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2012

2012-12-06 Christian Lessig, A Primer on Differential Formsがかなり面白かったので: 物理にも使えそう

これだ.

いくつかよさげな記述を引用する.

Differential forms are central to the modern formulation of classical mechanics where manifolds and Lie groups are employed to describe the configuration and time evolution of mechanical systems.

One of the principal applications of differential forms in modern mechanics is the mathematical description of observables: infinitesimal measurements, which, when integrated, yield a value that can be verified through real world experiments, at least in principle.

この指摘, 相当大事な気がする. 前に深川さんが言っていたこと, ようやく感じ取れたような気もする. ベクトル場はフローを生成する的なアレは数学的にはわかるし, 気分的には感じるがまだ腑に落ちていない.

In fact, whenever one encounters a line integral, what one is integrating is a 1-form, even if the computation is classically stated using vectors. For example, any classical physics book will present a Newtonian force as a vector, but more correctly a force should always be considered as a 1-form.

これ, 何となく良さげな記述なので記録しておきたい.

A zero dimensional manifold is a point, and hence ``integration" of such forms amounts to evaluation

この観点はなかった. メモ.

これ良さそうだ. 現代数学観光ツアーでも紹介しとこう.

2012-11-15 やたべさん筋の情報: 野矢茂樹の粗雑な論考に関するメモ

あと何かこれ.

よくわからないがあとで読み返したくなる可能性は極めて高い. 保全しておくべきなので記録.

2012-09-27 体の乗法群(?)に関する話

緩募 体$k$に対して加法の単位元を除いた集合 $k^$または$k^{\times}$の呼称(があればご教示願いたい). $k^$と$k^{\times}$のどちらをよく使う(印象がある)かもご教示願いたい

これに対して次のようなコメントを頂いた.

群構造を含めて乗法群? $k^*$派.

コメントその 2.

体だったら$0$でない全ての元が積に関する逆元を持つから, 体を環だと思って「単数群」とか呼んだりすればいいのではないでしょうか. なんとなく, 複素数体の場合は$C^*$, 標数$p$の素体の場合は$F_p^{\times}$を使っていることが多い気がします.

コメントその 3.

「加法群・乗法群って語は何のためにあるのか?」という質問をした文脈で, 黒木玄先生から下のような答えを頂いたことがあります. これの「実数」を$k$に置き換えて良いなら, 「$k$の乗法群」となりますね. https://twitter.com/genkuroki/status/251192918491152385

黒木さんツイートをいくつか引用.

もとは廣中先生の代数幾何の本で, 射影空間の定義のために$k^$と$k$-線型空間$V$に対する$V^$が出てきたのだ. 一方で$V^{\times}$などの$\times$表記もよく見るので, どちらの方が標準的か少し気になった.

2012-08-26 竹崎先生の論文Non-Commutative Integrationを読んでみた

はじめに

何回か非可換積分論に言及してきたが, 竹崎先生が論文を書いていた. このNon-Commutative Integrationという論文だ. 竹崎先生から見てどう映っているのか気になったので軽く眺めてみた. 私の感想とともに内容を外観してみよう.

積分とは何か

まずここでの「積分」が何かをきちんと考え直す必要がある. 積分は関数に対して適当な数を返す汎関数と思える. 作用素に対して適当な数を返す汎関数も積分と思って研究してみよう, というところが出発点だ.

「積分」を考えるのは正値関数 (作用素) だけとしている. 関数の場合と同じように作用素も正値作用素への分解があるので, それを前提とする. その上で次のような問題を考えよう:同じ積分値を返す 2 つの正値作用素はどういう関係にあるか.

可換な場合はほとんど何も言えず面白くないが, 非可換な場合, つまり作用素環上での議論にすると深い議論ができるようになる. 上記のような 2 つ作用素はお互いに同型な正値作用素列の可算和に分解できてしまう. はじめて知ったのでよく分からないが, これは非可換にいってはじめて積分の真の意味が分かる, と解釈するようだ. あともう 1 つ「可算和」で表現できることも大事. 非可算だと濃度まわりで解析的に話が面倒になり, ほとんど何もできなくなる. ふと竹崎先生が集中講義でポーランド空間まわりで「加算性のご利益」みたいなことを言っていたことを思い出したりもした.

2 節

2 節では weight の flow を復習する. weight は竹崎先生の集中講義で聞いたが, それ以外で扱ったことがない. 冨田-竹崎理論は von Neumann 環に必ず存在する weight に対して議論するのが一番一般的だが, 数理物理への応用上, $\sigma$ -finite の場合だけで十分で, いつも私が使っているのはこちら. ただ最近は場の理論で赤外発散があるときの散乱理論で weight を使うことがあるようなので, これからは weight の場合の完全な理論も大事になっていく可能性はある. Weight と散乱ついてに興味がある向きは Buchholz-Summers の Scattering in Relativistic Quantum Field Theory: Fundamental Concepts and Tools を読んでみよう. こことの絡みで非可換積分論を見直すのも面白いかもしれない.

話がそれたので論文に戻ろう. 可換な場合から証明つきで議論してくれているようなので助かる. 証明の終わりの記号がハートマークなのが無駄にかわいい.

非可換な方に入ると早速非可換 $L^p$ が出てくる. あまり勉強していないのではじめて知る話が多いのだが, $L^2 (\mathcal{M})$ の前双対が $\mathcal{M}$ の標準形というのはちょっと驚き. ここで論文とは $\mathcal{M}$ の字体を論文と変えているが, これは論文での字体は (竹崎先生の文章で) 良く見るのだが, 具体的にどのコマンドで出すのか分からなかったので上記の字体にした. 論文を読むときには注意してほしい.

3 節

3 節で積分の比較に入る. 相対モジュラーで考える, かなり本格的な話をする. 相対モジュラーの議論は相対エントロピーでも当然出てくるし, 数理物理としても平衡状態の摂動論でツールとして駆使するので結構大事なのだ. 平衡状態の摂動論に興味がある向きは J. Derezinski, V. Jaksic, and A. Pillet, PERTURBATION THEORY OF $W^*$-DYNAMICS, LIOUVILLEANS AND KMS-STATES, Rev. Math. Phys, 15, (2003), 447-489. を読んでみよう. 参考文献ページで簡単な論評もしておいたので参考にされたい.

本文に戻ろう. 3 節では汎関数の同値性やユニタリ共役の議論をする. $\mathrm{Int} \mathcal{M}$ は von Neumann 環の分類理論でもよく出てくる馴染みの対象だ. 因子環の場合の Lemma 3.3 とかなかなか強烈:次のような命題だ.

$\mathcal{M}$ を因子環とする. 0 でない正規正値汎関数のペア $\psi$, $\phi$ が次のようなペア $\psi_1$, $\phi_1$ を持つとする: \begin{align} 0 \neq \phi_1 \leq \phi, \quad 0 \neq \psi_1 \leq \psi, \quad \phi_1 \sim \psi_1. \end{align} 全ての 0 でない非忠実な正値汎関数 $\omega$ がある 0 でない非忠実な正値汎関数 $\omega_1$ を上からおさえるなら, 上の $\phi_1$ と $\psi_1$ はユニタリ共役に選べる. つまり \begin{align} \phi_1 \equiv \psi_1 \quad \mathrm{mod} \quad \mathrm{Int} (\mathcal{M}). \end{align}

因子環というだけで全ての型で成り立つのはちょっとすごい.

定理 3.6 が本題の定理だ. 汎関数のノルムの比較と分解に関する性質の同値性が示される.

続く定理 3.7 と注意 3.8 がまた飛ばしている. 超忠実性という性質が定義される. 驚くのはこういう汎関数がある場合, $\mathcal{M}$ が $\mathrm{III}_1$ になることだ. ちなみに $\mathrm{III}_1$ 型の環は物理でも大事な環なので, やはりそこへの応用もありそう.

4 節

4 節では可換な場合を議論する. 系 4.2 は普通に考えていたのではちょっと出てこないような感じの定理で, これは面白い. 長いのでここでは書かないが, 興味がある向きは論文を参照してほしい. 可換な場合で直接やるにはどう示せばいいのだろう. 結構面白い練習問題になる気がする.

5 節

5 節では汎関数の可換性というテーマになる. これもはじめて見たのであまりピンときていない.

6 節

6 節でまとめが入る. Kadison-Pedersen の結果との比較がされているが, やはり III 型環の議論ができるこの論文の議論はかなり強い結果のようだ. 超忠実な状態の存在問題は未解決なので, ちょっと皆やっておけ, という宿題が出て終わる.

やはり Lemma 3.3 が強烈なのだろう. ぱっと見でも驚く. 可換に落とした場合の系 4.2 も面白い. 結果を眺めただけでまだ証明はきちんと読んでいないので, 何とか時間を作って証明まで読み切りたい.

ラベル

数学, 作用素環

2012-08-21 Cox, Hyde の『THE GALOIS THEORY OF THE LEMNISCATE』

はじめに

誰が話していたのか忘れたが, Cox, Hyde の『 THE GALOIS THEORY OF THE LEMNISCATE 』という論文が出ていたのでメモしておく. Abstract を引用しておく.

Abstract

This article studies the Galois groups that arise from division points of the lemniscate. We compute these Galois groups two ways: first, by class field theory, and second, by proving the irreducibility of lemnatomic polynomials, which are analogs of cyclotomic polynomials. We also discuss Abel's theorem on the lemniscate and explain how lemnatomic polynomials relate to Chebyshev polynomials.

コメント

題名にある通りの Galois 理論は当然として, 類体論との関係とかも色々あるようなので面白そう. Cox は結構有名な (和訳もある) 代数幾何の入門書を書いている人で, 共形場とかもやっている人だったという記憶. 以前符号理論と代数幾何の動画を作ったとき, 代数幾何自体にはほぼ触れなかったが, さすがに勉強しないとまずいと思って, Cox らによる代数幾何の本を買って一応一通り眺めた.

全く身についていないが, いくつかあった誤植を報告した. 誤植を報告すると, それが新たに見つかった誤植の場合, 1 箇所 1 ドルくれるとか何とかいう話があって, それでいくらか送ってもらった覚えがある.

ちなみに特に自分が専門とするところの本なら, 一生懸命読んで誤植を報告したりすると, 名前とか覚えてもられる可能性が高い. 色々な研究者と仲良くなっていて損なことはないと思うので, 興味のあるところなら特にその辺を意識してやってみるといいかもしれない. 私の場合, 新井先生の本の誤植をたくさん指摘して興味があるという姿勢を示しておいたので, 修士くらいで研究に関して聞きたいことなどあったとき, (メールで) 色々相談に乗ってもらえたりした. 最近特に, 教官は研究と関係ない雑務で無駄に忙しいのであまり無茶なことを期待するのはアレだが, やっておくといいことがないでもないので, 興味がある向きはそういうのも考えてみよう.

2012-01-15 信じられた自然数0

patho_logic さんのツイートから

Twitter では時々話題になるが, patho_logic さんがまた釣り上げてきたようだ. 一応ブログにも関係することをまとめておきたい. patho_logic さんのツイートはこれだ.

0 は自然数とする皆様へ.< http://bit.ly/W27stm>

URL の参照先では次のような異常な文章が書かれている.

Q. 中 1 の数学の問題がわかりません>< 正しいか, 正しくないかの問題なんですが,

自然数でない整数で最も大きい数は 0 である.

というのは, なぜ正しいのかわかりません>< それに文章の意味もわかりません・・・

A. 結論から言うとその文章は正しいです. 説明すると 自然数というのは 0 より大きい (0 は含まない) 整数のことです. 1 とか 2 とか 100 とかとにかく 1 以上の整数です. 自然数でない整数は 0 と-1 や-2 などの負の数の整数です. 自然数でない整数→ 1 未満の整数=0 以下の整数 なので自然数でない整数で最も大きい数は 0 であるとなります.

t_uda さんコメント

Twitter の私の観測範囲内では, この辺について t_uda (0_uda) さんが「0 は自然数」を謳って活動している. いくつかあるが, 0 は自然数 FAQや, #0 は自然数 にしたい理由が参考になるだろう. 特に FAQ の方は軽いネタのような突っ込みや, 真っ先に武力解決を模索したくなるようなコメントに対しても回答が与えられていて面白い.

私のスタンスだが基本的に 0 は自然数に含める. 見てきた本が大体自然数に 0 を含めてきたから, というのがおそらく 1 番の理由だ. それ以外には関数環 $C^k (\Omega)$ について $k=0$ を連続関数の環としたい場合, $k$ は自然数と言っておくと楽だからというのもある. 「$k$ は非負整数」と言ってもいいが何となくめんどい, という程度でそこまで積極的というわけでもない.

上記ページにもあるように, 大学受験で問題を解くときに 0 は自然数としないとまずいことがある. Twitter だと受験生もツイートを見ているのでそこの影響は考えないでもないが, その場その場に応じて適切に定義しておけばよく, きちんと通じる範囲で人によって変わっても構わないというのを伝えることも大事だろう. 程良い適当さ, 寛容な心は大事なのだ. 寛容な心というの, あまり実践できていないがそれはそれとして積極的に棚に上げていきたい.

追記

大学受験というかセンターで実際に問題があったというのはこれの第 1 問〔 2 〕. ブルブルエンジン兄貴による Twiitter での反応まとめがこれ.

2011-07-16 小林俊行先生のインタビューページ: インタビュー・井上学術賞受賞・小林俊行教授 無限次元の対称性の数学 ~根源から湧き出す泉の豊かさ~

インタビュー・井上学術賞受賞・小林俊行教授 無限次元の対称性の数学 ~根源から湧き出す泉の豊かさ~という記事だ.

興味がある人はとりあえず読んでみよう. 極小表現について小林先生がいろいろ話している.

この辺からが本領発揮だ.

これ以上分解できない最小のものと言いましたけれども、 実は、重ね合せによる分解という古典的な考え方だけを用いるのではありません。 より単純なものから複雑なものを構成する、表現のインダクションという仕組みがあります。 その仕組みを逆にたどると、単に分解するだけより、もっと根源的なものに行き着きます。 実は、本当に根源的なものは非常に種類が少ないのです。 実際、対称性のほとんどは一次元のものに端を発していることがわかります。 根源的なのに無限次元のものもごく少数存在します。 この例外的な無限次元の対称性の代表格といえるのが極小表現です。

あとこれ.

教えるのが上手とか字がきれいとかというのと全然違うんだけど、 本物の数学の息吹を感じてもらう手助けなら少しできるかなあと。 一・二年生を教えたいという気持ちは、そういうところにあります。

自分の中のものが人に伝わる、あるいは人のものが自分に伝わるという、 空気中に飛び交うもの、目には見えない何かがあるでしょう。 ぼくは、こういう空気を大切にしたいのです。 ついさっきまで研究していた先生がパッと教室に行って講義する。 研究に没頭していた空気がまだ服にもついてるし、 体の中からも出ているかもしれない、それを伝えて、 また学生さんは学生さんで日々研鑽して伸びている空気を出してそれを一つの教室で共有するっていうのが、 何かすごく素敵なものだなあと思う。 それが教えることが好きな理由の一つかなあと思います。

これが凄く大事で, 私もやってみたいと思うことだ. 大したことができなかろうが何だろうが, 研究する気持ち・挑戦する気持ちを捨てずにいること, それを示し続けること, それが大事と信じている.

ちなみに小林先生について以前 この記事でも滅茶苦茶格好いい姿を紹介している. ぜひ読んでほしい. あと『数学まなびはじめ』は必読なので買っていない人はさっさと買ってほしい.

