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数学セミナーは特集の数学史目当てに買ったものの, 普遍被覆の話が書いてありました. リーマン面の解析接続と直結するテーマです.
後者に関してはいま書評を書くためにちょこちょこ読んでいます.
コメントをちょこちょこ入れてあるので参考にしてください. 本にはネタ自体はいろいろ書いてあるものの, P.50 程度まで読んだ範囲では, 純粋に本を読み進める上ためには, 線型代数・微分積分・関数論の基礎があれば十分そうです.
私のメルマガに登録するくらいの人なら, 十二分に楽しめる本のような気分があります. 値段がやたら張るのが難点ですが. 書評をまとめたらまたアナウンスします.
前段が長くなったので今回は軽めにしましょう. 被覆空間の話は追々進めることにして, 私のノートの順番で進めます.
リーマン面は連結な一次元の複素多様体として定義します. 単なる一次元の複素多様体ではなく, 連結性を課すのがふつうなようです. 実際, 解析接続まわりでは大事な性質ではあります. さらにふつうの多様体論でも連結な多様体が基本です. ついでにいえば, リーマン多様体もふつうは連結性を仮定します. これは距離関数の定義に関わる問題なのでリーマン面とはまた別の理由ですが.
もちろん複素平面の領域 (連結な開集合) が一番基本的な例です. 他に関数論, 特に有理型関数の理論からは複素射影空間が重要で, 解析接続からは複素平面の原点を抜いた集合 Ccross や半平面が重要です. 特に Ccross は指数関数の値域としても出てきます.
被覆空間の例として指数関数・対数関数がかなり大事です. これはそのうちきちんと書く機会があるでしょう.
もう一つ大事なのは $k$ 次の単項式 $p_k(z) = z^k$ です. これが大事なのは正則関数の局所的な振る舞いと直結するからです. 本によっては正規形定理と呼ばれていて, 全ての正則関数は適切な座標系に対して局所的に $k$ 次の単項式で書けることがわかっています.
ふつうの関数論では単純なテイラー展開からしたがう定理で自明と言えば自明です. しかし実はこれが異様なくらい役に立ちます. 多重度のような概念の基礎でもあり, 正則写像に対する開写像定理や逆写像定理を直接の系に持ちます. 解析接続でもシートの枚数と直結していると言えば, 重要度はわかってもらえるでしょうか.
局所的にはそう書けると言いつつ, 実は連結性とも絡めて正則写像を大域的に制御する強烈な言明です. 証明も含め, 多様体論・多様体間の写像の理論としてもごく基本的な認識を育ててくれる定理なので, まずはこれをきちんと制圧するのが大事です. 解析接続を考える上では根源的な定理と言っていいでしょう.
関数論・リーマン面はまだまだ慣れていません. 大事だと思ったことを書いていますが, 何か変なことを言っていたらぜひ教えてください.
今回はこんなところで. ではまたメールします.
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