論文紹介: Buchholz-Grundling の Quantum Systems and Resolvent Algebras

はじめに

Buchholz-Grundling による survey, Quantum Systems and Resolvent Algebras が arXiv に出ていた. これだ. 以前から resolvent algebra の論文は出ていたが, それに関するまとめらしい. Resolvent algebra を使うと何となく計算がうまくいきそうな感がするので, 使ってみたいと思っている. また Araki-Woods algebra の代わりに resolvent algebra を使った場合の自由場の BEC を調べることで親しんでみようとか思っているのだが, 滞りまくっている.

Resolvent algebra というのは大雑把にいえば非有界作用素のレゾルベントを取ることで有界作用素にし, その有界作用素から作用素環を作るという話. Araki-Woods algebra は非有界 (自己共役) 作用素 $A$ からスペクトル理論を使って $e^{iA}$ (有界作用素) を作り, これから作用素環を作るという話. レゾルベントの方が色々振舞いがいいのに何故かほとんど研究されてこなかったが, 何か色々な性質がよくて嬉しいから皆もやろう, ということで論文になっている.

アブストを見るとすぐ出てくるが, 量子系の運動学的な構造をモデル化するのによいらしい. この辺まだあまりよく分かっていない.

Introduction

Introduction では Segal の場の作用紡の話からはじまる.

作用素 $\phi (f)$ から作る多項式代数は自己同型による意味のあるダイナミクスをあまり持っていない. 実際それを不変にするのは多項式 Hamiltonian だけだ.

ということらしい. 知らなかった.

非有界作用素だと扱いが面倒なので, 指数の肩に乗せて有界にする. これは良く知られた Weyl algebra だ.

実は有界作用素にして Weyl 環にすると, 表現論的に元の CCR algebra とは違う環になる. 新井先生の本, 『量子現象の数理』の 3 章では量子力学のときに Aharonov-Bohm に即してこれが議論される. 興味がある向きは見てほしい.