2019¶
2019-11-08 選択バイアスと爆撃機統計¶
はじめに¶
実際には次のような話らしい?
BT-67とPV-2による「間違った生存バイアスの例図」がすっかりネットミームになってしまった(´・ω・`) https://t.co/BZ6bdoqVly
— ウチューじん・ささき (@uchujin17) November 8, 2019
ウォルド博士のやった研究ってFTA解析みたいなことじゃないのかな。防御する必要がないと思っていたところの損傷がドミノ倒し的に連鎖して機体全損に至るような箇所をオペレーションリサーチで検出するという。
— ウチューじん・ささき (@uchujin17) November 8, 2019
これも出てきたんですが、これをウォルド博士が描いたとしても被弾分布プロットではなく「生存バイアスという考え方の説明」ですよね。そしてこの図、奇妙なことにエンジンや燃料タンクのあるべき主翼や機首が塗りつぶされ、その代わり尾翼部分が塗り残されています。
— ウチューじん・ささき (@uchujin17) November 9, 2019
時が経ち原典を参照しなくなると情報が歪んで伝わっていく事案らしく, 面白いのでそれも含めてメモ.
連続ツイート収録¶
ホンダが作った白バイ用のシミュレータが現実にはありえないようなパターンの事故ばかりで体験した交通機動隊員が「現実に即してない」と苦情を言ったら「体験していただいた事故は皆さんの先輩方が殉職された時の状況です」と帰って来たってエピソードを思い出した(・ω・ )道路は危険がいっぱいだ
— めがねねこP (@FakeFalcon) 2017年3月17日
「選択バイアスの罠」ってヤツですなあ。 https://t.co/J0nuMn1rJG
— みたま (@mitama_) 2017年3月18日
これは文系脳の僕にとっては驚天動地だった。
— みたま (@mitama_) 2017年3月18日
「選択バイアスの罠」 pic.twitter.com/UuMgGcLmle
この話は良く喧伝されるが、最初からコクピットとエンジンを防弾するのが優先されたのでは https://t.co/iWzsVGv0FJ
— 坂東α (@bando_alpha) 2017年3月24日
個人的には、統計学者の指示した箇所すべての防弾を強化した結果として爆弾の搭載容量が皆無になってほしい。 https://t.co/feCvhNT5GI
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
一方ロシアはDC-3を爆撃機として使うのをやめた https://t.co/7pHC4ajB3z
— ハゼ (@pgrho) 2017年3月26日
それよりこの爆撃機なんだ? WW2関係だということまでは推測されるが。 https://t.co/biP7urTDao
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
このAbraham WaldがStatistical Research Groupに所得しており、同僚にミルトン・フリードマンがいたらしいということまではわかった。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
@Im_WeltkriegeDC-3ファミリーにB-23つーのがあるけど統計とるほど使われてはいないと思う
— ハゼ (@pgrho) 2017年3月26日
@pgrhoB-23が一番近そうではあるけど、ようわからんね。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
Abraham Waldによる航空機の生存率に関する概説を読んで当該文書を確認のため眺めた(なんと英語版Wikipediaからも簡単に見つかるぞ)が、被弾箇所を図にして空白の部分を強化すればOKというような雑な議論では全然なかった。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
未帰還機というデータの空白がある中でどのように効率的に機体を強化するかであり、単に弾の穴を全機数えただけでなく何発当たったかが問題になっているし、当然に敵弾の口径のようなファクターにも言及されている。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
これは図にプロットしたら空白=被撃墜箇所が見えましたなどという雑な話ではなく、どちらかといえば計算機のない時代に手計算大変でしたねという話なので、またコンピューターが勝利してしまった。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
とりあえず概説がこれです。暇な人はどうぞ。 https://t.co/fYDeeWzhGi
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
まさにあの爆撃機の被弾図こそが「賢い人が誰にでもわかるように説明した」図と信じられたものであります。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
第二次世界大戦は科学者の頭脳と膨大な計算によっても戦われたが、これが大衆の手にかかると一枚のポンチ絵に早変わりするのである。そこに本質は残されなかった。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
