ENERGEIA¶
おすすめ非自作コンテンツ集¶
時々タイムラインで面白そうなコンテンツを紹介しています. ここではそれをまとめます. 数学・物理・プログラミング・語学に関してそれぞれ思いつくモノを書きます. 折に触れて追記します.
数学・物理・プログラミングの本¶
- プログラミング: プログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造
- プログラミング: 問題解決のための「アルゴリズム×数学」が基礎からしっかり身につく本
- Geometry for Programmers
競技プログラミング: 算数とプログラミング¶
- 数学・プログラミング: AtCoder
- 数学・プログラミング: AtCoder Problems
- 数学・プログラミング: AtCoder Beginners Selection, C++コンテンツ
- 数学・プログラミング: AtCoder, 競プロ典型90問
- 数学・プログラミング: アルゴ式
- 数学・プログラミング: Project Euler
- 数学・プログラミング: AOJ
理系のための語学¶
投稿の記録¶
最近あまり本格的な記事を書かないのでいったんこちらに貯めます.
2022-11-23¶
相変わらず毎日シコシコと競技プログラミングをやっています.
競技プログラミングに関して次のような解説を作っている人がいたので共有しておきます. https://twitter.com/TumoiYorozu/status/1594970186775670784
さて, 今日はAtCoder ProblemsのHard, 52と53を解きました.
どちらも場合の数の問題で, 特に前者の52は整数の和と最大公約数の問題なので見た目からも完全に数学の問題です.
52を解いていて, 改めてある整数の約数のリストをどう作るか, 自作ライブラリを整備した方がいいだろうという結論に逹したため, これから整数処理用のライブラリを改めて整備します. 既に素因数分解などは https://github.com/phasetr/AlgorithmsAndDataStructureByFSharp/blob/master/Library/References.fsx に置いてあるのですが, 他のプログラムと混じっているため, 整数処理系を独立させた上で関数を追加します.
ちなみに(整数が小さければ)約数のリストを手動で作るのはもちろん簡単です. ただ漏れなく重複なく, 高速にプログラムでリストを作ろうと思うと多分結構大変です. そしてこの辺は定型処理なのでネット上にもサンプルが転がっているはずで, その辺を適当にまとめます.
2022-02-23 Mathler - 算数版Wordleクローンの紹介¶
Mathler は、「5文字の英単語」の代わりに「6文字の四則演算」を当てるというWordleインスパイア・クイズです。
この間yukoyさんとのやりとりで「5秒でいいから毎日何かしましょう」と書きました. 5秒で終わるとは思いませんが, 最近上で紹介したような算数系アプリなどもいろいろ出ています. どのくらいの内容にどう取り組みたいか人によっていろいろあります. 特に英語で探せば他にもいろいろな算数・数学系アプリがあります. そういうのを探すだけでも十分に「数学」です.
ちなみに上の記事に書いてあって驚いたのですが, これの元ネタのWordleはニューヨーク・タイムズが数億円で買い取ったそうで. 最近のコンテンツはどんどん最低レベルがあがってきていて, クリエイターの新規参入も大変になってきていると良く聞きます. それでもアイデア次第でこんなシンプルなアプリが爆発的に話題になり, 高い価値がつくのは面白いですね.
プログラミング系の部活もいくつかあるようですが, あまり動きを追えていません. 見ている限りweb系のプログラミングに関わる方が多そうですし, そちらでこういう動きを追いかけてくれないでしょうか. 私は広く言えば本職はweb系で, プログラミングも好きと言えば好きですが, 仕事に関わる勉強ならともかく個人でまでwebアプリを作るほどの情熱は持ち合わせていないので, どこかでやってほしいです. 紹介ならいくらでもするのですが.
2021-12-31 fri¶
メルマガでwolframalphaを紹介しました. こちらでも共有しておきます.
- https://phasetr.com/archive/misc/mm/2021-12-31/#wolfram-engine
先程コンテンツを追加しました. 根本的な内容自体はここにいる人の大半にほぼ関係ないとは思いますが, 私の中でここでの活動とは直結しています.
今年は何をどうしたものかと様子見で終わった感じがあります. 来年はもう少し部活らしく日々少しずつ活動しようと思います.
私自身, 人を巻き込んだ強制力がないとやるべきタスクが進まないと思ったので, きちんとここでやっていこうと思います. 具体的には平日22:00-23:00あたりで毎日一時間「もくもく会」という名の自習会をやります. 仕事などで都合がつかないときは時間をずらしたり, 中止したりはしますが, 基本は平日は毎日やります.
もくもく会はこんなやつです.
- https://www.pasonatech.co.jp/workstyle/column/detail.html?p=2282
zoomでやる予定です. もくもく会が原形なので, 顔出し・声出しは不要です. 私に何か相談したいことがある人などは適当に話かけてもらって構いません. 私は競技プログラミング(広義算数)関連の勉強またはコンテンツ作り, または数学・語学連携コンテンツ作りを進めます.
これ, 毎日やっていることなのですが, 具体的なリリースを目指したコンテンツ作りという視点が欠けているのが現状です. そこで私にとっては毎月一つコンテンツを作ることを目的にしたもくもく会です. 質問などがあればそれに応えるコンテンツも作れるので, 適当に参加して適当にコメントもらえると嬉しいやつです.
書いているうちに年を越したようです. というわけで今年も数学・物理・プログラミング・語学をやります.
イベントも作っておきました.
- https://energeia.app/event/684/detail
2021-12-25 sat¶
続報的な話.
この間の$(1/3) x3 \neq 1$問題で0.333…は近似だという一級建築士を名乗る人がいて, 改めて気になって見たらこんなことを言っていた事案です.
実は数には数そのもの概念とその表記に果てしない違いがあります. 「数学は人並みにできるだろう」と自認している人にでもおそらくなかなか通じない話だろうとも思います. ここでは 1/3 が指し示す数と0.333…が指し示す数の問題があります. 先のツイートや前回の問題は0.333…, 特に…の定義の問題で, それとはまた別です.
10進法や二進法の話があります. これが数の表記に関わる問題です. 一つの数に対して表し方がたくさんあります. 10 と書いた時, 10 進法で読むか二進法で読むかで何を表しているかが変わります. 0.333…の問題は十進法の分数表記と小数表記の問題と言えます.
ここで三進法を考えてみます. 実は十進法での1/3=0.333…を三進法の小数表記で0.1と書けます. これは三進法の定義の直接の帰結です. ここでは説明しきれませんが, とりあえずはこうなのだとだけ言っておきます.
実はこれは有理数と分数の違いとして重要です. これの区別がついていない人がいます. 「数学はできる・わかる」という人でもそうです. 分数は数の表記の話で例えば$1/\sqrt{3}$てあっても数の表記として分数で, 数の種類としては無理数です.
そしてさらに, 有理数は, 実は「ある整数$n$に対する$n$進法を考え, それの小数表記を考えた時, 小数点以下が有限桁で止まる数」というひねくれた定義ができます. もちろん無理数は「すべての正の整数$n$に対する$n$進法での小数展開が無限型になる数」と定式化できます.
この話がサッと受け入れられる人は相当数学的耐性があります. 知識云々, 計算力云々ではなく数学的思考法と親和性が高いという意味です. 何故この話をするかと言えば, 高校までの算数・数学でもこれらの話題はあるものの, ほぼ重要視されていないからです. 各種受験などでもあまり触れられないでしょうし, それこそ大した役にも立たない (知らなくても困らない) ので興味を持つ人もおらず, きちんと説明できる人・わかっている人もあまりいないからでしょう. 役に立つ数学を重視しすぎるとこうした話題は置いてけぼりになり, しかもハマる人はハマるのに世に解説もほとんどない, 少なくとも見つけづらい状態になります.
この間書いた通り, この辺はもう算数, 中高数学内部では解消しづらく, 一般理工系の人間に聞いてもろくな説明が聞けない領域です. 大学の数学科の学生・関係者に聞かないとどうにもならないでしょう. 上で紹介した, 一級建築士という世間的にはゴリゴリの理系属性を持ち, それで食べている人でもろくに把握しなくても問題ないタイプの役に立たない話だからです. 算数・中高数学の世界だけで算数の話題が理解し切れる保証はありません. 算数にだけ興味があるとしても, 折に触れてもっと面倒な数学の世界も見てみてください.
2021-12-23 thu¶
昨日Twitterで燃えていた話を共有します.
- https://twitter.com/Z7Mv8pyqhdGNa5Y/status/1473581581336199170
どうあがいても1/3は0.333…でしかないのに、さんかけると1とする理由の説明を向学のためにお願いします!
算数で「かけ算の順序が決まっている」と主張する地獄のような話があります. そう思っている人がここにもいるのではないかという気がしないでもありませんが, 本当に滅茶苦茶な話です.
それはさておき, この話から自然と出てくる1 = 0.999...は高校の最後の最後, 無限級数で回収する恐ろしく面倒な話です. あと算数では円の面積の公式を近似的に導出する議論もあります. これはこれで完全に積分の話で, 「何で?」「それ正しいの?」と思った人は一定数いるようです. 私は何とも思わず, 高校で積分や区分求積法をやったときでさえ何も思わず, あとで何かの機会に思い出して「小学校の算数では恐ろしい話がさらっと出てくる」とびっくりした記憶があります.
算数は下手な中高の数学よりもよほど「数学」になりえます. 人によっては哲学のようにも見えるようですが. 上の話だと1/3という有限の表記から, 0.333...という無限の表記が出てくるギャップがあり, きちんと処理するのに高校三年程度までかかる, 実際に数学として恐ろしく面倒な話です.
こういう話こそ小学生, それも疑問に思ったタイプの小学生にどう話していいのか, いまだにわかりません. 一番「簡単」なのは1/3 = 0.333...として, 両辺を三倍すると1 = 0.999...みたいなところからはじめる議論ですが, 当然これはこれで無限に続く(循環)小数の概念的な難しさがあります. 無限にまつわるいろいろな議論は古代ギリシャのパラドクスとして知られているほど面倒な話なわけで, 現代数学では解決された問題であるものの, 現代の哲学としては哲学の問題意識の中ではまだいろいろ遊べる話だと聞いた記憶もあります.
最後に念のため書いておくと, 高校, もっと言えば大学の数学まで来ない限り解決できない算数や中高数学の問題があります. 例えば上で書いた積分や無限級数にしても, 高校数学での極限の扱いに納得できないタイプの人もいて, それはもう大学の数学で処理するしかないからです. その意味では算数, それも小学校二年程度で積まれた問題が大学の数学科の数学にまで持ち込まれます.
「苦手だから算数からはじめないといけない」と思う人が時々いて, それはそれで正しいのですが, 単に算数だけを見ていても解決されない問題があります. よく教えるときにはその内容の三倍の知見を知らなければいけないみたいな話があります. まさにその話で, 小学校の算数だけできても, 小学生に算数を満足に教えられるかと言われても全くそうではありません. 現代数学での正しい処理を知っていて, 単純にそれを説明するだけでも難しく, さらに小学生に教える部分の困難さえあります. もっと言えば「数学は苦手」という強烈な意識がある大人に教えるときの難しさもあり, 本来教育学の知見としてストックされるべき話題です.
特に何かまとまりのある話ではありませんが, 算数・数学に潜む地雷として紹介しておきます. こうした問題はもちろんいろいろなところにあるはずです. 「ファッションセンスやスタイルのいい人が着れば格好いいのに, 自分がやるとひどいことになる」みたいなのも類似の問題だと思っています.
2021-12-22 wed¶
面白そうな本を見つけたの共有します. 残念ながら英語です.
- https://www.manning.com/books/geometry-for-programmers
タイトルはまさに「プログラマーのための幾何」で, 数学らしい数学には深入りせずに数学, 特に幾何を勉強する本です. これは本のクラウドファンディングのようなもので, 執筆途中の本を割安で販売する出版形態です.
数学ではよく「予備知識は仮定しない」と書いてあり, そしてよく「確かに予備知識は仮定しないが尋常ではないレベルの数学的耐性」されて閉口します. この本もやはり最低限の数学への耐性とプログラミングへの一定以上の耐性を要求されます. タイトルと出版社的な意味で, プログラマー, もしくは一定のプログラミング経験がないとわからない記述もあります.
ただ, この本で面白いのは, はじめから「この本は応用幾何の本だ. 応用幾何は金になる数学, そして幾何だ」と明言してあります. あくまで幾何の勉強用の本なので最終的な製品に投入されるようなプログラムが出てくるわけではないでしょう. しかし現役のプログラマーである著者の言なのできちんと収入につながる内容なのでしょう.
「役に立つ」水準の高さは本当に凄まじく, 心が折られるのも一度や二度ではありません. この本を読んだだけで足りるようなら何も苦労はありません. それでも役に立ち金になる数学の到達点を眺めてみたいなら参考にはなるでしょう. 前半はどうとでもなるので私は早く後半を読みたいです. 正座待機して待ちましょう.
2021-12-03 fri¶
「アルゴリズム×数学」が基礎からしっかり身につく本¶
気になる本が出たのでシェアします.
- https://twitter.com/e869120/status/1466406897271988225?s=21
『「アルゴリズム×数学」が基礎からしっかり身につく本』を執筆しました! アルゴリズムと数学が同時に学べる本です。12/25 に発売される予定です。詳しい紹介は以下の記事にまとめました。 https://e869120.hatenablog.com/entry/2021/12/02/225743
本書を手に取っていただけたら、とても嬉しいです!!! https://amazon.co.jp/dp/4297125218/
こういうのがたくさん出てくれると私がやりたい方向の荒野開拓に集中できるのでありがたいですね. いまから楽しみで, この本買ってみようと思っています.
2021-11-30 tue¶
Twitterで話題だったのでこちらでもシェアしておきます.
- 機械学習帳: 理論と実装を一体化した「動く」学習帳 https://chokkan.github.io/mlnote/
機械学習はいまはやりの言葉でいえばAI・人工知能です.
東工大の大学院の講義資料です. 大学院の資料なのでもちろん全くもって簡単ではありませんが, 大学教養数学の二強の一角であり高校での最重要分野である微分積分, そして大学教養数学の二強のうちの片割れである線型代数を酷使する分野です. いろいろある線型代数の応用のうちの一つでしかないものの, 最近実社会, 少なくともニュースのレベルでは関係が深くなっている巨大な応用です. よく役に立つ話をしてほしいという人がいますが, 本当に役に立つ話がどれほど大変なのか実感してもらう上でもいいコンテンツでしょう.
もう一つ, よく「数学でもっと図がほしい」という人がいます. 昔は個人ではなかなか作れなかった図・グラフ・アニメーションも, いまは比較的簡単に作れるようになっています. それだけプログラミング環境が整ってきたからです. このコンテンツでもそれを縦横無尽に使っています. プログラムを読み書きする訓練こそ必要とはいえ, そもそもコンピューターさえ恐ろしく高価で, プログラミングできる環境自体を作るのが大変だった頃からすれば雲泥の差です.
もしあなたが興味があれば, ぜひ眺めてみてください. 機械学習は統計学の応用でもあり, これまた今はやりの統計学に触れる機会にもなるでしょう.
2021-11-29 mon¶
いままさに私にとっても現在進行形の問題なので, ちょっとツイートをシェアします.
- https://twitter.com/tokoroten/status/1464672350364856320?s=21
ソフトウェアが楽しい人は、自分の原体験をベースに教育用のソフトウェアを作るので、何でも描けるまっさらな自由帳を作っちゃうんだよね 自由帳で好き勝手に絵を描いて、好き勝手にトレーニングできる人は必ずしも多くはない 何をしなくちゃいけないのかが明確なドリルが欲しい人は多い
ちょっと考えてみろよ、 まっさらなノートを渡されて、何も言われないでも、そこで数学の勉強始めるのは異常者だろ そういうことなんだよ
んで、これはリカレント教育やリスキリングで特に顕著だと思っていて、 「自由帳に何でもいいからお絵かきしてみましょう」ってのは、 減点法で生きてきた大人には受け付けられない 自由にお絵かきしたら刺される世界で生きてきたんだから
最後の部分は私は感覚を持っておらず何とも言えません. そして「何をしなくちゃいけないか」はともかく, 「何をすると良いか, 筋がよいか」が今まさに苦悩しているところです.
部活の投稿では同じことだけひたすらにずっと書いている気がしますが, そのくらいずっと悶絶し続けています.
一つは数学方面, もう一つは語学方面です. 中高生向けの数学としてベクトルに関わる議論, 格好よくいえば線型代数を核にしたコンテンツができないかと考えています. 線型代数は連立一次方程式から生まれた数学で, その意味では中学数学べったりとは言えるものの, 発展させる上でいろいろと無茶が必要です. 面白い結果が出てくる計算を軸に据えたいのですが, 自分自身勉強しないといけないことがたくさんあります.
ここで目で見て楽しいこと, プログラミングも大事だと思っているため, 幾何に関する話も入れたいのですが, ここでの「筋のいい計算」とは何かが大きな問題です. 物理関係の計算や微分方程式などの数値計算に絡めたところなら多少知っています. しかし幾何まわりでの筋のいい面白い計算を何も知りません. そこでいままさに苦悩しています. 実際「面白計算ドリルを作ろう」がテーマです.
もう一つは語学です. 単に会話がしたいのではなくて数学・物理・プログラミングに関わるコミュニケーションがしたいのです. 語彙なども特殊ですし, 書く・話す上では文法事項についてもある程度限定的です. 一方で読む分には文法を軽視すると地獄を見るため, 読むために網羅的な文法の知識も必要です. 網羅的な文法の知識は(昔の)学校の英語で十分なのは実体験済みです. 問題は自分から英語を出す, つまりライティングとスピーキングの英語です. 単純に既存のコンテンツが面白くなく, 理工系向け面白英語ドリルがほしいからです.
技術英語みたいなのはありますが, 名前の通り技術系で語彙が噛み合わずつらいのと, いまの私のレベルからするとこれをスピーキングで対応するには難しすぎる問題があります. 仕方なくふつうの初級スピーキング的なコンテンツで勉強していますが, 何かいいのがないかとずっと思っています. そしてこれもある程度まとめたら出そうとずっと思っていて, いつまでもまとまりません. もう日々の成果を出す形で何かしらコンテンツにするしかないか, それをきっかけに無理やり習慣化もしようかと思って, いま改めて年末と来年に向けた計画を立てています.
2021-11-23 tue¶
必ずしも数学ではなくきちんと読み切れたわけでもないですが, 面白かったツイートを紹介します.
- https://twitter.com/yujitach/status/1411667611415302152?s=21
- https://twitter.com/t_hayashi/status/1463086834829848584?s=21
前者は鉛蓄電池の電圧の八割が相対論的効果から来るという話, 後者は基礎をおさえる話です.
最近, 数学+プログラミングの話でアルゴリズムを大きく離れてsicmutilsに取り組んでいます. 大元のFunctional Differential Geometryで最後に相対論が出てきましたし, 学生時代以来あらためてプログラミングついでに相対論を勉強するかという機運が私の中で盛り上がっています. ここで後半の基礎をおさえる話が出てきます. 学生の頃, あまり真面目に相対論をやらなかったので, 基本的な感覚がほとんど全く育っていません. 相対論を勉強するために必要な数学的体力は十二分にあっても物理的な基礎が全くありません.
何であっても, たいてい基礎は面白くありません. 相当それに慣れ親しめば基礎を面白く感じられるようになることはあります. それこそ一周回って「そういえばこれはどうなのか?」という感じで, 面白いことを考えられるようになるからです. 半端な状態だとなかなかこうはなりません. あと, わけのわからないうちに基礎を鍛えておくのも大事です. これもわけのわからない学部のうちにもっと基礎を鍛えておくべきだったと後悔していることがたくさんあります. なまじ基礎体力があがっているので本当に簡単な部分はすぐわかります. しかし一般に難しいモノであるほど少し進むだけで難易度も跳ね上がっていくので, 「このくらいは大丈夫か」と思う途中からはじめても全くついていけません. こうなると何だかんだ言っても一からはじめる方が早くなります.
sicmutilsもここまできたらもう少し使い倒せるようになりたいですし, 他にもいくつか関係してやりたいことがあるので, 何でどうやるといいか検討中です. やはりプログラムも合わせて馬鹿みたいに大量に計算する中で何かが見える, みたいなコンテンツが作りたいですね.
大学教養数学の線型代数と微分積分にまでどう最短距離で辿り着き, そこで遊び倒せるコンテンツを作れるかがずっと課題です.
2021-11-22 mon¶
数学デッサンというのをやっている瑞慶山さんが日本数学会の会誌に寄稿されていました.
- https://twitter.com/ru_sack/status/1457501593683709954
日本数学会の『数学通信』第26巻第3号に、「数学を描くということ-数学デッサンを通して-」という記事を書きました。 web版でも読むことができますので、どうぞご覧ください。 https://mathsoc.jp/publications/tushin/backnumber/index26-3.html
いわゆるアーティスト・芸術サイドの人で「数学は苦手」な人です. 数学との付き合い方にもいろいろあるので, ぜひ眺めてみてください.
それはそれとして, ここ最近は勉強会用にJuliaの有名なライブラリのソースコード読解をしていたり, 引き続きsicmutilsの確認をしていたりと当初の目的からは脇道にそれまくったことばかりしています.
並行して考えているのは, 線型代数(いわゆる行列とベクトル)のうち, 行列を遊び倒す方向で何か面白いコンテンツ作れないだろうかという部分です. 遥か昔は高校でも行列があり, 時々復活もするようですが消えることはよくあります. しかし行列はとても重要であり, ベクトルはよく出てくるので早いうちから行列で遊び倒せるコンテンツが必要だと思っています. 行列はそれこそ中学で出てくる連立一次方程式の解法と直結する対象でもあり, 導入自体は早い段階からできます. これをもっと面白くできないかがいまの課題です.
最近一部で話題の量子情報でも低次の行列をいじれるだけで相当遊べることはわかっています. ただ, どうしても量子力学的な意味はあっても, それを感じ取るには量子力学への習熟が必要ですし, 抽象論だと余計にわけがわからないでしょう. その辺をうめる面白計算問題も大事です.
行列自体はリー群やリー環といったこれまた数学的に面白い対象があるものの, 専門から遠いため, 低次元の行列で計算して遊び倒して面白い対象自体をよく知りません. まずこの辺を勉強することからはじめないといけないのも大変です.
「よくわからなくても計算それ自体が楽しい」こともよくあるので, 細かいことはおいてとにかく計算しようと持っていくのも大事だとは思っています. あとはせっかくプログラムも絡ませられるところなので, お絵描き系の話題とも何か関係づけたいですね.
中高生にどうすると面白い世界を見せられるのか, 苦慮しています. 計算をがんばっていたらいつの間にかとんでもない世界に来ていた, みたいなのがほしいです.
2021-11-08 mon¶
以前書いたかもしれませんが, アルゴ式というサイトが比較的最近できたのでシェアします.
- https://algo-method.com/
ここではプログラミングというかアルゴリズムをやろうという話もしています. もちろん数学のために.
このあたり, 数学とプログラミング, 計算機科学の狭間にあるテーマでもあり, 数値計算への応用上も決定的に大事な概念・議論・技術です. 最近ビッグデータと言われる中でアルゴリズムの効率化はどうしても必要です. 大量のデータを効率的に処理しないと計算が終わらないからです.
数的感覚を説明するためにアルゴリズムで10倍処理が早くなったとしましょう. 言語と処理内容にはよるものの, 簡単なプログラムだとミリ秒・マイクロ秒オーダーで処理が終わるので, これだと大した話ではありません. しかし1秒が10秒になる, 1分が10分になる, 1時間が10時間になる, 1日が10日になると言われたらどうでしょうか?
特にインターネットをやっていると1秒待たされるとかなりストレスなはずです. これが10秒になると「そんなに待っていられない」と離脱するはずです. 1分が10分だと仕事に影響が出るでしょうし, 1時間が10時間になったらその日のうちに終わる仕事が次の日に持ち越しです. データが大量になって処理が重くなるとこの問題が起きます. 10倍早くするのは洒落にならないほど影響が大きいのです. この問題をまじめに考えるのがアルゴリズムです.
全てのプログラミングの仕事でアルゴリズムが必要なわけではありません. 他の人がやってくれた仕事に乗っかるだけで十分なことも多く, 少なくとも私自身はアルゴリズムの改良が本質的なプログラミングをしたことはありません. (どうしても必要なパフォーマンス改善で同じ会社の他の人がやっていたことはあります.)
ここでは競技プログラミングで計算して遊ぼうというテーマもあり, その観点ではとても大事です. 無料で試せるので試してみて楽しそうなら本腰入れてみるといいでしょう.
数学の場合, 微分や積分の近似計算アルゴリズムの問題があります. 全くもって簡単ではないテーマです. ネタがネタなので簡単な本がなかなかない問題があるとはいえ, これをきちんと考えるのは数学自体の理解にとっても役に立つので, この点から数学にアプローチするのもいいかもしれません.
2021-11-06¶
ここに書くのをさぼりまくっていますが, ずっと数学・プログラミングをやっています. この間書いたsicmutilsによるFunctional Differential Geometryをずっとやっていて, 次のDiscussionでライブラリのメイン開発者の@sritchieさんとやりとりをしつつ進めています.
- https://github.com/sicmutils/sicmutils/discussions/380
単純に本のコードを再現しようとしていただけでしたが, どうもその中でバグを踏んだようです. sritchieさんが本の原著者ともやりとりしたそうで, もとのScheme版にもあるバグだとか. 改修がバリバリ進んでいて, CHANGELOG.mdにThanks to @phasetrと載せてもらえたようです.
- https://github.com/sicmutils/sicmutils/pull/381/files#diff-06572a96a58dc510037d5efa622f9bec8519bc1beab13c9f251e97e657a9d4edR19
このやり取りで, ライティングが基本になるプログラミング・数学関係のやりとりなら割と英語でも対応できることを改めて実感しました. 数学の専門的な話以外でスピーキングはまるっきり訓練しておらず, 吃音もあるので余計に心理的なハードルがあるのも手伝ってかなりボロボロです. それでもライティングは多少鍛えてきていたのがきちんと活きてくれて嬉しいです.
いい機会ですし, これからプログラミングの強化をしていく中で海外の開発者との英語でのやり取りも避けて通れません. 改めてライティング・スピーキング系の英語の勉強をはじめました.
数学・プログラミング系のライティングは単語も表現も定型文ばかりであまり勉強にならないので, 必ずしも私にとって面白くはないものの, バリエーションと使えるコンテンツ数を増やすために日常会話に近いタイプのコンテンツで勉強しています. リーディングとリスニングなら対応できる内容であってもライティング・スピーキングで, 同じレベルのコンテンツを選ぶと破滅することはよくわかっているので, 高校どころか中学レベルのコンテンツを使っています.
内容的に本当に面白くなくてつらいことこの上ありません. ただ, ここからはじめないと耐え切れないのも嫌というほどわかっているのでやらざるを得ません. 並行して自分が楽しめる系のコンテンツも整備しています.
世の中に私がほしいコンテンツがとにかくありません. がんばって自作しています.
書いたら書いたでやたら長くなりました. お互い, 地道にやっていきましょう.
2021-10-26¶
ここ最近の活動録的なモノも込めてシェアしておきます。
いま微分幾何(要は図形の話)をプログラミングとセットで議論している本を読んでいます。プログラミングと数学といえばいろいろなお絵描きは一つのテーマで、実際にCGアートという巨大な分野があり、その中でもジェネラティブアートのような独立した分野もあります。
微分幾何は微分を使って幾何(図形)の話をしようという分野で、まさに高校数学の直接の延長線上にあります。きちんとやると死ぬほど面倒ですが、お絵描きで遊ぶだけならまた話は違いますし、いろいろな応用のある分野でもあります。
他にも素数夜曲でせっかくSchemeをやったのでLISP系言語をもう少し触りたいとかいくつか理由はありますが、この部活で私が研究したいと思っていることに向けてやってはいます。
2021-10-24¶
この間素数夜曲のSchemeコードの写経結果をコンテンツとして追加しました. 普通のプログラミング言語とはまた違う形のエディタ支援がないと多分書けないので Scheme または Lisp 系はどうかと思うものの, これはこれで面白い言語ではあります.
それはそれとして, 私自身の勉強としてFunctional Differential Geometryという, これまたSchemeで書かれた本を読んでいます.
これもやはりSchemeで, しかもscmutilsというライブラリまで必要な面倒な本です. いろいろあって, これまたLisp系のClojureという言語でsicmutilsというライブラリを作り直している人がいたので, それを使ってClojureで書いています.
Clojureでは言語仕様上, Scheme・scmutilsと同じようにはできないため, sicmutilsで完全に同じようにはできないため微妙な違いがあります. ちょっとわからないところがあるため, いまGithub上で問い合わせをしたりもしつつ読み進めています. これも様子見なので何とも言えない点はありますが, せっかくLispに慣れてきたのでついでと思って読んでいます.
これを読んだらいいかげんJuliaで素数夜曲をやるだとか, もっとまともな言語で何かやる方向で考えています. ただClojureというかsicmutilsはLisp系の特徴をうまく使って書かれていそうで, プログラミング技術的に面白そうなのでもっと勉強したいとは思っています. まだいい感じのコンテンツに練り上げられてはいませんが, 調査は明らかに進むようになりました. 引き続きやっていきます.
2021-10-14¶
昨日の投稿でリンクが張れていなかったので改めて. https://news.yahoo.co.jp/articles/6eff4feb5832cda9ed76e349801b3def2db09a0b
ついでに書こうと書くのを忘れていたことを改めて書きます. これ, 「数学が役に立つ」とは言いますが, 数学だけできる人間が孤立して何万人いても意味はありません. 数学をどう役に立てられるか知っていないと意味がないのです.
