メインメルマガ¶
2023-09-23¶
コリオリの力の実演¶
江沢先生の訃報¶
統計力学でのエルゴード性¶
メモ¶
識別子としてのタトゥー¶
タトゥーのことを「普通に考えて入れるデメリットが大きすぎる」と認識していたけど、世の中には遠くの身内に届く自分に関する唯一の情報が動画に映る身元不明の人体の映像とかになる可能性のある人生というのが割と存在していて、タトゥーがただ一つの識別子になったりもするんだな…と気付くなどした
Amazon Prime見放題での「マジカル・ガール」¶
アマプラ見放題の『マジカル・ガール』は、ただお父さんが娘のために日本のアニメのドレスを買いたいだけなのに、関係者が全員もれなく地獄に堕ちる素晴らしい映画なので、まだ観てない方はぜひ観てください。
Vercel、自然言語からUIを生成するサービス「v0」を実験的に公開。Tailwind CSSとShadcn UIをベースに¶
UI/UXデザイナー向けのChatGPTプロンプト集15選¶
つの丸の漫画「サバイビー」: こんな悲壮な兵士を描くのうまいギャグマンガ家がいてたまるか¶
2023-09-16 物質の安定性の物理/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 作業動画の重要性
- 物質の安定性
- 量子情報と線型代数
メルマガページへのリンクは次の通りです.
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
Web系のプログラミングに数年のブランクがあるため毎日ちょこちょこと勉強時間を取らねばならず, 数学・物理またはこれに関わるプログラミングの勉強はやや滞りがちです. 必要性に迫られたのもあり, ようやく本腰を入れて勉強しはじめると, 昔と比べて劇的に便利になっていて感心します. 「こういうのがほしかった」という機能なり何なりも比較的簡単に使えるようになっていて, その意味でもとにかく楽しいです.
そして現在事実上の一人エンジニアな上にUI/UX含めたデザイン関係もやらねばならず非常に苦戦しています.
数学・物理関係のメルマガで何故こんなことをいちいち書くかというと, 専門外の内容の勉強 または最新事情のキャッチアップに関する初学・独学の厳しさの体験が数学・物理の勉強に苦労するのと重なる部分があるからです.
新型コロナとインフルエンザとのセットでの大流行も出てきていますが, 5月からジム行きも再開しました. 筋トレは広く言えば生物系の話, 実験科学として捉えていてこれもなかなか楽しいです.
作業動画の重要性¶
仕事用に最低限のCSS・Webデザインをどう勉強するかずっと悩んでいます. 普段見ていじるWebサイト・アプリの画面からある程度「こんな機能がある」というのはわかります. ただしそれを実装しろと言われると厳しいことがよくあります. 勉強するべき内容はいろいろありますが, フロントエンドはある程度までコードが完全に見られるにしろ, 自分のところにデザイン崩れを起こさずに整合的に組み込むとなるとかなり面倒な場合はよくあります.
あと, 料理などでも最近は単なるレシピではなく動画による解説も増えてきました. 筋トレも微妙な違いの動画解説が便利な場合はよくあります. それでふとというかようやくという,あ ようやくCSSまわりもライブコーディングが一つ参考になるのではないかと気付きました. YouTubeで調べてみたらやはり上げている人がいたため, ちょこちょこ眺めています.
多少人によって違いはあると思いますが, TeXやふつうの文章作成と同じく, まずは基本的なタグだけドコドコ書いてからCSSをあてていく様子を見て, CSSでもきちんと大きく構造を捉えて似ているところは似ているようにする, html, bodyタグなど大枠の設定を決めてから細部にうつる流れはどこでも同じか, 広義の文章作成と思えば基礎・基本は変わらないのを改めて実感しました.
講義動画ではなく, 数学・物理でも何かしら作業動画が参考になる分野があるかふと気になりました. 物理の実験とはまた違うでしょう. 最近の量子情報系の線型代数の問題演習でプログラムを書いて計算させて試行錯誤することが何回かあったため, そういうのは参考になるのかもしれません. 初見時の試行錯誤の様子はダラダラと間延びしがちな部分もあり, 完成品を出すのでは講義動画と変わらなそうで, どういう感じがいいのかよくわかっていません.
物質の安定性¶
最近, 幾何系のための層とコホモロジーのノート作りがあまりに面倒で, 現実逃避のために物質の安定性のノートをシコシコ作っています. 物質の安定性はふつうの物理でめったに議論されないため, 前にも何度か書いた気がしますが, 物理的な意義を簡単に説明します.
量子力学のことの起こりはいくつかあります. その中の一つが原子の安定性の問題です. 学部レベルの電磁気学のハイライトの一つは輻射の理論です. 荷電粒子が加速運動すると電磁波を出します. 物理的には全系のエネルギーが保存します. 電磁波もエネルギーを持つため, 電磁波にエネルギーが持っていかれた分, 電子のエネルギーが減ります.
現代的な原子模型では, 原子核のまわりを電子が円運動することになっています. 円運動は加速運動である以上, 電子は電磁波を放出します. 高校でも出てくる等速円運動では円運動の半径または円運動の速度は電子のエネルギーと関係します. 大雑把に言えば電磁波を出した分だけ円運動の半径が小さくなり, やがて電子は原子核に落ち込んで原子が崩壊します.
これが古典力学と古典電磁気学の破綻で, 量子力学では水素原子の基底エネルギーの有限性として理論の破綻が救われました. この対象系のハミルトニアンに対する基底エネルギーの有限性は第一種の安定性と呼ばれます.
ここまでは量子力学の基礎として物理を勉強すれば必ず学ぶ内容です. 次の第二種の安定性は物理では重要なものの, 「量子力学の本」には滅多に載っていません. 実際, 数理物理の研究分野としての議論以外ほぼないようです.
第二種の安定性を一言で言うと熱力学的な安定性です. 熱力学には熱力学関数の相加性・示量性があります. 大まかに言えば系のエネルギーは物質量に比例します. ミクロな量子力学の視点で言えば, 基底エネルギーは粒子数に対して$E(N) = -cN$と線型であるべきです.
もしエネルギーが$E(N) = -cN^{\alpha}$で$\alpha \neq 1$だとすると, $N$が大きくなるほどエネルギーがどんどん下がります. 特に平衡統計力学では熱力学的極限と称して密度$\rho = \frac{V}{N}$を一定にしたたまま, 系の体積$V$と粒子数$N$を無限大に飛ばす極限を取ります. もし$E(N) = -cN^{\alpha}$で$\alpha \neq 1$をみたす場合, 平衡統計力学で一粒子に対する平均エネルギーなどが定義できません. 平衡系は近似概念である以上, そこに数学的な矛盾があっても問題ないと言う立場はありえますが, おさまりが悪いと感じる人はいます. そういう人達ががんばって議論しているのが物質の安定性に関わる数理物理です.
この分野は「難しい数学を使う」のではなく, 「数学の使い方が難しい」分野です. もちろんルベーグ積分を中心にいくつか解析学に対する知識は必要ですが, それ以上に不等式処理に関わる数学科水準の凄まじい剛腕が重要です. 私と同等以上の不等式処理能力が必要です.
興味がある方は次のLieb-Seiringerの"The Stability of Matter in Quantum Mechanics"を読むとよいでしょう. 尋常ではないほど難しいです.
私も細かいところはあまり気にせず緩く読んでノートを作っているところです. 難しいものの面白いのは間違いありません.
熱力学もそのうち勉強会つき通信講座を作る予定です. 気長にお待ちを.
量子情報と線型代数¶
これは改めて石坂・小川・河内・木村・林の『量子情報科学入門』を読んでいます.
この分野だとニールセン-チャンが有名で, 実際にこの二章の線型代数部分を通信講座で取り上げています. まずは大雑把にゆるふわで勉強しようと思い, 日本語でそこまでぶ厚くもないこの本をゆるく眺めています.
全八章のうち六章の途中まで読み進めていて, これはかなり読みやすくてお勧めです. 付録で線型代数も一通り書いてあり, 少し進んだ内容は証明もついています. 線型代数が大事なのはわかっているが数学の本を読む気はしない・読めない, 数学としてやる気が起きないという人でも, わざわざ私のメルマガを読むくらいの人なら量子力学には興味があるでしょう.
類似の内容は勉強会つき通信講座でも扱っているため, 一人では続かない人はそちらもどうぞ.
知らない人がいるかもしれないため念のため書いておくと, 量子情報は数学的にも面白い話がたくさんあり, 有限次元の線型代数レベルでも数学としての研究が続いています. 作用素論・作用素環論的な話ばかりではなく, 行列不等式・行列解析のような話題もあります. 行列と解析学と言えば数値計算の数理からのアプローチもあります. ある程度数学フレンドリーなスタイルの本で, 純粋な数学的興味から量子力学に触れたい人にも上記の本はお勧めです. 状態の扱いなど気に入らない部分がいくつかあり, それを前提にしたノートを作っている最中です.
行列解析は興味がありつつも勉強しきれていない分野でもあり, これも勉強したいとずっと思っています. エントロピーに関わる行列不等式も大きく見れば行列解析のテーマと言えます. 作用素論・作用素環でも重要な議論がたくさんあります. 作用素環的なところは学生時代に論文を読んだこともあり, それ自身前から興味関心が強い分野でもあります.
メモ¶
AIPでのLiebへのインタビュー¶
Elliott Liebのinterview. 朝鮮戦争時に韓国に行ったり、Edwardsの学生だったり、基研でポスドクをして、山崎和夫さんと共同研究をしたキャリアが興味深い。IBMに行ってから花が開いた様に、どちらかと言えば晩成タイプ。AKLTについての言及もある。
Leanと型¶
数学をLean等の証明支援系でプログラミング言語として書くときに「型」という概念を使うのですが、それについての数学者向けのわかりやすい解説記事(Xena projectの記事)の和訳が出ました: Mathematics in type theory https://lean-ja.github.io/math-in-type-theory-ja/index.html
素因数分解ゲームSOINSU¶
2023-09-09 年を取っても勉強しよう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告: Lean勉強会が面白かった
- 年を取っても勉強しよう
- 谷本溶さんの講義ノート: ntroduction to Algebraic Quantum Field Theory Nagoya University, 2023 May 15-19
- よいものにはきちんとフィードバックしよう
- 『非平衡統計力学入門:現代的な視点から』田崎晴明 Hal Tasaki "A Modern Introduction to Nonequilibrium Statistical Mechanics"
- 量子リソース理論と量子熱力学
- well-definednessをill-definednessから理解する具体例
- 計算トポロジー入門
- 確率変数の定式化と頻度論・ベイズ統計
- 線型代数の重要性
メルマガページへのリンクは次の通りです.
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告: Lean勉強会が面白かった¶
仕事が忙しく, しばらくメルマガをさぼっていたらもう四ヶ月近くになっていました. もちろん適当に数学なり何なりは続けていたものの, ホモロジー代数はTeX打ちがあまりに面倒で嫌になってきたため, 逃避行動で物質の安定性と量子情報関係のノート作りを進めていました. 久しぶりの解析学がとにかく楽しく, もっと共有したいとは思いますが, どうしても学部四年から修士程度のパワーがいる内容なため, なかなかつらいところです.
この一年, これまた久しぶり仕事で本格的にプログラムを書くようになったため, 仕事に絡めてふつうのプログラミング関係の勉強も再開しました. バックエンドは本当に書くのが楽になってきた感じがあります. フロントはまだまだ地獄というか, node.jsのエコシステムがただただ厳しいです. F#が気に入っているものの, 情報が少なすぎてつらいため.NETエコシステムを特にC#で進めています. フロントエンドはJavaScriptまたはTypeScriptではなくBlazorでどうにかできないかと勉強を進めています.
量子力学・線型代数の勉強会も第三回を放置したままなため, いい加減それも進めたいところではあります.
あとメルマガで宣伝しようと思って忘れていたLean勉強会に参加しました. これも言語のバージョンアップでライブラリが死ぬ問題があるとはいえ, Pythonなどでプログラムを書くよりはよほど「数学」ができそうです. まだ全然書けるレベルに到達していませんが, 何かしら貢献できないかと考えています. 日本語コミュニティも作ったとのことで, 興味がある方は参加してどうでしょうか.
「すうがくぶんか」の梅崎さんがYouTubeに解説動画も上げています.
- URL
- YouTube 【Lean実況】数学系のためのLean勉強会の教材を解くBasic2
- YouTube 【Lean実況】数学系のためのLean勉強会の教材を解くBasic3
年を取っても勉強しよう¶
物理のための数学で、いつも最前列で講義を受けてらっしゃる年配の男性が気になっていたので、講義後声をかけ、2時間ほど色々お話をしました。その方は現在74歳で、定年退職してから、科目等履修生として毎期1, 2コマだけ大学で講義を受けている、とのことでした。 今までに薬剤学や薬理学、現代史学、工学、電磁気学など、色々な授業を受けてきたそうです。とても朗らかで話好きな方で、沢山のことを話してくださいました。これを是非若い人たちに伝えたいんだ、というお話もありましたので、許可を得た上で、一部をまとめて書き残したいと思います。
「退職して暇になったときに、やっぱり学問をやり続けたいと思った。こうして講義を受け続けているのも、年齢がどうとか衰えがどうとかで自分に自分でブレーキをかけてしまいたくないという思いがあったから。自分は若い時でも、京大生のような超一流の学力は全くなかったし、」 「ましてや今なんて当然、当時より遥かに頭の回転も遅いし記憶力も衰えている。けれど、有り余った時間を使ってゆっくりじっくり考えて、学んで、頭を使って、ということを続けていると、まだまだやれるという気が湧いてくる」 「学生さんたちにも解けなかった問題が解けたり、2週間じっくり作ったレポートでA+の成績をいただいたりしたこともあって、そのことがすごく嬉しかった。当然学生さんたちの方が忙しい中で学問に取り組んでいるわけだけど、こんな後期高齢者目前の人でも、できることがまだまだあるんだ、と」 「高校時代の同級生にA君というやつがいた。僕らは両方とも成績は悪かったけど、彼は豪快で派手な性格で、勉強なんて別にできなくていいや、というようなことを言っていた。運動も得意で一緒に石垣に登ったりもした。でも彼は、内心では少しコンプレックスを抱えていたらしかった」 「また彼は『男は若さ。40過ぎたら終わりで、後は老いてくだけだ』というような考えを持っていた。その後大人になって、色々と上手くいかないことが重なり、躁鬱症のような状態になった。そして感情の起伏がどんどん激しくなり、結局、40歳を目前に自分で命を絶ってしまった」 「そのことがとても悔しく、『年老いてからでもやれることはあるんだと、自分が30年40年早く気づいていれば、あいつに何か言ってやれたのかもしれない』いつもそう考えている」 「今の時代、研究者になる道は険しく、金銭的にも厳しいものがある。理由は分からないが退学届を出しに来るところの学生を見かけたこともあった。東大京大とかの超一流の学生さんたちには是非この衰退しつつある日本の科学技術界を引っ張り上げてほしいとは思っている」 「しかし、若いうちに研究者にならないと良い結果は出せないとか、この道しかないと思い込まずに、人生は長いのだから、ブレーキをかけなければ大抵のことはいくつになってもできるもんだと思っておいてほしい。今20歳の君なら、50年後にだって僕みたいに講義を受けられるんだから」 「歴史上でも現代でも、歳取ってから素晴らしい業績を残している人もいる。人生百年時代というから、お金を稼いで中年になってからまた学問をやるとか、色んな道はあると思う。若い頃の方が思い切って行動できるけど、たとえ年を取ってからでも、気持ち次第で行動はできるのだと知ってほしい」 「自分も、この物理のための数学はなかなか難しくて、訊きたいところがいくつもある。けど、なんとか頑張って理解したいと思っているので、学生さんたちも、今はサークルやバイト、勉強で忙しいとは思うけれども長い人生、頑張ってほしい」
これ以外にもたくさんのことをお話しましたが、自分なりにまとめるとこのようなお話でした。物ためを今取っている京理の人たちは、良ければぜひとも話しかけていってもらいたいです。学生として、質問や理解したいことがたくさんあるそうなので、
谷本溶さんの講義ノート: ntroduction to Algebraic Quantum Field Theory Nagoya University, 2023 May 15-19¶
名古屋大学での集中講義のノートを書きました https://www.mat.uniroma2.it/~tanimoto/teaching/2023NagoyaAQFT/nagoya_lecture23.pdf Wightman と Araki-Haag-Kastler 公理の関係、自由場の構成、 Bisognano-Wichmann property, modular nuclearity と split property の関係、それを使った相互作用するネットの構成などをやりました。
院の先輩の講義ノートです. 修士レベルの解析学ができないと全くもってわからないとは思いますが, 面白い分野ではあるため興味がある人はぜひ眺めてみてください.
よいものにはきちんとフィードバックしよう¶
何度でも言うけど私はめちゃくちゃ絵の上手い神絵師がマイナーCP永遠に描き続けていたのに、ある日突然「誰も話しかけてくれないし感想もくれないから」というあまりにも哀しい理由で筆を折ってしまった件を見たことがあるんや。 そしてその神絵師が筆を折る宣言をしたら、突然マシマロやリプに感想が届きまくったんや。「ずっと見てました」「また描いてください」「◯◯さんの作品大好きです」と。 神絵師は静かに言ったんだ、「もっと早く言ってくれればよかったのに…」と。 その神絵師はそのCPから去った。するとどうだろう、その神絵師しか描いてなかったはずのCPの作品がチラホラあがりはじめた。 みんな「◯◯さん(神絵師)が描いてるから私は書かなくていいか!」状態だったのだ。こんな哀しいことがあるかよ。
これ読んで「そっか……じゃぁ…」つって好きな作家に感想を送る人が1人でも増えればいいと思いました。 伝えなきゃ伝わらないので……
『非平衡統計力学入門:現代的な視点から』田崎晴明 Hal Tasaki "A Modern Introduction to Nonequilibrium Statistical Mechanics"¶
ちょっと読みたい.
量子リソース理論と量子熱力学¶
量子リソース理論(QRT)と量子熱力学(QT)について、いまだにかなりモヤモヤとした感じだが私の現状での暫定認識をまとめる。間違いがあったら教えてください。 まず、QRT, QTどちらにもいくつかの源流があるが、どちらも Lieb&Yngvason(1999) の影響を強く受けている。 https://arxiv.org/abs/cond-mat/9708200 QRT,QTは、Lieb&Yngvason(1999)による熱力学の公理的定式化をなるべく忠実に量子論にも適用しようとするのだが、全く同じとはいかず、いろいろ変更が必要となる。また「量子論への適用」と一言で言っても、細かく言えばその適用分野はいろいろである。 QRT,QTは、Lieb&Yngvason(1999)による熱力学の公理的定式化をなるべく忠実に量子論にも適用しようとするのだが、全く同じとはいかず、いろいろ変更が必要となる。また「量子論への適用」と一言で言っても、細かく言えばその適用分野はいろいろである。(続く) https://arxiv.org/abs/1806.06107 では、量子熱力学がQRTの一分野であるように書かれているが、実際はQRT全体がLieb&Yngvason(1999)[LY99]の熱力学の影響を受けていて、その意味ではQRT全体を量子熱力学と呼べなくもない。しかし[LY99]への忠実度は様々で、特に忠実度の高い研究を慣例的に量子熱力学と呼ぶ(?) QRTの様々な応用のうち、entanglement theoryが最も典型的なものである。ただし、そこでは[LY99]の熱力学原理になるべく忠実な公理化を果たそうとしてきたのだが、なかなか綺麗にはいかず、完成からは程遠い。それどころか、(続く) ごく最近の以下の論文では、entanglement theory(ET)については熱力学の第2法則が成立しないということが主張されている。さらに、ETは熱力学のみならずQRT全体と適合しないと言いたそうである。これが正しいとすれば、ETはQRTの「典型例」から外れるかもしれない。 https://arxiv.org/abs/2111.02438
熱力学はとにかく楽しいので.
well-definednessをill-definednessから理解する具体例¶
well-defined の説明, そうである例を話すよりそうでない例を話す方が初見はわかってもらえそう
有理数全体からの関数fを分母と分子の和で定義してみましょう ワオ!!!!! f(1/2)=3 なのに f(2/4)=6だ!!!!!!!!!! みたいな感じで
確かによい例だと思い, 現代数学探険隊にも収録しました.
計算トポロジー入門¶
計算トポロジー入門,近刊 https://kyoritsu-pub.co.jp/book/b10032973.html この本の和訳らしい https://maths.ed.ac.uk/~v1ranick/papers/edelcomp.pdf ちなみに微分幾何版でこんな本もあります https://link.springer.com/book/10.1007/978-90-481-3564-6
これの微分幾何版がほしい.
確率変数の定式化と頻度論・ベイズ統計¶
物理なのか何なのかはよくわからないが、確率変数の「ランダムに値を取る」的な話と「可測空間上の可測関数」の間の話、後者の数学的定式化がどこまで応用上の要請を満たせる定式化なのかは時々気になる。
ベイズだと後者の解釈を使います.頻度論はp(ω)を「ランダムサンプルしたときにωが出る頻度」と考えるのでXも「ランダムサンプルしたときに出る値」と考えますが,ベイズはp(ω)を「ωの確からしさ」とだけ考える(サンプルはしない)ので,Xも「ωに対する値を記述したもの」とだけ考えます.
これは考えたことがなかったため, とりあえずX(Twitter)で放言しておくものだと思った次第.
線型代数の重要性¶
森田茂之先生も、
線型代数というと大学 1 年で終わっていると思っている人も若い人にいるとすれば,これはとんでもない事で,数学の中でも線型代数は永遠に大事で…
と言われているように、数学の人は微積や線型などの「基本的な学部の授業」こそが本質的に重要だと思ってる訳ですが、 この価値観が必ずしも教員にも学生にも共有されていないことは、数学側の人間としては残念だと感じています。 (計算に使えればいいという立場があることも理解した上で)
引用元 『特性類と不変量』森田茂之 https://www.math.chuo-u.ac.jp/lecture_notes_almostwhole.pdf
一般理工系にはまだ量子力学(など)をモチベーションに線型代数に触れた方がよいと思ったため, 勉強会つき短期集中講座を展開しています. 近々第三回をやる予定なのでご興味がある方はぜひ参加してください.
メモ¶
ジョーンズ追悼の数理物理関連の業績紹介¶
06/03: アメリカ数学会から頼まれて書いた Jones 追悼の数理物理関連の業績紹介記事がオンライン出版されました. https://ams.org/journals/bull/0000-000-00/S0273-0979-2023-01799-0/S0273-0979-2023-01799-0.pdf
霜田光一「水はどうして透明なの?」¶
霜田光一先生の「水はどうして透明なの?」という文章を読むと、レジェンド級の研究者は問題設定の出発点をここまで持って来るのか、と驚かれされる。
ちなみに 「水分子は可視光を吸収する遷移がないから」 は答えではあるけど、そこで「問い」が止まらないのが面白い。 以下、「」内は上記の文章から引用
「水分子の振動回転状態の遷移は赤外線を吸収し、電子遷移は紫外線を吸収するが、可視光線を吸収する遷移はないので、可視光線に対して水は透明なのである。これは正しいが、これで、水がどうして透明なのかわかっただろうか。」
「裏を返せば、赤外線や紫外線で見ると水は透明ではないのだ。電磁波の広いスペクトルで見ると、すべての物質はある波長では電磁波を吸収し、ほかの波長では透明である。水はどうして可視光線(波長380nmと760nmの間)に対して透明なのだろうか?」
「コップの水は確かに透明だが、川や海の水は青く見える。10mの深さの水では、波長が440から520nmまでの光は80%以上透過するが、400nm以下の光も、590nm以上の光も、40%以下しか透過しない。だから汚れのない水のなかは青い世界であることは、水中カメラの映像でよくわかる。」
「ヒトの眼の水晶体も硝子体も主成分は水であるから、ヒトは水を透過しない波長の光を見ることはできないはずである。だから水を透過する光が可視光線なのである。水が透明なのは偶然ではなくて、水が透明になる波長の光に感ずるようにヒトの眼の網膜ができたのではないだろうか?」
上記の引用元はこちらの本↓の霜田先生ご執筆のところなのですが、 「物理って面白いんですか?」 ってお題に対するエッセイに、(あれほどの先生が)自分の研究歴の話を書かず、エッセイ全体の残り2/3くらい生物の眼の進化に考え巡らせてるの、すごいと思うんですよ。
先生、物理っておもしろいんですか? パリティの1ページコラム連載記事をまとめて単行本化。 69本を収載。 物理系を中心に多彩な研究者の物理や科学に対する考え方、世界観、研究姿勢、生い立ちなどがわかり、 大変おもしろく、また、教育的効果もある内容。物理関係者のみならず広くいろいろな人に読んでもらえるエッセイ集。 ○短編の読み切りで読みやすい。 ○多彩な内容で、興味をもって読み進められる。 ○高校生、大学新入生に、将来を考えるため... 前にも呟いたのですが、レジェンド級のモノ作る量エレ実験系物理研究者は、問題にあたる時、その測定デバイスのことまで深く考えてるんだな、と。 今はそういう時代じゃないとは言え、デバイスをブラックボックスとして使ってる自分をちょっと省みたくなります。
霜田先生は「レーザー研究」で、光電効果の説明に本当に「光子」(電磁場の量子化)が必要かなど考える連載も書いてて、それっぽい説明でそのまま納得してはいけないんだなと考えさせられます。 https://twitter.com/drboar/status/1489561158994386946 直接の面識はほぼない、玄孫弟子くらいの量エレ研究者の身ですが (というか、今の日本の量エレ実験系研究者って、師匠筋を辿って行くとかなりの確率で霜田先生まで行きつくんじゃないかという気もしますが) 霜田先生のご冥福をお祈りします。
「太陽系最強の相転移の教科書」¶
「太陽系最強の相転移の教科書」を含む、西森先生の教科書が3冊オープンアクセスになったそうです。今すぐゲットして、あなたも太陽系最強に! open access books
製造業での機械学習の状況(?)¶
いま製造業で起こっていること⤵︎⤵︎
『とりあえずよく分からないけどデータをscikit learnに突っ込んだら予測精度が出ました!AIで出来ました!説明変数〇〇が重要です!』
→実際にはデータリークしてる、解釈間違ってる。
リアルにこんな感じです。もうカオスすぎて本当に収拾がつきません。 パッケージが簡便化して誰でもデータサイエンスが出来るようになってきてますが、同時にその弊害も生まれていると思っています。 個人的にこの状況は危険も大いに孕んでいると思います。 データサイエンスの民主化が進むと共に、正しく理解されないままデータサイエンスが使われる事案も増えてます。 これがまずいのは、本人も周りも間違いに気づかないって所ですね...。 発表してたらそれっぽく聞こえるけど、プロのデータサイエンティストでもコードの中身を読まないと合ってるかどうかまでは分からない。 でも仕事が増えるのでそこまですることは無いですよね。こうやって暴走していくわけです...
RT>この辺りは 数理をわからない人が簡単にAIツールが使えるようになった弊害だぬ。 昔は数値計算ライブラリができた時にも起こったことだよぬ。何も考えず、逆行列計算とか。 ちょっと前は、数理がわからない人がOpenFOAM使う例かな
幾何学的計算量理論¶
というわけで,数学は計算しちゃいけないが,どうやって計算するかは数学の問題である.(^^;; GCT=幾何学的計算量理論 http://ramakrishnadas.cs.uchicago.edu/gctcacm.pdf
教育系YouTuberのまなざし¶
星の物理と湯川英樹¶
星の進化って物理なの?って学生さん、日本で星の物理やろうって言い始めたのは湯川秀樹だよ https://www.jps.or.jp/books/50thkinen/50th_03/002.html
「世界史」の世界史¶
LLMの技術サマリー¶
1+1は定義か定理か¶
リーブ先生はものすごくいろいろな分野の「神」である¶
『リーブ先生はものすごくいろいろな分野での「神」である』田崎晴明¶
リーブ先生のガウス賞受賞に際して『数学セミナー』に寄稿した半年前の記事を許可を得て公開します。 https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/pdf/Lieb_Gauss_pub.pdf
人月の話の例¶
経験上、人月の話も並列計算の話もタスク分割と並列化の話なので100マス計算を例に出すと説明しやすくて、
「100マス計算の紙があって、1マス1秒、計100秒で計算できます。では100人で取り組めば1秒で計算できそうですか?紙は1枚だけです」
と言うと多くの人にわかってもらえる
統計学の気分¶
統計学がどういう学問分野なのかを把握すると少し感覚が掴めるかもしれません. ちゃんとした文献は先述の https://plato.stanford.edu/entries/statistics/ ですが, お気持ち表明としては https://wmbriggs.com/post/3169/ の「Statistics rightly belongs to epistemology, the philosophy of how we know what we know」が好きです.
「数理科学を使えば統計の”主義”を争う必要ない」という主張について検討する¶
英語が上達する方法¶
英語が上達する方法:
「ある語の "定義・説明" を尋ねる Q&Aの問いかけを、 頭の中で繰り返す。」
という勉強法がオススメです!
What is ○○? It is 〜20語程度の英語で説明〜.
↑ これを、頭の中で日常的に いつも繰り返すんです。
例えば、 What is language? →答えられますか?
古代ギリシャと化学¶
「文系だし、化学は頑張らなくていいか……」と流してた高校時代の私を「馬鹿ッ!古代ギリシャ語の錬金術パピルスを読む未来の自分のことを考えろ〜!日本語で化学の教科書しっかり読んどけ!いったい誰がその学問の源流を作ったと思ってるんだお前は〜!!」と往復ビンタで諭したい 高校の全教科が必要だったな!古代ギリシャの全てに付き合うためには……。 古代ギリシャのそういうところが好きなんだけどさ(惚気)。 現代化学、元素や物質の名称が統一されていてマジで便利だ……。 古代ギリシャだと各派閥によってどの物質をどの神の名前で呼ぶかが違うので、「この化学反応が起きるってことはここでの『ディオニュソスの石』は石灰だな」という逆算をしなければいけないが、高校化学を疎かにしていたためそれが困難
はっ。これもバズっているのか……。 古代ギリシャの錬金術、興味ある方はこれも超よろしく。 NHKオンライン講座「古代ギリシャ・ローマの錬金術にせまる」、ただいまアーカイブの再販期間中なのです。 https://nhk-cul.co.jp/sp/programs/pr
マツダがmazdaの理由¶
- URL
- マツダの英語表記がZの理由、これは知らなかった… 「90年前のエピソード」に思わず感動
「物理学は数学の一部です」¶
物理学は数学の一部です、って言われたらどうするよ?rt 「18世紀の力学は、数学の一分野だった」 画像
ベルヌーイ、オイラー、ダランベールの時代ですね この時代のある側面を強調するために出された言葉なので、ここだけ抜き出すと誤解を生じてしまいそうですが。 ただ、時折、かなり時代錯誤的に物理学や数学という区分をこの時代にも当てはめて、物理学が数学を作った!とか鼻息荒く言う人がいるので、解毒剤にはよかろうかと。
cambridge.org Mechanics and Experimental Physics (Chapter 15) - The Cambridge History of Science The Cambridge History of Science - March 2003
なお元つい 引用 部品(森七菜) @tjmlab · 7月8日 「数学は物理学の一部です...20世紀半ば、物理学と数学を分離することが試みられました。その結果は壊滅的なものであることが判明しました。数学者は何世代にもわたって科学の半分も知らずに育ちました。」
→争いが起きそう
例えば、ベルヌーイはダランベールの風についての論文に、「この論文をよんでも、風についてわかることは何もない」。また、弦の振動の方程式の解についての論争は、もっぱら数学的な側面に集中して、物理的な側面はほぼ無視された。 解かれた問題の多数派が、実験との関わりを持たなかった。。。などといったことが紹介されています。
JPNIC: 生きたNW設計や今のトレンド等参考書ではあまり学べない沢山の公演資料が¶
ネットワークエンジニアにとって有益なのに全然知られてないんだけど、JPNICから生きたNW設計や今のトレンド等参考書ではあまり学べない沢山の公演資料が落とせます。 SP分野が多いけどビギナー向け資料もあるので自身が気になる資料がないか探してみると良いかも。 https://nic.ad.jp/ja/materials/
押井守による宮崎駿¶
良すぎる。 「押井 それに宮さんはすごく細かい。一度、山賀(博之)と庵野(秀明)、前田(真宏)の4人で宮さんの別荘に行ったことがあるんだけど、宮さんはがみがみ怒ってばかり。この3人は本当に何もしないから、仕方なくわたしがご飯の支度をやっていた。…」 https://bunshun.jp/articles/-/64140?page=2
ペアノの公理が何を指すか?¶
数学教育の話題で「ペアノの公理」が出てきたら、「あなたのおっしゃるのは一階ペアノ算術、二階ペアノ算術、ペアノ構造のどれですか?」と尋ねてください。答えが返ってこなかったり的外れな答えが返ってきたりしたら、そこで話を打ち切るのが吉です。 それぞれが何かについて. https://mathtod.online/@kamo_hiroyasu/110647080208958487
大雑把にいえば、こういうことです。
- 一階ペアノ算術:自然数だけがある世界
- 二階ペアノ算術:自然数と自然数の集合(自然数を要素とする集合)だけがある世界
- ペアノ構造:あらゆる集合が存在する世界における自然数全体の集合
よく教科書にあるこれは間違いなんですか?
これはペアノ構造です。 引用先の著者に「あなたのおっしゃる『ペアノの公理』は一階ペアノ算術ですか、二階ペアノ算術ですか、ペアノ構造ですか?」と尋ねたら、「ペアノ構造です」が返ってくるでしょう。それで支障ありません。
ああ、"ペアノの公理"が「ペアノが提唱した公理」という解釈が可能なので「ペアノの公理」という言葉は相応しくないという意見ですか?
「ペアノの公理」がダメだとは言っていません。複数の意味があるので、そのどれであるかが明確でないと蒟蒻問答になります。相手が複数の意味をちゃんと区別できていると確認できれば支障なく会話できますし、そうでないことが確認されたら会話を打ち切るのが推奨というだけのです。
『微分形式と電磁気学』の補足解説¶
「割引は引き算ではない」¶
実は昔、とある大学(勤務校の兵庫教育大学ではないです。名前は伏せます)で『数学』の授業の非常勤を数年したことがあるのですが、内容はほぼ算数でした。 その初回でプレテストとして(状況把握のために)いくつか問題を出して、そのうちの一つが「1000円の2割引はいくらですか」という問題でした。 そのプレテストの解答の中には、 「1000−2=998円」 「1000÷2=500円」 他にも 「2割=0.2である。よって 1000÷0.2=5000円」 という解答もあった。楽しい。 プレテストを返却するときに言ったんです。 「割引き、っていうから、割り算か引き算だと思ってるみたいだけど、掛け算だよ」(どよめき) そのあと色々ありましたが、割合というものを理解せずに大人になると、こういう風になるんだなぁ、というのを目の当たりにした感じでした。もちろん、速さなんて理解してなくて「時速4kmで2時間進と、何km進みますか」という問いに対しても、多くの学生が「はじきを忘れたので、解けません」でした。 面白いことに、そんな彼らも、数の計算ができないわけではないのです。例えば、280×3.2を計算してといえば、計算できます。(もちろんケアレスミスをすることもありますが)しかし、 数直線を書いて、100、200、300、という目盛をつけたあと、280はどこ?(これは分かる)を確認したあと、280×3.2はどのあたり?と聞くと、「そんな難しい計算はやってみないと分かりません」というんですね。なるほど、と思いました。 大事なことは計算の練習ではなくて、割合の表現が何を意味しているかの理解なんですね。そんな彼らに、割合とは何か、速さとは何か、彼らがつまづいてしまったところからきちんと授業しましたよ。 授業の最後の感想文には、「これまで買い物の時、割引ってわからなくて、いつも心配でした。でも先生の授業で、安心して買い物できるようになりました。ありがとうございました」と。ちゃんと、教えれば分かるんですよね。 ちょいバズしそうなので、置いておきます。 本学では、算数・数学教育について、本気で学びたい方をお待ちしています。
ジェネラルトポロジーの本¶
10年位前、general topologyをちゃんと勉強するなら何を読めばよい?と専門家に聞いたところ、「とりあえずEngelkingのGeneral topologyとArkhangelskiiのTopological function spacesをよめ」と言われてた。 前者は有名なgeneral topologyの本。後者は連続関数全体に色々な位相をいれた空間を扱っている本。最近の一般位相空間論やるんだとそこらへんの空間は結構な頻度で出てきます ということで、みんなもこいつら読んでgeneral topology勉強しよう なお、私はEngelkingは半分くらい(演習問題は除く)、Arkhangelskiiは必要になったとこだけしか読んでません…
Paulによる佐藤幹夫情報¶
共同通信配信の記事で、北海道新聞さんはカラー写真付きで掲載してくださった。いつ頃の写真か、よく撮れております: https://hokkaido-np.co.jp/article/863790 佐藤幹夫さん(数学者) 1月9日死去 94歳 金字塔の理論、次々と発表 2023年6月19日 10:37
パレスチナの数学教育¶
目次あり。「批判的思考力の育成という同じ目標を掲げつつも学習内容や方法に様々な類似点と相違点があるパレスチナと日本の数学教育。…」 ⇒田中義隆 『こんなに違う!パレスチナの数学教育 日本の中学校教科書と比較する』 https://www.akashi.co.jp/book/b630599.html 「…分数、割合、関数、図形、統計・確率などについて両国の中学校段階の教科書の記述内容を比較し、その背景にある理由を分析・考察する。」 パレスチナ自治政府の歴史から始まる数学(教育)本というのは中々すごい。ほかの目次を見ると特にパレスチナ側の教育内容に結構ツッコミが入っているようだ(基本的な概念が書いていないとか、定義が不明瞭とか)。日本側にも入っているけど。 と目次を眺めていったら……
人工知能研究の新潮流2 ~基盤モデル・生成AIのインパクト~ エグゼクティブサマリー¶
佐藤幹夫関係資料: 講義ノートおよび講義録音, 1984-1986¶
- URL
- 京都大学研究資源アーカイブが「佐藤幹夫関係資料: 講義ノートおよび講義録音, 1984-1986」を公開しました
- https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2023-08-28
曲面と結び目のトポロジー¶
- URL
- これいいよ。 この本読むと とにかく 閉曲面の基本群が 生成元 と 関係式で書き下せる。 まあ それがどんな群になるかは別問題だけどね。(^_^;;
生物の本¶
- URL
- 生物やっている友人に聞いてみようくらいのノリで呟いたら、いろんな有識者にアドバイスいただいたので、お礼に変えて一覧にしておきます(多すぎて、抜けがあったらごめんなさい)
- URL
- 【緩募】(すっごいざっくりした質問だけど)遺伝子とか生物について独学するのによい教科書ある?高校2〜3年か、大学1〜2回生くらいのレベルで楽しく学べる教科書、募集。(基本的に)趣味です。
- [1] 数でとらえる細胞生物学 http://amazon.co.jp/dp/4758121060
- [2] 細胞の物理生物学http://amazon.co.jp/dp/4320057163
- [3] カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 http://amazon.co.jp/dp/4065137438
- [4] キャンベル生物学 原書11版 http://amazon.co.jp/dp/4621302760
- [5] Essential細胞生物学 原書第5版 http://amazon.co.jp/dp/4524226826
- [6] Physics of Life https://nap.nationalacademies.org/resource/26403/interactive/
- [7] 基礎から学ぶ生物学・細胞生物学 第4版 http://amazon.co.jp/dp/4758121087
- [8] 現代生命科学 第3版 http://amazon.co.jp/dp/4758121036
- [9] 小説みたいに楽しく読める生命科学講義 http://amazon.co.jp/dp/4758121141
- [10] 休み時間の分子生物学 http://amazon.co.jp/dp/406520173X
- [11] カラー図解 進化の教科書 第1巻 進化の歴史 http://amazon.co.jp/dp/4062579901
- [12] 生命のメカニズムhttp://amazon.co.jp/dp/4916166620
- [13] DVD&図解 見てわかるDNAのしくみ http://amazon.co.jp/dp/4062575825
- [14] 遺伝子―親密なる人類史http://amazon.co.jp/dp/4150505713
- [15] タンパク質の一生: 生命活動の舞台裏 http://amazon.co.jp/dp/400431139X
- [16] 遺伝子の川 http://amazon.co.jp/dp/479422043X
- [17] 自我の起源 http://amazon.co.jp/dp/400600205X
- [18] 新しい高校生物の教科書 http://amazon.co.jp/dp/4062575078
- [19] マンガでわかる分子生物学 http://amazon.co.jp/dp/4274067025
- [20] 生物と無生物のあいだhttp://amazon.co.jp/dp/4061498916
- [21] 精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか http://amazon.co.jp/dp/4163444300
物理ができないとはどういうことなのか(はじめの講義)¶
- URL
- 物理ができないとはどういうことなのか(はじめての講義) 関野 恭弘 https://jstage.jst.go.jp/article/peu/21/1/21_KJ00009874805/_article/-char/ja/ 拓殖大学工学部でこれは……怖い
日中韓共通語彙¶
- URL
- URL
- 「日中韓共通語彙」 これはすごい資料だ。震える。3言語どの学習者にも有用すぎる。 日中韓で使用される漢字語のうち厳選された658語について、それぞれの意味と使われ方を例文付きで360ページに渡って掲載。ビジュアル的にも実に見やすい。すごい! < https://tcvd-asia.com/wp-content/uploads/2020/05/(JP)TCVD.pdf>
英語史学習・教育とhellog¶
- URL
- 「#4019. ぜひ英語史学習・教育のために hellog の活用を!」 https://bit.ly/2VIy9s9 @chariderryu
- http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2020-04-28-1.html
逆像写像がよい性質を持つ理由¶
狂犬病予防法違反を見かけたときの対処¶
うちの子は狂犬病ワクチン打ってません☺️と云う飼い主を見つけた時はどうするかというとですね
その暴露ツイートのURLをインターネットホットラインセンターの通報フォームに入れて「狂犬病予防法違反」と一言書き添えて通報ボタンをぽちっとします
子供のための心臓マッサージ¶
【注意喚起】 昨日の仕事の帰り道、パパさんと5-6歳くらいの子がお話しながら歩いてて、ベビーカー(B型)に1歳らへんくらいの👶🏻が乗ってるっぽかったの。 ぽかったって言うのは、日除けのために幌に生地重めのブランケットみたいのをぶら下げてて、お顔が見えなかったのね。 ちょっと気になって見てたらベビーカーの👶🏻、手がダランってしてるのが見えてよく見たら真っ青... え!?と思って「すみません!赤ちゃん大丈夫ですか!?」って声掛けたらパパさんすぐブランケット取ったんだけど、口の奥深くにまで突っ込んでたみたいでチアノーゼ。 パパさん大パニックで話ができない状態だったので私が脈と呼吸確認したら微弱。どんどん真っ青になっていって、私もプチパニック。 けど、お姉ちゃんがすごく冷静でいてくれて、「救急車呼べるかな?」て聞いたら「ママと練習したことあるからできるよ!」と言ってくれ、電話掛けてくれた(素晴らしい) 幌にぶら下がってたブランケット地面に敷いて👶🏻おろして、「心臓マッサージできますか?」とパパさんに確認するも、パパさん震えて「わからない」となっていたので許可を得て👶🏻に心マをして3分くらい経ったら👶🏻がけほって咳き込んだ後泣き始めてくれて... 回復体位にして救急車を待って、救急隊員に状況を説明して、パパさんはパニックだったのでお姉ちゃんに私の連絡先を教えて私はダッシュでこえびのお迎えに行きました。延長保育になる1分前。こえび待たせてごめんな🥲 その夜ママさんから状況の確認とお礼の電話が来て、👶🏻も落ち着いて元気にお喋りしてると報告があって一安心...本当に良かった。 おそらくぶら下がってたブランケットで遊んでいたら飲み込むように口に入れてしまったことが原因だとのこと🥲
一晩考えて注意すること沢山あるなと思ったので以下まとめ
①幌を伸ばすなら必ず後付け幌を使う。布で代用しない ②ベビーカーに乗っている時は親が何かしていても必ず数分に1回は様子を伺う(お姉ちゃんとお話していて気づかなかったよう) ③いざという時の心マ等は必ず練習、イメトレしておく! 我が家は週1で夫と復習をしていたからすぐ動けたんだと思う
あとは私は第三者だから冷静になれたというところもあるし、周りに助けを求めるのはもアリだよなと思った。
我が家はコレをLINEのノートに貼って週1復習、人形で練習しています! https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=38705
心マはアンパンマンのマーチを気持ちゆっくりめに頭で歌いながらやると良いです!
【医師監修】早く始めるほど命が助かる!赤ちゃん・子どもを救う心肺蘇生法を覚えておきたい理由|たまひよ 心肺蘇生法 意識がない、呼吸がないなどのときは、迷わず、心肺蘇生を始めましょう。心肺蘇生は早く始めるほど命が助かる可能性が高くなります。呼吸が3分以上止まっていると、脳に酸素が行かず後遺症が残る危険があります。
本当どんなことでも事故に繋がるから...母はしないことでも父が良かれと思ってやってくれたことが実は危険なことだったりね...(今回の件もそうだったみたい) みんな...毎日子の命守ってて偉いよ... 頑張ろうね...! 散歩行ってくるわ...
アンパンマンのマーチを気持ち"ゆっくりめ"っていうのは我流です! 私はそういう時気持ちがはやって歌も爆速で頭で流れてしまうのでゆっくりめを意識して丁度良くなるから、落ち着けてる人は普通のテンポで良いと思う!
補足②突っ込んでくる人増えてきたからいうけど昨日の夜の電話の際にママさんに注意喚起をSNSであげることは許可得てるし、なんなら今度ご飯に行く約束までしてます😌 私はN○Kに無許可で記事にされたことあってムカついてるので絶対に無許可でこういうことは載せません!
大量の宿題¶
取材に協力した記事が公開されました。様々な形の宿題に苦しめられ、結果として頑張っているのに何一つ身につかない。その悲惨な現実を知って考えて頂きたいです。 「学校の宿題は最低限のもので必ずやるべきものだ」という、一昔前の親世代のイメージからすると想像もつかないくらい多量の宿題に、今の小中高生は苦しめられています。そして、超人的努力を要するのに見当違いなものも多く、いくら頑張っても受験で通用する力は何一つつかないまま時間を奪われます。 そうした宿題からどのように若い世代の学習時間を守っていくのか。「お子さんに宿題をやりなさい!」と言う前にどんな宿題がどれだけ出ているのかを必ず確認したほうがいいです。フィードバックのかけらもないやりっぱなしの多量な宿題ばかりなら、抗議していくことも大切です。 中高生は、「学校の先生が『やれ』と言ったこと」を是非疑いましょう。分厚い、誰もが知っている問題集を薦めてくる先生は、恐らくそれ以外の教材を研究していない可能性が高いです。理解していないことを演習しても仕方がない。ダメな宿題に付き合って、自分の人生を棒に振らないようお気をつけて。
Emacs, rxマクロ¶
Homotopy Type Theory: Univalent Foundations of Mathematics¶
『グラフェンの物理学』¶
『グラフェンの物理学』は,グラフェンの物理学を理論的側面から解説する教科書!グラフェンだけでなく,Dirac 粒子,Berry 位相,エッジ状態,バンドトポロジーといった新しい内容の基本的な部分も習得できるように書かれています!
UX¶
しっかり学ぶ数理最適化¶
5/23新刊『初等相対性理論 新装版』高橋 康¶
5/23新刊『初等相対性理論 新装版』高橋 康 3300円(講談社) 高校レベルの三角法と微分積分だけから始まる名講義。泰斗が語る老練でエキサイティングな講義は、読者を相対性理論の本質的な理解へ導いてくれる。
チラシ厳禁, 着払い返送します¶
AQFTのレビュー, 2023¶
there seems to be a series of review papers on mathematical QFT. here is one by Buchholz and Fredenhagen on AQFT Detlev Buchholz, Klaus Fredenhagen, Algebraic quantum field theory: objectives, methods, and results
[2305.11709] Detlev Buchholz, Klaus Fredenhagen: Arrow of time and quantum physics http://arxiv.org/abs/2305.11709
初等的な不等式のPDF¶
柳田『初等的な不等式Ⅰ』 http://izumi-math.jp/I_Yanagita/emath_ver1.1ps.pdf 柳田『初等的な不等式Ⅱ』 http://izumi-math.jp/I_Yanagita/emath_ver2ps.pdf
ウクライナのゼレンシキー大統領は21日、訪日日程の終わりに記者会見を開いた際に、日本国民へ向けた演説¶
親愛なる日本国民よ! 平和を大切にする世界の全ての人よ!
私は、戦争によって歴史の石に影のみを残すことになってしまったかもしれない国からここへ来た(編集注:ロシアの全面侵略戦争でウクライナが消し去られてしまう可能性を指している)。しかし、私たちの英雄的な人々は、私たちが戦争をこそそのような影にしてしまうべく、歴史を戻している。
私は、世界に戦争の居場所はないと信じている。人類は、とても長い道を通ってきたのであり、血塗られた対立で多くの命を失ってきた。死が空から降ってきて、死が海からやってきた。放射線が死をもたらした。人々は、互いに死を持ち寄ってきた。ある者は、人類の歴史は戦争抜きには想像できないと述べる。私たちは、人類の歴史は、戦争抜きにしなければならないと述べる。
ウクライナは殲滅戦の中心地にいる。私たちの大地には、私たちウクライナ人を単に服従させたいだけではない侵略者がやってきた。ロシアは世界に嘘をついている。あたかも「ウクライナ人など存在しない」と。
もし私たちがこれほどまでに勇敢でなければ、ロシアの私たちに対するジェノサイドは成功してしまっていたかもしれない。ウクライナは影だけになってしまっていたかもしれない。全ての人々が、影だけに!
しかし、ウクライナ人は、果てしなく勇敢である。果てしなく自由を愛している。そして、私たちは生きていく! そして、私たちは自由に生きていくのだ。
敵は核ではない兵器を使っているが、ロシアの爆弾と砲弾で焼き尽くされた町々の廃墟は、私が先ほどここで見たものと似ている。私にとっては、その平和記念館を訪れられたことは光栄である。そのような機会を与えてくれたことにつきとても感謝している。あなた方の民が自分たちの歴史で目にしてきたことは、何千という家族のありふれた生活の代わりに、灰だけが残り、町の代わりに焼け落ちた廃屋が残り、建物の代わりに瓦礫だけが残る、というものだ。
今、広島は復興している。そして、私たちは、現在、ロシアの攻撃の後で廃墟となっている全ての私たちの町、一軒たりと無傷のものの残っていない私たちの一つ一つの村の復興を夢見ている。
私たちは、自分たちの領土を取り戻すことを夢見ている。ロシアに占領されていた北部の領土を取り返したように、私たちは、東部と南部のウクライナ領を取り返さなければならない。私たちは、現在ロシアに拘束されている人々を取り戻すことを夢見ている。それは、捕虜や、民間人や、追放された大人や拉致された子供だ。私たちは、勝利を夢見ている! 私たちは、勝利の後の平和を夢見ている。
しかし、そのためには、その侵略者が負けなければいけないだけではなく、現存する戦争の野心が敗北せねばならないのだ。そして、それは世界中の全ての人にとって重要なことである。私は、世界にウクライナの団結の呼びかけを聞いてもらうために、ここ、広島にいる。
ロシアは、文明的なものの全てを踏みにじった。ロシアはもう、1年以上私たちの最大の、欧州にて最大の!原子力発電所を占拠し続けている。ロシアは、戦車から原子力発電所を砲撃した世界のテロ国家である。原子力発電所を武器や弾薬の保管用演習場にした者は他に誰もいない。ロシアは、私たちの町を多連装ロケットシステムで砲撃するために、原子力発電所によって身を隠しているのだ。もし世界の誰かが、ロシアの他の戦争犯罪をまだ無視することができるのであれば、そのような人道に対する罪は、間違いなく全ての人を行動に駆り立てしまうことだろう。
これを話しているのは、1986年にチョルノービリの放射線の惨劇を経験せざるを得なくなった、私たち、ウクライナなのだ。私たちの大地の一部は、いまだに立入禁止区域、汚染区域である。想像して欲しい。ロシア軍はその区域を通って進軍してきたのだ。彼らは、ソ連時代に放射線に汚染された物質を埋めた森に塹壕を掘っていたのだ。
そのような水準の悪と愚行のロシアの行動が悪い結果をもたらすことなく放置されるのだとすれば、世界は間違いなく破滅するだろう。国の要職に就く他の犯罪者たちが同じような戦争を望んでいる中では、それは時間の問題に過ぎない。
もしロシアに占領した領土をほんの一片でも与えてしまったら、国際法はもう決して機能することはないだろう。
ウクライナは「平和の公式」を提案した。公正で現実的なものだ。その最初の項目は、放射線・核の安全だ。ロシアは、放射線・核で世界を脅迫することを止めて、現在占拠している原子力発電所をウクライナと国際原子力機関(IAEA)の完全な管理下に戻さねばならない。
私たちの平和の公式には、全部で10の項目があり、その1つ1つの意味が国連(総会)決議によって確認されている。そこには、私たちの国に対するロシアの戦争を終わらせるために機能するあらゆるものが含まれている。
しかし、ウクライナの「平和の公式」の力は、ロシアの侵略の野心を止めて、ロシアが侵害した安全を回復した後でなお、世界にもう1つの追加的な結果をもたらすものでもある。それは、他の潜在的侵略者を麻痺させる、というものだ。戦争を望む者一人一人が、世界が平和を望む時にはどれだけ団結し、どれだけ覚悟を示すのかを目にしたら、戦争を始めることには意味がなくなるのだ。
これまで世界には、侵略者を止められるような公式がなかった。ウクライナはそれを提案している。ウクライナは世界に、戦争からの救いを提案している。そのためには、団結して、ロシアを最後の侵略者にしなければならない。そのロシアのウクライナへの侵攻の敗北後に、平和のみが栄えるようにだ。
私たち、人類は、異なる文化、異なる見方、異なる国旗を有している。しかし、私たちは、自分のため、自分の子供、孫のために等しく安全を望んでいる。そして、戦争が訪れてしまったら、私たちの命は、等しく灰じんと化してしまうのだ。
戦争からは影のみが歴史の石に残るよう、それが見られるのが記念館だけとなるようにするためには、世界の誰もが、あらゆる可能なことをしなければならない。
世界の誰もが、他国の人々を尊重しなければならない。
世界の誰もが、国境を認めなければならない。
世界の誰もが、正義を守らなければならない。
世界の誰もが、命を大切にしなければならない。
世界の誰もが、自らの義務として平和を受け止めなければならない。
広島よ、この数日間、通りで見られた青と黄の旗について、私はあなたに感謝している。ウクライナの旗があるというのは、自由への信念、命への信念、私たちを信じる心があるということを証明している。ありがとう!
日本よ、ありがとう。岸田文雄首相よ、全ての日本の人たちよ、包括的な支援をどうもありがとう!
戦争の全ての犠牲者を永遠に追悼する。
平和が訪れますように!
ウクライナに栄光あれ!
「女性君主なら平和」というイメージは真実なのか¶
数年前に「女性君主の方が男性より約39%戦争を起こしやすい傾向がある。」って論文が出て話題になったんですけどねぇ。 (此処のnoteから論文「Queens」のリンクに飛べますよ。当然全文英語ですけど。) 「女性君主なら平和」というイメージは真実なのか
東大理学部物理2023の学生展示, 数理物理班¶
- URL
- 微分幾何ノートの出来が良いらしい.
魔法少女によるTogetter: 法と論理と言語¶
徳川慶喜の玄孫が「家系の断絶」を決意した理由とは…120年以上続く名家の「家じまい」事情 徳川慶喜家第5代当主・山岸美喜さんインタビュー¶
法律用語としての「差別」¶
「不当な差別」という用語でどうこう言ってるの、これくらいには目を通してくれという感じだが。 http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000967115.pdf
>1.法律や条例における「不当な差別」及び「差別」の用例 ○ 法律においては、「不当な(に)差別」、「差別」のいずれも使用されているが、 「不当な(に)差別」のほうが多い傾向にある。
>また、「不当な差別的取扱い」と いう形で使用されていることが多い。 (例)「不当な差別」:人権教育及び人権啓発の推進に関する法律
>従来の憲法学の通説や判例では、「合理的差別」、「不合理な差別」というように、「差別」という言葉をいわば価値中立的に用いてきたとされている。
AIテセウスの船¶
- 背景は自分 キャラはAIの絵は…
- キャラは自分 背景はAIの絵は…
- 構図はAI, 手直しは自分の絵は
- 構図は自分, 出力はAIの絵は…
- 絵の描けなくなった老人が、介護ロボットに命じて描かせた絵は
- メインキャラは自分, それ以外のモブはAIが出力している場合
- ロボットを墨汁にぶち込んでそれを振り回して人間が描いた絵
- メインキャラの顔は人間, それ以外の全部をAIが描いてる漫画
- ロボットが人間に命じて描かせている絵
- 上司ロボットが人間に絵を描くように命じ、その人間が下請けロボに命じてその下請けロボットくんによって描かれた絵
- 人間の脳を完全にトレースして作られた人造人間 ヒューマノイドが描いた絵
- ドラえもんが描いた絵
- 人間の脳をコピーした後そのデータをチップに詰め込み、脳を摘出したのちチップと置き換えた人間が描いた絵
- 設定 キャラデザ 世界観など全てAIが考えたが人間が描いてる漫画
2023-05-13 競技プログラミングによる中学生へのプログラミング指導/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 競技プログラミングによる中学生へのプログラミング指導
- GPT-4による論文の概要把握
- 三平方の定理の新しい証明
- 「これからの集合と位相」
- ChatGPTでの語学学習
- 生物学と物理学の境界
- ヤウのインタビュー
- 小松彦三郎先生の『グロタンディク空間と核定理』
- 白石直人さんによる「ゆらぐ系の熱力学」の教科書
メルマガページへのリンクは次の通りです.
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
何かいつの間にか一月もメルマガを書いていませんでした. 仕事関係のプログラミングの勉強ばかりであまり数学もできていません. 久しぶりにプログラミング関連をかなり基本的なところから再勉強していて, ようやくわかってきたこともあれば, ただの勉強ばかりで実戦投入できずいまひとつ身についていなかった知識も実戦投入で血肉になりつつあり, とても楽しいので問題視しているわけではありません.
数学と言えば久しぶりに現代数学探険隊を一から眺めて記述を整理しています. そしてようやくコンテンツ販売している分の解析学編の整理ができました. 改めて眺めていたら自分にとって「こういうのがほしかった」をまとめたコンテンツなだけに, 読んでいてとにかく楽しく飽きが来ません. 焦点がバチバチに合っているときに書いた多少複雑な部分で, 久しぶりに読むともう少し記述を追加しなければならないところもいくつかありますが, 全体的に後で行間を埋めるのに時間を使わなくて済むように詳しく書いているため, その意味でもすらすら読めます.
まだまだ磨くべき部分はあるにせよ, 少なくとも自分が心からよいと思える内容にはなっていてとても気分がよいです.
あと, プログラミング学習と言えばいわゆるAI(機械学習)利用がなかなかよいです. とんでもない嘘をつかれる場合があるとはいえ, ChatGPTはGoogle検索で見つけづらいピンポイントの話題を解決したいときにかなりの威力を発揮します. phind.comもいろいろなサイトを取りまとめてくれるため, 検索で重宝しています. 人間絵の(?)イラストレーター界隈では相変わらず燃え上がっていますが, それぞれ高度な専門性がある(とされる)翻訳や確定申告については「さっさとシステム・人工知能でどうにかしてくれ」と言い, 同業であるはずの背景関係の生成ツールは「これで絵を描くのが一段と楽になった」とまで言ってきていた人が人間絵の生成は駄目だと言い出すのはさすがに筋が通らないだろうとは思います. 欧米だととりわけ児童ポルノに関わる形で問題視されているようですが, どうなることやらという感じがあります.
この間Twitterでコンサル系の人が「ChatGPT+Midjourneyを使って中小企業向けのロゴ制作の会社を作れる」と言って, デザイン系の人達で「あんな質の低いロゴでは話にならない」と言っている様子を見かけました. ただプロの目から見て, 実際にプロの仕事を比較したら優劣がわかるとしても, 比較対象がない中でそれだけ見せられたら十分ではないかと思えるようなものではないかとも思います. それこそ医学などの微妙なところはともかく, 数学や物理での明らかな嘘が平然とまかり通っている以上, プロの仕事を判定するにもプロの力が必要です. そもそもプロの仕事がオーバーキルで, 伝統工芸のように腕のいい職人の製品は高くて買えない贅沢品になる可能性もあるのでしょう.
もちろんプログラマーの処遇ももはや自明ではないと思っていて, それもまたどうなることやらといった感じです. Wolfram alphaと機械学習連携の話も出ていますし, 数学・物理もどこまで敷居が下がるか, それとも逆に上がるのかが気になっています.
競技プログラミングによる中学生へのプログラミング指導¶
やるやると言っていた中高生向けの話, ようやくはじまりました.
様子を見ているとタイピングスピードと正確さがないようです. 中学生がゴリゴリタイプする機会もそうそうないでしょうし, それはそうだと思ってタイピング練習の時間も作っています.
それで調べていたら私が中学生の頃, タイピングソフトは3000-5000円くらいしていた記憶がありますが, いまやネットでフリーでちょっとしたサイトがいくつもありました. 確かにいまやそのくらいでお金を出す人もいないのかと思うと, 一種のジェネレーションギャップを受けました.
GPT-4による論文の概要把握¶
GPT-4のWeb Browsingを使うと、「(論文のタイトル)について内容を教えて」と指示出すだけでいい感じに内容を要約してくれるので感動した。
最近研究者界隈のこの辺の話をよく見かけるようになりました. 試す機会もないため論文レベルでどうかはよく知りませんが, ちょっとした文なら読むだけではなく書く方も英語ならだいぶ便利です. 機会がないためあまり調べていないのですが, 会話関係はどの程度できるのでしょうか.
ああ、さっきから僕が言ってるボイチェンはこれの話です。声を作らなくても完全地声でちゃんとかわいい美少女ボイスに変換されます。 ただし発音・発声・口調の汚さは補正されないので僕みたく品がない人はまず品を手に入れましょう……(
『「RVC」+「VC Client」で自分の声を任意の声にリアルタイム変換しよう!』という記事を書きました。 https://eyatu-vrc.hatenablog.com/entry/2023/04/06/193512 DiscordやVRChatで任意の声へのボイチェンをするための手順を書いた記事です。 動画はずんだもんの声になったEヤツです。 不明点があればリプやDMでご指摘ください!
方向性は違いますが, コンテンツ制作関係でこの辺も気になっています.
三平方の定理の新しい証明¶
ニューオリンズの高校生2人が、無限級数を使ったピタゴラスの定理の新しい証明を発見。彼女らがこれを米国数学会で発表して話題に。 Here’s How Two New Orleans Teenagers Found a New Proof of the Pythagorean Theorem
アメリカの高校生が発見したという、三平方の定理の新しい証明法だそうです。高校数学でも新発見ができるものなのですねぇ。
さらにこんな話も.
【JKが学会で発表】 アメリカの女子高生が、三角関数を使ってピタゴラスの定理を証明する方法を発見しました。 三角関数を使ったピタゴラスの定理は、循環論法を回避するのが難しく、2000年間不可能だと考えられていました。 すごい。
❌2000年間不可能 ️ピタゴラスの定理が発見されてから、1度も発見されていなかった
「これからの集合と位相」¶
基本事項の羅列ではなく、議論の流れが読み取れるようにまとめ、自習に利用できるテキスト 『これからの集合と位相』梅原 雅顕/一木 俊助(裳華房) 「圏論」の普及に伴い、空集合・空写像の概念が重要視されつつあることをふまえ、付録の最終節として、空集合の扱いについての解説を掲載!
『付録の最終節として、空集合の扱いについての解説を掲載!』が特に気になります. あと以前英語版を紹介した記憶がある, 「圏論による位相空間論」的な本も和訳が出ました. 英語の方を読もうと思いつつ本だけあって読めていなかったうちに和訳が出てしまいました.
ChatGPTでの語学学習¶
なんかなんでも今更なんだけど、ChatGPT で語学を勉強するの楽しすぎてやばいんだけど 以前のノートを整理しながら文法を直してもらったり、文法や表現の不明点を解説してもらったり、用例を作ってもらったり、至れり尽くせりだよな クラスの先生は疎か、一対一の語学先生よりも百倍便利で草生える
ほんの一例だけど、ノートに溜まってた謎のフランス語とドイツ語の文を解説してもらいつつ、新たにまとめていくことをやっている https://sharegpt.com/c/QHKAISZ 自己紹介のテンプレートを書かせつつ、短くしてもらったり、文法をやさしくしてもらったり、解説してもらったり、記入してもらったり、追加情報を入れさせてもらったり、もうやばいん なんなら特にやることがわからないときでも、graded reader(易しい文法レベルまで落とした読み物)を童話からの bilingual text 作ってもらって、有名な話なんであらすじはわかるから comprehensible input になるし、わからないところば質問していいし、飽きたら新しい物語を作ってもらってもいいし
私もいま自分が所属している語学コミュニティ向けにちょっとした語学学習用のサイトを整備しています. 英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語あたりをいろいろまとめています. 語学学習用のコンテンツにはまだ載せていませんが, 最近はアラビア語とサンスクリットもやっています. ChatGPTも使っていろいろ取りまとめていて, やはり時々とんでもない嘘をつきます. 将来はともかく, いまはある程度の知見がないとChatGPTはうまく使えるツールではないように思います.
生物学と物理学の境界¶
生物学と物理学の境界について、少し前に思うところを書いた文を公開します(PDF)。双方の研究者がどういうところで仲違いしているのか、寺田寅彦が研究者の間で好かれてたりそうでもなかったりするのはどういうことか、
寺田寅彦の随筆をだいぶ前に読んだことがあるのですが, いまひとつピンと来ませんでした. この辺の味わいがわかる人に解説してもらう勉強会なども面白そうと思って幾星霜です.
ヤウのインタビュー¶
これもなかなか面白かったです. 数学・物理勢にはお勧めです.
小松彦三郎先生の『グロタンディク空間と核定理』¶
小松彦三郎先生の『グロタンディク空間と核定理』がウェブで公開されました。 https://digital-archives.sophia.ac.jp/repository/view/repository/20230419101
白石直人さんによる「ゆらぐ系の熱力学」の教科書¶
ゆらぐ系の熱力学の教科書がついに出版されました!確率過程の基礎やゆらぎの定理、情報熱力学、熱力学的不確定性といった定番トピックスはもちろん、2022年までのこの分野の主要な結果は大体網羅した決定版です。 https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-19-8186-9
確率過程とその熱力学・統計力学への応用はずっと気になっていたため, この本もかなり気になっています. もちろん情報熱力学にもずっと強い興味がありました. すぐに読む時間が取れそうにないのが悲しいところ.
メモ¶
Yahoo!きっずを使うライフハック¶
ライフハックなんだけどGoogleとかで検索した時に、情報がクソみたいなまとめブログしか出ない時は、「Yahoo!きっず」で検索し直すといい。 これすると、マジでクソまとめブログが激減して、必要な情報にたどり着ける可能性が上がる。
岸田首相の海外からの評価¶
我々が「海外から見たバイデン、習近平、プーチン」を見れるように、 「海外から見た岸田文雄」という非常に有益な情報なので政治齧ってる人は全員見るべき
Exclusive: Prime Minister Fumio Kishida tells TIME's @CharlieCamp6ell about his plans to transform Japan's role in the world https://ti.me/3nRThwX
男なら死ねい¶
たまたまyoutubeで流れてきたhttps://www.youtube.com/watch?v=Q1CSrD5kbQA&t=137s「お母さんが幸せでなければ、誰も幸せになりません。お父さんが幸せでなくても、誰も気にしません。」、まさしく江田島平八のhttps://livedoor.blogimg.jp/suko_ch-chansoku/imgs/c/0/c0b95be0.jpg?fbclid=IwAR32uL5UGCZ0cUMn3MbPKMLHIn_oNeLtw2IzgARJYMVVKLS3gHwDAVP7L8wで、男塾は英語圏でも通じるのかと深い感銘を受けている。
Creating Software with Modern Diagramming Techniques - Build Better Software with Mermaid, Ashley Peacock¶
ChatGPTで無料で学べる『英会話AI』の作り方¶
「『ChatGPT』に『Voice Control for ChatGPT』を入れるだけで、永遠に無限の英会話の時間を自分の部屋でできるようになった。しかも完全に無料である。」 ChatGPTで無料で学べる『英会話AI』の作り方(神田敏晶) ChatGPTで無料で学べる『英会話AI』の作り方
生江シェフの修士論文¶
- https://twitter.com/tam30929/status/1648199208497979392?s=46&t=rSGrt3q9L2eB3BJj6UZp7w
- 東大大学院 農学生命科学研究科 生江史伸 「外食が提供する価値に関する研究」
2023-04-08 スペクトル理論と一変数関数論/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- スペクトル理論と一変数関数論
- 京都大学2回生の統計力学の期末試験を解いた論文
- ヘリウム危機
- ChatGPT+Wolfram Alpha
- メモ: Document IDを使う
メルマガページへのリンクは次の通りです.
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
スペクトル理論と一変数関数論¶
継続的に対応している現代数学探険隊のノート整理で, スペクトル理論の章を整理しています. 思った以上に関数論をゴリゴリ使っていてちょっと驚いています. もちろんレゾルベント(グリーン作用素・グリーン関数)は作用素値正則関数である以上, 関数論の結果が援用でき, 実際にいろいろな応用・展開があるのは嫌というほど知っていますが, 久しぶりに見るとこんなにも空気のように使われていたのかと驚いたのです.
現代数学探険隊では関数解析のあと, 無理やり関数論に進んでいて, 関数論が必要だからというのはもちとんわかっていたものの, なぜこういう構成にしたか, その理由を改めて実感しています.
さらに強く, 多変数関数論のバナッハ環論への応用といった話題もあります. ヘルマンダーの本にも(何故か)一章割かれていて, 時代的にも重要な対象だったのかもしれません. 詳しく読めてはいませんが, 実際に書名がバナッハ環への多変数関数論の応用という洋書があるのは知っていて, これも読んでみたいと思って幾星霜です. いま読んでいる層とホモロジー代数が終わり, トポロジーのノート・指数定理のノート・モース理論のノートが作り終わったら読みたい本のリストには入れてあります.
京都大学2回生の統計力学の期末試験を解いた論文¶
「京都大学2回生の統計力学の期末試験」を解いて論文にしました。 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.130.148101 ゲルにおける「負のエネルギー弾性」の統計力学にもとづく説明です。 試験問題の公開から3年以上がたち、試験時間は大幅にオーバーしてしまいました。 https://t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2023-04-05-001
三重大学の白井さん(@nobucshirai)との共同研究です。研究の経緯は、プレスリリースにも書きました。白井さんとは、オンラインで出会い、一度も対面で会わずに原著論文にまで仕上げました。オンラインで理論物理の議論は厳しいと思っていましたが、双方の努力次第でなんとかなることがわかりました。
作道さんのゴム弾性の研究の話を聞いたことがあり, 非常に面白かったです. このあたりは統計力学・物性論の多彩さと面白さで, 熱力学熱と統計力学熱が高まります. 先日, 2022年のフィールズ賞受賞者の業績が$\phi^4$の自明性の証明だったとも聞き, イジング熱が高まっているため, 改めて原-田崎本を読む機運が高まっています. 早く幾何系のノート作りを終わらせたいです.
幾何は幾何で学部一年で深谷賢治さんの本を読んで以来, ずっと憧れの分野で, これはこれできっちりやりたいのです.
ヘリウム危機¶
Twitterで貴重な資源であるヘリウム浪費問題が流れてきました. 関係する記事も流れてきたのでシェアします. どうも嵐がコンサートで凄まじい浪費をしたために世界で大問題になったこともあるとか. 知らなかったのでちょっと驚きました.
産業・医療応用が重要な対象をエンタメで消費するのはいいのか悪いのか.
ChatGPT+Wolfram Alpha¶
ついにChatGPTと数学が融合、Mathematica開発者ウォルフラムさんの生の興奮が伝わる記事 ChatGPT Gets Its "Wolfram Superpowers"!
これで数学系のグラフ作成・動画作成が楽になると数学・物理教育にもいい影響があります. 私もプログラミング関係のコンテンツを作って管理する必要がなくなるので, 早くいい感じに使えるようになってほしいです.
メモ: Document IDを使う¶
今回のIPAのサイトリニューアルでわかったように、URLは脆弱なので、djb先生の唱えるDocument IDを使おう https://cr.yp.to/bib/documentid.html UUIDでも何でもユニークっぽい文字列をページごとに書いておいてそれをURL代わりに使えば、ググればページが見つけられる
先日サイトリニューアルした上で, さらにWordPressで作った本サイトも潰してこちらをメインに据える予定があります. 今回はもういいやと思っていますが, 次回何かあったときはちょっと考えたい内容です.
2023-04-01 数学・物理 熱力学が楽しい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- サイトをプチリニューアルしました
- 近況報告
- ChatGPTに数値計算コードを書いてもらう
- 全悪質時空
- トレースの定義
メルマガページへのリンクは次の通りです.
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
サイトをプチリニューアルしました¶
メルマガを載せているこのサイトはテキストファイルからmkdocsで作っています. 変換・アップロードが長くいい加減面倒になってきたため, 分散させていたファイルを一つにまとめました. リンクがメチャクチャになってしまっている部分もありそうですが, 気付いたら修正します.
一部のページは重くなってしまっているため, 必要に応じて適当に分割する予定です. 私自身はローカルで必要に応じてgrep
やrg
で検索をかけて読んでいるため, Web版の重たさになかなか気づけません. これまでいちいちgrep
していたのがファイル内検索で済むようになり, 私としては効率がよくなったのですが. メルマガページも少し重いかもしれません.
WordPressで作っていた旧本体サイトも, Webのインターフェースが重いのが嫌です. いまのアーカイブサイトのローカルのテキストファイルは, 複数ファイルにわたってちょこちょこ必要な記述を追記・修正できる点で, 個人のサイト・情報管理としてはもうWordPressは面倒なので, はやいところ移行したいですが, その作業も面倒で止まっています. WordPressを潰したら, このアーカイブも本体に格上げ予定です. いつになるかわかりませんが.
近況報告¶
熱力学のノート作りが一段落してちょっと気が抜けたのか, あまり数学・物理をやる気が出ず, 仕事がらみのプログラミングの勉強というか, ドキュメントの読み込みをしていました.
最近の公式ドキュメントは確かに充実していてよいのですが, いつも気になるのはハイパーリンク構造のドキュメントそのものです. リンクがあるとついつい踏みたくなってしまうため, あちこち意識が飛んで気が散ります. こういうときは紙でもPDFでも, 余計なリンクも少なく気が散らないように前から読める(必要なら適当に飛ばせる)本の形式はよいなと思います.
プログラミングと言えばGitHub Copilotが時々「これが書きたかった」というコードをぼんと出してくれるので, 確かに快適です. まだうまく使い切れていないのですが, いま仕事で使っているフレームワークの挙動に慣れてくれば, 基本的な枠組みをサクサク書けてGitHub Copilotとよく協調できるようになるのではないかと期待しています.
会社では一人エンジニアで技術的に質問・相談できる人がおらず, とうとう本格的にStackoveflowやGitHub Issueなどの質問サイトデビュー的なものをしてしまいました. 技術系の質問ならそれほど苦労せず英語で書けますが, それでも考えると面倒なときはChatGPTにも英作文のお手伝いをしてもらっています. 他にも語学学習でChatGPTにお世話になっていますが, 少なくとも現時点ではまだまだ思うようにいかない面が多々あります. 一人でやっていると本当につらいため, 何事にも先達はあらまほしきことなりの心を改めて痛感しています.
