そこで動的メッシュによる衝撃波の数値シミュレーションという話があったことも思い出したので, それも紹介しておいた. 流体の人らしいので何かの役に立てばいいと思って. 参考になれば嬉しい. ちなみに動的メッシュのシミュレーションに関する話は [このページ](http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/video/conference/2009sangyo/.html) の "Convergence Analysis for Numerical Methods to Stochastic Hyperbolic Equations" の動画に講演のトークが収められている. 動画を見れば分かるが, 実際の講演のタイトルは上記のものとは違ってちゃんと動的メッシュの話になっている. 興味のある人は見てみてほしい. 前の 2 回も参加すればよかったと思うくらいに非常に楽しかった. 次回もできれば講演側で参加したい. ### 第 3 回関西すうがく徒のつどい かわずさんの感想を見て反例を作る重要性で伝え忘れていたことを思い出した #### 本文 かわずさんがブログに感想を書いていた. [これ](http://blog.goo.ne.jp/kawazu1147/e/d4e5af71c107f88f42eafc27cbfd4e9d){target=_blank}だ. 感想を読んで, 大事なことを言い忘れていたことを思い出したのでそのメモ. #### 引用 >市民 (@phasetr) 「色々な反例を作って遊ぼう」 >数学をするときの楽しみ方というか態度について, 自分で問題を見つけることが大切であって, >そのために有名な定理の反例を探すということが, >何か思いついた問題を正確に述べる練習にもなるし, 楽しいのではないかという話. >数学的な内容 (も当然ながら重要だけど, それ) だけにとどまらないことを伝えようとされていたようで, >自分自身そういう話ができるようになりたいと思った. >"Counterexamples in Analysis"という本が面白いらしい. #### コメント 反例を作るとその定理が成り立つのに何が必要なのかがはっきりしていくので, もとの定理自体の理解も深まる. 講演で本質的には伝えているが, 数学の中に定理が網の目のように走る中, それをかいくぐって反例を作る必要が出てくることもあり, 定理間の関係, 数学の中で占める位置なども朧げながら見えるようになってくる. 反例を作るなかで本に書いてある証明自体もブラッシュアップできることもあるだろう. 「この仮定はもう少し緩めてよさそうだが, そうすると本の証明ではうまくいかなくなる」ということを発見したとき, 自分で証明をつけ直したくなったらしめたものだ. さらには証明自体を深く検討することにもつながる. 証明の中で条件をうまく使って議論することになるが, その議論の仕方を逆に読んで反例構成に使うこともできるだろう. 人にもよると思うが, 本を単純に読んでいくだけだと途中で疲れてくる. 息抜きもかねてちょろっと反例を作って遊んでみるというのもいい. 反例作りに真剣になって本を読み進めるどころではなくなるかもしれないが, それはそれで別にいい. 勉強になれば何でもいいし, 反例作りは勉強というよりも本から発展させたいった自らの研究と思っていい. とりわけ学部初年時では何かをしても既知の結果ばかりだと思うが, 再発見という楽しみがある. 偉い人達が到達した世界に独力で到達したということでもあり, そういう場合は遠慮なく自分を褒めていい. #### ラベル 数学, イベント ### ようやっと第 3 回関西すうがく徒のつどいで講演した内容を DVD 化し, Amazon で出すところにまでこぎつけた. あと反例と反省 #### 本文 ようやっと第 3 回関西すうがく徒のつどいで講演した内容を DVD 化し, Amazon で出すところにまでこぎつけた. 画像がまだないが, 大きなサイズを用意しなければならないようで, 作って頂いた方に大きなサイズを頂けるように打診しているところだ. 色々あって東大数理の古田先生にお渡しする機会があったのでお渡ししてきた. 東大数理の世界的に著名な研究者に数学の DVD を渡すというのもなかなか肝っ玉あるな, と自分でも思う. 