この木村健次郎さんは工学出身の応用物理の人で, あくまで何か役に立つことをしようという気持ちがあります. https://ja.wikipedia.org/wiki/木村建次郎 電気電子工学で工学の基礎訓練を受けている以上, ソフト (プログラミング) やハードの知識も一定以上あるでしょう. この辺の合わせ技があったからこそできることで, 数学だけができる人間はお呼びではありません.
数学の能力が高い人間が協力する形で参加するにしても, 専門家同士でのコミュニケーションに大きな課題があります. もちろん世間的な意味でのコミュニケーション能力ではありません. お互い高度に専門に特化しているのでお互いの話す言葉は異界の言葉です. そのギャップを辛抱強く埋める気迫が必要です. その過程で相手の主張や気分を理解するために, 当然相手の分野の知見も一定以上勉強する必要があります. こういう異分野の勉強にも興味が持てる人でないと, そもそもこの仕事に参加できません.
他にもいろいろ問題があります. 時々数学関係者を単なる数学屋さんとしかみなさず, 数学だけやっていろ, 工学には口を出すなと言ってくる人もいるようです. そして工学的な解決部分こそが面白かったりするのに, そういうところに全く口を出させてもらえないとなると, 当然面白くないので数学関係者が以後参画を拒絶することもあったようです. 結局人が絡むところで理屈だけでは終わりません.
何かしら役に立つことがしたいと思うからこそ参加したのに, 数学屋として下っ端扱いされたらそれは不愉快でしょう. ここで数学以外にプログラミングをやっている理由の一つでもあります. 数学だけだと片手落ちの世界があります. 「そんなことは知らない. 俺は数学をやる」というタイプの活動は他でやっているので, ここではせめてもう少し役に立つ話もした方がいいのだろうな, と思っているというのもあります. 実際, ハードを作るときにも陰に陽にプログラミングは出てきます. もし興味がある方がいれば「組み込み系エンジニア」などで調べてみてください. 最近だと IoT というキーワードもあります.
今回はこんなところで.
2021-10-13¶
数学お役立ちニュースをシェアしておきます.
数学で命を救う…!? 数学の"超難問"を解いたら「痛くない乳がん検査装置」が実現した…!(現代ビジネス) Yahooニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/6eff4feb5832cda9ed76e349801b3def2db09a0b
コメントしている人もいたのですが, この辺の話ではよく個々人にとって数学が役に立つかと, 社会として役に立つか・意味があるかが全然違います. 数学に限らず, 誰かやってくれる人は必要だがそれは自分か? という問題です. ここはどちらかと言えば「そんなことは知るか. 数学をやるのだ」という部活なので, これ以上は触れません.
それはそれとして超難問といわれている「波動散乱の逆問題」について少しコメントしておきます. 一般に逆問題は日常のいろいろなところで出てきます. だいぶ前に抽象化についてくどくどといろいろ書きましたが, 抽象的に言えば「結果から原因を突き止める問題」が逆問題です. 人間関係でも「何か今日いつになく怒られた」という「問題」に対して, 「今日は機嫌が悪かったのだろうか」という原因の推測もあれば, 「今までの積もり積もった怒りが爆発した?」もありえます. こういう結果から何が原因だったのかを考えるのかが逆問題です.
他には何か病気になったときを考えましょう. 暴飲暴食や不規則な生活を続けていた, 遺伝的な要因があったなど, 原因があって病気になることもありますが, 特に原因がない (わからない) こともあれば, 偶然そうなってしまったこともあります. 例えばたまたま電車に乗っていて, 病気持ちの人からその病気をもらってしまったとか.
これを考えればわかるように, 一般に逆問題はその結果をもたらす原因がたくさんあるため, 答えがうまく決まらないことがよくあります. 逆問題が難しくなる原因の一つがまさにこれです.
変な言い方ですが, 学校の勉強が役に立ちづらい理由の一つもまさにこれです. 学校の勉強というか, 学校で出てくる問題はたいてい順問題です. ある原因に基づいてそこから出てくる結果が何かと問う問題です. しかし日常でよく問題にされるのは結果から原因を推測する方で, 「現実は数学のように答えが一つとは限らない」事案でもあります. (上で書いたように数学だからといって答えが一つに決まるわけもないのですが, それは別の話.)
書けることはいろいろあり, 書くべきこともいろいろあると思うのですが, 記事中の潮の話でわかるのかと思ったので簡単に他の視点からのコメントをしておきました.
2021-09-24¶
数学とプログラミング, 何というかアカデミックな基礎を全く知らない・勉強したことがないので, 何をどうやっても結局基礎からやらないといつまで経っても同じような (面白くない) ことをやらないといけなくなるので, いい加減腹をくくって基本的な勉強をしています. アルゴリズムとデータ構造もその一つです.
よくある本 (プログラミング言語?) だとどうしても飽きるのですが, 関数型言語だとやたら元気が出ることに気づいてしまったので, もう関数型言語系の本で頑張るしかないとこれまた腹をくくりました. 何がつらいかというと, 本・文献の数が少ない・素人が情報を探しにくいという決定的な欠点があるのです. しかしどうがんばっても肌に合うのがこちらで, これでないと続かないのでやるしかありません.
並行して比較的数学に結び付けやすそうな本として素数夜曲を読み始めました. Scheme なのがつらいのですが, 頑張って読みます. 必要に応じて Haskell コードも書きながら進めます. ただ, 数学系プログラムに行くまでがとにかく長いので, これもまた腹をくくる事案です. がんばります.
そういえば, 語学でも「英語はどうしても駄目なのだがフランス語なら楽しめる」みたいな人もよくいるようです. これのプログラミング言語版をいま体感しているのでしょう.
2021-09-16¶
いま Twitter で過去のトラウマレベルの記憶を思い起こすツイートを見かけたので, トラウマの記憶とともにシェアします.
- https://twitter.com/numachi11111/status/1438154466402783233
そういえば、先日、卒業生(アルバイトできている大学生)にヒアリングしたこと。 sin(90°-θ)=cosθ とか sin(180°-θ)=sinθ とかは、文系に進んだ生徒はほとんど暗記していて、理系に進んだ生徒はほとんど「覚える必要ないでしょ」と言っている。 まあつまり、そういうこと。
これは単位円を書けばいいのですが, 高校時代, 図形に対する感覚が致命的に弱くて, 試験中などの緊張した状況下でよくパニックになっていたため, 覚えていた加法定理から毎回機械的に導出していました. いま改めてのんびり考えたら何でもなくさっと頭の中で図形的な処理はできて, 何で高校の頃これがさっとできなかったのかと不思議なくらいなのですが, 高校の頃, 本当にこれができませんでした.
ついでに言うと, 私は大学院で数学科に進学したくらいなので, 世間的に言えば数学への耐性は尋常ではないほどあるはずですが, 高校の頃, (当時の) センター試験の順列・組み合わせ・確率の問題さえ解けないくらいこれらの分野が苦手でした. いまでもこれらの分野に苦手意識があります. ちなみに大学の数学科の数学としての確率論 (誤解を恐れずに言えば統計学で出てくるような確率論) には耐えられます.
高校の順列・組み合わせ・確率論も今, そして落ち着いてやればもっと何とかなると思うのですが, 今でも触れたくないレベルでこの分野やりたくないですね. 大学受験時「こんなに数学ができないのに数学科は無理だろう」と断念した程度にトラウマがある分野の一つが中高での順列・組み合わせ・確率論です.
いい大人になってまでどれだけつらい思いをしたか, これだけ書ける程度に嫌な記憶があります.
今でも大学受験の季節になると思い出したくもないのに思い出すほど, 大学受験の数学が苦手で苦手でたまりませんでした. 大学の数学に触れて「これなら自分にもできるかも」と思ったほど, 私にとって中高までの数学と大学の数学は別世界です.
この間, 中高数学に初学者の視点で触れることはもう無理だとは書きましたが, どれだけ苦杯を喫したかに関しては悪夢のレベルで記憶を持っています.
こんなつらい記憶があるというのを語りたい方, ぜひコメントしてください.
2021-09-05¶
先週金曜, 語学の勉強会をやったのでシェアしておきます.
- 第36回 第18文の多言語比較・読解 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会 https://youtu.be/LtsklG8gJ7k
- 第6回 数学・科学の英語記事を読もうの会 The Lost City of Pompeii https://youtu.be/5tHiw-VmgtU
ネタが物理・科学系なので広い意味では理科・数学です. どちらも英語がメインで, 英語または語学・言語をもっと深くかつ多角的に見るため, 英語以外のいろいろな言語も紹介しています.
大事なことなので何度も書くのですが, 物理をはじめとした科学はふだん自然言語の守備範囲外の現象を捉える必要があります. 自然言語で捉えられない部分は数学やプログラミング言語のような言語も使いますが, 最終的に人間に伝達する必要があります. 自然言語で処理しきれないからこそ数学やプログラミング言語まで駆使していろいろやったというのに, それを最後に自然言語に翻訳する必要があるわけで, 自然言語に関する能力を研ぎ澄ませなければうまくコミュニケーションできません.
この言語センスを研ぎ澄ませるためにいろいろな言語に触れ, それらの世界観に触れるのが多言語に触れる目的です. この「多言語」には数学やプログラミング言語も含んでいます.
ネタからしても数学・科学なので, 興味があればぜひ上記動画も見てみてください.
2021-08-28 口内炎ダイエット¶
今日は少しダイエットの話をします. 最後に広い意味で数学・物理・プログラミングにつなげます.
先週口内炎ができてしまって, 食欲はあっても食べると痛いことから食事量が減っていて, そのために 1.5kg 程度痩せたため口内炎ダイエットとでも言うべき状況になっています. 単純に食べる量が減るとダイエットになることを改めて実感しています.
私は中学三年で白血病になっていて, もう完治はしているのですが半年に一度程度定期通院があり, 四月の定期通院でも新型コロナでやはり肥満がリスクだから, と言われてここ半年程度, 多少ダイエットをやっていて 5kg 程度痩せました.
実は東日本大震災のときもしばらく外出しない時期があって, そこで太った分もいまだに減らせていません. BMI 的な標準体重から 10kg 程度多いので, その水準までは減らすべしと言われています. とはいえ, ダイエットはどうしても気乗りがしなかったというか, どうしても途中で断念していました.
いま少なくとも半年続いている理由として明らかにあるのは, これを理科の実験だと思うようになったからです. ダイエットと思わず自分の身体での実験だと思えば続くことがわかったとも言えます. これは極度に人によるので全人類に勧められる考え方ではありませんが, こう思うと進むタイプの人間もいるはずなのでちょっと書いてみました.
ちなみに実際にやっているのは毎食お腹一杯食べない (食事量の制限) です. ふだんどうしてもお腹いっぱいまで食べてしまっていたので, 明確に腹八分目を心がけています. あと去年の給付金で買ったエアロバイクを毎日朝夜一時間ずつやっています. これは PC で作業しながらなのでむしろ一時間があっという間に終わります. このセットでゴリゴリ体重が減っています.
最近やはり新型コロナでジムをやめてしまったものの, やはりこの線からいくと筋トレも肉体改造みたいな視点よりも, 実験という視点を強めると私は続くようです. 筋トレも理屈に関してはいまだにいろいろあるようですが, 栄養と休養 (睡眠) をきちんと取った上で的確にトレーニングすれば, 筋肉がつくこと自体は最早疑いなく, 自分の身体で実験すると楽しいと思っています.
私の学生時代の専門は量子力学の数学なのですが, 量子力学の物理に関して実験などやりようがありません. そこでせめて数値実験できないか, そうした視点からプログラミングを採用しようと思い, それも大変なのでごく面倒なライブラリやら何やらがいらない競技プログラミングや算数で遊ぼう, と落ちてきたのがいまの状況です. 少なくとも私はプログラミングの勉強も数学・物理に絡めないと進まないことがよくわかっていて, ダイエットや筋トレでさえそこと絡めればうまくいくことが改めてわかりました.
もしあなたが数学やプログラミングを毎日続けられないなら, 数学・プログラミングを広く理科・科学だと思い, ダイエットも数学だと思って取り組んでみてはどうでしょうか. 好きでもない学校の勉強をさせられているわけでもないので, ダイエットも数学だと強弁して適当にやってください.
2021-08-09¶
まずは全体像を掴もうと思ってアルゴリズムの本を雑に眺めているのですが, こういうことをしていると, 学生時代にとにかく物理を一通り, それなりに体系的に叩き込まれたご利益を思います. 詳細まで含めて全体的に何となくわかっているので, 不明点だけピンポイントにやってもそれ程問題なく, しかもピンポイントの勉強から全体の理解も勝手に深まるご利益があります.
情報・計算機関係について, 雑にプログラムの読み書きこそできても, アルゴリズムやデータ構造, それらの実装と具体的な問題への適用がまるでできません. ProjectEuler にある, 規模が小さいところなら誰でも力づくで処理でき, おそらくちょっと気の効いた中高生ならさっとプログラムも書けそうな問題に手が出ません. 実際, 競技プログラミングで遊んでいる中高生もいますし, 私よりも明らかに知識と経験がある中高生が一定数います.
競技プログラミングは中学生どころか小学生でもわかるような問題でありつつ, 下手なプログラムを書くと, いまのコンピューターでは一生かかっても計算が終わらないような問題もあるのが凄まじいといつも思います.
早く問題を解いて遊びたいのですが, まとまって勉強しないとまた何度も基礎から面白くもない勉強をやり続ける羽目になるので, いい機会だから固め打ちで苦行に耐えます.
2021-08-08¶
いまアルゴリズムの本を読んでいたのですが, 「グラフの問題として (抽象的に) 捉え直すことで見通しが良くなる」という話が出てきました.
これはとても大事でかつなかなか人に伝わらないところで, 適切な理解度を持った人に適切な抽象化をかけて伝えると理解が一気に深まることがあります. 抽象的だからわかりにくいとよく言われますが, 逆に具体的だからわかりにくいこともあります. なぜかといえば具体的すぎて余計な情報が多く, 大量の情報が処理しきれず混乱するのです.
数学では吉田耕作による次の伝説の言葉があります.
具体的でわかりにくいので抽象的に話してください.
あくまで相手にとって適切なレベルで話す必要があります. 抽象化に強い人でも, 慣れていないところで抽象化された話をされてもまず理解できません. コミュニケーションの齟齬が起きる原因でもあります.
2021-08-05¶
今日は Project Euler の 18 番を考えていました.
問題文に, 類題の問題 67 では brute force が通じないと書いてあり, そこまで考えるならいい感じのアルゴリズムを考えないといけないようです.
アルゴリズム, ちょこちょこ勉強しては挫折しているので, そろそろ本腰を入れるべきときであるような気もします. 大事なのはわかっているのですが, いまひとつ身が入りません.
基礎が全く身についていないので, これまでの数学・物理学習からしても, 自分で何か工夫するよりもまずはきちんと定石を身につけた方がいいのだろうとも思っています. がんばってちびちび本を読みます.
2021-08-04¶
Project Euler の 17 番を Julia で解きました.
昨日やってあったのにアップするのを忘れていました. どう考えてもいろいろな条件わけは必要ですが, もっと綺麗に書けるだろうと思います.
正解がわからないところで微妙なバグを叩き込んでしまい, かなりハマりました.閉じる
2021-08-03¶
Project Euler の 17 番を Julia で解きました.
昨日やってあったのにアップするのを忘れていました. どう考えてもいろいろな条件わけは必要ですが, もっと綺麗に書けるだろうと思います.
正解がわからないところで微妙なバグを叩き込んでしまい, かなりハマりました.
2021-08-02¶
Project Euler の 16 番を Julia で解きました.
これもあっさりです. まだ入門用なのでこんなものでしょう.
2021-08-01¶
Project Euler の 15 番を Julia で解きました.
基本的なライブラリは使う方針にしたので, using Combinatorics
を使って瞬殺です.
2021-07-31¶
Project Euler の 14 番を Julia で解きました.
コラッツ予想に関する問題で面倒くさそうと思いましたが, バグなく一発で書けました. 小さいプログラムでもバグなく書けるのは珍しいので, 自分でびっくりしました.
問題のページにも書いてありますが, コラッツ予想はいまだに未解決の問題です. いわゆる文字式アレルギーのある人にはきついとは思いますし, 数列がわからないとなるとつらい部分もありますが, このくらいの式なら何とか読めるという人なら一定数いるはずです. 理系の高校生ならまず間違いなく読めて理解できるでしょう.
この高校生でもわかるような内容であるにも拘わらず, 有名な未解決問題が残っているのが数論・整数論の面白いところです.
またプログラムを書いて数値的検証がいくらできたところで, 無限個の数があるので永遠に完全解決できません. この辺も数学の面白いところでしょう.
数論の問題はプログラムを書いて数値検証して遊ぶのにいい問題がたくさんあると聞いています. そのうち紹介したいとは思っています. 情報も集めないといけないですね. がんばります.
2021-07-30¶
Project Euler の 13 番を Julia で解きました.
問題 13 はやたら簡単で拍子抜けしました. ただ競プロ系でよくある話として, 出てくる数が大きくて Int はもちろんのこと, Int64 ですら処理できないことがあります. 今回も BigInt を使いました.
2021-07-29¶
最近確率とリー環ばかりでプログラムを書いておらず, いい加減よくないと思い, 今日ようやく Project Euler の 12 番を Julia で解きました.
素因数分解があるとき毎度素因数分解のプログラム自体を書いていたのですが, 面倒になってきたので素直にライブラリを使うことにしました. F# だと遅延評価の Seq などを使いたくなるところ, 脳死でwhileで流して処理したら, 素因数分解ライブラリを使ったのと合わせて比較的すぐにできました. ライブラリは偉大.
プログラミングによる算数もそろそろ復活させましょう.
2021-07-21¶
久し振りにまともに投稿します. 毎日しこしこと数学はやっていますが, 最近はプログラミング (数値計算・ProjectEuler) もさぼっているというか, 趣味の数学が楽しくてそちらで時間を溶かしています.
プログラミングをサボりがちな理由は明確で, 凄まじく時間が溶けるからです. この間他言語での書き直しではなく新しい回答を作っていたら, 二日くらい溶けてしまいました. しかも没頭してしまって, 途中でやめると気持ち悪いので寝不足になったり, 仕事終わりの夜寝る前にやるので寝るときも思考が止まらずそもそも眠れなくなってしまう問題がありました.
ただ, いろいろな理由からプログラミングはしないといけない面もあり, やりたいこともありで困っていました. そんなときは人を巻き込むのがベストだというのがわかっているので, 別途やっている統計学・機械学習の勉強会で, Julia による数学プログラミングの話を勉強会のネタにすることにしました.
やはりやりたいことがあるなら人を巻き込むのが一番です. 自分一人だけではなく, 適当にやると人の時間を無駄遣いさせてしまって罪悪感・責任感が出るからです.
というわけで Julia をやっていきます. 候補は次の本.
- スタンフォード ベクトル・行列からはじめる最適化数学 https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065161968
- ipynb 日本語訳 https://github.com/tttamaki/julia_companion_jp
- Kwong, HANDSON DESIGN PATTERNS AND BEST PRACTICES WITH JULIA
興味がある方いたら勉強会招待するので言ってください. ただ, この勉強会, 数学・物理だけではないとはいえ, 理工系の修士卒以上の人しかおらず, プログラミングについても基礎の話はしません. 参加される方はそのつもりで.
もっと緩い話もしようと思っているのですが, 可換環・代数・確率論が楽しくて時間が溶けっぱなしです.
2021-07-08¶
ProjectEuler の問題 11 を解いていました. 次の問題です.
大した問題でもないのですがしょぼいバグ潰しで 3 日くらいかかりました. 逆にいうとこの程度の算数の問題でも, プログラムをきちんと書こうと思うととても大変なのです.
これは最大値を求める問題です. そして最大値または最小値を求める問題はたくさんあります. まとめて最適化問題と呼ばれることがあり, 数理工学での一大分野にもなっています.
最大・最小というと高校での微分積分, 特に微分を思い出す人もいるでしょう. 実際, 最適化問題での基本的な手法の一つです.
これは経済学にも応用があります. 経済学でも効用最大化問題と呼ばれる問題群があり, ここで微分積分を使います. 今回の ProjectEuler の問題はこうした問題のごく簡単なバージョンとみなせます.
もちろんこの問題が解けた程度で何か役に立つわけではありませんが, 最大・最小問題の射程距離ということで一応コメントしておきます.
2021-07-05¶
以前文章にも型があるという話をしました. もちろん数学的な文章にも型があり, その型に沿って読み書きしないと理解もしづらければ, 人に伝えるのも難しいのです.
プログラミングでも同じような話はあります. Twitter を見ていたら流れてきたので, 一つ記事をシェアしておきます.
- 伝わる文章作成の基本を学ぶための記事・学習コンテンツのまとめ
- https://qiita.com/flyaway/items/b6682dbf116454a6814a
この記事のタグに「テクニカルライティング」というのがあります. テクニカルライティングは名前の通り, 技術系の人間のための文章作法でいろいろな本も出ています. 特に英語では一大分野になっていて, 私も学生時代に勉強したことがあります.
時々型をやたら嫌う人がいるようなのですが, 型なしの世界はそれ程優しい世界ではありません. 型なしの世界ではいわば無から何かを生み出す必要があり, これができる人間は尋常な人間ではないのです.
例えば創造性の塊のように思われている (はず) の芸術の世界であっても型は非常に大事で, 俳句などはその権化です. 五七五の厳しい文字数制限がある上で季語まで盛り込まないといけない, 理不尽としか思えないような言語芸術ですが, この制約の極致で生み出される対象はそれだけで一定の力を持ちます.
漫画の HUNTER×HUNTER で制約と誓約みたいな話がありました. たぶん, 厳しければ厳しいほどそれが力を持つという一種の信仰があって, この手の信仰は数学や物理にもあります.
前から言っているように俳句や芸術がわかったとしても数学や物理ができるようになるわけではなく, その逆もまたしかりですが, 同じ人間のやることなので思考の基盤はどことなく似る部分があるようです. きちんと頭を鍛えていれば, 鍛えた部分は他の何にでも使えるはずです. 数学を勉強すると論理的思考が身につくとかいうやつも多分この一種でしょう.
2021-07-04¶
今日の話は次の 2 つです.
- ProjectEuler
- WolframAlpha
ProjectEuler¶
ProjectEuler の新たなプログラムを作りました.
- https://github.com/phasetr/mathcodes/blob/master/ProjectEuler/00009_Special_Pythagorean_triplet/01.lisp
今回も Common Lisp です. 公用語を Python にして Python で書いた方がいいとも思うのですが, 面白くなくてやる気が出ません. 何もやらないよりはましと思い, やる気が出る言語として Common Lisp にしています. Python 版は既に書いているので必要があればそちらを見てください.
WolframAlpha¶
全くの別件で自分の勉強用の数学ノートを毎日作っています. 最近は代数幾何のための可換環をやっていて, 自力でプログラムを書くのが面倒なので WolframAlpha でお絵描きしました. 次の URL にアクセスするとその「絵」が見られます.
- https://www.wolframalpha.com/input/?i=x%5E3-y%5E2%3D0&lang=ja
これは$#x^2 - y^3 = 0$ で定義される有名な曲線です.
細かな話はともかく次のような曲面 (3 次元図形) も簡単に描けるオンラインのソフトです.
- https://www.wolframalpha.com/input/?i=z%3Dx%5E2%2By%5E2&lang=ja
リンク先に「例を見る」のリンクがあります. いろいろな例と使い方の解説があって, 自分でお絵描きしなくてもリンク先を辿っていくだけでいろいろなグラフが見られます.
- https://ja.wolframalpha.com/input/?i=%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88+sin+x+cos+y&lk=3
この辺は見ているだけでも楽しいでしょう. 特に「ランダムな例を使う」をパンパンクリックしているだけでもいろいろな例が出てきます. 人の顔を描いてくれるといった謎の機能もあります.
- https://ja.wolframalpha.com/input/?i=Jay+Leno%E3%81%AE%E7%B7%9A%E7%94%BB%E3%81%AE3D%E5%87%BA%E5%8A%9B
これまた人の趣味によりますが, いろいろな式を眺めて楽しむ系の趣味があるなら次のページも楽しめるでしょう.
- https://ja.wolframalpha.com/input/?i=%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%81%AE%E6%A5%B5%E9%99%90%E8%A1%A8%E7%8F%BE
上の 3 つは「ランダムな例を使う」を連打して出て来たページです. 毎日ランダムな例を叩いて遊ぶ, みたいな遊び方をしてもいいかもしれません.
2021-07-03 週末プログラミング部¶
最近部活作成が完全解放されたとのことで, 新たに週末プログラミング部ができたという話をしました. そちらで Google Colaboratory による入門的なコンテンツを作りはじめるとか何とかいう気配を感じたので, プログラミングを基礎からきちんとやりたい人はぜひ入ってくるといいでしょう.
- https://energeia.app/club/274
プログラミングコンテンツとは全然関係ないですが, そこでフォン・ノイマンと彼に関わる本の紹介があったので, ちょっとフォン・ノイマンの話でもしようかと思います.
まず, 私の学生の頃の専門はフォン・ノイマン環と, その量子統計・場の量子論への応用だったので, フォン・ノイマンは分野の始祖です.
何でどう考えるか難しいところはあるにせよ, 歴史上の人類の天才トップ 3 に入れる人もいるほど, フォン・ノイマンは人類クラスの化け物です. 数学だけに留まらず数理科学というくくりで異様な業績があり, ノイマン型コンピューターというときのノイマンがフォン・ノイマンですし, 経済学などでもよく出てくるゲーム理論もフォン・ノイマンが創始した分野です. 一つの分野で人類クラスの貢献をするだけでもすごいのに, 複数分野でやっているのが人類クラスの人間である証明です.
これまた関係ないですが, 今月面白そうな量子力学の教科書が出るので, その勉強もしたいと思っています. この部活からするとあまりにも外れる対象なので, さすがにここでは触れませんが楽しみです.
フォン・ノイマンは量子力学でも観測の理論で先駆的な仕事をしています. それ以外にも量子力学の数理に関して, ヒルベルト空間論を駆使して量子力学の数理の額縁を書いた存在として有名です. ちなみにこの額縁に具体的に絵を描き入れはじめたのは日本人数理物理学者の加藤敏夫で, 修論で加藤-レリッヒの定理という加藤敏夫謹製の定理を使っていて, 加藤敏夫も足を向けて寝られない存在です.
さらについでにいうと, ヒルベルト空間のヒルベルトは, ゲームのゼノサーガシリーズでヒルベルトエフェクトなどとあるヒルベルトの元ネタの人のはずです. ヒルベルトも数学者として人類クラスの化け物で, 一般相対性理論でのアインシュタイン-ヒルベルト作用のヒルベルトもこのヒルベルトです.
週末プログラミング部で, 最後に高橋昌一郎の本への参照があったのですが, この人, 数物系だと「いい加減なことばかり書いていて本当にやめてほしい」と悪評が極めて高い人です. 次の記事とか.
- http://blog.livedoor.jp/kensaku_gokuraku/archives/1575473.html
「不完全性定理が知性の限界を示した」とかいうよくある話, 数学サイドでは「知性の限界が示されたのは人類ではなく哲学者だ」と言われることがある程, この手の哲学談義は嫌悪の対象です. 「フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔」も地雷なのではないかと非常に強く疑っています.
ちなみに日本の科学哲学界隈, 物理や数学での知見に敬意を払っている痕跡がろくになく, 「これが知を愛すると称する分野の人間の言動か」と, 一般に数物系の人達から蛇蝎のように嫌われています. 物理学者のブチ切れとして谷村省吾さんあたりを紹介しておきます.
- https://bn.dgcr.com/archives/20191122110000.html
一応書いておくと, 少なくとも海外には並の物理学者・数学者より物理・数学ができるタイプの (科学) 哲学者もいます. 例えば Hans Halvorson.
- https://www.princeton.edu/~hhalvors/
学生時代, ふつうに数学・数理物理のプレプリントを書いていて, 所属が哲学科なのはいろいろな都合によって数学の人が哲学科に所属しているだけだろうと思ったら, 全然そういう話ではなく本物の哲学者だったようで, 世の中には化け物がいると衝撃を受けました.
今回やたら長くなった上にあまりこの部活のテーマとしての数学っぽい話ではなくなってしまいました. 次回からはもとのテーマに戻します.
2021-07-01 アナウンス¶
今日はいくつかアナウンスします.
- プログラミングの新コンテンツ
- 他の部活の紹介
- 明日のイベント案内
プログラミングの新コンテンツ¶
先日 Common Lisp で書いた Project Euler の 8 問目を F# で書きました.
- https://github.com/phasetr/mathcodes/blob/master/ProjectEuler/00008_Largest_product_in_a_series/01.fsx
F# 好きなのですが, いろいろあってメイン言語を Julia と Common Lisp に切り替えたため, 久し振りに書いたせいでやたらはまりました. しばらくは大人しく Julia と Common Lisp に集中した方がいいのでしょう.
他の部活の紹介¶
またプログラミング関係の部活ができたようです.
- 週末プログラミング部
- https://energeia.app/club/274
プログラミングに興味がある方がいたら参加してみてはどうでしょうか. あとイベントを眺めていたら, これまた他の部活の次のようなイベントがありました.
- ゲームを作りたい人、募集します。
- https://energeia.app/event/334/detail
トップ固定記事に張った LP にも書いたように, ゲームでのプログラミングに興味が持てなくて, 純粋な計算としてのプログラミングしかできなかったので参加予定はないのですが, これも興味がある方は参加してみてはどうでしょうか. 一応プログラミングも対象に入っているようです.