来週は数学ノート作りに戻りたいですね. ホモロジー代数もさっさと仕上げて, トポロジーの基礎のノートを作って, はやく指数定理とモース理論あたりまでは整備したいです. それができれば他の好きな解析学, または数理物理系の議論に舞い戻れます.
全悪質時空¶
名前が面白くて気になっています. 特殊・一般相対性理論もそのうち通信講座で扱いたいですね.
トレースの定義¶
えへへ,内緒.というのは冗談で,学生向けだとやはり対角成分の和.大学院向けだと固有多項式の (n -1) 次の項の係数 x (-1) かな.もっと intrinsic にやりたければ Σ (一般固有空間の次元)x(固有値). でもこれでは無限次元で使えないので,やはり線型汎関数 T であって T(xy) = T(yx) を満たすとするのがいいのかな. もっとも,これは T(x) の定義ではないね.やはり x のみの情報で定義したいなぁ. そうだね,自己隨伴作用素に関していえばトレースってのはスペクトル分解そのものって言っても良い気がしてきた.それが核関数で書ければその関数をトレースって呼んでもいいね. 忘れてた.トレースの重要な特徴付けの一つ. 一般線型群の不変式のなかで斉次一次式のもの. しかし,これも A のトレースだけ,っていうピンポイントじゃないなぁ.しかし,私の専門はだいたいこれなので忘れちゃいけない. この視点にたてば,det と trace の間にある残り (n - 2) 個の不変式を hyper trace っていうか,degenerate det っていうか,そういうものとして考えられる. 要するに基本対称式だけれどねぇ.
無限次元ではトレースが収束する作用素は極めて強い性質を持ち, 物理的によく現れる作用素の大半はトレースが取れません. 特に量子統計で出てくるトレースはそのままでは数学的に正当化できません. これに関わる理論が冨田-竹崎理論です.
2023-03-25¶
数学・物理 熱力学が楽しい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- ChatGPTに数値計算コードを書いてもらう
- Wolfram alpha+ChatGPT
- 熱力学のリハビリ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先日からホモロジー代数を止めて熱力学の復習を進めています. ようやくあと少しでギブスの自由エネルギーまで一通りノート作りが終わります. 具体例に対する修行がまだまだ足りないものの, 一般論はだいぶ復習が進みました.
やはり熱力学は楽しいですね. 何度も書いているように力学のようにハードな計算が必要なく, 簡単な偏微分の計算程度の数学的な負荷しかない割に, 神秘扱いされがちなエントロピーへの理解も深まり, 応用上の威力も高い熱力学は得られるメリットに比べて苦労が少ないです. 変な言い方ですが非常にコスパがよいです. はやく基本的な数学のノート作りを終わらせて統計力学, 特にイジング模型の再勉強がしたいです.
そういえば仕事関係の勉強ばかり最近の動向追いかけてきれておらず数日前にはじめて知ったのですが, 2022年のフィールズ賞の受賞者の主要な業績が相転移・臨界現象まわりで, いわゆる$\phi^4$の自明性がようやく完遂されたとか.
長年未解決だった構成的場の量子論の問題である4次元時空のφ⁴ モデルのtrivialityは、2022年のフィールズ賞受賞者のH.Duminil-Copinらによって示されたのですが、先日、日本数学会で東京に滞在中に書泉グランデでその解説記事がある過去の数学セミナーが買うことができよかったです。
当然イジング模型との関係も深いためイジング熱が再燃しています. 楽しみが増えました.
ChatGPTに数値計算コードを書いてもらう¶
ワイ「二次元の熱伝導方程式をPythonで解きたい」 ChatGPT「Sure!この拡散方程式を解くよ!コードだよ」
ワイ「いいね。計算する時間を4分割して、それぞれの時刻で温度分布を出力するコードに修正できる?例えば2.0秒だったら、0, 0.5, 1.0, 2.0、みたいな感じで」 ChatGPT「Certainly!」
まだ自分できちんと試していないものの, 数学・物理の勉強もますます勉強しやすくなってきています.
書いたことがある人はよくわかるように, 数値計算コードは書くだけでも大変です. 特にバグ取りが地獄です. 計算したあとの可視化も楽ではありません. そもそもプログラミング学習自体が簡単ではありません. 数学なり物理なりがやりたいのに余計なプログラミングを勉強するのも手間です. まさに学生時代の私です.
一応書いておくとプログラミングだけできても, 数値計算の結果の理解となるとやはり数学や物理の知識が必要です. いろいろな都合・理由で適切な結果が得られるとは限らないからです. 結果が物理的に妥当か判断するだけの物理の力量が必要です. そもそも現実的なモデルをきちんと組んできちんとしたシミュレーション結果を出すのはプロの仕事になるほどです.
それでも物理がある程度わかっている人であっても, 実際にシミュレーション結果を見ると割と感動する場合があります. これも前に書いた記憶がありますが, 統計関係の勉強会でスターリングの公式の数値検証をして, 「学部一年から知っている内容だが, 実際に数値検証でグラフを見るとこれまでとは違った感慨がある」という話をしたことがあります. 物理で博士を取っている人とも意見が一致しました.
数学や物理の勉強にも手軽にプログラミングが使えるようになって, それ自体は明らかによい話です.
Wolfram alpha+ChatGPT¶
数学・物理界隈でも機械学習利用が加速しています. 私は本業こそプログラマーですが, あまりそこにアイデンティティは持っていません. しかし飯の種ではあるため, 職業としてのプログラマーがどうなるかはそれなりに大きな問題です. 心配しすぎてもどうにもなりませんが, 身の振り方が本格的に問題になってくる可能性も視野に入れないといけないのかと言う気はしています.
熱力学のリハビリ¶
あと少しでギブスの自由エネルギーまで一通り復習が終わります. 近況報告でも書いたようにやはり楽しいですね.
やはり慣れは大きく, 温度を変数にした議論はさくさく読み進められます.
改めて勉強していて, 理論構成の上でヘルムホルツの自由エネルギーはいい具合の落とし所という実感が強まっています. 流体系に限らない一般的な熱力学で物理の理論という前提に立てば, 常に存在を仮定できる変数はエネルギーです. 熱力学固有の量として孤立系(断熱系)特有の量がエントロピーです.
一方, 環境との相互作用を考えるとき, 環境を特徴づける量として温度を導入するなら温度も自然な量です. 流体系を越えた一般的な熱力学を考えるなら仮定できるのはここまでです. 一方ギブスの自由エネルギーはふつう流体系を前提に, 温度・圧力(と物質量)を変数にした完全な熱力学関数です. 特にヘルムホルツの自由エネルギーからルジャンドル変換を取る変数が体積で, 変数として体積を持つ系でないと意味を持たない量です.
例えば強磁性体はふつう体積をパラメーターに持ちません. 特に温度と磁化を変数に設定してヘルムホルツの自由エネルギーで議論するのがふつうでしょう. 完全な断熱系だけを議論の対象にしない限り温度を全く考えない熱力学はありえないため, ヘルムホルツの自由エネルギーは温度に対する直観も導入しながら一般の示量変数に対する理論も展開できる便利な熱力学関数です. 相転移, 特に三重点まわりでの議論がうまくいかなくなるのも, かえって熱力学の難しい事情を浮き彫りにしてくれると思えば教育的とさえいえるでしょう.
日々の自分用メモ¶
物性物理とトポロジー: 非可換幾何学の視点から¶
物性物理とトポロジー: 非可換幾何学の視点から
内容詳細: 本書は,物性物理学における物質のトポロジカル相(topological phase)の理論の一部について,特に数学的な立場からまとめたものである.とりわけ,トポロジカル相の分類,バルク・境界対応の数学的証明,の2つを軸として,分野の全体像をなるべく俯瞰することを目指した.
- 導入
- 関数解析からの準備
- フレドホルム作用素の指数理論
- 作用素環のK理論
- 複素トポロジカル絶縁体
- ランダム作用素の非可換幾何学
- 粗幾何学とトポロジカル相
- トポロジカル絶縁体と実K理論
- スペクトル局在子
- 捩れ同変K理論
- トポロジカル結晶絶縁体
- 関連する話題
- 補遺
「よく漫画で出てくる神社の神様が女の子で〜みたいなやつあるけど、そういうの見るたんびに、こいつ戦時中は出征する若者やおっさん達に沢山祈られて、一生懸命ご利益振りまいたけど誰も還ってこなかったんだろうなとか勝手に思ってる」¶
よく漫画で出てくる神社の神様が女の子で〜みたいなやつあるけど、そういうの見るたんびに、こいつ戦時中は出征する若者やおっさん達に沢山祈られて、一生懸命ご利益振りまいたけど誰も還ってこなかったんだろうなとか勝手に思ってる
というか100年くらい存在しているあらゆるキャラクターの戦時中の動向を無意識に考えてしまう そういう病気
草臥れた山村の最後の一人だった親戚の遺品整理にやってきた旧軍オタの前に、戦時中に出征したまま骨も帰ってこなかった昔の村人と勘違いしたのじゃロリババアが現れて喜ぶも、途中で時間の経過に気づいて正気に戻ってしょんぼりしながら誰も帰ってこなかった話をし出す。
ニューギニアで壊滅しましたからねぇ・・・と言う言葉に、行先が分かるのかとBBAが食いついてきたので、どうせもう住人も居ないんだから帰ってこなかった連中の骨を探しに行こうと言い出す旧軍オタ ロリババア神様と旧軍キモオタのドタバタ地獄参りが今始まる!
ここまで妄想した そういう病気なんだよほっといてくれ
お前が神様になってしまってどうするんじゃ!って言わせたいね? それが言いたいだけ
女性差別と男性差別のメタな違い¶
これが女性差別との違いですよね、メタ性
・男性は社会的に差別されている ・弱い男性はさらに激しく差別されている ・差別に抗議する男性は弱いとみなされ、激しく差別されるため、抗議できない
ここまでは周知徹底したい 具体的な差別(強くあらねばならないとか女を守れとか)に言及しても「そうだね、どっちもなんとかしていかなきゃいけないね」になってしまう、悪くすると差別コストとか言われてしまうから、メタ性に焦点を絞っていかなきゃいけない
ヨスガノソラ¶
多分俺たち世代は近親相姦で連想するのはヨスガるという単語で 公共放送としてはヤりまくった問題作ではあるんやが あの作品自体は性行為と背徳感を非常にテーマとして重視してるのでこのテーマに関心ある人には勧めたい作品 近親相姦とそれを周囲がどう解釈するかの生生しさもいい描写でしたしね
エロと創作の基本¶
エロには創作の基本が全部つまってます
- ・ターゲットが許すならOK、NGならNGという基本
- ・釣り詐欺や裏切りダメという基本
- ・辻褄合わせは二の次という基本
- ・真実は求められてないという基本
- ・大事なのは棲み分けであり統合ではないという基本
- ・性癖と妄想をぶちまけるのが創作という基本
R18はエロいか、そうでないかが全てやからな 画力や辻褄よりやっぱりエロいかどうか
- ・読者はシャイなので感想はレアだという基本
- ・全体に合わせるより一点特化という基本
- ・エロい(面白い)ければこまけえことは全て許されるという基本
- ・何をおいてもキャラとシチュという基本
- ・エタってもいいという基本
- ・基本褒めという基本
創作入り口には大変オススメでございます
- ・テンプレが山程あるが、そのテンプレに沿っててもちゃんと受け入れられるという基本
- ・なんなら沿ってるほど褒められる基本
- ・でもニッチはニッチでありがたがられる基本
- ・予想(エロに至る道筋)は外してもいいが、期待(エロそのもの)は外すながこの上なく理解されてる基本
ちなみに推理を入り口にすると…
- ・エタは絶対に許されないという思い込み
- ・矛盾は絶対に許されないという思い込み
- ・お前のルールよりリアルを優先しろという思い込み
- ・キャラよりも話の構造という思い込み
- ・世界設定はガッチガチにしろという思い込み
推理は創作の基本の逆に位置してます
創作の基本は大喜利だったり「こういうのどう?」からスタートするというのが学べますね
これはマジで仰る通りですね(スケベめちゃくちゃ楽しく書いてる人) 付け加えるなら、Twitterでつぶやく程度の文字数のアイデア、性癖語りからいくらでも膨らませられますしね 『Twitterにネタ・あらすじだけ書いて満足して作品にしない』やりがちだけど、スケベはツイートがまんまネタ帳になりやすい twitter.com/kazakura_22/st…
ChatGPTによる教育¶
やばいやばいやばい!!ちょーーーやばい!!!
AIが生徒に連立方程式を教えてる…ヤバすぎる…
GPT-4がマジでヤバい!!! (ChatGPTの進化系みたいなもん)
とりあえず学校の先生はみんな見て!!!
教育にも革命がががががが…(語彙力
画像見たらわかるけど、その生徒の回答にあわせてAIが教えてる。
これは今まで先生がずっと付き合ってなかったらできなかったやつですよ。それをAIがやってくれてる。
何がヤバいって「いつかそんな時代が来るよね」とか"ミライのハナシ"してたつもりが、多分もうすぐそこw
貼り付けてた画像の引用元はこちらね。Google翻訳で日本語にして出してます。 https://openai.com/research/gpt-4
「個別最適が〜」とか言ってた教育界隈はホントに見た方が良い。もちろん100%正確というわけではないし、それはOpenAIも指摘してる。
それでも、「それなりの正確性を持った学習のアシスタントが生徒一人ひとりに付く」という影響は計り知れないほど大きい。
まだデモ画面での動きやし、実際に教育現場で使うにはUIとかも未熟だとは思うけど、教育関係者なら画像のAIが「かなりのレベルで指導してる」ことがわかるはず。
ちなみに、GDP-4のレベルは司法試験の上位10%程度らしく、領域によっては大体の人類を超えましたね。
模擬司法試験に受験者の上位 10% 程度のスコアで合格します。対照的に、GPT-3.5 のスコアは下位 10% 前後でした。
あと、画像の通り「大学院入試の模試」でほぼ満点取ってますw
AI先生すごい!!
重点解説! TeX Live 2023はココが違う!¶
64ビット版で何がうれしいのか
32ビット版のバイナリでは「使用可能なメモリ領域は2GBまで」という制約がありますが、64ビット版にはありません。TeXにおいてメモリ領域の制限が問題になることは滅多にないのですが、一つだけ、とても大きな違いがあります。
64ビット版ではLua(La)TeXで巨大なフォントファイルを多く使ってもメモリ不足で落ちることがなくなる。
LuaTeXでのOpenTypeフォントの処理は大量のメモリを消費します。特に日本語のフォントはそれ自体のサイズが大きいので顕著になります。5個くらいの書体を使おうとしたり、あるいは「游明朝」のような“複雑”なフォントだとそれ1つを使おうとしただけで、メモリ不足で異常終了する事態が簡単に発生していました。
TeX Live 2023ではWindowsユーザでも安心してLuaTeXの「強力なフォント処理能力」を使えるようになります。
AI界隈とある予測¶
2023-03-18¶
数学・物理 機械学習系アプリの活用/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- GitHub Copilotの導入
- Rust本格参戦
- アラビア語
- 熱力学のリハビリ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
今週はChatGPT4旋風が巻き起こっていたような印象があります. 後で書くように私も重い腰をあげてGitHub Copilotを導入しました. 見た人も多そうですが, Twitterで評判になっていたのでとりあえず結城浩さんのGistを共有しておきます.
フロントエンド学習および機械学習系の動向をゆるく追う勉強会を一緒にやっている人がもともと車系のエンジニアだった人で, いま映像系のフリーランスをやっている人です. 主に映像系の活動をしているTwitterで機械学習系の話をしているとイラスト・映像系の人から「危機感を覚えないのか」と言われる機会が増えたようで, 当人は「仕事の面はあるにせよ, 何を恐れているのかわからない. 楽しく描いたらではないか. それはAIには奪われない.」と言っていました. 「AIは純度嘘発見器」なのかもしれないとも.
飯の種になっているとなると純度だけで割り切れなくなるとはいえ, 何にせよ楽しめるかどうかは大事なのでしょう. どこまで適切な比喩・比較になるのか現時点で予断を許しませんが, むかし写真が出てきたときも絵描きの仕事はどうなるという話が出たようですが, 絵と写真についていまでも絵は絵で楽しい営みとしてあり, 一方で写真は写真やジャーナリズムだけではなくそれ自身アートにもなりつつあり, 今度はアプリによる加工で写真が事実を写してくれなくなりつつあり, といった多重構造が出ていると聞いています.
数学・物理がどうなるかはわかりませんが, プログラミングに関しては競プロなど楽しみでやっている部分もあり, 飯の種にしている部分もありで, どこまで楽観視していられるのかはよくわかりません.
これまたTwitterで「いまはAI生成のプログラムもテスト回りで責任問題と関連して人間が関わらざるを得ない部分ではないかと言われているが, 昔電卓で計算したのを算盤で計算しろと言われたナンセンスだとなったのと同じように, AI生成のプログラム・システムを人間がチェックするのは老害の証拠になるのかもしれない」と言っている人も見ました.
何にせよもはやこれと付き合わざるを得ないのは間違いないので, 世間的な行き着く先はきちんと観測して, 自分自身の身の振り方を考え続けないといけないなとは思っています.
GitHub Copilotの導入¶
重い腰を上げて今日の朝導入しました. 昨日の夜, Rust系の人が「自分もようやく導入した. 思っていた以上にコーディングがはかどったのでもっと早くから入れておけばよかった」と言っていて, 競プロでRustを本格的にはじめようと思っていたので踏ん切りがついた形です.
まだ実感できるほどプログラムを書けているわけではないので, 二ヶ月のお試し期間で遊び倒せれば, と思っています.
Rust本格参戦¶
去年から本格化させた競プロ学習で, 参考のためにいくつかの言語のコードを同時に眺めています. 見ているとPythonやRustはデータ構造系のライブラリが強力で, ライブラリへの外出しによって問題ごとの重要なアルゴリズム構成に集中できそうな気がしてきました. ただでさえF#は命令型系の機能・構文がいくつかないためにC++・Pythonのコードの直移植がしにくいところでも頭を使う必要があります. はじめこそ「ヒープなどはよくわかっていないからライブラリに外出しせずにきちんと書きたい」などと思っていましたが, もうさすがにそこまで書きたくありません.
中学の頃, 初等幾何で「『以下同様に』が気にくわない. そのような省略はやっていいのか. そもそも本当に『以下同様にで』処理しきれるのかもよくわからない」と以下同様にと書かずにしばらくやっていました. 何かのタイミングでふと「同じことしかやらないのにいい加減何度も書くのは面倒だ」と思う瞬間があり, 「これが『以下同様に』の心か」と思ったのを思い出しました.
私はHaskellから入ったため, F#自体はじめは無理に完全な関数型的な書き方をしていたものの, 特に競プロでは非純粋性をうまく使った方が読みやすく書きやすい現実にぶちあたって, 程よく命令型系のコードも混ぜ込んで書くようになりました. もともとHaskellの凄まじい部分に踏み込むようなコードを書くわけでも書けるわけでも読めるわけでもないため, RustもF#での経験を活かして, 自分にとって気持ちよく書く方法を探します.
外出しと言えば, 数学や物理では省略箇所は定理や公式の結果だけ頭にロードすればいい一方, プログラミングでは頭でわかってもライブラリなどが使えなければきちんと書くしかありません. そしてきちんと書かないとバグってひどいことになります. 機械学習アプリに書かせる・GitHub Copilotのような補助を使うのも含め, 自分自身のプログラミング学習方針についても考え直す必要があるのでしょう.
アラビア語¶
これも1月から本格的に再開しました. 以前何回か, 語学学習のコミュニティでペルシャ文字入門の勉強会があって, そこでアラビア文字を雑に勉強して都度完璧に忘れるのをくり返していて, 今回は2ヶ月半, 毎日朝一時間程度の時間を割き続けるられるように習慣化しました. はじめはつらくてよくさぼっていたのですが, キーボードでアラビア語配列が少しずつ頭に入って打ちやすくなってから耐久力がつきはじめ, いまでは気がつくと一時間経つような状態になってきました. 年始の段階は5分で地獄のようにつらかったため, まだ何もわからない状態でも2ヶ月続ければこのくらいの精神的な負荷にはなるのかと実感しています.
Rust学習も以前にやったときは進捗が一気に死んで嫌になったのが二回ほどあります. 今回はアラビア語のおかげと進捗が死んでもRustをやると振り切ったおかげで, Rust学習ものんびりじっくり進められそうです. Rustは最近のフロントエンドで速度を求めるべくツール開発がRust一辺倒になっている印象があり, Rustは書けなくても最低限読めないと今後つらいのではないか感があります. これもRust再学習のモチベーションの一つです.
何にせよ初学の苦しみを忘れないためにも新しいことに挑戦するのは大事だと改めて実感しています. ようやく文字が認識できるようになってきたものの本当にそれだけで, 文字は認識できるが必ずしも全単語がスペース区切りされているわけでもなく, 活用も覚えていなければ単語も何も覚えられていないので何もわからない状態です. 「何が書いてあるのか本当にわからない」は今でもHaskellでよくあります. 競プロの短いコードでもさっと読めないプログラムがいまだに大量にあります. 数学や物理でも初学・非専門の人はこういう気分なのだろうと.
通信講座でも一回のボリュームをだいぶ削りました. 以前は「こんな簡単な問題をこれだけしか出していないのでは満足してもらえないのではないか」と思って, 復習の問題もかなり出していたのですが, 改めて初学またはしばらく触れていなかった社会人だとこれでも血を吐くほどつらかろうと思い直し, 量を減らして確認問題の内容もかなり変えました.
高いお金を払って最初はやる気まんまんでもすぐにつらくなるのは何度となく経験しています. アラビア語も勉強会をやって人を巻き込んでいるからこそぎりぎり勉強時間を確保できています. 仕事でも一人エンジニアで技術面で質問できないのがつらく, 最近はStackoverflowやGitHubのイシューに質問を出すようになりました.
熱力学のリハビリ¶
一旦田崎さんの本を雑に読んで雑にノート作りをしています. 他のノート作りを止めていて雑にまとめているだけなので, 来週, せめて今月中にはほしいところまで一通り終わらせたい見込です.
力学から手作りで理論を構築する様子を見せてくれる点で田崎さんの熱力学の本はやはり抜群によいです. さすがに教養レベル程度の力学を知らないとどうにもなりませんが, 一定以上の物理をやる上でそれはもうどうしようもありません. 力学に慣れていないと困るからこそ私の通信講座+勉強会企画でも初回に力学を据えたわけで.
力学的・物理的にこうあってほしい要請, 実験事実に基づく要請から「それは確かにそうだろう」という結果が出てきます. しかも一つ一つのステップで力学のようなハードな計算はあまり出てきません. そしてそれを積み上げるとエントロピーのような量とその強く非自明な性質が出てくる点が面白いです. 計算もハードではなく(田崎さんの本なら)議論もクリアなので, 熱力学はとても取り組みやすい分野です. 応用上の重要性もさることながら, 世間的に神秘的な扱いをされるエントロピーにも挑めます. 昔の自分を思い出しても量子力学・相対性理論に並ぶ「素人」垂涎の分野ではないかと思っています.
みんなもっと熱力学をやってほしいです.
日々の自分用メモ¶
図解¶
図解制作がなぜ稼げるのか、全力で解説します。
📌『"図解制作者"が圧倒的に少ないから』これに尽きます。
とはいえ、『コンテンツ制作代行』と銘打って活動をする人は多く存在します。 図解制作から始まって、動画編集からサムネイル作成、YouTube台本の制作からアナリティクス分析など、幅広く請け負う最強のジェネラリストです。
図解1本でやるよりも、当然仕事の幅は広がりますし、1件あたりの単価も雲泥の差が生まれるでしょう。
それでも、ありがたいことに僕は"図解だけ"でフリーランスとして多くのお仕事を頂けて、稼げている状態にいます。
📌僕が図解制作者として稼げているのは、文章をメインで発信されている方から依頼を頂戴しているためです。
動画に挟む図解と、文章に挟む図解。 作るものは全く同じでも、求める層(発信ジャンル)が違うため、コンテンツ制作代行を行なっている方とは競合になりません。
競合が居なければ、多くの方から声をかけていただけるのは必然。 言うなれば『"文章をメインとした"コンテンツ制作代行』というポジションを取れたから、忙しく仕事をさせていただけているのだと考えています。
動画全盛期とはいえ、文章で稼いでいる人も計り知れないほど多く存在します。 そういった文章で稼ぐ方へ向けて、『図解』というコンテンツのお手伝いをさせていただいているということです。
📌さらには、図解は多くの発信者が『欲しい』と考えています。
図解が欲しいのは、1万人以上のフォロワーが居るインフルエンサーや、数百万を稼ぐアフィリエイターに限りません。
フォロワーが100人未満でも、PV数がゼロに等しいブロガーでも欲しいんです。
✔︎あなたのツイート全てに図解が付けられたら? ✔︎あなたのブログの見出し全てに図解が付けられたら?
発信者として活動をしているなら、欲しいと思いましたよね。
文章を分かりやすくしてくれて、完全オーダーメイドの画像なんて、SEOの観点でも最良です。 影響力を付けたい発信者から見ても、図解ツイートに手を伸ばしたくなるのは当然ですよね。
ーーー
📌図解作りの上手い人が『1枚500円でツイート図解のお手伝いをします』と声を上げたとしましょう。
✔︎図解が10枚あれば、週に1回投稿して2ヶ月半くらい使える ✔︎図解が20枚あれば、週に1回投稿して4ヶ月くらい使える ✔︎図解が30枚あれば、週に1回投稿して半年間は使える
半年前に投稿された画像を覚えている人は ほとんどいません。 ということは、30枚の図解を、半年に1回を目安に循環させれば、毎週定期的に図解ツイートを発信できるようになる訳です。
1枚500円を30枚で掛け算する。 結果、1万5千円払えば、あなたのアカウントで、週1投稿の図解ツイートが年間を通してできるようになるんです。
そう考えると、1万5千円なら投資してもいいかな…と感じる人は多いはず。
📌話を戻せば、1枚500円なら、発信者から当たり前のように図解が買われるということです。
2枚の納品で4桁のマネタイズ達成。 20枚の納品で5桁のマネタイズ達成です。
500円はぶっちゃけ低単価すぎるので、将来的に見れば単価UPの施策は必須です。 それでも、マネタイズの難易度は、その他の副業と比較しても圧倒的にカンタンです。
📌インフルエンサーの無料プレゼントは図解の宝庫です。
「図解が上手くないからできない」と考えるなら、スライドの無料プレゼントを受け取って、徹底的に模写を繰り返してください。 100枚単位で最高品質のスライドを配布して下さっているのだから、それを参考にしない手はありません。
それに手を伸ばさず、ただ自己満足で「見やすくなったかも!」なんて状態じゃ絶対に上手くなりません。 『買われている図解』の特徴を、自分の中に落とし込んでください。
※当たり前ですが、丸パクリして発信は絶対NGですよ!
📌本気でマネタイズを目指すなら発信スタイルも変えてください。
あなたのフォロワーが『発信者』でなければ、マネタイズまで辿るのは少し難しいです。 美容アカウントの運用者が、美容の情報を知りたいフォロワー対して『図解が欲しい人いませんか?』なんて呼びかけても反応されません。
アイコンも、名前も、ヘッダーも、プロフィール文も、固定ツイートも、全部見直してください。
ついでに、実際に図解が欲しい人=発信活動をされている方と交流ができると、なお良いでしょう。 個人的に、オンラインサロンへ参加して交流を増やすのがおすすめです。
📌まとめ
✔︎図解制作者は圧倒的に人数が少ない →今なら図解制作者として稼ぐ枠が空いている
✔︎1枚500円なら買いたい人が大量に居る →速攻でマネタイズできる可能性を秘めている
✔︎参考の図解が無料で配られまくっている →いくらでも演習できる
結論:稼げる!!!!!!!
ガーシー参院議員「除名処分」 参院懲罰委で決定¶
ガーシー参院議員「除名処分」 参院懲罰委で決定 あす正式決定 | NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230314/k10014007601000.html “参議院懲罰委員会は、14日、改めて審査を行い、ガーシー議員の弁明について、党の浜田政策調査会長は「不登院という事情をもって除名処分に至ることは違法だ」と述べました”
同志社大 武蔵教授「処分はやむをえない」
参議院事務局の元職員で国会の制度に詳しい同志社大学の武蔵勝宏教授は、ガーシー議員が不当逮捕される可能性などを理由に帰 国しないことについて「国会議員には会期中の不逮捕特権があり、日本の司法手続きを理由に出席できないというのは正当な理由 とは言えない。陳謝の懲罰に対して、出席すると回答しながら欠席したことは参議院の権威をおとしめるもので処分はやむをえな い」と指摘しました。
そのうえで「ガーシー議員が集めた28万票余りは重みがあるが、国会議員は投票してくれた有権者だけでなく全国民の代表で、高 額の歳費が支払われ続けることも理解は得られない。議員が主張するオンラインでの参加には国会改革として道理はあるが、実現 するには法改正が必要で、議員として国会に出席したうえで主張するべきだった」と述べました。
一方で、議員資格を失わせる除名処分については「戦後3例目の非常に重い処分で、裁判で争うこともできず、本会議の決定が最終 決定となる。慎重の上にも慎重な検討が必要で、本人に弁明の機会がなかったのは残念だ。会期末までまだ3か月あり、登院停止処 分を踏まえたうえで会期末に除名にするやり方もあり得たのではないか」と話していました。
麗澤大 川上教授「国会議論が極めて重要 有権者は認識すべき」
政治心理学が専門でネットと政治の関係に詳しい麗澤大学の川上和久教授は、ガーシー議員が当選した背景について「参議院の比 例代表はテレビで全国的な知名度があるタレント候補が当選するケースが多かったが、近年はネットユーザーから支持を集める人 が得票を伸ばす現象が出てきている。芸能人のスキャンダルを取り上げる『暴露系ユーチューバー』として活動し政治の闇を暴く と訴えたガーシー議員が政治不信を抱く有権者のニーズをくみ取った側面はあると思う」と指摘しました。
そのうえで「ネット社会では自分の考えに近い情報だけに接触する『フィルターバブル』という現象が広がり、社会の分断が加速 することが懸念されている。こうした中で言論の場である国会で合意を見いだしていく努力を続けなければ、民主主義は崩壊する 危険もはらんでいる。国会の場で考えが違う人たちと議論することは民主主義社会で極めて重要で欠かせない手続きだということ を今回の除名処分を教訓に有権者は改めて認識すべきだ」と述べました。
AWSサーバーレス環境でのロギング¶
ラプラス変換の厳密な処理¶
フーリエ変換に関して厳密に書かれている本はとても多いと思いますが、ラプラス変換に関して厳密に書かれている本はじつは一度もみたことがなく、もしご存じの方がいたら教えてください。
ベクトル値のLaplace transformでよろしければ,以下のArendt et al.の本が厳密かと思います. https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-0348-0087-7
なぜ表現を考えるのか¶
群Gのベクトル空間への線型な作用を表現という.もちろん一般の空間 X への G 作用は線型でないし,ベクトル空間への作用だってほとんどの場合は線型でない. では,なぜ表現を考えるのか. 一般に,空間 X に対して X 上の関数環 F(X) を考えるとそれは『とても X に近い』.たとえばコンパクト位相空間上のゲルファントの表現定理は,F(X) の極大イデアルとして X が復活できることを主張する. もちろん F(X) はベクトル空間で,X への G 作用は F(X) 上の線型な G 作用,つまり表現を引き起こす.だから表現の性質(例えばプランシュレル型の既約分解)は X の性質を反映している. 惜しむらくは,F(X) の積構造が表現自体には反映されないこと.もっとも掛け算をテンソル積 F(X)⊗F(X) = F(X × X) と関連付けることで X は『ほとんど』再生される. ちょっと惜しいのはそのような『関数環』のような莫迦デカイ空間上のテンソル積の分解理論がよく理解できていないこと. これはやってみる価値があると思うが,かなり難しそう.まずは X が有限集合の場合から始めるのかな. ところが,なんと
隅廣の定理:正規射影多様体への線型代数群の任意の作用は『線型化』できる
という信じられないほど強力な定理がある.ある意味線型代数群の作用は表現からやって来るわけ. びっくりするね. 隅廣の定理 作用の線型化
2023-03-11¶
数学・物理 スペクトル分解のハマりポイント/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 記事紹介: 「ChatGPT」に浮かれる人が知らない恐ろしい未来
- 競プロの進捗
- スペクトル分解でのハマりポイント
- 熱力学のリハビリ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ゆるくChatGPTとの付き合い方を考えています. とりあえずは簡単な提案をしてくれる高機能な検索くらいの気分で付き合おうと思っていて, 冷蔵庫の余りものから献立を提案させるツイートなどを見かけました.
先程このようなツイートを見かけてちょっとやりとりしました.
流体の教科書で式変形が死ぬほど間違ってる本とか見ると、やはり人類の注意力に依存するのは悪い文明!粉砕する!!となるわけですが(´・ω・`)
一回性が強い計算をチェックしてくれるのは機械学習系では無理そうで, とりわけ「詳細は読者に任せる」とされがちな細々とした計算の話をどう処理するのかはかなり気にはなります. 数式処理と機械学習の組み合わせみたいな話も, 私が非専門だから知らない・見えていないだけで何かしらあるのだとは思いますが.
記事紹介: 「ChatGPT」に浮かれる人が知らない恐ろしい未来¶
最近いろいろと評判の悪い新井紀子さんへのインタビューです. この記事に関しても批判的なコメントがいくつかありますが, とりあえず次のコメントは私もかなり気になっています.
そのとき、われわれは過去30年間享受してきた「ウェブ」という資源を失うことになるかもしれませんね。
メルマガなりウェブサイト運営なりで少しでも数学・物理関係の面白い情報が届けられれば, と思っていろいろやってきたわけですが, これまでとは違う工夫が必要になってくるのかもしれません. コミュニティベースの口コミ的な要素がますます重要になってくる気もします.
競プロの進捗¶
評判がよいので買ってみた鉄則本で, A問題・B問題が70問程度あり, C問題が20問程度ある中でいったんA・Bが終わってCが残り10問程度になりました. はじめのうちはがんばって考えつつやっていたものの, 後半は息切れしてまずは他の言語のサンプルをもとにF#版を作るだけで手一杯になったため, もう何周かしないといけないものの一周目はもう少しで終わります.
いまさらながら数学・物理学習とプログラミング学習の違いをもっと意識して取り組むべきだったと思うようになったため, 自分用の備忘録がてらいまの所感を共有します.
基本的なアルゴリズムやデータ構造はそれ自体をきちんと読み書きするのは実際によい勉強になります. よくも悪くもF#(.NET)はデータ構造関係があまり充実しておらず, そこを埋めるのはよい勉強になったものの, 競プロの問題を解く中で基本的なコードを何度も書かないといけないのが非常に面倒で嫌になっています. 何だかんだ一番読み書きできるのがPythonなためPythonコードも参考にしていたものの, ライブラリ利用で簡潔に終わらせている場合がよくあります. アルゴリズムを組む上では重要とはいえ, 競プロとして本質的な頭の使い方をするにはF#は向いていないと痛感しています. もう一つ, パラパラとコードを見ているとRustも標準ライブラリ(またはAtCoderで使えるライブラリ)が割と充実していて, 特にAtCoder上での本格的な言語はRustに移行しようかとも思っています. Rust自体, 最近はWebのフロントエンドの処理系やツール開発で標準の言語になりつつあるようで, 多少なりともRustに慣れておくとよいような気もしています.
鉄則本の一周分はF#をメインにするものの以降どうするか検討中です. F#自体はその程良いREPLも含めて非常にお気に入りなので.
スペクトル分解でのハマりポイント¶
通信講座・勉強会で簡単な二次対称行列の平方根と対数を計算する問題を出題しました. そこで検算も入れていたものの検算の計算を間違えていたのですが, この間違いがハマりポイントでした. ウェブ上で式を書くのが大変で, 何度も書きたくないのもあって詳しくはここでは書きません. 興味がある人は次回の通信講座・勉強会に参加してください. メンテナンスまで含めていつどこでどう公開するか悩んだままのPython/SymPyによる検算用コードなども共有しています.
それはそれとして, やはり具体例をきちんと計算して確認する意義を改めて痛感しました. わかっていると思っていた議論にこんな落とし穴があるとは思ってもいませんでした. 二次の対称行列とその計算を馬鹿にしたものではないと実感しています.
熱力学に関わる凸性の議論でも三次のヘッシアンの半負定値性を示す苦労も実感したところなので, 行列の計算は本当に大変です.
熱力学のリハビリ¶
思っていた以上に細かい議論を追いきれないため, いったんふつうに教科書の一般論を読んで復習するモードに切り替えました. 特に学生時代に一所懸命読んでいた田崎さんの本を読み直しています. やはり慣れた流れなので読みやすいです. 大きく言えばおそらく新井先生の『熱力学の数理』も同じ流れと思います. 特に新井先生の本は前書きで「エントロピーや絶対温度は導出するべきものとはみなさない」というコメントがあります. もちろんLieb-Yngvasonの論文をうけた話です.
エントロピーの導出はともかく, 絶対温度の導出にはさほど興味がないのですが, いまは力学と同じく孤立系から議論をはじめて相互作用系に進むという流れで定式化したい意図があります. 田崎さんの本のように絶対温度をはじめから仮定すると当然外界との相互作用がはじめから前提になるため, ここを整理し直すのが当面の目的です. もちろん「孤立系」とは言ってもいわゆる「外界」がないだけで, 適当な意味で系の相互作用を考えなければいけないのが熱力学ではあります.
次の次の通信講座開催には計算問題整備が間に合えばいいなとは思っています. 今度は線型代数ではなく, 多変数の微分に関わる計算練習と熱力学というテーマで通信講座を組もうと思っています.
日々の自分用メモ¶
ChatGPTメモ: 春におすすめのダイエット用冷スープレシピを提案してください¶
春におすすめのダイエット用冷スープレシピとして、「トマト冷製スープ」を提案します。
- 【材料】
- トマト … 6個
- キュウリ … 1本
- 赤パプリカ … 1/2個
- レモン汁 … 大さじ2
- オリーブオイル … 大さじ1
- 塩 … 適量
- 黒胡椒 … 適量
- 【作り方】
- トマトは皮をむき、ヘタを取ってざく切りにする。
- キュウリは皮をむき、種を取ってざく切りにする。
- 赤パプリカは種とヘタを取り除き、ざく切りにする。
- フードプロセッサーに1〜3の材料を入れ、なめらかになるまで混ぜる。
- 混ぜたスープにレモン汁、オリーブオイル、塩、黒胡椒を加えてよく混ぜる。
- 冷蔵庫で冷やしてから、器に盛り付ける。
トマトにはダイエットに必要な栄養素が含まれており、また、トマトの酸味やレモン汁の酸味が食欲を抑えてくれる効果があります。キュウリや赤パプリカも低カロリーで、食物繊維やビタミンCを豊富に含んでいるため、ダイエットにも役立ちます。オリーブオイルはヘルシーな油で、味のアクセントにもなります。是非お試しください。
ジャガイモやカボチャを使った冷スープレシピも提案してください。
ジャガイモやカボチャを使った冷スープレシピとして、「かぼちゃとジャガイモの冷製スープ」を提案します。
- 【材料】
- カボチャ … 300g
- ジャガイモ … 150g
- 玉ねぎ … 1/2個
- 牛乳 … 150ml
- コンソメキューブ … 1個
- 水 … 400ml
- 塩 … 適量
- 黒胡椒 … 適量
- クレソン … 適量
- 【作り方】
- カボチャは種と皮を取り除き、小さめの角切りにする。
- ジャガイモは皮をむき、小さめの角切りにする。
- 玉ねぎはみじん切りにする。
- 鍋に1と2と玉ねぎ、コンソメキューブ、水を入れて火にかける。
- 煮立ったら中火にし、野菜が柔らかくなるまで15分ほど煮る。
- 火から下ろして、粗熱が取れたら牛乳を加え、フードプロセッサーでなめらかになるまで混ぜる。
- 塩、黒胡椒で味を調え、冷蔵庫で冷やしてから、器に盛り付ける。
- クレソンを飾って完成。
カボチャとジャガイモはどちらも食物繊維やビタミン類が豊富で、低カロリーなのでダイエットにもぴったりです。また、牛乳を加えることでまろやかな味わいになり、食欲を満たしてくれます。クレソンは栄養価が高く、彩りも良いので、ぜひトッピングに加えてみてください。
公理的凸集合論¶
- URL
- Van de Vel, Theory of Convex Structures
全さんの社会物理学¶
複雑系物理学の細菌の発展の一つが「社会物理学」です。私自身の最近やってる仕事はこのあたり見てください。 https://twitter.com/Quantum_Zen/status/1613110136415088643 こおゆう話、寺田寅彦に聞かせたらきっと喜ぶ事間違いなし
複雑系物理学的、数理科学的手法を使っての社会現象の研究の、数式使わない解説が拙著の次の章に見つかりますので、本持ってる人は参考にしてください 「銀河の片隅で科学夜話」第13夜 「渡り鳥たちが語る科学夜話」第13夜、第15夜
そいえばプロ向けの本が最近出て、これはストロガッツ読み終えたレベルで読んだら、社会物理学の研究最前線に即達するすごいやつです。社会物理学の創始者の一人、小田垣孝先生たちの本 https://amazon.co.jp/dp/4320036190 「社会物理学-モデルでひもとく社会の構造とダイナミクス」
TeX 参考文献リストに本文引用ページ番号をつける¶
\usepackage[pagebackref=true]{hyperref} とすると参考文献リストの末尾に本文引用ページ番号がついて非常に助かっているのだが,単に数字が出るだけなので,本文のページ番号なのかどうか,パッと見わからんなぁと悩みだしたが,再定義方法があった.
リベアルアーツ大学の死¶
米国で「リベラルアーツ大学の死」が始まった 英文学も歴史学も資本主義に抗えず
2月にバージニア州のメリーマウント大学が、英文学や歴史学、哲学、社会学などの専攻をなくすことを決めた。全部で10の専攻が削減されたが、そのほとんどがリベラルアーツだ。
これらの学問は人気がなく、専攻する学生が少ないからだという。講義科目としては残るが、専攻したりその学位を取得したりすることはもうできなくなる。 米国では2016年以降、87校ものリベラルアーツカレッジが閉鎖、あるいは近くの大きな大学に合併された。
宗教二世問題から考えるべきこととは¶
トランス差別, 性別で区分されたスペース編¶
ここ最近のトランス差別の盛り上がりについてみんなたちに伝わる言い方でののべから発信しようと思って考えてたんだけど、疲れてRTばかりしている トイレ風呂は100万回擦られてる話で、ここにわかりやすい解答があるから見てみてね 「素朴な感覚・疑問」って、「あんまり考えてなくて何も知らなくてまったく調べてない」ってことだから、あんまり開陳しない方が良いと思う……ののべは……
みんなね……リンク踏まないよねたぶん……簡易に書くからね……
トイレはどれ使うの? →自分の状態やその場の状況に合わせて適した方を使うみたいだよ
公衆浴場ではどうしてるの? →性器の形に従うみたいだよ
100万回擦られてる風呂トイレの話を「今」盛り上げてるのって、「差別を禁止したら、マイノリティを自称することで何をしても無罪になる」みたいなあり得ないことを主張してる人たちで、ここ最近のTwitterを眺めてて「確かにトイレに男の人入ってきたら怖いよねー」と何となく思ったみんなたちは、 その先に「だからセクシャルマイノリティの差別を禁止するのはやめよう」を用意している人たちがいることを覚えていてほしい みんなたちはたぶん「そんなつもりない」んだろうと思うので
冷蔵庫の残り物からChatGPTにレシピを提案してもらう¶
主婦の皆へ、これがchatGPTのとても便利な使い方です。夕飯に悩んだら冷蔵庫の材料を伝えて見ましょう。うちの冷蔵庫の中身が少なかったのと、和洋折衷それぞれレシピについて提案してほしいと伝えたらもっと解像度高いかもしれません。
2023-03-04¶
数学・物理 思った以上に熱力学がつらい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告: 最近のAIを試しはじめてみた
- 熱力学のリハビリ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近アラビア語学習に関連してChatGPTを使いはじめました.
比較的最近はじめた知人とゆるくやっているWeb系のオンライン勉強会があり, その知人はイラスト・映像系の仕事もしているため, Midjourneyなど最近のAI関係の話もゆるく共有していました. 数学・物理に関わる教材でイラストや動画を作るのにも転用できないかとずっと興味はあったものの, なかなか具体的な遊び方が見つからず悶々としていたのですが, ふとこれまた別途やっている(教えてもらっている)アラビア語勉強会で, アラビア語学習に使えないかと思い立ち, ちょこちょこ使っています. 簡単にその状況を紹介します.
はじめは翻訳ついでに母音つきアラビア文字を書くのに便利だと思ったものの, 実際には間違いが多いのでこの方向は捨てました. 他の人はともかく私はEmacsで母音まで自力で打てるため, 余計な確認・調整が不要な点で自分でやった方がよほど早く正確にできる結論にいたりました.
他に便利な点があります. 特に勉強会で教えてもらったあとに「これはどう取ればよかったか」とわからなくなったとき, 簡単な文の文法的解説をしてもらうときに役に立ちました. オンライン勉強会なので録画すればよかったものの忘れていたのでその補助です.
文字からして勉強が必要なロシア語・アラビア語・ヒンディー語, そして格変化が激しい言語を勉強するとよくわかるのですが, 単語の認識と文法的な役割の把握がとにかく大変です. そして単語はよくても熟語の把握が大変です. 単語さえ覚束ない状況で, どんな熟語があってどの組み合わせで熟語になるか判定するのも大変です. 一度勉強会で聞いたあと, 大雑把であっても本に解説がある文を復習する目的にはかなり役立ちます.
微妙に使いにくい(不正確)なことはあるものの, 大雑把に発音を調べたり, 動詞や格変化の活用を調べるのにも多少は役に立ちます. ちなみに「たまに(少し)間違えている」という勉強への利用が難しい状況もあるため, あまりお勧めはできない用法です.
他にはためしに一つ数学の証明を聞いてみたらまるで駄目でした. 全く期待していなかったので単に共有です. 全然関係ないですが, 割と前から初等幾何の定理の発見と自動証明というテーマがあります. グレブナー基底の有名な本にも書かれているので興味がある人は読んでみるといいでしょう.
最近新版の和訳が出たはずです.
あと最後に言葉遊びとして数学川柳も作らせたりしてみました.
他にも勉強会で共有した内容として, ブレストに付き合ってもらうとか, 一日の最後にAIに褒めてもらっていい気分で一日を終えるといった応用をしている人もいるようです. 何かを教えてもらったり検索するばかりが応用ではありません. 少なくとも簡単なプログラムについては自分で考えるよりChatGPTに聞いた方が早い場合もあれば, 最近の知見を踏まえてプログラムを提案してくる場合もあってよい再学習にも使えるという話もあります. 私も自分なりの付き合い方を考えるために今後もちょくちょく遊んでみる予定です. 一番はコンテンツの挿絵・動画作りに応用できるといいのですが.
熱力学のリハビリ¶
タイトルの話です. 思った以上につらいです. いくつか本を漁りつつ具体例を引っ張って計算しているのですが, 具体的な関数に対する多変数としての凸性の証明で一週間以上悶絶していました. 微分可能な関数はヘッシアンの半正定値性や半負定値性を示せばいいものの, 計算ミスしたりどう示せばいいかすぐにわからなかったりと大苦戦しました. 多変数の凸関数に対してここまで理解が浅かったかと反省しています. 学生時代は一般的な状況下でのいわゆる微分形式的な微分の計算などで苦戦していた記憶があり, 学生のときに読んだ田崎さんの教科書も一般論中心に読んでいたため, 熱力学に対する具体的な例の計算がここまで弱いかと自分で驚きました.
凸関数に対する肌感覚もなく, 具体的な命題の定式化や反例構成にも苦労しました. 証明を読めばわかるものの慣れていないと簡単な命題さえ自力で証明するのは一苦労です. ついでにヘッシアンの議論などを現代数学探険隊にきちんと収録していなかったのにも気付いたため, いい機会と思ってそこからノートをまとめています. 改めて物理にも触れながら多変数の微分と極値問題の計算練習ができる教材として, 熱力学はなかなかよさそうという気分も出てきています.
ちなみに多様体上でのヘッシアンは座標系への非依存性を課す必要があるため, 臨界点でしか定義されません. ユークリッド空間上での議論ではそうした点への言及なく定義されます. 多様体上での議論に持ち上げるときには注意するべき要素でもあり, ヘッシアンの定義と議論だけでも実はそれなりの背景があります.
ところで清水本の第一版を読んでいて, 定理4.9などでエネルギー$U[S,X_1,\cdots,X_n]$が$X_i$達に対しても下に凸などの議論がありますが, あれは正しいですか? 具体的な$(U,V,N)$変数なら他の本などとも合わせてそうなるのはいいとして, 清水本の一般的な設定から一般の示量変数に対して4.6節の内容がどこまで成り立つのかさっぱりわかりません. $U$が$S(U,X)$の$U$に対する逆関数であるだけでは変分原理も自明ではないのでは? 凸関数に対する肌感覚がないため, 自力で証明がつけるのが困難で苦しんでいます.
日々の自分用メモ¶
An Algebra of Observables for de Sitter Space¶
Wittenらによる論文。de Sitter空間上でのオブザーバブルのなすフォンノイマン環が、通常場の量子論の文脈で現れるIII型と違い、重力の影響でII型になるらしい。そのうち読みたい。 An Algebra of Observables for de Sitter Space
ChatGPTと認知症¶
chatGPTって凄いのよ。と母に説明したら、「私の友達の認知症の人に似ている」というびっくりする感想が帰ってきた。母曰く、その人はなくした記憶を補完するために勝手にエピソードを記憶して、辻褄を合わせるのだという。 母は健康のためにプールに通っているのですが、その友達は先生の指示をよく忘れて間違える。例えば腕を〇〇回回してください。みたいな指示でも間違えるのだけれど、聞いてみると、忘れてしまったという自覚は一切なく「先生が途中で指示を変えた」などの存在しない記憶を言うのだという。 そう考えると、これも脳の働きなんだろうかという気になってきました。例えば私達の視覚は盲点とか、結構抜けがあるんですが、脳の方で処理して辻褄を合わせるために普段はおかしいと気がつけない。で、もしかしたらですが、視覚がそうであるなら、記憶や認知も似たようなもので、 抜けがあった場合、そこを無理やり補完して何事もなかったかのように処理を続ける機能がついているのではないかと。認知症になって、記憶自体がボロボロ抜け落ちるようになっても、そのつじつま合わせの機能は動き続けているので、勝手に記憶を捏造する。ということが起こると。 chatGPTにお題を2つ入れると、その点と点を時にはアクロバティックにつないでくれるんですが、この動きってもかして、人間も同じようなことをやっていて、だからこそ、人間っぽく見えるのかもしれません。 人間は記憶を思い出す時、細部を勝手に捏造する(ので思い出すたびに微妙に変わっていく)という話を聞いたことが有るので、もともとそんなものであるのかもしれません。
2023-02-25¶
数学・物理 数学で外語大に行きたい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 量子力学のための線型代数
- 熱力学のリハビリ
- ファイバー束の話
- AIと安全保障
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
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近況報告¶
Twitterで次の記事を見かけました.
何が1.1倍になったのかまだ調べていないのですが, もしや数学利用なら外語大にも比較的簡単に入れるようになっているのか, と思い, 大学に行きたい熱が出ています. 特にここ数年は「理系のための総合語学」を謳いはじめた以上, 言語学をもっときっちりやりたいと思っているため, 渡りに船という感じがあります.
もちろん生活を考えながら勉強に集中できる環境を作る必要があり, 勉強以上にこれが問題です. お金もきちんと稼ぎながら言語学まで含めた学習環境を構築し, さらにそれを提供したいですね.
先日書いた中高生向けの(競技)プログラミング学習も乗り気な子がいるらしく, 具体的に話がしたいという話もあります. 英語でエラーメッセージを読む部分でも何かしら語学教育に関係する話が必要で, この辺の具体的なノウハウも必要になってきそうです.
量子力学のための線型代数¶
先日募集した通信講座+勉強会が本格的にはじまりました. 記号や用語に関して指摘が入って確かにそれはそうかという指摘があったため, 念のためこちらでも共有します.
特に作用素(演算子)の共役と随伴です. 行列のエルミート共役は英語でHermitian conjugateと書く場合もあれば, Hermitian adjointと書く場合もあります. 前者は日本語で共役と訳す一方で後者はふつう随伴と訳します. さらに英語でself-adjointと呼ばれる概念は作用素論では自己共役だと訳す一方, 直訳は自己随伴です. これに関してself-conjugateは見た記憶がありません. このように英語と対応する日本語がぐちゃぐちゃになっています. 慣れてしまっていてもう何とも思わなくなっていたところに質問が来て, 確かに, と思っていろいろと補足しました.
あと複素共役の記号, 作用素の共役(随伴)の記号, 内積の定義も数学・物理で食い違いがあります. 私は育った文化圏・読んだ本の関係で数学・物理の記号がこれらのチャンポンになっていて, 余計に注意しないといけないのを久し振りに思い出しました.
熱力学のリハビリ¶
理論もいいですがやはりここ二年程度の計算練習へのフォーカスもあるため, まずはいろいろな本を参照しつつ計算ノートを作っています.
変分原理を具体的に計算するところで具体的な多変数関数の極値問題を議論する必要があります. これがとにかく面倒です. 多変数だと図に描くのが大変なのもさることながら, 単純な導関数の計算も大変で, 導関数を計算したあとに広義の増減表を書く必要もあります. もちろんグラディエントやヘッシアンの計算・評価です. これがまた大変で辟易しています. いったんプログラムを書いて図示して濁していたのですが, 先程風呂に入りながら考えていたら楽に計算できそうな方法を思いついたため, メルマガを出したあとに計算する予定です.
あと改めてエントロピーに対する制約も眺めていて, 熱力学は本当に強烈だという思いを新たにしています. 一次同次関数の制約があるため, エントロピーに恐ろしく強い制約がかかっています. 計算しやすい問題を自作しようと思ったものの, この制約をみたす範囲で作らねばならず, まずはふつうの本に書いてある典型的な例で肌感覚を育て直そうとしているところです.
ファイバー束の話¶
この間ファイバー束の話をしてほしいというアンケート回答をもらったので, 私の認識まとめ・復習ついでに簡単な勉強の指針のようなものを書きます.
ファイバー束はある図形の各点に別の図形が連続にぺたっと張られた図形がもともとの動機です. 例えば三次元空間のxy-平面に円周を置いて, 円周の各点からz軸に平行に直線を生やすと無限に伸びた円柱が得られます. これは特に各点から直線(線型空間)が生えているためベクトル束の例です. 直線の代わりに円周の各点を中心にした小さな円板を生やすと中身の詰まったドーナツが得られます. 円板を円周にすればトーラスが得られます. これはファイバー束の例です. 当たり前すぎるからか幾何の本に書いてあるのを見かけた記憶がないのですが, まずはこれをアーキタイプと思うとよいでしょう.
問題は数学の本の一般論とのバトルです. 単純に勉強が足りていない(実際に勉強中)ため, 私自身ファイバー束の一般論は本当にわけがわかっていません. 玉木大さんの「ファイバー束とホモトピー」の講義録版PDFを眺めたとき, ファイバー束の具体的構成が書いてあって, 比較的簡単な例でも構成をきちんと書くと非常に面倒なことがきちんと書いてありました. 一般論も大変なら具体例の構成とそれをきちんと書くのも大変な対象です. 何にせよ数学を勉強するなら絶対に一定以上の気合は必要なので仕方ありません.
もう少し楽な上, いろいろな応用もある主束から攻めるのがよいのではないかと思っています. 主束は同伴するベクトル束もあり, ベクトル束の気分をある程度持ち込めるのが便利です. ベクトル束と言えばもとの多様体の情報を直接持っている接束・余接束があり, 計算し倒せる具体例としてもこれ以上なく便利です. もっと言えば主束もまた楽ではないため, さらにベクトル束から攻めるのがよいと思っています. 実際私が地道に進めているアプローチです. 特にリーマン幾何は接束・余接束の解析と直接関係し, ホッジ理論のような基礎理論とも関係するためちょうどよい目標です. 解析的に(コンパクト)多様体上のソボレフ空間のレベルまできちんと詰めようと思うと大変なので, 進め方と解析学の素養次第で多少調整は必要でしょう. 何にせよ面白い対象ではあります.
ただで幾何部分だけで添字や記号の嵐で大変なところに解析学まで含めると負担は計り知れません. 適当に調整して進めてください. 多様体上の線型代数としてホッジ理論に挑むだけでも本当に骨が折れます. ベクトル束の議論も多様体上の線型代数の側面があるため, やはり線型代数は一定以上の素養が必要です. 単なる計算だけではなく抽象論が必要な点には注意が必要です. いま展開している量子力学のための線型代数では, まさにクロネッカー積による具体的なテンソル計算に入ったところです. これだけでどうにかなるわけではありませんが, 量子系の物理・数理に興味があるなら一つの道としてお勧めできるアプローチです.
AIと安全保障¶
松尾豊先生が政府のAI討論会で発表した資料を読んでいて動悸が止まらない。 賽は投げられた。
個人的には安全保障上Aを直ぐに、しかも先ずは100億ででも。計算資源は今直ぐ産総研ABCIを実質割当て、かつ拡張も同時に。理研でも富岳を用いつつ密結合したLLM学習マシンを横に構築しABCIとダークファイバで3.2Tbpsで直結しデータやモデルを共有。AIP, AIRC, NICT, 大学や民間の言語AIコミュ総動員
なるほど。「言語の本質を解明する道が拓ける」とか「宿題が解けるw」とかそういう次元とは全く違うところで重大なことがおきている。
上で外語大に入りたいという話を書きました. この辺, いわゆる文理融合系の話で今後本当に大事になってきそうです. 最早私はこの辺の実務に携われるような人間ではありませんが, この領域を目指す人間の数学的基礎体力向上には役立てる人間にはなりたいと思っていて, 何とかして外語大に入って関連する領域を(再)学習する機運が私の中で高まっています.
日々の自分用メモ¶
営業力を鍛えよう¶
東京一工の賢い学生がマッキンゼーだの投資銀行だのに集まる根源的理由は『そこで働くことが自分が賢いという証明になる』、『営業なんてブルーカラーでなく戦略や投資のがホワイトカラー』的価値観だと思うんですが
結局そこに行っても案件取ってくる『営業力』がないと行き詰まるから営業力こそ命
まだマッキンゼーがどこの馬の骨ともつかない頃、大前研一御大なんてリクルート営業方式にビルの上から下まで片っ端からどぶ板営業かけて、頼まれてもないのに勝手に分析レポート作ってプレゼンして案件取ってきてたんだからな? MIT卒の博士がそこまでやってんだぞ? 見習おうぜ?
特異値分解¶
ああ「特異値分解」は,行列の対角化と比較するよりも,いわゆる「階数標準形」と比較する方が理解しやすいですね.そう思えばまったく自然な考え方.実 (m,n) 行列に対して GL(m,R)×GL(n,R) 軌道を考えるのと O(m)×O(m) 軌道を考えるのとの違いです.複素ならば U(m)×U(n) です. そう考えると,GL(n,R) の極分解,すなわち O(n) 軌道の記述から「特異値分解」が<存在する>ことがしたがいます.つまり,代表元のパラメーターとして r=rank(A) 個の正の実数からなる列がとれます. GL だとベクトルの長さを自由に変えてしまうので階数の情報しか残らないけど「応用」の場面ではノルムは大切な場合が多いので直交群(ユニタリー群)の作用を考える.そうすると「特異値」が意味のある量として残る.そういうことか. すると p 進数体上の「特異値分解」とその応用もあるかな.
p進数体だと開コンパクト群が格子の自己同型群つまり成分がp進整数の行列群で、極分解に対応するのはPID上の格子の標準型ですよね。
階数の計算においても,変換行列を覚えておくと,例えば逆行列が計算できるけど,忘れてしまう場合も結構ある.特異値分解では変換行列(左右の特異値ベクトル)はとても大切な情報で,その先の計算に使う.A =UΣV と書くのと UAV=Σ と書くのでは,ちょっとニュアンスが違うわけ.
例えば『東京大学工学教程 線形代数I, II』(室田一雄、杉原正顯 著)にも,ちゃんと読めばそう書いてあるんだけど「AA を考える」から始まると,計算に目がうばわれて意味をとらえるのに時間かかった💦 「正方行列の対角化を長方形の行列に一般化するのが特異値分解である」という導入(Anthony Bosman さんなど)はなんか変だな〜と思った. だって階数標準形も「対角化」だからね!! ノルムを保つ基底変換のもとでの線型写像の標準形といえばいいだけ. エルミート行列 A を UAU(Uはユニタリー行列)と変換する話を特異値分解の特殊な場合だと説明するのは間違い(誰もそうは言ってないかもしれないけど)で,特異値分解のように U*AV とするのとは別な話と思うのが自然. 特異値分解はさまざまな行列分解の一般最終形ですというのは confusing だ.
なるほど。確かに階数標準形(対角に1を並べて残りは0)は、V→Wで両側空間の基底を独立に選んで、Eに近い形に同値変形(ランク不変変形)するA=PE'Q⁻¹(P, Q は基本変形行列)。この基底を直交に限って対角化すると表現行列が特異値で対角化されるA=UΣV⁻¹(U, Vは直交行列)、ということか。
加法的関数の連続性について¶
定数倍を与える関数 $x \mapsto ax$はこのようなものとなっているが, (∗) f (x + y) = f (x) + f (y) を満たす関数で定数倍関数でないものは存在するのだろうか?
一見非常に単純に見える問題であるが,実は,この問題の答は選択公理を認めるかどうかで違ってくる: 選択公理の下ではコーシーの方程式を満たす関数で定数倍関数と異なるものが無数に存在するが,選択公理を認めないときには,「コーシーの方程式を満たすすべての関数は定数倍関数である」という命題が正しいものでありうる.
シャファレビッチの代数幾何の本¶
シャファレビッチ,代数幾何の2冊本もとってもオススメ.これでもか,これでもかっていうくらい驚くべき例が書いてあります.(私が無知なだけですが.) 入門書だけど,こっちも哲学的で好き.↓ 代数学とは何か
マンフォードの本¶
この本,Algebraic Geometry I で,II が出てないよなぁと思ってたけど,今回 Mumford の website で II がフリーアクセスで公開されているという驚愕の(?)事実を知った. なんと共著者は小田忠雄さんだぁ.読むべし.(^^;; Mumford ComplexProjectiveVarieties PDF
Texromancers, Quillen's "Homotopical Algebra"¶
Boosting: Quillen's "Homotopical Algebra" has been LateX'd up by the Texromancers group!
Link: http://aareyanmanzoor.github.io/assets/books/homotopical-algebra.pdf
Dyslexic friendly version: http://aareyanmanzoor.github.io/assets/books/homotopical-algebra-dyslexic.pdf
性を売るのは合法にして、性を買うのは犯罪にしろ?:北欧モデルvs非犯罪モデル¶
この「売るのは合法だけど、買うのは犯罪」という北欧モデルは、直感的には売る側有利に見えるけれど、実態としては圧倒的な買う側有利をもたらすわ。この法案を2009年に採用したノルウェーも、今では「北欧モデルが売春を買い手市場にした」と認めているくらい。
アルゴリズム全体主義¶
世界思想の最新版の、成田悠介論説の結論。こいつ、ホントどうしようもないなあ。今さらアルゴリズム全体主義ですか。
このツイートの存在にずっと気付いてなくて、昨晩読んでしまって笑い転げた。 やっぱり「知的レベルが低い」としか言いようがない。 今時の中学生はこの手のことを言うと馬鹿にされることをネットで見てよく知っているので、現代的には中学生にも馬鹿にされるレベルだと思います。 統計学ファンであれば、ゲルマンさんのブログで成田祐輔さんに関するNew York Timesでの記事が話題にされていることをすでに知っているはず。 ゲルマンさんのブログで悪い意味で取り上げられることは統計学方面では相当に怖いことだと思われます。 Yale prof thinks that murdering oldsters is a "complex, nuanced issue"
p値は使うべきではない¶
そもそも p 値は難しすぎるので使うべきでない(過激派) 「コインを 12 回投げたら 3 回表が出た。このコインが偏ってないといえるか」に対する答えが事前にどういうルールでコインを投げることにしたかに依存しちゃうし,事前にどういうルールにしたかなんて本人の申告以外に信用する手段がないんだから原理的に厳しい.(→実験の事前申告性へ) それを乗り越えたとしても,有意だったらなんなのかがよくわかんない.本来欲しいのは p(仮説が正しい | 観測) のはずなのに p(観測 | 仮説が正しい) を測ってるから,例えば p(仮説が正しい) がめっちゃ低くても高い値が出ちゃう.
位相的場の量子論のノート¶
Ko Honda 教授@UCLA このノートすごいよ.リー群とリー環を2ページで済ませたあとsl2とsl3に.ここまでは普通. KacMoody, Virasoro, 経路積分,WZWモデル,KZ方程式,ブレイド群と結び目,リンクとジョーンズ多項式,Witten不変量,写像類群にChern-Simons理論と続く. https://math.ucla.edu/~honda/math635/notes.pdf これ半期の授業でやるんだ.演習つき. UCLA なかなかきてるな. Ko さんの講演もすごく良かったね.
生物多様性¶
あんまこれも見せたかないんだけど。
私みたいな生物系の資料とか探している方は バイオダイバーシティ遺産図書館ではさ。
生物系の数十万枚以上の資料あって それが現代ではなく18世紀~19世紀の 航海記録や動物誌、植物誌のまとめ。
で「全部著作権フリー」 自由に使ってええのよ
無駄は一度しか削れない¶
前々から思っていた「無駄は一度しか削れない」という概念を図にしました。
北大の統計力学シラバス¶
準備学習(予習・復習)等の内容と分量
そんなことをとやかく指示されては不愉快であろうから任せる. 大学は自由である. 範囲外も立入禁止区域も無い. 本能と闘争心の赴くままに, 演習書と戯れ専門書に手を伸ばしたら好い. ただ物理の読書は, 文字通り『読む』のではなく, 『考え』て『手を動かす』ことであると, 貴重な10代, 20代に叩き込んで欲しい. それから, 志を同じくする身の回りの物理っ子と沢山議論をしよう. そうした中でなお, 自身の理解では不安だったり, 計算に悩んで座礁したり, その時この講義がオアシスや助け舟の役割を果たせたら良いと, 心から思う.
ティコ-ブラーエ¶
デンマークの天文学者ティコ・ブラーエはヘラジカを飼っていたが、←!? そのヘラジカはあるとき、宴席でビールを飲んで酔っぱらい、階段から転げ落ちて足を折り死んだ←!!!?!? 一言ごとに「!」を挿入したくなる逸話 鍵の方から教わったネタもとを貼っときます
沖縄と台湾¶
昨日沖縄で開かれた「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」のシンポジウムは現状維持と平和を目指す台湾社会への無理解と侮蔑的な姿勢が重なった。特に沖縄タイムスの宮城栄作編集局長による台湾に対する筋違いの図々しい「要求」は台湾側の神経を逆撫でする対話とは正反対で今後の議論を困難にしかねない衝撃はあった。シンポジウムは昨年10月に行われた「沖縄対話プロジェクト」の発足イベントに続いて行われたもの。台湾側から2名の識者を招き、沖縄の「識者」と議論する形だった。台湾側の2名は一般的にそれぞれ民進党と国民党の立場に近いとされているものの、見識を深く備えた学者である。シンポジウムはまず10月に行われた発足イベントの議論内容の紹介から始まった。10月の内容自体が台湾海峡の現状と構造を全く正しく認識できていないものだったが、今回のシンポはそれを踏まえる形式をとって始めてしまった(10月イベントの詳細は下記ツイートをご参照ください)。
すでに嫌な展開となったがその後の稲嶺恵一元知事の基調講演や招かれた台湾側識者2名のプレゼンは時間やまとめ方などテクニカルな問題を除けば大変有意義だった。これはシンポの流れも改善されるかと失望状態から少しだけ希望を持ちはじめてすらいた。しかし、次に行われた沖縄側の一部識者のコメントや対話セッションでのやりとりで再び失望した。コーディネーター(司会)である前泊博盛氏による台湾への理解が全くないからなのか要領を得ない質問の振り方は失望の象徴である。台湾側の識者は彼らにとって外国語である日本語で台湾有事の引き金を引くのは中国であって、ボールは台湾側になく、有事を招かないよう台湾は抑制的に振る舞っていることを懸命に説明し、有事の可能性についても台湾海峡の情勢を踏まえて冷静に論じた。だが、前泊氏は「どう台湾有事の可能性はないと2人に言わせて帰すか」「戦争はない、有事はないと2人にどう伝えるか」などあたかも両名が好戦的であるかの前提で議論を振り続けた。途中で「台湾が武力衝突を回避してきた知恵は何か」との質問を振っていたが、それこそ「台湾独立」など有事を招きかねない動きを台湾社会全体はバランス感覚を持って抑制してきたとともに、中国を台米日などで淡々と抑止して中国による台湾侵攻を先送りさせてきたからにほかならない。その認識も共有せずにコーディネーターをやっていたのならあまりにも準備不足だったと言わざるをえない。そして沖縄側の識者として出た高嶺朝一氏(元琉球新報社長)は「(有事は)ないでしょう笑」と一笑に付した上で、「あってほしくはありません」と言った。台湾側もあってほしくないと平和を求めているにもかかわらず、嘲笑的態度だったのが前泊氏の振り方も相まって実に失礼に思えた。続けて高嶺氏は台湾側論者が例示した米国高官による2027年までに台湾危機が顕在化するとの警告について「(高官は)次の仕事を探すためにそういう発言をする、煽られないように気をつけないといけない」と反論した。これはシンポで議論する上であまりに雑な扱いだ。求職活動のためという目的が含まれていたとしても政府・軍高官がなぜ公聴会やインタビューなどの公式や公の場でそのような発言をするかといえばシグナルの役割があるわけで、それは何の意味をもつかを着目して分析する必要がある。2027年までに台湾侵攻を中国が整える可能性が言及されているのは、中国の経済力と軍事力の強化に伴い、台米日等による対中抑止力とのギャップが埋まりつつあり、野心的な指導者(習近平氏)の登場で台湾の武力統一の可能性が過去と比較して高まりつつあるからでそれをこれまで通り有事を先送りさせるために防衛強化が必要なことを訴えるためだ。本当に侵攻が起こる可能性はまだ低いものの、有事の目を摘むための防衛強化議論が各国として必要となっているがゆえの発言だ。煽っているのは確かだが、それによってようやく必要な防衛強化議論ができるわけで、その背景を踏まえて台湾側の識者は例示をしている。前提のおかれた専門的な見方を揚げ足をとるように一蹴して議論の発展を期さないのは全く対話の姿勢が感じられない。そしてとどめを刺したのは対話セッション終了後にコメンテーターとして登壇した沖縄タイムスの宮城栄作編集局長の次の発言だ。「台湾の人たちも有事にならないように、あるいは日本や沖縄に迷惑をかけることのないようなしっかりした世論を築いていっていただきたい」。一体何様のつもりであるのか。この発言は台湾で昨年行われた世論調査で台湾有事に自衛隊が参戦するかとの問いに参戦を信じると答えた割合が4割を超えていたことを受けてのものだ。確かに憲法9条をはじめとした制約を理解している人からすれば台湾社会の日本に対する理解不足は目につくが、これは台湾政府や台湾の専門家も危機感を覚えている。日本が有事に際して直接台湾に自衛隊を派遣することはないと台湾の政策担当者は誰もがわかっているし、誤った認識の自国社会に現実を理解してもらい、台湾は台湾自身で守るのが前提で、対中抑止強化をまず自国で高めようと注力している。そもそも自衛隊の参戦期待は一昨年の調査では5割を超えており、日本への過度な期待は落ち着いてる傾向だ。せめて「台湾にも日本の政策や理念への理解を深めてもらいたい」など相互理解を前提にした指摘をすればよかった。台湾社会は70年以上戦争の脅威に直面し続け、大国間に揉まれながらも有事を回避して平和を保とうとバランス感覚を身につけ、それこそ迷惑にならないよう成熟してきた。そんな台湾社会に「迷惑をかけるな!ちゃんとした世論を作れ!」と要求するのは台湾をどこまで愚弄すれば気が済むのかと本当に怒りを覚えた。シンポのアーカイブを見た台湾政府にいる友人はこの発言を受けて「そんなに迷惑な存在だと思われてるということは沖縄の主流民意は台湾が中国に統一されることを望んでいるのか」と私に聞いてきたが、「わからない」と答えることが精一杯だった。ここまでで名前をあげた方々には強い言葉で申し訳ないが次の言葉を贈りたい。恥を知れ、と。それほど今回のシンポには失望を通り越して絶望した。救われたのは山本章子先生(琉球大)が最後に発言されたウィットに富んだ次のコメントである。「議論のスタート地点を明らかにした意味で有意義だった。願望や政治的主張でなく現実として我々が今のどこに立っているのか台湾と沖縄のそれぞれの立場から確認できた。今後も事実として我々が今どこに立っているのか、立たされているのか絶え間なく確認したい」。このコメントに私は全面的に同意するとともに沖縄の識者にこの言葉が通じることを私は期待している。また同じく沖縄側で出席した神谷美由希氏の姿勢もありがたかった。台湾や中台関係についてわからないから知りたいとの姿勢は対話において重要に思えたし、台湾側もそれにうまく応える環境が整っていればよかったのにと悔やまれる。そして、台湾側も同じように沖縄が何を考えているのか自分たちの考えを理解してもらいたいのと同じように知る上で、神谷氏の姿勢は学ぶところがあったと思う。ここまで感情的な点も含めて今回のシンポジウムについて長々と書いてきたが、改めて最大の問題は基本的な知識と理解が欠如して相手に対して敬意ある姿勢を示すことができずに対話にならない点と指摘する。プロジェクト主催者には中国や台湾の専門家を名乗る人物も含まれているが、彼らは明らかに台湾や中台関係に対する認識とそのフレームが20年以上前の状態から更新されず、見方が政治的にも偏ってしまい、現在の台湾の主流民意を理解できていないことが窺える。あと2回のシンポをどのように展開するのかわからないが意義ある対話が今後できるとはとても思えない。プロジェクトを継続して健全に発展させたいなら早急に最も簡単なものでいいから台湾に関する基本書籍を読むか然るべき人からレクチャーを受けてほしい。最後には台湾政府にもプロジェクトのまとめとして意見書を提出するようだが、今回のシンポの内容を見る限りとてもじゃないがまともに内容を相手にしてくれないだろう(出すことが目的化しているなら気にしないだろうが)。今回のプロジェクトがせっかくの機会だったのは間違いない。台湾と沖縄はともに「帝国」の狭間で翻弄された歴史をもち、自分たちの権利や主権が蔑ろにされてきた過酷な運命を背負ってきた。相互理解とともに平和を求める共通の利益も本来あるはずだ。歴史的経験と共同体の記憶の違いから埋めがたい差があるものの、それを乗り越えて大袈裟に言えば東アジアの平和のパートナーの一例になる契機にもなり得た。だから他の人が私に「出席者みたら無意味だとわかる」「沖縄左翼の自己満足」と批判してきても趣旨に賛同して期待もし続けた。対話は相手を尊重し、まずは受け入れることが重要だ。今回、対話を仕掛けた側は本当にその姿勢をもっていたのか。結果を見る限り、それは全く感じられない。何度でも言うが、台湾は有事を起こそうとはしていないし、日本や沖縄を巻き込もうとも思ってない。私を含めて多数の台湾人は日本に参戦しろとも求めていない。過去70年以上、中国による台湾全面侵攻を回避し続けた事実とその経験をもとにこれまで通り一緒に平和を求めていこう、そのために協力することがお互いの利益にもなるはずだとの考えである。それは端的に言えば中国の現状変化にあわせて台米日も対中抑止の度合いを変えるという長年の構造を継続しようというものだ。よく中国は経済関係上重要な相手で対中抑止を行うことはむしろ国益に反するとの主張を聞くし、今回のシンポで前泊氏などが中国との経済関係を例に挙げたが、これまでも対中抑止を続けながら経済関係を発展させてきたわけで尖閣諸島での対立激化時のレアアース禁輸や米中のハイテク覇権争いなど個々の特異な事象を含めて全体として対中抑止と経済活動の両立という構造が大きく変わっているわけではない。中国が軍事拡張を続けているのにそれに対応しない方がこれまでの東アジアの平和と安定の構造を変えようとする新しい動きだ。その結果として中国の台湾侵攻など台湾有事を招けばサプライチェーンは破綻し、抑止強化反対の理由に使われる経済的利益すら守れずに失われる。だからこそ対中抑止は日本の利益でもあるはずだ。現在日米で進む抑止強化の方法に問題や議論の余地があるのは確かで、かつ経済面の抑止力が過小評価されていることも確かだ。それを議論することは重要だし、これまでの平和の方法論に異論があれば、歴史と事実を踏まえた上で新しい平和の形を議論していくこともできる。対話を名乗り、仕掛ける以上は議論に必要なものは何かを理解して臨んでほしい。沖縄対話プロジェクトにもう期待はないが、残りが少しでも実りあるものになればと祈る。
今後の自動車業界¶
ホリエモンが再三ヤバいと述べている日本の自動車業界について。欧米を中心とする政治的なEV化の動きの中で、内燃機関のアドバンテージを失う日本メーカーがヤバいと言うのはその通りだし、最後の巨大輸出産業を失う日本がヤバいと言うのもその通り。その先について少し思うところを述べたい。(1/n) 米欧中がEV化で日系メーカー封じ込めを図り日系は孤立無援と語られるが、どこに活路を見出すかと言えば、まあ当たり前なんだけど「米欧中以外」なんですよね。この三極はEV化で巻き返しが図れる可能性があるから巨額の政府補助金を投じてEV化を進めてる訳だけど、その他の国にはそれが難しい。(2/n) なので今後も内燃機関が売れるのは中南米、アジアの発展途上国、中東、アフリカ、旧ソ連諸国とかその辺りな訳。ただ今の日系メーカーは北米、英、EUとか結構コストが高い地域で現地生産をやってて、そこから発展途上国に輸出するとか発展途上国に工場移すというのは相当辛いはず。(3/n) 自分もそう言う方向性を聞いた時は驚愕した。今までみたいに稼ぎまくる自動車業界みたいのはもう厳しくなってしまうかも知れない。(4/n) しかも米欧中が国内の全EV化に成功すれば、今度は環境対策をネタに新興国にも全EV化の圧力をかけてくる。環境保護とか温暖化対策を訴える国というのは事実上帝国主義と一緒なので、欧米中を敵に回す日系が内燃機関に拘るなら政治的にもかなり苦しい事になるだろう。(5/n) もう一つの大きな流れは自動運転なんだけど、これは車を使う習慣や街の作り自体を変える大きな変化だから政治的な調整がたくさん必要で各国で国内/域内メーカーが圧倒的に有利になる。そうすると日本メーカーはまずかなり狭い日本市場で仕組みを作って商売する事になる。(6/n) すると国内でタクシー業界とか路線バス業界と激しく利害が対立してくる事になる。タクシーや路線バスに自動車業界ほどの政治力があるようには見えないし、高齢化や地方の過疎化が進む中では自動運転車に優位性があるから、海外で失った売上を国内交通の共食いで感じになるだろう。(7/n) イメージとしては日本のIT業界が国際競争力を失って官公庁向けのシステム開発にシフトしたように、自動車業界も国内インフラへの依存度が高くなっていく。あんまり明るい未来ではないよね。(8/n) そのシステムが構築されれば、あわよくば上に書いた米欧中以外の国に自動運転車をシステムごと売っていくことになる。これは鉄道インフラの輸出と同じで日本が割と得意な分野でもあり上手くいくかも知れない。一方でこれまた国際関係が大事なので自動車業界は政府よりの産業になっていく。(9/n) 自動車産業が失った輸出をどこで挽回するかというのはかなり予測が難しい。一番良いのは需要を失ったメーカーが航空宇宙やロボットなどに技術や技術者を転用することだけどそれに失敗した場合は、最悪一次産業に回帰してより自給自足的な国になっていく可能性もあると思う。(n/n)
機械学習メモ¶
新しいMicrosoft Edgeは、論文の読み方を根本的に変えうるテクノロジーかもしれません。 この1年のAIの進歩で、ダントツの衝撃です...
