コンパクト性の諸相を探る対談を聞きたい方の市民¶
はじめに¶
我らが Dr 谷村のツイートを受けて次のようなツイートをした.
Dr谷村のいうコンパクト事案、私の気分だととにかく収束に関わる話が一番で、それ以外は連続関数の可積分性などを思うので、何に興味があるかにフォーカスを当てつつコンパクト性の諸相みたいな感じで色々な人の対談コンテンツあると面白いと思う。
— 相転移P (@phasetrbot) August 31, 2020
これ, 私だと全く他人への影響力がないので, 他力本願的に我らが数学市民に何かお願いしていきたい. どんな感じの話があると嬉しいか, 面白いか的な意図で関数解析系の解析学に関する私の趣味嗜好, そして Dr 谷村的な気分のツイートを記録しておく. Dr 谷村は鍵アカウントなのでツイート引用についてどうしようかという気分はあるが, 怒られないことを期待して適当にツイートを引くことにする. もとは一般位相空間に関わる話に端を発しているようなのでそこからのツイート引用もしよう.
私の趣味志向¶
最初に引用したように私の気分だととにかく収束に関わる話が一番で, それ以外は連続関数の可積分性などを思う. 実数論のボルツァノ-ワイエルシュトラスがアラオグルの定理として無限次元拡張を持つことへの拡張が全ての感覚の基礎にある. 物理学科所属としてはかなりのレアケースのようだが, 学部 1 年の必修で実数論・集合論・位相空間論があり, 実数論・解析学は私の数学認識の基礎基本になっている. 関数解析方面からは (局所) コンパクトハウスドルフ空間上のリース-マルコフ-角谷の定理など積分論・測度論とコンパクト性に関わる議論もある. 現代数学探険隊では可分なバナッハ空間上の汎弱点列コンパクト性やクレイン-ミルマンの端点定理, ストーン-ワイエルシュトラスの定理, ビショップの定理なども紹介している.
それぞれ簡単に言明を書いておこう.
- クレイン-ミルマンの端点定理: $X$ を局所凸線型位相空間とし, $C$ を $X$ の空でないコンパクトな凸部分集合とする. このとき $\mathrm{ex} C \neq \emptyset$ であり, $C = \overline{\mathrm{conv}} (\mathrm{ex} C)$ である.
- ストーン-ワイエルシュトラスの定理: 局所コンパクト空間 $X$ に対して $A$ を $C_c(X)$ の部分環とする. $A$ が $X$ の全ての点を分離し, 全ての点に対して $A$ の元であってそこで消えない元が存在するとき, およびその時に限り $A$ は 上限ノルムに関して稠密である.
- ビショップの定理: コンパクトハウスドルフ空間 $X$ 上の関数環 $\mathcal{A}$ が単位元を含む閉部分環で $X$ の全ての 2 点を分離するし, $\mathcal{K}$ が $\mathcal{A}$ の反対称集合の全体だとする. このときいろいろなよい性質が成り立つ.
コンパクト集合または局所コンパクト集合の上でいろいろないい定理が成り立ち, 特に収束周りのいい定理 (閉集合性) が成り立つ気分が大事. あとは物理まわりで局所コンパクト群とハール測度の存在のような群上の積分論に関するよい性質もある.
既に言及があるように, やはりコンパクトハウスドルフ空間まわりの議論も基本中の基本で, 作用素環でのゲルファント-ナイマルクの定理は決定的だ. 単位元つきの作用素環上の状態の空間はコンパクトなので, そこで状態の列を考えればとにかく部分列が収束する. ヒルベルト空間の単位ベクトル列だと赤外発散が原因で 0 にしか収束しないのだが, 単位元つきの作用素環の状態空間上での収束なら $\omega(1) = 1$ だから 0 には収束しない. 赤外発散処理の基本定理だと思っていて, こういうところで常にお世話になる.
他に幾何でも, ベクトル場の完備性の十分条件として多様体のコンパクト性がいるあたり, やはり解析の趣を感じるし, リーマン幾何のホップ-リノウもリーマン多様体がユークリッド空間の拡張である気分を感じさせてくれていい気分.
解析系だとほぼハウスドルフ空間しか見ないので, ハウスドルフ空間ではコンパクト集合が閉集合という意識さえしなくなる定理がある一方, 非ハウスドルフなザリスキ位相などを扱う代数幾何だとコンパクト開集合が出てくる. 代数幾何の気分は全くわからないので前から気になっている. quasi-compact という用語を準備したくなるほど違うらしいのでどういう事情が出てくるのか聞いてみたい気分がある. あと $p$-進は超距離から来る連結性まわりの位相的な特徴の違いもあり, コンパクト性にどういう影響があるかは聞いてみたい.