明日のイベント案内¶
明日は 21:00-22:00 に英語の勉強会をやります.
- 数学・科学系の英語記事を読もうの会
- https://energeia.app/event/319/detail
説明は上記ページを見てください.
20:00-21:00 で別の勉強会をやっていて, その続きとして 21:00-22:00 の勉強会をする形です. もし興味があれば 20:00 からの勉強会に参加してもらっても構いません. ただ, もう 30 回くらいやっていてその続きとして進めるので, 必ずしも新規参加の方には配慮できないのでご了承ください.
2021-06-30 新コンテンツ作成¶
またコンテンツを作ってみました.
興味のある方はどうぞ. たぶん 5 分くらいあれば読み切れます. 細かいところにこだわらず, 「そんなものか」と思って大雑把に眺めてみてください.
あと次の YouTube のリストには私が作った数値計算の動画を載せてあります。
見ているだけで面白いのもあれば, 「何これ?」みたいなのもあるでしょう. 次の動画からのいくつかは, 最近新型コロナのシミュレーションでよくテレビにも出てくる流体力学に関わる計算結果です.
もちろんスパコンなどの大鉈がなくてもできる範囲の簡単な計算でしかありませんが, 私が中高生の頃には手も足も出なかったような計算とお絵描き・アニメーションが, それなりに簡単に作れるようになっています. この部活で解説しきれるような話ではないのですが, 少なくとも私は見ているだけでも楽しい結果です.
この動画を見るだけでも「数学に触れた時間」だと思っています. ぜひいろいろな遊び方を, それも長続きする遊び方を見つけてください.
2021-06-21 ゲームのように数学を見る¶
どう見立てるといいかは人によるので例えが気に入った人だけ頭に入れてください.
次のような意味で数学をゲームのように見立てると楽しいという人がいます. 何かというと, 定理や命題を封印された武器とみなして, 証明によって定理や命題を倒せばその武器を使えるようになるとみなすのです. わかる人はロックマンのボスと対応する武器のように思えばいいでしょう. 以下, ロックマンの例えを使います.
ロックマンの武器が面白いのはそれが特効を持つ相手がいることです. あるボスを倒すにはそのボスに対して特効を持つ武器を先に持っておくと楽です. 数学で言えば, ある定理を証明するのに他の定理を使うような状況にあたります. 本を読み進めるとそれだけ使える武器が増えていき, 倒せる敵 (証明できる定理) が増えます. いわゆる強敵は証明が難しい定理です.
必ずしもきちんとはまるわけではありませんが, ゲームからの類推が効く局面は他にもあります. 例えば RTA (Real Time Attack) 概念は, 目的の定理まで「最短時間」でどう辿り着くかであり, 最短時間は例えば必要な定理をなるべく短くすればよく, 本で言えばなるべく薄い本でその理論を片付ける攻略法と言えます.
いろいろな縛りプレイも考えられます. 例えば証明で背理法をいっさい使わないというスタンスで進めてもいいでしょう. これを極限まで推し進めると数理論理の直観主義論理にもつながります.
何にせよ自分なりの楽しみ方を見つけてもらわないことには数学を続けられません. いろいろ工夫してみてください. 自分はこうやっている・こう考えているというのがあればぜひ教えてください.
2021-06-16 セガと数学, 線型代数¶
ゲームと数学¶
昨日 Twitter で話題になっていたセガのツイートを紹介します.
これはゲーム開発にも数学が使われているという話で, セガの社内勉強会での 150 ページ越えの数学資料をセガ公式がアナウンスした, というツイートです. 数値計算・シミュレーション系のプログラマーには有名な話で, 行列による回転で起きる不都合を四元数で回避します. ゲームの中でも特に CG に絡む話でもあり, CG が絡むエンタメにはだいたい影響があります.
役に立つ話をする理由¶
私自身は世間的な意味で役に立つ数学はほとんど全く興味がないので, こういう話をするモチベーションは特にないのですが, 役に立つというか, ある程度身近な話題として捉えられないとそもそも興味さえ持てない人もいるので, そのためにいろいろ書いています.
毎日 2 秒でいいから数学してほしいと書いているのは, 何もゴリゴリ計算してほしいとかいうわけではなく, こういうネタに触れるだけでもいいので, とにかく数学に触れ合う習慣を作ってほしいからです. ずっと触れ合っているとそれだけで親しみが増すからです.
数学を好きになってくれなくても構いません. せめて毛嫌いしてそれを他人に伝染させないでほしい, そのくらいの気分もあります.
ツイート埋め込み¶
サインコサインタンジェント、虚数i…いつ使うんだと思ったあなた。実は数学は、ゲーム業界を根から支える重要な役割を担っているんです。
— セガ公式アカウント?? (@SEGA_OFFICIAL) June 15, 2021
今日は、セガ社内勉強会用の数学資料150頁超(!)を無料公開。#セガ技術ブログ クォータニオンとは?基礎線形代数講座 #segatechblog https://t.co/OEHDwlJ9Vz pic.twitter.com/eBUG2YJwH1
ゲームでは、膝や肩など、3次元の回転を4次元を使って表現するクォータニオン計算を使用することが多いため、ゲーム開発者はよく使う数学なのですが、仕組み理解のため社内勉強会が開かれたのでした。
— セガ公式アカウント?? (@SEGA_OFFICIAL) June 15, 2021
「大人の学び直し」してみたい方、ぜひ→https://t.co/OEHDwlJ9Vz #segatechblog #セガ技術ブログ pic.twitter.com/CHb9sqE3pi
エンジニアのみなさん、ゲーム開発に興味のあるみなさん。セガでは共に技術力を高め合い研鑽していていける方を募集しています。 活発な技術知見交流やバックヤード部門も加わるゲームジャムイベントなども。興味がある方は下記サイトにアクセスしてみてくださいね。 https://t.co/qADRDRNpMG
— セガ公式アカウント?? (@SEGA_OFFICIAL) June 15, 2021
2021-06-15 適切な指導を受ける意義¶
その 1¶
語学ネタではありますが, 勉強する上で大事な話です.
ネットはおろか本, それも辞書でさえいい加減な話が書いてあるという厳しい話です. 変な話, ネットはもちろん本も変なのがありますが, 辞書さえそうなのかと言われると, 語学・言語学をどう勉強したものか途方に暮れます.
自分のペースでじっくり読むのも大事である一方, プロに一言コメントをもらった方が早いこともたくさんあります.
これは実際, 私自身, 理論物理学者に数学を教えていて, 数学科で数学をやった人なら誰でも知っている, もしくは持っている・育ててきている共通認識をさらっと言うと, それこそが一番響いたことが何度もありました.
私は人の話を聞いてもたいていすぐにはわからず, 3 年してようやく何となく気分が掴めてきた, くらいのことの方が多いのです. 人の話を聞くというか教わるときは, その人の話を聞いていて楽しいか, 勉強のモチベーションがあがるかどうかが判定基準で, わかりやすさなどはほぼ度外視していて, 「人に教える」みたいなことについても同じように考えていました.
しかし実際そうでもないなと思いはじめていたところで, 語学・言語学の勉強・コンテンツ制作を本格化させつつある中, そもそも正しい情報を得ること自体に高度な専門知識が必要だと改めて痛感しています.
部員のみなさんも, ぜひ自分に合ったよい指導者を見つけてください. 以前書いたように状況に応じて適切な指導者も変わります. 何かあれば相談してもらえれば, 適当な範囲で答えるのでコメントなり何なりしてください.
ちなみに, 言語はめちゃくちゃですが, ちょこちょこと Project Euler のプログラムも書いています.
あと次のページから飛べるコンテンツは中高数学についていくつかまとめているので, 必要に応じて適当に眺めてみてください.
勉強会の案内¶
こっちでも募集しておきましょう。 2か月くらい、Wikipedia の数学・物理系の英語記事を読んでみようという企画のテストをしようと思っています。 大元のモチベーションはここ。
これについて参加希望の人と少し話していたら、理工系の英語の教材としては、科学雑誌の読み物記事などもどうか、英文解釈の良いトレーニングにもなるのでは?という話が出ました。
- https://eikaiwa.dmm.com/blog/learning-tips/medium/science-magazine-recommend/
- https://www.nikkei-science.com/?cat=8
まだゴリゴリの数学・物理の話にするか、 上の記事中の記事(アメリカで小学校の授業で教材として使用されることもあるような雑誌記事など)のどれかにするか考え中です。 特に後者に関しては部員の方も興味が持てるかもしれないと思ったので、 一応募集しておきます。 興味がある方は適当にコメント・連絡してください。
2021-06-13 覚えるための文法¶
今日のコンテンツ¶
- Project Euler https://github.com/phasetr/mathcodes/tree/master/ProjectEuler
- 仮題 プログラミングのための中学数学 0020 大目標: 文字利用と関数の理解 https://phasetr.com/archive/math/hfa/jhmfpg/0020/
前者は特に解説なしで Project Euler のプログラムだけ置いてあります. もちろんそのうち解説はつける予定ですが, まずは解答だけ書いているのだと思ってください. ふつうの語学でも多言語と言っているので, ここでも Python, Julia, F#, Common Lisp の多言語で解答を作っています.
いろいろ考えるのも大変なので本質的にはほぼ同じ内容ですが, 見た目としては Python・Julia, F#・Common Lisp の組がお互いによく似ていて, Python・Julia 組と F#・Common Lisp 組はかなり違って見えるのではないかと思います.
後者は中学数学のコンテンツを作りはじめてみました. プログラミングを絡めることが前提なので, その時点でかなりハードルが高くなりそうな気はしますが, とりあえず作ってみないとはじまらないので. 他にも式が一切ない連携・補助講座もあるので, 必要に応じてそちらも受講してみてください.
語学の話¶
ここ最近, 私の中での最大の関心事が語学なので, 引き続きその話をします.
ドイツ語・ロシア語の最低限の読み方, 完全に把握できたようです. こんな自明なことでドイツ語で 5 年はまったことを思うと, やはり適切な指導者につく重要性を痛感します. さすがにこの程度に 5 年かけることはなかったでしょうに.
覚えるための文法¶
最近ロシア語をやっていて, 改めて単語を覚えるためにも文法が必要と痛感しています. 数学でも同じ事情があります. ここでは語学になぞらえて覚えるための理解という話をします.
英語で move という動詞があります. もちろん「動く」という意味の自動詞です. これに対して派生語として moves, moved, moving, motion, mobile などがあります. 日本人は何だかんだで英語に一定以上触れているので, これが派生語であるとわかる人はかなりいるはずです. しかしこれは凄まじいことなのです.
例えば motion. もともとは move で 4 文字だったところ, 後半の 2 文字を削って -tion に置き換えているわけで, 付加した -tion の方が語の要素として大きく見えるくらいです. それでも意味の本体が残った mo- にあると判定できるわけで, これは尋常なことではありません.
特にロシア語をやっているときにこれを痛感します. ドイツ語やフランス語は英語にかなり名残があるので, ある程度までは英語の感覚で類推ができます. しかしロシア語になるとキリル文字の呪いとスラブ系に対する耐久力のなさとで, この類推力が破綻します. いまその類推力を上げるために文法を大雑把に勉強しています.
上の英語のルールは動詞を名詞化するときには, 適当にもとの語の要素を削ったりしつつ -tion を付加する, といったルール, 文法をもとにしているわけです. 三単現の -s なり過去形・過去分詞の -ed なり現在分詞の -ing なり. これをある程度おさえておかないと, 本来ひとまとめにして覚えられるはずの単語を別単語として覚えなければならなくなり, 死ぬほど記憶に負荷がかかります. 少なくともいまの私では覚えきれません. この手抜きのために文法を一所懸命やっています.
数学でも同じようなことがあります. 数学でもある程度解法などを覚えないといけないという話をしています. そして覚えるのを楽にするためにこそ理解が必要です. ここの理解とは何かといえばパターンを見抜くことです. 語形成のルールに関する文法と同じ話です. 少なくとも私はそう思ってコンテンツや講座の内容を構成しています.
2021-06-12 論理と自然¶
今日は微妙な三本立てです. 削ろうかどうしようか迷ったのですが, 盛り込んでしまいました. こういうのがよくないのもわかっているのですが, お蔵入りのままになってしまっているのもいくつかあるので, とりあえず吐き出しておきます.
ロシア語も何となく読めるようになった¶
今日, 少しロシア語の文章を読みはじめました. ドイツ語で見えた格つき言語に対する読解方針を使うと, とりあえず一つ, 単純めの文をきちんと読めました. 基本的な文法事項をまた全然覚えていないので, 実際に文に触れつつ文法・単語を叩き込んでいこうと思います.
中学数学コンテンツを作ってみます¶
とりあえず叩き台として一つ記事を書いてみました.
論理と自然¶
結論¶
長いので結論を最初に書きます.
- 論理という堅苦しい言葉がつらいなら, 「自然」と言い換えてみよう.
- この意味での「自然」が何なのか語学をもとに説明してみた.
でははじめます.
語学を勉強していて思ったこと¶
最近私は語学も一所懸命やっているわけですが, 教わっている人の主張の関係もあって, よくいう「英語は英語のまま理解しろ」とかいうのは無茶だと思っています.
一応書いておくと, 英語の事情は英語の事情として十二分に尊重しないといけません. これはこの間書いたドイツ語の話と直結します. 結局, ずっとはまっていた理由は, 何となく似ているからといって英語の感覚でドイツ語に接していたからでした. そういう感覚を捨てて, ドイツ語らしさと言われる感覚を尊重して読むようにしたら, 少なくとも今までよりはスルスルと読めるようになったからです.
これはドイツ語の文法をきちんと考えたとも言えますし, ドイツ語の「論理」に沿って考えるようにしてみたとも言えます. ここで思うのは「論理」という言葉に対するたいていの人の忌避感です. 何かどうも, 私の思う「論理」と一般的な「論理」にだいぶ距離があるので. 「数学を勉強することで論理的思考を学ぶ」という気が狂っているとしか思えない主張もよく見かけますが, あれは本当にやめた方がいいと思っています.
論理とは自然である¶
それはそれとして, どこにつながるかというと, 論理というのは「自然」のことなのだと思っています. ドイツ人が自然にそう読み取るようにドイツ語を読んでみよう, それが文章の法則たる文法であり, ドイツ語の論理なのだと, そう思っています. つまり論理は「自然」と言い換えればいいのではないか, ふとそういうことを思いつき, 考えています.
人によって論理というか「自然」が違います. 自然というのは「そう考えると楽なのだ」と言ってもいいでしょう. 人に関してはずぼらな人ときちょうめんな人で何が違うのかと言えば, その人の思考体系 (論理体系)・自然観です. 何というか, 例えば, 適当にしておいてもそんなに困らないしいちいちきちんとする方が疲れると思うか, 整理整頓しておいた方があとで何か探すのも楽だ, みたいに思うかで, どこに楽の基準を置くかが違うわけです.
自然観の違い¶
自然観の違いはいろいろな分野にもあります. 数学を応用するときの論理の運び方や「自然」は数学のそれとは違いますし, 逆もまたしかりです. それでも何らかの形で (数学科の) 数学に触れないといけないなら, 数学の自然ときちんと向き合う必要があります. もっと言えば数学を主にやっている人である数学者が何を自然と思い, 何を大事にしているかを感じ取れるようにならないと, いつまで経っても数学がわかるようにはなりません. 単に計算できるようになるのと「わかった」と思えるかには大きな違いがあります. これはむしろ自分の専門分野での応用数学には対応できても, 数学科の数学に面喰らったタイプの理工系人・非数学人にはよくわかるのではないでしょうか.
いろいろ書きましたが, 言いたいのは論理とは「ある人の思考法・自然な考え方」で, それに合わせていろいろやりましょう, 数学にも数学の論理・自然がありますよ, という話でした.
アンケートを設定してみました¶
コメントしにくいのかもしれないと思い, 匿名で書けるアンケートを準備してみました.
- https://goo.gl/forms/hn7bUP4sblqOkBcI3
顕名で投稿にコメントしづらければこちらからコメントしてもらっても構いません.
ちなみに, 数学を数学としてダイレクトに取り組むのが大変だろうと思って, あえて私視点では数学学習に役立つと思っている数学以外のネタを散りばめているのですが, こういう話よりも直接数学の話をした方がいいでしょうか? これについてもぜひコメントください.
2021-06-11 ドイツ語の文章が読めるようになった¶
完全にレベルアップした¶
昨日ドイツ語がスルスル読めるようになったと書きましたが, つい先程新たにごつい文を読んでいて, 多分きちんと文法的に把握でき, 突然「これは完全にレベルアップした」という実感を得ました.
先日「理解度はRPGなどのゲームのレベルのように, 経験値が閾値を越えたときに突然上がるものだ」と書いた, その現象が起こったと実感しました.
その興奮とともにいまこの文章を書いています. 他にも気付いたことを書いておくと後々のためにもよさそうなので, 長文になりそうですがいろいろまとめておきます.
要点¶
まず, 要点 (さんざん言ってきたパターン認識・型) に関して簡単にまとめます.
- (おそらく) 格つき言語共通の特徴: 格を大事にする.
- (おそらく) ドイツ語の特性: 動詞句を中心に考える.
このたった二点に辿り着くまで, 学部の第二外国語での 2 年間, ここ 3 年間の細く長くの語学学習の 5 年をかけました. べったり張りつきでやっていたわけではないとはいえ. どちらもわかっている人には死ぬほど自明の話と思うのですが, それでもこの程度がわかっていなかったわけです.
何度も書いているパターン認識の話で言えば, 前者はロシア語にも使えるはずです. 実際に次に本格化させようと思っている言語なので, そこでテストする予定です. 後者, つまりロシア語の特性が何かを掴むため, いまロシア語の文法のコンテンツを雑に何周もしています.
「上達のコツ」の実態¶
よく「上達のコツを教えてほしい」という人がいます. 今回の語学に関して「掴んだ」と思ったのは本当にに上の 2 点だけです. もちろん単語などの単純知識・暗記と, 基本的な文法の知識・暗記は必要です.
改めて思ったのは「こんな簡単なことなら, 何でもっと速く教えてくれなかったのか, この要点をまとめたコンテンツがないのか.」です. そして, さらに一歩進めて, 「さんざん書いてあったのに私がその意義を腹の底から実感できていなかった」か痛感させられたことです.
格変化・活用に関しては「まずは覚えよう」といって, 本にもいろいろな表が何回も出てきます. 動詞句についてもまさに作文・読解のコツとして, 私の手元にあるコンテンツにはきちんと出ています. 前者はともかく後者は「大事」と明確に書いてあるのに, それを私が真剣に受け取れていなかったのです.
大事なことは何度でも¶
物理や数学だと何かを理解したと思えたとき, 「どこの本にもこんな大事なことが書いていない!」と憤慨していたら, 過去自分が読んだ本にきちんと書いてあったという事案があります. あなたも同じ経験はないでしょうか? もしくは部下や後輩に何を教えていて, 「先輩, ようやくわかりました. こういうことだったんですね. 何でこれをもっと早く教えてくれなかったんですか?」と言われ, 「アホか. 何回大事だと言ったと思っている.」と思ったことはないでしょうか. それです. 理系の人だと線型代数と微分積分, 特に線型代数でよく言われる印象があります. 教員からすれば「役に立たないことを教養の講義で必修にするような暇があるとでも思っているのか」という話でしょうし, 気付いたときには遅かった事案でもあります. これの語学, ドイツ語版を本当にたったいま味わいました. 大事だと散々言われていたわ, と.
逆に自分が何か教える・伝えるときも, 大事なことは何度でも言わないといけないと実感しました.
アンケートを設定してみました¶
コメントしにくいのかもしれないと思い, 匿名で書けるアンケートを準備してみました.
- https://goo.gl/forms/hn7bUP4sblqOkBcI3
顕名で投稿にコメントしづらければこちらからコメントしてもらっても構いません.
2021-06-10 勉強の秘訣記事¶
今日は二本立てです.
- コンテンツ: Project Euler 第 5 問を Julia で解く
- 記事のシェア・勉強法の紹介
今日のコンテンツ¶
本体: 記事のシェア・勉強法の紹介¶
今日は次の記事をシェアします.
- 39才で医学部合格、53才で医師免許取得の女性「分数から学び直した」
- https://www.moneypost.jp/796214
この記事で次の勉強術があがっていました.
- 中学の数学・理科からやり直すことで基礎を叩き込む.
- 家事や子育てのすき間時間を有効活用.
- 参考書や過去問は常に持ち歩き, 暇さえあれば読む.
- 同じ問題を暗記するまでくり返し解く.
- 覚えたことは誰かに説明して, 頭の中を整理する.
まずは一番最後を推します. これは特に先日紹介した勉強法の本にもまとめています.
学生時代にゼミを真剣にやっていたり, 人前で話した経験がある人はわかると思いますが, 人に説明しようとしていると頭の使い方・回転の仕方が変わります. その場で今までに気付いていなかった視点からの説明が思いつくことさえよくあります. 自主的な勉強会を開いてほしいと言っているのもそのためです.
いまの時代では 2-3 はスマホにコンテンツを入れておいて, それを見るようにするといいでしょう. 動画を見てもいいのですが, 私は PDF や Kindle を入れておくのをお勧めします. 実際, これは私もやっています.
あと 4 については暗記しようとしてもなかなか覚えられないでしょう. むしろきちんと覚えるためにこそ理解が必要です. 暗記が楽になってきたら理解が深まってきていると思っていいくらいです.
2021-06-08 格つきの言語の読み方と静的型つきプログラミング言語¶
わかっている人には「今更か」「3 年近くやってようやくそこか」と言われそうな話なのですが, さっきようやく辿り着いた境地というか, どれだけ基礎基本を疎かにしていたのかと反省したことがあり, 日記的に書いておきます. 結論から言うと, 格がある言語は格を中心に, 格を大事に読まないと駄目という話です.
学部のとき, 第二外国語でドイツ語をやったあと, ここ 3 年くらいで再びドイツ語の勉強をはじめました. 再勉強してから改めて格があることを認識し, 暗記事項としても格の話がよく出てくるのも当然知ってはいました.
ここ 2-3 ヶ月で 2 格の処理の仕方をようやく理解し, ちょうどこの二日くらいで長めの文を改めて読んで読めて, 格を大事に読めばいいのかとようやく腹に落ちました.
静的型つきプログラミング言語がきちんと書けるようになったときのことを思い出しました. これも最低限きちんと読み書きできるようになったと思えたのは, 型を大事にするようになったときです. やはりあるものはきちんと使わないといけません.
活用や格変化を覚えないといけないというのは言われても, その使い方というか, 実際のごつい文を文法的にきちんと解析してくれるコンテンツがどこにどうあるのかがわかりません. それこそ挨拶とか本当にどうでもいいので, いままさに読んでいるアインシュタインの原論文のような, 理系にとって面白い文章をきちんと解説してくれるコンテンツがほしいです.
最近の「文系のための数理論理」みたいな本が出ていたのですが, 理系のための地理やら歴史やら語学のようなコンテンツが一向に出ません. ビジネス的にも目に見える範囲でパイが極小であろうことも想像がつくのですが, 潜在需要はあるはずだしそこは開拓しろ, とずっと思っています. そして文系の人達に言ったところで作ってくれないようなので, もう自分でやるしかないという気持ちを新たにしました.
2021-06-06 語学学習で改めて気付いたこと¶
ごく当たり前のことなのですが, 今日ドイツ語をやっていた気付いたことを書いておきます. 一応何故ドイツ語をやっているか改めて書いておくと, アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を読む勉強会をやっていて, 英訳をメインに見てはいるものの, やはりドイツ語原文も読んでみたいからです.
さて, 何がきついかというと, まず暗記しないといけないことがたくさんあることです. そして今日改めて思ったのは熟語を覚えないといけないというか, そもそも何が熟語なのか, 文章を読んでいてなかなかすぐに判定できないことです.
もちろん英語でもちょっと凝った文章, または口語表現で熟語を熟語と気付かずに訳そうとして混乱することはあります. それでも何となく熟語は熟語だと気付きやすくはあります. 少なくともドイツ語よりは.
ある程度の知識があると, ふつうはそれに合わせて経験も積めているので, それらをセットにした判断力が高くなっているのがわかります. そしてこれは数学や物理でも同じです.
数学や物理は必要な知識の量は語学よりは遥かに少ないとは思います. ただ, 少なくともいまの教育コンテンツからすると, そう簡単に日常的な感覚と絡めて勉強できるようにはなっていないので, そもそも覚えにくい問題があります. あとおそらく必要な知識が少ない分, 極端に経験・修行量が効いてくるのもきついとは思います.
あと, これまでここでのコンテンツは動画をがんばって作ってみようと思っていたのですが, 作業の負荷というよりも, 動画コンテンツを作ろうという精神的負荷が大きいことをようやく認めました. テキスト系のコンテンツにしますが, 明日から少しずつプログラミング+算数系のコンテンツを作るので, 興味に応じて確認してください.
動画, 何が面倒かというと何かミスがあったとき, あとで作り直すのが面倒なのが嫌なところです. 私にはこの精神的な負荷が高いのでした.
2021-06-05 今日の自慢¶
今日はちょっとした自慢というか宣伝です.
Twitter で物理学者とちょっとやり取りしたのですが, 大学の同じ学科の先輩でした.
私は赤木さんの1つ下,松浦さんと同期です.以前「独学のすゝめ」拝読しましたが,とてもわかりやすく,ぜひ学生に読んでもらいたいと思いました!
ここでの「独学のすゝめ」は次の電子書籍です.
大学受験に特化した書き方をした本なので, ここでの趣旨と完全には一致しないスタイルの勉強法ですが, 参考にはなると思います.
いま久しぶりに見たら, レビューもけっこういいのが入っていてびっくりしました. 気合を入れてきちんと書けば, 伝わる人には伝わるのだとちょっと感動しました.
評価 3 のレビューで「LINE への誘導がちょこちょこあって鬱陶しい」みたいなのがあります. 作った当初, 特にいろいろな人の話を聞こうという意図でリンクを仕込んでいたのですが, 余計な意図を感じさせるらしいのでいまはもう外してあります.
無料配布してもいいのですが, いまコンテンツ整理中なこともあり, どこに置いたか忘れたので, いったん Amazon へのリンクだけ貼っておきます. 興味ある方はぜひ読んでみてください.
2021-06-04 多言語学習と数学・物理¶
今日は語学の勉強会をやっていました.
- アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会
- https://phasetr.com/archive/studygroup/sr/2021-06-04/
ここでプチ共有として話したことをここでもシェアしておきます.
このサイトは理系のためのリベラルアーツ・総合語学という大きな方向性があります. その中で語学, 特に英語は重要な核の一つです. 英語一つだけでも大変なのになぜたくさんの (自然) 言語を扱うのかと思っている方がいます. あなたもそうかもしれません. 結論から言えば総合的な言語への認識を上げるため, とりわけ自然言語の運用力を上げるためです. もっと強く言えば, 母語 (である日本語) の運用精度を上げるためです. 以下, 母語の代わりに日本語と書くことにします.
よく言語に関する能力は母語 (日本語) の能力で決まると言われます. 実際, 日本語で言われてさえわからないことが英語や他の言語ではまず理解できません. かといってなかなか日本語それ自体を勉強するのは大変です. いちいち日本語学・日本語の言語学の専門書の適切な記述にあたれるわけでもありません. そんなときは比較対象として他の国の言語を勉強することで, 逆説的に日本語に焦点を当ててみよう, それが多言語に触れる理由です.
例えば実際にロシア語の本を読んでいて出会った例を挙げましょう. 日本語で「医者の兄」というとき, 「ある医者の兄」と「医者である兄」の意味があります. しかしロシア語ではこれらをはっきり区別します. 特に брат доктора (brat doktora) は「ある医者の兄」の意味です.
特に自然科学は日常に潜む何気ない現象を詳しく調べることが全てのはじまりです. 日々話す日本語・自然言語の何気ない現象に目を向け, 一歩立ち止まって考えるのは自然科学を考える上でも大事な営みです. 英語だけでは見えない世界もたくさんありますし, 言語にも好き嫌いがあります. だからこそいくつかの言語の世界に触れてみよう・触れてみてほしい, そんな思いを込めて私自身日々勉強しています.
2021-06-03 いろいろなパターン認識¶
パターン認識という固い言葉を使うと縁遠いように思うかもしれません. しかしよくも悪くも, とても日常的な行為です.
例えばよくある占いがそうです. そもそも占いをほぼ何も知らないのですが, 動物占いやら誕生日占いやら, これらは全てパターン認識の話です.
- あなたは---型です.
- ---型の人にはこんな特徴があります.
こう書けば何をどう見ても「型」の問題で, パターンの問題です. 血液型性格判断・相性判断なども同じです.
人は暗黙のうちにいろいろなパターンを持って行動しています. いわゆる験担ぎなどもそうです.
- このパターンを踏めばこのパターンが発動するはず.
ジンクスには特に根拠があるわけでもありません. それでも「こうやればこうなる」と信じる型・パターンの話です.
ここで一つポイントがあります. 「このパターンを踏めば」のところです. 数学でも物理でもプログラミングでもこの前提部分が大事です. 数学で言えば定理の仮定・前提です.
- この条件下では絶対にこうなる.
- この条件下ではこの現象が発動する.
