公開読書メモ・書評¶
2024-12 serverless-apps-on-cloudflare¶
2024-11 達人に学ぶDB設計徹底指南-第2版¶
6章まではだいたい知っている内容でもう読む必要はないだろう.
8.1節でサロゲートキーがグレーノウハウになっていた. 確かに業務上意味がないIDを使う機会は大量にあり, 実際にこれまでもよく使ってきた. これが原理的にはグレー判定なのは頭に入れた方がいいのかもしれない.
9章のツリーの話ははじめて見かけて面白かった. 出会うことがあれば参考にしよう.
2024-08 State Monad For The Rest Of Us¶
part1¶
- URL
- バイナリツリー
2024-08 渡辺澄夫ベイズ理論100問with Python/Stan¶
2024-08 西林克彦 わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~¶
「行間を読む」という特殊能力を見事に解剖した本。久々に鳥肌が立ちました。
メモ¶
(Kindle の位置No.312-318)
- ここまでの「わからない」「わかる」「よりわかる」に関する知見をまとめておきましょう。
- 文章や文において、その部分間に関連がつかないと、「わからない」という状態を生じます。
- 部分間に関連がつくと、「わかった」という状態を生じます。
- 部分間の関連が、以前より、より緊密なものになると、「よりわかった」「よりよく読めた」という状態になります。
- 部分間の関連をつけるために、必ずしも文中に記述のないことがらに関する知識を、また読み手が作り上げた想定・仮定を、私たちは持ちだしてきて使っています。
(Kindle の位置No.372-373): 後から考えて不充分だというわかり方を、「わかったつもり」とこれから呼ぶ. 「わかったつもり」が、そこから先の探索活動を妨害する.
(Kindle の位置No.415-416): 何の話かがわからなければ、話はわからない.
(Kindle の位置No.431-432): 一般的にこのように、あることがらに関する、私たちの中に既に存在しているひとまとまりの知識を、心理学、とくに認知心理学では「スキーマ」と呼びます どの「スキーマ」を使えばよいのかわからない.
(Kindle の位置No.448-451): その場に応じてある部分の知識を持ちだしてくること、または、全体の知識の一部分にスポットライトを当てて使えるようにすることを、「活性化」と呼びます。記憶の、ある領域を事前に活性化しておくと、その部分の反応が早くなるという、「プライミング」などと呼ばれる実験の分野が心理学にあったりもします。
(Kindle の位置No.454-455): 「何の話かわからないと、文章がわからない」といったように、ここまで「何の話」という言葉を使ってきましたが、これを認知心理学では、「文脈」と呼びます。
(Kindle の位置No.467-468): 先ほどの文章について、訳がわからなかったのは、「文脈」がわからず、したがって、「スキーマ」の発動のしようがなかったから
(Kindle の位置No.471-472): 絵がないとわからない話, もうひとつ、「文脈」のわからない文章を読んでいただきましょうか. (文脈は図として提供されている.)
(Kindle の位置No.512-514): 文脈によってどのスキーマを使用すべきかが明らかになった後に、その文脈のもとで、スキーマが文脈から得られる情報と共同して働く.
(Kindle の位置No.539-540): 文脈がより細かく指定されると、それだけ多くのスキーマが発動されやすくなる
(Kindle の位置No.550-551): それらは、読みとられることではあっても、書かれてあることではないのです。 そのような意味は、文脈によって引き出されているのです。
わかった状態になる:各部分から「文脈と矛盾なく関連がつき, 文脈を介して他の部分とも矛盾なく関連がつく意味」が引き出されている.
文脈によって全く違う意味が引き出される場合がある:本文の失業者・株仲買人と思ったときの対比.
(Kindle の位置No.600-604)
二章の要約.
- 文脈がわからないと「わからない」
- 文脈がスキーマを発動し、文脈からの情報と共同してはたらく
- 文脈がそれぞれの部分の記述から意味を引き出す
- 文脈が異なれば、異なる意味が引き出される
- 文脈に引き出されたそれぞれの意味の間で関連ができることで文がわかる
「わかる」から「よりわかる」うえで必要なのは「わかったつもり」の乗り越え.
(正倉院と仏教の関係について)正答するかどうかではなく, 文章における「全体の雰囲気」は魔力を持っている. 「全体の雰囲気」が「部分の記述」から「全体の雰囲気」に都合のよい「意味を引き出し」てしまう.
「矛盾」や疑問は「よりよくわかる」ための契機で, 「認識の進展」からはよい存在.
間違っているのになぜ「わかったつもり」でいられるのか.
「読み飛ばし」現象に対する考察, 「文脈」の「侵入」現象.
全体の大雑把な文脈を打ち破るほどに部分が読み込まれていないため間違った状態が維持される. 部分の読みが不十分・間違っていると間違った「わかったつもり」が成立する.
- 人は文脈を使って部分を読む.
- 間違いは部分の読みの甘さから起こる.
文章の構成そのものから読み手がミスリードされやすい「わかったつもり」が存在する. 例:「小さなリスの大旅行」に対する読み.
- 「『結果から』というわかったつもり」:「ニャーゴ」の例.
- 「『最初から』というわかったつもり」は変化の面白さ・玄妙を味わえなくしてしまう.
- 「『いろいろ』というわかったつもり」:「いろいろある」と認識するとそれ以上の追求をやめてしまう.
- うまく分類・整理できそうにないと「いろいろある」という言い訳が使われるのではないか.
「ステレオタイプのスキーマの魔力」:木下順次の「夕鶴」の例. 民話『鶴の恩返し』の知識・「恩返し」スキーマの影響. ステレオタイプ化された『勧善懲悪』や寓話的枠組みでの読み取りが生じる可能性.
読み手が自分の持っている「ステレオタイプのスキーマ」を文章に粗雑に当てはめてしまい, 間違った「わかったつもり」, 不十分な「わかったつもり」を作り出す.
ステレオタイプのスキーマと高瀬舟の感想. 「善きもの」の魔力・当てはめ.
「無難」の魔力.
「当たり障りのない」スキーマ. 「情緒的で価値判断的なスキーマ」, 「社会や自然理解に関わるスキーマ」. 出現の機制の理解は「魔力」への対応を考える上で重要.
「わかったつもり」の壊し型. その状態をどう認識するか?
- 自分でまとめてみる.
- あまりに簡単であった場合, 「ステレオタイプのスキーマ」に搦め捕られている可能性がある.
- 「内容は, ああ, あれだな」と思ったときは要注意.
- 文章構成にミスリードされた魔物に搦め捕らている
- 慣れ親しんだスキーマを意識しながら文章にあたる.
- 変化の過程を読み飛ばしていないか?
- 「結果から」わかったつもり
- 「最初から」わかったつもり
- 各種事例やできごとが個別の特徴を伴って思い出せない
- 「いろいろ」というわかったつもり
- 「どうも通りのよい, 当たり障りのない解釈・読み取りをしているのではないか」
- 「ステレオタイプのスキーマ」
- 文章を読んで概略や解釈を述べるとき, 「当たり障りのない綺麗事」が出てきたら要注意
- 記述のまとめと例示は対応しているか
- 文中のことがらは本当に事例になっているか?
- 「魔物」という大雑把な文脈に変えて, もっと部分に焦点が当たる新たな文脈を導入する
状態の進展
- 「わかったつもり」の状態
- 新たな文脈による部分からの新しい意味の引き出し
- 引き出された意味による矛盾・無関連による「わからない」状態
- 新たな無矛盾の関連づけによる「よりわかった」状態
文脈の交換で新しい意味が引き出せる. これはその文脈を使わなければ意味が見えないとも言える. 気に留めて積極的に問うたことしか見えず, それ以外は「見えていない」.
部分の間の関連を見つけるために大事な作業の分解
a. 物事についての客観的な事実に関する情報・知識の獲得 b. 読み手による想定・過程:「解釈」
「4.まとめ」で文中での種々のまとめが並べられている.
より細かな文脈を櫛し「わかったつもり」にあたる.
2024-08 C#ユーザーのためのWebアプリ開発パターン-ASP.NET_Core-Blazorによるエンタープライズアプリ開発¶
基本的なBlazorの枠組み¶
- 静的サーバー側レンダリング(Static SSR)
Blazor United
としてアプリを開発する必要があるため次の指定が必要.Interactive render mode
=Auto (Server and WebAssembly)
Interactivity location
=Per page/component
Static SSR
を利用したい場合は@attribute
や@rendermode
を指定しない- ストリームレンダリング機能付き
Static SSR
には次の特性があるSignalR
回線を利用しない.- ページ描画後にサーバー側リソースを使わない.
- イベントハンドラとして利用できるのは
OnInitializedAsync()
のみ. - 他のイベントハンドラ(たとえばボタン押下などのイベントハンドラ)は記述しても動作しない
- 対話型WebAssembly(Interactive WebAssembly,
Blazor WASM
) - 対話型Server(Interactive Server,
Blazor Server
)- P.83参照
Interactive render mode
:Server
Interactivity Location
:Global
- 対話型Auto(Interactive Auto)
- Interactive render mode:利用するレンダリングモードの種類を指定する
- Interactivity location:レンダリングモードを設定する場所を指定する (グローバルはアプリ全体で特定のレンダリングモードだけを利用)
Blazor United
を使うときの設定Interactive render mode
=Auto
(Server and WebAssembly
)Interactivity location
=Per page/component
Blazor
での指定の意味
- レンダリングモード:
Per page/component
指定時は設定値に応じてo
のモードが利用可能. - インタラクティビティの場所
Per page/component
:個々に指定して使い分けるGlobal
:全てのページで特定のレンダリングモードを利用
Interactive render mode | Static SSR | Server | WASM | Auto |
---|---|---|---|---|
None | o | x | x | x |
Server | o | o | x | x |
WebAssemby | o | x | o | x |
Auto | o | o | o | o |
レンダリングモード・インタラクティビティの指定によるプロジェクトの変化
- プロジェクトファイルが二つになるか否か
- {Interactive render mode}として
WASM
を利用しないタイプ(None
または{Interactive Server})を選ぶと一つのプロジェクトだけ Interactive render mode
としてWASM
を利用するタイプ(Interactive WebAssembly
またはInteractive Auto
)を選ぶと二つのプロジェクトを利用
- {Interactive render mode}として
Blazor
ランタイムに組み込まれる機能Interactive render mode
としてServer
を利用するタイプ(Interactive Server
またはInteractive Auto
)を選ぶと,Program.cs
ファイルでInteractive Server
を利用するためのサービスやモジュールが追加されるInteractive render mode
としてWASM
を利用するタイプ(Interactive WebAssembly
またはInteractive Auto
)を選ぶと,Program.cs
ファイルでInteractive WebAssembly
を利用するためのサービスやモジュールが追加される
- 既定のレンダリングモードの指定
Interactivity location
としてGlobal
を指定すると,App.razor
ファイルの<HeadOutlet>
と<Routes>
に既定のレンダリングモードが指定されるInteractivity location
としてPer page/component
を指定すると,App.razor
ファイルの<HeadOutlet>
と<Routes>
に既定のレンダリングモードが指定されず, 個々のファイルで必要に応じて指定する
利用するレンダリングモードによって、ファイルの置き場所を変える必要がある - WASM
, Auto
モードを利用するファイルはクライアント側のプロジェクトに入れる - Static SSR
, Server
モードを利用するファイルはサーバー側のプロジェクトに入れる - Auto
モードのページはクライアント側のプロジェクトに入れる - コンパイルすると当該ページはサーバーとクライアント(ブラウザ)の両方に配置される - そのうえで初回はサーバー側で動作し, 二回目以降(キャッシュ完了後)はブラウザ側で動作する - マスターページ(MainLayout
, NavMenu
)はサーバー側プロジェクトで定義する - マスターページの中のコンテンツブロックがStatic SSR
, Server
, WASM
, Auto
に切り替えられて動作する形になっている - マスターページは作成上の制限事項が発生する
メモ¶
データバインドモデル:UI描画に必要なUI要素のプロパティ情報を変数として定義する.
- データバインドでUI要素と変数を適切に紐づける(片方向あるいは双方向)
- イベントハンドラからはUI要素ではなく変数を操作する
データバインドには片方向データバインドと双方向データバインドがある.
- 片方向データバインドは主にUI要素へのデータの書き込み
- 双方向データバインドは主にUI要素からのデータの読み取り
「画面」・「変数」・「処理」を明確に分離して書くのが重要.
2.3.4 手動で描画を更新しなければならない場合
イベントハンドラがBlazor
の画面のイベントハンドラではない場合, Blazor
ランタイムはデータバインドの再評価(再描画)の必要性を正しく把握できない. 処理の中で明示的にthis.StateHasChanged()
を呼び出す必要がある.
双方向データバインドはテキストボックスやチェックボックス, ドロップダウンリストなどユーザーからデータ入力を受け付けるUI要素で利用.
ドロップダウンリストのデータバインドでは, 一覧表示に利用するコレクションデータと選択された項目のキー値を取得するための文字列型変数の二つが必要. 前者には片方向データバインドを, 後者には双方向データバインドを利用する.
async
メソッドとしてイベントハンドラを記述するなら戻り型はTask
型でなければならない.
2.6.1 null 値の取り扱いの設計方針
- 原則としてデータバインド, 特に双方向データバインドでは利用するデータ変数に
null
を入れない. データ変数に対しては初期化処理を記述する. - データバインドに利用するデータ変数に
null
を入れる場合は, どのような意味を持たせるのかをはっきりさせる. 通常は「DB
などからデータを取得中である」という意味を持たせることが多い. データバインドに利用するデータ変数にnull
を入れることがあると決めたら, データ変数をnull
許容参照型として定義するとともに, データ変数がnull
になる可能性を考えて記述する.
OnParameterSet()
メソッドをきちんと使おう.
DataAnnotations
を使ったモデル検証機能によるViewModel
クラスの実装.
3.2.3 各ページへのナビゲーション方法
画面遷移は次の二通り.
- ハイパーリンク利用
NavigationManager
サービス利用
Blazor WASM
型アプリの場合での画面間でのデータ引き渡しの方法については第10章で解説.
4.6.2 モデル検証機能による単体入力テストの実装方法
5.6.5 集約例外を用いたロギングのカスタマイズ方法
既定ではアプリで発生した未処理例外はコンソールなどに出力される. 追加でフラットファイルに保存するとよい. カスタムロガーを開発すればよく, 具体的なやり方はリスト5.14(P.112).
次回:6.2.1から.
2024-08 CSS in Depth, Second Edition¶
ダークバージョン・レスポンシブにどう対応するかをきちんと見る.
1 カスケード、特異性、継承 メモ¶
以下の記述がCSS
の宣言(declaration). 宣言はプロパティproperty
と値value
からなる The following declaration comprises a property (color) and a value (black):
1 |
|
プロパティとHTML
の属性attribute
を混同しない. セレクターと宣言ブロックを合わせてルールセットruleset
. @media
や@import
などのat-rules
は言語構造.
リンクに関する設定順序
- LoVe/HAte (リンク, 訪問済み, ホバー, アクティブ)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 |
|
歴史的にカスケードの操作には2つの一般的な経験則があります. まずセレクターで
ID
を使用しないでください. 2番目に!important
を使用しないでください. これらの両方により将来必要になった場合にスタイルのオーバーライドが難しくなります.
body
へのfont-family
など継承をうまく使うべき対象がある.
inherit
, initial
, unset
, revert
.
短縮プロパティは余計なデフォルト値まで一緒に設定してしまう場合がある. 混乱を引き起こさないようにするためなるべく必要な値だけ指定するようにした方がよい.
特に小さい要素では上部と下部よりも側面のパディングを多くする方が良い場合がある.
特定の機能をサポートしているブラウザのバージョンを確認するにhttps://caniuse.com, またはMDNの関連ドキュメントページを確認.
@supports
2 相対単位の使用¶
ピクセル、ポイント、パイカ
1 インチ = 25.4 mm = 101.6 Q = 2.54 cm = 6 pc = 72 pt = 96 ピクセル
レスポンシブ デザインについては第8章.
2.2 エムとレム
最も一般的な相対長さの単位であるEmsはタイポグラフィで使用される尺度で, 指定されたフォント サイズを指す. CSSで1em
は現在の要素のフォントサイズ. 正確な値はそれを適用する要素によって変わる.
1 2 3 4 |
|
相対単位を使用して宣言された値はブラウザによってcomputed value
(計算値)と呼ばれる絶対値に評価される. ems
を使用すると次のようなプロパティを設定するときに便利: padding
, height
, width
, border-radius
.
ほとんどのブラウザではデフォルトのフォントサイズが16px. 技術的にはmedium
キーワードの値.
ems
が扱いにくいのは同じ要素のフォントサイズとその他のプロパティの両方にems
を使用する場合で, ブラウザは最初にフォントサイズを計算し, 次にその値を使用して他の値を計算する. 両方のプロパティは同じ宣言値を持てるが計算値は違う.
- 図 2.5 フォント サイズ 0.8em をネストされたリストに適用するとテキストが縮小する
ありがたいことにより良いオプションrems
がある. レムrem
は「ルートエム」の略称.
1 2 3 4 5 6 |
|
著者のデフォルトではフォントサイズにはrems
, 境界線にはピクセル, その他のほとんどの測定値、特にパディング・マージン・境界線の半径にはem
またはrems
を使用します.
デフォルトのフォントサイズは一部のユーザー, 特に視覚障害のあるユーザーにとって重要であるため, フォントサイズは常に相対単位またはパーセンテージで指定する必要がある.
2.3 ピクセル単位で考えるのをやめる
過去に一般的だった 1 つのパターン, つまりアンチパターンはページのルートのフォント サイズを 0.625 em または 62.5% へのリセット. これでブラウザのデフォルトのフォント サイズの16ピクセルが10ピクセルに縮小される. この慣習で計算が簡素化される.
このアプローチには2つの問題がある. 重複したスタイルを多数記述する必要がある. 10ピクセルはテキストとしては小さすぎるためページ全体でこれをオーバーライドする必要がある. エラーが発生する場所が増え, コードを変更する必要がある場合の連絡先が増え, スタイルシートのサイズが増える.
2番目の問題は依然としてピクセル単位で考えている点. レスポンシブWebでは「あいまいな」値に慣れる必要がある. 1.2 em が何ピクセルに評価されるかは問題ではない.
リスト 2.9 真のデフォルトのフォント サイズの設定
1 2 3 |
|
上記の設定下でのパネルのマークアップ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 |
|
セレクター.panel> h2
の>
は直接の子孫のコンビネーターを表す.
リスト 2.12 レスポンシブの基本フォントサイズ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
|
2.4 ビューポート関連の単位
ビューポートはWebページが表示されるブラウザ ウィンドウ内の枠で囲まれた領域.
- 基本ビューポート
vh
: ビューポートの高さの1%
vw
: ビューポート幅の1%
vmin
: 小さい方の寸法、高さ、または幅の1%
vmax
: 大きい方の寸法、高さ、または幅の1%
- 大きなビューポート単位を使用するには文字「l」を先頭に追加する:
lvw
,lvh
,lvmin
,lvmax
. - 同様に小さなビューポート単位を使用するには文字「s」を先頭に追加する:
svw
,svh
,svmin
,svmax
- ブラウザの UX 要素が表示または非表示になったときに動的にシフトする, ビューポート ユニットの本来の動作が必要な場合はダイナミックビューポート:
dvw
,dvh
,dvmin
,dvmax
.
ダイナミック ビューポート ユニットは慎重に使用する必要がある. モバイル デバイスのユーザーが上下にスクロールすると, 要素の高さが動的に変化するとレイアウトのスラッシングが発生する可能性がある.
追加のユニットタイプのセット(インラインとブロック)がある. これらは「論理プロパティ」と呼ばれ, それぞれ幅と高さと同様に動作する. 日本語などの縦書き言語では置き換えられる. 論理プロパティは第3章.
2.4.2 フォント サイズにビューポート単位を使用する
すぐには分からないかもしれないビューポート相対単位の応用例の1つはフォント サイズ.
calc()
関数で応答性を高める. 加算演算子と減算演算子は空白で囲む必要がある. 例:calc(1em + 10px)
.
clamp()
は最小値・式としての推奨値・最大値の3つの引数を取る.
フォントサイズがレスポンシブになったため, ems
またはrems
を使用して定義されたページ上の他のサイズも同様にレスポンシブに拡大縮小される. メディア クエリを1つも使わずにレスポンシブ戦略の大部分を達成できる.
2.5 単位のない数値と行の高さ
一部のプロパティでは単位のない値(つまり単位が指定されていない数値)が使える. これをサポートするプロパティとしてline-height
, z-index
, font-weight
. 700は太字に相当し, 400は標準に相当. 単位のない値として長さの0
がある.
2.6 カスタム プロパティ (別名 CSS 変数)
色の定義にも便利.
変数宣言の例
1 2 3 4 5 6 7 |
|
2.6.1 カスタムプロパティを動的に変更する
カスタムプロパティの宣言はカスケードおよび継承される. 複数のセレクター内で同じ変数を定義でき, その変数はページのさまざまな部分で異なる値を持つ. たとえば変数を黒として定義し, 特定のコンテナ内でそれを白として再定義できる. ダークバージョンに応用できる.
2.7 概要
- 相対単位を使用して、フォント サイズまたはビューポート サイズに適応するサイズを指定できます。
em
は要素のフォント サイズを基準にして長さを定義します。ただし、フォント サイズ自体を指定する場合は除きます。この場合、em は要素の継承されたフォント サイズを基準とします。- Rems は、ルートで指定されたフォント サイズに関して長さを定義します。
- レスポンシブ デザインでルート フォント サイズを拡大縮小すると、ems と rems を使用して定義されたページ上の要素も同時に拡大縮小されます。
- ビューポート相対単位は、ビューポートの幅または高さに関して長さを定義します。
- 単位のない数値で定義された行の高さは、より予測どおりに子要素に継承されます。
- カスタム プロパティは変数と同様に機能しますが、カスケードと継承を通じて動的に操作できます。
3 ドキュメントフローとボックスモデル¶
イントロダクション¶
- ページ レイアウトを構築するための一般的なヒント
- 要素のサイジングに関する実践的なアドバイス
- 論理プロパティの概要
- マイナスのマージンとマージンの崩壊
- ページ上のコンポーネントの一定の間隔
レイアウトのより高度なトピックはドキュメント フローやボックス モデルなどの概念に基づいて構築されています. これらはページ上の要素の位置とサイズを決定する基本的なルールです.
この章では基本的な一列のページ レイアウトを構築. 見落とされがちなレイアウトの微妙な点に焦点を当てて説明する. ボックス モデルのエッジケースを見る.
3.1 通常のドキュメントの流れ¶
inline
とblock
で動作が違う.
インライン要素:ページのテキストとともに左から右に流れ, コンテナの端に達するとラインが折り返される.
ブロック要素(通常は「ブロックレベル」要素と呼ばれる):それぞれ独立した行に表示される. コンテナの幅を自動的に埋める. 幅を減らすためにスタイルを追加しても上下に改行が入る.
通常のドキュメントフロー:ページ上の要素のデフォルトのレイアウト動作を指す.
注意すべき重要な点:高さと幅が根本的に異なる. 通常のドキュメントフローは制限された幅と無制限の高さで機能するように設計されている.
親要素の幅によって子の幅が決まる一方, 高さはその逆で, 子要素の高さで親の高さが決まる. 結果としてそれぞれを操作するために異なるアプローチが必要.
3.1.1 コンテンツを水平方向に中央揃えにする
ページのレイアウトを開始するには外側から内側に向かうのが最善.
3.1.2 論理プロパティの使用
論理プロパティ:上下左右または幅と高さを明示的に参照するのではなく, ブロック方向とインライン方向(書き込みモードによって変わる可能性があり)に関して要素を操作する方法を提供する.
縦横概念を柔軟にするため, 例えば次のような読み替えが起きる. 本のFigure 3.5
も参照すること.
padding-left
-padding-inline-start
padding-right
-padding-inline-end
border-top
-border-block-start
border-bottom
-border-block-end
3.1.3 便利な短縮論理プロパティの採用
3.2 ボックスモデル¶
Figure 3.7, デフォルトのボックスモデル 内側からContent - Padding - Border - Margin
.
3.2.2 ボックスモデルの調整
box-sizing
プロパティの理解が重要.
ユニバーサルボーダーボックスの修正. 2024年時点では以下の設定を追加するのが一般的.
1 2 3 4 5 |
|
3.3 要素の高さ¶
3.3.1 オーバーフロー動作の制御
要素の高さを明示的に設定するとその内容がコンテナからオーバーフローする危険がある. overflow
プロパティを適切に設定する必要がある. 特に意図がなければauto
を使うとよい.
3.3.2 パーセンテージベースの高さの代替手段の使用
パーセンテージを使用して高さを指定すると問題が発生する可能性がある. パーセンテージベースの高さを機能させるには, 親の高さが明示的に定義されている必要がある.
開発者がパーセンテージの高さを使用しようとして問題を引き起こすケースが特に 2 つある.
- コンテナを画面いっぱい表示する場合. より良いアプローチは, 第2章で説明したビューポート相対単位の利用.
- 同じ高さの列の作成. 次章のフレックスボックスとグリッドで議論.
3.3.3 min-height と max-height の使用
3.4 マイナスのマージン¶
要素のオーバーラップやコンテナより広く拡張するいくつかの特殊な用途がある.
負のマージンで複数の要素間にオーバーラップを生じさせられても, 複雑な対象相手では難しい. 多くの場合はposition
を利用する. ポジショニングは第6章で詳述.
負のマージンを使用して要素を重ねると, インタラクティブな要素が他の要素の後ろに移動した場合にクリックできなくなる可能性がある.
3.5 マージンの縮小¶
3.5.1 テキスト間の折りたたみ
3.5.2 複数のマージンを折りたたむ
3.5.3 コンテナ外での折りたたみ
マージンを完全に削除し, パディングで必要なスペースを定義するのがおそらく最善.
overflow: auto
(またはvisible
以外の値)をコンテナーに追加して, コンテナー内のマージンがコンテナーの外側のマージンと崩れるのを防ぐ. 多くの場合これは最も煩わしくない解決策.- 二つのマージンの間に境界線またはパディングを追加するとマージンが崩れるのを防ぐ.
- インラインブロック・フローティング(第12章), または絶対位置または固定位置(第6章)を持つコンテナーの外側にはマージンは折りたたまれない.
- フレックスボックスまたはグリッド レイアウトを使用する場合, フレックス レイアウトの一部である要素間でマージンは崩れない(第 4 章と第 5 章).
table-cell
が付いた要素などほとんどのテーブル表示タイプは余白がなく表示が崩れない. ただし例外table
,table-inline
,table-caption
がある.
3.6 コンテナ内の要素の間隔¶
+
: 隣接兄弟コンビネータ- さまざまなコンビネータの概要は付録A参照.
3.6.1 内容変更の検討
サイドバーにさらにコンテンツを追加するとすぐにスペースの問題が再び起きる.
3.6.2 より一般的なソリューションの作成
Webデザイナーのヘイドン・ピッカリングはかつて, マージンは「実際に何かに貼り付けるかどうか, あるいはそれが何なのかを決める前に, 物体の片面に接着剤を塗るようなものだ」と語った.
ロボトミー化された梟* + *
.
1 2 3 |
|
3.7 概要¶
- 通常のドキュメントフローではインライン要素は横に並べて配置され, 必要に応じて行が折り返される. ブロックレベルの要素はそれぞれ独自の行に配置されてデフォルトでコンテナの幅を埋める.
- 論理プロパティは明示的な基本的な方向ではなく, ドキュメント フローの観点から要素の側面またはサイズをす.
- ボックス モデルはマージン・ボーダー・パディング・コンテンツが要素のサイズを定義する方法を記述する.
box-sizing: border-box
を利用するとサイジングの動作がより直観的になる. - 要素の高さは内容に基づいて有機的に決まる. 高さを明示的に設定するとオーバーフローの問題が起き得る.
- マージンがコンテナの外側の他のマージンと崩れて要素間に望ましくない間隔が生じる可能性がある.
overflow: auto
はこれを防ぐ一つの方法. 「ロボトミー化されたフクロウ」セレクターはブロックレベルの要素間にスペースを追加するのに便利なツール.
4 フレックスボックス¶
flex box
を使用してページの要素をレイアウトする- フレックスコンテナとフレックスアイテム
- 主軸と交差軸
flex box
での要素のサイズ変更flex box
での要素の配置
4.1 フレックスボックスの原則¶
display: flex;
の追加でフレックスコンテナに変わる.display: inline-flex
でinline-block
のように動作するフレックスコンテナができる.
4.2 フレックスアイテムのサイズ¶
4.3 フレックス方向flex-direction
¶
垂直フレックスボックスを使用する場合(column
またはcolumn-reverse
), 行については同じ一般的な概念が適用される一方で留意すべき違いが一つある.
- CSSで高さの操作は幅の操作とは根本的に異なる.
フレックスコンテナの幅は利用可能な幅の100%になる. しかし高さはその内容によって自然に決まる. この動作は主軸を回転しても変わらない.
4.4 配置、間隔、その他の詳細¶
4.5 概要¶
- フレックス コンテナの子はフレックス アイテムになります。ブラウザは、フレックス項目を行または列に配置します。
flex
の短縮プロパティはflex-grow
,flex-shrink
およびflex-basis
の値を指定してフレックス項目のサイズを決定する方法を指定します。- フレックスボックスをネストして, より複雑なレイアウトをつなぎ合わせたり, 自然なサイズのボックスの高さを埋めることができます。
Flexbox
は同じ高さの列を自動的に作成します。Flexbox
にはフレックス アイテムを無数の方法で位置合わせしたり間隔をあけたりできるようにするいくつかのプロパティが用意されています。align-items
またはalign-self
プロパティはフレックス コンテナ内のフレックス項目を垂直方向の中央に配置できます。
5 Grid layout¶
- グリッドを使用してページ レイアウトを構築する
- グリッド レイアウト オプションを理解する
- グリッド線と名前付きグリッド領域を使用してアイテムを配置する
- 明示的および暗黙的なグリッド
- フレックスボックスとグリッドを併用してまとまりのあるWebページレイアウトを構築する
FlexboxはWeb上でのレイアウトの全体像の一部. 兄貴分がグリッド レイアウト モジュール(Grid)と呼ばれる仕様で, これら二つの仕様を組み合わせてフル機能のレイアウト エンジンが提供される.
CSSグリッドで列と行の二次元レイアウトが定義でき, グリッド内に要素を配置できる. 一部の要素はグリッドの一つのセルだけを埋める場合がある. 他は複数の列または行にまたがれる. グリッドのサイズは正確な定義も, 内容が収まるように必要に応じてグリッド自体のサイズの自動調整もできる. アイテムのグリッド内への正確な配置もでき, 自然に流れて隙間を埋められる. 特にグリッドで図5.1に示す複雑なレイアウトを構築できる.
5.1 基本的なグリッドの構築¶
5.2 グリッドの構造¶
重要な四つの用語:grid line
, grid track
, grid cell
, grid area
グリッドについて学んだ後, 開発者はフレックスボックスについてよく質問します. これら二つのレイアウト方法は競合するのでしょうか? 答えはノーです. それらは補完的です. これらは主に連携して開発されました. それぞれが達成できることには一部重複がありますが, それぞれが異なるシナリオで輝きます. デザインの一部としてフレックスボックスとグリッドのどちらを選択するかは特定のニーズに応じて決まります. 二つのレイアウト方法には次の二つの重要な違いがあります。
- フレックスボックスは基本的に一次元で, グリッドは二次元.
- 参考:図.5.8
- フレックスボックスはコンテンツから出力されるのに対して, グリッドはレイアウトから入力される.
注記 グリッドとフレックスボックスはどちらもグリッド項目またはフレックス項目間でマージンが崩れるのを防ぎます. ギャップを追加するとユーザー エージェント スタイルによって追加されたマージンによって, 項目間のスペースが大きくなりすぎる場合があります. このページのいくつかの場所でマージンを0
にリセットする必要があるのはこのためです.
5.3 代替構文¶
5.4 明示的グリッドと暗黙的グリッド¶
5.5 サブグリッド¶
5.6 整列プロパティ¶
5.7 概要¶
- グリッドは、ページの行ベースと列ベースのレイアウトを定義し、項目を相互に関連させて配置できるようにします。
- グリッドはフレックスボックスと連携して機能し、完全なレイアウト システムを提供します
- グリッド項目の配置は、番号付きグリッド線、名前付きグリッド線、名前付きグリッド領域の 3 つの構文のいずれかを使用して実行できます。どのような状況でも、レイアウトのニーズに合わせて最も直感的なものを使用できます。
- 自動入力/自動調整および暗黙的なグリッド配置は、多数のグリッド項目または不明な数のグリッド項目をレイアウトする場合にうまく機能します。
- サブグリッドは、単純な親子要素のセットよりも深くネストされた要素を整列できます。
- フレックスボックスと同じ配置プロパティがグリッドに適用されます。
6 コンテキストの配置と積み重ね¶
- 要素の配置のタイプ: 固定、相対、絶対、およびスティッキー
- モーダルダイアログとドロップダウンメニューの構築
- z-index とスタッキングコンテキストを理解する
- CSSで単純な三角形を描画する
6.1 固定位置¶
position: fixed
- 短縮表現として
inset
がある.
6.1.1 固定位置でのモーダルダイアログ¶
いまHTMLには<dialog>
要素がある. ここでは固定位置の動作をより詳しく説明するためにあえてこれを使っていない. dialog
はMeet the New Dialog Elementを読むとよい.
6.1.2 モーダルダイアログが開いているときに画面がスクロールしないようにする¶
6.1.3 配置された要素のサイズの制御¶
6.2 絶対位置決め¶
position: absolute
6.2.1 閉じるボタンの絶対配置¶
6.2.2 擬似要素の配置¶
ヒント: 「閉じる」ボタンでは文字x
の代わりに, 乗算記号としてUnicode文字を使う方がよい. より対称的で見た目もより美しくなる. HTML文字×
がこの文字としてレンダリングされる. CSS
でcontent
プロパティを利用するにはエスケープされたUnicode番号\00D7
を適用する必要がある.
絶対位置決めは位置決めタイプの中で最も強力. これはメニュー・ツールヒント・「情報」ボックスをポップアップするため, JavaScript
と組み合わせて利用する. これを利用してドロップダウン メニューを作成する方法を説明する. そのためにまずそのコンパニオンである相対位置を確認する必要がある.
6.3 相対位置決め¶
相対位置決めはおそらく最も理解されていない位置決めタイプ.
注記:fixed
・absolute
とは違ってinset
プロパティで相対的に配置された要素のサイズは変えられない.
6.3.1 ドロップダウン メニューの作成¶
アクセシブルなドロップダウンの構築の詳細はAccessible Custom Select Dropdownsを参照.
6.3.2 CSS トライアングルの作成¶
CSSで構築された多数の形状のリストはhttps://css-tricks.com/examples/ShapesOfCSS/を見るとよい. これらは特にSVG
アイコンで不要になる場合もあるが, うまく使うと余計な要素のローディングを避けられる.
6.4 コンテキストの積み重ねとz-index
¶
6.4.1 レンダリングプロセスとスタック順序を理解する¶
デフォルトでは位置決めされた要素はすべて位置決めされていない要素の前に表示される.
通常モーダルはコンテンツの最後の部分としてページの最後に追加される. 特にモーダル ダイアログを構築するためのほとんどのJavaScript
ライブラリはこのように実装されている.
6.4.2 z-index
を使用したスタック順序の操作¶
z-index
はページのスタッキングの問題を解決するための第二の方法. z-index
は簡単そうに見えても二つ注意点がある.
z-index
は位置決めされた要素に対してしか機能しない. 特に静的要素の積み重ね順序は操作できない.- 位置決めされた要素に
z-index
を適用するとスタッキング コンテキストが確立される.
6.4.3 スタッキングコンテキストの理解¶
スタッキング コンテキストのすべての要素が一緒にペイントされる. これには重要な影響がある.
スタッキング コンテキストの外側にある要素は, その内側にある二つの要素の間にスタックできない. 別の言い方をすると, 要素がスタッキング コンテキストの前にスタックされている場合, そのスタッキング コンテキスト内の要素をその前に置けない. 同じくページ上の要素がスタッキング コンテキストの背後にスタックされている場合, そのスタッキング コンテキスト内の要素をその要素の背後にスタックできない.
これを理解するのは簡単ではない. 「リスト 6.12 コンテキストのスタックの例」以降で説明用の最小限のシナリオを組み立てる方法を示す.
注記:z-index
の追加だけがスタッキング コンテキストを構成する方法ではない. transform
またはfilter
プロパティと同じく, 1
以下のopacity
もその一つ. 固定配置とスティッキー配置(セクション 6.5)はz-index
がなくても, 常にスタッキング コンテキストをなす. ドキュメントルート(<html>
)はページ全体の最上位のスタッキング コンテキストも作る.
変数を使用して Z インデックスを追跡する さまざまなコンポーネントの優先順位について明確な順序がないため, スタイルシートは簡単にz-index
戦争に発展する. 明確なガイダンスがなければスタイルシートにモーダルのようなものを追加する開発者は, モーダルがページ上の他のものの背後に表示されないよう999999
などの途方もなく高いz-index
インデックスを設定する可能性がある. これを制御するにはカスタム プロパティを有効活用する. すべてのz-index
値を変数として一箇所にまとめる. これで何が前に表示されるかを一目で確認できる.
1 2 3 4 5 |
|
10または100の増分を利用すれば必要に応じて間に新しい値を挿入できる.
明示的に何かを配置するのではなく, ドキュメント フローに作業を実行させられるなら, ブラウザーが多くのエッジ ケースを処理してくれる. 配置によってドキュメント フローから要素が取り除かれる点に注意する. 一般にこれは要素を互いの前に積み重ねる必要がある場合にだけ実行する必要がある.
6.5 スティッキーな位置決め¶
相対位置と固定位置のハイブリッドのようなもの. 要素は画面上の指定された点に到達するまでページとともに通常どおりスクロールし, その点でユーザーがスクロールを続けると, その点で所定の位置に「ロック」される. この一般的な使用例はサイドバー ナビゲーション.
6.6 概要¶
- 固定位置ではビューポートを基準にして要素が配置される.
- 相対配置では要素を初期の静的位置を基準にして配置する. ページ上の他の要素は引き続きその初期位置の周りを流れ続ける.
- 絶対配置では最も近い位置にある祖先要素を基準にして要素が配置される.
- 固定配置ではページの残りの部分がスクロールしても要素が画面上に留まる. それらは親要素内に含まれたまま.
z-index
は位置決めされた要素に対してしか機能しない. 新しいスタッキング コンテキストが作られる.
7 レスポンシブデザイン¶
- 複数のデバイスと画面サイズに対応したWebページの構築
- メディア クエリを使用してビューポート サイズに基づいてデザインを変える.
- ページのスタイルを設定するときに「モバイル ファースト」のアプローチを採用する
- レスポンシブ画像の使用
レスポンシブの良い例:The Boston Globe.
レスポンシブ デザインの三つの重要な原則.
- モバイルファーストのデザインアプローチ。 これはデスクトップ レイアウトの構築を開始する前にモバイル バージョンの計画があることを意味します。
@media
:このルールを使用すると, さまざまなサイズのビューポートに合わせてスタイルを調整できます。 この構文(メディア クエリと呼ばれることが多い)を使用すると, 特定の条件下でのみ適用されるスタイルを作成できます.- 流動的なレイアウトの使用。 このアプローチによってコンテナーをビューポートの幅に基づいてさまざまなサイズに拡大縮小できます.
7.1 モバイルファースト¶
モバイル向けの開発は制約の中での作業です。 画面のスペースは限られています。 ネットワークが遅くなることがよくあります。 モバイル デバイスのユーザーは異なる対話型コントロールのセットを使用します。 タイピングは可能ですが面倒です。 ユーザーは要素の上にマウスを移動して効果をトリガーできません。 完全なインタラクティブなWebサイトの設計から始めてこれらの制約を満たすためにそれを縮小しようとすると, 多くの場合失敗します.
モバイル レイアウトはほとんどの場合飾り気のないデザインです. インタラクティブなメニューとは別に, このデザインはコンテンツに重点を置いています. 大きな画面ではヘッダー・ヒーロー画像・メニューなどに多くのスペースを割けます. しかしモバイル デバイスではユーザーはよりタスク指向になることがよくあります. 彼らは友達と外出していて, 店舗の営業時間や価格や住所などの特定の情報をすぐに見つけたいと考えているかもしれません.
重要:レスポンシブ デザインのHTMLを記述するとき, 各画面サイズに必要なものがすべて含まれているかの確認が重要です. インスタンスごとに異なるCSSを適用できる一方, すべて同じHTMLを共有する必要があります.
7.1.1 モバイルメニューの作成¶
ヒント:スクリーン リーダーはランドマークとしてform
, main
, nav
, aside
のような特定のHTML5要素を使用します. これで視力の弱いユーザーがページをすばやく移動できるようになります.
ハンバーガーメニューのデメリット:ハンバーガー メニューはモバイル デザインの一般的なアプローチです. 小さな画面にさらに多くを表示するという問題は解決できますが代償も伴います. 重要な要素(メイン ナビゲーション メニューなど)を非表示にすると, それらの要素に対するユーザーの操作が減少することがわかっています.
7.1.2 ビューポートメタタグの追加¶
7.2 メディアクエリ¶
7.2.1 メディアクエリの種類を理解する¶
ライトモードとダークモード
1 2 3 4 5 6 |
|
1 2 3 4 5 6 |
|
7.2.2 ページへのブレークポイントの追加¶
ヒント:メディア クエリはオーバーライドする必要があるスタイルの後に配置します. こうするとメディア クエリ内のスタイルは, 同じセレクターの特性を持つ他のスタイルをオーバーライドできます.
7.2.3 レスポンシブ列の追加¶
7.3 流動的なレイアウト¶
7.3.1 大きなビューポート用のスタイルの追加¶
7.3.2 テーブルの処理¶
テーブルはモバイル デバイス上の流動的なレイアウトの場合に特に問題になります. テーブルに数個以上の列がある場合, 簡単に画面の幅をオーバーフローする可能性があります(図 7.10). 可能であればモバイル ユーザー向けにデータを整理する別の方法を見つけることをお勧めします. たとえば各行のデータを独自のタイルに移動し, タイルを互いに積み重ねることができます. あるいは小さなビューポートに適した視覚的なグラフやチャートを作成することもできます. ただしテーブルだけが必要な場合もあります.
7.4 レスポンシブ画像¶
レスポンシブ デザインでは画像に特別な注意が必要です. 画面に収まるようにするだけでなく, モバイル ユーザーの帯域幅制限も考慮する必要があります. 画像はページで使用されるリソースの中で最も大きなものの 1 つである傾向があります. 最初に行うべきは画像な十分な圧縮の確認です.
7.4.1 異なるビューポート サイズに対する複数の画像の使用¶
7.4.2 srcset を使用して正しいイメージを提供する¶
レスポンシブ画像の詳細はThe anatomy of responsive imagesにアクセスしてください.
レスポンシブ デザインでのページの領域の構造化は無数の方法で行うことができます. それらのいずれかを構築するにはモバイル ファースト・メディア クエリ・流動的なレイアウトの三原則を適用する必要があります. これらの原則を理解すると, ページを構築する際にレスポンシブなニーズを念頭に置くのに役立ちます.
このアプローチはかなり長い間効果的であることが証明されています. ただしこのリストに追加すべき重要なツールが一つあります. それはコンテナー クエリです. これは開発者が数年間楽しみにしていた CSS の最近の機能です. 次の 2、3 章で役立つ基礎を築き, 第 10 章でレスポンシブ デザインのトピックに戻ってこの機能を議論します.
7.5 概要¶
- 「モバイルファースト」の考え方でデザインに取り組むと, レスポンシブデザインの実装が容易になります. 一般にモバイル ページを大きな画面へのスケールアップは, デスクトップ ページをモバイルにスケールダウンするよりも簡単です.
- メディア クエリを使用すると, ビューポート サイズやユーザー環境のその他の側面に基づいてCSSを条件付きで適用できます. これを使用してより大きなビューポートでページを段階的に強化します.
- 流動的なレイアウトはどのブラウザ サイズでも常に画面にフィットします.
- レスポンシブ画像はモバイル デバイスの帯域幅制限に対応するのに役立ちます.
- メタ ビューポート タグはサイトがレスポンシブに設計されていることをブラウザーに伝えます. これでスタイルが期待どおりに小型デバイスに適用されるようになります.
8 カスケードレイヤーとネスト¶
- CSSを論理的に整理する
- レイヤーを使用してカスケードを制御する
:is()
と:where()
疑似クラスの使用- 関連するスタイルをネストしてグループ化する
これまで開発者がこれらの問題に対処できる唯一の方法は, 厳密に規定された方法論と命名パターンの利用使用でした. しかしCSSにはこの点で役立ついくつかの新しい機能があります. これらはコード編成の優れた手段とカスケードの明示的な制御を提供する第一級の機能です.
これらの各機能について説明する際に現在のブラウザーのサポートについても説明しますが, これを読む際には最新の統計を必ず確認してください. これに適した二つのリソースは次の通りです.
8.1 レイヤーを使用したカスケードの操作¶
8.1.1 レイヤーの定義¶
最新のCSSでこれを管理するより良い方法はカスケード レイヤー. レイヤーを使用したいがブラウザーのサポートが心配な場合https://www.oddbird.net/2022/06/21/cascade-layers-polyfill/を参照.
@layer
匿名レイヤー:レイヤーに名前を付けると一般にもう少し柔軟性が高まります.
@import
で外部スタイルシートをインポートすると, そのスタイルシートをレイヤーに割り当てられます. 例えば@import "bootstrap.css" layer(bootstrap); bootstrap.css
でbootstrap.css
をbootstrap
という名前のレイヤーにインポートします.
8.1.2 レイヤーの順序と優先順位¶
同じレイヤー名をもう一度参照すると, スタイルシートですでに確立されているレイヤーにさらにスタイルを追加できます.
CSSの次の行では優先順位の高い順に4つのレイヤーを宣言しています.
1 |
|
すべてのレイヤーをスタイルシートの最初でこのように宣言することを強くお勧めします. これで優先順位が明確になり, 見つけやすくなります.
レイヤー内で!important
を使用する¶
入れ子になったレイヤー¶
ネストされたレイヤーによって, そのスタイルシートで定義されているレイヤーを無効にせず, サードパーティのスタイルシートをレイヤーにインポートできる.
8.1.3 revert-layer キーワード¶
すべてのプロパティ¶
all
という便利な短縮プロパティがあります.
8.2 カスケード層の推奨構成¶
1 |
|
8.2.1 レイヤのリセット¶
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 |
|
8.2.2 テーマレイヤー¶
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 |
|
8.2.3 グローバル層¶
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 |
|
8.2.4 レイアウト層¶
多くのサイトではいくつかの異なるページ レイアウトがあります. たとえばホームページのレイアウトは記事とは異なる場合があり, 記事のレイアウトは検索結果ページとも異なります. レイアウト レイヤー上でこれらのそれぞれについて一般的なページ構造を定義できます.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 |
|
これまではセレクターの特異性が高いため, このようなセレクターでIDを使用することは通常避けてきました. しかしカスケード レイヤーの場合は心配ありません. 次のレイヤーに追加するスタイルは, レイヤーの優先順位によって必要に応じてこれらのルールをオーバーライドできます. IDの代わりにクラス名を使用したい場合, 私が好んで使用する一般的な規則は, クラス名にプレフィックスl-
を付けることです.
8.2.5 モジュール層¶
このような再利用可能なモジュールからサイト構築は, それ自体が大きなテーマです. これは次の章で詳しく見ていきます.
8.2.6 ユーティリティ層¶
8.2.7 追加のレイヤー¶
さまざまなモジュールの状態やステータスに応じて, ページに動的に追加またはページから削除されるスタイル用です. これには読み込み状態やドロップダウン メニューの開いた状態と閉じた状態などが含まれます.
8.3 :is()
および:where()
疑似クラス¶
大きなセレクターをより簡潔に記述できます.
以下の指定は等価.
1 2 3 4 5 6 7 8 |
|
1 2 3 4 5 |
|
正式に言えば:is()
擬似クラスは一連のセレクターを引数として受け取り, 指定されたセレクターのいずれかに一致する要素と一致する関数です.
8.3.1 より寛容なセレクター¶
8.3.2 特異性の操作¶
:where()
疑似クラスは機能的には:is()
と同じで, 違いが一つあります. :where()
の特異性は常にゼロです. つまり:where()
は特異性の高いセレクターの特異性を下げるために使用できます.
8.4 ネスティング¶
8.4.1 ネストセレクターの使用¶
&
をネストセレクターと呼ぶ.
1 2 3 4 5 6 |
|
1 2 3 4 5 6 7 |
|
ここで&
がないと.modal.is-open
ではなく, スペースが入る.modal .is-open
として解釈されてしまう.
警告:Sassと違ってネストセレクターを使用して部分クラス名をマージできません.
&
セレクターの順序を変更するにはネストされたセレクターの後に配置します.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 |
|
8.4.2 ネストセレクターの微妙な違いを理解する¶
親セレクター参照のために&
を使うと, 親セレクターを:is()
疑似クラス関数で親セレクターをラップする形で脱糖(desugar)される.
8.4.3 メディアクエリとその他のアットルールのネスト¶
ネストされていない宣言は常にネストされたブロックの前に配置します¶
8.5 概要¶
- カスケード レイヤーはCSSの優先順位を明示的に制御します. レイヤーを使用すると, セレクターの指定性とソースの順序を単独で使用する場合に比べてどのスタイルを優先するかを操作するためのより合理的な手段が提供されます.
- これら6つのレイヤー(リセット・テーマ・グローバル・レイアウト・モジュール・ユーティリティ)をスタイルシートを整理するための便利なテンプレートとして使用します. プロジェクトの特定のニーズに基づいて必要に応じてこれを調整してください。
:is()
擬似クラスを使用すると, 指定されたセレクターのリストから選択できます. これは反復的で面倒なセレクターを短縮するのに役立ちます.:where()
疑似クラスは常に特異性がゼロです. 他のスタイルをオーバーライドしないようにセレクターの特異性を抑える必要がある場合にこれを使用します.- ネストすると親セレクター ブロック内に子孫セレクターまたは at-rule を配置できます.
9 モジュラー CSS とスコープ¶
- CSSを再利用可能なモジュールに整理する
- セレクターの特異性のエスカレーションの防止
- CSSの一般的な命名規則
@scope
を使用してカスケードをより適切に制御する- パターン ライブラリを使用してモジュールを文書化する
9.1 モジュールの定義¶
モジュラーCSSは ページをコンポーネント部分への分割を意味します. これらの部分は複数のコンテキストで再利用可能である必要があり, 相互に直接依存すべきではありません. 最終的な目標はCSSの一部を変更しても, 別の部分に予期しない影響が生じないようにすること.
9.1.1 モジュールはグローバル スタイルに依存する¶
9.1.2 単純なモジュール¶
9.1.3 モジュールのバリエーション¶
BEM クラス名の規則:二重ハイフンと二重アンダースコアのクラス名は, BEMと呼ばれる方法論の一部である一般的な規則です. BEMはBlock-Element-Modifierの頭字語です.
ヒント:モジュールのすべてのCSS(修飾子クラスも含む)は常に同じ場所にまとめて保管してください. これでスタイルシートは一連のモジュールで構成されます.
ページ内の位置に基づいてモジュールを変更するために子孫セレクターを使用しないでください. この一つのルールへの従属が, スタイルシートが保守不可能なコードの狂気へと陥ることを防ぐ最善の方法です.
9.1.4 複数の要素を含むモジュール¶
9.2 より大きな構造に構成されるモジュール¶
モジュールはそれぞれ一つのことを担当する必要があります. メッセージ モジュールはメッセージを目立つようにする役割を果たします. メディア モジュールはテキストの横に画像を配置する役割を果たします. その目的を簡潔に要約できる必要があります. 一部のモジュールはレイアウト用で, その他はスタイルを目的としています. モジュールが複数のことを実行しようとする場合, それをより小さなモジュールへの分割を検討する必要があります.
9.2.1 モジュール間での複数の責任の分割¶
場合によってはモジュールが自然に大きくなることがあります. 分割が難しい場合, 具体的に分割する必要があるまで分割しないでください.
9.2.2 モジュールの名前付け¶
適切なモジュール名の選択には熟考が必要です. モジュールを開発するときに一時的な名前を入力できますが, 完成したと考える前にその名前に注意を払っていることを確認してください. これをうまく実行するのはおそらくモジュール式CSSを書く上で最も難しい部分です.
モジュールは多用途である必要があります. その名前はシンプルで覚えやすいものが理想的です. サイトのさらに多くのページをデザインするとき, 任意の数の目的でモジュールを再利用できます.
すべてのモジュールの名前に二つの単語を使用して, 一般的になりすぎないように強制する人もいます. まったく新しいタイル モジュールがいつ必要になるかはわかりません. 既存のタイル モジュールの名前をより正確に指定すると, 二つの混同がなく, 新しいタイル モジュールにもう少し自由に名前を付けることができます.
モジュールのバリアント クラスに名前を付けるときは同様の原則を適用する必要があります. たとえばボタン モジュールがある場合, 赤と青のバリアントをbutton--red
やbutton--blue
のようにサブクラス化しないでください. サイトのデザインは将来変更される可能性が高く, これらの色も変更されるかどうかはわかりません. button--danger
やbutton--success
のようなより意味のある名前を見つけてみてください.
9.3 CSS スコープ¶
9.3.1 スコープの近接性¶
9.3.2 スコープ制限¶
Shadow DOMと比較したスコープ:Shadow DOMはWebコンポーネントをWebページの外側の部分から分離する手段としてWebコンポーネントを定義するときに使用されます. Shadow DOMはスタイルのスコープを提供する方法として提供されることがありますが, これは特定の状況でのみ役立つと思います. Shadow DOMは主にJavaScript主導の機能であるため, 本書の範囲外です. ただしShadow DOMのユーザーがスコープについて説明するときによく質問されるため, スコープとの違いに注意してください.
すべてのモジュールがスコープされている場合, 考慮する必要がある名前の競合はモジュールのルート要素のクラス名だけです. 何らかの方法でこれらのクラスを特殊なケースとして区別することをお勧めします. 一つのオプションはすべてのモジュール クラス名にm-
のような共通のプレフィックスを付けることです。 結果としてm-media
やm-dropdown
のような一意のクラス名が得られます. クラス名ではなく<div data-scope="dropdown">
のようなカスタム属性を使用することもできます. 後者のアプローチを使用する場合は属性セレクターを使用してスコープを定義できます. 例えば@scope ([data-scope="dropdown"]) to ([data-scope])
.
9.3.3 暗黙的なスコープ¶
9.3.4 スコープとレイヤー¶
9.4 パターンライブラリ¶
9.4.1 CSS First ワークフローの使用¶
開発者はスタイルを設定しやすいHTMLをどのように記述したらよいかよく尋ねます. これは間違った質問だと思います. 代わりに任意の数のページで再利用できるスタイルをどのように記述できるかを考える必要があります. 最初にCSSを記述する必要があり, 適切に構造化されたHTMLが続きます. CSSのモジュール編成がこれを実現する手段です. CSSのモジュールはページ上で機能するために必要なHTMLの構造を決定します.
9.4.2 リファクタリングと破壊的な変更¶
場合によっては古いバージョンとの互換性がなくなるような方法でモジュールに変更を加える必要がある場合があります. 多くの場合,最善の行動はモジュールを非推奨にし(パターン ライブラリでそのことを示す), 必要な新しい機能用にまったく新しいモジュールの作成です. これで古いモジュールは使用されている場所で引き続き動作する一方, 両方がサポートされている間に新しいモジュールへの移行を開始できます. semverによるCSSのバージョン管理が有効です.
実際にはこのバージョン管理にはいくつかの方法があります. スタイルを使用するプロジェクトの性質によって異なります. たとえばCSSをNodeJSモジュールまたはRuby Gemの一部としてパッケージ化する場合, これらのシステムに組み込まれているバージョン管理を使用します. CSSをサーバー上で静的にホストしている場合, http://example.com/css/1.4.2/styles.cssのようにURLにバージョン番号を含めて, 複数のバージョンを同時にホストします.
9.5 概要¶
- モジュールはページ内のコンテキストに依存しない, 再利用可能な小さなスタイル部分です. モジュールのスタイルはカプセル化のプログラミング原則に従って, スタイルシート内の一か所にグループ化する必要があります. モジュラーCSSが別のモジュールに到達してその外観を変更することはありません.
- バリアント クラスを使用すると同じモジュールの複数のバージョンを提供できます.
- 大きな構造は小さなモジュールに分割する必要があります. 多数のモジュールをつなぎ合わせてページを組み立てます。
- 二重ハイフンや二重アンダースコアなどの命名規則を使用すると, モジュールの構造を一目で理解しやすくできます.
@scope
はスタイルのセットをページの特定の部分に制限する新しい機能です. これはモジュール スタイルを目的のモジュールにスコープしておくための完璧なツールです. 内部スコープ制限を指定すると, これらのスタイルが子孫スコープをターゲットにできなくなります. この機能に対する新しいブラウザーのサポートに注目してください.- 大規模なプロジェクトではパターン ライブラリを構築してモジュールを文書化し, インベントリを作成できます. 新しいページを組み立てるときに使用できるスタイルの参考としてこれを使用してください.
10 コンテナクエリ¶
- コンテナーの定義と
@container
の使用 - コンテナのサイズに基づいてモジュールの応答性を高める
- コンテナ相対単位の使用
- スタイル クエリを使用してカスタム プロパティの値に基づいてスタイルを変更する
ページ上のどこでも使用できるモジュールの設計はレスポンシブ デザインのコンテキストでは難しい場合があります. サイドバーなどの狭い列にモジュールを配置したい場合がよくあります. ビューポート自体は大きいかもしれませんが, その特定のモジュールに利用できるスペースは大きくありません. だから定期的な@media
クエリは, モジュールの応答性を高めるための実用的なアプローチであるとは限りません.
CSSの新機能であるコンテナ クエリは, より汎用性の高いオプションを提供します.
10.1 コンテナクエリの基本的な例¶
理論的にはメディア クエリを追加してこれに対処できます. これはモジュール設計の重要な原則の一つに違反しています. つまりモジュールが使用されるコンテキストを気にせずにモジュールを設計できる必要があります
これに対するより良いアプローチは, メディア クエリを完全に回避し, 代わりにコンテナ クエリを使用することです. このようなモジュールの場合ビューポートのサイズは関係ありません. 重要なのはモジュールを保持するコンテナのサイズです.
10.1.1 コンテナサイズクエリの使用¶
コンテナ サイズ クエリを使用するには次の二つの手順が必要です. コンテナを定義してからコンテナをクエリします. まずメディア モジュールを改善するための基本的な使用例を説明し, 次にコンテナを定義するときに使用できるいくつかの追加オプションを詳しく見ます.
CSSでは長い間コンテナという用語は祖先要素を指すために使用されてきました. 通常はページの領域を定義するために何らかのサイズ設定または背景色が与えられた要素です. これはコンテナー クエリのコンテキストでも依然として当てはまります. ただしコンテナ サイズのクエリの場合はcontainer-type
プロパティ, オプションでcontainer-name
.
10.2 コンテナを詳しく見る¶
10.2.1 コンテナの種類¶
10.2.2 コンテナ名¶
10.2.3 コンテナとモジュール式 CSS¶
モジュールを操作する場合, ほとんどの場合, メディア クエリよりもコンテナ クエリの方が適切な選択肢です. ページ全体でコンテナを一貫して定義している限り, 通常は代わりにすべてのモジュールにコンテナを使用できます.
10.3 コンテナ相対単位¶
10.4 コンテナスタイルのクエリ¶
10.4.1 コンテナからモジュールを切り離す¶
10.4.2 コードの重複を減らす¶
場合によっては, いくつかの事態のいずれかが発生したときに適用したいスタイルがある場合があります. これが発生する一般的な状況は, ライト モードとダーク モードを切り替えることができるサイトです. 理想的にはprefers-color-scheme
メディア クエリを使用して, ページを最初に正しいモードで表示すると同時に, ユーザーがいくつかのJavaScript制御入力を介してモードを切り替えることもできます.
10.5 概要¶
- コンテナ サイズ クエリを使用すると, スタイルがコンテナのサイズに応答できるようになります. これは多くの場合, 従来のメディア クエリよりも実用的なアプローチです.
- コンテナ タイプを要素に適用すると, コンテナが確立されます.
@container
を利用してコンテナのサイズをクエリし, それに応じて子要素のスタイルを設定します. - インライン サイズまたはサイズ タイプのコンテナ内の要素は, 測定されたディメンションのサイズに影響を与えない場合があります.
- コンテナ相対単位は, コンテナのインライン サイズまたはブロック サイズのパーセンテージとしてサイズを決定します. これらは概念的にはビューポートの相対単位と非常によく似ています.
- コンテナ クエリの
style()
関数を使用すると, コンテナのカスタム プロパティの値に基づいて条件付きスタイルを適用できます. これは新しいブラウザーのサポートによる新機能です.
パート 4 視覚的な強化¶
今度はそれらを美しく見せる時が来ました. ユーザーはプロフェッショナルな外観のアプリケーションを信頼する傾向があり, サイトが見た目に美しい場合は, より多くの時間をそのサイトの使用に費やす傾向がある可能性があります. この四つの章では, これまでに学んだことをすべてまとめて検討し, 設計に関していくつかの重要な考慮事項を指摘します. これらはサイトの外観に大きな影響を与える可能性のある小さな詳細です.
11 色とコントラスト¶
- デザイナーのモックアップをHTMLとCSSに変換する
- コントラストを使用してページの適切な部分に注目を集める
- 色の選択と操作
- 色空間とさまざまなCSSの色表記について理解する
- OKLCHカラーの詳細
- 色に関するアクセシビリティの問題
2024-08 F# in Action¶
もっと前から知ってはいたが, 改めて目次を見たら後半の内容が特に気になったため購入. 後半が本当によさそうで, ざっと読んだら再読・熟読したい.
9.3
r "nuget:FSToolkit.ErrorHandling, 2.13.0"¶
open FsToolkit.ErrorHandling
let myMaybeData = option { let! numberOne = tryParseNumber "1" let! numberTwo = tryParseNumber "2" let! numberThree = tryParseNumber "3" return calc numberOne numberTwo numberThree }
MS Learn scisharpある?
10.1 traverse 10.2 DTO処理 生の JSON からリッチな F# ドメインへの魔法のマッピングを行うためにシリアル化ライブラリだけに頼らないでください。プリミティブ値のみを使用する最も単純なドメイン モデルがない限り、努力する価値はありません。 10.3.1 JSON型プロバイダーの操作 リスト10.4
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 |
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リスト10.5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 |
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SQL データベースから生の型を生成する Facil などの F# 固有のライブラリがあります。 Microsoft SQL Server を操作するためのオプションは、DataReader、Dapper、Facil など多数あります。それぞれに長所と短所があり、どのオプションを使用する場合でも、より豊富なドメインにマッピングする前に、単純な型のデータを F# に取り込むという原則に従ってください。
asyncとtask
私のアドバイスとしては、タスクから始めることです。 特に
C#
でタスクを既に知っている場合は, タスクの方が.NET
の世界でより人気があり非常にうまく機能するためです. ただし2つの違いを直接理解し, 必要な動作に基づいてどちらが適切かを柔軟に選択できるようにするためだけでも, 非同期ワークフローを調査して実践的な経験を積む必要があります.
12はまた読もう.
13.
- Validus
- FsToolkit.ErrorHandling
- taskresult
- Expecto
2024-08 Learn Rust in a Month of Lunches¶
Chapter2¶
Chapter2は参照・所有権があったため非常に時間がかかる. 覚悟を決めて読むこと.
- スタック・ヒープ・ポインタ・参照を理解する
- Rustでよく見かけるポインタは参照で, メモリセーフなポインタとみなせる.
- 所有されているメモリへの参照ポイント.
- 安全でないランダムなメモリ位置ではない.
- 参照は別の値のメモリを指す
- 参照は値を借用するが所有はしない
- 参照の前に
&
がつく.
1 2 |
|
「文字列」に関するString
と&str
の違い.
&str
は単純な文字列. 文字列スライスとも言う.- データへのポインタと長さの組み合わせ.
String
はString
ヒープ上のデータを持つポインタ.- 最大の違いは
String
はデータを所有する一方,&str
はスライス(データのビュー) String
は簡単に拡大・縮小・変更できる.
const
とstatic
const
: 変更されず, コンパイル時に作成される値.- グローバル変数ではふつうこちらを使う.
static
:メモリ位置が固定. コンパイル時に作成されない可能性あり.
参照を使用してデータを変更する場合は可変参照を利用する. &mut
を使えばよい.
&
が参照で*
は逆参照.
- 不変参照: 不変参照は必要な数だけ持てる. データを表示するだけだから.
- 可変参照: 可変参照は一つだけ持てる. 不変参照と可変参照を一緒に持てない. 可変参照はデータを変更できるため, 他の参照がデータを読み取るときにデータを変更すると問題が起き得る.
Rust's simplest types are known as Copy types. They are all on the stack. Rustの最も単純な型はCopy
typesと呼ばれる. これらはすべてスタック上にあってコンパイラはそのサイズを認識している. 移動セマンティクスとコピーセマンティクス.
- 不変参照: 画面に表示されている内容を何度でも問題なく同僚に見せられる.
- 可変参照: 同僚が座って少しの間あなたのコンピュータを使いたい場合, 十分な理由があるはず. 二人の同僚が同時にあなたのコンピュータの前に座って入力できない.
- 所有権の譲渡: 同僚があなたのコンピューターを所有したい場合, 返還を求められないため正当な理由が必要. 晴れて許可が得られれば同僚はコンピューターを変更可能と宣言して自分の好きなように使用する.
まとめ
const
とstatic
プログラムの存続期間中はどこでも使える.- デフォルトでデータの所有権を取得する. 借用する場合は参照を利用.
- 文字列にも所有権の概念がある. 所有型の
String
と借用文字列の&str
. - Copy型は単純で所有権について心配不要.
- 型は「移動セマンティクス」ではなく「コピーセマンティクス」を利用する.
Chapter3 より複雑な型¶
Chapter2は参照・所有権があったため非常に時間がかかったが, この章はさくっと読める.
- 配列 - 同じ型のシンプルで高速な不変のコレクション
- ベクトル - 配列に似ていますが、拡張可能で、より多くの機能があります
- タプル(さまざまなタイプのグループ化)
- 制御フロー - 状況に応じてコードの実行方法を変える
配列はベクターよりも単純な型で, メモリを割り当てることができない小さな組み込みデバイスなどでも使用できます.
- 配列には同じ型のみを含める必要がある.
- 配列のサイズは変えられない.
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3.1.2 ベクトル 配列に加えてベクターもあります. この二つつの違いは&str
とString
の違いに似ています. 配列はより単純で柔軟性と機能性が低く高速である可能性があります. 一方ベクターはサイズを変更できるため操作が簡単です. (配列は動的にサイズが変更されないため, コンパイラは常にそのサイズを認識している. 前の例では配列を使用するために参照は不要だった.)
Vec
を作成するもう一つの簡単な方法はvec!
マクロ.
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ベクトルの配列化.into()
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3.1.3 タプル.
Rustでは空のタプルはユニット型と呼ばれる.
3.2 制御フロー
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if
によるマッチガード.
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 |
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3.2.3ループ
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ループへの命名
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for
によるループ.
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まとめ
- 配列は非常に高速である一方, サイズと型は固定.
- ベクトルは
String
に似ている. - 所有型で柔軟.
- タプルは数値でアクセスできる項目を保持する. ただしインデックス付きコレクションではなく独自の新しい型のように動作.
match
が使える.コードが非常に読みやすくなります。- Rustでは
match
でステートメント内のすべてが一致するか確認. - 構造化分解は強力. ほぼあらゆる方法で型を分解できる.
range
は'何かがいつ始まり, いつ終わるかを人間が判読できる形で表現するのに適している.- ループ内にループがある場合, ループに名前を付けてどのループから抜け出すかをコードに指示できる.
Chapter4 独自の型を構築する¶
はじめに¶
- 構造体は値をグループ化して独自の型を構築するために使用できます
- 列挙型は構造体に似た構文ですが、グループ化ではなく選択に使用されます。
- 構造体と列挙型にメソッドを与える型の実装
- 構造化解除と型の分解について
- 参照とドット演算子
Rustで独自の型を構築する主な方法, つまり構造体と列挙型を見る. これらの型にアタッチされて呼び出される関数, つまりメソッドの実装方法も学ぶ. これらのメソッドはキーワードself
をよく利用する.
4.1 構造体と列挙型の概要¶
構造体は列挙型を含められ, 列挙型は構造体を含められるためこれらは一緒に機能する.
- グループ化するものが多数ある場合は構造体.
- 選択肢が多数ある中の一つを選ぶ必要がある場合は列挙型.
構造体の名前はUpperCamelCase
.
タプル構造体, または名前のない構造体.
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構造体は多くのものをまとめて扱うための概念で, 列挙型は多くの選択肢を扱うための概念.
メソッドと関連関数
- メソッド:
&self
,&mut self
またはself
を取る. 通常のメソッドでは.
を利用. - 関連関数:
self
を取らない. 関連関数は型名と関数名の間に::
を入力して別の方法で呼び出す.String::from()
やVec::new()
が例.
Chapter5 Generics, option, and result¶
- URL
- ジェネリクス: 複数の型を使用する場合
- Option: 操作によって値が生成されるかもしれない
- Result: 操作に対して成功・失敗がある
Chapter6 More collections, more error handling¶
- URL
- Other collections—more complex and interesting ones this time
- The question mark operator—just type
?
to handle errors - When panic and unwrap are good
HashMap
, BTreeMap
. .get()
を使うとOption
で返してくれる. HashSet
. BinaryHeap
.
Chapter7 Traits: Making different types do the same thing¶
トレイトやクラスやインターフェースなどではなくあくまでトレイト. 多言語の余計な常識を使って判断してはいけない.
Debug
, Copy
, Clone
などがtrait
. #[derive(Debug)]
などで指定する.
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|
From
トレイト.
orphan rule
- 自分のトレイトを他の人のタイプに実装できる.
- 他の人のトレイトを自分のタイプに実装できる.
- 他の人のトレイトを他の人のタイプに実装できない.
newtype
イディオム. orphan rule
孤立ルールを回避する方法はあるか? 他の人の型をタプル構造体にラップして新しい型を作ると簡単.
AsRef
トレイト.
Chapter8 イテレータとクロージャ¶
- URL
- メソッドチェーンを使用してメソッドを次から次へと呼び出す
- コレクションを操作する最も便利な方法であるイテレータを使用する
- クロージャは名前が不要でスコープ内の変数をキャプチャできる関数.
