2013¶
2013-12-30 「女性にしかわからない科学がある」らしく号泣した¶
何か山形大が地獄の底から湧き上がってきたような企画をやっているらしい.
「女性にしかわからない科学がある」 http://www.tus.ac.jp/madonna/kagu/event.html という標語は愚かで, かつ危険. この問題の歴史を学べ! 「男性にしか…」「若者にしか…」「日本人にしか…」「プロレタリアートにしか…」「マイノリティにしかわからない科学」等々は, 科学ではありません.
@hori_shigeki なので, 「そんなもん」なんですね. この国では.
@hori_shigeki 「女性にしかわからない科学がある」我の強い女性が好みそうな表題です. 単に女性の興味を引く為のキャッチコピーに過ぎないと思います. あまりいきり立つ程のことではないのでは?
いや, ちょっと…, やっぱり驚きました. RT @Mihoko_Nojiri なので, 「そんなもん」なんですね. この国では.
@hori_shigeki しかもこれだけじゃないんですよね. "カワイイ!! ステキ! 理系女子研究生活の魅力とは" http://unicon.kj.yamagata-u.ac.jp/modules/pico/index.php/content0385.html
@hori_shigeki 一つ一つクレームとか無理なんですよ.
センスの悪い中年男が, 若い女性にウケるのはこういう感じだろう! と勝手に想像して作り上げた惹き文句でしょうね. RT @Mihoko_Nojiri しかもこれだけじゃないんですよね. "カワイイ!! ステキ! 理系女子研究生活の魅力とは" http://unicon.kj.yamagata-u.ac.jp/modules/pico/index.php/content0385.html
@hori_shigeki これは背景のイラストもまずいんですよ. (なにこれスーツで実験するの) 工学部がやるとこういうことがおこる. 山形大学の男女共同参画室はごく普通なんですが.
@Mihoko_Nojiri @hori_shigeki 工学部…… orz
確かに. こういう傾向を正すのは科学者の仕事ではなく, 中高等教育や教養教育の関係者の仕事. ただ, こうした講座へ講演に行く科学者には, その度に厳しく言っていただきたいですね. RT @Mihoko_Nojiri 一つ一つクレームとか無理なんですよ.
@apj 先生のとこですね w これはねぇ, なんかやろうとして工学部だけで企画たてちゃったっぽい. あと, 院生がかんでる.
@Mihoko_Nojiri 女子高から受けてる相談だと, 手に職系の理系ということでみんなが医療系をめざしたがるけど医療系は接客業で向いてない人は向いてないから, 理工系でも将来食べていけるということを教えて欲しい, って話になってますね.
@hori_shigeki ただ, 続けてやってるとマシになるというか, リケジョとかいう講談社の始めた就職支援サイトも最初は「理系女子のおしゃれ」とはみたいなやつだったけど, 3 年たったらさすがにマシになった. http://www.rikejo.jp/
@Mihoko_Nojiri 大学や研究機関の人を連れてきてもそれは少数派なのであんまりロールモデルにならない気が. 企業に技術者として就職して活躍している人の話の方が理系進学の動機付けになりそうです. 今の高校生って, 卒業後の仕事がどうなるかかなり気にしてるようですし.
こういうコピーで女性の興味を惹こう, 惹けると思うのがそもそも, 女性なるものをナメていますよ. (続く) RT @ATOM929 「女性にしかわからない科学がある」我の強い女性が好みそうな表題…. 単に女性の興味を引く為のキャッチコピーに過ぎない…. あまりいきり立つ程のことではないのでは?
@apj そうなんですよ. それで, うちの理系女子キャンプ http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Highlights/20130412110000/ でも, 大学院生のセッションを作って, ほら修士の人のほうが, 就職状況に詳しいから.
(承前) 科学へのアクセスの普遍性の否定には暗澹たる歴史があります. 「女性にしかわからない科学がある」としたら, 真実を知る可能性に恵まれているのは人類のある特定のカテゴリに属する者だけだという結論になる. 重大な問題なのです. RT @ATOM929 いきり立つ程のことではないのでは?
@hori_shigeki タイトルを付けた人は残念ながらそこまでの深慮はないと思います. 注目を浴びればそれで良いとしか思っていないでしょう. 浅慮です. それは危険だと言われれば確かにそうなんですけどね. @hori_shigeki 重大な問題なのです.
インタラクティブにやると当事者の感覚が分かっていくのかと. RT @Mihoko_Nojiri 続けてやってるとマシになる…, リケジョとかいう講談社の始めた就職支援サイトも最初は「理系女子のおしゃれ」…, 3 年たったらさすがにマシになった. http://www.rikejo.jp
尚, リケジョは大学のサイトではないですね. (リケジョ作ったのは準「教え子」の一人で, 多分今も担当してると思います). RT @Mihoko_Nojiri リケジョとかいう講談社の始めた就職支援サイトも… 3 年たったらさすがにマシになった. http://www.rikejo.jp
@hori_shigeki これは講談社です.
はい. 逆に「男性にしかわからない科学がある」と言ってよいかどうかくらいは, 考えてほしいと思います. 責任は採用した大学にあります. RT @ATOM929 タイトルを付けた人は…注目を浴びればそれで良いとしか思っていないでしょう. 浅慮です. …危険だと言われれば確かにそうなんですけどね.
@Mihoko_Nojiri はい, 創設時にアイデアを聞いて, ちょい励ましたので講談社と存じています. その後の推移は知りません.
潰れたとはいうものの, 阪大の物理といいキモいおっさん達のセンスはいかにも地獄で社会性が高く大変に素晴らしかった (完). 私も適宜頑張ろう.
2013-12-29 「子どもに数学の習い事をさせよう」みたいな親を増やそうの会¶
「文系学生数の減少は深刻だ。ハーバード大学の調査では、入学時には人文科学を専攻すると答えていた学生のほとんどが別の専攻に移っていることがわかった。」/閉鎖を決めた学科も…米国で止まらない大学生の「文系離れ」 http://t.co/U2KZhrE0ru
— 竹内健 (@kentakeuchi2003) 2013年12月29日
記事が消えていた. そういうのは本当にやめてほしい.
それはそれとして面白いやりとりがあったので記録する.
@kentakeuchi2003子供の公立小ではSTEM(Science, Technology, Engineering, Math)がしきりに強調されています。年長にあたるK(Kinder)でも最近はその方向。Language Arts等の影は薄いです。
— Katsuyuki Fukui (@KatsuyukiFukui) 2013年12月29日
@KatsuyukiFukui@kentakeuchi2003こういっちゃなんだが、親はピアノやアート、英語を自分の子供に習わせようとするけど、数学を習わせようとする親なんか聞いたことない。まともに数学を教えてくれるKレベルのとこなんてないのかも。
— 中川裕志 (@hiroshnakagawa3) 2013年12月29日
@kentakeuchi2003@mamoruk20年前には年あたり10万人の大学への理系入学者がいたのに、いまや5万人くらいに減少してきている。日本の技術が二流になるのは時間の問題だってことを知ってますか?
— 中川裕志 (@hiroshnakagawa3) 2013年12月29日
@kentakeuchi2003@mamoruk「理系学生数の減少は深刻だ。大学院入学時にはIT技術を専攻すると答えていた学生がかなり広告、金融、保険、イベント業に移っていることがわかった。」
— 中川裕志 (@hiroshnakagawa3) 2013年12月29日
理系は国家の国力を強化するけど文系が弱いと国家の外交力が弱まる@kentakeuchi2003「入学時には人文科学を専攻すると答えていた学生のほとんどが別の専攻に移っていることが」 閉鎖を決めた学科も…米で止まらない大学生の「文系離れ」http://t.co/FjjrmirdHd
— gattidormentijp (@gattidormentijp) 2013年12月29日
最後の外交力が弱まるというところ, 人文・社会学系の素養がなさすぎてどういうことなのかよく理解できていない.
それはそれとして気になったのは次のやつ.
@KatsuyukiFukui@kentakeuchi2003こういっちゃなんだが、親はピアノやアート、英語を自分の子供に習わせようとするけど、数学を習わせようとする親なんか聞いたことない。まともに数学を教えてくれるKレベルのとこなんてないのかも。
— 中川裕志 (@hiroshnakagawa3) 2013年12月29日
「数学を習わせようという親」というの, 発想としてあったしそれを目指してはいたが, こういう感じの比較対象を設定した上で言葉にできていなかった.
科学教室みたいなのがあるからそれに対になるというか, そういうのは想定していたが他の習い事との比較検討をしたことがなかった. 記録しておこう.
2013-12-27 みんな数学をやろう: 他の人文・社会学諸分野は日本語以外の複数言語で論文を書かなければいけないらしい¶
サロン的な空間とでもいうのかな。そういうのが今は少なくなりすぎているのかもしれない。そういえば先日も院生に「論文とはsomething newでなければならず、日本語以外も書く方がいい。あと一年位したら学術振興会のサイトも意識した方が云々」という話をしてしまった。
— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) 2013年12月27日
https://t.co/jyn7qOimD3初めからほぼ英語と数学オンリーで話できる理系、やはり文系より遥かに楽なのでは
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月27日
@phasetr何かあれば数学という人類最大精度を持つ言語による会話に切り替えられ、普段はブロークンEnglishが許される理系、文系に対し絶対的に有利な立ち位置という認識が改めて強化された
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月27日
@phasetr数学、英語以上に教育期間が長い第二言語で事実上世界共通語だし、下手な英語より習熟度高い人間も多いのでコミュニケーションすごく楽だと思っている
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月27日
@phasetrまた、現実とか人間とか社会とかきちんと考えないといけない他の諸学問と比べ、考えなければいけない範囲も狭いし、こんなに楽な学問ないのではないかとも思っている
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月27日
@phasetr無論数学が簡単というわけではなく、血を吐くほど辛いのだが、他はもっともっとつらいということが言いたい
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月27日
人文・社会学の話を聞くにつけ, 理工系は本当に気楽という感じしかしない. その中でも数学は他の学問分野を知らなくてもできることが極めて多い印象があるし, みんなも数学をやろう.
2013-12-27 大規模固有値問題を観測で解く¶
前に京大の物性研究室にお邪魔させてもらったとき,行列のサイズがデカ過ぎて普通じゃとても解けない大規模固有値問題を、その問題を再現するような物理現象を実際の世界に作り出し,その観測によって固有値問題を解くというアプローチやってる先生の話を聞いたときは天才だなと思った
— Masaki Saito (@rezoolab) 2013年12月27日
このツイートが回ってきた当時に物理系の人とこの話したらこの発想割と普通という話を聞いた. 実際のところどうなのだろう.
2013-12-26 Neumann級数のNeumannはC. Neumannでありvon Neumannではない¶
von Neumann の von を取ると別人になってしまう(Neumann 級数とかのひと)ので忘れないようにしたい
— ミスターコン (@mr_konn) 2013年12月26日
@mr_konnそういう場合はC. Neumann と書くのが我々の流儀
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月26日
@mr_konn級数の方がC. Neumannです。念のため
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月26日
Buchholzの論文だったと思ったが, 以前作用素環関係者の論文でC. Neumann級数をvon Neumann級数と書いているのを見たことがある. C. Neumann級数はWikipediaを参照してほしい.
式だけ書いておくとこれ:
\begin{align} (1 - A)^{-1} = \sum_{n=0}^{\infty } A^{n}. \end{align}
2013-12-25 alg-dツイート集¶
【選択公理が証明できないこと】2013年数学徒アドベントカレンダー(26日目)¶
【選択公理が証明できないこと】http://t.co/z60DPBM1Ow
— 聖戦アルゴドゥー (@alg_d) 2013年12月25日
数学徒アドベントカレンダー(26日目)
とりあえずブルブルエンジン兄貴のページの記述を引用.
元々は「選択公理の独立性」とするつもりでしたが、これをやろうとすると開始数ページでGödelのLを構成し終えるという誰も分からない記事になりそうだったので、半分諦めることにしました。最初に書いてあることを認めてもらえれば特に数学基礎論を知らなくても雰囲気は伝わるのではと思います。ZFCの定義くらいは知ってたほうが読みやすいとは思いますが。本当は強制法も入れようかと思ってたんですがわけが分からなくなりそうだったのでやめました。
ちなみに全部ちゃんと証明をつけたバージョンのPDFを書くプロジェクトも進行しています。そっちはトポスまで書くつもりですが…あれよくわかんないので #つらい
これは2013年の記事だがトポスまで書いたバージョンできているのだろうか.
『超準解析を代数的に』の Togetter¶
本文¶
古い Togetter だが, 「超準解析を代数的に」というのを久し振りにみかけた. 相変わらずあまりきちんと読んでいないが, 楽しい話ではあるのでここでも記録がてら書いておく. まず evinlatie さんの説明を引いておこう.
代数のみの知識で超準解析を理解してもらおうと, 実数体 $\mathbb{R}$ から超実数体 $\mathbb{R}^*$ を代数的に構成する方法をまとめました. 予備知識は代数学の可換環や体の基本的な性質のみです (少なくとも代数学の入門的な教科書には書いてある知識のみだと思います). ただ, だいぶコンパクトに記述してありますので, 読む際には Wikipedia も参考にしたほうがいいかと思います.
※@alg_d さんのご協力により, 補足に加えて直感的な説明も追加されました.
$m'$ が選択公理でしか作れない狂気の対象というの, これはなかなか楽しい.
ラベル¶
数学, 超準解析
ブルブルエンジン兄貴の「選択公理は直感に反さないだろいい加減にしろ! 」という記事の紹介:Banach-Tarski の定理¶
はじめに¶
Twitter でブルブルエンジン兄貴が次のようなツイートをしていた.
https://twitter.com/hounavi_tweet/status/333470628592107520 ツイッターのニュースってなんだよいい加減にしろ!
ブルブルエンジン兄貴のブログ記事, 選択公理は直感に反さないだろいい加減にしろ! へのリンクが張られている. コメント欄に社会の悲しみが現出しているが, それは置いておこう.
これはもちろん, ブルブルエンジン兄貴の真骨頂である選択公理の話だ. 選択公理と直観という意味不明な話が時々出てくるが, そこでよく, 選択公理から Banach-Tarski の逆理など変なのが出てきて嫌ね, という話がされる. そんなことはなく, 選択公理を認めないとひどい現象が起きる. 逆に選択公理から非常に自然でこれを認めないことには何もできない, という定理も色々あるので認めないでどうするの, という話をしている. ちなみに第 3 回の関西すうがく徒のつどいでのブルブルエンジン兄貴の話は関数の連続性まわりでそうした話をしていた.
バナッハ-タルスキの定理¶
そしてブログでは Banach-Tarski だ. 詳しくはブログを見てほしいが, Banach-Tarski でいう有限分割は現実には実行不可能な恐ろしい分割も含んでいる. そうした無茶な分割をした上で「直観に反する」結果が出てくる, という話なので, むしろ直観的に捉えきれない分割の方にこそ異常性を感じるべきで, 選択公理に責を押し付けるべきではない, という主張を展開している.
これもブログで触れられているが, 証明中, 選択公理はある一箇所で使われているだけだ. 証明中大事なのはむしろ自由群の性質であって, 選択公理ではない.
数学としてはむしろ, 図形の分割と体積の話をしているのにそれを制御しているのが自由群という群の性質である, という部分に思いを馳せるべきだ. これこそ直観を越えた緻密な論証のなせる技であり, 途方もなく豪快で自由な数学の姿と言える. とてもとても楽しい.
証明は本もあるし, ネット上に色々文献も落ちている. 色々探してみてほしい. そして証明をきちんと味わってほしい.
2013-12-25 「数学で卒業研究やらせても多くはセミナーで読んだ本のできの悪いまとめになりがちです」¶
今は(Twitter 上に亡き)kyon_mathさんのツイート. もはやPaulしかいない.
メモにあったのでとりあえず記録しておく.
そうでもないっす。私は今のとこに変わってからそれを発見しました。
もちろんマトメになっちゃう子もいる¶
RT @Paul_Painleve: @MRken_appmath ...数学で、卒業研究やらせても、多くはセミナーで読んだ本の、できの悪いまとめになりがちです。
@MRken_appmath @kyon_math1年、本気でやってくれれば、本のまとめでない何かをできる学生は少数いますね。
— Paul Painlevé@JPN (@Paul_Painleve) 2013年12月25日
@MRken_appmath @kyon_mathただ、修士に進学する学生ならじっくり本を読ませた方が、後のことを考えると実りが大きいような気はします。
— Paul Painlevé@JPN (@Paul_Painleve) 2013年12月25日
できが悪くてもまとめるのはそれでそれで意味があることだと思わないでもない. 絶望的なくらいきちんと文章書けないことを知る機会でもあるだろうから.
2013-12-23 上野健爾『はじめよう数学①円周率πをめぐって』へのコメントを見てどう人と接すればいいのかふと考えた¶
[2F]日本評論社品切れ書籍在庫あります
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2013年12月23日
『はじめよう数学①円周率πをめぐって』上野健爾著2100円
円周率πを題材にしながら、数学をトピックスの集合ではなく、できる限り一つの体系として述べることを試み、円周率πが多くの数学と有機的に結びついているか理解してもらうことがねらい。
数学の展開をしていこうというとき, 何をどうフックにしていけばいいのだろう.
無闇に数学にこだわり過ぎるのもよくないとは思うのだが, 結局数学以外でどう人と接すればいいのかがわかっていないのかもしれない.
困ったものだ.
2013-12-23 確率論と統計学の狭間で: 大数の法則とかベイズとか¶
前にでんまるPとやりとりした記録.
ベイズとかモンティホールはよくわかっていないので嘘を書いている可能性がある. この間黒木さんがその辺適当にまとめていた気がするので, 早くきちんと追いかけたい.
6の出る確率は最終的に6分の1になるように向かうわけだから、6が出たという事実は今後6が出る確率を下げますよね?変かなぁ???
— でんまる (@denmaru_p) 2013年12月23日
@denmaru_pどういう設定・定義を採用するかによりますが、「ある目の出る確率は1/6」というのは大数の法則 http://t.co/FvbQV7puMz周辺の話題でこのときは各試行を独立と思わなくてはいけない為、はじめに6が出たからと言って次の出目には影響ないです
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月23日
@phasetrやった!その手の回答を待っていました!!ありがとうございます!助かりました。自分のいっていることはいかにも屁理屈だよなぁと感じてもやもやしていたんですよ!
— でんまる (@denmaru_p) 2013年12月23日
@denmaru_p統計学にはあまり詳しくないのですが、少しつぶやきがあったように、モンティホールで有名なように、ベイズ流の統計学を使って確率の評価をする場面では適当なタイミングで確率が変わることはあり得ます。その辺りが状況設定・定義の問題です
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月23日
@denmaru_pあと標準的な数学の見解だと、普通、確率論は「ある事象の確率が定まったあとそれに基づいてどういう議論を展開するか」を議論する学問で、統計学は「ある事象が起きる確率そのものを考える」学問です。(記述統計はとりあえず無視。)
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月23日
@denmaru_pなので、この辺の話を考えるときは確率が決まりきったあとの議論を展開する確率論よりも、その確率そのものの評価を目的にする統計学の方をきちんと考えることが必要です。手持ちのデータからどう次の行動を決めるかと言う問題はとても身近な問題ですが、それは統計学の領分です
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月23日
@phasetrなるほど、私の考えが確率と統計がごっちゃになっていたんですね。大数の法則あたりの解説で目が覚めた感じです。人を煙に巻くような屁理屈に対する理路整然とした解説、感服いたしました。ありがとうございます。
— でんまる (@denmaru_p) 2013年12月23日
@denmaru_p後でブログにまとめようかと思いますが、確率自体が時々刻刻と変わって行くことは良くあって一番身近なのはおそらく漢字の予測変換です。いわゆる初期値はありますが、その人の変換履歴や前の文字に応じて最適変換候補が変わります。その計算はベイズでやるのがトレンドです
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月23日
@denmaru_pまた、確か科学史的にはベイズ流の主観確率が先行していて、その基礎付けの難しさと確率論の整備の進展から大数の法則周りの確率論よりの議論がしばらく主流になり、最近の機械学習や自然言語処理の中でベイズ流のも復活してきて、というような経緯だったと思います
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月23日
2013-12-20 Euler の公式と関数論: 1 変数関数論と多変数関数論の深い溝の狭間で¶
やりとり¶
TL がおおかみこどもだけでなんかつまんね
@1112345678999 そんなときこそ数学
@phasetr あまり詳しくないので大きな声で言えませんが, オイラーの公式は三角指数が絶妙に組合わさっているこの世で一番綺麗な数式だと思ってます
@1112345678999 オイラーはむしろ, 指数関数を複素領域にまで拡張する時のキーである一致の定理の破壊力に思いを馳せます. また, 一変数での一致の定理は集積点を含む集合上の一致だけみればいいのですが, これは多変数では成立しないので一変数と多変数の差異も際立つ深い定理です
@phasetr (理系学院生なのにピンとこないヤバイ……)
@1112345678999 この間で早稲田で数学科学生向けに関数論セミナーをしたときからずっと書こうと思っていた話なので後でブログにまとめます. そして DVD にもする予定がある方の市民
コメント¶
一変数での一致の定理¶
まず 1 変数の一致の定理を書いておこう.
一致の定理 (1 変数)
$U \subset \mathbb{C}$ を領域とする. 関数 $f, g \colon U \to \mathbb{C}$ が正則で $C \subset U$ が $U$ の中に集積点を持つとする. このとき $C$ 上で $f = g$ なら $U$ 上で $f=g$ となる.
この定理は次の 1 変数関数の零点の振る舞いによっている.
一変数での零点の孤立性¶
定理 (1 変数での零点の孤立性)
関数 $f \colon U \to \mathbb{C}$ が正則で恒等的には 0 でないとする. このとき $f$ の零点は孤立している.
一致の定理の証明¶
1 変数での一致の定理の証明は次の通り.
$h = f - g$ を定義したとき, $h$ はもちろん正則だが $C$ 上 $h = 0$ となるが, $C$ は $U$ 内に集積点を持つため零点は孤立しない. したがって $U$ 上全体で $h = 0$ となる必要がある.
孤立性さえ認めるなら証明は簡単だが, 当然零点の孤立性に強く依存している.
多変数での零点集合¶
これが多変数でどうなるか. 次のように変わるのだ.
定理 (多変数. 零点集合の性質.)
$n \geq 2$ とし, $U \subset \mathbb{C}^n$ を領域とする. 関数 $f \colon U \to \mathbb{C}$ が正則なとき, $U$ のある開部分集合上 $C$ で $f$ が恒等的に 0 になるなら, $f$ は $U$ 内で恒等的に 0 になる.
1 変数のときは $C$ が閉集合でも良かったのだが, 多変数では開集合に限定される. これがポイントで, 一致の定理の $C$ の条件として決定的に効いてくる.
1 変数のとき, 閉集合でもいいというのは決定的に大事だ. 上にも書いたとおり, 閉集合上での一致さえ言えればいいのだが, 複素平面の中で実数全体は閉集合にはなるが開集合にはならないことに注意しよう. 実数上での一致から全体の一致が結論でき, これが指数関数の複素拡張の一意性を生み出す. これが Euler の公式に正当性を持たせる根拠になっている.
また, 多変数の場合は多変数の場合で開集合に限定した一致の定理というか, 零点の振る舞いが決定的だ. セミナーのとき, ヘイヘイにも問題を出し (て即答が得られ) たのだが, 閉集合上で $f=g$ になったとしても全体で $f \neq g$ という例が簡単に作れる. これは (1 変数のときの) 一致の定理の証明からも反例が作れるし, もっと大事なこととして代数幾何から反例が作れる. だからこそヘイヘイに問題を出したのだが.
もっと強くいうと, 代数幾何から反例が作れるというより, 代数幾何学の成立そのものが反例となっているといっていい. (Affine) 代数多様体は複数の多項式の共通零点として定義されるが, 多項式は連続で零点集合なので, 代数多様体は ($\mathbb{C}^n$ の Euclid 位相で) 閉になる. このとき, 多変数でも 1 変数のときと同じく閉集合上の一致で全体が一致を導いてしまったら, 上述の定義多項式は全て 0 にならねばならず, 代数多様体が $\mathbb{C}^n$ 全体にしかなりえない. 当然こんなことは起きない.