これを見出したり使い倒すのが数学なり物理なりでやることです. よく「朝のヘアセットがばっちり決まって気分がいい」みたいな話を聞きますがそれと変わりません. 一日を分析的に見た日記を書いてと言っているのは, まずは的確にパターンを見つける能力, そしてそれをきちんと言葉にする能力を身につけてほしいからです. 数学なり物理なりプログラミングなりに実際に活用するのはまた別の話で訓練が必要です. それでも自分の生活パターンや気分のパターンを詳しく知るのは, あなたの生活にとって無駄にはなりません.
いきなり数学が大変なら, こんな感じのところからのんびり小さくはじめてください.
2021-06-02 いろいろなパターン認識¶
今日も二本立てにしようかと思ったのですが, 一本で長くなりすぎたので明日に回します.
「宿題がないと勉強できないようではだめです」¶
次のツイートを見かけました.
上のタイトル通りです. もう少し引用しておくと次の通り.
先生「自分で必要な勉強を考えてやる自習は大切です。宿題がないと勉強できないようではだめです。課題が必要な人は取りにきてください」
実際, 独学で一番つらいのもこれです. 自分で必要な勉強が何かがわかりません. 自己紹介シートにも「何かいいコンテンツがないでしょうか」という質問がよくあります.
私自身, 語学・言語学関係で何をどう勉強すればいいかよくわかっておらず, よく厳しい気持ちになっています. どうしても「無駄なく効率よく勉強したい」と思ってしまいます.
先日, 同じく私の周辺の Twitter で話題になっていたのは, 「必要なことはそのときに再勉強すればいいと軽く言うが, そのときに必要なことを必要と判断するためにこそ事前の勉強が必要だ. そして仮に必要なことがわかったとしても, それを勉強する余裕があるとも限らない.」という話です.
これを悲観的に捉えると, 特に大人になってから役に立てる目的で数学を勉強したいという理系勢, 学生時代にその種を十全に蒔いておかなかった時点で「負け確定」にさえなりかねない厳しい話です. 学生時代も「こんなの何に使うんだ」, 「(学生の狭い視野で判断して) もっと役に立つことをやろう」と思って放置しておいたツケが今になって身を蝕んでいるわけで.
こう厳しい話をしたものの, 対策があるわけでもありません. 究極的に言えば, 結局は覚悟を決めるしかありません. すぐに身につくわけもないので, 臥薪嘗胆よろしく長期戦を挑むという覚悟です. 諦めが肝心です. 適当な意味で数学ができるようになりたいなら長期戦をどう戦うか考えてください.
次回, 理系勢の話はこのまま放置して, 中高数学をのんびりやり直す勢向けにいろいろな勉強の切り口を紹介する話をします. 何度目かわかりませんが, また飽きずにパターン認識の話です. あなたがどう思うかわかりませんが, 私はこれも「数学」だと思っている, そういう話をします. 実際, 少なくとも私の意識としては, ここまで数学と本当に全く関係ない話をしたことはありません.
2021-06-01 漫画・小説の情報シェア, 勉強の心構え¶
今日は二本立てです.
- 漫画・小説の情報シェア
- 勉強の心構え
漫画・小説の情報シェア¶
ここに書くべき話題ではない気もしますが, すごい漫画だったので共有しておきます.
- モリエサトシ, 16歳の身体地図
- https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496334621791
数学でもこういう作品を, それも自分が作れるだろうか, というのをいつも思います.
ここまで書いて思い出したのですが, 一般向けで数学バトル小説の趣がありつつ, かなり数学をやっている人間の内面にも踏み込んでいる小説を紹介しておきます.
これは面白かったです. 二巻まではあって終わっていないのですがいまどうなっているかまで調べていません. あと, 映画にまで「博士の愛した数式」, これは数学界隈でも非常に人気で, 「数学」という数学会発行の雑誌の書評でも絶賛されていました. 読んでいない方がいたら, ぜひ読んでみてください.
勉強の心構え¶
最近, 理系のための総合語学・リベラルアーツを展開するべくふつうの語学も勉強していて, 英語では特に発音の勉強を進めています. その本はもともとリスニング力をあげようというところから, 次のようなスタンスで書かれています.
- なぜよく聞こえないのか? それはきちんと発音できないからだ.
- 話せない音は聞こえない. だから発音をきちんと勉強しよう.
これはこの間いろいろ書いた勉強の仕方として, 何をどう勉強していいかわからないなら, まずは日記を分析的に書いてみようといったのと同じです. 最近は動画講義も増えていますが, 数学に関して文章の読み書きでの勉強が中心にならざるを得ないでしょう. 計算がありますし, 言われた計算を全て頭の中だけで展開できるわけもありません.
最近英語教育で話す・聞く・書く・読むの 4 技能が出ています. これは確かに別の技能です. しかしもちろん相互に関係はあります. 長い歴史の中で「こう書くとよく伝わる」「こう話すとよく伝わる」方法がたくさん研究されてきました. この裏側には人間はこういうふうに文章を読む, こういうふうに人の話を聞くというパターンがあります. だからうまく書くためには読み方を知らなければいけません. 逆に読むときにも書き方を参考にする必要があります. 特に本の前書きなどで著者が読み方を指南しているときは必ずそれを念頭に置いて読みましょう. 著者の意図通りに読むばかりが読書ではありませんが, 著者の主張を理解することが目的の文章に対しては, その意図通りに読むのが読みやすいはずです.
いろいろなパターンを見抜いて使いこなすのが大事というのは語学学習でも出てきます. この意味では語学学習も数学学習に応用できます. 数学というと心理的なハードルが高いなら, こういう意識を持った上で別のことに取り組んでみてください. それだけでも数学への耐性は確実に上がります.
2021-05-31 Mathpedia による Zoom でのj機械学習勉強会¶
@機械学習勢
次のような企画が生えるそうです.
主催のこの人, 一応知人で, 数学はしっかりしている人です. 適度な補足や解説は入ると思いますが, たぶん本当にガチガチにやるのではないかと思います. 興味がある方がいたら参加してみてはどうでしょうか.
役に立つ数学というやつではあるので, 役に立つ数学ネタ紹介ついでに紹介しておきます. 気分的には次のような感じの内容でしょう.
この辺, 発展が早いので多分日本語の文献はありません. 英語自体は大したことないので, サラッと眺めてみても面白いかもしれません. 理工系の英語の要求水準もわかるでしょう.
2021-05-27 本・コンテンツ・書評の紹介と勉強への取り組み方¶
はじめに¶
今日は本・コンテンツ・書評を紹介します.
- チャート式のレビュー: https://www.amazon.co.jp/-/en/gp/customer-reviews/R7BMHAX9O611W/ref=cm_cr_srp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4410152300
- 東大・京大での Python の教科書: https://twitter.com/Pythonist19/status/1397688315277500417
- P・オーディフレッディ (翻訳: 河合成雄)『幾何学の偉大なものがたり』: https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000034202559&Action_id=121&Sza_id=C0
最後の本は目次を見る限り, 歴史, 特にギリシャ時代の話が中心です. 翻訳者が文学者なので数学的な内容をきちんと翻訳できているのか不安な部分もありますが, 歴史などから入るのもとっつきやすい方法の一つなのでそうした本の一種としてお勧めしておきます.
チャート式のレビュー¶
これもさっき見つけたばかりで詳細を把握しているわけではありません. ただいくつか参考になる部分と取り組むときの参考にしてほしいことがあったのでそれを書きます.
まずはチャート式のレビューはぜひ見てください. 「数学」の勉強の仕方が的確にまとまっています. そればかりが数学ではないとはいえ, 計算練習もとても大事です.
このレビューでは例を作って遊ぶことに対する言及もあります. 例で遊ぶのはとても大事で, 私は以前それに関して京大の数学イベントで講演していて, DVD にして Amazon でも販売しているくらいです.
- よくわからない数学 色々な反例で遊ぼう https://www.amazon.co.jp/dp/B00FYU9LQ0
何でもそうだと思いますが, 専門家は膨大な量の知識を覚えています. 「暗記」していると言っても構いません. いろいろなことを暗記しているからこそ理解に厚みが出ますし, 深く理解しているからこそいろいろことが暗記でき, そして覚えるだけではなく例を作り出すことまでできます. 数学では面白い例を見つけるとそれだけで論文が書けます. 例を作るのはそのくらい大事なのです.
あまりにすごい (反) 例ばかり探してくるので Mr. Counterexample という異名がつけられた数学者もいます. 実は日本人数学者で永田雅宜という人です. この人は数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞を取った森重文さんの指導教員で, 永田さん自身, 超をつけていいレベルの一流の数学者です.
東大・京大の Python の教科書¶
これもさっき見つけただけで中身を見ていません. ただ無料で提供されている上, そこそこまとまっているようですし, 少なくとも東大の方はここで使おうと思っている Google Colaboratory の説明が入っています. もしあなたがプログラミングに興味があるならそこだけでも見てみてください.
さて, ここで「東大・京大の」とつくと大きくわけて次の二通りの反応が考えられます.
- 東大・京大の教員がその学生向けに作ったいいやつなのだろう. 自分もこれで勉強してみたい.
- 東大・京大の学生が使っているようなコンテンツ, 自分では消化しきれなさそう.
集め方というか部活紹介ページの内容に書いた内容からすると, 後者のように感じる部員の方が多いように思います. この間も学習・教育ネタで書いたように, 人や状況に応じて適切な学習法・コンテンツ・指導者があります. 合わないなら無理に使うことはありません.
ここで一つ覚えておいてほしいのは, 何にせよ, 原則として新しいことを勉強するのは異様なくらい大変です. 私自身, いま自分がこれから進めようとしている「理系のための総合語学・リベラルアーツ」のため, いわゆる文系科目を再勉強しています. 特に語学と地理からはじめています.
地理はいわゆる暗記事項がとにかく頭に入りません. きちんと考えると語学要素もあるのでそこを掘ればいろいろ楽しめるのはわかっていますが, いまはまず何冊か適当に乱読して全体像を掴むモードでそこまで掘れていないし掘っていません.
語学はいろいろあって主にロシア語をやっています. これは「アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会」との関係で, 文章も読みつつ単語も覚えつつ文法を勉強しつつ進めています. まだ文法が欠片ほども頭に入っていないので, 実際に文中に出てくる単語の辞書の見出し語さえわからず, 辞書さえまともに引けません. ドイツ語・フランス語・イタリア語ではそんなことがなかったので衝撃を受けています. これらはゲルマン語・ロマンス語のチャンポンになっている英語からの類推がかなり効きやすいのですが, ロシア語はスラブ系でまた少し違う系統なので全然勘が効きません.
覚えないといけないこと・使い倒せないといけないこと・理解しないといけないことが山積みでまあ大変です. 初学の苦しみなどは簡単に味わえると改めて感じています.
やったことがない・少ないことの勉強はこんなものです. すぐにできるようになるなら誰も何も苦労しません. じっくりやっていきましょう.
2021-05-24¶
自己紹介のところで (多分数学の) 医療への応用につながるヒントが何かないか, というのがあったのですが, ちょっと探せばいろいろあります. このくらいはご存知だと思うのですが, 他の部員の方達への案内・紹介も込めていくつか書いておきます.
最近有名になった事案でいえば, 新型コロナに関する理論疫学での西浦さん関係の仕事でしょう. もちろん最近流行りのデータサイエンス・統計学とも深い関係があります. これと関係して医療統計という分野もあります. 他にも, 最近患者データを取るときにどうしても欠損値が出るので, そこを機械学習でうまいこと補正するソフトなども出てきていると聞きます. これは人命に直結するので採用の難しいソフトだとは思いますが, データサイエンス・統計関係では最近本当にいろいろあるのは間違いありません. 他にも DX やダイエットと絡めて広義の医療・統計連携は最近盛んなように思います.
尾身さんの出身大としても有名な自治医科大では比較的最近データサイエンスセンターもできていますし, こういうところでも数学・プログラミングの基礎スキルのもとで何かやる動きは本格化しているようです.
あと, 過激というか数学的に恐ろしくハードなのであまりお勧めできたものではありませんが, 数理医学という分野があるにはあります. 例えば阪大基礎工の鈴木貴さんが本を書いていてそれなりに有名な印象があります.
- http://www-mmds.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/structure/faculty/profile.php?id=111
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/bjsiam/22/2/22_KJ00008113429/_pdf
- http://www-mmds.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/faculty/personal/suzuki/seminar/
- https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320111950
あとは医療工学といったテーマもあります. 私が知る範囲だと, これは特に機械工学との連携が強く, いろいろな数値計算との連携もあって, 数学・物理・プログラミングの理工系三本柱がほどよくミックスされた厳しい分野です. 結果が人命に直結するので並大抵の覚悟では触れられない分野です.
他にも「医学と数理」というキーワードで次のようなワークショップがあります.
- https://indico2.riken.jp/event/3327/
あと医学・生理学としてごく初歩的というか有名なところでは, ホジキン・ハクスリーのノーベル医学・生理学賞にもなった数理生物の仕事があります.
これはこれで冒頭の西浦さんと同じく, 医学・生理学領域に微分方程式を持ち込んで数理モデルを研究した先駆的な業績です. 常微分方程式とはいえ, 非線型の連立方程式なのできちんとやろうと思うと全く簡単ではありません.
書きはじめるときりがありませんが, 他にも CT スキャンの原理と数学みたいな話もあります.
これは実用化に貢献した物理学者と技師がノーベル医学・生理学賞を受賞しているようなので, 物理も大事です. このページ内にも「この数学的方法の適用は、コンピュータを用いた計算によって行われます」とあるので, やはり数学+プログラミングが基本スキルです.
創薬と数学といった話題もあります.
これも凄まじい量の数値計算をぶん回す話で, 純粋な計算に関する膨大な知識と経験が必要です. 最近流行りの web の話とは必ずしも関係ありません.
この間も書いたように, ここにいろいろ書いた話のごくごく簡単なバージョンとして, 算数+プログラミングのコンテンツを作ろうというのが, ここで私がやろうとしている話です. とりあえずは Python でいいだろうと思って Python でのコンテンツを作っていくつかはここにもアップしています. ご興味あればどうぞ.
かなり長くなっているので今日はこんなところで.
2021-05-20 数学のレベルと RPG ゲーム¶
これまでのまとめ¶
パターン認識について書こうと思えばまだ書けます. ただいつまでもこのネタを引きずっていても仕方ないのでいったんこのくらいで終わりにします.
一つ標語的にまとめるなら, 勉強とはパターンを身につけることであり, パターンを使いこなせるようになることです. この「パターン」が抽象的であればある程, 応用の幅が広くなります. もちろん扱うのも難しくなります. この塩梅をうまく制御するのがいい勉強で, そういう塩梅で教えてくれる人がいい指導者です.
大事なことはいい塩梅は学習者であるあなたの状況に応じて変わることです. 小さな子供に教えるのとその道のプロがさらに極めるために教えを請うのとはでは当然何もかもが違います. 一つの指導法・スタイル・コンテンツや一人の指導者ではカバーできません. あなたとの人間的な相性などもあります. これ自体がひどく抽象的で扱いにくい「パターン」です. これに適切に答えていき, 適切な次の指導者へ橋渡しするのがよい指導者なのでしょう.
数学学習とゲームの類似¶
さて, 話をがらりと変えます. これはこれで数学に限らず, 何かを勉強するときに大事なことです.
勉強しているときの「成長」は基本的に RPG ゲームのレベルアップと同じだと思ってください. つまり経験値をためていき, ある値まで来たら一気にレベルアップするのです. 「あるときコツを掴んだ」みたいな話はよくあります. これがまさに不連続な変化であり, 成長であり, レベルアップです.
あなたはこれに違和感を感じるかもしれません. 特に学びはじめのうちはやればやるほどどんどんできるようになっていくからです. 特に語学で新しい言語を勉強するときによくそういう話を聞きます. しかしこれは, 学びはじめでレベルが低いとレベルアップまでに必要な経験値が低いため, 簡単にレベルアップできてしまい, 努力量 (経験値) と成長が比例するからです. ある程度レベルアップしてくると次のレベルまで大量の経験値が必要になり, なかなかレベルアップしなくなります.
もしあなたが数学が苦手と思うなら, それはレベル 1 から 2 にレベルが上がるのに大量の経験値が必要なタイプだからかもしれません. もしくはレベルこそ上がっていても数学に対する能力上昇が低いだけかもしれません. 魔法使いはなかなか腕力が上がらず, 戦士の賢さがなかなか上がらないのと同じです. 経験値自体はたまるので, レベルまたは必要な能力が上がるまでじっと待つしかありません.
これも一応書いておくと, 勉強に関しても「はぐれメタル」のような存在はあります. 受験勉強などでいうならいわゆる「良問」のような存在です. これも人や状況に応じて変わります. 私はこの「はぐれメタル」としてプログラミングが使える人がいると思っていて, その教材開発をしようとしているところです.
これも最後に念のため. RPG・レベル・レベルアップと学力の成長を比較して考えたりするのもパターン認識・型の使い方の一つです. ドラクエをやっていない人には「はぐれメタル」と言っても通じないでしょう. これは「人や状況による」一例です. こういう類推やパターン認識をいろいろやってみてください. これで数学をするために必要な力は確実に上がっていきます.
2021-05-19 プログラミング言語と型¶
書いたことがないと全くイメージが湧かないと思いますが, 少しプログラムの話をしていおきます.
プログラムにも型という概念があります. 多くの言語は値の型はよくありますが, 変数に型があるかはいろいろです. ここで扱おうと思っていて, 機械学習でよく使われている Python は値に型はあっても変数に型がありません.
この話を続けていても仕方ないので本題に入ります. この変数に型があるかどうかでプログラマーの気分が変わります. 型があるかどうかでプログラムの書きやすさが違うと言われます. 変数に型がない方がプログラムが自由に書けます. 変数に型があるとその型に合わせてプログラムを書かないといけなくなり, プログラムを書く自由度が下がります. これをどう判断するかが大事です.
少人数でプログラムを書くときには変数に型がない方がサクサク書けて便利と言われます. しかし大人数でプログラムを書くときは変数に型がある言語を使った方が, 制約があるおかげで統制が取りやすくなって便利だと言われます. これがとても大事です.
制約があると不自由である一方, その制約は統制の取りやすさにつながるのです. 大勢で何かをやるとき, この制約・統制が便利なのです. これと同じタイプの話は例えば論文のフォーマットがあります.
- タイトルで端的に内容をまとめ,
- アブストラクトでもう少し補足的な情報をつけて中身を読むか判断してもらい,
- イントロを読んで周辺状況や論文の意義を理解してもらい,
- さらなる興味を惹ければもっと読み込んでもらう,
このフォーマットが重要です. そもそもとして中身は果てしなく難しいので, 余計なところに余計な頭を使いたくありません. 定型処理できるところは定型処理で流したいのです. パターン認識や型の意義そのままです. これを実践的に身につけてもらいたいからこそ型を意識して日記を書いてほしいとお願いしたわけです. 一応書いておくと, 論文は論文でストーリー作りが非常に大事です. 研究にもいろいろな歴史があるので, どんな経緯でどんな研究をし, それにどんな意義があるのかを語る必要があるからです. 少し専門がずれると何が面白いのがわからないことは本当によくあるので, その面白さを伝えて論文を読んでもらうための工夫が必要なのです. 心血注いで研究した結果なので, やはり多くの人に読んでほしいと思うとこうした工夫は必要不可欠です.
ちなみにプログラミング言語の型についても, 型それ自体が意味や情報を持っています. 制約・統制が便利だというのはこの事情もあります. プログラムに突っ込み過ぎてイメージが湧かないと思うのでこれ以上は書きませんが, 英語の文型と同じような事情がプログラムにもあるのだと思ってください. 数学とプログラミングをセットでやる, 語学をネタに絡めるのは別に伊達や酔狂ではなくきちんと意味があるのです.
2021-05-16 型自身が意味を持つとき¶
パターン認識の話として, 今回は型自身が直接的に意味を持つ状況として英語の文型の話をします. 最近, 会話力の強化といって中高では英文法の言葉を使わず, 文型という言葉も導入しない (これからそうなる?) そうですが, これはなかなか困ります. 機械学習はともかく, 人間がパターン認識する上でのポイントの一つは名前をつけることにあります. 名前なしでは共通認識は作りづらいですし, 自分自身での認識力も弱くなってしまいます. 前回「数学は簡単だ」といったとき, それは概念が明晰に定義できるからだと言いました. これは適切な命名とも深く関わります. 歴史的な事情があり, 必ずしも適切な対象が適切な名前で呼ばれているとは限りませんが, 名は体を表すというように適切な命名, そしてそもそもの命名という行為自体がとても大事なのです. 言葉に魂を見出す (言霊) とまで言ったのは伊達や酔狂で済む話ではないのです.
実際に英語の文型がどういう意味を持つか, そして何故文型に意味を持たせるか・持たせなければいけないかを簡単に説明します. 以前, 英語の勉強会で話したときの資料から適当に抜き出してきます.
日本語は述語が最後に来る以外の語順ルールや文型がほとんどなく, 文章の型が意味を持つ感覚を持つのが難しいかもしれません. そこでまずは日本語から見直してみましょう.
日本語が語順を気にしなくていいのはいわゆる「てにをは」のような助詞があるからです. 助詞が各語の役割を説明してくれるため, 語の配置を気にする必要性が低いのです.
逆に言えば英語で語順が大事になるのは日本語の助詞のような文法要素がないからです. 助詞の代わりの文法要素が語順であり語の配置の仕方なのです. 例えば次の 2 文を比べてみましょう.
- The cat licked the clean saucer.
- The cat licked the saucer clean.
前者は第三文型 SVO で後者は第五文型 SVOC です. それぞれ次のように訳せます.
- 猫は綺麗な皿をなめた.
- 猫は皿をなめて綺麗にした.
この通り意味が全く違います. 意味の違いは語順・文型によって各単語の文法上の役割が変えられているからです. だから語順に注意するのがとても大事です. 特にその語順・配置の基本パターンを列挙したのが 5 つの文型です.
もちろんこれだけで全ての英文を理解できるようになるわけではありません. しかし文型を理解することで多くの文の骨格を理解できるようになり, 1 文 1 文の理解を素早く深く理解しやすくなります.
実際に各文型が持つ意味も書いた方がいいとは思うものの, 長くなりすぎるので省略します. 興味がある方が多ければそれも説明するので, コメントなり何なり下さい.
さて, 最後に少し補足します. 実はラテン語は語順がかなり自由に取れます. なぜ語順が自由になるかというと日本語でいう助詞の代わりに複雑な格変化があるからです. ラテン語には格と呼ばれる概念があって種類が 7 つあり, 名詞・代名詞・形容詞が格に合わせて形を変えます. いわば格という概念が日本語の助詞の役割を果たすため, 語順を自由にしても先程英語で起きたような解釈の問題が起きないのです. 弱くなったとはいえドイツ語もまだ格があるので, 英語よりは語順が柔軟です. ちなみに昔は英語も格を持っていたのですが, いろいろあってなくなりました. なくなった理由の一つ (とされるモノ) がまた面白いのですが, どんどん長くなるのでこれも省略します.
2021-05-15 数学での型の効用: 背理法の話¶
大分間が空きました. 改めてパターン認識の話をしましょう.
今回は実際に数学でのパターン認識・型の話をします. 多くの部員の方は数学というと計算というイメージがあるかもしれません. 計算には計算の型はありますが, ここでは大学の数学から見た話をします. 特に証明の話です.
数学の議論・証明の型として有名なのは背理法と数学的帰納法ではないでしょうか. 証明の方法論として名前がついていて, 高校でも出てきます. 人によって鳩の巣論法などもご存知かもしれません. 何にせよ, 数学にも議論の型があります.
ここでは背理法をもう少し掘り下げます. あなたはいつ・何故背理法を使うか ・使いたくなるか・使わないといけないかを言えるでしょうか? こういうところをどこまで丁寧に掘り下げられるか, わからない苦痛に耐えて努力できるかが理解を深められるかに直結します.
具体例を使って考えることも大事です. (具体例を使って考えるという方法論も一つのパターン・型です.) 背理法を使う有名な証明はルート 2 が無理数であることの証明でしょう. 必ずしも背理法を使わなくても証明できますが, 背理法を使うのが自然な理由があります.
これを掘り下げる上で数学でもう一つ大事なこと, 定義に注目する必要があります. あなたがどう思っているかわかりませんが, 数学は簡単です. 何が簡単かというとたいてい明確に定義できることを使って話ができるからです. 人間または「文系」領域に近づくほど明確に定義して議論しにくくなります. 「何となくこんな感じのアレ」とは言えても「明確にこれ」と言いづらくなるのです. 明確に何かと言えないモノに対する議論は難しいのです. しかし数学はたいていの概念を明確に定義できます. むしろ「問題を定義できれば 8 割方解けたものだ」とさえ言います. そのくらい考えを明確にしてきちんと定式化するのは難しいのです.
さて, ルート 2 を考えましょう. ルート 2 が無理数かどうか示すには無理数の定義にあてはまるかを考える必要があります. そして無理数の定義は「有理数ではない数」です. 定義そのものが「---ではない」と否定で定義されます. よくコンサルが MECE とか言います. まさにこの MECE 的に実数を分類した結果が有理数と無理数なのです. 有理数が何だったかというと, 雑に言えば二つの整数 m, n で m/n と書ける数のことでした. これは明確に定義できます. ふたつの整数を使って分数表記できる数というはっきりした特徴がありますし, 文字計算が進められます.
ひるがえって無理数は「整数比では書けない数」です. 何の手がかりもありません. それなら計算の手がかりがある有理数から議論をはじめたいと思うのが人情です. これを実現するための論法が背理法なのです.
細かい証明に踏み込んでいないのでまだ具体的なイメージは掴めないかもしれません. ここでは数学にも「議論の型」があること, その一つが背理法や数学的帰納法という高校で出てきた「---法」であることだけ頭に入れておいてください. この論法は恐ろしく抽象的なパターン・型で, これだけ知っていても何かできるわけではありません. 世間的に言えばいわゆる応用力が必要です.
私が知る限りファッションにもこの手の型があります. 色の合わせやら何やらいろいろな型があります. 色の合わせ自体は色相環なり何なりの明確なルールはありますが, 具体的な服でそれを実行するのはとても難しいわけです. これと同じような事情が数学にもあるのだと思ってください.
2021-05-13¶
出張で疲れ果てていて月曜-水曜はお休みしていました。今日からそれなりに復活です。
この部活の趣旨とは完全には一致しませんが、いわゆる役に立つ系の話に関して資料を共有しておきます。
- 機械学習の研究者を目指す人へ https://takahashihiroshi.github.io/contents/for_ml_beginners.html
何度か書いていると思いますが、機械学習は最近の人工知能の話だと思ってください。研究者というと遠く感じるかもしれませんが、最近は開発というよりも研究レベルが開発との距離が近くなっていて、他分野だとかなり距離がある研究と開発が近い分野になっている印象があります。つまり役に立つ話だというわけです。その役に立つところにいろいろな数学・アルゴリズム(プログラミング)が出ているという話です。
上で書いたように身近で役に立つ話に直結しているわけですが、論文を読めと出てきます。よく言われる「何の役に立つのかきちんと話せ」というやつ、当然こういうレベルで、役に立つことをしたければこのくらいの基礎がないと話にならないというメッセージです。
ちなみにこの部活で私が作ろうとしているコンテンツはこれを暴力的に簡単・単純にした内容です。数学・プログラミングのセットで、簡単なアルゴリズムの話もします。大学の学部と修士の6年くらい、死に物狂いで勉強してようやくたどり着けるのが上のページの話なので何もかも足りませんが、はるか遠くに霞んで見えるようになれることを目標にコンテンツを作るので興味がある方は継続的にチェックしてください。そろそろコンテンツ作りを再開する予定です。
2021-05-09¶
パターン認識搦みでいろいろ書くこと・書けることがあります. この間からの続きも大事なのですが, 備忘録も兼ねてロシア語の勉強をしつつ語学系のメルマガを書いていて思ったことを少し書いておきます.
英語ができないという人でも英語の be 動詞の現在形 am-is-are は覚えていると思いますし, 規則的な活用をする like-liked-liked の他, have-had-had, get-got-gotten のような不規則活用も覚えていておそらく大した苦も判別でき, 同じ動詞の活用形だと簡単に判定できるでしょう. しかし実はこれは凄まじいことなのです.
おそらくローマ字を使う言語なら, ある程度の言語でこの手の類推ができる人も多いでしょう. 例えば英語の learn にあたるドイツ語 lernen は不定形-過去基本形-過去分詞が lernen-lernte-gelernt です. これはいわゆる規則変化する動詞で, 一度こういうルールだと言われればすぐに対応できると思います. しかし見慣れない文字に変わった瞬間にこれが崩壊します. 皆が皆そうとは言いませんが, 私が今まさにロシア語で直面しています.
そもそもキリル文字自体に慣れていないのでキリル文字で書かれた単語を見るだけで極端に目が滑ります. この悪条件のもとで同じような基本的な動詞の活用を見ると, 同じ単語の活用と思えず, 全く別の単語のように見えます. たぶん, いまだにキリル文字を文字として認識しきれておらず絵や記号のように認識してしまっていて, 意味を持つ一まとまりの対象と思えず, 違う絵や記号のように思ってしまっているのでしょう.