「これはひどい」とかいう話になるとこう色々な意味で大ダメージだが, 数学の啓蒙的なアレということで自分も色々やっていますという話はしても損はなかろう, ということで自分を震い立たせてお渡ししてきた方の市民だった. [最後に nolimbre さんにも Twitter 上 stab されてさめざめと泣いたのだが, 備忘録として古田先生から突っ込まれたことをメモしておきたい](https://twitter.com/phasetr/status/391537734738661376). > 今日古田先生にお会いする機会があったので DVD を渡してきたのだが, > 「環から部分環を除いた集合は環になるか」というところで「実際になる例はあるのですか」と速攻問い返されて本当に大丈夫か即答できなくて泣いた > > @phasetr 仮に環の定義から単位元の存在と零環を除いたとしても, > 環の非自明な包含 $S \subset R$ に対して $s \in S \setminus \left\{ 0 \right\}$ と > $r \in \setminus S$ とれば $r=(r-s) +s$ なので $r-s \in R \setminus S$ となり $r-(r-s)=s \in S$ だから $R \setminus S$ は環にならないですよね. > > @non_archimedean 本当だ. > ありがとうございます. > この程度の議論がすぐに想起できないことに涙を禁じ得ません 一度つどいで指摘を受けたのにきちんと消化しきらずにいたこと, 恥ずべき怠惰である. #### ラベル 数学, DVD, 反例, 代数学 ### Amazon での DVD 出版に関する雑感 #### 本文 [さわらさんと少し話した内容について折角だから少しまとめておきたい](https://twitter.com/sawara0804/status/392649968688709632){target=_blank}. 先日もブログなり Twitter なりで報告したが, DVD というのはこれだ. 古田先生にお会いしたときにも「 YouTube やニコニコに上げて誰でも見られるような形にしないのか」と言われたのだが, 一応理由はある. 上でも少し書いたことだが, 1 つには Amazon の力を使うこと, 今までアプローチできなかった層にアプローチすることを意識している. Amazon を使う利点はいくつかあるが, 例えば SEO 効果がある. Amazon はページランクが高いし, 色々な導線も張りやすく実際にナチュラルなリンクも集まりやすいので検索時に上に来やすい. ひと目につく可能性が上がるのだ. また, YouTube などでも「動画のおすすめ」はあるが, Amazon の場合にも関連商品のお勧めがある. 正直 Youtube で数学の検索をする人間 (日本人?) はあまり多い気がしないのだが, Amazon で数学関係の検索をする人間ならもっと多いだろう. その方が引っかかる可能性が高いと踏んだ. 実際にそうなるかは分からないが人柱としてテストをするのは有意義だろう. そんな感じ. アプローチできる層も大きく変わる. 根本的なところとして, ニコニコに出すときにはアイドルマスター枠で出しているので, アイマスやら何やらのいわゆるオタクまわりの人間が基本的な対象になる. 興味があってもオタク関係のことはちょっと, という人はやはり見づらいだろう. 作る側としても視聴者層を絞り込んで作ってオタッキーな記述を増やして作るので, そういう意味でも非オタ, 特に非アイマス民が内容を理解するのには多少のハードルがあるといってもいい. 今回 Amazon で作ったが実写にした. アイマスの動画は見なくても Amazon で販売されている実写の DVD を見る (買う) 人ならいるだろう. その辺を狙った. うまくいくかは分からないのでとりあえず実験だ. 技術的に追いつかないということもあるが, 内容的にももっと簡単にするなりうねうねアニメーションを使うなりという「配慮」をすると, また違った層にもアプローチできるのだろうが, そういうことはしていない. (今回の話の内容に関しては) そういうのはむしろ邪魔であって淡々と数学と対面させろと思うような層に向けて作っている. ときどき言っているが, 私が究極的に唯一人意識するユーザは「子供の頃の自分」であって, 子供の頃の自分が喜ぶかどうかを考えて作っている. こういう作り方をしても 100 人くらいは興味を持つ内容になることも学生の頃の実体験とニコニコでの実験によって分かっている. 「子供の頃の自分」に向けて作ればこの 100 人の心には響く. ここで「 100 人」と書いたが, 文字通りの「 100 人」ではない. 大勢ではないが, 確実に一部マニアの心は捉える, という意味だ. 