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2024

2024-12-17 双曲幾何

そもそも、双曲幾何って時点で、低トポ、複素解析、群論、力学系、微分幾何、…と色々な派生があるので、 一般論殴りができる人は置いといて、とりあえず勉強が苦がじゃない人が具体例から色々な知識を仕入れることができる道具として、双曲幾何は有用なんよな

2024-12-11 古典的な二体ポテンシャルに対する最低エネルギーの評価

Kiessling, 2009, A note on classical ground state energies 物質の安定性に関連して古典的な二体ポテンシャルに対する最低エネルギーはどうなのかとずっと思っていたがたまたま改めて検索したら量子の方が頑張って計算した経験が多い市民的にはなかなか衝撃の結果があった。

2024-12-11 積分等式の導出集がほしい

緩募 この辺の実解析やフーリエ解析で良く出てくるような積分等式がまとまった本。

一般的な積分の公式集だとGradshteyn and Ryzhikが有名ですが、フーリエ解析に特化したような本があるのかどうかはよく分かりません。

(※この画像の積分はt=xs^2で置換して1/(1+s^2)の積分(arctanが出てくるもの)を使えばいけると思います)

ありがとうございます。作用素環で時々A short proof of Tomita's theoremのようなものが書かれる程度にフーリエに関わるような積分等式が出てきて、積分等式系の処理に慣れていないためよくハマっています。

なるほど。逆に私などのPDEerはこういう具体的な積分表示をゴリゴリ評価していく議論が好きって人が多いと思います笑 見ているとPDEの中でも人によって得意な手法が千差万別で、身も蓋もないんですがやはり慣れとか職人技の部分が大きいと思いますね...。

先の画像は(先日京都賞をとったとして一部界隈で話題になった)リーブの物質の安定性の本のノートから引っ張ってきた等式で、むしろその辺の議論自体はとても好きなのですが、R^d上(連続系)の議論は難しすぎて手が出ず、格子系または抽象的な模型にしか手が出せずに終わったのでとにかく不慣れです

これ、奏理音ムイさんから教えて頂いた文献以外にも探すと1000ページ越えの結果だけ書かれた本はあったりするが、証明も書いて欲しい。証明集らしかったこのページはPDFのリンクが切れている。https://arxiv.org/abs/1803.00632などarxivにも上がっているくらいアレで市民にはつらい。 逆にいえばこの積分をきちんと証明付きで書けば、流石にそれだけでは論文にはならないが数学界への貢献になるのだろう。https://arxiv.org/abs/1803.00632あたりはwe mention new integralsと言っているから新しいのが見つかればそれはそれで一仕事にはなるようだ。適当な指導で学部生でも論文になるのでは。

2024-12-10 スカラー量的な概念が通じない問題

素人質問ですが、スカラー量は全てベクトル空間の係数体の元として表現されるのでしょうか? 温度などのスカラー量をそのように捉えたことはなかったので気になりました

前半は線型空間に対する数学としての定義で数学としてそういう風に設定された対象としか言いようがなく、一方で温度は線型空間論の意味でスカラーではないためそもそも疑問の方向性がおかしく、数学として考えても何も答えは返ってこない。

説明ありがとうございます、数学におけるスカラーが物理のものと別物で一緒に考えても無意味なのはよく分かりました

内積空間で定まる内積の値や長さ,角度は数学的な意味でスカラーだと思うのですが、これはベクトル空間の係数体の元でしょうか?

違います。一般の線型空間の定義とその他の諸量の定義を確認してください。あと角度は定義できるといえばできますが、例えば複素係数のときに高校での角度と同じ意味を持つ保証はありません。 私の知る限りで正確にいえば、内積にあるように内積を定義するのは実または複素係数の時だけで実際にそれ以外の一般の体での内積を見たことがありません。p進の場合は論文https://arxiv.org/pdf/2204.09239があるのだけは知っていますが専門が遠く、何かしらの意味で簡単ではないのだろうとは思いますが、わかりません。そもそもinner productとは書いていても、実際に実・複素の内積と類似の対象なのかも私には判定できません。他の話として、ベクトルの長さ・内積は定義できなくても二つのベクトルの距離は定義される場合があり、それは情報系の符号理論・誤り訂正のハミング距離のような形で実応用があります。この場合は有限体である$F_2$係数の線型空間に対してハミング距離は$F_2$ではなく実数値(実際にはより強く非負の整数値)で体は一致しません。

大事なことを書くのを忘れていました。上記のF_2係数の2次元空間を考えて、実係数の2次元空間と同じように内積を定義して、内積から長さ(ノルム)は形式的には定義できます。この定義のもとで内積の値はF_2の要素として定義できます。ただしベクトルa=(1,1)に対してその内積はF_2の定義によって=1+1=0で、自分自身と直交します。そして無理矢理この平方根を取って長さを計算しようと思うと0です。角度もユークリッド空間と同じくコサインとその値を実現する角度で定めるならそもそも長さ(ゼロ)で割らなければならない点で形式的な内積の値を長さで割れません。特にcos θのθとしての角度は意味を持ちません。先ので言えばaは自分自身と直交するとみなせば無理矢理意味づけはできますがそれに意味があると思えるかは自明ではありません。また(ユークリッド空間と同じように考えた上での)長さに至っては内積の平方根を取る必要があるものの、F_2を含めて一般の体で平方根は定義できません。有理数係数の空間でさえ平方根は有理数を飛び出て実数になってしまいます。はじめに「内積や長さはスカラーではないのか」に関して「違う」と言ったのは内積は無理矢理定義できるがユークリッド空間と同じように解釈できる保証がない、長さに関しては平方根の存在が保証できないためそのままの形では定義さえ覚束ず、一般に代数拡大が必要なため本当にもとのスカラーでは閉じておらず、閉じていたとしても意味をなすと見做せるかは自明ではない、まで含んで書いています。さらにその状況であっても情報系で日々の生活に浸透しているレベルの凄まじい応用があるため、無視するのは勝手だが情報社会の破綻さえ含む可能性がある無価値な線型代数になりかねず、私はその程度の応用しかない範囲の線型代数にはもはや意味を見出せません。

