「方程式を解く」というときの「解く」の意味的なアレ

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イケメンエリートのあさみさんとの対話が面白かったので記録しておく.

といいつつそもそも「ナビエ-ストークス方程式に一般解がある」という状態がピンとこないというか, あったら逆に困るような気がする程度には数学が不自由

@adonis_fish 「ナビエ-ストークス方程式に一般解がある」というのはどういう意味で使っていらっしゃるのでしょうか

@phasetr 失礼しました, ミレニアム問題的な意味です. 困るという言葉もアレだったと思いますが, どうも水とか大気とか物理的な流体でしか捉えられないせいか近似で解くほうがしっくりくるといいますか, えっ解けるの, みたいな感覚がぬぐえませんで, 存在して全然構わないのは承知しています

@adonis_fish はじめの言明で気になったのは「一般解」というところです. 「解ける」と言う言葉の使い方も気になります. 解の存在・一意性証明を「解く」とは (特に非数学関係者は) あまり言わない気がすると言う程度の感覚的な話です.

@phasetr なるほど. 個人的には非数学関係者のほうが「解の存在・一意性証明」という (一見して) 難解な言葉遣いを避けてたんに「解く」と言い下してしまっているような (特にミレニアム問題の文脈では). これもただの印象ですが…普段接している言葉の領域が違うのかもしれませんね.

@adonis_fish 「解く」というと厳密解・近似解に限らず, 数値計算含めて適当に具体形を求める・求めようとすると言う感じで使われる印象がります. 数学で存在や一意性問題を考える場合「解の存在問題を解く」と言う感じで適当に限定するような印象です

@phasetr 仰る意味は理解しますが, こう, いわゆる「社会的」にはかなり厳密な使い分けかもしれません… 方程式を解いて具体形を手に入れる必要のない人にとっては, 解が存在するかどうか, ということとそれを具体形で手に入れられるかどうか, ということの区別にあまり意味はないので

@phasetr なんかあんまり上手く説明できていませんが, その程度の非常に分解能の悪い意味で「解く」を使ったとお考え頂ければと思います. 今後はより精確な言葉遣いに努めさせていただきます. .

@adonis_fish それは初めて知りました. そして衝撃です

@phasetr たぶん, これが使ってる言葉のフェーズが違うということだと思います. 方程式, うんあの $x$ とか $y$ とか出てくるやつね, というレベルを引き合いに出すのは妥当ではないかもしれませんが.

@adonis_fish 単純な疑問で, あさみさんも同じ感覚で「解く」という言葉を使っているという事でしょうか. あとその感覚, おつきあいのあるどんな人たちで見られる感覚でしょうか. 理工系の人間の感覚ではない, という漠然としたアレはあるのですが証拠は何もないので私, 気になります!

@phasetr まず 1 つ目のご質問ですが, 私は文脈や媒体, 話している相手によって言葉の意味, 定義の厳密さ (分解能という単語を先ほどは使いました) を変える, ということを日常的にやっている人間ですので, 簡便のために区別しない使い方をすることはあります (続く)

@phasetr 「同じ感覚で使うこともできるし, 使わないこともできる」というのがお答えですが, 数学に限らずツイッターにおける私の言葉の選び方はかなり感覚的なものなので, もしかしたらそっちがべースなのかもしれません. 理屈で区別しているだけなのかも.

@phasetr あと「その感覚はどんな人たちのものか」というご質問については, 仰るとおり理工系の方にはないですし, 文系ですらないというか, そもそも抽象的な思考をする習慣がないような方です. 結構います.

抽象的な思考というの, どんなものなのか今一つ分かっていない. 一般論と抽象論の区別もいまだにつかないしよく分からない.

追記

かもひろやすさんから次のようなコメントを頂いた.

距離空間上の点列 $(a_n)_{n \in \mathbb{N}}$ が $\alpha$ に収束することは、 $\forall \varepsilon >0 \exists N \forall n \geq N [d(a_n, \alpha) < \varepsilon]$ で定義されます。これを離散化してスコーレム化すると、 $\exists \phi \colon \mathbb{N} \to \mathbb{N} \forall k \in \mathbb{N} \forall n \geq \phi(k) [d(a_n, \alpha) < \varepsilon]$ と同値になります。ここで、 $\phi$ として計算可能関数が存在するとき、$a_n$ は $\alpha$ に実効的に収束するといいます。

当然、実効的な収束は単なる収束よりは強い条件になります。

私が知らない収束概念がまた 1 つ増えてしまった. 楽しい.

ラベル

数学, 物理, 微分方程式, 流体力学