別のラインの今までにアプローチできなかったところの新たな「100 人」にアプローチできると思っている. 正確にはその推測が正しいかの実験をしている. またニコマス理工系の Skype でコミケには出さないのかという話もしたのだが, そのとき, ニコニコ・コミケのようなオタク以外の層に対して何かしてみたいという話をした. 大して変わらないというかコミケの方がむしろ響きがいいのではないの, と言うコメントをもらったのだが, その辺は実験であり人柱というやつだ. 一応, Amazon の方が多少なりとも広い層に訴えられると思っている. 広いところに出したいのも理由があって, 他にも何か作ってくれる人を増やしたいからだ. オタ界隈だと皆がやっているし自分も, というアレが結構あるが, 数学やら物理やらの話だとあまりいない気がする. ブログはそれなりにあるがあれだけだとやはり幅がない. かといって Web 上だときちんとアニメーションを, みたいな話になりそうだが, それはそれでプログラミングがどうの, という話になると思うしそれはそれでまたそれなりの手間がかかる. そこで別のやり方を提示したい, とか何かそんな感じ. 「自分だったらもっとうまく・面白くできる」という人にもっと乗り込んできてもらって無茶苦茶やってもらいたい. 色々書いている内にまとまりもなくなってきた気がするが, とりあえず自分用メモということもあるしいいだろう. [ちょくマガでやっているヤバ研](http://chokumaga.com/magazine/?mid=104&vol=16){target=_blank}などもあるが, とにかく色々な人が色々なことをやってどんどん失敗して血の池地獄を作り, 最後に池のほとりでひっそりと美しい花が咲けばいい. まずは血の池地獄を作ろう. 話はそれからだ. #### ラベル 数学, 物理, 数理物理, 数学教育 ### Amazon に出した DVD 【色々な反例で遊ぼう】に関する情報は随時出していきたい #### 本文 [ブルブルエンジン兄貴と次のようなやりとりをしてきた](https://twitter.com/alg_d/status/394824973627293696){target=_blank}. > 相転移 P の DVD が何枚くらい売れてるのか, 私気になります! > > @alg_d 今の所 7 本は売れているようです. > そのうちブログにも書きますが, 他の人にも同じようなことをしてほしいと思っていて, > その参考と言う名の人柱になる予定なので, そういう情報は随時出したいと思っています > > @phasetr 全部で何枚くらいあるんですか > > @alg_d 先週木曜に 16 枚 Amazon に送って, 今日また Amazon から出荷要請があったので 14 枚送りました > > @phasetr すごい 先日も DVD を出す目的的な記事を上げたが, 上の通り, 人柱になるつもりなので適宜情報は出したい. この記事執筆時点ではさらに増えて, DVD は 13 枚売れたようだ. そのうち制作にかかった実費についてまとめたい. 動画の編集作業など, 実費がかかっていない時間相当の「経費」もあるが, それは今回きちんと測っていないので, 次回はその辺も気にしたい. DVD 制作にご興味がある向きは色々問い合わせられたい. #### ラベル 数学, 数学教育, DVD 制作, Amazon ### 【よく分からない数学 色々な反例で遊ぼう】の DVD がどこかの大学の図書館に入ったとかいう凶報を聞きつけた #### 本文 衝撃のニュースが飛び込んできた. こんな無茶な決断をした大学の図書館の方, 是非名乗り出てほしい. #### ラベル 数学, 相転移プロダクション ## tri_iro さん筋による情報: よく知らないがシータパン予想なる不可解な言葉をマスコミが生み出したらしい ### 本文 [よく知らないがシータパン予想なる不可解な言葉をマスコミが生み出したらしい](https://twitter.com/tri_iro/status/374851418357633024){target=_blank}. > 1 年半前の記事だけど, これニュースになってたのか > >史上最年少 22 歳の大学教授誕生! 