2011-05-13 酒と泪と数学者と業績: 富山先生と竹崎先生と河東先生

Twitter でときどき大学生の飲み会がらみのしょうもないネタが出てくるがそれについての話.

https://twitter.com/momongams/status/68881985375977472 https://twitter.com/Jelly_in_a_tank/status/380683596396101632 【そもそも数学科に飲み会ねえから. >RT】 私が作用素環の富山先生に聞いたところによると「竹崎君は昔酒が飲めなかったが, 酒が飲めるようになったおかげで一流の数学者になった」という話がある

上記 2 ツイートも引用しておこう.

数学科「n 杯飲めてー, (n+1) 杯飲めないわけがなーい」 とかいうコールが出回っていますが, n 杯飲めて n+1 杯飲めるとは限りません.

「 n=1, n=k が成立すると仮定した時, 数学的帰納法を用いて証明すれば, n 杯飲めてー, (n+1) 杯飲めないわけがなーい」 と言わないとダメです.

あとこれ.

そもそも数学科に飲み会ねえから. >RT

Twitter では何度か呟いたことがある富山-竹崎ネタでブログにも既に書いたかもしれないが, まあ何度書いてもいいだろう. 数学者ネタ好きなのだが, 他にも好きな人がいるだろうし.

これも前に書いた気がするが, 同じ作用素環で竹崎先生と師弟関係にある東大の河東先生はお酒が全く飲めないが立派な仕事をしている. 酒が飲めないと数学できない訳ではないので心配しないでほしい.

2010-10-31 満渊俊樹先生の『Kahler-Einstein幾何の問題; Donaldson-Tian-Yauの予想の解決に向けて』という PDF が流れてきたので

Twitter で 満渊俊樹先生の Kahler-Einstein 幾何の問題; Donaldson-Tian-Yau の予想の解決に向けてというPDFが流れてきた. Kahler 幾何はスーパー格好いいと思っているのでとりあえず読んだ. 意味は良く分からない.

我らが小林昭七先生も深く関与している Kobayashi-Hitchin 対応, コンパクト Kahler というかなり限定された状況の話だろうにいまだによく分かっていない部分があるというの, かなり凄まじいと思う.

Ricci 曲率が正の場合の Calabi 予想が未解決というのも結構凄い. もちろん詳しいことは全く知らないのだが, 非負のところが比較的簡単 (解決済み) なのに正ができていないというの, どこが難しいのだろう.

Donaldson-Tian-Yau 予想, (偏極) 代数多様体なのに幾何解析系の人間の名前がついているというの, 代数幾何の闇を感じる.

幾何を全然知らないので何でも格好よく見えた, という感想を抱いて今回の記事を終える.

2009-12-18 小澤先生のアロハ装の真相についての当人の発言動画を紹介しておきたい

先日, 京都の RIMS にいる小澤先生のアロハ装について TL の一部で話題になっていた. 当人がそれについて語っている動画があるので, それを紹介しておきたい.

東大数理ビデオアーカイブスというのがあるのだが, その中に動画がある. 具体的にはここ, ビデオゲストブック, 2009 年度のビデオの 3:40 くらいからご自身で理由を語っている.

小澤先生自体がこう色々と見た目的に特殊なキャラ立ちをしているので, 興味がある向きは動画で実際に確認されたい.

ちなみに冬でも本当にアロハ一枚で動いている. 最近は時々ジャンパー一枚くらいはおるようだが, それでも基本的にアロハ一枚で本当に過ごしている. 歩くのがめちゃくちゃ速いのだが, 何故かを周囲の人に聞いたところ, 「寒いから速く動いて体温を上げようとしていると言っていた」という情報を得たことがある.

数学, 物理, 数理物理での内積関係の記法, 記号

はじめに

Twitter で少しやりとりしたので簡単にまとめておこう. どういう意味で取るかはかなり微妙なところだが「初学者」には分かりづらいようだから.

動画

前提

面倒なので全部関数空間で考える. 定義域は適当に $\Omega$ にして, 関数は $f$, $g$ あたり. 作用素 (演算子) は $A$ にする.

数学での記法

複素共役を $\bar{f}$ として, 内積は次で定義する. \begin{align} \langle f, g \rangle := \int_{\Omega} f (x) \overline{g (x)} dx. \end{align} 左の引数 (第一引数) を線型にして右の第二引数を反線型にしたい, という人情を表す. 内積自体には次のような記号を使う: $(f, g)$ , $(f|g)$ , $\langle f, g \rangle$ , $\langle f | g \rangle$ . 多分一番最初の記号が一番一般的だろう. 私自身は $\langle f, g \rangle$ を使っているが, これは勉強した本である 量子力学の数学的構造 と Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 作用素の共役は $A^*$ のようにスターで書く.

全く関係無いが大学一年の頃, 演習の質問でスターを「雪印」と呼んだ友人がいて, 「これはスターと読みます. 」と突っ込まれていたことを想起した.

物理での記法

複素共役を $f^$ として, 内積は次で定義する. \begin{align} \langle f | g \rangle := \int_{\Omega} f (x)^{} g (x) dx. \end{align} 演算子の共役は $A^{\dag}$ と, ダガーで書く.

数理物理での記法

端的に言って滅茶苦茶だ: 数学の記法と物理の記法のチャンポンになっている. 同じ人でも時と場合によって記法を変えることがある. 例えば新井先生は数学系の論文では $(f,A^* g)$ で複素共役もバーを使う数学よりの記号だと思うが, 物理の人が多そうな文献では物理の記法を使う. 分類の仕方が微妙なところだが, 数理物理の文献では大体数学の記法である中, 内積の第一引数を反線型に取ったりする.

ちなみに私自身はチャンポンの記号を使っている. これは Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 内積は第二引数を線型に取る物理の記法だが, 複素共役と作用素の共役は数学の記法だ. 見ると分かるが, 量子力学の数学的構造 と Bratteli-Robinson でも記号が違う.

Altman-KleimanのA Term of Commutative Algebra の PDF 版が無料だったので買って(?)みた

本文

かなり恒例感あるが, kyon_math さん経由で本の情報を仕入れた. これこれこれだ.

Our text"A Term of Commutative Algebra"aims to be an updated, improved version of Atiyah and Macdonald's 1969 classic http://bit.ly/12wuOX0

Altman/Kleiman すげー. アティマクを越えると宣言してるのか. http://bit.ly/1dzKTkU

アルトマン・クライマンの可換環論, 電子版は無料だった. すげー. A Term of Commutative Algebra by Altman and Kleiman http://bit.ly/1dzKTkU

PDFなら無料な上, アティマク越えを目指しているとのことなのでとりあえず買ってみた (ダウンロードしてみた). これから読む. 使えそうなら誰かとゼミしてしっかり読み込みたい. 他にも Milnor の Morse 理論も読みたいし, Lieb-Seilinger の Stability of matter も読みたい. あと, 2 年くらい放置している論文もいい加減仕上げたい.

追記

少なくとも 2021 年時点で正式版が出ている. 演習の解答つきで 400 ページを越えている分厚い本になっていた. ただし解答が本当に半分, 200 ページ越えの量があるので, 形式的には本文は 200 ページ程度でアティマク相当の量ではある. まだきちんと読んでいないが読みたくはある.

伊藤哲史さんによる『楕円曲線の数論幾何』のPDF

はじめに

元ツイートがどれだか分からなくなってしまったのだが, 伊藤哲史さんによる楕円曲線の数論幾何というPDFが流れてきた.

次のような話が載っているとのことで, ちょっと読んでみた.

メモ

最近では, ワイルズ以降, 大きな進展があった. この 10 年間だけでも, 重要な未解決問題が数多く解かれた. この講演では, そのうちのいくつかを (雰囲気だけでも) 紹介したい.

  • フェルマーの最終定理
  • 谷山-志村予想
  • 佐藤-テイト予想
  • バーチ-スイナートン・ダイヤー予想 (BSD 予想)

細かいところは興味ある各人が勝手に読むことを期待しているので, 適当に面白いと思ったところだけ抜いていく.

数論幾何: 整数に関する問題を, 幾何学的手法を使って研究.

整数は "目に見える" 素朴な対象. 目に見えている部分だけでは, よく分からないことも多い. より深く理解するために, "幾何学的な視点" を導入して研究する.

数論幾何の醍醐味 『素朴な対象の背後に, 広大な世界が広がっている』 (ただし, 「素朴 $\neq$ やさしい」)

『素朴 $\neq$ やさしい』というの, Feynman の初等幾何を駆使した力学講義を想起させる.

モーデルの定理 (モーデル・ヴェイユの定理)

$E \colon y^2 + x^3 + ax + b$ を楕円曲線とする. このとき, 有限個の有理点 $P_1, P_2, \dots, P_n$ が存在して, $E$ の全ての有理点を $P_1, P_2, \dots, P_n$ から作ることができる.

面倒なので引用を省略したが, この前段にある具体例のあとに出てくるこの定理が凄まじい. 具体的にいうとねじれ点の話.

$P_1, P_2, \dots, P_n$ を生成系という. $Q_1, Q_2, \dots, Q_r$ から, ねじれ点以外の有理点を全て作ることが できるような $r$ の最小値を, $E$ の階数という.

P.19 の Hasse の定理, これ自身はよく分からないが, 言い換えの方を見て凄まじさを把握した.

P.24 の比較画像, 唐突過ぎる.

やはり他分野の問題の面白さの把握, 著しい困難を覚えるということが再確認された.

凸関数

基本的な性質

これはちょっとした共有用に準備したページで, 現代数学探険隊 解析学編には凸関数の基本的な性質に関してまとまった記録があります.

ここでは下に凸な関数を単に凸関数と呼びます.

凸関数族の上限は凸

凸集合$\Omega \subset \mathbb{R}^d$上の凸関数の族$(f_\lambda){\lambda \in \Lambda}$ に対して$f = \sup f_\lambda$とする. この$f$は凸である.

証明

任意の$a \in (0,1)$と$x,y \in \Omega$を取る. 任意の$\lambda \in \Lambda$に対して \begin{align} f_\lambda (ax + (1-a)y) \leq a f_\lambda(x) + (1-a) f_\lambda(y) \leq a f(x) + (1-a)f(y) \end{align} が成り立つ. 左辺の上限を取ると求める凸性が得られる.

凸関数の和は凸

凸集合$\Omega \subset \mathbb{R}^d$上の凸関数$f_1, \dots, f_n \colon \Omega \to \mathbb{R}$に対して$h = \sum_{k=1}^n f_k$は凸である.

証明

任意の$a \in (0,1)$と$x,y \in \Omega$を取る. このとき \begin{align} f(ax + (1-a)y) &= \sum_{k=1}^n f_k(ax + (1-a)y) \leq \sum_{k=1}^n (af_k(x) + (1-a) f_k(y)) \ &= ah(x) + (1-a)h(y) \end{align} が成り立つ.

凸関数族の下限は凸とは限らない

一般には成り立ちません. 具体的には$f(x) = x^2, g(x) = (x-1)^2$として$h = \min (f,g)$が反例です.

具体的な計算が面倒なので数値計算でさぼりました. 凸でないことは次のリンク先のグラフを見てください.

線型写像の場合の事例

このツイートで次の問題が出ています.

問題

以下で定義される関数$f \colon \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}$は凸関数か. \begin{align} f(x) = \sum_{i=1}^n \min (x_i, (Ax + b)_i). \end{align} 先の凸関数の一般論が使えないのは明らかですが, 線型写像なのでうまいこと嫌な現象をくぐり抜ける可能性があります. しかし一般には偽です. 反例を構成しましょう.

反例の構成

一次元で$A = -1$かつ$b = 0$としよう. このとき$f$は次のように書ける. \begin{align} f(x) = \begin{cases} x, & x \leq 0, \ -x, & x > 0. \end{cases} \end{align} これは凹関数(上に凸)である.

念のため確認しておくと$g(x) = \max (x, -x)$に対して \begin{align} g(x) = \begin{cases} -x, & x \leq 0, \ x, & x > 0 \end{cases} \end{align} で確かに凸である.

注意

まだきちんと議論を詰められていないため予想ではありますが, $A > 0$とすると$f$は凸で, $A$が成分を正とする対角行列ならやはり凸であるため, 一般次元でも行列$A$が(半)正定値性や強連結性(エルゴード性)のような強い性質を持つなら, 問題の$f$は凸になる可能性があります.

大学までの数学と大学の数学の違いについての個人的感慨をまとめていたらよく分からない文章になった

はじめに

時々「高校までの数学と大学の数学は全然違う」と話題になる. 私も違うと思っているが, どうやら見た限りの他の人と考えが違うらしいので自分の見解を出しておきたい. ちなみに黒木玄さんなど, 高校までの数学と大学の数学は変わらないという人もいることは付け加えておこう.

私にとっての一番の違い

細かい話はいくつかあるが, 一番の理由は高校までの数学にはいまだに苦手意識がある一方で 大学の数学に対してはそうした負の感情を一切感じないことだ.

高校までの数学と大学の数学の違い, これは純粋に私の肌に合うか合わないかというところに尽きる. 高校までの数学が肌に合わないというよりも, 大学の数学が合い過ぎるという方がおそらく正しい. どこがどう, という話でもなく, 私の感覚上の問題なのでそれ以上何ともいえない. ただ違う, それだけだ. 良く「高校の数学は極限の扱いが厳密でなく~」とかいう話があるが, 心底どうでもいい. あれはあれで味があるのだ.

大学進学時の体験

前提

あと大学進学時の私の体験にも原因があると思う. 前ふりが長くなるが, 私の数学には大事なことなのできちんと書きたい.

自己紹介のところにも書いているし Twitter でも何度か呟いたことでもある. 私は学部では物理, 修士では数学にいたが, 高校までは数学が一番できなくてその次に物理が駄目だった. 確率などはセンターレベルですら壊滅的だった. 本筋とはあまり関係ないが, 専門の場の量子論や統計力学では確率論を使う (こともある) けれども, 大学でやる方の数学なら一応ついていけるという私内部での現象をどう思ったらいいのかいまだに分かっていない.

一番だったのは数学・物理

それはともかく, 大学進学を考えたとき一番苦手だったが物理 (と数学) 以外に行くことなど一度たりとも考えたことはなかった. いわゆる得意科目 (点が取れる科目) は化学と国語で, その次に英語がそこそこだった. この得意科目を使って受験できる物理または数学科はどこか, と探したら東大だとかの国公立しかなかったので途方に暮れたことは今でも覚えている.

念の為に書いておくと, 高校時代一番勉強していたのは明らかに数学だ. 勉強の仕方は大分まずかったと思うが, 時間だけは多かった. 高校入学時, 先生が「学年 +2 時間は勉強しないといけません」と言っていたので, 素直にそれを守っていた. そしてその時間の 9 割以上は数学に使っていた. テスト前や高校 3 年のときはさすがに他教科にも時間を割く必要があったので数学の割合は減ったけれども. 勉強の仕方としては基本的に写経だった. 学校で買った問題集 (シグマベストだった) でやったところの問題を解くが, 20-30 分考えても大体できないので, そのあとは答えをひたすら書き写した. いわゆる暗記型の勉強といってもいい.

どうでもいい話だが, これも念の為書いておくと, いわゆる中堅くらいの大学の入試問題ならこういう勉強でも十分に数学で点が取れる. 実際, 代ゼミかどこかの私大模試かなにかでは数学で満点を取ったことがある. その辺は純粋に勉強量だけでカバーできる.

数学が駄目だった

(やり方が良くなかったとはいえ) 勉強時間の 9 割以上を数学に割いていたのに, 試験前に少し勉強するだけである程度の点が取れる他教科を思うと, 本当に数学は駄目なのだな, と思った. 上で「大学進学を考えたとき一番苦手だったが物理 (と数学) 以外に行くことなど一度たりとも考えたことはなかった」と書いたが, 実際には数学科に行く気はほとんどなかった. 模試で受験校や学部学科を選ぶところがあるが, そこで数学科も入れていただけだ. 数学は天才のやるものと思っていて, 物理なら凡人でもできるかな, と思って物理にしたのだ. これまた別件だが, 大学で「僕は丁度逆で, 物理は天才がやるもので数学なら凡人でもいいと思って数学科にしたんです」といっている数学の教授がいて面白かった.