いわゆる関数型スタイル.
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イテレータの種類.
.iter()
: 参照の反復子.iter_mut()
: 可変参照のイテレータ.into_iter()
: 非参照の値の反復子
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クロージャ
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Chapter9 イテレータとクロージャについてもう一度!¶
- フィルタリングを使用してイテレータに必要なものを保持する
- イテレータの反転・圧縮・循環
- イテレータで必要な値だけを取得する
- イテレータ内の何かまたはすべてが条件に一致するかどうかを判断する
dbg!
マクロを使用してコードがどの時点で何を実行しているかを確認する- イテレーターメソッド集
.filter(), .filter_map()
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|
ok()
, ok_or()
, ok_or_else()
. parse()
unwrap()
, unwrap_or()
, unwrap_or_else()
, map()
, and_then()
, flatten()
any()
, all()
. find()
, position()
, cycle()
, zip()
, fold()
, for_each()
, take_while()
, cloned()
, by_ref()
, chunks()
, match_indices()
, enumerate()
iter()
は参照を提供する.
Chapter10 寿命と内部可変性¶
&str
の種類- ライフタイムアノテーションを使用してコンパイラーが参照の存続期間を認識できるようにする
&mut
を使用せずに安全な可変性を提供する内部可変性の使用
ライフタイムは変数をいつ削除できるか参照がどれくらい持続するかを知るためにコンパイラが利用する. 可変参照なしに安全に値を変更する方法も議論する.
10.1 &str
の種類
- 文字列リテラル:
&'static str
- 借用された
str
: これが'static
ライフタイムのない, 普通の&str
.
borrowed str
の例
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|
10.2 ライフタイムアノテーション
ライフタイムは「変数または参照の存続期間」を意味する.
10.2.1 関数の有効期間
関数には明確な開始と終了があるため, 関数でライフタイムを扱うのはそれほど難しくない.
次は動作しない関数の例.
1 2 3 4 |
|
次のコードは動くがライフタイムに対するワーニングが出る.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 |
|
次のコードはワーニングなし.
1 2 3 4 5 6 7 8 |
|
コンパイラは賢いためふつうは有効期間を理解できます. コンパイラが独自に決定できない場合にだけ参照の有効期間を記述する必要がある.
10.2.2 型のライフタイムアノテーション
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 |
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 |
|
10.2.3 匿名の存続期間
<'_>
: 匿名ライフタイム.
10.3.2 RefCell
- 不変の借用がたくさんあるのは問題ない.
- 変更可能な借用は一つだけで十分.
- 可変借用と不変借用を同時使用は問題ない.
10.3.3 ミューテックス
Mutex
は「相互排他」を意味し, 「一度に一つだけ」を意味する.
10.3.4 RwLock
Chapter11 複数のスレッドなど¶
todo!
マクロ:コンパイラをしばらく静かにするマクロ- 新しい型ではなく別の名前を作成するための型エイリアス
Cow
列挙型. データを自由に借用するか所有するかを選択できます.Rc
は一意の所有権ではなく共有所有権を許可します- 複数のスレッドを使用して多くのことを同時に実行する
11.1 関数内でのインポートと名前変更
11.2 todo!
マクロ
プロトタイピング時に便利.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 |
|
11.3 型のエイリアス
11.4 Cow
Cow
は非常に便利な列挙型です. これは「書き込み時のクローン」を意味し, String
を所有する必要がない場合は&str
を返し, またはもし必要ならString
を返しす. 借りたいけれど所有したいと思う他のタイプでも同じようにできる.
1 2 3 4 |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 |
|
11.5 Rc
参照カウンター.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 |
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 |
|
11.5.3 Rc
によるライフタイムアノテーションの回避
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 |
|
11.6 マルチスレッド
11.6.1 スレッドの生成 11.6.2 JoinHandles
を使用してスレッドの終了を待機する
エラーになるコード.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 |
|
動くコードはクロージャーにmove
を追加.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 |
|
11.6.3 クロージャーの種類
FnOnce
: 値による取得FnMut
: 変更可能な参照を取得しますFn
: 定期的に参照する
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 |
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|
11.6.4 move
キーワードの使用
1 2 3 4 5 6 7 |
|
まとめ
clone()
の利用が多すぎると感じたらRc
- 開始する前にコードの概要をスケッチしたい場合は
todo!
を利用する. Cow
は所有値と借用値の両方を取得できる非常に便利な型.- 新しい型を作る場合それに好きな特性を実装できる. 孤立ルールを回避する最も一般的な方法です. ただし型エイリアスは既存の型の新しい名前にすぎないため、型エイリアスを使用しても基本的な動作は変わりません。
- スレッドは独立しているため別のスレッドが時間までに終了しない可能性があります. スレッドが終了するのを待ちたい場合は
JoinHandle
から得られるspawn()
. - スレッドが借用するデータよりも長く存続する可能性があるため, 複数のスレッドを使用する場合, コンパイラは特に厳格であるように見える.
move
をうまく使う.
Chapter12 クロージャ、ジェネリック、スレッドの詳細¶
- 関数内のクロージャ
- ジェネリックスを使用する別の方法として
impl Trait
を使用する Arc
とRc
は似ているがArc
はスレッドセーフ- スコープ付きスレッド・スコープ内でのみ存在するスレッド
- チャネルを使用して(スレッド間でも)メッセージを送信
1 2 3 |
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1 2 3 4 5 6 7 |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 |
|
12.1.2 FnOnce、FnMut、Fnの関係
1 2 3 |
|
12.1.3 クロージャはすべて一意である
12.1.4 クロージャの例
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 |
|
12.2.2 implトレイトでクロージャを返す
12.3 Arc
Arc
: アトミック参照カウンター.
12.4 スコープ付きスレッド
12.5 チャンネル
12.5.1チャンネルの基本
12.5.2 チャネルの実装
まとめ
- クロージャーは他のクロージャーとは異なる型を持つ. これらに共通するのはどのトレイト(
Fn
,FnMut
,FnOnce
)を実装しているか, そのシグネチャである. - クロージャーを入力として使用するとき, 最初にそれを関数として想定してどの引数を取って何を返すかを考えればよい. その後
fn
を必要なクロージャートレイトに変える.Fn
は参照で受け取り,FnMut
は可変参照で受け取り,FnOnce
は値で受け取る. impl Trait
は通常のジェネリクスよりも柔軟な部分とそうでない部分がある. 違いを実感する最良の方法は練習. 通常のジェネリクスを使用している部分でimpl Trait
が使えるか試すと良い. コンパイラが教えてくれる.- 通常のスレッドがアイテムをキャプチャすると, それらは
'static
ライフタイムを持つ必要がある. これによってスレッドを生成して忘れることができるか,.join()
を使用してスレッドの終了を待てる. - 標準ライブラリの
channel
では好きなだけ送信者を作れる. これに慣れるためにチャンネルを作り, 構造体のパラメータとして, 関数の入力として, 独自のスレッド内など考えられるすべての場所に送信者を置くとよい. - スコープ付きスレッドを使用すると
'static
ライフタイムについて考えなくてもスレッドが使える. ただしスレッドが最終的に終了することを確認しなければならない. 終了しない場合, そのスコープも終了せず, プログラムが永遠に終了しなくなる可能性がある.
Chapter13 BoxとRustのドキュメント¶
- Rustドキュメントを読む
- 属性(
Attribute
)は小さな追加情報である Box
は多くの柔軟性を提供するスマートポインターである
13.1 Rustドキュメントを読む
13.1.2 検索
13.1.4 トレイトに関する情報
ファイルとモジュールは第15章で学習するもう一つの主題.
13.2 ボックス
ボックスは「スマート ポインター」と呼ばれる. &
参照(一種のポインタ)で, それ以外にもできることがある.
再帰的な構造体を作成したいときにBoxが使える. ただしRustではあまり再帰的な構造体を使わない.
13.2.2 トレイトの周囲にボックスを配置する
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 |
|
13.2.3 ボックスを使用して複数のエラータイプを処理する
13.2.4 具体的なタイプへのダウンキャスト
Chapter14 テストとテストからのコードの構築¶
- クレートとモジュールを使用してコードを構造化して, 他の人がコードを使用する方法を制限する.
- テストを使用してコードが正しく実行されることを証明する
- 最初にテストを記述してからコードを記述するテスト駆動開発の使用
14.1.1 モジュールの基本
private
でコンパイルエラー.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 |
|
次のコードはビルドが通る.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 |
|
14.1.2 pub
キーワードの仕組みの詳細
14.1.3 モジュール内のモジュール
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 |
|
14.2 テスト
14.2.1 #[test]
を追加するだけでテストになります
1 2 3 4 |
|
14.2.2 テストが失敗した場合に何が起こるか
14.2.3 複数のテストの作成
14.3.1 計算機の構築: テストから始める
まとめ
- コードのモジュールへの配置は型のどの部分を公開する必要があるかを考え始める良い方法.
Rust
はデフォルトですべてをプライベートにする. 単純にpub
コードをコンパイルするために必要なときにいつでもキーワードを使える.- または型のパラメーターへのアクセスを許可したくない場合はコードを書き直せる.
- テスト関数は
main()
のようなものです. 引数を取らないからです. #[cfg(test)]
テストコードをオーバーテストして, テストを実行しない限りコードをコンパイルする必要がないかコンパイラーに知らせます. テストコードを他のコードの近くに置いておくこともできますが, 注釈を忘れないようにしてください。- 最終製品がどのようなものにしたいのかがすでにわかっている場合, テスト駆動開発は最適です。また、最終製品がどのようなものにしたいかをある程度知っている場合にも役立ちます。テストを書いていくと、何を作ろうとしているのかがより明確に理解できるようになります。
TDD
では最初はすべてのテストが失敗します. 思いつくだけ多く書いてから それらを合格させるコードを書き始めてください。
Chapter15 デフォルト、ビルダーパターン、およびDeref
¶
Default
トレイトの利用- ビルダーパターンで型の生成方法を制御する
Deref
とDerefMut
の利用, 他のタイプのメソッドを盗んで自分のメソッドで使用する.
構造体のすべてのパラメーターを記述する代わりに, メソッドを連鎖させて変数を宣言できるビルダーパターンを学習する. Deref
を使うと他の人の型を内部に保持する型を簡単に作れ, その上に独自のメソッドを追加できる.
15.1 デフォルトの実装
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 |
|
Default
はトレイトであるため, 実装するとDefault
型を必要とするあらゆるものに型を渡せる. 場合によっては必要な関数やトレイトに出会う..unwrap_or_default()
.- 型は実装する別の構造体または列挙型のパラメーターである必要がある場合がある. 実装するには
Default
を使用して#[derive(Default)]
, 型のすべてのパラメータもそれを実装する必要がある. Default
を持つ型のユーザーにその使用方法の一般的なアイデアを提供する. たとえば一般的にはnew()
やcreate()
のようなメソッドを用意するとよが, 全ての設定をいちいち気にしなくてもよいDefault
があると便利.Default
は構造体のパラメータを操作するときに非常に便利.
15.2 ビルダーパターン
15.2.1 ビルダーメソッドの記述
ビルダーメソッドの例
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 |
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 |
|
15.2.2 ビルダーパターンへの最終チェックの追加
ビルダーパターンに追加する最後のメソッドはふつう{.build()}で, このメソッドは一種の最終確認.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 |
|
15.2.3 ビルダーパターンをより厳密にする
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 |
|
15.3 Deref と DerefMut
15.3.1 Derefの基本
Deref
は逆参照できるように*
を使えるようにするトレイト. 参照は値と同じではない.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 |
|
1 2 3 4 5 |
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
|
Deref
を実装する単純な対象はスマートポインターとも呼ばれる.
String
は&str
のスマートポインター.Vec
はarray
などのスマートポインター.Box
,Rc
,RefCell
などもスマートポインター.
15.3.2 Implementing Deref
標準ライブラリのサンプル.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 |
|
1 2 3 4 5 6 7 |
|
15.3.3 DerefMutの実装
Deref
には関連型がある.DerefMut
は関連する型を持たないように見えるが,DerefMut : Deref
と書かれていることに注意.DerefMut
を実装するためにはDeref
が必要でDerefMut
を実装するものはすべて関連型Self::Target
を持つ. つまりDerefMut
のために関連型を改めて宣言する必要はない.- これが
deref_mut()
メソッドの出力として&mut Self::Target
が表示される理由. シグネチャに関連型があるのにシグネチャに関連型がない場合, 別の必要なシグネチャに関連型があるかどうかを確認すること. - 関数のシグネチャは可変性を除けば全く同じ.
self
の代わりに&mut self
deref()
の代わりにderef_mut()
, そして&Self::Target
の代わりに&mut Self::Target
がある.
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 |
|
Deref
は型安全性が必要な場面で使うと良い.
15.3.4 Derefの間違った使用方法
Deref
は混乱を避けるためのスマートポインターとしての用法だけに使うべき.
まとめ
Default
にはいくつかの利点がある. 特にコードがクリーンになり,Default
トレイトの制約があるならどこでも使える.- ビルダーパターンには非常に柔軟性がある. 別の型に変換するためのビルダーとしてだけ使える別の型を作成は型が悪用されないようにするための優れた方法.
Deref
とDerefMut
は保持している他の型のメソッドにアクセスできる独自の型を作れる.Deref
スマートポインターのような単純な用法に最適. 複雑な型に使うとコードが理解しにくくなる可能性がある.
Chapter16 Const, "unsafe" Rust, and external crates¶
Const
ジェネリック, またはconst
値上のジェネリック- コンパイル時にいつでも呼び出すことができる
const
関数 - 可変静的変数:静的変数を変更する安全でない方法
unsafe
なRust
rand
を含む外部クレート
const
値をジェネリックにできると配列操作で最も便利.
16.1 Const
ジェネリクス
- 型に対するジェネリクス
- ライフタイムにわたるジェネリクス
注記
3種類のジェネリックスはRustリファレンス で参照できる. 正式にはLifetimeParam
, TypeParam
, ConstParam
.
この厳密性を理解するために2つの配列を持つ構造体を想像する. const
ジェネリックスを使わしない場合, 項目の数を正確に指定する必要がある.
1 2 3 4 |
|
Chapter17 Rust
で最も人気のあるクレート¶
- Serialization and deserialization with
serde
- Time with the
time
module andchrono
crate - Speeding up your code with the
rayon
crate - Errors with the {anyhow} and
thiserror
crates - Statics with the
lazy
_static andonce_cell
crates - Blanket trait implementations on other types
17.1 コア
serde
クレートはJSON
, YAML
などの形式との間で変換できる.
17.2 標準ライブラリ内のchrono
17.3 chrono
17.4 Rayon
イテレータや関連型を操作するとき, 複数のスレッドを自動的に生成して高速化できる.
17.5 Anyhow
とthiserror
17.6 ブランケット特性の実装
17.7 Lazy_static
とOnce_cell
17.7.1 Lazy_static
: Lazily evaluated statics
17.7.2 OnceCell
: 一回だけ書き込むセル
Chapter18 Rust on your computer¶
- パッケージマネージャー
Cargo
cargo doc
- ユーザーの入力を処理する
- ファイル利用
18.1 Cargo
18.1.1 誰もがCargo
を使用する理由
18.2 ユーザー入力の操作
18.2.1 標準入力を介したユーザー入力
18.2.2 コマンドライン引数へのアクセス
1 2 3 4 5 6 7 8 |
|
コマンドライン引数を扱うためにRust
ユーザーが使用するメインクレートはclap(CLAP = Command Line Argument Parser).
18.2.3 環境変数へのアクセス
18.3 ファイルの使用
18.3.1 ファイルの作成
18.3.2 既存のファイルを開く
18.3.3 OpenOptions を使用したファイルの操作
ブラム・ストーカーのドラキュラ
18.4 cargo doc
Chapter19 その他のクレートと非同期Rust¶
- 別の外部クレート:
reqwest
- 機能フラグを使用してクレートの一部をコンパイルする
- ブロックしないコードに非同期
Rust
を使用する
19.1 リクエストクレート
19.3 非同期Rust
19.3.1 非同期の基本
19.3.2 Future の準備ができているかどうかの確認
19.3.3 非同期ランタイムの使用
19.3.4 非同期 Rust に関するその他の詳細
20 標準ライブラリのツアー¶
- よく知られたタイプをさらに詳しく見る
- 関連する定数
Rust
の3つの関連項目の概要from_fn
やthen_some
などの最近追加された関数OsString
やCString
などの新しい型
20.6 ブール
Rustではブール値は非常に単純である一方, 他の言語と比較すると非常に堅牢. C
言語でブール値を扱う際の難しさの一例:Introduction to C Programming Decision and Branching Concepts
20.8 文字列
String
はVec<u8>
を持つため一種のVec
である一方, Vec<u8>
上の単純なスマートポインターではない.
20.9 OsStringとCString
Chapter21 ツアーを続ける¶
mem
モジュールstd
ライブラリのprelude
- パニックフックの設定とバックトレースの表示
- その他のマクロ
21.1 std::mem
21.2 パニックフックの設定
21.4 標準ライブラリのプレリュード
21.5 その他のマクロ
21.5.1 unreacheble!
21.5.2 column!
, line!
, file!
とmodule_path!
21.5.3 thread_local!
21.5.4 cfg!
Chapter22 Writing your own macros¶
- Why macros exist
- Understanding and writing basic macros
- Learning to read macros written by others
- Using macros to reduce code duplication
22.1 マクロが存在する理由
22.2 基本的なマクロの作成
macro_rules!
22.3 標準ライブラリからのマクロの読み取り
22.4 マクロを使用してコードをクリーンに保つ
Chapter23 未完了プロジェクト:あなたが完了すべきプロジェクト¶
- タイピングの家庭教師を作る
- Wikipedia 記事検索ツールを作成する
- 時計とストップウォッチを作る
23.1 最後の 2 章のセットアップ
23.2 タイピング講師
23.2.1 セットアップと最初のコード
23.2.2 コードの開発
23.2.3 さらなる開発とクリーンアップ
23.2.4 あなたに
23.3 ウィキペディア記事概要検索ツール
23.3.1 セットアップと最初のコード
23.3.2 コードの開発
23.3.3 さらなる開発とクリーンアップ
23.3.4 あなたに
23.4 ターミナルのストップウォッチと時計
23.4.2 コードの開発
23.4.3 さらなる開発とクリーンアップ
23.4.4 あなたに
Chapter24 Unfinished projects, continued¶
- Making a web server–based word-guessing game
- Making a laser pointer for your cat
- Making a directory and file navigator
- Saying goodbye!
24.1 Web サーバーの単語当てゲーム
24.2 レーザーポインター
24.3 ディレクトリおよびファイルナビゲーター
2024-07 オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理¶
思い立って再読. やはり良い本だ.
- タスク指向ではなく操作したいオブジェクトを意識したオブジェクト指向
- タスク指向: 動詞中心
- オブジェクト指向: 名詞から動詞
- P.13 ファイル操作UI: ファイルが選択中か, ドラッグされているか, ロックされているか, 不可視状態か, ダウンロード中かなどは常に自身の性質と現在の状態をそのもの自体の形や色などによって示し続ける.
- P.15 オブジェクト指向UIでは, 日常で我々が世界との関わり方を学習するのと同じ方法で, コンピューター世界の構成や振る舞いを自然に理解し, 関わり方を体得できる.
- P.18: 自販機のUIでのもうひとつの問題はモードの発生
- 「動詞→名詞」式のタスク指向のUIはモーダル(モードがある)
- 操作の自由度を奪って余計な手続きを増やす
- 先に対象物を選んでからやることを選ぶ「名詞→動詞」式の操作はモードレス(モードがない)で, オブジェクト指向UIの優位性の本質
- P.19 タスク指向のGUIが例外的に許容される状況
- ATMのようにオブジェクトが限定的で選択の必要がない場合
- ATMは「口座」がオブジェクト
- 選択行為はキャッシュカードを入れる動作と一体化している
- 自己完結的な手続きを定型入力フローとして提供する場合
P.20
- オブジェクト指向UI
- 名詞→動詞
- まずオブジェクトを選び, 次にそのオブジェクトに対するアクションを選ぶ
- ナビゲーションはオブジェクト(名詞形)を手掛かりにする
- あらゆる情報システム, 特に作業者による探索や創意工夫が期待されるものについて有効
- タスク指向UI
- 動詞→名詞
- まずタスクを選び, 次に引数としてオブジェクトやパラメーターを指定する
- ナビゲーションはタスク(動詞形)を手掛かりにする
- オブジェクトを選択する必要がない場合, 定型の入力手続きだけを提供する場合にのみ有効
P.20 ビデオカメラ画面のタスク指向UI改善. 「再生機能」とは?
P.25 タスク指向UIを改善する: フードデリバリーサービス. おそらく従来からあった電話での注文受付フローをそのまま画面フローにしたのではないか. しかし電話での会話のような順次的な手順と違い, GUIでは自由な順序で操作できることが重要. このデザインは行き先のわからないトンネルの中を進まされているような不自由な状態を生む.
タスクはオブジェクトを閉じ込める入れ物ではなく, オブジェクト同士の間にある可能性として存在している.
P.28 なぜタスク指向になりがちか? 業務分析では「やること」がまとめられるから.
P.30 GUIらしいオブジェクト指向のUIを設計するには, タスクを手順化して画面フローにするのではなく, タスクに必要な情報オブジェクトを定義し, ユーザーがそれらに対して自由な順序で働きかけながら目的を達成できるようにしなければならない.
P.40 アプリケーションを作る動機が何か特定の「やること」の実現にあったとしても, その対象をまずユーザーに見せるのがオブジェクト指向UI.
P.45 極端に言えばよりよいGUIをデザインするには, あるべきグラフィックの形を優先的に検討すべき. その裏にある構造はそのプレゼンテーションとメンタルモデルの間の整合をとるためのもの. レストランに例えれば, 顧客を調査した結果として「おいしいハンバーグが食べたい」という要求がわかったとしても, それと「おいしいハンバーグの作り方」との間に直接の関係はない. デザインプロセスでのユーザー要求の明確化は, その解決方法を導出するものではなく, あくまでできあがったデザインがどれぐらい役に立つのかを試験するための指標でしかない.
P.49 ユーザーの個別のコンテクストを重視しすぎるてはならない. 個別性の強いユーザーコンテクストの特定より, ユーザー集団が共通して持っている性質, たとえば人としての一般的な認知特性や身体特性に基づいたデザインパターンの活用が重要. ユーザーフレンドリーな道具は個別のコンテクストに合わせた手順ではなく, さまざまなコンテクストに対して一貫して作用する「原理」を備えたもの. この原理は一般的な人の特性に基づいていて汎用性や応用性があり, ユーザーは自らの行動を多少変えてでもその道具とともに達成するゴールを最大化する.
P.50 良いデザインはユーザーに合わせたものではなく, ユーザーが自らを合わせられるもの. 優れた道具は人に合わせたというより, 人が自らをどこまでも合わせていけるようにデザインされている.
P.51 抽象度の高い道具はそれ自体が決まった使い方を強要していないという意味でモードレス. 同様に抽象度の低い道具はモーダル.
P.54 ある概念がオブジェクトと言えるかどうかを判断する手掛かり
- 数えられる名詞として表せる
- 同種の集合として管理され得る
- 共通のアクションを持っている
P.79 メインオブジェクトに「コレクション」と「シングル」のビューを与える. 人間は身の回りにあるものを眺め, 気になるものがあれば近寄って見るのをくり返す. 実生活で無意識に何度となく行っている普遍的な行動. アプリケーションでも同じで, ユーザーがオブジェクトを眺めて必要に応じてくわしく知る.
2024-07 Scott Wlaschin, 猪股健太郎, 関数型ドメインモデリング¶
- 2024-06.Wlaschin.関数型ドメインモデリング-1.0.0.pdf
前に英語で読んだ本. F#・関数型言語への理解も多少なりとも進んでいるため, 改めて勉強すると理解も前より深まるだろうと期待.
P.13
ワークフロー、シナリオ、ユースケース
ビジネス活動を表現する言葉にはさまざまなものがあります。「ワークフロー」、「シナリオ」、 「ユースケース」、「プロセス」などです。しかし、本書ではもう少し正確に表現してみましょう。
- シナリオは、顧客(または他のユーザー)が達成したい目標(たとえば、注文を確定する など)を記述します。これは、アジャイル開発における「ストーリー」に似ています。一 方、ユースケースは、シナリオをより詳細にしたもので、ある目標を達成するためにユー ザーが行うべきインタラクションやその他のステップを一般的な言葉で表現したもので す。シナリオとユースケースはどちらもユーザー中心の概念であり、ユーザーの視点か らどのようにインタラクションが見えるかに焦点を当てています。
- ビジネスプロセスは、(個々のユーザーではなく)ビジネスが達成したい目標を記述しま す。シナリオに似ていますが、ユーザー中心ではなく、ビジネス中心に焦点を当ててい ます。
- ワークフローとは、ビジネスプロセスの一部を詳細に記述したものです。つまり、ある ビジネスゴールやサブゴールを達成するために、従業員(またはソフトウェアコンポー ネント)が行うべき正確なステップを記載します。本書では、ワークフローを 1 人もし くは 1 チームができることに限定します。そのため、ビジネスプロセスが(注文プロセ スのように)複数のチームにまたがっている場合は、全体のビジネスプロセスを一連の 小さなワークフローに分割します。分割したワークフローは何らかの方法で連携します。
これらのドメインイベントを引き起こしたのは何か -> 「コマンド」. ビジネスプロセスを「入力と出力を持つパイプライン」として考える. 「ドメイン」とは、「ドメインエキスパート」が専門としているものごと. 解決空間では、問題空間のドメインとサブドメインが、DDD 用語で境界づけられたコンテキストと 呼ばれるもの(私たちの実装ではサブシステムの一種)にマッピングされている. これらのコンテキストを定義した後は、設計の詳細に巻き込まれることなく、コンテキスト間の相互 作用(全体像)を伝える方法が必要です。DDD の用語では、このような図をコンテキストマップと呼 びます。
今回のイベントストーミングは、まさにこの課題を示しています。出席者全員がイベントを説明する ときに「注文」という言葉を使っていました。しかし、発送部門が考える「注文」の定義と、請求部門 が考える「注文」の定義は微妙に異なっていたことにお気づきでしょうか。発送部門は、おそらく在庫 量や数量などを気にかけているのですが、請求部門は、それよりも価格や金額のほうに関心があるよう です。もし、同じ「注文」という言葉を、その文脈を特定せずにどこでも使ってしまうと、手痛い誤解 を招くことになりかねません。
DDD の用語では、これを永続性非依存と呼びます。これは、データベース内のデータの表現を気に することなく、ドメインを正確にモデル化することに集中させてくれる、重要な原則です。
P.93
ドメインモデルにおける集約の重要な役割についてまとめておきましょう。
- 集約とは、トップレベルのエンティティが「ルート」として機能する、単一のユニットとして扱 えるドメインオブジェクトのコレクションのことです。
- 集約内のオブジェクトに対するすべての変更は、集約ルートであるトップレベルエンティティを 起点にする必要があり、集約は、集約内のすべてのデータが同時に正しく更新されることを保証 する整合性の境界として機能します。
- 集約は、永続化、データベーストランザクション、およびデータ転送におけるアトミックな(す べて実行されるか、何も実行されないかのどちらかになる)処理単位です。
P.94
- 値オブジェクトは、アイデンティティを持たないドメインオブジェクトです。同じデー タを含む 2 つの値オブジェクトは同一とみなされます。値オブジェクトは不変でなけれ ばならず、一部が変更されると別の値オブジェクトになります。値オブジェクトの例と しては、名前、住所、場所、金額、日付などがあります。
- エンティティは、プロパティが変更されても持続する本質的なアイデンティティを持つ ドメインオブジェクトです。エンティティオブジェクトは通常、ID またはキーフィール ドを持ち、同じ ID/キーを持つ 2 つのエンティティは同じオブジェクトであるとみなさ れます。エンティティは通常、ドキュメントのように寿命と変更の履歴を持つドメイン オブジェクトを表します。エンティティの例としては、顧客、注文、製品、請求書などが あります。
- 集約は関連するオブジェクトの集まりで、ドメイン内の整合性を確保するためと、デー タトランザクションの原子単位として使用するために、単一のコンポーネントとして扱 われます。他のエンティティは、「ルート」として知られる集約の「トップレベル」のメ ンバーの ID である識別子によってのみ、集約を参照するべきです。
P.99
これらの型のユーザーにコメントを読ませるのではなく、制約を満たさない限り、これらの型の値が 作成できないようにしたいのです。そうすれば、データは不変であるため、内部の値を再度チェックす る必要はありません。これで、安心して WidgetCode や UnitQuantity をあらゆる場所で使用できる ようになります。その際、防御的なコーディングは一切必要ありません。 よさそうですね。では、その制約を確実に強制するにはどうすればよいのでしょうか?
答え:他のプログラミング言語と同じように、コンストラクタをプライベートにして別の関数を用意 し、有効な値は作成するけれども無効な値は拒否してエラーを返すようにします。関数型プログラミン グの世界では、この方法をスマートコンストラクタアプローチと呼ぶことがあります。ここでは、この アプローチを UnitQuantity に適用した例をご紹介します。
P.113, 第7章 パイプラインによるワークフローのモデリング
「第 10 章 実装:エラーの扱い」
P.191
ドメインの一部として明示的にモデル化したいエラーだけに焦点を当てます。モデ ル化したくないパニックやエラーは、上記のように例外を投げ、トップレベルの関数でキャッチするよ うにします。
P.220
一般的に、デシリアライズはできるだけクリーンであることが望ましいです。つまり、DTO への デシリアライズは、基礎となるデータが何らかの理由で破損していない限り、常に成功するべきです。 ドメイン固有の検証(OrderQty〈注文数量〉の整数値が適切な範囲に収まっているかを検証したり、 ProductCode〈製品コード〉の有効性を確認したりするなど)は、DTO からドメイン型への変換プロ セスで行うようにしてください。境界づけられたコンテキストの内側のほうが、エラー処理のコント ロールがしやすいからです。
P.221
境界づけられたコンテキスト同士の密結合は避け たいからです。それでも、イベントやコマンドのシリアライズされたフォーマットである DTO をやむ をえず変更する場合には、できる限り慎重に行うべきです。つまり、シリアライズのフォーマットは常 に完全にコントロールすべきであり、ライブラリの黒魔術任せではいけません!
P.256
F#では、オブジェクトリレーショナルマッパー (ORM) を使うことは少なく、代わりに生の SQL コマンドを直接扱います。そのもっとも便利な方法は、F#の SQL 型プロバイダを使うことです。利 用可能な実装はいくつかありますが、この例では、FSharp.Data.SqlClient 型プロバイダ*7を使用します。
マイグレーション関係はどうするのがふつうなのだろうか.
P.262
「これは全部無駄な作業なのでは?
Entity Framework
やNHibernate
のように、マッピングをすべ て自動的に行ってくれるツールを使えばよいのでは?」と思うかもしれませんが、もしドメインの整合 性を確保したいのであれば、答えはノーです。上記のようなORM
は、メールアドレスや注文数の検証、ネストした選択型の処理などができません。確かに、このようなデータベースのコードを書くのは面倒ですが、そのプロセスは機械的でわかりやすく、アプリケーションを書く上でもっとも難しい部分ではありません。
いったん読み終えた. やはり実によい本. 和訳が出て本当に助かる.
2024-07 A Developer's Guide to .NET in Azure¶
いま読みたいのはBicep
で構成を組みつつ, それにシステムを載せて動かす部分だがそういう話ではない. もちろん無駄ではないが, いま本当にほしい内容ではなくてつらい.
2024-07 Web API Development with ASP.NET Core 8¶
認証・認可のところがずっと気になっている.
Chapter14. テストではFluentAssertion
を使った方がよいか. テスト時, データベースをどうしようかずっと考えている. IdentityApiまわりはもう一度きちんと読もう. CI/CDまわりも実際に実行するべきか.
Chapter15. HttpClientFactory
を使用したHttpClient
インスタンスの管理, 他にもFactory
を使うべき対象が何かあった気がする. きちんとまとめておかなければならない.
Chapter16. 例外処理もミドルウェアパイプラインへの設定などいろいろ統合してやるべきことがある. これまでに読んだ本もきちんと紐解いてまとめないといけない. モデルのバリデーションはFluentValidation
に移行するべきか.
2024-07 ぜくる, Dependency Injection in F#
¶
- Zenbook, Dependency Injection in F#
「Functional Design and Architecture」でFree Monad
が重要という話で, F#
でどうなるかと検索したらこれが出てきた. 以前に買って読みはしたもののいまひとつモチベーションも湧いておらず, 後半のFree Monad
は雑なままだったため読み直した.
F#
でのFree
モナド活用はHaskell
ほどよいものではない可能性があるとのこと. 「Functional Design and Architecture」のF#
版実装とコンパイル時間チェックは試した方がいいのだろうとは思う.
2024-07 志甫淳, 『層とホモロジー代数』¶
- 第三者による誤植表
それ以外のメモ.
- P.358, 写像$\pi$の定義がおかしい?: $c_i$は何者?
2024-07-10 岩佐 晃也, 酒井 麻里子, 先読み!サイバーセキュリティ 生成AI時代の新たなビジネスリスク[Kindle 版]¶
Kindleで500円だったため買ってみた. 本当にさらっと読んだだけ. そんなものかという感じ. サイバーセキュリティ入門の入門くらいで(私にとって)500円の価値もなかった. 予備知識が全くないビジネスサイドの人間が読むなら良いのかもしれない.
2024-07-16 Functional Design and Architecture¶
Chapter2.
F#
での(Haskell
の)Lens
に対応するのは何だったか?
- Edwin Brady, Idrisによるタイプ駆動開発
- Debasish Ghosh, 機能的および反応性ドメインのモデリング
- Stephen Blackheath, Anthony Jones, Functional Reactive Programming
Free Monad
: Reflection without RemorseHydra
プロジェクト- 無料モナドを使用したカスタム ソフトウェア トランザクション メモリ
- C++ の無料モナドを使用したカスタム ソフトウェア トランザクション メモリ
- C++ のカスタム STM を使用したダイニング Philosophers
Chapter13.
Rust言語の開発者がRust言語から例外を完全に削除したという事実に本当に感謝しています。だから私たちも同じようにすべきではないでしょうか?
付録D
面白いが結局Haskell
の本で, たまにScala
は明示的に言及される. 一方たまにF#
(とC#
)への言及はあるものの, F#
でどうするといいかいまひとつ見えてこない. とりあえず改めて関数型ドメインモデリングを再読したい.
2024-07-03 Architecting ASP.NET Core Applications, Third Edition¶
Chapter7のTypedResult
をはじめとしてAPI
に関わる部分がかなり参考になる. ここは再読したい. 同じ内容のMVC
版がChapter8.
MVC
で(API向け)コントローラを書くとき, 返り値の指定は<ActionResult<TModel>>
がよい.
Chapter9, シングルトンパターンはC#
ではアンチパターン. DI
を使うべし.
Chapter11はオプションの話をしている. オプション関係で必要なときに再読したい.
Git へのシークレットの追加を回避するには、ASP.NET Core シークレットをローカルで使用し、ステージングや運用環境などのリモート環境では Azure Key Vault などのシークレット ストアを使用します。 シークレット ストアを使用する場合は、環境ごとにアプリケーションごとに 1 つの Key Vault を使用して、攻撃者が一度に侵害できるシークレットの数を減らすなど、ベンダーのベスト プラクティスに従ってください。
ライブラリScrutor
が便利そう.
Chapter19のAutoMapper, よく見かけるがいまだにちゃんと使えていない. Mapperly
というのもあるらしい.
垂直スライスでFluentValidation
の方が拡張性とテストにいいという. これまでDataAnnotation
しか使ってこなかったが, FluentValidationも改めて確認か.
Chapter22のREPR
(リーパー)はAPI
用の概念らしい. APIはAPIでいいのだが, 当面はどうにかしてBlazor Server
的な方向で楽するタイプを目指している. ただREPR
のパターン自体はかなり良さそう. ExceptionMapper
による例外一括処理はかなり良さそう.
実際のプロジェクトでは、セキュリティ上の理由から、エラー処理をさらにカスタマイズして、EF Core を使用しているという事実を隠すことをお勧めします。 可能な限りセキュリティを確保するために、悪意のある攻撃者にシステムに関する情報をできるだけ少なくしなければなりません。 カスタム例外ハンドラーの作成については、この章の範囲外であるため、ここでは説明しません。
らしいのでカスタム例外フィルターの調査は必須か.
Microsoftは、社内チーム向けに
C#
で書かれたYARP
というリバースプロキシをリリースし, オープンソース化しました(https://adpg.link/YARP)。YARP
はAzure App Serviceの一部になりました。
モジュラーモノリスは当面私が組むべき重要なパターンという気がする. もっと深めたい.
2024-06-27 Learn PowerShell in a Month of Lunches, Manning, 2022¶
PowerShellはずっと前から気になっていて, どんなものか一度は勉強しようと思っていた. 入院で時間ができ, 会社でも休業中に勉強用に本がほしければ買っていいと言われたため読んでみた. 使いこなせたら面白そうな気はするが別にいいか, という感じ. 覚えるのも面倒だし私にはシェルで十分. Microsoft Azureもaz
コマンドがある.
2024-06-24 稲葉 裕美 『美大式 ビジネスパーソンのデザイン入門』¶
- P.34 センスがいいとは「適切なものを選ぶ力」があること
- 独自性や個性とは全くの別問題
- P.35 仕事では顧客にとっての最適さをしっかり考えて提案する
- P.37 センスがいい人はアウトプットの前にたくさんのインプットと経験を得ている
- 数学でもこの側面はよくある
- センスを磨くためにいろいろな情報を得たり経験を得たりする
- そのなかで「これは面白い」「こういうのが好き」「他にもこんなのがあるといいのではないか」と知見を貯める
- アウトプットでは今回のテーマにあったものを経験の中から思い出して選び出す
- P.44
- デザインがわかっている人は一定の知識と経験がある
- その知識や経験でデザインを考えるための判断軸が備わっている
- デザインを客観的に考えて理由をもって議論できる
- P.48 デザインにはおおよそ一定の見え方がある
- ブーバキキ
- 特定の視覚情報に対して一定の印象を抱く
- 国や人種にさえ依らない本能的な感覚がある
- 例外: 緑
- ふつうは平和や癒し
- 西洋では毒を連想させる
- イスラム圏では神聖・国の反映・天: ムハンマドが緑のターバンをしていたとか
- P.53 デザインは感じ方を計画する
- P.56 「オシャレ=いいデザイン」ではない
- いいデザインは状況によって変わる
- 田舎風カフェにとってよい店舗デザインとは何か?
- P.60 目的にとって最適かどうかを考えるのがデザイン
- P.64 デザインがわからない人は実はそもそも「見ていない」
- 会社の床や壁の色が思い出せるか? 床や壁の材質や模様は?
- 目に映っているからと見ているわけではない
- 対象の存在を自分の思考や感情で受け止めてはじめて見た・認識した状態になる
- まずはきちんと「見よう」
- P.70 デザインは言語化できる
- アートや音楽でさえよく言語化されている
- 言葉にすれば意味や印象がわかる
- P.78 デザインの意味は「外国語」のように理解すべし
- 視覚言語を自然言語にしよう
- デザインは外国語と同じ
- 視覚に対して一定の印象があるのだから, それを照らし合わせながら意味を掴めばよい
- 緑ならリラックス感や安心感
- オレンジなら陽気さや明るさ
- P.85 アートは個としての精神活動
- P.88 デザインは人々の生活作り
- 対象者にとっての最適解を探す
- P.90 デザインとアートを混同しない
- P.99 優秀なデザイナーはデザインを包括的に捉える
- 世間的に言うマーケティングやエンジニアや調達の領域まで含めて考えなければならない
- P.106 デザイナーの強みとしてデザインを定義する.
- 他分野の人がやらずにデザイナーだけがしているのは何か?
- 視覚から情報を伝える
- 短時間で意思疎通できる
- 覚えてもらいやすい
- 印象を伝える役割
- サービスを具現化する: UXデザイン
- 必要に応じて五感から伝わる情報全体を設計する
- 感性的価値を生む
- 感性的価値: 美的・情緒的・精神的な観点で喜びを感じる
- 対義語: 合理的価値
- 感性的価値: 役には立たないかもしれないが人間に喜びを与える
- 暖炉の価値とは?
- 合理的価値は低いかもしれないが感性的価値が高い(場合がある)
- 例: 動物のかたちをした輪ゴム
- 例: 最も美しいレモン絞り器, ジューシーサリフ
- 人間中心で考える
- P. 143 とかく会社・業界の価値基準やどのような技術を使うかのような発想になりがちで, 社会に住む人間を中心とした発想から離れがち
- デザインの歴史は人間に寄り添った発想法の歴史
- 徹底的にユーザーに寄り添う
- そのモノを通して人がどんな体験をするのかを考える
- ソーシャルデザイン
- 例: スローショッピング
- 例: バリアフリー, ユニバーサルデザイン, インクルーシブデザイン
- P.182 美は細部に宿る
- デザインに必要な解像度
- 例: アルファベットの並び
- デザインがわかる人は細部にこだわる視点を持つ
- P.188 知識のインプットでデザイン力は伸びる
- デザインを分析的に見る, 具体的にどこがどう良いのか?
- P.196 センス磨きの第一歩は真似
- 上手にできているものを真似る
- P.200 デザイナーと話すとき
- まずは目的から話すべし
- 参考事例は複数見せよう
- 各参考事例はどこがどう良いと思っているのか?
- 漠然とした言葉遣いをしない・具体的すぎる指示をしない
- 「何が目的か?」
- 「この目的に沿った表現になっているか?」
- P.227 諦めずに言葉にしたいと願う
- P.233 感性と合理のバランスが大事
- P.238 カルチャー雑誌を月に一回読む習慣を作る
- P.242 衣食住へのこだわりが全ての基本
- センスがない人は生活の質が低い
- 自分の感性に喜びを与えることに妥協したり無頓着ではデザインはできない
- 生活の場が最も人間らしい感性を味わい, 表現し, 楽しみ, 学べるフィールド
- 感性的価値を考えられるようにするには自分自身が感性的価値を楽しめなければならない
- 自分に似合う素敵で心地良い服を見つける
- 美しいと感じる文具や道具を使う
- 居心地良い空間のカフェやレストランを見つける
- 食事が楽しくなるお気に入りの器やカトラリーを見つける
- 使うものだけではなく愛でるもの(置物や飾り)を家に置く
- 自分が深く生活と関わって楽しんでいるからこそ他者を喜ばせるアイデアの発想につながる
- etc
安田まさえ 『数学女子』¶
今日用事で東大に行き, 生協で『数学セミナー』 2012 9 月号を見かけた. 特集は有限群だったが, 別にこれに魅かれたわけではない. 注目したのは『数学女子』の作者の安田まさえさんと飯高先生の対談だ.
まず飯高先生の方を紹介しておこう. ご専門は代数幾何で, 世界的なレベルのハードパンチャーだ. 代数多様体の分類関係で何か強烈なことをしているのは知っているが, 詳しいことは何も知らない. 検索して調べてすぐ出てくる「小平次元」の話は聞いたことがあるが, 詳細は全く知らない. 岩波の数学の本で飯高先生の小平先生の思い出という話があって, その中に小平次元の命名のときの逸話が書いてあった. こちらも詳細も覚えていない. 覚えていなかったり知らなかったりどうしようもなくて泣いている.
それはそれとして本題の数学女子に入ろう. 数学女子は4コマ漫画だ. Twitter でお勧めされたので買ってみた. 男性陣の描かれ方が酷くて涙を禁じ得ない. あまり数学らしい数学の話が出てこず, しかし数学科っぽい日常の話が良く出ていて雰囲気を感じるにはとても良い. もちろん大分誇張されている部分はあるけれど.
つらつらと漫画の感想を書きたい. 出てくる 4 人の女の子が皆可愛いというのは非現実的ではないか, と思ったのだが私の個人的な交友の範囲では知り合いの大半の女性は可愛かったり美人だったりするので意外と現実的な話なのではないかと思っている. 「数学科の男子から見た幻想ではないか」という突っ込みも頂いたのだが, 数学科に進学した時点で世界の祝福を一手に受けた人々なので無謬であると理解している. また, 上にも書いたが男の扱いが酷い. どう酷いかというといわゆるキモオタみたいな外見のが良く出てくる. あれはやめてほしい. 格好良く描けなどとは全く思っていない. もうちょっとまともな理系男子として描いてほしかった. あと院生の下野は本当にやめてほしい. 色々書きたいことがあって止まらない.
数学というとがちがちの話 (私も片棒を担いでいる) か, 役に立つ話ばかりであまり気楽にアクセスできるコンテンツがないので, その間隙を埋める試みで非常に注目している. 私も似たようなことをはじめようと思っていたところだったので, その意味でも動向は要チェックだ.
NazoLab 汎関数はどのように分布を表すのか?¶
NazoLab http://nazolab.net/qa/q/515 というサービスで次のような投稿を見つけた. 本来はそちらに書いた方がよいのだろうが, 自分のデータとしてまとめたいのでこちらに書いておきたい. ちなみに投稿では Schwarz になっているが, 実際には Schwartz だ. ブルバキで Cauchy-Schwarz が出てくるところでスペルについて注意があったはず.
分布について考えるとき, 分布の場と分布する量を明示して考察することが重要である. Schwartz の理論において, 超関数が分布を表すと説明される. しかし, 「何」が分布の場と分布する量に関連づけられるのだろうか?
知らない方もいるかと思うので, 一旦この一文に説明をつけておこう. Schwartz の超関数は英語でいうと distribution だ. Schwartz の, とつけたのは Gelfand の一般化関数や佐藤幹夫の hyperfunction と区別するためである. 超関数論はあくまで数学の話だから物理的な感覚を引きづり続けるのは良くないのだが, 超関数を分布と呼んだのは Dirac の デルタ関数から来ている. 電磁気や拡散方程式で使われるように, デルタ関数は適当な物質の分布の様子を表している. また和訳の「超関数」については『超函数の理論』を訳した岩村聯による. これを逆に翻訳したのが佐藤の hyperfunction になる.
結論から言うと, 超関数は「分布」を表す数学的対象から適当に性質を抽出した純粋に数学的な概念なので, 必ずしも物理的に意味のある概念ばかりを表現しているわけではない. 実際問題として「分布」という言葉を濫用しているのは間違いないのだが, 数学だけでなく物理でも良くあることなので過剰に気にしていても仕方がない. 量子力学での「波動関数」が本当に「波動」かということもあるし, 第一 $\delta$ 関数を「関数」と呼ぶこと自体も間違いだ:明白に超関数なのだから. 枝葉末節にこだわり過ぎだ. 「細かいことは気にするな」という一言に付きる.
また, 学んだところで物理 (その他自然科学の諸学問. ここでは物理と略す) の理解に役に立つわけでもないので, 数学にうつつを抜かしている暇があるなら物理をやった方がいいし, それが気にいらないなら数学をきちんと学び, かつそれを物理に持っていけるだけの物理の力も同時に鍛えるしかない. 重ねていうが, 超関数論を学んだところで物理ができるようにはならない.
Schwartz の理論だと超関数は汎関数を用いて説明される. 代表的な超関数であるディラック関数 $\delta (x)$ は, 任意の関数 $\phi (x)$ を用いて, 次式で定義される. [ \int_{\mathbb{R}} \delta (x) \phi (x) dx = \phi (0). ] 左辺の関数 $\phi (x)$ 以外の部分が関数 $\phi (x)$ に作用して数値 $\phi (0)$ が得られると考えるとき, 汎関数であるという. この汎関数がディラック関数 $\phi (x)$ であると説明される. 汎関数は入力要素が関数 , 出力要素が数値である.
記述が色々と半端で酷く気になるが, それはおいておこう. 分布との関係で大事な定理といえば次の定理だ:「正値超関数は測度である」. 要は「正値」な超関数 ( $\delta$ 関数は含まれる) に限れば超関数は必ず積分で書けるということで, $\delta (x) dx$ をかたまり (測度) と思って積分すればいい. これは確率で良く出てくる話だ. 実際「ディラックの $\delta$ 測度」と読んでいる確率論の本がある. 再び拡散方程式を例に取る. $\delta (x) dx$ の部分は熱核 (ガウシアン) +$dx$ に相当する. ガウシアンはガウシアンで, ある時間における粒子の空間分布を表すので, 再び超関数と分布に関係がつく. また, ガウシアンの極限で $\delta$ 関数が復元できることを思っても大事な例であることは注意しておきたい. 当然といえば当然だが, 超関数は適当な範囲の関数を含んでいる (全ての関数は含まない:いくらでも変なのがあるから). この辺の極限の議論を追いかけることが超関数の起源の 1 つだ. また積分論をご存知の方には自明だが, 測度は正値超関数になる (測度による積分を汎関数とみなす) ので, これは正値超関数の完全な特徴づけになる.
きちんと確認していないのだが, 先輩に聞いたところによると Schwartz が超関数論を必要としたのは波動方程式の研究にあるらしい. 上記の拡散方程式では初期条件の特異性はすぐに消える (平滑化現象) が, 波動方程式では初期値の特異性が伝播していく. パルス状の波を考えてもらえればいい. この「微分できない微分方程式の解」を捉えるために見つけた概念ということらしい. Schwartzの自伝に書いてあるかもしれないが未確認である. どなたか読んだ方がいれば是非教えてほしい.
分布は分布の場と分布する量の対応関係で表される. 例えば, 空間内の各点の温度が測定されたとき, 各点 P と各点の温度 T の対応関係が温度の分布である. 座標を用いて各点を表すことができるから, 分布は関数を用いて表すことができる. 分布の入力要素は座標, 出力要素は数値である. 3 次元空間の場合, 座標は 3 つの数値の組で表されるから, 3 変数関数で表され, 1 次元空間の場合, 座標は数値で表されるから, 1 変数関数で表される.
汎関数は入力要素が関数, 出力要素が数値であるが, これらが分布の場と分布する量を表しているわけではない. 汎関数が分布の場と分布する量を表さないので, 汎関数が分布を表すとは考えられない .
ふと思ったのだが「分布」は単純な関数で表現できるものばかりではない:ディラックの $\delta$ が正にその例となる. しかも物理的な意味を持ち, 学部レベルでも頻出する決定的な例だ. この方の理解は実用上役に立たない. 繰り返しになるが「正値超関数は測度になり」, 測度が分布に対応してくるので正値超関数の範囲では汎関数が分布を表す:もちろん左の定理のもとで.
それはそれとして, この方は変に凝り固まった数学観を持っている感じがする. (適当なクラスの正値) 汎関数が測度になる $\to$ 測度は分布を表す $\to$ 超関数は分布の一般化と思える, という話なので全部が全部「分布」として (物理として) まともな解釈を持つことは初めから期待されていない.
余談だが「適当な空間上の汎関数が測度を使って書ける」というのは Riesz の定理 (ものによってはもう少し人名がつく:例えば連続関数空間上では Riesz-Markov-角谷の定理) と呼ばれ, とても大事な認識になっている. 量子力学, 場の量子論での経路積分でもこの定理は大事な役割を果たす. 場の理論だと超関数自身を変数とする関数を積分するのが経路積分になる. 知らなくても物理をやる上では全く困らないだろうから即忘れて頂いて構わない.
Schwartz の理論において, 超関数が或る数学的な実体を表すと言うのであれば, 超関数をそのような物と捉えれば良い. しかし, 超関数が分布を表すと言うのには, 違和感を感じる. Schwartz の理論において, 超関数は汎関数であり, 汎関数の入力要素と出力要素が分布の場と分布する量を表わすとは思えない.
汎関数は, 分布の場と分布する量を明示せずに, どのように分布を表すのだろうか?
言葉の濫用には間違いないので違和感を感じられるのはもっともなのだが, 「そんなことを気にしていてどうするの」と思っている. 繰り返し出てくるのでこちらも繰り返し書くが, 上述の定理からダイレクトに汎関数が分布に対応する. 入力要素の関数と出力要素の値は分布の場と分布の量とは全く関係ない.
勉強熱心なのは分かるし十分に評価できるのだが, 物理の感覚で数学を見過ぎていて自滅しているとしか思えない. 「正値超関数は測度である」という定理も多少高級品で難しいが, 数学的にどうの, といいたいならここまで来るしかない. ただし, 私は非数学の方がここまでやる必要があるとは全く思っていない. 物理の人は心おきなく適当に使えばよく, 何か問題が起きたらそのときに考えればいい. 数学が悪いというより物理としてどこかが悪いことの方が多いだろうし, 数学的に細かいことを気にしていたら何もできない. これは「物理の数学的に微妙な部分をきっちりやる」という部分を研究していると良く分かる. いまだに学部 3 年の量子力学でやる部分が数学的に制御しきれていなかったりする.
荻上紘一「多様体」の書評の評¶
ふと思うところがあったので書評の評をしてみたい. 今回は Amazon から荻上紘一「多様体」の書評の評としよう. http://www.amazon.co.jp/review/R2P9VM27VI29KP/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8&ASIN=4320015584&nodeID=465392&store=books
つまり, 多様体の定義とは「座標系に依存せず, 四則演算の自由にできる代数的構造を備えた集合(体)」です.
この書評, 読むたびに悲しくなる. 理由は上記の一文だ. それまでの全てを灰燼に帰す, 凄まじい一文だ. 幾何は分からないどころかほとんど知りもしないが, 分かる範囲でどこが悲しみの源泉なのか説明したい.
まず, リンク先では上記の一文に至るまでに色々書いている. そこまではかなり的確なまとめだと思う. それだけに上記の一文のひどさがきわだつ. まず一般に多様体に代数構造は入らない. 半群やら亜群やらあるが, 一番初等的でシンプルな代数系は群だろう. 群構造が入る時点で「リー群」と呼ばれる恐ろしく特殊な「多様体」になる. リー群というだけで研究対象になる程度に広く深いが, 逆にいえばそれだけ特徴的な対象だ. ヒルベルトの第 5 問題があるくらいで, 群 + 位相多様体から可微分性がでる. 代数と位相の交点にあるというだけで可微分性がいえるとか衝撃的にもほどがある. 当然, 体の構造まで入ったら対象はもっとひどく限定的になるだろう. 詳しく知らないが. 多様体はそこまで限定的な対象ではない.
多少ずれるところもあるが確実に関係はある話として, 完備な複素ノルム体は複素数体と同型性を主張するGelfand-Mazurの定理がある. 実係数でも対応する結果があったはずだ. 正標数の体の世界を知らないのでそこは何ともいえないが, 少なくとも初等的な微分幾何で出てくる体は実数か複素数だ. そこから位相体について考えただけで, 上記の定義では幾何としては何ら意味がなく, 恐ろしく限定的でつまらない話になってしまう. これが最初の一文が生みだす悲しみであった.
そして, その一文上を読むとさらなる悲しみに包まれる.
多様体はユークリッド空間を貼りあわせてできる空間である. 貼りあわせとは座標変換のことである. 多様体の導入により, 曲がった空間を本格的に取り扱うことができる.
ユークリッド空間が出てくるが, これは線型空間(正確にはアフィン空間といった方がいいが, こういう使い方もあるhttp://ja.wikipedia.org/wiki/ユークリッド空間)であって体ではない. 線型空間を貼り合わせて体になるなど正気の沙汰とは思えない. $\mathbb{R}^n$ を考えればすぐ分かるように, 体から線型空間をすぐ作れるが, 一般に逆は無理だ. 学部の頃, ある物理の教官が 3 次元ベクトルの内積をベクトルで割り算してベクトルを出すという荒技をくりだし, 我等の度肝を抜いてくれたがこういうのは物理 (や工学) の人の所業だ. (ちなみに内積が存在する空間自体, 位相線型空間として特殊な性質を持つ). もしかしたら, 多様「体」と体がついていたから体だと思ったのだろうか. 世界の悲しみを救う術はどこにあるのだろうと悲嘆に暮れている.
何というか上辺はかなりまともに勉強しているのだが, 根本的なところ, それもそこだけが綺麗さっぱり崩壊しているのだ. この人が応用を目指しているのなら別にそれでいいのだが, 見ている限り数学を数学としてきちんと学ぼうとしているような印象を受けるので, それが悲しい. 私自身も数学徒として半端なことこの上ないのでかなりアレということもあるが, 数学徒でもないのなら数学徒水準のものを求めるつもりはない. またこの人, 多分数学をかなりうまく「使える」人だろう. 私の知人にまさにこのタイプの人がいる. 大体何から何まで崩壊しているが, 運用に関しては何ら問題ないというすさまじい能力を持っているのでむしろ感嘆するのだが, かといって数学をきちんとやりたいというならこれはいけない.
私自身は物理学徒の数学的にいい加減な議論をきちんとトレースして何かやる, というのが守備範囲であって, はじめからいい加減なのを何とか持ち直させるのが仕事なのでその辺は普通の数学徒よりは春香に大らかであると思っている (がはたから見てどうなのかはまた別の問題だ).
どうすればこの方を正しく学べるように導けるだろうか?
一般化された書評: 新川直司『四月は君の嘘』 私はかをりと公生に顔向けできるような大人になれているだろうか¶
あどすくさんとMM2Pのおすすめで 四月は君の嘘を視聴した.
あまりに切なく, 夜が明けてもまだ気持ちが落ち着かなくて本当につらい. 冷静になどなれないし, 今無理にそうなるつもりもないのでまともなレビューなどはできないのだが, この気持ちをとにかく残しておきたい. 少しでも吐き出せば少しは気持ちが落ち着いてくれるかな, とは思っているけれども.
真っ先に考えることはかをりや公生のように懸命に生きているか, 人の心を震わせられるような数学ができているかということだ.
最近, 中学の頃の先輩でもあり, 通っていた道場の先輩が柔道部の監督で, 勤務校の HP 管理を依頼されている. そこでついでに柔道部に顔を出して稽古をしたり, 時間がある限り試合も見に行っている. 中高生が懸命に稽古する姿を見る度, 自分もこれだけ情熱を傾けて数学ができているか, その背中を見ながら人の心を震わせられているか, 子供の頃の自分が憧れたような人間になれているのかを思う.
全話を見終わってからも気持ちの昂りがおさまらず, 寝不足で仕方ないのだが, かといって「自分は全力を尽くせているか」と思うとおちおち休んでもいられない.
『はじめの一歩』, 一歩 VS 伊達戦の一歩の台詞, 「ぼくは全部出し切れたかな? まだ動く. 動けるうちは終わらない, 終われない」 も思い出した.
アニメを見ただけで平静を乱しまくるおっさんというのもどうなのかと思わざるをえないが, どうしようもない. かをりと公生に恥ずかしくないように数学に打ち込みたい.
書評: 数学者の視点¶
本文¶
今回は深谷先生の「数学者の視点」だ. 滅茶苦茶面白いので私の書評など読んでいる暇があるならまずは買って読め, といいたいくらいだ. 私の幾何学への憧れは深谷先生への憧れと言ってもいいくらいに この本は気に入っているし影響も受けている. 名言も色々あるので, それを採り上げているだけでも楽しい本だ.
まえがきに書いてあるのだが, とてものんびりした調子で書かれている. 深谷先生と一緒に散歩でもしながら語りかけられているような感じで, 何度読んでも楽しい.
数学について良く言われることに対し, 数学者として経験した研究・教育的観点から語られる話は 深谷先生にしてもそうなのかと思うことあり, 分野外の人が語る姿との数学者の実感の乖離といった話もあり バラエティに富んでいる.
4 次元が見えるか?¶
Amazon での他の方の書評でも「4 次元が見えるか」という話題について書かれているとあるが, この部分は冒頭で書かれている. 少し引用してみよう.
ポアンカレの『科学と方法』の中に, 空間認識について書かれた部分がある. ポアンカレの結論は, 簡単にいえば, 三次元空間において暮らした経験 (つまり自分が空間内で 運動し, それが視覚や触覚と結びついた経験) が 空間認識を作るというものであったように思う. これとカントの先験的認識云々との関係など論じた哲学者もいたようだ. しかしポアンカレがこれを書いた当時, まさしく高次元の幾何学の中心となるべき数学, すなわち位相幾何学を建設中であったということを, 哲学者たちが知っているかどうかは定かではない.
ポアンカレにとって, たとえば四次元の空間がはたして「見える」のか, というのは, 認識論の問題というより, 高次元の幾何学をいかにして建設すべきか, という実際的問題であったはずである.
こうした数学者から見た見解が真正面から書いてある飾らない文章は, 数学セミナーといった専門雑誌でなら読むことはできるが, 雑誌に書いてあるだけではあとで参照するのが難しいし, そもそも雑誌自体手に入れるのも難しい. その意味でこのように本にまとまっているというのは非常にありがたい.
ブルバキとファイバー束¶
ブルバキに関するところも面白い. ファイバーバンドルの定義について下記のような文章がある.
強調しておかなければいけないが, これらは決して複雑な概念ではない. このたくさんの条件の幾何学的な意味は, 明確かつ単純である. そうでなければ, これらがそんなに基本的な概念になりうるわけがない. しかし定義を (ブルバキ流に) 書くと長くなる. そんなわけだから, 多様体の定義をいくら論理的に正確に書いても, 多様体が理解できるわけではない.
ここも結構大事な指摘だ. 良く「数学は論理的に厳密な学問で~」と言われる. そしてブルバキ流の記述は正に論理的に厳密な書き方だが, その書き方で正確に書いたところで理解に繋がるわけではないと, 数学者が 明確に言い切った文章はなかなか見ない. なかなか, といったのは他に少なくとも 1 つ見たことがあるからで, それは飯高先生の文章だ.
上記の本の Amazon のレビューにもあるが 「皮膚的理解が大事」と言っている. 手元にないので正確に引用できないが, これも非常に面白い文章だった記憶がある.
厳密性と理解可能性のジレンマ¶
深谷先生の本に戻るが, このあとにある「厳密性と理解可能性のジレンマ」という節が 数学者, 少なくとも数学学習者の実感をとても良く表していると思う. 是非買って読んでほしい.
「6. 数学の難しさ」にある「難しくて専門家にしかわからない」という節の 記述も良く言われる話だが, 最終部の森さんの話を引いてある部分は やはりプロの数学者の実感のこもった文章として 特徴的で印象的だ.
歴史で邪馬台国がどこにあろうとどうでもいいが, これらの説の比較検討については素人であっても楽しく読めるのに, 数学でそれをするのが極めて難しいということに続き, フィールズ賞を取った森さんの理論を理論を 理解するのは数学者であっても難しいということが書いてある. それが次のように締め括られる.
京都での国際数学者会議での森氏の講演は, 専門家には当たり前のことしか言わないと不評で, 専門外の人たちの間での方が評判は良かった. 自分が心血注いで考えたことを数学者の前ですらほとんど話すことができないのは, まず森氏自身が至極残念に違いない.
これについては数学を学んだ者にはとても実感を持って感じられるのではないだろうか. 学部 4 年で専門に分かれるくらいで, それまで机を並べて同じ事を学んできた 友人間でもだんだん数学的な会話が難しくなってくるのではないだろうか. 私自身は修士から数学なので学部段階での話は分からないのだが, 物理だと本当に細かいところは分からなくても, 何となく人の研究の話も ある程度分かる気はするが, 数学だと同じ研究室の人達の話ですら 理解できる気はしないし, 実際無理だった. 各人がかなり適当に好き勝手にやっている研究室だったので, ある程度研究内容にバラエティがあり, かつ私が物理出身で数学的な知識が 少ないということを差し引いても足りない程度に数学で他人の話を理解するのは難しい.
ダーティー数学¶
「8. ダーティー数学」の章も名言が連発されていて滅茶苦茶面白い. 「高貴な貴族の数学とダーティーな庶民の数学」という言葉が出てくる. 本でも強調されているが, ダーティーな数学というのは悪口ではない.
これ以上書いていると全文引用してしまいかねない勢いなので この辺で自重しておくが, とにかく面白いので買って読んでほしい.
ラベル¶
数学,書評
書評 堀畑和弘・長谷川浩司『常微分方程式の新しい教科書』¶
いま現代数学観光ツアーでの次の動きのために常微分方程式とか勉強し直そうと思っていて, 本を物色しているところだ. たまたまTwitterで相互フォローの東北大の教員, 堀畑さんと長谷川さんが本を出したというのでちょっと聞いてみたら 献本してくださるというので厚かましくも献本してもらった.
@phasetr@myfavoritescene大阪工大?の真貝先生の本の内容を数学的に深く解説したような感じです。大変さしでがましいのですが、ブログを読ませていただいてるので、もしなんでしたら、相転移さんのほうでさしつかえなければ献本しますw
— 堀畑 和弘 (@kazzhori) 2016年6月19日
あとで読み返すときの参考にもなるよう, 読書メモをつけておいた. 他の方の参考にもなるだろう. 現代数学観光ツアーの読者の方々にも案内しておくことにしよう.
献本してもらえたらバンバン書評を書いていく所存.
総評¶
まずレイアウトがすっきりしていて見やすいというのが一番の印象. 計算もそこそこ丁寧で取り組みやすそうな感じがする.
考えてみると常微分方程式の本をまともに読んだことがなくて, 他の本を知らないので比較はできないのだが, 単純な解法だけで終わらず, 行列の指数関数とか行列と絡めた解法, 力学系との関係, 平衡点まわりでの解の振る舞いなど理論面についても ギリギリの線を攻めていて, 幅広いテーマをテンポよく書き切っている感じがある.
特殊関数についても物理や偏微分方程式との関係がちゃんと書いてある. 現代数学観光ツアーで 「常微分方程式の本を読んでいたとき, いきなりルジャンドルとかベッセルが出てきて, 何なのかわけわからなくて読み進めるのやめた」みたいなアンケートの回答をもらったことがある.
意味があるから書いているに決まっている, すぐにたくさん情報出てくるだしちょっとは調べろよ, みたいなことは思った. しかしそれはそれとして説明はちゃんとしないといけないというのはあり, そういうのも少ない紙数の中で突っ込んである.
紙数が少ない中でも有名な例や大事な例を割ときっちりおさえていて, それについてはよく盛り込んだなという感じすらある.
少ない紙数なので説明が少ないところはもちろんたくさんある. その中でも理論的に広い世界を見せようという工夫がされている. 単純に解法だけ知りたい人にはあまり進められないが, 理論的なところに興味があったり, 定性的なところまで知る必要がある人にとっては, その方面に対する一冊目にはいいと思う.
この辺のコメントがあったらいいのにな, というところは以下の細々としたコメントで 「補足」をしているので, そのコメント群から適当に探求をしていってほしい. 現代数学観光ツアーでも参考文献に入れておこう.
細々としたコメント¶
他の本を知らないので何とも言えないところだが, 記号として関数に $x$, 変数に $t$ を使っていて物理っぽい. 偏微分方程式だと関数には $u$ を使っているのをよく見る. $u$ に関しては他とぶつかりにくい記号という感じはある.
P.2. 放射性元素の個数を時間変化で追いかけると不連続関数になるはずだから, 微分自体に意味づけ必要で物理的にはかなり繊細な問題ではある. もちろんその辺の細かい話はしていない. 気になる人には気になるだろう.
細かいことをいえばある放射性元素が 1 発である非放射性元素に変化する確率の話なのか, 全ての放射性元素に対する話として, 適当な遷移を経て最終的にある非放射性元素に変化する確率なのかとか, わりとめんどいところはある. ラムダの意味づけ問題とも関わる.
ただ放射性元素の種類によると言い切る部分の物理的解釈の話で要は物理で与太話ではある. そもそも確率の定義から割と繊細な感じがある.
4 ページ. 微弱な電波の増幅の話は大事.
4 ページ 資本 Kapital は何でドイツ語なのか. 経済での慣習? 拡大相似的というところ $\alpha$ が小さくないと成り立たなそうだし限界来そう. $K$ と $L$ にもよるのか. 経済学的な議論は気になる. 1.16 は $f(k)$ に関して $(t)$ のつく位置合ってる?
ページ 6. シェイクスピアの話は面白い. 係数も時間変化しそうだし方程式自体も時間変化しそう. 制御やフィードバックとかのもっと一般的な応用がある話っぽいので そこまでのコメントがあるともっと良くなる. 今ふと思ったが, これに限らず本にも書こうと思ったが紙数制限で盛り込めなかった話を, 細かい説明なくていいので放流してもらえると助かる. ただ完璧主義の方だとそういうのは心情的に許せないっぽいし, それは諸々の大人の事情もありそうだから, 思いつく限りはコメントをつけまくるお仕事を私が勝手にしていくつもりでコメントつけていこう.
$R$ と $J$ の値の制限があるが, この微分方程式の解, 本当にその範囲内に収まるのだろうか. 係数にもよるのか. 数学的にやるのめんどいというか, そもそもほぼ未経験の微分方程式論でどうやっていくのかちょっと想像つかない. そんなときこそパワーで押し切れる数値計算やってみたい. パラメータによって振る舞いがどこまでどう変わるか気になる. 符号以外の定量的なところを知りたい. 市民なので原論文読みに行けなさそうなのでつらい.
固有値制御の指摘も大事. 精度が高い非線型のほう, こちらにも線型化が有効なのだと勝手に想定しているが, 力学系的に本当のところはどうなのだろう. 全く詳しくないので気になる. あと心理学的にこの手の数学的手法はどの程度有効性があるのかとかそういう話も気になる.
7 ページ. モデル化で (1). いきなりデータ取るの? まず理論的な定式化してからその予測に基づいて検証やるのかとか思っていた. もちろん先にデータがあるケプラーの話みたいなのもあるし, 理論はよくわからないがとにかくデータ取れたみたいなのも多いとは思う. 特に非理工系なら理論 (数学的な方程式) の存在すら極めて非自明だし. とかいろいろ思ったがちゃんと 8 ページに書いてあった.
ページ 9. 関数 $P$ や $Q$, 何の関数か書かれていないので $x$ の関数かもしれないし, 書き方微妙な感じがある. 数学の人間だけの小うるさい話かもしれない. 私もすっかり数学的な判断の枠組みに浸かってしまった.
ページ 10. 同次 (斉次), 何でこういう名前が付いているのだろう. どんな経緯によるのか. 歴史的事情も何かあるのだろうか.
ページ 10. 行列使ってまとめると線型性が形式的に見やすくなる. 線型代数のご利益だし強烈な破壊力を見せるところでもある. こういうところをはじめから紹介してくれているのは親切感がある. 見習いたい.
ページ 11. 非同次線型への書き直し. これは大事. 同次方程式をこれに書き換えて存在証明をすることだってある. 実際, 私の学部 2 年のときの講義でやった証明がそうだった. 解析力学でハミルトン形式でも似た話は出てくる. (似た話というか本質的に同じなのか?) もっと強調してもいいのでは感もある. でも初学者向けにはきつすぎるから省いたのだろう. この手の配慮, 逆に初学者には手法の広がりが見えなくなるのでなかなかつらいところもある. 私はゴリゴリ書いていくコンテンツを作って補完していこうという決意を新たにする.