↓は、指定した形式で論文を要約させた動画です。 「考えうる応用方法」として、論文には載っていないポイントを複数挙げてくれた点に、畏怖すら感じました。 この方法で論文を読む時間が仮に半分になれば、単純に情報収取の生産性が2倍になる。 さらに、内容についてインタラクティブに質問することもできるので、生産性は確実にそれ以上になる。 チャットAIを使いこなす能力は、研究者としても必須のスキルになりそうです。 特に今年に入ってから、「最低でも1日1時間は最新の情報やツールを追う時間に当てないと、人工知能の進歩についていくことすらできない」と強く感じます。 「人工知能を活用することで時間を節約し、その時間をキャッチアップに当てる」ことが、研究者としても必須の時代になるかもしれません。 DeepLの登場により、論文を読むのにかかる時間が僕の場合は半分程度になりました。 チャットAIが日本語で内容を要約してくれることにより、かかる時間がさらに半分程度になりそうです。 浮いた時間でチャットAIにインタラクティブに質問することで、従来より短い時間で深い理解ができそうです。 なお、使ったプロンプトは以下です。
論文「XXX」の内容を以下の構成で教えてください。
- abstract
- background
- methods
- results
- discussion
- limitation
- possible application
途中で止まってしまった場合は、
続きを書いてください
で書いてくれます。
2023-02-11¶
数学・物理 通信講座+勉強会に関する重要な連絡/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 通信講座+勉強会に関する案内
- 近況報告
- 通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始
- 熱力学のリハビリ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
通信講座+勉強会に関する案内¶
直接メールもしたものの反応がないため, 念のためメルマガでも連絡します. 支払いまで済ませた上で通信講座用のSlackに参加されていない方がいらっしゃいます. 勉強会用のZoom連絡などはSlackで対応するため, 勉強会に参加される場合はSlackに参加してください.
単に勉強会に参加しないならいいのですが, そもそもコンテンツに関するメールなどまで迷惑メールに入ってしまっているために連絡がつかないのではないかと心配しています.
近況報告¶
通信講座再開に合わせて仕事関係のプログラミング漬けだった生活からゆるく数学のリハビリをはじめています. 物理も軽くリハビリをしようと思い, どうするか思案中です.
ホモロジー代数のノート作りは地道に続けています. 相変わらず, とにかく可換図式を書くのが大変です. そして慣れていない分野であるため, 「詳細は読者に任せる」系の議論で四苦八苦しています. そのうち慣れると思って穴はそのままにして放置しています.
通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始¶
今回の締切は明日までです.
いつかまた同じ内容で開催する予定はあるものの, いつになるかはわかりません.
熱力学のリハビリ¶
物理のリハビリがてら, 熱力学の通信講座の構想をつらつらと書こうと思います. 何度か書いた話ではありますが, 新たに登録された方もいますし, 一度読んですっと頭に入る方ばかりでもないでしょう.
日常的な感覚からすれば, やはりはじめから温度を導入してそれを軸に据えて議論するのは一手です. 記憶にある限りまず温度の概念を導入している本も多かったように思います. 「統計力学を勉強してはじめてエントロピーが理解できた」と評判の統計力学でも重要なパラメーターです. しかし温度の概念以前に温度を導入するための設定が実は厄介です. そのために古典力学と比較しながら進めます.
古典力学では他に何者も存在せず, 相互作用もない状況からはじめ, 相互作用がある場合は運動方程式で力を導入する形で議論をはじめます. 温度の導入は温度を持つ対象として相互作用する外界を理論に導入する必要があります. 古典力学で言えば等速直線運動を飛ばしていきなり相互作用系から考えはじめています. 温度が日常的に見慣れた量だから親しみやすく感じるだけで理論的には複雑な扱いが必要です.
特に熱浴と切り離された系を孤立系と呼びます. 孤立系自体は日常的な対象として近似的に実現されています. いわゆる魔法瓶です. 冬場は特に飲み物を暖かく保つために重宝している人も多いでしょう. これがまさに外界と遮断した孤立系を作る装置です. この意味で孤立系は身近で重要な対象で, 一番最初に取り上げて議論する価値と意味がある系です.
必要以上に話を複雑にしないように流体, 特に気体を想定してパラメーターを設定します. 特に体積$V$と物質量$N$を考えます. 結論を先取りすると, 直接制御できるパラメーターではないものの, 温度の代わりの示量的なパラメーターとして(内部)エネルギー$U$を取ります. このときヘルムホルツの自由エネルギーやギブスの自由エネルギーに対応する, 完全な熱力学関数がエントロピーです.
エントロピーの面倒なところはパラメーターとして物理的に直接制御できないエネルギーが指定される点です. この点, 制御のイメージが持ちやすい温度の便利さが光ります. 一方でエントロピーをいつまでも謎のままの量にせず, 完全な熱力学関数としての地位を最初に与えておくのも意味があるのではないかと思っていて, 話の筋をどうつけるか考えています.
いま書いていてふと思ったのですが, 完全に一致するわけではないものの, 位相空間論と形式的な類似があります. 位相空間論も基礎を開集合系に取るか, 閉集合系に取るか, 近傍系に取るか, ネットに取るか, フィルターに取るか選び方があります. 標準的には開集合系である一方, 解析学としてはネットやフィルターが便利な局面があります. どの系を選ぶかと熱力学関数の選び方に似ている点がないでもない気分があります. 物理の人にどう説明するとよいかはともかく, 数学系の人に説明するには一つ便利な物言いなのかもしれません.
逆に熱力学を知る非数学系の人に位相空間論の様々な定式化の意義を伝えるには, 熱力学関数の取り方を例に挙げるとよいのかもしれません.
日々の自分用メモ¶
魚の生臭さと水圧耐性¶
「うまみ成分である 『トリメチルアミンオキサイド』が たぶん水圧守れる原因じゃね?」
中性子ビームを当てて高圧化した結果。
そしたらただの水は歪んでしまって 形が保てなくなったのですが 『トリメチルアミンオキサイド』
を加えた水は見事に安定化したわけです。
中学1年生が開発した「カラスからゴミを守るシステム」の成果 Python、TensorFlowLite、Raspberry Piなどを活用¶
ChatGPT活用¶
可能性空間を限定することが重要。
1.役割を与える 例:〇〇の観点で答えて
2.文脈,前提条件を与える 例:改善点教えて/危険度チェックして
3.英語で命令しよう
4.マークアップ言語で書き分け (続く)
【深津式プロンプト・システム①】
命令書: あなたはプロの編集者です。 以下の制約条件と入力文をもとに、最高の要約を出力してください。
制約条件: ・文字数は300文字程度。 ・小学生にもわかりやすく。 ・重要なキーワードを取り残さない。 ・文章を簡潔に。
入力文:
出力文:
【深津式プロンプト・システム②】 (これを追加すると精度が上げられる) このタスクで最高の結果をだすために、追加の情報が必要な場合は、質問をしてください。
【深津式プロンプト・システム③】 (これはやり方の話) まずベストプラクティスを聞いて、 その回答を前提に回答してもらうと精度が上がる
理系の英語¶
国際会議に行ったら主催者が「ここの公用語は下手な英語だ」とスピーチして喝采されてたり,フランス人と日本人が英語でやりとりしてて英語ネイティブが何言ってるか聞き取れないのになぜか当人達は意思疎通できてたとか,あるある……。
英語のコミュニケーションの話で、僕が1番好きなのは@mkuze せんせのこれ 「英語でのコミュニケーション能力が求められます。これにしても英会話の技術というよりも言いたいことを(日本語の段階で)論理的に整理できているかどうかが重要な点です。」
子供のアカウント乗っ取り¶
スマホを持つお子さん及び保護者の方気をつけて下さい・・・ 長女がインスタで知り合った人に電話番号やpaypayのパスワード等を教えてしまいアカウントを乗っ取られて、チケット詐欺の受け渡し場所となっていました・・・ チケット詐欺被害者からの直電で判明し、明日警察に届けます。↓
まずは友達として仲良くなってから言葉巧みにPayPayアカウントを作らせて、娘のスマホに送られてくる認証コードも聞き出しそのアカウントを詐欺の金銭譲渡に使用していた。被害総額20万強。↓ 私は以前小中学生向けのネットリテラシーを講師をしていまして、娘がスマホを持つ際は、何のために制限するのか・どのような事に気をつけるか・使用時の約束を記して貼る・ペナルティを作り実行する・フィルタリングをかけるetc対策出来てると思ってたのですよ、、↓ 色々話できる環境も作っていたし、そんな人いても絶対わかるし騙されないから大丈夫と言っていた子がこんなにも簡単に引っかかってしまったのは私の緩みと思春期の好奇心ゆえだと思います(犯人イケメンアイコンだった)。手綱離すの早かった。まぁ大丈夫だろって色々甘く見てたわー。↓ 親の許可がないと課金できない仕様にしてあるからPayPayとか登録しても意味ないだろーとか油断してたのもある。けど、金銭授受の箱としてだけ使うなら口座登録も本人確認もいらないので成立してしまっていた。。。 警察と連携をとり被害にあわれた方に対してもどのように責任を取っていくべきかを考えつつ、子どもと学び直して今後のスマホとの付き合い方に関してじっくり話合わなければ。↓ もはやスマホを禁止すればいいという訳ではなく、避けられない世界の中で、自分にとって有益なツールにする為に必要なのは何より知識だと思います。知らなかった分からなかったではすまされないのですよね。↓ 文部科学省等で親子向けのHP等もあるので、これから買う方は必ず親子で知識を共有してほしいなと思います!失敗者からのお願いです、、、 追記ですが、SNS利用の約束として、実際に会った事がある人以外とのDMや個別でのやり取りを禁止していました。もちろん破った際のペナルティも有で。 被害例を元にイケメンアカウントも実際は良からぬ輩ばかりであるという意識でいなさいと頻繁に伝えていましたが、中学生チョロすぎました。
「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」 杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由¶
なんだこれは。これは売名とか偽善とか以前に、善悪で語るもんじゃない何かではないか。なんなんですかこの人、爪の垢煎じて飲ませてもらっても真似できっこないこんなの。
記事引用¶
半世紀を優に超えて歌手や俳優として活躍する杉良太郎(78)は、60年以上にわたって私財を投じた福祉活動に取り組んできた。「特別矯正監」「特別防犯対策監」などに任じられている杉は、どのように矯正施設の改革に携わってきたのか。その思いを本人が語った。
***
【写真を見る】15歳の頃、あどけない表情の杉良太郎 この頃から刑務所の慰問を開始した
15歳の時に刑務所の慰問を始め、国内外で福祉活動を続けて64年が過ぎました。人からはよく「なぜ」「どうして」と聞かれますが、そういう質問が一番困ります。自分でも明確な答えを持ち合わせていないからですが、おそらくこれは私の性分。生まれる前、母親の胎内にいた頃に染みついた、一種の性(さが)だと思います。母は「人に親切、慈悲、情け」が口癖のような人でしたから。
現在は法務省・特別矯正監(永久委嘱)、厚生労働省・健康行政特別参与、警察庁・特別防犯対策監(永久委嘱)として福祉活動だけではなく対策活動を行う機会も増えています。すでに全国の税関、刑務所は視察を終えており、警察はこの2月、すべての都道府県警察本部を訪問し終えます。その後は各警察署にも足を運び、現場に近い声を聞いて対策に生かす考えです。 杉良太郎
慰問活動を始めた15歳の頃(他の写真を見る) 名誉矯正監になった理由
なぜ、全国を回る必要があるのか。例えば警察組織にしてもそれぞれの地域特有の県民性や地域性があります。だから、治安の維持という使命は同じでも、アプローチの仕方は微妙に異なる。それは私が矯正監として接している、受刑者や刑務官たちも同じです。
私が矯正施設で見るのは、彼らがどんな所で生まれ育ち、なぜ犯罪を起こしたのかという、根っこのところ。私が矯正監に任命されるまでには、幾つかの段階がありました。まず、15歳から始めた慰問を続けるうちに一日所長として視察するようになった。すると当時、5~6人の閣僚が集まる席があって、「何十年も取り組んでいる杉さんが一日だけの所長っていうのはおかしいんじゃないの?」という話になり、その後「一日所長じゃなく、何かポジションを作れないのか」と、法務大臣に伝えたという。そんなことはまったく知りませんでしたが、名誉矯正監や名誉所長という肩書きを受けてくれないか、と打診をいただきました。
そもそも私は「名誉」では引き受けたくなかったのですが、お飾りではないということを念押しし、名誉矯正監を拝命しました。
刑務官に「何が欲しいか」と聞くと…
それまでは受刑者の更生を促進する活動が中心でしたが、刑務官や職員の方の規律や指揮監督、処遇といったあらゆる角度から矯正施設の問題に取り組むようになりました。とくに現場の声を聞くことを大切にし、その後も全国の矯正施設を回り続けました。「なるべく若い人たちの意見を聞きたい」と思っても、所長や部長などの上司が横にいると、彼らはなかなか率直な気持ちを言えません。だから、看守長ぐらいまでの中堅クラスにメンバーを限定し、話を聞いていきました。
多くは30代半ばから後半ぐらいです。処遇から教育、経理や医務といったすべての部門から出席してもらいます。最初はまったく意見が出ませんでしたが、こちらから「日頃、仕事をする中での不満を聞かせてほしい」と促したら、多くの声が上がるようになりました。
例えば、勤続年数によって時計がもらえる制度がありました。私が「時計をもらってうれしいか?」と尋ねると「うれしくない」と。「じゃあ、うれしくないものはうれしくないと言いなさい」と話した。それで「本当は何が欲しいんだ?」と聞くと「長期休暇です」と言う。
当時は休日にポケベルが鳴ったり、受刑者が過剰収容されていた関係で仕事が多くて息つく暇もない。長期休暇がないから、お盆に墓参りすら行けないとも。「それじゃあ、まずは長期休暇を出そう」と、すぐに本省に掛け合って休暇制度を見直しました。長期の休暇が取れないことは、離職率の上昇にもつながるからです。 自己犠牲の精神 杉良太郎
東京税関に寄贈した麻薬探知犬のタロー号と(平成6年)(他の写真を見る)
刑務官がしっかり受刑者を指導・監督できるようになるには、広い知識や見聞、人間的な包容力を持つことも大切です。塀の中しか知らないような世間知らずでは務まりません。長期休暇を活用して、旅行も含めて見聞を広め、体験を重ねることも重要なのです。
また、この仕事は成果が見えにくいという側面があるので、職員にはやりがいとプライドを持たせることが必要です。自身の職業へのプライド、誇りがなければ、海千山千の受刑者にはなかなか対峙できません。そこで、専門官を作るなど、刑務官の心理面での育成につながることも考えました。
刑務官たちが最も喜んだのは、彼らが住む官舎の改善でした。これを言うと大抵の人に驚かれますが、刑務官を含めた職員たちに「刑務所と自分たちの官舎と、どっちを先にリフォームしてほしい?」と尋ねると、100人が100人とも「刑務所を先にお願いします」と答えます。職場を優先してほしいというわけです。
世間的にはこうしたイメージは薄いかもしれませんが、職員たちも人間です。受刑者に情が移るのか、「ちょっとでも甘い物を食べさせてあげたい」とか「少しでも処遇を良くしてあげたい」という気持ちの人が多い。自己犠牲の精神というのか、自分より受刑者の待遇改善を優先する意識が強いんです。だから私は、「あまりそっち寄りに行くなよ。被害者を忘れるな」と注意しているほどです。
刑務官は6畳と4畳半の2間で子どもを育てている
官舎というと「公務員住宅だから、さぞ良いところに住んでいるんだろう」といったイメージが強いと思います。赤坂や青山の国会議員宿舎などの印象があるからでしょうが、とくに地方にある国家公務員宿舎の多くは、想像以上に老朽化が進んでいるのが現状です。
施設課長が「居住環境を改善しないと職員が居着かない」と訴えてきたことがあります。そこで実際に足を運び、「どうしていままでこの事実を誰も口にしなかったのか?」と、気付けなかった自分にもがくぜんとしたことがあります。
視察に行く前に、法務省の職員に「間取りは幾つ?」と聞いたら「二間あります」という。私は「8畳と6畳の二間かな」と想像しましたが、実際には6畳と4畳半でした。いまどき4畳半なんて一間に含まれるのかと驚きましてね。受刑者には三食が付き、夜中でもガードマンが見回ってくれるから安心で安全な住環境にある。一方で、彼らを監督する刑務官は6畳と4畳半、そして台所という狭い部屋で、子どもを育てていることが分かった。
すぐに全国の官舎の写真を取り寄せ、それを超党派の再犯防止議員連盟のメンバーたちに見ていただいた。それで「近いうちに川越少年刑務所に行きます。みなさんも一緒に来て下さい」とお誘いしました。 「これ、廃墟じゃないですか」 杉良太郎
1986年。日本政府要人から中国政府への親書を携え、郵政省から贈られた制帽と郵便かばんを身に着け「幸せ配達人」を務める(他の写真を見る)
実際に現地を視察した後で、議員の方たちに「みなさんはここに住めますか?」と聞くと、全員が「住めません」と口をそろえた。中には「これ、廃墟じゃないですか」と驚く議員までいたほどです。そこで私は「ご自分が住めないところに、職員に住めと言うのはいかがなものでしょう」と窘(たしな)めるように続けた。率直な印象として「ひどいな、こんな住宅がまだあるのか」というほど老朽化が進んでいたので、いまも少しずつ住宅の建て替えやリフォームを進めているところです。
警察官とは違って、刑務所の職員にはなかなか陽が当たらない。子どもに「お父さんは何の仕事?」と聞かれて「刑務官だよ、とは言いにくい」と話す職員はいまも少なくありません。「自分の子どもに胸を張れない」というのです。だから私は全国の施設を回って「プライドを持て」と、指導したり勇気づけたりしてきたのです。
医官の処遇改善
刑務所に勤務する医師である、医官の離職も深刻な問題でした。以前の規則では、彼らが診療の対象にできるのは受刑者に限られていました。国家公務員だからというだけで、刑務官がちょっと体調を崩した時でも診察すらできない。以前はこんな非常識なことがまかり通っていたんです。だから私は、刑務官はもとより、近所に住む町の人々も診られるようにすべきだと訴えたことがありました。
医官は刑務所の近くに住んでいます。同じ地域の人々の理解や信頼は、人間的な触れ合いや結びつきから生まれてきます。高額な予算を投じて最新鋭のMRIを導入したのに、それを使ってもらえるのは受刑者だけ。それではあまりにもったいない。だから、医官の仕事は臨床に限らず、希望すれば研究もしていいようにした。給与水準のアップを含めた処遇改善にも手を付けて、医官の離職率が下がるように工夫したわけです。 「長く刑務所にいたい」という受刑者たち 杉良太郎
東日本大震災の被災地で行った炊き出し(他の写真を見る)
さまざまな刑務所の改革には、受刑者の処遇改善も不可欠です。ところが衣食住の快適さが増すと、居心地の良さから「長くここに置いて下さい」と訴える受刑者が増えてしまった。当たり前ですが、刑務所は「置いて下さい」なんて言われる場所じゃありません。
とくに高齢の受刑者ほどその傾向が強い。理由の多くは「出所したら死ぬしかない」「保険証がないから医者に診てもらえない」というもので、実際、持病があったり、身寄りがなくて出所しても身を置く場所がないんです。一方で刑務所なら食事はあるし、布団で寝られます。病気をすれば治療だって受けられますから、受刑者が高齢になればなるほど刑務所を「無料の老人ホーム」みたいな感覚で捉えているんですね。
刑務所にもさまざまな種類がありますが、最近は医療刑務所が非常に大きな役割を持つ時代だと感じます。違法な薬物に関する治療もありますが、心臓や脳の病気をはじめ、がんを患う受刑者も珍しくはありません。
麻薬や薬物の常習者の更生には、専門の病院や施設で徹底的に対応する必要があります。専門医も必要ですが、何よりものすごい手間がかかるんですよ。
受刑者の認知症問題
加えて最近の医療刑務所の守備範囲はかなり広がっていますが、喫緊の課題の一つが、仮に受刑者が刑務所内で認知症を発症したらどうするか、という問題です。自分が誰だか認識できない受刑者にはどう罪を償わせればいいのか。こういった贖罪のあり方の本質に関わる問題への対処など、刑務官の役割やありようは大きく変化しています。
心臓病や胃がんという具合に脳の機能に影響がない時はいいですが、アルツハイマー型認知症などの場合は罪を犯した事実やその罪名どころか、自分の名前すら覚えていないこともあります。入る刑務所もA級(犯罪傾向の進んでいない者)とB級(再犯や累犯、反社会的勢力といった犯罪傾向の進んでいる者)、L級(刑期が10年以上の者)などの等級によって分かれますが、長期で入っている人は症状がどんどん進んでしまいます。
認知症を患う受刑者の面倒、つまり介護も刑務官の任務とするのか。あるいは、別に収容する施設を造るのか。仮に介護施設を造った場合、刑務所とは異なる環境で生活する受刑者は本当に罪を償っているといえるのか。そもそも、介護施設が罪を償う場所になり得るのか、といった問題も出てきます。 資格取得まで導いても出所すると… 杉良太郎
愛媛県警を訪問(他の写真を見る)
かねて私は、刑務官が受刑者の介護に苦労していることを知って、「これは本来の刑務所の姿じゃない」と感じていました。だから刑務官だけでなく受刑者も介護ができるよう、さらに出所後にその経験が生かせるようにと、刑務所で介護福祉士の国家資格を取得できるようにしました。
ところが、ここで新たな問題が出てきました。仮に500人の介護資格を手にした受刑者がいたとして、その中の何人が出所後に介護職に就くのか。私の感覚ではせいぜい30人ぐらいだと思います。そもそも受刑者には勤労意欲が乏しかったり、働くのが苦手という人が多い。幾らこっちが「再犯防止につながるように」と資格取得まで導いても、ほとんどが出所したら働かない。
よく耳にする話に「出所後に雇ってくれるところがないので働けない」「収入が得られないから再犯してしまう」というものがありますが、「働きたくない」「仕事は苦手」という人たちの再犯率を下げることが、いかに難しいかということがお分かりいただけるでしょう。
欧米では寄付が節税対策に
私は平成8年に「名誉矯正監」を、平成20年に「特別矯正監」を拝命し、それに伴って私の役割も変わってきました。最も大きなものは、改善すべき点を明確にして必要な予算を獲得することです。平成28年4月に発生した熊本地震の後には刑務所や少年院などすべての刑事施設を、地震や津波、河川の氾濫といった災害が起きた際、市民が避難場所として利用できるようにしました。
本来、こうした取り組みは政治の役割かもしれません。しかし、特別矯正監という立場だからこそできることがある。だから私は全国の矯正施設を回り、目で見て耳で聞いて問題点を炙(あぶ)り出している。それがいまの私の役割だからです。東日本大震災で炊き出しなどの支援活動をした時など、これまでには「売名だ」とか「偽善では」と言われました。しかし、私はただ自分にできること、すべきだと思ったことを行動に移してきたに過ぎません。
ところで、日本と欧米のボランティアや寄付のありようには大きな違いがあります。文化や習慣も異なるからでしょうが、実は税制面でも大きな差があります。
例えばアメリカでは、個人が100万円をチャリティーとして寄付すると、手続きをすることでほぼ全額が所得から控除される。つまりは税金対策にもなるわけです。日本で杉良太郎が1億円を寄付するのと、ハリウッドスターが1億円を寄付するのとでは本質的な意味合いがまったく異なる。それを多くの日本人はご存じない。
いま、私がどこかの慈善団体に1億円を寄付したとしても、控除されて戻ってくる額はごくわずかです。もちろん、私はそれも寄付しますが、アメリカで1億円を寄付したら、日本よりも還付される額ははるかに多いんです。 1億円借金してまで寄付 杉良太郎
佐賀県庁を訪問(他の写真を見る)
日本テレビに「24時間テレビ 愛は地球を救う」というチャリティー番組がありますね。以前その会場へ、新聞紙に包んだ現金を会社の経理担当に持って行かせたことがありました。すると、たまたまテレビに映った彼を見た税務署の職員から「あれは杉さんの会社の人ですよね。課税の対象です」と連絡がきたことがあります。世間の多くは「寄付金は全額が控除の対象になる」と思っているようです。ところが実際は違います。日本は軽々に寄付ができない制度になっているんです。
昭和61年ごろに中国に残留していた日本人孤児の問題に取り組んだ時、自分で何とか4億円は都合できたものの、どうしても残りの1億円が不足したことがありました。そこで住友銀行(当時)の磯田一郎会長に「5億円のうち4億円は用意できたけど1億円足りない。1億円、私の体を担保に貸して下さい」とお願いに行ったんです。
会長は「銀行は体を担保に金を貸さないよ。だけど杉さん、老後はどうすんの?」と。私は「お粥を啜って生きていきますから」と答えた。そうしたら会長は1億円を融資して下さった。返済額は利子を含めて1億7500万円になりましたが、会長は「金を借りてまで寄付する人は初めてだ」と仰っていましたね。
刑務所を株式会社に
私は十数年以上前から刑務所の株式会社化を提言しています。これは民営化や半官半民とはまったく異なる世界初の試みです。受刑者の数が減少傾向にあるいま、廃止される刑務所などを活用し、株式会社化して運営したい。ここを社宅付きの職場にして、出所者や定年退職した刑務官たちを雇い入れる。互いに見知った関係ですから何でも相談できるだけでなく、出所者は得た収入から1カ月に千円でも2千円でも被害者への送金が可能になる。いつまでも被害者のことを心に留める意識が大切ですから、その一助となる取り組みとして、近いうちに本格化させるつもりです。
そこでは受刑者が出所後に即戦力として仕事を得られるよう、畜産や農業などの知識と技術を教えたい。すでに網走刑務所では「網走監獄和牛」という名前でA5ランクの黒毛和牛を育成したり、〈おつとめごくろうさまです〉といったロゴ入りのTシャツを販売していますし、鹿児島刑務所では日本茶に加えて紅茶作りが始まっています。函館少年刑務所では〈〇(マル)獄シリーズ〉という、「獄」の文字を丸で囲ったデザインがプリントされた前掛けや手提げバッグなど数多くのグッズが人気を集めています。 達成感はない 杉良太郎
大阪府泉佐野市役所を訪問(他の写真を見る)
このように、私は刑務所を一種のブランドにして新たな価値を生み出そうと考えている。そこが元受刑者の再就職先になれば、彼らの勤労意欲の喚起だけでなく、働くことの意味を理解させられると思うからです。
私は法務省のほかにも、厚生労働省で予防医療や未病という概念の普及と対策活動を、警察庁で特殊詐欺対策を中心とした防犯のあり方や、犯罪加担者を減らす取り組みに従事しています。私の活動は多岐にわたりますが、すべてに共通して言えるのは、「自分ができること」や「こうすべきだ」と思ったら、それを、すぐ行動に移してきたということです。
とはいえ、私は一度も「やってよかった」というような達成感や満足を覚えたことがありません。次々と問題が出てきますし、新たなアイデアが浮かんでくるからです。私にはいまも多くの課題が残されていますから、この道はずっと続いていく。まだまだ、これからですよ。
杉 良太郎(すぎりょうたろう) 昭和19年兵庫県生まれ。同40年に歌手デビュー。同42年にNHK「文五捕物絵図」の主演で脚光を浴び、以降は長年にわたってテレビや舞台で活躍。法務大臣顕彰、文部科学大臣表彰など数々の大臣表彰にとどまらず、紫綬褒章や芸能人として初めて緑綬褒章も受けた。平成26年に内閣総理大臣より感謝状を贈呈されたほか、同28年には長年にわたる国内外での文化交流が評価され文化功労者に選出されている。
週刊新潮 2023年2月2日号掲載
旧字体とは?【レトロデザインのための近代日本語講座〈1〉】¶
婚姻制度¶
憲法学者「同性愛という愛のありかたは個人の自由。しかしそれを国家が法的婚姻制度で保護することは別問題。生殖可能性がない以上、現状国家が保護すべき利益が見当たらない」 https://sn-jp.com/archives/112565
賛同する。制度の利害調整は婚姻者と独身者との間のもの。独身者の犠牲で婚姻者を利する理由が問われる。次世代の国民を産み養育するというところに認められる。 子供のない夫婦は「制度」の遊び。 婚姻が子供づくりを前提にしていないという人は、民法が近親婚を禁じる理由を説明してみよ。 そもそも結婚は、その女の腹から生まれてくる子供の父親を決定し、その子の養育に責任を負わせる制度。母親は自然と決まるが、父親は制度的に決定しないと絶対に分からなかったためだよ。
奇妙な国境や境界の世界地図¶
noteでたまに地理関連の書評記事を書いていたので、創元社様から出た新刊の『奇妙な国境や境界の世界地図』をご恵贈いただき、さっき読み終えたところですが、予想していた以上にマニアックな国境・境界の事例が取り上げられていて驚きました。1/ https://www.amazon.co.jp/dp/B0BT15YH88 もちろん、カリーニングラードの飛地や、キプロスを南北に分断している境界といった、政治地理でお馴染みの事例も若干ありますが、目新しい事例の方が割合としては多かったです。ベラルーシの領内にサニコヴォ=メドヴェジエというロシアの飛地があるのは知りませんでした。2/ 原発事故の影響で放棄され、無人地帯になりましたが、著者のニコリッチの調べによると、ロシアの行政管理が及ばないことを利用して、狩猟が禁止されているシーズンに近隣の住民が密猟を目的として進入するようで、典型的な無法地帯になっているなと思いました。3/ 個人的に中国の政治地理に興味があったので、手に入れたときに真っ先に調べましたが、残念ながら中ロ国境にあるユダヤ自治州の事例を除くと中国関連の事例は取り上げられていませんでした。そこはちょっと残念でしたが、欧州と北米に関しては詳しく調査されていると思いました。4/ 世界地図のスケールでは見落とされることが多い小さな人為国境について学ぶことが多い一冊でした。気取らない文体で書かれており、青を基調にした地図も読みやすく、よい意味で学術書らしくない著作だと思います。5/5
恐怖のアルコール その1 (酢を昼間から飲んでいた酒豪のクラスメートの謎がようやく解けた)¶
2023-02-04¶
数学・物理 通信講座+勉強会の募集は来週まで/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始
- 物性論に対する場の量子論の教科書的レビュー
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
今回は通信講座の簡単な再案内に留めます.
私自身通信講座開始に合わせて数学のリハビリをはじめています. ホモロジー代数のノート作りをしているのですが, 可換図式がとにかく重たく, TeXでのノート作りにうんざりしています. しかしここでまたやらなくなると手が出なくなるため, 歯を食いしばって対応を進めています.
あとは中学生向けプログラミング学習の話をしてもらえないかと頼まれました. いわゆる組み合わせ爆発お姉さんの動画を紹介したらそれに食いついたようです. 二月中旬の予定です. まだ詳しい状況を聞けていないものの, 必ずしもよい環境でなくてもどうプログラミングで遊ぶか, 情報系・数学で遊ぶかの試金石でもあり, ゆるく長く続けてもらうため, そして楽しんでもらうために何を提供できるかいまからいろいろ考えています.
通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始¶
案内は次のページにまとめました. 言うべきことは全て書いたのでここでは詳しく紹介しません.
募集期間は2/12(日)までとします. 募集期間が終わったら勉強会の日程を決め, 翌週から本格的に通信講座・勉強会をはじめます. そこから三ヶ月, 5月半ばまで続きます. 参加について何か相談があればメールなどで連絡してください.
申込をしたらメールが送られます. 通信講座の内容だけでなく, 連絡・質疑応答用のSlackやコンテンツ一覧ページのURLもいったんメールで送るため, 迷惑メールを確認してもメールがない場合, このメルマガ用のメールアドレスに連絡をお願いします.
物性論に対する場の量子論の教科書的レビュー¶
Field Theoretic Aspects of Condensed Matter Physics: An Overview https://arxiv.org/abs/2301.13234 凝縮物性における場の理論の教科書的レビュー。 125 pages, 380 referencesはすごいね
日々の自分用メモ¶
本¶
- Brendan Fong 著・ David I. Spivak 著・ 川辺 治之 訳, 活躍する圏論―具体例からのアプローチ―
- ミランダ語が生まれたとき―ポルトガル・スペイン辺境における言語復興史
- 『プログラマーのためのCPU入門 ― CPUは如何にしてソフトウェアを高速に実行するか』
- 現代経済学の直観的方法
- 戦火の中のオタクたち
- 内戦下のシリアで、鬼滅、ONE PIECE、宇崎ちゃんを見る!
- 長期的な内戦下にあるシリアは、アラブ諸国の日本アニメ放映の翻訳拠点だった。ラブライブ、鬼滅の刃、ONE PIECE、ジョジョ、スラムダンク、宇崎ちゃん……日本で流行っているアニメは、シリアのオタクの間でも流行っている! しかもほぼリアルタイム! 日常的に起きる銃撃戦、経済制裁による物資不足などにも負けず、内戦下でもたくましく、したたかに活動するシリアのオタクたちのアニメ・マンガ事情を通して、知られざるアラブ世界の一面を伝えるルポマンガ&エッセイ。さらに、複雑な中東の政治情勢についても理解が深まる一冊。オタク魂は海を越える。
結婚精度¶
結婚制度というのは、別れたくても、そう簡単には別れることができないようにするための制度で、通常であればそういう契約は人権侵害になるので国家(裁判所)が強制的には実現できないところ、憲法24条によって特別に人権侵害が認められているわけですよ。 そういう人権侵害を特別に許してまで秩序を守る必要が、異性同士だけでなく同性同士の場合にもあるかどうかというのが議論になっているわけです。 別れたいと当事者が言っても、国家が介入して簡単には別れさせないために強制力を発揮する制度を用いて、同性についても統制することの必要性ですね。 異性の場合は歴史的にそういう慣習が存在してしまったから、いきなり廃止はできず必要悪だ、とか、異性の場合も結婚制度は廃止すべきだとか、異性の場合にできるのなら同性の場合も平等にそうすべきだとか、進んで婚姻届けを出すのだから当事者の自己責任だとか、色々な価値判断があるわです。 そこに紐づいている社会保障とか税制とかの問題は重要ではありますが、結婚制度「自体」の持つ効果というのは、当事者が別れたくてなってもそう簡単には別れさせないための強制力を国家が提供することなわけでして。
永田雅宜先生の思い出¶
永田先生はお茶目でちょっとカワイイところのある白髪頭のちょっと無精髭が生えたオジサンというのが私の印象で,いつもニコニコしてらっしゃったのが特徴. しかし,その伝説は数多い.いくらでもあるが... そのうち2つ. 理学部の学生の線型代数と微積分は,理学部数学教室の先生が面倒を見ることになっていた.たしか6クラス中2クラスぐらいはそうだったのではないかと思う. 伝説の線型代数は,永田先生は一般の体上の線型空間で教え,丸山先生は行列環の成分は可換環で教えてたというもの. 丸山先生は確か,環の方が複素数や実数よりも簡単だという理念のもと教えられていたと思うが,割り算しなくてよかったのか定かではない. 私も普通の環の方が複素数や実数よりもよほど簡単だという意見には賛成.分かりやすいかどうかは別.(^^;; 永田先生は線型代数では四則演算しか係数に表れないからというこちらも至極まっとうな理由だったと思う.固有値をどう扱ったのか(拡大体?)は定かでない. どなたか経験者がいたら体験談ゆる募.
もう一つの伝説: 永田先生の科目はほとんどが可で若干の良,優または秀が1,2名という成績評価だったように思う.毎回掲示板に張り出されていた.(そういう時代 (^^;;) ある年,代数学の講義で一人の優を除いてすべて不可になったことがあったらしい. 合格したK中先生が廊下で永田先生とすれ違ったとき「追試をします.君もついでに落としといたから受けなさい」と言われたという.お茶目炸裂. きっと永田先生はK中先生に追試の問題を解いて貰いたかったんだと思う.先生ってそういうものです.
データベースのでRelationとRelationshipの混同¶
DB 設計における Relation と Relationship の混同を最近でもよく見かけるけど、この間違いがなかなか減らないのは、そもそも名前が似すぎているという問題がありそう。慣習としてそれぞれ関係、関連と訳すけど、こちらも紛らわしすぎる。 リレーションとリレーションシップの誤用に注意
40+ Elegant Books for Designers and Math People¶
40+ Elegant Books for Designers and Math People Things that are functional yet appealing have good designs. The books you will see below are extraordinary ones. They may seem like coffee table books, but they have the power to inspire your imagination. https://abakcus.com/40-elegant-books-for-designers-and-math-people/
クリエイターやアーティストに向けた文化庁のサービス¶
【クリエイター・アーティストの方へ】 クリエイターやアーティストに向けた文化庁のサービスが充実しすぎているので、ここで簡単にまとめときますね。 いずれも(裏で)すごい専門家の方々が関わってるのに、すべて無料です。 ぜひ多くの方にご活用いただくのがよいかと! 契約の基礎を知りたい方にはこちら。 「契約とは?」「口約束でも契約は成立する?」「覚書にサインしたら契約したことになる?」など、多くの方が疑問に思うことをQ&Aで解説しています。 さくっと見るだけでも、契約への理解が深まります。 https://bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/faq/index.html 舞台関係者向けですが、すべてのクリエイターの方へ。 わかりやすいテキスト、豪華講師陣のeラーニング、ワークショップ、いずれも無料です。 舞台関係を前提としていますが契約書のひな型(しかも解説付き)もついているという充実っぷり。 まずは①契約入門編にトライを。 https://sites.google.com/onpam.net/keiyaku/?pli=1#h.3nhe59b0skhw 契約などについて無料で相談できる窓口も。 相談員の弁護士の方々は、ふだんはなかなか依頼できない方も… 2月末までとのことなので、ふだん疑問に思っていることや困っていることがあれば、ぜひご相談を。 相談窓口はこちらから↓ https://bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/madoguchi/index.html 契約だけでなく、「フリーランスって?」「社会保障って?」などのベーシックな情報はこちら。 今後、契約や著作権についての情報も追加されていくもよう。 第二東京弁護士会がやってるフリーランス向けの相談窓口の案内も。 https://bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/kisochishiki/index.html 文化庁の回し者みたいになってますが、海老澤自身は文化庁にもこれらの事業にも特に関わっていません。 いずれも素晴らしいサービスなので、ぜひ多くの方にご覧いただけるとよいなと。 こういうサービスって各省庁でバラバラにやってるので、本当はどこかにまとまったサイトなどがあるといいですよね…
Stephanie Ann Houghton, Damian J. Rivers. (eds.) Native Speakerism in Japan¶
Stephanie Ann Houghton, Damian J. Rivers. (eds.) Native Speakerism in Japan (https://multilingual-matters.com/page/detail/NativeSpeakerism-in-Japan/?k=9781847698681) を楽しく読んだけど、この本には、一般の native-speakerism 論ではおそらく見かけない、かなり特殊なメッセージがある。それは「日本では英語ネイティブが差別されている」(!?) 「英語のノン・ネイティブ・スピーカーが差別されている」の書き間違いではない。 「英語のネイティブ・スピーカー」が日本では抑圧される側だ、というのが特異な部分。 実はこれは謎でもなくて、日本における外国人差別が、英語母語話者に対する差別と切り分けられていないために、こういう一見奇妙な話になる。公平のために記せば、著者のほとんどはおそらく気づいているし、明示的に言及している人も多い。しかし、理論的に整理している人はいない。 まあ、たしかに「伝統的な日本社会」においては、英語の母語話者は、外国籍者であったことはほぼ「伝統的」であったので、この辺の切り分けは難しいのだろうなというのはわかる。「伝統的」な日本社会ではね。 実質的に、在日コリアンをはじめとした「伝統的」マイノリティを排除するために制度化されていた外国人差別が、英語母語話者にも適用されていた面がある、という話は、本書のどこにも書いてなかった。 "Native-speakerism in Japan" とフレーミングすると論点がぼやけるので、「国籍と日本語能力という教職への排除障壁」あたりにしたほうが建設的じゃないかな? 「排除障壁としての国籍」は典型的な外国人差別の話だとして、日本語能力は問題が複数絡んでいるので結構ややこしいですよね。(以下)
0) 日本語力(初歩的なものも含めて)が、「日本社会への忠誠度の指標」として機能することがある 1) 一般論として、現地語の事務能力はどんな社会でも必要 2) その例外のひとつが高等教育。世界には、英語だけできれば事務遂行ができる大学もある。 3) 日本の高等教育は、日本語事務の範囲が支配的
native-speakersim をより理論的に一般化したらしいけど、定義拡張っていうのはやればいいって話ではない。悪い一般化だってあるんだから…。実際、その当然の副作用として、国籍差別的なフレーミングがぼやけてしまっている。/公立学校の外国籍教員 - 株式会社 明石書店
機械学習アプリ対策と教育¶
ありきたりの定量的な問題より、抽象的な○×問題の方がずっと難しい。答えるのが人間でもAIでも同様。記述式の試験が常に○×問題や多肢選択より難しいとか思考力を問うというのは幻想で、思考力をつけさせるには○×問題や多岐選択問題を課すべき。その方が採点も簡単だし。
2023-01-28¶
数学・物理 通信講座+勉強会の募集開始/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始
- 円周率の$n$桁目を求める論文
- 無限次元での級数の収束
- 倉橋太志, 不完全性定理の数学的発展
- Paulによる佐藤幹夫お勧め文献集
- 日合文雄, 行列解析から学ぶ量子情報の数理
- 田崎晴明さんの第二量子化のノート
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
やるやる詐欺になりつつありましたが, ようやく量子力学のための線型代数とその計算の通信講座+勉強会の開講案内を作り終わりました. 先月末から今月は仕事用のプログラミング関係の再学習ばかりで, ほぼ数学らしい数学をしませんでした. 一月も数学を放置していたのはおそらく10年ではきかないのではないかと思います. 勉強会に合わせて私も数学のリハビリをはじめます.
熱力学のノートや, 微分方程式の計算練習ノートなども作りたいですが, 一つずつ潰していくしかありません.
量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始¶
案内は次のページにまとめました. 言うべきことは全て書いたのでここでは詳しく紹介しません.
募集期間は二週間で2/12(日)までとします. 募集期間が終わったら勉強会の日程を決め, 翌週から本格的に通信講座・勉強会をはじめます. そこから三ヶ月, 5月半ばまで続きます. 参加について何か相談があればメールなどで連絡してください.
申込をしたらメールが送られます. 通信講座の内容だけでなく, 連絡・質疑応答用のSlackやコンテンツ一覧ページのURLもいったんメールで送るため, 迷惑メールを確認してもメールがない場合, このメルマガ用のメールアドレスに連絡をお願いします.
円周率の$n$桁目を求める論文¶
円周率の10進数でのn桁目を直接(それまでの桁を計算せずに)導く方法が2022年に発見されていたらしい
I just learned that the first formula for calculating the n-th decimal digit of pi (without calculating all the preceding digits) has been found by Simon Plouffe in 2022
上記の論文を見るとわかる通り, ベルヌーイ数などが出てくるため簡単に評価できる量ではありません.
超越数論もやってみたいと思いつつ幾星霜.
無限次元での級数の収束¶
「条件収束する実級数は項を並べ替えればどんな値にも収束させられる」という世にも奇妙で有名なリーマンの再配列定理は少し変えれば2次元以上へも拡張できます。 ところが、無限次元では、絶対収束しないにもかかわらず、どんなに項を並べ替えても同じ値にしか収束できない級数が存在します。
Levy-Steinitzの定理, Dvoretzky-Rogersの定理ははじめて目にしました. このくらいの基本的な事実でもまだまだ凄まじい現象があるのを知ると, 数学は本当に一生遊べるという思いを新たにします.
倉橋太志, 不完全性定理の数学的発展¶
数学会の論説に寄稿した解説論文"不完全性定理の数学的発展"が無料でダウンロードできるようになりましたね. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/73/1/73_0731060/_article/-char/ja/ ご興味のある方はぜひご一読ください.
そういえば一点訂正があり,定理48の"IΔ_0 において SC が成立すれば NP ∩ co-NP = P である."は今のところ"IΔ_0 において SC^U が成立すれば NP = co-NP である."までしか分かっていません.
書きかけの超準解析学習録もありますし, 数理論理・公理的集合論も勉強したいと思ったまま幾星霜. せめて超準解析ノートは一通り仕上げたいですが道は遠い. 超準解析は小澤正直さんによる量子系の数理物理への応用もあります.
Paulによる佐藤幹夫お勧め文献集¶
再掲。佐藤超函数でお勧めの文献は原論文 http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/6027 http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/6031 日本語なら雑誌「数学」 数理研講究録(浪川記)
森本さん「佐藤超函数入門」, 金子さん「超函数入門 新版 オンデマンド版」は、お二方が佐藤超函数を咀嚼した上で著者が自分の言葉で書いているので、それはそれで素晴らしい本なのですが。
現代の教育的な視点からは、金子さんの超函数入門が層係数コホモロジー入門としても読みやすいと思います。超函数までたどり着けなくても勉強にはなります。また、少し値は張りますがジュンク丸善からオンデマンドが買えます。佐藤さん本人の言葉がわかりやすいというのは、私個人の特殊事情によるもの
大分前のPaulのツイートを見かけたので転載しておきます. 森本さんの本は持っていて, これも読みたいと思って幾星霜. やはり場の量子論への応用でいくつか議論があります.
日合文雄, 行列解析から学ぶ量子情報の数理¶
量子力学のための線型代数とその計算でも重要な本がタイムリーに出るようです. もう家に本を置く場所がないため早くPDFを出してほしいです.
田崎晴明さんの第二量子化のノート¶
場の量子化、ここでは生成・消滅演算子の説明を含む、としては田崎晴明先生の明快で大変わかりやすいノートがarxivにあげれられています。私はここに書かれていることで物理的に疑問に思う点など全くないです。 Hal Tasaki, Introduction to the "second quantization" formalism for non-relativistic quantum mechanics: A possible substitution for Sections 6.7 and 6.8 of Feynman's "Statistical Mechanics"
高江洲さんによる紹介があったため, 念のためここでも紹介しておきます.
現代数学探険隊を持っている人向けにアナウンスしておくと, 関数解析の章の「ヒルベルト空間のテンソル積」や「テンソル積と対称群: 量子力学的粒子の統計」, 「場の量子論・量子統計のヒルベルト空間論・作用素論」で議論しています.
日々の自分用メモ¶
Texromancers¶
日本人ブラケット¶
mathematics - What is the origin of the "Japanese bracket"? - History of Science and Mathematics Stack Exchange 日本人ブラケットなる概念があるらしい
むしろ素人のほうが「マニアックな売り場」を作れる…国文科卒の書店員が神保町に"数学の聖地"を築くまで 5000冊の数学書が揃う「書泉グランデ」の秘密 #プレジデントオンライン¶
水道修理検索などで役に立つ検索戦略¶
[ご案内]凍結で水道が壊れた時に「●●市 水道修理」で検索すると広告がたくさん出て高額な修理代金を請求されることが多いので「●●市 配管 組合」などで検索してみてください。お住いの地域で良心的な事業所が見つかります。 ●●はお住いの市町村を入力してください
マチカネワニ¶
友人の青木良輔氏は著書「ワニと龍」の中で、中国の龍は想像上の生物ではなく、大阪で発見された化石種マチカネワニが古代中国には生き残っていて、それを龍と呼んでいたと推測しています。 それが証明されました。 An intermediate crocodylian linking two extant gharials from the Bronze Age of China and its human-induced extinction Masaya Iijima , Yu Qiao , Wenbin Lin , Youjie Peng , Minoru Yoneda and Jun Liu Published:09 March 2022https://doi.org/10.1098/rspb.2022.0085 この論文によれば、マチカネワニの近縁種が数百年前まで中国に生き残っていて、人間による刀傷のある骨が古代の遺跡から複数見つかったそうです。論文では、マチカネワニ近縁種が滅びたのは人間によるメガファウナ絶滅の一つということです。 つまり、ワニは古代中国の文明の初期には、生きた生物として、人間に狩られていたことが証明されました。 これは青木氏の主張する、「マチカネワニが中国古代まで生き残っていて、人間が畏怖していた」という説を証明するものです。 青木良輔氏の説は一見荒唐無稽に見えますが、私は初めて聞いた時、「龍虎合い討つ」という成句が凄くリアルに思いました。つまり、龍はトラ程度の動物だったのです。 これはアフリカのライオンとナイルワニの関係に似ています。 竜巻を引き起こすような想像上の動物ではあり得ないです。 青木説は正しいに違いないと思いました。 それが証明されて本当に嬉しいです。 論文で、マチカネワニの学名はToyotamaphimeia machikanensisとなっています。この属名は青木氏がこれは新属であるとして記載した属名です。 この論文ではその分類学的な重要性も示しています。 この論文は昨年の3月に発行されたようです。 彼がコロナに罹る前なので、彼自身も喜んだでしょう。 残念ながら彼はコロナで亡くなりました。 生きていれば、まだ多くのことがなされたと思います。 残念です。 彼の著書、青木良輔著「ワニと龍」平凡社出版、2001年
研究ネタに悩んだときは20-30年前の文献を読もう¶
1980年代の古井先生「研究ネタに悩めば、20〜30年前の論文を読めば良い。計算機が発達する前の論文には、人間の創造力に溢れた内容が沢山ある。」
古井先生の著書 > AI時代の大学と社会-アメリカでの学長経験から-
論理学の教科書¶
大西論理学、意味論で様相論理や直観論理を記述してそれらの間の関係まで詳しく書いていて、邦書ではなかなか類がないのでガチでオススメです。 入門書とは言いがたいのはそうだけど……。 RT
昨日ある人に「論理学入門一歩「前」みたいな本書かないんですか」みたいなこと言われて、なるほどなあと思った。まあ出してくれる本屋があればね。去年出した本は完全に論理学入門一歩「後」。
塾の経営者の話¶
塾の経営者の話が面白かった。 「昨今はプログラミング教室が活況に見えますが、都会の一部だけの現象です。塾の市場規模は1兆円ありますがプログラミング教室市場はわずか200億円。伸びてはいますが全体の50分の1でしかありません。これはプログラミング技能を測ることが難しいということが背景にあります。偏差値や大学合格実績などで親が子供にプログラミングを習わせる"成果"を実感できないと、継続的に通わる動機が弱くなるんですよね。プログラミングの重要性を理解している親でも、子供のプログラミング能力の成長を測るのは容易ではない」
「少子化で塾市場は縮小するといわれてきましたが実際は増加傾向にあります。これは少子化に伴って一人当たりに注げる教育費が上がったからであり、父親だけがポケットだった昔と異なり、今は父母と祖父母の6人がポケットになっているからです。シックスポケット論といいます」
「塾に通う比率の増加も市場規模の増加に寄与しています。昔は塾に通う子と言えば進学目的という意識が強かったのですが、今は公立の学校の授業についていけるようにする目的での塾通いが増えています。一種の学童のような目的で通わせる家庭も多くなっています」
「私はサラリーマンの不自由さが嫌で辞めて塾を始めましたが、塾の自由度は意外にもかなり小さいとわかりました。教育指導要領を超える範囲の指導は保護者から全く求められていないので、実質的には文科省の指導にガチガチに縛られます。あの指導要領の影響力は民間も含めて極めて大きいですよ」
「複数の教室を運営するなら、塾長を雇う目がとても重要になってきます。塾長は年収400万円で雇えるのですが、これは塾の経営に必要な資格は何もないのでどんな人でも応募できるからです。だからこそ玉石混交で、"資格がないせいで埋もれている才能"を見つけなければなりません」
「学習サポート塾と進学塾では固定費の考え方も違います。公立学校の学習サポートであれば大学生のアルバイトでもできるので講師費用は変動費です。でも進学塾となるとハイレベルな講師を正社員で雇わなければなりませんから固定費の桁が一つ上がります」
「最近は百貨店が塾と提携する動きがあります。なぜだかわかりますか?塾自体は大して儲かりませんが、固定客になるんです。塾は一度通うとなかなかスイッチしません。百貨店は別の店でも同じ商品が手に入るのでスイッチが容易です。逆に塾は知名度と集客力が弱い。互いにシナジーがあるのです」
$\sqrt{2}$の無理性証明¶
TeXでのSI単位の書き方: siunitx パッケージ¶
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Counterexamples in algebra¶
Counterexamples in algebra https://ncatlab.org/nlab/show/counterexamples+in+algebra
Mark Hunacek, Combinatorics and Finite Geometry¶
"covers an astonishing amount of material [...] a third or fourth year class in combinatorics or discrete mathematics from this text seems perfectly reasonable" Good book review by Padraig O ́Cathain in the Irish Math Soc. Bulletin https://irishmathsoc.org/bull90/wef/Reviews/OCathain/OCathain-wef.pdf
"an instructor looking for a text for a somewhat unusual combinatorics course should certainly take a look at this book" @maanow review of Steven Dougherty's 'Combinatorics and Finite Geometry' by Mark Hunacek: https://bit.ly/3CSjexR Book: https://bit.ly/3p5DLKq @SpringerMath
composerizeでDockerコマンドラインをdocker-composeファイル形式に変換する¶
おかしい人からは早く逃げよう¶
頭のおかしい女性が向かってきたら逃げてください。
相手が出してくるのが猫パンチか刃物かは受けるまで分かりません。
我々は男性に「殴り返してはいけない」というより先に、「逃げろ」と言うべきです。
今の日本には「女から逃げるな」の呪詛めいた社会圧があり、戦うか逃げるかの選択肢が実際は一択であることも少なくないでしょう。特に男性だと、女相手に逃げたなどという理不尽極まる不名誉を押しつけられる可能性と、相手の女性が単なるイキリでそのまま制圧できる可能性を、天秤にかけてしまう場合があるのではないでしょうか。 一般通念として男性の第一選択が「逃げる」になってほしいと思います。 女性が加害者になった暴力の実際の事例
これだけでは何なので、アメリカで起きた、女性加害者のDVがエスカレートし殺人に発展した事例を紹介します。
A2. おかしい人に半端に「やりかえされる」ことを学習させてはいけない この手の暴力的な人間は、相手を支配して思い通りにすることしか頭になく、やり返されると先手刃物が圧倒的に有利になることに気づく。 顔見知りなら武装して報復に現れることもある。
では逆に、どこから反撃して良いのか? みんな大好きアメリカには、武装者が建造物に侵入してきたときの行動指標として「RUN, HIDE, FIGHT」というものがある。日本語訳すると「まず逃げる、次に隠れる、それもだめなら戦う」というものだ。 この「戦う」を選択するときには「はさみや先端の尖ったもので突く」「消火器で後頭部を奇襲する」といった、相手に致命傷を与える可能性が高い行動が推奨されている。 反撃するならここまでやれということでもあり、ここまで追い詰められたときでなければ反撃は最善策ではない、ということでもある。
キャットハウスに頭を突っ込んで寝る¶
最近、IKEAで買ったキャットハウスに頭をつっこんで寝ている。バカみたいに見えるけど、これがとてもいい。
・頭まわりの温度と湿度が保たれる ・鼻やのどの調子がよくなる ・ほどよい遮光性
睡眠の質が明らかにアップ。ここに至るまでには変遷があった。(続く)
その結果がキャットハウス。たぶんファイナルアンサー。「LURVIG」という商品で1499円と手頃。最初と色違いなのは、ひっくり返してピンクにもできるからです。 布団に潜って足先が飛び出すクセも解消。バカッぽいビジュアルは自分には見えず自尊心もオッケー。すごくいいです。(かぶりもの話おしまい)
DI: new is glueと疎結合¶
- new is glue
- ASP.NET Razor Pages in Action, 7.1.2 Loose Coupling
- Manningの本への参照
IRの海外用語¶
こ、こ、これはすごい!!「売上/利益」を英語ではSales/Revenue/Earnings/Profit/Income/Gainのうちどれを使えばいいのか迷うことがある人は必読です。辞書を引いてもわからないこの使い分けを、単複の文法も含めて1万5千字で詳述されています。これがタダなのは完全なミスプライス。2千円払いたい。
IR系アドベントカレンダー、最終日🎄を担当させてもらいました。テーマは思いっきり実務・実用的にし、海外IRで必須の用語についての解説です。IRはもちろん、コミュニケーション全般に通じる内容にしていますので、よろしければぜひご一読を。 https://irisjapan.exblog.jp/29454127/
アンハッピーエンドとバッドエンド¶
どうしても主人公が死ぬ悲劇を書きたい人が後をたたないので,せめて「アンハッピーエンド」と「バッドエンド」の区別はつけて欲しいって話.別にアゴラの雑談で話す分にはどっちがどっちでもかまわないのだけど,ディオニュシア祭での上演を考えているなら詩人は明確に認識しておいたほうがいいです
FsLab, FSharp.Stats¶
2023-01-14¶
数学・物理 解析系数理物理100本ノック/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 次の通信講座
- 荒木先生の訃報
- 佐藤幹夫の訃報
- IAMPのセミナー
- まだ燃えるかけ算の順序問題
- 競技プログラマーハンドブック
- 野海正俊, 「Macdonald多項式入門」の講義録
- 論計舎, 自然演繹100題ノック
- pythonで学ぶ計算物理
- 雑誌「数学」の過去の記事の電子版
- いろいろなAI活用
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
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近況報告¶
去年末, Packtの一冊5ドルキャンペーンもあって, ずっと仕事関係のプログラミングの勉強をしています. 特にここ数日は現代数学探険隊の改訂の手も止めている状態で, ふつう数学と言われるような活動は全然していません. こんなに長期間, 世間的な意味での狭義の数学をしていないのも久しぶりです.
ちなみに, 興味がある人がどれほどいるのかわかりませんがC#(.NET)の勉強をしています. JavaScriptで作っていたコンテンツがありましたが, エコシステム的な意味でJavaScriptがあまりにつらいです. 競プロはF#でやっているわけで, いっそ.NET系でBoleroによるWASMだとどうかと思い, 情報が少ないからとりあえずC#でBlazorを調べてみるかと思ったら, 衝撃的なほど情報が多かったため, とりあえずしばらくC#系で攻めてみようと思って改めて一から勉強しています. 勉強会でもC#/F#
それはそれとして年末年始は本を含めて久しぶりにいろいろ買いました. それで改めて思ったのは, やはりモノを買うのは楽しいです. 上で書いたようにPacktで本をたくさん買ったのもさることながら, 少なくとも私はまだしばらくリモートワークが続くため, プログラミング環境をよくするためケンジントンのエキスパートを買いました. 前にガジェット好きの先輩がいて, 新しいトラックボールを買ったからとしばらくお古を使わせてもらったことがありました. 大きなディスプレイ二枚で作業していたため, トラックボールは非常に快適だった記憶があります. 久しぶりに使ってみてやはり快適で楽しいです. ちょっとした作業を楽しく快適にしてくれるモノはやはりよいですね.
トラックボール以外に本を買い込むのも楽しいですね. そして久しぶりにたくさん買って雑にざっと眺めるタイプの読書をしました. ここ数年, 気合を入れて読むタイプの数学の本ばかりで雑な読書をしていませんでした. 乱読の意味でも久しぶりのことをいろいろやっています.
何はともあれ, 年末年始は久しぶりにたくさん本やモノを買って異様にワクワクしていました. プログラミングの再勉強でもASP.NET Coreが思ったよりもいい感じで, Web開発関係でも久しぶりのワクワク感を感じています. いま次の通信講座の案内を練り込んでいますが, こういうワクワク感をもっと感じてもらえるようになったいただろうかという反省があります.
次の通信講座¶
仕事が立て込んでいて作業がなかなか進んでいないのですが, とりあえずは「量子力学のための線型代数」の続きです.
今回もまだ引き続き数学の話です. もちろん物理, 特に量子力学的なモチベーションの話は随時入れる予定です.
近況でも書いたように, 年末年始のプログラミング環境整備と本の買い込み・勉強で久しぶりにワクワク感のある勉強をしました. どうしても勉強するのが大変な数学・物理という点で, つらさをやわらげるためにもゆるく長く続けようというばかりで, 楽しもうという話を積極的にしてこなかったのを反省しました. まだ量子力学のための線型代数編さえ終わっていないのにこんな話をするのもアレですが, 物理系の人の楽しみに応えきれていないというのも前からずっと思っているため, そろそろもっと物理に踏み込みたいと思っています. もちろん数学レベルを揃える必要もあるため数学的な補足もいろいろ入れないといけません.
熱力学や(特殊)相対性理論の講座もやりたいのですが, これはまだ私の準備が追いつきません. そこで数学色が強めかつ物理にももっと触れやすい方向性として, ベクトル解析や具体的な偏微分方程式の解法といったあたりをやろうかと思っています. もしかしたら一月ごとに「今月はラプラス方程式」「来月は熱方程式」みたいな形にするかもしれません. そしてもう一つポイントにしたいのは, 既存のプログラミング講座のコンテンツを無料でつけようと思っています. すごくいいコンテンツと思っているものの, ちょっと孤立していてうまく活用しきれていない反省もあります.
簡単な計算でも実際眺めると面白い計算がたくさんあります. 例えば熱方程式の時間無限大極限でラプラス方程式の境界値問題の解が得られます. 一次元だと実装も比較的簡単です. しかし指数定理の著名なルートの一つ, 熱核の方法でも一つのキーになる振る舞いです. 直観的にも厳密解としても簡単に解ける一方, 数値的にも解けて眺めていて楽しい問題で, この辺を数学・物理・プログラミングの三方向から攻めるのもかなり楽しいのではないかと思っていて, いい加減これもきちんと形にしたいところです.
まだきちんとコンテンツの形にまでは練り上げられていないものの, まさに量子力学用の線型代数学習コンテンツ整備時に使ったSymPyによる行列計算プログラムなどもあり, プログラミングコンテンツにはSymPyの使い方も載せているため, その点でも意味があると思います. 次回の量子力学の通信講座にもプログラミング講座のコンテンツを無料でセットにする予定です. もしプログラミング講座を買おうと思っている人がいれば, ぜひもう少し待って通信講座に参加する形で購入してください.
荒木先生の訃報¶
01/10: 荒木不二洋先生が昨年12月に亡くなられたとのことです.大変お世話になりました.ご冥福をお祈りします.
場の量子論・量子統計力学の数理物理の草分けであった荒木不二洋先生がなくなったそうです. 分野がもろかぶりの大巨人です. 話したことこそないものの学会で見かけたこともあります. 最近, 現代数学探険隊の集合論の再整備をしていたら, 作用素環から大量に例を引っ張っていて, その中でも荒木先生の話を何度なく紹介していました. 作用素環は学生時代の紙のノートはあり, 一時期TeX化しようかと思いつつ, あまりに面倒で断念した記憶があります.
荒木-Woods, 荒木-Wyss表現, 相対エントロピーなど直接使ったり考えたりしたモノもたくさんあります. 私の大学院時代を彩る強烈な思い出がたくさんあります.
佐藤幹夫の訃報¶
2023年1月9日、京都大学名誉教授・佐藤幹夫氏が亡くなられました。94歳でした。超函数の理論、超局所解析、概均質ベクトル空間、ソリトン理論など幅広い分野で世界の数学をリードされ、代数解析を現代に甦らせました。
荒木先生がなくなったのか, と思った矢先に佐藤幹夫もなくなったという衝撃ニュース.
Twitterでも呟いたのですが, 荒木先生も佐藤幹夫もためらいなく呼び捨てにできるほど二人とも偉いものの, 荒木先生は分野まるかぶりの上, 直接見たこともあって自然と先生呼びになっています.
学生時代の憧れも遠くなりつつあるのかという感慨に浸っています.
IAMPのセミナー¶
場の量子論のフォック空間上での散乱理論の研究を代表する先駆者は2人なのですが、そのうちの一人 は Jan Dereziński 先生です。そのDereziński先生のセミナーがあるそうで、 講演題目は Dirac-Coulomb Hamiltonians となっています。
The 2023 season of the One World IAMP Mathematical Physics Seminar starts tomorrow with Jan Dereziński's talk. I hope to see many of you at the seminar! https://www.youtube.com/watch?v=oRtT9r085AA
YouTube channel もかなり充実してきました。 https://youtube.com/@iamp_seminars 是非ご活用ください。
YouTubeで講演の動画が公開されています. 他にもいろいろあるようなので興味がある方はぜひ眺めてみてください.
高江洲さんのコメントにもあるようにDerezińskiは巨人です. 私の場合だと非平衡統計での平衡への回帰, それに関わる荒木-Woods表現・荒木-Wyss表現に関するまとめPDFでかなりお世話になりました. 平衡への回帰問題ではDerezinski-Jaksic-Pilletのレビューの論文で, 荒木の相対エントロピーを勉強した思い出があります. 短いもののよくまとまっていて非常に勉強になりました.
プレプリント版と思いますが, 次のところに置いて(?)ありました.
学生時代の, ゴリゴリに不等式処理の腕力もあった私と同レベルにないと読めたものではありませんが, さすがに証明はないものの, 冨田-竹崎理論の大事な定理もカバーされています. 20年前ではあるものの, 少なくともその時点での量子統計・場の量子論での作用素環の応用の様子が見えるよい論文です. 興味があればぜひ眺めてみてください.
まだ燃えるかけ算の順序問題¶
あと本の帯に「大学生の10人に1人が40-16÷4÷2を間違えた!」とでかでかと書いてるけど、こんなん思考力の問題でも何でもなくて、ただの数学の世界のシンタックスの問題でしょ?文法が覚えられてるかどうかだけじゃん。こんな基本的な解釈ができないのはそれは大変な問題だけど、論調にまるで合わないぞ
この手の「÷記号を含む計算式の解釈」をめぐっては同工異曲の煽りが頻繁に出てくる。そんなの分数式で書くなり括弧を使うなり解釈のブレをなくすように書くのが当然で、解釈にブレが生じてる時点でそんな式はゴミ箱にブチ込むべき。 芳沢氏の論には総論賛成ではあるけどねぇ。。。
これを見て改めて思ったので自分用メモ: 確かにかけ算の順序で「割り算で困る」という人に対して, そもそも割り算の小学校での記法自体が問題で, 全て分数表記と積に揃えれば困らないのはそれはそう.
競技プログラマーハンドブック¶
「競技プログラマーハンドブック(Antti Laaksonen氏著)を翻訳・公開しました 基本的テーマから発展的テーマが300ページ超に渡って記載されており目次を見るだけでも興味深いハンドブックです。 「こんなのあるんだ!」という皆様のわくわくの助けになれば幸いです。 https://raw.githubusercontent.com/recuraki/cphb-ja/master/book.pdf
解けるのはわかったがどう解説を書いていいかわからない問題に出くわしたため, 競プロも毎日解いているものの最近解説を作っていません. 鉄則本を買った方がいいのでしょう. いまの.NET学習が一段落したら買って読みたいですね.
野海正俊, 「Macdonald多項式入門」の講義録¶
以前言っていた, 野海 正俊さんの集中講義「Macdonald 多項式入門」の講義録が公開されました. https://omu.ac.jp/orp/ocami/publications/preprint-series/2022/ よろしくお願いします.
自分用メモ+シェア.
論計舎, 自然演繹100題ノック¶
自然演繹100題ノックという教材を作りました。論計舎web shop https://quawai.stores.jp より無料にてDLいただけます。 証明可能な論理式に関する自然演繹の証明図を100個書いていただこうという趣旨です。 ぜひ挑戦してください。 https://quawai.stores.jp/items/62f22a41
解析系数理物理100本ノックみたいなコンテンツほしいですね.
pythonで学ぶ計算物理¶
物理 pythonで調べて一番上にかかるのが、岡大のサイトなんだけど、やはりレベルが高い http://physics.okayama-u.ac.jp/~otsuki/lecture/CompPhys2/index.html
何となくC#/F#系の数値計算コンテンツも作ってみたいとは思っていますが, そもそも数値計算がとにかくつらいので二の足を踏んでいます. PythonだとMatplotlibがあり, Juliaもデファクトでいろいろある一方, お絵描き系をどうするかでかなり困ります. 一応SciSharpでMatplotlibラッパーもあるのですが.
PDEはつらいものの, 格子系ならもう少し楽にやれそうな気もします. 時間がなかなか取れませんが, やはりいつかきちんとコンテンツを整備したい野望だけはあります.
雑誌「数学」の過去の記事の電子版¶
雑誌「数学」の過去の記事の電子版がたくさん公開されていることに気づいた https://mathsoc.jp/publication/dbase/sugaku/index.html
これも自分用メモ+シェア.
いろいろなAI活用¶
日本企業でAI導入が進まない・効果が出ない理由として、「データ基盤がないからAIも作れない」もありつつ、単純に「AIを使ったユースケースを(世の中には事例があるのに)思いつけていない、思いつける人がいない」もそれなりに支配的と思います。
ChatGPTの使い道を思いつけてない、思いつける人が少ないのも日本で普及が進まない理由だと思う。世界でChatGPTに対する関心度が64%に対し日本では17%しかない。順位で見ると64位。同じアジア圏でも台湾や韓国がそれぞれ30位と33位になってるのを考えると日本での関心がどれくらい低いのかがわかる。 ChatGPTは公開から5日で利用者数100万人を突破して、ニューヨーク市では学習に対する悪影響を理由として学校での利用を禁止してる。裏を返せば、それほど多くの子供たちがChatGPTを使っていること。一方で日本ではほとんどの子供たちがChatGPTの存在すら知らないと思う。
確かに遊んでみたいと思いつつ, 実際に何でどう遊ぶといいか何も思いつけていません.