そうした中, 一浪した上で第一志望の東大に落ち, 失意の中, 別の大学に進学したわけだが, 浪人しておあずけをくらった分, 大学での勉強に対する憧れのようなものは凄く強かった. ようやく大学で勉強できるという喜びは強かったのだ.

数学科の数学との出会い

そういう状態で大学で講義が始まったが, 大体の講義は高校でやった内容の復習みたいなところからはじまった. もちろん 1-2 ヶ月も経てばすっかりやばいレベルに到達するので心配はいらないが, それでも第一週のがっかり具合は今でも覚えている. 「こんな既に知っている簡単なことをやりに大学に来たのではない」と心底がっかりした. そんな中で週の終わり, 金曜午後一番の数学の講義が衝撃的だった. 私が通っていた大学は物理学科だが必修で実数論, 集合論, 位相空間論をやる講義がある. その講義が (私の在学時は) 金曜午後一の 3 限だったのだ.

この講義がやばかった. 細かいことは覚えていないが, 「物理を学ぶ上で必要な数学を考えると実数や集合, 位相という話が大事になる」 「高校数学では限りなく近づくといった文学的表現が使われるがこんなものは使い物にならない」といった話が突如はじまり, 「まずは実数をきちんと定義してかかる必要がある」ということでいきなり実数論がはじまった. のっけから何を言っているのかよく分からなかったのだが, 講義内容もさっぱり分からなかった. そしてこれが良かった. 何が何だか良く分からないというのがいい. こういう訳が分からないのをやりに大学に来たのだ, と震えた.

物理学科の学生にはあるまじきことだと思うが, 学部一年の頃はほとんどこの授業に関する復習しかしていなかった. その先生は基本的にやったことしか出さない (ただしやったことはほぼ全て試験に出る) のだが, 試験については「試験は教官 (出題者) との戦いである. 数年だか数十年だか知らないが少し早く生まれたくらいでなめられてはいけない」と勝手に思って, 万全の体制で臨んだ. 他教科については, 物理はおろか微分積分や線型代数の勉強すらほとんど全くしていなかったのでそれらについては戦々恐々だったのだが, それはどうでもいい. 復習の過程でノートの内容は無駄に全て覚えていた (今は細かいことはあまり覚えていない). 暗記がどうこう, ということではなく勝手に覚えるくらい馬鹿みたいに没頭していた. ちなみに試験の点は非常に良かったようで, 先生にその時点で名前を覚えてもらっていたようだ. あとでその先生聞いたのだが, 「諸君らは田舎ではお山の大将をしていたのかもしれないが, 大学を, 学問をなめてもらっては困る」というスタンスでその講義をしているらしい.

分かるから楽しい?

それはそうとよく「分かるから楽しい」と言われるが, 分かったからといって楽しいと思えたことがほとんどない. 分かった気になっていたらあとで全然何も分かっていなかったことに気付いて愕然としたことなら何度もあるのだが. 理解が喜びにつながるという人, 純粋に羨しい.

ただ, 一度だけはあって, それは受験生の頃に Z 会の問題を解いていて, 2 週間くらい考えた挙句に解法を閃いたときだ. 大学に行くとこういう体験がたくさんできるのか, と思っていたが, 全然なくて泣いた. むしろしばらく考えて分かったとき, 「こんな程度のことにこれだけ時間をかけないと分からないなんて自分はもう駄目なのではないか」, 「いや, 時間はかかったにしろ分かったではないか. 自分はまだいける」というやりとりが毎度脳内で発生する.

相変わらず最初に書こうと思ったことからどんどんずれていき, 最後には何が言いたかったのか自分も分からなくなり, しかも文章にまとまりもなくなっていくのが笑える.

ラベル

数学

数理物理の魅力と相転移の魅力: 数学と物理と数理物理と

Ask.fm での質問

二つの質問になってしまいますが, 主観的なもので結構ですので, 数理物理の (特に物理や数学それ自身と比較しての) 魅力および相転移現象の魅力がどこにあると感じてらっしゃるのか教えていただけませんか.

回答

今考えるとあまりきちんと回答していない気もするが とりあえず回答.

数学と物理, 両方好きで両方やりたいという単純な所です.

もちろんどちらか一方でも死ぬほどきついので, 本当に「研究」しようというなら, どちらも半端な出来損ないになる可能性を視野に入れつつ それでも踏み込む決意と覚悟が必要ですが. もうあまり詳しく覚えていませんが, 相転移は大体田崎さんの影響です.

数学的には「特異性の数理」が非常に好きです. 色々あって学部一年の頃から数学的には超関数だとか ある意味でかなり特異性の強い数学とずっと戦っていて, 結局今でも「場の理論の超関数論」と銘打って研究しているので 三つ子の魂百まで感あります.

話がずれましたが, 興味だけなら代数幾何の特異点論とか, ブラックホールだとか, 特異性が絡む話は大体何でも興味があります. 極限で特異性が出てくる現象がとても好きで, 熱力学的極限とそこからの相転移がとても気にいっています. 相転移をやるなら人類が最大精度で扱えるのが 磁性関係だから磁石を扱う方向に行ったと言う非常に単純な動機です.

もちろん水が凍るとかもやりたいですが, アレは即死レベルだし, シュレディンガーで磁性も即死コンボです.

磁性だととりあえずイジングですが, イジングは (相対論的) 場の量子論の繰り込み処理との関係もあり, 数学的に量子統計と場の理論の相性がいいこともあって, 手始めにやりやすいところから, と思って 場の理論方面の勉強をしていて, 相転移自体とは 大分離れた赤外発散を修士では主に勉強していたのですが, 修論の為のネタ探しで考えたら一応磁性もできるわ, と言う感じで磁性 + 赤外発散みたいな 特異性に特異性が重なって死ぬほど面倒臭い代わりに 趣味ばっちりな所を見つけたのでそこで今も 色々やっています.

物理的には素直な拡張でも数学的には全く 別の話を絡ませたりしなくていけなかったり, 逆に数学的には共通部分が多いのに物理としては ちょっと遠目の所にアプローチできたりするのが 今の分野の面白いところですが, 一旦話が難しくなりすぎて死んだ分野なので, 一般にはお勧めしていません.

ただその分やっている人も少ないので, すぐに世界のトップ 10 くらいに入れますし, 実際に多少しぼるだけでいわゆる オンリーワンでナンバーワンにもなれます.

大学のアカポスゲット的な意味でこのご時世に いい結果がすぐに出る保証は全くできないので, 決しておすすめはしませんが.

数学と現実問題の狭間で: 応用数学や数理工学

本文

このようなやり取りがあった.

うーん, だって論理は教えてませんからねぇ. RT @kagami_hr: Q ちゃんさんや嘉田さんのポストを読むと, 国立大学でも入学した学生さんの基本的な論理や日本語の使い方について, かなり深刻な状態になっているみたいだ. 少し認識が甘かったかも知れない.

@kyon_math 先程の内容については, ある程度の学力がある人ならば特に教わらなくても分かるのではと思っていましたが, かなり認識が甘かったようです.

@kagami_hr @kyon_math 3 流大学で数学をやっていると, マジで絶望しますよ. しかもその中から結構な数の教員が...

@aoeui666 @kagami_hr 絶望してても始まらないので, 高校の先生のスキルアップの必要性を感じてます. 米国数学会などは意欲的な先生を集めて, 少し高度な数学や, おもしろい教材などを紹介する夏期講習会みたいなものをやってますね.

@kyon_math @aoeui666 @kagami_hr 教育学部数学科の学生が, 高度な数学を学ぶことを嫌がるのを, どう教育するかという問題も出てくると思います. 教育実習とかやった後に「もっと数学やっておかなくちゃ」と感じる学生も多い.

@Paul_Painleve @aoeui666 @kagami_hr 最近は, よく「ボクは現実に即したことをやりたいんです」という人がいます. 聞いてみると, パズルとか, ルービックキューブとか, 株価とかですね. 「抽象的な理論はやりたくない」の裏返しだろうなと思ってます.

@kyon_math @aoeui666 @kagami_hr 現実を数学にするというのは, 抽象数学が必要になって, 本当はとても難しいのですけどね. 解析も幾何も嫌いだから, 高校数学程度のイメージで「整数論やりたい」という学生に通じるのかもしれません.

コメント

『「抽象的な理論はやりたくない」の裏返しだろうなと思ってます』というのに対する真偽の程はともかく, 『「ボクは現実に即したことをやりたいんです」』というのは地獄としか思えない. Paul_Painleve さんも言っているが, 数学を現実問題に使っていくのはとても難しい.

他にもいくつか記録しておくべきやりとりがある. まずはこれ.

引用

ルービックキューブにしても, 渋滞問題にしても, 株価にしても, 15 ゲームにさえその背後には深い数学があったりする. しかし, それらの数学は抽象的であり, 抽象的だからこそさまざまな問題に応用できる. ここを飛ばすと, 原因と結果を短絡させることしか残っていない.

@kyon_math ≪卒論要旨≫ ルービックキューブや 15 パズルも, 群論使って最短経路とか解き明かすよりも, さっさと手を動かす方が速く完成するから, 数学なんて役に立たないとわかりました. このことを教えてくれた kyon 先生に感謝します.

@Paul_Painleve それが自分で体得できたらもう卒論の単位なんて 10 倍位してあげます. #教わるだけじゃダメ

@kyon_math わ~い, kyon 先生から 100 単位もらった~ ルービックキューブ流行時, トポロジーの T さん等が凄い研究ノートを作っていて森毅もこりゃかなわんと思っていたら, 野崎さんだか誰かが本書いて売れた. 「あんなしょうもない本が売れるんやったら, 俺が先出すんやった:」

@Paul_Painleve 「もう君に教えることは残っていない. 君は自分の数学を追い求めてゆけばいい」なんてカッコいいセリフを一度言ってみたい. でも実際に言うときは限りなく悔しいだろな.

@Paul_Painleve ルービックキューブは複雑だと言ってもしょせん有限群の一つにしかすぎませんからねー. ルービックキューブが ubiquitos だとかわかるとみんな飛びつくかもしれないが, そんなことありそうもない.

@kyon_math 良いゲームは, 数学的には決して複雑ではないが, 数学として扱おうとすると煩雑で解法が簡単にはわからない, という性質を持っていると思います. 「わかりやすいけど, やってみると難しい」という意味ではフェルマー予想は, 究極かつ至高のゲームだったかも.

@Paul_Painleve 師匠のゲームもありますね. 米国ではコンウェイの名前がついてるようですが. あれは, 単純でいながらある種の有限な決定的ゲームを包括するという意味でも驚きだったかも.

@Paul_Painleve K 先生の著書が待たれる.

@kyon_math K さんは, S.-WELTER のゲームと呼んでますが, WELTER の論文自体は有名でなくて, Conway On Numbers and Games で紹介されたものが知られているようですね.

@kyon_math 確かに, マヤ・ゲームは「単純だけど普遍性をもつ」という意味で凄いゲームですが, ルービックキューブほど一般受けがしないのは, ゲームとしての面白さで及ばないからでしょう. 必要な数学もちょっと難しい.

引用

あと, この kyon_math さんのツイートについた Paul_Painleve さんのリプライがとても大事.

だいたい数学科に入ってきて「現実の問題をやりたい」なんてやつはいなかった. むしろそっちの方が問題だった. 数学とは本来抽象的なもの.

@kyon_math 現実の問題を数理科学として取り組もうとしても, 簡略化しすぎて現実と離れるか, 複雑すぎて扱いきれないか, どちらかになることが多いですし. 後者だと, 普遍化できずにその問題にしか使えない特殊計算になり, 前者だと構造は見やすいが現実とは完全に別物な空論になる.

kyon_math さんが言及した学生がどこまで考えて言っているのか分からないが, 現実問題を議論するのはとても難しい. 第 4 回の関西すうがく徒のつどいでも少し話すが, 現実の問題を考えるのは死ぬ程つらい. 本当に現実的な設定でやろうとすると厳密な数理解析としてはまず手が出ないし, 手が出せるレベルにしたらしたで, 今度は現実とかけ離れているので, どういう風に意味づけするかという部分で非常に苦しくなる.

確率論・数理ファイナンスの話

有名な話らしいのだが, 1 つ確率論・数理ファイナンス周辺で次のような話がある. 高橋陽一郎さんが「数理ファイナンスというのは物理でいうと理想気体を扱っているようなもので, 現実離れしたとても綺麗なところしか扱えない.」と評していた覚えがある. あと小ネタとして, サルコジが「数学 (数理ファイナンス) がリーマンショックを生み出した元凶だ」みたいなことを言ったそうなのだが, そのときにフランスの数学者達が連名で「数学が悪いのではない. 数学的な仮定があてはまらないところにまで無理にあてはめようとした人間達の問題だ」という抗議声明を出したと聞いている.

あの人検索 Spysee

応用数学・数理工学的に現実問題を考えるとき, 色々な意味で普通の数学の感覚からは離れてものを考えないといけないし, 数学外の現実問題も考えている必要がある. 色々あるが, 例えばあの人検索 Spyseeのソーシャルグラフとか. Spysee でどうやっているのかは知らないが, この手のことをしている人 (具体的にはチームラボの猪子寿之さん) に聞いたところによると, 次のようにして計算して表示するらしい.

  • グラフの中の人数に対応する高次元の空間で, 人と人の間に仮想的なバネをつける.
  • バネの「バネ定数」は色々なデータから適宜設定する. (Spysee の場合は web 上から色々調べて設定しているはず. )
  • これを 2 次元に落とす.
  • バネのエネルギーが最小になるような配置をする.

関係性が強い人の間ではバネ定数を大きく設定すれば, 距離が近い方がエネルギーは低くなる. そうしてソーシャルグラフの遠近に意味付けをしていると聞いた.

数学的な問題

ここで現実を考えたときにいくつか問題がある. まず最小値が存在するかだ. 最小値があったとしても問題がある: その解を現実的な時間で計算できるかだ. 「現実問題」として, いつまで経ってもグラフが表示されなければ, ユーザはページ遷移して離れてしまうだろう. 短時間で計算できるアルゴリズムが求められる.

短時間で計算できなかったり, 最小値がない場合, いくつかの対応方法がある. Spysee のようなサイトでは厳密な結果がいらないだろうから, そういう設定で考えよう. もちろん, このとき「厳密な結果がいらない」という判断をすること自体, 数学の意識の枠外であることに注意してほしい. 何となくそれっぽい結果が得られればいいので, 適当に近似計算をすればいい. 「適当に近似計算する」といってもそれをどうするか, という問題はあるがそこまで深いところには触れないことにする. ちなみに適当に近似計算していることは実際の結果を見てみると分かる. アイドルマスターの秋月律子が出ているからだ. これはアイドルマスターのアイドル, 菊地真 (女の子だ) と何かよく分からないが混同されていることから来ているのだろう. ただ, 計算結果というより, その前段の Web から情報を取ってくる段階での問題かもしれないのだが. ちなみに, 以前は菊地さんの画像自体, まこまこりんだったことを付け加えておきたい.

他の方法

他の方法についても書いておこう. 今の場合, そんなに頻繁にソーシャルグラフが変わらないことが予想できる. (もちろん数学以外の知識を使わなければこの判断はできない.) だから時々計算してその結果をデータベースに入れておき, リクエストがあったときだけ結果を呼び出すようにすれば, ユーザの待ち時間が短縮できる. 場合によっては計算機資源の節約にもなる. また, アクセス解析をした結果, ページのリクエストは早朝 3-6 にはほとんどないことが分かっているとしよう. 定期的な再計算をこの時間帯にすることで計算機資源の有効活用することができる. このとき, 近似計算の精度を上げた計算を回すことができるかもしれない. こういう話は Google のページランクの話とも色々関係する. ほとんど数学的な面だけしか議論していないが, 興味がある向きは私が前に作った動画などを参照してほしい.

