Atiyah-Macdonald のゼミ的なアレと参考書として岩永-佐藤の『環と加群のホモロジー代数的理論』がお勧めという話

本文

にゃんにゃんとのやり取りをまとめておきたい. この辺からだ. にゃんにゃんツイートが消えているので私のだけを引いておく. かの有名な Atiyah-Macdonald のゼミ的なアレをしようという話があったのでそれについてのやりとりだ.

メモ

@dingdongbell 前言っていた, にゃんにゃん的アティマクゼミはやるのでしょうか. やるなら参加したいのですが

@dingdongbell ぼなっちさんにも発表してもらうことでしのぐライフハックを提案

@dingdongbell 都合が合うなら呼んであげてもいいのでは, というのは思っています. もちろんあんなもの喋らせるつもりないですが

@dingdongbell ちなみに終わらせるはずだった勉強というのは何なのでしょうか

@dingdongbell 見る限り予備知識はいらない感じします:環のところを眺める限り最初からきちんと書いてあるので. 証明が簡潔なので参照用の控えの本候補や例が書いてある本を探しておくと便利かもしれません

@dingdongbell それ, 一応持っていますがかなり本格的で相当辛かった覚えがあります. http://www.amazon.co.jp/dp/4535783675 は非可換環の話が中心ですが, 例も結構ありつつ, 一般化を敢えて避けた上でかなり丁寧に議論していてかなり良い本だという印象

コメント

にゃんにゃんがお勧めされた本として松村の『可換環論』が挙げられていたが, これは相当つらいのでは, と返した.

上で私がいいと言っているのは岩永-佐藤の『環と加群のホモロジー代数的理論』だ.

李奇人 P にお勧めしてもらったのが非常にいい. この本はあえて過剰な一般化をしないで Noether 環や Artin 環に制限したところで議論している. 特に代数で一般化に抵抗するのは難しいだろうから著者達の熱意と気迫を感じる. 著者達の興味から非可換環への応用を見据えているのだが, 可換環の勉強にも役立つだろう.

普段 Twitter では東大やら京大の学生とばかり話しているので感覚が麻痺しつつあるのだが, 代数専攻の学生であってもその辺の数学科学生では松村などの本格的な本を読むのはしんどいだろう. この本はそうした教育的な配慮も行き届いている. 幾何だとある程度ホモロジーなどが必須なので代数もやらざるを得ないが, 関数解析主体の微分方程式まわりの解析専攻の学生が代数を学ぶには相当いい. 多変数関数論でも Noether 環くらいは山程出てくるが, そうしたところは十分カバーできる. 代数の学生でも一冊目としてこれを読んで, その後に本格的に一般的に勉強してもいい.

上で簡単に触れた教育的配慮としては, Noether レベルで一般化を止めているということの他に例がかなり豊富に書かれていることもある. 例を作ること自体も勉強だが, 初学だとやはりなかなかつらい. そうした点をきちんと埋めてくれている. 面白かったのは, 例えば環の単位元と部分環の単位元は一般には異なることを行列環で説明していることなどだ. 当たり前といえばもちろんそうだが, 身近な例を挙げて丁寧に説明してくれているのが嬉しい.

ラベル

数学, 環論, ホモロジー代数