日々の自分用メモ¶
いろいろな教育¶
いつだったか堀江貴文さんが寿司屋で10年修行なんて無駄、学校やYouTubeで学べば1ヶ月でできるとおっしゃていました。 彼の様に頭が良く、行動力がある人にとってはその通りかもしれませんが、世の中には家庭に問題があったり、本人が逃げてばかりで15.16歳くらいからカタギ社会からはみ出してしまいそうな若者を真っ当な大人に育てる器が社会にあったんです。 だから就業でなく修行と言ったわけです。 優秀な人間を前提とした行き過ぎた労働者保護や労働環境の効率化はこういったダメ人間矯正施設である商売を尽く潰し、大資本の非正規雇用や使い捨て請負業従事者を大量に生み出し、中年になっても家庭も待たず、家も自分の商売も持てない人間だらけにしました。 寿司屋に限らず、10年修行しろの裏には、商売をする上で必要になる社会の仕組みや周りの人たちとの接し方を教え、本人に社会的信用をつけてあげる為に必要な期間なのであり、修行を終えた時、大将の口利きがあれば多様な業者との繋がりを持て、独立資金等も借りる事ができたのです。 卑近な例ですが、15歳でウチの店に来て、複雑な家庭環境ゆえに一度高校中退し、夜間高校に通いながら10年ほど働いていた若い子が今は立派に社会人として頑張って働いています。 手前味噌ですが、その子に先日会った時、15の時、社長のところに行かなかったら自分の人生、どうなっていたかわからないと感謝されました。 私は特別なことは何もしてませんが、現場のスタッフが時には厳しく、時には優しく話を聞いてあげたりしてちゃんと育ててくれていたんです。 そんな弊社もこの3年で人を雇うことが難しくなってきました。若い人を育てるには責任が生じますから、続ける事ができるかわからない状態で受け入れられません。 10年なんて無駄と言い、飲食というだけでブラックという前にどうか我々みたいな零細飲食には色々な事情があることを知っておいて下さい。
【ホットサンドメーカーで作る太宰府名物 梅ヶ枝餅】¶
- URL
- 1.お餅2つを短冊切りにしてお皿をつくる
- 2.お皿に入るくらいのあんこを入れる
- 3.さらにお餅2つを使いあんこに蓋をする
- 4.弱火で焦げ目が付くまで焼く
- 5.外パリ! ウマウマ(´ω`)ウマウマ(´ω`)
記者のためのオープンデータ活用ハンドブック¶
この種のスキルは、体系的に学ぶどころか、調査報道の先細りで組織メディアのOJTですら雲行きがあやしくなっている。 個人的には、取材・調査技法のアップデートが止まってしまう中堅以降の記者こそ手に取ってほしいと思いました。
ゲーミングチェアならぬゲーミング座椅子という新提案。ゲームに仕事に読書に昼寝に最高すぎるんだ¶
デザイン素人に贈る、UIディレクション10個のポイント¶
Linux Foundationが「法律専門家のための WebAssembly ~ ライセンス・コンプライアンスにおける現在のパラメータを探る」日本語版ドキュメント公開¶
人事はテックブログを監視すれば社員の転職活動を見抜けるので、対策を考える¶
2022-12-31¶
数学・物理 自らの苦痛を解決する/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 式の読み上げ
- ゆるふわ情報共有のすゝめ
- 量子コンピューターを作るための参考文献
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
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近況報告¶
ここ一月, なかなか数学をやる気が出ず, 仕事関係の勉強もたまっているため, 現実逃避気味にデータ構造とアルゴリズムの勉強, 特に競技プログラミングばかりしていました. ここ最近一つに集中しすぎるのはよくないとずっと言われているため, 来年(明日)からはもう少しゆるく広く進めようと思っています. ここ半年ほどまともに語学・言語学も勉強できていません. 来年はもっとゆるく広く手がけるのを目標にします.
いま会社でも一人プログラマーで, 自社仕事に関して技術相談できる人もおらず, 競プロは競プロで相談できる人がいません. 数学や物理ではとりあえず相談できる人がいるのと比べると精神的なきつさが違います. この苦しさを何とかして解決するべく自分自身行動とこれまでとは違うタイプの行動が必要なのを実感します. そしてメルマガ執筆に関わる数学・物理系の活動でも, 他の人達のこうした苦しみにこたえないといけないのを改めて実感しています.
競技プログラミングの勉強でありがたいのは, やはりAOJなりAtCoderなりの自動採点システムです. 入力例では通っても他のデータで通らない場合はよくあります. 大量のデータでは遅くて仕方ない場合もあります. これらをチェックしてくれる勉強の仕組みは本当に偉大です. あとは適切な質と量の問題の必要性も痛感します. やはりある程度の量の問題に取り組まないと身につきません. 問題演習系の通信講座+勉強会は継続的に実践しなければと思っています.
現代数学探険隊の改訂も少しずつ進めています. 集合・位相・実数論を中心に, 数学系の通信講座・勉強会も開きたいですね. この人集めも来年の課題です.
式の読み上げ¶
現代数学探険隊をブラッシュアップしていて復習の仕方として挙げていました. 特に一定程度英語文献にアタックしなければならない状況もあるため, 英語への慣れも含めて書いた話です.
これはこれでよい取り組みと思っています. ただ独学しているとそもそも式の読み方がわからないでしょう. それを伝える必要があります. 既に世の中には「式を(英語で)どう読むか」といったコンテンツもあるにはあります. ただし本の数は少ないというか一冊しか知りません. そもそも英語の数学・物理・プログラミングの文献を読むための勉強会なども必要な気がしています. どこからどう攻めるか悩みの種です.
ゆるふわ情報共有のすゝめ¶
先日(確か)Discordでの数学徒向けプログラミング自助コミュニティを紹介したと思います. 私も主に次のようの目的で勉強会・コミュニティに参加・運営しています.
- 一人ではやらないがゆるく細く長くチェックが必要なテーマがある.
- 一人だとつらいため複数人を巻き込んで強制力をつける.
- 一人だと情報を集め切れないため, 個々人の興味に応じてゆるふわで情報共有する・してもらう.
最近だと一般のAI応用的な話, ウェブ関係の話をするコミュニティに所属してゆるふわ情報共有をしています. 来年は私のメインである数学・物理・プログラミング・語学でもゆるふわ情報共有コミュニティ作りたいですね. 何をどうするといいか見えきっていないため具体的には何もできておらず, 上記のコミュニティ所属もその様子を掴むための調査も兼ねた活動です.
量子コンピューターを作るための参考文献¶
量子コンピュータ作りたいって人にいつもすすめる参考文献
- ・Qmedia
- ・藤井先生著「驚異の量子コンピュータ」
- ・量子技術教育プログラムの動画達
- ・Quantum Native Dojo
- ・清水先生著「量子論の基礎」
- ・ニールセン・チャン
ニールセン・チャンはとくに1,2,4章を。これ読んでも量子力学が納得できなければ清水本。7章は古いのでQmediaのハードウェア記事と量子技術教育プログラム動画で補足。5,6章のかわりにDojo見ればユーザがどう使うかも勉強できる。誤り耐性は"Quantum Computation with Topological Codes"でマスター ハミルトニアンからゲートにするまでのテクニックはバンデルサイペン・チャンのレビュー。NMRじゃない人にこそ知って欲しい内容。 https://arxiv.org/abs/quant-ph/0404064 まぁでもここであげた全部を読み切っちゃう前に研究室の門を叩くのをオススメします。結局、目の前でラビ振動見るのが一番早いんだよなぁ。 量子コンピュータを作りたい人のために特化した授業がしたいなぁと思ってたところ、大阪公立大学の @ayumu_sugita さんから集中講義の依頼があったので引き受けました。2月6日〜8日なので、年末年始に準備を頑張っています。 途方もない作業で終わるのかとかなり焦ってたけど、久しぶりに一つのことに集中できててとても楽しくなってきた。自分の知識の全てを伝授できたらととにかく詰め込んでみる。授業の名前は「量子情報工学」と「量子制御工学」のどちらが良いかな(大阪公立大には違う名前で登録した気がするが。。。)
必ずしも量子コンピューターの議論はしませんが, ニールセン-チャンの二章は来月リリース予定の通信講座・勉強会のテーマです. 実際ニールセン-チャンの二章は量子力学・量子条件をモチベーションに線型代数が勉強できます. 非常にお勧めです. 翻訳もあるとはいえ読み切れる自信がない人はぜひ通信講座・勉強会を楽しみに待っていてください.
日々の自分用メモ¶
AIの進化はSEO・検索順位・広告・EEATとかすっ飛ばしてネット検索は次の時代に突入している?¶
【点訳版・PDF版】数学&情報処理点訳ガイドのダウンロード¶
「Rustでやると知らないうちに詰む設計」を避けるためのTipsを集めてみる¶
完全なくじ引き読書法を実践するためのWebページを作った¶
国立国会図書館のデジタルコレクションの大幅バージョンアップ¶
本日から、国立国会図書館のデジタルコレクションが大幅バージョンアップされています。全文検索可能な資料が5万点⇨247万点に拡充され、また類似画像の検索機能が付加されました。https://ndl.go.jp/jp/news/fy2022/__icsFiles/afieldfile/2022/12/02/pr221202_01.pdf
エンジニア向けデザイン参考サイト¶
【証明にミスがあった模様】: 四色問題をコンピューターなしで解いた可能性のある論文¶
え?これ、マジならすごすぎん?? 四色問題をコンピューターなしで解いた可能性のある論文が提出されたぞ https://arxiv.org/abs/2212.09835
7 Tips for Building a Good Web API¶
線形代数演習講義へのjulia導入を考える¶
こういう教育現場で導入されるの素晴らしい。 https://mti-lab.github.io/blog/2022/12/22/julia_linear_algebra.html
情報幾何¶
情報幾何 フリーダウンロード公開中 #期間限定 (12/31迄) 古畑仁 (北海道大学教授)著 「統計部分多様体の微分幾何学を目指して」 Perspective Statistical Submanifolds Differential Geometry DoublyMinimal HalfACenturyOfInformationGeometry
開成高校の中高生向け講義「位相的場の理論への誘い」の講義録¶
開成高校の中高生向け講義「位相的場の理論への誘い」の講義録が公開されました。録画からの書き起こしで丁寧にタイプしていただいたので、予想以上に臨場感のある講義録になったと思います。大雑把な話ですが予備知識はあまり必要ないので中高大生はぜひ読んでみてください。 https://kaiseigakuen.jp/wp/wp-content/uploads/2022/12/2021Yamazaki.pdf https://kaiseigakuen.jp/about/contents/feature/mathematics/には他にも二つの講義録[2017 年度] 有限体上の方程式を通して見る現代整数論(三枝洋一先生)[2018 年度] 結び目理論の圏論化(伊藤昇先生)が掲載されています。
2022-12-25¶
数学・物理 祝・競プロ入門300題一周完了/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 思考力より試行力
- 数学ノート(現代数学探険隊)の整理
- 自分自身の双対空間と等距離同型で非回帰的なバナッハ空間の存在
- 証明手法を軸にした議論の展開
- 独断と偏見による逆数学のすすめ
- 物理の理論構造, 孤立系と相互作用系・散逸系
- 素粒子・場の理論の教科書
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
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近況報告¶
体調自体は問題ないものの, 新型コロナ感染による生活リズム崩壊の余波は続いています. ここ数日会社仕事用の勉強で慌てているのもあるのか, 数学をやる気が出ません. そこで今年中にとにかく一周終わらせようと思っていたAtCoder Problems300題を進めていて, 今日一応終わりました. ハードはほぼ自力で解けていません. 来年は実際にコンテストでAtCoderのABCのC/D程度まで解き切るのを目標にしようと思っています.
あとこれは読者のあなたにもお勧めしたい話として, いわゆるアウトプット系の学習がやはり大事です. AtCoder Problems300題については来年以降に向けて解説を作りはじめました. やはり解説を書くと曖昧な箇所をいい加減なままにしていてはいけない圧力が加わります. もちろん一題あたりの時間はかかりますが, その分明らかに一題一題への踏み込みと理解が上がるのを実感します.
思考力より試行力¶
森の未知さんがまたいいことを言っているため紹介します.
和田秀樹の暗記数学本には「思考力(しこうりょく)よりも試行力(しこうりょく)」的なことが書いてあったように記憶しているが、あれは数学学習・教育における不変の真理だと思う。 例えば、「ある実数xが存在して、任意の負の数yについて、x+y<0」という主張の真偽を判定させるとする。 すると、様々なxについて「任意の負の数yについて、x+y<0」を判定するわけだが、xが0以下なら良いと気付くまで試行できるかがこの真偽判定できるかの分岐点となる。 「数学」とか「数理」の付く学科で習うような高等数学での躓きは、このような施行ができないことによるものが多く、巷で思われているような抽象的な思考能力は大して重要でないのが実感。 で、試行力を支えるのは処理能力で、一回一回の試行を素早く正確にできるかが本当に大事。 大学数学で苦労するタイプの学生に上の問題を指導すると、具体的なx(例えばx=1)について「任意の負の数yについて、x+y<0」が正しいか判定するのに異様に時間がかかることに気付く。 もちろん、そんな処理能力ではxが0以下なら良いと気付くまで試行回数を稼げずに途中で匙を投げることになる。 試行回数を稼ぐための粘り強さも数学学習においては重要であるが、教育者の観点では処理能力の方が後天的に伸ばしやすいので、処理能力を意識的に鍛えさせることは重要となる。
ちょうど今日も競プロの解説を書いていて, よくわからなかったアルゴリズムに対して解説を書いていて, それを理解するために具体例を作っていたりしました. この構成力は数学でも非常に重要です.
処理能力で試行スピードと正確さを上げる話も, TwitterのJuliaコミュニティで数式処理・記号処理の話が出ていて, 自分の手計算が信じられないからSymbolic.jl
をうまく使いたいという話をしている人がいました. 以前書いたように, 私もリー群学習時, 行列の対数計算(予想)でsympy
を使ってゴリゴリ計算していて何て便利なのかと感銘を受けたのを思い出します. こうした点でも数学学習にプログラミングをうまく活用して試行力・スピード・正確性の共存を目指す取り組みは引き続き来年以降のテーマです.
数学ノート(現代数学探険隊)の整理¶
現代数学探険隊の位相空間論と実数論を整理していて, ノート整理方針が固まりつつあります. 以前の記述もブラッシュアップしつつ全体に手をつけています.
いまは改めて先頭の集合論から進めています. 「自分がこんなのを知りたかった」と思った記述を散りばめているため, 読んでいてとにかく楽しいです. いま進めている競プロ解説でもお気に入りのF#布教の側面があり, いいと思ったものはもっときちんと勧めないといけない, お蔵入りさせるのは損失だと改めて思っています. 現代数学探険隊ももっと広めるために来年は久しぶりに広告なども使おうかと考えています. 通信講座・勉強会にももっと人を増やしたいのもあります.
私が参加している語学のコミュニティは数ヶ月ごとに新しい人が入ってくるのもあり, 各国の言語に関して数ヶ月ごとに同じ基本的な内容を勉強しています. そしてそこまでゴリゴリに勉強・暗記をしているわけではないため, 毎度の復習がルーティンになっているのがかかなり助かっています. 必ずしも専門でもない基本的な内容を定期的にゆるく復習できる機会を作る重要性を実感しているため, 通信講座・勉強会でもこの辺のメリットや楽しさをどう打ち出すかが鍵で, これも来年の課題です.
ちなみに整理していて実数論や位相空間論で次のようなネタが出てきています.
- $p$進数
- コイン投げの空間とポーランド空間
- 不動点定理
確率論ノートは多少埋めたものの, ポーランド空間がゴリゴリ出てくるようなところまでは書けていません. 不動点定理もよく使われる微分方程式系統の議論はまだまだ道半ばです. $p$進数・$p$進解析にいたっては全くノータッチです. 超距離不等式由来の$p$進関数解析の変な性質は恐ろしく扱いづらいものの, いままでに見たことがない位相空間論・距離空間論としても楽しみで, 改めて勉強意欲がわいてきています. 早くノート整理して, 幾何関係のノート作りも一段落させて解析学がやりたいです.
自分自身の双対空間と等距離同型で非回帰的なバナッハ空間の存在¶
単純なメモです.
[James 1951]: There is a non-reflexive Banach space which is isometrically isomorphic to its dual.
ヒルベルト空間ならともかく, バナッハ空間は変な空間で双対と等距離同型にするのも一苦労で, 非可分だと本当に魔界です. その魔界にこんなよい空間があるというか, 魔界だからこそこんな凄まじい現象が起きているというか, どちらで理解すればいいかよくわかっていません. ただ, なかなか強烈な例です.
文献探して証明を収録しておきたいと思いつつ探索できていません. それも込めて備忘録としての記録です.
証明手法を軸にした議論の展開¶
私の数学コンテンツには「証明手法を軸にした議論の展開」といった軸の補足説明もたくさんあり、例えば適当な条件を満たす位相や加法族の構成、ツォルンの補題を適用するハーンバナッハの定理や極大イデアルの存在証明など私が知る範囲の数学を縦横断した解説があるが、もっとそういうのが欲しい。
そもそもとしてボホナーの消滅定理やらdiagram chasingやら定理よりもむしろ証明手法の方が重要な議論もあるはずで、そういう縦横断系の話ももっと知りたい。
最近の現代数学探険隊ノート整理で集合論や位相空間論用の注意やコラム的に散りばめた記述を見ていると, いい話, そして最近あまり明示的に紹介していない, 忘れていた大事な話がたくさん書いてあります.
当時は一所懸命書いていてその当時の全力ではありましたが, とにかく文章が冗長でイライラしてくるのも事実です. これ含めて現在大改訂中です.
独断と偏見による逆数学のすすめ¶
超準解析ノート作りが半端なままなのも思い出しました.
物理の理論構造, 孤立系と相互作用系・散逸系¶
そういえば年明けすぐくらいから, 通信講座第三弾として「量子力学で学ぶ線型代数第二段」の通信講座の募集をはじめようと思っていたところ, 生活リズムの崩壊で何もできていません. いま二月開始を目処に考えているため, 興味がある人は三ヶ月分の勉強時間をおさえておいてください.
それはそれとして, 次にやろうと思っている熱力学とそれ向けノート整理で考えている話です. 熱力学は何となく身近な温度パラメータと環境がある系の議論からはじめるスタイルが多いように思います. しかし古典力学でも量子力学でも電磁気学でも, まずは理想的・非現実的な孤立系の議論をしてから, 現実的な系を考える非直観的なスタイルで進めるのがふつうです.
力学でいえばいったん摩擦がない系を考え, それから摂動的に摩擦を入れているとも思えます. 量子力学だとわかっているところからの摂動の視点は特に重要でしょう. 電磁気学でも電磁場だけを考えるケースと, 外場中の荷電粒子の運動を考えるケースのあと, 荷電粒子自身が作る場を考えるケースに進みます. 量子力学でもまずは水素原子の孤立系を考えます. 水素原子の励起状態は固有状態でいわゆる安定な状態です. しかしレーザーを考えればわかるように励起状態は光の形でエネルギーを吐き出して基底状態に落ちるはずです. ここで外場として古典的な電磁場を入れるとゼーマン効果とシュタルク効果にしかならず, 基底状態に落ち込む議論にはなりません. もちろんエネルギーを吐き出す対象として具体的に理論に自由度を追加する必要があり, それがいわゆるテンソル積による量子電磁場用の空間の導入です.
熱力学でも同じように孤立系を考えてから環境との相互作用や温度を考えるのが筋ではないか, そうするといまのノートの順番だとよろしくない, という状態です. 有名どころの教科書で言えば, 形式的には清水流か田崎流かという感じ. 熱力学の定式化の自分なりの整理を進めているため, 熱力学の講座はまだまだ時間がかかりそうです.
こういう内容の通信講座兼勉強会をやろうと思うと, そもそも一定以上の物理の素養がないと意義さえ感じてもらえないため, そこの種蒔きももっと真剣にやらないといけません. 量子情報でのクラウスの定理などもう少し分野横断の話をしようと思ったのですが, 今回は力尽きました. 改めて物理ネタももっと取り上げたいですね.
素粒子・場の理論の教科書¶
単純な情報共有です.
60 冊もの素粒子論物理&場の理論の本がSCOAP3 でただで見れるように
CERN's open access SCOAP3 initiative has released 60 particle physics and QFT books free for download here: https://scoap3.org/scoap3-books/
格子QCDシミュレーションの創始者のM. Creutzによる格子QCDの教科書がオープンアクセスになったそうです https://www.cambridge.org/core/books/quarks-gluons-and-lattices/2D0B198BB10DB7ACF56252909590DD6C?fbclid=IwAR3Q0DwJf8I79iPPLRnUVShXOeztqscAQeXE8xZxvIdB8EeM9P_FgIi7HbA
日々の自分用メモ¶
クリスティアーノ・ロナウドの言葉¶
献血ができなくなるからという理由で、体には入れ墨を一切入れておらず[357]、かつて受けた「動機が不純。単に自らの名誉と影響力を拡大したいだけ。言ってしまえば、ショーにすぎない」という批判に対しては、「もし、他人を助けることがショーだと言うなら、僕は永遠にこのショーを止めるつもりはない」と語っている[358]。
国立国会図書館デジタルコレクション¶
本日から、国立国会図書館のデジタルコレクションが大幅バージョンアップされています。全文検索可能な資料が5万点⇨247万点に拡充され、また類似画像の検索機能が付加されました。 https://ndl.go.jp/jp/news/fy2022/__icsFiles/afieldfile/2022/12/02/pr221202_01.pdf
理系の読み物でクラシックな本を丁寧にまとめたリスト¶
シェルスクリプトの正しい実行方法は一つだけ! ~ sh や source で実行するのが良くない理由とシバンの話¶
大島利雄先生の「大学における数学教育の問題点と工夫」¶
素因数分解の一意性と一階言語の文¶
それでは一階言語の文になっていません。一階言語では量化子の可変個の入れ子が書けないからです。ではどうするかは、リプライで。 https://marshmallow-qa.com/messages/9223c77e-8c18-4dfb-847d-e3504e5f62a5?utm_medium=twitter&utm_source=answer
まず、自然数のリストの自然数によるコードを何か採用し、必要なだけのリスト処理関数の定義をPA言語で書きます。次に、それらを使ってリストの要素の積を返す単項関数prodを作ります。 それとともに、二つのリストがバッグとして等しいことを表す二項述語bageqの定義とリストの要素が全て素数であることを表す単項述語allprimeの定義を書きます。 以上の準備の下で、
∀x∀y(allprime(x)∧allprime(y)∧prod(x)=prod(y)→bageq(x,y) です。 あ、括弧があっていない。 ∀x∀y(allprime(x)∧allprime(y)∧prod(x)=prod(y)→bageq(x,y)) です。 なお、リスト処理の部分はさまざまな変種があり得ますので、便利なのを採用すれば良いです。例えば、nilとconsとcarとcdrからLisp風に組み立てていっても良いですし、ゲーデルのβ関数を使っても良いです。
困っている人のための精度¶
世の中には困ってる人を助ける制度がたくさんあるのに何が使えるかを教えてくれないっていう理不尽仕様なんだが、そんな世界をなんとかしようとしてる人たちがいて、そのためのWebページがこの前リリースされたってことを僕はフォロワーさんに知っておいて欲しいと思ったんよ https://compass.graffer.jp/handbook/landing
岡村博の話¶
昔は闇市で手に入れたものは食べないと言って餓死した数学者もいたわけで、大学教員はその程度の意地は貫き通してほしい。 今時の大学教員は知的誠実さのために餓死もできない軟弱な人間ばかりで辟易する。 ちなみに餓死(栄養失調)で亡くなった(日本人)数学者の例として岡村博がいる. 常微分方程式の本があって、以前Paulが言及していた記憶がある。 さらについでに井川満による本の書評 「付録として収録されている山口昌哉の,著者についての文章も是非読んでもらいたく思う. 敗戦の混乱のなかで,闇物資を口にすることなく,42 歳で栄養失調の故に逝去した一生であったことが分かる」とある。
「岡村博は言葉を大切にし,学生と交わす些細な会話でさえもどこまでも大切にした日常であったことが記されている. 数学に携わる者が,言葉を大切にしないならば,どこに存在意義が見つけられるのだろうか. 最近私は,数学をする者の言葉遣いがふやけているのが気になっている.」
https://twitter.com/phasetrbot/status/1595002909535522818と書いたのはまさにこの文章のような状況が最近の大学関係者によく見られるのを指している。特にオープンレターズは大学教員どころか人として最低限の誠実ささえ持ち合わせておらず人の心を持たない差別主義者ばかりで最近ずっと衝撃を受け続けている。
物理・工学以外にも数学を濫用する人間が増えるのはいいことなのかという気分はある。ポストモダン的な地獄を生まないか、大学関係者の知的誠実さがどこまで信用できるのか、ただひたすらに気になる。
ドイツ語の表現¶
サッカーとドイツ語といえば
- 日本をLand des Sushis「寿司の国」と呼ぶのはセーフ(定冠詞+寿司が単数属格)
- でも定冠詞+寿司が複数属格のLand der Sushisだと「寿司野郎どもの国」的な意味になってしまって1文字違いで完全アウト
――というものすごい地雷があるらしい https://german.stackexchange.com/questions/63303/connotation-of-land-der-sushis これはどうも単数属格を加えるだけなら純粋な食べ物の意味になるけど複数属格だとそれを食べる人々への揶揄的なあだ名を加えた感じになるかららしい 実際、過去にドイツのサッカー番組では後者の表現を使ってしまったキャスターに盛大な批判が集まったことがある (※昨日の試合の話ではありません) d-で始まるドイツ語の定冠詞は英語のtheに当たる要素で語源も共通している ドイツ語では名詞自体は一部を除いてあまり変化しなくなっていて、冠詞の性・数・格の変化が語形変化の代わりになっていることが多い Sushi「寿司」は中性名詞として扱われて、単数では属格のみ-sがつくこともある
競プロのテーマ¶
人間には大変な, 膨大な量の計算を行って数学的な問題を解く
吉野元, 深層ニューラルネットワークの解剖 統計力学によるアプローチ¶
深層ニューラルネットワークの解剖 統計力学によるアプローチ 吉野元 https://jps.or.jp/information/2021/10/76_589.pdf
確率変数の数(ベイズなのでパラメータ数)が無限大に行くという意味での無限自由度系という意味で「統計力学」なのはこちらの方.時々誤解している人がいるけど,渡辺理論はそういう意味では有限自由度なので統計力学にはあまり似ていません. 漸近論で尤度関数全体を確率変数として扱うという意味では「汎関数的」なのですが,それはまた別の(もっと技術的な)側面だと思います. 「尤度関数を確率変数として扱う」は正しくないかも.対数尤度を扱うのに,まずパラメータの分布を正規近似するのではなく,漸近的な行く先を関数とみてガウス過程で近似をするというような意味です. (これは特異モデルを扱うために開発された方法と思いますが,正則モデルだからといって何でもかんでもまずパラメータで展開するという行き方に疑問を差しはさんだという意味で漸近論にとっては重要です) しかしながら,NNの理解に役立つような統計力学の意味で「無限自由度」の理論はまた別に開発しなければならなくて,その意味では吉野さんのような情報統計力学と高次元統計学のコラボが重要かと. 「平らな部分が重要」という意味では特異モデルのベイズ理論はよい点を突いているように思いますが,無限自由度の解析ではおそらく別の側面が重要.
Enriques曲面のPDF¶
びびる.Enriques曲面で1000ページ.3月の名古屋に向けて(?) Enriques Surfaces I,II http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~kondo/papers.html
記事期限切れ:¶
大栗博司先生の幻冬舎連載「数学の言葉で世界を見たら」 「計算されたリスクを取ること」で、ベイズの定理を 身近な例がいっぱいで、メチャおもしろく、わかりやすく、ためになる説明をしてくれてます。 http://gentosha.jp/articles/-/375
公理とinterface¶
逆にプログラマには公理は interface だと伝えると群とか環の公理が何のためのものなのか分かってもらいやすい
平行線の同位角の証明¶
トランプの「ババ抜き」で、勝率を "相手の3倍" にする方法¶
トランプの「ババ抜き」で、勝率を "相手の3倍" にする方法を見つけましたので記事を書きました。 なんと… 「誰から配るかを変えるだけ」ですっ。 記事→ https://kuina.ch/notebook/page33
工学のための関数解析の行間埋め¶
関数解析の資料探してたら良さそうなの見つけたけどこの資料作った人エグすぎる 工学のための関数解析PDF
ガウスの消去法と誤差, 検算の難しさ¶
ガウスの消去法にめっちゃ誤差が入って、あやしいと思って検算しても(検算にも誤差が入って)残差が0になってしまう、なんてこともあるので、検算したから安心とは言えない。
Haskellでの競技プログラミング¶
YouTubeのSampouOrgチャネルで米田優峻(@e869120)さんの『競技プログラミングの鉄則』をHaskellで楽しむ動画シリーズをはじめました。主目的はHaskellプログラミングを(和紙が)楽しむこと。ついでにアルゴリズム力、思考力が向上するといいな。つづくといいな。
追加しました。尺取虫法 = mapAccumL + span かな? A13: Close Pairs — 『競技プログラミングの鉄則』をHaskellで楽しむ 024 https://youtu.be/KiXQVixpamg @YouTube より
中国語は不思議¶
橋本陽介『中国語は不思議』読了 新書を読むのはかなり久しぶりではあったのですが、コレが語学ダメダメ人間でも ちょっと中国語分かってきたんじゃない? と自惚れさせられる感じでちょっと勉強再開しようかしらと思いました それは置いておくとして「疲労回復」「汚名挽回」のトピックスが面白い
ChatGPTの応用¶
日本人がネイティブな英語を書くのは、今までかなり難しかった(オンライン英文校正サービスもほぼ無力だった)けど、ChatGPTを使えば簡単に書けるし文脈も伝えられるのでやはり革命。実際に出力を見てみると、RT元が問題があると言っている部分もすべて修正されており、良い。
ロシア語で日本語の「かわいい」が導入¶
場末ホステルのロシア人(日本が好き/ピカチュウが好き)が「かわいいぬ」と言ってて何故急に日本語?(しかも"ぬ構文"?)と思ったら、日本語の「かわいい」がそのまま形容詞「カワイヌィ」(каваиный)になっているんだと。ほんまかいなって思って調べたらちゃんと存在してたし、鬼の格変化もするみたい。
ChatGPT¶
ChatGPTを試してみた。 有効な使い方のひとつに「自分が知らない分野の関連ワードを挙げてもらって思考を発散させる」ことがありそうだなと。 ある程度の知識がないとGoogleで検索するワードがそもそも思いつかないが、ひとつのキーワードを端緒にChatGPTに関連語句を色々挙げてもらうことができる。
2022-11のAIの進歩の包括的なリスト¶
いい記事見つけた 11月に最も重要なAIの進歩の包括的なリスト Cutting-edge AI: NOVEMBER Digest
同朋舎出版のビジュアル世界再発見と中高の世界の名著¶
同朋舎出版のビジュアルシリーズ世界再発見はいいぞ。 あれで入門すれば世界地理は答え合わせできてたのしい。 あと中公の世界の名著はいいぞ。本文の訳の気合の入り方もそうだが、訳者によるガチ解説がたのしくてわかりやすい。当時はB1くらいの学力で読むものなんだろうけど今ならB4くらいじゃね…?
2022-12-11¶
数学・物理 新型コロナにかかって大変な目にあいました/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- カントール集合
- 実践計算物理学: 物理を理解するためのPython活用法
- 基礎からの物理学とディープラーニング入門―Pythonで実践―
- F#による競技プログラミング学習の資料
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
家族が通院時に新型コロナをもらうというひどい目にあった余波を受けました. ちょうど先週の土曜, 夜から体調がおかしく, 朝になったら38.9度あって四日ほど寝込んでいました.
生活リズムが崩壊してしまったため立て直すのが大変です. AtCoder Problemsも今年中に一周する十二分な余裕があったものの, 10日潰れたためもうカツカツです. 無理して終わらせるものでもないため焦っているわけでもありませんが, げんなりしています.
心配しすぎていても仕方ないとはいえ, ブレインフォッグのような恐ろしい後遺症もあるようで, これが本当に憂鬱です.
世の中は平常化に向けて動き出しているようですが, 読者の皆様もお気をつけください.
今回は手短に済ませます.
カントール集合¶
先日から書いているように, 現代数学探険隊のノートを見直しています. カントールの三進集合を久し振りに見直して, やはり面白いテーマだと関心しています. 記号力学系から情報系の議論もあれば, 同じく作用素環にはねる経路もあって展開は異様に豊富です.
実践計算物理学: 物理を理解するためのPython活用法¶
ただでさえPythonはライブラリのバージョン管理が死ぬ程面倒で, これ以上自分で何か作りたいとは思わないため, よさそうなのはどんどん他の人のコンテンツを紹介しようと思っています.
メンテナビリティの高い数値計算プログラミングの可能性は相変わらずゆるく探り続けています.
基礎からの物理学とディープラーニング入門―Pythonで実践―¶
統計力学系のネタはもっと突っ込んで勉強したいため, これは読んでみようと思っています.
F#による競技プログラミング学習の資料¶
来年に向けた助走として, 競プロコンテンツの前に自分の学習ログの意図で記事を書きはじめました.
命令型・オブジェクト指向型の言語だと読み書きしていて元気が出ないため, お気に入りの言語で遊んでいます. F#はMicrosoftが機械学習用のライブラリを整備しているようで, 上で書いたようなディープラーニング系の話でもいい感じに使えないか検討したいところですが, まだまだそこまでいきません.
2022-11-26¶
数学・物理 子供の背中を見て反省する/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 昔書いた文章・ノートが冗長でつらい
- mathlib documentation
- 最近のプログラミング学習: 競プロ
- 新しく勉強するときの苦労
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
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ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近, 数学としてはシコシコと代数の基本的なノート作りと競プロばかりです. 代数はもう少しガロア理論の基本的なノート作りが終わるため, それが終わったら多様体の項目メモを仕上げつつ, 層のコホモロジーに関わる議論と加群のノートを整備する予定です.
長い間の懸案だったトポロジーのノート作りもしたいところですが, ここで代数のノート作りを止めてしまうとまた半端な状態が続くため, いまこの焦点が合ったときしかないと思ってふんばって進めています.
昔書いた文章・ノートが冗長でつらい¶
幾何ノートの整備と合わせて, 特に重要な位相空間論のノートも並行して整備しています. 書いていた当時はもちろん真剣に一所懸命書いていましたが, いま見ると冗長で読んでいて自分でイライラする記述があります.
それはそれとして, 通信講座として書いたときにはまだ書けていなかった定義や定理が既にあるため, その引用整理も合わせて進めています.
ただ改めて思ったのが, 「こういうのがあるといいのに」, 「こういう記述があると自分が楽しい」と思った記述を盛り盛りで詰め込んでいるため, 読んでいてとにかく楽しいです. 特に何度となく眺めて整備を進めていた部分は証明も詳しく, ストレスフリーで読めます. 凄まじく面倒ではあってもわざわざ自前のノートを整備してきたご利益を感じる部分です.
mathlib documentation¶
ノート整理で補有限フィルターを調べ直していたら見つけました.
証明支援系のライブラリのサイトで, Microsoft Research所属のプロによるサイトのようです. いつか証明支援系の議論にも取り組みたいとは思っているため, メモがてらシェアします.
最近のプログラミング学習: 競プロ¶
勉強方針を少し変えたのもあって, AtCoder Problemsを一日二題ペースでゴリゴリ進めています. 入門者向け基準とはいえハードの問題を自力でさっと解ける場合も出てきて, 一年間ほぼ毎日やってきた成果が上がっているようで気分もいいです. 自分用リファレンス・ライブラリも溜まってきました.
競プロ勢, もっと言えばF#・Haskell勢ともっと交流を持ちたいと思っているのですが, もっと競プロ系の記事なども書かないといけないのだろうと思います.
仕事のプロジェクトである程度自由にできるため, サーバーサイドでF#を使ってみようと思うものの, ネットに情報が少ないため二の足を踏んでいます. JavaScriptなどは新しい情報も大量にあって参考にする機会も多く, お世話になった分, プログラミング関係でももっと情報を出さないといけないのだろうとも思います.
新しく勉強するときの苦労¶
12月からAndroid開発のプロジェクトに参加します. Android・Kotlinを猛スピードで勉強しているのですが, 基本的な本を読んでいてレイアウトの説明など面白くもない記述をがんばって眺めています. 数学でも, 面白くなくても一度は一通り勉強して, 言葉だけでも頭に入れておかないといけない内容はあります. くり返し眺め続けてようやく少し慣れてきました.
既存コードの引き継ぎの面もあって仕事時間でもずっと眺めています. 朝から晩まで二週間もずっと浸っていてさすがに少しは慣れてきました. 仕事になると苦痛だろうと何だろうとやらねばならず, 嫌でも勉強は捗ります. 何か勉強したいことがあれば仕事にしろとはよく言いますが, 改めてそれを実感しています.
JavaScriptでも困っているのですが, Androidもテストの書き方・作成方針が全然わかっていません. 何かいい本や資料をご存知の方がいればぜひ教えてください. 小・中規模のAndroidアプリのリポジトリがあればそれも教えてくれるとありがたいです. 絶対的な量が足りておらず, もっと浴びるようにコードに触れたいと思っています.
勉強するときの実際を苦労を味わい続けた方が「こういうのがあればいいのに」という自分の問題意識も育つため, 程々に勉強の苦労を続けないといけないのだろうと最近良く思います.
以前から時々書いているように, 私は昔から柔道の道場に通っていていまや指導側です. 類は友を呼ぶ話のごとく, 通ってくる子供達はとにかく不器用で, 何年もくり返し言っていてもなかなか身につきません. ただ, 子供達は子供達で学校での勉強も含め, 毎日大量の情報に触れて覚えなければいけないことも多く, 5年-10年言い続けたくらいでどうにかなるなら苦労しないという話もあります. 子供達の様子も見ていると時々猛烈に反省することがあります.
2022-11-19¶
数学・物理 早いうちに基礎をゴリゴリやろう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 早いうちに基礎をゴリゴリやろう
- 来年に向けた競プロの取り組み
- アダマールの不等式
- 量子多体系の対称性とトポロジー: 統一的な理解を目指して
- 「無限次元」の代数と解析
- ドイツ語と英語が合成された学術用語“Eigenvalue”に関する数理的考察
- 理系向けの語学教材制作に向けて
- 世間的な理系の差別的な扱い
- いろいろなウェブサービス
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
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ではまたメールします.
近況報告¶
もう少しで量子力学と線型代数の三ヶ月間短期集中の通信講座が終わります. 先日の勉強会で受けた質問で, やはり行列と線型写像の区別に関する難しさを実感しました. 量子力学と線型代数もまだ最低限取り組んでほしい内容の残りがありますし, そもそも復習としてもう一度取り組む部分さえ需要があるとは思っています.
とりあえず量子力学をもとにした線型代数を続けますが, その先は自分の頭の整理も兼ねた熱力学もやりたいですし, 物理を考えずただただ数学する方向までいろいろ考えています.
数学ノート作りでは幾何ノート整備に向けて, 解析学編の位相空間論の整理もはじめました. 改めて見ると書きはじめた頃はまだノートを作っていなかった定義・定理も大量にあり, 並行してその参照もつけています. あとは箇条書きノートの見やすさが気に入ったため, 箇条書き化も進めています. 定義や定理の言明も箇条書きで整理した方が見やすいため, 必要に応じてそれらも整理し直しています.
やはりある程度幾何にけりをつけないと落ち着かないのがわかったため, 指数定理までの一通りのノート作りを今後二年の目標に置きました. やる気が出ないときに指数定理の本をパラパラと眺めていると, 解析学編でがんばって作ったノートの内容がゴリゴリと出てきます. 偏微分方程式はもちろんのこと, 閉作用素など作用素論も出てくる部分はテンションがあがります. 当たり前といえば当たり前であるものの, 執念深く整備してきたノートの内容はだいたい全て必要で, もちろんわかっていたことではあるものの, 案内ページに書いてきた内容の嘘偽りのなさを改めて実感しています.
早いうちに基礎をゴリゴリやろう¶
最近ずっとこの話をしている気もしますが, 幾何のためのノート整備をしていて痛感しているため何度でも強調して書き続けます.
特に多様体のノートを書いていると, 一度はある程度勉強しているため本当に身が入りません. ノートの参照などもあるため, いま証明は抜きに定義と命題だけシコシコと追記しています.
何となく一回はやっているが身についていない内容があるのはもちろんですが, それ以上にそもそもまともに勉強したことはない内容もたくさんあります. しかしもっと面白い話がたくさんあるのを既に知っているため, そうした基本的な内容に取り組んでいるとうんざりしてきます. だからこそ今改めて幾何まわりの基本的な内容に関するノートをがんばって作っています.
熱力学のノート作りでは, 内容は学部二年レベルのド基本であるにも関わらず, 頭の再整理の視点で取り組めてものすごい楽しいのと対照的です. 一度徹底的にやった上で思い出しつつ理解を深める楽しさとは全然違います.
先の話を知ってしまうと基礎的な内容に取り組むのにうんざりしてしまいます. 自分基準でよいので, やはり早いうちに一度基礎を徹底的にやるのをお勧めしたいです. そう思うとやはり学部一年の必修で実数・集合・位相があったのは, 私にとって本当に決定的でした.
来年に向けた競プロの取り組み¶
AtCoder ProblemsでMediumまで終わってから数ヶ月, しばらくAOJに取り組んでいましたが, 今年も残りわずかになってきてAtCoder Problemsの300題を終わらせたい機運が高まってきました. 残り56題で, これから一日二題取り組んでいったん年内に終わらせるのが目標です.
最近は10分考えてアルゴリズムを思いつかなければ解説を見て実装し, 30分経っても実装できなかったら他の人の提出コード, 特にHaskellコードを見て気に入った読みやすいコードをF#に引き写すようにしています. どうせ300題を一周した程度で身につくわけでもないので, ある程度問題量をこなすのが今の目標です.
AOJの基本的なデータ構造やアルゴリズムの対応も進めたいところですが, お気に入りのF#が使えないのが難点です. そんな中, 少し前に最近競技プログラミングの鉄則という本が出ました. 本の評判が非常に良いようですが, AtCoder対応しているいい話があります. せっかくなのでこれをF#/Haskellで取り組もうと思っています. これも150題程度あるらしく, 取り組みやすいところでF#が使えるのはAtCoderしか知らないため来年の楽しみです.
まだまだ量が圧倒的に足りていないため, これらをくり返して復習しつつ, 飽きないように新規コンテストで追加された問題などにも取り組んでアルゴリズム系の技能を鍛えようと思っています. 数学・物理系のプログラミングだと馬鹿みたいな計算量が必要ですし, 数値計算法もまさにアルゴリズムなので, この意味でも私にとって競プロは物理や数学です.
アダマールの不等式¶
行列解析系のネタです.
【ポッキーの日問題】 ポッキー(数字の1)を並べて目指せ高得点!
※行列式の計算は計算機を使用しても構いません(リプにサンプルコードをつけておきます)
Z^{n×n}の行列式の上界に関する定理何かあったはずだけど思い出せない Hadamard's inequalityだ。 Wikipedia
私の現代数学探険隊解析学編にも収録していますが, 実はFeldmanらによるRenormalization Group and Fermionic Functional Integralsという本があり, この中にもアダマールの不等式が証明つきで載っています. 以前, この本の誤植を送ったことがあって, タイポのPDFに私の名前も載っています.
ツイートに行列式の計算に計算機を使っても構わないとあって, こうしたお遊びネタとプログラミングの話もあれば, 上限を決定する不等式とゴリゴリの数理物理の関係もあります. 最近こういうのが面白くて仕方ない感じになってきて, 学生時代とは大分違う視点が得られている実感があります.
量子多体系の対称性とトポロジー: 統一的な理解を目指して¶
ツイートで渡辺さんの何かの話が流れてきて, 改めてこの本が読みたいなと思ったため宣伝ついでのメモです. 先日も情報理論と物性の論文を紹介したように, 幾何も量子多体系・物性の関係が強くなってきて, いよいよ幾何で遊ぶのを本格化させたいと思って改めて幾何ノート整備に乗り出した部分があります. 幾何それ自体で遊び倒すのも兼ねていて必ずしも物理だけに比重があるわけでもありませんが, 日々遊びたいおもちゃがどんどん増えてきて楽しいことこの上ない日々を送っています.
「無限次元」の代数と解析¶
これもちょっとした記録です.
佐古先生、可分なヒルベルト空間は有限次元でない限り全て非可算次元ですよ・・・。
可算個の正規直交系が存在しても非可算次元なんですか
はい、可算個からなる完全正規直交系が存在しても非可算次元です。これは例えばBaireの範疇定理から簡単に証明することができます。
文章で書くのは少し手間ですので、次のURLを見ていただけると幸いです・・・。https://planetmath.org/banachspacesofinfinitedimensiondonothaveacountablehamelbasis
なるほど分かりました 可分/非可分の区別を可分/非可算次元と勘違いしていたわけですね
Hilbert空間に対して次元というときは,特に断りが無ければCONSの濃度を指すことが多いと思います. 勿論,例えば線型空間としての次元と混同する恐れがあれば,Hilbert次元/Hamel次元のように呼び分けるのが妥当ですね. 以上は一般的な話です. 一方,Mathラブ娘さんの投稿については,かかる用語の選択そのものを取り上げられていると思います.これは概説全体で統一されているかどうかが問題の焦点になると思っていますので,引用されている画像からは判断しかねることを踏まえ,言及を差し控えます.
わたしはHilbert次元を単に次元というのはごく少数という認識です。特に、そういう言い方をしたいならHilbert次元/Hamel次元と言い分けるべきと考えています。が、この件については押し問答とならざるを得ないと思いますので、これ以上の議論は止めておきたいと思います。
そうですね,流儀の問題ですからね(蛇足ですが,個人的には言い分けるのも結構好きです).
これ大昔,大学の演習助手の就職試験で聞かれて間違えたことがありました.ヒルベルト次元と代数的な次元を全くごっちゃにしていて,へんな答えをしてしまったのですが,面接官の一人だった組み合わせ論で有名な Hanfried Lenz先生が,まあこれはいいとして,と次の質問に移ってくれ結果合格しました.
ちなみに物理バックグラウンドの人がヒルベルト次元を使う傾向があるのかはわかりませんが、試しに素論系の知人にインタビューしたところヒルベルト次元で答えました
物理学で使う数学のほとんどは,reverse mathematics で言うところの Big Five の弱い方の体系に落とし込めることがほとんどなので,集合論的な非可算がそこでは必要になっていないわけですが,これは,非可算性が hidden variable のようなものとして物理世界のどこかで本質的に機能していること↓ ↓ ↓ ↓の可能性を完全に否定しているわけでもないと思います. 少なくとも,数学世界では非可算性は,"hidden variable" 以上の役割を果たしているし,これをさらにどう考察するかが,数学の未来にかかっている,と個人的には思っています (人類の未来がないのに数学の未来があると言えるのかはちょっと疑問ですが).
まさに私はよくヒルベルト空間の次元をCONSの濃度の意味で使っているため, よい習慣ではないと反省しました. 齟齬が起きかねないのは間違いないため, 自分用のメモも兼ねてシェアします.
ドイツ語と英語が合成された学術用語“Eigenvalue”に関する数理的考察¶
知っている人は知っているでしょうが, eigenはドイツ語でeigenvalueはドイツ語と英語のチャンポンです. ついでにいうとvalueはフランス語valeurに起源があり, さらにラテン語に起源がある変な合成語です. この文献によると量子力学の発展に伴って現れた用語で, 固有といってよく使われる英語properでproper valueというと他の言葉と紛らわしく, あえてeigenを使ったという話があるようです.
語学・言語学が好き・興味がある人がどのくらいいるかわかりませんが, ちょっとシェアしてみます.
理系向けの語学教材制作に向けて¶
行方先生の新刊本。ジュニア新書ですが、これまでの著作から考えるに、また、取り上げられている著者の名前から判断しても、大人でも十分やりごたえのある英文が出てくるのだろうと想像します URL: 読解力をきたえる英語名文30
こういうのは人文・社会科学系の人にはいいのかもしれませんが, 理工系の人間は必ずしも楽しくありません. 最近語学系の動きが全然できておらず情報収集さえ微妙です. 忘れてはいない・忘れてはいけないのと, 「こんなコンテンツが面白かった, 勉強法が楽しい」という読者コメント収集も兼ねてシェアしておきます.
世間的な理系の差別的な扱い¶
理系女子、建築系や化学系に流れているだけでいないわけではない。工学系が少ないだけ。そして、工学系に女性が少ない理由はこの画像が全てを物語っている。安い床屋でスポーツ刈り、お母さんがしまむらで買ってきた服を着ている人が大半を占めている限り難しいでしょう。
例えばある看護学校が女性ばかりの点を議論してる際、「いる学生が化粧も服装もダメな醜く太った女ばかりだから。男は行かない」と言う人がいたとして、そんな感情は考慮に値しないどころか発言者が差別的と批判されるべきもの。この発言もそれと同水準の差別的暴言。 世の中には「黒人貧民街訛りの人間は受け付けない」「同性愛者は生理的にアウト」のような人もいるのだろうが、そのような心理は差別的発想に起因するもので、社会的には一切考慮すべきでないとされる。先のtweetのような露骨な差別的発想を表立って正当なものかのように語るのは論外。 こういう「恥ずべき感情」を抱いてしまう人がこっそりとその心理に従って選択をすることはあろうが、そうした差別的な侮蔑を当然のごとく語り、それに共感や賛同を送る人が多数いるという事実は、こうしてステレオタイプに語られた「理工系男子」への差別がいかに根深いかを図らずも明らかにしている。 理工系学部の女子率の低さはこうした心理が主要因ではないと思いたいが、少なくともここで語られたような心理の存在は、「理工系が不当な偏見と差別を受けている」がゆえに理工系の女子率が下がってしまうという、理工系が差別被害者である側面を明らかにしている。
最近またTwitterで『高専に進んだ女子が「こんな気持ち悪い男達ばかりの環境には耐えられない. 高専の内容には興味はあるが, もっとふつうの高校生ライフを送りたいと悩んでいた」』という伝言情報が流れてきました. 個人的には白血病で一年留年した上に吃音という言語障害まであるので, その「ふつうの高校生活とかいうのはありとあらゆる意味で何だ」という感じがあります. 一方で上記の世間的な理工系イメージと実態もそれ相応に知っています. よくも悪くも当たり前すぎて言われるまで気付いていませんでしたが, 確かにゴリゴリの差別と言えばそれはそうです.
私個人の話で言えば, 私はもういいおっさんですが, ファッションには全く興味がない一方, 変な格好をしているといろいろな意味でまずいため, 困り果てた最果てで十年くらい前から和装の方向に進んでいます. (おそらく)社交辞令ではなく似合うと言われることも多いので, 考えるのも面倒だから似合うらしいこれで行こうと決めました. ここ数年は普段着から作務衣にして, 一年中自宅でも(プライベートの)外出でも, 夏には夏用の, 冬には冬用の作務衣を着ています.
いわゆるチェックシャツ以外の理工系ファッションも何か考えた方がいいのだろうという気分があります. ワークマンのスーツという概念さえ出てきているので, ファッションに頭を使いたくない理工人向けファッションももっと提案した方がいいのではないかと最近思いはじめました.
いろいろなウェブサービス¶
ワールドミュージック界隈で話題騒然、世界中の民族音楽が聴ける慶應大Global Jukebox 、マジで直感的に操作できるのがすごく良い…。世界地図からも行けるし、動画後半のように円グラフ状に表示された地域一覧からも調べられます。 https://theglobaljukebox.org
最近面倒というか幾何ノート作りの方が楽しくて止めている物理学ギャラリーがあります. 現代数学探険隊や通信講座をはじめとして, 「こんなのがほしいが誰も作ってくれないので自分で作る」は私の大きなモチベーションなので, 「こんなサービスもあって喜ぶ人もいるのか」というのは参考になる場合があります.
正直このサービス自体にそこまで強い興味があるわけではないものの, 言葉にできない感じるモノがあったため, メモがてらシェアします.
2022-11-06¶
数学・物理 箇条書きノートのすすめ/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 箇条書きノートのすすめ
- 代数学習・復習で得た実感
- 非可逆行列の可逆化
- 数値計算とソボレフ空間
- 学習物理界隈へのコミットをはじめたい
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
最近メルマガ書くのもサボり倒しつつあります. 本職の方も今月で区切りがついて来月からまた新しいほぼ未経験の内容に関するプロジェクトがはじまるため, きりきり舞い状態です.
ここ最近は来年以降に向けた幾何コンテンツのリリースも見越して, 幾何ノートを集中的に整備しつつ復習しています. 全然書けていないと思っていた多様体論のノートが思ったよりも書けていたため, 思ったよりも速くリリースできるかもしれません.
ここ1-2週間, そしてしばらくは幾何というより代数の整備が中心です. ホモロジー代数はもちろんのこと, それを駆使する関数論が視野に入っているからです. 関数論には解析学の側面もあれば, 代数的場の量子論などでも楔の刃の定理など限定的とはいえ関連する議論があります. もう一つやはり学部四年-修士一年程度の内容くらいはきちんと勉強してみたい代数解析でもホモロジー代数を駆使するため, 私が守備範囲に入れたい広い意味での解析学にとって重要だからです.
毎日少しずつノートをためてきて, 途方もなく長い道のりでうんざりすることも多かったものの, リリースも考えてノートを整備しはじめたところ, 自分が勉強してみたいと思っていた学部四年程度の幾何への道が少しずつ整備されてきたのが具体的に感じられてとてもいい気分です.
箇条書きノートのすすめ¶
先日メルマガタイトル自体を「証明の構造がわかる数学ノートを作りたい」にした程度に, ノート整備のついでに証明の箇条書き化を進めています. そして単純にできるわりには非常に効果的でした.
現状ではいったんほぼ何も考えずにまずは箇条書きベースで書き換えています. これで次のような形式が強制されます.
- 1センテンス1トピック
- 箇条書きによる1トピックの視覚的表示
よくテクニカルライティングなどの文脈で「1センテンス1トピックにしろ」と言われます. 知ってはいたものの改めてその威力を実感しました. もともと通信講座用に作りはじめたノートで, 細切れの時間でも勉強しやすいようにと節もかなり細かく切っていました. 節・小節の単位でタイトルがつけられるため, あとでトピックを探す上でも便利で気に入っていたのがさらに徹底的になりました.
「情報を出している」という感じが強くなっていて, 文章の色気みたいなものまでほしい人には向かないのかもしれませんが, 少なくとも私には読みやすくなりました.
他にも箇条書きでまとめているため, 1トピックの区切りが明確です. 改めて眺めたときに「何だこれは」と詰まる部分もはっきりしやすくなりました. 箇条書きだと不明点も一段下げて「次のように考えればよい」といった補足が入れやすくなり, 追記・修正もしやすくなりました. あとで見れば「もはや自明」と思うような部分も, 箇条書きで一段下げて補足的な内容と明示させれば読み飛ばしやすくなります. やっているうちに気付いた点も取り込んでノートを少しずつ進化させる予定です.
代数学習・復習で得た実感¶
いま代数, 特に群と環の学部2-3年程度の基礎の基礎程度の内容のノート作りを終え, 体論・多項式論・ガロア理論の学習をはじめています. 実際には作用素環の部分因子環論で必要そうだから, と当時物理学科の学部四年のときに数学科の講義にもぐって一度は勉強していた内容です.
当たり前ですが全く身についていません. 久し振りに勉強して当時もよくわからなかった分離拡大などは, 改めて本を読んだら「標数0の体では全ての代数拡大は分離的」と書いてあって, いまだに慣れていない正標数の体でしか本質的な意味を持たない議論がわかるはずがありません. そもそもいまだに体論の理解はこの程度です. 学部一年から集合・位相をやっていて, 関数解析方面の基礎体力は多少ついていたにせよ, 非専門で適当に勉強した内容の理解度などこの程度だと改めて実感しました.
通信講座なりコンテンツ制作なりで, 必ずしも面白くない復習系のコンテンツをどう作っていくべきかなど, 改めて考えている中で注意しなければいけないポイントです.
非可逆行列の可逆化¶
わかれば一瞬かつ一言で直観的にも明らかである一方, 慣れていないときちんと証明がつけられない事案を観測しました. 参考になる方もいるでしょうからメルマガにも転載しておきます.
正方行列に怖い思いをさせてガタガタ震えさせることで、固有ベクトルがズレて可逆になる(?) 直感的には任意の非可逆行列 A と任意の ε > 0 について、可逆行列 B が存在して、すべての単位ベクトル v について |(A-B)v| < ε に出来ると思うんですけど、ほんとうでしょうか 線形代数力が無さすぎてわかりません
直観的には少し要素をずらせば行列式を非ゼロにできて可逆化します。特に非可逆な行列は基本変形でブロック対角型にできて「右下」が空くため、そこに成分がεの対角行列Dを埋めれば可逆化します。ブロック的な和としてA+Dを取れば大体Bが得られます。
ジョルダン標準系の0ブロックを適当に小さい数で埋める、確かに
相手がどこまで線型代数の諸概念を知っているかわからなかったため, 「このくらいは通じるだろう」という範囲で説明しました. 直観的に「それはそう」という話をきちんと詰めて話したところ, 相手からさらにそれを表す概念を使って一言でまとめる形で返ってきました. このやり取りだけでも線型代数の基本的な部分からある程度深い部分まで網羅されている上, 面倒な議論を一言で返せる概念が整備されている点にも気付きます.
先日Twitterで「数学まなびはじめ」の新井仁之さんの記事にあった, 「簡単な場合の証明を, 簡単な場合の特殊事情を使わず極限まで難しく書け. それが難しい場合の一般論を構築する上でのヒントになる」といった話をしました. 知識がある程度ある前提で復習するときは, 進んだ知識で簡単な議論を一言で表す訓練をしてみるといい勉強になります.
これの極端な場合が「大定理から系で示す」議論です. 有名どころはアティヤ・シンガーの指数定理です. 三次元空間内の曲面に対するガウス-ボネの定理は一般次元に持ち上げられる一方で, リーマン-ロッホの定理への一般化もあります. さらに一般的な議論がアティヤ-シンガーの指数定理で, 指数定理の系としてガウス-ボネの定理を証明する牛刀をもって鶏を割く話があります. そのままだと「すごいことはわかるが, いまひとつ心に落ちて来ない」ような場合に, 大定理の影響範囲が具体的に見えるする上で一つ大事なポイントになってきます. 進んだ議論を理解するためにこそ牛刀として使い倒すのは一手です.
数値計算とソボレフ空間¶
物理の人に必ずしも通じていないようなのですが, 数学, 特にソボレフ空間論は物理でもフォークロアになっている部分があるのを明示的にしたやり取りをシェアしておきます.
数値積分はいいけど数値微分はだめな理由 pic.twitter.com/HXQZqVaxD8
— horiem (@yellowshippo) November 7, 2022
あるいは、微分操作が高振動数成分を際立たせて、積分が低振動数成分を際立たせるということな気がする。。
— 🐟さかな🐟@威風堂々 (@ShunSakana) November 7, 2022
例えばソボレフノルムで見るとこのノイズは非常に大きなノルムを持っているので「ノイズ」とは言わないわけですね(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
「小さい」変化があったとき、結果の変化も「小さく」あって欲しい、そうなるように「大きさ」を決めてしまえばいいわけですよ(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
>RT
— 🐟さかな🐟@威風堂々 (@ShunSakana) November 7, 2022
これは、数値微分がダメということを表してない気がする。。
単に、微分自体の問題な気がする。。
これが全てのノルムが同値になってしまう有限次元位相線形空間になれてしまっている我々が、関数の空間にいったときに戸惑う理由の一つ...(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
数値的には線形作用素は行列で表現するしかなく、行列は常に有界にしかならないので非有界になる操作を近似すると上手くいかず、一方でソボレフ空間の様に微分の大きさに仮定を置かないと微分演算は非有界になる、という点を合わせた結果これは数値微分の問題だという主張はまぁあり(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
数値計算の話はほんとはこういうのをしたいんだけどね...(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
一様な誤差εが乗っただけでも全空間積分、特にエネルギーの積分は発散しますし、supノルムでどれだけ近くても三角関数型の摂動でエネルギーは跳ね上がりますし、何より20世紀的量子力学で節が増えるとエネルギーも高くなる事案があるので、単に物理を真面目に考えていないだけではないか感もあります。
— 数学女子 (@phasetrbot) November 7, 2022
関数解析や数学的な微分方程式論が数値解析の具体的な問題に直結している様子が見えます. 数値解析に興味がある人がどれだけいるのかよくわかっていないのですが, 私もいまプログラミングとの兼ね合いで改めていろいろ考えている部分なので, それとも合わせて注意している点です.
学習物理界隈へのコミットをはじめたい¶
先日, 科研費で学習物理のプロジェクトをやっている富谷さんに, 「物理界隈向けの情報関係, 特にプログラミングまわりの具体的な教育面で何か手伝えることはないか」とTwitterで打診してみました. 先日も紹介した永井さんの数値計算本など, このあたりでいろいろ遊んでみたいことはあるもののなかなか踏み込むのは大変です. いっそコミュニティに入ってその中でいろいろやろうと思い, 具体的な貢献をしますよベースで話を持ちかけてみました.
以前からGitの使い方といったレベルであっても, 物理の数値計算コミュニティにはうまく浸透していないという話がTwitterであがっていました. 少なくともこういうところなら協力できる要素が必ずあるので, とにかく何か小さな1アクションを取ろうと思います.
やはり一人だと限界がありますし, 先日知人から「あなたは具体的な技術や知見を深めて突破口を作るよりも, 新たな人との出会いで道ができていくタイプだよ」と言われました. 同じことばかりしていてもどうにもならない感じもあったため, 意図的にこれまでとは違う動きをして, 人を巻き込み, 巻き込まれるべく動いていこうと思っています.
2022-10-29¶
数学・物理 証明の構造がわかる数学ノートを作りたい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 中平健治, 図式と操作的確率論による量子論がようやく出版
- 非可換確率論
- 準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれる
- 純粋数学への取り組み方
- 最近のフロントエンド事情
- 高橋憲一『コペルニクス』
- アムロが教育するとしたらどうなるか
- 地理学習
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
いい加減きちんと勉強しなければと思ってAOJで基本的なアルゴリズムとデータ構造学習をしていたものの, AOJでF#が使えないのもあってうんざりしてきたためAtCoderに戻りました. そしてAtCoderは楽しいですね. 知らぬ間に少しずつアルゴリズム力も鍛えられているようで, AtCoder ProblemsのHardも前より取り組みやすくなっている気がします. 年始に本格再開したAtCoder Problemsもうまくいけば今年中に300問解き切れるかもしれません.
通信講座向けコンテンツ整備の一環としての熱力学ノート整備はやる気が出ないため, 既存のノート整理・復習と代数ノート整備を進めています. 先日Twitterで「ふつうの文章の体裁での証明は話の流れや構造が掴みにくい. 実際の本や論文ならともかく, 個人学習ノートなどなら箇条書きをうまく使って証明の構造を掴めるようにした方がいいのでは?」というツイートが流れてきました. 実は私もホモロジー代数ノートでは図式をTeXで書くのは面倒, しかし文章形式は読みづらいと思っていて箇条書き形式のノートにしていました. 試しに復習ついでのノート整理で証明をゴリゴリ箇条書きに変えています. 情報伝達に振り切った形式で好き嫌いは別れそうですが, 一文一文が簡潔で区切りも明確になって流れは掴みやすくなっている感覚はあります.
そもそも大人向け通信講座のコンテンツとして, 細切れの時間でも取り組みやすくするため小節をかなり細かく刻む方針にしています. 具体的にはAubinの幾何解析の本では注意や命題や証明自体を一つの節に切り分けて節番号が振られているのを参考に, 命題程度のレベルで小節をわけていました. いまはこれをさらに細かく, Aubinの本と同じく命題と注意と証明を小節にわける形式にしつつ, 証明を箇条書きベースに書き換えています. 細かな形式はまだ試行錯誤中ですが, 議論の流れを掴む目的でのノート作りを考えている人にはお勧めです.
中平健治, 『図式と操作的確率論による量子論』がようやく出版¶
先日宣伝した中平さんの本も出版されました.
まだパラパラと読みはじめたばかりで何も言えませんが, 量子力学の通信講座展開もあって読まないわけにもいきません.
この本では次のようなコメントがあります. (私の脳内翻訳です.)
線型代数の計算も大事だが必ずしも皆が皆慣れているわけではない. 計算ばかりでは事の本質が掴みにくいときもある. もちろん図式だけで全てが汲み尽くせるわけでもなく, ふつうの線型代数の計算力の意義・重要性は微塵も揺るがないが, いくつかの点で明確なご利益がある.
以前も紹介した気がしますが, 図式による議論は圏論的なストリング図とも関係があるらしく, 圏論への親しみも増すだろうと思いつつのんびり眺めている最中です. 図式によるTeXノート作りも大事なので, TeXの書き方に関して情報が出ていなければ何か参考情報をシェアしてもらえるよう働きかける予定です.
非可換確率論¶
Twitterで鍵アカウントの博士学生に対する応答をシェアしておきます. 何度となく言っている内容ではありますが, タイミング次第で同じ内容でも入ってくる情報量が変わる場合もあれば, 興味関心が合致する場合もあります.
作用素環の主な二つのクラスとして、C^環とvon Neumann環がある 可換C^環に対してはGelfand-Naimark双対性によってコンパクトHausdorff空間と反変圏同値があるが、可換von Neumann環に対してもcompact strictly localizable enhanced measurable spacesとの反変圏同値が成り立つらしい 他にもmeasurable locales、hyperstonean locales、hyperstonean spacesの圏としての表示もある https://arxiv.org/abs/2005.05284 この対応があるという意味で、一般のC^*環の理論は非可換位相空間論で、一般のvon Neumann環の理論は非可換測度論と見放されるらしい
圏論・幾何方面ならC^*というかもっと一般に非可換幾何ですが、ゴリゴリの解析で非可換積分論だと少し古いもののhttps://arxiv.org/abs/1208.5197のような話があります。非可換確率論もあり、最近圏の本をいろいろ書いている西郷甲矢人さんが非可換確率論の人です。Twitterにもいます。
準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれる¶
Observing quasiparticles through the entanglement lens https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.106.L161104 準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれるよ理論。物性屋さんも情報理論を本格的にやらんといけん時代かな?
いままで量子情報に興味が持ちきれない状態だったところ, こんな話まで出てきたとなれば物性から情報の勉強ができるパスが開かれたとも言えます. いよいよ私にとって情報理論を勉強しやすくなる環境が整ってきたのでしょう. とても楽しみです.
純粋数学への取り組み方¶
小中高で触れる数学は人間同士の間の競争という文脈と結構固く結びついている印象がある。大学以降も純粋数学を続けるなら、まず敵は人ではなく数学であり、対人戦ゲームではなく協力プレイのゲームであるという意識を持つところから始める必要がありそう。 まあ大学に入ってからも大学院に上がる際に院試があって、そこではどうしても対人の数学をやらなければいけないのだけどね。 僕は大学入試で2敗、修士の院試でも1敗してるので、もう対人の数学はあまりやりたくないですね…笑
書いといてなんだけど,小学校はそうでもなかったかもしれない.あと僕がこういう風に思ってるのは,高校受験とか大学受験みたいな受験戦争に身を投じたときに歪んだ価値観を植え付けられたからなのかもしれない…
これに対するくるるさんのコメント.
なんでもとあるアメリカの大学教授が、黒人学生が微積分でつまづくのをなんとかしようと観察・調査をした結果、白人やアジア系学生はグループで勉強し簡単なミスや勘違いを素早く修正できるのに対し、黒人学生は一人で勉強し細かい点で時間をかけすぎる傾向にあることを発見したそうで(続く) 小中高で触れる数学は人間同士の間の競争という文脈と結構固く結びついている印象がある。大学以降も純粋数学を続けるなら、まず敵は人ではなく数学であり、対人戦ゲームではなく協力プレイのゲームであるという意識を持つところから始める必要がありそう。 黒人学生もグループで勉強するように誘導したところ劇的に成績が改善し今ではむしろ黒人学生の方が平均値が高くなるようになったそうで。「負けたくない」「バカにされたくない」という意識は小中高でも十分ネガティブに働くのではないかと思う。 とはいえ、コミュ障の私にはどうも納得いかない面があるわけなのですが。まあとりあえずそういう研究・実践の報告があるということで。ちなみに本の文脈では、「黒人は数学ができない」というステレオタイプが最初に挙げた傾向の違いに影響しているという話になります。
何にせよ一人で勉強を続けられること自体が異常よりの行動力の持ち主です. 役に立つわけでもない話ならなおさらです. ここが私の領域だとも思うので通信講座は続けなければと思います.
最近のフロントエンド事情¶
プログラミングの話です. 細かなツールチェーンの話はいまだに山程あれど, 基本的にはReact一強にはなったため前よりは勉強しやすく, 取り組みやすくなっている印象があります. ツールチェーンも日々新しいのが出ているとはいえ, いろいろなモノをごちゃごちゃと組み合わせるのではなく, 簡素化の方向に向かっているのも有り難いです. もちろん開発者自身がもう耐えられないのでしょうし, Denoは明確にそこに舵を切っているようです.
それはそれとして書きたいのは高速化とRustの利用です. Rustは少なくとも他のメジャーな言語には搭載されているメカニズムがあり, 単純にそれを使った実装に興味があります. 前に微分方程式のプログラミングで少し使ったことはあり, 慣れないため面倒なことこの上なかったものの, バグを生みにくいプログラムを作るための面倒さ, もっと言えば既存の言語の悪癖の修正を促す言語という点がかなり気になっています.
そしてもう一つの高速化に対する明確な強い欲求が気になっています. アルゴリズムとデータ構造の話はそれ自体面白くなってきましたが, 高速化・効率化に関わる明確なご利益がある議論でもあります. そしてRust自体の速度だけではなくアルゴリズム上の工夫もたくさんあるようで, Rust+アルゴリズムはもっと面白い世界になっていくのではないかと見ています.
AOJを見ている限りではRustの競プロコードはそれなりにボリュームがあり, HaskellやF#ほどの簡潔さはなさそうです. 長いコードは読むのに体力を使い, Haskellでよく思うように短すぎても読みにくく, F#の程々さが気に入ってもいるためしばらくRustはお預けですが, 何かしらのタイミングでもっとしっかり勉強したいところです.
高橋憲一『コペルニクス』¶
先日『チ。』が微妙に燃えた影響でいくつか関連コメントが出ていました.
『チ。』で近世の天文学に関心をもった方にはこの本が超絶オススメ.若い読者向けということで「話し言葉」で書かれてあるのですが内容は初学者に配慮しつつも本格的.科学史という学問がどういった手法で過去の天才の思想と対峙しているのか,第一人者が手の内を明かしてくれている点にも大注目で コペルニクスが地球を動かした理由をどう考えればよいのか?高橋憲一先生の立場を結論から言います.
一般的にいって何らかの主義ないし信念をもちさえしたら「太陽の静止」と「地球の運動」の観念が得られると考えることこそ天文学研究の現場を素通りした想定だと言わなければならないであろう.
ここでの主義とは,コペルニクスの場合は新プラトン主義(とヘルメス主義)による「太陽中心」へ影響を想定しています.これをきっぱりと否定するのですが,その根拠の示し方に私は著者の史料への誠実さを感じるわけです.新書には収めきれなかった議論を少しご紹介します. まずコペルニクスは「ヘルメス・トリスメギストス」を「トリメギストス」と誤記しています.私であれば誤記は毎日のことですが,コペルニクスが「主義者」であれば,この誤記を見逃すわけがない.Twitterであれば,直ぐに引用RTで「間違ってますヨ」とマウントを取られるところです😂 また新プラトン主義者であるフィチーノは「太陽=神=宇宙の中心」というようなことを『太陽論』(『原典 ルネサンス自然学 上』に邦訳あり)で語るのですが,それは⬇のようなイメージ(月・水・金・「太陽」・火・木・土)であり太陽が宇宙の中心(最低部)でありません. 太陽のある「そこ」を「宇宙の中心」と見なしたのがフィチーノの斬新なのです. なお「地球中心から太陽中心への転換」はこの新書のクライマックスの一つではありますが,科学の歴史というものをどう検討すればよいのか?ということ考える実例として秀逸な本ですので,広く読まれて欲しい本です. 訂正:フィチーノ『太陽論』は「下巻」⬇です.なお訳者は,フィチーノの「太陽中心」(というより太陽中央というべきと思いますが)はコペルニクスに影響があったのでは??という期待を持っているようです. https://unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0881-5.html
アムロが教育するとしたらどうなるか¶
教官としてのアムロ、「どうすれば自分のような反射速度や判断ができるか」を真面目に考えると思うので、「反応出来なくても対応できるようにしよう」って教え方をすると思うんですよ 後ろから攻撃が来る場面を想定するなら、「反応しろ!」ではなく「こういう時は後ろからの攻撃も考えておく」とか カミーユに「後ろにも目をつけるんだ!」は「お前なら俺と同じく感覚を使えるんだからやれ!」なので、部下や生徒とかにはかなり基本に忠実になりながらも自分の経験を踏まえた的確な指導が飛んでくると思いますね ファンネルとかなら「オールレンジ攻撃はいかに的を絞らせないかだ、回避に専念するのではなくダミーを展開しつつ敵機への牽制をやめてはいけない」とか、「接近戦であればパイロットの気を反らしやすい、複数機でのダミー撹乱をしつつ一撃離脱を繰り返すんだ」とか、かなり具体的かな、と
この「反応出来なくても対応できるようにしよう」的な話がすごい好きで, また今後の教育関係の動きでも大事だと思うので自分用の備忘録も込めてシェアします.
地理学習¶
地理情報サイト「Geographia」を公開します。 地理の教養記事、受験に役立つノウハウや各種記事のピックアップ、地理関係書籍の情報を共有していきます。 「誰もが平等に学ぶ機会を」 これをモットーにコンテンツを充実させていきます。 応援いただければ幸いです。 https://itgeographia.com
まだ見切れていないものの, 地理は理系向けの人文系の切り口としてかなりよいという感覚があります. 今後きちんと勉強したいので自分用備忘録も兼ねてシェアします.
2022-10-15¶
数学・物理 基礎が必要なら早めに・徹底的に/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 基礎が必要なら早めに・徹底的に
- 河東YouTube講義録: エニオンの圏論的対称性と作用素環
- 第二不完全性定理と「コーディング」への依存関係
- 図解する整数論
- 藤岡敦『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』
- 永井セミナーの動画: 機械学習による材料物性シミュレーションの高速化
- 続 熱力学・統計力学学習の指針
- 熱力学の復習メモ
- 神学大全の羅和対訳
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
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近況報告¶
ここ最近急に気温が下がって体調がいまひとつでやる気も出ないため, 無理せずのんびり関数論の勉強をしていました. 久しぶりに少しアドバンストな勉強でもしようかと, 複素代数幾何への応用を意図した多変数関数論の入門の本を読んでいたところ, やはり代数の基礎が足りていないのを痛感しました. 最終的に関数論はもっときちんとやろうと思っているため, 何となく代数のノート作りを並行して進めていました. 学生時代に一度勉強していたとはいえ, 大して使っていない以前にやり込みさえ甘かった分野はなおのこと身についていない, 身につかないのを痛感させられました.
ノート整理をしていたら, 細かい精査の必要性を認識しつつ, 幾何のノートを早く充実させて作り切りたい気分が高まってきています. 少なくとも現状では研究にまで届くような内容への興味だとやはり解析学が中心で, 幾何で興味がある分野と内容は基本的な部分がわかれば当面は十分です. 一般論としては位相幾何(トポロジー), モース理論, 指数定理が揃えたいです. (多変数)関数論は私の中で解析学判定もありますし, ホモロジー代数も必要な範囲は位相幾何とモース理論を勉強すれば, ある程度はノートができるでしょう. あとは多変数関数論と代数解析を進めれば層のコホモロジーの基本的なノートが充実するはず.
復習・整理していると, やはり控え目に言ってもリリースできるレベルではありません. 定着のためにのんびり復習する時間も作って, リリースに向けた準備をはじめたいです. 書きっぱなしなので最低限の整備でさえ一年半はかかるでしょうけれども. そういえば多様体の基本的な内容もノートが作り切らずに止まっています.
一般論が整備できれば, 具体例と計算フェーズがもっと楽しくなります. 微分幾何もよくある2-3次元での曲線論, 3次元空間内の曲面論と一般的なリーマン幾何の対応が見えるノートを作りました. ずっと精神的な重しになっていた内容をクリアしたので, 具体的な計算で遊び倒すモチベーションも高まっています.