面倒なのでこのくらいにしておくが, 現実に即した役に立つことをしようと思うと色々なことを考える必要がある. 軽々しく「現実問題をやりたい」「役に立つことを」などと口にしてはいけない. そのためには知らなければいけないことがたくさんあるし, 他の人との協力プレーだって必要になる. 解きたい問題が自分の知っている数学で解ける保証もない. 必要なら勉強するなり新しい数学を作る必要すらある. 第 3 回のつどいでのーてぃさんが発展途上のパーシステントホモロジーと画像処理の話をしていたが, そういうことだ. 自分の無能さに歯を食いしばりながらアタックする覚悟があるのか. 私は色々な面でそうした能力がなかった悲しみに打ちひしがれている.

Atiyah-Macdonaldのゼミ的なアレと参考書として岩永-佐藤の『環と加群のホモロジー代数的理論』がお勧めという話

本文

にゃんにゃんとのやり取りをまとめておきたい. この辺からだ. にゃんにゃんツイートが消えているので私のだけを引いておく. かの有名な Atiyah-Macdonald のゼミ的なアレをしようという話があったのでそれについてのやりとりだ.

メモ

@dingdongbell 前言っていた, にゃんにゃん的アティマクゼミはやるのでしょうか. やるなら参加したいのですが

@dingdongbell ぼなっちさんにも発表してもらうことでしのぐライフハックを提案

@dingdongbell 都合が合うなら呼んであげてもいいのでは, というのは思っています. もちろんあんなもの喋らせるつもりないですが

@dingdongbell ちなみに終わらせるはずだった勉強というのは何なのでしょうか

@dingdongbell 見る限り予備知識はいらない感じします:環のところを眺める限り最初からきちんと書いてあるので. 証明が簡潔なので参照用の控えの本候補や例が書いてある本を探しておくと便利かもしれません

@dingdongbell それ, 一応持っていますがかなり本格的で相当辛かった覚えがあります. http://www.amazon.co.jp/dp/4535783675 は非可換環の話が中心ですが, 例も結構ありつつ, 一般化を敢えて避けた上でかなり丁寧に議論していてかなり良い本だという印象

コメント

にゃんにゃんがお勧めされた本として松村の『可換環論』が挙げられていたが, これは相当つらいのでは, と返した.

上で私がいいと言っているのは岩永-佐藤の『環と加群のホモロジー代数的理論』だ.

李奇人Pにお勧めしてもらったのが非常にいい. この本はあえて過剰な一般化をしないで Noether 環や Artin 環に制限したところで議論している. 特に代数で一般化に抵抗するのは難しいだろうから著者達の熱意と気迫を感じる. 著者達の興味から非可換環への応用を見据えているのだが, 可換環の勉強にも役立つだろう.

普段 Twitter では東大やら京大の学生とばかり話しているので感覚が麻痺しつつあるのだが, 代数専攻の学生であってもその辺の数学科学生では松村などの本格的な本を読むのはしんどいだろう. この本はそうした教育的な配慮も行き届いている. 幾何だとある程度ホモロジーなどが必須なので代数もやらざるを得ないが, 関数解析主体の微分方程式まわりの解析専攻の学生が代数を学ぶには相当いい. 多変数関数論でも Noether 環くらいは山程出てくるが, そうしたところは十分カバーできる. 代数の学生でも一冊目としてこれを読んで, その後に本格的に一般的に勉強してもいい.

上で簡単に触れた教育的配慮としては, Noether レベルで一般化を止めているということの他に例がかなり豊富に書かれていることもある. 例を作ること自体も勉強だが, 初学だとやはりなかなかつらい. そうした点をきちんと埋めてくれている. 面白かったのは, 例えば環の単位元と部分環の単位元は一般には異なることを行列環で説明していることなどだ. 当たり前といえばもちろんそうだが, 身近な例を挙げて丁寧に説明してくれているのが嬉しい.

AtiyahのFrom Quantum Physics to Number Theoryという講演がYouTubeに上がっていたので

2024-12-04追記:下記の動画はもう見られないようだ.

Atiyah の From Quantum Physics to Number Theory という講演が YouTube に上がっていたようなのでとりあえず見てみた.

From Physics to Number Theory http://youtu.be/I1ftUA17MZg

適当に聞いていたこともあり, どの辺からどう Number Theory が噛んでいるのかとか, 何故 Atiyah が幾何ではなく数論の話をしたのかとか全く分かっていないが, Atiyah の講演を聞いたことがなくミーハー根性を満たすためだけに聞いたのでよしとする. 砂田先生の言かと思ったが Atiyah の英語は日本語でいうところの「べらんめぇ口調」に対応するらしい. 分かるような分からないようなアレだが, Atiyah の英語はかなり聞きやすかったので程よい英語の勉強にもなりそう. 去年くらいに撮った映像のようだが, さすがに Atiyah も 84 なので疲れるということか, 座りながらトークしていた.

あまり真面目に聞いていなかったが, 最後の方でおそらく Hilbert-Polya 予想に関するのであろう話が出ていた. 次のように書かれたスライドがあったのだ.

Zeros of Riemann zeta functions are eigenvalues of gravity Hamiltonian?

Hilbert-Polya 予想というのは Riemann の $\zeta$ が適当な自己共役作用素のスペクトル (固有値の集合) で記述できるという予想だ. 元は重力の Hamiltonian に関する予想だった, ということなのだろうか. あまりきちんと聞いていないので分からないが. 量子力学 (非可換調和振動子) や場の量子論 (Fock 空間からの構成) については, 以前, それぞれ坊ゼミやささくれセミナーで少し触れた. Atiyah もこの辺に期待しているということだろうか.

あと最後に次の一文が出ていたので, 引用しておこう.

Without dreams there is no art, no mathematicians, no life.

Baez-Segal-Zhouの教科書, Introduction to Algebraic and Constructive Quantum Field Theory が無料公開されていた

本文

Baez-Segal-Zhou の有名な本がここで無料で配布されていたので, 一応共有しておこう. 『Introduction to Algebraic and Constructive Quantum Field Theory』という本だ. 時々論文にも引用されるので, 見てみたいとは思っていた.

ただ, 画像取り込みのようになっていて中で傾いているのでかなり見づらい. 検索が効くように配慮されているのは助かるけれども.

前半部分は大体 (場の理論の) どの本にも書いてある内容のようだが, 後半が少し珍しい. 特に最後の非線型場の話は最近の本にあまり書いていないように思う.

場の量子論の数学についてちょっと知りたいが, 本を買うほどの興味はないという向きは, 落としてみて眺めてみるといいかもしれない.

Bolzano-Weierstrassの定理

はじめに

Bolzano-Weierstrassの定理についてのやりとりがあったので残しておきたい.

ボルツァーノ・ワイエルシュトラの定理って難しいかな?

@bonacci_11235 名前がわからないけど有界な数列は収束部分裂をもつってやつ?

@bonacci_11235 そこまで難しくはないですよ

@dingdongbell そうです

@bonacci_11235 大丈夫だと思う (?)

コメント

そして市民メモ.

ボルツァノ-ワイエルシュトラス, 実数論の要という意味でかなりクリティカルだし, 一般にはコンパクトの話だし, 少し突っ込んだだけで深淵が出てくるのだがどういう意味でそれほど難しくないと言っているのか感ある. 数学が好きな子相手の話だからこそクリティカルという感ある

@phasetr 工学部の人間相手なら「気にしている暇があったら本業やれ. 本業で本当に出くわしたどうにもならなくなった時点で気にかけろ. それでも多分気にする必要はないし, 本当に気にする必要が出てきてしまったときはまず工学が分かる数学者を巻き込め. 話はそれからだ」的なことをいう

「わたしはついにモース理論がわかりました」:かの有名なWitten・SmaleのBottへの言葉

前にも紹介した記憶があるが, 改めて記事を抜き出し, 引用しておく. 橋本義武さんの回想録みたいなやつ. 元記事はこれ.

まず Bott への Witten・Smale の有名な言葉, 「わたしはついにモース理論がわかりました」

4.印度土産

さて,ADHM とほぼ同時に物理学者の方でも BPST の一人 Schwartz が同様の結果に達していたらしい.Atiyah は物理学者の世界の競争の激しさにとまどいながらも,今自分がおかれている状況にかつてないスリルをおぼえていた.

ちょうどそのころ,そんな Atiyah たちをよそに,所は変わってインドのタタ研究所,木陰にデスクを出してもらってのんびり海をながめる毎日を送りながら,一人の数学者が sabbatical year を満喫していた.われらが Bott 先生である.愉快なインド滞在を終えた Bott はオクスフォードに盟友 Atiyah をたずねた. Bott はこのときのことをふりかえって,「Atiyah はすっかり舞い上がっていて "mathematical high" の状態だったんだ」と述懐している.どうやら知らぬ間に大きな事件がおこっていたらしい.ところが,興奮しながらインスタントンの説明をまくしたてる Atiyah の声が,インドで聞いたリーマン面上の正則ベクトル束のモジュライの謎を語るバラモンの数学者 Ramanan の静かな声に不思議と響きあうのであった.こうして Atiyah-Bott のリーマン面上の Yang-Mills ゲージ理論が生まれる.それは,Bott が若いときから追い求めてきたモース理論の新局面を切り開くものであった.

Bott は各地の物理学者たちの前で,Atiyah と彼とのゲージ理論について講演して回ったのだが,その反応は熱いものではなかった.しかしそんな中にあって一人の男が鷹のように Bott のことばを追ってきた.Witten である.彼は Bott の講演から,後に言う Witten のモース理論を着想する.後日,Bott は彼から一通の手紙を受けとる.そこには,「Bott 先生,わたしはついにモース理論がわかりました!」と記されていた.それは奇しくも,かつての弟子 Smale が直伝のモース理論にさらに磨きをかけついに高次元ポアンカレ予想を解決したときに Bott に告げたのと同じことばだったという.

【Atiyahの子どもたち】というのがなかなかツボなのでこちらも.

5.あれでもなくこれでもなく

DonaldsonやKirwanといった"Atiyahの子どもたち"は, Bottの来訪を毎回サンタを待つように楽しみにしていたという. Donaldsonの論文"An application of gauge theory to four dimensional topology"の題がBottの若い頃の論文の題と似ているところに,そのあたりの雰囲気が表れているように思う.Donaldson のこの論文は,ADHM とも Atiyah-Bott とも違う道を切り開くものであった.すぐ近くで誕生した ADHM も Atiyah-Bott も深い理論であり,また当時できたばかりだからやることはたくさんあったはずである.事実 Donaldson はそれぞれに関連する仕事もしている.しかし彼は,それとは別に 4 次元トポロジーへの応用という思いもよらぬ方向へと一歩を踏み出した.彼の理論は,Rochlin の定理しかなかった 4 次元トポロジーの状況を打開しただけでなく,異種 4 次元ユークリッド空間という存在をわれわれに示してくれた.こんなものがあると知っただけでも数学を勉強した甲斐があったというものではないか.Witten はこう言っている,「Donaldson 理論は時空の幾何を理解する鍵である.」

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双子素数やGoldbach関係, いい加減動きを把握したいと思いつつできていない方の市民

ken yokoyamaさんが双子素数やGoldbachのネタを再掲していた.

【再掲】双子素数も Goldbach も大きな前進があったようだが, 未解決. Terence Tao さんの Lecture が参考になるのでは: Structure and Randomness in the Prime Numbers: http://www.youtube.com/watch?v=PtsrAw1LR3E

Tao の動画も見てみたいが, この動き全く追っていないのでいい加減適当に確認したいと思いつつ時は過ぎ行く.

魔人Milnor

Milnor強い.

Milnor の本読みたくなった. 読んだら YouTube の動画講義も作ろう.

最初の画像の Milnor に関する記述も引用しておこう.

ミルナー (J. W. Milnor, 1931-)

とにかくこの人の著作を一冊精読すると, この人は偉いとなぜか自然に思えてくる. そんな不思議な人である. 徹底した明晰さで書いてあることが自然に頭に入ってくる. 難しいはずのことがやさしくなってくる.

あと有名なのは何年か前の数学者主人公のヒット映画「ビューティフルマインド」の 主人公ナッシュの敵役がこの人である. 運命のいたずらで, この人が居たためにナッシュの人生が狂っていき, 巡り巡って, ヒット映画ができたわけである.

Nash も魔人だというのに Milnor やばい.

あと上で言及された本, 卜部東介『一次元代数的特異点とディンキン図形』はこれだ.

David Richeson, So-called the Japanese theorem for nonconvex polygons

今は(アカウントが)亡きkyon_mathさん情報.

ニッポン定理,初めて知った. http://bit.ly/1g3ccWU

ページからも引用しておこう.

The Japanese Theorem for Nonconvex Polygons David Richeson (Dickinson College)

Abstract. The so-called "Japanese theorem" dates back over 200 years; in its original form it states that given a quadrilateral inscribed in a circle, the sum of the inradii of the two triangles formed by the addition of a diagonal does not depend on the choice of diagonal. Later it was shown that this invariance holds for any cyclic polygon that is triangulated by diagonals. In this article we examine this theorem closely, discuss some of its consequences, and generalize it further. In particular, we explore its relationship with Carnot's classical theorem on triangles, we look for extreme values for this sum of inradii, we look at the limit of this value as the number of sides goes to infinity, and we generalize the theorem to nonconvex cyclic polygons. We include interactive applets throughout the article to give the theorems a tangible credibility.

「So-calledと言われてもはじめて聞いたわ」感溢れる. そして何はともあれメモ.

群の地図帳, リー群の地図帳

Twitter的な意味で今は亡きkyon_mathさん筋の情報.

群の地図帳ならある。 http://bit.ly/1kBHcmG ついでにリー群の地図帳もある。 http://bit.ly/1dHQ5CA

どう使ったらいいのかわからないがとりあえずメモ.

ルベーグ測度$0$の集合の補集合は$\mathbb{R}^{n}$で稠密か?

本文

答えはYesだ. いまSobolev空間論の本を読んでいて「?」と思ったので証明を確認した. 激烈簡単で自分で自分にがっかりした. 測度論弱者すぎる.

命題2

ルベーグ測度を${\left|\cdot\right|}$とし, 集合$A \subset {\mathbb{R}}^{n}$がルベーグ測度0だとする. このとき補集合$A^{c}$は${\mathbb{R}}^{n}$で稠密である.

証明

$A$が内点を持つとするとある開球$B_r$に対して$B_r \subset A$となる. 考えているのはルベーグ測度だから${\left|B_r\right|} >0$であり矛盾である. したがって$A$は内点を持たないから$A^{i} = \emptyset$である.

この補集合を取ると${\mathbb{R}}^{n} = A^{ic} = \overline{A^{c}}$である. つまり補集合$A^{c}$ は ${\mathbb{R}}^{n}$で稠密である.

補足

ついでにルベーグ測度ではない場合, 特にfull supportではない測度と簡単な反例も記録しておこう.

上のページによるFull supportの定義は次の通り.

It means that the support is the entire space, or equivalently that there is no open subset with 0 measure. 全空間を台とすること, また同値な条件として測度0の開部分集合が存在しないこと.

反例

全測度が$0$になるような測度が明らかに反例. これ以外にもルベーグ可測集合$C \subset {\mathbb{R}}^{n}$に対して, $\mu_{C} (A) = {\left|A \cap C\right|}$ とすれば $\mu_{C}$が反例になる. これは$C$の補集合に含まれる部分集合は内点があろうがなかろうが測度$0$だから.