ページ 12. 本書の主要部. 大事な指摘だ. 数値計算も大事だしその数学的保証という道もある.
ページ 13. 2.7 微分作用素の因数分解, 演算子法を想起する. 実際, あとで演算子法の話はある.
ページ 14, 特異解 よく見かけるきわどい例だ. ビンビン異常な感じはあるが, 注意を見ると変数変換で特異解は「消える」ようだし, 何となく代数解析的にどういう扱いになるのか気になる.
高いレベルの一般論から見たとき, 異常な例がどういうところに入るのか, 気になって仕方ない.
微分方程式は個別具体的な話になりがちな感じがあるので, 何か背景があるなら多分相当特殊または綺麗な世界がある感じがある. 私自身の研究上の趣味として今の数学の一般論で切り崩せないところを個別具体的にアタックしていく的なところにフォーカスが当たりまくっているが, 勉強的には綺麗なところも興味はある. あと負の時間への延長と複素化した時の振る舞いも気になる.
ページ 15. 例. なかなかクレイジーだなと思ったら非線型だった. ちょっと考えれば当たり前か. 非線型, 何が起こるかわからなくてリアルに恐ろしい. その前の例もだが.
ページ 15. 解の一意性は工学的応用・シミュレーションでも大事だし, もっと強調していい気もする. ただそれを言うならむしろ安定性の方なのか. こんなこと重々承知であえて削ったのだろうというのは察する. そういう私が話したいことは私のコンテンツでやればいいし, ガンガンやっていこう.
ページ 16. 変数分離形. 変数分離で綺麗に解ける理由には代数解析的な理由があり, その辺の代数解析的な知見の蓄積もある気がした. 根拠は全くない. こういうのはどう調べたらいいのだろう.
偏微分方程式版でも積の形に分解するし, そこからフーリエ的に重ね合わせたりもするし, そっちの理由とかも当然に気になる. 常微分方程式と類似の理由によるのかどうか.
ある種の完全微分方程式的な香りはある. それがどの程度関係しているのかよく知らない. 和では駄目で積でこそ意味があるというのもあまりきちんと捉えられていない. 簡単な理由だったりしたら自らの不見識が死ぬほど恥ずかしくなるがそれはそれで仕方ない. 全くわからないが有理型の微分形式とかなんかそんな感じなのだろうか. 気になること山ほどあるし, これをスルーしまくっていた昔の自分もすごい. 知識と経験を身につけた上で振り返るとこんなに見える世界が変わるのかと改めて驚いている.
ページ 16. 定義域問題. 常微分方程式での定義域問題はどういう感じになるのか全く想像がつかない. いま記憶を掘り下げたら幾何での局所一係数群とベクトル場の関係くらいしか常微分方程式の定義域問題を真剣に考えたことなかった. 偏微分方程式では (非線型?) 放物型方程式で解の爆発とかあるし, 常微分方程式ではどんな面倒があるのだろう.
ページ 17. ロジスティック. 特殊解の出し方など面倒な話が多くて割と真剣に意味がわからなくて困る. 線型作用素論と線型の方程式しか扱って来なかったから非線型に対する感覚が薄くて, こんなのでも衝撃を受ける. むしろ線型の世界がどれだけ綺麗なのかに衝撃を受けるべきなのだろう.
ページ 18. 同次形. 全くわからないが射影空間内で意味がある微分方程式はだいたいこんな感じなのだろうか. 射影空間では空間変数の同次性は大事なはずだが時間変数についてはどうなのだろう. この程度すらよくわからないこと, さすがに自らの不見識さを感じずにはいられない. ページ 21 で双曲線とか出てくるのにはどうしても代数幾何を連想してしまう. 気になる. 代数幾何もちゃんとやりたい. 通信講座を作るていで強制的にやる時間作りたいくらい.
ページ 24. 定数変化法. 初めて見たときなんだこの異常な方法は, と思った方法だ. これ, 発見者はどういう経緯でこの解法を見つけ, どう合理化してきたのだろう. 最初から理論先行で解法を見つけたとは考えづらいし.
ページ 29. 全微分が何なのか未だに全くわからない. 1 次微分形式と違うのかどうかとかそういうのもいまだによくわかっていない. 試問のときいきなり「全微分の定義を言ってください」と言われて しどろもどろになった院試の時を思い出す.
ページ 30. 5.2 節, 注意 5.2.1 「解ける方程式」に対する種明かしが来た. でもどの程度まで完全形式からくる話と思えるのだろう. 有理多項式 (と呼んでよかったか?) から来る微分形式と代数幾何的な香りを感じる. ドラームコホモロジーだとか幾何で完全形式作りたいとき, とりあえず多項式使えば割と気楽に作れるのかと今更ながらの発見があった. 閉形式の組織的な作り方もあるのだろうか. 気になる. そのあとも幾何とコホモロジー, 代数の香りがする.
定理 5.3.1 の証明, 多様体上でドラームコホモロジーやるときのホモトピー作用素的な話の原型なのだろうか. あとで確認しよう.
ページ 36. 問題 5.3.1. デカルトの葉線は特異点あるしめちゃくちゃめんどいだろう. こんな簡単なやつからめちゃくちゃめんどいのが出てくるから代数幾何怖い. あと完全形式で潰れるこの辺の話, コホモロジー的にはどう捉えたらいいのかとかこれも未だに全くわからない.
ページ 41. 積分因子, こいつは代数的, 幾何的に何か意味ありそう. 積分因子の一意性のなさ, そして解には一意性があるわけで割と謎. 多分なんか綺麗な話が裏にある気がしている.
ページ 41. 6.2. このダイレーションによる不変性はどんな対称性なのだろう. 各種関係式や積分因子の形にも意味がありそうだが. 解が存在する定義域も気になるが, 関数解析的にやるとき, どんな関数空間を設定すればいいのだろう. 指数がかかっているから可積分性かなり悪そう. 常微分方程式というか, 時間発展があるとき時間に関する可積分性はふつうよくないのか. 時間に関して連続性はそれなりに仮定できそうではある. 発展方程式やるときも時間に関しては連続性とか微分可能性を 課すだけで可積分性をつけることはあまりなさそうだし, それはそうか, という感じはある.
ページ 45, 多項式というか関数の一次独立, 明示的に例が上がっていてとても大事っぽい. 今さらだが紙数が少ない中でも有名な例や大事な例を割ときっちりおさえていて, よく盛り込んだなという感じがある.
ページ 47. 重解はともかく, 減衰のある調和振動子の問題で教養の物理というか力学でやるやつ. とても大事. ちゃんと章末問題にも書いてあった.
ページ 57. 演算子法. これ, 数学的にはどんな道具で厳密化するのだろう. 代数解析だと基本は環という気がするし, 体の構造叩き込んでいる感のある演算子法はちょっと違う気もする. でもよくわからない. 超準解析と演算子法みたいなのもあった気がする. 魔法少女に聞いてみよう.
改めて具体的な解法は割とどうでもよくて背景にある理論, または何か理論があってほしい欲求が自分の中にあるのを感じる.
ページ 61. 行列の指数関数. ふつうこういうのを見ると驚くのだろうが驚いた記憶がない. 特に物理でだいたい何かの流れでわけわからないのが出てきて, だいたい何もかもよくわからないので驚く前に着いて行くだけで手一杯, いつの間にか慣れていて不思議さを感じるどころではないというのが私の平常運転だ. 何でみんなそんなに初見で驚けるのか, それにいつも驚く.
物理では量子力学で微分作用素やハミルトニアンの指数関数がゴリッと出てくるので行列の指数関数程度で驚いていてはいけない. この辺は現代数学観光ツアーでも案内したところだ. 数学でもベクトル場を指数の肩に乗っけたりといろいろな概念が指数の肩に乗る. 指数関数, パワーがある. $p$ 進だとあまり性質よくなかった記憶がある. $p$ 進の線型常微分方程式はどうなっていただろうか. 数学の現在を流し読みし直そう.
あと行列係数にした微分方程式については, ベクトルがもろに関数, 行列が作用素になったバージョンだと発展方程式になるしそういう妄想も膨らむ. 作用素値行列という話に持っていくと作用素環とか $K$ 理論とかも想起するし楽しそう. この形見るだけで楽しめる.
文章だとまるで何も想像が膨らまなくても, 式を何か 1 つ見るだけで自分の頭の中の数学世界が一気に展開されるのでその辺も式を使う醍醐味という感じがある. 数学をやった人間の特権だ.
例 9.2.1 もリー環, リー群を想起する. 定理 9.3.1 も超長距離の射程を持つ. なるべく広く深い世界を見せようとしている著者のメッセージが見える. ただ, 初学者, もっというなら昔の自分は当然ながらこんなのは全く見えず感じ取れもしなかった.
その当時こんなこと聞かされて理解できた自信は全くないが, それでも聞きたいし読んだ本には書いてあって欲しかったというのはある. 見えたあとでの後出しジャンケンだしわがままというのもわかる. だからこそ本当に先の先まで書き含めたコンテンツが実際のところどうなのか, 本当にお役立ちコンテンツになるのか実験してみたいし, だから現代数学観光ツアーとかやってみている. これの欠点は展開できる世界がそのまま著者の限界を見せることだ. 私が見えていない世界は紹介のしようがない. 自らの不勉強さを晒すことにもなる. それでもやろうという無駄な気概が大事だと信じてやっていこう.
ページ 70. 対称ではない行列の対角化, 10 年以上やってないので面食らってしまった.
ページ 75. $\mathrm{det} \, e^A = e^{\mathrm{tr} \, A}$, リー群とかリー環やっているとよく出てくるのだろうか. 私がやっている場の理論まわりの作用素論だとでてくる大概の作用素に対してトレースが定義すらできないし, 冨田竹崎理論的にそれが勘所でもあるから使いどころが今ひとつ見えていない. Confined Hamiltonian くらいであればコンパクト性しか要求されず調和振動子は入るし論文にも出てくるからまだ活躍どころはある. 調和振動子くらいならトレースクラスにも入るのか.
ページ 77. 冒頭の時間無限大の振る舞いを見るという話だけ見てもこの節の難易度の高さが伺える. もちろん面白いし応用上も大事な話だ. 時間無限大というと散乱理論が真っ先に想起される. 非平衡統計での平衡への回帰問題もある. 確率論で時間を過去の無限大に飛ばした時の話で古代解 ancient solution みたいな話を見かけたこともある. リッチフローの話でも出てくるらしい.
9, 10 からの続きだから当然 2 階の方程式だ, という話なのだろうが, やはりちゃんと 2 階と明示してほしい. 系 11.1.1 で断りなく微分方程式うんぬんと書いてあって, 解空間が必ずしも 2 次元とは限らないのでは, とちょっとびっくりした. 数学徒がこの辺うるさいだけで一般の理工学関係者が見ると「いちいちうるさい」と思うのだろうか, という感じもある. 別に数学徒特化型の本でもないが, ぱらっと見たときに「え, いつでも 2 次元なの? 」と誤解を生まないだろうか, と見たことのない一般理工学徒を仮定してそれに責任を押し付けていく方の市民だ.
まったく関係ないが, トポロジー入門あたりにある「一般の位置」という概念, アレは割とめんどくさい概念だな, というのをふと想起した.
ページ 87. 第 3 部は冒頭からパンチ力が高い. 何で自励系というのだろう. 何由来の言葉なのか.
ページ 87. 解曲線が 1 点 $p$. 曲線なら 1 次元であるべきなのに 0 次元になっているという話, これ実はかなりめんどい話なのでは. そんな時があるのかどうか知らないものの, 代数幾何と絡むことがあるなら, ある種の特異点解析というか特異点解消みたいな話題も出てくるのだろうか.
定理 12.1.1 も強烈な分類定理だ. ただ限定が強烈すぎてこれだけ見ると自励系は何か面白いこと起きるのかという感じもしてくる. もちろん個々の系を見ると大暴れするはずで, そんなに大人しくもなるわけないだろうというのも想像できる. 個別具体的な話と猛烈に一般的な話, そのギャップみたいな何かを感じる. どうするとうまく言葉になるのだろう.
ページ 89. めちゃくちゃエネルギー保存. 多分一般化できるのだろう. あと, これは次元関係あるのだろうか.
P.91, 注意 12.1.3. 【自励系の名は上のような物理学の例に由来し】どう由来しているのかよくわからない. 相空間という名前を聞くとテンションが上がる.
P.91. 12.2 節, 「第 1 積分あるいは保存量」. 当然解析力学や群, ネーターの定理とかそういうのが一気に頭の中にロードされてくる. 尊い.
P.93 ロトカ-ボルテラ方程式. 何故かテンション上がる. ボルテラと聞くと何となく積分方程式の方がイメージ強い. あくまで私の中では, という話. ボルテラの積分方程式を出すならフレドホルムの積分方程式ももちろんセットでくる. あまり詳しく知らないものの Wikipedia 先生には次のような記述がある.
ヴォルテラ積分方程式は、人口学や、粘弾性物質の研究、保険数学に現れる再生方程式などへと応用されている。
フレドホルム積分方程式は信号処理の理論において自然に生じ、中でもデビッド・スレピアン(英語版)により広められた有名なスペクトル密度問題(英語版)は最も顕著である。フレドホルム積分方程式はまた、線形前進モデリングや逆問題においても用いられる。
注 12.3.2 が切ない. こういう具体例を見ると微分方程式は遊べる要素が多いから, 数値解析とも絡めて遊び倒したくなる. プログラミングの勉強も込めていつか微分方程式で遊ぼう企画を立てたい. 幾何との絡みもあるしカオスとかフラクタルとかそういうのもあるし, 夢だけはどこまでも広がる.
P.98. Chapter 13 【平衡点のまわりでの解の挙動】 詳しくはないが少なくとも初等的な範囲の力学系の理論では線型化が大事と聞くし, ここもその香りを感じさせるという点ではギリギリの線を突いている感じがある. 具体例も扱いつつ計算もそこそこ丁寧. 物理や応用とも絡めた例とか章末演習も含めて一通り目を通すべきところ.
私の個人の経験というか思い出からいうと, これに関しては「平衡点近傍でポテンシャルが作る行列が正定値ならその系は安定」というのが印象深い. 学部 1 年の力学でやった. そのとき担当教官の大場一郎先生が「こんなすごい結果が一般的に証明できる. 素晴らしいと思いませんか?」みたいなことを言っていたのを 10 年以上経ったいまでも覚えている.
ちなみに私はこのとき, この講義で「すごい」とは全く思えなかった. 講義の議論や計算は追えたが「よくわからないがこれはすごいらしい」というの, 何がどうすごいのか全く感じとれなかったからだ. このあと学部 2 年で友人の誘いで夏に KEK に行ってそこで 「調和振動は古典力学からニュートリノの質量に関するうなりまで全ての物理を貫く決定的に大事な話なんだ」みたいなことを聞いたのも覚えている. そのときもよくわからなくて「そうなのか」くらいのぼんやりした感覚しか持てなかった. 黒川さんの「学部 2 年で解析力学なんて難しいことをやっているの!?」みたいなコメントが印象的で, それもまだ覚えている.
今では確かに強烈な話だな, というのはわかるし力学系的な安定性に関わる決定的な議論だというのもわかる. でも本当にピンと来ているかと言われると心許ない.
何かそういう学部低学年のときのピンと来なかった遠い記憶を思い出させる話だ.
ちなみに P.100 の定理 13.1.1 がまた強烈で. 微分方程式で線型代数の諸結果, 特に線型化した行列の固有値の議論が定性的に大きく効いてくる話は線型代数の活用で決定的に大事なので, 絶対におさえておくべき. 機械工学でロボットの安定制御とかそういうときにも効いてくる. 平衡点近傍で放物線の回転面みたいになっているか, 回転面でも先端が上向きか下向きかがあるし, 馬の鞍 (まさに鞍点) のようにある方向から見ると極小, ある方向から見ると極大という状況がある. 局所的な振る舞いが大域的・定性的な振る舞いをも決めるという豪快な結果なのでなめてはいけない.
P.110 例 14.2.3. 級数解が存在しない例, 注意 14.2.1 のコメントが嬉しい. $t=0$ での非解析性が効いていることをちゃんと書いてくれている. 非解析性があるんだろうなと思ったらちゃんと書いてくれていたという. 親切だ.
P.111. ポホハンマー記号. 階乗絡みの話で Bhargava の仕事を思い出した.
階乗まわりだからやはり組合せ論に応用があるらしい. 超幾何級数論にも応用があるとか.
- http://mathworld.wolfram.com/PochhammerSymbol.html
- https://ja.wikipedia.org/wiki/ポッホハマー記号
- https://ja.wikipedia.org/wiki/Qポッホハマー記号
- https://en.wikipedia.org/wiki/Q-Pochhammer_symbol
P.113. Chapter 15, 線形方程式の正則点と確定特異点. 確定特異点, いまだに全くわからない. Riemann-Hilbert 対応とかいろいろ話はあるというのは知っている. 偏微分方程式版だとどういう話になるのだろう. 柏原さんの仕事がある. 気になることがたくさんある.
- http://www.math.titech.ac.jp/~yamakawa/proc-biwako2.pdf
P.122. Chapter 16 ルジャンドル多項式. 冒頭部の特殊関数への導入がけっこう数学的に大事っぽい. ただ非数学の人達には全く響きそうにない書き方な気がするがどうなのだろう. 偏微分方程式との関係はもっと早く強調してもいいと思っている.
内積とか直交多項式は導入が唐突という感じはある. 注意 16.2.2 は線型代数との接続上決定的なのでちゃんと読むべき.
母関数もどう捉えればいいのかいまだによくわかっていない. いまだに, というか学部 2 年で何となくちょろっとやったきり, 母関数にどういう背景があるのかを再勉強していない. どんな本に書いてあるのだろう. 関数解析系, 代数解析系それぞれでの話があったりするのだろうか.
と思っていたら注意 16.3.2 があった. これは電磁気で多重極展開とかあってまさにその辺. どんなところで応用があるか一言でもコメントがあると良かった. ディラックの $\delta$ とかもさらっと出てきた.
P.132 Chpater 17 ベッセル関数. 「ベッセル関数は超幾何関数の 2 つの特異点を合流させることで生じる」とか, けっこう大事そうなことが冒頭にさらっと書いてある.
こっちも 2 体問題とか物理系での応用話がある. P.136 の問題 17.2.1 には人工天体の軌道計算にも使われるというコメントあり. 知らなかった.
Pl.139 17.4 太鼓の音. ルジャンドルのときと同じで, ここも改めて偏微分方程式との関係に関する説明がある. 注意 17.4.1 で太鼓の音と音程に関する話があって, この話知らなかったのでちょっとびっくりした.
追記¶
リプライの記録.
@kazzhori@myfavoritescene『常微分方程式の新しい教科書』を一通り読んだ感想的なものを書きました https://t.co/hJUGfiAnEL
— 相転移P (@phasetr) 2016年6月27日
ピント外れがどうかとか全く気にせず気になったことをバンバンメモしておきました。妄想が膨らんで楽しかったです
@phasetr@kazzhoriこれはどうも。早速ここまで読み込んでいただき有難うございます。各所で我々が短いページながら込めた思いをくみ取っていただいているように思い、感謝の限りです。また、系11.1.1の書き方は確かにやや不注意で、方程式(11.1)と限定すべきでした。
— koji hasegawa (@myfavoritescene) 2016年6月27日
@phasetr@kazzhori常微分といっても奥が深いので、背景もまあ無限といってよいぐらいあると思いますが、今後も何か関連などに気が付いたら今回のようにどしどし書いていただけますと嬉しいです。以上取り急ぎ。_○_
— koji hasegawa (@myfavoritescene) 2016年6月27日
@phasetr@kazzhoriあと、特異解を変数変換から説明したり、変数分離にいつなるかだったり、積分因子はいつ見つかるかなど、こういうことは微分方程式の分類のような話でまさに代数解析チックですが、完全な説明は代数多様体の分類が難しいのと同様以上に難しいのだろうと思います
— koji hasegawa (@myfavoritescene) 2016年6月27日
@phasetr@CREATIVELOVE46朝の授業で紹介しますw
— 堀畑 和弘 (@kazzhori) 2016年6月27日
@phasetr@kazzhori現在解答のページを準備しているところですが、ご指摘のようなことを念頭に、背景の説明などもなるべく加えていこうと思います。
— koji hasegawa (@myfavoritescene) 2016年6月27日
@myfavoritescene@phasetrwebの方は制限がないので書き放題ですのでw
— 堀畑 和弘 (@kazzhori) 2016年6月27日
献本してもらえたらバンバン書評を書いていく所存なので, 何か書いて, という方はぜひ献本して頂きたい. 正直者なのでアレな本だったらアレな本と書くけれども.
Huybrechts, Complex Geometry¶
読書メモ¶
何となく読み始めた. まずはさらっと全体を眺めてみている. とりあえずさらさらと読んでみて「これは」と思った記述を抜き出しておく. あとで読むときめんどいので, 適当な訳もつけておく. 英語の表現集としても使っていきたい. 自分用のTeXに落とすことが前提なので適当なコマンドで書いている.
P.14 正則関数の層の茎¶
正則関数の層の茎で議論すると便利だ. これで何度も何度も開近傍を明示的に小さく取り直す手間が省ける. 必要な記号を準備しよう.
It is convenient to work throughout with the stalk of the sheaf of holomorphic functions. This way we avoid shrinking open neighbourhoods explicitly again and again. Let us introduce the necessary notations.
P.14¶
環 (\calO_{\bbC^n, 0}) は局所環であり, 極大イデアルは (f(0) = 0) の全ての関数からなる. 言い換えれば (\calO^{*}_{\calC^n, 0}) の単元は (f(0) \neq 0) の全ての関数からなる.
The ring (\calO_{\bbC^n, 0}) is local and its maximal ideal (\frakm) consists of all functions that vanish in 0. In other words, the set of units (\calO^{*}_{\calC^n, 0}) consists of all functions (f) with (f(0) \neq 0).
メモ¶
代数弱者なので局所環の定義を覚えていなかったのでメモしておく.
局所環¶
(非可換) 環で (R) は次の同値条件のどれか 1 つを満たすとき局所環であるという.
- (R) は極大左イデアルをただ 1 つ持つ.
- (R) は極大右イデアルをただ 1 つ持つ.
- (R) は零環ではなく, (R) のどの 2 つの非可逆元の和もまた非可逆になる.
- (R) は零環ではなく, (x \in R) は (x) か (1 − x) のどちらかが必ず可逆になる.
- (R) の元の適当な有限和が単元になるなら, 和の項となる元の中に単元が必ずある.
P.14¶
この記法を使うと WPT (Weierstrass Preparation Theorem) は次のように言い換えられる. 適当な座標を選ぶと任意の関数 (f \in \calO_{\bbC^n, 0}) は $f = g ⋅ h$と一意的に書ける. ここで (h \in \calO_{\bbC^n, 0}) は単元, (g \in \calO_{\bbC^{n-1}, 0} [z_1]) は Weierstrass 多項式. WPT から次の命題が示せる.
命題 1.1.15 局所環 (\cal0_{\bbC^n, 0}) は UFD である.
Using these notation the WPT can be rephrased by saying that after an appropriate coodinate choice any function (f \in \calO_{\bbC^n, 0}) can be uniquely written as (f = g \cdot h), where (h \in \calO_{\bbC^n, 0}) is a unit and (g \in \calO_{\bbC^{n-1}, 0} [z_1]) is a Weierstrass polynomial. The WPT implies the following
Proposition 1.1.15 The local ring (\cal0_{\bbC^n, 0}) is a UFD.
UFD の定義は P.14 の Definition 1.1.16 に書いてある. あと Gauss の補題: (R) が UFD ならば (R[x]) も UFD.
P.15¶
要は正則関数に対しても Weierstrass 多項式で互除法が成立する.
Proposition 1.1.17 (Weierstrass division theorem) Let (f \in \calO_{\calC^n, 0}) and let (g \in \calO_{\bbC^{n-1}, 0} [z_1]) be a Weierstrass polynomial of degree (d). Then there exist (r \in \calO_{\bbC^{n-1}, 0} [z_1]) of degree (< d) and (h \in \calO_{\bbC^{n}, 0}) such that (f = g \cdot h + r). The functions (h) and (r) are uniquely determined.
P.16¶
局所 UFD (\calO_{\bbC^{n}, 0}) はネーターである.
Proposition 1.1.18 The local UFD (\calO_{\bbC^{n}, 0}) is noetherian.
Noether 環の定義は省略.
P.52¶
実際, 複素代数幾何はある射影空間に埋め込める複素多様体を研究する. 複素幾何での射影空間の役割は微分幾何での級の役割に例えられるだろう.
In fact, complex algebraic geometry just studies those complex manifolds that can be embedded into some projective space. Maybe the role of the projective space in complex geometry can be compared to the role played by spheres in differential geometry.
P.53¶
複素幾何では実解析の技術的な道具の 1 つである 1 の分割はあまり役に立たない.
Also note that one of the main technical tools in real analysis, the partition of unity, is of limited use in complex geometry.
P.54: 超越次元の定義¶
体の拡大 (\bbC \subset K) に対して (\mathrm{trdeg}{\bbC} K < n) となる必要十分条件は 任意の ((n + 1)) 個の元 (f_1, \dots, f_n \in K) に対して 非自明な多項式 (F \in \bbC [x_1, \dots, x) = 0) となることに注意する.}]) があり (F(f_{1}, \dots, f{n+1
Recall that (\mathrm{trdeg}{\bbC} K < n) for a field extension (\bbC \subset K) if and only if for any ((n + 1)) elements (f_1, \dots, f_n \in K) there exists a non-trivial polynomial (F \in \bbC [x_1, \dots, x]) such that (F(f_{1}, \dots, f{n+1}) = 0).
P.56¶
可微分多様体は常に (\bbR^{n}) に微分同相な開集合で被覆できる. 対照的に一般の複素多様体は (\bbC^{n}) に双正則な開集合で被覆できない. この現象は (\bbC) が有界な開円板に双正則ではない事実による (Liouville の定理, page 4 を参照すること).
A differentiable manifold can always be covered by open subsets diffeomorphic to (\bbR^{n}). In contrast, a general complex manifold cannot be covered by open subsets biholomorphic to (\bbC^{n}). This phenomenon is due to the fact that (\bbC) is not biholomorphic to a bounded open disc (Liouville's theorem, see page 4).
P.57¶
変換関数をもっとエレガントに記述する方法がある. つまり (\phi_{i} (U_{i})) をアフィン部分空間 (\set{(z_{0}, \dots, z_{n})}{z_{i} = 1} \subset \bbC^{n+1}) に同一視する. このとき (\phi_{j} (U{i} \cap U_{j}) = \set{(z_{0}, \dots, z_{n})}{z_{j} = l, z_{i} \neq 0}) かつ (\phi_{ij} (z_0, \dots, z_n) = z_{i}^{-1} \cdot (z_{0}, \dots, z_{n})).
There is a more elegant way to describe the transition functions. Namely, we may identify (\phi_{i} (U_{i})) with the affine subspace (\set{(z_{0}, \dots, z_{n})}{z_{i} = 1} \subset \bbC^{n+1}). Then (\phi_{j} (U{i} \cap U_{j}) = \set{(z_{0}, \dots, z_{n})}{z_{j} = l, z_{i} \neq 0}) and (\phi_{ij} (z_0, \dots, z_n) = z_{i}^{-1} \cdot (z_{0}, \dots, z_{n})).
P.59¶
(U(n)) or (O(n)) のような古典群は複素 Lie 群ではなく実 Lie 群であることが多いことに注意する. 例えば (U(1) \cong S^{1}) は実奇次元.
Note that certain classical groups like (U(n)) or (O(n)) are often not complex, but just ordinary real Lie groups. E.g. (U(1) \cong S^{1}) which is of odd real dimension.
定義 2.1.11 全ての (1 \neq g \in G) と全ての (x \in X) に対してとなるとき (g \cdot x \neq x) 作用が自由だという. 写像 (G \times X \to X \times X), ((g, x) \mapsto (g \cdot x, x)) が固有のとき作用が固有であると呼ぶ. コンパクト集合の逆像がまたコンパクトであるとき, 写像 (f \colon A \to B) を固有という.
Definition 2.1.11 The action is free if for all (1 \neq g \in G) and all (x \in X) one has (g \cdot x \neq x). The action is proper if the map (G \times X \to X \times X), ((g, x) \mapsto (g \cdot x, x)) is proper. A map (f \colon A \to B) is proper if inverse images of compact sets are also compact.
自由な作用, 固有写像, ふだん使わないからすぐに定義を忘れる.
P.60: Example 2.1.14¶
離散な格子 (\Gamma \subset \bbC^{n}) が平行移動で自由かつ不連続に作用している. したがってトーラス (X = \bbC^{n} / \Gamma) が複素多様体である事実は上の命題の結果とも思える. 射影空間 (\bbP^{n}) は (\bbC^{n+1} \setminus \cbk{0}) 上の自然で固有かつ自由な (C^{*})-作用の商である.
English¶
A discrete lattice (\Gamma \subset \bbC^{n}) certainly acts freely and discretely by translations. Thus, the fact that the torus (X = \bbC^{n} / \Gamma) is a complex manifold could also be seen as a consequence of the above proposition. The projective space (\bbP^{n}) is the quotient of the natural (C^{*})-action on (\bbC^{n+1} \setminus \cbk{0}), which is proper and free.
P.68¶
可微分なベクトル束のカテゴリでは全ての短完全系列が分裂する (補遺 A 参照). 2.4 節でのオイラー列のように, これは正則な設定下ではもはや正しくない.
Recall that in the category of differentiable vector bundles every short exact sequence splits (see Appendix A). This is no longer true in the holomorphic setting, e.g. the Euler sequence in Section 2.4 does not split.
井ノ口順一, 曲面と可積分系¶
読書メモ: 井ノ口順一『曲面と可積分系』¶
10/15新刊予定『曲面と可積分系』井ノ口順一 著(朝倉書店) しゃぼん玉を数学的に表現した「平均曲率一定曲面」を中心に,曲面の幾何学の基礎を学ぶ,解ける(積分できる)偏微分方程式の研究である無限可積分系と微分幾何学が交差する「曲面の可積分幾何」のための,初めての入門書。
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2015, 9月 4
面白そう. 読みたい. とりあえずメモ.
書評: 井ノ口順一『曲面と可積分系』¶
以前「この本面白そう」とサイトで紹介したら, 井ノ口順一『曲面と可積分系』を献本して頂いてしまった.
完全に細部まで読み切れてはいないが, ざっと一周したので書評というか感想を書きたい.
次のAmazonのページにsusumukuniさんによる書評がある.
この本の魅力をきちんと伝えているので, そちらも合わせて読んでほしい.
ここでは私の視点からの感想を書き連ねる. 自分の「今後こんなのを作っていきたい」というコンテンツ作りとも絡めて書く.
全体¶
いいのか悪いのかは本当に判断がつかないのだが, 平均曲率一定というところから, 微分幾何でありがちなややこしい添字を引きずり続ける面倒が少なくなっているのは割と嬉しい. いきなり添字の嵐に叩き落とされると何をしているかわけがわからなくなるので, こういう配慮も大事なのかと気付かされる. もちろんこの本に関しては「配慮」ではなく本質だろうけども.
あと微分幾何というか $\mathbb{R}^3$ の曲線・曲面論と一般のRiemann, Kähler多様体での曲面論との繋がり, いまだに見えづらい. よくあるフレネ-セレも$\mathbb{R}^3$以外での曲線論で代わりがあるのかとかいまだにわからない.
もちろん代数曲線論なり実一次元での曲線論もろくにやったことがないという自分の問題もあるが, フレネ-セレが $\mathbb{R}^3$ の特殊性に依存しているのか, それともきちんと一般的に使える方向に展開していくのか, そういうののギャップがいまだに埋めきれない. いつも幾何は散発的にちょっとやってすぐ忘れるのをくり返しているのも悪いが, いい加減何とかしたいというの改めて思う結果になった.
1 章¶
では本題に入っていこう.
微分形式が早々に登場するが, いまだにこれがどういうご利益あるのかすっきりわかっていない. 小林昭七先生の『曲線と曲面の微分幾何』にも「使い込んではじめて体得するもの」とかいう説明があったし, そういう概念なり定理なりがあるのもわかるがなかなかつらい.
もちろん1.2節内の注意1.2.2でコホモロジーに移ることで 「単連結でない度合いの測定」という意味を持つことは触れられている.
1.3の「Frobeniusの定理」でいきなり行列値の微分形式を担ぎ出してくるところは思い切っているな, という感じがある. 可積分条件の話でメインテーマだからどうしても早くから出したいのだろう.
1.4節が「ユークリッド空間」というタイトルだが, かなりハードで, そして面白い. 行列値の微分方程式とかLie群・Lie環, 行列値の指数関数と初等的なところだとなかなか触れない話題がバンバン出てくる. 非数学専攻だとここでいきなり力尽きるのではないかという気もするが, 学部低学年の意欲ある学生が読んだら一気にテンション上がるだろう.
そして1.5は$\mathbb{R}^3$の曲線論. Frenet-Serretの公式だとかよくある話が出てくる. 上でも書いたが, Frenet-Serretあたりが一般の曲線論でどうなるのかいまだによくわからない. 法束とかその辺なのだろうか. 微分幾何入門として実の曲線・曲面論の話はよく見かけるし, 当然高次元, Riemann 多様体論の本は掃いて捨てるほどあるが, その間をきちんと埋めていく本とかあるのだろうか. 専門が違うので有名なのが既にあるが知らないだけという可能性もあるが, アクセスしづらいこと自体は大きな問題と勝手に思っている. ニーズ自体もほとんどないのだろうという気もする. ただ私が困っているし, 他にもそういう人はいるだろうと思っているので, その辺で何かしたいと改めて思う.
2 章¶
早めに第一基本形式が出てくる. あとでRiemann多様体の話を少しやるのだし, Riemann計量であるという説明とか注にほしい.
何度も書いているが, 入門的な$\mathbb{R}^3$の曲面論と 一般的な曲面論の解説の乖離が激しすぎるので, そういうのを少しでも埋めるような説明があると私が嬉しい. 自分用も兼ねてhttps://github.com/phasetr/math-textbookにまとめたい.
Gaussの公式やChristoffel記号, Weingartenなども同じく説明がほしい. 注意2.2.4で形状作用素が出ているが, これも高次元で対応物あるのだろうか. 第二・第三基本形式も同じ.
第二基本形式は2.3節が「第二基本形式の意味」となっているが, 「あとできちんと意味を考える」的な注をつけてほしい. 目次見てわかることといえばそれまでだが. あと P.49 で「第二基本形式の行列式やガウス曲率は~」とあるが, 第二基本形式それ自体に意味があるわけではなくて, その行列式にこそ意味があるという話なのだろうか. その辺もよくわかっていない. 前に誰かに教えてもらった記憶もあるが, きちんと記録を取っておくべきだったし, https://github.com/phasetr/math-textbookにまとめておくべきだったとまた後悔しきりだ.
2.4「曲面論の基本定理」ではいきなり一階連立偏微分方程式とか 可積分条件が出てきてテンションが上がる. P.56で「第二基本形式の行列式が第一基本形式だけで書けてしまう」とある. 本当にわからないのだが, 第二基本形式はそれ自体よりも行列式に意味のある量ということか? ここからしてわかっていないというのも一応数学科の院を出た身としては不勉強きわまりないので反省はしている. 最後に「平均曲率一定曲面ではガウス-コダッチ方程式の厳密解を具体的に求めることができる」とある. ここでまたテンションが上がるだろう. 具体例で遊べるのはとても大事.
2.5で等温座標系に入る. 命題2.5.2でGauss曲率の等温座標系の表示が綺麗に書けることが説明されている. $\log$とルートが噛むとはいえ, Laplace方程式型(?)になっているのでいかにも筋のよさそうな感じが伝わってくる. P.59で「曲率線座標系は第二基本形式に関する条件であるから曲面が三次元空間内にはめこまれていないと意味がない」とある. ということは第二基本形式は高次元で直接の類似物というか一般化がないということか. 臍点での注意があるが, 臍点が何なのかよくわからない. もちろん定義はP.44でされているが. 二つの主曲率が一致する点という定義だが, 主曲率が一致されると曲率線座標系としてはご機嫌斜めらしい. ここに突っ込みすぎると曲面論にスポットがあたりすぎて本題からずれていくのだろうとも思うが気になるのは気になる.
2.6で複素座標系になる. 複素解析との絡みが出てくるのでまたテンションが上がるわけだ. 極小曲面も出てくる. さらっと変分も出てくる. ここまででも本当に話題が盛り沢山でよくもまあこんなに詰め込んだものだと感心する. 可視化界隈の人(非数学の人)がノックアウトされていないか不安になるレベル. もちろん偏微分方程式はガンガン出てくるわけでいろいろ勉強したくなる.
2.7の「平行曲面」では微分方程式の議論になる. P.71のHopfの定理ではあとで出てくるRiemann面を使う証明を与えているから, また新ネタが叩き込まれる. 大したことではないがsinh-Gordon, sinh-Laplaceだけは人名は英語表記になるのがちょっと気になる. sinhとの表記の相性の良さはあるにしろ, これだけは後でも英語表記で一貫しているのが不思議ではある. 意識的なのか無意識にやっているのかもやや気にはなる.
3章 ラックス表示¶
タイトルからして可積分系という感じがある. 四元数を使うと冒頭にある. 最近のCG界隈での展開があるのでまあいろいろあるのだろう.
四元数を複素線型空間と見る話, はじめて知った. 右掛け算を採用するのも何か不思議な感じする. 竹崎先生が「解析の人は左掛け算を使うが, 代数の人は右掛け算をよく使う」とか仰っていたことがあるが, そういうアレなのだろうか. 右を採用する理由も気になる. 何か都合がいいのだと思うが, それが見えないから.
Adが出てきたり, 指数行列が出てきたりとここも話題が盛り沢山だ. これをいろいろ出てきた楽しいと思うか, また新しいこと勉強しないといけないと思うかで結構反応が別れそう. 応用の人達は余計なことをいろいろ要求されるの嫌がりそうな感じはする.
注意3.1.12でも二重被覆群とか出てくる. もういちいち紹介するのも面倒になってきているが, とにかく話題豊富. いろいろな数学が交差していることがわかる.
あと改めて気になったので. (外)微分作用素が $\mathrm{d}$ の ISO 準拠表記だが, 読んでいてものすごく目に引っかかる. 工学系の規格だし数学・物理系の本で従う理由全くないと思っている. 第一, 偏微分の $\partial$ がローマンではないのに 何故常微分というか外微分というか, その $d$ だけローマンなのか いまだにわからない.
注意 3.1.22 でいきなり (反) インスタントンとか出てくるので驚く. ここまでぶっ込んでくるか, という感じがある.
3.2 節でパラメータ $\lambda$ が出てくる. ざっと読んだだけでまだ全く様子が掴めていないのだが, あとで出てくるスペクトル係数と関係あるっぽい.
3.3 節で調和写像が出てくる. 変分問題とも絡んで大切な対象だ. 注意 3.3.2 がめっちゃ非線型の方程式なのでいかにもつらそう.
このあとも Riemann 面構造に対する言及, 有理型関数への言及もある. どんどん話題が出てくる. どちらかというと曲面論の射程距離の長さという感じはある. 可積分性が本質的に効いているところもありそうだが, まだそこまで読み切れていない.
4 章 平均曲率一定回転面¶
消化不良感に合わせて記述がどんどん雑になっていくが, まあ自分用の記録と思っていいことにしておく.
ここではいきなり楕円積分も出てくる.
5 章 ベックルンド変換¶
ここでは sine-Gordon がサイン・ゴルドン変換とカタカナ書きになっている. sinh-Gordon との記述の差が気になる.
4 章の図もそうだが, 図 5.1 のベルトラミの擬球, 図だけ見ているととんがっていて微分できなそうに見えるので, この辺 CG の限界という感じがある.
ベッグルンド, いろいろなところで名前を聞く感じがあるが, 可積分系の話なのだろうか.
命題 5.1.7 の非線型重ね合わせの公式, 全くわからないが, 名前からは非線型波動と可積分系の香りがする.
5.2 節のはじめでやはり sinh-Gordon となっていて, サイン・ゴルドンと書いたのとの差が何なのか改めて気になる. 何かこだわりを感じるのだが何なのだろう. 複素化されていきなり $\mathbb{C}^3$ が出てくる. 何か攻撃力が一気に高まった感がある.
ふと思い出したが, この本, 珍しく内積が $\langle \cdot | \cdot \rangle$ などと区切りに縦棒を使っている. 数学では竹崎先生が使っているのしか見たことなかったので, ちょっと珍しいと思って印象に残る. 可積分界隈だと割と使われていたりするのだろうか.
P.133 でいきなりソリトン方程式とか, 多重ソリトン解とか多重ブリーザー解とかソリトン理論, 無限可積分系の話題がぶっ込まれる. 楽しそうに本を書いている感じが伝わってくる.
6 章 曲面再考¶
要は Riemann 多様体の章. P.138 で第一基本形式の一般化に関して紹介があるが, 第二基本形式とか第三基本形式の話はない (はず). Riemann 計量だし当然議論するというのはわかるが, 第一基本形式だけ特にあって他の話がないのがいつも気になる. 低次元トポロジーとかならまだ話はわかるが, $\mathrm{R}^3$ だけで使える話にどの程度の意味があるのかとか いまだによくわからないし, 本当に困っている.
P.139 定理 6.14 で何の説明もなく コンパクト 2 次元 Riemann 多様体上の調和関数が定数しかないことが紹介される. さすがにもう少し注をつけた方がいいのでは. 系 6.2.2 で $\mathbb{E}^3$ にコンパクトな極小曲面が存在しないことが紹介され, そことの関わりはもちろんある. それはそうと, この結果, 何となく衝撃的な感じある. 極小曲面, 名前からして小さそうな感じあるのに, $\mathbb{E}^3$ の中という限定つきだがコンパクトなのがないという. 不思議な感じ.
そのあとの Riemann 面に測地線と結構程度の高いネタが さらりと叩き込まれる.
7 章 平均曲率一定輪環面¶
図 7.1 のウェンテ輪環面, 何というか「繋がったところ」で微分不可能になっているように見えてしまうのだが, この辺どういう振る舞いをしているのだろう.
P.151 ではやはり sinh-Gordon という書き方になっている. 雑にしか読んでいないので, バリバリ計算をしていくと何かいつの間にか結果が出ているという感じがある. P.156 でまた楕円積分がさらりと出てくる. 面倒な計算をやっていると思いつつ, 最後に可積分系らしい綺麗な世界が出てくるのは面白い. 綺麗な世界と言っても何も知らないで (7.8) をぱっと見ると, 導関数の 2 次がもとの関数の 4 次式になっているというえぐい話なので, そこに楕円積分という綺麗な結果を見通すのは 数学の基礎体力が必要ではある.
7.2 節ではいきなり $\mathrm{R}^5$ が出てくる.
8 章 非線型ワイエルシュトラス公式¶
章名がいかにも筋の良さそうな話っぽい. 調和写像の話だからいろいろな数学が交錯していそうな気配が満ちている.
のっけからゲージ変換が出てくる. インスタントンとか物理っぽいネタとの絡みあるのだろうか. 標構場, 動標構と何か関係あるのだろうか. そういうのがずっと気になっているが説明がなくてつらい.
su(2) とかガンガンぶっ込んでくる.
(8.1) は複素幾何の本とかでよく見かける. 接続形式とかその辺だったろうか. 注がほしいと思ったら P.163 の定義で容認接続として接続との関係が出てくる. 最近の超弦との絡みで微分幾何としても 接続の重要性が一段と高まっていると聞いている. その辺改めて勉強してみたくなっている.
雑にしか読んでいないので, もうどこからどう突っ込んでいいのか困るくらいだが, P.165 の注意 8.1.3 でいかにも可積分系という感じの 逆散乱問題との関係が示唆される. ただ, 逆散乱問題が可積分系の話題というの, この本でどこかに説明あっただろうか. 私は広田の逆散乱とかで名前だけ知っているから気付くが, 説明入れておかないと せっかくの可積分系との繋がりが見えづらくなってしまっている感じがありもったいない.
ループ群と調和写像とか, どこまでも話題は広く深くなっていく.
Birkhoff, Grothendieck 分解とか, Riemann-Hilbert 分解, 岩澤分解とか 凄い名前がばんばん出てくる. その前に P.166 の真ん中で (フーリエ展開) とか Fourier にもさらっと言及がある.
8.3 の DPW 公式では調和写像がポテンシャルだとか絡みながら 議論が展開される. 調和写像自体が幾何学的変分問題の大問題なので, この本の射程距離の長さ半端ではない.
P.176 で有理型関数から sinh-Gordon 解と正則部分との関係が DPW 公式でどうの, とかいう凄まじい話が出てくる. 広くて深いテーマを横断する筋のよさ, 半端ではない.
注意 8.3.6 で CMCLab の紹介があるが, ホームページとかでプログラムを公開してあるとなおいいのでは. 既に公開されているのかもしれないが, そういうのを探しにいくのが割とめんどいことに気づく. 私もコンテンツを作るとき, さぼらずにきちんと関連コンテンツを紹介しないといけないと反省させられる.
P.180 の定理 8.4.1 でのラックス作用素も可積分系の香りがする. これも可積分系で Lax 作用素というのがあるというのを 何となく知っているからそう思うが, はっきりそう言っておかないと伝わらないのではないか感がある. この本, そういうところがただただもったいない.
P.181 で代数曲線 (超楕円曲線) とかスペクトル曲線とかそういうのと 関係は紹介するのに肝心の可積分系との関係の議論をきちんと説明していない. その辺, 妙にアンバランスで不思議で仕方ない. 著者にとってあまりにも自然で当然のことで, 逆にその辺はきちんと説明しないとわからない, 伝わらないことが見えていないっぽい.
少し話がずれるが, スペクトル曲線といわれると 超弦関係のネタという印象が勝手にあるのだが, これ, どこ由来の用語なのだろう. スペクトル幾何とかそっちの方? P.181 の注 11 で田中俊一・伊達悦朗『KdV 方程式』の中で 解説があるという記述があるから, 超弦とは関係ないところからの話という感じはある.
9 章 可積分幾何へ向けて¶
何かいろいろ一般化するらしい. 全くついていけていない. もはや正則な関数とか自由自在に使いまくっているので, 思えば遠くまで来たものだ感がすごい.
そして Painleve 方程式が出てくる. ただただ Paul を想起する.
数学的なコメントをしようがなくなっているので, どうでもいいところに目が向くことになる. それで P.185 の定義での用語が気になる. Harmonic inverse mean curvature surface の訳語が 汎調和平均曲率曲面なのだが, 「汎」は inverse に対応しているような気がするのだが, これで本当にいいのだろうか. 順番的に言うなら「調和反平均曲率曲面」になりそうな気がする. 単純に「汎」は「反」のタイポ? 分野違うとこんなところですら混乱するので, タイポ気をつけないといけないと改めて思いを深める.
P.187 の注意 9.1.4 は Lax 表示, (動く) スペクトル係数, 逆散乱形式と 可積分系の香り高い注だが, やはりその辺の説明がない. 話題が豊富なので, どんな用語がどこ由来か初学者には全くわからないだろうから, 本当にもったいない. 「可積分系の本なんだしわかるだろう」と言われても, ここまで話題を盛り込まれていたらどこからどこまでが 可積分系の話なのかもう見えない.
はじめ $\mathbb{R}^3$ の曲線・曲面論からはじめているし, 学部 1 年から射程圏に入れている本だろうと思う. せっかくの読者想定なのにもったいない. いろいろな人に見てもらったのだと思うのだが, 誰も突っ込まなかったのだろうか.
P.188 で Thurston 幾何という言葉まで出てきた. やばい.
9.2 では突如差分の話にになる. 当然といえば当然でグラフの話になる. この辺, 砂田先生あたりの離散幾何解析と関係あったりしないのだろうか.
定理 9.2.1 と注意 9.2.2 でいきなり超準解析が出てくる. 魔法少女 @funcitonal_yy が食いつくかもしれないと思いながら眺めた.
P.193 の注意 9.2.6 の CAT(0) とか名前だけしか知らないが, またとんでもないところと繋げてきたなという感じがある.
まとめ¶
話題が超豊富なので, 学部低学年で読めば読むほど楽しい感じがある. 細かいところに気を配るよりも, いろいろな数学が交差する様を見て夢を膨らませるのに良さそう. もっと本格的に微分幾何を使った場合にどう記述が洗練されるかにも興味がある.
一番もったいないのはメインであるはずの可積分系的な記述が雑なところ. どこにどう可積分性が効いてくるのかがものすごく見づらい. それがもっとはっきりしていれば, もっと読者を可積分系に引きずりこめるだろうに.
何にしろ面白かった.
木村太郎, 2021, ランダム行列の数理¶
はじめに¶
現在書評用に全体読解中. この記事自体をある程度広い読者の勉強用コンテンツとして展開するので, 書評に限らない説明的な記述がある.
書評¶
TODO.
各章の冒頭にそこまでのまとめが書かれていて, これを先に読むとポイントが掴めて便利.
行列式とその具体的な処理が非常に重要.
参考資料¶
測度の小まとめ¶
基本¶
いろいろなところに書いているので手短に. 詳しくは現代数学探険隊 解析学編などを見てほしい.
測度は面積・体積の一般化概念である. 記述が煩雑になるので以下, 面積・体積などと書かずに一般化面積と書こう.
集合 $A$ に対してその一般化面積を $\mu(A)$ と書き, 写像 $\mu$ を測度と呼ぶ. 考えているのが平面 $\mathbb{R}^2$ で一般化面積がふつうの意味の面積だとすると, ふつうの積分を使って $\mu (A) = \int_A dx = \int_{\mathbb{R}^2} 1_A(x) dx$ と書ける. ここで $1_A$ は $A$ の定義関数 ($A$ 上で 1, それ以外で 0 を取る関数) とした. この $dx$ がいわゆるルベーグ測度と思えばいい.
確率測度は $P(\mathbb{R}) = 1$ とした測度で, 適当な条件をみたすとき $P(A) = \int p(x) dx$ と書ける. ここの $dx$ は上と同じくふつうの積分 (ルベーグ測度) の意味で, 関数 $p$ を確率密度関数と呼ぶ.
「適当な条件」に対する補足¶
上で書いた「適当な条件」は「ルベーグ測度に対して絶対連続」と表現できる. もちろん一般的には成り立たない. 「ルベーグ測度に対して」ではなく「適当な測度に対して」と変えたときにも同様の積分表現ができ, それをラドン-ニコディムの定理と呼び, このときの密度関数をラドン-ニコディム微分と呼ぶ.
上で一般的には成り立たないと書いたのはまさに物理で破綻する. 有名で決定的な反例はディラックのデルタ関数で, $P(A) = \int \delta(x) dx$ と書いたときの密度関数であるデルタ関数は, 純数学的に言えば形式的な意味しか持たない. シュワルツ超関数論の文脈では特に超関数核と呼ばれる.
ちなみに正値超関数に対するリースの表現定理によって, ディラックのデルタ関数は測度としても数学的に正当化できる. このとき超関数核は形式的な密度関数として意味を持つ. こうした議論も現代数学探険隊 解析学編に書いてある.
レゾルベント¶
スペクトル曲線に絡んで出てくる.
作用素論では行列 $A$ の固有値の集合を一般化した概念をスペクトルと呼び, 例えば $\sigma (A)$ と書く. 行列の場合, スペクトルと固有値の集合は完全に一致する. そして複素平面上でのスペクトルの補集合をレゾルベント集合と呼んで $\rho (A)$ と書き, レゾルベント集合の元 $z$ を使って $F(z) = (A - z)^{-1}$ とした行列値の複素関数をレゾルベントと呼ぶ. 必要に応じて内積をあてた $f(z) = \langle \psi, (A-z)^{-1} \phi \rangle$ を考えて複素数値関数にすることもある. この意味でのレゾルベント $f$ の特異点はまさに固有値である.
作用素論からするとレゾルベントを積分表示したときの積分核がグリーン関数で, レゾルベント自体グリーン作用素と呼ばれることがある.
木村さんによるコメント¶
ランダム行列の数理・第 5 章「ランダム行列と可積分系」ではまず,Lax 形式と呼ばれる方法によって,2 章で導入したランダム行列を特徴付ける波動関数に対する微分方程式系を取り扱う.これにより鞍点条件から定めた代数曲線が,実際にこの Lax 形式の意味でスペクトル曲線であることが示される. この微分方程式系がモノドロミー保存系であることを見た後に,行列積分が可積分階層における τ 函数,特性多項式が Baker-Akhiezer 函数と同定されることを示し, Hermite 行列積分を具体例として,双線形化法やボソン・フェルミオン対応に基づいて実際に KP 方程式や戸田方程式の解を構成する. 続いて 3 章で導入した正弦カーネル・Airy カーネルを用いた Fredholm 行列式の解析を Lax 形式に基づいて行い,固有値間隔分布や最大固有値分布が行列サイズの大きい極限下で Painleve V・Painleve II 方程式の解を用いてそれぞれ記述されることを示す. 最後に,Fredholm 行列式と Schlesinger 系との関係に言及し,上述の Painleve 方程式の出自について議論する.その他のキーワード:Riemann-Hilbert 問題・零曲率方程式・Fay 恒等式・広田微分・マヤ図形・Young 図形・Tracy-Widom 分布,など.#ランダム行列の数理
読書メモ¶
全体メモ¶
あとで見返すとき・書評を書くときに大事そうな部分を別途抜き出しておく.
- 数学・物理の多岐にわたったテーマを知る指導者がいた方が楽しく読めそう.
- 高密度でいろいろなことは書いてあるが, 本質的には線型代数と微分積分 (関数論含む) で尽きている (ように見える)
- P.10, 1.1 節ラストの注意. 概要把握に重要.
- P.13, ラストの注意. 概要把握に重要.
- 相関関数・二点関数などの基本的な計算対象はそれを計算したくなる物理的意義をどこかにまとめておいてもらえると嬉しい.
第 1 章 ランダム行列基礎論¶
P.5¶
複素共役が物理記法ではなくて驚いた. 物理の人, 困惑しそう. あとで出てくるエルミート共役はダガーだった.
対象をどこに置くかによるが, $\mathrm{Tr} H^2$ はヒルベルト・シュミット内積で書いた方がイメージ豊かに取れる人が多そうな気はする. これはもはや超弦まわりの物理の人には自明と思っていい?
はるか昔にランダム行列の話を聞いた時にも思ったが, 行列の空間での積分を具体的に考えたことがあまりない気がする. それだけでも割と楽しい. 少なくとも物理の学部低学年に線型代数と微分積分の射程距離を見せるにはいい題材のように思う.
P.6¶
l.7 「恒等元に対して」恒等元は定数関数 1 と書いた方がいいような. 何か恒等行列かのように感じた. 次の P.7 で単位行列の記号が出てきて記号の揺れかと思ったらそうではないようなのでちょっと紛らわしい気がする.
行列積分表示のところ, あくまでガウス分布を仮定した時の表示で, 一般の複素エルミートランダム行列の話ではないのでは感. この本, この後でガウス分布以外考えない? ここにも GUE などを明記すればいい話?
P.8¶
l.7 (固有値の) 集合に丸括弧を使うのが気持ち悪いと言えば気持ち悪い.
P.9¶
ヴァンデルモンドが出てくるのは面白い. これだけで既に何かありそう・出てきそうな雰囲気が漂う.
確率分布密度, ここもガウス分布仮定のもとと明記してほしい. 後でピンポイントでここだけ見た時にもわかるようになっていてほしいと言った方がいいのかもしれない. 私もコンテンツを作るときに気をつけよう. そもそも後で自分が困る.
P.10¶
1.1 節ラスト. ここはかなり大事な気がするのでもっと強調していいような. 数学ならきちんと remark で囲われるところだろう.
まだ感じたことを言葉にできていないが, 行列成分表示と固有値表示での違いが何なのか, 何かコメントがほしい. どういうときにどちらを使うと便利とか, それぞれ何節で表記の選択が大事になるとか.
あとはやはりガウス分布の仮定下にある注意は欲しい. これ, 自由場的な気分があるので, 「相互作用場」的な測度の導入もあるのかとか気になる.
P.10¶
四元数が出てくる. ずっと四元数は趣味的な対象だと思っていたが, 超ケーラー (四元数ケーラー) など超弦理論まわりでよく出てくるらしく驚いたことがある. 工学・プログラミングまわりでも回転に四元数を使うそうだし, 四元数の射程は思ったよりも広い. ランダム行列からのアプローチでこそ楽しく入門できる人もいるだろうから, ここでも多少の記述があるのはいい話なのではないか感がある.
P.12¶
スピン表示: 相対論的場の量子論などでもごく基本的な話で, 純粋に線型代数や表現論の話としても面白いので, 未習の人 (学部低学年やゴリゴリの非相対論の物性の人) 向けに少し注意があってもいいような気がする.
Gauss 型集団: ここでは「Gauss 分布にしたがうランダム行列」と明記してある. 上にも書いたがこの辺の注意は小まめにした方が, 久し振りに読んだり拾い読みするときに助かる.
P.13¶
固有値表示での差積表示とガウス核の競合が面白いという話. この最後の注意がやはり大事で, もっと強調してもいいように思う.
P.14¶
式 (1.43) の積分範囲が $\int_{- \infty}^{\infty}$ なのがちょっと気持ち悪い. ここは適当に高次の全空間なので. 式 (1.45) のような描き方でよかったのでは?
セルバーグ積分が突如出てくる. ベータ積分の高次元一般化らしいので, 教養の微分積分でもいいテーマになってくれそう.
P.15¶
「群体積との関係」という節タイトル自体がよい. 学習意欲がそそられる.
P.16¶
規格化定数と行列の対角化に使った構造の関係はかなり面白い部分だと思う.
P.17¶
特殊なことこの上ない三重対角行列がぽろっと出てきて, それがきちんと一般のパラメーター $\beta$ への議論につながるのが面白い. 考えてみれば三重対角行列はラプラシアンが制御する偏微分方程式の数値計算でもラプラシアンの離散化として出てくるし, LU 分解など数値計算上の行列解析が大事な対象だから, そうした意味でも応用上なめてはいけない. P.18 に数値計算上の利点も書いてあるが, 木村さんも数値計算やっているのだろうか.
P.18¶
カイラルランダム行列の節. 長方行列 (非正方行列) や特異値分解が出てきた. なかなかふつうの数学の線型代数の本に載っていないテーマである一方, 数値計算・工学では大事なテーマなのでこういうタイプの導入もあるのかという関心がある.
P.19¶
脚注で Ginibre (Ginibre 集団) が出てきた. 修士の頃, 作用素環的な量子統計の数理で死ぬほど苦しめられたところによく出てくる人名で, お久しぶりです感がある.
P.21¶
この囲みのところもガウス分布型のランダム行列の仮定がある (はず). あとで見たとき絶対に混乱するのでメモ.
カイラル対称性のところでの高次行列への埋め込み, 形式的には超対称化のところで見かけた処理や記号に似ている気がする. 超対称化は新井先生の「量子現象の数理」でちょろっと眺めたくらいなので何もわかっていないのだが. カイラルの方が一般的だと思うが何かしら並行的な処理はできそう.
P.23¶
ラゲール型が出てくる. 特殊関数の射程距離, 思ったよりも長かった. 常微分方程式でいまだに研究があるわけだという気分.
1.5 ランダム行列の分類. ここでも突如対称空間が出てくる. ランダム行列の射程距離の一端がわかる. さらっとしたリー群・リー環の関係の記述も実はとても大事なところなので, 学部低学年などの初学者は注意してほしい. 作用素論としてもユニタリ群の生成子問題と直結していて, 物理的には連続な時間発展とそれを生成するハミルトニアンの話題として読める.
行列と商集合, 接空間の議論などもさらっと書いてあるが, これも行列とリー群・多様体論をつなぐ大事なところ. 1 章をさらっと眺めるだけでも教養数学の射程距離や, 勉強のモチベーション維持・向上にかなり使えそう. もちろんここで細々とコメントしているような適切な補助はいると思う.
P.25¶
1.5.3 BdG 行列の節の冒頭に, 「商群の接空間ではあってもリー群の接空間ではない」という記述がある. 多様体やリー群に対する相当の予備知識がないとそもそも何を言っているかさえわからないと思うが, 数学的には面白く大事な具体例の話でもあり, こういうさらっとした記述の重要性をわかっている人と読むと凄まじく学習効率の高い本になりそうな予感.
P.26¶
「超伝導, 超流動体における準粒子に対するハミルトニアン」というの, 形式的には線型代数だけの話から現代物性の基礎的な面白い話を展開してくれていて, 学部低学年が読むと刺激になりそう. 私は楽しい.
P.26 下方: 自明な話ではあるが, 「(---の場合に) BdG 行列は接空間を与えている」というのは, 「(---の場合に) BdG 行列の全体は」でないといけない.
P.27¶
粒子・正孔変換, 荷電共役変換は形式的に物性と相対論が交わるところで, 形式的には面白い. Majorana 状態という記述も出てくる.
P.29¶
脚注で D-ブレーン, トポロジカル絶縁体, 超伝導体といった言葉が出てくる. 物性・超弦の数学的対応で遊んでみたい一般市民には楽しい記述の趣がある.
第 2 章 Coulomb気体の方法¶
P.30¶
第 2 章に入った. 熱力学的極限や漸近挙動は大好物なので楽しみ. 「スペクトル曲線とよばれる代数幾何的対象」というのも結構楽しみ. 式 (2.1) も相互作用系を視野に入れはじめてきた感があり, 期待が高まる.
P.31¶
有効作用という言葉が出てくる. くり込みやら何やらでいろいろな背景を持つ言葉なので, この辺の物理をきちんと補足してくれる人と読むと楽しそう.
来るかと思ってきた経路積分に見立てる記述もあった. 温度の話や平衡状態の話も出てくる. 線型代数のテーマに物理を叩き込めるので, 学部 3 年くらいまでの一定の物理の素養を鍛えた上でこれで線型代数に触れ直すと, 線型代数を物理の視点でいきいきと勉強できそう. よく量子力学に触れたときに「線型代数がこんなに大事ならもっと早くそう教えてくれ」という事案があり, かといってふつうの数学の本では勉強するのがつらい事案に悩まされたとき, 適切な指導者のもとで読めば線型代数が楽しく実践的に勉強できるいい本になっていそう感が高まる. 少しであっても数値計算の話が書いてある理論の本, そうそうないと思うので.
P.32¶
「積分を収束させるために最高次係数を」のところ, 物理によくある定型文で, こういうのをきちんと読む訓練は割と大事.
4 次のポテンシャルも非調和振動子の意味があり, $\phi^4$ にも波及する話でこういうさらっとした記述をなめてはいけない. 「正則であるからホモトピー類に依存する」というのも関数論と位相幾何にまたがる基本的な話で, よくある初学者が触れると「そんな難しい話をぽろっと書かないで. 読めない」事案でありつつ, 早い段階から幅広い数学手法・概念に触れて慣れてほしい著者の気持ち事案でもある.
P.34¶
レゾルベントに関して自分用メモ. いま $A$ は行列なので離散的な固有値しかなく, 作用素論的な意味でのスペクトル積分を考え, 行列をひきずらないようにするべく期待値を取ったような形になっている.
P.35¶
「レゾルベントはランダム行列での Green 関数」という記述がある. 作用素論からするとレゾルベントを積分表示したときの積分核がグリーン関数で, レゾルベント自体グリーン作用素と呼ばれることがある. この意味で数学的にはきちんと整合性がある.
P.36¶
Riccati 型という記述がある. こんなところにもリッカチが, と思ったのでメモ.
漸近解析から符号を決める議論があり, こういう手法はとても大事.
P.37¶
詳細はいまだにほとんど全く理解できていないのだが, 式 (2.27) は佐藤超関数によるデルタ関数表示と関わるので, この辺を突っ込んだ代数解析的なアプローチをやっている人もいるのだろう感がある. 何せ常微分方程式の解析も関わる部分で見た目は WKB みたいな話でもあるから, 正しいイメージかどうかは別にして, 私の代数解析のイメージの一部とよく合う.
P.38¶
Wigner の半円則が出てくる. これを見ると最近圏論関係の本をいろいろ出している西郷さんを思い出す. 作用素環的な代数的確率論の本でも出てきた記憶がある.
P.39¶
2.4 汎関数形式. 充填率とモジュライ空間の関係という大きなテーマが出てくる.
P.40¶
レゾルベントとヒルベルト変換, クラマース-クローニッヒ (Kramers-Kronig) 関係式の話. ヒルベルト変換, いまだに名前だけしか知らず, どんな数学が背景に広がっているのか全く知らない.
P.41¶
相関関数の小節のはじまり. 可積分系などでも相関関数に全ての情報が詰まっているとして大事な計算対象なので, 物理・数学のいろいろなところで出てくる大事なキーワード.
P.43¶
2.5 スペクトル曲線. 「多価性に起因してレゾルベントが不連続になる区間において固有値密度が生じる」という記述, ここでの概念の定義とその流れからすると非自明ではあるのだろう. 作用素論の用語からの補足は参考資料参照.
作用素論的なレゾルベントの定義と上の記述と整合性がある. 「レゾルベントが $x \to \infty$ で特異性を持たない」ことも, 行列を考えていることで上の参考資料中で定義した $f$ が有限個しか特異点を持たないことと直結している.
ここでコンパクトリーマン面が出てきた. いまちょうどメルマガでリーマン面の概要解説を書いていて, 超弦理論では大事みたいなこともコメントしたので, あとでこれもメルマガに書こう.
P.44¶
レゾルベントから決まるリーマン面をスペクトル曲線と呼ぶとのこと. スペクトル曲線は古典可積分系で導入された概念らしい. 上で意図せず (先を読まず) に相関係数で可積分系の話を振ったが, 回収されてしまった.
レゾルベントは有理型関数だから関数論がゴリゴリに使えるのかという気分が出てきた. この辺, 新井先生の「量子現象の数理」でも 2 次元でのアハロノフ-ボームの解析で関数論を叩き込むところでも出てくる.
P.45¶
リーマン面の周期やホモロジーが出てくる. 最近改めてリーマン面を勉強していて, 閉曲面の流れもあるのか, リーマン面でもホモロジーを使うのかとちょっと驚いた記憶がある. そこを把握する参考になりそう. Twitterでもちょっと木村さんからコメントをもらったが, この辺の話なのだろう.
P.46¶
2.5.1 周期積分. 正準 1-形式, シンプレクティック 2-形式, ラグランジュ部分多様体などの言葉が乱舞する.
きちんと細かく追い切っていないので詳細は把握できていないが, P.47 にかけてスペクトル曲線上の周期積分で固有値分布の情報が取れることが書いてある.
P.47¶
2.5.2 ゲージ理論との関係. 脚注で超弦理論の文脈で Special Geometry 関係式と呼ばれる関係式が出てくる. 関数論的な意味合いも持つ (はずの) 周期, 思った以上に射程距離が広かった.
スペクトル曲線の幾何から有効作用を決める方法はいろいろ使えて, 超対称ゲージ理論での真空のモジュライから有効作用を決めるのがかの有名なサイバーグ-ウィッテンだとか.
P.48¶
ゲージ理論との対応から行列変数の書き換えが出てくる. これを $\Omega$ 背景パラメーターと呼ぶらしい. ゲージ理論の文脈では台頭, 分配関数・相関関数ではその入れ替えで不変という. 変数 $\beta$ ごとの特性があり, リー群の話, さらに既約表現の関係も出るとか.
モジュライ空間上での積分で分配関数の双対を導入し, 可積分系やパンルヴェでの $\tau$ 関数が出てきて, あとで 9.2.2 項でも議論するとある.
議論自体は線型代数と微分積分で, そこからの世界の豊かさは確かにすごい.
P.49¶
2.5.3 スペクトル曲線の一意化. リーマン面の一意化定理は知っていたが, 共形変換で定曲率化可能という視点は考えたことがなかった.
自分用の注意: リーマン面上のすべてのリーマン計量はケーラーである. これは実二次元で 2次形式の閉性が自明なことによる.
一意化可能性がランダム行列の普遍性にはねるのは確かに面白い.
ジューコフスキー変換, 平面での流体で出てくるくらいのイメージしかなかったが, まさかこんな形で再会するとは. 学部で勉強すること, 何だかんだでいつまでもどこまでもついてくるらしい.
P.50¶
相関関数系の言葉である二点関数という言葉がさらっと出てくる. 摂動展開と絡めて系の基本的な情報を持つ関数の族で, 場の量子論・量子統計 (物性) の基本的な計算対象というのは何となく知っているが, ここの物理をまともにやっていないので勘がない. 物理系の用語に対して「この用語はこんな意義があるので, 計算したくなるのが人情」みたいな話を簡単にまとめておいてもらえると嬉しい.
リーマン球面上の第二種微分なども出てくる. ほとんど名前だけしか知らないのが物理と関わる計算で出てくるのは面白い.
P.51¶
リーマン面の一意化が連結二点関数の普遍的な表式につながるのは確かにかなりいい気分.
高次種数でワイエルシュトラスのペー関数が出てくる. この辺の面白い具体例が遊び倒したい. 楕円関数あたりももっときっちりやりたくなる.
P.52¶
2.6 量子スペクトル曲線. リッカチと絡めた議論があるとのこと. 常微分方程式, なめてはいけないことを改めて知る春の終わり.
P.53¶
ガウス型のポテンシャルでエルミート多項式を導く微分方程式が出てくる. 計算中心の量子力学とのバトルで数学に追われて物理を見失わないようにするべく, 直交関数系・特殊関数をきちんとヒルベルト空間論の話としてまとめたことがある.
私の専門絡みだと具体的な話をするのが難しいので, すぐ一般論か正体不明の直交系と戦うことになってしまって特殊関数の射程距離がいまだにあまりよくわかっていない. それを掴む一端としてよさそう.
P.54 にまでまたがる話として, クーロン気体の有効作用から直交多項式がみたす微分方程式を導く方法としての Stieltjes の方法へのコメントがある. ここに限らないが, 文献参照も割と細かく明確につけてくれていて, もっと突っ込みたい人には便利そう. 何にせよ計算力を鍛え上げた最果てで見える世界という感じで楽しい.
P.54¶
正準量子化.
$N \to \infty$極限の停留点方程式とそこからのスペクトル曲線の特徴づけと, 有限の $N$ での停留点方程式の違いを見て, そこからスペクトル曲線の量子化という用語を持ち出す. P.55 にかけてパラメーター $N$ とプランク定数を対応づけて量子化という言葉を正当化する. $N \to \infty$ が古典極限で有限の $N$ が量子化に対応する.