あと数ヶ月やっていたAOJも飽きてきた上に, 進めていたAOJの基礎教材はHaskellと相性がよくなさそうで, F#に慣れた頭でOCamlもつらいため, AtCoderに戻ってきました. 基礎教材と問題という違いもあるのでしょうが, 何となくHaskellとの相性もよく, Haskellerのコードが簡潔・明快で読んでF#に翻訳するだけでもよい勉強になっていて, とても楽しいです.
AtCoderで優先度つきキューを使うとよい問題が出てきて, HaskellではIntMap
, F#だと集合を使った解法がありました. .NET6で優先度つきキューが入ったようですが, .NET core 3のAtCoderでは使えず, しかもちょっと微妙な仕様のようで閉口しています. AtCoderに戻った途端にデータ構造学習の基本的な課題に当たったため, この数ヶ月の苦闘も無駄ではないものの, (F#による)関数型データ構造学習の道のりはまだまだ長いです.
C/C++やRustでやればよいのではという話もあり, Rustは興味があるものの, 「F#を書いて遊びたい」がモチベーションの一つになりつつあるため, なかなかうまくいきません.
自然言語で「英語は好きではないがフランス語はとても肌に合う」と言った話を聞いてそんなものかと思っていましたが, いままさに「他の言語ではなくF#を書きたい, F#で遊びたい」になっていてこういう感覚かという思いです.
基礎が必要なら早めに・徹底的に¶
近況報告に書いた話の続きです. いま代数のノートを作っていて改めて実感しています. なまじある程度知っているだけにノート作りが面倒で仕方ありません. かといってさぼると, あとで本を探すときにふだんその分野の本を読まないため奥に追いやられて手繰り寄せるのも面倒なのも実感しました. 思い立った今やるしかないと歯を食いしばって進めています. 先々の面白い話を知っているのもさっさと終わらせたい嫌な気分に拍車をかけます.
対照的に, 物理の勉強の場合だと少なくとも一度はまじめに・徹底的に勉強した上で, 改めて基礎の繊細な部分を徹底に考え直す側面があり, 逆に新たな発見というか楽しみが生まれてくるのが面白いです. いままさに作っている熱力学ノートでそれを実感しています. 学生時代に勉強した, 最低限知っている内容であっても, 明らかに理解が深まっていて理解できる内容もそこにいたるスピードも上がっています. 学生時代に物理学科だったご利益を実感しています.
先々の面白い勉強を進めたい人は多いと思いますが, いつかどこかで基礎に向き合うことになるのはよく覚えておいてください. ここでいう基礎はハードな計算を遂行しきる計算力も含んでいます.
河東YouTube講義録: エニオンの圏論的対称性と作用素環¶
面倒になったので転記をさぼりましたが第九回まであります. 第一回しか見られていないものの, ヤング図形の解説をはじめてまともに聞いたのですが, これがなかなかよかったのでそれだけでも聞く価値があると見ています.
第二不完全性定理と「コーディング」への依存関係¶
第二不完全性定理が、多くの自然なコーディングに依存していることは不完全性定理の研究者を除きあまり知られていないけど、証明はともかくその事実だけは割と知られていて良いと思っている。このサーベイがかなりわかりやすく説明されていて、intensionalityと言っている。
最近計算機科学にも興味が出てきて, その中である程度集合論の議論の要素を見かけます. 集合論ノートも作りたいと思いつつ幾星霜です.
図解する整数論¶
図解する整数論 - 丸善出版 https://buff.ly/3yAHsgO この本,ヤバいです,面白すぎる.最初の数え上げからこの手があるのかの連続で,平方剰余の相互法則が力学系で証明されていたり,ペル方程式の解を2次形式のトポグラフという図形的な手法で構成されています.素晴らしすぎる.
私も広い意味では$C^$-力学系・$W^$-力学系として力学系の基本的な部分を勉強・研究していましたし, 研究会で作用素環関係の力学系の話題にも触れていたため, 数論と力学系のようなテーマなら数論にも興味が持てそうな感覚があります. エルゴード理論・確率論と数論という話もあります. 数学としてのエルゴード理論は射程範囲が長いので, これもいつか解析学からのノート作りに勤しみたいです.
藤岡敦『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』¶
『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』 「本書は、このようなことから生じる高校までの数学と大学以降の数学の間のギャップを埋めるための教科書である。」
一定数興味がある人がいそうなのでシェアしておきます. 藤岡さんが最近書いている「手を動かして学ぶ」系は評判がよいようです. 内容は確認しきれていませんが, ここ一年私が主張し続けている計算の重要性もまさに手を動かして学ぶ系のコンセプトで, 様子を見る限り大きな方向性は同じようです. その大方針も合わせてお勧めです.
永井セミナーの動画: 機械学習による材料物性シミュレーションの高速化¶
そういえばこの前1時間位「機械学習による材料物性シミュレーションの高速化」って内容でオンラインセミナーしてきたのですが、その動画が公開されました。 |【オンラインセミナー】第3回 アドバンス・シミュレーション・セミナー https://youtu.be/KMLDPsktQ-w @YouTubeより
最近統計勉強会ではJuliaの統計パッケージを読むのに飽きてきたためsympyのコードを読んでいます. 高速化を意識したコードをしばらく読んでいたからか, sympyのコードで簡単で本当に微々たる量ではあっても, 明らかに効率化できるコードを見て「書き換えたい」と思うようになる程度には高速化への意識も芽生えてきました. まだ見られていないのですが, 気になってはいるのでメモついでにシェア.
続 熱力学・統計力学学習の指針¶
前回は熱力学の話をしました.
今回は統計力学です. はじめに断わっておくと熱力学と違って統計力学を数学的にきちんと議論しようとするのは勧めません. 単純に血反吐を吐くほど難しいからです.
まず数学方面の興味がある人向けに書いてしまいましょう. 例えば量子統計で言えば平衡状態の存在そのものがいまも論文になるレベルで大変です. もっと言えばBECがあるため自由場の議論さえ数学的にきちんと議論するのは大変です. 新井朝雄先生の「量子統計力学の数理」も自由場のBECが一つの山です. そんな中, 物理的な意義もおさえながら統計力学の基礎を勉強するのにお勧めなのは, 原・田崎の「相転移・臨界現象の数理」です. イジング模型には可解格子模型のようなテーマもありますがこれはもっと地味な議論です. しかし逆に物理学科の物理にとっても意義のある形・内容なので, 数学的に完全に厳密に物理にアプローチしたいならお勧めというかぎりぎり限界の内容です.
次に物理学科水準で統計力学の基本的な内容を勉強するときのポイントです. 結論から言えば, これも田崎さんの統計力学を読むのがいいだろうと思います.
統計力学には凄まじく多彩な展開があります. 先日沙川さんの非平衡統計力学の本も紹介したように, もはや非平衡統計も完全に市民権を得ています. 統計力学自体, たいていの物理学科では学部三年程度でようやく必修として処理できる内容です. そして四年では完全に研究室配属で専門的な話題の準備にうつるでしょうから, 基礎を修めたあとはもうゴリゴリの専門に向けたテーマの本に挑むはずです. 何を勉強するにしても大事な基礎となると本当にオーソドックスな内容を丁寧に勉強するのが一番で, 田崎さんの本ではシュレディンガー方程式系の議論に基礎を置いた量子力学の話も基本的なところから解説してくれていて, 偏微分方程式を駆使する(20世紀型の?)量子力学への導入にも使えて便利です.
熱力学の本も同じで, 田崎さんの本はとにかく丁寧なのがよい点です. 比較的最近の本なので物理的な基礎づけとエルゴード理論の(無)関係などにも注意があります. 強いて言えば二巻あって長いと言えないこともありませんが, 丁寧さの裏返しと思った方がよいでしょう.
応用に関する部分でも書いたように, この本だけだとさらなる魅力的な現象へのアプローチや具体例の計算が足りません. 熱力学の本でも引用があるように, 埋める一つのアプローチは久保亮五編の演習書です. なくしたようでいま手元にないので記憶で書くと, まず物理学科向けなのでかなり難しいです. もちろん最新のトピックもありません. それでも統計力学の幅の広さは実感できる特異な本です.
私は物性の数理物理に進んでしまったため, 物理としては深いものの極端に狭い世界しか把握できていません. ただそこまで広く深く勉強したい人はもはや研究志望の大学院生くらいで, もう私の手に負えるレベルの人ではないでしょう. まずは熱力学・統計力学ともに素直に田崎さんの本を読んでもらうのがいいと思っています. その先はもうほぼ研究水準です.
熱力学の復習メモ: エントロピーが温度をパラメーターに含まない理由¶
冷静に考えると大した話ではないものの, 本腰を入れて勉強し直したご利益的な形でいい気分なのでメモがてら共有します.
何というか, 完全な熱力学関数としてのエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由がようやく腑に落ちました. 全くもって高尚な話ではなく, 断熱系の定義のもと, 断熱系の状態間遷移を制御する量としてのエントロピーという既に知ってはいた定義を整理しつつ認識し直して, 改めて熱力学の理論の構造が見えてきて, 当たり前のことを当たり前と言えるようになりました. 田崎さんの本の二章の定義は本当に大事なので, 田崎本を読む人はぜひ注目して読んでください.
念のため簡単に理由を書いておきます. 温度は外部の環境に関するパラメーターとして熱力学に導入されます. 一方断熱系はいわば孤立系の議論で環境の情報は持ちません. 外部環境と比較した上でしか出て来ない温度の情報を使って断熱系を特徴づけるのは原理的に不可能です. これが断熱系の完全な熱力学関数がエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由です. わかる人にしかわからない説明かもしれません. 勉強会つき通信講座の形でノートを公開する予定なので, 興味がある人は楽しみにしていてください.
さらっと流しただけの代数や幾何と違い, 一度自分なりに徹底的に勉強した上での物理の復習は頭が整理されてとてもいい気持ちです.
神学大全の羅和対訳¶
なんと,慶應の上枝美典先生による『神学大全』の羅和対訳がGitHub上に公開されているだと・・・. http://ueeda.sakura.ne.jp/translation/
人文系でもGitHubの活用があるようで, インフラとしてのGitHubがどんどん広がりを見せているようです.
2022-10-08¶
数学・物理 ノーベル物理学賞は量子情報: ベルの不等式/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 社会の厳しさ
- 「チ。地球の運動について」
- 磁性の数値計算
- 熱力学・統計力学学習の指針
- 技術資料のあり方
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
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近況報告¶
ノーベル物理学賞はいままさに通信講座で展開している部分とも重なる量子情報, ベルの不等式に関わる議論で個人的にはとてもタイムリーでした. ベルの不等式は一連の不等式を指し, それぞれがいろいろな状況を扱っていて一概にこうとは言えないようですが, 面白い議論がたくさんあるのは間違いありません.
いまの通信講座でも一連のベルの不等式のうちCHSH不等式を扱っていて, このCが今回授賞対象のクラウザーです. ここ一年ずっと言っている具体的な計算・線型代数の計算・行列の計算の文脈からもドストライクです. 次の通信講座も予定ではいまの続きで, 線型代数の一般論を量子力学に役立つ形でゴリゴリ具体的に低次で計算するスタイルで続けます. 興味がある方は楽しみにしていてください.
特殊相対性理論のノートも力学部分は大まかに作り終えました. まだいろいろな本やPDFなどの切り貼り状態なので, 後で見たら「何だ, このわかりにくい構成は」となるはずです. このまましばらく寝かしておいてから整理して, 一定のレベルになったらまた通信講座としてリリースする予定です.
学生の頃, 学部三年で勉強したときは量子力学・統計力学と同時平行で進めていて, それぞれ計算も大変で物理どころではない状態で, 物理の理解以前で止まっていました. ようやく一歩踏み出せたのでこれからのさらなる追い込みが楽しみです.
これから熱力学ノートをざっと整理して, イジング模型の数理物理に進む予定です.
社会の厳しさ¶
「数学やってます」と言ったら心底嫌そうに顔を顰めて「しっしっ」と追い払う動作をされたことがあり,それをやられたらもう,自分は仮に自分の大嫌いなこと(それがあったとして)に従事している人が目の前にいてもそんなことをしないという誇りを胸に生きていくしかないと思った.
最近のTwitterでは「数学をやっていると言って嫌な目にあったことがない」との話をよく目にするようになって, そんな異世界があったのかと衝撃を受けていたものの, やはり社会はあったと現実を思い知らされた気分になりました.
「チ。地球の運動について」¶
『チ。地球の運動について』というマンガが人気のようです.コミック売り場で平積みになっていたりします.近世の地動説をテーマにしていますが,科学史的にはありえない話ばかり.近世の政治史,宗教史からも突っ込みどころ満載ではないかと思います.
実はこの手の成文化された批判を心待ちにしていました。最終巻を読むと、あの異端審問官が一体「誰」なのか分かるとともに、事実を反映しない云々の批判が瞬時に無効となります。
未読の漫画なのですが気になる話があったのでメモがてら共有です. ガリレイの異端審問的な記述に関して無茶苦茶だが, 最終的などんでん返しがあり, それを知ってもまだなお不満があるという話もあるようで, どんな話なのか逆に気になっています.
磁性の数値計算¶
イジングの数理物理をやる一方, 永井本を読んで, 改めてプログラミングネタとして格子模型をやるといいのでは, という天啓を得たため適当にツイートしたら教えてもらいました.
(答えてもらっておいてなんですが、専門外という事を含めていただいて話半分に聴いてください) 古典と量子で色々と異なる気はしますが、ネット上だと 川島直輝, 物性物理におけるモンテカルロ法(第52回物性若手夏の学校(2007年度)講義ノート), 原田健自, 量子モンテカルロ法の最近の発展とかでしょうか。 本だと計算物理〈3〉数値磁性体物性入門 基礎物理学シリーズが良かったと記憶してます。
数値計算でトロッター公式や経路積分といったテーマも重なるようで, 線型代数の一般論ネタとしても昇華できる部分があります. 富谷さんのツイートを見ていると, 物理学者向けのプログラミング教育的な部分も全然足りていないようなので, そこにも貢献できるようなことができればな, と妄想しています.
熱力学・統計力学学習の指針¶
これからまさに私自身これらを再学習します. 学生時代物理学科で一通りやっていて, イジング模型の数理物理については原・田崎のイジング本の査読に参加して謝辞に載せてもらった程度には勉強しているため, 直接役に立てるのも難しいと思うかもしれません. 逆に数学色が強い人間から見た勉強のつらさといった視点で何がどうつらいのか言える部分もあるので, 興味がある人はぜひ参考にしてください. ノートを整理したら通信講座も展開する予定です.
まず熱力学はここに田崎本・清水本の書評を書いています. これも参考にしてください. 清水本は2021年に二巻本として第二版が出ていますが, 私は一巻本の第一版しか持っていません. 内容・構成が大きく変わっているかもしれませんが, ここでは第一版に基づいた記述にします.
おそらく多くの人はエントロピーを理解したいと思うでしょう. どう書かれればわかりやすいと思うかは人によって大きく変わる点に注意が必要です. 古い(?)統計力学の本だとエントロピーは乱雑さを表すと言ったりしますが, 熱力学のレベルではそんな話は原理的に出てきません. 統計力学をどういう立場で捉えるかもあります. 少なくとも熱力学(だけ)を勉強するなら乱雑さの視点から捉えるのはやめた方がよいです.
最近の新しい本は調査できていないものの, とりあえず熱力学は田崎本と清水本を読むのがいいでしょう.
特に初学は田崎本を勧めます. 気体の力学的扱いからはじまって状況を表す図も差し込まれているため, 理論を直観的に理解しやすいはずです. 力学を軸にした熱力学の理論の立て方に慣れたあと, 断熱操作を軸にしたエントロピーの立ち位置を明確にしていて, 熱力学としてのエントロピーの意義が見やすい構成になっています.
あともう一つ, 初学にお勧めの田崎本の圧倒的な利点があります. それは完全な熱力学関数の記号的な識別です. 例えばヘルムホルツの自由エネルギーといっても, 何を変数としているかによって熱力学的に持つ情報量が変わります. 系の完全の情報を持つのは適切な独立変数を持ったときだけで, その場合に関数の引数を角括弧で書く区別をつけています. これだけでも熱力学の議論の見やすさが段違いです.
社会人や非専門の人だと時間もないでしょうから田崎本一冊読めばそれで十分です. もっといろいろ勉強してみたい人は清水本を読むといいでしょう. 次にこちらの特徴を書きます.
田崎本のいいところはよい意味で熱力学に閉じて, 熱力学の理論構成を教えてくれます. 一方, 清水本は物理の中の熱力学を教えてくれます. 例えば場の量子論や統計力学, 相対性理論との関係も一章割かれています. 他には離散的な量であるはずの物質量を連続とみなす感覚の説明もあり, 物理として明らかに一歩踏み込んだ記述があります. おそらく相当物理に慣れていないと読めません.
もう一つ, 初学者殺しになりがちな清水本の特徴があります. 著しく数学的な記述スタイルです. ここでいう「数学的」はいわゆる厳密な論理展開といった話ではありません. 実は清水本では田崎本と違ってエントロピーから話がはじまります. そして次のように議論が進みます.
- エントロピーという量が大事なことがわかっている.
- こういう量として定義する.
- エントロピーが持つ性質を解明しよう.
この「まずとにかく大事な量・概念を定義する」, 「何だかわからないまま話を進める」スタイルがいかにも数学の議論の趣があります. 特に途中までは具体例の計算もかなり少ないように思います. ふつうの物理の本のスタイルではないことも難しさに拍車をかけます. 念のために書いておくと数学関係者なら読みやすいかと言うとそうでもありません. 肝心の物理部分が難しいので物理に対するかなり高い耐性が必要だからです. そういう意味ではまずは四の五の言わず田崎本を読んだ方がいいでしょう.
本当は統計力学も書こうと思ったのですが, 長くなったので次回に回します.
技術資料のあり方¶
よく技術資料を書く人間としては背筋が伸びる資料だった。よく整理されていると思った。A群向けの記事を書きたいと常々思いつつ、B群向けの記事を執筆・量産している気がしてならない/テクノロジーマップ、技術カタログの在り方について
A群とB群はリンク先のPDFで次のように定義されています.
- [A群] 組織に少数ながら隠れて存在する、独立した頭脳を持ち、試行錯誤を好む、実質的技術的決定権者たち
- [B群] 組織の経営事務的機構(サラリーマン的集団)
私もA群と解されるような人達向けの情報を出す方だと思いますが, もっときちんと考えてやるべきなのでしょう.
今週の問題¶
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-10-01¶
数学・物理 格子模型の数値計算が面白そう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 計算統計・計算物理の諸手法
- 機械学習のための関数解析入門, 線型代数対話
- 同値な主張の言い換え
- 関真一朗, グリーン-タオの定理
- 中平健治, 図式と操作的確率論による量子論
- フォンダ, クルツワイル-ヘンストック積分入門
- 小学校でのプログラミング教育
- ラテン語派生語表
- 人生のはじまり, 勉強の我慢
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
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近況報告¶
ここ最近いまひとつ気分が乗らずメルマガが隔週になってしまっているものの, 数学・物理・プログラミング自体はのんびり進めています.
統計の勉強会で永井本のイジング部分を読んでいます. 微分方程式はあまりにもつらいものの, 何かしら物理に関わる数値計算はやりたいと思っていたところ, 改めて格子模型をいじっていたら「そうか, これもあるか」と今更ながらに気付きました. 格子模型の数値計算ネタや本がないか, 勉強会で読み終わったらちょっと永井さんに相談してみようと思っています.
あと最近よく触っていて, Juliaの統計パッケージのライブラリ読みも飽きてきたので, sympyのソースを読もうかとも思っています. プログラミングも改めて純粋に数学・物理に絡んでくるような方向が見えてきたので, とても楽しみです.
数学・物理に関しては通信講座関連で特殊相対性理論ノートがもう少しで雑に組み上がります. 一般相対性理論はいまひとつやる気が出ないので, 特殊相対性理論ノートができたらいったん熱力学ノートを作り, イジングでの統計力学ノートを作る方向に進もうと思っています. 上で書いたようにイジングは数値計算もセットで遊ぼうと思っていて, いまから楽しみでなりません.
計算統計・計算物理の諸手法¶
これ講義聞いてみたいと思うでしょう.ところが実は動画が全部無料で公開してるんですが https://sites.google.com/view/lecture-algorithm/ なぜか誰も聞きにこない.
そしてネット上で入手できる壮大な文献リストまでついているのである https://sites.google.com/view/lecture-algorithm/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/%E6%96%87%E7%8C%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88
計算物理関係の文献リストもあるのですが, いまひとつ何からどう読んでいけばいいかわかりません. よく知らないところに対して文献リストをボカンと出されても困るのを改めて実感しています. 今年に入ってからの通信講座・計算練習もこの反省というか実感に基づいて展開しています. よく知らない上に吟味する時間も取りにくい状況だとそれだけで困るので, とりあえずこれをかちっとやろうと出してくれると楽だろうと.
機械学習のための関数解析入門, 線型代数対話¶
これ(機械学習のための関数解析入門)は名著です。関数解析ガチ勢は、著者が「何を狙ったか」たぶんすごくわかって感動するのでは。内容は易しいが、理念はあくまで高い!
ありがとうございます!『線型代数対話』もいずれは関数解析までいくつもりなのですがまだ道は遠いのです。関数解析の方にむしろ読んで(ニヤリとして)いただきたいのは『指数関数ものがたり』ですね(付録は圏論)。下記Grassmannianさんという方のレビューが詳しいです。
11,12章は著者の専門に若干寄せた発展的なトピックというところだろうか。Fourier変換からGelfand変換へと話を進め非可換確率論に触れ、超関数を定義し中心極限定理で幕が下りる。本当はここからさらにBrown運動の話をしようと思っていたらしい。続編に期待したいがそれは演習問題とされていた。 私は付録がとても面白いと思った。本文で位相の話ができなかったからということで、圏論的に集合、超準解析、距離空間を取り扱っている。
西郷さんは比較的専門が近いので前からかなり気になっています. 『指数関数ものがたり』も読みたいですがとにかく時間がないですね.
作用素環も学生の頃にノートをTeXで作ろうと思ったものの, あまりに時間がかかるので断念した記憶があります. 今から思えば時間がありあまっていた大学院の頃にこそやっておけばよかったと非常に後悔しています.
同値な主張の言い換え¶
函数fについて、「任意のxについてf(x)は0以上」と「fの最小値(正確には下限)は0以上」は同値な主張ではあるが、学生視点だと前者の方が圧倒的に難易度が高い。それくらい(数学者以外の)人間にとって述語論理は難しくて分かりづらい。 現実に学生を指導する際には、「正確には最小値でなくて下限だけど、下限概念は難しい」とか「前者のように理解する方がより自然」とかあったりするわけですが、前者のような表現が学生の理解に負担をかけていること自体は意識したいと自戒。
この手の言い換えは受験数学のテクニックみたいに思われがちだけど、大学以降の数学でも実は大事で、リーマン積分の理論は過剰和と不足和を導入することで実質的にこの手の言い換えを駆使して記述を大幅に簡略化しているんですよね。 こういうものの見方は私も最近できるようになったもので、学生時代の理解力だと教科書や授業ノートの議論をフォローする(それもできたのか怪しい……)ので精一杯で全然ゆとりがなかった。 これぞ年の功である。
最近よく引用する森の未知さんのツイートです. 森の未知さんはかなり教育熱心で, かつツイートで知見を共有しているのでとても参考になります.
ちなみに上記引用の一番最初のところ, 実際にどちらの方がわかりやすい・わかりにくいというのはあるでしょうか? 私はむしろ前者の方がすっと入るくらいですが, それほどふつうではないと聞いてむしろびっくりしました.
関真一朗, グリーン-タオの定理¶
実物を見てない人がわいわい言うのはアレかもしれないですが、これ多分名著なので皆さん買いましょう。 というのも、この手の本にはしてはとても珍しいことにself-containedらしいんですよね。
グリーン・タオの定理 |朝倉書店 「素数には任意の長さの等差数列が存在する」ことを示したグリーン・タオの定理を少ない前提知識で証明し,その先の展開を解説する。〔内容〕等間隔に並ぶ素数/セメレディの定理/グリーン・タオの定理/ガウス素数星座定理/他。
21世紀に発見された大定理を一冊の本でself-containedに証明全て説明すると普通はガチ専門家にしか読めない本になるわけですが、非専門家(と言いつつ学部レベルの数学はある程度知ってた方が良いかもしれないが)向けで証明全て説明するのはとても珍しいです。
これも森の未知さんツイートです.
ちなみに関さんはいわゆる素数大好き人間です. 私は学部が物理, 修士は解析学専攻だったのであまりこの手の人に実際にお目にかかる機会がなく, 関西すうがく徒のつどいではじめて話を聞いたときに「素数大好き人間, 本当にいたのか」と思った記憶があります.
中平健治, 図式と操作的確率論による量子論¶
いま通信講座もやっている量子力学関連でまた本が出ます. いわゆる「21世紀の量子力学」的な内容でピンと来る本にいまだに出会えていないのですが, Twitterでの様子を見る限り, 中平さんの議論のスタイルはかなり肌に合いそうなのでとても気になっています. Amazonでもうポチっておきました. 10/21発売だそうなので到着が楽しみです.
フォンダ, クルツワイル-ヘンストック積分入門¶
リーマン積分とゲージ積分で微分積分学の基本定理の主張と証明がどう違うのか比べると結構面白い。 リーマン積分だと証明に平均値の定理を使う関係で被積分函数の可積分性の仮定が必要だが、ゲージで区分だと単に微分の定義なので被積分函数の可積分性は仮定ではなく結論となる。
これまた森の未知さんツイートで, 私の中で微妙な盛り上がりを見ました.
ルベーグを一般化できている面もあるようで, 何年も前からそれなりに気になる話ではあります. 私がルベーグ積分を使う・使いたい場面は, $\mathbb{R}^n$を越えた一般の測度空間上の議論が大事な局面が多いので, どこまで「使える」のかが気になっています.
関数解析・関数空間論的な方向も重要で, クルツワイル-ヘンストック積分可能な関数の空間論がどこまで論じられているかも問題です. ここがよい性質を持ってくれていないと使いづらく, リーマン積分の一般化だけに集中されて関数空間論に踏み込んでもらえていないとさすがに食指が伸びないですが, そこまで調査する気力と時間がないです.
どなたかご存知の方がいればぜひ教えてください.
小学校でのプログラミング教育¶
オープンアクセスになりました。無料でPDFをダウンロードできます。 ついに始まった小学校プログラミング教育 -その現状と課題-, 情報処理, Vol.61, No.8, Aug. 2020 http://id.nii.ac.jp/1001/00206050/
中高生向けの動きで何をするかずっと考えているので, 参考資料としてメモ+共有です.
ラテン語派生語表¶
題名は「ラテン語派生語表」だが、内実はラテン語由来の英単語を系統的に集め訳語を添えた解説書、ラテン語幹を記憶の鍵とし芋づる式に英単語を整理できる。ラテン語の英訳と和訳に用いた漢字とがなるべく意味の上で一致するよう配慮、相互関連が看取し易い。まさかの無料😳 http://bit.ly/3c8rIWs
ラテン語は学術用語として数学・物理に息づいています. そんなかたいことを言わずとも, アニメ・漫画・ゲームでもちょこちょこと出てきます. 文系人向けの「語学からの理工系入門」的な調査も進めているのでそれ用のメモ.
人生のはじまり, 勉強の我慢¶
二十台半ば、既に人生は本番中だったと気づいた。その頃は、まだ人生の準備中で勉強したり経験を積んで力を蓄えているのだと思い込んでいた。でも、それでは何もできないで終わると気づいた。今も時々思い出さないと、勉強や成長の快楽に逃げてしまう。 だから、何かを勉強してできるようになったら挑戦するとか、自分自身にとって大事なことを先延ばしにしている人には、あなたの人生も本番が始まってますよと言ってあげたい。勉強が得意な人生を歩んできた人ほど、この事実に気づきにくい。 確かに何かの目標に向けて勉強が必要という場面はある。しかし、自分の場合は、本能的に勉強が好きだから、勉強するのは仕事をサボっていることが多いと自覚している。だから、がんばって勉強するという精神がわからない。むしろ、勉強を我慢することが大事だと思ったりする。 研究者になる人にとっても、勉強フェイズから研究のフェイズへの遷移は難しい課題だ。勉強すると、短時間でたくさんの知識を蓄積できるのに、研究をすると、ほんの少しの知識を生み出すのに、無駄に終わるかもしれない行動をたくさん取らないとならない。
上でもずっと書いているように, 勉強ばかりで中高生向けの活動を行動にうつしていないので非常に反省するツイートでした. 地元の政治家に何か進める手立てが打てないか, 改めて話を持ちかけたので少しずつでも何か動かしたいですね.
今週の問題¶
つい先程ノートを作っていたローレンツ変換の導出に絡めて一つ.
ローレンツ変換の導出には光速度の不変性と相対性原理を使うことになっています. しかし実際には座標変換を線型変換に制限するために空間の一様等方性も使っています. 改めてノートを作って線型変換に帰着する部分の理解の曖昧さに気付きました.
こんなところも線型代数です. 特殊相対性理論でも線型代数は重要です. 一般相対性理論・微分幾何でも局所理論は線型代数で, ベクトル束とその演算としても線型代数は酷使します. 一般相対性理論の入門段階でそこまでどぎつい微分幾何は必要ないものの, もしあなたが数学としての幾何に興味があるなら避けては通れない対象です.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-09-17¶
数学・物理 興味が燃えてくるまで待ち, 耐える/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 興味が燃えてくるまで待ち, 耐える
- Web上学習がつらい
- 集合・位相, または微分積分・線型代数の通信講座
- アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近, 通信講座の次の展開用に物理として相対性理論のノートを作っています. 学生時代は相対論的場の量子論用に特殊相対性理論を少し使ったくらいで全然身についていないので, まずはリハビリです. 微分形式といった部分にどこまで踏み込むかと思いつつ, 特殊相対性理論だけならそこまでいらないかとも思い, いろいろ検討中です. 一般相対性理論にいまひとつ食指が伸びないので, 復習がてら特殊相対性理論ノートを作ったら統計力学, 特にイジングのノートを作る予定です.
永井さんのJulia本にもイジングの話があり, それはそれで別途勉強会でいま読んでいるところなので, 数値計算との絡みももう少しやりたいですね. そこまで含めて楽しみが続いています.
興味が燃えてくるまで待ち, 耐える¶
近況報告にも少し書いた一般相対性理論の話です. 学生時代, 講義に出て一度は一通り勉強したものの, いまひとつ食指が伸びずいまもそのままです.
いま仕事でこれまでいろいろあって手を出してこなかったフロントエンドまわりの勉強をはじめていて, 強制力でゴリゴリ進められているのを考えると, 興味が出てくるなり必要に迫られるなりして本腰を入れたくなるまで待つのがいいか, と思ってとりあえず特殊相対性理論に集中しています.
学術界隈だと何かを理解したければ研究するのが一番だとよく言われます. これにあてはめるなら, プログラムだと何かしらプログラムを書く・開発するのが一番なのでしょう.
中高生向けの展開のために言語学やアルゴリズムなどの情報科学の基礎を勉強しはじめ, 学生時代はまるで興味がなかった言語設計などにも興味が出てきたほどです. 自然な興味の発展を待ってじっくりやるしかないかと改めて感じています.
Web上学習がつらい¶
主にプログラミングでの話です. 最近は公式ページが充実していて本当に助かります. 変な本や解説を読むよりよほどしっかり丁寧に書いてあることさえよくあります.
しかし私にとってつらいのはハイパーリンク系の発想そのものです. リファレンスを読むような必要な部分のつまみぐいではなく, はじめから順を追って勉強したいとき, どこからどう読むのがよいのかとてもわかりにくい点です. そしてリンクが張ってあるとそちらに飛んでいきたくなり, 順番がめちゃくちゃになって混乱します.
「コースが三つある. 初心者向け, 中級者向け, 上級者向けだ. 興味・関心・状況に応じて好きなところからはじめよう.」と並列に並べられていて, 「あとで起点のこのページに戻って中級をやろう」みたいなのがもう面倒でたまらないです.
この点, 本は基本的にはじめから最後まで単線で読み進める前提で構成されています. 頭を使わず前から読めばいい点が本当にありがたいです. こういうスタイルの方がいい人もいるのでしょうが私にはつらいです. ウェブサイトやコンテンツを作るときの自戒として最近本当によく思います. 体系立ったコンテンツを何でどう作るべきか改めて気にしています.
ちなみに私のようにハイパーリンクに満ちたウェブ上の資源で勉強するのがつらいタイプ, どのくらいいるでしょうか? 結構気になっています. いま展開している通信講座は既存のコンテンツ・私の学習ノートがあるため, コンテンツの配布としてははじめに関連するPDFをドンと出した上で, 「今回の講座は全体の中のこれとこれとこれ, それ以外は時間があればどんどんやってほしい. もしくは講座の期間が終わってから復習がてらのんびり取り組んで」という形です. これももっと色々なアプローチがあるでしょう. 余計なコンテンツが入っていると混乱して嫌という人もいるはずで, いい形はずっとゆるく考えています.
集合・位相, または微分積分・線型代数の通信講座¶
当面は物理(の計算)系をメインに進めようとは思っているものの, 数学系をもっとやりたい人もいるのかもしれないと思っています. 以前文系プログラマー勢からコメントされたこともあり, いま量子力学や特殊相対性理論のノート作りでもsympyを使ったプログラムを改めてちょこちょこ貯めています. 以前作ったnumpy+sympyで中高数学に取り組むコンテンツも作っていますし, 数値計算系プログラミングを勉強したい理工人もいるでしょう. 既にいくつかモノはあるのにきちんと伝え切れていないとも思っているため, ずっと気にはしています.
Twitterにも少し書いた話で, よくプログラミングでは「何か作るのが大事で, ゲームやアプリを作るといい」と言われます. そして作るモノがない人が「自分はプログラミングに向いていないのか」と思ってしまう話もあるそうで. 「それなら計算したらいいじゃない」, 「競プロやるといいじゃない」というのが特に今年頭から私が模索している道です. それはそれで素数判定のミニコンテンツから先を作れていないため, そろそろ第二段を作らないとと思っています.
やりたいことがたくさんあって手が回らないので, どなたかよいコンテンツ作ってくれるとありがたいですね. がんばって宣伝協力するので.
アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング¶
アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング この本、パラパラ読んでたけどこれからプログラミング学びたい人はこっから入ると良さそうなくらい、いい本だった。
最近特に情報関係を再勉強中で, もっと具体的な本を必死に読んでいる最中で追い切れないものの, 面白そうなので読みたい本リストに叩き込んでおきました. いつも通りシェア+メモ.
今週の問題¶
最近は(特殊)相対性理論モードなのでそこから.
- マクスウェル方程式はガリレイ変換で不変ではない.
学生の頃にも散々計算した内容ではあります. それでも改めて計算して確認する意味があります. 例えば変に色気を出して一般的にやるより, とにかく成り立たないことだけ示せばいいから$X$軸方向のブーストを考え, それで見やすい解だけ取ってくれば十分です. これはまさに数学で反例を作るときの発想でも重要です. 変な色気を出すよりも簡単なところからしっかり詰める意義を再確認しました. 実際変に一般的にやろうとして「これどうすればよかったっけ?」と謎の混乱を起こしてしまいました.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-09-10¶
数学・物理 密度行列に関する話/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- テンソル積とは何か
- 関真一朗, グリーン・タオの定理
- 関数解析的な量子情報の本
- Helgasonの本
- 式の錯視
- Wigner-Araki-Yanaseの拡張
- 密度行列に関する話
- 数学屋さんとCS屋さんで問題意識とする点が異なるため、片方の問題意識がもう片方に上手く伝わらないという例
- 150分で学ぶ高校数学の基礎
- 田崎晴明, 統計力学Iの修正
- カーリングはなぜ曲がるか
- 統計の実例
- 大人の学び直しサイト
- ハーバード大のコンピューターサイエンス入門講座
- 法令APIを利用したリサーチツール
- メルカリのデータセット
- 不偏分散の分母
- 【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ①
- 数学ソフトウェアの作り方
- 教養としてのラテン語の授業
- 大学以外で言語学を勉強する方法
- 仕事のコツ
- ハードワークの捉え方
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
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近況報告¶
通信講座がはじまりました. そう組んだのだから当然ではあるものの, (私からすれば)そこまでハードな計算ではない一方で使い出がある計算が多くて眺めているだけでも楽しいです.
最近プログラミングを改めて意識しはじめたので, sympyでちょこちょこ検算プログラムを書いています. 二次の正方行列がさくさく計算できてこれも楽しいです. 統計とはかなり離れてしまうのが難点ですが, 今度, 統計の勉強会でsympyを読むよう提案してみようかと思うほどです. 統計をやるならnumpyで書いた方がいい一方で, 中高数学からやり直す系統ならsympyの方がいい面もあります.
何にせよ量子情報・量子開放系の議論で二次・三次の正方行列の具体的な計算の面白さを今まで以上に実感しましたし, そこにリー群・リー環系でもう少し高次まで計算したい要求も出てきたので, sympyの活用はいま私の中でホットです. 特にリー群・リー環は一般論を理解するための具体例の計算で割とすぐに五次・六次程度が出てきてしまい, 手計算したくない領域にすぐ突入します. ちょうどいま, 通信講座の勉強会で計算ミスを指摘され, 検算していたら混乱してきたのでsympyを使ったところです. テンソル積も計算できるので便利なことこの上なく, 感銘を受けています. ぜひ読者の皆さんもsympyを使えるようになってください. 本当に便利で助かります.
最近半年以上も延々と同じ話ばかりしています. しかしこれでもまだまだ汲み尽くせないほど楽しく重要な対象です.
そう言えばプログラミングに関連して, 以前作ったコンテンツはあります. ただこれに沿った中高数学復習系の勉強会つき講座もあった方がいいのか?とも思うようになってきました. 興味がある方がいれば連絡ください. 一人でもいれば何か考えます.
それはそうと, 今回もメモがもりもりです. そしてちょうど先週, 知人から「情報を集めすぎてそれをさばくために頭を使い過ぎて, 判断力が落ちているのではないか. もう少し情報を遮断した方がよいのでは?」と言われてしまいました. 自覚症状はないものの, だからこそ問題という話もあるわけでどうしたものかと悩み中です.
テンソル積とは何か¶
量子情報系のアプローチも大切なので通信講座でも触れざるを得ません. 今回はほぼいわゆるクロネッカー積による具体的な計算しか触れないとはいえ, 多少なりとも何か説明しないわけにはいきません. しかしなかなか説明するのが大変です.
私は一応学部一年で志賀浩二のベクトル解析30講で微分形式に絡めて触れたのがはじめてです. 少なくとも私が学部の頃の学部低学年の物理で微分形式は使わず, テンソルの言葉だけは解析力学・電磁気・流体・相対性理論で出てきても物理気分で適当に処理していました. そして学部3-4年の量子系の数理に絡めて改めてまじめに勉強し直す形になりました. このときは量子多体系, 特に合成系の構成としてその当時の私にとってこれ以上ないほど具体的な対象として出くわしたため, テンソルについて真面目に悩んだ記憶がほとんどありません. 量子力学をある程度勉強した上で改めて数学的定式化に挑んだときの気分ベースの理解こそあれ, 他の場面でのテンソルをどうするかほとんどわかっていません.
流体を改めて勉強し直したときに応力に関するテンソルの気分は把握したものの, 連続体の力学では四階のテンソルも出てきます. 幾何でも曲率は四階のテンソルで, リッチ曲率は縮約して二階になっていて, といろいろなテンソルまで含めてきちんと説明できるほどテンソルの多様な姿を把握できていません.
世間的な直観的でわかりやすい説明ではこの多種多様なテンソルをどう処理しているのでしょう.
関真一朗, グリーン・タオの定理¶
ついに!12月1日発売決定!! こちら→https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=11871
素数大富豪の作者で, 素数大好き系数学者として知っている人は知っている関真一朗さんが書いていた本がようやく出版されるようです. 数学は修士からだったこともあるのか, 素数が好きという数学者をはじめて見たのが関さんでなかなか衝撃でした. すうがく徒のつどいで二回話を聞いたことがあり, 話がうまい人ではあったので本も楽しみです.
関数解析的な量子情報の本¶
Holevoの著書などは、基本的に無限次元をカバーしてます。 Holevo, Probabilistic and Statistical Aspects of Quantum Theory (Publications of the Scuola Normale Superiore Book 1) (English Edition)
Holevo, Statistical Structure of Quantum Theory (Lecture Notes in Physics Monographs, 67)
あと、これのPart I V: Holevo, Quantum Systems, Channels, Information: A Mathematical Introduction
また本ではないのですが,この博士論文は勉強しました Kruger, Quantum Information Theory with Gaussian Systems
この間, クラウス表現とシュタインスプリング表現のよい具体例も書いてある文献を紹介しました. Twitterでもメルマガを流したところ, 量子情報系のプロが反応をくれたのでついでにいくつか文献を聞いておきました. D論はちょこちょこ眺めようと思っています. 楽しみです.
Helgasonの本¶
そうそう,ヘルガソン先生の Groups and Geometric Analysis... は調和関数だけじゃなく,球関数についても詳しいが,ハウ先生による書評がめっぽう面白いのでおすすめ. https://ams.org/journals/bull/1989-20-02/S0273-0979-1989-15786-8/S0273-0979-1989-15786-8.pdf
bioに著書名を入れていてツイートでもちょこちょこ自著と言っているため, 名前をどこまで出していいものかと悩んでいるmathraphsodyさんのコメントです.
調和関数は表現論のテーマであり, 微分方程式論や固有値の理論, 関数解析のテーマであり, コンパクト多様体上のラプラシアンの固有値解析とも絡んだりと勉強してみたいと思って幾星霜のテーマ含め, 私の趣味によくあう対象です. もちろんリー群・リー環とも相性ばっちりの対象です.
式の錯視¶
傾いて見える数式の錯視. 数学を使う文献の中にありそうであまりない錯視です.
↓↓新井仁之『ウェーブレット』(共立叢書現代数学の潮流、共立出版)の p.32 と p.75 にある数式。錯視を意図して書いたわけではありません。
上記ツイートのリンク先に錯視に見える式の画像が載っています. 興味がある人はぜひ見てみてください.
Wigner-Araki-Yanaseの拡張¶
論文を発表しました:https://arxiv.org/abs/2208.13494 九大の倉持さんが主著です。 「保存量と非可換な物理量は誤差なし測定不可」を意味するWigner-Araki-Yanase(WAY)定理は1960年の確立以来、非有界な物理量(運動量など)への拡張が未解決でしたが、この問題をYanase条件と呼ばれる条件下で解決しました。
WAY定理が非有界な物理量に成立すると、「位置の射影測定は、運動量保存の下で誤差なくできない」が成立するため、この問題は物理的にも重要です。WAY定理にはYanase条件(プローブ系にかける測定が保存量と可換)を使う設定と使わない設定があり、どちらも未解決でした。今回解決したのは前者です。 WAY定理は類似の結果がたくさんあり、測定、ユニタリゲート、誤り訂正符号などにそうした結果が知られています。最近、こうした結果を統一して一つの定理から導けることを示しましたhttps://arxiv.org/abs/2206.11086。この定理からは熱力学やブラックホール物理への応用も出ます。ご興味があればこちらも是非。
論文を軽く眺めても何だったか思い出せないものの, 確かこれは学生時代に関係するテーマを何か勉強していた記憶があります. 量子情報絡みで無限次元で直接的に作用素環を匂わせる話にも出くわして作用素環熱が微妙に高まっているのもあり, ちょっと気になっています.
密度行列に関する話¶
いま展開中の通信講座でもついでに状態や密度行列に関わる概念整理をやっています. Twitterで数学系の人と関連する話をしたのでここでもシェアしておきましょう.
密度汎関数理論(DFT)に出てくる密度行列って大体はトレースクラス作用素だと思うけどトレースクラスに入らない密度行列が物理的に重要になる場面ってあるのかな?
自分が普段扱っている密度行列は、トレースは確率の規格化の観点から1になっているので、トレースクラスでない密度行列というのはなかなかイメージが沸かないのですが、DFTでは密度行列がまれにトレースクラスでない場合が有るのでしょうか?
私は数学畑の人間なので物理のことは何も(本当に何も)分からないんですが、数学的にはトレースクラスでない密度行列を扱う研究もあります(トレースは粒子数に対応していますから要は粒子が無限個あるという状況です)。トレースが常に1の状況を考えることもあることは初めて知りました。 · 量子統計の状況ではありますが、数学的に相転移を起こすためには無限体積極限などが必要で、その場合の形式的な密度行列は連続スペクトルを持ちます(冨田竹崎)。相互作用系(または開放系)になると励起状態の準安定化で固有状態が消えます。基底状態の存在は発散の困難問題で数学的には非自明です。
このツイートだけからではちょっとよく分からないのですが、この話題について適切な文献等ありますでしょうか?>とても興味があります。
量子統計の数学の基礎という意味ではBratteli-Robinsonが基本的な文献です。ただ肝心要の密度作用素の話はそれ自身でほぼ出てこない問題があります。補足をいくつか書いておきます。密度作用素がどこで出てくるかといえば、平衡状態に対して$\omega(A)=Tr(\rho A)$と書くときで要は平衡状態の議論で出てきます。平衡統計力学では平衡状態はKMS状態で表されるとされていて、KMS状態に付随する作用素としてモジュラー共役Jとモジュラー作用素Δがあります。このΔをΔ^{it}=e^{itL}としたときのLが系のハミルトニアンにあたります。大まかにいえばΔが密度作用素です。 Δは冨田-竹崎理論の基本的な対象で、スペクトルの性質が作用素環の性質に反映するため、荒木・竹崎・コンヌらの作用素環的な決定的な結果がたくさんあります。密度作用素は大体e^{-H}にあたるため、ほぼハミルトニアンの解析にあたるものの、量子統計の文脈になるとハミルトニアンの解析がとにかく難しく、具体的なモデルに対する詳しい解析結果はあまりありません。先ほど書いたように作用素環論のレベルで作用素巻自体の解析の文脈で作用素環の性質とハミルトニアンのスペクトルの対応がわかっているくらいです。
私は密度汎関数の議論をほぼ知らず、私が知る限りその文脈から大きくずれると思うのですが、量子統計で興味がある系での密度行列はほぼ例外なくトレースクラスではありません。密度行列のスペクトルがハミルトニアンのスペクトルと関係がある前提のもとで、理由は無限体積極限での挙動にあります。 数少ない見やすい例としてラプラシアンがあります。有限の超立方体上のラプラシアンは指数関数が固有関数で、よく知られているように固有値は離散的です。しかし\mathbb{R}^d全体では全ての正の実数がスペクトルになり、固有値も消えます。調和振動のような例もあるとはいえ多くのハミルトニアンは連続部分を保つため、その時点で密度行列はただの有界作用素でコンパクト作用素の要件である離散的なスペクトル性がありません。おそらく密度汎関数の文脈と本質的に違う形で密度行列を使うため、あまり密度汎関数の議論に役立つ話はないだろうと思います。 密度汎関数業界でもE. H. Liebは有名人だろうと思う(少なくとも論文が一定数あるはず)のですが、Liebは物性・統計力学の幅広い分野で論文があります。Liebの仕事を眺めてみるのと密度汎関数からの議論で何かあるかもしれません。
きわめて丁寧な解説ありがとうございます。私はPDE畑の人間ですが、ある論文は方程式の背景を説明する際に明らかに密度汎関数の観点から密度行列を導入しているのに、途中から「トレースクラスではない密度行列を考えることも大切である」みたいな感じで量子統計っぽい具体例を引っ張ってきたりしていて謎なんですよね。まあ数学屋なので物理なんか知るかという態度も取れますが、やはり気になります。「量子統計の数理」みたいな本を眺めると作用素環の話が必要になるっぽくてつらいところです(作用素環ぜんぜん知らないので…)。
密度汎関数での密度は波動関数の絶対値の2乗にあたる量(関数)(のはず)、一方で密度行列は行列環(作用素環)上の線型汎関数としての状態がトレースとトレースクラスを使って書ける事情から切り出した作用素で、そもそも出所も何もかも違う概念です。密度汎関数で密行列という言葉を使うの自体がそもそもおかしいのではないかと思います。
数学屋さんとCS屋さんで問題意識とする点が異なるため、片方の問題意識がもう片方に上手く伝わらないという例¶
よく話題にあがる解析力学の$L(q, \dot{q})$の話です. 物理と情報系を両方一定程度知らないとわからないのかもしれません. 幾何的には接束上の関数の一言で終わりです.
150分で学ぶ高校数学の基礎¶
特に文系プログラマー系の人が概要を掴むのにはいいかもしれません. プログラミング関係は日々のデータ構造とアルゴリズム学習で手一杯で, あとは通信講座関係のsympyコード作成くらいしかできていないので, せめてもの宣伝協力です.
田崎晴明, 統計力学Iの修正¶
拙著『統計力学 I』でおそらく最も不親切だった(で、評判が悪かった)と思われる pp. 76, 77 の状態数の漸近的な振る舞いについての議論をより直観的で簡略なものに差し替えることにしました。「第 17 刷以前への修正」をご覧ください。以前の議論の簡単な解説もあります。 https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/statbook/errata.html
時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.
カーリングはなぜ曲がるか¶
こちらも時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.
統計の実例¶
この分析の精度はともかく, 興味が持てる実データがあるかどうかがとても大事という気分がずっとあります. 私自身なかなか統計系の勉強が続かないので. 語学・言語学で遊びたいとずっと思っています.
大人の学び直しサイト¶
- URL
- いろいろな科目を学ぶ: ただよび, 岐阜県総合教育センター, eboard, スタディチャンネル
- 英語と数学: NSGL, 数基礎
- 違う視点で学ぶ: schoo, Clearnote
こちらも時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.
ハーバード大のコンピューターサイエンス入門講座¶
ハーバード大のコンピュータサイエンス入門講座のCS50、久々に覗いたら教材だけでなく、講義動画も機械翻訳ではない日本語訳付きになってた。プログラミング学びたいと言ってる初心者に投げつける教材はもう全部これで良さそう。 https://cs50.jp
これも記録がてらシェア.
法令APIを利用したリサーチツール¶
最近仕事関係で改めて必要なプログラミング系の情報に集中的に触れるようにしていて, その中で見つけました. これもここ数ヶ月ずっと言っているように数学・物理・語学系でアプリを作っているので, その参考にもなるだろうとシェア+メモです.
メルカリのデータセット¶
うおおおおメルカリのデータセットだ、デカすぎんだろ!!!!
商品データ,コメントデータはCSV形式で,サイズはそれぞれ約100GB,約40GBです。画像データはサムネイル画像で約2TB,オリジナル画像で約1TBです。
データがあってもこれをどう解析しよう事案があります.
不偏分散の分母¶
よくある「$n$ではなく$n-1$で割るのはなぜ?」事案です. いろいろな角度からの解説があった方がいいだろう, そのストックをしておこうと思いシェア+メモです.
【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ①¶
JuliaにはPyCallによるsympyのバインディングがあり, 他にも代数系の処理ソフトがあったはずです. Juliaは数学系でいろいろな動きがずっとあるのがいいところです. これも自分用の備忘録も兼ねてシェア.
数学ソフトウェアの作り方¶
「コンピュータが育む数学の展開」(全10巻)に引き続き、姉妹編となります新たなシリーズ「コンピュータと数学の織りなす革新」(全5巻)の刊行を10月より開始します。第1回配本は『数学ソフトウェアの作り方』です。ご注目いただけますと幸いです。 本書は、数学ソフトウェアを開発するために知っておいて欲しい事柄をまとめております。著者は皆、計算代数システムRisa/Asirなど、数学ソフトウェアの開発に携わってきています。本書には、その経験が随所にちりばめられており、この上ない解説書になっておりマス。
Cは昔仕事で書いていたこともあります. 結局ポインタの理解がいま一つのままで終わり, 今となってはあまり覚えてさえいない厳しさがあります. 書くのはともかく読めた方がよさそう言語だとは思っていつつ, そこまでやる気が出るわけでもない言語でもあり, 競プロ関係ではC/C++は基本的な言語なのでその範囲では毎日ちょこちょこ触ってはいます.
何はともあれ執筆陣がRisa/Asirの開発者で, 最近よくsympyにお世話になっている関係からとても気になっています. 勉強したいことが山程あって目が回っています. 近況でも書いたようにこの状況はもう少し是正した方がいいのでしょう.
教養としてのラテン語の授業¶
気になる新刊『教養としてのラテン語の授業』 著者は非常に面白い経歴の人物。「本書はバチカン裁判所の弁護士、ハン・ドンイル氏が行った名講義を整理したもの。ラテン語がわかれば、歴史、教養、文化の根底がわかる。西洋文明の根源であるラテン語を通して、歴史、文化、宗教、経済を学ぶ。 カエサル、アウグスティヌス、レオナルド・ダ・ヴィンチ。先人たちの知の息吹に触れる。 全世界で30万部のベストセラー」
これ, 語学系の話をやる上で多分私に決定的に欠けていて, 必須の知識ではないかと直観しています. ラテン語は科学の言語でもあり, そこまでカバーしたコンテンツがないだろうかと日々悶々としています. 自作はさすがにつらすぎるので.
大学以外で言語学を勉強する方法¶
言語学もちょこちょこと勉強していて, 例えば最近は印欧祖語に関する基本的な日本語文献という新書を買ってみました. 基礎はなかなか書き換わらない物理, 基本的に正しいものはずっと正しい数学に浸っているため, 新発見があるとすぐに話が変わってしまう非数学・非物理の世界はそれだけで勉強がつらいです.
それはそれとして, レベル・種類ともに豊富な中高数学系コンテンツ, そして応用上の議論は統計絡みの微分積分・線型代数で, 300ページほどの本を一冊さらえば知識としては大抵何とかなるはずでおそらく知識は極小で済むであろう数学でさえ独学が大変と言われているのに, 独学が多少なりとも楽にできる分野は何かあるのでしょうか?
仕事のコツ¶
40代になってわかった仕事のコツ。時間が足りないと悩んでいる人は、この4つでマジで楽になる。試してみてほしい。
- できることはすぐやる. (準備の手間が減るから)それが最速.
- マルチタスク厳禁, 一つずつ答えにして格納.
- 常に20%の余力を確保すれば知恵が回る. 余力はイレギュラーのために使う.
- 急がば回れ. 忙しい時ほど丁寧にこなせ. 差し戻しによる余計な仕事を減らそう.
この間「一所懸命やりすぎて没頭しすぎるのはよくない」と指摘されたため, 改めて仕事術的なのも気にした方がいいのかと思ってちょっと気にしています.
最近先延ばし癖があり, 先延ばしするとそれだけで心理的負担として重くのしかかってくる上, 着手までの精神的負荷も凄まじいため, 「できることはすぐやる」は本当に目下最大の課題です.
ハードワークの捉え方¶
「やったことのないこと」に挑戦し、自身の考え方の枠組みに落とし込んで再現性を作ることは「スキーマ」の構築と言えるでしょう。それは「What」がやったことないことの場合もだし、「How」のやり方を再定義して「やったことない方法」に置き換えることも新たなスキーマの構築と言えると思います。成長というのは新たな認知スキーマの構築をしてスキルに習熟させることとも言い換えられるのだと思います。ハードワークをすることと、新たなスキーマを構築することはイコールではないのでしょう。
最後に、「成長」が人生の全てではないことを付け加えておきます。私の世代は成長をすることを強く求められました。成長を追い求めず、人生を謳歌すること、穏やかに暮らすことを人生の主目的におきたい人も多いし、むしろ多くの人がそうなのではないかと思います。やったことないことに挑戦することは面白みもありますが、心身のエネルギーも使います。既にできることの実行に時間を多く割いて、それ以外で人生を充実させるということも人生の主目的によっては有意義なのかもしれません。
いまちょうど研修でいろいろやっているのでどう落とし込むかいろいろ考えています.
今週の問題¶
まだやるべきことはたくさんあれど, 量子力学は一段落させたので何をしようかと思っています. 一応もう少し物理をやろうと思っていて, イジングに浮気しようかと思いつつ, 当初の予定通り相対性理論のノート作りをしています. 微分形式をどこまで導入するかは悩みどころで, まずはベクトル解析ベースのノートを作ってから考えます. ベクトル解析はともかく, 微分形式は完全に線型代数なので相変わらずの線型代数推しです.
問題ではないものの, 計量の符号に関して一つコメントを.
- $(x^0,x^1,x^2,x^3)$のもとで$(+,-,-,-)$は素粒子・高エネルギー系の物理で標準的.
- $(x^0,x^1,x^2,x^3)$のもとで$(-,+,+,+)$は宇宙物理・天文学で標準的.
計量の符号以外にも曲率の定義由来の符号の揺れがあり, 本を比較するときに非常に苦労します. もしあなたが相対性理論, 特に一般相対性理論に興味があるならぜひ覚えておいてください.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-08-27¶
数学・物理 量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見
- 完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相
- グロタンディークが独力でルベーグ積分を構築した話
- ドナルドソンの定理への直観
- Hal Tasaki, Variations on a Theme by Lieb, Schultz, and Mattis
- プログラムを書きながら数学で遊ぶ
- 子供に対する広義のIT教育
- 中高数学の復習の話
- 変節にまつわる悲しい話
- ヤング図形の講義録
- Non-metrizable Manifolds
- Paul筋の情報: 微分ガロア理論
- 上田晴彦, 物理科学における数学的方法
- 具体例の解析
- PDF: Johnny Nicholson, Exotic Spheres
- 博論のPDF, Muhammad Ilyas, 2022, Quantum Field Theories, Topological Materials, and Topological Quantum Computing
- ラグランジュの未定乗数法
- JAXA宇宙教育センターによる夏休みの宿題
- 遊んでみたい機械学習・統計学: 自然言語処理の具体的なテーマ
- 絵画史から見るとAI絵画はカメラ
- 2022-08時点でのAIの実応用をいくつか
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先週は体調不良でメルマガが出せなかったので今週は先週分のネタもあって大量です. 通信講座の案内もできず直前の一回だけになってしまいました.
何はともあれば, 数学版の定義・定理を眺めるアプリ, React;KaTeXでいい感じにレンダリングする方法の探索にけりがつきました. 最終的には既存のライブラリにプルリクしてマージしてもらいました.
大したことはしていない上に自分で実装しきれない点もあったものの, たぶんissueやドキュメントの修正ではない, プログラムを書いたプルリクとしては初でちょっと感慨深いです.
ようやく現代数学探険隊からのデータを抜く部分も終わりました. 数学版のアプリも第一段まであと少しです. 物理版のアプリの法則集も毎日少しずつ作業して116まで来ました.
これも地道に続けます.
「三ヶ月短期集中講座 量子力学のための線型代数とその計算の募集」も明日までです.
興味がある方は申込を忘れないようにしてください.
量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見¶
次の文献です.
もしあなたが量子力学・量子情報に興味があるなら, P.14からの6.1.6節の具体例には必ず目を通してください. 三つ例があり, それぞれ2x4=8, 2x3=6, 2x2=4次のモデルでノイズがある系の量子通信路の例を紹介しています. 量子情報よりも物理としての趣が強い例で, 最終的に大事な対象系の解析は二次正方行列の計算です. 二次正方行列の世界の懐の深さを改めて実感しました. この三つの計算だけでシュタインスプリング表現・クラウス表現の気分がかなり掴めます.
取り上げられている例は物理的にはレーザーの原理などにも関係しますし, 物理的な筋も非常によい例です.
このPDF自体は全体的に無限次元を含めた関数解析的な用語・議論がわかっていないと読めません. しかし上記の例は完全に有限次元の線型代数の知識だけでよく, 驚くほどに教育的なよい例です. この一年, 強調に強調してきた二次正方行列レベルの具体的な線型代数の計算の重要性もわかります.
今回の短期集中講座の範囲ではありませんが, 次回以降に必ず触れるべき内容でもあり, 今後の勉強の指針にもなる部分は同梱する方針なので配布コンテンツには既に取り込んであります. まだPDFの内容ほぼそのままで計算が雑ですが, 通信講座の対象になったら計算はもっと詳しくする予定です. 勉強してみたいという人がいて, 通信講座の勉強会で質問があればその時点で詳しい計算を載せようとも思っています. そのくらい簡単なわりに重要で面白い例です.
完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相¶
「完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相」という事実、「とても有名でよく言及される」ものだったのか。。
僕も初めて知りましたw
今検索して出てきた文献なのでガッチリそのものが書いてあるわけではないと思いますが、https://google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwjmvr-UkcT5AhVQmFYBHfa9D1QQFnoECAQQAQ&url=https%3A%2F%2Feprints.lib.hokudai.ac.jp%2Fdspace%2Fbitstream%2F2115%2F6077%2F1%2FETDS13.pdf&usg=AOvVaw3zJ3kkcIDECFMU30Xd-2cMには(記号)力学系とC*力学系の文脈で完全不連結なコンパクト距離化可能空間が出てきて、引用文献のレベルですがCantor集合への言及があります。 他にも大学院の頃ではありますが、千葉大の松井さん(作用素環の人)の講演など、力学系と作用素環界隈の講演でよく言及されていた記憶があります。私の知る限り記号力学系はそれなりに影響範囲があるため、割合有名な事実の可能性があります。
カントール集合は力学系理論やジェネラル・トポロジー周りの講演でしばしば登場しますが、上記の事実はその際によく耳にしました。 最近だと例えばこの本でも証明なしで言及されてました(なお、ちょくちょく違和感のある表現があります)。 https://www.amazon.co.jp/dp/4768705707
私が学部四年のときに読んだKadison-Ringroseの作用素環の有名な教科書には, 可換なフォン・ノイマン環と同型なコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環の性質として載っていた性質です. 他にはエルゴード性・エルゴード理論との関係で可分で完備距離づけ可能な位相空間としてのポーランド空間も作用素環でよく出てきます.
さらに森の未知さんのコメント.
完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相という、とても有名でよく言及されるけど証明を見たことがない事実だけど、和書だとこの本に証明が書かれていますね。
距離空間のトポロジー: 幾何学的視点から (ひろがるトポロジー) | 川村 一宏 本書では,単体分割できるとは限らない距離空間のトポロジーを,位相空間論的というよりはむしろ幾何学的な側面に焦点を当てて研究する理論の一部を紹介する。 このような理論は一般位相幾何学の一分野「幾何学的トポロジー」をなしており, 複雑な構造をもつ距離空間を多面体の極限としてとらえ, 無限反復および極限操作を通じて調べることにその特徴がある。 様々な極限操作で得られる空間についての考察から始めて,
この本の証明だとnerve複体(本書では「脈複体」と翻訳)で証明しているけど、古典的事実の割に証明がナウい気がしている。 私がnerve複体を知らなすぎるせいだろうか。 なお、学部生向けの教科書に見えて特殊な位相空間や連続体にやたら詳しくて研究者でも読んでて面白いのがこちら。 ついでにいうと、「だから学部生には難しい」というわけでもないのがこの本の真にスゴいところだと思う。相対位相の説明などは見事なもの。
グロタンディークが独力でルベーグ積分を構築した話¶
Feynmanの言う微積分とはいわゆるcalculusのことだと思いますが,Grothendieckが独力でルベーグ積分論を構築したエピソードは有名ですね。 https://ams.org/notices/200808/tx080800930p.pdf (Notice of AMS,独文の英訳)
どなたかのブログに私訳がありますね。 https://taro-nishino.blogspot.com/2019/03/blog-post033.html
どこで見かけたのか忘れてしまったものの, ゲルファントは中学の頃に独力で関数論を建設したエピソードがあります.
ドナルドソンの定理への直観¶
Q1. ドナルドソンの定理を砕けた表現でいうならばどんなものか?
A2. 4次元多様体の古典的な不変量(交叉形式)に,可微分構造由来の極めて強い制約が存在する
補足1:このようなタイプの定理の最初のものとしてRokhlinの定理があり、Donaldson以前から知られていました。 Donaldsonの定理はRokhlinの定理と比べると適用できる状況が多く(ただしDonaldsonの定理とRokhlinの定理は互いに独立の定理なので,あくまで主観的な基準), また理論物理由来のゲージ理論を用いて証明されたトポロジーにおける非自明な定理の最初の例なので,知名度が高いのだと思います。 尤も4次元業界ではRokhlinの定理も基本定理の一つです。
補足2:交叉形式は位相4次元多様体に対しても定義される不変量です。 Donaldsonの定理(やRokhlinの定理)が与える制約を破るような交叉形式を持つ位相4次元多様体の存在がFreedman理論から分かるので、 Donaldsonの定理(やRokhlinの定理)は4次元におけるトポロジカルな世界と滑らかな世界が全く違うということ意味します。
Q2. ある多様体の非同値な微分構造の数を求めるにはどういう手法が使われるのか
A2. 5次元以上においては手術理論が使われます。 これを一言で言うと、多様体の微分トポロジー的な問題を代数トポロジーに帰着させる手法です。 また多くの場合、分類したい多様体の接束の特性類が重要な情報を持ち、それが区別に使われます。 有名なMilnorのエキゾチック球面をdetectする議論がこの例です。 しかし多様体がある程度複雑だと、帰着させた先の代数トポロジーの問題が難しいものになり、可微分構造の正確な個数が分からないこともしばしばあります。 ただ、代数トポロジーの問題に帰着できた段階で微分トポロジーとしてはとりあえず原理的に解決した、という立場を取ることも多いです。
一方4次元では、可微分構造が完全に分類できている位相4次元多様体の例はまだ一つもありません。 可算無限個の可微分構造が入ることが分かることが多いのですが、発見されている可算無限個の系列で尽きているかを確認する手段がないのです。 またそもそも2つ以上の可微分構造が入るか分からない4次元多様体も沢山あります。 とりあえず互いに異なる微分構造が存在することを示すのには、典型的にはゲージ理論から来る不変量(Donaldson不変量、Seiberg-Witten不変量)が使われます。
接束が思った以上に重要なようでびっくりしました.
Hal Tasaki, Variations on a Theme by Lieb, Schultz, and Mattis¶
リープ先生の卒寿を祝う国際会議での講演が予想以上に好評だったので戻ってから動画を作りました。「捻り演算子」だけを使って様々な定理を初等的に証明しまくるという内容で、量子スピン系を知っていれば面白いと思います。英語ですが(編集したので)字幕がちゃんと出ます。 YouTube
Lieb, もう90なのかと衝撃です.
プログラムを書きながら数学で遊ぶ¶
数値計算のプログラムを書くときは「抽象的な数式を具体的な計算処理として書き下す作業」が必ず発生するので,適切なお手本さえあれば高い学習効果が得られる気がします. そんなわけで,電磁気学の難関(?)である「ベクトル解析」をプログラムを書きながら具体例で学べるように準備しています.
そういった意味では「ディジタル信号処理」はプログラミングと不可分なので,個人的にはかなり学びやすい分野だと思います.
とはいえ「回路は作れるがディジタル信号処理は一切ダメ」みたいな技術者の話もよく聞くので,良いお手本(教材)がないと「難しい数学」みたいに見えるのかもしれません. 数値計算や信号処理は「他人が用意したサンプル・コードをとりあえず写経すれば自分のパソコン上でも結果が表示される」ので,学習の過程で成功体験を得やすい.これはゲーム等と同じ構造. 抽象的な数学でも「例題を解く」という成功体験が用意されているのに,なかなか気づかない人が多いですね.
「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」はこれと重なるコンセプトで作っています. 興味がある方はどうぞ.
子供に対する広義のIT教育¶
いわゆる数学・物理・プログラミングのネタではありません.
うちの息子がとんでもないことやらかしてくれました😭 友達とスマホで通話しながら対戦ゲームしてて てっきりLINEの無料通話してるのかと思ったら相手はキッズ携帯で 普通に通話してて電話代が2ヶ月で28万円😭 しかも相手の子は親から言われてこちらからかけなおさせてた😭 もっと早く気づいていれば
最近の子供は生まれたときからスマホがあります. そして機器的な取り扱いには長けていても金銭的な感覚が育っているわけではありません. 特に凄まじく便利なツールさえ無料で使えるモノが大量にありますし, ゲームでさえ無料が基本になりつつあります. いまは広い意味でのお金の教育, IT教育はどこかしら何かしらでやらないといけないのでしょう.
中高数学の復習の話¶
いま某所で話していて思ったんですけど、高校の数学の授業相当のものがYouTube等で見れるものってないですかね。大学受験対策とかではなくて、その分野を全く勉強したことがない人が聞いてわかるレベルのもので、良質なものないですかね。 なぜこんなことを言っているかというと、大人になってから数学勉強し直したいという人で、「昔勉強したけど忘れた」という人以外に「全く履修したことがない」という人もいるんですよ。高校の卒業要件が数Ⅰまでなので、学校によっては数Ⅰしか履修してなくても高卒の肩書は得られるんですよね。 履修科目の問題だけではなく不登校等でほとんど授業出てないけど卒業する人もいるし、つまり数Ⅱ・数Bあたりを一切勉強せずに高校卒業したけど、その後やっぱり勉強したいって人に対してよいコンテンツないかなあと思いました。 もちろん無料であればいいなと思うんですが、現状では有料コンテンツでもほぼないという認識なので、無料・有料問わず、いいものがあったら教えてほしいです。 YouTubeで予備校講師の動画があるのは知ってるんですが、ああいうのは基本一度履修した人向けじゃないですか。
この件色々情報を頂いてますが、僕がざっとみてよさそうだと思うものを列挙しておきます。
もちろんこれ以外はすべてダメと言っているわけではなく、内容が確認できてそれなりにおすすめできそうなものということで3つ挙げました。また、ここでおすすめしたのも、もちろんざっと眺めた程度で全部見ているわけではないです。 ここでは動画に絞って紹介しましたけど、もちろん本で勉強する手もあって、その場合まずは検定教科書をおすすめしておきます。値段も安いし質も高いです。書籍だけのほうが理解が進む人、動画のほうがわかりやすいと感じる人、両方いると思うので。
コンテンツベースとしては上でも紹介した「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」, そして特に文系プログラマー向けにアルゴリズム系統からやるのはどうかというテスト目的で素数判定のコンテンツも作って以前紹介しました.
この辺もいい加減本格化させたいと思っていて, これもやはり既存コンテンツをもとにした通信講座や, またはアルゴリズム系と絡めて見繕った書籍を使った勉強会的な講座を作ろうと思っています. どういう感じの内容だったら参加したいか要望があればぜひ教えてください.
一応書いておくと, ふわっと中高数学全体みたいな感じにすると多分勉強していてつらいと思うので, 何かの目的に特化して一つのストーリーを紡ぐ感じで勉強した方がよいと思います. 興味があって継続して勉強していれば数学力も上がるので, 必ずしも興味がなかったところを勉強するときにも格段に勉強しやすくなるはずです.
変節にまつわる悲しい話¶
近藤誠先生は、昔はエビデンスの鬼でした。近藤誠先生の変節についての詳しい経緯は、こちらにまとめています。
知らない人は知らないと思いますが, 近藤誠氏は「がんもどき」などの話でがんに関する偽医療事案で悪名が高い人です. 先日亡くなったので話題になった, という文脈があります.
ヤング図形の講義録¶
さる事情があって, 講義録をまとめ直してアップしました: [「ヤング図形の組合せ論講義」]https://bit.ly/3ArsZFt({target=_blank})
メモ&シェアです.
Non-metrizable Manifolds¶
このNon-metrisable Manifoldsという本、パラコンパクトでなかったりHausdorffでなかったりする連結位相多様体について考えるという異常な内容でおもしろい。long lineには2のaleph-one乗個の異なる微分構造が入るらしい。
実数全体を2つ用意してそれぞれの負の実数の部分を同一視してできるYみたいな多様体はHausdorffでないけど、こういう枝分かれを単なるグラフではなく多様体として表現できるため量子力学の多世界解釈における時空のモデルとして使われるかもしれないとか書いてある。 「異なる」というのは単に異なるという意味でも、互いに微分同相でないという意味でもあるらしい。濃度はちょうど2のaleph-one乗であるとのこと。
上でドナルドソン理論の話も紹介しています. 距離化可能ではないため, 多様体論でよく仮定される第二可算性もなく, パラコンパクト性さえ破壞される世界です. 多様体だからといって位相多様体のレベルではいくらでも凄まじい例があって楽しそうです.
Paul筋の情報: 微分ガロア理論¶
いくつか質問を整理します
1) 初等函数の積分がいつ初等函数か? リッシュのアルゴリズムです。一松さんや佐々木さんの解説がわかりやすいでしょう。
2) 初等函数の積分を全部含む函数族はあるか? Liouville拡大体を考えることになります.
リッシュの方法で、原理的にはどんな初等函数に対しても不定積分が初等函数になることを判明できますが、速いアルゴリズムを考える計算代数の問題になります。 Liouville拡大は、微分ガロア理論的には拡大群がCの加法群と見なせますが、そう見てもあまり良いことは少ないです。wiki参照。
ありがとうございます!とても助かります。もうひとつ質問なのですが、もしかしてこのリウヴィル拡大体というのは具体的にいくつかの特殊関数を導入すればいいものなのか、代数方程式の解のように具体的には書けないものもあるのか、どうなんでしょうか。
不定積分ですので、e^(-x^2)でしたら誤差函数を導入すればいいわけです。ただ、初等函数と言っても合成函数を作ればいくらでも複雑になりますので、不定積分は必ずしも知られている特殊函数にはなりません。その意味では、代数方程式の解のような感じです。
特殊関数に関わる疑問を呟いている人がRTでまわってきたので, Paulをつないだ話で, 微分ガロア理論的な話です.
上田晴彦, 物理科学における数学的方法¶
/ わかったつもりなのに演習問題が解けない、そういうあなたに役立つ1冊 \
『物理科学における数学的方法』上田晴彦/訳(プレアデス出版) 先生、数学の理論はわかりましたが問題を解くことができません。 いつの時代でも紙と鉛筆での手計算が身につく第一歩。書泉オンライン⇩ https://www.shosen.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=5003144
内容はよくも悪くも20世紀の物理数学の趣があります. 大事なのは「先生、数学の理論はわかりましたが問題を解くことができません。」です. いくら数学それ自体を勉強したとしても物理の現場で計算できないとはじまりません. 大事なことなので何度でもくり返しますが, ここを鍛えるべく企画しているのが最近の計算力向上通信講座です. 今回の量子系のための線型代数は明日で締切なので興味のある方はぜひどうぞ.
具体例の解析¶
(c)みたいな問題が高校の教科書には必要だと思ってる
2.3.12 次の練習を行って, 例2.3.2を完全に理解せよ.
(a) $\sqrt{3}$が有理数でないことを示せ. (b) $\sqrt{6}$が有理数でないことを示せ. (c) $\sqrt{49}$に対して同じ証明をしようとすると, その論証はどこで破綻するだろうか.
『エレガントな問題解決』という本で、日本では高校数学にあたる内容を題材に数学の問題に対する取り組み方などを中心に扱ってるとても面白い本です。 https://oreilly.co.jp//books/9784873
この「うまくいかない例」の調査という視点, 非常に重要です. 私のコンテンツにももっと盛り込みたいですね. とりあえず記録しておきます.
PDF: Johnny Nicholson, Exotic Spheres¶
https://www.ma.ic.ac.uk/~jknichol/exotic-spheres.pdf これ読んでます。異種球面の作り方。面白いので共有
単純にメモ&シェアです.