ひるがえって何を思うかといえば, 当然数学や物理の話です. 特に数学を表層的な暗記で乗り切ろうとした人, または乗り切ってきてしまった人は数学のいろいろな概念や記号がこのように別々の謎の記号や概念のように見えているのではないでしょうか. 意図的にその時点で全くわからない自然言語にいくつか触れてみたとき, 少なくとも理解という面からすると, 面白いとか楽しいとか, 何の役に立つとかそれ以前の話というか問題があるのではないかと特に強く思うようになりました. これらの記号や概念が適当な固まりになっていてそれぞれが意味と関連を持つことが腹落ちしていないと, そもそもそれらが何かしらの意味を持つことさえいつまで経っても理解できないのではないでしょうか. この辺, いわゆる「数学できない勢」からすると当たり前なのかもしれませんが, 問題は数学再学習時に今までの認識を破壞して学習観・学習法からして正してもらわないとどうにもならなさそうで, それをどうするかです. 学習観はまさにパターン認識の問題なので, ここに手を入れないことにはどうにもならないのですが, そこにどう手を突っ込むかが大きな問題です.
人によっては強いコンプレックスもあるはずで, 安易に手を突っ込むと当然感情的な反発が来ます. 人生をかけて育ててきた・きてしまった話で, 人生を否定しているように捉えられてしまってもおかしくありません.
長々と書きつつ別に結論や暫定解があるわけではありません. 私がいままさにロシア語をやっていて現在進行形で抱えている苦労はたぶんもっと一般化できるのだろうと思っただけです. ちなみにロシア語学習に関して何か格好いい対策があってそれを紹介するという話もありません. 時間をかけてロシア語のパターンをじっくり習得しようという強い意志と執念でカバーするだけです. どちらかと言えば必要なときには必要な範囲でこの手の泥臭いことを地道にやるのが一番効率的で効果的であり, 的確にそう判断できるのが格好いいと思ってもらえればいいな, と改めて思った次第です.
何とも締まりのない話になりましたが, 今日はこんなところで. 次回はたぶんもう少しふつうの数学の話にできると思います.
2021-05-07¶
今日は語学の勉強会をやっていました.
- 動画 https://youtu.be/9dQHaJf4yhY
- 資料ページ https://phasetr.com/archive/studygroup/sr/2021-05-07/
一昨日からのパターン認識絡みの話の一環として話を差し込みます.
この勉強会, 当面は理系のための語学を目指してやっています. 理系の語学といえば英語が最優先なところ, あえて英・独・仏・伊・西・露・中という多言語でやっています. 英語以外, 特にスペイン語以降の言語はろくに勉強していないにも関わらず.
これを通じて自分自身の勉強のモチベーションにしたいというのもありますが, それ以上に「単に知っていること」それ自体がパワーになることがあるからあえて無理やりにでもいろいろやっています. これは昨日の次の言葉にもつながります.
いいのか悪いのかは微妙なところですが, 自分の考えをまとめあげ, それを実践してフィードバックする力は現行の高校までの教育で鍛えること, 評価することが難しい
昔から「馬鹿の考え休むに似たり」という地獄の底から湧き上がってきたような言葉があります. しかしこれは何かしらの専門知識をもって仕事をしている人には実感を伴った言葉ではないでしょうか. クライアントからの無茶な要望を受けて「そんなのは常識的に考えて無理」と言いたくなるときはあるはずです. ここで噛み合わない常識が何かというと, 単純に知識だけの話だったりするわけです. パターン認識というかメタ認知の問題としては「知らないことはそもそも認識できない」とでもまとめられるでしょう.
この語学勉強会ではその辺の話の一つとして音・発音の話を取り上げようとしています. 英語として正確に発音できない音は (正確に) 聞き取れないとよく言われるようですが, これはまさに知っているか知らないかだけでかなりの部分が決まってしまう問題です.
他に今日の資料ページに載せていない, 口頭だけでの話で言われてみれば当たり前の話もいくつかあります. 例えば音の重要性として, 太古の昔はそもそも文字さえなく, 文字が発明されてからも文字が読めるのはごく一部の特権階級だけだった以上, 語学学習でももっと音を重視すべきだという話があります. これは会話が大事とかいう上っ面だけの話ではありません. 例えば今日まさに出てきたのはドイツ語の接尾辞の -heit, -keit の類似です. 英語でいうと -hood などにあたる接尾辞ですが, -heit と -keit はそれがつく語幹の語尾によって変わるだけで「同じ」モノです. スペルに注目するとどう似ているのかよくわかりませんが, 音から見ると h と k のどちらも息を吐いて発音する点が同じなのです. また発音はいわば楽器としての人体の影響を強く受けるため, そこから物理の話を持ち込んでもいいでしょう. 何故 h と k が同じような役割を果たすことがあるか, 言語によってスペルが入れ替わるかと言えば, 文字なしで音中心に言語が伝播した時代の影響があるからです.
語学でいうと, 私が教わっている言語学者によるとヨーロッパの言語で英語はかなりイレギュラーよりで英語の常識でヨーロッパの言語を見てはいけないそうです. この辺も今日いろいろ話したのですが, 例えばよくフランス語は発音が難しいと言うものの, 実際には英語の発音ルールこそ無茶苦茶で, フランス語の方がよほどルールでガチガチに発音が決まります. 例外だらけの英語に飼い馴らされてフランス語が読みにくく感じるだけです. また英語と違ってフランス語では形容詞は名詞の後ろに決ます. 形容詞が名詞の前につくか後ろにつくかは言語によって変わるのです.
よく「英語は英語のまま理解しろ」などと言います. 確かに日本語の感覚を直輸入するとまずい局面はたくさんあります. しかし日本語と英語しか知らない状態では英語の英語らしさが何なのかはわかりません. またこの 2 つしか知らないと英語と日本語の共通点もわかりません. 同じ人間が操る「言語」である以上, 必ず共通項もあるはずです. それを炙り出すにはいろいろな知識を持っている必要があります. よく「狭い世界に閉じ込もっていないで広い世界を見ろ」と言われます. 語学学習でも同じです. 英語と日本語だけの狭い世界に閉じ込もっていてはいけません. 実際, プログラミングでは多言語学習はむしろ推奨されます. いろいろな言語のいろいろな文化や自然な実装を見ることでプログラミングの技術もあがるとよく言われます. これを理系向けの自然言語学習にも取り込もうと思って無茶を捩じ込んでいます.
実は冠詞に関してもいろいろあります. そもそも日本語のように冠詞がない言語があり, 例えばロシア語も冠詞があります. あったとしても冠詞が名詞の後ろにつく言語があります. 例えばルーマニア語では定冠詞は独立した単語の形をもたず, 定冠詞語尾として名詞の後ろにつきます. 定冠詞のつけ方も言語の癖があり, 例えばイタリア語では英語の the my book にあたる il mio libro という表現があります. 英語で the my book と書くと文法的に変ですが, イタリア語は (それが適切な場面では) こう書かないと文法的に正しくありません. いま Google 翻訳で試してみたところ, このくらい簡単ならきちんと翻訳してくれる, つまり my book を il mio libro, the book を il libro と翻訳してくれるようです. 翻訳ツールの癖の他, このあたりの言語の癖も知らないと適切に翻訳してくれません.
ちなみに英語中心の機械翻訳系の話については nasa さんがまさにこのテーマで部活をやっているので興味がある人は入ってみてはどうでしょうか.
- https://energeia.app/club/205
当面は有料で出すコンテンツも部活内で出してくれるそうなので, いい勉強になるでしょう. もっとまともでおそらく世間的にも実用的な英語は「AI・機械翻訳リテラシー研究部 -AIとの協働を目指して-」でここでやってもらえると思うので, 私はまた別の切り口で, 私の脳内で「数学」と思える切り口で語学をやります. 多々例外はあれど言語の世界の法則が文法で, 語学というとすぐ会話に持っていかれる中, 文法をもっと鬼のように深掘りすることこそ理系向けになるのではないかと思って文法自体も何かしら理系向けの切り口にできないかと考えています.
他にも例えば「知らないとできないが知っていれば一発」系の話題もいろいろあります. 例えば面積の話. 放物線と直線が囲む図形の面積は積分を知っていれば一発ですが, 知らないと手も足も出ません. 積分についても単なる公式だけではなくリーマン積分の定義としての区分求積法を知っていれば厳密な値は出せなくても近似計算はできます. 統計学・機械学習の現場で出てくる高次元の積分では次元の呪いがかかって定義通りの計算では一生かかっても終わらないかもしれません. しかし高次元での面積・体積計算さえできればいいと割り切るならモンテカルロのような確率的な手法を使った近似計算の発想にいたれますし, そういう手法があるはずだと想像・創造することもできます.
また長くなってきたので今回はこの辺で打ち止めにします.
2021-05-06¶
前回の続きでパターン認識の話をします. ちょっと話がずれますが, まずは全然違う文章修行が他のタイプの文章に活きた事例を一つ紹介します.
それは柔道部所属のある生徒の話です. 柔道の私立の強豪校所属で, 中学から柔道一直線という感じの子で, 学校の成績は振るわない, 部活命の生徒にはよくあるタイプです. いろいろな縁があって大学進学を控えた段階で, 一度この子のお母さんに「勉強の面倒を見てもらえないか」と頼まれたこともあります. 結局それはなくなったのですが, 問題はその理由です.
柔道強豪校なのでスポーツ推薦なり何なりあるわけです. 多少なりとも小論文や面接対策などの問題が出てきます. 話を聞くと, どうもここでふだんの学力からは想像できない, 非常にしっかりした文章を書いてきたそうです. もちろん何故そんな文章が書けたかが気になります.
これは単純です. 部活の顧問の先生 (この人が私の先輩でこの縁でちょっとお手伝いをしていた) は柔道ノートをつけろと生徒に言っているのです. 「出したくないやつは出さなくてもいい. でもきちんと考えて出したやつは出したなりの結果が必ず出る. 好きなのを選べ」といつも言っているそうで, この子はそれを愚直に続けたそうです. 自分は何が得意で何が苦手なのか, レギュラー取りに向けて・次の試合に向けてどんなテーマに取り組むべきか, 今日の稽古のテーマは何か, どれだけできたか, 次はどうするか, 先生からもフィードバックをもらいつつ自分なりに中高の 6 年間考え続け, 文章の形に自分の考えをまとめ続けてきたのです. 柔道ノートを通じて内省力を上げ, それをはっきりと文章の形で他人に伝える力を鍛え上げてきていて, それは大学受験の小論文などにも活きたそうなのです.
いいのか悪いのかは微妙なところですが, 自分の考えをまとめあげ, それを実践してフィードバックする力は現行の高校までの教育で鍛えること, 評価することが難しいです. しかし部活と, 何よりも柔道ノートと指導者とのやりとり, 柔道という実技での日々のフィードバックでそれが鍛え抜かれていたのです. この辺は非常に普遍的な技能なので多分何にでも活きるでしょう.
前回日常的なテーマで構わないので分析的に・主張を持たせた日記を書いてほしいと言ったのはこうした意図があります. まわりまわって数学学習にも効きます. もちろん数学には数学特有の文化・はまりどころ・訓練内容があるのでそれだけではどうにもならない部分はありますが, やらないよりは遥かにましです.
これは「数学を勉強すると論理的思考が鍛えられる」とかいう話の実態だと思います. 数学を理解しようと思うとそういう頭の使い方をせざるを得ず, 副作用として得られる能力なのでしょう. 本当に日々の生活に活かすには数学だけではどうにもならず, 別途訓練が必要とは思います.
一応言っておくと, 「数学でやっていることは他のいろいろなことと頭の使い方が同じだ」というメタ認知みたいな思考や応用の意識を持っていないと, 数学で鍛えられると噂の論理的思考力は他に活かせません. これはこれでまた別の話なのでここでは触れませんが, 頭の使い方にもいろいろあって, それ自体きちんと考えないと使いたいように使えません.
少しずつ型それ自身が大事な意味を持つことを説明していきます. 次回はもう少し直接的に数学の話をしましょう.
2021-05-05¶
書こうと思っていることがたまりにたまっているのですが, パターン認識絡みの話をもう少しした方がよさそうなのでそれに関連した話です.
どんな人が何を求めて・具体的にどんな数学がしたくて部活に参加しているのかいまだによくわかっていないのですが, 何をすればいいかよくわからないなら, とりあえず日記をつけてみてください. このときの次のポイントに注意して書いてください.
- 散漫に書くのではなく何かしらの主張を持たせる. 例えば「今日はこんないいことがあった」といいことを書く. そのときいいことランキングのようによかった順に書くとか, 時系列で書くとか, 何かしらの視点を入れる.
- 何かを分析的に書く. 今日の料理について手順を書く. なぜその手順にしたか, 本来こうしたい (するべきだ) が, 並行して他のこともしていたので正規の手順を踏まなかった, そしてその結果どうなったかなどなど.
- 頭の中だけに留めるのではなく, 紙に書く・スマホにメモする・PC でガッツリ書くなど, きちんと文字としてまとめる・出力する.
プライベートな話になるので無理に出さなくてもいいですが, 出せるなら適当に投稿・コメントしてください.
これと数学に何の関係があるかと思われていそうなので補足します. 数学に限らず, 何かを勉強するときは何かの主張を受け入れたり考えたりすることが必要です. 数学に関していえば「こんな問題をこう解いた」「この定理をこう証明した」という主張を理解するのが大事です. この意味でいつでも何かの主張を読み解き, 理解する必要があります.
そしてよく読めるようにするにはよく書けるようになることが必要で, よく書けるようにするにはよく読めるようになることが必要です. このあともう少し詳しく, 例を挙げて説明します. まずはこのパターンを認識して活用してください. 実際には適当な形で並行して進める必要がありますが, 具体的な進め方は人・状況で変わります. 何はともあれ文章の読み書き訓練が必要で, 「勉強」という人の主張を読み解くのが大変なら, とりあえず自分の主張を書いてまとめる方を優先してはどうか, という話です.
さて, 人の主張を読み解くのにパターン認識が大事なことをいくつか例とともに説明します. 以下, パターン認識を簡単に「型」と呼ぶことにします.
適当な意味で主張を含む人の話を聞くのにも, 主張を含む自分の話を語るのにも型を認識して使いこなすのがとても大事です. 「リーダーのためのライティング講座」に参加している人は「人間がどうしても反応してしまう型がある」という話を聞いているはずです. それに関わる話をしていると思ってもらうといいでしょう.
まずはお笑いの話をしましょう. もの凄く大まかに言えば次の 2 つの型があります.
- コテコテの大阪の笑いと言われるような, ガチガチの型がある笑い. 得意な型にはめたコントや漫才も含む.
- 型がない・型を崩すタイプの笑い. 意外性で笑わせる笑い.
実際のコント・漫才・漫談がこれのどちらかにわかれるわけではありません. お笑いには詳しくないのでアレですが, 例えばミルクボーイのコーンフレークネタにはその後の一連関連ネタがあります. これは「コーンフレークネタ」というガチガチの型がある一方, その中身は意外性のある展開・最後のどんでん返しがあったりと後者のタイプの要素も含んでいるからです.
これも言いはじめるときりがないのですが, エピソードトークなどもこの二つが鉄板でしょう.
- この話の流れだとこれが来るはずだ.
- 「本当にやったんかい」系の型通りの話.
- 「そうはならんやろ」系の意外な結末.
適当な人生経験があれば「こういうときはこうなる」という型が頭の中にできています. 型通りという型・型を崩すという型に合わせてうまく話をするのがお笑いの典型的な型です. その意味では日記の代わりに好きな芸人のお笑いのネタ分析をやってもらっても構いません. 楽しくできることをやってください.
文章にはいろいろな型があり, 数学の文章にも型があります. そしてそれは特に分析的で, 適当な意味で「問題を解く」という主張を込めた文章に分類されるので, そこに慣れるべく, まずはそういう文章を書いてみようという話です. 実際に問題の解答を書いたり証明を書くときに直接的に役に立ちます. 逆にこの能力が鍛えられていないと問題の解答や証明は全く書けません. 書いたとしても他人に伝わらない支離滅裂な文章になってしまいます.
まだこれを数学・プログラミング・英語に持っていく部分があるのですが, 既にかなり長くなっているので明日以降に回します.
ちなみにこの ENERGEIA の部活の投稿のように, ガチガチの数学・物理・プログラミング・語学だけではない, 一般向けにもっと響く話をしないといけないので, お笑いでもアイドルでも, 何か興味があるネタがあればいろいろコメントください. 何かしらの形で数学 (か物理かプログラミングか英語・語学) に変換して何かやります.
2021-05-04¶
ちょうどいまリーダーのためのライティング講座で Module 5-7 の質疑応答を見ていたら, 昼間のhttps://energeia.app/club/2148/postでのやり取りを思い出したので共有しておきます.
この和佐・木坂の質疑応答で次のようなことを言っていました.
- 今までコピーライティング・命名などでいろいろな実践企画をやってきたが, これらは言語化とは違う.
- それらは言語化のための訓練・準備ではある.
- 正解はがんばった結果としてどこかから出てくるもの.
- 訓練を積んでいろいろがんばった果てにぽっと出てきた結晶が大事.
- やるべきは答えを出すための準備を一所懸命に取り組むこと.
昼のやり取りもこれだと思っています. 頑張る方針は明確でそれをどう頑張るのか, どのくらい頑張るのか, そして執念深く頑張り続けるとその最果てで神様がご褒美をくれる, そういう類の話です. 執念深い頑張り方は具体的なモノによるので, そもそもパターン化するようなモノでもなければできるモノでもないというか.
大分前の話ですが, 自然言語処理の文字読取で一般論で処理できるのは 95%, 残りの 5% は泥臭い努力, 気合と根性だと聞きました. 95% がまさにパターンで「欲しい物がないなら探し方を変えるか探す場所を変えるか」, 残りの 5% は具体的な「代数方程式論で自力で複素数体をどう発見するか」の努力です. 5% だから小さいわけでもなく, むしろマラソンであと 1km が一番きついと言われるような部分でしょう.
何というか, 数学でも物理でも言語学でも最終的には人間のやることであって, この「人間がやること」というレベルでのパターンだけ見て基本方針を決めて, あとは場合に応じた気合と根性で動いています.
2021-05-03¶
投稿¶
今日は「理論物理学者に市民が数学を教える会」を2時間やっていました。
リンクも張りましたが、名前からわかるようにここでの趣旨とだいぶ違う内容なのでこれを見てほしいわけではありません。ただ、今回放したことが一部ここでの内容、そして今後やっていきたいことと直結しているので、その話をします。
一言でいうと、高校くらいまでの内容がわかっていない、またはそれが適切に結び付けられていない問題です。例えば理系の人なら代数学の基本定理(一変数のn次多項式は重複を込めてn個解を持つ)は誰もが知っているはずです。しかしそれと超関数論を結び付けられるかというとそうではないのです。
数学科の数学はよく「こんなのをやって何の役に立つのか」「何の意味があるのか」と一般の理工系の人から言われます。一方で数学科サイドからすると「これ、高校でさんざんやったことで、お前ら理系なのに何でこんなのもわからないの?高校で何をやっていたの?」ということもよくあります。細かい議論はともかく、「それが何なのか、何をモチベーションをどんなことをしようとしているか」は高校までの数学がわかっているなら「高校でやったあれと同じ」で処理できることがたくさんあります。この認識のギャップが凄まじく、そのオーバービューを提供するコンテンツが必要だ、そういう話をしていました。
今日、冗談抜きで理論物理学者に「これはこういう理由で高校の数学や物理と直結しているので、高校の内容をわかっていれば何も困らないはずだが、実際にはどうか?」という話を本当にしてきました。理論物理学者でさえ、高校レベルの数学、そして高校レベルの物理に潜む数学をきちんと評価しきれていません。
この部活にも機械学習勢がいて「高校数学からやり直した方がいいか?」という質問が上がっています。自己紹介シートに本当にそういう話が書いてあります。高校数学からやってもいいのですが、上で書いたような高校数学の評価ができない状態で高校の数学をやっても挫折します。理由は人によっていろいろあると思いますが、そのうちの一つとして決定的なのは、おそらく面白くないからです。そのギャップを埋めるコンテンツやサービスを考えるのが、私がこの部活でやりたいことです。そして、算数+プログラミングがこのギャップを埋める基礎になると思ってずっと言っています。
高校の数学であってもアプローチ次第では面白くも役に立つようにもなるので、その辺の話ができる人間を増やすためにまたいろいろやっていこうと思います。
やりとり¶
コメント¶
「例えば理系の人なら代数学の基本定理(一変数のn次多項式は重複を込めてn個解を持つ)は誰もが知っているはずです。しかしそれと超関数論を結び付けられるかというとそうではないのです。」
うそん・・・結びつくんですねw 遠い専門物理の国の出来事かと思ってました ^^;
返信¶
どちらも方程式の解を求めるために「解を考える範囲を大きくする(している)」のが共通点です。 「本来ほしいのは整数解だが、解の存在保証のために一旦複素数まで広げて探す」「解が見つかったので見つけたかいがほしい声質を持つか調べる」という流れは数学のありとあらゆるところで出てくる発想です。
コメント¶
百合智洋 おお・・・素晴らしい発想ですね・・・現実問題のありとあらゆるものに使えそう。ありがとうございます。
木坂さんも木坂部(仮)のなかで家族の形態についての議論をすすめるときに「相対化」って形で使ってたような気がします。
色んな所で効く発想法なのに、日常生活で忘れがちになりそうなので、ちょっと気をつけて使うようにしてみます。
1点、質問になります。
こういった発想ができるかどうかは、 「メタ」な拡張された世界観を知っているかどうか、 に依存すると思っています。
そういった世界観で有効なものを発見するコツというものも、数学的な思考法に慣れている方たちの間では暗黙知として存在するのでしょうか?閉じる
返信¶
問題意識がよくわかっていないのですが, 「数学はアナロジー」とはよく言われるので形式知です. 「コホモロジーは割り算で, コホモロジーがわからないやつは小学校の算数が何もわかっていない」とかいう話もよく出てきます. 紹介した勉強会でもこのネタの話をしました.
大したことを言っているつもりは全くなく, 物理だと現象を微分方程式に翻訳して, 方程式の類似と現象の類似を見ていろいろな感覚を養うとかいうのはよくやります. C言語系の言語を何か一つやっておくとJavaなり何なりの多くの言語が少し勉強すればノリで押し切れるとか, Haskellなどの関数型言語はノリが少し違うからC系の言語と同じ感覚を持ち込むと自然にプログラムが書けないとかいうのと私の中に意識の違いはありません. それぞれの分野や領域でノリの違いはもちろんありますが, 似ているだけで同じではないので当然違いはあってその調整を勉強と呼ぶのだと思っています.
他にも「比較---」とある分野はだいたいこのノリだと思っています. 私が語学を教わっている人は比較言語学が専門らしいのですが, そのノリで欧米系の言語が15ヶ国語自由に話せるとかいうのも同じ感覚のようですし, 数学的思考に話を限定するのも全然意味がわかっていません.
この辺の話をまずは理系向けにきちんとやろうというのが「理工系の総合語学・リベラルアーツ」と呼んでいる活動で, いわば文系向けにフィーチャーした試作品が https://phasetr.com/lp/evb1/ です. ここでやろうとしている算数+プログラミングも題材と切り口が違うだけで私の中では「広義の言語と文化をたぐ」点で同じことです.閉じる
大卒の人間はこのくらいの認識を持っていると仮定して生きてきたのですが、何かどうやらそうではないというのもだいぶ前から知ってはいますが、ちょっと話せばわかる人としか付き合いがないので、今一つ肌感覚がない部分です。
コメント¶
お返事ありがとうございます。
"「数学はアナロジー」とはよく言われるので形式知" というご説明、ありがとうございます。 暗黙知という言葉を使ってしまったのですが、適切でないということがよくわかりました。
以下、ご説明をさらにしていただいた中でクリアにして関根さんにお伝えしたほうが(私にとって)よさそうだなと思うポイントを●で見出しにしました。お読みいただき、ご返信いただければ大変うれしく思います。
●問題意識について
問題意識なのですが、いただいた例をもとにご説明させていただくと「解を考える範囲を大きくする(している)」という発想にいたるためには、より大きな範囲となる概念であるところの「複素数」を知っていればその発想ができるかもしれないという点、すごく腹落ちしております。
ただ、例えばなのですが、「複素数」がまだこの世に概念として誰にも認識されていなかった場合、自力で見つける必要があると思いました。
しかし私の場合は、とても見つけられないだろうなというのが問題意識となります。
見つけるためのパターンなどご存知であればたいへん助かるなと考えた次第です。
●「数学的思考に話を限定するのも全然意味がわかっていません.」という部分について
限定したのは特に深い理由はなく、ご返信の中で
"「本来ほしいのは整数解だが、解の存在保証のために一旦複素数まで広げて探す」「解が見つかったので見つけたかいがほしい声質を持つか調べる」という流れは数学のありとあらゆるところで出てくる発想です。"
の「数学のあらゆるところで出てくる発想です。」ということに引きずられて数学に限定しただけでした。閉じる
返信¶
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純粋に数学の話として複素数のような具体的なものを見つける・見つけたという話については、人類レベルでの偉業なので、自分にはできそうにない、と言われても「それはそうだろう」以外に返しようがありません。多くの天才が命をかけて死にものぐるいで頑張って探し当てたものを凡人がそんな簡単に探り当てられるわけがないので。 知っている範囲で数学史に名を残す天才がその偉業を成し遂げるためにやったことを2つ紹介しておきます。以前ドラマにもなった岡潔は「仏道の修行で精神を研ぎ澄ませることが大事」と言う言葉を残しています。参考になるか、という話ですが、複素数発見のような偉業を自力で達成してみたいとなるとこの域の話なのではないかと思います。あともう一つ、グロタンディークという20世紀数学の巨人の発言として「もっとじっくり丁寧に考え続ければ解決法は見つかるはずなのに、普通の数学者はその辛抱ができない。」といっています。閉じる
中途半端に複素数という具体例が出ているのがミスコミュニケーションの原因な気もするのですが、私としては「見つけるためのパターン」は「欲しい物がないなら探し方を変えるか探す場所を変えるか」で話が尽きています。具体的なモノである複素数を見つけるのに関してはケースバイケースの話だから筋がずれていてどう書くといいのかよくわからない、という感じ。文章だと細かいすり合わせ大変なので、GW開けにまた適当なタイミングでイベントと言うなの勉強会を開く予定なのでそこで話したほうが良さそうな気がします。閉じる
コメント¶
丁寧なお答え、ありがとうございます。
"私としては「見つけるためのパターン」は「欲しい物がないなら探し方を変えるか探す場所を変えるか」で話が尽きています"
というお返事をいただけたので、私としてはこの件に関しては十分な納得感を持っております。
"数学の話がしたいのか、生活一般に活かす話がしたいのかよくわかっていない"
という点に関してはできれば生活一般に活かすというところまでいきたい思いはありましたが、数学の話に限定されたお答えであっても十分でした。
ご相談にのっていただき、本当にありがとうございました。閉じる
2021-05-01¶
ちょっといろいろあって GW には, これまで作ってきたコンテンツを整理し直してアップしたコンテンツアーカイブサイトを整理することにしました. いま急ピッチで進めています.
リンクを作るために登録ページだけ作っておき, あとできちんと整理しようと思っていたところ, 公開状態にしてあったため, 登録された方がいました. 急いでその対応を進めた関係で, ここで共有してもよさそうなミニ講座がアップできたので共有します.
式は一切使わずに, 中高の数学が何にどう応用されているかを紹介したコンテンツです. 最後に今後の勉強の指針やお勧めコンテンツも紹介しているので, 興味がある方はどうぞ.
あと, 他にもいろいろな都合があって, 一変数関数論 (複素解析) の留数定理を目標にして作った, 過去のコンテンツも公開しました.
だいぶ前に「(大学レベルの) 電気回路の理論で必要な数学」といって紹介した話が大まかにまとめています. これは学生向けセミナー向けコンテンツとして作ったのですが, 記録を見たら 8 年前に作ったものでした. 当時学部 1-2 年の学生に向けたもので, その頃の学生はもうポスドクになっていたり, 就職して結婚していたりと, 時の流れを感じます.
当時のいろいろな事情やモチベーションによって英語で作っています. 凝った表現も頻発する文学作品ならともかく, これを読もうというくらいの人なら定型文ばかりの数学用の英語くらいなら問題ないでしょう. これも興味があればどうぞ.
もう少ししたらもとの算数+プログラミング系のコンテンツ制作・共有に戻ります.
2021-04-30¶
部員の方で私が作ったミニ通信講座に参加してくださった方がいて, アンケート回答してくれたのですが, それを見ていて思ったのをメモしておきます.
結論からいうと私は「3年くらいやればできるようになると思っているので, ふだん何かわからないことがあっても大して気にしない」という話です. いいのか悪いのか微妙なところですが, 日常的にたいがいのことがよくわからず, わからないことに耐性がありすぎる, もしくはそうなってしまったので, 「コンテンツのここがわからない」と言われたときに「3年くらいのんびりやってほしい」と真っ先に思ってしまう, という話です. もちろんわかりにくいところらしいのでどうするといいか考えてはいます.
ちなみに今日, 語学の勉強会をやっていました.
今日はある一文に関して英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語・中国語の多言語比較をしました. ロシア語は何とかキリル文字が判定できるようになったくらいで, 単語の意味が全くわかりません. それでも気にせず適当に話していました. もちろんドイツ語やフランス語などもはじめ何もわからず, 2年くらいちょこちょこと続けてようやく少し単語が覚えられてきたくらいです.
数学で大学院まで行ったと言われると「わからない人の気持ちがわからない」とか不愉快極まりないことを言われることがあります. ど専門であっても, 論文なり何なりを読んでいて「これ何なの?」という経験を死ぬほどしてきたので, 我々数学科出身者ほど数学がわからなくて困った経験のある人類は存在しません.
ここも趣旨として分かろうとやっきになるというより, わからない状態を抱えつつのんびりやっていこうという所と思っているので, 100万回生きたねこばりに100万回やってほしいです.
