2021-08-14 音読の意義と英語に生きるフランス語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

今回, 諸事情で勉強会は中止したので, 残念ながら動画はありません. 勉強会で言おうと思っていたネタがあるのですが, 忘れる前にメルマガで供養しておきます.

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音読教材の推薦を頂いたので

音読の教材は、英語の質、内容の面白さはもちろんですが、 - 音資材がある (お手本の音声があったほうが練習しやすい) - 信頼できる日本語訳がある(英語を正しく理解したうえで音読することが大事なので、音読の前に、自分の解釈にミスがないかを既存の訳と照らしてチェックするため) の2点も重視しています。

受験教材や書籍もいろいろ出ていますが、NHKの語学教材も便利です。 特によく活用しているのが、『ニュースで英語術』のサイト https://www2.nhk.or.jp/gogaku/news/index.html シャドーイングのほか、日本語訳をみながら英語に起こす訓練にも使えます。 ニュース英語は、書き言葉にも話し言葉にも応用できて汎用性が高いのが利点です。 (科学雑誌などは、話し言葉には使いにくい表現も多いので)

同じくNHKの『高校生からはじめる「現代英語」』もニュース英語で、 こちらは、冠詞やタイトル付けのルールなどまで掘り下げて解説してくれます。 https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=4407_01

音読の意義

何故音読を改めてはじめたかと言えば, 音の物理の理解のためでもあります.

例えばきちんと個々の発音を勉強し直して, なぜ get a の発音が「ゲラ」になるか, ようやくきちんと理解できました.

まず t の発音のときは上の歯に舌をつけて, 突き飛ばすように発音します. 一方 l の発音は上の歯に舌をつけたまま発音します. したがって get a を滑らかに発音しようとすると t の突き飛ばすような発音がしきれなくなり, 上の歯に舌をつける動作だけが残って t が l になるのです. いわば get a を「ゲラ」のように発音するのは物理に則った由緒正しい発音です.

これだけならそんなに大した話ではありません. しかし単語が言語と文化をまたぐときにもこの現象が起きる可能性があります. つまり t の音は l に変わる可能性があります.

音に関する事情はいろいろあります. 例えば英語の flower はイタリア語では fiore です. 何故そうなのかまでは把握しきれていませんが, 何にせよイタリア語は f と l の連続を嫌います. フランス語には例えばエリジオンがあり, リエゾンがあり, 母音または無音の h ではじまる語が続くと母音字を省略する現象があります. 音を聞いているとわかるのですが, イタリア語は滑舌よく発音するようでかなり聞き取りやすいのですが, フランス語は滑らかに発音する方が好まれるようで, 母音+母音は滑らかさが減るので好まれないのだと推測しています.

こうした事情は読解や暗記にも効いてくるはずだと思っています. 特に暗記については, 歴史的な事情もあって日本語の中で外来語である中国語, 特に漢字語には固さ・正式さのイメージがあるように, 英語でも固い・難しい単語にはフランス語に由来することがよくあります. 科学技術系というある意味固さの極みのような分野では, ラテン語・ギリシャ語の影響があります. ここに対する耐久力を上げるために使える事情は使い倒したいので, 少なくともフランス語の事情は把握したいと思っていて, このときに効いてくるのではないかと推測しつつ取り組んでいます.

また, 実験という視点も欠かせません. 先程 get a に関して書いたように, 発音の訓練は自分の身体による言語・文化またぎの実験でもあります. フランス語もちょくちょくリスニング・発音をやっています.

フランス語単語で遊ぶ

フランス語は特に会話ベースでもう少しきちんとやりたいものの, いざ会話の勉強となるとなかなか元気が出ません. いくつか試してみましたが, 結局, 一所懸命やっている相対性理論の原論文読みと合わせてやると元気が出るだろうと思い, まず単語暗記として相対性理論の原論文に出てくる単語集を作っています.

今回の単語: croire と mourir

意味は後で書きます. せっかくなのでフランス語をご存知でない方は意味を推測してみてください.

フランス語の基本単語で, 意味も覚えていたのですが, なぜこれらがこの意味なのかとずっと思っていて, 改めて調べました. 以下で答えを書くので, 自分で考えてみたい方はここでいったんストップしてください.


まず croire を考えましょう. これは対応するイタリア語かラテン語を見るとわかります. 具体的には credere です. ここから英語の credit が想像できればよく, 「信じる」という意味です.

クレディセゾンといったクレジットカードの credit が関連する単語としてあります. ちなみに Wikipedia いわく, 英語の社名は Credit Saison です. フランス語では credit でクレディと最後の t を発音していない以上, 気分的にはフランス語なのでしょう. さらに言えばセゾンの saison もフランス語での season なので, 本当にフランス語を想定しているのでしょう.


次に mourir です. これは Wiktionary を見るとわかります. 古フランス語 morir, 俗ラテン語 *moriō, ラテン語 morī とあって, いわゆるメメントモリのモリです.

不勉強なものではじめて知った・前に勉強したが忘れていた事案として, Wikipedia でメメントモリを調べてみたところ, 次のようにありました.

当時、「メメント・モリ」の趣旨は carpe diem(今を楽しめ)ということで

言葉だけ知っていた carpe diem の意味を改めて勉強しました. この carpe diem もきちんと調べないといけないのですが, これは次回の宿題にしましょう.

ちなみにメメントの方は memento を見る限り, memory として英語に息づいているようです.

なぜフランス語は会話を勉強したいのか

いまのご時世でこれから先どうなるのかよくわかっていない部分もあるとはいえ, 私が通っている柔道の道場では年に二回程度海外, それもフランスからお客さんが来ることがあります. オリンピックで柔道を見た方はご存知かもしれませんが, 男女混合の団体でフランスが優勝したように, フランスは実は柔道大国です. 私の先輩が二十年来フランスで柔道指導をしている関係もあって, たまにわざわざ柔道しにフランスから来るのです.

大人だけならまだしも, 8 歳くらいの子供まで柔道しに来ます. フランスの海沿いにお住まいの方もいて, 空港があるパリに来るまでで既に 4-5 時間, そこからさらに飛行機で日本まで来て, かさばる柔道着も荷物に詰め込んで来るという尋常ではない気合の入り方です.

一週間程度の滞在のうち, 柔道の聖地である講道館に行くのは十分わかるにせよ, 私が通っている道場にも二回来ました. 「一回来て楽しかったらもう一回来たくて来た」とまで言っていたようです. もちろんふつうの観光もしたのだとは思いますが, 10 人くらいで来ていたので, 日本円の価値で言えば何十万円というレベルでお金を使って来ていて, その中の主軸に柔道があるというすごい話です. スポーツツーリズムという概念があるのは知っていましたが, 本当にあるのかと驚きました.

そんなこんながあるので, フランス語については簡単な会話ができるようになって, できる範囲でおもてなししたい気分があるのです.