博論のPDF, Muhammad Ilyas, 2022, Quantum Field Theories, Topological Materials, and Topological Quantum Computing¶
博論!204ページ! 場の量子論、トポロジカル物性、トポロジカル量子計算っていうタイトルで基礎から書いてくれてるらしくて助かる。 個人的には圏論と場の量子論、TQFTのセクションが気になる。 https://arxiv.org/abs/2208.09707
物理としては物性の人間で, トポロジカル物性もずっと気になっています.
ラグランジュの未定乗数法¶
丁度多様体論的に見たLagrangeの未定乗数法をYouTubeの陰関数定理の続編としてやりたいと思っていて結局1年以上経つのですが、Submersionさんの記事を見つけました。こういう話あまり教科書に載っていない気がします。 メモ:Lagrange未定乗数法の多様体論的な見方 https://mathlog.info/articles/2376 #Mathlog
正直多様体論やってから解析力学とかでLagrange未定乗数法とか陰関数定理、逆写像定理あたりをみるとかなり見方が整理されて世界が変わる気がします。
先々に進んではじめて見える景色があるよという話です.
JAXA宇宙教育センターによる夏休みの宿題¶
JAXA宇宙教育センターが出してる夏休みの宿題が面白そう!好きな天体を選んで、Pythonを使ってその星への軌道を自由に設計してパワポでまとめて提出せよとのこと。解説付きで高校数学物理が分かればできるらしい(ほんとに?) プロの解説を見るだけでも勉強になりそう。いざ。 https://edu.jaxa.jp/news/2022/j-0805-1.html
プログラム利用としてメモ&シェアします.
遊んでみたい機械学習・統計学: 自然言語処理の具体的なテーマ¶
AIを利用し失われているテキスト部分を読み解く
http://u0u1.net/tFpw 2018年からプロジェクトがスタート 破損し一部しか解読できない粘土板を読み解く際、データベース化された他の破損粘土板から文章を引用し翻訳するシステムを構築中 完成すれば研究者らの強い助けに
これ自体は各種専門知識とプログラミング技能が必要なので首を突っ込めたものではありませんが, 言語学関係はいろいろ遊んでみたい話があります.
単語に限らず暗記にはイメージと結びつけて覚えるとよい場合があり, スマホの単語アプリには単語の意味を絵で表して選ばせるクイズがよくあります.
私がほしいのは理工系向け多言語学習アプリで, 見た限りの既存のコンテンツだとかゆいところに手が届かない感じがあります. アプリとして真面目に作ろうと思うと大変ですが, 機械学習で自動生成した画像には単語本来のイメージがある程度は載るはずで, 人間の単語学習に裏回し的に自動生成画像が使えないかと最近思っています. このあたりの研究もしないといけなくて時間がいくらあっても足りません.
絵画史から見るとAI絵画はカメラ¶
ここ数日, Twitterでお絵描きAIの話題が盛り上がっていて, それにまつわる話です.
2022-08時点でのAIの実応用をいくつか¶
実際に仕事で少し使ったこともあったので, そのときに調べた・知った一般的な話をいくつか紹介します.
連続“果樹園荒らし”…犯人は「クマ」 モモも被害(2022年8月19日) - YouTube カメラが捉えたのは、体長2メートルほどのクマ。そばには、プラムの木が植えられていました。 今回、枝を折られたプラムの木。この木の向かい側に設置されたAIカメラに、クマの姿が映っていました。 17日午後9時ごろ、札幌市の果樹園でクマにプラムの木が折られ、実が食べられる被害がありました。少し離れた場所では、クマの足跡... こういう場面で登場する「AIカメラ」って、どういうところが「AI」なんですか?
https://aismiley.co.jp/ai_news/what-is-ai-camera/ 異常検知系の仕組みが入ったカメラではないでしょうか。判断法・基準は色々あるでしょうが、侵入者などの見慣れない対象を検知して報告まで上げてくれるシステム(のはず)です。
AIカメラとは?できることや活用事例・導入事例をご紹介 AIカメラは、AI(人工知能)を搭載したカメラのことです。AIカメラのディープラーニングを活用することで、従来 […]
レス、だんけです。「AI」との売り文句は本件の場合、どの程度信用していいものなんでしょう。というか、どのへんの機能を以て「AI」の呼称の根拠としているのか、「判断法・基準」はナ変に、ぢゃなくて奈辺にあるのかといったところが気になります。
AIの定義からして割と問題ですが、いわゆる機械学習的な手法による監視・巡回・点検システムはもうそれなりに一般的です。システムの作りの話で、ユーザーからは見えにくい・見えないものの、「AIによる」と言われたら機械学習なり統計的な手法で何かやっていると思って問題はないでしょう。 問題は監視・巡回・点検システムとして適切に動くかどうかで、ガワで何と呼ばれていようが適切に動くならそれでいいとは言えます。そしてAI(機械学習)システムは適切な設定のもとでの稼働なら十分に動くレベルであろうと思います。問題はそもそもこの「適切な設定」を作る難しさにあります。 例えばソーラーパネルが壊れているかどうかの異常検知問題があります。比較のために正常な画像と異常な画像をいくつか準備する必要があるのですが、正常はともかく異常な画像を準備するのが大変です。何を異常とすればいいかがまず難しいからです。 例えば鳥のふんが引っかかっていたら清掃が必要でアラートが欲しいですが、それを検知できるだけの画像の鮮明さが必要です。他には「点検画像の撮影時にパネルの上をたまたま鳥が飛んでいてその影を異常と判定した」といったケースもあります。 「パネルを置いていた場所の草が伸びてきてパネルを塞いでいる」といったタイプの、システム導入当初には起こらない、時間差で現れる異常もあります。こういうモグラ叩きが必要です。人間が目視で点検していれば「そういう異常」と判定できますが、それを適当な形にシステム化する必要があります。 良くも悪くも人間だと柔軟に対応できる部分を機械化・自動化しようと思うとこの手の判断基準の設定・更新が必要です。これが適切な設定を作り維持する難しさです。いわゆる条件分岐によるエキスパートシステムのAIが頓挫した理由の一端でもあります。 余計な話ですが動画を使うとなると鮮明さと動画容量と一定期間の保管を両立させるシステム上の難しさもあります。あっという間にGBレベルの容量になり、異常検知の解析自体にも時間がかかります。運用にはシステムと現場のプロの高いレベルの連携が必要です。困難は色々ありますがそれは別の話なので。
いたって素人臭い連想に過ぎないのだろうとは思うのですが、たとえば、 集合写真からも人物特定、議論を呼ぶ最新の顔認証技術 - YouTube https://youtube.com/watch?v=B6Fsyc_DgSY のようなものから想像すると、そのあたりはすでにコストの問題なのかもしれませんね。 集合写真からも人物特定、議論を呼ぶ最新の顔認証技術 「クリアビュー・AI」の顔認証技術は、世界で最も有名だが、プライバシーや個人情報、自由といった観点から、最も議論の的となっている。BBCのジェイムズ・クレイトン北米テクノロジー記者が、同社の共同創業者である ホアン・トン=ザット氏を取材した。BBCニュースサイトの記事はこちら。https://www.bbc.co...
高齢化の問題もあって発電所のような場所でも巡視点検のニーズが高まっているそうなのですが、発電所といえば原発さえ含むためいわゆるパブリッククラウドは使えず、サーバー管理などもセキュリティをガチガチに固めた内部にとどめざるを得ません。施設内のネットワーク設備もあれば、 人間が動く前提で作られた設備内の移動をロボットにやらせる(電線などの高所や僻地もあれば、下水など入り組んだ地下施設さえある)ためのインフラづくりなどもあって、コストの問題は凄まじい問題になります。 カメラは固定され、映像中から変化を検知し撮影を開始するといったレヴェルなら、そうとう安上がりに出来るということでしょうか。 そもそも誰がどういう場所でどう使うかという問題があります。https://securityhouse-network.net/blog/%E6%9E%9C%E6%A8%B9%E5%9C%92%E3%82%92%E5%AE%88%E3%82%8B.html には果樹園だと電源が取りにくいといった話もあります。果樹園を例にするなら、むしろ対象に応じた最適な解決策の提案の方が重要なように思います。鳥獣対策ならむしろ侵入させない方にコストをかけたいはずなので
クマが食い荒らしていたことをメインにした報道からは、おそらくはヒトを怪しんでカメラを据えたのだろうといえそうですよね。ヒトが対象だとすると、果樹園を狙った不届き者の身元を割り出すことが最優先のではないでしょうか。鳥獣対策は本件に関する限り、これからの課題ではないでしょうか。
話を拡散させすぎたのと、状況に応じて何をどうするのがベストかという視点にこだわりすぎたのが失敗だったと反省していますが、コストと実用という話でいうと、侵入者検知ではないものの、農業用環境管理IoTだと https://japan.cnet.com/article/35167509/ で「機器費用が2万4750円、システム利用料が月990円」
畑の異常を電話で知らせる低価格な農業IoT「てるちゃん」--KDDIウェブが提供開始 KDDIウェブコミュニケーションズは3月9日、センサーが圃場(畑)の温度・湿度・照度の異常を検知して農業生産者へ電話・メール・SMSで通知する農業IoT「てるちゃん」をリリースした。
といった話があります。ハウスの環境制御だと https://pr.nepon.co.jp/lp/mc01 いわく「地上部の統合制御が50万円から」、参考までに農機具一般として中古トラクターが https://ummkt.com/market/category/tractor/ くらいの値段帯です。最初の月990円はおそらく容量も少なく抑えられ、事前処理もしやすい数値データを素直に解析すればいいだけのはずなので月額990円、メールなどの通知系で必要に応じてもう少し課金というのは妥当な値段と思います。画像・映像解析は安ければ数千円から数万円レベルだろうと推測しています。農家の収益・コスト感覚は把握できていないのですが、
なるほど、それくらいのコストなら、農耕機など他のコストに加わることがあっても、さほど懐具合に厳しいということはなさそうですね。
今週の問題¶
今週の問題はメルマガのタイトルでもある例です.
これのP.14, 6.1.6節の三つの例を眺めてください. シュタインスプリング表現とクラウス表現それぞれのご利益もよくわかる上, 量子開放系・ノイズの議論と熱力学や統計力学での環境に対する感覚も深まります. 計算上では本質的に二次正方行列の世界であり, ありとあらゆるいい話が書いてある例です.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-08-13¶
数学・物理 通信講座「量子力学のための線型代数とその計算」募集開始/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08 開講案内
- Looman-Menchoffの定理
- ヴィラーニの自伝と不等式の数学
- 直観と愚直な計算と
- 21世紀の量子力学学習に関連する諸々
- JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』
- 医療系オープンデータが取れるPhysioNet
- テクニカルライティングの基本
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先日からはじめている物理や数学のギャラリーの開発で苦戦しています. 特に現代数学探険隊から各定義・定理を切り出して眺める定理鑑賞アプリが課題です. KaTeXをいい感じにレンダリングさせるReactコンポーネントの開発で詰まっていて, 昨日一つ山場を越えたもののもう一つ最終解決すべき問題が残っています. これもさっさと片付けて語学用のアプリもほしい言語に関するデータ整備して, とやることが山積みです. せっかくの機会なのでテストも書きたいです. 早くふつうの物理・数学・語学学習モードに戻りたいです.
それはそうと, 物理学ギャラリーは66式(?)まで進みました. これは地道に増やします.
手持ちの本からテンションが上がる式をゴリゴリ入れています. 「まずはこれを載せろ」という要望があればぜひ挙げてください. TeXつきで送ってくれるとなお嬉しいです.
ここ一月くらい開発ばかりであまり物理や数学ができておらず, 語学はなおのことできていません. ただ, 開発に関連して一人で解決できない問題にぶちあたりまくっているため, 英語で各所に質問を投げているのですが, プログラミングに関わる英語は割とサラサラ書けるようになっていて, 今年に入ってから10分であっても毎日ちょこちょこがんばっている分が多少は効いてきているか? という感じもします.
あとは現代数学探険隊の再整理もしたいですね. 例と計算練習編をずっと追加し続けています. 以前通信講座として展開していた現代数学探険隊の解析学編, この中にも例や計算がいくつかあり, 全体構成を考えればこれを改めて整理した方がよさそうです. ただとにかく時間がありません. 一日10万時間くらいほしいです.
通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08 開講案内¶
ようやく案内が完成しました. 募集期間は二週間で8/29(月)から開講予定です. 詳しい内容は上記ページを参照してください. 何か質問があればメールやアンケートでお願いします.
書くべき内容は上記ページに書いてあるのでメルマガではこのくらいで.
Looman-Menchoffの定理¶
Looman-Menchoffの定理、「デリケートな定理であるので、初学者は手を出さない方がよいだろう」とはあるが、野村隆昭先生の「複素関数論講義」(共立出版)には紹介されていた。 リンク先は文献 [34](アクセス制限があるかも)。 https://jstor.org/stable/2321164?seq=1#metadata_info_tab_contents
読もう読もうと思ってずっと読んでいない論文です. ずっとメモの奥底に沈んでいたのでまずはシェア.
ヴィラーニの自伝と不等式の数学¶
気晴らしにヴィラーニの自伝を読んだ。この本は評価が分かれていると聞いていたが然もありなん。いわゆる不等式の数学が構築される現場の様子が露わに描かれている。私はこのタイプの数学は全く専門ではないけれど昔ある友人にそういう数学の存在と楽しむ様を教えてもらったおかげで親しみを感じる。
こう書かれるとヴィラーニの自伝にも俄然興味が出てきました. ちなみにヴィラーニは最適輸送などが専門で, ボルツマン方程式とランダウ減衰に関する研究でフィールズ賞を取った魔人です. 物理まわりの力学系をやっている知人が「自分にとってはスーパーヒーローだ」と言っていました.
直観と愚直な計算と¶
「現代物理」のレポートの採点を終えましたが、選択課題1(相対論的光行差の問題)の選択者のうち1/4ぐらい間違ってました...高校生のように(?)作図で済ませようとした人は概ね間違いで、何も考えず愚直にローレンツ変換した人はあってました。直観に頼らず計算したほうがよいということかなと思います。
直感に頼らず愚直に計算した方が間違いは少ない. 一方,直感に従って何もないところに一歩を踏み出すときに新しい理論は生まれる.間違いを恐れてはならない. 間違いを起こす曲がった角に神か悪魔がひっそりと佇んでいる.我々はだいたいそれには気がつかない.
最近ずっと推している計算の話です. これ以外にもう一つ, 直観が届かない世界に辿り着くためにこそ計算する世界観があることも追加しておきましょう. このうちの一つが上記ヴィラーニの不等式の数学に関わる話です.
以前書いた次の記事を引用します.
はるか彼方からの光芒を信じ, 膨大な計算を遂行し尽したときに初めて地平が見えてくるようなハードな解析は解析学の真骨頂であろう. ハード・アナライザーたちの数ヶ月からときには数年に及び, 岩に穴を穿つような計算を続行するその強靱な精神力と体力には畏敬の念を覚える. 不幸にしてその途上で力尽き果てた人もいた. 畏敬とともに深い哀悼の念を表する.
しかし, 例えば, モーメントの評価や相関関数の評価などのようなわずかな手掛りを頼りに必ず道が拓けるとの信念のもと, 恐ろしいほどのハードな計算を遂行し切って, 数学に新たな地平を切り拓くハードな解析はやはり解析学の真骨頂である.
私の数学・数理物理の原風景でもあります.
21世紀の量子力学学習に関連する諸々¶
通信講座をはじめるのでそれに合わせて私自身地道に再学習を進めています.
図式で学ぶ量子論 番外編 ~2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい~|Kenji Nakahira @KenjiNakahira #note https://note.com/kenji_nakahira/n/nbdaa609a3273 数学系学習者としては、どちらかといえば論理的に導出できるかよりも、何を仮定として議論しているかを明示してほしい。
すいません。完全に明示することは紙面の都合上(&一般読者にとって複雑なため)難しいのですが,強いて述べると一般確率論および St_2≅Den_2 が成り立つと仮定して,St_N≅Den_N を導けるかという問題を考えています。 一般確率論が成り立つことは,note記事の文献[5]のIII章で述べていることが成り立つとおきかえて頂いて構いません。無条件でSt_N≅Den_N を導くことは恐らく不可能ですので,(十分に知恵のあるほぼ全ての人が)自然だと思えるような前提を追加してもよいものとします。 この最後の条件は自然という言葉を用いたりして厳密性に欠けるのですが,ここの厳密性を高めることは難しいのでご容赦ください(汗)。
こちらこそすみません。記事の内容自体の話ではなく、物理の教科書に対する一般的なスタイルの話です。私は学部は物理だったのですが、かつて(今も?)熱力学や統計力学の教科書が大混乱していた時期の地獄スタイルは物理学科の学生にとってさえよくないはずなので。
いえ,コメントくださりありがとうございます。お気持ちよくわかります。何を仮定しているかや各用語をどう定義しているかなどが曖昧になっていると,混乱してしまいますよね…。
発端になった議論と直接関係のある部分だと思いますが、一般論を議論している中で理想気体など具体例での話が始まって終わったと思ったら、その具体例での知見がいきなり一般論に敷衍して適用され始めたりします。そういう習慣を改めない限りここでいう論理的な議論に耐えられる人間は育たないのでは?
はい。少なくともどこまでが論理的(=演繹的)でどこからがそうではないかを明確に区別することは重要だと思います。
一番気になるのはこれ.
ポイントはそこではなく,(私がお伝えしたいことの一つをまとめると)具体的にどのような前提を用いているかが不明瞭であることが問題であると主張してます。 用いている前提を具体的にお知らせ頂けないでしょうか?
ごく単純な話として前提をできる限り明らかにした方が自分にとってもチェックしやすくていいと思っているのですが, なかなかそうもいかないようで. それこそ研究中の話として暗黙の前提があることさえ気付けておらず, それが決定的なポイントだった事案がたくさんあるのが量子力学なので.
中平さんは秋に本を出すそうですしそれも楽しみです.
JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』¶
JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』、もともと新書として販売するという企画で書かれたらしいというくらいなので、とても内容の充実した文章です(リンク先PDF注意)
https://www.jamstec.go.jp/es/jp/publication/pdf/Development_ES.pdf
まだ読めていません. とりあえずシェア.
医療系オープンデータが取れるPhysioNet¶
PhysioNet をご存知でしょうか。今更感がありますが紹介いたします。 これは医療系オープンデータで、簡単な手続きだけでかなり大規模なデータも自由に使えるようになります。 無料でここまでデータが入手できるなんて, と感動ものです。
特にMIMICという集中治療系のデータが有名(というか論文が沢山出ている)ようです。その辺りがご専門の方にはお馴染みなのでしょうかね。 触ってみた感じでは、
1)GoogleのBigQueryに直結しているのでSQL書けると直ぐにデータの加工が出来そう。 2)直接ダウンロードも可能。
データが大きいので直接ダウンロードしてもデータは開けない。 なので開くには多少のコツが必要になる(この辺が一般には使いにくい理由なのかも)。 DBI packageとdbplyr使えば普通にRで操作できました。 ファイルによってはコマンドプロンプトからwgetを使って落とさなくてはならないっぽいです。 私のPCにはwgetがインストールされていなかったので、以下のページの容量でインストールを最初にしました。 その後は普通にデータダウンロードできました。 え、宝の山がこんなに簡単に!?って感じです😊 ちなみに、データダウンロードにはCITIトレーニングが必須(無料)です。 倫理に関する文章を読んでクイズに沢山答えるというもの。 結構大変でした(英語が得意な人なら簡単に終了すると思います)。 この修了証明書を送ると約2~3週間でデータダウンロード可能になります。忘れた頃に来る感じでした。
最近, 何かのテーマで統計学・機械学習で遊べそう, と思ったのですが何か忘れてしまいました. 語学ネタだったような気もします.
テクニカルライティング¶
cybozuの新入社員向け研修資料「テクニカルライティングの基本」(無料公開)が超勉強になった...! 本来は技術的な内容をわかりやすく伝えるための方法論だけど、リモートが普及しテキストコミュケーションが重要になった今、非技術者でも一度は目を通すべき内容かと思います。 https://speakerdeck.com/naohiro_nakata/technicalwriting
英語ベースですが私も学生時代にテクニカルライティングを勉強しました. 早稲田にテクニカルライティングの専門家がいて, TEPテストというテクニカルライティングの資格試験もありました. いわゆる教養系の講義で開講されていて, 学期終了直前に資格試験が開催されるため「受講者はせっかくだから受けてみては?」という担当教員のコメントのもと, 受講してみて二級は取りました.
今検索してみたら, コロナ禍に入ったからか2019年から試験の情報が更新されていません. 技術英語・工業英語・テクニカルイングリッシュで検索すると書籍が引っかかるので興味がある方は調べてみてはどうでしょうか. 近況にも書いたように最近は止まってしまっていますが, 語学系, 特に英語のコンテンツ作成ではテクニカルライティングなども視野に入っています.
今週の問題¶
今週は量子力学講座開講に向けてのカリキュラムの最終検討に入っていました. TODOもいくつかあったためそれを埋めていたところ, クラウス表現やシュタインスプリング表現がTODOのままでした. 今回の範囲ではありませんがいい機会なので調べ直したら無限次元版の議論を見つけたため, そのノートを作っているところです.
無限次元含めた議論, 系統的に議論されているは何かあるかと改めて探しています. 以前買った量子測定の数理物理本には載っていそうな気もしますが, もう内容を全然覚えていなくて愕然としています.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-08-06¶
数学・物理 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内
- 引き続き募集: 物理学ギャラリー・数学ギャラリーに載せてほしい式・法則募集
- Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke, 2022, The classification of surfaces via normal curves
- Stefan Friedl, Algebraic topology I - VI
- mathraphsodyさんによる調和多項式とべき零多様体の本
- 書かれていないことを書かれていないと認識する能力
- Understanding topology: 動画が面白い
- Wikipediaの数学記事: 確率変数の収束とフーリエ級数の収束の優秀さ
- フーリエ変換に対するある主張の当否
- 『代数学のレッスン 計算体験を重視する入門』
- 微分チートシート: 「ベクトルで微分・行列で微分」公式まとめ
- 永井佑紀, 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング
- 聖地巡礼の意義
- 「ルンバが走るには片付いた部屋が必要」
- 「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
昨日知人に改めて指摘されて反省したことがあります. 何事も全力でやろうとしすぎていて, 無我夢中になってしまって周りが見えなくなりすぎになっています. そして一つに集中しすぎて手を止めるべきタイミングを見失っているとも言われました.
ちょうど先週, 一日かけて解決できなかったプログラミングの課題を, 基礎基本に忠実に, 動くところから積み上げて対応したらすぐ解決した事案を報告しました. まさに上記指摘事項が全て悪い方にあてはまっていて, わかっているならちゃんとしなさいと. そしてむしろ「ぼちぼちやろう」くらいの方が真のフルパワーが出せるテンションなのでは? という話にもなりました.
先月, 本格的にフロントエンド学習をはじめたところ, 楽しかったからでもありますが, 事実上食事や風呂などを除いて本当に朝から晩まで, それこそ16時間とかいうレベルでプログラミングに没頭していた日が何度もありました. 休みの日もほぼ変わりません.
もちろん人や状況にもよりますが, 私の場合, 集中力とそれを続ける意志の力があっていいというよりも, 止め時を認識できないただの馬鹿事案のようです. というわけで, 今年の残りはこの馬鹿みたいな集中力を適切に分散させるのを課題に設定しました. 実際, 通信講座の案内やら何やら, 完全に放置状態になっていてよろしくありません.
まさに急がば回れというか, ほどよいところで止めて落ち着く時間を作った方が結局は課題も早く片付くタイプの人間のようです. 細々としたことが滞りに滞っていますが, もうしばらくお待ちください.
通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内¶
予定を遥かに越えて案内が滞っているので, いったんできているところまで案内ページをシェアしておきます.
あとでページ内にももっと強く書いておく予定ですが, 量子力学を元ネタにした, またはその用語が散りばめられた計算をするのが目的です. 量子力学を勉強するのに必要な線型代数の理論を案内する通信講座ではありません.
まだ練り込み切れてはいないもののカリキュラム案も載せています. 「こんなはずではなかった」とならないよう特に強調しておきます.
さらに言えば計算にフォーカスがあるため量子力学の物理にも踏み込みません. 上記ページにも推薦書をいくつか書いているのでそれを見てください. そして独学で捌ける人には鬱陶しいくらいのスローペースでしょう. 紹介してある本や文献を読んで一人では対応できないと思ったら受講を検討してみてください.
引き続き募集: 物理学ギャラリー・数学ギャラリーに載せてほしい式・法則募集¶
時間の都合で物理学ギャラリーしかできていませんが, 式を25本まで増やしました.
通信講座の副教材としても使おうと思っていて, 毎日コツコツ1-2本式を追加しています. まだ25本しかないからつまらない, 見る気も起きないという人も多いでしょう. 何より私が一番そう思っています. 式をバンバン増やしたいのでぜひ協力してください.
式の増強に関してはプルリクしてもらえるとなお嬉しいです.
phys-exprs.csv
に集約していて, これをts
に変換したのをソース中で使っています. 他のところで流用したくなる機会もあると思い, csvをオリジナルファイルにしています. ミニファイなしのjsonだとスペースで余計な容量を食い, ミニファイすると読み書き編集しにくいのでいったんcsvです.
Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke, 2022, The classification of surfaces via normal curves¶
同じようなことは考えていましたが先にやられました。 学部の講義で紹介しても良さそうです。
[2208.00999] The classification of surfaces via normal curves The classification of surfaces via normal curves
The classification of surfaces via normal curves Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke
We present a simple proof of the surface classification theorem using normal curves. This proof is analogous to Kneser's and Milnor's proof of the existence and uniqueness of the prime decomposition of 3-manifolds. In particular, we do not need any invariants from algebraic topology to distinguish surfaces.
微分幾何での数学+プログラミングでのお絵描きをやる野望はずっとあり, 数学パートを作るときの参考になりそうなのでメモ&シェアです.
Stefan Friedl, Algebraic topology I - VI¶
2919ページある大作です. これをじっくり読むかはともかく辞書として手持ちに置いておくといいかもしれません. 私も何かの参考になる機会があるだろうと文献ストックに突っ込んでおきました.
mathraphsodyさんによる調和多項式とべき零多様体の本¶
調和多項式とnilpotent variety(?)について 体系的に纏まってる洋本ってありますか? 『洋本』はきっと私たちの「代数群と軌道」を避けるための条件だと思います.とりあえずその宣伝を (^^;; 冗談でなくこの本は入手不可能になる可能性があると思うのでお見逃しなく https://sugakushobo.co.jp/903342_53_mae.html
さて,nilpotent variety については,もちろん
Nilpotent Orbits in Semisimple Lie Algebras An Introduction ByDavid H. Collingwood, William M. McGovern
にトドメを刺すでしょう.An Introduction に惑わされてはなりません. https://www.taylorfrancis.com/books/mono/10.1201/9780203745809/nilpotent-orbits-semisimple-lie-algebras-david-collingwood-william-mcgovern しかし,この本は variety というよりも,冪零軌道に詳しいと言えるかも知れません. 日本語によるよい書評 (^^;; があります. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/70/3/70_0703330/_article/-char/ja/
洋書ではないのですが,もう冪零多様体というとかなり専門的なので,書籍とか言ってないで Kostant の論文をお薦めします. この論文は教科書みたいなもので,読んでみるとたくさんのことを学べます.78ページもあるしね.無料です. https://jstor.org/stable/2373130?casa_token=5TPumCaXZIIAAAAA%3AKiCpSIiwr2CWgJRthtSWZ0Jr0GmE_xZC3cVHtOVI9R92xq2ni0EyDBFEOt5Yj5AEbZBuhjfCaOYx6k277D1f3bd6UKUhIjFMjGfsb85NnkNy83yjEPM#metadata_info_tab_contents
調和多項式と不変式環の関係,冪零多様体の正規性,完全交叉性,関数環の構造などなど,ついでに(?)半単純軌道についても書いてあります. だって,冪零軌道は半単純軌道の退化極限ですからねぇ. これを読んだあとは Kostant-Rallis をお勧めします. この論文,リー環の場合の冪零多様体の対称空間への『一般化』と思われがちですが,それは大きな間違いです.冪零多様体とは何か.私はそれをこの論文で学びました. https://jstor.org/stable/2373470?casa_token=tt_JneBq_HIAAAAA%3Ajwdi_JIUcN3CbmeLL4Hu4poHTEKRm6hk-inPwgxCmhstDSX5znd3qJ1EiqTGeZq2oQ5yUVRE0n7rah3Vpk5KOO5XkAj7KNPErpQel7K51JftPh9FhpM#metadata_info_tab_contents それでいま,たまたま見つけて,ああ,これがよいと思った論文があります.それは Brulinski-Kostant. Brylinski は Jan Luc ではなく,Ranee の方で,奥さん.7/🧵 日本に招待したことがあったけど「いまは起業ビジネスで忙しい」と断られたことがある. https://jstor.org/stable/2152759?casa_token=isYTJNPmTTcAAAAA%3AQeIfqIFrCdLuKgpi8A3n5SlkE7Bvxk553Qw70SvtFs17p4nhEMACZkWNW-5ltpxO7eeEYiGKx3_VrE-2KHwxMVO7euImxP1CXqY4Dfkr3HqLHvZJURo#metadata_info_tab_contents 彼女はもうとびきり優秀だったんだけどなぁ.惜しい人をなくした. (^^;; (いやもちろんまだご健在ですが,数学会からはいなくなっちゃった)
で,Brylinski-Kostant に話を戻すと,要するに nilpotent variety って隨伴作用の Hamiltonian reduction なのである,ってことが書いてあるんだと思う. だから冪零多様体を特別視する必要はなく,リー群のハミルトン作用を考えて Hamlitonian reduction すれば自然と冪零多様体みたいなものが現れるって訳だ. その一番原始的な例が冪零多様体で,それを深く理解しておけば Hamiltonian reduction は怖くない. (^^;; コワイケド これに関連して言えば,Fu さんの論文で,孤立シンプレクティック特異点は局所的に極小冪零軌道の閉包の特異点と解析的に同型であるという定理はとんでもないもので,びっくりしたなぁ. https://link.springer.com/article/10.1007/s00222-002-0260-9
まぁしかし,冪零多様体が symplectic reduction の特別なものに過ぎないということからするとある意味で当然の帰結かも知れない. そういえば『冪零多様体』という言葉にはなんとなく「冪零元の全体がなす多様体」というニュアンスがあるけど,この見方は誤解を招く. 不変式たちが定義する多様体,あるいは幾何学的不変式論で言うところの不安定点の全体という認識が正しい. その意味では,Mumford-Forgaty-Kirwan の Geometric Invariant Theory は冪零多様体を理解する一番よい教科書なのかも.ちなみに私は読んでません.
全く知らない分野ですが楽しそうに文献紹介されているのでその楽しそうな気分のお裾分けです.
書かれていないことを書かれていないと認識する能力¶
読解力が話題になってるみたいなのでなんとなく。理学、特に数学では「書かれていないことを書かれていないと認識する能力」が強く要求されてこれは読解力の一つだと思うわけですが、世間一般ではむしろこれは読解力の不足とみなされてそうだなと思ったり。
RT/Likeがたくさんつくのはこういういい加減な与太話だなぁ。「書かれていないことは読み取るべきでない」とは書いてないのだけれども、そういう筋の引用RTがそこそこついてる。書いていないのだからそう解釈してはいけないとは言わないけどさ。
【単に分野によって読み方・書き方が変わるだけ】と言っている人がいて、それはそうかなとも思うのだけど、まあ数学が割りと「書いてないことは書いていないと認識する」能力を要求するのは確かだと思う。 まあ、数学やってないときに数学者がその能力を発揮できるとも限らないけどさ。
最近ブログの記事を整理してアーカイブに再録し直しています. 昔の記事を見ていてこれは, という内容がありました.
競プロ勢が次のような主張をしていました.
- 数学の本はわかりにくすぎる.
- 数学科の人間でさえ苦労している.
- 人間の本来の理解の仕方に沿っていない.
これに対して雑にコメントすると, 単に他の分野はわかった気になりやすいだけで本来は数学くらい理解に対するハードルは高いはずではないか, そしてお前の言う「人間の本来の理解の仕方というのは何だ. 証拠でもあるのか.」です.
これについて私は実際に凄まじいエピソードを知っています. 学部一年のとき, 教養の微分積分の講義を担当していた郡先生が, 多変数の微分積分に入ったときにこう言っていました.
- 接ベクトルと言ってよく曲線上の点上からベクトルを生やす図が描かれることが多い.
- しかし実際には接ベクトルはあくまでベクトルであって原点から生えている.
- これがわからなくて私は理解が非常に遅れた.
これ, 大半の人には何を言っているのか全くわからないのではないでしょうか. 私も学部一年のときは「ベクトルだしそれはそうだが, そんな面倒なことをいちいち考えるか?」と思っていました. そしていつかも覚えていないものの, ある程度数学, 特に幾何を勉強したときにふと思い出しました. 「あのときの郡先生のコメント, 接空間の話をしていたのではないか」と. 多様体論はいろいろな点でとにかく面倒です. 微分作用素を接ベクトルと呼びますし, 本によっては大したモチベーションの説明もなく本当に抽象的に接空間や接束の議論がはじまります. しかし本当にこのスタイルでないと理解できない人がいるようなのです.
私の先輩の山下真さんも, 抽象的でないと理解できないタイプの人のようでした 学生向けの講義で自分のスタイルの抽象性の高い議論ベースの講義をしてしまい, その講義を聞いた学生達は有限集合の間の全単射さえろくに構成できない程に何も理解できなかったそうです. 他の先輩が「お前の理解のスタイルはよくわかっているが, そうではない人も多いのだからもう少し配慮しろ」と怒るくらいのレベルで指摘した話を聞かされました.
こうした意味で数学の本にも読み方があります. もちろん物理の本にも読み方があります. 通信講座の目的の一つは物理の本の読み方を伝えたい意図もあります. 先日も「綺麗な理論でどうにかするしようとするより泥臭い計算力で捻じ伏せる」といった話を書きました. 言葉で伝えるだけでわかる話ではありません. 実際の計算を見せて, そしてやってもらって肌で実感してもらうのが計算系通信講座の目的です.
Understanding topology: 動画が面白い¶
シンプルに遷移先の動画を見てほしいです. これは面白い.
Wikipediaの数学記事: 確率変数の収束とフーリエ級数の収束の優秀さ¶
Wikipediaの「確率変数の収束」と「フーリエ級数の収束」のページが有能すぎる。 わざわざ「〜の収束」という独立した記事がある時点で驚きな上に割と専門的な重要事項が簡潔にまとまっている。英語版には確率変数の収束の証明まで載っている。Wikipediaのくせに数学書より便利。 他にも「バナッハ空間の一覧」とかあってマニアックかつ便利すぎてビビる。オタクかよw 「ヒルベルト空間上のコンパクト作用素」「コンパクト作用素のスペクトル理論」とかやけに詳しいし、「ガウス関数の原始関数の一覧」「三角関数の公式の一覧」「円周率を含む数式」とか公式集的な記事もある。 Mathpediaっぽい雰囲気。 物理の絡むやつで「量子力学の数学的定式化」「一般相対性理論の数学」という数学的側面に限定した解説記事もある。 「水素原子におけるシュレーディンガー方程式の解」なんて丸々一つの記事を使って解の導出が詳しく載ってて教科書レベル。なんでこんな記事あるんだw
単純なシェアです.
フーリエ変換に対するある主張の当否¶
フォロワーの方々が教えてくださったのですが、これはほぼ正しいようです。例えば G. B. Folland の "Fourier Analysis and Its Applications"のp.218や小松彦三郎『Fourier解析』定理3.9などを参照してみてください。
Follandを見ると正確な言明の次のようです.
関数$f$が可積分で$\mathbb{R}$上で区分的に連続とし, 不連続点では$f(x) = \frac{1}{2}(f(x-) + f(x+))$をみたすとする. このとき \begin{align} f(x) = \lim_{\varepsilon \to 0} \frac{1}{2 \pi} \int e^{i \xi x} e^{- \varepsilon^2 \xi^2 / 2} \hat{f}(\xi) d \xi, \quad x \in \mathbb{R} \end{align} が成り立つ. さらに$\hat{f}$が可積分ならば$f$は連続で, \begin{align} f(x) = \frac{1}{2 \pi} e^{i \xi x} \hat{f}(\xi) d \xi, \quad x \in \mathbb{R} \end{align} が成り立つ.
証明の細部はともかく減衰因子が入っているならそれはそうか, という話でした. あとは元の関数の滑らかさはフーリエ変換の可積分性に伝播するから, というのも書いておいた方がいいのでしょう. その前に補足はあると思いますが, もとの黒板上の「区分的に滑らか」がどこまで強い主張なのか(まさか$C^{\infty}$ではないはず)も気にはなります.
『代数学のレッスン 計算体験を重視する入門』¶
【好評発売中】『代数学のレッスン 計算体験を重視する入門』 雪田修一/著 正規部分群やイデアルはなぜ必要なのだろう? ―こうしたことに引っかかった人に読んでほしい! 「計算体験=数学的現象の観察」から出発。証明にはデザインパターンがある!
私の意識がそちらに向いているからよく目に入るだけの可能性の方が高そうですが, 最近計算を重視する本がよく出ている印象があります. 「計算体験=数学的現象の観察」という指摘が非常に重要です.
微分チートシート: 「ベクトルで微分・行列で微分」公式まとめ¶
いま物理学・数学ギャラリーを整備していますが, やはりこういうのもほしいです. いろいろな定式化によるフーリエ変換の計算結果はリストに入っていますが, 微積分関係のリストも作らないと, と楽しみが増えました. 既にベクトル解析の諸式はいくつか突っ込んだのでもっと増強します.
永井佑紀, 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング¶
ありがとうございます。 こちらにとりあえず3日まで動作確認したコードが置いてあります。残りは順次確認次第載せる予定です。 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング(KS情報科学専門書)
ようやく手に入れました. 特に統計力学に関する数値実験をやろうと思っているのですが, 写経が大変で時間が取れていません. Twitter上で相互フォローなので聞いてみたところ, コードは公開準備中でいま三章までは出しているとのこと. 数値計算はバグ取りが地獄のようにつらいので早くコードを公開してほしいところです. いまTwitter上の知人とやっている統計勉強会もいまはJulia勉強会のようになっています. そこではイジングで遊び倒す機会も作ろうと思っています. 非常に楽しみです.
聖地巡礼の意義¶
今回一番注目したのが「聖地巡礼によって街の名前を知られた結果、地域住民が自分の街に誇りを持つ」っていう点で、これが聖地巡礼が地域に及ぼす最大のインパクトだと思う。 知名度を上げ、誇りを持たないと地域振興は難しいが、聖地巡礼にはその壁を乗り越えるパワーがある。
俗な話だけど、自分の街に誇りを持つときって、外から「○○の方ですか!」って言われる時が一番じゃないかと。 現代においては知名度と街への誇りは一体不可分だけど、殆どの地域でこれが大きな課題になってる。 その壁を同時に乗り越えられるからこそ、聖地巡礼による町おこしが注目されるのでは。 より平たく言えば、自分の街をいう度「○○ってどちらですか?」って聞かれ続けたんじゃ自分の街なんてその程度と思ってしまうし、そんな街よくしようとは中々思わんよね、という話。
物理や数学に直結するわけではありませんが, 気になったのでメモ&シェア.
「ルンバが走るには片付いた部屋が必要」¶
ルンバが走るには片付いた部屋が必要
という言葉がDXと要件定義の関係における、1番わかりやすい例えな気がする
これすごくわかりやすいな。「DXはデジタルの活用ではない。デジタルを活用するために自分と組織が変わること」という言葉が刺さる
最近, 会社の研修でDX関係のセミナーに出ているのでそれに関するメモです.
「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」¶
私はAIを勉強し始めたとき(2017)、自分にも「古典文学を博士まで勉強して、今更AIの勉強?」と何回も思った。でも、やり続けたのは本居宣長の言葉があった。
「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」
「自分には才能が乏しいとか、学び始めるのが遅かったとか、する暇が無いといった理由で思い悩んだり落ち込んだりして、進歩すること止めてはいけない。」
これは日本に留学するレベルで日本古典文学に興味を持ったものの, 肝心の崩し字が読めなくてつらかったため崩し字のハードルを越えるためにアプリケーションを開発したという人の話です. 私もいま理工系の総合語学に向けていろいろ検討し, アプリを作って情報も整理しているところで, いろいろな示唆があります.
今週の問題¶
ようやく行列リー群の基礎の基礎を終えました. リー群・リー環の基礎といえばやはり次の命題でしょう, というわけで.
- 同型なリー環を持つ単連結なリー群は互いに同型である.
非同型なリー群が同じリー環を持つ現象は初等的な範囲でもたくさんあります. この壁を乗り越えてリー環でリー群を記述しきるための鍵は位相にあり, それが単連結性だという決定的な定理です.
何度か書いているように, 代数+位相のセットは互いに恐ろしく強い制約を与えます. 微分幾何では曲率という微分幾何的・リーマン幾何的な構造が位相に制約を与えるのが面白さの一つで, 位相に制約を与える以上, 多様体が代数的な制約を持つときには代数にも影響を与えます. 当然代数的な制約から微分幾何的な制約が入るとも言えます.
位相がわけわからないという人は多いようですが, 行列・行列群の性質から少しずつ位相に慣れ親しむパスがあってもいいでしょう. リー群・リー環の議論, 行列計算のハードさもあるため位相への意識が薄くなってしまいかねない懸念はあるものの, 位相の射程距離を知るにはいいテーマです. ぜひリー群・リー環も勉強すると楽しい分野リストに入れてあげてください.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-30¶
数学・物理 載せたい方程式募集/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 質問の仕方・アンケート利用案内: 困った質問が来たので
- 基礎・基本の意義・重要性
- 物理への取り組み方と次の短期集中講座
- 集中して取り組む
- 載せたい方程式募集
- 計算できない理由を考える
- 大人の数学
- 幾何の講義YouTube
- SymPyが便利で感銘を受けた記録
- ニュートンの三法則の解釈
- 文理工の科学的世界観で考えるファンタジーの設定
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
土曜日で行列リー群・リー環の基礎の基礎くらいのところ, 終わると思ったら終わらなかったのですが, さすがに日曜には終わるでしょう. モース理論入門をリー群・リー環で最低限触ろうというネタも見つけて, それも調べつついろいろやりたいところですが, いったんリー群・リー環はいったん休止して物理モードに戻ろうかと思っています.
何故終わらなかったかというと先週宣言した物理の式のギャラリーを作っていたからです.
実物を見せないとイメージもわかないと思ったので.
Twitterに先週のメルマガの内容を放流したらQmQさんからリアクションが来たので, 継続的に一日一式くらい追加してやっていく予定です. 「こんな式を載せてほしい」というのがあればぜひ教えてください. TeXで式を作って送ってもらえるとなお嬉しいです.
物理モードに入ったので改めて量子力学の基本的な理論の部分や, 相対性理論を再勉強しています. 相対性理論の本を眺めていたら, 特に一般相対性理論で計量の符号の流儀に由来する曲率の表式の違いが問題になっているのを見かけました. 数学でも曲率の符号が問題になる場面はよくあり, 流儀ごとの計算結果は現代数学探険隊にまとめているのですが, これも改めてきちんとまとめようと思っています.
フーリエ変換も$2 \pi$をどこにどう置くか, 三パターンくらいありますし, これも現代数学探険隊にまとめています. 私が参照しやすくする目的も兼ねて公開しようと思っています.
私の勉強・参照の役に立つなら万人とは言わずとも役に立つ人は必ずいるはずで, そこを狙ってやっていきます.
疲れているときや昼食の休憩時など, ちょっとしたすき間時間はだらだらしがちなのですが, そういう時間に使うアプリとして非常に楽しみです.
質問の仕方・アンケート利用案内: 困った質問が来たので¶
率直に言ってとても困った質問が来たので改めて案内します. リー群・リー環に興味があるようで次のような質問が来ました.
- 物理に必要な最低限のリー群・リー環だけを勉強したい.
- わかりやすい教材を教えてほしい.
何回かコメントをもらったことがある人で確か理工系出身の人だったとは思うのですが, どういう背景を持つのかあまりよくわかっていません. 以前簡単な自己紹介をもらった気もしますが, 何年も前なのでさすがに覚えていません. そんな中で「物理に必要な最低限」と言われてもどう答えればいいのか全くわかりません. 同じく, どんな教育を受けてきて何を勉強してきたのか, 背景や状況を教えてくれずに「わかりやすいのを教えて」ともよく言われるのですが, 私と同程度にゴリゴリに物理と数学をやってきている人もそういないでしょうし, 集合・位相・実数論の背景がない人に勧められる数学の本もほとんど知りません.
それで「数学と物理をやってきた人だと思って期待していたが残念だ」と言われたので, 理工系の素養があってそれなりにやってきている人間からここまでどうしようもない質問が来た上で, こんな返信をもらうのかとさすがにげんなりしました.
回答の負担になるのであえてあまりくどくどと書いていませんが, アンケートには「質問があるならせめてこのくらいは情報をつけてほしい」という項目を入れてあります. 真剣な質問で回答がほしいなら, どのくらいの数学・物理・プログラミングなど項目ごとに適切な情報をつけてください.
せっかくなので上記の質問に関してここにもコメントをつけておきます.
物理に必要な最低限のリー群・リー環¶
何をやりたいかに強く依存します. そして私の知る限りの学部から修士の物理での「最低限」の線で言えば, リー群・リー環の勉強は無駄なのでやめようと言います. 一般論を勉強するよりも都度出てくる計算を処理しきれる計算力を育てる方が汎用的で重要です. 最近の計算押しもまさにここにフォーカスしています.
私の「物理」に関しても補足でコメントします. 主に修士の頃にやっていた範囲ですが, 物理としては場の量子論の赤外発散の数理・基底状態の存在, 量子統計での平衡状態の存在です. リー群・リー環の議論は全く使いません. 勉強の段階ではローレンツ群・ポアンカレ群というリー群らしいリー群, 非可換なリー群は出てきましたが, リー群の一般論をまともに勉強しきったことはありません. いま再勉強している様子を伝えている通り, 本を一通り眺めたことはありますが当時も今も身についていません. 具体的にどのくらいの勉強をしたかについては, 新井朝雄先生の『フォック空間と量子場』を見てください. その範囲しか勉強できていません.
勉強の段階でさえ私のメインの対象は場の量子論では時空並進群$\mathbb{R}^d$, 量子統計では空間並進群として$\mathbb{Z}^d$です. 後者にいたっては形式的にはリー群ですがわざわざリー群とみなす方が大変です. 自由場のボース-アインシュタイン凝縮関係で$U(1)$も少し触ってはいるものの, リー群の議論がいるかと言われれば全く必要ありません.
「数理物理」と言ってもいろいろあります. 数学的には関数解析が専門で, それ相応の範囲を勉強してもいますが, 研究で一番大事なのは収束制御のための極限処理の腕力です. 直接の修士の専門だった作用素環でも, 一番大事なのは学部四年で既に勉強済みだったGNS構成定理です. まわりまわっていろいろ必要になることは多々あります. それでもまず最低限と言われたらこのくらいです.
物理で最低限必要な数学と言われたらもっと数学の知識は減りますし, 何より数学をやるより計算力をつけろと言いますし, それへの回答として計算力養成講座を運営しようとしているくらいです. 数学の勉強よりもぜひ計算力の涵養を最重視してください. 「数学」をやるより余程役に立ちます.
わかりやすい本¶
わかりやすいかどうかは微妙ですが, 小林・大島の『リー群と表現論』が読んでいて抜群に面白いです.
私を越える数学力があれば難なく読めるでしょう. 自分に必要な範囲の解析学しか修めていないので, 幾何と代数に関して私程度は越えていないと気楽には読めません. リー群とその表現には届かないものの, 平井武『線型代数と群の表現I・II』は集合・位相のようなゴリゴリの数学の知識なしで読めて楽しい本です.
私は私より数学ができない人でも読めるリー群・リー環の本を知りません. 知らなくて困っているからこそ多様体ベースのリー群ではなく, 行列リー群・リー環で愚直に計算を進めるタイプのコンテンツを整備しているくらいです.
持っているだけ持っていて読めていないのですが, 物理, 特に素粒子系で有名なところだとジョージアイの本があるようです.
レビューによると独学にはつらいようですが, 物理の大学院レベル, それも素粒子系の専門性があるなら物理数学的腕力でねじふせられるのかもしれません. そもそも最近はもっといい本が出ている可能性もあります.
基礎・基本の意義・重要性¶
この間プログラムを書いていたときの話です. 一日かけて解決できなかった問題がありました. 夜寝る前に「手を抜くからいけない, 一から動く部分を少しずつ積み上げて問題を一つずつ潰そう」と, 正攻法で挑み直したら翌日10分程度で解決できました. 基礎の重要性を噛み締めています. 急がば回れとは本当によく言ったものです.
上でも少し書きましたが, 物理でも数学でも計算力は基本中の基本です. 特に物理では数学の綺麗な一般論で片付けるよりも, 泥臭かろうが剛腕で押し切るのは非常に重要です. もっと言えば私の専門の数理物理がそうであるように, その時点の数学で処理しきれない問題があって数学に頼れないこともよくある以上, その場しのぎであろうとも計算力さえあればねじ伏せられるならそれを使うしかありません. 最近では「計算力」の中にプログラミングも含まれるようになってきています.
通信講座でも計算力が足りなくて困っている人がいました. それなりに面倒な近似とその計算も含め, やはり古典力学は物理に馴染む上で最初に取り組むべき分野です. 応用上カバーする分野も恐ろしい程に広く, まさしく一生かけても遊び切れないほどテーマも豊富です. 物理, またはもっと物理を勉強したい人も読者に多い中で, 数学の話ばかりしているのもよくないと思っていたところなので, これまで以上に物理での計算の意義の強調, そして計算力向上プロジェクトの推進を進めなければと思いを新たにしています.
物理への取り組み方と次の短期集中講座¶
というわけで物理と計算です. 他のいろいろな取り組みが楽しすぎて全く準備が進めていませんが, 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数, 特にその計算」です. 二次または三次の行列計算をがんばってやろうという企画で, 一般論の趣が強い話はほぼ扱いません. 量子力学に関わる話もほぼ直接的には出てきません. 計算力さえ身につけば量子力学の本も自力で読めると思うので, まずはそのための力を育てるのがいま私が一番できる貢献と思っているからでもあります.
もちろん三ヶ月でできる範囲には限度があるので, 堀田量子・谷村量子あたりに挑むための基礎計算力を身につけるための第一段です.
念のため書いておくと, 学部教養レベルの線型代数の一般論は絶対に必要です. 何をどうしても一般の有限な$N$次元は処理できないと困るからです. そして具体的な2-3次元と$N$次元の処理はやはり多少のギャップがあります. さらに言えば$N$次元の一般論が処理できたとしても, 2-3次元のハードな計算をこなす腕力・計算的体力があるかも別問題です. 極端に言えば一般論は純粋な数学の人に聞いたり教えてもらう形でも対応できますし, 物理についても物理の人に聞く手があります. しかし計算を詳しくカバーするのは骨が折れます. 大学の学部でも演習系の講義はよく必修として組み込まれています.
最近大人向け数学塾的なところも増えていますし, 個人指導も増えています. そんな中, 計算力涵養講座は必ずしもカバーされていない領域ではないかと思っています. 個人指導だといくらでも聞けるとは思いますが, 個人指導に高いお金を払おうというときに計算だけ面倒見てくれ, 計算練習だけしたいという要望もないでしょう. 大事な割に軽視されがちな部分をきちんと追いかけようと思っています.
集中して取り組む¶
プログラミングに関してCSSを含めたフロントエンドにここ一月集中して取り組んでいます. だいぶ慣れてきました. これまで直したいと思って放置してきたこのサイトのCSSも微修正しました. 慣れてしまえば大したことはなかったものの, そこに至るまでの精神的なハードルの高さは凄まじかったのです. この一月でそのハードルが著しく下がりました. 長期間継続すると言うと聞こえはいいですが, ダラダラと長い時間やっていても必ずしも望み通りの結果は産めません. 集中するべきときは資源を全集中してガツっとやった方がいいのも改めて実感しています.
もちろん数学や物理は一月程度でどうにかなるわけではありません. 正直プログラミングは本当に大したレベルではないので, プログラミングの初期学習時にゴリっと時間を取るのはかなりよさそうな感じがします.
載せたい方程式募集¶
先週少し紹介した式を眺めるアプリ事案, 文章だけではイメージが掴めるはずもないのでさっとWebアプリを作ってみました.
イメージが違うと思う人もいれば, もっとこうしてほしいというのもあるでしょうし, 式が少なくてつまらないという人もいるでしょう. 式が少なくてつまらないのはまさにいまの私の感想です. すき間時間を潰すにもせめて500本くらいはほしいです.
物理の有名な法則や式を載せればいいのでネタは豊富にありますが, 式を打つ時間がかかります. 載せる順番の問題もあります. 「この式を優先して載せてほしい」といった要望があればぜひ教えてください. 式をTeXで打ってもらえるとなお嬉しいです.
もちろんこれの数学版も作りたいですし, 物理で言うならもう少し一般向けの内容として, 物理学者名言集のようなものも作りたいです. 数学についてはいまある現代数学探険隊から定義・定理・命題・補題を切り出してズバンと数百レベルで作ろうと思っています. そのためのテキスト処理プログラムを作ろうと思って時間が取れていない状況です. これも早く何とかしたいです. これがあればすき間時間のリー群・リー環の復習・定着に取り組みやすくなるので, 何より私がほしいアプリです.
計算できない理由を考える¶
今回ずっと計算づくしですが, そのくらい大事だからです. 最近私もずっと計算していますし, 通信講座で他の人の様子も見たのでその辺からいくつかピックアップします.
計算が進められない理由はいくつかあります. まず一つ, 文章が読めていない場合があります. 「そんな馬鹿なことがあるか」と思うかもしれませんが, Twitterを見たり通信講座で質問を受けていると, 「それ, きちんと証明の中で『こうやる』と書いてあるのですが」というところで「わからない」と言っている人が本当にいます.
- 「こうすればいい」
- 「そうだったのか」
このやりとりをしたあと, きちんと本を見たらそう書いてある場合が本当にあります. 根気強く丁寧に文章を読むのも計算力のうちのようです.
もう一つ, 特に初学者によくあるのは定義が頭に入っていない事案です. もっと言えば定義が大事だとわかっていない状態です. 分野のはじめの方であればあるほど使えるのは定義しかないので, 「定義に沿って計算する」, 「定義にあてはめられるように計算する」しかできることがありません. その状態で「何を計算したらいいのかわからない」のは単純に定義の重要性がわかっていないからです.
これは文章が読めていないと言ってもいいのでしょう. 何と言えばいいのかわかりませんが, 「論理的に進めるスタイル」とでもいうのか, 少なくとも物理・数学の専門書の本の読み方がわかっていなさそうな状況もよくあるようです.
次の短期集中講座でも週に一回か二回は勉強会またはもくもく会の時間を作る予定ですが, そこで問題を見たときにまず真っ先に何に着目してどうすると考えるのか, ミニレクチャーをはさんだ方がいいのかもしれません.
大人の数学¶
以前も少し紹介した事案です. 特に機械学習なり何なりで線型代数や微分積分が必要というとき, 実際には中学, せめて高校くらいの段階からみっちりやる必要もあります. それをカバーする教育体制がどこにどのくらいあるのかという話.
高校数学または中学数学くらいからのいい感じのアプローチはずっと考えている部分でもあります. これは特に私が一番やりたい部分である中高生へのアプローチとして, 先々の面白い話をどう手早く, それもきちんと腹落ちする形で見せられるかにもつながるからです. 競プロがあってコミュニティもできているから, アルゴリズム系の計算, そして計算でがんばるタイプの微分積分・線型代数, さらにはそのお絵描きがいいのではないかと思っています. 以前, 実際に微分積分・線型代数はコンテンツを作りましたが改めて具体的に要望あるでしょうか. SymPyもそれなりのボリュームで扱っていますし, 微分方程式にも触れているので, 古典力学はもちろんのこと量子力学の行列計算でもそれなりに役立ちます.
実際, リー群・リー環の場合も含めて行列計算ではsympyやnumpyにお世話になっています. 私はできる場合には数式処理的な厳密な計算をしたいのでsympyが主な対象ではあるものの, 数値的にそれなりにできれば十分という人もいるでしょう. sympyをがんばるよりnumpyで数値的に処理する方が簡単な場合も多いですし, sympyの限界でそうするしかない場合もあります. これも実際に二次正方行列の極分解でsympyだと二重根号の処理ができず, はまり倒しつつ三日かけて手計算をがんばったことがあります. 二重根号で処理できること自体, 一日半かけてようやくわかったのです. numpyで数値的に解くだけなら一瞬で終わるのですが気にくわなかったので.
幾何の講義YouTube¶
大分前のメモで共有できていなかった分です. いま改めてサイト・メルマガを整理していて書きかけを見つけたのでここで供養します.
SymPyが便利で感銘を受けた記録¶
今週の問題ネタでもあります. 特殊線型リー群$\mathrm{SL}(2,\mathbb{C})$は弧状連結なので任意の要素が指数写像の像の積で書けます. 一方, 具体的な$\mathrm{SL}(2,\mathbb{C})$の要素を分解してみせるのはなかなか大変です. そこでSymPyを使って探索したらあっという間に見つかりました. 二次であっても行列の計算は面倒でミスも多発します. 試行錯誤となると余計にやりたくなくなります. それをカバーしてくれるこんなに嬉しいモノがあるかと感銘を受けました.
何でもできるとは思えませんが, SymPyには行列の指数・対数もあります. まず適当な(簡単な)行列を積で分解しておき, 各因子の対数を取れば対応するリー環の要素がすぐに計算できます. これもまた便利で感銘を受けました. リー群・リー環の計算練習系コンテンツはもちろんのこと, 次の短期集中通信講座, 量子力学と線型代数ネタでももっと積極的に使った方がいい気持ちを新たにしました.
プログラムを書いて探索するのもぜひもっと使ってほしいですね.
ニュートンの三法則の解釈¶
科学哲学・自然哲学系の人です.
山本義隆先生は,Landau-Lifshitz 物理学小教程の『力学・場の理論』の解説で,「論理的に純化したときの力学原理としての「慣性の法則」は何かと言えば〔…〕慣性座標系の存在要請ということになる」(p. 419) と述べているが,私がこの主張に賛同できない理由の一つは,下記のスライドに書いた通り.
- 第一法則は第二法則の特殊ケース($F=0$の場合)であり, 余計ではないのか? -> そうではない.
- 第二法則だけでは, どういうときに「外力が加わった」と言えるのかが明らかではない.
- 第一法則は「外力が加わっていない自然な状態」がどういう状態なのかを基底しており, 第二法則はそれを前提としている
もう一つの理由は,そもそも座標系というのは人間の都合で設定されるもので,物理現象はそれとは独立なので,力学法則が座標系への言及を含むのは不適切だと思うから. 慣性の法則は,相対論における測地線原理(質量のある自由粒子はtimelikeな測地線上を運動する)の古典的時空における対応物だと思うので,その対応が明確になるような形で(座標系に言及しない形で)定式化するべきだと思う.
もう一つ当人の補足.
整理すると,第一法則は「外力が働いていない」状態がどのような状態なのかを規定しており,第二法則はそれを前提としている.したがって第一法則を慣性系の存在要請としなくても,第二法則の特殊ケースとはならない. 第二法則から「$F = 0$ のとき加速度$= 0$」が出てくるので,第一法則はその特殊ケースではないかと思われるかもしれないが,これは「$F = 0$のとき静止もしくは等速直線運動」と同じではない.例えばアリストテレスやガリレオにとって天体の一様円運動は「変化のない運動」,つまり加速のない運動だった. 気になるのは,アリストテレスにとって天球(エーテル)の一様円運動は「自然」な運動だから外力を必要としないと思うんだけど,同時に彼は天球を動かす「不動の動者」を考えていること.このあたりの整合性はどうやって取っているんだろう. SEPによると,アリストテレスの言う「自然な運動」は「外力を必要としない運動」というわけではないらしい.https://plato.stanford.edu/entries/aristo
これに対するコメントがいくつかあります.
非常に興味深いです。そのスライドに書かれていることはまさに「慣性座標系の存在要請」のように思えるのですが、どの点が違っているのでしょうか。
スライドに書いた慣性の法則は,座標系への言及を含んでいない(座標系とは関係なく成り立つ)ので,慣性系の存在要請とは違うと思います.ちょうど相対論における測地線原理(質量のある自由粒子はtimelikeな測地線上を運動する)が座標系への言及を含んでいないのと同様です.
そもそも山本先生は,慣性の法則が第二法則の特殊ケースになってしまうのを避けるために,それを慣性系の存在要請として解釈しているようですが,私はその議論の前提(慣性の法則を慣性系の存在要請として解釈しないと,第二法則の特殊ケースになってしまうという前提)が間違っているように思います.
では、第一法則を「静止あるいは等速直線運動をおこなっている物体には(トータルで)外力が働いていない」という意味での外力の定義とみなせば良いでしょうか
そうですね.外力の定義として考えるのは良いと思います.
他のコメントその二.
特殊な座標系(慣性系)においてのみ第二法則は成立し、第一法則はそのような系の存在を要請している。
よって、座標系に無関係に成立するという主張は支持しない。
「慣性の法則」の意義の話をする時にネーターの定理を持ち出さないのは違和感があります。山本義隆さんの言うように理論的にはユークリッドな慣性座標の存在から直ちに導かれるものです
あまり真面目に考えたことがない上に正確な状況設定も理解していないのですが, 慣性以前に座標系をいつどこでどう定義したことになっているのか把握できていません. 上の当人コメントでは「外力の定義として考えるのは良い」と言っていますが, 外力以前に単純な力の定義もどこでどう設定したことになっているのでしょうか.
上で「文章が読めていない」という話をしましたが, 特にこの辺の議論の前提に関わるところはこの前段で何をどう設定したかに強く依存しますし, いちかわけんとさんコメントもそこに関わる話でしょう. そこが明示されない状態での空中戦は本当に不毛です.
文理工の科学的世界観で考えるファンタジーの設定¶
ずっと構想してたけど供養す
魔法は世界に対する API の query で、図形化のプログラミング言語を利用して現実化させるみたいなやつで
言語学や民俗学も絡めて、さらに異世界薬局とかの物理や化学に基づいた物質創成・操作とか
つまり文理工の科学的世界観で考えるファンタジーみたいな設定が欲しい
自分でやる気は起きませんがこれはすごい楽しそうです. ファンタジーを作る気はしないものの, アーカイブのトップに書いた「理工系の総合語学」のコンセプトはこれと強い関係があるとは思っています. とりあえずは語学・言語学・プログラミングに力を入れてやっていく所存.
今週の問題¶
今週は行列リー群の当面の締めとして, 単連結なリー群についていろいろまとめていました. 単連結という位相的特徴と代数の関連はもちろん自明に大事なのですが, もう一つ面白かったのは次の事実です.
- 実・複素係数のリー環$\mathfrak{g}$に対してトレースはもとリー環の$\mathfrak{g}$から実数体・複素数体への準同型である.
理由は指数関数の行列式に対する有名な等式$\det e^A = e^{\mathrm{Tr} \, A}$です. これ自体は散々見て使ってきた等式でしたが, リー環の準同型を示唆すると思って見たことがなく自分の目の節穴ぶりを見せつけられました.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-23¶
数学・物理 式や定理を眺めるアプリを作ろう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 単語学習アプリとその数学・物理への展開
- 勉強しやすくする環境作り
- メタバースとオンライン教育の食い合わせ
- データ同化と作用素環
- 『インド数学研究』
- 「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」
- Stack projectのPDF
- 古典場と量子系の共存
- 『進化思考』における間違った進化理解の解説
- 居眠りを苛立たしく思わない方法
- Coqで書き直したPrincipia Mathematica
- 単語と世界史
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近, 仕事のアプリ開発用の調査も兼ねたプログラミングをしていたら, 「勉強ついでにやってみよう」で自分用のアプリ開発を進めています. 技術不足でなかなかうまくいってはいないものの, 「これもほしい」「これができるならあれも何とか自力でできそう」という感じで, 妄想と実装が進んでいてなかなか数学・物理が進んでいません. 贅沢な悩みなので大きな問題ではありませんが, 次の通信講座の準備も放置したままです. 無理やりにでも時間を作って来週のメルマガでもう少し具体的な話をしようと思います.
単語学習アプリとその数学・物理への展開¶
現状ほぼロシア語しかありません. そしてこれ自体にはほぼ興味ある人はいないでしょう. しかしこれができるなら, と思って妄想しているのが定理版や物理法則版です.
実際に勉強しているとき, ちょっとした空き時間やいまひとつやる気が出ないときの気力充填用のアプリとして, 既に整備しているコンテンツから定義・定理だけ抜き出して眺めたり, お気に入りの定理や式や物理法則をパラパラ眺めるアプリがあったらいいのではないかと思っています.
これは単純に勉強する上でも実はかなり大事です. 何をやるにしても復習は非常に大事です. そして大事な定義・定理の主張だけ眺めるのはかなり大事です. 証明の細かい議論の追跡や計算の完遂も重要ですが, 個々の定義や定理の言明に親しむのも同じく大事です. 定義や定理はエッセンスをまとめた対象なわけで, 証明は証明, 言明は言明とわけて考えて慣れるのには一定の意義があります.
自作のコンテンツは基本的に自分にわかるように計算を詳しく書いているため, どうしても長くなります. 定義や定理だけ抜き出してさっと眺められると便利とは前々から思っていて, それを実現する方法としてこの手のアプリを作るのは一手と思っています.
他にも通信講座の各回のコンテンツ配布用にPWAアプリの形の配布も割と便利ではないかと思っています.
何にせよ自分自身の復習効率向上のために早くアプリ作りたいです.
勉強しやすくする環境作り¶
7/20(水)で古典力学に関する三ヶ月間の短期集中講座が終わりました. 7/23(土)に最後にちょっとした振り返りをして感想を聞いたので, いくつかシェアします.
まずは次の二点.
- 勉強会がよい強制力になった.
- ペース配分してもらえるのがよい.
週に二回, オンラインで一時間ずつ勉強会と称して時間を取っていました. 社会人で忙しくともせめて週に二回, 一時間ずつくらいは勉強してもらいたいからです. もちろんこの時間には質問も受け付けていました. 勉強会への参加がいい強制力になっていたそうです.
もう一つ, 全体が見えている人間による内容とペースの配分がよかったようです. はじめはやる気や意志の強さの問題かと思っていたが, 三ヶ月で最低限の内容を無理のないペースで進める, という視点からの配分がかなり助かったと. いまやっている議論が先々どんな意味があるか, どう発展するかもいろいろな形で伝えていた点もよかったようです. 例えば調和振動子は量子力学や場の量子論でも重要, といった話を各所で展開していました.
あともっと計算を詳しくしてほしいという要望がありました. もちろん詳しくするべき箇所は詳しくしますが, 少なくとも手元にある元にしたいくつかの参考文献よりは計算を詳しく書いてあります. 計算力がないという自覚のある方だったので, このくらいは捌けるようにもっと計算力をつけてほしいとは伝えました.
まさに計算力強化を目的にした通信講座であり, 理論の理解と同じく, 実際にたくさん計算して計算力を育ててもらわないと理論の理解も覚束ないのが現実です. 広い意味での計算力のなさが理解を阻むのは自分自身苦しんできた部分でもあり, 引き続きこの線を追いかける決意を新たにしました.
ここ何回かメルマガでもプログラミングに関して書いてきたように, 一人でやっていても効率が悪いことはよくあります. 役に立つわけでもないタイプの勉強なら必ずしも効率を求めなくてもいいでしょう. しかしむやみやたらに苦行にするのも違います. その辺をよりよくバックアップするための処方箋として, まずは自分がほしいアプリ開発も優先順位をあげて対応しています.
そしてよく言われる一番よい勉強法は「人に教える」です. 大学でのゼミ形式です. 教えるために勉強するのもありますが, 教えていると頭の使い方が変わって, それまでに思いつかなかった説明の仕方をひらめくことがあります. 私もフロントエンドまわりのプログラミングに関して, 自分の中の圧力を上げるため, 勉強会の講師役をやる前提で知人が運営しているコミュニティに参加させてもらうことにしました.
もちろんここまでの圧をかけるのは大変なので安易にお勧めはしません. ただ特に計算力涵養に対していろいろなテーマの短期集中講座で対応していく予定です. 使える人はぜひ使ってください.
メタバースとオンライン教育の食い合わせ¶
最近各方面と話してて思うけど、メタバースとオンライン教育の食い合わせは完璧に近いのに、環境を整えるコストがボトルネックすぎて双方向授業やワークショップの活用事例があまりにも少ないのが悲しすぎる 既に現場にいる人が活用事例を創出しまくってオイデオイデするしか勝ち筋がない
子供たちはMMOの延長として捉えて導入がスムーズなのに対して、大人は自分たちが知らない別の世界へ連れていかれるようなモノというイメージを持ってるケースがあって…リケジョ教育もそうですが、先に伝達すべきは親御さんや先生ですね
Vtuberをやっている人と少し仲良くなったので, その人の活動を横目にしながら, 私も何かしらやろうと思っています. Vtuberを動かしつつ3Dの数学・物理系アニメーションコンテンツを作っている人もいるようですし, そういう方向性でもいろいろ遊びたいと思っています.
データ同化と作用素環¶
時間がなくてプレプリントは読めていませんがとりあえずシェア. 情報系, 割と滅茶苦茶な数学が出てくるようで時々驚きます. こういうのを見ていると関数解析をやっていてよかったと思うときもあります.
『インド数学研究』¶
『インド数学研究』オンデマンド版ということでペーパーバックだと思っていたのですが眩しいくらいに立派な装丁の本でした.光ってます😂 先週末時間をとって取組んだのですが思った以上に難しいですね.インド数学特有の表現法に慣れないといけません.数学ってもの凄く地域的で文化的なのだと再認識.
この小学校の円の求積の説明でみかけるこの図.ギリシャ数学ではまず見かけないのですが,どうやらインド数学の図版にはあるらしいのです.こういったアイディアの(現存する)初出に触れられるのも古い科学文献を読む楽しみです.
この小学校の円の求積の説明でみかけるこの図.ギリシャ数学ではまず見かけないのですが,どうやらインド数学の図版にはあるらしいのです.こういったアイディアの(現存する)初出に触れられるのも古い科学文献を読む楽しみです. pic.twitter.com/ltgYmQa60J
— 古代ギリシャのヘルメスさん (@kodaigirisyano) July 22, 2022
私もこの図はよく使います. インド起源らしいと知ってちょっとびっくりしました.
「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」¶
「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」にDST Triangleというのが出てきて、Distance, Speed, Timeとあって、悪評高いはじき、くもわの図は日本だけじゃなかったんかーい、ってなってる。
「はじき」系の話もありますが, 理工系向けの語学コンテンツの方向性もいろいろ考えているので, その参考にもなるだろうと思いメモ+シェア.
Stack projectのPDF¶
オリジナルのStacks projectのページで全体のpdf版もダウンロードできて,現在7,500頁超の模様.↓pdf直リンク注意: https://stacks.math.columbia.edu/download/book.pdf
このレベルの内容の7500ページのコンテンツ, 読むのにどれくらい時間がかかるでしょうか. 何はともあれ面白いことがいろいろ書いてあるのは間違いないので, 改めてシェアします.
私が作っている現代数学探険隊のPDFは議論を詳しくするため, 何よりも自分があとで読んですぐわかるように, なるべく詳しく定理・定義・式の参照を張るようにしていて, 参照が6000近くあります. ページ自体10000ページを越えているので, 私のマシンだとコンパイルに30分かかります.
古典場と量子系の共存¶
勉強になる。古典場と量子系を共存させるのは(重力でなくても)難しい https://twitter.com/yujitach/status/1549913475425906688
曲がった時空上の場の量子論?
その例えで行くと、曲がった時空上の量子力学でも、波動関数から重力場をきちんと決めましょうね、という話 (元々は重力だけ量子化されないとするとどうなのか、みたいな話だった)
古典重力の部分と重力以外の量子論の部分が相互作用する、みたいな系ですかね。 それならば、半古典近似という呪文を使わず、全体として整合的な定式化を構築せよ、というのが本質かと(見たことないけど)。
そのとおりですね
時間がなくてオリジナルのツリーまで記録できていないものの, 専門家のこういう話を見るのは楽しいですね.
『進化思考』における間違った進化理解の解説¶
『進化思考』における間違った進化理解の解説 ここで批判の対象になっている本の内容、 進化という言葉を使ってなにかいいこと言ってやろうという人間がやる間違いのカタログみたいになっているようだ。 ある意味で勉強に良い
生物, 高校レベルですら覚束ず, 勉強しようと思って幾星霜です.
居眠りを苛立たしく思わない方法¶
大学で教え始めた頃は、この私といえども居眠りしている学生に腹が立っていたものである。しかしニュートンの学生時代について少し調べた中で、おそらく彼も居眠りしてケンブリッジで居眠りしていただろうという想像がついたので、以来全く腹が立たなくなった。なぜならその居眠りしている学生は(1/n) きっと夜中に微積分学及び力学を構築していたに違いないからである。私はこの話が好きなので、講義の中だるみの時期、「居眠りは全く問題がない。きっと21世紀の微積分学か力学を構築しているのだろうから」と口走ると、教室は緊迫する。もちろん学問でなくても良いから、若きニュートンのように(2/n) 大いに熱中したまえ、それで居眠りをするのは偉大なことである、とフォローするのだが、Z世代の諸君はこれを甚大なる圧力のように感じるようである。私は本心で言っているし、大学人は皆そう考えるべきだと思う。一体あなたは誰がニュートンなのかわかると思っているのか?と。私は自信がない。(3/n) 講義で居眠りする学生がいたらそれはニュートンかもしれないと思うべきだ。図書館に入り浸る変な人間がいたらそれはマルクスかもしれないと思うべきだ。謎にふざけあうおっさん二人組がいたら寒山拾得かもと思うべきだし、七歳の女の子が衆生を救う教えを説くことも当然ある。そういう意味で私は(4/n) 「信仰」を持っていると言っても良いだろう(カルトは無論断罪するが)。決して「立証」されえないことを信じるのが宗教であるならば、それは確かに宗教かもしれない:あなたは私やあなた自身が思うよりもさらにすごいかもしれない、と私は信じる。しかしそれこそが教育の要諦ではないか。(5/n,n=5)
はっきりとは名乗っていませんが, ツイートを追っていると自著を紹介したりしているので, この人が誰だかはわかります. 面白い人なのでTwitterをやっている人はツイート追いかけるといいでしょう.
Coqで書き直したPrincipia Mathematica¶
最近改めて定理証明系にも興味が出てきたので, とりあえずメモしておきます.
単語と世界史¶
単語の語源を調べると、そこに世界史が見えてきます。 例えば英語にvandalize「破壊する」という動詞がありますが、これは455年にローマを略奪したヴァンダル族(ラテン語でVandali)の名前が語源です。 また、スペインの「アンダルシア地方」の名前の元もこのヴァンダル族です。
このあたり「理系の語学」でやりたい話でもあります. 一つ一つ丁寧に彫り込んでいくと多言語・多文化に共通の要素が見えてくる, みたいな話はまさに数学や物理でもよく出てくる面白い話で, 言語学者も言語の中で同じことを面白がっています.
特に音に関して物理で決まる言語現象がいくつかあります. 人間の口の形や音の出し方で決まることは当然言語や文化を越えます. こういう話をするべく「理工系の総合語学」という標語のもと, 日々地道に勉強を進めています. アプリを作ってロシア語などの英語以外の言語を勉強している理由もこれです.
