加藤和也, 『$p$ 進 Hodge 理論とゼータの値』

はじめに

我らが加藤先生の PDF があったので共有しておきたい. 『$p$ 進 Hodge 理論とゼータの値』と題された文章だ. 手書きで味わい深い.

1 章 城崎と宇宙

1 章がいきなり「城崎と宇宙」となっていて攻撃力高い.

P.1

仏教の法のことは全く理解していない筆者であるが, $p$ 進 Hodge 理論のような数学の深い法もまた, この温泉寺の大気の中に, 千年も億年もきらきらまじり入って, 人間や生物の生活とともにあったにちがいない.

このあとにも破壊力の高い文言が並ぶ. 是非読んでみてほしい.

P.1-2

筆者は [ 4 ] において, 鶴の恩返しの鶴の思いが, 宇宙の期限を考える鍵であることを書いた. そこには, 鶴女房のみならず, 蛇女房や雪女もあらわれたのであった. (その後こぶとりじいさんまであらわれた時は筆者もさすがにうろたえたが, こぶとりじいさんについてはまだ論ずるに至っていない. ) それらを書きながら, 当時の筆者は自分でもちょっとついてゆけないものを感じたが, 今はちゃんとついてゆけるし, 実に自然なことのように思える.

もうどうしたらいいのか分からない. 上記引用後も実に味わい深い一文があるのだが, 書き写すのが面倒なため省略する.

P.2

筆者は狂ってしまったのであろうか. いまだ狂い足らざることを恥ずるのみである.

15 ページある中の 2 ページ真ん中あたりなのだが, もう全文引用したい気分にかられる. Fontaine が「グルノーブルの狂人」と言われていたらしいことを知る夏だった.

最近, 息子とディズニー映画「美女と野獣」を見た. この漫画映画を「原作の味をそこなった」と嫌うかたもおられるけれども, 私はすばらしいと思う理由は, 主人公の娘さんもその父親もいかれていて, 映画はそれを力強く支持していることである.

城崎がどこにいったのかよく分からないし大宇宙を感じた.

2 章 $p$ 進 Hodge 理論とゼータの値

P.3

数論は, ある数が有理数か無理数か, ある素数で割り切れるかどうか, とか, 非常に微妙な話をとうとぶのであるが, $p$ 進 Hodge 理論の方は, 代数多様体なら何でも持ってこいという, 細かい所は気にしない性格である.

だそうだ.

3 章 宇宙は心?

タイトルからしてパンチ力が高すぎてすごい.

複素関数として定義されるゼータにとって, 大変苦手な, $p$ 進 Hodge の山道を, ゼータは与ひょうに会うために切ない思いをもって, 必ず越えてくる. (鶴が娘に姿を変えたように) $K_2$ の中の「ゼータの化身」に姿を変えて.

ゼータに心を感ずるのは, 単に我々の心を投影しているだけだという人もあるかもしれないが, 実は逆に我々の心が, ゼータの心の投影かもしれないことはいうまでもない.

いうまでもなかった.

上野健爾さんに, 「宇宙は物質だから…」と筆者が話しかけたとき, 「宇宙は物質ですか? 」と疑問を投げかけられてしまったことがあった. 上野さんのお考えは, 筆者ごときの推しはかれるところではないが, すると宇宙は「心」なのであろうか.

数学を学ぶとこんなに論理的になれるので, 論理力の涵養に役立つ.

P.5

宇宙 = 心 = ゼータ

なのであろうか.

中略

………… = モスラ

とさっきの等式は続くのであろうか.

ちょっともう全文引用になってしまって色々とアレなのだが, とにかく胸を打つ言葉, 文章が並び続ける.

4 章 ワープ航法の発見

各位は P.7 のワープ航法の図を見ておくように. もう記録しながら読むような精神状態にないゆえ.

P.7

この, 複素平面の中を通っていかない $s=0$ から $s=1$ への移動こそは, explicit reciprocity law によるワープ航法であり, 千年のうちには宇宙旅行に実用化されるように思える.

宇宙工学を学んでおくべきだったと悔やまれてならない.

引用文献にモスラの歌がある文献をはじめて見た.

最後に童話が引用されて終わる.

少し余白があるので, 小学校 1 年の息子の国語の教科書にある, 感銘を受けた童話のあらすじを紹介する. (松谷みよ子作. )

中略

(原文はとても美しい. 昔の国語の教科書には, こんな良い話はのってなかったような気がする. )

これが数学だった.

ラベル

数学, 数論, 数論幾何, 代数幾何, 加藤和也