数学, 物理, 数理物理での内積関係の記法, 記号

はじめに

Twitter で少しやりとりしたので簡単にまとめておこう. どういう意味で取るかはかなり微妙なところだが「初学者」には分かりづらいようだから.

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前提

面倒なので全部関数空間で考える. 定義域は適当に $\Omega$ にして, 関数は $f$, $g$ あたり. 作用素 (演算子) は $A$ にする.

数学での記法

複素共役を $\bar{f}$ として, 内積は次で定義する. \begin{align} \langle f, g \rangle := \int_{\Omega} f (x) \overline{g (x)} dx. \end{align} 左の引数 (第一引数) を線型にして右の第二引数を反線型にしたい, という人情を表す. 内積自体には次のような記号を使う: $(f, g)$ , $(f|g)$ , $\langle f, g \rangle$ , $\langle f | g \rangle$ . 多分一番最初の記号が一番一般的だろう. 私自身は $\langle f, g \rangle$ を使っているが, これは勉強した本である 量子力学の数学的構造 と Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 作用素の共役は $A^*$ のようにスターで書く.

全く関係無いが大学一年の頃, 演習の質問でスターを「雪印」と呼んだ友人がいて, 「これはスターと読みます. 」と突っ込まれていたことを想起した.

物理での記法

複素共役を $f^$ として, 内積は次で定義する. \begin{align} \langle f | g \rangle := \int_{\Omega} f (x)^{} g (x) dx. \end{align} 演算子の共役は $A^{\dag}$ と, ダガーで書く.

数理物理での記法

端的に言って滅茶苦茶だ: 数学の記法と物理の記法のチャンポンになっている. 同じ人でも時と場合によって記法を変えることがある. 例えば新井先生は数学系の論文では $(f,A^* g)$ で複素共役もバーを使う数学よりの記号だと思うが, 物理の人が多そうな文献では物理の記法を使う. 分類の仕方が微妙なところだが, 数理物理の文献では大体数学の記法である中, 内積の第一引数を反線型に取ったりする.

ちなみに私自身はチャンポンの記号を使っている. これは Bratteli-Robinson の記号を踏襲したことによる. 内積は第二引数を線型に取る物理の記法だが, 複素共役と作用素の共役は数学の記法だ. 見ると分かるが, 量子力学の数学的構造 と Bratteli-Robinson でも記号が違う.

ラベル

数学,物理,線型代数,関数解析,量子力学