今週の問題¶
行列リー群・リー環入門の佳境に入りつつあります. 位相と代数の絡みという関数解析でも重要なテーマを改めて眺めていて, 群・多様体の世界で何がどうなるかを見ています. 関数解析ではあまり表に出てこない連結性まわりの話が面白いです. 例えば次のような定理の言明・証明をまとめました.
- 行列リー群$G$に対して, 単位元の弧状連結成分は$G$の正規部分群である.
弧状連結成分は単なる部分集合でしかなく, 位相的特徴こそ持っていても代数的な制約は何もありません. しかし実際には正規部分群という極めて強い代数的制約が課されます.
関数解析, 特に作用素環, フォン・ノイマン環では, ある$C^$-環$\mathcal{M}$がフォン・ノイマン環である必要十分条件として, 「$\mathcal{M}$があるバナッハ空間の双対空間である」があります. 今では境の定理と呼ばれている基本定理で, 双対空間という代数的な性質が$C^$-環の位相に効いてくる事情を見せてくれます. 実際, フォン・ノイマンはリー群, 特に行列リー群の基礎づけに深く関わった人物でもあり, 作用素環版の議論にもその影響が色濃く残っています.
幾何・代数だけではなく解析学への影響もある言明なので, ぜひいろいろ調べて遊び倒してみてください.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-16¶
数学・物理 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 教育需要の話
- 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」
- 数学と計算
- 良書メモ: 調和積分論
- 良書メモ: 総合的研究 論理学で学ぶ数学
- Mathematics for Machine Learning
- 方程式を解く
- 若い女性がいい匂いがする理由
- Grafferお悩みハンドブック
- リーマン多様体上での最適化pymanopt
- 数学リテラシー
- 本格的な数学×プログラミングがやりたい
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先週もメルマガを書こうと思っていたのですが, 安倍元首相のニュースが衝撃で二日くらいほとんど何も手につきませんでした. 今の日本で総理経験者という重鎮があんなにあっさり亡くなってしまうのかと. 歳を重ねたせいもあるのかもしれません.
それはそれとして, 仕事用のプログラミング学習で, 落ち着いてはいませんが緊急事態は脱したので少しずつ数学モードに戻しています. プログラミングはプログラミングで楽しく, そして今回のプログラミングは仕事にも直結していてやや焦りがあったのも関係しているものの, やはり数学をやっているときの心の癒され具合が大きく違います.
しばらく止まっていたリー群・リー環学習も再開して, それも佳境に近づいて来ました. これが終わったら対称空間あたりをやろうと思っていましたが, 純粋な数学方面ではトポロジーに舵を切る予定です. これも何度か挫折を続けているので, 今回はわからなくても一周やり切るのを重視して進めます.
物理だと堀田量子的な量子力学の復習+コンテンツブラッシュアップ, 熱力学の復習+コンテンツ制作, 電磁気の数学・線型代数コンテンツ制作, 特殊相対性理論の復習+コンテンツ制作, そして統計力学の復習として原・田崎の『相転移と臨界現象の数理』あたりが念頭にあって, 何をどこからやろうかとぜいたくな悩みを展開中です. とりあえず次回の短期集中講座は量子力学に決めたので, それと合わせてウルトラショートコンテンツとして電磁気も整備したいとは思っています. やりたいことが多くて時間がいくらあっても足りません.
教育需要の話¶
「学部2,3年レベルの専門科目の勉強をやりたい」って思っているやつ、多分高校の授業から始めたほうがよく、社会人の学び直しにおいてここをサポートしている組織どこにあるんだ?って思う。
文系プログラマー勢のための数学みたいなところ, まさにここなのだろうと思っています. 以前出したプログラミング用コンテンツもありますし, これをもとにした短期集中講座もやった方がいいのかもしれません. やってほしいという方いたら連絡ください.
次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」¶
この間, 久し振りに量子力学に関するアンケート回答が来ました. 特に以前いくつか書いていた堀田量子に関する話です.
最近はどうしても量子情報的な視点が重要なようです. そしてその量子情報的な議論では行列レベルではあるものの, テンソル積が本質的な点でおそらく相当高いハードルがあると見ています. そもそもとして教養の線型代数自体, 私が期待している水準も相当高いと思うので, それも認識を合わせたいと常々思っていました.
そこで量子情報系の議論に耐えられる基礎体力を作ろう, そして線型代数用の計算力も磨いてもらう趣旨で, 次の短期集中講座を作ります.
テンソル積を除いて知識としては完全に教養の線型代数ですが, これを数学科水準の認識に持っていくのが一つの狙いです. 例えば対角化とスペクトル分解は同値な概念であり, 私のお気に入りの齋藤正彦『線型代数入門』にはスペクトル分解の記述もありますが, あまり認知・理解は高くないと見ています. こうした認識のギャップを埋めるのが目的の一つです.
あともう一つは線型代数の計算力向上です. 力学とその計算から攻めようとする中で, 特殊相対性理論のコンテンツも検討しています. 物理としては物理の意味でのテンソル計算が一つの山場である一方, 線型代数に関わる計算がやはり本質的な要素を占めます. 量子情報系の線型代数の計算とは必ずしも重ならないものの, 鍛えた計算力自体は当然相対性理論でも役に立ちます.
前も書いたと思いますが, いい本もたくさん出ていますし独学できる方はそれで構いません. ただ, いまの短期集中講座での質問を見ていると, 非専門の人にはやはり物理学科的常識が身についていないために物理学科民からすれば当然なことでもいちいちつまづくようですし, 物理卒でも長い間触れていないために計算力が落ちていて自力でカバーしきれないことなど, いくつものハマりポイントがあります. このあたりに困難を抱えているなら, ぜひ短期集中講座を活用してください. 正式な案内を二週間程度で出せるよう調整中です.
ちなみに「非専門の身からすると地獄のようにつらい」事案, この一月くらいで私も改めて嫌というほど体験しました. 最近の近況でも書いている通り, もちろんプログラミングの話です. 本職は一応プログラマーなわけでプログラミング自体は最低限こなせます. しかし慣れない言語・ツールを使うとそれだけで一気に非専門の素人ワールドに落ちます. 実際, わかってみれば一行レベルの課題を2-3個解決するためだけに休日含めて二週間まるまる潰しました. 「少しのことにも, 先達はあらまほしき事なり」は心のからの叫びです.
数学と計算¶
「ワーキング・メモリ」みたいな脳科学用語を使うとトンデモ臭くなると思うものの、大学の抽象数学を理解する上で処理能力はかなり重要だと思っている。 ただ、大学の抽象数学で求められる「処理能力」とは、述語論理で書かれた文章をスラスラ読む能力である。 これは高校数学までの計算能力とは違うものなので、「高校数学や受験数学と違って大学の数学では“暗記や計算でない本物の理解”が求められる」的な言説が発生するわけであるが、単に求められる処理能力が異なるだけの問題をこういう風に捉えるのは極めて有害である。 処理能力の問題だということが分かれば、それを「計算問題」の反復練習で鍛えれば良い。 しかし、どういう「計算問題」が好ましいかは残念ながらあまり蓄積がなく、これから我々が考えないといけない問題だと思う。
このツイートをしている森の未知さんは実際にプロの数学者です. 教育に関して本当にいいことをよく言っているので, ぜひ直接Twitterの発言もフォローしてください.
ここ最近の計算押しの決めた理由の一つは森の未知さんの発言を見ているからでもあります. あまり数学科の数学向けの計算もそのうち何かやりたいとは思いますが, まずは物理のための計算を重点的に進めようと思っています.
良書メモ: 調和積分論t¶
調和積分論をどうやって倒すか。一番簡単なのはWarnerの教科書を読むことだと思いマスが、ストーリーを一番はっきりと把握できるのは中島先生の講義の記録を読むことだと思いマス。 https://member.ipmu.jp/hiraku.nakajima/Lecture/04_Bibunkika.html Gilbarg-Trudingerを片手にこれを読めば、自力で証明を完成させることができると思います。
これはメモ+シェアです. 調和積分論は一度多様体上のソボレフ空間論のレベルでざっとノートを書いたものの, 見直していないので多分タイポなどボロボロです. 実際ノーテーションもかなりハードです.
調和積分論は楕円型, 特に多様体上のラプラシアンが主戦場で, リーマン幾何をうまく使って多様体の位相の情報を刈り取る議論です. もちろんリーマン面でも大事な議論です. 私が微分方程式畑ではないからという理由もあるかもしれませんが, 解析の人間からしても全くもって簡単ではありません. そしてGilbarg-Trudingerもそう簡単な本ではありません.
実は熱方程式の時間無限大極限として楕円型の解を考える議論もあります. 別に簡単になっているわけでもありませんが, 熱核の方法として有力なアプローチで指数定理にも応用されます. 解析的にも面白い部分がたくさんあって私としてももっと詰めたい分野です.
ちなみにWarnerの本は本格的なソボレフ空間論こそ避けているものの, トーラス上のフーリエ解析からコンパクト多様体上のソボレフ空間論をうまく処理していて, 解析的な予備知識をぎりぎりまで削って調和積分論をきちんと証明しています. 調和積分論の結果自体は非常に重要なのでいろいろな使われる一方, 証明は「Warnerやde Rham参照」として省略されがちです. その省略されがちな証明が初等的な範囲で書かれている貴重な本です.
良書メモ: 総合的研究 論理学で学ぶ数学¶
「男子:数学の点がいつも俺より良いなんて、かわいくないぞ.」(『総合的研究 論理学で学ぶ数学』https://obunsha.co.jp/product/detail/037704 12ページ) 数学の成績が良いとかわいくないとの価値観を、学習参考書で冗談でも披露しないでほしい。本筋でないところで良書の価値を毀損させてほしくありません。
こうした細かい難点はあるものの, 鴨浩靖さんが良書と認める本なのでメモ+シェアします.
Mathematics for Machine Learning¶
「Mathematics for Machine Learning」は、微積・線型代数・統計など、機械学習に必要な数学をまとめて学べるテキストです。Amazonで5000円以上するのですが、なんとPDF版は無料で公開されてます。AIを勉強したいけど、数学に自信がない方には超おすすめです! https://mml-book.github.io/book/mml-book.pdf
実際, 機械学習勢はどこまで数学必要なのでしょうか? 大半の人はライブラリ使えばそれで十分と思っていたのですが, そうでもない? ずっと疑問です.
方程式を解く¶
\begin{align} \begin{cases} x^6 - x^5 + x^3 + 2x^2 - x - 2 &=0, \ x^6 - x^5 + 2x^2 -2 &=0. \end{cases} \end{align}
一次とは限らない連立方程式を解かせる問題だけど、必要条件を絞る操作と同値変形の区別がついているかを問う上で格好の題材なので大学で数学科の一年生にやらせるネタとしてはかなり良いと思う。 教えていて思うけど、方程式をいじる時に必要条件を絞っている操作なのか同値変形なのかを意識できない学生は学部三年生ですらめっちゃ多いぞ。 数学が専門の学生については一年生のうちにガツンとやった方が良い気がしている。 それなりの大学の理系であれば必要条件と必要十分条件の区別は普通にできて、いかにも「論証問題」っぽい問題はできたりするのだが、それでも「方程式を解く」という操作が何なのかは分かってない感があるんだよな。 例えばこういう連立方程式は「方程式を解く」がどういうことか分かる人にとっては易しいけど、「方程式を解く」ことを決められたアルゴリズムに従うことだと思っている人には難しいのではなかろうか。 (xの方の潰れた数字は6です)
xの方→xの肩
眠れない深夜にこういう話を延々としているのは、学生が微分方程式を理解できてない根本的な原因が微分方程式以前に「方程式を解く」を分かってないにあるように最近思ったからですね。 更に易しい問題としてこういうのもあるが、これが分からない学生は(それなりの大学の数学専攻でも)結構いると思う。
式も書いておきました. この方程式, きちんと解ける方どのくらいいるでしょうか. 解けなくて解法が知りたいという方いたらアンケートで何か書いておいてください. 要望があって時間的余裕があれば次回解説します.
若い女性がいい匂いがする理由¶
この匂いを突き止めたロート製薬は確かにすごいのだが、回答している三味線奏者だという萩原さんは何者なんだ。
萩原 遼さんによる「一般的に若い女性が良い匂いがするというのは何故ですか?」への回答 https://jp.quora.com/ippan-teki-ni-wakai-josei-ga-yoi-nioi-ga-suru-toiu-no-ha-naze-desu-ka/answers/199981164?ch=15&oid=199981164&share=1c5ce8f5&target_type=answer
詳しくデータを確認し, 吟味したわけではないので単なる感想ですが, 「いい匂い」や「乳臭さ」が本当に「いい匂い」かつ「乳臭い」だという話だそうです. いい匂いはともかく「乳臭い」が本当に「乳臭い」というのはちょっとびっくりです.
Grafferお悩みハンドブック¶
“世の中には困ってる人を助ける制度がたくさんあるのに何が使えるかを教えてくれないっていう理不尽仕様なんだが、そんな世界をなんとかしようとしてる人たちがいて、そのためのWebページがこの前リリースされたってことを僕はフォロワーさんに知っておいて欲しいと思った…” https://togetter.com/li/1911629
【拡散希望】 製作者が病んでる間に #お悩みハンドブック がまた少しバズっていた(感謝🙏)ので、関連情報まとめます🍀 お役立ていただけた声や反響👉 https://determined-structure-45e.notion.site/f2dd423c29784b3c856644337f6dbda1 公式サイト【20万ユーザー突破】👉 https://compass.graffer.jp/handbook/landi
これも単純にシェアです. いまのご時世の問題もありますし, あなた自身はいいにしても, 知り合いに本当に困っている人がいる可能性はいくらでもあります. そうした方にもぜひ伝えてください.
リーマン多様体上での最適化pymanopt¶
リーマン多様体上での最適化を行う pymanopt というフレームワークがあるんですけど,自分がここ最近実装していた問題を解かせたら爆速で解いちゃうし,コードの記述が分かりやすくてその意味でも勉強になりました. この辺の疑問についても実装例が提示されていて為になった.
最適化計算で途中のログを吐き出す良いプラクティスが分からないぽよ…。
ここ三ヶ月くらい統計学の勉強会で統計学を直接やらずにJuliaの統計計算パッケージのソースコードを読む会をやっています. これが思っていた以上に面白く, しかもいくつか問題を見つけたのでGitHubにissueを挙げたら速攻解決してもらえている点でも楽しいです.
これを使うというよりも眺めて楽しそう系プログラムとしてメモ+シェアです. 文系プログラマー勢にはこういうライブラリを読む系の勉強会もいいのかもしれません.
数学リテラシー¶
微積分学の講義で知らない文字は「集合30講」にのってたのね.(^^;; つまり微積分以前で,高校では教えない... まずは「数学リテラシー」みたいな講義が必要なのかも知れないな.
力学に関する短期集中講座で物理リテラシー・力学リテラシー問題に直面しましたし, 私自身も専門外の勉強をするときに常にリテラシー問題に直面します. 上でも書いたようにプログラミングでは現在進行形で完膚なきまでにやられていますし, リー群・リー環のような数学でもまだまだ常識が身についていません.
本格的な数学×プログラミングがやりたい¶
上でも少しコメントしたようにJuliaの勉強会が楽しいです. Juliaの多重ディスパッチの使い方を見て「こう使うのか」という発見がありますし, マクロや生成関数などのメタプログラミングコード, 抽象型で書かれたライブラリコードの読解なども見応えがあります.
ただいわゆる数値計算よりもどちらかと言えば数式処理の方が興味があるので, maxima (common lisp)を読む勉強会などもやりたい野望があります. 他には以前紹介したGeometry for programmers読む勉強会もよさそうです.
最近ちょくちょく低次元でのリー群・リー環の議論で, 計算があまりに大変なので本質的な部分にsympyの補助を借りて計算する機会が何度かありました. 行列の計算は二次元でも面倒で三次元で既に破滅的です. 特に計算ミスが多発しますし何度もやりたくありません. やりたいことだけはどんどん増えていくので大変です.
今週の問題¶
今週は行列に対する指数写像・対数写像の議論をやっていました.
- リー群の単位元近傍で指数写像と対数写像は互いに逆写像で, 特に同相である.
いくつか非可換性にまつわる実数・複素数の指数写像との違いを埋める部分の議論があり, ここをうまく処理する部分が実はかなり頭を使います. 「できるだろう」で終わらせていてまだ完全に細部の計算を詰め切っていない部分があります. そしてこの事実から山のように面白い話が出てくるのもいいところです. ようやく行列リー群の山場に指しかかって楽しくなってきました. 位相が出てくるとなると当然本格的な多様体論も射程に入ってきます.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-02¶
数学・物理 幾何の本, そして幾何入門とは/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- サーストンの本, Geometry and topology of three-manifolds
- 幾何の本とその入門とは何か
- Maxwell方程式の表現論
- 証明の構成のポイントと苦しみ
- 何度目かの量子力学と関数解析
- 齋藤正彦『線型代数入門』を読むポイント
- ムペンバ効果
- 長さ2cmの細菌発見
- スマートニュース, 国会議案データベースを無償公開, 過去20年分をGithubで
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
今週はほぼ数学なしで, それこそ朝から夜寝るまでプログラミングの勉強をしていました. 研修期間の終わりも近付いてきて, 本格的に現場復帰を意識した勉強が必要で, そのためにしようと思っていた準備が終わりそうにないからです. 何にせよ朝起きて夜寝るまで食事や風呂以外の時間, 本当に全てプログラミングに当てていてよくやるものだと自分でも驚いています. 何だかんだでプログラミングが本当に気に入っているのでしょう.
ただしプログラミングへの集中もさすがに行き過ぎで, 最近ほとんどまともに語学に時間を使えていません. 数学や物理の時間さえ削っているのでそれはそうです. やはり無理やり時間を作るために勉強会です. 理工系向けの語学, 文系のための数学・物理入門としての語学に向けて改めて始動しようかと思っています.
それはそれとしてプログラミングです. 逃げ方もあると言えばあるものの, 仕事利用と思うと世に出ている情報量を気にしなければいけません. 基本的にフロントエンドはJavaScriptだろうと思うので, それならもういっそバックエンドもJavaScriptにしようと思い, これに関して調査しつつ勉強しているのですがとにかく面倒です. 情報がすぐ腐る. 数学のように一度正しくなったら前提が変わらない限り正しくあってほしいものの, この前提が本当に変わるのがプログラミング言語なのでただただつらいです. 終日プログラミングに張りついている理由でもあります. サービス・コンテンツ制作にも直結しますし, いい機会だと思ってがんばります.
サーストンの本, Geometry and topology of three-manifolds¶
ラミネーション知らなかった. Laminations, as introduced by Thurston, are a key tool in low-dimensional geometry, topology and dynamics; see e.g. [27], Chapter 8.5. [27] はサーストンのノート.っていうか,本か.
サーストンの本,MSRI で公開されてる. http://library.msri.org/books/gt3m/
この話と関係があるわけでもないのですが, サーストンは超直観型の数学者だったそうです. それもフィールズ賞受賞者なので, 見えている世界の深さと広さが尋常ではなく, 数学者相手にさえ自分の幾何が伝わらないのに業を煮やし, CGの研究にも手を出していたと聞いたことがあります.
これはそのまま私がプログラミングをがんばっている理由にもつながります. やはり視覚的なところは面白いです. CSSもうまくできず怒り狂いながらやっていますが, 綺麗にできると気分がいいのもそれはそうです. いつまで続くのかわかりませんが, Web系は比較的若者もマネタイズしやすい分野で, 中高生向けの理工系教育としても面白いのではないか感があり, いろいろ考えています.
幾何の本とその入門とは何か¶
https://amazon.co.jp/dp/4130629255 「数学の隣接分野の宇宙科学とか経営工学とかへの応用例などは1文字もありません」数学の本だからそれはそうでは、というのと「数学の先生が例えばベクトル空間などと言うとき、(中略)あまり複雑でない曲面が頭にあるはず」曲面が思い浮かぶ人、いなくない? そもそも宇宙科学や経営工学は数学に隣接しているか? 幾何の本なら図が欲しいとかいう発想、改めて言われると言葉に詰まる。しかも2-3ページには一枚とか。こんなにもコミュニケーションできないものかと驚くといえば驚くし、当然と言えば当然かとも思う。トポロジーが役に立たない数学科だけのものだったらこうはならなかったろうに、社会は厳しい。
学生の頃に友人と「幾何とは何か?」で雑談して、結局「位相が入ったら幾何だ」というところに着陸した覚えがある。
どこまで本気だったのかはわかりませんが、数論幾何専攻の人に「位相は甘え」と言われたことがあります。何が幾何かは時代の関数の部分もあり「数学者が幾何と判定したらそれは幾何」としか言いようないのではないでしょうか。アブストラクトナンセンスレベルの圏論であっても人によっては幾何でしょう
学生が教員免許(数学)を取れるようにサポートしようと既存の科目に「代数、解析、幾何、……」のラベルを貼ったことがあったんですけど、グラフアルゴリズムの科目が幾何になっていて、さすがにちょっと……って気持ちになりました。
最初の引用ツイートは「トポロジーの基礎」のAmazon書評です. もはや「幾何の本に図がほしい」と言われても「幾何はそういうものではないので」と自然に口をついて出るようになってしまっています. いいかどうかは微妙なところですが, 現代的な統計学, いわゆるビッグデータ解析では本当にどう可視化するか自体が超がつくほど巨大なテーマです. 「図がほしい」という視点から言えば, これも広い意味では幾何の仕事でしょう. 現代的な統計学ではプログラミングも必須でしょうから, 私の目指すところとも無関係ではありません.
それはそれとして世間での幾何のイメージ, どんなものなのでしょうか? そういえば買うだけ買ったもののいまだに読めていない数学ガール ポアンカレ予想, これも三次元球面でこれ自体は目に見えない対象です. これで何をどう扱っているか, いい加減確認しないといけないと思って幾星霜.
Maxwell方程式の表現論¶
Maxwell方程式の表現論(0) - https://m-a-o.hatenablog.com/entry/20150125/p2 日本語の文章です。ものすごく詳しくて目からウロコですね!こんな研究があったとは…… URL
Maxwellそのものではありませんが、 QEDまたはローレンツ群・ポアンカレ群の表現と作用素環は比較的最近でもまだあるようです。 単に検索で出てきただけですがhttps://art.torvergata.it/retrieve/handle/2108/117066/236199/QED-RMP.pdfだとか。 粒子描像と表現に付随する無限小生成子のスペクトル解析のようなテーマもあります。 Hans-Jürgen Borchers, Translation Group and Particle Representations in Quantum Field Theory
私のツイートで紹介したBorchersの本, 学生時代に読もうと思って難しすぎて読めなかった本です. 学生時代よりも明らかに不等式処理能力が落ちているであろう現在, 昔以上に読めないだろうと思いますが, ずっと興味があります.
ちなみにBorchersに聞いてみたいことがあったものの, 気付いたときにはもう亡くなっていて呆然とした記憶があります. 思い立ったが吉日は本当だったといまも後悔しています.
証明の構成のポイントと苦しみ¶
めっちゃ汎用性ある数学の考え方。 「当たり前」だと思うことを証明するときに、「なぜ当たり前だと思うか」を数学的に表現すれば証明ができる。 もし証明ができないなら、実はもっと面白くて、その「当たり前」に数学的に難しいものが潜んでいることが分かる。
数学書にある「自明」で苦しむポイントとも言えます. そもそも「当たり前」と思えていないから苦しい事案で, 私もいろいろな意味で現在進行形で苦しんでいます. 数学であってもよく知らない・勉強したことがない分野では非数学科の人と苦しむポイントは大きく変わらないでしょう. 今で言うならプログラミングで腸が煮えくり返っています.
何度目かの量子力学と関数解析¶
私はむしろこれが本当に面白くなったので, やるならぜひどんどんやってほしい勢です. ただ興味関心が物理にあるならやめた方がいいです. 先日もTwitterで物理の学生が数学的にきちんとやるには面倒, そして物理として気にする理由はないところで, 無駄に数学的な記述を追い求めていたのを目にしたばかりだったので, ふと流れてきたツイートに改めて反応して呟いた記録です.
量子力学をやるのに関数解析をやったら何も始まらずに終わってしまうから、本当にやめた方がいい。数学をやりたいならどんどんやればいい。学部三年レベルの物理に対応する議論が軒並み研究ネタになる。 もしイメージがつかないなら、有名なクレイ研究所のミレニアム問題でナビエ-ストークスの解の存在と一意性が問題なのを考えてほしい。学部三年次程度の流体力学の入り口が既に数学的な大難問になっている。程度の差こそあれ、数学的にきちんとやろうとするとこのくらいのレベルからわかっていない。 平衡統計力学だとまず平衡状態の存在が明らかではない。相転移があるので状況に応じて本当に一意性がない場合はよくある。物性だと磁性に関する有限次元の線型代数に関わるハバード模型で既に論文・研究マターなので有限次元の線型代数だけで数学以前に物理でさえ研究マターになる。無限次元だと 他の余計な要素が入ってきてさらに面倒。そういえば学部三年レベルの統計力学は量子力学に輪をかけて地獄なのだが、統計力学の数学の話をする人間を全然見かけない。アレは修羅の世界だからぜひもっと人が増えてほしい。物性のトポロジカル何たらなどの格好いい方ではない部分にはきちんと地獄がある。 昔Amazonの斉藤正彦「線型代数入門」に関係するレビューを書いたのだが、見当たらない。あの本は行列の解析学の話が書いてあり、指数関数なども載っているのでそのくらいまで把握できて使い倒せれば十分だ。
「量子力学の前に関数解析の本を一冊くらい読む必要がある」みたいな杓子定規な解釈をする人間がマジで存在してしまうのが問題で「量子力学を普通にやるときは並行して関数解析の初歩的な知見をつまみ食いするのがほぼ必須」くらいに言っておけば平和に済みそう(他の分野にも当てはまる)
これも言い方が難しいのですが、何というか「教養レベルの線型代数を数学科水準で勉強しておけば十分」というのをうまく言う方法はないかと思っています。量子情報の本を読んでいるとまさにこう言う感じなので。例えば対角化をスペクトル分解のレベルで認識するとかそう言う感じです。
物事をジャンル(この場合には分野)に分けて認識しようとするとどうしても機微を取りこぼす面があるのは避けがたいですね。僕は「グダグダ言ってないで量子力学をやってから考えろ」でいいと思います
私は「数学をやりたいなら数学科に行け」の線を押して行きましょう。
そうそう、私が関数解析の「思想は大事」で言いたかったのはそういうことです。そう言えばよかったのかも。
次の三ヶ月短期集中講座は「量子情報のための線型代数」みたいな感じにしようかと思っています. 自分用の計算メモの体で整備したコンテンツでもあり, ちょっと数学的な水準が高く見えてしまうかもしれません. 上で書いたような「対角化をスペクトル分解のレベルで徹底する」みたいなスタンスを貫いています.
齋藤正彦『線型代数入門』を読むポイント¶
前節の続きです. では実際にどんな本でどう勉強すればいいか, 何をどう読めばいいかという話があり, それをまとめたTogetterがあります.
知識としてはこのレベルで十分です. あとはとにかく使い倒すのが大事で, 最近見たところではNielsen-Chuangと量子情報科学入門がなかなかよさそうです. 正直, 量子情報よりの話はまだ自分なりの面白さを見出せていません. 量子測定だと一気に興味が出てくるので, その辺で面白いコンテンツが整備できないかと勉強を進めていす.
ムペンバ効果¶
前も紹介した気がしますが, この間早川さんがツイートしていたのが流れてきたので共有します.
Which freezes faster: hot water or cold water? The simple question has stumped physicists, but recent experiments show how some types of hot substances could beat cold ones. @adamspacemann Controversy Continues Over Whether Hot Water Freezes Faster Than Cold
100度の水と35度の水、同時に冷凍庫に入れたら先に凍るのはどっち? 熱い方が先に凍るのを発見したのはタンザニアの高校生。ただし、どういう条件なら再現するのか、はっきりとわかっていない。 非平衡物理学は難問。1次相転移の系では、高温から始めたのほうが先に基底状態に落ちることも。
Mpemba効果は非平衡状態の記憶効果で不思議は何もない。 最近、コロイドの実験が出るなどして急速に研究が進んでいる。 我々の論文では粘性発熱の有無による緩和率の差を利用してMpemba効果を定量的に示した。
非平衡も興味はありますが手に追えません. 平衡状態関係の数学や平衡状態での相転移もまだまだ勉強が必要です. そう言えば改めて統計力学を勉強しようと思い, ずっと買いそびれていた原・田崎のイジング本, 相転移と臨界現象の数理を買いました. この本は東大の物理の人達と査読ゼミをやった思い出があります. 謝辞にも載せてもらっています.
田崎さんの統計力学の本と言えば, 比較的最近出た洋書も全然読めていません. いつか時間を取ってきちんと読みたいと思ってはいます.
長さ2cmの細菌発見¶
概念覆す長さ2cmの細菌発見→長さだけでなくその構造も非常に特殊だった「ミッシングリンクの実例の発見かも」 URL
きちんと読めていませんが, とりあえずメモ&シェア.
スマートニュース, 国会議案データベースを無償公開, 過去20年分をGithubで¶
国会で審議された法案や予算案、条約、決議案といった議案は、衆参両議院のWebサイトに掲載されている。提出者や審議された委員会、賛成・反対した政党(衆院のみ)などの情報も確認できるが、国会の回次ごと、また議案ごとにページが分かれているため、集計や検索、一覧が難しかった。 今回、同社の「メディア研究所」が、各議案のページに掲載されている情報を収集、整理し、CSVファイルとJSONファイル形式で公開。MITライセンスに準拠し、商用・非商用を問わずオープンデータとして誰でも無償で使えるようした。 主に報道機関や研究者に、選挙報道や調査報道、研究活動に役立ててもらいたいという。
勉強のためにも統計学や機械学習で遊びたいと思っていつつ, 自発的に遊ぶネタを思いつけていません. とりあえずデータは必要なので, 使えるテキストデータとしてきちんと記録しておきます.
今週の問題¶
今週はほぼ数学ができていませんが, 何もやらなないのもどうかと思って, 水曜あたりに少しだけやった分があります.
- シンプレクティックリー環の単純性を示せ.
念のため書いておくとここでの単純性の定義は「自明なイデアルしか存在しない」です. 次元が1のときは二次の特殊ユニタリリー環で, やはりこれも単純です.
特殊直交リー環が恐ろしく面倒だったので証明を追う前からうんざりしていたものの, シンプレクティックリー環は四元数係数の行列とみなせ, 四元数の事情を使うとかえって簡単になるのが面白いです. 議論自体はそれなりに長いのですが, 行列の計算がだいぶ楽です.
特殊直交リー環でも行列単位とその簡単な和から基底を作り, その基底に対する計算で証明を構成しています. この証明を眺めて, 色々な意味で人類は一般の行列の計算・処理ができるほど賢くはないようです. 具体的な低次の計算でも手計算ではうんざりしますし, そこをカバーできるプログラムだと今度は一般論の展開が地獄です. 基底への帰着, 基底を使いたくなる理由にはこんなのもあったかと今更ながらに実感しました.
証明を読み終えてからじわじわとその意義・世界が見えてきて, 個人的にかなり大きな発見だったようです.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-06-25¶
数学・物理 分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」
- 代数の難しさ
- 特殊関数と微分方程式
- IoTの難しさ
- 心肺蘇生
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
仕事関係の勉強が忙しいというか楽しいというか, そんな状況で数学は亀のような進捗です. もともとずっとやろうと思っていたフロントエンドまわりで, この仕事の蓄積をそのまま通信講座などにも援用する予定なので, 回り回って全て数学のためではあります.
今日も一日, 朝に一時間程度データ構造とアルゴリズム関係でAOJを眺め, その後はひたすらプログラミングです. 先程もいつの間にか通信講座の勉強会の開始時間を過ぎていて, 泡を食ってしまいました. どう控え目に言っても私のプログラミング能力は低いのですが, 一日中続けられるのだから性に合ってはいるのでしょう.
フロントエンドまわりはデザインをもっと固め打ちしようと思っていて, もっと実践的に取り組もうと思っています. 実際にフリーランスでやっているタイプの数少ない知人がいま再びクリエーションのチームを立ち上げようとしているらしく, そこに講師役で乗り込むくらいの感じでフロントエンド, 特にデザインコーディング回りで巻き込み・巻き込まれていこうかと画策しています.
ここ数年勉強会をいくつかやってみて思いましたが, 人を巻き込まないとなかなか動けません. もっと言うと少しはじめるくらいはできても, 続けられないことがはっきりしてきました. 結局, 私が問答無用で続けられるのは数学くらいしかないようです.
これはもう私の現実として受け入れざるを得ません. だからやりたいことは私の脳内で数学にしてしまうか, 人を巻き込むしかないようです.
これも何度か書いているように, 最近の通信講座に勉強会を盛り込んだ理由でもあります. 時間は無理やり作るしかありません.
そういえば本の書評をやってほしいというアンケート回答がありました. 本は何かしらずっと読んでいますが, ノートを取りながらじっくり読んでいるため亀の歩みで, 読んでいる冊数は極小です. 書評というより参考文献集ですが, 以前ある程度書いた分がここあるので, 興味があれば眺めてみてください. 日付を見ると2015年で, 最近の量子力学の物理まわりの話など大事な本に対する更新がありませんが, 一つの参考にはなるでしょう.
「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」¶
アカウントがはっきりと紐づけられているわけではありませんが, 自己紹介欄の本を見ると多分これの著者が中の人なのだろうと思います.
数学の対象は幾通りもの考え方やそこにたどり着く方法(証明方法)があって,そのどれかはすごく簡明かつ簡単で,他のものは辿り着くのも計算も不可能なくらい複雑,そういうものですからねー.どんなものでも当てはまりそうです.1/n
ある方法ではあっという間に片がついて,他の方法だと不可能そうに見える.その「ある方法」に気がつくのが数学の本質だ,そう思いますね.2/n
数学女子さんの挙げた曲率なんかもそう. おそらく講義では長さパラメータ s を取って... と決める.しかし,実際に s を計算して定義通りに曲率求めようとするとすぐに破綻する. 「うまい」局所座標を使って求めなくちゃ. これはいい演習問題になりますね.3/n
どんな局所座標を持ってくれば,どんな計算になるか. n 次元空間内の曲線のときはどうか. 面積も同じかな. 4/n
幾何学とは本来,そのような局所座標の取り方によらずに決まる「不変量」を研究対象としているので,まぁ幾何学的対象なら何でもOK. オイラー標数とか.穴の数で数えてもいいけど,積分してもよい.積分をどう計算するのか? 5/n
ホモロジーもマイヤーヴィートリスを使って計算するとき,どのように曲面や立体を分割するのかによって計算は変わってきて,商群の取り方が思いもかけないものになったりしますね.6/n
レンズ空間や結び目の補空間なんかをうまく工夫して分割し,自分で計算するととてもおもしろいと思います. 7/n
一方,そのような具体的な計算よりも,数学の本質は 「計算しなくても答えは出る」というところにある, それを忘れない方がよいと思います. 8/n
私の友人のM先生がテストで,2つの上半三角・下半三角行列 A, B をもってきて,まず積 AB, BA を計算させ,その行列式を問うたそうですが,AB, BA を基本変形する人たちが続出したそうです. 9/n
行列式の計算はそれなりに楽しいものですが,答えは計算しなくても分かる.そこがポイントだと思います. 10/n
前半は予備知識も必要なので人によって全くわからない内容もあるでしょう. 特に大事にしてほしいのは9・10で, このツイートが行列・行列式を知っているなら何を意図しているのかぜひ考えてみてください. 一般的な行列で書かれているので逆に意図が掴みやすくなっています. 具体的な行列で書かれていると, ツイートにあるようについつい具体的に計算してしまう人も出てくるでしょう. 議論の一般化・抽象化のご利益を感じられる問い掛けでもあります.
これの前提のツイートも収録しておきますが, そもそもとして私のリプライがもとにあります.
「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」みたいなのを公開してもらえると私のような雑魚市民が喜びます。例えばちょっと面倒な多様体の曲率の計算や、ある多様体に対して単体複体・胞体複体などいろいろな見方をした時のホモロジー群の計算だとか。
この辺の計算メモを作ろうと思ったのが例と計算編のもとで, いまの通信講座の元ネタになっています. じっくり整備を続けて例と計算編は1100ページを越え, 現代数学探険隊の全体PDFは10000ページを越えました. 引き続きじっくり計算を続けてためて, 通信講座を含めて何らかの形で公開する予定です.
前提ツイート¶
Quillen が毎日数学ノートを付けてて,それがすべて公開されているとは! 知らなかったよ. Quillen の直筆を見た.(^^;; タンナルミーハー
Did you know that Daniel Quillen (Fields medallist 1978) kept detailed notes of his day-to-day mathematical research? They are available here 👉🏼 http://www.claymath.org/publications/quillen-notebooks
数学も物理や生物なんかと同じく,実験ノートつけるべきだなぁ.データもつけてさ.もっとも毎日1行だけ, 『今日も頑張ったけど進まなかった』 とか書くことになりそうな気がするが... そうか,追試と同じく,読んだ論文のまとめとか書いといてもいいわけか.あとで役に立つかも.
代数の難しさ¶
代数は、すごく発展しているように見えて、 基本的なところでさえ難しい。 たとえば、
A = C[X1, ..., Xn]/(f) BはCの部分環
として「環準同型A→Bを取る」なんて簡単に言えるけど、 これf(X1, ..., Xn) = 0のBでの解を考えてるってことだからね。 超難しいよ。 具体的な問題がすごく難しいということを意識すると「じゃあ抽象的だけど上手く行っている理論はどういうメカニズムになっているのか」ということが、 気になり出すのではないですかね。
言われてみれば確かにそうですが, この辺がまだ自分でさっと思いつけないので, 私の代数力の低さを痛感しました.
ちなみにこの視点を徹底すると, 準同型と方程式の解の関係に注目が集まり, その極致の一つが代数解析です. これは堀田良之『加群十話---代数学入門』の最後の方に少し記述があります. この最後の部分に限らず, この本はめちゃくちゃに面白い本なので, ぜひ買って読んでみてください. おすすめです.
特殊関数と微分方程式¶
5億回くらい言ってるけど、特殊函数持ってきて「微分方程式が解けました!」って言うのあんまり好きじゃないんだよね。よくわからない部分を先送りにしただけ感があるので。 解の存在はわかって、一意性ももしかするとわかるかもしれなくて、でも具体的な形とかがわからないので、情報は幾分増えているのだけど、なんかなぁ、という感情がないでもない 数学的に十分というのはよくわかるんだけど、物理の視点だとなんかなぁという感情が特に増す。いや数値計算で十分なのかも。
三角関数も微分方程式の解だし、特殊関数も三角関数も性質がよく調べられている関数では?みたいに思ってくると物理な数学になってくる。三角関数の和で書けたからってそれもある意味先送り説という
いくつかの視点がぐちゃぐちゃになっている印象があります。まず(多分)昔の人は適当な意味で特殊関数をよく知っていて、よく知っている対象で書けたからそれなりによくわかる(解けた)と言えたはずで、それを今も踏襲しているギャップがあるのだろうという話。 あとは多重極展開のように高次が無視できるようなタイプの特殊関数表示は特殊関数のおかげで実際によくわかると言っていい状況がある点を完全に無視している点。これと共通点がある話として、今知られている特殊関数は背後に固有値問題や群の表現論の話があり、 特殊関数で解けることそのものに意味がある(何かしらの意味、特に対称性の意味で本当に数学または物理が見えている)点があります。対称性というと物理的に自明な場合もよくありますが、解析力学(と幾何の関係)から非自明な話もあります。これらを知らずに特殊関数で書ける点だけ見たらそれは確かに先送りですが、 それは教育・カリキュラム・現代の研究情勢からくる要請の問題でもあります。あと先送りの定義も今ひとつよくわかっていません。いまの各学科のカリキュラムでどのくらい特殊関数論が教えられているか知らないのですが、先送りどころかそもそも特殊関数論をまともにやらないなら、カリキュラムの観点からすれば先送りでさえありません。
他にも同じようなコメントをしている人を見かけました. 特殊関数はそれで書ける事実そのものに強い意味があるので, 計算にうんざりしてきたらその背後にある表現論を勉強するといいでしょう. 逆に抽象論でうんざりしてきたら, 馬鹿になったつもりでこれらの計算をやるといいです. 物理まわりで遊び倒せるネタが掃いて捨てるほどあります. 微分方程式とも関わるので数値計算で遊んでもいいでしょう.
IoTの難しさ¶
スマート農業、まさに「実験いらないでしょ?工学の進んだ技術でやれば、時代遅れの農業なんて現地で簡単にできるでしょ?」みたいな感じでやられてて、大量の討ち死に(ほぼ全滅)がでてる感じ。
田んぼの水量管理だけでも自動化してほしい、何なら稲の様子を観察できる屋外用ネットワークカメラ(10年耐久)もほしい。 ケーブルと電源の敷設は自分でやるから
私も一年半程度仕事でIoTをやっていたので多少の知見はあるのですが, ハードと連携する部分がとにかく大変です. 実証実験中に急に動かなくなったと思ったらハード側が壊れていた, そんなことがよくありました.
他にも例えば今よく話題にあがるドローン運用だと, 夏は暑すぎてモーターが消磁するレベルまで熱を持ってしまい, 運用に支障をきたしているとか. ふだんはゴリゴリの引きこもりなので, いろいろ出張して外回りしたのも含めて, 非常に勉強になった経験でした. 高温で消磁する, まさに相転移の実例にこんな形で再開するとは, という明後日の感動もありました.
心肺蘇生¶
あ、心肺蘇生について。 この論文の存在は知っておいた方がいい。非医療者の方も。救命にあたったのはこの事例では救急法指導員の肩書を持つ「一般の方」だが、それでも処置中のことがきっかけで心的外傷を負ってるんですよね。 https://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/08/cprtrauma.htm
もちろんこの発表時点から15年経過していて今ではもう少し救命処置も一般に広がってるかもしれないが、ただでさえ救助側の人間はこんな風に「プレッシャー」に押しつぶされそうになってるんですよ。しかも彼女は「指導員」ですらあるにもかかわらず。 これは医療者だけじゃなく一般の方も是非読んでみて、そして考えてみてほしい。そのうえで「AED装着の時に脱衣への配慮を」という言葉についてもう一度考えてみてほしい。 日本語で書いてあるから読みやすいからね。絶対読んでほしいです。
上記論文の要約の引用¶
1990年以降,国内外の航空機内にAEDが搭載され,客室乗務員らが救命する事例が相次いで報告されている。日本でも2001年10月に日本航空国際線にAEDが搭載されたことを契機に,航空機を含む公共の場所へのAED設置が普及している。そのような中,平成18年2月17日金曜日,成田発東南アジア行きの外資系航空機内にてツアー旅客(55歳,男性,会社員)が心肺停止に陥った。同機にたまたま乗り合わせていた日本赤十字救急法指導員を持つ個人客(31歳,女性,会社員)が1時間に渡り1人で心肺蘇生を行い救命した。心肺蘇生と並行して行われたドクターコールに応じる者はおらず,客室乗務員に繰り返し要請されたにも関わらず機内に搭載されていたAEDが心肺蘇生の現場に持ってこられることはなかった。また客室乗務員は心肺蘇生を手伝わなかった。加えて多数の他の乗客が野次馬と化して現場に殺到し,心肺蘇生の現場を写真やビデオで撮影した。当の男性は軽度の手指の運動障害を残したのみで,元の勤務先に復帰した。しかし救命した女性は心肺蘇生時の出来事が元で惨事ストレス症状を呈して急性ストレス障害,外傷後ストレス障害を発症し,帰国後も長期間に渡って社会生活に支障を来たす状態が続いた。惨事ストレスは大災害の被害者のみならず,被害者を救援する救援要員にも生じ,日常的な救援活動でも見られる。また,バイスタンダー(たまたま生命の危険に陥った人の側にいて救援する人)も同様の症状に見舞われることがある。本事例では幸運にも,結果的に帰国後の女性の周囲の対応が適切であったため,それが精神療法的な役割を果たし症状は徐々に軽減した。しかし本邦に於いてはバイスタンダーの心のケアを行う制度が構築されておらず,本例は図らずも制度的欠陥を露呈させた。従って早急に全国的組織を構築して,バイスタンダーの精神的問題をサポートすべきである。
関連する話題¶
この感覚は常識的には当然なんだけども、救急の現場としてはかなり深刻らしく、実際に心停止で倒れた女性は男性に比べて有意に被救命行動割合が低くなります。若い年代では尚更そう。 ソースは嫁さんの共著論文 https://www.resuscitationjournal.com/article/S0300-9572(20)30105-2/fulltext
データは日本のものだけど、欧米でもその傾向は強いらしい。たしかに男性としては倒れた女性の胸まわりに触れたり服を切ったりというのは大変抵抗を感じる。が、もし自分の妻や娘に万一のことが起きたとしても、女性であることが理由で救命活動をしてもらえない可能性が高いということでもある。 私としては、そういう社会よりも、女性でも倒れたら救命活動がなされるべきだというコンセンサスがある社会の方がいいと思うし、そうなるように嫁さんを応援する。蘇生ガイドラインの策定委員でもある嫁さんは、近い将来必ず「若い女性が倒れたときの救命プロトコル」を作るはず。
この論文の実データをきちんと見るともっと色々な地獄が顕現してくるようです. 紹介ツイートを見かけたのですがメモしていなくて見つからなくなってしまいました.
今週の問題¶
今週も仕事関係のプログラミングで遊び倒していたので, 数学はあまり進捗がありません. それでも次の問題(命題)はかなり面白くお気に入りです.
- 四次特殊直交リー環は三次特殊直交リー環に直和分解できる.
三次特殊直交リー環はベクトル積を入れた三次元実線型空間と同型で, さらに純虚四元数の全体と同型です. この事情をうまく使うと証明できます.
このとき私が見かけた証明では, 四次特殊直交リー環の基底をうまく使って純虚四元数の基底を二組作っていました. 一組は明記されていたものの, もう一組は明記されていませんでした.
具体的に計算すればよく, 一般の四次の行列ではなくほぼ行列単位レベルの計算なので難しくはありません. しかし四次行列なので計算が非常に面倒です. そこでSymPyを使ってプログラムを書いて計算させました. とても便利でいい気分です.
基本的な証明は現代数学探険隊のPDFにまとめつつ, プログラムをメンテナンス性・実行性を兼ね備えた形でどう公開すればいいかがずっと懸案です. とてもつらい.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-06-18¶
数学・物理 新たな通信講座の妄想がはかどる/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- どんなコンテンツがあると理解が進む?
- 12 Unique Design Books That Show the Pure Beauty of Mathematics
- Karoubi, K-theory. An elementary introduction
- Cubical Homotopy Theory
- carp-lang
- chot.design
- 256times
- 「外国語を使えるようになりたい」のill-definedness
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
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ではまたメールします.
近況報告¶
先々週体調を崩した上にそれが少し長引き, さらに崩れたリズムをまだ完全に取り戻せていない状態です. メルマガもようやく再開です.
前々からちょこちょこ書いているENERGEIAでの活動に関連して, 文系の人に語学ネタの話をしたら食いつきがよかったので, 改めてそちらもきちんとやる機運が高まっています. 古典力学の通信講座も折り返し地点を過ぎたので, 次どうするかを考えています.
どんなコンテンツがあると理解が進む?¶
学校教育の中で、 こういった視覚的理解が促進できるような教材が当たり前のように出てくると、 生徒たちの理解は飛躍的に加速するように思う。 特に高校数学以降は顕著になってくると思う。
ところがどっこい実は理解が進まないんだよね。 一瞬で忘却の彼方に消えていく。 生徒自身が自由に動かせない道具の効果はうすいと思う。 実際に2次関数の最大最小問題を、 学校できれいなアニメーションで学んできた生徒達の解ける率は0です。 最新器具を使えばダイエット成功率が上がるか?答えはノーであるのと同じ。 ダイエットは自分が動かないの意味がないのと同じで、生徒自身が考えないと理解は進まない。 上の内容を理解させる最強の道具はおそらくビニールボールとハサミ✂
これの引用リツイートを見るとまたいろいろなコメントがあります. 根本的に当人のやる気がないと何もはじまらない以上, 教材だけでどうにかなると思うのは話にならないとは思いますが, ならばどうするか, がひたすらに問題です. いまやっている通信講座も当人にやる気がある前提での短期スパルタです.
そもそも「面白ネタ」で興味を持ったとしても, 雑学的に好きなだけで勉強しようとまでは思わない層もいるはずで, そこをどう扱うかも問題です. そしてこの層の扱いもとても大事です. 何故かと言えば「数学好きなの? こんな人がいてこんな楽しい話聞かせてくれるよ」という口コミの起点になってくれるからです. ちょうどいまこの辺で, 以前少し準備していた語学からの数学系の話を復活させられないかと検討中です.
12 Unique Design Books That Show the Pure Beauty of Mathematics¶
These 12 unique design books seem like coffee table books, but they have the power to inspire your imagination.
先の視覚的な要素のコンテンツに関連して, そういう話を展開している人はもちろんいて, それが流れてきたメモです.
この手のコンテンツ, いつも困るのは「数式を使わずに説明」みたいなノリが多く, さらにその数学部分にどう突っ込んでいけばいいか, 参考文献などもろくになかったりして私が発展させて遊べないのがいつも大体いらっと来ます. CGアート系のコンテンツもプログラムを載せてほしいのですが, なかなかそういうのもありません. プログラムがあるにしても試したいモノに限って載っていないとか, もっと面白く見せるために本に載っているプログラムとは違うプログラムで書いた図版を載せていることもあり, 猛烈にいらつく経験を何度もしていて, いまやあまり追いかけていません.
いま進めている数学×プログラミング系の話としてはいいネタなので, 何とかしたい部分ではありますが. CG系で何かいいコンテンツご存知の方がいたらぜひ情報をください.
Karoubi, K-theory. An elementary introduction¶
かなり面白い。分野の常識中の常識を大御所が纏めてるのエラすぎる
K理論は作用素環にも展開があって興味はあったものの, 全く触れていない分野です. 眺めるだけでも, と思ったら体調不良でまださらっと眺めることさえできていません. とりあえず自分の記録がてら共有しておきます.
Cubical Homotopy Theory¶
@1123sodium氏に教えてもらったこの本で勉強してます. 今までどうも覚えることができなかったホモトピー論の様々な定理を、図式を使って統一的に理解することができてかなり良いです.
ホモトピーは解析接続とリーマン面関係でも基本的で, 基本的なところは一応勉強したものの全く身についていません. これもとりあえずメモがてらシェア.
carp-lang¶
線形論理を用いてGCを消したLispなら1992年にこんな論文が。https://cs.utexas.edu/users/hunt/res そしてその成果も (おそらく) 取り込みつつ、静的型付きでGCがなくリアルタイムアプリ向きなLispがあってですね。 いま気付いたんですがREADMEに"ownership tracking"とか書いてあるのでもしかすると元ツイートで書かれている境地に肉薄してそう (なのにまださわってない…)。
あまりに面倒で結局全然勉強できていませんが, Rustは一回きちんとやりたい言語です. そこと絡む形のLisp系言語と言われると俄然興味が湧いてきます.
これも以前書きましたが, 数学×プログラミングの方向性を考える上で参考になるかと思って, 素数夜曲のコードをがんばって写経した記録がGitHubにあげてあります. これでかなりLisp系に慣れたというか, 心理的な障壁がものすごく低くなれ, Lisp系にも今まで以上に興味が出てきました. まだ全く身についてはいないものの, まさかLet Over Lambdaを買って読む日が来るとは思ってもいませんでした.
LispはMaximaもありますし, これまた以前も宣伝したsicmutilsもあります. Lispだけの特権ではありませんがREPL駆動開発は本当に気持ちいいです. 最近はREPLのある言語やJupiter含めた広義の環境も増えています. 数学抜きにしてもプログラミング学習に興味がある人はぜひ言語を選ぶときに楽に使えるREPLがあるか, 検討材料にしてください.
chot.design¶
有料デザイン学習サイトのhttp://chot.designが事業譲渡により、全てのレッスンを無料公開してるので、今のうちにチェックしておいた方がいいかも
メルマガ読者に興味がある人がどれだけいるかわかりませんが, 情報発信用に自分のサイトを作りたい勢もいる可能性はあると思ったので, 一応シェアしておきます.
私も状況は詳しくないのですが, 例えば大学のドメイン・サーバーにファイルを置かなければならず, どうしてもHTMLで作らないといけないとかいうのでもなければもっと楽な方法はいくらでもあります. 手軽に作りたいなら逃げ道はいろいろあり, HTML手打などはあまりお勧めできませんが, 一回やってみて「これは駄目だ(つらい)」と思うならそれはそれで意味のあることです.
256times¶
「ワンコインからはじめる自走型プログラミングスクール」と謳っていて, これはなかなか面白く, 通信講座の展開でもちょっと気になっています. プログラミング学習と一週間以下の短期集中プログラムなど, 特性を活かした面白い特徴のあるスクールです.
数学や物理だと一週間以下は少し短すぎないかと思うかもしれませんし, 私もそう思いますが, 例えば「太鼓膜の振動に対する波動方程式の特殊関数を駆使した計算」のような形でテーマを絞れば, 仕事もしている大人向けのプチ講座としては一週間くらいのいい塩梅の量でしょう. 「双子のパラドクスに関わる計算を自分でもやってみよう」のようなテーマ設定もありえます. 他にも物理・微分方程式絡みの重ための計算の特訓講座として, 一週間から二週間使った固め打ちなども考えられます. もちろん需要があるかどうかという問題はあります.
256times本体は「先生も模範解答もない」「自分で考え手を動かし, 他の人のコードを読んでスキルを伸ばす」コンセプトですが, 別に先生と模範解答はあってもよく, 手を抜かず計算しよう・計算ノートを提出しなさい, というタイプに変えてもいいでしょう. 進捗報告を怠ると脱落というのもそういうシステムを組むのは面倒なので, これは無視してもいいでしょうし, いろいろバリエーションは考えられます. 期間を三ヶ月にして他にもいろいろ調整したバージョンがいまやっている通信講座とも言えます. これの数学×プログラミング版として, データ構造とアルゴリズムや競プロ的な話をしてもいいですし, とにかく妄想がはかどります.
ちょうど同じ方向性の通信講座をやっていることもあり, 妄想を膨らませてくれるいいサービスだったので紹介しました. これに触発されて何か関連する面白いサービスを作った, という方がいたらぜひ教えてください. 宣伝にも協力します.
「外国語を使えるようになりたい」のill-definedness¶
最近の学生は真面目だけれど,コスパ至上主義なのでできるだけ勉強しないである種の技術を身につけたいという人が多い印象を受けるな. 英語史をやっていると,どうしても歴史の話をしないといけない.しかし,外国語・国際系の学部の学生は優位に歴史が嫌いという人が多いので,工夫が必要. 外国語を使えるようになりたいと主張する人は,だいたい「その外国語で話ができるようになりたい」という願望を持っていることが多い.そかし,会話を続けるためには,言語の技術よりは何を話すかという話題の方が重要で,共有できる話題は多ければ多い方がいい.それを教養と呼んでもいいのだが. この問題は軽視されがちで,教育再生実行会議の遠藤利明さん,英語教育の視学官・直山木綿子さんがよく顔を出してくる.彼らの主張は「内容はともかく話したい!」そのため,理想の会話の具体例が非常に薄っぺらい.「何色が好き?好きな食べ物は?」の後で話題が続かない. https://globalization.chuo-u.ac.jp/global_person/special/taidan1/taidan2-1/ ぼちぼち本学でも海外研修が復活できそうだけれど,海外に行く機会がある学生さんには,現地と日本の政治・経済・文化の基本知識を英語で理解でき,説明できるようになっていて欲しい.ホームステイ先や留学先で,基本的なことを知っていないとそもそも会話にならない.「元気?」はただの挨拶なので.
よく英語のレベルに関して「日常会話」程度と言いますが, 日常会話が一番難しくないでしょうか? よく言う旅行時の用を足すといった話は, 自分がほしい情報を引き出すだけのボールの投げつけに等しく, あれは会話ではなく, 言うにしても情報交換でしょう. 謎だ, と思ったのを単に改めて記録しようと思い, 今回取り上げました.
外国語とコミュニケーションと言えば, 私はやはり文章の読み書きが一番身近で, 少なくとも読む方なら毎日です. 下手をしたら日本語よりも英語を読む方が多いくらいの日もあります. ちょうど今日もプログラミングの勉強をしていて, ドキュメントにおかしいところがあったのでGitHubでイシューを立てたら, プルリク立てて直してくれる? と返ってきました. そもそも吃音があって会話というか発話にいろいろ問題があることもあり, 読み書きを何とかする方向のコンテンツくらいは何とかしたいです.
今週の問題¶
仕事関係のプログラミング学習ばかりで最近数学がだいぶ適当です. この三週間程度でやったのは次の命題くらいのような気がします.
- 特殊直交リー環は次元5以上で単純である.
実際に4次だと非単純なので次元の条件は本質的です. これに合わせて証明も5次以上の条件を使う必要があり, 単純計算ではあるもののそこそこ息の長い議論が必要です.
行列単位に対する計算がたくさんあって, かなり大変です. 五次・六次でSymPyによる計算もつけると証明がもっと具体的に見えてよさそうな感じがします. 高次になると手計算だと計算ミスも多発してきますし, 厳密計算も近似計算も取り込みやすいと思えば, 数学×プログラミングネタで行列関係の話をもっと本格的に検討してもいいのかもしれません.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-05-28¶
数学・物理 数学と思考の訓練/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 数学と思考の訓練
- 数学から見た超関数
- プログラミングと数論の本
- Python+Matplolibの資料
- 試行回数の増やし方
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
量が尋常ではないほど多いのも間違いないのですが, 思った以上に会社の研修の進捗もよろしくありません. 最低限の分は十分さばけているものの, プラスアルファの分, 特に勉強してみようとずっと思っていていい機会だからとやってみようと思っている分が全然終わらず, 本当に朝から夜までプログラムを書いています. ここまで勉強モード, それもプログラミングの勉強モードなのは久し振りです.
冷静に考えると毎週統計の勉強会でJuliaのライブラリのコードを読んでいますし, 今年に入ってからは毎日ほぼ二時間は競プロの勉強はしています. それ以外にもずっとちょこちょこプログラミングを勉強してはいますが, ここまで朝から晩まで固め打ちなのは久し振りです. サイトのデザインも変えたいと思っていたところで, デザイン・フロントエンドの勉強が入ったのでいろいろ妄想しています.
競プロでは最近ようやくSTモナドなどのプログラムが少し読み書きできるようになってきました. AOJで使える言語・書きたい言語がHaskellしかありません. C++は勉強した方がよく, Pythonあたりでさっと書く方がデータ構造とアルゴリズムの勉強に集中できてよいのですが, AOJで使える言語の中で書いていて楽しく, 程々の勉強で済み, さらに勉強が続くのがHaskellなので仕方ありません. OCamlは勉強するとよさそうですが, アルゴ式でも使える言語と思うとHaskell, OCamlはWindowsで使う言語でもないそうで. そこまでいろいろな言語を勉強したいわけでもなく, 特にコンテンツ化を目指す段で触れるような言語でもないので, 歯を食いしばってHaskellです.
具体的な方向性はちょうど明日少し話をすることになったのですが, プログラマーのための数学的な方向でまた何かオンラインイベント的なことをしようと思っています. メルマガでも案内を出すので興味があればぜひ参加してください.
数学と思考の訓練¶
法学部の入試で数学を課しているのは、法学がそれを使うからではもちろんなくて、順序立てて物事を考えたり、抽象的な思考をしたりする訓練を受けている学生が欲しいから。知識は全て忘れても、まあ、それでいいのです。
法学自体の学習カリキュラムとして課せないのでしょうか? たいていの人にとって数学は苦行のはずで, 法学によく馴染む人にとって取り組みやすい思考の訓練方法はあると思うのですが.
Twitterで見てみると人文系・社会学系の教員は, 教育方面に関して本当に知的怠惰としか言いようがないようにしか見えず, 本当に衝撃を受けています. あの人達, 本当に何なのでしょうか.
数学から見た超関数¶
数学の人、ディラックのデルタ関数嫌いな人多そう(偏見)
https://1-blog.net/author/detail/1360 おそらくこの辺りで、私は読んでいませんが、有名な「量子力学の数学的基礎」ではディラックのデルタが関数ではないことの証明があるそうです。ただしこれはシュワルツによる超関数の発明以前という時代背景があるので、物理の人の想像とはかなり違うような気がします。
そもそも生の超関数は位相的に使いづらい上、もはや超関数自体ほとんどやらないらしいので名前以上の興味ないのではないか感がある。さらっとやったら即ソボレフで、方程式ごとの必要に応じて適切な空間論に流れるのでは。
デルタ関数, 数学だと超関数のモチベーションとして出て来つつ, いくつか面白い性質を持つ例として出て来ます. 嫌いになるような登場の仕方をしないと思いますし, むしろモチベーティブな例として好意的に受け入れられているのではないでしょうか. 佐藤幹夫の佐藤超関数論文でも真っ先に比較対象として出てきたような記憶があります.
ちなみにディラックのデルタ関数はヘビサイド関数というふつうの関数の超関数微分で出てくる純粋な超関数という面白い性質があります. また十分大きな$s$に対するソボレフ空間$H^s$に属する点もよく例に挙がるのではないでしょうか.
プログラミングと数論の本¶
「プログラミングと数論」みたいな本ないんかな。具体的な言語を使いながら整数論の概念を学ぶ感じの。 例えば、Pythonで素イデアル分解を実装していく、とか。
読んだことはありませんがLewinter, Meyer, Elementary Number Theory with Programming, Cohen, A Course in Computational Algebraic Number Theoryのような本はあります。yokoemon2112さんがまさに計算数論なので伺ってみるといいのではないでしょうか。
本当にその場で調べて出て来た本なので内容を全く知りません. しかし内容自体には興味がありますし, 読んでみたいですね. とりあえず備忘録ついでにメルマガにも放流します.
Python+Matplolibの資料¶
科学技術計算を念頭に、matplotlibによる高度な可視化を解説した書籍「Scientific Visualization: Python + Matplotlib」は、コードとともに全文が無料公開されている https://github.com/rougier/scient
これも備忘録がてら放流します. 興味ある人はぜひ勉強してみて感想を教えてください.
試行回数の増やし方¶
なんやこの資料… やばすぎる… 全人類が読むべきことが詰まっている… 脳汁がやばい… Increasing number of attempts ver. 2021
割とこう, いわゆるライフハック的な文脈でよく出てくる話だろうと思います. ただ, いま私がやっている計算練習系の観点からも大事な指摘があるため, いくつかピックアップします.
- 成功の方程式: 成功回数=試行回数×成功率
- 成功率はコントロールしづらい
- ならば試行回数を上げよう
- 試行回数=手持ちの時間 / 一回の試行にかかる時間
- 手持ちの時間は差がつきにくい: ならば試行にかかる時間を短くしよう
- 試行にかかる時間の内訳
- プログラムの実装時間・実行時間: 運ではなく技術
計算編で意図しているのもまさにこれです. 計算速度を上げて一回の試行にかかる時間を短くするのが大事です. さらに計算力を上げれば計算ミスをなくす方向でも時間を減らせますし, そもそも計算力が必要な問題にも挑めます.
ちょうどいま展開している通信講座でも, 計算結果の解釈だけできてもやはり計算の細部まで自分で再現したくなるのが人情です. 何度でもくり返しますが,
理解を深めるのはもちろん大事です. しかし「理解を深める」は何でどう測るかが難しく, いわゆる成長の実感が難しい部分です. 一方計算はできる・できないがはっきりしますし, できなかったことができるようになるのもわかりやすいのがよい点です. 物理はもちろんのこと, 解析学での不等式処理に関わる計算力もあれば, ホモロジー代数など代数でのハードな計算に対する計算力もあります. 競技プログラミングやデータ構造とアルゴリズムも, コンピューターでの計算に対する計算力強化です. スパコン利用のプログラミングも人類の計算力強化が目的です.
古典力学が終わったら, いまのところ量子力学というか, 量子情報と(有限次元の)線型代数系の通信講座にしようかと思っています. とにかく計算をやりましょう.
今週の問題¶
直交群・特殊直交群関係で, 一度やってあってノートにもまとめていたにもかかわらず, 忘れて微妙にはまった問題です.
- 全ての自然数$n$に対して$SO(n) \subset O(n)$は真の正規部分群だが, リー環は一致する.
- 各自然数$n$に対して商群$O(n) / SO(n)$は$\mathbb{Z} / 2 \mathbb{Z}$である.
正規部分群自体が群の重要な概念ですし, 商群は初学者がよくはまるところです. 上記の議論は準同型定理と行列式で処理でき, 線型代数とふつうの代数の関係というか, よい修行になるのでぜひ取り組んみてください.
雑に眺めただけでまだ証明がきちんと腑に落ちてもいませんが, $SO(n) / SO(n-1)$, $O(n) / O(n-1)$, $SO(n) / O(n-1)$なども対称空間論でよく出てくる基本的な例で, 一気に微分幾何・リーマン幾何・表現論が視野に入ってくる面白い例です.
最初に挙げた問題は簡単すぎて(微分)幾何として議論する点はほぼありませんが, 代数の勉強には役立つ例です.
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語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-05-21¶
数学・物理 直観を調べるには"intuition"で検索してみる/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 直観を調べるには"intuition"で検索してみる
- Farah, Combinatorial Set Theory of C*-algebras
- 大野克嗣, 熱力学ノート
- well-definedではない例
- 確率論とルベーグ積分
- 山下真由子さんの第1回羽ばたく女性研究者賞受賞
- Karel Svadlenka, 偏微分方程式: 講義ノート
- 永井佑紀さんの新刊: 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング
- ClingでC++のREPLが使えた
- 要点抽出と途中計算の補足
- 次回の演習系通信講座
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
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近況報告¶
二週間メルマガを書くのを忘れていました. いま研修で本当に一日中, 朝から夜まで勉強しています. こういう書き方にしてしまうと労基法的にアレな気もしてきますが, 今までアプリ開発やスタイリング(デザイン)学習なども勉強してみようとずっと思っていたところだったため, 渡りに船という感じでシコシコプログラムを書いています.
もちろんデータ構造とアルゴリズムを引き続き勉強を続けています. AOJとアルゴ式ではHaskellまたはOCamlしかなくF#が使えないため, いくら競プロ特化とはいえ現状でそこまでいろいろな言語を勉強している余裕もありません. かといってもうREPLなしのプログラミングはつらくてやっていられません. 念のためと思って検索してみたら, C++のREPLがあるClingがあるのを知ったのでそれを入れてみたりもしたのですが, やはりC++はつらいです. AOJはソートアルゴリズムに関連して, ソートの各ステップの結果を出力しなければならず, これが単なるソートのアルゴリズムにprintを差し込めばいい言語と違って凄まじく実装が面倒になります.
最近F#でのAtCoder学習で勉強用にmutable版も書くようにしたので, もういっそHaskellを命令型的に書くことにしました. モナドの学習が甘かったので単にMVectorを使うだけでも苦労したものの挿入ソートは書けました. 既存のAOJの問題もMVectorで書き換えたバージョンを書いて修行する予定です.
今年になってから競プロでデータ構造とアルゴリズムの学習を本格的に再開しましたがもう少しで半年です. 半年もやればもう少しできるようになっていると思っていましたが仕方ありません. 引き続きやっていきます. もちろん数学・物理系の計算練習も計算練習用通信講座の整備も続けます.
直観を調べるには"intuition"で検索してみる¶
数学の概念の気持ちを知りたいときは、検索でその英単語に加えて "intuition" (直観)とつけるといい感じの回答が見つかりがちです
私も困ったときはTwitterで詳しい人に聞く以外によく英語で検索しています. そのキーワードが一つ追加されたので今度何かあれば使ってみます.
Farah, Combinatorial Set Theory of C*-algebras¶
はい、というわけで。これでゼミするって言って興味のある人いますか? Farah著 Combinatorial Set Theory of C*-algebras
何度か書いたと思いますが, ちょうど修士のときの日本数学会でカルキン環と集合論の講演がありました. もう本一冊になるほどのテーマになっていると知って驚きました. 集合論も勉強したいと思って幾星霜です. もう適当なタイミングで勉強会を開くしかないと思っています. 優先度を見極めて何とかしたいですね.
大野克嗣, 熱力学ノート¶
基礎部分の考察がよいという評判を見かけました. まだ読めていないのですが備忘録も兼ねてメモしておきます.
- 電気化学の基礎論的重要性.これなしで質量作用を仕事と対等に扱うことを正当化する経験事実は存在しない.
この記述が非常に気になっています.
well-definedではない例¶
これいいな
鍵RT
well-defined の説明, そうである例を話すよりそうでない例を話す方が初見はわかってもらえそう
有理数全体からの関数fを分母と分子の和で定義してみましょう ワオ!!!!! f(1/2)=3 なのに f(2/4)=6 だ!!!!!!!!!! みたいな感じで
ちょうどこの間の計算練習通信講座で似た話をしました. そこでは物理で出てくるベクトル・テンソルの定義の話でした.
- 物理では変換性をもとにベクトルやテンソルを定義する.
- もちろんふつう物理で出てくるのは適切な変換性を持つ対象しかないから, 独学していると, この定義にどんな意味・意義があるのか全くわからないだろう.
こんな話をしました. もちろんそこでも変換性を満たさない例を紹介したのですが, 「わかる人にはわかる」, 「わからない人には何を言っているかさっぱりわからない」例しか出せませんでした. 当然のごとく不自然な例なのですが, 不自然さの気分が何に依存しているかと言えばまさに上で書いたように, 「物理でそんな量をそんな風には扱わないから」で, 論理的にはともかく気分的には循環論法です.
それでも上の数学の例はまだwell-definednessについて気分を伝えてくれていると思いますし, よい例だと思います.
完全に別件ですが, 確か計算機科学系の人だか文献を読んでいたときだか, well-definednessを「整定義性」と訳しているのを見かけました. 文脈は数学とは必ずしも一致しないものの, 最近はなるべく日本語にきちんと訳して使おうと思っているため, well-definednessをこれで置き換えようか悩み中です.
確率論とルベーグ積分¶
確率論・ルベーグ積分を勉強するにあたって,原『測度・確率・ルベーグ積分』→ 清水『統計学への確率論,その先へ』→ 舟木『確率論』がスムーズな感じがするんだけどどうなんですかね.解析系がしっかり分かってる人であればいきなり舟木で良いと思うんですけど.
確率論は測度論をさばけないと困る一方、関数解析・作用素論・偏微分方程式系統への応用に意識を向けたルベーグ積分論はあまり測度の細かいことを知らなくても何とかなるので、混ぜると危険な感じがあります。確率論としての積分論・測度論はその成り立ちからもかなり独特です。 そもそも本当に数学科水準の確率論とルベーグが必要なのかどうかからよくわかっていません。あくまで数学としていうならルベーグというと関数解析方面への方向性が強く、確率論は確率論でそれ自体として一から組んである本も多いです。これも念のため書いておくと、 高校でさえ現れる独立性の概念は測度・加法族のレベルで定式化されるので学部一年の数学科の数学の集合論と実数論の一番きついところだけが必要で、それが確率論らしさで、関数解析系ルベーグだとあまり出てこない点です。R^nでのルベーグを頑張ってもあまりご利益がありません。
少なくともTwitterでは何度か言っている話です. 私自身, 確率論に取り組むときに測度回りで時々どはまりすることがあります. 修行が足りていません. 確率論的集合の実運用はかえって集合論入門として使えるのではないかとさえ思っています. これも計算練習的にまとめられないか思案中です.
山下真由子さんの第1回羽ばたく女性研究者賞受賞¶
山下氏は幾何学の代数トポロジーと呼ばれる分野と、理論物理学との関連を研究。世界的に実力が高く認められていることなどが評価された。
以下のリンク先の文献はどなたかが紹介していた山下真由子さん関係の仕事です.
一応, 形式的には大学院の研究室の後輩にあたりますが, すごい人はいるものだと感心します. 微分幾何で指数定理はずっと勉強したい対象として私の中にありますし, あまりそれらしいことはやっていなかったとはいえ作用素環専攻ではありましたし, だいぶ趣は違いますが格子上の議論は厳密統計力学的に私の主たる興味関心なのでどこからどう見ても興味しかありません.
幾何・微分幾何も1500ページ程度は学習メモがありますがまだ全然足りません. 計算も追い切れなくてとりあえず本なり何なりに書いてある分を記録しただけの断片が大量にあり, それらを馬鹿みたいに詳しくノート化する作業も残っています. 行列リー群に関連して群と位相関係で馬鹿みたいに計算してノートを準備したり, 曲線論や曲面論のノートも拡充して幾何に慣れたり, やるべきことはたくさんあります.
リー群にしても等質空間系の話からの微分幾何もあります. ある程度難しいところも眺めて基礎力の足りなさを実感してきたので, 歯を食いしばって計算力を鍛えます.
全然別件ですが, やはりRIMSに若手の助教として室屋晃子さんが在籍しています. 何にせよ若く強い数学者が着々と育っているようで感銘を受けます.
Karel Svadlenka, 偏微分方程式: 講義ノート¶
京大数学教室のKarel Svadlenkaさんが書いた偏微分方程式の講義ノートがかなり分かりやすくて、参考文献についても詳しく書いてて、カバー領域も広そうなのでオススメ(あと日本語上手すぎる)https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~karel/files/notes_pde_2015.pdf
何か流れてきたのでシェアしておきます. ダウンロードするだけしてほとんど読まないのですが, 何かあってふと調べ物をしようとしたときに役立つことがあります.
永井佑紀さんの新刊: 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング¶
ClingでC++のREPLが使えた¶
EmacsでREPLを起動させるところまで進みました. WindowsだとビルドしないといけないようでWSLやDockerなどもあるのでしょうが, とりあえずMacで試しています.
Elispは最低限という感じでそれほど使いやすくはないものの, 当面の競プロ学習用には十二分そうです. 気に入らない部分は少し修正・追加しつつ, キーバインドも追加しました.
やはりREPLは本当にいいです. どんな言語にもREPLつけてほしいです.
要点抽出と途中計算の補足¶
http://everything-arises-from-the-principle-of-physics.com 要点抽出と途中計算補足をしたpdfのサイト神すぎる JJサクライお世話になった。場古典とシュッツ相対論は持ってるからそのpdf見ながら読み返すか
これは私もぜひやりたいと思っています. 自分のメモも兼ねて計算の補足をやっているのが例と計算編であり, もっと拡充したいですし, 毎日少しずつ進めています. 上でも少し書いたように, 年始から進めているリー群関係は最近進捗が悪くなってはいますが, 進みが遅いだけでほぼ毎日少しでも進めています.
次回の演習系通信講座¶
まだ気が早いですが, 今回のパイロット版も次回を見据えて進めないと意味がありません. 予定としては古典力学版の再募集をするかどうか, あとは量子情報の基礎に触れつつの行列計算講座を作ろうかと思っています.
行列計算も時々とんでもない量の計算が出てきます. 二次の正方行列の計算であるにも関わらず, ミスとTeX化の苦労もあって, 5日くらいかかった計算もありました.
今週の問題¶
- 二次の特殊線型リー環$\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})$上で指数写像$\exp \colon \mathfrak{sl}(2,\mathbb{C}) \to \mathrm{SL}(2, \mathbb{C})$は全射ではない.