難問「シータパンの予想」を解いた数学の天才-中国 > [この辺から tri_iro さんのコメントがある](https://twitter.com/tri_iro/status/374846132888686592){target=_blank}. > 「デヴィッド・シータパンは, 英国の論理学者, 投資銀行家, 漁師である」 > 論理学者 ⇒ ゴールドマン・サックスのトレーダー ⇒ 100 億円の損失 ⇒ ラスベガスのギャンブラー ⇒ マグロ漁船の乗組員 > という経歴はなかなか斬新ですね. > > 14 年前の記事ですが, デヴィッド・シータパンに関する記事: 『幾億もの損失を出したポスドク』 > > > 僕は修士時代はシータパンと割に近い研究をやっていて, > シータパン論文も引用していたりしたんですけど, なんか無事に生きてるのかどうかすら心配になる経歴を辿っててやばい. > > なぜ急にシータパンの話をしたかというと, Woodin の tt-join 定理の論文をどっかで入手できないものかとググってたら, > Wikipedia のシータパンの記事が検索に引っ掛かったので, シータパンの記事なんてあったのかーと懐かしんでいたのでした. > > 『「シータパンの予想」とは, 90 年代に数学者のデビッド・シータパンが作成した数理論上の難問で, > これまでに世界中の数学者や研究者が挑戦したが誰も解くことができなかった』. > 世界中の数学者…って世界でせいぜい 30 人くらいしか挑戦してないのでは. いや僕も修士の時に挑戦した人の一人ですが [あとこんなやりとりも](https://twitter.com/jun0inoue/status/374854197839020032){target=_blank}. > "Seetapun Conjecture" でググっても劉路さんのことしか出てこなくて予想の内容が出てこないのでアレ. > > @jun0inoue 研究者の間では「RT^2_2 → WKL?」という専門用語で呼ばれていて, > シータパン予想というのは, 記事にするために作った用語かな, と思います. > というか大して有名な問題でもないのに, こんなニュースになっていたというのが驚きです. > > @tri_iro なるほど. > まあでも学部生で未解決問題解けるのは十分凄いんでは… > > @jun0inoue はい, マイナーとはいえ超難問を解決し, > 劉路さんの論文も良いアイデアと難解なテクニックを組み合わせた素晴らしいものなんですが, > 学部生から「修士」「博士」「ポスドク」「助教」「准教授」をすっ飛ばしていきなり「正教授」は, 少し飛び過ぎなのでは……と心配になってます > > @tri_iro 昔からそういう人は時々いますし, それはそれでうまく行くんじゃないかと思います. 構成的場の量子論, 厳密統計力学ともにあまり名のついた有名な予想ないし, 竹崎先生いわく, 私の数学上の専門ということになっている作用素環にも名前のついた有名な予想は少ない. 何か名前がある問題, 紹介しやすくていいな, という印象を受けた. ### 追記 [こんな情報も得た](https://twitter.com/kagami_hr/status/374885904407461889){target=_blank}. > シータパン予想ってラムゼー関連なのでとりいろさんが詳しいのは予想がつきましたが RT^2_2 → WKL のことだったのですか. Ramsey, 名前だけは知っているが何者なの, ということで [Wikipedia 先生から引用する](http://ja.wikipedia.org/wiki/フランク・ラムゼイ){target=_blank}. > フランク・プランプトン・ラムゼイ (姓はラムジーとも, Frank Plumpton Ramsey, 1903 年 2 月 22 日 – 1930 年 1 月 19 日) はイギリスの数学者である. > ケンブリッジ出身. その生涯は非常に短かったが数学・哲学・経済学に大きく貢献した. ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ (1920-23) にて学ぶ. > 卒業後, 短期間ウィーンに留学した後, キングス・カレッジフェロー (1924) ・講師 (1926). > > ベイズ確率 > > 確率論の主観的解釈 (のちにベイズ主義と呼ばれる) は 1931 年にラムゼイによって提唱される. > ラッセル・ホワイトヘッド理論の簡易化 > ラムゼーの定理 > ラムゼイ数 > ラムゼイ・グラフ > ラムゼイ問題 > > 哲学 > > 論理哲学論考の書評 > ウィトゲンシュタインへの手紙 > 論理哲学論考の英訳者の 1 人. > ウィトゲンシュタインの論文指導 想像以上に無茶苦茶な人材だった. やばい. [ラムゼー理論ということでこんな PDF も見つけた](http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/metadb/up/ZZT00003/ramsey.pdf){target=_blank}. ### ラベル 数学, 数理論理 ## 大学までの数学と大学の数学の違いについての個人的感慨をまとめていたらよく分からない文章になった ### はじめに 時々「高校までの数学と大学の数学は全然違う」と話題になる. 