他にもルベーグ測度に対して特異な測度を考えればいい. 例えばCantor集合上に台を持つCantor測度がある.

測度論はSobolevをやっていてもちょっとしたところですぐに顔を出す. 積分論の中でもうちょっときちんとやり直したい. 確率論だと死ぬほど出てくるからそちらでやり直す手もあるか. 確率論で測度論に関する議論が死ぬ程丁寧な本がほしい.

info

title: ルベーグ測度0の集合の補集合が稠密である証明 description: 結論を言えばYES。証明のポイントはルベーグ測度のfull support性で、ルベーグ測度が0だと内店を持てないところにある。Full supportでない測度に対しては反例が山ほどある。例えばカントル集合上に台を持つカントル測度。

小平邦彦先生の記憶: 故彌永昌吉博士による回想

コンテンツを作っていて検索していたら引っかかったので記録.

いくつか引用したい.

私が最初に量子力学を勉強したのは、故P.A.M Dirac博士の"The Principles of Quantum Mechanics"でしたが、読んだ人なら御存知の通り、物理実験の話は一切出て来ません。せいぜい、第一章の重ね合わせの原理のところで、光の偏光、すなわち光子の振舞いについて少し触れているだけです。それはそれで、私のような数学科の人間には助かるのです。と言いますのは、実験を長々と説明されても、そうかと思うだけで実感出来ないからです。実験器具なぞ、高校以来触ったこともなければ、見たこともない人間には苦痛以外の何物でもありません。

それはそうか, というのと, それはどうなんだ, というのが交錯する. コンテンツ作りの参考にはなる.

しかし本題はこちら:

それと、もう一つ、こっちの方が重要なのですが、紹介するにも私個人の心が痛むからです。あの時代の日本人(阿呆な政府軍部の人を除く)は今と違って、本当に強い精神力と忍耐力と心優しさを持っていて、(失礼ながら)一見ひ弱な小平博士でも、終戦前後の時、明日の日本(と御自分)がどうなるかも分からない中で、しかも発表する当てもない調和積分論に関する大論文を、病床の幼い御長男(最終的に病死されます)の傍らでお書きなったのは、終戦を見越してのことよりも、今を生きた証し(つまり、遺書)として残そうと思われたのではなかろうかと、私は考えていたからです。

これを検索していたのだ.

邦彦とセイ子の結婚から、彼等はかわいい息子和彦を得たが、残念ながら腎不全を患っており、終戦の数ヶ月後の1946年に諏訪で亡くなった。

あと彌永先生, 長寿だったということはそれだけ多くの, それも自分よりも年下の人が先立つのを見てきたということか, と割と悲しくなった.

私もそんな感慨を覚える年になったのか, というところもある.

関数解析の初学にいい本: 量子系の数理の観点から/メルマガから

記事の冒頭にもある通り, 数学・物理系のメルマガと無料の通信講座をやっている. どちらかに登録しておいてもらえれば こちらからプッシュでこの手の濃い話題をお届けできる. ご興味がある方はぜひ登録してほしい.

以下は無料の通信講座, 現代数学観光ツアーに参加されている方からの質問だ. サイトに公開しておく価値もあると思ったので出しておく. ここまでが常体, 以下は敬体で文体が統一されていないけれども, 以下はメルマガが元なのでご容赦願いたい.

はじめに: 今回の背景

読者の方からメール頂いた話で, 多分他の方にも役に立つだろうから いったん全体への返信という形でお返事します.

量子力学を深く勉強するために ヒルベルト空間論, 関数解析をやろうとしていて, それに対する本の選択とかそういう相談です. たぶん.

Twitter というか私のサイト http://phasetr.com に 「Hilbert 空間メインの関数解析の初学には日合•柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい」 という記事を書いていて, その中に『新井先生の『量子力学の数学的構造』があるが, 一般にはあまりお勧めしない』と書いたりしました.

その方がこれを読もうとしていたそうなので, それでどうしようか, という問い合わせです.

ちなみにこの人, 量子力学の数理, 特に量子測定などで知っている人は皆知っている 小澤正直先生に相談して von Neumann の 「量子力学の数学的基礎」を勧められたものの, 古いから新井朝雄先生の「ヒルベルト空間と量子力学」を読もう と思っている, とかいう訳のわからないことを言ってきました.

世界的な研究者に相談しておきながら, そこで勧められた本を無視して ど素人が勝手に自分の趣味で本を選ぶという行為が そもそも全く理解できなくて衝撃を受けました. 世界的な研究者の時間を奪っておいて, その話を聞かないとか何がしたかったのか全くわかりません.

率直に言って, すごいことするな, 何のために小澤先生に相談したんだ, こいつは何を考えているんだ, と.

確かこの人, もともと量子化学の研究者だと 言っていたと思うのですが, ふだんからこんな感じでやってたのでしょうか. 謎です.

小澤先生を無視しつつ, 何で私なんぞの意見あてにするんだ, 重鎮の意見を無視するのにこっちの意見は聞くのか, 何なんだと.

それはともかく, 参考になるところはあると思うので 私の見解をまとめます. いつも言っていることとはいえ, あなたははじめて聞くかもしれませんし, 改めていうことにも意味はあるはずですから.

あなたがしたいのは物理ですか? 数学ですか?

究極的なところからはじめます. 数学をやりたいのか, 物理をやりたいのかをはっきりさせてください.

あくまでも物理がやりたいというなら ルベーグ積分や関数解析をいくらやっても無意味です. 本当に無意味です. 数学はさっさと捨てて物理をやりましょう.

何故無意味かというと, 学部 3 年レベルの量子力学で出てくる話ですら, 数学的に追いきれないことが山程あるからです. これは私やあなたが愚かだから, とかそんなちゃちなレベルではありません. 現実問題として研究マターです.

あなたが研究者なら「そうは言っても 皆がやっていない穴とかあるんじゃないの? そういうところなら何とかなるのでは?」 と思うかもしれません. 残念ながらそんな都合のいい話はありません.

優秀な人が一所懸命やってできるところは たいがい潰されています. 残っているのは本質的な ブレークスルーが 5-10 個ないと進まない, そういう感じと思ってください.

数学的に厳密なスタイルの限界

レーザー, 量子電気力学, 散乱

具体例を挙げましょう. 物理の学部 3-4 年でレーザーに関する話, 量子光学的な話をやります. これを厳格にやろうと思うと 非相対論的量子電気力学が出てきます.

そしてこれは 2017 年現在でも 数理物理の研究最前線です.

もう 4 年も前の話ですが, これよりもう少し簡単な Nelson モデルの散乱理論に関して Dybalski さんからメールを頂いたことがあります. この人はもともと相対論的場の量子論の散乱理論を 研究している人で, 具体的なモデルの研究ということで, 非相対論的場の量子論にも踏み込んできたようです.

多体系の量子論, 量子統計に関するプレプリントを arXiv に上げたときに「自分も多体系に興味があって 研究しているからぜひ論文を読んでほしい」というメールでした.

そのときメールで教えて頂いたのは次の論文です.

これ, 電子と場の相互作用系なのですが, 扱う電子は 2 つですからね. 1 つでも厳しいというのが現状です.

この時点でまともな物理の人なら 「数学的に厳密な話なんて 全く使いものにならないな」と 思うでしょう.

もしかしたらあなたは「これは場の理論だから 厳しいのでは?」と思ったかもしれません. しかしその見込は甘いです.

量子力学の散乱

例えば数学的に厳密な量子力学の散乱理論ですら, 2 体はだいたい何とかなったものの, 3 体で既に研究の最前線のようです.

最後の PDF が一番状況がよくわかるでしょう. 9 年前の話ではありますが, 3 体問題が難しいという絶望的な話をしています. 数学ベースであっても散乱理論の研究は 50 年以上続いているので, 一般の N 体に関する知見が この 8 年程度で爆発的に広がったとは思えません.

数学に厳密な物理の厳しさ

数学的に厳密な話など いくらがんばったところでこの程度です. もちろん数学サイドなら別にいいのです. 数学として面白いならそれでいいし, 実際磯崎先生がそれで数学会の賞を取るほどに 面白い話が展開できているわけですから. もちろん世界的にも認められている業績です.

しかし物理としては 2 体, 3 体の散乱で いくらシャープな結果が出ても, ご利益は何も感じないでしょう.

こんなことしたいですか? という話です.

現代数学観光ツアーで十分

というわけで, 物理がしたいという人はヒルベルト空間論や 関数解析をやっている暇があるなら, さっさと物理にうつりましょう.

現代数学観光ツアーで紹介したレベルの 話がおさえられていれば十二分です. 関数解析というよりも線型代数の適用範囲を もっと積極的に広げたよ, 一度慣れておけばいろいろなことを 統一的に眺められて便利だよ, そのくらいの認識でほぼ完璧です.

あなたは現代数学観光ツアーを知らないかもしれないので, 一応改めて宣伝しておきましょう. 次の URL から登録ページに飛んでください. 講座の説明もしてあります. 無料ですし気に入らなければすぐ登録解除もできます.

長くなってきので, 残りは次に回します. 次回は数学をやると決めた場合の対応です.

最初に: 前回の記事を張り直し

前回, 「Hilbert 空間メインの関数解析の初学には 日合?柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい」 という記事へのリンクを きちんと張っていませんでした.

いちいち検索するので面倒と思うので, 念のため張っておきます.

あと関連する記事ももう 1 つ.

他にも関係する記事はいろいろあるのですが, 思い出せないのでまずはこの 2 つを.

前回の復習

それはさておき, 前回, 量子力学の勉強のために ヒルベルト空間論や関数解析を勉強したいと 思っている方から, 具体的に何をどう読もうか, という相談を受けたという話をしました.

それに対してまずは数学をやりたいのか, 物理をやりたいのかはっきりさせること, そして物理をやりたいなら, 現代数学観光ツアー以上の ヒルベルト空間論はやったところで無意味だから, さっさと物理を勉強しようと言いました.

数学的に厳密にやろうとすると, ちょっとしたことが既に研究最前線マターであることを, いくつか具体例を挙げて紹介しました.

厳しめのことを書きましたが, 私は実際にその方面, つまり数学的に厳密なスタイルで 物理をやる数理物理を専門にしていたので, どれほど大変なのかの実体験があります.

甘くはありません. しかし非常に楽しい分野ではあります. 少なくとも私にとっては.

というわけで書いていたら楽しくなってきて, とんでもないボリュームになりました. 1 回では長すぎるので何回かに分けて配信します.

今回からは数学よりの話をします. 量子系の数理といってもいろいろあります. それは扱いたい物理による話で, 質問された方がどの辺を意図しているのか, それがよくわかっていないので 何とも言えないところはあります.

先に質問者に聞けばいいじゃない, という話でもありますが, ある程度は網羅的に説明しようと思ったので, まあまずは情報を出そうという感じです.

新井先生の本の紹介

まず具体的に書名が挙がっていた 新井先生の『ヒルベルト空間と量子力学』と 『量子力学の数学的構造』に関して.

『ヒルベルト空間と量子力学』はきちんと 目を通していないし, 増補版は余計見切れていないものの, 少なくとも『ヒルベルト空間と量子力学』の旧版には スペクトル定理は使うだけであって, 証明が書かれていなかったはずです. その代わりに水素原子に関する議論が載っている, そういう認識です.

新井先生方面, つまり作用素論的な方面から言うなら, スペクトル定理抜きの議論には魂が入りません. 新井先生の本を読んで量子系の話をするなら, 最初から『量子力学の数学的構造』を読んだ方が早いですね.

水素原子の解析にしても, ハミルトニアンの自己共役性に関して, 続編の『量子現象の数理』で加藤-Rellich の定理からはじめて 1 章まるまる割いて議論されている程度には面倒ですし, 議論するべきこともたくさんあります.

『量子力学の数学的構造』を読む前提なら, 『ヒルベルト空間と量子力学』を読む理由をあまり感じません. 中途半端にやってもね, という感じ.

あともう 1 つ, 一般には『量子力学の数学的構造』を勧めないと書いた理由です. これは単純で, 記事ではヒルベルト空間メインとはいえ 「関数解析」に焦点を当てたからです.

新井先生の本, 特に『量子力学の数学的構造』と 続編にあたる『量子現象の数理』は, 極端なことを言えば, 新井先生の視点から量子力学に関わる数学にフォーカスしています.

関数解析の基本的で大事な定理でも, 本で扱っている範囲で使わないなら解説がありません. 『量子現象の数理』にはハーン-バナッハが載ってはいるものの, 証明抜きでした. 証明にツォルンの補題を使うから省略したのでしょう.

量子系の数理にだけフォーカスを当てるなら わからないでもありません. しかし数学として関数解析にフォーカスがあるのなら, あまりいいことではありません.

日合-柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』

しかし日合-柳の本は, 付録まで含めると関数解析の本として立派に使えます. リース-マルコフ-角谷の定理までありますし, こちらなら関数解析をやったと言える内容です. スペクトル定理の証明もあるし, 量子力学の数理でもときどき出てくる コンパクト作用素の議論もあります.

量子統計やるならある程度トレースクラスの議論も 必要ですし, その意味でも無駄ではありません. そういうわけで日合-柳をお勧めしています.

数学的にもリース-マルコフ-角谷の定理を使って スペクトル定理を証明していてなかなか気分がいいです. リース-マルコフ-角谷の定理も証明も載っていて, 至れり尽くせり感が素晴らしい良書です.

関数解析の基本定理は都度やると 割り切るなら新井先生の本だけでもいいでしょう. きちんと勉強していれば数学力もつきますし, その段階で改めて関数解析のふつうの本を読めば, 苦労なく読めるはずですから, それはそれで一手です.

テーマごとのお勧め

さて, ここからは物理のテーマごとに 合わせた数学という方向で話を進めます.

現代数学探険隊の募集ページで 量子力学がいろいろな数学と関係していることを お伝えしたので, そちらを見た方は何となくはご存知でしょう. 一応募集ページのリンクも張っておきます. 長いので, 読むにしても 必要なところだけ読んでもらえれば結構です.

ここでは詳しい話に踏み込むので, 私が知っている分野・範囲の話しかできません. 幾何は一切抜きにしてゴリゴリの解析方面の話です.

数学から言うと大きくわけて次の通りです.

  • 特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理.
  • シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析.
  • ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析.
  • 作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析.
  • 特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析.

これらは全て独立しているわけではなく, お互いに深く関係しています. 全ての数学をきっちり勉強しきるのは難しいですし, 好き・嫌いまたは得意・不得意があるので, ふつうはどれかをメインにします. 私は作用素論・作用素環論を使う方面で, 量子力学というよりも場の理論・量子統計に重きを置いています.

下の 3 つに関してはヒルベルト空間論を こってりやる意味があるし, その必要もあります.

まずはヒルベルト空間の一般論が それほど必要ないところからやりましょう. 大雑把に言って先のリストで 上から順にヒルベルト空間の一般論や, 関数解析の抽象論が必要になっていきます.

特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理

これは $L^{2}$ やソボレフ空間 $H^{1}$ が主戦場で, 特にそこでの不等式評価がキモです.

本としては Lieb-Loss の Analysis が 突き抜けています.

これはこの分野の世界的権威である Lieb (と Loss) が応用の現場を意識して, とっつきづらい関数解析の抽象論には 一切触れず $L^{p}$ の中で議論しきろうと書かれた本です.

ヒルベルト空間やバナッハ空間上での 基本定理は全て $L^{p}$ で議論されています. ルベーグ積分の定義からはじまってはいますが, 事実上ルベーグ積分は既習が前提です.

この本, Lieb-Loss の「現場の数学」を貫き通しすぎて, 抽象論がないからといっても 全く簡単ではありません.

