書評または感想: 数学セミナー 2014 年 02 月号 多様体が分かりたい

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【数学セミナー 2014 年 02 月号 多様体が分かりたい】をようやく読んだ. 今度も感想をつらつらと書いていこう.

Coffee Break, 松井

Coffee Break, 東海大の松井泰子さんの記事. 新課程『数学活用』の教科書の話が出ているがかなり魅力的に仕上がっている模様. 時々思うのだが教科書, どこか見られるところあるのだろうか. これは読んでみたい.

時枝

ハーバード, 時枝正さんの【こどもの眼・おとなの頭】. 「遠心力」というの, 誰から見ているかという微妙な問題があって結構面倒なのであまり好きなアレではない, というどうでもいいことを想起した直後, やはりというか一般相対論の等価原理が出てきた. 一般相対論, 結局講義には出たものの全く身についていない. 比較的触った方の特殊相対論もさっぱりだしつらい. スリンキーの話, 凄く面白い. ちょっと試してみたい. 縄梯子の話も面白い. この連載, 面白い.

橋本

東京都市大の橋本義武さんの【多様体入門】. Euclid 『原論』を次のように評しているのが面白い.

ユークリッド『原論』の中の図形は, ホメーロスの叙事詩の中の英雄のように時代を越えて価値あるものを人間精神に与えてきたが, 今まさに生まれつつある何かに呼応して自らを変革していく柔軟さを欠いていた. 公理という「すでに書かれたもの」の中でしか生きられない存在だったからだ. オイラーは, 図形という「すでに書かれたもの」の中の死せる英雄ではなく, 生まれたばかりの赤子である関数を自らの数学の中心に置いた.

P10 で【 $X$ 上の $C^{\infty}$ 関数全体のなす実ベクトル空間を $C^{\infty} (X)$ と書く】という記述があったが, ここで実線型空間論と複素線型空間論に比べて, 実多様体論と複素多様体論は実と複素で趣が全然違う感じがしたが, 幾何の人はどう感じているのだろうというようなことを思った. 線型空間だと固有値周りで面倒なことがたくさんあるので複素線型空間に移るのは (状況によっては) とても自然だが, 多様体の方でこういうことは起きるのだろうか, というような感じ. 実の方は自由度の高さから来る開放感があり, 複素の方は制限が厳しい代わりに深い理論になるという印象だが, この辺幾何人は何をどう思うのか.

定義 11, 接空間の定義の前に germ が出てきて爆笑する方の市民.

西川

東北大名誉教授の西川青季先生の【リーマン多様体 誕生から脚光を浴びるまで】.

リーマン多様体の概念が一躍脚光を浴びるのは, リーマンの講演から 60 年後に, アインシュタインが一般相対性理論の基礎にもちいてからである.

これ, 本当なのだろうか. 数学史的に何故このタイミングまで (あまり?) 注目を浴びなかったのかという研究とか知りたい. よくこう言われるが, 実際に一般相対論で使われているのは擬 Riemann 幾何でつらい. あと Riemann 面いまだにきちんと勉強していないしよく分からないのでつらい. 解析接続, よく分からない.

Gauss の曲面論, 普通にやると凄い面倒で実につらい. しゅそくさんの Bochner の定理に関するセミナーがとても明快で良かったことを想起する方の市民. やはりきちんと勉強している人は違うな, と思わされる.

藤木

京大特任教授/ 阪大名誉教授の藤木明先生の【複素多様体】. 【閉 Riemann 面上の正則な関数は定数しかない】という定理, 証明は分かるがどういうことなのかいまだによく分かっていない方の市民だった.

P20 に $S^6$ に複素多様体の構造が入るか, という有名な未解決問題に関する記述がある. これ, 何が難しいのだろうかとずっと思っているし幾何学の闇を感じる. 解析学・量子力学で 1 次元であっても調和振動子がかなりの闇なのでこう色々とアレなことも想起する方の市民だった.

一般に閉リーマン面 $Y$ の種数 $g$ は, $Y$ 上の 1 次の正則微分形式全体のなす複素ベクトル空間の次元 $h$ に一致することが知られていた.

不勉強なので知らなかったが衝撃を受けた.

伊藤

理科大, 伊藤浩行さんの【代数多様体 代数と幾何が融合した世界】. 代数弱者すぎて代数幾何はいつもつらい. ちょっとしたところですぐ詰まる. 「 Zariski 接空間と特異点の定義が局所的に超楽しい」という小学生並の感想を抱く. 多項式とか闇なのでつらかった (完).

山下

奈良女子大の山下康さんの【Virtual Haken 予想の解決!】. トポロジーよくわからないが双曲多様体が面白いらしいという認識を得た.

書くのが面倒になってきたが, 阿原一志さんの【サーストンからの手紙】, 曲率の話だったが面白かった (完). 参考文献の『フラットランド』と『 2 次元より平らな世界』, 読んでみたい.