私もロシア語わからんとのたうち回る姿を見せていこうと思っています.
2021-04-29¶
その 1¶
いまTwitterで見かけたのをシェアしておきます。
(私の界隈で)数学ガールで有名な結城浩さんがまさにその数学ガールで物理をやるとか。物理の基本的なところがこれにぶん投げられそうなのでとても期待しています。
その 2¶
機械学習勢が何人かいるので参考までに転載しておきます。以下のツイートで具体的に引用した前原さんはいまFacebookの人で、東大工学部で博士まで取って理研でも研究者をやっていたバリバリの情報工学畑の研究者です。「機械学習で線型代数(数学)が大事」というときの意識合わせとして一つ参考になるでしょう。
実際やるとわかりますが、数学科の数学はあまり使えません。例えば逆行列の計算公式などはあるが計算量的に使い物になりません。実際に計算をぶん回した感覚をセットにして勉強するべきだと思っています。その辺の塩梅もあって「早いうちからプログラムで計算して遊ぼう」というコンテンツを作ってここで出しているという経緯があります。「コンピューターで計算しても遅いものは遅い」「工夫しないと速くならない」経験は、今の時代、何だかんだで非常に役に立つと思うので。
このツイート周辺からの前原さんのツイートをまとめておきます.
- 「深層学習で線型代数が大事」みたいなのよく聞くけど本当かしら.普通に使う分には「行列を知っています」レベルで足りそうな気が.
- さすがに乗算がどう定義されているかくらいまでは知っていたほうがスムーズかなあと
- 「線形代数を勉強しましょう」と言ったときの線型代数はシラバスを参考にするべきだと思っていて(例1, 例2),大まかには逆行列・行列式・固有値分解を指すことになると思っています.
- 機械学習の前に"線形代数"と"微積分"が必要マン、たぶん(多変量解析に必要な)行列計算と偏微分が必要という意味だろうし、そう書いて欲しい。単因子論をやらせたいわけでも極限を厳密に扱って高校までの微積分を再構成させたいわけでもないだろうし。真に受けて教科書に戻っても遠回りな気がする。
あとはこれに対するやり取り.
- 対象を「機械学習」に広げると,逆行列・行列式・固有値分解いずれもよく出てくるので,線型代数を勉強するべきという主張に特に異論ないです.
- 特異値や数値計算・計算量との関係で見る議論など、いわゆる数学科の線型代数との乖離が激しい部分があり、それが応用上クリティカルに効きもするのでむしろ強調すべきはそういうところではないかという門外漢から眺めた気分があります。
- 「数学科で学ぶ線形代数」と「その他理工系学科で学ぶ線形代数」の乖離が大きくなってるんですよね(良いことだと思ってます).まあ「○○に使えるから線形代数を勉強しよう」的な言葉が刺さる人は工学系のほうに流れるだろうからいいんじゃないか,みたいな気持ちがありました.
- 工学の線型代数は計算機と絡めた暴力とともにやるべきで、工学部でそういうカリキュラムが組めていないのは知的退廃ではないかという気分があります。
2021-04-28¶
数学でよく暗記VS理解が取り沙汰されます。今回は番外編的にそれに関して一つ数学者からのコメントを紹介します。
公式を暗記したい人にこそ導出を追うことを勧めるのですけどね。それが最も効率良い暗記法ですから。丸暗記なんて効率悪いだけです。
最後のところ、正確には「結果だけを丸暗記」と読んでください。 どうせ暗記するなら証明にいたる細部まで本一冊丸暗記するくらいがベストです。
ついでにもう一つ、大学院時代の私の指導教員が書いたセミナーの準備の仕方も紹介しておきます。
上記文章中にもあるように、河東研の学生セミナーでは本やノートを見ずに二時間程度セミナーするのが義務になっています。一応言っておくと話していて混乱したりしたとき、「この計算合っていたっけ?」などとノートを確認するくらいは問題ありません。(実際には問題なのかもしれませんが、私はそれで怒られたことはありません。)
このようにして,何も見ないでセミナーで発表できるようになるんです.(私のセミナーでは,本,ノート,メモ等を見ることは一切禁止です.) これは丸暗記するということとは全く違います.数学の論理は有機的につながっていて,定義でも,仮定でも,補題の順番でも,何か理由があってそうなっているんですから,全体の構造を理解していれば,正しく再現できるようになります.
二時間分の内容を丸暗記しろと言っているわけではなく、要点を掴んだ上でその間を埋められるパワーを身につけろという話です。もちろん趣味で数学したい人にここまでやれというわけではありません。これまたついでに言えば、数学では「何かがわかったというならそれに関して本が一冊丸々書ける」くらいのレベルを指します。有名なエピソードとして「先生、ようやく私はモース理論が理解できました」と言って成し遂げたことがフィールズ賞(数学会のノーベル賞)受賞というケースが二例あります。数学で理解したというとこの水準を指すことさえあります。
最後に改めて書いておくと、たいていの人、どうやら数学での暗記に対する認識・水準が低いようです。どうせ暗記するなら本一冊、細部にいたるまで全て丸暗記していつでも本一冊を完全再現できるくらいにやってください。結果だけの丸暗記は本当に意味がないです。
2021-04-27¶
土曜からここまで、コンテンツアーカイブを整理していました。
まだ長期休暇にこそ入っていないものの、GW中の最優先対応事項です。まだ中高数学・プログラミング系が充実させられていないのですが、追々やっていきます。いったん他のタスクを全て止めているので、ENERGEIA向けのコンテンツ制作もお休み中です。
GW中にはけりをつけたいですね。
2021-04-24¶
今日はいくつか勉強会に参加していてほとんど何もできていません。コンテンツ制作はお休みです。
明日は13:00から勉強会なので興味ある方はどうぞ。勉強会でやっていた内容はコンテンツとして作り始めたので、何か違うことをやろうかと思っています。Project Eulerにしても他の言語でやるとか、逆に後回しにすると言っていた基本的なPythonの話をするとか。その場で適当に考えます。
2021-04-23¶
今日は語学の勉強会をやった後、自サイトのコンテンツアーカイブを整備していたので算数+プログラミングの動画はなしです。一応語学勉強会の動画を共有しておきます。
今日はこんなところで。
2021-04-22¶
今日の動画コンテンツと資料です。
- https://www.youtube.com/watch?v=vmAbV5Wi50Q
- https://github.com/phasetr/studygroup/blob/master/project-euler/problem00001_2021-04-20.md
コンテンツを書き溜めているのですが、動画収録中に「これだと説明足りないな」と思って追加したら6分になってしまいました。 ちょっと少ないくらいでちょうどいいのかもしれません。
2021-04-21¶
朝¶
一つツイートを紹介します.
Thurston のエッセイ https://arxiv.org/abs/math/9404236 を読んだ。 数学とは何か、数学者は何をするのか、力強い文章で、 今日偶然知って読みはじめたら止められませんでした。 お暇があるかたにはお薦め出来ます。
サーストンが誰か, 何をした人か簡単に紹介すると, 数学会のノーベル賞と言われるフィールズ賞を取った幾何学者です. 何年か前にNHKスペシャルでポアンカレ予想に関する話がありました.
宇宙の形が何とか, とかいうやつです. 上記リンク先にも次の一文があります.
番組は、高次元宇宙、「宇宙は最大で8種類の異なる断片から成り立つ」というサーストンの幾何化予想
このサーストンが上のThurstonです. 英語ですが17ページ程度です. アブストラクトに書いてあるように, 内容上, 葉層構造(foliation), 3次元多様体の幾何化(geometrization of 3-manifolds), 力学系(dynamical systems)と私でさえほぼ知らないゴリゴリの数学に触れてはいますが, 分類として「History and Overview」なので, 細かいことはわからなくても楽しめるはずです. 何より「数学とは何か、数学者は何をするのか」にフォーカスをあてた文章なので, そういうつもりで読めば楽しい人には楽しいはずです.
ちなみに, 私が語学系の話題にも繰り出すようにしたのは, こういう情報を出すときに「英語はちょっと」と言われることが何度もあったからです. 「中学・高校と英語をやってきて, 大学進学者も増えてきていて受験勉強でも英語をやって, まさにその学校英語で読みこなせる文章なのに」と思っていたのですが, 学校英語が役に立たないと思われているからか何なのか, 全然話が通じないので非常に困っていたからです.
ちなみにサーストンは凄まじく異常に「幾何が見える」人で, この人にとっては直観的ではっきり「見える」ことでも, 並の数学者には何を言っているのか全く伝わらず, 業を煮やしてCG・可視化の研究をはじめたことでも有名です. お絵描きのためのプログラミングというのを何回か描いていますが, それはこうした事情も考えてのことです. 数学者でさえプログラミングによる可視化支援が必要なことがあるのです.
サーストンはこの手の「いわくつき」の凄まじい数学者です. 『サーストン万華鏡』という本も出ています.
買うだけ買っていまだに読めていないのですが, 紹介しておきます.
夜¶
今日のコンテンツです。
毎日取り組むプチ数学として作ってはいますが、ご自身の状況に応じて、適当に見たいときだけ見てもらえれば十分です。 今回も4:15で終わりの短い動画です。
2021-04-20¶
今日のコンテンツです。
適当な意味で順番にしつつステップを踏んでいかないといけないので、一応前回の知識を前提にコンテンツを作っていきますが、気になったところだけでもいいので、途中からでも気にせずコンテンツに触れてみて下さい。今回の動画はちょうど5分です。
今日のポイントを簡単に書いておくと次の通り。
さて、問題はこれをどうプログラミング言語に「翻訳」するかです。
これを見ているあなたは日本語が堪能でそう。 一方で英語を含め、他の言語には必ずしも堪能ではないとします。 「日本語で言いたいことはあるのに英語でそれがうまく言えない」、 もっと言えば、「伝えたいことはあるのに日本語でさえうまく言えない」、 こんな経験をしたことがあるはずです。
プログラミングでも同じです。 コンピューターにしてほしいことをコンピューターに伝わるように、きちんと表現する必要があります。
これがプログラミングも語学に含めた理由の一つです。
詳しいことは追々やっていきます。 ではまた明日。
2021-04-19¶
やるやる詐欺気味になっていたコンテンツ、第一弾の動画をようやく作りました。
今回は7分近くになってしまいましたが、以後はできる限り5分以内に収める形でやっていこうと思っています。プログラミング自体は次回から始める予定です。今回の初回動画はオリエンテーション。
ではまた明日。
2021-04-18¶
今日も地味にイベントをやりました。参加者少ないので時間ずらそうと思うのですが、どこがいいかよくわからないので、とりあえず同じ時間で続けます。何にせよコンテンツ準備する時間にもなってくれていて、当面は私の作業時間でもいいかと思って。次回もイベントも作っておきました。
今日はTwitterで流れてきたPDFを一つ共有しておきます。応用数学、特に機械工学に関する4ページの文章です。特に読んでもらう必要はないですが、工学で実際役に立つ数学がどんなのか、そして何より、どんなことができると工学者から見ても嬉しいのかが書いてあります。冒頭の一文「遊歩道ということで,論文や著書の中では書かれることのない思いを述べてみたい.」にその気分がまとまっています。
この文章で注意してほしいのは、やはり冒頭の次の文です。
専門にしている形状最適化問題の教科書を書いた際,できれば絵本のような本にしてみたいと公言したこともあった.実際に取り組んでみると,なかなか思うようにはいかないことはだれもが気づいていることであろう.
工学から見ても、絵本のように絵がたくさんある本がほしいといっているわけです。実際に数学関係のミニ講座を作ったときにも同じコメントをたくさんもらいました。応用方面の理工系の専門家から見てもその思いは同じというのが確認できます。一頃は学生にプログラムを書いてもらっていて、その学生が卒業・修了していなくなったため、自分でやらざるを得なくなる状況に追い込まれてようやく取り組み始めたと書いてあります。理工系の専門家にとってさえ、プログラミングに取り組む精神的ハードルはこのくらい高いことに注意してください。一人でやるのは現実的ではないと思ったのでイベント・勉強会で扱っています。
文章の中で紹介されているFreeFEMのサイトを開くと英語です。有名なソフトなので日本語情報もありますが、詳しく調べようと思ったら英語の文章を読むしかありません。理系の共通言語は英語(と数学)で、少なくとも大学院まで行けば文献が嫌でも英語になってきます。得意不得意はもちろんあるにせよ、理工系人なら大学受験含めて英語をやらされるのだから読む方は問題ないだろうと思っていたらどうもそうでもないらしいと知りました。それなら何かやるしかないと思い、それが私が語学系のコンテンツを作ろうと思った理由です。
こうも言えます。便利そうなソフト・プログラムを使おうと思うと英語の壁が立ちはだかるのが数学プログラミングの世界です。算数レベルのProject Eulerを触っている理由の一つがこれです。面白いこと・役に立つことはほとんど自動的に死ぬほど難しくなるつらい世界です。
一応お絵描き系についてはすでにコンテンツは作ってあるので、必要なら次のミニ講座を受講してみてください。Pythonで書いてあります。
無記名アンケートなのでどなたかわかりませんがENERGEIAからこの講座に参加してくださった方もいるようです。これもコンテンツのブラッシュアップ版に差し替えないといけないのですが。
ちなみに、私が純粋に数学をやるときにお絵描きに必要以上にこだわらない理由は、そもそも絵が描けないか描いたところで理解が深まるとは限らないことにあります。私の数学上の専門は無限次元のベクトルに関わる解析学です。よく「四次元が見えるか」という話があります。四次元どころか無限次元の対象が相手でもう絵を描きようがないのです。描かないというより描けないので、そこにこだわるモチベーションを持ちようがないのです。
2021-04-17¶
新しく小さなコンテンツを作るために既存のコンテンツを整理しているのですが、いつまで経っても終わらないので、いったん既存のコンテンツをある程度そのまま共有しておきます。内容については次のページを参考にしてください。
明日はイベント(勉強会)です。算数+プログラミングで遊びます。興味ある方はどうぞ。
2021-04-16¶
せっかくなのでプログラミング言語についてもう少し書いておきます。
プログラミング言語を何にするかはかなり悩んでいます。最近の言語とライブラリは確かに便利で、しかも情報が多いメリットがあります。特に機械学習が流行ってくれたおかげもあって、Pythonの情報は恐ろしいほどあります。Google Colaboratoryもあるので、実行環境や資料の共有も本当に楽になりました。
ただ、これには大きな欠点があります。バージョンに関して繊細で、ライブラリのちょっとしたバージョンアップですぐに動かなくなります。これが本当に嫌で面倒です。数学だと一度正しく証明を書いておけば、その議論・証明が古臭くなることがあっても間違いではありません。物理も適用範囲を適切に取れば、一度発見した物理法則などはまず覆りません。生物などはかなり基礎から書き換わることがあるようで、高校の生物ですら根本部分が書き換わることがあると聞きます。歴史などでも新たな史料が発見されたために学説が書き換わることがあるとよく聞きますが、数学と物理でそういう話はまず聞きません。しかし実際のプログラミング・ソースコードでは起きてしまうのです。
Project Eulerの算数をやるくらいなら原始的な機能しか使わないので問題にはなりません。しかし中高数学を対象にするとなるとやはり適当なお絵かきは外せません。特に微分や積分、微分方程式を考えるときにはどうしても図やアニメーションで説明したくなります。自分だけの勉強なら任意の言語+gnuplot+ffmpegなどで強引にやってもいいのですが、この面倒臭さを非プログラマーに押し付けるわけにはいきません。そういうのも考えるとPythonは一番の候補なのです。
いま語学系のコンテンツリリースのためにミニ講座を作っているのですが、そこで多言語学習が大事だという話をしています。そこでプログラミング言語だと多言語学習はごくふつうで、しかもいろいろなご利益もある、みたいな話をしています。実際、いまProject Eulerのサンプルコードも興味がある人向けにPythonとJuliaを両方書いていて、趣味でF#を追加しようと思っています。ここにSchemeも突っ込もうかと思っています。Schemeは多少マニアックになる分、専門的な計算機科学の教育用コンテンツの中に謎の充実度があり、濃いコンテンツがあります。最終的に中高生向けの濃いコンテンツにも転用していく予定なので、私自身の勉強も兼ねて今からやっておいた方がいいかという気分があります。計算機系といえばHaskellも重要ですが、HaskellはWindowsでちょっとやりにくい部分があると思っているので、折衷案的にF#を取り入れています。F#はパイプライン処理(|>
)がとてもお気に入りです。Haskellにもこの演算子があるのですがHaskellだとあまり使われません。HaskellはHaskellでいい書き味もあって、いつかはもっときちんと取り上げたい言語ではあります。
この間紹介した『素数夜曲』もSchemeなのでこれを読んでみるか、という話もあります。
今日はこんなところで。
2021-04-15¶
今日はプログラムを何に使うか少し話をします。一言で言えば「コンピューターに教える」ことで勉強するのです。次の論文の話を参考にしています。
これは大学スタイルの勉強法でもあります。「誰かに教えるのが一番勉強になる」という方向性のもと、物理の勉強のためにコンピューターに物理を教えよう、そしてそれはプログラムを書くことだ、そういう方針の物理教育に関わる論文です。実際にアメリカの大学でやっている内容をまとめた論文のようです。
算数・数学でもこれをやろうというのがここでやりたいことの一つです。ほぼ純粋な算数であるProject Eulerを元ネタに遊んでみようと思っています。ちなみにプログラミングの基礎勉強から含め、AtCoderで遊ぶのもお勧めです。
競技プログラミングという世界です。
ちなみに上の論文・教育用にHaskellのライブラリlearn-physicsが開発されています。昨日の話として、このlearn-physicsを使えるようにするのは本当に大変です。Linux・Macなら大したことはないのですが、Windowsだと大変で、私はインストールできませんでした。OpenBLASという行列計算用のライブラリをインストールしないといけないのですが、これをビルドしてこういろいろやれといわれ、この導入の仕方がよくわからず破滅しました。いまならWSL使えばいいですし、当時でもVirtualbox使えばいいなど逃げ方はありましたが、面倒だったのでWindowsで直接何とかしたいと思って破滅した苦い記憶があります。この辺が面倒なので、お手軽なところに落とせるだけ落としたネタにしたいのがここで私がやりたいことです。
ではまた明日。
2021-04-14¶
今日は他の部活の宣伝をしておきます。まだ詳しい情報が何もでていないのでどうするのか詳しいところが全く知りませんがとりあえず。
名前の通りプログラミングをやる部活です。日曜日の勉強会のタイトルにもしているように、プログラムを書いて遊ぶ方向は一つ確定なのですが、プログラミングの入門回りのことは本当に大変なのでやりたくないと思っていたところ、その辺をやってくれる部活があるとのことなので全力でぶん投げたいと思っています。
何人かプログラム読み書きできる人がいるのでその人たちにはわかってもらえると思いますが、プログラミング入門で一番大変なのは環境構築(インストール)とプログラムの実行です。「インストールくらいできる」と思う方もいらっしゃるでしょうが、モノによっては非常に大変です。特に私は数学と絡めようとしているため、数値計算周りでいくつか地獄が出てくる可能性があります。特に最近流行りの人工知能・AIまわりだとはまりどころがあります。
人によって使っているOSが違うのは当然ですが、WindowsとMacとLinuxでまた変わります。プログラミングをやるのが一番楽なのはLinuxで、最近はWindowsでもWSLがあったりとだいぶ楽になってはいるものの、Linuxの操作自体が鬼門です。いわゆる「黒い画面」で操作する場面が出てくるからです。MacはMacでLinuxとも微妙に・本質的に違うところがいくつか出てきて、そこでも微妙なはまりポイントがあります。インストール自体、黒い画面からコマンドをたたくみたいなことがよくありますが、コマンド入力以前に黒い画面への精神的な障壁が極めつけに高いでしょう。
とにかく、実際に何か本を読んでもらえればわかります。さらっといければいいですが、はまったら初心者が自力で解決できないこともよくあります。なのでその辺をどう乗り越えるのか、どんな言語を使うのか、といった点が今の私の注目点です。
ちなみに私の勉強会ではGoogle ColaboratoryでのPythonをメインにします。インストールがいらないのと実行が楽だからです。形式的には黒い画面も開きませんし、インターネット上でできるのでよほど変なことをしない限りマシンを壊しようがないのもポイントです。
子どもがやる内容となるとScratchみたいな言語かもしれません。何はともあれ動き出すのを待ちましょう。
今日はこんなところで。
2021-04-13¶
そういえば今日ようやく思い出したのですが、中高数学入門のおすすめの本として数学ガールがありました。私が持っているのは大学数学にまで踏み込む方のシリーズですが、小説・物語形式の中に数学をうまく混ぜ込んでいる奇跡のような本です。「数学ガールの秘密ノート」というシリーズは中高生でも読める内容になっているそうで、非常に評判がいいのでお勧めしておきます。たくさんあるので興味があるところから読んでください。特に何か、といわれたら「学ぶための対話」をお勧めしておきます。
あともう一つ、物語形式で「数学」に迫る本として川添愛さんの『白と黒のとびら オートマトンと形式言語をめぐる冒険』を進めておきます。書名にあるようにオートマトンという「数学」をファンタジー小説の趣で書いた、これまた軌跡のような本です。こちらは数学ガール以上に小説として読める凄まじい本です。著者の川添さんは本当に言語学出身の文系の人です。最近自然言語処理から人工知能系の本もいくつか書いているので、そちらで知っている人もいるかもしれません。人工知能系もいくつか持っているのですが買うだけ買ってまだ読めていません。ただ「白と黒のとびら」は尋常ではない完成度なので本当におすすめです。これはこれで「語学・言語学から数学へ」という流れの一つの例です。形式言語とあるように、本当にある種の言語、特にプログラミング言語と深い関係のある概念です。
いつまでも悩んでいても仕方ないので、試験的に「ワンポイント数学」みたいな感じで短いコンテンツをたくさん作っていこうと思っています。元ネタとしてはすでにあるコンテンツがあるので、それをワンソースマルチユースする形にしようと思っています。既にミニ講座として文章ベースで公開しているのですが、動画にした方がいいという人もいるでしょうし、ちょっとやってみようと思います。
今日はこんなところで。
2021-04-12¶
今日は参加者の都合で勉強会をお休みしました。代わりにゴリゴリの数学ノートづくりにいそしむことにしました。
本格的に数学(正確には算数?)+プログラミング、競技プログラミングの勉強会をはじめたので、もっと情報系・計算機科学も勉強しないと、と思って改めて計算論などの勉強をゆるく再開しています。切り替え前の勉強会では前半一時間、応用情報技術者の資格の教材を使って応用ベースの知識整理などもやっていました。ここの勉強会で触れようとは思いませんが、中高生向けに本格展開するときには何らかの形で盛り込むべきテーマではあると思っています。
改めて固定投稿に入れてある自己紹介シートを見たのですが、詳しく書いている人がだいたい中高数学を超えた世界の話をしている人ばかりのようで、今はやりの機械学習関係でお勧めの本が知りたいというコメントがあります。私の場合、学部時代は物理学科で馬鹿みたいに暴力的な計算をやってきて、修士ではゴリゴリの数学科の数学への耐性を鍛えてきてしまっていて、その辺のいい本があまりよくわからない(知らない)ので結構困っています。機械学習系の本もいくつか持っていて多少読んだりもしていますが、記法が気に食わないとか言う問題を除いて純粋に数学の問題で困ることがないので。計算上の工夫として近似に関する議論もありますが、それはそれで物理でやってきたのと、実際にそれを計算するプログラムの読み書きができてしまうのでそこでも困った記憶はありません。強いていうなら統計学そのものの理解の浅さで困るくらいです。何でその量で見るといいのかとか、カイ二乗分布など名前は知っていて計算も問題なくさばけるが実体がよくわからないとか。
ちなみに資料を完全には公開していないのですが、クローズドで機械学習・統計学の勉強会をやっています。
- https://github.com/phasetr/studygroup/tree/master/statistics
- https://github.com/phasetr/mathcodes/tree/work/julia/statistics
もとは東北大助教の黒木玄さんによるノートやプログラムだったりもするipynbに追記しておいてあるので興味がある方はどうぞ。いろいろあって数学部分をまとめ直したPDFはTwitterでやっているクローズドの勉強会でしか共有していない(単に面倒なだけ)のですが、そのうち統計学ノート・ミニ講座として公開する予定はあります。
2021-04-11¶
その1¶
出張の疲れがまだあるのか、昼間寝落ちしました。それ以外にも生活リズムが崩れるのでとても厳しいです。いつも通りのノートづくりに加え、適当にJulia(プログラミング言語)の本を読んでいました。最近の数学系お手軽かつ高速なプログラミング言語として定着しつつあるので、少しずつ勉強を進めています。明日の勉強会でもJuliaでのプログラムを書く予定です。
明日はZoomによるオンラインイベント(勉強会)を13:00からはじめます。お時間ある方は是非参加してください。
その2¶
急にイベント立てて時間も昼の13:00-14:00だったからか参加者がいなかったのですが、ちょうどいい時間だったのでコンテンツを作るのに当てました。次の場所に作ったファイルを置いてあります。
機械学習(いわゆる人工知能関係)でよく使われているPython、最近数値計算系ではやっているJuliaに関してProject Eulerの問題1の解答・解説を書きました。あとはもう一つ、趣味で好きな言語のF#も作る予定です。プログラミングの基礎から話していると永遠に終わらないので、もしあなたがプログラミングに興味があるなら、何か適当な本を読んでおいてもらえるとありがたいです。現状、プログラミングとして難しいことは何もないので、ざっと眺めておいてもらえれば十分です。
さて、今回の反省を生かして次回のイベントに関して日時を聞いておきたいです。仮置きで作っただけなので、日時で何か希望がある方はコメントをください。
できれば次回、無理でも次々回は日時はずらそうと思っています。とりあえず何かテーマを置かないといけないと思うので、引き続き算数+プログラミングでテーマ設定していますが、何か話したいこと・聞きたいことがあればそれをテーマに変えても構いません。
2021-04-10¶
その1¶
これまで毎週日曜に通信講座をもとに中高数学+プログラミングの勉強会をやっていました。新年度になったのも合わせて、これを仕切り直した勉強会を始めることにしました。これ自体は前半はプログラミングで何だかんだ必要になるIT基礎知識勉強用に応用情報技術者試験用の本を使い、後半は上記のコンテンツを使ってやっていました。応用情報技術者向けの本を使うのだとここで展開するには必ずしも合わないので、何するか考えています。いまのところはProject Eulerでもやろうとか思っています。プログラミングをどこまでやるかが問題ですが、プログラミングと数学で遊ぶというのがやりたいことの一つですし、塩梅をどうするかが課題です。
ちなみにProject Eulerは算数・数学系サイトです。簡単なのは本当に算数レベルです。例えばこれ。
3または5の倍数のうち、1000未満の数の総和を求める問題です。もちろん手計算でもできますが、手計算では非常に時間がかかるのでそれをどうにかしてプログラムで計算しようという話です。ちょうどいい感じの算数・数学・プログラミングの課題になるだろうと見込んでいます。
では今日はこんなところで。
その2¶
Twitterで見かけました。
あなたの計算には「心」が入っていないわ!!
血も涙もない数学なんてコンピューター内部の計算上でしか役に立たないものよ
こういうの、見るたび腸が煮えくり返ります。私は私の数学をやります。
2021-04-09¶
今日は語学の勉強会をやりました。アインシュタインの特殊相対性理論の論文を英語メインで読んでいて、それ以外にドイツ語(原語)・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語・中国語でも雑に眺めて比較するという勉強会です。
今日もコメントがあって少し出てきたのですが、この比較をする中でゲルマン祖語や印欧祖語、ラテン語、ギリシャ語という鋳型から各言語の単語が出てくる部分があり、その辺から数学的思考みたいなものが学べる体で理工系の総合語学・リベラルアーツの一角に据えて進めています。少なくとも私にとってこの勉強会の内容は「数学」です。名前しか知りませんが、文法だと生成文法みたいな話になるのでしょうか。一度きちんとやらないといけないとは思っていますがそこまで手は出ていません。
ちなみに理系のための語学の趣がある部活として「AI・機械翻訳リテラシー研究部 -AIとの協働を目指して-」という部活があります。昨日入って「機械翻訳に適した文章は何か、そしてなぜそれが適切なのか」みたいな視点からの理系向け語学コンテンツも面白そうだ」とコメントしたらまさにそれがやりたいことだ、という話でした。ごく簡単に書いておくと、これは日英・英日だけではなくほかの言語でも出てきます。ドイツ語から英語への翻訳でも、ドイツ語らしい語順の文(ドイツ語の本に実際に出てくる文)をGoogle翻訳に叩き込むとまともな訳が出てきません。例を紹介します。
- de: In dem Auto sitzen eine Frau, ein Mann und ein Kind.
- en: In the car a woman, a man and a child is sitting.