それは不等式評価が苛烈だからです. 具体的な $L^{p}$ や $H^{k}$ での議論であり, 物質の安定性のように ハードな評価が必要な分野への応用も意図しているため,

ふつうの数学書で滅多に見かけない 最良定数評価もきっちりやっていて そういう部分は本当にきついです.

ただ量子力学への応用を意識して, ソボレフ空間の議論も過度に一般化せず, 詳しい議論はほぼ $H^{1}$ と $H^{1/2}$ に限定しています.

後半で量子力学, 特にシュレディンガー方程式の 解析にも関わる, クーロンポテンシャルの解析や ポアソン方程式などの議論があった上で, シュレディンガー方程式自体の議論もあります.

固有値評価に関する詳しい議論もあれば, 量子化学で重要な密度汎関数でもある トーマス-フェルミ汎関数の議論もあって, そこまで含めて参考になります. まさに量子系の数理という感じです.

ただトーマス-フェルミに関しては 引用されている原論文を読んで方が わかりやすいですね.

以前, 実際にこの辺を専門にしたいと 言っている院生から Lieb-Loss の Analysis のトーマス-フェルミパートが わけわからん! という相談を受けたので, トーマス-フェルミに関する セミナーをやってこともあります.

どうしてもわからないところがあったので, 原論文をあたってみたら その方が遥かにわかりやすかったという話です.

物理として何をやるかは難しいところですが, Lieb-Loss を読み終わったあと Lieb の方面としては物質の安定性や BEC がとっつきやすいでしょうか.

BEC でも議論される Gross-Pitaevski 方程式は 非線型シュレディンガー方程式と呼ばれるタイプの方程式で, 非線型の偏微分方程式論をやるという手もあります.

何はともあれ同じく Lieb が書いた本として, Stability of matter と The Mathematics of the Bose Gas and its Condensation (Oberwolfach Seminars) を勧めておきましょう.

どちらもかなり難しいです. 基本的に使っている数学は $L^p$ や $H^1$ と そこでの不等式評価だけで, 一般論・抽象論の出番はほぼありません.

また長くなってきたのでまた切ります. 残りは次回に回します.

前回の復習

まずは復習.

前々回は物理をやりたいのか, それとも数学をやりたいのか はっきりさせようという話で, 物理を数学的にきちんとやろうと思うと 学部レベルの物理すら厳しいという話をしました.

前回は数学をやろうというなら, という方向で軽く新井先生の本や, 日合-柳の本の紹介をしました.

さらに大雑把に 5 種類の方向性を挙げ, そのうちの最初, ヒルベルト空間の一般論や抽象論が ほぼいらない物理に関する数学を 具体的な本とともに紹介しました.

その 5 種類は次の通りです.

  • 特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理.
  • シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析.
  • ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析.
  • 作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析.
  • 特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析.

今回は後半の 4 つを紹介します. 2 番目, 微分方程式の解析に関して話をしましょう.

シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析

これは何をやるかによって 一般論・抽象論がかなり必要なところも出てきます. 例えば初回に説明した散乱理論は 作用素論に関する抽象論がかなり出てきます.

自己共役作用素の解析も必要になるので, そこで作用素論の一般論が必要になる局面があります.

当然ソボレフ空間論も必要なので, 前回の Lieb-Loss 程度のソボレフ空間論は カバーしておく必要があります.

数学としては非線型シュレディンガー方程式も 視野に入ってくるので, そちらに進んでもいいでしょうね.

非線型シュレディンガーは ソボレフや偏微分方程式の基礎を みっちりやった上での話なので, その基礎部分に関して参考文献を紹介していきます.

関係が深い話も多いですから, 前回紹介した Lieb-Loss の Analysis は 相変わらずお勧めの 1 冊に入れられます.

散乱理論のような作用素論の趣も強いところは ヒルベルト空間の一般論・抽象論が必要です. これに関しては日合-柳は相変わらずお勧めですし, 新井-江沢の『量子力学の数学的構造』もお勧めです.

『量子力学の数学的構造』の II 巻の後半は 基本的に場の理論・量子統計をやるときに 必要な内容なので, 飛ばして構いません.

具体的な作用素の自己共役性や 散乱理論の一般論など, 量子力学の数学に関してもう一歩踏み込んだ本としては 同じく新井先生の『量子現象の数理』がお勧めです.

高いのでおいそれと買えとは言えませんが, 私は専門の関係で読むしかなかったので 買って全部読んでいます. 本質的なものでもないですが, 誤植はいろいろあったので それは新井先生にお送りしています.

研究会で会って自己紹介したとき 「丁寧な誤植訂正を送って頂いて ありがとうございました. とても助かりました」と言って頂いたこと, 今でも覚えています. その程度には新井先生の本や論文を 読み込んで育っています.

Hausdorff-Young の不等式など Lieb-Loss の Analysis レベルの 不等式処理力は前提とした上で, 『量子力学の数学的構造』や 『量子現象の数理』のネタも 1 章で ある程度証明までカバーしつつ 量子力学の散乱理論に深く踏み込んだ本として 磯崎洋先生の「多体系シュレディンガー方程式」は なかなか面白いです.

一般論・抽象論が必要とは書いたものの, 全部 $L^{2}$ 上で考えておいて問題ありません. 基本は全部 $L^{2}$ ですからね.

数学として, 微分方程式としての取り扱いなら, 方程式の解の存在といった議論も視野に入ります. 時間発展を考えるときは発展方程式の議論で, Hille-吉田の定理などはふつう抽象論レベルでやるでしょう.

偏微分方程式も主戦場は $L^{p}$, $W^{k,p}$ だとはいえ, 関数解析の一般論・抽象論は必要です.

これについてはやはり 偏微分方程式関係の本がいいですね. 関数解析の抽象論からカバーしてくれる本としては, もともとフランス語でそれが和訳された ブレジスの本がいいバランスです.

上の URL は日本語版へのリンクです. しかし最近改めて英語で出た バージョンの方をお勧めしておきます.

ページ数が増えているので「ちょっときつい」と思うかもしれません. しかしこれはフランス語の英訳ではなく, 新たに書き直されたバージョンです.

各章末の発展的な話題にも最近の進展が反映されていますし, 実係数しか扱われていなかったのが, 付録で複素係数までカバーするようになりました.

複素係数まで含めた関数解析の本としての 完成度も高まっています. そして分厚くなった理由の 1 つとして, 演習問題の回答がついたことが挙げられます.

もともと関数解析からはじまり, $L^{p}$ の不等式やソボレフ, Hille-吉田など関連する重要な話題もカバーしつつ, 変分を基礎に具体的な線型方程式の解析も やっていて広い範囲をバランスよくおさえた本でした.

その完成度がさらに高まっているので これは本当にお勧めです. その後非線型解析に進むにしろ, 基礎としておさえておくべき内容です.

関数解析の基礎があるなら Evans の本もお勧めです.

この本は次の 3 本立てです.

  • 線型非線型問わず具体的に解ける方程式の解析.
  • 線型方程式の理論.
  • 非線型方程式の理論.

具体的に解けるところで偏微分方程式に親しみ, 線型の理論でソボレフ含め 偏微分方程式の本格的な理論への地ならしをし, 最後に非線型方程式の基礎を見るという, こちらもバランスのいい構成です.

半群理論も線型の Hille-吉田だけでなく 非線型半群も議論していますし, その辺もいたれりつくせり感があります.

非線型方程式を射程に入れているなら, 読んでみていい本でしょう. 東大の偏微分方程式の研究室の 学部 4 年セミナーでも使われている本なので, その意味でも確かな内容です.

ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析

これはばっちり私の専門です. もう少し広げて話すこともできるのでしょうが, 半端な話をするよりは特化させることにしました. 量子統計は微妙ですが, 場の量子論は射程距離に入れて話をします.

私は新井先生の本と論文を読んで育ち, その中で抽象論もバリバリやってきましたし, その方面が基礎です. どうしても $L^2$ の具体的なところを離れた議論, いわゆるヒルベルト空間論が必要不可欠です.

これに関しては新井先生の本が一番です. まずは『量子力学の数学的構造』を読んでから 『量子現象の数理』を読みましょう.

ここからさらに量子力学方面に進むなら Cycon, Froese, Kirsch, Simon の本でしょうか.

新井先生の本は奇蹟のように読みやすいですが, これはそこまで読みやすくはありません. 気合を入れないと読めない部分も増えます.

場の理論に行くならこれもまた新井先生の 『フォック空間と量子場』ですね.

『量子力学の数学的構造』, 『量子現象の数理』と来て 『フォック空間と量子場』を読めば, 作用素論的な方面の場の理論の論文が読めます. 少なくとも新井先生の論文はかなり読めます.

I, II と上下全部合わせるとページとしては 1700 ページくらいあるのでしょうか.

こう思うとかなりのボリュームに 感じるかもしれません. しかし新井先生の本は本当に読みやすいので 体感はもっと軽いです.

他の昔の本で半ページくらいの証明を 3-4 ページ程度に渡って 懇切丁寧に書いてくれているのだと思ってください.

実際に Reed-Simon と新井先生の本で 何かの定理の証明を比較したとき, そういうことがありました.

新井先生の本が読めなければ おそらく他の本は全く読めません. 他の本や論文を読むのは本当につらかったですからね.

ここに来ると一冊一冊がもう専門書のレベルで 1 万円越えたりしますし, 学生で大学の図書館を自由に使えるならともかく, 大人なら事実上本を買うしかありません.

余計なことは考えず新井先生の本を 買った方がお金を無駄にしないですみます.

私の専門が近い話で 書けることが増えてきたせいで またかなりのボリュームになりました.

また残りは次回に回します. 確率論は勉強しきれていないのですが, 最後の作用素環に関しては修士の頃の 研究室レベルでの専門なので, また多少詳しい話になるでしょう.

数学的にもいろいろ関係することが増えるので, 数学をやりたい人には楽しい話になるはずです.

前回までの復習

前回から今回にかけての内容で, 割と最近の成果がまとまった本として 次の本をおすすめしていきます.

私も参加していた Summer School 数理物理 2013 の 講演内容をまとめた本です.

内容の大雑把なところに関しては 当時レポートを書いたので参考にしてください.

でははじめましょう.

作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析

前回少し作用素論方面の話をしました. 関数解析系の量子系の数理の核の 1 つは ハミルトニアンの解析です.

ふつうハミルトニアンは線型作用素だから 作用素を調べることになり, そこで作用素を研究することに特化した 作用素論の出番になるわけです.

その作用素を詳しく調べるために確率論を使う手法があります. 物理としてはいわゆる「経路積分」の厳密解析にあたります. 場の理論では特に超関数を変数とする関数の積分論になるため, 汎関数積分と呼ばれることがあります.

前者の新井先生の本は丁寧でいいんですが, 論文を読むには全く足りません. この方面の 1 冊目には最適だろうと思います. 量子力学だけでなく場の理論の話も書いてあります.

Simon の「Functional Integration And Quantum Physics」もありますが, これに限らず Simon の本は難しいです. 読むにしても新井先生の本で きっちり基礎を固めた後にしましょう.

後者の廣島先生の共著の本は 完全に場の理論の本です. 正確には粒子系と場のカップリングを考えているので, 粒子系, つまり量子力学の話ももちろん書かれてはいます.

ただこれ, 確率論に関するかなりの予備知識が必要です. いきなり Levi 過程の話が出てきます. その確率論や確率過程, そいて確率積分に関しても基本的なことが 新井先生の本にいくらか書いてあります.

この方面に進むにしてもまずは 新井先生の本を読むのをお勧めします.

量子電気力学に関する解析でも 汎関数積分を使った結果に決定的な成果があります. 対応する結果を確率抜きの純粋な作用素論で証明したり, 作用素環で見てみたりといった研究をするにも, ある程度は結果をフォローできないといけません.

研究フェーズの話ではありますが, 楽しいところなのでぜひトライしてみてください.

確率論じたいの参考書もいくつか紹介しておきましょう. まずは舟木先生の本をお勧めします.

例えば分布の収束の定義について 「どうしてこういう定義なのか」という 「気分」についての説明もあり, 初学者が疑問に思うところを丁寧に潰しています. 舟木先生の教育力, 経験が光る本です.

Markov 鎖の場合に限ってはいますが エルゴード性に関する記述もあります. 確率積分は書いていないので, 別の本を読む必要があります.

確率論の基本的なところについては 西尾さんの確率論も証明が丁寧で 読みやすくていい本です.

確率積分に関しては初読は 新井先生の汎関数積分の本を勧めます.

突っ込んだ内容に関しては, 例えば次の本が有名どころです. 読んだ本もあれば きちんと読み込んでいない本もあります. 順に舟木直久, 長井英生, 渡辺信三, エクセンダール, カラザス・シュレーブです.

結論から言うと廣島先生の本が研究に直につながる本です. しかしここにいたるギャップが激しいです. 関数解析だけでは足りず, 確率論に関してもかなりカバーするべきことがあります.

作用素論の定理の確率的証明だとか 確率的解釈のようなことも面白いので, 数学としてもかなり面白いところです.

少なくとも作用素論と確率論という 2 つの分野の交点にあるわけで, 複数の分野をまたがる話に興味があるなら 挑戦するべき価値のある話です.

くり返しになりますが, 専門書と入門のギャップ, 特に関数解析だけではほとんど足りません. そこを埋めるのがかなり大変です.

私が知る限り, 直接量子系の話とはつながらない 部分も含めて確率論をふつうに相当かっちりやった上で 対応していかないといけません.

ダイレクトに絞っているのは 新井先生の本です.

しかしこれでは明白に分量が足りません. そこを埋める, それもダイレクトに埋めてくれる 具体的な本はないと思います. 何かご存知でしたらぜひ教えてください.

特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析

一応, 厳密にはこれが私の専門です. 研究室は作用素環が専門の東大の河東研だったので, 本来はここです. 修士論文では作用素論しか使いませんでしたが, その後の展開では積極的に絡めています.

河東先生は相対論的な場の理論でしたが, 私は非相対論的な場の理論と量子統計方面です. 量子統計は, 河東先生の指導教官である 竹崎先生の巨大な仕事があるので, むしろその血を受け継いだ感じがあります.

学部の頃の指導教官筋で言えば, 私の指導教官のさらに指導教官は黒田成俊先生ですが, そのさらに指導教官が加藤敏夫先生です. 加藤敏夫先生は量子力学の作用素論の大家ですし, 実際に加藤-レリッヒの定理は修論でも使いました.

直接の指導教官よりも先祖返りして, 指導教官の指導教官とか そういう人達の強い影響下にある研究をしています.

ちょっと話がずれました. 具体的に作用素環の話をしましょう.

相対論的場の量子論, 非相対論的場の量子論, 量子統計でそれぞれ微妙に違う趣があります.

しかしどれも基本的なところは同じで, Bratteli-Robinson が聖典です.

全部読む必要はなく, 最低限おさえるべきは次の節です.

  • 2 章
  • ここは全部読む.
  • 2.7 は軽く眺めるだけでもよし.
  • 3 章
  • 3.1 は全部
  • 3.2 はある程度眺めて必要になったときに適宜見るくらいでも可.
  • 4 章
  • 飛ばしていい.
  • 必要になったら泣きながら読む (難しい).
  • 5 章
  • 5.2 は新井先生の「フォック空間と量子場」を読んでから読んだ方がいい.
  • 5.3 は 5.3.1 の KMS 条件のところは特に前半は必ず読み, あとはさっと眺めておく. 必要なところは必要なときに詳しく読めばいい.
  • 5.4 はさっと眺めておく. 概念的には全て重要. 証明の詳細よりもどんな事実が示されているか, 物理として対応することは何かに注目する.
  • 6 章
  • 6.2 は必要になったときに読めばいい. スピン系をやりたいなら必ず読むこと. 具体例で遊んでみたい人は別途読んでみても楽しい.
  • 6.3 は読まなくてもいい: 修羅の世界. 本当に難しい.

