数学の院試での試問がどんな感じか知りたい向きへ: 阪大の架空口頭試問が公開されていたので

はじめに

阪大の情報基礎数学専攻が架空口頭試問を公開していた. 試みが面白かったので紹介しておこう. PDF はここ (直接リンク) だ.

Twitter で見つけたので, そちらも紹介しておく. 公開の背景が分かる.

院試の記憶

私も非数学科 (物理学科) だったが, 試問にはこう色々な思い出がある. 折角だから紹介しておこう. まず試問の始めに全微分の定義を聞かれた. 試験問題で全微分の問題があり, それの出来があまりにひどかったので, 教官陣が怒って全受験生に確認したらしいとかいう話を入学後に聞いた.

解析学専攻だったので関数解析で基本的な定理を挙げられるだけ挙げろ, というのもあったが, 思い出深いのはやはり Riemann-Lebesgue の定理の証明だ.

言明は一応言えたのだが「では証明できますか」と言われ, 少しやってぱっとは思いつかなかったので, 「すぐには分かりません」と正直に答えたところ 「もう少し頑張ってみてください」と言われたため, 頑張って最後まで示した. (実際には証明は難しくない. )

その最中, 証明を試行錯誤していて駄目かと思って 黒板を消したときに指導教官 (になる予定の教官, 河東泰之先生) から 「ああ……」みたいな声が出て, ああこれでいいのか, と思った.

大して時間は経っていないと思ったのだが, 終わったときに時計を見たら 1 時間経っていた. 証明以外の試問内容もあったとはいえ, おそらく証明に一番時間がかかっていたと思う. 体感的にはあっという間だったのだが.

終わったときには汗びっしょりだったので苦闘であったことが偲ばれる. よく試問は 5 分くらいで簡単に終わったという話があるが, 多分内部生で既に優秀であると分かっている学生はすぐ終わるのだろうと推測している. 試問で長時間かかったからと言って落ちるわけでもないので気にしすぎないでいい. どちらかというと, (外部受験で内部の事情がよく分からない場合) 入れてしまったた後に, レベルの違いに苦労することがあるかもしれないので, そちらを心配した方がいい.

他学科から数学に行くときに困ること

私の場合は基本的な数学, 特に代数と幾何をほぼ全く知らなかった (今でも駄目) だったので, その辺で非常に苦労した. 研究では使わないから問題ないが, 日常会話や講義で知らないことがぽんと出てきて困る感じ.

1 回教科書を通して読んだだけ, というのが多いので結構まずい所が色々ある. 例えば 1 変数多項式の代数や Galois 理論は 1 度やっただけで全く身についていない. Galois は学部の頃, 自分の大学の数学科の講義にもぐって勉強もしたが, 使わないので結局身につかなかった. 作用素環でも Jones の理論は非可換 Galois 理論と言われることがあり, やはり基礎教養だ.

幾何に関しても一応多様体論の教科書は松本先生の本を 1 冊読んだが, 身についている気はしない.

困ったものだ.

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数学, 数学教育