他にも探せば出てくるが, とりあえずこんなところで. 以下, 数学市民と Dr 谷村のツイートをいくつか引用して終える.
数学市民のツイート引用¶
今日記事内に追加されていたので知った本だけど「Geometry from the Logician&*39;s Point of View」というのはなかなかパワーワードな気がする。Kindle版もある。 https://t.co/ezlMAthIix
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 30, 2020
届きました。 pic.twitter.com/6x5SmQn40H
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 30, 2020
児玉永見、1時代前はマニアのみが知るマイナーな本という扱いだったと思うのですが、いつの間にか市民権を得ていて驚きますね。
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 31, 2020
個人的には、標準的な位相空間論の教科書と位相幾何学で用いられる位相空間論の間にそれなりにギャップがあるのは大変だなと思います。児玉永見がそれに応える教科書とは思いませんが。その辺りのちょっとAdvancedな位相空間論がまとまった本がほしいなぁという気持ち。
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 31, 2020
CW複体のトポロジーについて、よく参考にしていたのはこの本です。 https://t.co/Tu4cyuN98g
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 31, 2020
私はこの本は読んだことはないけど、
— Kuto (@KutoCat) August 31, 2020
一樂重雄先生の「位相幾何学」は候補に入れてもいいかも。
先生の別のテキスト2冊(集合と位相の)読む限り、行間がなく説明がわかりやすく、かつ、丁寧なので。https://t.co/xStu5DEO4k
「絶対近傍レトラクトについてやたら丁寧に載ってた位相幾何学の本あったよなぁ、なんだったっけなぁ」とAmazonを探していたら、見つかった。Cechホモロジーとか載ってる貴重な本。 https://t.co/A74sxGnYfW
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 31, 2020
【近代位相幾何学は、位相空間論と代数的位相幾何学の二つの大きな柱の上に成り立っている。専門化するにつれて、この両者はほとんど異質の分野と思えるくらいに極端化されつつある。しかし、これらは本来融合されるべきものである。本書では..(中略)できるだけこれらの交流を試みたつもりである。】
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 31, 2020
僕の書いたパラコンパクト性PDFみたいなのですかねhttps://t.co/Ji4uwzj4dxパラコンパクト性-pdf/
— Atsushi Yamashita (@yamyam_topo) August 31, 2020
位相空間の圏の圏論的性質は結構残念なので、「良い位相空間のクラス」を探すだけでもなかなか大変なのです。その一方でSimplicial setの圏は圏論的性質は素晴らしいのですが、幾何的実現しないと見えないという難しさがある。直観的な扱いやすさと圏論的な扱いやすさのトレードオフ。
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 31, 2020
Dr 谷村のツイート引用¶
何冊もは知らないけどケリーはいいと思う。
個人的にケリーの内容は、まあ普通だと思いますし、位相幾何をやるには正直あんまり役に立たない気もします。(Smith-Mooreの収束理論が書いてあるのは面白いので、関数解析的な目線では読む価値あるかも、という認識です)
— 数学市民 (@Infinity_topoi) August 31, 2020
まああとはブルバキ
アマチュア数学勢、「いや、自分にはまだ多様体は早いすから」って言いながらものすごく凶悪な位相空間論を繰り出してくるイメージ。 ぼくとしてはむしろ、多様体をやらずに位相空間論だけ直観に落とし込むってものすごいことだと思う。 多様体やるまでマジでコンパクト性ってなんなのか全くわからなかったし、普遍性やベクトル束に至ってはB4でセミナーやっててやっと理解出来た。
ちなみにコンパクト性どういうイメージなのでしょうか。私の場合の幾何でのコンパクト性、リーマン幾何でのホップ-リノウが真っ先に頭をよぎります。あとはベクトル場の完備性。
— 相転移P (@phasetrbot) August 31, 2020
これはえなじーさんの言なのですが、ペットボトルを回してみると、ペットボトルは変な形になったりせずに有界なパターンで動きます。これはSO(3)がコンパクトだからです。コンパクトとは「遠くに逃げない」状態です。 「こういうのの証明ってちゃんと書いてる本知らない気がする」を網羅している同人誌。
最後に¶
何にせよいろいろなコンテンツ作りはしていきたい. 連携できるならいろいろな人とも連携しつつ.