少なくとも作用素環の基礎である 2 章と, KMS の 5.3 は必ず読みましょう. KMS に関連して 3 章の半群理論が そこここに出てくるので, 必要なところをピンポイントでやるもよし, 必要だからと全部ガッとやってもいいです.

非相対論的場の量子論だと ほぼ作用素環の基礎だけで事足ります. むしろ作用素環の基本中の基本, GNS construction が魂です. 作用素環的な赤外発散処理のための道具です.

非相対論的場の量子論でも 有限温度との関係がありますし, 量子統計も自然と視野に入ってきます.

有限温度なら平衡状態を議論しないといけないし, そうなると KMS 状態の話になります. Bratteli-Robinson の 5.3 節ですね. KMS は冨田-竹崎理論との関係も極めて深いので, 冨田-竹崎理論は必ずやりましょう. これは 2.5 節です.

2.5 節の冨田-竹崎理論は weight に関する フルの理論ではありませんが, 場の理論への応用上は十分です. 必要になったら weight の場合の理論は 適宜結果だけ使えばいいでしょう.

相対論的場の量子論の散乱理論では weight を使おうという話もあるようで, そういうところでは関係してくるのでしょう. ド専門の話で完全に研究マターです.

Bratteli-Robinson を読んだら 論文がかなり読めます. 私が見ている範囲の作用素環を使う非平衡量子統計では 作用素論もある程度必要だったりはしますが, その辺は新井先生の本を読めば十分です.

論文になってしまいますが, Bratteli-Robinson の話の拡張でもある Derezinski-Jaksic-Pillet の PERTURBATION THEORY OF $W^*$-DYNAMICS, LIOUVILLEANS AND KMS-STATES は楽しいです. 作用素論との絡みもあるので, ぜひ読んでみてください.

あと相対論的場の量子論に関してもう少し補足しましょう. 河東先生がやっている方面の話です. 概要を把握するには最初にも引用した次の本がベストです.

これについて詳しく突っ込むには次の本を読みましょう.

Bratteli-Robinson 程度は知っていないと話になりません. 特に冨田-竹崎理論は全開で使っています. むしろ魂です.

この方面だと実際に河東先生がやっているように, 非可換幾何を介して幾何が絡んできたり, 低次元の話でジョーンズ多項式が出てきたり, それ以外にも共形場が絡むところでは 頂点作用素代数をはじめとして いろいろな数学が関係してきます.

明らかにいろいろな数学が交錯する分野です. あなたが数学に興味があるのならとても楽しい分野です.

あとは私の好みでいうなら $C^*$-力学系の話とスペクトル解析みたいなところですね. 数年前に亡くなってしまったのですが, Borchers がこのあたりをやっていた人です.

これは多変数関数論と超関数論を駆使しつつ, $\mathrm{R}^{d+1}$ の作用素環上への表現として $C^{*}$-力学系を考え, そのスペクトルを調べるという話です.

このスペクトルは粒子の情報も含んでいて, 相対論的場の量子論のやはり基本的な話を 数学的にがっちり議論するテーマです.

あなたが興味があるなら 「Quantum Field Theory as Dynamical System」という 論文を読んでみるのがいいでしょう. これを詳しく解説したのが上記の本です.

作用素論から見た私の専門はスペクトル解析ですし, やはりスペクトル解析好きなんですね. 多変数関数論や超関数論で, その分野じたいではあまり有名ではないし, 古い話を使うのですがそういうところがまたかなり好きで. どなたか興味がある方いれば一緒に勉強しましょう.

あと多変数関数論と超関数論が絡むところとして 楔の刃の定理 (edge of the wedge theorem) があります. これは代数解析への展開があります.

代数解析は全く手が出ていないのですが, 興味だけはずっとあります. これについては次の本に書いてあります.

場の理論関係だと最近そんなに話を見かけません. しかし量子力学に関しては河合隆裕さんが 何かいろいろやっている感じがします. 例えば Borel 総和法だとか, 完全 WKB 解析とかですね.

本もあるのであなたがその辺に興味があるなら 読んでみてはどうでしょうか.

私はこの本はきちんと読んだことがありません. 以前眺めた限りでは 1 次元の話をいろいろやっていて, 代数解析勢は常微分方程式論をいろいろやっているので, その辺の話なのかと勝手に思ってはいます.

代数解析の話は全く追えていませんが, イジングやスピン系の厳密解など 代数解析は昔から量子力学, 場の量子論, 統計力学とある程度の関係があります.

もはや関数解析の初学どころか 関数解析の話ですらなくなっていますが, まあいいでしょう.

最後にまとめ

長くにわたってごちゃごちゃと書いてきました. 数学パートが死ぬほど長くなりましたが, バリバリド専門, お気に入りの話をしたので こんなものでしょう.

量子力学と関わる関数解析の全てとはさすがに言えません. しかしある程度の広さはおさえたとは思っています.

現代数学探険隊の募集ページ, http://m.phasetr.com/l/m/bN5TxolcsyXt4qでもいろいろ書いたように, 幾何や代数, 数論との関係もあります. (このページ, 相当長いので 必要なところだけ適当につまみ読みしてください.)

関数解析以外にも興味がある数学を いろいろやってみてほしいですね. 幾何については最近コンテンツ制作が滯っていますが, 微分幾何・幾何解析関係の話も少しずつやっていく予定です. そちらも楽しみにお待ちください.

物理の話もしたいんですが, 最低限の数学の話を準備できないことには なかなか話ができません.

それに合わせてミニ講座は いくつか準備しようと思っていますし, がっつりやりたい人には 現代数学探険隊 http://m.phasetr.com/l/m/PMpCBo4snaB4n4もあるので ご興味あればぜひどうぞ.

毎度こんなに長い返信はしきれませんが, 何か質問があれば時間がある限り答えますし, みなに共有する価値があることは積極的にシェアします.

こんな講座を開いてほしいというのもあれば, 要望を挙げてみてください. どこかに何かの形で反映させていきます.

悲しみの背理法と否定導入

どこまでどう引用していいものかわからないがとりあえず記録. 結城浩さんのサイトから.

これがフェイスブックで次のように引用されていた.

高校生に背理法の説明をするのに「$\sqrt(2)$は無理数」は定番で、避ける方法も思いつきませんが、もやもやしちゃうんですよね。背理法の形式で書いているだけで、実は否定導入ですから。どうしたものか、ずっと悩んでいます。 次回、ミルカさんが中間値の定理とか証明に背理法が本質的に必要なものの話をしてくれるのを期待します。ちなみに、「証明に背理法が本質的に必要」の定義は「古典数学で証明できてBishop流構成的数学で証明できない」でいいですよね。

これに対して次のようなやりとりがあった.

そういう話はどんな本とか読むときちんとした記述があるのでしょうか? 論理系統の話、初等的な範囲で問題が色々あるっぽいのにそれを説明している記述になかなか巡り会えないので困っています。 基礎論やら数理論理をゴリゴリやるのも大変で。

これへのコメント.

そういえば、構成的証明についてまとめた本は思い当たりません。ほしいですね。

さらにコメント.

http://ameblo.jp/metameta7/entry-11526220719.html 8番目のwd0さんのコメント(の下から5行目を「狭義の排中律」から「狭義の背理法」に直したもの)を読むだけでずいぶん前に進めますね。

コメントも引用しておこう.

まず明快なコメントを.

結論から言えば、安部さんは「背理法を使わない」の定義を明確に定義せずに曖昧な主張をしているために、トンデモな議論になっています。 Pを証明するために、¬Pを仮定して矛盾を導く。 ¬Pを証明するために、Pを仮定して矛盾を導く。 狭義には前者のみが背理法です。後者は否定導入と呼ばれます。

参考のため以降の部分も引用.

高校数学は、狭義の背理法と否定導入をあわせたものを背理法と呼ぶ立場です。高校数学ではそれで困らないのでしょう。

数理論理学では、背理法と否定導入は性質が大きく異なるので、広義の背理法としてまとめて扱うことに何の利点もありません。したがって、通常はそうしません。

構成的論理(別名:直観主義論理)では狭義の背理法は使えませんが、否定導入は許されます。古典論理(通常の数学で用いる論理)で証明できるが、構成的論理では証明できない定理は掃いて捨てるほどあります。

古典論理は構成的論理+狭義の背理法と同値であることが知られています。さらに、構成的論理+排中律とも構成的論理+二重否定除去とも同値であることが知られています。

狭義の背理法は使ってはならないが排中律か二重否定除去は使って良いとするなら、「背理法で証明できることは背理法を使わないで証明できる」は真です。排中律か二重否定除去を使うように書き換えればよいのですから。

狭義の排中律と同値なものも背理法の変種とみなして使ってはよくないとするなら、上記の主張は偽です。古典論理で証明できて構成的論理で証明できないすべての定理が反例となります。中間値の定理もその一例です。

広義の背理法(およびそれと同値なものすべて)を使用不可とするなら、それは構成的論理よりもさらに弱い論理となります。当然、上記の主張は偽となります。

つまり、安部さんの主張は「背理法を使う」を明確に定義しない限り、ナンセンスということです。

今日も脱背理法は厳しい.

位相空間での収束理論: フィルタとチコノフの定理

現在は現代数学探険隊PDF版に統一. サーバーのファイル整理で昔張っていたファイルも削除してしまった.

昔の記録

とりあえずコンテンツとしてのPDFを張っておこう.

どんな内容のコンテンツなのか, 何でこんなものを作ったかそのあたりを以下説明する.

ページの冒頭でもリンクを紹介しているように, 最近はいろいろな数学の通信講座, ミニ講座を作って公開している.

その中で要望もいくつかあがったので, 有料の現代数学の通信講座もやっている.

その中で一般の位相空間での収束に関して 作用素環で時々出てくるネットを使った話を何度か紹介する機会があった. 改めてきちんと調べて情報を出そうと思っていたものの, 講座の中でうまくはまるところがなくお蔵入りになっていた.

自分の中でも宿題になっていて, いつまでも残っているのが気持ち悪かったのでいい加減きちんとしようと思い, まとめたのが上の PDF の内容だ. ミニ講座にするほどのボリュームでもないので, 記事にまとめるだけに留める.

まだ自分用のメモレベルなので, 実際にはもっと解説を詳しくしなければならない. 今回のまとめでフィルタに対して一定の感覚を育めたことが一番の収穫だ. 現代数学探険隊に突っ込むときにはまたもう少し視界が広くなっているだろう. 楽しみだ.

フィルタは特に極大フィルタ(超フィルタ)は超準解析でも使う概念だし, やっておいて損はないと思っている. 現代数学探険隊にも適切な形でマージしよう.

最後にもう一度PDFへのリンクを張っておく.

粘性解が古典解になるとき: 埼玉大の小池茂昭先生のPDF

既に削除されているツイートなので具体的な言及は控えるが, 私の手元に削除前のメモがあったのだ.

弱解で古典解にならない例に関する質問に対する回答で, その回答で指示されていたPDF自体は次のURLから取れる.

これは埼玉大の小池茂昭先生のやつ. 何度か講演を聞いたことがある. あと数年前, 早稲田の田崎秀一先生の葬儀のとき, 田崎先生と学部で同期 (早稲田の物理) だったということを知った.

物理から数学? と思う方がいらっしゃるかもしれないが, 早稲田の物理学科, 正確には応用物理学科の成り立ちの問題で, 早稲田の応用物理学科(物理学科ではない)に数学, 特に非線型偏微分方程式の専門家が二人いる.

最近プログラムと絡めて数学をやろう企画をはじめようとする中, やはり微分方程式が一番取り組みやすい感があり, 改めて偏微分方程式とか実解析周辺の話を勉強する機運が高まっている.

やりたいやりたいと言ってずっとやってこなかった BECや物質の安定性にも突撃したい.

初等幾何の謎: 補助線が交点をなすことを示さない

高校までの初等幾何, 上手く補助線引いて交点求めたりと色々と弄るのはいいが, 肝心の補助線が交点を成すということの証明は全く気にしないし地獄という感じがある

昔の魔法少女のツイートだ. 確かに言われるまで気付かなかった.

Ask.fmの紹介: 論理学を勉強すると何の役に立ちますか?

yuuki_with2usさんのAsk.fmなのだがちょっと気になったので.

論理学を勉強すると何の役に立ちますか?

ストア派の哲学者エピクテトスの説話集に次のようなエピソードがあります。

彼の聴衆の一人が言った。 「論理学が有用で必要なものだと私を説得してみせろ」 そこで彼は言った。 「私にそれを証明してほしいということですか」 「そうだ」 「なるほど、そういうことなら、私は証明による論証を使わなければなりませんね?」 そして、この聴衆がこれに同意したのを見て、彼は言った。 「ではあなたは、私がその論証であなたを騙していないということをどうやって知るのでしょう?」聴衆が返答に窮するのを見て彼は続けた。 「ご覧なさい、あなたはご自分で論理学が必要であると認めているのです。それなしでは、果たしてそれが必要かどうかさえも知りえないというのでは」 (The Discourses of Epictetus, Bk. 2, Ch. 25; 拙訳)

はたしてエピクテトスがここで展開している物言いは説得力のあるものでしょうか、それとも詭弁でしょうか。そうだとしたら、どこにどのような問題があるのでしょうか。このような物言いは日常的な会話や物言いの中で見られるでしょうか。そのような物言いには何か共通のパターンがあるのでしょうか。どのようにそれを見分け、評価すればよいのでしょうか。学部生が初めに学ぶくらいの論理学を勉強すると、このようなことを良く考えられるようになるはずです。

いまひとつよく分からないが, 気にはなるので忘れないようにメモ.

記事紹介: SIGGRAPHでの離散微分幾何レクチャーPDF

離散 (デジタル) 微分幾何 というのがあるという. ちょっと引用してみる.

今年のSIGGRAPHのレクチャーで,こんなのがあったようです. Discrete Differential Geometry: An Applied Introduction

これ,幾何学のとても良いレクチャーになってます.幾何学で言う曲率やホモロジーの概念は,空間を離散化して定義して,離散化幅を→1/∞にすると分かりやすい(というか,元々,それが定義)なので,連続的な幾何学を離散的な多角形で扱っているこの論文集はとても良いです.

講義録は多分このPDFだ. 数学・物理とプログラミングというのは前から興味があるので, 目を通してみたい.

やりたいことが日々増えていく. もっと真剣にこうした活動をお金に替えることを考えないといけない. 東北大の小谷さんの専門関係の話も追ってみるか.

あまりにもつらいコラム紹介: カワイイ数学コラムVol.1「誰かに好かれてる確率は?」

カワイイ数学コラムVol.1「誰かに好かれてる確率は?」というつらいコラムを見かけた. 「誰か」に好かれていて嬉しいのだろうか.

最近ストーカーという名づけられた変質者による殺人事件も目立って報道され, 社会問題としてはっきり認識されてきているような状況もあるので, むしろ不安になる.

これはむしろ防犯的な利用の方が役に立つのでは, とも思ったが, 女性側がそんなことを気にしないといけないというのもひどい話だ.

総評: とてもつらい.

ゼルプスト殿下のブログから: ホーキング博士の道案内で数学史の世界を探訪

ホーキング博士の道案内で数学史の世界を探訪 というゼルプスト殿下のブログの記事で, Hawking の本, 『God Created The Integers』の紹介記事だ.

数学の歴史に一時代を画した重要な業績を、作者である数学者のプロフィールと、 論文の英訳によって紹介したアンソロジーで、古代ヘレニズム時代のユークリッドから現代のアラン・チューリングまでをカバーしています。

安いしほしい.