英語はドイツ語の語順そのままに出してきておかしなことになっています。ドイツ語は格がまだあるため、日本語と同じで語の順番をある程度柔軟に変更でき、それが英訳するときのハードルになっていることが分かります。こうした事情をきちんと考えて文を組むのがGoogle翻訳とうまく付き合う方法のはずで、文法などをきちんとわかっていないとうまく組み替えられない話が展開されるはずです。
話が長くなってきたので今日はこの辺にしましょう。 日曜13:00-14:00でプログラミングを使った数学の勉強会または適当な座談会をやるので、お時間ある方はぜひ。
2021-04-08¶
その1¶
前泊込の二泊三日で、仕事で福島の山奥の発電所に行ってきました。一日中立ち仕事で疲れ果てていたのもあり、投稿はお休みしていました。仕事なのであまり細かいことは書けませんが、施設点検に関する研究開発案件の対応をしてきました。何でこんなのを書くかというと、陰に陽に数学が関係しているからです。レーダー・センサーを使っていろいろやる部分があるのですが、ものによってはレーダーやセンサーのデータ解析にいろいろな数学を使います。
仕事関係だと書きづらいのである程度身近なところで書くと、レントゲンなどもかなりハードな数学を使います。
これ、ここにいる人で読みこなせる人はほとんどいないと思います。身近にある役に立つ数学、割とどぎついのがさらっと出てくるので、何の役に立つか教えてほしいと言われても「こんなのがある」というのはいくらでも言えても、説明しろと言われるといつも困ります。レントゲンではフーリエ変換が出てくるのですが、これは大学教養をギリギリ超えるくらいのレベル感です。
これからプログラミング関係の話も少しずつしていこうと思っていますが、プログラミングが出てくる話だと、本当に四則演算しか使わない代わりに何億変数の連立一次方程式を解く、みたいな話になってきます。最近たまに出てくる、新型コロナのシミュレーションでもこの規模の計算が出てくることがあります。変数自体はもう少し少ないかもしれませんが、計算回数から見れば適当な意味で何兆のレベルになりえます。
役に立つ数学といってもいろいろありますが、私が知っているタイプの(身の回りにある)役に立つ数学、何らかの意味で人類の限界に触れるような領域だったりもするので紹介が本当に大変です。そうは言っても何となく話をするだけでなにかしら意味がある事はあるだろうと信じて色々な話を紹介しています。
今日はこんなところで。
その2¶
今週日曜、13:00-14:00でイベント作りました。他のところでやっていた勉強会を、仕切り直してこちらに移行させました。
興味ある人は是非参加してください。何がどんな人に響くかがわからないので、とりあえずいろいろやってみる企画のうちの一つです。プログラミングも何をどこまでどう話すといいかもよくわからないので、そういう部分も込めて色々実験します。
2021-04-07¶
出張で疲れたのでさぼり.
2021-04-06¶
そんな仰々しいものか?と思ったのですがせっかくなのでちょっと紹介しておきます。
このツリーでいうと次のあたり?
計算機の出現というのは数学にとってあまりに大きな転換点で、計算機によって「想像上の産物」だった数学が現実的な「実体」を得て、数学的な操作という行為がそのまま社会に影響力を与えられるような環境が実現してしまったということなんですよね
数学とプログラミングで遊びやすいようにいろいろ考えるのがここでの活動の一つの方向性なので、その意味では広く言えば関係のある話ではあります。プログラミングのおかげで数学で遊びやすくなったのは間違いないと思ってはいるので、こういう話を自分が楽しめるように加工するのは大事なのでしょう。どうしたものかと苦悩中です。
2021-04-05¶
その1¶
今日は表面上は数学と全然関係ない話です。今日ようやくシン・ヱヴァンゲリヲンを見てきました。ちょうど中二のときにテレビ本放送をやっていたので、何というか同じ年月を重ねてきたという気分があります。今はまだ何とも言えませんが、一つ時代が終わったという感覚があります。あと全然関係ないのですが、帰り際、子供の頃に誕生日会的なやつで行ったファミレスが新型コロナ禍の影響か潰れていてそんなのも心に来るものがありました。そんなのも私の中の「エヴァが終わった」感に拍車をかけています。全然関係ないですが、最近、理系のための総合語学・リベラルアーツでドイツ語を改めて勉強しはじめたので、エヴァで出てくる言葉にたまに出くわすことがあって、そういうのにもうまく言葉にならない感覚があります。
エヴァ、あの中でディラックの海なり何なりの数学・物理系の話がよく出てきていたのでそういうのが今の状況に反映されている気はします。ああいう言葉が格好いいとずっと思っていたので。明日からまた数学をやっていきます。
その2¶
Twitterで話題になっていた高校数学の問題をまとめておきました。
数学者が参戦してきちんとした事情をいろいろ書いているのでかなり難しいです。本当に正確にきちんと理解しようと思うと大学二年程度の数学科の数学を知らないといけません。
この間も書いたように自分なりに「理解」を定義して取り組まないと無限の深みに取り込まれます。きちんとした指導者につくか、良い加減に進めるのが大事です。中高生のお子さんをお持ちの方もいらっしゃると思うので、ぜひお子さんにも一言言っておいてあげてください。
2021-04-04¶
これまで毎週日曜に以前作ったコンテンツをもとに中高数学+プログラミングの勉強会をやっていました。新年度になったのも合わせて、これを仕切り直した勉強会を始めることにしました。これ自体は前半はプログラミングで何だかんだ必要になるIT基礎知識勉強用に応用情報技術者試験用の本を使い、後半は上記のコンテンツを使ってやっていました。応用情報技術者向けの本を使うのだとここで展開するには必ずしも合わないので、何するか考えています。いまのところはProject Eulerでもやろうとか思っています。プログラミングをどこまでやるかが問題ですが、プログラミングと数学で遊ぶというのがやりたいことの一つですし、塩梅をどうするかが課題です。
ちなみにProject Eulerは算数・数学系サイトです。簡単なのは本当に算数レベルです。例えばこれ。
3または5の倍数のうち、1000未満の数の総和を求める問題です。もちろん手計算でもできますが、手計算では非常に時間がかかるのでそれをどうにかしてプログラムで計算しようという話です。ちょうどいい感じの算数・数学・プログラミングの課題になるだろうと見込んでいます。
では今日はこんなところで。
2021-04-03¶
今日は統計関係の勉強会用に特にプログラミングまわりで資料確認・追加をしました。形式的に積分があるとはいえ、プログラミングなので基本的に四則演算しかないにもかかわらずこれがまた大変です。計算していてかなり時間もかかります。ちょっと気の利いた計算をしようと思うと何万・何十万回の計算になるからです。
日々いろいろなところでいろいろなことを言ったり書いたりしているのでこちらで書いたかどうか忘れてしまったのですが、中高生向けのコンテンツは整備しているのを中高の教員向けにいい感じに整備したらどうか、というアドバイスをもらったので、並行して調査も進めています。また来週出張が入ってしまったので、移動時間をうまいこと使えるようにしたいところ。
ではまた明日。
2021-04-02¶
ここでも書いたかどうか忘れましたが、単純に中高生または中高数学の学習者向けのコンテンツだけではなく、中高教員または塾・予備校の指導者向けのコンテンツ・サービスを作ろうと思い、Facebookの適当なグループで協力してくれる人を募ってみました。いい感じにヒントが得られるといいのですが。せっかくなので書いた文章をPDFで添付しておきます。
そもそもとしてこの部活ももっと活性化させないといけないという話もあります。来週からこれまで別途やっていたオンライン勉強会もこちらに統合しようと思っているので、それも合わせて新年度からまたいろいろ工夫していく予定です。
句読点を普通の日本語文章のモノにするため、いろいろな理由からエディタごと変えて書いているのですが、使い慣れないというか普段使いのエディタが指に慣れすぎていてすごい面倒です。(VSCodeですが、いくつか入れているプラグインのために立ち上げ自体に時間がかかる。)
2021-04-01¶
その1¶
予告した通りここでいう「基礎・基本」の意味をはっきりさせておきます。
基礎・基本は「簡単」の意味で使われることがあります。しかし私はまずその意味では使いません。すっきり表現できる適当な日本語が思いつかないので英語で書くと次の意味で使います。
- fundamental
- elementary
前者のfundamentalは基礎科学の意味の基礎です。基礎科学の代表格はまさに数学や物理です。こういえば基礎が「簡単」とは程遠い意味を持つと分かってもらえるのではないでしょうか。これが私が「基礎」というときの主な使い方です。
もう一つはelementary(初等的)の意味です。初等的だからといって簡単とは限りません。例えば次のように使います。
- ある理論(定理)を初等的な道具だけで証明する。
いわば大道具またはいろいろな予備知識や技術を使えばさっと示せることを、難しい道具立てなしに証明するのです。トンネルを掘るのにボーリングマシンを使わずにスコップだけで掘る状況を考えてみてください。ボーリングマシンを準備する手間・費用を払う苦労がない代わり途方もなく体力と時間が必要です。こういう状況をイメージするので初等的だから簡単とは限りません。
次回はこの気分のもとで理解に関して少し書きます。 ではまた明日。
その2¶
今日は算数・数学の理解に関して少しコメントしておきます。
はじめに書いておくと何をもって理解とするか自体とても難しいです。深いところまで切り込もうと思えばいくらでも切り込めて、しかもとんでもないところにまで連れていかれます。少なくとも私が子供の頃の小学校一年の算数の教科書、冒頭からして即地獄です。この話は大変なのでもう少しイメージしやすい面積の話をします。
結論からいうと面積をきちんと議論するのは数学科の大学三年です。数学科は本当に数学以外にやることがなく、一年三百六十五日、ずっと数学だけやり続ける前提で、それでも大学三年でようやくたどり着くレベルです。そこで出てくる測度論の測度が抽象化された面積です。少なくとも数学科水準で「面積を理解した」と言いたければここにたどり着かない限り理解したとは言えないでしょう。
長方形や三角形の面積なら「こう決めた」で終わりです。しかし小学校でも円の面積が出てきます。円の面積が「円周率×半径の二乗」なのは誰もが知っているでしょう。しかしこの公式をどう導くかが問題です。少なくとも私が見た段階では小学校でも何となく証明が書いてあり、図解もあります。この「証明」、実は「いい加減」です。きちんと詰めるには高校三年で出てくる極限の議論が必要です。このくらいの厳しさがあります。高校の極限の議論も「いい加減」です。きちんと議論するとき、ふつうは大学教養レベルのいわゆるイプシロン-デルタ論法を使います。
もちろんここまでやれといっているのではありません。大人になってから見返すと、子供の頃よりも「何かこれが腑に落ちない」と感じる部分も多くなってくるでしょう。そしてはまったところが今説明したようなところになると、わかりにくかろうが何だろうが説明できる人材自体がほとんどいません。いわゆる理系の人間程度ではどうにもならず、数学科の人間を召喚する以外どうにもならないはずです。
算数・数学を「基礎・基本から」「きちんと理解しよう」と思って勉強しようと思うとこのようなはまりどころがあります。きちんとした指導者を探すのも大変です。だから算数・(中高の)数学こそ適当にゆるくやるべきです。時々「そこではまるのは本当に正当なはまり方で、そこにはまれること自体センスを感じるといってもいいくらいだが、かといってそこにこだわると何もできない」はまりどころがあります。上で書いた面積のように。というわけでぜひのんびり・ゆっくり勉強を進めてください。
では今日はこんなところで。
2021-03-31¶
今日は統計学のオンライン勉強会をやっていました。統計学は何が書いてあるのか全く分からない本ばかりで、かろうじて次の資料が読めるくらいです。
実際にこれで勉強会をやっています。数値計算による確認とグラフつきでなかなかいい感じの資料なので、これを自分用にきちんとまとめつつ、プログラミングコンテンツとしてもまとめて公開したいと思って勉強会を進めています。
とりあえず今日も最低限やったことを報告しておきます。
2021-03-30¶
今日は統計関係の勉強会用に特にプログラミングまわりで資料確認・追加をしました。形式的に積分があるとはいえ、プログラミングなので基本的に四則演算しかないにもかかわらずこれがまた大変です。計算していてかなり時間もかかります。ちょっと気の利いた計算をしようと思うと何万・何十万回の計算になるからです。
日々いろいろなところでいろいろなことを言ったり書いたりしているのでこちらで書いたかどうか忘れてしまったのですが、中高生向けのコンテンツは整備しているのを中高の教員向けにいい感じに整備したらどうか、というアドバイスをもらったので、並行して調査も進めています。また来週出張が入ってしまったので、移動時間をうまいこと使えるようにしたいところ。
ではまた明日。
2021-03-29¶
中高数学絡みで基本的な認識に関してちょっと書こうと思っていたのですが、まとまり切りませんでした。何を書こうと思っているかというと、基礎基本・理解という二語に対する認識の共有です。算数・数学、実はものすごく面倒で、「基礎から」「きちんと理解」しようと思うとものすごく大変なのでこんなところに気を付けましょう、という話です。もっと言えば「適当な意味で諦めましょう」という意味で「適当な意味」がどういう意味か、という話です。
ではまた明日。
2021-03-28¶
さぼり.
2021-03-27¶
さぼり.
2021-03-26¶
予告した通りここでいう「基礎・基本」の意味をはっきりさせておきます。
基礎・基本は「簡単」の意味で使われることがあります。しかし私はまずその意味では使いません。すっきり表現できる適当な日本語が思いつかないので英語で書くと次の意味で使います。
- fundamental
- elementary
前者のfundamentalは基礎科学の意味の基礎です。基礎科学の代表格はまさに数学や物理です。こういえば基礎が「簡単」とは程遠い意味を持つと分かってもらえるのではないでしょうか。これが私が「基礎」というときの主な使い方です。
もう一つはelementary(初等的)の意味です。初等的だからといって簡単とは限りません。例えば次のように使います。
- ある理論(定理)を初等的な道具だけで証明する。
いわば大道具またはいろいろな予備知識や技術を使えばさっと示せることを、難しい道具立てなしに証明するのです。トンネルを掘るのにボーリングマシンを使わずにスコップだけで掘る状況を考えてみてください。ボーリングマシンを準備する手間・費用を払う苦労がない代わり途方もなく体力と時間が必要です。こういう状況をイメージするので初等的だから簡単とは限りません。
次回はこの気分のもとで理解に関して少し書きます。
ではまた明日。
2021-03-25¶
中高数学絡みで基本的な認識に関してちょっと書こうと思っていたのですが、まとまり切りませんでした。何を書こうと思っているかというと、基礎基本・理解という二語に対する認識の共有です。算数・数学、実はものすごく面倒で、「基礎から」「きちんと理解」しようと思うとものすごく大変なのでこんなところに気を付けましょう、という話です。もっと言えば「適当な意味で諦めましょう」という意味で「適当な意味」がどういう意味か、という話です。
ではまた明日。
2021-03-24¶
トップの投稿を更新して私が作った中高数学用コンテンツを載せておきました. こちらにもコンテンツのURLを転載しておきます.
今日は知人にいろいろ相談していて, 今後の活動のヒントをもらいました. 中高数学, またはもっと具体的に中高生向けのコンテンツ・サービスを作ろうという段で, いったん中高の教員向けコンテンツ群を作ればいいのでは? という話で, 教員に訴えかければ自然と中高生に落ちていくだろうということで. ここでの大人向けの活動もきっと参考になると思っています.
何をどうしたらいいかわからないので, とりあえずいくつか本を紹介します. 手元にあったというだけの理由ですが, 次の本の読書会をするといったら需要あるでしょうか? 興味があってもなくてもぜひコメントください.
- 数学と恋に落ちて 方程式を極める篇
- お茶の科学
- 人はどのように鉄を作ってきたか
- 応用数学夜話
- 科学の社会史
- 代数を図形で解く
- ロジックとリーディングに強くなる 英語で算数
他にも手元に買うだけ買って読めていない本・活用できていない本があります. 「それには興味がない」だけでも大事な情報なのでぜひいろいろコメントしてください. 本当に何をしたら部員の皆さんが「数学」を無理なく続けられるかわからないので困っています.
今日はこの面談との準備でいろいろやっていたので久し振りに数学ノート作りお休みしました. 広い意味で数学のコンテンツ作りまたはそれに寄与することをしていたので問題はない判断です.
ではまた明日.
2021-03-23¶
ようやく体調が戻ってきたので明日からは平常運転に戻せそうです. 語学関係の勉強会準備が完全さぼり状態になっているのでそこの復活も合わせて.
今日も引き続き多変数関数論です. 準備の部分の自明なところで全然面白くないのですが, こういうところのノート作りをさぼると後でもっと面倒なのでやるなら今と思って歯を食いしばりながらやっています.
中高数学的なところはJuliaでの数学コンテンツ勉強・整備がいいかと思って少しずつはじめる予定です.
みなさんもぜひ, 毎日二秒でいいので何か数学し, コメントしてください. 「こんな感じのイベント(勉強会)してほしい」というのがあれば, ぜひそれもコメントしてください. 自分でゴリゴリに数学をやる以外の数学の楽しみをほとんど知らないので, 何が楽しいか, 何が求められているか, 具体的なことがほとんどわかっていません. 特にここに集まっている人が何を求めているのかという部分が.
ではまた明日.
2021-03-22¶
体調不良は結局昨日の時点で治りました. 純粋に先週末の出張での三日間の二万歩耐久レースの疲れだったようです. 新型コロナなどでなくてとりあえず安心です. 先週の予定では今日から出張だったのですが, 週末の体調不良を受けて私は自宅待機になりました. いいのか悪いのか.
まだ体調が万全ではないと思い, 今日は緩めに多変数関数論のノートを作って終わりです. 以前別の本を読みながら作ったノートともうまく合わせてまとめる必要があります.
定義がよくわかっていないので数学小話になるのかわかりませんが, 私がお気に入りの数学者トークとしていくつか挙げておきます.
『数学まなびはじめ』シリーズはある程度年配かつ超一流の数学者が自分の数学遍歴を語った本です. いま80代の人も執筆していて, 戦争の話なども出てきます. 私の指導教員の指導教員でもある竹崎先生の話などは数少ない知っている人なだけあって食い入るように見てしまいます. 「数学まなびはじめ site:phasetr.com」で検索してもらうと私の書評がいくつかあるので, ぜひ書評を見てみてください. ガチガチの数学に関する内容もたくさん書いてありますが, 細かいところは飛ばして数学者の心象風景を眺めてみてください. 専門に関わる細かい話は私でも詳しくはわかりません.
次の『数学者の視点』もこれまた超一流の数学者である深谷賢治さんが書いた数学エッセイです. 『数学まなびはじめ』にも深谷さんの寄稿があります. それとはまた少し違ったテーマでとても面白いです. これも書評を書いているのでそちらも合わせて読んでみてください.
最後の『志学数学』は完全に数学者が数学者に向けて書いた本です. 数学者の知り合いどころか理工系の知り合いさえいない人もいるだろうと思うのですが, 競争的ではないタイプの数学者が後輩に向けた優しい筆致の文章です. これは私の指導教員が『数学』という日本数学会発行の会誌に「書評を読まなくてもていいからとりあえず買って読め」と書いていたほど「数学・数学者を志す者」に向けたメッセージが綴られています. 『たかが数学, されど数学』がいいと思った方にはお勧めです.
今日はこんなところで.
2021-03-21¶
先週の出張がたたったようで, 朝起きたら38度近くあり, 今日は一日ダウンしていました. いまは熱がおさまったので, 本当に疲れから来る体調不良だったようです. 去年11月に5週連続の泊まり込みの出張があり, それには耐えられたので「身体も少しは丈夫になったか」と思っていたのですが, がっかりです. 今日も休むモードにしました. 夜は軽くノート作りしました.
夜は体調が戻ったので一応イベントは開きました. 参加者一人だったので, もっと参加したくなるようにするのが課題です. あと, 今回のイベント前に小笠原さんによるデザイン勉強会に出て, そこで部活のサムネを作ってもらいました. 部活名ごと変えてあります. 改めて部活名と内容を合わせないといけないな, と思っています.
2021-03-20¶
昨日までの出張の疲れがあり, 午後は夕飯までずっと寝ていました. 午前中はきちんと数学していたのでいいとしましょう.
リーマン面の本を一周回し終えたので, 次は多変数関数論をざっと回す予定です. 細かな所を突っ込むよりまずは大きく状況を掴むことを目的にノートを作ります.
来週もまた月-水で出張があり, 余裕がないので来月からまたきちんと仕切り直してやっていこうと思っています. 何にせよ明日は21:00からイベントなのでお時間ある方はぜひ参加してください.
あと数学小話に興味があるというコメントありましたが, 数学を数学として単純に取り組むのが一番というかほぼそれなので, そういう小ネタは全然知りません. ただ, 私がが知っていることと要望にあった小ネタが一致するところもあるような気はするので, その辺の言葉のすり合わせは必要だと思っています. そういうのも明日話せるといいのですが.
何にしろ今日はこれで店じまいです. ではまた明日.
2021-03-19¶
今日も5時起きで実証実験で一日歩き遠しで疲弊しました. 一日目・二日目がひどかった分知見がたまったので実証実験じたいはいい感じに終わったはよかったのでしょう.
今日は「アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会」の勉強会をやったあと, リーマン面のノート作りをしました. まだ穴だらけですが, 一応本を読み終わりました. そもそも細部まで追い切れていないのでまだまだであるものの改めて全体を通したこともあってちょっと一段落です. 多変数関数論を追いつつ復習していく予定です.
勉強会について一応案内しておきます. 次の記事に今回の内容をまとめました. 勉強会の動画へのリンクも入っていますが, ここにも動画をはっておきます.
メインは物理・数学ではなく英語で, ついでに大雑把にドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語・中国語を眺めて, 言語の世界を数学・物理的な視点で眺めてみようという感じの企画です. 私の知識の限界があるので英語以外はかなり雑ですが, 単語レベルの比較を見ているだけでも楽しいのでやっています. これ, 冗談浮きで「数学」と思ってやっているので, 「数学をやってはみたいが, いきなり数学本体はハードルが高い」と思っている人はぜひ見てみてください. ボキャビルの視点からもっときちんと書いたのが次のコンテンツです. これもご興味あればどうぞ.
前回のイベントで「もっと作ったコンテンツはきちんと宣伝・共有しよう」という話になっていたので, これ以外のコンテンツも含め, あとでトップ固定投稿にもきちんと貼っておきます. 今週の日曜にもまたイベントがあります. 興味がある人はぜひ参加してください. もう眠くて限界なので今日はもう寝ます.
2021-03-18¶
昨日今日明日と5時起きで、今日に至っては普段引きこもりの私が二万歩歩くとかいう苦行に従事したのでさっさと寝ます。
今日は行き帰りでJuliaの英語の本を読んでいたのと、これから寝落ちするまで適当にノートを復習するのをもって今日の数学とします。ヘロヘロなので今日はこんなところで。
2021-03-17¶
今日は五時起きで, 引きこもりには珍しく終日実証実験のためにずっと外にいて, 疲れ果てました. 統計の勉強会を一時間こなしたあとリーマン面のノート作りです. 他にもしないといけないのをさぼって, 精神力が回復することをやりました.
また明日も同じ感じになりそうです. 明日も5時起きなのでもう寝ます.
2021-03-16¶
今日は残業を強いられた挙句, 明日も5時起きなので最低限の数学だけして寝ます.
今度小笠原さんが部活のロゴ講座みたいなのをやってくれるようですが, そこでちょっとロゴを相談する予定です. 部活の名前ごと変えるかもしれません.
2021-03-15¶
コメント書くのを完全に忘れていたので軽く書きます。 今日は「理論物理学者に市民が数学を教える会」という勉強会がメインです。タイトル通りのギチギチの内容なので見なくていいですが、物理学者と数学をやる様子を見られる機会はそうそうないと思うので、そういう「展示」としての数学を見てみたい人はぜひ眺めてみてください。
どうしても趣味の数学ばかりやってしまって、語学コンテンツの整備などが遅れがちでそろそろ本当にまずいです。他もきちんとがんばります。
今日はこんなところで。
2021-03-14¶
イベント(オンライン数学の会)が終わりました. 録画しようと思ってすっかり忘れていました. 次からは忘れないようにメモしておきました.
日時に深い意図はないので, 他の日の方が都合がいいなどあればぜひコメントください. 「みんなでもくもくと数学をやる日」みたいな形でイベントを作るのも考えています.
録画がないので, 今回どんな話をしたか簡単に箇条書きにしておきます.
- 関根(部長)の最近の活動の概要を話してみた
- どんなことをしたら面白そうか聞いてみた
- 各人ごとの興味に合わせた応用の話とか
- 実際に作っているコンテンツがあるのでそれの紹介
- もっと中高数学をやろう:既存コンテンツもきちんと紹介しよう
- スマホにも入っているGPS地図と一般相対論
- プログラミングと絡めた話, AI・人工知能(機械学習)の話
- 離散数学ネタ:計算幾何に関わる話とか
プログラミングは単純に数学・物理だけやるよりも遊べる要素が多く取りやすいので, その辺も強化するといいのでは, という話が出たので試験的にもう少しやってみようと思います.
いくつかWebページやコンテンツを紹介したので, そのURLを貼っておきます.
- 私の無料・有料ミニ講座一覧
- CTスキャンやレントゲンの数学
- GPSと物理, 一般相対性理論
- GPSにおける相対性原理の補正
- 数理工学への誘い
中高数学については, 無料講座の内容について簡単に紹介するコメント書くのも大事か, みたいな話をしました. 今日イベントに参加してくれたメンバーは割とゴリゴリ系なので, もっとゆるい感じの話で何が聞きたいか, どんなことをしたいか教えてもらえると嬉しいです.
2021-03-13¶
とうとう明日はイベントという名のオンライン数学会です. 一応こちらにも zoom のアドレスを貼っておきます.
21:00-22:00なので時間があれば気軽に参加してください. 途中入室・退室も問題ありません.
今日は一日, リーマン面をひたすらやっていました. 他にも勉強するべきことや, 他の勉強会準備もあるのですが, あと少しでいま読んでいる本が一周終わると思うとテンションが上がってそれだけになってしまいました. この辺の時間配分が本当に下手です. TODOリストを作っていても全く実践していません. ただただアホですが, 今月中には一周終わるのがほぼ確定になったと思うので, いい気分です. 中高数学系もがんばって何かやります.
明日のオンライン数学会がどうなるかが気がかりです.
2021-03-12¶
考えてみれば, 何をどうしてほしいかあまりきちんと書いていなかったのでトップ固定投稿にやってほしいことを書きました.
転記しておきます.
ぜひ、日々二秒でいいので「数学」をしてください。そしてその結果・成果をぜひ投稿してください。 いっぱい投稿が入るとごちゃごちゃしそうなので、まずは前日または当日の私の投稿のコメントに書くようにしてください。 ここでいう「数学」は、ENERGEIAとこの部活にアクセスして「数学」の文字を見るだけでも十分です。数学をやるなんていうのはふつう凄まじく精神的な負荷がかかると思うので、このくらいの軽いところから始めるので十分です。
私は今日は次のようなことをしました.
- リーマン面のノート作り
- 統計学のノート作り
- プログラミングの勉強: 『アンダースタンディング-コンピュテーション』を読む
また案内しておくと, 3/14 21:00-22:00 で Zoom でオンラインイベントをやります.
興味があればぜひ参加してください. 私は私で勝手に数学していますが, 部長に何かやってほしいことがある方もいるとは思うので, その辺が気楽に話せればいいかな, と思います. 今回のイベントとは関係なく, いろいろな実験のひとつとして私が量子力学を復習する様子を見せる会みたいなのもやってみようと思っています. 別にイベントではなくコメントで適当に何か言って言ってもらっても構いません. 私が毎日のたうち回りながらも数学を, それもできれば楽しくやっている姿を見るのが大事なのだと思っています. まだあまり楽しそうにやっている様子は見せられていませんが, 日々, 本当にアホみたいに数学をやっていることだけは伝えていこうと思っています.
とにかく, まずはゆるくてよく, 二秒でいいので毎日数学をやることからはじめましょう. ではまた明日.
2021-03-11¶
部員がじわじわ増えていて驚いています. ぜひ自己紹介シートに記入をお願いします.
あと日曜にイベントという名の何かをやるので, そちらも興味ある方はどうぞ.
人が集まれば何か適当に話をします. 何がどうなるか全くわかりません.
ε-n論法の話が出ていたのでそれの話を. 一応知らない人の方が大半なように思うので簡単にコメントしておきましょう. 最近のカリキュラムは把握しきれていませんが, 私が高校生だった頃は高校二年で微分積分, 特に微分で極限が出てきました. この極限, 高校では何か魔法のような謎の概念で曖昧模糊としています. これをいろいろな処理をやりやすくなるようにきちんと定義したのがε-δ論法で, その数列版がε-n論法です.
これはこの間も微妙にTwitterで話題になっていました.
ついでに以前から「工学にこそε-δが必要だ」みたいな話も聞いています.
このツイートでは誤差評価という話が出ています. 数列の場合のε-n論法に関して簡単に書いておきましょう. 特に簡単な単調増加数列で説明します.
数学とか工学とかいう以前に仕事の仕方や見積もりの取り方・作りかたそのものです. よく「結果から逆算しろ」といろいろなところで言われると思いますが, それだけです. 世の中全てそうとは言えませんが, 頑張れば頑張っただけ結果がよくなるモノがあります. しかしいつでもどこでも無限の努力ができるとは限りません. 合格点がどこかは状況によって変わります. 理想形に比べて6割でよければ6割, 8割でよければ8割, 9割9分ならそれだけの努力が必要だとしましょう. この達成点・必要な出力を決め, それに必要な分だけの努力でよしとする思考法がε-n論法です.
εは達成点・必要な出力に対する誤差です. この誤差が大きければ大きい程努力は小さくてよく, 小さければ小さいほど頑張らないと目標が達成できません. この事情はεが大きいときはnは小さくてよく, εが小さいときはnが大きくないといけないと表現できます.
ここでのポイントは「たくさん努力すれば (大きいnなら) いい結果が得られる (εが小さくなる)」ではなく「いい結果がほしいなら (εを小さくしたいなら) たくさん努力する必要がある (nを大きくしないといけない)」と話を逆転させている点にあります.
ついでに書くと, ε-nやε-δの「理解」にはいくつかの段階があるようです.
- ε-nが何を言っているのかわからない.