リー群・リー環の一般論のきちんとした理解が甘いため, 「連結なリー群だったら全射になるのでは?」と思って混乱しました. 「連結かつコンパクト」だとか「実の場合だけ」とか, 何かしら厳密な条件づけを抜かして標語的に覚えた気になっていると, こういうところで足元をすくわれるいい例です.
この非全射性は一般の$n$次でも成り立つ性質でしょうか? ご存知の方がいたら文献教えてもらえると嬉しいです. あとどうも複素一般線型リー環でも成り立つ(指数写像が全射でない)ようなのですが, 練習問題扱いで証明がなく, 苦戦しています. こちらも何か情報・文献あれば教えてください. きちんと読み込んだわけではないため, 手元にある我らが小林・大島にこの手の記述があるのかどうかわからず, 見つけられていません. 表現論の本だから書いていなくてもおかしいわけでもありません. リー群は代数と位相と幾何が密接に絡んでいて, いろいろな部分群, その位相と代数の関係などとても示唆的で本当に勉強になります. 二次正方行列であっても計算が楽なわけでもないとか, つらさもてんこ盛りですが.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-04-30¶
数学・物理 つどいの講演終了/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- エアコンを試運転しておこう
- 追い詰められないとやれない(こともある)
- 通信講座関連でコメントしたことその1: 全体を見よう
- 通信講座関連でコメントしたことその2: 諦めが肝心
- 通信講座関連でコメントしたことその3: 計算をできるようにしよう
- オンラインすうがく徒のつどい講演資料: 数学のためのプログラミング入門・学習案内
- 物理の数学
- 代数と単位元
- ヘイヘイによるregularityや交叉理論まとめ
- リー群と特殊関数
- 漸化式と固有値問題
- トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』
- トポロジーの入門書
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
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エアコンを試運転しておこう¶
このメルマガの本体と全く関係ないのですが, Twitterで回ってきたので私も注意喚起に協力します. 特にコロナ禍の影響もある中で, 今年はさらにロシアのウクライナ侵攻の影響で修理用の部品などがどうなるかわかりません. お住まいの地域によるとは思いますが, 夏が地獄のような地域もあるでしょう. 早めのチェックが肝心です.
毎年これくらいの季節になると先に注意喚起をしているのですが、今年どころかずっと前からエアコンをお使いのご家庭へ、エアコンの試運転をしておかないと真夏の修理待ちで詰みます。買い替えでも在庫なしで詰みます。買えても設置待ちで詰みます。あわせて実家のエアコンも試運転。冷房18度で10分。 真夏に備えるエアコンの試運転、くわしくはこちらを。もし調子が悪い場合の問い合わせ用に、ほぼ全メーカーのページもスレッドに載せています。
追い詰められないとやれない(こともある)¶
いま仕事で研修をしているのですが, ありがたいことに三ヶ月みっちり, 業務時間をフルに研修にあてていいと言われてweb系の技術をいろいろ勉強し直しています. 特にデザイン系も基本的な技能を磨いてほしいと言われていて関連する研修を受講しています. 今までやりたいなとは思っていてもなかなか取り組めなかったテーマでもあります. 何をどう考えても三ヶ月でどうにかしきれる話でもありませんが, 口実と時間ができたのも間違いありません. いま必死でやっています.
フロントエンドの話やアプリの内容もあり, 自分のコンテンツや通信講座, そして何よりサイトの構成にも応用したいと思っています.
追い詰められてはじめて取り組めるタイプの話もあるよね, と改めて感じています.
通信講座関連でコメントしたことその1: 全体を見よう¶
今週から通信講座がはじまりました. 今日も22:00-23:00で勉強会を開いています. 「確かに一人でやっているとわからない部分だな」と思う質問を受けましたし, 「位置ベクトルとは何ぞ」のような, 解析力学や相対性理論とも絡みつつ数学的にはそこそこ面倒な議論もありました.
そちらでも話したことはいろいろな人の参考になると思うので, メルマガでもシェアしておきます.
- 途中が飛んでも気にせず来たメールの内容に対応する
- 全体像の把握も大事なのでとにかく全部見る
- 独学で挫折すると本当に途中で終わって最後まで見られない
独学で進めて本を読むのに挫折すると, 途中までしか読まずに止めてしまうことがよくあります. 最後の方にこそ面白い話が書いてあったり, 前半の議論のイメージしやすい具体例が書いてある場合もよくあります.
通信講座関連でコメントしたことその2: 諦めが肝心¶
いま考えている通信講座はくり返し受講してもらう前提で組んでいます. それはいままさに私が研修で味わっている問題でもあります. 一度やったくらいでわかるようになるわけがなく, 身につくわけもありません. いきなり理解は深まらない, 時間がかかると諦めて我慢する必要があります.
いままさに研修でコンテンツを勉強していて, チュートリアルに沿って作業していても一回では全く頭に入りません. 早いところ数稽古に入らなければいけません. 身につけたところでちょっと凝ったことをしようと思うと, どうすればいいかわからず, いろいろな本を読んでみたりノウハウを調べないと手が出ません. デザイン系だと良く目にするデザインもある程度自分で作りたい・作らねばならない状況になるわけで, これも大変です.
通信講座関連でコメントしたことその3: 計算をできるようにしよう¶
これは前に作った語学系コンテンツに書いた内容とも関わります. 理解はどう測ったらいいかわからない一方, 計算はできる・できないがはっきりします. 上達も自分でしっかり測れます. 計算をできるようにしようと言っている理由の一つもこれです. 力学でやってみるとよくわかりますが, 計算の詳細を埋めるのも重要な勉強です. 特に近似絡みの議論は近似のセンスのような話もあります.
ちょうど今日, オンラインすうがく徒のつどいで数学・物理・プログラミング関係の話をしました. プログラミングが絡んだ計算もこれはこれで数学・物理・計算機科学の総合格闘技の趣があります. 計算は決して簡単な話ではありません. 質的に内容が少し変わりますが, 基礎論系で計算論といった分野・テーマさえあります.
オンラインすうがく徒のつどい講演資料: 数学のためのプログラミング入門・学習案内¶
次のリンク先に資料を置いてあります.
PDFの他, デモ用の数値計算プログラムも置いてあります. 念のためシェアしておきます.
物理の数学¶
文脈をよく知らないのですが, 「波動関数が連続なのは何故か?」みたいなことを言っていた人がいたようで, それについて何となくツイートした記録です.
「波動関数」が何を指しているのかよくわからないが、物理は言葉遣いが粗雑だからデルタ関数も波動関数の一種に含めると思うし、そもそも関数でさえないのに何で(L^2の)関数やら連続性やら何やらに言及するのか本当に意味がわかっていない。 連続性だとか収束の問題を一度も気にしたことなかろうに、なぜ量子力学でだけそんなどうでもいいことを気にするのだろうか。数学している暇があるなら物理をやれの一言で終わりでは。それでも数学したければ数学科に行けばいい。
波動関数はなぜ連続なのかとか本当にくだらない以外に言及しようのない疑問を持つ前に、まずは自分が考える波動関数の定義を明確にしてほしい。この思考に自力でたどり着けない時点で数学側からの回答は受け止めきれない。物理学者のコメントに数学的な意味はなく、求めるものでもない。 書くのを忘れていたが、数学者からの解答のようなものがあったとして、物理に基づいている可能性がほぼない(そういうことをする人たちではなく、興味関心が噛み合わない)ので、それはそれで物理の人間が物理として傾聴する意味がない。 物理を数学的にきちんと議論しようと思うと、まず解の存在とその場所(と一意性)がまず問題になるのだが、いちいちそんなことがやりたい人、どれだけいるのだろうか。ちなみに赤外発散に関連して一時期本当に物理として問題になったのは確かだが、今更物理で気にしている人はいないだろうし、数学的には基底状態・平衡状態の存在問題がいまだにほとんどどうにもなっていない。量子力学にしても、2006年ではあるが、https://mathsoc.jp/activity/awards/haruakilist/isozaki2006aki.html 三粒子の散乱に関わる数学的問題にさえ日本数学会賞が与えられるほど何もできていない。 数学科で数学として数学をやる以外の理由で物理の問題を数学的にきちんと議論しようと思うのは本当にやめた方がいい。
代数と単位元¶
部分環って単位元の一致は仮定しないのが一般的なの?冪等を作用させた環とかも部分環ですって言うためなんかな
行列環で簡単に破壊される(二次正方行列全体がなすM_2に対して、(1,1)成分だけが非零の行列全体は単位元がdiag(1,0)の部分環)ので、それなりに意味のある仮定です。
圏論的に捉えるとどうも違和感を覚えてしまうというのはありますね、、、部分環と呼ぶ以上は包含が環準同型であってほしいので、、、(non-unital?なら何も問題はないですが、、、)
部分環が部分対象とは限らないのキモいなってなった (nonunital ringの圏なら大丈夫だけど)
まじそれ、勝手に定義変えようかな笑笑
Non-unital ring上の加群論作ってみたら?
そんな恐ろしいもの触れたくないお
作用素環だとフォン・ノイマン環は中心極大射影を単位元とみなせるため, 常に単位元が存在すると思ってもよいのですが, $C^$-環は局所コンパクトハウスドルフ空間上の無限遠で消える連続関数環, コンパクト作用素がなす環は基本的な$C^$-環でしかも単位元を持ちません. 他には単位元を持たないバナッハ環としてたたみ込みを積として$L^1(\mathbb{R}^d)$もあります.
純代数の人から「非可換なのはまだ許せるとして, 単位元の存在は仮定させてほしい」と言われたこともあり, 単位元を巡る事情はいろいろあります.
ちなみに少なくとも$C^*$-環は常に近似単位元を持ちます. 近似単位元と言いつつ実体は点列またはネットです. 先の$L^1(\mathbb{R}^d)$で言えばディラックのデルタ関数近似列が近似単位元です. 解析学としては確かにそれはそうという部分があります.
あともとの$C^*$-環に単位元を付加した環という概念もあって, 局所コンパクトハウスドルフ空間$X$上の無限遠で消える連続関数環で言えば, 単位元の付加で得られる環は$X$の一点コンパクト化上の連続関数環です. つまり環に対する操作がその下に住む位相空間にも影響を与えています. これはこれで今度は非可換幾何への道でもあります.
ヘイヘイによるregularityや交叉理論まとめ¶
- 射影多様体に写像を作るには"関数"が必要
- でもコンパクト多様体上には定数関数しかない
- 定数関数は自明直線束の大域切断
- 代わりに一般の直線束の大域切断を使えば各自明化開集合上では関数が作れる
- これはもちろん貼り合わないがそれは変換関数が定数関数じゃないから
- でも斉次座標なら問題ないので有理写像が作れる
- いつ本当の射や埋め込みになるのか→regularityや交叉理論の話
というセミナーをした
コンパクト多様体上に定数関数しかない話, 特にリーマン面でも出てきます. 証明は割と単純な割にインパクトの強い性質です. 代数幾何は全然勉強できていないので, この話がこう展開していくのかと思うとなかなか趣深いものを感じます.
リー群と特殊関数¶
Lie group theory and special functions http://www-users.math.umn.edu/~mille003/lietheoryspecialfunctions.html
いまちょうど計算・理論ともに線型代数強化期間として取り組んでいるリー群で, 解析学と直接的な関係がある話題のPDFが流れてきたので, 一応共有しておきます. 電磁気や量子力学での偏微分方程式と固有値問題とも深い関係があるテーマです.
漸化式と固有値問題¶
漸化式 x_{n+1} = p x_n + q の特性方程式を解くってのは、行列 (p q) (0 1) の固有ベクトルを求めることなんです。 という話を書いておくのを忘れていたことに、今、気づきました。
これは確率論・力学系などの議論でも重要です. 特にエルゴード性が関わる力学系では, 適当な時間発展に対して時間無限大でどこかに収束する場合があります. この収束先の計算がまさに固有値問題だからです. 線型代数はこんなところにも顔を出します.
トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』¶
Twitterで流れてきたのでシェアします.
トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』が登場。 https://famitsu.com/news/202204/22259060.html
脳がぐるぐるするけどプレイ自体に数学的知識は不要。プラットフォームはPC/Mac/Linux。4月22日発売。
トポロジーの入門書¶
河澄先生の講義ノートは東大数理名物らしく, 東大数理勢が湧いていました. トポロジーももっときちんと勉強したいので私も正座待機しています.
『トポロジーの基礎・上』 ついに来た http://utp.or.jp/smp/book/b603128.html
ポアンカレ双対定理をゴールとして上下巻で出るっぽい 和書でポアンカレ双対定理について書かれてるものには服部『位相幾何学』があるけど、あの本はだいぶ敷居が高い。 この本は「非専門家を読者対象とし、徹底的にていねいに解説」してるらしいから新しいスタンダードになりそう
今週の問題¶
短期集中の通信講座がはじまって物理熱が高まってきたので, 今週はリー群絡みよりも量子力学のための線型代数みたいなところの計算ノートを作っていました. 特に純粋状態まわりの議論をしていました.
作用素環ベースでやると解析学がかなり強く絡んで, 面白くも大変な一方, 行列ベースだと比較的簡単に面白い結果がバリバリ出てきます. やはりニールセン-チャンの教科書第二章は抜群に面白いです. 量子力学(物理)に根差しつつ線型代数の勉強するには本当にお勧めです.
純粋状態に関わる議論は物理的な重要性もありつつ, 数学的な面白さもたくさんあって本当に楽しいです. 広い意味での幾何的な議論は作用素環や量子統計にも影響があります. 作用素環もまたやりたくなってきています. とにかく楽しい.
例えば次のような問題を考えてみるといいでしょう.
- Exercise 2.72: 二量子ビットの混合状態に対する任意の密度行列$\rho$はノルム1以下の実三次元ベクトルで$\rho= \frac{1}{2} (1 + \boldsymbol{r} \cdot \boldsymbol{\sigma})$と書けることを示せ.
いわゆるブロッホ球の議論です. これの一般次元の議論がハマりポイントでもありつつ面白いところです.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第六文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第六文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
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今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第六文¶
文構造¶
- Если же магнит находится в покое, а движется проводник,
- то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;
- зато в проводнике возникает электродвижущая сила,
- которой самой по себе не соответствует никакая энергия,
- но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.
- --- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---
動詞は次の通りです.
- находится: 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь), to be found, to turn up
- возникает: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть), to arise, to appear, to emerge, third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格, concern
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать), to call, to send for
接続詞は次の通りです.
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- но: 接続詞: but, yet
- которой: 関係代名詞
- которая: 関係代名詞
Если же магнит находится в покое, а движется проводник,¶
動詞は不完了体находится (<- находиться, to be in some condition), движется (<- дви́гаться, move)があります. さらにа (and/but)とЕсли же (if)が接続詞で, Если жеが導く従属節の中にаがあります.
動詞はどちらも三人称単数で, магнит (magnet)が男性名詞単数の主格・対格, проводник (conductor)が男性名詞単数の主格・対格なので, これらがそれぞれの動詞の主語でよいでしょう.
残るはв покоеで, покое (rest)は男性名詞不活動体の単数前置詞格だから, вは前置詞格をしたがえるときのin, at, onの意味で取ればよいでしょう.
これをまとめると次のように英訳できます.
- If the magnet is at rest and the conductor is moving,
то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;¶
動詞はвозникает (<- возника́ть, to arise, to appear)で三人称単数現在形です. 冒頭のто (<- тот, that)は中性名詞として単数主格・対格だからこれを主語とみなせばよいでしょう. さらにвокруг (around, about)は生格支配の前置詞で, магнита (магнит, magnet)は男性名詞の単数生格だからこれがтоにかかります. не (no)は副詞として動詞を否定します.
最後にникакого (<- никако́й: 代名詞, no, none)は男性・中性の生格, электрического (<- электрический, electric)は形容詞で男性形単数生格・対格, поля (field)は中性名詞不活動体複数の主格・対格です. ここではполяを対格とみなし, никакогоとэлектрическогоがполяにかかると見ればいいでしょう.
これの英訳は次のようになっています. ロシア語と文法的に正確な対応はないものの意味はこの通りです.
- no electric field arises in the neighbourhood of the magnet
зато в проводнике возникает электродвижущая сила,¶
この文の動詞はвозникает (возника́ть, to arise, to appear)で, 三人称単数の現在形です. 主格を探すと不活動体の女性名詞силаが主格・対格です. さらにэлектродвижущая (элѐктродви́жущий, electrodynamic)があります. 後半のдвижущаяはдви́жущийがдви́гатьの現在分詞で, движущаяは女性形の主格です. 特にэnлектродвижущая силаで起電力と訳せます.
зато (on the other hand)は副詞です. 男性名詞проводнике (проводник, conductor)は前置詞格なので, вは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onの意味を持ちます.
まとめると次のように英訳できます.
- instead, an electromotive force arises in the conductor,
которой самой по себе не соответствует никакая энергия,¶
冒頭のкоторойは関係代名詞で, силаを受けているとみなすのが自然でしょう. 実際女性形の生格・与格・具格・前置詞格です.
ここで動詞はсоответствует (<- соотве́тствовать, correspond)で三人称単数現在形です. いま不定代名詞никакая (<- никако́й, not any, none)は女性単数主格, энергия (energy)は女性名詞で単数形主格です.
最後にсамой (<- сам, self)は代名詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, поは前置詞で対格・与格・前置詞格支配でどの格かによって意味が変わります. себе (<- себя́, oneself)は再帰代名詞で与格・前置詞格です. ここではсам по себеでon one's own, by oneself, aloneの意味があります. 最後にнеはnoです.
まとめると次のように訳せます.
- which in itself does not correspond to any energy,
но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.¶
まずно которая вызываетを調べます. но (but, yet)は接続詞で, которая (<- который, which)は疑問詞・関係代名詞で女性単数主格です. 直前の女性名詞のэнергияを受けていると見てよいでしょう. 動詞はвызывает (<- вызыва́ть, to cause)で不完了体の三人称単数現在形です. 主語は関係代名詞котораяです. 残りを確認しましょう.
次はэлектрические токи той же величиныの塊です. электрические (<- электрический, electric)は形容詞で複数の主格・対格, токи (<- ток, current)は名詞の複数主格・対格, той (<- тот, that, the one)は限定詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, же (and, but, on the other hand)は接続詞, величины (<- величина́, amount)は女性名詞の単数生格です. ここまでを上に添えた訳語で直訳すれば, electric current of that amountです.
最後にи того же направления, что и электри́ческое поле в первом случаеを調べます. и (and)は接続詞, того (<- тот, that, those)は限定詞で男性生格・対格 же (very, same)は強調の不変化詞, направления (<- направле́ние, direction)は不活動体中性名詞の単数生格または複数主格・対格, что (that, what)は代名詞・接続詞・疑問詞, иは強調の不変化詞, электри́ческое поле (electric field)は электрическое (<- электрический, electric)は形容詞の中性主格・対格, поле (field)は不活動体中性名詞の主格・対格, первом (<- пе́рвое, the first thing)は不活動体中性名詞の単数前置詞格, случае (<- слу́чай, case)は不活動体中性名詞の単数前置詞格で, ここからвは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onのような意味で訳せます. まとめると次のように英訳できるでしょう.
- and the direction of the electric field of the first case
まとめて綺麗にすると次のように書けます.
- but which causes electric currents of the same magnitude and direction as the electric field in the first case.
--- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---¶
при (in the presence of; in the time of; at, by)は前置詞格支配の前置詞です. предполагаемой (<- предполага́ть, assume)は過去分詞で, 形容詞として女性形生格・与格・具格・前置詞格, тождественности (<-тождественность, identity)は女性名詞の単数生格・与格・前置詞格または複数の主格・対格です. 特に前置詞格と思えばいいでしょう. したがってこれらをまとめて前置詞格とみなせばよいでしょう.
さらに形容詞относительного (<- относи́тельный, relative)は男性生格・対格または中性生格で, движения (<- движе́ние, movement)は中性名詞単数生格, 複数主格・対格で, тождественностиに対する修飾としてof relative motionの意味で取ります.
前置詞в以下はслучаях (<- слу́чай, case)は中性名詞の前置詞格の複数形なので, вを前置詞格支配(in, at, on)とみなし, 数詞обоих (<- о́ба, both)は男性・中性複数形の前置詞格, интересующих (<- интересующий <- интересова́ть, to interest)は複数前置詞格, 代名詞нас (<- мы, we)は複数前置詞格とみなせばよいでしょう. ここは全体でin both cases of interest to usとでも訳せます.
上記英訳では次のように訳されています.
- ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---
次のように訳すともう少し直訳調になるでしょう.
- with the assumed identity of the relative motion in both cases of interest
単語¶
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- же:
-
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
-
- магнит: 男性名詞, 単数主格・対格, 不活動体 (inan): magnet
- находится <- находиться: 動詞, 不完了体, 三人称単数
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- to be found, to turn up
- to be located, to be situated (no perfective form)
- to be in some condition (no perfective form)
- to happen to have, to be found, to be discovered
- passive of находи́ть (naxodítʹ)
- 動詞, 完了体, находи́ться • (naxodítʹsja) pf (no imperfective form)
- to walk for a long time
- to tire oneself by walking
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- покое <- поко́й: m inan, rest
- prepositional singular of поко́й (pokój)
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- движется <- дви́гаться: 不完了動詞, 自動詞, impf (perfective дви́нуться): move
- third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
- проводник: 男性名詞, 単数主格・対格, 活動体・不活動体, genitive проводника́, nominative plural проводники́, genitive plural проводнико́в, feminine проводни́ца,
- conductor
- то: 限定詞: тот • (tot) m (demonstrative)
- neuter singular nominative of тот (tot); that
- вокруг: 前置詞, 生格(属格)支配: round, around, about
- магнита <- магнит: 男性名詞, 単数生格
- не: 不変化詞(Particle)
- (negative in full) not, no, -n't, without
- Idiomatic negative usage
- (partial negative) perhaps not, whether ... or not
- will never (implying impossibility to do something)
- (usually not translated, gives affirmative meaning for expression, especially in exclamations)
- возникает <- возника́ть: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть)
- to arise, to appear, to emerge, to originate, to spring up
- (slang) to object, to protest
- third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- никакого <- никако́й: 代名詞, not any of possible variants, no, none; (in a negative context) whatever, whatsoever, absolutely
- inflection of никако́й (nikakój)
- genitive masculine/neuter singular
- animate accusative masculine singular
- электрического <- электрический: 形容詞, electric, 男性単数生格・対格
- поля: 中性名詞, 不活動体, 複数主格・対格, field
- зато: 副詞
- (hedge) on the other hand
- but for all that
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- проводнике <- проводник: 男性名詞, 活動体・不活動体, 単数前置詞格, conductor
- bian masc-form velar-stem accent-b
- guide (person)
- conductor, guard, train attendant (on a train)
- conductor (physical, electrical)
- электродвижущая <- элѐктродви́жущий: 形容詞, 女性単数主格, electrodynamic
- эnлектродвижущая сила: 起電力
- дви́жущий: 現在分詞, движущая: 女性形の主格
- сила: 女性名詞, 不活動体(síla), 主格・対格
- которой: 関係代名詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格, which
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of кото́рый (kotóryj)
- самой <- сам: 代名詞, self, 女性生格・与格・具格・前置詞格
- сам по себе: on one's own, by oneself, alone
- по: 前置詞
- with accusative case
- up to
- till
- indicates distribution (with numerals other than one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending these words)
- with dative case
- along
- over
- around
- about
- on
- according to
- showing the cause that is unwanting or unwilling (see indicates the direct object of some verbs of striking or hitting indicates repetition of time indicates distribution (with numerals one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending in these words)
- with prepositional case
- on, immediately after
- for
- to the liking of
- with accusative case
- себе: 再帰代名詞, oneself
- dative/prepositional of себя́ (sebjá)
- не: no
- соответствует : 動詞, 三人称単数現在, correspond
- third-person singular present indicative imperfective of соотве́тствовать (sootvétstvovatʹ)
- никакая: 不定代名詞, none
- nominative feminine singular of никако́й (nikakój)
- энергия: 女性名詞, 単数形主格, 不活動体, genitive эне́ргии, nominative, plural эне́ргии, genitive plural эне́ргий
- energy, power
- vitality
- vigor
- но
- 接続詞: but, yet
- 名詞, 不活動体, 不変: but
- которая <- который: 疑問詞, 関係代名詞, 女性単数主格: which
- при: 前置詞 (pri), +locative case or prepositional case: in the presence of; in the time of; at, by
- предполагаемой: 過去分詞, (形容詞として)女性形生格・与格・具格・前置詞格
- present passive imperfective participle of предполага́ть (predpolagátʹ)
- тождественности <- тожде́ст венный
- equality
- то́ждество: identity, equivalence
- относительного <- относи́тельный: 形容詞, 男性生格・対格または中性生格
- relative
- (grammar) relative (as in relative clause)
- comparative
- движения <- движе́ние: 中性名詞単数生格, 複数主格・対格, movement
- inflection of движе́ние (dvižénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- обоих <- о́ба: 数詞, both
- inflection of о́ба (óba)
- animate accusative masculine/neuter plural
- genitive/prepositional masculine/neuter plural
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格
- интересова́ть: 動詞, 不完了体, интересова́ть • (interesovátʹ) impf (perfective заинтересова́ть)
- to interest, to concern
- нас <- мы: 代名詞, we, 複数生格・対格・前置詞格
- случаях <- слу́чай: 中性名詞
- case
- occurrence, event
- occasion
- opportunity, chance
- слу́чаях • (slúčajax) m inan pl
- prepositional plural of слу́чай (slúčaj)
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать)
- to call, to send for
- to challenge, to defy
- to summon
- to arouse, to cause, to stimulate, to evoke, to call forth
- third-person singular present indicative imperfective of вызыва́ть (vyzyvátʹ)
- электрические <- электрический: 形容詞, 複数主格・対格, electric
- токи <- ток: 男性名詞, 不活動体, 複数主格・対格: (water, electricity) current, (agriculture) threshing floor
- то́ки • (tóki) m inan pl
- nominative/accusative plural of ток (tok)
- той <- тот: 限定詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格: тот • (tot) m (demonstrative)
- that, those
- the one
- the other
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of тот (tot)
- же
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
- 接続詞
- величины <- величина́: 女性名詞, 単数生格, amount
- величины́ • (veličiný) f inan
- genitive singular of величина́ (veličiná)
- и: 接続詞, and
- того
- 限定詞 <- тот, that, those
- inflection of тот (tot), 男性生格・対格
- 述語
- (colloquial, euphemistic) not right in the head, daft, crazy
- (colloquial, euphemistic) tipsy, drunk
- (colloquial, euphemistic) not great, not very good
- (colloquial, euphemistic, crime) taken care of, murdered
- 限定詞 <- тот, that, those
- же: 上記参考
- направления <- направле́ние: 中性名詞, 不活動体, 単数生格, 複数主格・対格, direction, orientation
- направле́ния • (napravlénija) n inan or n inan pl
- inflection of направле́ние (napravlénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- что: 代名詞・接続詞・疑問詞: that, what
- и: 接続詞, and
- электрическое <- электрический: 形容詞, 中性主格・対格, electric
- электри́ческое поле: electric field
- поле: 中性名詞, 不活動体, 主格・対格, field
- в: 前置詞, 上記参照
- первом <- пе́рвое: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, the first thing
- пе́рвом • (pérvom) n inan
- prepositional singular of пе́рвое (pérvoje)
- случае <- слу́чай: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, слу́чай • (slúčaj) m inan (genitive слу́чая, nominative plural слу́чаи, genitive plural слу́чаев)
- case
- слу́чае • (slúčaje) m inan
- prepositional singular of слу́чай (slúčaj)
2022-04-23¶
数学・物理 通信講座の募集は明日までです/相転移プロダクション¶
今週は通信講座の準備で忙しく, メルマガは書きかけのメモしかないため, 案内の最終連絡だけ手短に.
ここ何回かで連絡してきた, 三ヶ月の短期集中の力学通信講座は明日で締め切ります.
継続的に勉強してもらうための工夫なので, またいつか開講するタイミングはありますが, 少なくとも三ヶ月より先です. 今回はタイミングが合わなかった人も, 次回ぜひ積極的に参加してください.
来週はいつものメルマガに戻ります. ではまたメールします.
語学 相転移プロダクション¶
お休み.
2022-04-20 号外¶
数学・物理 号外: 通信講座に関して/相転移プロダクション¶
はじめに¶
通信講座に関して問い合わせがあって, 返信を書いていたらすごく長くなった上に他の人にも参考になると思ったため, メルマガにも放流します.
最初に書いておきましょう. 毎日22:00-23:00でもくもく会(オンライン勉強会)をやっています. 最後にそれをやっているオンライン部活サービスENERGEIAへのリンクをつけました. そこで具体的なURLなどをアナウンスしているので, 直接相談したい人はそちらからどうぞ.
ゴリゴリ計算する時間が作れない人はつらいだけだから時間ができてからにしてね, と案内ページで書いているように無理な勧誘などはしません.
質問内容¶
大雑把に言えば「理工系を出てはいるが, しばらく触れていないため高校数学の知識さえ結構抜けている. それで参加しても大丈夫か?」という話でした.
回答概要¶
語学や最近私自身がプログラミング学習でやっている方法を例に, 勉強の取り組み方自体を変えてみてはどうか, それを身につける時間に使ってはどうかと提案しました. 最終的には明日以降, ENERGEIAのもくもく会・勉強会タイムで話をします.
回答(を整理・抜粋)¶
うまいことまとまらずものすごく長くなりました. 大事なので後でメルマガでも流そうと思います.
結論から言えば, 「独りだと続けられないから人を巻き込もう」の方が重要なコンセプトで, こちらに心が反応するかどうかだろうと思います.
そしてもう一点. どう書こうかと思っていろいろ考えていたのですが, 一つ心に留めておいてほしいのは「まずは解答をしっかり読む」です. 定義や定理が頭に入っていなくて困るというのは, 何も見ずに自力で解こうとするからではないでしょうか? 定義や定理が頭に入っていない状態で慣れていない問題を自力で解くのは本当に大変です. 英単語や英文法がわからないのに英作文しようと言っているようなものです. 以下説明を続けます.
さて, まずは最近プログラミングがらみで実際に私も積極的にやっている内容を紹介します. これをそのまま勧めたいからです. あとで語学の事例も書きますが, プログラミングの例がよくわからなければ語学を考えてみてください.
いま私はプログラミング学習でAtCoderやAOJで競技プログラミングをやっています. 特にデータ構造やアルゴリズム学習学習のためで, プログラミング系コンテンツ作成のためでもあります. 最近は少し難しめの問題に挑戦するようになってきたのでさっと簡単に解くとはいきません. まずは10分くらい考えます. 頑張れそうなときはそのまま頑張りますが, 何も思い浮かばければ解説を読み, 解説の通りに実装しようと頑張ります. うまくいかない場合, 他の人の解答を読みます.
コードゴルフほどではないにしろ, 競プロのコードは圧縮された形で書かれていたり, 逆に自分用ライブラリで埋めつくされた解答があります. 短めで読みやすそうな解答をいくつか見繕ってそれを読みます. 特によさそうな解答に対して, 変数名を自分にとってわかりやすくしたり, 必要があれば分解したり, 一つにまとめたりして自分の解答として整理していったん終わりにします. その上で何回か復習します.
ポイントは自分でプログラムを書くよりも, むしろ他の人の解答の理解を重視する点です. これを語学に即して説明しましょう.
このメルマガを読んでいる人は, 多少なりとも英文はある程度読めて聞けるでしょう. しかし書く・話す方は読むのに比べてかなりレベルが下がると思います. 少なくとも私はそうです. 小学生の発言に対応するリーディング・リスニングはできても, 小学生の発言に対応するライティング・スピーキングは絶望的に難しいです. 物理・数学・プログラミングの用事は足せても日常会話がまるでさばけません.
何かと言えば, 受動的な方はある程度何とかなるものの, 能動的に出力しなければならない方が大変です. プログラミングでも同じで「読めても書けない状態」です. 「英作文は英借文」と言われます. いくつか典型的な文はきちんと覚えておいて, それをうまく変形したり組み合わせる必要があります. 個々の単語や文法も必要ですが, その上で単語や文法をどう使って具体的な文章を作るか自体も覚えておく必要があります.
私の語学のメルマガを読んでいる人はわかると思いますが, いま私はアインシュタインの特殊相対性理論のロシア語翻訳を読みつつロシア語を勉強しています. ロシア語は全く書けませんが, 文法を並行して勉強していて読む方は多少なりとも何とかなるようになりました. 英語・ドイツ語と比較しながら読んでいるからでもあります. 単語や活用も早く覚えないといけないのですが, オンライン辞書を使うと覚えていなくても何とかなってしまうため, まずはやる気が出るところからはじめて習慣作りを大事にしてロシア語(語学)に取り組んでいます. なぜ英語以外の語学をやっているかは次のページに書いたので, 興味があれば読んでみてください.
物理や数学も語学やプログラミングと同じです. 書くよりも読む方が楽です. 学部初年次の難なく理解できる証明でも, 空で書けるかと言われたらきついことは多いでしょう. 特に計算がハードだと計算ミスも頻発します. 語学でも三単現のsを忘れたり時制の一致を忘れたり, 冠詞を忘れたり, 読む分には問題なくても常にきちんと英文を書き切れる自信がある人はそういないのではないでしょうか.
というわけでまずは解答や証明を読めるようになりましょう. 形式的に「問題」と呼ばれる対象であっても, 無理に自力で解こうとせず, 解答をじっくり読むことに注力してください. 解答を読んでわからない問題が自力で解けるわけがありません.
数学や物理で言えば, 公式を見直して自力で問題を解くために議論の組み立て方そのものもある程度覚える必要があります. Twitterでも時々話題に上がります. 数学で言えばよく「定義を大事に」と言われますし, 結城浩さんの数学ガールで言えば「例示は理解の試金石」として有名なフレーズもあります. これは学習法でもあれば議論の組み立て方でもあります.
高校では数学力の制限もあって, エネルギー保存なども個別具体的な暗記事項になりがちです. 大学の物理(古典力学)だと全ては運動方程式から出てくるのであって, 全て運動方程式から出すという思考の組み替えが必要です.
以前, 高校物理・数学はいくらやっても大学の数学・物理の役に立たないと書いたことがあります. その理由はこれです. 知識の話ではなく取り組む姿勢や議論の構成そのものが決定的に変わりますし, この思考様式の構築が物理や数学と言えるケースさえあります. 高校の物理・数学と大学の物理・数学のギャップ, 特に集合や位相のような基礎科目でのギャップとして抽象性などが挙げられる場合があります. そこはそこで確かにハードルですが, もっと根本的なハードルはゲームそのものが変わっていて, 取り組み方を変えないといけない点です.
数学で定義を大事にしろというのは, 定義に議論のエッセンスがつまっているからです. 「よい命題は定義になる」という言葉もあるほどです. (誰の発言か忘れましたが, 数理物理的関数解析の聖典, Reed-Simonの確か第一巻に発言が引用されていた記憶があります.) メルマガ読者の方なら「よい命題」概念は多かれ少なかれ通じると思いますが, 命題の良さの尺度として「定義として採用されるか」もあるのです.
例を挙げれば例えば連続性や微分可能性です. この性質があればいろいろなよい命題・定理が成り立ちます. よい命題・定理を支える性質だからこそ重要でわざわざ名前をつけるのです.
いいはじめるときりがないのでこのくらいにしますが, せっかく膨大な時間を割いて今回の通信講座に参加するなら, 具体的な計算力とともにこの思考様式を身につけてほしいと思っています. Twitterで小学生から高校生まで一気通貫で見る機会の多い塾講師の人達の発言を見ていると, 「できない子は手を動かそうとしない」とよく言っています. 今回改めて強調したいのは, 今回身につけてほしい「手を動かす習慣」にあたる行為は「解答をしっかり読みこなす」です. 解答は証明と読み替えても構いません.
「言われなくてもやっている」と言う人もいるでしょうが, 特にもしあなたが社会人で学生時代の専門が物理や数学ではない上でこれらを勉強しようとしているなら, 物理学科・数学科水準で本を読む姿勢を身につけられていると自信を持って言えるでしょうか? 「例示は理解の試金石」を知っている人は, 数学で必要なときに必要な例をさらっと出せるでしょうか. 何度か紹介しているように, 数学ではクリティカルな例や反例を作るだけで論文になります. 例を作るのをこのレベルで重視しているので, 何か言われて即座に例を作れない人に対する理解度判定は極めて厳しくなります. 「知っているべき有名な例」という概念さえあります.
この意識の変容に取り組むのは本当に大変で, 計算力以上に三ヶ月でどうにかなる話ではありません. しかし裏テーマとして常に抱えておくべきなのだろうと改めて実感しています.
自分用メモ¶
- これまでとコンセプトが違うコンテンツ・通信講座でもあるため, 通信講座用に簡単な公式集的なモノもあった方がいいかもしれない.
ENERGEIAへのリンク¶
最後に相談用の勉強会zoomのリンクを出しているENERGEIAへのリンクを張っておきます.
- 数学和尚の数学かけこみ寺
- 部活への直リンク https://energeia.app/club/36
今回の通信講座用のもくもく会・勉強会は上記部活用のもくもく会とは完全に切り離して運営します. 上記部活のもくもく会は私の体調や都合が悪くない限り土日でも毎日開催していますし, 参加も自由です. 興味があれば気軽に参加してください. 部活のもくもく会はコンテンツ作成などの作業タイムでもあるため, 話かけられても応えられないかもしれません. 予めご了承ください.
2022-04-16¶
数学・物理 通信講座の正式案内/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 位相のハマりポイント
- 群の内部自己同型の名前の由来
- 計算数論システム入門
- Google Scholar
- 宣伝: いろいろなプログラミング入門
- 通信講座の正式案内
- 今後の予定
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
位相のハマりポイント¶
位相空間Xの開集合Uと位相空間Yの開集合Vとの直積U×VはX×Yの開集合になる?
XxYに直積位相が入っていることを前提にしたコメントしかないようだが、そもそもどの位相を考えているかさえ言及がないのだから誠実な回答は「考えている位相による」なのでは。
そうか・・・そうですよね・・・
実際に直積にどんな位相を入れるかが大問題になる議論としてチコノフの定理がある(いわゆる直積位相ならいいが、無限直積の時に箱位相で問題が起きる)ので、考えている位相を意識しないと本当にハマります。
そうなんですね。直積の時は気をつけないとですね…
関数解析(バナッハ空間)だとノルムによる強位相が普通の位相である一方、弱位相があり、双対空間にはこの二つに加えて弱*位相が入ったり、作用素環でも(形式的には)七つ位相が入ります。
他にはザリスキ位相で積空間に入れる位相と個々の空間の積からの積位相で挙動が変わる有名な例があります。Math StackExchange, Zariski Topology question ある(よく使われる)位相での常識が他の位相で通じない例もあるので、位相は気を抜けるところがあるイメージがありません。
位相そんなに奥が深いのか…
私も学部は数学ではないので、私の位相への認識は数学科の常識レベルに達しているとさえ思えません。何を目的にどうしたいのかよりますが、余裕があるなら最近増えている個人指導お願いしたほうがいいのではないでしょうか。位相空間に挑む上で数学の勉強の仕方そのものが問題になる可能性があります。 変な例の把握まで含め、位相の基本ができていないと先々のありとあらゆるところで詰まります。位相を使う・使わないではなく、先々でそこで身につけているべき数学的態度・思考が前提になるからです。単純な知識以上の問題で身につけるのも大変で、明記さえされないからです。
そうなんですか…個人指導に頼むのも一つの手か…
良くも悪くも、数学科の教科書は数学科で使うこと(だけ)を前提にしていて、低学年でやっていることは前提にしないことにはまともな分量の本になりません。もちろん数学に限らない話ですが。
最後の「低学年でやっていることは前提にしないことにはまともな分量の本になりません」は本当に厳しく, 通信講座用に復習も組み込みながら書いたといった理由もあるにせよ, 実際に私の現代数学探険隊解析学編は集合・実数・位相までで1500ページ程度の異常な量があります.
ちなみに物理で数学科の集合・位相にあたるのは, 現状では何だかんだ言っても古典力学でしょう. エネルギー・運動量やそれらの保存, 近似に対する感覚の養成などは力学で培われたと思います.
以前堀田さんの量子力学の教科書が出たときに何度かコメントしましたが, 最近では現代的な理解に即した量子力学学習も決定的になりつつあるように思います. これについては私自身まだ追いつき切れておらず大きな課題です.
群の内部自己同型の名前の由来¶
内部自己同型って、どのあたりが内部なの?
私の守備範囲でいうとhttps://math.stackexchange.com/questions/2242038/characterization-of-inner-automorphisms-of-a-von-neumann-algebraの話題があります。つまりフォンノイマン環Mのユニタリ元自身(内部の元)でuxu^と書ける自己同型が内部自己同型です。適当な意味でフォンノイマン環の自己同型は全てユニタリによってuxu^と書けるのですが、u \in Mかどうかが問えます。
リプライに気付いて、読んで考えていて、(私のツイートは群の内部自己同型のことを特に考えていたのですが、)内部の元(と二項演算)で書こうとすると、両側からこの形で挟むしかないんですね。(単位元を単位元に移さないといけないから。)なるほど、"内部"ということに納得が行きました。
内部同型と自己同型については次のMath StackExchangeの議論も面白いです.
上のコメントを受け入れると可換群の内部自己同型は自明な変換に限ると言え, そうした点についても指摘がまとまっています.
ちなみに連続体仮説を仮定するとカルキン環と呼ばれるC^*環に内部的でない自己同型が定義されます. きちんと調べ切れておらず詳しい状況はいまだ把握できていないのですが, 私が修士二年のときの日本数学会で基礎論の人が関数解析の部でこの講演をしていて, 基礎論の非専門家に向けて「こういうふうに言ってしまうと語弊があるのですが」と言った譲歩つきの発表をしていたのをいまも覚えています. 基礎論は数学者相手でさえ誤解を招かないように話すのが本当に大変なのだろうと.
計算数論システム入門¶
6/27-7/1 に京都大学数学教室にて集中講義を担当します。一度しっかり計算数論システムの入門をやってみたかったので、理論より実践を意識した内容にするつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。
何回か数学+プログラミング関係で反響を頂いていますが, そういう方はちょっと眺めてみてはどうでしょうか? 京大での集中講義ですしさすがにそんなに簡単とは思いませんが, 遊び倒す方向のヒントになるかもしれません.
私も早く確認したいところですがなかなか時間が取れません. 数論はある程度まで厳密計算もできる部分もあり, プログラミングで遊ぶ観点からはかなり気になっています.
Google Scholar¶
数学論文の探し方 https://youtu.be/JCmHSVeotBQ より 数学の論文の検索方法などについて説明しています。 修士課程に入学したばかりの学生や学部4年生くらいを想定しています。
私はGoogle Scholarをよく使うのですが、以前関連ツイートをしていたので本ツイートのツリーでRTします ここに書いてあることに加えて、Google Scholarで単語検索するとおそらく論文本文まで検索して候補出してくれるのが強いですね。 いま思い出したんですけど、MathSciNetだと AMS Mathematics Subject Classificationの区分ごとに論文一覧出せるので、特定の分野の最新の論文を網羅的に見たい場合は非常に便利です。
これのリプライツリー読んでふむってなった。私はGoogle Scholar酷使マンなのでMathSciNetの仕様は知らないんですけど、GSの方の特徴(体感)としては
- ・被引用リスト漏れは滅多にない
- ・自著に限らず論文被引用アラート設定ができる
- ・出版論文にプレプリント版がある場合は関連バージョン一覧に載る
- ・カンファレンスのスライドや、大学のレポジトリで公開された学位論文や個人のノートなども出版論文と同列に扱われる(反映は遅いかも)
- ・bibtex等の引用データはある程度は出力できる(画像参照)。ただし私はbiblatex使ってるのでこの機能は使用しない。
なので、大きな違いは、アラート機能の有無と、出版物以外の文献の扱いなのだと思う あ、あとMathSciNetのレビューも
考えてみれば体系的な文献検索法をきちんと習った記憶がないですね. 図書館のイベントで文献検索法みたいなのはあった気はします. 今になってそういう基礎教育の重要性を思います. きちんと参加しておけばよかった.
宣伝: いろいろなプログラミング入門¶
いまオンラインすうがく徒のつどいに向けて改めていろいろな調べ物もしています. 前もいくつか紹介したと思いますが, ゲームでプログラミングを学ぶ方向もあります. 私のメルマガに登録している人達にはあまり興味ない方向性のような気はしますが, ご自身のお子さんや親戚の子供などに聞かれる機会もあるでしょう. そしてプログラミング勢ばかりが読んでいるわけでもないので, 念のため共有しておきます.
通信講座の正式案内¶
さすがに土曜には終わるかと調子に乗っていたら日曜の終わりも終わりまでかかってしまいました.
詳しいことは上記リンク先の案内ページを見てください. いつも公開後はずっと申込をオープンにしていますが, 今回は「三ヶ月の期限を区切ってがんばろう」という講座なので, 申込期限を区切ります. 改めてここでも書いておくと有料です.
来週日曜まで口を開けておくので, 興味がある方はぜひ受講してください. 例と計算編の一環として他にも短期集中講座は続ける予定ですが, いわゆる古典力学はしばらくやらないと思います. 機会が噛み合った方はぜひどうぞ.
今後の予定¶
短期集中講座を続けると書きました. 今のところ作りたいと思っているのは次のあたりです.
- 電磁気とベクトル解析ノート
- 量子力学と線型代数
- 特殊相対論的力学
- 熱力学と偏微分・凸関数ノート
このうち, 電磁気と言われると微妙なものの, ベクトル解析は既にある程度できています. 量子力学と線型代数はニールセン・チャンの第二章の解答集で相当いろいろ遊べます. 確か第二章の問題は100題くらいあったと思いますが, いま60題程度まで解答をつけてあるので, これもうまくいけば今年に組み込めます.
熱力学は原・田崎のイジング本の前哨戦としても復習したいと思っていて, 改めて理論の大枠を確認しつつ, 面白い計算問題をピックアップできればという野望だけはあります.
(特殊)相対性理論は学生の頃にほとんど真面目に勉強できていなかった分野です. 一般相対性理論は準リーマン幾何であってなかなか面倒な部分はあるものの, 微分幾何への直観を育む点からも面白そうと思っていて, 手始めに特殊相対性理論から計算し倒す野望があります.
行列べったりのリー群・リー環も日々計算を進めています. これは微分積分・線型代数の直接的な延長からの数学科の数学, 特に位相空間論・位相幾何的な議論・多様体論への接続としても便利ですし, 表現論は量子力学や素粒子への応用もあります.
リー群上での微分幾何も対称空間論など大きなテーマがあります. リー群の特殊事情を使っていくつか微分幾何の一般論が簡単になっている面もあれば, 特殊事情を使って比較的初等的な範囲で過剰な予備知識なしにさらに深く突っ込める面もあり, とにかく面白いところしかない分野です. 一般論を低次の具体的なところで計算するだけでも十二分な意味があり, これで一生遊び倒せる分野です.
リー群はいろいろな本やコンテンツがあり, 講義ノートもたくさん落ちていて独学のためのコンテンツ自体は山程あります. そのうち通信講座も作ろうと思いますが, もし待ち切れないなら自分のペースでどんどん突っ込んでいってください.
今週の問題¶
今週は通信講座の詰めをずっとやっていてあまり進展がありません. 強いていうなら息抜きにNielsen-Chuangの二章の問題2.66を解いたくらいです.
ここ三ヶ月くらい, 具体的な計算といいつつ文字の一般論ばかりだったので, パウリ行列のようなふつうの数を要素にした行列の具体的な計算は久し振りでした. 計算が合っているか不安になったのでsympyで検算したりもしました.
Python本体のsympyは記号が重たい一方, Juliaから呼び出す方が書きやすくなっています. ただJuliaの方はフルの機能が使えないようでそれがつらいです. いっそMaximaをうまく使えないかとも思っていますが, これはこれでMaximaの勉強が追いついていません.
プログラム援用コンテンツをどう作るかもさることながら, 自分の日々の計算にどう組み込むかもずっと懸案です. WolframalphaのようなWebベースの無料のモノもありますし, これを使うようにした方がいいかといった話もあり, 悩みは尽きません.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第五文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- ロジバン言語:
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第五文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
ロジバン言語¶
魔法少女(もはやそういうスクリーンネームは設定しないが, Twitterの特定アカウントを指す)がエスペラントと対比してコメントしていたので気になってとりあえずごく簡単に検索しました.
言語表現の論理的な構造を正確に(そしてしばしば簡潔に)記述するために開発されてきた述語論理を文法の基盤としている。
ロジバンの表記法や統語法はいかなる不規則性もきたさないように設計されているため、コンピュータによる解析や人による読解が容易である。実際、1997年時点でロジバンの公式の文法は Yacc 文法で書かれており、2015年現在では PEG で書かれた文法もある。そのため、ロジバンの構文解析器は非常に実装しやすく(その容易性の観点からみれば、ロジバンは自然言語よりもプログラミング言語に近い)、いくつかの構文解析器はロジバンの学習過程において広く使われている。このことから、日常会話としての言語だけでなく、プログラミング言語としての可能性も秘めている。
上記の記事中, こう書いてありました. 非常に気になっています. ロシア語・中国語・アラビア語も勉強したく, 述語論理などの数理論理も勉強したく, とにかく時間が足りません.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第五文¶
文構造¶
- Если же магнит находится в покое, а движется проводник,
- то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;
- зато в проводнике возникает электродвижущая сила,
- которой самой по себе не соответствует никакая энергия,
- но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.
- --- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---
動詞は次の通りです.
- находится: 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь), to be found, to turn up
- возникает: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть), to arise, to appear, to emerge, third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格, concern
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать), to call, to send for
接続詞は次の通りです.
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- но: 接続詞: but, yet
- которой: 関係代名詞
- которая: 関係代名詞
Если же магнит находится в покое, а движется проводник,¶
動詞は不完了体находится (<- находиться, to be in some condition), движется (<- дви́гаться, move)があります. さらにа (and/but)とЕсли же (if)が接続詞で, Если жеが導く従属節の中にаがあります.
動詞はどちらも三人称単数で, магнит (magnet)が男性名詞単数の主格・対格, проводник (conductor)が男性名詞単数の主格・対格なので, これらがそれぞれの動詞の主語でよいでしょう.
残るはв покоеで, покое (rest)は男性名詞不活動体の単数前置詞格だから, вは前置詞格をしたがえるときのin, at, onの意味で取ればよいでしょう.
これをまとめると次のように英訳できます.
- If the magnet is at rest and the conductor is moving,
то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;¶
動詞はвозникает (<- возника́ть, to arise, to appear)で三人称単数現在形です. 冒頭のто (<- тот, that)は中性名詞として単数主格・対格だからこれを主語とみなせばよいでしょう. さらにвокруг (around, about)は生格支配の前置詞で, магнита (магнит, magnet)は男性名詞の単数生格だからこれがтоにかかります. не (no)は副詞として動詞を否定します.
最後にникакого (<- никако́й: 代名詞, no, none)は男性・中性の生格, электрического (<- электрический, electric)は形容詞で男性形単数生格・対格, поля (field)は中性名詞不活動体複数の主格・対格です. ここではполяを対格とみなし, никакогоとэлектрическогоがполяにかかると見ればいいでしょう.
これの英訳は次のようになっています. ロシア語と文法的に正確な対応はないものの意味はこの通りです.
- no electric field arises in the neighbourhood of the magnet
зато в проводнике возникает электродвижущая сила,¶
この文の動詞はвозникает (возника́ть, to arise, to appear)で, 三人称単数の現在形です. 主格を探すと不活動体の女性名詞силаが主格・対格です. さらにэлектродвижущая (элѐктродви́жущий, electrodynamic)があります. 後半のдвижущаяはдви́жущийがдви́гатьの現在分詞で, движущаяは女性形の主格です. 特にэnлектродвижущая силаで起電力と訳せます.
зато (on the other hand)は副詞です. 男性名詞проводнике (проводник, conductor)は前置詞格なので, вは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onの意味を持ちます.
まとめると次のように英訳できます.
- instead, an electromotive force arises in the conductor,
которой самой по себе не соответствует никакая энергия,¶
冒頭のкоторойは関係代名詞で, силаを受けているとみなすのが自然でしょう. 実際女性形の生格・与格・具格・前置詞格です.
ここで動詞はсоответствует (<- соотве́тствовать, correspond)で三人称単数現在形です. いま不定代名詞никакая (<- никако́й, not any, none)は女性単数主格, энергия (energy)は女性名詞で単数形主格です.
最後にсамой (<- сам, self)は代名詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, поは前置詞で対格・与格・前置詞格支配でどの格かによって意味が変わります. себе (<- себя́, oneself)は再帰代名詞で与格・前置詞格です. ここではсам по себеでon one's own, by oneself, aloneの意味があります. 最後にнеはnoです.
まとめると次のように訳せます.
- which in itself does not correspond to any energy,
но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.¶
まずно которая вызываетを調べます. но (but, yet)は接続詞で, которая (<- который, which)は疑問詞・関係代名詞で女性単数主格です. 直前の女性名詞のэнергияを受けていると見てよいでしょう. 動詞はвызывает (<- вызыва́ть, to cause)で不完了体の三人称単数現在形です. 主語は関係代名詞котораяです. 残りを確認しましょう.
次はэлектрические токи той же величиныの塊です. электрические (<- электрический, electric)は形容詞で複数の主格・対格, токи (<- ток, current)は名詞の複数主格・対格, той (<- тот, that, the one)は限定詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, же (and, but, on the other hand)は接続詞, величины (<- величина́, amount)は女性名詞の単数生格です. ここまでを上に添えた訳語で直訳すれば, electric current of that amountです.
最後にи того же направления, что и электри́ческое поле в первом случаеを調べます. и (and)は接続詞, того (<- тот, that, those)は限定詞で男性生格・対格 же (very, same)は強調の不変化詞, направления (<- направле́ние, direction)は不活動体中性名詞の単数生格または複数主格・対格, что (that, what)は代名詞・接続詞・疑問詞, иは強調の不変化詞, электри́ческое поле (electric field)は электрическое (<- электрический, electric)は形容詞の中性主格・対格, поле (field)は不活動体中性名詞の主格・対格, первом (<- пе́рвое, the first thing)は不活動体中性名詞の単数前置詞格, случае (<- слу́чай, case)は不活動体中性名詞の単数前置詞格で, ここからвは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onのような意味で訳せます. まとめると次のように英訳できるでしょう.
- and the direction of the electric field of the first case
まとめて綺麗にすると次のように書けます.
- but which causes electric currents of the same magnitude and direction as the electric field in the first case.
--- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---¶
при (in the presence of; in the time of; at, by)は前置詞格支配の前置詞です. предполагаемой (<- предполага́ть, assume)は過去分詞で, 形容詞として女性形生格・与格・具格・前置詞格, тождественности (<-тождественность, identity)は女性名詞の単数生格・与格・前置詞格または複数の主格・対格です. 特に前置詞格と思えばいいでしょう. したがってこれらをまとめて前置詞格とみなせばよいでしょう.
さらに形容詞относительного (<- относи́тельный, relative)は男性生格・対格または中性生格で, движения (<- движе́ние, movement)は中性名詞単数生格, 複数主格・対格で, тождественностиに対する修飾としてof relative motionの意味で取ります.
前置詞в以下はслучаях (<- слу́чай, case)は中性名詞の前置詞格の複数形なので, вを前置詞格支配(in, at, on)とみなし, 数詞обоих (<- о́ба, both)は男性・中性複数形の前置詞格, интересующих (<- интересующий <- интересова́ть, to interest)は複数前置詞格, 代名詞нас (<- мы, we)は複数前置詞格とみなせばよいでしょう. ここは全体でin both cases of interest to usとでも訳せます.
上記英訳では次のように訳されています.
- ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---
次のように訳すともう少し直訳調になるでしょう.
- with the assumed identity of the relative motion in both cases of interest
単語¶
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- же:
-
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
-
- магнит: 男性名詞, 単数主格・対格, 不活動体 (inan): magnet
- находится <- находиться: 動詞, 不完了体, 三人称単数
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- to be found, to turn up
- to be located, to be situated (no perfective form)
- to be in some condition (no perfective form)
- to happen to have, to be found, to be discovered
- passive of находи́ть (naxodítʹ)
- 動詞, 完了体, находи́ться • (naxodítʹsja) pf (no imperfective form)
- to walk for a long time
- to tire oneself by walking
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- покое <- поко́й: m inan, rest
- prepositional singular of поко́й (pokój)
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- движется <- дви́гаться: 不完了動詞, 自動詞, impf (perfective дви́нуться): move
- third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
- проводник: 男性名詞, 単数主格・対格, 活動体・不活動体, genitive проводника́, nominative plural проводники́, genitive plural проводнико́в, feminine проводни́ца,
- conductor
- то: 限定詞: тот • (tot) m (demonstrative)
- neuter singular nominative of тот (tot); that
- вокруг: 前置詞, 生格(属格)支配: round, around, about
- магнита <- магнит: 男性名詞, 単数生格
- не: 不変化詞(Particle)
- (negative in full) not, no, -n't, without
- Idiomatic negative usage
- (partial negative) perhaps not, whether ... or not
- will never (implying impossibility to do something)
- (usually not translated, gives affirmative meaning for expression, especially in exclamations)
- возникает <- возника́ть: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть)
- to arise, to appear, to emerge, to originate, to spring up
- (slang) to object, to protest
- third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- никакого <- никако́й: 代名詞, not any of possible variants, no, none; (in a negative context) whatever, whatsoever, absolutely
- inflection of никако́й (nikakój)
- genitive masculine/neuter singular
- animate accusative masculine singular
- электрического <- электрический: 形容詞, electric, 男性単数生格・対格
- поля: 中性名詞, 不活動体, 複数主格・対格, field
- зато: 副詞
- (hedge) on the other hand
- but for all that
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- проводнике <- проводник: 男性名詞, 活動体・不活動体, 単数前置詞格, conductor
- bian masc-form velar-stem accent-b
- guide (person)
- conductor, guard, train attendant (on a train)
- conductor (physical, electrical)
- электродвижущая <- элѐктродви́жущий: 形容詞, 女性単数主格, electrodynamic
- эnлектродвижущая сила: 起電力
- дви́жущий: 現在分詞, движущая: 女性形の主格
- сила: 女性名詞, 不活動体(síla), 主格・対格
- которой: 関係代名詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格, which
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of кото́рый (kotóryj)
- самой <- сам: 代名詞, self, 女性生格・与格・具格・前置詞格
- сам по себе: on one's own, by oneself, alone
- по: 前置詞
- with accusative case
- up to
- till
- indicates distribution (with numerals other than one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending these words)
- with dative case
- along
- over
- around
- about
- on
- according to
- showing the cause that is unwanting or unwilling (see indicates the direct object of some verbs of striking or hitting indicates repetition of time indicates distribution (with numerals one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending in these words)
- with prepositional case
- on, immediately after
- for
- to the liking of
- with accusative case
- себе: 再帰代名詞, oneself
- dative/prepositional of себя́ (sebjá)
- не: no
- соответствует : 動詞, 三人称単数現在, correspond
- third-person singular present indicative imperfective of соотве́тствовать (sootvétstvovatʹ)
- никакая: 不定代名詞, none
- nominative feminine singular of никако́й (nikakój)
- энергия: 女性名詞, 単数形主格, 不活動体, genitive эне́ргии, nominative, plural эне́ргии, genitive plural эне́ргий
- energy, power
- vitality
- vigor
- но
- 接続詞: but, yet
- 名詞, 不活動体, 不変: but
- которая <- который: 疑問詞, 関係代名詞, 女性単数主格: which
- при: 前置詞 (pri), +locative case or prepositional case: in the presence of; in the time of; at, by
- предполагаемой: 過去分詞, (形容詞として)女性形生格・与格・具格・前置詞格
- present passive imperfective participle of предполага́ть (predpolagátʹ)
- тождественности <- тожде́ст венный
- equality
- то́ждество: identity, equivalence
- относительного <- относи́тельный: 形容詞, 男性生格・対格または中性生格
- relative
- (grammar) relative (as in relative clause)
- comparative
- движения <- движе́ние: 中性名詞単数生格, 複数主格・対格, movement
- inflection of движе́ние (dvižénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- обоих <- о́ба: 数詞, both
- inflection of о́ба (óba)
- animate accusative masculine/neuter plural
- genitive/prepositional masculine/neuter plural
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格
- интересова́ть: 動詞, 不完了体, интересова́ть • (interesovátʹ) impf (perfective заинтересова́ть)
- to interest, to concern
- нас <- мы: 代名詞, we, 複数生格・対格・前置詞格
- случаях <- слу́чай: 中性名詞
- case
- occurrence, event
- occasion
- opportunity, chance
- слу́чаях • (slúčajax) m inan pl
- prepositional plural of слу́чай (slúčaj)
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать)
- to call, to send for
- to challenge, to defy
- to summon
- to arouse, to cause, to stimulate, to evoke, to call forth
- third-person singular present indicative imperfective of вызыва́ть (vyzyvátʹ)
- электрические <- электрический: 形容詞, 複数主格・対格, electric
- токи <- ток: 男性名詞, 不活動体, 複数主格・対格: (water, electricity) current, (agriculture) threshing floor
- то́ки • (tóki) m inan pl
- nominative/accusative plural of ток (tok)
- той <- тот: 限定詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格: тот • (tot) m (demonstrative)
- that, those
- the one
- the other
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of тот (tot)
- же
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
- 接続詞
- величины <- величина́: 女性名詞, 単数生格, amount
- величины́ • (veličiný) f inan
- genitive singular of величина́ (veličiná)
- и: 接続詞, and
- того
- 限定詞 <- тот, that, those
- inflection of тот (tot), 男性生格・対格
- 述語
- (colloquial, euphemistic) not right in the head, daft, crazy
- (colloquial, euphemistic) tipsy, drunk
- (colloquial, euphemistic) not great, not very good
- (colloquial, euphemistic, crime) taken care of, murdered
- 限定詞 <- тот, that, those
- же: 上記参考
- направления <- направле́ние: 中性名詞, 不活動体, 単数生格, 複数主格・対格, direction, orientation
- направле́ния • (napravlénija) n inan or n inan pl
- inflection of направле́ние (napravlénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- что: 代名詞・接続詞・疑問詞: that, what
- и: 接続詞, and
- электрическое <- электрический: 形容詞, 中性主格・対格, electric
- электри́ческое поле: electric field
- поле: 中性名詞, 不活動体, 主格・対格, field
- в: 前置詞, 上記参照
- первом <- пе́рвое: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, the first thing
- пе́рвом • (pérvom) n inan
- prepositional singular of пе́рвое (pérvoje)
- случае <- слу́чай: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, слу́чай • (slúčaj) m inan (genitive слу́чая, nominative plural слу́чаи, genitive plural слу́чаев)
- case
- слу́чае • (slúčaje) m inan
- prepositional singular of слу́чай (slúčaj)
2022-04-09;¶
数学・物理 Haskellでの物理が楽しい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- オンラインすうがく徒のつどいの案内が出た
- 通信講座はリリース最終段階
- 江沢・中村・山本『演習詳解力学』が来た
- 勝手に宣伝: Learn You a Haskell for Great GoodのJupyter notebook
- とうとう出版か: Scott Walck, Functional Programming for Physics Geeks
- Walck, Functional Programming for Physics Geeksを軽く眺めた感想
- Julia(のStatsbase)に少しだけ貢献したので
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
オンラインすうがく徒のつどいの案内が出た¶
【スケジュール公開&参加者の募集開始!】 お待たせいたしました!第3回すうがく徒のつどい@オンラインの講演スケジュールを公開しました!
参加者の申込みを開始しました! HPの参加者募集要項をお読みの上、応募フォームから申込み下さい。期限は4月24日(日)までです。 https://tsudoionline.netlify.app/03/
聴講側の参加者申込がはじまりました. 私は講演者側で出ます. アブストにもあるように先日案内した素数判定プログラミング講座に関連する話をします. さらに以下で言及するWalckの本のネタなども紹介します.
江沢・中村・山本『演習詳解力学』に関連してプログラミングで遊ぶ話もコメントしているように, そうした話にも少し触れます. ただし数学関係者がいきなり独学でやるのは大変だから, あまり余計な知識が必要ないアルゴリズム, 特に数学関係のアルゴリズムからはじめようという話をする予定です.
ちなみにこの間ちょっとした提案をもらったので, ここで話す話を組み直して『プログラマーのための数学入門』として類似の話をする予定です. これはプログラムを一定程度読み書きできる人向けに, 逆にお絵描き系の勉強からはじめようという話をする予定で, これまた以前紹介したGeometry for Programmersなども案内する予定です.
今年の目標「たくさん計算しよう」がいい具合にいろいろ絡んできています. お待たせしているモノもたくさんあります. 一所懸命準備を進めているのでもうしばらくお待ちください.
通信講座はリリース最終段階¶
二週間くらい案内を続けている力学の通信講座, メインのPDFコンテンツを修正したので, あとは案内ページを作ればとりあえずはスタートできます. 今日書き切れれば, と思っていましたが全く間に合わなかったので正式な案内は来週です.
ちなみに何を直していたかというとベクトルの記号です. 数学だと物理と違ってベクトルの記号に太字を使いません. 数学の流儀に合わせて書いていたのですが, やはり物理向け計算のコンテンツとしてわかりにくいと思い, 一通り修正しました. 私も物理学科だったので力学は物理の風習に沿って勉強したため, やはり書き直したバージョンの方が読みやすいです. 物理っぽい計算の章は都度記号を書き直していく予定です.
例と計算編もちょこちょこ拡充していて, 単に項目出しだけの部分もあるとはいえ1100ページを越えています. そして1100ページあってこれからも増えていくので, いくらでも遊び倒せるコンテンツでありつつ, 一方では量が膨大すぎて途方に暮れるコンテンツにもなっています. そこをうまく再構成しつつサポートを入れるのがいま整備中の通信講座です. お待たせしていて申し訳ありませんが, もうしばらくお待ちください.
物理に集中的に触れてきたら私も物理熱が高まってきました. 偏微分の計算練習と線型代数の計算練習も兼ねた(特殊)相対性理論の計算に関する通信講座, 同じく偏微分の計算練習も兼ねた熱力学の通信講座, 線型代数の計算と絡めた量子情報的な通信講座, 微分積分と線型代数の融合(関数解析)を目指した電磁気学の通信講座など, 作りたい講座(自分が昔ほしかった講座)の作成予定がたくさんあります. そうすぐにはできないですが, 計算し倒す中で自分が計算していて楽しい例として外せない対象ばかりです.
江沢・中村・山本『演習詳解力学』が来た¶
先日宣伝した本です. ちょうど今日来たので本当にパラパラと眺めただけです. 文庫本の事情もありますが, 索引なども入れて665ページあります. これで1800円です. この1800円で人によっては一年遊び倒せるでしょう.
サービス内容が全然違うため単純な値段比較に意味はありませんが, いま準備中の力学の通信講座は当然これより値段が高いです. 独力で進められるなら本を買った方が遥かに安上がりです. 通信講座の初回に取り上げるくらいですし, 古典力学は本当に大事です.
数学的には常微分方程式論なので, ソルバーを使ったお絵描きも取り組みやすく, 曲線論(微分幾何)への発展も考えられます. いろいろな近似をかけたとき, 厳密解といろいろな近似解の数値比較も面白いでしょうし, 保存系の数値計算といった数値計算特有のテーマもあります. 今回の通信講座でここまで盛りだくさんにはできませんが, 力学は物理としても数学としてもネタの宝庫です. これまで挫折してきたならこの機会にぜひ取り組んでみてください. 単純な計算それ自体の楽しみも見つけられればなお良いです.
勝手に宣伝: Learn You a Haskell for Great GoodのJupyter notebook¶
「すごいH本」の元になった Learn You a Haskell for Great Good が IHaskell を使って Jupyter notebook に移植されてる!Binder を使えばWeb上で実行しながら読み進められるのも便利👀 https://github.com/jamesdbrock/learn-you-a-haskell-notebook
これはとても良い本なのでもしあなたがHaskellに興味があるならぜひ取り組んでみてください. いちいちコピペする必要がなくなっただけでも勉強が非常に楽です.
Walck, Functional Programming for Physics Geeksを軽く眺めた感想¶
先日紹介した本です.
まだ書きかけ状態の本である上, まだ物理パートの前のHaskellの言語説明のところまでしか読めていません. 型クラスが終わったくらいです. ちょうどすごいH本の紹介をしたのでちょうどいいと思ったので軽くコメントします.
すごいH本は一般的なHaskellの本なのである程度一般的な領域に踏み込んで解説しています. しかしこの本はあくまで物理に応用する本なので, 物理に必要なところに絞って解説しています. 型クラスも数値クラスに限定されていて, 入門としてはいいのではないでしょうか.
他にも「プログラムを書いてコンピューターを教育する」体で書かれているため, 自然と関数設計の形でプログラムの設計にも触れられています. 計算しながら暗号の勉強をしようと思ってJavaを使った暗号の本を読んだことがあります. 型を意識してプログラムを書く習慣がなかった上, コンパイルが必要な言語にも触れたことがなく, 全く何もできずに時間も本を買ったお金もドブに捨てたようなものでした. 型を意識した設計はなかなか面白いのでそこを読むだけでも楽しいでしょう.
ちなみにこの型を意識した読解, ドイツ語やロシア語, ラテン語などを読むときにも役に立ちます. これらの言語は格の支配が強く, 格の支配を型支配のようにみなして読むと文が読めるようになります. ちょうどこの間, 私が語学・言語学を教わっている言語学者が「ドイツ語やロシア語では動詞を中心にした読解が大事」と言っていて, それに関連して私のロシア語の学習ログ(語学メルマガで共有している内容)をシェアしました. 私はこの感覚をまさにHaskellで学びました. 別に何でどう勉強してもいいわけで私の学習経路はふつうではないと思いますが, 型を重視した思考法が他でも役立つ事例として紹介しておきます.
ちなみに英語・フランス語・イタリア語・スペイン語あたりは格がほぼなく, 代わりに語順が重要です. 語順が型になっているとも言えるでしょう. このあたりは『理工系の総合語学』ネタとしてとても大事にしています.
まだ読み進めていないのでどこまでカバーされているか見えていないのですが, Gnuplotを使ったお絵描きをする意志が見える(Gnuplotのライブラリを使うプログラムが出てきているのと, Githubのlearn-physicsにもGnuplot連携がある)ので, 上で書いたお絵描き用の訓練はこの本の勉強からでも得られるでしょう.
実はライブラリはhmatrixを使っていてBLASやLAPACKの導入が必要です. 昔, Walck論文を見つけたときにWindowsで導入しようとして挫折した苦い経験があります. いまならDockerで何とかなるとは思いますが. あといま仕事でMacを使っているのですが, M1になってから余計に不自由になったようで, プログラミング環境の構築が死ぬ程大変です. その辺が書籍でどう扱われるかはかなり気になっています. 正式出版が10月らしいですが, 早めにコメントを入れれば環境構築まわりもドキュメント化してくれると思うので, いまがんばって読んでコメントを入れようとしている最中です. これも通信講座というか勉強会で採用したいと思っています. Haskellを勉強してみたい人もいるはずで, 私のメルマガの読者なら数学・物理と絡めてやりたいはずなので. 楽しみしかないです.
Julia(のStatsbase)に少しだけ貢献したので¶
貢献というのもおこがましいのですが, いまやっている統計学の勉強会でJuliaの統計学ライブラリを眺めていて, ドキュメントのタイポを見つけたので「ここおかしくない?」とissueを立てたら, 「確かにおかしいね」と修正してmasterに入れてもらえました.
OSSはみんなで応援して育てて行くべき対象なので, こんな程度でもちゃんと開発者の人達は応えてくれますよ, ということで.
今週の問題¶
- (特殊)直交行列は歪対称行列の指数関数で書ける.
半群理論なりベクトル場の局所一係数部分群の議論なり, もっと言えば行列の指数関数の処理を知っていれば, 歪対称行列の指数関数化$e^X$の特殊直交性は苦労なく示せます.
言われて見れば当たり前ですが, これの逆, つまり全ての特殊直交行列に対して$e^X$をみたす歪対称行列が取れるかを真面目に考えたことがありませんでした. リー群・リー環対応で前者は簡単にわかるので, そこで思考を止めていたのです. 上で書いたような話を知っていなくても線型代数の理論と計算が一定水準のレベルにあればそれほど苦労なく示せます. 行列の対数とも関わる話でなかなか趣深い面もあります.
何はともあれ, 逆も具体的にきちんと示したことがなかったのでいい勉強になりました. リー群とリー環は有名ですし, 耳学問レベルで「知ってはいるが証明したことがない」話がたくさんあります. 特にハール測度の存在はいまだにきちんと議論したことがありません. 具体的な計算モードに入っているので多様体論と表現論が深く絡む理論的な部分はだいぶ後回しになる予定ですが, いつかはきちんと埋めたいところではあります. リー群・リー環の表現論は量子力学のスピンはもちろんのこと, 素粒子系でも出てくるので, これも例と計算編マターとして取り込む予定だけはあります.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第四文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第四文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
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「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
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ではまたメールします.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第四文¶
文構造¶
- Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита, "The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet,"
- в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
- согласно обычному представлению, "according to the usual notion,"
- в которых движется либо одно, либо другое из этих тел, "in which either one or another one of these bodies moves"
- в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
- The phenomenon observed here depends only on the relative motion of the conductor and the magnet, whereas, according to the usual view, the two cases in which either one or the other of these bodies moves must be strictly distinguished.
まず動詞を確認すると過去分詞のнаблюдаемое (observe), 三人称単数現在形のзависит (depend), 三人称単数現在形のдвижется (move), 原形のбыть (be)があります. したがって主文の他に従属文が二本あり, 接続詞・関係代名詞も二つあります. これにしたがって上にように分けました. 各要素を詳しく見ましょう.
Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита¶
動詞はзависит (depend)で三人称単数現在形なので, 主語は三人称単数, зави́сеть от + 属格でdepend onなので属格の名詞も必要です. ここではявление (phenomenon)が中性名詞の単数主格・対格なのでこれが主語, Наблюдаемое (observed)はявлениеにかかります. здесь (here), только (only)は副詞なので文構造上は無視できます. относительного (relative)は男性形で属格の形容詞, движения (движение, motion)は中性で単数属格または複数主格・対格なのでこのセットでзави́сеть отのотの支配を受けます. 最後にпроводника и магнита (conductor and magnet)は男性名詞単数形の属格, 男性名詞単数形の属格なので, of conductor and magnetの形でmotionを修飾します.
まとめると次のように英訳できます.
- The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet
в то время как, два случая, должны быть строго разграничены¶
動詞はбытьです. (TODO 不定形なのはどういうこと?)
まず冒頭のв то время какは熟語でwhile, whereasの意味です. должны (obligated, distinguished)は形容詞で複数形, строго (strictly)は副詞, разграничены (TODO これ何?)
- (TODO) whereas two cases must be strictly distinguished
согласно обычному представлению,¶
これは前置詞が導く副詞句です.
先頭のсогласно (according to)は与格支配の前置詞, обычному (usual)は男性与格, представлению (notion)は中性名詞の単数形与格です. (TODO 格は噛み合うが性が合わない. どう理解すべき?)
- according to the usual notion,
в которых движется либо одно, либо другое из этих тел,¶
これの動詞はдвижется (move)で不完全動詞の直説法三人称単数現在形です. ここから主語が決まります.
冒頭のвは前置詞格または対格支配の前置詞です. 次のкоторыхはwhichにあたる男性名詞