一部大衆に「この図はフェイクで、お前は馬鹿だ」と教えてあげても、さらに食い下がって「事実とは異なってもこの図には本質がある」と言い出すし、自分を賢いと勘違いしている大衆はメタゲームに走ってさらに激しく誤った教訓を導くので、基本的にはどうもなりません。よって気にしても無駄。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
専門家を信頼するというのも実際の問題に引きなおすと面倒な話なんだよね。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
爆撃機統計の専門家が狭すぎて存在しないことは誰でもわかるだろうけど、爆撃機と統計学についてその問題に関し十分な知識を持つ人間なんかほとんど居ない(爆撃機については後で勉強するとしても)わけだからね。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
ある大学(優しいので名前は出さないでおく)の統計教科書には堂々と「V1は特定の場所に落ちると統計で示された」という旨が書いてあった。実際はまったく同じ統計を用いて当時ロンドン市民に信じられていた「落ちやすい場所」など存在しないことを示したもので結論が真逆。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
軍オタが常識で考えればロンドンなんて巨大目標を選ばざるをえない雑爆弾がロンドン市内の特定の場所に偏って落ちたりしないだろうと直感できるけど、「実際にそれを体験した」ロンドン市民は特定箇所に落ちると信じてた。それに科学(?)で反証した勝利体験がこの話なんだね。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
裁判官は法律以外の専門分野を知らないので、それを補うための仕組みが作られており、今度は専門家側が法律を知らないという問題を起こす。世の中はそのように出来ており、統計学者は統計学以外知るわけもない。だから対象について知らなければ統計学者だって適当なことばかり言うに決まっている。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
大衆は愚かだ。専門家は専門外について大衆と同じだ。そう思ってる人が多いだろうけど、現実はもっと悲惨なんだね。その悲惨な現実に「ベストアンドブライテスト」が立ち向かって粉砕される話がボクは大好きなんだ。そう戦争のことだ。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
統計学という学問は、まさに戦争の只中で自身の頭上に爆弾の降り注いだ人々が頓珍漢な迷信にとらわれるということを示した。本当に素晴らしいことだと思う。歴史学ですらオーラルヒストリー・ブームは去った。なのにインターネットはまだ「当事者」にこだわる。当事者など何も知らない。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
@bando_alphaおいやめろ^^
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
あの話の悪質なところは、あの教訓があの案件の説明としては微妙であっても、統計学の基礎的な知見ではあるので、そこで統計学しか知らない普通の人はやられてしまうというところですかね。結論が正しくても説明が不適切なものは世の中腐るほどある。その一例。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
細かいことを話し始めると止まらない悪い軍オタなのでこの辺にしとくとして、この話を一々説明せずに共有できる「専門性」があると推測できるのは、私の周囲だと@pgrhoとおそらくは@bando_alphaぐらいですかね。さて、専門家とは何なのか。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
原機密文書を見ると大量の五次方程式を解いているのだが、なぜ五次かというと最大五発被弾しても帰還した機体までを計算しているからなので、「これ絶対計算力の限界でしょ」と虚空と盛り上がれます。アンチョコでは味わえない。おすすめです。 https://t.co/yt9K1oNiWE
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
鮮やかな知恵で一発解決と虚構を世間がもてはやす一方、実際の現場ではひたすら計算力の限界に直面しているという構図。ボクのかんがえた最強の現実という風情でとにかく気持ちいい。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
オタクは原機密文書の一番最後に付されている"TABLE 8 VULNERABILITY OF A PLANE TO A HIT OF A SPECIFIED TYPE
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
ON A SPECIFIED PART"だけでも眺めると良いです。オタクの知りたいやつです。
ここ数時間、科学によって民衆の迷妄を攻撃する軍オタという史上最低の人種を演じているのに何の攻撃も返ってこない。実は世界は存在しないのでは?