- ε-nはわかるがε-δは何を言っているのかわからない.
- (どちらかまたは両方とも) 言っていることはわかるが, それを駆使した数学の証明についていけない.
- 数学的な証明に関して, ε=1など具体的な値になると議論が追えるが, 一般のεになるとお手上げになる.
- 気分的なところはわかるが, 激烈な不等式処理の数学に耐えられない.
私ははじめからだいたい全部クリアできていたので, わからないという人の気分があまりよくわかりません.
こう書くと「もとから数学はできた人はうんぬん」と言われそうですが, 私は高校の頃, 本当に数学が苦手でした. 学部は物理, 修士は数学で, しかも修士では東大の数学科に行ったくらいなので最終的に鍛え上げた到達点は現行人類でも高い方だとは思います. しかし, 大学受験のとき, 一番苦手だったのは数学, 次が物理で, 進学したかった二大分野が一番できなかったのです. 国語・英語・化学の方がよほどいい点が取れました (理解していたかはどうかは別). 特に数学の確率は鬼門で, センター (現共通テスト?) レベルでさえいまだにできる自信がありません. これまたついでに書くと, センターの確率はできませんが, 大学の数学科の確率論や統計学の数学には耐えられます. 性質がだいぶ違うので.
それはさておき, 私が苦手といって克服するために何をしたかを一応書いておきます. 高校に入ってから「学年+二時間, つまり高校1年なら3時間, 2年なら4時間, 3年なら5時間は家庭学習しないと高校では大変だよ」と入学当時に言われました. 私はこれを愚直にやりました. そして家庭学習のほぼ全ての時間は数学にあてました. 試験前以外は本当に毎日そのくらい数学をやっていました. いまにしても思うとひどい勉強のし方をしていたので数学の理解度がその程度で, 取れる点数も思い出したくないくらいひどかったわけですが, それでも苦手克服にそのくらいのことはしています. よく「いくらやってもわからなかった」という人がいますが, 私の高校時代の「数学はいくらやっても駄目だった」はこの程度のことはこなした上できなくてできなくて困った話です.
そしてそんな私が大学でまわりがε-δに苦しむ中で何の苦労もなくすんなりなじめ, それどころか特に詳しく教わらずとも「極限, こんなにすっきり定式化できるなんて数学もやるではないか」「みんなが苦労しているのをこんなに楽しめる自分, 実は数学できる方なのでは?」と思ったのが大学で高校以上に, 数学にここまでのめり込んだ理由のひとつです. 私は学部が早稲田の物理だったので, たいていまわりは高校の頃は「数学が得意だった」と言っているような種族です. そんな人達が毎年撃沈する議論に耐えられた自分は, 高校までの数学は駄目だったかもしれないが, 大学での数学にこそ耐性があるのではないかと, そう思ったのです.
今日はこんなところで.
2021-03-10¶
今日はホテルに帰ってきてからも作業があり, 疲労困憊です. それでも2秒数学として1つの定理についてノート書きました. 帰ってから疲労困憊状態で何かがんばろうとするより, 体力のあるうちにがんばるのが大事で, 行きの移動中はドイツ語の頻度順辞書を眺めたりしていました. 毎日二秒のためにはそれだけ簡単に数学に触れられるようにするのが大事でスマホにPDFを突っ込んでいます. 人によると思うので, 他にも何かお手軽なのがないかは考えています.
明日で出張終わりです. 疲れの極致で明日帰ってからは何もできないと思うので帰りの新幹線で適当に何かしようと思います. 語学コンテンツに関する作業もあるので.
今日も手短に.
2021-03-09¶
今日も出張です. 一応リーマン面ノート作りは進みましたが, 他が残念な状況です. 昼休みや夕食後などもっと広義数学できる時間はあったのですが. いままで泊まりの出張をしたことがほとんどなかったこともあり, こうした状況下での時間・体力に使い方自体, きちんと考えないといけないのでしょう.
2021-03-14(日)21:00-22:00でイベントとしてZoomミーティングやる予定なので, 興味がある方はぜひ来てください. 今日はもう眠いので手短かに.
2021-03-08¶
昨日は午前中のある時間からENERGEIAのサイトにアクセスできなかった (できない人がいた) ので, 夜に活動報告が書けませんでした. 夜になっても直らなかったので小笠原さんに相談して, そのあと適当に報告したらそれで現象が再現でき, 無事問題解決できたようです.
私は今日から出張です. このご時世で面倒なことこの上ないのですが仕方ありません. 生活リズムも完全に破壞されるので, 無理せずできることをしました.
- 行きの新幹線で語学コンテンツのLP書く
- リーマン面のノートを作る
LPでは「これは語学コンテンツの皮をかぶった数学の本 (講座) である」とかいう話もしています. LPやミニ通信講座としての資料が一通り作れたら改めてこちらでも紹介します.
またしても本来の中高数学用活動が死んでいますが, 最低限やりたい数学はやっています. 私にとって数学は祈りのようなもので精神の安定に重要なのです. この辺が私なりの日々の二秒にあたる数学です.
やはりイベントやった方がいいのだろうと思ったので, 2021-03-14 (日) 21:00-22:00 にイベントを設定しました.
初回はまず単純にお話するのが目的で, 特にテーマは設定していません. 何か聞きたいことなどある方はどうぞ. 何もなければ数学しています.
2021-03-07¶
思い出したので忘れる前に適当にメモしておくと, 私の数学に対する気分はいくつかあるのですが, ひとつ大事なのは「数学ができる人間が世界で一番格好いいと思っている. (ここでいう『格好いい』は世間でいう『格好いい』と一致しているかは問わない). 」です. 何で格好いいと思ったのかはいまだに謎ですが, これを軸に動いています. 部活案内で紹介した「たかが数学, されど数学」を気に入っているところでもあります.
あと, 一部のおっさん部員には通じると思っている話として, ドラゴンボールというか悟空の「おめぇつええな! わくわくすんぞ」またはストリートファイターの「俺より強いやつに会いに行く」が私のもうひとつのモットーです. 私は大学は早稲田, 大学院は東大だったのですが, この辺に行きたかった理由がまさに「俺より強いやつに会いに行く」です.
これがこの部活と何の関係があるか, そして毎日数学のログを書いている理由は何かと言えば, 「俺より強いやつに会いに行く」とは言わないまでも, 身近にいない「数学をやっている人間の生態を見てみたい」という方もいるのではないかと思っていて, それを見せようと思っているからです.
実は以前, 理化学研究所で研究所の一般公開で「理論物理学者」を展示する機会がありました.
理論物理学者の議論の様子を公開する企画です. これがそれなりに反響があったようで人気だったとも聞いています. プロスポーツ観戦と同じ気分で数学や物理の議論を見て楽しむのはどうかという提案でもあります. スポーツとかなり違うのは, スポーツだと素人目にも明らかにすごいとわかるパフォーマンスがある一方, 数学だとそれを極端に感じにくい点があります. テレビでもときどきあるように, 物理ならまだ実験結果を見せる方向の工夫はあります. それでも理論物理に関して同じことができるかといえばかなり難しいでしょう. それが理論物理学者(の議論の様子)の展示につながったのだと思います.
前置きが長くなりましたが, 部員の方に聞いてみたいのはこういう「数学をやっている人の様子を見て楽しみたい」ニーズがどれだけあるかです. 数学の楽しみ方はいろいろあると言いつつ, こういう観戦型の楽しみ方というか, それを提供してくれる人はほとんど見たことがありません. 料理番組だと料理をしている姿自体がエンターテインメントとして成立しているわけで, そういうタイプの楽しみ方がもっとあってもいいだろうと思っています. そういうところまで込めて「こんなことをやってほしい」という希望があれば, 適当にコメントしてください. 記録の便宜があるので, トップ固定投稿のスプレッドシートに書いてもらえると嬉しいですが, 面倒な場合はこの投稿へのコメントでも構いません.
2021-03-06¶
機械学習系の勉強のための数学という話をします. 私も二年くらいゆるく知人と勉強会をやっているのですが, そこでの感覚からすると, 強いていうならプログラミングも兼ねた暴力的な計算が大事で, イプシロンデルタのような数学科の数学はほとんと役に立たないという気分です. 実際の計算もやろうとなるといわゆる計算の効率を本気で考えないといけなくなって, そのための数値計算法, 特にいろいろな近似計算とそれに対する肌感覚が大事になるので, すぐにはわからなかろうが腹を括って機械学習系の本で実際にプログラムを書いて計算を回しながらそういう感覚を磨くしかないと思っています. いわゆる数学科の数学が役に立つ場面をほとんと感じたことがありません. どちらかと言えば物理学科だった頃に仕込まれた具体的な計算や剛腕の方が役に立っています.
機械学習系に役立つ具体的な本やコンテンツは勉強会で読んだ本くらいしかなく, ほとんどわかりませんが, ある程度専門的な内容に関する広義サボりに由来する部分なのでとりあえずは腹を括る・覚悟を決める以外にないように思います. 腹を括るのが先, そして必ずしも面白くなくても, 地の底を這うようなつらく地道な勉強をやるしかない部分なので. 腹を括る部分についてはお金を払って教えを請うのも含みます. 例えば大人向け数学学習塾として次のようなのがあります.
これの梅崎さんに直接の面識はありませんが, 東大数理で博士を取っていて, 統計系の始動もしているようなので, こういう所を使ってみるのはありえます. いいお値段するので金銭面から勧めにくい部分はありますが.
統計に関するコンテンツについてもう少し補足しておくと, Juliaによるコードつき解説がある黒木さんの統計ノートはおすすめで, 実際, いままさに私はこのノートをもとに勉強会をやっています.
数学部分は(私は)問題ないのですが, プログラムにコメントがなくてわかりにくいので, プログラム部分にコメントをつけたバージョンを自分のリポジトリにアップしています.
勉強する順番などの問題もあるので, 勉強会で整理して, 順番までつけたコンテンツとしてそのうちきちんと出そうと思ってはいます.
黒木ノートには「学部一年でやるベータ関数やガンマ関数などの特殊関数は数値計算込み・図示ありで勉強した方がいい」とか「有名なスターリングの公式もきちんと数値計算して, その精度をもっと具体的に体感すべきだ」みたいなことを書いてあるのがいいところです. 一応言っておくと黒木さんはバリバリの数学者で, こういうことを言う人は結構珍しいと思います. 統計系の勉強で数学科の数学があまり役に立たないと言った理由の一つでもあります. こういうプログラム込みの学習が大事なので, 数学科の数学だとこれがカバーできません. この勉強会には物理の博士を持っている人も参加しているのですが, 「定性的に知ってはいることでも, プログラムを書いて様子を目で確認するのは大事だし, わかりきっていることでも改めてきちんと目にすると面白い」という話をしたので,
黒木さんの資料のこのPDFは割と「数学」としても使える資料と思っています. これも勉強会資料としてTeXにきちんとまとめて, 数値計算もつけてそのうちきちんと公開する予定です.
あとはまだ中身をきちんと確認していませんが, 最近私の周囲で流行っているJuliaによる数学的なコンテンツで, 「スタンフォード ベクトル・行列からはじめる最適化数学」が結構気になっています. これのもとになっているらしいipynbの日本語訳が次のリポジトリにあるそうなので, Juliaの勉強を兼ねてそのうちこれらを読んでみようとも思っています.
そのうち競プロ系で「算数・数学で遊び倒そう」みたいなことをやろうと思っていて, そのための準備もあります. 本当は言語としては F* が好みなのですが, 数学系についてはPythonとPythonの資源が使えるJuliaに敵わないのでJuliaをやる方向で固めました.
2021-03-05¶
時間が取れなかったので線型代数の話は明日 (以降) にします. ちょうど昨日, 去年の年末から作っていた語学コンテンツをKindleでようやくリリースしました. まだやるべきことがいろいろあるので, 今月中には仕上げて次のステップに進みたいと思っています.
各方面に「やっとコンテンツ作ったぞ」という報告と, 私が所属している語学系のコミュニティでレビュー協力依頼してきました. Kindleの紹介文にも少し書いたのですが, ボキャビルというか単語を見ているのは数学の表現論の趣があって, これは本当に楽しくていつまでもいくらでも遊べます. 今日の語学の勉強会でも英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ロシア語 (と中国語) の単語比較・解説をやって「これ楽しいね」という話をしていました. ボキャビルを語学と思ってやっているのではなく, 数学と思ってやっています. 興味があればぜひ読んでみてください.
ちなみに語学の勉強会の様子は, 今回の資料とZoom録画を次のページで公開しています. これも興味があればどうぞ.
部員のみなさんがどう思うのかはわかりませんが, 私にとってはこれも数学です.
2021-03-04¶
ENERGEIAメモその1¶
どうしようか迷ったのですが, それ自体がそれなりにトピックとして切り出した方がよさそうなので, 直接的なコメントへの返信にしないで投稿切り分けてみることにしました. ここでのメインテーマの中高数学から話題が離れるので微妙なところですが, いわゆる役に立つ数学の具体的な話なのでかえって参考になる人もいるだろうと思って.
まずはこの投稿の電験の方. はじめに結論を書くと, 役に立つ事をしないといけない工学的な状況下で複素関数論を勉強するのはコストパフォーマンスが悪過ぎる (からやめた方がいい) のではないかと思っています.
このあたりの理解を進めていくには複素関数論?が関係していくということなのでしょうか。
まず電気回路の理解を進めるためにラプラス変換の詳しい話がどのくらい必要かが問題です. 学部のときに回路理論の講義を聞いたとき, 工学者でさえ「変換表は覚えて使えればいい」と言っていましたし, その理解を進めたところで電気系の技術者としてどのくらい意味があるか, もっと言えば時間が有限な中でその勉強するよりももっと違うことをやった方がいいのでは? という話が出てきます. 私のように「役に立つかどうかは知らない. 面白いかどうかだけで全てを決める」と言い放てる穀潰しタイプではなく, 役に立つことをしないといけない人なら真っ先に考えないといけないことです.
その上できちんと勉強しようというなら, それ相応に複素関数論 (複素解析や関数論ともいう: 私はふだん関数論と呼んでいるので以下これで統一) は必要です. 計算の手段として使えれば十分で, (ガチガチの数学科の数学という意味での) 理解はたいして必要ありません. ただ, 学部のとき東大出身の生物物理の実験系の教員が「学生時代は理論物理学者になりたかったが関数論に挫折して理論物理学者は諦めた」と言っていましたし, 人によってはそれなりに牙を剥いてくる分野ではあります. みんなが気にせず使う変換表の結果をきちんと導いてみたいくらいの気持ちで挑んで元が取れる分野かと言われると, やめた方がいいのでは? とは思います. 教える上で大事なのは, むしろ一般の理工系が勉強に苦労しそうな関連法規などで, それを理工系にとって楽しく勉強できるようにする工夫ではないでしょうか. 数学の話ができる理工系はたくさんいても, 法律などの話を理工系の人間が興味を持てるように伝えられる人の方が遥かに少なそうなので. 念のため書いておくと, 純数学的には極めて豊富な内容を持つ分野で, 今でも研究されている上に純数学内部での応用も掃いて捨てるほどある面白い分野ではあります.
おそらくラプラス変換をちゃんと理解するにはフーリエ変換から理解していかなければいけないのかな
形が似ているだけで, 少なくとも私の気分としてはラプラスとフーリエはだいぶ別物です. 少なくとも数学・物理の学部から大学院程度だと, フーリエは山程出てきますがラプラス変換はほとんど出てきません. どちらにしても具体的な計算で留数定理が必要です. ベクトル解析の基本的な計算ができるなら, そのノリの延長で留数定理まで20ページくらいで到達できますが, ベクトル解析自体が鬼門であると良く聞くのでその辺どうなのだろうかと思います. これも物理学科視点だと「電磁気でベクトル解析死ぬ程使うし, 全員標準装備でしょう?」という気分もありますが, 工学部でベクトル解析にそんな時間が割けるのかとも思います. 物理学科だと電磁波まわりの地獄のような計算をやらされますが, 工学でどこまでそういう手計算やるのかという話もあります. いま電験一種の試験見たら少なくとも記号のレベルでは div や rot 出てきたので少なくとも一種なら多少はベクトル解析必要なのでしょう.
何というか究極的に言って数学科は数学だけ, 物理学科は数学と物理だけやっていれば済む学科で, これらをある程度やった上で自分の専門の勉強, はては関連法規まで勉強しないといけない工学系諸学科とは勉強に関するコスパ概念が全然違うと思っています. ここでの当面のメイン, 「中高数学をのんびりやろうぜ!」のある意味での数学科ノリが通じないところで, 勝手が通じないはずなのでどうコメントしたものか, という感じです. それでもなおちゃんとやりたいというなら, 時間がある範囲で適宜対応します.
ENERGEIAメモその2¶
語学コンテンツの出版準備をしていたらかなり時間が経ってしまったのと電験関係で長めの文章書いたのとで今日の数学メモは短めにします. 明日は機械学習関係の話を書く予定です.
- 引き続きのリーマン面
- 引き続きのアンダースタンディング-コンピュテーション
- 語学コンテンツのKindle出版準備
リーマン面はディリクレ境界値問題で, 有名な円板上のポアソン積分の証明を書きました. アンダースタンディング-コンピュテーションも引き続きオートマトンです. 非決定的オートマトンをプログラムに落とし込む部分がまだよくわかっていないので, じっくりやろうと思います.
2021-03-03¶
自己紹介シート, 一人書いてくださいましたが, 他の方もぜひ書いてください. トップに固定した投稿の中にリンクがあります.
自己紹介シートに書いた下さったのは電験のオンライン塾をやっている方だそうで. 私は学部が物理だったので物理のために役立つ数学という部分ならそれなりにできますが, 私の趣味の物理が役に立つかという大問があり, さらに最近はもはや数学のための数学がメインです. ただ中高数学, もっと言えば中高生向けとしてはそういうのもやらないといけないのだろうなとはずっと思っています. 試験的に次のようなミニ講座は作っていますが, 足りないというか, もうちょっと話を聞かないと駄目なのだろうとは思っています.
興味があればリンク先のページだけでも見ておいてもらえれば.
一応今日の活動メモを書いておきます.
- ベイズ統計のオンライン勉強会
- 統計のコンテンツ整備
- リーマン面のノート作り
電験の試験内容を見たら一応複素数やら回路理論というのが出てきていて, リーマン面は一応かすっている内容なのでちょっと書いておきましょう. リーマン面は複素変数の関数の研究から出てきた概念で, 連結な一次元複素多様体として定義されます. (細かい話はしません.) 回路理論をやっていると常微分方程式を解くためにラプラス変換を使います. 工学だと変換表を使うだけでその内容をどう導くかはやらないと聞いています. これはふつう留数定理を使って計算します. この留数定理が複素変数の関数に対する定理で, 限りなく広く取れば電験とも関係する数学と言えないこともありません. あとは電磁場の解析と思えばフーリエも出てきますし, これも一応複素変数の関数論と関わる部分があります.
ちなみに今日やったのはヤコビの逆問題に関わる議論です. 因子群とヤコビ多様体に関わる議論で, 第一種楕円積分などが出てきました. 楕円積分・楕円関数論や具体的な計算ももっとやりたいですが, 他にもっとやりたいことがあるので, それが終わったあとですね.
ここに書いたことがわかる人はいないと思いますが, 数学の話をしていることは通じると思います. 数学用語を見ただけでも数学していることにあたると思っているので, そういうつもりであえて言葉を紹介するつもりで書いています. 夜寝る前にこれを書いているので, 朝起きて一発目の習慣として投稿チェックしてその日一日の数学ノルマ達成! みたいに使ってみてください. 少しであっても行動した・数学したというマークとして, これに「いいね!」することからはじめてみてください.
2021-03-02¶
何か人が増えていますね. 単なる様子見という人もいらっしゃると思いますが, トップに固定した自己紹介シートに何か書いてもらえるとありがたいです.
日記がてらに今日やったことを書くことにしたので, それを箇条書きにしておきます.
- 引き続きリーマン面のノート作り
- 「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」で新しく参加した人に既存のコンテンツ共有
- 統計学ノートの整理
- 『アンダースタンディング-コンピュテーション』の続き: オートマトンのところ
- 「論理英語ボキャビル編」のepub生成の調整
明日は別途運営している統計の勉強会があります. epub生成も一段落したので, kindle出版に向けた文章整備などをする予定です. 部員の方も「今日はこんなのをやった」というのがあれば気楽に書いて共有してください. 小さくても行動を起こすのが大事なので, この投稿に「いいね!」押すだけでも十分です. というわけで明日も二秒でいいので数学をしましょう.
2021-03-01¶
ENERGEIA¶
一人いればすごいくらいの気分だったのに6人いらっしゃいますね. 驚きです. ゴリゴリやる系の部活とは思っていないのでのんびりやりましょう. 近いうちに適当に勉強会・座談会的なのをやる予定です. 来週は月-木で出張なので, ちょっと始動は遅れるかもしれません. もっと早く何かしてほしいというのがあれば, 適当に調整するのでとりあえず要望を投げてもらえれば.
あと, 部員の方は自己紹介シートを作ったのでぜひ適当に埋めてください.
ひとまず私は日記がてら適当に今日やったことを書いていきます. もしあなたが特に何かやりたいことがなくて様子見状態なら, どこかしらに数学用語が入ると思うので, それを見て数学に触れた気分を味わってみる, くらいからはじめてみてはどうでしょう?
今日やったことを箇条書きにしておきます.
- コンテンツ作りを兼ねたリーマン面のノート作り
- 「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」の連絡用Slackスペース作り
- プログラミングの勉強: 『TomStuart.笹田耕一.笹井崇司.P320.アンダースタンディング-コンピュテーション』を読む
- Kindle出版+αでリリース予定の「論理英語ボキャビル編」のepub生成を調整
今日対応できなかったので, 明日は統計のコンテンツ整備・勉強会準備を進めつつ, コンテンツのリリース準備を進めます. ここの使い方もどうするといいか見えていないので, しばらく適当にいろいろ書きます. 使い方も適当に調整していきましょう.
ENERGEIAの和歌部のやつ¶
何がきっかけで入部しましたか?: 最近「理工系のリベラルアーツ・総合語学」というコンセプトで切り直してコンテンツ作りをしているが, 語学に限らず人文学系のネタに関して牽強付会に理系のハートで切り込む方向性を探っている. 語学に関して「言葉をハックする」という広義理系視点で詩を扱えないかと思っていて, 詩学で検索したがアリストテレスの『詩学』が出てくるか論文しか出てこない. 勉強しづらいことこの上なく, とりあえず目についたので入ってみた. 広義詩を扱う人にとって「ハック」という言葉に詩情がないと受け付けられない公算も高いが, 「数学が何の役に立つ」と言われてこちらが腸が煮えくり返る気分を味わってもらうことにする方向で全てを虚空に投げていきたい.
和歌は好きですか?: 高校の古文レベルの話しか知らないのと, 和歌一般が好きなのかはわからないのと, 和歌と一般の定義が曖昧なのと, 「好き」の意味・定義が一致するかがわからない問題を棚に上げると, とりあえず教科書に載っていた梁塵秘抄の「我をたのめて来ぬ男」の歌と閑吟集の「あまり言葉のかけたさに」の歌は今でも覚えているレベルで好き.
どの時代の和歌、また誰の和歌が好きですか?: 自分の心を打つかどうかの判断基準しかなく, 時代で考えたことがない. 誰と言えるほど歌詠み基準で和歌を鑑賞していない. 中学高校で出てきた和歌は素朴な意味で大体好きな気分はある.
部活でどんな事がしたいですか?: とりあえずは一般論・具体例とも和歌の技巧についていろいろ知りたい. 好きなことを好きに語ってくれれば, 多分あとは勝手に魔解釈して勝手に遊ぶ.
意気込みをどうぞ! 一言でも大歓迎。: 理系向けに魔改造した語学・言語学系コンテンツを作るのが目標です.
【まずは自己紹介】について ふだんは数学・物理・プログラミングネタで情報発信・コンテンツ制作をしています. アンケートにも書きましたが, 理工系向けの「語学」コンテンツを作ろうと思っていて, 「言葉のハック」という観点から詩に関する勉強をはじめたところです. 語学に関する勉強会・コンテンツ制作方針はだいたい次のような気分で進めています.
- https://phasetr.com/blog/2020/08/22/studygroup-for-relativity/
- https://phasetr.com/blog/2021/02/24/language-learning-for-science-and-engineering-students/
2021-01-23 ENERGEIAの部長部の内容¶
勉強のところ¶
私が主催するのは「理工系の総合語学・リベラルアーツ部」です. はじめに部活に関する話を書き, 後半でふだんの情報発信活動に関して書きます.
部活でやろうと思っているのは私が理工系のリベラルアーツとして設定している数学・物理・プログラミング・語学の勉強です. ゴリゴリに専門的に展開するのは個人活動としていろいろやっているので, ここではもっと気楽に, そして日常に溶け込ませる形でゆるゆると上記4テーマに触れる形にするのを想定しています. もしゴリゴリにやりたいという方がいれば, それはそれなりに対応します. ちなみにゴリゴリレベルがどの程度まで含んでいるかというと, 「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」を開催する程度の水準です.
もう少し具体的にここでの展開として考えているのは「数学や物理に憧れがあって挑みたいと思っていたが一人では厳しい」だとか「文系出身エンジニアで数学がよくわからないが, 最近人工知能なり何なりで数学, 特に統計学の勉強が必要になってしまった」みたいなラインです. 植村信子さんによる次のエッセイに心を打たれて数学をやってみたいと思った方といってもいいかもしれません.
ここで大事にしたいのは「毎日少しずつでいいから自分なりに取り組む」ことで, 私自身も日々の勉強の様子を毎日共有したいと思っています. 特に私からの話としてはいまの能力またはコンテンツ整備の事情から言ってプログラミングと数学の連携といったところにフォーカスを置いて進めてみる予定でいます.
ここまでがいまの活動予定です. 以下, ふだんの情報発信についていくつかコメントします. 私の本職はWeb系のエンジニアで, その傍らで数学・物理に関わる情報発信をしています.
いままでリーチの問題から大人向けの活動を中心にしていましたが, ここ1-2年は前からやりたかった中学・高校生向け学習支援に向けていろいろ考えて地元の自治体などにも提案を持っていっています.
- 理工系を志す中高生向け学習支援の提案
- [理工系教育の趣旨
政治・行政を動かす話なのでそんなに簡単に行くわけはなく, ちょうど進めようと思ったタイミングで新型コロナ対応で役所もてんやわんやで話が止まっています. その間の時間を使って中高生向けの活動の下地作り・研究をしていて, そのテーマを理工系の総合語学・リベラルアーツと設定しています. ここではまさにここに向けたコミュニティ作りを念頭に置いて話を進める予定です.
語学のところ¶
広義にも狭義にも語学関係なので一応こちらにもコメントを残しておきます. 基本的なことはここに書いたのでここでは狭い意味での語学について取り組みたい事を書きます.
基本路線は「理系のための語学」です. ふつうの英会話も大事と言えば大事なのですが, それ以前に勉強・研究のために必要なのは英語の読み書きです. 正確な意思疎通が何より重要で, 文法的な正確さなど, たいてい忌み嫌われている学校英語こそが重要です. そこで論文や教科書などの文章をきちんと読むことを重視した内容に取り組みます. 他にボキャビルなどでも言語学者の知人に相談しつつ, 言語学の知見も取り入れた勉強法を実践します. これがけっきょく理工系にはよく馴染むスタイルだと思っています.
また理工系にとってはギリシャ語・ラテン語も非常に身近な対象です. これ以外にも単に英語だけではなく, 理工系にとって必要な言語に幅広く触れたいと思っています.
メモ¶
- https://twitter.com/math_girl99/status/1377883886487621635?s=21
- https://suzuri.jp/math_girl99/6495667/t-shirt/s/white
- 暴力的な量をどう稼ぐか
- 大人の高校
- 佐藤健太郎さんの有機化学の歴史
- 理系は論理的か.
- ENERGEIAで紹介:OnlineMathContest | For All Solvers
- 【後編】声優・緒方恵美さんロングインタビュー 緒方恵美さんの覚悟「完売しても200万赤字。でも続けなきゃ滅ぶ」
- TwitterでのPC購入, 教育問題.
- くり返しやることについて. 道場の事例をもとに.
- 算数・数学勉強のための理科での計算. そのための結城さんの本の推薦. オーダーや重要な定数を覚える意義.
- 計算練習は大事で, そのバリエーションも大事. 文字計算の重要性.
- プログラムで文字計算をどうするか? 記号計算と数値計算での違い, numpy sympy
- 黒木さんの Julia での三角関数の計算法メモを調べる.
書きかけ¶
この間, 数学でも語学・言語学でも何でも人間のやることは同じと書きました. もう少し具体例があった方がいいと思うので, 私がどう考えて何をやっているかいくつか紹介しておきます.
具体的には理系のためのリベラルアーツ・総合語学として実際に英語を中心とした語学の勉強会を主催しています, そこで私の主観で「数学・物理チック」に語学をやっています.
大きくわけて次の二つの筋があります.
- 言語をまたいだ共通構造を見る
- 起源を求めて縦に深く掘る
こう書くと「理系のための語学」にしかなりません. しかしこれを逆回転させられないか, 特に語学をもとにして「文系のための数学的思考法入門」のように位置づけられないかとも考えています. それで試しに一つコンテンツを作ってリリースしてあります.
買わなくても登録ページから無料の通信講座の中のコンテンツとして配布しているので, 興味があればどうぞ. いきなり数学だとハードルが高いと思うならこのあたりの語学から数学に入るのもお勧めします.
書きかけ2¶
聖域の話.