私も違うと思っているが, どうやら見た限りの他の人と考えが違うらしいので自分の見解を出しておきたい. ちなみに黒木玄さんなど, 高校までの数学と大学の数学は変わらないという人もいることは付け加えておこう. ### 私にとっての一番の違い 細かい話はいくつかあるが, 一番の理由は高校までの数学にはいまだに苦手意識がある一方で 大学の数学に対してはそうした負の感情を一切感じないことだ. 高校までの数学と大学の数学の違い, これは純粋に私の肌に合うか合わないかというところに尽きる. 高校までの数学が肌に合わないというよりも, 大学の数学が合い過ぎるという方がおそらく正しい. どこがどう, という話でもなく, 私の感覚上の問題なのでそれ以上何ともいえない. ただ違う, それだけだ. 良く「高校の数学は極限の扱いが厳密でなく~」とかいう話があるが, 心底どうでもいい. あれはあれで味があるのだ. ### 大学進学時の体験 #### 前提 あと大学進学時の私の体験にも原因があると思う. 前ふりが長くなるが, 私の数学には大事なことなのできちんと書きたい. 自己紹介のところにも書いているし Twitter でも何度か呟いたことでもある. 私は学部では物理, 修士では数学にいたが, 高校までは数学が一番できなくてその次に物理が駄目だった. 確率などはセンターレベルですら壊滅的だった. 本筋とはあまり関係ないが, 専門の場の量子論や統計力学では確率論を使う (こともある) けれども, 大学でやる方の数学なら一応ついていけるという私内部での現象をどう思ったらいいのかいまだに分かっていない. #### 一番だったのは数学・物理 それはともかく, 大学進学を考えたとき一番苦手だったが物理 (と数学) 以外に行くことなど一度たりとも考えたことはなかった. いわゆる得意科目 (点が取れる科目) は化学と国語で, その次に英語がそこそこだった. この得意科目を使って受験できる物理または数学科はどこか, と探したら東大だとかの国公立しかなかったので途方に暮れたことは今でも覚えている. 念の為に書いておくと, 高校時代一番勉強していたのは明らかに数学だ. 勉強の仕方は大分まずかったと思うが, 時間だけは多かった. 高校入学時, 先生が「学年 +2 時間は勉強しないといけません」と言っていたので, 素直にそれを守っていた. そしてその時間の 9 割以上は数学に使っていた. テスト前や高校 3 年のときはさすがに他教科にも時間を割く必要があったので数学の割合は減ったけれども. 勉強の仕方としては基本的に写経だった. 学校で買った問題集 (シグマベストだった) でやったところの問題を解くが, 20-30 分考えても大体できないので, そのあとは答えをひたすら書き写した. いわゆる暗記型の勉強といってもいい. どうでもいい話だが, これも念の為書いておくと, いわゆる中堅くらいの大学の入試問題ならこういう勉強でも十分に数学で点が取れる. 実際, 代ゼミかどこかの私大模試かなにかでは数学で満点を取ったことがある. その辺は純粋に勉強量だけでカバーできる. #### 数学が駄目だった (やり方が良くなかったとはいえ) 勉強時間の 9 割以上を数学に割いていたのに, 試験前に少し勉強するだけである程度の点が取れる他教科を思うと, 本当に数学は駄目なのだな, と思った. 上で「大学進学を考えたとき一番苦手だったが物理 (と数学) 以外に行くことなど一度たりとも考えたことはなかった」と書いたが, 実際には数学科に行く気はほとんどなかった. 模試で受験校や学部学科を選ぶところがあるが, そこで数学科も入れていただけだ. 