2024-12-05 関数解析の初学にいい本: 量子系の数理の観点から

昔書いた「関数解析の初学にいい本: 量子系の数理の観点から」という記事を発掘したのだが、Math Advent Calendar 2024に載せて需要あるだろうか。 普段の市民的ポスト基準では大量のふぁぼがあるため、あとでこれもまとめ直して追記しよう。

理論物理学者に市民が数学を教えようの会も元ネタにしたコンテンツ作りたい.

2024-12-05 『「統計学再入門」読んだけど、物の見方が哲学に寄りすぎていて違和感が強かった』

「統計学再入門」読んだけど、物の見方が哲学に寄りすぎていて違和感が強かった。ある昔の哲学者が「平均」が実在だと考えていたことはどうでもよく、我々は平均値を使っているからといって「平均」が実在すると思っているわけでは全くないんですよね。過去の哲学者の言ったことを公理みたいに扱って論を展開するのはどうなんだと思う。

2024-12-05 自作のYouTubeに上げた数学動画の紹介

最近全然作っていない上に内容もあまり覚えていないのだが、そういえばYouTubeにも比較的応用向けの数学動画、少なくとも60本以上は挙げていた。他の人が作らなそう(作れなさそう、もっといえば興味がなさそう)な動画として「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」があり、微分幾何とその応用としての光学迷彩の数理シリーズ、もう少し数学色の強い内容として測度論・積分論の基礎の基礎があった。

一応タグ付け #物理数学に対する数学物理 実際にはむしろ物理数学に近そうな気もする。

2024-12-05 「あなたは「自然言語にwell definedを求めるな」の意味を誠実に解釈できているか?」

この記事、自然言語からコード生成がうまくいかない理由のすべてが書かれている

「トイレに紙以外を流すな」のテキストに含まれる未定義部分を定義し終えるまでAIは人間に仕様を要求することが本来必要なんだけど、今してない理由は人間のご機嫌をとりながら未定義部分をハルシネーションしてるからだよ… これ結局今の人間対人間でも起きてて、自然言語で技術された仕様をプログラムの要求する厳密性に応えるまでwell-defined な穴埋めをするのが今のプログラマの役割ということができてしまいそう

これ、少なくとも広義では物理の本の記述に戸惑う数学科学生(の反応の一部)の図そのものという印象がある。

2024-12-04 「俺も未解決問題解きてぇなぁ 労働なんかじゃなく」

俺も未解決問題解きてぇなぁ 労働なんかじゃなく

(広義)数学教育にも大量の未解決問題があるので、そういう方向での未解決問題の解決の方向性もあります。私も広義ではそこで色々やっているともいえます。

おおお…なるほど……なんか地に足着きつつも夢のあるような話ですね。

実際にこのポストにも書いたように「理論物理学者に量子力学や統計力学に現れる数学的困難(ただし物理的に面白く、純粋な数学学習にも役立つ事例紹介)」のような話もしています。

ちなみにここ数年は一応「理工系の総合語学」と称して、教養で必ず触れるはずの物理・数学・英語(語学)・プログラミングの四本立てで色々考えています。 その中で数学だと割とフランス語を知らないと困る局面がある、と言った観点から語学も英語だけではないところまで踏み込もうという蛮行に及んでいて、理工系にとってある程度一般的に興味がありそうな、アインシュタインの特殊相対論の原論文とその英・仏・伊・露の対応を見て語学そのものに対するモノの見方を鍛えよう的な話もしています。

例えばここではスペイン語のsobreがラテン語のsuper由来で、ギリシャ語はhyperというところから佐藤超関数の英語のhyperfunctionはギリシャ語+ラテン語のチャンポンで、フランス人か誰かにhyperfunctionの話をしたら「その後の組み合わせは違和感がある」と言われたらしく、それはギリシャ語+ラテン語(由来の単語)の組み合わせだかららしい、とか、日本語または中国語にも仏教(サンスクリット)由来の閼伽棚というチャンポンっぽい言葉がある、みたいな話をしています。

2024-12-03 S^1-bundle over surfaceのイメージがよく分かる文献

ゆるぼ

S^1-bundle over surfaceのイメージがよく分かる文献 3次元多様体が†見たい†

和書でウェブで公開されているものとして、こちらの §16 がその説明当てられています:

森元勘治『3次元多様体入門』

日本語だと森本先生の3次元多様体入門は詳しく書いてると思います(丁寧に書いてるから読むのがしんどいってのはあるかもですが)(僕はMartelliの本(arxivに原稿がある)を読みました) S1束なら、本質的にSeifert多様体の一般論なのでその文脈を追うのがいいのかも知れないですね

ありがとうございます 確かに森本先生の本は割とボリュームありますね

Martelliのリンクも貼ってみます。(Scottの原論文のほぼそのままですが)Seifert多様体の幾何を含むサーストンの3次元幾何の解説もあって、ところどころ変なところはあるけど網羅的で、辞書的には良いと思います Bruno Martelli, 2016, An Introduction to Geometric Topology

2024-12-03 2023-02-17での坂井哲さんによる「Hugo Duminil-Copin氏の業績」

Copinの論文を読みたくなる文章だ. その前に改めて原・田崎本を読み直さないと.