機械学習で関数論を使う機会, 本当にあるのだろうか

本文

面白そうな呟きを見つけたので.

競技プログラミング勢, 「複素関数論は役に立たない」って言われたらどれくらいの人が同意するのか, 少し興味ある.

(複素関数論をセレクトしたのは, (ほぼ) 必修だった数学が「線型代数・微分積分・複素関数論」で, 最初の 2 つの重要性を主張するのはよく見るけど, 最後の重要性の主張はあんまり見ないから)

機械学習で複素関数論! とか, もっと主張していいんじゃないのか. 留数定理くらいなら使いどころも多かろうて.

@tmaehara 古典解析的には「複素解析までやって微積は完成する」ですけどね. 解析概論もそうですが, 初等函数の理解には複素解析が必須ですから. 確かに, 線型代数・複素解析を含めた微積の機械学習はあってもいいし, また, 競技化しても面白いかもしれません.

機械学習で関数論, 本当に使いどころあるのだろうか. それはそうと, 前にやった関数論のセミナー, いい加減 DVD 化したい.

コメント

chibaf さんに「いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか」に関する参考文献を教えてもらったので

いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか執筆に関し, Twitter で chibaf さんに質問してみたらいろいろサイトを教えてもらった. あとでそちらの参考文献一覧にも記録するが, いったんこちらにもまとめる.

(1) @phasetr 人体の 3D CG 表現がどんな様子かは「ニコニ立体」を眺めてみると良いと思います. 紹介記事 $\to$ http://gigazine.net/news/20140502-3d-niconico/

(2) @phasetr ゲームでの人体表現を特に意識されていると思います. ゲーム関連の記事 $\to$ http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20110908045/

(3) @phasetr 解剖学的な人体の見方 - teamLabBody-3D Motion Human Anatomy- 世界初, 生きた人間の動き・形態を再現した 3D 人体解剖アプリ http://www.teamlabbody.com/3dnote-jp/

(4) @phasetr CG クリエイターのための人体模型コンテンツ開発 金 尚泰 http://www.slis.tsukuba.ac.jp/grad/assets/files/kenkyukiyou/10-2.3.pdf

(5) @phasetr An example-based approach to human body manipulation http://icube-publis.unistra.fr/papr/docs/files/2684/An%20example-based%20approach%20to%20human%20body%20manipulation.pdf/ generating realistic human whole-body models

(6) @phasetr Lie Bodies: A Manifold Representation of 3D Human Shape http://people.csail.mit.edu/freifeld/LieBodies/FreifeldAndBlack2012LieBodies.pdf

(7) @phasetr 以上です. 他にあったら, また報告します

解剖学まで持ってくるとか, 自分では絶対に考えつかないところまで出てきている. 聞いてみてよかった.

「全国のやる気と活気のあるアマチュア研究者 (アカデミックなポストには就けていないが, 論文作成に励んでいる人たち) が集まるトキワ荘的アパートを誰か建ててください」

これは作りたい.

全国のやる気と活気のあるアマチュア研究者 (アカデミックなポストには就けていないが, 論文作成に励んでいる人たち) が集まるトキワ荘的アパートを誰か建ててください

頑張ろう.

「いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか」というタイトルで Amazon Kindle のアダルトで本を出したいので関連する情報提供を求む

Facebook で実験をしている人がいて, 自分もやってみたくなったので.

Amazon のアダルトで表紙がこんな感じの「微分可能なおっぱいの探究」とか 「いかにして人は微分可能なおっぱいを手に入れたのか」みたいな数学書を 20 ページくらいで 100 円くらいで出してアダルト一位取れるか実験をしたいが買ってくれる方 https://pic.twitter.com/K8s5xwLxsq

@phasetr 何, ふぁぼっているちょまどさんは買ってくれるということなの

@phasetr ウケる

@mitsuomi_miyata 私はいつだって真面目です

@phasetr 見付けたら買ってみせましょう w

@phasetr それでいい

@hafucco 出した時には連絡します

@phasetr ありがとうございます. よろしくお願いしますね.

@phasetr ちなみにこれ, 服部さんの研究も参考にすると瞬間最大風速が問題なので, 出て比較的すぐにに多くの人が買ってくれないと一位取れないので, 発火タイミングの調整も大事

@phasetr 買います!

@Taqa_ プログラミング関係の話を調べてからになるので, しばらくまっていてください. 頑張ります

ゲーム用の 3D 画像処理技術や背景となる数学, アルゴリズムなどを学べる本やサイト, どなたかご存知の方がいらっしゃれば教えて頂けないだろうか. 誠心誠意頑張る所存.

「心配すんなよさやか. 独りぼっちは, 寂しいもんな……. いいよ, 一緒にいてやるよ……さやか……」

Ask.fm からは質問

世界中にいるであろう数学・物理にその人生を燃やしている人達へのエールを一つお願いします.

回答

学問が何より一番大事なのでまともな人生は諦めて下さい. あと「心配すんなよさやか. 独りぼっちは, 寂しいもんな……. いいよ, 一緒にいてやるよ……さやか……」. ということで 私もまっとうな人生は諦める方向で進むのでどうぞよろしく

『数学通信』バックナンバー

kyon_math さんはいつも本当に役に立つ情報を提供してくれる.

というわけで「数学通信」バックナンバー http://bit.ly/N2SLW0

これをのんびり読む時間がほしい.

数学チョコで君だけの多様体を作れ

数学チョコで君だけの多様体を作れ.

数学チョコで君だけの多様体を作れ

@phasetr 苺でオイラーの等式を作りましたw

@RainbowGirl_aoi まずはオイラー苺の写真をあげて世界に高らかに宣言をしましょう

@RainbowGirl_aoi 苺によるオイラーの等式, 本当に見てみたいのですが写真ないですか?

@phasetr 少し前に作ったものですけど一応これです http://pic.twitter.com/MJDmv7lLIC

@RainbowGirl_aoi 世界平和への第一歩

苺による Euler の写真へのリンク, とりあえず皆見に行っておくように.

ひさこさんに確率論の反例集を読むセミナーを開いてもらおう

イケメンエリートの SO880 御大から本を紹介されたので.

@phasetr @greengrimghost DVD …研究室で上映会して, 新四回生や新 M1 生の教育目的とするなら公費で買えるのだろうか? 確率論の反例集が近々リニューアルされてペーパーバックで安価で発売されるとか…

@SO880 @greengrimghost 反例集出たら教えて下さい. 普段なかなかその辺をチェックしにいかないので

@phasetr @greengrimghost 密林にいつ頃出るとかありませんでした?

調べてみたら これのようだ.

とりあえず買っておいた. 読める日がいつ来るだろう. ひさこさんに教えてもらうまである.

Antonio Cordoba, et. al., All that Math - Portraits of mathematicians as young readers

kai さんが面白そうな本を上げていたので.

"All that Math - Protraits of mathematicians as young readers" おもしろそう. 『この論文に出会えてよかった』みたいな本. http://www.amazon.com/All-That-Math-Portraits-Mathematicians/dp/8461529006

誰が何を書いているのかよく分からない. ただ読んではみたい. そして小市民には高くて泣いている.

John Ludvig Pirl, The Momentum Map, Symplectic Reduction and an Introduction to Brownian Motion

全く分からないが kyon_math さんが宣伝していたので.

風呂から上がって調べてみるとこんな修士論文が... http://bit.ly/1f6o369 これ, 始めの 30 ページほどでシンプレクティックリダクションの解説を証明付きでやってくれてるのでお勧めです. 丁寧に書いてあるし, good job.

この修論, タイトルが「The Momentum Map, Symplectic Reduction and an Introduction to Brownian Motion」とかで凄い. 中身, はじめが Lie 群で最後が Brown 運動になっていて, 「the foundations for later work in Geometric Stochastic Mechanics」を目指しているらしい. Geometric Stochastic Mechanics とは何だろう. 量子力学関係で E. Nelson が言い出して色々とアレで廃れた Stochastic Mechanics というのがあるのは知っているが, その辺の話か. 実に謎い.

ぞみさんが Kunen の『集合論-独立性証明への案内』をおすすめしていたので

ぞみさんが本についてツイートしていたので.

『集合論-独立性証明への案内』 http://www.amazon.co.jp/dp/4535783829 これ, 引っかかりそうな落とし穴を丁寧にフォローしてて捗るんだよなあ… (捗るという単語が試験期間には悪い方に作用する珍しい例だ).

Kunen の本だった. 覚えておこう.

学会発表のドレスコード

やたべさんや鴨さんとお話した方の市民. ちなみに発端のツイートはこれ.

学会発表でなんでスーツ着るんってつぶやいたら, 同じ専攻の B4 と思われる方々に「学会でスーツ着ないとか常識外れにも程がある」ってつぶやかれてました (憤怒)

そしてやたべさん, 鴨さんとのやり取りメモ.

https://twitter.com/ag_smith/status/423042394464870400 そんな時は数学に転向

@phasetr 国際会議でスーツを着るなんて非常識な人はここにはいません→ http://cca-net.de/cca2005/

数学科ではスーツを着る人間は二流の研究者扱いされます. あれほどドレスコードが厳しい学会を知りません. 何着ようがいいじゃないか. QT @phasetr: https://twitter.com/ag_smith/status/423042394464870400そんな時は数学に転向

@kamo_hiroyasu 私が知る限りラフでなる Jones ですら, フィールズ賞の授賞式ではシャツ・短パン的な格好にネクタイくらいはしていたと聞きます https://www.google.co.jp/search?q=vaughan+jones&safe=off&client=firefox-a&hs=I8O&rls=org.mozilla:ja-JP-mac:official&hl=ja&channel=fflb&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=VynVUr-uLIWfkAWg44G4Ag&ved=0CAkQ_AUoAQ&biw=1006&bih=710 河東先生の文章でそういう記述があったのですがどこにあったか

@ytb_at_twt やはり半裸で行きましょう

@phasetr 半裸なんて数学会的ドレスコードど真ん中やんけ. もっと若い者はアナーキーに, 冒険して, ジャケットとネクタイとかしてみるべきだ.

@ytb_at_twt 学会会場に到達するまでが学会です

河東先生による Jones の Fields 賞授賞式の様子の話, 河東先生のサイトにあった記憶があるので, どなたかご存知の方は教えてほしい.

omelette_philos さんの【よく分からない数学 色々な反例で遊ぼう】の感想まとめ

omelette_philos さんがツイートで感想を書いてくれたのでまとめておこう. できれば Amazon のカスタマーレビューに書いてほしいのだが.

相転移 P のよく分からない数学 DVD を見たので感想を書く.

以前何かのオフ会で相転移 P にお会いしたときは仕事帰りでスーツ姿でしたが DVD では数学的正装だったので新鮮でした. $F (I)$ は区間 $I$ 上の実数値関数の全体という意味ですよね? そう思って見てて違和感を覚えなかったので.

代数的な話をしながらもちゃんと解析に導いていると感じました. 関数空間論や測度論に興味がわくように話ができていると私は勝手に解釈しました. 「途中」の「途」を「と」と書いて「ひらがなにしちゃった」と言うところは相転移 P の萌ポイントでしょう.

解析概論をまた読みたいなと感じつつ, 超関数のお勉強も今更ながらした方がいいのかなと反省. まどマギは不勉強なので相転移の事はよく分からないのも仕方ない. 4. の $C_p$ は $p$ 進の話ですかね? 興味はあるのにちゃんと勉強してないので詳しくないですが.

$\mathbb{Q} \cap [0,2]$ 上の $\mathbb{Q}$ 値連続関数の例はとても面白いし初等的でよいと思う. 所々出てくる超関数の話はシュワルツの超関数だと思うのですが, ちなみに佐藤超関数とはなにかリンクするところとかあるんでしょうか (素人意見).

総合して教育的だと思いました. 冒頭の導入の「自分で問題を作って自分で解く」というのは研究の基本だと思いますが, 高校生や学部教養の学年の人たちが実践できたら素晴らしいことですねと思いました. その意味でも高 2~B2 くらいの方に見てほしいなと感じた.

『ネクタイの数学-ケンブリッジのダンディな物理学者たち 男性の首に一枚の布を結ぶ 85 の方法』

Twitter で『ネクタイの数学-ケンブリッジのダンディな物理学者たち 男性の首に一枚の布を結ぶ 85 の方法』なる本の存在を知った. 面白そう. 絶版のようだが, 原著はどうだろうか. 今度調べてみよう.

とある筋からも『ネクタイの数学-ケンブリッジのダンディな物理学者たち 男性の首に一枚の布を結ぶ 85 の方法』という本があることを知った.

とりあえずメモ.

初等幾何の証明とアニメーション

mathpico さんのツイートを見た.

接弦定理をモノで見せたい. 画用紙で円周角を動かしていく教材はうまく作れず, ボツ. 前回の釘打ち板も接線の表現がイマイチ. すごく面白い定理なのに, なかなか生徒がピンとこないみたいだ…. やっぱ, ここでパソコン登場かなぁ.

そもそも, 接線というのが, イメージしづらいのかもなぁ.

ふと思い出したが, KSEG という初等幾何関係のソフトがある. これなどを使えばいいのではなかろうか. あと Geogebra はどうなのだろう. 初等幾何の証明のアニメーションも面白そうだとは思うが, それよりも一般の数学の証明それ自体をアートとして表現してみたい方の市民だった.

Cremona による楕円曲線のデータベースがあるらしいとの情報を得る方の市民

本文

Cremona による楕円曲線のデータベースがあるらしいとの情報を得る.

Cremona による楕円曲線の各種データベース. 導手 (conductor) 300,000 以下の楕円曲線を網羅. http://bit.ly/J6lHdA

@kyon_math 有名な Cremona と関係があるのか? と気になってしまいました. クレモナ変換の Cremona の名前は Luigi で, お兄さんが Mario かどうかは定かではない.

Paul による余計な情報まで付いてきた. 楕円曲線のデータベース, 何に使うのだろうと思ったが楕円曲線暗号とかあるし実用面で何かあるのかという気はする. いわゆる純粋数学的な話でこれはどういう方向に使うのだろう.

スウガクマスターがコミケで頒布されるらしいという情報を手に入れた

スウガクマスターがコミケで頒布されるらしいという情報を手に入れた.

【C85】スウガクマスター【PV】: http://youtu.be/8LCf4HJnYmA @youtube さんから youtube にも動画をアップロードしました.

今回もコミケに出陣せねばならないようだ. 時間あるだろうか. 作るしかないか.

manavee「伸び悩んでいる人のための数学基礎講座~試行錯誤する方程式~」受験のための導入 が面白いらしい

以前も紹介した覚えがあるのだが. manavee の数学の講義で面白いのがあるらしい. 直近見る暇ないがメモ.

高校生以上, ちゃんと数学を学びたい方へ. 「伸び悩んでいる人のための数学基礎講座~試行錯誤する方程式~」受験のための導入 http://t.co/h3xKXaw6 数学の基礎から学んで線形計画問題が解けるまでの講義. これ無料でいいの? と思う質です. @news_manavee

参考にしたい.

動画制作ツールメモ: 紙クリと AviUtl

ニコニコのブロマガで『紙クリと AviUtl~能書き』という記事があった. 私は紙クリユーザで, 今のところ AviUtl を使う予定はないが, 何かのときのため, 自分用参考情報として残しておきたい.

ツールに関していうなら, むしろ, Youtube やニコニコにも上げておいた JavaScript+MathJax のツールを開発したい. 自分が面白いと思ったもの, 万人に受けるとは全く思わないが, 100 人には面白いと思ってもらえるのはまず間違いないし, 実際何人かにアレを早く完成させろと言われている. 作りたいもの色々あって困る. 時間と才能が死ぬ程たくさんほしい.