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
@bando_alphaちなみに"The probability that a plane will be shot down does not depend on the number of previous non-destructive hits."が二大仮定の一つ。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
@Im_Weltkriegeまあ大型機というのも仮定の背景にあるんだろうけど
— 坂東α (@bando_alpha) 2017年3月26日
@bando_alphaあとBirge-Vieta MethodなるN次方程式の実根を求める手法の存在を初めて知った。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
@Im_Weltkriege計算機向きの手法だね(あんまり流行らなかったのかね
— 坂東α (@bando_alpha) 2017年3月26日
@bando_alpha計算手が大量にいるかどうかじゃないの。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月26日
@Im_Weltkriegeタイガー計算機の回しすぎで手が凍傷になった云々
— 坂東α (@bando_alpha) 2017年3月26日
新たな流れっぽい.
今からオタクに向けて喋ります。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
この報告書は1943年のもので、飛行機の種類は複数あるけど別々に考慮しているような前提になっているので、常識で考えてB-17とB-24に関するものと思われる。すると、この報告書が反映された可能性があるのはB-17GとB-24Jあたり。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
"Of the 1,000 planes dispatched, 634 actually attacked the objective. Thirty-two planes were lost in combat"とあるので、2/3しか目標に投弾できず32機が落ちた。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
”and the number of hits on returning planes was: Ai - number of planes returning with i hits, A0=386, A1=120, A2=47, A3=22, A4=16, A5=11."
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
とあり、248機が被弾しつつ帰還した。複数被弾したものもあるので、その総"hits"は399になる。これを元に生存率を推定する。1000機出撃中248機被弾後帰還、被撃墜32機なので、被弾機体中未帰還率は1割を超える。まあまあ落ちる。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
次に弾種をFlak、20mm、7.9mmの3つに分類する。さらに機体を機体前部、エンジン、燃料系統、その他の4つに分類する。まあ例のような「訓話」が話されたとしたらこの機体の分割の際だろうが、プロットして少なそうな部位を抽出したとも思えない。こんなの常識レベルの判断なので。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
機体部位と弾種に分類し被弾機の"hits"を数えるのだが、総和だと機体前部:エンジン:燃料系統:その他=32:45:84:238なので、面積比で見て言うほど「偏り」が見えるのかは謎。エンジン(どこまでがエンジン部位か不明)はたぶん4発なので、やや少なそうに見えるかどうか。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
狙ってくる20mmおよび7.9mmと違い、Flakはランダムに当たると思われる。そこで被弾割合を見ると機体前部:エンジン:燃料系統:その他=.058:.092:.174:.676なのだが、機体分割図が不明なので謎。ちなみに機銃は有意にその他以外に命中している。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
途中の計算をすべてすっ飛ばして結論に向かうと、ともかくエンジンが弱いとわかる。特に20mmが当たると死ぬ。実に0.534という確率。次に機体前部(つまりコックピット)が弱い。機銃を乱射されるとパイロットとコパイが死んで落ちる。なのでここは機銃対策が有効とわかる。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
燃料系統はどの弾種にも等しくやや弱い。発火の問題なのかシステムの機能の問題なのかは不明。その他の部位もおおむね3%程度の致死率となっている。当然ながらとにかく当たれば落ちるのである。この数字を信じるならどこでも20発強当たれば半分は落ちる。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
まあなので実務上はコックピットとエンジンを防弾(または何らかの対策)しようぜという話になるだけで、そんなの言われずとも常識じゃんとなるのだが、果たしてこの常識がこのリサーチ後のものか以前からの常識なのかはちょっと調べたほうが良いのだが、どう考えても以前からの常識だよね。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
各機体に詳しくないのでB-17GやB-24Jに顕著な改良が何なのか知らない。有効だったのかも知らない。対策にも機体自体の変更から戦術に至るまで色々な方法があるので、寄与分を推定している報告書の有無は不明。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
"we shall discuss some approximation methods by means of which the amount of computational work can be considerably reduced."(前掲PDF31ページ)
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
とあるので、やはり1943年の手計算リソースは常に逼迫していたことが伺える。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
知っている人には言うまでもありませんが、戦略爆撃機の生存率を最大に向上させたのは護衛戦闘機の航続距離の長大化です。
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
ちなみに米国戦略爆撃調査団の文書は最近ここから読めるようになったので、敵が見えるタイプの人はどんどん参考にしていきましょう。 https://t.co/m1byVBFGAg
— 非人 (@Im_Weltkriege) 2017年3月27日
よくわからないが楽しそうで何より.