数学は天才のやるものと思っていて, 物理なら凡人でもできるかな, と思って物理にしたのだ. これまた別件だが, 大学で「僕は丁度逆で, 物理は天才がやるもので数学なら凡人でもいいと思って数学科にしたんです」といっている数学の教授がいて面白かった. そうした中, 一浪した上で第一志望の東大に落ち, 失意の中, 別の大学に進学したわけだが, 浪人しておあずけをくらった分, 大学での勉強に対する憧れのようなものは凄く強かった. ようやく大学で勉強できるという喜びは強かったのだ. ### 数学科の数学との出会い そういう状態で大学で講義が始まったが, 大体の講義は高校でやった内容の復習みたいなところからはじまった. もちろん 1-2 ヶ月も経てばすっかりやばいレベルに到達するので心配はいらないが, それでも第一週のがっかり具合は今でも覚えている. 「こんな既に知っている簡単なことをやりに大学に来たのではない」と心底がっかりした. そんな中で週の終わり, 金曜午後一番の数学の講義が衝撃的だった. 私が通っていた大学は物理学科だが必修で実数論, 集合論, 位相空間論をやる講義がある. その講義が (私の在学時は) 金曜午後一の 3 限だったのだ. この講義がやばかった. 細かいことは覚えていないが, 「物理を学ぶ上で必要な数学を考えると実数や集合, 位相という話が大事になる」 「高校数学では限りなく近づくといった文学的表現が使われるがこんなものは使い物にならない」といった話が突如はじまり, 「まずは実数をきちんと定義してかかる必要がある」ということでいきなり実数論がはじまった. のっけから何を言っているのかよく分からなかったのだが, 講義内容もさっぱり分からなかった. そしてこれが良かった. 何が何だか良く分からないというのがいい. こういう訳が分からないのをやりに大学に来たのだ, と震えた. 物理学科の学生にはあるまじきことだと思うが, 学部一年の頃はほとんどこの授業に関する復習しかしていなかった. その先生は基本的にやったことしか出さない (ただしやったことはほぼ全て試験に出る) のだが, 試験については「試験は教官 (出題者) との戦いである. 数年だか数十年だか知らないが少し早く生まれたくらいでなめられてはいけない」と勝手に思って, 万全の体制で臨んだ. 他教科については, 物理はおろか微分積分や線型代数の勉強すらほとんど全くしていなかったのでそれらについては戦々恐々だったのだが, それはどうでもいい. 復習の過程でノートの内容は無駄に全て覚えていた (今は細かいことはあまり覚えていない). 暗記がどうこう, ということではなく勝手に覚えるくらい馬鹿みたいに没頭していた. ちなみに試験の点は非常に良かったようで, 先生にその時点で名前を覚えてもらっていたようだ. あとでその先生聞いたのだが, 「諸君らは田舎ではお山の大将をしていたのかもしれないが, 大学を, 学問をなめてもらっては困る」というスタンスでその講義をしているらしい. ### 分かるから楽しい? それはそうとよく「分かるから楽しい」と言われるが, 分かったからといって楽しいと思えたことがほとんどない. 分かった気になっていたらあとで全然何も分かっていなかったことに気付いて愕然としたことなら何度もあるのだが. 理解が喜びにつながるという人, 純粋に羨しい. ただ, 一度だけはあって, それは受験生の頃に Z 会の問題を解いていて, 2 週間くらい考えた挙句に解法を閃いたときだ. 大学に行くとこういう体験がたくさんできるのか, と思っていたが, 全然なくて泣いた. むしろしばらく考えて分かったとき, 「こんな程度のことにこれだけ時間をかけないと分からないなんて自分はもう駄目なのではないか」, 「いや, 時間はかかったにしろ分かったではないか. 自分はまだいける」というやりとりが毎度脳内で発生する. 相変わらず最初に書こうと思ったことからどんどんずれていき, 最後には何が言いたかったのか自分も分からなくなり, しかも文章にまとまりもなくなっていくのが笑える. ### ラベル 数学 ## 何事もはじめが肝心: 算数教育の現状を見て ### ツイート引用 ## 竹崎先生の論文 Non-Commutative Integration を読んでみた ### はじめに 何回か非可換積分論に言及してきたが, 竹崎先生が論文を書いていた. この [Non-Commutative Integration](http://arxiv.org/abs/1208.5197){target=_blank} という論文だ. 竹崎先生から見てどう映っているのか気になったので軽く眺めてみた. 私の感想とともに内容を外観してみよう. ### 積分とは何か まずここでの「積分」が何かをきちんと考え直す必要がある. 積分は関数に対して適当な数を返す汎関数と思える. 作用素に対して適当な数を返す汎関数も積分と思って研究してみよう, というところが出発点だ. 「積分」を考えるのは正値関数 (作用素) だけとしている. 