2024-12-03 (YouTube)の講義動画のいろいろな利用法

動画教材って頭入らなくないか?今更ながら 再生速度を速めて効率アップとか以前の話として 紙やタブレット等は問わずとしても、文字ベースの方が読書ペースを柔軟に変えられるし検索性も高いしで、動画教材より学ぶにあたって良いことが多いと思う 個人の感想だけど

以前「大学に入って集合位相の講義を受けたら何か異様なくらい頭の中に一致するものがあって怖い」みたいな話が流れてきて、真相が「子供の頃に親に松坂の集合・位相を読み聞かせられていた」だった話がありましたが、(高速の)音声学習で何度も概念に触れる機会を増やして重要そうな用語の把握や話の全体感を適当に掴むのに使って、流し読みの代替、また本当に文字通りの意味での耳学問に使える可能性があります。他にも場合によっては「その話のしている人の声や話し方が好きで、それを通じて話の対象も好きになる」みたいな形での応用もあるでしょう。実際、研究会などで「内容は何一つわからなかったがすごく楽しそうに話していて、きっと面白い話なのだろうと思った」みたいな経験があり、もっと言えば「講義の内容は何一つわからなかったが、楽しそうに話す教員の様子が見ていて楽しく、その分野を勉強するモチベーションが爆発的に湧いてくる」場合さえあり私は固体物理がそれでした

講義で楽しそうに話す〜のくだりは自分も心当たりあり、動画教材にそういう効能は確かにありそうなので、確かに否定ばかりするのも良くないですね。ありがとうございます

2024-12-02 数学の証明を吟じる曲がほしい

自分が8年前に「数学の証明を吟じるみたいな曲が欲しい(作りたい)。東大数理工学のどこかの研究室で自動作曲の研究とかあったし、それと初音ミク組み合わせるみたいなのやりたい。」と言っていたのがFacebookで流れてきたのだが、これ、今ならAI的なアレで割と簡単になったりしない?あとこれを思いついたの、「歌う生物学」というCD付き奇書があり、参考に一時期ずっと聞いていたのもあってこういうのを思ったのだった。YouTubeにクルアーンや般若心経の朗読的な動画もあるし、その流れで何かやってみたい。証明を吟じる歌で明らかに困るのは式を適切に読ませる部分だと思っているが、これをどう乗り越えるべきかが課題という気がする。数学書の証明歌い上げラップバトルみたいなのも誰かやってほしい。

2024-12-01 三次元多様体論の決定版

これはもう、3次元多様体論の決定版です。

3-Manifolds

できるだけ短くまとめた... ので,分かりやすく書けるはずがない(理解可能かどうかは別問題だ)... (^^;; 短さの帰結は「分かりやすく書けるはずがない」

3-manifolds: the book wants to be as short as possible, so there is no hope of being comprehensive (comprehensible is another matter).

2024-12-01 竹崎先生の三巻本を読む

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竹崎先生の作用素環の三巻本を読んでいたら、昔「僕はグロタンディークに恨みがある。作用素環の優秀な学生に対して「あの分野に未来はない」と言って作用素環をやめさせてしまったから」と言っていたのをふと思い出した。修士二年の間に何度かお会いする機会があっただけだが、本当に思い出深い。

記憶の改竄があるかもしれない(特に「あの分野は未来がない」のところ)が、作用素環の学生が一人いなくなったとかいう話自体は正しかったと思う。

一巻のP.54、カルキン環が名前抜きで出てくるが、当時はまだ名前がついていなかったのだろうか。

P.54のNotes、基本的な定理に文献の参照が貼られまくっていて、竹崎先生(の指導教員筋?)がまさにその時代を生きていたのをまざまざと感じさせる。今ではほぼ自明な1+x^xの可逆性をゲルファント-やナイマルクが初めてのC環の公理化で仮定していたというのと時代を感じる。

竹崎先生エピソード、数学まなびはじめにもある「寒い東北の冬に大学にこもって必死に勉強していた」的な話が書いてある。竹崎先生がいない時に先輩・富山先生との話で関連した話が出たがあって先輩が「何でそんなに頑張れたのか」的なことを富山先生に聞いたら「それは数学を愛しているからだよ」と何の気負いもなく笑顔で朗らかにスパッと答えていて、本当に感動した。富山先生は作用素環セミナーによく来ていて、終わった後の懇親会やら何やらで竹崎先生以上に接点があった。修論も聞いてくれて、作用素環ではなく作用素論で場の理論の話と専門から遠くてコメントしようもなかったろうに、講演が終わった後、「非有界作用素の話は本当に面倒で大変なのによく勉強したね」とコメントしてくれて、それだけでも本当に嬉しかったのをこれまた今もまだよく覚えている。たった二年間の修士の生活でも、竹崎先生と富山先生との交流は本当に思い出深さしかない。

竹崎先生の集中講義があったとき、板書が間違えていてそれを指摘したら、何かの琴線に触れたのか言及した対象について楽しく話し始めて、途中で富山先生が「そういう話ではなくて、単に板書が間違えているだけだよ」とコメントして、それに対して竹崎先生が「そうでしたか。(間違いの指摘に対して)正しいのはいいが、正しすぎるのも良くないね」と言い出して、そんなコメントがあるのかとめちゃくちゃ面白かった。 ある程度自由に時間が使える集中講義のようなところで好きな話をふると勝手に爆裂に話し出す数学者の姿を初めて見たので、そういう点でも本当に面白かった。