$D$-加群なども出てくる.
P.55¶
式 (2.119) の対応を使うと周期積分 (2.72) がボーア・ゾンマーフェルト量子化である. 正準交換関係がシンプレクティック 2-形式につながるという壮大な話が出てくる.
P.56¶
.2.7 カイラルランダム行列. カイラリティに対する感覚を何も持っていないので何とも言えない. ここでも漸近的な振る舞いを追いかけるのが中心とのこと.
P.57¶
式 (2.134) あたりから WKB 的な気配を感じる. 最後にラゲールが出てくるので, こういうのを見ると特殊関数熱が高まる. プログラムで特殊関数をお絵描きしつつ, いろいろな計算練習するコンテンツを作りたい.
P.59¶
P.60 にかけて, 得られた微分方程式が 3.4 節で波動関数のスケーリング極限で大事という話が出てくる.
P.60¶
$x\frac{d}{dx}$ を $\frac{d}{d \log x}$ と書いているのをはじめてみた.
第 3 章 固有値相関と固有値統計¶
P.61¶
エルミートランダム行列から相関関数が任意の行列サイズで得られるとか. さらにスケーリング極限での漸近形が普遍性を持つといういかにも物理の人が好きそうな話が出てくる, と思ったら実際に「ランダム行列理論の 1 つのハイライト」と書いてあった. この普遍性こそが応用可能性の論拠とまで書いてある.
量子力学との類推から観測量という言葉を導入している.
P.62¶
Elitzur の定理のメモ: 局所ゲージ対称性は自発的に破れない. この定理, 物理のレベルの定理なのだろう.
相似不変な観測量としてモーメントが出てくる. 対称多項式はこんなところにも.
モーメント母関数とレゾルベント. 作用素論で散々お世話になったレゾルベントがバカスカ出てくるのは気分がいい. 今後はもっとレゾルベントが役に立つと言っていこう.
P.63¶
行列の特性多項式が出てくる. 固有値を求めるための方程式という気分しかなかったが, もっと多項式としての扱いをしっかりやるっぽい. この辺, やはり学部低学年向けの線型代数コンテンツとしても大事だろう.
式 (3.9) あたりはいかにもチャーン類などの幾何が出てきそうな感じる. リー群の表現への言及はある.
P.64¶
シューア多項式が出てきた. あとは $\log \det X = \mathrm{Tr} \, \log X$.
P.65¶
キュムラントが出てくる.
P.66¶
特性多項式が出てくる. 多点関数の議論で因子 (divisor) が出てくる. リーマン面・代数幾何・複素幾何でも出てくる基本的な概念.
P.67¶
特性多項式のレベルベント表示が出てきて, 因子と絡めたいろいろな議論がある. $\langle \log \det (x-H) \rangle = \langle \mathrm{Tr} \log (x-H) \rangle$ が出てくる. いわゆる $\log \det = \mathrm{Tr} \log$ の行列の恒等式. モーメントの展開とレプリカ法で統計力学の匂い.
P.69¶
分配関数と固有値表示, ヴァンデルモンドの行列式. ここまでにもいろいろな行列式の処理が出てきて, 行列式の処理技術と多彩な数学の関連が見えてこれは楽しい.
P.71¶
直交多項式という概念が出てくる. ヒルベルト空間・偏微分方程式と深く関係する具体的な常微分方程式との関係などが想起される.
P.72¶
再生核が出てくる. 積分核とその演算子 (作用素) 表示の議論. ちょうど経路積分のパワーを発揮してくれる概念でもある.
P.75¶
クリストッフェル-ダルブー (Christoffel-Darboux) 公式. よく知らないが多分何かいろいろな展開があるのだろう.
P.77¶
ストリング方程式というのがソリトンと関係あるらしい (本にそう書いてある). 後で出てくる模様.
P.79¶
節タイトルが「4次ポテンシャル: 2 次元量子重力模型」.
P.80¶
臨界点やスケーリング極限と統計力学・相転移関係の議論 (技術) が出てくる.
P.81¶
パンルヴェ (Painlevé) 方程式や KPZ (Knizhnik-Polyakov-Zamolodchikov) が出てくる.
P.89¶
Dirac の海が出てくる. これと普遍性.
P.91¶
固有値統計と相関関数.
P.95¶
フレドホルム (Fredholm) 行列式.
P.98¶
ウィグナー (Wigner) 分布. ウィグナーと分布と言われると半円則を思い出すが, これは何か関係ある?
P.100¶
パフィアン (Pfaffian) と四元数行列式. 四元数はマニアックな対象だと思っていたが, 最近は計算機と回転だけでなく, こんなところで出てくる割と普遍的な対象らしいと知り, かなり驚いている.
P.117¶
二点関数のバルクスケーリング極限で, 「これらの表式には固有値密度関数の依存性はなく, したがって式(3.296)はポテンシャル関数のとり方に依存しない普遍的な漸近形である」とのこと.
P.126¶
一点関数のところでヤング図形.
P.135¶
コーシー核とヒルベルト変換. 前にどこかで見かけてどこで使うのだろうと思っていたが, さらっと出てきた.
P.140¶
リーマン予想との関係.
第 4 章 円型ランダム行列¶
P.141¶
4 章がはじまる. 前章までのまとめではあるが, Wigner-Dyson 型のランダム行列は実固有値を持ち, 固有値は非コンパクトな領域に分布するというのが著しい. これだけでもランダム行列の理論が単純な行列の枠にとどまらない射程を持つことがわかる. 有限の確率分布を得るためにガウス型ポテンシャルなどが必要というのも示唆的.
円型ランダム行列では固有値が単位円周上にあるというのはユニタリ行列の特徴である. そしてこのときポテンシャル項がいらなくなるという.
$\mathrm{U}(N)$のハール測度が出てくる.
P.142¶
CUE (Circular Unitary Ensemple) と行列式構造というキーワードがある. 行列式がとにかく大事だと強調されている.
P.148¶
特性多項式のスケーリング極限の普遍因子の導出に行列式構造を使う方法と, セルバーグ積分を使う方法があるという. これだけで裏に潜む構造の豊かさが示唆される.
P.150¶
ポテンシャルを積分収束因子と呼んでいる. 少し話はずれるが, 少なくとも私の専門の非相対論的場の量子論の文脈では, 量子力学系・粒子系で調和振動子のポテンシャルのように, スペクトルを離散的にするポテンシャルを持つハミルトニアンを confined system と呼ぶ. これは高エネルギーの固有値と (古典的な描像が) 大振幅の状態に対応があり, 基底エネルギーが一番振幅の小さい状態で, それだけ粒子が狭いところに閉じ込められているイメージからつけられた名前である. 特に散乱もない.
2021-08 時点で堀田量子を代表とした現代的な量子力学描く世界からすると, こうした古典的な描像は適切ではないのだと思うが, 一つ示唆的な用語ではある.
それはそうと可積分系と三輪変数という言葉が出てくる.
P.152¶
テプリッツ行列式が出てきた. この間, 最適化の数理の工学・プログラミングの本で出てきたと思ったら, こんなところにも.
あととにかく行列式を計算し倒している.
CD カーネル法, 直交多項式と関数空間の基底, 双直交多項式などのキーワードが出てくる.
P.156¶
自由エネルギーを分配関数で定義し, $N \to \infty$で有効作用の汎関数表示が出てくるという.
P.157¶
Gross-Witten-Wadia 模型の節. Witten の名前だけで既に只者ではない.
最後に変形ベッセルなどが出てくる. 特殊関数がいまでもこんなに大事なのかと驚く.
P.158¶
最後に弱結合領域と強結合領域での自由エネルギーの比較をしていて, それぞれで振る舞いが違うことも指摘されている. 特に相転移と絡めて GWW 相転移への言及がある. しかも場の理論に由来する類似の模型でよく見られるとのこと.
この手の強・弱結合領域の議論は構成的場の量子論でも, 調和振動と場の結合, cavity QED や circuit QED でよく議論されていて, 前からとても気になっている. 結合定数の実験的操作・変更に伴う振る舞いの変化に関しては, これまた堀田量子でも取り沙汰されている量子系・ハミルトニアンのデザインの視点から見ても, 実験的にも重要なのだと思う. P.159 の記述を見るとランダム行列の枠組みだとまた少し趣が違うような気はするが, スペクトル解析の視点から何かしらの関連はあるのだろう.
P.161¶
どうでもいいが, 式(4.101)の下, 太字強調の部分で「シプレクティック」の誤植がある.
P.162¶
四元数行列式構造の文字. ふだん実数・複素数しか使わない立場からすれば, 一般の体の世界に足を踏み込んだと言える四元数が割と気軽に出てきていて驚く. 一般向けの遊ぶ道具として一般的な代数・体論が確実に射程に入っている雰囲気を感じる.
P.168¶
第二部各章の内容を概説してくれている. キーワードが散りばめられていて眺めているだけでも楽しい. 現時点では第6章で $1/N$ 展開が位相幾何的解釈を持つ議論をするのが気になる.
第 5 章 ランダム行列と可積分系¶
P.176¶
戸田格子や格子可積分系の Lax 行列などが出てくる.
P.177¶
戸田格子のスペクトル曲線が Chern-Simons やランダム分割でも出てくるらしい. 戸田格子の守備範囲の広さに驚く.
P.178¶
既に波動関数のヒルベルト変換で与えられているが, そこで出てくる不定性の処理でモノドロミーが出てくるとのこと.
P.180¶
Lax 方程式と絡めて零曲率方程式・平坦接続の議論が出てくる. 井ノ口さんの『曲面と可積分系』にも書いてあった気がする. この本, 以前献本して頂いたのだが, 非常によい本だった.
P.188¶
KP 方程式と KdV 方程式が出てきた. 広田微分など関連する話題も出てくる.
P.191¶
マヤ図形とフェルミオン・ヤング図形の関係を論じていくという記述がある.
P.196¶
Schlesinger 方程式が出てきた. シュレジンガーという人名を時々見かけるが多分その人だろう. こんなところにいたのかという個人的な感慨がある.
作用素論系市民なので, やはりフレドホルム行列式からのレゾルベントカーネルが気になる.
第 6 章 ループ方程式¶
P.209¶
$1/N$ 展開の位相幾何的な意味づけというのがまず気になる.
P.210¶
ガウス型ランダム行列の相関関数の摂動展開は漸近級数としての意味しか持たない事案, 漸近展開に関するいろいろな知見が総動員される未来が見える.
ファインマン図で早速幾何学的解釈が出てくる. ファインマン図もろくに勉強したことがないのでこの機会に勉強したい気分がある.
P.211¶
早速のオイラー標数.
P.212¶
曲面の三角形分割が登場. 分配関数のために対数を取ることがファインマン図の連結部分の寄与だけを取るという話. この辺, まじめに勉強したことがないので感覚が全くない. そもそも物理の意味での摂動論, 学部三年の量子力学の講義・演習での経験しかない. これこそこういう意味づけがあるならもっとがんばって摂動論勉強したのに, という気分になる.
行列積分の $1/N$ 展開を位相的展開・種数展開と呼ぶのがそれだけで勉強意欲をそそる. 注 4 にもひどく楽しいことが書いてある.
P.220¶
レゾルベントの位相的展開の再帰的実行から位相的漸化式といういかにもな対象が出てくるという. 楽しそう. 論文や arxiv にもある文献が引かれていて勉強意欲をそそる.
P.221¶
節タイトルの共形場理論の方法からして楽しそう. ハイゼンベルク代数が出てきた. この間リー環の本で改めて出会った対象がこんなところに.
P.223¶
ヴィラソロ代数やら中心電荷やら. この辺, 指導教員だった河東先生の有名な仕事とも関係する概念だが, いまだに何も知らない.
P.224¶
注にヴィラソロ代数は $\mathfrak{sl}(2)$ の無限次元拡大と解釈できるという情報あり. リー環を勉強する機運が高まる.
式 (6.72a) がレゾルベントのトレースを計算していて, 作用素論系市民としてはテンションが上がある.
第 7 章 超ランダム行列¶
書評 小中英嗣『微分方程式の定式化と解法』¶
森北出版の方から書評してPRしてくれ (もちろん実際にはもっと丁寧な文章でご連絡頂いている), とのことで小中英嗣『微分方程式の定式化と解法』を献本して頂いた.
これは常微分方程式に関する本で, 著者はシステム工学, 制御工学が専門とのこと. 常微分方程式の本を網羅的に調べたことがないどころか, ろくに読んだことがないのであまり他書との比較はできないが, できる限りで知っている範囲の本との比較もしてみる.
総評¶
大雑把に言って二通りの見方をした.
- 高校生まで含む非数学の読者に対して(常)微分方程式の展開を伝えるという側面.
- 非数学の理工系である程度専門的なところにまで踏み込んだときにどうなのかという側面.
この両側面に着目したコメントだ.
まずは前者についてコメントしたあと, 後者についてコメントする.
この本は前半部分がけっこういい感じに書けていて, 数学的細部にこだわらずサクっと全体を眺めるのに向いている.
数学科の人であっても, 物理とか他の分野でどんな応用があるのか 具体的に見てみたいとか,
微分方程式の導出を全くやったことがなくて, そういうところをさらっと追いかけたいと 思っているなら程よくこってり書かれているので 割とお勧めできる.
ちょうどいま, 私も微分方程式に関する無料の通信講座を作っている. 微分方程式を見せてそこから逆に中高の数学が どこでどう役に立つかを紹介していく形で展開しようと思っていて, そこで読後の参考文献の一冊として具体的に勧める予定だ.
ちなみにその無料通信講座はここから登録できる.
あと以前, 常微分方程式に関しては 堀畑和弘・長谷川浩司『常微分方程式の新しい教科書』の書評も書いた.
数学的にきちんとやりたいなら, 最初の一冊としてこちらがお勧めできる. こちらも常微分方程式の数学的な様子について少ないページ数で, 驚くほど広い範囲をすっきりまとめている. 具体的な解法に関してはどうしても重なるところは出てくる.
常微分方程式の射程距離に関していろいろコメントしているので, 堀畑和弘・長谷川浩司『常微分方程式の新しい教科書』の書評ページもぜひ読んでほしい.
高校生まで含む非数学の読者に対して常微分方程式の展開を伝える¶
これについてはかなりいい感じ.
微分や積分からフォローしてくれているし, 速度など物理系とも絡めた議論がある. 少なくとも物理系に興味がある高校生にはとっつきやすいはず.
ただあとで生物系の話もあるものの, 第一章の微分積分の話で絡めて出てくるのは極端に物理に偏りがあるのはどうなのだろうと思っている.
私も学部が物理だったのでついついそちらのネタを出してしまうが, 高校生も対象にしたところで最初の微分積分のところでの絡みを物理だけでしか出さないのはどうかと思わないでもない. 物理での絡みがあることで逆にわかりづらくなる人もいるだろう.
私自身出身が物理だからそうやって持っていく方がもちろんやりやすいし, 他の分野と絡めて初等的に紹介するのにはどうしたらいいかわからないというのはある.
それはそれとして二章移行は運動方程式に関係して高校物理の話からはじめ, ばね, 振り子, 円運動, 電気回路, 放射性元素の崩壊, 生物の増減, 感染症, 金利計算と基本的なネタはおさえている.
そして常微分方程式の本で各方程式の導出をきちんと書いてある本は珍しい気がする.
変に生真面目な高校生だと導出が書いてあると「こんなに広い範囲の分野を理解してないと微分方程式が理解できないのだろうか」と, かえって苦しむところなのかもしれない. 実際の高校生の反応も聞いてみたいところだ. 私も参考にしたい.
P.4の「本書の使い方」節にあるように, いわば高校生向けの内容は二章までだし, 実際にここまで読むだけでも相当おなかいっぱいだろう. そしてやはりここまでは読んでほしいとも思う.
補遺も高校の数学+$\alpha$で必要な範囲の紹介がある. ここに出てくる話やキーワードを軸にとりあえず必要そうな数学をさらっていくこともできるだろう.
見た限り三章・四章は高校生は完全に切り捨て, 理工系基礎教養の数学は修めている前提で書かれているようだ.
軽くコメントや注があるだけでも大分違うだろうし, それは大学生に対しても意義があることだと思うのに, 割とぶん投げ気味なのはかなり気になっている.
以前研究室の先輩が工学部の数学教育に携わっていて, 次のようなことを仰っていたのを思い出した.
実際学生さんの様子を見たり話を聞いていて思ったけど, 工学部は数学は使って慣れろっていう感じで, もっとちゃんとやれば学生さんもみんなもっと楽になるだろうに, って思うよ. あれは学生さんつらいと思う.
勝手な想像でしかないが, そういう雑な数学教育で生き残ってしまった人達がそれで何とかなったからそれでいい, という感じで負の連鎖を回しまくっている印象がある.
後半はもっと丁寧にした方がよかったのではないかという印象が強い. 実際, ここからは後半に軸足を置いた批判的なコメントをつける.
非数学の理工系である程度専門的なところにまで踏み込んだときにどうなのかという側面¶
率直に言って気にいらないところが多い. これは私が学部が物理とはいえ, 修士以降完全に数学スタイルを身につけてそっちの文化に染まりきった弊害なのかもしれないというのは考えている.
ただ私の中の物理成分も「これはどうなんだ」と言っているので, そういうところもコメントをつける.
まずタイトルまで含んだ本全体のレベルで気になることとして, 偏微分方程式に一言も触れていない(気がする)ところがある.
私の見落としというのならすぐに訂正するけれども, まえがきで「数学の使い方をもうちょい前に授業で扱ってもらいたかったなぁ」というのなら, 偏微分の使いどころもきちんと触れておくべきだろう.
その手の半端さがいたるところに見られて, それがひたすらに気になる. 特にP.4で「理工系の専門科目での~」という記述があるので, 専門性の高い応用まで見込んだ記述の不足が本当に気になって仕方ない.
ここからは具体的にコメントしていこう.
P.35 積分のほうが微分よりも難しい演算だといえる.
これはどういう意味だろう. 手計算の意味が曖昧というのはさておき, むしろ原理的に現行人類が厳密な解を知らないとかそういう方向であって, 手計算が難しいのとはまるで意味が違う.
これはいわゆる楕円積分や誤差関数のように積分をそのまま新たな関数の定義としているとかそういう感じの意味だ.
また工学的応用という観点から言えば, 仮に厳密解が求められたとしてもフーリエのように無限級数や積分では収束性を吟味しなければ使い物にならないはずだし, 直接偏微分方程式を数値計算した方がいいかもしれない.
工学的な有用性や応用をも意識した本だというのならそういうところまで意識した記述にするべきだろう. 紙数の都合というにしても注をつけるくらいはできるはずだ.
P.35 さまざまな関数の不定積分
不定積分の性質にしているのがセンスない: 定積分にするべきだろう. まえがきにもあった数値計算でやっているのは定積分だし, 実際に使うのは初期値つきの微分方程式のはずでそこではどうしたって定積分だ.
応用で真っ先に必要なのは初期値付きの方程式で定積分だし, そっちで書くべきだ.
P.49 微分を含んだ方程式, つまり微分方程式
代数方程式との比較で, 未知関数とその導関数の関係で書かれた方程式くらいに書いた方が比較でイメージしやすいのでは.
フーリエ, ラプラス変換を前提に考えれば代数方程式との比較は本質的でさえある.
どこでコメントしたものかという気はするがここで書いておこう.
解法の説明ももちろん大事だが, 解の一意性をきちんと話した方がいいのでは. 一意性がないところで数値計算するの, 数値計算するたび計算結果がどの解になるかわからないし, 怖いと思っている. 物理とか工学の人達, そういうの怖くないのだろうか.
前, 昔の理論物理の人の文章で次のようなことが書かれていたのを見たことがある.
「微分方程式の解の存在や一意性, 安定性なんてどうでもいい」と言っていた人が, 確定特異点の側で数値計算をはじめて「思うような結果が出ない」と困っていたのを見たことがある. そういうところで無駄な時間や労力を使わないために数学の理論があるのだし, だからこそ勉強もさせているのであって, 数値計算一つとっても数学の理論を甘く見てはいけない.
こういうのを見て育ち, さらに修士で数学科の数学をやってきたので, 一意性の言及がない微分方程式の本, それで応用上本当に問題ないのだろうかといつも思っている.
例えば Google のページランクも, 数値計算で起こる問題として一意性を気にしている. もっと過激な状態として, 数理工学の画像処理関係で, 考えている数学的定式化に数学的な厳密解がないことがあって, それでもそれらしい解をでっちあげない状況があるというのを見たことがある.
いま本がロストして見つけられないが確か次の本の杉原厚吉さんの記事だったと思う.
解の存在すら保証されないところでいかにして戦うか, というすさまじい工学のバトルフィールドを見たので, そういうのいいのかな, とただただ気になる.
2.1 節
解法解法と連呼しているが, 制御などはむしろ解けないところをどう解くかみたいなところが大事なのだと認識している. なんか解けることを前提にした議論は工学的に役に立つの, と思ってしまう.
先の数理工学の本の杉原厚吉さんの記事のように, 工学者の書く本はもっと殺伐と「具体的に解き方がわかり解も綺麗に書けるおもちゃを扱う. 現実の厳しさはこんなものではない」みたいな感じだと思っていたが, 全然違うのでかなり衝撃を受けている. この記述だと既存の本と本質的に変わらないのでは感がある.
P.71 注, 数学では「何かの処理を施す」ことを左からの掛け算で書くことが多い.
これ, 関数解析の解析学では, という感じ. 数学全体で見るなら右作用もたくさんある. むしろ「解析の人は左作用で書くところ, 代数の人はよく右作用で書きますね」くらいの話を聞いたこともある.
この辺は工学者に対する要求としては無茶という自覚はある.
P.75 仕事の定義
何で力 (の大きさ) は時空間変化がない前提なのか. 微積分使う前提なのに何故積分で書かないのか. クーロン力扱えない. 端的に謎.
P.89 ロジスティック式.
ロジスティック方程式というのが普通と思っていたがそうでもないのか? ロジスティック式でググってもロジスクティス方程式が先に出てくる. ロジスティック式という呼び方もないことはないようだが, Wikipediaでもロジスクティス方程式に転送されている.
P.93 この(連立)微分方程式を式変形のみで解くのは難しい
ここでの式変形という言葉の意味と「難しい」はどういう意味か. 頑張ればできるということ?
P.96 2.12 の解答
$x=y=0$の解が抜けている.
P.107 例 2.40
「鏡を置く場所を$(x, y)$とすると鏡の傾きは$dy/dx$と表せる」というところ, 全然意味がわからないがこの例は面白い. ぜひ自分のやつのネタとして採用したい.
P.112 解の物理的な妥当性の検討
これはいい感じ.
P.129 微分方程式の解法.
いつも気になるのは, 代数方程式で解の個数の議論をするのに微分方程式になるとそれが途端になくなること. 1 つしかないか他にもあるかは応用上大事なのでは? フーリエやラプラスで代数方程式に変換するのだし, 本質的なところだと思うのだが.
P.135 演習問題
身につけるのにある程度の量の演習は必要なのはわかる. しかし実際問題, この手の演習は工学的にどのくらい求められているのだろう. 高校生からすると部分分数分解の応用などと言えないこともないし, (部分分数分解が) 役に立つと強弁できるのかもしれないが, それで工学的に嬉しいのか.
単に数字変えただけの方程式よりも, パラメータを変えると物理的にどうなるかまでの吟味をさせるタイプの演習をさせた方が単調な演習よりも効果ある気がしないでもない. その辺は教育的にどうなのだろう.
私も学部二年の数学演習のとき, 同じことをしたはずだがもう全然覚えていない.
P.137 線形(linear)である
線型という言葉だけは出てくるがそれが何なのか, 線型だとどうありがたいのか, そういう話が全くない.
この後でも線型代数の話が全然ない.
微分がこってりなのにこの扱いの差は何なのだろう. P.5でも線型代数への言及がない. この本, 本質的に線型代数の範囲内で議論している本だし言及するべきだ.
注で軽くコメントするだけで全く違うのに, なぜここまで徹底的に線型代数を無視しているのだろう.
線型代数は微積分以上にお役立ちポイントわからないようだし, その線型代数の使いどころが見えるところはきちんとコメントするべきだろう. まえがきの「数学の使い方をもうちょい前に授業で扱ってもらいたかったなぁ」はどこにいったのか. こういうところが本当に気にくわない.
P.147 虚数単位が$j$
補遺で定義しただけなのでちょっと驚いた. (複素数が入っているときに履修した)高校生が読むことを考えると, 高校生にとって虚数単位は$i$だから高校生への教育的配慮に欠ける.
それ以外にも数学として複素数をやるとき, 適当な意味で「数学の本」でやるならやはり虚数単位は$i$だし, 一言断わるべきだろう.
電気系というかその周辺の工学の人間しか対象読者にしていないならもちろん別だが, 生物や金利の話までしているこの本でそう言い張るのは強弁にすぎる.
P.148 基底関数.
こんな言い方聞いたことないがどうなのだろう. 適当な空間を設定した上で単に基底というならもちろんわかる. ここも線型代数にコメントするべきだが全くない.
あと解の要素というのは何だろう? 気分はわかるが記述が雑. 工学者に言うのも酷という気はする.
P.148
方程式の分類に関して線型・非線形の言及がない. 線型しか扱わないので工学で困るのではないだろうか. 注があるかないかだけで全然違うはずだ.
P.156 注1
ロピタルのようなマイナーな定理よりもテイラー展開で議論した方が応用性が広いし, ふつうの処理だろう.
厳密な評価になるとはいえ, 何で中途半端に応用範囲の狭いロピタルにしたのかがわからない.
P.169 余力があれば読んで.
それが応用できて何が嬉しいのか書くべきでは. そもそも, 信号処理や制御が何なのか自体わからない読者が置いてきぼりだ. 「研究でも使われるし身の周りにもある回路の話だ」みたいなことを書いてもっと読者の興味を引いてあげるべきだろう.
まえがきの「数学の使い方をもうちょい前に授業で扱ってもらいたかったなぁ」の物理や工学版だから, 紙数の都合を考えても何とかして盛り込むべきだろう. 専門の学生を相手にしていても丁寧に説かなければ通じないはずだし, 何故そこをさぼるのか.
この辺に猛烈な手抜きを感じる. Amazonの内容紹介に次のように書いてあったけれども, こんな書き方では類書と同じではないか.
『定式化→解法』の順番で学んでいけば, その答えがみえてくる. 一味違った切り口の入門書.
P.177 行列による表現
高校でもやる微分の話はこってりやっているのに, 高校で必修とは限らない線型代数が全く説明ないのでひどくアンバランス. 記号の説明もない.
注が一つあるだけで高校生にも近付きやすくなるのに, P.4 で△マークをつけたからといってここまで完全に高校生を切り捨てるのか, と衝撃を受けた.
行列の指数関数とかそういう話もできるし, 微分作用素(演算子)自体を指数の肩に載せる発展方程式みたいな話もある. 量子系の話をすると出てくるネタだし, ちょっと発展的な常微分方程式の本でも出てくる話だ.
線型代数がどうしてここまで扱いが悪いのだろう.
P.180 実用上非常に価値が高い.
実用上の価値の高さというところ, 実際の工学の場面でどのくらいなのか正直ピンと来ない.
最先端の研究, 論文でも使われるとか言われたら私は感覚が掴める. 非常に重要とだけ書かれて具体性のない話はよく見かけるのでその辺もっと注意すべきでは. 「大事なのはわかった. でもそれは実際どこでどんな風に使うんだ. それを教えろ」みたいなことを著者は学生時代に思わなかったのだろうか.
そもそもその辺はまえがきで数学に関して言及があるのに, 既存の本と同じ扱いに堕している感がある.
頑張るべきはこういうところだろう.
P.187 これは明らかに物理法則に反している
この表現が気になる. 物理法則というよりも実験事実と言うべきでは. また物理法則というと具体的にどの法則だ, と思う人もいる気はしている. 明示しないで物理系とは限らない高校生に通じるのだろうか.
P.191 ラプラスの線型性.
工学の人, こういう記述だけで線型性の意義を感じ取れるのだろうか. 何度も書いているように全般的に線型の方程式を議論しているにも関わらず線型性への言及が少ない.
この記述にしたって「他の本にもラプラス変換の線型性と書いてあるから」と, 極めて作業的な感じで重要性を何ら認めていない感じがする.
理工系必須教養である線型代数の使い方を全く説明していないが, 微分方程式の本だから微分積分の話だけしていれば事足れりという話なのだろうか. 線型代数は紙数の都合で省いたにしてもあまりにも言及がなさすぎる.
P.196, 197
単位ステップ関数やインパルス関数の意義が何も説明されていない. あとできちんと説明するとか一言入れるべきでは? 少なくとも高校生には通じないだろう. この時点で対象読者から切って捨てているなら話は違うが, 対象が電気電子系の学生でもちゃんと説明するべきなのではないかと思う. 相似定理と畳み込みも何も説明がない.
注すらないのが本当にわからない. 悪い意味で数学者の書いた本を読んでいるようだ.
P.217 余力があれば.
前と同じく説明が雑. むしろアピールポイントなのに何してんの, という印象.
改めて最後にふと思ったこと¶
偏微分方程式では導出も書いてある本を見かける気がする. 常微分方程式だとそんなに導出が書いてある本が少ないのだろうか.
微分方程式の本は主に偏微分方程式に関する, 学部 3 年以上の専門で読むようなゴリゴリの数学科の本しか見たことがない. 中高生または中高の数学復習用講座を作ろうと思って, 最近ようやく常微分方程式の本をいくつか買って眺めてみたくらいだから, あまり適当なことは言えないのだが.
微分方程式は,どこでどのように役立っているのか―― 『定式化→解法』の順番で学んでいけば, その答えがみえてくる. 一味違った切り口の入門書.
Amazonの内容紹介でこう書いてあったが, 非数学の理工系出身なら誰でも思いつくし, 講義では実際にそういう感じのフォローが入るのではないだろうか.
常微分方程式の本をもっと読み漁ると, 実際にこういう感じの本は少ないということなのかもしれない.
気に入らないなら自分で作れ, というメッセージは改めて受け取ったし私も好きにする.
もしあなたがこの本の逆向き, つまり偏微分方程式も含めて微分方程式をもとにして 中高数学の何がどこでどう使われるかを見る講座に 興味があるならぜひ次のページから無料の講座に登録してみてほしい.
シミュレーションを基調にしていて, 具体的なコードと一緒にプログラミングについても言及がある.
本について最後にまとめ直すと, 前半部分だけ読んでくれればそれだけでも相当の収穫がある. というか後半はちょっと勧められない. それも専門課程を目指す人であればある程勧められない.
高校生くらいならそんなに深いところまで意識する必要もないと思うので, 逆に後半までがんばって読んでもいいんじゃないかという気はする.
そんなところだろうか.
書評: 数学は世界を変える¶
本¶
概要¶
詩的な文章とイメージあふれるイラストで, わたしたちが数学を学ぶ意味を説き明かす. 独創的な解説と数学への信頼にみちた入門書の古典, ついに刊行. 数学を学ぶ喜びがここにある.
との触れ込みだったので, 動画作成時の参考にもしようと思って買ってみた.
不思議というか, 本当に自分で困っているのだが, 私としても非数学の人に気にしてほしいと思っているあたりは話があってそういうのを世間に広めてくれていて, おそらく実際にそういう部分が賞賛されているのは助かるというか嬉しいのだが, だからこそ逆に個人的な感慨に反するような部分が気になってしようがないという感じだろうか.
ただ, イラっとするところは「世間一般の意見」という部分ということもいくつかあるので, その辺りは言い掛かりになってしまうので, これもまた色々とアレだった.
内容面はこれから書くこととして, フレーズごとに改行されている形式面がかなり面白かった. 参考にしたい.
賞賛のコメントについてはは他のところで色々あるので, 細かいところで気になった部分を記録しておこう.
P.37¶
全ての長方形の面積 $A$ を知るには 高さ $a$ と底辺 $b$ を掛け算しないといけない という場合には, それは代数学だ.
面積の公式, これ, 代数か?
P.39¶
数学を知れば知るほど生活は楽になる.
個人的な感慨としては, 世間との意識の乖離がどんどん激しくなって, 生活は苦しくなっていく. 実に辛い.
P.41¶
「でも戦争屋は, 数学をもとにした近代兵器を使っているじゃないか. ヒトラーが成功したのは科学のせいで, 科学が良い生活に導いてくれることはありえない」.
上でも書いた「世間一般の意見」という部分を一つ抜いてみる. これが猛烈に頭に来るが, それはそれとしてこの気が狂ったような文章, 見るだけでつらい.
P.49¶
そこには数学者がいる. 「純粋」数学者ではない. … 4 階の数学者は, 過去の古典数学を 3 階の「純粋」科学者の科学的発見に当てはめる. 彼らは 科学的データを採り上げ, 持っている数学的道具を使って それを整理して研究する.
この「純粋でない数学者」なる存在, 何なのか分からない. いわゆる理論物理学者みたいな人達を指しているような感じはするが, 何か違う. もやもやして気持ち悪い.
今感想を書きつつ本を読み返してもいるが, 段々つらくなってきた.
P.50¶
まさに彼らは, 屋根裏部屋をシェアしている現代芸術家とお似合いだ!
私の感覚だと芸術家とやらと数学者, あまり相性いいように思えない. 正確に言えば, 数学者が芸術関係の話を芸術家とすることはできるが, 芸術家と数学関係の話をすることはできそうにないとでもいう感じ. 一方通行というか何というか, 私の心に悲しみが去来する.
P.52¶
「結局のところ 科学は善悪の判断がつかず 非道徳的だ」
「世間一般の意見」の方だが, 涙を禁じ得ない.
つらい.
Twitter でも呟いたが, いわゆる啓蒙書の類, 参考にしようと読むたび心に深い傷を負うの, 実につらい. そもそも内容が酷い本が多いせいでもあるが, 上でも多少書いたように, 「世間一般の意見」を強制的に目にさせられる「言い掛かり」の部分もかなりあることを改めて意識した.
既に書評でも何でもなくなっているし酷く中途半端な記述にしかなっていないがつらいので一旦ここで打ち切る. 心が癒えたら, また追記しよう.
追記: 2013/1/27¶
Twitter で kyon_math さんから次のようなご教示を頂いた: これ. 一応文章も引用しておこう.
これ, 相当に訳がひどいのでは. 「当てはめる」は当然「応用する」だし, 「純粋でない数学者」は明らかに「応用数学者」だ. 「全ての長方形の...」の部分はすでに日本語として破綻している.
リリアン・リーパーさんは有名なガロアの評伝の作者ですね. そんなにひどいとは思えません (私は読んでませんが). 意味不明な箇所は翻訳の不手際によるものも多いのではと思います. ワイルの「古典群」フルトンの「代数的位相幾何学」も原文読んだ方が分かりやすい箇所が多い.
翻訳の本はいくつか持っているが, あまりまじめに読んだ本がない. Feynman の本など「調子がいい」本は原著を読まないと面白くないというし, 中高生ならともかく, 英語が原語の本はやはり原著を読むべきか.
全く関係ない話だが, フランス人はときどき重要な文献をフランス語で書くので 関連する分野の人は非常に困ると聞く. 私はフランス語で困ったことは無いが, 確率の論文を読んでいたときに 参考書にロシア語を引かれていて困ったことがある. 論文自体は結果さえ知っていれば良くて, とりあえずそこまで真剣に読まなくてもよかったので大きな問題にはならなかったが, 読む必要が出てきたら割と本気で困る.
書評: 山下真『量子群点描』面白かったからあなたも読もう¶
私の 1 つ上の研究室の先輩, 山下真さんの (多分はじめての) 本である. 山下さん, 非可換幾何のイメージがあったのだが, 量子群もやっていたのかという感じ. いまはよくわからないが, 私が在籍していた当時は現北大の戸松さんは量子群が専門だったというイメージなので, 戸松さんではないのか感がある.
山下さんの記憶¶
こう書くと山下さんが死んでしまったようだが, 本を書いたばかりだしそんなわけはない. 山下さんというと, 修士の頃の次のような言葉を思い出す.
非可換幾何の論文読んでて引用があったからそれを読むとまた引用がされてて, そっちを読んだらまた引用で, 辿っていってもそれについてちゃんと書いてない. 他には引用されている論文を見ると関係があっても微妙に違うことが書かれていることがあって, 本当に困る. 特に Connes の論文がとてもつらい.
その他, 山下さんは抽象的に話してもらわないとわからないタイプで, さらにそれを講義でもやっていたようだ. 抽象的に話しすぎて, お茶大の集合論で有限集合に関する全単射の 簡単な円周問題すら学生の手が動かないほどの抽象性が高く理解しがたい講義をしていたと聞いている. 海外の講演でも同じスタイルでやって「わからないからいい加減にしろ」とかいう話が出て, 本人も反省して少し修正されつつある, とかいう話を以前どこかで聞いた記憶がある.
河東先生による推薦文¶
それはそれとして, 最初に河東先生による推薦文を勝手に全文引用しておこう. PDF はここにある.
推薦の言葉 本書は量子群に関するたぐいまれな入門書である.量子群に関する本はすでに世界中で多く出版されているが,本書はその内容において大変ユニークな本である.量子群と言ったときに何を指すかは人によって異なる.一番多いのはDrinfeld–神保式の普遍包絡環の量子変形のことであり,神保氏自身による日本語の本を始め,世界中で数多い本が書かれている.もう一つはWoronowiczに始まる,リー群上の連続関数環の量子変形であり,これについてはあまり成書がない.さらにもう一つはある種のテンソル圏の総称であり,これについては英語で本が出始めたところである.これら三者は密接に絡み合ってこれまで発展してきているが,互いに同じものではなく,これらを統一的に見る視点はこれまでの各書にはなかったものである.その点本書はこれらをバランスよくカバーしており,英語を含めても世界初の貴重な書物である.
量子群とは普通の群,特にしばしばリー群を何らかの意味で変形して「非可換化」したものである.ただし群演算はたいてい元から非可換なので,これを非可換化することには意味がない.Drinfeld–神保式の場合はリー環を変形する.一方,Woronowicz式の考え方は,空間とその上の関数環は同じものであり,関数環の方を非可換化することによって,空間の「非可換化」が得られるというものであり,作用素環論では古くからなじみ深い考えである.元の空間がリー群の場合は,そこに積演算が入っているため,関数環の方に Hopf 代数の構造が入る.こちらの代数構造を変形するのである.またコンパクト群についてはその有限次元ユニタリ表現たちが対称テンソル圏をなすので,この「対称性」をいくらか弱めたテンソル圏を考えることによって,「量子的な」対称性が実現できる.
これらの構造はいずれも純代数的に考えることができ,そのような見方の研究者の方が数が多いかもしれないが,自然に無限次元の代数系が現れるため,作用素環論がそこでの重要な道具となり,上記の三つの見方を統一する力の元を与えてくれるのである.著者の山下氏はこのテーマにおける世界第一線の若手研究者であり,このような入門書が日本語で書かれることはたいへん喜ばしいことである.多くの若い読者が本書によって量子群の魅力にふれることを願っている. 河東泰之
私が書評を書く意味がどの程度あるのかは知らない. 自分の備忘録もあるのでとにかく書く.
全く関係ないのだが, 河東先生のページのニュースを見ていたら次のような謎の記述があった.
- http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/news.htm
私のところで今年3月に博士号を取ったOtani君が新聞に出ていることに気づきました.こちらの記事だと博士論文題目も書いてあります. (4/26/2017)
何だこれ.
第 1 章 Fourier 変換と双対性¶
気を取り直して内容について書いていこう. まずまえがきがかなり気に入っている. 次のような記述があるのだ.
一方で, 量子群について興味があって学んでみたくても, 様々な切り口がありすぎてどこから手をつけたらいいのかわからないと敬遠してしまっている人も多いのではないかと推察される. そのような方に, 量子群に対する様々な分野・方法論を見渡せるような「地球儀」を提供することが本書の目標である.
私が最近展開している通信講座では, まさにこの辺, 数学や解析学の大きな姿を見せることを目的にしている. やはりそういうのも大事だな, と勝手に意を強くしている.
そして内容は一番はじめにフーリエ解析と表現論から入る. 現代数学観光ツアー 物理のための解析学探訪のラストがまさに フーリエだったので, 直接的にこの本に繋げられる. メルマガでも宣伝しておこう. 講座では作用素環にも何度か触れているし, その意味でもばっちり感がある.
フーリエということは群の表現論はもちろんのこと, リー群が出てくる. Drinfeld–神保の量子群からすればリー環の量子化なのだから, リー群の話をせざるをえないので, その意味からも当然だ. リー群, 通信講座を作る体でもう一度きちんとやり直したい.
山下さんは作用素環サイドということもあるし, かなり早い段階から作用素環の匂いを感じさせる. 節の名前が「Fourier 変換と双対性」だし, 作用素環から見ると代数的場の量子論での DHR-DR 関係の圏論的な話もあるのだろうかと思うが, 後半を見ると書いてあるのだろうか. (読み進めながら書いているので後半の詳細はまだよくわかっていない.)
全体的にかなりすっきりとまとまっている感じがある. ノートとこの章に関する参考文献を読んで, 有名な辰馬『位相群の双対定理』が作用素環的なアプローチだということをはじめて知った. 読みたい.
小林-大島も引用されている. これも面白そうと思って 1 度さらっと眺めて終わりになっている. リー群の復習を兼ねてきちんとやり直したい.
前も記事を書いた記憶があるが, リー群は小林先生の講義を受けたことがある. 何も持たず颯爽と講義室に現われ, 質疑応答に対しても完璧な講義を展開し, 講義が終わって質問がないことを確認すると颯爽と去っていく姿に感銘を受けたことを覚えている.
ちなみにその前年に大島先生によるリー群の大学院の講義があったのだが, 何故か常微分方程式の講義になっていた. アクセサリーパラメータという概念が出てきたことだけ覚えている. とにかくほとんど何もわからなかった.
大島のお子さんも東大数理で, 何年か下にいらっしゃった記憶がる. 確か小林研に行ったのではなかったか.
お子さんの方は大島先生より遥かに明快な話ができるようで, 先輩が「彼にお父様の分の講義をやってほしい」と言っていたことを思い出す. 確か三村さんが言っていたと思う.
第 2 章 Yang-Baxter 方程式¶
Yang-Baxter というと統計力学のイメージがある. 結局生まれたのはどこなのだろう. 冒頭部を見ると Yang は 1 次元量子系の散乱問題を扱っていたという話なので, ふつうに量子力学 (の物理) が発祥なのだろうか. 可積分系じたいもどこが発祥なのかあまりよくわかっていない.
(量子) Yang-Baxter 方程式を見ると結び目を想起する.
P.20 によれば, 数学者の間で Yang-Baxter が有名になったのは Fadddev による量子逆散乱理論であるとのこと. Fadddev, よく名前を聞くがいまだに物理の人なのか数学の人なのかよくわかっていない.
P.20 の下方, 時間発展の作用素半群を見るとそれだけで胸が高なる. P.21 ではバッチバチに解析力学の話なので, 解析力学もやりたくなる. これも復習する体で通信講座作りたい. この本楽しいな.
2.4 節で組紐群との関係が出てくる. これを見ると, 代数的場の量子論, 2 次元時空での DHR-DR で組紐が出てくることを真っ先に思い出す. Haag の Local Quantum Physics で眺めたくらいで, ほとんど全く理解できていないのだが.
ちなみに学部 4 年のとき, どんな本を読もうかと思って河東先生に相談したとき, 次のようなことを言われた.
Haag の本は Haag の哲学を語ったもので, 教科書ではありません.
第 3 章 $\mathrm{SL}_q(2)$, $\mathrm{SU}_q(2)$¶
戸松さんの話で何度か作用素環スタイルの話は聞いたことはあるけれども, Drinfeld–神保の量子群スタイルの量子群の議論は はじめてまともに読んだ気がする.
3.3 で「コンパクト量子群 $SU_q(2)$」というが, コンパクト量子群のコンパクトにはどの程度実効的な意味があるのだろう. 要は $SU_q(2)$ が本当に適当な位相でコンパクトなのかということが知りたい. そもそも位相空間なのかどうかすらよくわからない.
3.4 節で Templerley-Lieb 代数 (または圏) が出てきた. この Lieb は解析系数理物理の魔人, Elliot Lieb である. 物質の安定性あたりで著名な例の魔人. 可積分関係でも大きな仕事があって, Templerley-Lieb 代数はまさにそれという認識.
可積分系の話だと学習院の田崎さんも絡んだ Hubbard の 1 つ, AKLT 模型もある.
最後, ノートで Ocneanu の名前が出てきた. 河東先生が paragroup とかをやっていた頃にはよく名前を見かけた. まともに論文を書かないという話だった Ocneanu, 今は何をやっているのだろう.
第 4 章 Lie 環や $r$ 行列の量子化¶
このあたりはもう完全に私が知らない世界だ. 「そうにゃんか~」という感じでもうまともにコメントもできない.
P.48 注 3 で量子群で有名な Kac が 2 人いることをはじめて知った.
4.4 節の次の記述が衝撃的だった.
Drinfeld がこの概念に到達した動機は Knizhnik-Zamolodchikov 方程式と呼ばれる偏微分方程式から得られる組みひも群の表現と, 量子普遍包絡環の普遍 $R$ 行列により与えられる表現とを比較した河野の定理をよりよく理解することだったとされている.
偏微分方程式から得られる組みひも群の表現, すごいゲテモノという感じがある. ちなみにこれ. いわゆる KZ 方程式のことだった. 名前だけは知っている.
リンク先によれば頂点作用素代数関係の話らしいので, 代数的場の量子論からの共形場を介してまた作用素環にまわりまわる感がある.
第 5 章 変形量子化¶
これも名前だけは聞いたことがある. 冒頭部を見る限り, 幾何 origin で解析力学の数学が起源のようだ.
P.60 での話題. 古典的 Yang-Baxter 方程式の幾何的な意味づけとしての Poisson-Lie 群が出てくるらしく, そういう話はやはり面白い.
P.61 で Borel 部分群 $B$ という言葉が出てきた. ふと, 昔, 山下さんと会話した「僕がいる院生室で Borel っていうと, ルベーグ積分とかの Borel じゃなくて違う Borel の話になるよ」というのを思い出した. 旗多様体が出てくるので Borel-Weil とかの Borel でいいのだろうか. Borel-Weil も名前しか知らないのだが. Borel-Weil も前に挙げた小林-大島本に書いてあった気がする. もっとちゃんと読みたい.
第 6 章 代数的な理論¶
どんどんコメントする余力がなくなってきた.
P.73, これも黒木さんのツイートで見かけて名前だけは知っている 柏原の結晶基底の話が出てきた. 結晶基底はなぜ結晶という名前がついているのだろう.
P.80 で推移的な作用を「作用素環論的な文脈ではエルゴード作用という」というコメントがあった. 本当に恥ずかしいのだが, 推移的な作用とエルゴード作用の関係を考えたことがなかった. ふだんろくに使わないのでいつまで経っても覚えられなかったが, これなら両方覚えられそうだ. 念のため定義を引いておこう.
群 $G$ の集合 $X$ への作用を考える. $X$ が空でなく $X$ の任意の元 $x$ に対して $Gx = X$ が成り立つとき, $G$ の作用を推移的と呼ぶ.
確かに (物理の気分で) エルゴードだ.
ノートで戸松さんの論文が引用されていた. ちょうど私が院にいた頃に出版された仕事のようだ. こんなことをやっていたのかと 10 年のときを経て知った.
第 7 章 作用素環に基づく理論¶
知っている名前や概念が突如大量に出てきたのでテンションが上がる. やはり名前だけでも知っている話が出てくると一気に食いつきがよくなる. 自分のコンテンツにもこの知見を活かさねばならない.
P.87 の cancellative な半群構造を持つコンパクト位相空間の性質, 尋常ではない感じがある.
P.87, Haar 測度の存在と言われるとテンション上がる. やはりこの辺好きなのだなと実感する.
P.90, Woronowicz による淡中-Krein 双対性の話を見ると, やはり難しすぎて断念した DHR-DR の勉強をやり直したくなってくる. 確か荒木先生の本で勉強したような記憶があるが, あれ, 本当に何もわからなかった. 使われている数学に全くついていけなかった. 今もまだついていける気がしない. DHR-DR, いっそ原論文を読んだ方がいいのではないかという気もするが, 手元にあっても眺めたことすらない. その辺も検討した方がよさそう.
P.95 の $C^*$-環に affiliate する非有界自己共役作用素とか, いかにもゲテモノ感があるし, Woronowicz はよくそんなの頑張って解析したな感がある. 竹崎先生が「作用素環の人は非有界作用素を本当に嫌がる」みたいに言っていた記憶がある. Riefel-Van Daele の有界作用素による冨田-竹崎理論の定式化に対する 有名な論文があるくらいだし, 竹崎先生がそういうならそういうところもあるのだろう. 実際, 非有界作用素の作用素論が専門である私としても, 非有界作用素は面倒で鬱陶しいとは常々思う.
第 8 章 テンソル圏¶
代数的場の量子論は学部 4 年のときに専門にしたいと思って, 一定以上の勉強もしたところだし思い入れがある. そことの絡みがあるからずっと気になってはいるところだ.
もはや内容とほぼ関係ないのだが, QED と絡むところで DHR-DR に対応するという BF analysis はどういう展開があるのだろうと学生の頃から気になっている.
脱線ついでに言えば, 亡くなってしまったのでもはや永遠に聞けないが, Borchers による自己同型群のスペクトル解析もずっと気になっている. 多変数関数論マターでもあるので, そちらもちゃんとやりたいとか, そんなことばかりが頭に去来する.
まとめ¶
細部はばっさり切り落としていて, とにかく大きな姿をまず掴みたいという希望があるならかなりいいのではなかろうか. 本の中でもいくつか引用があったように, 雑誌「数学」の解説なども確かに参考になるだろうけれども, 短かすぎてなかなかまとまった姿は見出しにくいように思う.
それがこうした本の形にするのがいいかはともかく, 100 ページくらいですかっと (日本語で) まとまっているとやはり読みやすい. 私の既存の講座, 特に現代数学観光ツアー 物理のための解析学探訪は A5 サイズで 350 ページもあるのでさすがにやりすぎた感がある. 実際にいまもっと小さくしてトピックも絞ったものを試験的に展開してみようと思っている. いろいろ試してみよう. そういうモチベーションや参考にもなったので, 非常によかった.
何より先輩の仕事だし, 負けていられないと出来の極めて悪かった後輩のくせに 勝手に思っている.
書評: 数学まなびはじめ 第 1 集 深谷賢治¶
本文¶
今回は第 1 集の深谷先生のところについて書評というか感想を書こう. 冒頭に次のような記述がある.
「数学まなびはじめ」というシリーズであるが, あまり古いことを書くのは恥ずかしい.
ここに注があって, 大学 1, 2 年のころの話は岩波講座「現代数学の展開 1 」の月報に書いたとある. 手元には無いが, これも読んだことがある. こちらにはケリーだか有名な位相空間論の本をどう読んでいたか, またその読み方がどう滅茶苦茶だったかなどというのが書いてある. どの本だったか忘れたが「この本のはじめは定義ばかりがずっと続いていて全く面白くないのに, どうしてあんなに熱中して読めたのか不思議で仕方ない」とか「今の私がそんな風に本を読んでいる学生が見たら, そういう読み方はまずいと指摘しているところだ」と言った記述があり, これもまた面白い. 深谷先生ですら学生の頃には本の読み方を分かっていなかったということであり, 何というかほっとした記憶がある. またこのクラスの, 後年優れた数学者になる人でも初学時には変な読み方をしてしまうのだから, 初学者や独学者は適切に導く必要があるとも思うようになった.
本文だが, 冒頭から面白い. こうはじまる.
臆病で大学院に落ちるのが怖かったので, 学部で所属していた東京大学以外に京都大学の大学院も受験した.
あまりこういうのもアレだが, 深谷先生のクラスでも大学院に落ちるのが怖いというか, 院試に落ちる可能性を考えたというあたりにこう色々なものを感じる.
私は, ひねくれた性格のせいか, 難解ということになっているものを勉強したがる癖があり, いまでも直っていない.
注 4. これが悪いことか良いことか, 一概には言えない. 難しくないことは価値がないというのは, もちろんとんでもない偏見で, 数学の定理は証明するのが難しければ難しいほど良い定理だなどというのは真っ赤な嘘である. しかし, 難しそうだというだけで逃げ出すという風潮も, 困ったことであろう.
少し話がずれるが 2 つ想起したことがある. どれだったか忘れたが, 河東先生のページに置いてある Jones に関する文章に, 「Jones の仕事は誰かやっていてもおかしくなったが, それをきちんと取り出してきちんと調べたことに意義がある. 」 というような記述があった. 高温超伝導を引き合いに出し大意として 「ありそうだとは思っていても実際に誰も踏み出さなかったところに果敢に挑んだことが素晴らしい」とあった覚えがある.
さらに話がずれるが, 物理をやっているときに数学的な難しさと物理的な意義は全く関係ない. 田崎さんが統計力学の本で書いていたと思うが, 例えばボソンとフェルミオンの出現に関する話だ. 不可弁別性に関する話で $\psi ^2 = 1$ を解き, そこから $\pm$ を取ってボソンかフェルミオンか, という話をする. 2 乗の式を解くだけなので数学としては簡単なことこの上ないが, 物理としては当然決定的に重要なことだ. うるさいことを言えば, 置換群の無限次元 Hilbert 空間上のユニタリ表現とか仰々しく言えるが, こういうことを言うのは単に格好をつけたいだけのアレな人なので無視するか, 線型代数で殴りつけるかしておけばいい.
結局, 私は, 非線形偏微分方程式を使う微分幾何は少しかじっただけで, Gromov 流の Riemann 幾何学に進むことになった.
これも前, どこかで読んだ深谷先生の文章に「 Yau の論文はよく分からない凄まじい式が数ページ続いたあと, 誰が見ても大事と分かる定理が書いてあって凄かった」みたいな記述があった気がする. 単にそれを思い出しただけなのだが.
次の記述は修士の学生にとっては「励み」になるのではないかと思う.
そのころの私は自信過剰で, 自分に修士論文が書けないはずがないぐらいに思っていた. それで修士 1 年生が終わりかけ, 「自然に」かけるはずの論文ができてこないと, 焦り始めた. 勉強することと研究することの違い・段差がしきりに意識されるようになった. 修士 1 年から 2 年に移る春休みは, 焦りからほとんど数学ができず, 哲学の本を読んで 2 ヶ月ぐらいを過ごした.
これでついでに加藤先生の話を思い出した. 数学に集中するあまり半裸で街を歩き警官に捕まったという逸話があるが, これは確か修士論文で行き詰まり, 悩みに悩みに抜いていて身なりに気を配る余裕などなかった, という話だったと思う. 一度加藤先生の講演を聞いたことがあるが, Y シャツを派手にはみだしたまま講演していた. 数学しかできない人というのはこういう人をいうのだな, と深い感動を覚えた.
しかし, 結局私も「高貴な」ゲージ理論に惹かれてリーマン幾何を離れることになった.
注 8 それが良かったのかどうか, 最近しきりに気になる.
「高貴な」数学に関しては「数学者の視点」を読んでほしい. どう言ったらいいのか全く分からないのだが, 注のさらりとした一文にこう色々なことを考える.
Floer 関係の話がまた格好いい. 少し長いので特に格好いいと思った一節だけ抜き出して終わりにしたい.
そのような Floer ホモロジーの扱われ方が私には不満だった. Floer ホモロジーが切り開いた無限次元トポロジーの世界は, 4 次元トポロジーと同じくらい豊かで重要なはずである. 4 次元トポロジーへの応用ではなく, Floer ホモロジー自身にこだわってみたい. これが私がゲージ理論, そしてシンプレクティック幾何学の研究に入っていく, 突破点になった.
ラベル¶
数学, 書評
書評: 数学まなびはじめ 第 1 集 小林昭七¶
対象本¶
はじめに¶
今回は昨年亡くなった小林昭七先生の部分だ. 他の方のと比較して読むと面白い, というところもある. 冒頭部がまさにそれだ.
数学者になった人なら, 小学校の算数 (昔は算術といった) ではクラスで大てい一・二番だったろうから
他の方のを読むと, 必ずしも得意でなかったとかいう記述はよくあるし, 「中学くらいから数学をしたいと思っていたという人がいる一方, 私はそれほど早くから興味を持っていたわけではない」といった記述もある. ちなみに河東先生は「記憶にある限りの昔から, 漠然とは数学者になりたいと思っていた」という話である. Web で明確に書いているから引用しただけで, 河東先生を引いてきた他の理由は特にない.
別件: 算術¶
あと全くの別件だが, これからは算数という呼び方はやめて「算術」にしたらどうだろう. 思わず名前を呼びたくなるような教科名ではないか. 算術と呼ぶようにすれば, 算数を馬鹿にする愚鈍な自称理系もいなくなるだろう. 太古の昔, ファイナルファンタジータクティクスには算術士という職業が存在する. 現代に算術士の復活を望みたい.
FFT はやったことないのでここで記述を調べてみた.
シリーズに度々登場する「レベル○魔法」にあたるものを繰り出すことができる. 算術ではレベルだけでなく高さ・ CT ・ EXP と, 3 ・ 4 ・ 5 ・素数を組み合わせ, さらに算術可能な魔法を詠唱なし・ MP 消費なしで発動することができる. ただし, 対象は敵味方無差別であり, 使用時に誰にかかるかを確認する必要がある.
考えてみればレベルが素数という敵もいたりするのか. Twitter 上の理想の東工大生, 素数レベルの敵が倒せずゲームがクリアできなさそう, とかいうことを想った.
話を戻して: 小林先生の中学時代¶
ちょっと面白かった記述があるので, それも引いておこう. 小林先生が中学の頃の話である.
$\varepsilon$ - $\delta$ を使った収束や連続の定義も何回か説明していただいた. そのとき解ったと思って, 1 里 (4km) の帰り道を歩きながら考えて家に着く頃にはなんだかもやもやしてきて, 翌日もう一度説明していただくということを 2~3 回繰り返したように記憶している. だから微積分を教えているとき学生が $\varepsilon$ - $\delta$ の議論を 1 回で理解しなくても当然だと思っている.
中学でやったのだからそう簡単に理解できるか, というところはあるが, 小林先生くらいの人でも悪名高い $\varepsilon$ - $\delta$ に苦しんだ, といえば救われる向きもあろうかと思い, 引用した. 私の場合は大学に入ってから学んだのでまた少し状況が違うが, $\varepsilon$ - $\delta$ に苦労した覚えはない. 当然ながら中学の頃には知りもしなかったけれども.
高校の頃¶
一高の頃, ということでやはり戦争の影響を受けた文章が入るあたりは最早お約束のレベルといっていい.
当時は私のように中学 4 年から来た 16 歳くらいのから零戦のパイロットで元中尉というような人までいて, 私などは「昭ちゃん」と子供扱いされた. 日本中, 食糧不足の時代だったから寮の食事はひどいものだし, よく停電するし最悪だったが毎日楽しかった. それが若いということなのだろう.
大学の頃¶
今の時代の日本で停電といったら文句を言う人がたくさん出てくるだろうから, 時代を感じる. 大学での話に進むが, メンゲという渾名の先生がまた最高に格好いい. これが東大か, 大学か, と思わせてくれる.
あまりにお世話になったので, 教養学部を終了するとき数研の連中が何人かでメンゲのお宅に手土産を持ってお礼に伺ったら, 「こういう物を持ってくるものではない. いまに論文を書いたらその別刷を持ってきなさい」と叱られた. 3 年後, フランスで Comptes Rendus のノートを出したときは一番先に先生に送った.
P143 に写真があり, 4 人写っているのだが, 皆同じような眼鏡で格好も同じ感じで見分けがつかない. 分身の術でも使っているのかと思う. 数学科の話に入ると, 少しずつ色々な人が出てくる. 杉浦光夫, 谷山豊といった名前もある. 何度でも書くが, 東大に行くと同級生から上級生, 下級生までこんな化け物揃いかと思うとつくづく東大に落ちたのが残念でならない.
淡中先生の話¶
あと淡中忠郎先生の集中講義の話が印象深いので, これは是非とも引用したい.
淡中先生は Tannaka の双対定理で有名な方だが, 頭の回転の速い先生ではないらしく, 講義の最中によくつっかえられ, 頭の回転の速い学生の方が先に証明が分かってしまうこともあった (その頃は不思議に思ったが, 後にいろいろな数学者に会うようになって, 頭の回転速度と仕事の室にはあまり関係がないことが分かった).
ときどき「頭がいい人」というのが「頭の回転が速い人」という意味で使われることがある. 淡中先生クラスであってもこのような現象が存在するので「頭がいい」という言葉の使い方にはやはり注意がいるな, という思いを新たにした. ただし, 少なくとも今の場合は相手が淡中先生である. 勝手に自分を重ねてしまうと逆に致命傷になりかねないので, 用法用量は正しく守って適用されたい.
矢野先生の話¶
このあとも面白い記述が続く. 矢野先生がプリンストンから帰ってくるから矢野先生について調和積分を学んでは, という河田先生からのアドバイスを受けた, という記述に続き, こうくる.
Hodge の harmonic integrals の本は難解で, 当時は de Rham の定理でさえもまだ Weil による Cech コホモロジーを使う簡単な証明が発表される前で, もちろん de Rham の本 Varietes Differentiables も出ていなかった
当時 Morse の理論を理解するのは大変なことで, Morse の本は読みにくく
Milnor の有名な本が出るのは 10 年以上も後のことである
数学セミナーでの追悼号¶
このあたりからは数学セミナーの小林先生追悼号にもいくらか記述がある. そこと合わせて読んでみるのもまた楽しい.
ラベル¶
数学, 書評
書評: 数学まなびはじめ 第 1 集 竹崎正道¶
本文¶
今回は第 1 集の竹崎先生のところについて感想を書きたい. 1-2 集合わせて, 会ったというか見たことがある数学者は 3 人いて, 深谷先生と小林先生は見たことがある. 竹崎先生だけは集中講義の後など何度か実際にお話したことがあり, さらにお酒を一緒に飲んだこともある.
富山先生の記憶¶
詳しいことは忘れたが, (年齢自体は 1 つ下らしいが) 同級らしい富山先生と先輩を交じえた飲み会でのやり取りは今でも覚えている. 問題ないと思うので, いくつか印象的な言葉を記録しておこう. 無茶苦茶な話だが, 竹崎先生が一流の数学者となった理由として, 富山先生曰く, 「もともと竹崎君はお酒が飲めなかったんだけど, お酒が飲めるようになって彼は一流の数学者になった」というのがあった. 先輩と共に「いや, いくら何でもそれは」と言ったが超自信満々で断言されたことを今でも覚えている. ただ, 竹崎先生の学生でもあり同じく一流の数学者である河東先生はお酒が全然飲めないので, お酒が飲めなくても一流の数学者にはなれることは付記しておきたい. むしろお酒が飲めることと数学者の実力, 全く関係ないのでは, と思うがこの辺について理屈を考えても仕方がないという暫定的結論に達している.
数学に対する姿勢¶
昔のことなので一部記憶が曖昧だが, もう一つ印象的なのは, 本文にも一部書いてあるが学生の頃の竹崎先生の数学に対する姿勢である. 東北大学なので冬は寒い. 暖房もあまり効かない中, 大学で遅くまで殘って数学をやっていたそうだが, 他にも色々と数学を続けていくのが苦しい状況下で何故そこまで数学に打ち込めたのかということを富山先生に伺ったところ, 即答で「そんなの, 数学を愛しているからだよ」と返ってきた. 普段「数学が何の役に立つ」などと散々言われているなかで, 即答でこの答えが返ってきたことに深く感動した.
冨田-竹崎理論¶
上で一流の数学者ということを書いたが, 竹崎先生の業績について決定的なものの一つとしては, 私の専門, 場の量子論と量子統計で決定的に重要な冨田-竹崎理論がある. 荒木先生の文章などで時々話にあがるが, この理論の一番基本的なところを最初に出したのは冨田先生なので, 冨田理論や冨田のモジュラー理論と呼ばれることもある. 何故「冨田-竹崎理論」と竹崎の名前を冠して呼ばれるかというと, 理論の中で竹崎先生が果たした役割の大きさもさることながら, 講義録を出版するなど理論の普及のため尽力したことがある. 誰か忘れたが, 幾何の先生から「Connes は竹崎さんの講義録を勉強して作用素環をやろうと思って, あんな結果 (Fields 賞の結果や作用素環における決定的な仕事の数々) を出したんでしょう. そういうのはロマンがあってやはりいいね」というお話を聞いたことがある.
冨田-竹崎理論は数理物理でも決定的に重要なのだが, (数理) 物理学者との共著論文も多い. 例えば Araki, Haag, Kastler, Takesaki の Extension of KMS states and chemical potential などがある. 引っ張ってきた文献は有名な論文ではあるが, 何か特別に意味があるわけではない. 名前に「 chemical potential 」と入っているので物理関係の話であることが分かりやすいだろうと思っただけだ. 量子統計だけでなく (相対論的) 場の量子論でも冨田-竹崎理論は基本的な意義を持つので, 関係することを研究する場合は必ずお世話になる. 量子統計方面については 動画を作った. 興味がある向きはご覧頂きたい.
お酒の席で研究について聞かれたとき, 量子統計をやっているといったら「今となっては地味な分野だけど, そういうことをきちんとやることも大事だね. 是非頑張って研究してほしい」と言われたことも懐かしい. 大学関係者か大学図書館に行ける人でないと手に入れるのは難しいだろうが, 作用素環への入口 も面白い文章なので読めるなら読んでみてほしい.
直接話したことがあるだけでなく, 色々と話したこともある先生なので本と関係ない話が長くなってしまった. そろそろ本題の文章の感想に入ろう.
冒頭部¶
まず冒頭部を引用したい.
編集部より, 私の数学との出合いについて書くことを求められたとき, あらためて私の数学について振り返ってみました. 私の数学との出合いについて語るためには, どうしても第二次大戦の戦中, 戦後の混乱期の少年時代について語る必要があるように思われます. あの今は遠い昔になってしまった混乱期の体験抜きに私の数学を語るのは, 表面的なものになってしまうことをおそれるからです. 少々風変わりな数学随想記ですが, つき合ってください.
『数学まなびはじめ』の他のお年を召した方々の文章でもそうだが, 戦争の影がどこかしらにあるあたりに時代を感じる.
小学校入学は 1940 年でした. この年は皇紀二千六百年ということで, 特別な年に進学した少国民として, 何かにつけて特別あつかいされました. 皇太子 (現天皇) と同年の生れということもあって, 自分たちは特別な使命をおびているかのように思い込んでいました.
こんなにふうにして, 私は典型的な軍国少年として, 成長していきました.
この中学校は軍人を育てることでも有名でしたから, 敗戦で特攻隊予備軍だった予科練から戻ってきた上級生は荒れ狂いましたが, 先生たちも彼らの心中を察してか, 暴力沙汰も大目に見ていました. なにしろ, 日本中で何もかも狂っていましたから…….
こういう文章が登場する.
中学の頃¶
中学くらいから数学との関わりに関して大事な記述が出てくる.
前年まで鬼畜米英を叫んでいた先生たちは急に民主主義を説きはじめました. 『民主主義』という名の教科書もひときわ立派な装幀で配布されました. いつの間にか, ひねくれぐせのついた私にはとてもうさんくさいものに思えました.
中略
数学の授業は退屈で, 嫌いでした. 先生が偉そうに教師用裏本からうつし取る黒板の文字, 記号をあくびをしながらぼんやり眺め, 時の過ぎるのを待っていました.
凄まじい時代を感じる. このあとで南原繁の全面講和の話も少し出てくるが, 想像を絶するものがある. 全く関係ないが, 去年あたりに南原繁の息子さんとお会いした. 当然相当のお年だったが, 日本史で学んだことがある人物のご子息に会うというのも滅多にない経験かと思って印象深かった.
このあとの「土田喜輔先生」という節が竹崎先生の転機その 1 になる.
第一回目の授業で, 問題を与えられた私は, 例によってふざけた調子で黒板の前に立って, ふざけた仕方で解答を書いて, 先生にひどくしかられたのが, 出合いの始まりでした. 顔面蒼白になった先生に 「竹崎! お前はおれをなめるのか! 」 とつめよられたときは本当にこわかったけれども, 先生は手は出されませんでした. 書き直しを命じられただけで席に帰されました.
土田先生の授業が始まって, すぐ私はこれまでの数学とまったく異質なものだということを感じとりました. 中略 何よりも私が感動したのは, 混乱の中の日本で, 数学を盾に, すっくと立って超然としている先生の姿でした. 敗戦以来, 右往左往する他の教師たちとはまったく違った世界に, 事もなげに真直ぐに立っておられました.
心の支えとしての数学, 実に尊い.
工学部での生活¶
竹崎先生はご尊父が中国に抑留されている母子家庭だったため, 就職などを考えて工学部で進学したという記述がある. それに続いて次のような記述がある.
工学部での生活は, 確かに私が場違いなところにいるという感じを強くさせるものでした. しかし, 鶴丸先生から最初の数学の講義を受けたことは幸いでした. その名の通りやせ気味の身体からくり出される講義に私は酔いました.
多少話がずれるが, 鶴丸先生の名前は別の所で見たことがあった. これを読む大分前に次の本を読んだことがあるのだが, これは鶴丸先生の講義ノートから作ったらしい.
この本にも鶴丸先生の講義は颯爽としたものだったという記述がある. 手元にないので不確かだが, 著者は学生紛争の時代に鶴丸先生の講義を受けたとのことだった. 名講義の影響力は強い.
戦前・戦中の軍国主義, 戦後の民主主義, それにつづいてレッドパージ等々と価値観や理念の動揺をくり返す日本で, 自明なことを自明であると論証する数学の確かさがまぶしく, 感動しました. 難解な証明は, その難解さの故にもっと確かなもののように思えました.
私の心を震わせる文章がこのように続いていく. 大学一年のときに地質のレポートというのがあったそうなのだが, そこの記述もまた凄い.
地質の標本の中に, 研究室は半ば埋っていました. そこで, 地質教室の将来を嘱望されていた若い格子がその 2 年ほど前に南太平洋の火山活動調査中に亡くなったことを知りました. 学問に命を捧げる人は, 昔ばかりでなく, 現代にも, そして身の近くにもいたことを知って厳粛な気持になりました.
理学部数学科へ¶
ご尊父が抑留から戻り結局数学に進むことになる.
しかし, 何といっても私を感激させたのは, 先生方の学生に接する態度でした. 11 人ばかりの少人数のクラスでしたが, 自分たちと同じ道を歩む者たちの集団として待遇してくださいました. 学生たちが敬意をもって迎えられる教室のあり方に, 私はびっくりしてしまいました. 物資の乏しい時代でしたが, 勉強に専念できるように最大限の配慮がされていることが進学第一日目から感じられました. 小学校入学以来, こんな風な期待と敬意を受けたことのなかった私には, 感激と同時に責任の重さがずしりと身にこたえました.