山形大の脇克志さんの【見える群論入門 体の模様:3 次方程式が作る正三角形】. 【体への作用】の項, $\mathrm{Aut}(\mathbb{Q}) = {\mathrm{id}_{\mathbb{Q}}}$ が示されている. 普段ほとんど $\mathbb{Q}$ 使わないのであまりきちんと認識もしていなかったが, 改めてみると凄まじい.

梅田

梅田享先生の【森毅の主題による変奏曲】. 相変わらず面白い.

《僕は位相空間論をやるのなら位相ベクトル空間を経て積分論までやらなければというドグマを持っている. 》

《元来微積分を関数の収束と関連して論ずるには, その収束概念は一様収束であるべきだ. この点をあからさまに打出していることは, Bourbaki 第一の功績だと思う. そのために, 実に Riemann 可積分という定義はどこにも出て来ない (実は積分論第 4 章の演習問題にある). そこで fonction reglee という概念が出現するが, これは階段関数の一様近似となる函数のことで (中略) しかし僕は気にくわない. (中略) 何もわざわざこんな大仰な新概念を持出す必要があるだろうか.》

森毅の言葉をほうほうと読んでいる. 全文をネットで読めるそうだがどこにあるのだろう. 「面白いなんてものではない」とのことなので是非読んでみたいのだが.

とは言うものの, 飽くまで比較の話だが, ルベーグ積分より見かけ初等的なので, リーマン積分を「やさしい積分」の同義語に用いる人が少なからずいる. しかい, 「やさしい」なんてとんでもない. リーマン積分はヤヤコシイのだ. もちろん, 「一般の」連続函数のリーマン積分可能性という厄介な問題はあるが, それ以前に定義自体が充分難しい. そのようなリーマン積分の問題点については, のちのちじっくり述べたい.

ともかく, リーマン積分は導入の手間に比べ, 得られる性質が中途半端 (労多くして益少なし).

同じことをを考えられているかは分からないけれども, 私も似たようなことは思っている. かなりユーザ視点で数学者視点とは言い難いだろうが, Riemann 積分は議論と定理が Lebesgue 程にはクリアでない. Lebesgue だと級数を含むと明らさまに分かるため, 実数論・数列の定理の一般化として素直に理解できる定理が基本定理になっている. 非常に覚えやすいし使いやすい. この辺は 3 月にやる予定の Lebesgue ・関数解析・作用素論セミナーでも触れたい.

そこには, もう一つ「連続函数のリーマン積分可能性」には「一様連続性」が不可欠という根強い迷信についても書いてある. この迷信は高木『解析概論』をきちんと読めば気づくことだが, (略)

手持ちの『解析概論』を読むと, P.91 から【定積分】の項が始まる. ここでははじめ関数 $f$ の有界性だけが仮定されている. P.93 で積分の平均値の定理が示され, そのあとで $f$ の連続性を仮定して中間値の定理を使い, 原始関数の存在 (積分可能性) を示している形だ. このことを言っていると思ってよいのだろうか.

【3. リーマン積分】の項で梅田さんがお怒りである. 私などは Riemann 積分よりも, 応用のためには Lebesgue と Hilbert 空間論を基礎に据えてやった方がいいと思っているくらいだ. もちろんそれなりに人は選ぶだろうが, 個人的には物理への応用上 Hilbert 空間論は是非導入したい. 量子力学うんぬんではなく「エネルギー有限」の条件設定としての Hilbert 空間だ. 3 月にやると何度か言っているセミナーで Lebesgue と Hilbert 空間をセットでやるのもこの方向性を模索するためだ.

P.85 【よこがお】の西川先生のところに次のような記述がある.

アインシュタインの論文「一般相対性理論の基礎」の冒頭に, 「必要なすべての数学的手法は, この論文の B 章に, 最も簡単な見通しのよい方法で説明してある」と書かれている. 実際, テンソル解析のつぼが, へたな教科書よりはるかに解りやすく, 22 ページで解説されている. 和訳もあるので, ぜひ読まれることを勧めたい.

これは読みたい. 誰かコピーとか取ってくれないだろうか. 今度文献複写に行くしかないか.

【数セミ メディアガイド】.

長岡亮介さんの『東大の数学入試問題を楽しむ 数学のクラシック鑑賞』が紹介されていた. 読みたくなった.

2/22 (土) に千葉県立松戸南高校「春を呼ぶ研究集会」で【トークショー「数学エンターテインメントへの正体--MF (Mathematical Fiction) の世界」】というのをやるらしい. 大分興味ある. 行ってみたいがどうしよう. 締切は 2/17 (月) なのでちょっと考えよう.

朝日カルチャーセンターのも面白そう. 逆問題は聞きに行きたいが, 1/18 から 全 6 回だった.

楽しそうなのたくさんある. 自分も何かしていくべきだが, 現状の研究もあるし, この辺も積極的に参加すべきか.

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数学, 数学教育, 相転移プロダクション, 一般相対論, 幾何学, 微分幾何, 代数幾何, 量子力学, 代数学, トポロジー, 位相空間論, 積分論