あと竹崎先生ではなく九大の松井卓先生だが、集中講義の後の懇親会で何かの研究会に向かう途中の話か何かで「物理学者はきちんと歩くが、数学者は歩き方がおかしくふらふらしていて歩き方で所属がわかる」みたいな話をしたあと、速攻でみんな「ランダムウォーク」と突っ込んで自分たちでウケていた。

リポストからのコメントに対する私の反応

グロタンディークに「望みはない」と言われたけど、1人で研究を続けて結果を出したのが広中平祐の特異点解消なので、グロタン大王のせいというより突き抜けた結果を出せなかった(それほど成熟していなかった)作用素環の問題だと思う ヒーローがいなかったんだろう

竹崎先生が書いているいろいろな文章を読んでいるとわかりますが、フォンノイマンが亡くなったり、最初加わっていたゲルファントのような人が離れたり、目に見えて大きな結果は出にくくなっていても中の人間からは着実に進展が見えていて、実際に竹崎先生自身が爆発的な発展を支えた一人でもあるため余計に悔しいのもあったのでしょう。ちなみにこれは竹崎先生が小澤さんの数学会春の賞を取った時の寄稿で「数学の中心地であるプリンストンなどではなく、地方の小さな大学で着実に進行していた」「作用素環に絶対の自信を持つKadisonは世界各地から学生を自大学に集めた」みたいな話があります。 あと竹崎先生ではなく他の人から聞いた話ですが、自身の名も関する大理論である冨田-竹崎理論について、重要な理論であるにもかかわらず冨田の論文が難しすぎて誰にも伝わらずに終わってしまうと危惧して、議論をクリアにして講演しつつまとめたレクチャーノートを出版し、それを読んだコンヌが 作用素環に来た、という話もあるらしく、その当時に華々しいヒーローはいなくなっていたとしても、竹崎先生は後に自身がヒーローになった上で分野に怪物を呼び込んだ実績も持っています。

2024-11-20 福島竜輝「授業では教えてくれない微積分学」

森北出版さんの新刊、福島竜輝さん著「授業では教えてくれない微積分学」をご恵贈頂きました。 大事なんだけど、通常の授業ではなかなか触れにくいような微積分に関する話題が沢山書いてあって、教える人も教えられる人もとても楽しく読めそうです。

2024-11-20 科学の殿堂 (5)数学の巨人 永田雅宜 〜ひたむきに歩き続けた人生〜

ロックな永田雅宜先生(13:00辺り〜)

概要

世界に衝撃を与え続けた数学者・永田雅宜の伝記。学校の先生になりたかった少年は、刈谷中学校時代にメモを使った勉強法を実践することで「覚える数学」から「考える数学」へ転換、数学の喜びを体験し数学の道を志した。自由な雰囲気の中で数学の新しい問題に挑戦していった名古屋大学時代。出会った人々に薦められ、助けられて京都大学から研究員として渡米したハーバード大学時代。そこで証明した「ヒルベルトの第14問題」、しかも否定的回答(反例による証明)で世界に衝撃を与え、永田を「ミスター・カウンター・エグザンプル」と言わしめた。世に出した論文は100以上。研究者としてだけではなく、教育者としても優秀な人材を育て続け、また弟子たちも永田の後姿を見て歩き続けた。「数学は、覚えるのではなく考える。考えてわかる。わかるということがうれしくて続けてきた」という永田。考え続け、答えを求め続け、ひたむきに歩んできた永田雅宜の人生を追いました。

2024-11-18 双曲線に関わる事実の初等幾何的証明

【ゆるぼ】双曲線x^2/a^2 + y^2/b^2 =1 の焦点を(±c,0)とするときに、c=¥sqrt{a^2+b^2}となることの初等幾何的証明

双曲線が「焦点からの距離の差が2aである点の軌跡」であることを利用して、“漸近線の方程式を用いずに”漸近線と直線x=aとの交点が原点から距離cにあることを示したいんだけど……

すみません双曲線の方程式は左辺がマイナスです……

脳汁溢れるやつあります これ楕円でやってるけどやり方は双曲線も放物線も同じ感じなので読んでもらえば分かると思います。

2024-11-18 「数学物理」のような本がないか?

数学の人間が数学の人間向けに書いた本が非数学の人間にとって読みにくくても知るかボケ事案と同じく、物理の人間が物理の人間向けに書いた本が数学の人間に読みづらいとしても物理の人間としては知るかボケ以外にならないのをもっと数学サイドも認識するべきという気はする。

必要に迫られているとはいえ物理数学のような分野・教科書ごとたくさんある「物理学科の数学」がある一方で、「数学物理」のような形で数学関係者が興味を持つ範囲だけでもいいから数学の人間が面白いと思うところだけ集めた物理の本、世界のレベルで探して何かないのだろうか。特に英語で。 特にロシアは数学と物理の交流が盛んだったという話をよく聞くが、どういうふうに数学サイドに物理を教育していたのだろうか。単純に物理学科の物理の教科書を読ませるスパルタ式? そもそも数学系の人が物理の本を読んでいて厳しいところ、究極的にはどのあたりなのだろうか。もちろん個々人でさまざまなはまりどころはあるとはいえ、ある程度最大公約数的な部分はあるとは思うのだが。 物理出身の数学者が物理関係者向けに受け入れやすい数学の本を書く、みたいなのはある程度あるが、彼ら・彼女らが数学の人間が受け入れやすいような物理の本を書くみたいなのは見かけた記憶がない。ウィッテンはまた少し違うような気がするがどうなのだろう。 何にせよ「数学の人間が物理にさして興味がないのはともかく、勉強しなくても特に困らないのでやる気もない」事案があるのはかなり大きいとは思う。