これは私も覚えがある. 何の実験だったか覚えていないが, 学部一年のころ化学系の学生実験の試問で, 化学か応用科学の試問担当の方に量子力学関係の質問をされたときだったが, 「これは僕もよく分かりませんし, むしろ将来の皆さんにお聞きしたいくらいなんですけども」という言葉が出てきた. いくら物理学科とはいえ, 大学に入って 1-2 ヶ月の学部生に対してだ. 専門家として無限の信頼と期待を寄せて敬意を払ってくれたこととそれに対する感動は今でも忘れない.
最後にまた竹崎先生の言葉を引用して終わろう.
最後に¶
私には数学は自分が自分自身であることを確認させてくれるものでした. 戦時中から戦後にかけての混乱に弄ばれ続けた私に, 数学は確かなものを与えてくれました. 数学に出合えたことに感謝しています. その意味で, 高校 2 年のときの土田先生, 華麗な講義で私を数学へと誘い込んでくださった鶴丸先生, それから教養部 2 年のときに工学部へ進学することに疑問を感じ始めていた私に, 「竹崎君, 君は理学部へ行って数学をやってごらん……」 と皆の反対とは逆に私を勇気づけてくださった勝浦先生に限りない感謝の念を感じております.
ラベル¶
数学, 書評, 作用素環, 竹崎正道
書評: 数学まなびはじめ 第 2 集 原田耕一郎¶
本文¶
前から持っていた本だが『数学まなびはじめ』を久しぶりに読み返したらやはり面白い.
特にいわゆる大御所の話は往時が偲ばれる他, 昔のエリート教育の様子が分かりそれもまた興味深い. ある人の追想で別の人が出て来るあたりも面白い. 先日数学セミナーで追悼の特集が組まれた小林昭七先生の文章もある. 個々の話にそれぞれ面白いところがあるので, 気儘に紹介していきたい. 初回は第 1 集の深谷先生でも良かったのだが, 第 2 集の原田先生の回想にする.
まずは第 2 節を読もう¶
何はともあれ第 2 節を読んでほしい. 第 2 節は全文引用したいくらいだが, とりあえず冒頭部を引用しよう.
数学者を志す学生に伝えたいことがひとつあります. 「伝えたい」と言ったのは言葉を選んだのです. 「意見を言いたい」とか「教えたい」とうほど私から強く働きかけているのではありません. 私の言うことを「信じてほしい」というほどの意味を「伝えたい」という言葉に託しているのです.
その伝えたいということは「学生時代 (大学院も含めて) の数年の間になにかで世界一 (世界一のもの知りでもよい) になろうと思いなさい」ということです. ここで「学生時代の数年の間に」というところが大切です. ですから「リーマン予想を解いて世界一の数学者になりなさい」と言っているのではありません. もっともっと身近にあるものでよいし, また勤勉に努力すれば本当に世界一になれそうなことでないといけないでしょう.
中略
食事をしているときも, 通学電車に乗っているときでも, 「どんな小さいことでもよいから世界の誰にも負けないようになりたい」と思い続け, そう思い込むことです. 「そうしなければ, 自分の存在価値はまったくない」と思い込むことができたらもう成功したようなものです.
感銘を受ける¶
学生時代にこれを読んで深い感銘を受けた. 自分もやってみようと実際に思ったし, やってみせたとも思っている. 色々あって修士論文の結果を分野の大家である Spohn に聞いてもらったのだが, その中で「 Nice observation! 」と言ってもらえたことや「その結果は出版しないのか? 」と言ってもらえたことは非常に嬉しかった. 構成的場の量子論と厳密統計力学の狭間にある非常に狭い部分で, そもそも世界的に専門家が 10 名ほどいないところだが, 逆にいうなら, 私は粒子-ボソン場の相互作用系の数理物理では世界のトップ 10 に入っていたし, 他にやっている人がいないというだけであっても, 私の修論の結果は今でもここでナンバーワンでオンリーワンのはずだ.
とにかく第 2 節がよいので, そこを読んでほしい. これだけでも第 2 集を買う価値があるくらいだ.
ちなみに原田先生は有限群で世界的に有名な数学者だ. これ (PDF) などを見てほしいが, 26 個しかない散在型有限単純群の 1 つを発見したことは偉大な業績である.
どこがどうというよりも第 2 節が一文一文気に入っているのだが, きりがないので最後の部分を再度引用して終わりたい.
最後の引用¶
この 25 年ほど一度も開いたこともない私のホールとシニアーの本を取り出してみました. ページを繰って最後にきて, 本当にびっくりしました. この本は自分で買ったとばかり思い込んでいたのですが, 実は数学科の同級生がお金を出しあって私のために買ってくれたものでした.
友人の署名が円型に 13 個書いてあります.
中略
そして落合卓四郎君, 堀田良之君の名もあります. 飯高茂君は「幸福はまず健全生活から, 早寝早起き, 奥さん孝行」と添え, 杉田公生君は「人生に一度位本当に嬉しいと思う時がありたい」と添えてくれました. 秀才のほまれが高かったのに若くして自らの命を断ってしまった新谷卓郎君の署名はしばらくジッと見てしまいます.
(上記引用の) 最後の一文などはむしろこちらがじっと見入ってしまう.
ラベル¶
数学, 書評
書評: 数学セミナー 2013 年 2 月号¶
本文¶
毎号買っているときりがないので普段あまり買わないのだが, 何となく今回は買ってみた. 昨年 8 月に亡くなった小林昭七先生の特集になっている. 気になった記事についてつらつらと感想を書いていきたい.
巻頭の coffee break¶
「数学者が紙と鉛筆を捨てる日」という記事だ. 数学者は紙と鉛筆さえあればいいというのは本当か, と尋ねられた吉永さんが思ったことを書いている.
研究活動のコアな部分はもちろんなくてもいいが, 研究全体ではないと困る, というところから始まる. 論文書きやら他の研究者とのやりとりでメールを書くなど, そうした部分で PC がないと困る, というところからノートを取ったり, 論文を読むのにタブレット PC を使い始めた, という近況を報告されている.
私も最近タブレットを買って, 論文や本を読むのに便利なこともある, という感じだが, ノートを取ったり動画作成補助に使うというところでまだまだ使い慣れない. (無料) アプリの充実も含め, 何とか状況を改善してほしい部分もある.
大沢先生による「ポアンカレとの散策」¶
Poincare (e にはアクサンがつく) の不等式について触れられていた. Poincare の不等式は偏微分方程式ではとても大事で, 必ず学ぶ. その辺りに関する数理物理でも大事で, 下記 BEC の文献では Poincare の拡張について議論があるくらいだ. BEC への応用上, 拡張が必要になっているらしい. 私は読みたいと思いつつ全く読めていなくて悲しいのだが.
小林先生追悼関係の記事¶
あとで少し書くが, 小林先生の写真, 大体全部笑顔なのが非常に印象的だった. また皆に愛されたいた感のある記事ばかりだった.
まずは落合先生による小林先生の数学的人生についてまとめた記事だ. 矢野先生は「矢野」と書かれているのに小林先生を「昭七先生」と書いているあたりが萌えポイントだ. 昭和 7 年生まれだから「昭七」という命名だ, という噂は本当だったらしい.
弟の久志の証言によると, この結婚で昭七先生のキャラクターがものすごく変わり, 例えば写真に写る姿は何時も微笑み笑っているようになったとのことであり
という記述を見た上で各写真を見ると本当に笑っている写真ばかり上がっているのに思わず笑った.
幾何が本当に分からないので何とも言えないが, 引用されている次の言葉が印象的だった. 引用は適宜中略するので, 全部読みたい方は購入してほしい.
微分幾何は, 数学に対する一つの見地 (view-point) であり, 方法である. 微分幾何の存在意義は, 新しい見方や, 有力な方法を提供する点にあるとと思う. それに幾何学的に意味のわかる概念とか方法は, 自然なものだがら, あとで予想以上の発展をみせることが多い.
話が微分幾何という一つの閉じた世界で終わっているようなときには, 良い定理であっても私は感心しても特に興奮するほどの魅力を感じることはできない.
微分幾何のような分野で, ささやかでも自分のアイデアを伸ばす方が楽しいのではないか. メインストリームに身を浮かべなくても, メインストリームに流れこむ小さな流れの内に, 微分幾何の面白い問題を見つけ出すというのも, また楽しいのではないか.
数学を勉強するときにはぜひ数学史も一緒に勉強してほしいと思います. 『この概念はどうしてうまれたのか』といった歴史を知ることでより深く理解できると思う
最後の記述, このへんは私も何とかしたいと思っていて, 色々考えている.
小林先生と全く関係ないが, 落合先生というと日体大が何か不祥事を起こしたときに学長をしていて謝罪会見を開いていたので, 誰かと「落合先生が全国区の有名人になった」と大変不謹慎な会話をしていたことを思い出す.
慶應の前田先生の曲面の記事¶
有名な『曲線と曲面の微分幾何』に敬意を払って幾何学入門を意図して書かれたらしい. 大分前に買って読んだのだが, あまり真剣に読んだというわけでもなかったため, 結局あまり頭に入っていない. 色々あって複素曲面に興味があるので, その辺を勉強するついでに読み直したいところだ.
野口先生の小林双曲性に関する記事¶
小林双曲性, 名前は知っていたがどんなものなのかを今回始めて知った. 何をどう思ってこんなのを定義したのか全く分からないが, これがやばい. $N$ が小林双曲的な場合の正則写像全体がいかなる $M$ に対しても同程度連続になるとか衝撃の一言だ. コメントがあるが, Ascoli-Arzela が使い易くなるので強烈の一言. Ascoli-Arzela, 条件が結構厳しいので面白いが (私がやっている範囲では) 使いづらい定理という印象があるのだが, こういう使いやすそうな状況はあるのか, というところも面白い.
$M$ がコンパクトな複素多様体なら小林双曲性と「整曲線 $f : \mathbb{C} \to M$ は定写像しかない」という ブロディの定理も凄まじい. タイヒミュラー空間上のタイヒミュラー距離が小林距離に一致するというロイデンの結果も, 「タイヒミュラー距離はタイヒミュラー空間上だけで定義されていたもので, いわば孤立していた」という記述を見ると, 小林擬距離の強烈さが分かるというもの. ちなみにタイヒミュラー空間は定義すら知らないが, 良く聞く名前なので大事, または面白い対象なのだろうということくらいは分かっている. 野口先生の研究は代数幾何との関係がある感じのものが多いという感じだが, 実際にそのあたりの話がいくつか書かれていて, それも面白く, 勉強意欲をそそる.
P34 の超笑顔の写真がまた印象的だった.
満渊さんの小林-ヒッチン対応の記事¶
これまた名前だけ知っていてどんなものか全く知らない話だったので, 単純に楽しい. これもまた超強烈な話だった. Frankel 予想の「曲率から多様体の性質が決まる」という話, 本当に意味が分からないが, 微分幾何の王道っぽい強烈な予想だと思う.
何となく買ってみただけだが, 名前しか知らなかった話がいくつか強烈な結果とともに解説されたいたので思っていた以上に楽しい号だった. 一通りは眺めたが全く身についていない小林先生の複素幾何の本もしっかり読み直したいと思わせる内容だった.
ラベル¶
数学,微分幾何,複素幾何
書評または感想: 数学セミナー 2014 年 01 月号 グラフ理論の新展開¶
本文¶
数学セミナーを定期購読することにしたのだが, 時間が取れずにようやく 2014/1 月号を読んだ方の市民だった.
せっかくなので感想をまとめていきたい.
時枝正¶
まず冒頭, 時枝正さんの「無理な数のこしらえかた」が恐ろしく面白かった. 素数定理, $\pi (x) - \int_0^x \frac{d\xi}{\log \xi}$ は $x \to \infty$ で無限回符号を変えることを 1914 に Littlewood が示したらしいのだが, その証明が面白い. 次の 2 ステップで証明しているそうなのだ. - Riemann 予想を偽としてその仮定から結果を導く. - Riemann 予想を真としてその仮定から結果を導く. 結果として Riemann 予想の真偽に関係なく結果を導いているという. これと $\sqrt{2}^{\sqrt{2}}$ の無理性証明を比較してうんぬん, とやっていて面白いから是非読むべき. ここからさらに零知識証明と暗号理論への応用の話題になる.
グラフ理論¶
今回の特集はグラフ理論だ. 4 色問題が有名なアレだ. ネットワークの問題や, 最近だと Nobel 経済学賞になった Gale-Shapley のマッチング理論などの話題もある. 東大教養の垣村尚徳さんの記事によれば理論計算機科学, トポロジー, 数学基礎論への影響もあるらしい. トポロジーと言えば, 情報技術者とかその辺の資格試験にもネットワークのトポロジーという話題は出てくる. 私の近いところだと, 作用素環でもグラフから作る作用素環という話題がある. 研究していた先輩もいたし, 慶應の 勝良健史 さんもやっていたはずだ. (今やっているかは知らない. )
小関¶
国立情報学研究所の小関健太さんの記事によると, 4 色問題のバリエーションも色々あって, 特に 3 色問題というのもあったり, 最近弱 3-flow 予想というのが解決されたというニュースがある. Thomassen の話題がちょろっと紹介されているが, 非常にスマートな証明を与える優れた数学者とのこと. 格好いい. 数学セミナーの執筆者の所属に「国立情報学研究所」が出てくるあたり, グラフ理論の展開の広さを伺わせるようで面白い.
徳重¶
琉球大の徳重典英さんの【セメレディとその周辺】という記事, 数学者のエピソード系記事とも言えるのでそれだけで特記する価値がある. Szemeredi は 2012 年に Abel 賞を取ったとのことだがそんな有名人も知らない無知無学無教養な市民だった.
松井¶
東工大の松井知己さんの【安定マッチング問題の応用 嘘をつく人々】にはこう色々と興味がある. Nobel 経済学賞関連の 1962 年の Gale-Shapley 論文の安定結婚問題とかその辺の話. ところで次のような記述があった.
1962 年の Gale-Shapley 論文では, この話題が数学教育において優れた教材であると述べられている点でしょう. 複雑な数式や前提知識が不要なのに, 数学的に奥深い構造を持ち, 現実にも応用を持つ安定結婚問題は, 高校生にも初見から興味を持ってもらえそうです.
この観点はなかった. 今度きちんと勉強しよう. 何か良い本ないだろうか. この記事, 参考文献などは 2013/4 の安田さんの記事を参照しているが, 手元にないしすぐ見られる環境でもないので困る. 日本評論社に参考文献一覧みたいなのないだろうか. あと, (PDF で) 数学セミナーの電子書籍ないだろうか. 個人所有で本のままだと置くスペースとか困る. 日本評論社の方は是非検討されたい. 過去のものも是非電子書籍化してほしい.
Gale-Shapley はいわば【男性の選好を優先するアルゴリズム】を作ることで安定マッチングの存在とその具体的構成までやった. Gale-Shapley の問題では男女は対称なので, 【女性の選好を優先するアルゴリズム】と言ってもいい. ここで問題なのは, 男女が正しく自分の選好を申告することが肝要だった. 3 節の【安定マッチングの構造】で議論されている. ここでは「嘘の選好リスト」を出されたときの問題があり, Nobel 賞になったときに少し勉強したところによるとこれが現実への応用上とても大切になるという話が展開される. 何で嘘をつくかというと簡単で, 例えば受験で「本当の第一志望は東大だがそれは色々と無理なので第一志望は早稲田にした」みたいなケースを想定すればいい. 真の選好を出さない状況は色々あり, その中で安定マッチングを作るのが難しくかつ価値がある. 話のネタとしても面白いだろうから, やはりグラフ理論というかマッチングの話はきちんと勉強したい感ある.
伊藤¶
名大の伊藤由佳理さんの【第 16 回 ヨーロッパ女性数学会総会に参加して】は相転移プロダクションの活動的に非常に興味がある. 紋切り型に言えば「女性の就学・研究支援」のようなものだ. 詳しくは記事を参照されたいが, 来年の韓国での ICM の直前に 国際女性数学者会議 (ICWM) もあるとのこと. 「この記事を読まれた方は, ぜひ周りにいらっしゃる女性数学や女子学生にお知らせください」とのことなので, 私も宣伝協力していきたい.
小澤正直¶
名大の小澤正直先生の【量子測定の数理と不確定性原理 (10) 不確定性原理と相補性原理】, 不勉強なので知らなかったのだがびっくりした記述があった.
一般に二つの物理量の値に関する「同時測定可能性」と「同時定義可能性」, および二つの物理量の作用素としての「可換性」の三者の概念が互いに同値だと考えられてきたからである. ところが, 新しい不確定性関係の発見によって, 非可換な物理量の同時測定可能性が明らかにされ, 「二つの物理量の値の同時測定可能性」と「二つの物理量の作用素としての可換性」が同値な概念ではないことが明らかにされた.
ちょっと認識を改めないといけない. 勉強しないとまずそう. 量子集合論とか出てくるそうなのでつらい.
阿原¶
明治の阿原一志さんの【サーストンの描いた 8 つの宇宙の絵】冒頭部, とてもよい.
2010 年 3 月 5 日パリ, 三宅一生氏が立ち上げた世界的ブランドである ISSEY MIYAKE の 2010 年秋冬コレクションが, 当時クリエイティブディレクターだった藤原大さんの手によって華やかに行われました. コレクションのタイトルは「ポアンカレ・オデッセイ (Poincare Odyssey) 」. ポアンカレ予想とサーストンの 8 つの幾何学 (幾何化予想) をテーマとしてこのコレクションはファッションと高等数学の幸福な出会いとして, 欧米でとても評判になりました. このことについて, 本誌 2010 年 6 月号「パリコレで数学を」と 2010 年 8 月号「宇宙の形と質感をめぐる冒険」で紹介されましたので, ご存知のかたも多いと思います.
JosephYoiko さんに教えてもらったアレか. こういうの, 私も私なりのやり方でやっていきたい. あとこの過去記事読みたい.
この記事によると, ジオメトリーセンターによって作られた「not Knot」とかいうビデオが Youtube で公開されているとのこと. あとでじっくり見たい.
矢崎¶
インタビューの【実験を通して, 現象を数理的に考える】, 明治の矢崎成俊さんの話, 超面白い. 関西すうがく徒のつどいでも【偏微分方程式の逆問題–拡散方程式の数学と物理と工学】で関連する話題に触れたが, やはりこの辺結構好き. この記事では移動境界問題に触れている. ラーメンの汁の表面に浮いている油の玉がくっついて境界の形が変わる, というような現象を扱うのが移動境界問題だ. 以前【自分でつくる現象数理】という連載があったようだが, これ読みたい. 何かムック的なアレでまとまっていたりするのだろうか. 著作権も考えつつ出版社的にきちんとした形にまとめようとすると大変なのだろうというのは簡単に想像がつくが, 不完全な形でもいいから何かほしい.
【雪氷数学】というキーワードが出てきた. 是非頑張ってほしい. 話聞きたい.
本連載のインタビューの模様を, 2014 年 1 月より順次 web 配信する予定です. 放映日時など, 詳しくは『数学セミナー』 web ページ (http://www.nippyo.co.jp/blog_susemi) にあります『詳細情報』をご覧ください.
こういう取り組みすごい良い. 私もこの活動, 注視していこう.
脇¶
山形大の脇克志さんの【数の拡大:直線の中の 3 次元空間】, SF チックで面白い. こういう発想大事にしたいし, 自分でもきちんとやっていきたい. あまりきちんと考えたことなかったが, $\mathbb{Q}$ 係数のベクトル空間, もっとちゃんと考えたら楽しそう.
梅田¶
梅田享先生の【森毅の主題による変奏曲】, これが滅茶苦茶面白い. 全文引用したいレベル. これだけでも買う価値があるレベル. 位相と実関数論, コンパクト性を基軸にした位相空間論とかないの, という無茶ぶりとか書きはじめるときりがない. 全国紙上数学談話会 のリンクのメモだけしておこう.
数セミメディアガイドのページ, 何か告知にも使えるのだろうか. 今後利用を検討したい.
ラベル¶
数学, 数学者, 数学セミナー, グラフ理論, 幾何学, 相転移プロダクション, 数論, 偏微分方程式, 量子力学, 観測問題, 線型代数, 位相空間論, 実関数論
書評または感想: 数学セミナー 2014 年 02 月号 多様体が分かりたい¶
本文¶
【数学セミナー 2014 年 02 月号 多様体が分かりたい】をようやく読んだ. 今度も感想をつらつらと書いていこう.
Coffee Break, 松井¶
Coffee Break, 東海大の松井泰子さんの記事. 新課程『数学活用』の教科書の話が出ているがかなり魅力的に仕上がっている模様. 時々思うのだが教科書, どこか見られるところあるのだろうか. これは読んでみたい.
時枝¶
ハーバード, 時枝正さんの【こどもの眼・おとなの頭】. 「遠心力」というの, 誰から見ているかという微妙な問題があって結構面倒なのであまり好きなアレではない, というどうでもいいことを想起した直後, やはりというか一般相対論の等価原理が出てきた. 一般相対論, 結局講義には出たものの全く身についていない. 比較的触った方の特殊相対論もさっぱりだしつらい. スリンキーの話, 凄く面白い. ちょっと試してみたい. 縄梯子の話も面白い. この連載, 面白い.
橋本¶
東京都市大の橋本義武さんの【多様体入門】. Euclid 『原論』を次のように評しているのが面白い.
ユークリッド『原論』の中の図形は, ホメーロスの叙事詩の中の英雄のように時代を越えて価値あるものを人間精神に与えてきたが, 今まさに生まれつつある何かに呼応して自らを変革していく柔軟さを欠いていた. 公理という「すでに書かれたもの」の中でしか生きられない存在だったからだ. オイラーは, 図形という「すでに書かれたもの」の中の死せる英雄ではなく, 生まれたばかりの赤子である関数を自らの数学の中心に置いた.
P10 で【 $X$ 上の $C^{\infty}$ 関数全体のなす実ベクトル空間を $C^{\infty} (X)$ と書く】という記述があったが, ここで実線型空間論と複素線型空間論に比べて, 実多様体論と複素多様体論は実と複素で趣が全然違う感じがしたが, 幾何の人はどう感じているのだろうというようなことを思った. 線型空間だと固有値周りで面倒なことがたくさんあるので複素線型空間に移るのは (状況によっては) とても自然だが, 多様体の方でこういうことは起きるのだろうか, というような感じ. 実の方は自由度の高さから来る開放感があり, 複素の方は制限が厳しい代わりに深い理論になるという印象だが, この辺幾何人は何をどう思うのか.
定義 11, 接空間の定義の前に germ が出てきて爆笑する方の市民.
西川¶
東北大名誉教授の西川青季先生の【リーマン多様体 誕生から脚光を浴びるまで】.
リーマン多様体の概念が一躍脚光を浴びるのは, リーマンの講演から 60 年後に, アインシュタインが一般相対性理論の基礎にもちいてからである.
これ, 本当なのだろうか. 数学史的に何故このタイミングまで (あまり?) 注目を浴びなかったのかという研究とか知りたい. よくこう言われるが, 実際に一般相対論で使われているのは擬 Riemann 幾何でつらい. あと Riemann 面いまだにきちんと勉強していないしよく分からないのでつらい. 解析接続, よく分からない.
Gauss の曲面論, 普通にやると凄い面倒で実につらい. しゅそくさんの Bochner の定理に関するセミナーがとても明快で良かったことを想起する方の市民. やはりきちんと勉強している人は違うな, と思わされる.
藤木¶
京大特任教授/ 阪大名誉教授の藤木明先生の【複素多様体】. 【閉 Riemann 面上の正則な関数は定数しかない】という定理, 証明は分かるがどういうことなのかいまだによく分かっていない方の市民だった.
P20 に $S^6$ に複素多様体の構造が入るか, という有名な未解決問題に関する記述がある. これ, 何が難しいのだろうかとずっと思っているし幾何学の闇を感じる. 解析学・量子力学で 1 次元であっても調和振動子がかなりの闇なのでこう色々とアレなことも想起する方の市民だった.
一般に閉リーマン面 $Y$ の種数 $g$ は, $Y$ 上の 1 次の正則微分形式全体のなす複素ベクトル空間の次元 $h$ に一致することが知られていた.
不勉強なので知らなかったが衝撃を受けた.
伊藤¶
理科大, 伊藤浩行さんの【代数多様体 代数と幾何が融合した世界】. 代数弱者すぎて代数幾何はいつもつらい. ちょっとしたところですぐ詰まる. 「 Zariski 接空間と特異点の定義が局所的に超楽しい」という小学生並の感想を抱く. 多項式とか闇なのでつらかった (完).
山下¶
奈良女子大の山下康さんの【Virtual Haken 予想の解決!】. トポロジーよくわからないが双曲多様体が面白いらしいという認識を得た.
書くのが面倒になってきたが, 阿原一志さんの【サーストンからの手紙】, 曲率の話だったが面白かった (完). 参考文献の『フラットランド』と『 2 次元より平らな世界』, 読んでみたい.
脇¶
山形大の脇克志さんの【見える群論入門 体の模様:3 次方程式が作る正三角形】. 【体への作用】の項, $\mathrm{Aut}(\mathbb{Q}) = {\mathrm{id}_{\mathbb{Q}}}$ が示されている. 普段ほとんど $\mathbb{Q}$ 使わないのであまりきちんと認識もしていなかったが, 改めてみると凄まじい.
梅田¶
梅田享先生の【森毅の主題による変奏曲】. 相変わらず面白い.
《僕は位相空間論をやるのなら位相ベクトル空間を経て積分論までやらなければというドグマを持っている. 》
《元来微積分を関数の収束と関連して論ずるには, その収束概念は一様収束であるべきだ. この点をあからさまに打出していることは, Bourbaki 第一の功績だと思う. そのために, 実に Riemann 可積分という定義はどこにも出て来ない (実は積分論第 4 章の演習問題にある). そこで fonction reglee という概念が出現するが, これは階段関数の一様近似となる函数のことで (中略) しかし僕は気にくわない. (中略) 何もわざわざこんな大仰な新概念を持出す必要があるだろうか.》
森毅の言葉をほうほうと読んでいる. 全文をネットで読めるそうだがどこにあるのだろう. 「面白いなんてものではない」とのことなので是非読んでみたいのだが.
とは言うものの, 飽くまで比較の話だが, ルベーグ積分より見かけ初等的なので, リーマン積分を「やさしい積分」の同義語に用いる人が少なからずいる. しかい, 「やさしい」なんてとんでもない. リーマン積分はヤヤコシイのだ. もちろん, 「一般の」連続函数のリーマン積分可能性という厄介な問題はあるが, それ以前に定義自体が充分難しい. そのようなリーマン積分の問題点については, のちのちじっくり述べたい.
ともかく, リーマン積分は導入の手間に比べ, 得られる性質が中途半端 (労多くして益少なし).
同じことをを考えられているかは分からないけれども, 私も似たようなことは思っている. かなりユーザ視点で数学者視点とは言い難いだろうが, Riemann 積分は議論と定理が Lebesgue 程にはクリアでない. Lebesgue だと級数を含むと明らさまに分かるため, 実数論・数列の定理の一般化として素直に理解できる定理が基本定理になっている. 非常に覚えやすいし使いやすい. この辺は 3 月にやる予定の Lebesgue ・関数解析・作用素論セミナーでも触れたい.
そこには, もう一つ「連続函数のリーマン積分可能性」には「一様連続性」が不可欠という根強い迷信についても書いてある. この迷信は高木『解析概論』をきちんと読めば気づくことだが, (略)
手持ちの『解析概論』を読むと, P.91 から【定積分】の項が始まる. ここでははじめ関数 $f$ の有界性だけが仮定されている. P.93 で積分の平均値の定理が示され, そのあとで $f$ の連続性を仮定して中間値の定理を使い, 原始関数の存在 (積分可能性) を示している形だ. このことを言っていると思ってよいのだろうか.
【3. リーマン積分】の項で梅田さんがお怒りである. 私などは Riemann 積分よりも, 応用のためには Lebesgue と Hilbert 空間論を基礎に据えてやった方がいいと思っているくらいだ. もちろんそれなりに人は選ぶだろうが, 個人的には物理への応用上 Hilbert 空間論は是非導入したい. 量子力学うんぬんではなく「エネルギー有限」の条件設定としての Hilbert 空間だ. 3 月にやると何度か言っているセミナーで Lebesgue と Hilbert 空間をセットでやるのもこの方向性を模索するためだ.
P.85 【よこがお】の西川先生のところに次のような記述がある.
アインシュタインの論文「一般相対性理論の基礎」の冒頭に, 「必要なすべての数学的手法は, この論文の B 章に, 最も簡単な見通しのよい方法で説明してある」と書かれている. 実際, テンソル解析のつぼが, へたな教科書よりはるかに解りやすく, 22 ページで解説されている. 和訳もあるので, ぜひ読まれることを勧めたい.
これは読みたい. 誰かコピーとか取ってくれないだろうか. 今度文献複写に行くしかないか.
【数セミ メディアガイド】.¶
長岡亮介さんの『東大の数学入試問題を楽しむ 数学のクラシック鑑賞』が紹介されていた. 読みたくなった.
2/22 (土) に千葉県立松戸南高校「春を呼ぶ研究集会」で【トークショー「数学エンターテインメントへの正体--MF (Mathematical Fiction) の世界」】というのをやるらしい. 大分興味ある. 行ってみたいがどうしよう. 締切は 2/17 (月) なのでちょっと考えよう.
朝日カルチャーセンターのも面白そう. 逆問題は聞きに行きたいが, 1/18 から 全 6 回だった.
楽しそうなのたくさんある. 自分も何かしていくべきだが, 現状の研究もあるし, この辺も積極的に参加すべきか.
ラベル¶
数学, 数学教育, 相転移プロダクション, 一般相対論, 幾何学, 微分幾何, 代数幾何, 量子力学, 代数学, トポロジー, 位相空間論, 積分論
数学セミナー 2021/6¶
ここからの連続ツイートのまとめ. 数え上げの群論はすごくて, ゼータが出てきていた. いまの時点でまとまった本はあるだろうか. 読みたい.
- 今月の数学セミナー, 数え上げの群論めちゃくちゃ面白い気がする. 有限群でもこんな話あるのか.
- 本橋さんの整数論基礎講義面白そう. 読んでみたい.
- 解析的整数論の解析の言葉に心動かされる方の市民.
- 三宅さんの P12 の「点はあり, 部分を持たない」, かなりいい話では.
- やはり楕円関数論は一度きちんとやってみたい.
- ガロア理論もやり直さねばならない.
- 高木貞治の初等整数論講義, 今でも良い本なのか.
- 高瀬正仁さんの文章で突如冨田先生が出てきた.
- 冨田先生, Banach の本を読んでいたのか.
- P.66 当たりの普遍被覆なり何なりの話, のーとにまとめよう.
- 数学セミナー, 心が洗われる.
書評: 佐藤幹夫の数学¶
本文¶
自己紹介のところにも書いているように, 最近代数解析を勉強している. その一環として, 今回奮発して「佐藤幹夫の数学」を買って読んだ.
ちなみに概要をさらっと頭に入れようと思い, ぱらぱらと眺めている文献は佐藤幹夫自身によるTheory of Hyperfunctions, I, Theory of Hyperfunctions, II, と小松彦三郎による佐藤超函数論入門だ. あと楔の刃の定理の代数解析的な見方に興味があったので「佐藤超関数入門」を買ったのだが 「代数解析学の基礎」にすれば良かったかとやや後悔している.
概要¶
内容を大雑把に言うと, 正に部別の通りで, 佐藤幹夫の半生を語る第 1 部, 佐藤幹夫の数学を語る第 2 部, 他者が語る佐藤幹夫の数学の第 3 部に別れる.
第 2-3 部は佐藤-Tate 予想で有名で数論や概均質ベクトル空間の話もあるが, やはりメインは代数解析の話だ. 私が興味があるのが代数解析なので, そこに集中して話をしたい. 興味があるのは佐藤超関数の定義それ自体だったのだが, それ以外にも「本地垂迹」として解説がある微分方程式の表現論的考察が面白かった. 私自身の興味があるところは後で書くとして, 本の内容についてもう少し詳しく触れたい.
本を読んでいて, 佐藤幹夫は究極的には関数が好きなのだろうという印象を受けた. どういうことかというと, 超関数自体が関数として自然な形で導入したいという強烈なモチベーションがあること, さらに特殊関数の特徴付けで有名なように, 微分方程式は関数の特徴付けとして重要視している, という感じだった. $D$ 加群の話にしても解を自然に特徴付けるための手法という感じの説明がされていたという印象がある.
本地垂迹¶
$D$ 加群に関連した話として本地垂迹が出ていたのだが, これが面白かった. 微分作用素の表現論といった趣がある. 表現論への応用があるし, 実際そうなのだろう. まだあまり良く分かっていないのだが. 私の研究では作用素環の表現論が決定的に重要だし, それが元で表現論も好きなのでなかなか楽しい.
また Schwartz の超関数 (distribution) だと「微分のことも積分でやろう」という感じだったので, 佐藤超関数でも同じ感じだと勝手に思っていたのだが, どうやら違うらしい. 該当箇所が見つけられないのだが「昔は微分が簡単で積分が簡単だと言っていたが, Lebesgue 積分以降は 積分は簡単だが微分は難しいとなっていておかしい」みたいな一文があった. 佐藤超関数の文脈で超関数の積分があるが, これは超関数微分方程式を考えて, その解を不定積分と呼んでいる. 興味がある向きは Theory of Hyperfunctions, I の P148 を見てほしい. 正則な関数だと Cauchy の積分定理なり Morela の定理なりで微分可能性と積分可能性が大体同じ感じになる. これもどこに書いてあったか見つけられないのだが, それを上手く使えば (実関数の?) 積分可能性がどうの, というあたりの事情も簡単になるしその方が嬉しい, という記述があったはずだ.
Diagram chasing による議論を見ていて面白かったので, ホモロジー代数の動画を作ると楽しいのでは, と思ったのでその兼ね合いから (ホモロジー) 代数を勉強したくなり, それで改めて勉強していて, 自分は結構代数が好きだということが分かりつつある. それでホモロジー代数の応用としてやはり解析方面から何かあるとより楽しくなりそうなので 代数解析, と単純に思ったということもあるが, もう一つ目的がある.
場の量子論¶
研究の方で場の量子論での超関数という大テーマがあるのだが, 関数解析的というか, distribution 方面からの超関数という方向で作用素環とその表現論を使った処理をしている. これを確率論 (経路積分) を使って見てみるというのは標準的な別アプローチでそちらも検討しているが, 一方で代数解析的なアプローチは全くないのが現状だ. Curved spacetime 上での相対論的場の量子論でスペクトル条件の代替に超局所解析を使うという議論があり, 代数解析的な話があるので, 非相対論の方でも何か使えないかと思って, そこを少し調べてみたいというのがある. 今のところその方向では話を持ち上げづらそうな感じだが, プロの研究者というわけでもないし のんびりやろうと思っている.
ちなみに作用素環による「場の量子論での超関数」というのは汎関数を上手く使った収束の議論を指している. 手法自体は構成的場の量子論で確立しているが, これを「超関数」と呼んでいる人はみかけない. 何をやっているか分野外の人に伝えるのに便利だから作った, 私独自の呼び方なので, 他の人にいっても通じないので注意されたい.
代数解析¶
別件だが, 代数解析は代数的な, 等号の話というか厳密解というか, そんな感じの話が得意なようなので, それを使ってハミルトニアンの固有値の詳細な解析とかできたら嬉しいのだが, そのへんはどうだろうか, とも思っている. 物質の安定性での基底エネルギーの評価だとかに使いたい. 一応, Schrodinger については河合先生の特異摂動の研究があるので全く関係ないということもないはずではある. ただ, 物質の安定性で出てくるハミルトニアンは Coulomb ポテンシャルが出てきて, これが有理型ですらないので, 使うのは難しいのだろうかとも思う.
私の興味ある部分に使える数学は, 微分作用素の解析学としては作用素論が, ある程度代数らしい話があるとすればむしろ作用素環になりそうだ. 研究の方でも何か面白い展開あれば嬉しい, と思いつつ代数解析を学んでいる.
ラベル¶
数学,書評,代数解析,量子力学,場の量子論,統計力学,作用素論,作用素環
書評: GIRL FRIENDS 森永みるく¶
本文¶
百合キチババアセレクションから GIRL FRIENDS を読んだ. とりあえず購入を確定したレベルで面白かったのだが, ただ漫画的に面白かった点を書くだけなら誰でもできるので, 数学的に注目すべき点を書いていきたい. まだ物語自体に興奮醒めやらぬ段階なので, とりあえず比較的落ち着いて読んでいられた 1 巻だけについてまとめる.
かわいい服いっぱい着れるのって女子の特権じゃん
かわいい構造たくさんつけられるの可微分多様体の特権じゃんとかいうのと同じではなかろうか. クローバーのときも思ったが, ファッション関係は幾何と相性がいい印象を受ける. 「深い服が着られるの複素多様体の特権」など色々な応用が考えられる名言と言える. 「深い服」の定義自体も大きな問題と言える. かわいい構造を着せた多様体間, または多様体と人間間の関係性など解明すべき問題自体も深い.
ダイエットってこんなにワクワクするものだっけ
この記述はレギュラリティ落とすとか条件落として証明してみるとかその辺を暗示しているのではなかろうか. ここで, レギュラリティを落とすと考えている集合自体は大きくなるのでこれを太ることと解釈できてしまうのではないか, という貴重なご指摘も頂いた. レギュラリティの解釈について詳しく検討する必要性を痛感した. 痩せた (meager な) 集合にも何か解釈を加えたい. 「太った空間」に対する「痩せた空間」への憧れといったことも何か魔解釈がありそうだ. 想像は膨らんでいく.
私はまりちゃんに私と全く同じカッコして欲しい訳じゃないんだよね
これは「私と同じ構造持って欲しい訳じゃないんだよね」的な意味がありつつ, 相手に似合う構造 (多様体の個性というか何というかアレ) 自体には適当な理想がある感じで, 超弦理論の duality とか示唆しているのでは. 超弦理論は不勉強でよく分からないため, 双対性についてきちんと学ぶ必要がありそうだ.
こういう服着たまりちゃんも可愛いなとは思うんだけど…なんかまりちゃんらしくないっていうか…
深い台詞が連発されていて凄い. これも何か魔解釈がありそうだ.
でも 3 人とも服の好みがちょっとずつ違うんだね
普段着ない系の服見れるしさ
アレか, 共同研究者間で興味が微妙にずれていて, それでも微妙に重なり合うところで起きる共同研究がいいとかそういう話か. 後者は普段使わないテクニックや使わない構造を見られるとかそういう話か. 深い.
新しい服買ったら絶対次の日寝不足なんだー 持ってる服と合わせまくってさ, もう夜じゅう 1 人ファッションショーだよ♪
知っている多様体に対して色々な構造と複素構造が両立するか試すとかそういう話か. 新たに学んだ概念を知っている多様体に対して適用してみたりして色々調べて親密度を増していくとか, その他の方向性もある. 各種構造ということに関していえば, 代数や解析にも適用していけるだろう.
うん カワイイカワイイ デニムにも合うしまりちゃんぽいね♪
「カラビ-ヤウ多様体にも合うし, 複素幾何っぽいね」とかそんなのを想起している. 幾何については素人なので多少アレな部分があったら適当にスルーするか文献を御教示頂ければ幸い.
夢の中でファッションショーしちゃいました
先輩が修論前, 夢の中でも具体例を計算していたと言っていたので多分そういう話だろう. 私も集中して一つのことに取り組んでいると夢でうなされることがあるので分かる.
体重気にしてやせすぎるのも体にはよくないのよー
位相体とか考えた場合, meager な集合と体 (field の方) の構造とか何か関係あるのだろうかと数学的に想像が膨らむ. 実際問題, Lie 群や von Neumann 環のように代数と位相が相互に強く関係している数学的対象はあるので, その方向で何かあると楽しそうだ.
可愛い服着たいし…気になるところもあるし…
可愛い構造が求められている雰囲気を感じる.
ダイエットなんて必要ないでしょっ ちゃんと食べなさいっ!!
過剰な一般化や抽象化を控えるという general nonsense や abstract nonsense に対する警告だろう. こんな言葉を目にするとは思わなかったので戦慄している.
ラベル¶
数学, 百合
書評: GIRL FRIENDS 森永みるく 2¶
本文¶
前回も書評を書いたが, 今回も続く. Twitter でいくつか呟いているが, 気持ち悪いくらい 4 巻を読み直していて非常にアレだ. 今まだまとめている最中だが, ふと思ったことを端的にまとめたい. それは 4 巻でのすぎさんの台詞だ.
だって一生愛してくれる人はいそうじゃない
本当に?
ラベル¶
数学, 百合
書評: GIRL FRIENDS 森永みるく 3¶
本文¶
前回の書評があまりにもアレだったので追記する.
だって一生愛してくれる人はいそうじゃない
数学者だったら (他の学問でもいいだろうが) 一生どころか死んだ後ですら愛してくれる人がいる. 定理だったら存在自体が祝福だ. というわけですぎさんは定理になるといい.
ここですぎさんに定理化をお勧めしたときに私に閃光が走った. その他にも色々なことを思っているが, 今まで頭にあったのは数学者×定理 (順番については色々な意見があろう. ここでは暫定的に書いただけだ) または定理×定理という一番シンプルなラインだった. ふと思ったのだが, 名詞に性がある言語で「定理」が女性名詞になっている言語は何かあるのだろうか. そしてその言語では定理×定理はまぎれもなく百合になるな, と思った. もちろん (定理が女性名詞なら) 数学者×定理も百合にできる. 腐なら腐にすればよいだけだ.
Twitter でも各方面で話題になるように, 凡人が考えつくことなど他に考えている, または考えていた人は大勢いるはずだ. つまり定理×定理の百合 (または腐) 同人が存在する国や地方があるはずだ. また性 (の Web での調べ方) が分からないのだが Faktortheorem (因数定理) のような単語もあった. 性が分からないので何ともいえないのだが, Faktor と Theorem が同性の名詞だったら, そこでの百合展開なども有り得る. Faktortheorem で Faktor か Theorem どちらの性を継ぐかでもこう色々なことが考えられるし, どちらの性とも違う場合 (少なくともドイツ語には男性, 女性, 中性の 3 つの性がある), 悪魔合体的な様相すら呈してくる. 「アクマでも愛してくれますか?」が実現できるかもしれないという点で私の胸が高なる.
また言語学を知らないのでピント外れかもしれないが, 歴史の中である名詞の性が変わることもあるだろうと思う. 英語は名詞に性がなく, 英語の元であるフランス語は性があるが, 性がなくなるという現象はあると思ってよいのだろうか. なくなる場合をどう解釈するかは今後の研究次第だが, 性が変わる場合, それも適当な意味で適当な解釈がつけられないだろうか. 生物学的な意味で人類が性を転換するのは現代科学の水準では難しいことだが, 創作の世界でくらい今の時点でも何か魔解釈がつけられないだろうか.
最後に一応補足しておくと, 数学者が死後も (適当な意味で) 愛される例として, ガロアやアーベルがある. アーベルに至っては概念にすらなっている. 前に Twitter の私の周囲で話題になったが, まどか☆マギカの地平は既に数学が到達していたことは強調したい.
ラベル¶
数学, 百合
書評: GIRL FRIENDS 森永みるく 4¶
本¶
メモ¶
今回は「触れ合う」というあたりについて思ったことを簡単にメモしておきたい. 例えば 4 巻の次のあっこの台詞だ.
もっと… キスしたり… さわったりしたりしたい… かな…
名前しか知らないが幾何で接触構造というのがある. そこの魔解釈も何か産めるかもしれないが, まず私が接触構造自体を勉強しなければならず, ハードルが高い. もっと簡単なところから歩みを進めることにしよう.
それはもちろん微分法だ. 接線や接平面などでこうした「触れる」ことに関する感覚を何か表現できないだろうかと思うのは自然だろう. 安直ではあるが, 基本を疎かにしてはいけない.
接線の悲しみについて真っ先に想起したのは (滑らかで下に) 凸関数における接線だ. まず凸関数は必ず接線を持つことと, 凸関数は必ず接線よりも上にあることを確認しておきたい. 興味がある向きは, 例えば田崎さんの熱力学の本の付録を見てほしい.
図を描くと分かるが, 適当に滑らかな凸関数なら凸関数と接線は接線を引いたその点でしか触れ合わない. ただ一点でしか触れ合わない関数と接線の出会いは「一夏の恋」とでも表現すればいいのだろうか. 流石に安直すぎると思うのだが, こうすると高校の数学でも色々な百合的魔解釈ができそうだ.
底が平な凸関数 (とその図) を考えれば分かるが, 凸関数と接線が無限個の点で触れ合うことがある. こうした現象はどう解釈すればいいのだろう. 接しはじめる点を交際開始, 接しなくなる点を交際終了とでも思えばいいだろうか. また関数の滑らかさはどう解釈すればいいだろう. このあたりに課題が残る.
また, 複接線という現象もどう解釈すればいいか気にかかる. 以前確か下記の本で目にしたかと思うが, 複接線という話がある.
詳しくことは全く覚えていないが, 代数幾何だと複接線についても何か面白い話があるのだろうか. 複数の点で関数とのふれ合いを持つ接線, これはどう思えばいいだろう. 映画自体は見ていないのだがワン・デイ 23 年のラブストーリーのストーリーを想起した. 23 年に渡って毎年 7/15 だけ出会うという話らしいのだが, この 23 年に渡る一日だけの出会いを, その悲しさや切なさや愛しさを含めて複接線で表現できないだろうかと, そんなことを思う.
接線ではなく曲線の話にはなるが「高次の接触」についてはどう思えばいいだろう. これは Taylor 展開で 1 次だけでなく高次の微係数まで一致するような接し方を考えている. 接線による触れ合いを軽い触れ合いと思うなら, 高次の接触は適度に濃厚な触れ合いを表すことになるだろう. 「同情でも何でもいい この恋が叶うなら」といったまりの心情や付き合い方は, このような Taylor 展開で何か議論することはできないだろうか. 元の関数が何かによるが, 当然ながら場合によっては無限次の接触も定義できる. これは何を意味するだろう. 具体例の研究によって理解を深めたいところだ.
無限次の接触の場合, Taylor 展開が元の関数と一致することになるが, そうなると Taylor 展開の収束半径が気になる. 収束半径が無限大の場合はどう思えばいいか, 有限の場合はどうかということが自動的に問題となる. また解析接続に何か意味が出てくるか, 複素解析的な考察が必要か, ということも問題になろう. Riemann 面の理論の応用可能性についても想像が膨らむ. Riemann 面の別のシートは「生まれ変わり」のような解釈はできるか, ということをパッと思ったが, これもやはり安直に過ぎる気がする.
あと思ったのが, ジェットバンドルの話だ. Taylor 展開の思いを幾何学的にきちんと表現しきるにはやはりジェットバンドルを導入して議論することが必要なのではないだろうか. ジェットバンドルはまともに勉強したことがないのでこれまたよく分からないことばかりだが, 追求する価値はありそうだ.
作中の 1 文を拾うだけで宿題が山程できるので大変だ. 百合の世界の深さを知る冬だった.
ラベル¶
数学, 百合
書評: 幾何学的変分問題¶
本¶
本文¶
kazz_281 さんによる簡単な書評 があったので, Twitter でも少しつぶやいたのだが私も以前読んだ感想をまとめておこう.
調和写像に向けて丁寧に書かれた本でのんびりしていて 非常によい本だったことは強調したい. この本で扱っているのは幾何と解析にまたがる分野だが, 双方ともにそれ程予備知識は仮定されず, しかも内容的にもそれぞれについて深い知識は必要にしないにも関わらず かなり突っ込んだ内容まで書かれているのは率直に凄いと思う.
あとで内容に触れるときにも少し書くが, 変分は物理でも大事な教養で本の内容自体も解析力学に直結している. 解析力学関係の数学, 特に変分を真面目に勉強してみたいと 思う物理の人向けには丁度いいだろう. 当然この周辺に興味がある数学の初学者にもいい.
変分とは何か¶
微分法の一般化にあたる. 微分では関数の極値を取る数値を求めるのが大事な仕事になるが, 「関数の関数」を考えてその「関数」の極値を与える 関数を求めるのが変分の基本的な考え方になる. これは力学だと粒子の経路を求めるのに, エネルギーが最小になる経路 (関数) を求める問題にあたる. エネルギーが経路 (これ自体関数) の関数になるからだ. 実際歴史的に見てもこの力学の問題が変分のはじまりだ.
第 1 章¶
第 1 章では実際にこの力学の問題を扱う形になっている. 本には物理的なモチベーションについては特に書かれていないが, 物理の方は式を見ただけで大体分かるはずだ. (解析力学を知っていることは前提としているが.) 適宜物理の本で復習しながら読み進めると楽しいだろう. 曲線に関する話を軸に接続や共変微分が定義される. 微分幾何の基本的な重要な概念なので ここできっちり勉強しておくととても役に立つ. 接続の幾何は今の超弦関係でもとても大事な話のはずだ. そちらでも大事な概念だと思うが, 複素幾何を学ぶときに Chern 類の微分幾何的定義でも 曲率が出てくるので, とても大事な箇所なので丁寧に読みたい.
第 2 章¶
第 2 章では曲率を議論する. Riemann 多様体の基本的な対象なので, 当然とても大事なところだ. 定理 2.19, Hopf-Rinow の定理など, Riemann 幾何の基本的な概念や定理も紹介されているので, Riemann 幾何入門としても使える. 2.5 節で具体的に Riemann 幾何への応用が議論されるが, 定理 2.24, Myers の定理はやはり強烈だ. Ricci テンソルに関する条件から多様体のコンパクト性や 基本群に関する位相的な情報が出てくる. 詳しくないので大分アレだが, Ricci テンソルは曲率に関係する概念であって, 曲がり具合から位相構造が制限されるというのはなかなか意味不明で凄まじい.
第 3 章¶
第 3 章ではとうとう写像のエネルギーの話から調和写像に入る. 色々なベクトルバンドルとそこでの接続が出てくるのでかなり大変な章だが, 本格的な議論が始まってくるので楽しくなってくる所でもある. トポロジーなどでベクトルバンドルの一般論を学ぶ前に 具体例に親しむという目的に使ってもいいだろう. 私は実際にかなり参考になった. 調和写像はこれまでの議論を具体例として含むこと, 他の興味深い話題も含んでいる大事な概念であることが具体的に説明される.
第 4 章¶
最後に第 4 章で調和写像の存在が議論される. ここで関数解析というか解析的な議論が出てくる. 多様体上の非線型偏微分方程式に興味がある人が読むと参考になる. Holder (o にはウムラウトが付く) 空間が出てくるのだが, これは楕円型正則性 (elliptic regularity) でも大事になる空間で, 関係する人はきちんと勉強しておく必要がある. ごりごりの解析になるので, 初読時にはさらりと流してもいい.
付録も簡潔にまとまっているので他書を読むときに参考になる. 現代数学への展望も読むだけで楽しいので是非読まれたい.
ラベル¶
数学,書評,微分幾何,関数解析
Lewis 微分幾何と機械制御¶
keywords: differential geometric methods for control of mechanical systems, The port-controlled Hamiltonian approach, geometric control theory, geometric mechanics,
機械系の微分幾何的なモデリングと機械系の制御. 微分幾何的な手法を使わないことによる
微分幾何的なモデリングが何故大事なのか? 概念を直観的に定義できること. 定義していない言葉や記号を自由に使えること. 正確な定義がないことが障害にならない.
記号が批判されることもあるが, その記号を使ってはじめて表現できることがある. 記号の背後にはアイデアがある.
微分幾何の言葉で問題を定式化するだけで適切な解答が得られることがある. 数学的に正確な定式化に関してこれは見落とされがちなポイントだ. 問題を解くときに大事なのは問題自体を正確に定式化すること.
配位空間 (configuration space, manifold). 機械系の配位の集合は微分多様体の構造と対応を持つ. 配位空間を $Q$ で書く. $SO(3)$ と剛体の対応. ある人は $SO(3)$ をオイラー角で書くかもしれない. しかし $SO(3)$ は 多様体である. リー群であるという重要な特徴も持つ.
余接束とは何か? 物理や制御問題としてどう捉えればいいか? 力は余接束に値を取る写像である. $\gamma (t)$ がある質点が描く軌跡だとする. これに力 $F(t)$ が加わるときの仕事は $W = \int_I \dotinpr{F(t)}[\gamma'(t)] dt$ である. この $\cdot$ を内積, より強く双対形式と思えば, $\gamma'(t) \in T_{\gamma (t) M}$ だから $F(t) \in T_{\gamma (t)}^* M$ である.
機械系の制御理論のことを思うなら, 力には 2 種類がある. 1 つは外力でポテンシャル, 摩擦や消散的な力で, もう一つは制御する力 (control force) $\sum_{a = 1}^n u^a F^a$ だ.
運動エネルギーは計量になる. 慣性行列や質量行列とよく呼ばれる.
アフィン接続について. 次の式でクリストッフェル記号を定義する. \begin{align} \nabla_{\partial_j} \partial_k = \Gamma^{i}{jk} \partial_i. \end{align} 元々のアフィン接続の定義 (挙動) は次の通り. \begin{align} \nabla_X (f Y) = f \nabla_X Y + \rbk{L_X f} Y. \end{align} クリストッフェル記号を使うと次のように書ける. \begin{align} \nabla_X Y = \rbk{\frac{\partial Y^i}{\partial q^j} X^j + \Gamma^{i} \partial_i. \end{align}} X^j Y^k
測地線の方程式は次の通り. \begin{align} \nabla_{\gamma' (t)} \gamma'(t) = 0. \end{align} これを局所座標系を使って書くと次の通り. \begin{align} \ddot{q}^i (t) + \Gamma^i_{jk} \dot{q}^j (t) \dot{q}^k (t) = 0. \end{align}
速度を形式化したのが接束. 常微分方程式 $\dot{x}^i (t) = X^i (x(t))$ の解を考えることと $\gamma' (t) = X(\gamma(t))$ となる曲線を考えることは同値. ベクトル場 $X$ による関数 $f$ の Lie 微分の定義. \begin{align} L_X f(x) = \myrestriction{\frac{d}{dt} f \rbk{\Phi_t^X (t)}}{t=0}. \end{align} 座標で書くと $L_X f = X^i \rbk{\partial_i f}$ で単なる方向微分.
計量テンソル $g$ に対してラグランジアンは $L (v_q) = \frac{1}{2} g(v_q, v_q)$ で定義できる.
Lie 微分による流れ場の方程式¶
- Lie 微分による流れ場の方程式
- 古川.Lie微分による流れ場の支配方程式.pdf
流体について書いてある. 微妙.
三平 非線型状態方程式と微分幾何学の初歩概念¶
- 制御の微分幾何
- 三平.非線型状態方程式と微分幾何学の初歩概念.pdf
二度読むご利益なし.
Ravi Vakil 1998 A Beginner's Guide to Jet Bundles from the Point of View of Algebraic Geometry¶
数理科学 2018/2 幾何学と次元¶
P.22 小林治 リーマン幾何量に現れる次元依存¶
命題, P.28¶
$S^n$を単位球面とし, $n+1$次元単位球体を$D^{n+1}$とする.
- 次の等式が成り立つ. \begin{align} \muL (D^{n+1}) = \frac{1}{n+1} \muL (S^n). \end{align}
- 球面$S^n$のルベーグ測度はガンマ関数によって次のように書ける. \begin{align} \muL (S^n) = \frac{2 \pi^{(n+1) / 2}}{\Gamma \rbk{\frac{n+1}{2}}}. \end{align} 特に次のように帰納的に書ける. \begin{align} \muL (S^0) = 2, \quad \muL (S^1) = 2 \pi, \quad \frac{\muL (S^{n+1})}{\muL (S^{n-1})} = \frac{2 \pi}{n}. \end{align}
森吉仁志, P.29, 無限次元空間に展開する幾何学とホモトピー論¶
基本的に$K$理論の話.
短完全系列$0 \to \bbKcalH \to \bbBcalH \to \calQ (\calH) \to 0$が考えられ, $\bbBcalH$ の非自明な両側イデアルはコンパクト作用素環だけであることが知られていることと合わせると, $\bbQ (\calH)$ は $\bbBcalH$ のただ一つつの非自明な商環で, これをカルキン環と呼ぶ.
カルキン環を部分環として含む$\bbBcalH$に対するヒルベルト空間は非可分になってしまうとのこと. cf. KadisonRingrose2. これは知らなかったので衝撃.
$K_0$群の定義をメモ. $\Cstar$-環$\calA$が単位的だとする. $M_n (\calA)$ を $\calA$ 係数の $n$ 次元正方行列環として, $e^2 = e = \adjoint{e}$ をみたす元を射影と呼ぶことにし, $P_n(A)$ を $M_n(A)$ の射影全体とする. $P_\infty (\calA) = \bigcup_{n=1}^\infty P_n(\calA)$ に帰納的位相を与える. $P_\infty (\calA)$ の 2 つの元 $e_1, e_2$ が $P_\infty (\calA)$ の連続曲線で結ばれているとき, その元は同値であると定義する. さらに $P(\calA)$ の射影 $e_1, e_2$ に対して $e_1 \oplus e_2 = \begin{pmatrix} e_1 & 0 \ 0 & e_2 \end{pmatrix}$ と定義すると, この直和で $P_\infty (\calA)$ の同値類全体は半群になる.
定義: $P_\infty (\calA)$の同値類全体がなす半群のグロタンディーク群として得られる可換群を$K_0 (\calA)$と書き, これを$\calA$の解析的$K_0$群と呼ぶ.
他にも適当に$\GL_\infty (\calA)$とその同値類を定義し, それを$\calA$の解析的$K_1$群と呼ぶ.
カイパーの定理: 可分なヒルベルト空間の可逆な作用素の全体は可縮である.
フレドホルム作用素が出てくるし, アティヤ-シンガーの指数定理の話もしている.
角大輝 P.45 フラクタル次元¶
スーパーサイエンスハイスクールの研究で, 漫画のボックス次元が各話で起承転結の流れとともにどう変化するかを調べたら, 点のところで最も次元が高くなり, 結で次元がすっと落ちることが多いというのを発見したらしい. 「マンガからわかるフラクタル次元」, 学校法人池田学園池田中学・高等学校 (鹿児島県), 野村(河野)文香ほか, 2012年とのこと. あとで調べよう.
P.51で悪魔のコロシアム, フラクタルウエディングケーキというのが出てきた. 名前が格好いい. 次元論面白い
塚本真輝 P.52 空間の次元から力学系の平均次元へ¶
時系列の信号処理での話が面白い.
$\Ltwo$関数$\phi$が$[-W, W]$に帯域制限されているならば$$\phi(t)¶
\sum_{n \in \bbZ} \phi \rbk{\frac{n}{2W}} \frac{\sin \pi (2Wt - n)}{\pi (2Wt-n)}$$が成り立つ.
熊谷隆 P.61 フィールズ賞で語る現代数学21回¶
P.62, 稲浜さんのラフパスの論説がネットにも落ちていて面白いらしい. ラフパスというとささくれパイセンが以前コメントしていたのが懐かしい.
P.67, 伊藤清先生のガウス章受賞記念講演会での福島正俊さんの講演原稿に基づいた論説, 「伊藤清先生と確率解析---分布系列から見本路へ」, 数学通信, 第11巻第3号(2006年11月), 9-13とのこと. これも読んでみたい.
P.68 谷村 幾何学から物理学へ¶
多様体$M$上の曲線$c \colon (- \varepsilon, \varepsilon) \to M$の微分は直接定義できません. これは値域の問題で差に意味がなければ, 割り算にも意味がないから. しかし多様体上の関数$f \colon M \to \bbR$ をかませれば$F(t) = f \circ c (t)$ がふつうの意味で微分可能になります.
これはいわば$TM$のモノである曲線$c$と$\adjoint{T} M$のモノである関数$f$の双対性を示しています.
Hitchin DIFFERENTIABLE MANIFOLDS¶
目次¶
- イントロ
- 多様体
- 座標系, 多様体の定義, 多様体の例, 多様体間の写像
- 接ベクトルと余接ベクトル
- 滑らかな関数の存在, 関数の微分, 滑らかな写像の微分
- ベクトル場
- 接束, 微分としてのベクトル場, 微分同相の一径数群, リー括弧再訪
- テンソル積
- 外積代数
- 微分形式
- $p$-形式の束, 単位の分割, 微分形式詳論, 微分形式のリー微分, ド・ラームコホモロジー
- 形式の積分
- 向き付け, ストークスの定理
- 滑らかな写像の写像度, 最高次元のド・ラームコホモロジー
- リーマン計量
- 計量テンソル, 測地流
- 付録, 技術的な結果
- 逆写像定理
- 常微分方程式の解の存在
- 滑らかな依存
- 一般の多様体上での単位の分割
- サードの定理 (特別な場合)
読書メモ¶
多様体¶
- 多様体のチャートの関数は多様体から$\bbRn$への写像.
- 多様体上に滑らかな関数があるかどうかはこぶ関数と$\Cinfty (M)$が環であることから理解.
- なめらからしいことはわかる: では微分それ自体はどう定義するのか?
- 座標によらず定義するために余接空間を考える.
- 微分が消えることはチャートの取り方によらず成り立つことで, チャートの貼り合わせの定義から成り立つ.
- 微分が消える部分集合を$Z_a$とすると$\Cinfty (M)$の部分環.
- $\dual{T}_a M = \Cinfty (M) / Z_a$.
- 余接空間の構造と$a$にだけ依存することを確認, 命題 3.1. (構造がなぜ大事?)
- 余接空間の双対として接空間を定義.
- どうやって内在的に定義するか?
- 一つは関数$f \colon \bbR \to M$を考えてその同値類を取る.
- もう一つは方向微分を考える.
- ここでは後者を考える.
- ライプニッツ則をみたす線型汎関数として方向微分を定義.
- 補題 3.2 で接空間の well-definedness を確認する必要あり: 微分が消える関数に適用したら $X_a f = 0$ であること. もっと言えば接ベクトル $X_a$ が $Z_a$ をゼロに送ること.
- P.20 上の方の接空間の代数的考察はどう取り込むか?
- 定義 11 多様体間の写像の微分は接空間の間の写像として定式化する,
- 線型写像であるゆえんであり, 座標系によらない.
- 接空間は写像の微分のカーネルと同型であり, $\bbRn$での議論での基礎になっている. P.21 の例参照.
- $\inverse{F} (c)$ による部分多様体, 特にはめ込み (あってる?) による部分多様体の定義.
- 位相が誘導位相であることで避けられる事情の例が大事, P.22.
接束¶
- 地球上の風の流れがベクトル場.
- $\bbRthree$ では多様体上のベクトル値関数として定義できる. しかし値域に埋め込まれた多様体と各点で接するという条件がつく.
- これを内在的に定義したい.
- 特に滑らかに変化する族として.
- これが接束.
- 接束の定式化がきちんと書かれているので参考にする.
- 定義 14 でベクトル場を定義.
- 余接束, ベクトル束に続く.
- $\CinftyM$ 上の微分としてのベクトル場の定義.
- リーブラケットの登場.
- ベクトル場の記述の仕方その 2: 1 係数微分同相群.
- 微分同相群から生成子を作るのは楽, 微分するだけ.
- その逆をどうするかという問題がベクトル場から局所微分同相を作る方法.
- 特にベクトル場の積分曲線.
- ここで常微分方程式の局所解の存在定理が役に立つ.
テンソル積¶
- テンソルが何者であるかよりもそれが持つ性質の方が大事: これは実数についての話と同じ. 実数をいちいち有理数からなるコーシー列の同値類だと思うか?
- 大域的な一般の 1 形式と関数から作られる 1 形式の違い. いわゆる角変数の $\theta$ の話. 関数で書ききれなくても 1 形式が存在できることが大事で, 多様体論が効いてくる世界. この辺改めて自分なりにまとめる.
- P.39 例に接束, 余接束での切断の存在に対するコメントあり.
- 高次の微分形式をなぜ扱うのか? 一つは行列式の議論のため. 積分の変数変換でも行列式が出てくるからそこへの意義はある. もう一つはふつうのベクトル解析での外積を定式化するため. そして勾配, 回転, 発散などの各種微分を座標系によらない形で定式化するため.
- P.41 ベクトル場よりも微分形式の方が役に立つ理由. ベクトル場よりも微分形式の方がよく振る舞う部分を見てみる. 例えば滑らかな写像 $F \colon M \to N$ を考えよう. 各点 $x \in M$ でのこの微分は線型写像 $DF_x \colon T_x M \to T_{F (x)} N$ になる. ここで $TM$ のセクション $X$ を取って $DF_x (X_x)$ を考えても, これは $N$ 上のベクトル場を定義しない. それは $a \in N \setminus \Image F$ に対する $T_a N$ をどう取ればいいのかわからないから.
微分形式¶
- ドラームコホモロジーとベクトル解析.
- $\rot \grad = 0$ と, $\rot F = 0$ なら $F = \grad f$ f で書ける, ただし単連結性が必要, という話. これを正確に定式化するのがドラームコホモロジー.
リーマン計量¶
- P.81の測地流の定義がまだイメージできていない.
谷村省吾, 理工系のためのトポロジー・圏・微分幾何¶
加群¶
自由加群¶
記号と意味は本当にフリーダム: 鎖加群を考えよう. 鎖の形式的な整数による線型結合$\sum_{k=1}^n c_k [C_k]$を考えるほど, 適当に自由に作れる.
圏論¶
集合論は集合が先, 写像があと. 圏論は写像が先, 集合があと.
圏は対象と射があって, 射は合成が定義できて結合的で, 恒等射が存在する.
圏は図式を使って表すことが多く, 対象を結ぶ矢印のネットワークと思う.
可換図式が重要.
図式の可換性と方程式の解. \begin{align} \xymatrix{ \bullet \ar[dr]_h \ar@{..>}[r]^x & \bullet \ar[d]^g \ & \bullet }, \quad \xymatrix{ \bullet \ar[dr]_h & \ar@{..>}[l]_y \bullet \ar[d]^g \ & \bullet } \end{align} これは加法群 $\bbZ$ 上で $g \colon m \mapsto gm$, $h \colon m \mapsto hm$ という写像だとして, $g \circ x = h$ という射 $x$ があるかどうかという問題になる.
これは $3 \circ x = 12$ なら $x = 4$ であり, $5 \circ x = 12$ なら解なし, といった形.
矢印の向きを適当に調整すれば対応した方程式になる.
射の分解問題としてよく出てくる.
可逆射, 同型射.
圏の例: 集合の圏, 順序の圏 ($a \leq b$ のとき $a \to b$), 位相空間の圏, 群の圏, 環の圏, 加群の圏, ベクトル空間の圏.
モノとエピ.
モノ. \begin{align} \xymatrix{ a \ar@<0.5ex>[r]^{g_1} \ar@<-0.5ex>[r]_{g_2} & b \ar[r]^m & c. } \end{align}
エピ. \begin{align} \xymatrix{ a \ar[r]^e & b \ar@<0.5ex>[r]^{h_1} \ar@<-0.5ex>[r]_{h_2} & c. } \end{align}
関手は圏と圏の関係を語る. 共変関手だけ書いておく. \begin{align} F (g \circ f) &= F(g) \circ F(f), \ F(1_a) &= 1_{Fa}. \end{align}
関手の例: ホモトピー関手 ($f \colon X \to Y$ に $\pushout{f} \colon \pi_1 (X) \to \pi_1 (Y)$ が定義され, $\ppushouts{f \circ g} = \pushout{g} \circ \pushout{f}$), ホモロジー関手など.
関手を作ることは不変量を作ること.
ベクトル空間の圏.
共役作用素を対応させる関手: これは双対関手と呼ばれる反変関手.
モノとエピの双対性から, $A$ の単射性と $\adjointA$ の全射性は同値.
部分空間に対してその annihilator を対応させる関手 $\Ann$ を零化関手: これも反変関手.
P.130, 指数定理有限次元版が大事. $V$ を線型空間, $M \subset V$ とし, $\Ann M \subset \dual{V}$ を $M$ の零化空間とする. $\cbkszero \subset M_1 \subset M_2 \subset V$ に対して $\dual{V} \supset \Ann M_1 \supset \Ann M_2 \supset \cbkszero$ が成り立つ. $\scrS (V)$ を $V$ の部分空間の全体とすると, $\Ann \colon \scrS (V) \to \scrS(\dual{V})$ が零化関手. 自然な同型対応 $\Ann M \cong \pdual{V / M}$. これを拡張した $\Ann M_1 / \Ann M_2 \cong \pdual{M_2 / M_1}$. 包含 $i \colon M \hookrightarrow V$ に対して $\adjoint{i} \colon \dual{V} \to \dual{M}$ は全射. 零化空間の定義から $\Ker \adjoint{i} = \Ann M$ だから, 準同型定理 $\Image \adjoint{i} \cong \dual{V} / \Ker \adjoint{i}$ は $\dual{M} \cong \dual{V} / \Ann M$ を意味する. $A \colon V \to W$ とすると $\Ann \adjointA = \Ker A \subset V$ であり, $\Ker \adjointA = \Ann (\Image A) \subset \dual{W}$. 準同型定理 $V / \Ker A \cong \Image A$ によって \begin{align} \pdual{\Image A} &\cong \padjoint{V / \Ker A} \cong \Ann \Ker A \ &\cong \Ann \Ann \Image \adjointA \cong \Image \adjointA. \end{align} $\Ind A = \dim \Ker A - \dim \Ker \adjointA$ を定義し, $A$ の指数と呼ぶ. 指数定理: $V / \Ker A = \Image A$ は $\dim V - \dim \Ker A = \dim \Image A$ であり, 上の式から $\Image A \cong \Image \adjointA$ で, $\dim \Image A = \dim \Image \adjointA$ だから, \begin{align} \ind A &= \dim \Ker A - \dim \Ker \adjointA \ &= (\dim V - \dim \Image A) - (\dim W - \dim \Image \adjointA) \ &= \dim V - \dim W. \end{align}
ベクトル空間の随伴関手.
$\Ker \adjointA$ はどれだけ $A$ が全射ではないかを表す.
P.135 図 5.1 も転記する, これは指数定理.
随伴関手から双対関手への自然変換.
加群の生成関手と忘却関手.
ベクトル空間のスカラーを忘れて加群と思う忘却関手.
直積の圏論的定式化, 普遍性. \begin{align} \xymatrix{ & & X \ A \ar[urr]^f \ar@{.>}[r]^h \ar[drr]g & P \ar[ur] & \ & & Y } \end{align}} \ar[dr]^{p_Y
そして双対が直和または余積. \begin{align} \xymatrix{ A \ar[dr]_{i_A} \ar[drr]^f & & \ & S \ar@{.>}[r]^h & Z \ B \ar[ur]^{i_B} \ar[urr]_g & & } \end{align}
直積, 直和 (余積) の例.
- 集合の圏ではそれぞれ集合論的直積と集合論的直和.
- 部分集合の圏での圏論的直積は共通部分, 圏論的直和は和集合.
- 直積, 直和が存在しない圏もある.
テンソル積の圏論的定義に関連して.
$f \in \dual{V}$, $w \in W$ のテンソル積を $f \otimes w \colon v \mapsto \bkts{f}{v} w$ と定義する. 有限次元線型空間 $V$ から $W$ への $K$-線型写像の全体を $L_K (V; W)$ と書くことにし, さらにこれを $(V \to W)$, $L_k (V_1, V_2; W)$ を $(V_1 \times V_2 \to W)$ と書くことにする. $(V \to K) = \dual{V}$, $(K \to V) =V$, $\ddual{V} = V$. 写像の集合の同型 (カリー化). \begin{align} (X \times Y \to Z) = (X \to (Y \to Z)) = (Y \to (X \to Z)). \end{align} カリー化を使って線型写像を次のように同値に書き換える: 結果としては $(V \to W) = \dual{V} \otimes W$. \begin{align} &(V \to W) \ = &(V \otimes \dual{W} \to K) = (V \times \dual{W} \to K) = (V \to (\dual{W} \to K)) \ = &\dual{W} \to \dual{V} = (\dual{W} \to (V \to K)) \ = &(K \to \dual{V} \otimes W) = \dual{V} \otimes W = \pduals{V \otimes \dual{W}}. \end{align}
自己準同型 $A \in \End (V, V)$ は $A \in \dual{V} \otimes V$.
普遍対象としてのテンソル積空間: 任意の線型空間 $X$ と任意の双線型写像 $S \colon V \times W \to X$ に対して, 線型写像 $S' \colon V \otimes W \to X$ で $S' \circ \tau = S$ をみたすような $S'$ が一意的に存在する. \begin{align} \xymatrix{ V \times W \ar[r]^\tau \ar[dr]S & V \otimes W \ar@{.>}[d]^{S'} \ & X }, \quad \xymatrix{ & V \times W \ar[ddl]_S \ar[d]^\tau \ar[ddr]^T & \ & V \otimes W \ar@{.>}[dl]^{S'} \ar@{.>}[dr] & \ X & & Y. } \end{align}
微分幾何¶
微分幾何の重要性: 観測者に依存しない物理法則の微分方程式による定式化, 座標系に依存しない微分方程式の書き方. この記述言語.
$n$次元の微分多様体の定義.
- $M$はハウスドルフ空間.
- $M$の開集合族$\famalpha{U}$, $M = \bigcup_{\alpha \in A} U_\alpha$, $V_\alpha \subset \bbRn$への同相$\phi \colon U_\alpha \to V_\alpha$.
- $U_\alpha \cap U_\beta \neq \emptyset$のとき, $\psi_{\alpha, \beta} = \phi_\alpha \circ \inverse{\phi_\beta}$が滑らか.
- $(U_\alpha, V_\alpha, \phi_\alpha)$をチャート.
- チャートを全て集めた$\famalpha{(U_\alpha, V_\alpha, \phi_\alpha)}$をアトラス.
- 各 $U_\alpha$を座標近傍, $\phi_\alpha$を座標関数, $\psi_{\alpha, \beta}$を座標変換関数と呼ぶ.
多様体自身は位相空間でしかないので, 直接微分は定義できない. そこで $\bbRn$ 上の写像とその微分可能性で滑らかさを定式化する.
多様体上または多様体間の写像に関する微分可能性も同じ.
チャート・アトラスに依存してもらっても困るので, そこで貼り合わせに関する条件をつけている.
6.4 曲線と関数, 接ベクトルと余接ベクトル.
$\bbR$ はよくわかっている多様体で, これを基軸にして議論を進める.
特に $\bbR \to M$ という射 (曲線), $M \to \bbR$ という射 (関数) で $M$ を仲立ちにして射の性質を調べる.
曲線 $c \colon \bbR \to M$ を座標関数 $\phi_\alpha$ を使って $\phi_\alpha \circ c$ にして, $\bbRn$ の議論に落とす. 曲線の微分は $\dot{c} = \frac{dc}{dt} \colon \bbR \to TM$ という写像を誘導する.
写像 $f \colon M \to \bbR$ は座標関数 $\phi_\alpha$ を使って $f \circ \inverse{\phi_\alpha} \colon V_\alpha \to \bbR$ に落として考える. 関数の微分は $df \colon \dual{T} M \to \bbR$ を誘導する.
$I_\varepsilon = (- \varepsilon, \varepsilon)$ とし, 特に曲線 $c \colon I_\varepsilon \to M$ と関数 $f \colon M \to \bbR$ を合成して $\bbR$ 上の関数 $f \circ c \colon I_\varepsilon \to \bbR$ を考える. \begin{align} df (X) = \bkts{df}{X} = Xf = \frac{d}{dt} f \circ c (t) &= \frac{d}{dt} (f \circ \inverse{\phi_\alpha}) \circ (\phi_\alpha \circ c) (t) \ &= \frac{d}{dt} f_\alpha (x^1 (t), \dots, x^n (t)) \ &= \sum_{\mu=1}^n \frac{\partial f_\alpha}{\partial x^\mu} \frac{d x^\mu}{dt}. \end{align}
$c (0) = p$ であるとして, 次のように接ベクトルを定義する. \begin{align} X^\mu = \myrestriction{\frac{dx^\mu}{dt}}{t=0}, \quad X = \frac{d}{dt} = \sum_{\mu=1}^n X^\mu \frac{\partial}{\partial x^\mu}. \end{align}
接空間, 接束, 余接ベクトル, 余接空間, 余接束.
ベクトル場は接束の切断, 微分形式は余接束の切断.
一般の微分形式は $\sum_{\alpha \in I} f_\alpha dx^\alpha$ であって, 1 本の関数で綺麗に書けているとは限らない. ここで, ポテンシャルがあって $\omega = df$ と書けているような状況を 1 本の関数で綺麗に書けていると表現している. これはまさに完全形式のこと. 一般に微分形式は完全形式ではないわけで, これはポテンシャルの存在を言っている. 逆にポテンシャルがあると保存力になっているわけで, 一般に力が保存力ではないことは, 力を表す物理量・微分形式がポテンシャルで書けないことを意味する. そしてポテンシャルで書けるかどうかは考えている空間のトポロジーにもよることは, ド・ラームコホモロジーで検出できる.
例: 2 形式は面積に比例する物理量を測る関数で, 単位面積あたりの密度を表す. 流体力学の場合なら, 単位面積を通過する流量の密度は 2 形式で書く. 3 形式 $\alpha$ はある物理量の単位体積あたりの密度 (質量密度や電荷密度).
1 次元多様体上でド・ラームコホモロジーが非自明な例. $M = (- \infty, x_0) \cup (x_0, \infty)$. $f = c_1 \chi_{(- \infty, x_0)} + c_2 \chi_{(x_0, \infty)}$, $c_1 \neq c_2$ とすると, $df = 0$ で $f$ は定数関数ではない (局所定数関数). そして $H^0 (M) = \bbRtwo$.
一般に $H^0 (M)$ は連結成分の個数.
ふつうの定義だと, 微分形式は多様体の各点の余接空間として定義され, そのままでは多様体上の異なる 2 点との関係はない. 一方, 外微分を定義して閉形式を考えれば, ある点での微分形式の値とその近傍での微分形式の値が関係づけられる. そして本質的な閉形式の個数を数えることで多様体の全体像がわかる: それがコホモロジー. 特に 0 次元コホモロジーは連結成分が検出できる.
1 次元のコホモロジー. $M_2 = \bbRtwo \setminuscbkszero$ と次の 1 形式を考える. \begin{align} \omega = \frac{x}{x^2 + y^2} \dx - \frac{y}{x^2 + y^2} \dy. \end{align} これは $d \omega = 0$ をみたすから閉形式. しかし $\omega = d \eta$ をみたす 0 形式 $\eta$ は存在しない. $x = r \cos \phi$, $y = r \sin \phi$ とすると, $\omega = d \phi$ と書ける. しかしこれは $r$ を固定したまま $\phi \in [0, 2 \pi]$ を動かすと $\phi = 0$, $\phi = 2 \pi$ が $M$ の同じ点を表すことになる. $\phi \colon M \to \bbR$ は一つの $M$ の点に複数の値を対応させられないので, $0$ か $2 \pi$ の値のどちらかを選ばなければいけない. しかし任意に小さな $\varepsilon \in (0, 2 \pi)$ に対して $\phi = 2 \pi - \varepsilon$ と $\phi = \varepsilon$ は $M$ 上では近いのに $\phi$ の値は有限のギャップ $2 \pi + 2 \varepsilon$$ を持つ: つまり $\phi$ は $M$ 上の連続関数ではなく, $\phi$ は $M$ 上の 0 形式ではない. さらに言えば $\phi$ は $(0,0)$ では定義できないし, $\omega$ の存在は $M$ から原点がくり抜かれていることに由来している.
$M_3 = \bbRthree \setminuscbkszero$ とし, 次のように 2 形式を定義する. \begin{align} \omega = \frac{x \dy \wedge dz + y \dz \wedge dx + z \dx \wedge dy}{(x^2 + y^2 + z^2)^{3/2}}. \end{align} これも $M_2$ のときと同じで立体角を表していて, 完全形式ではない.
ポアンカレの補題と可積分条件.
ポアンカレの補題は不定積分に関わる議論とも言える.
ポアンカレの補題: 多様体 $M$ 上の 1 点可縮な開集合 $U$ 上で閉形式は完全形式である.
$\omega = d \eta$ をみたす $\eta$ が大域的に連続写像として存在するかどうかこそ, 多様体の大域的トポロジーに関する事情.
ポアンカレの補題によって, 1 点可縮な空間では $\partial_\mu \omega_\nu = \partial_\nu \omega_\mu$ をみたすとき, $\frac{\partial F}{\partial x^\mu} = \omega_\mu$ をみたす $F$ が存在する.
多様体上の定積分がいわゆる微分形式の積分.
単位の分割.
曲線の微分は写像 $\dot{c} = \frac{dc}{dt} \colon I_\varepsilon \to TM$ を誘導する. 関数の微分は $df \colon \dual{T} M \to \bbR$ を誘導する. そこで $df \circ \dot{c} \colon \bbR \to \bbR$ であり, この関数は積分できる. もっと言えば dual pair $\bkts{df}{c} = \int_c df$ が積分.
物理への応用¶
電磁気学¶
ローレンツ力とマクスウェル方程式.
\begin{align} F &= eE + e v \times B, \ \divergence B &= 0, \ \rot E + \frac{\partial B}{\partial t} &= 0, \ \divergence E &= \frac{1}{\varepsilon_0} \rho, \ \rot B - \frac{1}{c^2} \frac{\partial E}{\partial t} &= \frac{1}{\varepsilon_0 c^2} j. \end{align}
電場を $E = \sum_{k=1}^3 E_{x_i} dx_i$, $B = B_x \dy \wedge dx + B_y \dz \wedge dx + B_z \dx \wedge \dy$ と書けば, マクスウェルの前半は $dB = 0$, $dE + \frac{\partial B}{\partial 0} = 0$ と書ける.
後半の 2 つはホッジのスター作用素を使う. \begin{align} * E &= E_x \dy \wedge dz + E_y \dz \wedge dx + E_z \dx \wedge dy, \ * B &= B_x \dx + B_y \dy + B_z \dz. \end{align} 電荷密度と電流密度を次のように微分形式にしておく. \begin{align} \rho &= \rho \dx \wedge dy \wedge dz, \ j &= j_x \dy \wedge dx + j_y \dz \wedge dx + j_z \dx \wedge dy. \end{align}
マクスウェルの後半 2 本を書き換え. \begin{align} d * E &= \frac{1}{\varepsilon_0} \rho, \ d * B - \frac{1}{c^2} \frac{\partial * E}{\partial t} &= \frac{\varepsilon_0 c^2} j. \end{align}
$\bbMfour$ 上で電磁テンソルと 4 元電荷密度を考える. \begin{align} F = & E_x \dx \wedge dt + E_y \dy \wedge dt + E_z \dz \wedge dt \ &+ B_x \dy \wedge dz + B_y \dz \wedge dx + B_z \dx \wedge dy, \ *F = & \frac{1}{c} \rbk{E_x \dy \wedge dz + E_y \dz \wedge dx + E_z \dx \wedge dy} \ &- c \rbk{B_x \dx \wedge dt + B_y \dy \wedge dt + B_z \dz \wedge dt}, \ J = & \rho \dx \wedge dy \wedge dz \ &- \rbk{j_x \dy \wedge dz \wedge dt + j_y \dz \wedge dx \wedge dt + \dx \wedge dy \wedge dt}. \end{align}
これでマクスウェルをさらに書き直す. \begin{align} dF = 0, \quad d * F = \frac{1}{\varepsilon_0 c} J. \end{align}
$\bbMfour$ は 1 点可縮だから, $F = dA$ となる 1 形式 $A$ が存在する. $A = - \phi dt + A_x \dx + A_y \dy + A_z \dz$ と書ける. マクスウェル方程式と $dd * F = 0$ によって $dJ = 0$ である. \begin{align} dJ = \rbk{\frac{\partial \rho}{\partial t} + \divergence j} \dt \wedge dx \wedge dy \wedge dz = 0. \end{align}
これはマクスウェル方程式の成立にとって電荷保存則は必要条件だと言っている.
積分形で方程式を書くと電荷分布が不連続に変化するような場合でもそのまま使える (と本に書いてあるが, 適当にカレントを導入したりすればいいはず). 微分方程式では関数値が不連続に変化するところで境界条件が必要になる.
拘束系の力学¶
\begin{align} dx &= a \cos \theta d \phi, \ dy &= a \sin \theta d \phi. \end{align}
ここで $ddx, ddy \neq 0$ なので非ホロノーム拘束.
ハンドル操作とペダル操作の非可換性が非可積分性. 非可積分性はプロセスの順序・経路に依存して変化の蓄積結果が変わること.
可積分な拘束条件: $\alpha = x \dx + y \dy$. これは $d \alpha = 0$ をみたす.
力学と保存則¶
\begin{align} \frac{dp}{dt} &= - \omega^2 x, \ \frac{dx}{dt} &= p. \end{align}
$\eta_1 = dp + \omega^2 x \opd t$, $\eta_2 = dx - p \opd t$ を定義する.
ベクトル場として $X = \frac{d}{dt} = \frac{dx}{dx} \partial_x + \frac{dp}{dt} \partial_p + \partial_t$ を取る.
運動方程式は $\bkts{\eta_i}{X} = 0$.
$\alpha_1 = p \eta_1 + \omega^2 x \eta_2 = p \opd p + \omega^2 x \opdx$ であり, $H = \frac{1}{2} p^2 + \frac{1}{2} \omega^2 x^2$ とすれば, $\alpha_1 = dH$ と書ける.
$\bkts{\alpha_1}{X} = \bkts{dH}{\frac{d}{dt}} = \frac{dH}{dt} = 0$ が成り立つ.
$\bkts{x \eta_1 - p \eta_2}{X} = 0$ を作ると次のように書ける. \begin{align} \bkts{x \opdp - p \opdx + (\omega^2 x^2 + p^2) \opdt}{X} = 0. \end{align}
さらに $x = \frac{\sqrt{2H}}{\omega} \cos \theta$, $y = \sqrt{2H} \sin \theta$ とすると次の等式を得る.
\begin{align} \bkts{\frac{2H}{\omega} \opdtheta + 2H \opdt}{X} = 0. \end{align} $\alpha_2 = \opdtheta + \omega \opdt$ とすると $H \neq 0$ なら $\bkts{\alpha_2}{X} = 0$ で $\alpha_2 = d (\theta + \omega t)$ と書ける.
微分方程式は適当な多様体 $M$ 上の曲線 $c$ の接ベクトル $X$ に対する条件式. これは特に接ベクトルを微分形式の組 $\cbks{\eta_1, \dots, \eta_k}$ に作用させたら 0 になるという条件式. つまり微分形式は曲線を内包的に規定する.
$\alpha_i = dH_i$ をみたす関数 $H_i \colon M \to \bbR$ は $dH_i / dt = 0$ をみたし, $H_i (c(t)) = E_i$ と積分される. 解曲線の存在範囲は $\inverse{H_i} (E_i)$ の中に限定される. これも曲線を内包的に規定する条件.
多様体 $M$ をはさんで $\bbR \to M \to \bbR$ という写像の入出力があり, 微分形式 $TM \to \bbR$ や 保存量 $M \to \bbR$ という内包から, 曲線 $c \colon \bbR \to M$ という外延を浮き上がらせる.
双対的世界観¶
方程式を解くことは内包から外延に迫るアプローチ.
方程式は内包的で解は外延的.
現象から法則性を見出すことは解から方程式を推測することで, 外延から内包への帰納にあたる.
Asenjo, Erices, Gomberoff, Hojman, Montecinos, 2017, A differential geometry approach to asymmetric transmission of light¶
重力に関する物理で普遍的なように, 光学でも微分幾何の技術が登場してきている. 光学的な人工物質(メタマテリアル) のデザインでも, 現在 transformation optics と呼ばれる技術で使われている. しかしこの方法は impedance matched として知られるメタマテリアルの特定のクラスに対してしか使われていない. impedance matched でない状況でも使えるようにする.
電磁放射を制御する方法が発展してきている. 特に媒質の構成. 光学的ブラックホールというのもある. 特に一般相対論の数学, つまり微分幾何の技術を使っている. $W$-テンソルと呼ばれる一般相対論でのワイルテンソルの局所性を持ったテンソルが大事. 計量と結びついていないところがポイント.
二つの計量は二つの物質に結びつく: 背景の幾何は平坦. これがtransformation opticsが役に立つ理由.
Ricciテンソルは出てくるからやはり知らないでは済まされない. invisibility devices: 不可視装置.
4節での式(16-17)はブラックホール背景下での光の伝播やホログラフィーでも使われる方程式.
微分幾何という言葉を入れずに, ふつうに光ファイバーを調べてみて文献を探す.
Leonhardt, Philbin, 2008, Transformation Optics and the Geometry of Light¶
メタマテリアルは工学者の夢. 現実的な限界はあるのかないのか? 原理的な限界はあるのかないのか? 光学と一般相対論の関係を議論する. 一般相対論の知見を電気的・光学的に使うことで, 電磁的な不可視デバイスに使えそう. 光にとっての人工的な幾何を作り出す理論的バックグラウンドに重力理論を使う. メタマテリアルからなる物質は現実の空間からある仮想的な電磁的な空間への座標変換をしているように見える.
Transformation optics とは transform optics のはじまり. (メモ: これらはどう違うのだろう?)
曲率は位相と違って局所的. 円筒と平面は位相は違うが曲率は等しく0.
曲率をどう測るか? まずは直線の概念を一般化する: つまり測地線を導入する.
測地線の方程式は平行移動を使って意味づけできる. 測地線の方程式に出てくるベクトルは測地線の接ベクトルである. 方程式自体は接ベクトルの共変増分が 0 であることを意味する. つまり接ベクトルが測地線に沿って平行移動されたことを意味している.
測地線は曲率を測るのに使える. 平坦な空間での 2 本の測地線は一定の距離を保つか, 分離する距離が一定の割合で変わっていく. したがって測地線に沿って分離していく距離の 2 階微分が消えない. これは P.29 の図参照. 球面を考えてみる.
光学 屈折率を変えることで光にとって侵入できない領域を人為的に作り出す. 共形変換が大事. 2 次元に制限した時のヘルムホルツ方程式, 複素解析での共形性. 関数論は解析のための道具と幾何的直観の源. 時空を混ぜる変換もある. 4 節で解析の道具を提供する, これは一般相対論から概念を借りてきている.
3 節. マクスウェルをいろいろな座標で考えたい. P.19, 共変微分, クリストッフェルを一般の微分幾何から復習. 平行移動の具体例はフーコーの振り子.
P.27 平坦性の議論. 球は平坦ではないが円柱は平坦. これは円柱が紙を巻きつけるだけでできるから, 本質的に平坦である, 球は紙を無理やり伸び縮みさせない限り, 一枚の紙で同じことことができない.
Cox, Little, OShea, Ideals, Varieties, and Algorithms¶
5 章¶
ロボットは線分で繋がれた様々なタイプの関節を持つ. 人間の四肢のように連続して繋がっているとする. 腕の一方は固定, 他方はいわゆる「手」. 手の位置と向きを知りたい. 関節が回転するとき, 腕は常にある平面内にあると仮定. 角型関節はクレーン車のように伸びる関節.
もっとリアルにしたければ, 球関節やネジ型関節で 3 次元の動きを実現させる. これでアフィン代数多様体が出てくる.
P.267 例 1 に図. 回転できる関節は $S^1$ またはその部分集合上を動く. 2 つの関節の間の骨で回転を表現する. 角型関節は正の実数の部分集合で動きを表す.
$r$個の回転関節と $p$個の角型関節があるロボットの動きは $\calJ$ で記述できる. あとできちんと書く. $\calJ$ を関節空間と呼ぶ.
腕について. 腕は腕の位置に関する $\bbRtwo$の自由度と, 腕の向きの分の $S^1$ の自由度がある. 腕の配位は $\calC = U \times V$ とする.
考える写像は $f \colon \calJ \to \calC$. 順問題と逆問題. 順問題は (あとで書く). 逆問題は腕の位置を指定した上でそれが実現できるか. 非線型問題だから, 回転関節がある場合は逆問題が難しい. 非線型問題は解が有限個であってもいろいろな状況がありうる. 解の非一意性は多様な解のあり方を示していて, むしろ有り難いこと. P.269 の図も参照, 物理的に問題の配置もありうるので解がたくさん方が嬉しい.
三松佳彦 リーマン多様体上の流体運動方程式の幾何学的基礎¶
1¶
本稿では多様体上の流体の運動方程式に対して上の言葉にある幾何の役割を遂行することを試みたい.
数学を大きく三つの分野, 代数, 解析, 幾何に分け, '方程式'を使ってそれらを対比した言葉がある. 「方程式を立てるのが幾何, 方程式の解の存在を示すのが解析, そして解の記述を行うのが代数の役割」 (筆者はこれを矢野公一氏から教わった.)
2¶
閉 (=コンパクトで境界がない) リーマン多様体 $M$ 上の非圧縮流の運動を考えるとき, 実際の流体粒子の運動そのものではなく, その速度場を表す $M$ 上のベクトル場 $u = u (t)$ の方程式として運動方程式を与えるのが Euler 以来の考え方.
\begin{align} \frac{du}{dt} = \nabla_u u (t) - \grad p, \quad \divergence u = 0. \end{align}
幾何の立場からは, $\divergence u = 0$ は速度場 $u (t)$ に対する非圧縮という前提に込められていると考えて省く. その代わりに第 1 式の圧力関数 $p$ は 第 1 式の発散を消すために, 時間のみに依存し空間方向には定数であるような任意の関数の差を除いて一意に定まる, と考える.
2.1¶
Euler 方程式の導出のための考え方や解釈は何通りも知られていて, 結論は全て一致する.
幾何的には 2 つの重要な点があり, 「測地線」および「対称性」というキーワードに集約する.
まずは「測地線」に重心を置いた 2 通りの解釈から始める.
第 1 の解釈では, 各流体粒子がすべてまっすぐ (運動量を保存して) 運動しようとしているとみる. $\bbRn$ で考えた場合, Euler 方程式の第 1 項に現れる $\nabla_u u (t)$ は流線の加速度に他ならない. それを打ち消すように, つまり等速直線運動せよと方程式が命じている. もし (1) が圧力項 $- \grad p$ を伴わなかったとするとまさにそのようになる. ただそのままでは実際には非圧縮性に抵触するので, それに応じた圧力が生じ, その分の力を受ける. この様に考えれば既に Euler 方程式は導出されている.
リーマン多様体上でも以上の考え方を全くそのまま踏襲できる. リーマン多様体 $M$ 上の質点の 運動を $M$ 上の曲線 $\gamma (t)$ で表そう. 一切外力を受けないとすれば, 質点は測地線に沿う運動をする.
言い換えると等速度でまっすぐ曲がらずに運動する, すなわち運動エネルギーも運動量も保って運動する. 2 点間の最小の長さかつ等速で結ぶ曲線が測地線.
流体を多 (無限) 粒子系として捉え, 系が外力の無い 運動をしていると捉えれば, やはり運動方程式が書き下せる. これが測地線としての第 2 の解釈: 具体的には多少準備が必要.
2.3¶
リーマン多様体の測地線の方程式は, その相空間である接束上の 1 階の常微分方程式で表される. 一般に右不変な計量を持つ Lie 群の場合, 右移動による対称性を使って Lie 環上の方程式に書き直せる. 我々の場合, divergence free はベクトル場の全体 $\calX_d (M)$ の上の 1 階の方程式が得られる. それが完全流体の Euler 方程式に他ならない. 導出法については記事の該当個所参照.
2.4¶
よく知られているように, 一般の多様体において, ベクトル場よりは微分形式の方が「外微分」という自然な微分作用素を許容しうる. '自然な'という意味は自由な座標変換に対して表現が不変性を持つという意味.
ベクトル場に対する発散 $\divergence$ や回転 $\rot$ は体積要素 $d \vol$ やリーマン計量が指定されていないと定義できない. 一方, 外微分 $d$ は計量のない多様体上でも定義される. 色々な意味でベクトル場を微分形式による表示に変換しておいた方が都合がよい.
ベクトル場を微分形式に変換する方法は 2 つ. 1 つはリーマン計量から直接. もう一つはホッジのスター作用素. これらは内部積で符号を除いてうつりあう.
ホッジ-小平の特別な場合¶
$B^1 = d \Omega^0$, $H^1 = \ker d \cap \ker \delta$, $\beta^1 = \delta \Omega^2$, $\zeta^1 = \ker \delta$とすると, 直交分解$\Omega^1 = B^1 \oplus H^1 \oplus \beta^1$が得られる.
特に発散のないベクトル場に対応する1-形式全体は$\zeta^1 = H^1 \oplus \beta^1$ で, その直交補空間$B^1$はちょうど関数の外微分にあたり, ベクトル場としてはある関数の勾配ベクトル場である. \end{thm}
2.5¶
ベクトル場を空間方向へ偏微分するためには (リーマン) 接続の概念が必要となる. ユークリッド空間ではベクトル場の各成分を偏微分すればよいのだが, 例えばベクトル場 $Y$ を曲線 $\gamma (t)$ に沿って微分したいとき, 異なる $t$ 毎にベクトル場は値 $Y_{\gamma (t)}$ を異なるベクトル空間 $T_{\gamma (t)} M$ にとっており, 何らかの特別な方法でこれらの空間が同一視されていなければ「値 $Y_{\gamma (t)}$ の $t$ に従う変化」という言葉が意味を持たない. 上でリーマン多様体上での質点の運動に'運動量保存'を定義しにくい理由である.
2 点間をつなぐ曲線を取り替えれば同一視の結果も変わるが, 曲線を指定すれば平行性 (同一視) が定式化できることを意味しており, 「絶対平行性」という言葉でも言い表されることがある. 曲線を取り替えたときの同一視の差は曲率で表現される.
3.1¶
具体例が参考になる.
荒井迅.第一回さきがけ数学塾「力学系」はじめに.pdf¶
1 力学系とは¶
力学系は「時間」「状態空間」「時間発展のルール」の 3 つ組のこと, つまり群または半群 $G$ の空間 $X$ への作用 $\Psi \colon G \times X \to X$, $(g,x) \mapsto \Psi (g,x) = \Psi^g (x) = gx$, $\Psi (gh,x) = hgx$ が与えられると, $G$ を時間, $X$ を状態空間, $\Psi$ を時間発展のルールとする力学系が定まるという.
状態空間の点 $x \in X$ がある「状態」を表わすとすると, その $G$ による軌道 $O (x) = \Psi (G, x)$ は時間と共に状態がどのように変化するかを表現する. たとえば時間 $G$ として加法群 $\bbZ$ を考える. この場合 $f = \Psi^1 \colon X \to X$ という写像を考えると, 軌道は $O (x) = \set{f^k (x)}{k \in \bbZ}$ となり, 状態 $x$ の時間 $k$ 後の状態が $f^k (x)$ である. ここでの $f^k$ は写像の合成で定義する.
最初の例¶
$\lambda \neq 0$ に対して $L_\lambda (x) = \lambda x$ で定義される写像 $L_\lambda \colon \bbR \to \bbR$ を考える. $\Psi (k,x) = L_\lambda^k (x) = \lambda^k x$ であり, $k \to \infty$ のときの漸近挙動は $\abss{\lambda} > 1$ なら発散, $\abss{\lambda} < 1$ なら 0 に収束.
可逆力学系と不可逆力学系¶
前節で $\lambda \neq 0$ という仮定をおいたのは, $\lambda = 0$ だと $L_\lambda$ の逆写像を考えることができないので, $k < 0$ に対して $\Psi^k$ が定義できず, 群 $\bbZ$ の作用とはみなせないからである.
この場合でも正の時間に対しては力学系は問題なく定義されているので, $\bbZ$ ではなく半群 $\bbN$ が作用していると考えることができる. このように群が作用している場合その力学系は「可逆」であり, 半群の作用の場合には非可逆」であるという. 非可逆な力学系においては時間を遡ることができない.
これは拡散方程式のように実際の物理系でも時間逆回転ができない (意味がない) 系でありうること.
5 連続力学系と離散力学系¶
以下では時間が $\bbZ$ や $\bbN$ の場合 (群 $G$ に離散位相を入れて考える場合) を離散力学系, 時間が $\bbR$ の場合を連続力学系, もしくは flow と呼ぶことにする. 以下では flow と離散力学系 $G = \bbZ$ の関係を考えよう. 当然のことながら両者は密接な関係にある.
まず flow $\Psi \colon \bbR \times X \to X$ が与えられると, $t \in \bbR$ に対し $f (x) = \Psi (t,x)$ とおくことで写像 $f \colon X \to X$ が得られる. この $f$ を $\Psi$ の 時間-$t$ 写像という. $f$ の生成する力学系の軌道は, もとの flow における挙動を $t$ 秒ごとにスナップ写真を撮ったようなものである.
もとの flow のポアンカレ写像, ポアンカレ断面 $S$ も大事. ポアンカレ写像を調べることで, もとの flow の周期軌道の近傍での挙動がわかる. 一般に $S$ は $X$ よりも次元が低いこと, 写像のほうが flow よりも扱いやすいこどから, この方法は flow の研究において非常に強力な道具となっている.
6 漸近挙動¶
F. Diacu and P. Holmes, "Celestial Encounters", Springer (日本語訳「天体力学のパイオニアたち」上・下, シュプリンガー東京)が面白いらしい.
参考文献¶
必要なときは参考にしよう.
白岩謙一, 力学系の理論(数学選書)¶
接空間がバナッハ空間でちょっと変わった幾何の本, という印象. 関数解析風味があって内容的には面白いが, こんなに定義定理証明の羅列になっている無味乾燥な本は久し振りに読んだ. もしかしたらはじめて?
前半の集合位相の部分は本当に事実の羅列だが, すっきりまとまっていて物理数学2.0には良さそうな気もする.
新井紀子, AI vs. 教科書が読めない子どもたち¶
文章が読めない人がたくさんいる, という問題をもっと真剣に考えなければ. 本を貸してしまったので, 余裕があれば適当にまとめる.
佐藤雅彦 行動経済学まんが ヘンテコノミクス¶
まんが形式の本は人に勧めやすい. こういうのをもっと真剣に模索したい.
2018-02-18 大森英樹, 力学的な微分幾何 新装版¶
2018-02-23 Bullo, Fujimoto 2006 Proceeding, Lagrangian and Hamiltonian Methods for Nonlinear Control¶
P.32, 最急降下法に関して.
2018-02-23 教科書 Bullo.Lewis.2004.Geometric_Control_of_Mechanical_Systems.pdf¶
ふつうに教科書.
2018-02-23 Bullo, Thesis, Nonlinear Control of Mechanical Systems A Riemannian Geometry Approach¶
対称性と reduction を軸に据えた Marsden 系の議論が重要になっている. 非線型制御と微分幾何. underwater vehicle, 58, 63, 40.
2018-02-23 Kolar, Michor, Slobak, NATURAL OPERATIONS IN DIFFERENTIAL GEOMETRY¶
強引に120ページくらいまで読んだが, あまり興味が持てず断念. もう少し読めば面白くなるのかもしれない.
大栗博司さんによる『大栗先生の超弦理論入門』講談社ブルーバックス¶
書評という名の感想¶
はじめに¶
大栗博司さんによる『大栗先生の超弦理論入門』という本が 8/20 にブルーバックスから出版される.
これの早刷による書評募集があったので, 応募したら当選になったようで, 本が送られてきた. 送るべき書評は 400 字までなのだが, 備忘録も込め, ここでは詳しく書いておく. 自分の趣味に沿った, 普通の人は気にすることのない細かいいちゃもんのようなものもあるが, このブログ読んでいる人に普通の人はいない想定なのでよしとする.
まず一言でいうと面白かった. 今まで断片的に知っていた色々な超弦理論関係の言葉が繋がっていってすっきりした, というのもある. 特に後半, 何を言っているのかさっぱりだが大栗さんが実に楽しそうに研究し, 本を書いている姿が伺える. 所々自分の趣味を刺激してくるので, 研究 (勉強ではなく) したくなる気にさせてくる素敵な本であった.
とりあえず私の知る大栗さん像から書き始めることにしよう. 私の専攻はいわゆる数理物理で大栗さんも広義の数理物理だとは思うが, 研究の方向についてほぼ関係はない. 始めて大栗さんの名前を聞いたのは東大数理の名誉教授 (話を聞いたときは教授だったが) の桂利行先生からだ. 何かのときに IPMU の話になって「大栗さんも村山さんも数学めちゃくちゃできる」と言っていたので名前を知った. 東大数理の名誉教授になるくらいなので桂先生も大概だが, その人にこう言わせるとは凄まじいな, と. 超弦関係の物理の人, 鬼のように数学できるので恐ろしいが, その中でもトップクラスとか戦慄した.
では内容. 「はじめに」から順に思うところを徒然に書いていく.
書評¶
はじめに¶
超弦理論は素粒子の理論であると同時に時空の理論でもあるということ, 空間の「次元」が決定できる理論であると紹介される. P.5 で次のように書かれているので, 「決定」と書いてしまうのはまずい気もするが, あとの方で「次元が決定できて嬉しい」という記述はあったので.
超弦理論の研究から, 空間の「次元」が変化してしまうという驚くべきプロセスが発見されました.
何にせよ, のっけから空間の次元の話を押し出してきていて, 心を掴みに来ているな, という感じ. ふと思ったが, 時間は何で 1 次元扱いなのだろう. 不公平感溢れる.
P.6 に次のような記述があるが, ちょっと思うところがあった.
P.6
温度とは分子の平均エネルギーの表れにすぎません.
超弦理論, ブラックホールの温度という話も出てきたし形式的には多体系の理論になると思っているのだが, 温度はどう扱っているのだろう. 形式的に「絶対零度」の世界の理論なのだろうか. 京都の小嶋先生あたりの相対論的場の理論での非平衡状態に関する研究あるし, 温度が入ると Lorenz 不変性が壊れるとかいう話というのを聞いたので, その辺気になる. Curved spacetime 上, 普段私が触っているフラットな時空での対称性の議論がどこまで使えるかがまず問題なので Lorenz 不変性の話はいいとして, 温度の扱いは気になった. 超弦レベルでの温度の定義とかまた修羅の世界っぽいが, そもそも意味があるのかどうかが気になる.
のっけから私の話が脱線しまくっているのだが, 本ではストレートに空間とは何ぞ, 次元とは何ぞ, というところを考えるのだというのを強調している.
P.7
そして, この理論が数学的につじつまが合っているかどうか確認していく作業の過程で
超弦というか相対論的場の量子論を含む素粒子関係, 理論が異常なくらい綺麗なので時々驚く. 私は一応物性回りで, 綺麗になり過ぎないぎりぎりのところで, しかも現行人類に扱える範囲の対称性は持っているところを狙っているので, (不勉強で関連する物理がよく分かっていないこともあり) 綺麗すぎると物理として大丈夫なのか, というのが気になるが, 真っ向から逆を行っている感じ, 何ともいえず, 面白い. 数学的整合性を軸に議論するというの, AQFT では基本中の基本ではあるけれども.
P.8
第 4 章では, 超弦理論では「空間の次元が決まる」理由を明らかにします.
次元が決まるというの, 確かに面白いし魅力的. 普段好き好んで $d$ 次元で考えている私が言うのもアレだが.
第 1 章 なぜ「点」ではいけないのか¶
量子統計というか非相対論的場の量子論というか, その辺で電子が点粒子なせいで, 基底状態の不安定性との戦いが必要になるので困っている方の市民だった. 私が扱っている範囲では原子核も点扱いが一次近似として正当なので, いつも困っている. もっというなら, つらくて手に負えないため普段は Hubbard で格子上に制限してその辺さばいているのだが. というようなことをタイトルを見た時点で色々思う.
章の冒頭の一文を引いておこう. 駄目な大人には困ったものだ.
P.12
私たち素粒子物理学者はこうした問いかけを心に抱き続けたまま, 大人になってしまいました.
超弦だと物質の基本は (昔ながらの) 粒子とするのではなく弦だと思うという話だが, 少なくとも何故「点」では困るのか, というところから始まる. ここまで書いて思ったが, 脱線が多過ぎて本の筋が何なのか見えなくなりつつある感想文になってしまっていて実にアレ.
Euclid あたりの数学的な点の扱いから Demokritos の原子論に流れて, というお決まりの話の流れが出てくる. この辺については我らが江沢洋先生の『だれが原子をみたか』がハイパー面白いのでお勧め. 江沢先生は日本の数理物理の草分けで素粒子・場の理論界隈の数理物理の人だ.
原子・原子核からさらに陽子・中性子, クォーク, 標準模型の話で, そこから標準模型の問題を議論して弦だ, となる.
単純に私が知らなかっただけだが, 暗黒物質は標準模型関係の話だというの, あまり認識していなかった. 宇宙論関係の話だとしか思っていなかったので「ほー」と思った.
重力と電磁気力の比較のところ, 物質の安定性関係で中性子星 (重力多体系) の扱いなどを思ったが今は別に関係ない (はず).
電子が自分で作った場との相互作用で無限大が出てきて困るから点は駄目なので, 繰り込みでどうにか対処したがある所まで行くと 繰り込みも駄目だからどうしようとなって弦に行きついた, というところで 1 章が終わる.
章末のコラムでひもと弦という言葉回りの小話が紹介される. ひもという言葉を使った方が一般にインパクトがあるらしいというのだが, 弦と言った方が格好いいのに, と思ったけれども, Twitter で「女性に寄生する男性としてのひも点意味での超ひも理論」とかいう地獄の底から這い上がってきたような, 何重もの意味で線型代数で殲滅すべき発言をよく見かけることを想起し, 納得せざるを得なかった.
次の話, 涙を禁じ得ない.
P.32
先日も著名な天文学者と話しているときに「大栗さん, 超弦理論と超ひも理論というのは, 同じものだったのですか」と聞かれて, びっくりしました.
第 2 章 もはや問題の先送りはできない¶
電子の話だが, 電磁場が出てくるので光の話も出てくる. くりこみの話がメインだが, 重力を考えるとくりこみができなくなって困った, というところで終わる.
P.37
光は「波」であり「粒」でもある
よくあるアレだが, 超弦くらいの無茶な話をするなら, もう「光は波やら粒子やらといった (古典的な) 存在ではなく量子という別の何かであって, 常識的な見方は捨てるように」と言い切った方がいいのではないか. 「物理学者は保守的」という記述もある中, 保守的な人間ですら常識を捨てざるを得ないほどよく分からないということ, もっと強調していいと思う. その上でさらにどうしようもなくなって弦のような何かというところまで行き着いた, という話ではないのか.
P.42
これをファインマン図で表すと, 図 2-3 の左のように, 電子が自ら発した光子を吸収する現象と表現することができます. これによって電子の質量が無限大になってしまうのです.
Feynman ダイアグラムがぽんと描かれていて爆笑した. この辺きちんとやったことがない方の市民なので, これ見ても何故無限大になるのかさっぱりだが, 無理矢理ぶっこんで来る気概, 尊い. あとで弦のダイアグラムも出てくる.
P.46
自然界の階層構造
この周辺でくりこみの話が議論される. 階層構造のおかげでくりこみが上手く働くのだが, 重力を考えないといけなくなるとここが難しくなるという話.
私は (超弦から見て) 階層構造の上の方, 特に 上の方が上の方で本当に閉じているのかを数学的にきちんと追跡しきる部分に興味がある のだが, あまり下の方をきちんと勉強していなかったので, この辺, 最下層に進撃している人の見解が見られて面白かった. 私は自然界の階層構造の数学的整合性それ自体を調べたい. その辺を改めて認識させられて, 私にはとても刺激的な部分だ.
P.53
先ほども述べたように, 自然界に階層構造があって, よりミクロな世界の理論のほうが基本的であるというときには, 空間的な距離がきちんと測れることを前提をしています. 距離が測れなければ, よりミクロな世界とは何を意味するのかさえわかりません.
中略
重力と量子力学が統一される世界までいくと, それよりもミクロな世界は存在しないと考えられているのです.
ここ, さらりと書かれているが凄まじい. 最後, ブラックホールの話が出て次章となる.
P.58 コラム 思考実験
街中を散歩していても, 食事中でも, 思考実験はいつでもどこでもすることができます.
数学だと「思考」が外れて本当に実験ができる. 理論と実験の区別, 特にないのが数学のいいところ, ということで牽強付会に数学につなげていきたい.
第 3 章 「弦理論」から「超弦理論」へ¶
弦と超弦, 何が違うのかよく知らなかった方の市民だったが, ここではじめて違いを知る. 違うのは把握したが, どう違うのか.
南部・後藤の提唱, 開弦と閉弦, 粒子を弦にしたときの Feynman ダイアグラムと進んでいく. P.70-71 で弦にしたおかげで原理的に発散の困難を取り除けたということがダイアグラムを使って説明されるが, 私にはよく分からなかった. ダイアグラム自体よく分かっていないのも大きいのだろう. ひとまず何か大丈夫らしい, ということで先に進む.
P.72
光子は「開いた弦」の振動
閉じた弦は重力を伝える
弦の話に入って早々に光と重力が弦で統一的に理解できるという無茶がぶっこまれる. さらりと猛スピードでやってくるのでびっくりだ.
P.78
弦理論と超弦理論の違い
弦理論だと boson だけ, 超弦だと fermion も含む, ということらしい. 超空間とかグラスマン数の話が出てくる. 物理の人はよくグラスマン数というが, 数学だと普通は外積代数という. Lie 代数と Lie 環, 作用素代数と作用素環のように, この辺, どういうところから言葉の使い方の違いが出てきたのか前から不思議に思っている. 外積代数に関しては, はじめに見つけた人の名前を出す物理の人の言い方がいいとは思うし, Lie 代数についても環ではなく代数の方が正確だからこれも物理の言い方の方がいいと思うが, 物理の人の言葉遣い, 無茶苦茶な方が普通なので, こう色々なものを感じる. 数学は数学で, 量子化・量子何とか・エネルギーなど物理用語を魔解釈することはあるにはあるのだが.
最後, 超対称性と余剰次元の話が出てきて章が終わる. 外積代数の方の次元が「空間」の次元扱いになるの, 凄まじい. 自然やばい.
第 4 章 なぜ九次元なのか¶
タイトルからして既に危険領域に突入している.
章の冒頭に小川洋子『博士の愛した数式』の一節と Euler の公式が引用されている.
話の本筋と全く関係ないが, 数学会の会誌の「数学会報」だか何かに, 「博士の愛した数式を読んで, 改めて自分が日々触れている数学が素晴らしいものだということに気づかされた」という書評があったのを思い出した. この章では $\zeta$ が出てくる.
P.95
なぜ三次元なのか
正面切って聞かれると答に窮する疑問だが, 超弦だとこれが出てくるという戦慄すべき話が語られる. 大栗さん自身次のように書いている.
P.95
次元の数が決まるというのは, 物理法則としては前代未聞のことです.
超弦理論という「理論」を「自然法則」と言っていいのかはよくわからないが, 次元を決めてしまう理論が凄まじいのは間違いない. これではじめて知ったのだが, これなら超弦理論に夢中になる人がいるのも道理だという認識に至った. この章では 25 次元の話なども出てくる. ここに興味がある向きは是非きちんと本を買って読んでみてほしい. あと, ここの特に超弦理論の計算のところ, 参考文献つけてほしい.
コラムで超弦理論の実験的検証という話があるが, 実験的に検証するための実験の提案などはあるのだろうか. 少なくとも現段階で高エネルギー領域での直接検証は無理だろうが, 最近物性への応用の国際会議があったとか聞いたし, そういう方向からの話は何かないのか. この本, 基本的に理論の話で実験の話はないので, そういう方向の参考文献とか知りたい.
P.111
超弦理論の研究で, 数学的な整合性が大きな導きの意図になっているのはそのためです.
散乱理論が作れない中で出てきた AQFT や GQFT の動き・目的は正にここだったのに, 物理の人から「公理的場の理論の物理への寄与は任意に与えられた正数よりも小さい」とか言われていた, というのをふと想起した.
第 5 章 力の統一原理¶
冒頭にヘレン・ケラーが引用されているあたりに大栗さんの感情の高ぶりを感じる. ここではゲージ原理の話が出てくる.
金融市場を例に説明されるのだが, これが私にはわかりづらい. これは一般向けの本であって, 私は厳密には対象の層ではないので全く参考にならない意見だろうが, 一般にはこの説明は分かりやすいものなのか, というは気になるところではある.
また, Yang-Mills の話が出てくる. これは Clay 研究所の 7 問題のアレだ. つまりこの辺 (の数学), 死ぬ程難しい.
第 6 章 第一次超弦理論革命¶
Schwarz の孤軍奮闘とその背景・歴史的経緯がまず語られる. I 型, II 型, アノマリーなど聞いたことのある言葉が乱舞しはじめて楽しい.
P.150
「三十二次元の回転対称性だ」
これ, 本当に $SO (32)$ なのだろうか. 本当に「 Infinity cancellations in SO (32) superstring theory 」というタイトルで, Green-Schwarz だしこれだろうか. Yang-Mills にしろ, 本当に回転なのか. 何故球面上の話がそんなに大事なのだろう. そもそもゲージがよく分かっていないというところがあるから仕方ないのだが. ぎりぎり BCS と BEC を知っている (分かっているわけではない) が, そこでも「向き」が大事なようだし, 何か向きの話なのだろうな, という漠然とした感覚はあるが, それでいいのかよく知らない.
ヘテロティック弦理論がまた意味不明でやばい. 何だこれは.
P.158
カラビ-ヤウ空間によるコンパクト化
Calabi-Yau からの Witten が来た. Witten は「量子力学は 20 世紀の数学を彩ったが, 21 世紀の数学は場の量子論の数学になるだろう. 超弦理論は本来 22 世紀の数学なのに間違って今世紀に出てきてしまった. 私はこちらで頑張るが, 場の量子論界隈は 21 世紀の数学をきちんとやっておくように」のようなことを言ったと聞いている. それならほぼ死んだ状態の場の量子論界隈の数理物理に人を回すよう手配してほしいと思っているのだが, 全く実現しない. 困ったものだが, そのおかげで私も大学出てしばらく経つのに場の理論の数学界隈から取り残されずに済んでいるのでつらい.
それはそうと, ここでのコンパクト化, 数学的には何をやっているのかずっと前から気になっているのだが結局よく分からない. こちらも全然知らないが, Riemann 多様体の崩壊みたいな話が関係あったりする? この辺まで来ると, 正直物理よりも数学的な内容の方が気になってくるあたり, 物理学科出身ではなかったのかと自らの業の深さを感じる.
P.160
コンパクト化したときにその条件をぴったり満たす六次元空間が, 六年前の一九七八年に数学者によって見つかっていたことを知りました.
この条件とか凄く気になる. あと Calabi-Yau, 問題自体は大分前 (20 世紀初等くらい) から出ていたと思っていたが, かなり最近だというのを確認してちょっとびっくりした. 解決自体は Yau だからそれ相応の年代というのは知っていたが. 数学的な発見の時代と物理的な利用の時代が時期的にかなり近いというかほぼ同時進行なのも奇跡的で面白い.
P.162
カラビ-ヤウ空間の幾何学で, 素粒子模型が決まる
トポロジーからクォークの世代数が決まるという話, 意味不明で凄まじい. トポロジーというか幾何から物理が決まるというの, P.130 あたりの Aharonov-Bohm でもあるにはあるのだが, 結局この辺触ったことほとんどないからぴんと来ないというか戦慄する感じはある. Aharonov-Bohm も物理というより数学関係, CCR の表現論として触ったところが強いので, そういうのもいけないのだろうけれども.
P.169
カラビ-ヤウ空間が与えられることで答えの出る問題は, 実は素粒子の世代数だけではありません. 後略
あまり書いてしまうとよくないかと思って省略した. これは凄まじい. それは超弦理論に, Calabi-Yau に夢中になると理解.
P.170
距離の測り方すらわからない
この記述の意味は以前 Twitter で大栗さんに直接聞いたことがある. ここで周辺の話についてちょっと書いておいたので興味がある向きはご確認頂きたい. 大栗さんから Twitter で頂いたお返事は別途引用しておこう. よくある存在だけは分かっているが性質がよく分からないというアレだ.
@phasetr コンパクトなカラビ-ヤウ多様対については, 計量テンソルが存在することは証明されているが, その具体的な形がわかっていないということを噛み砕いて述べたものです.
P.172
ゲルマンはのちに, 「超弦理論のような絶滅に瀕している分野のために, 保護区を設けたのだ」と語っています.
中略
ゲルマンのような目利きが見守っていたからこそ, シュワルツも自由な心と集中力を持って研究ができ, 真のイノベーションを起こすことができたのです.
言いたいことは分かるが, 何というか, 結果的にゲルマンが目利きだったという部分が強調されているような感じでちょっと嫌. 結果的に超弦が駄目な結果になっていたとしても, それに賭けて心血注いだ Schwarz とそれをサポートした Gell-man の志は尊い. いいたいことが上手くまとまらないが, 言いがかりに近いアレだ.
第 7 章 トポロジカルな弦理論¶
名前だけは知っていた topological string, 大栗さんの業績だったのかというのを始めて知る夏だった. 量子効果を計算するというがそれが何なのかさっぱり分からないというか, そもそも書いていないという認識. 気になる. 定義自体はやはり計量に依存する量の計算なのだろうか. そうでないと話に意味がないので多分そうなのだとは思うのだが. あと P.179 の式, Word みたいな表示で嫌: TeX の感じで載せてほしかった. 難しいのだろうか.
P.184
大事件が起きたのは, その数ヶ月後でした. 第一次超弦理論革命と同時に研究者人生をスタートした私は, バークレイで研究室を立ち上げようとしていたときに, 第二次超弦理論革命に直面することになったのです.
大栗さん, 超弦理論の発展の生き証人という感じで実に羨ましい. 研究者になりたかったと改めて思わされる.
第 8 章 第二次超弦理論革命¶
Witten が再登場した: 双対性や M 理論の話.
P.196
空間の次元を高くすると, 二種類の粒子の数を合わせることができなくなるからです.
これ, どういうことなのだろう. 参考文献知りたい. 数学的・物理的に読めるかどうか, 読む時間が取れるかはともかく.
P.203
当時はまだこの研究に使える数学的な道具が限られていたことも, 理由の一つでしょう.
数学的に何が足りなかったのだろう. それが無性に気になる. 超弦ではなく場の理論だが, こういう「物理に必要な数学を見つける・作る」という問題, 自分の専門ということもあるから.
P.204
円の半径が, 力の大きさになる
P.207
結合定数が大きければ大きいほど複雑化し, 計算が困難になると思われていた超弦理論が, その極限では一〇次元空間の超重力理論になるという, きわめてシンプルで美しい理論になっていたわけです.
円の半径が変わるというはともかく, 結合定数が変わるというのはどういうことなのだろう. ある物質というか場の結合定数が大きいときの問題というにしても, 結合定数変わるのだろうか. 裸の結合定数とかその辺の話? それは超弦理論でもまだ何かあるということか. 光学格子上の BEC のように, 結合定数を変化させられるのだろうか.
P.214 column
そもそも, 素粒子論や超弦理論の新しい発展が, 既存の数学ですべて理解できるとはかぎりません. 研究をしながら, 新しい数学を作っていくことも必要になるでしょう. そして, このような研究から新しい数学分野が開けていくこともあります.
超弦界隈は現在進行形で色々あるようだが, 私の専門の量子統計・場の量子論でも色々あるし今もある. 特に作用素環への影響は顕著だ. 熱力学・統計力学で一番基本になる概念である平衡状態の定義そのもので新しい数学が生まれたことがある. 正確にいうと数学での発展と物理での発展が同時に起こって一体になって進んだ経緯がある. 有名な話でバトンルージュでの国際会議で, 後に冨田のモジュラー理論 (冨田-竹崎理論) と呼ばれる理論に関する冨田稔のプレプリントが出ていたのだが, Haag-Hugenholz-Winnink による平衡状態の定式化に関する話もあった. プレプリントを見ると出てくる式がやたら似ていて不思議なこともあるものだ, と思っていたら, 実は数学的には同じ話だった, という荒木先生の話があった. 最近量子統計界隈でそういう動きはないように思うが, 相対論的場の量子論, AQFT ではまだまだ動きがある. 非相対論的場の量子論 (構成的場の量子論) だと新しい数学と言えるのかは分からないが, 数学的研究は進んでいる. 超弦は人がたくさんいるので, 興味がある向きは是非こちらにも来てほしい.
第 9 章 空間は幻想である¶
その辺の適当に何かかじっただけの人間がいっていたら苦笑いするしかないような発言だが, まともな物理学者が言っていることに戦慄する方の市民だった.
ブレーンの話が出てくるのだが, 破滅的に意味不明で戦慄する. もう, どうなっているのだ, としかいいようがない.
P.225 の IIA 型の話, 何を言っているのか全然分からない.
P.229
ブラックホールの温度が説明できるようになったのです.
ブラックホールの温度, どう定義しているのだろう. ブラックホールの熱力学というのを聞いたことはあるが, 実際に何をやっているのかは知らない. 「 p-ブレーンも温度を持つ」という記述があるが, p-ブレーンの温度もどう定義しているのか気になって仕方がない. P.230 で「開いた弦の運動によって説明できた」との記述があるが, 平衡系の計算みたいなことをしているのだろうか. ブラックホールに平衡系の理論は適用できるのだろうか. とりあえず適用してみて一致することが分かった, という話? 素人がすぐに思うことを専門家が突っ込まないはずがないので, きちんと議論はあるのだろうし, それを知りたい.
P.234
重力のホログラフィー
また名前だけは知っている重力ホログラフィーと AdS/CFT が出てきた. AdS/CFT, この辺の話だったのか.
P.239
温度も, 空間も, その中に働く重力も, 本質的なものではない.
何だか知らないが「温度が本質的なものではない」というのにイラっと来た. 自分の熱力学・統計力学への過剰な思い入れを感じる出来事だった.
P.242
この現象は, 重力のホログラフィー原理を使って予言されていました.
理論で予言できた現象が実験で再現されるという話, 無条件に胸が高鳴る.
第 10 章 時間は幻想か¶
理解が置いつかなくなっていることもあり, もはや「ほー」「へー」くらいしか書くことがなくなっている方の市民だった.
P.252
私「空間とは, どのような種類の集合なのですか」
数学者「近いものと遠いものの区別がつくような集合です」
数論幾何をやっている nolimbre さんの「位相空間は甘え」という言葉を想起した.
P.261
超弦理論のこれまでの研究は, 九次元空間のコンパクト化のような, 時間的に変化しない現象に集中してきました. しかし, 宇宙の始まりの問題に超弦理論を応用しようとすると, 超弦理論において時間がどのように扱われるべきかについて, 深く考える必要があります.
これまでの記述は時間変化のない現象ばかりだったということ, 意識していなかったので「ほー」という印象.
P.269
学生が大学院に入学してから超弦理論の論文を書けるようになるまでの年数が, 私が大学院生だった三〇年前も現在も, 変わっていないことです.
難しくなりすぎて研究者が離れて, 今では滅亡の危機に瀕している構成的場の量子論とは大違いだ. 非相対論的場の量子論の方ならもう少し何とかなる気はする. 4 次元 $\phi^4$ の自明性ですら手が負えず, QED は Dyson が 50 年も前に存在しないだろうという兆候を見つけたきり多分何も動いておらず, かといって QCD もどうにもならない. (量子) 統計方面でも, Heisenberg や Hubbard ならもう少し何とかなる気はするが, Ising だと大体悪魔のような問題しか殘っていなくて, 革命的な展開が 2-3 は必要という印象がある. 超弦理論, 羨ましい.
P.270
超弦理論はまだまだ発展途上の理論です. それは研究者にとっては, 挑戦すべき問題がたくさんあるということでもあります. この分野のさらなる発展にご注目下さい.
もちろん注目はするが, 少し研究者をこちらに分けてほしい.
まとめ¶
この本の感想だか何だかよく分からないことになってしまったが, 刺激的な本だった. 2 年くらい書きかけで放置していた論文をいい加減まとめようという気持が湧いてきた. 頑張ろう.
ラベル¶
数学, 物理, 数理物理, 超弦理論, 場の量子論, 熱力学, 相対論
講談社ブルーバックスの『大栗先生の超弦理論入門』に関して大栗博司さんによるメッセージ動画がアップされたので宣伝協力していきたい¶
本文¶
先日書評というか感想を書いた本, 大栗博司さんによる講談社ブルーバックスの『大栗先生の超弦理論入門』に関して, 著者の大栗さんからのメッセージ動画がアップされたとのこと.
【動画】今週発売のブルーバックス『大栗先生の超原理理論入門』, 著者の大栗先生からメッセージ動画アップされました, こちら→ http://youtu.be/UY6cXpTTKJQ
動画内では大栗さんの他, Schwarz と Green で出てきている. 大栗さんの肉声が聞いてみたいという向きは是非見てみよう. 本も面白かったし, 興味がある向きは読んでみよう.
大栗さんが楽しそうに本を書き, そして研究しているのが伝わってくる.
ラベル¶
物理, 超弦理論
書評: クローバー 乙ひより¶
本文¶
百合キチババア (これは当人の自称である) から百合で定評のある本をいくつか借りた. Twitter のフォロワー諸氏がどれだけ認識しているかは最早分からないが, 私はニコニコ動画でアイドルマスター関連の動画を作っている. 色々な意味で新機軸を探し求めているのだが, その中で百合や腐の方向で何かできないかと思っていて, その方面で参考にするべくアタックしていきたい.
第一話 彼女の隣¶
これは化粧や衣装について色々なことを考えさせられる, 貴重で意義深いな話だった. 不勉強な幾何を勉強しなければならないという気にさせられる.
大丈夫 キレイな人はなに着ても似合うから
まずこの台詞は示唆的で感銘を受けた. 「キレイな人」と「なに着ても」に何を合わせるかといったことを思う. ひとまず方向は 2 つあって, 「なに着ても似合う人をキレイとする」と「キレイな人はむしろ着るものを制限する」だ. うまく作用する変換群や剛性定理をイメージしている. 色々な群が作用させられる, または変換群が巨大な多様体は「キレイ」と思って, 何か群×多様体で話を展開できないだろうか. 掛け算の順番も大事かもしれない.
後者の「キレイな人はむしろ着るものを制限する」はもちろん複素多様体をイメージしている. 以前 千早誕生祭【貧乳はステータスだ! 希少価値だ! 】の数学的解釈について という動画を作ったがこの方向とも言える.
また, 選択公理と同値な「全ての集合には群構造が入る」という定理の魔解釈も想起される. 「どんな人でも似合う衣装が存在する」と魔解釈することで, 何か話が作れないだろうかと想像が膨らむ. どんな絵を描けばいいのかという大きな問題があるが, そこもまた数学的に興味深い.
ゴムやピアス, マニキュアといった (広義) アクセサリは多様体に入る群以外の構造とでも思えばいいだろうか. ある多様体に似合うアクセサリとして Kahler 構造だとか Lie 群の構造だとかを導入するという線を考えている. Hopf 多様体のように, 自然な複素構造と Kahler 構造が両立しないことなどをこの線で理解していきたい. Kahler にはならないが, Hermite 多様体にはなったかと思うのでそういうところも生かしたい.
ねえ… なんでダメなのわかっててしてくるの?
ただかわいくてキレイなものが好きなだけ
多様体愛護協会 というのがあるが, これに対して「かわいくてキレイなものが好きなだけ」と言って構造を入れていくことを想起した. その他, 刺青のようなちょっとアレな方向で構造を理解する方向もありかもしれない.
誰かさんの影響か知らないけど マニキュア塗ってきたらしいよ~
これなどは多様体の構造が多様体のコホモロジーに与える影響として魔解釈する方向を想起させる.
第 2 話 bitter girl¶
あ~… どっかにいい人いないかなぁ?
顔がよくって~ 中略
…その山より高い理想を下げればすぐ出来ると思いますけど…
そうすると長続きしないんだよ…
これは自らの意思にもとづいて自らの感性に合った研究しかできない不器用な (ろくでもない) 理学系研究者を彷彿とさせる名文ではないか. この次の「思い当たる人」の記述もとりあえず出会った研究対象がライフワークになってしまったという状況を想起する. 「お互い彼氏ができるまで」といいつつ離れられなくなってしまった感じを数学的にもうまく描写していけないかと想像が膨らむ. 別の対象に「浮気」しつつ結局戻るような感じもなかなかいいのでは.
第 3 話 春よ恋¶
この話は全体的に『数学まなびはじめ』の高村先生の話を想起した.
少し筋が違うが, 先に目をつけておいた非線型半群の問題を他の人に解決されてしまった感じをこの線で描けないかという感じだ. 順番はともかく, 数学者と問題で三角関係が描けることに気付いたのは大きな収穫だった.
あと橋本さんの私服のときの姿, マリみての祥子様 (髪型的な意味で小説版) のようでかわいかった.
第 4 話 夢心¶
幼馴染ネタで真っ先に Wiles と Fermat の最終定理を想起した. 途中楕円曲線に「浮気」しつつも結局のところそれが Fermat の解決に繋がるあたりを上手く魔解釈につなげたい.
いくら家が隣同士だからって… ずっと一緒にいられるわけじゃない…
これには「小中学生でも理解できるからといって簡単に解決できる問題ではない」という魔解釈を施したくなる. その他, 数論でのこの手の問題も同じように魔解釈できるだろう. ワンパターンなのは良くないので, やり過ぎには注意だが.
描き下ろし Happy Days¶
第 1 話でテンションが上がり過ぎたせいか, 疲れ果てておりあまりよい魔解釈がおりてこない. マンネリ化させずに話を作っていく難しさを知る冬だった.
総評¶
第 1 話がやばい. Seventeen や Nonno などでのファッションの研究をより深化させつつ魔解釈の腕も磨いていきたい.
ラベル¶
数学, 百合
2015-10-15 書評: 齋藤正彦『線型代数入門』 Amazon のベストレビューにもなっているレビューを書き直し+追記¶
齋藤正彦『線型代数入門』の書評をAmazonから書き直した上で転載する. この書評は確か学部三年のときに書いて四年で書き直したという記憶がある.
書いた理由は何かわけのわからない頭の悪そうな 物理の学生(自称していたので申告を信じる限り間違いない)が「この本を読んでも物理の役に立たない」と愚かなことを書いていたので恥ずかしくなって急いで書いたのだ.
それはそれとして書き直し・追記の上での転載をしておこう.
Amazon から¶
物理・物理まわりの諸工学への応用にはものすごく使える.
数学科だとテンソルがないとかいろいろあり, 佐武一郎『線型代数学』の方が役に立つのだろう. しかし応用向きには本当に使える.
経験に照らしてみても, (非数学の)初学者が気楽に読める本ではないが, (初等)物理の中で線型性はとても大事な概念であり, 物理・諸工学の人達もこのくらいの本で本格的に勉強してほしい.
数々の物理法則は微分方程式の形で書かれていて初等的な範囲で出てくる方程式はたいてい線型だ. 例えばたいていの電磁気学の本は静電場を記述する, 点電荷に対する Coulomb の法則からはじまる. これを重ね合わせの原理で多電荷の系へ拡張してさらに電荷が連続分布した系へと拡張する. この重ね合わせの原理を数学的にいうと微分方程式の線型性にあたる.
線型空間の理論は座標による表示を離れるという幾何学的な面もある. これは物理法則の共変性を定式化する上で大切で解析力学, 特に相対論で決定的な役割を果たす.
もっと本質的に線型性が出てくるのは現代物理の要たる量子力学だ. 正確には量子力学で用いるのは無限次元の線型代数(関数解析)だが, 基本を学ぶには有限次元の線型代数(本書の程度!)で十分だ. 応用上も大事な正規作用素のスペクトル分解(抽象的対角化)について触れてあるのも嬉しい.
スペクトル分解は無限次元でも成り立ち, 量子力学・場の量子論の数理では基本的な道具だ.
最後に行列の解析的な取り扱いがあり, これがまた大切. そもそも行列の関数, 指数関数や対数関数を定義する応用上も大事な議論がある. たとえば量子光学で現れるコヒーレンスを扱うときこれを知っていると戸惑いがなくなる. 常微分方程式の具体的な解法でも出てくる上テイラー展開でも使える発想だ.
かなりマニアックな話(数理物理的観点)だが Perron-Frobeniusの定理の前に「工学や経済学への応用上重要」という説明がある. この定理は厳密統計力学への応用がある. さらに正値性保存(または改良)作用素の理論という無限次元版もあり, これは汎関数積分(経路積分)に応用がある. 確率論・力学系で大切なエルゴード理論とも関係のある定理で数学内部でも役に立つ定理だ.
学部四年にもなれば物理で線型代数が重要なことは身にしみて分かる. 特に量子力学においては決定的だ. ある程度線型代数に慣れたら物理・諸工学の人にもぜひともアタックしてもらいたい.
ツイート(Togetter)からの転載¶
齋藤正彦『線型代数入門』について見るべき所を挙げておきたい. まずp120からが決定的に重要. 例3で関数空間(多項式空間)に内積を叩き込んでいる. 量子力学で出てくる線型空間は原則関数空間で正にここを使う. ヒルベルトとか鬱陶しいのはひとまずいい.
p122 例5: ルジャンドル多項式. 多項式空間での基底としてのルジャンドルを出してきている. 関数のノルム(ベクトルの「長さ」)も出している. ルジャンドルは電磁気でも出てくる. マクスウェルは電磁場の「線型」方程式なので上手くはまってくれる.
p126 例7, 有限フーリエ級数. フーリエは知っていると仮定するが, 正にフーリエが線型代数の枠内で議論出来る(部分もある)事を明示している. 三角関数が(適当な内積空間での)「正規直交基底」になる. これは高校の教科書にも計算問題としては書いてある.
問題7. これは量子統計で使う. (平衡)状態はオブザーバブル$A$に対して適当な複素数を返す関数だが, これは必ず (密度) 行列を使ってトレースで書けることを言っている. ただしうるさいことを言うと原則有限次元でしか使えないので, 物理としては役に立たないと言い切ってもいいのだが.
p128 問題8: ある種の変分とか何とか. 問題10, 色々な内積とラゲール多項式: 他にもこの系で電磁気・量子力学で出てくる 「~多項式」が再現される.
問題 12, 双対空間: 初学者にとって直接どうというのが言いづらいが, 少し進んだ話をするとそれなりに使うはず. 数学としては大事.
第5章: 量子力学の魂. p137 例8, 数列空間:数列も線型代数の枠内で議論できる(部分がある). p138 例9. 線型常微分方程式. 先程から電磁気などそれらしい例を挙げているが, 微分方程式論を応用先に持つことがここではっきりと分かる.
p144: スペクトル分解. 要するに対角化だが, スペクトル分解は無限次元化出来て量子力学で直接使える. 射影の値域がその固有値の固有空間で, 縮退度が固有空間の次元に対応したりとか何とか.
qmstd 定理2.10: 行列の極分解. 量子力学的な解釈としては行列は大体複素数と思える. 複素数ならば極形式で表現出来るか考えたくなるのが人情らしいのでそれをやってみた. 定理 2.11: 変分原理. 量子力学で基底エネルギーを評価するときに使う.
第7章. 行列の関数を定義するという荒業. ハミルトニアンを$H$とすると系の時間発展は$U_t=e^{itH}$である. ここで行列の指数関数が出てくる. あと量子光学でコヒーレンス扱うときもこの辺が出てくる.
量子力学ではより激しく微分作用素の指数関数も出てくる: 運動量作用素を$p=-id/dx$として$e^{itp}$が出てくる. この場合, 数学的に正確な定義は面倒だが, とりあえず指数のテイラー展開に直接代入で「納得」されたい. ついでに言うとこれは本当にテイラー展開になる.
p217, ペロン・フロベニウスの定理. 正確に言うと別のバージョンだが, 固体物性, 磁性のモデルで使うハバードモデルの「研究」で本当に使う. 詳しくは田崎さんの http://bit.ly/368vRy を参考にされたい. Googleのページランクでも使う定理で応用は広い.
Amazonでのコメント, その他ツイートの引用¶
Amazonで書評に関して次のようなコメントをもらっていた. 後でツイート引用しつつそれに対してもコメントするが, 大事な指摘もあるので転載しておく. コメントのURLはこれ.
Amazon でのコメント¶
スペクトル分解と対角化は同値ではありません。正規変換の対角化が可能ならばスペクトル分解が可能なのであり、スペクトル分解からは対角化は必ずしもできませんし、それに触れた本はありません。また無限次元空間ではスペクトル分解はルベーグ式の積分で表され当然対角化と同値ではありません。
本書の145項~146項 「線型代数入門」(松坂和夫)367項~371項 「線型代数学」(佐武一郎 , 旧版)170項と306項
をご確認ください。
明らかにスペクトル分解は対角化ではありません。或る意味で線型変換(の表現行列)を射影子で分解したものであり、表現行列を簡単な形に変形する対角化とは違います。
また本格的に量子力学をやりないのなら解析学も位相空間論も必要です。線型空間論や対角化の理論も必要です。確かに本書程度で理解は進みますがあくまで補助程度であり量子力学に現れる殆んど全ての関数空間は無現次元で位相空間論と解析学が多用されます。有限次元と無現次元では決定的に違う性質は多くあります。
私のレビュー(http://www.amazon.co.jp/review/RLEIMOTFVYN73/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8&ASIN=4130620010&channel=detail-glance&nodeID=465392&store=books)で紹介している本も参考にしてください。有限次元空間など出てきません。典型的な空間はR^nの部分集合Ω上のL^2ノルムが有限な(二乗可積分な)関数の空間(L^2)(Ω), k階までの弱導関数がL^2な関数の空間(H^2)(Ω), 二乗総和可能な数列の空間ℓ^2など無数にあります
私の返信コメント+追記¶
また本格的に量子力学をやりないのなら解析学も位相空間論も必要です
「本格的にやる」がどういう意味なのかわかりませんが、 物理として本格的にやるというなら数学としての解析学 (Lebesgueや関数解析、PDEの理論)と位相空間(topological space)が必要というのはどう考えてもありません。
そんなことをしている暇があるならきちんと物理やりましょう。 時間の無駄です。
量子力学の数学・数理物理をやりたいならもちろん最低限の解析学の素養は必要です。 (解析学と位相空間論を分けている理由はよくわかりませんが。)
追記¶
$H^1$ならLieb-Seiringerでも出てくるしよく使うイメージも湧くが量子力学で$H^2$使うのだろうか. これは本当に知らない. 量子力学(の数学)はあまりやっていないので.
下でもやり取りを引用しているが, 私が実際に学部の三年の講義で扱った量子電磁場とカップルした系 (正確にはいろいろと適当な近似を入れていて完全な量子電磁場とのカップルではなかったが) の取り扱いが既に研究の最前線レベルだ.
数学を多少やったところで本当に全く物理の実用にならない. むしろ物理の学部程度にすら届かないので無駄と言い切ってもいい. 上のコメントは数学者のポジショントークにしてもお粗末だ. できるというならぜひ研究してどんどん結果を発表してほしい. 私はこの分野の人間であり, 人が少なくて困っているくらいだからぜひ来てほしい.
興味がある奇特な人は次の Lorinczi-Hiroshima-Betz でも読んでみてほしい. 確率論の素養が必要で死ぬほどつらいのでお勧めはしない. arXiv で Fumio Hiroshima とか Frohlich とかで 適当にプレプリントを探してもらってもいい.
ツイート引用¶
http://t.co/sGWgPM8iFP学部の時に書いたAmazonの書評に大類さんからのコメントがあるのだが【また本格的に量子力学をやりないのなら解析学も位相空間論も必要です】というの明らかに嘘なので本当に困る
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2015, 10月 15
スペクトル分解できたら、直交する射影作用素の和でかけてそいつら全部可換(かけたら0になる)だから同時対角化できて元の行列も対角化できるのでは
— たんじぇ (@f_tangent) 2015, 10月 15
@f_tangentていうかスペクトル分解できる時点で正規だ
— たんじぇ (@f_tangent) 2015, 10月 15
@f_tangentそれはそうなのですが、スペクトル分解はいわば抽象論で、対角化は具体的名表示の問題で確かに杓子定規にいうなら違うのは違いますし、その堅苦しさもそれはそれで大事なので。【明らかに違う】とか言われると「いやそうは言ってもだね」という感じでもにょったというアレ
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2015, 10月 15
@phasetrあそこまで違うもの扱いされると、それはそれでという感がありました
— たんじぇ (@f_tangent) 2015, 10月 15
@f_tangent私も「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」という感じはありますが、線型代数の関門の大きな1つが線型写像と表現行列の区別でもあり、それで痛い目を見たならあそこまでうるさくいうのもわからないではありません
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2015, 10月 15
あとこれ.
新井先生の本とか読むと関数解析(とその基礎としてのルベーグ積分)が量子論において重要だと思うようになるかもしれないけど、別にそれを知らないと量子力学が学べない訳ではない
— こうのいけ (@conoike) 2015, 10月 15
@conoike普段からずっと行っているのですが、数学的な詳細を気にし始めると学部3年の量子力学すら2015年現在の数理物理の研究最前線になってしまうので、むしろ2015年現在、物理をやる上では数学的詳細を気にするのはほとんど邪魔にしかなりません
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2015, 10月 15
書評: Simulations' Achille's heel¶
本文¶
書評と言っていいかは微妙だが, いい呼び方が思い付かなかったので. Twitter の nishi_aki さんの次のようなツイートを見かけたので読んでみた.
計算機科学の落とし穴 演算能力向上で複雑な系を計算出来るように見えても, 適用する理論を間違え現実的に意味のない解を導き出していることがあるという報告. 例えばミクロな系でのみ成立する理論を 3 次元的に拡張してマクロでの予測をするとか.
適用する理論を間違えるというより, きちんと見たい現象に合わせて理論を選べ, という話といった方がいいのだろうか. あと「ミクロな系~」という部分は少し違う. バルクの性質を見たい場合を考えよう. 単位胞のようなミクロなところだと, 例えば表面の効果が強く効いてくる (可能性がある) ので, バルクの性質を見たいならこの効果を消さないと何か問題が起きる (正しく見たい現象が見られない). その表面項処理をせずに単純に計算機を回してはいけない, という話. ミクロな系で成立する理論を使ってマクロなところの計算をしてしまうと, という話とは少し違う.
メモ¶
ほとんど関係ない上に我田引水しまくるが, 物理だと (少なくともパッと見) 数学的にまずい議論をして, 物理的に正しい (場合によっては数学的にさえ正しい) 結論を出してくることがあることを想起した.
例はいくらでもあるし, 場合によってはまたは時代によっては「数学者」ですらそうしたことをする. 良く言われるのは Euler か. 級数の収束を気にせずに計算をはじめて, 実際に見かけは無茶苦茶な計算だが 結果だけは圧倒的に正しいというとんでもないことをやっていると評判だ. 彼は彼なりの数学的直観によって正しい道を進んでいて, 彼が現代的な意味できちんとしたことをしなかったのは時代的に そうした道具がなかったからで云々, という話も色々ある. 興味がある向きは高瀬先生の本を読むと面白い. 「dx と dy の解析学」はまだ読んでいないので, そのうち読みたいと思っている.
場の量子論での事例¶
私の専門に近いところだと掃いて捨てる程あるのだが, 例えば量子電気力学 (QED) の摂動計算がある. 「共変的摂動論は数学的には破綻している」ことを主張する Haag の定理というのがある. そのため大体の QED の計算は数学的には破綻しているのだが, 数値的には驚異的な精度で合うことで有名だ.
ついでに言うと, 場の量子論の数学的困難の源の一つはここにある. そのうち出るはずの (私も査読に参加している) イジング模型の議論だと, 物理的, 直観的な議論をそのまま数学的に厳密な議論に昇華した証明というのがあるし, そういうことができるのが非常に強い. しかし, 場の量子論だとそうした物理的に明快な議論というのが数学として 根本的に破綻していることが多いので, そうした筋を辿れず, 物理で既に分かっている結果を再現することを目的に議論を構成する羽目になってしまうことがよくある. また, 級数の収束性をきちんと確認して摂動論の結果を精密にする, といったことも大体上手くいかない. 赤外発散が起きる場合, 高橋康本第 5 章で理論物理レベルの議論でもおかしなことが起きるという話が 解説されているので興味がある向きは参照されたい.
物質の安定性¶
ついでなので書いておくと, 今でも完全に数理物理先行というか, 数学的に精密な議論からしか物理的な結果が叩き出せないのは物質の安定性くらいではないだろうか. これは数学的に厳密に議論しておいて, あとから物理的, 直観的な議論は 物理として重要な部分を切り出す (数学的に煩雑になってしまう部分を除く) という方向で 物理の人に結果を説明するというようなことをするようだ. これについては Solovej によるレビューを参考にしてほしい. 詳細については下記の本を参照. 今, ものすごい安くなっているので買っておいて損はない.
線形代数と群の表現¶
また少し別件だが, 数学的に厳密な議論にこだわっていてもどうしようもないことはあるので, そこはきちんと注意しておきたい. Weil の ユニタリ表現に関する話として平井先生の「線形代数と群の表現 II」 23.7 節を読んでおくと面白い.
ローレンツ群 (非コンパクト群) のユニタリ表現という問題があったのだが, 数学的にきちんとした議論にこだわるあまり, なかなか話が進まなかったのに業を煮やした Wigner が先陣を切って研究を始め, その後を Dirac が追って研究を深めたという話がある.
1940-50 年代の話のはずだが, このとき相対論的量子力学, または場の量子論のためにローレンツ群のヒルベルト空間表現を考える必要があって, 物理的にここを何とかしたいという強烈なモチベーションがあった. そして数学者がモタモタとして結果を出さないので痺れを切らした物理学者が切り込んだという話.
物理だと実験との整合性という話があるのでそこを盾にして切り込んでいける. 実際に Wigner や Dirac の話は (少なくとも) 結果は数学的に正しい (部分が多かった?) らしく, 何が起こっているか分かったあとは数学者も研究に参加してきたということだ.
上記の本に書いてあったのだと思ったが, 表現論で有名な Harish-Chandra は元々 Dirac の学生だったらしい.
数学者へのフォロー¶
あと上の話で数学者側をフォローしておくと, この頃の数学は無限次元のことが全く分かっておらず そこの研究に関しては非常に苦しい時代だったことを強調しておきたい. 特に物理への応用を考えると運動量作用素なりハミルトニアンなり非有界作用素がバンバン出てくるのだが, これは定義域の問題など面倒な話が死ぬ程たくさんある. Weil クラスの研究者ですら辛い世界だったということで状況をご想像頂きたい. このあたりについては例えば竹崎先生の作用素環への入り口を見てみると楽しい.
ラベル¶
計算機科学,数学,物理,量子力学,場の量子論,表現論,書評
谷村省吾, 量子力学10講¶
本へのAmazonリンク¶
TODO 書評¶
あとで書く. 以下のツイートツリーに関する詳細なコメントもつける予定.
書くメモ¶
- インピーダンスの議論はかなり面白かった.
- 以前, 数理科学かどこかで谷村さんが書いていた非単連結領域上の量子力学とアハロノフ-ボームあたりも読んだときからずっと気になっている.
読書メモ¶
私のツイートツリー¶
市民なので谷村さんの量子力学10講を得た。ざっと何度か目を通す予定の市民。
- P13 力学構文概念、良さそう。
- P14、力学構文概念と確率表記P(C=D|B)のマッチング
- P45, 補足のところ、無限次元でも演算子の行列式は定義できることもあるので、「定義するには演算子に厳しい制限がつく」と書くべきでは。その十分条件の一つが有限次元性といえばいい気分。
- P59、表現固定での等式のドットイコール表記、良さそう。
- P68、良くも悪くも、有限次元系だと位置・運動量概念がほぼ消失してスピンの値的な概念が中心になる一方、無限次元だと真っ先に位置・運動量を考えたくなるし、そのギャップが教科書執筆に関する色々な苦しみを生むのではないかという天啓を得た。
- P69、行列式の定義問題。リーマンのゼータとヒルベルト・ポリア予想など作用素の行列式とリーマンのゼータ絡める話もあって行列式が定義できることはあるからミスリーディングではないか感。
- トレースが慎重に書いてあるのに何故行列式がこの書き方なのか。
- P8、干渉と重ね合わせ。これ、改めて考えてみたら数学的に正式な定式化が何なのかよくわからなくなった。ここでの「経路」概念、かなり曖昧かつ難しいのでは?なんというか、古典的な経路を想定しつつ、いきなり量子または波動概念を叩き込まれている。後で聞いてみよう。
- P81、測定の理論をきちんと定式化しないとこの辺きつそう。ちゃんとやろう。
- 第7講前半、やはり測定理論気になる。まずはここを詰め直そう。有限次元の小澤論文を読む。
- P.98、非可換物理量の話、私の市民感覚にあう書きっぷりという感じがあるので参考に使用。
- 状態ベクトルの和で干渉を議論するのはよく見かけるが、密度行列の定式化で干渉をどう定式化するのかよくわかっていない。いわゆる「状態の和」から干渉が出るという部分がどう変わるのかが未だにわかっていない。この辺、私の量子力学基礎の理解の浅さが直接出ているところだと思っている。
谷村さんのコメントツリー¶
いくつかピックアップ.
そうなのです、無限次元ヒルベルト空間をきちんと扱おうとすることはあきらめて、有限次元に徹して、いろいろ注意しながらも無限次元も有限次元のノリで行けるんだろうなと思わせてしまうことにしました。https://t.co/sEEWsQkyoL
— TANIMURA Shogo (@tani6s) October 31, 2021
無限次元空間上の演算子の行列式の定義は、言い出すとあまりにも微妙なので・・・
P45, 補足のところ、無限次元でも演算子の行列式は定義できることもあるので、「定義するには演算子に厳しい制限がつく」と書くべきでは。その十分条件の一つが有限次元性といえばいい気分。
トレースの方は素朴な定義のまま行けるときは行けるけれど、行列式は、写像前の体積と写像後の体積の比として定義すると、のっけから無限次元の体積がよくわからない概念になるので、「まず無理」扱いしてしまいました。
トレースが慎重に書いてあるのに何故行列式がこの書き方なのか。
本書では密度行列をまったく扱わなかったことは、私も不満ではあります。
状態ベクトルの和で干渉を議論するのはよく見かけるが、密度行列の定式化で干渉をどう定式化するのかよくわかっていない。いわゆる「状態の和」から干渉が出るという部分がどう変わるのかが未だにわかっていない。この辺、私の量子力学基礎の理解の浅さが直接出ているところだと思っている。 密度行列を使う場合は、密度行列とオブザーバブルとが非可換で同時対角不可能であるときに干渉効果が出る、という特徴付けになると思います。それはベクトル状態における干渉とほぼ同列の扱いになると思います。 難しさの程度問題ですが、私から見ると、無限次元空間上の演算子の行列式は「すごく難しい」ので・・・ 量子統計で大事なトレースに対するほどでなくても、大抵の非数学の人は「定義自体も面倒で気にしなくて良い」と言っておけば十分で、もう少しゆるい言明でも良かったのではないかという気分があります。 無限次元行列式は regularization を駆使して定義することが多いし、regularization が要らないケースはかなり運の良いケースですし。
無限次元空間上のトレースも非自明であり、Gibbs weight state を KMS condition で特徴づける代数的方法があったりするので、非自明な(素朴には発散する)トレースも重要であることは私も認めています。
大学院で量子統計まわりの数学をやっていて、竹崎先生は指導教員の指導教員というある種直系の人間からするとトレースの扱いの方がよほど深刻な問題なので、その辺の思い入れもあるのだろうとは思います。
干渉に関する疑問¶
状態ベクトルの和での干渉に関するこのツイートに対して次のようなコメントが返ってきた.
密度行列を使う場合は、密度行列とオブザーバブルとが非可換で同時対角不可能であるときに干渉効果が出る、という特徴付けになると思います。それはベクトル状態における干渉とほぼ同列の扱いになると思います。
これがよくわからないので質問をしたいのだが長くなりそうなので別途まとめることにした. この問題, 本当によくわかっていないため私の頭の整理をする目的もある.
元々気になっていたのはこの意味だった.
P8、干渉と重ね合わせ。これ、改めて考えてみたら数学的に正式な定式化が何なのかよくわからなくなった。ここでの「経路」概念、かなり曖昧かつ難しいのでは?なんというか、古典的な経路を想定しつつ、いきなり量子または波動概念を叩き込まれている。後で聞いてみよう。
いくつかの疑問がある. 今改めて見たら私が誤読したと思しき部分さえある.
直接的には有名な二重スリットに関わる疑問だが, 「状態」概念(ヒルベルト空間のベクトルで定義する状態と, 密度行列または作用素環上の「状態」で定式化される状態)とそこでの議論にまつわる話がある. これらは分けた方が良さそうなので切り分けて書こう.
二重スリットの具体的・数学的定式化に関する疑問¶
真面目にシュレディンガーを解くとどうなる?¶
この設定をあとで踏襲するので先に書いておく. 特に純粋に数学上の問題も関係する.
二重スリットの問題は導入で出てきて実験結果が示されるだけで, 数値計算含めてまともにシュレンディガーを解いて具体的に確認している文献を見たことがない. (あるのかもしれないが私が目にした数少ない文献では見たことがないか, 遥か前の記憶なので覚えていない. 多少なりとも目を通したのはディラック・清水本・シッフあたり.)
多少の調整はあるとして, 二重スリット問題に対して私が理解している数学的設定から書いておこう. まずはシュレディンガー方程式自体は自由粒子のシュレディンガーでよいと思っている. 数学系市民らしく係数を落として書くことにすれば, ハミルトニアンを自由ハミルトニアン$H_0 = - \triangle$とした系だろう.
考える領域も問題だ. ここでは三次元で考える. 点$S_{\pm} = (0, \pm 1, 0)$に二つのスリットがあり, 無限遠から電子が入射してきて平面$\{x=1\}$上のスクリーンで電子を検出する状況にする. スリットは平面$\{x=0\}$上にあるから, 基本的な領域を$\Omega_0 = \big( (-\infty, 1] \times \mathbb{R}^2 \big) \setminus \{ x=0 \}$とすれば, 二重スリットがある領域は $\Omega_{2} = \Omega_0 \cup \{S_{+}, S_{-}\}$で, スリットを一つ潰した空間は $\Omega_{\pm 1} = \Omega_0 \cup \{S_{\pm}\}$とすればよい. (スリットは一点ではなく$S_{\pm}$を通る直線の方がいいのかもしれない. これもよくわからない.)
微分方程式上の設定としてはスリットでの散乱を考える散乱問題だと思っている. 特に固有値問題ではない. (当初は固有値問題で解くべきなのかと思っていたが段々それだとまずいと思うようになった.) 初期条件は無限遠から入射してきた形で設定し, 適当な時刻でスクリーンに到達するとしよう.
まとめると三つの領域$\Omega_{2}$と $\Omega_{\pm 1}$上での自由ハミルトニアンが支配するシュレディンガー方程式の散乱問題の解が議論の対象になるはずだ. これをきちんと解いてP.6の結果は得られるのだろうか? 大昔の文献できちんと議論してありそうな気はするがわからない. そもそも最近ようやく量子力学の基本的な問題を考えられる程度に量子力学に慣れてきて頭が追いついてきたくらいなので, 学生時代はこんなことを考える余裕さえなかった.
そういえば上記の領域$\Omega_{k}$で波動方程式をきちんと解いたこともない. どう解いたらいいかもよくわからない. 数値解でもいいので, ふつうの波動方程式ではうまくいかないこと, シュレディンガーだと実験結果を再現できることも前から気になっている. つまりP.5の干渉縞は得られるのだろうか. 高校または大学受験だと幾何光学の範囲で何となく議論したことになっていると思うが, 波動方程式できちんと考えたことがない.
また固有値問題だと思ったとしても二重スリットの問題は純粋に数学的な問題としては相当非自明だろう. 例えば各領域$\Omega_{k}$上で自由ハミルトニアンは数学的に厳密な意味で基底状態を持つか? 三次元の全空間$\mathbb{R}^3$では当然固有値を持たない. 基底エネルギーが固有値かどうかもよくわからないが固有値を持つこと自体が非自明ではなかろうか. これもあって散乱での定式化なのかと思ったというのもある.
経路概念¶
これは直接P.8の記述と上で書いたコメント・疑問の話で, 1.3節での状態概念が何なのかわからない. シュレディンガー方程式で解くかはともかく, スリットなどの状況設定は前段を引き継ぐ.
はじめに書いておくと, 式の字面と日本語の表現が一致していないような気がして混乱している.
P.8: 確率振幅に関する規則2: 重ね合わせの原理. 始状態$A$から終状態$X$に到達する経路が二通りある場合を考える.
まずP.8上方で(常識的な, よく使われる意味での?)ブラケット記法であることを主張した上で, $\langle X | A \rangle_1$という記法がよろしくない. 「経路」の情報を右下の添字で表現するの, ブラケットの標準的な用法ではないのでは.
さて, この始状態と終状態は何なのだろうか. 抽象論でやっているのをシュレディンガー方程式での議論に叩き落とすのも品がないが, いったんいわゆる「波動関数」だとみなして議論する.
始状態・終状態の「状態」をヒルベルト空間の元(波動関数)と思うなら, 「$A$から$X$に向かう経路」という概念は一径数ユニタリ群$U(t)$が導くヒルベルト空間内の曲線と理解するべきではないかという気がする. しかしP.9の「経路1だけを開けた」という表現とP.6の「1番目の孔を開けた」といっ表現を考えると, 「どちらのスリットを通ったか」くらいの意味で使われている気もしてくる. 後で書くように後者の理解だと困るのではないかと思うのだが, どう理解したいいのだろうか. ちなみに「$A$と$X$は三次元空間内のある点で, どちらかのスリットを通った上で$A$と$X$を結ぶ曲線」の意味で「$A$から$X$に向かう経路」という解釈もありえそうだが, よくわからない.
まとめると「$A$から$X$に向かう経路」には次の三通りの理解がある. 考えている状態の空間(ヒルベルト空間)を$\mathcal{H}$としよう.
- 始状態$| A \rangle \in \mathcal{H}$と終状態$| X \rangle \in \mathcal{H}$を結ぶ$\mathcal{H}$内のある曲線.
- 始状態$| A \rangle \in \mathcal{H}$と終状態$| X \rangle \in \mathcal{H}$があり, どちらかのスリットを通った状態$|B \rangle \in \mathcal{H}$を通過する$\mathcal{H}$内のある曲線.
- 三次元空間$\mathbb{R}^3$の点$A$から$X$を結び, スリットの位置を通る三次元空間$\mathbb{R}^3$内の曲線.
これのうちどの意味なのだろうか?
二重スリットの問題を杓子定規にシュレディンガー方程式で二重スリット問題を定式化するなら, 「経路1を通って始状態Aから終状態X」という概念がシュレディンガー方程式に存在するのだろうか. 散乱理論では時間が過去・未来の無限大での時間発展の極限を取る意味で確かに始状態・終状態概念が出て来る. 時間発展に関する発展方程式を考え, 初期時刻・最終時刻を指定した意味での境界値問題で定式化しているのか? これは量子力学の修行として先々で解くことになるシュレディンガー方程式の固有値問題ではなく, 私はこの時点で議論に対する直観が効かない.
あと, ここでの状態概念として特に「経路1を通って」という概念が量子力学として意味を持つのかもわからない. 波動関数に対する過剰な(古典的)意味の読み込みではないかという気がする. (こういう読み取りは問題があると思っているのだが本当にわからない.) シュレディンガー方程式の解として, 考察下のハミルトニアンの適当な意味での解に「経路1を通って」という意味・情報は与えられるのだろうか. 古典的な装いが強い言葉で, むしろ(私が雑に認識している範囲での)経路積分的な定式化がよくはまる言明という印象がある. シュレディンガー方程式で捉えると難しいが経路積分ならうまく捉えられる状態概念, みたいな話なのだろうか. しかしこのくらいの基本的なところで使う数学的で具体的な問題の定式化・道具の詳細に依存するような議論になるのは気持ち悪い. あくまでメインは確率分布で, それをどう計算するかはモデル化の話, 物理の原理的な議論にモデル化の詳細を持ち込むのは違うのではないかというか.
上にコメントしたゴリゴリの杓子定規に数学的な議論では, 偏微分方程式は領域と初期条件・境界条件などに依存して解が決まる. 一方P.9では「経路1だけを開けたときの到達確率」と書いてある. これは領域$\Omega_{+1}$上で偏微分方程式を考えたことにあたる. 「経路2だけを開けたときの到達確率」は領域$\Omega_{-1}$上で偏微分方程式を考えたことにあたるだろう. この理解が正しいとして確率振幅の和は意味を持つのだろうか. もちろん単なる複素数の和として数学的な意味はある.
そしてこれまた杓子定規に言えば, 考察下のヒルベルト空間は前者はソボレフ空間$H^1(\Omega_{+1})$で, 後者は$H^1(\Omega_{-1})$, 両スリットが開いている空間は$H^1(\Omega_{2})$で属する空間自体が違うから状態の和は意味を持たない. もちろんP.8では状態の和は考えていないので今は関係ない.
全然関係ないが, $\phi$はあとでヒルベルト空間の元を指すためにも使う記号なので, 確率振幅に$\phi$を使うと紛らわしいのではないかという気もする.
干渉に関する谷村さんのコメントに関する疑問¶
次のようなコメントを頂いた.
密度行列を使う場合は、密度行列とオブザーバブルとが非可換で同時対角不可能であるときに干渉効果が出る、という特徴付けになると思います。それはベクトル状態における干渉とほぼ同列の扱いになると思います。
一方P.8での干渉は裏でハミルトニアンが決まっているものの, 単に確率振幅とその二乗に関する話でオブザーバブルは出てこない. だからこのコメントに対する「干渉効果」は何か違う話をしている. 密度行列で議論したときにP.8の議論に相当する干渉はどうなるのだろうか.
ちなみにP.96での干渉は波動関数(ケット)の和$|\psi \rangle = c_1 |\psi_1 \rangle + c_2 |\psi_2 \rangle$を考えて, これに対して$\langle \psi | A | \psi \rangle$を考えているから, 上記コメントに対応する干渉の話だろう. P.8での干渉では状態ベクトルの和ではなく, 確率振幅の和だから杓子定規には違う. ここの記号でいうなら$\langle \psi^{(1)} | A | \psi^{(1)} \rangle + \langle \psi^{(2)} | A | \psi^{(2)} \rangle$のような量がP.8での確率振幅の和になっているはず.
時々量子力学の本で$x \in \mathbb{R}^3$とケット$| \psi \rangle$に対して $\psi(x) = \langle x | \psi \rangle$で関数$\psi$の$x$での値を定義するのを見かける. P.8での$\phi$はこの意味か? この意味だとP.8の議論は数学的には大分話が変わってくると思うが, 何なのだろうか?
書評: 田崎晴明 熱力学, 清水明 熱力学の基礎¶
本の紹介¶
Twitter で何度も紹介しているので, いい加減きちんと書評をまとめておこう. 佐々さんの本は読んだことがないので省略する.
一度話したことはあるが, 講義も受けたことはない. 非常に面白い講義だと聞いているので 受けてみたかったとは思う.
まずは田崎さんの本¶
それはそれとして書評である. いつも言っているが, 初学者にはまず田崎さんの本を勧める. 清水さんの本は組み上がった理論を 整理されきった形で提供するという意味で極めて数学的だ.
物理的な議論は非常に丁寧なのだが, いきなりエントロピーを持ってくる構成からしてもかなりしんどい. 学部上級生から院生の知識の整理にはとてもいい.
両者の特徴¶
両方の本に共通している良い点は熱力学の位置付け, 重要さをはっきり言ってくれているところだ. その上でそれぞれのアプローチで それぞれが最良と思う形で熱力学を論じている. 2 冊の間で違うアプローチなのが良い.
端的に言うと, 田崎本は手作りで熱力学を作り上げているという感じだ. 操作的 (力学的) にやっているので, 初学者の取っ付きもよい.
清水本は完成された体系としての 熱力学を紹介するという形だ. 一番最初に最も重要な量としてエントロピーを導入し, その様々な姿を明らかにしていく. とても数学書に近いスタイルになっている.
数学書だと一番議論したい部分 (定理や定義) に 向けて進んでいくが, 逆にエントロピーという一番重要な量を はじめに出す (ことができる) のが違うが瑣末なことだ. その意味で, 田崎さんの本よりもよほど数学的と言える.
田崎晴明『熱力学―現代的な視点から』¶
個人的な追想¶
詳しい内容に入ろう. まず田崎さんの方から. この本と田崎さんは私が自分の専門を決める上でも 決定的な影響を及ぼしている.
実際, 修論では田崎さんの集中講義で紹介された Hubbard モデルの強磁性の結果を使って書いた程度である. それはそれとして, この本のよい所は 図をたくさん使いながら熱力学を操作的に議論しているところだ. おそらく一番とっつきがいい 力学的なイメージを大事にしながら進んでいく.
温度の選択¶
もう 1 つ大事な (しかし突っ込んで考えると難しい量である) 温度を取っているところも大事なポイント. ここで清水本は理論的な完全性を はじめから意識してエントロピーを取っているのだが, やはり温度を使った方が分かりやすい. 温度一定や温度変化がある場合というのがイメージしやすいからだ.
数学的な明晰さ¶
また付録含め, 数学的に議論がクリアなのもいい. (物理的にクリアなのは当然だ.) ときどき学部の低学年で 「数学的にいい加減な議論が気にくわない」という学生がいるが, そういう下らない話ではなく, 熱力学では数学的にある程度精密な議論が必要になるからだ. 具体的にいうと相転移だ.
記法上の配慮¶
あと熱力学関数の引数を全く省略しないスタイル, 初学者には本当に親切で素晴らしい配慮だろう. これは全ての物理の熱力学の本で徹底してほしいくらい.
相転移¶
相転移はこの間 Nobel 賞も 取った南部さんの業績 (つまり素粒子) でも出てくる話で, 物理学全体で非常に大事な現象といえる.
この相転移は熱力学関数の特異性, もっと具体的にいえば不連続性や 微分不可能性を使って定義される. 物理だと関数の連続性や 微分可能性などはあまり真剣に議論されないが, まさにそこが問題になる.
そこをきちんと議論しようと思うと 必然的に数学的に精密な議論が要求される場面が出てくる. そうした部分が丁寧に議論されていて安心できる. 特に強磁性体の相転移については, 著者の専門どストレートで その経験が十分に反映された出来になっていて, 読んでいて非常に面白い.
清水本との違い¶
清水本との違いとして, 多成分系の熱力学, 特に化学への応用が議論されていることもある. 清水本を読んだ人もここだけは 別途田崎さんの本を読んでもよいと思う. 高校化学で学んだ内容が 大学の物理学科の熱力学で どう料理されるか見てみるという楽しみ方もある.
田崎さんの本はこのくらいにして 清水さんの本の紹介に入ろう.
清水明『熱力学の基礎』¶
特徴: エントロピーの強調¶
この本ははじめからエントロピーを前面に出して, 理論的な完全性を強く意識している. 田崎さんの本も Legendre 変換を使うことで 温度を示量変数 (エントロピー) に変えれば 同じく (相転移まで含めた) 完全な議論ができるが, Legendre 変換をかまさないといけないところは難といえば難.
難易度の高さ¶
しかし清水本はその代償として難易度が高い. 跳ね上がっているといってもいいだろう. Twitter で物理志望の東大の学部 1 年などとも話したが, やはり難しいと言っている. 決して彼が愚かなどというわけではなく, 本当にこの本は難しい. しかしそれだけの内容を扱っているので 読破できれば物理の非常の深いところまで 見えるようになっているだろう.
物理と数学的理想化¶
この本の特色として物理で理論を作るときの 数学的理想化に関する議論がきちんとしているところがある.
例えば熱力学がどのオーダーで成立している理論か, 本来離散的であるはずの物質量で微分するというのはどういうことか, といった疑問にもきちんと答えている.
示量変数の強調¶
その他にも物理としての熱力学を 恐ろしいほど詳しく議論している. 示量変数で議論しないと 物理的に不完全なところがあると再三言っているが, それが実際どこでどう問題になるかは, 例えば相転移の章で詳しく議論されているので 興味がある方はそこだけ優先しても見てもいい.
最後の二章¶
最後に終わりの 2 章は圧巻. 相転移については田崎本も十分に詳しく あの本のスタイルで十分に議論されているが, この本はこの本のスタイルで徹底的に議論している.
最終章は修士くらいの学生でないと本当に分からないだろう. 何しろ統計力学や場の量子論との関係を論じている. 場の理論でも相転移が大事ということはここでも議論されている. ちなみにここで出てくる代数的場の量子論は Summer School 数理物理 2013で河東先生が話す内容だ. 河東先生はあくまで数学の人だが この物理部分に触れられている. ちなみに Summer School 数理物理 2013 の主催者の 小嶋先生が脚注で触れられている「小嶋泉氏」だ.
改めてお勧めルート¶
まず田崎さんの本で肩ならし (というと何だか失礼だが) してから 清水本にアタックするのがいい. あとできるなら両方読んだ方がいい. この 2 冊を読めば熱力学については 研究者レベルと言っていいだろう. そのくらいしっかりした本なので覚悟を決めて読んでほしい.
ラベル¶
物理, 熱力学, 相転移, 書評
今まで読んだ中で最低の本: 肖鋒, 長崎孝夫, 数値流体解析の基礎 - Visual C++とgnuplotによる圧縮性・非圧縮性流体解析 2020/1/9¶
あまりにも最低の本だったので, Amazon にもレビューを書いたが, 消されるかもしれないし, ブログにも記録しておく.
次のツイートのツリーにも怒りの記録がある.
今読んでいる数値計算の本のサンプルコード、コメント中ではあるが、半角スペース・全角スペース・タブが空白の表記で混在していて厳しい気持ちになっている。
— 相転移P (@phasetrbot) March 10, 2020
以下, レビューで書いた内容.
レビュー: 2020年のソースコードではない¶
多少のプログラムは書いたことがあり, C も少し書いたことはあるが C++ は完全未経験であることをお断わりしておく. サンプルコードを推奨の Visual Studio 2019 でビルドしたら次のようなエラーが出る.
- ファイルは, 現在のコード ページ (932) で表示できない文字を含んでいます. データの損失を防ぐために, ファイルを Unicode 形式で保存してください.
- 型指定子がありません - int と仮定しました. メモ: C++ は int を既定値としてサポートしていません
書名には「Visual C++」とあり, サンプルコードの拡張子も cpp. しかし付録の「A.3 プログラムの実行」では「Microsoft Visual Studio の C (あるいは C++)」と書かれていて, C++ というよりも C 前提なのだろうか. しかし上のような C++ 対応とは思えないようなエラーが出ている. まだ読み終わっておらず, まさにコードが出てくるところでこのレビューを書いていて, まさにビルドを通すための作業をがんばっている. とてもつらい.
ちなみにコードは (Visual Studio で作っているから?) 文字コードが Shift_JIS で, コメント中のスペースには半角・全角スペースとタブが混在していたり, インデントもタブだったりスペースだったりする. 工学系の研究室のコード管理はひどいというのは聞いているが, これはその片鱗なのだろう. とてもつらい.
追記: コードサンプルが本当に最低であることがわかった.
1 2 |
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とした上で「u[i_max] = u[3];」という未定義動作のコードが境界条件として設定されている. 著者も最低だが, 編集者が何も仕事をしていない. 他にも描画に関して, 古代の gnuplot ではアニメーション機能が無く外部プログラム経由で随時描画していたそうで, その手法をいまだに踏襲していて, 2020 年のコードではない. 正気の沙汰とは思えない. 1 番簡単な移流でさえ何なのかさっぱりわからない. 本を買ってここまで損したと思ったことはない. ただただ最低としか評価できない. 評価 5 をつけた人は何を考えて評価したのか. 本当に読んだのか.
他の欠点がひどすぎてかすむ程度の欠点だが, 本のコードではインデントが消えていて, 本当に読みにくい. こういうところにも編集者の無能さ加減が見える. コロナ社の本はもう 2 度と買いたくない.
修正版レビュー¶
多少のプログラムは書いたことがあり, C も少し書いたことはあるが C++ は完全未経験であることをお断わりしておく. 結論から書くとまずプログラムがひどく, 本もまともな体裁を保っていない. 著者が研究用に書いて公開しないコードというならいくらでもひどくて構わないが, 商業にのせていいレベルの品質のプログラムではない. コード中, インデントは不揃いで, コメント中のスペーシングには半角・全角スペースとタブが混在しているし, インデントもスペースとタブが混在している. そして本に載っているコードでインデントが消えていたりするし, 公式で配布されているサンプルを推奨環境の Visual Studio 2019 でビルドしようとしても通らない. ここまでひどいと物理・工学的な記述もひどいのではないかと疑わざるを得ない. とりあえずコードについては Python で書き直したバージョンを GitHub にあげてある: 興味がある方はぜひ見てほしい. (C 言語版は購入者しかダウンロードできないようにしているようなのでアップしない. この対応もコードの品質がひどいから公開したくないのでは, とさえ勘繰りたくなる.)
以下, もう少し詳しく書いていこう. まずタイトルがあまりにもひどい. Visual C++ と書いてあるが, Visual Studio 2019 を使っているだけで, 実際には C++ ではなく, C でコードが書かれている. それにも関わらず, ファイルの拡張子は cpp になっている. Gnuplot の部分もひどい: 描画はアニメーションを作れなかった太古の Gnuplot の流儀で計算しながら随時 Gnuplot で描画させている. 最終的な動画作成には postscript を使っている. ここが私の環境ではうまく動かないのだが, postscript はほとんと何も知らないので, 調整のしようもない. 上記のような理由であまりにひどいので著者に問い合わせる気も失せる. 2020 年のコードとは思えない.
ビルドについては, サンプルコードを推奨の Visual Studio 2019 でビルドしたら次のようなエラーが出た.
- ファイルは, 現在のコード ページ (932) で表示できない文字を含んでいます. データの損失を防ぐために, ファイルを Unicode 形式で保存してください.
- 型指定子がありません - int と仮定しました. メモ: C++ は int を既定値としてサポートしていません
他にも 15 程度のエラーが出た. よくわかっていないが, C でビルドすべきなのに C++ としてビルドしようとして起きたエラーなのかもしれない. C ならまだしも, C++ も Visual Studio もよくわからないので追求は諦めた.
ちなみにコードは (Visual Studio で作っているから?) 文字コードが Shift_JIS で, コメント中のスペースには半角・全角スペースとタブが混在していたり, インデントもタブだったりスペースだったりする. 工学系の研究室のコード管理はひどいというのは聞いているが, これはその片鱗なのだろう. とてもつらい.
他にもコードのすごいところを書いておこう. 例えば次のような配列外参照が平然と書いてある.
1 2 3 4 5 6 |
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境界条件を配列外参照で書くというの, 研究用コードなら動けばいいで終わらせてもいいが, 商業用・教育用のコードで書くことか? いくら研究能力を買われてこその話とはいえ, 著者は大学の教員であり, 教育者でもある. これが教育者の態度か. 工学者であってプログラマーではないといったスタンスが許されるのか. 100 歩譲って著者は工学の研究者であって教育者としての誇りを持っていないとしよう. 次の問題は編集者だ. こんなコードを平然と通せる編集者は理工学の専門書の編集としての仕事をしたつもりか. 税込でほぼ 4000 円, 専門書としてはともかく, 日本では一般の本として決して安くない値段の本でこのクオリティというのは読者を愚弄している. ここまでひどい本に評価 5 をつけた人は何を考えて評価したのか. 本当に読んだのか. 安くもない専門書に関して, ここまでひどい編集者が編集した本にはあたりたくないし, コロナ社の本はもう 2 度と買いたくない.
吉田武, 素数夜曲¶
Schemeコード¶
メモ¶
プログラミング言語の発見¶
\hyperref[toc]{【目次へのリンク】} \setcounter{tocdepth}{2} \localtableofcontents
はじめに¶
ここでは集合論などいくつか関連する数学の議論があります. 公理的集合論に関する議論についての詳しい議論はそちらまたは本に任せ, このノートではプログラミングに関わる議論に集中します.
A.1無からはじめる¶
数学でいう$0$の代わりに何もないリスト(空リスト)として()
を導入します. Haskellでの空リストは[]
です. 空リストは空集合\index{くうしゅうごう@空集合} (empty set)とみなせます.
A.1.1無から括弧へ¶
Lisp系の言語では空リストはnil
としても使われます. これはtrue
, false
のfalse
を表す概念としても転用されます.
先程空リストは空集合とみなせるとも書きました. これを使うと$0 = ()$, $1 = (()) = (0)$としてフォン・ノイマン流の自然数の構成につながります.
A.1.2括弧から自然数へ¶
数2は2 = (1 0) = ((()) ())
と書けます. これより大きい数も同じように再帰的に定義します.
0 = ()
1 = (0)
2 = (1 0)
3 = (2 1 0)
4 = (3 2 1 0)
このあたりはプログラミング言語の基礎概念といったテーマや本で詳しく議論されています.
プログラミング言語が配慮するべき対象として次の段階的な区分があります.
- 無意味な対象: meaningless
- 意味はあるが間違っている対象: meaningful & incorrect
- 正しい意味と結果を持つ対象: meaningful & correct
それぞれ次のような例があります.
)(3=(1+*2)
2+3=1
1+2=3
A.2裏で支える集合論¶
構成的に集合論を展開するとき基礎にする概念・記号が必要で, それが空集合です. この意味で「初めに空集合が在った」と言えます.
先の数の構成を集合論の形式に持っていくのも簡単です. 形式的に丸括弧を中括弧に置き換えて空集合は{}
と表します. 数学ではふつう空集合には記号$\emptyset$をあてます.
A.2.1集合の定義¶
集合論では集合を無定義語として採用します. そして属す・属さないという帰属関係が二つの集合の関係を規定します. 特に数学では集合$a$が$A$に属することを$a \in A$, 属さないことを$a \notin A$と書きます.
A.2.2要素から対へ¶
ふつう集合は具体的には異なる要素の順序を問わない並びとして表します. 特に外延記法と呼びます.
二つの要素$a,b$を持つ集合$\setone{a,b}$を特に対と呼びます. 対の存在は対の公理と呼ばれます. 対で$a=b$のとき$\setone{a,a} = \setone{a}$と書き, これを\coloredtextbf{シングルトン}\index{しんぐるとん@シングルトン} (sigleton)と呼びます.
シングルトン$\setone{a}$に対して $a$は集合$\setone{a}$の(ただ一つの)要素である一方, $\setone{a}$は$\setone{a}$の要素ではありません. 特に$a \in \setone{a}$かつ $\setone{a} \notin \setone{a}$です.
A.2.3対から順序対へ¶
リスト内包表記のようにプログラムの文脈でも出てくるので簡単にコメントしておくと, 内包は対象の性質を説明する手法で, 外延は対象を具体物として例示する手法です. 集合で言えば$\set{n}{n\text{は偶数}}$のように書くのが内包, $\setone{0,2,4,\cdots}$のように具体的に書くのが外延です.
ここでは順序対を$\opair{x,y}$と角括弧で書いています. 順序対の実装法はいくつかありますが詳しい議論は省略します. 大事な性質は順序対の等号$\opair{a,b} = \opair{c,d}$は $a = b$, $c = d$と定義されることです.
A.3集合を操る¶
ここまでは集合の要素, 要素の組としての対を与えて思考の対象を増やしてきました. 次は与えられた対象の\coloredtextbf{計算}, 特に和集合(合併)と共通部分を考えます. これらについて詳しくは\ref{expedition02314}節を参照してください.
A.3.1合併¶
集合$A,B$は$\cup$の\coloredtextbf{前置記法} (prefix notation)を使って \begin{align} \bigcup \setone{A,B} \end{align} と書きます. 言われてみると確かに前置記法による演算記号・定義で, Scheme・Lispの視点からは基本的です.
プログラミングとしても大事なので一つ例を考えましょう. 集合$A = \setone{a_1, a_2}$, $B = \setone{b_1, b_2}$に対してこの和集合は \begin{align} \bigcup \setone{A,B} = \bigcup \setone{\setone{a_1, a_2}, \setone{b_1, b_2}} = \setone{a_1, a_2, b_1, b_2} \end{align} です. Schemeでは(append '(:a1 :a2) '(:b1 :b2))
を実行すると求める (:a1 :a2 :b1 :b2)
が得られます.
ここでのポイントは(:a1 :a2 :b1 :b2)
と((:a1 :a2) (:b1 :b2))
の違いです. 数学で言えば$\setone{a_1, a_2, b_1, b_2}$と $\setone{\setone{a_1, a_2}, \setone{b_1, b_2}}$の違いです.
ちなみに和集合は$\bigcup \setone{A,B} = \setone{A} \cup \setone{B}$と\coloredtextbf{中置記法} (infix notation)で書くこともあります.
A.3.2共通部分¶
共通部分は和集合を上下反転させた記号 \begin{align} \bigcap \setone{A,B} = A \cap B \end{align} と書きます. 本にはSchemeと順序対に関する大事な指摘があります. ここでは必要なときが来たら触れることにして先を急ぎます.
順序対は要素の並び順を保てる大事なデータの保管庫です. 各データにアクセスするには順序対の共通部分と, そこから定義される差集合をうまく使って議論します. Schemeでいうcar
とcdr
, Haskellでいうhead
とtail
の姿が見えて面白いところです.
A.4命題と論理式¶
計算機を理解する上で大事なのは論理から集合, 集合から現実へのパスをきちんと理解することが計算を理解するポイントだそうです. 計算機にできることは何か, 具体的な回路にできることは何か, 計算で現実を再現できるか, こうした問題を論理の問題として議論するのが大事です.
TODO A.4.1命題¶
命題は「客観的に検証可能な陳述(statement)あるいは主張」を指します.
- TODO この定義確認.
- 真偽
- 排中律
- 二値原理
- 公理
- 原子式(原子論理式?)
- 論理式
A.4.2命題論理¶
- 述語
- 論理結合子: 否定・論理和・論理積・含意
- 古典命題論理
A.4.3論理式の意味¶
- 排他的論理和
- ベン図
- 逆・裏・対偶
- 恒真式
A.4.4万能結合子¶
- ド・モルガンの法則
- シェーファーの棒(Sheffer stroke)は$P | Q = \lnot (P \land Q)$
A.5自然数の構造¶
- 無限公理
- 空集合の存在公理
A.6 再帰による定義¶
- 無限に直接触れずに無限にまで行き渡る
A.6.2自己言及の定式化¶
A.6.3括弧と自然数¶
A.7関数とラムダ記法¶
A.7.1関数の定義と記法¶
A.7.2ラムダ記法¶
記法$x \mapsto ax+b$の代わりに $\lambda x.ax+b$と書く記法を指します. 一般化すると $x \mapsto f(x)$と$\lambda x.f(x)$が等価です.
関数への代入は $(\lambda x. ax+b)2 = 2a+b$と書きます. 文字$a$も変数とみなしたいときは, 例えば $(\lambda a. (\lambda x. ax + b)) (3 2) = 6+b$と書きます. これについてカリー化のような概念も関係します.
A.7.3ラムダの来歴¶
次のような経緯だそうです.
- 変数への強調として文字上に二行にわけてハットをつけて$\hat{x}(x+1)$のように書いた.
- 一行にするべく$\wedge x (x+1)$と書いた.
- 類似のギリシャ文字の大文字の$\Lambda$で$\Lambda x(x+1)$とした.
- 記号の混同を避けるために小文字で$\lambda x (x+1)$とした.
A.8リストから始まる¶
ここではSchemeまたはLispの視点から説明します. 集合論での順序対を基礎に対象をスペース区切りで並べて(2 1 0)
のように書いた対象がリストです. これを実際のScheme上でデータとしてのリストとみなすには'(2 1 0)
とシングルクォートを先につける必要があります. これは先頭のシンボルを関数名とみなすルールがあるからです. 実際にプログラムを書くときには注意してください.
ここで先の(2 1 0)
の2
はhead
と呼び, それ以降の部分である\coloredtextbf{リスト}(1 0)
をtail
と呼びます. これらはそれぞれcar
とcdr
で取れます. 他の言語, 例えばHaskellではcar
はhead
, cdr
はtail
という関数になっています.
二つの要素を括弧でくくることにあたる関数をconstructから取ってcons
と呼びます. 関数としてもcons
です. \myquotefile{primenocturne/scheme/37501.scm}
A.9 LISP is not LISt Processor¶
A.9.1 S-表記¶
このSはSymbolicのSです. 再帰的に定義します. この本, アトムと(空)リストのきちんとした定義がないようなので, 適当なタイミングで追記します.
- 基底部: アトムと空リストはS-表記である.
- 再帰部: もし$e_1,e_2$がS-表記ならば$(e_1 \cdot e_2)$もS-表記である.
このデータ構造はS-式と呼ばれる方が多いように思います.
TODO・メモ: 定義が雑で読むに堪えないので, 大事そうな要素・言葉・概念のメモとプログラム部分だけ読もう.
文字の代わりに使う数として素数を使うとよいという話が書いてある. ちょっと採用してみよう.
ytb_at_twt さんの Amazon の『哲学的な何か, あと科学とか』の書評に涙を禁じ得ない¶
本文¶
『哲学的な何か, あと科学とか』の書評に対するコメントに涙を禁じ得ないため, 少しコメントしたい.
はじめに¶
下記のコメントは凄まじい異常さを感じる. 「意味が分からない」といいたいのはこちらの方だ.
(中略) したがって, 不完全性定理は適用できません. (1) 哲学から最も遠い態度です. (2)
と書いてらっしゃいますが, 意味が分かりません. 数学の話をされているのですか? それとも, 哲学の話をされているのですか?
数学の話をされているなら, 哲学は関係ありません. (2) は不思議な結論です. 哲学の話をされているなら, 不完全性定理は基本的な思考実験から簡単に説明出来ます. 数学は必要ありません. 故に, (1) はこれまた不思議な結論です.
数学の本質は計算にあるのではなく, 証明の厳密さとその美しさにあります. これは科学や哲学, "全ての体系"に反映されるべき美しい特質です. しかし, あなたが (1) (2) で言われている事はダブルスタンダードに過ぎません.
厳密さを求めるばかりで, あなたにはエレガントさが足りません. 失礼ですが, もう一度算数からやり直された方が宜しいかと存じます.
細かく分けてつっこみたい.
ツッコミその 1¶
数学の話をされているなら, 哲学は関係ありません. (2) は不思議な結論です. 哲学の話をされているなら, 不完全性定理は基本的な思考実験から簡単に説明出来ます. 数学は必要ありません. 故に, (1) はこれまた不思議な結論です.
何をどう言ったらいいか分からないほど, はじめからひどい. 前者は意味が分からなすぎてどうコメントしたらいいか分からないレベルだ. 後者についても滅茶苦茶すぎる. 思考実験から分かるとかいう哲学における不完全性定理というのは何なのだ. この本を読んでいないから分からないが, 批判された方が言っているのはそうした話を混同したこの本のふざけた暴論だろう.
ツッコミその 2¶
数学の本質は計算にあるのではなく, 証明の厳密さとその美しさにあります.
あくまで現代から見れば, という話だが, 数学が「厳密」になったのはこの 100-200 年程度だ. いわゆる微積分の厳密化としての Cauchy の $\epsilon$ - $\delta$ 論法などは有名な話だろう. それ以前の 2000 年近くの「数学」は数学の本質を外れた行いだったとでもいうつもりか. 大体からしてなぜ「計算」なる単語が出てくるのかもまるで分からない.
数学の本質は計算にあるのではなく, 証明の厳密さとその美しさにあります. これは科学や哲学, "全ての体系"に反映されるべき美しい特質です.
Boltzman は「エレガンスなど仕立屋と靴屋に任せておけばいい」といったそうだが, 色々な人がいて色々な思いで研究している. 「証明の美しさ」で何を指すかも時と場合や人によって変わるだろう. 例えば「大道具を準備して快刀乱麻を断つように鮮やかに切り捨てていく」証明もいいが, 「素朴な道具立てで頑張る」証明も味があるし, 「何がなんだか分からないがとにかく力づくで示した」証明もまた味がある. まともに数学なりなんなりを学んだことのない馬鹿の妄言と切って捨ててしまっていい.
ツッコミその 3¶
厳密さを求めるばかりで, あなたにはエレガントさが足りません. 失礼ですが, もう一度算数からやり直された方が宜しいかと存じます.
妄言もいい加減にしろと言いたい. まず真っ先に学ぶとるべきことは厳密さだ. そこをきちんと身につけるだけでも気が遠くなるほど大変だというのに何を言っているのだ, この馬鹿は. エレガントさというのは何か, 定義してみてほしい. 算数を馬鹿にしきったようなこの一文自体怒りに震えるが, 算数から学び直すべき馬鹿はこのコメント主の方だ.
社会の厳しさ¶
他の高評価の書評にも共通する話だが, もう一つのコメントの方は別のことを考えさせられる.
私は飲茶さんの WEB サイトを閲覧したばかりの, 量子力学について何も知らない者です. あなたの言っている事は一般的にみて正しいと思います. そして, その分野に関する正当性もある程度理解できます. だけど, 飲茶さんのライティングは, 私の心に響きます. そして, あなたがおっしゃられている事なんて, どうでもよくなるくらいなんです. 飲茶さんの本を読む人の多くは, 「1+1=2」になる事なんて, どうでもよくなっちゃう人が多いと思います. すみません, ただの娯楽レベルですね^^ そもそも, それを問いただしたら, 間違いだらけの本ばかりが既に出版され続けているじゃないですか^^
社会その 1¶
あなたの言っている事は一般的にみて正しいと思います. そして, その分野に関する正当性もある程度理解できます. だけど, 飲茶さんのライティングは, 私の心に響きます. そして, あなたがおっしゃられている事なんて, どうでもよくなるくらいなんです.
これだ. 「心に響く」というのがとても強烈. 「理解と納得」というのが時々話題にのぼるが, 理解せずに「納得」されてしまうと非常につらい. 「素人」が「納得」してしまうと理解が止まることが多いらしいことを多数の事例で確認し, またそれはかなり危険なことなので, 怖い.
社会その 2¶
飲茶さんの本を読む人の多くは, 「1+1=2」になる事なんて, どうでもよくなっちゃう人が多いと思います. すみません, ただの娯楽レベルですね^^ そもそも, それを問いただしたら, 間違いだらけの本ばかりが既に出版され続けているじゃないですか^^
娯楽レベルというのは一向に構わないし, それでいいと思うのだが, 明らかにおかしい (であろう) 本で「納得」されても困る.
社会その 3¶
そもそも, それを問いただしたら, 間違いだらけの本ばかりが既に出版され続けているじゃないですか^^
色々言いたいことはあるのだが, この人, 間違いだらけの本を進んで読みたいと思っているのだろうか. できれば「分かりやすくしかも正確な本を読みたい」とは思わず, とにかく納得できて気分が良くなる本なら何でもいいのだろうか.
考え直すだけでしんどくなってきたので今回はここで止めるが, こう色々なことを考えさせられる地獄のようなコメントだった.
コメントへのコメント¶
Twitter で ytb_at_twt さんから突っ込みを受けていた. 次のツイートだ. これとこれだ.
phasetr さんのコメントは非常に正しいと思うが, 一カ所 「数学の本質は…証明の厳密さとその美しさにあります」という箇所に「あくまで現代から見れば」だ, と反論する箇所は問題があると思う. かつてそうでなかったとしても, 現代において合理的に再解釈した結果そうなっているのでは>前 RT
歴史的な経緯と, 現在における正当化のルートが違うのは, 数学に限らず, いろいろな分野でそうなんだと思います.
コメントへの雑感¶
まともな返答になっているとは思えないのだが, 何を思ったかというのを書いておきたい.
『線形代数と群の表現 II』P316 からプリンキピアでの月の軌道運動に関する記述がある.
私自身はプリンキピアを読んでいないのだが, 平井先生によるまとめを少し抜き出しておこう.
この命題の証明がすごい (英訳書, pp.803-805). まず, ニュートンは, 当時分かっていた観測値, 測定値を挙げる.
(中略)
すると, 公式 (18.10) によって, 月にはたらく遠心力が単位質量あたり $F_{\mathrm{cf}} = v^2/R$ として求められる. この遠心力をうち消すには, 同じ強さの力が, 月を地球中心に向かって引っ張っていなければならない.
(中略)
これは, 地球からの万有引力によるはずである.
(中略)
他方, 上述のホイヘンスの秒振り子の糸の長さ $\ell_1$ の測定値を使って, 公式 (18.8) により, 重力加速度 $g$ を計算のその作用によるパリでの最初の 1 秒間の落下距離は, $\frac{1}{2} gt^2 |_{t=1} = \frac{1}{2} g$, である.
(中略)
月の軌道運動から算出した値と地上で観測した値とは, わずかに $\frac{3}{9}$ lines の差があるにすぎない. かくて, ニュートンは, 「天上の月をその軌道にとどめている力は地上に至ると我々が重力と呼んでいる力になる」ことを厳密に論証できたとして, 誇らかに次のように述べている.
正確には数学ではなく物理の話にはなってしまうが, 異常なまでに力強い「証明」であり, はじめて読んだとき感銘を受けた. 何で読んだのか忘れてしまったのだが, Rolle の定理の「証明」も具体例をいくつか出しただけだったという. 今の時代ではこんなことは怖くて誰もできないとは思うが, このおおらかさ, 力強さはとても気に入っているし, 少なくともニュートンの「証明」は「エレガント」と感じた.
こういう私の感覚を元に, 下記のような発言を「何だとこの野郎」と思ったのが正直なところだ. ちなみにあまり理性的な対応だとは思っていない.
数学の本質は計算にあるのではなく, 証明の厳密さとその美しさにあります. これは科学や哲学, "全ての体系"に反映されるべき美しい特質です.
書いていて何の話か自分でも分からなくなったが, 件のコメントを見返して愛と怒りと悲しみを覚えたことだけ最後に記しておきたい.
ラベル¶
数学,物理
2015-03-06 書籍紹介: 宮田親平『毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者』¶
毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者 http://t.co/aXiE18h4WR これ、まったくのノーチェックだなぁ。読んでおこう。
— 山猫 だぶ (@fluor_doublet) 2015, 2月 22
これか. 読みたい. ほしい.
2015-03-24 松田道雄『育児の百科』が面白いようなので¶
- 育児, 教育, 相転移プロダクション
育児書で唯一持ってるのが古典ともいえる松田道雄「育児の百科」。実に味わい深い筆致で、読み物としても面白い。新生児期、何かと過敏になってはネット検索してドツボにはまって煩悶してたとき、結構救われた。だいたいのことは「個性。よくあること。大丈夫。問題ない」と長老に言われるような本
— lililium (@lililium) 2015, 2月 25
読んでみたいのでメモ.
2015-05-03 西田正規『人類史のなかの定住革命』¶
- 文化人類学, 定住, 農耕, 狩猟
なんか書いた 「定住化」という人類史最大の革命 http://t.co/fLCYP5nbpy
— イスカリオテの湯葉 (@yubais) 2015, 2月 15
面白そうなので読書リストに放りこんでおいた.
2015-04-05 新刊案内: 『小平邦彦----人と数学』(日本数学会編)¶
- 数学, 小平邦彦, 数学者, 書籍, 幾何学, 複素多様体, 代数幾何
[新刊のご案内] 3月中旬予定 『小平邦彦----人と数学』(日本数学会編) A5判・約380頁・予価4600円(税別) 小平邦彦先生生誕100年記念出版です。
— 数学書房 (@sugakushobo) 2015, 2月 12
Twitter経由でほしい本が100冊単位で溜まっている.
2015-04-06 新刊案内: 照井一成 『コンピュータは数学者になれるのか? -数学基礎論から証明とプログラムの理論へ』 青土社¶
- 数学, 数学基礎論, 証明, プログラム
照井さんの本に期待. 照井一成 著「コンピュータは数学者になれるのか? -数学基礎論から証明とプログラムの理論へ」 青土社2015/2/24 http://t.co/UUZdllbvvX
— 蟾蜍(時々まあ飲めよbot) (@patho_logic) 2015, 2月 13
patho_logicさんのアレだし中身が気になる. そういえば菊池誠『不完全性定理』もいまだにきちんと読めていない.
2015-05-28 ウィリアム H. マクニール『疫病と世界史』が面白そうだったので¶
- 世界史, 疫病, 疫学, モンゴル
「かつてモンゴル人は水を極度に恐れ、生水は決して飲まず水分はすべて山羊のミルクで補給し、水たまりもよけて通った」というのを昔なんかで読んだときはなんだそれと思ったものだが、「疫病と世界史」を読んだ今となっては、疫学的にとても正しい伝統だったのだなと考えを改めた。
— 古川 (@furukawa1917) 2015, 4月 16
『疫病と世界史』はこの二分冊か.
疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1) 疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)
面白そうな本が世界には多過ぎてつらい.
2015-04-30 ほしい本リストへの追加: 八杉佳穂『ずかん文字』技術評論社¶
技術評論社の『ずかん文字』、もうほんと素晴らしい。子供向けっていうか、本気すぎてここまでくると廉価版の世界文字図典といってまったく遜色ない。しかも版面はポップなデザイン。みんなに買ってほしい。 pic.twitter.com/YGvutyMx2j
— 真塚なつき (@truetomb) 2015, 4月 17
面白そう. Twitterをやっていると欲しい本・読みたい本がどんどん増えていく. 嬉しいやらつらいやらという感じでつらい.
2015-08-01 ツイート・記事紹介: 世界史悪党6人衆とその中のヘリオガバルスの言動¶
ちょび髭のアドルフ ビッチ男の娘帝ヘリオガバルス 傭兵隊長オドアケル 蝋燭デブの安禄山 ギロチン無双のロベスピエール 影の薄いガヴリロ・プリンツィプ 世界史悪党6人衆
— 中埜春友 (@borisbadenov85) 2015, 7月 31
とりあえずヘリオガバルスをWikipediaで調べてみた.
凄い記述がたくさんあったので引用したい. 引用し過ぎでアレな感もある.
ヘリオガバルスは放縦と奢侈に興じ、きわめて退廃的な性生活に耽溺し、しかもその性癖は倒錯的で常軌を逸したものであった。
ヘリオガバルスの退廃した性生活についての話題は、彼の政敵によって誇張された部分があるともみられているが、後世の歴史家からも祭儀にふけって政治を顧みなかった皇帝として決して評判はよくない。
ローマ入城の際、人びとは新皇帝の出で立ちをみて驚愕した。少年皇帝は、地面に届きそうな長袖を支える紫色の地に錦糸をあしらった司祭服を着用し、ネックレスや腕輪など豪奢な装身具をほどこし、頭上に宝石を散りばめた帝冠をいただいたうえで女装していたからである。
彼女はアウグスタ(皇后)の称号を得たものの、この結婚生活は長く続かず、その年のうちに2人は離婚した。パウラが皇帝の異常ともいえる性愛に応えられないというのが離婚の理由であった。
皇帝はパウラと離婚すると、220年末に「ウェスタの処女」たる巫女のアクウィリア・セウェラ(英語版)を手篭めにして再婚した。竈(かまど)の神ウェスタに仕える巫女は共同生活を送り、聖なる火を絶やさぬことを務めとしていた。幼少時に神職に召された巫女たちは「神々に身を捧げる」という意味から、その身を清らかに保つため、神に仕えるあいだ処女を貫くことが求められ、その禁忌を破った場合には生きたまま穴埋めされるという恐ろしい掟があった。しかし、ヘリオガバルスはそのような掟は意に介せず、彼女と結ばれれば、神のような子どもが授かると信じ、彼女に禁忌を犯させてでも結婚を強要したのである。
退廃と性的倒錯
急進的な宗教政策以上にヘリオガバルス帝を有名にしたのは、倒錯的かつ退廃した性生活に関する逸話である。そもそもヘリオガバルスは、正式な結婚生活すら4回の離婚と5回の「結婚」を繰り返しているのである。
「ウェスタの処女」セウェラとよりを戻し、4度目の結婚をしたはずの皇帝であったが、その年のうちにまたも離婚した。今度は、こともあろうに小アジア出身のカリア人奴隷で、しかも男性であるヒエロクレスの「妻」となることを宣言。これが、5度目の「結婚」であった。さらに『ローマ皇帝群像』によれば同じく男性の愛人である戦車選手ゾティクスとも結婚したと伝えられている。
皇帝は、公共浴場へ行っては女風呂に入って女性たちに脱毛剤を塗ってやったとか、毎晩、怪しげな女たちをベッドルームに連れ込んで彼女たちの痴態を観察するなどの淫行を繰り返した。また、密偵を放ち、ペニスの巨大な男性を探させて宮廷に連れて来させ、情事を楽しんだ。皇帝は芝居をしながら、突然全裸になり、片手を胸に片手を陰部に当ててひざまずき、巨根の男に向かって尻を突き出して腰を前後運動させたという。猟奇的な逸話としては、神殿内で飼育している猛獣に切り落とした男性器をエサとして与えたというものまで伝わっている。『皇帝列伝』は、以下のように伝える。
元老院議員として宮殿に出入りしていたカッシウス・ディオはヘリオガバルス帝の性的倒錯を記録し、同性愛ばかりではなく女装癖があったとして実際にその現場を見たことを記録している。カッシウスは、以下のように伝える。
カッシウスはまた、「皇帝は、いつしか男を漁るために酒場に入り浸る習慣を持つようになり、化粧と金髪の鬘をつけて売春に耽溺した」と叙述してこれを非難し、皇帝が最終的に帝国の中枢である宮殿に客を呼び込んで売春宿にするという醜態まで晒したと記録している。
…遂に皇帝は権威ある宮殿までも自らの退廃の現場とした。宮殿の一室に売春用の場所を用意して、そこを訪れる客に男妾として体を売ったのだ。ヘリオガバルスは売春婦がそうするように裸で部屋の前に立ち、カーテンをつかんで客を待った。そして男が通りかかると哀れを誘うような柔らかい声で甘えるのだった。
皇帝は全裸で廷臣や警護兵を甘い声で誘い、男娼として売春する一方、金髪の奴隷ヒエロクレスに対しては「妻」として従っていた。厚化粧して妻になりきり、しかも、「ふしだらな女」と噂されるのを好んで、他の男性とも肉体関係を結んだ。これを知ったヒエロクレスは「妻」である皇帝の不貞をなじり、罵倒し、しばしば殴打におよんだ。そして、皇帝は、殴られて自分の眼の周りがどす黒く腫れ上がったことを悦んだという。また、性転換手術を行える医師を高報酬で募集していたともいわれている。このことからヘリオガバルス帝の性癖について、これを同性愛や両性愛というより、トランスジェンダーの一種として考える論者も多い。
世界史をはじめとして人文系の素養のあまりのなさ, 勉強不足を感じるので, 最近勉強し直している.
2015-08-02 青木薫訳, エドワード・フレンケル『数学の大統一に挑む』¶
ロシア生まれの数学者が,「美しい数学」を,自分の人生の物語と重ね合わせながら,魅力的な語り口で表現したノンフィクション。文藝春秋さん発行『数学の大統一に挑む』(エドワード・フレンケル 著/青木 薫 訳)のご紹介です。http://t.co/BOKPPviYh1
— 共立出版スタートレック蟻 (@1738310) 2015, 7月 30
青木薫さん訳だしエドワード・フレンケルだしで超読みたい.
2015-09-10 読書・積読リスト: 『圏論の歩き方』¶
Cheng さんの popular 圏論本がめっちゃ売れとる http://t.co/vrTpTlaq0j負けられない! 圏論の歩き方http://t.co/MD8MZoD2Muhttp://t.co/8z8S8YCWKo
— Ichiro Hasuo (@IchiroHasuo) 2015, 8月 17
kindle版出ないんですか? http://t.co/4bNmd5tf0s
— ytb (@ytb_at_twt) 2015, 8月 17
引用されているのは次の本.
『圏論の歩き方』, 小嶋先生と西郷さんの文章があって超読みたい. ほしい本ばかり増えていって積読も増えていくのが本当につらい.
2015-09-13 2015-08-25発売, 日経サイエンス2015年10月号【追悼・南部陽一郎博士「南部先生が成し遂げたこと」】¶
☆8月25日発売:日経サイエンス2015年10月号☆追悼・南部陽一郎博士「南部先生が成し遂げたこと」大栗博司 素粒子物理の礎を築いた南部博士が死去した。ゆかりの著者が博士を偲ぶ。 http://t.co/ow31pQL5Su
— 日経サイエンス (@NikkeiScience) 2015, 8月 21
大栗さんの文章だし読みたい. とりあえずメモ.
2015-09-14 『プリンストン数学集成』ティモシー・ガワーズ総編集, 砂田利一ほか監訳(朝倉書店)¶
11月新刊予定 『プリンストン数学集成』ティモシー・ガワーズ総編集,砂田利一ほか監訳(朝倉書店) B5判1200頁,予価本体25,000円+税. テレンス・タオ,マイケル・アティヤ,アラン・コンヌほか百名超の豪華執筆陣による,「読める」数学総合事典。
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2015, 8月 24
高いがほしい.
2015-09-07 新刊発売: 2015-09-18 江口徹, 菅原祐二著『共形場理論』, 岩波書店¶
9/18新刊予定『共形場理論』江口徹・菅原祐二著 6156円(岩波書店) 素粒子の統一理論として注目される超弦理論や、統計力学の臨界現象、数理物理など多くの分野で重要な役割を演じる共形場理論。その基礎から先端の研究までを紹介。新しいムーンシャイン現象にも触れる
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2015, 8月 15
ほしい. とりあえずメモだ.
2015-09-15 読書メモ: 『数学セミナー 2015-09 号』面白記事メモ: 早く読みたい¶
月刊誌『数学セミナー』最新号の、銅鏡における同位体分析のハナシ、キレッキレ。(はあと)
— ほしくずっ (@s_hskz) 2015, 8月 24
月刊誌『数学セミナー』最新号の、「エレガントな解答求む」、なぜハノイの塔に、2進と3進のグレイコードのハナシをかまさないのかなあと思ったけど、全然関係ないのかもしれないし。
— ほしくずっ (@s_hskz) 2015, 8月 24
言語学クラスタの皆様におかれましては、読み物として、月刊誌『数学セミナー』最新号の、数詞と序数詞との、比較言語学的な、歴史言語学的なお話が、すんげー面白いと思います。
— ほしくずっ (@s_hskz) 2015, 8月 24
買うだけ買ったはいいが, まともに読めていない. さっさと読もう.
2015-09-16 読書メモ: 【セシルマクビーと学研がコラボ! “史上最強にかわいい”参考書登場】ということで中学生 (女子) 向け参考書が出たようなので買ってみる¶
お堅い参考書なんて時代遅れ!? セシルマクビーと学研がコラボ! “史上最強にかわいい”参考書登場というニュースを観測した.
出発点は、「かわいい!と思ってくれれば、勉強のモチベーションも絶対アップするはず」。そんな思いから、女の子の気持ちを知る若い女性編集者が集まり、細部までこだわりぬいた。“史上最強!のかわいさ”が実現した参考書になっている。
実際のところはどうなのだろうか. もちろんこれで喜ぶ層はいるのだとは思う.
もちろん、かわいいだけでなく参考書としての実用性も◎。各学年の5教科の要点が1冊にまとまっているので、日常学習や定期テスト対策に1年間ずっと使える。学習ページには、楽しくおしゃれに勉強できる工夫も盛りだくさん! SNS風のチャットを読みながら学習できるページや、ガールズライフと学習内容を関連付けたコラムページなど、一度読み始めたら止まらなくなっちゃうかも!?
とりあえず中一の分を買ってみよう.