1 変数と多変数の関数論の決定的な違いになっているし, 1 変数の時の特殊事情はそれはそれで圧倒的な結果を生み出す. こうした背景があるからこその Euler であり, ただ式だけ見て美しいというのはそれはそれで構わないが, 私の興味関心はそこで終わらないしここまで詳しく喋らせろ, という話になるが, これはこれで鬱陶しいと思われるから Euler は原義マスハラである, という主張をしているという話だった.
2013-12-16 ブルブルエンジン兄貴の業績¶
.@alg_d 氏が楽しそうに数学をやっている様子を高校生のとき Twitter を通してみて, 数学科に来たという若者に出会って, @alg_d さん偉大だと思った
私も泣いている場合ではない.
2013-12-05 自己共役2階楕円型微分作用素の固有値の発散オーダーをどう調べるか?¶
自己共役2階楕円型微分作用素の固有値が正で集積点が∞なのはいいんだけど、小さい順に並べたときにどれくらいのオーダーで発散するのかって知られてるの?
— け (@ke_math) 2013年12月5日
@ke_mathほとんど答えになっていないですが、(有界領域で)量子統計との兼ね合いを考えるとき、Tr e^{-\beta H}の収束を考えないといけないのでその辺でなら多少の結果はあります。Riemann幾何でのラプラシアンの固有値の漸近評価を見るのもいいかもしれません
— 相転移P (@phasetr) 2013年12月5日
@phasetrありがとうございます。調べてみます。
— け (@ke_math) 2013年12月5日
何ら役に立つ情報を出せた気はしないが, かつての自分がこんなことをさらっと言っていたことに割と衝撃を受けている. きちんと記録しておこう.
コメント1¶
ラプラシアンの固有値の振る舞いについてはWeyl’s lawが知られてます。 以下はwikipediaより
In mathematics, especially spectral teory, Weyl’s law describes the asymptotic behavior of eigenvalues of the Laplace–Beltrami operator. https://en.wikipedia.org/wiki/Weyl_law
コメント2¶
あとこんな記事が
- sp.spectral theory – Growth of Laplacian eigenvalues on a compact domain? – MathOverflow
- 楕円型作用素の固有値分布と負の固有値について (位相 解析的方法による偏微分方程式の研究)
- Eigenvalues of the Laplacian (pdf)
- Eigenvalues and eigenfunctions of the Laplacian, Andrew Hassell (pdf)
コメント3¶
これの非可換幾何・共形場理論版が「量子現象の数理」の河東先生のところにも書いてあります。
非可換幾何版との比較のところでリーマン多様体版もちょろっと書いてあります。
2013-12-01 井草準一先生の訃報を知る方の市民¶
井草準一先生が亡くなられたとの報 http://krieger.jhu.edu/blog/2013/11/27/jun-ichi-igusa-noted-mathematician-and-researcher-died-at-89/ だが, 真っ先に浮かんだのは岩澤健吉氏の思い出を綴られた文章での語り口. ご冥福をお祈りします.
井草先生と言えば, 『数学まなびはじめ』第 2 集が思い起こされる.
私も次世代の数学アイドルをプロデュースしていけるよう精進したい.
2013-12-01 マッチング理論関係の文献を教えて頂いたので¶
数学セミナーの書評というか感想を書いたが, それで言及したマッチング理論の本について教えてもらったので記録. 元ツイートは消えていたので, 教えて頂いたブログの情報を抜いておきたい.
【書評または感想: 数学セミナー 2014 年 01 月号 グラフ理論の新展開 】よく分からない数学
安定結婚問題が一部で話題になっていたみたいですが, 一昔前は安定結婚問題を勉強すると言ったらここら辺の本を読むこととほとんど等価だったような気がします. Tamas Fleiner が組合せ論的な不動点定理を駆使して安定結婚問題の構造を解きほぐしていったところも (個人的に) 懐かしいところです (当時は私も束や選択関数のことをよく考えていたので, Fleiner の論文を眺めることが多かったです).
日本語ではまとまった書籍はないような気がしますが, 次のハンドブックの 14.2 節に根本先生による詳しい解説があります. 応用数理計画ハンドブック
もちろん rotation poset や stable marriage polytope の話もでています.
挙げられていたのは次の本たち.
2013-11-26 フィナンシャルタイムズの記事: オンライン大学は米国の教育危機を救えない¶
『オンライン大学は米国の教育危機を救えない』という記事があった.
元スタンフォード大学教授のスラン氏が立ち上げた「ユダシティー」でオンライン講座を受講していた学生は, 生身の人間による講義を受講していた学生よりはるかに成績が悪く, ドロップアウトする数も大幅に多かった.
中略
そこでオンライン教育の出番, となったわけだ. MOOC を使えば, コストはほぼゼロになる. だが大きな注目を集めたユダシティーの実験のように, 受講者の 90%以上が学習に興味を失ってしまうのであれば, コスト問題への対処を迫られることになるだろう. 興味を失う学生の割合は, 一般の学生の 2 倍である.
中略
■大多数に意欲を持たせることが課題
ここから MOOC について何が言えるのか. テクノ楽観主義者が好んで指摘するように, 今では米議会図書館の蔵書や名門大学の講義を無料でダウンロードできるようになった. 時代に取り残されまいとする年配の従業員, 米軍の予備兵, インドのような国の野心あふれる若者など, いくつかの意欲の高い層ではオンライン講座を修了する割合が高い. だがスラン氏の受講生をはじめ, たいていの人は急速に興味を失ってしまう. 要するに, 米国の教育者が直面している本当の課題は, 熱意の乏しい大多数の人にいかに意欲を持たせるかなのだ. 言うは易く, 行うは難し. 馬を水辺に引いていくことはできても, 水を飲ませることはできない.
このような厳しい世界で成功するのは, MOOC を筆頭にインターネット全般がもたらす無限のリソースを活用する才覚を持ち合わせた者だろう. 残念ながらユダシティーの挫折は, そんな人材が間違いなく少数派であるという現実を突きつけている. 米国の教育危機について, コンピューターで解決できる部分はせいぜいごく一部だろう. コンピューターに比べてカネがかかるとはいえ, それ以外はわれわれ人間が引き受けるしかない.
あまり具体的な数値がないので突っ込んだ話はできないしするつもりもないが, 少なくとも現状, 人の影響力は絶対的で無視できない. 「良い教師」的なアレ, どうしても必要だというただそれだけのことだろう. 道具に遊ばれている感あって, ひどく間抜けという印象.
2013-11-22 自然言語処理は独習が難しいらしいが数学は気楽っぽい印象があるので皆も数学をしよう¶
人文系の方が計量言語学とか自然言語処理的なアレをやるのは結構大変らしいという情報を小耳に挟んだ. これとかこれとかこれとか.
む, 人文系の 4 年生の方から, うちの研究室を受けたいという相談. NAIST と違ってうちは基礎科目がなく, プログラミングができないとどれくらいきついかよく分かってきたので, ちょっと悩む. . . 来年は, 相当簡単なところからプログラミング勉強会をやり, 毎回提出してもらえばなんとかなるかなぁ
人文系でなくても, 情報科学の基礎知識がなく, 一から勉強したいと思っている人は, NAIST をお勧めしますよ. 他の大学は, 一から勉強するシステムになっていないので, 自分でなんとかできる人でないと, 正直厳しいと思います. NAIST は同じ境遇の人も多いので, 同期に助けられますし. . .
いわゆる文系出身で NAIST に進学した同期たちと, 軽々と宿題をこなす理工系出身の同期を横目に文字通り泣きながらみんなで徹夜して課題を解いたり, 励ましあってなんとかあの 1 年を乗り切ったので, 正直一人であれが乗り越えられるとは思えない. . . 吐き気がするくらい, 毎日勉強したし. . .
自然言語処理は独習が難しいということらしい. 何を以ってして「独習が難しい」とするかによると思うのだが, 数学は結構気楽な感あるので皆も数学をしよう.
2013-11-21 東大の本郷で 12/7 (土) に Science Front なるイベントというか講演会というか何かが数学・物理をテーマとして開かれるらしいので¶
本文¶
ymatz さんが Science Front の宣伝をしていたので.
Science Front の講演者 @sin_forest と打ち合わせをしてきた. 12 月 7 日, 現代の数学ってこんな世界なのかー! って体験ができますよ. あとの 2 人は物理の人で, そちらの内容については僕も当日のお楽しみ. https://sites.google.com/site/0to1sciencecommunication/science-front
発表概要¶
転載しておこう.
発表概要
「光電子分光法を通して観た"物性物理学"が見据える未来」
物質の性質を研究する分野である物性物理学は, 数 10 年~100 年後の応用 (=人類社会への貢献・還元) を念頭に研究を行っています. 実例を挙げると, 1989 年に論文発表された巨大磁気抵抗効果は, 10 年足らずでハードディスク (HDD) の再生ヘッドに実用化され, HDD の容量を飛躍的に増大させました.
現在の人類社会が解決すべき課題の 1 つに, エネルギー問題が挙げられます. 持続可能な社会を実現するためには, 省エネルギー化・クリーンエネルギー源を開発することが急務です. 物性物理学は, そのような革新的なエネルギーシステムを構築可能な材料・物質を探求することを目標とし, 熱電材料, 室温超伝導物質, スピントロニクスデバイス材料, 太陽電池などの開発・研究が日進月歩で進められています.
本発表では, 光電子分光法を主な実験手法とする登壇者の立場・研究内容から観た, 物性物理学が見え据える"未来"と"現状"について簡単に話そうと考えています. 未来を変えるかもしれない物質を"実際に手に取って実験できる"という物性実験の魅力を, 少しでもお伝えできれば, と思います.
「図形の大域不変量とその局所化ー Spinc 多様体上の Dirac 作用素について」
図形 (空間) について研究する一つの方法に, その大域的な位相不変量を計算する, という方法があります. 例えば球面の上に三角形を書いてその表面を埋め尽くしたとき, その (頂点の数)-(辺の数) + (面の数) という数を計算すると, その数は必ず 2 になります. この数は Euler 数と呼ばれる不変量の一種で, 球面を曲げたり潰したりしてもその値が変わらないことから, 位相 (トポロジー的な) 不変量と呼ばれています.
1960 年代に指数定理と呼ばれる大定理が証明されました. これは図形の上のある種の微分作用素から定まる数と, 上のようにトポロジー的に定まる数が一致する, というもので, Euler 数のような位相不変量の研究に (図形の研究に) 解析的な手法が有用であることがはっきりと示されました.
私は図形の上のある種の微分作用素を図形の一部に局所化する手法について研究しています. これによって図形の大域的な不変量の情報がその一部の情報に局所化されるため, 不変量の研究に新たな道が開かれることが期待されます. 今回は図形の不変量の研究について, 古典的な話題から現在行われている様々な研究まで, 私自身の研究も含めてお話しできればと考えています.
「新粒子探索ーヒッグス粒子のその先にー」
最近「ヒッグス粒子発見」「ノーベル章はヒッグス粒子」というニュースで話題になった「ヒッグス粒子」.
ヒッグス粒子とは, 物質の最小単位であると考えられている「素粒子」のうちの一つで, ヨーロッパで行われている LHC 実験で発見されました. では, そのヒッグス粒子はどのようにして発見されたのでしょうか? またヒッグス粒子を発見したら素粒子物理学は終わりでしょうか?
LHC 実験では陽子と陽子を加速して衝突させ, 衝突後に出てくる素粒子の種類やエネルギーを見ています. これにより, ヒッグス粒子が生成されたのか, 未知の粒子が生成されたのかなどを調べています.
また, ヒッグス粒子の発見で素粒子物理学の全てがわかった事にはなりません. 理論的な研究から, 未だ発見されていない「新粒子」が予言されています. LHC 実験では更なる新粒子の発見に向けた実験と, 多くの理論的な研究が行われています. 新粒子を発見するには闇雲に探すだけではダメで, 多くのゴミとなるような事象から, 新粒子に値する事象を選び抜かなければいけません.
これらの「新粒子探索」という素粒子物理学の最先端について, 理論的側面から最新の結果を交えつつお話したいと思います.
物理としては物性理論専攻に相当する研究をしているが, 上記のような殊勝なことなど一度も考えたことがない方の市民だった. 面白そうだし時間があったら行ってみよう.
2013-11-21 松崎拓也, 岩根秀直, 穴井宏和, 相澤彰子, 新井紀子諸氏による論文『深い言語理解と数式処理の接合による入試数学問題解答システム』¶
松崎拓也, 岩根秀直, 穴井宏和, 相澤彰子, 新井紀子諸氏による『深い言語理解と数式処理の接合による入試数学問題解答システム』という論文が出たとのこと. 冒頭部を引用してみよう.
あらゆる数学のオブジェクトは Zermelo-Fraenkel の公理的集合論 (ZF) の (保存拡大の) 項だと考えることだできるので, ここでいう「計算」とは ZF の項の書き換えだと見做せよう. では, その計算をどこえめるべきか. 即ち, 問題文の直訳である項を, それと同等であるような無数の項のうちから, どのようなものに書き換えれば問題が「解けた」ことになるのだろうか. それを考えるヒントは, 解答群の中に見いだすことができる. 大学入試を例にとると, 証明問題以外では, 解答に現れるのは, $y = 2ax - a2,(x < 0 \to a = 3) \wedge (x ≥ 0 \to a = 5)$, $a_1 + · · · + a_n >0$ のような限量記号をひとつも含まないような式である. しかも, その式は, 実閉体の理論に三角関数や指数関数などの超越関数をシンボリックにしか利用しないような拡張を行った実閉体の体系 (拡張 RCF) に弱いペアノ算術の体系を加えた体系 ($\mathrm{RCF}^{+ }+\mathrm{PA}$) で表現されるようなものにほぼ限られる. また, 模範解答に現れる式も, 実は $\mathrm{RCF}^{+ }+\mathrm{PA}$ で記述可能な式が圧倒的に多いことに気づく. となれば, 問題文を同等の $\mathrm{RCF}^{+ }+\mathrm{PA}$ の式に変換し, その式から限量記号を消去することが, 大学入試の数学問題を「解く」ことだと考えてもよいだろう.
この先の細かい部分はほぼ何を言っているのか分からないが, 試み自体がとても面白い. こんなこともやっている人がいるのか. 楽しい.
2013-11-21 LerayのBiographical Memories¶
Leray の Biographical Memories というのを見つけた. あとで読むのと適当に共有するため, とりあえず記事にする.
2013-11-17 GeoGebraで遊んでみたい¶
GeoGebra の話がまた出ていた. 前も紹介した覚えがあるが, こういうのは何度紹介してもいいだろう.
こういう使い方もあるんですね. 「GeoGebraがすばらしい」 http://kyane.net/2013/11/geogebra/
私も遊んでみたいとは思っているのだが.
2013-11-17 「科研費, まだ良く分からないけど, これが落とせるか落とせないかのボーダーだと考えている」¶
科研費, まだ良く分からないけど, これが落とせるか落とせないかのボーダーだと考えている http://p.tl/fTn1
@tsurunokaraage 無理じゃね…
@SO880 #はい
科研費で落ちる作品をプロデュースする方の P になれるよう, 粉骨砕身していきたい.
2013-11-17 研究室を選ぶ基準としての研究費問題とか学振とか¶
これから研究室を選ぶ学部生のみなさん. 知ってるかもだけど, 科研費データベースというのがあって, 教員の名前で検索かければ, 研究費がどれだけあるか, どのような研究で研究費を取得しているかがよくわかります. 参考にしてください. http://kaken.nii.ac.jp/
特にドクターに行く学生には学振も問題だろう. そうした所も見ると楽しそう.
今年うちで出していた学振特別研究員 DC1 三人, DC2 一人の申請は 全勝で通りました. (10/17/2013)
河東研, やばくて爆笑する.
2013-11-17 読み方が分からない外国人名の発音を検索できるウェブサービス「Pronounce Names」: まだ Nachtergaele の発音はない¶
読み方が分からない外国人名の発音を検索できる「Pronounce Names」というサービスが始まったらしい.
[ウェブサービスレビュー] 読み方が分からない外国人名の発音を検索できる「Pronounce Names」 http://japan.cnet.com/news/society/35040025/ @cnet_japan さんから
記事からも引用しておこう.
また, ユーザー自身が音声ファイルをアップしたり, マイクで録音するためのインターフェースも用意されており, これらの正誤についてユーザーから報告できる仕組みも整えられている. それゆえ人名によっては異なる発音が複数収録されている場合もあるが, 幅広い名前を考えうるだけのパターンで網羅し, なるべく正しい発音を収録しようとするコンセプトが伝わってくる.
対応しているのはおもに英語圏の人名だが, 掲載されているリクエストを見る限りではラテン系やアラブ系の人名も多く, 実際に検索してみてもきちんと対応しているケースが多い. リクエストがあった人名をユーザー同士で補った結果, ボリュームが膨らんで現在に至ったようだが, それゆえデータベースとしては価値が高い. プレゼンテーションやスピーチ, 商談, 会食など, 外国人の名前を発音する必要があるさまざまなシチュエーションにおいて, 強い味方となってくれるであろうサービスだ.
いつも発音を忘れてしまう Nachtergaele を検索してみたが, なかったので号泣している.
追記¶
dif_engine さんに別の方法を教えて頂いた.
@phasetrGoogle翻訳でスピーカーのボタン押せばそこそこ行けると思います。
— differential_engine (@dif_engine) 2016年4月24日
2013-11-09 日本数学会による大学入試数学問題の解答例および採点基準の開示の是非に関する見解が面白い¶
大学入試数学問題の解答例および採点基準の開示の是非については日本数学会が見解を公表しています. http://mathsoc.jp/publication/tushin/0402/21-23.pdf
特に面白かったのは次の箇所.
- 記述式試験の採点は「主観的」なものである.
記述式解答の採点者は, 場合によっては下書きまでも参考にしながら, 受験生の意図を忖度し, その理解の程度を量って, 1) に挙げた能力の判定を行う. 従って, 判断は総合的かつ主観的にならざるを得ない.
数学の記述解答とその採点を「主観」と言い切っているのが凄い面白い. 論文や教科書に表れる著者の個性のようなものか. 採点やったことないから分からないのだが, 採点するの面白そうだと初めて思った. 入試のような面倒な場で経験するのは死んでも御免だが.
2013-11-08 Aizenmanらの論文, Random Currents and Continuity of Ising Model's Spontaneous Magnetization¶
田崎さんから 11/8 に Aizenman が Ising の磁化の連続性の証明を出したことを教えてもらった.
Random Currents and Continuity of Ising Model's Spontaneous Magnetization
Michael Aizenman, Hugo Duminil-Copin, Vladas Sidoravicius
The spontaneous magnetization is proved to vanish continuously at the critical temperature for a class of ferromagnetic Ising spin systems which includes the nearest neighbor ferromagnetic Ising spin model on $Z^d$ in $d=3$ dimensions. The analysis applies also to higher dimensions, for which the result is already known, and to systems with interactions of power law decay. It allows to conclude similar continuity results for one dimensional systems provided the decay is slower than $1/r^2$ (at which the transition is known to be discontinuous). The proof employs in an essential way an extension of Ising model's random current representation to the model's infinite volume limit. This extension enables one to reduce the continuity statement to a simple criterion on the decay of correlation in the Gibbs state with free boundary conditions. For reflection positive models, this criterion may be established through the related infrared bound.
今すぐには読めないが, 忘れないようメモしておこう.
2013-11-07 やたべさん筋の情報: 論理学を学ぶのに大事なこと¶
「論理学の一般向け本はカントールが発狂したとかゲーデルが餓死したとかそんな話ばかりだ. それでは肝心な話が書けなくなってしまう」 「『肝心な話』とは? 」 「タルスキがセクハラパワハラ大魔王であったこととか, モンタギューが浴室で絞殺死体で発見されたこととか, クリプキが超変人なこととかだ」
やたべさん情報, 本当に役に立つ.
2013-11-05 北大, 戸松玲治さんの安藤-Haagerup 理論入門の講演を聞きたかった¶
既に終わってしまっているが東大での戸松さんの作用素環の講演は面白そうなので行きたかった.
連続講演
講演者: 戸松玲治 (北海道大学)
題目: 安藤-Haagerup 理論入門
日時/ 部屋
2013 年 11 月 5 日 (火) 午後 3 時 30 分~5 時 30 分 数理科学研究棟 118 号室
2013 年 11 月 6 日 (水) 午前 10 時~12 時 数理科学研究棟 122 号室
2013 年 11 月 7 日 (木) 午後 3 時 30 分~5 時 30 分 数理科学研究棟 123 号室
2013 年 11 月 8 日 (金) 午前 10 時~12 時 数理科学研究棟 122 号室
アブストラクト: 作用素環の超積 ($M_{\omega}$ や $M^{\omega}$) は von Neumann 環の性質の特徴付けや 群作用の分類において重要な役割を果たします. 安藤浩志, Uffe Haagerup 両氏による仕事 (2012 年) は 超積 von Neumann 環についての理解をそれまでよりさらに深めるものです. とくに, 主定理 「超積状態の modular 自己同型群が, modular 自己同型群の超積と一致する」によって, III 型環の超積をようやく「正しく」扱えるようになった, といっても過言ではないでしょう.
講演では, 安藤-Haagerup の論文から, 以下の 3 つを含むいくつかのトピックスを抜粋して, なるべく self-contained に証明をつけます.
- Groh-Raynaud 型の超積と Ocneanu 型超積の関係.
- 超積状態の modular 自己同型群 = modular 自己同型群の超積
- 植田好道氏による問題 ($M$ が full 因子環ならば $M' \cap M^{\omega} = \mathbb{C}$ か?) の解決.
予備知識として, 冨田-竹崎理論, 標準型の理論をあげておきます.
確か作用素環に超積を持ちこんだのは Connes で, Connes 自体元々集合論というか, 超準解析的なことをしていたとか聞いたことがある. 冨田-竹崎理論は量子統計を作用素環的に扱う上での魂だし, 相対論的場の量子論を研究する上でも必須の道具だ. III 型環だし, 何かその辺を駆使する話ということで凄い楽しそう. 超積自体もよく知らないので, その辺も楽しそう.
聞きたかったので残念でならない.
2013-11-05 アンドレ・ヴェイユ 『ゼータ函数の育成について』¶
はじめに¶
素数の歌はとんからり bot が非常にアグレッシブな PDF を紹介していた.
私が, Riemann の $\zeta$ -函数と性質を共有する函数を "育成" するときに使って来た一つの特別なトリックをお話しよう.
── アンドレ・ヴェイユ 『ゼータ函数の育成について』 http://goo.gl/p1mR1
引用¶
まず衝撃的な冒頭の一文を引こう.
今日のような蒸暑い日には, 竪苦しい話より, 動物や植物' を `育成 でもするような話の方がよいであろう. $\zeta$-函数についていえば, 本質的な点は第一に $\zeta$ がギリシヤ語のアルファベットの一つであることで, 第二にその変数が普通 $s$ と書かれることである: $\zeta (s)$.
これが育成に関わることも衝撃的だし, $\zeta$ の本質がこんなところにあることも知らなかった. ただ, 先日の第 4 回関西すうがく徒のつどいで「数論は $\zeta$ が綺麗に書けるようになることからはじまる」という, 数論専攻の方の有り難い話も聞いたので要はそういうこと感ある. 「 Weierstrass の最大の仕事はペー関数に $\wp$ の字を当てたことだという説がある」などの貴重な話も聞いてきた.
ところでこの動物について, Euler の最も重要な発見は, $\zeta$-函 数の函数等式である.
$\zeta$, 動物だったのか.
次の step をなし遂げたのは Dedekind である. これが, bigger and better zeta-function の育成の始まりである. 私自身も近頃は, その育成に, 私の数学的な努力の一部を捧げているのである.
もう 1 つ引用.
Riemann の $\zeta$ とこの Dedekind の $\zeta$ の定義との主要なちがいは, ローマ字とドイツ文字とのちがいであることがわかるであろう. ここでドイツ文字が使われているのは, 長い間ドイツ人だけしか数論をやらなかつたので, 数論の記号にはドイツ文字を使うのが習慣になつているからである.
引用が面倒なので省略するが, Riemann の $\zeta$ の零点に対して, 確率論による大雑把な推測法を説明しているのが目を引く. 確率論と数論の接点, Weil は強く意識していたということか.
次の step は, 非常に面白いものであることがわかり, 現在, 数学的植物学者に対し, 非常に大きな研究分野を繰り拡げているものであるが, それは次のようなものである
数学的植物学者とか, 先程から衝撃的な言葉が連発されまくっているので Weil の偉大さを感じる.
それにしても, $\zeta$, 育成するものだとは知らなかった. $\zeta$ をアイドルと思ってプロデュースすることも考えなければいけない時代なのかもしれない.
2013-10-30 IT教育, 特にプログラミング教育と数学と物理の教育¶
政府 CIO や文科省や経産省や総務省の偉い人がいる前で, 「必修のプログラミング教育なんかムダ」, 「教育のIT化もおおむねムダ」, 「IT人材は育成なんかできない」などと言って会議の空気を凍りつかせた人のアカウントがこちらです.
@yukihiro_matz プログラミングの必修化は, 今まで接点が無かった生徒でも興味を持つきっかけになるのではと思いますが, その程度で始めるようではやってもムダということでしょうか?
@awazuhours 必修だと興味がない子には苦痛だし, 興味がある子にはレベルが低くてつまらないので効果薄です. きっかけならプログラマーが主人公の漫画をジャンプで連載する方が 100 万倍効果的. バクマンの IT 版
数学 (と物理) だとどうなのだろう, ということを色々考える.
2013-10-27 量子力学と群の表現論: エネルギー固有状態と群のユニタリ表現の表現空間¶
はじめに¶
"量子力学で,ハミルトニアンHがある変換群Gで不変であるとすると,1つのエネルギー固有値Eに属するHの固有空間はGのユニタリー表現の表現空間になっている.(…)これが,原子や分子の状態や素粒子の分類に群論が有力な道具となる理由である." (群の表現,物理学辞典(培風館)) へえー
— 石塚(無所属) (@Yusuke_Ishizuka) 2013, 10月 27
@Yusuke_Ishizuka 大雑把に言うとただの同時対角化です
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2013, 10月 27
@Yusuke_Ishizuka 新井先生の物理の中の対称性の七章あたりでしょうか。とりあえず連続群だとして、とか書こうと思ったところでブログに書けばいいと気づいたので、後でなんか書きます。きちんとやると大変ですが、気分的には大したことないです
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2013, 10月 27
@phasetr ありがとうございます。ブログ楽しみにしますね
— 石塚(無所属) (@Yusuke_Ishizuka) 2013, 10月 27
まとめ¶
というわけで簡単にまとめる. 参考文献としてはいつも通り新井先生の本で, 『物理の中の対称性』だ.
7.8 節【物理量の時間発展と保存量】が大体それだ. 正確にいうとこの節ではちょっと違うことをしているが, 次に書くようにすぐ直せる.
Hamiltonian $H$ がある (連続) 群 $G$ で不変だというのは, $G$ のユニタリ表現 $(U_g){g \in G}$ を取って, $U_g H U_g^ = H$ が成立することとする. 書いていて私がやりづらいので, $G = \mathbb{R}$ としよう. ここで Stone の定理から無限小生成子 $T$ があって $U_x = e^{i x T}$ と書ける. (一般の場合は SNAG 定理 を使う.) ここで不変性の定義式を $x \in \mathbb{R}$ で微分した上で $x = 0$ とし, 生成子同士の関係式に変えてみよう. (念のため書いておくと, 定義から Hamiltonian $H$ は時間並進の生成子だ. ) \begin{align} \frac{d}{dx} U_x H U_x^ | = \left{i T U_x H U_x^ - U_x H U_x^ (-i T) \right} |_{x=0} = TH - HT = 0. \end{align} 元の不変性から「生成子同士が交換する」という条件が導かれた. ここで $H$ はもちろんのこと, Stone の定理から $T$ も自己共役であることに注意する. 自己共役というのは要は Hermite 行列ということであって, 交換する Hermite 行列は同時対角化可能という線型代数の定理によって $H$ の固有空間が $T$ の固有空間でもあることが分かる. 元の表現をここに制限すれば表現空間ができたことになる. 以上, 大雑把な説明だ.
線型代数と量子力学¶
これを見れば分かるように線型代数は量子力学の基本的な認識を形作る上で数学的に大事な役割を果たす. 学部 1 年で学ぶ線型代数で十分だが, その代わり学部 1 年を学ぶことは完璧に分かっていなければいけない. 数学科水準で理解するくらいでないと多分量子力学の理論にはついていけない. 少なくとも物理学科に来る人間なら量子力学を単なる計算の道具ではなく, きちんと学びたいと思っているだろう. そういう人は本当にきっちり線型代数を詰めておく必要がある.
大雑把と言った以上, 細かいこと, そして普通の Schr\"odinger を扱っているときに実際に数学的に起きる問題がある. それを簡単に書いて終わりにしよう. まず本の『注意 7.34 』に書いてあることだが, 普通の意味で可換 ($TH - HT = 0$) だからと言って $H$ が $T$ の保存量になる保証はない. これは大抵の場合 $H$ と $T$ の少なくともどちらかは非有界になるからだ. 非有界作用素については「強可換」という概念があり, 強可換なら問題ない. この辺は『量子力学の数学的構造』や『量子現象の数理』を読んでほしい. 興味があるという向きにはセミナーを開いてもいい. 関東近郊なら何とか出向けるのでご相談頂きたい.
赤外発散の困難¶
他の問題だが, 物理としては瑣末と言ってもいいのだけれども, 数学的に根本的な問題として $H$ が固有値を持っているかという問題がある. 期待としては「スペクトルの下限である基底エネルギーは固有値であってほしい」が, これが怪しくなる物理現象を (赤外) 発散という. ちなみに私の専門だ. $T$ も同じで, 固有値を持つかどうかが問題になる. 一応, 「固有空間」があることを前提にしているから.
上の問題と同じく物理というより数学の問題になるが, 非有界作用素の取り扱いが必要になるために色々数学的に面倒くさい.
ついでなので書いておこう. 「これは大抵の場合 $H$ と $T$ のどちらかが非有界になるからだ」と書いたが, では両方とも有界になることがあるか, という話がある. それはある意味で山程ある. 量子スピン系を考えるとき, 作用素環的に初めから無限系を考える場合もあるが有限系から熱力学的極限を取る場合もある. 有限系は有限次元なので, そもそも非有界作用素の出番はない.
2013-10-22 何でもランキング「これさえあれば数学を楽しく学べる 20 の娯楽作品」 (日本経済新聞社)¶
はじめに¶
何でもランキング「これさえあれば数学を楽しく学べる 20 の娯楽作品」 (日本経済新聞社) http://s.nikkei.com/16s0Iad
実際のランキングで出てきた本などを引用しておこう.
普通の本¶
1 位 数の悪魔 -算数・数学が楽しくなる 12 夜 230 ポイント
2 位 素数の音楽 190 ポイント
3 位 フェルマーの最終定理 (文庫判) 181 ポイント
4 位 天地明察 (文庫判, 上下) 156 ポイント
5 位 浜村渚の計算ノート (1~5 巻, 以下続刊) 150 ポイント
6 位 シュプリンガー数学クラブ 21 数学が経済を動かす -ドイツ企業編
7 位 ガロアの生涯 神々の愛でし人 (新装版)
8 位 博士の愛した数式 (文庫判)
9 位 すうがく博物誌 (新装版)
10 位 aha!Insight ひらめき思考 (1~2)
漫画¶
1 位 数学ガール (上下) 470 ポイント
2 位 マンガおはなし数学史 240 ポイント
3 位 Q.E.D. 証明終了 (1~45 巻, 以下続刊) 180 ポイント
4 位 和算に恋した少女 (1 巻, 以下続刊) 170 ポイント
5 位 ニャロメのおもしろ数学教室 100 ポイント
『マンガおはなし数学史』, 凄いつまらなかった. 絵も異常なくらい古くさいし地獄のような「漫談」とかあってどの層に向けて書いているのだろうと不思議で仕方ない. 著者というか原案の 60 オーバーの教官と同年代にはいいのかもしれないが, 私には大変ひどいアレだった.
映画¶
1 位 博士の愛した数式 (日) 428 ポイント
2 位 ビューティフル・マインド (米) 410 ポイント
3 位 グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち (米) 210 ポイント
3 位 $\pi$ (米) 210 ポイント
5 位 天地明察 (日) 204 ポイント
天地明察は見てみたい. ビューティフルマインド, ナッシュが穀潰しのろくでなしだということだけ知っている.
2013-10-17 19世紀の代数幾何の定理とかUrysohnの補題とか¶
誰かが言ってたけど, ホントに謎なのは, 数学の定理は不死鳥のように蘇ることがあること. 19 世紀の計算で解いた代数幾何学の定理が, ヒルベルト時代に忘れられ, 計算機時代に復活したとか聞くと数学ってなんなのかわからなくなる.
@ytb_at_twt ありますね, 古い定理や手法などの復活. 数学に限らない気がします. アナログ電子回路でも, 昔に廃ってしまった回路方式が復活したのを見て驚いたことがあります.
@tadamago アナログ回路って職人芸的なイメージがあるんですが, そういう分野では復活とかがあるような気がします.
@ytb_at_twt Urysohn の万有距離空間を触っていた時は, 後のかっこいい存在証明よりも Urysohn 自身のごりごりとした構成法のほうが役に立ちました. おかげで, 仏語を読むはめになりましたが.
@kamo_hiroyasu ああ, それはすごく判ります. きたない証明の方が情報量は多いですよね. 「最大不動点が存在」とか言われて何が起こったか輪からにこととかよくありますね.
かもさんのコメントがかなり気になった. Urysohn の論文はどんなことをやっているのだろう.
そもそものやたべさんのコメントにある定理が何なのかも気になる.
2013-10-15 1文字の記号から展開される世界が見てみたい¶
瀬山士郎さんによる『数学記号を読む辞典 数学のキャラクターたち』というのが出るらしい.
[2F] 好評発売中 『数学記号を読む辞典 数学のキャラクターたち』瀬山士郎著 1580 円 (技術評論社) これで数学記号の意味・読み・使い方がわかる! 小学校からはじめて, 大学までの数式が読めるようになる, 読み通せる辞典風数学エッセイ. http://pic.twitter.com/K9Rqd807VR
数学やら物理やらをやっていて思うのだが, 文字を 1 文字見ただけでそこから色々な世界が想起される. 例えば, $E$ は次のような色々な意味で現われる.
- エネルギー.
- 電場.
- ベクトル束.
- 射影.
- 射影値測度 (スペクトル測度).
これはぱっと思いついたものを挙げただけで, 実際にはもっとある. さらにここから関連する色々な数学や物理の話がある. エネルギーは物理全体で大事な概念だし, 電場というところから電磁気での諸々が想起される. ベクトル束からは幾何の色々の話が想起されるし, ベクトル束上の話として Chern 類やら接続やら, 指数定理やら K 理論やら. 射影とくると作用素論, スペクトル分解を想起するし, 私ならさらにそこから量子力学や場の量子論での色々な話が頭の中を駆け巡る.
記号 1 つ見て何を思うのか, という話, 何かどこかでやりたい. DVD 用の小ネタとしても面白いと思っている. 数学・物理以外でも専門的に学んだ人にとって 1 文字でもそれだけから色々な世界が展開できると思う. その辺を喚起するような作品も作ってみたい. したいこと, たくさんある.
2013-10-09 東大数理の教育事情と私の雑感¶
はじめに¶
一部界隈による東大数理の講義・演習に関しての話がまとまるなり何なりしていた. 話題になっている松尾先生からするとやめてほしいのかもしれないが, 東大での実際の教育内容というの, 高校生には参考になると思うし私も非常に興味があるところなので, 備忘録も込めて記録しておきたい.
引用¶
駒場は楽しそうでいいなあ~ そういえばここしばらく委員長に会ってない.
@Paul_Painleve すごいですねw
@myfavoritescene やる以上は徹底してやる, ということなのでしょう. 学生を一度どこかでこういう形で鍛え上げるのも大切かもしれませんが, 私にはできません. こういう形式でやるなら「集合と位相」だろうとは思います.
@Paul_Painleve @myfavoritescene 厳しくするのは教員側も大変な労力がいりますからねえ....
@Paul_Painleve なかなかできませんよね. プリントを本にして欲しいです.
@ken_math @Paul_Painleve 必修でやると大変なことになりますし. . (などというと怒られそうですが)
@myfavoritescene @ken_math まあ, 昔永田さんは京大の代数が必修だった時代に 3 年生全員を落としたり, たいてい何度も何度も追試をやりましたから. 4 月まで追試やった年もあったんじゃないかな. そういう意味では, 永田 DNA が違う形で受け継がれているのかも.
@myfavoritescene 「集合と位相」は, 数学科でしか教えないこともあって, 日本語の本の種類も豊富とはいえませんし, 演習込みで本になると, 案外と一気に定番になるかもしれません.
永田さん, そんなに凶悪な人だったのかと衝撃を受ける. 私は学部が物理だったので数学の学部教育のスタイルはよく分かっていない. 人にも学校にもよるのだろうとは思う (東大やら京大やらいわゆる旧帝大以外でやったら阿鼻叫喚の様しか想像できない) が, やはりいい大学ではきちんとしたことをやっているのだな, という気はする. 講義に関しては, 東大だと斉藤 (確か恭二) 先生が学部 2 年の代数で「加群というのはベクトルバンドルみたいなものです」とかぶっぱなしたり, 川又先生が関数論で Riemann-Roch まで進むとか, 本質を突きすぎて一致の定理の言明の板書が $f=g$ だけだったとかいう逸話を仕入れている. さすがにここまで無茶をしてそれでまともに人が育つのは東大や京大くらいしかいないとは思うが, 逆にこんな無茶をしても人が育つというのが凄まじい. セミナーなり何なり, きちんと教育すべきところではしているのだとは思うが.
全くの別件だが, 何かの研究集会で川又先生と東北の小谷先生が次のような会話をしていたのを覚えている. 川又先生が「学生が (修論の) 発表をするときには黒板に書いて話すように指導している. 時間が足りないという声も聞くがそれは本質的なところをおさえきれていないからだ. きちんと勘所を押さえておけば板書をしても時間内に収まるはずだし, そこまできちんと準備すべきだ」とか何とか. 小谷先生は「学生は社会に出てからスライドを使った話をする機会は多いだろうし, 学生のうちにそういうのをきっちり練習する機会があった方がいいと思うから, 自分はスライドでもいいと思う」みたいなことを言っていたという記憶.
それはそれとして, スライドで講演されるとメモしきれないし量が多くなりすぎて消化不良にもなるから, できるならスライドやめてほしいとはよく思う. あとで配布する用途には便利だろうけれども. 物理で実験の話だったりすると図なりデータなりがあるからスライドの方が話しやすく聞きやすい面もあるのかもしれない, とか何とかどんどん話がずれてきたのでこの辺で終わろう.
2013-10-08 土屋昭博述, 中井洋史記, 近代ホモトピー論 (1940 年代から 1960 年代まで)¶
本文¶
立川さんのツイート越しに美少女でなる小泉さんによる土屋昭博先生のホモトピー論講義のアレがあったので共有しておく.
こんな講義録があったんですね: http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/publication/documents/2008tsuchiya.pdf RT @koizumi_fifty 土屋先生のご講演『近代ホモトピー論 (1940 年代から 1960 年代まで) 』の pdf が非常に面白いので, 某氏や某氏はぜひ一度読んでおくのがよいと思います.
どこだか忘れたが, 深谷賢治先生の何かの共形場に関する文章で「以前ホモトピー論を専門にしていた土屋と A (名前を忘れた) が, その後 20 年を経て共形場で再び出会ったことは偶然ではない」みたいなのがあった. ホモトピー論と共形場の結び付きが云々みたいな話があるのか, と思った覚えがある.
この深谷先生の発言 (文章) について何かご存知の方は是非教えてほしい.
追記¶
コメントで教えて頂いた.
初出:『数学のたのしみ』第 2 号 (1997 年 8 月), 上野健爾・砂田利一・志賀 浩二編 『現代数学の土壌-数学をささえる基本概念』に 収録の「ホモロジー」の論説の脚注 (22) でしょうか?
引用: かつてともに代数的位相幾何学を研究した, G. Segal と土屋昭博が, 20 年後の ICM 京都で 今度は, 共形場理論の専門家としてまみえたのは, 理由があることであろう.
有り難いことこの上ない.
2013-10-04 超準解析のプロである魔法少女に超準解析で超関数がどうなるかについて聞いてみた¶
超準解析のプロである魔法少女とのやりとりを記録していきたい.
大学入ってから運動量は酷使するものの力積使ったことないのだがアレはいったい何だったのだろう
@phasetr デルタ関数の近似ということにしておこう
@functional_yy ふと思ったのですが超準解析でδ関数はどういう扱いになるのでしょうか. 超準解析的には普通の関数と思えるのか的なアレです
@phasetr この辺り詳しくはないのでよく知りませんが, 例えば幅無限小高さ無限大で掛け合わすと 1 のパルスを考えれば望みの性質は得らます. http://planetmath.org/constructionofdiracdeltafunction
場の量子論で赤外発散という現象があるが, その数学的解決には「場の量子論版の超関数」が必要だと思っている. 作用素環上の状態の空間でとりあえず定義はできるのだが, それを確率論 (経路積分) でいうとどうなるか, 最近は特に表現論的にもう少し突っ込むとどうなるかというあたりをスピン-ボソンモデルで計算している. 代数解析的なアプローチではどうなるかというのは考えていたが, 超準解析的にどう見えるか考えてもいいかもしれない.
2013-10-04 mr_konn さんの PDF: 『 Measure Problem と可測基数』¶
Measure Problem と可測基数 http://konn-san.com/math/measurable-cardinals.html レポートで書いた可測基数とか連続体仮説のはなしを加筆修正して公開しました. PDF 版はこちら
時間をひねり出して読みたい.
2013-10-02 男性・理系が論理的とかいう妄言はどこから湧いて出てくるのだろう¶
何か時々男性理性的で女性は感情的であり, 理系は論理的文系は情緒的でありとかいう異常者を見かけるのだが, 私の感覚で言えば理学部, 特に物理学科・数学科の人間の方がよほど感性だけで生きている. その様子をまとめておいた.
理系一般はどうか知らないし工学は知らないし、理学といっても数学と物理しか知らないが、少なくとも数学と物理関係者、究極的には美しい・面白いしか言わないから理系ほど感性だけで生きている異常者はいないという認識
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2013, 10月 2
理系が論理的とかいう妄言, どこから湧いて出てくるのだろう.
追記¶
@phasetr君みたいな人とか
— 大天使どぎゅえる (@doguuP) 2015, 10月 26
感性の赴くままに生きていると思っていたので, 非常に衝撃的なコメントだった.
2013-10-02 無限次元トポロジーという魔界¶
はじめに¶
tri_iro さんの連続ツイートが面白かったので張っておく.
- https://twitter.com/tri_iro/status/385075846018375680
- https://twitter.com/tri_iro/status/385725260164628480
- https://twitter.com/tri_iro/status/385725908771807232
- https://twitter.com/tri_iro/status/385726851957538818
- https://twitter.com/tri_iro/status/386472808923926528
- https://twitter.com/tri_iro/status/386473588863168514
引用¶
van Mill の "Infinite-Dimensional Topology" http://www.amazon.co.jp/dp/0444871330/ 読んでたら強無限次元の完備な全不連結空間とか超限次元を持たないけど弱無限次元のコンパクト空間の例とか載ってたのでしっかり理解しとこう.
【疑問】アレクサンドロフの問題 (1951) の一般化:コンパクト可分距離空間が遺伝的弱無限次元ならば必ず零次元部分空間の可算和となるか? いや, どちらかといえば反例が欲しいんですが.
ってかヒルベルト・キューブを可算個の全不連結空間の和として分解するのって無理だと勝手に思ってたんですが可能なのかなー. いや, 零次元空間の可算和にするのが無理ってことは簡単に分かるんですが, 無限次元トポロジー本読んでたら, 無限次元の全不連結空間とか出て来るし自信なくなってきた.
アレクサンドロフの問題の Pol による反例は, 変な強無限次元空間のコンパクト化として作るから, 当然, 強無限次元空間を部分空間として含むわけで, 遺伝的弱無限次元にならないんですよねー
E. Pol "高次元遺伝的分解不可能連続体の比較不可能なフレシェ型を持つ族" http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166864104001695 遺伝的強無限次元カントール多様体の非可算族で, フレシェ次元型が反鎖になっているものの作り方がここに載ってた.
「ヒルベルト・キューブを埋め込めない非可算次元ポーランド空間ってどうやって作るんだよ! 」という疑問から始まり, 自力では構成を思いつかず, 「非可算次元ポーランド空間のフレシェ次元型は唯一なんじゃないか」という楽観的な予想をして色々調べていたけど, 無限次元トポロジーの闇は深かった.
無限次元トポロジー, 魔界.
2013-10-01 河東研の学部 4 年セミナーに使われる本の紹介ページが出ていたので¶
本文¶
勝手に例年楽しみにしている河東研の学部 4 年セミナーに使われている本の紹介ページが出ていた.
- 書名: "A Short Course on Spectral Theory" (Graduate Texts in Mathematics 209)
- 著者: W. Arveson
- 出版社: Springer
発行年: 2002 作用素のスペクトルの理論を扱いますが, 関数解析の基本的な内容は ある程度知っている必要があります. 作用素環的な雰囲気があちこちに 出ています.
書名: "A Course in Functional Analysis" (Graduate Texts in Mathematics 96)
- 著者: John B. Conway
- 出版社: Springer
- 発行年: 1990 普通の関数解析から始まります. いろいろなことが書いてあり, 最後の方では C*環の話も出てきます.
Currently Available Books on Operator Algebras - Mathematical Theory of Quantum Fields by H. Araki, Oxford University Press, 1999. - An Invitation to C*-Algebras by W. Arveson, Springer 1976. - K-theory for Operator Algebras by B. Blackadar, Cambridge University Press, 1998. - Operator Algebras by B. Blackadar, Springer, 2005. - Wavelets through a Looking Glass: The World of the Spectrum by O. Bratteli and P. E. T. Jorgensen, Birkhauser, 2002. - Operator Algebras and Quantum Statistical Mechanics, Volumes a pdf file supplied by the author - Noncommutative Geometry by A. Connes, Academic Press, 1995. - C*-Algebras by Example by K. Davidson, Amer. Math. Soc., 1996. - Quantum Symmerties on Operator Algebras by D. E. Evans and Y. Kawahigashi, Oxford University Press, 1998. - Local Quantum Physics by R. Haag, Springer, 1996. - Fundamentals of the Theory of Operator Algebras, Volumes IV by R. V. Kadison and J. R. Ringrose, Amer. Math. Soc., 1997. - An Introduction to K-Theory for C*-Algebras by M. Rordam, F. Larsen and N. Laustsen, Cambrige University Press, 2000. - Theory of Operator Algebras, Volumes III by M. Takesaki, Springer, 1979-2003.
コメント¶
Wavelet の本, あれは本当に作用素環の本だったのか. Bratteli のページにあったので名前だけは知っていたが, 分野を変えたという話で, 作用素環ではない話なのかと思っていた. あと, 以前河東先生から「 Local Quantum Physics は Haag の哲学を書いた本で勉強用に読む本ではありません」というのを直接聞いた. 実際ある程度読んでみようとしたことがあるが, さっぱり分からなかった. 多分今読んでも無理だろう. 荒木先生の本も省略が多くて読めたものではない. その分短いので, 大体どんな話があるかだけ知りたい場合に眺めるのにはいいだろう. 勉強に使える本ではない.
Davidson の本は例がたくさんあって比較的良いらしいが, 内容にムラがあってやたら適当なところややたら詳しいところがあったりすると, いま東北の助教をしている三村さんに伺ったことがある.
Bratteli-Robinson は作用素環の量子統計におけるバイブルなのでその方面の人は読まざるを得ない. ただ, 必要なことが大体全部書いてある分, 雑多と言ってもよく純粋に作用素環を学びたいという人が読む本ではないだろう. 私も全部は読んでいない.
Connes の本もあれで勉強するのはしんどそう. 色々書いてあるので眺めていると楽しいのは間違いない.
Kadison-Ringrose は私も多少読んだ. 普通の関数解析から始まり, Banach 環の話などをしたあと, 作用素環の話題に入る. 作用素環としては標準的だろう. もう少ししっかり読むべきだったとは思っているが, 早く論文読みたかったので適当に切り上げて Bratteli-Robinson に移った. 富山先生に「教育熱心な彼等が書いた良い本だ」と言われた覚えがある.
一番基礎から本格的なのはやはり我らが竹崎先生の書いた三部作だろう. 私は何かの参考で 1-2 度参照しただけで, 全く読んでいない. 以前九大の増田さんの書評で「良い本だが具体例の扱いがかなり後回しになってしまっているので, 詳しい人の指導を受けて適宜例を補いながら読むととてもとてもよい」というのがあった覚えがある. 同じく増田さんの書評で, 竹崎先生の「作用素環の構造」は滅法面白いというのがあった. こちらも読んでみたい. これは軽く眺めたとき, 零れ話的な話で竹崎先生が大発見を逃がして Connes に先にやられてしまった話などが書いてあったり, そういう部分が楽しかった. 何十年も前の話なのにやはり余程悔しかったようで, ちょっとしたスピーチでも良く話を取り上げるようだ. 同じ話を 3 回くらい聞いたことがある. ちなみに今になっても悔しくなるだろう, というくらい作用素環には決定的な話で, Connes コサイクルとか何かその辺の話.
2013-10-01 『古都がはぐくむ現代数学 京大数理研につどう人びと』なる本が出版されるらしいので出たら買う¶
『古都がはぐくむ現代数学 京大数理研につどう人びと』なる本が出版されるらしい.
「超函数の理論, abc 予想, ……京都の数学研究所を舞台に, 日本の数学者たちが新たな数学を生み出す現場を生き生きと描く」 →内村直之『古都がはぐくむ現代数学 京大数理研につどう人びと』日本評論社 http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784535787445.html
何これ. 超ほしい. 出たら買う. まだ買っていなが, IHES のもほしい. アレ, 確か Frohlich がいるのだ.
2013-10-01 美少女であるところのひさこさんを確率的な意味で善導してきた¶
これは美少女であるところのひさこさんを善導したその記録である.
確率論とそれる方向に向かっている方のひさこさん.
@ml_hisako 何やってるんですか
@crobert_z フーリエ解析です.
@ml_hisako 測度のフーリエ変換とかあり, 分布周りの大事な話があり, ガウシアンとの関わりも強いのでそれていない説
@phasetr なるほど. ありがとうございます!
@ml_hisako http://ja.wikipedia.org/wiki/特性関数_(確率論) この辺見ると, 特性関数は定義そのものにフーリエ変換を使っているのが分かります. また確率論の基本的な対象, ガウシアンはフーリエ変換と相性がいいのですが, そういうところで陰に陽に使います
@ml_hisako さらに言えば, ブラウン運動を基礎にした確率積分でもやはりフーリエ変換は適宜使いますし, フーリエ変換発祥の地, 熱方程式を解析するときにも Feynman-Kac の公式という確率論の金字塔もあるので, フーリエはやっておいて全く損はない話です
@ml_hisako むしろ, 色々なものが色々に絡んでいくところこそ面白いところなので, あまり確率論に関係なさそう, という理由で他の数学を避けたりしないようにしてほしいくらいです. 確率論からの共形場理論でウェルナーにフィールズ賞が出ていますが共形場は他の数学との相互作用があります
@ml_hisako 前ブログにも少し書きましたが, 数論と関係ある部分もありますし, 確率論の射程も広く深いです
@phasetr なるほど…最近, 勉強してるうちに違う事もやりたいけれど確率論をやりたい気持ちが強いのでやっぱりそれに基軸を定めてやるなのかと疑問に感じました. でも市民さんからアドバイスをいただき, ほかの数学も避けずに学びたいと思いました. (続く)
@phasetr 伊藤清の確率論の 1 巻を調べてみたら特性関数の章でフーリエ変換を定義してました. Poisson 分布を考える際にも必要なんですね. この章をまだ勉強してませんでしたがフーリエ解析の大切さも理解できました. http://pic.twitter.com/0iobVWGWmf
@ml_hisako ついでなのでもう少し色々書いておくと, 例えばフーリエ解析は表現論と深い関係がありますが, 大雑把に表現論とフーリエの交点に調和解析という分野があります. この分野に確率解析を持ち込んで画期的な仕事をしたのが東大数理の新井仁之先生です
@ml_hisako また伊藤清自身がはじめた分野として確率微分幾何というのもあります. ささくれパイセンがこの辺に進もうとしているようですが, 20 世紀数学の金字塔の 1 つ, Atiyah-Singer の指数定理の確率論的証明という話題もあります
@ml_hisako これや量子力学・場の量子論と深い関係がある話ですが, (偏微分) 作用素を積分核を使って表示することで作用素を詳しく解析する手法としての経路積分 (Feynman-Kac 公式) というのがあり, 作用素論との関わりもあります
@ml_hisako 私が知っている範囲で考えるだけでもこれだけの広がりがある分野です. 元々応用から出てきた分野なので, 統計学まで含めて応用向きの話も数限りなくあります. 確率に限りませんが, 何をやっていてもそれる方が難しいでしょう
@phasetr 確率論がこんなに広がりがあると知り, 改めて学びたいなと思いました. 貴重なお話ありがとうございます! また色々教えてください!! 私も勉強して身につけたいです.
数年したら逆に色々教えてもらえるようになるはずだ. 楽しみに待っていたい.
2013-10-01 数学のできるイケメンエリートの育成は急務である¶
女性の望みと男性の対応, それに対するさらなる女性の対応というのが Twitter でネタになっていたので便乗した.
■女子の望み 数学のできるイケメンエリートを出せ ■男子の対応 数学が出来ないので曖昧な笑顔でごまかす ■女子の反応 人人人 人人人人
線型代数で殴打< YYYYYYYYYYYYY
数学のできるイケメンエリートの育成は急務である.
2013-10-01 小林銅蟲による裏サンデーの漫画「寿司 虚空編」と数学¶
【なんでずっと数学の話なんだよ! 裏サンデーの漫画「寿司 虚空編」がシュールすぎる】ということで話題になっている漫画があるようだ.
[ねとらぼ] なんでずっと数学の話なんだよ! 裏サンデーの漫画「寿司 虚空編」がシュールすぎる http://bit.ly/16c8zfr
元の記事も引用しておこう.
引用¶
寿司屋が延々と数学の話をし続けるというシュールすぎる漫画がネット上で話題になっています.
話題になっているのは, 小林銅蟲さんが裏サンデーで連載中の「寿司虚空編」. お寿司をテーマにした漫画かと思いきや, 板前たちが 2 ページ目から突然「グラハム数」という数学の話を始め, 以後ずっとその話が続きます. 中略.
小林銅蟲さんは Web 漫画「ねぎ姉さん」でもシュールさや難解な数学用語の導入が話題を呼んだ作者.
小林銅蟲, 名前を覚えておこう.
2013-09-30 愛情の表現論とは¶
しょうもない話だが, 愛情表現というツイートを見かけて次のようなことを想起した.
愛情表現, 何のというかどんな表現なのだろう
@phasetr ほしい物リストの中からプレゼント
@sulaymanhakiym すみません. 私が言っていたのはこの意味での表現です
@phasetr この手の文章は漢字の読みなどは問題なく読めるところから, 確実に素人を殺しにきます.
@sulaymanhakiym @phasetr 表現論は誰でもわかる!
もちろん群の表現とかの意味での表現を考えていた.
2013-09-29 コンパクトの訳語, 完閉やら緊密というのがあったようだが何故使われなくなってしまったのだろう¶
コンパクトの訳語は何かあるのだろうかというツイートをしたら色々教えて頂いた.
いまふと思ったのだが, コンパクト, 日本語に無理やり訳すとするとどうなるのだろう. 昔何か無理やり訳していたりしてそのときの訳語とか何かないの
@phasetr 完閉と読んでいたという話を何人かの先生から聞いたことが
@ysgr_sasakure !!!感謝感激雨霰!!!
@phasetr 緊密と言う訳もありますね
鍵アカウントなので直接の引用は控えるが, 「立花俊一, リーマン幾何学, 朝倉書店では実際に完閉と書かれている」という事も教えて頂いた. 何で使われなくなったのだろう, というのも気になる. どう調べればいいのかよく分からないが数学史でこういう言葉の定義や変遷とか調べるのも面白そう.
2013-09-29 本当は怖いBanach空間¶
引用¶
Banach 空間がやばい的なツイートを見かけてこう色々と感銘を受けた.
Banach 空間病的すぎるだろ…
@Lyirth あまりよく知らないのですが, バナッハ空間は多様な微分方程式を制御するために出てきた, 多様なものを許容する空間とかいう話を聞いたことがあります. 作用素環もバナッハ空間ですが, 環構造と対合と特殊なノルムをつけてすらどうにもならないヤバい空間で小粋という理解
@Lyirth 何に書いてあるか思い出したので調べたのですが, $\ell^2$ の原点にあった積分方程式とそのための関数空間, 線型作用素論を展開するためにバナッハが導入した, という話のようです. 志賀先生の「無限からの光芒」 p116-117 に書いてあります
@Lyirth この本, 竹崎先生も名著と呼ぶスーパーよい本で, 私も学部 1 年で細部が全く訳分からないのに読んで感銘を受け, 院で数学に行ったというところで深い影響を受けているスーパー面白い本なので, 未読なら是非読んで下さい
@Lyirth 昨日からやっているサマースクール数理物理でちょうど議論しているところですが, フラットな時空上での相対論的な方だと収束評価が死ぬほどつらくてどうにもなっていないというのが率直なところです. 非相対論ならある程度は制御できています. あくまである程度は
@phasetr 実をいうと覚えてないと思いますが $C^$ 環を始めたのは「ユニタリ化と局所コンパクト空間の一点コンパクト化」が対応しているということを 市民さんから一年以上前に聞いたのが Cに興味を持ったきっかけで C*の門を叩いたこのタイミングでもう一度お話を聞けるのは幸せです.
@Lyirth それ覚えています. 今日河東先生が AQFT の共形場周辺をやっているのは河東先生の他, Longo とその学生くらいしかいないのでもっと増えてほしい的なことを言っていました. 場の理論であるのはもちろん, 頂点代数作用素等色々な数学が絡む面白い所なので目指されては
@phasetr 読みます. ありがとうございます! (ところでもし面倒でなければ教えて頂きたいのですが (基本的な内容で申し訳ありせん) Banach 空間 A=B+C (直和) と書けるときに B が閉→ C は閉って反例あるのでしょうか?)
@Lyirth ちなみにこの本, 前半でカントル集合とか他にもこう色々一見関数解析と関係なさげで基礎的な話が出てきますが, 作用素環だと意外とその辺かなりクリティカルで, カントルに関しては千葉大の松井さんの研究対象にもなっている程度です http://www.math.s.chiba-u.ac.jp/~matui/
@phasetr 嬉しいです! 最近楽しいなと思っていたのですがますます心惹かれた気がします. とりあえず, Murphy の $C^*$ algebra を読んでみようと思います. もし読み終えることができたらオススメの本をお聞きするかもしれませんがそのときはお願いします.
@Lyirth まだ証明つけていないのですが, 日合-柳の「ヒルベルト空間と線型作用素」 P29, 演習問題 12 として【直和ノルム空間 X+Y がバナッハである必要十分条件が X,Y ともにバナッハである】とあるので, 反例ないのではないでしょうか
@phasetr 直和ノルムではなく, $X+Y$ にノルムを入れてそれを $X$ 上 $Y$ 上に制限するときに元のノルムと制限から作られた直和ノルムが同型ならそうだと思います. もしそうでないなら一般の場合にも言えるのでしょうか? (続け様にすみません汗
@Lyirth まだ同型になる場合の証明をつけていないのでアレですが, まずは同型になってしまう理由からきちんと調べたいところです. あとは一般の位相空間や位相群でも類似の問題を考えて様子見したいところです. ノルム空間だと半端に知っているところにひきづられてしまうので
@phasetr 昨日の問題, 否定的に解決されまして人から教えて頂いたのですが, 例えばまず稠密な基底を取ったあとにそれを延長して代数的な基底を作り延長した元から一元除くと, codim1 の閉でない空間と一次元 (すなわち閉) 部分空間の直和になり反例になるようです.
@Lyirth ありがとうございます. 代数的なきていというの, いまだに感覚が掴めないですね. そもそもバナッハで基底を使わないので
@phasetr たしかにまだゲルファント表現あたりまでしか読んでないのですが, 一度も基底を取ってないです笑 一応線形空間なのに基底を取らないというのは変わった感じがします (無限からの光芒買ってきました←
コメント¶
志賀先生の本はこれだ. ハイパー面白いのでとにかく買って読むべき.
上掲書にもあるが, Banach での基底を Schaudar 基底とか言ったりもするらしい. ただ, 使ったことはない. 作用素環だと, 各作用素の成分表示をするときがないわけでもなく, そのときは「行列単位」という形での基底を取ることはある. 少なくともイメージのレベルではよく行列形式の書き方はするし, von Neumann 環だと本当に必ず射影があるので, それに合わせて「コーナーを取る」とかいう形で作用素を行列表示することもある.
あと, 作用素環専攻だったにも関わらず, 物理への応用まわりと作用素論の勉強にかなり時間を割いたせいで, 本当に作用素環の基礎事項を知らない. GNS とか本当の基礎の基礎と, 物理で使う関係上, 冨田-竹崎理論を (私の物理に必要な範囲内の state レベルで) やった程度. (ただ, たまたま竹崎先生の集中講義があって, weight での定式化も一度やったことにはなっている. ) ICC とか II_1 factor とか, K-理論とか知らないのはかなりやばいのでどうにかしたいとは思うが, なかなか思うに任せない. 先日のつどいで関さんの 290 定理にも興味があったにも関わらず, パン耳パイセンの作用素環入門を聞きにいった理由もここにある. これはこれで十分に楽しかったのでいいのだが, 私の作用素環がズタズタなのは変わらない.
それはそれとして, 初めて邂逅したときは学部初年度でひいひい言っていた学生達が, あっという間に学部 3-4 年になり, 院に行き, とんでもないレベル, 世界最先端にアタックしていくようになるのを見るのはとても楽しい. るの人も 1 年くらいすれば当然私を凌駕するようになるだろう. 何か面白い話を聞かせてほしい.
その他¶
発端となった Banach 空間のアレの PDF の話とかもある. あとこんなマイコメントもつけておこう.
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1100-12.pdf 近寄りたくないw
ちょっとるの人がバナッハ空間に関する, 感銘を受けざるを得ない PDF を張っているのであとできちんと読む
@phasetr 私の心はむしろヒルベルト空間と共にあるのだが, もう 1 つの心の故郷として作用素環があり, 一般にはノルム空間 (ノルム環) であってバナッハ空間なので要はバナッハ空間は祈りの対象
その他¶
あとこの辺も面白い.
@phasetr 読みます. ありがとうございます! (ところでもし面倒でなければ教えて頂きたいのですが (基本的な内容で申し訳ありせん) Banach 空間 A=B+C (直和) と書けるときに B が閉→ C は閉って反例あるのでしょうか?)
@Lyirth 横槍失礼, 直和が単に algebraic な直和の閉包になるというだけの意味なら, closed でない codim 1 subspace はたくさんあるが, dim 1 subspace は常に閉. これらを complementary に取ることは難しくないよね.
@Lyirth 閉包とったほうが安全だけど, この例は片方 dim 1 だし閉包とってないよ. Hilbert でもできるけど, ミソはあえて orthogonal じゃなくとるところさね.
@Lyirth 可算次元 dense subspace をはる基底をとってから, それを延長して代数的な基底を作り, 最後一個以外からはられる subspace は codim 1 だが dense だね. これでどんな Banach 空間でもできる.
@Ara_1729 お風呂で気づきました! 代数的な操作については"いつでも基底が取れる"んですもんね! そこで最初に可算 subspace を貼るのはなぜですか?
@Lyirth 適当に基底とって一個残して subspace 作る時に, closed にならないようにすれば他の方法でも大丈夫
@Ara_1729 なるほど, すっごく納得しました. ありがとうございます, 勉強になりました.
さらっと例が作れるの, 格好いい.
2013-09-29 るのひとによる Gowers の仕事紹介 PDF の発掘¶
るのひとが, この間 フィールズ賞を取った Gowers の業績紹介 PDF を発掘していた.
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1100-12.pdf 近寄りたくないw
はじめて Gowers の話を聞いたとき, まず一般の Banach 空間論の研究をやっている人がまだいるということに衝撃を受けた. $C^*$ や von Neumann 環も Banach 空間ではあるが, 作用素環というまた別のラインの話であり, こう色々と衝撃を受ける.
フィールズのときの紹介で, 証明も組み合わせ論など純関数解析的な話以外も駆使したとか書いてあって, 何をやっているのだ的な感じがあり, 戦慄した. 関数解析怖い.
2013-09-28 九大の原隆さんとの初邂逅を果たした一方で論文投稿を勧められる方の市民¶
Summer School 数理物理で原さんとの初邂逅を果たしたことなどは先日まとめたが, 呟きの方をまとめておきたい. これとかこれ.
明日, 原さんの講義を録音したいくらい原さんの語り口が気に入った方の市民
腹さんについては田崎さんのようなパンチャーを想定していた
@phasetr 腹→原. 数理物理で育ったはずの相転移 P 氏が柔らかいと感じるとは意外
@tetshattori これはひどいタイポ. それはともかく, 何と言うかこう, 田崎さんがかなり攻撃的な感じなので, どういう人なのだろうと思っていて, 語り口が凄く柔らかくて穏やかなかんじだったという程度の意味です. 講義内容についてはきちんとやるなら激烈ハードな内容です
@phasetr 田崎氏と長くコンビを組んでいる時点でおわかりと思いますが. ところでもう投稿しましたか
@tetshattori 投稿まだです. 先週関西すうがく徒のつどいのトークの準備があったのと今の Summer School 数理物理でブラッシュアップされるであろう状勢を見てからきちんと序文を書き直そうと思っていたもので. 新井先生からも是非出版するようにというご意見を頂きました
@phasetr 新井先生にも推奨されましたか. それは心強い
@tetshattori @phasetr 「田崎氏と長くコンビを組んでいる時点でおわかり」というと, 何が? (a) 原氏は温厚な人に決まっている (b) 原氏は温厚そうでも中身は攻撃的だとわかる (c) 田崎も攻撃的に見えて実は温厚 ← これか!
@HalTasaki_Sdot ああ, 悪いけど, どれも違ってて, @phasetr へのリプなので, 原・田崎についての何かではなく, 相転移 P さんの感想についてのある statement を示唆したのです
@tetshattori @HalTasaki_Sdot 何はともあれ, 以前も直接言いましたが, できることはやるのでイジング本で何かあれば適当に声をかけてください. イジング周りはともかく, 現状の非相対論的構成的場の理論周りなら私の知見と能力はまだ使い物になるようだと分かったので
@phasetr その前に論文を投稿することを勧めます
@tetshattori 頑張ります
論文投稿を勧められる方の市民だった. 頑張ろう.
2013-09-27 相転移関連の論文「More is the Same; Phase Transitions and Mean Field Theories」¶
「More is the Same; Phase Transitions and Mean Field Theories」 初期の相転移の理論について注目した論文らしい
平均場なので微妙な感もあるが, 初期の相転移の理論をあまりよく知らないので, 歴史的な興味もある.
2013-09-23 解析学とコンパクト性: 特に無限次元空間の単位球の(汎)弱コンパクト性¶
本文¶
ブルブルエンジン兄貴と解析学に関するやりとりをしてきた これとかこれ.
やりとりその 1¶
ヒルベルト空間は, 閉単位球体が点列コンパクトなら直交基底を持つらしいのですが, これ選択公理要るのってやばいんですか??
@alg_d 誰も気にしていないのでは. 作用素環だとちょっとした汎関数つくるのに選択公理つかうようですし, 使うものと割り切っているか気にしないか, という印象
@phasetr この命題が成り立たないとしたらやばいんですか??
@alg_d 応用上, 大体可分なところしか考えない (ただ, $L^{\infty}$ はよく出てくるのに非可分)(作用素環だと普通可分性を仮定)ので, そもそも現行人類が制御できる世界の外側なのでは, という感覚があります
@phasetr やばいと思った
やりとりその 2¶
そもそも関数解析で閉単位球体をコンパクトにしたいのってなんかあるんですか
@alg_d 「有界閉集合はコンパクト」の類似が使えてこう色々とはかどるからです. 幾何でよくコンパクト多様体ばかり出てくるのと似たような感じ
@phasetr なんかはかどるイメージがあまりわかないレベルで雑魚でした
@alg_d 解析学だと何かしら収束させないと話が進まないわけですが, 有界列であれば部分列くらいは収束してくれるのでうれしいわけです. そういう感じ
@phasetr はー, なるほど!!
2013-09-18 Ian G. Macdonald の Hypergeometric Functions I, II が arXiv に出た: II は q-analog¶
私は全く知らなかったが, その筋では有名だったらしい Ian G. Macdonald の Hypergeometric Functions I, II が arXiv に出たとのこと. これとこれだ. II は q-analog でその筋にはとても貴重な文献らしい.
2013-09-13 多面体の折り紙--正多面体・準正多面体およびその双対¶
多面体の折紙-正多面体・準正多面体およびその双対という修羅のような本があるらしい.
折り紙というと兵庫教育大学院大学の和田宗士さんによる折り紙の作図可能性に関する論文も想起される. 折り紙, Origami とか言って世界的にも認知されつつあるとかいう話を聞くのであなどれない. 上記の本も読んでみたい.
2013-09-05 「プログラマのための圏論の基礎」なるページがあったのでとりあえず共有¶
まろやかな人ことホモト P が「プログラマのための圏論の基礎」なるものを発見していた.
たぶん読めない / "プログラマのための圏論の基礎 (仮題)" http://htn.to/ueTycU
この記事は, プログラマに向けた圏論の入門記事です. 通常の圏論の教科書より解説を多く, プログラマにとって必要ない概念を削って書いています. 圏論とは何かから始まり, アルゴリズム設計, プログラム意味論および Haskell の free-operational パッケージと圏論との関連について解説していきます.
前提知識として必須ではありませんが, 何かしらの関数型言語に慣れ親しんでいると読みやすいと思います. 本記事では Haskell に特化した話題を出すこともありますが, 多くは Haskell の知識がなくても大丈夫です.
そもそもプログラマに圏論必要なの, というところからよく分からないが.
プログラミング Coq というのもあった. 一応メモしておきたい.
プログラミング Coq
〜絶対にバグのないプログラムの書き方 〜
はじめまして. 今回, Coq のチュートリアルを執筆させていただくことになった池渕未来 (いけぶちみらい) です. IIJ-II のアルバイトとして, 山本和彦先生のもとで, この連載を書きます.
私はこの春から女子大生になります. Coq のエライ人でもスゴイ人でもありません. そうであるからこそ, 読者の皆さんと同じ視線に立って一緒に楽しく Coq を学んでいけるのではないかな? と思います.
2013-09-03 tri_iroさん筋による情報: よく知らないがシータパン予想なる不可解な言葉をマスコミが生み出したらしい¶
本文¶
よく知らないがシータパン予想なる不可解な言葉をマスコミが生み出したらしい
1 年半前の記事だけど, これニュースになってたのか
史上最年少 22 歳の大学教授誕生! 難問「シータパンの予想」を解いた数学の天才-中国 http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20120322/Recordchina_20120322011.html
「デヴィッド・シータパンは, 英国の論理学者, 投資銀行家, 漁師である」 http://en.wikipedia.org/wiki/David_Seetapun 論理学者 ⇒ ゴールドマン・サックスのトレーダー ⇒ 100 億円の損失 ⇒ ラスベガスのギャンブラー ⇒ マグロ漁船の乗組員 という経歴はなかなか斬新ですね.
14 年前の記事ですが, デヴィッド・シータパンに関する記事: 『幾億もの損失を出したポスドク』 http://www.timeshighereducation.co.uk/148896.article
僕は修士時代はシータパンと割に近い研究をやっていて, シータパン論文も引用していたりしたんですけど, なんか無事に生きてるのかどうかすら心配になる経歴を辿っててやばい.
なぜ急にシータパンの話をしたかというと, Woodin の tt-join 定理の論文をどっかで入手できないものかとググってたら, Wikipedia のシータパンの記事が検索に引っ掛かったので, シータパンの記事なんてあったのかーと懐かしんでいたのでした.
『「シータパンの予想」とは, 90 年代に数学者のデビッド・シータパンが作成した数理論上の難問で, これまでに世界中の数学者や研究者が挑戦したが誰も解くことができなかった』. 世界中の数学者…って世界でせいぜい 30 人くらいしか挑戦してないのでは. いや僕も修士の時に挑戦した人の一人ですが
"Seetapun Conjecture" でググっても劉路さんのことしか出てこなくて予想の内容が出てこないのでアレ.
@jun0inoue 研究者の間では「RT^2_2 → WKL?」という専門用語で呼ばれていて, シータパン予想というのは, 記事にするために作った用語かな, と思います. というか大して有名な問題でもないのに, こんなニュースになっていたというのが驚きです.
@tri_iro なるほど. まあでも学部生で未解決問題解けるのは十分凄いんでは…
@jun0inoue はい, マイナーとはいえ超難問を解決し, 劉路さんの論文も良いアイデアと難解なテクニックを組み合わせた素晴らしいものなんですが, 学部生から「修士」「博士」「ポスドク」「助教」「准教授」をすっ飛ばしていきなり「正教授」は, 少し飛び過ぎなのでは……と心配になってます
@tri_iro 昔からそういう人は時々いますし, それはそれでうまく行くんじゃないかと思います.
構成的場の量子論, 厳密統計力学ともにあまり名のついた有名な予想ないし, 竹崎先生いわく, 私の数学上の専門ということになっている作用素環にも名前のついた有名な予想は少ない. 何か名前がある問題, 紹介しやすくていいな, という印象を受けた.
追記¶
シータパン予想ってラムゼー関連なのでとりいろさんが詳しいのは予想がつきましたが RT^2_2 → WKL のことだったのですか.
Ramsey, 名前だけは知っているが何者なの, ということで Wikipedia 先生から引用する.
フランク・プランプトン・ラムゼイ (姓はラムジーとも, Frank Plumpton Ramsey, 1903 年 2 月 22 日 – 1930 年 1 月 19 日) はイギリスの数学者である. ケンブリッジ出身. その生涯は非常に短かったが数学・哲学・経済学に大きく貢献した. ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ (1920-23) にて学ぶ. 卒業後, 短期間ウィーンに留学した後, キングス・カレッジフェロー (1924) ・講師 (1926).
ベイズ確率
確率論の主観的解釈 (のちにベイズ主義と呼ばれる) は 1931 年にラムゼイによって提唱される. ラッセル・ホワイトヘッド理論の簡易化 ラムゼーの定理 ラムゼイ数 ラムゼイ・グラフ ラムゼイ問題
哲学
論理哲学論考の書評 ウィトゲンシュタインへの手紙 論理哲学論考の英訳者の 1 人. ウィトゲンシュタインの論文指導
想像以上に無茶苦茶な人材だった. やばい.
ラベル¶
数学, 数理論理
2013-08-23 加藤文元さんの Foundations of Rigid Geometry Vol.I が arXiv で出たので¶
加藤文元さんがご自身の Foundations of Rigid Geometry を宣伝していた.
『Foundations of Rigid Geometry』 (Vol. I) がついに arXiv からリリースされました. ここまで来るのに 10 年かかりました. http://arxiv.org/abs/1308.4734
今の代数幾何・数論界隈で 10 年もかかったら基礎の部分から大きく書き直しが発生したことも何度かあるだろうし, 凄まじい. さらに Vol. I というのがやばい. これ, あと何巻続く予定なのだろう.
2013-08-22 「いい数学書とは, 初等的な例が多く載っている本である」なんて聞いたことがない¶
http://www.amazon.co.jp/review/RN778JMC1RCXH/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8&ASIN=4785314044&channel=detail-glance&nodeID=465392&store=books 【どこかの文献で, 「いい数学書とは, 初等的な例が多く載っている本である」と読んだことがあるが】聞いたことがない
特に初学者向けの本ということなら初等的な例もある程度載せた方がいいが, 大事なのは面白い例やきわどい反例を議論することだろう. 大事な例に関しては 1 章まるまる割いて議論してもいいくらいだし, 実際そういう本もよくある.
とにかくこんな話は聞いたことがないのだが, どの文献にどういった形で書いてあったのか非常に気になる.
2013-08-21 Twitterで辻元先生の複素多様体論講義の言及があったので¶
Twitterで辻元先生の複素多様体論講義の言及があったのでちょっと呟いてみた.
辻先生の複素多様体論講義, 進度自体もめちゃくちゃだが話題の豊富さもやばい. きちんと読んではいないが. 勉強する本ではなくこんな進展があるのか, という感じで概観するのにはよさそうなというかそれしかない感. 引用されているDemailyのPDFとか読んだ方がいいのでは説
@phasetr なんのシリーズですか…??
@waheyhey サイエンス社のやつです http://www.amazon.co.jp/dp/B009M8UX94 Demailyのはこれ
@eszett66 @phasetr 小林複素幾何とはまた別のことが書いてある感じですか?
@waheyhey @eszett66 アレよりももっと解析的です. たとえば調和積分の楕円型作用素の話が書いてあったり L^2 評価式とか書いてあります
@eszett66 なるほどー. 今度書店か図書館でみてみます!
@phasetr か, 解析…
@eszett66 よ, 読んでみます
この本は複素幾何のトピック集みたいな感じもある. 分量の割にトピックが豊富なのでその分 1 つ 1 つの記述は薄いのでこれで勉強するのはかなりつらそう.
2013-08-20 H. M. エンツェンスベルガー, 岡本和夫著『数学者は城の中?』¶
H. M. エンツェンスベルガー, 岡本和夫著『数学者は城の中? 』読了. 1998 年の国際数学者会議で行われたエンツェンスベルガーの講演と, 岡本先生のエッセイ. 数学関係者はうなずく内容なのではないでしょうか. 数学嫌いの人にも面白いはず. なんて思っていたら, あれ, 岡本先生? (S)
Amazon を見てみると, オリジナルは独英対訳本らしい. ドイツ語の復習も兼ねてそちらも読んでみたいところだが, 和訳の方は岡本先生の文章もあるという. どちらを買おうか悩む方の市民だった. ちなみにこの岡本先生は以前 Paul が「月光仮面世代の和夫ちゃんは, その辺はわからないっす.」と言っていた岡本先生だ.
2013-08-19 加藤文元, 廣中クローン説¶
ブンゲン先生は広中先生のクローン説は良い思い出 http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/ikite/ik091215.html
@yagi2013 3 つ比べると モリキ~ヒロナカ~~~ブソゲソ という位置づけのような気がします
"@yagi2013: ブンゲン先生は広中先生のクローン説は良い思い出 http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/ikite/ik091215.html" 比較の対象がスゴい人過ぎる…森毅先生も…
写真が見当たらないのだが, 早稲田の小松啓一先生も廣中先生に似ている気がする. 特に私が把握している限りの廣中先生の昔の髪型と小松先生の髪型が.
全く関係ないが, 学生時代に廣中先生からサインをもらったことを想起した. ちょうど先日整理していたら発掘した.
2013-08-16 有限次元線型位相空間の位相の入れ方: $T_2$ なら一意的¶
やりとり¶
線型位相空間としての $\mathbb{R}^n$ に入る位相について次のようなやりとりをし, 文献を教わった.
@phasetr @ilovegalois R^n に対しては実位相線形空間としての位相の入れ方は一意的です. 無限次元の時のみ問題になります.
@hymathlogic 証明どこにあるでしょうか. 読んでみたい
@phasetr 帰ったら返信します. (一意というのは正確には間違いで T_0 なら一意です)
@phasetr http://www.math.ksu.edu/~nagy/func-an-2007-2008/top-vs-3.pdf これなんてどうでしょう
コメント¶
$T_0$ とはいえ分離公理が効いているというの, なかなか戦慄させてくれる. というわけで Gabriel Nagy による Topological Vector Spaces III: Finite Dimensional Spaces を読み進める.
$\mathbb{K}$ を $\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$ とした線型空間での議論をしている. 線型写像を基礎にして位相を議論していく.
In this section we take a closer look at finite dimensional topological vector spaces, and we will learn that they are uninteresting from the topological point of view.
そうだったのか.
Exercise 1. Show that the only other linear (non-Hausdorff) topology on $\mathbb{K}$ is the trivial topology $\mathfrak{T} = \left{ \emptyset, \mathbb{K} \right}$.
何だと.
Theorem 2. For a topological vector space $\mathcal{X}$, the following are equivalent: (i) $\mathcal{X}$ is finite dimensional; (ii) $\mathcal{X}$ is locally compact.
Hilbert 空間ですら弱位相でないと単位球がコンパクトにならないのでその意味では関数解析を学んでいれば「自明」に近い事実だが, 改めて見ると衝撃的だ.
それはそうと, 山元さん, $T_0$ という風に書いているが, この文献では $T_2$ の枠内での議論だ. $T_0$ で言えるのだろうか. あと, 線型位相は必ず $T_2$ とかいう話だったろうか. 今すぐチェックする気力が出ないので, 今度確かめたいが, いつになることやらということで悲しみ.
$T_2$ というと我らが zena_mp さんに怒られそうな気もする.
2013-08-16 数学書は定理の証明や例・反例は追加パックで買う¶
先日の飲み会での話. DeNA やグリーがもし数学書を電子出版すれば, 「証明は自明」と書いてるところで「100 円課金で詳細を解説!」と出てくる. 演習問題の解答も全て課金システム. Web3.0 時代の数学書はこうなっちゃうな.
@nolimbre 課金のバランスをうまく考えれば, DeNA 数学シリーズ・全巻無料! (でも, すべて課金すれば一冊 20 万円) とかで大儲けできるかもしれません. 演習問題を試験に出すことにすれば, 7 月と 1 月にはサーバーが落ちる「バルス」本まで生まれることでしょう.
今鍵がかかっているのでアレだが, 以前 nolimbre さんが言っていたのは, 上記のようなタイプのような数学書について「定理の証明パック」とか「例や反例の追加パック」つけよう的なアレだった.
例と反例の追加パックは本当にほしいし, 自分でも何とかしたいと思っている. 単位元のない環に関する話を繰り返し書いているのもその辺を何とか埋めようと思ってのことだ. つどいでの講演もこの辺の話に端を発している.
前, Euclid の幾何アプリとかどうだろうというのを考えたことがある. 定理を武器というか鍵というか, とにかくその辺の何かに見立てて, はじめは公準しか使えないところに定理という鍵をどんどん見つけていって, 合う鍵を上手く見つけて定理という閉じた扉を開けていく, みたいなゲーム. 初等幾何で「直観的に明らかなことなのに何故使ってはいけないのか」というのを, 鍵とかで適当に表現してゲームとして身につけさせる感じ.
これの最大の問題は, 証明の自動採点部分だ. ゲームにするなら人力は無理だから. Euclid の原論の流れに沿った形にすれば多少は何とかなるか, とか思ったが, それを実装する腕, 少なくとも私にはない. 一般の数学でやると, 証明の経路が凄まじく多種多様になるため追いつかないので, 今の時点で本当にゲーム化するなら, 適当に制限を入れないと無理だろう.
IT が進歩したといっても, この程度も実現できていないし, 乙女回路などもいまだ開発されていないし, こういうのを少し考えただけでも科学万能主義とかいうのが異常者の戯言というのが分かる.
最後に これを引用して終わりとする.
.@wingcloud 各節末の演習問題を解くと, ビブンタンやコユーチタンなどの素敵な萌えキャラカードが集められるんです. 後半になると着てる服がしだいに (略
2013-08-13 大学によるオンライン無料講義が出たとしても大学含めしばらく「学校」の意味は失われない¶
本文¶
我らが Paul による教育に関するこんなツイートがあった. ちなみに 以前当人から Paul と呼ぶように言われたのでそうした.
オンラインの無料講義はどんどん公開すればよい. もっとも効率化できると思われる大学低学年教育を考えても, これだけ微積や線型代数のわかりやすい教科書・問題集が世にあふれているのに, 独習できてる学生が少ない. その現状を思えば, オンラインですべてが置き換わるはずがないのだ.
かなり前だが MIT かどこかが全講義をオンラインで動画配信しているとかいうニュースを見たことがある. 動画配信にしろ PDF などの配布にしろ, オンラインの教材がいくら充実しても, 少なくともしばらくは従来通りの学校での教育に完全に置き換わることはないだろう. 理由は簡単で, 一人での孤独な学習に耐え切れる人間はそうはいないからだ. また, 従来通りの対面の学習は時間・空間的な強制力が強い. この強制力に代わる何かがオンラインで実現できない限り, 怠惰な人は勉強が進まない. そしてほぼ全ての人間は怠惰なので要はどうにもならない.
後者とも関わるが, 「一人での孤独な学習に耐え切れる人間はそうはいない」という点がおそらく決定的に大事. 友人などと「やはりお前もここは分からないか. 自分も分からなくて困っている」などなど, 色々な形で具体的に共感しつつ共に学べる人が近くにいるのといないのでは精神衛生上大きな違いがある.
やり方にもよるが, オンライン教育だとやりたいところだけやるということにもなりがちな印象があるが, これはあまり良くない. 先々で何が役に立つかは分からない. 現状の専門家が将来に渡って役に立つだろうと思った内容を, とにかく強制で一通り学ぶというのは意味のあることだろう. 情報関係など移り変わりの激しい分野はあるだろうが, 基礎体力として身につけたことはそう無駄にはなるまい.
頭がおかしい人による相当にアレなものもネットには落ちているし, 玉石混交で結構怖いところはある. 大学教員にも時々アレな人はいる. 元はまともだったのに時とともにアレになってしまう人もいる. 大学から出ている教材だからといって無条件に信頼できるものでもない, とか言い出すとまた大変なことになるが, 要は自分の目も磨きつつ一所懸命勉強するしかないということでお茶を濁しつつ無責任に終わりたい.
ラベル¶
数学, 教育
2013-08-10 ドイツで数学したい¶
はじめに¶
8 月はドイツにいたいというアレを見つけたのでちょっとお話した.
引用¶
8 月はずっとドイツとかで過ごしていたいのだけど, そういう都合の良い研究会はないだろうか?
@AHD21 オーベルヴォルバッハとか. 何があるのか, やっているのか全く知りませんが
@phasetr 初めて聞きました. 調べみましたが, 滞在型研究施設という感じの所でしょうか. 自然に囲まれていて良いですね.
@AHD21 数学の方では有名です. 当然私は行った事無いですが, 環境的にお知り合いにそこに行った方をたくさん見つけられると思うので, そちらに相談してみるといいでしょう. 私も行ってみたかった
@phasetr ありがとうございます. 僕の興味に近い研究会も行われているようなので, 今後アンテナを張っておく事にします.
今ツイート見たら派手にタイポしていて泣いているが, Oberwolfachはこれだ. 一度は行ってみたかった.
2013-08-10 3ヶ月ごとに論文書かないと¶
号泣した.
論文の謝辞が, アニメキャラになる時代か. 3 か月ごとに論文書かないといけないなあ.
2013-08-09 論文: Garity-Repovš の Inequivalent Cantor Sets in $R^{3}$ Whose Complements Have the Same Fundamental Group¶
まだ読んでいないのだが Cantor 集合の補集合の基本群を計算してガチャガチャやる論文が出たそうだ. 相変わらずの kyon_math さん情報であった.
Inequivalent Cantor Sets in $R^{3}$ Whose Complements Have the Same Fundamental Group. http://arxiv.org/abs/1307.8111
えー? カントール集合の補集合の基本群だと? そんなの考えたこともなかった. すげー. http://bit.ly/15aQCyh
これを読む時間, いつ取れるだろうか.
2013-08-08 東大のTodai Researchなるページがあった¶
寡聞にして知らなかったのだが, Todai Research というページがあった. 未発見の素粒子がトポロジカル絶縁体で活躍, 強磁性を保ったまま金属から絶縁体に相転移するしくみを解明などはかなり気になる. 数学のネタもある, または上がってくるはずなので, 注視したい.
他の大学でもあるはずだし, 個人的に北大数学, さらに強く新井先生の動向は気になるのでこう色々とアレ.
2013-08-06 研究室で昼寝をしていたら幽体離脱してしまったので Hilbert 空間に行ってきた¶
いつもどおり, 研究室で心地よい昼寝を楽しんでいた数学者のぼくに驚愕すべきことが起こった. なんと, 無意識に幽体離脱をやってしまったのだ! 肉体を離れて意識だけになったぼくは, 一冊の案内書に導かれ, ヒルベルト空間を-. 数学の概念が文字どおり実体化した奇妙奇天烈な世界を目指した…. "無限"の実像を探求するため. 鬼才の名に値する真の鬼才が怒涛のアイデアで SF と数学の極北を探求する超絶マッド SF.
調べたところ, ルーディ・ラッカーの『ホワイト・ラッカー』というハヤカワ文庫 SF の作品らしい.
最近積読が多過ぎてつらいのだが, これはちょっと読んでみたい. 本当に Hilbert 空間に行けたのだろうか.
2013-08-02 チャーハニスト鈴木と tri_iro さんによるランダムネス対話の記録¶
チャーハニスト鈴木と tri_iro さんによる対話を記録しておく.
Schnorr ランダムとか Martin-L Ö F ランダムの話というかランダムネスの話, なんべんも聴いてるのに, 未だにぜんぜんわからない…
@mszk_p コーエン強制法とランダム強制法を recursive な世界に落とし込んだ位相と測度の対比からランダムネスを理解すると, 次数絡みのランダムネス研究が何をやりたいのかは分かりやすいと思います (超遠回りルート)
@tri_iro いやなんというか, もっと低いレベルの話でわかってないんですよね… たぶん一番の原因はちゃんと勉強していないからということなのだと思いますが…
@mszk_p 定義とかの話なら, 漠然と「ランダム=ある種の確率 1 の事象全て満たす点」くらいに思っておけばお k ですよ. Martin-L Ö F とか Schnorr とか weak-2 とかはこの「ある種」の部分, つまり「確率 1 事象の部分クラス」を規定する形容詞であって, 枝葉の部分なので.
@tri_iro あぁ, そういうことだったんですか. ランダムの概念をいろんなアプローチで定義することを試みているのだと勘違いしていました…
@mszk_p ある意味では, 「ランダムの概念」をいろんなアプローチで定義しようと試みているという一面もある, というのは正しいのですが, 結局は, 数学的には, それは「確率 1 事象の部分クラス」を色んなアプローチで定義するということに落ち着くという感じです.
@mszk_p たとえば, 「チューリング機械では圧縮不可能である」確率は 1 なので, 圧縮不可能性はある種の確率 1 の事象を表しますし, 「マルチンゲールで予測不可能である」確率は 1 なので, 予測不可能性はある種の確率 1 の事象を表しますし, などなど.
@tri_iro あぁ, そういうところでコルモゴロフ複雑性とかが出てくるのですね.
@mszk_p はい, 「構成的に確率 1 」「コルモゴロフ複雑性の意味で圧縮不可能」「構成的なマルチンゲールでは予測不可能」が全て同値条件であるというのが, いわばランダムネスの基本定理なわけです. 興味あれば去年の僕の講義ノートとかもどうぞ http://researchmap.jp/mu1ce3br9-12518/#_12518
@tri_iro ありがとうございます. 去年は勉強する余裕がなかったので今年の夏休みで再チャレンジしてみます.
基本的に何を言っているのか全く把握していないが, 興味を持つ向きもいるだろうし, 何かあったときにメモを残しておくと私にとって有用になる可能性があるので, こういったことは積極的にメモっておく所存.
2014-08-02 つむじとベクトル場と特異点と¶
いろいろ教えてもらったのでメモ.
ちなみに,人につむじがあるのは,ポアンカレによる定理「曲面上の接ベクトル場の特異点の指数の総数は,その曲面のオイラー数に等しい」により説明できる. (野口廣『トポロジー 基礎と方法』ちくま学芸文庫版p. 290)
— iSem (@AzuleneS0_S2) 2014, 8月 2
https://t.co/xX4ru1TZ52ふと思ったのだがつむじが存在しない人と言うのは本当に存在しないのだろうか
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2014, 8月 2
@phasetr厳密には、半球面と見なした頭部に、万遍なく、十分な長さの毛が生えている人には、少なくとも一つのツムジがある、となります。
— iSem (@AzuleneS0_S2) 2014, 8月 2
@AzuleneS0_S2正確な定式化を知らないのですが、半球面(片側)にもポアンカレの定理は使えるのでしょうか
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2014, 8月 2
@phasetrはい.使えます.正確な定式化は,http://t.co/t5q8BL6X7c などがGoogle検索で見つかりました.このpdf の 5章の注意(1)が,ツムジ問題に適用できます.
— iSem (@AzuleneS0_S2) 2014, 8月 2
@phasetr正確にはPoincar´e-Hopf の定理でした.
— iSem (@AzuleneS0_S2) 2014, 8月 2
@AzuleneS0_S2ありがとうございます。幾何弱者ぶりを露呈してしまいお恥ずかしい限り
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2014, 8月 2
毎度のことだが適当に投げておくといろいろ情報が入ってくる Twitter, 実に尊い.
2013-08-01 第4回関西すうがく徒のつどい¶
第 4 回関西すうがく徒のつどいに向けて逆問題の勉強を始めたので¶
はじめに¶
夏のつどいに向けてちびちび勉強を始めている. のーてぃさんの話を聞いて応用向けの話がもう少しあった方がよいのではないかと思ったので, 逆問題というところで話をしようと思い, 本も買ってみた.
元々「逆問題の数理と解法-偏微分方程式の逆解析」は持っていたのだが, 今回「熱方程式で学ぶ逆問題」を買ってみた. 前者は双曲型と楕円型が主で放物型があまりない感じだったので.
逆問題について¶
逆問題は講義を受けたことがあるので多少は知っているのだが, 改めて勉強という感じ. 講義の担当教官が実際に企業との共同研究をしている人だったので, 応用上の意味などの解説もあって楽しい講義だった. 物理として当然成り立ってほしいことが定理として出てくるとニヤニヤしてしまうので, 周りにいた人は実に気持ち悪かっただろう. 申し訳なかったと虚空に向けて祈りを捧げている.
ちなみに山本先生については web 記事などもあるのでそれを紹介して終わりたい. 新日本製鐵の溶鉱炉に関する記事 だ. 山本先生主催の逆問題のワークショップなどにも出たことがあるのだが, そこでは数学側とその他 (ととりあえず大雑把にくくっておく) でコミュニケーションが非常に難しく, 言葉遣いを合わせるだけでも 1 年くらいかかったという話も聞けた. 第 3 回のつどいでののーてぃさんの話はおそらく一番質疑応答が活発だったと思うが, 応用側はお金もかかっていて必死だろうから, さらに大変だったろう. 社会や工学に役に立つ話をしろと言われると途端に「何だとこの野郎」という感じになるが, この辺の数学は私が好きな感じの特異性のある話が出てくるので結構好き. 数学的な焦点はその辺に合わせつつ, つどいが対象にしている幅広い層に訴えるような内容にもしていきたい.
第 4 回関西すうがく徒のつどいのアブストが出揃った¶
第 4 回の関西すうがく徒のつどい の講演概要が出揃ったようだ. 1 日目がこれ, 2 日目がこれだ. 8/7 から一般参加者の募集がはじまるので, 興味がある向きは注視されたい.
まだ中身を見ていない. これからゆっくり見よう. 私は『偏微分方程式の逆問題–拡散方程式の数学と物理と工学』というタイトルで話す. 専門外の話なのに結構突っ込んだ話が必要なので, 準備がとても大変で戦慄している. 頑張ろう.
第 4 回の関西すうがく徒のつどいに参加してきた¶
9/21-9/22 と第 4 回関西すうがく徒のつどいに行ってきた. 端的にいうと「楽しかったです. 終わり」なのだが, どうしようもないのでもう少し書く. 基本的に普段自分が自覚的に触らないのを中心に聞いてきた.
『代数学における選択公理』¶
1 日目の 1 発目ではブルブルエンジン兄貴の『代数学における選択公理』を聞いてきた. まとめはこの辺. 代数弱者なので細部がさっぱりだし, 有限生成な (可換) 環なんて普段使わないのでそれ困るの? というところからこう色々とアレなのだが, まあそんなものなのだろうということで適当に脳内処理した. 3 つテーマがあって, 環これと変な $\mathbb{Q}$ の代数閉包と入射性・射影性の話. エンジン兄貴のホームページに PDF が出るそうなので, 興味がある向きは確認してみよう.
まずは話題の「環これ」から始まった. 選択公理なしで変な環 (の存在を許すモデル?) を作ることで, 選択公理ないとやばいという話. Noether と Artin が一致しないとか何とかそういう話. 少なくとも加群については Artin 性と Noether 性が一致しない例があるので, それが一致しないことはそんなに重大なのだろうかとか色々気になるところはあるが, もう少し代数をきちんとやらないと何ともいえない.
その 2 として変な代数閉包の話. 選択公理がないと代数閉包の (一意性) 存在が言えないらしいが, 何かその辺. ZF で変なサポートを持つ $\mathbb{Q}$ の代数閉包 $L$ が作れる (モデルがある?) らしく, そういう話. この $L$, 非自明な絶対値がないとか Galois 群が自明とか相当やばい. 議論の主軸は上記の変なサポートがあるということのようだ.
その 3 は入射性と射影性の話. 一番印象的だったのは, 入射と射影は双対的な概念なのに射影の方が同値条件など何か面倒なことになっているということ. 入射のときと射影のときで, 証明自体かなり違うようで, 単純に双対で写せば簡単に終わるというわけでもなく, 証明自体も射影の方が何か面倒だという話だった. 選択公理についても双対的な概念を導入すればひょっとしたら綺麗になるかもしれないがよく分からないね, ということでその場はまとまったのだが.
ブルブルエンジン兄貴が PDF をアップした. 興味がある向きは確認しておこう.
つどいの発表内容をアップロードしました. http://alg-d.com/math/tsudoi4.pdf
@alg_d 関連ページ
1 発目の裏番組でぞみさんが『外から数学を眺めてみよう』というテーマで話をしていた. もちろん聞けていないのだが, 1 年生なのに積極的に発表をしていて素晴らしい. 今度何か教えてもらおう.
『偏微分方程式の逆問題–拡散方程式の数学と物理と工学』¶
お昼を挟んで 2 つ目の話は市民講演枠と勝手に自称した市民トークだった. どなただったか失念したが, あとで直接コメントを伺ったところ「あまり逆問題の話はなかった」という実に真っ当なご指摘を頂いた. 申し訳なかった. これもあとで DVD にする予定だが, そのときにはもう少し突っ込んで内容を増やす予定.
数学として突っ込んだ話よりも, 物理や工学で数学を使っていく上で何が難しいかといった話や, 物理・工学的に考えてどうかという部分を中心にしてきた. 例えばシミュレーションに関わる問題として, 解の存在や一意性, 安定性が現実的に決定的に大事になる. 本当にお話だけだが, シミュレーションする上でまともな時間内で計算結果を出すことをも大事であって, プログラミングや計算効率・収束速度についても真剣に検討する必要がある, みたいなことにも触れておいた. あと拡散方程式自体, 本当に現象をきちんと表現しきれているのかという問題とか.
目的としては次のような感じ. つどいで物理・工学系の話題が少ないため, どういうリアクションが返ってくるかまで含めて試験的にやってみたい. 物理の学部生が当たり前と思っているくらいのことで, どこまでが本当に当たり前として通じるかというところを知りたい. 少なくとも超弦関係では物理と数学の交流が活発になっているので, そうした業界に足を踏み込もうという数学の人にとっては物理の人間の感覚を把握しておくと, 交流しやすくなるだろう. 必ずしも伝統的な数学の意識下にない話題でもあり, そうした数学に馴染めない人がこうした境界分野に活路を見出せるかもしれない. また, つどいに来る人の中で数は少ないだろうが, 物理や工学など非数学の人が数学の人と交流するとき, 自分の常識について自覚的に話せるようになれば交流がスムーズにいくようになるだろう, ということもある.
まずは逆問題というのが何かというのを具体例を挙げていくつか説明した. 数値計算を数学方面からやっているうださんが, 話は大雑把には知っているが具体例をあまり知らなかった, と言っていたので, いくつか挙げておいて良かったのだろうと思っている.
拡散に関する物理的な問題の説明とか, 「物理として」何が難しいのかとかそういう話を展開したあと, 解の存在・一意性・安定性が応用上どういう意味があるのかを数値計算を例に説明し, 最後に拡散方程式の解の非現実性とその解釈について話してきた. 物理の人にとっては当たり前なことしか言っていないが, 数学の人にとっては当たり前ではないのだろうと想定した話.
実際に全体的にどうなのかはまだ良く分からないが, 数学の人からも「面白かった」という反応を得られたのでとりあえずよしとする.
あまり突っ込んで感想聞かなかったので, アンケートの内容で反省しつつそれを活かして DVD でブラッシュアップする予定. あと, ばんぬさんとかに必要なら数学的に突っ込んだ話をセミナー的に何かやるので, 必要なら呼んで, という話とかしてきた. あと, ひさこさんに「今回はほとんど数学の話をしなかったが, もっと数学チックなアレについてはリクエストがあれば, できる範囲で答える」的な話もした.
ちょっと話はずれるが, 休憩のとき, 数理物理的なアレをやろうと思っているという学生さんと話した. 構成的場の量子論は基底状態の存在とか物理としてはどうしようもないことをやっていて, 赤外発散などを数学的にきちんとしていきたいという強い数学的モチベーションがあればいいかもしれないが, 「物理」をガンガンやっていきたいという人にはつらいということ, 物理, 特に研究がやりたいなら素直に物理学科に行った方が楽しいはずだということを話してきた. もちろん人が来てくれた方が嬉しいが, やりたいことが何かを考えてそれをきちんとやった方が精神衛生上もいいだろうから.
圏論における再帰的関数¶
3 限目はうださんの『圏論における再帰的関数』の話を聞いてきた. まとめはこれ. 始対象とか圏論の基本的な概念を全く把握していないので, その辺は結構つらかったが, プログラミング周りで何か理解のとっかかりは掴める的なところを把握してきた. fold と banana が同じものと聞いたのが一番の収穫だったと思う. つどい, 何故か圏の話多い印象を受けるので, もうちょっと勉強したい. 参考文献の本を買おうと思ったが 16,000 とかハイパー高いので泣いた.
何か普通の数学の圏の本を読もう.
懇親会とそのあと¶
コミュ力低いのであまり色々な人と話せなかった. 2 日目は参加しないというのを後で知った一ノ瀬さんとはもう少し話しておくべきだったと反省している. 講演中に受けたもの含め, いくつか質問も頂いたのだがあまりまともに答えられなかったのも猛省している. あと, 実際に企業で数値解析している方ともお話したのだが, やはり話に力がある. 専門でもなければ実際に数値計算したこともないので, そういう人間の話にはどうしても限界があるというのを思い知った. 次回話をしたらどうかと勧めてきた.
夜, こう講演について色々と反省したし早めに反省点をまとめておかないと忘れてしまう, と思いつつ早く寝ないと明日がつらいというので無理矢理寝たが, 0 時頃に起きたあとに反省をやってしまい, 2 時間くらい寝られなくなったのでつらい.
食パンの耳『作用素環論入門』¶
2 日目 1 つ目はパン耳パイセンのやつを聞きに行った. まがりなりにも作用素環専攻だったのに何も知らないのもまずいな, と思っていたので. 「入門詐欺だ」という話が Twitter で出ていたが, ぎりぎりまで配慮はできていたと思っている. AF 環だったし「1-2 年でも雰囲気が掴めるように」と思うと本質的にこのくらいのところしかやりようもない気はする. (本質的に) 行列環くらいでもかなり凄まじい話が展開できるということは分かるだろうし, 学部 1 年で学ぶ線型代数だがなめてはいけないということくらいはきちんと伝わっているだろうと思いたい. 幾何でも出てくる (はずの) $K$ 群とか Grothendieck 構成とか, 出てきたキーワードも覚えておいて損はない.
ちなみにこれの裏番組で関真一朗さんの『290 定理』というのがあったのだが, これが評判よかったので是非聞いてみたかった. 実際どちらに行こうか迷っていた. 後で PDF とか読んでも講演者の語り口や雰囲気というのは完全に再現できるものではないので, かなり残念. 休憩時間に少し話を聞いたのだが, とても面白い話をする人だったので, 余計に残念感が高まる. 証明もかなり泥臭く楽しい感じだったらしい. 楽しそう.
なゆた『有限オートマトンの基礎』¶
2 つ目は『有限オートマトンの基礎』の話を聞いてきた. この間川添愛さんの『白と黒のとびら オートマトンと形式言語をめぐる冒険』というのを読んだのだが, かなり面白かった. その抽象版に触れてみようということで聞いてみた.
正規表現との関係やらプログラミングとの関連が楽しい. その辺結構好きらしいということに気付いた.
eno『カウンターパーティ・リスクと CVA』¶
最後の話は eno さんの話を聞いてきた. 金融工学とかその辺の話. 一番心に殘ったのは数値計算に関する時間感覚の話だった. 1 分どころか 1 秒すら問題になる状況で, 計算が終わるのに数分かかるのはもはや死刑宣告に等しいとのことで, 実務に携わる人の言葉の重みを感じる. 数学を使う実務経験などは全くないので, その辺の味, 私には出せない.
次回何を話そうかというところを早速考えている. 一応, ニコニコで動画にもしたページランクの話を考えてはいる. 今回横田さんがグラフ理論の話をしていて一応その周りだし, これで使う Perron-Frobenius の物理への応用もある. 90 分講演にして最後, Hubbard の話につなげるという線で物理まで絡める線も検討している. あと, これまた関西だがぶつりがく徒のつどいでも何か話してみたい. DVD とかでこの交通費・宿泊費くらいは軽く賄えるようにしていきたい.
2013-08-01 Turing 次数理論の Martin 予想をめぐる対話¶
ゼルプスト殿下による Turing 次数理論の Martin 予想をめぐる対話という Togetter があった. さっぱり分からないが, 興味を持つ向きがいる可能性があるのでとりあえずリンクだけつけておきたい.
またまた, 集合論家 DIke さんと計算論家トリイロさんの対話です. 往年のヴィクトリア・デルフィノ問題について. S.Jackson による Projective Ordinals の計算の話題から, Turing Degrees のグローバルな構造に関する Martin 予想の話へと進みます.
集合論界隈, 本当に魔境という感ある.
2013-08-01 数学徒と物理アレルギー¶
PDE の話が書かれた pdf を読んでいたのだけど, どうしても物理っぽい話が出てきてしまって, その辺りから急激に興味が薄れて読むのをやめてしまう. 物理アレルギーが今日も勉強をジャマしている.
数学の人, そもそも物理が嫌いという場合があるのだが, そういう人にどう話をすればいいかというのはいつも気になっている. 私の場合, やっていることの数学的意義の存在がかなり微妙なところにあり, 物理的なモチベーションを抜いたらほぼ何の意味もない話になったり, さらに各種定義の意味が全く分からなくなるということもあってかなり困ることがある.
あと, 物理絡みの話に興味はあるが読んでいる文献で仮定されている素養とのギャップがあってつらい, という状況もあるかと思うが, そういう場合はどう処理するのだろうか. 私は平衡統計・場の理論関連の話がメインだが, モデルが被っているために非平衡の人も参入していたり, 非平衡の論文が参照されていて, 実際に困ることがある. 今まで触った範囲では非平衡といえどもあまり大きく意識を変えずに済んではいるが, はじめは何を言っているか分からずつらかったことなどを想起した.
この辺も何か考えよう.
2013-08-01 Hahn-Banachを使ったMarkov-Kakutaniの不動点定理の簡単な証明¶
本文¶
チャーハニスト鈴木と次のようなやりとりをしたのでその記録をしておきたい.
あそうだ, セミナーのノート整理してて思い出した. 【ゆるぼ】 Markov-Kakutani の不動点定理の主張が書いてある pdf (和洋文問わず)
@mszk_p きちんと読んでおらずさっと見つけただけですが http://page.mi.fu-berlin.de/werner99/preprints/markkaku.pdf などはどうでしょうか. ちなみに filetype:pdf として検索すると pdf だけ引っかかるようになります
@phasetr そのオプション知りませんでした. どうもありがとうございます.
PDF は Dirk Werner による『A proof of the Markov-Kakutani fixed point theorem via the Hahn-Banach theorem』というタイトルの文章だ. 2 ページしかなく難しくもないので興味がある向きは読んでみてほしい. 定理も引用しておこう.
引用¶
Theorem¶
Let $K$ be a compact convex set in a locally convex Hausdorff space $E$. Then every commuting family $(T_i)_{i \in I}$ of continuous affine endomorphisms on $K$ has a common fixed point.
次の補題を挟んで証明する. この補題を Hahn-Banach を使って鮮やかに示すというのがポイントだ.
Lemma¶
Let $K$ be a compact convex set in a locally convex Hausdorff space $E$, and let $T \colon K \to K$ be a continuous affine transformation. Then $T$ has a fixed point.
不動点定理, 楽しい.
2013-07-31 小林昭七先生の『顔をなくした数学者』というエッセイが出るので積読を消化して読みたい¶
書泉グランデ MATH が小林昭七先生の随筆の宣伝をしていたので私も宣伝しておく.
[2F] 新刊入荷! 『顔をなくした数学者 数学つれづれ』小林昭七著 (岩波書店) 50 余年米国の大学で教鞭をとり, 世界的な業績を挙げた著者初エッセイ集♪
ちょうどこの間, 昭七先生の記事を書いたのをググって見つけたという昭七先生の弟君であるところの 久志先生からお問い合わせを受けて久し振りに昭七先生の文章を読んでみたいフェーズにあることもあり, 積読を消化したら買って読みたいと思っている.
2013-07-31 講談社が大栗博司さんの新刊『超弦理論入門』のモニターを募集しているのでここでも宣伝しておく¶
本文¶
時間的にかなり厳しくなっているが, 大栗さんがまた本を出すようでそのモニターを募集している.
8 月 20 日にブルーバックスから『超弦理論入門』を出版することになりました. これに先立ち, 講談社では読者モニターを募集しているそうです. 募集締め切りは日本時間で今週の 8 月 2 日正午で, 感想文の締め切りは 8 月 18 日だそうです. https://eq.kds.jp/bookclub/3526/
とりあえず私も応募してきた. 大栗さん, 村山さんが最近頑張っているので, 超弦周りは色々本があるが, 物性周りで何かこういう動きないだろうか. 数学でももっとやってほしい.
例えば秋月康夫の『輓近代数学の展望』などがある.
古い本だが, 一般向け書籍なのに付値論やら調和積分やらで全力で殴りかかってくる. こういう無茶をしてほしい.
無茶してもある程度売れることを示すべく, 私も動画などでどんどん実績作りしていきたい. 早く色々動かないと.
ラベル¶
物理, 数学, 超弦理論, 代数幾何
2013-07-23 Publications of MSJ 第 13 巻 Gaisi Takeuti, Two Applications of Logic to Mathematics の電子版が一般公開された¶
Publications of MSJ 第 13 巻 Gaisi Takeuti, Two Applications of Logic to Mathematics の電子版を一般公開しました http://bit.ly/12IITSs
竹内外史の本 (?) だが, 地雷だったりしないのだろうか. まだ目を通していないのだが, ご存知の方がいれば内容についてご教示頂きたい.
それはそうとして, Publications of MSJ のページを見るといくつか文献があるが, 次の 2 冊が気になる.
No.15 Shoshichi Kobayashi, Differential Geometry of Complex Vector Bundles, 1987, xii+305 pp. No.11 Goro Shimura, Introduction to the Arithmetic Theory of Automorphic Functions, 1971, xiv+267 pp.
これ読んでみたい. 数学会, 何とか頑張ってこれを公開してほしい.
2013-07-22 定常状態の熱伝導方程式と楕円型方程式の解の挙動について気になることがあったので¶
はじめに¶
やりとりその1¶
「う」がつけば何でもいいなら楕円型非線形偏微分方程式でいいだろう
— 相転移P (@phasetr) 2013年7月22日
楕円型っていうと、熱伝導の式とか? QT @phasetr: 「う」がつけば何でもいいなら楕円型非線形偏微分方程式でいいだろう
— VIN (@VINZARNY) 2013年7月22日
@VINZARNY 説明がいいかどうかは微妙ですが,例えばこのページなどに説明があります http://t.co/DCJdohlpD8 適切な者が見つけられず申し訳ない限り
— 相転移P (@phasetr) 2013年7月22日
@phasetr 楕円型、放物型、双曲型偏微分方程式があるのは知ってますん。細かいことは忘れてましたが。
— VIN (@VINZARNY) 2013年7月22日
@VINZARNY ああ、定常熱伝導じゃないと楕円型にならないか。非定常だと放物型だ
— VIN (@VINZARNY) 2013年7月22日
やりとりその 2¶
あとこれ.
. @phasetr 定常熱伝導方程式http://t.co/SBVu6WoDfs
— VIN (@VINZARNY) 2013年7月22日
@VINZARNY 定常状態に関する解析というのは知っていますしこの文脈で定常状態の拡散方程式と呼ぶのも分かりますが,熱伝方導程式といったら少なくとも数学では普通方物型を指します
— 相転移P (@phasetr) 2013年7月22日
コメント¶
時間定常の熱伝導方程式が単純に時間項を落とした式として紹介されているが, 物理的に実験と合うのだろうか. もちろん適切な境界条件などの設定も必要だが, 定常状態は方程式自体は放物型の解で, それの時間無限大の極言を取った状態だと思っていたので, 実際のところどうなのか凄い気になる. 境界条件などが同じだからといって, 放物型の解の極限と楕円型の解は一致するのだろうか.
根本的に私の認識がおかしいということももちろんありうる. 機械工学の人の文章らしいし, 実験的な裏付けはきちんとありそうだけれども.
追記¶
その筋の数学者にコメントを頂いた.
偏微分方程式 (1966年) (新数学シリーズ〈第26〉) 伊藤 清三 https://t.co/gLuIbfyHHa @amazonJPさんから
— 堀畑 和弘 (@kazzhori) 2016年12月7日
@AmazonJP その辺はこの本に詳しいですね。線形熱方程式の解をt → ∞とすると対応する楕円形方程式の解に近づきます。熱のグリーン関数から対応する楕円形方程式のグリーン関数もだせます。
— 堀畑 和弘 (@kazzhori) 2016年12月7日
@AmazonJP この本が1000円で買えるなら買いでしょうw
— 堀畑 和弘 (@kazzhori) 2016年12月7日
非線型の同じようなタイプのやつ (何といえばいいのかわからない) だとどうなのだろう. とりあえず安いし買ってみよう.
追記¶
あとで冷静に考えたらまさに指数定理などの熱核の方法だった.
2013-07-22 確率論的な $\zeta$ の特殊値の導出法¶
ツイート¶
不勉強と言われたら返す言葉はないのだが, 聞いたことない $\zeta (2)$ の導出の方法が言及されていたのでちょっと聞いてみた.
引用¶
先週は測度論による $\zeta (2) = \pi^2 / 6$ の証明 今週はガロア理論による角の三等分問題 完全に趣味の領域です.
@sesiru8 測度論によるゼータの特殊値の証明, どんなことをするのでしょうか. 測度論からというのは聞いたこと無いので気になります
@phasetr ルベーグ積分でやりました. 殆ど広義リーマン積分でしたが
@phasetr こんな問題です https://twitter.com/sesiru8/status/359443578470137856/photo/1
@sesiru8 ありがとうございます. このやり方, 知りませんでした. ただ, これを測度論とは言わないのでは, という感じはします
@phasetr 最後の方で無限級数を考え, 積分と極限の交換を利用するためにはルベーグの意味での積分が必要になるのでしょうか. (これを測度論というかは…分かりません. ご指摘ありがとうございます).
@sesiru8 ルベーグ積分なら級数も積分と思えるので単に積分でしょう. 測度論と言うともっと集合演算とか駆使するイメージです. 何か確率論的にぎろんするのか, と思ったのですがそうではないようで. あと, 積分と級数の交換はリーマンでもできます
@phasetr なるほどです.
@sesiru8 具体的なやり方をすぐには見つけられなかったのですが, 確率論的にζの特殊値を出す方法はあるようです http://gcoe.math.kyoto-u.ac.jp/cgi-bin/seminars/.ja.php?type=view&id=770&ca=seminar 挙げられた言葉を見た感じ, 測度論的色彩が強いのかはどうかは分かりませんが確率という感じはします
@phasetr ありがとうございます.
コメント¶
問題についてはこちらにも書き写しておこう.
函数 $f (t)$ を $f (t) = \left ( \frac{2}{\pi} \right)^2 \int_{0}^{\infty} \frac{1}{1 + x^2} \frac{1}{1 + (t/x)^2} \frac{1}{x} dx$ と定めるとき $\int_{0}^{\infty} f (t) dt = 1$ が成り立つことを示せ. 関係式 $\frac{1}{1 + x^2} \frac{1}{1 + (t/x)^2} \frac{1}{x} = \frac{1}{t^2 - 1} \left ( \frac{x}{1 + x^2} - \frac{x}{t^2 + x^2} \right)$ を用いて $f (t) = \left ( \frac{2}{\pi} \right)^2 \frac{\log t}{t^2 - 1}$ を示せ. 次を示せ. \begin{align} \int_{0}^{\infty} \frac{\log t}{t^2 - 1} dt = 2 \int_{0}^{1} \frac{\log t}{t^2 - 1} dt = 2 \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(2n+1)^2}. \end{align} 以上の計算より \begin{align} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(2n+1)^2} = \frac{\pi^2}{8}. \end{align}
計算すればすぐ分かるのだろうが, 3 の左 2 つの式, 正の実軸上の積分が $[0,1]$ の積分に落ちているのでなかなか凄い.
あと確率論的に特殊値を出す方についても記述を引用しておこう.
リーマンゼータ関数の特殊値 (特にバーゼル問題 $\zeta (2) = \pi^2 / 6$) を初等確率論の手法で求める. 2 つの独立なコーシー分布の商, 逆正弦分布の商, 指数分布の商, ウィグナー半円分布の商のすべてでバーゼル問題, リーマンゼータ関数に関するオイラー公式が導き出せる. また, ルジャンドル展開の手法でもバーゼル問題が解けることや, チェビシェフ多項式との関連なども論じる.
追記¶
pekemath2 さんが A probabilistic approach to special values of the Riemann zeta functionという論文を引いていた.
@ftksr_sakamuke ちなみにこういうのもあります
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1590-01.pdf
まだ詳細を追っていないが, これも面白そう.
2013-07-21 数学をテーマにした美術: 方程式のある風景¶
はじめに¶
「数学をテーマにした美術館展覧会」というネタが上がっていた.
「数学をテーマにした美術館展覧会」って非常に魅力的だが, 何をかざればいいんだろうか.
ここで「証明図はどうか」というリプライがある.
引用¶
@ytb_at_twt 数学記号満載の計算式を大量に書いていくライブペインティングが見たいです. 計算過程をとても美しいと思うので. 数学わかりませんが.
@noukoknows うーん…ある種の美ですが…結局はよくあるツリー状のデータ型の一つですからねぇ…
@ytb_at_twt はい, さすがに冗談です (笑) とはいえたまに証明図きれいだなと思うことはありますが・・・!
@dot_taigu 外見的には, Unix とか MacOSX のマシンでコンソール・ウィンドウを開きっぱなしにして 記号列がすごい勢いで進んでいくのを眺めるのと似た体験になりそうですね (もしかしたら数学と計算機の中の記号処理は本質的な違いはないのかもしれませんし).
@noukoknows それはたしかに. 大学祭で「数学者百人の選ぶ『美しい証明図展』」とかやれば人が…来ないか….
@ytb_at_twt 数学とアートに関してはこんな国際的なカンファレンス http://bridgesmathart.org/mission-statement/ があるんだそうですね.
コメント¶
まだ大量に書いていくライブペインティングとまでは行かないが, 数学用タイプライターアプリはここで作成途中のものを公開している. 最近別件で忙しくて開発に手をつけていないのだが. これ, ニコニコにも投下しておこうと思って忘れている程度にアレだ.
あと, 式自体を鑑賞する試みというと大袈裟だが, 次のような本もある.
物理, 特に量子力学関係の式を鑑賞しようという本だ. 上記タイプライターアプリを作った背景には以前これに目を通したことがあるということも大きい. 相変わらずしたいことは色々ある.
2013-07-21 Twitterまとめ: 単位元のない環¶
はじめに¶
Twitter だけだったかブログにもまとめたか既に記憶にないのだが, Twitter でまた単位元のない環に関する話が出ていた.
引用¶
単位元の存在しない環の例をパッと思いつかない
@supernova3024 なんか重要な例があるそうなのですがわたしは知りません
@primenumber 重要な例があるのか……
@supernova3024 作用素環とかの分野だと結構あるっぽい (あんまり知らない)
@Asabokujo そうだったのか……
@dingdongbell あっ…………
@dingdongbell ありがとう
@Asabokujo @supernova3024 $L^1 (\mathbb{R})$ が畳み込み積に関してなす可換環は単位元を持たないよ
@bean_paste そうなんですか…… (よく知らないです…)
@Asabokujo @bean_paste 0 に収束する数列全体 (演算は項別) という例もあります.
@LT_shu なるほど, lim の分配則 (っていうんでしたっけ) から環になるんですね で{1,1,1,…}はこの元ではないと
@Asabokujo はい. ちなみに, 単位元の存在を要求しなければ, 一般に環のイデアルは環になります. さっきの環は, 収束する数列全体の環 (これは単位元をもつ) のイデアル (lim が環準同型で, その核) ですね.
コメント¶
私が良く出す例は 2 つある. 1 つは局所コンパクト Hausdorff 空間 $\Omega$ 上, 無限遠で 0 になる連続関数のなす可換環だ. もう 1 つは無限次元 Hilbert 空間上のコンパクト作用素のなす非可換環だ. 両方とも $C^$ 環になっている. 作用素環 ($C^$ または von Neumann) は一般に単位元を持たなくてもいい. 私が実際に触るのはほぼ von Neumann 環 で, 大体単位元の存在を仮定しているし, 具体例だと本当に持っている.
$C^*$ だと単位元の存在を仮定しないことがよくあるようだがあまり触ったことはない. von Neumann 環の場合, 単位元がなくても中心極大射影が単位元の代わりになってくれるため, 単位元の存在を仮定しても一般性が失われないということはある. Kadison-Ringrose にその辺のことが書いてあるため, 興味がある向きは読んでみよう.
追記¶
コメントを頂いた. まずは dif_engine さんからのコメント.
コメント 1¶
@phasetr $C[0,\infty)$ 上の積 $f (*) g (x) := \int_{[0, x]} f (x - t) g (t) dt$ を入れたものも単位元のない環です. これが整域である (ティッチマーシュの定理) ことが Mikusinski の演算子法の基礎になっています.
コメント 2¶
@phasetr 関数 $t \to f (t)$ のことを ${f (t)}$ と書けば, $({1}*f) (t)=\int_{[0, t]}f (\tau) d\tau$. すなわち {1} は積分演算子になっているわけです. この逆元が微分演算子というわけですが, $C[0, \infty)$ にそのような元はありません.
@phasetr $C[0, \infty)$ には単位元がありません. ところが, デルタ関数 $\delta$ を導入し, 形式的に $f\delta$ を計算すると, $(f\delta) (t)=\int_{[0, t]}f (t-\tau) \delta (\tau) d\tau=f (t)$. すなわち $\delta$ は (形式的には) 単位元になるわけです.
@phasetr もちろん $C[0, \infty)$ の中に $\delta$ のような元は存在しません. ところで, 任意の可換整域 (単位元の存在は仮定しない) について, それを含む最小の可換体が存在します. 整数環の直積から有理数体を構成するのと同様にすればいいわけです.
@phasetr $C[0, \infty)$ を含む最小の可換体 $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$ を考えてみましょう. 今や微分演算子やデルタ関数はすべて $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$ の中に入っています. 所謂 D-法 (微分演算子法) を Fourier 変換などを用いずに実現したことになります.
微分作用素やデルタが本当に $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$ に入っているかの確認が必要だとは思うが, 演算子法の概略というレベルで把握した. 知らなかったので助かる. $\mathrm{Frac}(C[0, \infty))$, 定義域固定なのが微妙に気になるが, これはどこまで一般性があるのかというのは気になる.
何か書いておくと勝手に色々教えてくれるという実に楽しい Twitter ライフを堪能している.
ラベル¶
数学, 作用素環, 環論
2013-07-19 ある環が可換環になる十分条件: Jacobson's Commutativity Theorem¶
何かよく分からないが, 環が可換環になる十分条件的なアレで Jacobson's Commutativity Theorem という面白そうな話があるらしい. これだ.
x^4=x 以外にも 2,3 で似た様に示せて, 条件が付けば n でもいけるっぽい事示せて何これとか思ったらもっと強い結果が割と普通の証明付きで知られているようだ http://www.mateforum.ro/articole/jacobson.pdf
これは一般の環で言えるらしい. まず $n=2$ の場合の定理の言明を書いておこう.
Lemma 1.1
If $x^2 = x$ for all $x \in R$, then $R$ is commutative.
この 2 を $n$ に一般化できるか, という問題で, 流れとして division ring (和訳忘れた) で示してから一般に示すことになっている. 長くない上にそう難しくもないので, 興味がある向きは自分で PDF を追ってほしい.
ところでこんな記述があった.
We can think of this as a generalization of the well-known fact that every finite division ring is a field.
これを知らない程度に代数弱者の市民である.
2013-07-16 数学と計算機援用証明¶
はじめに¶
古田彩さんのこんな呟きがあり, そこに反応したら鴨さんからのリアクションまで返ってきて戦慄したのでメモしておく.
引用¶
「測定」という裁判官がいない数学に、捏造は存在しないよなあ。人の成果を横取りするくらいしか思いつかないけど… http://t.co/OwZuWRHArG
— 古田彩 Aya FURUTA (@ayafuruta) 2013, 7月 15
@ayafuruta 四色問題のように、コンピュータを使った証明でプログラムに細工をしてしまうとか…
— k u r i t a (@kuri_kurita) 2013, 7月 15
@kuri_kurita @ayafuruta 見破る方法は二つ、一つは独立した複数の実装、もう一つはソースコードの公開です。それぞれ、実験系での追試と生データの提供に相当しますね。
— Hiroyasu Kamo (@kamo_hiroyasu) 2013, 7月 16
@kuri_kurita なるほど。しかし生物や物理の実験データ捏造より、簡単にバレそうですねー。「お前は実験が下手だから再現できないんだ」という強弁が通らないので。
— 古田彩 Aya FURUTA (@ayafuruta) 2013, 7月 15
@ayafuruta @kuri_kurita http://t.co/QYEEKiQ9gl 計算機援用証明というのがあるのですが,これ,今どのくらいあるのでしょうね.原理的に何がどこまでカバーできるのか凄く気になる所ですが
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2013, 7月 15
@phasetr @kuri_kurita 計算機を援用することで、解(なのかな)の存在を「解析的に証明することに成功」というところが気になります。
— 古田彩 Aya FURUTA (@ayafuruta) 2013, 7月 16
@phasetr @kuri_kurita へー、四色問題方式って、その後もこんな風に発展していたんですね。知りませんでした。教えて下さってありがとうございます。
— 古田彩 Aya FURUTA (@ayafuruta) 2013, 7月 16
@ayafuruta @phasetr @kuri_kurita 組合せ論的計算をゴリゴリ行う証明という意味で近いものとして、有限射影平面の探索があります。http://t.co/Oqj3zfyGEF
— Hiroyasu Kamo (@kamo_hiroyasu) 2013, 7月 16
@kamo_hiroyasu 色々と資料をご教示頂き,誠にありがとうございました。「ケプラー予想」は,amazonを見ると「数学の証明とコンピューターの関係について知りたいという方にオススメ」,しかも翻訳が青木薫さんということで,迷わず購入しました。
— 古田彩 Aya FURUTA (@ayafuruta) 2013, 7月 16
@ayafuruta @kuri_kurita 歴史的な経緯は全く知らないのですが,私の知る限り4色問題は厳密に処理できる数式処理などの系統であって,微分方程式は精度保証周りで意識が大分違う感じはします.素人なのでアレですが,前者は代数周り,後者は解析周りという印象
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2013, 7月 16
@phasetr @ayafuruta @kuri_kurita 数理計算をゴリゴリ使った証明といえば、古くは、整面凸多面体の決定(Zalgaller 1966)があります。
— Hiroyasu Kamo (@kamo_hiroyasu) 2013, 7月 16
@phasetr @kuri_kurita 私の数学知識はご存知の通りですが、4色問題はすべての可能性をしらみつぶしに当たったものと理解していて、計算機援用証明ってそういうものだとばかり思っていました。「精度」保証による「解析的」証明が可能、というのは新鮮です。
— 古田彩 Aya FURUTA (@ayafuruta) 2013, 7月 16
@ayafuruta @phasetr @kuri_kurita ケプラー予想の解決(Hales 1997)も精度保証計算を利用した証明です。啓蒙書も書かれています。http://t.co/FOHeAUeA3n
— Hiroyasu Kamo (@kamo_hiroyasu) 2013, 7月 16
査読者情報を捏造した疑いで論文撤回というケースを依然見かけました…>数学 RT @ayafuruta: 「測定」という裁判官がいない数学に、捏造は存在しないよなあ。人の成果を横取りするくらいしか思いつかないけど… http://t.co/7K4onT5VJJ
— 蟹 (@kanipuffin) 2013, 7月 16
@kany1120 おお、そんなことが。でもそれを捏造したとして、せいぜい結果の箔付けになる程度で、ウソの結論を同業者に信じさせることはできないですよねー。結果が合っているかどうかは、どうせ検証されちゃいます。捏造としては小物(笑)のような気がします。
— 古田彩 Aya FURUTA (@ayafuruta) 2013, 7月 16
Kepler 予想¶
Kepler 予想の本はこれだ.
鴨さんからご紹介頂いた文献も読みたいが, 積読がたまる一方でつらい.
2013-07-16 Thurston によるコンパクト・シンプレクティックだが Kaehler ではない多様体の例¶
本文¶
TL を見ていたら Thurston の論文が引用されていて, ちょっと「おお」と思ったのでとりあえず読んでみた. これだ. シンプレクティック多様体は解析力学でも出てくる多様体で, 最近は超弦とかその辺との兼ね合いもあって精力的に研究されているという話を聞いている. Kaehler ももちろん非常に筋のよい対象で, 複素幾何の中心的な対象だと聞いている.
シンプレクティックは実多様体, Kaehler は複素多様体だが, 両方とも実次元は偶数なのでこういう比較にはきちんと意味がある. またこれで始めて知った程度に幾何弱者なのだが, 「多様体 $M$ が閉でシンプレクティックなら概複素構造を持つ」ということなので, こう何となく複素構造とかも持ってくれる可能性はある. その辺から「全ての閉シンプレクティック多様体が Kaehler になるか」というのは結構大事な問題だったようだ. ちなみに逆はすぐ分かる. 例えば Wikipedia を見てみよう.
で, 結局反例があるということを Thurston が言った, というのがこの論文のようだ. 2 次元トーラスの微分同相群, $\mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}$ の表現からファイバーバンドルを作って, そのコホモロジーを見るとアウト, という話だった. もう滅茶苦茶に不勉強なためコホモロジーが大体さっぱりなのだが, 反例を作る前に Kaehler の奇次元 Betti 数が偶数になる, という事実が紹介されているので, そこから分かるという寸法.
1 つだけではなくもっとたくさん反例が作れることを注意した上で, 別の予想を立てて論文は終わっている.
この論文が面白いというか紹介したい理由の 1 つとして, Guggenheimer の論文が出たがそれが間違いだった, ということを反例を使って示したところがある. 教科書でも時々あるが, 論文 (研究) レベルになると当然間違いがある可能性があるということ. Fermat 予想が何度も「証明」されたとか「立方体倍積問題の証明」などそういう話を耳にすることはよくあるかもしれないが, 結構色々なところで実際にあるということはもっと注意してもいいかと思った的なアレだった.
あと, 関西のつどいでも話した反例が大事的な話だが, Thurston が反例を作ったのを論文にしているということで, 面白い反例を作ったらそれ自体論文にできるのだ, ということも言いたい.
追記¶
Kaehler の 奇次元 Betti 数の話は Wikipedia の Laplace 作用素のところから来ることを教えて頂いた. あと森の未知さんのツイートも引用しておこう.
引用¶
これは学部生や修士課程学生が読むには非常にいい文章だと思う. >RT
件の Thurston の論文, とにかく短くて, 私の記憶だとたったの 2 ページ. すごい結果なら 2 ページで済むというのも知っていていいだろう.
手法も胞体分割でコホモロジー (ホモロジーだったかも) を計算するという, かなりのローテクノロジー. それで 2 ページで本質的に重要な結果を導いたわけでやっぱり Thurston はすごい.
私も低次元トポロジーには疎い人間で Thurston の論文はあれくらいしか読んだことないのだが, あれだけ読んでも Thurston の偉大さは分かる.
Godbillon-Vey 類の連続変化の話も森田先生の本で少しフォローしたことがあるが, あれもローテクノロジーだったと思う. それでかなり本質的な例を構成したんだよなぁ….
三次元多様体論で Thurston の業績が決定的なのはよく聞くし実際そうなんだろうと思うけど, 具体的に何をしたかは結局今も理解できていないような.
ということで皆も読んでみよう. そして基礎知識から私にレクチャーしてほしい.
2013-07-15 九州大学のキャンパスが舞台と思しきゲームがあるという¶
Twitter で九大がゲームの舞台に使われているという情報を得た. こちらが実際の九大だ.
九州大学はエロゲの舞台に使われる優秀な大学 pic.twitter.com/BrXv5UFHzV
— ri (@Rio08190819) 2013, 7月 15
ゲーム自体はよく知らないし何とも言えないのだが, 九大キャンパス格好いい. 九大数理と言えば廣島先生と松井先生がいるし, 遊びに行ってみたい大学の筆頭に入る. 北大も行きたい.
2013-07-15 数学用タイプライターアプリを作ってみた¶
本文¶
typist-jqueryを元に, 理工学 M@ster 用の数学タイプライターアプリを作ってみた. ここに上げておいたので, 御興味のある方はご覧頂き, ご意見など頂きたい.
紙芝居クリエータもいいのだが, アレだと「黒板」と下の台詞を行き来しなければならず, 結構負担があるとかいうご意見を頂いたことがあり, ならば全部「黒板」内でやればいいのでは, という所から着想した.
Github の生態系が分かっていないが, fork とかきちんとした方がいいと思うので, これから色々調べてやってみる. そもそも Git 自体あまりよく分かっていない. バージョン管理というか, 自宅と会社の HOME ディレクトリの共有に使っている感じであって, まずはそこからもう少し何とかしないといけない感ある.
勉強しないといけないこといっぱい. 備忘録としてプログラミング関係の話も書いていこう. 数学関係の人の役に立つことも期待したい.
追記: 2021-06-13¶
いまとなっては jquery も厳しい. 大量生産できるように, かつ簡単に動画を作り直せるようなプログラムを作りたいが, どうするといいだろうか? 詳しい人に頼んだ方が早いとは思う. 依頼できるだけの資金がほしい.
2013-07-13 本文が 3 行, 5 行の論文があるという¶
本文¶
本文がたったの 5 行の論文. http://forumgeom.fau.edu/FG2011volume11/FG201105.pdf
本文がたった 3 行 (参考文献を除く) の論文. http://forumgeom.fau.edu/FG2011volume11/FG201106.pdf
それぞれ, Jo Niemeyer の A Simple Construction of the Golden Section, Michel Bataille の Another Simple Construction of the Golden Section だ. 大体からしてこんなのが論文になるの, という感じすらあって衝撃を受ける.
2013-07-12 『不完全性定理は, 一体, どんな成果をあげてきたのだろうか? と素朴な疑問が浮かんでしまう』¶
号泣した.
【しかしながら, 技術者である私には, 華々しい成果をあげた量子力学と相対性理論に比べてみると, 不完全性定理は, 一体, どんな成果をあげてきたのだろうか? と素朴な疑問が浮かんでしまう】 http://sakuraimac.exblog.jp/19237670
何で数学と物理比べているの, とか地獄の底から這い上がってきたような意見に目も眩む方の市民だった.
2013-07-11 江田bot¶
本文¶
patho_logicさんによる次のようなツイートがあった.
本人知ってると破壊力がすごい.
これは江田botのツイートを受けての呟きだ.
私は背理法は大好きですよ.
江田先生を良く知らないのでアレなのだが, どう面白いのかすごい興味ある.
2013-07-10 やっぱ特異点だべした!¶
感動した.
2013-07-10 『数とは何かそして何であるべきか』 リヒャルト・デデキント 著, 渕野 昌 翻訳, 渕野 昌 解説¶
本文¶
数とは何かそして何であるべきか
リヒャルト・デデキント 著 , 渕野 昌 翻訳 , 渕野 昌 解説 待望の新訳 訳者による充実の解説付き!
「数とは何かそして何であるべきか? 」「連続性と無理数」の二論文を収録. 現代の視点から数学の基礎付けを試みた充実の訳者解説を付す. 新訳.
コメント 1¶
この辺からytb_at_twtさんが感想を書いている.
現代的視点から読み直すというのはまあ批判はあるじゃろな. でも, デデキンドの実数論を現代的視点から読み直して位置づけ直すというのでお値打ち (フチノさん曰く名古屋弁) な本だと思います. http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095473/
コメント 2¶
patho_logic さん分.
「数とは何か, 何であるか」買って来た. フチノ節前回でゲラゲラ笑いながら読んでる. http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095473/
でも, デデキンドの実数論を現代的視点から読み直して位置づけ直すというのでお値打ち (フチノさん曰く名古屋弁) な本だと思います. http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095473/
現代的視点から読み直すというのはまあ批判はあるじゃろな.
コメント 3¶
ytb_at_twt さん分.
デデキント「数とは何かそして何であるべきか」買ってきたー。デデキントの2論文が計110ページ程度、ネーターやツェルメロの「関連」論文が50ページ程度、訳者解説が150ページ程度、岩波文庫のゲーデル本と同じく原著者ではなく訳者の本。こういうビジネスモデル流行っているのだろうか。
— ytb (@ytb_at_twt) 2013年7月12日
デデキント「数とは何かそして何であるべきか」買ってきたー. デデキントの 2 論文が計 110 ページ程度, ネーターやツェルメロの「関連」論文が 50 ページ程度, 訳者解説が 150 ページ程度, 岩波文庫のゲーデル本と同じく原著者ではなく訳者の本. こういうビジネスモデル流行っているのだろうか.
参考書の紹介で「江田 [ 10 ] と坪井 [ 54 ] はともに不完全性定理を中心とした個性的な教科書である. 両方とも著者を個人的に知っていると十倍楽しめる本である」と書いているが, このデデキント本も (以下略).
「ゲーデルの不完全性定理をなかったかのように振る舞う」ブルバキ派について「大震災での原発事故の起こる前の日本では, 原発事故は『起こらないものである』とされていて…訳者にはこれは『第一不完全性定理はなかったことにする』という一部の数学者の思考パターン…と同型」 (p238)
つーか原稿事前に読んだ誰か, こういうの止めろよ.
で, ところで, そもそも「数学の基礎」って何なのでしょうか. どこかに解説があるのかもしれないけれど見つけられない.
あと, この本, 対象とする読者はどういう人なんでしょうか. 50 ページで命題論理から ZF での選択公理とデデキント有限/ 無限の独立性まで書いてあって, すごい知識がないと読めないような気もします. 香りを楽しむ?
僕が独裁者になったら, 「数学の基礎」とは何かの定義を与えることなく, 「数学の基礎付け」について語ることを禁止したい.
私も読みたい.
2013-07-10 数学ができる女性が世界で一番かっこかわいいに決まっている¶
本文¶
「【女子学生必見】女性は偽名を使うと数学の点数がアップするという研究結果」というニュースを目にした.
昔から「女性は数学が苦手」だといわれている. 実際, 日本では大学の理系学部に女性が数人しかいないということもある. 「女性は数学が苦手」の原因は, 脳構造に多少の男女差があるためではないかという説もある.
だが, この考えを見直す新しい研究結果が発表された. なんでも「女性は偽名を使って数学のテストを受けると, 男性と同じくらい良い成績を出すことができる」というのである. そう, 女性はもともと男性と同じくらい数学の才能があったのだ!
どういうカウントの仕方をしているか知らないが, 「学部で女性数人」は確かに異常に少ない感ある. あと【女性はもともと男性と同じくらい数学の才能があったのだ】というのが地獄っぽい.
どこまで本当か知らないが, とある男性の教官が「男は若い頃に爆発的に業績を上げるような感じだが, 女性はコンスタントに良い業績を上げている, という感覚がある.」みたいなことを言っていた記憶がある. 性差はあるかもしれないし業績の評価をどうするかという問題はあるが, 一番不可解で頭に来るのは「頭のいい女性はかわいくない」とかいう風潮だ.
頭のいい女性, 特に数学が出来る女性は格好いいに決まっているので, 上記のようなことをいう異常者は全員問答無用で殴り倒していきたい. こういう馬鹿者共を殲滅していくことを 相転移プロダクションのミッションとしてかかげていきたい.
追記¶
次のようなコメントを頂いた.
実際数学できる女性の方が「数学ができる男には」モテると思うんだよね……
— 七星 慧斗 (@kate_ccs) 2016年2月26日
でも、髪染めて男女半々ぐらいで青春してる人らと話してると、かわいいと思う思わない以前にお互い同じ世界に住む恋愛対象候補とは思ってないなと感じることもある https://t.co/h8J53j6XIh
数学できるできないの間の壁ってよりかはオタクとリア充の壁だと思うけどね
— 七星 慧斗 (@kate_ccs) 2016年2月26日
オタクとリア充の壁なのかどうかは知らないが, 同じ感覚世界に生きていない感じはある.
2013-07-09 一ノ瀬さんからのご要望に応えて: 数理物理って何?¶
数学から見た数理物理¶
本文¶
一ノ瀬さんから次のようなご要望を頂いた.
@phasetr 最近少し数理物理に興味があります. 具体的にどんなことしてるのか知りたいです… あと解析力学と量子力学とか, 分野間にどんなつながりがあるのかとか知りたいです. と, 注文が多くてすみません (~_~;)
コメント¶
ということで色々書いてみる. まずは数理物理について適当に色々書いて, その後, 知る限りの物理の分野間の繋がりについて書いていきたい.
まず数理物理だが, あまりかっちりした意味があるわけではなく, 結構適当な使い方をされていることに注意してほしい. 人によって意味が大きく変わるので, まずをそこを説明する. 私が見た範囲での話であって, 人によって大きく意味が変わると言った以上他の使い方をしている人もいるかもしれないので, その辺も考えて読んでほしい. むしろ違う使い方などあれば教えてほしい.
大きく分けると次のような感じになる.
言っている人 | 実際の意味 |
---|---|
数学者 | (物理が元ネタの) 数学 |
-------------- | ---------------------------------------------------- |
物理学者 | (物理が元ネタの) 数学 |
当人は物理と思っているが傍から見ると数学 | |
数学者も認めるレベルで数学的にきちんとした理論物理 | |
数学色が強い理論物理 (数学的に厳密ではない) |
数学者が「数理物理」と言っていたらそれはただの数学だ. いいとか悪いとかそういう話とは関係ない. 物理学者が考えている問題を数学的にきちんと考えてみたら数学的にも面白い, という程度. 神保道夫先生のソリトンの本に「専門は数理物理」と書いてあったが, こういう意味だと考えていい.
物理学者と興味がかぶる部分はもちろんあるが, かと言って完全に重なることは基本的にない. 数学者は数学者だからだ. 最近は超弦関係でこういう話が多いが, もう少し古い話では微分方程式関係がこの感じ強い気がする.
よく「現象が実際にあるから微分方程式に解があるのは当たり前で下らない」とかいう, 物理として考えて気が狂っている発言をする社会性溢れる者がいるが, 極端なことをいうとこの辺: 物理学者からしたらあまり興味のない話でも数理「物理」と言ったりするし, むしろ大抵これ, と印象. 興味の向きがあくまで数学なので, 基本的に数学者の言う数理物理は数学であって物理ではない. ちなみに, 以前河東先生が「物理の人に『数理物理と物理を名乗るなら何か意味のある数字出してみろ』と言われて凄く困りました」と言っていた.
念のために何故「現象が実際にあるから微分方程式に解があるのは当たり前で下らない」が物理として狂っているかを書いておく. 微分方程式を立てた (現象をモデル化した) からといって, そのモデルが本当に自然を適切に表現できている保証はない. 例えば現象として明らかに拡散なのに波動方程式が出てきたらそのモデル化はおかしい. 素粒子で適切な対称性を持つべきモデルなのにはじめから Lagrangian の対称性が壊れていてもいけない.
単に方程式を見ただけではそれが現象を記述できている保証がどこにもない. 数学的に解があるとかないとかいう以前の問題で, 特に研究フェーズなら物理として真剣に考えるべき問題だ. また, 仮に物理として適切なモデル化であったとしても, 解を持つかといった純粋に数学的な話とは何の関係もない. 少なくとも一時期, 場の理論で発散の困難などと言われていた話では, 解 (基底状態) の存在が本当に問題になっていたので, 物理として解の存在が非自明なことは実際にある.
こういうこと言う人, 自分の立てたモデルはいつも必ず現実を適切に説明できているという全幅の信頼を置いているのだろうか. 頭おかしいとしか思えないし, 実際おかしい. 「物理ではいちいち解の存在まで考えない」ということなら分かるが, それならそう適切な表現を使うべき.
別件だが, 以前宇宙論をやっていた友人が「論文読んで研究室のゼミで発表したら『そのモデル, 解がないこと分かっているからやっても意味ないよ』って言われて愕然とした」というようなことを言っていた. この辺の意味や真偽について久徳先生に聞こうと思っていてずっと忘れている.
脱線しまくっているが, 数学者のいう数理物理は数学ということだ. 一方で物理学者のいう数理物理はバリエーションがある. 次回はそれについて書こう.
ラベル¶
数学, 物理, 数理物理
物理から見た数理物理¶
本文¶
まずは分類を再掲しよう.
言っている人 | 実際の意味 |
---|---|
数学者 | (物理が元ネタの) 数学 |
-------------- | ---------------------------------------------------- |
物理学者 | (物理が元ネタの) 数学 |
当人は物理と思っているが傍から見ると数学 | |
数学者も認めるレベルで数学的にきちんとした理論物理 | |
数学色が強い理論物理 (数学的に厳密ではない) |
今回は物理学者のいう数理物理について書いていきたい.
まず数学者と同じで「物理が元ネタになっている数学」という程度の意味で使う場合がある. 何となく超弦関係で「 (現時点で) ほとんど実験にかけられないような話で, 物理的な正当性を確かめづらいところで物理というのはどうなの」的な文脈で多少否定的な用法が多い印象. あと「物理ではないが (数学としては) 面白い問題ではある」という物理学者の意見表明にも使われることがある印象.
思い出したが, Gottingen の物理にいる Buchholz という代数的場の量子論という数理物理分野の有名人がいる. 河東先生が「彼は『お前のやっていることは物理ではないと言われて, 自分は物理学科ではいじめられている』と言っていましたが, それはそうでしょう. 彼がやっていることはスタイルから中身まで数学ですよ」と言っていたので爆笑した. そういうレベルで数学的にガチガチにやっていても物理を自称する人もいる. この辺は「当人は物理と思っているが傍から見ると数学」と言えそう. Buchholz と並べると即死レベルのアレだが, 私も多分この辺.
「数学者も認めるレベルで数学的にきちんとした理論物理」だが, Lieb や学習院の田崎さんあたりは比較的この辺ではないだろうか. 物理としても面白い結果をきちんと出している (であろう) ことを前提にしている. Lieb くらいでも数学の人で「彼は修士くらいの学生でも知っていることを知らなかったりする」という発言を聞いたことはある. 私は Lieb の興味は基本的に物理だとは思っているが. 物理としても意味があって数学的に制御できることというの, 私が近い分野では非常につらくて, 強磁性の Hubbard モデル関係くらいならぎりぎり何とかなるのでは, という感覚. 田崎さんを挙げたのもその辺の兼ね合いがある. スピン系だと物理の方が遥かに進んでいる印象はあるが, スピン系の連続極限からの共形場ということになると, むしろ数学的色彩が極めて強くなるという印象はあるもののその辺の物理自体をよく知らず数学からの話ばかり目にする方の市民だったので詳細不明.
数学的に厳密ではないが数学色が強い理論物理, 大体超弦を想定している. 他に何かあるだろうか. よく考えたら「数学的に厳密ではないが数学色が強い理論物理」という一文自体よく分からない.
前もつどいのときに少しお話したのだが, 物理を数学的にきちんとやるというのはもの凄く大変で, 分野によっては本当に何もできない. もちろん私が近いところしか知らないが, 何とかなるところはスピン系とか Hubbard など格子系での相転移くらいではなかろうか. 量子力学・量子統計力学からの物質の安定性は数理物理というか Lieb 周辺しかやっていないようで, その辺は私は物理的にも極めて大事な研究だと思っているが, 純粋な物理の人がどう思うかはよく分からない.
あまりろくな話を書いていない気がするがとりあえずこんなところで.
追記¶
数理物理って物理から逃避したくなった時にやる数学のことじゃないの? http://phasetr.blogspot.jp/2013/12/blog-post_19.html
いいとか悪いとかそういう話ではなく「数理物理」というのはこういう (否定的な?) 使い方もされることがある. 数学だからといっていつもいつでも厳密な言葉の使い分けをしているわけではない. 「可積分系」などもかなりふわっとした使い方をする. グレンラガンのカミナの兄貴のように「お前の信じる数理物理を信じろ」という感ある.
ラベル¶
数学, 物理, 数理物理
2013-07-08 Ruby に超準解析のライブラリがあって激しい衝撃を受けた¶
本題¶
HTML5+JavaScript で高校生向けの数学・物理の簡単なアニメーションが作れるので, その関係もあって最近プログラミングを本格的に勉強したいと思っている.
そして全く別件で今色々あって Ruby の勉強を迫られている. そしてまた色々あってるびきちさんに 何かいい本がないか伺ってみたら次の本をおすすめされた.
読んでいたら, 数値の章のラストに超準解析のライブラリがあるとかいう衝撃的な話が出てきたので早速検索した. それがこれだ.
今のところインストールしても使う用途がないので 何もしていないが, びっくりした. ライブラリなら複素数やら行列はいくらでもあるだろうが, 超準解析ライブラリがある言語, 他にあるだろうか. Haskell 勢とか頑張ってほしい.
追記¶
別記事にしてしまったが, dif_engine さんからご指摘を頂いている.
こちらも参考にしてほしい.
追記 2¶
上の指摘をこちらに追記しないままにしていたら, dif_engine さんから再度指摘を頂いた.
@phasetr これはLaugwitz流の無限小計算の方法であって、A.Robinsonが創始した超準解析とは方向が違うというのは以前コメントした気がする
— differential_engine (@dif_engine) 2016年3月11日
で, これ.
@dif_engine 魔法少女にも何か指摘された覚えがあります。あとでコメント引用しておきます
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2016年3月11日
@phasetr @dif_engine https://t.co/zXyzLvJlON ここで言及してる
— (@functional_yy) 2016年3月11日
とりあえず, こちらにもきちんと記録・引用しておく.
追記 3¶
2021 年時点では数学+プログラミングは Julia を使うのがよさそう. Python ももちろん役に立つ.
追記 4¶
この間 Ruby に超準解析ライブラリがあるのを知って衝撃を受けた話をしたが, それについて dif_engine さんにちょっと教えてもらったことがある. 少なくとも今の私にはあまりよく分かる話ではないが, 面白いと思う人はいるだろうから転記しておこう.
この辺のツイートからはじまる.
Ruby に超準解析のライブラリがあって激しい衝撃を受けた http://goo.gl/fb/mReIe よく分からない数学
@phasetr tar.gz が落とせなかったのでソースを見ていませんが内部計算に RationalPoly を使ってるとあるので, 1+epsilon の処理のときには形式的に epsilon の有理式として計算してから epsilon=0 と代入してるのではないかと想像します.
@dif_engine ありがとうございます. 超準解析全く知らないのですが, 修羅っぽい印象を受けました
@phasetr 順序体 K の正の部分 P に対して, ∀ p ∈ P p < T として, それと整合するように多項式環 K[T] を順序環とみなし, その商体を考えると t := 1/T が無限小とみなせて…というような話が昔からあるようです. (超準解析の前から)
適当にネタを投下しておくと色々教えてくれる人がいる. いい時代だ.
追記 5¶
Twitter で詳しい方から次のような情報を頂いた. 鍵アカウントだったので許可を頂いた上で転載する.
実数体の任意の拡大順序体は無限大元と無限小元を持ちます. 既に説明されているように, このライブラリでは, 有理式体 R(X) が R の拡大順序体と見做せるので, それを利用しています.
これは超実数体(もう少し正確にいえば計算機で表現できるような実数体の部分環の超準化)とは全く異なるものです. ですから超準解析ライブラリやちょう実数のライブラリという説明は(開発者がそのように説明しているものの)不適切です.
定義をはっきりさせないといけないが, 【実数体の任意の拡大順序体は無限大元と無限小元を持ちます】というのがやばい. 他の (順序?) 体でも同じことは起きるのだろうか. 実数の魔界ぶりを改めて認識させられる.
追記 6¶
編集したらさらに情報を教えてもらったので.
なお無限大と無限小の定義は次の通り: 任意の正の実数よりも絶対値が大きい元を無限大元, 任意の正の実数よりも絶対値が小さい元を無限小元という.
あともう 1 つ.
@phasetr 有理数体を用いて定義された「無限小を持つ環」と(超準解析の)超実数との違いは、例えばsin(x)に代入できるか?などというところに現れます。超準解析では、実数上定義されていれば自動的に超実数に定義が延長される。
— differential_engine (@dif_engine) 2015, 5月 5
あの日見た数体系の名前を僕達はまだ知らない。
追記 7¶
@phasetr有理数体の拡張ならreal closed transcendental and infinitesimal extensions of the rational numbers(http://t.co/GhXtKXXZ8Z)が他にも計算機で応用されてますね
— カオナシ(T.MATSUMOTO) (@CharStream) 2015, 5月 5
どんどん情報が集まってくる.
ラベル¶
数学, 数学教育, 物理, プログラミング
2013-07-04 『俺が一番気に入らない定理』とか見てみたい¶
本文¶
Twitter でこんなツイートを見かけた.
『世界で最も美しい 10 個の物理方程式』みたいなタイトルの本はよく見かけるので 『世界で最もきたない 10 個の物理方程式』みたいな本もバランスをとるためにも出してほしい
前, ブログだか何だかで早川尚男さんが「非平衡は魔境で, 到底美しいとは思えない変な話ばかりだ」みたいなことを書いていた覚えがある. 色々な人に聞いても分野ごとにとびきり綺麗なのが出てくるばかりだろうから, やはり汚い方で色々聞いてみたい.
あと, 『世界で最も美しい~』は正直食傷気味なので, 『俺が一番気に入っている方程式・定理』とか, そういう個人の感慨を前面に押し出す方向で何かやりたい. 前, 数学徒が愛した定理というのをまとめたが, 『俺が気に入らない定理』というのもいいかもしれない.
逆に, 一番お気に入りの 1 つの定理を延々と語り続けるというのも面白そう. こんな拡張があるとか, 数学の進むべき方向を示したとか何とかを 5 時間くらい話し続ける動画とか.
追記¶
気に入らない数学の定理は"1+1=2"。原始再帰関数の定義通りゴリゴリ計算するだけじゃないか!二ステップで答えが出るからやり遂げた感もない! QT @phasetr: 『俺が一番気に入らない定理』とか見てみたい http://t.co/CdnnoHoWB9 よく分からない数学
— ytb (@ytb_at_twt) 2013, 7月 5
涙を禁じ得ない.
追記 2¶
数学書房から『この定理が美しい』という本が出ている.
2013-06-20 「順序数解析という魔境」について tri_iro さんに悪魔のような文献を教わったので共有したい¶
はじめに¶
最近忙しくて Twitter 上で応答できなかったのだが, いつも通り覚書としてこちらに書いて残しておこう.
tri_iro さんから次のような情報を頂いた. ありがたい限りだ. お願いしたわけでもないのに色々と教えてくれるというの, 最高に楽しい.
転載¶
宣伝:2013 年 8 月 5 日 (月)-7 日 (水) に慶応の三田キャンパスで数学基礎論サマースクール 2013 が開かれる http://goo.gl/fb/ZIxUB よく分からない数学
@phasetr 言及されていることに今更気づいたのですが, 順序数解析は, なんというかもはや順序数云々を越えたもっとやばい魔境ですね. https://en.wikipedia.org/wiki/Ordinal_analysis
@phasetr ゲンツェンによる「順序数 $\epsilon_0$ の下での」 ペアノ算術の無矛盾性証明は聞いたことがあるかもしれませんが, それをスタート地点とする話で, このあらい先生の解説 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/57/2/57_2_113/_article/-char/ja/ を見ると, その魔境具合を体感できます.
メモ¶
ゲンツェンやばい. そして折角なので後者のを軽く眺めてみた.
事実, 後に Hilbert の 第 10 問 題 (Di0phantus 方程式の可解性の決定) の Matijasevic-Robinson-Davis-Putnam による否定的解決により, CON (T) は Diophantus 方程式が自然数解を持たない $\forall \vec{x} \in \mathbb{N} \left[ p (\vec{x}) \neq 0 \right]$ という命題と同値である.
P.2 の記述なのだが, Diophantus, そんなにやばい問題だとは知らなかったので, まずそこで驚いた.
同じく P.2 の無限降下法, 名前が格好いいので一度は使いたいと思いつつ使ったことがない学生生活だった.
ひとは詩しく思うかもしれない:ここで言う構成的とはいかなる謂か? 数学的に正確に定義されているか? 例えばある公理系 T で形式化できることが構成的てあるための必要十分条件となるような T があるのか? これに答えて曰く:Hi1bert'spr0gram のような grandprogram において, その開始以前にこのようなことを問うことは単なる怯儒というべきである. 何が構成的か, あるいは得られた証明が構成的か否かは, 証明が得られてから吟味すればよいし, その価値は得られた洞察から判断するほうが生産的である.
それはそうなのだろうが, (基礎論の) 素人の素朴な感覚としては, やはり真っ先に考える.
P.3 の次の記述がよく分からなかった. 明らかなのか.
この簡易化のステップが終了して $0=1$ の数学的帰納法なしの証明が得られたら, 矛盾. なぜなら数学的帰納法なしの矛盾に至る証明があり得ないことは明らかだから.
あと, 次の一文, かなり切れていると思う.
このステップの有限性を保証するのに超限順序数を導入する.
有限性を保証するのに超限何とかを担ぎ出すとか並大抵の発想ではない. もちろん, 言葉の上で有限の対として無限があるのだから当たり前といえば当たり前ではあるが, 改めて言われると衝撃を受ける.
P.6
直感を欠いたままで組合せ論的につくられたものが, 後に発見された集合論的直観を先取りしていたのは驚きである.
何かびびっと来るものを感じたので抜き出しておく.
P.7
ところで, このような集合の定義の仕方は, 数学では Borel 集合族 $\mathscr{B}$ の定義が典型的である.
戦慄した. あと. この辺からもう何を言っているのかほぼ完全に分からなくなっている.
P.9
竹内外史の (brutal な) テーゼに従おう
これ, 無駄に格好いい一文だ
P.12
6 結 語 しかしなにより謎なのは, 何故 Gentzen (そして竹内外史) は, 不完全性定理の後に無矛盾性証明に挑んだのか, ということだ. 不完全性定理のために, そのような証明がいかなるものであれ, その認識論的価値は大幅に減じたことが確かなのに.
胸に来る一文だ.
結論からいうと, 新井敏康先生は面白い文章を書く人だったということが分かった.
2013-06-18 何度も言っている線型代数と量子力学と関数解析と数理物理的なアレ¶
イケメンエリート野郎のオペのコン P が 次のようなことを言っていた. それに対していつも言っていることをまた言ってきた. オペのコン P にももう何度も言っている気がして申し訳無く感じてアレだった.
量子論を物理として理解するなら, 連続な場合は離散的な場合のアナロジーでいいので線形代数で十分では?
@kbl_30 大分前に Amazon の線型代数入門の書評にそれ書いておきました
@phasetr ねくちゃんが関数解析から攻めようとしていたので
@kbl_30 @phasetr アナロジーではなく関数解析でないとこまる, という場面はやはり出て来るのでしょうか.
@Yonus_Mendox @kbl_30 困るときは物理が悪い (物理的考察が甘い) と判断するべきです. むしろ関数解析をきちんと使って物理的に満足いく議論が出来る方が珍しいくらいなので, その意味でも数学的にどうこうというのはおすすめできることではありません
@Yonus_Mendox @kbl_30 ただ無限次元の線型代数として把握していれば色々なことを 統一的に理解できて楽な部分はあると思っているので, その辺について今度東大かどこかで話したい (そして動画化したい) とは思っています. 忙しくてそちらの話は全く進められていないのですが
@phasetr なるほど. 言い換えれば, 物理にとって関数解析は「無限次元の線型代数」に過ぎないので, 大抵はアナロジーで充分, ということになりますか.
物理を数学的に厳密に, とか息まく新入生などがいるかもしれないが, そういう人はとりあえず私を見よう. 物理も数学も中途半端な出来損ないの醜いキメラだ. こうなる覚悟がある者だけ数理物理に来よう. 来るなら歓迎はするが勧めることはできない.
2013-06-10 (おそらく) 数学教育に関する takey_y さんの発言を記録しておく¶
この辺からはじまる takey_y さんの発言を備忘録として記録しておく. ちなみにまとめるにしても Togetter の方が楽とか view も多いとか色々あるが, それでもブログに残しておくのはあとで自分で読み返すときに楽だからだ.
昨夜ちょっとだけ話題になってたことに参加すると, 今年の阪大数学の第一問. 僕は, あの感じの問題が増えるのは良いことだと思っています. この辺りの話は, だいぶ前にブログに書きました. → http://bit.ly/14NhoY0
承前) 昔の文章はこっぱずかしくて読み直すのが辛いのだけど (笑), 考え方はあまり変わってない. (というか同じ話をずっとしてるなあ・・・
承前) 昔の東大の加法定理の問題にせよ, 今年の阪大の第一問にせよ, 定義を聞いて証明させる問題というのは, 数学に携る人々の内部からも外部からも非難の声が上がる可能性が高い. 高校数学は所詮ニセモノなんだから, 論理体系のあり方に抵触するような出題はすべきでない, という声もあると思う.
承前) そういう非難の声を受けるリスクを背負ってでも出題してるわけで, どうしてそういう出題をするのか, という点が大事だと思う.
承前) 大学入試の数学の問題を「小論文」のようにする可能性はあるだろうかな, ということを少し前から考えていたのだけど, ちょうど「数学文化」の最新号では巻頭で宇野先生がこのことを論じられてた. http://bit.ly/14NjfMB
2013-06-07 楕円曲線暗号のサーバー証明書, 導入第 1 号とのことだが, 楕円曲線暗号のサーバ証明書が日本で出ていなかったことを知る無学な市民だった¶
楕円曲線暗号のサーバー証明書, 導入第 1 号は「小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記」という記事を見つけた. もちろん小悪魔女子大生とかはどうでもよく, 楕円曲線暗号というところが大事.
楕円曲線暗号のサーバー証明書, 導入第 1 号は「小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記」 (2013/6/7 14:48)
株式会社シマンテックは 6 日, 楕円曲線暗号 (ECC) 対応版 SSL サーバー証明書が, 株式会社ディレクターズの運営する商用 Web サイトとブログに導入されたと発表した. シマンテックは 2 月に商用の ECC 対応版 SSL サーバー証明書の提供を開始したが, 今回が導入第 1 号となる.
恥ずかしながら不勉強で知らなかったのだが, 楕円曲線暗号のサーバ証明書, (日本では) まだ稼動していなかったようだ. 楕円曲線暗号, 理論的には結構前だと思うのだが, どのくらい実装されているのだろう. ググれば Wikipedia とかに書いてありそうだが, そこをさぼる市民クオリティを発揮していきたい.
2013-06-04 茂木健一郎御大の衝撃的なほど下らない見解を見た¶
はじめに¶
本当にしょうもない見解があった.
ツイート¶
らぞ (6) ネットがあれば, 大学は要らないか. よっぴーとの間で, あっという間に「いらない」と結論が出ちゃった. OCW を見て, ネット上で議論し, google scholar で論文を読み, 動画で上がっている lecture を見れば, へぼ大学の授業よりもよほど密度の高い学びができる.
コメント¶
数学なら一応 arXiv があるとはいえ, 現実問題としてアクセスできない論文はたくさんある. それはそれとして, こういう意見がついていた.
@kenichiromogi (1) 知識はウェッブ上で充分得ることができると実感します. ですが, 学問・研究のトップアスリートの本気レクチャーを生で受け取る「質感」と 自分が揺り動かされる「衝撃」はウェッブで得られるのでしょうか? レクチャーの内容自体はウェッブ上でむろん視聴できる.
@kenichiromogi (2) 先日 6/13, 望月新ー教授 (ABC 予想を解決したと言う論文をウェッブ上に発表した数学者) の講演を生で聞き, 内容はほとんど理解できない (私は実験物理系の企業技術屋) にも関わらず, 「強烈な質感」を感じて, 私も自分の勉強をさらに深めようと決意.
@kenichiromogi (3) 望月先生の講演は, 訥々淡々としながらも「磁力」がありました. この体験の場となった東大 (駒場) と, 京大 (望月先生の所属) に感謝しています. 話し手の持つ「強い磁力」は, 現状の技術では, ウェッブより「生の出会い」がはるかに影響力を持つと実感.
正にこれで, 現状の技術では場の空気が共有できない. 何でもいいが, スポーツ観戦や音楽のライブがいいのだろうか. 確かにこれらは家でも見られるが, 会場で一体となる臨場感は違う. あと, 気持の上で「わざわざお金を払って見に行った」というのものめりこむのに大きく効くのだろう.
こういうしょうもない Web 万能論, 本当に下らない. 少なくとも現状の Web, 満足できるレベルの講演録とかあまり置いていない印象ある. 私が学生の頃, たまたま就職の面接がある日に Fields 賞を取った Yau が講演に来ることが分かり, 分野は全然関係ないが生で Yau を見てみたかったから, という理由で交渉して面接日ずらしてもらったことがある. この間, 理研で理論物理学者の展示をやったという話があったが, それと同じで現状, 生というのは気持の上でまるで違う.
茂木御大は「自分はそう思わない」というのならそれはそれでいいが, こういう部分に気が配れないというのでは web 上の学習に未来はない. 最近企業でも e ラーニングというのが浸透してきているが, ここでも 1 人で黙々と画面に向かった学習をするということで, モチベーション維持がかなり問題になっていると聞いている.
強烈なモチベーションが勝手に湧いてくるタイプの人間ならいいが, 一般ではそうもいかない. 数学は心でやるものだと何度だって言い返せる.
大学のいいところは個人で頑張らなくても, 専門家が本や人, 環境が揃えてくれるのがいい所. 金と時間をかけてでも整備する価値がある.
2013-06-04 論文紹介: Buchholz-Grundling の Quantum Systems and Resolvent Algebras¶
はじめに¶
Buchholz-Grundling による survey, Quantum Systems and Resolvent Algebrasが arXiv に出ていた. これだ. 以前から resolvent algebra の論文は出ていたが, それに関するまとめらしい. Resolvent algebra を使うと何となく計算がうまくいきそうな感がするので, 使ってみたいと思っている. また Araki-Woods algebra の代わりに resolvent algebra を使った場合の自由場の BEC を調べることで親しんでみようとか思っているのだが, 滞りまくっている.
Resolvent algebra というのは大雑把にいえば非有界作用素のレゾルベントを取ることで有界作用素にし, その有界作用素から作用素環を作るという話. Araki-Woods algebra は非有界 (自己共役) 作用素 $A$ からスペクトル理論を使って $e^{iA}$ (有界作用素) を作り, これから作用素環を作るという話. レゾルベントの方が色々振舞いがいいのに何故かほとんど研究されてこなかったが, 何か色々な性質がよくて嬉しいから皆もやろう, ということで論文になっている.
アブストを見るとすぐ出てくるが, 量子系の運動学的な構造をモデル化するのによいらしい. この辺まだあまりよく分かっていない.
Introduction¶
Introduction では Segal の場の作用紡の話からはじまる.
作用素 $\phi (f)$ から作る多項式代数は自己同型による意味のあるダイナミクスをあまり持っていない. 実際それを不変にするのは多項式 Hamiltonian だけだ.
ということらしい. 知らなかった.
非有界作用素だと扱いが面倒なので, 指数の肩に乗せて有界にする. これは良く知られた Weyl algebra だ.
実は有界作用素にして Weyl 環にすると, 表現論的に元の CCR algebra とは違う環になる. 新井先生の本, 『量子現象の数理』の 3 章では量子力学のときに Aharonov-Bohm に即してこれが議論される. 興味がある向きは見てほしい.