関数の場合と同じように作用素も正値作用素への分解があるので, それを前提とする. その上で次のような問題を考えよう:同じ積分値を返す 2 つの正値作用素はどういう関係にあるか. 可換な場合はほとんど何も言えず面白くないが, 非可換な場合, つまり作用素環上での議論にすると深い議論ができるようになる. 上記のような 2 つ作用素はお互いに同型な正値作用素列の可算和に分解できてしまう. はじめて知ったのでよく分からないが, これは非可換にいってはじめて積分の真の意味が分かる, と解釈するようだ. あともう 1 つ「可算和」で表現できることも大事. 非可算だと濃度まわりで解析的に話が面倒になり, ほとんど何もできなくなる. ふと竹崎先生が集中講義でポーランド空間まわりで「加算性のご利益」みたいなことを言っていたことを思い出したりもした. ### 2 節 2 節では weight の flow を復習する. weight は竹崎先生の集中講義で聞いたが, それ以外で扱ったことがない. 冨田-竹崎理論は von Neumann 環に必ず存在する weight に対して議論するのが一番一般的だが, 数理物理への応用上, $\sigma$ -finite の場合だけで十分で, いつも私が使っているのはこちら. ただ最近は場の理論で赤外発散があるときの散乱理論で weight を使うことがあるようなので, これからは weight の場合の完全な理論も大事になっていく可能性はある. Weight と散乱ついてに興味がある向きは Buchholz-Summers の [Scattering in Relativistic Quantum Field Theory: Fundamental Concepts and Tools](http://arxiv.org/abs/math-ph/0509047) を読んでみよう. こことの絡みで非可換積分論を見直すのも面白いかもしれない. 話がそれたので論文に戻ろう. 可換な場合から証明つきで議論してくれているようなので助かる. 証明の終わりの記号がハートマークなのが無駄にかわいい. 非可換な方に入ると早速非可換 $L^p$ が出てくる. あまり勉強していないのではじめて知る話が多いのだが, $L^2 (\mathcal{M})$ の前双対が $\mathcal{M}$ の標準形というのはちょっと驚き. ここで論文とは $\mathcal{M}$ の字体を論文と変えているが, これは論文での字体は (竹崎先生の文章で) 良く見るのだが, 具体的にどのコマンドで出すのか分からなかったので上記の字体にした. 論文を読むときには注意してほしい. ### 3 節 3 節で積分の比較に入る. 相対モジュラーで考える, かなり本格的な話をする. 相対モジュラーの議論は相対エントロピーでも当然出てくるし, 数理物理としても平衡状態の摂動論でツールとして駆使するので結構大事なのだ. 平衡状態の摂動論に興味がある向きは J. Derezinski, V. Jaksic, and A. Pillet, PERTURBATION THEORY OF $W^*$-DYNAMICS, LIOUVILLEANS AND KMS-STATES, Rev. Math. Phys, 15, (2003), 447-489. を読んでみよう. 参考文献ページで簡単な論評もしておいたので参考にされたい. 本文に戻ろう. 3 節では汎関数の同値性やユニタリ共役の議論をする. $\mathrm{Int} \mathcal{M}$ は von Neumann 環の分類理論でもよく出てくる馴染みの対象だ. 因子環の場合の Lemma 3.3 とかなかなか強烈:次のような命題だ. > $\mathcal{M}$ を因子環とする. > 0 でない正規正値汎関数のペア $\psi$, $\phi$ が次のようなペア $\psi_1$, $\phi_1$ を持つとする: > \begin{align} > 0 > \neq > \phi_1 > \leq \phi, \quad > 0 > \neq > \psi_1 > \leq \psi, \quad > \phi_1 > \sim > \psi_1. > \end{align} > 全ての 0 でない非忠実な正値汎関数 $\omega$ がある > 0 でない非忠実な正値汎関数 $\omega_1$ を上からおさえるなら, > 上の $\phi_1$ と $\psi_1$ はユニタリ共役に選べる. > つまり > \begin{align} > \phi_1 > \equiv > \psi_1 \quad > \mathrm{mod} \quad > \mathrm{Int} (\mathcal{M}). > \end{align} 因子環というだけで全ての型で成り立つのはちょっとすごい. 