数理物理とかどうなんでしょ、これも物理か

数理物理だと「物理の問題を数学的に厳密に解決する」から「物理が動機にあるだけで単に数学」まである上、どちらかと言えば「単に数学」に重きがある印象があります。さらに一般に数学として定式化しやすい話題しか扱わないため、物理としての網羅性が極めて低いです。そこでもう少し物理としての幅を広げてみてもいいのではないか、物理の人間が数学を無視し切って適当に運用しているのと同じように、数学側がもっと物理を魔解釈・魔改造して遊べるようにした方が面白いのではないか、くらいの実験をしてみてもいいのではといった感じです。

個人的には、 物理に動機があるだけの数学 というのが (特に物理からすると)物理の魔解釈で出てきたただの数学 なんじゃないかと思ってたんですが、物理的にも意外と無難な感じなんでしょうか

完全に外野なので詳しくはわかりませんが、超弦まわりは割と物理そのものとも近いのではないかと見ています。偏微分方程式だと魔解釈というより単にガチガチに微分方程式そのものを議論していて、ちがいといえば物理ではほぼ気にしない解の存在と一意性に(当然)こだわるとかそんな感じです。

魔解釈・魔改造に近いのはエルゴード関係で、物理だと元の統計力学の話では意味がないとして議論する価値なし判定である一方、数学としては力学系としての扱いから生成子に関する性質に持ち上がって、ここから各方面に伝播しています。2014年のフィールズ賞では四人中三人が各々の専門での意味でエルゴード性に関わる仕事をしていて、元の物理を離れたところにまでエルゴード性が伝わっています。あと、物理学者を前にした数学者の講演で数学者がエネルギーといった時、物理から「それはどういう意味ですか?」と質問が出て、「単に保存量くらいの意味で物理としての厳格なエネルギーではありません」みたいに回答していたのを覚えています。この辺もエネルギーの魔解釈でしょう。

エルゴードは魔解釈という感じですが、魔改造っぽいのはソリトンに関わる佐藤幹夫関係の仕事でしょうか。おそらくほぼ全ての物理の人間の想像を超えて無限次元グラスマン多様体の云々かんぬんまで持ち上げたのはソリトン理論の真改造と言って良い気はします。これはこれで素粒子系と何かしら交流があるとか聞きますが詳しくないのでわかりません。

2024-11-17 Rosenstein, 1982, Linear Orderings

線形順序に関する唯一のまとまった書籍であるRosensteinのLinear Orderingsですが、物理的な本としては絶版ですが、DRM freeなPDFが下記URLで購入できることがわかりました。

Rosenstein, 1982, Linear Orderings

2024-11-16 物理の本の構造

なんで物理の人って,定義(命題証明)^nみたいな構造をやらないで定義(証明命題)^nみたいな構造で文を書くのだろう

僕が(経験的に)理解した物理の心構え

  • 例で理解するから出来る限り一般化して論じるモチベがあまりない
  • 定義は暫定的なものなので明確に概念として切り出すモチベがあまりない
  • 仮定は必要に応じて適宜追加されるものなので初めに明言する意味があまりない

この辺の事情があるので、定義、定理、証明という構成にすることに意味がない. 数学書に慣れた人でもこの辺の心構えがあればキレ散らかすことはないと思う. もちろん学部とかの古典物理は全部数学のマナーで書くこと自体はできると思うけど、↑の事情により多くの物理の論文はそのように書かれてないから物理学徒を数学マナーで教育しても仕方がないというのも教育側としてあるだろう

教科書レベルの話としては、一般化に関しては運動方程式・マクスウェル方程式といったレベルで適切な範囲で十分に一般化されていてそれ以上の一般化の余地がないくらいの感じがあります。定義は(数学と同じようには)書きにくいです。例えば熱力学での環境、系がマクロ、 マクロには時間変化が見えない状態を平衡状態と呼ぶ、みたいなところでマクロとは何かと言われると非常に困ります。仮定に関しても同じで、条件に関する言明自体が非常に書きにくい(振幅が小さければテイラーの一次近似で十分、みたいな議論で振幅が小さいとはどのくらいか、 どの程度の精度で議論したいのかなど)色々あって、少なくとも数学的な議論には馴染みづらいです。比較的物理の人にも通じる熱力学的極限やそれに伴う極限での特異性発現は比較的書きやすいものの、単に無限体積極限としてしまうと半径4mmの無限に長い円柱みたいなものも含むため、 ある程度等方性のある極限が必要で、それに合わせてvan Hove極限やFisher極限といった極限の取り方の指定があります。こういうのをいちいち指定するのもやっていられないので、物理をやっているときは物理的常識みたいなところでふんわり済ませたくなります。

物理はそもそも命題がものすごく書きにくいという印象がある。特に複数の近似が必要なタイプの結果でどう命題の形で定式化するかが極めて難しい。

2024-11-15 比例のグラフは直線か?

中1向け #数学授業の教材

主発問「『比例のグラフは直線である』って,本当ですか? 証明できますか?」

その45分後,よもやアルキメデスのらせんを見せることになろうとは(そこまでの展開はさすがに想定していなかった)

ふと我に返ったけど「比例のグラフが直線なのはなぜ」という問いに対する「それは,座標軸が直線だから」という答え,なかなかエグい慧眼なのではないか? (だいたい『そんなの思いつきもしない』か『それが答えになっているとは思えない』のどちらかになってしまいそう)

例えば比例のグラフをかいたあと,その紙をぐしゃぐしゃに折って「比例のグラフが折れ線になりました」って言われたら反射神経でなーに言ってんだって返しちゃいそうだけど,それが「あっ,座標軸が折れたので,比例のグラフが折れ線になりました」だったらキミは天才か!ってなるよね(?)

2024-11-15 量子力学の議論, 特にデルタ関数の処理

粒子がある1点にいる状態を表す波動関数って、δ(x-a)じゃなくて、 絶対値の二乗がδ(x-a)になっている何かであるべきな気がするけど、そんな意味不明なものを表せる関数概念あるのかな

近い話を井田先生の本で見かけたので、ご参考までに共有します。 数学的に真面目に考える場合はやはりδ関数を位置演算子の固有関数としてしまうわけにはいかない(そもそも位置演算子は固有値をもたない)なので、工夫して回避する必要があります。 井田先生の本だとこの後スペクトル分解をベースに説明がされています。ほかにもWeyl近似列(バーチャルな固有関数を近似する関数列、今の場合は単にδ関数を近似する関数列)を固有関数の代わりと思って、確率解釈と整合するように議論することもできると思います。

ありがとうございます!! 確率解釈が分からないと思っていたのでとても参考になります!読んでみます! ワイル列についても考えてみます

物理での記述と数学での記述の違いを埋めてくれそうな本として、上の井田先生の「現代量子力学入門」と新井・江沢先生の「量子力学の数学的構造I・II」は結構良いのではと思います。

私は物理側から入門してみようと思っていま井田先生の本を読んでるんですが、くさだんごさんが読まれてる中村先生の本などもそのうち勉強したいなと思っていて、いつもツイート興味深く拝見してます。 お互いがんばりましょう!💪

どんな問題意識なのかよくわからないものの、杓子定規に言えば、確定的に位置がある一点にいる波動関数は不確定性原理に反するため、物理としては考えてもご利益がないため何かしら数学的な動機があるのだと思いますが、どこに引っ掛かるのでしょうか。

問題意識は、 「デルタ関数δ(x-a)は形式的にxδ(x-a)=aδ(x-a)をみたすので、位置演算子の固有関数になっているように見える。そこで以下の二つの問が出てくる: (1)デルタ関数は数学的に見ても位置演算子の固有関数と言ってよいか? (2)それがダメな場合、『デルタ関数が位置演算子の固有関数になるように見える』ことを数学的に説明できるか?」 というものになるかと思います。

上の問への解答としては、 問(1)についてはもちろん答えはNOで、理由としてはいろいろな上げ方があると思います。例えば、 ・デルタ関数は通常の意味での関数ではない ・デルタ関数はL2の元ではない ・位置演算子はL2上の作用素として固有値を持たない(連続スペクトルのみ)のでそもそも固有関数はない などなどです。

相転移Pさんがおっしゃっている「確定的に位置がある一点にいる波動関数は不確定性原理に反する」はこの問(1)への一つの解答に対応するものかと思います。

井田先生の教科書にあるスペクトル分解を用いた説明や私がリプライに書いたWeyl列が云々というのは問(2)への解答(の一つ)というつもりです。

物理としては考える意味はない、というのもその通りかなと思います。 たぶん物理にだけ興味があるor数学にだけ興味があるという人にとっては上の問題意識はそもそも発生しないけど、両方に興味がある人にとっては割と自然に沸いてくる疑問ということじゃないかなと思います。

全く詳しくない方面ですが、量子論の数学的定式化に関してかなり古い(少なくとも50年前)からrigged Hilbert spaceによる量子力学または場の量子論の定式化があって、むしろ連続スペクトルがある時はこの定式化の方が自然と主張する人もいます。

私は修士までしか進んでおらず網羅的に調べたわけでもないとはいえ、ほとんどやっている人を見かけないので何らかの理由でほぼ死んだ分野なのだと思っています。ちなみに少なくとも50年前と書いたのは場の量子論の本で言及があり、この本(英訳?)が1975出版だからです。 素人が思いつくようなことは大体(先日京都賞で話題になった)Eliiot Liebクラスの化け物が色々考えて人類の限界クラスまで振り絞って取り組んで、難しくなりすぎて分野が死んだ経緯を持つ分野なので、先行研究自体はたくさんあるでしょう。そこまで気合をもって取り組むならいいのですが、そうでないならあまり深追いしない方が得策です。ちなみに私は色々あって修士で終わったとはいえ、そうした事情を知ってなお物理から数学科に進学するレベルで振り切って構成的場の量子論・厳密統計力学に突っ込み、趣味とはいえ今なお周辺で遊んでいるので、本当に好きにやったらいいと思っています。

ありがとうございます! p.7~8の説明がわかりやすいと思いましたが、これはだいたいシュワルツクラスとL2と緩増加超関数の三つ組を使って定式化しようという話だと思いました。 固有関数にならないものを含めるためにより広い空間を使おうというのは自然な発想で、50年以上前というのもシュワルツ超関数が整備された少し後くらいなので、こういう定式化が出てきたんでしょうね。面白いです。 もちろん私は(たぶん他の多くの数学徒の方々も)そんなに急にこの問題に深入りしていくつもりはなくて(笑)、数学的な道具を勉強して使いながら量子力学を理解していきたいなあというくらいのものです。 またいろいろ教えていただければ幸いです。

rigged hilbert spaceについては、シュレディンガー方程式の数学的散乱理論の定常的方法という所で使われているのを見ました。量子論の定式化とはあまり関係がありませんが。一般化固有関数やレゾルベントの実軸境界での値を捕まえるために使われます。

2024-11-13 Paulによるソリトンに関わる佐藤・広田の話

ソリトンの専門家ならご存知の話だが昔話を。 ソリトン方程式の研究が盛んになり,逆散乱法が中心だった欧米ソ連に対して,双線型方程式を用いて直接解を構成したのが,俳優・藤木直人を育てた(違)広田良吾である https://blogs.yahoo.co.jp/nk8616e/38326324.html

この広田の直接法に対する反響は大きく「広田微分はNewton以来の最大の発見」「新しいソリトンっぽい方程式があれば,広田に手紙を書くと2,3週で解いてくれる」とまで言われた。とにかく,いきなり日本から黒船=直接法が襲来したという印象だったようだ

これに対して「数学でそんなに本質的に新しい発見はない」という考えにたち,広田微分・双線型方程式を見直したのが,佐藤幹夫と泰子夫人である。その計算は1980年の3月と9月に数研の研究会で「広田氏のBilinear Equationsについて」として発表された

実は,その少し前から佐藤さんは紀伊国屋「KdV方程式」の著者の一人である阪大の田中俊一さんらとソリトンの勉強をしていたそうだ。しかし,80年の研究会での発表は,双線型方程式を書き出したジャンク計算にしか見えず,あの超函数やSKKの佐藤が何をやってるんだろうとしか思われなかった。

状況が一変したのが80年10月ごろで,1ヶ月くらいの間に当時出たばかりのシャープ・ポケットコンピューターで計算して,ソリトン方程式がグラスマン多様体の力学系であること,広田の双線型方程式はグラスマンのPlücker関係式に他ならないことが発見され,翌年1月のSinai来日の研究会で発表された。

その歴史的な論文は,数理解析研究所講究録No.439「ランダム系と力学系」に掲載されている

  • [Soliton Equations as Dynamical Systems on a Infinite Dimensional Grassmann Manifolds]http://kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/0439-05.pdf

ちなみに題名「a Infinite Dimensional Grassmann Manifolds」には決して突っ込んではならない(笑)

81年1月の研究会は確率論の関係者が集まり,池田信行氏は「KdVがMaya図形で解ける」と聞いて驚いて阪大に帰り,田中,伊達,川中らの前で話したら「そんなわけがない,池田さんはどうせ佐藤さんの話が理解できなかったんだ」と散々馬鹿にされたそうだ(この愚痴は繰り返し池田爺さまから聞かされた)。

1970年代に広田の双線形形式がソリトンの研究に大きな衝撃を与え,さらにそれを上回る衝撃を佐藤のグラスマン多様体の研究が与えたことは確かである。佐藤の研究は伊達神保柏原三輪(DJKM)に引き継がれ,さらにAffineリー代数の表現論や,共形場理論へと応用が広がった。可積分系の黄金時代である(終

(終)と書いてしまったが,別件で話をしたので,後からご覧になる方のためにツイートをぶら下げておきます

これも有名な話だが,広田さんがreduceの解説の中で「天才が使うポケットコンピューターには及ばなくても,reduceを使えば凡人でも計算できる」みたいなことを書いておられた(確か,Bitの連載)。佐藤でも広田でもない,本当の凡人はMathematicaだろうと何を使ってもお二人には及ばないのである。 x.com/Paul_Painleve/…

2024-11-02 田崎さんによる「緒方芳子さんの猿橋賞および令和 6 年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞受賞に寄せて-一人の物理学者が見た緒方さん」

『一人の物理学者が見た緒方さん』田崎晴明 日本数学会『数学通信』第29巻第3号(2024年11月)所収 == 畏敬する数学者、緒方芳子さんについて書きました。ちょっと気に入っているエッセイ風の記事です。 ご覧いただければ幸いです。 https://mathsoc.jp/assets/file/publications/tushin/2903/ogata-tasaki.pdf

2024-10-14 柳田五夫, 初等的な不等式

http://izumi-math.jp/I_Yanagita/emath_ver1.1ps.pdf http://izumi-math.jp/I_Yanagita/emath_ver2ps.pdf http://izumi-math.jp/I_Yanagita/emath_ver3ps.pdf 不等式に関する900ページ超えの三部作があって、これの2つ目の5ページの定理2に載っている

2024-10-09 一次元トーラス上の$L^1$上で$f*f = f$をみたす関数

今日のf*f=fとなるf in L^1を全て求めよって問題すきすぎる(*は畳み込み)

トーラス上ならクロネッカーのデルタがある. 問題は他にあるかどうかで, まだきちんと詰めていない.

2024-10-07 有限次元の線型代数の難しさ

数学徒曰く、有限次元の量子力学は線形代数で書けるから自明なことしかないらしいですよ 量子計算は自明…

確か河東先生が2次元の時点で非自明(Choi による量子通信路の特徴付けを指して)と言っている量子情報に関する数ページの日本語pdf があった記憶があるけど見つからない。 あったー、数理科学だった。3x3 でした。 https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/suri1806.pdf

量子情報では主に有限次元のヒルベルト空間を考えるため,作用素環論で無限次元ヒルベルト空間に特有の現象を研究していると,有限次元は易しいというような印象を抱きがちであるが,そのようなことはなく,有限次元でも十分に難しく,また興味深い現象が起こるのである.上述のチョイの言葉として,$2 \times 2$行列はかなりやさしいが,$3 \times 3$行列は十分に難しく,無限次元に近い,というものがある.私は昔,大学 1 年生の時の講義で,微分積分学は底が深くずっと先までつながっているが,線型代数学は底が浅い,と言われたことを覚えている.今考えてみるとそのような見方は全く間違っていると思う.

2024-10-06 線形代数は楽しくないが群環体など抽象代数が好きな場合は、PID上の有限生成加群の構造定理の応用としてジョルダン標準形の存在証明をやってみよう

線形代数は楽しくないが群環体など抽象代数が好きな場合は、PID上の有限生成加群の構造定理の応用としてジョルダン標準形の存在証明をやってみよう。

例えば以下の井草先生のPDFだと4ページで収まっている。https://people.brandeis.edu/~igusa/Math101aF07/Math101a_notesB10.pdf

これに限らず線形代数の定理を加群論から導けば楽しく学べるかも。

2024-09-17 ヒルベルト流で述語論理まで議論している教科書はあるか?

そういえばヒルベルト流で述語論理までやってる教科書って何があったっけ?

Hilbert流で困ったらここが詳しいです: Metamath Proof Explorer Theorem List (Table of Contents)

2024-09-13 Heath Emerson, An Introduction to C*-Algebras and Noncommutative Geometry

面白そうな本が出てた

Heath Emerson, An Introduction to C*-Algebras and Noncommutative Geometry

2024-09-01 Costello, Renormalization and Effective Field Theory

2024-08-31 高校数学とJulia

JuliaTokyo #12 で「高校数学とJulia」について話をしました。

JuliaLang #julia言語

https://github.com/shimizudan/20240831juliatokyo/

2024-06-24 Hörmanderの2章はマニアック

Hörmanderの2章、distributionの定義、連続性、台などについて説明するという程度の内容なのにマニアックな命題や反例がたくさん出てきて楽しい。

2024-05-02 Juliaで学ぶ解析学

こんなのもあります。

実1変数関数の微分積分学に出て来る面白い例について #Julia言語 で計算して視覚化することをやっています。

内容的には大学1~2年生でも読めるように書いたつもりですが、大学院生も楽しめそうなネタも入れたつもりです。

https://github.com/genkuroki/Calculus?tab=readme-ov-file#readme

Juliaで学ぶ解析学みたいなものがあったのか、知らなかった。誰か訳してくれ!(言い出しっぺ???) Calculus with Julia https://jverzani.github.io/CalculusWithJuliaNotes.jl/

2024-03-25 かけ算順序固定強制指導が特に算数が苦手な子を苦しめる負担の1つになっている

かけ算順序固定強制指導が特に算数が苦手な子を苦しめる負担の1つになっていることについては、支援教室のお陰でかけ算の問題を解けるようになっていたYちゃんが、小学校でのかけ算順序固定強制指導のせいで自信を無くして問題を解けなくなった件を見てください。

3.かけ算文章題解決時の Y の状況

(1)Y が解決可能であった課題

第 1 回目(10 月)の支援教室において,スタッフがかけ算の計算問題を出すと,Y は学校で学習済みの 2 の段~7 の段の問題全てで正答した。第 2 回目の支援教室では,かけ算の文章題を出題したが,Y は,文章題を解くことができず,スタッフが問題の状況を絵で描いて呈示しても,それを手がかりに立式することはなかった。

第 3 回目(11 月)の支援教室で,Y は,かけ算の文章題で正しく式を立て,答えを求めることができた。問題の状況を表す絵を手がかりに立式できるかどうかを確かめるために,スタッフが「一皿にリンゴが 3 つ載っていて,それが2皿ある」状況を絵で描いて呈示し,式と答えを書くように求めた。すると,Y は正しく立式して答えを求めた。さらに,絵で呈示された他の問題でも全て正答した。Y はこの活動に喜んで取り組み,問題をもっと出すようにスタッフにせがむほどであった。

(2)Y が抱える文章題解決上の問題

第 4 回目(12 月)の支援教室では,スタッフが算数のプリントを作成し,かけ算の文章題の解法が定着したかを調べた。1 問目を解こうとしたとき,Y は「わからない」と言った。スタッフが問題文を音読すると,Y は自信がなさそうに「4 かける 7?」と尋ねた。スタッフが「そうだね」と答えると,Y は式と答えを書いた。2 問目の文章題では,スタッフに質問することなく式と答えを書いた。Y は,第 3 回目の支援教室ではかけ算の文章題解決が可能であったにも拘らず,この回では突然,文章題が解けないと言い出し,さらに,問題文を読んだ時点で式も答えも分かっていたようであったが式を書くのを躊躇した。このような Y の様子が,スタッフにとっては意外であった。

Y が立式を躊躇した理由を考えるうえで,Y の保護者の見立てが参考になった。支援教室終了後に保護者からスタッフに,Y がかけ算の「かけられる数とかける数」についてよく分かっていないらしいとの話があった。かけ算の「かけられる数とかける数」とは,「一あたり量がいくつ分」というかけ算の意味を指す。これに関連して,小学校ではしばしば,かけ算の式を「一あたり量×いくつ分」のように,「一あたり量」を先に書くように指導する場合がある(e.g., 遠山,1978)。保護者の話を受けて,Y の取り組んだ問題を後日スタッフが確認すると,Y は問題文中に出てくる順に数値を並べて立式しており,必ずしも「一あたり量×いくつ分」の順で立式しているわけでないことがわかった。このことからY は,かけ算の意味と式の順序との対応がついておらず,「一あたり量×いくつ分」という順序で書かれた式に「一あたり量がいくつ分ある」との意味があることを理解せずに立式していると考えられた。また,支援教室で Y が式を書くのを躊躇したのは,かけ算の意味理解が不十分な状態で,式の順序だけを守ろうとしたためではないかと推察された。