2015-09-20 betweenで両端を含むかどうかは自明ではなく, 不安ならinclusiveを追加すべきという話¶
【緩募】英語に詳しい人 odd numbers between 3 and 10 と書いた時、これに 3 が含まれるのかどうか。 わからなくて割といま号泣している
— 相転移P(市民) (@phasetr) 2015, 8月 24
気になったので調べてみたら、ふつうinclusiveだけど between x and y, inclusive. って書いてないと保証はない。明示しろハゲってことらしい https://t.co/c7lgLiTuk8
— がちゃぴん先生 (@kosaki55tea) 2015, 8月 24
これはEven and Odd Numbers: 偶数と奇数 英語で学ぶ算数という記事を書いていたときに 気になったことだ. 英語, もっときちんと使えるようになりたい. 数学・物理をやる上で大切な道具だ.
2015-09-21 小倉博行著, 『ラテン語とギリシア語を同時に学ぶ』¶
【妄想書店】 新刊『ラテン語とギリシア語を同時に学ぶ』ができてきました!今週末にはこんな感じで並びます!! (駝) http://t.co/r3X7fBSHZypic.twitter.com/wZtamyvayW
— 白水社・語学書編集部 (@hakusuisha_G) 2015, 8月 24
何これ面白そう. めっちゃほしい.
2015-10-04 読書メモ: アレクサンダー『無限小』¶
アレクサンダーぎ無限䰏』(岩波書店)が数日後に発売されるそうだ。値段がちょっと高い。4000円だそうだ。アメリカではベストセラーになったスゴイ杬だが、買ってくヌとはちょっと言い難いなあ〃研究費で買える亻は買って下さい、位は言っても良いだろう。
— 足立恒雄 (@q_n_adachi) 2015, 8月 26
何となくほしい. とりあえずメモ.
2015-10-05 記事紹介: 中室牧子『教育の経済学』の書評的な記事を見かけたので¶
先日, 読みたい本的に記事を書いたが, 中室牧子『教育の経済学』の記事があった.
まだ読めていないのでとりあえずメモ.
- 子どもをほめるときには、もともとの能力てなく、具体的に達成した内容を挙げることが重要
これはよく聞く. 気をつけたい.
- 平均的な学力の高い友だちの中にいると、自分の学力にもプラスの影響がある
- 学力が優秀な子どもに影響を受けるのは、上位層だけ。「学力の高い友だちといさえすればよい」は間違い
実に殺伐としている.
- 人的資本への投資は子どもが小さいうちに行うべき
- 幼児教育への財政支出は、社会全体でみても割りのよい投資
これも殺伐感漂う.
- 少人数学級には効果があるが、費用対効果は低い
- 教育を受けることの経済学的な価値に対する誤った思い込みを正すだけで、子どもの学力はあがる
少人数学級は前にも何か記事を引用した記憶がある. 後者, どういうことなのか気になるので本読みたい気持ちが高まる.
面白そう. 教育学, 本当にきちんと勉強してみたい. お金と時間がほしい.
2015-10-13 記事紹介: 菅原裕輝『科学哲学を専門的に学びたい高校生・大学生のために(随時更新)』¶
菅原裕輝さんによる科学哲学を専門的に学びたい高校生・大学生のために(随時更新)というページがあったので. いくつか引用しておきたい.
・〈科学哲学を専門的に学ぶ〉ことを,ここでは以下の三つの能力が身につくことを指すものとする(筆者の個人的な意見であり,共通認識ではない).
(1)サーヴェイができる ・自分が関心を持つ問題に関する基礎的文献・基礎資料を集め,読み,これまでにどのような議論がなされてきたかを知り,これまでになされた議論の長所・短所をそれぞれ整理し,残された問題を整理できるようになる.
(2)残された問題をシンプルに再定式化できる ・どのような前提のもとで何が争点となっているかを明確に示せるようになる.
(3)再定式化された問題に新たな視座を与えられる ・再定式化された問題がもつ可能な論理空間を考究したり,再定式化された問題の時間軸や射程の範囲をずらすことにより,既存の問題枠組みでは想定されていない範囲に焦点を当て新規性を生み出せるようになる(新規性のある学術論文が書けるようになる).
これ以外にも次のような項目がある.
- 科学哲学初学者のための文献リスト
- 科学哲学(者)とは
- 日本国内にある科学哲学研究室のリスト
- 大学院修士課程への進学・受験希望者が行うべき7つのこと
- 大学院博士課程に進学するうえでの注意点
- 付記:「科学哲学を専門的に学びたい高校生・大学生のために」という記事を作成した理由
次の記述が不穏で面白かった.
訪問後,研究室の院生の就職状況・研究状況を調査する.院生に直接訊くと不穏な空気になる恐れがあるため,お会いした院生やODの名前を控えておき,訪問後に調査(google検索)する.もちろん,率直に話してくれそうな院生には直接訊いてみると良い.研究室の院生がどれだけ真剣に科学哲学の研究をしているのかを見極めることが大事.
あと次の最後の記述がとても大事だと思っている.
当時のわたしのように,科学哲学を専門的に学びたいが,何をどうすれば分からないという方のために,このブログ記事を作成した.そういった方が日本にいるのかは,正直わからない.もしそういった方がいるのだとすれば嬉しいし,このブログ記事がそういった方の役に少しでも立つことができるのであれば,もっと嬉しい.
私も頑張ろう.
2015-10-14 文献紹介: 楊静芳『中日昔話における異類婚姻譚の比較研究』¶
これとか凄いよね…中日昔話における異類婚姻譚の比較研究 http://t.co/6dxG3goifV
— Sasaki Mitsuya (@Mitchara) 2015, 9月 4
200ページもある.
2015-11-01 ツイート・記事紹介: 『お金をかけずに英語を学ぶ。Kindleで無料で読める洋書77選』¶
ミシシッピーはおもしろそう。お金をかけずに英語を学ぶ。Kindleで無料で読める洋書77選 http://t.co/nsPZgRbqv5
— Hiroki Fukagawa (@hiroki_f) 2015, 9月 13
ガリバー旅行記とか一度きちんと読んでみたい.
2015-11-05 記事紹介: 『東大理?3兄弟ママが話題だけど、京大3兄弟の強烈オヤジの方がずっとおもしろい件』¶
東大理?3兄弟ママが話題だけど、京大3兄弟の強烈オヤジの方がずっとおもしろい件という記事を見かけたので. ちょっと引用する.
それよりも、私が最近興味深く読んで、大変共感したのは、『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』だ。これは、ほんとうに強烈で、子どもが「高校を辞めたい」と言ったら、オヤジが「いいよ」と言って簡単に了承してしまう。そして、子どもは自分で大検を取って塾にも行かず独学て勉強し、京大に合格する、しかも3兄弟ともにだ。その秘訣は、強烈なオヤジが、子どもたちを引き連れて本屋に行き、大量の学習マンガや本を購入して読ませたり、教育によい映画やドキュメンタリーを録画してみせて、それらの感想を言わせたりする独特の家庭教育にあった。
この本, 読んでみたい.
2015-11-07 記事・書籍紹介: 『プログラマ向けに書かれた「Soft Skills」』技術以外のほとんどのスキルがここで網羅されているという¶
"プログラマとして生きていくための技術以外のほとんどのスキルがここで網羅されていると言っても過言ではない。" / “プログラマ向けに書かれた「Soft Skills」という本がすごいという話 - サンフランシスコではたらくソフトウ…” http://t.co/PnQXE7f0Tf
— 結城浩 (@hyuki) 2015, 9月 21
元記事からいくつか引用する.
Soft Skills 。alc.co.jp によればソフトスキルは「対人的な交渉・指導・意思疎通などをうまく行える能力(または知恵)」のことらしい。そのタイトルからも分かる通り、プログラマ向けに書かれた本だがほとんど技術の話は書かれていない。
あとこれ.
読むたびに「え?そんな内容までカバーするの?」と驚かされるばかりである。以下カバーされている領域の一部を紹介する。
- 雇用形態の選択肢
- 会社で出世する
- リモートではたらく方法
- テクノロジーを宗教的にあつかうな
- コード書きのためのマーケティング
- ばかに見えるのを怖がるな
- メンターを探す
- 燃えつき(burnout) は治せる
- hard work の価値とそれを避けてしまう理由
- 入社時給与交渉
- 不動産投資
- きちんと引退プランを理解していますか?
- 彼氏・彼女の戦略的な見つけ方
ちょっと読んでみたい.
2015-11-08 読書リスト: 本橋 永至『Rで学ぶ統計データ分析 マーケティングデータを分析しながら正しい理論と分析力を身につける』¶
Rで学ぶ統計データ分析 マーケティングデータを分析しながら正しい理論と分析力を身につける http://t.co/K9SMfsm02A
— iSem´∀`* (@AzuleneS0_S2) 2015, 9月 25
数学のプログラミング関係と統計関係, きちんとやってみたいので参考にしたい.
2015-11-20 読書リスト: 山崎雅人『場の理論の構造と幾何』¶
.@196884さんに著書をもらったのでざっと眺めた。途中の詳細も勉強になるけれど、第1章は(僕らが最近やっているが、ぺスキンとかにはのってない)モダンな場の理論の思想がよくまとまっていて、そこだけをとってもお勧めできます。 pic.twitter.com/4W9jSeB3jd
— o-o⇒o-o-o (@yujitach) 2015, 9月 24
まあ僕はあの内容の本を日本語で書くのは時間のムダだと思うので、しませんが。非日本語話者があの本を読めないのは、勿体無いよ。ていうか、あれぐらいの内容に興味のある人は英語読め。
— o-o⇒o-o-o (@yujitach) 2015, 9月 24
幾何はともかく場の理論部分を読んでみたい. とりあえずメモ.
2015-11-21 向井湘吾『お任せ! 数学屋さん』¶
電車で女子中学生か高校生が読んでいた.
レビューもいいのでちょっと読んでみたい.
2015-11-26 山下純一『グロタンディーク巡礼 数学思想の未来史』現代数学社¶
Grothendieck関係.
好評発売中‼ 『グロタンディーク巡礼 数学思想の未来史』山下純一 6264円(現代数学社) 数学そのものだけでなく、「神秘的な飛躍を可能」にする「グロタンディークの深淵」を探るための旅と試行錯誤の記録 Ⅰ時が煌めき夢が甦る Ⅱ萌芽と仄暗い無垢の中へ Ⅲ思い知るべき人はなくとも
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2015, 5月 19
他に『収穫と蒔いた種と』などGrothendieck関係の本をきちんと読んでみたい. 本が積読でどんどんたまっていく.
2015-12-06 ツイート・書籍紹介: 後藤健二『エイズの村に生まれて―命をつなぐ16歳の母・ナターシャ』(汐文社・2007)¶
古いツイート記録から発掘した. とりあえずメモ.
こんな時に言うのもどうかと思っていたので黙っていたが、政治厨がゴミクズ&蛆虫レベルの低劣な言辞を弄しているから敢えて言う。後藤健二さんの『エイズの村に生まれて―命をつなぐ16歳の母・ナターシャ』(汐文社・2007)は非常に良い本である。エストニアの、ある「エイズ村」のルポだ。
— 岸本元 (@bowwowolf) 2015, 1月 24
森皆ねじ子『人が病気で死ぬワケを考えてみた』¶
今日衝動買いしたこの本が面白い。一般人でも理解出来ると思うからオススメ pic.twitter.com/KyCitWoLo6
— 青木瑠璃子の脚 (@KaguraAkikosan) 2014, 12月 27
これか.
医師で漫画家とのことだった. マンガというか, 絵が描けるのは強いなと改めて思う. 最近またお絵描きの練習をはじめたが, 続けるモチベーションがまた増えた.
なかみ検索も見たが, こんな感じでもきちんと本になるというのも貴重な示唆だった.
2016-01-14 新刊・読書メモ:中岡宏行『圏論の技法(仮題)アーベル圏と三角圏でのホモロジー代数』¶
12月上旬新刊 『圏論の技法(仮題)アーベル圏と三角圏でのホモロジー代数』中岡宏行著4320円(日本評論社) 今広い分野で注目される圏論の入門書。圏の定義から導来圏までの基本事項を一貫して初学者を意識しながら懇切に解説する。 【圏論祭】開催中 『圏論の歩き方』好評発売中
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2015, 11月 3
ほしい.
2016-01-20 読書メモ:見尾三保子『子どもの学習にいちばん大切なこと』¶
掛算おすすめの見尾さんの本はタイトルのせいで損をしていると思う。副題の『子どもの学習にいちばん大切なこと 』の方が内容をうまく要約している。かなりの頁が算数と数学を理解するとはどういうことかの解説に費やされている。おすすめ! http://t.co/SmnPBfty7X
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 5月 24
掛算おすすめの見尾さんの本の内容をインターネットを眺めるだけで知りたい人は以下の連ツイを参照して下さい。 https://t.co/kRt0NURtFI
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 5月 24
というわけで連続ツイート紹介.
前7RTsに見尾三保子さんの著書 http://t.co/KfGLpSyntKの内容は直接に関係がある。この本のタイトルがひどすぎ。副題の『子どもの学習にいちばん大切なこと 』は内容を適切に表現している。この本のかなりの部分が数学を理解することとは何かについて費やされている。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 2月 5
続き。見尾三保子さんの本のサンプル画像 pic.twitter.com/N1NaVRoi pic.twitter.com/Wh6NTP2h ここに登場するA君のように理解するスタイルを身に付けてしまえば本当に楽になると思う。「あらゆる問題の解き方を習って覚えよう」は絶対に駄目。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 2月 5
続き。見尾三保子さんの本ではとても怖い話も紹介されていて、 http://t.co/bRq3WeeNWCで読める。これマジに怖い話。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 2月 5
続き。見尾三保子さんの本 http://t.co/KfGLpSyntKは、タイトルには問題があるのですが、「理解するとはどういうことか」について非常にうまく説明していると思います。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 2月 5
続き。さらに付け加えるべきこと。実は「与えられた問題を解く」という勉強法だけだとたどり着けない領域が巨大。自分の足で散策してみて初めて身に付くことは実に多い。どんな分野であっても、理解しようと思ったら、その分野の世界を自分の足で散策してみることが必要。最初は必ず失敗する。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 2月 5
この本, 買って読んでみよう.
2016-02-07 『あの文豪の長女も書いていたボーイズラブ『古典BL小説集』』¶
あの文豪の長女も書いていたボーイズラブ『古典BL小説集』という記事があったので. メモとしていくつか引用.
これまでに『ゲイ短編小説集』、『レズビアン短編小説集』という、異色のアンソロジーを出してきた平凡社ライブラリーが、このジャンルを見逃すはずはありませんでした。
不勉強でそんなのがあったとは知らなかった.
ねじれた三角関係は、同性愛ではなく彼ら男性のマッチョな部分こそが、自然を逸脱しているのではないか?という疑問を炙り出していきます。
「自然」の定義が気になる.
大気圏を越えたBL
女性はもう存在しない。 太陽の膨張によって、地球は滅亡。残された人類は、地球と似た惑星を探しに宇宙を旅していた探検隊の16名の男たち。 ただし、人類存続の道はありました。それは、男性同士で子供を産むこと。 滞在中のプロキシマ星の技術でなら、実現不可能な話ではなかったのですがー。
マリオン・ジマー・ブラッドリーとジョン・ジェイ・ウェルズ(男性名だけど実は女性)の共作によるSF小説「もうひとつのイヴ物語」(1963年作)は、究極の選択を迫られた男たちの姿を通じて、読者の倫理観を揺さぶります。 でもそれは、BL小説としての読みどころとはまた別の話。
これ気になる.
この物語のBL的な読みどころとは、一人の男と異星人の友情の行方にあるのです。 男性同士の生殖を肯定できずに苦悩する、隊長のエヴェレット。 そして、友である地球人を生き残らせるために力を尽くす、星に住む種族の唯一の生き残りである異星人ファニュ。 時に衝突し、時に歩み寄りながら互いを理解しようとする二人。 最後にエヴェレットがファニュへ贈る言葉は、まさにBLの神髄といえる名台詞!
読んでみたい.
2016-02-08 記事紹介: 『蚊はなぜ雨に打たれても死なないのか?』¶
そもそもこの発想がなかった. 自分の発想力の貧困さに泣けてくる.
これ, どんな分野にあたるのだろうと思ったが, 『HighWire Press-hosted articles citing this article』の 文献や引用文献見る限りJ. Exp. Biol.やIntegr. Comp. Biol.だし, 実験生物学(?)とか計算生物学(?)か.
蚊にとって雨粒は自分の体と比べて最大で50倍も大きな物体であり、雨に打たれることは、人間であれば大型バスにはね飛ばされるほどの衝撃に相当します。ではなぜ、「バスが次々と降ってくる」状況下でも蚊は死ぬことがないのかについて、アメリカの研究者が実験で明らかにしています。
きちんと実験やっているのか.
蚊が雨の中を飛行する場合、25秒に1回の割合で雨粒にぶつかる可能性があります。自分の体積の50倍もの雨粒が秒速9メートル(時速32.4キロメートル)でぶつかるという状況は、人間が大型バスにはね飛ばされることに相当するため、その中に身を置けば数分ともたずに死んでしまうのが当たり前の危険が雨にはあるというわけです。
確かになかなか衝撃的なデータではある.
しかし、昆虫は羽に細かな毛があり、水をはじく性質(疎水性)の体を持っています。
このため水が直撃してもまとわりつくことなくはじかれます。
低速度の水滴なら……
水滴は、単にはじき飛ばされます。
本当か, という感じがある. 実験というか動画もあるのでまあそうなのだろうが. きちんと元の文献読んでいないのだが, 低速度というのはどのくらいなのだろう.
雨の中では2つのタイプの衝突があります。
一つは水滴が当たるときに昆虫が回転するタイプの衝突。
もう一つは、昆虫を下方向に落下させるタイプの衝突。
いずれのタイプの衝突にもかかわらず、蚊は素早く体勢を取り戻して飛行を続けることが可能です。
力学の基礎だが, こういう剛体系の話, 勉強不足で本当によくわからない.
しかし、体重の軽い蚊の場合、衝撃によって運動量はほとんど伝わりません。
この辺がよくわからない.
これは衝突時の速度変化を計算する簡単なモデル。水滴の質量(m1)に対して蚊の質量(m2)があまりにも小さいときは、衝突後、一体になっている状態での速度変化は無視できるほどのレベルになるはず。
論文読めばわかるのだろうが, ここで後者の【一体になっている状態での速度変化】, 水滴と蚊のどちらを指しているのかわからない.
あまりにも軽い物体には接触しているときに大きな力は伝わらず、水滴が変形することもありません。
これもそう. どちらに大きな力が伝わらないのか, 両方なのかとかよくわからないし, その影響もぱっと直観でわからない.
そして、蚊を含む昆虫は外骨格を持っているので水滴の衝突によっても体が変形せずに数十ミリ秒という短い時間で水滴から逃れています。
外骨格の強度と水滴が伝える衝撃について詳しく調べたくなる. あと数十 ms というのが蚊から見て短い時間なのかどうかよくわからない.
大きな運動量の変化を受けずに短い時間で水滴をやりすごすことで、蚊は雨の中でも飛べるというわけです。
速度変化といったり運動量の変化といったり, どちらかに統一してほしい.
こういう適当な日本語の文章を見ると, やはり原論文読むしかないのかと途方に暮れる. ある種のビジネスチャンスはあるのだろうとも思いはするが.
2016-02-09 『マーチン・ガードナーの数学ゲーム』別冊日経サイエンス176¶
【書籍:マーチン・ガードナーの数学ゲーム】SCIENTIFIC AMERICANに四半世紀にわたって連載され多くのファンを集めた数学ゲーム。箱詰めパズルやライフゲームなど17編のほか,マーチン・ガードナー氏へのインタビューを収録。 — 数学問題bot (@mathematics_bot) 2015, 5月 2
これか.
読書リストに突っ込んでおこう.
2016-02-18 読書リスト: Mahajan, Street fighting mathematics, The Art of Insight in Science and Engineering¶
元のツイートを見つけられなくなってしまったが 面白そうな本があったので.
- https://mitpress.mit.edu/index.php?q=books/street-fighting-mathematics
- https://mitpress.mit.edu/books/art-insight-science-and-engineering
読みたい本がどんどん溜まっていく. Street fighting mathematicsとか格好よすぎるし私もやりたい.
2016-02-20 室井和男『バビロニアの数学』¶
何だこれ.
シュメールとアッカドについてなんであれ書かれた日本語の著作において、これ以上に優れた著作を僕は知らない。明日のワークショップで紹介しよう。 バビロニアの数学 室井 和男 https://t.co/p2ad3wfKi4via @amazonJP
— タカイケイスケ (@ninshatapada) 2015, 11月 29
とても気になる.
2016-02-21 プログラミング: フリーソフトで遊ぶ数学・物理¶
この辺もいろいろやりたいのでとりあえずメモ.
これを Mathematica と Illustrator, LaTeXiT でやっている.2次元の簡単な図なら,フリーソフトでできるってことだ. http://t.co/XC6xg0JskX
— Hiroyasu Satoh (@shiroyasu_) 2015, 1月 24
OS X Yosemite で試し.pstoedit と pdf2svg は MacPorts でインストール.Inkscape から TeX Text を呼び出すと,エラーが起こる.Tcl 関係か? (取り敢えず保留)
— Hiroyasu Satoh (@shiroyasu_) 2015, 1月 24
時間が無限にほしい.
2016-02-22 塚本浩司『コーヒーカップとスプーンの接触音の音程変化 Variation in Tones of Sound from the Mug Hit by a Spoon』¶
楽しそう.
昔甥っ子と盛り上がった「インスタントコーヒー混ぜてるとスプーンとカップがぶつかる音がどんどん高くなる不思議」を急に思い出しぐぐったら何と論文が!アイツが犯人だったかぁぁぁぁ! https://t.co/M7chjEOWPp https://t.co/l07uLpluAT
— P2←魔女おじさん (@pletwobine) 2015, 11月 21
あとで読んでメルマガ書こう. とりあえずメモだ.
2016-03-21 Jacques Hadamard『数学における発明の心理』¶
十分ここで思い出されるはアダマールが『数学における発明の心理』で指摘している「印字視覚型」の思考型を持つ人達の存在。そのような人達はまず最初に「印刷された文字」が頭の中に思い浮かぶのだそうだ! http://t.co/2Ri0DSyELo
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2014, 1月 15
掛算最近、新情報発掘でお世話になることが多い OokuboTactさんがアダマール著『数学における発明の心理』(愛読書の一つ)の私による紹介文をRTしてくださっていたので紹介。 https://t.co/85CtPl0zfg https://t.co/hZADOxNcnZ
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2015, 12月 24
掛算算数・数学教育に興味を持っている人達は「人間の思考の仕方」にも強く興味を持っている場合が多いと思う。そういう人達にはJ.アダマール著『数学における発明の心理』はおすすめの一冊。非常に面白く書かれています。 — 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2015, 12月 24
これか.
とりあえずメモしておく.
書泉グランデMATHのツイートから2014数学書年間ベスト10¶
【書泉グランデ2014数学書年間ベスト10】 ドゥルルルルルル~♪ ジャン♪ 1位『わかりやすい類体論と虚数乗法入門 上』繭野孝和(天の川教育文化研究所) 2位『岡潔 多変数関数論の建設』大沢 健夫(現代数学社) 3位『ロボットは東大に入れるか』新井紀子(イーストプレス)
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2014, 12月 28
大沢先生のは読んだ. $\bar{\partial}$ はもっとやりたいが, 優先度低めに設定している.
それ以上に数学に限らず専門書で「わかりやすい」とかいうある種詐欺的なタイトルどうにかならないだろうか. 勝負所そこか?
2016-04-13 ツイート・読書メモ: 香西秀信『論より詭弁 反論理的思考のすすめ』 (光文社新書)¶
ところで今日はこれを読了したけどめちゃ面白かった(嫌いな人も多そうとは思ったけど).数学するとき使ってる「純粋培養の」論理を自分のなかで相対化する助けにもなった./論より詭弁 反論理的思考のすすめ (光文社新書) 香西 秀信 https://t.co/st2PaokULO
— のらんぶるん (@nolimbre) 2016, 1月 2
的確なおすすめツイートをする自信はないけど題名が過激なのでいちおう注意しておくと,「論理的思考は不要」という本ではなく,既に論理的思考の訓練を積んだ人に向けて,そのような人が陥りがちな「非論理的」誤りや論理的議論の弱点を説く「『いわゆる論理的思考』をよりよく知る本」とも見られる.
— のらんぶるん (@nolimbre) 2016, 1月 2
著者の文章も分かりやすくジョーク(?)も効いてて,いかにも「新書」という感じでよい.ただ同じ著者の本を何冊も続けて読むとその<s>性格の悪さに</s>あまり読み慣れない内容に辟易しそう.あと(繰り返しになるけど)内容面・文体面ともに受け付けない人も多そう.
— のらんぶるん (@nolimbre) 2016, 1月 2
これか.
最後の部分が気になるので 要立ち読みチェックだ. とりあえずはメモ.
2016-05-03 版権が切れていてDLできるオーナメントハンドブック¶
絵を描く人もそうでない人も知っていて損は無いと思うオーナメントハンドブック。版権切れてるのでDLできるんですわ https://t.co/1ODfED1PHLpic.twitter.com/qjOg4JGPPw
— 恐れを知らない山羊 (@brad_stane) 2016, 1月 5
よくわからないがとりあえずメモ.
2016-05-07 読書メモ: 瀬山士郎『読む数学 数列の不思議』角川ソフィア文庫¶
10月25日新刊予定 『読む数学 数列の不思議』瀬山士郎 821円(角川ソフィア文庫) 抽象的な世界に潜む驚きの法則性。直感を刺激する画期的な「読む」入門書 倍々数列等の等比数列、黄金比とも密接な関係をもつフィボナッチ数列ほか、個性溢れる数列を多数紹介。
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2014, 10月 5
Fibonacciはもう有名すぎてアレだが, それでも実際のいろいろな応用というか展開はよく知らない. 気にはなるのでメモ.
2016-05-17 鈴木宏昭『教養としての認知科学』東京大学出版会¶
【まもなく刊行】鈴木宏昭『教養としての認知科学』 https://t.co/pGvRgmXvX9「情報」という共通言語のもとに研究を進める認知科学が明らかにしてきた,知性の意外なまでの脆さ・儚さと,それを補って余りある環境との相互作用を,記憶・思考を中心に身近なテーマから紹介.
— 東京大学出版会 (@UT_Press) 2016, 1月 15
何となく気になるのでとりあえずメモ.
2016-05-18 マスオ『高校数学の美しい物語』SBクリエイティブ¶
新刊発売中『高校数学の美しい物語』マスオ/著 定価1944円 (SBクリエイティブ) 定番公式や定理の意外な証明や利用法から、数学マニアも聞いたことがない不思議な定理の紹介まで、美しく感動的な数学の世界が“高校数学(数Ⅱまで)の知識だけ”でたっぷり楽しめる本。
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2016, 1月 14
これか. ちょっと気になる. とりあえずメモ.
2016-05-20 杉原厚吉『だまし絵と線形代数』シリーズ・現象を解明する数学¶
作者の杉原先生はこんな本も出している だまし絵と線形代数 (シリーズ・現象を解明する数学) 杉原 厚吉 via @amazonJP
— 非線形 (@_mod_p) 2014, 9月 27
こういう場合の常としてとりあえずはメモしておく.
2016-06-12 読書メモ: 高瀬正仁『高木貞治とその時代 西欧近代の数学と日本』¶
高瀬正仁『高木貞治とその時代 西欧近代の数学と日本』 http://t.co/aS4sqGyrEc… を 8 月中旬に刊行しました. これまでにいくつもの数学者の評伝を手がけてこられた高瀬先生による, 高木貞治と近代日本の数学のあゆみを描いた評伝です.
— 東京大学出版会 (@UT_Press) 2014, 9 月 11
ほしい. メモがてらページから引用しておこう.
高木貞治とその時代 西欧近代の数学と日本 高瀬 正仁 ISBN978-4-13-061310-1, 発売日:2014 年 08 月下旬, 判型:四六, 440 頁
内容紹介
世界的数学者高木貞治. 彼はどのような道のりをたどり, 類体論をはじめとする偉大な業績や数多くの名著を残したのか--近世から近代へと学問がダイナミックに変遷した時代を懸命に生きた, 高木と彼をめぐる人びとの姿を鮮やかに描き出す.
主要目次
プロローグ-日本の近代の星の時間に寄せる
第一章 学制の変遷とともに 一 菊池大麓の洋行 二 和算から洋算へ--高久守静の回想より 三 藤澤利喜太郎の帰朝 四 高木貞治と一色学校
第二章 西欧近代の数学を学ぶ 一 三高時代 二 帝国大学に学ぶ 三 藤澤セミナリー
第三章 関口開と石川県加賀の数学 一 洋算との邂逅 二 衍象舎の人々
第四章 西田幾多郎の青春
第五章 青春の夢を追って 一 クロネッカーの青春の夢 二 ドイツ留学 三 類体の理論 四 過渡期の数学
第六章 「考へ方」への道--藤森良蔵の遺産 一 「考ヘ方研究社」の創設まで 二 『高数研究』と日土大学 三 再生と終焉
附録 エピローグ-高木貞治をめぐる人びと 年譜 黎明期の日本と高木貞治の生涯
2016-06-19 読書メモ: 加藤明『「もっと読みたい」と思わせる文章を書く』¶
https://t.co/I8IJbiy4zC文章術の本はたいていの場合、いちばん肝心なその本の地の文章が気の毒なぐらい面白くなかったりするのだけど、この本は抜粋だけ読んでも著者の並々ならぬ表現力がずしっと伝わってくる。やばい、このひと本物だ。
— OreKanegon (@hachi8833) 2015, 12月 24
これか.
参考にしよう.
2016-07-04 読書メモ: 飯間浩明『伝わる文章の書き方教室 書き換えトレーニング10講』¶
ちくまプリマー新書から出てる飯間浩明『伝わる文章の書き方教室 書き換えトレーニング10講』というのを学生さまにどうしても読んで欲しくて宣伝頑張ったのだけどあまりアピールしなかったみたいで残念
— 長門 (@nag_ato) 2016, 2月 15
これか.
長門さんのお勧めだし気になる. ちくまプリマーのシリーズ自体気になる. 数学・物理方面でもちくまはけっこう頑張っている感がある. 中高生に勧められる本とかも見繕っていきたい.
2016-07-06 読書メモ: 柳沼重剛『ギリシア・ローマ名言集』¶
ギリシア人から皆さんにアドバイスです pic.twitter.com/TMinj2kuFB
— なるべく安くて立派 (@knugw) 2016, 2月 15
これは岩波文庫の『ギリシア・ローマ名言集』という薄くて時々見るのに面白い本です Kindle版も出ていますのでよかったらどうぞ https://t.co/tnYDuaTTY4
— なるべく安くて立派 (@knugw) 2016, 2月 15
面白そう. とりあえずメモ.
2016-07-09 読書メモ: 向井泰蔵『記臆の歌附き幾何学. 上巻』瓊林館¶
初等幾何に五七調の歌をつけて親しみやすくしよう!という明治18年出版の面白い本を見つけた。「點は唯だ位置(ところ)はあれどうちたえて(※)幅も厚さも長さだになし」(※うちたえて=全然) https://t.co/rt203Luc2Npic.twitter.com/L3YIgMJhIK
— 石塚 (@Yusuke_Ishizuka) 2016, 2月 5
明治18年・・・つまり131年前!(第一次伊藤博文内閣が成立した年らしい)
— 石塚 (@Yusuke_Ishizuka) 2016, 2月 5
これを幼少の頃より論語のように音読すれば幾何学の素養が身に付く(?)かもしれない
— 石塚 (@Yusuke_Ishizuka) 2016, 2月 5
何これほしい. こういうのこそ青空文庫とかに入れてほしい. むしろ現代版を作れという話かもしれない. 頑張りたい.
2016-09-01 上野健爾『小平邦彦が拓いた数学』¶
Amazonを巡回していたら見つけた.
2015/12に出たばかりなのにsusumukuniさんが速攻レビューをつけているし, これがまた面白そうで困る.
いろいろアレな気もするが引用しておこう.
今日の私たちは現代数学の整備された観点から小平先生の業績を教わることが多く、小平先生の論文集をもとにその研究の軌跡を学ぶことは、この分野の専門家である研究者を除いて殆ど無いのではなかろうか。本書はこのアプローチを採る非常に貴重で有益な書である。本書を通読して印象に残った事を以下に感想として述べてみたい。
先ず、小平先生の数学研究におけるH.ワイルの影響の大きさだろう。スツルム・リューヴィル作用素の一般展開定理の密度行列の計算や『リーマン面の概念』の高次元化の研究はワイルの先駆的な業績が研究の起点であり、かつてやり残した分野で素晴らしい業績を挙げている小平先生にワイルが注目したのも当然と頷けると思う。また、本書から小平先生のヒルベルト空間論への造詣の深さを認識できる。スツルム・リューヴィル作用素や多様体の微分形式に作用するラプラス作用素(およびラプラス・ベルトラミ作用素)はともにヒルベルト空間における自己共役作用素であり、そのスペクトル分解や直交分解を活用して新理論を構築する小平先生の数学に、創世期の量子力学に精通した数理物理学者の姿を垣間見るのは評者だけではないと思う。
次に、数学研究における共同研究者あるいは有能なライバルの存在の重要性であろう。本書から小平先生の数学研究における「調和積分論」と「層のコホモロジー理論」の重要性を理解できるが、層とそのコホモロジー理論を勉強しようと誘ったのは、プリンストン高等研究所での同僚であり複素構造の変形理論の共同研究者にもなったスペンサーであった。1952年頃から学び始め、1953年の春ごろにその有用性を認識し、瞬く間に複素射影空間に埋め込めるコンパクトケーラー多様体を特徴付ける「埋め込み定理」という大定理を確立する小平先生の数学の進展の素晴らしさを読み取れる処に本書の大きな魅力がある。「私が夢見ることも出来なかった高みに到達した」とワイルが称える偉業であり、この業績は今日でも最大級の称賛に価すると思う。
この辺りで注目したいのは、複素直線束に係数を持つ微分形式に対し、∂-(ディーバー)作用素とその随伴作用素、更にそれらからラプラス・ベルトラミ作用素が定義でき、この場合にも直交分解定理が成立するという事実だろう。これからコンパクトケーラー多様体上の複素直線束に係数を持つ正則微分形式(の芽の層)に対するコホモロジーの消滅が、そのコホモロジー類に属する調和形式がゼロである事を示す事に帰着する。秋月・中野両先生により考案されたこの方法で消滅定理を証明するのが、今日では標準的なものと認識されている。小平先生の当時の目標が高次元の複素多様体における「リーマン・ロッホの定理」の確立(定式化と証明)にあったという事実も非常に興味深い。この定式化を最初に考案し、いち早く複素ベクトル束の特性類の重要性を認識したのは、(今日コホモロジーの双対定理で名高い)セールであったという事実から、「小平とスペンサー、カルタンとセール、などの超一流の数学者はやはり眼の付け処(層のコホモロジーの重要性の認識レベル)が違う」という事を改めて認識させられる。
最後に、本書の終盤で扱われている「複素多様体の変形理論」と「解析曲面の分類理論」でも、層のコホモロジーが基本的で重要な役割を演じている事が読み取れる。変形理論の小平・スペンサー写像にH1(M,Θm)が現れ、変形族の存在条件にH2(M,Θm)の消滅が現れる事、また解析曲面の双有理型不変量の殆ど全てが層のコホモロジー群の次元から定義できる事からこれは納得できると思う。上野先生は「小平の数学研究では調和積分論が大きな役割をもっており、理論の進展に欠かせない基本的な道具であったことが分かって頂けるであろう」と指摘されているが、「層のコホモロジー理論」も同等の重要性をもつ不可欠な道具であったことを指摘したいと思う。連接層のコホモロジーでは、本書でも触れられている様に、多変数関数論での岡、カルタン・セール、グラウエルトなどの重要な業績は外せないが、双書「大数学者の数学」の中の大沢健夫『岡潔 多変数関数論の建設』と好一対をなす本書に、「小平邦彦 調和積分論と層のコホモロジー理論による複素多様体論の建設」という副題を付けてみたくなるのは評者だけではないだろう。
学部の頃から小平先生と深谷先生に憧れがあるというのもあり, 幾何はもっと勉強したいが全くできていない.
この本, 本当に読みたい.
時間がたくさんほしい.
2016-09-25 岡本久『日常現象からの解析学』: 読書メモ¶
【新刊】『日常現象からの解析学』 (岡本 久 著)
— 近代科学社 (@kindaikagakusha) 2016年1月22日
本書は,主として日常現象に見られる非線形力学現象を数学の立場から解説し,その面白さを理解していただくことを目的とする.具体的に計算した例を多数用意した. https://t.co/IZByAeWLfE
岡本先生の放送大学講義テキスト「現象の数理」は、名著と言われながら長らく入手が困難だった。今回、装いを新たに出版されるようで、何より。https://t.co/KyYg2vfzdg
— NAGATA Yusaku (@follow_against) 2016年2月15日
これほしい. とりあえずはメモ.
2016-11-12 記事紹介: 機械翻訳と意味¶
機械翻訳(に限らず機械学習一般)って、要は「頻度の高いことを猿真似してる」だけ。だから「誕生日忘れて怒るのは、父より母」となってしまう。「頻度は低いけど論理的にそうならざるを得ない」ことはわからない。https://t.co/e6wEYpV1LL
— Eikyu Ito (@aq3948) 2016年11月12日
機械翻訳と意味
このことから導かれる結論は、「機械学習は、『時々間違えても、全体的に正答率が高ければOK』な分野にしか使えない(一度の間違いがクリティカルになるような分野には使えない)」ということ。そのような分野は、ところどころにあることはあるが、残念ながらそう多くはない。
— Eikyu Ito (@aq3948) 2016年11月12日
ブログが面白い. 引用しよう.
ここ最近、Google翻訳がリニューアルされ、性能が向上したという話が流れてきたので、さっそく試してみた。
ぼくが真っ先に試したのは、「母は、父が誕生日を忘れたので、怒っている。」だ。
なぜこの文が気にかかっていたかは後述する。
母は父が誕生日を忘れたので怒っている "My mother is angry because my father forgot her birthday."
ここからがすごい.
次にぼくは、「父」と「母」を入れ替え、「父は、母が誕生日を忘れたので、怒っている。」を翻訳してみた。 "My father is angry because my mother forgot her birthday."
「誕生日」を「母の誕生日」と解釈している。
最初の文でうまくいっていたのは偶然だった。
まずこういうことを考える視点がなかった.
さて、なぜぼくは「母は、父が誕生日を忘れたので、怒っている。」という文が気にかかっていたのか?
ぼくがこれを見たのはある語学教材の中でだったが、「誕生日」が「誰の」誕生日なのかを確定するために必要な知識・推論を考えると、なかなか複雑だということに気づいたからだ。
ここの分析がまた面白い. 全文引用に近くなってくるので省略する. ぜひ元のページを見てきてほしい.
そしてこう繋がる.
人工知能について語るとき、よく次のようなことが言われる。
「飛行機は空を飛べるが、鳥を模倣しているわけではない。機械で何かを実現するにあたって、生物がそれを行っているようにやる必要はない」
これは妥当だろうか?
ぼくはそう思う。
目的さえ達成できるのであれば、その手段はどうでもいい。
これに賛成する人は多いだろう。
では、機械翻訳・自動運転・コンピュータ将棋のそれぞれの目的は何だろうか?
中略.
では、機械翻訳の目的は何か。
それは、原語の文によって人間が伝えたかったことを、人間に伝わるように、目的言語に翻訳することだ。
ここで問題になるのが、目的の中に人間が入ってしまっているということだ。
そうである以上、正しい翻訳をするためには、人間の思考を何らかの形でエミュレートせざるを得ない。
コンピュータ流の思考を通すわけにはいかない。
例えば、「父」と「母」を入れ替えた「父は、母が誕生日を忘れたので、怒っている。」という文を機械が翻訳するにあたって、機械は「誕生日を忘れて怒るのは普通女だから、この誕生日は『母の誕生日』ってことでいいでしょ」と言うことはできない。
正解の判定基準は人間にあるからだ。
割と人間が介在がすることが少ないところにいるっぽいので, なかなかこういうこと自体考えない.
ツイートを見失ってしまったものの, 「感情を載せた表現がまるで駄目だからこんな翻訳は使いものにならない」 というコメントをしていた方も見かけた. これも私の考慮の範囲外だった.
特にコメントしようもないのだが, 心を動かされたので記録しておく.
指輪物語とホビットの冒険¶
指輪物語とホビットの冒険について質問致します。 https://t.co/Edw2ORrwRW
— カイザキ (@kizk_lov) 2016年9月25日
偶然見つけたのだけど、このベストアンサーを読んで翻訳の見方が変わった…プロってすごいなあという思いと同時にわたしが指輪物語(原作)の翻訳に感じてた違和感がなんかちょっとわかった。
私には真偽判定できないもののベストアンサーが面白かったのでいくつか引用.
原作者のトールキンはオックスフォードの言語学者でしたが、 他国の言葉に翻訳する時は、 英語の単語はその国の言葉に翻訳するように、と言いました。 『指輪物語』はかつての地球の神話時代の本で、それを自分が発見し、 英語に訳して出版した、という設定にしたからです。
そういうわけで「Sting」は英語なので、 当然日本語に訳さねばならないんです。「スティング」じゃダメなんです。
トールキンが言語学者だったというところから知らなかった.
一方ガンダルフの剣「グラムドリング」は トールキンが文法から何から全部完成させたシンダール語なので、 そのままにしてあります。(意味は「敵を砕くもの」)
文法から何から完成させたとか謎.
ちなみに「ガンダルフ」は「杖を持つエルフ」という意味です。
よく聞くガンダルフ, もしやここが発祥だったの.
また指輪物語のアラゴルンのあだ名「Strider(英語)」を 指輪物語では「馳夫(はせお)」、 映画では「韋駄天」もしくはそのまま「ストライダー」としていますが、 翻訳の原則に則ると、カタカナにしただけの「ストライダー」は問題外です。 また「Strider」は、もとはブリー村の村人たちが 得体の知れないアラゴルンを蔑んで付けた名前です。 従って韋駄天のような良い意味しかない名前もダメです。 それじゃ蔑んだことになりませんし褒めてるようにしか聞えません。 瀬田さんはわざとカッコ悪い名前にすることで その蔑みをうまく表現していると思います。
馳夫, 翻訳当時の感覚としてもださかったのだろうか. それがよくわからない.
映画の字幕をした戸田奈津子氏は字幕界のヌシのような人ですが、 原作を読んでないようで、指輪物語のことを全然分かっていません。
映画の翻訳のほうがまともじゃないと思います。 他にも例えばフロドが指輪を奪おうとするボロミアに言った言葉。 「You are not yourself!」 あなたはそんな人じゃない、とか、あなたは我を忘れている、 という感じでしょうか。これの字幕(戸田訳)↓ 「うそつき!」
びっくりしました。ひどすぎ。 ボロミアという人物を全く理解せず、前後の文脈だけで訳した結果です。 DVDでは改善されてましたが。
戸田奈津子, 本当に何なの.
ドラゴンナイト5がDMM GAMESで出る衝撃的展開¶
ドラゴンナイト5がまさかDMM GAMESで出るとは思わなかった.
- https://www.dmm.com/netgame/feature/dk5.html
衝撃のあまり記事化してしまうレベル. ドラゴンナイト4, やったことはないものの名作として名高い. そしてかなり難しいらしい.
ネタばれ的に知ってしまったため私はよくわからないが, ストーリーもかなり衝撃的らしく多くのユーザーが展開に衝撃を受けたという.
ドラゴンナイト4, リアルにやってみたかった. そんな遠い記憶を呼びさます初秋.
斎藤毅『線形代数の世界』が読みたい¶
さわらさんからのお役立ち情報を記録する.
線形代数の世界、普通に代数代数してるからあれで入門するのは骨折れそうだけど"そうだよね"を教えてくれる貴重なタイプな本な気はする
— さわら@三日目西 i -26a (@sawara0804) 2016年6月30日
@sawara0804それは読みたい。どんなところが良さげでしょうか
— 相転移P (@phasetr) 2016年6月30日
@phasetr個人的に思う特色を挙げると
— さわら@三日目西 i -26a (@sawara0804) 2016年6月30日
・行列の計算などにはある程度慣れている読者を想定している
・余談という形でかなり多くのコメントがつけてある(章末のまとめも端的にわかりやすい)
・図式を使った議論などを積極的に取り入れており、少し進んだ代数的な視点で見直しやすい
@phasetrといった所でしょうか
— さわら@三日目西 i -26a (@sawara0804) 2016年6月30日
演習問題のバリエーションも多く、商空間等の躓きやすい部分もすっきりわかりやすいのも魅力です
集合・位相の本が面白かったのでかなり期待している. 買ってみるか.
『カオスとアクシデントを操る数学―難解なテーマがサラリとわかるガイドブック』: 読書リスト¶
該当ツイートを忘れてしまったのだが, 『カオスとアクシデントを操る数学―難解なテーマがサラリとわかるガイドブック』という本の話を見かけた.
本としてはこれだ.
Amazonにあった内容から引用.
あの手この手で学生に数学を教え込む達人二人が書き上げたイラスト満載で画期的にわかりやすい数学ガイドブック。無限集合、トポロジー…現代数学の入門にも最適。
面白そうだし図も満載らしいから参考に読んでみたい.
飯高茂 「数学の研究をはじめよう(Ⅰ)」 現代数学社: 読書リスト¶
おはようございmath!今月発売された書籍「数学の研究をはじめよう(Ⅰ)」(現代数学社)をご紹介!飯高茂先生が書かれた、数学という奥深く先の見えない世界に引きずり込まれる一冊。 pic.twitter.com/dbXgZK0Kkn
— 実用数学技能検定(数学検定・算数検定) (@sugaku_net) 2016年6月14日
これか. ほしい. 買おう.
David Ruelle『数学者のアタマの中』: 読書リスト¶
書泉グランデ4階【数学者 宮岡礼子先生の本棚フェア】開催中
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2016年6月30日
『数学者のアタマの中』D.ルエール著 富永星/訳2376円(岩波書店)
数式は人間のアタマのなかの創造物。しかし現実世界をうまく記述できるのはなぜか。数学的発想への回答。 pic.twitter.com/b8XdFO9NF5
これだ.
このRuelle, 私の分野の先達だ. 相対論的場の量子論でのHaag-Ruelleの散乱理論や, 統計力学の数理物理で顕著な業績がある.
Ruelleの有名な統計力学の数理物理の本二冊のうち, 一冊は持っている. あまりにも議論が追いかけられず, 田崎さんに極めて読みにくい本だと教えてもらった記憶がある. 読みにくいどころかあんなのは読めたものではない. 昔の人, よくあんなのを読めたなと感心する.
ちなみにこれ. 絶対にお勧めしない.
それはそれとして『数学者のアタマの中』はそういう数学的地雷要素はないだろうしちょっと読んでみたい.
『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』: 読書リスト¶
7月25日発売の新刊『子どもを守るために知っておきたいこと』、予約開始しました。子育てに関する情報にはデマが多いもの。そこで、各分野の専門家13人が育児・医学・食・教育などの幅広い疑問にわかりやすく回答しています。ぜひご一読を。https://t.co/7jGyTzYKRv
— ONISHI MAO (@mao7735) 2016年7月8日
これはほしい. 買い物リストに突っ込んでおいた.
ブライアン バターワース『なぜ数学が「得意な人」と「苦手な人」がいるのか』¶
えありぷ。学習障害の一形態としてのディスカリキュリア?(算数障害?)について脳科学的考察を交えて著された良書のひとつ。 なぜ数学が「得意な人」と「苦手な人」がいるのか/ブライアン バターワース 嘉田 勝 (@kadamasaru) 2016年7月31日
脳科学と言われた瞬間うさんくささしか感じなくなっていてとても悲しい. それはそれとしてとりあえず買ってみよう.
宣伝協力: [限定販売] 東大生200人が共感した!! 書籍『やってはいけない勉強法』¶
まず端的に書いておくと次のページで書籍出版に関するクラウドファンディングを募っている. これのシェアに協力しようというのと, できるなら資金協力までしてほしいという話だ.
3000円から資金協力できるので, 応援したいと思った方はぜひ応援してあげてほしい. 私もとりあえず3000円は出してきた.
一月になってしまうようだが, 資金援助すれば実際に東大生が一時間勉強の相談に乗ってくれるようだ. 今年の受験生だと遅過ぎるだろうが, 来年の受験生ならむしろちょうどいいスタートダッシュになるだろう.
3000円でも一時間相談に乗ってくれる. 本に関する費用とも合わせれば ほとんどタダで東大生に相談できる. ふつうに暮らしていたら東大生と話す機会はそうそうないという人が大半だろう. 本当に困っていることがあって相談したいことがあるなら, 3000円出してみる価値は十二分にある.
簡単に経緯を説明するとこのプロジェクトの統括をやっているという学生さんから宣伝に協力してほしいとの依頼のメールを頂いた. 現時点での草稿も見せてもらい, 中身は実に真っ当だったので協力しようと思ったのだ.
何より協力したいと思ったのは, 私が中高生くらいだったら喉から手が出るほどほしい情報だったから. 同じように思う人はたくさんいるだろう.
そして今の段階での草稿を見る限り, 私がサイトでまとめていることと方向性は同じだし, むしろだからこそ先方からシェアに協力してほしいと声がかかってきたとも言える.
目的がある状況で勉強が必要なときにはいつでも使える汎用的な方法, 視点でもあるし, 何か他人に勧めるときに「東大生がまとめた本だ」と言えば, 興味も持ってもらいやすい.
言っていることに大きく重なりがあるし, 他の人ががんばってそれを伝えようとしているなら そちらに流した方がこちらとしても楽でありがたい.
このサイトでも受験関係の情報をここにとりまとめているが, 私はもともとというか今でも数学や物理のゴリゴリの専門的な情報を出すのがメインの活動だ. その中で中高生との接点もあって, やはり大学受験は悩みの一つだった.
他の記事でも書いているように, いろいろな面から勉強に関する情報格差はひどくて, 「それもっと早く知りたかった」という話はたくさんある. 自分で編み出せていればそれで良かった話ではあるし, 実際にそうやっている人もいるが実際問題として私にはできなかったことだ.
情報を持っている人がいてそれを出してくれるというなら それをもらっていいところをどんどん取り入れた方が早くていいに決まっている.
上でも書いた通り一番安い金額であっても, 資金援助すれば本がもらえるだけでなく 一時間勉強に関する相談にも乗ってもらえる. 現受験生だと遅いが, 来年の受験生は相談してみて損はない.
やはりツールとして本は本当に強力だ. 私もこの動き, ぜひ参考にしたい.
並木陽『斜陽の国のルスダン』¶
最後の一コマが描きたかっただけのグルジアまんが。色々間違ってるかもしれませんすみません。
— 零 (@zero_hisui) 2016年7月30日
とりあえず強くて格好いい女王様は最高世界史創作企画pic.twitter.com/dYVQTdxzNU
@zero_hisui最後のルスダンのデザインは「斜陽の国のルスダン」の表紙からお借りしております。T.Soupさん画の表紙は最高だし並木さんの中身も当然最高なので是非読んでください。アマゾンで買えるよ!アマゾンで!
— 零 (@zero_hisui) 2016年7月30日
何これ面白そう. 買う. 数学でもこういうのを作りたい.
数学・理論物理関係者は動画講義を作ってYouTubeにアップしよう¶
ぴあのんさんがいいことを言っていたので.
圏論の入門とかいまは親切な本もたくさんあるのだからわざわざ講習会開くよりは、自分で勉強するのを中心にして、時々わからないところを勉強会で教え合うみたいなのがいいと思う。そっちの方が身につくし、詳しい人の時間を不必要に奪うこともない。
— ぴあのん (@piano2683) 2016年7月25日
もちろん詳しい人に話をしてもらうメリットもたくさんあるんだけど:
— ぴあのん (@piano2683) 2016年7月25日
・その場で質問できる
・本や論文だとどうしても「細かいところを飛ばす」のがしづらいので、理論の概要をコンパクトにまとめるような講演は初心者にはありがたい
・講演者に希望を出せば聴衆のニーズにある程度合わせてもらえる
自分で言うのもなんだけど、私は人に教えることに労力を割くのを厭わないタイプだから、最近の圏論ブームに合わせて人に圏論の話をすることも多くてちょっと微妙な気持ちになることもある。初等的な話を何度もやるのはあまり面白くはないですからね。
— ぴあのん (@piano2683) 2016年7月25日
一連のツイートに関連して、原子心母さんが仰っているように人に教える場合でも事前に周到に準備ができる状況なら歓迎です。今度の数学カフェでは圏論の雰囲気は知っていることを前提として、圏論がいかに活躍するかプレゼンできたらと思います。https://t.co/YXz46SthBQ
— ぴあのん (@piano2683) 2016年7月26日
この辺を見ると本なりPDFなり動画なりのコンテンツを作る意味もわかる. 特に動画. その場で直接質問できなくなるデメリットがある代わりに, 上でぴあのんさんが上げたメリットはそのまま満たせる.
本やPDFよりも動画がいいのは適当に流せるところだ. うるさくいえば動画でも一時停止はある. しかし本やPDFだとわからないところがあると自動的に止まってしまう一方で, 動画はとにかく強制的に情報が流れてくる. 受動的に徹して通して受け取ることがいい場合もある.
また最近動画作っていないので, そろそろ何か作りたい. 現代数学観光ツアーも動画してYouTubeなりニコニコにアップしたい.
そういえば動画コンテンツをアップしてみたいという方, 私はそれなりのノウハウはあるのでご相談頂ければ適宜いい方法はお伝えしたい. とりあえずスマホがあればどうにかなる.
読書(記事)メモ: Telence Tao, There's more to mathematics than rigour and proofs¶
テレンスタオ 数学における厳密さについて。https://t.co/aGNZ9nV1bh@wordpressdotcomさんから
— 吉田 紅 (@rougeteaviolet) 2016年7月22日
気になるのであとで読もう. 読書メモ.
津田一郎『脳のなかに数学を見る』: 読書メモ¶
文藝春秋さんから発行された『心はすべて数学である』の著者であります津田一郎先生の新刊を弊社より発行いたします。連携するする数学 1『脳のなかに数学を見る』です。ぜひ書店さん、大学生協さんでお買い求めください。 pic.twitter.com/afQ6aSrneO
— 共立出版アリがと蟻 (@1738310) 2016年7月15日
数学と言われるとそれだけ心を惹かれるのはどうなのかと自分でも思う. そして『心はすべて数学である』と言われるとうさんくさいと思う自分もいる. とりあえず気にはなったのでメモ.
『心はすべて数学である』をAmazonでちょっと見てみたら, 次のような地雷ほぼ確定なのではと思しき言葉が並んでいた.
ゲーデルの不完全性定理、無限との格闘、超越的なカオスの存在……。
これ, 大丈夫なのだろうか.
ナイチンゲールの伝記が気になったので: 読書メモ¶
ちなみにブロンテの『シャーリー』がきっかけになって、Shirley という名前が、あまり使われない男性名から、非常に人気がある女性名へと変わったというから、そこに女性の職業として看護を改革したFNがからむのは、何か面白さがある。
— akihito suzuki (@akihito_suzuki) 2014年3月5日
@yumifurusawa専門家ではないのでコメントは避けますが、非常に興味深い人物であることは間違いありません。人生のかなりの部分を、うつ病か半身不随か人格障害状態で過ごして、家族と知人の多くを深く傷つけた女性であることも憶えておくべきですね。
— akihito suzuki (@akihito_suzuki) 2014年3月5日
@yumifurusawa最新の伝記を読んでいるのですけど、彼女の個性と、家族や周辺人物の意向と、時代の流れとが絡み合うさまが見事に描かれていますね。特に、FNの母親の描写が非常に新しいです。なるほどねと納得します。http://t.co/nBJ3rGIc1U
— akihito suzuki (@akihito_suzuki) 2014年3月5日
医療統計の祖でもあるわれらがナイチンゲール. この本は気になる. とりあえず記録しておこう.
並木陽『斜陽の国のルスダン』でグルジアの場所を覚えたので¶
https://t.co/QDALD2QMlcを見かけてとりあえず『斜陽の国のルスダン』をAmazonでポチって読み切った後、とりあえず「グルジア 数学」でググったら https://t.co/HXkHRJei9Aが出てきたので何となくグルジアが好きになった
— 相転移P (@phasetr) 2016年8月9日
@phasetrhttps://t.co/HXkHRJei9Aそれはそうと、また首相に成った数学者を見つけてしまったし、Paulといい多方面で優秀な人はいるのだなと改めて実感している
— 相転移P (@phasetr) 2016年8月9日
ちなみに引用したWikipediaのページはギオルギという方のページで, もと数学者で政治家にもなった方だ. そして『斜陽の国のルスダン』ではルスダンの兄としてギオルギが出てくる.
あとグルジアをジョージアに呼称変更されたというのをこれを読んではじめて知った. そしてグルジアがどこにあるのか全く覚えられなかったのに, 黒海とカスピ海の狭間, トルコの北というのを今回の件で覚えた.
科学史とも絡めつつ地理とか世界史もっときちんとやりたい. あとタマラママの話も読みたい.
仮にも数学科なのだし、科学史っぽい漫画描くべきかな…?
— 零 (@zero_hisui) 2016年8月9日
ちなみに数学者だとコーシー推しです。革命期フランスが産んだ天才数学者。ラプラスに見出されラグランジュに賞賛された折り紙つきの逸材だよ!
零@zero_hisuiさんのこれもとても気になるので応援していきたい.
「メンデル批判論争について」: メンデルは捏造していないという話¶
数楽もっと本格的に論争の中身を知りたい人は https://t.co/6RaTnokrWx..「メンデル批判論争について」 https://t.co/BvwYV1H5Vb
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年8月14日
あとで読もう. 忘れる前にメモ.
ジェイムズ グリック『情報技術の人類史』¶
シャノン先生はもっと評価されるべきなので買おう / “『情報技術の人類史』を読まずして未来を生きるなかれ - RyoAnnaBlog” http://t.co/J7ZLVfsLSr
— KING OF PRISM最高かよ…… (@MaroYakaZ) 2014年2月11日
歴史を絡めた話もきちんとやりたいと思っている. とりあえずメモ.
矢崎成俊『実験数学読本』¶
https://t.co/nuOtFV4X20ぱらぱらっとめくっていて「ハイジの危険なブランコ」で手が止まる。しっかりブランコの揺れ幅が大きいことも計算に入れている。ハイジの絵が無いのが残念だが、全国の小学校教員ともども、これは読まねばならぬだろう。
— uncorrelated (@uncorrelated) 2016年8月28日
前から気にはなっている. 実験というか具体的に手を動かせるのはけっこう大事だから. なるべくお金のかからないところから遊びはじめられることも大事.
須藤靖『もうひとつの一般相対論入門』¶
好評発売中『もうひとつの一般相対論入門』須藤靖(日本評論社)
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2016年8月25日
面倒な数学的準備は座標変換と微分計算だけにとどめ、GPS、重力波、重力レンズなどの実例に即して一般相対論に“再”入門する。関連した約50問の計算問題と詳細な解答付き pic.twitter.com/sIigTfwboA
これほしい. メモしておこう.
吉田耕作『私の微分積分法』がちくま学芸文庫で復刊¶
Re:RT https://t.co/kBfhFGpvjtで吉田耕作著『私の微分積分法』および 書評 https://t.co/CiKWZUiP57の存在を知った。私が大学一年レベルで最も重要だと思う定積分はガウス積分∫_{-∞}^∞ e^{-x^2}dx=√π
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月11日
長らく品切れで古書でも1万円くらいした吉田耕作『私の微分積分法』が、ちくま学芸文庫で再刊してた。紹介書くには時間も能力も足りないので、新井仁之氏による書評 https://t.co/AUiopcpJipをシェアします。すばらしい。https://t.co/lQMH6rLCk3
— くるぶし(読書猿) (@kurubushi_rm) 2016年9月10日
良さそう. 買おう.
やまなしレイ『マンガは描ける!絵が描けない人でも』が気になったので¶
本当の本当に絵が描けない人のための入門書『マンガは描ける!絵が描けない人でも』 (やまなしレイ) アオシマ書店 https://t.co/a9jNrfeRcy この本のいいところ:実例がたくさん。作者が本当に絵がそんなに巧くないけどマンガは読みやすい。マンガと文のバランスいい。
— 米光一成「想像と言葉」 (@yonemitsu) 2016年9月21日
気になる. マンガ・イラストを主体にしたコンテンツを 作ってみたいとは思っているので参考にするべきか. とりあえず記録しておこう.
結城浩さんの『数学文章作法』の書評: 数学会の会員誌『数学通信』の書評群が楽しい¶
『数学文章作法 推敲編』の書評を拝見したが、抜群に端的に書かれている→日本数学会--会員誌「数学通信」--総目次「書評」 https://t.co/ziEk2K4xZ3
— 倉下 忠憲 (@rashita2) 2016年11月8日
結城さんの本の書評もいいが, それ以上に数学通信にある書評群が楽しい. メモして記録しておこう.
グレン パケット「科学論文の英語用法百科」¶
書籍部に行ったらパケット本の第2編が出ていたので即買いしてしまった。 pic.twitter.com/ZzfPkhNCc0
— シータ (@Perfect_Insider) 2016年11月1日
ちょっと読んでみようかと思ってAmazonで一巻を調べてみたら6000円もしたので驚いてしまった. 高い.
すぐに読む時間もないがとりあえずメモ.
Princeton University Library rare books and special collections¶
The Princeton Mathematics Community in the 1930s: Contents mathhttp://t.co/QWOIy6jn4y
— chibaf (@chibaf) 2013年12月29日
リンク切れしていたが遷移先のページにはrare books and special collectionsとかいうのでけっこう気になる.
記録しておこう.
砂田利一『基本群とラプラシアン―幾何学における数論的方法』¶
今は(Twitter アカウント的な意味で)亡きkyon_mathさんのツイート.
砂田利一さんの「基本群とラプラシアン」の緒言と準備なんてすごい.緒言読むだけで類体論の目指すことがほぼ要約されているわけで,幾何しかやったことのない人は読めないだろう.準備は平坦ベクトル束とか出るので数論の初心者には無理? https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314004992
そしてPaul.
@kyon_mathさすがに、砂田さんの本をM1の学生に渡して「夏休み中にこれ読んできてね」は言いませんよ(笑
— Paul Painlevé@JPN (@Paul_Painleve) 2013年12月28日
前後が全くわからない.
何はともあれ面白そう. 読みたい.
神谷美恵子『生きがいについて』¶
数学書が役に立っている様子です pic.twitter.com/YF02aiccvC
— 若冲 (@nloglogn) 2016年11月24日
ちなみに、右にちょこっと出てる「私というものを象徴してくれる最適の記念物」というのは田辺元『哲学通論』のことだそうです
— 若冲 (@nloglogn) 2016年11月24日
@nloglognこの書物自体は誰の何という本でしょうか
— 相転移P (@phasetr) 2016年11月24日
@phasetr神谷美恵子『生きがいについて』です
— 若冲 (@nloglogn) 2016年11月24日
@nloglogn買わなければ
— 相転移P (@phasetr) 2016年11月24日
@phasetr数学が出てくるのはこのページだけですが、いい本ですよ
— 若冲 (@nloglogn) 2016年11月24日
これだ. 読書リストに入れておこう.
杉原厚吉『理科系のための英文作法 文章をなめらかにつなぐ四つの法則』がいいらしいので¶
『理科系のための英文作法 文章をなめらかにつなぐ四つの法則』(杉原厚吉 中公新書)を読了したのだけど、端的に言って名著だった。
— 無人在来線爆弾㌠שין גודזילה (@morinomichi_311) 2016年12月8日
著者が情報系や応用数理に近い方なので例文も数学が多くて、数学者も使いやすい。「なんで自分の周囲でこれを薦める人が一人もいなかったんだ」と不思議に思う。
これか. 買ってみよう.
数学のための英語みたいなのやる必要ありそうだし, いろいろネタを仕入れておきたい.
ほしい本メモ: 四ッ谷晶二, 村井実『楕円関数と仲良くなろう 微分方程式の解の全体像を求めて』(日本評論社)¶
[2F]12月中旬新刊予告
— 書泉グランデMATH (@rikoushonotana) 2013年10月21日
『楕円関数と仲良くなろう 微分方程式の解の全体像を求めて』四ッ谷晶二・村井 実 著(日本評論社)
数学のみならず物理や工学でも有用な楕円関数。その基礎から最新の研究成果までを、境界値問題や変分問題に絡めて紹介する。
楕円関数はろくに勉強していない. 黒木さんも楕円関数をだいぶ推していたのでちょっとやりたいとは思っているがなかなか手が出ない.
しかし境界値問題や変分問題と絡める部分にかなり興味がある. 具体的にどんなことをやるのだろう.
自然言語処理の理論に関わる本を教えて頂いたので¶
緩募 自然言語処理の理論の本や資料、pdf。Python実装とかそういうのは一切いらなくて、統計的にどう捉えるかとか、そういう数学の理論面の話が書いてあるコンテンツ
— 相転移P (@phasetr) 2017年3月13日
@phasetrこういうのはどうでしょう。もっと網羅的な教科書っぽい方がいいですか。https://t.co/FnRzjWBnrr
— 高岡一馬 (@klmquasi) 2017年3月13日
@klmquasiありがとうございます。まずは読んでみますが網羅的な文献もご存知でしたら教えてください。本当に全く知らないところなので網羅的に全体像を掴みたいです。目的は中高数学復習みたいなところで「こんな役に立つ、というのを知りたい」と言われるので実際に役に立つ話の紹介です
— 相転移P (@phasetr) 2017年3月13日
@phasetrなるほど。そういうことでしたら少し古い本ですが、「言語と計算 (4) 確率的言語モデル」(東京大学出版会) あたりはどうでしょうか。
— 高岡一馬 (@klmquasi) 2017年3月13日
https://t.co/hjYiw3TreD
@klmquasiありがとうございます。帰ったらポチります
— 相転移P (@phasetr) 2017年3月13日
@phasetrあとこのへんです。「言語処理のための機械学習入門 (自然言語処理シリーズ) 」コロナ社https://t.co/trYrm6c1DJ
— 高岡一馬 (@klmquasi) 2017年3月13日
早速ポチった. ごつい数学パートはゴリゴリの方で紹介して, 雰囲気重視の感じで中高数学復習的な方面に流そう.
やること死ぬほどたくさんある.
エッセイ紹介: エッセイ:信仰、カトリシズム、国際政治−−『旧約聖書』との出会い¶
本文¶
日本人がなんとなしに無神論というフレーズを持ち出すたび、このエッセイを思い出す。http://t.co/8OCShXCMYf
— Suslov (@MValdegamas) 2014, 8月 23
エッセイから少し引用しておこう.
けれどもいまにいたるまで最も鮮明に覚えているのは、フレンドリーな会話の間ただいっとき緊張した場面である。その神父さんは、「ところで君はキリスト者なの」と尋ねられた。わたしは、当時ベルギーの大学街にあって確かに道ばたで佇むマリア像に感じ入り、神学部の図書館で見たこともない巨大な蔵書を眺めては一人おののいていたものの、信者ではなかった。どこか照れかくしもあり、和英辞典から直接抜きだしてきたような横文字で「アテイスト(無信教徒)です」と答えたのだが、そのわたしを待っていたのは「アテイストっていうのは大変なことなんだよ。君はそういえるほど毎日神を信じないという努力を払っているのかね」という衝撃的な再問だった。
八百万の神の世界に無意識に身をおいていたわたしは、この瞬間、神を信じ畏れることの激しさと、その裏返しとしてのアテイズムの緊張感を垣間見た。爾来、カトリシズム、キリスト教、そしてひろくイスラム教やユダヤ教を含めた一神教が頭から離れない。
数学に関してもこのくらいの誠実さをもって臨みたい.
タグ¶
宗教学, 神学, 信仰, 数学
読みたい本メモ: 神社本庁編『靖国神社』(PHP研究所), 葦津珍彦『国家神道とは何だったのか』(神社新報社)¶
本文¶
かなり前にもツイートしましたが、靖国神社について知識を得たければ、神社本庁編『靖国神社』(PHP研究所 ¥1,300+税)を。近代神道について考えたければ葦津珍彦『国家神道とは何だったのか』(神社新報社 ¥1,728)をおすすめします。
— Nakamichi51@神道学者 (@genshin01) 2014, 8月 16
前にも見かけたがまだ読んでいない. 他にも超本が溜まっている. やりたいことが多くて退屈する暇などない.
ラベル¶
神道, 神学, 宗教学
2021-05-10 鎌田浩毅, 『やりおなし高校地学---と宇宙をまるごと理解する』ちくま新書¶
地学からの生物と物理。レントゲンの有害性などある意味日常だが、それを改めてきちんと掘る。 鉄・ニッケル合金が融点高く、地球の内核である謎。高圧が原因らしいが、どういう影響か。
2021-05-01 水野一晴, 『世界がわかる地理学入門---気候・地形・動植物と人間生活』ちくま新書¶
とりあえず一読目, いろいろ細かいところが気にはなるが, シロアリがゴキブリ目であり, ふつうのアリはハチ目で大きく違うと書いてあって驚いたのでちょっと調べた. やはり Wikipedia にぶちあたるので, そこからリンクで飛び回って遊んだ.
雑に見たページは次の通り.
- シロアリ
- アリ
- 社会性昆虫
- 変態
- 真社会性
- 遺伝子の水平伝播
- 蛆
リンクを張りつつメモをつけていく.
!!! Note 何ページだったか失念. あとで読み直してメモしよう.
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未まとめ¶
- 古川安, 科学の社会史, Kindle
- 吉田洋一, 赤攝也, 数学序説, Kindle
- 安西洋之, 八重樫文, デザインの次に来るもの, Kindle
- 玉飼真一, 村上竜介, 佐藤哲, 太田, Web製作者のためのUXデザインをはじめる本, Kindle
- 情報処理学会, 情報処理 2020年8月号, Kindle
- トム-デマルコ, ティモシー-リスター, ピープルウェア, Kindle
- 羽生章洋, はじめよう! システム設計, Kindle
- 高安厚思, システム設計の謎を解く, Kindle
- ユーザー要件を正しく実装へつなぐシステム設計のセオリー, Kindle
- ずっと受けたかった要求分析の基礎研修, Kindle
- 担当になった知っておきたい「プロジェクトマネジメント」実践講座, Kindle
- 手塚治虫のマンガの描き方
- 大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる
読みたい本¶
- 加藤文元, 『数学の想像力 正しさの深層に何があるのか』1785 円 (筑摩選書)
- 数学者, 哲学者達を戦慄させた正しさのパラドクス. 緻密な論理の底に彼らがのぞきみた真理の深淵をさぐる.