定理 3.6 が本題の定理だ. 汎関数のノルムの比較と分解に関する性質の同値性が示される. 続く定理 3.7 と注意 3.8 がまた飛ばしている. 超忠実性という性質が定義される. 驚くのはこういう汎関数がある場合, $\mathcal{M}$ が $\mathrm{III}_1$ になることだ. ちなみに $\mathrm{III}_1$ 型の環は物理でも大事な環なので, やはりそこへの応用もありそう. ### 4 節 4 節では可換な場合を議論する. 系 4.2 は普通に考えていたのではちょっと出てこないような感じの定理で, これは面白い. 長いのでここでは書かないが, 興味がある向きは論文を参照してほしい. 可換な場合で直接やるにはどう示せばいいのだろう. 結構面白い練習問題になる気がする. ### 5 節 5 節では汎関数の可換性というテーマになる. これもはじめて見たのであまりピンときていない. ### 6 節 6 節でまとめが入る. Kadison-Pedersen の結果との比較がされているが, やはり III 型環の議論ができるこの論文の議論はかなり強い結果のようだ. 超忠実な状態の存在問題は未解決なので, ちょっと皆やっておけ, という宿題が出て終わる. やはり Lemma 3.3 が強烈なのだろう. ぱっと見でも驚く. 可換に落とした場合の系 4.2 も面白い. 結果を眺めただけでまだ証明はきちんと読んでいないので, 何とか時間を作って証明まで読み切りたい. ### ラベル 数学, 作用素環 ## 統計学 黒木メモ ### 黒木さんによるベイズ統計のお勧め書籍, 渡辺澄夫『ベイズ統計の理論と方法』 ベイズ統計どころか統計よくわからないし, 買ってみるか. ### 尤度に関する黒木さんのツイートまとめ: 統計学 次のツイートからなるツリーを勝手にTeX化・PDF化した. - [連続ツイートへのリンク](https://twitter.com/genkuroki/status/1174148478085107713) 統計学は大事な割にろくな本がないという印象で, とにかく勉強に苦労する. 学生の頃のように時間があればまだしも, 隙間時間で雑にしか勉強できていない状態で記述の雑な本を読んでいて, とにかく困惑している. 少しずつでも勉強しようと思って, 参考情報として黒木さんのツイートはいろいろ保管しているし, 一部は既に(勝手に)TeX化している. がんばって勉強を続けよう. ### カルバック-ライブラ情報量とサノフの定理・大偏差原理に関する黒木さんのツイートまとめ: 統計学 次のツイートからなるツリーを勝手にTeX 化・PDF化した. - [連続ツイートへのリンク](https://twitter.com/genkuroki/status/1177843969822093312) 先程の尤度に関するまとめと同じで, 統計学・機械学習系にはろくな本がないという印象が強い. 少なくとも数学系市民にはまるでやさしくなく, とにかく勉強に苦労する. 少しずつでも勉強しようと思って, 参考情報として黒木さんのツイートはいろいろ保管しているし, 一部は既に (勝手に) TeX 化している. がんばって勉強を続けよう. ## メモ: きちんとまとめ切れていないリンク集 - - - - - - 黒木玄 Gen KurokiさんはTwitterを使っています 「#Julia言語 Julia言語版を作ってみました。完全に同じだとつまらないので、地面でバウンドするようにしてみました。 ソースコード↓ https://t.co/AdfmU2bK9y https://t.co/Chbb3wFdKt」 / Twitter - - 黒木玄 Gen KurokiさんはTwitterを使っています 「#数楽 杉浦光夫『解析入門I』p.50の問題8)はどこか別のところですでに知られていた問題なのだと思う。自分で考えて練習問題を作ったなら、"< 80" というようなひどく粗い評価の証明問題にはなり難い。 杉浦光夫『解析入門I』p.50より前に同じ問題が出されていることを知っていたら教えてください。 https://t.co/6gBsAowSgu」 / Twitter - Julia - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -