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2024-04-13 本のクラウドファンディングに対するコメント募集/相転移プロダクション

今回のテーマ

記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています. 前回いちいちサイトに飛ぶのが面倒というコメントを頂いたため, 今回, 試験的にメールにも内容を載せます.

  • 雑多な状態メモ
  • 本のクラウドファンディングに対するコメント募集
  • 自己共役性と自己共役拡大の物理
  • 人間が絡む難しさ: 筋トレ
  • 田崎晴明さんの論文: 温度が均一な状態への緩和

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雑多な状態メモ

量子情報入門のノートがざっと作れました. 以前も紹介した『量子情報科学入門』を一度通し読みしただけで全く詰め切れてはいませんが, なかなかよい勉強になりました.

勉強会で実際に詰めてやっている第四章「量子情報理論の基礎」は量子力学の基礎でもあり, 有限次元の線型代数の復習+量子情報から見た量子力学の定式化に対してよくまとまっていておすすめです. 付録Aとして線型代数の基礎がまとまっています. 相対性理論・量子力学は物理に興味がある人にとって二大勉強してみたい分野で, どちらも一定以上の線型代数が必要です. 大事なのがわかっていたとしても数学の本の勉強ばかりでは気分が乗らない人も多いでしょう.

特に工学での線型代数の応用となると必ずしも数学科・教養の線型代数でカバーしきれないものの, 相対性理論・量子力学は教養の線型代数・数学科の線型代数が直接役立ちます. 物理に興味があって線型代数の勉強の動機づけに悩んでいる人は, ぜひ読んでみてください.

モース理論のノートもちょびちょび見直しています. 多様体上にモース関数は大量にあり, この凄まじく大量にある個別のモース関数の臨界点が多様体の位相の情報を持っているという凄まじい理論で, 本当に何なのかとびっくりします.

ちょうど今日, 量子情報のノート作り一周目が終わったため, 次に何を読もうかと思っています. 読みかけの「層とホモロジー代数」を読み切りたいと思いつつ, 層とホモロジー代数の具体例で遊ぶために佐藤超関数にするかとも思っています. イジング模型も勉強したいし, Leanなどのプログラミングもやりたいし, 一日380時間くらいほしいです.

本のクラウドファンディングに対するコメント募集

結論から言えば節タイトル通り, (肯定的な)(応援)コメントを書いてくれる方を募集します. https://camp-fire.jp/projects/view/736890の「ユーザーの声」にあるような応援コメントです.

ulearnという会社がデジタル書籍出版に関していろいろやりはじめていて, 近々ローンチするそうです. 以前書いた中高数学の応用に関するコンテンツ, 特に役に立つ中高数学 中高数学お散歩コースに関連してこれを提供してもらえないかと相談を受け, その中で「海外含めてこういうことをしている会社(ManningのMEAP)もあって, そういう方向性の出版サポートもあると助かるのでは」という話をしたら, 実際にクラウドファンディングを軸にする方向にしたそうです.

それで私にもクラウドファンディング的な方向で何かしてもらえないかと言われ, 実際に図の挿入を含めて編集を入れた, 本としての体裁を整える方向で何かしてもらえないかとのことで, 試しに編集と図を簡単に入れたサンプルを作ってもらえました. やはり図が入ったり編集が入るととてもとっつきやすい感じになってさすがプロの編集の仕事は違うと感心しました. これを完成させるためにクラウドファンディングを実際にやってみようと思います. このプロジェクト説明ページを作る上で応援コメントが取れるなら取った方がよく, メルマガなどで応募したらどうかと言われたため, 協力して頂ける方を募集しています. 以前はコンテンツのアンケートも取っていたためそこからも取ろうと思いますが, 改めてきちんと一定のボリュームのコメントを頂けないかと考えています.

これはまだ書いている途中で追記・修正含めてもっと詰めます. 上記ページの「TODO 応援コメント」のところにコメントを入れようと思っています. このページの「ありがたいコメントの数々」にあるような数十字程度のコメントもいいのですが, 数百文字程度の少しまとまったコメントが頂けるとありがたいです.

自己共役性と自己共役拡大の物理

Twitter(自称X)で最近話題になった近藤本など割と本格的に物理でもエルミート性と自己共役性をきちんと区別する機運があるようです. 前にも書いたかもしれませんが, 改めて物理的な意義をいくつかまとめようと思います. 数学的にはさらに微妙な点があるからとは思うものの, 現時点で田崎さんの演算子の定義域と自己共役性にも書いていないように思います. きちんと説明しきるのは大変なため, この文章に書いてある内容を前提にし, 用語としては上記PDFにも引用されている新井・江沢の『量子力学の数学的構造』の用語を利用します. 結論から言えば次の通りです.

  • 適当に定義域を制限したときの作用素のエルミート性はほぼ自明である.
  • 自己共役性を保証するためには適当な意味で定義域を拡大する必要があり, これに応じて作用素の拡大に関わる厄介な数学的現象が起きる.
  • 特に, 一般に定義域ごとに別の自己共役拡大, つまり別の自己共役作用素が対応する.
  • 定義域は境界条件を含み, 境界条件は物理的な現象の設定と密接に関わるため, 自己共役拡大の多様性は境界条件が決める物理と直接関わる数学的現象である.
  • 特に自己共役性と物理には直接的な関係がある.

まず数学的に言うと, たいていのハミルトニアンや, 自己共役であるべき物理的に重要な作用素のエルミート性・対称性は自明と言っても問題ありません. 対称作用素は閉拡大できるため閉対称性まで自明です. 以下面倒なため併記せず単にエルミート性と呼びます.

自己共役性の議論では上記文献にもあるように定義域が問題です. たいていは作用素を適当に制限した定義域でのエルミート性を確認します. ここで適当に制限した定義域として典型的なのは「コンパクト台を持つ無限階微分可能な関数全体がなす線型空間$F$」が選ばれます. 直観的には「コンパクト台を持つ」は「境界で0」と読み替えてください. 標語的に言えばエルミート性が簡単に確認できるのはディリクレ境界条件です.

微分方程式の議論では初期条件と境界条件が重要です. ここでは基底状態(平衡状態)しか議論しないため, 考えるべきは時間発展が死んだ状況で初期条件は気にする必要がなく, 重要なのは境界条件です.

境界条件の設定の重要性に対して, 念のため高校の物理の例を挙げます. 振動・波動の分野で固定端・自由端の波に対する定常波の問題があります. 単純に糸の振動で実験すればすぐわかるように, 固定端か自由端かで定常波の様子は全く違います. 固定端・自由端はまさに波動方程式に対する境界条件で, 境界条件が現象に直結する様子が見えます. 定常波は波動方程式の時間変化項が死んだ状態, つまりラプラシアンの固有関数として得られ, 数学的にはラプラシアンの境界値問題と, それに付随する固有値・固有関数の議論に帰着します. ここで固有値は振動数または波長に関係します. 特に境界条件が変わると固有値・固有関数という量子力学で重要な対象にもはねる様子が具体的に見える点が重要です.

一般に量子力学のハミルトニアンでも同じです. ふつうハミルトニアンは運動量作用素を含むため, これを明確に微分作用素と捉えば微分方程式・境界値問題と固有値問題が直結します. 先の振動・波動を考えればすぐわかるように境界値ごとに現象が変わります.

コンパクト台を持つ関数は実際には「境界から少し遠いところでべったり0」の関数です. さらに上記の$F$は一般にヒルベルト空間の部分空間で, もう少し定義域を拡張する必要があります. この定義域の拡張と合わせて境界条件を設定する必要があり, 境界条件が設定された上での定義域の拡張ごとに作用素の拡張が定義されます. この自己共役拡大は物理的な境界条件ごとに別の拡張が定まるべきで, 特に空間$F$上のハミルトニアンに対して, 非可算個ありうる境界条件に対して非可算の自己共役拡大が存在します.

この議論は数学的にはnotorious domain problemと呼ばれるほど厄介で有名な問題である一方, 数学が確かに物理現象を記述できるなら当然満たすべき性質です. この面白さは私が数学方面に進んだ理由の一つでもある一方, 物理の人はもちろん数学・数理物理の人もあまり言及しない議論であるため, 改めて紹介しました.

人間が絡む難しさ: 筋トレ

先週末, 柔道の稽古中に骨折(ひび)してしまったため, この一週間は何もできていないのですが, 去年柔道を再開してから改めて筋トレしています. 何度も書いている話ではあるものの, やはり面白いので何度でも書こうと思います.

筋トレ関係はいろいろな人がいろいろなことを言います. 生物・医学系の話題は体質やら何やらで恐ろしく多様性があり, ある人にとって良い方法が極端なくらい他の人には不適切な場合があります. 数学や物理でも勉強法のような形で多様性があるものの, 事実それ自体に関してはかなり固いためなかなか大変です.

そうは言いつつある程度までは物理実験の趣もあり, 実験と関係する試行錯誤が非常に楽しいです. プログラミングを含めて具体例の検証といった意味での実験は数学でも日々取り組んでいますが, 実験はいいですね.

田崎晴明さんの論文: 温度が均一な状態への緩和

学習院大学田崎晴明教授一人だけの研究グループは、一次元固体を模した単純な量子多体系モデルにおいて、全エネルギーがほぼ一定で温度の不均一な任意の状態が長時間の後に温度の均一な状態に緩和するという驚くべかない現象が生じることを未証明の仮定を用いず証明しました。 https://arxiv.org/abs/2404.04533 この研究成果は熱いコーヒーを部屋に置いて冷ますなど様々な応用につながることが期待されます。 モデルと解析の詳細は『熱は高温から低温に流れる』という題のノートにまとめられ、arXiv で公開されました。

まだ読めていないのですがメモを込めてシェア. 非平衡状態では温度の定義自体が非自明なため, それに関する処理やどこまでが前提になっているかなど楽しみです.

メモ

フラクタル構造と数論

佐野薫さん・竹平航平さんと共著論文を書きました! 画像はマンデルブロ集合というフラクタルの代表例ですが、このようなフラクタル構造を数論の立場から研究しました! 以下で研究内容を詳しく述べてみます。 この研究では f(z) = z²+c など様々な多項式の周期点を考えます。周期点というのは、

アルティメット限界ラーメン

アルティメット限界ラーメン

水に醤油や味の素を加えるだけで作るラーメンを"限界ラーメン"と呼ぶ

それをさらに超えた簡単さで、お店レベルのラーメンを作る術が爆誕してしまった…

味の素の「休日だし。」ほたて貝柱だし、が凄まじく美味かったので、コレだけで限界ラーメンを作りたくなった

まず、休日だし。だけでラーメンを作るための計算式を作ってみた

<ラーメンスープに必要な塩分濃度>

  • ラーメンの塩分濃度1.2%
  • ラーメンスープ350g×1.2%=4.2g
  • →4.2gの塩分が必要

<休日だし。の使用量>

  • 休日だし。→塩分濃度は2.1g / 1包中
  • 休日だし。12g(2包)→塩分4.2g

<スープに必要な休日だし。の量>

  • 休日だし。12g+水350g=塩分濃度1.2%
  • →ラーメンスープの味!

そして…コレがアルティメット限界ラーメンのレシピだ!!

【材料】 . - 水 350ml - 休日だし。:ほたて貝柱だし 2包 - 油(オリーブオイルがベスト) 約小さじ1 - 麺 1玉 - ネギ 好みの量

【作り方】

  • ①水にほたて貝柱だし2包、油を入れて沸騰させる
  • ②麺を茹でる
  • ③丼にスープ&麺を入れてネギを乗せる
  • 完成

コレ、マジでヤバい… 僕はラーメン屋として自信をもってお店レベルの味だと断言できる

休日だし。のほたて貝柱だしは本物の干貝柱がちゃんと入ってるから、旨味と風味がかなり自然 一口スープを啜って、マジで驚いた うますぎる… うちのスタッフ(元塩ラーメン屋店長)もかなり驚いてた… 絶対試して

『圏論による論理学 高階論理とトポス』清水 義夫(東京大学出版会)

『圏論による論理学 高階論理とトポス』清水 義夫(東京大学出版会) 関数概念を基本として現象をとらえようというこの方法を,関数型高階論理とトポスを題材にして丁寧に解説する.論理学の観点を中心に,圏論の考え方を紹介するテキスト.

鴨浩靖さんによるユークリッド原論へのコメント

-URL

ユークリッド原論がいうほど論理的にかちっとした本ではないことは19世紀後半には常識に近くなっていて、数々の改良案が出ていたようです。ドジソン(ルイス・キャロル)『ユークリッドと彼の現代のライバルたち』を読めばその辺りの詳細がわかるのかな。 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7031.html ユークリッド原論の瑕の修復作業の集大成といえるのが、ヒルベルト『幾何学基礎論』です。原論にあった論理の飛躍はすべて消えています。ただし、瑕を修復できることを示しただけで、そこで示されている体系は研究対象としては不便なものです。https://chikumashobo.co.jp/product/9784480089533/

ヒルベルト『幾何学基礎論』の不便なところその1: 二次元では点と直線が、三次元では点と直線と平面が無定義語で、次元を上げるごとに無定義語を増やす必要がある。

ヒルベルト『幾何学基礎論』の不便なところその2: 直線は無定義語だが線分と半直線は点の集合なので、線形な図形を統一的に扱うには無定義語の直線とは別に点の集合としての直線が必要になる。

タルスキーによるユークリッド幾何の公理化には、ヒルベルトのものにある不便はありません。実質的には線分も基本概念ですが、形式的には点に関する述語のみからなっています。次元を上げることも次元公理を替えるだけでできます。 残念なことは、タルスキーによる公理化から始めるユークリッド幾何の公理的構成の教科書がまだないことです。誰か書いてください。

横浜ガンダムと富野由悠季のコメント

横浜ガンダム、出口に用意した文章がコレって所にやっぱりこう、富野由悠季という男の真骨頂がありますよね。

書き起こし

見に来てくださってありがとう

今日、実物大のガンダムを見に来てくださって、「あれ、歩かないのか、つまんないな」と思った君には、心からごめんなさい、とあやまります。 本当は、この大きさで歩くガンダムを造りたかったのですが、おじさんたちができることは、ここで見られる以上には動かせなかったのです。 本当にごめんなさい。

数年前に頭だけ動くガンダムを造ってみて、もっと動かせるだろうと思ったおじさんやおばさんたちがいっぱい、いました。 それでビルなどを作るときに使われる建設用の機械を作っている人たちや、二本足歩行のロボットを作っている人たちとも相談しました。どこまで動かせるのか、と考えたのです。そして、分かったことがあります。歩かせようとすると足の裏を地面から浮かせなければならないのですが、ガンダムの大きさでは歩かせることができないということだったのです。歩くロボットが作れるようになったのに、なんでできないの?と不思議に思ったでしょうが、人の大きさならできるのですが、ガンダムの大きさでは、片方の足が地面から浮いている時間が長すぎるので、倒れてしまうのです。

そして、実際の大きさのガンダムができる"動かし方"を研究した結果が、ここで皆さん方が見ることができる"動き"なのです。

こんな動きしか、させられない、というのには、理由があります。 物が地面に落ちるのは、地球に重力というものがあって、それに引っ張られているからです。これを防ぐ方法はありません。 逆に考えれば、テーブルの上にコップを置いておけるのは、重力があるからです。 スカイツリーのような高い塔は、倒れないだけの強い鉄骨の材料を組み合わせて、強風にも地震にも負けないように頑丈に作られています。塔の足元はとても頑丈な足場で、地面のなかに埋まっています。そのために、絶対に動かすことができません。

大型のトレーラーは動きますが、車輪を使って地面から浮かないようにして、さらに、タイヤを使うことで、振動が車体に伝わらないようにして、荷台に乗っている荷物がゆれないように工夫されています。

ガンダムは人の形をしていますから、動くのなら"歩く"ということになりますが、足の裏が地面から浮いてしまう時間が長いのが欠点になって、動かすことができないのです。

ごめんなさいと言わせてください

もちろん、足の裏に地面との距離を測るセンサーや、全体のバランスを知らせるジャイロスコープといった機械を取り付けて、それらのデーターをコンピューターに集めて、体の向きや傾きを修正させるように各部のモーターを動かしてバランスを取ることができるのですが、ガンダムの大きさでは、とてもとても難しいのです。 もっと軽い材料やもっと優れた機械があれば、とも考えましたが、現在、建造できる動くものは、ここまでのものしか出来なかったのです。 なによりも、ガンダムの高さの大きさのものを"乗り物"と認めてくれる法律がなくて、"建造物の法律"にしたがって造る必要があったので、絶対に倒れてはならないものを造る必要があったのです。 ですから、整備塔のようなものの一部としてのガンダム、にしなければならなかったのです。

二本足で歩かせることができなかったので、悔しいと思っています。ですから、君たちにお願いしたいことがあります。 もっと乗り物として動かしたいと思う人は、このガンダムを見上げて、解決しなければならない問題がいっぱいあるのだ、という想像をして、その解決策を考え出してほしいのです。でも、今回、ここまでしか動けないガンダムですが、 建設に関係したスタッフはみんなで、造って良かったと思っています。 なぜなら、これだけの大きさの人の形が、ゆっくりしか動けないのですが、そのゆっくりさがとても似合っていて、やさしいなぁ、と感じているのです。 本当は、アニメのように早く動くとか、スポーツ選手のように格好良く動いて欲しかったのですが、それだけでない "優しいガンダム"を見上げられることができて、ちょっと幸せな気持ちになっています。 これは、造ってみるまでは、誰も想像できなかったことなのですが、それはそれで、楽しいことだと思っていますので、楽しんで下さいとお願いします。 本当に、今日は、 見に来てくださって、ありがとうございます。

機動戦士ガンダム 原作者

富野由悠季 でした。

2020年12月19日

環から位相を作る

クロハゲワシと天狗

アカデミック英語とEverything You Need to Ace

アカデミック英語を身につけるには英語圏の中高レベルの教科書がベスト。Everything You Need to AceにはGeometryやBiologyを含め、高校生用の教材もある。ただ、中学と比べ格段と難しくなってるので中学から始めることをオススメしたい。

かわいいのルール

オッサンだけどKindle版買ってみた。至極当然の内容が描かれていながら、「お前はこんなことも出来てないんだぞ」と毎ページ突きつけられる厳しい本。

岩波ジュニア新書を読もう

【お願い】 岩波ジュニア新書を読んで!!! 岩波ジュニア新書を読んで!!! 岩波ジュニア新書を読んで!!!

『砂糖の世界史』以外にも!!

絶版本の中にもめちゃくちゃ面白い本があるよ!!

読んでみてね😂

早水桃子 講義録

開成中学・高校の数学特別セミナーで私が昨年講義したときの講義録が公開されました👩‍🏫開成の数学科教諭の穂坂秀昭先生が私の雑談や講義を全て文字起こしして読みやすくまとめ上げてくださった超大作です😮穂坂先生ありがとうございました! ▼リンク先の一番下のPDFです📃✨ https://kaiseigakuen.jp/about/contents/feature/mathematics/

アーノルド: 五次方程式と正20面体,そして楕円曲線

アーノルドが5次方程式の不可解性の証明を高校生に向けて講義してたらしい.ロジャーズ・ラマヌジャン連分数はじめ,j不変量,不変式論など総登場で楽しめる. 附録は楕円函数による5次方程式の解法の5ステップアルゴリズム.

次の本が参考になるかと思います:

ナースの有給消化

ナースが退職時に有給消化できないあるある。Xに病院名バンバン晒して欲しいよね

厚労省のHPから匿名で通報できるから、みんなバンバン通報した方がいい。私は以前に通報して、後日職場に是正勧告が入ったよ。 https://www.mhlw.go.jp/form/pub/mhlw01/roudoukijun_getmail

You Don't Need AWS ~お前にAWSは必要ない~

ちいかわにおいて鳥が飛ぶのはキャラが死んだ時

このファンアートの意味するところを理解できてしまって、西洋絵画における羊とか鏡とか髑髏とかそう言ったシンボルを知ってるとより深く知れるみたいな話を思い出した

「ちいかわにおいて鳥が飛ぶのはキャラが死んだ時」らしい これこれこれ これだよ西洋絵画鑑賞のいいところって

2024-03-10 高校物理は本当によい/相転移プロダクション

今回のテーマ

記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています. 前回いちいちサイトに飛ぶのが面倒というコメントを頂いたため, 今回, 試験的にメールにも内容を載せます.

  • 非有界作用素の代数
  • 高校物理は本当に良い
  • 量子情報を詰めたい
  • 広義一様収束のための関数論
  • 英会話のための英作文学習

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非有界作用素の代数

これらのことを考慮した場合,場の量子論の数学的構造を研究するにあたっては,あらかじめ表現を特定しない方法が有効になる可能性がある. このアイデアは,$C^$代数やvonNeumann代数を用いる代数的アプローチによって展開された[14]. $C^$代数やvonNeuma代数は有界演算子の代数として表現される. しかし,ハミルトニアンや量子場は一般には有界演算子であるとは限らない. そこで,非有界演算子の代数を直接扱うことも考えられてしかるべきである. この方向の研究はSckmtidgen[34]を中心にして展開された.

作用素環論は非有界な作用素も有界作用素で近似できるようにノルム位相じゃない弱い位相を考えるわけなので、その説明はおかしいでしょ(´・ω・`)

意図がよくわからないのですが、適当な弱い位相にしても有界作用素で非有界作用素を近似できるというのはどの程度の意味でしょうか。

これを読んでそんな気がしたんですが、これは有界作用素を近似する話でそんなことは書いてないので、何を読んだんでしょうね…(´・ω・`)

あまり興味ないと思いますが、 元のツイートでの話として非有界作用素がなす代数として実際に研究されている(いた)例に例えばO*-algebraなどがあります。 $e^{itH}$の形の有界化だとCCRといってもアハロノフ-ボームなり何なりでちょっと嫌な問題があるため、有界化したくない動機が(数理)物理的にはあります。 指数関数ではなくレゾルベントを使った手法もあるにはあって https://core.ac.uk/download/pdf/82235866.pdf が私が知る限り初めての論文です。 これを使って(自由場の)BECを試しに考えてみた https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/251612/1/2089-13.pdf のもあります。 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mana.19951720113 非有界版のO*だと冨田竹崎が議論できるらしく、学生時代に読もうと思って挫折した記憶だけがあります。 この著者の人、場の量子論の数理に向けて汎関数微分方程式を議論しようとしていたり、なかなか趣味が奇特な人だという遠い記憶があります。

冨田-竹崎理論は本当に好きな理論で, 非有界版の冨田-竹崎理論はいまでも興味があります.

冨田-竹崎理論はBratteli-Robinsonで巡回ベクトルの存在下での議論しかしたことがなく, 場の量子論の散乱理論で荷重を使うようで, 荷重に対するフルの冨田-竹崎理論をきっちりやりたいとは今も思っています.

冨田-竹崎理論は本当に面白いので, 興味がある人はぜひ勉強してみてください. 量子統計から見ても場の量子論から見ても直接的に物理といろいろな関係があるため, 遊び倒せる要素しかありません.

高校物理は本当に良い

高校の物理の教科書って馴染みのある現象に対して、一見現象論的法則を紹介しつつ、その法則の適用範囲が非常に広いものだと暗に仮定しながら微積の背景にあるような変化量の計算を念頭に置きながら、高校生時点で可能な計算を貼り付け合わせて、それらしく演繹を行うかなりの芸術品だと思ってる。 芸術品としてはすごいのだが、その凄さゆえに誰も真には消化できない何かになってて、どの学校に行っても易く消化できるようにコンテンツが改変されざるを得ないのが現状なんだろうなと。すなわち、敢えて微積を使って諸々の定理の枠組みにいろんな結果を落とし込むか、そもそも理論性を諦めるか。 こういうことを考えるとどの学校に行くのかで何を教えるかを変えていくことを認めることになるんだけど、激しく分けちゃうと求めている教え方をしてくれない環境に入った人に不幸な世界になるのでそれもそれで悩ましいところ。 物理教えるのも難しいよ。

僕の高校物理に対する見方も、これとかなり近い。あれは良くできている。

高校物理の良さを一点にまとめると「依存パッケージを最小限にする構成」と要約できると思う。あれだけ広範囲の事象に対し、高1程度の数学だけ使って、「物理」を失わず定量的に議論できるのは、まさに芸術だよなぁと思う。

たびたび同じことを書いとるな。繋げとこう

これは思う。「微分方程式こそが力学の本質だ!」みたいな立場が目立つけど、僕はむしろ「何がどう動くのか分かる」ことが重要だと思ってる。そして自然界に普遍的に存在する逆2乗則の状況は、微分方程式まで遡らずにそこそこ議論できて、そのミニマルな自然感を植え付ける上で高校物理はよくできてる

なんか大学一二年の頃は高校物理クソやと思ってたけど、歳を取ると「最小のツールで本質をえぐり出すような理論構成」の意義が分かってきた。そういう立場で周りを見渡すと、高校物理や高校数学は本当に良くできてて、そうして作った(専門家以外を対象とする)理論ミニマムには、極めて大きな価値がある

高校数学・高校物理・高校化学は本当によくできてて、十分な存在意義がある。大学1,2年生あたりが「高校の数学/物理/化学はクソ」などと言いがちだが、それは若すぎでございますね。ああいう「習得するための必要知識が少ない閉じた有効理論」の価値が分からんようではマダマダよ

この世界のダイナミクスはどうしようもなくコテコテの微分方程式なので、なにか理論を作ると何でもかんでも微分方程式になってしまう。それでは辛いので、対象を限定して微積分を隠蔽し、初等的な関数の加減乗除で閉じた簡単な理論が欲しくなる。その成功例が高校物理の教科書なのだろう。抽象化だわな

解答略さんは

  • 依存パッケージが少なく、独立して動く
  • 必要最小限のコード量・内容量
  • そこそこ広いユースケース

みたいなのを好む。ソフトウェアに限らず、様々な分野の良い教科書や、高校物理、高校数学などもこれに該当する。

これに関して私は高校物理に非常に肯定的です.

高校物理、どちらかといえば手元にある最小限の道具だけで無理やり全てを処理している点で大学の物理と大して変わらないという気分があるが、自称物理の人たちはそんなに色々数学がわかっていてできるつもりでいるの?

高校物理の数学的記述が気に食わない各位、文句を言っている暇があったらもっと物理に役立つ線型代数でも勉強していればいいのに、くらいの気分がある。 もっと言えばファラデーよろしく、数学がなくても何とかなる人類史に残る実験の提案でも考えていてほしい。もっと物理に時間を割いてほしい。

私が大学院で志した内容自体, 物理のために現代数学では足りない部分をゴリゴリに詰めて, 必要なら数学を作るというスタンスで挑んでいて, 大学に行けば道具が調達できるか, 道具を自作しなければならないかくらいで高校物理と大学物理にあまり感覚的な違いがありません.

量子情報を詰めたい

以前も紹介した量子情報科学入門, 線型代数学習補助として勉強会で第四章を進めていてもう少しで終わりそうです. 非常によいです. それとは別にとにかく読み進めてノートを整備していて, あと少しで付録を除いて最後まで読み終わります.

時々「学部低学年で線型代数をもっと勉強しておけばよかった」という話を目にします. ただし線型代数は恐ろしく多種多彩で, 教養の線型代数ではカバーされない応用的な話題はたくさんあります. 例えば統計学や工学系・数値計算では特異値分解などの話題がありますが, これは教養の数学ではまず触れられないでしょう.

こうした話題を勉強したいならあまり役に立ちませんが, 教養の線型代数を勉強したいなら量子情報の勉強はとても役に立ちます. 上掲書で言えばまさに第四章の内容です.

対角化の抽象化にあたるスペクトル分解がいたるところで使われています. 教養の線型代数がわかっていれば何ということはない一方, わかっていないといたるところで躓くでしょう. もっと一般に物理が勉強したい人にとっても役立ちますし, 何より量子力学を勉強してみたい人には直接的に役立ちます. 巻末付録の線型代数も知識の総ざらいにはちょうどいいでしょう. お勧めです.

勉強会つき通信講座もそろそろ再開しようかと思っています.

広義一様収束のための関数論

教養の微分積分で各点収束と一様収束の話がよく出てきます. 数学科でもない限り知らなくてもほぼ困らないでしょう. それはそれとして一様収束のご利益を知りたい人はぜひ一変数関数論を勉強してください. モレラの定理と(リーマン)積分の(広義)一様収束に対する極限交換のおかげで, 正則関数列の広義一様収束極限は正則です.

一般に微分可能な関数列であっても一様収束極限は連続にしかなりません. しかしモレラの定理によって正則関数列の一様収束極限は正則です. さらにモレラの定理は(適当な追加設定のもとで)任意の閉曲線上で成り立ち, これが広義一様収束にまで収束がゆるめられる理由になっています. この事情がいたるところで使われるため, 関数論を勉強すると広義一様収束の使い出のよさがよくわかります.

英会話のための英作文学習

前回書いたように改めて英会話, 特にスピーキングのための英作文を勉強中です.

日記をつけてみるとかいろいろ言われますが, 結局困っているのはいい感じの日本語文を作るのが大変です. そこで大学受験の英作文系教材を買ってきました. 日本語でよくある, しかしなかなか訳しにくい程よい日本語がたくさん載っています.

ただ解答案の英語がいろいろな点でよろしくないです. 例えば次のような理由があります.

  • いかにも日本人が書いたような英語でまわりくどい.
  • 受験生の不安を解消させるためか, 全ての単語をうまいこと訳文に盛り込もうとしてくどい. 例えば「本当にすごい」という文にいちいち really を入れる. なるべく簡潔な英語にしたいため無くても通じる単語はバリバリ削りたい.
  • 一文一文が長い. 特に関係代名詞を使った複雑な文を書きがちで, こんな文は英会話素人が口頭でさっと作れない.

とにかく英語が気に入らないため, DeepLやChatGPTも併用して口頭でさっと言えるような形に書き換えて, それで勉強を進めています. いま次のページで実際に練習しているのを公開しています. 興味がある方はぜひ使ってください.

英語以外は試しに一緒にChatGPTで生成してみて突っ込んだだけで, 内容は全く確認できていません. これは私が所属している語学・言語学のコミュニティ向けの試作です.

2024-03-03 筋トレの感覚で柔軟性を上げる/相転移プロダクション

今回のテーマ

記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています. 前回いちいちサイトに飛ぶのが面倒というコメントを頂いたため, 今回, 試験的にメールにも内容を載せます.

  • 筋トレの感覚で柔軟性を上げる
  • モース理論の本を一通り読み終えた
  • 改めて英語のスピーキングを学習再開
  • 定理証明手習いを読みたい

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筋トレの感覚で柔軟性を上げる

(世間的な意味で)コロナ禍が明けてから柔道と筋トレを再開しました. その中で怪我を防ぐために柔軟性も上げなければと思いつつ, いわゆるストレッチは長続きしなくて困っていたところ, 次の動画を見つけて試してみました.

試してみて本当に立位で手が床について感動しました. 寝て起きるとまた身体の硬さがすぐに戻ったものの, 数日くり返すと前よりも楽に手が床に着くようになってきました. 「筋トレの感覚で柔軟に挑む」という手法が面白いです.

「前に倒そうとするより腰から曲げる感覚でやるとよい」と言われたことは何度かあったものの, 実際にどうすればいいかというところで実践的でした.

これが何より参考になったのは即効性です. どんなものか試しやすく, 実際に10分程度で「柔軟性」が上がったため「がんばるともっとよくなりそう」という感覚が得られるのはやはり継続性に強く効きます. ちょっと時間があるときに簡単に試せるのもありがたいです.

数学・物理でも同じようなのがあったらいいなという気持ち.

モース理論の本を一通り読み終えた

コメントをもらったので念のため. Twitterで書いていたためメルマガでも書いていたような気がしていましたが, 読んでいたのは次の本です.

ようやく一通り読み終えました. 当然一通り読み終えただけで細かい部分で全く追いつけていない部分が大量にあります. ただ, 面倒ではあるものの(TeXで)ノートを取りつつ読むと嫌でもある程度読むペースが落ち, ある程度まで細かい部分の様子を掴みながら読み進められるため, モース理論の概要はだいぶ掴めました. やはり非常に面白いです. これだけ面白いならもっと前からきっちり勉強しておくべきだったと思っています.

どうしようかと迷ったものの, 微分位相幾何の用語の日本語の確認のため, ハーシュの微分位相幾何の本の和訳も買ってみました. これもそのうちノートを取りつつじっくり読みたいですね.

不思議なことに, もとの本を読んでいるとよく面倒になってくるのですが, 自分のノートはもとの本を読むより集中力が続いて読めます. あくまで私の場合ではありますが, 勉強をきちんとしたいならやはりノートを作る方があとあと勉強に取り組みやすくなります. 特にTeXだとあとで気付いていなかった行間を埋めるのも楽です.

改めて英語のスピーキングを学習再開

先日大学のOB会のお手伝いで留学生を皇居の一般参賀に案内する会に参加しました. 留学生の人達も日本語を勉強してはいるものの, 特に理工系は英語の方がよほど楽にコミュニケーションできます. 英語を聞く分にはあまり問題ないのですが, 訓練していなかったためスピーキングはからっきしです. 留学生にいろいろな話を聞いてみたいのもあるためスピーキングを勉強しはじめました.

会話・スピーキング以前にまずはもっと口を慣らす必要があるため, 中学生向け・高校入試くらいの文章を読みつつ, 和訳を見ながら対応する英語を暗記して読み上げるくらいのところからはじめています. 一般的な英会話に関連して何かよいコンテンツ・本があれば教えてください. まずはとにかく簡単な内容からはじめないといけないと考えています.

どうしてもふつうの本だと面白くなく飽きてしまうため, 主にライティングの勉強として何かいいのがないかと探していたとき, ナショジオの英語のサイトなど中高生向けの記事を使って勉強していました. 一般の理工系向けだと必ずしも趣味・興味の合わない内容も多いため, やはり自分が面白いと思うのを自作するしかないとも思っています. これはこれで進めようと思っています.

定理証明手習いを読みたい

Leanを勉強しようと思いつつ, なかなか気分が乗らないため何かしらクッションを置こうと思って, 「定理証明手習い」でも読もうかと思っています.

検索していたらこのシリーズにThe Little Typerというのもあるとか.

あとは型システム入門もきちんと読み切れていないため, これもきちんと読みたいですね.

メモ

麻枝准さん「夢ではなく、泣きゲーは十字架。死ぬまで背負い続ける覚悟はできている」

当時kanonに脳を焼かれた身としては、麻枝氏の過去よりも久弥氏の今が気になる記事だった » 麻枝准さん「夢ではなく、泣きゲーは十字架。死ぬまで背負い続ける覚悟はできている」 沼る 夢中の極み 「泣きゲー」インタビュー(下) - 産経ニュース

記事1

「泣ける」ことが映画・ドラマの売りとなって久しいが、ゲームの世界でも感動でプレーヤーを魅了する「泣きゲー」が長年人気を博している。その立役者の一人が、「AIR」「CLANNAD」(クラナド)などの人気美少女ゲームを手掛けたシナリオライター・作曲家の麻枝准(まえだ・じゅん)さんだ。今月2周年を迎えたRPG「ヘブンバーンズレッド」(ヘブバン)でもメインシナリオを担うなど活躍を続ける麻枝さんが、四半世紀にわたり「泣きゲー」を作り続けてきた理由とは―。

自分は「はずれ」ライター扱いだった

子供の頃からパソコンを通じてゲーム作りに親しんできた麻枝さん。美少女ゲーム業界へと歩みを進め、後日「泣きゲーの元祖」と呼ばれるようになる始祖的作品の一つ「ONE~輝く季節へ~」(平成10年)のシナリオを手掛けた。

「やはりクリエーターとしては、人の心に残るものを作りたい。それには、その人の感情を強く揺り動かす必要がある。人の感情に一番響くのは『泣く』ことだし、日常から切り離された別の世界のドラマを体験するのは心地良いことでもある。自分の武器は、文章と音楽を合わせて(ユーザーを)『泣かせられる』ことだと思っています」

時は1990年代後半。美少女ゲームブランド「Leaf」が手掛けた「痕」(きずあと)や「To Heart」が業界を席巻するなど、魅力的なヒロインたちとの疑似恋愛を楽しむ美少女ゲームも「ストーリー性、シナリオで魅せる」時代に突入していた。

「えいえんの世界」などの抽象的かつ文学的な要素をストーリーに織り込んだ「ONE」は当時、ゲームファンの間で反響を巻き起こした。後に「Fate/stay night」でシナリオを手掛けた奈須きのこさんをはじめ、「ONE」の影響を公言するクリエーターも多い。麻枝さんも同作について「泣きゲーという〝文化〟を生み出した作品」と語る。

「『茜(ヒロインの一人)シナリオで泣いた』『号泣しました』…。これまで見たことがない熱量のアンケートはがきがたくさん届き、すごいことが起きているな―と実感しました。でもはがきをよく見ると、褒められていたのは自分ではなく、久弥直樹君というもう一人のライターが書いたシナリオ。自分は『はずれのライター』扱いでした」

麻枝さんは久弥さんのことを「天才」と呼ぶ。その功績は「『感動』で多くのファンを獲得した点」にあるという。

「久弥君のシナリオに魅了されたファンが、さらなる感動を求めて次回作を期待する…という流れが生まれたんです。これは彼が成し遂げた、すごくエポックメイキングなこと。『泣きゲー』というジャンルを生み出したのは久弥君だと思います」

僕の泣かし方は鈍器で殴るようなもの

その後2人は、コンテンツ制作会社「ビジュアルアーツ」に移籍し、美少女ゲームブランド「Key」を設立。雪の降る街を舞台に、高校生たちの恋愛模様をファンタジー要素を交えて幻想的に描いた「Kanon」(平成11年)のシナリオを共に手掛けた。

久弥君には負けたくない―。麻枝さんはこの一心で久弥さんのテキストを研究。ユーザーの支持を集める「泣きゲー」を分析し、学んでいく。「自分も次は、全力で(ユーザーを)泣かす、泣かしにかかろう…と思っていましたね」

麻枝さんには今でも忘れられない瞬間がある。公式ホームページの掲示板の最初の書き込みが、「真琴で号泣した」だったのだ。真琴とは、麻枝さんが「Kanon」でシナリオを担当したヒロインの一人。「そのとき初めて自分も『泣きゲー』を作る側になれたと思えました」と振り返る。

当時、Keyの二枚看板としてファンの間で名をはせた麻枝さんと久弥さん。麻枝さんは2人の作風の違いをこう分析する。

「久弥君はテクニカルなんです。(シナリオに)伏線に伏線を貼って、『Kanon』でいえば(終盤の)『…ボクのこと、忘れてください…』というセリフで、(ユーザーを)ガーンと泣かせる。確かな技術を持った、『泣かせることの天才』なんです」

「自分はその逆で、(シナリオの)技術がない。ただ、作曲はできるので、泣ける雰囲気に持っていった後に、伏線とは関係なく唐突に、ドカーンと泣ける曲やバラードをタイミングよく投下して泣かせる。大きな鈍器で殴るようにして涙を流させるというか、力技なんですよ。自分にやれることは、それしかない」

後に「伝説の泣きゲー」とも呼ばれことになる「Kanon」はヒットし、アニメや漫画など他メディアにも展開。だが、その矢先に思わぬ出来事が起きた。同作を作り終えた後に久弥さんがKeyから独立したのだ。

「(当時の)Keyというブランドのファンは、実際はほぼ久弥君のファンだったのに、残されたのは自分だった。本当は自分も(Keyを)辞めて一から自分のブランドを作ろうと思っていましたが、馬場(隆博)社長から『残ってくれ』と頼まれたんです。それで当時仕方なく、という形でKeyに残り、作ったのが『AIR』という作品でした」

自問自答の末、できたのが「AIR」

久弥さんの独立を受け、Keyを牽引(けんいん)する立場に立つことになった麻枝さん。その後は会社に寝泊まりし、「泣きゲーとは何か」という自問自答の日々を送る。「自分なりに泣けるゲームを何とかして作ろうとあがいた」末の努力が結実したのは平成12年。海辺の田舎町にたどり着いた青年と少女たちのひと夏の物語と、1千年前の記憶が交差する「AIR」だ。

「AIR」から。「…もうゴール、していいよね」に代表されるヒロインの言葉が多くのユーザーの涙を誘った©VISUAL ARTS/Key「AIR」から。「…もうゴール、していいよね」に代表されるヒロインの言葉が多くのユーザーの涙を誘った©VISUALARTS/Key

同作が当時衝撃的だったのは、美少女ゲームにもかかわらず、ヒロインの一人が死亡したまま物語が終わるなどしたためだ。後に京都アニメーション(京アニ)によりアニメ化もされ、人気を博した。ただ、麻枝さんは同作を「京アニさんのおかげで神格化された作品」だとし、「多くの人の期待に応えられる作品だったかというと、そうではなかった」と振り返る。

「鋭り過ぎた作品を作ってしまったという実感があったんです。実際、エンディングなどをめぐって賛否両論や考察合戦も巻き起こりました。本来、自分は〝間口〟の広い作り手ではない。本当に刺さる人にだけ刺さるものを作る、ニッチな作家性を持ったクリエーターだと思っています」

麻枝さんは、「泣きゲー」を作り続けてきた自身の歩みをこう振り返る。

「自分は『泣きゲー』を作ったのではなく、久弥君が残した『泣きゲー』という文化を引き継いできた。ずっと追い越せなかった彼の背中を、25年追いかけて、追いかけて…。ずっと『泣きゲー』だけを作り続けてきた人生です」(本間英士)

(下)泣きゲーは十字架

泣きゲー

「泣けるゲーム」を指す言葉。厳密な定義はないものの、イラストや文章を通じてヒロインたちとの恋愛を疑似的に楽しむ「美少女ゲーム」の文脈で語られることが多い。特に話題になり始めたのは、1990年代後半。「To Heart(トゥハート)」などの先駆的作品をへて、平成10年の「ONE~輝く季節へ~」や、11年の「Kanon」が、いわゆる「泣きゲーの元祖」とされる。

2000年代以降も「君が望む永遠」や「うたわれるもの」「マブラヴ オルタネイティヴ」といった人気作が続々と登場。独自の世界観や魅力的なキャラクターが人気を博した。「泣きゲー」の影響を公言する人気クリエーターも多く、その影響は漫画や音楽、アニメなど他のメディアにも拡大。世界にもファン層を広げている。

「沼」とは?

没頭することで日常から切り離され、仕事や人間関係の憂いからも解き放たれる…それが「趣味」である。そんな趣味世界の深淵をのぞき込んだ人たちが共通して感じるのが、自分たちは今「沼」にはまっているという感覚。ゴールの見えない収集趣味、創造性が高く技術と知識の研鑽が必要な趣味。現代社会を心豊かに生きるために必要な「趣味の世界」に心酔し、抜けるに抜けられなくなった人たちの、苦しくも楽しい「沼」を紹介する。

記事2

「ヘブンバーンズレッド」から。伏線の回収の見事さと、声優の迫真の演技も評判となったⒸWFS ⒸV/K

「泣きゲーの金字塔」と呼ばれる「CLANNAD」(クラナド)などの作品を手掛け、長年にわたり「泣きゲー」人気を牽引(けんいん)してきたシナリオライター・作曲家の麻枝准(まえだ・じゅん)さん。今後も「泣きゲー」を作り続けたいと語る。ただ、麻枝さんにとってそれは、夢や目標などではない。四半世紀前から今もなお背負い続ける「十字架」なのだという。

(上)追いかけて追いかけて

一番感動できるゲームこそ「人生」だ

平成12年発売の「AIR」は大きな話題を呼んだものの、麻枝さんの中では「鋭り過ぎた作品を作ってしまった」という思いが内心残った。「『泣きゲー』のコツを学んだ」という麻枝さんは、16年に「もう少し一般ユーザーに寄せた作品」を発表する。「泣きゲーの金字塔」として日本ゲーム史に名を刻む「CLANNAD」だ。

美少女ゲームは通例、ヒロインとの交際開始をもってエンディングを迎える。だが、同作は全く違っていた。ヒロインの一人と付き合い始めてからがむしろ本番。結婚や仕事、大切な人との死別、子供との関わり…など、「その後」の要素を情感豊かに描いた。

当時、「美少女ゲームなのにその後の人生を描くなんて訳が分からない」などの反発も社内で巻き起こったという。だが、麻枝さんは自身の考えを突き通す。

「当時は『君が望む永遠』など、泣けるゲームの全盛時代でした。学園パートだけでは従来の美少女ゲームの域を出ないと思っていたし、何より自分が一番感動できるゲームを考えたとき、それは『人生』を描くことだと思ったんです」

「CLANNAD」の人気は京都アニメーションによるアニメ化によってさらに加速。インターネット上では「CLANNADは人生」という言葉も生まれた。実現はしなかったものの、企画段階では老後までを描く予定だったという。

「就職してからの人生の苦節、愛する人の死、残された子供との関わり…。これはきっとすごく泣けるものになるぞ、と息巻いて作った作品でした。学園ドラマの枠を超え、人生を描き切ったという意味で、当時自分が作ったゲームの完成形だったと思いますね」

「サブカルの最先端」がそこにあった

1990年代後半から2000年代にかけ、多くのゲームユーザーから支持を集めた「泣きゲー」。麻枝さんは人気の理由を「サブカルチャーの最先端がそこにあった」からとみる。

2000年代以降も「君が望む永遠」や「うたわれるもの」「マブラヴ オルタネイティヴ」などといった人気作が続々と登場。独自の世界観や魅力的なキャラクターが人気を博した。ファンたちはこのビッグウエーブに乗り、二次創作も活発化した。

「一般の人が知らないところでこんなに感動できるものがあり、自分たちだけがそれを楽しんでいる…。一種の誇りがあったと思います」

これまで手掛けた作品では、「死」を描写することが多い麻枝さん。ただし、「死が重要なのではない。むしろ、大切なのはその後」と力を込める。

「大切な人がいなくなり、いつまでも続くと思っていた日常が突然変わってしまった。そうすると人はいったいどうなるのか…を描きたいんです。『CLANNAD』で言えば、(最愛の人が亡くなった後に)両親はどうなるのかや、残された子供はどうなるのかの方が描きたいドラマでした。ただ、安易に人の死を扱うつもりはありませんし、実際に扱ってこなかったのが支持されてきた証拠なのかな、と思います」

毎日闘いの制作現場の「熱量」が大切

2010年代はアニメなどに軸足を移した麻枝さんにとって、15年ぶりの完全新作ゲームが、メインシナリオや音楽などを担当したRPG「ヘブンバーンズレッド」(ヘブバン)だ。令和4年2月にサービスを開始。今月2周年を迎えた。

同作はスマートフォン向けゲームの開発や運営を担う「WRIGHT FLYER STUDIOS」(ライトフライヤースタジオ)と、麻枝さんが所属する美少女ゲームブランド「Key」の共同制作作品。謎の生命体に襲われ危機にひんした世界を救うため奮戦する少女たちの物語を精緻に描いた同作は、「Google Play ベスト オブ 2022」のベストゲームにも選ばれた。

「自分がこの業界に入ったとき、一番やりたかったのがRPGを作ること。(文章主体の)ノベルゲームを25年以上作り続けてきて、ようやく夢がかないました」

人の心を揺るがすというのは、決して簡単なことではない。麻枝さんが最も大切にしているのは、作品に込める「熱量」だという。

「(制作陣が)お互い『このくらいでいいか』という落としどころを絶対に作らないんです。今も毎日が闘いのような制作現場になっているのが、『ヘブバン』が『ヘブバン』たりうる理由かな、と。多くの方々に『泣ける』と言ってもらえるのは、その熱さのおかげだと思っています」

劇中バンド、もっと羽ばたいてほしい

「正直に言うと、もっと自由に別のものを作ってもいいと思うこともあった」とも明かす麻枝さん。ではなぜ、泣けるゲームを作り続けてきたのか。

「25年前に久弥君から託されたバトンは、『お前がこれからずっと泣きゲーを作っていけ。脇道にそれるなよ』という意味だと思っていて。例えば自分が、クスッとできる、ちょっといい話を作ったとします。でもそういう話を作るのは、別に自分じゃなくてもいいんです」

「泣きゲー」を「これからも作り続けたい」と語る麻枝さん。だがそれは夢や目標などではなく、いわば「十字架」なのだと吐露する。

「自分に期待されているのは、とことんまで『泣き』に全振りしたもの。もうこのまま走り続けるしかない、死ぬまでやり続けるしかない、という覚悟はできています」

約1時間の取材で、麻枝さんが「久弥君は…」と語り出すこと実に30回。一方で、屈託のない笑顔をのぞかせたのは、ファンであるプロ野球・横浜DeNAベイスターズの話題と、「ヘブバン」の劇中バンドから生まれ、歌手のXAIさんと鈴木このみさんがボーカルを務めるバンド「She is Legend」に話題が移ったときだ。

「(全国ツアーで)3000人の前でライブをやったのですが、もう歓声がすごかった。あれを見たら、もっと羽ばたいてほしいと思いました。今は『ヘブバン』ユーザーしか知らない知る人ぞ知るユニットなんですが、歌声もパフォーマンスも素晴らしくて。『She is Legend』をもっといろいろな人に知ってほしい―これが今の新しい目標です」(本間英士)

泣きゲ―

「泣けるゲーム」を指す言葉。厳密な定義はないものの、イラストや文章を通じてヒロインたちとの恋愛を疑似的に楽しむ「美少女ゲーム」の文脈で語られることが多い。特に話題になり始めたのは、1990年代後半。「To Heart(トゥハート)」などの先駆的作品をへて、平成10年の「ONE~輝く季節へ~」や、11年の「Kanon」が、いわゆる「泣きゲーの元祖」とされる。

2000年代以降も「君が望む永遠」や「うたわれるもの」「マブラヴ オルタネイティヴ」といった人気作が続々と登場。独自の世界観や魅力的なキャラクターが人気を博した。「泣きゲー」の影響を公言する人気クリエーターも多く、その影響は漫画や音楽、アニメなど他のメディアにも拡大。世界にもファン層を広げている。

桃鉄に枚方市が追加されない理由

ガチで却下したのが本当に素晴らしい。 あとここ全てに通じる>「ゲームしかやっていない人は、正直に言うと、実際にはあまり使えないことが多いです。(中略)いろんなことに興味を持つことがゲーム制作につながっていく」

国民的ゲームソフト「桃太郎電鉄」、通称「桃鉄」。目的地の駅を目指して日本各地を巡りながら地域の特産や名物の「物件」を購入して収益を上げ、総資産が勝敗を決するボードゲームだ。88年の第1作発売からおよそ35年が経ち、2023年11月には最新作「桃太郎電鉄ワールド」が発売された。

コナミは23年、この桃鉄を学校教育機関向けに無償で提供する取り組み(「桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~」)を開始した。この教育版桃鉄をいち早く導入した大阪・枚方市立小倉小学校の6年生が2月7日、桃鉄制作者らを迎えてプレゼン発表会を行った。

プレゼンテーマは、「桃鉄に枚方を追加してもらおう」。枚方が桃鉄の駅として存在しないことに注目し、同校の6年生たちが枚方の魅力を全力でアピールした。

「ひらかたパークは明治45年に開園した日本最古の遊園地。アトラクション数は、USJや東京ディズニーランドを上回る40種以上もあります」と地元遊園地が持つ特色や強みを力説。地元ショッピングモールのくずはモールについても、「ショッピングセンターの満足度ランキング全国13位にランクイン。改装工事でフードコート付近がとても綺麗になりました」と写真を交えて紹介した。伝統文化や地元の工場、さらには食べログやGoogleマップで人気の飲食店を取り上げ、ランキングやグラフを用いた資料で説得力を高めた。

「枚方には子どもから大人まで楽しめる魅力がたくさんあります。教育版桃鉄に追加するしかありません」と力強く訴えた。

調べ方が足りない

「桃鉄に枚方を入れてくださいといろんな班の人が言いましたが、無理です」

プレゼンが終わり、桃鉄制作者からの講評は厳しいものだった。最初に「子ども扱いしない」と明言した、「桃太郎電鉄ワールド」監督/ゲームデザインの桝田省治(ますだ・しょうじ)さんだ。

「まず枚方に対して調べ方が足りない。どういう条件がクリアしないと入らないかということも調べられていない。なぜ選ばれて、選ばれていないかを言及している人がいません。なぜ近いまちが入っていて、枚方が入っていないか。実際の現実というのはライバルがいます。比べられます。それを押しのけた人が、自分の提案が採用されたり、されなかったりします」

「調べること、考えること、提案すること」には、時間はかかっても、お金はかからない。「採用されてから商品にするには、たくさんの人が関わってお金がかかるけれど、それまでの段階は、時間と根気、あるいは違う情報ソースを持っている友達さえいればタダです」

各班が提案した物件の多くが重複していたことを指摘し、「8割の人が同じことを言いました。これは採用されない。なぜなら、みんなと視点が同じだから」と語った。

また、ショッピングモールなどの短命な施設を挙げたことについて、「桃鉄の物件は、30年経っても8割は変わっていない。ということは、10年、20年持つ物件しか選んでいない。10年経っても今と同じようにありますか、というのを検討してください。点だけじゃなくて時間軸や面で考えた方がいい」と述べた。

桝田さん自身の若い頃も振り返った。「20代の頃、桃鉄のメインのゲームデザイナーのさくまあきらさんに言われたのは、お前ごときは100個考えて1個採用されればいい。99はボツだ。でもお前は才能があるから100のうち1個はいける。どんどん出せと。ゲーム制作だけじゃなくて、商品、サービスを作るのも全部同じ。ライバルがいて、コストがかかるし、採用できる人数にも限りがある。条件はいろいろあるけれど、たくさん調べて考える。いっぱい失敗すること。それしかない」と伝えた。

さらに、小学生の頃、地元新聞に短歌や俳句が採用された経験も語った。「岡山に住んでいて、山陽新聞に短歌や俳句を送り、採用されると5千円もらえた。図書館に行って、山陽新聞の過去10年、20年の採用された短歌や俳句を全部調べて、どんな傾向があるか、この審査員のときは何が採用されているかを調査した。それで、月に3、4本は採用された。人に採用されるには、自分だけがいいなと思っていることだけじゃなくて、周りの人たちにも認めてもらわなきゃいけない」 他の人と同じことをしていたらダメ

「ゲームが面白くないのは監督の責任。売れないのはプロデューサーの責任」

仕事の役割の違いを説明したのは、株式会社コナミデジタルエンタテインメントのシニアプロデューサーの岡村憲明(おかむら・のりあき)さんだ。「監督は作品を面白くするために全力投球する人で、プロデューサーはそうやって作られたものを世にどうやって届けるかを考える人です」

プレゼンについて、「より掘り下げた部分を伝えてくれた人がいて、それが印象的でした。他の人より前に出ていこうとするなら、他の人と同じことをしていたらダメ。他の人が何をしているのかを見て、自分なりの色を出していくことを考えてほしい」と述べた。

ゲーム制作者になるためのヒントにも言及した。「ゲームしかやっていない人は、正直に言うと、実際にはあまり使えないことが多いです。いろんなことに興味を持ってください。全然関係ないなと思っていることが、ゲーム制作に役に立つことがあります。ゲーム業界外の人と話していて、こんなのがあるんだと面白いと思うことが結構ある。なので、いろんなことに興味を持つことがゲーム制作につながっていく」

将来のアドバイスもした。「夢をずっと持っていてください。必ずかないます、思い描いて強く願っていれば。形は変わっても、この辺だったなというところにたどり着きます。夢をあきらめないで、いろんなことにチャレンジしていってほしい」とエールを送ったのは岡村さんだ。

逆に、「正直、夢は持たなくていいかなと思っています」と述べたのは桝田さん。「その代わりに持ってほしいのは目標です。夢は、どうやっていいか分からないけれど、なれたらいいなというもの。目標は、いつまでにこれになっているぞ、というもの。10年後になっていたい自分を想定し、そのためのスケジュール表をちゃんと作って、それに向かって何をやるべきかを考える。『いつまでにこうなっているぞ』は、目標であって夢じゃない」。目標は、成長に伴って変化もする。「知識が増えたら、何をやるべきかは変えてもいい。親は所詮応援しかできない。目標は自分で設定する。やり方を周りの大人やすでに目標を達成した人に相談するのもいいと思うけれど、最終的には自分で考えて、自分で動かないといけない」

最後に岡村さんは、「桃鉄の学校での使用に関して、いろいろ気付きがありました。皆さんが調査してくれたことを、教育版桃鉄にどう反映していくか。取り組みを進めていきたいです」と締めくくった。

知識ばかり教えていたらChatGPTに負ける

教育版桃鉄リリースの知らせをキャッチし、枚方市での導入をいち早く進めた立役者がいる。授業を参観していた枚方市教育委員会の浦谷亮佑(うらたに・りょうすけ)さんだ。

「4年生の社会科の都道府県の単元がどうしても暗記中心になりがちで、子どもたちが社会科を嫌いになるきっかけになっていた。教育版桃鉄を導入すれば、この問題を解消できるかもしれない」と考えたことが、導入の動機だという。現在では、枚方市の小中学校全63校に、教育版桃鉄のアカウントが配布されている。

導入に際して、不安を感じる教員たちを考慮した。月一で集まり、桃鉄を利用した授業案を共有する有志の研究会を立ち上げた。

「単に桃鉄で遊ぶだけじゃなくて、教科学習として先生がどう活用し、子どもたちがどう学びに変えていくかについて、きちんと研究しました。授業案は社会科が中心でしたが、国語科にも取り入れていました。ここ小倉小学校でも、6年生の『情報を適切に伝えよう』という授業で、自ら書籍とかインターネットで情報を集め、インタビューを行い、グラフ資料の作成などと関連付けました」

支援学級では予想外の効果が上がった。桃鉄で、所持金1千万円で500万円の物件を買ったとき、「残り500万か」と言えた。おはじきを使って教えても、数の概念や四則計算の理解が難しい子だった。

今回、桃鉄に枚方市を入れてもらうために説得するべき相手に実際に学校に来てもらった。「大人になると、相手の心を動かし、やってみたいと思わせ、アクションを起こさせなければならない時がある。クラスの友達に発表することも悪くないけれど、発表して『良かったね』と拍手をもらうだけでは不十分だと思っています。誰に何の目的で発表するのか、相手意識と目的意識が大事」。目指しているのは、「子どもたちがどれだけ本物に触れる体験ができるか」だという。

そのほかにも、枚方市ではICTを用いた積極的な取り組みが行われている。海外の日本人学校の子どもたちとオンラインで1対1の交流を行い、メタバース内に美術館を構築するためのクラウドファンディングにも挑戦している。枚方市の中学校が、文部科学省が進めるリーディングDXスクール事業「生成AIパイロット校」にも選ばれた。

「ICTはあくまでも子どもたちの学びを深めるためのツールです。本物に触れて、志とか夢とかをきちんと持ってもらいたいと考えています。今日の体験も、何人かに響けば、それだけで価値のあるものだと思います。先生方には、積極的に授業改善を進めていっていただきたい。これまでのように知識ばかり教えていたら、一瞬でChatGPTに負けますよ。あなただからできることは何か、子どもたちが学校に来るからこそできることは何かを考えてほしい」と訴えた。悔しすぎたのでもう1回チャレンジしたい

ゲーム制作者からのリアルな講評を受け、6年1組担任の山本健斗(やまもと・けんと)先生は「先生も勉強になった」と授業を振り返った。

「授業の中での『物事を多角的に捉える』を先生もやった気になっていた。実際に学校の中で『それでいいよ』とされることと、社会で求められるレベルが違うと感じた。その分野で社会で活躍したいと思うなら、独自性を持ち、他と違うことをやってみることが大事。そんな話が、第一線で活躍している方から聞けた」

6年生たちにとっても、「一生に一度しかない貴重な体験」になったようだ。

資料の作り込みやプレゼンの練習を必死に行った分、「率直に『無理』は少し悲しかった」とショックを隠せない様子だった。だが、「プレゼンを作って、いいのできたなぁーとか思ってたから、だだの自己満足で終わっていたんだなと思った」「企画は、1回だけじゃ通らないという社会を知った」「自分たちが作ったプレゼンじゃあ説得できなかったし、もっと多角的に調べた方がよかった」「自分では調べたと思っていたけど、まだまだ調べる内容が薄かった」「辛口な講評が返ってきたけど、(他の班と物件の内容が)かぶりすぎているところとか、内容が薄いところとかが、その通りだと思った」と現実をしっかり受け止めていた。

「悔しすぎたのでもう一回チャレンジしたい」

「考えるのはタダだから、もっと頑張って大人の人でも納得ができるようなプレゼンをしてみたい」

「次はもっと詳しく、なぜそうなのかとかを調べてより説得力を上げたい」

「もっと調べて何回も提案して成功できればいい」

この悔しさこそが、次への成長のバネになる。

電子の観測

応え方の難しい問いですが、位置を観測する前の電子の状態は、位置が決まってないだけでなくて、 「ある確率でどこかの場所にいるという状況」にすらなっていません。

じゃあどういう状況かというと、「重ね合わせ」です。重ね合わせと確率は全然違うもので、その違いが量子コンピューターや量子暗号(鍵配布)のパワーの源です。 観測すると、観測機と電子が相互作用します。むしろ、何かしらの意味で物理的に働き掛けないと観測なんかできません。その結果、このよくわからない「重ね合わせ」が「ある確率である場所にある状況」に変化します。 ここまでの変化は、観測かどうかはあんまり関係なくて、一般的な物理的なプロセスの理論と同じ計算をすればよいです。よって、ここまでのところ、解釈で悩む話はでてきません。

問題はここから先です。観測機器の表示を知能がある何か(人間とかドラえもんなど)が「見た」時には、どこかの位置に電子があることが、その「見た」人には決まってしまいます。 ここは、サイコロを振った後に見た瞬間、どの目がでたかが決まるのと同じです。 ここのプロセスは、一般的な物理的な変化と同じ計算プロセスでは計算できず、「射影規則」とか「ボルン則」などといわれる式を使います。 つまり、最後の最後のところで例外的な処理がいります。これを不思議と思うかどうかで人によって意見が異なります。

ただし、何か矛盾があるわけではないです。例えば、 人間も物質的な存在なので、人間が観測機を見る過程は物理的な過程のはずです。そこだけ別の扱いにしなければいけないのはおかしいのでは?といった問いは皆が合意できる答えがあります。 このときは、観測機を見る人間を、さらに外から見ている別の人の視点で考える。すると、観測機とそれを見る人間のあいだの物理的な相互作用も、他の物体と同じように記述できます。 ただし、この「観測機と観測機を見る人間」を外から見ている人が、観測結果を知るときにはやはり「射影規則」を使わないといけません。 これは、射影規則を不思議だと思う人からすれば、単なる問題の先送りになります。不思議だと思わない人からすれば、理論の整合性は証明されており、不満はないという結論になります。

では、射影規則に不満がある人はどうするのか。 一番ソフトな解決策は、①ほとんどの部分は通常の量子論のままの規則を用いる②観測の最後の射影規則は適用しない。というやり方です。 「射影規則を仮に適用したらどうなるか」は、実は射影規則の適用する前の式をよーく見れば、実は計算せずとも明らかなのです。ですから、射影規則を適用しなくても、計算上はちょっと不便なだけで、決定的に困るわけではないです。、 そして、この射影規則を適用する前の式に物理的な解釈をします。こういった類の解釈を「多世界解釈」とひとくくりで言うことがあります。この中の一番ソフトなバージョンは、射影規則をやめよう以上の強い主張はあまりないタイプ。 量子情報や量子計算の研究者で「多世界解釈が好きだ」「多世界解釈でも別によい」という人のいう「多世界解釈」は、しばしばこの程度の意味です。 もっとも激しい主張としては、本当に観測の瞬間に世界が物理的に分岐する。そして分岐した枝が、宇宙のどこかに存在している、といったものです。 こういうのはちょっと脇において、我々の日常経験する世界と式の間に繋がりを持たせるべく、各々の項に巨視的な実体を対応させるわけです。 多世界解釈とラベルされるもののうち、マイルドな部類に属するものたちは、結局、標準的な解釈の仕方(と、一言でいいましたが、これもニュアンスは人によって随分違います)と、結論はかわらず、実行する計算はかわりません。 こういったもののうち、どれを選ぶかは「科学の問題じゃない」ともいえるかもしれません。 しかし、こういった類の解釈に飽きたらず、量子力学をもっと本質的に書き換えようとする試みもあります。これらも「解釈」と並んで取り上げられますが、結論がそもそも変わってしまうので、別の理論です。 今の所、それらの新理論は非常に限定的な状況でしか成功していません。

中田考, 『イスラーム諸学の革新・要約』とイスラームの解釈学的アプローチ

論文メモ:サードの定理

未来が自分の後ろ側にあった時代には矛盾がなかったんですよ

これ面白くて、未来が自分の後ろ側にあった時代には矛盾がなかったんですよ 我々現代人は普通「未来が前、過去が後ろ」なのが当たり前だと思ってますが、昔は過去が前、未来が後ろにあったんです 全く日本独自のことではなく、古代ギリシャやソマリ語など世界の地域/言語であった/あることらしいですが

過去は見えても未来は見えないから後ろにあるのか.

井村屋会長 九死に一生を得た過去

井村屋グループ会長CEO 中島伸子氏 71

中島伸子氏

アイスや肉まん・あんまんで知られる井村屋グループの中島伸子会長CEO(最高経営責任者)は、列車事故に遭い、九死に一生を得た経験を持つ。社員の活躍や幸せを重視する経営改革を進めている。(聞き手・山内竜介 写真・菅野靖)

中島さんが取引先に披露した手品グッズ <1972年、死者30人を出した北陸トンネル列車火災事故に遭った。その後遺症で教師になる夢を諦めた>

20歳の誕生日を実家で過ごすため、夜行列車で帰省している時でした。3人の小さな男の子を連れた若い母親と一緒に4人がけのボックス席に座っていると、トンネルの中で突然、列車が止まりました。真っ暗な車内でアナウンスも何もない。そうしたら隣の食堂車から炎が迫ってくるのが見えました。  その母親が泣きながら言うのです。「3人の子連れで逃げられない。跡取りの上の子だけでも連れて行ってほしい」。私は5歳の子を抱きかかえ、窓から車外へ飛び降りました。黒煙が充満するトンネルではぐれてしまい、必死に子どもの名前を叫んでいるうちに気絶してしまいました。  意識を取り戻したのは、ちょうど誕生日を迎えた2日後。4人の母子が亡くなったことを知らされました。  私自身も、のどからすすの塊が出てきて2年間はほとんどしゃべれませんでした。医師からは一酸化炭素中毒で声帯が麻痺している、声を使う仕事は諦めた方がよいと宣告されました。その後、声は徐々に出るようになりましたが、今でも少ししわがれているでしょう。きつい体験でした。  子どもを救えなかった後悔と無念。目指していた教師になる夢への道が閉ざされた喪失感。ぐずぐずしていた日々から立ち直ったきっかけは父からの手紙でした。「声が出なくても生きていけるし、自分だけのプラス1を探すことだ。『辛』に一本足せば『幸』になる。亡くなった人のためにも一生懸命生きることが使命だ」。この言葉はずっと私の支えとなりました。  高校の同窓生だった主人と結婚した後、23歳の時に近所にあった井村屋の福井営業所で経理事務の募集を見つけ、アルバイトとして働き始めました。  亡くなった子どもたちのことを思うと、どんな仕事でもしっかりやろうと。経理だけでなく、4トントラックを運転して配達もしていましたよ。  ある配達先で「カップアイスのふたが開けにくい」と聞きました。ちょうど全社的に改善活動の募集があったので、ふたの持ち手を大きくするよう提案すると、採用され、社長賞をもらいました。  バイトでも差別なく表彰してくれる会社ってないじゃないですか。感激して25歳で登用試験を受けて正社員になりました。

<営業畑で実績を重ねていく。就いた役職は「女性初」ばかりだった>

女性の営業が珍しい時代。苦労もありました。福井営業所長になった時、問屋さんの社長へあいさつに行ったら「女なんかよこして、俺の会社をバカにしているのか」と言われましてね。中に入れてもらえず、帰りの車で情けなくて涙が出てきました。  翌日、朝5時半に起きて7時には問屋さんに着いて社長が出勤するのを待ちました。2時間くらい待っていたら社長が「まだいるのか。入れ」って。中に入ったら「今日の株価は分かるか。日本経済はどうなるのか」と質問されました。口ごもっていたら「ほかのメーカーの所長はみんなわかっている。朝、新聞読んで来ているのか」と、3時間もこんこんと経済の大切さを教えてもらいました。  それまでは、消費者目線が女性の良さとして生きると思っていました。経済感覚に弱かったのですが、企業人としてこれじゃいけないと痛感しました。勉強して消費生活アドバイザーや企業実務に関する資格をとりました。  育児では義母や近所の人にお世話になりました。自営業の主人も協力してくれました。約束は「3人の子どものお弁当は私がつくる」という一つだけ。それ以外は一切ノーと言いませんでした。  福井県の自宅から石川県の北陸支店へ午前6時半の電車に乗って通勤していた頃のことです。ある朝、寝坊をしてしまい、これで弁当をつくっていたら遅刻する。遅刻はできない。ふと周りを見渡すと、義母がプランターで育てていたキュウリ、ナス、ピーマン、トマトが目に入りました。とっさにそれらをもいで、ご飯の上にのせ、マヨネーズをかけただけの弁当をつくって高校生の長男に渡しました。  その晩、長男が「友達にこんな弁当を作るなんて本当のお母さんじゃないんじゃないかと言われた」と話すんです。本当につらかった。すると長女が「そんな遠回しに嫌みを言うのはやめて。お兄ちゃんだって、お母さんが生き生きと働いているから家が明るいって言ってたじゃない」と助けてくれたんです。  働くって、家族の応援があってこそです。子どもはそれぞれ独立して仕事をしていますが、親が一生懸命働いている姿を見てくれていたと思うとうれしいですね。

<2011年に総務・人事担当の役員に就任すると、人事制度を大きく見直した>

中島伸子氏

当時、総合職、エリア総合職、一般職の三つがありました。約1000人の社員全員の履歴書を見ていくと、立派な特技や資格を持っている人が、昇進に制限がある一般職やエリア総合職に多くいました。大事な「ダイヤモンド」を埋もれさせるのは損だと思い、総合職に一本化すべきだと考えました。  「自信がない」と話す一般職の女性から、人件費増を懸念する役員まで反対意見が多かったのですが、当時の浅田剛夫社長に背中を押してもらいました。会社全体を底上げする必要があると信じ、手分けして全社員と面談し、理解してもらいました。  人事制度の改革に合わせ、「学習する組織」を目指して通信教育の学費助成を拡大し、女性活躍の後押しにも力を入れました。女性の管理職比率は10年に2%でしたが、今では14%にまで高まっています。  CEOとして掲げているのは「1人の100歩より、100人の1歩」です。ニーズが多様な時代は経営陣のアイデアだけでは乗り切れないからです。若い人たちが自由に考えたことの中から、いいものをつかみ取る。そうした力が大事になります。昨秋発売した微細氷入りのアイス「SHALILI(シャリリ)」は20歳代の女性社員のアイデアから生まれました。  経営者は社員の人生に関わっています。本当に責任が重い。一緒に働く社員を大事にしなきゃいけない気持ちは強いし、幸せになってほしい。  あの鉄道事故から生き残った者として、それが社会への貢献だと思っています。 〈NUMBERS〉60周年

2024年、肉まん・あんまんが発売から60周年を迎えた。アイス販売用の冷凍ケースを冬場は肉まんの保存用として活用してもらい、必要な分だけ蒸し器で温めて売る方法で売り上げを伸ばし、主力商品になった。現在、コンビニなど店頭の蒸し器で販売する業務用と冷凍・冷蔵の家庭用を合わせ、年間約2億個を販売している。 ~中島さんを知るもう一つのキーワード~

取引先に披露した手品グッズ…鉄道事故の後遺症で声がよく出ないため、取引先との接待でカラオケに行った際に「デュエットより、手品が得意なんです」と話して、場を白けさせないようにしていたという。日曜日の夜に地元の奇術同好会に3年間通って技を磨いた。役員就任後も新人歓迎会で披露することがある。

◇中島伸子(なかじま・のぶこ) 1952年新潟県生まれ。75年近畿大豊岡女子短大(現豊岡短大)卒。アルバイトを経て、78年に正社員として井村屋製菓(現井村屋グループ)入社。北陸支店長、関東支店長、常務取締役総務・人事グループ長などを歴任。2019年に社長、23年4月から現職。

「面倒なことはChatGPTにやらせよう」の全プロンプトを実行した配信のリンクを整理しました

PythonPeriodic-table-cli

2024-02-17 調和振動子を勉強しよう/相転移プロダクション

今回のテーマ

記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています. 前回いちいちサイトに飛ぶのが面倒というコメントを頂いたため, 今回, 試験的にメールにも内容を載せます.

  • 幾何と量子力学: 調和振動子を勉強しよう
  • モース理論が難しい: 微分位相幾何がつらい
  • Satoshi Ogawa: On holomorphic tubular neighborhoods of compact Riemann surfaces

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幾何と量子力学: 調和振動子を勉強しよう

「何故そんなに幾何を?」というのが通じていない方もいそうなため, 久しぶりに関連する話を紹介します.

自分自身きちんと勉強しておきたいという理由はもちろんある一方, 幾何を突き詰める動機として超弦理論を勉強してみたいという方がいたのも大きいです. 超弦理論は幾何との強い関係がいたるところで言及されているため, ある程度は知っておかないとどうにもなりません.

もちろんウィッテンの仕事もあります. いままさに取り組んでいるモース理論もウィッテンによるアプローチは大きな影響を与えていると思います.

これを眺めるとすぐわかるように, 何だかんだで調和振動子が重要です.

ちなみに熱核による指数定理の議論でも調和振動子が現れるため, 応用上で調和振動子の射程距離は恐ろしく広いです. 作用素論的にはかえって自由粒子よりも簡単な面があり, どれだけやっても損は全くありません.

私のノートは当然私の趣味でゴリゴリに数学的で, 公開してもちょっとな, と思うところしかありません. いわゆる20世紀的な量子力学的な教科書やオンラインの文献ならまず確実に載っているでしょう. まだ勉強したことがなければぜひ勉強してみてください. 数学としてもヒルベルト空間論のよい入門にもなり, 計算練習としても役に立ちます. 特殊関数の処理という面から見れば電磁気の勉強にもなるでしょう. 人によって細々とした数学がどうの, 物理がどうのというよりもたくさん計算がしたい場合もあるでしょう. 特殊関数論は数学的な議論も多種多彩な一方, 馬鹿みたいに大量な計算が必要な部分があります. 特に偏微分方程式関係だと厳密解と直接関係があり, 数学的な計算だけではなく数値計算も面白いです.

数学的にいろいろ計算して物理への応用から見てもよくわかっている内容だとしても, 数値検証で可視化してみるとまた違った感動があります.

モース理論が難しい: 微分位相幾何がつらい

モース理論の勉強を続けていますが, 何がつらいのかはっきりしてきました. 微分位相幾何がつらいです.

私がいま読んでいる本では証明していない事実はきちんと定理番号まで含めて文献を紹介してくれています. それでとても助かるのですが, 三冊程度の微分位相幾何の(おそらく)有名な教科書から引用してくれています. 際限なく読むべき文献が増えるわけでもなく, 最後の最後にある重たい議論が必要な主結果というより本の前半・中盤にある比較的基本的な結果が多いです. それでも基本的な議論とはいえ三冊程度を追加で事前にがっちり読むよりも, まずはモース理論の概要をおさえようと思い, とにかくモース理論を進めています.

ちなみに専門が違うため全く状況が見えていないのですが, 微分位相幾何の新しい本は出ているのでしょうか? うまいこと一冊で綺麗に一通りまとまっていてもらえるとありがたいですが, ゲージ理論のような内容ならともかくモース理論に必要な微分位相幾何的な議論はなかなかなさそうな気がします.

微分位相幾何は1970-80年代が黄金期だったようで, 引用されている教科書もその時代の本です. 眺める限り代数・位相空間論が主力の位相幾何よりも, 微分積分が主力の微分位相幾何の方が私の好みのようです. 多様体上の$C^r$-級関数の空間に超関数の空間のようなノルムの族による位相を入れて, それで完備距離空間(またはフレッシェ空間)に関する議論が出てきたのを見かけ, こうした関数解析的な感じもかなりお気に入りです.

微分位相幾何に関する結果を丁寧にまとめたノートを作って公開したいという野望も出てきました. 他にもまだまだ勉強するべき内容も多いのでいつになることやら, という感じですが.

Satoshi Ogawa: On holomorphic tubular neighborhoods of compact Riemann surfaces

We give a sufficient condition for the existence of a holomorphic tubular neighborhood of a compact Riemann surface holomorphically embedded in a non-singular complex surface. Our sufficient condition is described by an arithmetical condition of unitary flat line bundles which can be regarded as an analogue of the Brjuno condition for irrational numbers which appears in the theory of 1-variable complex dynamics.

Twitterで流れてきたプレプリントです. 内容がわかるわけではありませんが, 面白かったのはよりにもよってコンパクトリーマン面(代数曲線)のような知られも知られきった対象に対して, 正則管状近傍のような議論がまだまだ議論されているという部分です. ちなみに管状近傍はモース理論でも現れます. 多様体論・微分幾何の基本的な概念ではあるものの, 何となく微分位相幾何的な方向でよく使われるような印象があります.

メモ

高校の情報I・情報IIの公式副読本

Twitterのバズに対する公式の分析

Twitter公式が「バズる」ツイートの法則を徹底的に統計解析して168ページの資料にした代物、SNSマーケティングやっているプロが全員廃業するレベルの化け物級の優良資料だった。 ちなみに無料。 SNSで「バズりたい」と思う人は全員これ読めばいいんじゃないかってレベル。

https://marketing.twitter.com/content/dam/marketing-twitter/apac/ja/insights/kakusan/kakusan.pdf

関さんのプレプリント「Deriving two dualities simultaneously from a family of identities for multiple harmonic sums」とコメント

プレプリントを公開しました。 https://arxiv.org/abs/2402.05730 月曜日にTwitterのスペースで高校生があまりに衝撃的な発見(ヒューリスティック&数値的に発見)をし、私は共同研究者である大学3年生とLINE通話で即座に証明に取り組み、2日間ぶっ通しで論文を書き上げ、金曜日である本日の公開となりました。 何故すぐに論文を書けたかというと、私が何年間もずっと夢であった問題だったからです。それがあのスペースでの発見で瞬間的に叶うことがわかったのです。技術はこれまでに2018年の山本さんとの発見以来、土台を整備してあったので本当に一瞬の出来事でした(連結和法)。夢を見ているようです。 私の今回の仕事における貢献の1つは、あの出来事をほっとかなかったことだと思います。そこに見たことのない現象があったので、発言者が高校生だろうが老人だろうが関係ありません。 ただ、一つの心配は先行研究の見逃しがないかです。相当努力はしましたが、今後何かわかったときは報告します。 実はスペースを聴いてたときは睡眠薬を飲んでいたので、脳が相当やばかったです。起きて即刻DMをして研究が始まりました。 なお、共著者である高校生とも大学生とも面識がもともとあり、彼らの数学力についてはもともと信頼がありました。 以下、今回の研究内容を簡単に紹介します。 今回の仕事は多重ゼータ値に関する研究であり、新しい(と思われる、と期待される)公式を発見し証明しました。それが一体どんな公式かを簡単に以下で説明します。 多重ゼータ値は級数表示によって定義される実数(無限にたくさんあります)であり、それぞれの多重ゼータ値は反復積分表示を持つことが知られています。今回の新公式はこの「反復積分表示」の精密化(?「何」化と表現するのがベストかまだ理解してません)です。 多重ゼータ値の反復積分表示は教科書に載っていて、初等的に証明でき、多重ゼータ値を勉強している現代の人々にとっては常識です。ですが、やっぱり最初に発見した人はすごいしえらいと思います。実際、ホフマンさん周辺の最初期の多重ゼータ値研究では反復積分表示が知られていなかったために困難があったことと推察します。ザギエの有名な論文において反復積分表示が紹介され、多重ゼータ値の研究は加速したことでしょう。ザギエの論文においてはコンツェビッチにクレジットが与えられていたと記憶してますが、ドリンフェルト積分ともよくよばれていましたし、他にもクレジットが与えられるべき数学者がいるらしいですが(Le-村上?)、ここの歴史は今詳しくないので割愛させてください。何にせよ、最初の発見者たちはとても偉大だと思っています。それで、例えばダブルシャッフル関係式のようなとても重要な現象が理解されていきました。反復積分表示が生み出した研究成果は膨大と言っていいでしょう。ところで、多重ゼータ値は多重調和和とよばれる対象の極限として理解することができます。多重調和和は無限和である多重ゼータ値を有限のNまでの和でとして打ち切ったものであり、N→∞の極限で多重ゼータ値に収束します。 一方、反復積分表示の方は、言われれば当たり前なのですが、リーマン和の極限として表示することができます。つまり、 多重ゼータ値の反復積分表示を ζ = ∫ と表現することにし、多重調和和をH(N)、リーマン和をR(N)と表すことにすると、 ζ = lim H(N) = lim R(N) = ∫ が成り立つことがわかりますが(ここまでは既知とみなせる)、実は各Nにおいて H(N) = R(N) が成り立っているのではないか?と考えてみましょう(そんなこと考えてこともなかった!!!!)! でも、R(N)の選び方って全く一意的じゃないんですよね。最もシンプルな形だと等号は成り立ちません。そこで、高校生は和の範囲を表す不等号<(たくさんある)をところどころ≦に変更して計算したのです(ここが偉大なる試行錯誤!!) するとポツポツと(数値的に)H(N)=R(N)が成り立つケースが見つかるじゃないですか!!最初は全く法則性が見えないかに思えたその現象も、ほどなくして大学生による慧眼で一般的な法則が予言されました。 この等式H(N) = R(N) こそが今回発見された公式です。 つまり、コンツェビッチ、ドリンフェルトらによる多重ゼータ値の反復積分表示の「極限を取る前」があることがわかったのです!まじかよ!! 予言されたこの公式は既に証明されているのでご安心ください。私と山本先生が2018年に発見し、その後発展してきた「連結和の手法」とよばれる証明技術があり、それを用いた新公式の証明を今回の論文で与えています。適切な「コネクター」とよばれる部品を見つけることにより、H(N)を段階的にR(N)に有限多重ゼータ値は多重調和和にRにおける極限とは異なる"A-極限"をとることで定義されます。多重ゼータ値は英語でMultiple Zeta Valueですが、以下では多重ゼータ値をRMZV、有限多重ゼータ値をAMZVと表現することにします。RMZVがRの中で満たす様々な関係式が研究されていますが、同様にAMZVも様々な関係式をA内で満たすことが調べられています。違う極限をとった違う世界の住人であるにもかかわらず、RMZVとAMZVはそれぞれが似た形の関係式を満たすことがあります。RMZVの満たす「導分関係式」が知られているけれども、AMZVが満たす「導分関係式」も発見されるというように。 それで、RMZVの満たす関係式の中で私が最も好きなものが「双対関係式」とよばれるものです。以下、duality。まず、dualityはRMZVの定義級数からは全く非自明な定理と言えます。ですが、RMZVの反復積分表示が見つかったことにより、その表示においては t → 1-t という変数変換を行うことでdualityは即座に証明されます。反復積分表示という偉大な発見の後にはdualityってほぼ自明になってしまうわけですが、そんなことではdualityは全く色褪せないんですよね。実はdualityに関してわかってないことってまだまだあるんですよ。この業界に入った時に何人かの専門家が「dualityは最初期に発見され、証明も簡単だが、最も謎めいた関係式である」みたいなことを言うんですね。それ以来、私の心はdualityに奪われました。 それで「dualityって積分的現象だよね」みたいな言明を聞いたことがあるのですが、それは反復積分証明によって作られた固定観念だと思っていました。 dualityに関する重要未解決問題(これはまだ解かれてないので今回は詳細は述べません)に向かうためには、「dualityの級数解釈が必要だ」というのが2017年ごろの私の認識でした。dualityの最も単純なケースが、オイラーが証明した ζ(3) = ζ(1,2) という等式なのですが、BorweinとBradleyの論文にオイラーの等式の証明が32通り述べられています。その最初の2つは級数変形による見事な証明なのですが、なので当然それらを拡張してdualityの級数証明が得られないかを吟味しました。 1つ目の証明は部分分数分解を用いるものですが、オイラーの等式はdualityだけでなく様々な関係式の特殊ケースとなっており、自然に拡張するとdualityにならず失敗しました。 2つ目は有限和(多重調和和)にして差 H(N)(3) - H(N)(1,2) を明示的に計算し、極限をとると差が0に収束するという証明です。 これは極めて良い発想だと感じ、一般の場合の差の計算を得たかったのですが当時の私には遂行できませんでした。 それで、dualityの級数証明を手に入れるにはBorwein-Bradleyには載ってない真に新しい証明を見つけるしかないとなり、2018年2月、愛媛のスタバで"コネクター"が発見されました。 https://arxiv.org/abs/1806.04679 RMZVはコネクターを利用することによって、その双対に段階的に変身できるという感じの証明です。 これで「dualityって積分的現象だよね」というのは棄却できたわけですが、コネクター証明の発見でも結局dualityのことはまだわかり尽くせてはいないという感覚を持っていました。詳しいことは述べませんが、次にやるべきことはBorwein-Bradleyの第2証明をちゃんと拡張することだと感じるにいたります。 RMZVで知られている関係式の対応物・類似物と言えるAMZVの関係式を見つけるというのはAMZVの典型的な研究ですが、未だに対応物が見つかってない(論文になっていない)ものも幾つかあると思いますが、dualityの類似物はHoffmanが紆余曲折ののち、2000年には発見しています。 RMZVのdualityを以下ではR-duality、AMZVのdualityをA-dualityと区別して呼ぶことにしましょう。ここで、1つのミステリーが発生します。他の種類の関係式、例えばシャッフル関係式とか巡回和公式とか、は、数学的な定式化は多分まだないですが、確かに対応物という感じがします。例えば、それらは同じコネクター・連結和を用いて同時に証明することが可能であり、出自が同じという意味で確かに対応物という気がするのです。一方で、R-dualityもA-dualityもともに"duality"ではあるのですが、R-dualityとA-dualityがどれぐらい数学的に近いのか、似ているのかということはわかりません(でした)。 まず、式の見た目が違います(双方でdual indexの定義が異なりますし、A-dualityはいわゆるstar版になっています)。 そして、Seki-Yamamotoは同時期に論文が2つあって、A-dualityのコネクターも発見しているのですが、我々が発見したR-dualityとA-dualityのコネクターは異なるものです。つまり、R-, A-dualityはともにコネクター証明が可能だったけれども別々に証明されたのであって、同じ出自からの同時証明というのは知られていない状況でした。知られていないというか、私は長い間R-dualityとA-dualityをそれぞれ研究してきましたが、これらは異なる現象であり、そんなものは「ない」のではないかと思っていました。MZV研究者である広瀬さんとはこれまでに様々な研究討論を行ってきましたが、あるとき彼がR-dualityとA-dualityの同時証明をしようという研究提案をしてくださりました。もしそんなものがあるのであればとても魅力的ではありますが、そもそも同時証明なんて不可能なのではと思っていましたし、色々考えてみてもいいアイデアは浮かびません。時々思い出しては考えていましたが、2024年以前には解ける兆しは全くありませんでした。 ところが、離散反復積分表示が得られた瞬間に、この公式がR-dualityとA-dualityの両方を導出することがわかりました! RMZVの級数表示を見てもR-dualityが得られるかは非自明であり、コネクターを使って1ずつ重さを輸送していく手段はあったものの、変数変換で一気に変換するというのは反復積分表示があって初めて可能なことでした。しかし、有限範囲で打ち切った多重調和和を考えると、それも定義そのままの表示だと変換のしようがないですが、離散反復積分表示(それは有限和)にすれば、なんと N-n → n 型の変数変換によって殆ど双対形に一気に変身できるのです! まさか、あの変換が積分を使わずに和の形のままでできるなんて!「殆ど」と言いましたが、実際は離散反復積分表示における和の範囲の等号がついた部分の寄与が誤差として残ります。 H(N)(k) - H(N)(dual of k) = 誤差 という形です。この誤差は N→∞の極限で0に収束することが簡単に示せるため、R-極限を取ればR-dualityが得られます。 つまり、これはR-dualityの新しい級数証明を与えており、実は反復積分表示によるR-duality証明には「極限を取る前」にも同様の操作が可能なことが判明し、単なる別証明というよりは、有限範囲で打ち切ったときの誤差を明示的に書き下すことができたという点で精密化を与えることに成功したと言うことができ、そしてBorwein-Bradleyによるオイラーの等式の第ニ証明の一般化を与えているのです。まさか、あの誤差項をちゃんと記述することができる日がやってくるなんて! 多重調和和にR-極限を取る操作を施せばRMZVになりますが、A-極限をとればAMZVになります。離散反復積分表示を用いて離散変数変換を施してからR-極限をとればR-dualityが得られましたが、離散反復積分表示にA-極限を取る操作を施すと、なんと!A-dualityになるのです!! 離散反復積分表示における等号部分はR-極限を取ることによって寄与が消え、そしてシンプルなR-dualityが得られました。一方でA-極限を取る場合はその等号部分がそのまま生き残り、その結果としてA-dualityの独特な形が現れるのです!大きく異なるのではないかと思っていたR-dualityとA-dualityはなんと「多重調和和の離散反復積分表示」という同じ公式を出自に持ち、2種類の極限を取ったときのそれぞれの極限値として現れたものだったのです!!! まさかあの2つのdualityがこんなに密接に関係していたなんて!!!!! 今回の研究で嬉しかったこととして、離散反復積分表示の証明にコネクターが使えたことがあげられます。Seki-Yamamotoの仕事だけではdualityにはまだまだ知らないことが残っていたわけですが、あのときの発見があったからこそ、迅速に新しい公式の短証明を与えることができました。コネクターの方法が知られてなければ、おそらく証明はもっと困難だっただろうと思います。(もちろん別証明に興味がある方は取り組んでみると何か新しいことがわかるかもしれません。) 以上のように、今回新しく発見された離散反復積分表示は早速「2つのdualityの同時証明」という1つの応用を与えました。が、その ポテンシャルはこんなものではないでしょう。 反復積分表示に対して知られていたことを離散化し、ついでにA-極限も取ってみれば、手を動かすごとに新しいことがわかるかもしれません。離散反復積分表示そのものについてもvariantや拡張が色々あることは確実と言ってもいいでしょう。 本当にたった一夜で世界の見え方が完全に変わりました。これから忙しくなりますよ。新規参入者がたくさん現れますように。 世界を変えてくれた共著者の2人へ。本当にありがとう。 以上で説明されてること、結構論文に書いてないのを反省しています。共著者の受験が終わり次第v2を出す予定です。

既知の結果を一般化することも、未解決の予想を解くことももちろん大事だけど、今回は ・全く予期してなかったものがあった ・ないと思ってたものがあった という発見だから興奮度がものすごく大きい。一週間経ったけど全然興奮がおさまらない。

『ドラゴンクエストIV』における人工知能

今日は34年前に『ドラゴンクエストIV』が発売された日です。

それを記念して、以下の『ドラゴンクエストIV』のAIをインタビューで明らかにした論文をもう一度公開させてください。

『ドラゴンクエストIV』における人工知能 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/38/5/38_659/_article/-char/ja

よろしければ、ご高覧ください。

〝わかっていても落ちる〟川の深みの恐怖

2024-02-10 数学と物理と情報の狭間/相転移プロダクション

今回のテーマ

記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 二次元でも難しい
  • ルベーグ積分の数学的定式化と直観的把握
  • 自己共役性の物理
  • 形式言語と情報科学: 数理論理と情報理論
  • Union-Findアルゴリズムと計算科学の話: 情報と物理の関係

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二次元でも難しい

クロスポスト。ユークリッド平面からユークリッド平面への連続単射は開写像になるって言えてますかね。多分行けると思うんだけとググっても出てこないので心配になっている。なんか勘違いしている?

https://en.wikipedia.org/wiki/Invariance_of_domain これでしょうか。代トポが必要なようで、自明ではないようですが、正しいのだとは思います。

情報ありがとうございます。n=2のケース限定で考えてましたが、まさにこれです。その場合にはほぼジェネトポで行けると思ってましたが、高次元では代トポなんですね。

ちなみにはじめに見つけたページはhttps://math.stackexchange.com/a/3898932で, 検索キーワードは「continuous injection is open map or not in euclidean space」です.

これには面白い点が二つあります. 一つはプロの数学者でも数学科大学一年で定式化できる問題に対して解答に自信が持てない場合がある事実です.

まず言及先のくるるさんは集合論の専門家でまさにプロです. 実際の解決法は位相幾何的な議論が本質的なようで, そうなると集合論からすれば専門外の内容でもあり, 判断するのは難しいのでしょう. 私としても専門外とはいえ, このレベルの議論で確たる証明ができないのには愕然としました.

もちろん問題の定式化だけなら簡単だが解決は超難問と言えば数論でその手の問題が大量にあるため, 定式化の簡単さと解決の容易さは関係ないのは数学としては当たり前の話ではあります.

もう一つ面白いのは単純に内容です. 最近幾何をずっと勉強していますが, 時々顔を出す部分多様体が本当に難しいです. 微分構造の定義・議論もさることながら, 位相の強弱が厳密には合わず, いわゆる正則な部分多様体にはならないケースに対する感覚が全く育っていません. 微分位相幾何で基本的なはめ込み・埋め込み・沈め込みに関わる部分でもあり, もちろん面白い部分とは言えます.

ルベーグ積分の数学的定式化と直観的把握

ルベーグ積分や測度論の説明で「縦を横に分割する」といわずに「値域の逆写像から生じる分割」といってくれたほうが可測関数や確率変数との関係もイメージできるのでそうした説明を最初の頃に読みたかった

これを見て次のようにツイートしました.

ルベーグ積分、縦で切るとか横で切るとかいう話ではなく、積分の近似に系統的な関数列の極限を採用する視点の方が関数解析への展開からは重要と思っているが、測度空間への意識づけには確かに値域・定義域の関連付けの方が適切だろうという気はするため、やはり両方きちんと解説しろ事案だった。 関数列の近似で単関数列を作る時、当然可測性を考えないとどうにもならず、嫌でも可測構造に意識が向くといえばそれはそうではある。

書き方が微妙だった感じはありますが, 何にせよ積分の近似でリーマン積分は関数をいじらず区間を区切ってその極限を議論している一方で, 関数列をうまく作って関数列の極限で議論している点は非常に重要な違いです. 関数列の極限がうまく動くように理論を定式化する動機が生まれるからです. これは関数列に対する収束概念の精緻化の動機づけにもなり, まさに関数解析的な視点につながるからです.

自己共役性の物理

Twitterでまた物理での作用素の自己共役性に関する議論が微妙に出ていました. それを見て次のようなツイートをしました.

自己共役作用素の定義域問題、数学的にはややこしいことこの上ないが気分として境界条件ごとに物理が変わり、それに合わせてスペクトルや固有関数もうまく切り替わってくれるわけでむしろ物理をよく写してくれるありがたい話と思っていたがそう思わない物理の人がいるらしくていつも困惑している。 微分作用素の定義域を考えないの、境界条件を無視して偏微分方程式を解くのと同じ作業なのだがどうしてそういう意識が育たなかったのかがむしろ気になる。 よくわかっていないのだが、ディリクレ・ノイマン・周期境界など、典型的に物理的に意味がある境界条件で適当なクラスのハミルトニアンに対して自己共役性が成り立つという数学的結果はあるだろうか。 この話、熱力学的極限を考えるとき、Liebのグループがやっているような連続系でのBECの議論で作用素論的には必要なのではないかという気がするが、Lieb達はもっと実解析的にやっていてそれ程表立って議論されていない気はする一方、Bratteli-Robinsonに少し書いてあった気もする。

実際問題として物理の議論で自己共役性を気にする必要はないというか, 自己共役性の証明だけで純数学の論文になるほど難しいです. 難しすぎて私自身全く把握できていないのですが, 物理的によく知られた, 重要なハミルトニアンであっても自己共役性が知られていない例はおそらく大量にあるはずです. どちらかと言えば自己共役性が証明できている作用素の方が少ないのではなかろうかと思います. 少なくとも場の量子論・量子統計力学では極めて非自明です. 量子統計的な無限格子系だと格子系による単純化がある一方で, 作用素環的な議論も必要で簡単ではありません.

形式言語と情報科学: 数理論理と情報理論

数学基礎論(というか数理論理学)は初手がめちゃくちゃ難しいのはあるのかもしれない。そもそも「形式言語」とその意味論を考えるということのモチベが伝わりにくいのよね……

その辺りは数学他分野よりも情報科学と親和性が高いんですよね。foo.cの中身がccにとってはCソースコードでもgrepにとっては単なるテキストでgzipにとっては単なるバイト列というのと似た話ですので。

形式言語と意味論の感覚がずっと掴めていなかったのですが, 改めてかもさんのこの手のツイートに触れてああそうかと少し感覚が掴めました. 私も出身の面からは純数学ではなく, 仕事の面からは広い意味で情報系でもあります. 数理論理の情報系への応用も基本的な議論がたくさんあるため, この辺をうまく絡めたコンテンツがほしいですが, 上記ツリーでかもさんに聞いたところ, 教育含めてその筋専門家であるかもさんも知らないのだから今本当にないのでしょう.

まずはこれらの関係はおいておいて, 数理論理とその情報への応用をきちんと勉強しなければいけません. いつになるやらといった感じですが.

Union-Findアルゴリズムと計算科学の話: 情報と物理の関係

Union-Findの応用としてパーコレーションが挙がっていて, これはやはり専門家にしか書けない文章でしょう. 上で自己共役性の物理, 数理論理と情報理論といった話を書きましたが, 数学・物理・情報に関わる・またがる話で, 少し突っ込んだところに触れるのは大学の外では非常に大変です. もっとやってくれる人が増えないかと願っています. 私ももっと情報をきちんとまとめて, いろいろな人が触れられるようにしなければと感じています.

メモ

標準ボレル空間と速度距離空間の詳しいPDF

arXiv にもはや教科書扱いされそうなPDFを見つけた 標準Borel空間 https://arxiv.org/pdf/0809.3066.pdf 測度距離空間 https://arxiv.org/pdf/1410.0428.pdf

標準確率空間って完備可分距離空間上に確率測度を与えた空間だから、測度距離空間論の主戦場なんだろうね・・

あと日本数学会にも標準Borel空間のPDFがあった https://www.mathsoc.jp/publication/ItoArchive/V10/A12pp001-149.pdf

『取扱注意!高校数学を大学数学で解く「チート解法」』

拙著『取扱注意!高校数学を大学数学で解く「チート解法」』がもうすぐ出版されます。予約受付中です。 https://hanmoto.com/bd/isbn/9784753935505 Amazon:https://amazon.co.jp/dp/4753935507 楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/17772250/ 題名通りのえげつない本です。多分こういうコンセプトの本は史上初だと思います。

何を侮辱と捉えるか

マザーファッカー系の悪口は日本人には効きが悪いということをまず学ぶべき、こうやって異文化を理解していこう

自分も親と距離があるし親とベタベタな人が周りに居なかったので、何故母親を侮辱する事が本人への最大の侮辱になるのか?ってのがずっとピンと来なかった。中国語でも母親を侮辱する悪口が沢山あって不思議だったけど、とっても近く濃い親子関係を見て聞いて、やっと何と無くわかるようになった。 親への感謝や愛情を人前で言う事は少なく親のことをくさす冗談の方が多い。特に母親は「女性」じゃ無く「母親」という感覚があるので、親を貶されても、特に母親を性的な方面で侮辱する言葉はピンと来ない。 それを中国人の友達に説明すると皆驚く。怒るポイントの違いも文化の差の面白い所だと思う。 国絡みで腹立つ事っていう友人との話で、日本を嫌いで日本っぽいデザインに腹を立てる気持ちは分からないし(アメリカっぽいデザインやそこら中にあるし)、中国人に日本の政治批判をされても別に腹は立た無いけど、もし職人が丹精込めて作った寿司を踏み潰されたら物凄い怒りを感じる。これは何だろう。 きっと食べ物を大事に、人が一生懸命作った物を大事に、お米は大事に、職人へのリスペクト、などの道徳観をぶち壊される感じが許せないのか? 国を離れて、こういう自分にとっての当たり前を改めて考える癖がついたし、割と面白い。

小平先生のレクチャーノートの英訳

ひょんなことから小平先生の「代数曲面論」(東大レクチャーノート8)が2020年に英語に翻訳されていたのを知る. https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-15-7380-4 ちなみに日本語版は無料.

小平 邦彦 述 山島 成穂 記 代数曲面論 [1968] https://ms.u-tokyo.ac.jp/publication/docs/lecturenotes08-kodaira.pdf 50ページ強で小平消滅定理まで. ちなみに東大のレクチャーノートは多数公開されていてかなり読みごたえあるよ. https://ms.u-tokyo.ac.jp/publication/lecturenote.html

公開されてないけど、小平さんのNevanlinna 理論は英訳された https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-10-6787-7

読み上げの意義

頭の良くない人って、テキスト読ませると「書いてないことを読み上げる」んだよね。てにをは、接続詞、助詞など細かいところまで丁寧に拾って読めないの。雰囲気で読んでるの。だから私は家庭教師や塾講師、知人の子の勉強を見る時はまず一番最初に「教科書声に出して読んでみて」って学力チェックする そうするとやっぱり「うわー、全く書いてないことを読み上げてるわー…」というケースが必ずある。「書いてある通り、そのまんま、ただ読めばいいだけ」なのに、それができない。「どこにも書いてないことを読む」って、ツイッタランドのクソリパーだけじゃなく「小さい頃から」始まってるみたいだよ そんで人に指摘されるまで「自分が間違えて読んだこと」に気づかないし、指摘しても気づかないことすらある。「ちょ、今のところもう1回読んで」っていうと「え、間違ってた?ちゃんと読んだけど?」って言う。「いやいやいやいや、ちゃんと読めてなかったし、間違ってた」っていうやり取りになる 嫌なやり方かもしれないけど、読んでるところを録音してあとで聞かせた方がいいのかも。「ここがちゃんと読めてなかった」「書いてないことを読んでるよ」みたいなことを教えるのって大変だけど、そもそも「書いてあることを書いてある通りに読めない」ようでは、何の科目を勉強しても無駄だと思う だって「書いてあることを、書いてある通りに、読めない」んだから。 勉強の前にまず「テキストの音読」をやって「書いてあることを、書いてある通りに、そのまま読む」訓練したほうがいいと思う。 少しバズっていて言葉が足りなかったなと思ってたところに質問が来たので補足しますが「書いてないことを読み上げる」というのは「書いてある通りに読ま(め)ずに、助詞や接続詞を平気で飛ばし、雰囲気で意味が通じように、自分で無自覚に創作したものを、勝手に挿入して発音する」という感じです。 「書いてある通りに読める人」にとっては「一体どうやったらそんなことができるのか」「書いてないことを読むほうが、はるかに難しい」と思うのですが、「書いてある通りに読むほうが難しい人」にとっては「自分で勝手に創作する方が簡単」みたい?と思います あと、言うまでもなく漢字。「この学年で、この漢字が読めない」というのが、音読してもらうと一発で速攻把握できるので、教える側にはとても便利。 最悪ひどいときは、「~~ではない」を「~~である」に読み違えていたりして、「まるきり正反対の意味」に読んでいる事すらある。「これじゃあ、勉強が全然わからないわけだわ~!」と思うことが多い。低学力の子は。音読を見てあげるだけでも全然違うと思う。 なんかすごいバズってしまってビックリだし宣伝するものもないんだけどww、書き出しが「頭のよくない人って、」って書いたのがよくなかったみたいだね。誤解を生んだり気分を害された方がいらしたみたいでサーセン。「学力の伸び悩んでいる方は」とか書けばよかったかな。 クソリプもかなり来てるけどw、「目からウロコ」「音読の意味がやっと分かった」というリプが多い中、「全く信じられない」という人もいて、そういう人はたぶん低学力の子の勉強を見た経験があまりおありでないのかも?。「それはディスレクシアです」ってリプもけっこう多い。

工学者の矜持: 体育館に「おうち」ができた…能登半島地震で大活躍する「1棟1万円」の簡易住宅を作った大学教授の使命感

文字式の難しさ

思想の自由

だからクセイさんは 「海外では小児性愛者に厳しいことを言ってるやつほど、実は小児性愛者で犯罪を犯していたってことが多々あるので、小児性愛者を叩いてるお前も怪しいことになるので、そうじゃない証明をしてみろ」 と言う

世界史学習

どっかでまた山川世界史を読めという議論が発生してるのか。これどうぞ。>高校世界史レベルの知識を速成でインストールする方法 - Togetter 14年越しの補足記事です。> 高校世界史教科書で学びなおす歴史学習メソッド(2024年/令和6年改訂版)tricken @tricken

今回、山川世界史への批判点も複数出ている。OSとアプリのシナジーみたいな話と議論の構造が似てきたかもしれない。もちろん山川世界史は「教師から見た都合の良い保守性」という批判はある程度的を射てるんだけど、その保守性のお陰でできた教材ネットワークのは自習派にも恩恵を齎してると思う。 自分は「自習派こそ山川世界史B×良質な資料集のコンビネーションで独習できる」という仮説を敢えて推してる(※教師付きの方が効果が高まる場合はあるが、教師付きでなければ山川世界史の価値が大きく減じる、という立場には立たない)。 その上で「引っかからず通読する」ことを重視するなら、山川世界史Bは厳しい局面もあるかもしれない。あと他の方も言ってる通り、山川世界史にはグローバルヒストリーアプローチや世界システム論の視座が希薄だし。(前に岡和田さんに「西欧中心すぎる編纂だよね」と突っ込まれた事もあったね)。 2010年の頃は受験世界史への視点もあり、「テーマ史から論述へ」という点を断ち落とせなかった。そうなると、一見zipファイル的とも言える山川世界史の圧縮言語文も、「論述としてまとめるならこれっきゃない」的な端正な文として参考になるんですよね。その点で山川世界史は若干誤解されている。 システム論、グローバルヒストリー的な視座を踏まえつつ(つまり西欧中心主義的な書き振りを現代的な傾向に合わせて崩しつつ)、なお若干の圧縮言語的端正さを継承した山川世界史・改みたいな教科書があればいいんだけど、山川の『新世界史』最新版はそういうものになってるのかしらね。確かめたい。 しかし改めて、受験世界史を目標としない場合の目標設定、つまり「テーマ史や論述と言った問題に回答できる(=アウトプット可能な状態になる)」ことを単なる世界史やり直しの中の課題に全然含めないでいいのか、というのは、実は結構悩ましい。世界史的問題を作文で答えて身につくものもあるから。 テーマ史や論述を全然省いて「読むだけの理解」をひとに薦めるのは、数学に例えるなら「演習問題をぜんぜんやらなくても微分積分はわかります!」的な欺瞞に近いものを感じるんですよ。 「単に読み通すだけで高度に理解できる世界史読書」なるものは、本当に世界史の“アウトプット”能力含めた理解を涵養してくれるのか疑問だ、という気持ちがある。他方で世界史の国立大論述対策みたいな激ムズ問題をやりまくることもまあ、やり直し世界史のコアにはなり得ない。どこでバランスを取るか。 自分が、人によってはとっつきづらい山川世界史を敢えて薦め続けるのは、この「特定の歴史記述について端的に述べ直す」という時の手本となる作文を示してるという点が大きい。単に読むための教科書ではなく、いつか自分で述べ直すための手本を示している教科書、という見方をしている。 その上で、もしかするとそういう点も含めて、帝国書院やその他の教科書の方が、モダンで優れた「歴史を語る作文の新たな手本」になっているかもしれない。その時は山川世界史をいったん省いてもいいかもしれないと思う。(帝国書院の世界史Aと新詳世界史みとこ) ともあれ「自分の手で歴史の一部を、学んだ事実に基づき述べ直す」という演習が世界史学習の後半部分において想定されていることは、どんなタイミングで世界史をやり直すのであれ、僅かでも意識されたほうが学習効果が高まると思う。 「読み物としての世界史(学習)」ではなくて「書き物=規定演武的語り直し=出力品質保証としての世界史(訓練)」みたいな世界観をバックグラウンドで駆動させながら山川世界史を推していたかもしれない。その世界観で褒められる山川世界史というのがあるわけです。 ここまで山川教科書の是非を述べたところで、「書き物の参考としても今一番イケてる高校世界史教科書はどーれだ」という話はアップデートさせてゆきたい。書き物としての山川世界史のことは相変わらず評価してるけれど、2024年現在で見直すと山川が脱落してる可能性は全然あると思っている。 新課程の方が評判いいというコメントがあり、気になりますねえ〜。ディベート的に山川世界史Bを推す立場をしばらく保持しますが、折れる日も来るかも。

私も世界史教科書は帝国書院を推します。 山川のシェアが高いのはその保守性(新項目はコラムに回すなどして構成をできるだけ変えない等)故、つまり採用する側=教える側の「授業のやり方をできるだけ変えたくない」という心理に寄り添っているから、というフォークロアもあってですね。

2024-01-28 幾何の難しさと暗記問題/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 勉強するときに意識する三要素
  • 幾何の難しさと暗記問題
  • 幾何と調和振動

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勉強するときに意識する三要素

最近数学としては腰を据えてゆるく幾何のノート作りを進めています. 改めて感じたのが覚える大変さです. まず一般的に何かを勉強する上での要点は次の三点にあると考えています.

  • 知識
  • 技術
  • 頭の使い方・思考法

お互いに関連する要素もありますが標語的に分けてあります.

知識は単純に知識です. 暗記事項と言っても構いません. 数学で言えばいろいろな概念の定義その記号, さらに基本的な記号運用のルールを覚える必要があります.

技術は例えばホモロジー代数で可換図式のdiagram chasingなどが(知っている人には)イメージしやすいでしょうか. 不等式処理の腕力なども技術枠に入れています. telescope methodのような名前がついている方法もあり, 電磁気などベクトル解析でのガウスの法則・ストークスの定理に対する部分積分なども技術枠と思っています. 変な言い方かもしれませんが, 「受験テクニック」の類も技術的な問題と言えるでしょう. 知ってさえいれば楽になるがそれを知らないと困るタイプの知識があります. 単に知っているだけでは駄目で必要なときに知識の引き出しから出せる必要があります.

上記二つは基本的に分野特有で, 最後の頭の使い方・思考法はある程度汎用性があると思います. ここで想定しているのは例えば「分類」です. どんな分野でも分類は基本的な思考の枠組みです. 語学・言語学で言えば例えば単語の品詞の分類があります. 物理で言えば, 磁性による強磁性・常磁性・反強磁性物質, 電気伝導度による分類として超伝導現象を起こすかどうかといった分類があります. 数学で言えば「どのような多様体があるか」, 「どのような作用素環があるか」といった問題は常に分野の基本的な問題です. 新たな分類を探すのも大事な問題で, 分類を特徴づける要素の研究や, 新たな分類を生み出す要素の発見といった問題もあります.

幾何の難しさと暗記問題

前段を受けて幾何の難しさを考えます. 解析系出身から見た幾何の難しさはまず知識面, もっと端的には暗記にあります. 具体的には幾何では次のような形で大量の空間が出てきます.

  • 多様体
  • 接空間・余接空間
  • 接束・余接束
  • 一般にベクトル束
  • ベクトル束のファイバーのテンソルで得られるテンソル積束
  • ファイバー束・主束

もちろん全て「多様体」の一言でまとめられるとはいえ, それで済んだら苦労はしません. そもそも多様体自体に関わる概念・記号がたくさんあってひどく面倒です. そして上記の多彩な多様体を適当な形で区別して議論しなければならない理由として, 多様体上・多様体間の写像や作用素の問題があります.

  • 多様体上の写像
  • ベクトル場・微分形式
  • (リーマン)計量
  • ベクトル束に値を取る微分形式
  • 一般に多様体上の切断(がなす空間)
  • 様々な微分作用素: 外微分作用素, 接続(共変微分), リー微分

カルタンの公式などこれらの間の適当な関係もあります. ここでもいくつかは「切断」と言えば一言でまとめられます. しかし実際に勉強していてそれで済んだら苦労はいりません.

さらにややこしくなるのが「誘導---」です. 例えば接束上でのリーマン計量は余接束に対してリーマン計量を誘導します. 他にも引き戻しで誘導される計量といった概念もあります. 接続も同じく誘導接続があります. たくさん空間がある中で誘導された概念も含めて大量の計量や接続や微分作用素の概念が現れます. 実際に計算をしていてどこの空間にどう作用するのか記号的・概念的によく混乱します.

ここで「慣れればわかる」問題が出てきます. 確かにそれはそうですがそれで済んだら苦労はしません. 基本的に概念間に適当な整合性があるように定義されていますし, それこそ丁寧に追いかければどうにかなります. そしてこの「丁寧に追いかけてどうにかする」のが一番大変です. 最近ようやく慣れてきたというか, いろいろな概念や基本的な等式などが頭に入ってきました. やはり焦らずじっくり丁寧に向き合うしかないと改めて実感しています.

しばらくベクトル束を中心に勉強していて, 指数定理で特性類が出てくるためファイバー束と特性類の復習を再開しました. ファイバー束まわりで記号の定義が全く頭に入っておらず, 議論を追いかけるのが本当に大変です. そもそも一回とにかくノートを作っただけで, 事実上新しいことを勉強していると言っても間違いではありません. 「慣れればわかる」は基本項目の暗記も含むのを実感しています.

幾何と調和振動

とりあえずざっと指数定理の証明に関するノートを作りました. まだクリフォード代数のノートが雑なままで半端ですが, 解析的な部分が一通り書けたため, これからじっくりタイポチェックも兼ねて復習をはじめます.

熱核の方法による議論を追いかけていて, その中で調和振動子に対する熱方程式が出てきました. 単に$\frac{\partial u}{\partial t} = Hu$の$H$が調和振動子になっているタイプの熱方程式です. 調和振動子のシュレディンガー方程式の虚時間化と言っても構いません. この中でメーラーの公式なども出てきました. 前から名前などはもちろん知っていましたが, これまでまともに使ったことがなくノートも作っていなかったため, 改めて調和振動子まわりのノートも整備しました.

幾何, 特に調和積分論や指数定理の, 微分幾何というより幾何解析よりの解析的な議論でこれまで積極的に使う機会のなかった解析学系統の知見を使う機会があって非常に楽しいです. 調和積分論も指数定理も熱方程式とコンパクト作用素周辺の議論を軸にでき, コンパクト作用素のスペクトルも幾何的な情報を持っています. 他にはテイラー展開, より強くは漸近展開の議論も重要です. これがなかなか大変ですが形式的ベキ級数もこんなところで使うのかという感動があります. リーマン計量のテイラー展開なども追いかけるのが大変ですが面白いです.

メモ

国籍の定義

外国人が帰化すればそれで「日本人」と言って良いかどうかの旨、議論が繰り広げられております。これに関しては、国の政策に関わることであり、大使としての立場上コメントすることは許されません。しかし、一人の個人として意見を述べることは、実はそれ以上に憚る気持ちがあります。なぜなら、それはまさしく日本人が決めることであり、外から来た私たちは、たとえ帰化したとしてもそれに対して軽率に口出しして変えようとするのは、適切ではないと思います。「答えになっていない。だから、その日本人の定義は?」と聞かれればそれは、雲ひとつない青空のように疑問の余地を残さず自分のことを「日本人」だと確信している人を言います。

また私個人に関しては、これだけ日本に馴染んでいて多くのフォロワーがいるから、これから付き合っていく上でこれを機会に説明をしたいと思います。私は幸せな人間です。なぜなら自分にジョージアという国が特有のアイデンティティを恵んでくれたからです。だから、今世はジョージア人として誇りをもって生きていきます。その上で、日本は私にとっては第二の故郷です。それだから一層と自分は恵まれていると感じます。

これでいて、もちろん自分の子供はジョージア人として生きてほしい気持ちはあるが、子供は子供で大きくなってからものごとを自分で考えてほしいという気持ちが強いです。その時はその時で状況が変わっていることでしょうし。本題に関しても、今とは考え方が変わっていると思いますし、それだから歴史は面白いのです。

素イデアルの集合とスペクトル

擬微分作用素とパラメトリクス

擬微分作用素の理論を先にやって楕円型微分作用素のParametrixの存在を先に示してしまった後に楕円型正則性を楽に示すと言う方法、Wells以外で見たことない

2024-01-14 省略記号の利用を控える/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 省略記号の利用を控える

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近況報告

年明けから数学のリハビリを続けています. 年末年始に買い込んで休みに読もうと思っていたプログラミングの本の積みもあるため, そこも消化したいところですが久しぶりの数学集中モードでなかなかうまく時間配分できていません.

やはり数学は猛毒というかいったん集中すると抜けられません. 復習のためにもノート整理しつつ進めていてあまり進捗はないものの, 急ぐものでもないためのんびり進めています.

Leanなど勉強したいことが死ぬほどたくさんあって精神と時の部屋がほしいくらいです. 日常が退屈とかいうのは本当に理解できないですね.

今週は書けることがあまりないのですが, できる範囲できちんとやっている姿を見せるだけでも大事だろうと思い, 自分の進捗記録も兼ねて書いています.

省略記号の利用を控える

細々とした記号の確認のため, 久しぶりに多様体論と微分幾何の基礎のところからノートを見直しています. TeXのタイピングが面倒で省略記法を使っていたのですが, 久しぶりに見返すといま一つわかりにくいと思うようになりました. 以前はシンプルな記号の方が読み書きしやすくてよいと思っていたものの, 慣れていない幾何の分野でそれをやるのは悪手だと改めて感じています. 復習ついでに記号を整理しているため, 復習自体の進捗も芳しくありませんが後でコンテンツとして提供する予定でもあるため, 最終的に必要な作業でもあります.

他にも省略記号には流儀がいくつかあります. 必要になってネットで調べ, 時々でその文献での記号を使って書いている部分もあり, 不揃いになりがちな部分もあります. その統一も兼ねてシコシコとノートを整理しています.

方針の大変更でもあるため, 記述の整合性のような問題もありますが, 仕方ありません.

そもそもとして熱力学の有名な問題で, 「どの変数の関数で何を固定して偏微分するか, 既存の記法はわかりやすいとは言えないが, 慣れれば問題ない」とよく言われる一方, 慣れるまでが問題で挫折するともよく言われます. そして実際, 慣れきっていない分野で前に書いたノートが案の定読みにくいため, 幾何解析系の記述を追加しつつ並行して改善中です.

指数定理のノートを作っていると, 当然ながら位相幾何系の話も出てきて, そのノートも作り切れていませんし, そもそも基礎知識も足りていません. 興味はあるものの私の中での優先度は低めに設定していつつ, どうしたものかと悩むところでもあります. 悩むというとネガティブな響きもありますが, 基本的なところでもまだまだ見えていない面白い世界があるのも確実で, もちろん楽しみの方が強いです. こういうのは勉強会的に人を巻き込んでやるのがいいのですが. 数年レベルでじわじわ進めるしかありません.

2024-01-06 『偏微分方程式で学ぶ多様体論』がほしいので作る/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • お勧めの本二冊, 『調和積分論』と「複素関数論」
  • 他にも挑戦したい分野: 基本的な幾何解析の分野集
  • コンパクト作用素の幾何への応用

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近況報告

結局ここ半年ほど仕事関係のプログラミングの勉強ばかりでほとんど数学・物理のノート作りをしていませんでした. たまに気分転換に過去のノートを見返して復習・整備をしていた程度です. 年も明けたため心機一転で微分幾何・幾何解析のうち具体的にソボレフ空間論・作用素論・偏微分方程式論を駆使するタイプの勉強を再開しました. ここ二ヶ月程度は現実逃避で$\overline{\partial}$-方程式による多変数関数論の勉強をしていてソボレフ空間をよく使っていたからでもあります.

去年は代数的位相幾何・層とコホモロジーなどの幾何に関わるノートを整備しきりたいと思っていたものの, 後半の怒涛の仕事用学習でほぼ頓挫しています. ノート作りからもかなり離れていたため, 気分を乗せやすい解析関係で勉強を再開しました.

ついでにいろぶつ先生が特殊相対性理論の教科書の査読者募集をしていて, そちらにも応募して特殊相対性理論のリハビリをやっています. 量子情報のための線型代数の通信講座・勉強会の第三弾の開催が遠くなっていますが, これが終わったら特殊相対性理論(のための線型代数)をやろうと思っています.

今月からメルマガもきちんと再開する予定です. ゆるくがんばります.

お勧めの本二冊, 『調和積分論』と「複素関数論」

具体的には次の二冊です.

前者は$\overline{\partial}$-方程式による多変数関数論の本で, 後者は熱核の方法による多様体上のラプラシアンを調べる調和積分論の本です. どちらも比較的薄い割に一定以上のラインまで議論が進む点がよいです. 前者は意図的に複素多様体の議論はおさえて$\overline{\partial}$-方程式の議論に集中している点がよいです. 幾何の本はあくまで幾何がしたいため, 調和積分のゴリゴリに解析的なラプラシアンの解析の詳細は避けられ, 結果だけが導入される方が多いように思います. そんな中で後者は(私の観測範囲では)なかなかない解析に真正面から取り組まれた本で貴重です. 一応多様体の基礎からまとまっています. 後半も後半の調和積分のところしか読んでいないものの, ベクトル束を含めて必要な知識自体はまとまっているため, ベクトル束までの幾何の様子をさっと知る目的にもよいのではないでしょうか.

どちらにも特徴的なのは関数解析やヒルベルト空間の議論がある点です. 関数解析を勉強したはいいものの, どこにどう使うのかイメージが持てない人, 純粋な解析以外, 特に幾何への応用を見てみたい人にもお勧めです. $\overline{\partial}$-方程式・調和積分論はともに楕円型正則性が実際に役立つ場面でもあり, 楕円型正則性愛好家にもお勧めです.

他にも挑戦したい分野: 基本的な幾何解析の分野集

既にいくつかノートを作ってある内容(ただしタイポ修正を含めたブラッシュアップができていない)も含め, 次のような内容を整備したいと思っています.

  • 多様体上のラプラシアン・ディラック作用素の解析
  • 指数定理
  • (ウィッテン流の)モース理論
  • 山辺の問題
  • モンジュ・アンペール方程式
  • ゲージ理論, サイバーグ・ウィッテン方程式
  • $\overline{\partial}$-方程式, さらに深い多変数関数論, 特に複素多様体上での議論

モース理論はウィッテン流だとソボレフ空間をゴリゴリに使うようです. ミルナーの本に相当する内容でも常微分方程式とその解の極限を丁寧に議論してモースホモロジーを構成するため, 解析的に丁寧な議論が必要です. モース理論自体, かなり直接的に微分積分をがんばっていると幾何がわかる分野でパラパラと本を眺めていて面白かった理論です.

そもそも基本的な多様体のノートも面倒で作り切れていない問題があります. 何度か勉強しているため, ある程度わかっている内容を改めてきちんと書くのが本当に面倒で, 逆に解析方面の基本的なノートを通信講座作成と合わせて書いたときの強制力の強さの凄まじさに今更ながら驚きます.

コンパクト作用素の幾何への応用

これまで非可換幾何で無限小の扱いになるとか何とかでコンパクト作用素を使う話は聞いていて, それ以外にこんなの都合のよすぎる作用素をどこで使うのかと思っていたら, 改めてコンパクトリーマン多様体上のソボレフ空間論・偏微分方程式論の応用で標準的な議論の対象だとようやく認識しました.

有界領域に対するソボレフ空間論で埋め込み写像のコンパクト性はもちろん知っていたのですが, こんな形で使うのかと改めて驚いています. 全空間でのシュレディンガー方程式に対する応用しかしたことがなく, 当然この意味でのコンパクト埋め込みが出てくる局面がありませんでした. 特に調和積分論で醍醐味が味わえるためぜひ先程紹介した本で調和積分論を解析的に詰めるところまでやってみてください.

調和積分論の解析的に面倒な部分はホッジ分解の厳格な議論で, 特にポアソン方程式の解の存在の議論です. 本質的には同じような話ですが, ホッジの定理「向きづけられた閉多様体の全てのド・ラームコホモロジー類はただ一つの調和形式で代表される」でも調和形式の存在の議論でラプラス方程式を解く必要があり, ここで解析をフル回転させます. 特に熱核の方法では熱核のコンパクト性に帰着させます. いま手元のノートでは上記の本による余接束でのシンプルな熱核の方法による調和積分論と, クリフォード束上のディラック作用素の楕円型正則性と合わせて議論するタイプの調和積分論と二通りのノートを整備しています. 上記の『調和積分論』ではパラメトリクスの議論もあり, 同じく熱核の方法によるディラック作用素の指数定理でも役に立つ議論です. 実際, 読もうとしている本が熱核の方法による指数定理を議論しているため, その前哨戦として上記の本のノートを再整備した形です.

ちなみにホッジ分解は電磁気で有名なヘルムホルツ分解の一般化にあたります. 私の手元の幾何ノートにはもちろん証明つきで記録しています. 細かな整備が全然できていないため公開できる状態ではないのですが.

メモ

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ディラックの逸話

ディラックが学生に「何か質問はあるか?」と聞いて、式の導出が分からないと聞いてきた学生に、「それは質問ではなくて陳述にすぎない」と言った話好き。 http://www.p.s.osakafu-u.ac.jp/~kayanuma/teigi.html

突出した子を集めた英才教育に挫折「IQだけじゃない」学園の教訓

文部科学省が「これまで我が国の学校において取組はほとんど行われてきませんでした」と、今年度から始めた「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」。いわゆる天才児、ギフテッドと呼ばれるような飛び抜けた才能を持つ子への支援だ。

ただ、民間でのギフテッド教育で先行したNPO法人翔和学園(東京都中野区)の中村朋彦さんは「レベルが高い集団で英才教育を施し一芸を伸ばす、そんな単純なものではなかった」と振り返る。

才能を伸ばす試みがうまくいかなかった理由、挫折から得た教訓、形を変えた新たな試みを聞いた。 連載「天才観測」

将棋の藤井聡太八冠、大リーグMVPの大谷翔平選手。前人未到の境地を切りひらく「天才」の活躍に沸く日が続きます。天才が社会にもたらすもの、人々が天才に託すもの、現代の天才について考えます。

つんく♂「天才はいたけど採らなかった」 才能よりも大事な成功の源

目標はイノベーション、小学生が相対性理論に言及

――ギフテッド教育はどのような経緯で始まったのでしょうか?

「発達障害を抱えている、小学校を不登校といった子どもたちを支援するフリースクールを運営する中で、IQ(知能指数)が飛び抜けて高い子が一定数いることに気がつきました」

「子どもたちと一緒に公園に行くと、すべり台やブランコでの靴飛ばしをして楽しそうに遊びます。子どもらしいなと思ってよくよく会話を聞くと、すべり台では摩擦係数について、靴飛ばしでは射出角度について話し合っている。同年代の一般的な子どもたちとはなじみにくいはずです」

「IQの高さゆえに学校の授業に魅力を感じなかったり、才能の凸凹の凹の部分ばかり指摘されることで意欲をなくしたりする子が多いです。恵まれた才能を生かして凸を伸ばすことに特化すれば、社会にイノベーション(技術革新)を起こす未来のエジソンやアインシュタインが生まれるのではと、2015年にIQ130以上を目安に選抜した小学生によるアカデミックギフテッドクラスを設けました」

――どのような子が集まり、どのような教育をしたのでしょうか?

「イノベーションが目標だったので、特に理数系が得意な子を募集しました。バーチャル嗅覚(きゅうかく)を研究したいという子がいて、人間の五感のバーチャル技術において、視覚や聴覚は研究や実用化が進んでいるものの、嗅覚は遅れているといった関心の高さを持っていました」

「他のクラスで行っている基本的な課程は最小限にして、子どもたちがそれぞれ関心がある分野を重点的に。学習発表では、インターネットを駆使して様々に調べて相対性理論に言及する子もいました。我々では教えられない高度な部分も多く、理系の大学院生や英語講師といった外部の方も講師として招きました」 3年で廃止「指導が間違っていたと認めないといけない」

――意欲的な取り組みで、問題があるとは思えません。なぜそれがうまくいかなかったのでしょうか?

「この子たちの将来の働き場になると想定した、IT企業の技術者や大学の研究者に視察に来てもらいました。ところが評価は厳しいもので、甘さを痛感しました……」

「指摘されたのは『小学生にしてはすごいが、このレベルの子は高専にはたくさんいる。ネットで調べた形式的な知識はあるが、科学の基本的概念の理解が浅い。周囲の助言にあまり耳を傾けず、実験に失敗した時の諦めも早い。これでは厳しいよ』というものでした」

「そう言われてよくよく見ると、IQが高くて弁舌も巧みなので大人が感心するようなすごいことを話しているのですが、資料を丸暗記しているだけで本質的な部分は理解できていないのではないかと感じることもありました。また、IQで選抜したことにより、子どもたちが悪い意味での特別感を持ってしまった面も見受けられました」

「医師ら運営に協力頂いている外部の有識者の方とも相談し、私たちの指導方針は間違っていたと認めないと次には進めないという結論になり、アカデミックギフテッドクラスは3年後の18年に廃止しました」

――挫折から得た教訓は何でしょうか?

「IQの高さばかりに注目してしまいましたが、社会で生活をうまく営むための発達に飛び級はないということです。成長のためにはやはり基礎学力、協調性、やり抜く力が欠かせません」

「全員が一つの大教室に集まっています。喜びや達成感を共有するためみんなで肩を組んで歌うなど、経験を共有する機会を大切にしています。それぞれが興味ある分野で個別学習するだけでなく、共通の目標に向かって集団で協力して学ぶことなども行っています」

――しかし、ギフテッドや発達障害の人はそうしたことが苦手だから、学校になじみにくいとされます。だからこそ長所特化にしたのではないでしょうか?

「長所を伸ばすためにも基礎が必要なんです。そのため一律的な形でなく、個別に適した形を模索しています。具体的には、文字を読んだり書いたりするのは苦手だけど絵を描くのがすごく得意な子がいます。絵の教本を渡すと、何回も模写をしてどんどん上手になっていく。ところが、ある程度のところで上達が止まりました。理由を探ってみると、文字が苦手だから教本の絵ばかり見ていて、技法の説明文をしっかり理解できていなかったのです。この子は今、苦手な国語を克服するためではなく、得意な絵をさらに伸ばすために言葉を調べるなどの勉強を頑張っています」

「また、世界一の大きさのペットボトル水ロケット発射に何度も挑戦して、昨年にギネス世界記録認定を受けました。大きくて明確な目標を立てることで、みんなで取り組む、失敗しても諦めずに続けるということを結果につなげられました。個人の興味関心の分野だけに閉じこもるのでなく、高校野球のように仲間と一緒に泥臭い青春を送ることで、様々なことに折り合いが付けられるようになるのではと期待しています」

――未来のエジソン、アインシュタインを育てるという目標も変わったのでしょうか?

「その目標も反省点です。イノベーションというわかりやすいキャッチフレーズにとらわれて、私たちが才能に優劣をつけてしまった面もありました。IQの高い低いは個人差でしかありません。実際、ペットボトル水ロケットの取り組みでは、IQが低くてもテープを巻く作業に黙々と取り組める、ロケット先端を上手に鋭角にすることができるといった子が大きな力になりました。それぞれの個性が、成功につながる才能でした」

「今は、自己肯定感を持ち、他者の幸福に貢献することに喜びを感じられる若者を育てたいと思っています。イノベーションの文脈で言うなら、『勝者総取り』ではない形で社会の発展に寄与する人材を育てることを目指しています」(聞き手・加藤勇介)

2023-09-23

コリオリの力の実演

江沢先生の訃報

統計力学でのエルゴード性

魔法少女から: 超準解析的超関数論

佐藤超関数を含め既存の超関数論の超準解析的表現は色々と研究されている. https://doi.org/10.1016/S0019-3577(00)88579-1 https://doi.org/10.1007/978-3-211-49905-4_6

魔法少女から: 超準解析と完備性

超準解析、超実数体で完備性が崩壊するだけでも関数解析系市民には直感を育て直す必要があってかなり厳しい。

内的部分集合(内的論理式の解集合として書ける)に限れば完備性が成立しているというのがポイントになっている.有理数体の実閉包(代数的実数全体)rcl(Q)は完備ではないが,半代数的集合(多項式の連立不等式の解集合として書ける)に限ってみれば完備性が成立しているのと同様.

テレンス・タオも使っているLean

Nice, Terence Tao (Fields Medal 2006) found a bug in one of his papers using Lean 4.

Sourcegraph, ソースコード特化の検索エンジン

ソースコード特化の検索エンジン「Sourcegraph」、コードリーディングが10倍捗る

GithubやGitlabなどのpublicリポジトリを爆速で横断検索

定義元へのジャンプや関数などがどのファイル、どの部分で使われてるかなども見れる

勉強や実装方法などで迷った時にpublicリポジトリを参考にする時に超便利

数学科的な数学と、それ以外の数理科学者の平均的な数学の違い

元ツイート

数学科的な数学と、それ以外の数理科学者の平均的な数学の違いとして、よく証明の厳密性が言われると思うが、それに関係して概念の規定の厳密性があって、すると当然表記方法もかなり変わってくる

確率や確率過程に関わる表記方法の違いなどは、一つの良い例ではないかと。なんか、各々のシンボルの身分をあまりきちんと決めず、前後関係でボヤッとやってしまうのが数理科学者流 確率変数とその実現値を同じ記号で書いて心が痛むかどうか、など 確率変数とは事象の空間から確率変数の値域への関数だ、 と説明した時、 それは決定論的な関数なの?と聞かれて虚をつかれた 解析学全般も似たようなところがある。

非数学者の数学の証明が厳密性を欠く、といった時、「そうか、証明の途中のステップがたくさんとんでいるんだね」と思うかもしれないけど、実際には土台のところからずれてるわけです 厳密化で失われるものもまた結構あって、やっぱり過度に煩雑になりすぎる。 。。。のかもしれない。僕自身は学部時代はラフな数学が主軸でだったから。数学の本も読み込みはしたが、修士を出て確率過程の研究室に就職した時、学生時代の勉強では全然足らずに苦労した。 なお、「出発点があいまい」というのは「定義が十分細かくない」という意味ではないです。例えば微分可能性仮定してるのかしてないのかわからん、程度の曖昧さならそんなのは適当に補えば良いのであって。概念の階層のようなところが曖昧はわけです。 よく冗談で、数理科学者が積分や極限の順序交換しちゃってごめんね、みたいな冗談ツイートがあるけど、本当をいえばあれで困惑する数学者はあまりいないと思う。適切に条件を足せば良いだけだから(条件を確認してくることはあると思う)。 あと、収束しない級数を収束させてごめん、みたいなのもそれで戸惑う数学者は更に居ないと思う。むしろ定義の拡張は彼らの得意技

私のコメント

後のツイートにもきちんと言及があるが、概念が雑なところにきちんとした証明がつくわけがないみたいな部分があまり通じていなさそうな印象がある。あと簡単に厳密化できる部分とそうではない部分の感覚も多分だいぶ違う。

そう、それです。ツリーにも書いたけれども、自分は基本は数理科学者的な数学でベースを作っているので、「雑な」と言われるとちょっと嫌ではありますが。。。。

深谷賢治さんが何かの本で「厳密性を気にしている物理学者の講演はつまらなかった。そんなのは我々がやるから、あなたたちはあなたたちの視点で自由にやってほしい」と言っていて、興味関心が違うのに無理に合わせる必要はなかろうという気分です。

https://x.com/gejiqmq/status/1718283817730056237?s=46&t=cytbgQ_rsSixpyGQuSuvRw この土台から違う事案、次のやり取りが意識の違いを表す様子を示す一つの例になっているのではないかという霊感がある。 URL

的確にコメントできなくて申し訳ないのですが、数学的に言えば正準不変量・正準不変式に関して定式化される対象である以上、何を根拠にしてラグランジュ括弧が正準不変量か保証する議論全体を精査しないと的確な仮定は洗い出せないのではないかと思います。

この収束に関する話はむしろ数学以外が困惑する部分で「収束させるために適切な位相を頑張って定義して関連する定理・理論を整備しました」と言われて出てくる数学に面食らう人の方がはるかに多いのではなかろうか。シュワルツ超関数くらいなら捌ける人はいるだろうが、 かなりの代数が必要になる佐藤超関数の議論を追うのは解析系の数学者でさえかなり際どいと思う。もう少し関数解析的なネットの収束でも特にサブネットの収束は部分列の収束よりもはるかに嫌な現象を引き起こすため、私はいまだに感覚が掴めていない。

簡単に厳密化できる部分とそうではない部分に関して、例えば近似が絡むと一気に修羅度が増す。例えば相対論的場の理論だとHaagの定理によって共変的な摂動論が破綻していて、数学的には現状大体何も解決できていないと思う。基底状態の存在さえ激烈に非自明だろう。 量子統計でも平衡状態の存在を示すだけでとんでもない大仕事で、何かするならLiebレベルの化け物を連れてこい事案になってしまうはず。

おかしさに気付く方法

物理の人が物理的なおかしさで計算間違いに気づくように、数学の人も数学的なおかしさで計算間違いに気づくんだよなぁ…

メモ

取扱注意!高校数学を大学数学で解く「チート解法」

続きはFANBOXで!じゃなくて… ここだけの話ですが、出版社の方に依頼され、こういう解法をまとめて本を書きました! 他の応用例やより詳しい解説はこちらの本をご覧ください。 来年2月20日発売予定で、まだ表紙も未定ですが、既にこちらから事前予約できます。 https://7net.omni7.jp/detail/1107463537

2023-12-18 これは嬉しい ChatGPTプロンプト書き方のコツ、OpenAIが公開

4年間、7色だけでUIをデザインし続けた話

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模写でプロ級の制作スキルを身につけよう!:mosya.dev

自閉スペクトラムの世界

今朝の新聞に掲載されていた中学3年生の自閉スペクトラム症の男の子が書いた作文 こんなにわかりやすく自閉症の人の心理状態を言語化できるのはすごい! 自閉症が正しく理解される世の中になればいいなと思う

第73回全国小・中学校 作文コンクール 文部科学大臣賞

私は重度自閉症である。いつも叫び出したい衝動を感じている。でも叫ばない。叫んではいけないと学んだからだ。この作文で私から見える世界を、みんなに共有したい。

小学校は支援級に在籍していたが、現在は中高一貫で少人数制の私立中学に通っている。4歳の時に注意欠陥多動優勢の自閉症スペクトラムと診断を受けた。小学6年生の時に身長が止まり、成長ホルモンを毎日注射している。身長は146センチで、15歳男子平均より20センチ以上低い。

家族とファミリーレストランに行くと、店員が「子供椅子はいりますか」と笑顔で聞く。耐える私に、今度はキッズメニューを差し出してくる。見た目で判断しないでください。そう伝えたいけれど、見た目で子供なのだから、店員を責められない。やりどころの無い怒りを抱えて私は黙る。

私は授業中によそ見をしてしまう。宿題のお知らせを聞き逃し、やってこない。不真面目で意欲を持っていないと評価される。悲しい出来事で、何度も泣いた。

真面目に授業を受ける気持ちで座っているが、教室はその気持ちを阻む様々な情報であふれている。クラスメイトの動きやきぬ擦れの音がとても不快な音でジャリジャリと聞こえる。ノートの上を動くシャープペンシルの音は不協和音で合奏している。エアコンの音がごおごおと鳴り、隣の教室からも似た物音が聞こえてくる。等々きりが無い。

私はいつも叫び出してしまいそうで、疲れ果てている。先生の声は、200メートル先の、遠くのトンネルの向こうから聞こえる感じで、なかなか拾えない。

自閉症なのによく喋(しゃべ)ることが出来るね、と言われる事がある。私は人と関わるのが大好きであるし、お喋りも好んでする。だがコミュニケーションがしっかりとれているわけではないようだ。私を母はたまにラジオと呼ぶ。一方的に喋って満足してしまうからだ。

人の気持ちを読み取るアンテナが通常なら5本立っているならば、私は1本しか立っていないからだ。私は自分の気持ちも分からない。心を自分に感じない。だけど、相手を泣かせた時は、私の目から涙が出てくる。悲しい気持ちだと教わるけれど、なかなかつかむことが出来ないでいる。

自閉症の子供が産まれて、悲しむ家族もいるだろう。でも私達(たち)は学ぶし、成長する。人の気持ちが分かりにくいけれど、人が嫌いではない。小学校では床で寝転んでいたが、今は椅子に座り、必死に勉強している。

私達にはみんなと同じだけの未来があり、期待を持っている。私が間違った時は、あきらめないで教えて欲しい。私もこの困難な世界に向き合い、痛みを知っているぶんだけ、弱さを持っているぶんだけ、他の誰かに優しくなれる大人になりたいと考えている。

「首を斬る快感」を語るおやじが許せなくて 武田鉄矢さんと父の物語

stratificationは滑層分割

ホイットニー stratification を初めて知る. ところで stratification の日本語訳って何? 階層化?

特異点論の人たちは滑層分割と訳すことが多い気がします

「最悪」のLGBT理解増進法看護学者が語るそれでも見る希望とは

はてな匿名ダイアリー: ほぼ叔父に育てられた

父親はモラハラで母に興味が無く気まぐれに私を殴り

母親はアル中で不倫中毒で家事一切しない

共働きで父母どちらも炊事洗濯掃除全くしない

そんな家庭で育った

乳幼児の頃から本当に叔父に助けられて育った

叔父は母の年離れた弟で叔父が大学生の時に私が生まれた

私が生まれたばかりの頃から母の子育てを危ぶんだ叔父は私の世話をかって出た(らしい)

それから小学校に入学するまで母の実家で祖父母と叔父と暮らしていた

高齢者のパート賃金と大学生だった叔父のバイト代、叔父が就職したら新卒の給料が頼りだったので裕福とは言えない暮らしだったが穏やかだった

小学校入学とともに父母に引き取られた

地獄だった

叔父は土日に遊びに連れ出してくれたり母の実家にお泊まりさせてくれたりした

母はなぜか実家にあまり来ないので叔父と祖父母といられて懐かしいごはんが食べられて嬉しかった

10代になると自分の家庭が明らかにおかしいことがわかって心が荒んだ

それでもぐれたり非行に走ったりしなかった

叔父が仕事帰りに勉強を教えに来てくれていたのが大きいかもしれない

素直に勉強しようと思えたし勉強して進学するのがこの家を離れられる手段だと言葉ではなく感覚でわからせてくれた気がする

両親に学校や部活関連のお金を払ってもらえない

それどころか光熱費も滞納で家が機能しない

叔父は全部渋らず出してくれた

嫁に行った姉の家に金を出すなんておかしいと中学生でもわかる

すごく申し訳無かった

叔父はこんなことのためにお金を貯めてきたんじゃないだろうに

叔父がずっと独身なのは私のせいだと思った

金銭も勉学面も叔父に支えられ大学に進学した

上京して一人暮らしすることになり父母とは縁を切った

祖父母と叔父とは連絡を取り続けるつもりだったがちゃんと自立し叔父を解放してあげたいと思った

私が大学合格する頃に叔父は結婚した

叔母となった人は叔父よりも若いが私の状況も理解してくれて打ち解けてくれて本当に良い人で私も大好きだ

私が生まれた時の叔父の年齢と同じ年齢になった

叔父の子が生まれた

私のいとこにあたる

祖父母と叔父以外親戚づきあいもなかったので初めて身内に小さい子ができた

子守りをしに頻繁に叔父宅へ行くようになった

かわいい

ものすごくかわいい

何をしていてもかわいい

寝ていてもかわいい

泣くのもかわいい

寝返りもかわいい

はいずりまわるのもかわいい

つかまり立ちもかわいい

不安定に歩くのもかわいい

だんだん言葉を覚えるのもかわいい

名前を呼んでくれるのもかわいい

本やおもちゃを欲しがるのもかわいい

おいしいと思ったものを必死に食べてるのもかわいい

覚えたてのひらがなで私の名前を書いてくれるのもかわいい

かわいすぎてなんでもしてあげたい

色んなものを買い与えて叔父に怒られた

社会人になったし一人暮らしもちゃんとこなしているのでこれくらいいいじゃないと思う

いとこをかわいいと思うたびに泣けてくる

叔父は感情表現があまり無く強く怒りもしないが大きく喜んだり幼少期でも私を判りやすくかわいがったりしなかった

なので私は叔父は同情と義務感から私の面倒を見ているんだと思っていた

叔父の人生に私は邪魔だと思っていた

もしかして私はものすごく愛されていたのではないだろうか

幼い頃に見たビデオを思い出す

赤ん坊の私が寝転がってごきげんに風に吹かれているだけの5分間の映像

寝返りをするわけでもない

ただ時折笑い声をあげるだけの赤ん坊

それに合わせてカメラを構えているであろう叔父が小さく笑う声がする

ただそこにいるだけのいとこがかわいくてスマホのカメラを起動するたびにあのなんでもないビデオの映像を思い出す

この子が生きる過程で父母以外の拠り所を求めるなら私がそうでありたい

それが私にできる1番の叔父孝行な気がしている

【惜別】江沢洋さん / 理論物理学者・学習院大名誉教授:朝日新聞デジタル

内村直之さん @Historyoflife による江沢洋先生の追悼記事です。(有料記事ですが11月26日 21:26まで誰でも読めます。「プレゼント」というやつですね。初めて使った。) 細かい補足ですが、Ezawa-Sweica は(公理的な場の理論の枠組みでの)南部・ゴールドストン定理の証明であり、対称性の自発的破れの証明ではありません。 もっと細かい補足ですが、写真の右の方でマイク持ってる態度悪そうな奴は、みなさんご存知かもしれません。

小学5年生、生成AIを活用したボタン会話アプリを開発

ちゃんと使える生成AI。

公開から約1年経った生成AI、ChatGPT。その受け答えの賢さに多くの人が衝撃を受けて爆発的に広がりましたが、素のチャットとして日常的に使う人はそんなに多くはなく、ユーザーが減ってるなんて話もありました。

でも、これならたしかに使えそう!と希望が広がるアプリを見つけましたのでご紹介しますね。

それが、場面緘黙(かんもく)症(特定の状況で声を出して会話ができなくなる)の当事者である上田蒼大氏が開発したアプリ「Be Free」です。

上田氏は人前での会話全般ができないので、普段から筆談やジェスチャーで会話をしていましたが、時間がかかったり、細かいニュアンスが伝わりにくかったりするのが悩みでした。そんなとき、自分の言いたいことをパッと言葉にしてくれそうなChatGPTの存在を知って、すぐにアプリ化を思い立ったそうです。

実家の犬に 弔事

実家の犬が昨日亡くなったそうだ。東京からは帰省も出来ず、会えなかった。

我が家には過ぎるくらいのいい犬だった。

犬との思い出を書こうと思ったが、そんなことをしていたら辞書くらいの分量がいる。

どうしてもなにか書きとめておきたいkら、誰に聞かせるわけでもないけれど弔辞だけ書いた。

犬よ

おれが10歳のときに拾ってきた犬よ

バイパスの高架の下に捨てられていて

みかんの箱で連れて帰って

獣医さんにもに連れていって

うちの軒下に住むことになった

6月6日の小さな犬よ

おれが散歩に連れて行った犬よ

昔はなんでもちょっかい出して

よせばいいのにマムシをいじめて

鼻面がビビるくらいに腫れていて

獣医とておまえが悪いと言っていた

夏の散歩が大好きな犬よ

おれの家出についてきた犬よ

おまえはおそらく散歩のつもりで

おれは二度とは帰らぬつもりで

あくる日は隣の町で見つかって

おれたちは泣きながら帰った

冬のある日のあたたかい犬よ

おれと彼女をつないでくれた犬よ

おまえのためのドッグランで

おまえは完全に犬見知りをして

その姿をみてあの人は笑って

おれと彼女は知り合った

ついに一度も走らなかった犬よ

おれに似ずかしこくなった犬よ

おまえは見事な番犬で

無駄には吠えずに仕事をこなし

病気のひとつもせずに育って

上京するとき見送ってくれた

頼れる男の背中の犬よ

犬よ

おれはおまえの最期を知らない

16歳でもかくしゃくと歩き

脚が弱ろうともトイレは間違えぬ

たいした犬だと母から聞くのみだ

死んだと聞いて言葉もなかった

犬よ

おれは悲しい

おまえの死に目に会えなかったこと

共に悲しむ彼女はもういないこと

仕事はうまくいっていないこと

上京したのを後悔していること

犬よ

おれはもう少しがんばることにした

それを喜ぶものがいるかはわからぬ

それでもいつか高架の下で

おまえのような犬を見つけたとき

家族にできるくらいの働きはしたい

ロク

ありがとう

対象に対する知識の有無で受け取り方が変わる例

Zenn book: つくりながら学ぶ!AIアプリ開発入門 - LangChain & Streamlit による ChatGPT API 徹底活用

Generative AI for Everyone

生成AIに興味のある全ての方にお勧めしたいのが、スタンフォード大学Andrew先生の「Generative AI for Everyone」です📺↓。ビジネスマンや非エンジニア向けの入門クラスで、英語ネイティブなら6時間で修了できる分量。講義内容を一通りを見たけどMOOCの入門としても超オススメです。しかも、無料👏。

『インド人の謎』

「インド人の謎」(著:拓徹、星海社新書) 未知の版元とキワモノ風の書名で敬遠してたんだけど、読んでみたら良書だった。特に前半、ヒンドゥー教の成り立ち、カースト制の辿ってきた道のりをコンパクトに解説した部分は、初心者に是非ともお勧めしたい。ネットでトンデモを浴びる前に読んでほしい。

せっかくなので私からもレビューを(`・ω・´) だいぶ前に読んでとても好ましく感じる部分とちょびっとだけ気になった部分があった本です。

いい本だなと思ったのは、初めてインド旅行した人が感じるような疑問(冒頭がトイレ問題🚽)を丁寧に説明してくれているところで、在印歴が長い人だからかありがちなぶっ飛んだインドになっていない。インド興味があるけどまだ行ったことない…くらいの人に特におすすめです。とても読みやすいよ~ 戦争で大変なことになってますが「なぜイスラエル人旅行者がインドには多いのか」という章があって、だいぶ面白かった。北の人だな~。特に貧困問題やそれに対するNGO活動の説明が詳しめで、これは大変によかった。オブラートに包んでいるけど実際に経験しないと書けないことだと思う。 でも現代カシュミールの問題とかは、専門ということなのでもうちょっと詳しく見たかったな。廣瀬さんのキルド・イン・ヴァレイを知ってるからね。インド国内の紛争の問題は専門家の書いた文章(と忌憚のない意見)をもっと読みたいといつも思っている。

インド過去編(宗教と神さま)で他の一般書と違って面白いと思ったのは、「超訳インドの宗教思想」で細かい話はなし(ブラフマンちょっと間違ってるの気になるけど)というのを理解した上で、瞑想や梵我一如を取り上げた後それを直にバクティに結びつけていたこと。うおおまじかよと思った。 「宗教」と題しているので哲学視点ではないとしても、アートマン=ブラフマン思想からバクティというのは古代中世インドの極めて限られた視点で、一方でそれはヴィシュヌ教の歴史と切っても切れない関係にある。宗教的アプローチは他にもたくさんあるからね… 「二人の思想家」としてシャンカラとラーマーヌジャ(!!)が挙がっていることから明らかなように、これはインド思想を満遍なくやった人なら絶対やらない挙げ方で、作者の人も後に述懐してますがこれは一般の、それもヴィシュヌ教信仰者の目線から過去のインドを十把一絡げにした見方です。

ひとつ明らかなミスがある。シャンカラは「最高神信仰から遠ざかった」人ではない。彼こそがそれまでの正統派の宗教哲学にヴィシュヌ信仰を持ち込んでその後の歴史を変えてしまった戦犯です。 シャンカラとラーマーヌジャの思想的立場は確かに違っているけど、違いは有神論への傾倒の差などではない。 二人ともがっつりヴィシュヌ信仰です。シャンカラの前後でインド哲学史には明らかな違いがあって、そこでヴェーダーンタ哲学が有神論化してしまったのよ。それはもうその時代の思想家の著作を見れば明らかです。 シャンカラとラーマーヌジャは間違いなくカリスマではあったけれど(黄金像建ったしね…) 天才ではない。天才なら他にいくらでもいる。彼らはバクティ思想という面でインドを見たときに際立ってくるだけで、中世インド思想を代表していた訳ではないです。インドは南北で分けると北の方がヴィシュヌ教が強い傾向があるから、北の影響を受けるとこういう宗教思想の見方が生まれてくるんだろう。 これ読んだときバクティについてちょっと考えたけど、タミルのバクティだけがインドのバクティの源泉である~てやるのも確かにそれはそれで問題があるけど、ギーターとシャンカラ(+それ以降)だけでバクティ思想を語るのも同じ位偏ってるな~と感じた。シャンカラがどこ出身だと思っているのだ。 あとシヴァ教がアンダーグラウンドてなんや。これはあかん。ヴァルダナ王朝やパッラヴァはアンダーグラウンドでしょうか。海洋覇権を握ったチョーラはアンダーグラウンドだったのか。そんなわけないですね。シヴァ教が6世紀頃からずっとインド各地で王家の信仰対象となっていることを忘れている。 シヴァ教はそもそもカシュミールで極めてオーソドックスな宗教として確固たる位置を占めて、見事な哲学と神学を発展させ、その後インド全域に伝播したんですよ。そこで一旦ヴィシュヌ教は完膚なきまでに負けている。シヴァ教は最盛期にはそれこそヴィシュヌ教など敵ではなかったのです。

漢字検索, 異体字検索

異体字が検索できる便利なサイトを知った。適当な字を入れるとバババっと異体字が出てきて、見ているだけでも楽しい。 漢字検索、異体字検索

イタリアのカトリックと新型コロナ

これはもう「歴史」やな 社会って「科学的に正しいこと」とか一面での合理性だけで成り立つわけではないのでこれは「必要・緊急」だったろうな、その上で人のために奔走した人に敬意を表したくなる

なんか派生してコロナ禍のイタリアのキャソリック司祭について。

伊政府が「外出するな、自宅に籠っていろ」と指示し、地方警察に代わって陸兵が街を巡回していた時期、ヴァチカンは極めて強い口調で司祭たちに対して「教会を出よ、信徒の恐怖を和らげよ、それが司祭の義務だ」と連呼していました。 ペストだろうがスペイン風邪だろうが我々は常に宗教的義務を果たしてきたのだ、というわけです。 イタリア政府も流石にこれを押し留めることは出来ません、緊急事態のため動員された陸兵と似たような存在と捉えられ、後期には軍が司祭の衣類の消毒処理を手伝ったりしていました。 まだコロナがどういうものか良く判っていなかった(非常事態と認識されていなかった)時期から、司祭は熱心に家々を巡って、特に重症で寝込んでいる人たち(特にお年寄り)を精力的に見舞っていました。 軍事教区の従軍司祭の場合は、基地の病院で寝込んでいる軍人や軍人家族たちを見舞っていました。 既に書いたようにキャソリックでは瀕死の者に懺悔させ秘跡を与える「終油の秘跡(ウンクティオ・インフィルモルム)」をしないと信徒が地獄行きになってしまうという深刻な問題があります。 懺悔の際、司祭は信徒の顔に頭を寄せて、小さな声も聞き逃さず、また耳元で許しを与えることを宣言します。 相手がげほげほしていても、そうするしかないのです。

コロナについてある程度判ってきてからも、流石に「2メートル離れて懺悔を聞く」という訳には行かず。 医療従事者のように使い捨てガウンにマスク姿で接する訳にも行かないと考えられました(後期には司祭も防護を固めるようになるのですが)。 エアロゾルで感染、などが良くわかっていなかった時期には、当然司祭は同じ服を着たままで病人の出た家々を順々に回っていくことになります。 司祭が出掛ける場合、小さな簡易礼拝キットを持ち歩くのがふつうです。これは野戦で礼拝をする従軍司祭だけでなく、民間司祭も同様。というか軍用の原型。 これには十字架や蝋燭(今はオイル式)のほか、エウカリスティア(聖餐式)のためのプラエ・ホースティアーエー(ウェーファー、パン)も含まれています。 この小さなおせんべいみたいの、米では教会向けに大量に袋詰めで売られてるのが多いんですが、伊の地方教会だと信徒たちが焼いてる場合が多いのです。 小麦粉を水で伸ばして小さな薄焼きにしただけのものなので簡単ですし、湿気やすくて日持ちしないので。 初期にはマスクもせずに焼いて、布の上に並べて冷ました後で、司祭が聖別して、チボーリウム(教会用の保存容器)やピィクシス(携帯用の小型保存容器)に収めていたことでしょう。

*コロナ禍以前には百枚まとめて袋詰め、みたいな売り方が一般的だったんですが、コロナ禍以降は日本のお菓子みたいに一枚ずつ個包装されたものが売られるようになりました。 それを見て「やっぱり危険性が考慮されたんだなぁ」と思ったりしました。

こういった事情により、二つの可能性が出てきました。

  • 司祭の感染率が劇的に上がる
  • 司祭が巡回した家々にウィルスをばらまく

まあ後者はほとんどが「既に病人が出ている家」のためほぼ無視できるレベルと考えられましたが、前者は「敢えて危険な環境に繰り返し暴露された状態」なわけです。 さらに礼拝のために地域の人たちが教会に集まり、通例風通しの悪い教会の長椅子に並ぶわけです。 古い教会ほど窓はただの明り取りであることが多く、開けることが出来ません。 そこで賛美歌を歌ったりするわけです。 お葬式も同様。参列者は互いにハグしあい、死者の額や手にキスなどするわけです。 程なくして司祭たちは次々と体調を崩し、老齢の司祭から順番に呼吸器系疾患で亡くなっていきます。 司祭急死となると、ヴァチカンは大急ぎで代わりの司祭を派遣しなければなりません。 しかし各地で老司祭が次々と亡くなり、あっという間にまともに対応することが出来なくなって行きました。 この時期に聞かされた話は、相手が司祭であれ軍人であれ、ほとんど戦争同然でした。聞いている感じだとアメリカより酷い雰囲気というか。 リミニで司祭をしてた友人は「重病者のために来てくれと言われても、国道72号が渋滞で進めず、パトカーに先導して貰って信徒のところまで行かねばならなかった。 あの渋滞はまるでアルマゲドンから逃れようとするかのようだった」と愚痴りました。 国道72号はリミニからサン・マリノ共和国国境へ続く道で、サン・マリノには国土規模に相応しくないほど大きくて立派な病院があり、周辺のイタリア人が地元の病院に愛想をつかしてサン・マリノを目指していたのです。 ガリバルディ旅団のベルサリェーリ(速歩行進兵)だった友人は、「兵力が圧倒的に足りない」と嘆きました。 兵力削減の一途であった当時のイタリア軍では、「連隊」を名乗っている部隊が実質一個大隊であることが多く、それを市街地警備や民生支援に回すと戦力ゼロになってしまうため、州知事権限で 郷土予備役兵が招集されたのですが、みんな体調不良を理由に出頭しないという。 そりゃまあ「各地で死者が出過ぎて棺桶を収容出来ない(街の路傍に棺桶が並んでる状態)、衛生上の理由で土葬に出来なくなったため火葬にしなければならないが、火葬にできる施設は限られている、陸軍が輸送隊を編成して 棺桶を収容し、火葬場へ移送せよ。その後遺灰を詰めた瓶を各家庭に届けよ」と言われたらみんな震えあがってしまうでしょう。 特にキャソリックには基本的に火葬の概念が無いですし。 当時は医療用マスクなどの最低限の「装備」も足りず、「マンマが縫ってくれたマスク」だけが対抗手段という状態の かわいい花柄のマスクつけた若い兵とか、「これしかないから」とガス・マスクつけて現場に登場して市民に恐れられたりとか。 ちょっとしたホラーでしょうそんなの。 陸軍は病院の収容能力の低さ(僅かな街医者と待ち時間の長い病院という医療制度の貧弱っぷりはイタリアにとって長年の大問題なのです) を補うために、病院の隣にテント村を作ってベッドを並べて収容能力の拡大をはかったのですが、お年寄りが巡回してる兵士に「おい坊主、あのうるさいの(発電機)を止めろ」と怒って、「それ止めたらあんたの横の機械も止まって、あんた自身も『止まる』んだぞ」と喧嘩になったりしてたそうです。泣ける。 こういった経験を「俺は戦争には行ったことが無いが、あれは限りなく戦争に近い経験だったと思う」と後にしみじみ語ってました。 テント村なんて実質野戦病院でしょうし、しかも一人ずつしか収容出来ず、お年寄りが寂しがって「おーい」と言い続けていたそうで……イタリアのお年寄りだもんなぁ……。 そんな風にしてコロナの大被害をどうにか生き延びたわけですが、長生きすることが多いイタリアの老司祭たちは壊滅的打撃を受け、友人曰く「たぶん平均年齢が20歳くらい若返ったんじゃないか」と言っていました。 何も無ければずーっと元気に長生きしたであろう世代が、まるっと被害に遭った、と。 なお、頻繁に着替え・洗濯する必要性が出た関係で、教会向け衣類を作ってる仕立て屋さんは薄っぺらいナイロンの安物カソック(夏物っぽい体裁)を大量に作って、若い助祭が感染覚悟で毎日洗濯しまくってたそうです。 宗教の教義を文字通り「死守」するのはほんと色々大変というかなんというか……orz

コメント見失ってしまったのですが、unctio infirmorumは日本語訳だと「塗油の秘跡」というそうです。失礼しました。 秘跡を受けないと絶対地獄行きというわけではないのですが、司祭は極力生前(本人の意識があるうち)に秘跡を行うべしとされています。事故などで急死した場合はどうしようもないため、 やむなく遺体に秘跡を与えることになります(それでも一応問題はありません)。 ただ、コロナ禍では、亡くなってしまうと直ちにボディ・バッグに収められて隔離され、そのまま棺桶に入れられ(棺桶不足で東欧から粗雑な急造品を大量輸入したほどでした)、二度と顔を見ることも出来ないままに収容されて、 火葬されてしまうという、かつてない事態になってしまったのです。ボディ・バッグに入れられた後は二度と開けることは出来ず、流石に教会もそれを開けろとは言えません。 閉じられた棺桶を前にして、屋外で、ごく少数の近親者のみで、非常に簡易的な葬儀を行うという程度のことしか出来ませんでした。 このため司祭たちは、まだなんとか接触可能である「生前」に、なんとしてでも秘跡を与えねばならん、となったのです。 当然ながら(特に初期は)司祭自身の罹患はほとんど避けられず、次々と倒れ、天に召されることとなり、司祭が足りなくなります。 ここで立ち上がったのが既に引退した老司祭たち。 「この歳になってもまだ信徒のために尽くせる日が来ようとは!」と大挙現役復帰して、秘跡を与えて回り、やはり罹患して天に召されていくという人海戦術じみた展開へと突入して行きました。50~60代に続いて70~80代の司祭が壊滅。 当時のニュースで85歳の司祭が「(指示の通りに)家に居るのが正しい、 だが私は司祭だから、人々の求めに応じるため法を曲げる必要がある場合もある」と言っているのが記事になっていました。 政府の公式命令で礼拝その他の集団活動が「禁じられる」地域が出てきた後は特に、信徒を巻き添えにせず司祭一人で行える秘跡はより重要度を増したのです。もう泣くしかない。 教皇フランチェスコが(伊政府が外出禁止令を出したその日に)「我らの司祭たちが外へ出て病を得た者たちの許へ行く勇気をお与えください」と朝のミサで公式に祈りを捧げて「政府方針と真逆だ」と一瞬だけ問題視されましたが、それほど重要なことだったのです。 今調べたら2020年3月10日のミサでした。 老司祭たちの大挙復帰とかどこのバトルシップですかという雰囲気かも知れませんが、そうやってでも教会は自身の使命を果たした、といいましょうか……。

小学生が書いた詩

みどりちゃんへ

天国での夏やすみどうだった

天国がっこうで

たんぼの田ならった?

くものプール

ほしのこうえん

つきのすべりだいに ベッド

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2023-09-16 物質の安定性の物理/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 作業動画の重要性
  • 物質の安定性
  • 量子情報と線型代数

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近況報告

Web系のプログラミングに数年のブランクがあるため毎日ちょこちょこと勉強時間を取らねばならず, 数学・物理またはこれに関わるプログラミングの勉強はやや滞りがちです. 必要性に迫られたのもあり, ようやく本腰を入れて勉強しはじめると, 昔と比べて劇的に便利になっていて感心します. 「こういうのがほしかった」という機能なり何なりも比較的簡単に使えるようになっていて, その意味でもとにかく楽しいです.

そして現在事実上の一人エンジニアな上にUI/UX含めたデザイン関係もやらねばならず非常に苦戦しています.

数学・物理関係のメルマガで何故こんなことをいちいち書くかというと, 専門外の内容の勉強 または最新事情のキャッチアップに関する初学・独学の厳しさの体験が数学・物理の勉強に苦労するのと重なる部分があるからです.

新型コロナとインフルエンザとのセットでの大流行も出てきていますが, 5月からジム行きも再開しました. 筋トレは広く言えば生物系の話, 実験科学として捉えていてこれもなかなか楽しいです.

作業動画の重要性

仕事用に最低限のCSS・Webデザインをどう勉強するかずっと悩んでいます. 普段見ていじるWebサイト・アプリの画面からある程度「こんな機能がある」というのはわかります. ただしそれを実装しろと言われると厳しいことがよくあります. 勉強するべき内容はいろいろありますが, フロントエンドはある程度までコードが完全に見られるにしろ, 自分のところにデザイン崩れを起こさずに整合的に組み込むとなるとかなり面倒な場合はよくあります.

あと, 料理などでも最近は単なるレシピではなく動画による解説も増えてきました. 筋トレも微妙な違いの動画解説が便利な場合はよくあります. それでふとというかようやくという,あ ようやくCSSまわりもライブコーディングが一つ参考になるのではないかと気付きました. YouTubeで調べてみたらやはり上げている人がいたため, ちょこちょこ眺めています.

多少人によって違いはあると思いますが, TeXやふつうの文章作成と同じく, まずは基本的なタグだけドコドコ書いてからCSSをあてていく様子を見て, CSSでもきちんと大きく構造を捉えて似ているところは似ているようにする, html, bodyタグなど大枠の設定を決めてから細部にうつる流れはどこでも同じか, 広義の文章作成と思えば基礎・基本は変わらないのを改めて実感しました.

講義動画ではなく, 数学・物理でも何かしら作業動画が参考になる分野があるかふと気になりました. 物理の実験とはまた違うでしょう. 最近の量子情報系の線型代数の問題演習でプログラムを書いて計算させて試行錯誤することが何回かあったため, そういうのは参考になるのかもしれません. 初見時の試行錯誤の様子はダラダラと間延びしがちな部分もあり, 完成品を出すのでは講義動画と変わらなそうで, どういう感じがいいのかよくわかっていません.

物質の安定性

最近, 幾何系のための層とコホモロジーのノート作りがあまりに面倒で, 現実逃避のために物質の安定性のノートをシコシコ作っています. 物質の安定性はふつうの物理でめったに議論されないため, 前にも何度か書いた気がしますが, 物理的な意義を簡単に説明します.

量子力学のことの起こりはいくつかあります. その中の一つが原子の安定性の問題です. 学部レベルの電磁気学のハイライトの一つは輻射の理論です. 荷電粒子が加速運動すると電磁波を出します. 物理的には全系のエネルギーが保存します. 電磁波もエネルギーを持つため, 電磁波にエネルギーが持っていかれた分, 電子のエネルギーが減ります.

現代的な原子模型では, 原子核のまわりを電子が円運動することになっています. 円運動は加速運動である以上, 電子は電磁波を放出します. 高校でも出てくる等速円運動では円運動の半径または円運動の速度は電子のエネルギーと関係します. 大雑把に言えば電磁波を出した分だけ円運動の半径が小さくなり, やがて電子は原子核に落ち込んで原子が崩壊します.

これが古典力学と古典電磁気学の破綻で, 量子力学では水素原子の基底エネルギーの有限性として理論の破綻が救われました. この対象系のハミルトニアンに対する基底エネルギーの有限性は第一種の安定性と呼ばれます.

ここまでは量子力学の基礎として物理を勉強すれば必ず学ぶ内容です. 次の第二種の安定性は物理では重要なものの, 「量子力学の本」には滅多に載っていません. 実際, 数理物理の研究分野としての議論以外ほぼないようです.

第二種の安定性を一言で言うと熱力学的な安定性です. 熱力学には熱力学関数の相加性・示量性があります. 大まかに言えば系のエネルギーは物質量に比例します. ミクロな量子力学の視点で言えば, 基底エネルギーは粒子数に対して$E(N) = -cN$と線型であるべきです.

もしエネルギーが$E(N) = -cN^{\alpha}$で$\alpha \neq 1$だとすると, $N$が大きくなるほどエネルギーがどんどん下がります. 特に平衡統計力学では熱力学的極限と称して密度$\rho = \frac{V}{N}$を一定にしたたまま, 系の体積$V$と粒子数$N$を無限大に飛ばす極限を取ります. もし$E(N) = -cN^{\alpha}$で$\alpha \neq 1$をみたす場合, 平衡統計力学で一粒子に対する平均エネルギーなどが定義できません. 平衡系は近似概念である以上, そこに数学的な矛盾があっても問題ないと言う立場はありえますが, おさまりが悪いと感じる人はいます. そういう人達ががんばって議論しているのが物質の安定性に関わる数理物理です.

この分野は「難しい数学を使う」のではなく, 「数学の使い方が難しい」分野です. もちろんルベーグ積分を中心にいくつか解析学に対する知識は必要ですが, それ以上に不等式処理に関わる数学科水準の凄まじい剛腕が重要です. 私と同等以上の不等式処理能力が必要です.

興味がある方は次のLieb-Seiringerの"The Stability of Matter in Quantum Mechanics"を読むとよいでしょう. 尋常ではないほど難しいです.

私も細かいところはあまり気にせず緩く読んでノートを作っているところです. 難しいものの面白いのは間違いありません.

熱力学もそのうち勉強会つき通信講座を作る予定です. 気長にお待ちを.

量子情報と線型代数

これは改めて石坂・小川・河内・木村・林の『量子情報科学入門』を読んでいます.

この分野だとニールセン-チャンが有名で, 実際にこの二章の線型代数部分を通信講座で取り上げています. まずは大雑把にゆるふわで勉強しようと思い, 日本語でそこまでぶ厚くもないこの本をゆるく眺めています.

全八章のうち六章の途中まで読み進めていて, これはかなり読みやすくてお勧めです. 付録で線型代数も一通り書いてあり, 少し進んだ内容は証明もついています. 線型代数が大事なのはわかっているが数学の本を読む気はしない・読めない, 数学としてやる気が起きないという人でも, わざわざ私のメルマガを読むくらいの人なら量子力学には興味があるでしょう.

類似の内容は勉強会つき通信講座でも扱っているため, 一人では続かない人はそちらもどうぞ.

知らない人がいるかもしれないため念のため書いておくと, 量子情報は数学的にも面白い話がたくさんあり, 有限次元の線型代数レベルでも数学としての研究が続いています. 作用素論・作用素環論的な話ばかりではなく, 行列不等式・行列解析のような話題もあります. 行列と解析学と言えば数値計算の数理からのアプローチもあります. ある程度数学フレンドリーなスタイルの本で, 純粋な数学的興味から量子力学に触れたい人にも上記の本はお勧めです. 状態の扱いなど気に入らない部分がいくつかあり, それを前提にしたノートを作っている最中です.

行列解析は興味がありつつも勉強しきれていない分野でもあり, これも勉強したいとずっと思っています. エントロピーに関わる行列不等式も大きく見れば行列解析のテーマと言えます. 作用素論・作用素環でも重要な議論がたくさんあります. 作用素環的なところは学生時代に論文を読んだこともあり, それ自身前から興味関心が強い分野でもあります.

メモ

AIPでのLiebへのインタビュー

Elliott Liebのinterview. 朝鮮戦争時に韓国に行ったり、Edwardsの学生だったり、基研でポスドクをして、山崎和夫さんと共同研究をしたキャリアが興味深い。IBMに行ってから花が開いた様に、どちらかと言えば晩成タイプ。AKLTについての言及もある。

Leanと型

数学をLean等の証明支援系でプログラミング言語として書くときに「型」という概念を使うのですが、それについての数学者向けのわかりやすい解説記事(Xena projectの記事)の和訳が出ました: Mathematics in type theory https://lean-ja.github.io/math-in-type-theory-ja/index.html

素因数分解ゲームSOINSU

2023-09-09 年を取っても勉強しよう/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告: Lean勉強会が面白かった
  • 年を取っても勉強しよう
  • 谷本溶さんの講義ノート: ntroduction to Algebraic Quantum Field Theory Nagoya University, 2023 May 15-19
  • よいものにはきちんとフィードバックしよう
  • 『非平衡統計力学入門:現代的な視点から』田崎晴明 Hal Tasaki "A Modern Introduction to Nonequilibrium Statistical Mechanics"
  • 量子リソース理論と量子熱力学
  • well-definednessをill-definednessから理解する具体例
  • 計算トポロジー入門
  • 確率変数の定式化と頻度論・ベイズ統計
  • 線型代数の重要性

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近況報告: Lean勉強会が面白かった

仕事が忙しく, しばらくメルマガをさぼっていたらもう四ヶ月近くになっていました. もちろん適当に数学なり何なりは続けていたものの, ホモロジー代数はTeX打ちがあまりに面倒で嫌になってきたため, 逃避行動で物質の安定性と量子情報関係のノート作りを進めていました. 久しぶりの解析学がとにかく楽しく, もっと共有したいとは思いますが, どうしても学部四年から修士程度のパワーがいる内容なため, なかなかつらいところです.

この一年, これまた久しぶり仕事で本格的にプログラムを書くようになったため, 仕事に絡めてふつうのプログラミング関係の勉強も再開しました. バックエンドは本当に書くのが楽になってきた感じがあります. フロントはまだまだ地獄というか, node.jsのエコシステムがただただ厳しいです. F#が気に入っているものの, 情報が少なすぎてつらいため.NETエコシステムを特にC#で進めています. フロントエンドはJavaScriptまたはTypeScriptではなくBlazorでどうにかできないかと勉強を進めています.

量子力学・線型代数の勉強会も第三回を放置したままなため, いい加減それも進めたいところではあります.

あとメルマガで宣伝しようと思って忘れていたLean勉強会に参加しました. これも言語のバージョンアップでライブラリが死ぬ問題があるとはいえ, Pythonなどでプログラムを書くよりはよほど「数学」ができそうです. まだ全然書けるレベルに到達していませんが, 何かしら貢献できないかと考えています. 日本語コミュニティも作ったとのことで, 興味がある方は参加してどうでしょうか.

「すうがくぶんか」の梅崎さんがYouTubeに解説動画も上げています.

年を取っても勉強しよう

物理のための数学で、いつも最前列で講義を受けてらっしゃる年配の男性が気になっていたので、講義後声をかけ、2時間ほど色々お話をしました。その方は現在74歳で、定年退職してから、科目等履修生として毎期1, 2コマだけ大学で講義を受けている、とのことでした。 今までに薬剤学や薬理学、現代史学、工学、電磁気学など、色々な授業を受けてきたそうです。とても朗らかで話好きな方で、沢山のことを話してくださいました。これを是非若い人たちに伝えたいんだ、というお話もありましたので、許可を得た上で、一部をまとめて書き残したいと思います。

「退職して暇になったときに、やっぱり学問をやり続けたいと思った。こうして講義を受け続けているのも、年齢がどうとか衰えがどうとかで自分に自分でブレーキをかけてしまいたくないという思いがあったから。自分は若い時でも、京大生のような超一流の学力は全くなかったし、」 「ましてや今なんて当然、当時より遥かに頭の回転も遅いし記憶力も衰えている。けれど、有り余った時間を使ってゆっくりじっくり考えて、学んで、頭を使って、ということを続けていると、まだまだやれるという気が湧いてくる」 「学生さんたちにも解けなかった問題が解けたり、2週間じっくり作ったレポートでA+の成績をいただいたりしたこともあって、そのことがすごく嬉しかった。当然学生さんたちの方が忙しい中で学問に取り組んでいるわけだけど、こんな後期高齢者目前の人でも、できることがまだまだあるんだ、と」 「高校時代の同級生にA君というやつがいた。僕らは両方とも成績は悪かったけど、彼は豪快で派手な性格で、勉強なんて別にできなくていいや、というようなことを言っていた。運動も得意で一緒に石垣に登ったりもした。でも彼は、内心では少しコンプレックスを抱えていたらしかった」 「また彼は『男は若さ。40過ぎたら終わりで、後は老いてくだけだ』というような考えを持っていた。その後大人になって、色々と上手くいかないことが重なり、躁鬱症のような状態になった。そして感情の起伏がどんどん激しくなり、結局、40歳を目前に自分で命を絶ってしまった」 「そのことがとても悔しく、『年老いてからでもやれることはあるんだと、自分が30年40年早く気づいていれば、あいつに何か言ってやれたのかもしれない』いつもそう考えている」 「今の時代、研究者になる道は険しく、金銭的にも厳しいものがある。理由は分からないが退学届を出しに来るところの学生を見かけたこともあった。東大京大とかの超一流の学生さんたちには是非この衰退しつつある日本の科学技術界を引っ張り上げてほしいとは思っている」 「しかし、若いうちに研究者にならないと良い結果は出せないとか、この道しかないと思い込まずに、人生は長いのだから、ブレーキをかけなければ大抵のことはいくつになってもできるもんだと思っておいてほしい。今20歳の君なら、50年後にだって僕みたいに講義を受けられるんだから」 「歴史上でも現代でも、歳取ってから素晴らしい業績を残している人もいる。人生百年時代というから、お金を稼いで中年になってからまた学問をやるとか、色んな道はあると思う。若い頃の方が思い切って行動できるけど、たとえ年を取ってからでも、気持ち次第で行動はできるのだと知ってほしい」 「自分も、この物理のための数学はなかなか難しくて、訊きたいところがいくつもある。けど、なんとか頑張って理解したいと思っているので、学生さんたちも、今はサークルやバイト、勉強で忙しいとは思うけれども長い人生、頑張ってほしい」

これ以外にもたくさんのことをお話しましたが、自分なりにまとめるとこのようなお話でした。物ためを今取っている京理の人たちは、良ければぜひとも話しかけていってもらいたいです。学生として、質問や理解したいことがたくさんあるそうなので、

谷本溶さんの講義ノート: ntroduction to Algebraic Quantum Field Theory Nagoya University, 2023 May 15-19

名古屋大学での集中講義のノートを書きました https://www.mat.uniroma2.it/~tanimoto/teaching/2023NagoyaAQFT/nagoya_lecture23.pdf Wightman と Araki-Haag-Kastler 公理の関係、自由場の構成、 Bisognano-Wichmann property, modular nuclearity と split property の関係、それを使った相互作用するネットの構成などをやりました。

院の先輩の講義ノートです. 修士レベルの解析学ができないと全くもってわからないとは思いますが, 面白い分野ではあるため興味がある人はぜひ眺めてみてください.

よいものにはきちんとフィードバックしよう

何度でも言うけど私はめちゃくちゃ絵の上手い神絵師がマイナーCP永遠に描き続けていたのに、ある日突然「誰も話しかけてくれないし感想もくれないから」というあまりにも哀しい理由で筆を折ってしまった件を見たことがあるんや。 そしてその神絵師が筆を折る宣言をしたら、突然マシマロやリプに感想が届きまくったんや。「ずっと見てました」「また描いてください」「◯◯さんの作品大好きです」と。 神絵師は静かに言ったんだ、「もっと早く言ってくれればよかったのに…」と。 その神絵師はそのCPから去った。するとどうだろう、その神絵師しか描いてなかったはずのCPの作品がチラホラあがりはじめた。 みんな「◯◯さん(神絵師)が描いてるから私は書かなくていいか!」状態だったのだ。こんな哀しいことがあるかよ。

これ読んで「そっか……じゃぁ…」つって好きな作家に感想を送る人が1人でも増えればいいと思いました。 伝えなきゃ伝わらないので……

『非平衡統計力学入門:現代的な視点から』田崎晴明 Hal Tasaki "A Modern Introduction to Nonequilibrium Statistical Mechanics"

ちょっと読みたい.

量子リソース理論と量子熱力学

量子リソース理論(QRT)と量子熱力学(QT)について、いまだにかなりモヤモヤとした感じだが私の現状での暫定認識をまとめる。間違いがあったら教えてください。 まず、QRT, QTどちらにもいくつかの源流があるが、どちらも Lieb&Yngvason(1999) の影響を強く受けている。 https://arxiv.org/abs/cond-mat/9708200 QRT,QTは、Lieb&Yngvason(1999)による熱力学の公理的定式化をなるべく忠実に量子論にも適用しようとするのだが、全く同じとはいかず、いろいろ変更が必要となる。また「量子論への適用」と一言で言っても、細かく言えばその適用分野はいろいろである。 QRT,QTは、Lieb&Yngvason(1999)による熱力学の公理的定式化をなるべく忠実に量子論にも適用しようとするのだが、全く同じとはいかず、いろいろ変更が必要となる。また「量子論への適用」と一言で言っても、細かく言えばその適用分野はいろいろである。(続く) https://arxiv.org/abs/1806.06107 では、量子熱力学がQRTの一分野であるように書かれているが、実際はQRT全体がLieb&Yngvason(1999)[LY99]の熱力学の影響を受けていて、その意味ではQRT全体を量子熱力学と呼べなくもない。しかし[LY99]への忠実度は様々で、特に忠実度の高い研究を慣例的に量子熱力学と呼ぶ(?) QRTの様々な応用のうち、entanglement theoryが最も典型的なものである。ただし、そこでは[LY99]の熱力学原理になるべく忠実な公理化を果たそうとしてきたのだが、なかなか綺麗にはいかず、完成からは程遠い。それどころか、(続く) ごく最近の以下の論文では、entanglement theory(ET)については熱力学の第2法則が成立しないということが主張されている。さらに、ETは熱力学のみならずQRT全体と適合しないと言いたそうである。これが正しいとすれば、ETはQRTの「典型例」から外れるかもしれない。 https://arxiv.org/abs/2111.02438

熱力学はとにかく楽しいので.

well-definednessをill-definednessから理解する具体例

well-defined の説明, そうである例を話すよりそうでない例を話す方が初見はわかってもらえそう

有理数全体からの関数fを分母と分子の和で定義してみましょう ワオ!!!!! f(1/2)=3 なのに f(2/4)=6だ!!!!!!!!!! みたいな感じで

確かによい例だと思い, 現代数学探険隊にも収録しました.

計算トポロジー入門

計算トポロジー入門,近刊 https://kyoritsu-pub.co.jp/book/b10032973.html この本の和訳らしい https://maths.ed.ac.uk/~v1ranick/papers/edelcomp.pdf ちなみに微分幾何版でこんな本もあります https://link.springer.com/book/10.1007/978-90-481-3564-6

これの微分幾何版がほしい.

確率変数の定式化と頻度論・ベイズ統計

物理なのか何なのかはよくわからないが、確率変数の「ランダムに値を取る」的な話と「可測空間上の可測関数」の間の話、後者の数学的定式化がどこまで応用上の要請を満たせる定式化なのかは時々気になる。

ベイズだと後者の解釈を使います.頻度論はp(ω)を「ランダムサンプルしたときにωが出る頻度」と考えるのでXも「ランダムサンプルしたときに出る値」と考えますが,ベイズはp(ω)を「ωの確からしさ」とだけ考える(サンプルはしない)ので,Xも「ωに対する値を記述したもの」とだけ考えます.

これは考えたことがなかったため, とりあえずX(Twitter)で放言しておくものだと思った次第.

線型代数の重要性

森田茂之先生も、

線型代数というと大学 1 年で終わっていると思っている人も若い人にいるとすれば,これはとんでもない事で,数学の中でも線型代数は永遠に大事で…

と言われているように、数学の人は微積や線型などの「基本的な学部の授業」こそが本質的に重要だと思ってる訳ですが、 この価値観が必ずしも教員にも学生にも共有されていないことは、数学側の人間としては残念だと感じています。 (計算に使えればいいという立場があることも理解した上で)

引用元 『特性類と不変量』森田茂之 https://www.math.chuo-u.ac.jp/lecture_notes_almostwhole.pdf

一般理工系にはまだ量子力学(など)をモチベーションに線型代数に触れた方がよいと思ったため, 勉強会つき短期集中講座を展開しています. 近々第三回をやる予定なのでご興味がある方はぜひ参加してください.

メモ

ジョーンズ追悼の数理物理関連の業績紹介

06/03: アメリカ数学会から頼まれて書いた Jones 追悼の数理物理関連の業績紹介記事がオンライン出版されました. https://ams.org/journals/bull/0000-000-00/S0273-0979-2023-01799-0/S0273-0979-2023-01799-0.pdf

霜田光一「水はどうして透明なの?」

霜田光一先生の「水はどうして透明なの?」という文章を読むと、レジェンド級の研究者は問題設定の出発点をここまで持って来るのか、と驚かれされる。

ちなみに 「水分子は可視光を吸収する遷移がないから」 は答えではあるけど、そこで「問い」が止まらないのが面白い。 以下、「」内は上記の文章から引用

「水分子の振動回転状態の遷移は赤外線を吸収し、電子遷移は紫外線を吸収するが、可視光線を吸収する遷移はないので、可視光線に対して水は透明なのである。これは正しいが、これで、水がどうして透明なのかわかっただろうか。」

「裏を返せば、赤外線や紫外線で見ると水は透明ではないのだ。電磁波の広いスペクトルで見ると、すべての物質はある波長では電磁波を吸収し、ほかの波長では透明である。水はどうして可視光線(波長380nmと760nmの間)に対して透明なのだろうか?」

「コップの水は確かに透明だが、川や海の水は青く見える。10mの深さの水では、波長が440から520nmまでの光は80%以上透過するが、400nm以下の光も、590nm以上の光も、40%以下しか透過しない。だから汚れのない水のなかは青い世界であることは、水中カメラの映像でよくわかる。」

「ヒトの眼の水晶体も硝子体も主成分は水であるから、ヒトは水を透過しない波長の光を見ることはできないはずである。だから水を透過する光が可視光線なのである。水が透明なのは偶然ではなくて、水が透明になる波長の光に感ずるようにヒトの眼の網膜ができたのではないだろうか?」

上記の引用元はこちらの本↓の霜田先生ご執筆のところなのですが、 「物理って面白いんですか?」 ってお題に対するエッセイに、(あれほどの先生が)自分の研究歴の話を書かず、エッセイ全体の残り2/3くらい生物の眼の進化に考え巡らせてるの、すごいと思うんですよ。

先生、物理っておもしろいんですか? パリティの1ページコラム連載記事をまとめて単行本化。 69本を収載。 物理系を中心に多彩な研究者の物理や科学に対する考え方、世界観、研究姿勢、生い立ちなどがわかり、 大変おもしろく、また、教育的効果もある内容。物理関係者のみならず広くいろいろな人に読んでもらえるエッセイ集。 ○短編の読み切りで読みやすい。 ○多彩な内容で、興味をもって読み進められる。 ○高校生、大学新入生に、将来を考えるため... 前にも呟いたのですが、レジェンド級のモノ作る量エレ実験系物理研究者は、問題にあたる時、その測定デバイスのことまで深く考えてるんだな、と。 今はそういう時代じゃないとは言え、デバイスをブラックボックスとして使ってる自分をちょっと省みたくなります。

霜田先生は「レーザー研究」で、光電効果の説明に本当に「光子」(電磁場の量子化)が必要かなど考える連載も書いてて、それっぽい説明でそのまま納得してはいけないんだなと考えさせられます。 https://twitter.com/drboar/status/1489561158994386946 直接の面識はほぼない、玄孫弟子くらいの量エレ研究者の身ですが (というか、今の日本の量エレ実験系研究者って、師匠筋を辿って行くとかなりの確率で霜田先生まで行きつくんじゃないかという気もしますが) 霜田先生のご冥福をお祈りします。

「太陽系最強の相転移の教科書」

「太陽系最強の相転移の教科書」を含む、西森先生の教科書が3冊オープンアクセスになったそうです。今すぐゲットして、あなたも太陽系最強に! open access books

製造業での機械学習の状況(?)

いま製造業で起こっていること⤵︎⤵︎

『とりあえずよく分からないけどデータをscikit learnに突っ込んだら予測精度が出ました!AIで出来ました!説明変数〇〇が重要です!』

→実際にはデータリークしてる、解釈間違ってる。

リアルにこんな感じです。もうカオスすぎて本当に収拾がつきません。 パッケージが簡便化して誰でもデータサイエンスが出来るようになってきてますが、同時にその弊害も生まれていると思っています。 個人的にこの状況は危険も大いに孕んでいると思います。 データサイエンスの民主化が進むと共に、正しく理解されないままデータサイエンスが使われる事案も増えてます。 これがまずいのは、本人も周りも間違いに気づかないって所ですね...。 発表してたらそれっぽく聞こえるけど、プロのデータサイエンティストでもコードの中身を読まないと合ってるかどうかまでは分からない。 でも仕事が増えるのでそこまですることは無いですよね。こうやって暴走していくわけです...

RT>この辺りは 数理をわからない人が簡単にAIツールが使えるようになった弊害だぬ。 昔は数値計算ライブラリができた時にも起こったことだよぬ。何も考えず、逆行列計算とか。 ちょっと前は、数理がわからない人がOpenFOAM使う例かな

幾何学的計算量理論

というわけで,数学は計算しちゃいけないが,どうやって計算するかは数学の問題である.(^^;; GCT=幾何学的計算量理論 http://ramakrishnadas.cs.uchicago.edu/gctcacm.pdf

教育系YouTuberのまなざし

星の物理と湯川英樹

星の進化って物理なの?って学生さん、日本で星の物理やろうって言い始めたのは湯川秀樹だよ https://www.jps.or.jp/books/50thkinen/50th_03/002.html

「世界史」の世界史

LLMの技術サマリー

1+1は定義か定理か

リーブ先生はものすごくいろいろな分野の「神」である

『リーブ先生はものすごくいろいろな分野での「神」である』田崎晴明

リーブ先生のガウス賞受賞に際して『数学セミナー』に寄稿した半年前の記事を許可を得て公開します。 https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/pdf/Lieb_Gauss_pub.pdf

人月の話の例

経験上、人月の話も並列計算の話もタスク分割と並列化の話なので100マス計算を例に出すと説明しやすくて、

「100マス計算の紙があって、1マス1秒、計100秒で計算できます。では100人で取り組めば1秒で計算できそうですか?紙は1枚だけです」

と言うと多くの人にわかってもらえる

統計学の気分

統計学がどういう学問分野なのかを把握すると少し感覚が掴めるかもしれません. ちゃんとした文献は先述の https://plato.stanford.edu/entries/statistics/ ですが, お気持ち表明としては https://wmbriggs.com/post/3169/ の「Statistics rightly belongs to epistemology, the philosophy of how we know what we know」が好きです.

「数理科学を使えば統計の”主義”を争う必要ない」という主張について検討する

英語が上達する方法

英語が上達する方法:

「ある語の "定義・説明" を尋ねる Q&Aの問いかけを、 頭の中で繰り返す。」

という勉強法がオススメです!

What is ○○? It is 〜20語程度の英語で説明〜.

↑ これを、頭の中で日常的に いつも繰り返すんです。

例えば、 What is language? →答えられますか?

古代ギリシャと化学

「文系だし、化学は頑張らなくていいか……」と流してた高校時代の私を「馬鹿ッ!古代ギリシャ語の錬金術パピルスを読む未来の自分のことを考えろ〜!日本語で化学の教科書しっかり読んどけ!いったい誰がその学問の源流を作ったと思ってるんだお前は〜!!」と往復ビンタで諭したい 高校の全教科が必要だったな!古代ギリシャの全てに付き合うためには……。 古代ギリシャのそういうところが好きなんだけどさ(惚気)。 現代化学、元素や物質の名称が統一されていてマジで便利だ……。 古代ギリシャだと各派閥によってどの物質をどの神の名前で呼ぶかが違うので、「この化学反応が起きるってことはここでの『ディオニュソスの石』は石灰だな」という逆算をしなければいけないが、高校化学を疎かにしていたためそれが困難

はっ。これもバズっているのか……。 古代ギリシャの錬金術、興味ある方はこれも超よろしく。 NHKオンライン講座「古代ギリシャ・ローマの錬金術にせまる」、ただいまアーカイブの再販期間中なのです。 https://nhk-cul.co.jp/sp/programs/pr

マツダがmazdaの理由

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  • マツダの英語表記がZの理由、これは知らなかった…「90年前のエピソード」に思わず感動

「物理学は数学の一部です」

物理学は数学の一部です、って言われたらどうするよ?rt 「18世紀の力学は、数学の一分野だった」 画像

ベルヌーイ、オイラー、ダランベールの時代ですね この時代のある側面を強調するために出された言葉なので、ここだけ抜き出すと誤解を生じてしまいそうですが。 ただ、時折、かなり時代錯誤的に物理学や数学という区分をこの時代にも当てはめて、物理学が数学を作った!とか鼻息荒く言う人がいるので、解毒剤にはよかろうかと。

cambridge.org Mechanics and Experimental Physics (Chapter 15) - The Cambridge History of Science The Cambridge History of Science - March 2003

なお元つい 引用 部品(森七菜) @tjmlab · 7月8日 「数学は物理学の一部です...20世紀半ば、物理学と数学を分離することが試みられました。その結果は壊滅的なものであることが判明しました。数学者は何世代にもわたって科学の半分も知らずに育ちました。」

→争いが起きそう

例えば、ベルヌーイはダランベールの風についての論文に、「この論文をよんでも、風についてわかることは何もない」。また、弦の振動の方程式の解についての論争は、もっぱら数学的な側面に集中して、物理的な側面はほぼ無視された。 解かれた問題の多数派が、実験との関わりを持たなかった。。。などといったことが紹介されています。

JPNIC: 生きたNW設計や今のトレンド等参考書ではあまり学べない沢山の公演資料が

ネットワークエンジニアにとって有益なのに全然知られてないんだけど、JPNICから生きたNW設計や今のトレンド等参考書ではあまり学べない沢山の公演資料が落とせます。 SP分野が多いけどビギナー向け資料もあるので自身が気になる資料がないか探してみると良いかも。 https://nic.ad.jp/ja/materials/

押井守による宮崎駿

良すぎる。 「押井それに宮さんはすごく細かい。一度、山賀(博之)と庵野(秀明)、前田(真宏)の4人で宮さんの別荘に行ったことがあるんだけど、宮さんはがみがみ怒ってばかり。この3人は本当に何もしないから、仕方なくわたしがご飯の支度をやっていた。…」 https://bunshun.jp/articles/-/64140?page=2

ペアノの公理が何を指すか?

数学教育の話題で「ペアノの公理」が出てきたら、「あなたのおっしゃるのは一階ペアノ算術、二階ペアノ算術、ペアノ構造のどれですか?」と尋ねてください。答えが返ってこなかったり的外れな答えが返ってきたりしたら、そこで話を打ち切るのが吉です。 それぞれが何かについて. https://mathtod.online/@kamo_hiroyasu/110647080208958487

大雑把にいえば、こういうことです。

  • 一階ペアノ算術:自然数だけがある世界
  • 二階ペアノ算術:自然数と自然数の集合(自然数を要素とする集合)だけがある世界
  • ペアノ構造:あらゆる集合が存在する世界における自然数全体の集合

よく教科書にあるこれは間違いなんですか?

これはペアノ構造です。 引用先の著者に「あなたのおっしゃる『ペアノの公理』は一階ペアノ算術ですか、二階ペアノ算術ですか、ペアノ構造ですか?」と尋ねたら、「ペアノ構造です」が返ってくるでしょう。それで支障ありません。

ああ、"ペアノの公理"が「ペアノが提唱した公理」という解釈が可能なので「ペアノの公理」という言葉は相応しくないという意見ですか?

「ペアノの公理」がダメだとは言っていません。複数の意味があるので、そのどれであるかが明確でないと蒟蒻問答になります。相手が複数の意味をちゃんと区別できていると確認できれば支障なく会話できますし、そうでないことが確認されたら会話を打ち切るのが推奨というだけのです。

『微分形式と電磁気学』の補足解説

「割引は引き算ではない」

実は昔、とある大学(勤務校の兵庫教育大学ではないです。名前は伏せます)で『数学』の授業の非常勤を数年したことがあるのですが、内容はほぼ算数でした。 その初回でプレテストとして(状況把握のために)いくつか問題を出して、そのうちの一つが「1000円の2割引はいくらですか」という問題でした。 そのプレテストの解答の中には、 「1000−2=998円」 「1000÷2=500円」 他にも 「2割=0.2である。よって 1000÷0.2=5000円」 という解答もあった。楽しい。 プレテストを返却するときに言ったんです。 「割引き、っていうから、割り算か引き算だと思ってるみたいだけど、掛け算だよ」(どよめき) そのあと色々ありましたが、割合というものを理解せずに大人になると、こういう風になるんだなぁ、というのを目の当たりにした感じでした。もちろん、速さなんて理解してなくて「時速4kmで2時間進と、何km進みますか」という問いに対しても、多くの学生が「はじきを忘れたので、解けません」でした。 面白いことに、そんな彼らも、数の計算ができないわけではないのです。例えば、280×3.2を計算してといえば、計算できます。(もちろんケアレスミスをすることもありますが)しかし、 数直線を書いて、100、200、300、という目盛をつけたあと、280はどこ?(これは分かる)を確認したあと、280×3.2はどのあたり?と聞くと、「そんな難しい計算はやってみないと分かりません」というんですね。なるほど、と思いました。 大事なことは計算の練習ではなくて、割合の表現が何を意味しているかの理解なんですね。そんな彼らに、割合とは何か、速さとは何か、彼らがつまづいてしまったところからきちんと授業しましたよ。 授業の最後の感想文には、「これまで買い物の時、割引ってわからなくて、いつも心配でした。でも先生の授業で、安心して買い物できるようになりました。ありがとうございました」と。ちゃんと、教えれば分かるんですよね。 ちょいバズしそうなので、置いておきます。 本学では、算数・数学教育について、本気で学びたい方をお待ちしています。

ジェネラルトポロジーの本

10年位前、general topologyをちゃんと勉強するなら何を読めばよい?と専門家に聞いたところ、「とりあえずEngelkingのGeneral topologyとArkhangelskiiのTopological function spacesをよめ」と言われてた。 前者は有名なgeneral topologyの本。後者は連続関数全体に色々な位相をいれた空間を扱っている本。最近の一般位相空間論やるんだとそこらへんの空間は結構な頻度で出てきます ということで、みんなもこいつら読んでgeneral topology勉強しよう なお、私はEngelkingは半分くらい(演習問題は除く)、Arkhangelskiiは必要になったとこだけしか読んでません…

Paulによる佐藤幹夫情報

共同通信配信の記事で、北海道新聞さんはカラー写真付きで掲載してくださった。いつ頃の写真か、よく撮れております: https://hokkaido-np.co.jp/article/863790 佐藤幹夫さん(数学者)1月9日死去94歳金字塔の理論、次々と発表 2023年6月19日 10:37

パレスチナの数学教育

目次あり。「批判的思考力の育成という同じ目標を掲げつつも学習内容や方法に様々な類似点と相違点があるパレスチナと日本の数学教育。…」 ⇒田中義隆 『こんなに違う!パレスチナの数学教育 日本の中学校教科書と比較する』 https://www.akashi.co.jp/book/b630599.html 「…分数、割合、関数、図形、統計・確率などについて両国の中学校段階の教科書の記述内容を比較し、その背景にある理由を分析・考察する。」 パレスチナ自治政府の歴史から始まる数学(教育)本というのは中々すごい。ほかの目次を見ると特にパレスチナ側の教育内容に結構ツッコミが入っているようだ(基本的な概念が書いていないとか、定義が不明瞭とか)。日本側にも入っているけど。 と目次を眺めていったら……

人工知能研究の新潮流2~基盤モデル・生成AIのインパクト~ エグゼクティブサマリー

佐藤幹夫関係資料: 講義ノートおよび講義録音, 1984-1986

曲面と結び目のトポロジー

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  • これいいよ。 この本読むと とにかく 閉曲面の基本群が 生成元 と 関係式で書き下せる。 まあ それがどんな群になるかは別問題だけどね。(^⁠_⁠^;;

生物の本

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    • 生物やっている友人に聞いてみようくらいのノリで呟いたら、いろんな有識者にアドバイスいただいたので、お礼に変えて一覧にしておきます(多すぎて、抜けがあったらごめんなさい)
    • URL
    • 【緩募】(すっごいざっくりした質問だけど)遺伝子とか生物について独学するのによい教科書ある?高校2〜3年か、大学1〜2回生くらいのレベルで楽しく学べる教科書、募集。(基本的に)趣味です。
  • [1] 数でとらえる細胞生物学 http://amazon.co.jp/dp/4758121060
  • [2] 細胞の物理生物学http://amazon.co.jp/dp/4320057163
  • [3] カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書http://amazon.co.jp/dp/4065137438
  • [4] キャンベル生物学 原書11版http://amazon.co.jp/dp/4621302760
  • [5] Essential細胞生物学 原書第5版 http://amazon.co.jp/dp/4524226826
  • [6] Physics of Life https://nap.nationalacademies.org/resource/26403/interactive/
  • [7] 基礎から学ぶ生物学・細胞生物学 第4版http://amazon.co.jp/dp/4758121087
  • [8] 現代生命科学第3版http://amazon.co.jp/dp/4758121036
  • [9] 小説みたいに楽しく読める生命科学講義http://amazon.co.jp/dp/4758121141
  • [10] 休み時間の分子生物学http://amazon.co.jp/dp/406520173X
  • [11] カラー図解 進化の教科書 第1巻 進化の歴史http://amazon.co.jp/dp/4062579901
  • [12] 生命のメカニズムhttp://amazon.co.jp/dp/4916166620
  • [13] DVD&図解 見てわかるDNAのしくみhttp://amazon.co.jp/dp/4062575825
  • [14] 遺伝子―親密なる人類史http://amazon.co.jp/dp/4150505713
  • [15] タンパク質の一生: 生命活動の舞台裏 http://amazon.co.jp/dp/400431139X
  • [16] 遺伝子の川http://amazon.co.jp/dp/479422043X
  • [17] 自我の起源http://amazon.co.jp/dp/400600205X
  • [18] 新しい高校生物の教科書http://amazon.co.jp/dp/4062575078
  • [19] マンガでわかる分子生物学http://amazon.co.jp/dp/4274067025
  • [20] 生物と無生物のあいだhttp://amazon.co.jp/dp/4061498916
  • [21] 精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか http://amazon.co.jp/dp/4163444300

物理ができないとはどういうことなのか(はじめの講義)

日中韓共通語彙

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  • 「日中韓共通語彙」 これはすごい資料だ。震える。3言語どの学習者にも有用すぎる。 日中韓で使用される漢字語のうち厳選された658語について、それぞれの意味と使われ方を例文付きで360ページに渡って掲載。ビジュアル的にも実に見やすい。すごい! < https://tcvd-asia.com/wp-content/uploads/2020/05/(JP)TCVD.pdf>

英語史学習・教育とhellog

逆像写像がよい性質を持つ理由

狂犬病予防法違反を見かけたときの対処

うちの子は狂犬病ワクチン打ってません☺️と云う飼い主を見つけた時はどうするかというとですね

その暴露ツイートのURLをインターネットホットラインセンターの通報フォームに入れて「狂犬病予防法違反」と一言書き添えて通報ボタンをぽちっとします

子供のための心臓マッサージ

【注意喚起】 昨日の仕事の帰り道、パパさんと5-6歳くらいの子がお話しながら歩いてて、ベビーカー(B型)に1歳らへんくらいの👶🏻が乗ってるっぽかったの。 ぽかったって言うのは、日除けのために幌に生地重めのブランケットみたいのをぶら下げてて、お顔が見えなかったのね。 ちょっと気になって見てたらベビーカーの👶🏻、手がダランってしてるのが見えてよく見たら真っ青... え!?と思って「すみません!赤ちゃん大丈夫ですか!?」って声掛けたらパパさんすぐブランケット取ったんだけど、口の奥深くにまで突っ込んでたみたいでチアノーゼ。 パパさん大パニックで話ができない状態だったので私が脈と呼吸確認したら微弱。どんどん真っ青になっていって、私もプチパニック。 けど、お姉ちゃんがすごく冷静でいてくれて、「救急車呼べるかな?」て聞いたら「ママと練習したことあるからできるよ!」と言ってくれ、電話掛けてくれた(素晴らしい) 幌にぶら下がってたブランケット地面に敷いて👶🏻おろして、「心臓マッサージできますか?」とパパさんに確認するも、パパさん震えて「わからない」となっていたので許可を得て👶🏻に心マをして3分くらい経ったら👶🏻がけほって咳き込んだ後泣き始めてくれて... 回復体位にして救急車を待って、救急隊員に状況を説明して、パパさんはパニックだったのでお姉ちゃんに私の連絡先を教えて私はダッシュでこえびのお迎えに行きました。延長保育になる1分前。こえび待たせてごめんな🥲 その夜ママさんから状況の確認とお礼の電話が来て、👶🏻も落ち着いて元気にお喋りしてると報告があって一安心...本当に良かった。 おそらくぶら下がってたブランケットで遊んでいたら飲み込むように口に入れてしまったことが原因だとのこと🥲

一晩考えて注意すること沢山あるなと思ったので以下まとめ

①幌を伸ばすなら必ず後付け幌を使う。布で代用しない ②ベビーカーに乗っている時は親が何かしていても必ず数分に1回は様子を伺う(お姉ちゃんとお話していて気づかなかったよう) ③いざという時の心マ等は必ず練習、イメトレしておく! 我が家は週1で夫と復習をしていたからすぐ動けたんだと思う

あとは私は第三者だから冷静になれたというところもあるし、周りに助けを求めるのはもアリだよなと思った。

我が家はコレをLINEのノートに貼って週1復習、人形で練習しています! https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=38705

心マはアンパンマンのマーチを気持ちゆっくりめに頭で歌いながらやると良いです!

【医師監修】早く始めるほど命が助かる!赤ちゃん・子どもを救う心肺蘇生法を覚えておきたい理由|たまひよ 心肺蘇生法 意識がない、呼吸がないなどのときは、迷わず、心肺蘇生を始めましょう。心肺蘇生は早く始めるほど命が助かる可能性が高くなります。呼吸が3分以上止まっていると、脳に酸素が行かず後遺症が残る危険があります。

本当どんなことでも事故に繋がるから...母はしないことでも父が良かれと思ってやってくれたことが実は危険なことだったりね...(今回の件もそうだったみたい) みんな...毎日子の命守ってて偉いよ... 頑張ろうね...! 散歩行ってくるわ...

アンパンマンのマーチを気持ち"ゆっくりめ"っていうのは我流です! 私はそういう時気持ちがはやって歌も爆速で頭で流れてしまうのでゆっくりめを意識して丁度良くなるから、落ち着けてる人は普通のテンポで良いと思う!

補足②突っ込んでくる人増えてきたからいうけど昨日の夜の電話の際にママさんに注意喚起をSNSであげることは許可得てるし、なんなら今度ご飯に行く約束までしてます😌 私はN○Kに無許可で記事にされたことあってムカついてるので絶対に無許可でこういうことは載せません!

大量の宿題

取材に協力した記事が公開されました。様々な形の宿題に苦しめられ、結果として頑張っているのに何一つ身につかない。その悲惨な現実を知って考えて頂きたいです。 「学校の宿題は最低限のもので必ずやるべきものだ」という、一昔前の親世代のイメージからすると想像もつかないくらい多量の宿題に、今の小中高生は苦しめられています。そして、超人的努力を要するのに見当違いなものも多く、いくら頑張っても受験で通用する力は何一つつかないまま時間を奪われます。 そうした宿題からどのように若い世代の学習時間を守っていくのか。「お子さんに宿題をやりなさい!」と言う前にどんな宿題がどれだけ出ているのかを必ず確認したほうがいいです。フィードバックのかけらもないやりっぱなしの多量な宿題ばかりなら、抗議していくことも大切です。 中高生は、「学校の先生が『やれ』と言ったこと」を是非疑いましょう。分厚い、誰もが知っている問題集を薦めてくる先生は、恐らくそれ以外の教材を研究していない可能性が高いです。理解していないことを演習しても仕方がない。ダメな宿題に付き合って、自分の人生を棒に振らないようお気をつけて。

Emacs, rxマクロ

Homotopy Type Theory: Univalent Foundations of Mathematics

『グラフェンの物理学』

『グラフェンの物理学』は,グラフェンの物理学を理論的側面から解説する教科書!グラフェンだけでなく,Dirac 粒子,Berry 位相,エッジ状態,バンドトポロジーといった新しい内容の基本的な部分も習得できるように書かれています!

UX

しっかり学ぶ数理最適化

5/23新刊『初等相対性理論 新装版』高橋 康

5/23新刊『初等相対性理論 新装版』高橋 康3300円(講談社) 高校レベルの三角法と微分積分だけから始まる名講義。泰斗が語る老練でエキサイティングな講義は、読者を相対性理論の本質的な理解へ導いてくれる。

チラシ厳禁, 着払い返送します

AQFTのレビュー, 2023

there seems to be a series of review papers on mathematical QFT. here is one by Buchholz and Fredenhagen on AQFT Detlev Buchholz, Klaus Fredenhagen, Algebraic quantum field theory: objectives, methods, and results

[2305.11709] Detlev Buchholz, Klaus Fredenhagen: Arrow of time and quantum physics http://arxiv.org/abs/2305.11709

初等的な不等式のPDF

柳田『初等的な不等式Ⅰ』 http://izumi-math.jp/I_Yanagita/emath_ver1.1ps.pdf 柳田『初等的な不等式Ⅱ』 http://izumi-math.jp/I_Yanagita/emath_ver2ps.pdf

ウクライナのゼレンシキー大統領は21日、訪日日程の終わりに記者会見を開いた際に、日本国民へ向けた演説

親愛なる日本国民よ!平和を大切にする世界の全ての人よ!

私は、戦争によって歴史の石に影のみを残すことになってしまったかもしれない国からここへ来た(編集注:ロシアの全面侵略戦争でウクライナが消し去られてしまう可能性を指している)。しかし、私たちの英雄的な人々は、私たちが戦争をこそそのような影にしてしまうべく、歴史を戻している。

私は、世界に戦争の居場所はないと信じている。人類は、とても長い道を通ってきたのであり、血塗られた対立で多くの命を失ってきた。死が空から降ってきて、死が海からやってきた。放射線が死をもたらした。人々は、互いに死を持ち寄ってきた。ある者は、人類の歴史は戦争抜きには想像できないと述べる。私たちは、人類の歴史は、戦争抜きにしなければならないと述べる。

ウクライナは殲滅戦の中心地にいる。私たちの大地には、私たちウクライナ人を単に服従させたいだけではない侵略者がやってきた。ロシアは世界に嘘をついている。あたかも「ウクライナ人など存在しない」と。

もし私たちがこれほどまでに勇敢でなければ、ロシアの私たちに対するジェノサイドは成功してしまっていたかもしれない。ウクライナは影だけになってしまっていたかもしれない。全ての人々が、影だけに!

しかし、ウクライナ人は、果てしなく勇敢である。果てしなく自由を愛している。そして、私たちは生きていく!そして、私たちは自由に生きていくのだ。

敵は核ではない兵器を使っているが、ロシアの爆弾と砲弾で焼き尽くされた町々の廃墟は、私が先ほどここで見たものと似ている。私にとっては、その平和記念館を訪れられたことは光栄である。そのような機会を与えてくれたことにつきとても感謝している。あなた方の民が自分たちの歴史で目にしてきたことは、何千という家族のありふれた生活の代わりに、灰だけが残り、町の代わりに焼け落ちた廃屋が残り、建物の代わりに瓦礫だけが残る、というものだ。

今、広島は復興している。そして、私たちは、現在、ロシアの攻撃の後で廃墟となっている全ての私たちの町、一軒たりと無傷のものの残っていない私たちの一つ一つの村の復興を夢見ている。

私たちは、自分たちの領土を取り戻すことを夢見ている。ロシアに占領されていた北部の領土を取り返したように、私たちは、東部と南部のウクライナ領を取り返さなければならない。私たちは、現在ロシアに拘束されている人々を取り戻すことを夢見ている。それは、捕虜や、民間人や、追放された大人や拉致された子供だ。私たちは、勝利を夢見ている!私たちは、勝利の後の平和を夢見ている。

しかし、そのためには、その侵略者が負けなければいけないだけではなく、現存する戦争の野心が敗北せねばならないのだ。そして、それは世界中の全ての人にとって重要なことである。私は、世界にウクライナの団結の呼びかけを聞いてもらうために、ここ、広島にいる。

ロシアは、文明的なものの全てを踏みにじった。ロシアはもう、1年以上私たちの最大の、欧州にて最大の!原子力発電所を占拠し続けている。ロシアは、戦車から原子力発電所を砲撃した世界のテロ国家である。原子力発電所を武器や弾薬の保管用演習場にした者は他に誰もいない。ロシアは、私たちの町を多連装ロケットシステムで砲撃するために、原子力発電所によって身を隠しているのだ。もし世界の誰かが、ロシアの他の戦争犯罪をまだ無視することができるのであれば、そのような人道に対する罪は、間違いなく全ての人を行動に駆り立てしまうことだろう。

これを話しているのは、1986年にチョルノービリの放射線の惨劇を経験せざるを得なくなった、私たち、ウクライナなのだ。私たちの大地の一部は、いまだに立入禁止区域、汚染区域である。想像して欲しい。ロシア軍はその区域を通って進軍してきたのだ。彼らは、ソ連時代に放射線に汚染された物質を埋めた森に塹壕を掘っていたのだ。

そのような水準の悪と愚行のロシアの行動が悪い結果をもたらすことなく放置されるのだとすれば、世界は間違いなく破滅するだろう。国の要職に就く他の犯罪者たちが同じような戦争を望んでいる中では、それは時間の問題に過ぎない。

もしロシアに占領した領土をほんの一片でも与えてしまったら、国際法はもう決して機能することはないだろう。

ウクライナは「平和の公式」を提案した。公正で現実的なものだ。その最初の項目は、放射線・核の安全だ。ロシアは、放射線・核で世界を脅迫することを止めて、現在占拠している原子力発電所をウクライナと国際原子力機関(IAEA)の完全な管理下に戻さねばならない。

私たちの平和の公式には、全部で10の項目があり、その1つ1つの意味が国連(総会)決議によって確認されている。そこには、私たちの国に対するロシアの戦争を終わらせるために機能するあらゆるものが含まれている。

しかし、ウクライナの「平和の公式」の力は、ロシアの侵略の野心を止めて、ロシアが侵害した安全を回復した後でなお、世界にもう1つの追加的な結果をもたらすものでもある。それは、他の潜在的侵略者を麻痺させる、というものだ。戦争を望む者一人一人が、世界が平和を望む時にはどれだけ団結し、どれだけ覚悟を示すのかを目にしたら、戦争を始めることには意味がなくなるのだ。

これまで世界には、侵略者を止められるような公式がなかった。ウクライナはそれを提案している。ウクライナは世界に、戦争からの救いを提案している。そのためには、団結して、ロシアを最後の侵略者にしなければならない。そのロシアのウクライナへの侵攻の敗北後に、平和のみが栄えるようにだ。

私たち、人類は、異なる文化、異なる見方、異なる国旗を有している。しかし、私たちは、自分のため、自分の子供、孫のために等しく安全を望んでいる。そして、戦争が訪れてしまったら、私たちの命は、等しく灰じんと化してしまうのだ。

戦争からは影のみが歴史の石に残るよう、それが見られるのが記念館だけとなるようにするためには、世界の誰もが、あらゆる可能なことをしなければならない。

世界の誰もが、他国の人々を尊重しなければならない。

世界の誰もが、国境を認めなければならない。

世界の誰もが、正義を守らなければならない。

世界の誰もが、命を大切にしなければならない。

世界の誰もが、自らの義務として平和を受け止めなければならない。

広島よ、この数日間、通りで見られた青と黄の旗について、私はあなたに感謝している。ウクライナの旗があるというのは、自由への信念、命への信念、私たちを信じる心があるということを証明している。ありがとう!

日本よ、ありがとう。岸田文雄首相よ、全ての日本の人たちよ、包括的な支援をどうもありがとう!

戦争の全ての犠牲者を永遠に追悼する。

平和が訪れますように!

ウクライナに栄光あれ!

「女性君主なら平和」というイメージは真実なのか

数年前に「女性君主の方が男性より約39%戦争を起こしやすい傾向がある。」って論文が出て話題になったんですけどねぇ。 (此処のnoteから論文「Queens」のリンクに飛べますよ。当然全文英語ですけど。) 「女性君主なら平和」というイメージは真実なのか

東大理学部物理2023の学生展示, 数理物理班

  • URL
  • 微分幾何ノートの出来が良いらしい.

魔法少女によるTogetter: 法と論理と言語

徳川慶喜の玄孫が「家系の断絶」を決意した理由とは…120年以上続く名家の「家じまい」事情 徳川慶喜家第5代当主・山岸美喜さんインタビュー

法律用語としての「差別」

「不当な差別」という用語でどうこう言ってるの、これくらいには目を通してくれという感じだが。 http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000967115.pdf

>1.法律や条例における「不当な差別」及び「差別」の用例 ○ 法律においては、「不当な(に)差別」、「差別」のいずれも使用されているが、 「不当な(に)差別」のほうが多い傾向にある。

>また、「不当な差別的取扱い」と いう形で使用されていることが多い。 (例)「不当な差別」:人権教育及び人権啓発の推進に関する法律

>従来の憲法学の通説や判例では、「合理的差別」、「不合理な差別」というように、「差別」という言葉をいわば価値中立的に用いてきたとされている。

AIテセウスの船

  • 背景は自分 キャラはAIの絵は…
  • キャラは自分 背景はAIの絵は…
  • 構図はAI, 手直しは自分の絵は
  • 構図は自分, 出力はAIの絵は…
  • 絵の描けなくなった老人が、介護ロボットに命じて描かせた絵は
  • メインキャラは自分, それ以外のモブはAIが出力している場合
  • ロボットを墨汁にぶち込んでそれを振り回して人間が描いた絵
  • メインキャラの顔は人間, それ以外の全部をAIが描いてる漫画
  • ロボットが人間に命じて描かせている絵
  • 上司ロボットが人間に絵を描くように命じ、その人間が下請けロボに命じてその下請けロボットくんによって描かれた絵
  • 人間の脳を完全にトレースして作られた人造人間 ヒューマノイドが描いた絵
  • ドラえもんが描いた絵
  • 人間の脳をコピーした後そのデータをチップに詰め込み、脳を摘出したのちチップと置き換えた人間が描いた絵
  • 設定 キャラデザ 世界観など全てAIが考えたが人間が描いてる漫画

2023-05-13 競技プログラミングによる中学生へのプログラミング指導/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 競技プログラミングによる中学生へのプログラミング指導
  • GPT-4による論文の概要把握
  • 三平方の定理の新しい証明
  • 「これからの集合と位相」
  • ChatGPTでの語学学習
  • 生物学と物理学の境界
  • ヤウのインタビュー
  • 小松彦三郎先生の『グロタンディク空間と核定理』
  • 白石直人さんによる「ゆらぐ系の熱力学」の教科書

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近況報告

何かいつの間にか一月もメルマガを書いていませんでした. 仕事関係のプログラミングの勉強ばかりであまり数学もできていません. 久しぶりにプログラミング関連をかなり基本的なところから再勉強していて, ようやくわかってきたこともあれば, ただの勉強ばかりで実戦投入できずいまひとつ身についていなかった知識も実戦投入で血肉になりつつあり, とても楽しいので問題視しているわけではありません.

数学と言えば久しぶりに現代数学探険隊を一から眺めて記述を整理しています. そしてようやくコンテンツ販売している分の解析学編の整理ができました. 改めて眺めていたら自分にとって「こういうのがほしかった」をまとめたコンテンツなだけに, 読んでいてとにかく楽しく飽きが来ません. 焦点がバチバチに合っているときに書いた多少複雑な部分で, 久しぶりに読むともう少し記述を追加しなければならないところもいくつかありますが, 全体的に後で行間を埋めるのに時間を使わなくて済むように詳しく書いているため, その意味でもすらすら読めます.

まだまだ磨くべき部分はあるにせよ, 少なくとも自分が心からよいと思える内容にはなっていてとても気分がよいです.

あと, プログラミング学習と言えばいわゆるAI(機械学習)利用がなかなかよいです. とんでもない嘘をつかれる場合があるとはいえ, ChatGPTはGoogle検索で見つけづらいピンポイントの話題を解決したいときにかなりの威力を発揮します. phind.comもいろいろなサイトを取りまとめてくれるため, 検索で重宝しています. 人間絵の(?)イラストレーター界隈では相変わらず燃え上がっていますが, それぞれ高度な専門性がある(とされる)翻訳や確定申告については「さっさとシステム・人工知能でどうにかしてくれ」と言い, 同業であるはずの背景関係の生成ツールは「これで絵を描くのが一段と楽になった」とまで言ってきていた人が人間絵の生成は駄目だと言い出すのはさすがに筋が通らないだろうとは思います. 欧米だととりわけ児童ポルノに関わる形で問題視されているようですが, どうなることやらという感じがあります.

この間Twitterでコンサル系の人が「ChatGPT+Midjourneyを使って中小企業向けのロゴ制作の会社を作れる」と言って, デザイン系の人達で「あんな質の低いロゴでは話にならない」と言っている様子を見かけました. ただプロの目から見て, 実際にプロの仕事を比較したら優劣がわかるとしても, 比較対象がない中でそれだけ見せられたら十分ではないかと思えるようなものではないかとも思います. それこそ医学などの微妙なところはともかく, 数学や物理での明らかな嘘が平然とまかり通っている以上, プロの仕事を判定するにもプロの力が必要です. そもそもプロの仕事がオーバーキルで, 伝統工芸のように腕のいい職人の製品は高くて買えない贅沢品になる可能性もあるのでしょう.

もちろんプログラマーの処遇ももはや自明ではないと思っていて, それもまたどうなることやらといった感じです. Wolfram alphaと機械学習連携の話も出ていますし, 数学・物理もどこまで敷居が下がるか, それとも逆に上がるのかが気になっています.

競技プログラミングによる中学生へのプログラミング指導

やるやると言っていた中高生向けの話, ようやくはじまりました.

様子を見ているとタイピングスピードと正確さがないようです. 中学生がゴリゴリタイプする機会もそうそうないでしょうし, それはそうだと思ってタイピング練習の時間も作っています.

それで調べていたら私が中学生の頃, タイピングソフトは3000-5000円くらいしていた記憶がありますが, いまやネットでフリーでちょっとしたサイトがいくつもありました. 確かにいまやそのくらいでお金を出す人もいないのかと思うと, 一種のジェネレーションギャップを受けました.

GPT-4による論文の概要把握

GPT-4のWeb Browsingを使うと、「(論文のタイトル)について内容を教えて」と指示出すだけでいい感じに内容を要約してくれるので感動した。

最近研究者界隈のこの辺の話をよく見かけるようになりました. 試す機会もないため論文レベルでどうかはよく知りませんが, ちょっとした文なら読むだけではなく書く方も英語ならだいぶ便利です. 機会がないためあまり調べていないのですが, 会話関係はどの程度できるのでしょうか.

ああ、さっきから僕が言ってるボイチェンはこれの話です。声を作らなくても完全地声でちゃんとかわいい美少女ボイスに変換されます。 ただし発音・発声・口調の汚さは補正されないので僕みたく品がない人はまず品を手に入れましょう……(

『「RVC」+「VC Client」で自分の声を任意の声にリアルタイム変換しよう!』という記事を書きました。 https://eyatu-vrc.hatenablog.com/entry/2023/04/06/193512 DiscordやVRChatで任意の声へのボイチェンをするための手順を書いた記事です。 動画はずんだもんの声になったEヤツです。 不明点があればリプやDMでご指摘ください!

方向性は違いますが, コンテンツ制作関係でこの辺も気になっています.

三平方の定理の新しい証明

ニューオリンズの高校生2人が、無限級数を使ったピタゴラスの定理の新しい証明を発見。彼女らがこれを米国数学会で発表して話題に。 Here’s How Two New Orleans Teenagers Found a New Proof of the Pythagorean Theorem

アメリカの高校生が発見したという、三平方の定理の新しい証明法だそうです。高校数学でも新発見ができるものなのですねぇ。

さらにこんな話も.

【JKが学会で発表】 アメリカの女子高生が、三角関数を使ってピタゴラスの定理を証明する方法を発見しました。 三角関数を使ったピタゴラスの定理は、循環論法を回避するのが難しく、2000年間不可能だと考えられていました。 すごい。

❌2000年間不可能 ️ピタゴラスの定理が発見されてから、1度も発見されていなかった

「これからの集合と位相」

基本事項の羅列ではなく、議論の流れが読み取れるようにまとめ、自習に利用できるテキスト 『これからの集合と位相』梅原 雅顕/一木 俊助(裳華房) 「圏論」の普及に伴い、空集合・空写像の概念が重要視されつつあることをふまえ、付録の最終節として、空集合の扱いについての解説を掲載!

『付録の最終節として、空集合の扱いについての解説を掲載!』が特に気になります. あと以前英語版を紹介した記憶がある, 「圏論による位相空間論」的な本も和訳が出ました. 英語の方を読もうと思いつつ本だけあって読めていなかったうちに和訳が出てしまいました.

ChatGPTでの語学学習

なんかなんでも今更なんだけど、ChatGPT で語学を勉強するの楽しすぎてやばいんだけど 以前のノートを整理しながら文法を直してもらったり、文法や表現の不明点を解説してもらったり、用例を作ってもらったり、至れり尽くせりだよな クラスの先生は疎か、一対一の語学先生よりも百倍便利で草生える

ほんの一例だけど、ノートに溜まってた謎のフランス語とドイツ語の文を解説してもらいつつ、新たにまとめていくことをやっている https://sharegpt.com/c/QHKAISZ 自己紹介のテンプレートを書かせつつ、短くしてもらったり、文法をやさしくしてもらったり、解説してもらったり、記入してもらったり、追加情報を入れさせてもらったり、もうやばいん なんなら特にやることがわからないときでも、graded reader(易しい文法レベルまで落とした読み物)を童話からの bilingual text 作ってもらって、有名な話なんであらすじはわかるから comprehensible input になるし、わからないところば質問していいし、飽きたら新しい物語を作ってもらってもいいし

私もいま自分が所属している語学コミュニティ向けにちょっとした語学学習用のサイトを整備しています. 英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語あたりをいろいろまとめています. 語学学習用のコンテンツにはまだ載せていませんが, 最近はアラビア語とサンスクリットもやっています. ChatGPTも使っていろいろ取りまとめていて, やはり時々とんでもない嘘をつきます. 将来はともかく, いまはある程度の知見がないとChatGPTはうまく使えるツールではないように思います.

生物学と物理学の境界

生物学と物理学の境界について、少し前に思うところを書いた文を公開します(PDF)。双方の研究者がどういうところで仲違いしているのか、寺田寅彦が研究者の間で好かれてたりそうでもなかったりするのはどういうことか、

寺田寅彦の随筆をだいぶ前に読んだことがあるのですが, いまひとつピンと来ませんでした. この辺の味わいがわかる人に解説してもらう勉強会なども面白そうと思って幾星霜です.

ヤウのインタビュー

これもなかなか面白かったです. 数学・物理勢にはお勧めです.

小松彦三郎先生の『グロタンディク空間と核定理』

小松彦三郎先生の『グロタンディク空間と核定理』がウェブで公開されました。 https://digital-archives.sophia.ac.jp/repository/view/repository/20230419101

白石直人さんによる「ゆらぐ系の熱力学」の教科書

ゆらぐ系の熱力学の教科書がついに出版されました!確率過程の基礎やゆらぎの定理、情報熱力学、熱力学的不確定性といった定番トピックスはもちろん、2022年までのこの分野の主要な結果は大体網羅した決定版です。 https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-19-8186-9

確率過程とその熱力学・統計力学への応用はずっと気になっていたため, この本もかなり気になっています. もちろん情報熱力学にもずっと強い興味がありました. すぐに読む時間が取れそうにないのが悲しいところ.

メモ

Yahoo!きっずを使うライフハック

ライフハックなんだけどGoogleとかで検索した時に、情報がクソみたいなまとめブログしか出ない時は、「Yahoo!きっず」で検索し直すといい。 これすると、マジでクソまとめブログが激減して、必要な情報にたどり着ける可能性が上がる。

岸田首相の海外からの評価

我々が「海外から見たバイデン、習近平、プーチン」を見れるように、 「海外から見た岸田文雄」という非常に有益な情報なので政治齧ってる人は全員見るべき

Exclusive: Prime Minister Fumio Kishida tells TIME's @CharlieCamp6ell about his plans to transform Japan's role in the world https://ti.me/3nRThwX

男なら死ねい

たまたまyoutubeで流れてきたhttps://www.youtube.com/watch?v=Q1CSrD5kbQA&t=137s「お母さんが幸せでなければ、誰も幸せになりません。お父さんが幸せでなくても、誰も気にしません。」、まさしく江田島平八のhttps://livedoor.blogimg.jp/suko_ch-chansoku/imgs/c/0/c0b95be0.jpg?fbclid=IwAR32uL5UGCZ0cUMn3MbPKMLHIn_oNeLtw2IzgARJYMVVKLS3gHwDAVP7L8wで、男塾は英語圏でも通じるのかと深い感銘を受けている。

Creating Software with Modern Diagramming Techniques - Build Better Software with Mermaid, Ashley Peacock

ChatGPTで無料で学べる『英会話AI』の作り方

「『ChatGPT』に『Voice Control for ChatGPT』を入れるだけで、永遠に無限の英会話の時間を自分の部屋でできるようになった。しかも完全に無料である。」 ChatGPTで無料で学べる『英会話AI』の作り方(神田敏晶) ChatGPTで無料で学べる『英会話AI』の作り方

生江シェフの修士論文

2023-04-08 スペクトル理論と一変数関数論/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • スペクトル理論と一変数関数論
  • 京都大学2回生の統計力学の期末試験を解いた論文
  • ヘリウム危機
  • ChatGPT+Wolfram Alpha
  • メモ: Document IDを使う

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スペクトル理論と一変数関数論

継続的に対応している現代数学探険隊のノート整理で, スペクトル理論の章を整理しています. 思った以上に関数論をゴリゴリ使っていてちょっと驚いています. もちろんレゾルベント(グリーン作用素・グリーン関数)は作用素値正則関数である以上, 関数論の結果が援用でき, 実際にいろいろな応用・展開があるのは嫌というほど知っていますが, 久しぶりに見るとこんなにも空気のように使われていたのかと驚いたのです.

現代数学探険隊では関数解析のあと, 無理やり関数論に進んでいて, 関数論が必要だからというのはもちとんわかっていたものの, なぜこういう構成にしたか, その理由を改めて実感しています.

さらに強く, 多変数関数論のバナッハ環論への応用といった話題もあります. ヘルマンダーの本にも(何故か)一章割かれていて, 時代的にも重要な対象だったのかもしれません. 詳しく読めてはいませんが, 実際に書名がバナッハ環への多変数関数論の応用という洋書があるのは知っていて, これも読んでみたいと思って幾星霜です. いま読んでいる層とホモロジー代数が終わり, トポロジーのノート・指数定理のノート・モース理論のノートが作り終わったら読みたい本のリストには入れてあります.

京都大学2回生の統計力学の期末試験を解いた論文

「京都大学2回生の統計力学の期末試験」を解いて論文にしました。 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.130.148101 ゲルにおける「負のエネルギー弾性」の統計力学にもとづく説明です。 試験問題の公開から3年以上がたち、試験時間は大幅にオーバーしてしまいました。 https://t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2023-04-05-001

三重大学の白井さん(@nobucshirai)との共同研究です。研究の経緯は、プレスリリースにも書きました。白井さんとは、オンラインで出会い、一度も対面で会わずに原著論文にまで仕上げました。オンラインで理論物理の議論は厳しいと思っていましたが、双方の努力次第でなんとかなることがわかりました。

作道さんのゴム弾性の研究の話を聞いたことがあり, 非常に面白かったです. このあたりは統計力学・物性論の多彩さと面白さで, 熱力学熱と統計力学熱が高まります. 先日, 2022年のフィールズ賞受賞者の業績が$\phi^4$の自明性の証明だったとも聞き, イジング熱が高まっているため, 改めて原-田崎本を読む機運が高まっています. 早く幾何系のノート作りを終わらせたいです.

幾何は幾何で学部一年で深谷賢治さんの本を読んで以来, ずっと憧れの分野で, これはこれできっちりやりたいのです.

ヘリウム危機

Twitterで貴重な資源であるヘリウム浪費問題が流れてきました. 関係する記事も流れてきたのでシェアします. どうも嵐がコンサートで凄まじい浪費をしたために世界で大問題になったこともあるとか. 知らなかったのでちょっと驚きました.

産業・医療応用が重要な対象をエンタメで消費するのはいいのか悪いのか.

ChatGPT+Wolfram Alpha

ついにChatGPTと数学が融合、Mathematica開発者ウォルフラムさんの生の興奮が伝わる記事 ChatGPT Gets Its "Wolfram Superpowers"!

これで数学系のグラフ作成・動画作成が楽になると数学・物理教育にもいい影響があります. 私もプログラミング関係のコンテンツを作って管理する必要がなくなるので, 早くいい感じに使えるようになってほしいです.

メモ: Document IDを使う

今回のIPAのサイトリニューアルでわかったように、URLは脆弱なので、djb先生の唱えるDocument IDを使おう https://cr.yp.to/bib/documentid.html UUIDでも何でもユニークっぽい文字列をページごとに書いておいてそれをURL代わりに使えば、ググればページが見つけられる

先日サイトリニューアルした上で, さらにWordPressで作った本サイトも潰してこちらをメインに据える予定があります. 今回はもういいやと思っていますが, 次回何かあったときはちょっと考えたい内容です.

2023-04-01 数学・物理 熱力学が楽しい/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • サイトをプチリニューアルしました
  • 近況報告
  • ChatGPTに数値計算コードを書いてもらう
  • 全悪質時空
  • トレースの定義

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サイトをプチリニューアルしました

メルマガを載せているこのサイトはテキストファイルからmkdocsで作っています. 変換・アップロードが長くいい加減面倒になってきたため, 分散させていたファイルを一つにまとめました. リンクがメチャクチャになってしまっている部分もありそうですが, 気付いたら修正します.

一部のページは重くなってしまっているため, 必要に応じて適当に分割する予定です. 私自身はローカルで必要に応じてgreprgで検索をかけて読んでいるため, Web版の重たさになかなか気づけません. これまでいちいちgrepしていたのがファイル内検索で済むようになり, 私としては効率がよくなったのですが. メルマガページも少し重いかもしれません.

WordPressで作っていた旧本体サイトも, Webのインターフェースが重いのが嫌です. いまのアーカイブサイトのローカルのテキストファイルは, 複数ファイルにわたってちょこちょこ必要な記述を追記・修正できる点で, 個人のサイト・情報管理としてはもうWordPressは面倒なので, はやいところ移行したいですが, その作業も面倒で止まっています. WordPressを潰したら, このアーカイブも本体に格上げ予定です. いつになるかわかりませんが.

近況報告

熱力学のノート作りが一段落してちょっと気が抜けたのか, あまり数学・物理をやる気が出ず, 仕事がらみのプログラミングの勉強というか, ドキュメントの読み込みをしていました.

最近の公式ドキュメントは確かに充実していてよいのですが, いつも気になるのはハイパーリンク構造のドキュメントそのものです. リンクがあるとついつい踏みたくなってしまうため, あちこち意識が飛んで気が散ります. こういうときは紙でもPDFでも, 余計なリンクも少なく気が散らないように前から読める(必要なら適当に飛ばせる)本の形式はよいなと思います.

プログラミングと言えばGitHub Copilotが時々「これが書きたかった」というコードをぼんと出してくれるので, 確かに快適です. まだうまく使い切れていないのですが, いま仕事で使っているフレームワークの挙動に慣れてくれば, 基本的な枠組みをサクサク書けてGitHub Copilotとよく協調できるようになるのではないかと期待しています.

会社では一人エンジニアで技術的に質問・相談できる人がおらず, とうとう本格的にStackoveflowやGitHub Issueなどの質問サイトデビュー的なものをしてしまいました. 技術系の質問ならそれほど苦労せず英語で書けますが, それでも考えると面倒なときはChatGPTにも英作文のお手伝いをしてもらっています. 他にも語学学習でChatGPTにお世話になっていますが, 少なくとも現時点ではまだまだ思うようにいかない面が多々あります. 一人でやっていると本当につらいため, 何事にも先達はあらまほしきことなりの心を改めて痛感しています.

来週は数学ノート作りに戻りたいですね. ホモロジー代数もさっさと仕上げて, トポロジーの基礎のノートを作って, はやく指数定理とモース理論あたりまでは整備したいです. それができれば他の好きな解析学, または数理物理系の議論に舞い戻れます.

全悪質時空

名前が面白くて気になっています. 特殊・一般相対性理論もそのうち通信講座で扱いたいですね.

トレースの定義

えへへ,内緒.というのは冗談で,学生向けだとやはり対角成分の和.大学院向けだと固有多項式の (n -1) 次の項の係数 x (-1) かな.もっと intrinsic にやりたければ Σ (一般固有空間の次元)x(固有値). でもこれでは無限次元で使えないので,やはり線型汎関数 T であって T(xy) = T(yx) を満たすとするのがいいのかな. もっとも,これは T(x) の定義ではないね.やはり x のみの情報で定義したいなぁ. そうだね,自己隨伴作用素に関していえばトレースってのはスペクトル分解そのものって言っても良い気がしてきた.それが核関数で書ければその関数をトレースって呼んでもいいね. 忘れてた.トレースの重要な特徴付けの一つ. 一般線型群の不変式のなかで斉次一次式のもの. しかし,これも A のトレースだけ,っていうピンポイントじゃないなぁ.しかし,私の専門はだいたいこれなので忘れちゃいけない. この視点にたてば,det と trace の間にある残り (n - 2) 個の不変式を hyper trace っていうか,degenerate det っていうか,そういうものとして考えられる. 要するに基本対称式だけれどねぇ.

無限次元ではトレースが収束する作用素は極めて強い性質を持ち, 物理的によく現れる作用素の大半はトレースが取れません. 特に量子統計で出てくるトレースはそのままでは数学的に正当化できません. これに関わる理論が冨田-竹崎理論です.

2023-03-25

数学・物理 熱力学が楽しい/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • ChatGPTに数値計算コードを書いてもらう
  • Wolfram alpha+ChatGPT
  • 熱力学のリハビリ

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  • 今回のページ
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近況報告

先日からホモロジー代数を止めて熱力学の復習を進めています. ようやくあと少しでギブスの自由エネルギーまで一通りノート作りが終わります. 具体例に対する修行がまだまだ足りないものの, 一般論はだいぶ復習が進みました.

やはり熱力学は楽しいですね. 何度も書いているように力学のようにハードな計算が必要なく, 簡単な偏微分の計算程度の数学的な負荷しかない割に, 神秘扱いされがちなエントロピーへの理解も深まり, 応用上の威力も高い熱力学は得られるメリットに比べて苦労が少ないです. 変な言い方ですが非常にコスパがよいです. はやく基本的な数学のノート作りを終わらせて統計力学, 特にイジング模型の再勉強がしたいです.

そういえば仕事関係の勉強ばかり最近の動向追いかけてきれておらず数日前にはじめて知ったのですが, 2022年のフィールズ賞の受賞者の主要な業績が相転移・臨界現象まわりで, いわゆる$\phi^4$の自明性がようやく完遂されたとか.

長年未解決だった構成的場の量子論の問題である4次元時空のφ⁴ モデルのtrivialityは、2022年のフィールズ賞受賞者のH.Duminil-Copinらによって示されたのですが、先日、日本数学会で東京に滞在中に書泉グランデでその解説記事がある過去の数学セミナーが買うことができよかったです。

当然イジング模型との関係も深いためイジング熱が再燃しています. 楽しみが増えました.

ChatGPTに数値計算コードを書いてもらう

ワイ「二次元の熱伝導方程式をPythonで解きたい」 ChatGPT「Sure!この拡散方程式を解くよ!コードだよ」

ワイ「いいね。計算する時間を4分割して、それぞれの時刻で温度分布を出力するコードに修正できる?例えば2.0秒だったら、0, 0.5, 1.0, 2.0、みたいな感じで」 ChatGPT「Certainly!」

まだ自分できちんと試していないものの, 数学・物理の勉強もますます勉強しやすくなってきています.

書いたことがある人はよくわかるように, 数値計算コードは書くだけでも大変です. 特にバグ取りが地獄です. 計算したあとの可視化も楽ではありません. そもそもプログラミング学習自体が簡単ではありません. 数学なり物理なりがやりたいのに余計なプログラミングを勉強するのも手間です. まさに学生時代の私です.

一応書いておくとプログラミングだけできても, 数値計算の結果の理解となるとやはり数学や物理の知識が必要です. いろいろな都合・理由で適切な結果が得られるとは限らないからです. 結果が物理的に妥当か判断するだけの物理の力量が必要です. そもそも現実的なモデルをきちんと組んできちんとしたシミュレーション結果を出すのはプロの仕事になるほどです.

それでも物理がある程度わかっている人であっても, 実際にシミュレーション結果を見ると割と感動する場合があります. これも前に書いた記憶がありますが, 統計関係の勉強会でスターリングの公式の数値検証をして, 「学部一年から知っている内容だが, 実際に数値検証でグラフを見るとこれまでとは違った感慨がある」という話をしたことがあります. 物理で博士を取っている人とも意見が一致しました.

数学や物理の勉強にも手軽にプログラミングが使えるようになって, それ自体は明らかによい話です.

Wolfram alpha+ChatGPT

数学・物理界隈でも機械学習利用が加速しています. 私は本業こそプログラマーですが, あまりそこにアイデンティティは持っていません. しかし飯の種ではあるため, 職業としてのプログラマーがどうなるかはそれなりに大きな問題です. 心配しすぎてもどうにもなりませんが, 身の振り方が本格的に問題になってくる可能性も視野に入れないといけないのかと言う気はしています.

熱力学のリハビリ

あと少しでギブスの自由エネルギーまで一通り復習が終わります. 近況報告でも書いたようにやはり楽しいですね.

やはり慣れは大きく, 温度を変数にした議論はさくさく読み進められます.

改めて勉強していて, 理論構成の上でヘルムホルツの自由エネルギーはいい具合の落とし所という実感が強まっています. 流体系に限らない一般的な熱力学で物理の理論という前提に立てば, 常に存在を仮定できる変数はエネルギーです. 熱力学固有の量として孤立系(断熱系)特有の量がエントロピーです.

一方, 環境との相互作用を考えるとき, 環境を特徴づける量として温度を導入するなら温度も自然な量です. 流体系を越えた一般的な熱力学を考えるなら仮定できるのはここまでです. 一方ギブスの自由エネルギーはふつう流体系を前提に, 温度・圧力(と物質量)を変数にした完全な熱力学関数です. 特にヘルムホルツの自由エネルギーからルジャンドル変換を取る変数が体積で, 変数として体積を持つ系でないと意味を持たない量です.

例えば強磁性体はふつう体積をパラメーターに持ちません. 特に温度と磁化を変数に設定してヘルムホルツの自由エネルギーで議論するのがふつうでしょう. 完全な断熱系だけを議論の対象にしない限り温度を全く考えない熱力学はありえないため, ヘルムホルツの自由エネルギーは温度に対する直観も導入しながら一般の示量変数に対する理論も展開できる便利な熱力学関数です. 相転移, 特に三重点まわりでの議論がうまくいかなくなるのも, かえって熱力学の難しい事情を浮き彫りにしてくれると思えば教育的とさえいえるでしょう.

日々の自分用メモ

物性物理とトポロジー: 非可換幾何学の視点から

物性物理とトポロジー: 非可換幾何学の視点から

内容詳細: 本書は,物性物理学における物質のトポロジカル相(topological phase)の理論の一部について,特に数学的な立場からまとめたものである.とりわけ,トポロジカル相の分類,バルク・境界対応の数学的証明,の2つを軸として,分野の全体像をなるべく俯瞰することを目指した.

  • 導入
  • 関数解析からの準備
  • フレドホルム作用素の指数理論
  • 作用素環のK理論
  • 複素トポロジカル絶縁体
  • ランダム作用素の非可換幾何学
  • 粗幾何学とトポロジカル相
  • トポロジカル絶縁体と実K理論
  • スペクトル局在子
  • 捩れ同変K理論
  • トポロジカル結晶絶縁体
  • 関連する話題
  • 補遺

「よく漫画で出てくる神社の神様が女の子で〜みたいなやつあるけど、そういうの見るたんびに、こいつ戦時中は出征する若者やおっさん達に沢山祈られて、一生懸命ご利益振りまいたけど誰も還ってこなかったんだろうなとか勝手に思ってる」

よく漫画で出てくる神社の神様が女の子で〜みたいなやつあるけど、そういうの見るたんびに、こいつ戦時中は出征する若者やおっさん達に沢山祈られて、一生懸命ご利益振りまいたけど誰も還ってこなかったんだろうなとか勝手に思ってる

というか100年くらい存在しているあらゆるキャラクターの戦時中の動向を無意識に考えてしまう そういう病気

草臥れた山村の最後の一人だった親戚の遺品整理にやってきた旧軍オタの前に、戦時中に出征したまま骨も帰ってこなかった昔の村人と勘違いしたのじゃロリババアが現れて喜ぶも、途中で時間の経過に気づいて正気に戻ってしょんぼりしながら誰も帰ってこなかった話をし出す。

ニューギニアで壊滅しましたからねぇ・・・と言う言葉に、行先が分かるのかとBBAが食いついてきたので、どうせもう住人も居ないんだから帰ってこなかった連中の骨を探しに行こうと言い出す旧軍オタロリババア神様と旧軍キモオタのドタバタ地獄参りが今始まる!

ここまで妄想したそういう病気なんだよほっといてくれ

お前が神様になってしまってどうするんじゃ!って言わせたいね?それが言いたいだけ

女性差別と男性差別のメタな違い

これが女性差別との違いですよね、メタ性

・男性は社会的に差別されている ・弱い男性はさらに激しく差別されている ・差別に抗議する男性は弱いとみなされ、激しく差別されるため、抗議できない

ここまでは周知徹底したい 具体的な差別(強くあらねばならないとか女を守れとか)に言及しても「そうだね、どっちもなんとかしていかなきゃいけないね」になってしまう、悪くすると差別コストとか言われてしまうから、メタ性に焦点を絞っていかなきゃいけない

ヨスガノソラ

多分俺たち世代は近親相姦で連想するのはヨスガるという単語で 公共放送としてはヤりまくった問題作ではあるんやが あの作品自体は性行為と背徳感を非常にテーマとして重視してるのでこのテーマに関心ある人には勧めたい作品 近親相姦とそれを周囲がどう解釈するかの生生しさもいい描写でしたしね

エロと創作の基本

エロには創作の基本が全部つまってます

  • ・ターゲットが許すならOK、NGならNGという基本
  • ・釣り詐欺や裏切りダメという基本
  • ・辻褄合わせは二の次という基本
  • ・真実は求められてないという基本
  • ・大事なのは棲み分けであり統合ではないという基本
  • ・性癖と妄想をぶちまけるのが創作という基本

R18はエロいか、そうでないかが全てやからな 画力や辻褄よりやっぱりエロいかどうか

  • ・読者はシャイなので感想はレアだという基本
  • ・全体に合わせるより一点特化という基本
  • ・エロい(面白い)ければこまけえことは全て許されるという基本
  • ・何をおいてもキャラとシチュという基本
  • ・エタってもいいという基本
  • ・基本褒めという基本

創作入り口には大変オススメでございます

  • ・テンプレが山程あるが、そのテンプレに沿っててもちゃんと受け入れられるという基本
  • ・なんなら沿ってるほど褒められる基本
  • ・でもニッチはニッチでありがたがられる基本
  • ・予想(エロに至る道筋)は外してもいいが、期待(エロそのもの)は外すながこの上なく理解されてる基本

ちなみに推理を入り口にすると…

  • ・エタは絶対に許されないという思い込み
  • ・矛盾は絶対に許されないという思い込み
  • ・お前のルールよりリアルを優先しろという思い込み
  • ・キャラよりも話の構造という思い込み
  • ・世界設定はガッチガチにしろという思い込み

推理は創作の基本の逆に位置してます

創作の基本は大喜利だったり「こういうのどう?」からスタートするというのが学べますね

これはマジで仰る通りですね(スケベめちゃくちゃ楽しく書いてる人) 付け加えるなら、Twitterでつぶやく程度の文字数のアイデア、性癖語りからいくらでも膨らませられますしね 『Twitterにネタ・あらすじだけ書いて満足して作品にしない』やりがちだけど、スケベはツイートがまんまネタ帳になりやすい twitter.com/kazakura_22/st…

ChatGPTによる教育

やばいやばいやばい!!ちょーーーやばい!!!

AIが生徒に連立方程式を教えてる…ヤバすぎる…

GPT-4がマジでヤバい!!! (ChatGPTの進化系みたいなもん)

とりあえず学校の先生はみんな見て!!!

教育にも革命がががががが…(語彙力

画像見たらわかるけど、その生徒の回答にあわせてAIが教えてる。

これは今まで先生がずっと付き合ってなかったらできなかったやつですよ。それをAIがやってくれてる。

何がヤバいって「いつかそんな時代が来るよね」とか"ミライのハナシ"してたつもりが、多分もうすぐそこw

貼り付けてた画像の引用元はこちらね。Google翻訳で日本語にして出してます。 https://openai.com/research/gpt-4

「個別最適が〜」とか言ってた教育界隈はホントに見た方が良い。もちろん100%正確というわけではないし、それはOpenAIも指摘してる。

それでも、「それなりの正確性を持った学習のアシスタントが生徒一人ひとりに付く」という影響は計り知れないほど大きい。

まだデモ画面での動きやし、実際に教育現場で使うにはUIとかも未熟だとは思うけど、教育関係者なら画像のAIが「かなりのレベルで指導してる」ことがわかるはず。

ちなみに、GDP-4のレベルは司法試験の上位10%程度らしく、領域によっては大体の人類を超えましたね。

模擬司法試験に受験者の上位 10% 程度のスコアで合格します。対照的に、GPT-3.5 のスコアは下位 10% 前後でした。

あと、画像の通り「大学院入試の模試」でほぼ満点取ってますw

AI先生すごい!!

重点解説! TeX Live 2023はココが違う!

64ビット版で何がうれしいのか

32ビット版のバイナリでは「使用可能なメモリ領域は2GBまで」という制約がありますが、64ビット版にはありません。TeXにおいてメモリ領域の制限が問題になることは滅多にないのですが、一つだけ、とても大きな違いがあります。

64ビット版ではLua(La)TeXで巨大なフォントファイルを多く使ってもメモリ不足で落ちることがなくなる。

LuaTeXでのOpenTypeフォントの処理は大量のメモリを消費します。特に日本語のフォントはそれ自体のサイズが大きいので顕著になります。5個くらいの書体を使おうとしたり、あるいは「游明朝」のような“複雑”なフォントだとそれ1つを使おうとしただけで、メモリ不足で異常終了する事態が簡単に発生していました。

TeX Live 2023ではWindowsユーザでも安心してLuaTeXの「強力なフォント処理能力」を使えるようになります。

AI界隈とある予測

2023-03-18

数学・物理 機械学習系アプリの活用/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • GitHub Copilotの導入
  • Rust本格参戦
  • アラビア語
  • 熱力学のリハビリ

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  • 今回のページ
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近況報告

今週はChatGPT4旋風が巻き起こっていたような印象があります. 後で書くように私も重い腰をあげてGitHub Copilotを導入しました. 見た人も多そうですが, Twitterで評判になっていたのでとりあえず結城浩さんのGistを共有しておきます.

フロントエンド学習および機械学習系の動向をゆるく追う勉強会を一緒にやっている人がもともと車系のエンジニアだった人で, いま映像系のフリーランスをやっている人です. 主に映像系の活動をしているTwitterで機械学習系の話をしているとイラスト・映像系の人から「危機感を覚えないのか」と言われる機会が増えたようで, 当人は「仕事の面はあるにせよ, 何を恐れているのかわからない. 楽しく描いたらではないか. それはAIには奪われない.」と言っていました. 「AIは純度嘘発見器」なのかもしれないとも.

飯の種になっているとなると純度だけで割り切れなくなるとはいえ, 何にせよ楽しめるかどうかは大事なのでしょう. どこまで適切な比喩・比較になるのか現時点で予断を許しませんが, むかし写真が出てきたときも絵描きの仕事はどうなるという話が出たようですが, 絵と写真についていまでも絵は絵で楽しい営みとしてあり, 一方で写真は写真やジャーナリズムだけではなくそれ自身アートにもなりつつあり, 今度はアプリによる加工で写真が事実を写してくれなくなりつつあり, といった多重構造が出ていると聞いています.

数学・物理がどうなるかはわかりませんが, プログラミングに関しては競プロなど楽しみでやっている部分もあり, 飯の種にしている部分もありで, どこまで楽観視していられるのかはよくわかりません.

これまたTwitterで「いまはAI生成のプログラムもテスト回りで責任問題と関連して人間が関わらざるを得ない部分ではないかと言われているが, 昔電卓で計算したのを算盤で計算しろと言われたナンセンスだとなったのと同じように, AI生成のプログラム・システムを人間がチェックするのは老害の証拠になるのかもしれない」と言っている人も見ました.

何にせよもはやこれと付き合わざるを得ないのは間違いないので, 世間的な行き着く先はきちんと観測して, 自分自身の身の振り方を考え続けないといけないなとは思っています.

GitHub Copilotの導入

重い腰を上げて今日の朝導入しました. 昨日の夜, Rust系の人が「自分もようやく導入した. 思っていた以上にコーディングがはかどったのでもっと早くから入れておけばよかった」と言っていて, 競プロでRustを本格的にはじめようと思っていたので踏ん切りがついた形です.

まだ実感できるほどプログラムを書けているわけではないので, 二ヶ月のお試し期間で遊び倒せれば, と思っています.

Rust本格参戦

去年から本格化させた競プロ学習で, 参考のためにいくつかの言語のコードを同時に眺めています. 見ているとPythonやRustはデータ構造系のライブラリが強力で, ライブラリへの外出しによって問題ごとの重要なアルゴリズム構成に集中できそうな気がしてきました. ただでさえF#は命令型系の機能・構文がいくつかないためにC++・Pythonのコードの直移植がしにくいところでも頭を使う必要があります. はじめこそ「ヒープなどはよくわかっていないからライブラリに外出しせずにきちんと書きたい」などと思っていましたが, もうさすがにそこまで書きたくありません.

中学の頃, 初等幾何で「『以下同様に』が気にくわない. そのような省略はやっていいのか. そもそも本当に『以下同様にで』処理しきれるのかもよくわからない」と以下同様にと書かずにしばらくやっていました. 何かのタイミングでふと「同じことしかやらないのにいい加減何度も書くのは面倒だ」と思う瞬間があり, 「これが『以下同様に』の心か」と思ったのを思い出しました.

私はHaskellから入ったため, F#自体はじめは無理に完全な関数型的な書き方をしていたものの, 特に競プロでは非純粋性をうまく使った方が読みやすく書きやすい現実にぶちあたって, 程よく命令型系のコードも混ぜ込んで書くようになりました. もともとHaskellの凄まじい部分に踏み込むようなコードを書くわけでも書けるわけでも読めるわけでもないため, RustもF#での経験を活かして, 自分にとって気持ちよく書く方法を探します.

外出しと言えば, 数学や物理では省略箇所は定理や公式の結果だけ頭にロードすればいい一方, プログラミングでは頭でわかってもライブラリなどが使えなければきちんと書くしかありません. そしてきちんと書かないとバグってひどいことになります. 機械学習アプリに書かせる・GitHub Copilotのような補助を使うのも含め, 自分自身のプログラミング学習方針についても考え直す必要があるのでしょう.

アラビア語

これも1月から本格的に再開しました. 以前何回か, 語学学習のコミュニティでペルシャ文字入門の勉強会があって, そこでアラビア文字を雑に勉強して都度完璧に忘れるのをくり返していて, 今回は2ヶ月半, 毎日朝一時間程度の時間を割き続けるられるように習慣化しました. はじめはつらくてよくさぼっていたのですが, キーボードでアラビア語配列が少しずつ頭に入って打ちやすくなってから耐久力がつきはじめ, いまでは気がつくと一時間経つような状態になってきました. 年始の段階は5分で地獄のようにつらかったため, まだ何もわからない状態でも2ヶ月続ければこのくらいの精神的な負荷にはなるのかと実感しています.

Rust学習も以前にやったときは進捗が一気に死んで嫌になったのが二回ほどあります. 今回はアラビア語のおかげと進捗が死んでもRustをやると振り切ったおかげで, Rust学習ものんびりじっくり進められそうです. Rustは最近のフロントエンドで速度を求めるべくツール開発がRust一辺倒になっている印象があり, Rustは書けなくても最低限読めないと今後つらいのではないか感があります. これもRust再学習のモチベーションの一つです.

何にせよ初学の苦しみを忘れないためにも新しいことに挑戦するのは大事だと改めて実感しています. ようやく文字が認識できるようになってきたものの本当にそれだけで, 文字は認識できるが必ずしも全単語がスペース区切りされているわけでもなく, 活用も覚えていなければ単語も何も覚えられていないので何もわからない状態です. 「何が書いてあるのか本当にわからない」は今でもHaskellでよくあります. 競プロの短いコードでもさっと読めないプログラムがいまだに大量にあります. 数学や物理でも初学・非専門の人はこういう気分なのだろうと.

通信講座でも一回のボリュームをだいぶ削りました. 以前は「こんな簡単な問題をこれだけしか出していないのでは満足してもらえないのではないか」と思って, 復習の問題もかなり出していたのですが, 改めて初学またはしばらく触れていなかった社会人だとこれでも血を吐くほどつらかろうと思い直し, 量を減らして確認問題の内容もかなり変えました.

高いお金を払って最初はやる気まんまんでもすぐにつらくなるのは何度となく経験しています. アラビア語も勉強会をやって人を巻き込んでいるからこそぎりぎり勉強時間を確保できています. 仕事でも一人エンジニアで技術面で質問できないのがつらく, 最近はStackoverflowやGitHubのイシューに質問を出すようになりました.

熱力学のリハビリ

一旦田崎さんの本を雑に読んで雑にノート作りをしています. 他のノート作りを止めていて雑にまとめているだけなので, 来週, せめて今月中にはほしいところまで一通り終わらせたい見込です.

力学から手作りで理論を構築する様子を見せてくれる点で田崎さんの熱力学の本はやはり抜群によいです. さすがに教養レベル程度の力学を知らないとどうにもなりませんが, 一定以上の物理をやる上でそれはもうどうしようもありません. 力学に慣れていないと困るからこそ私の通信講座+勉強会企画でも初回に力学を据えたわけで.

力学的・物理的にこうあってほしい要請, 実験事実に基づく要請から「それは確かにそうだろう」という結果が出てきます. しかも一つ一つのステップで力学のようなハードな計算はあまり出てきません. そしてそれを積み上げるとエントロピーのような量とその強く非自明な性質が出てくる点が面白いです. 計算もハードではなく(田崎さんの本なら)議論もクリアなので, 熱力学はとても取り組みやすい分野です. 応用上の重要性もさることながら, 世間的に神秘的な扱いをされるエントロピーにも挑めます. 昔の自分を思い出しても量子力学・相対性理論に並ぶ「素人」垂涎の分野ではないかと思っています.

みんなもっと熱力学をやってほしいです.

日々の自分用メモ

図解

図解制作がなぜ稼げるのか、全力で解説します。


📌『"図解制作者"が圧倒的に少ないから』これに尽きます。

とはいえ、『コンテンツ制作代行』と銘打って活動をする人は多く存在します。 図解制作から始まって、動画編集からサムネイル作成、YouTube台本の制作からアナリティクス分析など、幅広く請け負う最強のジェネラリストです。

図解1本でやるよりも、当然仕事の幅は広がりますし、1件あたりの単価も雲泥の差が生まれるでしょう。

それでも、ありがたいことに僕は"図解だけ"でフリーランスとして多くのお仕事を頂けて、稼げている状態にいます。


📌僕が図解制作者として稼げているのは、文章をメインで発信されている方から依頼を頂戴しているためです。

動画に挟む図解と、文章に挟む図解。 作るものは全く同じでも、求める層(発信ジャンル)が違うため、コンテンツ制作代行を行なっている方とは競合になりません。

競合が居なければ、多くの方から声をかけていただけるのは必然。 言うなれば『"文章をメインとした"コンテンツ制作代行』というポジションを取れたから、忙しく仕事をさせていただけているのだと考えています。

動画全盛期とはいえ、文章で稼いでいる人も計り知れないほど多く存在します。 そういった文章で稼ぐ方へ向けて、『図解』というコンテンツのお手伝いをさせていただいているということです。


📌さらには、図解は多くの発信者が『欲しい』と考えています。

図解が欲しいのは、1万人以上のフォロワーが居るインフルエンサーや、数百万を稼ぐアフィリエイターに限りません。

フォロワーが100人未満でも、PV数がゼロに等しいブロガーでも欲しいんです。

✔︎あなたのツイート全てに図解が付けられたら? ✔︎あなたのブログの見出し全てに図解が付けられたら?

発信者として活動をしているなら、欲しいと思いましたよね。

文章を分かりやすくしてくれて、完全オーダーメイドの画像なんて、SEOの観点でも最良です。 影響力を付けたい発信者から見ても、図解ツイートに手を伸ばしたくなるのは当然ですよね。

ーーー

📌図解作りの上手い人が『1枚500円でツイート図解のお手伝いをします』と声を上げたとしましょう。

✔︎図解が10枚あれば、週に1回投稿して2ヶ月半くらい使える ✔︎図解が20枚あれば、週に1回投稿して4ヶ月くらい使える ✔︎図解が30枚あれば、週に1回投稿して半年間は使える

半年前に投稿された画像を覚えている人は ほとんどいません。 ということは、30枚の図解を、半年に1回を目安に循環させれば、毎週定期的に図解ツイートを発信できるようになる訳です。

1枚500円を30枚で掛け算する。 結果、1万5千円払えば、あなたのアカウントで、週1投稿の図解ツイートが年間を通してできるようになるんです。

そう考えると、1万5千円なら投資してもいいかな…と感じる人は多いはず。


📌話を戻せば、1枚500円なら、発信者から当たり前のように図解が買われるということです。

2枚の納品で4桁のマネタイズ達成。 20枚の納品で5桁のマネタイズ達成です。

500円はぶっちゃけ低単価すぎるので、将来的に見れば単価UPの施策は必須です。 それでも、マネタイズの難易度は、その他の副業と比較しても圧倒的にカンタンです。


📌インフルエンサーの無料プレゼントは図解の宝庫です。

「図解が上手くないからできない」と考えるなら、スライドの無料プレゼントを受け取って、徹底的に模写を繰り返してください。 100枚単位で最高品質のスライドを配布して下さっているのだから、それを参考にしない手はありません。

それに手を伸ばさず、ただ自己満足で「見やすくなったかも!」なんて状態じゃ絶対に上手くなりません。 『買われている図解』の特徴を、自分の中に落とし込んでください。

※当たり前ですが、丸パクリして発信は絶対NGですよ!


📌本気でマネタイズを目指すなら発信スタイルも変えてください。

あなたのフォロワーが『発信者』でなければ、マネタイズまで辿るのは少し難しいです。 美容アカウントの運用者が、美容の情報を知りたいフォロワー対して『図解が欲しい人いませんか?』なんて呼びかけても反応されません。

アイコンも、名前も、ヘッダーも、プロフィール文も、固定ツイートも、全部見直してください。

ついでに、実際に図解が欲しい人=発信活動をされている方と交流ができると、なお良いでしょう。 個人的に、オンラインサロンへ参加して交流を増やすのがおすすめです。


📌まとめ

✔︎図解制作者は圧倒的に人数が少ない →今なら図解制作者として稼ぐ枠が空いている

✔︎1枚500円なら買いたい人が大量に居る →速攻でマネタイズできる可能性を秘めている

✔︎参考の図解が無料で配られまくっている →いくらでも演習できる

結論:稼げる!!!!!!!

ガーシー参院議員「除名処分」 参院懲罰委で決定

ガーシー参院議員「除名処分」 参院懲罰委で決定 あす正式決定 | NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230314/k10014007601000.html “参議院懲罰委員会は、14日、改めて審査を行い、ガーシー議員の弁明について、党の浜田政策調査会長は「不登院という事情をもって除名処分に至ることは違法だ」と述べました”

同志社大 武蔵教授「処分はやむをえない」

参議院事務局の元職員で国会の制度に詳しい同志社大学の武蔵勝宏教授は、ガーシー議員が不当逮捕される可能性などを理由に帰 国しないことについて「国会議員には会期中の不逮捕特権があり、日本の司法手続きを理由に出席できないというのは正当な理由 とは言えない。陳謝の懲罰に対して、出席すると回答しながら欠席したことは参議院の権威をおとしめるもので処分はやむをえな い」と指摘しました。

そのうえで「ガーシー議員が集めた28万票余りは重みがあるが、国会議員は投票してくれた有権者だけでなく全国民の代表で、高 額の歳費が支払われ続けることも理解は得られない。議員が主張するオンラインでの参加には国会改革として道理はあるが、実現 するには法改正が必要で、議員として国会に出席したうえで主張するべきだった」と述べました。

一方で、議員資格を失わせる除名処分については「戦後3例目の非常に重い処分で、裁判で争うこともできず、本会議の決定が最終 決定となる。慎重の上にも慎重な検討が必要で、本人に弁明の機会がなかったのは残念だ。会期末までまだ3か月あり、登院停止処 分を踏まえたうえで会期末に除名にするやり方もあり得たのではないか」と話していました。

麗澤大 川上教授「国会議論が極めて重要 有権者は認識すべき」

政治心理学が専門でネットと政治の関係に詳しい麗澤大学の川上和久教授は、ガーシー議員が当選した背景について「参議院の比 例代表はテレビで全国的な知名度があるタレント候補が当選するケースが多かったが、近年はネットユーザーから支持を集める人 が得票を伸ばす現象が出てきている。芸能人のスキャンダルを取り上げる『暴露系ユーチューバー』として活動し政治の闇を暴く と訴えたガーシー議員が政治不信を抱く有権者のニーズをくみ取った側面はあると思う」と指摘しました。

そのうえで「ネット社会では自分の考えに近い情報だけに接触する『フィルターバブル』という現象が広がり、社会の分断が加速 することが懸念されている。こうした中で言論の場である国会で合意を見いだしていく努力を続けなければ、民主主義は崩壊する 危険もはらんでいる。国会の場で考えが違う人たちと議論することは民主主義社会で極めて重要で欠かせない手続きだということ を今回の除名処分を教訓に有権者は改めて認識すべきだ」と述べました。

AWSサーバーレス環境でのロギング

ラプラス変換の厳密な処理

フーリエ変換に関して厳密に書かれている本はとても多いと思いますが、ラプラス変換に関して厳密に書かれている本はじつは一度もみたことがなく、もしご存じの方がいたら教えてください。

ベクトル値のLaplace transformでよろしければ,以下のArendt et al.の本が厳密かと思います. https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-0348-0087-7

なぜ表現を考えるのか

群Gのベクトル空間への線型な作用を表現という.もちろん一般の空間 X への G 作用は線型でないし,ベクトル空間への作用だってほとんどの場合は線型でない. では,なぜ表現を考えるのか. 一般に,空間 X に対して X 上の関数環 F(X) を考えるとそれは『とても X に近い』.たとえばコンパクト位相空間上のゲルファントの表現定理は,F(X) の極大イデアルとして X が復活できることを主張する. もちろん F(X) はベクトル空間で,X への G 作用は F(X) 上の線型な G 作用,つまり表現を引き起こす.だから表現の性質(例えばプランシュレル型の既約分解)は X の性質を反映している. 惜しむらくは,F(X) の積構造が表現自体には反映されないこと.もっとも掛け算をテンソル積 F(X)⊗F(X) = F(X × X) と関連付けることで X は『ほとんど』再生される. ちょっと惜しいのはそのような『関数環』のような莫迦デカイ空間上のテンソル積の分解理論がよく理解できていないこと. これはやってみる価値があると思うが,かなり難しそう.まずは X が有限集合の場合から始めるのかな. ところが,なんと

隅廣の定理:正規射影多様体への線型代数群の任意の作用は『線型化』できる

という信じられないほど強力な定理がある.ある意味線型代数群の作用は表現からやって来るわけ. びっくりするね. 隅廣の定理 作用の線型化

2023-03-11

数学・物理 スペクトル分解のハマりポイント/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 記事紹介: 「ChatGPT」に浮かれる人が知らない恐ろしい未来
  • 競プロの進捗
  • スペクトル分解でのハマりポイント
  • 熱力学のリハビリ

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  • 今回のページ
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近況報告

ゆるくChatGPTとの付き合い方を考えています. とりあえずは簡単な提案をしてくれる高機能な検索くらいの気分で付き合おうと思っていて, 冷蔵庫の余りものから献立を提案させるツイートなどを見かけました.

先程このようなツイートを見かけてちょっとやりとりしました.

流体の教科書で式変形が死ぬほど間違ってる本とか見ると、やはり人類の注意力に依存するのは悪い文明!粉砕する!!となるわけですが(´・ω・`)

一回性が強い計算をチェックしてくれるのは機械学習系では無理そうで, とりわけ「詳細は読者に任せる」とされがちな細々とした計算の話をどう処理するのかはかなり気にはなります. 数式処理と機械学習の組み合わせみたいな話も, 私が非専門だから知らない・見えていないだけで何かしらあるのだとは思いますが.

記事紹介: 「ChatGPT」に浮かれる人が知らない恐ろしい未来

最近いろいろと評判の悪い新井紀子さんへのインタビューです. この記事に関しても批判的なコメントがいくつかありますが, とりあえず次のコメントは私もかなり気になっています.

そのとき、われわれは過去30年間享受してきた「ウェブ」という資源を失うことになるかもしれませんね。

メルマガなりウェブサイト運営なりで少しでも数学・物理関係の面白い情報が届けられれば, と思っていろいろやってきたわけですが, これまでとは違う工夫が必要になってくるのかもしれません. コミュニティベースの口コミ的な要素がますます重要になってくる気もします.

競プロの進捗

評判がよいので買ってみた鉄則本で, A問題・B問題が70問程度あり, C問題が20問程度ある中でいったんA・Bが終わってCが残り10問程度になりました. はじめのうちはがんばって考えつつやっていたものの, 後半は息切れしてまずは他の言語のサンプルをもとにF#版を作るだけで手一杯になったため, もう何周かしないといけないものの一周目はもう少しで終わります.

いまさらながら数学・物理学習とプログラミング学習の違いをもっと意識して取り組むべきだったと思うようになったため, 自分用の備忘録がてらいまの所感を共有します.

基本的なアルゴリズムやデータ構造はそれ自体をきちんと読み書きするのは実際によい勉強になります. よくも悪くもF#(.NET)はデータ構造関係があまり充実しておらず, そこを埋めるのはよい勉強になったものの, 競プロの問題を解く中で基本的なコードを何度も書かないといけないのが非常に面倒で嫌になっています. 何だかんだ一番読み書きできるのがPythonなためPythonコードも参考にしていたものの, ライブラリ利用で簡潔に終わらせている場合がよくあります. アルゴリズムを組む上では重要とはいえ, 競プロとして本質的な頭の使い方をするにはF#は向いていないと痛感しています. もう一つ, パラパラとコードを見ているとRustも標準ライブラリ(またはAtCoderで使えるライブラリ)が割と充実していて, 特にAtCoder上での本格的な言語はRustに移行しようかとも思っています. Rust自体, 最近はWebのフロントエンドの処理系やツール開発で標準の言語になりつつあるようで, 多少なりともRustに慣れておくとよいような気もしています.

鉄則本の一周分はF#をメインにするものの以降どうするか検討中です. F#自体はその程良いREPLも含めて非常にお気に入りなので.

スペクトル分解でのハマりポイント

通信講座・勉強会で簡単な二次対称行列の平方根と対数を計算する問題を出題しました. そこで検算も入れていたものの検算の計算を間違えていたのですが, この間違いがハマりポイントでした. ウェブ上で式を書くのが大変で, 何度も書きたくないのもあって詳しくはここでは書きません. 興味がある人は次回の通信講座・勉強会に参加してください. メンテナンスまで含めていつどこでどう公開するか悩んだままのPython/SymPyによる検算用コードなども共有しています.

それはそれとして, やはり具体例をきちんと計算して確認する意義を改めて痛感しました. わかっていると思っていた議論にこんな落とし穴があるとは思ってもいませんでした. 二次の対称行列とその計算を馬鹿にしたものではないと実感しています.

熱力学に関わる凸性の議論でも三次のヘッシアンの半負定値性を示す苦労も実感したところなので, 行列の計算は本当に大変です.

熱力学のリハビリ

思っていた以上に細かい議論を追いきれないため, いったんふつうに教科書の一般論を読んで復習するモードに切り替えました. 特に学生時代に一所懸命読んでいた田崎さんの本を読み直しています. やはり慣れた流れなので読みやすいです. 大きく言えばおそらく新井先生の『熱力学の数理』も同じ流れと思います. 特に新井先生の本は前書きで「エントロピーや絶対温度は導出するべきものとはみなさない」というコメントがあります. もちろんLieb-Yngvasonの論文をうけた話です.

エントロピーの導出はともかく, 絶対温度の導出にはさほど興味がないのですが, いまは力学と同じく孤立系から議論をはじめて相互作用系に進むという流れで定式化したい意図があります. 田崎さんの本のように絶対温度をはじめから仮定すると当然外界との相互作用がはじめから前提になるため, ここを整理し直すのが当面の目的です. もちろん「孤立系」とは言ってもいわゆる「外界」がないだけで, 適当な意味で系の相互作用を考えなければいけないのが熱力学ではあります.

次の次の通信講座開催には計算問題整備が間に合えばいいなとは思っています. 今度は線型代数ではなく, 多変数の微分に関わる計算練習と熱力学というテーマで通信講座を組もうと思っています.

日々の自分用メモ

ChatGPTメモ: 春におすすめのダイエット用冷スープレシピを提案してください

春におすすめのダイエット用冷スープレシピとして、「トマト冷製スープ」を提案します。

  • 【材料】
  • トマト … 6個
  • キュウリ … 1本
  • 赤パプリカ … 1/2個
  • レモン汁 … 大さじ2
  • オリーブオイル … 大さじ1
  • 塩 … 適量
  • 黒胡椒 … 適量
  • 【作り方】
  • トマトは皮をむき、ヘタを取ってざく切りにする。
  • キュウリは皮をむき、種を取ってざく切りにする。
  • 赤パプリカは種とヘタを取り除き、ざく切りにする。
  • フードプロセッサーに1〜3の材料を入れ、なめらかになるまで混ぜる。
  • 混ぜたスープにレモン汁、オリーブオイル、塩、黒胡椒を加えてよく混ぜる。
  • 冷蔵庫で冷やしてから、器に盛り付ける。

トマトにはダイエットに必要な栄養素が含まれており、また、トマトの酸味やレモン汁の酸味が食欲を抑えてくれる効果があります。キュウリや赤パプリカも低カロリーで、食物繊維やビタミンCを豊富に含んでいるため、ダイエットにも役立ちます。オリーブオイルはヘルシーな油で、味のアクセントにもなります。是非お試しください。

ジャガイモやカボチャを使った冷スープレシピも提案してください。

ジャガイモやカボチャを使った冷スープレシピとして、「かぼちゃとジャガイモの冷製スープ」を提案します。

  • 【材料】
    • カボチャ … 300g
    • ジャガイモ … 150g
    • 玉ねぎ … 1/2個
    • 牛乳 … 150ml
    • コンソメキューブ … 1個
    • 水 … 400ml
    • 塩 … 適量
    • 黒胡椒 … 適量
    • クレソン … 適量
  • 【作り方】
    • カボチャは種と皮を取り除き、小さめの角切りにする。
    • ジャガイモは皮をむき、小さめの角切りにする。
    • 玉ねぎはみじん切りにする。
    • 鍋に1と2と玉ねぎ、コンソメキューブ、水を入れて火にかける。
    • 煮立ったら中火にし、野菜が柔らかくなるまで15分ほど煮る。
    • 火から下ろして、粗熱が取れたら牛乳を加え、フードプロセッサーでなめらかになるまで混ぜる。
    • 塩、黒胡椒で味を調え、冷蔵庫で冷やしてから、器に盛り付ける。
    • クレソンを飾って完成。

カボチャとジャガイモはどちらも食物繊維やビタミン類が豊富で、低カロリーなのでダイエットにもぴったりです。また、牛乳を加えることでまろやかな味わいになり、食欲を満たしてくれます。クレソンは栄養価が高く、彩りも良いので、ぜひトッピングに加えてみてください。

公理的凸集合論

  • URL
  • Van de Vel, Theory of Convex Structures

全さんの社会物理学

複雑系物理学の細菌の発展の一つが「社会物理学」です。私自身の最近やってる仕事はこのあたり見てください。 https://twitter.com/Quantum_Zen/status/1613110136415088643 こおゆう話、寺田寅彦に聞かせたらきっと喜ぶ事間違いなし

複雑系物理学的、数理科学的手法を使っての社会現象の研究の、数式使わない解説が拙著の次の章に見つかりますので、本持ってる人は参考にしてください 「銀河の片隅で科学夜話」第13夜 「渡り鳥たちが語る科学夜話」第13夜、第15夜

そいえばプロ向けの本が最近出て、これはストロガッツ読み終えたレベルで読んだら、社会物理学の研究最前線に即達するすごいやつです。社会物理学の創始者の一人、小田垣孝先生たちの本 https://amazon.co.jp/dp/4320036190 「社会物理学-モデルでひもとく社会の構造とダイナミクス」

TeX 参考文献リストに本文引用ページ番号をつける

\usepackage[pagebackref=true]{hyperref} とすると参考文献リストの末尾に本文引用ページ番号がついて非常に助かっているのだが,単に数字が出るだけなので,本文のページ番号なのかどうか,パッと見わからんなぁと悩みだしたが,再定義方法があった.

リベアルアーツ大学の死

米国で「リベラルアーツ大学の死」が始まった英文学も歴史学も資本主義に抗えず

2月にバージニア州のメリーマウント大学が、英文学や歴史学、哲学、社会学などの専攻をなくすことを決めた。全部で10の専攻が削減されたが、そのほとんどがリベラルアーツだ。

これらの学問は人気がなく、専攻する学生が少ないからだという。講義科目としては残るが、専攻したりその学位を取得したりすることはもうできなくなる。 米国では2016年以降、87校ものリベラルアーツカレッジが閉鎖、あるいは近くの大きな大学に合併された。

宗教二世問題から考えるべきこととは

トランス差別, 性別で区分されたスペース編

ここ最近のトランス差別の盛り上がりについてみんなたちに伝わる言い方でののべから発信しようと思って考えてたんだけど、疲れてRTばかりしているトイレ風呂は100万回擦られてる話で、ここにわかりやすい解答があるから見てみてね 「素朴な感覚・疑問」って、「あんまり考えてなくて何も知らなくてまったく調べてない」ってことだから、あんまり開陳しない方が良いと思う……ののべは……

みんなね……リンク踏まないよねたぶん……簡易に書くからね……

トイレはどれ使うの? →自分の状態やその場の状況に合わせて適した方を使うみたいだよ

公衆浴場ではどうしてるの? →性器の形に従うみたいだよ

100万回擦られてる風呂トイレの話を「今」盛り上げてるのって、「差別を禁止したら、マイノリティを自称することで何をしても無罪になる」みたいなあり得ないことを主張してる人たちで、ここ最近のTwitterを眺めてて「確かにトイレに男の人入ってきたら怖いよねー」と何となく思ったみんなたちは、 その先に「だからセクシャルマイノリティの差別を禁止するのはやめよう」を用意している人たちがいることを覚えていてほしいみんなたちはたぶん「そんなつもりない」んだろうと思うので

冷蔵庫の残り物からChatGPTにレシピを提案してもらう

主婦の皆へ、これがchatGPTのとても便利な使い方です。夕飯に悩んだら冷蔵庫の材料を伝えて見ましょう。うちの冷蔵庫の中身が少なかったのと、和洋折衷それぞれレシピについて提案してほしいと伝えたらもっと解像度高いかもしれません。

2023-03-04

数学・物理 思った以上に熱力学がつらい/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告: 最近のAIを試しはじめてみた
  • 熱力学のリハビリ

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近況報告

ここ最近アラビア語学習に関連してChatGPTを使いはじめました.

比較的最近はじめた知人とゆるくやっているWeb系のオンライン勉強会があり, その知人はイラスト・映像系の仕事もしているため, Midjourneyなど最近のAI関係の話もゆるく共有していました. 数学・物理に関わる教材でイラストや動画を作るのにも転用できないかとずっと興味はあったものの, なかなか具体的な遊び方が見つからず悶々としていたのですが, ふとこれまた別途やっている(教えてもらっている)アラビア語勉強会で, アラビア語学習に使えないかと思い立ち, ちょこちょこ使っています. 簡単にその状況を紹介します.

はじめは翻訳ついでに母音つきアラビア文字を書くのに便利だと思ったものの, 実際には間違いが多いのでこの方向は捨てました. 他の人はともかく私はEmacsで母音まで自力で打てるため, 余計な確認・調整が不要な点で自分でやった方がよほど早く正確にできる結論にいたりました.

他に便利な点があります. 特に勉強会で教えてもらったあとに「これはどう取ればよかったか」とわからなくなったとき, 簡単な文の文法的解説をしてもらうときに役に立ちました. オンライン勉強会なので録画すればよかったものの忘れていたのでその補助です.

文字からして勉強が必要なロシア語・アラビア語・ヒンディー語, そして格変化が激しい言語を勉強するとよくわかるのですが, 単語の認識と文法的な役割の把握がとにかく大変です. そして単語はよくても熟語の把握が大変です. 単語さえ覚束ない状況で, どんな熟語があってどの組み合わせで熟語になるか判定するのも大変です. 一度勉強会で聞いたあと, 大雑把であっても本に解説がある文を復習する目的にはかなり役立ちます.

微妙に使いにくい(不正確)なことはあるものの, 大雑把に発音を調べたり, 動詞や格変化の活用を調べるのにも多少は役に立ちます. ちなみに「たまに(少し)間違えている」という勉強への利用が難しい状況もあるため, あまりお勧めはできない用法です.

他にはためしに一つ数学の証明を聞いてみたらまるで駄目でした. 全く期待していなかったので単に共有です. 全然関係ないですが, 割と前から初等幾何の定理の発見と自動証明というテーマがあります. グレブナー基底の有名な本にも書かれているので興味がある人は読んでみるといいでしょう.

最近新版の和訳が出たはずです.

あと最後に言葉遊びとして数学川柳も作らせたりしてみました.

他にも勉強会で共有した内容として, ブレストに付き合ってもらうとか, 一日の最後にAIに褒めてもらっていい気分で一日を終えるといった応用をしている人もいるようです. 何かを教えてもらったり検索するばかりが応用ではありません. 少なくとも簡単なプログラムについては自分で考えるよりChatGPTに聞いた方が早い場合もあれば, 最近の知見を踏まえてプログラムを提案してくる場合もあってよい再学習にも使えるという話もあります. 私も自分なりの付き合い方を考えるために今後もちょくちょく遊んでみる予定です. 一番はコンテンツの挿絵・動画作りに応用できるといいのですが.

熱力学のリハビリ

タイトルの話です. 思った以上につらいです. いくつか本を漁りつつ具体例を引っ張って計算しているのですが, 具体的な関数に対する多変数としての凸性の証明で一週間以上悶絶していました. 微分可能な関数はヘッシアンの半正定値性や半負定値性を示せばいいものの, 計算ミスしたりどう示せばいいかすぐにわからなかったりと大苦戦しました. 多変数の凸関数に対してここまで理解が浅かったかと反省しています. 学生時代は一般的な状況下でのいわゆる微分形式的な微分の計算などで苦戦していた記憶があり, 学生のときに読んだ田崎さんの教科書も一般論中心に読んでいたため, 熱力学に対する具体的な例の計算がここまで弱いかと自分で驚きました.

凸関数に対する肌感覚もなく, 具体的な命題の定式化や反例構成にも苦労しました. 証明を読めばわかるものの慣れていないと簡単な命題さえ自力で証明するのは一苦労です. ついでにヘッシアンの議論などを現代数学探険隊にきちんと収録していなかったのにも気付いたため, いい機会と思ってそこからノートをまとめています. 改めて物理にも触れながら多変数の微分と極値問題の計算練習ができる教材として, 熱力学はなかなかよさそうという気分も出てきています.

ちなみに多様体上でのヘッシアンは座標系への非依存性を課す必要があるため, 臨界点でしか定義されません. ユークリッド空間上での議論ではそうした点への言及なく定義されます. 多様体上での議論に持ち上げるときには注意するべき要素でもあり, ヘッシアンの定義と議論だけでも実はそれなりの背景があります.

ところで清水本の第一版を読んでいて, 定理4.9などでエネルギー$U[S,X_1,\cdots,X_n]$が$X_i$達に対しても下に凸などの議論がありますが, あれは正しいですか? 具体的な$(U,V,N)$変数なら他の本などとも合わせてそうなるのはいいとして, 清水本の一般的な設定から一般の示量変数に対して4.6節の内容がどこまで成り立つのかさっぱりわかりません. $U$が$S(U,X)$の$U$に対する逆関数であるだけでは変分原理も自明ではないのでは? 凸関数に対する肌感覚がないため, 自力で証明がつけるのが困難で苦しんでいます.

日々の自分用メモ

An Algebra of Observables for de Sitter Space

Wittenらによる論文。de Sitter空間上でのオブザーバブルのなすフォンノイマン環が、通常場の量子論の文脈で現れるIII型と違い、重力の影響でII型になるらしい。そのうち読みたい。 An Algebra of Observables for de Sitter Space

ChatGPTと認知症

chatGPTって凄いのよ。と母に説明したら、「私の友達の認知症の人に似ている」というびっくりする感想が帰ってきた。母曰く、その人はなくした記憶を補完するために勝手にエピソードを記憶して、辻褄を合わせるのだという。 母は健康のためにプールに通っているのですが、その友達は先生の指示をよく忘れて間違える。例えば腕を〇〇回回してください。みたいな指示でも間違えるのだけれど、聞いてみると、忘れてしまったという自覚は一切なく「先生が途中で指示を変えた」などの存在しない記憶を言うのだという。 そう考えると、これも脳の働きなんだろうかという気になってきました。例えば私達の視覚は盲点とか、結構抜けがあるんですが、脳の方で処理して辻褄を合わせるために普段はおかしいと気がつけない。で、もしかしたらですが、視覚がそうであるなら、記憶や認知も似たようなもので、 抜けがあった場合、そこを無理やり補完して何事もなかったかのように処理を続ける機能がついているのではないかと。認知症になって、記憶自体がボロボロ抜け落ちるようになっても、そのつじつま合わせの機能は動き続けているので、勝手に記憶を捏造する。ということが起こると。 chatGPTにお題を2つ入れると、その点と点を時にはアクロバティックにつないでくれるんですが、この動きってもかして、人間も同じようなことをやっていて、だからこそ、人間っぽく見えるのかもしれません。 人間は記憶を思い出す時、細部を勝手に捏造する(ので思い出すたびに微妙に変わっていく)という話を聞いたことが有るので、もともとそんなものであるのかもしれません。

2023-02-25

数学・物理 数学で外語大に行きたい/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 量子力学のための線型代数
  • 熱力学のリハビリ
  • ファイバー束の話
  • AIと安全保障

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  • 今回のページ
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近況報告

Twitterで次の記事を見かけました.

何が1.1倍になったのかまだ調べていないのですが, もしや数学利用なら外語大にも比較的簡単に入れるようになっているのか, と思い, 大学に行きたい熱が出ています. 特にここ数年は「理系のための総合語学」を謳いはじめた以上, 言語学をもっときっちりやりたいと思っているため, 渡りに船という感じがあります.

もちろん生活を考えながら勉強に集中できる環境を作る必要があり, 勉強以上にこれが問題です. お金もきちんと稼ぎながら言語学まで含めた学習環境を構築し, さらにそれを提供したいですね.

先日書いた中高生向けの(競技)プログラミング学習も乗り気な子がいるらしく, 具体的に話がしたいという話もあります. 英語でエラーメッセージを読む部分でも何かしら語学教育に関係する話が必要で, この辺の具体的なノウハウも必要になってきそうです.

量子力学のための線型代数

先日募集した通信講座+勉強会が本格的にはじまりました. 記号や用語に関して指摘が入って確かにそれはそうかという指摘があったため, 念のためこちらでも共有します.

特に作用素(演算子)の共役と随伴です. 行列のエルミート共役は英語でHermitian conjugateと書く場合もあれば, Hermitian adjointと書く場合もあります. 前者は日本語で共役と訳す一方で後者はふつう随伴と訳します. さらに英語でself-adjointと呼ばれる概念は作用素論では自己共役だと訳す一方, 直訳は自己随伴です. これに関してself-conjugateは見た記憶がありません. このように英語と対応する日本語がぐちゃぐちゃになっています. 慣れてしまっていてもう何とも思わなくなっていたところに質問が来て, 確かに, と思っていろいろと補足しました.

あと複素共役の記号, 作用素の共役(随伴)の記号, 内積の定義も数学・物理で食い違いがあります. 私は育った文化圏・読んだ本の関係で数学・物理の記号がこれらのチャンポンになっていて, 余計に注意しないといけないのを久し振りに思い出しました.

熱力学のリハビリ

理論もいいですがやはりここ二年程度の計算練習へのフォーカスもあるため, まずはいろいろな本を参照しつつ計算ノートを作っています.

変分原理を具体的に計算するところで具体的な多変数関数の極値問題を議論する必要があります. これがとにかく面倒です. 多変数だと図に描くのが大変なのもさることながら, 単純な導関数の計算も大変で, 導関数を計算したあとに広義の増減表を書く必要もあります. もちろんグラディエントやヘッシアンの計算・評価です. これがまた大変で辟易しています. いったんプログラムを書いて図示して濁していたのですが, 先程風呂に入りながら考えていたら楽に計算できそうな方法を思いついたため, メルマガを出したあとに計算する予定です.

あと改めてエントロピーに対する制約も眺めていて, 熱力学は本当に強烈だという思いを新たにしています. 一次同次関数の制約があるため, エントロピーに恐ろしく強い制約がかかっています. 計算しやすい問題を自作しようと思ったものの, この制約をみたす範囲で作らねばならず, まずはふつうの本に書いてある典型的な例で肌感覚を育て直そうとしているところです.

ファイバー束の話

この間ファイバー束の話をしてほしいというアンケート回答をもらったので, 私の認識まとめ・復習ついでに簡単な勉強の指針のようなものを書きます.

ファイバー束はある図形の各点に別の図形が連続にぺたっと張られた図形がもともとの動機です. 例えば三次元空間のxy-平面に円周を置いて, 円周の各点からz軸に平行に直線を生やすと無限に伸びた円柱が得られます. これは特に各点から直線(線型空間)が生えているためベクトル束の例です. 直線の代わりに円周の各点を中心にした小さな円板を生やすと中身の詰まったドーナツが得られます. 円板を円周にすればトーラスが得られます. これはファイバー束の例です. 当たり前すぎるからか幾何の本に書いてあるのを見かけた記憶がないのですが, まずはこれをアーキタイプと思うとよいでしょう.

問題は数学の本の一般論とのバトルです. 単純に勉強が足りていない(実際に勉強中)ため, 私自身ファイバー束の一般論は本当にわけがわかっていません. 玉木大さんの「ファイバー束とホモトピー」の講義録版PDFを眺めたとき, ファイバー束の具体的構成が書いてあって, 比較的簡単な例でも構成をきちんと書くと非常に面倒なことがきちんと書いてありました. 一般論も大変なら具体例の構成とそれをきちんと書くのも大変な対象です. 何にせよ数学を勉強するなら絶対に一定以上の気合は必要なので仕方ありません.

もう少し楽な上, いろいろな応用もある主束から攻めるのがよいのではないかと思っています. 主束は同伴するベクトル束もあり, ベクトル束の気分をある程度持ち込めるのが便利です. ベクトル束と言えばもとの多様体の情報を直接持っている接束・余接束があり, 計算し倒せる具体例としてもこれ以上なく便利です. もっと言えば主束もまた楽ではないため, さらにベクトル束から攻めるのがよいと思っています. 実際私が地道に進めているアプローチです. 特にリーマン幾何は接束・余接束の解析と直接関係し, ホッジ理論のような基礎理論とも関係するためちょうどよい目標です. 解析的に(コンパクト)多様体上のソボレフ空間のレベルまできちんと詰めようと思うと大変なので, 進め方と解析学の素養次第で多少調整は必要でしょう. 何にせよ面白い対象ではあります.

ただで幾何部分だけで添字や記号の嵐で大変なところに解析学まで含めると負担は計り知れません. 適当に調整して進めてください. 多様体上の線型代数としてホッジ理論に挑むだけでも本当に骨が折れます. ベクトル束の議論も多様体上の線型代数の側面があるため, やはり線型代数は一定以上の素養が必要です. 単なる計算だけではなく抽象論が必要な点には注意が必要です. いま展開している量子力学のための線型代数では, まさにクロネッカー積による具体的なテンソル計算に入ったところです. これだけでどうにかなるわけではありませんが, 量子系の物理・数理に興味があるなら一つの道としてお勧めできるアプローチです.

AIと安全保障

松尾豊先生が政府のAI討論会で発表した資料を読んでいて動悸が止まらない。 賽は投げられた。

個人的には安全保障上Aを直ぐに、しかも先ずは100億ででも。計算資源は今直ぐ産総研ABCIを実質割当て、かつ拡張も同時に。理研でも富岳を用いつつ密結合したLLM学習マシンを横に構築しABCIとダークファイバで3.2Tbpsで直結しデータやモデルを共有。AIP, AIRC, NICT, 大学や民間の言語AIコミュ総動員

なるほど。「言語の本質を解明する道が拓ける」とか「宿題が解けるw」とかそういう次元とは全く違うところで重大なことがおきている。

上で外語大に入りたいという話を書きました. この辺, いわゆる文理融合系の話で今後本当に大事になってきそうです. 最早私はこの辺の実務に携われるような人間ではありませんが, この領域を目指す人間の数学的基礎体力向上には役立てる人間にはなりたいと思っていて, 何とかして外語大に入って関連する領域を(再)学習する機運が私の中で高まっています.

日々の自分用メモ

営業力を鍛えよう

東京一工の賢い学生がマッキンゼーだの投資銀行だのに集まる根源的理由は『そこで働くことが自分が賢いという証明になる』、『営業なんてブルーカラーでなく戦略や投資のがホワイトカラー』的価値観だと思うんですが

結局そこに行っても案件取ってくる『営業力』がないと行き詰まるから営業力こそ命

まだマッキンゼーがどこの馬の骨ともつかない頃、大前研一御大なんてリクルート営業方式にビルの上から下まで片っ端からどぶ板営業かけて、頼まれてもないのに勝手に分析レポート作ってプレゼンして案件取ってきてたんだからな? MIT卒の博士がそこまでやってんだぞ? 見習おうぜ?

特異値分解

ああ「特異値分解」は,行列の対角化と比較するよりも,いわゆる「階数標準形」と比較する方が理解しやすいですね.そう思えばまったく自然な考え方.実 (m,n) 行列に対して GL(m,R)×GL(n,R) 軌道を考えるのと O(m)×O(m) 軌道を考えるのとの違いです.複素ならば U(m)×U(n) です. そう考えると,GL(n,R) の極分解,すなわち O(n) 軌道の記述から「特異値分解」が<存在する>ことがしたがいます.つまり,代表元のパラメーターとして r=rank(A) 個の正の実数からなる列がとれます. GL だとベクトルの長さを自由に変えてしまうので階数の情報しか残らないけど「応用」の場面ではノルムは大切な場合が多いので直交群(ユニタリー群)の作用を考える.そうすると「特異値」が意味のある量として残る.そういうことか. すると p 進数体上の「特異値分解」とその応用もあるかな.

p進数体だと開コンパクト群が格子の自己同型群つまり成分がp進整数の行列群で、極分解に対応するのはPID上の格子の標準型ですよね。

階数の計算においても,変換行列を覚えておくと,例えば逆行列が計算できるけど,忘れてしまう場合も結構ある.特異値分解では変換行列(左右の特異値ベクトル)はとても大切な情報で,その先の計算に使う.A =UΣV と書くのと UAV=Σ と書くのでは,ちょっとニュアンスが違うわけ.

例えば『東京大学工学教程線形代数I, II』(室田一雄、杉原正顯著)にも,ちゃんと読めばそう書いてあるんだけど「AA を考える」から始まると,計算に目がうばわれて意味をとらえるのに時間かかった💦 「正方行列の対角化を長方形の行列に一般化するのが特異値分解である」という導入(Anthony Bosman さんなど)はなんか変だな〜と思った. だって階数標準形も「対角化」だからね!! ノルムを保つ基底変換のもとでの線型写像の標準形といえばいいだけ. エルミート行列 A を UAU(Uはユニタリー行列)と変換する話を特異値分解の特殊な場合だと説明するのは間違い(誰もそうは言ってないかもしれないけど)で,特異値分解のように U*AV とするのとは別な話と思うのが自然. 特異値分解はさまざまな行列分解の一般最終形ですというのは confusing だ.

なるほど。確かに階数標準形(対角に1を並べて残りは0)は、V→Wで両側空間の基底を独立に選んで、Eに近い形に同値変形(ランク不変変形)するA=PE'Q⁻¹(P, Q は基本変形行列)。この基底を直交に限って対角化すると表現行列が特異値で対角化されるA=UΣV⁻¹(U, Vは直交行列)、ということか。

加法的関数の連続性について

定数倍を与える関数 $x \mapsto ax$はこのようなものとなっているが, (∗) f (x + y) = f (x) + f (y) を満たす関数で定数倍関数でないものは存在するのだろうか?

一見非常に単純に見える問題であるが,実は,この問題の答は選択公理を認めるかどうかで違ってくる: 選択公理の下ではコーシーの方程式を満たす関数で定数倍関数と異なるものが無数に存在するが,選択公理を認めないときには,「コーシーの方程式を満たすすべての関数は定数倍関数である」という命題が正しいものでありうる.

シャファレビッチの代数幾何の本

シャファレビッチ,代数幾何の2冊本もとってもオススメ.これでもか,これでもかっていうくらい驚くべき例が書いてあります.(私が無知なだけですが.) 入門書だけど,こっちも哲学的で好き.↓ 代数学とは何か

マンフォードの本

この本,Algebraic Geometry I で,II が出てないよなぁと思ってたけど,今回 Mumford の website で II がフリーアクセスで公開されているという驚愕の(?)事実を知った. なんと共著者は小田忠雄さんだぁ.読むべし.(^^;; Mumford ComplexProjectiveVarieties PDF

Texromancers, Quillen's "Homotopical Algebra"

Boosting: Quillen's "Homotopical Algebra" has been LateX'd up by the Texromancers group!

Link: http://aareyanmanzoor.github.io/assets/books/homotopical-algebra.pdf

Dyslexic friendly version: http://aareyanmanzoor.github.io/assets/books/homotopical-algebra-dyslexic.pdf

性を売るのは合法にして、性を買うのは犯罪にしろ?:北欧モデルvs非犯罪モデル

この「売るのは合法だけど、買うのは犯罪」という北欧モデルは、直感的には売る側有利に見えるけれど、実態としては圧倒的な買う側有利をもたらすわ。この法案を2009年に採用したノルウェーも、今では「北欧モデルが売春を買い手市場にした」と認めているくらい。

アルゴリズム全体主義

世界思想の最新版の、成田悠介論説の結論。こいつ、ホントどうしようもないなあ。今さらアルゴリズム全体主義ですか。

このツイートの存在にずっと気付いてなくて、昨晩読んでしまって笑い転げた。 やっぱり「知的レベルが低い」としか言いようがない。 今時の中学生はこの手のことを言うと馬鹿にされることをネットで見てよく知っているので、現代的には中学生にも馬鹿にされるレベルだと思います。 統計学ファンであれば、ゲルマンさんのブログで成田祐輔さんに関するNew York Timesでの記事が話題にされていることをすでに知っているはず。 ゲルマンさんのブログで悪い意味で取り上げられることは統計学方面では相当に怖いことだと思われます。 Yale prof thinks that murdering oldsters is a "complex, nuanced issue"

p値は使うべきではない

そもそも p 値は難しすぎるので使うべきでない(過激派) 「コインを 12 回投げたら 3 回表が出た。このコインが偏ってないといえるか」に対する答えが事前にどういうルールでコインを投げることにしたかに依存しちゃうし,事前にどういうルールにしたかなんて本人の申告以外に信用する手段がないんだから原理的に厳しい.(→実験の事前申告性へ) それを乗り越えたとしても,有意だったらなんなのかがよくわかんない.本来欲しいのは p(仮説が正しい | 観測) のはずなのに p(観測 | 仮説が正しい) を測ってるから,例えば p(仮説が正しい) がめっちゃ低くても高い値が出ちゃう.

位相的場の量子論のノート

Ko Honda 教授@UCLA このノートすごいよ.リー群とリー環を2ページで済ませたあとsl2とsl3に.ここまでは普通. KacMoody, Virasoro, 経路積分,WZWモデル,KZ方程式,ブレイド群と結び目,リンクとジョーンズ多項式,Witten不変量,写像類群にChern-Simons理論と続く. https://math.ucla.edu/~honda/math635/notes.pdf これ半期の授業でやるんだ.演習つき. UCLA なかなかきてるな. Ko さんの講演もすごく良かったね.

生物多様性

あんまこれも見せたかないんだけど。

私みたいな生物系の資料とか探している方は バイオダイバーシティ遺産図書館ではさ。

生物系の数十万枚以上の資料あって それが現代ではなく18世紀~19世紀の 航海記録や動物誌、植物誌のまとめ。

で「全部著作権フリー」 自由に使ってええのよ

無駄は一度しか削れない

前々から思っていた「無駄は一度しか削れない」という概念を図にしました。

北大の統計力学シラバス

準備学習(予習・復習)等の内容と分量

そんなことをとやかく指示されては不愉快であろうから任せる. 大学は自由である. 範囲外も立入禁止区域も無い. 本能と闘争心の赴くままに, 演習書と戯れ専門書に手を伸ばしたら好い. ただ物理の読書は, 文字通り『読む』のではなく, 『考え』て『手を動かす』ことであると, 貴重な10代, 20代に叩き込んで欲しい. それから, 志を同じくする身の回りの物理っ子と沢山議論をしよう. そうした中でなお, 自身の理解では不安だったり, 計算に悩んで座礁したり, その時この講義がオアシスや助け舟の役割を果たせたら良いと, 心から思う.

ティコ-ブラーエ

デンマークの天文学者ティコ・ブラーエはヘラジカを飼っていたが、←!? そのヘラジカはあるとき、宴席でビールを飲んで酔っぱらい、階段から転げ落ちて足を折り死んだ←!!!?!? 一言ごとに「!」を挿入したくなる逸話 鍵の方から教わったネタもとを貼っときます

沖縄と台湾

昨日沖縄で開かれた「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」のシンポジウムは現状維持と平和を目指す台湾社会への無理解と侮蔑的な姿勢が重なった。特に沖縄タイムスの宮城栄作編集局長による台湾に対する筋違いの図々しい「要求」は台湾側の神経を逆撫でする対話とは正反対で今後の議論を困難にしかねない衝撃はあった。シンポジウムは昨年10月に行われた「沖縄対話プロジェクト」の発足イベントに続いて行われたもの。台湾側から2名の識者を招き、沖縄の「識者」と議論する形だった。台湾側の2名は一般的にそれぞれ民進党と国民党の立場に近いとされているものの、見識を深く備えた学者である。シンポジウムはまず10月に行われた発足イベントの議論内容の紹介から始まった。10月の内容自体が台湾海峡の現状と構造を全く正しく認識できていないものだったが、今回のシンポはそれを踏まえる形式をとって始めてしまった(10月イベントの詳細は下記ツイートをご参照ください)。

すでに嫌な展開となったがその後の稲嶺恵一元知事の基調講演や招かれた台湾側識者2名のプレゼンは時間やまとめ方などテクニカルな問題を除けば大変有意義だった。これはシンポの流れも改善されるかと失望状態から少しだけ希望を持ちはじめてすらいた。しかし、次に行われた沖縄側の一部識者のコメントや対話セッションでのやりとりで再び失望した。コーディネーター(司会)である前泊博盛氏による台湾への理解が全くないからなのか要領を得ない質問の振り方は失望の象徴である。台湾側の識者は彼らにとって外国語である日本語で台湾有事の引き金を引くのは中国であって、ボールは台湾側になく、有事を招かないよう台湾は抑制的に振る舞っていることを懸命に説明し、有事の可能性についても台湾海峡の情勢を踏まえて冷静に論じた。だが、前泊氏は「どう台湾有事の可能性はないと2人に言わせて帰すか」「戦争はない、有事はないと2人にどう伝えるか」などあたかも両名が好戦的であるかの前提で議論を振り続けた。途中で「台湾が武力衝突を回避してきた知恵は何か」との質問を振っていたが、それこそ「台湾独立」など有事を招きかねない動きを台湾社会全体はバランス感覚を持って抑制してきたとともに、中国を台米日などで淡々と抑止して中国による台湾侵攻を先送りさせてきたからにほかならない。その認識も共有せずにコーディネーターをやっていたのならあまりにも準備不足だったと言わざるをえない。そして沖縄側の識者として出た高嶺朝一氏(元琉球新報社長)は「(有事は)ないでしょう笑」と一笑に付した上で、「あってほしくはありません」と言った。台湾側もあってほしくないと平和を求めているにもかかわらず、嘲笑的態度だったのが前泊氏の振り方も相まって実に失礼に思えた。続けて高嶺氏は台湾側論者が例示した米国高官による2027年までに台湾危機が顕在化するとの警告について「(高官は)次の仕事を探すためにそういう発言をする、煽られないように気をつけないといけない」と反論した。これはシンポで議論する上であまりに雑な扱いだ。求職活動のためという目的が含まれていたとしても政府・軍高官がなぜ公聴会やインタビューなどの公式や公の場でそのような発言をするかといえばシグナルの役割があるわけで、それは何の意味をもつかを着目して分析する必要がある。2027年までに台湾侵攻を中国が整える可能性が言及されているのは、中国の経済力と軍事力の強化に伴い、台米日等による対中抑止力とのギャップが埋まりつつあり、野心的な指導者(習近平氏)の登場で台湾の武力統一の可能性が過去と比較して高まりつつあるからでそれをこれまで通り有事を先送りさせるために防衛強化が必要なことを訴えるためだ。本当に侵攻が起こる可能性はまだ低いものの、有事の目を摘むための防衛強化議論が各国として必要となっているがゆえの発言だ。煽っているのは確かだが、それによってようやく必要な防衛強化議論ができるわけで、その背景を踏まえて台湾側の識者は例示をしている。前提のおかれた専門的な見方を揚げ足をとるように一蹴して議論の発展を期さないのは全く対話の姿勢が感じられない。そしてとどめを刺したのは対話セッション終了後にコメンテーターとして登壇した沖縄タイムスの宮城栄作編集局長の次の発言だ。「台湾の人たちも有事にならないように、あるいは日本や沖縄に迷惑をかけることのないようなしっかりした世論を築いていっていただきたい」。一体何様のつもりであるのか。この発言は台湾で昨年行われた世論調査で台湾有事に自衛隊が参戦するかとの問いに参戦を信じると答えた割合が4割を超えていたことを受けてのものだ。確かに憲法9条をはじめとした制約を理解している人からすれば台湾社会の日本に対する理解不足は目につくが、これは台湾政府や台湾の専門家も危機感を覚えている。日本が有事に際して直接台湾に自衛隊を派遣することはないと台湾の政策担当者は誰もがわかっているし、誤った認識の自国社会に現実を理解してもらい、台湾は台湾自身で守るのが前提で、対中抑止強化をまず自国で高めようと注力している。そもそも自衛隊の参戦期待は一昨年の調査では5割を超えており、日本への過度な期待は落ち着いてる傾向だ。せめて「台湾にも日本の政策や理念への理解を深めてもらいたい」など相互理解を前提にした指摘をすればよかった。台湾社会は70年以上戦争の脅威に直面し続け、大国間に揉まれながらも有事を回避して平和を保とうとバランス感覚を身につけ、それこそ迷惑にならないよう成熟してきた。そんな台湾社会に「迷惑をかけるな!ちゃんとした世論を作れ!」と要求するのは台湾をどこまで愚弄すれば気が済むのかと本当に怒りを覚えた。シンポのアーカイブを見た台湾政府にいる友人はこの発言を受けて「そんなに迷惑な存在だと思われてるということは沖縄の主流民意は台湾が中国に統一されることを望んでいるのか」と私に聞いてきたが、「わからない」と答えることが精一杯だった。ここまでで名前をあげた方々には強い言葉で申し訳ないが次の言葉を贈りたい。恥を知れ、と。それほど今回のシンポには失望を通り越して絶望した。救われたのは山本章子先生(琉球大)が最後に発言されたウィットに富んだ次のコメントである。「議論のスタート地点を明らかにした意味で有意義だった。願望や政治的主張でなく現実として我々が今のどこに立っているのか台湾と沖縄のそれぞれの立場から確認できた。今後も事実として我々が今どこに立っているのか、立たされているのか絶え間なく確認したい」。このコメントに私は全面的に同意するとともに沖縄の識者にこの言葉が通じることを私は期待している。また同じく沖縄側で出席した神谷美由希氏の姿勢もありがたかった。台湾や中台関係についてわからないから知りたいとの姿勢は対話において重要に思えたし、台湾側もそれにうまく応える環境が整っていればよかったのにと悔やまれる。そして、台湾側も同じように沖縄が何を考えているのか自分たちの考えを理解してもらいたいのと同じように知る上で、神谷氏の姿勢は学ぶところがあったと思う。ここまで感情的な点も含めて今回のシンポジウムについて長々と書いてきたが、改めて最大の問題は基本的な知識と理解が欠如して相手に対して敬意ある姿勢を示すことができずに対話にならない点と指摘する。プロジェクト主催者には中国や台湾の専門家を名乗る人物も含まれているが、彼らは明らかに台湾や中台関係に対する認識とそのフレームが20年以上前の状態から更新されず、見方が政治的にも偏ってしまい、現在の台湾の主流民意を理解できていないことが窺える。あと2回のシンポをどのように展開するのかわからないが意義ある対話が今後できるとはとても思えない。プロジェクトを継続して健全に発展させたいなら早急に最も簡単なものでいいから台湾に関する基本書籍を読むか然るべき人からレクチャーを受けてほしい。最後には台湾政府にもプロジェクトのまとめとして意見書を提出するようだが、今回のシンポの内容を見る限りとてもじゃないがまともに内容を相手にしてくれないだろう(出すことが目的化しているなら気にしないだろうが)。今回のプロジェクトがせっかくの機会だったのは間違いない。台湾と沖縄はともに「帝国」の狭間で翻弄された歴史をもち、自分たちの権利や主権が蔑ろにされてきた過酷な運命を背負ってきた。相互理解とともに平和を求める共通の利益も本来あるはずだ。歴史的経験と共同体の記憶の違いから埋めがたい差があるものの、それを乗り越えて大袈裟に言えば東アジアの平和のパートナーの一例になる契機にもなり得た。だから他の人が私に「出席者みたら無意味だとわかる」「沖縄左翼の自己満足」と批判してきても趣旨に賛同して期待もし続けた。対話は相手を尊重し、まずは受け入れることが重要だ。今回、対話を仕掛けた側は本当にその姿勢をもっていたのか。結果を見る限り、それは全く感じられない。何度でも言うが、台湾は有事を起こそうとはしていないし、日本や沖縄を巻き込もうとも思ってない。私を含めて多数の台湾人は日本に参戦しろとも求めていない。過去70年以上、中国による台湾全面侵攻を回避し続けた事実とその経験をもとにこれまで通り一緒に平和を求めていこう、そのために協力することがお互いの利益にもなるはずだとの考えである。それは端的に言えば中国の現状変化にあわせて台米日も対中抑止の度合いを変えるという長年の構造を継続しようというものだ。よく中国は経済関係上重要な相手で対中抑止を行うことはむしろ国益に反するとの主張を聞くし、今回のシンポで前泊氏などが中国との経済関係を例に挙げたが、これまでも対中抑止を続けながら経済関係を発展させてきたわけで尖閣諸島での対立激化時のレアアース禁輸や米中のハイテク覇権争いなど個々の特異な事象を含めて全体として対中抑止と経済活動の両立という構造が大きく変わっているわけではない。中国が軍事拡張を続けているのにそれに対応しない方がこれまでの東アジアの平和と安定の構造を変えようとする新しい動きだ。その結果として中国の台湾侵攻など台湾有事を招けばサプライチェーンは破綻し、抑止強化反対の理由に使われる経済的利益すら守れずに失われる。だからこそ対中抑止は日本の利益でもあるはずだ。現在日米で進む抑止強化の方法に問題や議論の余地があるのは確かで、かつ経済面の抑止力が過小評価されていることも確かだ。それを議論することは重要だし、これまでの平和の方法論に異論があれば、歴史と事実を踏まえた上で新しい平和の形を議論していくこともできる。対話を名乗り、仕掛ける以上は議論に必要なものは何かを理解して臨んでほしい。沖縄対話プロジェクトにもう期待はないが、残りが少しでも実りあるものになればと祈る。

今後の自動車業界

ホリエモンが再三ヤバいと述べている日本の自動車業界について。欧米を中心とする政治的なEV化の動きの中で、内燃機関のアドバンテージを失う日本メーカーがヤバいと言うのはその通りだし、最後の巨大輸出産業を失う日本がヤバいと言うのもその通り。その先について少し思うところを述べたい。(1/n) 米欧中がEV化で日系メーカー封じ込めを図り日系は孤立無援と語られるが、どこに活路を見出すかと言えば、まあ当たり前なんだけど「米欧中以外」なんですよね。この三極はEV化で巻き返しが図れる可能性があるから巨額の政府補助金を投じてEV化を進めてる訳だけど、その他の国にはそれが難しい。(2/n) なので今後も内燃機関が売れるのは中南米、アジアの発展途上国、中東、アフリカ、旧ソ連諸国とかその辺りな訳。ただ今の日系メーカーは北米、英、EUとか結構コストが高い地域で現地生産をやってて、そこから発展途上国に輸出するとか発展途上国に工場移すというのは相当辛いはず。(3/n) 自分もそう言う方向性を聞いた時は驚愕した。今までみたいに稼ぎまくる自動車業界みたいのはもう厳しくなってしまうかも知れない。(4/n) しかも米欧中が国内の全EV化に成功すれば、今度は環境対策をネタに新興国にも全EV化の圧力をかけてくる。環境保護とか温暖化対策を訴える国というのは事実上帝国主義と一緒なので、欧米中を敵に回す日系が内燃機関に拘るなら政治的にもかなり苦しい事になるだろう。(5/n) もう一つの大きな流れは自動運転なんだけど、これは車を使う習慣や街の作り自体を変える大きな変化だから政治的な調整がたくさん必要で各国で国内/域内メーカーが圧倒的に有利になる。そうすると日本メーカーはまずかなり狭い日本市場で仕組みを作って商売する事になる。(6/n) すると国内でタクシー業界とか路線バス業界と激しく利害が対立してくる事になる。タクシーや路線バスに自動車業界ほどの政治力があるようには見えないし、高齢化や地方の過疎化が進む中では自動運転車に優位性があるから、海外で失った売上を国内交通の共食いで感じになるだろう。(7/n) イメージとしては日本のIT業界が国際競争力を失って官公庁向けのシステム開発にシフトしたように、自動車業界も国内インフラへの依存度が高くなっていく。あんまり明るい未来ではないよね。(8/n) そのシステムが構築されれば、あわよくば上に書いた米欧中以外の国に自動運転車をシステムごと売っていくことになる。これは鉄道インフラの輸出と同じで日本が割と得意な分野でもあり上手くいくかも知れない。一方でこれまた国際関係が大事なので自動車業界は政府よりの産業になっていく。(9/n) 自動車産業が失った輸出をどこで挽回するかというのはかなり予測が難しい。一番良いのは需要を失ったメーカーが航空宇宙やロボットなどに技術や技術者を転用することだけどそれに失敗した場合は、最悪一次産業に回帰してより自給自足的な国になっていく可能性もあると思う。(n/n)

機械学習メモ

新しいMicrosoft Edgeは、論文の読み方を根本的に変えうるテクノロジーかもしれません。 この1年のAIの進歩で、ダントツの衝撃です...

↓は、指定した形式で論文を要約させた動画です。 「考えうる応用方法」として、論文には載っていないポイントを複数挙げてくれた点に、畏怖すら感じました。 この方法で論文を読む時間が仮に半分になれば、単純に情報収取の生産性が2倍になる。 さらに、内容についてインタラクティブに質問することもできるので、生産性は確実にそれ以上になる。 チャットAIを使いこなす能力は、研究者としても必須のスキルになりそうです。 特に今年に入ってから、「最低でも1日1時間は最新の情報やツールを追う時間に当てないと、人工知能の進歩についていくことすらできない」と強く感じます。 「人工知能を活用することで時間を節約し、その時間をキャッチアップに当てる」ことが、研究者としても必須の時代になるかもしれません。 DeepLの登場により、論文を読むのにかかる時間が僕の場合は半分程度になりました。 チャットAIが日本語で内容を要約してくれることにより、かかる時間がさらに半分程度になりそうです。 浮いた時間でチャットAIにインタラクティブに質問することで、従来より短い時間で深い理解ができそうです。 なお、使ったプロンプトは以下です。

論文「XXX」の内容を以下の構成で教えてください。

  • abstract
  • background
  • methods
  • results
  • discussion
  • limitation
  • possible application

途中で止まってしまった場合は、

続きを書いてください

で書いてくれます。

2023-02-11

数学・物理 通信講座+勉強会に関する重要な連絡/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 通信講座+勉強会に関する案内
  • 近況報告
  • 通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始
  • 熱力学のリハビリ

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

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通信講座+勉強会に関する案内

直接メールもしたものの反応がないため, 念のためメルマガでも連絡します. 支払いまで済ませた上で通信講座用のSlackに参加されていない方がいらっしゃいます. 勉強会用のZoom連絡などはSlackで対応するため, 勉強会に参加される場合はSlackに参加してください.

単に勉強会に参加しないならいいのですが, そもそもコンテンツに関するメールなどまで迷惑メールに入ってしまっているために連絡がつかないのではないかと心配しています.

近況報告

通信講座再開に合わせて仕事関係のプログラミング漬けだった生活からゆるく数学のリハビリをはじめています. 物理も軽くリハビリをしようと思い, どうするか思案中です.

ホモロジー代数のノート作りは地道に続けています. 相変わらず, とにかく可換図式を書くのが大変です. そして慣れていない分野であるため, 「詳細は読者に任せる」系の議論で四苦八苦しています. そのうち慣れると思って穴はそのままにして放置しています.

通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始

今回の締切は明日までです.

いつかまた同じ内容で開催する予定はあるものの, いつになるかはわかりません.

熱力学のリハビリ

物理のリハビリがてら, 熱力学の通信講座の構想をつらつらと書こうと思います. 何度か書いた話ではありますが, 新たに登録された方もいますし, 一度読んですっと頭に入る方ばかりでもないでしょう.

日常的な感覚からすれば, やはりはじめから温度を導入してそれを軸に据えて議論するのは一手です. 記憶にある限りまず温度の概念を導入している本も多かったように思います. 「統計力学を勉強してはじめてエントロピーが理解できた」と評判の統計力学でも重要なパラメーターです. しかし温度の概念以前に温度を導入するための設定が実は厄介です. そのために古典力学と比較しながら進めます.

古典力学では他に何者も存在せず, 相互作用もない状況からはじめ, 相互作用がある場合は運動方程式で力を導入する形で議論をはじめます. 温度の導入は温度を持つ対象として相互作用する外界を理論に導入する必要があります. 古典力学で言えば等速直線運動を飛ばしていきなり相互作用系から考えはじめています. 温度が日常的に見慣れた量だから親しみやすく感じるだけで理論的には複雑な扱いが必要です.

特に熱浴と切り離された系を孤立系と呼びます. 孤立系自体は日常的な対象として近似的に実現されています. いわゆる魔法瓶です. 冬場は特に飲み物を暖かく保つために重宝している人も多いでしょう. これがまさに外界と遮断した孤立系を作る装置です. この意味で孤立系は身近で重要な対象で, 一番最初に取り上げて議論する価値と意味がある系です.

必要以上に話を複雑にしないように流体, 特に気体を想定してパラメーターを設定します. 特に体積$V$と物質量$N$を考えます. 結論を先取りすると, 直接制御できるパラメーターではないものの, 温度の代わりの示量的なパラメーターとして(内部)エネルギー$U$を取ります. このときヘルムホルツの自由エネルギーやギブスの自由エネルギーに対応する, 完全な熱力学関数がエントロピーです.

エントロピーの面倒なところはパラメーターとして物理的に直接制御できないエネルギーが指定される点です. この点, 制御のイメージが持ちやすい温度の便利さが光ります. 一方でエントロピーをいつまでも謎のままの量にせず, 完全な熱力学関数としての地位を最初に与えておくのも意味があるのではないかと思っていて, 話の筋をどうつけるか考えています.

いま書いていてふと思ったのですが, 完全に一致するわけではないものの, 位相空間論と形式的な類似があります. 位相空間論も基礎を開集合系に取るか, 閉集合系に取るか, 近傍系に取るか, ネットに取るか, フィルターに取るか選び方があります. 標準的には開集合系である一方, 解析学としてはネットやフィルターが便利な局面があります. どの系を選ぶかと熱力学関数の選び方に似ている点がないでもない気分があります. 物理の人にどう説明するとよいかはともかく, 数学系の人に説明するには一つ便利な物言いなのかもしれません.

逆に熱力学を知る非数学系の人に位相空間論の様々な定式化の意義を伝えるには, 熱力学関数の取り方を例に挙げるとよいのかもしれません.

日々の自分用メモ

魚の生臭さと水圧耐性

「うまみ成分である 『トリメチルアミンオキサイド』が たぶん水圧守れる原因じゃね?」

中性子ビームを当てて高圧化した結果。

そしたらただの水は歪んでしまって 形が保てなくなったのですが 『トリメチルアミンオキサイド』

を加えた水は見事に安定化したわけです。

中学1年生が開発した「カラスからゴミを守るシステム」の成果 Python、TensorFlowLite、Raspberry Piなどを活用

ChatGPT活用

可能性空間を限定することが重要。

1.役割を与える 例:〇〇の観点で答えて

2.文脈,前提条件を与える 例:改善点教えて/危険度チェックして

3.英語で命令しよう

4.マークアップ言語で書き分け (続く)

【深津式プロンプト・システム①】

命令書: あなたはプロの編集者です。 以下の制約条件と入力文をもとに、最高の要約を出力してください。

制約条件: ・文字数は300文字程度。 ・小学生にもわかりやすく。 ・重要なキーワードを取り残さない。 ・文章を簡潔に。

入力文:

出力文:

【深津式プロンプト・システム②】 (これを追加すると精度が上げられる) このタスクで最高の結果をだすために、追加の情報が必要な場合は、質問をしてください。

【深津式プロンプト・システム③】 (これはやり方の話) まずベストプラクティスを聞いて、 その回答を前提に回答してもらうと精度が上がる

理系の英語

国際会議に行ったら主催者が「ここの公用語は下手な英語だ」とスピーチして喝采されてたり,フランス人と日本人が英語でやりとりしてて英語ネイティブが何言ってるか聞き取れないのになぜか当人達は意思疎通できてたとか,あるある……。

英語のコミュニケーションの話で、僕が1番好きなのは@mkuze せんせのこれ 「英語でのコミュニケーション能力が求められます。これにしても英会話の技術というよりも言いたいことを(日本語の段階で)論理的に整理できているかどうかが重要な点です。」

子供のアカウント乗っ取り

スマホを持つお子さん及び保護者の方気をつけて下さい・・・ 長女がインスタで知り合った人に電話番号やpaypayのパスワード等を教えてしまいアカウントを乗っ取られて、チケット詐欺の受け渡し場所となっていました・・・ チケット詐欺被害者からの直電で判明し、明日警察に届けます。↓

まずは友達として仲良くなってから言葉巧みにPayPayアカウントを作らせて、娘のスマホに送られてくる認証コードも聞き出しそのアカウントを詐欺の金銭譲渡に使用していた。被害総額20万強。↓ 私は以前小中学生向けのネットリテラシーを講師をしていまして、娘がスマホを持つ際は、何のために制限するのか・どのような事に気をつけるか・使用時の約束を記して貼る・ペナルティを作り実行する・フィルタリングをかけるetc対策出来てると思ってたのですよ、、↓ 色々話できる環境も作っていたし、そんな人いても絶対わかるし騙されないから大丈夫と言っていた子がこんなにも簡単に引っかかってしまったのは私の緩みと思春期の好奇心ゆえだと思います(犯人イケメンアイコンだった)。手綱離すの早かった。まぁ大丈夫だろって色々甘く見てたわー。↓ 親の許可がないと課金できない仕様にしてあるからPayPayとか登録しても意味ないだろーとか油断してたのもある。けど、金銭授受の箱としてだけ使うなら口座登録も本人確認もいらないので成立してしまっていた。。。 警察と連携をとり被害にあわれた方に対してもどのように責任を取っていくべきかを考えつつ、子どもと学び直して今後のスマホとの付き合い方に関してじっくり話合わなければ。↓ もはやスマホを禁止すればいいという訳ではなく、避けられない世界の中で、自分にとって有益なツールにする為に必要なのは何より知識だと思います。知らなかった分からなかったではすまされないのですよね。↓ 文部科学省等で親子向けのHP等もあるので、これから買う方は必ず親子で知識を共有してほしいなと思います!失敗者からのお願いです、、、 追記ですが、SNS利用の約束として、実際に会った事がある人以外とのDMや個別でのやり取りを禁止していました。もちろん破った際のペナルティも有で。 被害例を元にイケメンアカウントも実際は良からぬ輩ばかりであるという意識でいなさいと頻繁に伝えていましたが、中学生チョロすぎました。

「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由

なんだこれは。これは売名とか偽善とか以前に、善悪で語るもんじゃない何かではないか。なんなんですかこの人、爪の垢煎じて飲ませてもらっても真似できっこないこんなの。

記事引用

半世紀を優に超えて歌手や俳優として活躍する杉良太郎(78)は、60年以上にわたって私財を投じた福祉活動に取り組んできた。「特別矯正監」「特別防犯対策監」などに任じられている杉は、どのように矯正施設の改革に携わってきたのか。その思いを本人が語った。

***

【写真を見る】15歳の頃、あどけない表情の杉良太郎この頃から刑務所の慰問を開始した

15歳の時に刑務所の慰問を始め、国内外で福祉活動を続けて64年が過ぎました。人からはよく「なぜ」「どうして」と聞かれますが、そういう質問が一番困ります。自分でも明確な答えを持ち合わせていないからですが、おそらくこれは私の性分。生まれる前、母親の胎内にいた頃に染みついた、一種の性(さが)だと思います。母は「人に親切、慈悲、情け」が口癖のような人でしたから。

現在は法務省・特別矯正監(永久委嘱)、厚生労働省・健康行政特別参与、警察庁・特別防犯対策監(永久委嘱)として福祉活動だけではなく対策活動を行う機会も増えています。すでに全国の税関、刑務所は視察を終えており、警察はこの2月、すべての都道府県警察本部を訪問し終えます。その後は各警察署にも足を運び、現場に近い声を聞いて対策に生かす考えです。 杉良太郎

慰問活動を始めた15歳の頃(他の写真を見る) 名誉矯正監になった理由

なぜ、全国を回る必要があるのか。例えば警察組織にしてもそれぞれの地域特有の県民性や地域性があります。だから、治安の維持という使命は同じでも、アプローチの仕方は微妙に異なる。それは私が矯正監として接している、受刑者や刑務官たちも同じです。

私が矯正施設で見るのは、彼らがどんな所で生まれ育ち、なぜ犯罪を起こしたのかという、根っこのところ。私が矯正監に任命されるまでには、幾つかの段階がありました。まず、15歳から始めた慰問を続けるうちに一日所長として視察するようになった。すると当時、5~6人の閣僚が集まる席があって、「何十年も取り組んでいる杉さんが一日だけの所長っていうのはおかしいんじゃないの?」という話になり、その後「一日所長じゃなく、何かポジションを作れないのか」と、法務大臣に伝えたという。そんなことはまったく知りませんでしたが、名誉矯正監や名誉所長という肩書きを受けてくれないか、と打診をいただきました。

そもそも私は「名誉」では引き受けたくなかったのですが、お飾りではないということを念押しし、名誉矯正監を拝命しました。

刑務官に「何が欲しいか」と聞くと…

それまでは受刑者の更生を促進する活動が中心でしたが、刑務官や職員の方の規律や指揮監督、処遇といったあらゆる角度から矯正施設の問題に取り組むようになりました。とくに現場の声を聞くことを大切にし、その後も全国の矯正施設を回り続けました。「なるべく若い人たちの意見を聞きたい」と思っても、所長や部長などの上司が横にいると、彼らはなかなか率直な気持ちを言えません。だから、看守長ぐらいまでの中堅クラスにメンバーを限定し、話を聞いていきました。

多くは30代半ばから後半ぐらいです。処遇から教育、経理や医務といったすべての部門から出席してもらいます。最初はまったく意見が出ませんでしたが、こちらから「日頃、仕事をする中での不満を聞かせてほしい」と促したら、多くの声が上がるようになりました。

例えば、勤続年数によって時計がもらえる制度がありました。私が「時計をもらってうれしいか?」と尋ねると「うれしくない」と。「じゃあ、うれしくないものはうれしくないと言いなさい」と話した。それで「本当は何が欲しいんだ?」と聞くと「長期休暇です」と言う。

当時は休日にポケベルが鳴ったり、受刑者が過剰収容されていた関係で仕事が多くて息つく暇もない。長期休暇がないから、お盆に墓参りすら行けないとも。「それじゃあ、まずは長期休暇を出そう」と、すぐに本省に掛け合って休暇制度を見直しました。長期の休暇が取れないことは、離職率の上昇にもつながるからです。 自己犠牲の精神 杉良太郎

東京税関に寄贈した麻薬探知犬のタロー号と(平成6年)(他の写真を見る)

刑務官がしっかり受刑者を指導・監督できるようになるには、広い知識や見聞、人間的な包容力を持つことも大切です。塀の中しか知らないような世間知らずでは務まりません。長期休暇を活用して、旅行も含めて見聞を広め、体験を重ねることも重要なのです。

また、この仕事は成果が見えにくいという側面があるので、職員にはやりがいとプライドを持たせることが必要です。自身の職業へのプライド、誇りがなければ、海千山千の受刑者にはなかなか対峙できません。そこで、専門官を作るなど、刑務官の心理面での育成につながることも考えました。

刑務官たちが最も喜んだのは、彼らが住む官舎の改善でした。これを言うと大抵の人に驚かれますが、刑務官を含めた職員たちに「刑務所と自分たちの官舎と、どっちを先にリフォームしてほしい?」と尋ねると、100人が100人とも「刑務所を先にお願いします」と答えます。職場を優先してほしいというわけです。

世間的にはこうしたイメージは薄いかもしれませんが、職員たちも人間です。受刑者に情が移るのか、「ちょっとでも甘い物を食べさせてあげたい」とか「少しでも処遇を良くしてあげたい」という気持ちの人が多い。自己犠牲の精神というのか、自分より受刑者の待遇改善を優先する意識が強いんです。だから私は、「あまりそっち寄りに行くなよ。被害者を忘れるな」と注意しているほどです。

刑務官は6畳と4畳半の2間で子どもを育てている

官舎というと「公務員住宅だから、さぞ良いところに住んでいるんだろう」といったイメージが強いと思います。赤坂や青山の国会議員宿舎などの印象があるからでしょうが、とくに地方にある国家公務員宿舎の多くは、想像以上に老朽化が進んでいるのが現状です。

施設課長が「居住環境を改善しないと職員が居着かない」と訴えてきたことがあります。そこで実際に足を運び、「どうしていままでこの事実を誰も口にしなかったのか?」と、気付けなかった自分にもがくぜんとしたことがあります。

視察に行く前に、法務省の職員に「間取りは幾つ?」と聞いたら「二間あります」という。私は「8畳と6畳の二間かな」と想像しましたが、実際には6畳と4畳半でした。いまどき4畳半なんて一間に含まれるのかと驚きましてね。受刑者には三食が付き、夜中でもガードマンが見回ってくれるから安心で安全な住環境にある。一方で、彼らを監督する刑務官は6畳と4畳半、そして台所という狭い部屋で、子どもを育てていることが分かった。

すぐに全国の官舎の写真を取り寄せ、それを超党派の再犯防止議員連盟のメンバーたちに見ていただいた。それで「近いうちに川越少年刑務所に行きます。みなさんも一緒に来て下さい」とお誘いしました。 「これ、廃墟じゃないですか」 杉良太郎

1986年。日本政府要人から中国政府への親書を携え、郵政省から贈られた制帽と郵便かばんを身に着け「幸せ配達人」を務める(他の写真を見る)

実際に現地を視察した後で、議員の方たちに「みなさんはここに住めますか?」と聞くと、全員が「住めません」と口をそろえた。中には「これ、廃墟じゃないですか」と驚く議員までいたほどです。そこで私は「ご自分が住めないところに、職員に住めと言うのはいかがなものでしょう」と窘(たしな)めるように続けた。率直な印象として「ひどいな、こんな住宅がまだあるのか」というほど老朽化が進んでいたので、いまも少しずつ住宅の建て替えやリフォームを進めているところです。

警察官とは違って、刑務所の職員にはなかなか陽が当たらない。子どもに「お父さんは何の仕事?」と聞かれて「刑務官だよ、とは言いにくい」と話す職員はいまも少なくありません。「自分の子どもに胸を張れない」というのです。だから私は全国の施設を回って「プライドを持て」と、指導したり勇気づけたりしてきたのです。

医官の処遇改善

刑務所に勤務する医師である、医官の離職も深刻な問題でした。以前の規則では、彼らが診療の対象にできるのは受刑者に限られていました。国家公務員だからというだけで、刑務官がちょっと体調を崩した時でも診察すらできない。以前はこんな非常識なことがまかり通っていたんです。だから私は、刑務官はもとより、近所に住む町の人々も診られるようにすべきだと訴えたことがありました。

医官は刑務所の近くに住んでいます。同じ地域の人々の理解や信頼は、人間的な触れ合いや結びつきから生まれてきます。高額な予算を投じて最新鋭のMRIを導入したのに、それを使ってもらえるのは受刑者だけ。それではあまりにもったいない。だから、医官の仕事は臨床に限らず、希望すれば研究もしていいようにした。給与水準のアップを含めた処遇改善にも手を付けて、医官の離職率が下がるように工夫したわけです。 「長く刑務所にいたい」という受刑者たち 杉良太郎

東日本大震災の被災地で行った炊き出し(他の写真を見る)

さまざまな刑務所の改革には、受刑者の処遇改善も不可欠です。ところが衣食住の快適さが増すと、居心地の良さから「長くここに置いて下さい」と訴える受刑者が増えてしまった。当たり前ですが、刑務所は「置いて下さい」なんて言われる場所じゃありません。

とくに高齢の受刑者ほどその傾向が強い。理由の多くは「出所したら死ぬしかない」「保険証がないから医者に診てもらえない」というもので、実際、持病があったり、身寄りがなくて出所しても身を置く場所がないんです。一方で刑務所なら食事はあるし、布団で寝られます。病気をすれば治療だって受けられますから、受刑者が高齢になればなるほど刑務所を「無料の老人ホーム」みたいな感覚で捉えているんですね。

刑務所にもさまざまな種類がありますが、最近は医療刑務所が非常に大きな役割を持つ時代だと感じます。違法な薬物に関する治療もありますが、心臓や脳の病気をはじめ、がんを患う受刑者も珍しくはありません。

麻薬や薬物の常習者の更生には、専門の病院や施設で徹底的に対応する必要があります。専門医も必要ですが、何よりものすごい手間がかかるんですよ。

受刑者の認知症問題

加えて最近の医療刑務所の守備範囲はかなり広がっていますが、喫緊の課題の一つが、仮に受刑者が刑務所内で認知症を発症したらどうするか、という問題です。自分が誰だか認識できない受刑者にはどう罪を償わせればいいのか。こういった贖罪のあり方の本質に関わる問題への対処など、刑務官の役割やありようは大きく変化しています。

心臓病や胃がんという具合に脳の機能に影響がない時はいいですが、アルツハイマー型認知症などの場合は罪を犯した事実やその罪名どころか、自分の名前すら覚えていないこともあります。入る刑務所もA級(犯罪傾向の進んでいない者)とB級(再犯や累犯、反社会的勢力といった犯罪傾向の進んでいる者)、L級(刑期が10年以上の者)などの等級によって分かれますが、長期で入っている人は症状がどんどん進んでしまいます。

認知症を患う受刑者の面倒、つまり介護も刑務官の任務とするのか。あるいは、別に収容する施設を造るのか。仮に介護施設を造った場合、刑務所とは異なる環境で生活する受刑者は本当に罪を償っているといえるのか。そもそも、介護施設が罪を償う場所になり得るのか、といった問題も出てきます。 資格取得まで導いても出所すると… 杉良太郎

愛媛県警を訪問(他の写真を見る)

かねて私は、刑務官が受刑者の介護に苦労していることを知って、「これは本来の刑務所の姿じゃない」と感じていました。だから刑務官だけでなく受刑者も介護ができるよう、さらに出所後にその経験が生かせるようにと、刑務所で介護福祉士の国家資格を取得できるようにしました。

ところが、ここで新たな問題が出てきました。仮に500人の介護資格を手にした受刑者がいたとして、その中の何人が出所後に介護職に就くのか。私の感覚ではせいぜい30人ぐらいだと思います。そもそも受刑者には勤労意欲が乏しかったり、働くのが苦手という人が多い。幾らこっちが「再犯防止につながるように」と資格取得まで導いても、ほとんどが出所したら働かない。

よく耳にする話に「出所後に雇ってくれるところがないので働けない」「収入が得られないから再犯してしまう」というものがありますが、「働きたくない」「仕事は苦手」という人たちの再犯率を下げることが、いかに難しいかということがお分かりいただけるでしょう。

欧米では寄付が節税対策に

私は平成8年に「名誉矯正監」を、平成20年に「特別矯正監」を拝命し、それに伴って私の役割も変わってきました。最も大きなものは、改善すべき点を明確にして必要な予算を獲得することです。平成28年4月に発生した熊本地震の後には刑務所や少年院などすべての刑事施設を、地震や津波、河川の氾濫といった災害が起きた際、市民が避難場所として利用できるようにしました。

本来、こうした取り組みは政治の役割かもしれません。しかし、特別矯正監という立場だからこそできることがある。だから私は全国の矯正施設を回り、目で見て耳で聞いて問題点を炙(あぶ)り出している。それがいまの私の役割だからです。東日本大震災で炊き出しなどの支援活動をした時など、これまでには「売名だ」とか「偽善では」と言われました。しかし、私はただ自分にできること、すべきだと思ったことを行動に移してきたに過ぎません。

ところで、日本と欧米のボランティアや寄付のありようには大きな違いがあります。文化や習慣も異なるからでしょうが、実は税制面でも大きな差があります。

例えばアメリカでは、個人が100万円をチャリティーとして寄付すると、手続きをすることでほぼ全額が所得から控除される。つまりは税金対策にもなるわけです。日本で杉良太郎が1億円を寄付するのと、ハリウッドスターが1億円を寄付するのとでは本質的な意味合いがまったく異なる。それを多くの日本人はご存じない。

いま、私がどこかの慈善団体に1億円を寄付したとしても、控除されて戻ってくる額はごくわずかです。もちろん、私はそれも寄付しますが、アメリカで1億円を寄付したら、日本よりも還付される額ははるかに多いんです。 1億円借金してまで寄付 杉良太郎

佐賀県庁を訪問(他の写真を見る)

日本テレビに「24時間テレビ 愛は地球を救う」というチャリティー番組がありますね。以前その会場へ、新聞紙に包んだ現金を会社の経理担当に持って行かせたことがありました。すると、たまたまテレビに映った彼を見た税務署の職員から「あれは杉さんの会社の人ですよね。課税の対象です」と連絡がきたことがあります。世間の多くは「寄付金は全額が控除の対象になる」と思っているようです。ところが実際は違います。日本は軽々に寄付ができない制度になっているんです。

昭和61年ごろに中国に残留していた日本人孤児の問題に取り組んだ時、自分で何とか4億円は都合できたものの、どうしても残りの1億円が不足したことがありました。そこで住友銀行(当時)の磯田一郎会長に「5億円のうち4億円は用意できたけど1億円足りない。1億円、私の体を担保に貸して下さい」とお願いに行ったんです。

会長は「銀行は体を担保に金を貸さないよ。だけど杉さん、老後はどうすんの?」と。私は「お粥を啜って生きていきますから」と答えた。そうしたら会長は1億円を融資して下さった。返済額は利子を含めて1億7500万円になりましたが、会長は「金を借りてまで寄付する人は初めてだ」と仰っていましたね。

刑務所を株式会社に

私は十数年以上前から刑務所の株式会社化を提言しています。これは民営化や半官半民とはまったく異なる世界初の試みです。受刑者の数が減少傾向にあるいま、廃止される刑務所などを活用し、株式会社化して運営したい。ここを社宅付きの職場にして、出所者や定年退職した刑務官たちを雇い入れる。互いに見知った関係ですから何でも相談できるだけでなく、出所者は得た収入から1カ月に千円でも2千円でも被害者への送金が可能になる。いつまでも被害者のことを心に留める意識が大切ですから、その一助となる取り組みとして、近いうちに本格化させるつもりです。

そこでは受刑者が出所後に即戦力として仕事を得られるよう、畜産や農業などの知識と技術を教えたい。すでに網走刑務所では「網走監獄和牛」という名前でA5ランクの黒毛和牛を育成したり、〈おつとめごくろうさまです〉といったロゴ入りのTシャツを販売していますし、鹿児島刑務所では日本茶に加えて紅茶作りが始まっています。函館少年刑務所では〈〇(マル)獄シリーズ〉という、「獄」の文字を丸で囲ったデザインがプリントされた前掛けや手提げバッグなど数多くのグッズが人気を集めています。 達成感はない 杉良太郎

大阪府泉佐野市役所を訪問(他の写真を見る)

このように、私は刑務所を一種のブランドにして新たな価値を生み出そうと考えている。そこが元受刑者の再就職先になれば、彼らの勤労意欲の喚起だけでなく、働くことの意味を理解させられると思うからです。

私は法務省のほかにも、厚生労働省で予防医療や未病という概念の普及と対策活動を、警察庁で特殊詐欺対策を中心とした防犯のあり方や、犯罪加担者を減らす取り組みに従事しています。私の活動は多岐にわたりますが、すべてに共通して言えるのは、「自分ができること」や「こうすべきだ」と思ったら、それを、すぐ行動に移してきたということです。

とはいえ、私は一度も「やってよかった」というような達成感や満足を覚えたことがありません。次々と問題が出てきますし、新たなアイデアが浮かんでくるからです。私にはいまも多くの課題が残されていますから、この道はずっと続いていく。まだまだ、これからですよ。

杉 良太郎(すぎりょうたろう) 昭和19年兵庫県生まれ。同40年に歌手デビュー。同42年にNHK「文五捕物絵図」の主演で脚光を浴び、以降は長年にわたってテレビや舞台で活躍。法務大臣顕彰、文部科学大臣表彰など数々の大臣表彰にとどまらず、紫綬褒章や芸能人として初めて緑綬褒章も受けた。平成26年に内閣総理大臣より感謝状を贈呈されたほか、同28年には長年にわたる国内外での文化交流が評価され文化功労者に選出されている。

週刊新潮 2023年2月2日号掲載

旧字体とは?【レトロデザインのための近代日本語講座〈1〉】

婚姻制度

憲法学者「同性愛という愛のありかたは個人の自由。しかしそれを国家が法的婚姻制度で保護することは別問題。生殖可能性がない以上、現状国家が保護すべき利益が見当たらない」 https://sn-jp.com/archives/112565

賛同する。制度の利害調整は婚姻者と独身者との間のもの。独身者の犠牲で婚姻者を利する理由が問われる。次世代の国民を産み養育するというところに認められる。 子供のない夫婦は「制度」の遊び。 婚姻が子供づくりを前提にしていないという人は、民法が近親婚を禁じる理由を説明してみよ。 そもそも結婚は、その女の腹から生まれてくる子供の父親を決定し、その子の養育に責任を負わせる制度。母親は自然と決まるが、父親は制度的に決定しないと絶対に分からなかったためだよ。

奇妙な国境や境界の世界地図

noteでたまに地理関連の書評記事を書いていたので、創元社様から出た新刊の『奇妙な国境や境界の世界地図』をご恵贈いただき、さっき読み終えたところですが、予想していた以上にマニアックな国境・境界の事例が取り上げられていて驚きました。1/ https://www.amazon.co.jp/dp/B0BT15YH88 もちろん、カリーニングラードの飛地や、キプロスを南北に分断している境界といった、政治地理でお馴染みの事例も若干ありますが、目新しい事例の方が割合としては多かったです。ベラルーシの領内にサニコヴォ=メドヴェジエというロシアの飛地があるのは知りませんでした。2/ 原発事故の影響で放棄され、無人地帯になりましたが、著者のニコリッチの調べによると、ロシアの行政管理が及ばないことを利用して、狩猟が禁止されているシーズンに近隣の住民が密猟を目的として進入するようで、典型的な無法地帯になっているなと思いました。3/ 個人的に中国の政治地理に興味があったので、手に入れたときに真っ先に調べましたが、残念ながら中ロ国境にあるユダヤ自治州の事例を除くと中国関連の事例は取り上げられていませんでした。そこはちょっと残念でしたが、欧州と北米に関しては詳しく調査されていると思いました。4/ 世界地図のスケールでは見落とされることが多い小さな人為国境について学ぶことが多い一冊でした。気取らない文体で書かれており、青を基調にした地図も読みやすく、よい意味で学術書らしくない著作だと思います。5/5

恐怖のアルコールその1(酢を昼間から飲んでいた酒豪のクラスメートの謎がようやく解けた)

2023-02-04

数学・物理 通信講座+勉強会の募集は来週まで/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始
  • 物性論に対する場の量子論の教科書的レビュー

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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近況報告

今回は通信講座の簡単な再案内に留めます.

私自身通信講座開始に合わせて数学のリハビリをはじめています. ホモロジー代数のノート作りをしているのですが, 可換図式がとにかく重たく, TeXでのノート作りにうんざりしています. しかしここでまたやらなくなると手が出なくなるため, 歯を食いしばって対応を進めています.

あとは中学生向けプログラミング学習の話をしてもらえないかと頼まれました. いわゆる組み合わせ爆発お姉さんの動画を紹介したらそれに食いついたようです. 二月中旬の予定です. まだ詳しい状況を聞けていないものの, 必ずしもよい環境でなくてもどうプログラミングで遊ぶか, 情報系・数学で遊ぶかの試金石でもあり, ゆるく長く続けてもらうため, そして楽しんでもらうために何を提供できるかいまからいろいろ考えています.

通信講座案内: 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始

案内は次のページにまとめました. 言うべきことは全て書いたのでここでは詳しく紹介しません.

募集期間は2/12(日)までとします. 募集期間が終わったら勉強会の日程を決め, 翌週から本格的に通信講座・勉強会をはじめます. そこから三ヶ月, 5月半ばまで続きます. 参加について何か相談があればメールなどで連絡してください.

申込をしたらメールが送られます. 通信講座の内容だけでなく, 連絡・質疑応答用のSlackやコンテンツ一覧ページのURLもいったんメールで送るため, 迷惑メールを確認してもメールがない場合, このメルマガ用のメールアドレスに連絡をお願いします.

物性論に対する場の量子論の教科書的レビュー

Field Theoretic Aspects of Condensed Matter Physics: An Overview https://arxiv.org/abs/2301.13234 凝縮物性における場の理論の教科書的レビュー。 125 pages, 380 referencesはすごいね

日々の自分用メモ

結婚精度

結婚制度というのは、別れたくても、そう簡単には別れることができないようにするための制度で、通常であればそういう契約は人権侵害になるので国家(裁判所)が強制的には実現できないところ、憲法24条によって特別に人権侵害が認められているわけですよ。 そういう人権侵害を特別に許してまで秩序を守る必要が、異性同士だけでなく同性同士の場合にもあるかどうかというのが議論になっているわけです。 別れたいと当事者が言っても、国家が介入して簡単には別れさせないために強制力を発揮する制度を用いて、同性についても統制することの必要性ですね。 異性の場合は歴史的にそういう慣習が存在してしまったから、いきなり廃止はできず必要悪だ、とか、異性の場合も結婚制度は廃止すべきだとか、異性の場合にできるのなら同性の場合も平等にそうすべきだとか、進んで婚姻届けを出すのだから当事者の自己責任だとか、色々な価値判断があるわです。 そこに紐づいている社会保障とか税制とかの問題は重要ではありますが、結婚制度「自体」の持つ効果というのは、当事者が別れたくてなってもそう簡単には別れさせないための強制力を国家が提供することなわけでして。

永田雅宜先生の思い出

永田先生はお茶目でちょっとカワイイところのある白髪頭のちょっと無精髭が生えたオジサンというのが私の印象で,いつもニコニコしてらっしゃったのが特徴. しかし,その伝説は数多い.いくらでもあるが... そのうち2つ. 理学部の学生の線型代数と微積分は,理学部数学教室の先生が面倒を見ることになっていた.たしか6クラス中2クラスぐらいはそうだったのではないかと思う. 伝説の線型代数は,永田先生は一般の体上の線型空間で教え,丸山先生は行列環の成分は可換環で教えてたというもの. 丸山先生は確か,環の方が複素数や実数よりも簡単だという理念のもと教えられていたと思うが,割り算しなくてよかったのか定かではない. 私も普通の環の方が複素数や実数よりもよほど簡単だという意見には賛成.分かりやすいかどうかは別.(^^;; 永田先生は線型代数では四則演算しか係数に表れないからというこちらも至極まっとうな理由だったと思う.固有値をどう扱ったのか(拡大体?)は定かでない. どなたか経験者がいたら体験談ゆる募.

もう一つの伝説: 永田先生の科目はほとんどが可で若干の良,優または秀が1,2名という成績評価だったように思う.毎回掲示板に張り出されていた.(そういう時代 (^^;;) ある年,代数学の講義で一人の優を除いてすべて不可になったことがあったらしい. 合格したK中先生が廊下で永田先生とすれ違ったとき「追試をします.君もついでに落としといたから受けなさい」と言われたという.お茶目炸裂. きっと永田先生はK中先生に追試の問題を解いて貰いたかったんだと思う.先生ってそういうものです.

データベースのでRelationとRelationshipの混同

DB 設計における Relation と Relationship の混同を最近でもよく見かけるけど、この間違いがなかなか減らないのは、そもそも名前が似すぎているという問題がありそう。慣習としてそれぞれ関係、関連と訳すけど、こちらも紛らわしすぎる。 リレーションとリレーションシップの誤用に注意

40+ Elegant Books for Designers and Math People

40+ Elegant Books for Designers and Math People Things that are functional yet appealing have good designs. The books you will see below are extraordinary ones. They may seem like coffee table books, but they have the power to inspire your imagination. https://abakcus.com/40-elegant-books-for-designers-and-math-people/

クリエイターやアーティストに向けた文化庁のサービス

【クリエイター・アーティストの方へ】 クリエイターやアーティストに向けた文化庁のサービスが充実しすぎているので、ここで簡単にまとめときますね。 いずれも(裏で)すごい専門家の方々が関わってるのに、すべて無料です。 ぜひ多くの方にご活用いただくのがよいかと! 契約の基礎を知りたい方にはこちら。 「契約とは?」「口約束でも契約は成立する?」「覚書にサインしたら契約したことになる?」など、多くの方が疑問に思うことをQ&Aで解説しています。 さくっと見るだけでも、契約への理解が深まります。 https://bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/faq/index.html 舞台関係者向けですが、すべてのクリエイターの方へ。 わかりやすいテキスト、豪華講師陣のeラーニング、ワークショップ、いずれも無料です。 舞台関係を前提としていますが契約書のひな型(しかも解説付き)もついているという充実っぷり。 まずは①契約入門編にトライを。 https://sites.google.com/onpam.net/keiyaku/?pli=1#h.3nhe59b0skhw 契約などについて無料で相談できる窓口も。 相談員の弁護士の方々は、ふだんはなかなか依頼できない方も… 2月末までとのことなので、ふだん疑問に思っていることや困っていることがあれば、ぜひご相談を。 相談窓口はこちらから↓ https://bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/madoguchi/index.html 契約だけでなく、「フリーランスって?」「社会保障って?」などのベーシックな情報はこちら。 今後、契約や著作権についての情報も追加されていくもよう。 第二東京弁護士会がやってるフリーランス向けの相談窓口の案内も。 https://bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/kisochishiki/index.html 文化庁の回し者みたいになってますが、海老澤自身は文化庁にもこれらの事業にも特に関わっていません。 いずれも素晴らしいサービスなので、ぜひ多くの方にご覧いただけるとよいなと。 こういうサービスって各省庁でバラバラにやってるので、本当はどこかにまとまったサイトなどがあるといいですよね…

Stephanie Ann Houghton, Damian J. Rivers. (eds.) Native Speakerism in Japan

Stephanie Ann Houghton, Damian J. Rivers. (eds.) Native Speakerism in Japan (https://multilingual-matters.com/page/detail/NativeSpeakerism-in-Japan/?k=9781847698681) を楽しく読んだけど、この本には、一般の native-speakerism 論ではおそらく見かけない、かなり特殊なメッセージがある。それは「日本では英語ネイティブが差別されている」(!?) 「英語のノン・ネイティブ・スピーカーが差別されている」の書き間違いではない。 「英語のネイティブ・スピーカー」が日本では抑圧される側だ、というのが特異な部分。 実はこれは謎でもなくて、日本における外国人差別が、英語母語話者に対する差別と切り分けられていないために、こういう一見奇妙な話になる。公平のために記せば、著者のほとんどはおそらく気づいているし、明示的に言及している人も多い。しかし、理論的に整理している人はいない。 まあ、たしかに「伝統的な日本社会」においては、英語の母語話者は、外国籍者であったことはほぼ「伝統的」であったので、この辺の切り分けは難しいのだろうなというのはわかる。「伝統的」な日本社会ではね。 実質的に、在日コリアンをはじめとした「伝統的」マイノリティを排除するために制度化されていた外国人差別が、英語母語話者にも適用されていた面がある、という話は、本書のどこにも書いてなかった。 "Native-speakerism in Japan" とフレーミングすると論点がぼやけるので、「国籍と日本語能力という教職への排除障壁」あたりにしたほうが建設的じゃないかな? 「排除障壁としての国籍」は典型的な外国人差別の話だとして、日本語能力は問題が複数絡んでいるので結構ややこしいですよね。(以下)

0) 日本語力(初歩的なものも含めて)が、「日本社会への忠誠度の指標」として機能することがある 1) 一般論として、現地語の事務能力はどんな社会でも必要 2) その例外のひとつが高等教育。世界には、英語だけできれば事務遂行ができる大学もある。 3) 日本の高等教育は、日本語事務の範囲が支配的

native-speakersim をより理論的に一般化したらしいけど、定義拡張っていうのはやればいいって話ではない。悪い一般化だってあるんだから…。実際、その当然の副作用として、国籍差別的なフレーミングがぼやけてしまっている。/公立学校の外国籍教員 - 株式会社明石書店

機械学習アプリ対策と教育

ありきたりの定量的な問題より、抽象的な○×問題の方がずっと難しい。答えるのが人間でもAIでも同様。記述式の試験が常に○×問題や多肢選択より難しいとか思考力を問うというのは幻想で、思考力をつけさせるには○×問題や多岐選択問題を課すべき。その方が採点も簡単だし。

2023-01-28

数学・物理 通信講座+勉強会の募集開始/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始
  • 円周率の$n$桁目を求める論文
  • 無限次元での級数の収束
  • 倉橋太志, 不完全性定理の数学的発展
  • Paulによる佐藤幹夫お勧め文献集
  • 日合文雄, 行列解析から学ぶ量子情報の数理
  • 田崎晴明さんの第二量子化のノート

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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近況報告

やるやる詐欺になりつつありましたが, ようやく量子力学のための線型代数とその計算の通信講座+勉強会の開講案内を作り終わりました. 先月末から今月は仕事用のプログラミング関係の再学習ばかりで, ほぼ数学らしい数学をしませんでした. 一月も数学を放置していたのはおそらく10年ではきかないのではないかと思います. 勉強会に合わせて私も数学のリハビリをはじめます.

熱力学のノートや, 微分方程式の計算練習ノートなども作りたいですが, 一つずつ潰していくしかありません.

量子力学のための線型代数とその計算, 通信講座+勉強会の募集開始

案内は次のページにまとめました. 言うべきことは全て書いたのでここでは詳しく紹介しません.

募集期間は二週間で2/12(日)までとします. 募集期間が終わったら勉強会の日程を決め, 翌週から本格的に通信講座・勉強会をはじめます. そこから三ヶ月, 5月半ばまで続きます. 参加について何か相談があればメールなどで連絡してください.

申込をしたらメールが送られます. 通信講座の内容だけでなく, 連絡・質疑応答用のSlackやコンテンツ一覧ページのURLもいったんメールで送るため, 迷惑メールを確認してもメールがない場合, このメルマガ用のメールアドレスに連絡をお願いします.

円周率の$n$桁目を求める論文

円周率の10進数でのn桁目を直接(それまでの桁を計算せずに)導く方法が2022年に発見されていたらしい

I just learned that the first formula for calculating the n-th decimal digit of pi (without calculating all the preceding digits) has been found by Simon Plouffe in 2022

上記の論文を見るとわかる通り, ベルヌーイ数などが出てくるため簡単に評価できる量ではありません.

超越数論もやってみたいと思いつつ幾星霜.

無限次元での級数の収束

「条件収束する実級数は項を並べ替えればどんな値にも収束させられる」という世にも奇妙で有名なリーマンの再配列定理は少し変えれば2次元以上へも拡張できます。 ところが、無限次元では、絶対収束しないにもかかわらず、どんなに項を並べ替えても同じ値にしか収束できない級数が存在します。

Levy-Steinitzの定理, Dvoretzky-Rogersの定理ははじめて目にしました. このくらいの基本的な事実でもまだまだ凄まじい現象があるのを知ると, 数学は本当に一生遊べるという思いを新たにします.

倉橋太志, 不完全性定理の数学的発展

数学会の論説に寄稿した解説論文"不完全性定理の数学的発展"が無料でダウンロードできるようになりましたね. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/73/1/73_0731060/_article/-char/ja/ ご興味のある方はぜひご一読ください.

そういえば一点訂正があり,定理48の"IΔ_0 において SC が成立すれば NP ∩ co-NP = P である."は今のところ"IΔ_0 において SC^U が成立すれば NP = co-NP である."までしか分かっていません.

書きかけの超準解析学習録もありますし, 数理論理・公理的集合論も勉強したいと思ったまま幾星霜. せめて超準解析ノートは一通り仕上げたいですが道は遠い. 超準解析は小澤正直さんによる量子系の数理物理への応用もあります.

Paulによる佐藤幹夫お勧め文献集

再掲。佐藤超函数でお勧めの文献は原論文 http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/6027 http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/6031 日本語なら雑誌「数学」 数理研講究録(浪川記)

森本さん「佐藤超函数入門」, 金子さん「超函数入門 新版 オンデマンド版」は、お二方が佐藤超函数を咀嚼した上で著者が自分の言葉で書いているので、それはそれで素晴らしい本なのですが。

現代の教育的な視点からは、金子さんの超函数入門が層係数コホモロジー入門としても読みやすいと思います。超函数までたどり着けなくても勉強にはなります。また、少し値は張りますがジュンク丸善からオンデマンドが買えます。佐藤さん本人の言葉がわかりやすいというのは、私個人の特殊事情によるもの

大分前のPaulのツイートを見かけたので転載しておきます. 森本さんの本は持っていて, これも読みたいと思って幾星霜. やはり場の量子論への応用でいくつか議論があります.

日合文雄, 行列解析から学ぶ量子情報の数理

量子力学のための線型代数とその計算でも重要な本がタイムリーに出るようです. もう家に本を置く場所がないため早くPDFを出してほしいです.

田崎晴明さんの第二量子化のノート

場の量子化、ここでは生成・消滅演算子の説明を含む、としては田崎晴明先生の明快で大変わかりやすいノートがarxivにあげれられています。私はここに書かれていることで物理的に疑問に思う点など全くないです。 Hal Tasaki, Introduction to the "second quantization" formalism for non-relativistic quantum mechanics: A possible substitution for Sections 6.7 and 6.8 of Feynman's "Statistical Mechanics"

高江洲さんによる紹介があったため, 念のためここでも紹介しておきます.

現代数学探険隊を持っている人向けにアナウンスしておくと, 関数解析の章の「ヒルベルト空間のテンソル積」や「テンソル積と対称群: 量子力学的粒子の統計」, 「場の量子論・量子統計のヒルベルト空間論・作用素論」で議論しています.

日々の自分用メモ

Texromancers

日本人ブラケット

mathematics - What is the origin of the "Japanese bracket"? - History of Science and Mathematics Stack Exchange 日本人ブラケットなる概念があるらしい

むしろ素人のほうが「マニアックな売り場」を作れる…国文科卒の書店員が神保町に"数学の聖地"を築くまで 5000冊の数学書が揃う「書泉グランデ」の秘密 #プレジデントオンライン

水道修理検索などで役に立つ検索戦略

[ご案内]凍結で水道が壊れた時に「●●市 水道修理」で検索すると広告がたくさん出て高額な修理代金を請求されることが多いので「●●市 配管 組合」などで検索してみてください。お住いの地域で良心的な事業所が見つかります。 ●●はお住いの市町村を入力してください

マチカネワニ

友人の青木良輔氏は著書「ワニと龍」の中で、中国の龍は想像上の生物ではなく、大阪で発見された化石種マチカネワニが古代中国には生き残っていて、それを龍と呼んでいたと推測しています。 それが証明されました。 An intermediate crocodylian linking two extant gharials from the Bronze Age of China and its human-induced extinction Masaya Iijima , Yu Qiao , Wenbin Lin , Youjie Peng , Minoru Yoneda and Jun Liu Published:09 March 2022https://doi.org/10.1098/rspb.2022.0085 この論文によれば、マチカネワニの近縁種が数百年前まで中国に生き残っていて、人間による刀傷のある骨が古代の遺跡から複数見つかったそうです。論文では、マチカネワニ近縁種が滅びたのは人間によるメガファウナ絶滅の一つということです。 つまり、ワニは古代中国の文明の初期には、生きた生物として、人間に狩られていたことが証明されました。 これは青木氏の主張する、「マチカネワニが中国古代まで生き残っていて、人間が畏怖していた」という説を証明するものです。 青木良輔氏の説は一見荒唐無稽に見えますが、私は初めて聞いた時、「龍虎合い討つ」という成句が凄くリアルに思いました。つまり、龍はトラ程度の動物だったのです。 これはアフリカのライオンとナイルワニの関係に似ています。 竜巻を引き起こすような想像上の動物ではあり得ないです。 青木説は正しいに違いないと思いました。 それが証明されて本当に嬉しいです。 論文で、マチカネワニの学名はToyotamaphimeia machikanensisとなっています。この属名は青木氏がこれは新属であるとして記載した属名です。 この論文ではその分類学的な重要性も示しています。 この論文は昨年の3月に発行されたようです。 彼がコロナに罹る前なので、彼自身も喜んだでしょう。 残念ながら彼はコロナで亡くなりました。 生きていれば、まだ多くのことがなされたと思います。 残念です。 彼の著書、青木良輔著「ワニと龍」平凡社出版、2001年

研究ネタに悩んだときは20-30年前の文献を読もう

1980年代の古井先生「研究ネタに悩めば、20〜30年前の論文を読めば良い。計算機が発達する前の論文には、人間の創造力に溢れた内容が沢山ある。」

古井先生の著書 > AI時代の大学と社会-アメリカでの学長経験から-

論理学の教科書

大西論理学、意味論で様相論理や直観論理を記述してそれらの間の関係まで詳しく書いていて、邦書ではなかなか類がないのでガチでオススメです。 入門書とは言いがたいのはそうだけど……。 RT

昨日ある人に「論理学入門一歩「前」みたいな本書かないんですか」みたいなこと言われて、なるほどなあと思った。まあ出してくれる本屋があればね。去年出した本は完全に論理学入門一歩「後」。

塾の経営者の話

塾の経営者の話が面白かった。 「昨今はプログラミング教室が活況に見えますが、都会の一部だけの現象です。塾の市場規模は1兆円ありますがプログラミング教室市場はわずか200億円。伸びてはいますが全体の50分の1でしかありません。これはプログラミング技能を測ることが難しいということが背景にあります。偏差値や大学合格実績などで親が子供にプログラミングを習わせる"成果"を実感できないと、継続的に通わる動機が弱くなるんですよね。プログラミングの重要性を理解している親でも、子供のプログラミング能力の成長を測るのは容易ではない」

「少子化で塾市場は縮小するといわれてきましたが実際は増加傾向にあります。これは少子化に伴って一人当たりに注げる教育費が上がったからであり、父親だけがポケットだった昔と異なり、今は父母と祖父母の6人がポケットになっているからです。シックスポケット論といいます」

「塾に通う比率の増加も市場規模の増加に寄与しています。昔は塾に通う子と言えば進学目的という意識が強かったのですが、今は公立の学校の授業についていけるようにする目的での塾通いが増えています。一種の学童のような目的で通わせる家庭も多くなっています」

「私はサラリーマンの不自由さが嫌で辞めて塾を始めましたが、塾の自由度は意外にもかなり小さいとわかりました。教育指導要領を超える範囲の指導は保護者から全く求められていないので、実質的には文科省の指導にガチガチに縛られます。あの指導要領の影響力は民間も含めて極めて大きいですよ」

「複数の教室を運営するなら、塾長を雇う目がとても重要になってきます。塾長は年収400万円で雇えるのですが、これは塾の経営に必要な資格は何もないのでどんな人でも応募できるからです。だからこそ玉石混交で、"資格がないせいで埋もれている才能"を見つけなければなりません」

「学習サポート塾と進学塾では固定費の考え方も違います。公立学校の学習サポートであれば大学生のアルバイトでもできるので講師費用は変動費です。でも進学塾となるとハイレベルな講師を正社員で雇わなければなりませんから固定費の桁が一つ上がります」

「最近は百貨店が塾と提携する動きがあります。なぜだかわかりますか?塾自体は大して儲かりませんが、固定客になるんです。塾は一度通うとなかなかスイッチしません。百貨店は別の店でも同じ商品が手に入るのでスイッチが容易です。逆に塾は知名度と集客力が弱い。互いにシナジーがあるのです」

$\sqrt{2}$の無理性証明

TeXでのSI単位の書き方: siunitx パッケージ

1
2
\usepackage{siunitx} %% SI単位系の出力
\SI{数値}{単位}

Counterexamples in algebra

Counterexamples in algebra https://ncatlab.org/nlab/show/counterexamples+in+algebra

Mark Hunacek, Combinatorics and Finite Geometry

"covers an astonishing amount of material [...] a third or fourth year class in combinatorics or discrete mathematics from this text seems perfectly reasonable" Good book review by Padraig O ́Cathain in the Irish Math Soc. Bulletin https://irishmathsoc.org/bull90/wef/Reviews/OCathain/OCathain-wef.pdf

"an instructor looking for a text for a somewhat unusual combinatorics course should certainly take a look at this book" @maanow review of Steven Dougherty's 'Combinatorics and Finite Geometry' by Mark Hunacek: https://bit.ly/3CSjexR Book: https://bit.ly/3p5DLKq @SpringerMath

composerizeでDockerコマンドラインをdocker-composeファイル形式に変換する

おかしい人からは早く逃げよう

頭のおかしい女性が向かってきたら逃げてください。

相手が出してくるのが猫パンチか刃物かは受けるまで分かりません。

我々は男性に「殴り返してはいけない」というより先に、「逃げろ」と言うべきです。

今の日本には「女から逃げるな」の呪詛めいた社会圧があり、戦うか逃げるかの選択肢が実際は一択であることも少なくないでしょう。特に男性だと、女相手に逃げたなどという理不尽極まる不名誉を押しつけられる可能性と、相手の女性が単なるイキリでそのまま制圧できる可能性を、天秤にかけてしまう場合があるのではないでしょうか。 一般通念として男性の第一選択が「逃げる」になってほしいと思います。 女性が加害者になった暴力の実際の事例

これだけでは何なので、アメリカで起きた、女性加害者のDVがエスカレートし殺人に発展した事例を紹介します。

A2. おかしい人に半端に「やりかえされる」ことを学習させてはいけない この手の暴力的な人間は、相手を支配して思い通りにすることしか頭になく、やり返されると先手刃物が圧倒的に有利になることに気づく。 顔見知りなら武装して報復に現れることもある。

では逆に、どこから反撃して良いのか? みんな大好きアメリカには、武装者が建造物に侵入してきたときの行動指標として「RUN, HIDE, FIGHT」というものがある。日本語訳すると「まず逃げる、次に隠れる、それもだめなら戦う」というものだ。 この「戦う」を選択するときには「はさみや先端の尖ったもので突く」「消火器で後頭部を奇襲する」といった、相手に致命傷を与える可能性が高い行動が推奨されている。 反撃するならここまでやれということでもあり、ここまで追い詰められたときでなければ反撃は最善策ではない、ということでもある。

キャットハウスに頭を突っ込んで寝る

最近、IKEAで買ったキャットハウスに頭をつっこんで寝ている。バカみたいに見えるけど、これがとてもいい。

・頭まわりの温度と湿度が保たれる ・鼻やのどの調子がよくなる ・ほどよい遮光性

睡眠の質が明らかにアップ。ここに至るまでには変遷があった。(続く)

その結果がキャットハウス。たぶんファイナルアンサー。「LURVIG」という商品で1499円と手頃。最初と色違いなのは、ひっくり返してピンクにもできるからです。 布団に潜って足先が飛び出すクセも解消。バカッぽいビジュアルは自分には見えず自尊心もオッケー。すごくいいです。(かぶりもの話おしまい)

DI: new is glueと疎結合

IRの海外用語

こ、こ、これはすごい!!「売上/利益」を英語ではSales/Revenue/Earnings/Profit/Income/Gainのうちどれを使えばいいのか迷うことがある人は必読です。辞書を引いてもわからないこの使い分けを、単複の文法も含めて1万5千字で詳述されています。これがタダなのは完全なミスプライス。2千円払いたい。

IR系アドベントカレンダー、最終日🎄を担当させてもらいました。テーマは思いっきり実務・実用的にし、海外IRで必須の用語についての解説です。IRはもちろん、コミュニケーション全般に通じる内容にしていますので、よろしければぜひご一読を。 https://irisjapan.exblog.jp/29454127/

アンハッピーエンドとバッドエンド

どうしても主人公が死ぬ悲劇を書きたい人が後をたたないので,せめて「アンハッピーエンド」と「バッドエンド」の区別はつけて欲しいって話.別にアゴラの雑談で話す分にはどっちがどっちでもかまわないのだけど,ディオニュシア祭での上演を考えているなら詩人は明確に認識しておいたほうがいいです

FsLab, FSharp.Stats

2023-01-14

数学・物理 解析系数理物理100本ノック/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 次の通信講座
  • 荒木先生の訃報
  • 佐藤幹夫の訃報
  • IAMPのセミナー
  • まだ燃えるかけ算の順序問題
  • 競技プログラマーハンドブック
  • 野海正俊, 「Macdonald多項式入門」の講義録
  • 論計舎, 自然演繹100題ノック
  • pythonで学ぶ計算物理
  • 雑誌「数学」の過去の記事の電子版
  • いろいろなAI活用

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  • 今回のページ
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近況報告

去年末, Packtの一冊5ドルキャンペーンもあって, ずっと仕事関係のプログラミングの勉強をしています. 特にここ数日は現代数学探険隊の改訂の手も止めている状態で, ふつう数学と言われるような活動は全然していません. こんなに長期間, 世間的な意味での狭義の数学をしていないのも久しぶりです.

ちなみに, 興味がある人がどれほどいるのかわかりませんがC#(.NET)の勉強をしています. JavaScriptで作っていたコンテンツがありましたが, エコシステム的な意味でJavaScriptがあまりにつらいです. 競プロはF#でやっているわけで, いっそ.NET系でBoleroによるWASMだとどうかと思い, 情報が少ないからとりあえずC#でBlazorを調べてみるかと思ったら, 衝撃的なほど情報が多かったため, とりあえずしばらくC#系で攻めてみようと思って改めて一から勉強しています. 勉強会でもC#/F#

それはそれとして年末年始は本を含めて久しぶりにいろいろ買いました. それで改めて思ったのは, やはりモノを買うのは楽しいです. 上で書いたようにPacktで本をたくさん買ったのもさることながら, 少なくとも私はまだしばらくリモートワークが続くため, プログラミング環境をよくするためケンジントンのエキスパートを買いました. 前にガジェット好きの先輩がいて, 新しいトラックボールを買ったからとしばらくお古を使わせてもらったことがありました. 大きなディスプレイ二枚で作業していたため, トラックボールは非常に快適だった記憶があります. 久しぶりに使ってみてやはり快適で楽しいです. ちょっとした作業を楽しく快適にしてくれるモノはやはりよいですね.

トラックボール以外に本を買い込むのも楽しいですね. そして久しぶりにたくさん買って雑にざっと眺めるタイプの読書をしました. ここ数年, 気合を入れて読むタイプの数学の本ばかりで雑な読書をしていませんでした. 乱読の意味でも久しぶりのことをいろいろやっています.

何はともあれ, 年末年始は久しぶりにたくさん本やモノを買って異様にワクワクしていました. プログラミングの再勉強でもASP.NET Coreが思ったよりもいい感じで, Web開発関係でも久しぶりのワクワク感を感じています. いま次の通信講座の案内を練り込んでいますが, こういうワクワク感をもっと感じてもらえるようになったいただろうかという反省があります.

次の通信講座

仕事が立て込んでいて作業がなかなか進んでいないのですが, とりあえずは「量子力学のための線型代数」の続きです.

今回もまだ引き続き数学の話です. もちろん物理, 特に量子力学的なモチベーションの話は随時入れる予定です.

近況でも書いたように, 年末年始のプログラミング環境整備と本の買い込み・勉強で久しぶりにワクワク感のある勉強をしました. どうしても勉強するのが大変な数学・物理という点で, つらさをやわらげるためにもゆるく長く続けようというばかりで, 楽しもうという話を積極的にしてこなかったのを反省しました. まだ量子力学のための線型代数編さえ終わっていないのにこんな話をするのもアレですが, 物理系の人の楽しみに応えきれていないというのも前からずっと思っているため, そろそろもっと物理に踏み込みたいと思っています. もちろん数学レベルを揃える必要もあるため数学的な補足もいろいろ入れないといけません.

熱力学や(特殊)相対性理論の講座もやりたいのですが, これはまだ私の準備が追いつきません. そこで数学色が強めかつ物理にももっと触れやすい方向性として, ベクトル解析や具体的な偏微分方程式の解法といったあたりをやろうかと思っています. もしかしたら一月ごとに「今月はラプラス方程式」「来月は熱方程式」みたいな形にするかもしれません. そしてもう一つポイントにしたいのは, 既存のプログラミング講座のコンテンツを無料でつけようと思っています. すごくいいコンテンツと思っているものの, ちょっと孤立していてうまく活用しきれていない反省もあります.

簡単な計算でも実際眺めると面白い計算がたくさんあります. 例えば熱方程式の時間無限大極限でラプラス方程式の境界値問題の解が得られます. 一次元だと実装も比較的簡単です. しかし指数定理の著名なルートの一つ, 熱核の方法でも一つのキーになる振る舞いです. 直観的にも厳密解としても簡単に解ける一方, 数値的にも解けて眺めていて楽しい問題で, この辺を数学・物理・プログラミングの三方向から攻めるのもかなり楽しいのではないかと思っていて, いい加減これもきちんと形にしたいところです.

まだきちんとコンテンツの形にまでは練り上げられていないものの, まさに量子力学用の線型代数学習コンテンツ整備時に使ったSymPyによる行列計算プログラムなどもあり, プログラミングコンテンツにはSymPyの使い方も載せているため, その点でも意味があると思います. 次回の量子力学の通信講座にもプログラミング講座のコンテンツを無料でセットにする予定です. もしプログラミング講座を買おうと思っている人がいれば, ぜひもう少し待って通信講座に参加する形で購入してください.

荒木先生の訃報

01/10: 荒木不二洋先生が昨年12月に亡くなられたとのことです.大変お世話になりました.ご冥福をお祈りします.

場の量子論・量子統計力学の数理物理の草分けであった荒木不二洋先生がなくなったそうです. 分野がもろかぶりの大巨人です. 話したことこそないものの学会で見かけたこともあります. 最近, 現代数学探険隊の集合論の再整備をしていたら, 作用素環から大量に例を引っ張っていて, その中でも荒木先生の話を何度なく紹介していました. 作用素環は学生時代の紙のノートはあり, 一時期TeX化しようかと思いつつ, あまりに面倒で断念した記憶があります.

荒木-Woods, 荒木-Wyss表現, 相対エントロピーなど直接使ったり考えたりしたモノもたくさんあります. 私の大学院時代を彩る強烈な思い出がたくさんあります.

佐藤幹夫の訃報

2023年1月9日、京都大学名誉教授・佐藤幹夫氏が亡くなられました。94歳でした。超函数の理論、超局所解析、概均質ベクトル空間、ソリトン理論など幅広い分野で世界の数学をリードされ、代数解析を現代に甦らせました。

荒木先生がなくなったのか, と思った矢先に佐藤幹夫もなくなったという衝撃ニュース.

Twitterでも呟いたのですが, 荒木先生も佐藤幹夫もためらいなく呼び捨てにできるほど二人とも偉いものの, 荒木先生は分野まるかぶりの上, 直接見たこともあって自然と先生呼びになっています.

学生時代の憧れも遠くなりつつあるのかという感慨に浸っています.

IAMPのセミナー

場の量子論のフォック空間上での散乱理論の研究を代表する先駆者は2人なのですが、そのうちの一人 は Jan Dereziński 先生です。そのDereziński先生のセミナーがあるそうで、 講演題目は Dirac-Coulomb Hamiltonians となっています。

The 2023 season of the One World IAMP Mathematical Physics Seminar starts tomorrow with Jan Dereziński's talk. I hope to see many of you at the seminar! https://www.youtube.com/watch?v=oRtT9r085AA

YouTube channel もかなり充実してきました。 https://youtube.com/@iamp_seminars 是非ご活用ください。

YouTubeで講演の動画が公開されています. 他にもいろいろあるようなので興味がある方はぜひ眺めてみてください.

高江洲さんのコメントにもあるようにDerezińskiは巨人です. 私の場合だと非平衡統計での平衡への回帰, それに関わる荒木-Woods表現・荒木-Wyss表現に関するまとめPDFでかなりお世話になりました. 平衡への回帰問題ではDerezinski-Jaksic-Pilletのレビューの論文で, 荒木の相対エントロピーを勉強した思い出があります. 短いもののよくまとまっていて非常に勉強になりました.

プレプリント版と思いますが, 次のところに置いて(?)ありました.

学生時代の, ゴリゴリに不等式処理の腕力もあった私と同レベルにないと読めたものではありませんが, さすがに証明はないものの, 冨田-竹崎理論の大事な定理もカバーされています. 20年前ではあるものの, 少なくともその時点での量子統計・場の量子論での作用素環の応用の様子が見えるよい論文です. 興味があればぜひ眺めてみてください.

まだ燃えるかけ算の順序問題

あと本の帯に「大学生の10人に1人が40-16÷4÷2を間違えた!」とでかでかと書いてるけど、こんなん思考力の問題でも何でもなくて、ただの数学の世界のシンタックスの問題でしょ?文法が覚えられてるかどうかだけじゃん。こんな基本的な解釈ができないのはそれは大変な問題だけど、論調にまるで合わないぞ

この手の「÷記号を含む計算式の解釈」をめぐっては同工異曲の煽りが頻繁に出てくる。そんなの分数式で書くなり括弧を使うなり解釈のブレをなくすように書くのが当然で、解釈にブレが生じてる時点でそんな式はゴミ箱にブチ込むべき。 芳沢氏の論には総論賛成ではあるけどねぇ。。。

これを見て改めて思ったので自分用メモ: 確かにかけ算の順序で「割り算で困る」という人に対して, そもそも割り算の小学校での記法自体が問題で, 全て分数表記と積に揃えれば困らないのはそれはそう.

競技プログラマーハンドブック

「競技プログラマーハンドブック(Antti Laaksonen氏著)を翻訳・公開しました 基本的テーマから発展的テーマが300ページ超に渡って記載されており目次を見るだけでも興味深いハンドブックです。 「こんなのあるんだ!」という皆様のわくわくの助けになれば幸いです。 https://raw.githubusercontent.com/recuraki/cphb-ja/master/book.pdf

解けるのはわかったがどう解説を書いていいかわからない問題に出くわしたため, 競プロも毎日解いているものの最近解説を作っていません. 鉄則本を買った方がいいのでしょう. いまの.NET学習が一段落したら買って読みたいですね.

野海正俊, 「Macdonald多項式入門」の講義録

以前言っていた, 野海 正俊さんの集中講義「Macdonald 多項式入門」の講義録が公開されました. https://omu.ac.jp/orp/ocami/publications/preprint-series/2022/ よろしくお願いします.

自分用メモ+シェア.

論計舎, 自然演繹100題ノック

自然演繹100題ノックという教材を作りました。論計舎web shop https://quawai.stores.jp より無料にてDLいただけます。 証明可能な論理式に関する自然演繹の証明図を100個書いていただこうという趣旨です。 ぜひ挑戦してください。 https://quawai.stores.jp/items/62f22a41

解析系数理物理100本ノックみたいなコンテンツほしいですね.

pythonで学ぶ計算物理

物理 pythonで調べて一番上にかかるのが、岡大のサイトなんだけど、やはりレベルが高い http://physics.okayama-u.ac.jp/~otsuki/lecture/CompPhys2/index.html

何となくC#/F#系の数値計算コンテンツも作ってみたいとは思っていますが, そもそも数値計算がとにかくつらいので二の足を踏んでいます. PythonだとMatplotlibがあり, Juliaもデファクトでいろいろある一方, お絵描き系をどうするかでかなり困ります. 一応SciSharpでMatplotlibラッパーもあるのですが.

PDEはつらいものの, 格子系ならもう少し楽にやれそうな気もします. 時間がなかなか取れませんが, やはりいつかきちんとコンテンツを整備したい野望だけはあります.

雑誌「数学」の過去の記事の電子版

雑誌「数学」の過去の記事の電子版がたくさん公開されていることに気づいた https://mathsoc.jp/publication/dbase/sugaku/index.html

これも自分用メモ+シェア.

いろいろなAI活用

日本企業でAI導入が進まない・効果が出ない理由として、「データ基盤がないからAIも作れない」もありつつ、単純に「AIを使ったユースケースを(世の中には事例があるのに)思いつけていない、思いつける人がいない」もそれなりに支配的と思います。

ChatGPTの使い道を思いつけてない、思いつける人が少ないのも日本で普及が進まない理由だと思う。世界でChatGPTに対する関心度が64%に対し日本では17%しかない。順位で見ると64位。同じアジア圏でも台湾や韓国がそれぞれ30位と33位になってるのを考えると日本での関心がどれくらい低いのかがわかる。 ChatGPTは公開から5日で利用者数100万人を突破して、ニューヨーク市では学習に対する悪影響を理由として学校での利用を禁止してる。裏を返せば、それほど多くの子供たちがChatGPTを使っていること。一方で日本ではほとんどの子供たちがChatGPTの存在すら知らないと思う。

確かに遊んでみたいと思いつつ, 実際に何でどう遊ぶといいか何も思いつけていません.

日々の自分用メモ

いろいろな教育

いつだったか堀江貴文さんが寿司屋で10年修行なんて無駄、学校やYouTubeで学べば1ヶ月でできるとおっしゃていました。 彼の様に頭が良く、行動力がある人にとってはその通りかもしれませんが、世の中には家庭に問題があったり、本人が逃げてばかりで15.16歳くらいからカタギ社会からはみ出してしまいそうな若者を真っ当な大人に育てる器が社会にあったんです。 だから就業でなく修行と言ったわけです。 優秀な人間を前提とした行き過ぎた労働者保護や労働環境の効率化はこういったダメ人間矯正施設である商売を尽く潰し、大資本の非正規雇用や使い捨て請負業従事者を大量に生み出し、中年になっても家庭も待たず、家も自分の商売も持てない人間だらけにしました。 寿司屋に限らず、10年修行しろの裏には、商売をする上で必要になる社会の仕組みや周りの人たちとの接し方を教え、本人に社会的信用をつけてあげる為に必要な期間なのであり、修行を終えた時、大将の口利きがあれば多様な業者との繋がりを持て、独立資金等も借りる事ができたのです。 卑近な例ですが、15歳でウチの店に来て、複雑な家庭環境ゆえに一度高校中退し、夜間高校に通いながら10年ほど働いていた若い子が今は立派に社会人として頑張って働いています。 手前味噌ですが、その子に先日会った時、15の時、社長のところに行かなかったら自分の人生、どうなっていたかわからないと感謝されました。 私は特別なことは何もしてませんが、現場のスタッフが時には厳しく、時には優しく話を聞いてあげたりしてちゃんと育ててくれていたんです。 そんな弊社もこの3年で人を雇うことが難しくなってきました。若い人を育てるには責任が生じますから、続ける事ができるかわからない状態で受け入れられません。 10年なんて無駄と言い、飲食というだけでブラックという前にどうか我々みたいな零細飲食には色々な事情があることを知っておいて下さい。

【ホットサンドメーカーで作る太宰府名物 梅ヶ枝餅】

  • URL
  • 1.お餅2つを短冊切りにしてお皿をつくる
  • 2.お皿に入るくらいのあんこを入れる
  • 3.さらにお餅2つを使いあんこに蓋をする
  • 4.弱火で焦げ目が付くまで焼く
  • 5.外パリ! ウマウマ(´ω`)ウマウマ(´ω`)

記者のためのオープンデータ活用ハンドブック

この種のスキルは、体系的に学ぶどころか、調査報道の先細りで組織メディアのOJTですら雲行きがあやしくなっている。 個人的には、取材・調査技法のアップデートが止まってしまう中堅以降の記者こそ手に取ってほしいと思いました。

ゲーミングチェアならぬゲーミング座椅子という新提案。ゲームに仕事に読書に昼寝に最高すぎるんだ

デザイン素人に贈る、UIディレクション10個のポイント

Linux Foundationが「法律専門家のための WebAssembly ~ ライセンス・コンプライアンスにおける現在のパラメータを探る」日本語版ドキュメント公開

人事はテックブログを監視すれば社員の転職活動を見抜けるので、対策を考える

2022-12-31

数学・物理 自らの苦痛を解決する/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 式の読み上げ
  • ゆるふわ情報共有のすゝめ
  • 量子コンピューターを作るための参考文献

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  • 今回のページ
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近況報告

ここ一月, なかなか数学をやる気が出ず, 仕事関係の勉強もたまっているため, 現実逃避気味にデータ構造とアルゴリズムの勉強, 特に競技プログラミングばかりしていました. ここ最近一つに集中しすぎるのはよくないとずっと言われているため, 来年(明日)からはもう少しゆるく広く進めようと思っています. ここ半年ほどまともに語学・言語学も勉強できていません. 来年はもっとゆるく広く手がけるのを目標にします.

いま会社でも一人プログラマーで, 自社仕事に関して技術相談できる人もおらず, 競プロは競プロで相談できる人がいません. 数学や物理ではとりあえず相談できる人がいるのと比べると精神的なきつさが違います. この苦しさを何とかして解決するべく自分自身行動とこれまでとは違うタイプの行動が必要なのを実感します. そしてメルマガ執筆に関わる数学・物理系の活動でも, 他の人達のこうした苦しみにこたえないといけないのを改めて実感しています.

競技プログラミングの勉強でありがたいのは, やはりAOJなりAtCoderなりの自動採点システムです. 入力例では通っても他のデータで通らない場合はよくあります. 大量のデータでは遅くて仕方ない場合もあります. これらをチェックしてくれる勉強の仕組みは本当に偉大です. あとは適切な質と量の問題の必要性も痛感します. やはりある程度の量の問題に取り組まないと身につきません. 問題演習系の通信講座+勉強会は継続的に実践しなければと思っています.

現代数学探険隊の改訂も少しずつ進めています. 集合・位相・実数論を中心に, 数学系の通信講座・勉強会も開きたいですね. この人集めも来年の課題です.

式の読み上げ

現代数学探険隊をブラッシュアップしていて復習の仕方として挙げていました. 特に一定程度英語文献にアタックしなければならない状況もあるため, 英語への慣れも含めて書いた話です.

これはこれでよい取り組みと思っています. ただ独学しているとそもそも式の読み方がわからないでしょう. それを伝える必要があります. 既に世の中には「式を(英語で)どう読むか」といったコンテンツもあるにはあります. ただし本の数は少ないというか一冊しか知りません. そもそも英語の数学・物理・プログラミングの文献を読むための勉強会なども必要な気がしています. どこからどう攻めるか悩みの種です.

ゆるふわ情報共有のすゝめ

先日(確か)Discordでの数学徒向けプログラミング自助コミュニティを紹介したと思います. 私も主に次のようの目的で勉強会・コミュニティに参加・運営しています.

  • 一人ではやらないがゆるく細く長くチェックが必要なテーマがある.
  • 一人だとつらいため複数人を巻き込んで強制力をつける.
  • 一人だと情報を集め切れないため, 個々人の興味に応じてゆるふわで情報共有する・してもらう.

最近だと一般のAI応用的な話, ウェブ関係の話をするコミュニティに所属してゆるふわ情報共有をしています. 来年は私のメインである数学・物理・プログラミング・語学でもゆるふわ情報共有コミュニティ作りたいですね. 何をどうするといいか見えきっていないため具体的には何もできておらず, 上記のコミュニティ所属もその様子を掴むための調査も兼ねた活動です.

量子コンピューターを作るための参考文献

量子コンピュータ作りたいって人にいつもすすめる参考文献

  • ・Qmedia
  • ・藤井先生著「驚異の量子コンピュータ」
  • ・量子技術教育プログラムの動画達
  • ・Quantum Native Dojo
  • ・清水先生著「量子論の基礎」
  • ・ニールセン・チャン

ニールセン・チャンはとくに1,2,4章を。これ読んでも量子力学が納得できなければ清水本。7章は古いのでQmediaのハードウェア記事と量子技術教育プログラム動画で補足。5,6章のかわりにDojo見ればユーザがどう使うかも勉強できる。誤り耐性は"Quantum Computation with Topological Codes"でマスター ハミルトニアンからゲートにするまでのテクニックはバンデルサイペン・チャンのレビュー。NMRじゃない人にこそ知って欲しい内容。 https://arxiv.org/abs/quant-ph/0404064 まぁでもここであげた全部を読み切っちゃう前に研究室の門を叩くのをオススメします。結局、目の前でラビ振動見るのが一番早いんだよなぁ。 量子コンピュータを作りたい人のために特化した授業がしたいなぁと思ってたところ、大阪公立大学の @ayumu_sugita さんから集中講義の依頼があったので引き受けました。2月6日〜8日なので、年末年始に準備を頑張っています。 途方もない作業で終わるのかとかなり焦ってたけど、久しぶりに一つのことに集中できててとても楽しくなってきた。自分の知識の全てを伝授できたらととにかく詰め込んでみる。授業の名前は「量子情報工学」と「量子制御工学」のどちらが良いかな(大阪公立大には違う名前で登録した気がするが。。。)

必ずしも量子コンピューターの議論はしませんが, ニールセン-チャンの二章は来月リリース予定の通信講座・勉強会のテーマです. 実際ニールセン-チャンの二章は量子力学・量子条件をモチベーションに線型代数が勉強できます. 非常にお勧めです. 翻訳もあるとはいえ読み切れる自信がない人はぜひ通信講座・勉強会を楽しみに待っていてください.

日々の自分用メモ

AIの進化はSEO・検索順位・広告・EEATとかすっ飛ばしてネット検索は次の時代に突入している?

【点訳版・PDF版】数学&情報処理点訳ガイドのダウンロード

「Rustでやると知らないうちに詰む設計」を避けるためのTipsを集めてみる

完全なくじ引き読書法を実践するためのWebページを作った

国立国会図書館のデジタルコレクションの大幅バージョンアップ

本日から、国立国会図書館のデジタルコレクションが大幅バージョンアップされています。全文検索可能な資料が5万点⇨247万点に拡充され、また類似画像の検索機能が付加されました。https://ndl.go.jp/jp/news/fy2022/__icsFiles/afieldfile/2022/12/02/pr221202_01.pdf

【証明にミスがあった模様】: 四色問題をコンピューターなしで解いた可能性のある論文

え?これ、マジならすごすぎん?? 四色問題をコンピューターなしで解いた可能性のある論文が提出されたぞ https://arxiv.org/abs/2212.09835

7 Tips for Building a Good Web API

線形代数演習講義へのjulia導入を考える

こういう教育現場で導入されるの素晴らしい。 https://mti-lab.github.io/blog/2022/12/22/julia_linear_algebra.html

情報幾何

情報幾何 フリーダウンロード公開中 #期間限定 (12/31迄) 古畑仁 (北海道大学教授)著 「統計部分多様体の微分幾何学を目指して」 Perspective Statistical Submanifolds Differential Geometry DoublyMinimal HalfACenturyOfInformationGeometry

開成高校の中高生向け講義「位相的場の理論への誘い」の講義録

開成高校の中高生向け講義「位相的場の理論への誘い」の講義録が公開されました。録画からの書き起こしで丁寧にタイプしていただいたので、予想以上に臨場感のある講義録になったと思います。大雑把な話ですが予備知識はあまり必要ないので中高大生はぜひ読んでみてください。 https://kaiseigakuen.jp/wp/wp-content/uploads/2022/12/2021Yamazaki.pdf https://kaiseigakuen.jp/about/contents/feature/mathematics/には他にも二つの講義録[2017 年度] 有限体上の方程式を通して見る現代整数論(三枝洋一先生)[2018 年度] 結び目理論の圏論化(伊藤昇先生)が掲載されています。

2022-12-25

数学・物理 祝・競プロ入門300題一周完了/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 思考力より試行力
  • 数学ノート(現代数学探険隊)の整理
  • 自分自身の双対空間と等距離同型で非回帰的なバナッハ空間の存在
  • 証明手法を軸にした議論の展開
  • 独断と偏見による逆数学のすすめ
  • 物理の理論構造, 孤立系と相互作用系・散逸系
  • 素粒子・場の理論の教科書

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近況報告

体調自体は問題ないものの, 新型コロナ感染による生活リズム崩壊の余波は続いています. ここ数日会社仕事用の勉強で慌てているのもあるのか, 数学をやる気が出ません. そこで今年中にとにかく一周終わらせようと思っていたAtCoder Problems300題を進めていて, 今日一応終わりました. ハードはほぼ自力で解けていません. 来年は実際にコンテストでAtCoderのABCのC/D程度まで解き切るのを目標にしようと思っています.

あとこれは読者のあなたにもお勧めしたい話として, いわゆるアウトプット系の学習がやはり大事です. AtCoder Problems300題については来年以降に向けて解説を作りはじめました. やはり解説を書くと曖昧な箇所をいい加減なままにしていてはいけない圧力が加わります. もちろん一題あたりの時間はかかりますが, その分明らかに一題一題への踏み込みと理解が上がるのを実感します.

思考力より試行力

森の未知さんがまたいいことを言っているため紹介します.

和田秀樹の暗記数学本には「思考力(しこうりょく)よりも試行力(しこうりょく)」的なことが書いてあったように記憶しているが、あれは数学学習・教育における不変の真理だと思う。 例えば、「ある実数xが存在して、任意の負の数yについて、x+y<0」という主張の真偽を判定させるとする。 すると、様々なxについて「任意の負の数yについて、x+y<0」を判定するわけだが、xが0以下なら良いと気付くまで試行できるかがこの真偽判定できるかの分岐点となる。 「数学」とか「数理」の付く学科で習うような高等数学での躓きは、このような施行ができないことによるものが多く、巷で思われているような抽象的な思考能力は大して重要でないのが実感。 で、試行力を支えるのは処理能力で、一回一回の試行を素早く正確にできるかが本当に大事。 大学数学で苦労するタイプの学生に上の問題を指導すると、具体的なx(例えばx=1)について「任意の負の数yについて、x+y<0」が正しいか判定するのに異様に時間がかかることに気付く。 もちろん、そんな処理能力ではxが0以下なら良いと気付くまで試行回数を稼げずに途中で匙を投げることになる。 試行回数を稼ぐための粘り強さも数学学習においては重要であるが、教育者の観点では処理能力の方が後天的に伸ばしやすいので、処理能力を意識的に鍛えさせることは重要となる。

ちょうど今日も競プロの解説を書いていて, よくわからなかったアルゴリズムに対して解説を書いていて, それを理解するために具体例を作っていたりしました. この構成力は数学でも非常に重要です.

処理能力で試行スピードと正確さを上げる話も, TwitterのJuliaコミュニティで数式処理・記号処理の話が出ていて, 自分の手計算が信じられないからSymbolic.jlをうまく使いたいという話をしている人がいました. 以前書いたように, 私もリー群学習時, 行列の対数計算(予想)でsympyを使ってゴリゴリ計算していて何て便利なのかと感銘を受けたのを思い出します. こうした点でも数学学習にプログラミングをうまく活用して試行力・スピード・正確性の共存を目指す取り組みは引き続き来年以降のテーマです.

数学ノート(現代数学探険隊)の整理

現代数学探険隊の位相空間論と実数論を整理していて, ノート整理方針が固まりつつあります. 以前の記述もブラッシュアップしつつ全体に手をつけています.

いまは改めて先頭の集合論から進めています. 「自分がこんなのを知りたかった」と思った記述を散りばめているため, 読んでいてとにかく楽しいです. いま進めている競プロ解説でもお気に入りのF#布教の側面があり, いいと思ったものはもっときちんと勧めないといけない, お蔵入りさせるのは損失だと改めて思っています. 現代数学探険隊ももっと広めるために来年は久しぶりに広告なども使おうかと考えています. 通信講座・勉強会にももっと人を増やしたいのもあります.

私が参加している語学のコミュニティは数ヶ月ごとに新しい人が入ってくるのもあり, 各国の言語に関して数ヶ月ごとに同じ基本的な内容を勉強しています. そしてそこまでゴリゴリに勉強・暗記をしているわけではないため, 毎度の復習がルーティンになっているのがかかなり助かっています. 必ずしも専門でもない基本的な内容を定期的にゆるく復習できる機会を作る重要性を実感しているため, 通信講座・勉強会でもこの辺のメリットや楽しさをどう打ち出すかが鍵で, これも来年の課題です.

ちなみに整理していて実数論や位相空間論で次のようなネタが出てきています.

  • $p$進数
  • コイン投げの空間とポーランド空間
  • 不動点定理

確率論ノートは多少埋めたものの, ポーランド空間がゴリゴリ出てくるようなところまでは書けていません. 不動点定理もよく使われる微分方程式系統の議論はまだまだ道半ばです. $p$進数・$p$進解析にいたっては全くノータッチです. 超距離不等式由来の$p$進関数解析の変な性質は恐ろしく扱いづらいものの, いままでに見たことがない位相空間論・距離空間論としても楽しみで, 改めて勉強意欲がわいてきています. 早くノート整理して, 幾何関係のノート作りも一段落させて解析学がやりたいです.

自分自身の双対空間と等距離同型で非回帰的なバナッハ空間の存在

単純なメモです.

[James 1951]: There is a non-reflexive Banach space which is isometrically isomorphic to its dual.

ヒルベルト空間ならともかく, バナッハ空間は変な空間で双対と等距離同型にするのも一苦労で, 非可分だと本当に魔界です. その魔界にこんなよい空間があるというか, 魔界だからこそこんな凄まじい現象が起きているというか, どちらで理解すればいいかよくわかっていません. ただ, なかなか強烈な例です.

文献探して証明を収録しておきたいと思いつつ探索できていません. それも込めて備忘録としての記録です.

証明手法を軸にした議論の展開

私の数学コンテンツには「証明手法を軸にした議論の展開」といった軸の補足説明もたくさんあり、例えば適当な条件を満たす位相や加法族の構成、ツォルンの補題を適用するハーンバナッハの定理や極大イデアルの存在証明など私が知る範囲の数学を縦横断した解説があるが、もっとそういうのが欲しい。

そもそもとしてボホナーの消滅定理やらdiagram chasingやら定理よりもむしろ証明手法の方が重要な議論もあるはずで、そういう縦横断系の話ももっと知りたい。

最近の現代数学探険隊ノート整理で集合論や位相空間論用の注意やコラム的に散りばめた記述を見ていると, いい話, そして最近あまり明示的に紹介していない, 忘れていた大事な話がたくさん書いてあります.

当時は一所懸命書いていてその当時の全力ではありましたが, とにかく文章が冗長でイライラしてくるのも事実です. これ含めて現在大改訂中です.

独断と偏見による逆数学のすすめ

超準解析ノート作りが半端なままなのも思い出しました.

物理の理論構造, 孤立系と相互作用系・散逸系

そういえば年明けすぐくらいから, 通信講座第三弾として「量子力学で学ぶ線型代数第二段」の通信講座の募集をはじめようと思っていたところ, 生活リズムの崩壊で何もできていません. いま二月開始を目処に考えているため, 興味がある人は三ヶ月分の勉強時間をおさえておいてください.

それはそれとして, 次にやろうと思っている熱力学とそれ向けノート整理で考えている話です. 熱力学は何となく身近な温度パラメータと環境がある系の議論からはじめるスタイルが多いように思います. しかし古典力学でも量子力学でも電磁気学でも, まずは理想的・非現実的な孤立系の議論をしてから, 現実的な系を考える非直観的なスタイルで進めるのがふつうです.

力学でいえばいったん摩擦がない系を考え, それから摂動的に摩擦を入れているとも思えます. 量子力学だとわかっているところからの摂動の視点は特に重要でしょう. 電磁気学でも電磁場だけを考えるケースと, 外場中の荷電粒子の運動を考えるケースのあと, 荷電粒子自身が作る場を考えるケースに進みます. 量子力学でもまずは水素原子の孤立系を考えます. 水素原子の励起状態は固有状態でいわゆる安定な状態です. しかしレーザーを考えればわかるように励起状態は光の形でエネルギーを吐き出して基底状態に落ちるはずです. ここで外場として古典的な電磁場を入れるとゼーマン効果とシュタルク効果にしかならず, 基底状態に落ち込む議論にはなりません. もちろんエネルギーを吐き出す対象として具体的に理論に自由度を追加する必要があり, それがいわゆるテンソル積による量子電磁場用の空間の導入です.

熱力学でも同じように孤立系を考えてから環境との相互作用や温度を考えるのが筋ではないか, そうするといまのノートの順番だとよろしくない, という状態です. 有名どころの教科書で言えば, 形式的には清水流か田崎流かという感じ. 熱力学の定式化の自分なりの整理を進めているため, 熱力学の講座はまだまだ時間がかかりそうです.

こういう内容の通信講座兼勉強会をやろうと思うと, そもそも一定以上の物理の素養がないと意義さえ感じてもらえないため, そこの種蒔きももっと真剣にやらないといけません. 量子情報でのクラウスの定理などもう少し分野横断の話をしようと思ったのですが, 今回は力尽きました. 改めて物理ネタももっと取り上げたいですね.

素粒子・場の理論の教科書

単純な情報共有です.

60 冊もの素粒子論物理&場の理論の本がSCOAP3 でただで見れるように

CERN's open access SCOAP3 initiative has released 60 particle physics and QFT books free for download here: https://scoap3.org/scoap3-books/

格子QCDシミュレーションの創始者のM. Creutzによる格子QCDの教科書がオープンアクセスになったそうです https://www.cambridge.org/core/books/quarks-gluons-and-lattices/2D0B198BB10DB7ACF56252909590DD6C?fbclid=IwAR3Q0DwJf8I79iPPLRnUVShXOeztqscAQeXE8xZxvIdB8EeM9P_FgIi7HbA

日々の自分用メモ

クリスティアーノ・ロナウドの言葉

献血ができなくなるからという理由で、体には入れ墨を一切入れておらず[357]、かつて受けた「動機が不純。単に自らの名誉と影響力を拡大したいだけ。言ってしまえば、ショーにすぎない」という批判に対しては、「もし、他人を助けることがショーだと言うなら、僕は永遠にこのショーを止めるつもりはない」と語っている[358]。

国立国会図書館デジタルコレクション

本日から、国立国会図書館のデジタルコレクションが大幅バージョンアップされています。全文検索可能な資料が5万点⇨247万点に拡充され、また類似画像の検索機能が付加されました。 https://ndl.go.jp/jp/news/fy2022/__icsFiles/afieldfile/2022/12/02/pr221202_01.pdf

理系の読み物でクラシックな本を丁寧にまとめたリスト

シェルスクリプトの正しい実行方法は一つだけ! ~ sh や source で実行するのが良くない理由とシバンの話

大島利雄先生の「大学における数学教育の問題点と工夫」

素因数分解の一意性と一階言語の文

それでは一階言語の文になっていません。一階言語では量化子の可変個の入れ子が書けないからです。ではどうするかは、リプライで。 https://marshmallow-qa.com/messages/9223c77e-8c18-4dfb-847d-e3504e5f62a5?utm_medium=twitter&utm_source=answer

まず、自然数のリストの自然数によるコードを何か採用し、必要なだけのリスト処理関数の定義をPA言語で書きます。次に、それらを使ってリストの要素の積を返す単項関数prodを作ります。 それとともに、二つのリストがバッグとして等しいことを表す二項述語bageqの定義とリストの要素が全て素数であることを表す単項述語allprimeの定義を書きます。 以上の準備の下で、

∀x∀y(allprime(x)∧allprime(y)∧prod(x)=prod(y)→bageq(x,y) です。 あ、括弧があっていない。 ∀x∀y(allprime(x)∧allprime(y)∧prod(x)=prod(y)→bageq(x,y)) です。 なお、リスト処理の部分はさまざまな変種があり得ますので、便利なのを採用すれば良いです。例えば、nilとconsとcarとcdrからLisp風に組み立てていっても良いですし、ゲーデルのβ関数を使っても良いです。

困っている人のための精度

世の中には困ってる人を助ける制度がたくさんあるのに何が使えるかを教えてくれないっていう理不尽仕様なんだが、そんな世界をなんとかしようとしてる人たちがいて、そのためのWebページがこの前リリースされたってことを僕はフォロワーさんに知っておいて欲しいと思ったんよ https://compass.graffer.jp/handbook/landing

岡村博の話

昔は闇市で手に入れたものは食べないと言って餓死した数学者もいたわけで、大学教員はその程度の意地は貫き通してほしい。 今時の大学教員は知的誠実さのために餓死もできない軟弱な人間ばかりで辟易する。 ちなみに餓死(栄養失調)で亡くなった(日本人)数学者の例として岡村博がいる. 常微分方程式の本があって、以前Paulが言及していた記憶がある。 さらについでに井川満による本の書評 「付録として収録されている山口昌哉の,著者についての文章も是非読んでもらいたく思う. 敗戦の混乱のなかで,闇物資を口にすることなく,42 歳で栄養失調の故に逝去した一生であったことが分かる」とある。

「岡村博は言葉を大切にし,学生と交わす些細な会話でさえもどこまでも大切にした日常であったことが記されている. 数学に携わる者が,言葉を大切にしないならば,どこに存在意義が見つけられるのだろうか. 最近私は,数学をする者の言葉遣いがふやけているのが気になっている.」

https://twitter.com/phasetrbot/status/1595002909535522818と書いたのはまさにこの文章のような状況が最近の大学関係者によく見られるのを指している。特にオープンレターズは大学教員どころか人として最低限の誠実ささえ持ち合わせておらず人の心を持たない差別主義者ばかりで最近ずっと衝撃を受け続けている。

物理・工学以外にも数学を濫用する人間が増えるのはいいことなのかという気分はある。ポストモダン的な地獄を生まないか、大学関係者の知的誠実さがどこまで信用できるのか、ただひたすらに気になる。

ドイツ語の表現

サッカーとドイツ語といえば

  1. 日本をLand des Sushis「寿司の国」と呼ぶのはセーフ(定冠詞+寿司が単数属格)
  2. でも定冠詞+寿司が複数属格のLand der Sushisだと「寿司野郎どもの国」的な意味になってしまって1文字違いで完全アウト

――というものすごい地雷があるらしい https://german.stackexchange.com/questions/63303/connotation-of-land-der-sushis これはどうも単数属格を加えるだけなら純粋な食べ物の意味になるけど複数属格だとそれを食べる人々への揶揄的なあだ名を加えた感じになるかららしい 実際、過去にドイツのサッカー番組では後者の表現を使ってしまったキャスターに盛大な批判が集まったことがある (※昨日の試合の話ではありません) d-で始まるドイツ語の定冠詞は英語のtheに当たる要素で語源も共通している ドイツ語では名詞自体は一部を除いてあまり変化しなくなっていて、冠詞の性・数・格の変化が語形変化の代わりになっていることが多い Sushi「寿司」は中性名詞として扱われて、単数では属格のみ-sがつくこともある

競プロのテーマ

人間には大変な, 膨大な量の計算を行って数学的な問題を解く

吉野元, 深層ニューラルネットワークの解剖 統計力学によるアプローチ

深層ニューラルネットワークの解剖 統計力学によるアプローチ 吉野元 https://jps.or.jp/information/2021/10/76_589.pdf

確率変数の数(ベイズなのでパラメータ数)が無限大に行くという意味での無限自由度系という意味で「統計力学」なのはこちらの方.時々誤解している人がいるけど,渡辺理論はそういう意味では有限自由度なので統計力学にはあまり似ていません. 漸近論で尤度関数全体を確率変数として扱うという意味では「汎関数的」なのですが,それはまた別の(もっと技術的な)側面だと思います. 「尤度関数を確率変数として扱う」は正しくないかも.対数尤度を扱うのに,まずパラメータの分布を正規近似するのではなく,漸近的な行く先を関数とみてガウス過程で近似をするというような意味です. (これは特異モデルを扱うために開発された方法と思いますが,正則モデルだからといって何でもかんでもまずパラメータで展開するという行き方に疑問を差しはさんだという意味で漸近論にとっては重要です) しかしながら,NNの理解に役立つような統計力学の意味で「無限自由度」の理論はまた別に開発しなければならなくて,その意味では吉野さんのような情報統計力学と高次元統計学のコラボが重要かと. 「平らな部分が重要」という意味では特異モデルのベイズ理論はよい点を突いているように思いますが,無限自由度の解析ではおそらく別の側面が重要.

Enriques曲面のPDF

びびる.Enriques曲面で1000ページ.3月の名古屋に向けて(?) Enriques Surfaces I,II http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~kondo/papers.html

記事期限切れ:

大栗博司先生の幻冬舎連載「数学の言葉で世界を見たら」 「計算されたリスクを取ること」で、ベイズの定理を 身近な例がいっぱいで、メチャおもしろく、わかりやすく、ためになる説明をしてくれてます。 http://gentosha.jp/articles/-/375

公理とinterface

逆にプログラマには公理は interface だと伝えると群とか環の公理が何のためのものなのか分かってもらいやすい

平行線の同位角の証明

トランプの「ババ抜き」で、勝率を "相手の3倍" にする方法

トランプの「ババ抜き」で、勝率を "相手の3倍" にする方法を見つけましたので記事を書きました。 なんと… 「誰から配るかを変えるだけ」ですっ。 記事→ https://kuina.ch/notebook/page33

工学のための関数解析の行間埋め

関数解析の資料探してたら良さそうなの見つけたけどこの資料作った人エグすぎる 工学のための関数解析PDF

ガウスの消去法と誤差, 検算の難しさ

ガウスの消去法にめっちゃ誤差が入って、あやしいと思って検算しても(検算にも誤差が入って)残差が0になってしまう、なんてこともあるので、検算したから安心とは言えない。

Haskellでの競技プログラミング

YouTubeのSampouOrgチャネルで米田優峻(@e869120)さんの『競技プログラミングの鉄則』をHaskellで楽しむ動画シリーズをはじめました。主目的はHaskellプログラミングを(和紙が)楽しむこと。ついでにアルゴリズム力、思考力が向上するといいな。つづくといいな。

追加しました。尺取虫法 = mapAccumL + span かな? A13: Close Pairs — 『競技プログラミングの鉄則』をHaskellで楽しむ 024 https://youtu.be/KiXQVixpamg @YouTube より

中国語は不思議

橋本陽介『中国語は不思議』読了 新書を読むのはかなり久しぶりではあったのですが、コレが語学ダメダメ人間でも ちょっと中国語分かってきたんじゃない? と自惚れさせられる感じでちょっと勉強再開しようかしらと思いました それは置いておくとして「疲労回復」「汚名挽回」のトピックスが面白い

ChatGPTの応用

日本人がネイティブな英語を書くのは、今までかなり難しかった(オンライン英文校正サービスもほぼ無力だった)けど、ChatGPTを使えば簡単に書けるし文脈も伝えられるのでやはり革命。実際に出力を見てみると、RT元が問題があると言っている部分もすべて修正されており、良い。

ロシア語で日本語の「かわいい」が導入

場末ホステルのロシア人(日本が好き/ピカチュウが好き)が「かわいいぬ」と言ってて何故急に日本語?(しかも"ぬ構文"?)と思ったら、日本語の「かわいい」がそのまま形容詞「カワイヌィ」(каваиный)になっているんだと。ほんまかいなって思って調べたらちゃんと存在してたし、鬼の格変化もするみたい。

ChatGPT

ChatGPTを試してみた。 有効な使い方のひとつに「自分が知らない分野の関連ワードを挙げてもらって思考を発散させる」ことがありそうだなと。 ある程度の知識がないとGoogleで検索するワードがそもそも思いつかないが、ひとつのキーワードを端緒にChatGPTに関連語句を色々挙げてもらうことができる。

2022-11のAIの進歩の包括的なリスト

いい記事見つけた 11月に最も重要なAIの進歩の包括的なリスト Cutting-edge AI: NOVEMBER Digest

同朋舎出版のビジュアル世界再発見と中高の世界の名著

同朋舎出版のビジュアルシリーズ世界再発見はいいぞ。 あれで入門すれば世界地理は答え合わせできてたのしい。 あと中公の世界の名著はいいぞ。本文の訳の気合の入り方もそうだが、訳者によるガチ解説がたのしくてわかりやすい。当時はB1くらいの学力で読むものなんだろうけど今ならB4くらいじゃね…?

2022-12-11

数学・物理 新型コロナにかかって大変な目にあいました/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • カントール集合
  • 実践計算物理学: 物理を理解するためのPython活用法
  • 基礎からの物理学とディープラーニング入門―Pythonで実践―
  • F#による競技プログラミング学習の資料

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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近況報告

家族が通院時に新型コロナをもらうというひどい目にあった余波を受けました. ちょうど先週の土曜, 夜から体調がおかしく, 朝になったら38.9度あって四日ほど寝込んでいました.

生活リズムが崩壊してしまったため立て直すのが大変です. AtCoder Problemsも今年中に一周する十二分な余裕があったものの, 10日潰れたためもうカツカツです. 無理して終わらせるものでもないため焦っているわけでもありませんが, げんなりしています.

心配しすぎていても仕方ないとはいえ, ブレインフォッグのような恐ろしい後遺症もあるようで, これが本当に憂鬱です.

世の中は平常化に向けて動き出しているようですが, 読者の皆様もお気をつけください.

今回は手短に済ませます.

カントール集合

先日から書いているように, 現代数学探険隊のノートを見直しています. カントールの三進集合を久し振りに見直して, やはり面白いテーマだと関心しています. 記号力学系から情報系の議論もあれば, 同じく作用素環にはねる経路もあって展開は異様に豊富です.

実践計算物理学: 物理を理解するためのPython活用法

ただでさえPythonはライブラリのバージョン管理が死ぬ程面倒で, これ以上自分で何か作りたいとは思わないため, よさそうなのはどんどん他の人のコンテンツを紹介しようと思っています.

メンテナビリティの高い数値計算プログラミングの可能性は相変わらずゆるく探り続けています.

基礎からの物理学とディープラーニング入門―Pythonで実践―

統計力学系のネタはもっと突っ込んで勉強したいため, これは読んでみようと思っています.

F#による競技プログラミング学習の資料

来年に向けた助走として, 競プロコンテンツの前に自分の学習ログの意図で記事を書きはじめました.

命令型・オブジェクト指向型の言語だと読み書きしていて元気が出ないため, お気に入りの言語で遊んでいます. F#はMicrosoftが機械学習用のライブラリを整備しているようで, 上で書いたようなディープラーニング系の話でもいい感じに使えないか検討したいところですが, まだまだそこまでいきません.

2022-11-26

数学・物理 子供の背中を見て反省する/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 昔書いた文章・ノートが冗長でつらい
  • mathlib documentation
  • 最近のプログラミング学習: 競プロ
  • 新しく勉強するときの苦労

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  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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近況報告

ここ最近, 数学としてはシコシコと代数の基本的なノート作りと競プロばかりです. 代数はもう少しガロア理論の基本的なノート作りが終わるため, それが終わったら多様体の項目メモを仕上げつつ, 層のコホモロジーに関わる議論と加群のノートを整備する予定です.

長い間の懸案だったトポロジーのノート作りもしたいところですが, ここで代数のノート作りを止めてしまうとまた半端な状態が続くため, いまこの焦点が合ったときしかないと思ってふんばって進めています.

昔書いた文章・ノートが冗長でつらい

幾何ノートの整備と合わせて, 特に重要な位相空間論のノートも並行して整備しています. 書いていた当時はもちろん真剣に一所懸命書いていましたが, いま見ると冗長で読んでいて自分でイライラする記述があります.

それはそれとして, 通信講座として書いたときにはまだ書けていなかった定義や定理が既にあるため, その引用整理も合わせて進めています.

ただ改めて思ったのが, 「こういうのがあるといいのに」, 「こういう記述があると自分が楽しい」と思った記述を盛り盛りで詰め込んでいるため, 読んでいてとにかく楽しいです. 特に何度となく眺めて整備を進めていた部分は証明も詳しく, ストレスフリーで読めます. 凄まじく面倒ではあってもわざわざ自前のノートを整備してきたご利益を感じる部分です.

mathlib documentation

ノート整理で補有限フィルターを調べ直していたら見つけました.

証明支援系のライブラリのサイトで, Microsoft Research所属のプロによるサイトのようです. いつか証明支援系の議論にも取り組みたいとは思っているため, メモがてらシェアします.

最近のプログラミング学習: 競プロ

勉強方針を少し変えたのもあって, AtCoder Problemsを一日二題ペースでゴリゴリ進めています. 入門者向け基準とはいえハードの問題を自力でさっと解ける場合も出てきて, 一年間ほぼ毎日やってきた成果が上がっているようで気分もいいです. 自分用リファレンス・ライブラリも溜まってきました.

競プロ勢, もっと言えばF#・Haskell勢ともっと交流を持ちたいと思っているのですが, もっと競プロ系の記事なども書かないといけないのだろうと思います.

仕事のプロジェクトである程度自由にできるため, サーバーサイドでF#を使ってみようと思うものの, ネットに情報が少ないため二の足を踏んでいます. JavaScriptなどは新しい情報も大量にあって参考にする機会も多く, お世話になった分, プログラミング関係でももっと情報を出さないといけないのだろうとも思います.

新しく勉強するときの苦労

12月からAndroid開発のプロジェクトに参加します. Android・Kotlinを猛スピードで勉強しているのですが, 基本的な本を読んでいてレイアウトの説明など面白くもない記述をがんばって眺めています. 数学でも, 面白くなくても一度は一通り勉強して, 言葉だけでも頭に入れておかないといけない内容はあります. くり返し眺め続けてようやく少し慣れてきました.

既存コードの引き継ぎの面もあって仕事時間でもずっと眺めています. 朝から晩まで二週間もずっと浸っていてさすがに少しは慣れてきました. 仕事になると苦痛だろうと何だろうとやらねばならず, 嫌でも勉強は捗ります. 何か勉強したいことがあれば仕事にしろとはよく言いますが, 改めてそれを実感しています.

JavaScriptでも困っているのですが, Androidもテストの書き方・作成方針が全然わかっていません. 何かいい本や資料をご存知の方がいればぜひ教えてください. 小・中規模のAndroidアプリのリポジトリがあればそれも教えてくれるとありがたいです. 絶対的な量が足りておらず, もっと浴びるようにコードに触れたいと思っています.

勉強するときの実際を苦労を味わい続けた方が「こういうのがあればいいのに」という自分の問題意識も育つため, 程々に勉強の苦労を続けないといけないのだろうと最近良く思います.

以前から時々書いているように, 私は昔から柔道の道場に通っていていまや指導側です. 類は友を呼ぶ話のごとく, 通ってくる子供達はとにかく不器用で, 何年もくり返し言っていてもなかなか身につきません. ただ, 子供達は子供達で学校での勉強も含め, 毎日大量の情報に触れて覚えなければいけないことも多く, 5年-10年言い続けたくらいでどうにかなるなら苦労しないという話もあります. 子供達の様子も見ていると時々猛烈に反省することがあります.

2022-11-19

数学・物理 早いうちに基礎をゴリゴリやろう/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 早いうちに基礎をゴリゴリやろう
  • 来年に向けた競プロの取り組み
  • アダマールの不等式
  • 量子多体系の対称性とトポロジー: 統一的な理解を目指して
  • 「無限次元」の代数と解析
  • ドイツ語と英語が合成された学術用語“Eigenvalue”に関する数理的考察
  • 理系向けの語学教材制作に向けて
  • 世間的な理系の差別的な扱い
  • いろいろなウェブサービス

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近況報告

もう少しで量子力学と線型代数の三ヶ月間短期集中の通信講座が終わります. 先日の勉強会で受けた質問で, やはり行列と線型写像の区別に関する難しさを実感しました. 量子力学と線型代数もまだ最低限取り組んでほしい内容の残りがありますし, そもそも復習としてもう一度取り組む部分さえ需要があるとは思っています.

とりあえず量子力学をもとにした線型代数を続けますが, その先は自分の頭の整理も兼ねた熱力学もやりたいですし, 物理を考えずただただ数学する方向までいろいろ考えています.

数学ノート作りでは幾何ノート整備に向けて, 解析学編の位相空間論の整理もはじめました. 改めて見ると書きはじめた頃はまだノートを作っていなかった定義・定理も大量にあり, 並行してその参照もつけています. あとは箇条書きノートの見やすさが気に入ったため, 箇条書き化も進めています. 定義や定理の言明も箇条書きで整理した方が見やすいため, 必要に応じてそれらも整理し直しています.

やはりある程度幾何にけりをつけないと落ち着かないのがわかったため, 指数定理までの一通りのノート作りを今後二年の目標に置きました. やる気が出ないときに指数定理の本をパラパラと眺めていると, 解析学編でがんばって作ったノートの内容がゴリゴリと出てきます. 偏微分方程式はもちろんのこと, 閉作用素など作用素論も出てくる部分はテンションがあがります. 当たり前といえば当たり前であるものの, 執念深く整備してきたノートの内容はだいたい全て必要で, もちろんわかっていたことではあるものの, 案内ページに書いてきた内容の嘘偽りのなさを改めて実感しています.

早いうちに基礎をゴリゴリやろう

最近ずっとこの話をしている気もしますが, 幾何のためのノート整備をしていて痛感しているため何度でも強調して書き続けます.

特に多様体のノートを書いていると, 一度はある程度勉強しているため本当に身が入りません. ノートの参照などもあるため, いま証明は抜きに定義と命題だけシコシコと追記しています.

何となく一回はやっているが身についていない内容があるのはもちろんですが, それ以上にそもそもまともに勉強したことはない内容もたくさんあります. しかしもっと面白い話がたくさんあるのを既に知っているため, そうした基本的な内容に取り組んでいるとうんざりしてきます. だからこそ今改めて幾何まわりの基本的な内容に関するノートをがんばって作っています.

熱力学のノート作りでは, 内容は学部二年レベルのド基本であるにも関わらず, 頭の再整理の視点で取り組めてものすごい楽しいのと対照的です. 一度徹底的にやった上で思い出しつつ理解を深める楽しさとは全然違います.

先の話を知ってしまうと基礎的な内容に取り組むのにうんざりしてしまいます. 自分基準でよいので, やはり早いうちに一度基礎を徹底的にやるのをお勧めしたいです. そう思うとやはり学部一年の必修で実数・集合・位相があったのは, 私にとって本当に決定的でした.

来年に向けた競プロの取り組み

AtCoder ProblemsでMediumまで終わってから数ヶ月, しばらくAOJに取り組んでいましたが, 今年も残りわずかになってきてAtCoder Problemsの300題を終わらせたい機運が高まってきました. 残り56題で, これから一日二題取り組んでいったん年内に終わらせるのが目標です.

最近は10分考えてアルゴリズムを思いつかなければ解説を見て実装し, 30分経っても実装できなかったら他の人の提出コード, 特にHaskellコードを見て気に入った読みやすいコードをF#に引き写すようにしています. どうせ300題を一周した程度で身につくわけでもないので, ある程度問題量をこなすのが今の目標です.

AOJの基本的なデータ構造やアルゴリズムの対応も進めたいところですが, お気に入りのF#が使えないのが難点です. そんな中, 少し前に最近競技プログラミングの鉄則という本が出ました. 本の評判が非常に良いようですが, AtCoder対応しているいい話があります. せっかくなのでこれをF#/Haskellで取り組もうと思っています. これも150題程度あるらしく, 取り組みやすいところでF#が使えるのはAtCoderしか知らないため来年の楽しみです.

まだまだ量が圧倒的に足りていないため, これらをくり返して復習しつつ, 飽きないように新規コンテストで追加された問題などにも取り組んでアルゴリズム系の技能を鍛えようと思っています. 数学・物理系のプログラミングだと馬鹿みたいな計算量が必要ですし, 数値計算法もまさにアルゴリズムなので, この意味でも私にとって競プロは物理や数学です.

アダマールの不等式

行列解析系のネタです.

【ポッキーの日問題】 ポッキー(数字の1)を並べて目指せ高得点!

※行列式の計算は計算機を使用しても構いません(リプにサンプルコードをつけておきます)

Z^{n×n}の行列式の上界に関する定理何かあったはずだけど思い出せない Hadamard's inequalityだ。 Wikipedia

私の現代数学探険隊解析学編にも収録していますが, 実はFeldmanらによるRenormalization Group and Fermionic Functional Integralsという本があり, この中にもアダマールの不等式が証明つきで載っています. 以前, この本の誤植を送ったことがあって, タイポのPDFに私の名前も載っています.

ツイートに行列式の計算に計算機を使っても構わないとあって, こうしたお遊びネタとプログラミングの話もあれば, 上限を決定する不等式とゴリゴリの数理物理の関係もあります. 最近こういうのが面白くて仕方ない感じになってきて, 学生時代とは大分違う視点が得られている実感があります.

量子多体系の対称性とトポロジー: 統一的な理解を目指して

ツイートで渡辺さんの何かの話が流れてきて, 改めてこの本が読みたいなと思ったため宣伝ついでのメモです. 先日も情報理論と物性の論文を紹介したように, 幾何も量子多体系・物性の関係が強くなってきて, いよいよ幾何で遊ぶのを本格化させたいと思って改めて幾何ノート整備に乗り出した部分があります. 幾何それ自体で遊び倒すのも兼ねていて必ずしも物理だけに比重があるわけでもありませんが, 日々遊びたいおもちゃがどんどん増えてきて楽しいことこの上ない日々を送っています.

「無限次元」の代数と解析

これもちょっとした記録です.

佐古先生、可分なヒルベルト空間は有限次元でない限り全て非可算次元ですよ・・・。

可算個の正規直交系が存在しても非可算次元なんですか

はい、可算個からなる完全正規直交系が存在しても非可算次元です。これは例えばBaireの範疇定理から簡単に証明することができます。

文章で書くのは少し手間ですので、次のURLを見ていただけると幸いです・・・。https://planetmath.org/banachspacesofinfinitedimensiondonothaveacountablehamelbasis

なるほど分かりました 可分/非可分の区別を可分/非可算次元と勘違いしていたわけですね

Hilbert空間に対して次元というときは,特に断りが無ければCONSの濃度を指すことが多いと思います. 勿論,例えば線型空間としての次元と混同する恐れがあれば,Hilbert次元/Hamel次元のように呼び分けるのが妥当ですね. 以上は一般的な話です. 一方,Mathラブ娘さんの投稿については,かかる用語の選択そのものを取り上げられていると思います.これは概説全体で統一されているかどうかが問題の焦点になると思っていますので,引用されている画像からは判断しかねることを踏まえ,言及を差し控えます.

わたしはHilbert次元を単に次元というのはごく少数という認識です。特に、そういう言い方をしたいならHilbert次元/Hamel次元と言い分けるべきと考えています。が、この件については押し問答とならざるを得ないと思いますので、これ以上の議論は止めておきたいと思います。

そうですね,流儀の問題ですからね(蛇足ですが,個人的には言い分けるのも結構好きです).

これ大昔,大学の演習助手の就職試験で聞かれて間違えたことがありました.ヒルベルト次元と代数的な次元を全くごっちゃにしていて,へんな答えをしてしまったのですが,面接官の一人だった組み合わせ論で有名な Hanfried Lenz先生が,まあこれはいいとして,と次の質問に移ってくれ結果合格しました.

ちなみに物理バックグラウンドの人がヒルベルト次元を使う傾向があるのかはわかりませんが、試しに素論系の知人にインタビューしたところヒルベルト次元で答えました

物理学で使う数学のほとんどは,reverse mathematics で言うところの Big Five の弱い方の体系に落とし込めることがほとんどなので,集合論的な非可算がそこでは必要になっていないわけですが,これは,非可算性が hidden variable のようなものとして物理世界のどこかで本質的に機能していること↓ ↓ ↓ ↓の可能性を完全に否定しているわけでもないと思います. 少なくとも,数学世界では非可算性は,"hidden variable" 以上の役割を果たしているし,これをさらにどう考察するかが,数学の未来にかかっている,と個人的には思っています (人類の未来がないのに数学の未来があると言えるのかはちょっと疑問ですが).

まさに私はよくヒルベルト空間の次元をCONSの濃度の意味で使っているため, よい習慣ではないと反省しました. 齟齬が起きかねないのは間違いないため, 自分用のメモも兼ねてシェアします.

ドイツ語と英語が合成された学術用語“Eigenvalue”に関する数理的考察

知っている人は知っているでしょうが, eigenはドイツ語でeigenvalueはドイツ語と英語のチャンポンです. ついでにいうとvalueはフランス語valeurに起源があり, さらにラテン語に起源がある変な合成語です. この文献によると量子力学の発展に伴って現れた用語で, 固有といってよく使われる英語properでproper valueというと他の言葉と紛らわしく, あえてeigenを使ったという話があるようです.

語学・言語学が好き・興味がある人がどのくらいいるかわかりませんが, ちょっとシェアしてみます.

理系向けの語学教材制作に向けて

行方先生の新刊本。ジュニア新書ですが、これまでの著作から考えるに、また、取り上げられている著者の名前から判断しても、大人でも十分やりごたえのある英文が出てくるのだろうと想像します URL: 読解力をきたえる英語名文30

こういうのは人文・社会科学系の人にはいいのかもしれませんが, 理工系の人間は必ずしも楽しくありません. 最近語学系の動きが全然できておらず情報収集さえ微妙です. 忘れてはいない・忘れてはいけないのと, 「こんなコンテンツが面白かった, 勉強法が楽しい」という読者コメント収集も兼ねてシェアしておきます.

世間的な理系の差別的な扱い

理系女子、建築系や化学系に流れているだけでいないわけではない。工学系が少ないだけ。そして、工学系に女性が少ない理由はこの画像が全てを物語っている。安い床屋でスポーツ刈り、お母さんがしまむらで買ってきた服を着ている人が大半を占めている限り難しいでしょう。

例えばある看護学校が女性ばかりの点を議論してる際、「いる学生が化粧も服装もダメな醜く太った女ばかりだから。男は行かない」と言う人がいたとして、そんな感情は考慮に値しないどころか発言者が差別的と批判されるべきもの。この発言もそれと同水準の差別的暴言。 世の中には「黒人貧民街訛りの人間は受け付けない」「同性愛者は生理的にアウト」のような人もいるのだろうが、そのような心理は差別的発想に起因するもので、社会的には一切考慮すべきでないとされる。先のtweetのような露骨な差別的発想を表立って正当なものかのように語るのは論外。 こういう「恥ずべき感情」を抱いてしまう人がこっそりとその心理に従って選択をすることはあろうが、そうした差別的な侮蔑を当然のごとく語り、それに共感や賛同を送る人が多数いるという事実は、こうしてステレオタイプに語られた「理工系男子」への差別がいかに根深いかを図らずも明らかにしている。 理工系学部の女子率の低さはこうした心理が主要因ではないと思いたいが、少なくともここで語られたような心理の存在は、「理工系が不当な偏見と差別を受けている」がゆえに理工系の女子率が下がってしまうという、理工系が差別被害者である側面を明らかにしている。

最近またTwitterで『高専に進んだ女子が「こんな気持ち悪い男達ばかりの環境には耐えられない. 高専の内容には興味はあるが, もっとふつうの高校生ライフを送りたいと悩んでいた」』という伝言情報が流れてきました. 個人的には白血病で一年留年した上に吃音という言語障害まであるので, その「ふつうの高校生活とかいうのはありとあらゆる意味で何だ」という感じがあります. 一方で上記の世間的な理工系イメージと実態もそれ相応に知っています. よくも悪くも当たり前すぎて言われるまで気付いていませんでしたが, 確かにゴリゴリの差別と言えばそれはそうです.

私個人の話で言えば, 私はもういいおっさんですが, ファッションには全く興味がない一方, 変な格好をしているといろいろな意味でまずいため, 困り果てた最果てで十年くらい前から和装の方向に進んでいます. (おそらく)社交辞令ではなく似合うと言われることも多いので, 考えるのも面倒だから似合うらしいこれで行こうと決めました. ここ数年は普段着から作務衣にして, 一年中自宅でも(プライベートの)外出でも, 夏には夏用の, 冬には冬用の作務衣を着ています.

いわゆるチェックシャツ以外の理工系ファッションも何か考えた方がいいのだろうという気分があります. ワークマンのスーツという概念さえ出てきているので, ファッションに頭を使いたくない理工人向けファッションももっと提案した方がいいのではないかと最近思いはじめました.

いろいろなウェブサービス

ワールドミュージック界隈で話題騒然、世界中の民族音楽が聴ける慶應大Global Jukebox 、マジで直感的に操作できるのがすごく良い…。世界地図からも行けるし、動画後半のように円グラフ状に表示された地域一覧からも調べられます。 https://theglobaljukebox.org

最近面倒というか幾何ノート作りの方が楽しくて止めている物理学ギャラリーがあります. 現代数学探険隊や通信講座をはじめとして, 「こんなのがほしいが誰も作ってくれないので自分で作る」は私の大きなモチベーションなので, 「こんなサービスもあって喜ぶ人もいるのか」というのは参考になる場合があります.

正直このサービス自体にそこまで強い興味があるわけではないものの, 言葉にできない感じるモノがあったため, メモがてらシェアします.

2022-11-06

数学・物理 箇条書きノートのすすめ/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 箇条書きノートのすすめ
  • 代数学習・復習で得た実感
  • 非可逆行列の可逆化
  • 数値計算とソボレフ空間
  • 学習物理界隈へのコミットをはじめたい

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

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近況報告

最近メルマガ書くのもサボり倒しつつあります. 本職の方も今月で区切りがついて来月からまた新しいほぼ未経験の内容に関するプロジェクトがはじまるため, きりきり舞い状態です.

ここ最近は来年以降に向けた幾何コンテンツのリリースも見越して, 幾何ノートを集中的に整備しつつ復習しています. 全然書けていないと思っていた多様体論のノートが思ったよりも書けていたため, 思ったよりも速くリリースできるかもしれません.

ここ1-2週間, そしてしばらくは幾何というより代数の整備が中心です. ホモロジー代数はもちろんのこと, それを駆使する関数論が視野に入っているからです. 関数論には解析学の側面もあれば, 代数的場の量子論などでも楔の刃の定理など限定的とはいえ関連する議論があります. もう一つやはり学部四年-修士一年程度の内容くらいはきちんと勉強してみたい代数解析でもホモロジー代数を駆使するため, 私が守備範囲に入れたい広い意味での解析学にとって重要だからです.

毎日少しずつノートをためてきて, 途方もなく長い道のりでうんざりすることも多かったものの, リリースも考えてノートを整備しはじめたところ, 自分が勉強してみたいと思っていた学部四年程度の幾何への道が少しずつ整備されてきたのが具体的に感じられてとてもいい気分です.

箇条書きノートのすすめ

先日メルマガタイトル自体を「証明の構造がわかる数学ノートを作りたい」にした程度に, ノート整備のついでに証明の箇条書き化を進めています. そして単純にできるわりには非常に効果的でした.

現状ではいったんほぼ何も考えずにまずは箇条書きベースで書き換えています. これで次のような形式が強制されます.

  • 1センテンス1トピック
  • 箇条書きによる1トピックの視覚的表示

よくテクニカルライティングなどの文脈で「1センテンス1トピックにしろ」と言われます. 知ってはいたものの改めてその威力を実感しました. もともと通信講座用に作りはじめたノートで, 細切れの時間でも勉強しやすいようにと節もかなり細かく切っていました. 節・小節の単位でタイトルがつけられるため, あとでトピックを探す上でも便利で気に入っていたのがさらに徹底的になりました.

「情報を出している」という感じが強くなっていて, 文章の色気みたいなものまでほしい人には向かないのかもしれませんが, 少なくとも私には読みやすくなりました.

他にも箇条書きでまとめているため, 1トピックの区切りが明確です. 改めて眺めたときに「何だこれは」と詰まる部分もはっきりしやすくなりました. 箇条書きだと不明点も一段下げて「次のように考えればよい」といった補足が入れやすくなり, 追記・修正もしやすくなりました. あとで見れば「もはや自明」と思うような部分も, 箇条書きで一段下げて補足的な内容と明示させれば読み飛ばしやすくなります. やっているうちに気付いた点も取り込んでノートを少しずつ進化させる予定です.

代数学習・復習で得た実感

いま代数, 特に群と環の学部2-3年程度の基礎の基礎程度の内容のノート作りを終え, 体論・多項式論・ガロア理論の学習をはじめています. 実際には作用素環の部分因子環論で必要そうだから, と当時物理学科の学部四年のときに数学科の講義にもぐって一度は勉強していた内容です.

当たり前ですが全く身についていません. 久し振りに勉強して当時もよくわからなかった分離拡大などは, 改めて本を読んだら「標数0の体では全ての代数拡大は分離的」と書いてあって, いまだに慣れていない正標数の体でしか本質的な意味を持たない議論がわかるはずがありません. そもそもいまだに体論の理解はこの程度です. 学部一年から集合・位相をやっていて, 関数解析方面の基礎体力は多少ついていたにせよ, 非専門で適当に勉強した内容の理解度などこの程度だと改めて実感しました.

通信講座なりコンテンツ制作なりで, 必ずしも面白くない復習系のコンテンツをどう作っていくべきかなど, 改めて考えている中で注意しなければいけないポイントです.

非可逆行列の可逆化

わかれば一瞬かつ一言で直観的にも明らかである一方, 慣れていないときちんと証明がつけられない事案を観測しました. 参考になる方もいるでしょうからメルマガにも転載しておきます.

正方行列に怖い思いをさせてガタガタ震えさせることで、固有ベクトルがズレて可逆になる(?) 直感的には任意の非可逆行列 A と任意の ε > 0 について、可逆行列 B が存在して、すべての単位ベクトル v について |(A-B)v| < ε に出来ると思うんですけど、ほんとうでしょうか線形代数力が無さすぎてわかりません

直観的には少し要素をずらせば行列式を非ゼロにできて可逆化します。特に非可逆な行列は基本変形でブロック対角型にできて「右下」が空くため、そこに成分がεの対角行列Dを埋めれば可逆化します。ブロック的な和としてA+Dを取れば大体Bが得られます。

ジョルダン標準系の0ブロックを適当に小さい数で埋める、確かに

相手がどこまで線型代数の諸概念を知っているかわからなかったため, 「このくらいは通じるだろう」という範囲で説明しました. 直観的に「それはそう」という話をきちんと詰めて話したところ, 相手からさらにそれを表す概念を使って一言でまとめる形で返ってきました. このやり取りだけでも線型代数の基本的な部分からある程度深い部分まで網羅されている上, 面倒な議論を一言で返せる概念が整備されている点にも気付きます.

先日Twitterで「数学まなびはじめ」の新井仁之さんの記事にあった, 「簡単な場合の証明を, 簡単な場合の特殊事情を使わず極限まで難しく書け. それが難しい場合の一般論を構築する上でのヒントになる」といった話をしました. 知識がある程度ある前提で復習するときは, 進んだ知識で簡単な議論を一言で表す訓練をしてみるといい勉強になります.

これの極端な場合が「大定理から系で示す」議論です. 有名どころはアティヤ・シンガーの指数定理です. 三次元空間内の曲面に対するガウス-ボネの定理は一般次元に持ち上げられる一方で, リーマン-ロッホの定理への一般化もあります. さらに一般的な議論がアティヤ-シンガーの指数定理で, 指数定理の系としてガウス-ボネの定理を証明する牛刀をもって鶏を割く話があります. そのままだと「すごいことはわかるが, いまひとつ心に落ちて来ない」ような場合に, 大定理の影響範囲が具体的に見えるする上で一つ大事なポイントになってきます. 進んだ議論を理解するためにこそ牛刀として使い倒すのは一手です.

数値計算とソボレフ空間

物理の人に必ずしも通じていないようなのですが, 数学, 特にソボレフ空間論は物理でもフォークロアになっている部分があるのを明示的にしたやり取りをシェアしておきます.

関数解析や数学的な微分方程式論が数値解析の具体的な問題に直結している様子が見えます. 数値解析に興味がある人がどれだけいるのかよくわかっていないのですが, 私もいまプログラミングとの兼ね合いで改めていろいろ考えている部分なので, それとも合わせて注意している点です.

学習物理界隈へのコミットをはじめたい

先日, 科研費で学習物理のプロジェクトをやっている富谷さんに, 「物理界隈向けの情報関係, 特にプログラミングまわりの具体的な教育面で何か手伝えることはないか」とTwitterで打診してみました. 先日も紹介した永井さんの数値計算本など, このあたりでいろいろ遊んでみたいことはあるもののなかなか踏み込むのは大変です. いっそコミュニティに入ってその中でいろいろやろうと思い, 具体的な貢献をしますよベースで話を持ちかけてみました.

以前からGitの使い方といったレベルであっても, 物理の数値計算コミュニティにはうまく浸透していないという話がTwitterであがっていました. 少なくともこういうところなら協力できる要素が必ずあるので, とにかく何か小さな1アクションを取ろうと思います.

やはり一人だと限界がありますし, 先日知人から「あなたは具体的な技術や知見を深めて突破口を作るよりも, 新たな人との出会いで道ができていくタイプだよ」と言われました. 同じことばかりしていてもどうにもならない感じもあったため, 意図的にこれまでとは違う動きをして, 人を巻き込み, 巻き込まれるべく動いていこうと思っています.

2022-10-29

数学・物理 証明の構造がわかる数学ノートを作りたい/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 中平健治, 図式と操作的確率論による量子論がようやく出版
  • 非可換確率論
  • 準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれる
  • 純粋数学への取り組み方
  • 最近のフロントエンド事情
  • 高橋憲一『コペルニクス』
  • アムロが教育するとしたらどうなるか
  • 地理学習

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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近況報告

いい加減きちんと勉強しなければと思ってAOJで基本的なアルゴリズムとデータ構造学習をしていたものの, AOJでF#が使えないのもあってうんざりしてきたためAtCoderに戻りました. そしてAtCoderは楽しいですね. 知らぬ間に少しずつアルゴリズム力も鍛えられているようで, AtCoder ProblemsのHardも前より取り組みやすくなっている気がします. 年始に本格再開したAtCoder Problemsもうまくいけば今年中に300問解き切れるかもしれません.

通信講座向けコンテンツ整備の一環としての熱力学ノート整備はやる気が出ないため, 既存のノート整理・復習と代数ノート整備を進めています. 先日Twitterで「ふつうの文章の体裁での証明は話の流れや構造が掴みにくい. 実際の本や論文ならともかく, 個人学習ノートなどなら箇条書きをうまく使って証明の構造を掴めるようにした方がいいのでは?」というツイートが流れてきました. 実は私もホモロジー代数ノートでは図式をTeXで書くのは面倒, しかし文章形式は読みづらいと思っていて箇条書き形式のノートにしていました. 試しに復習ついでのノート整理で証明をゴリゴリ箇条書きに変えています. 情報伝達に振り切った形式で好き嫌いは別れそうですが, 一文一文が簡潔で区切りも明確になって流れは掴みやすくなっている感覚はあります.

そもそも大人向け通信講座のコンテンツとして, 細切れの時間でも取り組みやすくするため小節をかなり細かく刻む方針にしています. 具体的にはAubinの幾何解析の本では注意や命題や証明自体を一つの節に切り分けて節番号が振られているのを参考に, 命題程度のレベルで小節をわけていました. いまはこれをさらに細かく, Aubinの本と同じく命題と注意と証明を小節にわける形式にしつつ, 証明を箇条書きベースに書き換えています. 細かな形式はまだ試行錯誤中ですが, 議論の流れを掴む目的でのノート作りを考えている人にはお勧めです.

中平健治, 『図式と操作的確率論による量子論』がようやく出版

先日宣伝した中平さんの本も出版されました.

まだパラパラと読みはじめたばかりで何も言えませんが, 量子力学の通信講座展開もあって読まないわけにもいきません.

この本では次のようなコメントがあります. (私の脳内翻訳です.)

線型代数の計算も大事だが必ずしも皆が皆慣れているわけではない. 計算ばかりでは事の本質が掴みにくいときもある. もちろん図式だけで全てが汲み尽くせるわけでもなく, ふつうの線型代数の計算力の意義・重要性は微塵も揺るがないが, いくつかの点で明確なご利益がある.

以前も紹介した気がしますが, 図式による議論は圏論的なストリング図とも関係があるらしく, 圏論への親しみも増すだろうと思いつつのんびり眺めている最中です. 図式によるTeXノート作りも大事なので, TeXの書き方に関して情報が出ていなければ何か参考情報をシェアしてもらえるよう働きかける予定です.

非可換確率論

Twitterで鍵アカウントの博士学生に対する応答をシェアしておきます. 何度となく言っている内容ではありますが, タイミング次第で同じ内容でも入ってくる情報量が変わる場合もあれば, 興味関心が合致する場合もあります.

作用素環の主な二つのクラスとして、C^環とvon Neumann環がある 可換C^環に対してはGelfand-Naimark双対性によってコンパクトHausdorff空間と反変圏同値があるが、可換von Neumann環に対してもcompact strictly localizable enhanced measurable spacesとの反変圏同値が成り立つらしい 他にもmeasurable locales、hyperstonean locales、hyperstonean spacesの圏としての表示もある https://arxiv.org/abs/2005.05284 この対応があるという意味で、一般のC^*環の理論は非可換位相空間論で、一般のvon Neumann環の理論は非可換測度論と見放されるらしい

圏論・幾何方面ならC^*というかもっと一般に非可換幾何ですが、ゴリゴリの解析で非可換積分論だと少し古いもののhttps://arxiv.org/abs/1208.5197のような話があります。非可換確率論もあり、最近圏の本をいろいろ書いている西郷甲矢人さんが非可換確率論の人です。Twitterにもいます。

準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれる

Observing quasiparticles through the entanglement lens https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.106.L161104 準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれるよ理論。物性屋さんも情報理論を本格的にやらんといけん時代かな?

いままで量子情報に興味が持ちきれない状態だったところ, こんな話まで出てきたとなれば物性から情報の勉強ができるパスが開かれたとも言えます. いよいよ私にとって情報理論を勉強しやすくなる環境が整ってきたのでしょう. とても楽しみです.

純粋数学への取り組み方

小中高で触れる数学は人間同士の間の競争という文脈と結構固く結びついている印象がある。大学以降も純粋数学を続けるなら、まず敵は人ではなく数学であり、対人戦ゲームではなく協力プレイのゲームであるという意識を持つところから始める必要がありそう。 まあ大学に入ってからも大学院に上がる際に院試があって、そこではどうしても対人の数学をやらなければいけないのだけどね。 僕は大学入試で2敗、修士の院試でも1敗してるので、もう対人の数学はあまりやりたくないですね…笑

書いといてなんだけど,小学校はそうでもなかったかもしれない.あと僕がこういう風に思ってるのは,高校受験とか大学受験みたいな受験戦争に身を投じたときに歪んだ価値観を植え付けられたからなのかもしれない…

これに対するくるるさんのコメント.

なんでもとあるアメリカの大学教授が、黒人学生が微積分でつまづくのをなんとかしようと観察・調査をした結果、白人やアジア系学生はグループで勉強し簡単なミスや勘違いを素早く修正できるのに対し、黒人学生は一人で勉強し細かい点で時間をかけすぎる傾向にあることを発見したそうで(続く) 小中高で触れる数学は人間同士の間の競争という文脈と結構固く結びついている印象がある。大学以降も純粋数学を続けるなら、まず敵は人ではなく数学であり、対人戦ゲームではなく協力プレイのゲームであるという意識を持つところから始める必要がありそう。 黒人学生もグループで勉強するように誘導したところ劇的に成績が改善し今ではむしろ黒人学生の方が平均値が高くなるようになったそうで。「負けたくない」「バカにされたくない」という意識は小中高でも十分ネガティブに働くのではないかと思う。 とはいえ、コミュ障の私にはどうも納得いかない面があるわけなのですが。まあとりあえずそういう研究・実践の報告があるということで。ちなみに本の文脈では、「黒人は数学ができない」というステレオタイプが最初に挙げた傾向の違いに影響しているという話になります。

何にせよ一人で勉強を続けられること自体が異常よりの行動力の持ち主です. 役に立つわけでもない話ならなおさらです. ここが私の領域だとも思うので通信講座は続けなければと思います.

最近のフロントエンド事情

プログラミングの話です. 細かなツールチェーンの話はいまだに山程あれど, 基本的にはReact一強にはなったため前よりは勉強しやすく, 取り組みやすくなっている印象があります. ツールチェーンも日々新しいのが出ているとはいえ, いろいろなモノをごちゃごちゃと組み合わせるのではなく, 簡素化の方向に向かっているのも有り難いです. もちろん開発者自身がもう耐えられないのでしょうし, Denoは明確にそこに舵を切っているようです.

それはそれとして書きたいのは高速化とRustの利用です. Rustは少なくとも他のメジャーな言語には搭載されているメカニズムがあり, 単純にそれを使った実装に興味があります. 前に微分方程式のプログラミングで少し使ったことはあり, 慣れないため面倒なことこの上なかったものの, バグを生みにくいプログラムを作るための面倒さ, もっと言えば既存の言語の悪癖の修正を促す言語という点がかなり気になっています.

そしてもう一つの高速化に対する明確な強い欲求が気になっています. アルゴリズムとデータ構造の話はそれ自体面白くなってきましたが, 高速化・効率化に関わる明確なご利益がある議論でもあります. そしてRust自体の速度だけではなくアルゴリズム上の工夫もたくさんあるようで, Rust+アルゴリズムはもっと面白い世界になっていくのではないかと見ています.

AOJを見ている限りではRustの競プロコードはそれなりにボリュームがあり, HaskellやF#ほどの簡潔さはなさそうです. 長いコードは読むのに体力を使い, Haskellでよく思うように短すぎても読みにくく, F#の程々さが気に入ってもいるためしばらくRustはお預けですが, 何かしらのタイミングでもっとしっかり勉強したいところです.

高橋憲一『コペルニクス』

先日『チ。』が微妙に燃えた影響でいくつか関連コメントが出ていました.

『チ。』で近世の天文学に関心をもった方にはこの本が超絶オススメ.若い読者向けということで「話し言葉」で書かれてあるのですが内容は初学者に配慮しつつも本格的.科学史という学問がどういった手法で過去の天才の思想と対峙しているのか,第一人者が手の内を明かしてくれている点にも大注目で コペルニクスが地球を動かした理由をどう考えればよいのか?高橋憲一先生の立場を結論から言います.

一般的にいって何らかの主義ないし信念をもちさえしたら「太陽の静止」と「地球の運動」の観念が得られると考えることこそ天文学研究の現場を素通りした想定だと言わなければならないであろう.

ここでの主義とは,コペルニクスの場合は新プラトン主義(とヘルメス主義)による「太陽中心」へ影響を想定しています.これをきっぱりと否定するのですが,その根拠の示し方に私は著者の史料への誠実さを感じるわけです.新書には収めきれなかった議論を少しご紹介します. まずコペルニクスは「ヘルメス・トリスメギストス」を「トリメギストス」と誤記しています.私であれば誤記は毎日のことですが,コペルニクスが「主義者」であれば,この誤記を見逃すわけがない.Twitterであれば,直ぐに引用RTで「間違ってますヨ」とマウントを取られるところです😂 また新プラトン主義者であるフィチーノは「太陽=神=宇宙の中心」というようなことを『太陽論』(『原典 ルネサンス自然学 上』に邦訳あり)で語るのですが,それは⬇のようなイメージ(月・水・金・「太陽」・火・木・土)であり太陽が宇宙の中心(最低部)でありません. 太陽のある「そこ」を「宇宙の中心」と見なしたのがフィチーノの斬新なのです. なお「地球中心から太陽中心への転換」はこの新書のクライマックスの一つではありますが,科学の歴史というものをどう検討すればよいのか?ということ考える実例として秀逸な本ですので,広く読まれて欲しい本です. 訂正:フィチーノ『太陽論』は「下巻」⬇です.なお訳者は,フィチーノの「太陽中心」(というより太陽中央というべきと思いますが)はコペルニクスに影響があったのでは??という期待を持っているようです. https://unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0881-5.html

アムロが教育するとしたらどうなるか

教官としてのアムロ、「どうすれば自分のような反射速度や判断ができるか」を真面目に考えると思うので、「反応出来なくても対応できるようにしよう」って教え方をすると思うんですよ 後ろから攻撃が来る場面を想定するなら、「反応しろ!」ではなく「こういう時は後ろからの攻撃も考えておく」とか カミーユに「後ろにも目をつけるんだ!」は「お前なら俺と同じく感覚を使えるんだからやれ!」なので、部下や生徒とかにはかなり基本に忠実になりながらも自分の経験を踏まえた的確な指導が飛んでくると思いますね ファンネルとかなら「オールレンジ攻撃はいかに的を絞らせないかだ、回避に専念するのではなくダミーを展開しつつ敵機への牽制をやめてはいけない」とか、「接近戦であればパイロットの気を反らしやすい、複数機でのダミー撹乱をしつつ一撃離脱を繰り返すんだ」とか、かなり具体的かな、と

この「反応出来なくても対応できるようにしよう」的な話がすごい好きで, また今後の教育関係の動きでも大事だと思うので自分用の備忘録も込めてシェアします.

地理学習

地理情報サイト「Geographia」を公開します。 地理の教養記事、受験に役立つノウハウや各種記事のピックアップ、地理関係書籍の情報を共有していきます。 「誰もが平等に学ぶ機会を」 これをモットーにコンテンツを充実させていきます。 応援いただければ幸いです。 https://itgeographia.com

まだ見切れていないものの, 地理は理系向けの人文系の切り口としてかなりよいという感覚があります. 今後きちんと勉強したいので自分用備忘録も兼ねてシェアします.

2022-10-15

数学・物理 基礎が必要なら早めに・徹底的に/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 基礎が必要なら早めに・徹底的に
  • 河東YouTube講義録: エニオンの圏論的対称性と作用素環
  • 第二不完全性定理と「コーディング」への依存関係
  • 図解する整数論
  • 藤岡敦『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』
  • 永井セミナーの動画: 機械学習による材料物性シミュレーションの高速化
  • 続 熱力学・統計力学学習の指針
  • 熱力学の復習メモ
  • 神学大全の羅和対訳

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

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近況報告

ここ最近急に気温が下がって体調がいまひとつでやる気も出ないため, 無理せずのんびり関数論の勉強をしていました. 久しぶりに少しアドバンストな勉強でもしようかと, 複素代数幾何への応用を意図した多変数関数論の入門の本を読んでいたところ, やはり代数の基礎が足りていないのを痛感しました. 最終的に関数論はもっときちんとやろうと思っているため, 何となく代数のノート作りを並行して進めていました. 学生時代に一度勉強していたとはいえ, 大して使っていない以前にやり込みさえ甘かった分野はなおのこと身についていない, 身につかないのを痛感させられました.

ノート整理をしていたら, 細かい精査の必要性を認識しつつ, 幾何のノートを早く充実させて作り切りたい気分が高まってきています. 少なくとも現状では研究にまで届くような内容への興味だとやはり解析学が中心で, 幾何で興味がある分野と内容は基本的な部分がわかれば当面は十分です. 一般論としては位相幾何(トポロジー), モース理論, 指数定理が揃えたいです. (多変数)関数論は私の中で解析学判定もありますし, ホモロジー代数も必要な範囲は位相幾何とモース理論を勉強すれば, ある程度はノートができるでしょう. あとは多変数関数論と代数解析を進めれば層のコホモロジーの基本的なノートが充実するはず.

復習・整理していると, やはり控え目に言ってもリリースできるレベルではありません. 定着のためにのんびり復習する時間も作って, リリースに向けた準備をはじめたいです. 書きっぱなしなので最低限の整備でさえ一年半はかかるでしょうけれども. そういえば多様体の基本的な内容もノートが作り切らずに止まっています.

一般論が整備できれば, 具体例と計算フェーズがもっと楽しくなります. 微分幾何もよくある2-3次元での曲線論, 3次元空間内の曲面論と一般的なリーマン幾何の対応が見えるノートを作りました. ずっと精神的な重しになっていた内容をクリアしたので, 具体的な計算で遊び倒すモチベーションも高まっています.

あと数ヶ月やっていたAOJも飽きてきた上に, 進めていたAOJの基礎教材はHaskellと相性がよくなさそうで, F#に慣れた頭でOCamlもつらいため, AtCoderに戻ってきました. 基礎教材と問題という違いもあるのでしょうが, 何となくHaskellとの相性もよく, Haskellerのコードが簡潔・明快で読んでF#に翻訳するだけでもよい勉強になっていて, とても楽しいです.

AtCoderで優先度つきキューを使うとよい問題が出てきて, HaskellではIntMap, F#だと集合を使った解法がありました. .NET6で優先度つきキューが入ったようですが, .NET core 3のAtCoderでは使えず, しかもちょっと微妙な仕様のようで閉口しています. AtCoderに戻った途端にデータ構造学習の基本的な課題に当たったため, この数ヶ月の苦闘も無駄ではないものの, (F#による)関数型データ構造学習の道のりはまだまだ長いです.

C/C++やRustでやればよいのではという話もあり, Rustは興味があるものの, 「F#を書いて遊びたい」がモチベーションの一つになりつつあるため, なかなかうまくいきません.

自然言語で「英語は好きではないがフランス語はとても肌に合う」と言った話を聞いてそんなものかと思っていましたが, いままさに「他の言語ではなくF#を書きたい, F#で遊びたい」になっていてこういう感覚かという思いです.

基礎が必要なら早めに・徹底的に

近況報告に書いた話の続きです. いま代数のノートを作っていて改めて実感しています. なまじある程度知っているだけにノート作りが面倒で仕方ありません. かといってさぼると, あとで本を探すときにふだんその分野の本を読まないため奥に追いやられて手繰り寄せるのも面倒なのも実感しました. 思い立った今やるしかないと歯を食いしばって進めています. 先々の面白い話を知っているのもさっさと終わらせたい嫌な気分に拍車をかけます.

対照的に, 物理の勉強の場合だと少なくとも一度はまじめに・徹底的に勉強した上で, 改めて基礎の繊細な部分を徹底に考え直す側面があり, 逆に新たな発見というか楽しみが生まれてくるのが面白いです. いままさに作っている熱力学ノートでそれを実感しています. 学生時代に勉強した, 最低限知っている内容であっても, 明らかに理解が深まっていて理解できる内容もそこにいたるスピードも上がっています. 学生時代に物理学科だったご利益を実感しています.

先々の面白い勉強を進めたい人は多いと思いますが, いつかどこかで基礎に向き合うことになるのはよく覚えておいてください. ここでいう基礎はハードな計算を遂行しきる計算力も含んでいます.

河東YouTube講義録: エニオンの圏論的対称性と作用素環

面倒になったので転記をさぼりましたが第九回まであります. 第一回しか見られていないものの, ヤング図形の解説をはじめてまともに聞いたのですが, これがなかなかよかったのでそれだけでも聞く価値があると見ています.

第二不完全性定理と「コーディング」への依存関係

第二不完全性定理が、多くの自然なコーディングに依存していることは不完全性定理の研究者を除きあまり知られていないけど、証明はともかくその事実だけは割と知られていて良いと思っている。このサーベイがかなりわかりやすく説明されていて、intensionalityと言っている。

最近計算機科学にも興味が出てきて, その中である程度集合論の議論の要素を見かけます. 集合論ノートも作りたいと思いつつ幾星霜です.

図解する整数論

図解する整数論 - 丸善出版 https://buff.ly/3yAHsgO この本,ヤバいです,面白すぎる.最初の数え上げからこの手があるのかの連続で,平方剰余の相互法則が力学系で証明されていたり,ペル方程式の解を2次形式のトポグラフという図形的な手法で構成されています.素晴らしすぎる.

私も広い意味では$C^$-力学系・$W^$-力学系として力学系の基本的な部分を勉強・研究していましたし, 研究会で作用素環関係の力学系の話題にも触れていたため, 数論と力学系のようなテーマなら数論にも興味が持てそうな感覚があります. エルゴード理論・確率論と数論という話もあります. 数学としてのエルゴード理論は射程範囲が長いので, これもいつか解析学からのノート作りに勤しみたいです.

藤岡敦『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』

『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』 「本書は、このようなことから生じる高校までの数学と大学以降の数学の間のギャップを埋めるための教科書である。」

一定数興味がある人がいそうなのでシェアしておきます. 藤岡さんが最近書いている「手を動かして学ぶ」系は評判がよいようです. 内容は確認しきれていませんが, ここ一年私が主張し続けている計算の重要性もまさに手を動かして学ぶ系のコンセプトで, 様子を見る限り大きな方向性は同じようです. その大方針も合わせてお勧めです.

永井セミナーの動画: 機械学習による材料物性シミュレーションの高速化

そういえばこの前1時間位「機械学習による材料物性シミュレーションの高速化」って内容でオンラインセミナーしてきたのですが、その動画が公開されました。 |【オンラインセミナー】第3回 アドバンス・シミュレーション・セミナー https://youtu.be/KMLDPsktQ-w @YouTubeより

最近統計勉強会ではJuliaの統計パッケージを読むのに飽きてきたためsympyのコードを読んでいます. 高速化を意識したコードをしばらく読んでいたからか, sympyのコードで簡単で本当に微々たる量ではあっても, 明らかに効率化できるコードを見て「書き換えたい」と思うようになる程度には高速化への意識も芽生えてきました. まだ見られていないのですが, 気になってはいるのでメモついでにシェア.

続 熱力学・統計力学学習の指針

前回は熱力学の話をしました.

今回は統計力学です. はじめに断わっておくと熱力学と違って統計力学を数学的にきちんと議論しようとするのは勧めません. 単純に血反吐を吐くほど難しいからです.

まず数学方面の興味がある人向けに書いてしまいましょう. 例えば量子統計で言えば平衡状態の存在そのものがいまも論文になるレベルで大変です. もっと言えばBECがあるため自由場の議論さえ数学的にきちんと議論するのは大変です. 新井朝雄先生の「量子統計力学の数理」も自由場のBECが一つの山です. そんな中, 物理的な意義もおさえながら統計力学の基礎を勉強するのにお勧めなのは, 原・田崎の「相転移・臨界現象の数理」です. イジング模型には可解格子模型のようなテーマもありますがこれはもっと地味な議論です. しかし逆に物理学科の物理にとっても意義のある形・内容なので, 数学的に完全に厳密に物理にアプローチしたいならお勧めというかぎりぎり限界の内容です.

次に物理学科水準で統計力学の基本的な内容を勉強するときのポイントです. 結論から言えば, これも田崎さんの統計力学を読むのがいいだろうと思います.

統計力学には凄まじく多彩な展開があります. 先日沙川さんの非平衡統計力学の本も紹介したように, もはや非平衡統計も完全に市民権を得ています. 統計力学自体, たいていの物理学科では学部三年程度でようやく必修として処理できる内容です. そして四年では完全に研究室配属で専門的な話題の準備にうつるでしょうから, 基礎を修めたあとはもうゴリゴリの専門に向けたテーマの本に挑むはずです. 何を勉強するにしても大事な基礎となると本当にオーソドックスな内容を丁寧に勉強するのが一番で, 田崎さんの本ではシュレディンガー方程式系の議論に基礎を置いた量子力学の話も基本的なところから解説してくれていて, 偏微分方程式を駆使する(20世紀型の?)量子力学への導入にも使えて便利です.

熱力学の本も同じで, 田崎さんの本はとにかく丁寧なのがよい点です. 比較的最近の本なので物理的な基礎づけとエルゴード理論の(無)関係などにも注意があります. 強いて言えば二巻あって長いと言えないこともありませんが, 丁寧さの裏返しと思った方がよいでしょう.

応用に関する部分でも書いたように, この本だけだとさらなる魅力的な現象へのアプローチや具体例の計算が足りません. 熱力学の本でも引用があるように, 埋める一つのアプローチは久保亮五編の演習書です. なくしたようでいま手元にないので記憶で書くと, まず物理学科向けなのでかなり難しいです. もちろん最新のトピックもありません. それでも統計力学の幅の広さは実感できる特異な本です.

私は物性の数理物理に進んでしまったため, 物理としては深いものの極端に狭い世界しか把握できていません. ただそこまで広く深く勉強したい人はもはや研究志望の大学院生くらいで, もう私の手に負えるレベルの人ではないでしょう. まずは熱力学・統計力学ともに素直に田崎さんの本を読んでもらうのがいいと思っています. その先はもうほぼ研究水準です.

熱力学の復習メモ: エントロピーが温度をパラメーターに含まない理由

冷静に考えると大した話ではないものの, 本腰を入れて勉強し直したご利益的な形でいい気分なのでメモがてら共有します.

何というか, 完全な熱力学関数としてのエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由がようやく腑に落ちました. 全くもって高尚な話ではなく, 断熱系の定義のもと, 断熱系の状態間遷移を制御する量としてのエントロピーという既に知ってはいた定義を整理しつつ認識し直して, 改めて熱力学の理論の構造が見えてきて, 当たり前のことを当たり前と言えるようになりました. 田崎さんの本の二章の定義は本当に大事なので, 田崎本を読む人はぜひ注目して読んでください.

念のため簡単に理由を書いておきます. 温度は外部の環境に関するパラメーターとして熱力学に導入されます. 一方断熱系はいわば孤立系の議論で環境の情報は持ちません. 外部環境と比較した上でしか出て来ない温度の情報を使って断熱系を特徴づけるのは原理的に不可能です. これが断熱系の完全な熱力学関数がエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由です. わかる人にしかわからない説明かもしれません. 勉強会つき通信講座の形でノートを公開する予定なので, 興味がある人は楽しみにしていてください.

さらっと流しただけの代数や幾何と違い, 一度自分なりに徹底的に勉強した上での物理の復習は頭が整理されてとてもいい気持ちです.

神学大全の羅和対訳

なんと,慶應の上枝美典先生による『神学大全』の羅和対訳がGitHub上に公開されているだと・・・. http://ueeda.sakura.ne.jp/translation/

人文系でもGitHubの活用があるようで, インフラとしてのGitHubがどんどん広がりを見せているようです.

2022-10-08

数学・物理 ノーベル物理学賞は量子情報: ベルの不等式/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 社会の厳しさ
  • 「チ。地球の運動について」
  • 磁性の数値計算
  • 熱力学・統計力学学習の指針
  • 技術資料のあり方

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近況報告

ノーベル物理学賞はいままさに通信講座で展開している部分とも重なる量子情報, ベルの不等式に関わる議論で個人的にはとてもタイムリーでした. ベルの不等式は一連の不等式を指し, それぞれがいろいろな状況を扱っていて一概にこうとは言えないようですが, 面白い議論がたくさんあるのは間違いありません.

いまの通信講座でも一連のベルの不等式のうちCHSH不等式を扱っていて, このCが今回授賞対象のクラウザーです. ここ一年ずっと言っている具体的な計算・線型代数の計算・行列の計算の文脈からもドストライクです. 次の通信講座も予定ではいまの続きで, 線型代数の一般論を量子力学に役立つ形でゴリゴリ具体的に低次で計算するスタイルで続けます. 興味がある方は楽しみにしていてください.

特殊相対性理論のノートも力学部分は大まかに作り終えました. まだいろいろな本やPDFなどの切り貼り状態なので, 後で見たら「何だ, このわかりにくい構成は」となるはずです. このまましばらく寝かしておいてから整理して, 一定のレベルになったらまた通信講座としてリリースする予定です.

学生の頃, 学部三年で勉強したときは量子力学・統計力学と同時平行で進めていて, それぞれ計算も大変で物理どころではない状態で, 物理の理解以前で止まっていました. ようやく一歩踏み出せたのでこれからのさらなる追い込みが楽しみです.

これから熱力学ノートをざっと整理して, イジング模型の数理物理に進む予定です.

社会の厳しさ

「数学やってます」と言ったら心底嫌そうに顔を顰めて「しっしっ」と追い払う動作をされたことがあり,それをやられたらもう,自分は仮に自分の大嫌いなこと(それがあったとして)に従事している人が目の前にいてもそんなことをしないという誇りを胸に生きていくしかないと思った.

最近のTwitterでは「数学をやっていると言って嫌な目にあったことがない」との話をよく目にするようになって, そんな異世界があったのかと衝撃を受けていたものの, やはり社会はあったと現実を思い知らされた気分になりました.

「チ。地球の運動について」

『チ。地球の運動について』というマンガが人気のようです.コミック売り場で平積みになっていたりします.近世の地動説をテーマにしていますが,科学史的にはありえない話ばかり.近世の政治史,宗教史からも突っ込みどころ満載ではないかと思います.

実はこの手の成文化された批判を心待ちにしていました。最終巻を読むと、あの異端審問官が一体「誰」なのか分かるとともに、事実を反映しない云々の批判が瞬時に無効となります。

未読の漫画なのですが気になる話があったのでメモがてら共有です. ガリレイの異端審問的な記述に関して無茶苦茶だが, 最終的などんでん返しがあり, それを知ってもまだなお不満があるという話もあるようで, どんな話なのか逆に気になっています.

磁性の数値計算

イジングの数理物理をやる一方, 永井本を読んで, 改めてプログラミングネタとして格子模型をやるといいのでは, という天啓を得たため適当にツイートしたら教えてもらいました.

(答えてもらっておいてなんですが、専門外という事を含めていただいて話半分に聴いてください) 古典と量子で色々と異なる気はしますが、ネット上だと 川島直輝, 物性物理におけるモンテカルロ法(第52回物性若手夏の学校(2007年度)講義ノート), 原田健自, 量子モンテカルロ法の最近の発展とかでしょうか。 本だと計算物理〈3〉数値磁性体物性入門 基礎物理学シリーズが良かったと記憶してます。

数値計算でトロッター公式や経路積分といったテーマも重なるようで, 線型代数の一般論ネタとしても昇華できる部分があります. 富谷さんのツイートを見ていると, 物理学者向けのプログラミング教育的な部分も全然足りていないようなので, そこにも貢献できるようなことができればな, と妄想しています.

熱力学・統計力学学習の指針

これからまさに私自身これらを再学習します. 学生時代物理学科で一通りやっていて, イジング模型の数理物理については原・田崎のイジング本の査読に参加して謝辞に載せてもらった程度には勉強しているため, 直接役に立てるのも難しいと思うかもしれません. 逆に数学色が強い人間から見た勉強のつらさといった視点で何がどうつらいのか言える部分もあるので, 興味がある人はぜひ参考にしてください. ノートを整理したら通信講座も展開する予定です.

まず熱力学はここに田崎本・清水本の書評を書いています. これも参考にしてください. 清水本は2021年に二巻本として第二版が出ていますが, 私は一巻本の第一版しか持っていません. 内容・構成が大きく変わっているかもしれませんが, ここでは第一版に基づいた記述にします.

おそらく多くの人はエントロピーを理解したいと思うでしょう. どう書かれればわかりやすいと思うかは人によって大きく変わる点に注意が必要です. 古い(?)統計力学の本だとエントロピーは乱雑さを表すと言ったりしますが, 熱力学のレベルではそんな話は原理的に出てきません. 統計力学をどういう立場で捉えるかもあります. 少なくとも熱力学(だけ)を勉強するなら乱雑さの視点から捉えるのはやめた方がよいです.

最近の新しい本は調査できていないものの, とりあえず熱力学は田崎本と清水本を読むのがいいでしょう.

特に初学は田崎本を勧めます. 気体の力学的扱いからはじまって状況を表す図も差し込まれているため, 理論を直観的に理解しやすいはずです. 力学を軸にした熱力学の理論の立て方に慣れたあと, 断熱操作を軸にしたエントロピーの立ち位置を明確にしていて, 熱力学としてのエントロピーの意義が見やすい構成になっています.

あともう一つ, 初学にお勧めの田崎本の圧倒的な利点があります. それは完全な熱力学関数の記号的な識別です. 例えばヘルムホルツの自由エネルギーといっても, 何を変数としているかによって熱力学的に持つ情報量が変わります. 系の完全の情報を持つのは適切な独立変数を持ったときだけで, その場合に関数の引数を角括弧で書く区別をつけています. これだけでも熱力学の議論の見やすさが段違いです.

社会人や非専門の人だと時間もないでしょうから田崎本一冊読めばそれで十分です. もっといろいろ勉強してみたい人は清水本を読むといいでしょう. 次にこちらの特徴を書きます.

田崎本のいいところはよい意味で熱力学に閉じて, 熱力学の理論構成を教えてくれます. 一方, 清水本は物理の中の熱力学を教えてくれます. 例えば場の量子論や統計力学, 相対性理論との関係も一章割かれています. 他には離散的な量であるはずの物質量を連続とみなす感覚の説明もあり, 物理として明らかに一歩踏み込んだ記述があります. おそらく相当物理に慣れていないと読めません.

もう一つ, 初学者殺しになりがちな清水本の特徴があります. 著しく数学的な記述スタイルです. ここでいう「数学的」はいわゆる厳密な論理展開といった話ではありません. 実は清水本では田崎本と違ってエントロピーから話がはじまります. そして次のように議論が進みます.

  • エントロピーという量が大事なことがわかっている.
  • こういう量として定義する.
  • エントロピーが持つ性質を解明しよう.

この「まずとにかく大事な量・概念を定義する」, 「何だかわからないまま話を進める」スタイルがいかにも数学の議論の趣があります. 特に途中までは具体例の計算もかなり少ないように思います. ふつうの物理の本のスタイルではないことも難しさに拍車をかけます. 念のために書いておくと数学関係者なら読みやすいかと言うとそうでもありません. 肝心の物理部分が難しいので物理に対するかなり高い耐性が必要だからです. そういう意味ではまずは四の五の言わず田崎本を読んだ方がいいでしょう.

本当は統計力学も書こうと思ったのですが, 長くなったので次回に回します.

技術資料のあり方

よく技術資料を書く人間としては背筋が伸びる資料だった。よく整理されていると思った。A群向けの記事を書きたいと常々思いつつ、B群向けの記事を執筆・量産している気がしてならない/テクノロジーマップ、技術カタログの在り方について

A群とB群はリンク先のPDFで次のように定義されています.

  • [A群] 組織に少数ながら隠れて存在する、独立した頭脳を持ち、試行錯誤を好む、実質的技術的決定権者たち
  • [B群] 組織の経営事務的機構(サラリーマン的集団)

私もA群と解されるような人達向けの情報を出す方だと思いますが, もっときちんと考えてやるべきなのでしょう.

今週の問題

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-10-01

数学・物理 格子模型の数値計算が面白そう/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 計算統計・計算物理の諸手法
  • 機械学習のための関数解析入門, 線型代数対話
  • 同値な主張の言い換え
  • 関真一朗, グリーン-タオの定理
  • 中平健治, 図式と操作的確率論による量子論
  • フォンダ, クルツワイル-ヘンストック積分入門
  • 小学校でのプログラミング教育
  • ラテン語派生語表
  • 人生のはじまり, 勉強の我慢
  • 今週の問題

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近況報告

ここ最近いまひとつ気分が乗らずメルマガが隔週になってしまっているものの, 数学・物理・プログラミング自体はのんびり進めています.

統計の勉強会で永井本のイジング部分を読んでいます. 微分方程式はあまりにもつらいものの, 何かしら物理に関わる数値計算はやりたいと思っていたところ, 改めて格子模型をいじっていたら「そうか, これもあるか」と今更ながらに気付きました. 格子模型の数値計算ネタや本がないか, 勉強会で読み終わったらちょっと永井さんに相談してみようと思っています.

あと最近よく触っていて, Juliaの統計パッケージのライブラリ読みも飽きてきたので, sympyのソースを読もうかとも思っています. プログラミングも改めて純粋に数学・物理に絡んでくるような方向が見えてきたので, とても楽しみです.

数学・物理に関しては通信講座関連で特殊相対性理論ノートがもう少しで雑に組み上がります. 一般相対性理論はいまひとつやる気が出ないので, 特殊相対性理論ノートができたらいったん熱力学ノートを作り, イジングでの統計力学ノートを作る方向に進もうと思っています. 上で書いたようにイジングは数値計算もセットで遊ぼうと思っていて, いまから楽しみでなりません.

計算統計・計算物理の諸手法

これ講義聞いてみたいと思うでしょう.ところが実は動画が全部無料で公開してるんですが https://sites.google.com/view/lecture-algorithm/ なぜか誰も聞きにこない.

そしてネット上で入手できる壮大な文献リストまでついているのである https://sites.google.com/view/lecture-algorithm/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/%E6%96%87%E7%8C%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88

計算物理関係の文献リストもあるのですが, いまひとつ何からどう読んでいけばいいかわかりません. よく知らないところに対して文献リストをボカンと出されても困るのを改めて実感しています. 今年に入ってからの通信講座・計算練習もこの反省というか実感に基づいて展開しています. よく知らない上に吟味する時間も取りにくい状況だとそれだけで困るので, とりあえずこれをかちっとやろうと出してくれると楽だろうと.

機械学習のための関数解析入門, 線型代数対話

これ(機械学習のための関数解析入門)は名著です。関数解析ガチ勢は、著者が「何を狙ったか」たぶんすごくわかって感動するのでは。内容は易しいが、理念はあくまで高い!

ありがとうございます!『線型代数対話』もいずれは関数解析までいくつもりなのですがまだ道は遠いのです。関数解析の方にむしろ読んで(ニヤリとして)いただきたいのは『指数関数ものがたり』ですね(付録は圏論)。下記Grassmannianさんという方のレビューが詳しいです。

11,12章は著者の専門に若干寄せた発展的なトピックというところだろうか。Fourier変換からGelfand変換へと話を進め非可換確率論に触れ、超関数を定義し中心極限定理で幕が下りる。本当はここからさらにBrown運動の話をしようと思っていたらしい。続編に期待したいがそれは演習問題とされていた。 私は付録がとても面白いと思った。本文で位相の話ができなかったからということで、圏論的に集合、超準解析、距離空間を取り扱っている。

西郷さんは比較的専門が近いので前からかなり気になっています. 『指数関数ものがたり』も読みたいですがとにかく時間がないですね.

作用素環も学生の頃にノートをTeXで作ろうと思ったものの, あまりに時間がかかるので断念した記憶があります. 今から思えば時間がありあまっていた大学院の頃にこそやっておけばよかったと非常に後悔しています.

同値な主張の言い換え

函数fについて、「任意のxについてf(x)は0以上」と「fの最小値(正確には下限)は0以上」は同値な主張ではあるが、学生視点だと前者の方が圧倒的に難易度が高い。それくらい(数学者以外の)人間にとって述語論理は難しくて分かりづらい。 現実に学生を指導する際には、「正確には最小値でなくて下限だけど、下限概念は難しい」とか「前者のように理解する方がより自然」とかあったりするわけですが、前者のような表現が学生の理解に負担をかけていること自体は意識したいと自戒。

この手の言い換えは受験数学のテクニックみたいに思われがちだけど、大学以降の数学でも実は大事で、リーマン積分の理論は過剰和と不足和を導入することで実質的にこの手の言い換えを駆使して記述を大幅に簡略化しているんですよね。 こういうものの見方は私も最近できるようになったもので、学生時代の理解力だと教科書や授業ノートの議論をフォローする(それもできたのか怪しい……)ので精一杯で全然ゆとりがなかった。 これぞ年の功である。

最近よく引用する森の未知さんのツイートです. 森の未知さんはかなり教育熱心で, かつツイートで知見を共有しているのでとても参考になります.

ちなみに上記引用の一番最初のところ, 実際にどちらの方がわかりやすい・わかりにくいというのはあるでしょうか? 私はむしろ前者の方がすっと入るくらいですが, それほどふつうではないと聞いてむしろびっくりしました.

関真一朗, グリーン-タオの定理

実物を見てない人がわいわい言うのはアレかもしれないですが、これ多分名著なので皆さん買いましょう。 というのも、この手の本にはしてはとても珍しいことにself-containedらしいんですよね。

グリーン・タオの定理 |朝倉書店 「素数には任意の長さの等差数列が存在する」ことを示したグリーン・タオの定理を少ない前提知識で証明し,その先の展開を解説する。〔内容〕等間隔に並ぶ素数/セメレディの定理/グリーン・タオの定理/ガウス素数星座定理/他。

21世紀に発見された大定理を一冊の本でself-containedに証明全て説明すると普通はガチ専門家にしか読めない本になるわけですが、非専門家(と言いつつ学部レベルの数学はある程度知ってた方が良いかもしれないが)向けで証明全て説明するのはとても珍しいです。

これも森の未知さんツイートです.

ちなみに関さんはいわゆる素数大好き人間です. 私は学部が物理, 修士は解析学専攻だったのであまりこの手の人に実際にお目にかかる機会がなく, 関西すうがく徒のつどいではじめて話を聞いたときに「素数大好き人間, 本当にいたのか」と思った記憶があります.

中平健治, 図式と操作的確率論による量子論

いま通信講座もやっている量子力学関連でまた本が出ます. いわゆる「21世紀の量子力学」的な内容でピンと来る本にいまだに出会えていないのですが, Twitterでの様子を見る限り, 中平さんの議論のスタイルはかなり肌に合いそうなのでとても気になっています. Amazonでもうポチっておきました. 10/21発売だそうなので到着が楽しみです.

フォンダ, クルツワイル-ヘンストック積分入門

リーマン積分とゲージ積分で微分積分学の基本定理の主張と証明がどう違うのか比べると結構面白い。 リーマン積分だと証明に平均値の定理を使う関係で被積分函数の可積分性の仮定が必要だが、ゲージで区分だと単に微分の定義なので被積分函数の可積分性は仮定ではなく結論となる。

これまた森の未知さんツイートで, 私の中で微妙な盛り上がりを見ました.

ルベーグを一般化できている面もあるようで, 何年も前からそれなりに気になる話ではあります. 私がルベーグ積分を使う・使いたい場面は, $\mathbb{R}^n$を越えた一般の測度空間上の議論が大事な局面が多いので, どこまで「使える」のかが気になっています.

関数解析・関数空間論的な方向も重要で, クルツワイル-ヘンストック積分可能な関数の空間論がどこまで論じられているかも問題です. ここがよい性質を持ってくれていないと使いづらく, リーマン積分の一般化だけに集中されて関数空間論に踏み込んでもらえていないとさすがに食指が伸びないですが, そこまで調査する気力と時間がないです.

どなたかご存知の方がいればぜひ教えてください.

小学校でのプログラミング教育

オープンアクセスになりました。無料でPDFをダウンロードできます。 ついに始まった小学校プログラミング教育 -その現状と課題-, 情報処理, Vol.61, No.8, Aug. 2020 http://id.nii.ac.jp/1001/00206050/

中高生向けの動きで何をするかずっと考えているので, 参考資料としてメモ+共有です.

ラテン語派生語表

題名は「ラテン語派生語表」だが、内実はラテン語由来の英単語を系統的に集め訳語を添えた解説書、ラテン語幹を記憶の鍵とし芋づる式に英単語を整理できる。ラテン語の英訳と和訳に用いた漢字とがなるべく意味の上で一致するよう配慮、相互関連が看取し易い。まさかの無料😳 http://bit.ly/3c8rIWs

ラテン語は学術用語として数学・物理に息づいています. そんなかたいことを言わずとも, アニメ・漫画・ゲームでもちょこちょこと出てきます. 文系人向けの「語学からの理工系入門」的な調査も進めているのでそれ用のメモ.

人生のはじまり, 勉強の我慢

二十台半ば、既に人生は本番中だったと気づいた。その頃は、まだ人生の準備中で勉強したり経験を積んで力を蓄えているのだと思い込んでいた。でも、それでは何もできないで終わると気づいた。今も時々思い出さないと、勉強や成長の快楽に逃げてしまう。 だから、何かを勉強してできるようになったら挑戦するとか、自分自身にとって大事なことを先延ばしにしている人には、あなたの人生も本番が始まってますよと言ってあげたい。勉強が得意な人生を歩んできた人ほど、この事実に気づきにくい。 確かに何かの目標に向けて勉強が必要という場面はある。しかし、自分の場合は、本能的に勉強が好きだから、勉強するのは仕事をサボっていることが多いと自覚している。だから、がんばって勉強するという精神がわからない。むしろ、勉強を我慢することが大事だと思ったりする。 研究者になる人にとっても、勉強フェイズから研究のフェイズへの遷移は難しい課題だ。勉強すると、短時間でたくさんの知識を蓄積できるのに、研究をすると、ほんの少しの知識を生み出すのに、無駄に終わるかもしれない行動をたくさん取らないとならない。

上でもずっと書いているように, 勉強ばかりで中高生向けの活動を行動にうつしていないので非常に反省するツイートでした. 地元の政治家に何か進める手立てが打てないか, 改めて話を持ちかけたので少しずつでも何か動かしたいですね.

今週の問題

つい先程ノートを作っていたローレンツ変換の導出に絡めて一つ.

ローレンツ変換の導出には光速度の不変性と相対性原理を使うことになっています. しかし実際には座標変換を線型変換に制限するために空間の一様等方性も使っています. 改めてノートを作って線型変換に帰着する部分の理解の曖昧さに気付きました.

こんなところも線型代数です. 特殊相対性理論でも線型代数は重要です. 一般相対性理論・微分幾何でも局所理論は線型代数で, ベクトル束とその演算としても線型代数は酷使します. 一般相対性理論の入門段階でそこまでどぎつい微分幾何は必要ないものの, もしあなたが数学としての幾何に興味があるなら避けては通れない対象です.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-09-17

数学・物理 興味が燃えてくるまで待ち, 耐える/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 興味が燃えてくるまで待ち, 耐える
  • Web上学習がつらい
  • 集合・位相, または微分積分・線型代数の通信講座
  • アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

感想をください

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.

ではまたメールします.

近況報告

ここ最近, 通信講座の次の展開用に物理として相対性理論のノートを作っています. 学生時代は相対論的場の量子論用に特殊相対性理論を少し使ったくらいで全然身についていないので, まずはリハビリです. 微分形式といった部分にどこまで踏み込むかと思いつつ, 特殊相対性理論だけならそこまでいらないかとも思い, いろいろ検討中です. 一般相対性理論にいまひとつ食指が伸びないので, 復習がてら特殊相対性理論ノートを作ったら統計力学, 特にイジングのノートを作る予定です.

永井さんのJulia本にもイジングの話があり, それはそれで別途勉強会でいま読んでいるところなので, 数値計算との絡みももう少しやりたいですね. そこまで含めて楽しみが続いています.

興味が燃えてくるまで待ち, 耐える

近況報告にも少し書いた一般相対性理論の話です. 学生時代, 講義に出て一度は一通り勉強したものの, いまひとつ食指が伸びずいまもそのままです.

いま仕事でこれまでいろいろあって手を出してこなかったフロントエンドまわりの勉強をはじめていて, 強制力でゴリゴリ進められているのを考えると, 興味が出てくるなり必要に迫られるなりして本腰を入れたくなるまで待つのがいいか, と思ってとりあえず特殊相対性理論に集中しています.

学術界隈だと何かを理解したければ研究するのが一番だとよく言われます. これにあてはめるなら, プログラムだと何かしらプログラムを書く・開発するのが一番なのでしょう.

中高生向けの展開のために言語学やアルゴリズムなどの情報科学の基礎を勉強しはじめ, 学生時代はまるで興味がなかった言語設計などにも興味が出てきたほどです. 自然な興味の発展を待ってじっくりやるしかないかと改めて感じています.

Web上学習がつらい

主にプログラミングでの話です. 最近は公式ページが充実していて本当に助かります. 変な本や解説を読むよりよほどしっかり丁寧に書いてあることさえよくあります.

しかし私にとってつらいのはハイパーリンク系の発想そのものです. リファレンスを読むような必要な部分のつまみぐいではなく, はじめから順を追って勉強したいとき, どこからどう読むのがよいのかとてもわかりにくい点です. そしてリンクが張ってあるとそちらに飛んでいきたくなり, 順番がめちゃくちゃになって混乱します.

「コースが三つある. 初心者向け, 中級者向け, 上級者向けだ. 興味・関心・状況に応じて好きなところからはじめよう.」と並列に並べられていて, 「あとで起点のこのページに戻って中級をやろう」みたいなのがもう面倒でたまらないです.

この点, 本は基本的にはじめから最後まで単線で読み進める前提で構成されています. 頭を使わず前から読めばいい点が本当にありがたいです. こういうスタイルの方がいい人もいるのでしょうが私にはつらいです. ウェブサイトやコンテンツを作るときの自戒として最近本当によく思います. 体系立ったコンテンツを何でどう作るべきか改めて気にしています.

ちなみに私のようにハイパーリンクに満ちたウェブ上の資源で勉強するのがつらいタイプ, どのくらいいるでしょうか? 結構気になっています. いま展開している通信講座は既存のコンテンツ・私の学習ノートがあるため, コンテンツの配布としてははじめに関連するPDFをドンと出した上で, 「今回の講座は全体の中のこれとこれとこれ, それ以外は時間があればどんどんやってほしい. もしくは講座の期間が終わってから復習がてらのんびり取り組んで」という形です. これももっと色々なアプローチがあるでしょう. 余計なコンテンツが入っていると混乱して嫌という人もいるはずで, いい形はずっとゆるく考えています.

集合・位相, または微分積分・線型代数の通信講座

当面は物理(の計算)系をメインに進めようとは思っているものの, 数学系をもっとやりたい人もいるのかもしれないと思っています. 以前文系プログラマー勢からコメントされたこともあり, いま量子力学や特殊相対性理論のノート作りでもsympyを使ったプログラムを改めてちょこちょこ貯めています. 以前作ったnumpy+sympyで中高数学に取り組むコンテンツも作っていますし, 数値計算系プログラミングを勉強したい理工人もいるでしょう. 既にいくつかモノはあるのにきちんと伝え切れていないとも思っているため, ずっと気にはしています.

Twitterにも少し書いた話で, よくプログラミングでは「何か作るのが大事で, ゲームやアプリを作るといい」と言われます. そして作るモノがない人が「自分はプログラミングに向いていないのか」と思ってしまう話もあるそうで. 「それなら計算したらいいじゃない」, 「競プロやるといいじゃない」というのが特に今年頭から私が模索している道です. それはそれで素数判定のミニコンテンツから先を作れていないため, そろそろ第二段を作らないとと思っています.

やりたいことがたくさんあって手が回らないので, どなたかよいコンテンツ作ってくれるとありがたいですね. がんばって宣伝協力するので.

アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング

アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング この本、パラパラ読んでたけどこれからプログラミング学びたい人はこっから入ると良さそうなくらい、いい本だった。

最近特に情報関係を再勉強中で, もっと具体的な本を必死に読んでいる最中で追い切れないものの, 面白そうなので読みたい本リストに叩き込んでおきました. いつも通りシェア+メモ.

今週の問題

最近は(特殊)相対性理論モードなのでそこから.

  • マクスウェル方程式はガリレイ変換で不変ではない.

学生の頃にも散々計算した内容ではあります. それでも改めて計算して確認する意味があります. 例えば変に色気を出して一般的にやるより, とにかく成り立たないことだけ示せばいいから$X$軸方向のブーストを考え, それで見やすい解だけ取ってくれば十分です. これはまさに数学で反例を作るときの発想でも重要です. 変な色気を出すよりも簡単なところからしっかり詰める意義を再確認しました. 実際変に一般的にやろうとして「これどうすればよかったっけ?」と謎の混乱を起こしてしまいました.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

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語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-09-10

数学・物理 密度行列に関する話/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • テンソル積とは何か
  • 関真一朗, グリーン・タオの定理
  • 関数解析的な量子情報の本
  • Helgasonの本
  • 式の錯視
  • Wigner-Araki-Yanaseの拡張
  • 密度行列に関する話
  • 数学屋さんとCS屋さんで問題意識とする点が異なるため、片方の問題意識がもう片方に上手く伝わらないという例
  • 150分で学ぶ高校数学の基礎
  • 田崎晴明, 統計力学Iの修正
  • カーリングはなぜ曲がるか
  • 統計の実例
  • 大人の学び直しサイト
  • ハーバード大のコンピューターサイエンス入門講座
  • 法令APIを利用したリサーチツール
  • メルカリのデータセット
  • 不偏分散の分母
  • 【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ①
  • 数学ソフトウェアの作り方
  • 教養としてのラテン語の授業
  • 大学以外で言語学を勉強する方法
  • 仕事のコツ
  • ハードワークの捉え方
  • 今週の問題

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  • 今回のページ
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近況報告

通信講座がはじまりました. そう組んだのだから当然ではあるものの, (私からすれば)そこまでハードな計算ではない一方で使い出がある計算が多くて眺めているだけでも楽しいです.

最近プログラミングを改めて意識しはじめたので, sympyでちょこちょこ検算プログラムを書いています. 二次の正方行列がさくさく計算できてこれも楽しいです. 統計とはかなり離れてしまうのが難点ですが, 今度, 統計の勉強会でsympyを読むよう提案してみようかと思うほどです. 統計をやるならnumpyで書いた方がいい一方で, 中高数学からやり直す系統ならsympyの方がいい面もあります.

何にせよ量子情報・量子開放系の議論で二次・三次の正方行列の具体的な計算の面白さを今まで以上に実感しましたし, そこにリー群・リー環系でもう少し高次まで計算したい要求も出てきたので, sympyの活用はいま私の中でホットです. 特にリー群・リー環は一般論を理解するための具体例の計算で割とすぐに五次・六次程度が出てきてしまい, 手計算したくない領域にすぐ突入します. ちょうどいま, 通信講座の勉強会で計算ミスを指摘され, 検算していたら混乱してきたのでsympyを使ったところです. テンソル積も計算できるので便利なことこの上なく, 感銘を受けています. ぜひ読者の皆さんもsympyを使えるようになってください. 本当に便利で助かります.

最近半年以上も延々と同じ話ばかりしています. しかしこれでもまだまだ汲み尽くせないほど楽しく重要な対象です.

そう言えばプログラミングに関連して, 以前作ったコンテンツはあります. ただこれに沿った中高数学復習系の勉強会つき講座もあった方がいいのか?とも思うようになってきました. 興味がある方がいれば連絡ください. 一人でもいれば何か考えます.

それはそうと, 今回もメモがもりもりです. そしてちょうど先週, 知人から「情報を集めすぎてそれをさばくために頭を使い過ぎて, 判断力が落ちているのではないか. もう少し情報を遮断した方がよいのでは?」と言われてしまいました. 自覚症状はないものの, だからこそ問題という話もあるわけでどうしたものかと悩み中です.

テンソル積とは何か

量子情報系のアプローチも大切なので通信講座でも触れざるを得ません. 今回はほぼいわゆるクロネッカー積による具体的な計算しか触れないとはいえ, 多少なりとも何か説明しないわけにはいきません. しかしなかなか説明するのが大変です.

私は一応学部一年で志賀浩二のベクトル解析30講で微分形式に絡めて触れたのがはじめてです. 少なくとも私が学部の頃の学部低学年の物理で微分形式は使わず, テンソルの言葉だけは解析力学・電磁気・流体・相対性理論で出てきても物理気分で適当に処理していました. そして学部3-4年の量子系の数理に絡めて改めてまじめに勉強し直す形になりました. このときは量子多体系, 特に合成系の構成としてその当時の私にとってこれ以上ないほど具体的な対象として出くわしたため, テンソルについて真面目に悩んだ記憶がほとんどありません. 量子力学をある程度勉強した上で改めて数学的定式化に挑んだときの気分ベースの理解こそあれ, 他の場面でのテンソルをどうするかほとんどわかっていません.

流体を改めて勉強し直したときに応力に関するテンソルの気分は把握したものの, 連続体の力学では四階のテンソルも出てきます. 幾何でも曲率は四階のテンソルで, リッチ曲率は縮約して二階になっていて, といろいろなテンソルまで含めてきちんと説明できるほどテンソルの多様な姿を把握できていません.

世間的な直観的でわかりやすい説明ではこの多種多様なテンソルをどう処理しているのでしょう.

関真一朗, グリーン・タオの定理

ついに!12月1日発売決定!! こちら→https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=11871

素数大富豪の作者で, 素数大好き系数学者として知っている人は知っている関真一朗さんが書いていた本がようやく出版されるようです. 数学は修士からだったこともあるのか, 素数が好きという数学者をはじめて見たのが関さんでなかなか衝撃でした. すうがく徒のつどいで二回話を聞いたことがあり, 話がうまい人ではあったので本も楽しみです.

関数解析的な量子情報の本

Holevoの著書などは、基本的に無限次元をカバーしてます。 Holevo, Probabilistic and Statistical Aspects of Quantum Theory (Publications of the Scuola Normale Superiore Book 1) (English Edition)

Holevo, Statistical Structure of Quantum Theory (Lecture Notes in Physics Monographs, 67)

あと、これのPart I V: Holevo, Quantum Systems, Channels, Information: A Mathematical Introduction

また本ではないのですが,この博士論文は勉強しました Kruger, Quantum Information Theory with Gaussian Systems

この間, クラウス表現とシュタインスプリング表現のよい具体例も書いてある文献を紹介しました. Twitterでもメルマガを流したところ, 量子情報系のプロが反応をくれたのでついでにいくつか文献を聞いておきました. D論はちょこちょこ眺めようと思っています. 楽しみです.

Helgasonの本

そうそう,ヘルガソン先生の Groups and Geometric Analysis... は調和関数だけじゃなく,球関数についても詳しいが,ハウ先生による書評がめっぽう面白いのでおすすめ. https://ams.org/journals/bull/1989-20-02/S0273-0979-1989-15786-8/S0273-0979-1989-15786-8.pdf

bioに著書名を入れていてツイートでもちょこちょこ自著と言っているため, 名前をどこまで出していいものかと悩んでいるmathraphsodyさんのコメントです.

調和関数は表現論のテーマであり, 微分方程式論や固有値の理論, 関数解析のテーマであり, コンパクト多様体上のラプラシアンの固有値解析とも絡んだりと勉強してみたいと思って幾星霜のテーマ含め, 私の趣味によくあう対象です. もちろんリー群・リー環とも相性ばっちりの対象です.

式の錯視

傾いて見える数式の錯視. 数学を使う文献の中にありそうであまりない錯視です.

↓↓新井仁之『ウェーブレット』(共立叢書現代数学の潮流、共立出版)の p.32 と p.75 にある数式。錯視を意図して書いたわけではありません。

上記ツイートのリンク先に錯視に見える式の画像が載っています. 興味がある人はぜひ見てみてください.

Wigner-Araki-Yanaseの拡張

論文を発表しました:https://arxiv.org/abs/2208.13494 九大の倉持さんが主著です。 「保存量と非可換な物理量は誤差なし測定不可」を意味するWigner-Araki-Yanase(WAY)定理は1960年の確立以来、非有界な物理量(運動量など)への拡張が未解決でしたが、この問題をYanase条件と呼ばれる条件下で解決しました。

WAY定理が非有界な物理量に成立すると、「位置の射影測定は、運動量保存の下で誤差なくできない」が成立するため、この問題は物理的にも重要です。WAY定理にはYanase条件(プローブ系にかける測定が保存量と可換)を使う設定と使わない設定があり、どちらも未解決でした。今回解決したのは前者です。 WAY定理は類似の結果がたくさんあり、測定、ユニタリゲート、誤り訂正符号などにそうした結果が知られています。最近、こうした結果を統一して一つの定理から導けることを示しましたhttps://arxiv.org/abs/2206.11086。この定理からは熱力学やブラックホール物理への応用も出ます。ご興味があればこちらも是非。

論文を軽く眺めても何だったか思い出せないものの, 確かこれは学生時代に関係するテーマを何か勉強していた記憶があります. 量子情報絡みで無限次元で直接的に作用素環を匂わせる話にも出くわして作用素環熱が微妙に高まっているのもあり, ちょっと気になっています.

密度行列に関する話

いま展開中の通信講座でもついでに状態や密度行列に関わる概念整理をやっています. Twitterで数学系の人と関連する話をしたのでここでもシェアしておきましょう.

密度汎関数理論(DFT)に出てくる密度行列って大体はトレースクラス作用素だと思うけどトレースクラスに入らない密度行列が物理的に重要になる場面ってあるのかな?

自分が普段扱っている密度行列は、トレースは確率の規格化の観点から1になっているので、トレースクラスでない密度行列というのはなかなかイメージが沸かないのですが、DFTでは密度行列がまれにトレースクラスでない場合が有るのでしょうか?

私は数学畑の人間なので物理のことは何も(本当に何も)分からないんですが、数学的にはトレースクラスでない密度行列を扱う研究もあります(トレースは粒子数に対応していますから要は粒子が無限個あるという状況です)。トレースが常に1の状況を考えることもあることは初めて知りました。 · 量子統計の状況ではありますが、数学的に相転移を起こすためには無限体積極限などが必要で、その場合の形式的な密度行列は連続スペクトルを持ちます(冨田竹崎)。相互作用系(または開放系)になると励起状態の準安定化で固有状態が消えます。基底状態の存在は発散の困難問題で数学的には非自明です。

このツイートだけからではちょっとよく分からないのですが、この話題について適切な文献等ありますでしょうか?>とても興味があります。

量子統計の数学の基礎という意味ではBratteli-Robinsonが基本的な文献です。ただ肝心要の密度作用素の話はそれ自身でほぼ出てこない問題があります。補足をいくつか書いておきます。密度作用素がどこで出てくるかといえば、平衡状態に対して$\omega(A)=Tr(\rho A)$と書くときで要は平衡状態の議論で出てきます。平衡統計力学では平衡状態はKMS状態で表されるとされていて、KMS状態に付随する作用素としてモジュラー共役Jとモジュラー作用素Δがあります。このΔをΔ^{it}=e^{itL}としたときのLが系のハミルトニアンにあたります。大まかにいえばΔが密度作用素です。 Δは冨田-竹崎理論の基本的な対象で、スペクトルの性質が作用素環の性質に反映するため、荒木・竹崎・コンヌらの作用素環的な決定的な結果がたくさんあります。密度作用素は大体e^{-H}にあたるため、ほぼハミルトニアンの解析にあたるものの、量子統計の文脈になるとハミルトニアンの解析がとにかく難しく、具体的なモデルに対する詳しい解析結果はあまりありません。先ほど書いたように作用素環論のレベルで作用素巻自体の解析の文脈で作用素環の性質とハミルトニアンのスペクトルの対応がわかっているくらいです。

私は密度汎関数の議論をほぼ知らず、私が知る限りその文脈から大きくずれると思うのですが、量子統計で興味がある系での密度行列はほぼ例外なくトレースクラスではありません。密度行列のスペクトルがハミルトニアンのスペクトルと関係がある前提のもとで、理由は無限体積極限での挙動にあります。 数少ない見やすい例としてラプラシアンがあります。有限の超立方体上のラプラシアンは指数関数が固有関数で、よく知られているように固有値は離散的です。しかし\mathbb{R}^d全体では全ての正の実数がスペクトルになり、固有値も消えます。調和振動のような例もあるとはいえ多くのハミルトニアンは連続部分を保つため、その時点で密度行列はただの有界作用素でコンパクト作用素の要件である離散的なスペクトル性がありません。おそらく密度汎関数の文脈と本質的に違う形で密度行列を使うため、あまり密度汎関数の議論に役立つ話はないだろうと思います。 密度汎関数業界でもE. H. Liebは有名人だろうと思う(少なくとも論文が一定数あるはず)のですが、Liebは物性・統計力学の幅広い分野で論文があります。Liebの仕事を眺めてみるのと密度汎関数からの議論で何かあるかもしれません。

きわめて丁寧な解説ありがとうございます。私はPDE畑の人間ですが、ある論文は方程式の背景を説明する際に明らかに密度汎関数の観点から密度行列を導入しているのに、途中から「トレースクラスではない密度行列を考えることも大切である」みたいな感じで量子統計っぽい具体例を引っ張ってきたりしていて謎なんですよね。まあ数学屋なので物理なんか知るかという態度も取れますが、やはり気になります。「量子統計の数理」みたいな本を眺めると作用素環の話が必要になるっぽくてつらいところです(作用素環ぜんぜん知らないので…)。

密度汎関数での密度は波動関数の絶対値の2乗にあたる量(関数)(のはず)、一方で密度行列は行列環(作用素環)上の線型汎関数としての状態がトレースとトレースクラスを使って書ける事情から切り出した作用素で、そもそも出所も何もかも違う概念です。密度汎関数で密行列という言葉を使うの自体がそもそもおかしいのではないかと思います。

数学屋さんとCS屋さんで問題意識とする点が異なるため、片方の問題意識がもう片方に上手く伝わらないという例

よく話題にあがる解析力学の$L(q, \dot{q})$の話です. 物理と情報系を両方一定程度知らないとわからないのかもしれません. 幾何的には接束上の関数の一言で終わりです.

150分で学ぶ高校数学の基礎

特に文系プログラマー系の人が概要を掴むのにはいいかもしれません. プログラミング関係は日々のデータ構造とアルゴリズム学習で手一杯で, あとは通信講座関係のsympyコード作成くらいしかできていないので, せめてもの宣伝協力です.

田崎晴明, 統計力学Iの修正

拙著『統計力学 I』でおそらく最も不親切だった(で、評判が悪かった)と思われる pp. 76, 77 の状態数の漸近的な振る舞いについての議論をより直観的で簡略なものに差し替えることにしました。「第 17 刷以前への修正」をご覧ください。以前の議論の簡単な解説もあります。 https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/statbook/errata.html

時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.

カーリングはなぜ曲がるか

こちらも時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.

統計の実例

この分析の精度はともかく, 興味が持てる実データがあるかどうかがとても大事という気分がずっとあります. 私自身なかなか統計系の勉強が続かないので. 語学・言語学で遊びたいとずっと思っています.

大人の学び直しサイト

  • URL
  • いろいろな科目を学ぶ: ただよび, 岐阜県総合教育センター, eboard, スタディチャンネル
  • 英語と数学: NSGL, 数基礎
  • 違う視点で学ぶ: schoo, Clearnote

こちらも時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.

ハーバード大のコンピューターサイエンス入門講座

ハーバード大のコンピュータサイエンス入門講座のCS50、久々に覗いたら教材だけでなく、講義動画も機械翻訳ではない日本語訳付きになってた。プログラミング学びたいと言ってる初心者に投げつける教材はもう全部これで良さそう。 https://cs50.jp

これも記録がてらシェア.

法令APIを利用したリサーチツール

最近仕事関係で改めて必要なプログラミング系の情報に集中的に触れるようにしていて, その中で見つけました. これもここ数ヶ月ずっと言っているように数学・物理・語学系でアプリを作っているので, その参考にもなるだろうとシェア+メモです.

メルカリのデータセット

うおおおおメルカリのデータセットだ、デカすぎんだろ!!!!

商品データ,コメントデータはCSV形式で,サイズはそれぞれ約100GB,約40GBです。画像データはサムネイル画像で約2TB,オリジナル画像で約1TBです。

URL

データがあってもこれをどう解析しよう事案があります.

不偏分散の分母

よくある「$n$ではなく$n-1$で割るのはなぜ?」事案です. いろいろな角度からの解説があった方がいいだろう, そのストックをしておこうと思いシェア+メモです.

【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ①

JuliaにはPyCallによるsympyのバインディングがあり, 他にも代数系の処理ソフトがあったはずです. Juliaは数学系でいろいろな動きがずっとあるのがいいところです. これも自分用の備忘録も兼ねてシェア.

数学ソフトウェアの作り方

「コンピュータが育む数学の展開」(全10巻)に引き続き、姉妹編となります新たなシリーズ「コンピュータと数学の織りなす革新」(全5巻)の刊行を10月より開始します。第1回配本は『数学ソフトウェアの作り方』です。ご注目いただけますと幸いです。 本書は、数学ソフトウェアを開発するために知っておいて欲しい事柄をまとめております。著者は皆、計算代数システムRisa/Asirなど、数学ソフトウェアの開発に携わってきています。本書には、その経験が随所にちりばめられており、この上ない解説書になっておりマス。

Cは昔仕事で書いていたこともあります. 結局ポインタの理解がいま一つのままで終わり, 今となってはあまり覚えてさえいない厳しさがあります. 書くのはともかく読めた方がよさそう言語だとは思っていつつ, そこまでやる気が出るわけでもない言語でもあり, 競プロ関係ではC/C++は基本的な言語なのでその範囲では毎日ちょこちょこ触ってはいます.

何はともあれ執筆陣がRisa/Asirの開発者で, 最近よくsympyにお世話になっている関係からとても気になっています. 勉強したいことが山程あって目が回っています. 近況でも書いたようにこの状況はもう少し是正した方がいいのでしょう.

教養としてのラテン語の授業

気になる新刊『教養としてのラテン語の授業』 著者は非常に面白い経歴の人物。「本書はバチカン裁判所の弁護士、ハン・ドンイル氏が行った名講義を整理したもの。ラテン語がわかれば、歴史、教養、文化の根底がわかる。西洋文明の根源であるラテン語を通して、歴史、文化、宗教、経済を学ぶ。 カエサル、アウグスティヌス、レオナルド・ダ・ヴィンチ。先人たちの知の息吹に触れる。 全世界で30万部のベストセラー」

これ, 語学系の話をやる上で多分私に決定的に欠けていて, 必須の知識ではないかと直観しています. ラテン語は科学の言語でもあり, そこまでカバーしたコンテンツがないだろうかと日々悶々としています. 自作はさすがにつらすぎるので.

大学以外で言語学を勉強する方法

言語学もちょこちょこと勉強していて, 例えば最近は印欧祖語に関する基本的な日本語文献という新書を買ってみました. 基礎はなかなか書き換わらない物理, 基本的に正しいものはずっと正しい数学に浸っているため, 新発見があるとすぐに話が変わってしまう非数学・非物理の世界はそれだけで勉強がつらいです.

それはそれとして, レベル・種類ともに豊富な中高数学系コンテンツ, そして応用上の議論は統計絡みの微分積分・線型代数で, 300ページほどの本を一冊さらえば知識としては大抵何とかなるはずでおそらく知識は極小で済むであろう数学でさえ独学が大変と言われているのに, 独学が多少なりとも楽にできる分野は何かあるのでしょうか?

仕事のコツ

40代になってわかった仕事のコツ。時間が足りないと悩んでいる人は、この4つでマジで楽になる。試してみてほしい。

  • できることはすぐやる. (準備の手間が減るから)それが最速.
  • マルチタスク厳禁, 一つずつ答えにして格納.
  • 常に20%の余力を確保すれば知恵が回る. 余力はイレギュラーのために使う.
  • 急がば回れ. 忙しい時ほど丁寧にこなせ. 差し戻しによる余計な仕事を減らそう.

この間「一所懸命やりすぎて没頭しすぎるのはよくない」と指摘されたため, 改めて仕事術的なのも気にした方がいいのかと思ってちょっと気にしています.

最近先延ばし癖があり, 先延ばしするとそれだけで心理的負担として重くのしかかってくる上, 着手までの精神的負荷も凄まじいため, 「できることはすぐやる」は本当に目下最大の課題です.

ハードワークの捉え方

「やったことのないこと」に挑戦し、自身の考え方の枠組みに落とし込んで再現性を作ることは「スキーマ」の構築と言えるでしょう。それは「What」がやったことないことの場合もだし、「How」のやり方を再定義して「やったことない方法」に置き換えることも新たなスキーマの構築と言えると思います。成長というのは新たな認知スキーマの構築をしてスキルに習熟させることとも言い換えられるのだと思います。ハードワークをすることと、新たなスキーマを構築することはイコールではないのでしょう。

最後に、「成長」が人生の全てではないことを付け加えておきます。私の世代は成長をすることを強く求められました。成長を追い求めず、人生を謳歌すること、穏やかに暮らすことを人生の主目的におきたい人も多いし、むしろ多くの人がそうなのではないかと思います。やったことないことに挑戦することは面白みもありますが、心身のエネルギーも使います。既にできることの実行に時間を多く割いて、それ以外で人生を充実させるということも人生の主目的によっては有意義なのかもしれません。

いまちょうど研修でいろいろやっているのでどう落とし込むかいろいろ考えています.

今週の問題

まだやるべきことはたくさんあれど, 量子力学は一段落させたので何をしようかと思っています. 一応もう少し物理をやろうと思っていて, イジングに浮気しようかと思いつつ, 当初の予定通り相対性理論のノート作りをしています. 微分形式をどこまで導入するかは悩みどころで, まずはベクトル解析ベースのノートを作ってから考えます. ベクトル解析はともかく, 微分形式は完全に線型代数なので相変わらずの線型代数推しです.

問題ではないものの, 計量の符号に関して一つコメントを.

  • $(x^0,x^1,x^2,x^3)$のもとで$(+,-,-,-)$は素粒子・高エネルギー系の物理で標準的.
  • $(x^0,x^1,x^2,x^3)$のもとで$(-,+,+,+)$は宇宙物理・天文学で標準的.

計量の符号以外にも曲率の定義由来の符号の揺れがあり, 本を比較するときに非常に苦労します. もしあなたが相対性理論, 特に一般相対性理論に興味があるならぜひ覚えておいてください.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-08-27

数学・物理 量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見
  • 完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相
  • グロタンディークが独力でルベーグ積分を構築した話
  • ドナルドソンの定理への直観
  • Hal Tasaki, Variations on a Theme by Lieb, Schultz, and Mattis
  • プログラムを書きながら数学で遊ぶ
  • 子供に対する広義のIT教育
  • 中高数学の復習の話
  • 変節にまつわる悲しい話
  • ヤング図形の講義録
  • Non-metrizable Manifolds
  • Paul筋の情報: 微分ガロア理論
  • 上田晴彦, 物理科学における数学的方法
  • 具体例の解析
  • PDF: Johnny Nicholson, Exotic Spheres
  • 博論のPDF, Muhammad Ilyas, 2022, Quantum Field Theories, Topological Materials, and Topological Quantum Computing
  • ラグランジュの未定乗数法
  • JAXA宇宙教育センターによる夏休みの宿題
  • 遊んでみたい機械学習・統計学: 自然言語処理の具体的なテーマ
  • 絵画史から見るとAI絵画はカメラ
  • 2022-08時点でのAIの実応用をいくつか
  • 今週の問題

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メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.

ではまたメールします.

近況報告

先週は体調不良でメルマガが出せなかったので今週は先週分のネタもあって大量です. 通信講座の案内もできず直前の一回だけになってしまいました.

何はともあれば, 数学版の定義・定理を眺めるアプリ, React;KaTeXでいい感じにレンダリングする方法の探索にけりがつきました. 最終的には既存のライブラリにプルリクしてマージしてもらいました.

大したことはしていない上に自分で実装しきれない点もあったものの, たぶんissueやドキュメントの修正ではない, プログラムを書いたプルリクとしては初でちょっと感慨深いです.

ようやく現代数学探険隊からのデータを抜く部分も終わりました. 数学版のアプリも第一段まであと少しです. 物理版のアプリの法則集も毎日少しずつ作業して116まで来ました.

これも地道に続けます.

「三ヶ月短期集中講座 量子力学のための線型代数とその計算の募集」も明日までです.

興味がある方は申込を忘れないようにしてください.

量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見

次の文献です.

もしあなたが量子力学・量子情報に興味があるなら, P.14からの6.1.6節の具体例には必ず目を通してください. 三つ例があり, それぞれ2x4=8, 2x3=6, 2x2=4次のモデルでノイズがある系の量子通信路の例を紹介しています. 量子情報よりも物理としての趣が強い例で, 最終的に大事な対象系の解析は二次正方行列の計算です. 二次正方行列の世界の懐の深さを改めて実感しました. この三つの計算だけでシュタインスプリング表現・クラウス表現の気分がかなり掴めます.

取り上げられている例は物理的にはレーザーの原理などにも関係しますし, 物理的な筋も非常によい例です.

このPDF自体は全体的に無限次元を含めた関数解析的な用語・議論がわかっていないと読めません. しかし上記の例は完全に有限次元の線型代数の知識だけでよく, 驚くほどに教育的なよい例です. この一年, 強調に強調してきた二次正方行列レベルの具体的な線型代数の計算の重要性もわかります.

今回の短期集中講座の範囲ではありませんが, 次回以降に必ず触れるべき内容でもあり, 今後の勉強の指針にもなる部分は同梱する方針なので配布コンテンツには既に取り込んであります. まだPDFの内容ほぼそのままで計算が雑ですが, 通信講座の対象になったら計算はもっと詳しくする予定です. 勉強してみたいという人がいて, 通信講座の勉強会で質問があればその時点で詳しい計算を載せようとも思っています. そのくらい簡単なわりに重要で面白い例です.

完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相

「完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相」という事実、「とても有名でよく言及される」ものだったのか。。

僕も初めて知りましたw

今検索して出てきた文献なのでガッチリそのものが書いてあるわけではないと思いますが、https://google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwjmvr-UkcT5AhVQmFYBHfa9D1QQFnoECAQQAQ&url=https%3A%2F%2Feprints.lib.hokudai.ac.jp%2Fdspace%2Fbitstream%2F2115%2F6077%2F1%2FETDS13.pdf&usg=AOvVaw3zJ3kkcIDECFMU30Xd-2cMには(記号)力学系とC*力学系の文脈で完全不連結なコンパクト距離化可能空間が出てきて、引用文献のレベルですがCantor集合への言及があります。 他にも大学院の頃ではありますが、千葉大の松井さん(作用素環の人)の講演など、力学系と作用素環界隈の講演でよく言及されていた記憶があります。私の知る限り記号力学系はそれなりに影響範囲があるため、割合有名な事実の可能性があります。

カントール集合は力学系理論やジェネラル・トポロジー周りの講演でしばしば登場しますが、上記の事実はその際によく耳にしました。 最近だと例えばこの本でも証明なしで言及されてました(なお、ちょくちょく違和感のある表現があります)。 https://www.amazon.co.jp/dp/4768705707

私が学部四年のときに読んだKadison-Ringroseの作用素環の有名な教科書には, 可換なフォン・ノイマン環と同型なコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環の性質として載っていた性質です. 他にはエルゴード性・エルゴード理論との関係で可分で完備距離づけ可能な位相空間としてのポーランド空間も作用素環でよく出てきます.

さらに森の未知さんのコメント.

完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相という、とても有名でよく言及されるけど証明を見たことがない事実だけど、和書だとこの本に証明が書かれていますね。

距離空間のトポロジー: 幾何学的視点から (ひろがるトポロジー) | 川村 一宏 本書では,単体分割できるとは限らない距離空間のトポロジーを,位相空間論的というよりはむしろ幾何学的な側面に焦点を当てて研究する理論の一部を紹介する。 このような理論は一般位相幾何学の一分野「幾何学的トポロジー」をなしており, 複雑な構造をもつ距離空間を多面体の極限としてとらえ, 無限反復および極限操作を通じて調べることにその特徴がある。 様々な極限操作で得られる空間についての考察から始めて,

この本の証明だとnerve複体(本書では「脈複体」と翻訳)で証明しているけど、古典的事実の割に証明がナウい気がしている。 私がnerve複体を知らなすぎるせいだろうか。 なお、学部生向けの教科書に見えて特殊な位相空間や連続体にやたら詳しくて研究者でも読んでて面白いのがこちら。 ついでにいうと、「だから学部生には難しい」というわけでもないのがこの本の真にスゴいところだと思う。相対位相の説明などは見事なもの。

位相空間 例と演習

グロタンディークが独力でルベーグ積分を構築した話

Feynmanの言う微積分とはいわゆるcalculusのことだと思いますが,Grothendieckが独力でルベーグ積分論を構築したエピソードは有名ですね。 https://ams.org/notices/200808/tx080800930p.pdf (Notice of AMS,独文の英訳)

どなたかのブログに私訳がありますね。 https://taro-nishino.blogspot.com/2019/03/blog-post033.html

どこで見かけたのか忘れてしまったものの, ゲルファントは中学の頃に独力で関数論を建設したエピソードがあります.

ドナルドソンの定理への直観

Q1. ドナルドソンの定理を砕けた表現でいうならばどんなものか?

A2. 4次元多様体の古典的な不変量(交叉形式)に,可微分構造由来の極めて強い制約が存在する

補足1:このようなタイプの定理の最初のものとしてRokhlinの定理があり、Donaldson以前から知られていました。 Donaldsonの定理はRokhlinの定理と比べると適用できる状況が多く(ただしDonaldsonの定理とRokhlinの定理は互いに独立の定理なので,あくまで主観的な基準), また理論物理由来のゲージ理論を用いて証明されたトポロジーにおける非自明な定理の最初の例なので,知名度が高いのだと思います。 尤も4次元業界ではRokhlinの定理も基本定理の一つです。

補足2:交叉形式は位相4次元多様体に対しても定義される不変量です。 Donaldsonの定理(やRokhlinの定理)が与える制約を破るような交叉形式を持つ位相4次元多様体の存在がFreedman理論から分かるので、 Donaldsonの定理(やRokhlinの定理)は4次元におけるトポロジカルな世界と滑らかな世界が全く違うということ意味します。

Q2. ある多様体の非同値な微分構造の数を求めるにはどういう手法が使われるのか

A2. 5次元以上においては手術理論が使われます。 これを一言で言うと、多様体の微分トポロジー的な問題を代数トポロジーに帰着させる手法です。 また多くの場合、分類したい多様体の接束の特性類が重要な情報を持ち、それが区別に使われます。 有名なMilnorのエキゾチック球面をdetectする議論がこの例です。 しかし多様体がある程度複雑だと、帰着させた先の代数トポロジーの問題が難しいものになり、可微分構造の正確な個数が分からないこともしばしばあります。 ただ、代数トポロジーの問題に帰着できた段階で微分トポロジーとしてはとりあえず原理的に解決した、という立場を取ることも多いです。

一方4次元では、可微分構造が完全に分類できている位相4次元多様体の例はまだ一つもありません。 可算無限個の可微分構造が入ることが分かることが多いのですが、発見されている可算無限個の系列で尽きているかを確認する手段がないのです。 またそもそも2つ以上の可微分構造が入るか分からない4次元多様体も沢山あります。 とりあえず互いに異なる微分構造が存在することを示すのには、典型的にはゲージ理論から来る不変量(Donaldson不変量、Seiberg-Witten不変量)が使われます。

接束が思った以上に重要なようでびっくりしました.

Hal Tasaki, Variations on a Theme by Lieb, Schultz, and Mattis

リープ先生の卒寿を祝う国際会議での講演が予想以上に好評だったので戻ってから動画を作りました。「捻り演算子」だけを使って様々な定理を初等的に証明しまくるという内容で、量子スピン系を知っていれば面白いと思います。英語ですが(編集したので)字幕がちゃんと出ます。 YouTube

Lieb, もう90なのかと衝撃です.

プログラムを書きながら数学で遊ぶ

数値計算のプログラムを書くときは「抽象的な数式を具体的な計算処理として書き下す作業」が必ず発生するので,適切なお手本さえあれば高い学習効果が得られる気がします. そんなわけで,電磁気学の難関(?)である「ベクトル解析」をプログラムを書きながら具体例で学べるように準備しています.

そういった意味では「ディジタル信号処理」はプログラミングと不可分なので,個人的にはかなり学びやすい分野だと思います.

とはいえ「回路は作れるがディジタル信号処理は一切ダメ」みたいな技術者の話もよく聞くので,良いお手本(教材)がないと「難しい数学」みたいに見えるのかもしれません. 数値計算や信号処理は「他人が用意したサンプル・コードをとりあえず写経すれば自分のパソコン上でも結果が表示される」ので,学習の過程で成功体験を得やすい.これはゲーム等と同じ構造. 抽象的な数学でも「例題を解く」という成功体験が用意されているのに,なかなか気づかない人が多いですね.

プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」はこれと重なるコンセプトで作っています. 興味がある方はどうぞ.

子供に対する広義のIT教育

いわゆる数学・物理・プログラミングのネタではありません.

うちの息子がとんでもないことやらかしてくれました😭 友達とスマホで通話しながら対戦ゲームしてて てっきりLINEの無料通話してるのかと思ったら相手はキッズ携帯で 普通に通話してて電話代が2ヶ月で28万円😭 しかも相手の子は親から言われてこちらからかけなおさせてた😭 もっと早く気づいていれば

最近の子供は生まれたときからスマホがあります. そして機器的な取り扱いには長けていても金銭的な感覚が育っているわけではありません. 特に凄まじく便利なツールさえ無料で使えるモノが大量にありますし, ゲームでさえ無料が基本になりつつあります. いまは広い意味でのお金の教育, IT教育はどこかしら何かしらでやらないといけないのでしょう.

中高数学の復習の話

いま某所で話していて思ったんですけど、高校の数学の授業相当のものがYouTube等で見れるものってないですかね。大学受験対策とかではなくて、その分野を全く勉強したことがない人が聞いてわかるレベルのもので、良質なものないですかね。 なぜこんなことを言っているかというと、大人になってから数学勉強し直したいという人で、「昔勉強したけど忘れた」という人以外に「全く履修したことがない」という人もいるんですよ。高校の卒業要件が数Ⅰまでなので、学校によっては数Ⅰしか履修してなくても高卒の肩書は得られるんですよね。 履修科目の問題だけではなく不登校等でほとんど授業出てないけど卒業する人もいるし、つまり数Ⅱ・数Bあたりを一切勉強せずに高校卒業したけど、その後やっぱり勉強したいって人に対してよいコンテンツないかなあと思いました。 もちろん無料であればいいなと思うんですが、現状では有料コンテンツでもほぼないという認識なので、無料・有料問わず、いいものがあったら教えてほしいです。 YouTubeで予備校講師の動画があるのは知ってるんですが、ああいうのは基本一度履修した人向けじゃないですか。

この件色々情報を頂いてますが、僕がざっとみてよさそうだと思うものを列挙しておきます。

もちろんこれ以外はすべてダメと言っているわけではなく、内容が確認できてそれなりにおすすめできそうなものということで3つ挙げました。また、ここでおすすめしたのも、もちろんざっと眺めた程度で全部見ているわけではないです。 ここでは動画に絞って紹介しましたけど、もちろん本で勉強する手もあって、その場合まずは検定教科書をおすすめしておきます。値段も安いし質も高いです。書籍だけのほうが理解が進む人、動画のほうがわかりやすいと感じる人、両方いると思うので。

コンテンツベースとしては上でも紹介した「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」, そして特に文系プログラマー向けにアルゴリズム系統からやるのはどうかというテスト目的で素数判定のコンテンツも作って以前紹介しました.

この辺もいい加減本格化させたいと思っていて, これもやはり既存コンテンツをもとにした通信講座や, またはアルゴリズム系と絡めて見繕った書籍を使った勉強会的な講座を作ろうと思っています. どういう感じの内容だったら参加したいか要望があればぜひ教えてください.

一応書いておくと, ふわっと中高数学全体みたいな感じにすると多分勉強していてつらいと思うので, 何かの目的に特化して一つのストーリーを紡ぐ感じで勉強した方がよいと思います. 興味があって継続して勉強していれば数学力も上がるので, 必ずしも興味がなかったところを勉強するときにも格段に勉強しやすくなるはずです.

変節にまつわる悲しい話

近藤誠先生は、昔はエビデンスの鬼でした。近藤誠先生の変節についての詳しい経緯は、こちらにまとめています。

知らない人は知らないと思いますが, 近藤誠氏は「がんもどき」などの話でがんに関する偽医療事案で悪名が高い人です. 先日亡くなったので話題になった, という文脈があります.

ヤング図形の講義録

さる事情があって, 講義録をまとめ直してアップしました: [「ヤング図形の組合せ論講義」]https://bit.ly/3ArsZFt({target=_blank})

メモ&シェアです.

Non-metrizable Manifolds

このNon-metrisable Manifoldsという本、パラコンパクトでなかったりHausdorffでなかったりする連結位相多様体について考えるという異常な内容でおもしろい。long lineには2のaleph-one乗個の異なる微分構造が入るらしい。

実数全体を2つ用意してそれぞれの負の実数の部分を同一視してできるYみたいな多様体はHausdorffでないけど、こういう枝分かれを単なるグラフではなく多様体として表現できるため量子力学の多世界解釈における時空のモデルとして使われるかもしれないとか書いてある。 「異なる」というのは単に異なるという意味でも、互いに微分同相でないという意味でもあるらしい。濃度はちょうど2のaleph-one乗であるとのこと。

上でドナルドソン理論の話も紹介しています. 距離化可能ではないため, 多様体論でよく仮定される第二可算性もなく, パラコンパクト性さえ破壞される世界です. 多様体だからといって位相多様体のレベルではいくらでも凄まじい例があって楽しそうです.

Paul筋の情報: 微分ガロア理論

いくつか質問を整理します

1) 初等函数の積分がいつ初等函数か? リッシュのアルゴリズムです。一松さんや佐々木さんの解説がわかりやすいでしょう。

2) 初等函数の積分を全部含む函数族はあるか? Liouville拡大体を考えることになります.

リッシュの方法で、原理的にはどんな初等函数に対しても不定積分が初等函数になることを判明できますが、速いアルゴリズムを考える計算代数の問題になります。 Liouville拡大は、微分ガロア理論的には拡大群がCの加法群と見なせますが、そう見てもあまり良いことは少ないです。wiki参照。

ありがとうございます!とても助かります。もうひとつ質問なのですが、もしかしてこのリウヴィル拡大体というのは具体的にいくつかの特殊関数を導入すればいいものなのか、代数方程式の解のように具体的には書けないものもあるのか、どうなんでしょうか。

不定積分ですので、e^(-x^2)でしたら誤差函数を導入すればいいわけです。ただ、初等函数と言っても合成函数を作ればいくらでも複雑になりますので、不定積分は必ずしも知られている特殊函数にはなりません。その意味では、代数方程式の解のような感じです。

特殊関数に関わる疑問を呟いている人がRTでまわってきたので, Paulをつないだ話で, 微分ガロア理論的な話です.

上田晴彦, 物理科学における数学的方法

/ わかったつもりなのに演習問題が解けない、そういうあなたに役立つ1冊 \

『物理科学における数学的方法』上田晴彦/訳(プレアデス出版) 先生、数学の理論はわかりましたが問題を解くことができません。 いつの時代でも紙と鉛筆での手計算が身につく第一歩。書泉オンライン⇩ https://www.shosen.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=5003144

内容はよくも悪くも20世紀の物理数学の趣があります. 大事なのは「先生、数学の理論はわかりましたが問題を解くことができません。」です. いくら数学それ自体を勉強したとしても物理の現場で計算できないとはじまりません. 大事なことなので何度でもくり返しますが, ここを鍛えるべく企画しているのが最近の計算力向上通信講座です. 今回の量子系のための線型代数は明日で締切なので興味のある方はぜひどうぞ.

具体例の解析

(c)みたいな問題が高校の教科書には必要だと思ってる

2.3.12 次の練習を行って, 例2.3.2を完全に理解せよ.

(a) $\sqrt{3}$が有理数でないことを示せ. (b) $\sqrt{6}$が有理数でないことを示せ. (c) $\sqrt{49}$に対して同じ証明をしようとすると, その論証はどこで破綻するだろうか.

『エレガントな問題解決』という本で、日本では高校数学にあたる内容を題材に数学の問題に対する取り組み方などを中心に扱ってるとても面白い本です。 https://oreilly.co.jp//books/9784873

この「うまくいかない例」の調査という視点, 非常に重要です. 私のコンテンツにももっと盛り込みたいですね. とりあえず記録しておきます.

PDF: Johnny Nicholson, Exotic Spheres

https://www.ma.ic.ac.uk/~jknichol/exotic-spheres.pdf これ読んでます。異種球面の作り方。面白いので共有

単純にメモ&シェアです.

博論のPDF, Muhammad Ilyas, 2022, Quantum Field Theories, Topological Materials, and Topological Quantum Computing

博論!204ページ! 場の量子論、トポロジカル物性、トポロジカル量子計算っていうタイトルで基礎から書いてくれてるらしくて助かる。 個人的には圏論と場の量子論、TQFTのセクションが気になる。 https://arxiv.org/abs/2208.09707

物理としては物性の人間で, トポロジカル物性もずっと気になっています.

ラグランジュの未定乗数法

丁度多様体論的に見たLagrangeの未定乗数法をYouTubeの陰関数定理の続編としてやりたいと思っていて結局1年以上経つのですが、Submersionさんの記事を見つけました。こういう話あまり教科書に載っていない気がします。 メモ:Lagrange未定乗数法の多様体論的な見方 https://mathlog.info/articles/2376 #Mathlog

正直多様体論やってから解析力学とかでLagrange未定乗数法とか陰関数定理、逆写像定理あたりをみるとかなり見方が整理されて世界が変わる気がします。

先々に進んではじめて見える景色があるよという話です.

JAXA宇宙教育センターによる夏休みの宿題

JAXA宇宙教育センターが出してる夏休みの宿題が面白そう!好きな天体を選んで、Pythonを使ってその星への軌道を自由に設計してパワポでまとめて提出せよとのこと。解説付きで高校数学物理が分かればできるらしい(ほんとに?) プロの解説を見るだけでも勉強になりそう。いざ。 https://edu.jaxa.jp/news/2022/j-0805-1.html

プログラム利用としてメモ&シェアします.

遊んでみたい機械学習・統計学: 自然言語処理の具体的なテーマ

AIを利用し失われているテキスト部分を読み解く

http://u0u1.net/tFpw 2018年からプロジェクトがスタート 破損し一部しか解読できない粘土板を読み解く際、データベース化された他の破損粘土板から文章を引用し翻訳するシステムを構築中 完成すれば研究者らの強い助けに

これ自体は各種専門知識とプログラミング技能が必要なので首を突っ込めたものではありませんが, 言語学関係はいろいろ遊んでみたい話があります.

単語に限らず暗記にはイメージと結びつけて覚えるとよい場合があり, スマホの単語アプリには単語の意味を絵で表して選ばせるクイズがよくあります.

私がほしいのは理工系向け多言語学習アプリで, 見た限りの既存のコンテンツだとかゆいところに手が届かない感じがあります. アプリとして真面目に作ろうと思うと大変ですが, 機械学習で自動生成した画像には単語本来のイメージがある程度は載るはずで, 人間の単語学習に裏回し的に自動生成画像が使えないかと最近思っています. このあたりの研究もしないといけなくて時間がいくらあっても足りません.

絵画史から見るとAI絵画はカメラ

ここ数日, Twitterでお絵描きAIの話題が盛り上がっていて, それにまつわる話です.

2022-08時点でのAIの実応用をいくつか

実際に仕事で少し使ったこともあったので, そのときに調べた・知った一般的な話をいくつか紹介します.

連続“果樹園荒らし”…犯人は「クマ」モモも被害(2022年8月19日) - YouTube カメラが捉えたのは、体長2メートルほどのクマ。そばには、プラムの木が植えられていました。今回、枝を折られたプラムの木。この木の向かい側に設置されたAIカメラに、クマの姿が映っていました。17日午後9時ごろ、札幌市の果樹園でクマにプラムの木が折られ、実が食べられる被害がありました。少し離れた場所では、クマの足跡... こういう場面で登場する「AIカメラ」って、どういうところが「AI」なんですか?

https://aismiley.co.jp/ai_news/what-is-ai-camera/ 異常検知系の仕組みが入ったカメラではないでしょうか。判断法・基準は色々あるでしょうが、侵入者などの見慣れない対象を検知して報告まで上げてくれるシステム(のはず)です。

AIカメラとは?できることや活用事例・導入事例をご紹介 AIカメラは、AI(人工知能)を搭載したカメラのことです。AIカメラのディープラーニングを活用することで、従来 […]

レス、だんけです。「AI」との売り文句は本件の場合、どの程度信用していいものなんでしょう。というか、どのへんの機能を以て「AI」の呼称の根拠としているのか、「判断法・基準」はナ変に、ぢゃなくて奈辺にあるのかといったところが気になります。

AIの定義からして割と問題ですが、いわゆる機械学習的な手法による監視・巡回・点検システムはもうそれなりに一般的です。システムの作りの話で、ユーザーからは見えにくい・見えないものの、「AIによる」と言われたら機械学習なり統計的な手法で何かやっていると思って問題はないでしょう。 問題は監視・巡回・点検システムとして適切に動くかどうかで、ガワで何と呼ばれていようが適切に動くならそれでいいとは言えます。そしてAI(機械学習)システムは適切な設定のもとでの稼働なら十分に動くレベルであろうと思います。問題はそもそもこの「適切な設定」を作る難しさにあります。 例えばソーラーパネルが壊れているかどうかの異常検知問題があります。比較のために正常な画像と異常な画像をいくつか準備する必要があるのですが、正常はともかく異常な画像を準備するのが大変です。何を異常とすればいいかがまず難しいからです。 例えば鳥のふんが引っかかっていたら清掃が必要でアラートが欲しいですが、それを検知できるだけの画像の鮮明さが必要です。他には「点検画像の撮影時にパネルの上をたまたま鳥が飛んでいてその影を異常と判定した」といったケースもあります。 「パネルを置いていた場所の草が伸びてきてパネルを塞いでいる」といったタイプの、システム導入当初には起こらない、時間差で現れる異常もあります。こういうモグラ叩きが必要です。人間が目視で点検していれば「そういう異常」と判定できますが、それを適当な形にシステム化する必要があります。 良くも悪くも人間だと柔軟に対応できる部分を機械化・自動化しようと思うとこの手の判断基準の設定・更新が必要です。これが適切な設定を作り維持する難しさです。いわゆる条件分岐によるエキスパートシステムのAIが頓挫した理由の一端でもあります。 余計な話ですが動画を使うとなると鮮明さと動画容量と一定期間の保管を両立させるシステム上の難しさもあります。あっという間にGBレベルの容量になり、異常検知の解析自体にも時間がかかります。運用にはシステムと現場のプロの高いレベルの連携が必要です。困難は色々ありますがそれは別の話なので。

いたって素人臭い連想に過ぎないのだろうとは思うのですが、たとえば、 集合写真からも人物特定、議論を呼ぶ最新の顔認証技術 - YouTube https://youtube.com/watch?v=B6Fsyc_DgSY のようなものから想像すると、そのあたりはすでにコストの問題なのかもしれませんね。 集合写真からも人物特定、議論を呼ぶ最新の顔認証技術 「クリアビュー・AI」の顔認証技術は、世界で最も有名だが、プライバシーや個人情報、自由といった観点から、最も議論の的となっている。BBCのジェイムズ・クレイトン北米テクノロジー記者が、同社の共同創業者である ホアン・トン=ザット氏を取材した。BBCニュースサイトの記事はこちら。https://www.bbc.co...

高齢化の問題もあって発電所のような場所でも巡視点検のニーズが高まっているそうなのですが、発電所といえば原発さえ含むためいわゆるパブリッククラウドは使えず、サーバー管理などもセキュリティをガチガチに固めた内部にとどめざるを得ません。施設内のネットワーク設備もあれば、 人間が動く前提で作られた設備内の移動をロボットにやらせる(電線などの高所や僻地もあれば、下水など入り組んだ地下施設さえある)ためのインフラづくりなどもあって、コストの問題は凄まじい問題になります。 カメラは固定され、映像中から変化を検知し撮影を開始するといったレヴェルなら、そうとう安上がりに出来るということでしょうか。 そもそも誰がどういう場所でどう使うかという問題があります。https://securityhouse-network.net/blog/%E6%9E%9C%E6%A8%B9%E5%9C%92%E3%82%92%E5%AE%88%E3%82%8B.html には果樹園だと電源が取りにくいといった話もあります。果樹園を例にするなら、むしろ対象に応じた最適な解決策の提案の方が重要なように思います。鳥獣対策ならむしろ侵入させない方にコストをかけたいはずなので

クマが食い荒らしていたことをメインにした報道からは、おそらくはヒトを怪しんでカメラを据えたのだろうといえそうですよね。ヒトが対象だとすると、果樹園を狙った不届き者の身元を割り出すことが最優先のではないでしょうか。鳥獣対策は本件に関する限り、これからの課題ではないでしょうか。

話を拡散させすぎたのと、状況に応じて何をどうするのがベストかという視点にこだわりすぎたのが失敗だったと反省していますが、コストと実用という話でいうと、侵入者検知ではないものの、農業用環境管理IoTだと https://japan.cnet.com/article/35167509/ で「機器費用が2万4750円、システム利用料が月990円」

畑の異常を電話で知らせる低価格な農業IoT「てるちゃん」--KDDIウェブが提供開始 KDDIウェブコミュニケーションズは3月9日、センサーが圃場(畑)の温度・湿度・照度の異常を検知して農業生産者へ電話・メール・SMSで通知する農業IoT「てるちゃん」をリリースした。

といった話があります。ハウスの環境制御だと https://pr.nepon.co.jp/lp/mc01 いわく「地上部の統合制御が50万円から」、参考までに農機具一般として中古トラクターが https://ummkt.com/market/category/tractor/ くらいの値段帯です。最初の月990円はおそらく容量も少なく抑えられ、事前処理もしやすい数値データを素直に解析すればいいだけのはずなので月額990円、メールなどの通知系で必要に応じてもう少し課金というのは妥当な値段と思います。画像・映像解析は安ければ数千円から数万円レベルだろうと推測しています。農家の収益・コスト感覚は把握できていないのですが、

なるほど、それくらいのコストなら、農耕機など他のコストに加わることがあっても、さほど懐具合に厳しいということはなさそうですね。

今週の問題

今週の問題はメルマガのタイトルでもある例です.

これのP.14, 6.1.6節の三つの例を眺めてください. シュタインスプリング表現とクラウス表現それぞれのご利益もよくわかる上, 量子開放系・ノイズの議論と熱力学や統計力学での環境に対する感覚も深まります. 計算上では本質的に二次正方行列の世界であり, ありとあらゆるいい話が書いてある例です.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-08-13

数学・物理 通信講座「量子力学のための線型代数とその計算」募集開始/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08 開講案内
  • Looman-Menchoffの定理
  • ヴィラーニの自伝と不等式の数学
  • 直観と愚直な計算と
  • 21世紀の量子力学学習に関連する諸々
  • JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』
  • 医療系オープンデータが取れるPhysioNet
  • テクニカルライティングの基本
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

感想をください

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.

ではまたメールします.

近況報告

先日からはじめている物理や数学のギャラリーの開発で苦戦しています. 特に現代数学探険隊から各定義・定理を切り出して眺める定理鑑賞アプリが課題です. KaTeXをいい感じにレンダリングさせるReactコンポーネントの開発で詰まっていて, 昨日一つ山場を越えたもののもう一つ最終解決すべき問題が残っています. これもさっさと片付けて語学用のアプリもほしい言語に関するデータ整備して, とやることが山積みです. せっかくの機会なのでテストも書きたいです. 早くふつうの物理・数学・語学学習モードに戻りたいです.

それはそうと, 物理学ギャラリーは66式(?)まで進みました. これは地道に増やします.

手持ちの本からテンションが上がる式をゴリゴリ入れています. 「まずはこれを載せろ」という要望があればぜひ挙げてください. TeXつきで送ってくれるとなお嬉しいです.

ここ一月くらい開発ばかりであまり物理や数学ができておらず, 語学はなおのことできていません. ただ, 開発に関連して一人で解決できない問題にぶちあたりまくっているため, 英語で各所に質問を投げているのですが, プログラミングに関わる英語は割とサラサラ書けるようになっていて, 今年に入ってから10分であっても毎日ちょこちょこがんばっている分が多少は効いてきているか? という感じもします.

あとは現代数学探険隊の再整理もしたいですね. 例と計算練習編をずっと追加し続けています. 以前通信講座として展開していた現代数学探険隊の解析学編, この中にも例や計算がいくつかあり, 全体構成を考えればこれを改めて整理した方がよさそうです. ただとにかく時間がありません. 一日10万時間くらいほしいです.

通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08 開講案内

ようやく案内が完成しました. 募集期間は二週間で8/29(月)から開講予定です. 詳しい内容は上記ページを参照してください. 何か質問があればメールやアンケートでお願いします.

書くべき内容は上記ページに書いてあるのでメルマガではこのくらいで.

Looman-Menchoffの定理

Looman-Menchoffの定理、「デリケートな定理であるので、初学者は手を出さない方がよいだろう」とはあるが、野村隆昭先生の「複素関数論講義」(共立出版)には紹介されていた。 リンク先は文献 [34](アクセス制限があるかも)。 https://jstor.org/stable/2321164?seq=1#metadata_info_tab_contents

読もう読もうと思ってずっと読んでいない論文です. ずっとメモの奥底に沈んでいたのでまずはシェア.

ヴィラーニの自伝と不等式の数学

気晴らしにヴィラーニの自伝を読んだ。この本は評価が分かれていると聞いていたが然もありなん。いわゆる不等式の数学が構築される現場の様子が露わに描かれている。私はこのタイプの数学は全く専門ではないけれど昔ある友人にそういう数学の存在と楽しむ様を教えてもらったおかげで親しみを感じる。

こう書かれるとヴィラーニの自伝にも俄然興味が出てきました. ちなみにヴィラーニは最適輸送などが専門で, ボルツマン方程式とランダウ減衰に関する研究でフィールズ賞を取った魔人です. 物理まわりの力学系をやっている知人が「自分にとってはスーパーヒーローだ」と言っていました.

直観と愚直な計算と

「現代物理」のレポートの採点を終えましたが、選択課題1(相対論的光行差の問題)の選択者のうち1/4ぐらい間違ってました...高校生のように(?)作図で済ませようとした人は概ね間違いで、何も考えず愚直にローレンツ変換した人はあってました。直観に頼らず計算したほうがよいということかなと思います。

直感に頼らず愚直に計算した方が間違いは少ない. 一方,直感に従って何もないところに一歩を踏み出すときに新しい理論は生まれる.間違いを恐れてはならない. 間違いを起こす曲がった角に神か悪魔がひっそりと佇んでいる.我々はだいたいそれには気がつかない.

最近ずっと推している計算の話です. これ以外にもう一つ, 直観が届かない世界に辿り着くためにこそ計算する世界観があることも追加しておきましょう. このうちの一つが上記ヴィラーニの不等式の数学に関わる話です.

以前書いた次の記事を引用します.

はるか彼方からの光芒を信じ, 膨大な計算を遂行し尽したときに初めて地平が見えてくるようなハードな解析は解析学の真骨頂であろう. ハード・アナライザーたちの数ヶ月からときには数年に及び, 岩に穴を穿つような計算を続行するその強靱な精神力と体力には畏敬の念を覚える. 不幸にしてその途上で力尽き果てた人もいた. 畏敬とともに深い哀悼の念を表する.

しかし, 例えば, モーメントの評価や相関関数の評価などのようなわずかな手掛りを頼りに必ず道が拓けるとの信念のもと, 恐ろしいほどのハードな計算を遂行し切って, 数学に新たな地平を切り拓くハードな解析はやはり解析学の真骨頂である.

私の数学・数理物理の原風景でもあります.

21世紀の量子力学学習に関連する諸々

通信講座をはじめるのでそれに合わせて私自身地道に再学習を進めています.

図式で学ぶ量子論 番外編 ~2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい~|Kenji Nakahira @KenjiNakahira #note https://note.com/kenji_nakahira/n/nbdaa609a3273 数学系学習者としては、どちらかといえば論理的に導出できるかよりも、何を仮定として議論しているかを明示してほしい。

すいません。完全に明示することは紙面の都合上(&一般読者にとって複雑なため)難しいのですが,強いて述べると一般確率論および St_2≅Den_2 が成り立つと仮定して,St_N≅Den_N を導けるかという問題を考えています。 一般確率論が成り立つことは,note記事の文献[5]のIII章で述べていることが成り立つとおきかえて頂いて構いません。無条件でSt_N≅Den_N を導くことは恐らく不可能ですので,(十分に知恵のあるほぼ全ての人が)自然だと思えるような前提を追加してもよいものとします。 この最後の条件は自然という言葉を用いたりして厳密性に欠けるのですが,ここの厳密性を高めることは難しいのでご容赦ください(汗)。

こちらこそすみません。記事の内容自体の話ではなく、物理の教科書に対する一般的なスタイルの話です。私は学部は物理だったのですが、かつて(今も?)熱力学や統計力学の教科書が大混乱していた時期の地獄スタイルは物理学科の学生にとってさえよくないはずなので。

いえ,コメントくださりありがとうございます。お気持ちよくわかります。何を仮定しているかや各用語をどう定義しているかなどが曖昧になっていると,混乱してしまいますよね…。

発端になった議論と直接関係のある部分だと思いますが、一般論を議論している中で理想気体など具体例での話が始まって終わったと思ったら、その具体例での知見がいきなり一般論に敷衍して適用され始めたりします。そういう習慣を改めない限りここでいう論理的な議論に耐えられる人間は育たないのでは?

はい。少なくともどこまでが論理的(=演繹的)でどこからがそうではないかを明確に区別することは重要だと思います。

一番気になるのはこれ.

ポイントはそこではなく,(私がお伝えしたいことの一つをまとめると)具体的にどのような前提を用いているかが不明瞭であることが問題であると主張してます。 用いている前提を具体的にお知らせ頂けないでしょうか?

ごく単純な話として前提をできる限り明らかにした方が自分にとってもチェックしやすくていいと思っているのですが, なかなかそうもいかないようで. それこそ研究中の話として暗黙の前提があることさえ気付けておらず, それが決定的なポイントだった事案がたくさんあるのが量子力学なので.

中平さんは秋に本を出すそうですしそれも楽しみです.

JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』

JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』、もともと新書として販売するという企画で書かれたらしいというくらいなので、とても内容の充実した文章です(リンク先PDF注意)

https://www.jamstec.go.jp/es/jp/publication/pdf/Development_ES.pdf

まだ読めていません. とりあえずシェア.

医療系オープンデータが取れるPhysioNet

PhysioNet をご存知でしょうか。今更感がありますが紹介いたします。 これは医療系オープンデータで、簡単な手続きだけでかなり大規模なデータも自由に使えるようになります。 無料でここまでデータが入手できるなんて, と感動ものです。

特にMIMICという集中治療系のデータが有名(というか論文が沢山出ている)ようです。その辺りがご専門の方にはお馴染みなのでしょうかね。 触ってみた感じでは、

1)GoogleのBigQueryに直結しているのでSQL書けると直ぐにデータの加工が出来そう。 2)直接ダウンロードも可能。

データが大きいので直接ダウンロードしてもデータは開けない。 なので開くには多少のコツが必要になる(この辺が一般には使いにくい理由なのかも)。 DBI packageとdbplyr使えば普通にRで操作できました。 ファイルによってはコマンドプロンプトからwgetを使って落とさなくてはならないっぽいです。 私のPCにはwgetがインストールされていなかったので、以下のページの容量でインストールを最初にしました。 その後は普通にデータダウンロードできました。 え、宝の山がこんなに簡単に!?って感じです😊 ちなみに、データダウンロードにはCITIトレーニングが必須(無料)です。 倫理に関する文章を読んでクイズに沢山答えるというもの。 結構大変でした(英語が得意な人なら簡単に終了すると思います)。 この修了証明書を送ると約2~3週間でデータダウンロード可能になります。忘れた頃に来る感じでした。

最近, 何かのテーマで統計学・機械学習で遊べそう, と思ったのですが何か忘れてしまいました. 語学ネタだったような気もします.

テクニカルライティング

cybozuの新入社員向け研修資料「テクニカルライティングの基本」(無料公開)が超勉強になった...! 本来は技術的な内容をわかりやすく伝えるための方法論だけど、リモートが普及しテキストコミュケーションが重要になった今、非技術者でも一度は目を通すべき内容かと思います。 https://speakerdeck.com/naohiro_nakata/technicalwriting

英語ベースですが私も学生時代にテクニカルライティングを勉強しました. 早稲田にテクニカルライティングの専門家がいて, TEPテストというテクニカルライティングの資格試験もありました. いわゆる教養系の講義で開講されていて, 学期終了直前に資格試験が開催されるため「受講者はせっかくだから受けてみては?」という担当教員のコメントのもと, 受講してみて二級は取りました.

今検索してみたら, コロナ禍に入ったからか2019年から試験の情報が更新されていません. 技術英語・工業英語・テクニカルイングリッシュで検索すると書籍が引っかかるので興味がある方は調べてみてはどうでしょうか. 近況にも書いたように最近は止まってしまっていますが, 語学系, 特に英語のコンテンツ作成ではテクニカルライティングなども視野に入っています.

今週の問題

今週は量子力学講座開講に向けてのカリキュラムの最終検討に入っていました. TODOもいくつかあったためそれを埋めていたところ, クラウス表現やシュタインスプリング表現がTODOのままでした. 今回の範囲ではありませんがいい機会なので調べ直したら無限次元版の議論を見つけたため, そのノートを作っているところです.

無限次元含めた議論, 系統的に議論されているは何かあるかと改めて探しています. 以前買った量子測定の数理物理本には載っていそうな気もしますが, もう内容を全然覚えていなくて愕然としています.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-08-06

数学・物理 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内
  • 引き続き募集: 物理学ギャラリー・数学ギャラリーに載せてほしい式・法則募集
  • Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke, 2022, The classification of surfaces via normal curves
  • Stefan Friedl, Algebraic topology I - VI
  • mathraphsodyさんによる調和多項式とべき零多様体の本
  • 書かれていないことを書かれていないと認識する能力
  • Understanding topology: 動画が面白い
  • Wikipediaの数学記事: 確率変数の収束とフーリエ級数の収束の優秀さ
  • フーリエ変換に対するある主張の当否
  • 『代数学のレッスン計算体験を重視する入門』
  • 微分チートシート: 「ベクトルで微分・行列で微分」公式まとめ
  • 永井佑紀, 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング
  • 聖地巡礼の意義
  • 「ルンバが走るには片付いた部屋が必要」
  • 「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

感想をください

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.

ではまたメールします.

近況報告

昨日知人に改めて指摘されて反省したことがあります. 何事も全力でやろうとしすぎていて, 無我夢中になってしまって周りが見えなくなりすぎになっています. そして一つに集中しすぎて手を止めるべきタイミングを見失っているとも言われました.

ちょうど先週, 一日かけて解決できなかったプログラミングの課題を, 基礎基本に忠実に, 動くところから積み上げて対応したらすぐ解決した事案を報告しました. まさに上記指摘事項が全て悪い方にあてはまっていて, わかっているならちゃんとしなさいと. そしてむしろ「ぼちぼちやろう」くらいの方が真のフルパワーが出せるテンションなのでは? という話にもなりました.

先月, 本格的にフロントエンド学習をはじめたところ, 楽しかったからでもありますが, 事実上食事や風呂などを除いて本当に朝から晩まで, それこそ16時間とかいうレベルでプログラミングに没頭していた日が何度もありました. 休みの日もほぼ変わりません.

もちろん人や状況にもよりますが, 私の場合, 集中力とそれを続ける意志の力があっていいというよりも, 止め時を認識できないただの馬鹿事案のようです. というわけで, 今年の残りはこの馬鹿みたいな集中力を適切に分散させるのを課題に設定しました. 実際, 通信講座の案内やら何やら, 完全に放置状態になっていてよろしくありません.

まさに急がば回れというか, ほどよいところで止めて落ち着く時間を作った方が結局は課題も早く片付くタイプの人間のようです. 細々としたことが滞りに滞っていますが, もうしばらくお待ちください.

通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内

予定を遥かに越えて案内が滞っているので, いったんできているところまで案内ページをシェアしておきます.

あとでページ内にももっと強く書いておく予定ですが, 量子力学を元ネタにした, またはその用語が散りばめられた計算をするのが目的です. 量子力学を勉強するのに必要な線型代数の理論を案内する通信講座ではありません.

まだ練り込み切れてはいないもののカリキュラム案も載せています. 「こんなはずではなかった」とならないよう特に強調しておきます.

さらに言えば計算にフォーカスがあるため量子力学の物理にも踏み込みません. 上記ページにも推薦書をいくつか書いているのでそれを見てください. そして独学で捌ける人には鬱陶しいくらいのスローペースでしょう. 紹介してある本や文献を読んで一人では対応できないと思ったら受講を検討してみてください.

引き続き募集: 物理学ギャラリー・数学ギャラリーに載せてほしい式・法則募集

時間の都合で物理学ギャラリーしかできていませんが, 式を25本まで増やしました.

通信講座の副教材としても使おうと思っていて, 毎日コツコツ1-2本式を追加しています. まだ25本しかないからつまらない, 見る気も起きないという人も多いでしょう. 何より私が一番そう思っています. 式をバンバン増やしたいのでぜひ協力してください.

式の増強に関してはプルリクしてもらえるとなお嬉しいです.

phys-exprs.csvに集約していて, これをtsに変換したのをソース中で使っています. 他のところで流用したくなる機会もあると思い, csvをオリジナルファイルにしています. ミニファイなしのjsonだとスペースで余計な容量を食い, ミニファイすると読み書き編集しにくいのでいったんcsvです.

Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke, 2022, The classification of surfaces via normal curves

同じようなことは考えていましたが先にやられました。 学部の講義で紹介しても良さそうです。

[2208.00999] The classification of surfaces via normal curves The classification of surfaces via normal curves

The classification of surfaces via normal curves Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke

We present a simple proof of the surface classification theorem using normal curves. This proof is analogous to Kneser's and Milnor's proof of the existence and uniqueness of the prime decomposition of 3-manifolds. In particular, we do not need any invariants from algebraic topology to distinguish surfaces.

微分幾何での数学+プログラミングでのお絵描きをやる野望はずっとあり, 数学パートを作るときの参考になりそうなのでメモ&シェアです.

Stefan Friedl, Algebraic topology I - VI

2919ページある大作です. これをじっくり読むかはともかく辞書として手持ちに置いておくといいかもしれません. 私も何かの参考になる機会があるだろうと文献ストックに突っ込んでおきました.

mathraphsodyさんによる調和多項式とべき零多様体の本

調和多項式とnilpotent variety(?)について 体系的に纏まってる洋本ってありますか? 『洋本』はきっと私たちの「代数群と軌道」を避けるための条件だと思います.とりあえずその宣伝を (^^;; 冗談でなくこの本は入手不可能になる可能性があると思うのでお見逃しなく https://sugakushobo.co.jp/903342_53_mae.html

さて,nilpotent variety については,もちろん

Nilpotent Orbits in Semisimple Lie Algebras An Introduction ByDavid H. Collingwood, William M. McGovern

にトドメを刺すでしょう.An Introduction に惑わされてはなりません. https://www.taylorfrancis.com/books/mono/10.1201/9780203745809/nilpotent-orbits-semisimple-lie-algebras-david-collingwood-william-mcgovern しかし,この本は variety というよりも,冪零軌道に詳しいと言えるかも知れません. 日本語によるよい書評 (^^;; があります. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/70/3/70_0703330/_article/-char/ja/

洋書ではないのですが,もう冪零多様体というとかなり専門的なので,書籍とか言ってないで Kostant の論文をお薦めします. この論文は教科書みたいなもので,読んでみるとたくさんのことを学べます.78ページもあるしね.無料です. https://jstor.org/stable/2373130?casa_token=5TPumCaXZIIAAAAA%3AKiCpSIiwr2CWgJRthtSWZ0Jr0GmE_xZC3cVHtOVI9R92xq2ni0EyDBFEOt5Yj5AEbZBuhjfCaOYx6k277D1f3bd6UKUhIjFMjGfsb85NnkNy83yjEPM#metadata_info_tab_contents

調和多項式と不変式環の関係,冪零多様体の正規性,完全交叉性,関数環の構造などなど,ついでに(?)半単純軌道についても書いてあります. だって,冪零軌道は半単純軌道の退化極限ですからねぇ. これを読んだあとは Kostant-Rallis をお勧めします. この論文,リー環の場合の冪零多様体の対称空間への『一般化』と思われがちですが,それは大きな間違いです.冪零多様体とは何か.私はそれをこの論文で学びました. https://jstor.org/stable/2373470?casa_token=tt_JneBq_HIAAAAA%3Ajwdi_JIUcN3CbmeLL4Hu4poHTEKRm6hk-inPwgxCmhstDSX5znd3qJ1EiqTGeZq2oQ5yUVRE0n7rah3Vpk5KOO5XkAj7KNPErpQel7K51JftPh9FhpM#metadata_info_tab_contents それでいま,たまたま見つけて,ああ,これがよいと思った論文があります.それは Brulinski-Kostant. Brylinski は Jan Luc ではなく,Ranee の方で,奥さん.7/🧵 日本に招待したことがあったけど「いまは起業ビジネスで忙しい」と断られたことがある. https://jstor.org/stable/2152759?casa_token=isYTJNPmTTcAAAAA%3AQeIfqIFrCdLuKgpi8A3n5SlkE7Bvxk553Qw70SvtFs17p4nhEMACZkWNW-5ltpxO7eeEYiGKx3_VrE-2KHwxMVO7euImxP1CXqY4Dfkr3HqLHvZJURo#metadata_info_tab_contents 彼女はもうとびきり優秀だったんだけどなぁ.惜しい人をなくした. (^^;; (いやもちろんまだご健在ですが,数学会からはいなくなっちゃった)

で,Brylinski-Kostant に話を戻すと,要するに nilpotent variety って隨伴作用の Hamiltonian reduction なのである,ってことが書いてあるんだと思う. だから冪零多様体を特別視する必要はなく,リー群のハミルトン作用を考えて Hamlitonian reduction すれば自然と冪零多様体みたいなものが現れるって訳だ. その一番原始的な例が冪零多様体で,それを深く理解しておけば Hamiltonian reduction は怖くない. (^^;; コワイケド これに関連して言えば,Fu さんの論文で,孤立シンプレクティック特異点は局所的に極小冪零軌道の閉包の特異点と解析的に同型であるという定理はとんでもないもので,びっくりしたなぁ. https://link.springer.com/article/10.1007/s00222-002-0260-9

まぁしかし,冪零多様体が symplectic reduction の特別なものに過ぎないということからするとある意味で当然の帰結かも知れない. そういえば『冪零多様体』という言葉にはなんとなく「冪零元の全体がなす多様体」というニュアンスがあるけど,この見方は誤解を招く. 不変式たちが定義する多様体,あるいは幾何学的不変式論で言うところの不安定点の全体という認識が正しい. その意味では,Mumford-Forgaty-Kirwan の Geometric Invariant Theory は冪零多様体を理解する一番よい教科書なのかも.ちなみに私は読んでません.

全く知らない分野ですが楽しそうに文献紹介されているのでその楽しそうな気分のお裾分けです.

書かれていないことを書かれていないと認識する能力

読解力が話題になってるみたいなのでなんとなく。理学、特に数学では「書かれていないことを書かれていないと認識する能力」が強く要求されてこれは読解力の一つだと思うわけですが、世間一般ではむしろこれは読解力の不足とみなされてそうだなと思ったり。

RT/Likeがたくさんつくのはこういういい加減な与太話だなぁ。「書かれていないことは読み取るべきでない」とは書いてないのだけれども、そういう筋の引用RTがそこそこついてる。書いていないのだからそう解釈してはいけないとは言わないけどさ。

【単に分野によって読み方・書き方が変わるだけ】と言っている人がいて、それはそうかなとも思うのだけど、まあ数学が割りと「書いてないことは書いていないと認識する」能力を要求するのは確かだと思う。 まあ、数学やってないときに数学者がその能力を発揮できるとも限らないけどさ。

最近ブログの記事を整理してアーカイブに再録し直しています. 昔の記事を見ていてこれは, という内容がありました.

競プロ勢が次のような主張をしていました.

  • 数学の本はわかりにくすぎる.
  • 数学科の人間でさえ苦労している.
  • 人間の本来の理解の仕方に沿っていない.

これに対して雑にコメントすると, 単に他の分野はわかった気になりやすいだけで本来は数学くらい理解に対するハードルは高いはずではないか, そしてお前の言う「人間の本来の理解の仕方というのは何だ. 証拠でもあるのか.」です.

これについて私は実際に凄まじいエピソードを知っています. 学部一年のとき, 教養の微分積分の講義を担当していた郡先生が, 多変数の微分積分に入ったときにこう言っていました.

  • 接ベクトルと言ってよく曲線上の点上からベクトルを生やす図が描かれることが多い.
  • しかし実際には接ベクトルはあくまでベクトルであって原点から生えている.
  • これがわからなくて私は理解が非常に遅れた.

これ, 大半の人には何を言っているのか全くわからないのではないでしょうか. 私も学部一年のときは「ベクトルだしそれはそうだが, そんな面倒なことをいちいち考えるか?」と思っていました. そしていつかも覚えていないものの, ある程度数学, 特に幾何を勉強したときにふと思い出しました. 「あのときの郡先生のコメント, 接空間の話をしていたのではないか」と. 多様体論はいろいろな点でとにかく面倒です. 微分作用素を接ベクトルと呼びますし, 本によっては大したモチベーションの説明もなく本当に抽象的に接空間や接束の議論がはじまります. しかし本当にこのスタイルでないと理解できない人がいるようなのです.

私の先輩の山下真さんも, 抽象的でないと理解できないタイプの人のようでした 学生向けの講義で自分のスタイルの抽象性の高い議論ベースの講義をしてしまい, その講義を聞いた学生達は有限集合の間の全単射さえろくに構成できない程に何も理解できなかったそうです. 他の先輩が「お前の理解のスタイルはよくわかっているが, そうではない人も多いのだからもう少し配慮しろ」と怒るくらいのレベルで指摘した話を聞かされました.

こうした意味で数学の本にも読み方があります. もちろん物理の本にも読み方があります. 通信講座の目的の一つは物理の本の読み方を伝えたい意図もあります. 先日も「綺麗な理論でどうにかするしようとするより泥臭い計算力で捻じ伏せる」といった話を書きました. 言葉で伝えるだけでわかる話ではありません. 実際の計算を見せて, そしてやってもらって肌で実感してもらうのが計算系通信講座の目的です.

Understanding topology: 動画が面白い

シンプルに遷移先の動画を見てほしいです. これは面白い.

Wikipediaの数学記事: 確率変数の収束とフーリエ級数の収束の優秀さ

Wikipediaの「確率変数の収束」と「フーリエ級数の収束」のページが有能すぎる。 わざわざ「〜の収束」という独立した記事がある時点で驚きな上に割と専門的な重要事項が簡潔にまとまっている。英語版には確率変数の収束の証明まで載っている。Wikipediaのくせに数学書より便利。 他にも「バナッハ空間の一覧」とかあってマニアックかつ便利すぎてビビる。オタクかよw 「ヒルベルト空間上のコンパクト作用素」「コンパクト作用素のスペクトル理論」とかやけに詳しいし、「ガウス関数の原始関数の一覧」「三角関数の公式の一覧」「円周率を含む数式」とか公式集的な記事もある。 Mathpediaっぽい雰囲気。 物理の絡むやつで「量子力学の数学的定式化」「一般相対性理論の数学」という数学的側面に限定した解説記事もある。 「水素原子におけるシュレーディンガー方程式の解」なんて丸々一つの記事を使って解の導出が詳しく載ってて教科書レベル。なんでこんな記事あるんだw

単純なシェアです.

フーリエ変換に対するある主張の当否

フォロワーの方々が教えてくださったのですが、これはほぼ正しいようです。例えば G. B. Folland の "Fourier Analysis and Its Applications"のp.218や小松彦三郎『Fourier解析』定理3.9などを参照してみてください。

Follandを見ると正確な言明の次のようです.

関数$f$が可積分で$\mathbb{R}$上で区分的に連続とし, 不連続点では$f(x) = \frac{1}{2}(f(x-) + f(x+))$をみたすとする. このとき \begin{align} f(x) = \lim_{\varepsilon \to 0} \frac{1}{2 \pi} \int e^{i \xi x} e^{- \varepsilon^2 \xi^2 / 2} \hat{f}(\xi) d \xi, \quad x \in \mathbb{R} \end{align} が成り立つ. さらに$\hat{f}$が可積分ならば$f$は連続で, \begin{align} f(x) = \frac{1}{2 \pi} e^{i \xi x} \hat{f}(\xi) d \xi, \quad x \in \mathbb{R} \end{align} が成り立つ.

証明の細部はともかく減衰因子が入っているならそれはそうか, という話でした. あとは元の関数の滑らかさはフーリエ変換の可積分性に伝播するから, というのも書いておいた方がいいのでしょう. その前に補足はあると思いますが, もとの黒板上の「区分的に滑らか」がどこまで強い主張なのか(まさか$C^{\infty}$ではないはず)も気にはなります.

『代数学のレッスン計算体験を重視する入門』

【好評発売中】『代数学のレッスン計算体験を重視する入門』 雪田修一/著 正規部分群やイデアルはなぜ必要なのだろう? ―こうしたことに引っかかった人に読んでほしい! 「計算体験=数学的現象の観察」から出発。証明にはデザインパターンがある!

私の意識がそちらに向いているからよく目に入るだけの可能性の方が高そうですが, 最近計算を重視する本がよく出ている印象があります. 「計算体験=数学的現象の観察」という指摘が非常に重要です.

微分チートシート: 「ベクトルで微分・行列で微分」公式まとめ

いま物理学・数学ギャラリーを整備していますが, やはりこういうのもほしいです. いろいろな定式化によるフーリエ変換の計算結果はリストに入っていますが, 微積分関係のリストも作らないと, と楽しみが増えました. 既にベクトル解析の諸式はいくつか突っ込んだのでもっと増強します.

永井佑紀, 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング

ありがとうございます。 こちらにとりあえず3日まで動作確認したコードが置いてあります。残りは順次確認次第載せる予定です。 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング(KS情報科学専門書)

ようやく手に入れました. 特に統計力学に関する数値実験をやろうと思っているのですが, 写経が大変で時間が取れていません. Twitter上で相互フォローなので聞いてみたところ, コードは公開準備中でいま三章までは出しているとのこと. 数値計算はバグ取りが地獄のようにつらいので早くコードを公開してほしいところです. いまTwitter上の知人とやっている統計勉強会もいまはJulia勉強会のようになっています. そこではイジングで遊び倒す機会も作ろうと思っています. 非常に楽しみです.

聖地巡礼の意義

今回一番注目したのが「聖地巡礼によって街の名前を知られた結果、地域住民が自分の街に誇りを持つ」っていう点で、これが聖地巡礼が地域に及ぼす最大のインパクトだと思う。 知名度を上げ、誇りを持たないと地域振興は難しいが、聖地巡礼にはその壁を乗り越えるパワーがある。

俗な話だけど、自分の街に誇りを持つときって、外から「○○の方ですか!」って言われる時が一番じゃないかと。 現代においては知名度と街への誇りは一体不可分だけど、殆どの地域でこれが大きな課題になってる。 その壁を同時に乗り越えられるからこそ、聖地巡礼による町おこしが注目されるのでは。 より平たく言えば、自分の街をいう度「○○ってどちらですか?」って聞かれ続けたんじゃ自分の街なんてその程度と思ってしまうし、そんな街よくしようとは中々思わんよね、という話。

物理や数学に直結するわけではありませんが, 気になったのでメモ&シェア.

「ルンバが走るには片付いた部屋が必要」

ルンバが走るには片付いた部屋が必要

という言葉がDXと要件定義の関係における、1番わかりやすい例えな気がする

これすごくわかりやすいな。「DXはデジタルの活用ではない。デジタルを活用するために自分と組織が変わること」という言葉が刺さる

最近, 会社の研修でDX関係のセミナーに出ているのでそれに関するメモです.

「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」

私はAIを勉強し始めたとき(2017)、自分にも「古典文学を博士まで勉強して、今更AIの勉強?」と何回も思った。でも、やり続けたのは本居宣長の言葉があった。

「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」

「自分には才能が乏しいとか、学び始めるのが遅かったとか、する暇が無いといった理由で思い悩んだり落ち込んだりして、進歩すること止めてはいけない。」

これは日本に留学するレベルで日本古典文学に興味を持ったものの, 肝心の崩し字が読めなくてつらかったため崩し字のハードルを越えるためにアプリケーションを開発したという人の話です. 私もいま理工系の総合語学に向けていろいろ検討し, アプリを作って情報も整理しているところで, いろいろな示唆があります.

今週の問題

ようやく行列リー群の基礎の基礎を終えました. リー群・リー環の基礎といえばやはり次の命題でしょう, というわけで.

  • 同型なリー環を持つ単連結なリー群は互いに同型である.

非同型なリー群が同じリー環を持つ現象は初等的な範囲でもたくさんあります. この壁を乗り越えてリー環でリー群を記述しきるための鍵は位相にあり, それが単連結性だという決定的な定理です.

何度か書いているように, 代数+位相のセットは互いに恐ろしく強い制約を与えます. 微分幾何では曲率という微分幾何的・リーマン幾何的な構造が位相に制約を与えるのが面白さの一つで, 位相に制約を与える以上, 多様体が代数的な制約を持つときには代数にも影響を与えます. 当然代数的な制約から微分幾何的な制約が入るとも言えます.

位相がわけわからないという人は多いようですが, 行列・行列群の性質から少しずつ位相に慣れ親しむパスがあってもいいでしょう. リー群・リー環の議論, 行列計算のハードさもあるため位相への意識が薄くなってしまいかねない懸念はあるものの, 位相の射程距離を知るにはいいテーマです. ぜひリー群・リー環も勉強すると楽しい分野リストに入れてあげてください.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

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語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-07-30

数学・物理 載せたい方程式募集/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 質問の仕方・アンケート利用案内: 困った質問が来たので
  • 基礎・基本の意義・重要性
  • 物理への取り組み方と次の短期集中講座
  • 集中して取り組む
  • 載せたい方程式募集
  • 計算できない理由を考える
  • 大人の数学
  • 幾何の講義YouTube
  • SymPyが便利で感銘を受けた記録
  • ニュートンの三法則の解釈
  • 文理工の科学的世界観で考えるファンタジーの設定
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感想をください

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.

ではまたメールします.

近況報告

土曜日で行列リー群・リー環の基礎の基礎くらいのところ, 終わると思ったら終わらなかったのですが, さすがに日曜には終わるでしょう. モース理論入門をリー群・リー環で最低限触ろうというネタも見つけて, それも調べつついろいろやりたいところですが, いったんリー群・リー環はいったん休止して物理モードに戻ろうかと思っています.

何故終わらなかったかというと先週宣言した物理の式のギャラリーを作っていたからです.

実物を見せないとイメージもわかないと思ったので.

Twitterに先週のメルマガの内容を放流したらQmQさんからリアクションが来たので, 継続的に一日一式くらい追加してやっていく予定です. 「こんな式を載せてほしい」というのがあればぜひ教えてください. TeXで式を作って送ってもらえるとなお嬉しいです.

物理モードに入ったので改めて量子力学の基本的な理論の部分や, 相対性理論を再勉強しています. 相対性理論の本を眺めていたら, 特に一般相対性理論で計量の符号の流儀に由来する曲率の表式の違いが問題になっているのを見かけました. 数学でも曲率の符号が問題になる場面はよくあり, 流儀ごとの計算結果は現代数学探険隊にまとめているのですが, これも改めてきちんとまとめようと思っています.

フーリエ変換も$2 \pi$をどこにどう置くか, 三パターンくらいありますし, これも現代数学探険隊にまとめています. 私が参照しやすくする目的も兼ねて公開しようと思っています.

私の勉強・参照の役に立つなら万人とは言わずとも役に立つ人は必ずいるはずで, そこを狙ってやっていきます.

疲れているときや昼食の休憩時など, ちょっとしたすき間時間はだらだらしがちなのですが, そういう時間に使うアプリとして非常に楽しみです.

質問の仕方・アンケート利用案内: 困った質問が来たので

率直に言ってとても困った質問が来たので改めて案内します. リー群・リー環に興味があるようで次のような質問が来ました.

  • 物理に必要な最低限のリー群・リー環だけを勉強したい.
  • わかりやすい教材を教えてほしい.

何回かコメントをもらったことがある人で確か理工系出身の人だったとは思うのですが, どういう背景を持つのかあまりよくわかっていません. 以前簡単な自己紹介をもらった気もしますが, 何年も前なのでさすがに覚えていません. そんな中で「物理に必要な最低限」と言われてもどう答えればいいのか全くわかりません. 同じく, どんな教育を受けてきて何を勉強してきたのか, 背景や状況を教えてくれずに「わかりやすいのを教えて」ともよく言われるのですが, 私と同程度にゴリゴリに物理と数学をやってきている人もそういないでしょうし, 集合・位相・実数論の背景がない人に勧められる数学の本もほとんど知りません.

それで「数学と物理をやってきた人だと思って期待していたが残念だ」と言われたので, 理工系の素養があってそれなりにやってきている人間からここまでどうしようもない質問が来た上で, こんな返信をもらうのかとさすがにげんなりしました.

回答の負担になるのであえてあまりくどくどと書いていませんが, アンケートには「質問があるならせめてこのくらいは情報をつけてほしい」という項目を入れてあります. 真剣な質問で回答がほしいなら, どのくらいの数学・物理・プログラミングなど項目ごとに適切な情報をつけてください.

せっかくなので上記の質問に関してここにもコメントをつけておきます.

物理に必要な最低限のリー群・リー環

何をやりたいかに強く依存します. そして私の知る限りの学部から修士の物理での「最低限」の線で言えば, リー群・リー環の勉強は無駄なのでやめようと言います. 一般論を勉強するよりも都度出てくる計算を処理しきれる計算力を育てる方が汎用的で重要です. 最近の計算押しもまさにここにフォーカスしています.

私の「物理」に関しても補足でコメントします. 主に修士の頃にやっていた範囲ですが, 物理としては場の量子論の赤外発散の数理・基底状態の存在, 量子統計での平衡状態の存在です. リー群・リー環の議論は全く使いません. 勉強の段階ではローレンツ群・ポアンカレ群というリー群らしいリー群, 非可換なリー群は出てきましたが, リー群の一般論をまともに勉強しきったことはありません. いま再勉強している様子を伝えている通り, 本を一通り眺めたことはありますが当時も今も身についていません. 具体的にどのくらいの勉強をしたかについては, 新井朝雄先生の『フォック空間と量子場』を見てください. その範囲しか勉強できていません.

勉強の段階でさえ私のメインの対象は場の量子論では時空並進群$\mathbb{R}^d$, 量子統計では空間並進群として$\mathbb{Z}^d$です. 後者にいたっては形式的にはリー群ですがわざわざリー群とみなす方が大変です. 自由場のボース-アインシュタイン凝縮関係で$U(1)$も少し触ってはいるものの, リー群の議論がいるかと言われれば全く必要ありません.

「数理物理」と言ってもいろいろあります. 数学的には関数解析が専門で, それ相応の範囲を勉強してもいますが, 研究で一番大事なのは収束制御のための極限処理の腕力です. 直接の修士の専門だった作用素環でも, 一番大事なのは学部四年で既に勉強済みだったGNS構成定理です. まわりまわっていろいろ必要になることは多々あります. それでもまず最低限と言われたらこのくらいです.

物理で最低限必要な数学と言われたらもっと数学の知識は減りますし, 何より数学をやるより計算力をつけろと言いますし, それへの回答として計算力養成講座を運営しようとしているくらいです. 数学の勉強よりもぜひ計算力の涵養を最重視してください. 「数学」をやるより余程役に立ちます.

わかりやすい本

わかりやすいかどうかは微妙ですが, 小林・大島の『リー群と表現論』が読んでいて抜群に面白いです.

私を越える数学力があれば難なく読めるでしょう. 自分に必要な範囲の解析学しか修めていないので, 幾何と代数に関して私程度は越えていないと気楽には読めません. リー群とその表現には届かないものの, 平井武『線型代数と群の表現I・II』は集合・位相のようなゴリゴリの数学の知識なしで読めて楽しい本です.

私は私より数学ができない人でも読めるリー群・リー環の本を知りません. 知らなくて困っているからこそ多様体ベースのリー群ではなく, 行列リー群・リー環で愚直に計算を進めるタイプのコンテンツを整備しているくらいです.

持っているだけ持っていて読めていないのですが, 物理, 特に素粒子系で有名なところだとジョージアイの本があるようです.

レビューによると独学にはつらいようですが, 物理の大学院レベル, それも素粒子系の専門性があるなら物理数学的腕力でねじふせられるのかもしれません. そもそも最近はもっといい本が出ている可能性もあります.

基礎・基本の意義・重要性

この間プログラムを書いていたときの話です. 一日かけて解決できなかった問題がありました. 夜寝る前に「手を抜くからいけない, 一から動く部分を少しずつ積み上げて問題を一つずつ潰そう」と, 正攻法で挑み直したら翌日10分程度で解決できました. 基礎の重要性を噛み締めています. 急がば回れとは本当によく言ったものです.

上でも少し書きましたが, 物理でも数学でも計算力は基本中の基本です. 特に物理では数学の綺麗な一般論で片付けるよりも, 泥臭かろうが剛腕で押し切るのは非常に重要です. もっと言えば私の専門の数理物理がそうであるように, その時点の数学で処理しきれない問題があって数学に頼れないこともよくある以上, その場しのぎであろうとも計算力さえあればねじ伏せられるならそれを使うしかありません. 最近では「計算力」の中にプログラミングも含まれるようになってきています.

通信講座でも計算力が足りなくて困っている人がいました. それなりに面倒な近似とその計算も含め, やはり古典力学は物理に馴染む上で最初に取り組むべき分野です. 応用上カバーする分野も恐ろしい程に広く, まさしく一生かけても遊び切れないほどテーマも豊富です. 物理, またはもっと物理を勉強したい人も読者に多い中で, 数学の話ばかりしているのもよくないと思っていたところなので, これまで以上に物理での計算の意義の強調, そして計算力向上プロジェクトの推進を進めなければと思いを新たにしています.

物理への取り組み方と次の短期集中講座

というわけで物理と計算です. 他のいろいろな取り組みが楽しすぎて全く準備が進めていませんが, 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数, 特にその計算」です. 二次または三次の行列計算をがんばってやろうという企画で, 一般論の趣が強い話はほぼ扱いません. 量子力学に関わる話もほぼ直接的には出てきません. 計算力さえ身につけば量子力学の本も自力で読めると思うので, まずはそのための力を育てるのがいま私が一番できる貢献と思っているからでもあります.

もちろん三ヶ月でできる範囲には限度があるので, 堀田量子・谷村量子あたりに挑むための基礎計算力を身につけるための第一段です.

念のため書いておくと, 学部教養レベルの線型代数の一般論は絶対に必要です. 何をどうしても一般の有限な$N$次元は処理できないと困るからです. そして具体的な2-3次元と$N$次元の処理はやはり多少のギャップがあります. さらに言えば$N$次元の一般論が処理できたとしても, 2-3次元のハードな計算をこなす腕力・計算的体力があるかも別問題です. 極端に言えば一般論は純粋な数学の人に聞いたり教えてもらう形でも対応できますし, 物理についても物理の人に聞く手があります. しかし計算を詳しくカバーするのは骨が折れます. 大学の学部でも演習系の講義はよく必修として組み込まれています.

最近大人向け数学塾的なところも増えていますし, 個人指導も増えています. そんな中, 計算力涵養講座は必ずしもカバーされていない領域ではないかと思っています. 個人指導だといくらでも聞けるとは思いますが, 個人指導に高いお金を払おうというときに計算だけ面倒見てくれ, 計算練習だけしたいという要望もないでしょう. 大事な割に軽視されがちな部分をきちんと追いかけようと思っています.

集中して取り組む

プログラミングに関してCSSを含めたフロントエンドにここ一月集中して取り組んでいます. だいぶ慣れてきました. これまで直したいと思って放置してきたこのサイトのCSSも微修正しました. 慣れてしまえば大したことはなかったものの, そこに至るまでの精神的なハードルの高さは凄まじかったのです. この一月でそのハードルが著しく下がりました. 長期間継続すると言うと聞こえはいいですが, ダラダラと長い時間やっていても必ずしも望み通りの結果は産めません. 集中するべきときは資源を全集中してガツっとやった方がいいのも改めて実感しています.

もちろん数学や物理は一月程度でどうにかなるわけではありません. 正直プログラミングは本当に大したレベルではないので, プログラミングの初期学習時にゴリっと時間を取るのはかなりよさそうな感じがします.

載せたい方程式募集

先週少し紹介した式を眺めるアプリ事案, 文章だけではイメージが掴めるはずもないのでさっとWebアプリを作ってみました.

イメージが違うと思う人もいれば, もっとこうしてほしいというのもあるでしょうし, 式が少なくてつまらないという人もいるでしょう. 式が少なくてつまらないのはまさにいまの私の感想です. すき間時間を潰すにもせめて500本くらいはほしいです.

物理の有名な法則や式を載せればいいのでネタは豊富にありますが, 式を打つ時間がかかります. 載せる順番の問題もあります. 「この式を優先して載せてほしい」といった要望があればぜひ教えてください. 式をTeXで打ってもらえるとなお嬉しいです.

もちろんこれの数学版も作りたいですし, 物理で言うならもう少し一般向けの内容として, 物理学者名言集のようなものも作りたいです. 数学についてはいまある現代数学探険隊から定義・定理・命題・補題を切り出してズバンと数百レベルで作ろうと思っています. そのためのテキスト処理プログラムを作ろうと思って時間が取れていない状況です. これも早く何とかしたいです. これがあればすき間時間のリー群・リー環の復習・定着に取り組みやすくなるので, 何より私がほしいアプリです.

計算できない理由を考える

今回ずっと計算づくしですが, そのくらい大事だからです. 最近私もずっと計算していますし, 通信講座で他の人の様子も見たのでその辺からいくつかピックアップします.

計算が進められない理由はいくつかあります. まず一つ, 文章が読めていない場合があります. 「そんな馬鹿なことがあるか」と思うかもしれませんが, Twitterを見たり通信講座で質問を受けていると, 「それ, きちんと証明の中で『こうやる』と書いてあるのですが」というところで「わからない」と言っている人が本当にいます.

  • 「こうすればいい」
  • 「そうだったのか」

このやりとりをしたあと, きちんと本を見たらそう書いてある場合が本当にあります. 根気強く丁寧に文章を読むのも計算力のうちのようです.

もう一つ, 特に初学者によくあるのは定義が頭に入っていない事案です. もっと言えば定義が大事だとわかっていない状態です. 分野のはじめの方であればあるほど使えるのは定義しかないので, 「定義に沿って計算する」, 「定義にあてはめられるように計算する」しかできることがありません. その状態で「何を計算したらいいのかわからない」のは単純に定義の重要性がわかっていないからです.

これは文章が読めていないと言ってもいいのでしょう. 何と言えばいいのかわかりませんが, 「論理的に進めるスタイル」とでもいうのか, 少なくとも物理・数学の専門書の本の読み方がわかっていなさそうな状況もよくあるようです.

次の短期集中講座でも週に一回か二回は勉強会またはもくもく会の時間を作る予定ですが, そこで問題を見たときにまず真っ先に何に着目してどうすると考えるのか, ミニレクチャーをはさんだ方がいいのかもしれません.

大人の数学

以前も少し紹介した事案です. 特に機械学習なり何なりで線型代数や微分積分が必要というとき, 実際には中学, せめて高校くらいの段階からみっちりやる必要もあります. それをカバーする教育体制がどこにどのくらいあるのかという話.

高校数学または中学数学くらいからのいい感じのアプローチはずっと考えている部分でもあります. これは特に私が一番やりたい部分である中高生へのアプローチとして, 先々の面白い話をどう手早く, それもきちんと腹落ちする形で見せられるかにもつながるからです. 競プロがあってコミュニティもできているから, アルゴリズム系の計算, そして計算でがんばるタイプの微分積分・線型代数, さらにはそのお絵描きがいいのではないかと思っています. 以前, 実際に微分積分・線型代数はコンテンツを作りましたが改めて具体的に要望あるでしょうか. SymPyもそれなりのボリュームで扱っていますし, 微分方程式にも触れているので, 古典力学はもちろんのこと量子力学の行列計算でもそれなりに役立ちます.

実際, リー群・リー環の場合も含めて行列計算ではsympyやnumpyにお世話になっています. 私はできる場合には数式処理的な厳密な計算をしたいのでsympyが主な対象ではあるものの, 数値的にそれなりにできれば十分という人もいるでしょう. sympyをがんばるよりnumpyで数値的に処理する方が簡単な場合も多いですし, sympyの限界でそうするしかない場合もあります. これも実際に二次正方行列の極分解でsympyだと二重根号の処理ができず, はまり倒しつつ三日かけて手計算をがんばったことがあります. 二重根号で処理できること自体, 一日半かけてようやくわかったのです. numpyで数値的に解くだけなら一瞬で終わるのですが気にくわなかったので.

幾何の講義YouTube

大分前のメモで共有できていなかった分です. いま改めてサイト・メルマガを整理していて書きかけを見つけたのでここで供養します.

SymPyが便利で感銘を受けた記録

今週の問題ネタでもあります. 特殊線型リー群$\mathrm{SL}(2,\mathbb{C})$は弧状連結なので任意の要素が指数写像の像の積で書けます. 一方, 具体的な$\mathrm{SL}(2,\mathbb{C})$の要素を分解してみせるのはなかなか大変です. そこでSymPyを使って探索したらあっという間に見つかりました. 二次であっても行列の計算は面倒でミスも多発します. 試行錯誤となると余計にやりたくなくなります. それをカバーしてくれるこんなに嬉しいモノがあるかと感銘を受けました.

何でもできるとは思えませんが, SymPyには行列の指数・対数もあります. まず適当な(簡単な)行列を積で分解しておき, 各因子の対数を取れば対応するリー環の要素がすぐに計算できます. これもまた便利で感銘を受けました. リー群・リー環の計算練習系コンテンツはもちろんのこと, 次の短期集中通信講座, 量子力学と線型代数ネタでももっと積極的に使った方がいい気持ちを新たにしました.

プログラムを書いて探索するのもぜひもっと使ってほしいですね.

ニュートンの三法則の解釈

科学哲学・自然哲学系の人です.

山本義隆先生は,Landau-Lifshitz 物理学小教程の『力学・場の理論』の解説で,「論理的に純化したときの力学原理としての「慣性の法則」は何かと言えば〔…〕慣性座標系の存在要請ということになる」(p. 419) と述べているが,私がこの主張に賛同できない理由の一つは,下記のスライドに書いた通り.

  • 第一法則は第二法則の特殊ケース($F=0$の場合)であり, 余計ではないのか? -> そうではない.
  • 第二法則だけでは, どういうときに「外力が加わった」と言えるのかが明らかではない.
  • 第一法則は「外力が加わっていない自然な状態」がどういう状態なのかを基底しており, 第二法則はそれを前提としている

もう一つの理由は,そもそも座標系というのは人間の都合で設定されるもので,物理現象はそれとは独立なので,力学法則が座標系への言及を含むのは不適切だと思うから. 慣性の法則は,相対論における測地線原理(質量のある自由粒子はtimelikeな測地線上を運動する)の古典的時空における対応物だと思うので,その対応が明確になるような形で(座標系に言及しない形で)定式化するべきだと思う.

もう一つ当人の補足.

整理すると,第一法則は「外力が働いていない」状態がどのような状態なのかを規定しており,第二法則はそれを前提としている.したがって第一法則を慣性系の存在要請としなくても,第二法則の特殊ケースとはならない. 第二法則から「$F = 0$ のとき加速度$= 0$」が出てくるので,第一法則はその特殊ケースではないかと思われるかもしれないが,これは「$F = 0$のとき静止もしくは等速直線運動」と同じではない.例えばアリストテレスやガリレオにとって天体の一様円運動は「変化のない運動」,つまり加速のない運動だった. 気になるのは,アリストテレスにとって天球(エーテル)の一様円運動は「自然」な運動だから外力を必要としないと思うんだけど,同時に彼は天球を動かす「不動の動者」を考えていること.このあたりの整合性はどうやって取っているんだろう. SEPによると,アリストテレスの言う「自然な運動」は「外力を必要としない運動」というわけではないらしい.https://plato.stanford.edu/entries/aristo

これに対するコメントがいくつかあります.

非常に興味深いです。そのスライドに書かれていることはまさに「慣性座標系の存在要請」のように思えるのですが、どの点が違っているのでしょうか。

スライドに書いた慣性の法則は,座標系への言及を含んでいない(座標系とは関係なく成り立つ)ので,慣性系の存在要請とは違うと思います.ちょうど相対論における測地線原理(質量のある自由粒子はtimelikeな測地線上を運動する)が座標系への言及を含んでいないのと同様です.

そもそも山本先生は,慣性の法則が第二法則の特殊ケースになってしまうのを避けるために,それを慣性系の存在要請として解釈しているようですが,私はその議論の前提(慣性の法則を慣性系の存在要請として解釈しないと,第二法則の特殊ケースになってしまうという前提)が間違っているように思います.

では、第一法則を「静止あるいは等速直線運動をおこなっている物体には(トータルで)外力が働いていない」という意味での外力の定義とみなせば良いでしょうか

そうですね.外力の定義として考えるのは良いと思います.

他のコメントその二.

特殊な座標系(慣性系)においてのみ第二法則は成立し、第一法則はそのような系の存在を要請している。

よって、座標系に無関係に成立するという主張は支持しない。

「慣性の法則」の意義の話をする時にネーターの定理を持ち出さないのは違和感があります。山本義隆さんの言うように理論的にはユークリッドな慣性座標の存在から直ちに導かれるものです

あまり真面目に考えたことがない上に正確な状況設定も理解していないのですが, 慣性以前に座標系をいつどこでどう定義したことになっているのか把握できていません. 上の当人コメントでは「外力の定義として考えるのは良い」と言っていますが, 外力以前に単純な力の定義もどこでどう設定したことになっているのでしょうか.

上で「文章が読めていない」という話をしましたが, 特にこの辺の議論の前提に関わるところはこの前段で何をどう設定したかに強く依存しますし, いちかわけんとさんコメントもそこに関わる話でしょう. そこが明示されない状態での空中戦は本当に不毛です.

文理工の科学的世界観で考えるファンタジーの設定

ずっと構想してたけど供養す

魔法は世界に対する API の query で、図形化のプログラミング言語を利用して現実化させるみたいなやつで

言語学や民俗学も絡めて、さらに異世界薬局とかの物理や化学に基づいた物質創成・操作とか

つまり文理工の科学的世界観で考えるファンタジーみたいな設定が欲しい

自分でやる気は起きませんがこれはすごい楽しそうです. ファンタジーを作る気はしないものの, アーカイブのトップに書いた「理工系の総合語学」のコンセプトはこれと強い関係があるとは思っています. とりあえずは語学・言語学・プログラミングに力を入れてやっていく所存.

今週の問題

今週は行列リー群の当面の締めとして, 単連結なリー群についていろいろまとめていました. 単連結という位相的特徴と代数の関連はもちろん自明に大事なのですが, もう一つ面白かったのは次の事実です.

  • 実・複素係数のリー環$\mathfrak{g}$に対してトレースはもとリー環の$\mathfrak{g}$から実数体・複素数体への準同型である.

理由は指数関数の行列式に対する有名な等式$\det e^A = e^{\mathrm{Tr} \, A}$です. これ自体は散々見て使ってきた等式でしたが, リー環の準同型を示唆すると思って見たことがなく自分の目の節穴ぶりを見せつけられました.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-07-23

数学・物理 式や定理を眺めるアプリを作ろう/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 単語学習アプリとその数学・物理への展開
  • 勉強しやすくする環境作り
  • メタバースとオンライン教育の食い合わせ
  • データ同化と作用素環
  • 『インド数学研究』
  • 「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」
  • Stack projectのPDF
  • 古典場と量子系の共存
  • 『進化思考』における間違った進化理解の解説
  • 居眠りを苛立たしく思わない方法
  • Coqで書き直したPrincipia Mathematica
  • 単語と世界史
  • 今週の問題

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ではまたメールします.

近況報告

ここ最近, 仕事のアプリ開発用の調査も兼ねたプログラミングをしていたら, 「勉強ついでにやってみよう」で自分用のアプリ開発を進めています. 技術不足でなかなかうまくいってはいないものの, 「これもほしい」「これができるならあれも何とか自力でできそう」という感じで, 妄想と実装が進んでいてなかなか数学・物理が進んでいません. 贅沢な悩みなので大きな問題ではありませんが, 次の通信講座の準備も放置したままです. 無理やりにでも時間を作って来週のメルマガでもう少し具体的な話をしようと思います.

単語学習アプリとその数学・物理への展開

現状ほぼロシア語しかありません. そしてこれ自体にはほぼ興味ある人はいないでしょう. しかしこれができるなら, と思って妄想しているのが定理版や物理法則版です.

実際に勉強しているとき, ちょっとした空き時間やいまひとつやる気が出ないときの気力充填用のアプリとして, 既に整備しているコンテンツから定義・定理だけ抜き出して眺めたり, お気に入りの定理や式や物理法則をパラパラ眺めるアプリがあったらいいのではないかと思っています.

これは単純に勉強する上でも実はかなり大事です. 何をやるにしても復習は非常に大事です. そして大事な定義・定理の主張だけ眺めるのはかなり大事です. 証明の細かい議論の追跡や計算の完遂も重要ですが, 個々の定義や定理の言明に親しむのも同じく大事です. 定義や定理はエッセンスをまとめた対象なわけで, 証明は証明, 言明は言明とわけて考えて慣れるのには一定の意義があります.

自作のコンテンツは基本的に自分にわかるように計算を詳しく書いているため, どうしても長くなります. 定義や定理だけ抜き出してさっと眺められると便利とは前々から思っていて, それを実現する方法としてこの手のアプリを作るのは一手と思っています.

他にも通信講座の各回のコンテンツ配布用にPWAアプリの形の配布も割と便利ではないかと思っています.

何にせよ自分自身の復習効率向上のために早くアプリ作りたいです.

勉強しやすくする環境作り

7/20(水)で古典力学に関する三ヶ月間の短期集中講座が終わりました. 7/23(土)に最後にちょっとした振り返りをして感想を聞いたので, いくつかシェアします.

まずは次の二点.

  • 勉強会がよい強制力になった.
  • ペース配分してもらえるのがよい.

週に二回, オンラインで一時間ずつ勉強会と称して時間を取っていました. 社会人で忙しくともせめて週に二回, 一時間ずつくらいは勉強してもらいたいからです. もちろんこの時間には質問も受け付けていました. 勉強会への参加がいい強制力になっていたそうです.

もう一つ, 全体が見えている人間による内容とペースの配分がよかったようです. はじめはやる気や意志の強さの問題かと思っていたが, 三ヶ月で最低限の内容を無理のないペースで進める, という視点からの配分がかなり助かったと. いまやっている議論が先々どんな意味があるか, どう発展するかもいろいろな形で伝えていた点もよかったようです. 例えば調和振動子は量子力学や場の量子論でも重要, といった話を各所で展開していました.

あともっと計算を詳しくしてほしいという要望がありました. もちろん詳しくするべき箇所は詳しくしますが, 少なくとも手元にある元にしたいくつかの参考文献よりは計算を詳しく書いてあります. 計算力がないという自覚のある方だったので, このくらいは捌けるようにもっと計算力をつけてほしいとは伝えました.

まさに計算力強化を目的にした通信講座であり, 理論の理解と同じく, 実際にたくさん計算して計算力を育ててもらわないと理論の理解も覚束ないのが現実です. 広い意味での計算力のなさが理解を阻むのは自分自身苦しんできた部分でもあり, 引き続きこの線を追いかける決意を新たにしました.

ここ何回かメルマガでもプログラミングに関して書いてきたように, 一人でやっていても効率が悪いことはよくあります. 役に立つわけでもないタイプの勉強なら必ずしも効率を求めなくてもいいでしょう. しかしむやみやたらに苦行にするのも違います. その辺をよりよくバックアップするための処方箋として, まずは自分がほしいアプリ開発も優先順位をあげて対応しています.

そしてよく言われる一番よい勉強法は「人に教える」です. 大学でのゼミ形式です. 教えるために勉強するのもありますが, 教えていると頭の使い方が変わって, それまでに思いつかなかった説明の仕方をひらめくことがあります. 私もフロントエンドまわりのプログラミングに関して, 自分の中の圧力を上げるため, 勉強会の講師役をやる前提で知人が運営しているコミュニティに参加させてもらうことにしました.

もちろんここまでの圧をかけるのは大変なので安易にお勧めはしません. ただ特に計算力涵養に対していろいろなテーマの短期集中講座で対応していく予定です. 使える人はぜひ使ってください.

メタバースとオンライン教育の食い合わせ

最近各方面と話してて思うけど、メタバースとオンライン教育の食い合わせは完璧に近いのに、環境を整えるコストがボトルネックすぎて双方向授業やワークショップの活用事例があまりにも少ないのが悲しすぎる 既に現場にいる人が活用事例を創出しまくってオイデオイデするしか勝ち筋がない

子供たちはMMOの延長として捉えて導入がスムーズなのに対して、大人は自分たちが知らない別の世界へ連れていかれるようなモノというイメージを持ってるケースがあって…リケジョ教育もそうですが、先に伝達すべきは親御さんや先生ですね

Vtuberをやっている人と少し仲良くなったので, その人の活動を横目にしながら, 私も何かしらやろうと思っています. Vtuberを動かしつつ3Dの数学・物理系アニメーションコンテンツを作っている人もいるようですし, そういう方向性でもいろいろ遊びたいと思っています.

データ同化と作用素環

時間がなくてプレプリントは読めていませんがとりあえずシェア. 情報系, 割と滅茶苦茶な数学が出てくるようで時々驚きます. こういうのを見ていると関数解析をやっていてよかったと思うときもあります.

『インド数学研究』

『インド数学研究』オンデマンド版ということでペーパーバックだと思っていたのですが眩しいくらいに立派な装丁の本でした.光ってます😂 先週末時間をとって取組んだのですが思った以上に難しいですね.インド数学特有の表現法に慣れないといけません.数学ってもの凄く地域的で文化的なのだと再認識.

この小学校の円の求積の説明でみかけるこの図.ギリシャ数学ではまず見かけないのですが,どうやらインド数学の図版にはあるらしいのです.こういったアイディアの(現存する)初出に触れられるのも古い科学文献を読む楽しみです.

私もこの図はよく使います. インド起源らしいと知ってちょっとびっくりしました.

「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」

「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」にDST Triangleというのが出てきて、Distance, Speed, Timeとあって、悪評高いはじき、くもわの図は日本だけじゃなかったんかーい、ってなってる。

「はじき」系の話もありますが, 理工系向けの語学コンテンツの方向性もいろいろ考えているので, その参考にもなるだろうと思いメモ+シェア.

Stack projectのPDF

オリジナルのStacks projectのページで全体のpdf版もダウンロードできて,現在7,500頁超の模様.↓pdf直リンク注意: https://stacks.math.columbia.edu/download/book.pdf

このレベルの内容の7500ページのコンテンツ, 読むのにどれくらい時間がかかるでしょうか. 何はともあれ面白いことがいろいろ書いてあるのは間違いないので, 改めてシェアします.

私が作っている現代数学探険隊のPDFは議論を詳しくするため, 何よりも自分があとで読んですぐわかるように, なるべく詳しく定理・定義・式の参照を張るようにしていて, 参照が6000近くあります. ページ自体10000ページを越えているので, 私のマシンだとコンパイルに30分かかります.

古典場と量子系の共存

勉強になる。古典場と量子系を共存させるのは(重力でなくても)難しい https://twitter.com/yujitach/status/1549913475425906688

曲がった時空上の場の量子論?

その例えで行くと、曲がった時空上の量子力学でも、波動関数から重力場をきちんと決めましょうね、という話 (元々は重力だけ量子化されないとするとどうなのか、みたいな話だった)

古典重力の部分と重力以外の量子論の部分が相互作用する、みたいな系ですかね。 それならば、半古典近似という呪文を使わず、全体として整合的な定式化を構築せよ、というのが本質かと(見たことないけど)。

そのとおりですね

時間がなくてオリジナルのツリーまで記録できていないものの, 専門家のこういう話を見るのは楽しいですね.

『進化思考』における間違った進化理解の解説

『進化思考』における間違った進化理解の解説 ここで批判の対象になっている本の内容、 進化という言葉を使ってなにかいいこと言ってやろうという人間がやる間違いのカタログみたいになっているようだ。 ある意味で勉強に良い

生物, 高校レベルですら覚束ず, 勉強しようと思って幾星霜です.

居眠りを苛立たしく思わない方法

大学で教え始めた頃は、この私といえども居眠りしている学生に腹が立っていたものである。しかしニュートンの学生時代について少し調べた中で、おそらく彼も居眠りしてケンブリッジで居眠りしていただろうという想像がついたので、以来全く腹が立たなくなった。なぜならその居眠りしている学生は(1/n) きっと夜中に微積分学及び力学を構築していたに違いないからである。私はこの話が好きなので、講義の中だるみの時期、「居眠りは全く問題がない。きっと21世紀の微積分学か力学を構築しているのだろうから」と口走ると、教室は緊迫する。もちろん学問でなくても良いから、若きニュートンのように(2/n) 大いに熱中したまえ、それで居眠りをするのは偉大なことである、とフォローするのだが、Z世代の諸君はこれを甚大なる圧力のように感じるようである。私は本心で言っているし、大学人は皆そう考えるべきだと思う。一体あなたは誰がニュートンなのかわかると思っているのか?と。私は自信がない。(3/n) 講義で居眠りする学生がいたらそれはニュートンかもしれないと思うべきだ。図書館に入り浸る変な人間がいたらそれはマルクスかもしれないと思うべきだ。謎にふざけあうおっさん二人組がいたら寒山拾得かもと思うべきだし、七歳の女の子が衆生を救う教えを説くことも当然ある。そういう意味で私は(4/n) 「信仰」を持っていると言っても良いだろう(カルトは無論断罪するが)。決して「立証」されえないことを信じるのが宗教であるならば、それは確かに宗教かもしれない:あなたは私やあなた自身が思うよりもさらにすごいかもしれない、と私は信じる。しかしそれこそが教育の要諦ではないか。(5/n,n=5)

はっきりとは名乗っていませんが, ツイートを追っていると自著を紹介したりしているので, この人が誰だかはわかります. 面白い人なのでTwitterをやっている人はツイート追いかけるといいでしょう.

Coqで書き直したPrincipia Mathematica

最近改めて定理証明系にも興味が出てきたので, とりあえずメモしておきます.

単語と世界史

単語の語源を調べると、そこに世界史が見えてきます。 例えば英語にvandalize「破壊する」という動詞がありますが、これは455年にローマを略奪したヴァンダル族(ラテン語でVandali)の名前が語源です。 また、スペインの「アンダルシア地方」の名前の元もこのヴァンダル族です。

このあたり「理系の語学」でやりたい話でもあります. 一つ一つ丁寧に彫り込んでいくと多言語・多文化に共通の要素が見えてくる, みたいな話はまさに数学や物理でもよく出てくる面白い話で, 言語学者も言語の中で同じことを面白がっています.

特に音に関して物理で決まる言語現象がいくつかあります. 人間の口の形や音の出し方で決まることは当然言語や文化を越えます. こういう話をするべく「理工系の総合語学」という標語のもと, 日々地道に勉強を進めています. アプリを作ってロシア語などの英語以外の言語を勉強している理由もこれです.

今週の問題

行列リー群・リー環入門の佳境に入りつつあります. 位相と代数の絡みという関数解析でも重要なテーマを改めて眺めていて, 群・多様体の世界で何がどうなるかを見ています. 関数解析ではあまり表に出てこない連結性まわりの話が面白いです. 例えば次のような定理の言明・証明をまとめました.

  • 行列リー群$G$に対して, 単位元の弧状連結成分は$G$の正規部分群である.

弧状連結成分は単なる部分集合でしかなく, 位相的特徴こそ持っていても代数的な制約は何もありません. しかし実際には正規部分群という極めて強い代数的制約が課されます.

関数解析, 特に作用素環, フォン・ノイマン環では, ある$C^$-環$\mathcal{M}$がフォン・ノイマン環である必要十分条件として, 「$\mathcal{M}$があるバナッハ空間の双対空間である」があります. 今では境の定理と呼ばれている基本定理で, 双対空間という代数的な性質が$C^$-環の位相に効いてくる事情を見せてくれます. 実際, フォン・ノイマンはリー群, 特に行列リー群の基礎づけに深く関わった人物でもあり, 作用素環版の議論にもその影響が色濃く残っています.

幾何・代数だけではなく解析学への影響もある言明なので, ぜひいろいろ調べて遊び倒してみてください.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-07-16

数学・物理 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 教育需要の話
  • 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」
  • 数学と計算
  • 良書メモ: 調和積分論
  • 良書メモ: 総合的研究 論理学で学ぶ数学
  • Mathematics for Machine Learning
  • 方程式を解く
  • 若い女性がいい匂いがする理由
  • Grafferお悩みハンドブック
  • リーマン多様体上での最適化pymanopt
  • 数学リテラシー
  • 本格的な数学×プログラミングがやりたい
  • 今週の問題

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近況報告

先週もメルマガを書こうと思っていたのですが, 安倍元首相のニュースが衝撃で二日くらいほとんど何も手につきませんでした. 今の日本で総理経験者という重鎮があんなにあっさり亡くなってしまうのかと. 歳を重ねたせいもあるのかもしれません.

それはそれとして, 仕事用のプログラミング学習で, 落ち着いてはいませんが緊急事態は脱したので少しずつ数学モードに戻しています. プログラミングはプログラミングで楽しく, そして今回のプログラミングは仕事にも直結していてやや焦りがあったのも関係しているものの, やはり数学をやっているときの心の癒され具合が大きく違います.

しばらく止まっていたリー群・リー環学習も再開して, それも佳境に近づいて来ました. これが終わったら対称空間あたりをやろうと思っていましたが, 純粋な数学方面ではトポロジーに舵を切る予定です. これも何度か挫折を続けているので, 今回はわからなくても一周やり切るのを重視して進めます.

物理だと堀田量子的な量子力学の復習+コンテンツブラッシュアップ, 熱力学の復習+コンテンツ制作, 電磁気の数学・線型代数コンテンツ制作, 特殊相対性理論の復習+コンテンツ制作, そして統計力学の復習として原・田崎の『相転移と臨界現象の数理』あたりが念頭にあって, 何をどこからやろうかとぜいたくな悩みを展開中です. とりあえず次回の短期集中講座は量子力学に決めたので, それと合わせてウルトラショートコンテンツとして電磁気も整備したいとは思っています. やりたいことが多くて時間がいくらあっても足りません.

教育需要の話

「学部2,3年レベルの専門科目の勉強をやりたい」って思っているやつ、多分高校の授業から始めたほうがよく、社会人の学び直しにおいてここをサポートしている組織どこにあるんだ?って思う。

文系プログラマー勢のための数学みたいなところ, まさにここなのだろうと思っています. 以前出したプログラミング用コンテンツもありますし, これをもとにした短期集中講座もやった方がいいのかもしれません. やってほしいという方いたら連絡ください.

次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」

この間, 久し振りに量子力学に関するアンケート回答が来ました. 特に以前いくつか書いていた堀田量子に関する話です.

最近はどうしても量子情報的な視点が重要なようです. そしてその量子情報的な議論では行列レベルではあるものの, テンソル積が本質的な点でおそらく相当高いハードルがあると見ています. そもそもとして教養の線型代数自体, 私が期待している水準も相当高いと思うので, それも認識を合わせたいと常々思っていました.

そこで量子情報系の議論に耐えられる基礎体力を作ろう, そして線型代数用の計算力も磨いてもらう趣旨で, 次の短期集中講座を作ります.

テンソル積を除いて知識としては完全に教養の線型代数ですが, これを数学科水準の認識に持っていくのが一つの狙いです. 例えば対角化とスペクトル分解は同値な概念であり, 私のお気に入りの齋藤正彦『線型代数入門』にはスペクトル分解の記述もありますが, あまり認知・理解は高くないと見ています. こうした認識のギャップを埋めるのが目的の一つです.

あともう一つは線型代数の計算力向上です. 力学とその計算から攻めようとする中で, 特殊相対性理論のコンテンツも検討しています. 物理としては物理の意味でのテンソル計算が一つの山場である一方, 線型代数に関わる計算がやはり本質的な要素を占めます. 量子情報系の線型代数の計算とは必ずしも重ならないものの, 鍛えた計算力自体は当然相対性理論でも役に立ちます.

前も書いたと思いますが, いい本もたくさん出ていますし独学できる方はそれで構いません. ただ, いまの短期集中講座での質問を見ていると, 非専門の人にはやはり物理学科的常識が身についていないために物理学科民からすれば当然なことでもいちいちつまづくようですし, 物理卒でも長い間触れていないために計算力が落ちていて自力でカバーしきれないことなど, いくつものハマりポイントがあります. このあたりに困難を抱えているなら, ぜひ短期集中講座を活用してください. 正式な案内を二週間程度で出せるよう調整中です.

ちなみに「非専門の身からすると地獄のようにつらい」事案, この一月くらいで私も改めて嫌というほど体験しました. 最近の近況でも書いている通り, もちろんプログラミングの話です. 本職は一応プログラマーなわけでプログラミング自体は最低限こなせます. しかし慣れない言語・ツールを使うとそれだけで一気に非専門の素人ワールドに落ちます. 実際, わかってみれば一行レベルの課題を2-3個解決するためだけに休日含めて二週間まるまる潰しました. 「少しのことにも, 先達はあらまほしき事なり」は心のからの叫びです.

数学と計算

「ワーキング・メモリ」みたいな脳科学用語を使うとトンデモ臭くなると思うものの、大学の抽象数学を理解する上で処理能力はかなり重要だと思っている。 ただ、大学の抽象数学で求められる「処理能力」とは、述語論理で書かれた文章をスラスラ読む能力である。 これは高校数学までの計算能力とは違うものなので、「高校数学や受験数学と違って大学の数学では“暗記や計算でない本物の理解”が求められる」的な言説が発生するわけであるが、単に求められる処理能力が異なるだけの問題をこういう風に捉えるのは極めて有害である。 処理能力の問題だということが分かれば、それを「計算問題」の反復練習で鍛えれば良い。 しかし、どういう「計算問題」が好ましいかは残念ながらあまり蓄積がなく、これから我々が考えないといけない問題だと思う。

このツイートをしている森の未知さんは実際にプロの数学者です. 教育に関して本当にいいことをよく言っているので, ぜひ直接Twitterの発言もフォローしてください.

ここ最近の計算押しの決めた理由の一つは森の未知さんの発言を見ているからでもあります. あまり数学科の数学向けの計算もそのうち何かやりたいとは思いますが, まずは物理のための計算を重点的に進めようと思っています.

良書メモ: 調和積分論t

調和積分論をどうやって倒すか。一番簡単なのはWarnerの教科書を読むことだと思いマスが、ストーリーを一番はっきりと把握できるのは中島先生の講義の記録を読むことだと思いマス。 https://member.ipmu.jp/hiraku.nakajima/Lecture/04_Bibunkika.html Gilbarg-Trudingerを片手にこれを読めば、自力で証明を完成させることができると思います。

これはメモ+シェアです. 調和積分論は一度多様体上のソボレフ空間論のレベルでざっとノートを書いたものの, 見直していないので多分タイポなどボロボロです. 実際ノーテーションもかなりハードです.

調和積分論は楕円型, 特に多様体上のラプラシアンが主戦場で, リーマン幾何をうまく使って多様体の位相の情報を刈り取る議論です. もちろんリーマン面でも大事な議論です. 私が微分方程式畑ではないからという理由もあるかもしれませんが, 解析の人間からしても全くもって簡単ではありません. そしてGilbarg-Trudingerもそう簡単な本ではありません.

実は熱方程式の時間無限大極限として楕円型の解を考える議論もあります. 別に簡単になっているわけでもありませんが, 熱核の方法として有力なアプローチで指数定理にも応用されます. 解析的にも面白い部分がたくさんあって私としてももっと詰めたい分野です.

ちなみにWarnerの本は本格的なソボレフ空間論こそ避けているものの, トーラス上のフーリエ解析からコンパクト多様体上のソボレフ空間論をうまく処理していて, 解析的な予備知識をぎりぎりまで削って調和積分論をきちんと証明しています. 調和積分論の結果自体は非常に重要なのでいろいろな使われる一方, 証明は「Warnerやde Rham参照」として省略されがちです. その省略されがちな証明が初等的な範囲で書かれている貴重な本です.

良書メモ: 総合的研究 論理学で学ぶ数学

「男子:数学の点がいつも俺より良いなんて、かわいくないぞ.」(『総合的研究 論理学で学ぶ数学』https://obunsha.co.jp/product/detail/037704 12ページ) 数学の成績が良いとかわいくないとの価値観を、学習参考書で冗談でも披露しないでほしい。本筋でないところで良書の価値を毀損させてほしくありません。

こうした細かい難点はあるものの, 鴨浩靖さんが良書と認める本なのでメモ+シェアします.

Mathematics for Machine Learning

「Mathematics for Machine Learning」は、微積・線型代数・統計など、機械学習に必要な数学をまとめて学べるテキストです。Amazonで5000円以上するのですが、なんとPDF版は無料で公開されてます。AIを勉強したいけど、数学に自信がない方には超おすすめです! https://mml-book.github.io/book/mml-book.pdf

実際, 機械学習勢はどこまで数学必要なのでしょうか? 大半の人はライブラリ使えばそれで十分と思っていたのですが, そうでもない? ずっと疑問です.

方程式を解く

\begin{align} \begin{cases} x^6 - x^5 + x^3 + 2x^2 - x - 2 &=0, \ x^6 - x^5 + 2x^2 -2 &=0. \end{cases} \end{align}

一次とは限らない連立方程式を解かせる問題だけど、必要条件を絞る操作と同値変形の区別がついているかを問う上で格好の題材なので大学で数学科の一年生にやらせるネタとしてはかなり良いと思う。 教えていて思うけど、方程式をいじる時に必要条件を絞っている操作なのか同値変形なのかを意識できない学生は学部三年生ですらめっちゃ多いぞ。 数学が専門の学生については一年生のうちにガツンとやった方が良い気がしている。 それなりの大学の理系であれば必要条件と必要十分条件の区別は普通にできて、いかにも「論証問題」っぽい問題はできたりするのだが、それでも「方程式を解く」という操作が何なのかは分かってない感があるんだよな。 例えばこういう連立方程式は「方程式を解く」がどういうことか分かる人にとっては易しいけど、「方程式を解く」ことを決められたアルゴリズムに従うことだと思っている人には難しいのではなかろうか。 (xの方の潰れた数字は6です)

xの方→xの肩

眠れない深夜にこういう話を延々としているのは、学生が微分方程式を理解できてない根本的な原因が微分方程式以前に「方程式を解く」を分かってないにあるように最近思ったからですね。 更に易しい問題としてこういうのもあるが、これが分からない学生は(それなりの大学の数学専攻でも)結構いると思う。

式も書いておきました. この方程式, きちんと解ける方どのくらいいるでしょうか. 解けなくて解法が知りたいという方いたらアンケートで何か書いておいてください. 要望があって時間的余裕があれば次回解説します.

若い女性がいい匂いがする理由

この匂いを突き止めたロート製薬は確かにすごいのだが、回答している三味線奏者だという萩原さんは何者なんだ。

萩原 遼さんによる「一般的に若い女性が良い匂いがするというのは何故ですか?」への回答 https://jp.quora.com/ippan-teki-ni-wakai-josei-ga-yoi-nioi-ga-suru-toiu-no-ha-naze-desu-ka/answers/199981164?ch=15&oid=199981164&share=1c5ce8f5&target_type=answer

詳しくデータを確認し, 吟味したわけではないので単なる感想ですが, 「いい匂い」や「乳臭さ」が本当に「いい匂い」かつ「乳臭い」だという話だそうです. いい匂いはともかく「乳臭い」が本当に「乳臭い」というのはちょっとびっくりです.

Grafferお悩みハンドブック

“世の中には困ってる人を助ける制度がたくさんあるのに何が使えるかを教えてくれないっていう理不尽仕様なんだが、そんな世界をなんとかしようとしてる人たちがいて、そのためのWebページがこの前リリースされたってことを僕はフォロワーさんに知っておいて欲しいと思った…” https://togetter.com/li/1911629

【拡散希望】 製作者が病んでる間に #お悩みハンドブック がまた少しバズっていた(感謝🙏)ので、関連情報まとめます🍀 お役立ていただけた声や反響👉 https://determined-structure-45e.notion.site/f2dd423c29784b3c856644337f6dbda1 公式サイト【20万ユーザー突破】👉 https://compass.graffer.jp/handbook/landi

これも単純にシェアです. いまのご時世の問題もありますし, あなた自身はいいにしても, 知り合いに本当に困っている人がいる可能性はいくらでもあります. そうした方にもぜひ伝えてください.

リーマン多様体上での最適化pymanopt

リーマン多様体上での最適化を行う pymanopt というフレームワークがあるんですけど,自分がここ最近実装していた問題を解かせたら爆速で解いちゃうし,コードの記述が分かりやすくてその意味でも勉強になりました. この辺の疑問についても実装例が提示されていて為になった.

最適化計算で途中のログを吐き出す良いプラクティスが分からないぽよ…。

ここ三ヶ月くらい統計学の勉強会で統計学を直接やらずにJuliaの統計計算パッケージのソースコードを読む会をやっています. これが思っていた以上に面白く, しかもいくつか問題を見つけたのでGitHubにissueを挙げたら速攻解決してもらえている点でも楽しいです.

これを使うというよりも眺めて楽しそう系プログラムとしてメモ+シェアです. 文系プログラマー勢にはこういうライブラリを読む系の勉強会もいいのかもしれません.

数学リテラシー

微積分学の講義で知らない文字は「集合30講」にのってたのね.(^^;; つまり微積分以前で,高校では教えない... まずは「数学リテラシー」みたいな講義が必要なのかも知れないな.

力学に関する短期集中講座で物理リテラシー・力学リテラシー問題に直面しましたし, 私自身も専門外の勉強をするときに常にリテラシー問題に直面します. 上でも書いたようにプログラミングでは現在進行形で完膚なきまでにやられていますし, リー群・リー環のような数学でもまだまだ常識が身についていません.

本格的な数学×プログラミングがやりたい

上でも少しコメントしたようにJuliaの勉強会が楽しいです. Juliaの多重ディスパッチの使い方を見て「こう使うのか」という発見がありますし, マクロや生成関数などのメタプログラミングコード, 抽象型で書かれたライブラリコードの読解なども見応えがあります.

ただいわゆる数値計算よりもどちらかと言えば数式処理の方が興味があるので, maxima (common lisp)を読む勉強会などもやりたい野望があります. 他には以前紹介したGeometry for programmers読む勉強会もよさそうです.

最近ちょくちょく低次元でのリー群・リー環の議論で, 計算があまりに大変なので本質的な部分にsympyの補助を借りて計算する機会が何度かありました. 行列の計算は二次元でも面倒で三次元で既に破滅的です. 特に計算ミスが多発しますし何度もやりたくありません. やりたいことだけはどんどん増えていくので大変です.

今週の問題

今週は行列に対する指数写像・対数写像の議論をやっていました.

  • リー群の単位元近傍で指数写像と対数写像は互いに逆写像で, 特に同相である.

いくつか非可換性にまつわる実数・複素数の指数写像との違いを埋める部分の議論があり, ここをうまく処理する部分が実はかなり頭を使います. 「できるだろう」で終わらせていてまだ完全に細部の計算を詰め切っていない部分があります. そしてこの事実から山のように面白い話が出てくるのもいいところです. ようやく行列リー群の山場に指しかかって楽しくなってきました. 位相が出てくるとなると当然本格的な多様体論も射程に入ってきます.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

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語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-07-02

数学・物理 幾何の本, そして幾何入門とは/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • サーストンの本, Geometry and topology of three-manifolds
  • 幾何の本とその入門とは何か
  • Maxwell方程式の表現論
  • 証明の構成のポイントと苦しみ
  • 何度目かの量子力学と関数解析
  • 齋藤正彦『線型代数入門』を読むポイント
  • ムペンバ効果
  • 長さ2cmの細菌発見
  • スマートニュース, 国会議案データベースを無償公開, 過去20年分をGithubで
  • 今週の問題

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近況報告

今週はほぼ数学なしで, それこそ朝から夜寝るまでプログラミングの勉強をしていました. 研修期間の終わりも近付いてきて, 本格的に現場復帰を意識した勉強が必要で, そのためにしようと思っていた準備が終わりそうにないからです. 何にせよ朝起きて夜寝るまで食事や風呂以外の時間, 本当に全てプログラミングに当てていてよくやるものだと自分でも驚いています. 何だかんだでプログラミングが本当に気に入っているのでしょう.

ただしプログラミングへの集中もさすがに行き過ぎで, 最近ほとんどまともに語学に時間を使えていません. 数学や物理の時間さえ削っているのでそれはそうです. やはり無理やり時間を作るために勉強会です. 理工系向けの語学, 文系のための数学・物理入門としての語学に向けて改めて始動しようかと思っています.

それはそれとしてプログラミングです. 逃げ方もあると言えばあるものの, 仕事利用と思うと世に出ている情報量を気にしなければいけません. 基本的にフロントエンドはJavaScriptだろうと思うので, それならもういっそバックエンドもJavaScriptにしようと思い, これに関して調査しつつ勉強しているのですがとにかく面倒です. 情報がすぐ腐る. 数学のように一度正しくなったら前提が変わらない限り正しくあってほしいものの, この前提が本当に変わるのがプログラミング言語なのでただただつらいです. 終日プログラミングに張りついている理由でもあります. サービス・コンテンツ制作にも直結しますし, いい機会だと思ってがんばります.

サーストンの本, Geometry and topology of three-manifolds

ラミネーション知らなかった. Laminations, as introduced by Thurston, are a key tool in low-dimensional geometry, topology and dynamics; see e.g. [27], Chapter 8.5. [27] はサーストンのノート.っていうか,本か.

サーストンの本,MSRI で公開されてる. http://library.msri.org/books/gt3m/

この話と関係があるわけでもないのですが, サーストンは超直観型の数学者だったそうです. それもフィールズ賞受賞者なので, 見えている世界の深さと広さが尋常ではなく, 数学者相手にさえ自分の幾何が伝わらないのに業を煮やし, CGの研究にも手を出していたと聞いたことがあります.

これはそのまま私がプログラミングをがんばっている理由にもつながります. やはり視覚的なところは面白いです. CSSもうまくできず怒り狂いながらやっていますが, 綺麗にできると気分がいいのもそれはそうです. いつまで続くのかわかりませんが, Web系は比較的若者もマネタイズしやすい分野で, 中高生向けの理工系教育としても面白いのではないか感があり, いろいろ考えています.

幾何の本とその入門とは何か

https://amazon.co.jp/dp/4130629255 「数学の隣接分野の宇宙科学とか経営工学とかへの応用例などは1文字もありません」数学の本だからそれはそうでは、というのと「数学の先生が例えばベクトル空間などと言うとき、(中略)あまり複雑でない曲面が頭にあるはず」曲面が思い浮かぶ人、いなくない? そもそも宇宙科学や経営工学は数学に隣接しているか? 幾何の本なら図が欲しいとかいう発想、改めて言われると言葉に詰まる。しかも2-3ページには一枚とか。こんなにもコミュニケーションできないものかと驚くといえば驚くし、当然と言えば当然かとも思う。トポロジーが役に立たない数学科だけのものだったらこうはならなかったろうに、社会は厳しい。

学生の頃に友人と「幾何とは何か?」で雑談して、結局「位相が入ったら幾何だ」というところに着陸した覚えがある。

どこまで本気だったのかはわかりませんが、数論幾何専攻の人に「位相は甘え」と言われたことがあります。何が幾何かは時代の関数の部分もあり「数学者が幾何と判定したらそれは幾何」としか言いようないのではないでしょうか。アブストラクトナンセンスレベルの圏論であっても人によっては幾何でしょう

学生が教員免許(数学)を取れるようにサポートしようと既存の科目に「代数、解析、幾何、……」のラベルを貼ったことがあったんですけど、グラフアルゴリズムの科目が幾何になっていて、さすがにちょっと……って気持ちになりました。

最初の引用ツイートは「トポロジーの基礎」のAmazon書評です. もはや「幾何の本に図がほしい」と言われても「幾何はそういうものではないので」と自然に口をついて出るようになってしまっています. いいかどうかは微妙なところですが, 現代的な統計学, いわゆるビッグデータ解析では本当にどう可視化するか自体が超がつくほど巨大なテーマです. 「図がほしい」という視点から言えば, これも広い意味では幾何の仕事でしょう. 現代的な統計学ではプログラミングも必須でしょうから, 私の目指すところとも無関係ではありません.

それはそれとして世間での幾何のイメージ, どんなものなのでしょうか? そういえば買うだけ買ったもののいまだに読めていない数学ガール ポアンカレ予想, これも三次元球面でこれ自体は目に見えない対象です. これで何をどう扱っているか, いい加減確認しないといけないと思って幾星霜.

Maxwell方程式の表現論

Maxwell方程式の表現論(0) - https://m-a-o.hatenablog.com/entry/20150125/p2 日本語の文章です。ものすごく詳しくて目からウロコですね!こんな研究があったとは…… URL

Maxwellそのものではありませんが、 QEDまたはローレンツ群・ポアンカレ群の表現と作用素環は比較的最近でもまだあるようです。 単に検索で出てきただけですがhttps://art.torvergata.it/retrieve/handle/2108/117066/236199/QED-RMP.pdfだとか。 粒子描像と表現に付随する無限小生成子のスペクトル解析のようなテーマもあります。 Hans-Jürgen Borchers, Translation Group and Particle Representations in Quantum Field Theory

私のツイートで紹介したBorchersの本, 学生時代に読もうと思って難しすぎて読めなかった本です. 学生時代よりも明らかに不等式処理能力が落ちているであろう現在, 昔以上に読めないだろうと思いますが, ずっと興味があります.

ちなみにBorchersに聞いてみたいことがあったものの, 気付いたときにはもう亡くなっていて呆然とした記憶があります. 思い立ったが吉日は本当だったといまも後悔しています.

証明の構成のポイントと苦しみ

URL

めっちゃ汎用性ある数学の考え方。 「当たり前」だと思うことを証明するときに、「なぜ当たり前だと思うか」を数学的に表現すれば証明ができる。 もし証明ができないなら、実はもっと面白くて、その「当たり前」に数学的に難しいものが潜んでいることが分かる。

数学書にある「自明」で苦しむポイントとも言えます. そもそも「当たり前」と思えていないから苦しい事案で, 私もいろいろな意味で現在進行形で苦しんでいます. 数学であってもよく知らない・勉強したことがない分野では非数学科の人と苦しむポイントは大きく変わらないでしょう. 今で言うならプログラミングで腸が煮えくり返っています.

何度目かの量子力学と関数解析

私はむしろこれが本当に面白くなったので, やるならぜひどんどんやってほしい勢です. ただ興味関心が物理にあるならやめた方がいいです. 先日もTwitterで物理の学生が数学的にきちんとやるには面倒, そして物理として気にする理由はないところで, 無駄に数学的な記述を追い求めていたのを目にしたばかりだったので, ふと流れてきたツイートに改めて反応して呟いた記録です.

量子力学をやるのに関数解析をやったら何も始まらずに終わってしまうから、本当にやめた方がいい。数学をやりたいならどんどんやればいい。学部三年レベルの物理に対応する議論が軒並み研究ネタになる。 もしイメージがつかないなら、有名なクレイ研究所のミレニアム問題でナビエ-ストークスの解の存在と一意性が問題なのを考えてほしい。学部三年次程度の流体力学の入り口が既に数学的な大難問になっている。程度の差こそあれ、数学的にきちんとやろうとするとこのくらいのレベルからわかっていない。 平衡統計力学だとまず平衡状態の存在が明らかではない。相転移があるので状況に応じて本当に一意性がない場合はよくある。物性だと磁性に関する有限次元の線型代数に関わるハバード模型で既に論文・研究マターなので有限次元の線型代数だけで数学以前に物理でさえ研究マターになる。無限次元だと 他の余計な要素が入ってきてさらに面倒。そういえば学部三年レベルの統計力学は量子力学に輪をかけて地獄なのだが、統計力学の数学の話をする人間を全然見かけない。アレは修羅の世界だからぜひもっと人が増えてほしい。物性のトポロジカル何たらなどの格好いい方ではない部分にはきちんと地獄がある。 昔Amazonの斉藤正彦「線型代数入門」に関係するレビューを書いたのだが、見当たらない。あの本は行列の解析学の話が書いてあり、指数関数なども載っているのでそのくらいまで把握できて使い倒せれば十分だ。

「量子力学の前に関数解析の本を一冊くらい読む必要がある」みたいな杓子定規な解釈をする人間がマジで存在してしまうのが問題で「量子力学を普通にやるときは並行して関数解析の初歩的な知見をつまみ食いするのがほぼ必須」くらいに言っておけば平和に済みそう(他の分野にも当てはまる)

これも言い方が難しいのですが、何というか「教養レベルの線型代数を数学科水準で勉強しておけば十分」というのをうまく言う方法はないかと思っています。量子情報の本を読んでいるとまさにこう言う感じなので。例えば対角化をスペクトル分解のレベルで認識するとかそう言う感じです。

物事をジャンル(この場合には分野)に分けて認識しようとするとどうしても機微を取りこぼす面があるのは避けがたいですね。僕は「グダグダ言ってないで量子力学をやってから考えろ」でいいと思います

私は「数学をやりたいなら数学科に行け」の線を押して行きましょう。

そうそう、私が関数解析の「思想は大事」で言いたかったのはそういうことです。そう言えばよかったのかも。

次の三ヶ月短期集中講座は「量子情報のための線型代数」みたいな感じにしようかと思っています. 自分用の計算メモの体で整備したコンテンツでもあり, ちょっと数学的な水準が高く見えてしまうかもしれません. 上で書いたような「対角化をスペクトル分解のレベルで徹底する」みたいなスタンスを貫いています.

齋藤正彦『線型代数入門』を読むポイント

前節の続きです. では実際にどんな本でどう勉強すればいいか, 何をどう読めばいいかという話があり, それをまとめたTogetterがあります.

知識としてはこのレベルで十分です. あとはとにかく使い倒すのが大事で, 最近見たところではNielsen-Chuang量子情報科学入門がなかなかよさそうです. 正直, 量子情報よりの話はまだ自分なりの面白さを見出せていません. 量子測定だと一気に興味が出てくるので, その辺で面白いコンテンツが整備できないかと勉強を進めていす.

ムペンバ効果

前も紹介した気がしますが, この間早川さんがツイートしていたのが流れてきたので共有します.

Which freezes faster: hot water or cold water? The simple question has stumped physicists, but recent experiments show how some types of hot substances could beat cold ones. @adamspacemann Controversy Continues Over Whether Hot Water Freezes Faster Than Cold

100度の水と35度の水、同時に冷凍庫に入れたら先に凍るのはどっち? 熱い方が先に凍るのを発見したのはタンザニアの高校生。ただし、どういう条件なら再現するのか、はっきりとわかっていない。 非平衡物理学は難問。1次相転移の系では、高温から始めたのほうが先に基底状態に落ちることも。

Mpemba効果は非平衡状態の記憶効果で不思議は何もない。 最近、コロイドの実験が出るなどして急速に研究が進んでいる。 我々の論文では粘性発熱の有無による緩和率の差を利用してMpemba効果を定量的に示した。

非平衡も興味はありますが手に追えません. 平衡状態関係の数学や平衡状態での相転移もまだまだ勉強が必要です. そう言えば改めて統計力学を勉強しようと思い, ずっと買いそびれていた原・田崎のイジング本, 相転移と臨界現象の数理を買いました. この本は東大の物理の人達と査読ゼミをやった思い出があります. 謝辞にも載せてもらっています.

田崎さんの統計力学の本と言えば, 比較的最近出た洋書も全然読めていません. いつか時間を取ってきちんと読みたいと思ってはいます.

長さ2cmの細菌発見

概念覆す長さ2cmの細菌発見→長さだけでなくその構造も非常に特殊だった「ミッシングリンクの実例の発見かも」 URL

きちんと読めていませんが, とりあえずメモ&シェア.

スマートニュース, 国会議案データベースを無償公開, 過去20年分をGithubで

国会で審議された法案や予算案、条約、決議案といった議案は、衆参両議院のWebサイトに掲載されている。提出者や審議された委員会、賛成・反対した政党(衆院のみ)などの情報も確認できるが、国会の回次ごと、また議案ごとにページが分かれているため、集計や検索、一覧が難しかった。 今回、同社の「メディア研究所」が、各議案のページに掲載されている情報を収集、整理し、CSVファイルとJSONファイル形式で公開。MITライセンスに準拠し、商用・非商用を問わずオープンデータとして誰でも無償で使えるようした。 主に報道機関や研究者に、選挙報道や調査報道、研究活動に役立ててもらいたいという。

勉強のためにも統計学や機械学習で遊びたいと思っていつつ, 自発的に遊ぶネタを思いつけていません. とりあえずデータは必要なので, 使えるテキストデータとしてきちんと記録しておきます.

今週の問題

今週はほぼ数学ができていませんが, 何もやらなないのもどうかと思って, 水曜あたりに少しだけやった分があります.

  • シンプレクティックリー環の単純性を示せ.

念のため書いておくとここでの単純性の定義は「自明なイデアルしか存在しない」です. 次元が1のときは二次の特殊ユニタリリー環で, やはりこれも単純です.

特殊直交リー環が恐ろしく面倒だったので証明を追う前からうんざりしていたものの, シンプレクティックリー環は四元数係数の行列とみなせ, 四元数の事情を使うとかえって簡単になるのが面白いです. 議論自体はそれなりに長いのですが, 行列の計算がだいぶ楽です.

特殊直交リー環でも行列単位とその簡単な和から基底を作り, その基底に対する計算で証明を構成しています. この証明を眺めて, 色々な意味で人類は一般の行列の計算・処理ができるほど賢くはないようです. 具体的な低次の計算でも手計算ではうんざりしますし, そこをカバーできるプログラムだと今度は一般論の展開が地獄です. 基底への帰着, 基底を使いたくなる理由にはこんなのもあったかと今更ながらに実感しました.

証明を読み終えてからじわじわとその意義・世界が見えてきて, 個人的にかなり大きな発見だったようです.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-06-25

数学・物理 分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」
  • 代数の難しさ
  • 特殊関数と微分方程式
  • IoTの難しさ
  • 心肺蘇生
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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近況報告

仕事関係の勉強が忙しいというか楽しいというか, そんな状況で数学は亀のような進捗です. もともとずっとやろうと思っていたフロントエンドまわりで, この仕事の蓄積をそのまま通信講座などにも援用する予定なので, 回り回って全て数学のためではあります.

今日も一日, 朝に一時間程度データ構造とアルゴリズム関係でAOJを眺め, その後はひたすらプログラミングです. 先程もいつの間にか通信講座の勉強会の開始時間を過ぎていて, 泡を食ってしまいました. どう控え目に言っても私のプログラミング能力は低いのですが, 一日中続けられるのだから性に合ってはいるのでしょう.

フロントエンドまわりはデザインをもっと固め打ちしようと思っていて, もっと実践的に取り組もうと思っています. 実際にフリーランスでやっているタイプの数少ない知人がいま再びクリエーションのチームを立ち上げようとしているらしく, そこに講師役で乗り込むくらいの感じでフロントエンド, 特にデザインコーディング回りで巻き込み・巻き込まれていこうかと画策しています.

ここ数年勉強会をいくつかやってみて思いましたが, 人を巻き込まないとなかなか動けません. もっと言うと少しはじめるくらいはできても, 続けられないことがはっきりしてきました. 結局, 私が問答無用で続けられるのは数学くらいしかないようです.

これはもう私の現実として受け入れざるを得ません. だからやりたいことは私の脳内で数学にしてしまうか, 人を巻き込むしかないようです.

これも何度か書いているように, 最近の通信講座に勉強会を盛り込んだ理由でもあります. 時間は無理やり作るしかありません.

そういえば本の書評をやってほしいというアンケート回答がありました. 本は何かしらずっと読んでいますが, ノートを取りながらじっくり読んでいるため亀の歩みで, 読んでいる冊数は極小です. 書評というより参考文献集ですが, 以前ある程度書いた分がここあるので, 興味があれば眺めてみてください. 日付を見ると2015年で, 最近の量子力学の物理まわりの話など大事な本に対する更新がありませんが, 一つの参考にはなるでしょう.

「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」

アカウントがはっきりと紐づけられているわけではありませんが, 自己紹介欄の本を見ると多分これの著者が中の人なのだろうと思います.

数学の対象は幾通りもの考え方やそこにたどり着く方法(証明方法)があって,そのどれかはすごく簡明かつ簡単で,他のものは辿り着くのも計算も不可能なくらい複雑,そういうものですからねー.どんなものでも当てはまりそうです.1/n

ある方法ではあっという間に片がついて,他の方法だと不可能そうに見える.その「ある方法」に気がつくのが数学の本質だ,そう思いますね.2/n

数学女子さんの挙げた曲率なんかもそう. おそらく講義では長さパラメータ s を取って... と決める.しかし,実際に s を計算して定義通りに曲率求めようとするとすぐに破綻する. 「うまい」局所座標を使って求めなくちゃ. これはいい演習問題になりますね.3/n

どんな局所座標を持ってくれば,どんな計算になるか. n 次元空間内の曲線のときはどうか. 面積も同じかな. 4/n

幾何学とは本来,そのような局所座標の取り方によらずに決まる「不変量」を研究対象としているので,まぁ幾何学的対象なら何でもOK. オイラー標数とか.穴の数で数えてもいいけど,積分してもよい.積分をどう計算するのか? 5/n

ホモロジーもマイヤーヴィートリスを使って計算するとき,どのように曲面や立体を分割するのかによって計算は変わってきて,商群の取り方が思いもかけないものになったりしますね.6/n

レンズ空間や結び目の補空間なんかをうまく工夫して分割し,自分で計算するととてもおもしろいと思います. 7/n

一方,そのような具体的な計算よりも,数学の本質は 「計算しなくても答えは出る」というところにある, それを忘れない方がよいと思います. 8/n

私の友人のM先生がテストで,2つの上半三角・下半三角行列 A, B をもってきて,まず積 AB, BA を計算させ,その行列式を問うたそうですが,AB, BA を基本変形する人たちが続出したそうです. 9/n

行列式の計算はそれなりに楽しいものですが,答えは計算しなくても分かる.そこがポイントだと思います. 10/n

前半は予備知識も必要なので人によって全くわからない内容もあるでしょう. 特に大事にしてほしいのは9・10で, このツイートが行列・行列式を知っているなら何を意図しているのかぜひ考えてみてください. 一般的な行列で書かれているので逆に意図が掴みやすくなっています. 具体的な行列で書かれていると, ツイートにあるようについつい具体的に計算してしまう人も出てくるでしょう. 議論の一般化・抽象化のご利益を感じられる問い掛けでもあります.

これの前提のツイートも収録しておきますが, そもそもとして私のリプライがもとにあります.

「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」みたいなのを公開してもらえると私のような雑魚市民が喜びます。例えばちょっと面倒な多様体の曲率の計算や、ある多様体に対して単体複体・胞体複体などいろいろな見方をした時のホモロジー群の計算だとか。

この辺の計算メモを作ろうと思ったのが例と計算編のもとで, いまの通信講座の元ネタになっています. じっくり整備を続けて例と計算編は1100ページを越え, 現代数学探険隊の全体PDFは10000ページを越えました. 引き続きじっくり計算を続けてためて, 通信講座を含めて何らかの形で公開する予定です.

前提ツイート

Quillen が毎日数学ノートを付けてて,それがすべて公開されているとは! 知らなかったよ. Quillen の直筆を見た.(^^;; タンナルミーハー

Did you know that Daniel Quillen (Fields medallist 1978) kept detailed notes of his day-to-day mathematical research? They are available here 👉🏼 http://www.claymath.org/publications/quillen-notebooks

数学も物理や生物なんかと同じく,実験ノートつけるべきだなぁ.データもつけてさ.もっとも毎日1行だけ, 『今日も頑張ったけど進まなかった』 とか書くことになりそうな気がするが... そうか,追試と同じく,読んだ論文のまとめとか書いといてもいいわけか.あとで役に立つかも.

代数の難しさ

代数は、すごく発展しているように見えて、 基本的なところでさえ難しい。 たとえば、

A = C[X1, ..., Xn]/(f) BはCの部分環

として「環準同型A→Bを取る」なんて簡単に言えるけど、 これf(X1, ..., Xn) = 0のBでの解を考えてるってことだからね。 超難しいよ。 具体的な問題がすごく難しいということを意識すると「じゃあ抽象的だけど上手く行っている理論はどういうメカニズムになっているのか」ということが、 気になり出すのではないですかね。

言われてみれば確かにそうですが, この辺がまだ自分でさっと思いつけないので, 私の代数力の低さを痛感しました.

ちなみにこの視点を徹底すると, 準同型と方程式の解の関係に注目が集まり, その極致の一つが代数解析です. これは堀田良之『加群十話---代数学入門』の最後の方に少し記述があります. この最後の部分に限らず, この本はめちゃくちゃに面白い本なので, ぜひ買って読んでみてください. おすすめです.

特殊関数と微分方程式

5億回くらい言ってるけど、特殊函数持ってきて「微分方程式が解けました!」って言うのあんまり好きじゃないんだよね。よくわからない部分を先送りにしただけ感があるので。 解の存在はわかって、一意性ももしかするとわかるかもしれなくて、でも具体的な形とかがわからないので、情報は幾分増えているのだけど、なんかなぁ、という感情がないでもない 数学的に十分というのはよくわかるんだけど、物理の視点だとなんかなぁという感情が特に増す。いや数値計算で十分なのかも。

三角関数も微分方程式の解だし、特殊関数も三角関数も性質がよく調べられている関数では?みたいに思ってくると物理な数学になってくる。三角関数の和で書けたからってそれもある意味先送り説という

いくつかの視点がぐちゃぐちゃになっている印象があります。まず(多分)昔の人は適当な意味で特殊関数をよく知っていて、よく知っている対象で書けたからそれなりによくわかる(解けた)と言えたはずで、それを今も踏襲しているギャップがあるのだろうという話。 あとは多重極展開のように高次が無視できるようなタイプの特殊関数表示は特殊関数のおかげで実際によくわかると言っていい状況がある点を完全に無視している点。これと共通点がある話として、今知られている特殊関数は背後に固有値問題や群の表現論の話があり、 特殊関数で解けることそのものに意味がある(何かしらの意味、特に対称性の意味で本当に数学または物理が見えている)点があります。対称性というと物理的に自明な場合もよくありますが、解析力学(と幾何の関係)から非自明な話もあります。これらを知らずに特殊関数で書ける点だけ見たらそれは確かに先送りですが、 それは教育・カリキュラム・現代の研究情勢からくる要請の問題でもあります。あと先送りの定義も今ひとつよくわかっていません。いまの各学科のカリキュラムでどのくらい特殊関数論が教えられているか知らないのですが、先送りどころかそもそも特殊関数論をまともにやらないなら、カリキュラムの観点からすれば先送りでさえありません。

他にも同じようなコメントをしている人を見かけました. 特殊関数はそれで書ける事実そのものに強い意味があるので, 計算にうんざりしてきたらその背後にある表現論を勉強するといいでしょう. 逆に抽象論でうんざりしてきたら, 馬鹿になったつもりでこれらの計算をやるといいです. 物理まわりで遊び倒せるネタが掃いて捨てるほどあります. 微分方程式とも関わるので数値計算で遊んでもいいでしょう.

IoTの難しさ

スマート農業、まさに「実験いらないでしょ?工学の進んだ技術でやれば、時代遅れの農業なんて現地で簡単にできるでしょ?」みたいな感じでやられてて、大量の討ち死に(ほぼ全滅)がでてる感じ。

田んぼの水量管理だけでも自動化してほしい、何なら稲の様子を観察できる屋外用ネットワークカメラ(10年耐久)もほしい。 ケーブルと電源の敷設は自分でやるから

私も一年半程度仕事でIoTをやっていたので多少の知見はあるのですが, ハードと連携する部分がとにかく大変です. 実証実験中に急に動かなくなったと思ったらハード側が壊れていた, そんなことがよくありました.

他にも例えば今よく話題にあがるドローン運用だと, 夏は暑すぎてモーターが消磁するレベルまで熱を持ってしまい, 運用に支障をきたしているとか. ふだんはゴリゴリの引きこもりなので, いろいろ出張して外回りしたのも含めて, 非常に勉強になった経験でした. 高温で消磁する, まさに相転移の実例にこんな形で再開するとは, という明後日の感動もありました.

心肺蘇生

あ、心肺蘇生について。 この論文の存在は知っておいた方がいい。非医療者の方も。救命にあたったのはこの事例では救急法指導員の肩書を持つ「一般の方」だが、それでも処置中のことがきっかけで心的外傷を負ってるんですよね。 https://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/08/cprtrauma.htm

もちろんこの発表時点から15年経過していて今ではもう少し救命処置も一般に広がってるかもしれないが、ただでさえ救助側の人間はこんな風に「プレッシャー」に押しつぶされそうになってるんですよ。しかも彼女は「指導員」ですらあるにもかかわらず。 これは医療者だけじゃなく一般の方も是非読んでみて、そして考えてみてほしい。そのうえで「AED装着の時に脱衣への配慮を」という言葉についてもう一度考えてみてほしい。 日本語で書いてあるから読みやすいからね。絶対読んでほしいです。

上記論文の要約の引用

1990年以降,国内外の航空機内にAEDが搭載され,客室乗務員らが救命する事例が相次いで報告されている。日本でも2001年10月に日本航空国際線にAEDが搭載されたことを契機に,航空機を含む公共の場所へのAED設置が普及している。そのような中,平成18年2月17日金曜日,成田発東南アジア行きの外資系航空機内にてツアー旅客(55歳,男性,会社員)が心肺停止に陥った。同機にたまたま乗り合わせていた日本赤十字救急法指導員を持つ個人客(31歳,女性,会社員)が1時間に渡り1人で心肺蘇生を行い救命した。心肺蘇生と並行して行われたドクターコールに応じる者はおらず,客室乗務員に繰り返し要請されたにも関わらず機内に搭載されていたAEDが心肺蘇生の現場に持ってこられることはなかった。また客室乗務員は心肺蘇生を手伝わなかった。加えて多数の他の乗客が野次馬と化して現場に殺到し,心肺蘇生の現場を写真やビデオで撮影した。当の男性は軽度の手指の運動障害を残したのみで,元の勤務先に復帰した。しかし救命した女性は心肺蘇生時の出来事が元で惨事ストレス症状を呈して急性ストレス障害,外傷後ストレス障害を発症し,帰国後も長期間に渡って社会生活に支障を来たす状態が続いた。惨事ストレスは大災害の被害者のみならず,被害者を救援する救援要員にも生じ,日常的な救援活動でも見られる。また,バイスタンダー(たまたま生命の危険に陥った人の側にいて救援する人)も同様の症状に見舞われることがある。本事例では幸運にも,結果的に帰国後の女性の周囲の対応が適切であったため,それが精神療法的な役割を果たし症状は徐々に軽減した。しかし本邦に於いてはバイスタンダーの心のケアを行う制度が構築されておらず,本例は図らずも制度的欠陥を露呈させた。従って早急に全国的組織を構築して,バイスタンダーの精神的問題をサポートすべきである。

関連する話題

この感覚は常識的には当然なんだけども、救急の現場としてはかなり深刻らしく、実際に心停止で倒れた女性は男性に比べて有意に被救命行動割合が低くなります。若い年代では尚更そう。 ソースは嫁さんの共著論文 https://www.resuscitationjournal.com/article/S0300-9572(20)30105-2/fulltext

データは日本のものだけど、欧米でもその傾向は強いらしい。たしかに男性としては倒れた女性の胸まわりに触れたり服を切ったりというのは大変抵抗を感じる。が、もし自分の妻や娘に万一のことが起きたとしても、女性であることが理由で救命活動をしてもらえない可能性が高いということでもある。 私としては、そういう社会よりも、女性でも倒れたら救命活動がなされるべきだというコンセンサスがある社会の方がいいと思うし、そうなるように嫁さんを応援する。蘇生ガイドラインの策定委員でもある嫁さんは、近い将来必ず「若い女性が倒れたときの救命プロトコル」を作るはず。

この論文の実データをきちんと見るともっと色々な地獄が顕現してくるようです. 紹介ツイートを見かけたのですがメモしていなくて見つからなくなってしまいました.

今週の問題

今週も仕事関係のプログラミングで遊び倒していたので, 数学はあまり進捗がありません. それでも次の問題(命題)はかなり面白くお気に入りです.

  • 四次特殊直交リー環は三次特殊直交リー環に直和分解できる.

三次特殊直交リー環はベクトル積を入れた三次元実線型空間と同型で, さらに純虚四元数の全体と同型です. この事情をうまく使うと証明できます.

このとき私が見かけた証明では, 四次特殊直交リー環の基底をうまく使って純虚四元数の基底を二組作っていました. 一組は明記されていたものの, もう一組は明記されていませんでした.

具体的に計算すればよく, 一般の四次の行列ではなくほぼ行列単位レベルの計算なので難しくはありません. しかし四次行列なので計算が非常に面倒です. そこでSymPyを使ってプログラムを書いて計算させました. とても便利でいい気分です.

基本的な証明は現代数学探険隊のPDFにまとめつつ, プログラムをメンテナンス性・実行性を兼ね備えた形でどう公開すればいいかがずっと懸案です. とてもつらい.

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語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-06-18

数学・物理 新たな通信講座の妄想がはかどる/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • どんなコンテンツがあると理解が進む?
  • 12 Unique Design Books That Show the Pure Beauty of Mathematics
  • Karoubi, K-theory. An elementary introduction
  • Cubical Homotopy Theory
  • carp-lang
  • chot.design
  • 256times
  • 「外国語を使えるようになりたい」のill-definedness
  • 今週の問題

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  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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近況報告

先々週体調を崩した上にそれが少し長引き, さらに崩れたリズムをまだ完全に取り戻せていない状態です. メルマガもようやく再開です.

前々からちょこちょこ書いているENERGEIAでの活動に関連して, 文系の人に語学ネタの話をしたら食いつきがよかったので, 改めてそちらもきちんとやる機運が高まっています. 古典力学の通信講座も折り返し地点を過ぎたので, 次どうするかを考えています.

どんなコンテンツがあると理解が進む?

学校教育の中で、 こういった視覚的理解が促進できるような教材が当たり前のように出てくると、 生徒たちの理解は飛躍的に加速するように思う。 特に高校数学以降は顕著になってくると思う。

ところがどっこい実は理解が進まないんだよね。 一瞬で忘却の彼方に消えていく。 生徒自身が自由に動かせない道具の効果はうすいと思う。 実際に2次関数の最大最小問題を、 学校できれいなアニメーションで学んできた生徒達の解ける率は0です。 最新器具を使えばダイエット成功率が上がるか?答えはノーであるのと同じ。 ダイエットは自分が動かないの意味がないのと同じで、生徒自身が考えないと理解は進まない。 上の内容を理解させる最強の道具はおそらくビニールボールとハサミ✂

これの引用リツイートを見るとまたいろいろなコメントがあります. 根本的に当人のやる気がないと何もはじまらない以上, 教材だけでどうにかなると思うのは話にならないとは思いますが, ならばどうするか, がひたすらに問題です. いまやっている通信講座も当人にやる気がある前提での短期スパルタです.

そもそも「面白ネタ」で興味を持ったとしても, 雑学的に好きなだけで勉強しようとまでは思わない層もいるはずで, そこをどう扱うかも問題です. そしてこの層の扱いもとても大事です. 何故かと言えば「数学好きなの? こんな人がいてこんな楽しい話聞かせてくれるよ」という口コミの起点になってくれるからです. ちょうどいまこの辺で, 以前少し準備していた語学からの数学系の話を復活させられないかと検討中です.

12 Unique Design Books That Show the Pure Beauty of Mathematics

These 12 unique design books seem like coffee table books, but they have the power to inspire your imagination.

先の視覚的な要素のコンテンツに関連して, そういう話を展開している人はもちろんいて, それが流れてきたメモです.

この手のコンテンツ, いつも困るのは「数式を使わずに説明」みたいなノリが多く, さらにその数学部分にどう突っ込んでいけばいいか, 参考文献などもろくになかったりして私が発展させて遊べないのがいつも大体いらっと来ます. CGアート系のコンテンツもプログラムを載せてほしいのですが, なかなかそういうのもありません. プログラムがあるにしても試したいモノに限って載っていないとか, もっと面白く見せるために本に載っているプログラムとは違うプログラムで書いた図版を載せていることもあり, 猛烈にいらつく経験を何度もしていて, いまやあまり追いかけていません.

いま進めている数学×プログラミング系の話としてはいいネタなので, 何とかしたい部分ではありますが. CG系で何かいいコンテンツご存知の方がいたらぜひ情報をください.

Karoubi, K-theory. An elementary introduction

かなり面白い。分野の常識中の常識を大御所が纏めてるのエラすぎる

K理論は作用素環にも展開があって興味はあったものの, 全く触れていない分野です. 眺めるだけでも, と思ったら体調不良でまださらっと眺めることさえできていません. とりあえず自分の記録がてら共有しておきます.

Cubical Homotopy Theory

@1123sodium氏に教えてもらったこの本で勉強してます. 今までどうも覚えることができなかったホモトピー論の様々な定理を、図式を使って統一的に理解することができてかなり良いです.

ホモトピーは解析接続とリーマン面関係でも基本的で, 基本的なところは一応勉強したものの全く身についていません. これもとりあえずメモがてらシェア.

carp-lang

線形論理を用いてGCを消したLispなら1992年にこんな論文が。https://cs.utexas.edu/users/hunt/res そしてその成果も (おそらく) 取り込みつつ、静的型付きでGCがなくリアルタイムアプリ向きなLispがあってですね。 いま気付いたんですがREADMEに"ownership tracking"とか書いてあるのでもしかすると元ツイートで書かれている境地に肉薄してそう (なのにまださわってない…)。

あまりに面倒で結局全然勉強できていませんが, Rustは一回きちんとやりたい言語です. そこと絡む形のLisp系言語と言われると俄然興味が湧いてきます.

これも以前書きましたが, 数学×プログラミングの方向性を考える上で参考になるかと思って, 素数夜曲のコードをがんばって写経した記録がGitHubにあげてあります. これでかなりLisp系に慣れたというか, 心理的な障壁がものすごく低くなれ, Lisp系にも今まで以上に興味が出てきました. まだ全く身についてはいないものの, まさかLet Over Lambdaを買って読む日が来るとは思ってもいませんでした.

LispはMaximaもありますし, これまた以前も宣伝したsicmutilsもあります. Lispだけの特権ではありませんがREPL駆動開発は本当に気持ちいいです. 最近はREPLのある言語やJupiter含めた広義の環境も増えています. 数学抜きにしてもプログラミング学習に興味がある人はぜひ言語を選ぶときに楽に使えるREPLがあるか, 検討材料にしてください.

chot.design

有料デザイン学習サイトのhttp://chot.designが事業譲渡により、全てのレッスンを無料公開してるので、今のうちにチェックしておいた方がいいかも

メルマガ読者に興味がある人がどれだけいるかわかりませんが, 情報発信用に自分のサイトを作りたい勢もいる可能性はあると思ったので, 一応シェアしておきます.

私も状況は詳しくないのですが, 例えば大学のドメイン・サーバーにファイルを置かなければならず, どうしてもHTMLで作らないといけないとかいうのでもなければもっと楽な方法はいくらでもあります. 手軽に作りたいなら逃げ道はいろいろあり, HTML手打などはあまりお勧めできませんが, 一回やってみて「これは駄目だ(つらい)」と思うならそれはそれで意味のあることです.

256times

「ワンコインからはじめる自走型プログラミングスクール」と謳っていて, これはなかなか面白く, 通信講座の展開でもちょっと気になっています. プログラミング学習と一週間以下の短期集中プログラムなど, 特性を活かした面白い特徴のあるスクールです.

数学や物理だと一週間以下は少し短すぎないかと思うかもしれませんし, 私もそう思いますが, 例えば「太鼓膜の振動に対する波動方程式の特殊関数を駆使した計算」のような形でテーマを絞れば, 仕事もしている大人向けのプチ講座としては一週間くらいのいい塩梅の量でしょう. 「双子のパラドクスに関わる計算を自分でもやってみよう」のようなテーマ設定もありえます. 他にも物理・微分方程式絡みの重ための計算の特訓講座として, 一週間から二週間使った固め打ちなども考えられます. もちろん需要があるかどうかという問題はあります.

256times本体は「先生も模範解答もない」「自分で考え手を動かし, 他の人のコードを読んでスキルを伸ばす」コンセプトですが, 別に先生と模範解答はあってもよく, 手を抜かず計算しよう・計算ノートを提出しなさい, というタイプに変えてもいいでしょう. 進捗報告を怠ると脱落というのもそういうシステムを組むのは面倒なので, これは無視してもいいでしょうし, いろいろバリエーションは考えられます. 期間を三ヶ月にして他にもいろいろ調整したバージョンがいまやっている通信講座とも言えます. これの数学×プログラミング版として, データ構造とアルゴリズムや競プロ的な話をしてもいいですし, とにかく妄想がはかどります.

ちょうど同じ方向性の通信講座をやっていることもあり, 妄想を膨らませてくれるいいサービスだったので紹介しました. これに触発されて何か関連する面白いサービスを作った, という方がいたらぜひ教えてください. 宣伝にも協力します.

「外国語を使えるようになりたい」のill-definedness

最近の学生は真面目だけれど,コスパ至上主義なのでできるだけ勉強しないである種の技術を身につけたいという人が多い印象を受けるな. 英語史をやっていると,どうしても歴史の話をしないといけない.しかし,外国語・国際系の学部の学生は優位に歴史が嫌いという人が多いので,工夫が必要. 外国語を使えるようになりたいと主張する人は,だいたい「その外国語で話ができるようになりたい」という願望を持っていることが多い.そかし,会話を続けるためには,言語の技術よりは何を話すかという話題の方が重要で,共有できる話題は多ければ多い方がいい.それを教養と呼んでもいいのだが. この問題は軽視されがちで,教育再生実行会議の遠藤利明さん,英語教育の視学官・直山木綿子さんがよく顔を出してくる.彼らの主張は「内容はともかく話したい!」そのため,理想の会話の具体例が非常に薄っぺらい.「何色が好き?好きな食べ物は?」の後で話題が続かない. https://globalization.chuo-u.ac.jp/global_person/special/taidan1/taidan2-1/ ぼちぼち本学でも海外研修が復活できそうだけれど,海外に行く機会がある学生さんには,現地と日本の政治・経済・文化の基本知識を英語で理解でき,説明できるようになっていて欲しい.ホームステイ先や留学先で,基本的なことを知っていないとそもそも会話にならない.「元気?」はただの挨拶なので.

よく英語のレベルに関して「日常会話」程度と言いますが, 日常会話が一番難しくないでしょうか? よく言う旅行時の用を足すといった話は, 自分がほしい情報を引き出すだけのボールの投げつけに等しく, あれは会話ではなく, 言うにしても情報交換でしょう. 謎だ, と思ったのを単に改めて記録しようと思い, 今回取り上げました.

外国語とコミュニケーションと言えば, 私はやはり文章の読み書きが一番身近で, 少なくとも読む方なら毎日です. 下手をしたら日本語よりも英語を読む方が多いくらいの日もあります. ちょうど今日もプログラミングの勉強をしていて, ドキュメントにおかしいところがあったのでGitHubでイシューを立てたら, プルリク立てて直してくれる? と返ってきました. そもそも吃音があって会話というか発話にいろいろ問題があることもあり, 読み書きを何とかする方向のコンテンツくらいは何とかしたいです.

今週の問題

仕事関係のプログラミング学習ばかりで最近数学がだいぶ適当です. この三週間程度でやったのは次の命題くらいのような気がします.

  • 特殊直交リー環は次元5以上で単純である.

実際に4次だと非単純なので次元の条件は本質的です. これに合わせて証明も5次以上の条件を使う必要があり, 単純計算ではあるもののそこそこ息の長い議論が必要です.

行列単位に対する計算がたくさんあって, かなり大変です. 五次・六次でSymPyによる計算もつけると証明がもっと具体的に見えてよさそうな感じがします. 高次になると手計算だと計算ミスも多発してきますし, 厳密計算も近似計算も取り込みやすいと思えば, 数学×プログラミングネタで行列関係の話をもっと本格的に検討してもいいのかもしれません.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

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語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-05-28

数学・物理 数学と思考の訓練/相転移プロダクション

今回のテーマ

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  • 近況報告
  • 数学と思考の訓練
  • 数学から見た超関数
  • プログラミングと数論の本
  • Python+Matplolibの資料
  • 試行回数の増やし方
  • 今週の問題

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「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

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ではまたメールします.

近況報告

量が尋常ではないほど多いのも間違いないのですが, 思った以上に会社の研修の進捗もよろしくありません. 最低限の分は十分さばけているものの, プラスアルファの分, 特に勉強してみようとずっと思っていていい機会だからとやってみようと思っている分が全然終わらず, 本当に朝から夜までプログラムを書いています. ここまで勉強モード, それもプログラミングの勉強モードなのは久し振りです.

冷静に考えると毎週統計の勉強会でJuliaのライブラリのコードを読んでいますし, 今年に入ってからは毎日ほぼ二時間は競プロの勉強はしています. それ以外にもずっとちょこちょこプログラミングを勉強してはいますが, ここまで朝から晩まで固め打ちなのは久し振りです. サイトのデザインも変えたいと思っていたところで, デザイン・フロントエンドの勉強が入ったのでいろいろ妄想しています.

競プロでは最近ようやくSTモナドなどのプログラムが少し読み書きできるようになってきました. AOJで使える言語・書きたい言語がHaskellしかありません. C++は勉強した方がよく, Pythonあたりでさっと書く方がデータ構造とアルゴリズムの勉強に集中できてよいのですが, AOJで使える言語の中で書いていて楽しく, 程々の勉強で済み, さらに勉強が続くのがHaskellなので仕方ありません. OCamlは勉強するとよさそうですが, アルゴ式でも使える言語と思うとHaskell, OCamlはWindowsで使う言語でもないそうで. そこまでいろいろな言語を勉強したいわけでもなく, 特にコンテンツ化を目指す段で触れるような言語でもないので, 歯を食いしばってHaskellです.

具体的な方向性はちょうど明日少し話をすることになったのですが, プログラマーのための数学的な方向でまた何かオンラインイベント的なことをしようと思っています. メルマガでも案内を出すので興味があればぜひ参加してください.

数学と思考の訓練

法学部の入試で数学を課しているのは、法学がそれを使うからではもちろんなくて、順序立てて物事を考えたり、抽象的な思考をしたりする訓練を受けている学生が欲しいから。知識は全て忘れても、まあ、それでいいのです。

法学自体の学習カリキュラムとして課せないのでしょうか? たいていの人にとって数学は苦行のはずで, 法学によく馴染む人にとって取り組みやすい思考の訓練方法はあると思うのですが.

Twitterで見てみると人文系・社会学系の教員は, 教育方面に関して本当に知的怠惰としか言いようがないようにしか見えず, 本当に衝撃を受けています. あの人達, 本当に何なのでしょうか.

数学から見た超関数

数学の人、ディラックのデルタ関数嫌いな人多そう(偏見)

https://1-blog.net/author/detail/1360 おそらくこの辺りで、私は読んでいませんが、有名な「量子力学の数学的基礎」ではディラックのデルタが関数ではないことの証明があるそうです。ただしこれはシュワルツによる超関数の発明以前という時代背景があるので、物理の人の想像とはかなり違うような気がします。

そもそも生の超関数は位相的に使いづらい上、もはや超関数自体ほとんどやらないらしいので名前以上の興味ないのではないか感がある。さらっとやったら即ソボレフで、方程式ごとの必要に応じて適切な空間論に流れるのでは。

デルタ関数, 数学だと超関数のモチベーションとして出て来つつ, いくつか面白い性質を持つ例として出て来ます. 嫌いになるような登場の仕方をしないと思いますし, むしろモチベーティブな例として好意的に受け入れられているのではないでしょうか. 佐藤幹夫の佐藤超関数論文でも真っ先に比較対象として出てきたような記憶があります.

ちなみにディラックのデルタ関数はヘビサイド関数というふつうの関数の超関数微分で出てくる純粋な超関数という面白い性質があります. また十分大きな$s$に対するソボレフ空間$H^s$に属する点もよく例に挙がるのではないでしょうか.

プログラミングと数論の本

「プログラミングと数論」みたいな本ないんかな。具体的な言語を使いながら整数論の概念を学ぶ感じの。 例えば、Pythonで素イデアル分解を実装していく、とか。

読んだことはありませんがLewinter, Meyer, Elementary Number Theory with Programming, Cohen, A Course in Computational Algebraic Number Theoryのような本はあります。yokoemon2112さんがまさに計算数論なので伺ってみるといいのではないでしょうか。

本当にその場で調べて出て来た本なので内容を全く知りません. しかし内容自体には興味がありますし, 読んでみたいですね. とりあえず備忘録ついでにメルマガにも放流します.

Python+Matplolibの資料

科学技術計算を念頭に、matplotlibによる高度な可視化を解説した書籍「Scientific Visualization: Python + Matplotlib」は、コードとともに全文が無料公開されている https://github.com/rougier/scient

これも備忘録がてら放流します. 興味ある人はぜひ勉強してみて感想を教えてください.

試行回数の増やし方

なんやこの資料… やばすぎる… 全人類が読むべきことが詰まっている… 脳汁がやばい… Increasing number of attempts ver. 2021

割とこう, いわゆるライフハック的な文脈でよく出てくる話だろうと思います. ただ, いま私がやっている計算練習系の観点からも大事な指摘があるため, いくつかピックアップします.

  • 成功の方程式: 成功回数=試行回数×成功率
  • 成功率はコントロールしづらい
  • ならば試行回数を上げよう
  • 試行回数=手持ちの時間 / 一回の試行にかかる時間
  • 手持ちの時間は差がつきにくい: ならば試行にかかる時間を短くしよう
  • 試行にかかる時間の内訳
  • プログラムの実装時間・実行時間: 運ではなく技術

計算編で意図しているのもまさにこれです. 計算速度を上げて一回の試行にかかる時間を短くするのが大事です. さらに計算力を上げれば計算ミスをなくす方向でも時間を減らせますし, そもそも計算力が必要な問題にも挑めます.

ちょうどいま展開している通信講座でも, 計算結果の解釈だけできてもやはり計算の細部まで自分で再現したくなるのが人情です. 何度でもくり返しますが,

理解を深めるのはもちろん大事です. しかし「理解を深める」は何でどう測るかが難しく, いわゆる成長の実感が難しい部分です. 一方計算はできる・できないがはっきりしますし, できなかったことができるようになるのもわかりやすいのがよい点です. 物理はもちろんのこと, 解析学での不等式処理に関わる計算力もあれば, ホモロジー代数など代数でのハードな計算に対する計算力もあります. 競技プログラミングやデータ構造とアルゴリズムも, コンピューターでの計算に対する計算力強化です. スパコン利用のプログラミングも人類の計算力強化が目的です.

古典力学が終わったら, いまのところ量子力学というか, 量子情報と(有限次元の)線型代数系の通信講座にしようかと思っています. とにかく計算をやりましょう.

今週の問題

直交群・特殊直交群関係で, 一度やってあってノートにもまとめていたにもかかわらず, 忘れて微妙にはまった問題です.

  • 全ての自然数$n$に対して$SO(n) \subset O(n)$は真の正規部分群だが, リー環は一致する.
  • 各自然数$n$に対して商群$O(n) / SO(n)$は$\mathbb{Z} / 2 \mathbb{Z}$である.

正規部分群自体が群の重要な概念ですし, 商群は初学者がよくはまるところです. 上記の議論は準同型定理と行列式で処理でき, 線型代数とふつうの代数の関係というか, よい修行になるのでぜひ取り組んみてください.

雑に眺めただけでまだ証明がきちんと腑に落ちてもいませんが, $SO(n) / SO(n-1)$, $O(n) / O(n-1)$, $SO(n) / O(n-1)$なども対称空間論でよく出てくる基本的な例で, 一気に微分幾何・リーマン幾何・表現論が視野に入ってくる面白い例です.

最初に挙げた問題は簡単すぎて(微分)幾何として議論する点はほぼありませんが, 代数の勉強には役立つ例です.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-05-21

数学・物理 直観を調べるには"intuition"で検索してみる/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 近況報告
  • 直観を調べるには"intuition"で検索してみる
  • Farah, Combinatorial Set Theory of C*-algebras
  • 大野克嗣, 熱力学ノート
  • well-definedではない例
  • 確率論とルベーグ積分
  • 山下真由子さんの第1回羽ばたく女性研究者賞受賞
  • Karel Svadlenka, 偏微分方程式: 講義ノート
  • 永井佑紀さんの新刊: 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング
  • ClingでC++のREPLが使えた
  • 要点抽出と途中計算の補足
  • 次回の演習系通信講座
  • 今週の問題

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  • 今回のページ
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近況報告

二週間メルマガを書くのを忘れていました. いま研修で本当に一日中, 朝から夜まで勉強しています. こういう書き方にしてしまうと労基法的にアレな気もしてきますが, 今までアプリ開発やスタイリング(デザイン)学習なども勉強してみようとずっと思っていたところだったため, 渡りに船という感じでシコシコプログラムを書いています.

もちろんデータ構造とアルゴリズムを引き続き勉強を続けています. AOJとアルゴ式ではHaskellまたはOCamlしかなくF#が使えないため, いくら競プロ特化とはいえ現状でそこまでいろいろな言語を勉強している余裕もありません. かといってもうREPLなしのプログラミングはつらくてやっていられません. 念のためと思って検索してみたら, C++のREPLがあるClingがあるのを知ったのでそれを入れてみたりもしたのですが, やはりC++はつらいです. AOJはソートアルゴリズムに関連して, ソートの各ステップの結果を出力しなければならず, これが単なるソートのアルゴリズムにprintを差し込めばいい言語と違って凄まじく実装が面倒になります.

最近F#でのAtCoder学習で勉強用にmutable版も書くようにしたので, もういっそHaskellを命令型的に書くことにしました. モナドの学習が甘かったので単にMVectorを使うだけでも苦労したものの挿入ソートは書けました. 既存のAOJの問題もMVectorで書き換えたバージョンを書いて修行する予定です.

今年になってから競プロでデータ構造とアルゴリズムの学習を本格的に再開しましたがもう少しで半年です. 半年もやればもう少しできるようになっていると思っていましたが仕方ありません. 引き続きやっていきます. もちろん数学・物理系の計算練習も計算練習用通信講座の整備も続けます.

直観を調べるには"intuition"で検索してみる

数学の概念の気持ちを知りたいときは、検索でその英単語に加えて "intuition" (直観)とつけるといい感じの回答が見つかりがちです

私も困ったときはTwitterで詳しい人に聞く以外によく英語で検索しています. そのキーワードが一つ追加されたので今度何かあれば使ってみます.

Farah, Combinatorial Set Theory of C*-algebras

はい、というわけで。これでゼミするって言って興味のある人いますか? Farah著 Combinatorial Set Theory of C*-algebras

何度か書いたと思いますが, ちょうど修士のときの日本数学会でカルキン環と集合論の講演がありました. もう本一冊になるほどのテーマになっていると知って驚きました. 集合論も勉強したいと思って幾星霜です. もう適当なタイミングで勉強会を開くしかないと思っています. 優先度を見極めて何とかしたいですね.

大野克嗣, 熱力学ノート

基礎部分の考察がよいという評判を見かけました. まだ読めていないのですが備忘録も兼ねてメモしておきます.

  • 電気化学の基礎論的重要性.これなしで質量作用を仕事と対等に扱うことを正当化する経験事実は存在しない.

この記述が非常に気になっています.

well-definedではない例

これいいな

鍵RT

well-defined の説明, そうである例を話すよりそうでない例を話す方が初見はわかってもらえそう

有理数全体からの関数fを分母と分子の和で定義してみましょう ワオ!!!!! f(1/2)=3 なのに f(2/4)=6 だ!!!!!!!!!! みたいな感じで

ちょうどこの間の計算練習通信講座で似た話をしました. そこでは物理で出てくるベクトル・テンソルの定義の話でした.

  • 物理では変換性をもとにベクトルやテンソルを定義する.
  • もちろんふつう物理で出てくるのは適切な変換性を持つ対象しかないから, 独学していると, この定義にどんな意味・意義があるのか全くわからないだろう.

こんな話をしました. もちろんそこでも変換性を満たさない例を紹介したのですが, 「わかる人にはわかる」, 「わからない人には何を言っているかさっぱりわからない」例しか出せませんでした. 当然のごとく不自然な例なのですが, 不自然さの気分が何に依存しているかと言えばまさに上で書いたように, 「物理でそんな量をそんな風には扱わないから」で, 論理的にはともかく気分的には循環論法です.

それでも上の数学の例はまだwell-definednessについて気分を伝えてくれていると思いますし, よい例だと思います.

完全に別件ですが, 確か計算機科学系の人だか文献を読んでいたときだか, well-definednessを「整定義性」と訳しているのを見かけました. 文脈は数学とは必ずしも一致しないものの, 最近はなるべく日本語にきちんと訳して使おうと思っているため, well-definednessをこれで置き換えようか悩み中です.

確率論とルベーグ積分

確率論・ルベーグ積分を勉強するにあたって,原『測度・確率・ルベーグ積分』→ 清水『統計学への確率論,その先へ』→ 舟木『確率論』がスムーズな感じがするんだけどどうなんですかね.解析系がしっかり分かってる人であればいきなり舟木で良いと思うんですけど.

確率論は測度論をさばけないと困る一方、関数解析・作用素論・偏微分方程式系統への応用に意識を向けたルベーグ積分論はあまり測度の細かいことを知らなくても何とかなるので、混ぜると危険な感じがあります。確率論としての積分論・測度論はその成り立ちからもかなり独特です。 そもそも本当に数学科水準の確率論とルベーグが必要なのかどうかからよくわかっていません。あくまで数学としていうならルベーグというと関数解析方面への方向性が強く、確率論は確率論でそれ自体として一から組んである本も多いです。これも念のため書いておくと、 高校でさえ現れる独立性の概念は測度・加法族のレベルで定式化されるので学部一年の数学科の数学の集合論と実数論の一番きついところだけが必要で、それが確率論らしさで、関数解析系ルベーグだとあまり出てこない点です。R^nでのルベーグを頑張ってもあまりご利益がありません。

少なくともTwitterでは何度か言っている話です. 私自身, 確率論に取り組むときに測度回りで時々どはまりすることがあります. 修行が足りていません. 確率論的集合の実運用はかえって集合論入門として使えるのではないかとさえ思っています. これも計算練習的にまとめられないか思案中です.

山下真由子さんの第1回羽ばたく女性研究者賞受賞

山下氏は幾何学の代数トポロジーと呼ばれる分野と、理論物理学との関連を研究。世界的に実力が高く認められていることなどが評価された。

以下のリンク先の文献はどなたかが紹介していた山下真由子さん関係の仕事です.

一応, 形式的には大学院の研究室の後輩にあたりますが, すごい人はいるものだと感心します. 微分幾何で指数定理はずっと勉強したい対象として私の中にありますし, あまりそれらしいことはやっていなかったとはいえ作用素環専攻ではありましたし, だいぶ趣は違いますが格子上の議論は厳密統計力学的に私の主たる興味関心なのでどこからどう見ても興味しかありません.

幾何・微分幾何も1500ページ程度は学習メモがありますがまだ全然足りません. 計算も追い切れなくてとりあえず本なり何なりに書いてある分を記録しただけの断片が大量にあり, それらを馬鹿みたいに詳しくノート化する作業も残っています. 行列リー群に関連して群と位相関係で馬鹿みたいに計算してノートを準備したり, 曲線論や曲面論のノートも拡充して幾何に慣れたり, やるべきことはたくさんあります.

リー群にしても等質空間系の話からの微分幾何もあります. ある程度難しいところも眺めて基礎力の足りなさを実感してきたので, 歯を食いしばって計算力を鍛えます.

全然別件ですが, やはりRIMSに若手の助教として室屋晃子さんが在籍しています. 何にせよ若く強い数学者が着々と育っているようで感銘を受けます.

Karel Svadlenka, 偏微分方程式: 講義ノート

京大数学教室のKarel Svadlenkaさんが書いた偏微分方程式の講義ノートがかなり分かりやすくて、参考文献についても詳しく書いてて、カバー領域も広そうなのでオススメ(あと日本語上手すぎる)https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~karel/files/notes_pde_2015.pdf

何か流れてきたのでシェアしておきます. ダウンロードするだけしてほとんど読まないのですが, 何かあってふと調べ物をしようとしたときに役立つことがあります.

永井佑紀さんの新刊: 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング

ClingでC++のREPLが使えた

EmacsでREPLを起動させるところまで進みました. WindowsだとビルドしないといけないようでWSLやDockerなどもあるのでしょうが, とりあえずMacで試しています.

Elispは最低限という感じでそれほど使いやすくはないものの, 当面の競プロ学習用には十二分そうです. 気に入らない部分は少し修正・追加しつつ, キーバインドも追加しました.

やはりREPLは本当にいいです. どんな言語にもREPLつけてほしいです.

要点抽出と途中計算の補足

http://everything-arises-from-the-principle-of-physics.com 要点抽出と途中計算補足をしたpdfのサイト神すぎる JJサクライお世話になった。場古典とシュッツ相対論は持ってるからそのpdf見ながら読み返すか

これは私もぜひやりたいと思っています. 自分のメモも兼ねて計算の補足をやっているのが例と計算編であり, もっと拡充したいですし, 毎日少しずつ進めています. 上でも少し書いたように, 年始から進めているリー群関係は最近進捗が悪くなってはいますが, 進みが遅いだけでほぼ毎日少しでも進めています.

次回の演習系通信講座

まだ気が早いですが, 今回のパイロット版も次回を見据えて進めないと意味がありません. 予定としては古典力学版の再募集をするかどうか, あとは量子情報の基礎に触れつつの行列計算講座を作ろうかと思っています.

行列計算も時々とんでもない量の計算が出てきます. 二次の正方行列の計算であるにも関わらず, ミスとTeX化の苦労もあって, 5日くらいかかった計算もありました.

今週の問題

  • 二次の特殊線型リー環$\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})$上で指数写像$\exp \colon \mathfrak{sl}(2,\mathbb{C}) \to \mathrm{SL}(2, \mathbb{C})$は全射ではない.

リー群・リー環の一般論のきちんとした理解が甘いため, 「連結なリー群だったら全射になるのでは?」と思って混乱しました. 「連結かつコンパクト」だとか「実の場合だけ」とか, 何かしら厳密な条件づけを抜かして標語的に覚えた気になっていると, こういうところで足元をすくわれるいい例です.

この非全射性は一般の$n$次でも成り立つ性質でしょうか? ご存知の方がいたら文献教えてもらえると嬉しいです. あとどうも複素一般線型リー環でも成り立つ(指数写像が全射でない)ようなのですが, 練習問題扱いで証明がなく, 苦戦しています. こちらも何か情報・文献あれば教えてください. きちんと読み込んだわけではないため, 手元にある我らが小林・大島にこの手の記述があるのかどうかわからず, 見つけられていません. 表現論の本だから書いていなくてもおかしいわけでもありません. リー群は代数と位相と幾何が密接に絡んでいて, いろいろな部分群, その位相と代数の関係などとても示唆的で本当に勉強になります. 二次正方行列であっても計算が楽なわけでもないとか, つらさもてんこ盛りですが.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション

2022-04-30

数学・物理 つどいの講演終了/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • エアコンを試運転しておこう
  • 追い詰められないとやれない(こともある)
  • 通信講座関連でコメントしたことその1: 全体を見よう
  • 通信講座関連でコメントしたことその2: 諦めが肝心
  • 通信講座関連でコメントしたことその3: 計算をできるようにしよう
  • オンラインすうがく徒のつどい講演資料: 数学のためのプログラミング入門・学習案内
  • 物理の数学
  • 代数と単位元
  • ヘイヘイによるregularityや交叉理論まとめ
  • リー群と特殊関数
  • 漸化式と固有値問題
  • トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』
  • トポロジーの入門書
  • 今週の問題

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  • 今回のページ
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エアコンを試運転しておこう

このメルマガの本体と全く関係ないのですが, Twitterで回ってきたので私も注意喚起に協力します. 特にコロナ禍の影響もある中で, 今年はさらにロシアのウクライナ侵攻の影響で修理用の部品などがどうなるかわかりません. お住まいの地域によるとは思いますが, 夏が地獄のような地域もあるでしょう. 早めのチェックが肝心です.

毎年これくらいの季節になると先に注意喚起をしているのですが、今年どころかずっと前からエアコンをお使いのご家庭へ、エアコンの試運転をしておかないと真夏の修理待ちで詰みます。買い替えでも在庫なしで詰みます。買えても設置待ちで詰みます。あわせて実家のエアコンも試運転。冷房18度で10分。 真夏に備えるエアコンの試運転、くわしくはこちらを。もし調子が悪い場合の問い合わせ用に、ほぼ全メーカーのページもスレッドに載せています。

追い詰められないとやれない(こともある)

いま仕事で研修をしているのですが, ありがたいことに三ヶ月みっちり, 業務時間をフルに研修にあてていいと言われてweb系の技術をいろいろ勉強し直しています. 特にデザイン系も基本的な技能を磨いてほしいと言われていて関連する研修を受講しています. 今までやりたいなとは思っていてもなかなか取り組めなかったテーマでもあります. 何をどう考えても三ヶ月でどうにかしきれる話でもありませんが, 口実と時間ができたのも間違いありません. いま必死でやっています.

フロントエンドの話やアプリの内容もあり, 自分のコンテンツや通信講座, そして何よりサイトの構成にも応用したいと思っています.

追い詰められてはじめて取り組めるタイプの話もあるよね, と改めて感じています.

通信講座関連でコメントしたことその1: 全体を見よう

今週から通信講座がはじまりました. 今日も22:00-23:00で勉強会を開いています. 「確かに一人でやっているとわからない部分だな」と思う質問を受けましたし, 「位置ベクトルとは何ぞ」のような, 解析力学や相対性理論とも絡みつつ数学的にはそこそこ面倒な議論もありました.

そちらでも話したことはいろいろな人の参考になると思うので, メルマガでもシェアしておきます.

  • 途中が飛んでも気にせず来たメールの内容に対応する
  • 全体像の把握も大事なのでとにかく全部見る
    • 独学で挫折すると本当に途中で終わって最後まで見られない

独学で進めて本を読むのに挫折すると, 途中までしか読まずに止めてしまうことがよくあります. 最後の方にこそ面白い話が書いてあったり, 前半の議論のイメージしやすい具体例が書いてある場合もよくあります.

通信講座関連でコメントしたことその2: 諦めが肝心

いま考えている通信講座はくり返し受講してもらう前提で組んでいます. それはいままさに私が研修で味わっている問題でもあります. 一度やったくらいでわかるようになるわけがなく, 身につくわけもありません. いきなり理解は深まらない, 時間がかかると諦めて我慢する必要があります.

いままさに研修でコンテンツを勉強していて, チュートリアルに沿って作業していても一回では全く頭に入りません. 早いところ数稽古に入らなければいけません. 身につけたところでちょっと凝ったことをしようと思うと, どうすればいいかわからず, いろいろな本を読んでみたりノウハウを調べないと手が出ません. デザイン系だと良く目にするデザインもある程度自分で作りたい・作らねばならない状況になるわけで, これも大変です.

通信講座関連でコメントしたことその3: 計算をできるようにしよう

これは前に作った語学系コンテンツに書いた内容とも関わります. 理解はどう測ったらいいかわからない一方, 計算はできる・できないがはっきりします. 上達も自分でしっかり測れます. 計算をできるようにしようと言っている理由の一つもこれです. 力学でやってみるとよくわかりますが, 計算の詳細を埋めるのも重要な勉強です. 特に近似絡みの議論は近似のセンスのような話もあります.

ちょうど今日, オンラインすうがく徒のつどいで数学・物理・プログラミング関係の話をしました. プログラミングが絡んだ計算もこれはこれで数学・物理・計算機科学の総合格闘技の趣があります. 計算は決して簡単な話ではありません. 質的に内容が少し変わりますが, 基礎論系で計算論といった分野・テーマさえあります.

オンラインすうがく徒のつどい講演資料: 数学のためのプログラミング入門・学習案内

次のリンク先に資料を置いてあります.

PDFの他, デモ用の数値計算プログラムも置いてあります. 念のためシェアしておきます.

物理の数学

文脈をよく知らないのですが, 「波動関数が連続なのは何故か?」みたいなことを言っていた人がいたようで, それについて何となくツイートした記録です.

「波動関数」が何を指しているのかよくわからないが、物理は言葉遣いが粗雑だからデルタ関数も波動関数の一種に含めると思うし、そもそも関数でさえないのに何で(L^2の)関数やら連続性やら何やらに言及するのか本当に意味がわかっていない。 連続性だとか収束の問題を一度も気にしたことなかろうに、なぜ量子力学でだけそんなどうでもいいことを気にするのだろうか。数学している暇があるなら物理をやれの一言で終わりでは。それでも数学したければ数学科に行けばいい。

波動関数はなぜ連続なのかとか本当にくだらない以外に言及しようのない疑問を持つ前に、まずは自分が考える波動関数の定義を明確にしてほしい。この思考に自力でたどり着けない時点で数学側からの回答は受け止めきれない。物理学者のコメントに数学的な意味はなく、求めるものでもない。 書くのを忘れていたが、数学者からの解答のようなものがあったとして、物理に基づいている可能性がほぼない(そういうことをする人たちではなく、興味関心が噛み合わない)ので、それはそれで物理の人間が物理として傾聴する意味がない。 物理を数学的にきちんと議論しようと思うと、まず解の存在とその場所(と一意性)がまず問題になるのだが、いちいちそんなことがやりたい人、どれだけいるのだろうか。ちなみに赤外発散に関連して一時期本当に物理として問題になったのは確かだが、今更物理で気にしている人はいないだろうし、数学的には基底状態・平衡状態の存在問題がいまだにほとんどどうにもなっていない。量子力学にしても、2006年ではあるが、https://mathsoc.jp/activity/awards/haruakilist/isozaki2006aki.html 三粒子の散乱に関わる数学的問題にさえ日本数学会賞が与えられるほど何もできていない。 数学科で数学として数学をやる以外の理由で物理の問題を数学的にきちんと議論しようと思うのは本当にやめた方がいい。

代数と単位元

部分環って単位元の一致は仮定しないのが一般的なの?冪等を作用させた環とかも部分環ですって言うためなんかな

行列環で簡単に破壊される(二次正方行列全体がなすM_2に対して、(1,1)成分だけが非零の行列全体は単位元がdiag(1,0)の部分環)ので、それなりに意味のある仮定です。

圏論的に捉えるとどうも違和感を覚えてしまうというのはありますね、、、部分環と呼ぶ以上は包含が環準同型であってほしいので、、、(non-unital?なら何も問題はないですが、、、)

部分環が部分対象とは限らないのキモいなってなった (nonunital ringの圏なら大丈夫だけど)

まじそれ、勝手に定義変えようかな笑笑

Non-unital ring上の加群論作ってみたら?

そんな恐ろしいもの触れたくないお

作用素環だとフォン・ノイマン環は中心極大射影を単位元とみなせるため, 常に単位元が存在すると思ってもよいのですが, $C^$-環は局所コンパクトハウスドルフ空間上の無限遠で消える連続関数環, コンパクト作用素がなす環は基本的な$C^$-環でしかも単位元を持ちません. 他には単位元を持たないバナッハ環としてたたみ込みを積として$L^1(\mathbb{R}^d)$もあります.

純代数の人から「非可換なのはまだ許せるとして, 単位元の存在は仮定させてほしい」と言われたこともあり, 単位元を巡る事情はいろいろあります.

ちなみに少なくとも$C^*$-環は常に近似単位元を持ちます. 近似単位元と言いつつ実体は点列またはネットです. 先の$L^1(\mathbb{R}^d)$で言えばディラックのデルタ関数近似列が近似単位元です. 解析学としては確かにそれはそうという部分があります.

あともとの$C^*$-環に単位元を付加した環という概念もあって, 局所コンパクトハウスドルフ空間$X$上の無限遠で消える連続関数環で言えば, 単位元の付加で得られる環は$X$の一点コンパクト化上の連続関数環です. つまり環に対する操作がその下に住む位相空間にも影響を与えています. これはこれで今度は非可換幾何への道でもあります.

ヘイヘイによるregularityや交叉理論まとめ

  • 射影多様体に写像を作るには"関数"が必要
  • でもコンパクト多様体上には定数関数しかない
  • 定数関数は自明直線束の大域切断
  • 代わりに一般の直線束の大域切断を使えば各自明化開集合上では関数が作れる
  • これはもちろん貼り合わないがそれは変換関数が定数関数じゃないから
  • でも斉次座標なら問題ないので有理写像が作れる
  • いつ本当の射や埋め込みになるのか→regularityや交叉理論の話

というセミナーをした

コンパクト多様体上に定数関数しかない話, 特にリーマン面でも出てきます. 証明は割と単純な割にインパクトの強い性質です. 代数幾何は全然勉強できていないので, この話がこう展開していくのかと思うとなかなか趣深いものを感じます.

リー群と特殊関数

Lie group theory and special functions http://www-users.math.umn.edu/~mille003/lietheoryspecialfunctions.html

いまちょうど計算・理論ともに線型代数強化期間として取り組んでいるリー群で, 解析学と直接的な関係がある話題のPDFが流れてきたので, 一応共有しておきます. 電磁気や量子力学での偏微分方程式と固有値問題とも深い関係があるテーマです.

漸化式と固有値問題

漸化式 x_{n+1} = p x_n + q の特性方程式を解くってのは、行列 (p q) (0 1) の固有ベクトルを求めることなんです。 という話を書いておくのを忘れていたことに、今、気づきました。

これは確率論・力学系などの議論でも重要です. 特にエルゴード性が関わる力学系では, 適当な時間発展に対して時間無限大でどこかに収束する場合があります. この収束先の計算がまさに固有値問題だからです. 線型代数はこんなところにも顔を出します.

トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』

Twitterで流れてきたのでシェアします.

トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』が登場。 https://famitsu.com/news/202204/22259060.html

脳がぐるぐるするけどプレイ自体に数学的知識は不要。プラットフォームはPC/Mac/Linux。4月22日発売。

トポロジーの入門書

河澄先生の講義ノートは東大数理名物らしく, 東大数理勢が湧いていました. トポロジーももっときちんと勉強したいので私も正座待機しています.

『トポロジーの基礎・上』 ついに来た http://utp.or.jp/smp/book/b603128.html

ポアンカレ双対定理をゴールとして上下巻で出るっぽい 和書でポアンカレ双対定理について書かれてるものには服部『位相幾何学』があるけど、あの本はだいぶ敷居が高い。 この本は「非専門家を読者対象とし、徹底的にていねいに解説」してるらしいから新しいスタンダードになりそう

今週の問題

短期集中の通信講座がはじまって物理熱が高まってきたので, 今週はリー群絡みよりも量子力学のための線型代数みたいなところの計算ノートを作っていました. 特に純粋状態まわりの議論をしていました.

作用素環ベースでやると解析学がかなり強く絡んで, 面白くも大変な一方, 行列ベースだと比較的簡単に面白い結果がバリバリ出てきます. やはりニールセン-チャンの教科書第二章は抜群に面白いです. 量子力学(物理)に根差しつつ線型代数の勉強するには本当にお勧めです.

純粋状態に関わる議論は物理的な重要性もありつつ, 数学的な面白さもたくさんあって本当に楽しいです. 広い意味での幾何的な議論は作用素環や量子統計にも影響があります. 作用素環もまたやりたくなってきています. とにかく楽しい.

例えば次のような問題を考えてみるといいでしょう.

  • Exercise 2.72: 二量子ビットの混合状態に対する任意の密度行列$\rho$はノルム1以下の実三次元ベクトルで$\rho= \frac{1}{2} (1 + \boldsymbol{r} \cdot \boldsymbol{\sigma})$と書けることを示せ.

いわゆるブロッホ球の議論です. これの一般次元の議論がハマりポイントでもありつつ面白いところです.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 特殊相対性理論ロシア語版第六文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第六文

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今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第六文

文構造
  • Если же магнит находится в покое, а движется проводник,
  • то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;
  • зато в проводнике возникает электродвижущая сила,
    • которой самой по себе не соответствует никакая энергия,
    • но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.
      • --- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---

動詞は次の通りです.

  • находится: 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь), to be found, to turn up
  • возникает: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть), to arise, to appear, to emerge, third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
  • интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格, concern
  • вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать), to call, to send for

接続詞は次の通りです.

  • если: 接続詞: if, in case
    • если же: if
  • а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
  • но: 接続詞: but, yet
  • которой: 関係代名詞
  • которая: 関係代名詞
Если же магнит находится в покое, а движется проводник,

動詞は不完了体находится (<- находиться, to be in some condition), движется (<- дви́гаться, move)があります. さらにа (and/but)とЕсли же (if)が接続詞で, Если жеが導く従属節の中にаがあります.

動詞はどちらも三人称単数で, магнит (magnet)が男性名詞単数の主格・対格, проводник (conductor)が男性名詞単数の主格・対格なので, これらがそれぞれの動詞の主語でよいでしょう.

残るはв покоеで, покое (rest)は男性名詞不活動体の単数前置詞格だから, вは前置詞格をしたがえるときのin, at, onの意味で取ればよいでしょう.

これをまとめると次のように英訳できます.

  • If the magnet is at rest and the conductor is moving,
то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;

動詞はвозникает (<- возника́ть, to arise, to appear)で三人称単数現在形です. 冒頭のто (<- тот, that)は中性名詞として単数主格・対格だからこれを主語とみなせばよいでしょう. さらにвокруг (around, about)は生格支配の前置詞で, магнита (магнит, magnet)は男性名詞の単数生格だからこれがтоにかかります. не (no)は副詞として動詞を否定します.

最後にникакого (<- никако́й: 代名詞, no, none)は男性・中性の生格, электрического (<- электрический, electric)は形容詞で男性形単数生格・対格, поля (field)は中性名詞不活動体複数の主格・対格です. ここではполяを対格とみなし, никакогоとэлектрическогоがполяにかかると見ればいいでしょう.

これの英訳は次のようになっています. ロシア語と文法的に正確な対応はないものの意味はこの通りです.

  • no electric field arises in the neighbourhood of the magnet
зато в проводнике возникает электродвижущая сила,

この文の動詞はвозникает (возника́ть, to arise, to appear)で, 三人称単数の現在形です. 主格を探すと不活動体の女性名詞силаが主格・対格です. さらにэлектродвижущая (элѐктродви́жущий, electrodynamic)があります. 後半のдвижущаяはдви́жущийがдви́гатьの現在分詞で, движущаяは女性形の主格です. 特にэnлектродвижущая силаで起電力と訳せます.

зато (on the other hand)は副詞です. 男性名詞проводнике (проводник, conductor)は前置詞格なので, вは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onの意味を持ちます.

まとめると次のように英訳できます.

  • instead, an electromotive force arises in the conductor,
которой самой по себе не соответствует никакая энергия,

冒頭のкоторойは関係代名詞で, силаを受けているとみなすのが自然でしょう. 実際女性形の生格・与格・具格・前置詞格です.

ここで動詞はсоответствует (<- соотве́тствовать, correspond)で三人称単数現在形です. いま不定代名詞никакая (<- никако́й, not any, none)は女性単数主格, энергия (energy)は女性名詞で単数形主格です.

最後にсамой (<- сам, self)は代名詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, поは前置詞で対格・与格・前置詞格支配でどの格かによって意味が変わります. себе (<- себя́, oneself)は再帰代名詞で与格・前置詞格です. ここではсам по себеでon one's own, by oneself, aloneの意味があります. 最後にнеはnoです.

まとめると次のように訳せます.

  • which in itself does not correspond to any energy,
но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.

まずно которая вызываетを調べます. но (but, yet)は接続詞で, которая (<- который, which)は疑問詞・関係代名詞で女性単数主格です. 直前の女性名詞のэнергияを受けていると見てよいでしょう. 動詞はвызывает (<- вызыва́ть, to cause)で不完了体の三人称単数現在形です. 主語は関係代名詞котораяです. 残りを確認しましょう.

次はэлектрические токи той же величиныの塊です. электрические (<- электрический, electric)は形容詞で複数の主格・対格, токи (<- ток, current)は名詞の複数主格・対格, той (<- тот, that, the one)は限定詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, же (and, but, on the other hand)は接続詞, величины (<- величина́, amount)は女性名詞の単数生格です. ここまでを上に添えた訳語で直訳すれば, electric current of that amountです.

最後にи того же направления, что и электри́ческое поле в первом случаеを調べます. и (and)は接続詞, того (<- тот, that, those)は限定詞で男性生格・対格 же (very, same)は強調の不変化詞, направления (<- направле́ние, direction)は不活動体中性名詞の単数生格または複数主格・対格, что (that, what)は代名詞・接続詞・疑問詞, иは強調の不変化詞, электри́ческое поле (electric field)は электрическое (<- электрический, electric)は形容詞の中性主格・対格, поле (field)は不活動体中性名詞の主格・対格, первом (<- пе́рвое, the first thing)は不活動体中性名詞の単数前置詞格, случае (<- слу́чай, case)は不活動体中性名詞の単数前置詞格で, ここからвは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onのような意味で訳せます. まとめると次のように英訳できるでしょう.

  • and the direction of the electric field of the first case

まとめて綺麗にすると次のように書けます.

  • but which causes electric currents of the same magnitude and direction as the electric field in the first case.
--- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---

при (in the presence of; in the time of; at, by)は前置詞格支配の前置詞です. предполагаемой (<- предполага́ть, assume)は過去分詞で, 形容詞として女性形生格・与格・具格・前置詞格, тождественности (<-тождественность, identity)は女性名詞の単数生格・与格・前置詞格または複数の主格・対格です. 特に前置詞格と思えばいいでしょう. したがってこれらをまとめて前置詞格とみなせばよいでしょう.

さらに形容詞относительного (<- относи́тельный, relative)は男性生格・対格または中性生格で, движения (<- движе́ние, movement)は中性名詞単数生格, 複数主格・対格で, тождественностиに対する修飾としてof relative motionの意味で取ります.

前置詞в以下はслучаях (<- слу́чай, case)は中性名詞の前置詞格の複数形なので, вを前置詞格支配(in, at, on)とみなし, 数詞обоих (<- о́ба, both)は男性・中性複数形の前置詞格, интересующих (<- интересующий <- интересова́ть, to interest)は複数前置詞格, 代名詞нас (<- мы, we)は複数前置詞格とみなせばよいでしょう. ここは全体でin both cases of interest to usとでも訳せます.

上記英訳では次のように訳されています.

  • ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---

次のように訳すともう少し直訳調になるでしょう.

  • with the assumed identity of the relative motion in both cases of interest
単語
  • если: 接続詞: if, in case
    • если же: if
  • же:
      • 接続詞
      • (contrasting) and, but
      • on the other hand, whereas, as for, as to
    • 不変化詞(Particle)
      • Emphasises identity: very, same
      • With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
      • Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
      • Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
      • In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
  • магнит: 男性名詞, 単数主格・対格, 不活動体 (inan): magnet
  • находится <- находиться: 動詞, 不完了体, 三人称単数
    • 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
      • to be found, to turn up
      • to be located, to be situated (no perfective form)
      • to be in some condition (no perfective form)
      • to happen to have, to be found, to be discovered
      • passive of находи́ть (naxodítʹ)
    • 動詞, 完了体, находи́ться • (naxodítʹsja) pf (no imperfective form)
      • to walk for a long time
      • to tire oneself by walking
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • покое <- поко́й: m inan, rest
    • prepositional singular of поко́й (pokój)
  • а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
  • движется <- дви́гаться: 不完了動詞, 自動詞, impf (perfective дви́нуться): move
    • third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
  • проводник: 男性名詞, 単数主格・対格, 活動体・不活動体, genitive проводника́, nominative plural проводники́, genitive plural проводнико́в, feminine проводни́ца,
    • conductor
  • то: 限定詞: тот • (tot) m (demonstrative)
    • neuter singular nominative of тот (tot); that
  • вокруг: 前置詞, 生格(属格)支配: round, around, about
  • магнита <- магнит: 男性名詞, 単数生格
  • не: 不変化詞(Particle)
    • (negative in full) not, no, -n't, without
    • Idiomatic negative usage
    • (partial negative) perhaps not, whether ... or not
    • will never (implying impossibility to do something)
    • (usually not translated, gives affirmative meaning for expression, especially in exclamations)
  • возникает <- возника́ть: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть)
    • to arise, to appear, to emerge, to originate, to spring up
    • (slang) to object, to protest
    • third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
  • никакого <- никако́й: 代名詞, not any of possible variants, no, none; (in a negative context) whatever, whatsoever, absolutely
    • inflection of никако́й (nikakój)
    • genitive masculine/neuter singular
    • animate accusative masculine singular
  • электрического <- электрический: 形容詞, electric, 男性単数生格・対格
  • поля: 中性名詞, 不活動体, 複数主格・対格, field
  • зато: 副詞
    • (hedge) on the other hand
    • but for all that
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • проводнике <- проводник: 男性名詞, 活動体・不活動体, 単数前置詞格, conductor
    • bian masc-form velar-stem accent-b
    • guide (person)
    • conductor, guard, train attendant (on a train)
    • conductor (physical, electrical)
  • электродвижущая <- элѐктродви́жущий: 形容詞, 女性単数主格, electrodynamic
    • эnлектродвижущая сила: 起電力
    • дви́жущий: 現在分詞, движущая: 女性形の主格
  • сила: 女性名詞, 不活動体(síla), 主格・対格
  • которой: 関係代名詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格, which
    • genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of кото́рый (kotóryj)
  • самой <- сам: 代名詞, self, 女性生格・与格・具格・前置詞格
    • сам по себе: on one's own, by oneself, alone
  • по: 前置詞
    • with accusative case
      • up to
      • till
      • indicates distribution (with numerals other than one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending these words)
    • with dative case
      • along
      • over
      • around
      • about
      • on
      • according to
      • showing the cause that is unwanting or unwilling (see indicates the direct object of some verbs of striking or hitting indicates repetition of time indicates distribution (with numerals one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending in these words)
    • with prepositional case
      • on, immediately after
      • for
      • to the liking of
  • себе: 再帰代名詞, oneself
    • dative/prepositional of себя́ (sebjá)
  • не: no
  • соответствует : 動詞, 三人称単数現在, correspond
    • third-person singular present indicative imperfective of соотве́тствовать (sootvétstvovatʹ)
  • никакая: 不定代名詞, none
    • nominative feminine singular of никако́й (nikakój)
  • энергия: 女性名詞, 単数形主格, 不活動体, genitive эне́ргии, nominative, plural эне́ргии, genitive plural эне́ргий
    • energy, power
    • vitality
    • vigor
  • но
    • 接続詞: but, yet
    • 名詞, 不活動体, 不変: but
  • которая <- который: 疑問詞, 関係代名詞, 女性単数主格: which
  • при: 前置詞 (pri), +locative case or prepositional case: in the presence of; in the time of; at, by
  • предполагаемой: 過去分詞, (形容詞として)女性形生格・与格・具格・前置詞格
    • present passive imperfective participle of предполага́ть (predpolagátʹ)
  • тождественности <- тожде́ст венный
    • equality
    • то́ждество: identity, equivalence
  • относительного <- относи́тельный: 形容詞, 男性生格・対格または中性生格
    • relative
    • (grammar) relative (as in relative clause)
    • comparative
  • движения <- движе́ние: 中性名詞単数生格, 複数主格・対格, movement
    • inflection of движе́ние (dvižénije)
    • genitive singular
    • nominative/accusative plural
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • обоих <- о́ба: 数詞, both
    • inflection of о́ба (óba)
    • animate accusative masculine/neuter plural
    • genitive/prepositional masculine/neuter plural
  • интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格
    • интересова́ть: 動詞, 不完了体, интересова́ть • (interesovátʹ) impf (perfective заинтересова́ть)
    • to interest, to concern
  • нас <- мы: 代名詞, we, 複数生格・対格・前置詞格
  • случаях <- слу́чай: 中性名詞
    • case
    • occurrence, event
    • occasion
    • opportunity, chance
    • слу́чаях • (slúčajax) m inan pl
    • prepositional plural of слу́чай (slúčaj)
  • вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать)
    • to call, to send for
    • to challenge, to defy
    • to summon
    • to arouse, to cause, to stimulate, to evoke, to call forth
    • third-person singular present indicative imperfective of вызыва́ть (vyzyvátʹ)
  • электрические <- электрический: 形容詞, 複数主格・対格, electric
  • токи <- ток: 男性名詞, 不活動体, 複数主格・対格: (water, electricity) current, (agriculture) threshing floor
    • то́ки • (tóki) m inan pl
    • nominative/accusative plural of ток (tok)
  • той <- тот: 限定詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格: тот • (tot) m (demonstrative)
    • that, those
    • the one
    • the other
    • genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of тот (tot)
  • же
    • 接続詞
      • (contrasting) and, but
      • on the other hand, whereas, as for, as to
    • 不変化詞(Particle)
      • Emphasises identity: very, same
      • With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
      • Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
      • Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
      • In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
  • величины <- величина́: 女性名詞, 単数生格, amount
    • величины́ • (veličiný) f inan
    • genitive singular of величина́ (veličiná)
  • и: 接続詞, and
  • того
    • 限定詞 <- тот, that, those
      • inflection of тот (tot), 男性生格・対格
    • 述語
      • (colloquial, euphemistic) not right in the head, daft, crazy
      • (colloquial, euphemistic) tipsy, drunk
      • (colloquial, euphemistic) not great, not very good
      • (colloquial, euphemistic, crime) taken care of, murdered
  • же: 上記参考
  • направления <- направле́ние: 中性名詞, 不活動体, 単数生格, 複数主格・対格, direction, orientation
    • направле́ния • (napravlénija) n inan or n inan pl
    • inflection of направле́ние (napravlénije)
    • genitive singular
    • nominative/accusative plural
  • что: 代名詞・接続詞・疑問詞: that, what
  • и: 接続詞, and
  • электрическое <- электрический: 形容詞, 中性主格・対格, electric
    • электри́ческое поле: electric field
  • поле: 中性名詞, 不活動体, 主格・対格, field
  • в: 前置詞, 上記参照
  • первом <- пе́рвое: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, the first thing
    • пе́рвом • (pérvom) n inan
    • prepositional singular of пе́рвое (pérvoje)
  • случае <- слу́чай: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, слу́чай • (slúčaj) m inan (genitive слу́чая, nominative plural слу́чаи, genitive plural слу́чаев)
    • case
    • слу́чае • (slúčaje) m inan
    • prepositional singular of слу́чай (slúčaj)

2022-04-23

数学・物理 通信講座の募集は明日までです/相転移プロダクション

今週は通信講座の準備で忙しく, メルマガは書きかけのメモしかないため, 案内の最終連絡だけ手短に.

ここ何回かで連絡してきた, 三ヶ月の短期集中の力学通信講座は明日で締め切ります.

継続的に勉強してもらうための工夫なので, またいつか開講するタイミングはありますが, 少なくとも三ヶ月より先です. 今回はタイミングが合わなかった人も, 次回ぜひ積極的に参加してください.

来週はいつものメルマガに戻ります. ではまたメールします.

語学 相転移プロダクション

お休み.

2022-04-20 号外

数学・物理 号外: 通信講座に関して/相転移プロダクション

はじめに

通信講座に関して問い合わせがあって, 返信を書いていたらすごく長くなった上に他の人にも参考になると思ったため, メルマガにも放流します.

最初に書いておきましょう. 毎日22:00-23:00でもくもく会(オンライン勉強会)をやっています. 最後にそれをやっているオンライン部活サービスENERGEIAへのリンクをつけました. そこで具体的なURLなどをアナウンスしているので, 直接相談したい人はそちらからどうぞ.

ゴリゴリ計算する時間が作れない人はつらいだけだから時間ができてからにしてね, と案内ページで書いているように無理な勧誘などはしません.

質問内容

大雑把に言えば「理工系を出てはいるが, しばらく触れていないため高校数学の知識さえ結構抜けている. それで参加しても大丈夫か?」という話でした.

回答概要

語学や最近私自身がプログラミング学習でやっている方法を例に, 勉強の取り組み方自体を変えてみてはどうか, それを身につける時間に使ってはどうかと提案しました. 最終的には明日以降, ENERGEIAのもくもく会・勉強会タイムで話をします.

回答(を整理・抜粋)

うまいことまとまらずものすごく長くなりました. 大事なので後でメルマガでも流そうと思います.

結論から言えば, 「独りだと続けられないから人を巻き込もう」の方が重要なコンセプトで, こちらに心が反応するかどうかだろうと思います.

そしてもう一点. どう書こうかと思っていろいろ考えていたのですが, 一つ心に留めておいてほしいのは「まずは解答をしっかり読む」です. 定義や定理が頭に入っていなくて困るというのは, 何も見ずに自力で解こうとするからではないでしょうか? 定義や定理が頭に入っていない状態で慣れていない問題を自力で解くのは本当に大変です. 英単語や英文法がわからないのに英作文しようと言っているようなものです. 以下説明を続けます.

さて, まずは最近プログラミングがらみで実際に私も積極的にやっている内容を紹介します. これをそのまま勧めたいからです. あとで語学の事例も書きますが, プログラミングの例がよくわからなければ語学を考えてみてください.

いま私はプログラミング学習でAtCoderやAOJで競技プログラミングをやっています. 特にデータ構造やアルゴリズム学習学習のためで, プログラミング系コンテンツ作成のためでもあります. 最近は少し難しめの問題に挑戦するようになってきたのでさっと簡単に解くとはいきません. まずは10分くらい考えます. 頑張れそうなときはそのまま頑張りますが, 何も思い浮かばければ解説を読み, 解説の通りに実装しようと頑張ります. うまくいかない場合, 他の人の解答を読みます.

コードゴルフほどではないにしろ, 競プロのコードは圧縮された形で書かれていたり, 逆に自分用ライブラリで埋めつくされた解答があります. 短めで読みやすそうな解答をいくつか見繕ってそれを読みます. 特によさそうな解答に対して, 変数名を自分にとってわかりやすくしたり, 必要があれば分解したり, 一つにまとめたりして自分の解答として整理していったん終わりにします. その上で何回か復習します.

ポイントは自分でプログラムを書くよりも, むしろ他の人の解答の理解を重視する点です. これを語学に即して説明しましょう.

このメルマガを読んでいる人は, 多少なりとも英文はある程度読めて聞けるでしょう. しかし書く・話す方は読むのに比べてかなりレベルが下がると思います. 少なくとも私はそうです. 小学生の発言に対応するリーディング・リスニングはできても, 小学生の発言に対応するライティング・スピーキングは絶望的に難しいです. 物理・数学・プログラミングの用事は足せても日常会話がまるでさばけません.

何かと言えば, 受動的な方はある程度何とかなるものの, 能動的に出力しなければならない方が大変です. プログラミングでも同じで「読めても書けない状態」です. 「英作文は英借文」と言われます. いくつか典型的な文はきちんと覚えておいて, それをうまく変形したり組み合わせる必要があります. 個々の単語や文法も必要ですが, その上で単語や文法をどう使って具体的な文章を作るか自体も覚えておく必要があります.

私の語学のメルマガを読んでいる人はわかると思いますが, いま私はアインシュタインの特殊相対性理論のロシア語翻訳を読みつつロシア語を勉強しています. ロシア語は全く書けませんが, 文法を並行して勉強していて読む方は多少なりとも何とかなるようになりました. 英語・ドイツ語と比較しながら読んでいるからでもあります. 単語や活用も早く覚えないといけないのですが, オンライン辞書を使うと覚えていなくても何とかなってしまうため, まずはやる気が出るところからはじめて習慣作りを大事にしてロシア語(語学)に取り組んでいます. なぜ英語以外の語学をやっているかは次のページに書いたので, 興味があれば読んでみてください.

物理や数学も語学やプログラミングと同じです. 書くよりも読む方が楽です. 学部初年次の難なく理解できる証明でも, 空で書けるかと言われたらきついことは多いでしょう. 特に計算がハードだと計算ミスも頻発します. 語学でも三単現のsを忘れたり時制の一致を忘れたり, 冠詞を忘れたり, 読む分には問題なくても常にきちんと英文を書き切れる自信がある人はそういないのではないでしょうか.

というわけでまずは解答や証明を読めるようになりましょう. 形式的に「問題」と呼ばれる対象であっても, 無理に自力で解こうとせず, 解答をじっくり読むことに注力してください. 解答を読んでわからない問題が自力で解けるわけがありません.

数学や物理で言えば, 公式を見直して自力で問題を解くために議論の組み立て方そのものもある程度覚える必要があります. Twitterでも時々話題に上がります. 数学で言えばよく「定義を大事に」と言われますし, 結城浩さんの数学ガールで言えば「例示は理解の試金石」として有名なフレーズもあります. これは学習法でもあれば議論の組み立て方でもあります.

高校では数学力の制限もあって, エネルギー保存なども個別具体的な暗記事項になりがちです. 大学の物理(古典力学)だと全ては運動方程式から出てくるのであって, 全て運動方程式から出すという思考の組み替えが必要です.

以前, 高校物理・数学はいくらやっても大学の数学・物理の役に立たないと書いたことがあります. その理由はこれです. 知識の話ではなく取り組む姿勢や議論の構成そのものが決定的に変わりますし, この思考様式の構築が物理や数学と言えるケースさえあります. 高校の物理・数学と大学の物理・数学のギャップ, 特に集合や位相のような基礎科目でのギャップとして抽象性などが挙げられる場合があります. そこはそこで確かにハードルですが, もっと根本的なハードルはゲームそのものが変わっていて, 取り組み方を変えないといけない点です.

数学で定義を大事にしろというのは, 定義に議論のエッセンスがつまっているからです. 「よい命題は定義になる」という言葉もあるほどです. (誰の発言か忘れましたが, 数理物理的関数解析の聖典, Reed-Simonの確か第一巻に発言が引用されていた記憶があります.) メルマガ読者の方なら「よい命題」概念は多かれ少なかれ通じると思いますが, 命題の良さの尺度として「定義として採用されるか」もあるのです.

例を挙げれば例えば連続性や微分可能性です. この性質があればいろいろなよい命題・定理が成り立ちます. よい命題・定理を支える性質だからこそ重要でわざわざ名前をつけるのです.

いいはじめるときりがないのでこのくらいにしますが, せっかく膨大な時間を割いて今回の通信講座に参加するなら, 具体的な計算力とともにこの思考様式を身につけてほしいと思っています. Twitterで小学生から高校生まで一気通貫で見る機会の多い塾講師の人達の発言を見ていると, 「できない子は手を動かそうとしない」とよく言っています. 今回改めて強調したいのは, 今回身につけてほしい「手を動かす習慣」にあたる行為は「解答をしっかり読みこなす」です. 解答は証明と読み替えても構いません.

「言われなくてもやっている」と言う人もいるでしょうが, 特にもしあなたが社会人で学生時代の専門が物理や数学ではない上でこれらを勉強しようとしているなら, 物理学科・数学科水準で本を読む姿勢を身につけられていると自信を持って言えるでしょうか? 「例示は理解の試金石」を知っている人は, 数学で必要なときに必要な例をさらっと出せるでしょうか. 何度か紹介しているように, 数学ではクリティカルな例や反例を作るだけで論文になります. 例を作るのをこのレベルで重視しているので, 何か言われて即座に例を作れない人に対する理解度判定は極めて厳しくなります. 「知っているべき有名な例」という概念さえあります.

この意識の変容に取り組むのは本当に大変で, 計算力以上に三ヶ月でどうにかなる話ではありません. しかし裏テーマとして常に抱えておくべきなのだろうと改めて実感しています.

自分用メモ

  • これまでとコンセプトが違うコンテンツ・通信講座でもあるため, 通信講座用に簡単な公式集的なモノもあった方がいいかもしれない.

ENERGEIAへのリンク

最後に相談用の勉強会zoomのリンクを出しているENERGEIAへのリンクを張っておきます.

今回の通信講座用のもくもく会・勉強会は上記部活用のもくもく会とは完全に切り離して運営します. 上記部活のもくもく会は私の体調や都合が悪くない限り土日でも毎日開催していますし, 参加も自由です. 興味があれば気軽に参加してください. 部活のもくもく会はコンテンツ作成などの作業タイムでもあるため, 話かけられても応えられないかもしれません. 予めご了承ください.

2022-04-16

数学・物理 通信講座の正式案内/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 位相のハマりポイント
  • 群の内部自己同型の名前の由来
  • 計算数論システム入門
  • Google Scholar
  • 宣伝: いろいろなプログラミング入門
  • 通信講座の正式案内
  • 今後の予定
  • 今週の問題

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位相のハマりポイント

位相空間Xの開集合Uと位相空間Yの開集合Vとの直積U×VはX×Yの開集合になる?

XxYに直積位相が入っていることを前提にしたコメントしかないようだが、そもそもどの位相を考えているかさえ言及がないのだから誠実な回答は「考えている位相による」なのでは。

そうか・・・そうですよね・・・

実際に直積にどんな位相を入れるかが大問題になる議論としてチコノフの定理がある(いわゆる直積位相ならいいが、無限直積の時に箱位相で問題が起きる)ので、考えている位相を意識しないと本当にハマります。

そうなんですね。直積の時は気をつけないとですね…

関数解析(バナッハ空間)だとノルムによる強位相が普通の位相である一方、弱位相があり、双対空間にはこの二つに加えて弱*位相が入ったり、作用素環でも(形式的には)七つ位相が入ります。

他にはザリスキ位相で積空間に入れる位相と個々の空間の積からの積位相で挙動が変わる有名な例があります。Math StackExchange, Zariski Topology question ある(よく使われる)位相での常識が他の位相で通じない例もあるので、位相は気を抜けるところがあるイメージがありません。

位相そんなに奥が深いのか…

私も学部は数学ではないので、私の位相への認識は数学科の常識レベルに達しているとさえ思えません。何を目的にどうしたいのかよりますが、余裕があるなら最近増えている個人指導お願いしたほうがいいのではないでしょうか。位相空間に挑む上で数学の勉強の仕方そのものが問題になる可能性があります。 変な例の把握まで含め、位相の基本ができていないと先々のありとあらゆるところで詰まります。位相を使う・使わないではなく、先々でそこで身につけているべき数学的態度・思考が前提になるからです。単純な知識以上の問題で身につけるのも大変で、明記さえされないからです。

そうなんですか…個人指導に頼むのも一つの手か…

良くも悪くも、数学科の教科書は数学科で使うこと(だけ)を前提にしていて、低学年でやっていることは前提にしないことにはまともな分量の本になりません。もちろん数学に限らない話ですが。

最後の「低学年でやっていることは前提にしないことにはまともな分量の本になりません」は本当に厳しく, 通信講座用に復習も組み込みながら書いたといった理由もあるにせよ, 実際に私の現代数学探険隊解析学編は集合・実数・位相までで1500ページ程度の異常な量があります.

ちなみに物理で数学科の集合・位相にあたるのは, 現状では何だかんだ言っても古典力学でしょう. エネルギー・運動量やそれらの保存, 近似に対する感覚の養成などは力学で培われたと思います.

以前堀田さんの量子力学の教科書が出たときに何度かコメントしましたが, 最近では現代的な理解に即した量子力学学習も決定的になりつつあるように思います. これについては私自身まだ追いつき切れておらず大きな課題です.

群の内部自己同型の名前の由来

内部自己同型って、どのあたりが内部なの?

私の守備範囲でいうとhttps://math.stackexchange.com/questions/2242038/characterization-of-inner-automorphisms-of-a-von-neumann-algebraの話題があります。つまりフォンノイマン環Mのユニタリ元自身(内部の元)でuxu^と書ける自己同型が内部自己同型です。適当な意味でフォンノイマン環の自己同型は全てユニタリによってuxu^と書けるのですが、u \in Mかどうかが問えます。

リプライに気付いて、読んで考えていて、(私のツイートは群の内部自己同型のことを特に考えていたのですが、)内部の元(と二項演算)で書こうとすると、両側からこの形で挟むしかないんですね。(単位元を単位元に移さないといけないから。)なるほど、"内部"ということに納得が行きました。

内部同型と自己同型については次のMath StackExchangeの議論も面白いです.

上のコメントを受け入れると可換群の内部自己同型は自明な変換に限ると言え, そうした点についても指摘がまとまっています.

ちなみに連続体仮説を仮定するとカルキン環と呼ばれるC^*環に内部的でない自己同型が定義されます. きちんと調べ切れておらず詳しい状況はいまだ把握できていないのですが, 私が修士二年のときの日本数学会で基礎論の人が関数解析の部でこの講演をしていて, 基礎論の非専門家に向けて「こういうふうに言ってしまうと語弊があるのですが」と言った譲歩つきの発表をしていたのをいまも覚えています. 基礎論は数学者相手でさえ誤解を招かないように話すのが本当に大変なのだろうと.

計算数論システム入門

6/27-7/1 に京都大学数学教室にて集中講義を担当します。一度しっかり計算数論システムの入門をやってみたかったので、理論より実践を意識した内容にするつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。

何回か数学+プログラミング関係で反響を頂いていますが, そういう方はちょっと眺めてみてはどうでしょうか? 京大での集中講義ですしさすがにそんなに簡単とは思いませんが, 遊び倒す方向のヒントになるかもしれません.

私も早く確認したいところですがなかなか時間が取れません. 数論はある程度まで厳密計算もできる部分もあり, プログラミングで遊ぶ観点からはかなり気になっています.

Google Scholar

数学論文の探し方 https://youtu.be/JCmHSVeotBQ より 数学の論文の検索方法などについて説明しています。 修士課程に入学したばかりの学生や学部4年生くらいを想定しています。

私はGoogle Scholarをよく使うのですが、以前関連ツイートをしていたので本ツイートのツリーでRTします ここに書いてあることに加えて、Google Scholarで単語検索するとおそらく論文本文まで検索して候補出してくれるのが強いですね。 いま思い出したんですけど、MathSciNetだと AMS Mathematics Subject Classificationの区分ごとに論文一覧出せるので、特定の分野の最新の論文を網羅的に見たい場合は非常に便利です。

これのリプライツリー読んでふむってなった。私はGoogle Scholar酷使マンなのでMathSciNetの仕様は知らないんですけど、GSの方の特徴(体感)としては

  • ・被引用リスト漏れは滅多にない
  • ・自著に限らず論文被引用アラート設定ができる
  • ・出版論文にプレプリント版がある場合は関連バージョン一覧に載る
  • ・カンファレンスのスライドや、大学のレポジトリで公開された学位論文や個人のノートなども出版論文と同列に扱われる(反映は遅いかも)
  • ・bibtex等の引用データはある程度は出力できる(画像参照)。ただし私はbiblatex使ってるのでこの機能は使用しない。

なので、大きな違いは、アラート機能の有無と、出版物以外の文献の扱いなのだと思う あ、あとMathSciNetのレビューも

考えてみれば体系的な文献検索法をきちんと習った記憶がないですね. 図書館のイベントで文献検索法みたいなのはあった気はします. 今になってそういう基礎教育の重要性を思います. きちんと参加しておけばよかった.

宣伝: いろいろなプログラミング入門

いまオンラインすうがく徒のつどいに向けて改めていろいろな調べ物もしています. 前もいくつか紹介したと思いますが, ゲームでプログラミングを学ぶ方向もあります. 私のメルマガに登録している人達にはあまり興味ない方向性のような気はしますが, ご自身のお子さんや親戚の子供などに聞かれる機会もあるでしょう. そしてプログラミング勢ばかりが読んでいるわけでもないので, 念のため共有しておきます.

通信講座の正式案内

さすがに土曜には終わるかと調子に乗っていたら日曜の終わりも終わりまでかかってしまいました.

詳しいことは上記リンク先の案内ページを見てください. いつも公開後はずっと申込をオープンにしていますが, 今回は「三ヶ月の期限を区切ってがんばろう」という講座なので, 申込期限を区切ります. 改めてここでも書いておくと有料です.

来週日曜まで口を開けておくので, 興味がある方はぜひ受講してください. 例と計算編の一環として他にも短期集中講座は続ける予定ですが, いわゆる古典力学はしばらくやらないと思います. 機会が噛み合った方はぜひどうぞ.

今後の予定

短期集中講座を続けると書きました. 今のところ作りたいと思っているのは次のあたりです.

  • 電磁気とベクトル解析ノート
  • 量子力学と線型代数
  • 特殊相対論的力学
  • 熱力学と偏微分・凸関数ノート

このうち, 電磁気と言われると微妙なものの, ベクトル解析は既にある程度できています. 量子力学と線型代数はニールセン・チャンの第二章の解答集で相当いろいろ遊べます. 確か第二章の問題は100題くらいあったと思いますが, いま60題程度まで解答をつけてあるので, これもうまくいけば今年に組み込めます.

熱力学は原・田崎のイジング本の前哨戦としても復習したいと思っていて, 改めて理論の大枠を確認しつつ, 面白い計算問題をピックアップできればという野望だけはあります.

(特殊)相対性理論は学生の頃にほとんど真面目に勉強できていなかった分野です. 一般相対性理論は準リーマン幾何であってなかなか面倒な部分はあるものの, 微分幾何への直観を育む点からも面白そうと思っていて, 手始めに特殊相対性理論から計算し倒す野望があります.

行列べったりのリー群・リー環も日々計算を進めています. これは微分積分・線型代数の直接的な延長からの数学科の数学, 特に位相空間論・位相幾何的な議論・多様体論への接続としても便利ですし, 表現論は量子力学や素粒子への応用もあります.

リー群上での微分幾何も対称空間論など大きなテーマがあります. リー群の特殊事情を使っていくつか微分幾何の一般論が簡単になっている面もあれば, 特殊事情を使って比較的初等的な範囲で過剰な予備知識なしにさらに深く突っ込める面もあり, とにかく面白いところしかない分野です. 一般論を低次の具体的なところで計算するだけでも十二分な意味があり, これで一生遊び倒せる分野です.

リー群はいろいろな本やコンテンツがあり, 講義ノートもたくさん落ちていて独学のためのコンテンツ自体は山程あります. そのうち通信講座も作ろうと思いますが, もし待ち切れないなら自分のペースでどんどん突っ込んでいってください.

今週の問題

今週は通信講座の詰めをずっとやっていてあまり進展がありません. 強いていうなら息抜きにNielsen-Chuangの二章の問題2.66を解いたくらいです.

ここ三ヶ月くらい, 具体的な計算といいつつ文字の一般論ばかりだったので, パウリ行列のようなふつうの数を要素にした行列の具体的な計算は久し振りでした. 計算が合っているか不安になったのでsympyで検算したりもしました.

Python本体のsympyは記号が重たい一方, Juliaから呼び出す方が書きやすくなっています. ただJuliaの方はフルの機能が使えないようでそれがつらいです. いっそMaximaをうまく使えないかとも思っていますが, これはこれでMaximaの勉強が追いついていません.

プログラム援用コンテンツをどう作るかもさることながら, 自分の日々の計算にどう組み込むかもずっと懸案です. WolframalphaのようなWebベースの無料のモノもありますし, これを使うようにした方がいいかといった話もあり, 悩みは尽きません.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 特殊相対性理論ロシア語版第五文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • ロジバン言語:
  • 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第五文

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ロジバン言語

魔法少女(もはやそういうスクリーンネームは設定しないが, Twitterの特定アカウントを指す)がエスペラントと対比してコメントしていたので気になってとりあえずごく簡単に検索しました.

言語表現の論理的な構造を正確に(そしてしばしば簡潔に)記述するために開発されてきた述語論理を文法の基盤としている。

ロジバンの表記法や統語法はいかなる不規則性もきたさないように設計されているため、コンピュータによる解析や人による読解が容易である。実際、1997年時点でロジバンの公式の文法は Yacc 文法で書かれており、2015年現在では PEG で書かれた文法もある。そのため、ロジバンの構文解析器は非常に実装しやすく(その容易性の観点からみれば、ロジバンは自然言語よりもプログラミング言語に近い)、いくつかの構文解析器はロジバンの学習過程において広く使われている。このことから、日常会話としての言語だけでなく、プログラミング言語としての可能性も秘めている。

上記の記事中, こう書いてありました. 非常に気になっています. ロシア語・中国語・アラビア語も勉強したく, 述語論理などの数理論理も勉強したく, とにかく時間が足りません.

今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第五文

文構造
  • Если же магнит находится в покое, а движется проводник,
  • то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;
  • зато в проводнике возникает электродвижущая сила,
    • которой самой по себе не соответствует никакая энергия,
    • но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.
      • --- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---

動詞は次の通りです.

  • находится: 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь), to be found, to turn up
  • возникает: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть), to arise, to appear, to emerge, third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
  • интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格, concern
  • вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать), to call, to send for

接続詞は次の通りです.

  • если: 接続詞: if, in case
    • если же: if
  • а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
  • но: 接続詞: but, yet
  • которой: 関係代名詞
  • которая: 関係代名詞
Если же магнит находится в покое, а движется проводник,

動詞は不完了体находится (<- находиться, to be in some condition), движется (<- дви́гаться, move)があります. さらにа (and/but)とЕсли же (if)が接続詞で, Если жеが導く従属節の中にаがあります.

動詞はどちらも三人称単数で, магнит (magnet)が男性名詞単数の主格・対格, проводник (conductor)が男性名詞単数の主格・対格なので, これらがそれぞれの動詞の主語でよいでしょう.

残るはв покоеで, покое (rest)は男性名詞不活動体の単数前置詞格だから, вは前置詞格をしたがえるときのin, at, onの意味で取ればよいでしょう.

これをまとめると次のように英訳できます.

  • If the magnet is at rest and the conductor is moving,
то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;

動詞はвозникает (<- возника́ть, to arise, to appear)で三人称単数現在形です. 冒頭のто (<- тот, that)は中性名詞として単数主格・対格だからこれを主語とみなせばよいでしょう. さらにвокруг (around, about)は生格支配の前置詞で, магнита (магнит, magnet)は男性名詞の単数生格だからこれがтоにかかります. не (no)は副詞として動詞を否定します.

最後にникакого (<- никако́й: 代名詞, no, none)は男性・中性の生格, электрического (<- электрический, electric)は形容詞で男性形単数生格・対格, поля (field)は中性名詞不活動体複数の主格・対格です. ここではполяを対格とみなし, никакогоとэлектрическогоがполяにかかると見ればいいでしょう.

これの英訳は次のようになっています. ロシア語と文法的に正確な対応はないものの意味はこの通りです.

  • no electric field arises in the neighbourhood of the magnet
зато в проводнике возникает электродвижущая сила,

この文の動詞はвозникает (возника́ть, to arise, to appear)で, 三人称単数の現在形です. 主格を探すと不活動体の女性名詞силаが主格・対格です. さらにэлектродвижущая (элѐктродви́жущий, electrodynamic)があります. 後半のдвижущаяはдви́жущийがдви́гатьの現在分詞で, движущаяは女性形の主格です. 特にэnлектродвижущая силаで起電力と訳せます.

зато (on the other hand)は副詞です. 男性名詞проводнике (проводник, conductor)は前置詞格なので, вは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onの意味を持ちます.

まとめると次のように英訳できます.

  • instead, an electromotive force arises in the conductor,
которой самой по себе не соответствует никакая энергия,

冒頭のкоторойは関係代名詞で, силаを受けているとみなすのが自然でしょう. 実際女性形の生格・与格・具格・前置詞格です.

ここで動詞はсоответствует (<- соотве́тствовать, correspond)で三人称単数現在形です. いま不定代名詞никакая (<- никако́й, not any, none)は女性単数主格, энергия (energy)は女性名詞で単数形主格です.

最後にсамой (<- сам, self)は代名詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, поは前置詞で対格・与格・前置詞格支配でどの格かによって意味が変わります. себе (<- себя́, oneself)は再帰代名詞で与格・前置詞格です. ここではсам по себеでon one's own, by oneself, aloneの意味があります. 最後にнеはnoです.

まとめると次のように訳せます.

  • which in itself does not correspond to any energy,
но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.

まずно которая вызываетを調べます. но (but, yet)は接続詞で, которая (<- который, which)は疑問詞・関係代名詞で女性単数主格です. 直前の女性名詞のэнергияを受けていると見てよいでしょう. 動詞はвызывает (<- вызыва́ть, to cause)で不完了体の三人称単数現在形です. 主語は関係代名詞котораяです. 残りを確認しましょう.

次はэлектрические токи той же величиныの塊です. электрические (<- электрический, electric)は形容詞で複数の主格・対格, токи (<- ток, current)は名詞の複数主格・対格, той (<- тот, that, the one)は限定詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, же (and, but, on the other hand)は接続詞, величины (<- величина́, amount)は女性名詞の単数生格です. ここまでを上に添えた訳語で直訳すれば, electric current of that amountです.

最後にи того же направления, что и электри́ческое поле в первом случаеを調べます. и (and)は接続詞, того (<- тот, that, those)は限定詞で男性生格・対格 же (very, same)は強調の不変化詞, направления (<- направле́ние, direction)は不活動体中性名詞の単数生格または複数主格・対格, что (that, what)は代名詞・接続詞・疑問詞, иは強調の不変化詞, электри́ческое поле (electric field)は электрическое (<- электрический, electric)は形容詞の中性主格・対格, поле (field)は不活動体中性名詞の主格・対格, первом (<- пе́рвое, the first thing)は不活動体中性名詞の単数前置詞格, случае (<- слу́чай, case)は不活動体中性名詞の単数前置詞格で, ここからвは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onのような意味で訳せます. まとめると次のように英訳できるでしょう.

  • and the direction of the electric field of the first case

まとめて綺麗にすると次のように書けます.

  • but which causes electric currents of the same magnitude and direction as the electric field in the first case.
--- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---

при (in the presence of; in the time of; at, by)は前置詞格支配の前置詞です. предполагаемой (<- предполага́ть, assume)は過去分詞で, 形容詞として女性形生格・与格・具格・前置詞格, тождественности (<-тождественность, identity)は女性名詞の単数生格・与格・前置詞格または複数の主格・対格です. 特に前置詞格と思えばいいでしょう. したがってこれらをまとめて前置詞格とみなせばよいでしょう.

さらに形容詞относительного (<- относи́тельный, relative)は男性生格・対格または中性生格で, движения (<- движе́ние, movement)は中性名詞単数生格, 複数主格・対格で, тождественностиに対する修飾としてof relative motionの意味で取ります.

前置詞в以下はслучаях (<- слу́чай, case)は中性名詞の前置詞格の複数形なので, вを前置詞格支配(in, at, on)とみなし, 数詞обоих (<- о́ба, both)は男性・中性複数形の前置詞格, интересующих (<- интересующий <- интересова́ть, to interest)は複数前置詞格, 代名詞нас (<- мы, we)は複数前置詞格とみなせばよいでしょう. ここは全体でin both cases of interest to usとでも訳せます.

上記英訳では次のように訳されています.

  • ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---

次のように訳すともう少し直訳調になるでしょう.

  • with the assumed identity of the relative motion in both cases of interest
単語
  • если: 接続詞: if, in case
    • если же: if
  • же:
      • 接続詞
      • (contrasting) and, but
      • on the other hand, whereas, as for, as to
    • 不変化詞(Particle)
      • Emphasises identity: very, same
      • With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
      • Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
      • Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
      • In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
  • магнит: 男性名詞, 単数主格・対格, 不活動体 (inan): magnet
  • находится <- находиться: 動詞, 不完了体, 三人称単数
    • 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
      • to be found, to turn up
      • to be located, to be situated (no perfective form)
      • to be in some condition (no perfective form)
      • to happen to have, to be found, to be discovered
      • passive of находи́ть (naxodítʹ)
    • 動詞, 完了体, находи́ться • (naxodítʹsja) pf (no imperfective form)
      • to walk for a long time
      • to tire oneself by walking
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • покое <- поко́й: m inan, rest
    • prepositional singular of поко́й (pokój)
  • а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
  • движется <- дви́гаться: 不完了動詞, 自動詞, impf (perfective дви́нуться): move
    • third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
  • проводник: 男性名詞, 単数主格・対格, 活動体・不活動体, genitive проводника́, nominative plural проводники́, genitive plural проводнико́в, feminine проводни́ца,
    • conductor
  • то: 限定詞: тот • (tot) m (demonstrative)
    • neuter singular nominative of тот (tot); that
  • вокруг: 前置詞, 生格(属格)支配: round, around, about
  • магнита <- магнит: 男性名詞, 単数生格
  • не: 不変化詞(Particle)
    • (negative in full) not, no, -n't, without
    • Idiomatic negative usage
    • (partial negative) perhaps not, whether ... or not
    • will never (implying impossibility to do something)
    • (usually not translated, gives affirmative meaning for expression, especially in exclamations)
  • возникает <- возника́ть: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть)
    • to arise, to appear, to emerge, to originate, to spring up
    • (slang) to object, to protest
    • third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
  • никакого <- никако́й: 代名詞, not any of possible variants, no, none; (in a negative context) whatever, whatsoever, absolutely
    • inflection of никако́й (nikakój)
    • genitive masculine/neuter singular
    • animate accusative masculine singular
  • электрического <- электрический: 形容詞, electric, 男性単数生格・対格
  • поля: 中性名詞, 不活動体, 複数主格・対格, field
  • зато: 副詞
    • (hedge) on the other hand
    • but for all that
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • проводнике <- проводник: 男性名詞, 活動体・不活動体, 単数前置詞格, conductor
    • bian masc-form velar-stem accent-b
    • guide (person)
    • conductor, guard, train attendant (on a train)
    • conductor (physical, electrical)
  • электродвижущая <- элѐктродви́жущий: 形容詞, 女性単数主格, electrodynamic
    • эnлектродвижущая сила: 起電力
    • дви́жущий: 現在分詞, движущая: 女性形の主格
  • сила: 女性名詞, 不活動体(síla), 主格・対格
  • которой: 関係代名詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格, which
    • genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of кото́рый (kotóryj)
  • самой <- сам: 代名詞, self, 女性生格・与格・具格・前置詞格
    • сам по себе: on one's own, by oneself, alone
  • по: 前置詞
    • with accusative case
      • up to
      • till
      • indicates distribution (with numerals other than one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending these words)
    • with dative case
      • along
      • over
      • around
      • about
      • on
      • according to
      • showing the cause that is unwanting or unwilling (see indicates the direct object of some verbs of striking or hitting indicates repetition of time indicates distribution (with numerals one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending in these words)
    • with prepositional case
      • on, immediately after
      • for
      • to the liking of
  • себе: 再帰代名詞, oneself
    • dative/prepositional of себя́ (sebjá)
  • не: no
  • соответствует : 動詞, 三人称単数現在, correspond
    • third-person singular present indicative imperfective of соотве́тствовать (sootvétstvovatʹ)
  • никакая: 不定代名詞, none
    • nominative feminine singular of никако́й (nikakój)
  • энергия: 女性名詞, 単数形主格, 不活動体, genitive эне́ргии, nominative, plural эне́ргии, genitive plural эне́ргий
    • energy, power
    • vitality
    • vigor
  • но
    • 接続詞: but, yet
    • 名詞, 不活動体, 不変: but
  • которая <- который: 疑問詞, 関係代名詞, 女性単数主格: which
  • при: 前置詞 (pri), +locative case or prepositional case: in the presence of; in the time of; at, by
  • предполагаемой: 過去分詞, (形容詞として)女性形生格・与格・具格・前置詞格
    • present passive imperfective participle of предполага́ть (predpolagátʹ)
  • тождественности <- тожде́ст венный
    • equality
    • то́ждество: identity, equivalence
  • относительного <- относи́тельный: 形容詞, 男性生格・対格または中性生格
    • relative
    • (grammar) relative (as in relative clause)
    • comparative
  • движения <- движе́ние: 中性名詞単数生格, 複数主格・対格, movement
    • inflection of движе́ние (dvižénije)
    • genitive singular
    • nominative/accusative plural
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • обоих <- о́ба: 数詞, both
    • inflection of о́ба (óba)
    • animate accusative masculine/neuter plural
    • genitive/prepositional masculine/neuter plural
  • интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格
    • интересова́ть: 動詞, 不完了体, интересова́ть • (interesovátʹ) impf (perfective заинтересова́ть)
    • to interest, to concern
  • нас <- мы: 代名詞, we, 複数生格・対格・前置詞格
  • случаях <- слу́чай: 中性名詞
    • case
    • occurrence, event
    • occasion
    • opportunity, chance
    • слу́чаях • (slúčajax) m inan pl
    • prepositional plural of слу́чай (slúčaj)
  • вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать)
    • to call, to send for
    • to challenge, to defy
    • to summon
    • to arouse, to cause, to stimulate, to evoke, to call forth
    • third-person singular present indicative imperfective of вызыва́ть (vyzyvátʹ)
  • электрические <- электрический: 形容詞, 複数主格・対格, electric
  • токи <- ток: 男性名詞, 不活動体, 複数主格・対格: (water, electricity) current, (agriculture) threshing floor
    • то́ки • (tóki) m inan pl
    • nominative/accusative plural of ток (tok)
  • той <- тот: 限定詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格: тот • (tot) m (demonstrative)
    • that, those
    • the one
    • the other
    • genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of тот (tot)
  • же
    • 接続詞
      • (contrasting) and, but
      • on the other hand, whereas, as for, as to
    • 不変化詞(Particle)
      • Emphasises identity: very, same
      • With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
      • Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
      • Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
      • In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
  • величины <- величина́: 女性名詞, 単数生格, amount
    • величины́ • (veličiný) f inan
    • genitive singular of величина́ (veličiná)
  • и: 接続詞, and
  • того
    • 限定詞 <- тот, that, those
      • inflection of тот (tot), 男性生格・対格
    • 述語
      • (colloquial, euphemistic) not right in the head, daft, crazy
      • (colloquial, euphemistic) tipsy, drunk
      • (colloquial, euphemistic) not great, not very good
      • (colloquial, euphemistic, crime) taken care of, murdered
  • же: 上記参考
  • направления <- направле́ние: 中性名詞, 不活動体, 単数生格, 複数主格・対格, direction, orientation
    • направле́ния • (napravlénija) n inan or n inan pl
    • inflection of направле́ние (napravlénije)
    • genitive singular
    • nominative/accusative plural
  • что: 代名詞・接続詞・疑問詞: that, what
  • и: 接続詞, and
  • электрическое <- электрический: 形容詞, 中性主格・対格, electric
    • электри́ческое поле: electric field
  • поле: 中性名詞, 不活動体, 主格・対格, field
  • в: 前置詞, 上記参照
  • первом <- пе́рвое: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, the first thing
    • пе́рвом • (pérvom) n inan
    • prepositional singular of пе́рвое (pérvoje)
  • случае <- слу́чай: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, слу́чай • (slúčaj) m inan (genitive слу́чая, nominative plural слу́чаи, genitive plural слу́чаев)
    • case
    • слу́чае • (slúčaje) m inan
    • prepositional singular of слу́чай (slúčaj)

2022-04-09;

数学・物理 Haskellでの物理が楽しい/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • オンラインすうがく徒のつどいの案内が出た
  • 通信講座はリリース最終段階
  • 江沢・中村・山本『演習詳解力学』が来た
  • 勝手に宣伝: Learn You a Haskell for Great GoodのJupyter notebook
  • とうとう出版か: Scott Walck, Functional Programming for Physics Geeks
  • Walck, Functional Programming for Physics Geeksを軽く眺めた感想
  • Julia(のStatsbase)に少しだけ貢献したので
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

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オンラインすうがく徒のつどいの案内が出た

【スケジュール公開&参加者の募集開始!】 お待たせいたしました!第3回すうがく徒のつどい@オンラインの講演スケジュールを公開しました!

参加者の申込みを開始しました! HPの参加者募集要項をお読みの上、応募フォームから申込み下さい。期限は4月24日(日)までです。 https://tsudoionline.netlify.app/03/

聴講側の参加者申込がはじまりました. 私は講演者側で出ます. アブストにもあるように先日案内した素数判定プログラミング講座に関連する話をします. さらに以下で言及するWalckの本のネタなども紹介します.

江沢・中村・山本『演習詳解力学』に関連してプログラミングで遊ぶ話もコメントしているように, そうした話にも少し触れます. ただし数学関係者がいきなり独学でやるのは大変だから, あまり余計な知識が必要ないアルゴリズム, 特に数学関係のアルゴリズムからはじめようという話をする予定です.

ちなみにこの間ちょっとした提案をもらったので, ここで話す話を組み直して『プログラマーのための数学入門』として類似の話をする予定です. これはプログラムを一定程度読み書きできる人向けに, 逆にお絵描き系の勉強からはじめようという話をする予定で, これまた以前紹介したGeometry for Programmersなども案内する予定です.

今年の目標「たくさん計算しよう」がいい具合にいろいろ絡んできています. お待たせしているモノもたくさんあります. 一所懸命準備を進めているのでもうしばらくお待ちください.

通信講座はリリース最終段階

二週間くらい案内を続けている力学の通信講座, メインのPDFコンテンツを修正したので, あとは案内ページを作ればとりあえずはスタートできます. 今日書き切れれば, と思っていましたが全く間に合わなかったので正式な案内は来週です.

ちなみに何を直していたかというとベクトルの記号です. 数学だと物理と違ってベクトルの記号に太字を使いません. 数学の流儀に合わせて書いていたのですが, やはり物理向け計算のコンテンツとしてわかりにくいと思い, 一通り修正しました. 私も物理学科だったので力学は物理の風習に沿って勉強したため, やはり書き直したバージョンの方が読みやすいです. 物理っぽい計算の章は都度記号を書き直していく予定です.

例と計算編もちょこちょこ拡充していて, 単に項目出しだけの部分もあるとはいえ1100ページを越えています. そして1100ページあってこれからも増えていくので, いくらでも遊び倒せるコンテンツでありつつ, 一方では量が膨大すぎて途方に暮れるコンテンツにもなっています. そこをうまく再構成しつつサポートを入れるのがいま整備中の通信講座です. お待たせしていて申し訳ありませんが, もうしばらくお待ちください.

物理に集中的に触れてきたら私も物理熱が高まってきました. 偏微分の計算練習と線型代数の計算練習も兼ねた(特殊)相対性理論の計算に関する通信講座, 同じく偏微分の計算練習も兼ねた熱力学の通信講座, 線型代数の計算と絡めた量子情報的な通信講座, 微分積分と線型代数の融合(関数解析)を目指した電磁気学の通信講座など, 作りたい講座(自分が昔ほしかった講座)の作成予定がたくさんあります. そうすぐにはできないですが, 計算し倒す中で自分が計算していて楽しい例として外せない対象ばかりです.

江沢・中村・山本『演習詳解力学』が来た

先日宣伝した本です. ちょうど今日来たので本当にパラパラと眺めただけです. 文庫本の事情もありますが, 索引なども入れて665ページあります. これで1800円です. この1800円で人によっては一年遊び倒せるでしょう.

サービス内容が全然違うため単純な値段比較に意味はありませんが, いま準備中の力学の通信講座は当然これより値段が高いです. 独力で進められるなら本を買った方が遥かに安上がりです. 通信講座の初回に取り上げるくらいですし, 古典力学は本当に大事です.

数学的には常微分方程式論なので, ソルバーを使ったお絵描きも取り組みやすく, 曲線論(微分幾何)への発展も考えられます. いろいろな近似をかけたとき, 厳密解といろいろな近似解の数値比較も面白いでしょうし, 保存系の数値計算といった数値計算特有のテーマもあります. 今回の通信講座でここまで盛りだくさんにはできませんが, 力学は物理としても数学としてもネタの宝庫です. これまで挫折してきたならこの機会にぜひ取り組んでみてください. 単純な計算それ自体の楽しみも見つけられればなお良いです.

勝手に宣伝: Learn You a Haskell for Great GoodのJupyter notebook

「すごいH本」の元になった Learn You a Haskell for Great Good が IHaskell を使って Jupyter notebook に移植されてる!Binder を使えばWeb上で実行しながら読み進められるのも便利👀 https://github.com/jamesdbrock/learn-you-a-haskell-notebook

これはとても良い本なのでもしあなたがHaskellに興味があるならぜひ取り組んでみてください. いちいちコピペする必要がなくなっただけでも勉強が非常に楽です.

Walck, Functional Programming for Physics Geeksを軽く眺めた感想

先日紹介した本です.

まだ書きかけ状態の本である上, まだ物理パートの前のHaskellの言語説明のところまでしか読めていません. 型クラスが終わったくらいです. ちょうどすごいH本の紹介をしたのでちょうどいいと思ったので軽くコメントします.

すごいH本は一般的なHaskellの本なのである程度一般的な領域に踏み込んで解説しています. しかしこの本はあくまで物理に応用する本なので, 物理に必要なところに絞って解説しています. 型クラスも数値クラスに限定されていて, 入門としてはいいのではないでしょうか.

他にも「プログラムを書いてコンピューターを教育する」体で書かれているため, 自然と関数設計の形でプログラムの設計にも触れられています. 計算しながら暗号の勉強をしようと思ってJavaを使った暗号の本を読んだことがあります. 型を意識してプログラムを書く習慣がなかった上, コンパイルが必要な言語にも触れたことがなく, 全く何もできずに時間も本を買ったお金もドブに捨てたようなものでした. 型を意識した設計はなかなか面白いのでそこを読むだけでも楽しいでしょう.

ちなみにこの型を意識した読解, ドイツ語やロシア語, ラテン語などを読むときにも役に立ちます. これらの言語は格の支配が強く, 格の支配を型支配のようにみなして読むと文が読めるようになります. ちょうどこの間, 私が語学・言語学を教わっている言語学者が「ドイツ語やロシア語では動詞を中心にした読解が大事」と言っていて, それに関連して私のロシア語の学習ログ(語学メルマガで共有している内容)をシェアしました. 私はこの感覚をまさにHaskellで学びました. 別に何でどう勉強してもいいわけで私の学習経路はふつうではないと思いますが, 型を重視した思考法が他でも役立つ事例として紹介しておきます.

ちなみに英語・フランス語・イタリア語・スペイン語あたりは格がほぼなく, 代わりに語順が重要です. 語順が型になっているとも言えるでしょう. このあたりは『理工系の総合語学』ネタとしてとても大事にしています.

まだ読み進めていないのでどこまでカバーされているか見えていないのですが, Gnuplotを使ったお絵描きをする意志が見える(Gnuplotのライブラリを使うプログラムが出てきているのと, Githubのlearn-physicsにもGnuplot連携がある)ので, 上で書いたお絵描き用の訓練はこの本の勉強からでも得られるでしょう.

実はライブラリはhmatrixを使っていてBLASやLAPACKの導入が必要です. 昔, Walck論文を見つけたときにWindowsで導入しようとして挫折した苦い経験があります. いまならDockerで何とかなるとは思いますが. あといま仕事でMacを使っているのですが, M1になってから余計に不自由になったようで, プログラミング環境の構築が死ぬ程大変です. その辺が書籍でどう扱われるかはかなり気になっています. 正式出版が10月らしいですが, 早めにコメントを入れれば環境構築まわりもドキュメント化してくれると思うので, いまがんばって読んでコメントを入れようとしている最中です. これも通信講座というか勉強会で採用したいと思っています. Haskellを勉強してみたい人もいるはずで, 私のメルマガの読者なら数学・物理と絡めてやりたいはずなので. 楽しみしかないです.

Julia(のStatsbase)に少しだけ貢献したので

貢献というのもおこがましいのですが, いまやっている統計学の勉強会でJuliaの統計学ライブラリを眺めていて, ドキュメントのタイポを見つけたので「ここおかしくない?」とissueを立てたら, 「確かにおかしいね」と修正してmasterに入れてもらえました.

OSSはみんなで応援して育てて行くべき対象なので, こんな程度でもちゃんと開発者の人達は応えてくれますよ, ということで.

今週の問題

  • (特殊)直交行列は歪対称行列の指数関数で書ける.

半群理論なりベクトル場の局所一係数部分群の議論なり, もっと言えば行列の指数関数の処理を知っていれば, 歪対称行列の指数関数化$e^X$の特殊直交性は苦労なく示せます.

言われて見れば当たり前ですが, これの逆, つまり全ての特殊直交行列に対して$e^X$をみたす歪対称行列が取れるかを真面目に考えたことがありませんでした. リー群・リー環対応で前者は簡単にわかるので, そこで思考を止めていたのです. 上で書いたような話を知っていなくても線型代数の理論と計算が一定水準のレベルにあればそれほど苦労なく示せます. 行列の対数とも関わる話でなかなか趣深い面もあります.

何はともあれ, 逆も具体的にきちんと示したことがなかったのでいい勉強になりました. リー群とリー環は有名ですし, 耳学問レベルで「知ってはいるが証明したことがない」話がたくさんあります. 特にハール測度の存在はいまだにきちんと議論したことがありません. 具体的な計算モードに入っているので多様体論と表現論が深く絡む理論的な部分はだいぶ後回しになる予定ですが, いつかはきちんと埋めたいところではあります. リー群・リー環の表現論は量子力学のスピンはもちろんのこと, 素粒子系でも出てくるので, これも例と計算編マターとして取り込む予定だけはあります.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 特殊相対性理論ロシア語版第四文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第四文

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今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第四文

文構造
  • Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита, "The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet,"
    • в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
      • согласно обычному представлению, "according to the usual notion,"
      • в которых движется либо одно, либо другое из этих тел, "in which either one or another one of these bodies moves"
  • The phenomenon observed here depends only on the relative motion of the conductor and the magnet, whereas, according to the usual view, the two cases in which either one or the other of these bodies moves must be strictly distinguished.

まず動詞を確認すると過去分詞のнаблюдаемое (observe), 三人称単数現在形のзависит (depend), 三人称単数現在形のдвижется (move), 原形のбыть (be)があります. したがって主文の他に従属文が二本あり, 接続詞・関係代名詞も二つあります. これにしたがって上にように分けました. 各要素を詳しく見ましょう.

Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита

動詞はзависит (depend)で三人称単数現在形なので, 主語は三人称単数, зави́сеть от + 属格でdepend onなので属格の名詞も必要です. ここではявление (phenomenon)が中性名詞の単数主格・対格なのでこれが主語, Наблюдаемое (observed)はявлениеにかかります. здесь (here), только (only)は副詞なので文構造上は無視できます. относительного (relative)は男性形で属格の形容詞, движения (движение, motion)は中性で単数属格または複数主格・対格なのでこのセットでзави́сеть отのотの支配を受けます. 最後にпроводника и магнита (conductor and magnet)は男性名詞単数形の属格, 男性名詞単数形の属格なので, of conductor and magnetの形でmotionを修飾します.

まとめると次のように英訳できます.

  • The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet
в то время как, два случая, должны быть строго разграничены

動詞はбытьです. (TODO 不定形なのはどういうこと?)

まず冒頭のв то время какは熟語でwhile, whereasの意味です. должны (obligated, distinguished)は形容詞で複数形, строго (strictly)は副詞, разграничены (TODO これ何?)

  • (TODO) whereas two cases must be strictly distinguished
согласно обычному представлению,

これは前置詞が導く副詞句です.

先頭のсогласно (according to)は与格支配の前置詞, обычному (usual)は男性与格, представлению (notion)は中性名詞の単数形与格です. (TODO 格は噛み合うが性が合わない. どう理解すべき?)

  • according to the usual notion,
в которых движется либо одно, либо другое из этих тел,

これの動詞はдвижется (move)で不完全動詞の直説法三人称単数現在形です. ここから主語が決まります.

冒頭のвは前置詞格または対格支配の前置詞です. 次のкоторыхはwhichにあたる男性名詞・疑問詞・関係代名詞で, 複数形の属格または前置詞格, 活動体の対格です. (TODO 関係代名詞が受けるのは何? 文章からすればこれはслучая <- случайを受けるべきだが, случаяは単数(属格)では? случаяはдваを修飾し, これが複数だとみなす?)

ли́бо оди́н, ли́бо друго́й=either one or the otherの熟語表現に注意して続きを読みましょう. либо (if)は接続詞, одно (one)は男性名詞の中性単数主格・対格, другое (other, another)は限定詞で中性単数の主格・対格, из (from, out of)は属格支配の前置詞, этихはэтот (this)の複数属格・前置詞格・活動体与格, тел (body)は中性名詞の複数形属格です. したがってлибо одно, либо другоеがセットでeither one or the other, из этих телがセットでout of these bodiesです. либо одно, либо другоеは単数の主格と見るべきで, 動詞からしてもこの見立てが正しいです.

まとめると次のように訳せます.

  • in which either one or another one of these bodies moves
単語
  • наблюдаемое: 動詞, 不完了体: to watch, to observe; to study; to supervise, to take care of
    • present passive imperfective participle of наблюда́ть (nabljudátʹ)
  • явление: 中性名詞, 単数主格・対格, phenomenon
  • зависит <- зави́сеть: 動詞, 不完了体: to depend (on), to rely (on) [+ от (genitive)]
    • third-person singular present indicative imperfective of зави́сеть (zavísetʹ)
  • здесь: 副詞, here
  • только: 副詞: only, but
  • от: 前置詞, 生格(属格)支配: from, since
  • относительного <- относительный: 形容詞, relative
    • 男性形, 属格, accusative animate
  • движения <- движение: 中性名詞, 不活動体, 単数属格または複数主格・対格, motion
    • inflection of движе́ние (dvižénije): genitive singular, nominative/accusative plural
  • проводника <- проводни́к: 男性名詞, 活動体・不活動体: conductor
    • inflection of проводни́к (provodník): genitive singular, animate accusative singular
  • и: 等位接続詞, and
  • магнита <- магнит: 男性名詞, 不活動体, 単数属格: magnet
  • в: 前置詞, 副詞
    • в то время как = while, whereas
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
    • prep., Adverb, infinitive marker: (en) at, in, into, per, to, (ja) に, (de) im, (fr) dans, (it) nel, (sp) en, (cn) 在, (tw) 在, (ko) 에, (ar) في, (fa) که در, (da) i, (el) σε, (eo) en, (hi) में
  • то <- тот: 中性主格・対格, that, those, the one
  • время: 中性名詞, 単数主格・対格, 時間
  • как: 接続詞, 副詞, how, what, like, as, suddenly
  • согласно
    • 前置詞 (+ dative case, 与格支配), according to, as to
    • 形容詞: short neuter singular of согла́сный (soglásnyj)
  • обычному <- обычный: 形容詞, 男性与格, usual, customary
  • представлению <- представление: 中性名詞, 不活動体, 単数形与格
    • introduction, presentation, performance, idea, concept
  • два: 男性・中性名詞, 数詞, 2
  • случая <- случай: 中性名詞, 単数属格, case
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • которых <- кото́рый (kotóryj): 男性名詞, 疑問詞, 関係代名詞: which
    • genitive/prepositional plural
    • animate accusative plural
  • движется: 不完全動詞, 直説法三人称単数現在形, move
    • third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
  • либо: 接続詞, if
    • ли́бо оди́н, ли́бо друго́й = either one or the other
  • одно <- оди́н: 男性名詞, 中性単数主格・対格, one
    • nominative/accusative neuter singular of оди́н (odín)
  • другое <- друго́й: 限定詞 other, another, different, else, next, second
    • nominative/accusative singular neuter of друго́й (drugój)
  • из: 前置詞, 属格支配
    • from
    • out of
    • of, through
  • этих: pl (demonstrative), inflection of э́тот (étot)
    • genitive/prepositional plural
    • animate accusative plural
  • тел <- тело: 中性名詞,複数形属格, 体
  • должны <- plural of до́лжен (dólžen), 形容詞, obligated
  • быть: 動詞, 不完全動詞: to be
  • строго
    • 副詞: rigorously, strictly, strongly, pronouncedly, religiously, definitely
    • 形容詞: short neuter singular of стро́гий (strógij)
  • разграничены ?

2022-04-02

数学・物理 勉強会が役に立つ/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 通信講座の詳細
  • すうがく徒のつどいの講演決定
  • ツイート紹介: アラオグルの定理と量子状態空間
  • 再宣伝: 江沢洋, 中村孔一, 山本義隆, 演習詳解力学第2版
  • とうとう出版か: Scott Walck, Functional Programming for Physics Geeks
  • 書評紹介: 「C&Fortran 演習で学ぶ数値計算」書評
  • 記事紹介: オブジェクト指向関係の話
  • 勉強会が役に立つ
  • 今週の問題

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通信講座の詳細

先週日曜にさらに少し話をして金銭的なところも詰めました. 概要については前回のメルマガを参照してください.

一度やった程度で身につくわけもないため, くり返し使える・使ってもらう意図で値段設定しています. 特に例と計算編のコンテンツの使い回しでもあるため, その購入者向け金額として三ヶ月で10000円で提供する想定です. これは月3000円相当で, もっと具体的に言えば「毎日ジュース一本我慢してもらう」くらいの費用感です. ジュース一本分の費用, そしてジュースを飲むような細切れの時間もうまく使ってもらうための通信講座だ, という精神性を反映した設定です. もう一つ, あとで説明する1500円版も作ります. ちなみに例と計算編を買っていない人には月5000円相当の費用感にする予定です.

これで大事なのはサポートです. 続けてもらうことが前提なので何かしら続けてもらうための場を用意します. もちろん費用から言ってそんなに手厚いことはできません. そして時々メルマガでも紹介しているように, 最近個人指導サービスがたくさん立ち上がってもいます. 手厚い個人サポートはそちらに任せてこちらはゆるく長く続けることを意図したサポートを実験します. 具体的にはここ数ヶ月, ENERGEIAで毎日やっているいまのもくもく会を有料サービス用に切り分け, 質疑応答の時間にあてます. このあたりがお互いに負担が少ない線ではないでしょうか. 専用の時間としては週二回, それぞれ平日と休日に一時間ずつくらいを想定しています. もちろん参加者の様子を聞きながら調整します. これ以外にも基本的に毎日私はENERGEIAで一時間もくもく会の時間を取っているので, そこに参加してもらっても構いません.

ちなみに金額とともにサポートは二種類考えています.

  • 上位(3000円版): こちらは上記の有料サービス用でサポートつき: 具体的な質疑応答用のもくもく会つき.
  • 下位(1500円版): 教材だけ配信して自分でもくもくとやってもらう.

こう書くと下位版には何もしないように見えるかもしれませんが, もちろん誤植の指摘に対する対応や, 内容の間違いに関する問い合わせには対応します. 単純な「ここがわからないので教えてほしい」といった質問への対応の優先度を下げるだけです.

通信講座はメール配信形式で, パスワードで保護したコンテンツ一覧ページも案内します. こちらは期間が終わってもずっとアクセスできるようにします. 各回ごとに確認問題や前回の復習, 関係する小ネタ紹介や応用例の紹介も入れる予定です. 定着させるためのくり返し学習には復習も重要なので, ここは気合を入れたいところです. ゆるく長く, そしてしつこく何度でも基本を確認できるような仕組みをブラッシュアップしつつ, 実践を積んでさらに練り上げていきたいと思っています.

いまコンテンツの記述整理をしているところで, それが終わったら正式に案内ページを作って募集をはじめる予定です. 何をしているかというと, 数学方式でベクトルの文字をふつうの細字の$x$などを使っていたのですが, 物理をやるなら太字にした方が気分が出る上, やはり便利なので変えることにしました. 来週のメルマガでは案内できる予定なので, ぜひ楽しみにお待ちください.

すうがく徒のつどいの講演決定

まだプログラム・アブストは公開されていないものの, 講演者は決まったようで, 私も応募が通りました.

素数判定のミニ講座に関する話をします. 特に数学とプログラミングの連携と, どう絡めて勉強していくかを議論します. これについて考えていて, また改めて大事な視点に気付いたのでその辺の話も盛り込みます. 講演が終わったら資料のスライドも公開する予定です.

ツイート紹介: アラオグルの定理と量子状態空間

先に書いておくと私のツイートではありません.

下記引用の内容について数学学としては現代数学探険隊の解析学編に載せてあります. 物理についてここまで詳しくないにせよ, 作用素環や赤外発散の視点からいくつか議論しています.

数学に飲まれずに物理にどう数学を使うのか, 気になる人はぜひ上記ツイートのツリー(または以下の引用)を読んでみてください.

引用

Alaoguluの定理(閉じた球は弱*位相でコンパクト)というものがあります。これをもって、量子あるいはGPTの状態の空間はコンパクトだ!と言えるかというと、いろいろと違います。 まず、小さな点から。Alaoguluの定理で球といっていることに注意。球面ではない。球面は、閉じてすらいないので、ここは本質。>つまり、トレースが1以下のものも全部いれておく。 ついて、弱*位相とは何者か。細かいことはさておき、「線形汎関数の空間」に入れる位相です。今の間合いであれば、有界作用素(値が有限の範囲に限られる物理量)の線形汎関数の空間です。これのうち、正でω(I)=1を満たすものたちの集合がコンパクトである、、 というのがAlaoguluの定理の主張になります。しかし、「正でトレースが1の線形汎関数」たちは、どのようなものが入るでしょうか。

量子よりも簡単な古典の場合を考えます。例えば、整数上の確率分布。これは普通の意味で状態と思っていいでしょう。しかし、「整数上の一様分布」はどうでしょうか。 もちろん、そんなものは確率分布としては存在しないのですが、「整数上に値を取る確率変数から実数への関数」としては定義できます。具体的には、有限なところで一様分布を作って、近似していった極限で作ればよい。 ところが、このようにして作ったものは、確率の法則のうち、非常に基本的な「σ加法性」、つまり「排反な事象の和事象の確率が事象ごとの確率の和になる」という性質を満たしません。 このことは、すぐにわかります。先の「一様分布」である一点からなる集合の「確率」を定義すると、ゼロにしかなりませんから。 こういたものも含めて、初めて「コンパクト」になります。もちろん、こういった状態も数学的にはすごく有用です。

例えば、ガウス状態族の最適クローニングの問題。このときは、一度状態の空間を、線形汎関数の意味での状態を含めて拡張しておいて、答えを出します。その上で、この状態に対応する密度演算子が存在することを証明します。 ですが、この線形汎関数としての状態は、「確率の和の法則」を満たしませんから、物理的な状態に入れないことが多いです。小澤先生の書かれた論文などでは、必ずや物理的な状態は密度作用素をもつ状態です。 「状態汎関数の意味での状態」は、かならずや密度をもつ状態で「近似できる」のですが、この「近似」はあまり性質のよいものでないことも、要注意だと思います。弱*位相をセミノルムの族で定義したのを見て「ほとんどノルムじゃん!」と早合点してしまうと、とんでもないです。

例えば、「整数上の一様分布」は、現実に存在する確率分布で「いくらでもよく近似できる。」 ですが、今精度を与えて、「この精度以下で近似する状態を探したい」とします。 すると、これは「どんな組の一連の観測するか」によって答えが変わってしまいます。ある観測の選択をしたときはこの状態が近似をあたえ、別の観測の時はあのまた別の状態が。。。となります。 なんでこんなことになるかというと、実は、先ほどの「一様分布」の構成が少し嘘を書いているからで。。。。本当は極限だけでは構成できなくて、「ある部分空間上で極限で定義しておいて、後はハーンバナッハの定理で拡張」という捻ったことをします。 つまり、「点列として収束する列がとれる」わけではない。 ですから、「観測の選択に、近似状態が依存する」のは、単に収束のスピードの話ではないです。「「一様分布」を含む任意の近傍の中に、少なくとも一つ確率分布がある」だけです。

再宣伝: 江沢洋, 中村孔一, 山本義隆, 演習詳解力学第2版

4月上旬新刊『演習詳解力学第2版』江沢洋/中村孔一/山本義隆(ちくま学芸文庫) 一流の執筆陣が妥協を排し世に送った至高の教科書。練り上げられた問題と丁寧な解答は知的刺激に溢れ、力学の醍醐味を存分に味わうことができる。

以前も宣伝した本だと思います. 私自身ちょうどこれから力学の通信講座をはじめますし, 興味のある方はぜひチャレンジしてみてください. 力学はそれ自身いろいろな工学への応用もあれば, 数学の常微分方程式論, 微分幾何・曲線としての展開も広く深くあり非常に面白い分野です.

いろいろな物理系の工学への応用まで考えれば, いまも現役でバリバリ使えます. モノにもよりますが, 自分で実験できるネタもあれば数値実験もあります. とにかくありとあらゆる角度から意味をつけられ楽しめる分野ですし, 数学的な展開もたくさんあります. 歴史的な話でいえば, ポアンカレの有名な話があるように天体力学はトポロジーの基礎でさえあります.

とうとう出版か: Scott Walck, Functional Programming for Physics Geeks

New Early Access Book: Functional Programming for Physics Geeks

素数判定ミニ講座でもコメントしていた論文の著者による本がようやく出るそうです. あなたもぜひ買って読みましょう.

これのAppendixに「A Installing Haskell」があるのですが, この本で使うHaskellの線型代数のライブラリ, hmatrixはバックエンドにBLASとLAPACKを使っています. 以前Windowsでのインストールで死ぬ程苦労して結局Windowsではインストールできずに諦めた経緯もあり, Windowsでの導入にはDockerなり何なりの工夫が必要なはずで, その辺を盛り込んでほしいという要望を早めに出さないと正式に出版されてしまうと思って, ちょっと焦っています. これをネタに何かやりたいと本当に思っているのですが, そこのサポートは本に盛り込んでおいてほしいので.

書評紹介: 「C&Fortran 演習で学ぶ数値計算」書評

これも数値計算本です. 数値計算をどこまで真面目にやるかはともかく, Cは何だかんだでいろいろなところでお目にかかってしまう可能性が高いとは言えます. やりたいことが他に大量にあるのでどう考えてもすぐに取りかかれませんが, 自分用の備忘録も兼ねて紹介しておきます.

記事紹介: オブジェクト指向関係の話

先日ほぼ純粋なプログラミングネタにも多少の反響があったので, 今回もちょっと紹介しておきます. 私もだいぶ前に読んでおけと言われたGoFのデザインパターンなど, オブジェクト指向に関する勉強は多少したのですが, あまりにも難しくていまだに全然わかっていません. 実際難しい上に現実に適用するのも大変という話が最近出てきていると思っていますが, 何だかんだでオブジェクト指向的なモノが世に溢れている中でどう対応するかが(私の)課題です.

上の記事の私の理解を簡単にまとめると次のような感じです.

  • オブジェクト指向以前に, そもそも組み込み系や昔のハードのようにメモリなどの資源が限られた世界では可変(mutable)な要素でプログラムを組むしかなかった.
  • この可変性はバグの温床になっていた.
  • いまは(少なくともWeb系なら)ある程度コンピューター資源は潤沢に使えるから, それを前提にした不変(immutable)な要素の取り扱いが大事になってきている.
  • パフォーマンス向上に直結する並行・並列処理でもimmutabilityをうまく使うのが大事.
  • 関数型言語がいいというより, そこで培われた参照透明などの知見が役に立つ.

前述のScott Walck, Functional Programming for Physics Geeksはまさにこの関数型言語のHaskellで書かれています. 何というか「素人」におすすめできるような本または言語ではないと思いつつ, 物理・数学からの導入ならかえっていいのかもしれないという気もしています.

これをネタにした勉強会もよさそうですね.

勉強会が役に立つ

昔からの知り合いとクローズドでやっている統計学の勉強会, いまはJuliaにもっと慣れようの巻でJuliaの統計のライブラリ(集)であるJuliaStatsのコードを読んでいます. これがなかなか楽しいです. 恥ずかしながらライブラリのコードを本格的に読んだことがなかったので, そういう意味でも楽しいです. マクロの実装まで含めたマクロ利用(を意識した)プログラムの読み書きをしたこともなく, 読むだけでもかなり勉強になります.

Juliaとして標準的なプログラミングスタイルで書かれていると思いますし, それが見られるのもよいです. 多重ディスパッチも概念としてしか把握できていなかった部分が多かったものの, 実際のコードでどう使われているか, 実用的なコードとともに眺められているのが大きいです. (改名するらしい)SICMUtilsが採用しているClojureでも多重ディスパッチやマクロプログラミングを酷使する言語ですし, 対Clojure戦・SICMUtils戦の役にも立ちそうでいい感じです.

何度も言っているように, この手の「一人ではやる気は起きないがやってはみたいテーマ」を進めるのに, 勉強会というか他人を巻き込むのは本当にお勧めです. 人, 特に大人に時間を取ってもらって勉強会をやるので, 準備不足で挑むわけにはいかないからです. 嫌でも一定の時間を捻出する機運が生まれます. 何か勉強してみたいことがあるなら, ぜひあなた自分でも勉強会を立ち上げて人を巻き込んでみてください. 自分で立ち上げるのはちょっと, というなら以前から案内しているENERGEIAでの私の部活のもくもく会に参加してみるところからはじめるのも一つの手段としてお勧めしておきます.

私もここで面倒で作ってこなかったプログラミング系のコンテンツを作ってリリースにこぎつけたりしています. そういう普段やらないことを無理やりやる時間を作る手段として使うのもありですし, 私はまさにそういう使い方をしています.

今週の問題

今週は通信講座の準備で線型代数・リー群系のノート作りがほとんどできていません. 何もやらないわけにもいかないので, 今日の午前中に上でも連続ツイートを紹介した定理であるアラオグルの定理に関して, 改めて事実をまとめたノートを作りました.

  • 無限ヒルベルト空間の単位球面は強閉である
  • 無限ヒルベルト空間の単位球面は強コンパクトではない
  • 無限ヒルベルト空間の単位球面は弱閉ではない
  • 無限ヒルベルト空間の単位球面は弱コンパクトではない
  • 無限ヒルベルト空間の単位は弱コンパクトである
  • 無限次元単位球は単位球の中で弱稠密である

いくつかは解析学編でも触れているのですが, 断片的になっている部分もあるため, 改めて例と計算編に関数解析の章を追加してまとめました. どれも関数解析を勉強したと自称するなら自力で証明をつけられないといけない問題です. そしてどれも無限次元固有の現象であり, 関数解析の基礎を華やかに彩る言明です.

上で紹介した藤井さんの言明では量子力学基礎系の話題に触れていますが, よくも悪くも無限系の統計力学や場の量子論の数学的側面でも大事な性質です.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 特殊相対性理論ロシア語版第三文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第三文

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今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第三文

今週から翻訳作成修行に並行してロシア語文法学習を再開しました. 簡単に全体像メモと暗記用の表を作っているところで, この暗記作業を進めつつ翻訳パートを整備していく予定です. 暗記は本当につらいのですが, 逃げると逆に後がつらいのではじめに気合を入れてやらねばなりません. 文法学習と単語・活用暗記がないと毎回その調査で面倒なことこの上ないので, やらざるを得ない状況を作るための翻訳学習でもあります.

文構造
  • Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита, "The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet,"
    • в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
      • согласно обычному представлению, "according to the usual notion,"
      • в которых движется либо одно, либо другое из этих тел, "in which either one or another one of these bodies moves"
  • The phenomenon observed here depends only on the relative motion of the conductor and the magnet, whereas, according to the usual view, the two cases in which either one or the other of these bodies moves must be strictly distinguished.

まず動詞を確認すると過去分詞のнаблюдаемое (observe), 三人称単数現在形のзависит (depend), 三人称単数現在形のдвижется (move), 原形のбыть (be)があります. したがって主文の他に従属文が二本あり, 接続詞・関係代名詞も二つあります. これにしたがって上にように分けました. 各要素を詳しく見ましょう.

Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита

動詞はзависит (depend)で三人称単数現在形なので, 主語は三人称単数, зави́сеть от + 属格でdepend onなので属格の名詞も必要です. ここではявление (phenomenon)が中性名詞の単数主格・対格なのでこれが主語, Наблюдаемое (observed)はявлениеにかかります. здесь (here), только (only)は副詞なので文構造上は無視できます. относительного (relative)は男性形で属格の形容詞, движения (движение, motion)は中性で単数属格または複数主格・対格なのでこのセットでзави́сеть отのотの支配を受けます. 最後にпроводника и магнита (conductor and magnet)は男性名詞単数形の属格, 男性名詞単数形の属格なので, of conductor and magnetの形でmotionを修飾します.

まとめると次のように英訳できます.

  • The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet
в то время как, два случая, должны быть строго разграничены

動詞はбытьです. (TODO 不定形なのはどういうこと?)

まず冒頭のв то время какは熟語でwhile, whereasの意味です. должны (obligated, distinguished)は形容詞で複数形, строго (strictly)は副詞, разграничены (TODO これ何?)

  • (TODO) whereas two cases must be strictly distinguished
согласно обычному представлению,

これは前置詞が導く副詞句です.

先頭のсогласно (according to)は与格支配の前置詞, обычному (usual)は男性与格, представлению (notion)は中性名詞の単数形与格です. (TODO 格は噛み合うが性が合わない. どう理解すべき?)

  • according to the usual notion,
в которых движется либо одно, либо другое из этих тел,

これの動詞はдвижется (move)で不完全動詞の直説法三人称単数現在形です. ここから主語が決まります.

冒頭のвは前置詞格または対格支配の前置詞です. 次のкоторыхはwhichにあたる男性名詞・疑問詞・関係代名詞で, 複数形の属格または前置詞格, 活動体の対格です. (TODO 関係代名詞が受けるのは何? 文章からすればこれはслучая <- случайを受けるべきだが, случаяは単数(属格)では? случаяはдваを修飾し, これが複数だとみなす?)

ли́бо оди́н, ли́бо друго́й=either one or the otherの熟語表現に注意して続きを読みましょう. либо (if)は接続詞, одно (one)は男性名詞の中性単数主格・対格, другое (other, another)は限定詞で中性単数の主格・対格, из (from, out of)は属格支配の前置詞, этихはэтот (this)の複数属格・前置詞格・活動体与格, тел (body)は中性名詞の複数形属格です. したがってлибо одно, либо другоеがセットでeither one or the other, из этих телがセットでout of these bodiesです. либо одно, либо другоеは単数の主格と見るべきで, 動詞からしてもこの見立てが正しいです.

まとめると次のように訳せます.

  • in which either one or another one of these bodies moves
単語
  • наблюдаемое: 動詞, 不完了体: to watch, to observe; to study; to supervise, to take care of
    • present passive imperfective participle of наблюда́ть (nabljudátʹ)
  • явление: 中性名詞, 単数主格・対格, phenomenon
  • зависит <- зави́сеть: 動詞, 不完了体: to depend (on), to rely (on) [+ от (genitive)]
    • third-person singular present indicative imperfective of зави́сеть (zavísetʹ)
  • здесь: 副詞, here
  • только: 副詞: only, but
  • от: 前置詞, 生格(属格)支配: from, since
  • относительного <- относительный: 形容詞, relative
    • 男性形, 属格, accusative animate
  • движения <- движение: 中性名詞, 不活動体, 単数属格または複数主格・対格, motion
    • inflection of движе́ние (dvižénije): genitive singular, nominative/accusative plural
  • проводника <- проводни́к: 男性名詞, 活動体・不活動体: conductor
    • inflection of проводни́к (provodník): genitive singular, animate accusative singular
  • и: 等位接続詞, and
  • магнита <- магнит: 男性名詞, 不活動体, 単数属格: magnet
  • в: 前置詞, 副詞
    • в то время как = while, whereas
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
    • prep., Adverb, infinitive marker: (en) at, in, into, per, to, (ja) に, (de) im, (fr) dans, (it) nel, (sp) en, (cn) 在, (tw) 在, (ko) 에, (ar) في, (fa) که در, (da) i, (el) σε, (eo) en, (hi) में
  • то <- тот: 中性主格・対格, that, those, the one
  • время: 中性名詞, 単数主格・対格, 時間
  • как: 接続詞, 副詞, how, what, like, as, suddenly
  • согласно
    • 前置詞 (+ dative case, 与格支配), according to, as to
    • 形容詞: short neuter singular of согла́сный (soglásnyj)
  • обычному <- обычный: 形容詞, 男性与格, usual, customary
  • представлению <- представление: 中性名詞, 不活動体, 単数形与格
    • introduction, presentation, performance, idea, concept
  • два: 男性・中性名詞, 数詞, 2
  • случая <- случай: 中性名詞, 単数属格, case
  • в: 前置詞
    • (location) in, at, on [+prepositional]
    • (direction) to, in [+accusative]
    • (time) at, in, on [+accusative]
    • per [+accusative]
  • которых <- кото́рый (kotóryj): 男性名詞, 疑問詞, 関係代名詞: which
    • genitive/prepositional plural
    • animate accusative plural
  • движется: 不完全動詞, 直説法三人称単数現在形, move
    • third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
  • либо: 接続詞, if
    • ли́бо оди́н, ли́бо друго́й = either one or the other
  • одно <- оди́н: 男性名詞, 中性単数主格・対格, one
    • nominative/accusative neuter singular of оди́н (odín)
  • другое <- друго́й: 限定詞 other, another, different, else, next, second
    • nominative/accusative singular neuter of друго́й (drugój)
  • из: 前置詞, 属格支配
    • from
    • out of
    • of, through
  • этих: pl (demonstrative), inflection of э́тот (étot)
    • genitive/prepositional plural
    • animate accusative plural
  • тел <- тело: 中性名詞,複数形属格, 体
  • должны <- plural of до́лжен (dólžen), 形容詞, obligated
  • быть: 動詞, 不完全動詞: to be
  • строго
    • 副詞: rigorously, strictly, strongly, pronouncedly, religiously, definitely
    • 形容詞: short neuter singular of стро́гий (strógij)
  • разграничены ?

2022-03-26

数学・物理 ミニ講座完成/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 勝手に宣伝: 長谷川雄之, 数論アルゴリズムの数学的基礎
  • 勝手に宣伝: 雪田修一, 代数学のレッスン 計算体験を重視する入門
  • ツイート紹介: 楕円曲線の魅力
  • 勝手に宣伝: 沙川さんが本を出すらしい
  • 勝手に宣伝: 片桐孝洋・大島聡史, C&Fortran 演習で学ぶ数値計算
  • 勝手に宣伝: 宮岡礼子『極小曲面』
  • ツイートから: 場の量子論の数理物理の研究者
  • 大島利雄先生のPDF紹介: Japanese TheoremとRisa/Asir
  • 例と計算編をもとにした通信講座を作ろう
  • 通信講座の具体的な話
  • プログラミングのミニ講座, 素数判定編完成
  • 適切な言語で読む
  • 今週の問題

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勝手に宣伝: 長谷川雄之, 数論アルゴリズムの数学的基礎

3月下旬新刊『数論アルゴリズムの数学的基礎』長谷川雄之(学術図書出版) 理工系の学生を対象として,初等整数論とその応用について解説する目的で書かれた.

  1. ユークリッド互除法
  2. 合同式
  3. オイラー関数
  4. 原始根
  5. 平方剰余の相互法則
  6. ミラー?ラビン判定法
  7. リュカ数列
  8. 2次ふるい法

ちょうどいま進めているプログラミングミニ講座のテーマとしてばっちりそうでとても気になっています. これ以外にも勉強しないといけないこともあって, なかなか時間取れないですえん. とりあえず読書リストに突っ込んでおきました.

勝手に宣伝: 雪田修一, 代数学のレッスン 計算体験を重視する入門

4月上旬新刊『代数学のレッスン 計算体験を重視する入門』雪田 修一(日本評論社) 代数学でつまずいた学生を想定して書かれた本。演習問題で計算体験を習得し、証明のパターンを身に着けることに主眼を置いた。

この『演習問題で計算体験を習得し、証明のパターンを身に着ける』が重要です. 今年, 例と計算編を展開している大きな理由です. まだ出版されておらず中身を見たわけではないのでこの本自体の評価はできませんが, 例と計算編の意義をサポートしてくれる本でもあるため注目はしています. まだしばらく純代数の議論には進められないので, もしあなたが代数に興味があるなら手に取ってみてはどうでしょうか.

ツイート紹介: 楕円曲線の魅力

面白いツイート群だったのでまとめておきました. 楕円曲線も一度きっちり勉強してみたい対象です.

数学詳しい人に聞きたいけど、楕円曲線ってなんで豊かな性質を持つのですか?もっと高次式の曲線考えたらそれも楕円曲線みたいに豊かな性質持ちますか? 人類はまだ高次の曲線の性質を知らないから楕円曲線の研究をやってるのか、もうすでにいろいろ分かった上で楕円曲線が特別に面白いのかどっちなんだろ。

(ガチの代数勢でないので詳しくは知らないですが、)昔見た動画。 楕円曲線はなぜ特別か?@第10回日曜数学会 お酒を飲みながら数学の話をするイベント「日曜数学会」。そのメイン企画である数学LT(5分間の発表)...

座標の有理式で書ける点と点の演算が定義され、曲線そのものがそれでアーベル群になるからでしょう。こういう性質を持つ曲線は楕円曲線しかありません。(高次の曲線への拡張(ヤコビ多様体)もあるけれど、関係は直接ではないし、手でかけるほど簡単でもない)

これに対してもう少し詳しい話.

「楕円曲線はなぜ豊かな性質を持つのか?」というのは大変興味深い問いだと思います。 「穴の数が1個だから」という答えが僕の理解です。 例えば楕円曲線が持つ豊かな性質として、その幾何学と非常にマッチした「群構造」があります。?/(格子) という構造を持つと言い換えても良いです。

上の話をまとめると、楕円曲線が持つ様々な性質のうち群構造については 穴の数が多い曲線に対しては一般化できず、代わりに?^g/(格子)に一般化できる ということです。 となると群構造以外の他の性質はどうかが気になりますが、どうやらあまり研究が進んでおらず未解明の部分が多いような気がします。 例えば、楕円曲線が持つ豊かな理論の一つに楕円関数論がありますが、これを他の曲線に拡張する研究は他分野ほどは進んでいない印象があります。 (※楕円関数論の拡張については、岩手大学の大西良博先生が大変興味深い研究を精力的にされております。参考:URL ……というような事情から、 「高次式の曲線も楕円曲線のように豊かな性質を持つか?」 という元ツイ2番目の問いに対しては ・元の曲線は持たないがC^g/(格子)が持つ性質もある ・持つかどうか未解明な性質もたくさんある というのが私の持ちうる答えになります。 ※ここで「高次式の曲線」と「穴の数が多い曲線」を同一視して話をしています。一般に曲線の定義方程式の次数が上がると穴の数も上がります。

ここで 「楕円曲線が豊かな性質を持つのは穴の数が1だからだ」 という最初の話に立ち返ってみたいと思います。 これは逆に言うと 「曲線の穴の数が1なら豊かな性質を持つ」 と言ってしまえそうです。 ※対偶ではないので論理的には間違っています 3月19日 そこで、抽象度の高い数学の理論では 「穴の数が1の曲線を楕円曲線と呼ぶ」 としてしまうのです! ※数学ではこういう逆転現象がよく起こります 実際のところ、この定義は元々の楕円曲線の定義と等価であることが分かります。 y^2 = ax^3 + bx^2 + cx + d という定義方程式を持つ曲線だ、というものです 「穴の数が1の曲線を楕円曲線と呼ぶ」 という定義を採用することのメリットは、適切な高次元化の方向性を考えやすくなるということです。 この方向性での高次元化としてカラビ・ヤウ多様体というものが考えられ、現在非常に活発に研究されています。

※1次元カラビ・ヤウ多様体が楕円曲線

まとめると、 「楕円曲線はなぜ豊かな性質を持つのか?」 という問いは 「楕円曲線の穴の数が1だから」 と答えることができ、しかもこの答えを掘り下げることで現在最前線で研究されている概念(カラビ・ヤウ多様体)に到達できる、ということになります。 元の問いの重要性が分かると思います。 ここで書いたことは脇道に面白い話題がとてもたくさん転がっていて、本当はそれも話したいのですが、思っていたよりずっと分量が長くなってしまったのでここで打ち切ります。 この話題で僕が大好きなモジュラー曲線について触れないのは僕にとって有り得ないことなのですが、ぐっとこらえました(笑)

楕円曲線は代数曲線で閉リーマン面と関係があります. リーマン面については別途サイト内にに参考情報を書いています. ぜひ参考にしてください. リーマン面もいったんノートを書いたきり, きちんと復習できていないのでこれもどこかできちんと整理したいとは思っています.

勝手に宣伝: 沙川さんが本を出すらしい

4月発売(arXiv版あり) Entropy, Divergence, and Majorization in Classical and Quantum Thermodynamics

6月発売第2版 量子測定と量子制御 2016年 03 月号 [雑誌] (数理科学 別冊) URL

7月発売シリーズの「非平衡熱力学」 基本法則から読み解く物理学最前線

量子情報・測定まわりの量子力学は前から気になっていますし, ノーベル賞のパリージの場の理論・統計の本が面白いというのも見てから改めて統計力学熱が高まっていますし, この間相談を受けてから熱力学熱も高まっています. きちんとノート作りつつ再勉強しつつ, コンテンツ化もしたいですね.

勝手に宣伝: 片桐孝洋・大島聡史, C&Fortran 演習で学ぶ数値計算

これも読んでみたい本です. 数値計算も体系的に勉強したわけではありません. CやFortranだと何でグラフやアニメーションを作るのでしょうか. Gnuplot? お絵描きが絡んだところで腐りにくいコードを何でどう書くか, いまだに解が見えていません. 数値計算はほんの一歩進んだだけで一気にとんでもなく難しくなることもあり, どこまでどう手を出すかも難しいです.

勝手に宣伝: 宮岡礼子『極小曲面』

唐突ですが、間もなく「共立叢書 現代数学の潮流」の新刊を発行します。本書は、他分野に及ぼす影響も期待される、と言われている「極小曲面」に関する書です。https://kyoritsu-pub.co.jp/series/18/

本書は、極小曲面論が研究の原点でもあった筆者による、極小曲面論の基礎を中心として執筆された書籍である。基本を身に付けることができるよう、Euclid空間内に議論を絞り、関数論的アプローチと幾何解析的アプローチ、双方の良いところを取り入れ、解説している。また、前半は多くの知識がなくとも理解できるように、また後半は専門的な議論もあるが、今後の研究の展開につながるように、意識して書かれている。さらに、類書にはあまり見られないPlateau問題の解の存在とレギュラリティについても解説しており、価値の高い1冊と言える。

関数論と幾何解析という私の興味があるところにフォーカスがあるようで, とても気になっています. 関数論や微分幾何もいろいろノートを作ったのですが, その見直しさえできていません.

ツイートから: 場の量子論の数理物理の研究者

トポス量子論は全く把握していませんが、場の量子論の数学方面で、作用素論方面だと新井朝雄先生とそこの関係者(北大の宮尾さん信州大の松澤さん佐々木格さん鈴木章斗さん)あたりがいます。 後は確率論と作用素論で九大の廣島先生(とその関係者)がいて、作用素環だと定年退官されていますが小嶋泉先生とその関係者(例えば西郷さん)がいます。完全に数学としてやっている人なら東大の河東先生もそうです。 九大は原さんもいますし、比較的近いと言えば近い厳密統計力学の松井先生も九大です。あと服部さんはTwitterにもいます。これは私の守備範囲の解析系の人達です。場の量子論ではなく超弦系なら何というかいっぱいいます。 mp_arcやarxivのmath-phを眺めていると、人と研究の様子がわかるので眺めてみてはどうでしょうか。ずっと眺めているとどんなキーワードで調べると何が出てくるか、どんなテーマやどんな人の研究に興味があるかも少しずつ見えてきます。

大島利雄先生のPDF紹介: Japanese TheoremとRisa/Asir

大島利雄先生による「Japanese Theoremについて」相変わらずRisa/Asirに対するHackがすごいです.https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~oshima/lecture/sangaku0.pdf os_muldif.pdf が540ページ超えてる.https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~oshima/muldif/os_muldif.pdf

大島先生に関して次のような逸話を聞いたことがあります.

研究科長のような職につくと事務の負担でふつうは研究が捗らなくなり, 出せる論文も減るのがふつうだろうが, 大島先生は東大の研究科長になって論文数が増えた. 理由はライブラリを書かなくなったから.

上の引用にもあるように大島先生はプログラムをゴリゴリ書ける人で, 研究をはじめるときにはまずライブラリの整備からはじめるそうです. 研究科長になって時間が取れなくなるから, とプログラムを書かないようにして研究時間を捻出したとか.

当人から聞いたわけでもないので完全に真偽は保証できないものの, 化け物クラスの人類ではあることも間違いありません.

例と計算編をもとにした通信講座を作ろう

この間いくつか相談を受けたので, 改めて通信講座を作る予定です. あとでまたきちんとした文章を書く予定ですが, いったんいくつか考えていることをシェアしておきます.

まずどのような要望があったか整理します.

  • 大学レベルの数学や物理がやりたい.
  • 理工系の共通言語としてきちんと理解したい.
  • 必ずしも数学・物理が専攻だったわけでもなく, 教養レベルの内容も定着しているわけではない.
  • 自分自身の専門を含め, いろいろな分野を勉強する上で障害になっている. 必要だから勉強しなければならない面もあるが, 数学や物理が純粋に面白いとも思っている.
  • 一人ではなかなか続けられない. 行き詰まったときには相談できる相手もほしい. 独学では勘違いしたままになってしまうかもしれない.
  • 自分でペースを作るのは大変だから予め小分けにしてもらえると嬉しい.
  • 通信講座の形式は魅力的.
  • (以前私が展開していた通信講座は)値段もお手頃だったので, このくらいだと嬉しい.
  • 物理では熱力学や量子力学など, 単なる教養を越えて幅広く勉強したい.
  • 毎回確認のミニクイズなどもあると嬉しい. クイズには解答もほしい.

細々とした話はもっとありますが, おおよそこんなところです.

以前やっていた現代数学探険隊解析学編はさすがにハードすぎます. 時々メルマガでも宣伝協力しているように, 最近個人指導系のサービスはかなりたくさんできていますし, 個人で請け負っている人もそれなりに見かけます. ただ個人指導系はかなりの金額になるため, 何かいい落とし所を作りたいとはずっと思っていました. 例と計算編のコンテンツ販売もその一つです. そして今回, 実際にお問い合わせも入ったので, モニターになってもらっていい落とし所を探ろうと思っています.

いま考えているのは, 例と計算編の拡充を進めつつ, これをもとにした通信講座コンテンツです. 具体的に要望をもらったところから整備しようと思っていて, 特に物理の方, 古典力学からはじめたいと思っています. これは常微分方程式とそのシミュレーションの観点から, プログラミング系のネタ・コンテンツも作りやすい利点があります.

以前YouTubeに古典力学の動画を投稿していて, ちょうどそのコンテンツの資産もあります. それを通信講座として整え直そうと思っています. いい感じに微分積分の復習もできますし, 運動学として曲線論(微分幾何入門)にも触れられます.

問題は料金と課金体系です. 例と計算編をもとにする以上, その購入者の方に対する金額には配慮が必要です. 一方で通信講座の運営という点で別のサービスでもあり, その運営費用も必要です.

あと, どうしても外せない大事な点があります.

  • 一度では身につかないから何度もくり返し取り組んでほしい. (気軽にくり返し受講できる金額・課金体系が必要.)
  • あまり長期だと集中が切れる上, 社会人だと長期にわたると状況も変わってくるため, 長くても3ヶ月ワンセットくらいの塊で提供したい.
  • 一回分はなるべく短く.
  • お金を出したからこそ続く.

最後の項目はこの間全然違う知人と話したときの話でもあります. 安くないお金を払ったのだからやらないと損だ, という話でもあります. そういえば, 上に書いたように(多少間違い(タイポ)もあるのは許してもらうとして), 古典力学などいくつかのコンテンツはYouTubeに放流しています. リストにまとめてもいるのでそれで勉強したい方はそれで進めてもらっても構いません. 異様なやる気を継続できるなら問題ないでしょうが, そうではないと思っているから通信講座を作る話になっています.

ちなみに, 私自身, 有料の通信講座を止めている間, 調査も兼ねていろいろな通信講座に参加していたことがあります. 例えば一週間に一度, 15分程度の動画コンテンツが一年半配信される講座を受講していて, この程度でも結構大変でした. もちろん興味があってそれなりの金額を払ったにも関わらず, 少し気を抜くと後回しにしがちでした. 最終的には気合を入れて必ず勉強の時間をおさえて取り組んではいたものの, 一定の興味があって受講した講座さえ, 毎週15分がこれ程きついのかと驚いた経験があります. やる気があったはじめの二ヶ月程度はともかく, やはり一年半の長丁場がきついのは実体験としてあります. せっかく相談を頂いたので, 自分の講座としてこのあたりを調整するいい機会だと思っています. きつすぎず, 気分もリフレッシュしつつ, モチベーションを保ちながらテンポよく勉強できる通信講座の形を探っています.

長くなってきたのでいったん切ります.

通信講座の具体的な話

まずは改めて予定している内容を書きます. 正直ベースで書いておきます.

  • 例と計算編を追記・整理しながら, テーマごとに切り貼りしてコンテンツ集の形にして配布する.
  • 2-3ヶ月の短期(?)集中講座にする.
    • たくさん作りたい.
  • バリバリ進めたい人向けにその期間分のコンテンツ全体は配布してしまいたい.
    • これとは別に各回のコンテンツを配布する.
  • 短期集中の特性を活かして, 一週間に二回配布程度の頻度にしたい.
    • 一回分はなるべく小さくする.
  • 上位(?)コースではオンライン自習室を作り, そこで簡単な交流や質疑応答対応する.
  • 下位(? 安価な)コースでは原則コンテンツ配布だけ.
    • 念のため: コンテンツのタイポ指摘・確認などを含めた問い合わせは当然受け付ける.
  • 必要に応じて複数回受講を前提にする.
    • まず私自身の負担を小さくする目的がある: 質疑応答は大変なのでなるべく減らしたい.
      • ハードな質疑応答が続いてしまって疲弊するのを避けたい.
      • (現状)専業で数学・物理教育をしているわけでもなく, 私が潰れたら元も子もない.
      • もちろん配布するコンテンツの質自体には妥協しない.
    • 全体像を掴むのも大事なのであえて細かいところにこだわりすぎないスタイルの勉強法を推したい.
      • 仕事や種々のプライベートもある大人で細かいところにこだわりすぎると全く進まない.
    • 一回やってわからなくてもずっと続けていれば三年後くらいにわかる可能性もある.
    • のんびりじっくり進めてほしいし, 折に触れて気軽に復習できるようにもしてほしいし, それを促しもしたい.

この基本方針のもとでコンテンツの配布法や金額も決めます. 例と計算編を買った人には当然その分安くします. 私がメンテしやすいような仕組みも必要で, 細部はまだまだ詰める必要があります. 本当に細かい部分はやりながら調整する予定です.

ここでも適宜案内はする予定ですが, もしあなたが通信講座に興味があれば, メールなり何なりでご連絡ください.

プログラミングのミニ講座, 素数判定編完成

上記ページにミニ講座本体の三コンテンツへのリンクと, メール講座用の原稿が置いてあります. 一応メール講座登録ページへのリンクも置いておきます.

コンテンツと原稿は上のページに置いてあるので, もしあなたがバリバリ読み進めたいなら, メール講座を待たずにどんどん読み進めてしまってください.

タイトル通り素数判定の話で, ごく基本的な話しか書いていません. 他にも何というか「物理学科の数学スタイル」というか, 「習うよりも慣れろ」方式で書いています. これは世にいろいろな本やコンテンツがあること, 陳腐化を回避するための対処でもあります. プログラミング学習として基本的なことは意図的にほぼ省いてあり, これでどこまで受け入られるかの調査の意味もあります.

これはこれで計算に力点を置いてあり, 今年のテーマ, 例と計算の一環です. メール講座では数学系プログラミングの学習案内も書いています. 一応リンクも張っておきます.

特に第五回以降が学習案内です.

久しぶりに本格的に活動しようと思っていて, TwitterかFacebookで広告を打ってみようと思っています. もしあなたも宣伝協力して頂けるなら, メール講座登録ページをぜひ紹介してください.

もちろん「これだとこういう点が勉強しにくい」といったご批判も大歓迎です. あと地元の区議の方にも改めて活動報告しないといけないですね.

適切な言語で読む

中高の古典の授業、枕草子の音読課題で先生が「君ら関西人なんやから関西弁で読みなさい。当時の標準語は京言葉やで」と言うので関西アクセントで読んだら、訳のわからなかった呪文が途端に生きた言語としてスルッスル入ってきたカルチャーショックから 古典を好きになったきっかけは何ですか

いやほんとあの体験は凄かった 関西弁で読むだけで聞き慣れない古典単語や文法も感覚的に意味が通じるんだもの あの感動が忘れられなくて、阿岐の書く平安小説の登場人物はああいう口調なのです そしてこれは大学受験あまりに関西人有利では、と圧倒的不公平を感じもした だから関西圏の高校生には社会は日本史選択にしとけと思うし古典を出題する大学を受験しろと思う 平安京藤原京長岡京の位置関係を問う問題で悩まないでいいのは君らだけの福音なんだぞ門前の小僧ども! 世の中、単語帳で必死に覚えなければ「淀川」の河川名を忘れてしまう人のほうが多いんだよ?

(こっちにもぶら下げておこう) 10代の多感な頃にそういう衝撃を受けると大人になって平安時代舞台の歴史小説とか書いちゃうんだぜ、もちろん台詞は古語+京言葉??

語学ネタに入れるべきかもしれませんが, あえてこちらに入れました. プログラミング言語ネタとしての議論でもあり, 数学や物理の話でもあります. やはり自然に関する議論がしたければ, 自然言語よりも数学を使うべきでしょう. プログラミング言語にしても, 問題ごとにある程度は適切な言語があります. トレードオフがあるにせよ, 高速な処理が必要なところで遅い言語でがんばるのは非効率です.

メモだけしておいて何を書こうとしていたか忘れてしまいました. 思い出したらまた何か書きます.

今週の問題

  • 行列不等式を(も)背景にした不等式(広義の二次形式)
  • 一次元のアフィン変換群

不等式処理能力を持つ大学受験生はそうそういないという点で実際にはまずありえないとは思うものの, 前者は大学受験でもありそうな和に関する不等式が, 二次形式, もっと言えば正型関数・特性関数・ボホナーの定理関係の深い議論につながり, さらに量子情報系の議論にまで発展します. 例えば完全正値性と関係があります. 2022-03-26時点では例と計算編の「2.9.3いろいろな不等式, 2.9.3.2 広義の二次形式」に収録しています. ボホナーの定理は解析学編でミンロスの定理として何度か触れています. 通信講座とも絡めた販売中のPDFコンテンツには入っていませんが, 手元の解析学編の続編ノート中, 確率論パートには収録してあります.

全然関係ない(はず)ですが, 微分幾何でもボホナーの定理という有名な定理があります. これも未公開の微分幾何ノートには収録してあります. いったんゴリっとノートを書いたきり, 詳しくチェックしていないのでタイポなどが大量にあり, 公開できるレベルではありません. これも早く公開したいとは思っていますが, まだまだ時間がかかります.

一次元のアフィン変換群は非コンパクトで非可換かつ連結な二次元リー群です. リー環や指数写像が具体的に書ける上, いろいろな計算もやりやすいのでこれも例と計算編としては一つ大事な対象です. これはいったん幾何編の線型代数パートに突っ込んでいて, 例と計算編に移動するかどうか考えているところです. 幾何編で行列リー群の一般論の指数写像につなぎで入れたのですが, 具体例にうつした方がいいかを検討中です.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 特殊相対性理論ロシア語版第二文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • ドイツ語Zucker
  • 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第二文

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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ドイツ語Zucker

私が所属している語学コミュニティのウクライナ語の講義中に出た話題をちょっと調べてみたら面白い話が出てきたので.

ウクライナ語の「砂糖」はцукорと書き, カタカナで無理やり読みを書けば「ツコル」です. 上記リンク先を見るとわかるように, ポーランド語cukierやドイツ語Zuckerの借用語で, Zuckerは英語sugarと同根です. さらにWiktionary先生によると, Zuckerはアラビア語・ペルシャ語・サンスクリットと同根です.

面白かったのは英語のところです. 人名由来でありつつ微妙に意味も交錯するZucker ratのような概念もあるようでちょっとびっくりしました. 例えばZucker fatty ratという概念があります.

  1. 由来

1961年 Zucker らにより13C 系ラットとM系ラットの交雑種13M 系の中に突然変異体として発見された。

1980 年代前半、米国インディアナ大学において通常は糖尿病を発症しない肥満モデルであるZucker fatty ラットの中に糖尿病を発症するラットが見い出された。これらのラットを選択的に交配することにより確立された自然発症糖尿病モデルが Zucker Diabetic Fatty (ZDF) ラットである。

今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第二文

文法を並行して勉強中なので, まだよくわかっていない部分があります. 他にもわかった気になっているだけで実際には全くわかっていない(間違っている)部分もあるでしょう. 変なところがあればぜひ教えてください.

ついでに, ゼレンスキー演説をネタにウクライナ語 (いま話題なように一応ロシア語とも近い)を勉強したいとも思っています. 各国の演説で各国への翻訳はあっても原文が見当たりません. 日本のウクライナ大使館アカウントにもリプライを飛ばしてみましたが, 返信がない状態です. もしかしたらウクライナ本国のサイトには演説原文が置いてあるとか, 他にも何かしらどこかしらに演説原文があるかもしれないと思ってはいますが, ウクライナ語(またはロシア語)はまだ全然読めないので探せません. もしあなたがご存知でしたらぜひ教えてください.

文構造
  • Вспомним электродинамическое взаимодействие между магнитом и проводником с током.
    • например

напримерは副詞の挿入で, 残りがシンプルな文です.

TODO 先頭のВспомним (to recall)が動詞です. 上記の英訳ではtakeが対応しています.

электродинамическое (electrodynamic)は形容詞の対格で, взаимодействие (interaction)は中性名詞の主格または対格なので, взаимодействиеは対格で, электродинамическоеが修飾しているとみなせます. между (between)は具格支配の前置詞で, магнитом (и) проводникомはともに具格だからこれらがセットです. ここでиはandの意味の等位接続詞です. さらにсは具格支配の前置詞でтоком (current)も具格だからこれらもセットです.

まとめると次のように英訳できます.

  • Recall, for example, electrodynamic interaction between a magnet and a conductor with current.
単語
  • вспомним <- вспомнить: 動詞, to remember, to recall, to recollect
    • first-person plural future indicative perfective of вспомнить
  • например: 副詞, for example, e.g., for instance
  • электродинамическое: 形容詞, electrodynamic
    • динами́ческое: accusative animeate, 中性
  • взаимодействие: 中性名詞, 単数主格・対格, interaction
  • между: 副詞, (with instrumental, rarely with genitive) between, among
  • магнитом <- магни́т: 男性名詞, 単数, 具格, magnet
  • и: 等位接続詞, and
  • проводником <- проводни́к: instrumental singular: 男性名詞, conductor, 具格単数
  • с: 前置詞
    • with (+ instrumental)
    • from, off, from off, from below (with abstract nouns; nouns entailing a flat, open area; and special exceptions; + genitive)
  • током <- ток: instrumental singular, 電流

2022-03-19

数学・物理 数学を独学で勉強した人にありがちなこと/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 微分演算子に関わる議論
  • ガウス型確率変数に対する問題
  • 講座紹介: 『線形代数と群の表現I, II』に関する講座
  • ページ紹介: 原岡喜重先生の「数学基本動作集」
  • 数学を独学で勉強した人にありがちなこと
  • note紹介: 「わかりやすい説明をすると「結論を理解する労力」が「その結論を導き出した労力」と誤解されるときがある」
  • 書籍紹介: 池田岳, 『テンソル代数と表現論 線型代数続論』(東京大学出版会)
  • 近藤効果の近藤淳氏死去
  • 記事紹介: 「プログラミングの最初の壁は逐次実行」
  • 書籍紹介: Numerical Methods for Scientific Computing
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

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微分演算子に関わる議論

Twitterで見かけた量子力学の作用素論の話題に対していくつかコメントしたので, こちらにも転載しておきます.

量子力学の演算子の具体例として行列ってありなんだ(そこから…)

有限次元の線型空間は全て同型なので、適当な線型全単射(具体的には、演算子Aの固有関数を|n>として、をm,n成分に持つ行列)によって、固有関数に対応したベクトルを基底とした数ベクトル空間に飛ばして議論できるというのが背景にあります (有限次元なら微分演算子の空間だろうと使えます)

うぉぉ…線型空間の同型ってそこに生きてくるんですか… 微分演算子を含んでいてもその議論ってできるんですか…?

無限次元で微分演算子(作用素)を含んでいても適当な範囲でいろいろな議論があります。離散性を外れたところの議論で典型的なのは例えばスペクトル理論として知られています。新井朝雄先生の著書群にかなりの程度まとまっています。ボリュームはそこそこあります。 話が少しずれますが、量子力学と関係するところで微分作用素の固有値解析や作用素的な性質と物理との関係で出てくる多彩な議論があります。量子力学では作用素の固有値と観測値を関係させるわけですが、微分方程式を記述するタイプの微分作用素にも一定の物理が乗るべきです。 典型的には量子力学・電磁気学での特殊関数論とそこからの固有値・固有関数の議論があります。ここからさらに一般の微分方程式論に波及します。例えば境界条件の設定は物理と直結することになっているので、境界条件が変わると微分方程式に対応する微分作用素の数学的な性質にはねてほしくなります。 量子力学の(少し古い?)数理物理の典型的な課題の一つが作用素の自己共役性(エルミート性)の議論です。よく堀田さんが「その議論に何か意味がありますか?」みたいなことを言いますが、微分方程式が自然をよく近似する範囲では、逆に物理を反映した議論として数学的には重要です。 応用上問題になる(と数学サイドが思っている、または主張する)のは、数値計算または工学的な議論です。応用上、境界をはじめとして一部の情報しか数値計算に使えません。数学的には無限個情報が必要なところに有限個の情報しか使えないとも言えます。 具体的に何かはともかく、例えば初期条件・境界条件に対してセンシティブな系で精度が悪い情報しか取れない状況下でどれだけのことが言えるかは、工学的にも意味がある(可能性がある)議論です。そして「鉄の製造現場を動かす数学イノベーション」のように数学者と企業の共同研究もあります。 ここで議論になっている逆問題は工学でも議論している人がたくさんいます。例えば「数学で命を救う…!? 数学の"超難問"を解いたら「痛くない乳がん検査装置」が実現した…!」。専門でもないので最近の事情は把握できていませんが、伝統的にロシアが強い(強かった)と聞いています。 以前偏微分方程式の逆問題?拡散方程式の数学と物理と工学というトークをしたこともあります。

ガウス型確率変数に対する問題

ガウス分布 N(x) があって x1, x2 ~ N(x)のとき、x1-x2 の値って何分布に従うかご存じの方いらっしゃいますか?どうやって求めたらいいのか。

例と計算編の例によさそうなので収録しようと思っています. どうやって例を見つけて何を計算したらいいかわからない人もいると思うので, それに対するヒントとしてもコメントしておきます. 他人が考えている問題からヒントを得ることもよくあるので, ぜひ参考にしてみてください.

これのリプライにネット上に落ちている参考資料を紹介している人もいます. こういうのを読んでいろいろ計算してみるのも大事です. 今回, 時間がなくて計算しきれなかったのですが, これも例と計算編に突っ込んでおこうと思っています.

講座紹介: 『線形代数と群の表現I, II』に関する講座

【講座のお知らせ】4月から平井武先生の『線形代数と群の表現I, II』(朝倉書店)の講座を開講します。線形代数や群について、豊富な応用例と共に高校程度の予備知識で解説します。演習問題の添削もやります。土曜午前隔週開講、オンラインで講義録画も自由にご覧になれます。

これは「すうがくぶんか」の梅崎直也さんのツイート・講座です. 梅崎さんと直接お話したことなどはありませんが, 非常に優秀な人だとは聞いています. 私が例と計算編で取り組んでいるリー群・リー環系の議論とも深い関係がある分野・本なので興味がある人にはおすすめです.

この本, 学部の頃だかいつだか忘れましたが, 一通り読んだのは間違いありません. そしてかなり面白いです. 二巻に物理と関わる話が載っていて, そこにも面白い記述があります.

例えばヴェイユの述懐として, 「数学者が手を出せなかったところを, ディラックとウィグナーが自らの研究の必要性のために数学者に先んじて無限次元表現論の道を切り開いた.」というような話が書いてあります. これは私の学生時代の専門と直結する話でもあります. 難しすぎて手を出し切れなかったものの, 四次元時空で相対論的場の量子論を考え, それに対する作用素環の自己同型群への作用は作用素論的にはだいたいユニタリ表現論で, まさにディラックとウィグナーが議論した世界です. ここの解析でいまだにわかっていない(はずの)話もあります.

番外編として, 自己準同型群に拡張するとふつうに作用素環上の調和解析として未知の世界が広がっているようで, 京大の泉さんの主要な業績の一つでもあります. 例えば次のPDFの4節を見てください.

表現論の近くは他にも凄まじく広大な世界があります. リー群・リー環と絡めた形で言えば微分幾何にもあって, 等質空間論・対称空間論などの議論もできます. 代数・幾何・解析のどこにもアプローチでき, 物理との関係も深い分野なので勉強して得しかありません. まだ私がしばらく触れない領域の講座なので, もし興味があるなら積極的に参加してみてはどうでしょうか?

ページ紹介: 原岡喜重先生の「数学基本動作集」

原岡喜重先生の「数学基本動作集」。 数学を学び始めた人に役立つQ&Aが載っている。 例えば 「Q.2つの集合A, Bが等しいことを示せといわれました.このときあなたは,何と何を示せばよいでしょうか?」 http://sci.kumamoto-u.ac.jp/~haraoka/action0.html

例と計算編というか, 数学・物理の学習の秘訣的なモノをいろいろ作らないといけないと思っています. 量が少なすぎてさすがにこれだけではどうにもならないでしょうが, こういうのももっと蓄積しないといけません.

量が少ないとはいえ, もしあなたが数学に興味があるなら必ず参考になるページなので, ぜひ眺めてみてください.

数学を独学で勉強した人にありがちなこと

これはp進大好きbotのコメントです.

数学を完全独学で勉強した人たちにありがちな間違いに 「厳密な定義は難しいから簡単な日本語に翻訳しよう」 「簡単な日本語に翻訳したらすごく簡単に理解できた!」 っていうのがありますが、これまでの経験上このパターンで本人に誤りを説明しても理解できた試しがほとんどないんですよね。

これ厳密な定義が分からない本人が簡単な日本語に変換する過程で全く別物になってしまっていて、理解したと思っているものは元の概念ではないんですよね。 なのに「いやこんな簡単な概念を間違えるはずない」みたいな循環論法をしてしまうんです。簡単だという結論がそもそも誤った変換に基づくのに。 この循環論法部分は(概念自体が理解できなくてもある程度誠実に数学を勉強していれば)簡単に理解できるはずなのですが、結局どう説明しても「厳密ではないかもしれないが完璧に理解している!」ってなっちゃう人たちを何年も見てきました。せっかく勉強に時間割いたのにもったいないですよね・・。

数学・物理ならともかく, 専門的な教育を受けていない情報科学や語学ではこれと類似のことをやっているのではないかといつもヒヤヒヤしています. 他山の石ということで.

note紹介: 「わかりやすい説明をすると「結論を理解する労力」が「その結論を導き出した労力」と誤解されるときがある」

"おまけ2:試行錯誤の様子は、わかりにくいからブログにも出てこない" とあるけど、むしろ逆で、だからみんなウェブ検索するときに "-qiita" するようになってしまったような

まず「わかりやすい説明」概念がいまだによくわからず, 記事の内容もそれほどよくわかっているわけではないのですが, 「試行錯誤」に一つ力点があったのでそれについて.

何にせよ理解を深める上でこの試行錯誤はとても大事で, 数学・物理・プログラミングを勉強する上での決定的な要素の一つが, まさに今年の目標である「具体例を遊び倒す」です. これを言いたいがためにこの記事を紹介したとさえ言えます.

特に自分の認識がおかしくないかを判定するのに役立つのが反例の構成です. 以前作ったDVDで反例をテーマにしたのも, 現代数学探険隊の解析学編のページで反例に触れているのも, 例と計算編をひたすらやっているのも, 競プロ学習の一環としてここ三ヶ月毎日問題を解いているのも, 全て具体的な問題を丁寧に扱うことからはじめようという意識に基づいています.

書籍紹介: 池田岳, 『テンソル代数と表現論 線型代数続論』(東京大学出版会)

3月下旬新刊予約受付中 『テンソル代数と表現論 線型代数続論』池田岳(東京大学出版会) ジョルダン標準形の理論、そしてテンソル代数から群の表現論までの道すじを、明確に動機付けながら案内する。豊富な具体例と演習問題により、理論的にも直感的にも理解が深められる。

池田岳さん, 数え上げ幾何学講義などかなり気になる本を書いている人です. 上の方で梅崎さんの表現論関係の講義の紹介をしていますが, 私も学生時代の専門は$C^*$-環・フォン・ノイマン環の表現論ですし, やはり表現論は射程が深く広く楽しいです. テンソル積は量子情報でも基本的な演算ですし, そういう視点からのアプローチもあります. 気になるモノがあればぜひ遊び倒してみてください.

近藤効果の近藤淳氏死去

日本物理学会の名誉会員の近藤淳先生が3月11日に逝去されました。近藤先生は、極低温領域での微量の磁性分子を含む金や銅などの電気抵抗の異常な振る舞いについて、その原因を理論的に解明され、その現象は「近藤効果」と呼ばれています。ご逝去を心よりお悔み申し上げます。

近藤効果, 学生時代に読んだ高橋康さんの「物性研究者のための場の量子論」に出てきたのを思い出しました. 大学院レベルの物性ももっときちんとやりたいと思って幾星霜です. まずは原・田崎のイジング本や, 田崎さんの量子多体系の本を読みたいとは思っています. 学生時代に集中講義に出たりして数理物理系の基本的な知識・全体像は知っているのですが, 具体的な数学的技術が身についていません. イジング本は査読に参加した(本に謝辞も載っている)ものの, やはり細かいところまで詰め切れてこその本なので, もっとやりたいですね.

記事紹介: 「プログラミングの最初の壁は逐次実行」

プログラムに慣れた人にとって、プログラムが上から順に実行されるというのは当たり前で学習が必要なことには思えないと思います。 「見たままやん」 となるのではないかと。

ここで詰まった記憶がないので, そういうこともあるのかとちょっと衝撃を受けています. 何か言えることがあるわけでもありませんが, 自分の備忘録的に残しておきます.

書籍紹介: Numerical Methods for Scientific Computing

Redditを見ていたら流れてきました. 例と計算編のそのものずばりの内容でもあります. しばらくはもっとシンプルなことしかしませんが, 興味がある人はいるだろうと思ったので, 一つの資料のシェアということで.

今週の問題

  • 行列リー群の正規部分群による商群は行列群とは限らない.

こういう事例があることだけ知っていて, いまだに具体例を知りません. 調べていてこの言明だけ出てきて例がきちんと書かれていない (正確には例は挙がっていたが証明がなく, まだその証明をつけていない)のでいい加減きちんと調べようと思っているところです.

この一方で面白いのが, 有限次元リー環は行列リー環への忠実な表現を持つというアドの定理です. 確か正標数への一般化もあったような気がします. これも事実だけ知っていてまだ証明を読んだことがありません. リー群とリー環の事情の違いもあれば, リー環のレベルなら行列で片がつく面白さもあり, リー群・リー環, そして線型代数の学習をお勧めする部分でもあります. リー群を議論するなら嫌でも多様体が必要という話でもあります.

上の言明自体, 数学を勉強していく上で一つのキーになると思います. 興味があればぜひ深掘りしてみてください. 私もいつかはきちんと証明を読もうと思っています. 疑似乱数, 特にメルセンヌ・ツイスターは正標数の体上の議論を使っていて, 最近の軸の一つである情報科学・計算機科学との関連も馬鹿にできません. 勉強したいことがいつまで経っても尽きません.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 特殊相対性理論ロシア語版第一文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第一文

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今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第一文

文法は並行して勉強している常態で, よくわかっていない積み残し部分があります. どなたかわかる方いたらぜひ教えてください.

とにかく触れ続けて慣れるフェーズだと思って無理やり進めています. 暗記もやらないといけません. 先は長い.

文構造
  • Вспомним электродинамическое взаимодействие между магнитом и проводником с током.
    • например

напримерは副詞の挿入で, 残りがシンプルな文です.

TODO 先頭のВспомним (to recall)が動詞です. 上記の英訳ではtakeが対応しています.

электродинамическое (electrodynamic)は形容詞の対格で, взаимодействие (interaction)は中性名詞の主格または対格なので, взаимодействиеは対格で, электродинамическоеが修飾しているとみなせます. между (between)は具格支配の前置詞で, магнитом (и) проводникомはともに具格だからこれらがセットです. ここでиはandの意味の等位接続詞です. さらにсは具格支配の前置詞でтоком (current)も具格だからこれらもセットです.

まとめると次のように英訳できます.

  • Recall, for example, electrodynamic interaction between a magnet and a conductor with current.
単語
  • вспомним <- вспомнить: 動詞, to remember, to recall, to recollect
    • first-person plural future indicative perfective of вспомнить
  • например: 副詞, for example, e.g., for instance
  • электродинамическое: 形容詞, electrodynamic
    • динами́ческое: accusative animeate, 中性
  • взаимодействие: 中性名詞, 単数主格・対格, interaction
  • между: 副詞, (with instrumental, rarely with genitive) between, among
  • магнитом <- магни́т: 男性名詞, 単数, 具格, magnet
  • и: 等位接続詞, and
  • проводником <- проводни́к: instrumental singular: 男性名詞, conductor, 具格単数
  • с: 前置詞
    • with (+ instrumental)
    • from, off, from off, from below (with abstract nouns; nouns entailing a flat, open area; and special exceptions; + genitive)
  • током <- ток: instrumental singular, 電流

2022-03-12

数学・物理 コンピューターに教える教師になろう/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • コンピューターに教える教師になろう
  • プレプリント紹介: Shintaro Minagawa, Hayato Arai, Francesco Buscemi, von Neumann's information engine without the spectral theorem
  • Maximaを使いはじめてみた
  • 今週の問題

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コンピューターに教える教師になろう

いま作っているミニ講座に関連して次のようなツイートをしました.

収束やら数値計算が云々以前にまともに計算できる人自体激レア人材では。私が学部の頃の固体物理の講義を持っていた工学出身の表面物理の教員、講義でベクトルの内積をベクトルで割る荒技を披露していたくらいまともな計算概念で指す対象も違う。 これ、手計算なら何となくふんわりうまくいってしまうことがあるから是正されなかったのだろうが、それこそ数値計算しだした時にこの計算を実行しようとしたら破滅的なことになるから、数学学習にプログラミングをうまく組み込むの、数学科の数学学習にとっても本質的な気がしてきた。 型が強い言語にコンパイルエラーを吐いてもらいたくなる市民感覚的な話にもつながる。

素数判定の算数・数学・プログラミングのミニコンテンツの案内ページを作ってみた。 https://phasetr.com/lp/mpga01pd/ 今日適当につぶやいていたら、「コンピューターに教える教師になろう」的なコンテンツはもっと作った方がよさそうな気がしてきたのでもっとたくさん作りたい。

いま「今後の学習案内」といった後書き部分を作っている最中ですが, プログラミングコンテンツ部分はできました. もし興味があるならぜひ登録しておいてください.

プレプリント紹介: Shintaro Minagawa, Hayato Arai, Francesco Buscemi, von Neumann's information engine without the spectral theorem

今日読もうと思っていたら寝落ちしてしまってまだ読めていないのですが, 面白そうなのでメモがてらシェアします.

今は、量子論でもエントロピーを使って情報理論が研究されていますが、フォン・ノイマンが初めてエントロピーを量子論に導入したときは、古典論の情報理論さえもありませんでした。 ではどのようにエントロピーを導入したかというのが、『量子力学の数学的基礎』に載っている「半透膜の思考実験」です 彼の議論では、量子論の数学的な構造、すなわちヒルベルト空間の性質(とくにスペクトル分解)と、熱力学を利用しています。 我々の結果は、半透膜の思考実験をヒルベルト空間に頼らず操作的な記述で再構成し、「半透膜が存在すること」と「熱力学第二法則」を認めた時点で、 エントロピーについて、凹性のような情報理論的に重要な性質が、スペクトル分解を使わなくとも第二法則の帰結として導かれる、というものです。 ※正確には凸結合した状態に対してもエントロピーが定義できるという仮定がいります

自分が望む理解度に達していないものの, 学生の頃から熱力学は本当にお気に入りなので, そうしたところと関係がある議論は非常に興味があります.

あとはエントロピー. 概念上もいろいろあるのだとは思いますが, 豊富な数学的内容を持つ対象です. 例えば私の修士の頃のテーマである平衡状態の存在や作用素論・摂動論の枠でも関連する議論を使います. 次の論文で相対エントロピーやその議論でよく出てくる概念が出てきます.

他にも確率論では大偏差原理のレート関数としてエントロピーが出てきますし, 数学的に重要な役割を担う概念でもあります. 大偏差原理も統計力学の数理物理で重要な概念のようで, 勉強したいと思いつつ幾星霜です.

付録を見るとわかるように, 二次正方行列とそのテンソル積に関する議論もあります. 最近はリー群・リー環に特化していて量子情報関係の線型代数は手薄になっているものの, 例と計算編でのNielsen-Chuangの演習問題解答作りでもこうした計算をたくさんやっています. 最新の論文ベースでも大事な例の構成に使われているわけで, 有限次元の線型代数で遊び倒す意義がますます深まっています.

線型代数の勉強の進め方がわからなくて困っている方も多いでしょう. 特に物理や量子力学の興味があるなら, 一つの方向性として量子情報から入るのは非常にお勧めです. かなりの抽象論が展開されているものの, 線型代数のどんな議論がどこでどう使われているか知るには便利でしょう.

小澤正直さんといえば元々数理論理の方ですし, 超準解析の応用などもあって, そうした方面の勉強もしたいですが, 特に超準解析はいまストップ中です. これも以前紹介しましたが, 記述集合論を使って作用素論・作用素環の問題を考えるという話もあります.

コンヌが超準解析系のことをしていたことがあるようで, 超積の作用素環への導入はコンヌによると聞いたこともあります. 集合論・数理論理もこの視点から勉強をしたいと思いつつ, これも幾星霜. 少しずつやっていきましょう.

Maximaを使いはじめてみた

腐りにくい数学系プログラミングコンテンツのため, Maximaの調査をはじめることにしました. もちろん完全な安定は望むべくもありませんが, これはこれで恐ろしく長く使われているアプリケーションですし, 一定の意義があるだろうと. (Androidの)スマホアプリもあるようです.

wxMaximaがJupyterのような感じで, もっと言えばJupyter上でMaximaを使えるようにもなっているようです. シンプルなテキストによるバージョン管理がしたいので, どうするかいろいろ考えています. 例えばEmacsのmaxima-modeならMaximaのREPLにパチパチ流し込めるので, 私としてはこれが嬉しいのですが, (Windowsでのimaximaによる)TeX連携がうまくいっていません.

これのためにエディタの調整・調査で時間を使うのも馬鹿馬鹿しいと思う一方, これはこれで楽しくなってしまう病理もあります. この辺の調査で得られる経験値もあると言えばあるものの, 困ったものだとも思います.

コンピューターに教育する観点からは自分で簡単なライブラリを再発明することにもなりますし, もう一方のアルゴリズム学習・応用の観点からもMaximaのコードを調べたりするのも大事になりそうなので, いろいろな視点から調査を進める予定です.

今週の問題

相変わらずプログラミング系の調査・講座制作がメインになっていて最近はかなり緩めに進めています. 今週は一般化回転群として$\mathrm{SO}(n)$, $\mathrm{U}(n)$, $\mathrm{SU}(n)$, $\mathrm{Sp}(n)$の極大トーラスと中心の議論をしていました. ほぼ自明なトーラスが実際に極大トーラスで, 中心もほぼ自明です. この「ほぼ」自明のところで二重被覆という位相幾何的話題が出てきますし, 群構造との関連がある部分も面白い点です.

もう何度目かわかりませんが, 大事なことなので何度でも強調しましょう. 上記のプレプリント紹介で, 量子情報からの線型代数入門について改めてコメントしました. 線型代数からの位相空間論・位相幾何・多様体・代数入門として, リー群・リー環論を使うのも面白いアプローチです. リー群・リー環をある程度やっておけば, 対称空間・等質空間の幾何につなげることもできれば, 表現論への・からの広い数学への展開もあります. 線型代数はやればやっただけ数学それ自体への理解が深まる分野です.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版タイトル/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 続ベラルーシのベラ
  • 禁止された文字列・発音
  • 暗記が大事
  • 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版タイトル

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  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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続ベラルーシのベラ

読者の方からコメントで教えてもらいました.

「ベラルーシ」の国名の由来は明らかではないが、ルーシの人々は13世紀から16世紀にかけてモンゴルの支配を受け(「モンゴルのルーシ侵攻」「タタールのくびき」参照)、ベラルーシの国名の由来である白ルーシ(英語版)の名前の由来をモンゴルに関連付ける説がいくつか挙げられている [3]。その際、モンゴル人が中国から学んだ文化である「方角を色で呼ぶ方法(五行思想)」をルーシに持ち込んだため、「赤ルーシ」(南部ルーシすなわち現在のウクライナ西部)、「白ルーシ」(西部ルーシすなわち現在のベラルーシ)、「黒ルーシ」(北部ルーシすなわち現在のモスクワ周辺)という名称が生まれ、そのうちの白ルーシ(ベラルーシ)が国名として残ったと言われている[3][4]。モンゴル系の国家で用いられたテュルク系の言語の影響を受けて生まれた、「自由な、支配から解放された」白ルーシと「隷属した」黒ルーシの呼称を起源とする説も存在する[3]。

最近のウクライナ情勢でもタタールの軛の話が出てきましたが, こんなところにもタタールの軛が出てくるとは, と驚いています.

禁止された文字列・発音

まず,なぜ という綴字がストレートに「アエロ」に対応しないのかについて解説します.一言でいえば,英語では「アエ」という音連鎖が許されないからです(身も蓋もないですが).なぜ特定の音連鎖が許されたり許されなかったりするか,というのはなかなかの難問です.例えば,日本語では「ん」は正規の音素なのに,なぜ語頭では現われてはいけないのかというのと同じ類いの問題です.このような問いに対しては,音韻論では「分布」なのだ,といって逃げるのが普通です・・・.

「よくわからないがとにかくそうなっている」系の話で, 物理なり何なりやっていても出くわすタイプの話です. 文法を筆頭に言語の世界にもいろいろな法則があり, 理工系にこそハマる世界観ではないかと思っていて, 語学を通じた理工系の視点入門に使えないかとずっと言っている部分です.

例えばイタリア語で皿をpiatteと言います. これは英語のplateに対応している単語です. 実はイタリア語でplの並びが許されていないからで, 英語(フランス語?)とイタリア語の単語比較に役立ちます. 似た単語にfiore (flower)があります. 「花の都フィレンツェ」を知っていればfioreとフィレンツェはつながりやすいでしょう.

本文で日本語で語頭に「ん」が来れない話がありました. 子供の頃, くにおくんのドッジボールでアフリカチームに「んじょも」がいたのを今でも覚えています. ちなみに2010年にフィールズ賞を取ったベトナム人のNgoさんも名前の先頭が「N」です. Wikipediaを見ると, ベトナム語はその表記にいろいろな歴史的経緯があるようです.

暗記が大事

ここまで英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・中国語あたりを雑にやってきて, ロシア語・アラビア語で改めて出会った問題があります. 単純な暗記量の問題です.

英語をある程度やってきたおかげで, ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語は何となく単語もわかりますし, ドイツ語やフランス語を雑にでもやっておいたおかげで, 活用も何となく共通で何となくわかります. 中国語もある程度漢字がわかるメリットがあります.

ただロシア語とアラビア語はそうもいきません. ロシア語は相対性理論の論文で勉強しているため, 専門用語がバリバリに共通語彙なのは面白いです. そもそもとして文字の暗記から入らないといけないハードルがあります. アラビア語の場合語頭系・語中系・語末系と同じ文字が最大三種類の形を持つので, それも厄介です. もちろんひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字を持つ日本語よりは遥かにましだとは思いますが.

単語もさることながら, 文法というか各種活用も本当に暗記が面倒です. 手持ちのロシア語文法書に「暗記しなくても表を見ればいいという人はいるが, やはり暗記してしまった方がよい. 何より時間がかかってしょうがない. 暗記にも時間を取った方が最終的な学習時間が圧倒的に短くて済む」みたいなことが書いてありました. まずは楽しめる作業をしようと思って暗記は後回しにしていますが, 確かにいちいち見慣れない文字が詰まった活用表で調べるのは消耗が激しいため, さっさと暗記した方が最終的には楽なのだろうとも思います. そこまでロシア語をやり込む気もないため余計やる気が出ないのですが, それはそれです.

ちなみに, 数学でも何をどう覚えるかがやはり重要なテーマです. よく「理解こそが大事で暗記はいらない」のような極論を言う人もいますし, 理解が深まると形式的には暗記量が減るのも間違いありません. ただ, 語学のコンテンツを作るときに思い至った話として, 理解度測定に「どれだけ暗記が楽にできるようになったか」という指標の提案があります. 暗記がいらなくなるというより, 忘れたことを思い出すかのように暗記ができるようになります. 暗記作業そのものが楽になるのが理解の深まりと定義してもよいのではないかと思っています. 単純な暗記事項と思っていたらそれにきちんと意味を持たせられるようになれるというか.

例えばフランス語とイタリア語の男性名詞単数形に対する定冠詞はそれぞれle, ilで, これはラテン語のthisにあたる指示詞(?)illeの前半・後半を取った形になっています. なぜそうなったかと言われても困ります(言語学的な知見はあるかもしれないが, そこまで私に言語学の知見がない)が, ラテン語に由来があると言えばそれはそうなのは確かなようです.

ラテン語を知らないといけないではないかという話もある一方, ラテン語を知っていると統一的な視点が得られる(こともある)とは言えます. 知識が理解を呼び, 理解が知識を呼び, さらに探究心を刺激する例ではあると思っています. ラテン語は学術用語の母胎としての側面もあるため, ラテン語に帰着させるのには一定の意義があります.

こういうのをもっと積極的にやりたいと思って, いま語学を雑に幅広く勉強しています. そのうち語学ではなく言語学にも踏み込みたいです.

今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版タイトル

タイトルは以前紹介した気もするのですが, 再挑戦ということで改めてはじめから.

文構造
  • К ЭЛЕКТРОДИНАМИКЕ ДВИЖУЩИХСЯ ТЕЛ
  • ローマ字転写: K ÈLEKTRODINAMIKE DVIŽUŜIHSJa TEL

まずКは与格支配の前置詞でここでは英語のto・ドイツ語のzuにあたります. ЭЛЕКТРОДИНАМИКЕは女性名詞で原形はэлектродинамикаです. 特にе終わりなので与格か前置詞格で, ここでは前置詞кの支配下なので与格です. ТЕЛ(body)は中性名詞телоの複数形属格で, ДВИЖУЩИХСЯは不完全動詞двѝгаться (move)の現在分詞движущийсяの複数属格です. このтелの属格性はドイツ語と同じなのでドイツ語自体が直接的に参考になるでしょう.

まとめると次のように英訳できます.

  • TO THE ELECTRODYNAMICS OF MOVING BODIES
単語
  • К: 与格支配の前置詞, to, toward, by, for
  • ЭЛЕКТРОДИНАМИКЕ <- электродинамика: 不活動体, 女性名詞, 単数形与格・前置詞格, electrodynamics
  • ДВИЖУЩИХСЯ <- двигать: 他動詞: to move
  • ТЕЛ <- тело: 中性名詞の複数形属格

2022-03-05

数学・物理 数学を続ける秘訣: 中途半端で止める/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 数学を続ける秘訣: 中途半端で止める
  • 物理と現実の対応を考える
  • プレプリント: Shirai, Sakumichi, Negative Energetic Elasticity of Lattice Polymer Chain in Solvent
  • 多様体の多様性
  • 線型代数コンテンツのさらなる拡充が必要: 特異値分解
  • 勝手に宣伝協力: はじめての数学ブログ講座
  • Twitterで反響があったのでもっとがんばらないといけないと思った事案
  • 数学コンテンツ作りのノウハウ共有
  • 強調語と不思議な専門用語
  • 競プロ: Haskellコードが見ていて楽しく勉強になる
  • Common Lispの面白そうな解説
  • 勝手に宣伝協力: 連載講座「短時間フーリエ変換入門」
  • 今週の問題

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  • 今回のページ
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数学を続ける秘訣: 中途半端で止める

ちょっとしたコメントがあったので, たまに・簡単にタスク管理・モチベーション管理的な話も書くことにしました. 私が把握している限り学生さんよりも仕事をしている大人の方が読者に多いので主にそちら向きです.

勉強に限りませんが, よい意味でいい加減さを取り入れるのが続ける秘訣です. 今回はいい加減さの一つとして「中途半端にしてもよく, かえってそれがいい場合さえある」ことをお伝えします.

ここでいう中途半端は, 例えば問題を解いていたとして, その問題を解き切れなくても勉強を打ち切ってしまうことです. 具体的にはある日の勉強時間が10分しか取れないなら10分やるだけやって, 解けなくてもその日はそこで打ち切りましょう. 解けないと気になって仕方ありません. そしてこれが大事です. 気になって仕方ないので次の日以降の勉強のモチベーションになります. 「気になるからもっと時間を取ろう」と思えるからです. 仕事終わりで疲れていてついダラダラしてしまうことは私にもよくあります. それでも「こんなダラダラしている時間ももったいない. 早く問題を解き切りたい」と思えるようになります. ダラダラした時間を過ごしてしまい「時間を無駄にしてしまった」と後悔した経験がある人は多いでしょう. それを削る方策でもあるのです.

さらに無駄な時間を削る上で他のご利益もあります. ずっとその問題が気になっているので, ちょっとした空き時間にもその問題を考えるようになります. すき間時間の有効活用にも役立ちます. そして何より数学学習の習慣化には本当に効果的です.

半端なところで止めていいと思えば取り組むときの初動のパワーも少なくて済みます. 勉強をはじめるときに億劫さを感じるなら, ぜひ5分だけやろう, 中途半端でも5分でとにかく止めて終わらそうといった感じで挑んでみてください.

物理と現実の対応を考える

我らが久徳先生とのTwitterトークです.

引用は次の通り.

「現実との対応とか興味ない、有効数字?何それおいしいの?」的な理論物理があるかないかは皆さんへの宿題とします

有効数字とはまた違いますが、物性だとオーダーが上から下まであってまた別の視点が出てくるのでは感があります。

ここでオーダーと言うと?

しばらくまともな物理から離れていて数値含めた具体的な話できなくてアレですが、電気伝導度は上から下まで身近な物質でも20桁くらい違いがあり、二・三桁ずれていてもそこそこ(定性的には)OK的な意味です。

なるほど、しばしば宇宙では一桁二桁は気にしないと(雑に)言われる類の話と同じやつですね。物理だと物性でも宇宙でもどの分野でも「自分が今しないといけないのは依存性の話なのか桁の話なのか数の話なのか」みたいな切り分けの感覚が重要な印象です

良くも悪くももう一定の位置を占めてしまったのでアレですが、ハバードくらいならまだしも、スピン系のような暴力的なモデルがどこまで物理かが割と私にはクリティカルです。依存性でも桁でも数でもなく、定性的な議論と呼んでいいかさえ微妙です。量子情報の視点で見ているわけでもないので。

なるほど、そのへんの感覚は自分でやっていない僕にはないですね。てっきり現実の物質の挙動を大掴みにでも説明していて十分に物理なのだろうと思っていました

スピン系は、難しすぎてそのままではまるで手が出ない多体系特有の現象が、実際に温度という日常的で操作しやすいパラメーターを軸に、相転移というこれまた直観的な現象が数学的に再現できたところに価値があると理解しています。あとは計算練習のモデルや理論構成のモデルになっている点だとか。 色々批判もあるとはいえ一定の有効性を持つとされる平均場近似などの統計力学の手法が物理的・直観的に把握しやすく、計算もしやすいので技術的な習熟に使えるといった面もあるでしょう。あとは場の理論でφ^4との関係があり、発散の困難と臨界現象の処理の類似といったこれまた数学上の関係もあります 物理をつかんでいるというよりも、理論的な模型としての位置、計算処理・技術の実験場としての立ち位置が非常に優れていて、強引な点があるにせよそれらを温度と相転移に関する直観を繋いでさえくれるところに強い意義がある議論だと思っています。 論点はいろいろあって、以前誰かが言っていたのでロシアの古い物理の本(の和訳)を読んだことがあるのですが、かつては周期境界条件が物理として意味があるかが問われていて、それに対して意味があることをきちんと論じなければいけない時代があったようです。続 その本では「イジングで計算するとこうなっている。他の模型でも似た形になると推測できて云々」と書かれていた覚えがあります。スピン系の物理的な意義を疑う人はもはやいないと思いますが、その意義の確立は自明ではなく、統計力学系の物理をやるなら一度きちんと考えるべきテーマと思います。

「以前は問題だったがいまや悩む必要さえなく, ショートカットしてどんどん進んでいい」話はたくさんあるはずで一概に悪いことではないとはいえ, このあたりの話, 数学の本はもちろんのこと, 物理の本でもあまりきちんと書いてくれていない気がします. イジングも原・田崎本を改めてきちんと読みたいですね. 2021年のノーベル物理学賞を取ったパリージの有名な統計的場の理論の本(Statitical Field Theory, 和訳『場の理論―統計論的アプローチ』)もスピン系・イジングの議論があります.

プレプリント: Shirai, Sakumichi, Negative Energetic Elasticity of Lattice Polymer Chain in Solvent

Negative internal energetic contribution to elastic modulus (negative energetic elasticity) has recently been observed in polymer gels. This finding challenges the conventional notion that the elastic moduli of rubberlike materials are determined mainly by entropic elasticity. However, the microscopic origin of negative energetic elasticity has not yet been clarified. Here, we consider the n-step interacting self-avoiding walk on a cubic lattice as a model of a single polymer chain (a subchain of a network in a polymer gel) in a solvent. We show the occurrence of negative energetic elasticity based on an exact enumeration up to n=20 and analytic expressions for arbitrary n in three cases where the chain is highly stretched. Furthermore, we demonstrate that the negative energetic elasticity of this model originates from the attractive polymer-solvent interaction, which locally stiffens the chain and conversely softens the stiffness of the entire chain. This model qualitatively reproduces the temperature dependence of negative energetic elasticity observed in the polymer-gel experiments, indicating that the analysis of a single chain can explain the properties of negative energetic elasticity in polymer gels.

東大の作道さん (@sakumichi) との共同研究に関するプレプリントを出しました! 単純な格子モデルで得られた1本鎖の弾性が高分子ゲルの実験で観測されていた負のエネルギー弾性 (https://doi.org/10.1103/PhysRevX.11.011045) と定性的に同じ温度依存性を示すことを見出しました [Fig. 1参照]。 負のエネルギー弾性を特徴付ける温度について得られた有理式(式6; nは自己回避ウォークのステップ数)はお気に入りの1つです。もう少し複雑な有理式をあと2つ導出していて、3つの解析線がFig. 4に描かれています。ある指数で解析線がすべて重なるのも見どころです。

まだプレプリントを読めていないのですが, 作道さんのゴムの話は講演を聞いたことがあって非常に面白かったです. やはり統計と物性が好きで面白い分野だと気付かせてくれる研究でした. ゆっくり読む時間が取れなくて悲しいですが, メモしておかないと忘れてしまうのでメモがてらシェアしておきます.

多様体の多様性

manifoldはどの辺が多様だったんです(´・ω・`)?

ホイットニーの定理が示されてしまったのと我々が慣れすぎてしまっただけで、manifoldの守備範囲は十分に異常な広さ・多彩さを持つとは思います。あの定義で一般化された図形と認識できるのは凄まじい訓練を受けた人間しかいないでしょう。

中島啓さんの単調体の話などもあって, 「多様体のどこが多様なのか」はよくある突っ込みになりつつあるとは思います. しかし多様体の定義だけを見ても, そもそも何を言っているか理解するだけでも大変ですし, あの定義から一般化された図形を定義しようとしていると理解するのも困難を極めます. 射影空間やグラスマン多様体は「ユークリッド空間の線型部分空間を集めた集合に適当な遠近感(位相または計量)が入り, それ自身図形になる」と言っているわけで, 無茶にもほどがあります.

計量による空間観もそう自明ではありません. リーマン計量だけではなく, 山登りのように登りと下りで変わるべきフィンスラー計量のような計量概念もあります.

いま対応中のリー群・リー環の基礎が一段落したら, 等質空間や対称空間の形でリーマン幾何・微分幾何をやろうとも思っています. いろいろな数学が交錯する面白い世界ですし, ここで遊び倒しておくと一般相対性理論の数学的足腰を鍛える助けにもなるので, 私自身楽しみにしています.

線型代数コンテンツのさらなる拡充が必要: 特異値分解

手元のいくつかの線形代数学の教科書の索引に特異値分解がなくってびびった

Laxは行列不等式の章に特異値分解あった(´・ω・`)

そういうのもきちんと書いてある数学・数理物理系の文献を作らねばならないと思う方の市民です。私のコンテンツももっと線型代数を拡充したいのですがなかなか時間が取れていません。

特異値分解はPDEの数値計算で使う機会がありました. 数学の本ではあまり見かけませんが工学的応用ではかなりよく出てくるようです. 例えば機械学習やら統計系の数値計算でもよく見かけます. 他にもこの間勉強会でQR分解が出てきて関連する分解を調べていたら, これの一般化は岩澤分解だとか. 岩澤分解もいつかどこかできちんとやりたいテーマです. 「役に立つ岩澤分解」とも言えるでしょう. こういうのも計算し倒す上では大事な話で注目しています.

ちなみに上記の勉強会で読んでいたのはGitHub上にあがったipynbです.

ipynbはJuliaで書かれていてJulia入門としてもお勧めです. 私が読んだのは主にJulia版の和訳ipynbですが, 上記ページにPython版へのGitHubへのリンクもあります.

勝手に宣伝協力: はじめての数学ブログ講座

可換環論botやYouTubeの動画によって一部界隈では有名な龍孫江さんによるブログ講座です. 最近はTeXをインストールしなくてもTeXを書ける環境が増えてきました. もう一歩広げて数学コミュニティ作りといった部分にまで踏み込んだサービスも増えてきています.

私自身, 一人ではやる気が起きないテーマに取り組むために人を巻き込んだ勉強会を主催する形で進めていますし, いろいろな人がいろいろなことを試してほしいとも思っているので, 興味がある人はぜひ参加してみてください.

Twitterで反響があったのでもっとがんばらないといけないと思った事案

以下紹介するツリーでのやり取り+コンテンツの案内ページだけで6人からの購入があってびっくりしました. そしてきちんと情報を伝えるべき人に伝えられていないのだと反省もした事案です.

私の物理数学をまとめたPDF、目次や索引含めれば9964ページある。そしてまだ全然書き足りない。 普通の本では150ページくらいの分量の位相空間論を(数理)物理への応用や例も盛り盛りにして700ページ弱になっている。元が通信講座用のコンテンツなので同じ話を何度も繰り返していて膨れている部分もあるが、議論を自分基準で丁寧にして膨れた分もある。通読には向かないまさに辞書。

純粋に読みたいです・・・

いろいろあって有料提供なのですが、例えば解析学基礎編についてはここ{target=blank}でどんな気分でこれを作ったか(作っているか)書いています。最近は例と計算編に力を入れています。幾何ですがYouTubeのこのリストも参考になるかもしれません。 すぐ見ます_φ(・

すいません。質問なんですが先にかうならどっちがオススメですか?

何をしたいかによります。教科書または辞書がほしいなら解析学編のほうがよく、たくさん計算練習したいなら例と計算編の方がよいです。後者は今まさに拡充中で、「もっとこんな計算も紹介してほしい」というのがあれば拡充します。(前者もまだ書いていないことはありちょこちょこ追記してはいます。)

うむむ。 分かりました。計算編にします。 ちなみにプログラムって書いてありましたが、コードも記述されているんですか?言語はpython ですか?

そちらにはまだプログラムは載せていなくて、いくつか手元で計算したのがあるだけで未公開です。Julia(のSymPy)を試したり普通のSymPyにしたり、コードが腐りにくいかどうかまで含めて検討中だからです。Clojureのsicmutilsやmaximaにするかなども検討中で、 sicmutilsについてはここここ程度には調査していて、Pythonについては別枠でコンテンツも作っています。とにかくGitHubに置いてあるという意味ではmathcodesでRustやJuliaも少しあります。 プログラミングに関して最近特に力を入れているのは競プロ(中高生向けコンテンツとして場合の数や素数判定などの数学とも深く絡むため)で、ここでは私の趣味でF#(とHaskell)で修業中です。これもPythonによる素数判定のミニ講座を今作っていて、近々無料で公開する予定です。 主に偏微分方程式の解のアニメーションに関してここにリストを作っています。作るだけ作ってとにかく公開したまま未整理状態のものも多いです。整理するいい機会でもあるので、何か追加質問あればお気軽にどうぞ。

冒頭のツイートがなぜか(私にしては)大量のファボを受けていて何故かフォローも増えました. ついでに現代数学探険隊 解析学編を実際に購入された方が何人かいらっしゃって驚きました. カバー範囲からすればごくごく真っ当な値段で, 専門性が高くなると特に洋書で本が万単位するような領域にも踏み込んでいるため, その意味では安い部分もあるとはいえ, 総合的にはどう控え目に言っても安くないコンテンツです. それでも案内ページの内容を見て信じて買ってくれた方が何人もいらっしゃるわけで身が引き締まります.

あと単にちょろっとバズったツイートにリンクとやりとりをつけただけでこうなったので, きちんと情報を伝えられていないのだろうとも思って反省しています. 必要ない人に売りつけても意味がないどころか害悪ですが, 必要な人に必要なモノを届けられていないのはここ数年の私の怠慢の面も大きく反省しています. またちょっとTwitter広告もやってみようかと思っています. Energeiaでの勉強会ももっとメンバーを増やしたいとも思っています.

人が集まるとコントロールも大変ですが, そこで生まれるよいモノもいろいろあります.

あとTwitterで解析系数理物理コミュニティを作ってみたので, それに関する話ももう少しきちんとしたいですね. 基本はここで書いてそちらのコミュニティにも流す, またはそちらで書いたのをこちらにも流す形にしようと思っています.

数学コンテンツ作りのノウハウ共有

それほど本格的な内容でもありませんが, 書いておくことには意味があると思ったので共有します.

本一冊の内容じゃなくてここまでの量を全部一つのノートにまとめてる人あんまり見たことなかったから(複雑な相互リンクが発生しすぎて)事実上無理なのかと思ってたけどできるもんなのか でもこの量をNotionでやったらいずれ重くなって詰みそう…

集合・位相などの基本的なところでは特に定理や命題の参照もなるべく細かく入れて何を理由にどの事実が成り立つか詳しく書くようにしていて、相互参照が5000以上あります。(証明を詳しくしたいならもっと必要。)全体のコンパイルに20-30分かかります。

20-30分…すごいですね。 個人的には、詳細の「折りたたみ」のようなことができると良いと思っていて、WYSIWYGで編集もできるので、Notionを使いたいなと思っています(肝心の数学の勉強のほうは全然足りていないのですが…)

サイト潰してしまったようですが、少なくとも7年前に証明や具体例の折りたたみがあるといいよね、と言ってサンプルを作った人がいました。記事へのURL いまも現役の若手の数学者の人です。あとはDLCよろしく具体例やら何やらを追加購入できるパックとかも欲しくない?だとか。 HTML(またはepub)系も考えたのですが、やはり面倒なのと、数学の本道に関わる部分でTeXの表現力を超えられない部分がある・TeXの資源を完全には使い回せない部分があるのでひとまずTeXメインにしています。 表現力を超えられないというのはalg-dさんがよく書くような凄まじい可換図式で、複雑な式は式だけコンパイルして画像にするとかやりようはありますし、もちろんcanvasなどHTML専用のものを考える手法もありはします。ただHTML側で綺麗にするとTeXと二重管理が必要でコード自動生成もつらいので。 epubならともかく、HTML(でのウェブ公開)だと通信ができるところでしか見られない・MathJaxのレンダリング待ちが鬱陶しい問題もあります。数学への集中力が途切れてしまうので。レンダリングを減らすためにページを分けると検索や一覧性に問題が出ます。 あとは色々な数学系プログラム(数値計算・数式処理)との関係もあります。その辺を色々考えたうえでいまは自分用ノートを作り続ける方を優先させています。課題は色々あるので是非自分なりの工夫でいい方法を開発してほしいです。 いまの私はとにかく単独ファイルに突っ込んでPDF検索とセットで辞書を作る方に倒してコンテンツづくりをしています。

実体験に基づくお話で大変参考になります。以前から興味のある話題で、実はそちらのサンプルも知っていました。 やはり可換図式は鬼門ですよね…今調べてみたら、Notionで使われているKaTeXでは斜め矢印が使えなさそうです。外部プログラムとの連携も盲点でした。 また色々考えてみます。

何度も書いているようにプログラムはすぐ腐る上, そこのメンテナンスに力を割きたくもないのでどうするか今も答えが出ていません. いまはそもそも腐りにくいデータ構造とアルゴリズムに向けて私自身が勉強している最中です.

強調語と不思議な専門用語

ちょっと本筋からずれた話題だったのですが気になったのでコメントした記録です. 元ツイートを見つけられないのですが, 大元は大学で徹底的に叩き込まれたから「非常に」という文章を書くと「どのくらい?何と比較して?」のような脳内セルフ突っ込みを入れるようになってしまったという話です.

強調語、非常にめちゃくちゃすごくたくさんいっぱい使ってるけど、この点は数学科と他の理系学科は違いそう(そもそも「すごく」とか「非常に」とかを学術的なコンテキストで見た事ない) 「この定理は非常に大きな影響をもたらした」みたいな文脈で見たことあるから普通に偽だ

豊富な直線束 私自身は非専門の領域であまり語感がないのですが「非常に豊富」(very ample)という専門用語があります。豊富・非常に豊富ともに明確な定義があります。

なるほど、存じ上げませんでした。。。! どうだろう、これだと「非常に豊富」で一つの記号だと思うので、「非常に」だけで意味を成してるのかは謎ですが〜

どちらかと言うと「非常に(豊富)」という語に専門的な意味を付与する事例(学術の文脈で正式に使う、おそらく珍しい事例)として紹介しました。今思い出したのですが、(ルベーグ)積分論で「ほとんど至るところ」(almost everywhere)というのもあります。

これが面白いのは「いたるところ」が割と曖昧さのある表現である一方、「ほとんどいたるところ」の方がかえって常に厳密な意味を与えられて使われることです。

たしかに一般生活でほとんどいたるところ、聞いたことないかもです。。。!

競プロ: Haskellコードが見ていて楽しく勉強になる

データ構造とアルゴリズムの何度目かの再勉強は競プロのおかげで続いています. やはり読み書きしていて勉強になり, かつ私の感性にあっていて楽しいのはHaskellです. 少なくともAtCoder・AOJでも取り上げられていてそこでの人口も多く, サンプルプログラムがたくさんある圧倒的な利点があります. まだHaskellでのREPL開発に慣れていないためメインはF#にしていますが, F#勢は本当に少なく, 私しか提出していないこともあって, 結局Haskellを見にいってそれをF#に翻訳することがよくあります. やはり勉強するときに人口が多く情報が多いのは重要です. 数学系ならとりあえずPythonをやっておこうと書いている理由でもあります.

Common Lispの面白そうな解説

引用RTを受けてツイートを眺めにいったら上記のような記事を書いている人だったので, メモついでにシェアしておきます. Eazy-gnuplotはともかくNumclというCommon LispのNumpyクローンがあり, これはいいかもと思ったので. ふつう何年も更新されていないライブラリというともう死んでいるのでは? と思ってしまいますが, Common Lispだとそのくらい割とふつうでしかもちゃんと動くそうなのでこれはかなり気になっています.

あとはmaximaがどこまで素直にライブラリとして動いてくれるかですね. ClojureはSciclojも活発なようで, sicmutilsもありますし, Javaの資産も使える上, clj-maximaもあるのでこちらの方がいいのかとか色々思います. プログラミングだけならいいのですが, メンテを少なくしようと思うと一気に面倒になって本当に嫌です.

勝手に宣伝協力: 連載講座「短時間フーリエ変換入門」

連載講座「短時間フーリエ変換入門」の最終回が無料オンライン公開されました! jstage, 矢田部浩平, 第六回:時間周波数領域のスパース表現, 日本音響学会誌

物理やいくつかの工学ではフーリエ変換・フーリエ級数は嫌になるほど使い倒します. そして純粋な数学としても凄まじく広い守備範囲があります. ただ数学の人には必ずしも応用の裾野が知られていない気もするのでちょこちょこ布教するシリーズでもあります. 軽く眺めてみて次の文が面白かったです.

ビッグデータとは対極にある,二度と取得できないスモールデータの解析に注力している研究も多く,今後の進展からも目が離せないと思っている。

もちろんタイトルにある「スパース」も数値計算上で重要な要素です.

今週の問題

引き続き例と計算編はプログラミングコンテンツに集中していて, 純粋な数学部分の進捗はあまりありません. 先週と大きく変わりばえはしないものの, 特殊ユニタリ群の弧状連結性の証明もつけました.

  • ユニタリ群と特殊ユニタリ群の違い: 弧状連結性

これ, 「幾何のための線型代数」という幾何編に突っ込んでいて, 例と計算編に入っていないことに気付きました. 例と計算編を購入された方にはあとで別途お送りします. 興味があればぜひ議論を追ってみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 ベラルーシのベラと白の多言語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • グリムの法則
  • ベラルーシのベラとフランス語のblancと白
  • publicの多彩な意味
  • 今週のロシア語

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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グリムの法則

ハーグってロシア語/ウクライナ語だと「ガーガ」なんですね。そいえばロシアのドラマを見てたら、ゲロー、ゲローっていってて、どうやら英雄の意味らしいとわかったし、病院のことをゴスピタルっいってた。

既にご存知であろうとも思うのですが、hとkは両方息を吐きだすタイプの音で、kが濁ってgになるので大体同じ音(言語をまたぐときによく変わる)のようです。この辺、物理と人体の構造と言語が関わって理工系も面白がれるネタのはずですが、そういう話をしてくれる人がいなくていつも厳しい気分です。 現代英語を英語史の視点から考える 第8回 なぜ「グリムの法則」が英語史上重要なのか 言語の世界にも物理に支配された法則があるとかいえばそれだけでも語学・言語学へのバリアーが減る人もいると思うので、高知工科大でもそういう講演ができる人を呼んだり、カリキュラム工夫したりしてコースを開発してそれを公開してもらえると非常にうれしいです。

私自身, 目下この視点からコンテンツ作りを考えていて, 日々の進捗報告・知見メモ・シェアにメルマガを利用しています. もう放送大学にでも入って言語学やった方がいいかもしれないとも思っています. 費用は恐ろしく安いので時間をどう捻出かが問題でどうするか悩んでいるところです.

ベラルーシのベラとフランス語のblancと白

いま話題のベラルーシに関連してちょっとやりとりしたので.

ベラルーシの「ベラ」の部分(ラテン文字にすると Belarus の bela らしい)は、フランス語で「白」の「blanc」と語源とか関係あるのかな

参考リンク: ベラルーシ共和国, 東京都立図書館 以前も少し調べたことがあるのですが、素直に白で良さそうです。Wikipedia: ベラルーシ 由来は割と面倒そうな気がします。続 これを見るとフランス語はいいとしてラテン語・ギリシャ語がalbus系(いわゆるアルプスが多分ここが語源なような気がする)の言葉で、色などの基本的な語彙は割と各言語のネイティブとしてあまり変わらないような印象があり、スラブ語のベラが何由来なのか気になっています。

フランス語とラテン語とギリシャ語で「白」ってなんていうんですか?読みかたと綴りをおしえてください 「白」というより「白い」なら、★フランス語:Blanc(ブラン)★ラテン語:Albus(アルブス)★現代ギリシャ語:άσπρος(アスプロス)です。

参考: бела, wiktionary 我らがwiktionary先生に聞いてみたところ、スラブ祖語からの印欧祖語が直接の由来のようです。 フラ語のblancはこれを見る限り印欧祖語のレベルだと別単語です。

似ているが元をきちんと辿ると違うらしい語もあれば, 紆余曲折を経て同じ単語になってしまったが全然違う由来を持つ語もあります. 例えば魚の群れを表すschoolは学校とは関係ありません.

publicの多彩な意味

ツイートを発掘できないのですがTwitterで見かけました. 確かいま問題のウクライナ関係の情報をきちんと見る, といった文脈だったと思います.

of ordinary people 1. only before noun] connected with ordinary people in society in general

for everyone 2. [only before noun] provided, especially by the government, for the use of people in general

of government 3. [only before noun] connected with the government and the services it provides

seen/heard by people 4. known to people in general

5.open to people in general; intended to be seen or heard by people in general

place 6. where there are a lot of people who can see and hear you

勉強会で翻訳をやっている人にも「基本的な単語こそ入念に調べます」みたいに何度か言われたことを思い出します. 英語と言わずとも数学でも基本的な用語の使い方が雑だと一気に信用できなくなりますし, 何でも同じかと反省とともに.

今週のロシア語

以前買った本で文法の復習をやっていたため今週は特に記録なしです. 独・仏・伊・西・中と違って一般的な単語があまりに英語と違う上, 文法的にも細かい違いが多いためどんな要素があったか雑に再復習をしています. 雑に総復習しつつ, 実際の文にあたって実践しつつで進める予定です.

数学・物理ではもはやほぼ味わえない初学者の苦しみを思い出すいい機会でもあり, のたうち回って来ます.

2022-02-26

数学・物理 数学を続ける秘訣・ダイエットと数学学習の関係/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 数学を続ける秘訣
  • ダイエットと数学学習の関係
  • 書籍紹介: 数学のとびら ルベーグ積分と測度
  • 書籍紹介: 岩井敏洋(著)/ネコの着地を理解するための幾何学・力学・制御講義
  • 書籍紹介: 川平友規, 入門複素関数
  • 書籍紹介: 演習詳解力学
  • 代数幾何チャンネルの紹介: 榎本 觀 代數幾何學
  • 物理と(厳密な)数学
  • ベンチマークからの統計学入門
  • Dependency Injection in F#
  • eagle, .NET 6で始めるF#デスクトップアプリ開発
  • Common Lispのクイックリファレンス
  • ピアノと気合(語学版に掲載)
  • Windowsでの音声読み上げツール(語学版に掲載)
  • 今週の問題

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数学を続ける秘訣

以前話したEnergeiaでのもくもく会は出張中や帰ってきた当日のヘロヘロ以外は基本的に土日も毎日22:00-23:00でやっています. 私としては言われてなくても毎日勝手にやっている時間にzoomをつけてみただけですが, 一ヶ月程度ずっと一人でやっていたところ, 最近メルマガから来た方が時間があるときに参加してくれるようになりました. 知人にこの話をしたら「いくら毎日やっているからといって, 誰も来ていないオンラインもくもく会を良く続ける気になるね」と言われました. せっかくなのでちょっとこれについて書こうかと思います.

これはまず信用の問題があります. メルマガ発行もそうですが, やったりやらなかったりの状態だと参加者も参加しにくいです. 主催者の本気度がわからないというか. だから参加者がいなくても毎日続けるのが大事です. 続けていると「少なくともこいつは口だけではない」とは思ってくれます. それで即信用につながるわけでもありませんが. 少しでもいいから日々続けるのが大事, そして去年末からはたくさん計算しようとも言っているわけで, それを実践する姿を見せようという意図もあります.

最終的には習慣化とそれにいたるメンタルケアが必要です. 読者の方もいくつかの層にわかれていますが, 最近は単純な数学やらプログラミングの話よりもこの手の時間管理というか, 環境構築というか, その手の話が必要そうな人が多いのかもしれないと思うようになりました. この辺, 世間的には自己啓発的な分類に入り, 社会的にはタスクマネジメント・ビジネススキルの話にもつながります. 少なくとも数学・物理・プログラミング勢はあまりこの辺を見ておらず, むしろ忌避しているのではないかという霊感があります. そして同じことを言うにしても私からそういう話を出した方が受け入れやすいのではないかという気もしています. 興味がある人が多そうならこの手の話もちょこちょこ入れようと思うのでアンケートでコメント入れておいてください.

少し書いておくと結城浩さんの活動を見るとそれだけでも十分参考になります. 日々の行動ログを見せてくれる投げ銭系のサービスもありますが, そこまでせずともTwitterで活動記録を見ているだけでも参考になる. ポイントは二つあります.

  • 気分は掴めていても, 明確に言葉として提示されてようやく腑に落ちる.
  • 言葉としてはわかっていても, 行動してようやく腑に落ちる.

どちらかではなくどちらも大事です. 前者だけでどうにかなることもありますが, 後者の実際に行動する部分が抜け落ちている人もよくいます. 特に理屈重視で腰が重い, 私のような人間です. 多分わざわざ私のメルマガを読み続けるような人はよくも悪くも似た人なわけで, これこそはっきりと「あなたがそうです」と言った方がいいのかもしれません.

この辺, 言霊と定義・定理みたいな話をよく思います. 言霊みたいな話をするとうさんくさいと思う人がいるかもしれないのでちょっとコメントします.

時々「すぐれた定理は定義になる」と言われます. 代表的なのは微分積分です. 微分積分が重要な局面は数多く, だからこそそれらの源である連続性・微分可能性・可積分性が理論の核になります. このとき「この性質が大事だ」と名前をつけて概念に魂を吹き込みます. ディラックが「私の方程式は私よりも賢い」と言ったように, すぐれた記号や概念運用はそれ自身が強い意味を持ち, 思考をリードしてくれます. これに宗教色を与えた言葉が言霊だ, というくらいの感覚を持っています.

多分言霊というとうさんくさいと思っても, 数学・物理・プログラミングでの定義や概念に対する適切な命名や記号化と言えば受け取りやすい人も多いのではないでしょうか. 上でタスクマネジメントみたいな話も私からなら受け取りやすかろうと書いたのはこういう話です. 数学・物理・プログラミング勢に伝わるように変換できるからです. 結城浩さんの名前を挙げたのも, 結局この技術を磨き抜いている人で, 数学・物理・プログラミング勢を越えた層に届く変換能力を持つ人だからです.

この話, 今回はこんなところで.

ダイエットと数学学習

習慣とメンタルと言えば, ということでちょっとダイエットの話もします.

新型コロナで肥満が危険因子と言われていました. 私は白血病で身体が弱く, あまり運動もできない時期が続いてその間じわじわと太り続けていてやや肥満でした. できる限り適性体重にしようと医者に言われたため, この一年くらいダイエットを続けていて, 無事適性体重にはなりました. 目標にはまだもう少しあるのでダイエットは継続中です. ここ数ヶ月は停滞中ですが, 半年で6kg程度は痩せました.

痩せた方法はごく単純です. 摂取カロリーが消費カロリー以下なら嫌でも痩せるわけで, 食べ過ぎず適度に運動すればよいのです. これまで食べ過ぎだった面もあるので, 毎食の食べる量を少し減らしつつ, エアロバイクを買って毎日二時間から三時間, 作業・勉強をしながら漕いでいます.

これは去年いきなりはじめたわけではありません. まず七年程前にいい加減体力をつけるための工夫をしようと思い, 子どもの頃にやっていた柔道を再開しました. そのうち中学生くらいともっと稽古できるようになるべく筋力もつけようと思い, ジム通いをはじめました. せっかくならしっかりボディメイクもしようと思い, 食事や生活に気をつけるようになりました. 五年程度じわじわ環境と習慣を作ってきたのです. そして今回, ようやくダイエットモードとしてお腹がすいても我慢する・我慢できるようにするメンタルも作り上げました. いわゆるチートデイなど嫌にならない工夫も入れ込んでいます.

前もメルマガで書いていたように, このときの一つのキーは「実験科学の視点」です. ダイエットなり体力作りなり筋トレというとなかなか精神的なハードルが高いのですが, 自分の身体での人体実験・検証と思うと多少なりとも心と身体を動かしやすくなったのです. これも言霊バリアーなのだと思います. どういう言い方をすれば自分が受け入れやすいのか工夫したわけで. 世間的には「人体実験」と言った方が嫌がられそうですが. 何かやる上で自分に合った言霊を見つけるのは大事なのも改めて実感した次第です.

あなたも数学・物理・プログラミング関係で何かしたいのだろうと思います. 自分が行動しやすくなるような言い換えを探してみてください. 今年は競プロやプログラミングを含めた計算し倒す系に集中しようと言っているのも新たな言霊獲得のための特訓中なのです.

書籍紹介: 数学のとびら ルベーグ積分と測度

2月下旬新刊予約受付中 『数学のとびらルベーグ積分と測度』山上滋(裳華房) 測度論を経由せず、積分を線型汎関数として捉えるというアプローチで記述された、これまでのルベーグ積分とは異なる画期的な入門書。

これは私が愛してやまないリース-マルコフ-角谷の定理を背景にした議論で, 現代数学探険隊解析学編でも取り上げています. 実は現代数学探険隊でも当初はこの本にあったようなアプローチを取ろうかと思っていました. 学生時代の私の専門である作用素環, そして線型代数とのリンクもいいお気に入りのアプローチでもあります. ついでにいうと山上先生も作用素環系の人(のはず)です.

このアプローチを取らなかった理由も念のため書いておきます. 端的に言うとルベーグ積分に制限がつくからです. 少なくともリース-マルコフ-角谷の定理を前提にしようと思うと.

リース-マルコフ-角谷の定理ではコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環の双対空間を考え, この元が上記の「積分を線型汎関数として捉える」の線型汎関数です. つまり基礎の空間に位相が, それもコンパクトハウスドルフ性が必要です. 応用上この仮定を満たすことも多いとはいえ, 特に確率論では裸の可測空間上での議論が必要な局面が多いのも実状です. ちょうど今書いたように応用上はどうにかなる場合も多いのですが, 入門書で書かれる基礎理論では逆に位相空間論を知らないといたるところでハマる可能性があります. もっと言えば「位相空間を知らないとこの本は読めないのでは?」と思わされる可能性です.

積分論の本当に最近の進展は追えていませんし, 位相空間論を意識しなくても問題ない, 私が知らない定式化があるのかもしれません. いい傾向とは思えませんが, 機械学習などで測度論を知らないといけないとかいう風潮が一部にあるようで, その議論をおさえられるこの本に興味がある方もいるでしょう. 今年は計算モードなので読む時間が取れなさそうです. これから読もうという方がいればぜひ感想を教えてください.

書籍紹介: 岩井敏洋(著)/ネコの着地を理解するための幾何学・力学・制御講義

今日2月22日は #猫の日 『猫の着地を理解するための幾何学・力学・制御講義』 岩井敏洋(京都大学名誉教授)著 https://bit.ly/36lchuG

"The falling cat is an interesting theme to pursue"で始まる数学書 https://bit.ly/3s7IHRM #LectureNotesinMathematics 第2289巻(2021年刊)です.

結論からいうと猫の宙返りは力学的・制御的に面白いという話で, そこに幾何学の事情も絡みますよ, といういろいろな視点から楽しめるテーマです. いまだ勉強しきれていないのですが簡単にいまの私の理解を書いておきます.

猫が宙返りするには尻尾をうまく使っています. 力学的には何か力がはたらかない限り運動できません. 空中にいる猫には重力しかはたらいていないので, ふつうに考えると回転にあたる宙返りは不可能です. これを可能にするのが尻尾の存在で, 尻尾と身体を逆向きに捻れば反作用的に自分の内部で力を産み出せ, 空中でも身体を回転させられる寸法です. もちろん角運動量の話です. ここには幾何の事情もあり, 物理的にはゲージ場と等価な話だ, といっていろいろな研究があります.

学生時代, 作用素論・表現論的な視点から勉強していたアハロノフ-ボームとも関係があり, 前々から興味があったものの, 微分幾何方面の素養がないから微分幾何をはじめとした幾何を勉強していたのがここ数年, という何度か書いている経緯があります.

書籍紹介: 川平友規, 入門複素関数

普段は全然使わないくせに、要所で伏兵のように経済学徒を襲ってくる複素関数論、この教科書は大変おすすめです。高校数学の教科書みたいな圧倒的な読みやすさです。 フレンドリーで丁寧な説明で、章末問題は解答が充実してます。これはゼミが助かるなあ。

何に使うとかあまり意識していなかったですが経済でも使うんですね! 今ちょうどこの本の線積分の章を読み進めているところです

経済学そのものよりも、経済学で使う統計学で不意打ちしてくる困ったやつです。

計算結果だけ使えばいいのでは感しかないのですが, そういうこともあるのかと思い紹介しておきます.

いろいろな積分計算と言えばフーリエ変換やラプラス変換もあり, 常微分方程式の解法としてのラプラス変換の計算の応用は電気回路の理論にもあります. 学部のとき応用物理系の講義もあったのでそこに出ていたら, 工学出身の先生が「これは表を見て使えればいい」と言っていました. その辺の割り切りをすればいいので経済で関数論の勉強とかやめた方がいいという気分しかないのですが, 経済には経済のいろいろな事情もあるのでしょう.

書籍紹介: 演習詳解力学

われらが筑摩が演習詳解力学を復刊してくれるようです. 猫の話を紹介したように力学由来の話は汲めども尽きぬ物理の源泉ですし, 馬鹿みたいな計算が出てきて必要な分野でもあり, 常微分方程式の数値計算で遊べる分野でもあり, いろいろなポイントがあります. 計算で遊び倒すが今年のテーマで手元に置いて損はなかろうと, とりあえず予約注文しておきました.

代数幾何チャンネルの紹介: 榎本 觀 代數幾何學

第一回が閉リーマン面でした. 時間が取れずながら聞きしかできていませんが, 期待のテーマなので応援も込めて宣伝します.

物理と(厳密な)数学

数理物理やるんでもなければ物理に厳密な数学はあまり有用でないと思っているが一方で様々な数学を知っていて使えることはどこに行っても大いに役立つという感覚

厳密な数学で物理に挑もうと思うとナビエ-ストークスを筆頭にスタートの遥か手前で既に死ぬので、あくまで物理と思って取り組みたいなら取り組む問題が死ぬほど限定されるか、もしくはそこだけピンポイントに狙い打てる凄まじい物理の嗅覚が必要です。

若い頃のPenroseとかはまさに嗅覚が凄まじかったんだろうなと思います

今日も堀田量子の堀田さんが「厳密な数学で物理に挑む」的な話に暴言を吐いていて困ったものだと思っていましたが, それはそれとして数理物理を物理にするのは大変ですよというのは何度でも言っておくべきだとも思っています.

ベンチマークからの統計学入門

先日から言っているように, いま数学・競プロからのプログラミング入門として素数判定コンテンツを作っています. 出張が思ったよりもボディブローのように効いていて今月中にリリースまで行きませんでしたが, もう少しでできそうです. 3月第一週にはリリースしたいです. (ちなみに世のいろいろなコンテンツに挑むたためのミニコンテンツで, 無料です.)

素数判定高速化に関して時間測定が必要なわけですが, そこで時間測定に関連して平均をみたりする簡単な統計処理が必要です. もちろん本格的な統計学は大変で当面そこまでやる予定はありませんが, 簡単なプログラミングでも数学絡みで統計処理が必要な場面として一つの導入になるとは思っています. そのばらつきを考えた時間測定からの統計学入門の入門というか. この辺も一つコンテンツを作り込んでみるといろいろ議論するべき点が見えてくるので, 試行錯誤しているところです.

Dependency Injection in F

DI, 関数型言語なら単に関数を差し替えればいいのでは? という雑な理解しかありません. ただReaderモナドやFreeモナドで議論するという話になっているようで, そこに興味があります. FSharpPlusを使っているとのことで, その辺も興味があるのでちょっと読んでみようと思っています. まずは無料サンプルを読んでみます.

ちなみに我らがF# for Fun and ProfitでのDIの解説.

Clojure版のデザインパターンを論じた次のページも非常に面白いです. 言語こそClojureですが発想としてはどの関数型言語でも使えるはずです.

eagle, .NET 6で始めるF#デスクトップアプリ開発

本書ではWindows環境にて、Visual Studio 2022と.NET 6を用いてWindows用デスクトップアプリケーション開発を行います。 開発言語にはF#を採用します。

DIの記事を見ていたら見つけたので. F#, .NET系の資産を使えるタイプの言語なのでもっと遊んでみたいとは思っています.

Common Lispのクイックリファレンス

これは自分用の備忘録でもあります. 古びないプログラミング系コンテンツにふさわしい言語として一つ候補に挙げているからです. あとはやはりREPL開発が本当に気持ちいいからです.

今週の問題

最近コンテンツ制作と競プロ演習でプログラミング系の計算ばかりやっていてなかなか例と計算編が進んでいませんが, 今週は少し進捗を生みました.

  • 直交群と特殊直交群の違い: 弧状連結性
  • 弧状連結な位相群の代数的特性: 弧状連結成分は部分群をなす

どちらも位相空間論の面倒な議論はさほど必要ではなく, 定義を適切に扱えればそれで終わるタイプの議論です. あくまで知識ベースの話としては, しかし十分な習熟がないと位相の言葉に目が眩んでどうしたらいいかわからないという人も多いでしょう. 単純に行列の話にまで落とし込んだとしても, です.

数学的にも意外といろいろなところに尾を引く面白い議論です. 何せ行列群の特性と位相空間論が結びつくわけで, こうしたところから位相空間論に親しむ手さえあります. 直交群・特殊直交群自体は絵に描けませんが, 絵に描ける事情が群の代数と位相に影響しているという意味では絵に描けます. そして後者は位相的性質と代数的性質の連携を謳う重要な命題で, ヒルベルトの第五問題に直結する大きなテーマです.

まとめましょう.

  • 証明を眺めると定義の確認だけ. それも行列の抽象的な計算処理で対応できる.
  • 定義の確認をする, ただそれだけの証明が意外と書けないことに気付かされる.
  • 位相と代数のセットが描く世界を見られる.
  • 行列論から位相空間論に迫る経路を与えてくれる.

この問題は良さを実感するだけでも相当の数学力が必要だとは思いますが, とにかくいいところが散りばめられた問題(命題・性質)です.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今こそロシア語をやろう/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 来週からはロシア語をやります
  • ピアノと気合
  • Windowsでの音声読み上げ
  • アインシュタインの原論文, スペイン語第八文の学習ログ

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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来週からはロシア語をやります

何となく(アインシュタインの特殊相対性理論の)スペイン語は読めそうな自信がついてきたので, 来週から本格的にアラビア語, 特にクルアーンの読解をはじめる予定でした. しかしこの世界情勢下で新たに言語を勉強するなら, ロシア語だろうと思い, 急転直下ロシア語の(再)勉強にシフトします.

本来はウクライナ語の方がいいのでしょうが, ウクライナ人はほぼ全員ロシア語が話せ, 実際に非常に近い言語だとも聞いています. 私の観測範囲・検索能力では教材などを含めた情報量はロシア語の方が多く, 勉強しやすさが違うのでいったんウクライナ語ではなくロシア語に向かいます.

ピアノと気合

ピアノをやると頭が良くなるというより、ピアノみたいに正確性と忍耐力の求められる細かい反復動作を一人で毎日何時間も根気強く練習し続けられる時点で、そもそも勉強にも向いているよねと思う

数学・物理・プログラミングでも同じです. そしてこの手のコンセプトから最近『英語のハノン』という本が出版されました. 「スピーキングに役立つ文法」というコンセプトで, とにかく発音のくり返し練習をさせる本です. 実際去年末あたりから毎日夜寝る前に一時間やっています. 一日たった一時間とはいえ, 一年続ければ少しはまともになるだろうと思い, 歯をくいしばって続けています.

少し長めの文だと覚えきれないだろうと思ってはじめは本を読みながらの音読だけにしていたのですが, 苦手だからと逃げてばかりではいけないと思い, この数週間は本を開かずに音声を聞くだけのリピートでがんばっています.

Windowsでの音声読み上げ

Windows SAPIを使って合成音声を直接ファイルに落とすコマンドラインツールが欲しかったのだが、適当なフリーソフトがない。仕方ない、作るか・・・

Macでコマンドがあるのは知っていたのですが, Windowsにもあると知ったのでメモがてらシェアします. 以前単語暗記用にフランス語単語集を作って, その発音チェックしつつの暗記のためにMacで音声ファイルを作ったことがあります. こういうのもちょっとしたプログラミングができれば自作で対応できます.

散発的な対応ならGoogle Translateでも対応できます. ただ大量に生成してくり返し聞き込みたい場合, やはり音声ファイルを作るべきです. そんな自分用メモでした.

アインシュタインの原論文スペイン語第八文

文構造
  • Basándonos en la teoría de Maxwell para cuerpos en reposo,
  • estas dos hipótesis son suficientes para derivar una electrodinámica de cuerpos en movimiento
    • que resulta ser sencilla y libre de contradicciones.

先頭は現在分詞が導く分詞構文で副詞句です. カンマからも区切りが明確です. 他の動詞はson (<- ser), derivar, resulta (<- resultar), serがあります. 英語と違ってスペイン語では動詞の原形は本動詞として使えないため, 本動詞はsonとresultaの二つです. 他の要素を大きく見ればカンマのあとからson (<- ser)が動詞の主節で, そのあとにqueが導く関係代名詞節が来ているはずと推測できます. この推測が正しいか検証します.

Basándonos en la teoría de Maxwell para cuerpos en reposo,

冒頭がbasando+nos (<- basar)の現在分詞です. 英語でいうbased onがbasar enでla teoríaが続きます. そのあとのde Maxwellがof Maxwellです. さらに前置詞paraが導くpara cuerpos, 前置詞enが導くen reposoがあります. あとは名詞の性数などの注意点があるだけで構造は素直です.

まとめると次のように英訳できます.

  • Based on Maxwell's theory for bodies at rest,

英訳すると見かけの構造が多少変わります. at restはコロケーションの問題でふつうenに対応しないatが来ています.

estas dos hipótesis son suficientes para derivar una electrodinámica de cuerpos en movimiento

冒頭のestasは英語theseにあたる女性形の複数形です. アクセント記号の有無でbe動詞estarの二人称単数tú estásと区別しましょう.

先程書いた通り本動詞はsonでserの三人称複数現在形です. 主語は三人称複数なのでhipótesisは単複同形性に注意すれば, 素直にestas dos hipótesisとすればよいでしょう. 動詞がbe動詞なので英語で言う第一文型か第二文型の型になるはずで, 後ろは副詞・副詞句だけか補語が来ます. ここでは形容詞suficientesが複数形の活用形で出ているため, 補語で判定できそうです.

次に原形derivarがparaをしたがえている点に注意します. 英語で言えば目的用法のto不定詞です. derivarは他動詞なので目的語があるはずで, 確かにuna electrodinámicaが続きます. さらにこれを補足説明するde cuerpos, en movimientoが続きます. 物理の話の流れとしてはこれで一まとまりとみなしていいでしょう.

まとめると次のように英訳できます.

  • these two hypotheses are sufficient to derive an electrodynamics of bodies in motion
que resulta ser sencilla y libre de contradicciones.

本動詞はresultaです. 特に原形のserがあるためturn out to beにあたる熟語resultar serとみなします. 形式的にはbe動詞のようにみなします. 三人称単数現在形だから主語は三人称単数で, 後ろは副詞・副詞句か補語が来ます.

queは主語にあたる関係代名詞と判定でき, 先行詞は単数形ですがmovimientoでは意味が通りません. 意味が通る先行詞は単数形の名詞electrodinámicaです. 文法的にもう少しサポートします. 補語にあたる単語はyで連結された二つの形容詞sencilla y libreです. スペイン語では主語に合わせて形容詞が活用し, 前者は女性形だから主語も女性名詞でなければなりません. この点からも先行詞は男性名詞のmovimientoでは駄目で, 男性名詞かつ複数形のcuerposはなおのこと問題です.

最後のde contradiccionesはlibreとセットにして, 英語でいうfree of contradictionsと判定します.

まとめると次のように英訳できます.

  • which turns out to be simple and free of contradictions.
単語
  • basándonos <- basando+nos <- basar: 現在分詞+nos, base
  • en: in, at, on
  • la: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • teoría: 女性名詞, theory
  • de: of
  • Maxwell: マクスウェル(人名)
  • para: for, to, by, due
  • cuerpos <= cuerpo: 男性名詞, body
  • reposo: 男性名詞, rest
    • cf. reposar
  • estas <- esta <- este: 女性複数形, this
    • cf. tú estás
  • dos: 男性名詞, 2
  • hipótesis: 女性名詞, 単複同形, hypothesis
  • son <- ser: 三人称複数現在形
  • suficientes <- suficiente: suffiecient
  • derivar: derive
  • una: 不定冠詞, un-una-unos-unas
  • electrodinámica <- electrodinámico: electrodynamic
  • movimiento: 男性名詞, move
  • que: 関係代名詞
  • resulta <- resultar: 三人称単数現在形
  • ser: be動詞
  • (f) sencilla <- (m) sencillo
    • 形容詞: simple
    • 女性名詞, single
  • y: and
  • libre: 形容詞free (動詞librarの活用形)
  • contradicciones <- contradiccion, 女性名詞

2022-02-19

数学・物理 馬鹿みたいに計算する/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

今回は日曜から前泊で出張で, 夜もヘロヘロで何もできなかったので情報共有系のネタがあまりありません.

  • 田崎さんのオンラインレクチャーシリーズ
  • 馬鹿みたいに計算する
  • clj-maxim計算する
  • 今週の問題

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田崎さんのオンラインレクチャーシリーズ

以前スピン系の本か何かの査読応募に出したときの話か, 田崎さんからメールが来ていたのでここでもシェアします.

田崎さんのホームページのトップからリンクされていて, 非公開のページではありません. むしろYouTubeにあがってさえいる動画なので積極的に宣伝していい動画でしょう.

一昨年のスピン系の本さえまだ読み切れていないくらいですが, 学部二年のとき田崎さんの熱力学の本を読んで感動して, 学習院に遊びに行ったり, 数理物理を本格的に意識したきっかけの人です. 私の修論も田崎さんが書いたレビューを参考にしていますし, ハバード模型の拡張でさえあります. 講演も非常にうまいので興味がある方はぜひ聞いてみてください.

馬鹿みたいに計算する

出張で平日はほぼ何もできなかったのですが, 出張の移動中, そして月曜の夜だけは何とか競プロの問題を解いていました.

いま私が把握している限り, 私のメルマガを読んでいてプログラミングに興味があるのは, 「プログラムが一定以上書けて, 何らかの理由で数学を勉強したい・しなければいけない人」と思っています.

(数学よりのスタンスでプログラミングもやってみたい人がいたらぜひ教えてください. このあたりにも書いたように, 私はまさに「数学よりのスタンスでプログラミングもやってみたい」勢です.)

さて, 上記の層の人で, いわゆる「文系プログラマー」の方もいらっしゃいます. 特に「数学的思考力」(とかいう何か)に課題を感じている人もいます. かといって何をしたらいいかわからない人も多いようです. 実際にプログラムを書いて中高数学の問題を考えてみよう・解いてみようというコンセプトのコンテンツがまさに応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう 中高数学駆け込み寺, プログラミングで数学を 中高数学虎の穴です. もちろんとにかく数学がしたい, 私と同タイプの人には勧められる一方, これは良くも悪くも数学しすぎているきらいもあります. 入口としてどこがいいかはずっと考えています.

そしてこれも何度も書いているように, いまその入口としてアルゴリズムとデータ構造・競技プログラミングを考えています. 動的計画法やら何やら, 明らかに知るべき知識・技術もあり, 本もたくさん出ています. ただ本は読むだけ読んで知識としてもプログラミングを組み上げる能力としても全く身についていないので, 年明けからまずはAtCoder Problemsにひたすら取り組んでいます. もともと10題くらい解いていたところから, 毎朝起きて朝の支度をしたあとの時間を使って取り組み続け, 300題中114題まで来ました.

少なくともMediumの13問程度まで, 問題を解くのにアルゴリズムとデータ構造の深い知識はほぼ不要です. プログラミングとしては適切な配列の処理をがんばるだけです. 問題もほぼ例外なく場合の数の数え上げで, 小学校の算数または中学・高校の場合の数の問題で, 数が冗談みたいに多いバージョンです.

こう書くと状況は明らかに限定的ですが, それでも数学・プログラミング学習に役立つ点があります. いまの時点でいくつか気付いた内容を紹介します.

まず「場合分けの必然性」です. 高校の頃, 数学の問題を解いていていろいろな場合分けが自力でできずにハマりまくっていたことがあります. 数学の先生は「場合分けはいわゆる発想やひらめきによるのではなく, 自然とそうやるべきことなのだ」と言っていました. 「自然とそうなると言われても」と途方に暮れていたのを思い出します. 今は多少なりともその気分はわかります. 自然と「この場合は大丈夫か?」と心配になるのです: ある程度できるようになれば. AtCoderでもWA(Wrong Answer)になったとき, 何かのコーナーケースを落としているときがありました. 解説を見るなり他の人のコードを見るなりして「ああ, 確かにこの場合が抜けていた」, 「考えてはいたがプログラムに表現しきれていなかった」と思うことがよくあります. この場合分けの思考は場合分けだけではなくありとあらゆる数学の場面で基本的です. プログラミングなどの実務でもテストでのコーナーケースの問題に直結します. プログラミングができる勢は場合分けはこうした場合分けをコーナーケースの確認なのだと思うと, 少しは場合分けに関する数学的思考を体感する糸口になるはずです.

あとは人力での計算とコンピューターにさせる・させられる・させたい計算の違いがあります. 人間(自分)がやるならこう, という計算の処理をコンピューターに直接辿らせるのは難しい, 少なくともその処理が自分にはさっと書けないことがあります. 競技プログラミングの制約として時間内に処理させきらなければならず, その点もアルゴリズム構築上の制約になる場合があります. 人間(自分)が考えるようにプログラムを書いた方がいい場合もあれば, 剛腕で全部計算させるタイプのプログラムを書いた方がいい場合もあれば, 少し工夫しないと意図通りの計算をさせられない場合もあります. 初心者レベルだとこの少しの数学と少しのプログラミングの技術の組み合わせで答えでさっと書けます. もしあなたにプログラミング系の素養があって数学的思考に難を抱えている自認があるなら, 騙されたと思ってAtCoder Problemsの300題を解いてみてはどうでしょうか? 上で書いたように, 少なくともコーナーケースの嗅ぎ分け能力を上げると, 場合分けに関して数学のありとあらゆる場面で役に立ちます.

一覧ページがすぐに見つからなかったのですが, AtCoderだと大体どんな言語でも使えるはずです. プログラムを書いたことがなくても, 公式でC++入門コンテンツがあるのでこれを読むといいでしょう. 最近はPythonによる本が充実してきているので, 入門レベルならPythonで十分です. (私は趣味でF#が基本, 最近Common Lispを並行して勉強しているところです. 聞ける人が少ないと思うのでどちらも初学者にはお勧めしませんが.)

今年は計算しまくる年にしようと宣言したわけで, プログラミングでも年始から計算し続けていて, まだまだ本当に続けているぞという宣言を改めてしておきます. 年始に目標を掲げても二月になるとその目標への取り組みをやめてしまう人が8割を越えるとか. 私はまだまだ続けています. 競プロはようやく少し楽しくなってきたところです. 現状私がプログラムネタで気楽に楽しめる数少ない領域です. ぜひ一緒にやりましょう.

clj-maximaまたはmaxima

数学系プログラミングもいろいろ調べて実践もしている証拠として, clj-maximaのREADMEのサンプルコード修正プルリクを出しておきます.

READMEのサンプルコードとはいえ, 明白なコード修正のプルリクを送ったのははじめてで, 取り込まれたのもはじめてだったので自分用の記念です.

上でCommon Lispをやっていると書いたのもこれの影響です. 去年から素数夜曲のためにSchemeをやっていて, さらに先日からfdg-bookSICMUtilsの話をしているように, ここ最近割とClojure・Schemeづいています. Clojureはすっきりしていてかなりお気に入りですが, 上記ライブラリがまだ発展途上なのが面倒です. Pythonはnumpyやらsympyやらあって私自身学習の記録を整理してコンテンツも作っていますが, 微妙なメンテナンスが入って面倒です. 今も開発が続いてはいるものの, かなり枯れていて後方互換性がかなり強く担保されていそうな言語としてCommon Lispはだいぶ前から視野に入っています. AtCoderでプログラムを書くレベルならもう少し強化しても罰は当たるまいと思ってついでに強化中です. (Common) Lispは古い言語なのでかなり設計も古くて半端なところはあります. 改善のためのrutilsなどのライブラリもありますが, このライブラリはAtCoderで使えないのでがんばって裸のCommon Lispで書いています.

ちなみにmaximaのプログラムを実際に読み解く勉強会, 需要あるでしょうか? 私の場合, 例と計算編のような自発的なやる気が出る話以外は, 勉強会形式で無理やり話すための勉強時間を作らないと続かないことが見えています. 興味がある人がいたら連絡ください. 何か考えます.

今週の問題

今週は忙しくて何もできなかったため, 残念ながら新規追加はありません.

とはいえ, 例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 アインシュタインの原論文, スペイン語第七文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

今週は日曜前泊からずっと出張でほぼ何もできていません. 先週出していなかった分の学習ログを共有します.

  • アインシュタインの原論文, スペイン語第七文の学習ログ

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アインシュタインの原論文スペイン語第七文

今回は未公開分の先週の学習ログです. 単語について詳しくは単語集ページも参考にしてください.

文構造
  • Queremos llevar esta suposición al nivel de hipótesis y además introducir una hipótesis adicional
    • (cuyo contenido será llamado de ahora en adelante "principio de la relatividad")
    • que solamente a primera vista parece ser incompatible con el principio de la relatividad.
  • Dicha hipótesis adicional sostiene
    • que la luz en el espacio vacío siempre se propaga con cierta velocidad $V$
    • que no depende del estado de movimiento del emisor.

簡単に全体を見渡すべく動詞を数えます.

  • queremos <- querer: 一人称複数, 現在形
  • será <- ser: 三人称単数, 未来形
  • parace <- paracer: 三人称単数, 現在形
  • sostiene <- sostener: 三人称単数, 現在形
  • se propaga <- propagarse: 三人称単数, 現在形
  • depende <- depender: 三人称単数, 現在形

途中のllevar, introducirは原形なので不定詞句で出てくるはずです. つまり五つの文または節が必要です. これを上のように分解しました. いつも通り動詞の活用から主語を割り出し, 自動詞・他動詞の区別から目的語の有無を判定し, 関係詞節の欠けた要素を割り出しましょう.

Queremos llevar esta suposición al nivel de hipótesis y además introducir una hipótesis adicional

querer+不定詞はwant+to不定詞なのでqueremos+不定詞で抜き出します. ここのestaにはアクセント記号がないため, estarの三人称単数現在形ではなくthisにあたる指示形容詞です. introducirは不定詞なので適当な不定詞句で解釈する必要があり, ここではyによる並列も考える必要があります. 特にqueremos+to不定詞が並列で置かれたと解釈するのが自然でしょう. これで動詞回りがわかり, ついでに大きな文構造も取れました. to不定詞句の不定詞は他動詞だからあとは主語・目的語・形容詞句・副詞句などを特定してピースを埋めます.

queremosは一人称複数形だから主語は明らかにweの省略です. 目的語は形式的にはto不定詞句で, 特にto不定詞句の目的語として(llevar) esta suposiciónと(introducir) una hipótesisが候補に挙がります. 前者には前置詞句al nivel de hipótesisがさらについていて, 後者には名詞句una hipótesis adicionalがついています.

まとめて英訳すれば次のように書けます.

  • We want to bring this assumption to the level of a hypothesis and also to introduce an additional hypothesis
(cuyo contenido será llamado de ahora en adelante "principio de la relatividad")

動詞は明らかにserá llamadoで, スペイン語がよくわからなくてもフランス語との類似で何となく未来形感を感じます. 何にせよllamadoが過去分詞だから未来形の受動文で, seráが三人称単数形だから主語は三人称単数です. ここでは明らかにcuyo contenidoです. cuyoはcontenidoを受けて男性形なので先行詞探しは別枠で考える必要があります. もちろん文の流れ, そして意味を考えればsuposiciónしかありません.

次にllamarを考えます. これはcallにあたり英語でいう第五文型を導けるため, 補語的な要素を持つ可能性があります. de ahora en adelanteでfrom now onの熟語で副詞なので, 「相対性原理」が浮いています. これはまさにSVOCのCでしょう. これで全ての要素に役割が与えられました.

まとめると次のように英訳できます.

  • (the content of which will be called from now on "principle of relativity")
que solamente a primera vista parece ser incompatible con el principio de la relatividad.

本動詞はpareceで三人称単数現在形です. 原形のserがあって形容詞incompatibleが続くためparecer+不定詞+形容詞の述語句が見えます. 文の流れからするとこのque節はuna hipótesis adicionalの内容を説明しているはずで, solamenteは副詞, a primera vistaで熟語的な副詞(at first glance)であり, principioとcon el, relatividadはde laで前置詞の支配を受けているため, 浮いている名詞は関係代名詞とみなしたときのqueしかありません. これで主語が確定しました.

意味としてincompatibleに対して何がincompatibleなのかを補足するべくcon el principioがあります. 定冠詞つきだから何の原理なのか気になるわけで, それを示すのがde la relatividadです.

まとめると次のように英訳できます.

  • that only at first sight seems to be incompatible with the principle of relativity.
Dicha hipótesis adicional sostiene

ここはsostieneが三人称単数現在形で, 三人称単数の女性名詞hipótesisを 形容詞dichaとadicionalが挟んでいます. (Dichaを見てもhipótesisの性が推測できます.) sostenerはholdの意味でhold that構文が推測できます.

まとめると次のように英訳できます.

  • This additional hypothesis holds
que la luz en el espacio vacío siempre se propaga con cierta velocidad $V$

英語holdにあたるsostenerに続くのでおそらく完全な文を作るはずの節です. それを念頭に置いて読みましょう. 動詞は再帰動詞のpropagarseで, ここでのpropagaは三人称単数現在です. そもそも浮いている名詞はla luzしかなく三人称単数なので主語は決まりました. 残りは名詞句el espacio vacíoが前置詞en, cierta velocidad $V$が前置詞conの支配を受けているため, 副詞句と解釈すれば全ての要素が分類できます.

まとめると次のように英訳できます.

  • that light in empty space always propagates with a certain velocity $V$
que no depende del estado de movimiento del emisor.

意味としてもcierta velocidadが何なのか気になりますし, 文の流れからしてもこれを先行詞とした節のはずです. 動詞は(no) dependeで三人称単数現在で, 他の名詞はdel estado, de movimiento, del emisorと全て前置詞の支配を受けているため浮いた名詞は関係代名詞とみなしたqueだけで, 主語の判定と節の分類ができました.

dependerと言えば英語のdepend onが想像され, depend onの形で他動詞とみなしたときの目的語がほしくなります. スペイン語ではdepender deで(del = de+el) estadoが目的語です. 単にestadoでは意味がわからないのできちんと補足があり, de movimientoが続き, さらに何のmovimientoかがわからないためそれを補足するdel emisorがあります. これで全ての要素に役割が与えられました.

まとめると次のように英訳できます.

  • which does not depend on the state of motion of the emitter.
単語
  • queremos <- querer: 一人称複数現在形, to desire, to want, to want to
    • querer+不定詞: ---したい
    • cf. query
  • lleva <- llevar: 三人称単数現在形, take, cf. lever
  • esta: this
    • cf. él está <- estar
  • suposición: 女性名詞, assumption, guess, supposition
  • cuyo: whose
  • contenido <- contener: 男性名詞, content
    • cf. 過去分詞, contain
  • será <- ser
    • Formal second-person singular (usted) future indicative form of ser.
    • Third-person singular (él, ella, also used with usted) future indicative form of ser.
  • llamado <- llamar: 過去分詞
  • de: 前置詞, of
  • ahora: 副詞, now, just now, today, however
    • cf: de ahora: nowadays, today, latter
  • en: 前置詞, in, at, to
  • adelante: 副詞, forward
  • principio: 男性名詞, principle
  • la: 女性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • relatividad: 女性名詞, relativity
  • al=a+el
    • el: 男性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • nivel: 男性名詞, level
  • hipótesis: 女性名詞, hypothesis
  • y: and
  • además: in addition, as well
  • introducir: 他動詞, introduce
  • una <- un: 不定冠詞, 女性形
  • adicional: additional
  • que: 関係代名詞, 疑問詞, that, which
  • solamente: 副詞, only
  • primera <- primero: 形容詞, former
  • vista: 女性名詞, sight, view
    • a primera vista: 副詞(熟語) at first glance
  • parece <- parecer: 動詞, to seem
  • ser: be動詞
  • incompatible: 形容詞, incompatible
  • con: 前置詞, with
  • dicha <- dicho: 男性名詞, remark
  • sostiene <- sostener: 動詞, hold, sustain, support
    • cf. tener: yo tengo - tú tienes / tenés - él tiene - nos. tenemos - vos. tenéis / tienen - ellos tienen
  • luz: 女性名詞, light
  • espacio: 男性名詞, space
  • vacío: 形容詞・男性名詞, vacant, vacuum
  • siempre: 副詞, always
  • se: 代名詞, 三人称単数目的格, 再帰的に使う
  • propaga <- propagar: 動詞, propagate
  • cierta <- cierto: true
  • velocidad: 女性名詞, velocity
  • no: 否定
  • depende <- depender: 三人称単数現在形, depened
  • del = de+el
  • estado: 男性名詞, state
  • movimiento: 男性名詞, movement
  • emisor: 男性名詞, emittor

2022-02-12

数学・物理 何もかも正確にやればいいわけではない/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • QCD: 詐欺から納得へ
  • 何もかも正確にやればいいわけではない
  • 『第2、第3の「KUMON」はなぜ出ないか』
  • 木田雅成, 連分数
  • 数論とエルゴード理論, Yuya Murakami: Extended-cycle integrals of modular functions for badly approximable numbers
  • お気に入りのプログラミング言語を探せ
  • Pythonでの動画作成
  • $\mod$の総和の最大値
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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QCD: 詐欺から納得へ

この記事、めっちゃ面白かったのでオススメです 「QCD: 詐欺から納得へ」

いろいろな読み方があるでしょう. 素粒子系が好きな人はそれだけでも楽しめるかもしれません.

今回のポイントとしてはリー群がたくさん出てくる点です. 最近ずっとやっている計算系の話で数学としてはリー群・リー環だと言っています. 物理での具体的な応用先としては有名な話で, 改めて強調しておきます.

何もかも正確にやればいいわけではない

しかし、そんな彼らもどうやら数学は厳密すぎて面倒になることがあるらしい。 理論は数式化されなければいけないから、物理にとって数学は必要不可欠な基盤だ。 だから日常的に数学には触れているはずだが、どうやら数式の正確な操作や証明はしばしば彼らを疲弊させるらしい。 Twitterのタイムラインでも、この手の数学者と物理学者の意識というか守備範囲のちがいを見かける。 反対側の極にいる自分からは、厳密すぎるくらいに正確に研究に取り組んでいるように見える人たちが、数学の厳密さにうんざりしている。 その様子にはある種の微笑ましさを覚えるし、同時に、どの複雑さを受け入れて、どの正確さを犠牲にするのか、それぞれの場所で考えているのだなと感じる。

この数学と物理の話、なんとなくニュアンスの差を感じますね。ある領域の物理でその数学を厳密化しても、考慮していない新しい物理法則が働き出してしまって無意味な場合には、自分は無駄な数学はしません。一方もし物理に本質的ならばいくらでも厳密な数学を使おうとします。

私は「物理のための数学」と称してオーバーキルなコンテンツを作っている身としてはどうかという気はしますが, 物理学科での実際という意味では, もしあなたが物理をやりたいなら, 数学にこだわるべきではありません. 堀田さんが上に書いた理由とは全く別で, 数学的にきちんと議論できる領域自体ほぼないからです.

例えば流体力学はその基本方程式であるナビエ-ストークス方程式は解が存在して一意かどうかさえわかっていません. 数学としてはこれがスタート地点で, そもそもスタートさえ切れていないのが流体力学です. 物理的には論外の段階で止まっています. そうまでしてもやりたければやればいいと思いますが, 物理の遥か手前で失速します.

ちなみに私が常々文句を言っているのは教科書の記述です. 例えば以前いろぶつ先生の熱力学の本の査読をしていたのですが, 一般論を話している中で段落の変更さえなくいきなり具体例の話をはじめたり, 文章として無茶苦茶です. 他にも熱力学で初学者の混乱を引き起こすと有名な関数の引数を平然とやります. 「慣れればその方が楽だから」とは言いますが, 初学者に読ませるための教科書で, 散々悪評が定着している分野でどういうつもりなのか, 本当に理解に苦しみます.

この点, 温度を基本変数にした点で多少の批判がある田崎さんの熱力学の本は常に引数を明記し, さらに完全な熱力学関数(と変数)の場合は括弧の形を変えて明記する念の入れようです. 悪癖とわかりきったことを何故やめないのか, 異様としか言いようがありません.

熱力学というと, 私の学部の指導教員の話も思い出します. 「熱力学の第二法則は公理だと言ってくれればわかったのに」と学生時代から40年を越えてなお言い募る執念に感心しました.

『第2、第3の「KUMON」はなぜ出ないか』

KUMONの仕組みは、一見すると、初期資本も少なく、真似しやすそうに見える。しかし、KUMONの強みというのは、標準化された教材それ自体ではない。「子どものために」を合い言葉に指導者たちを動機づけ、指導に必要な知識を共創し、優れた教材の見返りとしてロイヤルティを徴収する、という仕組み全体にある。

そして、その仕組みを成り立たせているのが、教材を共通言語に、日々指導の改善に励んでいるコミュニティ・ネットワークなのである。このような仕組みがあって、日本においても世界においても独自のポジションに立つことができている。

よくよく調べてみると、同じようなことをするのが至難の業だということがわかる。生半可な気持ちで模倣すると大やけどを負うという仕組みなのだ。

これはまさに現代数学探険隊でやりたいことです. 例えばいろいろな本を読んでいると細かい部分で非常に困ります.

勉強していて困ることはいろいろあります. 例えば勉強したい大目標があってそこにいたるにはどうするか: 具体的には素粒子を勉強するために何をどう勉強していけばよいか, などです. 全体像を掴むとでもいいましょうか. ただ, ここで議論したいのは別のテーマです.

何を言いたいかというと, 「この本のこの定理のこの証明がわからない」という疑問です. 実際にその本を持っていないと質問に対応できません. そしてピンポイントでその定理やら何やらとその証明を見せられても回答できません. 定義・命題群の構成が違うとその本のその議論で使っていい命題も違います. 「この定理を使えば示せる」と言われても, その本ではあとに出てくる場合があります. 究極的には一冊丸々の全体構造がわかっていないと質問に答えられない可能性があります. これを削るために一気通貫で作ったコンテンツを共通言語にして, 「このコンテンツではこう」と言いたいわけで, それが私にとっては現代数学探険隊です. 研究室ではゼミで使う本だったりします.

最近はプログラミング(プログラミング言語)も共通言語にしたいと思っています. 最近プログラミング関係でいくつか反響があります. 思っていたより望まれていたようで, これも進めなければいけないなと改めて実感しています. ちなみに素数判定に関するコンテンツと書いたらこのくらいの, 知っている人にはごく入門的なコンテンツにさえ反応がありました. いま精力的に制作中です. 楽しみにしていてください.

入門系の小さなコンテンツをいくつも作っていく予定です. いま勉強中の競技プログラミング, アルゴリズムとデータ構造系とも絡めていろいろやりたいです.

木田雅成, 連分数

初等整数論への入門、連分数。問も豊富な一冊! これまで,多くの有名な数学者がそれぞれの立場から連分数を研究し,重要な役割を果たすことを明らかにしてきた.特に2次無理数とよばれる数の整数論を深く理解するには,連分数の研究がかかせない. 本書の目的は,連分数の基礎的な理論を大学一年生程度の知識,とくに行列の理論を仮定して解説することである.また,各節には計算を中心とした問を掲載し,巻末に略解も用意している.初等整数論への入門として,更に群論などの抽象代数学の活用が具体的な問題に対していかに有効であるかを,本書を通して学ぶことができる.

Twitterで眺めていたら出てきました. プログラミングで計算し倒すのに楽しいのではないかと思い気になっています. 単純に計算練習系のコンテンツとしても取り組みたいです. 連分数を近似計算し倒すのも面白そうですし, すぐ次の不良近似の問題もまさに計算機で死ぬほど計算させて収束が悪いのを実感したりもできるでしょう.

数論とエルゴード理論, Yuya Murakami: Extended-cycle integrals of modular functions for badly approximable numbers

明日 9:10から、Workshop 「数論とエルゴード理論」にてこちらの論文 https://twitter.com/MurakamiMath/status/1450390950832840714?s=20&t=ifX19xZ_3ihxatcBO4U3sA… の内容を発表させて頂きます。 連分数や記号力学系と関連する研究なので、もしかしたらエルゴード理論を応用すると何か新しいことが分かるかも……と思っています。よろしくお願いいたします。

論文を書きました! 「実二次無理数」wに対し、j関数の測地線積分val(w)という値が九州大の金子先生らによって定義・考察されているのですが、現状は謎に満ちた量です。 この論文では「不良近似数」という実数xに対しval(x)を定義する試みを述べました。

それはもはや測地線積分ではなく、エントロピーのようなある種の極限値として定義されます。 エルゴード理論では「ほとんど全ての点でエントロピーが一定になる」というタイプの定理が扱われますが、この論文では反対に個々の点に対して定まる個々のエントロピーに着目しています。>またこの論文ではval(x)をxの連分数展開が ・どんどん大きくなる巡回部分を持つ場合 ・巡回部分を全く持たない場合(Thue-Morse語) のときに計算しています。

まだ論文が読めていないので先程の不良近似とここでの不良近似が一致するかわかりません. ただ近似の精度・速度問題はとても大事です. 例えばテイラー展開や数値計算まわりで収束すること自体はわかっていて, 収束のスピードが遅いこともよく知られている例がいくつかあります. スパコン利用など高速化が必要な事例はよくあり, 何より最近流行りの機械学習系でも高速化は真っ先に重要になるテーマです. 入門を少し越えた教科書になると必ず出てきます. 実用上も重要なテーマです.

お気に入りのプログラミング言語を探せ

質問者はJavaScriptの初歩の初歩しか学んでおらず、このようなコードは見たことがないはずだ。しかしわかりやすいと言う。再帰は正しく理解できていることが確認できた。 質問者にはHaskellのような純粋関数型の言語のほうが向いているのかもしれない。

Twitterで「何年もプログラマーをやっているのにif文やfor文が書けない人がいる」という話に, 「for文やif文は書けないがfor式やif式は書ける・わかる人はありうるか?」と書いたら教えてもらいました.

これに限らず, あるアプローチではどうしても無理だが他のアプローチならすんなりわかる経験はよくあります. 数学の本でも, 本当に微妙な表現の違いなのに, 「ある本の記述はよくわからない一方である本の記述はよくわかる」ケースはよくあります. がんばって取り組むべきメインの本を据えつつ, 不明点を調べられるように何冊か持っておくといいと言われる理由でもあります.

プログラミング言語に限らず自然言語でもあります. 調査・勉強のためにここ数年語学・言語学界隈にも顔を出していますが, そこで「英語はあまり好きではない」, 「(実際に留学含めて台湾に数年住んでいたレベルで中国語はできる人が)英語は本当に嫌い」, 「英語はよくわからないが, フランス語はよく馴染む」と言っていたりします. 英語は実用言語なので好き嫌い言うものではなく, 他の自然言語はおもちゃという感じで付き合っているため, 自然言語に対して好き嫌いという感覚はあまりありません. 正確に言えば, ドイツ語はほどほどに格が強くて読みやすいとか, 格は強いが格変化が厳しすぎてロシア語は暗記が面倒で嫌になるとか, 格がさらに強いおかげで前置詞と名詞の位置が遠く離れられるラテン語は凄まじいな, といった感覚はありますが.

ただプログラミング言語に関しては嫌いとは言わないまでも, 明確に好きな言語はあります. 私の場合はいわゆる命令型の言語よりはいわゆる関数型の言語の方が好きです. 肌に合います.

あまりまとまりのある話にはなりませんでしたが, いろいろ考えつつそれなりの意図はきちんと持って日々勉強し, 成果をコンテンツ化していることを伝えようとしています.

Pythonでの動画作成

単純に面白そうだったので紹介です. これでコンテンツ作っても面白いかもしれません. 私自身はもっと原始的な計算し倒す形のコンテンツが作りたいので, 現状あまり気乗りしませんが, 何か作った方がいればここでも宣伝協力するので教えてください.

$\mod$の総和の最大値

年明け前後から毎日ずっとやっているAtCoder Problemsで出会った問題です. 面白かったので紹介します. 形式的には完全に数学の問題です. 面白いのは一見すると無限個のチェックが必要なところ, mod演算を考えているために計算機で計算できるレベルで完全に有限の世界に落ちている点です. 小さいところで実際に計算してみると周期性が見えたりもします.

ただし考えなしに計算しようとすると簡単にオーバーフローしたり, いつまで経っても計算が終わらなかったりします. この辺を工夫して計算する点も面白いです.

AtCoderは全部自力で考えてもよく, 公式の解説を見て実装部分だけ自力で考えてもよく, 人の実装を見て意図を読み解く訓練をしてもよく, いろいろな遊び方があります. Projet Eulerは面白いのですが正解しないと解説が読めない点がつらいです. ぜひうまいこと使い分けて遊んでみてください.

今週の問題

一般論の中に組み込んだため計算練習コンテンツには入れていないのですが, 四次特殊直交群の部分群と四元数体の自己同型群の話が面白かったです. これは特にSO(3)でもあり, 四元数体の自己同型群が面白いのなら, それ自身は結合律を満たさず代数的には厳しい八元数代数も自己同型群は面白いかもしれない, そしてそれは例外型リー群$G_2$だと言及されていました.

私がこの分野に疎いから知らなかっただけで, 何をどう考えても有名すぎるほど有名な話でしょう. ここでは「ある対象が面白いなら他のこんな例も考えてみるべきで, 面白いことがあるかもしれない」という示唆を得る例として紹介しました. こういう話は数学でも物理でもコンピューター関係でもあります. いま特にデータ構造とアルゴリズム周辺をやっていて痛感していますが, 毎日小さな一歩を積んでいくしかありません. 今年は私自身の小さな一歩を具体的に見せていく年にしようとも思っています. 特に競技プログラミングはAtCoder ProblemsのEasyでさえいまだ二時間かかって終わらないことがあります. 今まできちんと取り組んで来ておらず, 知らないこと・できないことばかりなのは仕方ありません. 小さな一歩から踏んでいけないので歯を食いしばってやっていきます.

そういえば前回のマズール-ウラムには反響がありました. まさにコンテンツ内の注意として書いた点が面白いと言ってきた人がいました. 面白い定理なのです.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

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語学 科学英語文法 覚書/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 科学英語文法 覚え書き(冠詞について)
  • 単語の議論: beefとcow
  • 単語の議論: pero
  • アインシュタインの原論文, スペイン語第六文の学習ログ

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  • 今回のページ
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科学英語文法 覚え書き(冠詞について)

またaかtheかそれとも冠詞を付けないかでよくわからなくなってきたのでググってたら「科学英語文法 覚え書き(冠詞について)」というのを見つけて読んでる。奥が深い・・・ 文献へのリンク(target=_blank)

理工系の英語に関する教育的な見地からの(?)論文紹介です. 最後に次のような恐ろしい例文が出てきました.

  • An estimated 200 samples were tested.
  • おおよそ200個のサンプルについて検査が行われた

名詞の複数形にaがついています.

私の実用面から言って英語が本当に最優先で英語情報はよく目にしますが, 多言語での冠詞の振る舞い比較みたいなのも知りたいです.

単語の議論: beefとcow

さすがに英語関係の話をしないのもどうかと思うので少し. 以前も書いたか勉強会で話したかと思いますが, 英語でbeefとcowがあります. 英語でbeefは牛の肉(食事用)に使い, cowは家畜としての牛などを指すときに使います. しかし元になったフランス語bœufは肉の意味もあるものの, ふつうの牛(ox)も意味します.

これは世界史でも出てくるノルマンコンクエストでフランスに占領され, 英語にフランス語が流入してきた痕跡のようです. 王侯貴族・上流階級がフランス人で, フランス人は食べるモノ, 下々のイギリス人は家畜・労働力として普段接する違いが今でも言葉に残っているわけです.

理工系の皆が皆このような話に興味があるとは思いません. しかし嫌でも使う英語から歴史やら何やらの話に波及すれば, 多少なりとも色々な話に親しみが持てるのではないかと思い, 語学・言語学についても少しずつ知見を貯めています.

単語の議論: pero

スペイン語をやっていたらbutの意味でperoがよく出てきます. 何故peroでbutなのか謎なのでWiktionary先生に尋ねたところ, ラテン語per hoc (by this, for this reason)に由来するとのこと. 意味がだいぶ変わっていて謎ではありますが, 日本語でも「さうざうし」などの例があるのでそんなものかという気分です.

Wiktionaryは見ていると時間が溶ける魔界です. 何もやる気が出ないとき, だらだら眺めるのに使ってみてください.

アインシュタインの原論文スペイン語第六文

今週の学習ログです. スペイン語に慣れてきた上にDeepL併用という技も取得したため, 学習速度も上がっていて既に第七文まで大雑把な自分用解説をつけています. そんなに張りつきでやっているわけでもないのでこの程度の歩みですが, きちんと勉強を進めています.

単語について詳しくは単語集ページも参考にしてください.

文構造
  • Otros ejemplos de esta índole así como los intentos infructuosos para constatar un movimiento de la Tierra con respecto al "medio de propagación de la luz" permiten suponer
  • que no solamente en mecánica sino también en electrodinámica ninguna de las propiedades de los fenómenos corresponde al concepto de reposo absoluto.
  • Más bien debemos suponer que para todos los sistemas de coordenadas, en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas, también tienen validez las mismas leyes electrodinámicas y ópticas, tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.
Otros ejemplos de esta índole así como los intentos infructuosos para constatar un movimiento de la Tierra con respecto al "medio de propagación de la luz" permiten suponer

いい切れ目がないのでこの固まりで考えます. 前から順に調べましょう. まず動詞を見つけます. いくつか候補がある中でpermiten suponer queに注目します. これはallow to suppose thatと読めます. 後ろにsuponerの内容にあたるque節が続き, 主語は三人称複数が来るはずです. この上で主語が何かと言えば先頭のotros ejemplosです. つまり基本構造は次のようになっています.

  • Otros ejemplos permiten supponer que

他の部分は副詞かotros ejemplosへの修飾しかありえません. まずdeは前置詞なので後ろに何かしら名詞が来ます. 次のestaは(アクセントを除けば)estarの三人称単数現在とも同形ですが, ここでは指示形容詞としてのesta (this)で取るべきです. 続くíndoleが女性名詞(type, nature, character)ので, まとめてof this typeと訳せます.

次のasí comoはas well asの意味です. 何とas well asかを見るべく続きを見れば, los intentos infructuosos (the unfruitful attempt)が来ています. これはotros ejemplosとの並列と見ればいいでしょう. 先程はotros ejemplosだけにしてしまったこの文の主語は, 実はlos intentosまで含むのでした.

次にparaのあとに動詞の不定形が来ています. スペイン語では原則として不定形は本動詞にならないため, ここではpara+不定詞(英語のto不定詞)と見ればよく, constatarの目的語があとに続くはずです.

constatarの目的語はun movimiento de la Tierraで良いでしょう. ここの大文字のTierraは地球です. さらにcon respecto alが続きます. これは直訳でwith respecto toと思えばよく, 何に対する相対運動なのかを考えているはずです. そこでまさに(al) "medio de propagación de la luz"が出ます. 光の媒質であるエーテルが出てきました.

まとめると次のように英訳できます.

  • Other examples of this kind as well as unsuccessful attempts to establish a motion of the Earth with respect to the "medium of light propagation" allow us to assume

主語が長いだけで実はシンプルな文でした.

que no solamente en mecánica sino también en electrodinámica ninguna de las propiedades de los fenómenos corresponde al concepto de reposo absoluto.

これはsuponerの内容にあたるque節です. 主語・動詞が揃った完全な文が来ているはずです. まず動詞はcorrespondeで三人称単数現在形です. 主語は三人称単数で目的語も存在する可能性があります. 直後にal (a+el)が来ているので目的語相当の存在があり, 特にel concepto de reposo absoluto (= the concept of absolute rest)です. これで後半部の解釈が確定したので前半部分を解釈しましょう.

まずは主語を確定させましょう. 名詞として明らかに浮いているのはningunaで女性形の名詞です. 三人称単数形なのでこれが主語でしょう. そのあとのde las propiedades de los fenómenos (= of the properties of the phenomenon)は修飾句です.

残りは冒頭のno solamenteからの部分の解釈です. まずno solamente A sino también Bはnot only A but also Bの形で, これに気付く必要があります. 何が並列されているかを見れば, en mecánicaとen electrodinámicaで明らかに副詞句です.

以上をまとめると次のように書けます.

  • that not only in mechanics but also in electrodynamics none of the properties of phenomena corresponds to the concept of absolute rest.
Más bien debemos suponer que para todos los sistemas de coordenadas, en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas, también tienen validez las mismas leyes electrodinámicas y ópticas, tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.

これまた異様に長い文です. 冒頭にsuponer que (= suppose that)があるためここで一旦切れます. 特にque以下は主語・動詞がある完全な文です. まずは前半分をさっと確認します.

  • Más bien debemos suponer que

先程触れたsuponerは原形なので明らかに本動詞ではありません. 本動詞はdebemos (<- deber)はmustにあたる助動詞で一人称複数現在形で主語が省略されています. Más bienはこれでratherを表します. 念のため書いておくと次のように英訳できます.

  • Rather, we must assume that

次にque節の中を調べます. カンマで区切られているのでそこに注目して分けて解釈しましょう. 明らかに前置詞が導く副詞句などは分けてあります.

  • que también tienen validez las mismas leyes electrodinámicas y ópticas
    • para todos los sistemas de coordenadas
    • en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas
    • tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.

まず動詞はserの三人称複数現在形であるson, tenerの三人称複数現在形tienen, 「haber+demostrarseの過去分詞」型のse ha demostradoがあります. このうちsonはcualesの支配下にあり, se ha demostradoはtal como (= just like)の支配下にあるため, que節の本動詞はtienenでしょう. 主語として浮いた名詞を探します. 直後に女性名詞単数形のválidasがあり, その次に女性名詞の複数形las leyesがあります. 主語は三人称複数としてlas leyesを選べばよいでしょう. 間にあるmismasはmismoの複数形で, electrodinámicas y ópticasは後置の形容詞句でlea leyesと文章の流れ・概念上の相性もよく, これで主語にあたる名詞句がわかりました. 間にあったválidasは他動詞tienen (<- tener)の目的語です.

英訳してまとめます.

  • (suppose) that the same electrodynamic and optical laws are also valid

あとは前置詞paraが導く副詞句, 前置詞enが導く副詞句があり, se ha demostradoを核にした分詞構文があります. 順に調べましょう.

  • para todos los sistemas de coordenadas

これは素直に英語に直訳でき, 例えばfor all the systems of coordinatesです.

  • en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas

このen直後のlosは関係代名詞を受ける定冠詞と思えばよく, sonがbe動詞相当だから in which the equations of mechanics are validとすればよいでしょう. 直訳のmechanical equationsだと「力学の方程式(運動方程式)」のニュアンスが出ないため, ここではequations of mechanicsとしました. また文の流れからしてen losのlosが受ける名詞(cualesの先行詞)はcoordenadasです.

  • tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.

これはse ha demostradoをhave been demonstratedと受身で訳出します. 最後のlas magnitudes de primer ordenはいわゆる「一次の微少量」にあたる表現で, 標準的な英訳を選んだ方がよい程度で, あとは順序もほぼそのままに直訳でき, as have already been demonstrated as the first order quantitiesとでも訳せます. 直訳を心がけたら先頭と二つ目にasが来ていて微妙な英訳になってしまいました. 実際の英訳とも比較してみてください.

まとめた上で少し調整すると次のように英訳できます.

  • for all the coordinate systems, in which the equations of mechanics are valid, the same electrodynamic and optical laws are also valid, as have already been shown to the first order quantities.
単語

詳しくは単語集ページも参考にしてください.

  • Otros <- otro: other
  • ejemplos <- ejemplo: example
  • de: 前置詞, of
  • esta: 指示形容詞, this
    • cf. estar: 三人称単数現在
    • yo estoy - tú estás - él está - nos. estamos - vos. estáis / están - ellos están
  • índole: 女性名詞, type, nature, character
  • así: like this
    • así como: as well as
  • como: 副詞・接続詞 like
  • los: 定冠詞 el-la-lo-los-las-lo
  • intentos <- intento: attempt
  • infructuosos: fruitless, unfruitful
  • para: 前置詞, for, to, by, due
    • para 不定詞: ---のために, to不定詞の副詞的用法
  • constatar: verify, confirm
  • un: 男性不定冠詞, un-una-unos-unas
  • movimiento: 男性名詞, movement
  • de: 前置詞 of
  • la: 定冠詞 el-la-lo-los-las-lo
  • tierra: 女性名詞, terra, earch
  • con: with
  • respecto: respect
  • al: a+el
  • medio: 男性名詞, media, medium
  • propagación: 女性名詞, propagation
  • luz: 女性名詞, light
  • permiten <- permitir: 三人称複数現在形, permit
  • suponer: suppose
  • que: 関係代名詞
  • no: no
  • solamente: only
    • no solamente A sino también B = not only A but also B
  • en: in, at, to
  • mecánica: mechanics
  • sino: but
  • también: also, too, as well, so
  • electrodinámica: 女性名詞, electrodinamics
  • ninguna <- ninguno: 女性形, 限定詞, not any
  • de: of
  • las: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • propiedades <- propiedad: property
  • los: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • fenómenos <- fenómeno, 男性名詞
  • corresponde <- corresponder: 三人称単数現在, correspond
  • al: a+el
  • concepto: 男性名詞, concept
  • reposo: 男性名詞, rest
  • absoluto: absolute
  • más: more
    • más bien: rather
  • bien: well
  • debemos <- deber: 一人称複数現在形, owe, must, should
  • para: for, to, by, due
  • todos <- todo: all, each
  • sistemas <- sistema: 男性名詞, system
  • coordenadas <- coordenado
  • cuales <- cual: 関係代名詞: what, which, which one
  • son <- ser: 三人称複数現在形
  • válidas <- valido: valid
  • ecuaciones <- ecuacion: 女性名詞, equation
  • mecánicas <- mecánico: mechanics
  • tienen <- tener: 他動詞, have, (fr) tenir
  • validez: 女性名詞, validity
  • mismas <- mismo: (fr) même, same, similar
  • leyes <- ley: 法則
  • electrodinámicas <- electrodinámico
  • y: and
  • ópticas <- óptico: optic
  • tal: such
    • tal como: 副詞句, just like
  • como: like
  • ya: now, already, yet
  • se: 代名詞
  • ha <- haber: 一人称単数現在, exist(?)
  • demostrado <- demostrar: 現在分詞, to show
  • magnitudes <- magnitud: 女性名詞
  • primer <- primero: 形容詞, first
  • orden: 女性名詞, order

2022-02-05

数学・物理 素数判定に対するプログラミング・数学入門/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • WebでLinuxを勉強できる
  • 動的計画法問題集があった
  • 数学からのプログラミング入門コンテンツを作りはじめた
  • 今週の問題

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WebでLinuxを勉強できる

もう「Linux分かりません」って言い訳出来ない環境が用意されてしまった...。 WebAssembly製のx86仮想マシン「WebVM」が登場、Webブラウザ上でLinuxや各種コマンド、アプリがそのまま実行可能 - Publickey

あくまでも自らの技術力の評価のためだけらしく, 永遠に公開されるわけでもないでしょう. ただ今後似たような環境提供は出てくるでしょう. 例えばGoogle Colaboratoryでも一応Linuxコマンドが実行できます.

もちろんプログラミング勢からすれば(Windowsでも)WSLがあるとか, そもそもMacなら大丈夫という人もいるでしょう. MacならまだしもWSLはインストールそれ自体にハードルがあります. Microsoftストアでクリック一発ならいいわけでもありません. ローカルにインストールするとそこから壊してしまわないか問題があります. 最近はストップをかけられているとはいえ, いわゆるrm -rf問題もあります.

私も就職してはじめて入った会社で, VMでバンバン作って壊せる環境で二ヶ月くらいいろいろ遊ばせてもらえた記憶があります. 教育体制が整った会社とは言えませんでしたが, 勉強し倒せる時間はかなりたっぷり与えてもらえたように思います. それで今の体たらくかと言われると言葉もないですが, 無ければもっと技術力は低かったでしょう. 狼藉を働ける環境をどう手軽に作るかは本当に大事です.

動的計画法問題集があった

今の私のアルゴリズム力からすると入門でさえきついです. 確かProject Eulerをゴリゴリ解くのをやめてまずはアルゴリズムをきちんと勉強しようと思ったのが「あとで出てくる同じ問題は調べる数がただ増えただけだが, brute forceではまともな時間で解けない. 動的計画法などを使おう」みたいな記述があり, AtCoder Problemsでもそろそろ中級なのでレベルアップが必要と思い, 挑んだのですがあっさりと跳ね返されました. アルゴ式にも動的計画法がありますし, こちらも見てみようかと思っています.

無理してHaskellで書こうと思わず, サンプルが多く読みやすいのも広いやすいはずの, C++あたりで勉強した方がいいかとかいろいろ考えています. アルゴ式にもF#入ってくれると嬉しいのですが.

数学からのプログラミング入門コンテンツを作りはじめた

先月から本格的にENERGEIAでほぼ毎日, 22:00-23:00でもくもく会の一つとしてzoomを立ち上げています. 短い時間であってもたまに参加して下さる方も出てきました.

以前メルマガでも森の未知さんとのやり取りを紹介しました. 最近は機械学習のおかげでプログラミング入門から応用数学系までかなり幅広いコンテンツ群が揃ってきています. ただ, それでも, 少なくとも日本の純粋な数学関係者にはまだまだハードルが高いだろうとも思います. 数学関係者向けのプログラミング入門がもっとあるべきだろうと思い, このもくもく会の時間を使ってコンテンツを作っています. まずは入門的にPythonでの素数判定をするコンテンツを整備しています.

これは今まさに並行して進めている例と計算編の裏コンテンツ・補足コンテンツでもあります. 次の項目でも少し書くように, 実際に行列の計算は本当に大変なのでできるところはプログラムに流したいです. 常微分方程式からの中高数学再入門はここ, その続編の中高数学虎の穴は微分積分と簡単な線型代数のまとめを作ってはいますが, これらはnumpy・matplotlibなどライブラリを駆使したコンテンツで, 大事な要素はたくさんあるもののライブラリの使い方特集の面もあり, 徒手空拳でプログラムをゴリゴリ書く楽しさがあまりないようにも思えます. 素数判定は計算量の削減のようなアルゴリズム系情報科学の基礎基本を身につけるのにも役立ちますし, 定義を確認する訓練にもなれば, 証明をプログラムに翻訳するといった側面もあります. 微分積分などもプログラムに載せるには定義を重視する必要がありますが, そうそう直接書かないと思うので, 直接証明をプログラムに載せる経験をするにはもってこいの題材でもあります.

それこそ素数夜曲のような本もあれば, 計算数論のような発展的な問題・分野もあります. 少なくとも私の視界に入ってきた文献では, 数学系の視点から迫るコンテンツがありません. 素数判定のプログラミングからはじめる数学の観点からコンテンツを作ろうと思っているので, 興味ある方はぜひ楽しみにしていてください. 需要があるかわかりませんが, 上記もくもく会で作っている様子を見せているので, 制作過程にも興味がある方はどうぞ. 世にインストール含めて基礎から議論しているコンテンツはあるので, 私のコンテンツではGoogle Colaboratory実行を前提に, 実行できるipynb配布とともに, 文法の解説などよりも計算し倒す方面に寄せ切る予定です. 「もうちょっとこういう解説もほしい」と言われたら, プログラミングに関しては他の本などを紹介したり, 数学系のテーマに関してはコンテンツを作る予定です.

今週の問題

今週面白かったのは次の例・問題・定理です.

  • マズール-ウラムの定理
  • ハウスホルダー変換

前者はノルム空間の等距離写像のアフィン性を謳う定理で, 後者は超平面に対する鏡映を表す射影作用素の構成です. 後者はこれを使って具体的な行列も構成できて便利です. 例と計算編の2022-02-05コンパイル分では, 「2.8.9.9鏡映の具体例: 実二次元の直線に関する鏡映」周辺でいくつか具体例を計算しています.

前者は今回改めて調べていてはじめて知った定理です. はやくリー群関係の文献・量子情報系の議論を進めたいものの, もっと基本的なところで詰めておきたい議論や計算するべき例が山程出てきていて, 全く進みません.

ちなみに四元数についてはPythonでSymPyを使った計算も併用しています. 計算ミスを頻発したからでもあり, 四次行列などが出てきて手計算がきつくなってきたからでもあります. 便利です. いまはアルゴリズムの本に集中しているのでまだしばらく手は出ませんが, 早くMEAPのGeometry for Programmersも読みたいです.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

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語学 地道にスペイン語を進める/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • アインシュタインの原論文, スペイン語第五文の学習ログ

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スペイン語第五文の学習ログ

文構造
  • 第一ブロック
    • Pero si el imán está en reposo y el conductor se mueve,
    • al rededor del imán no aparece ningún campo eléctrico
  • 第二ブロック
    • sino que en el conductor se produce una fuerza electromotriz que en sí no corresponde a ninguna energía,
    • pero da lugar a corrientes eléctricas que coinciden en magnitud y dirección con las del primer caso,
    • suponiendo que el movimiento relativo es igual en cada uno de los casos bajo consideración.

まずは明らかな接続詞とカンマ, 関係代名詞に注目して調べましょう. 二文に分けて訳している英語も参考になるはずです. 区切りの目安はbutにあたるpero, if notにあたるsino, さらにもう一つpero, 分詞構文を示唆するカンマの直後のsuponiendoです.

Pero si el imán está en reposo y el conductor se mueve,

途中にy (and)があり, 三人称単数の動詞estáと(se) mueveがあるため, yで二つの文の等置されていて, 全体をsiが包んでいるとみなせます. 主語にあたる単語は定冠詞つき男性名詞imánとconductorでいいでしょう. 話の流れからも対比される概念です. 動詞もestá en reposoとse mueveでまさに対立しています. 全体的には次のように英訳できます.

  • But if the magnet is at rest and the conductor moves,
al rededor del imán no aparece ningún campo eléctrico

冒頭が明らかに前置詞+定冠詞のal=a+elではじまり, no+apareceの動詞が三人称単数で来ているため主語は倒置されているはずで, 実際三人称単数の男性名詞からなる (ningún) campo eléctricoがあります.

まとめると次のように英訳できます.

  • no electric field appears around the magnet,

この文はNingúnとnoが両方入っていて, 少なくとも英語ではあまり見かけないタイプの構文です. 実際に次のような文があり, スペイン語の特徴なのでしょう. (TODO 本当に?)

  • Además, no vendemos ningún dato.
    • またどんなデータでも販売することはありません.
  • No debes tocar este interruptor en ningún caso.
    • どんなことがあっても絶対にスイッチにさわってはいけません.
  • Ellas no se permitieron ningún obstáculo.
    • どんな障害も物ともしませんでした.
sino que en el conductor se produce una fuerza electromotriz que en sí no corresponde a ninguna energía,

長いのでいったんここで切りましょう. 冒頭にsino = if notがあります. ここではsino queのセットでbut相当とみなします.

まずen el conductorで前置詞が導く副詞句があり, 次に再帰動詞・三人称単数のse produceがあります. こうなると主語は後置された三人称単数の名詞のはずで, 素直にuna fuerza electromotrizを主語とみなします. この次のqueは関係代名詞と思えばよく, en síはin itselfにあたる副詞句なので queの中に浮いた名詞がないためuna fuerzaが主語にあたるはずです. 動詞correspondeは三人称単数なので人称と単複は一致します.

まとめると次のように英訳できます.

  • but an electromotive force is produced in the conductor which in itself does not correspond to any energy,
pero da lugar a corrientes eléctricas que coinciden en magnitud y dirección con las del primer caso,

冒頭のperoはbutにあたる等位接続詞で何と何を結びつけているかが問題です. まずdaはdarの三人称単数現在形なので主語は三人称単数です. 次に無冠詞名詞lugarがあり, 前置詞aが続きます. この直後に名詞が必要で実際女性名詞複数形のcorrientesが続きます. さらに直後の形容詞eléctricasは複数形でcorrientesを修飾しているとみなせます. 直後のqueはおそらく関係代名詞節でしょう. 見たところ主語にできる浮いた名詞はなく, 動詞coincidenは三人称複数現在形だからcorrientesを修飾しているはずです. こうなるとpero以下にdaの主語はなく, sino que以下の主語una fuerzaがdaの主語でなければなりません. 物理的にも「起電力が電流を与える」で筋が通ります.

最後にqueが導く関係代名詞節を調べましょう. 動詞coincidirは自動詞なのでこれで基本構造は閉じています. あとはen magnitud y direcciónがあり, con (= with)が導く前置詞句で何とcoincidenしたかが示されています. このcon lasのlasはmagnitud y direcciónで, magnitudとdirecciónがどちらも女性名詞で二つ(複数)あるため, 女性の定冠詞複数形のlasが来る事情を正当化します.

まとめると次のように英訳できるでしょう.

  • but gives rise to electric currents which coincide in magnitude and direction with those of the first case,
suponiendo que el movimiento relativo es igual en cada uno de los casos bajo consideración.

先頭はsuponerの現在分詞なので分詞構文で, 特にsuponiendo queはsupposing thatです. queのあとには完全な文が来ていると推測して続きを見ます.

動詞はserの三人称単数現在のesだから主語の人称と数が決まり, 補語にあたる語句があるか副詞句だけかという全体構造も見えました. 素直に文頭のel movimiento relativoが主語と見ます. 補語は形容詞igualで何に等しいかが説明されているはずと思って続きを見ます. cada unoで熟語的にeachを表すため, en cada uno deはin each ofと英語に直訳できます. 次に前置詞deの勢力下に男性名詞casoの複数形としてlos casosが来て, 前置詞bajoの勢力下にconsideraciónが来ます.

まとめると次のように英訳できます.

  • assuming that the relative motion is equal in each of the cases under consideration.
単語
  • pero: but
  • si: if
  • el: 男性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • imán: 男性名詞, magnet, cf (fr) aimant
  • está <- estar: 三人称単数現在形
  • en: in, at, to,
  • reposo: 男性名詞, rest
  • y: and
  • conductor: 男性名詞, conductor
  • se: 代名詞, it
  • mueve <- mover: move
    • se mover: get a move on
  • al: a+el
  • rededor: 男性名詞 contour, surrounding
  • del: de+el
  • no: 副詞, no
  • aparece <- aparecer: 三人称単数現在, appear
  • ningún: not any
  • campo: 男性名詞, field
  • eléctrico: electric
  • sino: if not
  • que: 関係代名詞
  • produce <- producir: 三人称単数現在, produce
  • una: 不定冠詞, un-una-unos-unas
  • fuerza: 女性名詞, force
  • electromotriz: electromotive
  • sí: yes
    • en sí: in itself
  • corresponde <- corresponder: 三人称単数, correspond
  • a: to, by, at
  • ninguna <- ninguno: no, none
  • energía: 女性名詞, energy
  • da <- dar: 三人称単数, 現在形, give
  • lugar: 男性名詞, place (cf. location)
  • corrientes <- corriente: 女性名詞, current
  • eléctricas <- eléctrico: electricの女性複数形
  • coinciden <- coincidir: coincide
  • en: in, at, on
  • magnitud: 女性名詞, magnitude
  • y: and
  • dirección: 女性名詞, direction
  • con: with
  • las: 定冠詞, 女性複数, el-la-lo-los-las-lo
  • del: de+el
  • primer <- primero: former, first
  • caso: 男性名詞, case
  • suponiendo <- suponer: 現在分詞
  • movimiento: 男性名詞, movement
  • relativo: 形容詞, relative
  • es <- ser: 三人称単数現在
  • igual: 形容詞, equal
  • cada: each, every
    • cada uno: each
  • uno: 不定冠詞, uno-una-unos-unas
  • de: of
  • los: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • casos <- caso: 男性名詞, case
  • bajo: 前置詞, under
  • consideración: 女性名詞, consideration

2022-01-29

数学・物理 算数・数学系プログラミング系コンテンツを作ろう/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 医学知識の高速インストール法
  • ヨーヨー振り回しからの話
  • 一般化確率論
  • 対称多項式
  • SymPyと四元数計算, Geometry for Programmers
  • OpenFOAMなど微分方程式の計算結果
  • 実用Common Lisp
  • プログラミングコンテンツを作ろう
  • 今週の問題

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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医学知識の高速インストール法

「医学知識を高速インストールしたければ看護師向けのテキストがよい」というのは司法修習で教えてほしい(本当にめちゃくちゃ役に立つ)

今度何かしら読んでみようと思います. 知識自体も気になりますが, それ以上にこれの数学版を何かしら作る上での参考になるかも気になる点です.

ヨーヨー振り回しからの話

質量0で一切伸び縮みせず張力のみをつたえる高校物理的な《糸》を近似ではなく厳密なものとして考えると日常で見かける糸とはまったく異なる振る舞いをみせる。 まず相対論だと光速で運動するmasslessの糸を想像することになる。非相対論で考えても空気分子ひとつにぶつかっただけで弾かれる。 質量のない糸の先端に重りを固定しようにも、糸の先端は光速以外の値をとれない。 そしてさらに「一切伸び縮みしない」という相対論的に"邪悪"な設定が《糸》に付与される。

一般化確率論

一般化確率論(General probabilistic theories) https://arxiv.org/pdf/2011.01286.pdf https://arxiv.org/abs/2103.07469

なんか量子論が部分集合に思える枠組みらしい

量子力学系の人が時々言及する一般化確率論, 何なのかとずっと思っていたのですが, 参考になりそうな文献がTwitterで回ってきたのでメモがてら共有します. 確率論は経路積分(汎関数積分)とも関わるため学生の頃からずっと気になっている対象です. マルチンゲールあたりまでは簡単なノートは作ってあるものの, せめてブラウン運動くらいまではやりたいですし, 確率解析と汎関数積分は本腰を入れてやりたい対象です.

対称多項式

プロ向けですがこういうのがあります: Macdonald, Symmetric Functions and Hall Polynomials あとはランダム行列本の付録にもちょっとした対称多項式の章があります.

何でいきなり対称多項式かというと, 密度行列のブロッホ表示に関連して, ブロッホ表示で表した行列の正値性が対称多項式を使って特徴づけられ, その中で行列式と対称多項式の話が出てきたからです. こんなところでこんな形で出会うことになるとは思いませんでした. 線型代数の射程距離の果てしなさを感じる事案なのでシェアしておきます.

こうなるとやはり木村さんのランダム行列の数理も計算を詳しく埋めるノートを作りつつ, もっと精読したくなってきます. 「この辺の具体例もきちんと調べないと」と思ってちょっと脇道に逸れたら逸れっぱなしでなかなか本筋に戻れません. 線型代数コンテンツ作りの調査も兼ねた量子情報系の基礎をさらうのが当面の目標で, とりあえずざっと目を通したところ, ちょっとやそっとで対応できそうな話でもありません. すぐに取り組むべきテーマというよりTODOとして突っ込んでおくテーマに分類しました.

これも低次で具体的にいじり倒すと楽しそうな対象で, 腰を据えて取り組む日を楽しみにしています.

SymPyと四元数計算, Geometry for Programmers

先日量子系の線型代数とも距離が近いといったリー群・リー環方面も少しずつ進めています. いま基本的な回転の話をいろいろやっていて, 特に二次正方行列に複素数と四元数が埋め込める部分をしつこく計算しています.

四元数の計算で計算ミスを連発したため, 何かないかと思ったらSymPyにも四元数があったのでそれを使いました. 二次の行列でさえ計算ミスしてはまりました. 完全に代数だけでかたがつく, 低次の行列の計算はやはりプログラムをうまく使いたいです. 文字込みの四元数の計算も計算ミスに悩まされにくくなりました.

とは言っても先日紹介した極分解では二重根号が出てきて, 必ずしも二重根号をきちんと処理してくれるわけではないこともわかっています. よい連携のさせ方も探っています. Geometry for Programmersはnumpyやscipyよりもsympyを使う本のようなので, いまの執筆分だけでも早く読みたいですね. まだ寄り道分のノート作りさえ終わっていないのでいつになることやら, といった状況ですが.

ちなみにSICMUtilsにも四元数が追加されたようです. SICMUtils本体の開発に参加できるほどClojureの読み書き・数学プログラミングができるわけではありません. しかしfdg-bookは手助けできることがありそうなので, プルリクも送っています. こちらはついでに幾何の計算もできるので非常に楽しみにしているプロジェクトです.

OpenFOAMなど微分方程式の計算結果

思い出したので念のため共有しておきます.

Python・Julia・Rustで書いたプログラムで作った動画を載せています. 数年前に書いたプログラムなので一部は既に動かなくなっているかもしれませんが, 各動画にGitHubへのプログラムのリンクも張っています. 興味がある方はぜひ眺めてみてください.

OpenFOAMもGitHubに設定ファイルを置いています. OpenFOAMはWSLを使えば一応Windowsでも動くらしいので興味がある方はどうぞ. 偏微分方程式の数値計算は本当に大変です. OpenFOAMにしてもメッシュを切るだけで大変ですし, それを長時間実行しなければいけないのも面倒です. 数値計算の面倒くささを実感できます. 数学・物理系プログラムに関して私が微分方程式ネタを避ける理由がわかってもらえるでしょう. 難しすぎてプログラミングやコンピューターサイエンス系統の問題になってしまうのです.

実用Common Lisp

びっくり。GrammarlyってCommon Lispで書かれてるんだ…!

Running Lisp in Production | Grammarly Engineering Blog

名前が微妙に違いますが, Common Lispのアルゴリズム本の著者でしょう. この人はウクライナ人のようなのでキリル文字のローマ字転写の問題のようで, 本だと著者名がVsevolod Domkinになっています.

まだほとんどわかっていない言語ですが, (Emacsでの)SLIMEとREPL開発が非常に気持ち良いです. このREPL利用開発の気持ち良さがわかったので, PythonなどでもIPythonを使うようにしました. JuliaもVSCodeでREPL使ってパチパチ小さく実行しながら組むのが楽しいです.

いまプログラムを書くというとほぼ競プロで, 実際にCommon Lispはまだ競プロでしか使っていないのですが, 何となく適切なライブラリセットを組んで使うべき言語のようで, 標準ライブラリだけでは競プロでいろいろ面倒な気がします. この点Clojureはインターフェースも統一されていて, 最低限の関数も揃っているので便利です. ただClojureはJVMの関係からかAtCoderとの相性が悪い (現状, 競プロは基本AtCoderでしかやっていない: Project Eulerは割や早い方の問題で「数が少なければblute forceでいいが, 後で出てくる数を増やしたバージョンはblute forceで解くとものすごい時間がかかる」と出てきて, 基本的なアルゴリズムを知らないと解けないと思っていったん放置状態)ため, AtCoderでのClojure利用は諦めています. SICMUtilsのためにもできればClojureを使いたいのですが仕方ありません.

プログラミングコンテンツを作ろう

去年暮れあたりから心を入れかえて取り組みを再開したデータ構造とアルゴリズムや競プロ系, ようやくAtCoder ProblemsはEasyで67問目まで行きました. 今日は数学をやる気が出なかったのでずっとこれをやっていました. いまだにはまると一題解くのに二時間かかることがあります. げんなりしますがいまの私の実力なので仕方ありません.

それはそれとして. 上で書いた微分積分・線型代数系は一応コンテンツを二つ作っています.

これ以外のテーマとして, 自分用のまとめも兼ねて, 素因数分解あたりの算数・数学・計算系のコンテンツを整備しようと思っています. 「プログラミングはできるが数学はちょっと」系ではなく, 「数学はそれなりにできるまたは数学科だがプログラミング入門したい」系の人向けを考えています. 上の微分方程式やお絵描き系もこれはこれで大事で役に立つと思っていますが, ライブラリを使うのがメインだったりして必ずしもよろしくない面があります. ライブラリのバージョンアップに関するメンテの問題さえあります. 言語選択もかなり強く効きます. 内容のミスはともかく, プログラミング言語・ライブラリ事情によるメンテナンスに時間を割きたくありません. 余計なライブラリはなく, 基本的なループなど言語としてもそうそう変更されない要素だけで処理でき, 数学的にそこまで難しいわけでもないが, プログラムをバグなく組もうとすると割と大変, みたいなところでいい感じの塩梅にあるのが素因数分解などのテーマだと思っています.

あと大事なのは小さな例での計算です. プログラムを組む上でも重要ですし, 年末から年始にかけてプロモーションした例と計算でも強調したテーマです. これを習慣づけてもらうためにも一つよいテーマではないかと思っています.

引き続き, コンテンツを作るなら言語はPythonですね. PythonはPythonで実際の仕事利用でのPythonはライブラリ関連で面倒くさいとよく言われてはいます. しかしGoogle Colaboratoryを使えばある程度問題は回避できますし, 何より言語導入ドキュメントを書きたくないですし, そのメンテナンスはなおさら嫌です. あとPythonは最近情報がたくさんあって続く独学が比較的やりやすいのも採用ポイントです. 私が競プロのコードを書くのに愛用しているF#などはさすがに勧められませんし, Haskellも好きですが素人にそう気楽に勧められる言語でもありません. ClojureやCommon Lispも気が引けます.

これも一応書いておきましょう. 一般的な競プロ系に関しては何冊か本が出ていますし, 最近は割と精力的にがんばって広めようとしている人達も出てきています. オンラインの無料のリソースとしてAtCoderのC++コンテンツとアルゴ式を勧めておきます.

アルゴ式は見切れていませんが, AtCoderのC++入門は一度一通りやりました. AtCoderAOJで遊ぶだけなら入門として十分でよいコンテンツです. そしてAOJはAOJでこのページなど, データ構造や基本的なアルゴリズムを組むお勉強用課題・コンテンツがあります. AOJもサンプルコードでC++, Java, Python, Haskellなどがあり, AOJはAOJでとても勉強になります. AOJの問題を使った競プロ本としてプログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造もあります. 途中までしか読み込みきれておらず, アルゴリズム初心者には難しい問題も入っていますが丁寧ないい本ではあります.

AtCoderだけでも1000題以上あり, 多少なりとも算数・数学と絡めて, プログラムを組んでたくさん計算・勉強したい人には一つお勧めの分野です. データ構造とアルゴリズム自体は計算機科学の大事なテーマでもあって勉強して損をすることは全くなく, 合わなければすぐやめればよいので, 数学系プログラミングで何をしたらいいかわからない人にも具体的な問題がたくさんあるという点からもお勧めです.

ついでに言えば, AtCoderやAOJは他の人が提出したプログラムも読めるので, プログラムの読解練習としてさえお勧めできます. 直接比較となるといろいろな論点はあるものの, 数学の証明が読めない問題と他人が書いたプログラムが読めない問題にはそれなりの共通点があり, もう少し一般には伝わる文章を書く難しさとも関係があります. コンピューターだけではなく人間も読むプログラムを書くことから, 読みやすい文章(プログラム)をどう書くかという視点があり, これを鍛える教育的視点からも競プロに注目しています. 短いが(人間には)わかりにくいプログラムもあれば, 多少冗長だが(人間に)わかりやすいプログラムもあります. 全く同じことをやっているのにちょっとした書き方の塩梅で読みやすさが大きく変わることもあります. こうした点からもプログラム・文章をたくさん読み書きしてほしいとも思います.

今週の問題

今週面白かったのは次の問題です.

中心を三次元空間の原点に置いた正六面体(立方体)の中に正四面体を置き, 正四面体を自身にうつす回転がなす群を考える. 特に図の1/3回転は次の16個の四元数 \begin{align} \pm \frac{1}{2} \pm \frac{\boldsymbol{i}}{2} \pm \frac{\boldsymbol{j}}{2} \pm \frac{\boldsymbol{k}}{2} \end{align} で表せる.

三次元空間の回転を四元数で表す方法を知らないと手も足も出ない問題です. CGなどのプログラミングでは回転を四元数で表すのが標準らしいので, この辺もやらないとと思ってがんばって計算しています. 四元数による回転以前に四元数自体に慣れていないため, はじめどう手をつけたらいいかわからなかった問題です.

ついでにいうと, 正多面体まわりは置換群とその表現など群の表現論の入門でもよく出てくる話題で, これまた非常に有名です. いまちょっと手元で見つからなくて記憶でしかありませんが, 有名な平井武『線形代数と群の表現』にも載っていたはずです. 有限群関係でもおそらく基本的な対象でしょう. 上記の平井本は具体例も込めて非常に面白い本でお勧めです. 確か「$\ell^2$-ノルムからしか内積が入らない」といった関数解析方面でも大事な話が書いてあったり, 最後の方に無限次元ユニタリ表現に対するディラック・ウィグナーの貢献, ヴェイユの述懐などの話もあり, こうしたちょっとした横道の話題も楽しいです.

上記の議論は例と計算編の2022-01-29コンパイル分では, 「2.8.11.20 四元数による回転と正四面体の回転2」にあります. 私自身のためにもせっせと計算しているので, 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 アインシュタインの原論文のスペイン語第2-4文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 学習メモ
  • スペイン語第2-4文の学習ログ

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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学習メモ

スペイン語はDeepLに突っ込んで英訳すると対応が一気に見やすくなって構文を解析しやすくなるのがわかりました. これはアラビア語だと使えず, Google翻訳に叩き込んでみてどうなるかが気になります. アラビア語の原論文の訳はいまだに見つかりません.

興味があって読み続けられそうでいろいろな情報が取りやすいとなると, もうクルアーンがいいかと思っています. クルアーンとなると今度は逆に凄まじい量のコンテンツが出てきます. スマホアプリもあるくらいです. 2ヶ月くらい固め打ちしたら何となく読めるようになると思いますし, いったんそのレベルで十分なのでそこまではがんばります.

前も何かしらで書いたのですが, やはり理工系情報を取る上で中国語が大事だろうとも思っていて, これもこれでもっとやりたいと思っています. 語学はゆるく, その代わりに執念深くやっていく予定です.

スペイン語第2-4文の学習ログ

他の言語に関してはアインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会のページにいろいろな情報があります.

スペイン語第2文
文構造
  • Pensemos en la interacción electrodinámica entre un imán y un conductor.
    • por ejemplo,

単純な文ではあるものの他の言語と比較すると俄然面白くなります. まずpor ejemploは英語for exampleと全く同じ副詞的挿入句で, 特にコメントはありません. 主文の動詞は単純にpensemosで, これはpensarの一人称複数現在形なので主語が省略されています. 英語が命令形, ドイツ語はMan denkeでManが主語, フランス語はAnalysonsで一人称複数の直説法現在または命令形, イタリア語はSi pensi(TODO 何か調べる)でバリエーション豊かで, 英語では恐らくコロケーションでtakeを使っていますし, フランス語も直接的にthinkにあたる単語を使ってはいません. 訳者の癖や趣味もあるとは言え, ここだけでも言語ごとの違いが見え隠れしています.

単語
  • pensemos <- pensarの一人称複数現在形, : think
  • por: for
    • por ejemplo
  • ejemplo: example
  • en: in, at, to
  • la: 女性定冠詞単数, el-la-lo-los-las-lo
  • interacción: interaction
  • electrodinámica: electrodynamics
  • entre: between
  • un: 不定冠詞の男性単数, un-una-unos-unas
  • imán: 磁石, cf (fr) aimant, (en) diamond
  • y: and
  • conductor: conductor
スペイン語第3文
文構造
  • el fenómeno depende solamente del movimiento relativo
    • entre el conductor y el imán,
    • fenómeno que se observa
    • En este caso,
  • mientras que
  • de acuerdo a la interpretación común se deben distinguir claramente dos casos muy diferentes,
    • dependiendo de cuál de los dos cuerpos se mueva.

el fenómenoで三人称単数の男性名詞でdependeと性数が合うため, まずこれが主語-動詞と見ていいでしょう. ドイツ語のDas beobachtbare Phänomen hängt abとも合います. ドイツ語nurとsolamenteが対応し, ab以下Magnetまではdel movimiento relativo entre el conductor y el imánです. ドイツ語hierはEn este casoに対応すると思えば, ドイツ語の主文との対応が見えます. 残りはwährend (whereas, mientras que)以下です.

次にde acuerdo a la interpretación común se deben distinguir claramente dos casos muy diferentesを考えます. まずどこで切れるかが問題です. deは前置詞なので次に名詞が来るはずで, ここではacuerdoです. さらに前置詞のaがあって定冠詞つきの名詞interpretaciónが来ます. スペイン語は形容詞が後ろからつくためcomúnは形容詞として interpretaciónを後ろから修飾していると見ればいいでしょう. 次はse deben distinguirの固まりで見る方が適切なはずで, ここで切れ目を与えます. ここまではaccording to the common interpretationと訳せます.

後半の動詞を持つ部分を考えましょう. これを詳しく追いかけます. claramenteは副詞なので無視して考えます. seが入っていてdeberの三人称複数系debenが来ているため, se受身文またはse不定人称文の可能性があります. ここではse受身文で判定しましょう. 残りはdos casosに副詞・形容詞のmuy diferentesがついたと見ればよく, 全体としてtwo very different cases should be clearly distinguishedと訳せます.

最後のdependiendoはdependerの現在分詞であり, dependiendo deでdepending on, cuál de los dos cuerpos se muevaで which of the two bodies is movingです. ここでmuevaは接続法現在なので, ドイツ語での接続法bewegte seiと対応します.

単語

詳しくは単語集を参考にしてください.

  • En: 前置詞, in, at, on
  • este: 限定詞, this
  • caso: 男性名詞 case
  • el: 男性定冠詞, el - la - lo - los - las - lo
  • fenómeno: 男性名詞, phenomenon
  • que: 関係代名詞
  • se: 代名詞, 三人称単数目的格, 再帰用法
  • observa: 二人称への命令形 (タイポではないか?)
  • depende <- depender: depend, 三人称単数形
  • solamente: only (<- solo)
  • del: de+el, of the, from the (男性名詞の単数系が続く)
  • movimiento: 男性名詞, movement
  • relativo: 形容詞 relative
  • entre: 前置詞, between
  • conductor: 男性名詞, 導体
  • y: and
  • imán: 男性名詞, magnet
  • mientras: 副詞・接続詞, meanwhile, while
    • mientras que: ---する一方で, while
  • de: 前置詞 of
  • acuerdo: 男性名詞, agreement
  • a: 目的語の前に付加
  • la: 女性単数につく定冠詞, el - la - lo - los - las -lo
  • interpretación: 女性可算名詞, interpretation
  • común: common
  • deben <- deber: 三人称複数現在, to owe, must
  • distinguir: distinguish
  • claramente: clearly
  • dos: 2
  • casos <- cas0: 男性名詞, case
  • muy: very
  • diferentes <- diferente: different
  • dependiendo <- dependerの現在分詞
  • de: of
  • cuál: what, which, which one
  • los: 男性定冠詞複数形; el - la - lo - los - las - lo
  • dos: 2
  • cuerpos <- cuerpo: 男性名詞, body
  • mueva <- mover: 接続法現在, 三人称(?)
スペイン語第4文
文構造

二文に分かれているのでそれぞれ調べましょう.

  • Si se mueve el imán mientras que el conductor se encuentra en reposo,
  • al rededor del imán aparece un campo eléctrico con cierto valor para su energía.

冒頭のSiはラテン語由来のifでフランス語と同じです. 間にカンマがあるため, 素直にここでsiが導く副文が切れると思えばいいでしょう.

Siの文は間にmientras queがあってさらに副文が挟まっています. Mientras queは接続詞(while)で, このあとに完全な文が入るはずです. 動詞は再帰動詞se encuentraでto be located, en reposoは前置詞が導く副詞句でat restの意味です. 動詞encuentraは三人称単数現在形だから主語も三人称単数で, 残りの要素から見てもel conductorです. となるとsiは動詞se mueveで主語がel imánと思えばいいでしょう. (TODO これ主語の倒置と思ってよい?)

次のように英訳すると対応・構造が見やすいはずです.

  • If the magnet is moved while the conductor is at rest,

後半の主文も(今の私が)わかるところから見ましょう. まず動詞はapareceで, aparecerの三人称単数現在です. 主語も三人称単数で, 浮いている名詞はun campo eléctricoだけです. 先頭は前置詞句al rededor del imánで, これはaparecerを修飾する副詞句と見ればよいでしょう. 残りはcon以下です. 前置詞conは名詞としてvalorを従えていて, さらに前置詞paraが名詞energiaを従えています.

次のように英訳すると対応・構造が見やすいはずです.

  • an electric field with a certain value for its energy appears around the magnet.

次のスペイン語文も比較的素直に読めます.

  • Este campo eléctrico genera una corriente en el lugar
    • donde se encuentre el conductor.

途中のdondeの後ろはse encuentreが再帰代名詞で主語がないため, これは関係代名詞dondeと思えばいいでしょう. もちろんその前に主文があり, generaは三人称単数現在なので三人称単数の名詞を探せば, 主語は素直に冒頭のEste campo eléctricoです. このeléctricoはフランス語と同じく形容詞が後置です. 目的語はuna corrienteでそこに前置詞句en el lugarによる修飾がかかっています.

まとめて次のように英訳すると状況がよくわかるでしょう.

  • This electric field generates a current at the location of the conductor.
単語
  • si: if
  • se: 代名詞, 三人称単数
  • mueve <- mover: 三人称単数, 現在
  • el: 男性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • imán: 男性名詞 magnet
  • mientras que: while
  • conductor: 男性名詞, conductor
  • encuentra <- encontrarの直説法現在の二人称
  • en: in, at, on
  • reposo <- reposar: 直説法現在, 一人称
  • al = a+el: at the, to the
  • rededor: 男性名詞, contour, surrounding
  • del = de+el
  • aparece <- aparecer: appera
  • un: 不定冠詞, un-una-unos-unas
  • campo: field (cf. camp)
  • eléctrico: electric
  • con: with
  • cierto: 形容詞, true
  • valor: value
  • para: for, to, by, due
  • su: 限定詞, 三人称単数
  • energía: 女性名詞, エネルギー
  • este: 限定詞, this
  • genera <- generar: generate
  • una: 不定冠詞, un-una-unos-unas
  • corriente: flowing, current, common, usual, ordinary
  • en: 前置詞, in
  • el: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • lugar: place (cf. local, locate)
  • donde: 副詞・接続詞・前置詞, where
  • se: 再帰代名詞, 三人称単数目的格
  • encuentre <- encontrar: meet, find, think
    • 再帰用法でto be located
  • el: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
  • conductor: 男性名詞, 導体

2022-01-22

数学・物理 ブロッホ表現と量子力学と代数と幾何/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • ワイエルシュトラスの加法定理
  • 今週の対応内容: 線型代数とプログラミング
  • 今週の問題: 一般のブロッホの定理

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  • 今回のページ
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ワイエルシュトラスの加法定理

https://arxiv.org/pdf/math/9806077.pdf たった2ページでびっくりしたんですけどワイエルシュトラスが証明した加法定理に関する論文です このワイエルシュトラスの定理から考察すると加法定理って2n個の関数さえあれば他の点での関数の値が完全に決まる(線形代数的に)みたいなことなんですっごく面白いですよね オイラーの発見した加法定理です https://greggkelly.com/ABEL.html アーベルの加法定理は19世紀で最も讃えられた代数積分定理である

今週の対応内容: 線型代数とプログラミング

今週の問題でも書くように, 今週はブロッホの定理まわりの議論・計算をしていました. ちなみに, 一般次元の議論について関連する話題を調べていたら芋蔓式に問題が出てきて, それではまり倒していてまだ終わっていません.

三次の行列式の文字計算もしていて本当に嫌になりました. 行列の計算は三次元で既に嫌になるので, 具体例を調べるのが本当に大変です. (Juliaでの)SymPyでいい感じに計算してもらえないか確認したりしていて, あまり計算それ自体での進捗がありません. さらにICMUtils, 特にfdg-book関係の作業もしていて, 余計に例と計算編それ自体の進捗が微妙です. 別に無駄なことをしているわけではないものの, 進めたいところが進まないのは嬉しくありません.

SICMUtilsにも文字計算があり, せっかくかなりの時間を割いているので, そちらで処理できるかも検討しないといけません.

今週の問題: 一般のブロッホの定理

今回はこれに関わる問題をいろいろやっていました. 2022-01-22版の例と計算編, 「2.5.5 量子力学と線型代数」に2-3準位系の具体例を含めて書いているので, 購入されている方は参考にしてください.

ブロッホの定理という言い方があるのかよくわかっていませんが, いわゆるブロッホ表示・ブロッホ表現(Broch representation)の話です. 二準位系の状態は二次元球内の点で表せ, 特に純粋状態は二次元球面$S^2 \subset \mathbb{R}^3$上の点として表せます. 「幾何的に表せて嬉しい」らしいですが, その感覚はよくわかりません.

何はともあれ, 私の観測範囲では量子情報系の議論だとブロッホ表現はよく出てきます. 作用素環的な純粋状態は状態空間の端点として定義されるため, 純粋状態が実際に(幾何学的な)端点として現れているのは気分がよいです.

それはそれとして, 勘違いを具体例で正せたのでそれをシェアしておきます. 二準位系では全ての状態(密度行列)をブロッホ表現で表せ, 逆にブロッホ表現は全て密度行列に対応します. しかし三準位以上ではこれが破綻します. これ自体は知識として知ってはいたものの, 一般論としてまとめようと思ったとき, この事実が骨身に沁みていなかったため, ブロッホ表現の非負性を示そうとして数時間はまってしまいました.

「きちんと具体例で確認しよう」と思い, 二準位は既に具体的に調べてあるから次は三準位だと思って調べたら, そんなことは成り立たない例がすぐに出てきました. 例を見れば一発だったのを猛烈に時間を無駄にしたわけですが, 具体例で勘違いを正すのは正攻法なのでそこはよかったです.

一応書いておくと, 三準位系は状態ベクトルの空間次元が3であり, 行列で言えば$n^2 = 9$次元なのでもう計算が嫌になります. 数値計算をやっていればいいわけでもなく, きちんと文字計算で処理しないといけないタイプの話題もあります. 検索しつつ文献を辿っていったら2003年くらいのarXivの論文などに辿り着いたので, いまはそれを読みながら例と計算編に記述を整理しています.

あまり意識していなかったのですが, 量子情報系の有限次元の議論はリー群・リー環の議論が陰に陽に出てきます. スピンの表現論があるのでそれはそうという面もあるにせよ, 構造定数やカシミール元なども出てきます. この間から書いているように, 代数・幾何への展開としてリー群・リー環の記述を増やしている最中なので, 物理と数学でやっていることがちょうど交差しています. 別に私のコンテンツを買わなくても構いませんが, 量子情報の議論, 特に線型代数に関する数学的側面に対する訓練としても, 深く広い数学の世界への探求としても, 具体的な計算練習にしても, 行列に関わる議論は本当に深く広く重要です. 特にリー群・リー環は絶対的に役に立つので, 何らかの形でゴリゴリと具体例を勉強するのを勧めます.

比較的最近, 杉浦・山内の連続群論入門が復刊したとかいうのを見た記憶があります. 私は読みたいと思いつつ未読のままですが, 聞くところによれば具体例を扱っていつつ, 議論自体は一般論に合わせて展開しているそうで, そのままリー群・リー環論に進めるよい本だそうです. 何でもいいですが, 何を勉強したらいいかわからない, 何か新しい勉強のネタを探しているならぜひリー群・リー環に挑んでみてください. リー群はどうしても多様体や位相的な議論もしたくなる一方, リー環は(線型)代数だけで議論を進める部分が多いため, 線型代数からの接続では特に便利です. リー群の話ではありますが, 対称空間のようなリーマン幾何のテーマにも直結しますし, 無限次元ユニタリ表現に行けば関数解析・表現論にも直結します. ジョージアイの本が有名なように素粒子でも出てくるので, もしあなたが素粒子に興味があるなら, そういう枠で眺めてみてもいいでしょう.

何度も同じ事を書いていて見飽きた方もいるかもしれません. しかし大事なことは何度でもの精神で, 何度でも強調しておきます. ここ数年, 私が今一つ理解が深まっていなかった部分を埋めるための取り組みに選んだ程度には重要なのです.

上記の議論は例と計算編の2022-01-22コンパイル分では, 私自身のためにもせっせと計算しているので, 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 アインシュタインの原論文のスペイン語第一文/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 今週の進捗
  • スペイン語第一文の学習ログ

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今週の進捗

アラビア文字はかなり認識できるようになったものの, 文法はもちろんのこと単語がからっきしです. 単語をある程度頭に入れていないと文法の勉強をするときに延々単語を調べる羽目になり, 単語を勉強しているのか文法を勉強しているのかわけがわからなくなり, 文法に集中できません. あとは活用練習で発音も必要なので, 発音をちょこちょこ確認しつつ, 単語をやろうと思っています.

そんな状態なので, まだアラビア語の話は全くできません. スペイン語は地道に進めているので, スペイン語での特殊相対性理論論文の解析結果を出す形でメルマガに代えます.

スペイン語第一文の学習ログ

コンテンツの非公開メモから取ってきました. 何か変なところなどあればぜひ教えてください. 多言語・他言語のメモがあるところから切り出しているので, その前提の記述があります. 気になる方は勉強会の記録から資料・動画を確認してください.

第一文

Se sabe que cuando la electrodinámica de Maxwell – tal como se suele entender actualmente – se aplica a cuerpos en movimiento, aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.

文構造

英語よりもフランス語の文構造の方が参考になるはずです.

  • Se sabe
    • que aparecen asimetrías
      • que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.
      • tal como se suele entender actualmente -
    • cuando la electrodinámica de Maxwell se aplica a cuerpos en movimiento,

私の理解の範囲では英語ではちょっと考えられない語順で出てきます. 順に確認しましょう.

単語

詳しくは単語・熟語集を参考にしてください.

  • se: 代名詞, 三人称単数
    • yo - tú - él/ella/usted - vosotros/vosotras - nosotros/nosotras - ellos/ellas/ustedes
  • sabe: saberの三人称単数現在
  • que: 関係代名詞, that
  • cuando: when
  • la: 女性単数の定冠詞, el - la - lo - los - las - lo
  • la electrodinámica: 電気力学
  • de: 前置詞, of
  • Maxwell: 人名
  • tal: such, cf. (francais) telle
    • tal como: such as, just like
  • como: as, like, about
  • suele <- solerの三単現: to pave
  • entender: 原形, understand
  • actualmente: at present
  • aplica <- aplicar: apply
    • (reflexive) to apply oneself, to apply, to hold true
  • a: 前置詞, to, by, at
  • cuerpos <- cuerpo: body
  • en: in, at, on
  • movimiento: 男性名詞, movement
  • aparecen <- aparecer: appear, 三人称複数現在形
  • asimetrías <- asimetria: asymmetry
  • no: no, not
  • parecen <- parecer: seem
  • estar: be動詞, 主語の状態を表す
  • la correspondencia: correspondence
  • con: with
  • los: 男性定冠詞・複数形 el - la - lo - los - las - lo
  • fenómenos: 男性名詞, phenomenon
  • observados: 過去分詞男性複数形
Se sabe

これはsaberの再帰動詞的用法で, 英語を見ればわかるようにit is knownです. このsaberはホモサピエンスの由来のラテン語sapereが語源です.

- tal como se suele entender actualmente -

queが導く節の中の挿入句で, 英語・フランス語と比較すれば見やすいはずです. ここのtal comoはjust likeのように捉えればよく, actualmenteは英語のactualの意味とはずれがあります. (詳しくは単語ページを見てください.) 意味上のキーse suele entenderはtend to understandとでも訳せばいいでしょう.

cuando la electrodinámica de Maxwell se aplica a cuerpos en movimiento,

冒頭にカンマでもあればともかく, なかなか衝撃的な挿入節です. 英語で言えばit is known that when the electrodysmics ...にあたるのでしょう. 私はそんなに見かけた記憶がありませんが, 私が一般的な英語を知らなすぎるだけで実は英語にもよくある形だったりするのかしれませんが. 何はともあれば英語・フランス語と単語も含めて比較すれば意味・構文は明らかでしょう.

que aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.

メインはque aparecen asimetríasで後半のque節は関係代名詞節です. 前半の動詞はaparecerの三人称複数現在形で, asimetríasが三人称の複数形です. 意味からしてもこれが主語とみなすのが素直でしょう. つまりここでは主語が後置されています. 関係詞がついて主語が長いときに後置される現象と思えばよく, 後半の関係詞節がasimetriasを修飾していると予想できます.

後半のque節を見ましょう. 動詞は(no) parecen estarでよいでしょう. 「estar結果構文ではよく動作主句が省略される」ため, この現象が起きていると推測できます. あとは英語の気分で読めます.

2022-01-15

数学・物理 今週の衝撃: 科学哲学の態度/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 数学書の読み方
  • 科学哲学の態度「世界観にあうか」
  • リー群・リー環と吉田近似
  • 環論のデータベース
  • 現代数学探険隊のお試し版公開?
  • プログラミングの進捗
  • 今週の問題
  • 解答案内

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数学書の読み方

参考になる人もいるでしょうから, いくつか引用しておきましょう. 興味がある方はぜひ上のリンクから全文眺めてきてください.

数学書1冊の読了に時間がかかることを受け入れる 1章が終わらないのはザラ。1行しか進まない日もある。

文学修士の方のようですが, これを特記しないといけないという判断がなかなか衝撃です. よほど非自明なのでしょう. 実際すぐあとに次の記述があります.

普通の本は1~2日、簡易な内容であれば数時間で読み切れるような中、 年単位でようやく1冊読み切る、というような経験はとても大変だった。

こちらとしては逆にこれが理解できないくらいです. 極端に言えば「そんな簡単な本しかないの?」, 「そんな中身の薄い本しかないの?」とでもいうか. 数学(や物理)の本の冗談のような行間が異常で, それに慣らされているだけなのかもしれません. プログラミングはプログラミングでまた違う行間またはハードルがあります.

「定義」と「定理」は違う 少なくとも「定理」は「定義」に基づいた「証明」が必要。

これについて, 中学二年のときの数学の先生が「いくら言っても通じないし, 君達もすぐにはわからないかもしれないが, この二つは別物だ. わからなくても(中学の)数学はできるが, わかる人は心に留めておいてほしい」と強調していたのを今も覚えています. その当時で既に40代の先生だったと思いますし, 20年以上も話していてどうしても通じない経験を積んできたにも関わらず, それでも諦めずに毎年必ず説明していたのでしょう. これが本当にすごかったのだと最近改めて思います. いい先生だった.

何ができれば「理解した」ことになるのかについて、自分の中で本にある記述が正しい根拠を自分の言葉で表現できることであろうと解釈できる。 本の記述を自分の言葉で表現できるようになるためにはどうすれば良いのか?というのが次の問いになる。

文学修士の人のこのコメントをどう取ったらいいか微妙なところはあります. いわゆる直観的な理解みたいな話をしているのでしょうか. むしろ「本の記述に対して余計な再解釈を挟まず, きちんと文字通りに理解」する方が大事ではないかと思っています. 自然言語的な言葉の用法に惑わされず, 数学の本に書かれた用語に沿って数学の言葉を理解するのは尋常ではない程苦労するようなので. この話, 一応すぐあとに書いてはあるのですが.

②例を考える

私もよく引用する結城浩さんの数学ガールの「例示は理解の試金石」が引用されています. これについては私も最近コンテンツをリリースし, 本格的に進めるぞと言っている程度には重要です.

  1. 図を描く.本には図を入れた方がいいことは著者も分かっているのだが,ページ数の都合で図を省略する, あるいは小さい図でお茶を濁すことがある.そういうときは読者自身で図を描けばよい.

元が統計の勉強なのでこういう話になっているようです. 数学の場合, 無限次元を含む高次元は原理的に何をどうしても絵が描けないことがあります. 平面内の曲線であってもカントールの悪魔の階段などもあります. 描けないから描かない・載せない世界もあります.

他には絵に引きずられて間違う事例もあります. これは現代数学観光ツアーの小旅行3 目で見える世界に頼ることの危うさでも書いたので, 興味がある人は眺めてみてください.

こうして見ると、特に数学書においては「自分が理解した」ということに十分にリソースを割くことが重要そうである。

文学だとこのステップはそんなに軽いのでしょうか. カルチャーショックでは言い表せないほどのショックを受けました. いまも受け止めきれません.

文化のギャップを感じつつ, この記事へのコメントを終えます.

科学哲学の態度「世界観にあうか」

自分のメモだけで書くつもりはなかったのですが, 先の節を書いていて思い出したのでメルマガにも載せておきます.

そもそもこの本の解釈ってどれくらい 科学哲学的に メジャーなんですか? ほら,和文の科学哲学の書籍とか割とひどいじゃないですか.なので書籍として1冊出てるだけだと分野がひどいのか著者がひどいのかよくわからないなって. Oxford Handbook of Philosophy of Physics によるとこんな感じ.これは予想外に思想が強く出ていて面白いぞ.

Philosopher の立場が予想外だった.彼ら的には「現象を説明できること」よりも「物理観に合うこと」のほうが重要度高いんだ.もし物理観にはあってるけど現象を説明できないモデルがあったら修正するのはモデルの方であるって立場なのか. ここ最近で一番衝撃を受けた.わたしには「現象を説明できる」と「世界観にあう」が比較できるって感覚が全然なかった.世界観が first class object の民はこれらを比較できるのか.

科学哲学でやりたいのは哲学であって科学ではないことは認識していましたが, その内実がここまで違うとは思っていませんでした. ここまで世界観が違うとなると, もう科学哲学の人と対話できる気がしません.

リー群・リー環と吉田近似

最近の具体例の話で線型代数をがんばっていて, アドバンストな話とも絡むところでリー群・リー環に注目しています. 特にリー群(の単位元の連結成分)の元はリー環の元の指数化$e^A$で得られます. テイラー展開による定義を自明と言うならともかく, 実数のときと違って指数と対数の定義が非自明です. 実数のときも含めて, これを改めてきちんと書いてまとめるのも私のタスクとしてリストアップしています.

実は大学の教養の数学で触れた対数関数の定義は $\log x = \int_1^x \frac{1}{t} dt$でした. 「これを『定義』としてはじめていいのか」とちょっと驚いたことを今も覚えています. 私は数学に対する感受性が恐ろしく低いというか, 「理解」にいたるのが恐ろしく遅いので「ほほー, そういうのもあるのか」くらいにしか思えていませんでした. いま思うとこれは本当に面白いですね. その講義以外でこのスタイルを見かけた記憶がないので, いいことを教えてもらえたと今も思います. そもそも微分積分を改めて基礎から勉強する機会もあまりないですね. あったとしても教養数学のスタイルにはなりづらいのもあります. いわゆる教養の数学も, 突っ込んだ視点から見て面白いところがたくさんあるのを伝えることも, 例と計算編の重要なタスクと思っています.

話を戻して吉田近似です. 指数関数の定義として $e^x = \lim_{n \to \infty}(1 + \frac{A}{n})^n$があります. 実はこれは関数解析でも重要な定式化です. 正確には非有界作用素の事情があるため, $e^{tx} = \lim_{n \to \infty}(1 - \frac{tx}{n})^{-n}$のように書きます. この$x$に作用素を叩き込みます.

非有界作用素であっても$(1 - tA)^{-1}$が有界になることはあり, これならいくらでも積が取れます. この事情を使って作用素半群を作るのがヒレ-吉田の定理です. また$(1-tA)^{-1}$が有界になるような複素数(または実数)$t$の全体をレゾルベントといい, $(1-tA)^{-1}$の形の元をレゾルベントと呼びます.

無限次元の場合は作用素論や位相的な問題があってさらに非自明性は上がります. それでもリー群・リー環の議論が関数解析のような解析学にも直結することは指摘しておくべきでしょう. レゾルベントに関する議論自体は解析学編でも書いたのでここで詳しくは議論しません. 何にせよ学部は物理で数学分は修士で解析学べったりの私が, 代数や幾何への習熟のためにリー群・リー環に興味を持つのにはそれ相応の理由があることには触れておこうと思い, 簡単にコメントしておきました.

別に私のコンテンツを買ってくれなくてもよいのですが, ぜひリー群・リー環は勉強してみてください. これらの表現論も非常に面白く, 量子力学や素粒子ともいろいろな関係があります.

環論のデータベース

先程Twitterで見かけたのでシェアします.

another super useful (and cool) maths website! https://ringtheory.herokuapp.com search for specific rings, or for rings satisfying (or not satisfying) collections of properties! e.g. "show me rings that are commutative and connected but not integral domains"

this reminds me of π-base, which does the same for topological spaces https://topology.jdabbs.com is there one for categories? somebody (i.e. not me...) should build this functionality on top of the n-lab or something...

環論のデータベース!これは便利そう! 他の便利なデータベースも紹介しておきます:

だいぶ趣は違いますが, 名前だけは作用素環を専攻していたわけで, 環論にも一定の興味があります. 何だかんだ代数はかなり好きでもっと突っ込んで勉強したい対象です. 面白そうな例を見つけたら例と計算編にも収録したいですね. これもかなり楽しみな文献です.

現代数学探険隊のお試し版公開?

この間「購入検討のためにサンプルとしてこの節を見てみたい」というメールを頂きました. いちいち答えていると事務負担が増えてしまうこともあり, オンラインだとAmazonの本のページ公開はほとんどなく, 現代数学観光ツアーなど無料公開しているコンテンツもたくさんあるので, それで判断してほしいと返信しました.

内容からすればむしろ安いくらいとは思っていますが, 絶対的な額面の金額は何をどう考えても安くありません. テイスト把握にも役立つと思って例と計算編を安めに提供したというのもあります. 何にせよ高い買い物ですし, もっとしっかり事前に中身を見たいという要望自体は真っ当なので, どうしようかとは思っています. 最近は幾何方面に乗り出そうと思っている関係上, 幾何とも強く関わる微分の章など何かの公開は検討中です. まだどうするかはわかりませんが.

一応有料にしている理由も改めて書いておきます. これは本当に単純で, 実際に大事にしてほしい・読んでほしいからです. 人は本当に無料で提供されたモノを大事にしません. 他人のことを言うまでもなく私がそうです. ネットにもいろいろな文献が落ちています. 私自身調査をしているときに重宝します. しかしダウンロードするだけして全く読んでいない文献・コンテンツもたくさんあります. 有料で買うと多少なりともそれを大事にします.

無料提供の方がリーチは増えますが, 大切にしてくれる人が増えるかというと微妙です. もちろんその塩梅は簡単ではないのですが, いろいろ考えた上で現状は有料にしています.

プログラミングの進捗

毎日朝の一時間はAtCoder ProblemsをEasyから地道にやっています. 楽しいですね. あとはBird, GibbonsのAlgorithm Design with HaskellをF#で書き直すのをやっています. まだ読んでいる最中ですが, 読み終わったらGitHubjにもアップする予定です.

このHaskellの本, 前に関数型でデータ構造とアルゴリズムの勉強をしていると言ったら読者の方にも勧めてもらった本で, まさにそのときも読んでいた本です. 私よりもプログラミングに強い人からもお勧めされたので, 「やはりこれはいい本なのか」と思い, 改めて再挑戦しています. 単純に時間が取れなくなりフェードアウトしていたのですが, 今年のテーマとして無理やり時間を作って読み進めています. 面白いこと自体は間違いないのでお勧めです. サンプルコードも出すと本に書いてあるものの, いまだにアップロードされていません.

Haskellの本なので素直にHaskellでサンプルを写経した方がもちろん楽なのですが, 趣味でF#にしています.

あと, こちらで紹介したか忘れましたが, ManningのMEAPでGeometry for Programmersという本が出ています. これはSymPyで書かれています. 幾何方面の具体例計算とも合わせてこれもかなり気になっていて, まだいい本かどうか判断できるほど読み込めていませんが, いま出ている分を少しずつJuliaのSymPyで写経を進めています. プログラミングと数学関係も期待しているというコメントも頂いています. この辺の調査・研究も精力的に進めたいですね.

幾何とプログラミングと言えば, OSSのsicmutils/fdg-bookにも参加しています. メイン開発者のSam Ritchieがいま忙しいようでちょっと止まっていますが, 口先だけではなくきちんと進めているぞ, ということで. まだ深いところまで使い倒していないのですが, もとがSICMで古典力学との関係もあれば, 微分幾何への応用として曲率の計算などもできます. 物理とも絡められるプログラミングとして私も進展が楽しみです.

今週の問題

毎日ちょこちょことやっていて, ある問題を調べていて芋蔓式に辿り着いた問題などもあり, 何をどうしたか覚えきれません. 何をどう登録したらきちんとメモしておけばよかったと反省しています. Git管理はしていますが, いろいろなファイルをごった煮で管理しているリポジトリに入れていて, 個別で取り出すのはちょっと面倒なので.

それはそれとして覚えている範囲で面白かった問題・命題を紹介します. 今週は複素係数の$n$次全行列環の中で, エルミート行列がなす集合は実$n^2$次元の実部分空間です. これを証明してみてください. 特に一つ基底を具体的に求めてみてください.

この問題の意義をいくつか紹介しておきましょう. まずリー群・リー環の視点からコメントします. 歪対称行列や歪エルミート行列の全体は, それぞれ特殊直交群と特殊ユニタリ群のリー環です. リー環論の入門として半単純リー環が一つの山で, この中でこれらの次元や基底を求めるタスクがあります. 上で紹介したのはただのエルミート行列ですが, 歪エルミートを考えるときの参考になります. エルミート行列はふつうの線型代数での対角化計算, そして量子力学で馴染みがあるはずで, いきなり歪エルミートを考えるより取り組みやすいはずです.

もう一つ大事なのは複素線型空間(いまは全行列環)の中の実線型空間という視点です. 実は複素多様体論では, 接空間を考えるとき, まず$n$次元の複素多様体を実$2n$次元の実多様体とみなし, 実のレベルで実$2n$次元の接空間を考え, これを複素化して複素$2n$次元(実$4n$次元)の(接)空間を構成します. 上のエルミート行列がなす実線型空間では, まさに複素線型空間内の実部分空間を考えるので, 思考の訓練になります. ついでに半単純リー環の議論でも, 実カルタン部分環を考えるところがあり, そういう場合の参考にもなるでしょう.

ちなみに複素多様体の接空間に対して, 上記のひねくれた構成を取る理由はいくつかあり, まだ未公開の幾何編ノートにはコメントがあります. ちなみに私の観測範囲の数学の本には, 構成法は書いてあっても何故こうするかのコメントがなく, はじめかなり戸惑った記憶があります. 形式的に大学院で数学科を出たといっても, 数学内部であっても専門外を勉強すると本当に困るのです. 上で文学修士の方の数学学習法メモをシェアしましたが, 一行読むのに本当に苦労するのです.

解答案内

上記の問題の解答は例と計算編の2022-01-15コンパイル分では, 2.6.8節の「実次元は$n^2$: (正規直交)基底とともに」で議論しています. そこでは一般の$n$次元で議論していて, 次の節で二次元版の例も書いています. 一般の$n$でわかったのをあえて二次元・三次元で確認するのも重要です. 自分でやると大変な部分もあるでしょう. 私自身のためにもせっせと計算しているので, ぜひ参考にしてください.

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語学 いろいろな言語に触れてみよう/相転移プロダクション

今回の内容

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  • 緩募: アインシュタインの特殊相対性理論の原論文アラビア語訳が探せる方
  • アラビア語学習状況
  • アインシュタインの原論文: スペイン語第二文

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緩募: アインシュタインの特殊相対性理論の原論文アラビア語訳が探せる方

「クルアーンを読むぞ」という趣旨の本を勧められ, それはそれで読む予定ではあるものの, やはり理工系のための多言語プロジェクトとの兼ね合いもあって, アインシュタインの原論文読解にもアラビア語を加えたいと思っています. 他の言語は何となく見つけられましたが, 現状アラビア語は何もかもわかりません. アラビア語での特殊相対性理論に関する文献自体はある程度見つかるものの, アインシュタインの原論文の翻訳が見つけられていません. 他にも私が所属している語学コミュニティでも聞いてみる予定ですが, そちらは物理・数学系に詳しい方がおらず, アラビア語自体はわかってもアインシュタインの原論文かの判定がつかない・つけられない可能性があり, 頼れる伝手は頼ろうと思っています.

どなたかご存知の方, もしくは探索できた方はぜひ教えてください.

アラビア語学習状況

まずアラビア文字を読めるようにしなければなりません. 現状取った方法・取っている方法はここにまとめました. この辺は理屈をうんぬんしているより力づくで覚えた方がいいと思っているため, そういう方法を取っています.

一番やりたかったのはロシア語のときにやったような, 数学者名のアラビア文字表記で慣れる手法なのですが, いいリストが得られませんでした. (ロシア語の場合は『数学者のためのロシア語』的な本があって, そこにリストがあった.) 代わりに外語大のモジュールとアラブ人名辞典を使っています. 女性名でアーイシャがあり, 「ロマサガ1のアイシャはここからか?」とか, 同じくロマサガ1のジャミルがアラビア語にあって, これももしかしてアラビア語由来?とかいくつか発見があります.

特殊相対性理論の文献探索中に「アラビア語での物理用語辞書」という600ページ程度のPDFを見つけたので, これもちょっと眺めてみようと思っています. 用語解説などでは時制の面倒な話が出てきづらいはずで, 動詞の活用に関する記憶負担も減るメリットはあります. ただ構文が複雑になったりするデメリットがあるので, いろいろなことを考えて進めます.

アインシュタインの原論文: スペイン語第二文

最低限の全解説作成が間に合わなかったので, 今回は軽いコメントに留めます. フランス語とイタリア語, またはラテン語を何となく知っていると何となくわかります. ちなみに第一文の全体は次のようになっています.

Se sabe que cuando la electrodinámica de Maxwell – tal como se suele entender actualmente – se aplica a cuerpos en movimiento, aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.

いきなりこの長さと構文的複雑さです. 初学者がアタックするような文章ではないですが, わかるところにはアタックしてみましょう.

実際にドイツ語・英語・フランス語を眺めつつ進めます.

まず(Se) sabeに対応するはずのドイツ語は(ist) bekannt, 英語はIt is knownです. フランス語ではIl est connuです. フランス語はいわゆる「コネ」のconnaitreに対応する単語で, やはり「知る」に関わる意味です. 同じくフランス語で「知る」に関わる単語でsavoirがあり, bとvが入れ替わっているだけで, スペイン語のsabeもやはり「知る」に関わる意味でしょう.

こういう感じの議論を積むと, 何となくスペイン語も読めるようになります. 次のqueやcuandoはフランス語の疑問詞・関係代名詞でqueやquandがあります. イタリア語だとcheなどになりますが, 音は「ク」「クアンド」のような感じで, イタリア語もcheで「ケ」と読みます. スペイン語も同じだろうと推測できます.

他にも英・独・仏・伊比較をすると意味が推測できる単語はあります. 具体的に大きく見れば一致するはずの文の中での登場具合も見ると, 例えばaplicaはapply(application)にあたるでしょう. 他にはaparecenは英語のappear, asimetríasは同じく英語のasymmetries, correspondenciaはcorrespondense, fenómenosはphenomena, observadosはobserveにあたるのが想像できるはずです.

こう見るとこれらの英単語はロマンス語(ラテン語)由来なのが見えてきます. 一応書いておくと, 実はsymmetryはギリシャ語由来です. sym (syn)にもいろいろありますが, 後半の-metryはgeometryやtrigonometryなどと同じく, 「測る」の意味です. 他にはfenomenosのphenomenaは英語の方がギリシャ語由来が見やすいです. 英語の中でギリシャ語由来の単語にはよくphがつきます. ファイナルファンタジーでも出てくるテュポーン先生のtyphoonや, pharmacyが例です.

この辺の話の何が大事か改めて書いておくと, 例外が掃いて捨てるほどあるとは言え, 言語の中にも一定の法則があります. その法則を探る体を取ることで, 理工系の語学として楽しめる点を見出せるのではないかと思っています. 逆に「文系のための数学・物理入門」として, こうした言語に潜む法則を探る視点が使えないかと思っています.

まだヨーロッパ方面に偏っているとはいえ, 半端であってもいろいろな言語に無理やり触れているのは, こうした言語をまたいだ共通法則を探るためです. ヨーロッパ方面だけでは本当に半端なので, ヨーロッパ外に出るべくまずはアラビア語というチョイスです. よくも悪くも現代の中国は理工系強いので, そのラインから中国語もやりたいですし, アジア系の言語もまずは一つ触れたいと思っています. ある種の原点であるサンスクリットに行くか, ヒンディー語にしてみるか, やはりサンスクリットの痕跡が見やすいと聞くタイ語にするか, というのもあります.

2022-01-08

数学・物理 明日でキャンペーンは終わりです/相転移プロダクション

今回のテーマ

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今回はTwitterの転載含め, 凄まじいボリュームになってしまいました.

  • Nielsen-Chaungを読もう
  • 量子力学と具体的な計算
  • プログラミングの状況
  • ディリクレ-ノイマン写像
  • 基本的な演習の重要性
  • ローレンツ群のユニタリ表現論
  • 関数解析とルベーグ積分論
  • 機械学習関係と作用素環, Reproducing kernel Hilbert C*-module and kernel mean embeddings, Yuka Hashimoto, Isao Ishikawa, Masahiro Ikeda, Fuyuta Komura, Takeshi Katsura, Yoshinobu Kawahara
  • $\varepsilon$-$\delta$論法が必要な議論
  • フレーリッヒの講演
  • キャンペーンは明日で終了
  • 今週の問題: 二次正方行列の極分解

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Nielsen-Chaungを読もう

現代的な量子力学では量子情報的な視点が大事というのもあり, たくさん計算しよう・例をたくさん作ろう事案もあり, 改めてニールセン-チャンの演習問題をはじめから解いています.

まだ二章の途中までしか見ていませんが, パウリのスピン行列を含め, 二次正方行列での計算がたくさん書かれています. これだけでも線型代数の一般論と物理で重要な例での確認があり, 恐ろしく役に立ちます. 特にスペクトル定理を応用したいろいろな計算, 行列の関数がたくさんあります. スペクトル定理は私の専門である作用素論的な議論でも酷使する定理で, 本当に重要です.

他にも極分解のようなふつうの線型代数ではなかなか見かけない議論もあります. 具体的には今週の問題で軽く紹介します. ニールセン-チャンでの極分解の証明も非常によいです. 特に面白いのは部分等距離作用素の構成です. 私が知っているのは無限次元での存在証明だけで, もとの行列が正則なら簡単に計算できるものの, そうではない場合に演習問題だけ見てどう計算すればいいのかなどと思っていたところ, 行列の特殊性を使って具体的な構成で証明していました. その意味でも線型代数の教科書としてふつうに使えます. 少なくとも物理学科の線型代数の教科書はこれの二章でいいのではないかとさえ思えるほどです.

全部の証明を詳しく検討したわけでもないため, もしかしたらレベル感などに多少のハードルがあるかもしれません. 基本的に演習問題しか見ていないため, 線型独立性や行列式の定義などの基本的なことが書いてあったかも確認していません. それでも応用に根差したアドバンストな線型代数, そして物理学科民の興味を引く面白い例・計算問題に満ちていて, 物理系で線型代数を復習したいと思っている人は必読です.

ちなみにこの解答は例と計算編でいままさに解答を作り続けているので, 興味がある方はどうぞ. そしてこれを買う買わないは好きにしてもらえればよいのですが, ニールセン-チャンはぜひ手に取ってみてください. 確か和訳もあったはずです. いろいろな点で学生指導されている方もいると思うのですが, そうした方は応用に役に立つ計算例がたくさんあるため, 学生指導や演習問題のネタにも使えると思います. 二次正方行列とそのテンソル積である四次正方行列の計算だけで, いわゆるベルの不等式やエンタングルメントなどの量子情報で一番基本的かつ大事な概念と戦えるので, 本当にお得です.

量子力学と具体的な計算

新たに現代数学探険隊を購入された方からメールを頂いて, こちらで全体に共有していい内容だったので私が書いた内容を転載します.

最近、量子力学は量子情報との関係を真剣に検討しなければならないようで、 量子情報の視点を十分に取り入れたアプローチ・本も市民権を得てきています。 私もまさにその視点からの再勉強を進めているところで、 ちょうど年末にリリースした問題演習コンテンツの大きなテーマの一つです。

数学的には有限次元の線型代数、 特に2次元と四次元の線型代数が重要で、 ベルの不等式のような有名どころがまさにこの世界です。

高いものを買ってもらった後に(無料提供するとはいえ)別のコンテンツを勧めるのもなんですが、 元々相補的なコンテンツでもあります。 ぜひ無理のない形で取り組み、楽しんでください。

ちなみにまだMEAPですが画像だと次のような本が出ています.

昨年末に半額のときに買いました. 計算編のテーマとして私の幾何学習もあり, プログラミングも使って計算し倒す方向でもかなり気になっています.

私もやりたいことがたくさんあり, 「あれもこれもできていない」と嫌になることもあります. それでも一歩一歩進むしかないので, じっくり計算力を高めていこうと思っています. ぜひ一緒にやっていきましょう.

この幾何の本, SymPyを使うようです. Julia版で書き直したり, もしくはSICMUtilsで書いてみたりなどいろいろ遊んでみたい本です. これもかなり楽しみにしています.

プログラミングの状況

プログラミングの話が出たので軽く書きます. どうするといいのか, そして何よりどうすると私自身楽しく勉強できるのかという問題さえあります. 紆余曲折をいろいろ書いていますが, 現状はF#でAtCoder ProblemsのTraining300題をEasyから解いています. SICMUtils用にClojureではじめから解き直していたのですが, JVMの立ち上がりの問題か, 本質的にはほぼ変わらないコードのCommon LispやF#版が軽く通るのにタイムアウトになってしまうのに苛ついて, いまは結局F#で解き進めています.

データ構造やアルゴリズムの理論の本も並行して読んでいますが, いまだにアルゴリズムの理論面の楽しみ方がわかっていません. もうゴリゴリ問題を解いていって, 解説で「---法を使えばいい」みたいなのが出てきたらそれを読む形にしようと思って, いまはメインを問題演習にあてています.

言語に関して, CやC++, または最近だとPythonサンプルも多いですが, 自分が書いていて楽しい言語となると, 現状ではいわゆる関数型なのもほぼ確定しました. 私のスタイル(技量ともいう)だとHaskellではREPLスタイルの開発がうまくいかない(一応VSCodeでREPLプラグインも入れてみたものの, 使い方も悪いのかもしれないが気持ち良くない)ので, いまの私の技量・エディタ設定能力で気分よく使えるF#を使っています. ClojureもEmacsのCIDERが非常によいです. Common LispとSLIMEもかなりよいのですが, これは標準機能でいわゆる関数型の処理を書きやすいのがリストだけで, Clojureのように配列でも同じインタフェースが使えるような機構がないのがつらいところです.

データ構造とアルゴリズムは2021年にHaskellによる本が新しく出ていて, これが読みやすく楽しいです. これもふつうのCやC++で書かれた本だと楽しく読めないので, これをできる限りF#に翻訳しつつ読もうと思っています.

一方で数値計算を本格的にやる面では現状はJuliaで趨勢が決したように思います. 先のGeometry for Programmersよろしく一般向けコンテンツはPythonなのでしょうが, ちょっと凝ったことをコードを楽に楽しく, そしてさらに速くしたいならもうJuliaでしょう. SymPy自体もJuliaから使えますし, Juliaネイティブの記号計算ライブラリもあるにはあるようです.

昨日もTwitterで次のライブラリの話が出てきました.

量子力学はもちろん, 量子情報でも重要な記法であるディラックのブラケット記法をJuliaで使えるライブラリです. 見たところ, ユニコードで変数を書けるというJuliaの数学的なノリの良さそのままで$| \psi \langle$的な変数名にできるわけではないようですが, それでも一つ象徴的で良さそうなライブラリです.

最近SICMUtils対策にClojureとCommon Lispに簡単に触れたら, この辺の記号乗っ取り系はCommon Lispが相性良さそうなところですね. Clojureは言語に^/が乗っ取られて自由度がCommon Lispより減っていて, SICMUtilsでは苦労しているようです.

取り留めもなくダラダラと書きましたが, 中高数学の問題をSymPy・Juliaで解いたり, 計算・お絵描きするのも今年の例と計算編に関わるテーマです. これだけいろいろ書くのもその程度には調べたり実践しているということで. 面白計算ネタがあればぜひ教えてください.

ディリクレ-ノイマン写像

こちらも例と計算編関係で質問が来たので返信を共有します.

ディリクレ-ノイマン写像に関して何でどんな情報を得ているかわからず, さらに予備知識または力量的な情報がないため, 現代数学探険隊を一通りこなしている前提で書きます.

まずはじめに書いておくと, 私はこの言葉やテーマをはじめて知ったので, 完全に素人です. 少し調べただけなので既にご存知のことばかりかもしれません.

この二つを見る限り, 境界条件を変えて偏微分方程式を簡単にするのではなく, 工学や逆問題的に境界(の一部)しか情報を取れない状況で, 内部のデータを推定する手法なのではないでしょうか. 同じ名前がついているだけの全く違う手法を私が見つけただけかもしれませんが, 名前しか情報を渡してもらっていないので判断できません.

少し眺めた限りでは, 次の文献が比較的様子が見やすそうな印象を受けました. 読み込んではいないので実際の行間などはわかりません.

現代数学探険隊ではあまり議論していないトレースの話が出てはいますが, 基礎になるソボレフの埋め込みは議論しているので, 結果を追うだけならさほど苦労はないように思います. (念のため書いておくと, ここでの「トレース」は線型代数的なトレースではなく, ソボレフ空間上でのベクトル解析のように, 境界上での値や滑らかさを真剣に考えないといけない状況で出てくる, ソボレフの埋め込み関係の議論です.)

あとは現代数学探険隊でも双線型形式まわりではスタンパッキアの定理, ラックス-ミルグラムも議論していますし, コンパクトレゾルベントを持つ自己共役作用素, フレドホルムの択一定理も収録しているので, 現代数学探険隊があれば予備知識は問題ないでしょう.

こう見るとちょっと進んだことをやる上で, ぎりぎりまでの内容はおさえられているな, とちょっとほっとしています. そして少し凝った内容では, すぐトレースが必要になるのも改めてわかったのが私にとっても収穫です. 応用上, 境界(の一部)までしか情報が取れないこともよくあるので, 境界に絡むトレースはもう少し補足コンテンツを作った方がいいのかもしれません.

(学生時代の)専門外なので, いま言えることはこのくらいです.

簡単にトレースの話を補足します. まず偏微分方程式論では境界条件があります. そして一般に境界は元の空間より次元が低く, 測度零の集合です. 測度零の集合で値を指定するのが境界条件であり, 測度零の集合上での振る舞いを無視するのがルベーグ積分論で, ルベーグ積分と関数解析を軸にした偏微分方程式論では, 境界条件の取り扱いははじめから猛烈な困難があります.

現代の関数解析的な偏微分方程式論では, まずはソボレフ空間からはじめるのでそれを基本にした話をします.

ソボレフ空間は適当な階数だけ超関数微分可能な可積分関数の集合です. 不連続な関数であっても超関数微分できるとはいえ, それなりによい性質が必要です. そして適当な階数だけ超関数微分ができ, さらに適当な可積分性もあるなら, この適当によい性質を持つと主張するのがソボレフの不等式とソボレフの埋め込みです. 特に十分多く超関数微分でき可積分なら, 本当に連続または微分可能になります. この事情をうまく使って境界条件をうまく指定する手法がここでいうトレースの議論です.

ソボレフの不等式まわりの議論が必要なので, それ程簡単ではありません. しかしソボレフの不等式に耐えられるならトレースの議論もシンプルな範囲は十分カバーできます. ソボレフの不等式の一般論は考える領域にも依存して非常に面倒です. 私も専門ではないため, とても完全な状況までカバーしきれていません. 当然多様体上のソボレフ空間論もあり, これはこれでまた曲率やリーマン多様体の測地的完備性も影響してきて, 別の難しさが出てきます. このようにソボレフ空間論自体もかなり色々な展開があり, 偏微分方程式を抜きにしても面白いテーマです.

基本的な演習の重要性

この間, ちょうど森の未知さんとお話をしてやはり, と思うことがあったのでシェアします.

以下で書いたようなことを念頭にコンテンツを作っています. あとで書くように明日でキャンペーン終わりなので, 「これは」と思った方は早めに購入するとお得です.

やりとりその一

大学数学では計算しなくなる?みたいな言説、計算練習を積まなくなる原因になってないだろうか

これは本当にその通りで、学生も基礎的な鍛錬をしなくなるのみならず、教員も基本的な問題を演習問題に出さなくなるんですよね。 あの手の言説は徹底的に滅ぼすべきですね。

私が今まさにそれで困り果てていて、今年の目標はたくさん計算することで、その結果を問題集に転用して提供する予定です。いつになるかわかりませんが、幾何系の基本的な空間のコホモロジーの計算だとかも叩き込みたいです。あとは数値計算・グラフ描きも込みで。

ちなみにスターリングの公式の近似の数値的検証みたいな形でグラフお絵描き込みの話を勉強会でやったのですが、すでに分かり切った(数学的な計算はやったことがある)結果でも、グラフを目で見るとそれはそれで含蓄があるのを実感したので、数学の人もどんどん数値計算やってほしいです。

ありがとうございます。 数値計算は実際大事だと思うのですが、プログラミングかマセマティカを習得するのが重たいんですよね……。

逆にそここそが自分が貢献できるところだろうなと思って、今年はいろいろやろうと思っています。ちなみに https://phasetr.com/lp/mpgh1/ こんなのは作ったことがありますが、これは中高数学メインなのでもうちょっと微分積分・線型代数をゴリゴリ計算したいと思っています。

やりとりその二

それはなかなか素晴らしい企画かと思います。 コホモロジーでなくホモロジーですが、『計算で身につくトポロジー』は参考になるかもしれません。

それも手元にあって読まねばと思いつつ読んでいないので、バリバリ計算する予定です。あと森の未知さんには言うまでもない話ですが、一般次元の議論を二次元・三次元で書くとか、一次元で書いてほぼ自明、みたいタイプの具体例と計算も大事と思っています。

その手の具体例と計算はガチで大事ですね。 習ったらその場で自分で簡単な例を考えて手を動かせるのが理想といえば理想ですが、現実問題として手の動かし方も経験値がないと分からなかったりするので、そこで適切な例を出せるかが教育者の腕の見せどころなのかなと思っています。

あとは「これは計算する価値のいい例だ」もきちんと協調するべきだと思っています。価値についても、そもそも計算できる例自体少ない貴重な例とか、基本的な手法が一通り身につくとか、先々で延々使うとか色々あるので、できること・やるべきことはたくさんあります。

ローレンツ群のユニタリ表現論

Twitterでちょっとやりとりしたので転載します. これも前にどこかで似たようなことを書いていたりするテーマです.

@物理やってるフォロワーの人 ローレンツ群のユニタリ表現論ってなんか本に体系的にまとめられてたりするんですか? カクミチオの場の理論の本に書いてあるのは知ってるんですけど、ユニタリ表現について書いてる本はないんですかね?WikiにはBargmann?Wigner equationsというものが関連するってあるんですが 午後4:20 ・ 2022年1月5日・Twitter Web App

新井朝雄先生の「フォック空間と量子場」(確か下巻の方)にはフォック空間上へのユニタリ表現の議論があります。他には代数的場の量子論の文献にもいくつか基本的な記述があります。実は代数的場の量子論で大きな基本的残課題が(たぶんいまだ未解決で)あって、Borchers, Translation Group and Particle Representations in Quantum Field Theoryに記述あり。

同じBorchersの Quantum Field Theory as Dynamical Systemという論文があり、これは20ページくらいで端的に問題がまとまっています。他にも有限温度でローレンツ対称性が破れる問題があり、ローレンツ対称性は破れても並進対称性は生き残るはずだ、みたいな研究もあります。

ちょっと記述の不備というか勘違いに気づいたのですが、先のBorcherdsの本と論文はローレンツ対称性の破れに起因する時空並進群の表現論で、ローレンツ群の表現論ではありません。

あと、ローレンツ群というよりSL_2(C)で議論していることがあります。ローレンツ群と$SL(2, C)$ 私の観測範囲だと相対論的な場の量子論をやっているのは代数的場の量子論(作用素環)の人たちなので、そちらの文献を見ると陰に陽に記述があります。 相対論的場の量子論はいまだに四次元のまともな理論の存在さえ示されていないはずで極端に難しいので、一般論・抽象論よりも作用素環ベースの話の方が数学色の強い文献は見つけやすいでしょう。代数的場の量子論の文脈でのC^* dynamical systemで検索するとまた少し関連文献があります。 あとは作用素環上だとユニタリ表現というよりも作用素環上の自己同型群への表現になるので、automorphism groupで見た方が作用素環(代数的場の量子論)系の文献は見つかりやすいかもしれません。

(非コンパクト群の)無限次元ユニタリ表現はともかく, ローレンツ群や$SL(2,\mathbb{C})$などの計算もゴリゴリやりたいですね. 特殊相対性理論に関してはパラドクスまわりの丁寧な計算も収録したいです. とにかくいろいろやりたい.

関数解析とルベーグ積分論

前も転載したような気がしますが, 大事な話は何度でもということで, 再度転載. この間ファボがついて「こんなの書いたな」となったのです.

もとのツリーを追うと途中でいかにも半端なことしかしていなさそうなコメントがありますが, ルベーグ積分抜きの関数解析には本当に魂がありません. この辺の具体例については現代数学探険隊の解析学編全体で議論しています. 数学科でもないなら別にルベーグも関数解析もいらず, 関数解析だけでルベーグに触れる必要もないと思いますが, 数学科で教養程度の関数解析というならむしろルベーグをべったりやらないと数学的教養にはならないでしょう.

発端

関数解析ってルベーグ積分論いるんだね、初めて知った ルベーグ積分論がいるというよりはただの関数空間において関数の定義域がもうちょい大雑把でも成り立つような命題があるけどその大雑把ってのが測度論とかないと書けないって感じ?>

他の人とのやりとり

別に具体例を扱わないなら殆ど要らなくないですか?

やっぱり大筋には関与してこないんですかね??

Lp空間の性質を完備性に押し付けることで抽象化しているので...圏論自体を勉強するのにはホモロジー代数は要らない みたいなことです. (但し, 関数解析にはBochner積分という測度論と密接関わった概念がありますが)

おーなるほど無茶苦茶わかりやすい例えですね、、、そう言ったものとして飲み込んで話進めても体系的に破綻しないって感じですかね!

私のコメント

https://ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/guide06.htmで作用素環(関数解析の一分野)をやるのに「ルベーグが分かっていない人は無理」という一文があります。抽象的な関数解析の理論もあるにはありますが、決定的に重要な具体例で関数解析の魂とさえいえるのがルベーグで、ルベーグなしの関数解析は魂の抜けた抜け殻にだけ触れているようなもので、一般的にはあまりお勧めできません。関数解析の抽象論だけがとにかく好きで、そういう方向の勉強をしたいだけなら特に問題ありません。

私が知る限りフィールズ賞を取ったガワーズは少なくとも抽象的な関数解析の結果もありまさにそれがフィールズ賞の業績だと理解しています。何にせよルベーグを知らないと関数解析系の人とコミュニケーションできないレベルで困りかねないとは言っていおきます。

なるほど、ルベーグ積分への応用(?)が重要な分野でもあるのが関数解析なんですね、僕は関数解析を専攻したいほど関心があるわけでは無いのですが、教養程度に知っておきたいなという気持ちがあります、、

ルベーグ自体が激しい応用を恐ろしく広範に持っていて、その中で陰に陽に関数解析が出てくると思った方がもう少し正確です。関数解析の中でも作用素のスペクトル理論(行列の対角化の一般化)でスペクトル測度という測度が出てくるので、関数解析の理論中でもルベーグが本質的に必要な場面があります。あと圏論的な背景さえあることでも有名なリース・マルコフ・角谷の定理は表面的には積分論が不要な連続関数環に対して、その双対空間がラドン測度の空間であるという大定理で、これも関数解析で測度論・ルベーグ積分論が本質的な例です。

機械学習関係と作用素環, Reproducing kernel Hilbert C*-module and kernel mean embeddings, Yuka Hashimoto, Isao Ishikawa, Masahiro Ikeda, Fuyuta Komura, Takeshi Katsura, Yoshinobu Kawahara

どこまで「実用的」なのかはわかりませんが, まさか作用素環と機械学習まで絡むと思わなかったので. そして研究室の先輩と知人が関係する論文を書くとは, という話もあり宣伝も兼ねて紹介します.

最近位相論, 関数解析を独学で勉強し, すごい面白いと思いました! この辺の数学をデータサイエンスに応用するような分野, それにかんする本, 論文など何かご存知でしょうか?

良いですね! そしたら、深層学習とか、勾配ブースティング決定木の、普遍近似定理の証明とかを探して見てみるのが良いのではないでしょうか!(^o^)

スッ・・ Reproducing kernel Hilbert C*-module and kernel mean embeddings, Yuka Hashimoto, Isao Ishikawa, Masahiro Ikeda, Fuyuta Komura, Takeshi Katsura, Yoshinobu Kawahara

位相空間論やら関数解析が必要なところがどれだけ応用上で役に立つのか正直私は懐疑的ですが, 引用された論文の著者の勝良さんは修士のときの研究室の先輩ですし, その他, 学部の頃から知っている知人もいるので宣伝しておきます.

$\varepsilon$-$\delta$論法が必要な議論

「ε-δ論法を理解できないと函数の連続性を扱えない」では大学教養レベルの解析学が破綻するけども、じゃあどこからがε- δ論法を理解する必要のある話かというと難しいな。

不等式処理が必要になったらもうε-δが必要という気分があります。そして応用ではたいてい近似を含めた等号しか使わないのでほぼ不要という気分です。 よく言うのですが、むしろε-δは形式的な一つの極限の等式を無限個の不等式で表現する様式なので、不等式で色々な制御が必要にならない限り担ぎ出す理由が本当にありません。

これは確か「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」でも話した記憶があります. 興味があればYouTubeの記録を見てみてください.

フレーリッヒの講演

これは私の守備範囲である厳密統計力学・構成的場の量子論分野の数理物理の神々の一人, Jürg Fröhlichがフランス語で講演している動画をYouTubeでたまたま発見したので共有しておきます.

フレーリッヒはスイスの人で, スイスは公用語がドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語だからフランス語も話せるのでしょう. この辺は語学ネタなので興味があれば語学メルマガも見てみてください. そちらは語学をやるというより, 語学からどう数学・物理を勉強するかという視点でいろいろやっています.

キャンペーンは明日で終了

去年末, ラストのラストでリリースした例と計算編は明日でキャンペーン終了です.

キャンペーン終了後も販売は続けますが, 値上げするので興味がある方は今のうちにどうぞ. 今後どんどん例や計算を追加しますが, 既に購入されている方には追加分も無料です.

こちらに混ぜた方がいいだろうと思う記述も移行したら1000ページを越えました. これでもまだほしい例やコンテンツが全然載せられていません. 自分自身, コンテンツの充実が待ち遠しいです. 中高生向けコンテンツの充実の面から, 一変数の微分積分や二次正方行列の例もどんどん充実させなければ, と私自身楽しみで, そして楽しみながら作っているコンテンツです. ぜひ一緒にバリバリ計算していきましょう.

通信講座は廃止したので, 各回の宿題と称した問題集も例と計算編に移行しようかと思っています. 本編にある例への参照もつけたいですし, やることが山のようにあります.

今週の問題: 二次正方行列の極分解

ニールセン-チャンのExercise 2.50では行列 \begin{align} \begin{pmatrix} 1 & 0 \ 1 & 1 \end{pmatrix} \end{align} の極分解の計算があります. (ウェブ上でうまく表示されないようですが, 二次の正方行列としてがんばって読み取ってください.) これだけシンプルな行列でも極分解の計算は本当に大変です. 実際にこれは例と計算編でも計算していて, A5版で5ページ使っている大変な計算です.

これだと大変なので, \begin{align} \begin{pmatrix} 1 & 0 \ 1 & 0 \end{pmatrix} \end{align} を計算してみてください. こちらの計算は簡単で, ゆったりペースを使っても(TeXによるコンテンツ内の)1ページで計算が終わっています. これもコンテンツで計算しています.

語学 今年はとりあえずスペイン語とアラビア語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 理系のための国語教育
  • 今年は新しい言語に取り組みたい
  • アインシュタインの原論文: スペイン語タイトル

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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理系のための国語教育

2018年のツイートですが知らない方もいると思うのでリツイート URL

Nature公式、論文要旨の書き方。 授業でこれを扱うと国籍問わず大半の大学院生が知らなかったと言うので簡易和訳版を作成。 もちろん、Nature以外の論文にも流用する事が可能。 注目は、[結果]に使える文の少なさ(2~3文。全体の20~25%)。 和訳の修正案、大歓迎です。 英語版: URL, PDF

この辺, 理系のための国語教育として取り組みたい内容です. 科学英語や工業英語みたいなところの一環でやるべきリストに突っ込んでおきました.

今年は新しい言語に取り組みたい

ただでさえいろいろやろうとしているのにアレですが, 語学は語学でいろいろ触れたいというか遊びたいと思っています. そして既存のコンテンツだと勉強が続かないのもわかっています.

そこでコンテンツの充実にもなるので, これはもうアインシュタインの原論文を多言語で読もうの会枠で扱うべきだと思って, それでスペイン語とアラビア語をやろうと思っています. こうでないと勉強が続かないのがはっきりしたので. というわけでやっていきましょう. 文法もまずは概要を把握しないといけないので, 東京外語大の言語モジュールを雑に眺めていこうと思っています.

アラビア語は文字から再トライで道は長いのですが, やっていくしかありません.

アインシュタインの原論文: スペイン語タイトル

アラビア語は間に合わなかったので, まずはスペイン語だけ簡単に解説をつけます. 会員限定という名の現状非公開ページの記述を追加し, その現状を転載しています.

相対性理論の原論文は一文が異常に長く, 読むのは本当に大変です. いまはドイツ語を多少読めるようになり, 比較でがんばれば他の言語も多少は読めるようになったものの, 全くもって初学時点で挑む文献ではありません. ただ他にいい感じのコンテンツもなく, ついでに相対性理論の勉強もしたい思惑があるので, しばらくこれでがんばります.

記述
  • Sobre la electrodinámica de cuerpos en movimiento

構造はフランス語とほぼ同じです. 単語もよく似ています. 英語・フランス語・イタリア語と比較しながら進めて大体わかるでしょう.

Sobreはsuperで, 英語で言えばonにあたります. 英訳でもまさにonを使っています. 英・仏・羅・西などの単語間での子音のbとpの入れ替わりはスペイン語に限らずよくある話で, 日本語での「ぶ」と「ぷ」の違いでしかありません.

次のla electrodinámicaは女性名詞electrodinámicaに定冠詞laがついた形です. スペイン語の定冠詞はスペイン語の文法解説ページを見てください. 単数形はフランス語の女性定冠詞と同じで, 複数形には素直にsがつく英語と同じタイプなので覚えやすいでしょう.

次のde cuerposは英語のof bodiesです. 前置詞deはでフランス語と同じで, 英語ではofが対応します. 英語でよく「分離のof」といってdepriveなどがあるように, 分離的な意味も持ちます. 例えばDNAのデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)のdeがこれです.

男性名詞のはcuerposはラテン語由来で, ドイツ語のKörperとも同根です. むしろ英語のbodyが浮いています. (ロシア語はまた別系統ですが詳しくないのでそのうちきちんと調べたい.) 英語でも遺体の意味でcorpusがあり, 言語コーパスのような形でのcorpusがあるので, この意味では英語の感覚から理解できる単語でもあります.

ドイツ語のKörperもスペイン語のcuerpoも数学で「体(群・環・体の体, 英語のfield)」の意味があります. これはこれで英語での「体」がfieldなのか謎で, 調べ切れていません.

最後のen movimientoもフランス語のen mouvementと同じで, 英語でもin motionと書けます. フランス語でもenは英語のinにあたり, スペイン語でも大きく言えば同じです.

2021-12-31

数学・物理 2022年は例を計算し倒す/相転移プロダクション

今回のテーマ

年末年始の休暇に合わせてコンテンツを出すといって, 完全に年末になってしまいました. さらにいつもの土日に出せずにこんなタイミングです. 多少無理やりですが何とか年内に出せてよかったと思うことにします. コンテンツ案内は今回のラストに載せています.

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • Wolfram Engine
  • AlbeverioとHoegh-Krohn
  • 公文と計算練習
  • 名誉の文化
  • 一般化への道
  • ENERGEIAで毎日計算
  • コンテンツ案内: 現代数学探険隊 いろいろな例と計算編

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

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Wolfram Engine

先日プログラミングでの計算についてメルマガを書いたら, 「自分はこんなのを使っている」とWolfram Engineを教えてもらいました.

以前凝ったプログラムを書かずに簡単な文字計算や, 三次元を含めたグラフを描いてくれるサービスとしてWolframalphaを紹介したことがあります.

これも凄まじいサイトなので一つ紹介しておきます. 例えばトップページの「科学と技術」の「Physics」から遷移できる次のページが面白いです.

簡単なお絵描きをしたいだけならこれほど便利なサービスもそうありません.

この間書いたのは本格的なプログラミングに対する目標として, 数値計算・記号計算系のライブラリの理解を掲げる話はどうか, そして自分自身それをターゲットに勉強する話でした. かなり面倒ではあるものの, Webサービスを作るやらゲームを作る話よりよほど気合が入るテーマだからです.

それはそれとしてこれもきちんと中高生に紹介するべきなので, 備忘録込めて共有しました.

AlbeverioとHoegh-Krohn

Twitterで超準解析の話を時々魔法少女からリアクションをもらいます. 一つ論文を教えてもらったところ, AlbeverioとHoegh-Krohnの名前が出てきました. この人達は何者なのかと呟いたら次のコメントをもらいました.

AlbeverioとHoegh-Krohn、私の中では構成的場の量子論の人なのだが、超準解析的にはどういう人という認識なのだろうか。

Loebが超準解析を使った測度空間(Loeb測度空間)の構成を与え,Andersonがそれを使って確率解析への応用を始めた(Loeb?AndersonのBrown運動).AlbeverioとHoegh-Krohnはこの流れの上にあり,流体力学等の数理物理のモチベーションから超準確率解析の研究をやったひと,といった認識.

ありがとうございます。ごりごりの専門なので当然と言えば当然ですが、この人たちの仕事、前々から非常に気になっています。超準解析は小澤正直さんが量子測定などにも応用しているらしいので、もっときちんと遊びたい分野です。

超準解析も超準測度論に入ったところでいったん勉強停止中です.

ちなみに超準解析は非常に難しいです. 「超準解析をうまく使うと証明が短くなり簡略化される」話が有名です. これも魔法少女に教えてもらった話ですが, 竹内外史本になるように超準解析の基本構成は無視して公理的に進める取り組み方もあります.

しかしこの「うまく」が非常に曲者です. 超準宇宙のうち, 標準元(内的な元)と外的な元があり, 移行原理に関連して三つの集合族が出てきます. これをきちんと意識しつつ論理式を処理しないと簡単に破滅します. 詳しくは超準解析を勉強してもらうしかありませんが, これが本当に面倒です.

もう一つ大変なのが完備性の破壞です. 実数はただ一つの完備なアルキメデス順序体です. 超実数は実数の拡張概念ですが, 実数ではない存在にするために上記の性質がどこか壊れます. 特に壊れるのが完備性なのです. もちろん移行原理が通じる範囲では完備です.

この辺の繊細な使い分けが非常に大変なのが上のコメントで, そもそも完備性が破壞されるために関数解析で鍛えた感覚がいちいち止められてつらいのが第二点です. 実際, 超準ルベーグ積分論の主役は$*$-有限加法性です. このために慣れ親しんだ操作と直観がいちいち狂わされます.

私の大学院の指導教員でもある河東泰之先生は超準解析を使えるようですが, この何ともいえない感覚をどう処理しているのかとても気になっています. コンヌが作用素環にも超積などのアイデアを導入しているそうで, 自由確率論の文脈でも超積の言葉を聞いたことがあります. いま改めて作用素環と超準解析の話が気になっています.

公文と計算練習

来年の計画と密接に関係する話です.

公文公, 正論過ぎだろ.

ていねいに教えても, 力がつかないのはなぜ? 世間では, 「勉強ができるようになるには, ていねいに教えてもらうことが大切で, 先生の教え方が微に入り細をうがったものであれば成績が上がる」と思われているようですが, これは大きな誤解です. 学問は, 教わるだけでは身につかないのです. 公文公は各所で似たことを書いているけども、巧い説明を聞くよりも適度な問題で手を動かす方がずっと数学が身につくんだよな。 数学科が演習科目を伝統的に重視しているのもそのせい。

結局これよ。

創業者の公文公(くもんとおる)の思想が強烈すぎてヤバい。「何を教えるかではなく、何を教えないかが大切である」とか至高の名言感がある。

小学生の頃、「形式的な解き方を把握したらそれで良いではないか、ドリルは不要」と言って宿題をサボり、公文式を馬鹿にしていた。 しかし高校が厳しく、宿題をサボれずとにかく計算問題を解きまくる必要があり、計算機に徹した。 今、その時の「瞬時に得られる操作と計算結果」が支えになっている。 ほんとね、子どものころは何も考えずとにかく手を動かした方がいいよ。 公文式やっとけばよかったよほんとに… まあADHDでは集中してできなかっただろうけどね。

私も自分が教える立場になるまでは否定的だったんだけど、ゼミなんかで考えてる問題を微分積分や線形代数の単なる計算問題にまでようやく落とし込んだところでズッコケる学生さん達をたくさん見るうちに、程度の差こそあれ、アホみたいに計算練習しておくのは大事なんだなぁ、と思うようになった。

P85、森の未知さんが好きそうなことが書いてある。これ、最近プログラミングというかアルゴリズムの勉強をしようとしていてよく思う。何かプログラム書こうとして手が動かないし頭も動かない。よくできるプログラマーは事前調査や設計をしっかりやってから手を動かすみたいなのを見かけるが、あれは多分、その気になれば馬鹿みたいに手が動かせて片付けられる自信もあるからできるのだと思う。逆にとりあえず色々書いて遊んでから考えるとか何とか色々。私が数学何なりやるときも、頭動かす前にまず例を計算してみたりとか、逆に何か良い例がないか自体考えるとか色々やるが、まさにプログラミングでそれができない・していない。何せ素因数分解さえバグなくサクッとプログラム書ける自信がない。多分この辺なのだろうと目下非常に反省している。

計算力というと、京大の泉先生に対する河東先生の評を思い出す。「泉氏の特長はその類稀な計算力・剛腕にある」みたいなことを日本数学会の受賞の評価で書いていて、凄まじい計算を処理し切る剛腕の重要さを知った。

別の話として、幾何系の勉強をしていると痛感するが、基本的な計算でいちいちつまづく。計算をすらすらやり切れるだけのパワーがなく、同時に基本的な知識や定義も身についていないのを毎度痛感する。

いろいろな言い方や切り口はあります. 一つはやはり結城浩さんの数学ガールの言葉, 「例示は理解の試金石」でしょう. 具体例を出せるか, そして計算しきれるかは理解の試金石です. 解析学からすればハードな不等式処理という計算の完遂能力そのものが数学力であり, 数学の理解に直結しています. ホモロジー代数のような分野でもdiagram chasingに代表される広義の計算遂行能力は理解と直結しています.

プログラムを書くときでもプログラムを書き切るのは広義の計算力です. 特に解くべき問題をいろいろな制約の中で目的を到達できる精度で, 時間内に解き切るのは決定的に重要です. この辺の広義計算力涵養が私の来年の課題であり, 今回リリースするコンテンツです.

名誉の文化

面白かったので単純なメモです. 数学・プログラミング関連でも積読が溜まり続けていますが, この本も読書リストに突っ込んであります. 私がギリギリ何とか扱える範囲として, 数学・物理・プログラミング・語学と言っているだけで, 中高生に広く興味を持って遊び倒してほしいと思っている以上, 私も人文・社会学方面で広く遊び倒さないと嘘になってしまいます.

「復讐は何も生まないが、きっちり復讐する人間だという評判は将来の被害から私を守ってくれる。」というセリフは人間関係全てに通ずる金言だと思う。

これがあるために/これが必要な環境では,社会・文化レベルで,やられたらやりかえすタフで粗暴な「名誉の文化」が根付く, っていうのが,社会心理学や文化心理学で研究されています。 名誉の文化に関しては,この記事などどうぞ。 心理学ワールド 77号 特集 なめんなよ!社会・文化 環境が生み出す名誉と暴力 石井 敬子(神戸大学) | 日本心理学会

こちらも紹介。 アメリカ南部には,「なめんなよ」といった,侮辱に暴力的に応じる名誉の文化があることを多面的に論証した名著です。お勧めです。 名誉と暴力: アメリカ南部の文化と心理

ちなみに,名誉の文化は戦争とも関係しています。 一例として,タフな男らしさを重視する名誉の文化では,戦士を賞賛していて,集団間紛争が多いよ,っていう私の研究です。 こちらもどうぞーNawata, K. (2020). GPIR論文 "A glorious warrior in war: Cross-cultural evidence of honor culture, social rewards for warriors, and intergroup conflict"

一般化への道

これは今回リリースするコンテンツとも関係する話です.

コンテンツ、あとで一般化やより良い議論をする時にはきちんと参照をつけたほうがいいというのを実感する。

具体例と計算を大量に載せていますが, それがどこにどうつながるかまだ書き切れていません. この辺の整備も今後の課題です.

逆に一般論パートで具体例をきちんと書くのも大事です. これも今後さらに充実させます.

ENERGEIAで毎日計算

ENERGEIAは以前案内した「オンライン部活」のサービスです.

  • 数学和尚の数学かけこみ寺
  • https://energeia.app/club/36

2021-12にアプリ化したので, iPhone・Androidからさらにアクセスしやすくなりました. 来年からここで平日に自習会(もくもく会みたいなやつ?)を開こうと思っています. もしあなたが興味あれば, ぜひここに参加してください. いろいろなところで案内するのが面倒なので, 改めてここを使ってみる予定です.

コンテンツ案内: 現代数学探険隊 いろいろな例と計算編

ここまでいろいろ書いてきたように, 来年に向けての活動の布石として, 新たにコンテンツをリリースします.

詳しくは上記ページを参考にしてください. 案内ページがいま一つ練り切れていません. 購入にあたって何か疑問・質問があれば気軽に連絡をください. キャンペーン期間は年末・年始の休暇中にしようと思っていたのですが, リリース自体が年内ぎりぎりになってしまったので, 年始の一週間として2021-12-31~2022-01-08までをキャンペーン価格で提供します. それ以降は値上げするので, 興味がある方はいまのうちに買っておいてください.

来年は各方面から計算し倒す一年にしようと思っています. やろうやろうと思って2-3年は経ったテーマなので, 私自身楽しみです.

語学 2022年はアウトプット強化/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 2022年の予定

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  • 今回のページ
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2022年の動き

12月はいろいろあってメルマガもろくに書けず, 勉強会もできずで散々でした. その分, 最低限のタスクを明確にし, それを確実に回すための準備をしないと駄目なことを実感しました.

私にとっての語学は物理・数学・プログラミングとも直結しています. これらについてはこのページの上の方にいろいろ書きました. 興味があればそれを見てもらうことにして, ここでは語学に特化して書きます.

語学では英語の強化が目標です. 特にライティングとスピーキングです. ライティングは既存のコンテンツの英語化の形で進めます. 世の会話教材などは本当に続かないのがわかったので, 本格的に自作します.

スピーキングについては積極的に会話するというより, ライティング教材をしっかり音読する方向です. 勉強会でも「音は物理である」と言っていますし, やはり実際に発音しないとわからないこともあります.

あと, 細かいことは考えられていないのですが, 勉強会をもっと発展させたいとは思っています. これは英語だけだと面白くないので, 今まで通り独・仏・羅あたりは絡めて遊びたいですね. 相対論のコンテンツも数学・物理系補足を整備する予定です.

数学・物理系と違ってこちらは大分手短になってしまいました. 来年はまた地道な単語比較・学習コンテンツも書いていく予定です.

2021-12-18

数学・物理 具体例で遊ぼう/相転移プロダクション

何かいろいろあって一月メルマガを書いていませんでした. 他にもいろいろ止めていたため今週から少しずつ復活させます.

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 超関数微分と超準解析
  • 「全ての概念はKan拡張である」ペーパーバック化
  • 「日本で少子化対策はなぜ失敗したのか」
  • 量子力学10講 補足ノート
  • 知らないふりゲーム
  • 熱力学学習への感想
  • アンケートへのコメント
  • 具体例で遊ぼう
  • 今回の宿題

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超関数微分と超準解析

魔法少女とのやり取りです.

超関数微分しろ

超準解析での(ふつうの関数のふつうの)微分、超関数微分をどの程度含んでいるのでしょうか。まだそこまで進みきっていないのですが、超準解析での関数は(一部?)超関数を含む、みたいなのを見かけた記憶があるので。

任意のSchwartz超関数がある超準的なC^∞関数(の積分作用素)で表せるという意味で,Schwartz超関数はぜんぶ含んでいます.普通の微分と超関数微分は「up to 積分」で一致する. あとColombeauの超関数環も超準的なC^∞関数(の同値類)として実現できる.その意味でColombeau超関数も含んでいる.

コロンボーの超関数を使って非線型偏微分方程式, 特にアインシュタイン方程式を考えるとかいう本があり, 非常に気になっています. 本をパラっと読んだだけであまり身についていないのですが, ネットで位相を定義していて, なかなかえげつない空間が出てきたのは覚えています.

超準解析も止めたままなので復活させたいところですが.

「全ての概念はKan拡張である」ペーパーバック化

特に圏論で有名で, 知っている人は知っているalg-d兄貴のサイトのPDFがペーパーバック化しました. 全部まとまって参照も丁寧になったそうで, これこそPDFでほしいですね. 有料でいいので.

「日本で少子化対策はなぜ失敗したのか」

Twitterで見かけて面白い記述があったPDfです. P.7から記述を一つ抜き出しておきます.

  • 日本における従来の調査、分析、政策提言の二つの問題点
    1. 欧米に固有の慣習や価値意識を、日本に当てはまるものとして前提にしたこと。
    2. 日本人に特徴的な慣習、価値意識を考慮しないこと。

いろいろなところに応用できる・すべき考え方なのでしょう. 数学には数学のお作法があり, 物理には物理のお作法があります. さらにプログラミングでも言語ごとのお作法があります. それぞれのお作法をきちんと考えないとやはり適切な形で勉強・実践できません.

紆余曲折あっていまJuliaをぶっちぎりでCommon Lispを勉強しています. やはりマクロをきちんと勉強しないといけないのだろうとか, いろいろな気分があります. ただディスパッチ関連でCommon Lisp・ClojureとJuliaに共通のお作法があるようで, そういう部分は非常に勉強になっています.

WindowsのEmacsとJuliaのelispの相性が悪いようで, vscodeでJuliaを書いた方がJuliaを書く上では遥かに便利です. EmacsとCommon Lisp・Clojureの相性がよく, 当面これらに浮気しているような部分もあります.

上で書いたお作法的にJuliaはvscodeで書く方がよいのだろうといったことなども思うPDFでした. きちんとマッチする道具を使うべきなのでしょう. 単純に広義文章を書くエディタとしてEmacsを手になじませすぎたので, vscodeでプログラムを書いて気持ちよくないです. 慣れればいいだろうと思いつつ, その腰が重くなっています.

量子力学10講 補足ノート

以前少し紹介した谷村省吾さんの本に関して補足ノートが出ました. きちんと読み切れていないのですが, 自分用のメモも兼ねて紹介しておきます.

知らないふりゲーム

よく私は「知らないふりゲーム」と言っていますが、最近勉強している代数や初等整数論では今まで「数」だとか「演算」だとか素朴に考えてきたものを一旦取っ払う必要性があり、ここが結構大学数学を学ぶうえで初学者がしんどいところなんじゃないかと思っています. 例えば群論では、初歩的な定理として「単位元の一意性」がありますが、群の定義を学ぶ段階で「単位元は掛け算でいう1のようなもの」といった理解だけでは、証明で「その"1のようなもの"が2つ以上ある」と仮定するのすらも結構頭がこんがらがるんです(私だけかもですが). 必ずどこかで今まで慣れ親しんできた概念から離れてより抽象化する必要があり、それが「知らないふりゲーム」と言っているところのお気持ちです. 最小限の公理から整数の性質を示していく初等整数論も同様. (d|m, m|n⇒d|nとか直感的には当たり前だが、示すとなるときちんと定義に沿わなければならない)

これとはまた少し違うものの, 次のような工夫も大事です.

  • よくわからないこともとりあえず認めて先に進む.
  • 具体例をたくさん知る・作る.
  • たくさん具体的な計算をする.

後ろ二つは幾何で日々実感しています. 私が幾何で苦しんでいる理由がまさに後ろ二者です.

熱力学学習への感想

以前も紹介したような気がしますが, 大事な内容なので改めて紹介します.

熱力学の難しさの一端は、他で鍛えて来た微分方程式の議論が全く使えないところにもある。極論、計算で議論が組めないと言ってもいいのだろう。あくまで物理、自然科学なので論理というわけでもなく、よくわからないが何故かそう、という経験事実に依拠しなければいけない。続 もちろん、力学でも何でも何故かこの現象はこの方程式に従う、という経験事実とそれに対する諦めはあったとはいえ、いわば数学的な装いと難しさに押されて物理に向き合いづらかったともいえるのだろう。物理の勉強なのか数学の勉強なのかいい意味でわかりづらかった。 その一方、熱力学は数学的なハードルがもはやかなり低くなっていて、直接的に物理に向き合えるし、向きわざるを得なくもなる。しかも使い慣れた数学的道具も使えない。その辺の巨大なギャップが厳しいとは思う。 あと、熱力学の数学的厳しさでよく聞くのが記号的にもわけのわからない偏微分の計算とかいう単純な記号運用上の話だったりするし、教科書書く人間はやる気あるのかとはよく思う。その非本質的な部分で悩む人が多く、過去自分もそうだったといっておきながら再生産する者がいる度し難さは許しがたい。

今年のノーベル賞に関連してパリージの場の理論の本がよいという話が出ていました. 目次を眺めたらイジングや統計力学と関係する話がたくさん盛り込まれているようで, 非常に面白そうな本です. 量子力学と合わせて, 熱力学・統計力学も改めて勉強し直したい分野です.

ちなみに原・田崎のイジング本も査読に参加して本に名前に載せてもらったくらい読み込んだものの, まだまだ血肉になっているとは言い難いです. これもパリージの場の理論の本と関係ある議論ですし, 再挑戦したい本です.

アンケートへのコメント

  • 数学史から入るやり方には関心があり、高瀬正仁氏の本を読んでみようと思います
  • 圧倒的偉人たちの列伝みたいな数学史はそれはそれで面白いですが、そういう過去の蓄積の上で現在があるということが地味に理解できるような本も読んでみたい

「今では一般化・抽象化されきって捉えどころのない概念も, 明確なモチベーションと具体例のもとに生まれていて, 発見当初の議論の方がわかりやすいことも多いのです. そしてその概念にどんな意義があるのか, 何を見えるようにしたのかは歴史を通じてようやくわかるからです.」 →この「具体例」に出会えるかどうかも運なのかなと思います。昨今どうしてもインターネットの構造やそこでの活動、デジタルなデータなどに目が行きがちですが、個人的にはそれだけでなく、もっと自然を観察したり人と話したりしたいという気持ちもあります

このページにも語学メルマガの内容を載せています. これは語学のある側面から数学・物理・プログラミング, 少なくともそれと共通する思考を身につけられないかと思って取り組んでいる内容です. プログラミングの勉強をしていると, 特に人によって何を楽しいと思うかが違うことを実感します. プログラミングでは「何か作るといい」とは言うものの, 私は何かアプリケーションを作るのには興味が持てません. ゲーム作成などもよくあるシューティングゲームなどにはそこまで興味が持てません. しかし数学・物理関連ならいくらでも遊べます. プログラミングはプログラミングは言語の話題なので, そうした視点からも何か遊べないかとのたうち回っています.

具体例で遊ぼう

量子力学のための線型代数とリー環系をいま整備しています. 線型代数, 特に二次正方行列は連立一次方程式から入れるので, 中学数学から無理やり突撃する対象として最近注目しています. 量子情報と関わる議論や堀田量子系の最近の量子力学でも二次正方行列で基本的な手法が身につけられますし, テンソル積としての四次正方行列まで行けばベルの不等式に挑めます.

幾何との絡みでリー群とその具体的な計算をゴリゴリ進めていました. そこで改めてリー環と合わせて勉強しています. 二次正方行列には複素数も埋め込まれていれば, 四元数も埋め込めます. さらに計算中心にリー群・リー環の面白い議論にも進めるので, 改めて勉強しつつ, 二次正方行列で遊び倒す・計算し倒す演習系コンテンツを整備しています. 年末・年始, そして来年の目標作りにもしてもらうべく, リリースの準備を急ピッチで進めています. 私自身の来年への布石でもあります.

最近リー群・リー環を勉強していて, 指数・対数の行列に関わる議論も割と面倒, もしくは面白い話題がたくさんあることを改めて気付いています. 例えば行列レベルで$\exp \circ \log A = A$を証明するのは割と面倒です. 特にテイラー展開で行列の指数・対数関数を定義したとき, この関係式を証明するにはある程度計算力が必要です. 実際にリー群の本を読んでいたら, これを実変数の関係式に帰着させて証明していました. それだと気に食わないので改めて級数展開と組み合わせでがんばって証明しようと思っています. これも計算系コンテンツに盛り込みたいところ. 計算系のコンテンツはもっと充実させたいですね.

計算と言えばプログラミングとのセットが重要です. JuliaまたはPythonでちょろっと計算させています. SymPyで厳密な計算また文字計算ができ, これが非常に役に立っています. 特に三次行列程度でもかなり面倒です. リー環をやっていると, もとが2-3次でも6-8次程度の行列も出てきてしまうので, プログラムを書いて計算させるご利益が増します.

数値計算的なところは機械学習などでいろいろなコンテンツがあります. しかし比較的低次で, リー群・リー環などと数式処理的なプログラミングと絡めたコンテンツはあまり見かけない (少なくともこの分野の素人である私には簡単に見つけられない)ため, がんばって自作しています.

先月程度まで一所懸命やっていたClojureでのsicmutilsは行列計算もあるようなので, マクロなどLisp系の学習も兼ねていっそもっとこれに注力する手もあるなと思っています. やりたいことがあまりにも多いです. 逆にやりたいことが多すぎて迷走しているくらいなので, もっと一点集中すべきな気もします.

今回の宿題

改めて問題演習系コンテンツを作ろうと思っているので, 試しにメルマガでも宿題を出してみます. 位相空間論の問題です. 要望が多ければ次回解答をつけるので, 興味があればぜひアンケートなり何なりで要望を挙げてください.

連続写像$f \colon X \to Y$と$X$のコンパクト集合$K_X$を取ります. 位相空間の一般論によって$f(K_X)$はコンパクトです. 逆に$K_Y \subset Y$がコンパクトなとき, $f^{-1}(K_Y)$はコンパクトでしょうか? 正しければ証明を, 間違っていれば反例を挙げてください.

このくらいの内容であっても, 位相空間論を勉強したてだと全くわからない人もいるでしょう. 一般論や命題の証明を考えるときにも具体例をさっと思いつけるかはとても大事ですし, そもそも一般論を理解する上でも適切な具体例の構成が重要です. その定理の典型的なカバー対象という概念さえあります. この辺もカバーするコンテンツが必要ですね.

語学 ポケモンと言語学/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

ここ最近メルマガも出せていませんでしたが, いろいろあって勉強会もありませんでした.

  • ポケモンと言語学
  • ドイツ語で遊ぼう
  • フランス語で遊ぼう

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  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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ポケモンと言語学

まだ読み切れていないのですが, 面白そうな文献が紹介されていたので紹介しておきます.

『ポケモンの名付けにおける母音と有声阻害音の効果』という最高の論文を見つけてしまった。

ドイツ語で遊ぼう

以前書いたか忘れたので念のため書いておくと, この単語はドイツ語の頻度辞書の順番で書いています. 代名詞などいまの私にとって突っ込みづらい単語は省いています.

als

Wiktionaryによると古高ドイツ語also, alsō (as, like)に由来します. 英語のasもいろいろな用法があるようにドイツ語でもいろいろ意味・用法があります. when, while, asのようなところから, then, like (as), as if, butのような意味まであります.

wie

副詞としてhow, 接続詞としてasのような意味がある単語です.

基本的にドイツ語の方が古いので, 何故wieがhowになるかという話があります. まずWiktionaryによるとwieは中高ドイツ語wieに由来します. 他には二つの相互に関係がある形の単語への由来もあります. 一つは古高ドイツ語hwio, さらに古い形のhwēo, そしてゲルマン祖語の*hwaiwaです. もう一つは古高ドイツ語hwē, hwie, ゲルマン祖語*hwēです. 後者はゲルマン祖語*hwīの変種で, 英語のwhyやさらに古い具格の*hwaz, *hwat ("who, what")に由来します.

これを見るとわかる通り, wieはhwの単語に由来します. 英語でもwhatを「ホワット」のように最初にhの発音がある場合があります. なぜhがあるかと言えば上のような古い形がhwだからです. スペルが変わったにも関わらず発音に古い形が残っている面白い単語, または単語の系列です.

私達理工系は文献読解が主でスピーキングや発音を軽視しがちですが, 決して発音を馬鹿にしてはいけません. 発音にも理解のためのいろいろな鍵や歴史が潜んでいるからです. 実際wh-cluster reductionという現象があると聞いています.

フランス語で遊ぼう

rendre

基本的な意味の「返す・戻す」以外では直接目的語に置かれた人を形容詞の状態にする使い方で, 英語での第五文型のような使い方です. この用法ではよくモノが主語になります.

  • Cette histoire la rendra heureuse.

代名動詞のse rendreの意味は「---へ向かう・赴く」です.

Wiktionaryによると古フランス語rendre, 俗ラテン語*rendō, ラテン語reddōに由来します. ラテン語reddoはre-+dō ("give", donner)に分解できます. このdonnerはもちろん英語のドナーと同根です. フランス語, そして背後にあるラテン語を少し掘ると英語に出くわします. このチャンポン言語としての英語を知っておくと, それだけでも知識が広がります.

何度も言っているように, もしあなたが英語にしか興味がなくても, こうした基本単語だけでも多言語に触れておくと英語の勉強にもなります. ぜひあなた自身でもたくさん遊び倒してください. そして面白い知識や本などあればぜひ教えてください.

2021-11-13

数学・物理 微分幾何プログラムは一段落?/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 整数からの実数の構成
  • Function Differential Geometryとsicmutils
  • 量子力学の基礎

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整数からの実数の構成

以前紹介したかもしれませんが再びツイートを見かけたので再紹介します. 前回きちんと読み込んで内容を紹介しようと思っていたものの, 時間が取れませんでした.

前も紹介したけど、数学科の学生に実数の構成を教える際にオススメの流儀の一つがこの方法。 なんと、有理数を経由せずに整数からいきなり実数を構成できる。

[math/0301015] A natural construction for the real numbers

有理数から距離を使って実数を構成するのが現在標準的な方法だが、それと同じく同値関係は用いるので、同値関係に習熟している必要はある。

Function Differential Geometryとsicmutils

ここしばらくsicmutilsを使ったFunctional Differential Geometryの実装確認を進めていて, ようやく一段落しました. 残課題はまだあってしかもSussmanへの問い合わせが必要でさえあるようです. とはいえテストがなかったChapter 10-11にもテストが入りました.

まだプログラムを追いかけただけで, これから本の中身は全く追いかけられていません. それでもまずはテストを読んで実装, 特にClojureのお作法を改めて確認するのが先決です.

これが終わったらいい加減アルゴリズムの勉強に戻ります. この数ヶ月でかなりLisp系の言語の読み書きに大分慣れました. せっかくなのでもう少し詰めたいですね. アルゴリズムもHaskellと並行してClojureでも書いてみようと思っています.

もともとsicmutilsはSICPの古典力学版でもある(らしい)SICM用のライブラリなので, いっそSICM読んでみるのもありなのかもしれません.

量子力学の基礎

現代数学探険隊では構成上, 線型代数の基本的な議論が散在しているため, それをきちんとまとめた章を作ろうとは前から思っています. 最近は量子力学でも有限次元の量子力学, 特に量子情報・量子測定的な議論が非常に重要になっているそうなので, それと絡めて私自身再勉強しつつ整理し直す方向で進めています.

これもやはりプログラミング利用の計算もセットにしたいと思っていて, 検算も兼ねてちょこちょことJuliaでのプログラムも作っています.

まだ量子情報の面白さが何もわかっていません. 一方で量子測定は前から非常に興味があり, かつ面白いです. これは小澤正直さんの文献があり, すぐに「数学」の話に持っていけるからなのだろうと考えています. 量子情報だと情報の話の比重が重過ぎて「早く数学(線型代数)に入れ」と思っているような気がします. もっと言えば情報理論の面白さもわかっていないのでしょう.

とはいえ, 量子力学・物理からしても量子情報は根源的に大事という話になっているそうですし, 歯を喰いしばって勉強を進めています. コンテンツ整備も兼ねてNielsen-Chuangの解答を作るために読み進める体で, Nielsen-Chuangを読んでいます. 演習問題を見ているとこれもきちんと具体的な計算が必要だ, と思うところがよく出てくるので, それらも計算問題として自分のメモに突っ込んでいます.

ちなみに量子情報では抽象的なテンソル積が本質的に重要です. 量子情報としてはディラックのブラケット記法で吸収できてしまう面があるとはいえ, 「テンソルなんて相対論系の添字だけ計算するスタイルでやれればいい」といった態度がもはや通じなくなっているのは時代の変化を感じます.

ついでに言えば古典情報理論はなかなかすさまじく, 有限体$\mathbb{F}_2$上の線型空間も出てきます. 量子情報の比較対象として有限体上の線型空間の議論も必要なので, 数学サイドとしては線型代数の抽象論の導入に使えるネタが増えて便利な世の中になっているように思います.

符号理論は現代数学観光ツアーで一つ節を割いてコンテンツを作っているので, 興味があれば読んでみてください.

有限体上では実数・複素数のような形では内積・ノルムが定義できません. しかし情報理論的に自然な意味を持つ距離としてハミング距離が定義できます. これも符号理論の面白いところです.

符号理論と言えば代数幾何が応用される分野としても有名です. 量子暗号と比較する対象として古典暗号があり, ここでも代数幾何・数論が出てくるため, 純粋な数学・暴力的な量の計算・プログラミングでの実現などいろいろな分野が交錯します. 量子情報と言われるとまだ面白さは見えず, 単に情報理論と言われても同じであるものの, 自分が興味関心を持てる点も見えているので, これを上手く絡めてコンテンツを作れないかはずっと考えています.

語学 英語学習と数学・物理・プログラミング/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

今週は勉強会がありませんでした. プログラミング関係の現実的な要請もあり, ここ最近は英作文・スピーキング・音読練習をがんばっていて, 他の言語の探求がだいぶ疎かになっています. せめてここくらいは何とかしようと思ってやっています.

どうせならやろうと思いつつ全くできていないロシア語・中国語・アラビア語あたりをやった方がいいかとも思っています. どれも広い意味で理工系ネタで遊ぶなら大事な言語だと思っています. アラビア語はアラビア文字自体も勉強しないといけません. やりたいことは山程あるのですが, まずはサボり倒していた英語をもっとやらないといけない感じが出てきたので, しばらく英語をがんばります.

  • ドイツ語で遊ぼう
  • フランス語で遊ぼう
  • 英語学習と数学・物理

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ドイツ語で遊ぼう

基本的に語源や関連語はWiktionaryとDWDSで調べています.

mit

これは前置詞で意味としては英語のwithにあたり, 英語のmidと同根です. 「生徒たちと(議論する)」のように相手を表す他, 「バスで(行く)」のように「手段」を表す用法もあります.

もちろん英語のmidは「真ん中」のような意味です. 手段の意味は媒介物としての「真ん中」なのでしょうし, 相手の意味の用法は自分と相手で一体という意味なのでしょう.

ちなみにwithはwithは印欧祖語・ゲルマン祖語から来ている言葉で, ドイツ語内部でもwider (against), wieder (again)と関係があります. 中英語でoppositionからassociationに意味が変わり, これがゲルマン語の古い形に由来するmidを置き換えたようです. 確かに古い形を残すドイツ語ではwiderがagainstの意味で, 本当にoppositionの意味が残っています.

調べてもまだピンと来ていないものの, againとagainstの違いがよくわかっておらず, もう少し突っ込んで調べたいと思っています. ちなみにWiktionaryいわく, この-stはamong->amongst, mid->midst, while->whilstの-stと同じ-stのようです.

auch

これは英語のalso, tooにあたる副詞です. これもゲルマン祖語に由来する単語で, オランダ語やルクセンブルク語, スウェーデン語, アイスランド語などにも同根の単語があります.

古い英語でもekeという単語があり, これと同根のようです. chとkの類似は見えます. やはり古い英語を追いかけるとドイツ語と英語の共通点が見えます. ちなみにドイツ語でのalsoはso, thusといった意味があります.

können

これは助動詞で英語でいうcanです. ゲルマン祖語・印欧祖語に由来する言葉で, 印欧祖語の*ǵneh₃-はknowにあたる言葉とのこと.

知ることとできること, 可能性がつながるというのも示唆的です. フランス語で「知る」にあたる単語はsavoirとconnaîtreがあります. 後者はいわゆるコネです. 意味・用法の違いにはついてはいろいろなところに解説があり, 例えばここを見てください. またconnaîtreはcognitionなどの語源であるラテン語cognōscereに由来します. さらにsavoirは「学んで身につけている」という意味での「できる」の意味・用法があり, pouvoirとの使い分けが基本的で重要でこれもいろいろなところに書いてあります. 例えばここを見てください.

さてkönnenに戻りましょう. 印欧祖語でgneとあるところで思い出してほしいのが, キリスト教の宗教関係の言葉であり, ゲームなどでも良く出てくるグノーシスです. これはギリシャ語で「知識, 認識」といった意味があります. ギリシャ語にもはねる面白い言葉で, 印欧祖語はもっと掘りたいとずっと思っていて, そもそもどこからどう攻めればいいかわかっていない領域です.

フランス語で遊ぼう

donner

この単語の基本的な意味は「与える」です. 英語または日本語の「ドナー」を考えればすぐに覚えられるでしょう.

英語のgiveまたは日本語の「与える」から想像されるように, シンプルに「モノを与える」意味もあれば, «Il donne l'impression d'être fatigué.»で「疲れている印象を与える->彼は疲れているようだ」のような表現もあります. 前置詞surと一緒に使うと「---に面している」という意味になります.

  • Ma chambre donne sur la mer.

このsurはsurfaceなどのsurでsuperとつながる意味があります.

英語学習と数学・物理・プログラミング

数学・物理系メルマガでも書いたように, プログラミングに関するやりとりであってごく限定的ではあるものの, やはりもっと流暢に英語を使えるようにならないと時間がかかって仕方ない状況が本当に出てきました.

中学レベルの一般的な英作文・スピーキングの勉強もしていましたが, いったんそれよりも量子力学基礎の勉強も兼ねて, 量子情報・量子測定系の文献を和訳・英訳で例文を作って進めています. 日本語の文章が長いとさっと作文・スピーキングできないので, もとにした日本語・英語自体も短めに書き直しつつ, 読んでいる本の翻訳の体で例文集を作っています.

中学レベルの一般的な短い文, 理工系の完全に型にはまった文の両方が口をついて出るようにするのが当面の目標です. 多少時間をかけてよければ英作文では困りません. しかし即出るかどうかが大事でこれがいまの課題です.

2021-11-06

数学・物理 プログラミングと数学で語学は大事だった/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • アンケートへの回答: ヤコビアンとは何か
  • 位相群の定義
  • 数学における「自明」の意味
  • ベルの不等式とエンタングルメント
  • 定理・定義・理論の類似と近さ概念
  • 関数空間
  • sicmutilsでバグ発見に貢献

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アンケートへの回答: ヤコビアンとは何か

現代数学観光ツアーへの衝撃のコメントがあったので回答します.

辞書を引いたりしたがヤコビアンが何なのかがいまいちわからない。

もちろん岩波数学入門辞典などもあるとはいえ, ふつうの人が「辞書」と言ってこれらの数学辞書を指すとも思えません. ふつうの辞書は数学用語を調べるためには出来ていないので意味がありません. よく間違いが多いと言われはしますが, まだWikipediaの方が役に立つでしょう.

よく言われる中で一番直観的なのは変数変換での体積の変化比で, 上記Wikipediaにも書いてあります. ただ, これにしても具体的な座標変換で計算してみて実感しないとピンと来ないはずです. 二次元でも十分で, もっと言えば一次元でもいいとはいえ, 何をどう具体的に計算すればその気分が掴めるかは人によります. 何がピンと来る例になってくれるかが人によるとも言えます. もっと言えばある例が適切な例であることを認識するために一定の「レベル」が必要です.

何にせよ, 数学用語を(ふつうの)辞書で調べても意味はないのでやめましょう. あくまで数学の概念なので数学の本または数学辞典で確認すべきです. 数学辞典ならともかく, どの分野のどんな本に定義が書いてあるかわからないこともあるでしょう. 現代数学探険隊は一冊の「本」にいろいろな分野を詰め込んだため, 作っているうちにそうした辞書的な使い方もできると気付いたので, 案内ページにも書いてあります. 安くないので簡単にはお勧めできないのが難点ですが.

こういうのも言わないと通じないらしいというのが今回の衝撃ポイントでした.

位相群の定義

言われてみればという感じで気付いていなかったので, 自分用の備忘録も兼ねてTwitterのやりとりを引用します.

なんかめちゃくちゃ混乱してきた。逆に完全不連結なものも位相群と呼んだら、位相群でない群ってなに?という気がしてきますね。(群であり位相構造の入らないもの)

付加構造の考え方で混乱しているかもしれませんね。

厳密には ・位相空間は「位相の入る集合」ではなく「集合と開集合系の順序対」 ・群は「群演算の入る集合」ではなく「集合と群演算の順序対」 と定義されるのと同様に、 ・位相群は「位相の入る群」ではなく「群と位相の順序対」 と定義されます。 なので群は(群と位相の順序対でないので)位相群ではありませんし、位相群も厳密には群ではないです。ただ ・直線Rとその加法+の組(R,+) ・(R,+)とユークリッド位相τの組((R,+),τ) を全部Rと略記するのと同様に、位相群(G,O)も第1成分である群Gと同一視することで位相群を群とみなします。 こうやって「位相群を群とみなす」のは第1成分を取り出す(第2成分を忘却する)だけなのであまり問題が置きないのですが、逆向き(群を位相群とみなす)はみなし方を固定するごとにしか意味を持たず、それをしないと「群はいつ位相群か?」という問いが意味を持たない感じです。

数学における「自明」の意味

参考になる人もいるでしょうからシェアしておきます.

ベルの不等式とエンタングルメント

いままさに勉強中のところでよくわかっていないところだったのでメモ・シェアです. わかっている人にはいまさらなのでしょう.

このあたり, 私はまだ理解しきれておらず今まさに再勉強中です.

メインツリー

ベルの不等式(の破れ)の理論とエンタングルメント、基本的に別の話なのは、勉強している人には常識で、ちょっと言葉だけ知ってる勢は弁別してない。 一般向けの本で「エンタングルメントの発見!」とか大字が踊ってて、中を見るとベルの不等式の話でした。。。というのはありがち 物理学者でも、結構この辺はてきとうだったりする。ベルの不等式破らないエンタングル状態もあるけど、そういうのは両者の定義が同じだったら、起こり得ないよね。 例えば、アインシュタインはエンタングルメントを!っていうのはきっとEPRの思考実験のことだろうけど、あれに繋がるのはベルの不等式の破れの方だと思う。。。 シュレーディンガーはエンタングルメントという言葉を使ってた!というのはきっと正しいんでしょうけど、言葉が同じだからなに?という感想。 もちろん、(Efの意味での)エンタングルメントがないとベルの不等式は破れない。直感的にも見るからに関係ありそう。なので、両者をどう関係づけようか皆考えているが、悩ましい話題だということ。 例えば、抽出エンタングルメントがゼロだけれども、ベルの不等式を最大限破る状態もあります。

補足

エンタングルしててもベルの不等式破れるとは限らないけど、ベルの不等式破れるにはエンタングルしてないといけない(んだったよね?) はい。それはおっしゃる通りです。ですから、両者に何か関係があるとは皆思うわけですが、部分的な成果はあるけれど、悩ましい問題として残っています。 そもそも、ベルの不等式は量子力学すら仮定していませんから、理論の作りが全然違って、両者の理論はかなり異質です。

定理・定義・理論の類似と近さ概念

Twitterで絡んだような形になってしまって申し訳なかったのですが, 面白かったのでシェアします.

大元のツイート

ルベーグ積分って何をもって理解したと言っていいのかわからん。具体的な計算はリーマン積分を使うはずなので、関数空間とかを決めて測度論的な議論、証明に使えれば最低限の理解と言っていいのかな?

最低限は、とりあえずは用語に怯えずに、積分はリーマンで計算するのと同じ、測度は体積、と思って論文を読み進めることができること。。じゃないですかねー その次は、フビニの定理の主張を理解すること(証明はともかく) その次が、ルベーグの優収束定理とその前後を押さえること。できるかぎり証明含めて。(実解析に限ると、リーマン積分よりそんな主張が強くなるわけではないが、どうせ忘れてる人が多いとおもう。。。)

私の反応とやり取り

数学だと実解析はバリバリにルベーグ前提で議論する分野だと思うので数学人と違う言葉遣いをしていそうな雰囲気を感じる。

そりゃそうでしょ。ここで指摘したのは、リーマン積分でもほぼルベーグの収束定理に近い定理がなりたつし、教養レベルの教科書にも書いてあるということ。

「ほぼ近い」で指す内容が全く噛み合わないミスコミュニケーションが起きている、という感想です。 類似の定理と言われればそれはそう、と思うが、近くはないのでは?という言語感覚がある。

工学などへの応用が念頭にあるので、関数はリーマン積分可能かつルベーグ積分可能な関数に制限し、測度はルベーグ測度で、測度ゼロの点については良きにはからえ、ということで。 類似かどうかは、そういう局面での極限の入れ替えをするにあたって、より強力な技を供給してくれるか、という視点です。

数学での事例・ツリー

緩募 類似の定理・定義・概念だが近くはないモノ。なかなか伝わらなさそうだが例:フォンノイマン環上の正規状態に対して単調収束定理が成り立つ(実際は正規状態の定義、非可換積分論)だが、普通のルベーグ積分と近いか?と言われるとそういう話ではない気分。 もう一つの例:非可換幾何。可換C^環に対してコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環が存在する。非可換なC^環に対しても類似の議論をすることで「非可換な空間」を構成・想定する。類似の議論ではあるが「近い」が何をどう指すのかがそもそもわからない。 ABC予想の多項式類似があったか。類似だがあまり近くはないのではと思うが、数論勢はどう思うのだろうか。

ABC予想に限らず、数論だと数と(特に有限体上の)多項式の類似性をもとに様々な対象がしばしば研究されていますが、似てたり似てなかったりするので(だから面白いわけですが)、近いかと言われると微妙です

この類似と遠近感、多分他の分野にもあってそこが擦り合わないのは常にコミュケーションの障害なのだろう感があります。極端にいえば物理的正当化はともかく古典力学と量子力学は正準交換関係の点で類似といえば類似の構造を持つものの似ているかといえば全然似ていない判定でしょう。 数学でもこれに触発された非可換化・量子化は適当な(それもある程度広範な)分野でよく話題になっていると思いますし、q類似のようにまさに類似という言葉も使いますが、近いかというとそうではなく、類似なのに遠いのが面白ポイントでさえあると思っています。

関数空間

ひどい勘違いをしてはじめ解析関数を含む集合をピックアップしてしまいました. 注意して読んでください. 鍵アカウントとのやりとりなので適当に抜粋します.

実解析的関数に含まれる面白い部分空間は何かあるか? $L^p$はどうなのか?

まずは連続関数環があります。非コンパクト集合上では実解析的でも有界(特に可積分)とは限らないので、必ずしもL^pは含みません。コンパクト集合上(またはそこへの制限)なら連続関数の有界性と有界収束定理によって可積分でL^pを含みます。 「含みます」ではなく「$L^p$に含まれます」でした。

コンパクト集合上だと実解析的なら連続で連続なら$L^p$?

そうです。正確にはコンパクト集合上の連続関数は有界かつルベーグ可測で、これと有界収束定理によって可積分性が出ます。可測かつ有界なことから$L^\infty$なことがわかり、有界(ルベーグ測度有限な)集合上で$1 \leq p<q$なら$L^q \subset L^p$も別途示せて、特に$L^\infty \subset L^p$です。

ちなみに非有界(ルベーグ測度無限大)な集合上で$L^p$と$L^q$に共通部分はあっても包含はありません。共通部分としてはコンパクト台の連続関数などがあります。この事情は幾何でコホモロジーにもはねます。リーマン幾何・調和積分論でコンパクト性(閉多様体)を仮定するのは、積分によるペアリングで可積分性と微分可能性がうまくマッチするからです。非コンパクトだと一般に可積分な微分形式を別に考える必要が出て来ます。(もちろんドラコホやるだけでも究極的には楕円型偏微分方程式の処理で関数解析・ソボレフがバリバリ必要ですが)

あと、同じ事情で解析関数は局所可積分ではあります。局所可積分性は関数をシュワルツ超関数と見なすときに大事な要件で、これはこれでそれなりの発展性があります。 考えてみれば可積分な正則関数はヘルマンダーのディーバーで基本的な対象なので、実ではなく複素になってしまうものの、解析性(微分可能性)と可積分性の食い違いは関数解析とその応用での一つの大きなテーマだと思います。

sicmutilsでバグ発見に貢献

先日からsicmutilsなど数学・物理系プログラミングに本腰を入れはじめました. ドキュメントが足りない(らしい)というのもあって, 質問に非常に親切に答えてもらえていて質問を続けていたらついでにバグも踏んでいたようです.

本のプログラミング部分を全部通せたら, 新ためてFunctional Differential Geometryのテストも読みつつ, GitHubにコードを上げる予定です. 自分のリポジトリに上げるよりも, 少しがんばってsicmutils本体のテストコードにコントリビュートしたいとも思ってはいます.

これをやっていて, やはり数学・物理・プログラミングまわりならライティングが割とできると改めて実感しました. もちろんまだまだ力が足りていません. 語学メルマガもやっているように, 理系のための語学, さらにはせめて数学・物理・プログラミング用の語学コンテンツは整備しなければと思っていたところです. ちょうどいいタイミングだと思い, 本格的にライティング・スピーキングの勉強をはじめました.

最近は量子力学基礎論, または量子情報・量子測定系の勉強もはじめたので, これの洋書や論文・プレプリントを自分で翻訳して, そこから逆に元の文章を復元するといった形の自分用コンテンツを整備しています. 必ずしもゴリゴリの一かたまりの論文を書かなければいけないわけでもないので, DeepLなども使いつつ, 和訳した上でさらに英語に再翻訳し, 意味を損なわずにシンプルに書き直し, 日本語に再翻訳してさらに調整して, といった形で自分でもさっと書けて話せる英文を作っています. 毎週やっている英語の勉強会には本当に翻訳をやっている人も参加してくれているので, そこでも取り上げてブラッシュアップしようかとも思っています. ついでに量子情報・量子力学の勉強会という名の私のさらなる学習機会も作れそうで, 楽しみです.

幾何やその他やりたい物理・数学の勉強に手が回らなくなっているものの, 堀田量子以来量子力学の再勉強がテーマになっているため, いまは量子力学系の勉強と語学に集中するべきなのだろうと思い, その方向に切り替えています. 木村太郎さんのランダム行列の深掘りも気になっていますし, 線型代数のコンテンツの再編集もあります.

語学 キッズ向け科学雑誌の英語が面白い上に役に立つ/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 第41回 第20文の多言語比較, 英・独文読解 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会 https://youtu.be/_LyX5KiS63U
  • キッズ向け科学雑誌の英語が面白い上に役に立つ
  • ライティング・スピーキング修行開始
  • ドイツ語で遊ぼう
  • フランス語で遊ぼう

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キッズ向け科学雑誌の英語が面白い上に役に立つ

勉強会として科学雑誌を読む会を開催してナショジオキッズの英文を読んでいます. 日本語の感覚で考えればわかるように, 「大学受験英語」の感覚からは恐ろしく難しい単語であってもさらっと出てきて驚くこともあれば, 読めば読むほど英語らしい面白い表現がたくさん出てくることもあり, 勉強になる上に楽しいです.

中高生向け, 特に中学生用のコンテンツとしては難しすぎるとは思う一方, 程々の長さなので理系高校生向けのコンテンツとしてはかなりよさそうです. 読むのもさることながら, やはりライティングに使いたい文がたくさんあります. 次のテーマ, ライティング・スピーキング修行では多様な文に触れるために日常系の文章が散りばめられた本で勉強しています. あえて選んでいるからとはいえ, どうしても面白くなくてつらい部分があります. その一方, 勉強会の形で一人の孤独さを解消しつつ読んでいることもあり, 科学雑誌の文章はかなり楽しく取り組めます.

勉強会でいろいろ聞いたり確認したりしつつ進めていることによる部分も強そうで, 勉強会・セミナー方式の利点を改めて実感しています.

ライティング・スピーキング修行開始

数学・物理系メルマガでも書いたように, プログラミングを本格化したため, そのやり取りで英語ライティングが必要な局面が本格的に出てきました. どちらにしろコンテンツは作らないといけない上, さらに鍛えないといけない部分でもあるため修行を再開しました.

ここで作った英作文コンテンツも適当なタイミングで勉強会投入しようとも思っています. 私自身非常に楽しみです.

ドイツ語で遊ぼう

werden

Wiktionaryを見るとゲルマン語の古い形をそのまま残した形のようで, 対応する英語は廃れてしまっているため英語からの感覚だとすぐにはわからない単語です. ただラテン語のvertere (to turn)と同根のようです. ここでverto, そしてDerived termsを見ると, adverto, convert, pervert, versionという形で英単語と関係することがわかります.

私が教わっている言語学者いわく, ドイツ語はがんばって掘っていけばゲルマン語の名残りを残す英単語の何かと必ずぶつかるそうなので, その英単語を探りたいと思って幾星霜. 「ドイツ語語源小辞典」や「スタンダード英語語源辞典」がドイツ語語源探索にいいとずっと言われていますし, 買って地道に調べるべきであるところ, ずっとさぼっています.

それはそれとしてドイツ語のwerdenをもう少し掘りましょう. これは非常に不思議な単語です. 本動詞としてはbecomeにあたる意味を持ちつつ, 未来表現の助動詞や受身の助動詞としても使えます. WiktionaryでもDWDSにFurther readingのリンクがあります. ただこれは完全ドイツ語のサイトなのでなかなか読めません.

最近ようやく無理やり機械翻訳してでも概要を掴むという割り切りを受け入れました. 今後は多言語学習に機械翻訳もうまく取り入れるべきなのだろうと思っています. 私が把握できているのはヨーロッパ, それも西欧系の言語のごく一部です. 多少なりとも多言語・文化をまたいでその最奥を覗きたいと思うなら, 機械翻訳をうまく活用できるパワーが必要で, その知見も貯めないといけないのでしょう. やるべきことは山ほどあります.

フランス語で遊ぼう

続mettre

勉強会のときに改めてラテン語ページを見る機会がありました. そのときミサイルにつながるmissilis, permitにつながるprētermittō, commit, omit promise, submit, transmitなどもDerived termsにあり, 思った以上に世界が見えていないことに気付きました. 楽しいですね.

servir

もちろん英語のserveにあたります. 大きく見れば意味も同じで「仕える・給餌する・役立つ」といった意味があります.

特に人や国, 職務に仕える・奉仕することがもともとの意味で, 他動詞としてservir sa partie (祖国に尽くす), servir Dieu (神に仕える)という表現があります. しかし日常で一番使われるのは「給仕する」, つまり食べ物や飲み物を出す意味だそうです. この意味ではservir un clientのように人が目的語になることもあれば, servir du vin (ワインを注ぐ)のように食べ者や飲み物が目的語になることもあります.

自動詞としては「役立つ」の意味があり, servir àで「誰かの・何かの役に立つ」という意味を持ちます. 前置詞àに不定代名詞や疑問代名詞が続く表現があり, 定型表現として覚えておくと役に立ちます. いわゆるto不定詞のservir de ---もあります.

代名動詞se servir de ---では「---を使う」という意味があります. これはにはse servirで「自分で食べ物・飲み物を取る」意味もあり, «Servez-vous.»とあれば「どうぞご自分でお取りください」と人に促すときに使えます.

名詞形のserviceも動詞に対応した意味があります. これも英語と同じです.

過去分詞はservi, 現在分詞はservantで, -ir動詞なので活用も次のように特殊です.

単数 複数
je sers nous servons
tu sers vous servez
il sert ils servent

2021-10-23

数学・物理 プログラミングと数学/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 何となく近況報告
  • 計算機科学をもっとやりたい
  • 統計力学がやりたい
  • トレースにまつわる話
  • プログラミングと数学

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何となく近況報告

今週はワクチン二回目で二日間ノックダウンであまり何もできていません. Functional Differential GeometryをClojureで進める関係で, ちょこちょこClojure関係のドキュメントを読んでいました.

Clojureはいい感じに整理されていてほしかったタイプのCommon Lispの趣があります. Common Lispは歴史があるというかありすぎるので仕方ないようですが. 素数夜曲の写経でだいぶ括弧の嵐に慣れましたし, Lisp系は確かに味があるのもわかりました.

あと何よりも嬉しいのはメインエディタのEmacsと相性がいいことです. 混沌を極めていて結局メインはVSCodeプラグインになったらしいHaskellと違って, Common LispもClojureも一番基本的なエディタはEmacsのようです. REPLでパチパチ小さく実行してテストできるのは本当に楽しいです. Haskell, F#, Juliaあたりも(VSCodeで)REPLありますが, REPLがあるとどれも開発体験がいいです.

もちろんモノによってJupyterもありますし, Jupyterのネイティブアプリ化という進化もあります. そしてお絵描きしたいときは特にJupyterが便利です. 純粋なコードを書く体験的にエディタに及ばない部分がつらいです. 以前使ってみたときはVSCode上でのJupyterもキーバインドの設定が外れてしまうようで, そういうのも厳しいところです.

何にせよ, 語学はともかく, 数学・物理・プログラミングに関してはもう少しまとまって勉強できるようなコンテンツの形を探っています. 言語をどうするかはひたすらに悩むところですが, いま, 単純に計算するという視点ならとりあえずJuliaなのでしょう. 理論に習熟させるという視点では, 年単位で前に紹介したLearn Physics by Programming in Haskellを見て, Haskellまたは同じくらい型が強い言語がいい気はします. F#はunits of measureまであるので, 数値計算まで込めてもいい選択肢とは思っています. 一応Microsoftも次の記事でF#を機械学習の言語として使いたい, みたいな話もあるようです. これがいまも, これからも動き続けるなら線型代数・数値微分積分系, お絵描き系も充実するのでしょうし.

まだお絵描き部分がどうなるかかあっていないのですが, sicmutilsを見ているとLisp系の特徴をうまく使ったシンボリックな計算もできていて, かなり面白そうです. プログラミングとしては原初のプログラミング言語としての一つとしてのLisp系(計算機系でも時々出てくる), 計算機科学に近いところの諸課題に関して実装言語としてよく使われている印象もあるHaskell, いろいろな人がいろいろな高速計算で遊び倒しているJuliaの三本柱を使い回す形で進める予定です.

計算機科学をもっとやりたい

素数夜曲でSchemeとも合わせて計算機科学の話題がいくつか扱われています. 雑にしか勉強できていませんがやはりラムダ計算が面白そうで, この辺ももっときちんとやりたいと思っています. 近々Introduction to Computation Haskell, Logic and Automataという本も出るようです. 以前魔法少女に教えてもらったアンダースタンディングコンピュテーションのHaskell版だろうと思っているのですが, これは実装言語がRubyなのが気に食わなかったため, かなり気になっています.

自分がやるだけなら何とかするのですが, コンテンツとしていろいろな人, 特に想定ターゲットの中高生にやらせようと思うと, Haskellはいわゆる「ふつうの処理」をやるハードルがあるので鬱陶しい問題があります. ただ読み書きしていて楽しい言語ではあり, これはこれでもっと理解を深めたい言語です. 私自身の計算機科学の話題への理解も全くないといっていいレベルなのでこれもちゃんとしなければとずっと思っています.

それはそうと, 素数夜曲でもフォン・ノイマン流の自然数の定義などが出て来ました. 学生時代は数学としてはフォン・ノイマン環, 数理物理としては作用素論・作用素環論の量子論への応用でフォン・ノイマンが直接作った土台の上でいろいろやってきました. いまになってさらに計算機関連の話でも具体的にフォン・ノイマンの影がちらつきはじめ, 別途勉強している超準解析でも数理論理・集合論で当然フォン・ノイマンの影がちらつくので, 大学以降の人生が全部フォン・ノイマンの手の平の上にあるようです.

統計力学がやりたい

堀田量子が出て以来, 物理熱が高まっています. 量子情報も含めた量子力学の基本の再勉強も進めていますが, イジング・(量子)スピン系などの統計力学の基礎も改めて勉強熱が高まっています.

量子力学は世間的にやたらニーズが高いらしい線型代数の実戦訓練の場でもあります. イジング・スピン系・格子模型はいろいろな問題はあれど, 数値計算が盛んな土地柄らしいですし, ここでも数学・物理・プログラミングが交錯します. 先日も紹介しましたが永井さんがJuliaでの物理プログラミング本を出すそうですし, ここも非常に楽しみです.

いま読んでいる超準解析の本もノートを作りつつさっさと一回通しで読み終えて, 田崎さんのイジング本・格子系の本を読みたいです. 両方とも査読に参加したのですがまだ完全に身についていませんし楽しみが尽きませんん.

トレースにまつわる話

ちょっとTwitterでやりとりしたので転載しておきます.

トレースとか、計算しろと言われたら、そりゃ定義知ってるから計算できるけど。一体あれがなんでそんな大事なのか分かってない。

以下私の回答.

理由の一つは、行列ではなく線型写像であることから来る不変性です。暴論を言えば圏論がらみの応用で普遍性があると嬉しい(背後に何かありそう)みたいな話が出てくるように、トレースで書ける量には何かありそう、的な話も展開します。 あと、トレースは計算しやすく、しかもいろいろな方法で計算できる利点があります。例えば無限次元で線型作用素(量子力学)で素直に計算するのと、確率論((量子)統計力学)で計算するのとで二通りの計算方法があり、物理としても二つの分野の計算手法・物理的直観の交換があります。 詳しいことは知らないのですが、幾何の金字塔である指数定理ではディラック作用素のトレースから引き出せる情報が重要で、その計算手法の多彩さと引き出せる情報の精度、解釈に直接反映されているようで、現代的な幾何と物理の交流でも基本的らしいように思います。

この辺の数学と物理, きちんとノートを作りたいのですがなかなか. 指数定理は学生の頃からの憧れなのでいつかは必ず挑む予定ではいます.

プログラミングと数学

現代数学観光ツアーのアンケートコメントが来たのでそれについて. 区分求積法の体で高校の教科書にもあるリーマン積分のイメージ図が定積分のイメージ作りに役立つというコメントを頂きました. 一枚絵でもそこそこ気分は掴めますが, もう一つ, 極限で確かに面積を厳密に定式化できる動的なイメージも大事です. この手の動画を昔は自力で作ることなど夢のまた夢でしたが, いまはその辺に転がっているコードをGoogle Colabで流せば簡単に改造できていろいろな例で確認できるようになりました. 私のGithubのどこかにもipynbを置いておいたので, 興味がある人は確認してみてください.

ただ, メンテしていないのでGithub上のコードはいま動くかは不明です. メンテする気がある分はコンテンツとして販売しているのでよろしければどうぞ.

これもJulia版を作りたいと思って幾星霜です.

あとリーマン可積分でない関数に対するコメントがあったので, 一応ここでも書いておきましょう. 単位区間$[0,1]$上の関数として, 有理数の上で$1$, 無理数の上で$0$を取る関数はリーマン可積分でない関数として有名で, 特にディリクレ関数という名前がついています. 現代数学観光ツアーでも確か紹介していたはずです.

ちなみに「(リーマン)可積分ではない」は多少曖昧さのある言葉ですが, ここでは極限の値が一意に決まらないという意味で使われています. 無限大に発散してしまうことを「可積分ではない」ということもありますし, 特にルベーグ積分は積分以前に可測ではない関数を真面目に考える必要もあります. 虚心坦懐に数学科の数学をやりたいのでもない限りルベーグ積分の事情は気にする必要はありませんが, 入門的なところにも魔界がボコボコあり, 集合論的なお遊びポイントもたくさんあるようなので数学としては多彩な遊び方があります.

最後にもう少しClojureとFunctional Differential Geometryの話. Functional Differential Geometryではお絵描きパートがあるのか確認できていません. 数値積分プログラムはあるので積分計算自体はあるようですが, それを使ったお絵描きがあるかは非常に気になるところです. Scheme本体にそんなものがあるはずがないので, scmutilsには関連するプログラムがあるはずで, Clojure移植版のsicmutilsにお絵描きプログラムがあるかが気になります. scmutilsだと素数夜曲のようにGnuplotに外出しされている可能性もありますが, Javaの資産も含めればいくらでもやりようはあるはずですし, 静止画だけでもよく簡単でもいいのでよさげなお絵描きプログラムつきだと嬉しいですね.

Prologueに出てきたプログラムを実行すると, かなりいい感じにラグランジアンが書けるので, これがシンボリックな計算だけではなく, 数値計算とお絵描きとどこまで連携しているのかがこれからの読書の楽しみです. Clojureでの確認後はJulia移植もしたいところです.

語学 キッズ向け科学雑誌の英語が面白い上に役に立つ/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 第40回 第20文の多言語比較 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会 https://youtu.be/vxDz9lE7Hes
  • 相対論の勉強会でのドイツ語
  • 科学雑誌勉強会での英語
  • ドイツ語で遊ぼう
  • フランス語で遊ぼう

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相対論の勉強会でのドイツ語

今回の勉強会で構文に関して変なことを言ってしまいました. 都合で今週はお休みなので次週(次回)補足するのですが, ここで結論だけ言うと, やはり英語の感覚で適当に処理すると根本的に駄目でした. 当たり前ですがドイツ語はドイツ語の文法に沿ってきちんと考えないと, 勝手に自滅します.

ここ最近語学に力が入れられていないので, いい刺激にはなりました.

科学雑誌勉強会での英語

メルマガで書いたかちょっとすぐにわからないのですが, この勉強会で使っているのはキッズナショジオの文章であるにも関わらず, 何というか, いわゆる「難関大の受験英語」でも出てこないような単語がぽろっと出て来ます.

例えばprosperous. 対応する「繁栄」という日本語は多少難しめの言葉ですが, ちょっと気の利いた小学生なら知っていて, 高校生なら確実に知っている言葉だと思いますし, そう思えば確かにキッズ単語ではあります.

何でこんなことを書くかと言えば, 私の英語はガチガチの学校英語で, 大学受験+数学・物理の専門教育とプログラミングに関わる職業教育的な文脈での英語なので, 日常的な英単語に対する感覚が徹頭徹尾ないのだな, と改めて実感したからです.

ちなみに毎回参加してくれている翻訳の人とも話題になるのですが, そこまで難しくはない英語ではあるものの, 英語らしい表現がたくさんあります. 「英語から日本語に訳すのは簡単でも, 日本語から英語に適切に戻すのが難しい」というタイプの文, または単語・表現選択がたくさんあり, 文章を読み込んだあとに英作文教材としてもそのまま転用できるレベルです. 内容的にも科学系なので私にはとっつきやすく, これはいいコンテンツだと毎回非常に楽しみな勉強会です.

ドイツ語で遊ぼう

haben

今回からドイツ語単語もやることにしました. 初回はhabenを見ます.

見ての通り英語のhaveと同根です. Wiktionaryによると印欧祖語由来でオランダ語のhebben, デンマーク語のhaveと同根です. ゲルマン系の言語には同根の語があり, オランダ語やデンマーク語はゲルマン系なのだろうというのが推察されます. 勉強会でいつも言っているのですが, Wiktionaryで同根の単語を見ていると言語をまたいだときの語の変遷というか, 語の意味を持つのはどの要素なのか, 詳細な語源研究の成果はともかく「単語が似ている, または同根のような気がする」という感覚はどこにどう持てばいいのか, といった肌感覚が身につくようで非常に面白いです. さすがにオランダ語やデンマーク語を覚える気力と時間, 今はありませんが, いろいろな単語をWiktionaryで見てみると類似の事情があるのだろうと思えてきて無限に時間が溶かせます.

同じ「持つ」の意味があるフランス語のavoirとは同根ではないのですが, 面白いはどれも時制に関わる助動詞としてhaveに相当する単語を使う共通点があります. 完了または過去に関わります.

英語だといわゆる完了です. これについてはいいでしょう. ドイツ語の時制は英語の時制と表面的にはよく似ていますが, 意味や指す内容・守備範囲は全然違います. ドイツ語の現在形は英語でいう現在完了・現在進行形も含めた広い概念です. そもそもドイツ語には現在進行形自体が存在しません. フランス語のavoirから派生する時制も英語・ドイツ語と違います.

ちなみにドイツ語でも「頭痛は持つもの」で, "Ich habe Kopfschmerzen."と書きます. フランス語でも"J'ai mal à la tête."でやはり「頭痛は持つもの」です. 何が持てるか, 各言語で比較してみるとまたいろいろ違うのかもしれません. まだそこまで調べ切れておらず, 今後の個人的研究テーマというか表現集として貯めておかないといけないと思っているところです.

フランス語で遊ぼう

mettre

これはモノをどこかに「置く」意味が基本で, 置く場所は前置詞句や副詞で指示します.

「衣類を着る・身につける」の意味は身につける動作を指す言葉です. 英語でも着る動作はput on, 着ている状態はwearです. フランス語でのwearはporterです. ただし複合過去形では「身につけた状態」を意味するようで面倒です.

これ以外に人やモノを「ある状態に置く・仕向ける」, 「お金や時間を費やす」意味もあります.

代名動詞se mettreは「ある状態に身を置く」の意味です. 例えばêtre à tableは「食卓についている状態」で, se mettre à tableは「食卓につく動作」です. さらにse mettre à + inf.で「---しはじめる」と全然違う意味になります.

基本単語はいろいろな単語が合流したり意味の展開があったりと多義的なことが多く, これもその例に漏れないようです.

Wiktionaryによるとラテン語mittōの現在能動不定形のmittereに由来します. ラテン語はsendなどの意味を持ちます. これだけ見ていてもわかりませんが, やはりWiktionary先生のDerived termsを見ると, 例えばadmittō, ēmittōなどがあります. これらを再びWiktionaryで見てみれば, 英語のadmit, emitにあたります. ここでadは「向かう」という意味の前置詞でadvertiseなどのadです. 一方ēmittōのēはex由来でemitの「放出する」といった意味と対応しています. パッと見ではわかりませんが, 英語にもきちんと生きている言葉です.

また, これで調べてはじめて, 私はadmitとemitに関係があることを知りました. たぶんメルマガ読者の方は多言語に興味がある人はあまりいないように思うのですが, こういうのを丁寧にやっていくことで, 多言語学習が英語にも活きること, 言語感覚を育てるのに活きることを何とかして伝えられないかと思っています. プログラミング言語では多言語学習・実践はある程度当たり前である以上, これを自然言語の学習にも転用できないかという試みでもあります.

2021-10-16

数学・物理 素数夜曲の写経と数学・物理のためのプログラミング/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 高校での位置ベクトルとは何か
  • 多体量子系の数理: Twitterで見かけた数学コミュニケーション
  • 数学史メモ
  • Twitterで見かけた数学コミュニケーション
  • コンテンツのシェア
    • 立川さんの結晶群の講義ノート
    • 幾何・数理物理の講義ノート
    • 小澤正直さんの量子測定理論プレプリント
  • 素数夜曲の写経が (だいたい) 終わった
  • 現代数学観光ツアーのコメントへの回答
  • 基礎から勉強する大変さ・面白くなさ

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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高校での位置ベクトルとは何か

高校の数学とはだいぶ離れた別の話題として, 以下でツイートを引用しているように, 線型空間自体の認知度が恐ろしく低い中, アフィン空間は言葉でさえほぼ知られていないのではないかという気分があります.

アフィン空間という言葉を知っているか, 大雑把でいいので定義を知っているか, 定義を知らなかったが Wikipedia での定義を読んだだけで何を意図しているかわかったか, などいくつかの段階があるでしょう. そもそもゴリゴリの数学科でもない限り線型空間の議論自体通じていない公算が高いとさえ思っていますが, とりあえずアフィン空間の認知がどの程度が知りたいですね. 今回のアンケートで回答してもらえると嬉しいです.

ツイート引用

位置ベクトルはベクトルの分類ではありません。点からベクトルへの写像φがφ(P)=\vec{OP}で定められるとき、φ(P)をPの位置ベクトルと呼びます。点を実数の組で表すことができ、その組を点の座標と呼ぶのと同様に、点をベクトルで表すことができ、そのベクトルを点の位置ベクトルと呼ぶだけです。

ユークリッド平面に原点はアプリオリに存在するのではなくどれかの点を原点に選ぶのだという感覚を持たないと、位置ベクトルの理解は混乱するでしょう。

まずユークリッド平面(空間)の定義というかよくある使われ方自体がかなり厳しい気分があります。ユークリッド空間でアフィン空間を指す場合とベクトル空間を指す場合があって、後者の方が多いくらいの気分があります。

これに関して物理学科出という背景を追加して言うと、アフィン空間という言葉を知っている人自体がかなり少ないのではないか、「アフィン空間も要はベクトル空間みたいなものだろう」からいつの間にかベクトル空間とほぼ変わらない何か的な認識にシフトしているのでは、とか色々な想像があります。

多体量子系の数理: Twitterで見かけた数学コミュニケーション

数学科学生と思しき人が物理のゼミに顔を出したときの応答に対する反応をツイートしていました. たくさんツッコミが来たからかアカウント自体消されてしまっていましたが, 冗談抜きで数学的にきちんと詰め切れない, もしくは詰め切るにしても学部卒程度の知識・修士終了の力は必要なことはよくあります.

詳しくは以下のツイート引用を見てもらいたいのですが, そこで書いていないことで一つ気になっていることとして教養レベルの古典力学での常微分方程式の解の一意性があります. 具体的に歴史的な力学の一里塚である, 万有引力場のもとでの粒子軌道の問題です.

そもそもあまりきちんと考えたことがないのですが, ニュートンポテンシャルは原点での特異性があり, 微分方程式も非線型です. 常微分方程式入門レベルでよく議論される正規形の常微分方程式の議論で, 古典力学での解の存在と一意性がどこまでカバーできるのかよくわかっていません.

ちなみに古典力学の金字塔である万有引力場のもとでの運動は, 教養で触れていてよく知られているから簡単そうに思われているだけで, 実際には非常に鬱陶しいです. 何が鬱陶しいかと言えば方程式中のパラメーターから定義される離心率の値によって楕円・放物線・双曲線軌道と, 全然違う軌道を取ることです. もちろん射影空間で考えればこの三つの曲線は等価ですが, ふつう古典力学までの範囲で射影空間上での常微分方程式論まで行かないでしょう.

私自身, 微分方程式論には完全に疎いので状況を全く把握・制圧できていないのですが, パラメーターによる分岐を持つ現象は力学系の基本的なテーマでもあるはずで, 反応拡散系の偏微分方程式などでは動的にパラメーターが変わる現象などもあるのだろうと思います.

話がだいぶずれてきたので元に戻すと, アカウントを消してしまった自称数学徒の人, 物理以前に数学を知らなさすぎるのではないかというのが私の印象です.

ツイート引用
数学的な厳密さを保ってどの程度の物理ができると思っている?

面倒なので以下 Twitter 的によろしくない文章だけの引用.

物理サイドもそうだが「数学的な厳密さ」にどんな意味を込めるのかが曖昧で、しかも双方でイメージする内容がずれているのも大きな問題なのだろう。

https://twitter.com/AtRuins/status/1447605979583975428 これ、意図するところで本当によくわからなくて極端に言えば「流体では解が不連続になりうるので、微分方程式の議論の前にまずはベゾフ空間論からはじめる」みたいなことを言われても困ると思うのだが、どうしてほしいのだろうか。 他には一次元だとソリトンが出てくるのでまずは無限次元グラスマン多様体から始めようとか言われると、いい加減に処理できる物理こそ困らなくても、数学サイドがたぶん死ぬほど困る。特に関数解析系PDEのために流体をやってみたい勢が。 数学が物理に混ぜてもらう前提なのになぜそんなに居丈高なのかもわからないが。

言い出すときりがなくて、例えば物理では学部一年で超関数のフーリエ解析もバリバリ出てくる。現代数学では普通に扱えるとはいえ、解析系であっても学部三年後半でようやく追いつく話を数学的な厳密性も担保しつつ展開できる人類がそもそもどれだけいるかという話もある。 自分の数学力によほど自信があるのだろうか。量子力学でも現代的には解析学だけでどうにかなるわけでもなく、解析学にしてもPDEだけでどうにかなるわけでもない。 元ツイートの人、物理とかいう以前に数学を知らないのではないだろうか。常微分方程式でさえほんの少し先に魔界が広がっているというのに。

私が知る多体量子系の数理の風景

杓子定規に数学的に言うと、多体(量子)系の数学は本当に面倒で、ハバードくらいのレベルで言っても、正体がよくわかっているラプラシアンの離散化とオンサイトの相互作用の和の行列の振る舞いだけで既によくわからないことだらけで研究マターというレベルで本当に鬱陶しい。

多体系と言っていいかは微妙だが、相互作用する環境が場で形式的には無限多体系であるスピンボソンモデルも、数学者が満足できるレベルで数学的にはちゃんと制御し切れる人類あまりいないのではないか。そもそもそんなことをやりたがる人間がどれだけいるかはともかく。 あとLiebあたりがやっている物質の安定性もかなり面倒でつらい。他に私が学部三年の講義で出会った非相対論的QEDは2000年ごろに発散処理と基底状態の議論がとりあえず最低限できたが、いまだに平衡状態周りの話、存在さえわかっていないのでは? この間のオンラインすうがく徒のつどいで広義中高数学の話として適当に存在を仮定するとひどいことになる話をしたが、数学としては存在の議論をしないことには始まらない部分がたくさんあり、量子・古典以前に物理に関わる数学、大体何もできていないのではなかろうか。

常微分方程式にしても、この間NTTで話題になった若山正人さんの量子ラビ模型も行列係数の調和振動子の問題で、これのスペクトル解析からリーマンのゼータが出てくるくらいに数学的には面倒がボコンと出てくる。 専門外なので詳しいことは全く知らないが、2006年時点で磯崎さんの量子力学系の散乱理論で三体の時点ですでに現代数学最前線という話もあったし、15年経ったからと言ってそんなに状況が好転しているとも思えない。 物理周りの話、数学的にはきちんとやると大抵何でも研究マターに一気に上り詰める感じがある。

数学史メモ

ツイートが消えたときのための自分用備忘録: 参照1は吉田洋一「零の発見」, 参照2はベルの「数学をつくった人びと」, 参照3は矢野健太郎の「数学物語」です.

Twitterで見かけた数学コミュニケーション

これに関して以前作った通信講座にもいろいろ書いたのですが, 「これをやって何の役に立つのか」と言われるとき, 相手の意図をきちんと確認する必要があります. 単に「数学がやりたくなくて, そのためにもっともらしいよく使われる言い訳として言っているだけ」という場合もあるからです. 実際, 以前受験生と思しきアカウントに「ネット検索に関わるグーグルのページランクなど多変数の連立一次方程式が使われている」とリプライしたら, 「私はグーグルのページなんて使わない」という (ピント外れの) 回答が返ってきたことがあります. ネットショッピングでのセキュリティと暗号なり何なり役に立つ事例自体はいくらでも挙げられますが, そういうのを求めている人ではないなと思ってそれ以上は触れませんでしたが, 相手が何を求めているのかは確認しないとお互い徒労に終わります.

他の場合のケースについての面倒くささは以下のやり取りの記録も見てみてください.

鍵アカウントのツイートとやり取り

昨日の知識のネットワーク?だったかの話そのもの。どの段階でも初見概念を勉強したり人に教えるのは難しい. 「xとかyが出てくる」のくだりはともかく、教科書を見るとサインもコサインもタンジェントもlogも意味がちゃんと書いてある。もちろん「書いてあるから意味も分かりますよね?」とは言わないけど、書いてあることを書かれた通りに読む(理解する)ってのは特殊な訓練を経て得られる能力なんだな.

つい今しがた書いたこの事案だと思うのですが、「意味」という言葉で何を意味するのかがまず大きくずれていて、そこのすり合わせが必要なところ、「数学が苦手」サイドが恐らくそれに付き合ってくれない(そういう忍耐に耐えようとしたときにまともに答えてもらえなくて諦めさせてしまった)のがお互いにとってかなり厳しくつらい事案だろうと推測しています。

よく物理で「式の物理的な意味」みたいなことを言いますが、線型代数の話にしても情報系だと符号理論や擬似乱数では有限体上の議論が必要ですし、「有限体の議論がやりたい自分にとって、RやC上の線型代数が何の役に立つの?」みたいな話にもなり得ます。距離にしても符号理論的にはハミング距離が直観的に意味のある距離で、相手の興味関心をきちんと確認しないとそれこそ意味のある話にならないのに、その辺のコミュニケーションが本当におろそかです。数学関係者はそういう応用をそもそも知らないので聞かれても困る面もあってとにかく至る所非自明です。

コンテンツのシェア

単なるシェアです. ツイートまたはページへのリンクをペタペタ張っておきます.

立川さんの結晶群の講義ノート
幾何・数理物理の講義ノート
小澤正直さんの量子測定理論プレプリント

物理としてヒルベルト空間をどう捻り出すかこそがポイントのようなので, それはそれで別途追う必要はあるものの, 頭の整理としては非常に重要です.

素数夜曲の写経が (だいたい) 終わった

一つ継続に関わる部分で, D.15 節のコードのバグ (私の転記ミスの可能性もあり) が修正できていません. ここは D.16 以降で使われていないこともあり, 面倒になったのでとりあえず放置です.

素数夜曲は必ずしも完全な形ではない再実装も込めて, Scheme についてはほぼ全ての実装が書いてあります. 簡単な再実装版は Scheme 標準では任意引数の関数を二引数にしてしまっている部分はいいとして, グラフに関する Gnuplot のコードが載っていない部分がたくさんありました. Scheme やその他の記述が鬱陶しいくらいあるのに Gnuplot は人類の常識で説明がろくにないのには一人ブチ切れていました.

あと, 行列の演算などは二引数限定で, 多数の和を取るコードがかなり冗長になっています. ただ, これはこれで Julia などで現代的な実装を見たときの感動ポイントにもなりうるのと, 実際に一度は直接実装して面倒さを実感してみるという意味ではいいのかなとは思います. 数学でも「面倒だから二度はやりたくないが, 一度はやっておくべき計算・証明」はあり, そういうタイプのコーディングを具体的に実践するいい機会でしょう.

ほぼ写経しただけなので Scheme への理解が深まったとは言えませんが, Lisp 系の言語, もっと言えば括弧の嵐と処理には前よりも遥かに慣れました. 優先度はちょっと考え中ですが, せっかく Scheme に慣れ親しんだので改めて Functional Dirrential Geometry に再挑戦しようかとも思っています. これは MIT Scheme と scmutils のセットが Unix 系前提らしく, Windows ではインストールさえ面倒そうだったので挫折したままでした. いま改めて Common Lisp 版がないか探したら, Clojure 移植はあるようです.

起動が遅い JVM 上なのでどうかとかいろいろ思うところはありますが, 最近の言語なのでシンタックスが Common Lisp よりも綺麗なので, せっかくだからちょっとやってみるかという気分にはなっています. プログラミング言語マニアでもなく, 数学方面に集中したいのでそんなにいろいろな言語をまたぎたくもないのですが, 一つの言語に集約するにもまずは Scheme なり Clojure なり本に書かれている言語で動かして, 実際に出力・挙動を確認してからそれと同じ挙動を取るようにしないと移植コードの正しさも検証できないので, まずは地道に Clojure 版でやろうと思っています. 次のようなライブラリも見つけたので, Clojure は Clojure で少し気になっています.

いろいろ見ていて結局, 速度・グラフ描画・情報量・数学系コードの充実度でやはり素直に Julia を使うのがよさそうなので, Julia もちょこちょこ勉強を進めています. 的確なライブラリを探して試す労力も馬鹿にならないので, プログラミングのプロは本当にすごいなと日々感心します.

現代数学観光ツアーのコメントへの回答

「集合を設定してからその元をベクトルと呼ぶ」→集合を設定するということは元の内包表記と違い、集合に構造を付加するということ?

内包表記がプログラミングの気分で書かれているような気がしますが, そもそもとして (たぶん) プログラミングでのリスト内包表記は, 哲学での外延と内包から数学の集合論に輸入された集合の外延的記法と内包的記法に由来すると思うので, 内包表記という言葉に関しては視点がそもそもいろいろとおかしい感じがします.

それはそれとして本体部分の回答はちょっと面倒です. コンテンツでのもとの書き方がいい加減でミスリーディングな部分があるからです. メルマガ読者全員が元のコンテンツを読んでいるわけではないと思うので, 周辺の記述に関しては次のページにある PDF を読んでください.

話を元に戻すと, この質問では「集合を設定する = 集合に構造を付加する」でこれが問題です. (上に書いたように内包表記の話はたぶん全然違う話.) 集合を設定するのは単に集合を考えるだけで特に構造の視点はありません. むしろ集合に構造を載せてベクトル空間にすると言うべきところです.

  • 高校でのベクトル: 要素が持つ計量的な性質で要素を直接定義している (ような形になっている).
  • 大学でのベクトル: 集合に線型構造を仮定した線型空間という枠組み (構造つきの集合) を作り, その要素をベクトルと呼ぶ.

「集合の設定」と「集合に線型構造を付加する」の間にギャップがあるので, ここが認識できているならその認識は正しいです.

あとはたぶん直接口頭 (オンライン会議的な形態含む) で細かいところを確認しないと回答できないように思います. テンポのいいやり取りの中で「この辺怪しそう」というのを掴んで掘っていかないと適切・的確な回答にならないでしょう. 最近改めて個人指導をはじめて, 勉強会形式で講義的に話すのと, 個人指導で細かく掘るのがかなり違うことの意味・意義と重要性を改めて実感しています.

前回も Mathpedia の個人指導サービスを紹介しましたが, 個人指導は個人指導で大きな意義があるので興味がある人はぜひ使ってみてください. 個人指導はやってくれている人達がいるので, 私はどちらかと言えば価格 (受講者負担) をおさえること, 「ともに戦う仲間がいる」的な意味でコミュニティを作る方向を模索していてはいますが, もし私に個人指導を受けたいという方がいれば, それはそれで相談には乗ります. 実際, 松尾さんと話をしていてまがりなりにも数学・物理・プログラミングにまたがってそこそこ話せる人もなかなかいないそうなので. いずれか二つならゴリゴリのプロのレベルで一定数存在していて, 三つにまたがると途端に数が減るようです.

基礎から勉強する大変さ・面白くなさ

上で素数夜曲を勉強していて今まさに実感しているところです. 数学・物理で考えても基礎の部分はやっていても必ずしも楽しくありません. 例えばホモロジー代数の初歩はもういい加減何度かやっていて面倒なのですが, 改めて一からノートを取らないとあとで困るのがわかっています. 適当に優先度を決めていつかはきちんとノートを作る予定です.

それはともかく, 基礎から勉強する上での工夫が必要です. まず何らかの意味で自分なりに楽しくする方法を考える必要があります. そして楽しくする以外の工夫も必要です. 例えばまずは概要を大きく掴むことも大事です. ついでに必要な能力が鍛えられることをやるのも大事で, その一つとしてプログラミングも併用して馬鹿みたいに大量に計算する方向で進めています.

もちろん諦めて歯を食いしばって勉強するのも大事です. これに関しては人を巻き込むのが大事です. 公開していない勉強会があるのですが, そこでの内容として Julia の基礎やデータ構造・アルゴリズムをじっくり進めています. 忙しい大人を何人か巻き込んで勉強会をしているので, きちんと準備しないと失礼だというところで勉強のモチベーション, そして必ず勉強時間を作る拘束力生成に役立てています.

前から何度か書いているように, 他人を巻き込むと勉強が捗りますし, やるなら話す側の方が身につきます. メルマガ読者の皆さんもぜひ勉強会を主催して教える側でやってみてほしいです. いまはオンライン勉強会が本当にやりやすくなっているので.

語学 多言語学習のご利益/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 第39回 第19文の読解 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会 https://youtu.be/eoG-y-dBslI
  • 英語とフランス語
  • 英語とドイツ語
  • フランス語で遊ぼう

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
  • メルマガ バックナンバー

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英語とフランス語

仕事をしていてテナントという言葉が出てきました. 割と日常的なところでもビルのテナントなどとして出てきます. 調べたらやはりフランス語の tenir, そしてラテン語が語源のようです.

最近強制的にフランス語を勉強する機会を作るため, 手持ちのフランス語単語帳をもとに, 基本単語に自分なりの追加解説を突っ込む形でフランス語単語を紹介していますが, これまで以上に英語の中にあるフランス語・ラテン語に気付くようになっています.

少なくとも現状, 究極的には英語のためのフランス語・ラテン語・ドイツ語などの他言語を緩く勉強しています. 応用系の人の数学への態度を見ていると私自身時々感じるように, 言語畑の人から見るとこういうスタイルの勉強は見ていて気に食わない部分はあるのだろうとも思っています. 一方でプログラミング関係の文化・知見からすると, そこまで深くなくてもいいから他の言語・設計思想に触れるのは大事とも言われるので, それを信じて自然言語もつまんでいます.

一応最終的には多言語をまたぐことで自身の基盤言語である日本語, ひいては言語感覚それ自体を研ぎ澄ませるのが目的ではあります. これを目指してメルマガ発行をペースメーカーにして地道に勉強を進めています.

英語とドイツ語

いい感じに調べるのが大変というかどうすればいいのかよくわかっていないのですが, 英語はゲルマン語の系統なので, きちんと調べるとドイツ語単語と英語の単語にもいろいろな語源の関係があると聞いています.

例えばこのページ. ここでは英語の book とブナを表す beech の関係が書かれています.

beech と book は形態上たまたま関係しているわけではなく,確かに語源的な関係がある.この場合,前者から後者が派生されたとされている.かつてブナの灰色で滑らかな樹皮の板にルーン文字が書かれたことから,ブナは文字や本の象徴となったのである.

数学・物理・プログラミングでも, 考えている「言語」の表現力をぎりぎり限界まで引き出して使い倒すのが大事です. これを自然言語でもできるようになりたいわけで, 英語を通じて日本語, そして一般的に言語のセンスを磨けないかと思っています.

ドイツ語の語源のサイトとして Wiktionary と DWDS はあるのですが, Wiktionary で book と beech のような話は書いていないようですし, DWDS は完全にドイツ語なので私のドイツ語の能力では読めないという難点があります. いいドイツ語語源と英語比較文献がないか探しています. 見つかればそれをもとに勉強ノートを作る体でメルマガで勉強ログをつけていこうと思っています.

フランス語で遊ぼう

tenir

たまたま今回はテナントに関連して上でも少し書いた tenir です. 活用は英語の come にあたる venir と同じです. よく ir-動詞と呼ばれるクラスの動詞です.

意味の中心はモノを「持っている」「掴んでいる」ことです. 英語でも基本単語は極端に多義的であるのと同じく, フランス語でも tenir は多義的です. 例えば「人を掴まえている・拘束する」, 「あるモノ・ある状態を保持する・維持する」から, 「管理・経営する」の意味まで持ちます.

目的語 (フランス語では直接補語?) によって的確な訳語を選ぶ必要があります. 例えば tenir sa parole は直訳すれば「発言を維持する」で, 発言したことを変えないことから「約束を守る」の意味です. parole は動詞の parler から来ていて「話すこと」の意味で, これはこれで英単語で parlor (「話すところ」から「客間・喫茶店」など), parliament (「話すところ」から「議会」) のような展開があります. この辺の意味のうつろいは発展は日本語にもよくある話で, こうした議論を丁寧に積んでいくのが言語センスの涵養に役立つと思って, 自分用の勉強メモも兼ねてメルマガコンテンツとして記録を取っています.

他には tenir は自動詞としても使えます. ある姿勢・位置を保つ意味から「しっかりしている・持ちこたえる」といった意味が出てきます. 特に tenir à --- はあるモノ・行為に関する立ち位置を変えずにいるという意味から, 「あるモノ・行為に愛着を持つ, 執着する・こだわる」という意味が出てきます. 英語でも have は日本語の意味を越えていろいろなモノが持てるのと同じく, tenir もいろいろなモノを持てます. こうなるといわゆる have である avoir との違いも気になってきます. ちなみに「いわゆる have」と書いたのは, avoir は英語の have が完了形を表す助動詞としても使えるように, avoir も時制を表す助動詞に使えることを想定して書きました.

2021-10-09

数学・物理 定義をきちんと読もうの会/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 先週は鬼滅の刃を読んでいたら興奮冷めやらずメルマガを書くどころでなかったでござるよの巻
  • 定義をきちんと読もうの会
  • 代数学の基本定理の代数的証明
  • Juliaで物理系の数値計算をする本
  • Mathpedia のオンライン家庭教師
  • 「重ね合わせの法則が成り立たないなら散乱が起こっていない」とは何か

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

  • 今回のページ
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先週は鬼滅の刃を読んでいたら興奮冷めやらずメルマガを書くどころでなかったでござるよの巻

先週, あまり気分が乗らなかったため, 「こういうときはもう諦めよう」と思い, ずっと読まずにいた鬼滅の刃をやや遅めの時間から読みはじめたら, 止まらずに朝 4 時まで読み続けていました. 生活リズムが破滅したので日曜もめちゃくちゃで, もっと言えば先週一週間生活が破滅していました.

あれだけ面白ければ流行る理由もわかります. 煉獄さんが 400 億の男になるのもむべなるかなと言わざるを得ません. 現状シーンとしては義勇が何も言わず禰豆子を守るために命を張っていたところが一番好きで, 戦闘キャラ特性としては壱ノ型しか使えず, ただそれだけをぶち抜きで鍛え続けた善逸が好きです. NARUTO で言うと完璧ノーセンスのところから体術だけをただただ鍛え続け, イタチ・カカシ父・マダラなどの実力者だけに狙い撃ちで認められているガイが好きで, ああいうのは男の子が好きなやつだと心の底から信じています.

ああいうのを数学でもやらねばならんのです. 煉獄さんが言っていたように, 「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと 心を燃やせ 歯を喰いしばって 前を向け」, これです. しばらくビビって進めていなかったことがあるので, これを読んでやらねばならぬと覚悟を決めました.

定義をきちんと読もうの会

先週の個人指導で出た話です. 定義で「---に関して閉じている」などとさらっと書かれているところ, 改めて見るとこれは相当数学に慣れていないと読めないというか, 何を言っているかわからないはずだ, というのを確認してみたらやはりできないね, というわかっていたことを改めて確認しました.

定義をきちんと読もうの会みたいな勉強会, 顕在化しているかどうかはともかく, 潜在的なニーズは相当あるのだろうと思います. 個人指導の方でいろいろ検証してみてまた大事そうなことを共有します.

ちなみにベキ集合のベキ集合はイメージできるか? みたいな話が出てきました. こういうのはプログラムでリストのリストみたいな形で, 有限集合に対するベキ集合を作ってみるといいのではないか, みたいなのも思います. 有限集合であってもベキ集合の時点で自力で書くのは大変です. 位相空間論の位相や, 測度空間論の加法族のレベルでさえふつうは大変です. 準基のような概念を考えると部分集合族の部分集合族が出てくるので, ここでつらいね, という話でした.

代数学の基本定理の代数的証明

前回のメルマガに対するコメントで教えてもらいました. 名前のスペルと最後の University of Cracow, Poland からポーランドの人なのでしょう.

イントロダクションでピタゴラスの定理のいろいろな証明に関する文献と同じく, 代数学の基本定理の多彩な証明を載せた文献もあるという話があり, ここだけでも参考になるのではないかと思います. ちなみに素数が無限個存在する定理もたくさんの証明が知られています.

超準解析を突っ込む議論で「純代数?」という感じもありますが, この情熱がすさまじいと感心します. 本当にこの数週間で超準解析を勉強しはじめたので面白いタイミングで来たなとも思っています.

メモも兼ねて簡単に内容を紹介します. 何かしら連続性が必要だという話があり, 実は二種類の連続があって一つは the continuity of total order (これ何のことだろう?), もう一つは (多項式) 関数の連続性です. 後者を使わないのがこの論文での証明です. やはり実閉体の議論は重要で, 一般の連続関数ではなく多項式関数に対する議論さえあれば十分なことをうまく使います.

P.6 にアルティン-シュライアーで「実閉体上では全ての奇数次多項式は少なくとも一つ解を持つ」ことが示されていると言及があります. ふつうここに関数の連続性と中間値の定理 (連結な集合の連続像は連結) を使うので, ここをどう乗り切るかが大事とコメントされています. P.7 の命題1は「順序体上の多項式に対する中間値の定理をみたすなら $\sqrt{-1}$を付加して得られた体は代数的に閉である」が重要です.

雑に眺めた範囲で言えば位相の代わりに順序を使っています. Ordered field の記述は随所に見えます. 順序集合に順序を使って位相を入れる話もあり, ふつうは面倒だから位相を入れる部分をがんばって順序でおさえて処理したという話なので, むしろ位相または位相的な議論のおかげでどれだけ議論がシンプルになるかが確認できたと見るのがいいのでしょう.

Juliaで物理系の数値計算をする本

次のツイートを見かけました.

非常に気になっています. というか買います. 微分方程式などの近似計算だとあっと言う間に難しくなっていくので, 数学・物理・プログラミング系のネタで扱うのはどうなのかとは思っていますが, それはそれとして鍛えないといけないのは間違いないので.

Mathpedia のオンライン家庭教師

Mathpedia が最近何をしているか全く追いついていないのですが, 純粋な数学については私よりもカバー範囲が広いはずなので, 興味がある方は利用してみてはどうでしょうか.

まあ, いい値段がしますが, 実際個人指導をやっていて, まじめにやるならこのくらいの労力はかかります. 講師・教師側からの持続可能性からするとそれはそうですが, これだと受講側の持続可能性に乏しいなと前から思っています. このギャップを埋めるようなのを何か考えないと, と思いつつ幾星霜です.

「重ね合わせの法則が成り立たないなら散乱が起こっていない」とは何か

Twitter でちょっとやりとりしたので転載しておきます.

上でもコメントした「定義を読もうの会」でイメージしている内容の一つがこういう話です. こういうさらっと書かれていて, 分厚い背景知識がないと意味が取れないような話をちゃんと拾うのが大事だろうと.

Tomoki Oda さんとのやりとり

物理の本なんですが重ね合わせの法則が成り立たないなら散乱が起こってるって言うのはどう言う理屈ですか?

散乱はふつう何かしらの相互作用の結果なので線形の理論は重ね合わせが起こるだけで互いに干渉しない(散乱が起きない)が、重ね合わせが成り立たない波は非線形波動だからその波が出会ったときには非自明な現象として散乱が起きている(からそういう現象が起きたら非線形波動を考えろ)という印象です

なるほど。ここで言う散乱って実際に古典的に粒子と粒子がぶつかる、というよりはポテンシャルとポテンシャルが相互作用を起こす現象ということですか?

これをポテンシャルと呼べるのかわかりませんが、(私の気分では)そのまま素直に「非線形波動方程式に従う波がぶつかり合うと散乱が起きる」と読むのだと思っています。あと粒子という言い方がかなり微妙で、非線形波動として有名なKdVで「粒子性を持つ波動現象」からソリトンが出てきます。

なるほど。ちょっと逆説的な言い方であることも否めないですがなんとなく腑に落ちました。

物理を無視すればクラインゴルドンは型的にあくまで波動方程式なので、まずは波動方程式として理解する方がいいのではないかというのと、粒子としてみるなら、相互作用しない粒子は衝突してもすり抜けるだけなので相互作用の視点は重要です。

なるほど、アプローチとしてはそれが正しいのかもしれないんですが

相互作用しない粒子は衝突してもすり抜けるだけなので というのはどう言う原理から導き出されるんですか?浅学なので初めて聴きました

これは衝突の定義と先の用法の曖昧さの問題で、いわゆる粒子が「衝突して」「散乱する」のはデルタ関数的なポテンシャルがあるからで、相互作用しないならもちろんデルタ関数的なポテンシャルもなく、「衝突(粒子が同じ座標に来る)」してもポテンシャルがないので相互作用せず、散乱もしません。

なるほど。うまくまとめてくれてありがとうございます。ちょっとこう言うことをアプリオリに仮定されるのは(もしかすると物理の方にとっては常識なのかもしれませんが)読み進める上で障害になるので解説助かります

集合・位相・実数論あたりを知らずに現代数学にアタックするのが無茶という程度に、学部物理の基礎体力なしに場の量子論のアタックするのは無謀なので、アプリオリな仮定というよりも「この本を読むならこのくらいの基礎知識・体力は仮定する」というところのミスマッチ感があります。

なるほど、失礼しました

物理なり他の専門の人が学部二年くらいであっても数学の本を読むとき、このくらいふとした一文でハマるのだと思ってもらえれば。この辺に関する話をこの間オンラインすうがく徒のつどいで話した所です。

てらモスの兄貴とのやりとり

なんか逆説的だけど、物理だと近接相互作用をする事を「衝突」と言っている気がするよ(´・ω・`)

今リプライしたのですが、「点粒子の衝突」には「同じ座標に来る」ことと「デルタ関数的なポテンシャルがあってそれで相互作用する」の二つの意味があり、同じ座標に来ても自由粒子だと相互作用・散乱の意味での衝突はしない、だというアレで空気を読んで使い分ける感があります。

確かに暗黙にそういう仮定を置いているとするのが妥当っぽいですね(´・ω・`)

自由粒子の統計力学というか気体分子運動論というか,その辺りだとさらりと流される邪悪なやつなのかもしれません。

統計力学だとさらに散乱と平衡への緩和の問題も絡むのにふわっとスルーしがちですね…(´・ω・`)

語学 フランス語・ラテン語で学ぶ英語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • フランス語で遊ぼう

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フランス語で遊ぼう

devenir

これは古フランス語 devenir, ラテン語 dēvenīre (present active infinitive of dēveniō) に由来し, dē + veniō と分解できます. もちろん前回の venir に由来する言葉です. この de はフランス語の前置詞でもある de で, of や from のような意味があります. 他の単語, もっと言えば日本語と英語でもよくあるように, 英語と意味が一対一に対応するわけではありません.

意味は「---になる」で, 英語で言うと become の意味です. 単純に of + veniō と思うと意味不明ですが, ラテン語で arrive のような意味を持つため, 「何かに辿り着く」から「辿り着いて何かになる」というふうに意味が発展したのでしょう. もちろん語源をもっときちんと掘らないとこの意味の展開が正しいかはわかりませんが, 何にせよ語幹を育てるのは大事です. 他にも Wikitionary のラテン語で Related terms を調べてみるといいでしょう. 明らかに英語で良く見かける単語が並んでいます.

  • adveniō
  • antēveniō
  • circumveniō
  • contrāveniō
  • conveniō
  • ēveniō
  • interveniō
  • inveniō
  • obveniō
  • perveniō
  • praeveniō
  • prōveniō
  • reveniō
  • subveniō
  • superveniō
  • trānsveniō
  • veniō
  • ventitō
  • ventō

明らかに英語にもある接頭辞があります. これらはフランス語を経由してラテン語が英語に入っているのです.

英語だけで見ていると関係性が見えない単語の関係性が見え, 英語・フランス語単語を暗記する上でもとても役に立ちます.

現代フランス語としての意味・用法をもう少し説明します. 属詞 (英語でいう補語) の位置に来るのは原則として形容詞か, 職業・みぶん を表す無冠詞の名詞で, 「(形容詞が表す状態) になる」, 「(ある職業・身分) になる」が基本的な使い方です. 職業名でも形容詞がついて個別化すると不定冠詞がつきます. 「彼の妻になる」 devenir sa femme のように所有形容詞がつくこともあります.

ここで無冠詞の名詞と書きましたが, 冠詞も言語ごとに意味・用法に微妙な違いがあります. フランス語には部分冠詞という英語やドイツ語にはない冠詞概念があれば, 不定冠詞にも複数形があります.

疑問代名詞 que を使った表現もあります. 特に「何になるのか」, つまり事態や状況が「どうなる」のか, 人が「どうしている」のかをたずねられます.

他には非人称構文も持ちます. «il devient (ça devient) de plus en plus + 形容詞 + de + inf»で, 「---するのはますます (形容詞の状態) になっている」という意味です.

2021-09-25

数学・物理 つどい講演の補足: 「微分できない微分方程式の解」/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • プログラミング学習の再始動
  • つどい講演の補足: 「微分できない微分方程式の解」
  • 代数学の基本定理は「解析学」なしで証明できる?
  • メモ: 統計学のモデル選択と物理の近似
  • 「アホの子」向けの教育
  • ジョーンズの追悼記事
  • 谷村省吾さんの量子力学の教科書が出るらしい
  • 久し振りに見た河東講義
  • 鴨さんによる数学的帰納法に対する解説
  • 松原グリーン関数の解説

今回は雑多なネタが多いです. 興味があるところだけ適当に拾い読みしてもらえれば.

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プログラミング学習の再始動

ここ半年くらい中高数学・物理・語学との連携としてプログラミングで遊ぶ方向を模索しています. とにかく計算をしようぜ! という一つの方向性として競プロが面白いと思っているのですが, ちょっと凝った問題を解こうと思うとデータ構造またはアルゴリズムの知識が必要で, もういい加減きちんとやらねばと思ってどうすれば自分が楽しんで勉強できるかも含めてここ数ヶ月苦闘しています.

そしてようやく, いわゆる命令型の言語 (?) での勉強がつらいこと, もっと正確に言えば Haskell で書かれた本だと勉強が続けられることを発見したというか認めました. 私にとっては何をやっているか見やすい言語・書き方のようです. Haskell だと実行が面倒で, エディタの支援まで含めて, fsxで書いたコードを REPL に流し込んでパチパチ実行できる F#がお気に入りなのですが, F#で直接書いてくれている本がないため, がんばって Haskell でやる決意を固めました. Haskell だとたまに (F#にはない) 型クラスを使って書かれた本などもあり, プログラミングに関して雑魚なことこの上ない私には厳しいのですが, この辺が腹を括るポイントです.

話は変わりますが, 語学学習に関連して自然言語で「英語はどうにも肌は合わないがフランス語はすごく肌に合う」, 「『英語が駄目なのに他の言語なんて』と思わず他の言語に触れてみてほしい」という人を見かけます. プログラミング言語なら好みの言語はよくある話なので, 自然言語でもそうなのかと面白かった記憶があります.

あとこれを逆に回すのも大事だと思っています. 理工系だと英語は大事と言われていますが, 自然言語でも複数の自然言語に触れるのは大事なのではないかと. 相対論の勉強会でも科学雑誌を読む会でも少なくともラテン語・ギリシャ語の話はちょこちょこ出していますが, この二言語くらいはもうちょっとやっても罰はあたらないのでしょうか.

そしてこれらの言語, 数学や自然科学関係の文献も残っているはずなのにとかく文学関係の文献講読ネタしかないので, 理系向けにカスタムした何かをやらないといけないとも思っています.

とにかくやりたいことがたくさんあります. 数学でもプログラミングに絡めて数理論理系のネタも, 計算に関係するネタも, 九大の横山俊一さんがやっている計算機数論のようなゴリゴリの数学と絡むネタももっと勉強して遊び倒したいです. 一つずつ潰していくしかありません.

つどい講演の補足: 「微分できない微分方程式の解」

補足用の情報はメルマガ読者にも参考になると思ったので, こちらにも書く形で公開回答を作ることにしました.

「理論物理学者に数学を教える上でのコツ」で質問に関して応えきれていなかった感があるのでいくつか補足します. 「微分できない微分方程式の解」に関して粘性解を上げましたが, いい感じの具体例がすぐに出てきませんでした. それに対して例えば小池茂昭, 粘性解が古典解になる時---Caffarelli の研究の紹介にコメントがあります. 冒頭に幾何光学で出てくるディリクレ条件つきのアイコナール方程式 $|Du| = 1$ in $\Omega$ が出てきて, これには古典解 (滑らかなふつうの解) はないこと, そして境界からの距離関数 $d(x) = \inf {|x-y| : y \in \partial \Omega }$が境界条件をみたす一意的な解で, しかも粘性解であることがコメントされています. 弱解といったキーワードも出ています

これ以外にも (一次元の) 波動方程式 $u_{tt} = v u_{xx}$ の一般解として知られている $f(x - vt) + g(x+vt)$ からもいろいろな変な解を叩き込めます. 実際にはこのPDFにもあるように, ダランベールの公式という形で知られています.

ここで形式的には $f$ や $g$ は微分可能でなくても, もっと言えば関数である必要さえありません. 少なくとも超関数の意味で波動方程式をみたせるからです. これは物理としてもそれなりに意味があります. 「関数」$f$ や $g$ としていわゆるパルス波も取れます. 特に単発パルスの極限としてディラックの $\delta$-関数を取ることもできます.

この手の (物理の) 議論の中で出てくる対象としてグリーン関数やグリーン作用素もあります. 例えば拡散方程式で初期値がディラックの $\delta$-関数になっている解を考えることがあり, 物理ではこの場合の解をグリーン関数と呼びます. これはリーマン幾何の基礎で重要な一里塚でもある調和積分論でも出てくるグリーン作用素と大まかには同じです.

いろいろな形で数学・物理を縦横無尽に駆け回るテーマとも関わるので, 念のため補足を入れました. 私の専門とも遠いところで講演直後にパッと思いついたことを書いただけなので, 実際にはさらに深く広い話があります. 解析でも幾何でも, 物理でも. このサイトの中にもいくつかネタを仕込んであるので, サイト内検索などを使って調べてみてください.

代数学の基本定理は「解析学」なしで証明できる?

Twitter で呟いたら魔法少女に教えてもらいました. 面白いと思う人もいるでしょうからメルマガでも紹介しておきます.

メモ: 統計学のモデル選択と物理の近似

細かいことは和すれたのですが, この間 Twitter を見ていて関連することを呟いていた人がいました. この感覚が適切なのかよくわかっていませんが, 統計学は統計学で数学・プログラミングで遊ぶネタとして採用したいのでメモしてあります.

「アホの子」向けの教育

元がはてなの記事でそこから取ったのでタイトルがアレですが, とりあえずこれで. 備忘録的に記録しておきます.

ジョーンズの追悼記事

去年フィールズ賞受賞者であるジョーンズが亡くなったのですが, それに関する追悼記事が AMS から出たようです. Twitter で流れて来たので流し読みしました.

竹崎先生や河東先生の寄稿もあります. 特に直接知っていて作用素環の歴史も知る竹崎先生の話は本当に面白いです.

I couldn't find the words to express my surprise and stopped my car on the road side to calm myself.

ジョーンズのフィールズ賞に関わる話を聞いたときのエピソードとして記事の中にあった文章です. 竹崎先生の興奮が伝わって面白いです. ぜひ竹崎先生のところだけでも読んでみてください. 私が大学院に入った頃にはもはや常識的な話で「そういうものか」という感じでしたが, 当時の衝撃と影響力の大きさ, 範囲の広さが尋常ではなかったことを改めて認識しました. 場の量子論・量子統計の話, そして作用素論の勉強ばかりで, 本来の専攻である作用素環らしい作用素環をろくに勉強していなかったこと, こういうときに少し勿体なかったなといつも思います. 院生のときは院生のときで面白いと思ったことを全力で勉強していて当時としては確かに余裕もなかったのですが. 今からでも遅くはないですし, この辺もいつかきちんと議論することを目論んでいます.

谷村省吾さんの量子力学の教科書が出るらしい

谷村省吾さんと言えば代数的量子論の本も近々 (?) 出るらしいですがとりあえず.

堀田さんの本, Twitter で寄せられた質問に対して当人が長々と Twitter で解説していますが, そういう応答がないとわからないような内容なわけで, 行間がすさまじすぎて当人の講義資料くらいにしか使えないのではないか感があります. その辺の行間が少ない感じの本になっているといいなと期待しています.

久し振りに見た河東講義

はじめの五つが河東泰之先生による2018年の作用素環と共形場理論の講義です. 在学期間中に河東先生の講義がなく, 河東先生の講義を聞いたのは大学院を出たあとだったのですが, 聞く限りでは河東先生は講義うまいですね. 一つ二時間で五本あるので気楽にお勧めできるボリュームではありませんが, 内容自体は面白いので興味がある人はぜひ見てみてください.

この分野, あまりにも難しすぎて本が読めず, 自分でも触れられるところから鍛えようと思って非相対論的場の量子論・構成的場の量子論の勉強をしていたことを思い出します. 構成的場の量子論よりも遥かに多彩な数学が交差していて代数的場の量子論は非常に面白い分野です.

鴨さんによる数学的帰納法に対する解説

上でも数理論理系の話をもっとやらなければと書いていますが, こういうところからも数理論理的な視点や議論に発展するようですし, 情報系のガチガチのプログラミング言語の基礎といった本を眺めても自然数の扱いは重要なようですし, ずっと気になっているところです.

メイン
メモ

松原グリーン関数の解説

これも Twitter で流れてきました. グリーン関数・グリーン作用素は物理でも数学でもいろいろなところで出てきます. 幾何でもリーマン幾何の基礎理論の一つ, 調和積分論・ホッジの定理で重要な対象です. ここでは物性での場の量子論の視点からグリーン関数が議論されていて参考になります.

特に次の記述は場の量子論・物性らしいコメントで面白いです.

グリーン関数のイメージ.平衡状態に粒子をひとつ加え,その後粒子を一つ取り除いて平衡状態に戻すまでの「擾乱の伝播」を表す.

語学 『ファインマン物理学』のオーディオが公開された/相転移プロダクション

今回の内容

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  • 『ファインマン物理学』のオーディオが公開された
  • 再帰動詞とサンスクリット
  • フランス語で遊ぼう

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『ファインマン物理学』のオーディオが公開された

リスニングはもちろんのこと, スピーキング・ライティングの修行にも使えそうです. 最近プログラミング関係の調査・勉強で語学が疎かになっているので, 仕切り直しと勉強を楽しむためにこれを使ってみようかと思っています.

再帰動詞とサンスクリット

この間聞いたところによると, サンスクリットでは目的語は欲望の対象で, 動詞はその欲望の解消手段と捉えるのだそうです. 再帰動詞は自分自身に欲望が向かうという視点で捉えた呼び方と捉えられ, ヨーロッパの言葉に深く刻み込まれているとか何とか. ちなみにフランス語だと再帰動詞を代名動詞と言います.

再帰と言われると私はやはり数学とプログラミングを思い出します. 再帰的な定義, 再帰的なデータ構造など, 根本的なところでよく出てくる概念で数理論理・計算機科学で非常に重要な概念です. 何だかんだ言って数学・プログラミングは西洋で生まれ発展したので, 西洋の言葉・文化がここにも反映しているのかもしれません. いわゆる関数型言語の入門ではよく強調されるものの, 実際にはそれ程使われないとも良く言われます. 競技プログラミングで遊んでいると割とよく使うように思います.

いまの私の習熟度で脳死で競プロのコードを書くとすぐ再帰になります. ちなみにループの代わりに使います.

いまデータ構造とアルゴリズムをシコシコ勉強していますが, 関数型言語というか型が強い言語, 特に Haskell は基本的なデータ構造はよく再帰的に書けます. これが状況をすっきり表してくれて私には本当にしっくりきます.

パフォーマンスを求めるなら, そもそも C なり何なりで書くべきでしょうからまた話は変わりますが, 少なくともデータ構造とアルゴリズムを勉強するときは Haskell 便利だと思います. 最近 Lisp でのデータ構造とアルゴリズムの本が (はじめて?) 出たそうで買って読んでいるのですが, これはこれで面白いものの Haskell ほどデータ構造が見やすくありません. 理解を深めるためにいろいろな言語で実装を見てみる分にはいいかもしれませんが, 初学で様子を掴むにはやはり Haskell がいいのではないかと思います.

私のお気に入りは F# なので F# 版の書き換えもやろうと思って, ここでいろいろやっていました. しばらくさぼっていたのですが, プログラミングも本格始動しようと思っていまリハビリ中です.

フランス語で遊ぼう

venir

前回の aller (行く) と対になる動詞で「来る」の意味です. 昔の言葉は「行く」と「来る」の区別がなかったようで, 同じ単語で「行く」と「来る」両方の意味があります. 実際ロシア語などは古い形をよく残していてどちらもидти, ехатьを使います.

語源はやはりラテン語で venīre (veniō) です. フランス語内でも advenir など跳ねる言葉があり, 見てわかるように英語にも adventure としてそのままの関連語があります. これはフランス語からわかるように ad + venir と分解できます. 相対論でも出て来て驚いたのですが, event も ex + venir と分解できるフランス語・ラテン語由来の言葉です. ついでに prevent もフランス語の prévenir に由来し, ラテン語 praevenīre (praeveniō) に由来します.

用法の上でも aller と比較するのが有効なようで, 「来る」という中心的な意味から, 英語のように「出身や産地, モノの由来」を表します. 他にも英語と同じく話し手がいる場所, 話し手が行く場所に「来る」ときにも使うため, 日本語としては「行く」と訳すべきときもあります.

aller+inf. が「---しに行く」を意味するように, venir+inf. が「---しに来る」を意味します. さらに aller で近接未来が作れるように, venir は近接過去を作ります. ただ aller と違って venir de + inf. の形で, 「たった今---したところだ」の意味です.

他にもモノを主語にして, 時期や出来事が到達する・生じる, 感情や生理現象が起こる, 考えが浮かぶといった用法もあります.

英語と同じく基本的な動詞として異様な活用をします. 過去分詞は venu, 現在分詞は venant で, 現在形は次のように活用します.

人称 単数 複数
一人称 je viens nous venons
二人称 tu viens vous venez
三人称 il vient ils viennent

2021-09-18

数学・物理 明日はオンラインすうがく徒のつどい/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

  • 明日はオンラインすうがく徒のつどい
  • 二次元アニメーションのグラフに関して
  • プログラミングの地道な学習
  • 経路積分

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明日はオンラインすうがく徒のつどい

以前アナウンスしたようにオンラインすうがく徒のつどいで講演希望を出して通ったので, 「理論物理学者に数学を教える上でのコツ」というテーマで話をしてきます. 役に立つ話ができるかと戦々恐々です.

二次元アニメーションのグラフに関して

オンラインすうがく徒のつどいで物理と数学の狭間ではまること, みたいな話をしますが, 数値シミュレーションに関連して, それとも関係あるような質問をもらったので共有します.

アニメーション:x, yで空間2次元なのはわかりますが z 軸のラベルをuとしているのがちょっとわからないです。空間2次元・時間1次元のケースだったはずがアニメーションが空間3次元になっているのはなぜなのでしょうか。

これは一次元のときに横軸が変数の$x$で縦軸は関数の値$u$, アニメーションの「コマ」の意味でも時間変化が時間発展で$t$を表しているのと同じで, 単に$z$軸が関数の値$u$になっただけなのですが, 確かにきちんと言われないとわからないのかもしれません.

これの前に空間一次元の熱方程式のシミュレーションもやっていてそちらには質問がなかったので, むしろ一次元だとなぜ何の問題もなく受け入れられたのかが大事なのかもしれません. 三次元グラフはあまり見かけないからというだけなのかもしれませんが.

何にしろわからないポイントは人によって様々というのを改めて実感しました.

プログラミングの地道な学習

今も新しい本が出続け, いろいろな形で陰に陽に使われていますし, 競技プログラミングも含めて遊ぶための裾野さえ広がっているので, データ構造とアルゴリズムの勉強を地道に進めています.

2021年に初の LISP でのアルゴリズム本が出たというので, それを買ってみたり, 以前買った競プロ系の本を読んだりしています. 大事なことはわかっていつつどうしても飽きてしまうので, 勉強会ネタにして人を巻き込んで無理やり勉強する理由を作って進めています.

ふと思ったのですが, 関数型言語によるデータ構造とアルゴリズム本があったのを思い出して読んでみたのですが, 不思議とこれは続きます. ちなみに Haskell を使った本です.

Haskell はデータ構造をデータ型で表現でき, 関係する関数も型から自然に導けてサンプルコードも読みやすく, 読んでいて楽しいです. そもそも Haskell が気に入っているというのはあります.

Haskell これ自身は純粋性からこういろいろと面倒なことがあり, Unix 系でないと困る点もあって, 実際には F# に移植していろいろやっています. 私の F# の腕では直接でなくも移植するのは大変なのですが, VSCode での REPL 連繋のよさもあって F# は本当に快適で気に入っています. LISP は LISP で私のメインエディタである Emacs との相性というか設定の楽さがあって, コーディング体験自体は非常にいいです.

語学の方で多言語を無理やり進めていますが, 言語の方もそれなりに多言語の特徴を見てみたいというのはあり, とりあえず飽きずに勉強を進められるようにすることを優先させています.

経路積分

量子力学レベルでの基本的な部分はノート作りが終わりました. この内容だとやはり Simon の Functional Integration And Quantum Physics が基本文献のようで, いつかはこれにもアタックしなければいけないと思っています. Simon は関数解析系数理物理の聖典, Reed-Simon のきつさの印象が非常に強く, この本もそういう厳しい感じの本でなければいいのだがと戦々恐々しています.

最近新しいことを詳しく勉強しようモードなので, 超準解析・超準確率論と量子力学という方向の経路積分の勉強をはじめました. 超準解析に関して適当に質問するとさっと答えてくれる知人がいるので非常にありがたいです. 超準解析は小澤正直さんが量子測定に応用しているそうなので, そういうところも勉強したいと思っています. 公理的集合論や数理論理もいつか改めてきちんとやりたいところです. 勉強したいことはいろいろあります.

最近モードチェンジしてしまって, リーマン面まとめ企画が頓挫していますが, これもそのうち復活させるのでしばらくお待ちください.

語学 フォーマルな英単語と外来語/相転移プロダクション

今回の内容

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  • 第38回 第19文の多言語比較・読解 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会 https://www.youtube.com/watch?v=gb_KyWloI3g
  • フォーマルな英単語と外来語
  • フランス語で遊ぼう aller

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フォーマルな英単語と外来語

これは勉強会で小ネタとして紹介した内容でもあります.

Twitter で次のツイートを見かけました.

表は下に転載しておきました. 今週ワクチンの副反応による体調不良で時間がなくて調べ切れておらず, 上で引用したような意見もあるので必ずしも正確ではないようですが, いくつか明らかに informal はゲルマン系, formal がラテン系の語彙になっています.

異文化を受け入れた側にとって固い言葉が外来語というのはよくある話なのかもしれません. ラテン語にしてもその前の古代ギリシャ語の語彙をそのまま使っているケースがあります. 哲学や自然科学系統のラテン語単語はギリシャ語由来の単語がよくあります.

逆にフランス語やイタリア語などのラテン系の言葉での口語・文語がどういう区別になっているのかが気になっています. 日本語・英語についてはある程度まで外来語が formal な用途に使われると言えますが, 大元の外来語の方ではどうなっているのかがいまの私の問題意識です. 先のツイートでもゲルマン語内での informal/formal 問題があるので語感がかなり気になっています.

以前, Twitter で「自分の書く論文でもネイティブから見ると 『我々はこの手法を用いて研究しまちゅ』みたいな文章を書いていないか時々不安になる」みたいなのを見かけたことがあります. あまり気にしても仕方ないとは思いますが, 本当に気になるならフランス語・ラテン語を軽く勉強してみるという手法はあるのかもしれません.

あとこれもTwitterで見かけてメモしたはずがどこにあるかわからない事案で, 「日本語が完全に流暢に話せる外国人の知り合いに, 滞在許可的な公的な話をする役場に行く上で日本人の自分が付き合わされた理由」的なツイートがありました. その外国人が話せるのは完全に日常会話の語彙しかなく, いわゆる formal な言葉が話せず, formal に話すべきところで formal な語彙・表現を知らないデメリットを強く知った, みたいな話がありました. formal な表現を知るべき理由みたいなところでちょっと衝撃を受けました. 確か特にその知人がアジア系の若い女性だったようで不法滞在系の疑義を受けやすく, その状態で「だからそう言ってるじゃん」みたいな口語日本語しか話せないようだと, いわゆる TPO の問題で場に合った表現ができないと非常に印象が悪いわけで, 冗談ではすみません.

そもそもの話として, こうしたフォーマルな表現は日本語でも説明ができません. 日本人ネイティブでも個々の単語に関して判定はできても一般的なルールは説明できません. 英語であっても, 言語学者でもない限りルールは説明できないでしょう. きちんとした英語を話さなければいけない人や, そうしたニーズはあると思うのですが, いいコンテンツがないように思います. とりあえずフランス語・ラテン語を勉強するといいのではないかという暫定的な判断をして, これらを勉強しています.

informal formal
choose select
maybe perhaps
show demonstrate
look for seek
first of all to start with
live reside
whole entire
blow up explode
anyway nevertheless
sorry apologies
I think In my opinion
to sum up in conclusion
in the end finally
but however
point out indicate
go up increase
stand for represent
leave out omit
think about consider
seem appear
rich wealthy
ask enquire
buy purchase
climb ascend
check verify
get receive/obtain
go leave/depart
help assist
keep retain
see observe
stop cease
start commence
tell inform
try endeavour
use utilise/consume
want desire/wish for
good positive
childish immature
free release
buy purchase
give provide
ask enquire
so therefore
check verify
get by survive
say express

フランス語で遊ぼう

aller

これは異様な活用をする単語として有名です. あとで直説法現在と単純未来の活用表を載せておきます. 直説法現在は va と原形 aller 系の語根があり, 単純未来では ira 的な要素が語幹になっています.

Wiktionaryによると補充形 (ほじゅうけい、suppletive form) の動詞で, 補充形とは異形態の一種で他の異形態と音韻的な共通性のないものを指します. これはラテン語 vādō ("I go") が現在形を与え, eō と同義の現在能動不定形 īre が未来形と条件法を与えます. all- の形は中フランス語 aller, 古フランス語 aler (with subjunctive aill- and other forms with all-), 俗ラテン語 *alō から導かれたようです.

英語でも go-went-gone のように過去形で went という異様な要素があり, 基本単語は基本的なだけに, 意味としても形としてもよく使われるいくつか基本的な単語を巻き込んで一語になっていることがあります. 英語の know を調べてみてください.

aller の意味を少し掘ってみましょう. まず意味については中心的な意味は「行く」です. ここから物事や機械が「調子よく進行する・動く」ことや, 毎日の暮らしや健康状態が「順調に進む」ことも意味します. 例えば «Ça va?» (元気?) は有名でしょう.

他には服や家具などが人やモノに「似合う・調和する」ことにも aller が使えます.

英語で be going to がいわゆる未来形を表せるように, 助動詞的な用法があります. 一つは「---しに行く」という表現で, もう一つは近接未来の表現です.

近接未来は直後, または確実に起こることに使う表現で, 単純未来よりも主語の意志や主観が強く出ます. 例えば「お金を返すね」と言いたいときは近接未来で言うべきで, 単純未来で言うと「余裕ができたら返すかも」のような意味で取られてしまうようです. こうしたニュアンスを時制や助動詞で表現できるのがフランス語の面白いところで, 文学・言語表現上のポイントのようです. 近接未来を過去形にするときは半過去になるといった話もあります. フランス語は英語と比べて少なくとも文法上の時制は非常に複雑です. 私もいまだにまったく勉強が進んでいません.

ちなみに古い言語では「行く」と「来る」に区別がなく, 同じ単語になっているようです. 例えばロシア語はいまでもその古い特徴を保っていて, 実際「行く」と「来る」が同じ単語です.

直説法現在
人称 単数形 複数形
一人称 je vais nous allons
二人称 tu vas vous allez
三人称 il va ils vont
直説法単純未来
人称 単数形 複数形
一人称 j'irai nous irons
二人称 tu iras vous irez
三人称 il ira ils iront

2021-09-11

幾何との連繋・経路積分の技術的面白ポイント/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

いま細かい内容は web に飛ばして, 興味があるところだけ読めるようにしているため, 個々の読者の方にはあまり関係ないとは思うのですが, 数物系と語学と二つわけるのが面倒になってきたので, 今後はメルマガで発信する口自体はわけつつ, web 上でのメルマガページは統合するかもしれません.

読みやすさと私の書きやすさ・管理のしやすさを考えつつ, web 上での載せ方はちょっと検討する予定です.

感想をください

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.

ではまたメールします.

幾何との連繋

プログラミング講座に参加されている方から「幾何をもっときちんと見てみたい」というコメントを頂いたのですが, 何をどうするといいかというのがいまだにあまりよく見えていません. 正確に言うと, 自分が制御できる範囲は日々拡充させていて, 見せたい切り口もあるのですが, まだ面白く語るに足る力量が備わっていない状態です. 興味がある人はいると思うのでプランというか概要は紹介しておきます.

現代数学探険隊では微分論の最後, 陰関数定理と逆写像定理の議論の中で円周から多様体への議論を詳しく議論しました. 多様体自体は高校数学からも直接攻められる世界ではありますが, 抽象化した瞬間に即死レベルのコンボを叩き込んでくる曲者です.

よくある曲線論・曲面論はいまだにどう導入すると面白くなるのか見えていません. 極小曲面論や変分と絡めた議論すればまた違うと思うのですが, そうなると関連する数学が難しくなってきますし, どうすると面白いでしょうか. 曲線論は常微分方程式と絡めると多彩な世界が描けるとは思うのですが, なかなか気に入る導入が見えていません.

ここまで書いて思い出したのですが, 以前献本してもらった井ノ口『曲面と可積分系』はかなり面白い本です.

中高数学から飛んでいくにはあまりに厳しい本ですが, 一つお勧めではあります.

それはそれとして微分積分の徒手空拳から幾何に行くアプローチ, 何かいいのを見つけたいとは前から思っているものの, 幾何への素養がいまだに育っていないため, 微分位相幾何や微分幾何のかなりハードなところしか思いつけていません.

あともう一つ気になっているのは最近の物理・機械工学・制御などへの幾何の応用です. 例えばロボットで関節などの位置・座標を制御パラメーターとすると, 腕の長さなどの座標の制約があり, 数学的には部分多様体の議論が自然に出てきます. 姿勢の安定性の判定の条件は関数の極値問題ですが, もちろん幾何的な解釈があり, そこからの幾何との関係もいろいろあると聞いています. 他にも猫の宙返りの微分幾何は有名な話で, それもそれほど簡単ではありません.

微分積分を一所懸命がんばった最果てで幾何が出てくる世界はとても気になっていて, もっときちんと勉強しようと思って, 基礎の勉強を進めるばかりで何も手についていません. これも勉強会形式で無理やり人を巻き込むのがいいのだろうとは思っています.

以前メルマガとしても切り分けた語学の話も, 勉強会で人を巻き込むようにするといろいろと捗ることがわかったので, やはり人を巻き込んで何かするのが勉強を進める近道だと最近痛感しています. 語学方面の知見を深めるために眺めたラテン語の本でも, 「ラテン語を勉強する一番簡単な方法は教えることだ」という話が紹介されていて, 「学習歴は関係ない. 教え, そして学び続ける意志とそれを実行にうつす力が大事だ」と書かれていました.

数学・物理だとかえっていい加減なことができなくなるのもわかっているので, 少し目先を変えて数学・科学関係の英語の記事を眺めることで英語・語学と科学を一緒に勉強しよう, みたいな企画を回しています. 変な話ですが, これは素人なりにいろいろ遊んで楽しいという姿勢を前に打ち出す形で楽しめています. 語学と数学・科学を絡めた方向から攻めるのも一手だと思っているので, まずはそちらでいろいろ遊ぶ算段を立てています.

木村太郎さんからのコメント: 素粒子と物性と幾何と解析と

この間メルマガで書いたことに関して, 文献をいくつか教えてもらったので紹介します.

カイラル対称性というのは詳細は省きますが,ディラック演算子の指数定理と深い関係にあります.それを格子上でどう定めるか,という問題は数学的にも面白くて,最近は古田先生なども興味を持たれている様です:

あとは関根さんの後輩たちもこういった論文を書いてます:

という感じで,素粒子論の業界的には,格子ゲージ理論 $\sim$ 数値シミュレーション,という研究が多いと思いますが,個人的には物理・数理的にも面白いトピックだと思います.日本語でも青木慎也, 格子上の場の理論という教科書があります.

双対性といってもいろいろあるのであれなのですが,橋本さんの想定していることの一つに,例えば全く別の文脈で同じ方程式が出る,というのがあると思われます.これを体現したものとしてKoji Hashimoto, Taro Kimura, 2015, Band spectrum is D-brane こういう論文があります.

あと格子QCD・ゲージ理論に関連して関連する文献もいくつか教えて頂きました.

Peierls (1933) Zur Theorie des Diamagnetismus von Leitungselektronenも参考になるようです. 格子ゲージ理論に対して作用素環と指数定理などの関係もいろいろあるようで, そんなところまでと思ってかなり驚いています.

現代数学探険隊 解析学編 PDF 販売のページにも指数定理の話を書いています. なぜ指数定理を盛り込んだかというと, ここにもあるように幾何と解析と (一部の) 物理との架け橋になっているからです.

大定理にもいくつかの種類があります.

  • 結果それ自体が強い.
  • 結果も強いがそれを証明する技術面でブレークスルーがあり, 証明技術に強い応用がある.
  • 結果それ自体がさらなる理論の基礎にもなる.

指数定理はいろいろな定理を統合する定理であり, しかも結果それ自体がさらなる理論の基礎にもなるタイプの定理です. 作用素環の応用の一つである非可換幾何でも, 指数定理の展開が一つのポイントなようで, 夏目-森吉の有名な本にもコメントがあります. 私自身ますます幾何や指数定理への勉強意欲が湧いてきました.

前から数学関係者向け, または学部低学年からなるべく面白く多彩な物理に触れられるようなコンテンツ作りは目標で, その一つに線型代数だけで戦える格子模型がずっと想定にあります. 私自身修論で議論したハバード模型は, 線型代数の徒手空拳でいろいろなことがわかる教育的なモデルでもあると思っています. 修士の頃にも読んだ田崎さんのレビューが一つの方向性です. 最近スピン系まで含めた本も書かれたようなので, それもチェックしないと, と思いつつ読めていません.

数学的に少ない予備知識から物理に迫るラインナップとして, 格子ゲージ理論もいいのではないかという霊感があります. 何だかんだで量子力学に興味がある人は多く, 物理的な予備知識をおさえて量子力学に触れられることに越したことはないので. そんなに簡単ではないと思いますが, 数学としても物理としても, プログラミングとしても数値計算で遊ぶ方向は一つの核と捉えていて, 数値計算の蓄積がある分野としても注目しています.

基本的な線型代数・微分積分からの広い数学への展開として, ランダム行列もかなり使えそうなので, 引き続き時間を作ってランダム行列の本も詳しく読み進めていくつもりです.

経路積分の技術的な面白ポイント

いま物性の基礎の本を適当に眺めているのですが, 経路積分・汎関数積分を主軸に据えた本らしく, そこでも強調されていた話があります. 現状, 物理の経路積分に対してコメントできることはないものの, 雑に読んでいるので本に書いていなかったような気がする分まで含め, 最近確率論と絡めて勉強していると言っている経路積分に関して数学面からいくつかコメントします. 以下面倒なので経路積分を汎関数積分で通します.

汎関数積分のいいところは作用素 (演算子) を関数で評価できるところにあります. 特にハミルトニアンという「作用素」積分で書けるのが強烈です. 積分に関しては近似含めていろいろな評価技巧があるため, それが転用できるのがポイントです.

作用素は何が難しいかというと, 作用素はまさに作用で, その前後の結果しかわからず細かいことが何も見えません. 一方で積分作用素として積分で書けると, 各点ごとの細かい様子が見えるようになります. つまり作用素を作用素として見るとブラックボックスになっている部分が見えるご利益があります.

もう一つ大事なのは自由場のハミルトニアンがガウシアンと直結することです. 特に $e^{-x^2}$ の評価がポイントです. 強い収束性を持つ因子なので収束性の議論もしやすくなり, それがありとあらゆる良い評価法の基礎です. 鞍点法のような古典的な良く知られた評価も使えてとにかく便利です.

微分と積分についても簡単にコメントしましょう. まず数学から見た微分方程式論では一項一項の処理がとにかく大変です. ある項があるかないかで方程式の性質が激変します. 物理ではよく「いま考えている議論ではこの項は落とせる」というのがありますが, 数学でそれをやると方程式の性質が激変して, 使える手法が使えなくなることがあります. もちろんある手法が使えないことと方程式論としての難易度が直結するわけではありませんが, 解の定性的な振る舞いが変わるので数学的な細かい処理に影響が出てくる可能性は常にあります.

微分が面倒なのは差の処理の面倒さに由来します. 微分係数の定義はもちろん $\lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h}$ ですが, 引き算の処理は面倒なのです. これは積分と比較した方がわかると思うので積分の話をしましょう.

積分は足し算の極限なのでとにかく足します. そしてある程度実数論などを勉強した方にはわかるように, 不等式処理をするときは三角不等式なり何なりで正・非負の数を足し上げる形に帰着させます. 正・非負の数を足したら値が正の方向に積み上がるだけなのでごくごく単純です. 微分の場合は差で正負が入り乱れるため, こういう単純な処理ができません. 変分法が便利なのもこの事情によります. この点でもとにかく積分に帰着させたいのです.

またできる限り全体の様子を使い倒したいのは統計学でも同じです. いわゆる最尤法は原理的に尤度関数の極値の情報しか拾えません. 一方, 昔のベイズ主義がどうかはともかく, 最近流行りのベイズ統計は尤度関数の情報をもっときちんと拾うのがポイントです. 今流行りの内容に関するベイズ統計がかつて難しかった理由の一つは, 関数全体の情報を拾うのが難しかったからで, 高次元積分の数値処理が難しかったからです. 最近はコンピューティングパワーが格段に上がったので計算機で高次元積分をぶん回せるようになり, 積分絡みの計算がやりやすくなった事情もあります.

計算機というかプログラミング関係の話を地道に勉強してコンテンツを作っているのも, やはりこの流れ, または勉強の結果によります. 数学・物理だけやっていたときよりもも別角度から数学の難しさが見えてきて, これはこれで面白い点があるからです. この意味で, 応用などは一切関係なく数学として統計学に触れてみるのも一興です. 数値計算・プログラミングも絡めて勉強できる・する価値のある分野で, 関数列の収束を数値的に追い可視化する手法さえ発達しているので, ふつうに解析学の教材としても使えます. この辺は統計学の勉強会をやって実感できた知見です. 統計学で育っている手法とそこから見える世界は, メルマガ読者のあなたにもぜひ体感してほしい世界です.

やりたいこと・紹介したいことは毎度毎度山程あります.

英語 event とフランス語 événement とラテン語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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いま細かい内容は web に飛ばして, 興味があるところだけ読めるようにしているため, 個々の読者の方にはあまり関係ないとは思うのですが, 数物系と語学と二つわけるのが面倒になってきたので, 今後はメルマガで発信する口自体はわけつつ, web 上でのメルマガページは統合するかもしれません.

読みやすさと私の書きやすさ・管理のしやすさを考えつつ, web 上での載せ方はちょっと検討する予定です.

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勉強会のメモ

語学の勉強会もはじめてそろそろ一年です. 毎回面白いと思ったことを話しているので私は楽しいのですが, 一年ずっと参加してくれる人がいるので, どう控え目に言っても万人受けするとは思いませんが, 響く人・求める人はもっといるだろうと思っています.

数学・科学・プログラミングとも絡めようとしていることもあり, 人を選ぶとは思いますが, だからこそ求めている人もいるはずです. 勉強会をはじめてから一年経ったこともあり, 求めている人がきちんと探せるように, そろそろ本格的に情報発信しないといけないフェーズだと思っています.

科学雑誌を読む方も, いろいろな文章をさくさく読むのも, 中高生向けの文章から必ずしも数学・物理に特化しない日常系の語彙に出会う機会にするのも, 訳した日本語から英語を復元する英作文に転用するのも, 科学系の知見を増やすのにも使えそうです. 色々な活用法がありうるので, 遊び倒せるコンテンツとしてどう使うか妄想を膨らませています.

フランス語で遊ぼう

各言語のページに単語のオンライン辞書へのリンクや調査メモ (和訳) があるので, 必要に応じて参照してください.

événement

これは今回の相対性理論の勉強会で出てきた単語で, des événements simultanés として出てきました. 対応する英語は simultaneous events で, 対応するドイツ語は gleichzeitige Ereignisse でした. ドイツ語は明らかに別物で英語が明らかにフランス語に寄っています.

フランス語は明らかにラテン語由来で, 実は ex + veniō と分解される単語だそうです. アリナミン Ex のように ex はもはや日本語化していると思いますが, event が ex から来ているのを知ってちょっと驚きました. ちなみに以前調べていたものの完全に忘れていたので, 時々きちんと復習するのも大事だなと感じています.

ちなみに veniō は come の意味で, フランス語だと venir でイタリア語では venire です. イタリア語で come は Come sta? / Come stai? などに使われていて, 英語でいう how/as にあたる全く別の単語です.

フランス語またはイタリア語は語彙がほぼ直接ラテン語とつながっているので, ラテン語はちょっと, というならとりあえずフランス語やイタリア語を勉強してみてはどうでしょうか. ラテン語は文法というか実際の文が凄まじいことになっているので, 文法までやりたいならそれ程参考になりませんが, 単語に関してはある程度参考になります.

相対性理論の勉強会動画でもいろいろ話しているので, 詳しくはそちらに任せます. いったんクローズ状態にした数学・科学の雑誌や記事を読む会でもいろいろ話しています.

prendre

よくある訳は「取る・掴む」です. 英語と同じく基本単語は異様に幅広い用例・用法を持っていて, この prendre も同じです. 「ものを手に取る」から戦争で街を「取る・占領する」まであります. 「人からモノを取り上げる・奪う」ときにも使えます.

方法や手段を「選び取る・選択する」意味への展開もあり, 「ある方向・道に進む」, 「ある交通手段を選ぶ」, 「メニューを見て選ぶ」, 「食べる・飲む」にまで使えます.

他に恐ろしい用例として自動詞として「(液体が) 固まる」, 「(火が) つく」, 「効果がある」といった意味さえあります.

もっと詳しく見てみたければ次のオンラインの仏仏辞書を見てみるのもいいでしょう.

ラテン語では prendere にあたることも書いてあります. やはり英英, 仏仏, 独独辞書などはとんでもないことまで書いてあるので, 一語を深く突っ込んで勉強するには欠かせません. 語源については Wikitionary も楽しいです.

Wikitionary には prae- ("before") + *hendō ("I take, seize") と分解されると書いてあります. 前者の prae- はいわゆるプレでしょう. 大学受験の頃のプレ模試などで日本語化していると言っていい言葉と思いますが, こういうのもラテン語なわけです. 後半の *hendo は英語にも入っていて, comprehend や apprehend があります. これも以前相対論の勉強会で話したことがあり, com は con でこれがまたラテン語由来で, 英語の中にもたくさんあります.

これも勉強会でいろいろな例を挙げつつ話していて, 今回も少し触れたのですが, フランス語はノルマンコンクエストでイングランドを支配していた歴史的経緯があり, 支配層の言葉, (当時の) 文明的・先進的な言葉として固い言葉・正式な言葉として, 英語の中に散りばめられています.

よく英語でも他の国の言葉でも, もちろん日本語でも「それで通じるが, 幼稚な表現なので避けましょう」と言われる表現や単語があります. 日本語でこれらをよくよく考えると, 割とこう日本語本来の言葉と漢字語, もっと言えば中国的な言葉に行き着きます. 英語でもフランス語由来の言葉は固い言葉・正式な言葉としてよく使われる雰囲気があり, 相対性理論の原論文のドイツ語と英訳を見比べるといろいろ見えてきます. 学術的に使われている単語で, ドイツ語はドイツ語をそのまま使っているところに, 英語だとフランス語と同じ単語が当てられていることがよくあります.

大人の格好いい英語を使いたいという人は, フランス語を勉強してみるといいかもしれません. 逆にこういう要望を持つ人向けに英仏をうまいこと絡めて勉強する方法を紹介・提案すると, これはこれで引きがあるのかもしれません. いろいろ考えて集客的なこともがんばります. 興味がある人いたら連絡を頂ければと思います.

2021-09-04

宣伝: 富谷昭夫さんの場の量子論勉強会/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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宣伝: 富谷昭夫さんの場の量子論勉強会

最近 Julia 関連でも積極的に活動されているようですが, 富谷昭夫さんが場の量子論の勉強会を開くそうです.

私も物理としての場の量子論の勉強も半端で止まっているので参加しようと思ったものの, 時間が合わなくて断念しました. 興味がある方もいるだろうと思ったのでここでも紹介しておきます.

オンラインすうがく徒のつどい

先日お伝えしたオンラインすうがく徒のつどいの日, 9/19も迫ってきたので本格的に資料作りをはじめています. 参加募集も出ているので念のため宣伝しておきます.

あまりよくわかっていないのですが, 配信スタイルはいろいろあっていいようで, 私の分は YouTube ライブでやってみようと思っています. まだ使ったことがないので当日までに何度かテストしてみないといけないと思っています.

内容としてはアブスト通りですが, 基本的な内容をきっちりやるべきだと思って詳しく作っていたら, あまりたくさんのネタは盛り込めなさそうです. 一応話す内容は YouTube にも上げた内容なので興味があれば YouTube を眺めてみてください.

確率論・経路積分

書いたかどうか忘れたので念のため書いておくと, 読んでいるのは新井先生の汎関数積分の本です.

とにかく異様なくらい丁寧で読みやすいので本当に助かります. 一段落したら超準解析と確率論まわりの話を勉強しようと思っています. 代数と幾何の基礎事項のノート作りも必要なのですが, せっかく堀田量子で量子力学づいてきたのでこの流れでしばらく進める予定です.

新井本を読んで改めて思ったのは, やはり確率論を勉強したいというよりも, 量子系の数理, 作用素論と絡む形での確率論に興味があるのだろうという自分の趣味です. あとは大偏差原理と統計力学まわりもずっと興味はあって, いつかアタックしたい分野です.

プログラミング, アルゴリズム

統計の勉強会で, 「自分一人ではなかなかやらないが, 勉強してみたいこと, 何かしらの意味で勉強しておかなければならないこと」として, いくつかのネタを並行してやっています. そのうち Julia の Statistics ライブラリのソースを読んだりするのも考えています.

アルゴリズムも取り上げようと思っていて, Twitter で適当に呟いていたら Common Lisp でのアルゴリズム本なども教えてもらいました. 私は普段使いのエディタが Emacs なのですが, Emacs と Common Lisp は異様に相性がよく Chromebook でも軽快に動くので, この本も並行して読んでみようと思っています.

おそらく人にお勧めしにくい言語なのでコンテンツとして組み上げるときには困りそうですが, プログラミングコンテンツも自分の勉強を兼ねていろいろ遊んでみています.

既存のプログラミングコンテンツもいまいろいろ感想をもらっているのですが, 割と狙い通りの感想をもらえていて面白いです.

あとプログラミング, 特に競プロをやっていると, 中学・高校のときの単元ごとの大量な演習問題がほしくなってきます. AtCoder が資格本を出しているようですし, それにたくさん載っているかもしれないので調査しようと思いつつ, 時節柄本屋にも行けていないのでまだ調べられていません. この辺もたくさんある課題の一つです. 数学・物理の人向けのコンテンツとして非常に重要だと思うので, いつかはきっちり組み上げたい対象です.

思ったよりもラテン語は無茶苦茶だった/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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今回の勉強会の記録

今回は小ネタは雑誌を読む勉強会に回したので, 相対論の方は相対論に集中できました. 相対論は一年かけてようやく 18 文目まで行きました. 余計な話もいろいろしているので凄まじく進展が遅いですが, ようやく時間と事象の処理が大事だと明言された部分が来て, 本格的に相対論に入りつつあります.

科学雑誌の方は小ネタを 40 分も話していたのでまた本編である, まとまった文章読みの進みが悪かったのですが, こちらはもっと雑多に, かつ私の時々の勉強内容の共有的な部分もあるので, まあいいかと思って (私にとっては) いい意味で適当に進めています. ラテン語を改めて雑に勉強したのでその話もいくつかしています. エンタメと絡めた話や語源の話もしました. 今回話すのを忘れた文法上の性質もあるので, 次回の「数学・科学の雑誌を読む会」で話す予定です.

学部二年のときにもいわゆる教養の講義でラテン語をやったのですが, そのときの記憶がもうほぼありません. 文法をどこまでどうやったか覚えていないのですが, こんなに覚えていないものかと衝撃を受けています.

それはさておき, いまメインの英・独・仏・伊・西にとってラテン語・ギリシャ語が大事なので, 本当に雑にラテン語・ギリシャ語を勉強した話も少ししました. 文法も大事ですが, 現状私の趣味は単語比較にあるので, むしろ単語を大量に覚えるのを頑張らないといけない状態です. フランス語は実用目的でいろいろやり, そこからラテン語はある程度カバーできるのですが, ギリシャ語・ロシア語・アラビア語・中国語あたりの単語を大量に叩き込まねばならず, 道は遠いです.

アラビア語は文字から覚えなければならず大変です. ギリシャ語も文字はわかるのですが, 古典ギリシャ語はアクセント記号でやたら発音が切り替わるので, それをきちんと覚えるのが本当に面倒です. こういうとき音声教材の補助があると便利だと改めて実感しました.

最近さぼっていますが, 英作文ももっと訓練しないといけません. 目が回るほどやることがあります.

最近本当に思うのは, やりたいことは勉強会を立ち上げて人を巻き込んでやるのが一番ですね. ドイツ語・フランス語の勉強はまさに相対論の勉強会のためにというモチベーションがやはり強く, その他の言語も勉強会で話をするから無理やり時間作ってやっている面があります. 英作文も専用の勉強会を立ち上げようかと思っているところです.

英語以外のいろいろな自然言語をやるのは, 各言語それ自体を勉強しようというよりも, 言語に対する感覚を研ぎ澄ませる方が目的です. 何にせよ言語活動は必要不可欠で, 理工系であろうとも絶対必要だからです. むしろ自然言語の守備範囲を飛び出る理工系にこそ, それをどうには自然言語におさめる部分で強い言語感覚・バランスが必要だと思っています.

作文もまずは必要性からして英作文にフォーカスしますが, 少しずつフランス語など別言語もカバーしたいと思っています.

フランス語で遊ぼう

書き忘れていましたが, 各言語のページに単語のオンライン辞書へのリンクや調査メモ (和訳) があるので, 必要に応じて参照してください.

faire
基本的な意味

これには「---を作る」「---をする」の二つの意味があります. 家でパンやケーキを作るのも, 工業製品を生産するのも, 小説を書くのにも使える単語です. 他にも faire du ski でスキーをする, faire du latin でラテン語を勉強するという用法さえあります.

英語, 特に英作文でもとりあえずこれを使っておけばいい単語・動詞として have や get などがありますが, それと同じです. 何にでも濫用しているとやはり幼稚な印象を与えるそうですが, 何も言えないよりはましという状況では便利です.

英語の make と同じく使役構文を作れること, 非人称構文で天候を表現する特性もあります.

基本動詞によくあるように, 活用は変則的です. 発音も一部おかしく, 一人称複数の現在形 faisons は, フランス語の発音ルールからすると「フェゾン」のように読むべきところ, 「フゾン」と読みます. 異様な英語と違ってフランス語はほぼルール通りの発音なのでかなり珍しいです.

語源

ラテン語の facio が元で, ラテン語自体にまさにこの二つの意味があります. ちなみにイタリア語だと fare で, この三言語では明らかに「同じ」単語です. スペイン語では hacer でスペル上 h と f が入れ替わっていますが, 語源は同じでラテン語・印欧祖語です.

英語の do, make

フランス語の faire は英語の do と make にあたるので, ついでにこれも調べておきましょう.

Wiktionary によると do はゲルマン祖語・印欧祖語に起源を持っていて, 印欧祖語としては to put, place, do, make の意味を持つ *dʰeh₁- が起源とのこと.

Wiktionary によると make はラテン語 mācerō, macer, 古代ギリシャ語 μάσσω (mássō) にも起源があるようですが, ゲルマン系の言語で, ドイツ語 machen と同根です. 他のゲルマン系の言語で同根の単語があります. Wiktionary で同根の単語を眺めていると言語間の単語の遷移・変遷・関係が見えてくるので, 地道に数をこなす意義も見えてきます. Wiktionary は便利なのでぜひ使い倒してください. そして面白い単語や語源があったら教えてください.

フランス語と同じく, 英語でも make でいろいろなモノを作れます. 英作文では make だと意味が弱くなる上, (日本人が書く文章では) make O の O に動名詞が来る場合もよくあり, その場合は O の動名詞をそのまま動詞に使った方が文意も明確になり, しかも短くさえなるから注意するべしという (私の中の, またはテクニカルライティング) 鉄則があります. フランス語でも faire ばかり使っていると幼稚に感じられると書きましたが, おそらく同じ感覚なのでしょう.

ドイツ語の tun, machen

もちろん do と tun, make と machen に対応があります.

実は machen が面白く, 英語の make の印欧祖語語源で od, make 両方あると書いたように, machen にも do, make の意味があり, ドイツ語の文法書を見ていても do, make 両方で例文に machen を使っていて, tun はほとんど見たことがありません. この点, どうも英独仏伊西蘿で見るとむしろ英語がイレギュラーのようです. 他の欧米系言語でどうなのかまでは把握しきれておらず, この10にも満たない言語間の比較にどこまで意味があるかは微妙ですが, いまの私の認識の記録として記録しておきます.

ドイツ語の machen もフランス語のように多彩な用法があります. これも英語と同じように考えればいいでしょう.

2021-08-28

『ランダム行列の数理』が気になってきた方の市民/相転移プロダクション

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メルマガへの返信

次のようなコメントが来ました.

無責任に書きますが、知識そのものもさることながら、本を読んでいるときの感覚(堀田量子本に対する感想のようなもの)を放談風に書いてくださると非常にありがたいです。結局ちゃんとやるには自分で読み込まなければならないのですが、そもそも「これ」は超難しいのか、コツさえつかめばやさしいのかという感覚がわからないので。

これはいろいろな意味でただでやれるレベルの内容ではないので, やってほしいと言われても困るのですが, 何かしらこれまでとは違うこと, または違う切り口でのコンテンツ・サービスを展開した方がいいのだろうなとは思っています.

考えていることはいろいろありますが, 「お金かかるならいいや」という人も多いようなので厳しいですね. そこまでの信頼が得られていないのでしょう. 不徳の致すところです.

凸関数に対する議論と簡単な計算とプログラミング

Twitter を見ていてちょっと気になることがあり, 凸関数に関するミニノートを作りました.

この中で非凸性の証明が面倒だったので (Julia で) 数値計算した結果とそのグラフを張ることで証明とした部分があります.

さっとプログラムを書いてお絵描きできると便利なのを改めて感じました. 統計の勉強会でも散々数学的・定性的に議論したことでも, 改めてプログラミングでお絵描きしてみるとまた違う感慨があって面白いというのを何人かで確認しました. Julia の勉強も兼ねてやはりこれもコンテンツ整備したいとは思っています.

プログラミングで数学を 中高数学虎の穴

量子力学の勉強会で「ちょっとレベル感が違う (難しすぎる)」からと言っていた方に, それならこれはどうか, と既存のプログラミングコンテンツを勧めてみたのですが, 楽しんでもらえているようです.

いま経路積分が楽しすぎて完全に停止していますが, リー環の勉強でプログラムを書いて行列計算させるのが非常に便利で, しかも楽しいです. ふつうの行列論・線型代数もさることながら, リー群・リー環のような具体的で役に立つ少しアドバンストなテーマについても, こういうノウハウを貯めています.

メルマガ送信前のたった今, 次のコメントが来たので返信しておきます.

グラフを活用して視覚的な理解を得ていますが、四変数以上の場合などで図示できない数式をどう直観的に把握すればよいだろうかと思いました。その点、プログラムを書いて理解するという学習法は視覚的側面もありつつ図示の限界がないのでよいかもしれないとも感じました。

まず結論から言えばそれはそうです. むしろ現代数学に関わる他の講座では「視覚に騙されることもあるので, 下手な図を描くのは勧められない」とまで言っています. あとでも考える量子力学からすると, そもそも「見る」ことの意味さえ自明ではなく, 視覚的な理解の定義からして問題です.

これは現代的な統計学・機械学習でも問題と言えば問題です. 数十から数百パラメーターがあり, 本当にグラフの書きようがありません. 一方で実用と直結するので広い意味での回避法も発展しているので, それを見て実践してみるのも一手です.

期待するコメントではないのは前提として, 例えば統計学では点の色・形・大きさに意味を持たせることで, 平面上のグラフで 3 どころか 4 以上の次元の情報を盛り込むことはできます. もちろん統計学などで実際に使われてもいます.

他には二次元の射影を大量に作る手法も統計学ではよく出てきます. これも全体像を一目で掴むのははじめから無理ですが, 無理と言って諦められる対象ばかりではないので, 統計学の実践の中で使い倒されてきた手法です. むしろこれこそコンピューターのおかげで簡単に大量に作れるようになった分野でもあり, ちょっとやった程度で簡単に諦めてもらっては困ります.

それ専用の数学的・物理的直観を育てるという (最終) 手段もあります. 私の場合, 主戦場は無限次元の線型空間です. 高次元の極致のような存在です. 目で見える対象ではありませんが, ギチギチにこれらを勉強した人間にしかない, 何かしらの直観を私は持っています.

いま話題のメンタリスト DaiGo も, 彼は彼なりに目に見えない他人の精神を見て制御する術を持ってはいるはずで, 目に見えない対象とのバトルは数学や物理に限ったことでもありません. 最後は勉強量・修行量と慣れであって小手先の話ではありません.

この辺, どうも大人であっても通じない人がいるようなのですが, 何でも同じです. 例えばファッションやデザインなどは私は何もわからないのですが, 明らかに私に見えていないモノが見えている人がいます. 具体的に何と言うこともできませんが, その人達がやること・作るモノは確かに明らかに違う・良いと感じることがよくあります. 逆に言えば数学・物理もその程度の話です. 目に見えることだけでどうにかなるはずがありません.

それでも見えるところは見る, 見えるようにできるところは見えるようにする, そうした努力の一つがプログラミング利用のコンテンツのポイントなので, 用法・容量を守って適切に使ってください. 銀の弾丸など存在しません.

竹崎正道先生の米寿記念研究会

知らない間にはじまって終わっていました.

80 歳のときは実際に東大に行って参加してきたのですが, 今年はさすがにオンラインだったようです.

80 歳記念の勉強会では「娘もなくなってしまったが, 学問上の知人・友人, 息子・孫がこんなにたくさんできて, こんなに嬉しいことはない」みたいなことを言っていたと思います. 竹崎先生のスライドは少なくとも当人とそのコメントを知っているとなかなか感動的です. 竹崎先生関係の話もいくつかサイトに載せています.

特に『数学まなびはじめ』の竹崎先生の記事が本当によいので, ぜひ買って読んでください.

超局所層理論

池祐一さんが PDF を公開しています.

超局所層理論はともかく, 層についてはリーマン面などでも重要です. 証明は意図的に省いているところも多いそうですが, かえって概要を掴むのには便利なのではないでしょうか. 私もまだきちんと読めていませんが, そのうち読んでみる予定です.

木村太郎さんの『ランダム行列の数理』

まだまだ私の中で量子力学祭りはフィーバー中です. ついでに経路積分も再勉強しようと思い, 関係する数学もやっています. 以前から気になっていた中村徹著『超準解析と物理学』も読もうと思っています.

量子測定で有名な小澤正直さんは超準解析も使っていて, そちらを勉強するときにも役に立つだろうという見込もあります. 買ってパラパラと眺めはじめています. ここで竹内外史本に格子ゲージ理論の超準解析は面白いのではないかというコメントがありました. それを見て俄然格子ゲージ理論に興味が出てきました.

現状全く知らないのですが, $\phi^4$ とイジングよろしく (有限) 格子上でがんばっていろいろやって, 場の理論の議論をするタイプの分野だと思っています. 有限格子ならゴリゴリの線型代数の話で, 最近機械学習の物理への応用などでも有名な, 橋本幸士さんや富谷さんあたりの話なのだろうとか適当に思っています.

P.10 に次の記述があります.

数理的フレームワークとしての超弦理論の有用性

等価だが別の物理系に問題を移し替えて(幾何学的に)解く 問題:強相関系、多自由度系、ソリトンなど

等価な系に問題をうつすのは量子情報も重視した堀田量子でも重要な視点ですし, 幾何も絡んでくるのは先日から主張しているアハロノフ-ボームにも通じる視点で, 広い意味でずっと気になっている視点でもあります.

上記橋本さんの文献にあるように, 物性の視点から超弦理論や格子ゲージやら何やらを見ているのが木村太郎さんで, 『ランダム行列の数理』がまさにこれか? と思っています. しばらく別件にかかりきりで読むのをさぼっていたのですが, ここ数日読み直しはじめています.

ここにメモを残しながら雑に一周しているところで, 興味があれば適当に眺めてみてください.

現時点での簡単な書評もメモ・シェアしておきましょう.

私の物理はほぼ学部レベル, または数理物理でしか議論されていない物質の安定性などのピーキーなテーマの固め打ちなので, なかなかこの本の物理的射程を捉え切れていないのですが, 物理の学部 1-2 年生が適切な指導者のもとで読むと数学・物理に対する大きな視野が得られてかなり楽しいのではないでしょうか. 少なくとも表に出ている計算はほぼ純粋な線型代数と微分積分の計算で, 難しい数学が出ているわけではありません. 特に行列式の計算が大事で, 線型代数の抽象論どころか具体的な計算をがんばっているいろいろ見えてくるという面白い話がたくさん書いてある印象です.

問題はここで議論している内容を物理・数学ともに射程範囲におさめている人がどこにいるか, どれだけいるかでしょう. 私が数学的な展開ならまだ多少見えますが, 物理にまで踏み込める素養がありません. 物性まわりにしても極端に守備範囲が狭いのでなかなか大変です.

有名な小林-大島の『リー群と表現論』でも, 「この本にはいろいろな分野の数学の記述があるが, それに臆さず読んでほしい. そうした予備知識が必要だと言いたいのではなく, 広く深く多彩な数学との関係があることが表現論の魅力だからだ」と書いてあります. まさにそういうタイプの本なので, 細かいところを気にせず読めるところだけ読んで, 気になるところは個別に突っ込んでみたり, 誰かに聞いてみるのがいいかもしれません.

この本については書くことはたくさんあり, 上記の書評メモページにもいろいろ書いていますし書いていきますが, 特殊関数論にも従来の偏微分方程式の具体的解法以外の光を当てているようです. 新しい物理数学の本としても楽しめるはずなので, ちょっと高いですがぜひ買って読んでみるといいでしょう.

堀田量子に関して適当に放談してほしいというコメントを紹介しましたが, これに関して木村太郎さんと適当に話したりしても楽しいのかもしれません. 本当にやるかどうかはともかく, 実際に話したときに面白い話が引き出せる程度にちゃんと勉強して理解するのが今の目標の一つです.

自然言語の多言語学習とプログラミング/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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今回も, 諸事情で勉強会は中止したので, 残念ながら動画はありません. 勉強会で言おうと思っていたネタがあるのですが, 忘れる前にメルマガで供養しておきます.

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数学・科学の英語記事を読もうの会の展開

何回か休みがあったものの, 二ヶ月のトライアルが終わりました. 当初は数学・物理に関わる文章を読もうと思っていました, むしろふだん読まないタイプの文章をサクサク読んでいくのが面白いことがわかったので, その視点でさらに教材研究の勉強会を続けます.

他の言語はともかく, 私の英語学習は本質的に大学受験で終わっているので, 数学・物理の専門用語以外の単語力が本当にありません. 次回からの文章はアメリカの小中学生向けという National Geographic kids でさえ知らない単語が出てきます. その意味では小中学生向けの文章さえ私には勉強になります.

そもそも英作文の視点から見ると, シンプルな文章にこそ勉強すべきポイントが凝縮されているので, その辺も地道に進めます.

こちらの雑誌を読む勉強会は今後いったんクローズドにするので, 参加したい方がいたら連絡をください.

単語で遊ぶ

まずは英単語です. 最近改めてラテン語文法を勉強しはじめ, 雑に眺めていると少なくともフランス語はゴリゴリにラテン語の娘であることがはっきり見えてきました. もちろんフランス語学習は英語学習にも役に立つので, まわりまわって英語学習です. ラテン語の本を眺めていて調べようと思ったことがあり, メルマガに書くでもしないとやらないので, メルマガを書く体で調べ勉強します.

hypo, hypothesis

数学の作用素論でも hyponormal operator, hypoelliptic operator という単語があります. おそらくわかる人には見てすぐわかるようにギリシャ語由来です.

hypo は before の意味で, thesis はラテン語だと命題 (proposition) の意味もあり, 命題の前に置く原論から仮説などの意味になるのでしょう.

region: rex, rajah

これもラテン語の本で rex を見てふと思ったことです. 以前, 少なくとも相対論の勉強会でもコメントしたように, マハラジャの maha は mega や摩訶不思議の摩訶と語源が同じで, ラジャ rajah は王の意味です. マハラジャはサンスクリット由来で, まさに印欧語というときの印です. 印欧語の欧の代表であるラテン語の rex もやはり王の意味があります.

ここで region は王の支配地の意味で領域といった意味を持つのではないかと思ったのです. 語源関係の調査法をきちんと理解しきれていないので何ともいいようがないのですが, 何となく調べた限りでは関係はあるようです. 興味があれば次のリンク先を眺めてみてください.

フランス語で遊ぶ: avoir

今回は英語の have に対応する avoir です. イタリア語では avere, ラテン語では habere が対応するようです. ちなみに英語の have とラテン語の habere の語源は同じではありません.

ここによると avoir と habere も語源は違います. フランス語の直説法現在の標準的な活用を知らないと何が変則なのかわからないと思いますが, avoir は次のような変則的な活用を持ちます.

人称 単数 複数
一人称 j'ai nous avons
二人称 tu as vous avez
三人称 il a ils ont
意味

英語でも同じように基本的な単語は異様に多義的で, 多彩な意味・用法を持ちます. 英語の have も日本語の「持つ」からは想像もできない対象を持てます. 例えば I have a headache. など頭痛が持てます. ちなみにフランス語でも頭痛は持てる対象で, J'ai mal à la tête. と書きます. この tête はラテン語の testa に由来する「頭」の意味を持つ単語です. ちなみに mal は英語で栄養失調などを malnutrition と表すように, 悪いことを表す単語です.

助動詞としての avoir
その前に時制や雑多な話

いきなり脱線しますがフランス語は英語よりも多彩な時制があり, その時制表現がフランス文学を豊かにしていると言われているようです. フランス語と文学と言えば, 英語と違って人に対する表現とモノに対する表現が同じように書ける点も文学性を高めると言われているようです.

例えば英語で「日が昇る」と言えば日本語と同じように The sun rises. と書きます. しかしフランス語では「太陽が起きる」を Le soleil se lève. と書きます. この se lever は代名動詞で「起きる」の意味で, 人が起きるときにもこの代名動詞を使います. この擬人表現がフランス語の面白いところだそうです.

ちなみに英語の三人称単数が he/she/it と人・モノを区別している一方で, フランス語は he/she にあたる il/elle だけで人・モノを区別する単語がありません. これは上の擬人表現・モノに対しても人と同じ表現を使うことと整合的だとか.

いくら近かったり関係が深くても, 言語ごとにその言語を彩る特性があります. それはその言語を操る人達の歴史的・文化的特性もあります. 例えば旧ユーゴスラビアのクロアチア語とセルビア語の言語的な違いの筆頭は使う文字で, あとは八割同じと言われています. クロアチアとセルビアは文字通り致命的に仲が悪く, 本質的な言語特徴はよく似ていてもそれを操る人達の文化的・歴史的特徴が決定的に違うのです.

外務省の次のページも参考になるでしょう.

時制

さて, フランス語には複合時制という概念があります. 実は英語には未来表現はあっても未来形という概念はありません. これは未来を表すにはあくまで助動詞 will や be going to を使わざるを得ず, 現在形・過去形とは違って動詞に未来形がないという意味です.

そしてフランス語には助動詞なしの単純時制として, 過去形と未来形が本当にあります. そして複合時制として助動詞をつけた過去・未来表現があります.

英語でも時制の助動詞として have を使います. そしてフランス語でも時制の助動詞として avoir と être (be 動詞) を使います. いわゆる往来発着系の動詞に être を使い, それ以外に avoir を使います. 実はドイツ語も同じように往来発着系の現在完了的な時制に sein (be 動詞)を, それ以外に haben を使います. (ドイツ語・フランス語と比較したとき) 英語だけこの特徴がつぶれて have しか使わなくなっているのです.

ちょっとしたコメント

このように他の言語と比較することで, 逆説的に英語とその特徴を見つめ直す形で英語を勉強しています. もっと言えば日本語にも他言語・他言語からの光を当てて見直しています.

何度も言っているつもりですが, これはプログラミングの勉強と同じです. ある言語でこう書くことを他の言語ではこう書く, またはこんな言語機能があるというのを学び, 自分の得意な言語にフィードバックするのはよくやられています. プログラミングでは毎年一つ新しい言語を勉強するといいと言われることさえあります.

しかし何故か自然言語ではこういう話を聞きません. そんな半端なことばかりして全部中途半端になるより役に立つ英語を勉強したら, みたいな知ったようなことを言う人もいますが, どうせ (私も含めて) 英語さえまともに使えていないのだから, 半端だろうが何だろうが知ったことではないのです.

英語のスペルと発音のずれは有名です. フランス語もよく発音とスペルのずれの面倒を言われますが, 英語と比べるから発音がわかりにくくなるだけで, フランス語のルールがきちんとあって慣れれば英語よりは遥かに厳格で明確です.

これと比べると日本語の発音ルールの方がよほど無茶苦茶です. これもよく例が挙がっています. 例えば「一」について「一つ」と書いたら「ひとつ」であって「いちつ」と読みません. 漢字の読み自体たくさんあり, 振仮名がつくことでまた変幻自在に変わります. おそらく中国人でさえ全部振仮名を振ってくれと思うのではないでしょうか.

いまいろいろあってアラビア語も軽く眺めていて, 文字からして苦労しています. 高々 30 文字程度しかないにも関わらず. しかし日本語を思うと平仮名だけで 50 文字あり, カタカナもあれば漢字もあります. 文字だけ考えるなら, それに比べればアラビア語も大したことはないと思って歯を食いしばって文字を勉強しています.

別にあなたにも同じように多言語学習しろというつもりはありませんが, もともと理工系的にも私は数学・物理・プログラミングの「三言語」を雑に使う種族の人間なので, もうそういうものと思って適当にやっています.

この辺もやはり人を巻き込んで勉強するのが一番捗るのはこの一年の勉強会でよくわかりました. もっと多くの人を巻き込むための準備を着々と進めています.

2021-08-21

量子力学の再学習/相転移プロダクション

今回のテーマ

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すうがく徒のつどいオンラインで発表します

まだスケジュールが公開されていないのですが, 講演希望が通りました.

テーマは『理論物理学者に数学を教える上でのコツ: 「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」の経験をふまえて』です. 理論物理学者に市民が数学を教えようの会のページで動画を公開していますが, そこでの内容をピックアップして紹介する予定です. 前回参加していないのであまりよくわかっていませんが, そのうち参加者が公開されると思うので, もしあなたが興味があるならアナウンスを追いかけてください.

堀田量子に関して

いわゆる堀田量子の話です. ここまでいろいろと読み込んできましたが, 暫定的な結論として, 少なくとも初学者向きではなく, そもそも読めるのは誰なのかが気になるレベルです.

Twitter の動きを見ていても, 本に書いてある物理が薄く, 著者に問い合わせないと細かい様子がわかりません. どうも私だけではないようです. 他にいくらでも資料がある数学的付録をつけるくらいなら, Twitter でやりとりしている物理をきちんと本に書いてほしいです.

しかも脚注まで読み込むようにと堀田さん自身が明言しているのですが, あくまで補足的な内容を書くことになっている脚注に, 明確に本質的なコメント・物理が書かれています. 本の体裁といったレベルでも滅茶苦茶で, さすがに勘弁してほしいです.

私は量子情報や量子測定の面からも引き続き勉強を続けますが, もしあなたがこの本を読もうと思っているなら, 十分な覚悟の上で買うようにしてください.

確率論

いろいろな事情があって確率論を再勉強しています.

幾何と違ってある程度の基礎知識・体力があり, 幾何よりはるかに細部も概要も見えていて, 私にとっては非常に勉強しやすいです. 量子力学関係でも経路積分を使って解説されるテーマもあり, 経路積分自体が幾何との関係が強いので, 量子力学の基礎の再勉強と絡めて考えています.

私の観測範囲だと量子測定を数学的にきっちりやろうと思うと作用素論系の話もいろいろ使うので, それも改めてノートを作らないといけないかと思っています. 学生の頃に TeX でノートを作っておけばよかったと今更ながらに思っています. 一時期やろうとして, あまり時間がかかるので面倒でやめたのですが, いまボディーブローのように効いています.

リーマン面

幾何・量子力学と関連して, 改めて木村太郎さんのランダム行列の本も読み進める機運が出てきています. いまそういうタイミングなのだろうと思うので, 無理やりにでも時間を取って読み進める予定です.

読書記録は次のページにまとめているので, もしあなたが興味をお持ちなら参考にしてください.

純粋に数学としてのリーマン面の概要についても, まだ書こうと思ったことを書き切れていません. そちらを待っている方もいらっしゃるでしょう. もう少しお待ちください.

プログラミング

最近, 文系出身の方と問い合わせに関連してやり取りしていて, 「もう少し簡単なところからはじめた方がいいのだろう」という話になり, プログラミングのコンテンツをお勧めしておきました.

中高レベルの数学系プログラミングはどうしても積分やグラフ描きが出てきて, どうしてもライブラリ利用の要素が出てきます. SymPy のような記号計算もやはりライブラリに頼る必要があります.

プログラミングの厳しいところはバージョンアップ問題です. 内容が古くなるとそもそも動かなくなってしまいます. 数学は基本的な内容であるほど, 多少古びてもそこまで致命的な問題にはならないものの, プログラミングではそうはいきません. コンテンツを作ること自体はいいのですが, あまりたくさんコンテンツを作るとメンテナンスが大変になります. 個人でやっているとこれが本当にきついです.

それでも何とかなる部分はあるだろうと思って, アルゴリズム関係で競技プログラミングや ProjectEuler をやっています. 基礎知識がなくてもやりやすかろうと思い, ProjectEuler を優先的に進めていたのですが, 多少なりともきちんとした知識をもとにしないと, 大規模になったときに処理しきれないケースが出てくる問題にでくわしました.

動的計画法程度のごく初歩的な内容なのですが, 私はまだ血肉になっていない内容です. 改めてアルゴリズムの勉強を進めていますが, 一般論メインで最後に問題が少し, といった本で勉強するのがとにかく面倒です. 数学はむしろこのスタンスで勉強していて楽しくさえあるのですが, アルゴリズムだとそうはならないのが面白いというかつらいというか. しかし一般論は一般論できちんとやっておかないと, 何度も面白くない基礎理論を再勉強する羽目になるので, これもやるなら今なのだろうと考え, ここ一月くらいちびちびと進めています. そして一人だと続かないので, 別件でやっていたプログラミング・統計系の勉強会でのネタにすることにしました. 人を巻き込むともうやらざるを得なくなり, きちんと説明するためにある程度の深さの勉強も必要になり, 自分の勉強という点からは本当に効果的です.

最終的には量子力学の再学習の一環として, 簡単な行列計算に関して記号計算, シュレディンガー方程式の数値計算を使うなどの現代化も進めたいと思っているので, これはこれでやはり一連の量子系再学習の問題意識の中にあります.

be動詞の多言語展開/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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フランス語単語で遊ぶ

はじめに

自分の勉強, もっと言えば暗記事項の定着も兼ねて引き続きフランス語単語をやります. 英語にもほぼ直接的によい影響があります. 前回, croire はイタリア語まで見た方がかえって英語との関係が見やすいことも紹介したので, 必要に応じてもう少し掘ってみましょう.

私にとってはアインシュタインの特殊相対性理論の原論文に出てくる単語から攻めるのがモチベーションが続くので, それも引き続き拡充しています.

être

いわゆる be 動詞のフランス語です. せっかくなのでいくうか紹介しておくと, ドイツ語での be 動詞の原形は sein, イタリア語は essere, スペイン語は ser と estar です. スペイン語では ser が国籍のような恒常的な性質を表し, estar は現在地のような一時的な性質を表すというように使い分けられています.

スペイン語を見るとわかるように, be 動詞を見るだけでも言語ごとの違いが出てきます.

ちなみに exist と何か関係あるかと思ったのですが, あまり関係ないようでした. もし関係があることをご存知の方はぜひ教えてください.

多言語比較の観点

多言語比較から見るといくつかのポイントがあります. be 動詞に限りませんが, どの言語でも基本的な単語は極端に不規則です. ここでは各言語での be 動詞の現在形の活用と, フランス語の基本的な単語の活用をいくつか紹介します.

主語+動詞の活用の形で紹介します. 一人称単数, 二人称単数, 三人称単数, 一人称複数, 二人称複数, 三人称複数の順で書きましょう.

  • (fr) je suis - tu es - il/elle est - nous sommes - vous êtes - ils/elle sont
  • (de) ich bin - du bist - er/sie/es ist - wir sind - ihr seid - sie sind
  • (it) sono - sei - è - siamo - siete - sono
  • (sp) soy - eres - es - somos - sois - son

イタリア語とスペイン語で主語がないのは特徴的です. 三人称は別として, 実はイタリア語ではよく主語を省略します. スペイン語でも同じようです. 上の活用を見ればわかるように, 一般にイタリア語は動詞の活用は全ての人称・数で違います. いわば動詞の活用に主語の情報がエンコードされていて, 主語を書かなくてもわかるのです. 日本語のように文脈でわかると言っているのではなく, 文法上のサポートがあります. ちなみにフランス語はスペルが違っても同じように発音されます. 特に être では tu es と il est の es と est の発音が同じです. 見た目が違うからといって区別がつくわけではありません.

上で書いたように be 動詞一つ見ても言語ごとの特徴が出るのです.

フランス語の基本的な単語の活用

あえて乱暴な書き方をしますが, フランス語での have は avoir, go は aller, come は venir です. 英語でも不規則活用するように, フランス語でも極端な不規則活用をします.

  • avoir: j'ai - tu a - il a - nous avons - vous avez - ils ont
  • aller: je vais - tu vas - il va - nous allons - vous allez - ils vont
  • venir: je viens, tu viens, il vient, nous venons, vous venez, ils viennent

フランス語動詞の規則的な活用を紹介していないので, 知らない方は全くわからないと思いますが, 興味に応じてフランス語の活用を調べてみてください.

être に関して

もともとの意味は「存在する」の意味では, デカルト (René Descartes) の Je pense, donc je suis 「我思う, 故に我あり」が有名でしょう. いまは場所を示す副詞・副詞句か前置詞句を伴うのがふつうです. 前置詞を使う場合, être de ---で出身を, être à ---で帰属・所有を表します.

英語の場合でもあるように, 属詞 (英語でいう補語) を取る用法もあります. 他にも英語と同じく受動態を作る助動詞としても使われますし, もっと面白いのは代名動詞・往来発着を表す自動詞の複合過去を作る助動詞としても使われます.

フランス語の時制は複雑なので本当に雑な言い方ですが, 複合過去はとりあえず英語の現在完了にあたると思ってください. 実はもう一つの複合過去を作る助動詞がまさに avoir (英語の have) なのです.

ちなみにドイツ語で現在完了を作る助動詞がやはり sein (be 動詞) と haben (have) であり, イタリア語でも近過去を作る助動詞は essere (be 動詞) と avere (have) です. 少なくともドイツ語・フランス語・イタリア語と比べれば, 英語の現在完了の助動詞が have だけの方が特殊です.

時制関係でついでに言うと, 英語には未来表現があっても未来形はないと言われます. 何かというと英語で未来を表すとき, will や be going to という助動詞を使います. ドイツ語でも同じです. しかしフランス語には本当に動詞の活用の中に単純未来という未来形があります. 例えば être についてはフラ活を見てみてください.

二つくらいは書こうと思っていたのですが, これだけで大分長くなったので今回はこのくらいにしましょう.

2021-08-14

量子系の物理と数理/相転移プロダクション

今回のテーマ

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量子力学の勉強

引き続き量子力学を再勉強しています. 私が Twitter で「訳が分からん」と呪詛を吐いているのをご覧になっている方はご存知かもしれませんが, 昔気になっていて放置したままだった問題も調べたり再考していて, 少しずつ頭の整理も進んでいます.

その中で谷村省吾さんの PDF が面白く参考になったので, こちらでも共有しておきます.

堀田量子では量子情報系の文脈から, 「有限次元量子系では全てのエルミート行列に対応する物理量が存在する」と書かれていますが, この PDF では場の量子論で全ての自己共役作用素に対応する物理量があるわけではないことを具体例と共に書いてくれています. こういうの, 一行でさっとコメントがあるだけで全く違うのですが, それがないのが堀田量子に対するいらつきでもあります.

あと, これらの PDF にも少し記載がある話として, DHR-DR のセクター理論は学生時代に眺めるだけ眺めて何もわかりませんでした. 物理も数学も何もわからず, 少なくとも数学は今見てもわからないと思いますが, ここで言いたかった物理的な気分を別の視点から説明してくれていたのも好印象です.

DHR-DR 理論を非常に大雑把に説明しておきましょう. フェルミオンの生成消滅作用素は空間的な領域間で反交換関係をみたしますが, 相対性理論と同時測定からすると反交換関係は異様です. 気分的にいうと, フェルミオン場のハミルトニアンが典型的なように, フェルミオンの生成消滅作用素は必ずペアで出てきて, このペアで見れば空間的な領域間で可換な作用素になります. つまり実際の理論の中で使うときには物理的に意味のある交換関係として出てきます.

細かいところを無視すると, 理論として設定した代数的な関係の中にどれだけ物理があるか, 特に (反) 交換関係の中にある情報から, 適切な物理がどれだけ引き出せるかという視点が出てきます. 特に前回・前々回と議論した, 適当なゲージ群による対称性で統率できないかという視点が出ます. これを議論するのが DHR-DR のセクター理論です.

私が勉強した時点では DHR-DR 自体は質量を持つ粒子しか対象にできておらず, その点で欠点はあれど一つの到達点ではありました. カバー範囲は QED だという話でしたが, BF (Buchholz-Fredenhagen) 理論では質量がない粒子もカバーしているようです. (難しくて全く読めなかった.)

これが谷村さんの (ふつうの?) 物理の視点では気に入らないという話, どう克服するかの一案も書いてあって面白いです. これがまわり回って堀田量子や有限次元線型空間しか出てこない量子情報的な記述の不備にもつながるようで, 学生の頃の問題意識に再び回収されてとても気分がいいです. 改めて量子力学・場の量子論・統計力学あたりを勉強し直したくなってきて, 物理へのモチベーションがあがっています. あとは改めて熱力学も勉強したいです.

あとアハロノフ-ボーム効果も改めて気になっています. 位相 (phase) が持つ情報がどういうメカニズムで観測にかかってくるのかがいまだに全くわかっていません. 堀田量子では「それらは多数回の観測結果の統計的効果として出てくる」, 「ワンショットの実験結果としてかからないので議論しない」と書かれていたはずで, 非常に気になっています.

アハロノフ-ボーム効果は自己共役性証明などの基礎知識涵養のため, 新井先生の『量子現象の数理』を勉強する中で第三章で出会い, 学部三年の講義でよくわからない内に終わった議論をもっと詰めたいと思いつつ, 場の理論・量子統計方面に進んだためやはり放置したままに終わったテーマです. これも以前, 谷村省吾さんが数理科学で「非単連結領域上の量子力学」として数理科学で記事を書いていて, 最近の幾何と物理・量子論のつながりでいろいろあるようでとても気になっています. もう少し基本的な勉強が済んだらいっそ谷村さんに問い合わせようかと思っているほど気になっています.

ここまで来るといろいろやりたいことも増えてきます. 改めて統計力学・量子統計もやりたいですね. 田崎さんの英語の本もあって, 結局査読になったときにほとんど読めませんでした. 修論では田崎さんのレビューを読んでハバードまわりの議論をしたこともあり, 広く言えば守備範囲ですがまだまだ基本的な認識が足りていません. 特にスピン系の基礎教養がないのでみっちり修行したいです. 田崎さんの熱力学と統計力学も改めて勉強したいです. 他のタスクにおされてなかなか進まないので, こういうのは勉強会で無理やり他人を巻き込んでやるのがいいのでしょう.

あと, どなたか幾何学的位相のいい本ご存知ではないでしょうか. アハラノフ-ボーム効果を調べていると, 現代的にはベリー位相などの話題に吸収され, 特に幾何学的位相や幾何学的量子力学といった話題に回収されるようです. ここ数年, 幾何を一所懸命勉強してきたわけですが, それがいい感じに量子系の数理につながってきたようですし, これも勉強の機運が高まってきています. もちろん英語でも構わないので, 何かいい本をご存知の方がいらっしゃたらぜひ教えてください.

量子力学の勉強会でも, もっと基本的なところからやりたいという話も出ているので, コンテンツ整備も兼ねてもっと基本的なところから議論するのも大事かと思っています. ここでいう「基本的」は, 上で書いた, どちらかといえば fundamental な話よりも, (素粒子ではない) elementary の意味です. 文系出身だが物理・数学をもっと勉強したいという方もいらっしゃるようなので. プログラミング利用, プログラミングで計算し倒すといった部分も合わせて改めて企画を考えています. プログラミングに関しては微分積分や簡単な常微分方程式・偏微分方程式を解くコンテンツも整備しているので, そちらで何かする手もあり, いい塩梅を検討しています.

量子力学の再勉強をしていて, 改めて量子系の数理がとにかく気に入っているのを再認識しました. よくも悪くも, いまの私の興味関心は学部で触れる物理を数学的にゴリゴリに詰め切る部分に触れ切っています. 例えば上で議論していない物質の安定性は, 電磁波の物理と原子の安定性にとって fundamental な問題で, まさに学部三年で把握できる問題ですが, 数理物理的にはいまだ最先端で, しかも事実上数理物理の人達しか議論していない問題です. 量子力学の基本的な部分の再勉強はこうした点の理解にも直結しますし, いい機会だからと積極的に再学習に励んでいます. とても楽しい. あなたもぜひ一緒にやっていきましょう. 引き続きいろいろな情報を出していきます.

音読の意義と英語に生きるフランス語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

今回, 諸事情で勉強会は中止したので, 残念ながら動画はありません. 勉強会で言おうと思っていたネタがあるのですが, 忘れる前にメルマガで供養しておきます.

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音読教材の推薦を頂いたので

音読の教材は、英語の質、内容の面白さはもちろんですが、 - 音資材がある (お手本の音声があったほうが練習しやすい) - 信頼できる日本語訳がある(英語を正しく理解したうえで音読することが大事なので、音読の前に、自分の解釈にミスがないかを既存の訳と照らしてチェックするため) の2点も重視しています。

受験教材や書籍もいろいろ出ていますが、NHKの語学教材も便利です。 特によく活用しているのが、『ニュースで英語術』のサイト https://www2.nhk.or.jp/gogaku/news/index.html シャドーイングのほか、日本語訳をみながら英語に起こす訓練にも使えます。 ニュース英語は、書き言葉にも話し言葉にも応用できて汎用性が高いのが利点です。 (科学雑誌などは、話し言葉には使いにくい表現も多いので)

同じくNHKの『高校生からはじめる「現代英語」』もニュース英語で、 こちらは、冠詞やタイトル付けのルールなどまで掘り下げて解説してくれます。 https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=4407_01

音読の意義

何故音読を改めてはじめたかと言えば, 音の物理の理解のためでもあります.

例えばきちんと個々の発音を勉強し直して, なぜ get a の発音が「ゲラ」になるか, ようやくきちんと理解できました.

まず t の発音のときは上の歯に舌をつけて, 突き飛ばすように発音します. 一方 l の発音は上の歯に舌をつけたまま発音します. したがって get a を滑らかに発音しようとすると t の突き飛ばすような発音がしきれなくなり, 上の歯に舌をつける動作だけが残って t が l になるのです. いわば get a を「ゲラ」のように発音するのは物理に則った由緒正しい発音です.

これだけならそんなに大した話ではありません. しかし単語が言語と文化をまたぐときにもこの現象が起きる可能性があります. つまり t の音は l に変わる可能性があります.

音に関する事情はいろいろあります. 例えば英語の flower はイタリア語では fiore です. 何故そうなのかまでは把握しきれていませんが, 何にせよイタリア語は f と l の連続を嫌います. フランス語には例えばエリジオンがあり, リエゾンがあり, 母音または無音の h ではじまる語が続くと母音字を省略する現象があります. 音を聞いているとわかるのですが, イタリア語は滑舌よく発音するようでかなり聞き取りやすいのですが, フランス語は滑らかに発音する方が好まれるようで, 母音+母音は滑らかさが減るので好まれないのだと推測しています.

こうした事情は読解や暗記にも効いてくるはずだと思っています. 特に暗記については, 歴史的な事情もあって日本語の中で外来語である中国語, 特に漢字語には固さ・正式さのイメージがあるように, 英語でも固い・難しい単語にはフランス語に由来することがよくあります. 科学技術系というある意味固さの極みのような分野では, ラテン語・ギリシャ語の影響があります. ここに対する耐久力を上げるために使える事情は使い倒したいので, 少なくともフランス語の事情は把握したいと思っていて, このときに効いてくるのではないかと推測しつつ取り組んでいます.

また, 実験という視点も欠かせません. 先程 get a に関して書いたように, 発音の訓練は自分の身体による言語・文化またぎの実験でもあります. フランス語もちょくちょくリスニング・発音をやっています.

フランス語単語で遊ぶ

フランス語は特に会話ベースでもう少しきちんとやりたいものの, いざ会話の勉強となるとなかなか元気が出ません. いくつか試してみましたが, 結局, 一所懸命やっている相対性理論の原論文読みと合わせてやると元気が出るだろうと思い, まず単語暗記として相対性理論の原論文に出てくる単語集を作っています.

今回の単語: croire と mourir

意味は後で書きます. せっかくなのでフランス語をご存知でない方は意味を推測してみてください.

フランス語の基本単語で, 意味も覚えていたのですが, なぜこれらがこの意味なのかとずっと思っていて, 改めて調べました. 以下で答えを書くので, 自分で考えてみたい方はここでいったんストップしてください.


まず croire を考えましょう. これは対応するイタリア語かラテン語を見るとわかります. 具体的には credere です. ここから英語の credit が想像できればよく, 「信じる」という意味です.

クレディセゾンといったクレジットカードの credit が関連する単語としてあります. ちなみに Wikipedia いわく, 英語の社名は Credit Saison です. フランス語では credit でクレディと最後の t を発音していない以上, 気分的にはフランス語なのでしょう. さらに言えばセゾンの saison もフランス語での season なので, 本当にフランス語を想定しているのでしょう.


次に mourir です. これは Wiktionary を見るとわかります. 古フランス語 morir, 俗ラテン語 *moriō, ラテン語 morī とあって, いわゆるメメントモリのモリです.

不勉強なものではじめて知った・前に勉強したが忘れていた事案として, Wikipedia でメメントモリを調べてみたところ, 次のようにありました.

当時、「メメント・モリ」の趣旨は carpe diem(今を楽しめ)ということで

言葉だけ知っていた carpe diem の意味を改めて勉強しました. この carpe diem もきちんと調べないといけないのですが, これは次回の宿題にしましょう.

ちなみにメメントの方は memento を見る限り, memory として英語に息づいているようです.

なぜフランス語は会話を勉強したいのか

いまのご時世でこれから先どうなるのかよくわかっていない部分もあるとはいえ, 私が通っている柔道の道場では年に二回程度海外, それもフランスからお客さんが来ることがあります. オリンピックで柔道を見た方はご存知かもしれませんが, 男女混合の団体でフランスが優勝したように, フランスは実は柔道大国です. 私の先輩が二十年来フランスで柔道指導をしている関係もあって, たまにわざわざ柔道しにフランスから来るのです.

大人だけならまだしも, 8 歳くらいの子供まで柔道しに来ます. フランスの海沿いにお住まいの方もいて, 空港があるパリに来るまでで既に 4-5 時間, そこからさらに飛行機で日本まで来て, かさばる柔道着も荷物に詰め込んで来るという尋常ではない気合の入り方です.

一週間程度の滞在のうち, 柔道の聖地である講道館に行くのは十分わかるにせよ, 私が通っている道場にも二回来ました. 「一回来て楽しかったらもう一回来たくて来た」とまで言っていたようです. もちろんふつうの観光もしたのだとは思いますが, 10 人くらいで来ていたので, 日本円の価値で言えば何十万円というレベルでお金を使って来ていて, その中の主軸に柔道があるというすごい話です. スポーツツーリズムという概念があるのは知っていましたが, 本当にあるのかと驚きました.

そんなこんながあるので, フランス語については簡単な会話ができるようになって, できる範囲でおもてなししたい気分があるのです.

2021-08-07

代数と幾何と物理/相転移プロダクション

今回のテーマ

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代数系による統率

微妙に反響があったので追加で少し書きます. リーマン面にも陰に陽に関係するため, 幾何のページにも参照をつけてあります.

いろいろな代数系とその表現

代数系による統率の視点で言えば表現論が欠かせません. もちろんガロアの曖昧の理論よろしく, 表現論どころか群が生まれた母胎でさえあります.

何か数学的対象に群が作用して影響を与えているとき, 群の作用が綺麗にはまるために対象に制約を与えます. これは前回コメントした通りです. 書こうと思っていたことを一部忘れてしまったのですが, 思いつく限り私が知ることを書いておきましょう.

ヒルベルトの第五問題

詳しくは次の資料を見てください. ここでは大まかな話をします.

ヒルベルトの第五問題が何かというと, 群と位相のマッチングで何が起きるかを調べる問題です. 特に連続群またはリー群をイメージしてください.

連続群は群という代数構造と位相の構造が入って, 群演算に連続性を要求するクラスです. この意味で代数と位相のマッチングを見ています. お互いに特殊な構造なので整合性を保つために何らかの制約が入ると思うのは自然な発想です. しかしそれがどのくらい強いのか, 具体的にどういう影響を与えるのかは全くわかりません.

もちろん実際には非常に強い制約を与えることがわかっています. 特に $C^0$-級構造と整合的な $C^{\omega}$-級微分構造が入ることまでわかっています.

ここでポアンカレ予想とも関連したドナルドソンの仕事, 「四次元ユークリッド空間において異種微分構造が存在する」を思い出してください. 四次元ユークリッド空間は内積空間であり, 特に線型位相空間でリー群 (連続群) でもあります. ユークリッド空間は微分論の母体でもあるので当然解析的な微分構造を持ちますが, 全然関係ない異種微分構造も持っています. 微分構造があることはわかっても, もとの位相と整合的かどうかは予断を許しません. それが起きないことを主張するのがヒルベルトの第五問題とその解答です.

ちなみに買ったままでいまだに読めていないのですが, ポアンカレ予想についてはこれまた結城浩さんが数学ガールで取り上げているので, もしあなたが興味があるなら読んでみるといいでしょう. 他のシリーズを読んだ限りではきちんとした内容のはずです.

関数解析

ヒルベルトの第五問題にはいろいろなバリエーションがあります. もともとは群と位相ですが, 群を他の代数系に取り替えてもいいでしょう.

私が知る限り, 関数解析ではかなり早い時期からこのバージョンを考えていたそうで, 例えばバナッハ環は日本人数学者の南雲道夫が定義して議論しています.

バナッハ環と言っていることからもわかるように, 作用素環は特に境の定理など代数と位相に関する研究が早くからあります. 一つの究極形がゲルファント-ナイマルクの定理です. これは可換な $C^$-環は局所コンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環であることを謳う定理で, ノルムと $$-環の代数のマッチングが強いとここまで強く構造が規定されてしまいます. これは現代幾何の基本中の基本, 代数-幾何対応にも強く影響を与えています. もちろん作用素環にも非可換幾何として跳ね返ってきて精力的な研究が続いています.

層による微分多様体の定義

ふつうの微分多様体の定義だと見えづらくなっていますが, 斎藤毅『数学原論』では層で微分多様体の定義を与えています. 特に微分可能な関数からなる単位的可換環がなす層を考えています.

ベクトル束

書けることはいろいろあります. ここでは改めてベクトル束を考えましょう. これは特殊なファイバー束でもあります. 特に各ファイバーに一般線型群が作用するファイバー束です.

特にリーマン多様体の接束を考えれば, 計量との整合性も考えたくなり, ファイバーである各接空間に特殊直交群の作用が考えられます. この作用をどこまで特殊化できるか考えるとホロノミー群の議論が出てきて, 小さい群であればある程強い制約が生まれ, 強い性質・制約を持つリーマン多様体が得られます.

主束

ベクトル束をもう少し一般化したのが主束で, これはまさにリー群による統率を受けるファイバー束です. これも現代幾何の一つの基礎で, 例えば指数定理の舞台でもあります.

被覆空間: 特殊なファイバー束

ここでリーマン面の話に戻ります. 被覆空間は離散的なファイバーを持つ特殊なファイバー束です. この辺の話の流れがあるので, 幾何の入口として被覆空間やリーマン面から入るのも悪くないと思って勉強を進めています.

相対性理論

群の作用と物理にもいろいろありますが, 典型的というか, 明らかに理論の中で強調されて出てくるのは相対性理論でしょう. もちろんローレンツ群またはポアンカレ群の作用のもとで不変な理論をはじめから目指しています.

ちなみに, 非相対論でも時間反転対称性などいろいろな対称性があり, そこには対応する群とその作用があります. そして非相対論・相対論的な量子論にもはねます.

量子力学

もちろん量子力学にもいろいろな対称性があります. 典型的なのは時間発展に関わる $\mathbb{R}$ の作用・ユニタリ群です. スピンと関わるリー群 $SU(2)$ の作用と表現論も基本的です.

群以外にも代数の表現論の視点があります. 特に量子力学それ字体が正準交換関係がなす代数の表現論という視点があります. 物理的にどうかはともかく, 数学的にこの視点を追求しているのが作用素環を使った代数的量子論です.

先日 Twitter の少なくとも私のタイムラインでは, 東大数理の緒方芳子さんが数理物理最高の賞であるポアンカレ賞を受賞したニュースが話題になっていました. 緒方さんは量子統計の視点から作用素環を使って研究している人です. 緒方さん, ちょうど私が修士だった頃に東大数理にポスドクで来ていました. すごい人がいるものだと思ったものです. 我が身のしょうもなさも感じますが, できることをやるだけなのでやっていきます.

木村太郎さんからのコメント

この間書き忘れたようなので木村太郎さんからもらったコメントを共有しておきます. 群と物理に関わる話です.

今週のメルマガで言及している有限群の話ですが, 例えば Dijgraaf-Witten 理論というのがありまして, 位相的場の理論の toy model としてその筋の人たちが色々と議論しています:https://ncatlab.org/nlab/show/Dijkgraaf-Witten+theory

他にも,離散群をゲージ対称性とするような (位相的) 場の理論の議論もいろいろと最近はあって, その主たる応用先が素粒子論というよりはトポロジカル絶縁体・超伝導などのいわゆるトポロジカル物性というのも面白いです.

すっかりモンスターのことを忘れていました。 かなり数学寄りではありますが、Mathieu Moonshine https://ncatlab.org/nlab/show/Mathieu+moonshine というのが少し前 (とはいっても 10 念年前くらい) に江口・大栗・立川の仕事で revival したとかそういう話があります。

有限群と言えばモンスターの話もあるのだろうとコメントしたら, すぐ返ってきました. 素人が思いつくことなどプロはそれはやり尽くしているはずだ, という思いを新たにしました.

幾何的位相・ベリー位相

トポロジカル物性と言えば, 最近堀田量子本を見ていてずっと気になっています. 私の Twitter を見ている方はご存知かもしれません.

私の物理は学部三年でほぼ完全に止まっています. どれだけよく言っても学部四年です. 学部三年の講義で出てきた問題を数学的に詰め切れずに終わった学生生活でした. 実際, 今でもまだ研究中のテーマでもあるので, 私が愚かなだけではないのですが.

非相対論的場の量子論・量子統計の話が前回の相転移まわりで, もう一つは量子力学の一体系の議論, 特にアハラノフ-ボーム効果です. これは新井朝雄先生の『量子現象の数理』, 自己共役性と正準交換関係の表現のところで議論されています.

私の意識としては表現や代数系による理論の統率とも直結しています. いわゆる非同値表現の問題で, 場の量子論では赤外発散と絡めてよく出てきますが, 有限自由度の量子系で現れます. 典型的なのが位相的に欠陥のある領域上での量子力学で, 外村さんらによるアハラノフ-ボーム効果の実験的検証, ゲージ理論の物理的意義とも関わる重要な議論だと思っています.

ここで空間領域の位相 (topology) 的な問題が波動関数の位相 (phase) にはねることが知られています. いまだに全くわかっていないのですが, 調べるとベリー位相が関係あるようです.

波動関数で状態を議論していると位相 (phase) の影響は見えやすいと思いますが, 密度行列に議論をうつすと位相の影響が見えなくなります. これも改めて調べたら量子計算と幾何的位相 (phase) のようなテーマの論文があり, 何かしら議論はあるようですが, 前提が全く共有できていないせいで何をどう論じているのか全くわかっていません. 堀田量子本を読もう・読みたいと思った理由も, この辺の問題にも何かしら回答が与えられているからではないかという期待があったからです. 堀田量子本の勉強会はあくまでこの本をきちんと読むという前提で考えていますが, 私の知りたいことを知るにはまだ道は長いようです.

ちなみに幾何的位相などの文献ではごく簡単な微分幾何の話はよく出てきます. ゴリゴリの関数解析系・量子系の数理の私がなぜ幾何を勉強しようと思っているかといえば, まさにこの辺の話題に興味があるからでもあります. 新井先生の『量子現象の数理』でも, アハラノフ-ボーム効果は平面に制限して関数論を使って議論しています. 私が知る限り田村英男さんのアハラノフ-ボーム効果に関わる散乱理論も, 平面上で関数論を駆使して議論しています. リーマン面がどこまで絡むかはともかく, 関数論はやはり便利な道具なのできちんと追い切りたいモチベーションがここにあります.

もっと言えば空間三次元でのアハラノフ-ボーム効果の数学的研究がどこまであるのか, そもそもあるのかどうかがずっと気になっています. 学生時代, 本道ではなかったとはいえ新井先生の本で勉強したので一時期追いかけていました. 三次元だと関数論が使えなくなっておそらく一気に難しくなるのでしょう. こんな感じで, 学部三年のときの宿題に延々向き合っています.

それはそうと, アハラノフ-ボーム効果に対するよい文献をご存知の方, ぜひ教えてください. 数学・数理物理ではなくふつうの物理の文献でも構いません. これから堀田量子の勉強のためにも大事だと思っています.

音読をはじめました/相転移プロダクション

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音読をはじめました

英作文に関するコンテンツ整備をはじめたと言いましたが, いわゆる四技能とかいうやつのバランスがよくないともずっと思っています. いま勉強会をやっているように, 大人相手に専門的な内容の読解をやる分にはどうにかなるものの, 中高生向けの展開も考えるとさすがにいまのようなアンバランスさもよくないですし, 自分なりに新しいことに挑戦しないといけない気もしてきたので, 最近音読をはじめました.

とりあえず学生どころか受験の頃に使っていた速読英単語の入門編を音読しています. 読む分には何ら問題ないのですが, この程度でもすらすら英作文できるかと言われるとかなり厳しい事実を目の当たりにしています. もっと簡単な文章がいいのだろうという気もしますが, やっていて楽しめるのも大事で, いい落とし所がないか探しています.

それこそ科学雑誌を読む会で教えてもらった, ネイティブの小学生向けくらいの記事がいいのかもしれません. まだきちんと文章を眺めていないので, 明日の朝の時間を使って読んでみようと思っています.

ここで「簡単」概念が非常に難しいのが悩みどころです. 先日英語で童話をいくつか眺めてみたのですが, 一文がやたら長かったり, 英語らしい表現が出てきて逆に英作文を見据えた音読には厳しすぎると思って断念しました. 何より長続きしそうにありません. いっそ数学の本を音読しようかと思ったほどです. 数学の本は表現が限定されすぎるので候補からはあえて抜いてありますが, ネイティブの算数や理科の教科書を読むのはどうかと今真剣に検討しています. 興味があるところから選ばないと続かない一方, 特殊すぎても訓練になりきらないので, 我ながら面倒な趣味をしていて自分にうんざりしています.

ある程度英作文にも転用できる, よい音読教材をご存知の方, ぜひ教えてください.

勉強会の記録

アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会

第17文を読みました. 一年近く続けてようやく 17 文という尋常ではないスローペースです.

細かい注意はいろいろありますが, 今回は単純な文章読解としては難しくないものの, 物理的に重要なことを執念深く語っている一文で, そのニュアンスを汲み取れるかが勝負だ, という話をしました.

多少なりとも物理をやっていれば当たり前と言えば当たり前の話なのですが, やはり専門がずれると汲み取りにくいようです. 科学雑誌を読む会でいま読んでいるのは生物系ですが, これも生物系の人なら汲み取れるニュアンスは汲み取り切れていないのでしょう.

数学・物理系のメルマガでしか書いていなかったかもしれませんが, やはり自分で勉強できること, 会話の実地訓練など自分でやるしかないこと, 教わらないと大変なことがあって, 教わるべきことを見抜いてきちんと教えを請うのが大事なのだろうと改めて感じます.

数学・科学の英語記事を読もうの会

今回, こちらでかなりハマり所が出ました. 英語でよくある, 「意味はわかってもよい日本語訳が出てこない問題」にぶち当たりました. それも二文です. 語学系のコンテンツ・勉強会のテーマは英語を通じて日本語の力を鍛え, 思考力・表現力も磨くことにあるので, まさにここが試されてしまいました.

やはり面白かったのは相変わらず単語の深掘りです. あと個人的には事前に見ていたときには特に何も思わなかった単語に対して, 勉強会の最中にふと気付くことがいろいろあった点です.

事前に見ていたとき, 例えば deity という単語を素通りしていたのですが, 勉強会の最中に deity が何故神なのかと思ったのです. そして deus や Zeus なのだろうなと思って, 勉強会の最中に調べました. あとで単語録を見たらきちんと調べてありましたが, 調べたことを完全に忘れていました. divine とも関係があるようですが, 何も覚えていませんでした. それでも Zeus からの類推はすぐできるのかと自分に感心しています.

あと goddess もふと疑問に思いました. 人 (?) に関係する名詞の女性形でウェイトレスと同じ系統の話のはずですが, ドイツ語やフランス語で名詞の性という概念を知った一方, 英語で名詞の性自体は死んでいます. 英語での女性形とはそもそも何なのか, ついたりつかなかったりするのは何故なのかなどいろいろ気になります.

ちなみに日本語でも父・母, 息子・娘など名詞の性はなくても, 性によって名詞がわかれているケースはあります. 逆にこうした区別を持たない言語はあるのか, それを育んだ文化と歴史は何かといったことが気になります. 他の人はともかく, 科学史・数学史以外にも, こういう視点から歴史の話をしてくれると私は面白いのですが, どうするとこういう資料が探せるのか, 知識と能力と経験がありません.

英語の神関係の単語はいくつかありますが, それぞれ語源はどうなっているかなども次回の私の宿題として残っています.

プログラミング

プログラミングもちょこちょこやっています. ただ, これをどこにどう書くかを考えています. 広義言語なのでこちらに書いた方がいいのかと思いつつ, やっているのは大抵何かしらの計算なので, 数学・物理系メルマガに書けばいいのか.

言語としてのプログラミングを語れるならこちらで書くのがいいのでしょうが, 生憎それだけの知見を持ち合わせていません. やるべきことがたくさんあって日々目が回っています.

2021-07-31

物理と幾何と代数/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

申し訳ないのですが, 今回もリーマン面の話はお休みです.

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

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「物理の人って群論どれくらい勉強しとくといいんですかね」

Twitter の鍵つきアカウントの人と少し話をしたので記録しておきます. 参考になる人もいるでしょう. どちらかと言えば物理や応用系の人より, 数学の人が物理の人の気分を掴むのに役立つはずです.

物理の人はどのくらい群をやるのか

何をやるかによります。 量子力学だとスピン関係で行列としてのSU(2)やSO(3)と、 そのヒルベルト空間上への無限次元ユニタリ表現で数学的詳細を一切気にしないバージョンなどをやります。 あとはボソン・フェルミオンに関連して置換群の無限次元表現をやります。 表現の意味で準同型は出てきますが、 準同型写像や準同型定理などはふつうの量子力学の本で見たことはありません。

言い方が難しいのですが、 数学から見ると表現論の範疇ではあるものの、 実際にやっているのは固有値・固有ベクトルに関する議論で、 しかも有限次元の線型代数です。 量子力学だとどれも https://mns.kyutech.ac.jp/~okamoto/education/quantum/spin-angl-mom-coupling-summary110713.pdf のノリです。

まじめにやったことがないので詳細は全く知らないのですが、 結晶学をやる人は点群の勉強をするそうで、 これは量子力学用のスピンや置換群とは全然気分が違います。 一方、素粒子系だとリー群・リー環の話が出てきます。

有限群の理論はどのくらい使うのか, そういう文脈があるか

聞いたことはありません。 点群は有限群なので裏で使っている可能性はありますが、 そういう(物理から見れば)飛び道具を使うよりも、 目の前の具体的な群に対して腕力で強引に乗り切る方が尊ばれる文化的な素地があります。 テンソルに対して数学的な定義を知る人さえほぼいない状況と合わせるとイメージしやすいのではないかと思います。 おそらく数学関係の人が想像する以上に物理の人は数学ができない・知らない・興味がなく、 点群関係だと実験の人も関係してきて理論面への興味関心が一段と下がる事情もあります。

頂いた感想: 何故・どこに・どんな重点を置くのか問題

お久しぶりの方からメルマガで感想を頂きました. どんな形であっても数学を勉強しようという人には参考になるはずなので, いくつかコメントを引用します.

学部生等のセミナーや非常勤講師として面倒を見る機会が多く、 その際に多項式が基礎体上定義されるのか/拡大体上定義されるのかや、 根を閉体の中から取るのか/それより小さい拡大体の中から取るのか、等がよく問題になります。

この辺は写像の始域/終域と類似して、 癖がついてないと疎かにしがちかつ間違いやすい、 けれども、どこで自分が何を考えるのかという主体性に関わる重要な部分だよなあと痛感していた

三週間くらい大雑把に可換環を勉強していたのですが, そこで環・代数・体の拡大が何度か出てきました. まさに上でコメントされているような話が何度か出てきて, 本格的な議論になったら相当注意しないと確実にはまる危険な匂いを察知しました.

このあたりの危機予測に関して一つ大事なのは例, 特に反例を一定量知っておくことです. 現状, 私は幾何の十全な議論に必要なだけの代数の修行量がまだ足りておらず, そのうちの大きな部分が適切な例の把握です. そもそも何が把握しておくべき適切な例なのかさえ見えていません.

環ならとりあえず多項式環とそのいろいろなイデアルと商環ですが, 簡単に見た範囲でもまだ全く感覚が掴めていません. 多変数の多項式環は必ずしも難しくないにもかかわらず, 多種多彩な振る舞いをするのが面白い対象です. しかも代数幾何を通じて直接幾何的な性質も見られてかなり楽しいです. イデアルを加群とみなせば加群の理論も同時に守備範囲に入りますし, ふつうの群・環・体のノート作りをさっさと終わらせて, 早く本格的な可換環・加群の勉強に入りたいです.

最後, だいぶ話がずれましたが, 何にせよ面白い例を把握すること, そして何より面白い例を面白いと思える感性を磨くことが大事です. 他の分野よりも勉強したいと思うかどうかはともかく, 面白いモノをきちんと面白いと判定できる感性を育てるのは非常に重要です.

ガロア理論

リーマン面でも出てきたのでこれからノート作りに精を出す予定で, かつ先の物理での代数といった話と関係するので少しまとめておきましょう.

まずリーマン面だと被覆空間・ホモトピーまわりで使います. まさにガロア被覆といった概念が出てきます. 直接的にゴリゴリにガロア理論を使うわけではありませんが, 群による統制・対称性の統率というガロア理論が生み出した群による統率が直接効いてくる重要な局面です. 特にガロア群の作用が被覆空間上の点の置換を引き起こす点は代数方程式に対するガロア理論と同じ構造です.

他には数学内部での実用性があります. ガロア理論自体, 微分方程式論で微分ガロア理論などがありますし, 代数的整数論での応用など直接的な応用もあります. しかしそれ以上に, 上にも書いた群による対象の統率という視点が決定的に大事です.

対象の統率という視点では幾何全体にも非常に強い影響があります. 例えばリーマン多様体でのホロノミー群はその種類でリーマン多様体の計量的な性質が決まります. もちろん対称性の群をできる限り小さくすることで, その多様体の構造を限定して多様体を研究しやすくするという視点も生まれます.

他にも相転移での対称性の破れは, その名の通りもともと持っていた対称性が破壞される現象で, 特に対称性を記述する群が小さくなる現象を表します.

素粒子ではふつう理論にいろいろな対称性を課します. 理論にはいろいろな自由度がある中, 物理的に自然な (高い) 対称性を持つ群の作用があることを仮定して, 理論の存在範囲を絞り込みます.

あまり単純な比較をするのもよくないのですが, 物性が雑多で綺麗な理論を作りにくい理由はここにもあります. 理想的な状況を考えてさえ理論によい対称性を仮定しづらいのです. 例えば結晶格子の構造を見ても, 一般に整数 $\mathbb{Z}^3$ の作用は仮定できません. 高校化学のレベルでさえ立方格子の他に面心立方格子や体心立方格子, 六方最密構造があります. 結晶を構成する原子やイオンの位置は $\mathbb{Z}^3$ の上になく, この可換群が結晶に作用できません.

もちろん理想的には適当な対称性は持っていますが, 数学的に扱いづらく理論を組みにくいのです. 普遍性などを根拠に, シンプルなところだけ見ていてもある程度は物理がわかるだろうと思って展開する議論以外, 現行人類には対処しようがない部分があります.

ガロア理論は一変数多項式環という, かなり触りやすい対象でこうした事情をある程度まで見せてくれるのがいいところです. ぜひ一度腰を据えて勉強してみてください. 多様体への群作用や群の表現論・調和解析と言われても余計な要素がたくさん入ってくるので, おそらくそれ程勉強しやすくはありません.

調和解析ならフーリエ解析から応用も含めた別の入口が作れますが, 解析のかなりややこしい議論も入ってきて, 必要に応じて余計な部分をショートカットしたり, 各人に合わせた具体例を的確に出せる人に師事を仰がない限り, フーリエ解析から群の射程距離を追いかけるのはとても大変です.

量子力学のための線型代数オンラインセミナー

先日から堀田本をもとにした量子力学の有料指導をするという話をしています. Twitter を見ていると数学系の人でも興味はあるという人はいるようですし, 何がはまりどころになりうるのか, 私としてもできる限り把握しておきたいと思っています. そのために本編がはじまる前にちょっとしたオンラインセミナーをしようと思っています.

専用メルマガで案内するので, 興味がある方は登録しておいてください.

以前も言いましたが, 有料の勉強会開始前に最終的な参加者を募るので, とりあえず量子系の物理・数理に興味がある人は登録しておいてください. ちなみに今日は現代の量子力学でも重要な, 操作主義に関する資料を配布します. これは先日 Twitter で木村元さんからいくつかコメントをもらったところでもあり, 現代的な量子力学を理解する上でもかなり大事話だと思っています.

前半の有限自由度系が堀田本の一番の目玉だと思っているのですが, 非数学系の人にとってはこの目玉の部分こそが一番の鬼門で難関でしょう. そこまでほとんど鍛えてこなかったであろう, 線型代数の抽象論が乱舞しているからです. 特に実用的にも重要な多体系の構成では抽象的なテンソル積の処理が必要で, 「添字と適当な対称性があるベクトルの拡張のようなやつ」としか思っていない人の魂を効率よく刈り取る世界です.

以前松尾さんと勉強会をしたときの蓄積もあり, 物理系の人には響きそうな話の展開の仕方の案はあります. 興味がある方は登録して案内をお待ちください.

フランス語と数学/相転移プロダクション

今回の内容

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今週の英語

残念ながら今週は都合により勉強会がなかったので, 動画コンテンツなしです. 何を書いたものか迷うのですが, まずは最近強化中の英作文に関する話を少し書こうと思います.

Twitter を眺めていたら次の本が出るというのを見かけました.

音声があったので少し聞いてもみました. 例文もいわゆる理工系例文です. この間も書いたような気がするのですが, 理工系の文・文章ならいいというわけではなく, やはり興味関心が持てる分野でないと勉強が続きそうにありません. 自分用の例文集は自分で作るしかないかと改めて実感しました.

特に他分野の専門的な文だと, 専門用語を覚える負荷もあって英作文に意識が向けられません.

いまのところ面白いのは, やはり短めの文章をどうすっきり訳すか, そして大学受験で出てくるちょっと凝った日本語をどう訳すかの二点です. これなら英単語自体はだいたいわかるので, 英作文に集中できます.

あと大事にしたいのは, 英語を通じて語学力・文章構成能力それ自体を鍛えるという視点です. この視点からすると大学受験でのちょっと凝った日本語をどう日本語で言い換え, 英語に持っていくかを考える方向に頭を使いやすくなるのが利点です.

数学会話なら多少こなせますが, この範囲を拡大させるべく, いま少しずつ時間を取っています.

フランス語

新型コロナ禍の今はもちろんどうにもなりませんが, 私は柔道の道場に通っていて, 時々フランスからお客さんが来ます. 毎度お客さんが来た直後だけフランス語熱が高まり, しばらくするとその熱が冷めるよくあるループがありました.

何だかんだ, 最近はアインシュタインの論文読みで, 少なくとも週一はフランス語に触れています. 最近また朝の空き時間などにフランス語の数学の文献を読む時間を作ることにして, フランス語もシコシコやっています.

何となく Serre の層の論文を読んでいます. やはり数学でないと続かないので, 続ける方が大事と思ってとりあえずこれでやっています. 本当はもっとシンプルに単語もたくさん覚えないといけませんし, 文法, 特に動詞の活用をもっと真剣に覚える必要があります. この辺をどうすると楽しめるか考えるのが今の課題です.

雑誌を読む方の勉強会でもあまり言及しきれていませんが, やはり理工系単語にはラテン語が陰に陽に良く出てきて, フランス語はラテン語由来が英語よりも見やすい事情があります. 数学の文献での重要度もありますし, 私の日常では会話の意味でもフランス語が大事なので, これももう少し何とかしたいところです.

もちろん英語との相乗効果も狙える形にどうまとめるかも課題です.

2021-07-24

勉強会での発見/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

申し訳ないのですが, 今回もリーマン面の話はお休みです.

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

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勉強会での発見

教えてようやくわかること

先日お伝えした通り, これまで公開で進めていた理論物理学者である松尾衛さんとの勉強会は, 今週から有料のクローズドな勉強会になりました. クローズドにしたので, ここでそんなにベラベラと書けはしないものの, いくつか私自身改めて勉強になったことがあり, それを共有しておきます.

先日, すうがくぶんかの紹介をしたとき, メールで感想をくれた方が 「こんなところで個人指導をしてもらうのもいいのかもしれない」と言っていました.

実はそこで「教わるのもいいが, 教えることでようやくわかることもある」という返信をしました. そしてまさに今回, それを体感しました. 何というか, わかっていたことではあったのですが, 改めて質問されて大事なことを再認識したというか.

写像の記法

一つは写像の記法です. 数学は定義域・終域を生真面目に書きます. それは定義域 (始域)・終域にもいろいろな情報が入っているからです. 物理やその他の分野では面倒だからなのか何なのか, そうした記法や運用を取り入れていません. それを無視するからいろいろな無理や, 数学の理解に齟齬をきたすのだろうという話をしました. これも以前どこかで誰かに話したことがあるものの, 改めて認識しました.

自分用の記録としてもここに残しておきたいと思います. もしあなたが数学をきちんと勉強したいと思っているなら, おそらくあなたの想像を遥かに越えて大事です.

もしあなたが数学を現代数学のスタンスできちんと理解したいと思っているなら, 記号の用法なども大切にしてください. 記号一つ・用語一つにしても適当に書いているわけではありません.

概念間の関係

もう一つは概念間の関係です. 記号に関して一つ質問を受けたのですが, そこから実数論・位相・関数論・作用素環など多方面に話が展開されました.

以前公開の勉強会でも何度か言った話ですが, 次のようなポイントに注意して勉強する必要があります.

  • 自分一人でもできること.
  • 自分でやらなければいけないこと.
  • 一人でもできるが人に聞いた方が遥かに速いこと.

誰かに何を教えてもらうとき, 大事なことは最後の「一人でもできるが人に聞いた方が遥かに速いこと」に注目する必要があります. これも細分するといくつかあります.

  • 自分にはわからない証明や計算のギャップ.
  • 分野の全体像やいろいろな関係を知ること.

ある程度までなら前者は放っておいて進めておいて, 後で戻る手法で対応できます. しかし後者には本当に長い時間と労力がかかります. 人に何かを教わるときにはとても大事な要素です.

実際今回改めてやり取りして, 一つの記号の話の話から数学に対する大局的な展望をいくつかお話することになりました. そうした事情を知るのは, やはりよく知っている人から指導を仰ぐ利点なのだと改めて確認しました.

ちなみにこの個人指導は, 私が以前から作って販売している現代数学探険隊をもとしています. 自分が面白く役に立つようにと作ったので, 面白く役に立ち, 自分が講義しやすいようにできていて, 我ながら惚れ惚れしています.

最近進めている勉強

ここ半年程度幾何づくしです. リーマン面で多少のガロア理論が出てきたので, いい加減代数も勉強し直さなければいけないと思っています.

リーマン面との関係から代数曲線論も勉強したいところがあり, まずは可換環論のノートを雑に作りました. まだ細部が埋まりきっていませんが, 以前よりはだいぶ世界観の把握が進みました.

それ以外にも幾何のための代数として, いわゆる群・環・体の基礎, そして幾何のための線型代数として, リー環, 内部積・リー微分, ホッジ理論 (調和積分の局所理論), 複素微分形式あたりがあります.

外積代数はもう現代数学探険隊の解析学編で書いていることもあり, 線型代数方面はほぼノートを作ってあります. あとはノート自体のブラッシュアップと, 私自身の理解の定着です.

他には層とホモロジー代数, そして簡単な圏くらいまでのノート作りを考えています.

このノート群は幾何をやりたい人の誰にとっても大事なはずで, 早く公開したいところですが, あまりにも完成度が低い (タイポなども未チェック) のでまだ寝かせざるを得ません. もうしばらくお待ちください.

その他, いろいろな理由から確率論の勉強も再開しています. 新井先生が書いた汎関数積分の本での確率積分は読めるものの, ふつうの確率解析や確率過程の本は全然読めないので, 基礎からやり直す必要性を感じていて, いままさに基本的な本からノートを作っています.

量子力学の基礎知識

先日から堀田本をもとに量子力学の勉強会を計画しています. 猛スピードで私自身再勉強を進めていて, いまのところ 8 月中旬からはじめることを想定しています. もう何人かの方からお申し込みを頂いていて, あと数名は受け付けられそうです.

8 月中旬まで時間が空いてしまい, 単純に待たせしまうのも申し訳ないので, 受講希望の方向けの特設ページを作って, そこに堀田さんの本に書かれていない基礎知識なども載せることにしました.

興味のない方にいつまでも案内をお見せしていてもご迷惑でしょうから, 今後はしばらく量子力学系の話は勉強会用メルマガで展開します. もしあなたが「勉強会には必ずしも興味ないが, 量子力学関係の話は知りたい」と思っているなら, ぜひ登録しておいてください.

時間が空いてしまうこともあり, 最終的にまた勉強会受講希望も取るので, 登録したからといって受講を強制したりはしません.

ちなみに今後基礎知識コンテンツとして作ろうと思っている内容を簡単に箇条書きにしておきます.

  • 小澤正直, 量子測定理論入門 (第56回 物性若手夏の学校(2011年度))」に関するコメント
  • 量子系でのテンソル積をいろいろな角度から眺める
    • 多体系の構成, $L^2$ でのテンソル積, TPCP・量子力学の公理系との関係
  • 操作主義の説明, 熱力学との比較.
  • 最終的な結論のまとめ: 堀田本の読み方・意義などを大掴みにする.
  • 観測と測定の違いを改めてまとめる.

今日配信予定の基礎知識メルマガでは, Twitter で量子力学基礎論の専門家で, 量子情報などの研究もされている木村元から頂いたコメントなども紹介しています. 量子情報からの視点や, 観測の理論と測定理論の違いについてもコメントを頂いていて, 非常に面白いです.

動詞sportの意外な意味/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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動詞 sport の意外な意味

「数学・科学の英語記事を読もうの会」で次のような文が出てきました.

  • Like other types of Dumbo octopus, it sports two ear-like fins on its head.

あなたはこの sport の意味がわかるでしょうか? 見ればわかる通り動詞です.

一応 (オンラインの) 英和辞典にも関連する意味は書いてありました.

ただたまたま書いてあっただけで, やはりこの手の特殊な用法は英英辞典で調べた方がよいのだろうと思います.

以前も書いたか動画で話をしたと思いますが, 典型的なのは have や make のような基本的な単語です. 私の中でこうした単語の中に sport が降臨した瞬間でした.

一緒に勉強している K さんも「はじめてこの用法を見た」と言っていました. 上記オンライン辞書でも口語とあったので, 口語表現・会話の難しさを感じます.

まだ英作文ノートに転記しきれていないのですが, 雑誌記事には理工系向けによい例文が揃っていて, 読解+英作文コンテンツとしてこれは使えるな, という確信を深めています.

ある程度慣れていれば英語から和訳はできるものの, その和訳から英語を復元するのが難しい文がたくさんあります. さらに和訳を作るのは簡単でも, 生物学的にきちんと意味を取り切る難しさもあります.

私も高校では生物を履修していないので, その意味では正式に持っているのは中学レベルの知識なのですが, それだけでもある程度は読めます. しかし K さんにそれを話してみると, 意外と通じなかったりもしました. こうしたところから, 実践的に科学のいろいろな分野の知見を深めるのもありだな, という感覚もあります.

私も生物はもっとふつうに高校くらいの内容は知らないといけないとは思っていて, 以前多少勉強したものの, 当然その程度で身につくほど甘くありません.

大人向けに, 中高生物の内容を, 大学くらいの視点から深く切り込んでくれるコンテンツがほしいです. 地歴公民方面でもそう.

とりあえず, 数学・物理・プログラミング・英語でそれらを組み上げるのが いまの自分の一番の仕事だと思っていろいろやっています.

2021-07-17

残念なお知らせ/相転移プロダクション

今回のテーマ

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今日は一日中量子状態の定義の資料をまとめていたので, リーマン面はお休みです.

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量子状態の定義

ちょうど先週, メルマガを出した翌日に堀田さんの本が届きました. 勉強会を開こうと言っていた堀田さんの本に関してツイートでメモを取りながら読み進めています.

これでいろいろ書いていたら堀田さんからコメントが来ました. それに関連して, 今日, 堀田さんの本での量子状態に関するまとめを作っていたので, その PDF を共有しておきます.

ぜひ参考にしてください. 回答を返せるかはわかりませんが, 不明点があれば気軽に質問してください. 堀田さんの本の勉強会の案内についても PDF 内に案内があります. こちらにも載せておきましょう.

今週の「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」

今週の勉強会の動画です. 一応 YouTube へのリンクも貼っておきます.

さて, 残念なお知らせです. いままで理論物理学者の松尾衛さんと進めていたこの会ですが, 今回で公開は終わりです. 松尾さんからもっとディープな質問やコメントも気軽にできるようにしたいという要望を受け, 次回から有料のクローズドな勉強会に移行することが決まりました. これまでの勉強会の記録や YouTube 上の動画は公開したままなので, 引き続き楽しんでください.

ちなみに今回分の内容のコンテンツは現代数学観光ツアーとして公開しています. 理論物理学者が楽しめるくらいの内容に仕上がっているお墨付きがあるので, 未受講の方はぜひ受講してみてください. もともとメルマガの講座だったのを受講しやすく整理・再構成しています. まだ通信講座としての体を整えられていないのが残念ですが, ご自分でコントロールしつつ楽しんで下さい.

もしあなたが個人指導などをご希望ならお問い合わせなどからご連絡・ご相談ください.

思っていたより楽しめる/相転移プロダクション

今回の内容

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勉強会の所感とライティング

アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会

相対論の方はもう少しで一年で, 面白いと思ってやっているのもあり, とにかく面白いです. 事前にここまで楽しい会になるとは思っていませんでした. もっと多くの人に広めるべく, 何ができるかいろいろ考えています.

数学・科学の英語記事を読もうの会

今月からはじめた英語記事を読む会, あえてネタを慣れない生物系に選んだため, はじめは面白くなるかどうか不安なところもありましたが, 勉強会を進めていたら思いの外面白くなってきました.

今回, 表面的な日本語訳を作るのは難しくなくても, その意味をきちんと取って楽しむには生物学の素養が必要という, まさにこの題材を選んでよかったという文が出てきました. これ以外にも接続詞の使い方のような複数文の関係を見るべき文もあれば, 短い文章でいいからきちんと全体を読む意義が感じられる文もあり, この方向性も大事なことを改めて実感しました.

私は数学・物理特化型で歪ではあるものの, 参加してくれている K さんはもっと英語全般に詳しく, 今回は特に訳文や私の理解に関していくつかおかしいところを指摘してもらえました. やはりきちんと勉強している人は地力が違います. 動画を見てもらえばわかるように, 前置詞などの細かい使い方もきちんと知っていて, 自分の勉強が甘いのを思い知らされます. 今後の強化点が掴めたと思っています.

ライティング

雑誌の勉強会の中で何度か, ライティングにも活きるコンテンツにしたい・作りたいと言っていて, 理系ネタ英作文としても使いたい, みたいな話をしています.

勉強会のあと, 英作文について少し相談したのですが, やはり自分用のコーパスを作るのがベストとのこと. 先々週あたりから改めて英作文の例文集をシコシコ作りはじめました.

方向性はいくつかあります. まずもって大事なのはもちろん理工系の文章のやり取りで大事な文・表現, 次に一般向けとしてビジネス系にも使えるような文・表現, 最後にどうしても発生してしまう適当な範囲での会話での文・表現です.

  • 本当にリアルの日常会話で「これどう言えばいいのだろうか?」と思った文・表現のストック.
  • 日常会話系のコンテンツに収録された文・表現のストック.
  • 大学受験用の英作文コンテンツに収録された, ちょっとひねった・小洒落た日本語の翻訳.

前回も書きましたが, やはりここで大事なのは単純にこれらを収録するだけではなく, いまの私でもさっと書けるレベルの文をストックすること, そのために日本語自体を書き換えること, 大幅に意訳すること, 言いにくいことがあったら最低限の意図が伝わるレベルまで削って文を書くこと, この辺を徹底することです.

四の五の言わず基本的な例文は覚えましょうと良く言われます. 例文でなくても, 例えばロシア語の文法の本で「面倒と思うのもわかるが, とにかく覚えてしまうのも非常に大事. きちんと覚えておかないと結局時間を浪費してしまう」とはっきり書いてあります.

ただ, そんなに簡単にサクサクと覚えていけるわけでもなく, 英語・語学ばかりやっていられるわけでもなく, やりたいわけでもありません. まず何を覚えるか考えて工夫する必要がありますし, 覚えなくてもいいようにする工夫も必要です.

これも前回紹介したように, 特に大学受験用の英作文コンテンツの英文は自分なりに魔解釈して, 簡単にした翻訳もつけています. 一年くらいストックを続ければ私の作文能力自体ももう少しましになるでしょう. それを期待して毎日シコシコ英作文のストックを作っています.

面白い例文があればぜひ教えてください.

2021-07-10

量子力学の勉強会/相転移プロダクション

今回のテーマ

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量子力学の勉強会の案内

先日紹介した堀田さんの量子力学の本がそろそろ出ます. そして堀田さんが次のようなツイートをしていました.

ツリーから引用しておきます.

理論物理学私塾や物理教育インフルエンサーの皆さまに、この教科書に沿った量子力学のオンライン授業を常識的な授業料で行って頂ければ嬉しいです。教科書を買って著作権を守って頂ければ、開講されてもこちらは他に何も要りません。この国で民間の物理学高等教育の場が成熟することを願っております。

私塾などで理論物理学を教えることで、教育する側の生活が成り立つような環境が、この国中に広がることを夢見ております。

極めて例外的だとは思いますが、大学教員の皆さんが無料で、ご自分の大学の学生ではない一般の方に向けて、この教科書に沿った内容の本格的な授業をするのはお避け下さい。私塾などの民間事業の圧迫を避けるように、ご配慮願います。

この教科書は304ページしかありません。先生方の授業の中で、いくらでも膨らませられる余地があるような設計です。受講生のニーズに合わせて、様々な授業設計が可能だと思います。そして私塾や物理教育インフルエンサーの皆様の腕の見せどこでもあります。是非いろいろと考えて頂けないでしょうか。

せっかくこういう話が著者から出ているので, 私も有料の勉強回を主催してみようと思います. まだ本が出てさえいなくて本の中身を確認できてもいないので, 詳細は何も決まっていませんが, もしあなたが興味があるのなら参加希望を出しておいてください.

相場としては次くらいを想定しています.

あくまで物理に集中したいので, 数学的な補足は最小限にする予定です. (計算は別です.) 数学の話をしてほしいという人が多ければそれはそれで考えますが, やるとしても物理とは切り話した別枠にすると思います.

そろそろ物理にも本腰を入れたいと思っていたところなので, とても楽しみです. 早く本が出てほしい.

英作文コンテンツの方針/相転移プロダクション

今回のテーマ: 英作文コンテンツの方針

今週の勉強会は中止になったので, 英作文コンテンツについていろいろまとめていた内容を共有します.

理系向け英作文コンテンツの難しさ

私が知る限り, まず一般的なコンテンツの方向性は次のようにまとめられると思っています.

  • 論文執筆のためのライティング技術.
  • 理工系単語集.
  • 工業英語・テクニカルイングリッシュ.

それぞれに関して不満があります. ちょうどいい落とし所のコンテンツが見当たらないので, 叩き台を作っているところです.

まず Not for me な点をいくつか書きましょう.

Not for me

ごく簡単な英会話にも対応できるコンテンツがほしい.

英作文をする機会は作ろうと思えばいくらでも作れます. 極端に言えば数学・物理・プログラミング系のサイト, stackoverflow に質問を投げればいいのです.

問題はある程度の瞬発力が必要な会話です. しかも訓練するには相手が必要です. 最近よく 4 技能と言われるように, 会話と英作文は別の技能なので一緒にどうにかしようというのは虫のいい話です. しかしもう少し何とかならないかと思っています. ふつうの英会話系の教材に何の興味も持てない私の資質の問題でもあります.

正直, ふだん滅多に英会話の機会はありません. それでもふとした時に英会話 (またはフランス語会話) の機会があります. そう思うたびに少しは (英) 会話もやらないとと思うのですが, 下手をすると年に 1 回あるかないかくらいです. 英作文をがんばっていると勝手に英会話の基礎スキルも上がるような, いい感じのコンテンツがほしいです. 英会話学習にも転用できる英作文のコンテンツがほしいと言えるかもしれません.

一般の理系向けには夾雑物がある

例えば理系向け語源による単語集みたいなのがあります. 単純に眺めている分には面白いのですが, やはり異分野の単語は使う機会がありません. 自分野用に使い倒せる, 私にとって都合のいいモノがほしいです.

テクニカルイングリッシュのノウハウをいい感じに数学・物理ローカライズしたい

テクニカルイングリッシュまたは工業英語と言われる分野があります. 私が通っていた早稲田には専門家がいたようで, ミシガン大と提携した TEP テストという資格試験もありました. 気分的には特許や家電の説明書用の英語だと思ってもらえばいいでしょう. 一言で言えば, ただでさえ内容が難しいのだから, すっと理解してもらえるような簡潔明快な文・文章を書くための技術です.

一つだけ気分が伝わる例文を挙げます. 次の日本語を訳してみてください.

  • レバーを手前に倒してください.

特に意図はありませんが, たまたま見つかったので次のサイトから訳文を取ってきます.

Tilt the lever toward the operator.

これはテクニカルイングリッシュの視点からはいい翻訳ではありません. 次のように訳せと言われます.

Pull the lever.

上記リンク先では「tilt は傾けると言っているだけでどちらにどう傾けるかがあいまいだから, toward the operator という副詞句が必要だ」という解説があります. それならはじめから「手前に倒す」という意味の動詞を使えというのがテクニカルイングリッシュの教えです.

これのいいところは指示が一語で明確になっていること, 文が短くなっていることであり, さらに言えば tilt よりも簡単な単語 pull で表現しきれているのも良い点です. 技術の英語なので単語の簡単さは常に実現できるとは限りませんが.

この簡潔・明快さを基本方針にした英作文コンテンツはないものかと思っています. 多少の時間をかけて簡潔・明快に文が作れるなら, その時間を短くすればある程度英会話にも転用できるのではないか, そう思っているのもあります.

ただしノウハウの全てが数学と物理, そして私に必要な英会話にマッチしているわけではありません. 一見相反するようなノウハウもあります. ここを魔改造するのがいまのタスクです.

会話転用できるレベルの例文と翻訳がほしい

数学や物理は中二病用語生成器であると言われることがあります. 論文レベルの文章や単語は格好いいので, 勉強するモチベーションもあがります. ただ, どうしても話題・表現・語彙は限定的になってしまいます. 特に会話で出てくるアクロバティックな文章・訳・表現はカバーしていません.

この辺, 雑誌, それも中高生向けの雑誌のレベルなら, もう少しバリエーションも増えるだろうと思って, 雑誌を読んでみよう企画を立ち上げてきちんと読み込んでみようと思ったのにつながります.

ではどうするか?

二本の柱

いま作業しているのは次の二点です.

  • ここまでに勉強してきた英作文技術, 特にテクニカルイングリッシュのノウハウの抽出.
  • ちょっと凝った文の翻訳例の生成.

前者について特に言うことはありません. 後者が大事で, しかも私自身にも必要なものだと思っています. コンテンツを作る体だと勉強のやる気も上がるので, まさに勉強ついでのコンテンツ生成という都合のいい話にもなってくれます.

二つ翻訳例を紹介しましょう.

リアルに使えそうな文: プレゼンのまとめとして, この商品のよいところをご説明します.

表題の文の翻訳を考えてみてください. 生真面目に訳すと次のような翻訳になるでしょう.

  • As a summary, I will explain good points of this product.

このくらいなら大したことはないでしょう. しかしまだるっこしいのでもっとシンプルに書きたいのです. 何より, ただでさえ吃音があって人前で話すのに過剰な緊張がかかる自分が, 緊張している場面でこんなに長い文がさっと出ると思えません.

これに対して次のような翻訳を提案します.

  • I show good points.

実際には話の流れもあるでしょうから, これだけでも「ここまでのまとめでもあるよ」というニュアンスも伝わるでしょう. まとめというニュアンスをどうしても入れたければ次のように書けます.

  • I summarize good points.

入れたければ will やら now やら突っ込んでもいいですが, 最小構成としてはこれで十分でしょう. 少なくとも今の私が会話の場面で summarize などという洒落た単語が思いつくとも思えないので, はじめの翻訳では show という中学英語でしのぎました. こういうしのぎ方・頭の使い方を教えてくれる本がほしいのです.

ちょっと凝った和文の翻訳: それはまさに起死回生のホームランだった.

これは大学受験用の英作文教材, 「新ユメサク 夢をかなえる英作文」の最初の例文です. そこでは和文和訳という手法が提案されていて, 起死回生を直接訳すのは大変だから, 「ホームランのおかげで試合に勝てた」みたいに書けばいいと解説され, 次のような翻訳が提案されています.

  • Thanks to that home run, we were able to turn around the game we had been losing and fight back.
  • That was absolutely the home run that allowed us to turn the tables in the game we'd been losing.

大学受験用の英作文としてはこうするといいのでしょう. これがさっと浮かぶなら大したものです. しかし私はこんな文をさっと生成できません. 何度も書いているように瞬発力が必要な会話にも転用したいのです. そこで次のような翻訳を考えました.

  • We had an important homerun.
  • It was an important homerun.
  • The homerun gave us the win.

起死回生というのは自分にとって重要な一打なわけで, 単に important でいいだろうと判断したのです. これならすぐに書けますし, 不格好でも最低限の意図は伝わります.

最後の文, "The homerun gave us the win." については次のように思う人もいるでしょう.

起死回生の一打で逆転できたかもしれないが, このあとさらに相手に点を取られて逆転されてしまったかもしれないのでは?

もちろんその可能性はあります. 大学受験, それも模試でしょっぱい採点者だと原点してくる可能性もあります. しかしいまの私はそんな状況で英作文をするわけでもしたいわけでもありません. 逆にこの指摘は次の大事な点を浮き彫りにします. つまり, 状況によって適切な翻訳も変わるのです.

私が目指すところがどこかと言えば, 簡潔明瞭な英作文であり, 会話にも転用できる作文技術です. この視点からすれば, 上の第三文も使える状況はあるのです. 使えないなら別の訳を考えるだけですし, その場合も上の二つの文は使えます.

実はこの最初の文については「数学・物理の英作文」ノウハウを適用してもいます. それは万能動詞としての have です. 英語の have は日本語の「持つ」とは守備範囲が全然違います. 有名なのは次の文でしょう.

  • I have a headache.

英語だと頭痛は持つモノなのです.

他にも「システムに不具合がある」と言いたいとき, "This system has a problem." のようにも言えます. システムは問題を have できます.

よくわからない場合はとりあえず have を使うというノウハウがあります. 実際数学だと「計算によってこのような式が得られる」というときにも have を使います. もっと have を使おう, そしてそれがかえって英語らしく簡潔な表現を与えてくれるのだ, そういう感じのノウハウをまとめ, 例文をストックしています.

例文は延々とストックを続けていく必要があり, それこそ一生かける必要さえあるでしょう. しかしノウハウとよさげな例文集のピックアップ, そして叩き台なら 1-2 ヶ月もあれば作れると思います. ほしいものを中心にいろいろ考えて進めています.

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2021-07-03

相対性理論にまつわる話/相転移プロダクション

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相対性理論にまつわる話

語学の勉強会と反省

何度かアナウンスしている通り, アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会を主催して, もう 10 ヶ月です.

英語を中心として語学的にこってりやっているので, 物理・数学の話はほとんどしていないにも関わらず, いまだに第 1 章の前半も前半です.

それはそれとして, 特殊・一般含めて, 相対性理論の物理もきちんとやらないとまずいだろうと思いはじめました. ちょっと凝った文になると物理がわかっていないと英語の意味も取れません. 実際, 一緒にやっている人が理系とは言え数学出身の人で, 物理としては学部 1-2 年の話でもやはりなかなか気分が掴めず, 訳出もしづらいようです. そこで改めて特殊・一般相対性理論の勉強をはじめました.

物理の前に数学の話

特殊相対性理論は数学として何ということはありません. もちろん理工系教養程度の数学力は仮定した上で. 物理としてはきちんと考えないとはまるので, そこを改めてきちんと詰めるのが今のテーマです.

もう一つ, 一般相対性理論についても一応触れておきましょう. よく擬リーマン多様体の理論・微分幾何が必要でうんぬんという話を見かけます. ただ, シュバルツシルト時空やらブラックホールの基礎やらの入門トークをするだけなら, わざわざ微分幾何というほどの数学は必要ないのでは? という気しかしません. この程度の範囲ならテンソル解析もはっきりいって大した話ではなく, 共変微分だけ謎の微分法として受け入れて覚えて使い倒せば計算は十分に進められます.

そういえば, 擬リーマン幾何ではなくふつうのリーマン多様体・リーマン幾何ですが, 相対性理論でも必要な微分幾何を計算ベースでゴリゴリ作った動画シリーズがあります.

興味があればどうぞ. メインの「光学迷彩の数理」では, 実際にメタマテリアルの物理の論文の数学的イントロから作っているので, ある程度物理モチベーションで微分幾何の計算が勉強できます.

物理スタイルと数学スタイルを両方議論しているので, 物理の人が数学スタイルの微分幾何を勉強するにも便利だと思います. 以前, 理論物理学者の松尾衛さんからも非常に出来がよく, とても参考になると言われていて, 一応, 理論物理学者からもお墨付きをもらった講座であると宣伝しておきます.

それより大事な「数学」の話

私が一般相対性理論の本を読んでいてつらいのは, 微分幾何ではなく単純な微分積分です.

計算がハードなのはもちろんですし, 久し振りのある程度本格的な物理でいろいろな近似を見かけ, これはもう鍛え直さないといけない気分しかありません.

そしてもう一つきついのが, 厳密に計算できる系の積分です. 「これは積分公式があるのでそれで厳密に解ける」というのが時々出てきます. 本を見れば書いてあるでしょうし, コンテンツ制作のネタでもあるため, せっかくなのできちんとやろうかと思っています. 高校・大学受験の積分でも技巧的な積分の技術暗記がありましたが, まさにそのノリです. きちんと追いかけていないのでよく知らないものの, ヨビノリ動画に積分シリーズがあったと思うので, そこでもいろいろ議論していそうな感じはします.

何にせよ微分積分の計算系コンテンツは作らないといけないと思ってさぼったままなので, 一般相対性理論のついでに計算系コンテンツの拡充を測る予定です.

まさに相対性理論の原論文と語学の勉強会で嫌という程実感していることとして, やはり一人でやっていると飽きてきて途中で面倒になって終わるので, やるなら誰か巻き込んでやろうと思っています.

ライティングを強化したい/相転移プロダクション

今回のテーマ

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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リーディングとライティング

詳しくは上でもリンクを張った「数学・科学の英語記事を読もうの会」の動画を見てほしいのですが, この勉強会の当初の目的は二つで, 相対性理論の原論文を読むのに死ぬ程時間がかかるので, 全体を読み切れるような勉強会をしたかったこと, 単語を掘るタイプの勉強会・コンテンツ作成がしたかったことがあります.

はじめ単語を掘るというとき, 語源を掘るタイプを想定していました. これは相対性理論の勉強会でも実際にはじめにやっていたことです. 最近改めていろいろ勉強しつつ, 今後のコンテンツ計画もしていると, ライティングの観点から単語を掘るのもいいのではないかと思いはじめています.

これも勉強会でいくつか話したので, やはり興味があれば動画を見てほしいのですが, ここでも少し書いておきましょう.

例えば「練習すればできるようになるよ」と言うとき, 日本人の発想からすると "If you practice hard then you can do it." のように書いてしまうでしょう. しかし英語らしい英語で書くなら多分 "Practice makes perfect." でしょう.

これにはいくつかの特徴があります.

  • 読むのは簡単で, 直訳からいわゆるこなれた日本語に直すのも簡単だが, こなれた日本語から「こなれた英語」に戻すのは異様なくらい大変.
  • 日本語では条件文で書くところを, 主語を practice にして書けてしまう.
  • 日本語の「作る」の語感から想像できないような make の用法がある.
  • 全てとは言わずとも日本語では長い文でも英語では異様にシンプルに書ける. 実際ここでは三語で書けている.

しかもこれらは一般的にも使える特徴です. 他にも, 改めてリーディング教材に使っている記事を見ていると, ライティングの視点から見て面白い英文がいくつかありました. 単語のこういう掘り方も面白いなと思っています. ただ, これをやるならライティング専門でやった方がよさそうなので, 別で切り分けた方がいいだろうとも思っています.

数学・物理だとちょっと突っ込むと本・論文が英語になるので, リーディングは山程やっているものの, 博士に行って論文でも書かないとなかなかゴリっとライティングする機会がなく, 私もライティングはかなり弱いです. しかし, プログラミングとなると英文ライティングがかなり大事で, 私自身はあまり機会はありませんが, GitHub の issue 書きややりとりでライティングが必要です. もっとさっとライティングできたらいいのに, と思う機会は多いので, この際ライティングはライティングは別に切り出してやった方がいいかと思いはじめています. ライティングからはじめて音読でスピーキング練習する手法もあるので, スピーキングにもつながるコンテンツが作れないかとも思っています.

以前, ちょこちょことライティング用の例文集は作っていて, 会員制サイトにもいくつか, 少なくとも 100 文以上は載せていると思います. いまの勉強会をやっている二ヶ月間は勉強会に集中したいので, これが終わったらライティング強化勉強会がしたいです.

やりたいことがたくさんありますが, 実験しつつ一つずつ進めます.

2021-06-27

英語 who とフランス語 que の類似/相転移プロダクション

今回のテーマ

2021-06-26 語学・言語学セミナーの記録

私が参加している語学・言語学コミュニティのセミナーがありました. そこでの話をいくつかシェアしておきます.

今回はラテン語・エスペラント語がメインでした. 一番面白かった・または私にとって大事だったのは, やはり物理との関係です.

最近, 発音含めて音に注目しています. 大分前から「音は国を越える」という話が出ています. 「すべて芸術は絶えず音楽の状態に憧れる」, 「すべての芸術家は音楽に嫉妬する」という話があります. 詳しいわけでもないのでこれに関する話は省略します.

問題はこれの語学版で, 文字・スペルは国・言語・文化をまたぐと大きく変わることがあります. キリル文字なのに文法はペルシャ語と言われるタジク語のような言語もあれば, キリル文字を使うかラテン文字を使うか程度の違いしかなく, 日本語で言えば東京方言と大阪方言程度の違いさえないと言われているクロアチア語とセルビア語のような言語もあります. 後者に関しては旧ユーゴスラビア時代は, セルビア・クロアチア語という一つの言語とされていたほどです.

特にセルビア・クロアチア語に顕著なように, 言語には政治の要素も強く入ります. 国・言語・文化の別の側面だからでもあるのでしょう.

音の話

それはともかく, 音の話です. 声・音声は人体という楽器が奏でる音楽です. そして発声器官である口周辺の構造は, 人種などによってほぼ変わらないはずです.

言語ごとに細かな音・発音の特徴はあるにせよ, 大まかな発音自体はいくらでも真似できます. つまり音は人体の物理によっていて, 人間の身体の構造が大まかに言えば同じだからであって, それは自然言語にも物理がきちんと効いている証拠なのです.

ここを追いかけて, 「理系のためのリベラルアーツ・総合語学」にうまく活かせないか考えるのが, 今のテーマです.

実例

英語での who はドイツ語では wer で, この類似は英語がゲルマン系の言語だからでもあります.

一方ロマンス系の言語であるフランス語は qui, スペイン語は quien で, ラテン語は quis です. ちなみに現代ラテン語でもあるイタリア語は che です. イタリア語だけ大分見た目が違いますが, 発音は「ケ」です. ちなみにフランス語は「キ」, ラテン語は「クイス」, スペイン語は「キエン」で, どれも k の系統の音です.

ここで who (wer) とラテン語は大きく違うように見えます. しかしこれは次のような見方をすると「同じ」言葉だと思えます.

よく what や why は「ホワット」「ホワイ」のように, 先に h の音を発音することがあります. この事情が関係しています.

音韻転換 (メタセシス) と呼ばれる現象があります. 「新しい」は「あたらしい」である一方, 「新たな」は「あらたな」と読みます. これが音韻転換です. 他にも秋葉原は「あきはばら」と読みますが, もともとは「あきばはら」です.

これをもとにすれば what・why は hwat・hwy だった可能性があります. 実際 Wiktionary いわく, 古英語では hwæt だったようです. もちろん who も hwo のような形があったようです.

英語の発音を勉強するとわかりますが, この h は空気が出る音・吐き出す音で, que・quis・quien・che の k も空気が出る音です. 実際に h と k はよく入れ替わります.

これは実例とともに『論理英語 ボキャビル編』にもいくつか書いてあるので, 興味があれば眺めてみてください.

入れ替わりその 2

さて h と k (q・c) の入れ替わりはわかりました. 次に w と u の都合を見てみましょう.

メルマガで紹介したような気もしますが, ラテン語の時代はそもそも v (ヴァ) の音がありません. それ以外にも歴史的に u, v, w はぐちゃぐちゃに入れ替わっています. 語源などを考えるときは同じようなものだと考えます. ちなみに w は「ダブルユー」なわけで音の上でもだいたい u です.

というわけで, who と quis は全然違うように見えますが, hwo と入れ替えた上で, 音とスペルに関していろいろな事情を考えれば同じ起源を持つ言葉だとは言えます.

他の例

長くなってきたので手短にします. 英語の over に対応するドイツ語として auf があります.

日本語では「フ」「ブ」と濁点の有無で極端に文字が似ているので, b・v, f がだいたい同じようなものだと思うのはそれほど抵抗がないはずです.

母音なので微妙なところではありますが, o と au について考えてみましょう. ちょっと強引ではありますがフランス語を引いてきます. フランス語での au は cafè au lait (カフェオレ) のオで有名なようにオと読みます. 英語でも audio のように au でオ (オー) と読むことがあります. こう思えば o と au の転換もそうおかしくはありません.

音, そして音も考えつつスペル・アルファベットの対応も考えれば, 少なくともヨーロッパ系の言語はこれでいろいろ辿って遊べます.

この辺, いま勉強会をやっているところでは, 理系の人にも楽しんでもらえているので, うまく料理すれば理系の人にも楽しんでもらえるはずですし, 「文系のための理系入門」として, いわゆる文系の人にもいい感じに提供できないかとも考えています.

念のため注意

これだけ見るとこじつけではないかと思う人がいるかもしれません. 私も自分自身で文献学・音韻学的な調査をして追いかけきったわけでもありません. それでも言語学者から聞いた話なので, いったん一定の信頼感を持って受け入れています.

コンテンツ作りのためにも, このあたりをきちんと勉強するのも今後の課題です.

感想をください

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.

ではまたメールします.

2021-06-19

解析接続と層/相転移プロダクション

今回のテーマ

  • 人文学者向けのプログラミング講座
  • リーマン面: 解析接続
  • 2021-06-19 代数学演習, 群作用に関するやりとり
  • 「Wikipedia を読もうの会」改め「数学・科学の英語記事を読もうの会」
  • ProjectEuler 解答 (GitHub へのリンク)

読みたい内容は上記リンク先から読んでみてください. あと, このメルマガ原稿自体も次の場所に置いてあります.

バックナンバーを公開しました

今回からメルマガ原稿というかバックナンバーを次の場所に置くことにしました.

感想をください.

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数学・科学の英語記事を読もうの会/相転移プロダクション

今回のテーマ

人文学者向けのプログラミング講座

こちらの語学系のメルマガに登録されている方がどんな属性の人達なのか, いまだに全くわかっていないのですが, 人文系の方はいらっしゃるのでしょうか.

プログラミングの裾野は広く応用もいろいろあります. 私自身, 最近よく書くプログラムは, いわゆるシステム系のプログラミングではなく, ちょっとした処理の自動化スクリプト, 長持ちさせるスクリプトではなく書き捨てのスクリプトだったりしていて, 広い意味で (自分の) 業務効率化みたいなプログラムです.

人文系の人達にはかえってこういう方がはまるのか? と思いつつ, 求められているものがよくわかっていません. もしかしたら中高生にもはまるネタがあるかもしれないと思っていて, かなり気になっています.

何か具体的な事情をご存知の方がいたらぜひ情報をください. 人文学者と言わず, こんな感じのプログラミングコンテンツがあると嬉しい, というのでも構いません.

「Wikipedia を読もうの会」改め「数学・科学の英語記事を読もうの会」

金曜日にどういう感じで進めようかちょっと話をして, 方向性を少し変えたというか, 数学・物理に限らないネタを扱うことにしました. とりあえず科学雑誌系の記事を読むことにして, 特にまずは生物系のネタを扱います.

上記ページの最後にも書いたのですが, 今日一日どんな感じにしようかコンテンツ準備しつつ考えたのですが, 昨日の時点で考えていた単語深掘り系は時間がかかりすぎて駄目そう, という感じになってきました.

そもそも一つのテーマに時間がかかり過ぎる, 一つのテーマを読み切る形にしたいのが試験企画のポイントだったのに, そこが死んでしまいそうです.

あと長期間過度な負荷なくずっと回し続けるためには, いい意味で準備に手が抜ける企画も大事で, 単語の深掘りだと永遠に手が抜けなさそうなのもつらいポイントです.

私自身が楽しい部分なのでやらないことはありませんが, いい意味で手を抜けるようにするための工夫をこの 2 ヶ月で考える予定です.

ちなみに日時は金曜 21:00-22:00 に決まりました. まずは次の記事を読みます.

参加自体はまだ受け付けているので, もしあなたもご興味があるなら連絡してください. やりとり用のグループに招待します.

感想をください

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ではまたメールします.

2021-06-12

2ヶ月の勉強会トライアル募集/相転移プロダクション

今回のテーマ

  • リーマン面の話
  • 2 ヶ月の勉強会トライアル募集

リーマン面の話

いまあるリーマン面のノートの章一覧も貼っておきます.

まだ詰めが甘いのと, 全ての章を書き切れているわけでもなく, 上のページの各章のリンク先は非公開状態 (パスワードをかけている) ので見られませんが, 幾何編公開に向けてこのくらいは準備しています.

2 ヶ月の勉強会トライアル募集

理工系向けの英語に関して, 前から考えていた 2 か月くらいの短期の企画をやってみようと思っています. 具体的な企画内容については次のページを参照してください.

語学系メルマガでも募集するので, 詳細については集まった人次第です.

念のため, どんなノリで語学の勉強会をやっているかも改めて紹介します.

ここにある 30 回分の資料を見てください. 勉強会の動画もあります.

感想をください.

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.

ではまたメールします.

ドイツ語・ロシア語の読解力が爆上がりした/相転移プロダクション

今週の内容

次の 3 本立てです.

  • 今週の記事: 外部リンク紹介
  • ドイツ語とロシア語の読解力向上
  • 2 ヶ月の勉強会トライアル募集

今週の記事

メルマガに書いたか忘れましたが, 以前から「エンタメの語学」はやりたいとずっと思っていて, それに関わる軽い調査も含んでいます.

改めて書いておくと, 語学学習の成果は基本的にコンテンツアーカイブサイトへの不断の, 各箇所への追記で対応しています. 小さな修正まで含めれば数十ページにわたるので, いちいち書き切れません. 一番大きなかたまりが毎週の「アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会」です.

ドイツ語とロシア語の読解力向上

別のところで喜びのあまり連投していたのですが, ようやくドイツ語が読めるようになってきました. 具体的にはアインシュタインの特殊相対性理論の論文中の文です.

論文を見るとわかるように, 一文一文が尋常ではないほど長いのです. 長いというのはそれだけ複雑な構文なわけで, これまで何をどう読めばいいのかずっとわかっていませんでした.

結論だけ端的に言えば文法をきちんと大事にしただけですが, ドイツ語としては動詞句を大事にし, 格つき言語として格を丁寧に読み取るようにしただけです.

この二つ, わかっている人には自明だと思うですが, ここに辿り着くのに 5 年かかったわけです.

はじめから適切な指導を受けていれば一発だったろうに, この辺が独学の厳しさなのだろうと痛感しています. これを起こさないようにするコンテンツ制作が大事という思いを新たにしました.

「格を大事に」のもと, 改めてロシア語を読んでみたら, 単語・文法を覚えていないためにものすごい時間がかかること以外, 文をきちんと把握できたので, 次はロシア語の最低レベルを上げる方に注力します.

この成果は「アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会」で出すので, 興味ある方は来週以降もそちらをチェックしてください.

ちなみに今週は参加者の体調不良などがあってお休みでした.

2 ヶ月の勉強会トライアル募集

理工系向けの英語に関して, 前から考えていた 2 か月くらいの短期の企画をやってみようと思っています. 具体的な企画内容については次のページを参照してください.

数学・物理系メルマガでも募集するので, 詳細については集まった人次第です.

念のため, どんなノリで語学の勉強会をやっているかも改めて紹介します.

ここにある 30 回分の資料を見てください. 勉強会の動画もあります.

感想をください

「読んだよ」の一言でもいいので, ぜひ感想をください. 今後もメルマガを書く励みになります.

では今日はこんなところで. またメールします.

2021-06-05

分岐性・固有写像・シートの枚数

見せ方を変えてみます

読者の方からコメントを頂いたので, 今回から見せ方を変えます. 特に式を含む内容は TeX をレンダリングしてくれる外部記事に流すことにしました.

こうした「見づらい」といった内容でもいいので, ぜひメルマガに感想を送ってください. 鬱陶しいかもしれませんが, やはり毎回きちんと言わないと伝わらないとも思うので, これからはくどくても感想くださいと書くようにします.

今回のメインコンテンツ

参考: 前回 (まで) のコンテンツ

リーマン面関係の話を, 幾何特集として改めて次のところにまとめてあります.

感想をください

「きちんと読んだよ」というだけでもいいので, ぜひ感想を送ってください. 執筆の励みになります.

ではまたメールします.

右作用・左作用と英語表現/相転移プロダクション

見せ方・書き方を変えました

数学・物理系の読者の方から, 内容が雑駁すぎて今回のテーマが何なのかわからない, といった感想を頂きました. そこでちょっと書き方を変えてみます.

特に外に出せる部分は外に出して, 興味ある内容だけ読みやすいようにリンクを張る形にしてみます.

今回の自作記事・コンテンツ

面白ネタまとめ

私の情報源が Twitter なので主にそこからの引用をまとめた内容です.

どれも面白いのでぜひ読んでみてください. 時間がないからあえてどれか一つを挙げてと言われたら, 「2021-06-03 Twitter 引用: サイゼリヤの雑学と言語学」を勧めます.

最後に: 感想をください

今回は直接やり取りする機会があって, そこでコメントを頂いたのですが, やはり何でもいいから感想がほしいというのも, 毎回きちんと言うべきだと実感しました.

というわけで「今回も読んだよ」だけでいいので, ぜひ感想をください. アンケートで匿名回答もできます.

ではまたメールします.

2021-05-29

特異点解消の気分をもっと知りたい/相転移プロダクション

狭義の数学があまりできていない

最近語学ばかりであまり数学らしい数学ができていません. 「理系のためのリベラルアーツ・総合語学」の大目標もあり, 私の中では語学も数学枠ではあるのですが.

あと勉強ばかりでプログラミングもコンテンツが作れていません. 最近謎の Common Lisp 熱の高まりがあり, シコシコ勉強しています. 数学・物理まわりのプログラミングの観点からは, 情報量を見ても Julia の方がお得なのですが, そんな損得感情で動けたら苦労はしません. 困ったものです.

語学メルマガで少し書いたように, 理系人からは数学学習として, 文系人からは語学からの理系入門として, Wikipedia の数学・物理の解説ページを 3 ヶ月ワンテーマくらいで, いろいろ読むみたいな勉強会が楽しそうだし, コンテンツを作る上でも作りやすそう, みたいな知見がたまってきています.

今週のリーマン面

さて, 今週のリーマン面です. 少し被覆空間に入ります.

多項式・指数関数・対数関数が大事

改めて復習していてこの 3 つは大事だと痛感します. 多項式, もっと言えば単項式は前回の正規形定理でほぼ尽きます. こんな大事な定理はありません.

指数と対数に関しては, 累乗根関数と同じく, 極座標表示からの多価性問題は基本中の基本ですし, それをどう処理するかがことの発端だからでもあります.

そしてここがまさに被覆空間が直接出てくるところです.

指数関数の持ち上げと対数関数

整備中のノートの「分岐被覆・不分岐被覆の関数論」の節から記述を引いてきます.

リーマン面$X, Y$と非自明な正則写像$p \colon Y \to X$を取りましょう. 特に例として$Y = \mathbb{C}$, $X = \mathbb{C}times$として $p = \exp \colon \mathbb{C} \to \mathbb{C}times$とします.

このとき恒等写像$id \colon \mathbb{C} \to \mathbb{C}$は $\mathbb{C}^\times$上の多価の対数関数を誘導します. 何故かと言えば $b \in \mathbb{C}^\times$に対する集合$\exp^{-1} (b)$がまさに $b$の対数の値からなる集合だからです.

もっと具体的に $b = 1$としましょう. このとき $\exp^{-1} (1) = \twopii \bbZ$であり, 複素数$1$は全ての整数$n$に対して極座標で $1 = e^{\twopii n}$と書けるので, 確かに$\log 1 = \log e^{\twopii n} = \twopii n \in \exp^{-1}(1)$です.

上で書いた正則写像 $p = \exp$ は被覆写像で, $\mathbb{C}^{\times}$に対して$\mathbb{C}$は被覆空間です. これは $\mathbb{C}^{\times}$ を円周 $S^1$ に制限して, $\mathbb{C}$ には 3 次元的に円周の上下に巻き付く螺旋を割り当てれば, 円周に対する被覆空間としての螺旋が出てきます.

ここで被覆空間の持ち上げと解析接続的な意味での持ち上げの対応が出てきます. いろいろなところで言っているので, メルマガで書いたかあまり覚えていませんが, もしあなたが代数的な色彩が強くなる代数トポロジーや, 幾何的な色彩が強い被覆空間に馴染めないなら, この手の関数論・解析学に関わるところから勉強を進めるのもお勧めです.

理論を, コンテンツを作ろうと思うと, 代トポは代トポで整備してからとなりがちなので, 話の持って行き方は工夫しないといけませんが, モース理論も線型代数・微分積分からはじめて, ホモロジーに流せる道があります. もちろんコホモロジーならなおさら入口からダイレクトです.

関数論とホモトピーの場合, 複素平面上の議論が本当に本質的で, 絵にも描きやすいというか, 絵に描けるところだけいじっていてもかなり本質的という利点があります. 幾何がわかっていなさすぎるせいで, ここに切り込み切れずに 1 年くらい経っていますが, 何にせよ工夫のしがいがあるところです.

特異点解消への道

ここでふと特異点解消を思い出したので言及しておきます. はじめに書いておくと, 代数幾何は勉強していないと言い切った方が正確なくらいわかっていないので, おかしなことを言っている可能性の方が高いです. 識者がいらっしゃればぜひご指摘ください.

さて, 何で思い出したかというと, まさに被覆空間の構成, つまり円周の持ち上げとしての螺旋の構成です.

この持ち上げで面白いのは, 実一次元のコンパクト多様体である円周は二次元に埋め込まれていて, それの被覆空間である螺旋は実一次元の非コンパクト多様体で, 三次元に埋め込まれている点です.

前者の円周の二次元への埋め込みはともかく, 後者の螺旋の三次元の埋め込みとそこへの持ち上げがポイントです.

解析接続で問題だったのは, 極座標で複素数が$z = r e^{i n \theta + 2 \pi i n}$を持ち, $2 \pi i n$の分がいろいろな悪さをすること, その悪さを「解消」するために高次元に住む同じ次元の対象 (ここでは螺旋) に切り替えるところです.

この「次元は同じ実一次元で, 埋め込まれている空間の次元が上がっている」のが面白いと思っています. つまり二次元の円周は高次元空間である三次元空間からの射影で, 解析接続の視点からはそこから見たのが自然な姿, 真の姿なのだ, とも言えます.

特異点解消

私が知る限り, 特異点解消にも似たところがあります.

  • 低次元で考えていると尖ったところ (特異点) が出てきてしまう.
  • 高次元からの射影として捉えて特異点を滑らかにしてしまおう.

これは以前, 数論幾何の人から, 「特異点はこうぐわっと回すイメージ」といって, ジェスチャーとともにイメージ図が載っているページを教えてもらったところから来ています. そのページ自体は忘れてしまいましたが, 次のあたりがいまパッと探して出てきた私の想定です.

私の理解では, 高次元で滑らかが代数曲線を平面に射影すると特異性が出てしまっていて, それを平面側から見れば高次元に持ち上げて特異点解消した図です.

関数論では多価性という特異性を, 高次元空間に埋め込まれた複素一次元の連結な多様体であるリーマン面に持ち上げ, それで特異性を解消しているのではないか, そういう気分で眺めています.

この辺を調べていると改めて代数幾何も勉強したくなりますし, 関連する楕円関数などももっと突っ込んで勉強したくなります. 梅村本も買ってはあるものの積読状態です. 早く勉強したい.

それはそれとして, 代数幾何での特異点解消に関しておかしなところがあればぜひ教えてください. 本当に自信がありません.

あとこれまであまり書いてきませんでしたが, 間違いのご指摘含め, 感想はぜひ送ってください.

ではまたメールします.

なぜ多言語を扱うのか/相転移プロダクション 語学メルマガ

ロシア語の勉強をはじめました

最近改めてロシア語を本格的に勉強しはじめました. 東京外語大のサイトの記述がどうにもわかりづらく, 参考文献として載っていた「現代ロシア語文法」を買ってみました.

まだ雑に読み進めているだけですが, やはり P.106 にある次のような記述が身にしみます.

この本に書いてある表はきちんと覚えよう. 暗記を馬鹿にしてはいけない. 最終的には覚えるべきは覚えなければロシア語の上達は覚束ない.

「表を横に置いて調べながらでもいいのでは?」, と思う人もいるかもしれない. しかしそれでは無駄に時間がかかりすぎてしまい, かえって上達を阻害する. まずは覚えるべきを覚えてほしい.

なぜ多言語を扱うのか

このメルマガを取っている人の趣味がよくわかりませんが, 色々やり取りしていて, 改めてこの話題を書いておかないといけないと思い, サイトにも記述を追加しておきました.

興味があれば眺めておいてください. 個人的にはあくまでも数学・物理のためです.

アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会に関するやり取り

今週も勉強会をやりました.

同じ語学コミュニティにいる文系出身の人が, 改めて文法を勉強したい, 特に複雑な構文の文を読むための訓練をしたいと言っていたので, まさにそれをやっている勉強会として資料・動画をシェアしました. 次のような感想をもらったので抜粋して紹介します.

先入観

  • その 1:相転移って何だろう? 理系の内容はムズカシソウ.
  • その 2:アインシュタイン難しそう.

実際:

  • 原文が読める.
  • 理系単語が意外と面白い (co-ordinates の複数の説明とか).
  • 英語の構造説明がわかりやすい.
  • こんなにたくさん多言語が出てくると思わなかった.

理系理系と構えすぎた. 勝手に難しいのだろうと慄いていたが楽しかった. アインシュタインが読めるのにも感動.

理系も面白いというのさえわかってしまえば, あとは日頃見る単語かどうかくらいで言語という括りでは同じだった. 逆に日頃見ない単語だからこそ新鮮だったり, 小難しいだろうと決めつけているものが案外読めてしまうんだ, そういう感動を誰かと分かち合いたい.

まだ最序盤で数学・物理の話があまりなく, 途中のかなり部分まで凝った話も出てこない事情はあるものの, 理系方面に苦手意識がある文系の人にも楽しんでもらえる要素があると知り, ちょっとほっとしました.

理系のための語学入門の裏として, 文系のための理系入門として機能させられないかとも思っているので, 見せ方・切り口を工夫すればもう少し何とかなるかもしれない, という具体的な感じが少し掴めました.

これもやり取りで話したのですが, ある程度のボリュームがある論文をごりっと読むのはつらいので, いろいろな数学・物理系の単語や概念に関する Wikipedia の英語記事を題材に, 3 ヶ月ワンテーマの勉強会を開く, みたいなことも並行して企画・実行したいと考えています.

これも最近勉強し直している音・発音の話をしようと思っていましたが, 大分長くなってきたので次回にしましょう.

ではまたメールします.

2021-05-22

ランダム行列の数理が面白そう

コンテンツアーカイブの URL を変えました

いま整理しているアーカイブサイトの URL を https://phasetr.com/archive/ に変えました. 以前のメールにあったリンクも死んでいるのでご注意ください. いまのところ free だったのを archive に変えただけなので, そこだけ直せば問題ないはずです.

何にせよまだページ構成・URL は流動的なのでご注意ください.

今週の新規コンテンツ

買った本

  • 木村太郎, ランダム行列の数理
  • 数学セミナー 2021-06 号

数学セミナーは特集の数学史目当てに買ったものの, 普遍被覆の話が書いてありました. リーマン面の解析接続と直結するテーマです.

後者に関してはいま書評を書くためにちょこちょこ読んでいます.

コメントをちょこちょこ入れてあるので参考にしてください. 本にはネタ自体はいろいろ書いてあるものの, P.50 程度まで読んだ範囲では, 純粋に本を読み進める上ためには, 線型代数・微分積分・関数論の基礎があれば十分そうです.

私のメルマガに登録するくらいの人なら, 十二分に楽しめる本のような気分があります. 値段がやたら張るのが難点ですが. 書評をまとめたらまたアナウンスします.

今週のリーマン面

前段が長くなったので今回は軽めにしましょう. 被覆空間の話は追々進めることにして, 私のノートの順番で進めます.

リーマン面の定義

リーマン面は連結な一次元の複素多様体として定義します. 単なる一次元の複素多様体ではなく, 連結性を課すのがふつうなようです. 実際, 解析接続まわりでは大事な性質ではあります. さらにふつうの多様体論でも連結な多様体が基本です. ついでにいえば, リーマン多様体もふつうは連結性を仮定します. これは距離関数の定義に関わる問題なのでリーマン面とはまた別の理由ですが.

リーマン面の例

もちろん複素平面の領域 (連結な開集合) が一番基本的な例です. 他に関数論, 特に有理型関数の理論からは複素射影空間が重要で, 解析接続からは複素平面の原点を抜いた集合 Ccross や半平面が重要です. 特に Ccross は指数関数の値域としても出てきます.

解析接続の理論で重要な関数

被覆空間の例として指数関数・対数関数がかなり大事です. これはそのうちきちんと書く機会があるでしょう.

もう一つ大事なのは $k$ 次の単項式 $p_k(z) = z^k$ です. これが大事なのは正則関数の局所的な振る舞いと直結するからです. 本によっては正規形定理と呼ばれていて, 全ての正則関数は適切な座標系に対して局所的に $k$ 次の単項式で書けることがわかっています.

ふつうの関数論では単純なテイラー展開からしたがう定理で自明と言えば自明です. しかし実はこれが異様なくらい役に立ちます. 多重度のような概念の基礎でもあり, 正則写像に対する開写像定理や逆写像定理を直接の系に持ちます. 解析接続でもシートの枚数と直結していると言えば, 重要度はわかってもらえるでしょうか.

局所的にはそう書けると言いつつ, 実は連結性とも絡めて正則写像を大域的に制御する強烈な言明です. 証明も含め, 多様体論・多様体間の写像の理論としてもごく基本的な認識を育ててくれる定理なので, まずはこれをきちんと制圧するのが大事です. 解析接続を考える上では根源的な定理と言っていいでしょう.

最後に

関数論・リーマン面はまだまだ慣れていません. 大事だと思ったことを書いていますが, 何か変なことを言っていたらぜひ教えてください.

今回はこんなところで. ではまたメールします.

ロシア語がきつい/相転移プロダクション

コンテンツアーカイブの URL を変えました

いま整理しているアーカイブサイトの URL を https://phasetr.com/archive/ に変えました. 以前のメールにあったリンクも死んでいるのでご注意ください.

いまのところ free だったのを archive に変えただけなので, そこだけ直せば問題ないはずです.

何にせよまだページ構成は流動的なのでご注意ください.

今週のコンテンツ

文法をやらないと調べられないし覚えられない

これは上の英語・多言語の勉強会でロシア語をやっていて痛感したことです. 文中で活用した単語を辞書で調べられない事案が発生しました.

ネットで叩き込むと適当に翻訳だけは出てきます. しかしいわゆる原形というか不定形, または辞書の見出し語がわかりません.

もう駄目だと思って, ロシア語はまず文法を勉強しています.

ローマ字だからということもあるのか, イタリア語やスペイン語だとろくに文法を勉強していなくても, 力づくで何とか読めてしまうものの, ロシア語はどうにもなりませんでした.

何かを暗記したり調べるにも, 最低限の文法・ルールがわかっていないと厳しいことを痛感しています. 一緒に勉強会をやっている K さんともこの間その辺の話をしました.

やはり最近の理工系で勢い自体はあるので中国語は勉強したいのと, サンスクリットに近いヒンディー語あたりも勉強したく, あとは一部の理工系の専門用語の基礎でもあるアラビア語もやりたいと思っています. 最近は重要な文献は翻訳されているらしいとはいえ, 数学・物理からすればロシア語ももちろん勉強したいです.

いままさに勉強会で, 全く勉強していないスペイン語が何となく読めていて, このレベルで各言語が読めるようになるのが目標です.

まずはまともにロシア語の辞書を惹けるようになるのが目標です. ちなみに Emacs で, ではありますが, キリル文字は気楽に・自由に打てるようになりました. Emacs を使っている人限定で誰得かわかりませんが, 一応次のページに載せています.

set-input-method の cyrllic-translit でやっています. これが一番私にとって直観的に打てそうでした. あとは地道にやっていきます.

あとは中国語やりたいので, いまピンインそれ自体と, ピンインから簡体字を打てるようにする部分を調べています. 前に調べたもののうまく使いこなせていないので, 思い出す部分からはじめます.

文字が打てないと検索も大変なので, まずはその辺をどうにかしたいです.

ドイツ語は一通り文法まとめをしましたが, 雑なのであまり出せるレベルでもなく, 勉強が進んでおらず数学・物理と違ってストックもありません.

今回あまり情報を出せていませんが, 地道に勉強とコンテンツ制作は進めている, という報告くらいはしておきます.

ではまたメールします.

2021-05-15

リーマン面の概要を追う 解析接続と物理への応用/相転移プロダクション

機械工学への応用

Twitter 経由で見かけた本を一冊紹介します.

本の紹介を引用します.

代数幾何学と作業機械学の基礎面での結び付きを目指す、新たなロボティクス研究の地平。リー群、リー代数、スクリュー理論、クリフォード代数…。ロボット機構学の水準は、新しい機構学の体系化へと進む。

リー群・リー環・クリフォード代数はともかく, 代数幾何です. 中身を確認できていないので目次を見ているだけですが, 数学での代数幾何と必ずしも噛み合っていないように思います. ただコックス・リトル・オシーの本でもロボットアームの稼働域を代数幾何的に捉える問題が議論されていましたし, 以前どこかで紹介した微分幾何と機械工学の話もあります. 目次からするとむしろ, いわゆる幾何代数の話なのかと思ったりもします. 何にせよ工学でも幾何の重要性が増しているのは間違いないでしょう.

前回の三位一体で「非特異射影曲線の圏」と書いたように, リーマン面の理論は代数幾何とも深い関係があります. 解析学から幾何, そして代数に迫れる分野であることは間違いありません. 代数的な代数幾何もやりたいと思い続けて幾星霜ですし, リーマン面と多変数関数論の基礎の基礎を終えたら取り組みたい分野に改めてリストアップしておきました.

アンケートへの反応

リーマン面をコンパクトにすると物理での使い勝手が良くなるという事が面白そうだと思いました。

こんな反応が来ました. こんな話を書いたつもりはなく, 前回の内容を見返してもそういう話はないように思うので, どういうことか困惑しています.

物理学での使う愉しみも愉しそうなのですが、応用研究ほど役に立ちそうにないことfを愉しむ方法というか、基礎研究を愉しむ動機づけの方法があれば知りたいです。

これは以前「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」で聖域 (オタクの聖地) の話としてまとめています. 下記 YouTube のリストで最近の 3 回の中のどこかで話しているので, 探してみてください.

究極的な結論だけ書けば, 議論されているテーマに広義オタクとして興味が持てるかどうかです. こちらの数学・物理メルマガに登録して語学メルマガに登録していない人はたくさんいると思いますが, 興味が持てないならどうにもなりません. きちんとテーマを分けた以上, このメルマガで語学の話をされても迷惑でしょう. これと同じです. 無理に興味を持つ必要もありません. もちろん興味が持つような語り口に触れられるかという話もありますが, その語り口に反応できるかどうかは自分次第です.

リーマン面

いい加減本題に入ります. 改めて書いておきますが, 現代数学探険隊 解析学編, 最低でも現代数学観光ツアー程度の知識は仮定して進めます.

リーマン面は関数論でいわゆる多価関数を議論するために生まれた分野・理論・対象です. 関数論での多価関数はある正則関数を複数の経路に沿って解析接続するときに出てきます. リーマンはこのような領域を扱うために, 複素平面上にいくつかのシートを準備し, 各シートの上で一価関数にすることを考えました. これは位相幾何(トポロジー)の中で整備された概念である被覆空間に辿り着きます.

リーマン面の定義

一言で言えば連結な一次元の複素多様体です. 連結性を課すのが非常に重要です. 少なくとも私が見た範囲の初等的な本ではふつう連結性を課しています.

曲線に沿った解析接続

複数の経路に沿うことを考える以上, そもそも考察下の領域上で自由に任意の二点を結ぶ曲線を引きたくなります. つまり弧状連結性が必要です. 多様体くらいの適当にいい空間なら連結性と一致します. これがリーマン面に対する連結性の仮定につながります.

被覆空間論

トポロジーではホモトピーの理論で重要な空間です. 解析接続の議論の中では基本群に対するガロア理論またはその類似がとても大事です. ホモトピーは代数トポロジーの一分野と言われますし, ガロア理論またはその類似と書いたように, ある程度代数に慣れ親しんでいないと被覆空間論という空間論も理解しきれません. 逆に言えば, ここからガロア理論をはじめとした代数に慣れ親しめるとも言えますし, 幾何的な直観を使いながら抽象的な代数を勉強できるとも言えます.

何からどういう方向でアタックしても構いませんが, ある程度の代数と幾何, そして位相空間論の知見が必要です. 適当な手段でカバーしてください. ガロア理論は結城浩さんの数学ガールで専門の巻がありますし, 買うだけ買っていまだに読めていないのですがポアンカレ予想の巻もあるのでそこで多少は吸収できるでしょう.

もっとゴリっとやりたい人はそれぞれ適当な本を見繕ってください. 特に英語ならいくらでもネットに PDF が落ちています. ホモトピーについては私のノートもあるのですが, まだ公開できる精度にまで練り上がっていません.

リーマン面ではここにさらに関数論の解析学が絡んできます. この時点で代数・幾何・解析を総動員しなければならないことがわかります. ここではリーマン面それ自体の議論よりリーマン面の生まれに関わる解析接続の議論からはじめます. もしあなたがこれらの分野を未習なら, (解析学からの) モチベーションを保ちつつ勉強を進めるヒントにしてください.

物理との関係: 量子電気力学とレーザーの原理

本質的にコンパクト複素多様体が出てくる物理は超弦理論くらいしか知りませんし, 超弦理論も全く知らないのでそちら方面の話は何も書けません. ここでは解析接続がずっと気になっていた理由の一つとして, 私の専門である作用素論・作用素環論的な場の量子論の数理に関わる解析接続の応用を紹介します. 場の量子論・量子力学に関わる知見を多少仮定して進めます. これも必要なら現代数学探険隊を見てください. 多少は書いてあります.

ハミルトニアン $H$ と状態ベクトル $\Psi$, $\Phi$ に対して $f(z) = \langle \Psi, (H - z1)^{-1} \Phi \rangle$ を考えます. 面倒なのでハミルトニアンのスペクトルは実軸正の部分に一致するとすれば, $f$ の定義域は $D = \mathbb{C} \setminus [0, \infty)$ です. 定義によってこの $f$ は $D$ 上に特異点を持ちません. しかし適当な仮定のもとで, 実部が正の下半平面の領域から上半平面に向けて解析接続すると上半平面に特異点を持ちます. これがごく素朴なレーザーの原理と深く関係します.

物理的な設定をもう少し明確にしましょう. 特に非相対論的な水素原子と量子電磁場がカップルした系を考えます. 水素原子だけの系は実軸負の部分に固有値を持ちます. ふつうの量子力学では固有状態は安定な状態と言われています. つまり励起状態であるにも関わらず安定なのです. これは物理的にはあまり嬉しくありません. 励起状態が基底状態に落ちるにはエネルギーを吐き出す必要があります. 吐き出すべき先はもちろん量子電磁場で, 上で考えた系はこれをうまく取り込めているのです.

上半平面に解析接続したときに出てくる特異点の虚部は, 実軸負の部分にあった励起状態が準安定状態化したときの寿命の逆数です. 特異点の実部はもとの固有値を少しずれていて, このずれがラムシフトにあたります. 水素原子の挙動をもっと物理的に満足な形に持っていく努力の中で解析接続が出てきて, 実際に準安定状態の寿命やラムシフトともうまく整合しているのが面白いところです.

これを議論するとき, 準安定状態が出てくるところまで解析接続すればよく, 私が知る限りでは解析接続の最大領域を追いかけたりはしません. 物理的にはあまり意味がないとは思うのですが, それ以上に少し解析接続するだけでも論文レベルで 100 ページの激烈な難易度を誇るので数学的にはそこまでやり切れないことによります. 何にせよ解析接続が物理的に基本的な意味を持つ例ではあります.

ちなみに, 多変数の世界に行くとまた別の理由で多変数の解析接続が必要な局面は出てきます. 学部 4 年のときにアタックしたものの, あまりの難しさに挫折した議論でもあります. 挫折したままなので詳しく議論はできませんが, 少なくとも数理物理としては解析接続それ自体は基本的で重要な問題に連なることは改めて強調したいと思います.

大分長くなったので今日はこのくらいにしましょう. ではまたメールします.

言語と世界認識/相転移プロダクション

この間のアインシュタインの原論文を多言語で読もうの会では, ようやく前文が終わって第 1 章に入りました.

もう軽く半年以上になっていますが, K さんも完全に多言語にはまってくれているようなので嬉しい限りです.

勉強会の小まとめ

この間の勉強会で次のような話をしました.

  • 何が常識かは言語によって違う.
  • 英語 (と日本語) の常識が通じると思ってはいけない.

具体的にはドイツ語や英語で die Newtonschen mechanischen Gleichungen のように「ニュートン (の形容詞形)」の先頭が大文字なのに, フランス語では newtoniennes と小文字だ, という話になり, ここでフランス語にはフランス語の事情があるので他の言語と同じように大文字になるとは限らないという話になりました. 形容詞もフランス語だとふつうは名詞の後ろにつきます.

言語と世界認識

もう少し一般化して, そして強めて言うと言語を学んだ分だけ世界の認識が変わるのです. 私のメルマガに来ているくらいの人なので理系の人の方が多いと思いますし, そういう人達からするとこの言葉にあまりピンと来ないかもしれません. あなたもそうかもしれません.

これについてはこう思ってください. 例えば物理のドップラー効果です. はじめてまともに勉強したのは中学だったか高校だったか忘れましたが, ドップラー効果を勉強したあとに救急車だか消防車だかパトカーだかのサイレンを聞いたとき, 「これがドップラー効果か!」と感動したのを覚えています. これまで何度となく聞いてきた音なのに, 音・現象に対する認識が一気に変わったのです.

最近強調しているように私はいま理系のための総合語学として数学・物理・プログラミング・ふつうの語学の四本柱を軸にしたコンテンツ・サービス展開をしようとしています. 昔私がドップラー効果を知って世界の認識が変わったように, 語学の知見でも世界認識が変わるのです.

実際, 私が習っている言語学者と街中を歩いていたとき, 「関根さん, あそこに書いてあるやつ, もう意味不明な文字列ではなく, まとまったフランス語に見えませんか?」と言われたことがあります. ゆるくであってもフランス語を勉強しはじめて一年くらい経っていて, 確かに今まで意味不明だったアルファベットの並びがこれまでとは違う意味を持つようになったのです.

言語にはいろいろな文化が詰まっています. これまた最近いろいろなところでよく書いているように, 語学としての物理や各プログラミング言語にもそれぞれの文化やコミュニティがあります. この辺をどううまく伝えていくか, 勉強会の中でいろいろ実験・見当しています.

今回はこんなところで. ではまたメールします.

2021-05-08

関数論の概要/相転移プロダクション

今週の追加コンテンツ

ブログからコンテンツアーカイブにうつした分もありますが, 新たに作った・書いたコンテンツとしてこの 2 つです.

現代数学観光ツアーのイントロコンテンツを整理しています. 幾何方面を作ろうとしていて, 実際にその前提でイントロを書き直しています.

メモ: 線型代数

最近だと機械学習関係でよく見かける話題として, 「線型代数がこんなに役に立つならもっとそう教えてくれ」事案があります. 少なくとも理工系では同じく必修の物理でゴリゴリ使っているはずで, 何でそんなに役に立つと思われていないのか自体がいまだにわかりません. 抽象的な線型空間論ばかりやっているわけではなく, 機械学習でも具体的な計算手段としての線型代数が重要なのだと思うのですが, どういう事情なのでしょうか.

一応, これについても改めて何か作ろうとは思っています. 次のようなテーマではあまりきちんと作っていない気がしますし, 世の中にもあまりないような気がしています.

  • 抽象論まで含めた線型代数の概要と応用範囲・対象.
  • 計算とフォーマリズムがあること, フォーマリズムは計算から来ること.
  • 抽象線型空間論はどの程度必要?

制作のヒントにしたいので, 他にも何か要望や意見・見解があれば教えてください. メールで直接言いづらければアンケートでも構いません.

関数論

復習: 留数定理までの流れ

前回, セミナーで作った英語の資料を共有したと思います. 流れだけまとめておきましょう.

  • 複素微分可能性を定義する.
  • コーシー-リーマンの方程式を導く.
  • ベクトル解析のグリーンの定理とセットでコーシーの積分定理を導く.
  • (特異点つきの状況にコーシーの積分定理を少し拡張する.)
  • コーシーの積分表示式を導く.
  • 正則関数の解析性を導く.
    • コーシーの積分表示式の被積分関数の分母を級数展開し, 級数と積分を交換すればいい.
  • 特異性を持つ関数として有理型関数を導入する.
  • 有理型関数に対してローラン級数展開を導く.
    • 特異点を囲む円環を考え, 最後に円環の内部の半径を0に持っていく.
  • これの線積分で$(z-a)^{-1}$だけが残ることから有理型関数に対する留数定理を導く.

収束証明や関連する定理の細かい部分は全て無視してよく, 括弧をつけた積分定理の拡張などもできることは前提にして, 大雑把な証明ごとこの流れを暗記してもいいくらい大事なところです. 実際, 今後はこのくらいのことはできると仮定してリーマン面・関数論の話を進めます.

リーマン面の議論の概要

よくも悪くも多変数・高次元と違う部分があるので, 私のいまの認識の限りで大まかに概要を議論します.

私が知る限り, コンパクトリーマン面と非コンパクトリーマン面でかなり趣が変わります. もちろん解析的な面もありますが, それ以上にコンパクトリーマン面だと代数幾何との対応が強くつく事情によるのでしょう.

少なくとも古典的な代数幾何は射影空間内の議論が基本です. そして実数体・複素数体に対する射影空間はユークリッド位相でコンパクトです. 素朴には代数多様体は複数の多項式の共通零点として定義され, 多項式は連続関数なので代数多様体は閉集合です. コンパクトハウスドルフ空間の閉集合はコンパクトなので, 古典的な代数幾何の基本的な対象は全てコンパクトです.

三位一体と呼ばれるもう少し強い事情があります.

定理 10.1.1 を引用しましょう.

定理 10.1.1. 次の 3 つの圏は同値である. (i) 非特異射影曲線の圏 (Curve). 対象は C 上の非特異完備代数曲線 C. 射は C 上のスキームの射 C → C′. (ii) 閉 Riemann 面の圏 (Riemann). 対象はコンパクト 1 次元複素多様体 R. 射は複素多様体の正則写像 R → R′. (iii) 1 変数代数函数体の圏 (Fuction). 対象は 1 変数有理函数体 C(x) の有限次元拡大体 K. 射は C 代数と しての準同型 K → K′.

この (ii) が特に直接的にコンパクトなリーマン面です. 高次元では完全な同値は成り立たないものの, 作用素環のゲルファント-ナイマルクの定理にはじまる代数-幾何対応があるため, 一定の意義があり, 現代幾何の強いモチベーションにもなる大定理です. ガチガチの圏論ベースの話にまで持っていくかはともかく, リーマン面を勉強するときの重要なテーマであることは間違いありません.

代数幾何の文脈を離れてもコンパクト多様体は幾何のごく基本的かつ重要な対象で, その議論に慣れる意味でもひとつとても大事です.

これまた私が知る限り, 非コンパクトなリーマン面は解析的な趣が強くなり, かえって非数学科出身の人には近付きやすい対象と思います. ポアソン積分や楕円型の偏微分方程式の解析など, 応用上も大事で身近な対象がよく出てきます.

数学を数学として味わいたいときは, まずはコンパクトリーマン面を目指して勉強するのがお勧めです. 学部レベルの数学科の数学を総動員してアタックするべき対象で, いろいろな数学が交差します. もちろん解析学も使えます. 実際, ここでもまずはコンパクトリーマン面に関わる基本的な数学を紹介することからはじめます.

この線については, 以前も紹介したように, 斎藤毅先生の数学原論を眺めてみるといいでしょう.

私もまだ読み切れておらず, そして必ずしも読みやすい本ではないようですが, 目次を見ているだけで楽しい本です. この本は確かコホモロジーだけでホモトピー論が書いていなかったと思いますが, 解析接続がらみでホモトピー論が必要なので, ここではホモトピー論の話もします.

層の理論

リーマン面だけに限らず代数幾何・関数論で根源的な理論です. これも追々紹介しますが, 大雑把に言えば局所的な情報を代数的に制御するための道具です. もう少し言えば関数のパッチワークで局所的な情報から大域的な情報を調べ, 取り出す方法です.

ここで多様体は開集合のパッチワークとして定義されること, ゲルファント-ナイマルクの定理をはじめとした代数-幾何対応を思い出してください. 多様体を開集合のパッチワークとして定式化するのは明確なのですが, 究極的には集合論しか道具がなく非常に扱いづらいです.

一方, 関数の議論に持ち込むと, 微分積分のような解析的な道具はもちろん, 関数環を考えることで代数も持ち込めます. これが層による議論のメリットです. 斎藤毅本でも多様体を関数環つきの位相空間として定義していたはずです.

層は単独の関数に対するパッチワークというより関数環のパッチワークですが, 単独の関数に対するパッチワークも解析接続として重要です. さらに正則関数はその性質から局所的な情報が大域的な情報を強く制約します. このうちの一つが層に対する解析接続の原理です. 名前から想像できるように関数論でも根源的な議論ですし, 解析接続の基礎になっています.

解析接続

私にとって解析接続は学部一年ではじめて関数論に触れて以来, ずっと謎として残っていた議論でした. 雰囲気レベルの話はいろいろなところに書いてありますが, きちんと書いてある本をほとんど見かけません. リーマン面に行ってしまうと逆にコンパクトリーマン面や代数幾何との話が出てきて, 「もう解析接続くらい知っているでしょう?」といった雰囲気の本ばかり目にします.

この辺を改めてきちんと調べて勉強することは私にとっての大きなモチベーションです. 証明込みで一通りは勉強していますが, やはり証明の丁寧な読み込み・個別の詳細にフォーカスをあてるばかりで, 大きな姿を改めて復習する機会がなかなかありませんでした. メルマガ作成・コンテンツ化を口実に, 解析接続の理論を整理し直すことも私個人の大きな目標になっています.

メルマガとしてはかなり長くなってしまいました. 今回はこの辺で終わりましょう. 次回からはもう少し具体的な話にうつります.

学部レベルの数学を大横断すると言ったように, いろいろな数学の予備知識が必要です. なかなかリーマン面それ自体の話にならない部分もありますが, のんびりお付き合いください.

ではまたメールします.

magnetとseulmentの多言語比較/相転移プロダクション

反省

今週, 語学勉強会はできたものの, マシンのトラブルで開始が遅れてしまいました. 最近, 語学の勉強会は週で一番の楽しみなので, 時間が短くなってしまってがっかりしました. 原因はわかって潰したので来週はきちんと時間通りにはじめます.

今週の勉強メモ

ロシア語単語を覚えようとしてどこからどう進めるか苦慮しています. 勉強会をやっていてロマンス語とゲルマン語の単語は少し感覚がついてきたので, キリル文字とスラブ系の単語にもう少し造詣を深めたいと思っています. 明らかなラテン語またはギリシャ語由来, そして学術系単語はいいのですが, ふつうの単語をどう攻めるかが問題です.

アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を読む勉強会で, はじめはロシア語・スペイン語を明示的に入れていなかったのを入れるようにし, ロシア語学習も兼ねて最近改めて復習的に眺めていました.

すると磁石の単語は英語・ドイツ語はともかくイタリア語が (en) magnet, (de) der Magnet, (it) il magnete, (ru) магнит となっていて似ている一方, フランス語・スペイン語が別系統で (fr) l'aimant, (es) el imán と似ていました.

この他 (en) only と (fr) seulement に対して, (en) only に対して (de) nur, (fr) seul, (it) solo, (es) solo でした.

seulment は何故これで only の意味なのかずっと疑問だったのですが, イタリア語とスペイン語を見ると日本語化すらしている solo から来ているのかとようやく気付きました. ついでに Wiktionary から語源情報を突っ込んであります.

磁石のフランス語・スペイン語

結論から言うと古ギリシャ語由来で, 英語としては diamond と同根だそうです. 参考にした Wiktionary のリンクも貼ってアップするので, 必要ならサイトからその辺を眺めてみてください.

スペイン語については, 英英辞典にあたる西西辞典, それもオンラインのいい辞典を探しています. 何かいいのをご存知の方がいればぜひ教えてください. オンラインの独独辞典としては dwds.de がいいらしいのですが, フランス語も未調査です. いますぐは読めませんが将来的に効いてくると思いますし, オンラインで使えるコンテンツ情報を求めています.

seulment の話

この辺, ボキャビル編のコンテンツでも書いておいた, いろいろな言語の基本単語をおさえておくと, いろいろな言語でその語感が活きると書いたのを自分で実感します.

いま見たら一回 Wiktionary で調べていたものの, そこでは単純に「英語の solely, イタリア語の solamente, スペイン語の solamente と比較してみてください」と, Wiktionary の引き写しをしただけに留まっていて, そしてこれがなぜ only なのかわかっていませんでした.

今回, 改めて Google 翻訳によるまさに機械的な一括翻訳で, only の訳語に (fr) seul, (it) solo, (es) solo と出てきてようやく気付いた次第です. ソロは日本語化さえしているのにここまではっきり見ないと気付けなかったのは, 個人的には失態です.

Google 翻訳も単語一語だけで付加情報がないので, 時々とんでもない訳になっていることがありますが, これはこれでやはり役に立つ局面があることを感じています.

ロシア語

まがりなりにも学生時代の第二外国語で本を雑に二周くらいしているドイツ語, 雑にでも二年くらい触れ続けているイタリア語, 同じく二年くらい触れ続けて文法の本もこれまた二周くらいしているフランス語に対して, キリル文字さえまだ怪しいロシア語への習熟度を比較するのも馬鹿げた話ではありますが, 単語どころか文字の読みさえつらいのにはやはり厳しいものがあります. ドイツ語・フランス語と同じく二年歯を食いしばるしかなく, それだけで全然違うのもわかってはいるのですが.

適当に長くゆるくやっていく予定です. あと科学・数学ネタ関係のために, これまた雑にであってもアラビア語はやりたいですし, 中国語ももう少し何とかしたいです.

初学の苦しみは本当に筆舌に尽くしがたいものがあります. いろいろな活用や構文と絡めてごく基本的な文法の勉強をセットにしないと何をどう覚えたらいいかも見当がつきません. 一方で単語も相当量覚えないと, 文法の本を読むときに単語の再調査を何度もしなければならず, 恐ろしく非効率になるので, 具体的にどう勉強していくかももう少し練り上げようと思います.

文法または活用がわからないと, 英語で言えば have, has, had が同じ単語であることさえわからないわけで, 実際いまロシア語でこれにぶちあたっています. 同じ名詞の単数形・複数形さえも判定できないので本当にきつい.

数学・物理とはまた趣は変わりますが, 改めてコンテンツ制作に漢して初学者の苦しみを味わい続けるのが大事だと思っているので, そういうつもりで取り組んでいます.

またメールします.

2021-05-01

幾何への準備をしよう/相転移プロダクション

コンテンツアーカイブの整備をはじめました

今週はひたすらにコンテンツアーカイブの整備を進めていました. 毎日の自分の勉強にも使うので語学系中心に進めていますが, 数学系もある程度整備できたのでいまの時点でも改めて共有しておきます.

これまでノートだけ取り続けて公開していなかった分も含めて公開していくので, 数ヶ月単位でしばらくアップが続きます. 量が多すぎてなかなか具体的に「これを公開した」と書きづらい状況が続きます. 当面は現代数学観光ツアーを復習しておいてもらえれば, と思います.

特に次の節は書いたまま公開していなかったところのはずです.

このイントロはいまの状況に合わせて書かれておらず, 少し変な記述が残っていると思いますが本筋には影響しません. これから具体的に進めようと思っている幾何方面へのコメントをつけているので, もしあなたが幾何にも興味があるなら参考になるはずです. 観光ツアー本体は関数解析系の解析学なので, そこに興味がある人はもちろん役に立つ内容です.

未受講または内容をよく覚えていないならぜひ眺めてみてください. PDF もダウンロードできるようにしてあります.

一つ注意

最近登録された方には申し訳ないと思いつつ, これから幾何の話をするとき, 現代数学観光ツアーの内容くらいの話は前提にしたいと思っています. このメルマガ自体も復習の内容を盛り込もうとは思っていますが, 積極的に受講してもらえると助かります.

ここでいう「前提」は次のくらいの意味です.

  • 名前だけは知っている.
  • 詳しい定義や性質は全く覚えていないが例は知っている.

これだけでも全然違います.

もしあなたが詳細について知りたいなら, いったん現代数学探険隊を標準テキストとして推薦しておきます.

これを買わないと駄目ということは全くありません. ただ物理モチベーションの数学の話がこってり書いてあるコンテンツは見かけないので, 事実上これを勧めるしかないというか, ないから作った部分があります.

案内ページだけ読んでも勉強・参考になるように作っています. これも折に触れて眺めてみてください. 数学・物理の大きな姿の一端が見えるはずです.

幾何の話に向けて: 解析学から近付こう

解析学から考えてもいくつか入り方はあります. 当面は私の趣味と実益 (勉強) を兼ねて関数論からの話をします.

細かい話はたくさん本がありますし, まだ私も制圧しきれていない部分があります. 一変数関数論であっても独学しているとなかなか骨が折れるのです.

メルマガでは関数論の概要や関数論に出てくる数学的道具の紹介, もっと言えば言葉に慣れ親しむことにフォーカスして文章を書きます.

何も前提にしないのは厳しいので, 留数定理くらいまでの話を仮定しておきます.

実は以前, 留数定理を一つの結論に設定したセミナーを早稲田で学生相手にやったことがあり, そのときの原稿を次のページに公開しました.

当時いろいろな理由があって英語で原稿を作っていました. 日本語訳も同時に作っていたのですが, これは日本語訳を作らずに放置したままです. 現代数学探険隊でもっときちんとしたバージョンの日本語版を作ってしまったので, もう翻訳する理由がなくなってしまいました. ないよりはましなので一応公開して共有しておきます.

これも適当に眺めておいてもらえると助かります. プライベートもいろいろある中でいきなり大量の要求をしていて, 無茶は承知です.

コンテンツアーカイブにどんどん情報を上げている, という情報共有も兼ねてのことなので, 無理のない範囲で適当に楽しんでいってください.

最後に: 雑感

サイトを構成して思うのは, 階層構造が本当に扱いにくいです.

あまりフラットにするのもどうかと思い, 適当にディレクトリを切ってはいるものの, そもそも数学と物理にまたがるところが守備範囲なので, どこにどう入れるかが判断に悩みます.

それがあるから講座群紹介のところで 「アーカイブ上のコンテンツをある視点からまとめ, 勉強しやすくした通信講座」を入れています.

サイト検索もうまく動いていないので, Google検索に置き換え, その検索前提にしようかとも思っています. 私自身, 分類はもう諦めていて, ファイルや情報を適当に突っ込み, あとは grep や find などの検索ベースでやっています.

プログラミングも明確に守備範囲に入れたので, こういうライフハック的な話も紹介した方がいいような気もしています.

今回, メルマガ本体であまり数学の話ができませんでしたが, 次回からは関数論の話をはじめます. 楽しみにしていてください.

ではまたメールします.

ボキャビルコンテンツ公開/相転移プロダクション

今週のコンテンツ

いつも通り「アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会」です.

今回は原論文の前文の最終文の多言語比較です. 途中何回か休みも入っているとはいえ, 1 ページ少しで半年かかっています.

やりたいことやりたいようにやっている私が楽しいのはもちろんとして, 参加してくれて特に英語に関していろいろコメントをくれる K さんも楽しんでくれているようなので, のんびりやっていこうと思っています.

今回, ようやく少し真面目にロシア語に触れました. 数学・物理に関わることをやる上で, やはりもう少しロシア語を読めるようになりたいとは思っています. コンテンツアーカイブにロシア語の単語情報も大量に叩き込んでおいたので, 語学に関してはしばらくロシア単語暗記に励もうと思っています.

ボキャビルコンテンツ案内

まだ通信講座のメールを書くだけ書いてセットしきれていないのですが, 入口とコンテンツへのリンクを載せたメールだけはセットしました. もしあなたが多言語の視点を絡めたボキャビルコンテンツを読んでみたいなら, 次の登録ページからミニ講座に登録しておいてください.

今後ここで書いた知見は前提にしようと思うので, そのつもりでいてください.

ちなみに Kindle でも売っているので, 読んだらレビューを入れてもらえると助かります.

ボキャビル編に関して

このコンテンツにも書いているのですが, 語学に取り組んでいるとボキャビルが大事というか, つらいです.

大学受験のときもそういう話は聞いていたものの, それなりに自学自習していて英単語も最低限は覚えていたため, 語彙力不足で本格的に困ったことはありませんでした. しかし, いままさに語彙力不足で本格的に困っています.

理系のためのリベラルアーツ・総合語学の視点からすると, 言語の世界を統制するルールとしての文法みたいな話もしたいので, もっと文法の勉強をしたいのが本音です.

しかし文法の本を読んでいると次々と単語が出てきます. 文法学習が優先だから, と単語を無視すると出てくる文が全く読めないため, 都度単語を調べないといけなくなって恐ろしく非効率です. やはり先に単語をある程度叩き込まないと勉強にならないことが身に沁みてわかりました. そういう経緯があってのボキャビル編です.

最終目標は中高生用コンテンツですが, 現状は語学に限らず, いろいろな知識を持っている「大人」向けのコンテンツとして作りました. 一部の漫画・ゲーム系のネタも古いのでどうかと思うのですが, そのあたりも今後の課題です.

ちょうど 4/30 の勉強会が多言語単語比較で, まさにこのコンテンツで紹介した話を陰に陽に使っています. 今回分の勉強会の内容が面白いと感じるなら, 絶対に面白い内容に仕上げています. ぜひコンテンツ・ミニ講座を受講してみてください.

ではまたメールします.

2021-04-25

コンテンツアーカイブを作りました/相転移プロダクション

はじめに

メルマガを仕切り直して第一回目です. 100名近くの方が再登録して頂けたようで, ありがたい限りです.

仕切り直しに合わせて心機一転やっていこうと思います. 一年くらい幾何の勉強をちょこちょこ進めてきて, ある程度大まかなところが見えてきた部分があります. 細かい話は本を読んでもらうしかないですし, メルマガで書くことでも書けることでもありません.

概要系のコンテンツとしてまとまったものにできるレベルで, しばらく自分の棚卸も込めて幾何・数学・物理の話をやり直そうと思っています. ぜひ楽しみにしていてください. 私の趣味からして解析の話も当然出てきます.

コンテンツアーカイブを作りました

せっかくメルマガを切り直したので, ずっとしようと思っていてコンテンツ整理をはじめました.

今日は明日以降の自学自習の都合があって語学関係の情報だけまとめていました. 明日からは数学・物理関係の情報も整理しはじめます. これまでノートを取るだけ取って公開していなかった分も公開していきますし, ミニ講座類も整理して, メルマガ受講しないと勉強できなかった分も適宜公開します.

ぜひ楽しみにお待ちください. メインサイトからもお気に入りの記事を移行してきます.

いままでメインサイトはWordPressで作っていて, 管理サイトも表示も鈍重で修正も面倒だったのですが, 静的ジェネレーターを使うようにしたため, 表示もかなり速くなっています.

何を追加したかメルマガでも報告するので, ぜひ楽しみにしていてください. 統計学関係の数値計算込みの微分積分に関わる話も公開していくので, これはかなり広範囲の人に影響がある話と思っています.

勉強会に参加してくれている物理の博士持ちが, 「結果自体はよく知っているしわかりきったことでさえあるが, 実際にグラフを描いて確認するとまた違う感慨がある」と言っていました. 慣れていないとプログラムを書くのも大変です.

黒木さんの資料も役に立つのですが, プログラムにろくにコメントがないのが厳しく, その辺もがんばってコメントを書いたりしています.

数値計算系含め, プログラムも書いていて楽しいので, こういう部分でも強い仲間を増やしていきたいと思っています.

今回はこんなところで. ではまたメールします.

とある勉強会の共有/相転移プロダクション

はじめに

この間連絡した通り, メールマガジンを仕切り直して語学を分離させました. 「アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会」をやっているように, 私の意識として数学・物理・プログラミングとは分離していません.

しかし, これからおそらく, 語学だけに興味があるという人も来そうというか, そうなりそうな方向にも展開していこうと思っているため, あえて分離しました.

どのくらいいるのかと思っていたところ, 10名程度もいたので驚きです. 改めてメルマガそれ自体がきちんとしたコンテンツになるように組みます. 今後ともよろしくお願いします.

コンテンツアーカイブを作りました

せっかくメルマガを切り直したので, ずっとしようと思っていてコンテンツ整理をはじめました.

語学に関してもこちらにまとめています. これまで公開していなかった分も公開していますし, 語学に関しても先程ロシア語の単語に関して, ネットで3000語程度のリストを拾ってきて, それを叩き込みました.

ロシア語と中国語は相対性理論の勉強会でも触れていて, 全然何もわかっていないので, ちょこちょこ勉強しようと思っています.

勉強会に参加してきました

メルマガで書いたかどうか忘れたのですが, 語学に関しては言語学者のコミュニティに入っていて, そこで勉強しています. ちょうど土曜に勉強会があって参加してきました.

ヨーロッパ系言語を中心に, 確か12だか15ヶ国語話せるという人で, 実際に毎回多言語・多文化に関する話が出てきます.

もしあなたがある程度深くプログラミングの勉強をしているなら実感さえあると思いますが, 人工言語・自然言語どちらも, その言語に適当な意味で思想や文化があります. 他の言語を学ぶことで得意な言語・仕事で使う言語にもいい影響があるから, 簡単でもいいから毎年一つ, 新しい言語を勉強するといいだろうとも言われます. 極端に言えばこのノリで自然言語に関しても多言語を勉強しようと思ってやっています.

勉強会の結果の共有

あまり公開するとよくないものの, 現状読者が10名しかいません. この多言語という話, ちょっと具体的に見てほしいので内容を共有します.

一週間くらいしたら消すので, なるべく早めに見てください.

相対性理論勉強会と合わせて

何人見ているかわかりませんが, YouTubeやGitHubで公開してきた相対性理論の勉強会でも, あえて多言語に触れています.

Zoomでは名前を出すかもしれないと言ってはあるものの, メルマガで名前を出すとは言っていないので, その参加者はイニシャルで書くことにして, Kさんと呼ぶことにしましょう.

最初はどう思われていたかわかりませんが, 前回, 4/23では「多言語で見るといろいろあるんですね」と仰っていました. いろいろな言語で眺める面白さが伝わってきたように思います.

せっかくなので, 先程の勉強会の内容を含め, ここでもいくつか紹介します.

話は突然アメリカのホテル王, ヒルトンの話から, Hilton に関して Hill は丘, ton は town から来ているとはじまります. あのニュートンの Newton も new + town なのだとか.

この手の構成を持つ言葉として, レニングラードやサンクトペテルブルクの話が出ます. レニングラードは「レーニンの街」, サンクトペテルブルクは「聖ペテロの街」の意味です. 後者はロシア語で Санкт-Петербург で, 後半のブルクはドイツ語の burg 由来です.

話の流れの本体はこちらではなくてレニングラードです. 特に見るのはロシア語の город で, あえてローマ字で書くと gorod で, これが「街」の意味です.

子音を抜き出すと grd です. そしてスラブ語ではgrdは街を意味します. これを見て即座に思い出してほしいのは英語の garden です. 何故かといえば子音を抜き出すとこれも grd です. 実際, これらは同じ語源だそうで, 「垣根で囲まれている」という意味があるとのこと.

ゆるく眺めているとロシア語はスラブ系で, 基本的な語彙がゲルマン系ともロマンス系とも違うのですが, ふとしたところに共通項が出てきます.

子音が重要

相対性理論の勉強会でも何度か話しているのですが, ヨーロッパ系の単語は子音が重要です. 子音が意味を持っているのです. それはまさに上で grd が「垣根で囲まれている」ことを表していることを指します.

もしあなたがゲームの女神転生をご存知なら, ラスボスの唯一神が YHVH と呼ばれるのをご存知かもしれません. 知らない方に向けて書くとふつうこれで「ヤハウェ」と読みます. これはまさに子音だけで表記された例です.

実は, 少なくとも遥か昔, ヘブライ語は子音しか書かなかったそうです. 文字が読み書きできるのは知識層で, そういう人達は子音だけで意味などを判定できるので, 内輪向けの共有ならそれで問題なかったのでしょう. 日本語でも万葉集の万葉仮名があったように. 後代, 平安貴族でさえ解読班が必要になったほど非自明な表記で, そういうのはあとの人は困りますが, 内輪向けの文章ならこれでいいわけです.

つまり, 子音だけで単語を表記・判定していた以上, 少なくとも文字情報としては子音は決定的に大事なわけで, それはヨーロッパの現代の言語にも受け継がれているのです.

子音, もっと言えば文字以上に大事なのは物理的な音です. 特に日本人の語学学習だと見失いがちなようですが, もともと文字などなかったわけで, 文字でどうにかしようという発想自体, 言語にとってどこまで自明かという話もあります.

そして音としての言葉は人体に影響を受けます. 文化や人種などが変わっても人体の構造に大きな違いはなく, そこから来るいろいろな共通項もあります. 人体の構造と音といえばバリバリの物理で, こういうところから理工系の生徒・学生に話せば面白がってくれる部分はあるでしょう.

またこの間, 勉強会でも話したように, 英語の発音の特徴が文法にさえ影響を与えることがあり, 特に格の消失を招いた話もあります.

具体的にどの回だったか忘れてしまいましたが, 次の連載のどこかでその話がありました.

  • 連載「現代英語を英語史の視点から考える」http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/history_of_english/series.html

歴史も含め, まわりまわっていろいろな話が英語にも影響しています. 直近は道具として使い倒す必要がある関係上, 英語を中心に回しますが, 最終目標は「理系のためのリベラルアーツ」で, 言語から歴史などにも切り込んでいきたいと思い, いろいろ教わりつつ調べつつ勉強しています.

多言語でボキャビル

相対性理論の勉強会では共有してありますが, この辺の話について, 現時点である程度まとめたコンテンツを作っています.

  • 論理英語 ボキャビル編 https://www.amazon.co.jp/dp/B08XZQZRQR

これですが, 買えというわけでありません. 今月中, どれだけ遅くともゴールデンウィーク中には, 無料のミニ講座として公開します. 興味があればぜひ受講してみてください.

ではまたメールします.

2021-04-19 メルマガ刷新: 解除確認を兼ねて/相転移プロダクション

先程, メルマガを解除したはずなのに何度もメールが送られてくる, というお叱りを受けました. そこで確認を込めてメルマガに登録されている方にご連絡します.

誤送信を避けるため, 改めて配信を希望される方に向けて, 新たなメルマガを創刊することにしました. (ミニ講座は別なので, 不要でしたらこちらは別途解除をお願いします.) 今後も私の配信に興味がある方はぜひこちらにご登録ください.

  • 新メルマガ登録ページ https://m.phasetr.com/p/r/Jont4nss

注意: 最近迷惑メール判定が厳しくなっていて, icloud.com, me.com, mac.com や docomo, ezweb, softbank などの携帯メールアドレス, hotmail.com, hotmail.jp などのマイクロソフト系などメールアドレスには 特にメールが届きにくくなっています.

Gmail は比較的届きやすいようなので, ぜひ Gmail で登録してください. メールが届かない場合, 迷惑メールになっていないか, 確認してください.

マニアックな方面の数学・物理, 語学, 中高数学系とぐちゃぐちゃになっていたため, この機会に合わせてそれらも切り分けます. 上記メルマガではマニアックな方向の数学・物理の話だけを書いていくので, もしあなたがそちらに興味あるなら改めてご登録をお願いします.

念のため, 語学系のメルマガに関しても案内しておきます.

  • 語学系メルマガ https://m.phasetr.com/p/r/CFNOigbg

中高数学に関しては当面ENERGEIAで賄うことにしました. これについては次のページからどうぞ.

  • ENERGEIA登録 https://energeia.app/

これまでお付き合い頂いた方は本当にどうもありがとうございました. 今後も活動は続けるので, またどこかでお会いすることもあるでしょう.

改めて登録される方, 今後ともよろしくお願いします.

2021-04-18 「大人の高校」を作ろう/相転移プロダクション

最近, 関数論や幾何系のノート作りをしこしこ進める以外, ENERGEIAというか中高数学および総合語学・リベラルアーツまわりのことばかり考えている上, 日々の行動記録をENERGEIAで出しているので, こちらに書く内容があまりありません. 最近参加者の予定が合わず, 「理論物理学者に市民が数学を教える会」もできていないので余計に.

  • ENERGEIA https://energeia.app/

で, タイトルの話なのですが, ここ半年くらい理系のリベラルアーツというイメージでいろいろやっていたのですが, 本質的な内容はほとんと変わらないものの, 理工系の人がメインでない場に乗り出したので, この言葉だと微妙だなと思うようになりました.

どうするかと思案していて, とりあえず「大人の高校」という方向性で少し捻ってみようかと思っています. これはこれで最終目標の中高生が排除されてしまうワーディングで気に入らないのですが, 「大人から見て勉強したかった中学・高校の内容」みたいな形にすれば, 少なくとも内容的には中高生に響くはずだろうと.

中高生に響かせるにはまた言葉をきちんと切り直すべきだ, または理系のリベラルアーツをきちんとやればいいだろう, そう思ってとりあえず大人の高校という形で, コンテンツも整理して, サイトを作る予定です.

そのためにどんな感じのサイトにすればいいかを調査中です. コンテンツの構成だとか検索やらタグづけやら考えることはいろいろあります. 最初はクローズドなENERGEIA内で見てもらうためのミニコンテンツ整備が目的なので, はじめはしょぼくても全然問題ないとは思うのですが, 理想な持っておかないとコンテンツ作成方針自体がピント外れになってしまいます.

例えば http://hotozero.com/ だとか. いろいろな言語という意味での多彩さで言えば, プログラミング系のサイトも参考になると思っています.

結局, 日々, 本業の仕事も含めて数学・物理・プログラミング・語学に囲まれて過ごしていて, 適当な意味でこれらを総合的に勉強できるようにしておきたいのですが, 私の好みの感じにまとまっているところがありません. 私の好み自体もきちんと言語化しないといけません.

というわけで引き続きやっていきます. 語学に関しては, アインシュタインの原論文を読む会でどんなのをやると楽しいか見えてきたので, まずはその方向を徹底的にやろうと思っています. こちらも私含めた参加者都合で最近ちょこちょこ休みが入りますが, 毎回参加してくれている人と二人で盛り上がっているので, 見せ方を考えればもっと人を巻き込めると思ぅつています.

今日はこんなところで. またメールします.

2021-04-11 プロジェクト新規立ち上げ・進行中/相転移プロダクション

出張なり何なりでメルマガを書く元気が出ず一月あいてしまいました. 相対性理論の原論文を多言語で読む会など, 私含めた参加者の都合がつく限り勉強会もやっています.

  • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFoprY1UhOvl-wXADKLQR5hkiOc

久し振りかつこの間紹介したENERGEIAで大体毎日ちょこちょこ書いているので, 何を書けばいいかと思っているのですが, クローズドでやっていた数学+プログラミングの勉強会を ENERGEIAでのオンラインイベントとしてセミオープンで開くことにしました.

  • https://energeia.app/

ここで「数学和尚の数学かけこみ寺」という部活でやっていて, オンラインイベント (勉強会) の案内もしているので, もしあなたが数学+プログラミング系の勉強会に参加したいなら, 登録しておいてください.

今日の勉強会で作ったコンテンツはGitHubに上げておきました. ENERGEIAでは中高数学関係の話をしようと思っているので, 具体的にはProject Eulerの数学というより算数系の問題を解いています.

  • https://github.com/phasetr/AlgorithmsAndDataStructureByFSharp/tree/work/ProjectEuler/00001_Multiples_of_3_and_5

今回PythonとJuliaのコードを書いたので, 次はF#版を書いた上で次の問題に行く予定です. もともと次のコンテンツのブラッシュアップとしてやっていた勉強会だったのと, これも中高数学ネタなのでこれはこれで別の勉強会として仕切り直して続けるのもありと思っています.

  • https://phasetr.com/mthlp1/

今回はこんなところで. ではまたメールします.

2021-03-14 オンラインのプチイベント/相転移プロダクション

ここ二週間, 出張準備などでバタバタしていてメルマガを送るのを忘れていました. また復活させる予定です.

ちょうど先程, オンラインのプチイベントをしました. 私自身, いろいろな話を聞きたいという目的で, 軽くお話を聞いてみる感じで Zoom でやりました. 3人くらいで (普段のメルマガからすれば) ごくライトな話をしていて, 楽しんでもらえたようで何よりです. 今後も週一くらいで定期的にやろうと思っています.

今回はだいたい次のような話をしました.

  • 最近の活動の概要を話してみた
  • どんなことをしたら面白そうか聞いてみた
  • 各人ごとの興味に合わせた応用の話とか
  • 実際に作っているコンテンツがあるのでそれの紹介
  • もっと中高数学をやろう:既存コンテンツもきちんと紹介しよう
  • スマホにも入っているGPS地図と一般相対論
  • プログラミングと絡めた話, AI・人工知能(機械学習)の話
  • 離散数学ネタ:計算幾何に関わる話とか

ちなみに次のサイト (サービス) でイベントを作って告知・展開しています.

  • https://energeia.app/

登録に電話番号が必要で鬱陶しいかもしれません. ここでは中高数学系の活動をメインに展開しようと思っています.

このサービスは「オンラインで部活をしよう」というサービスで広義知人が運営していて, 今までとは違う方面で活動してみようと思って登録して部活しています. 「たかが数学, されど数学」という部活名でやっているので, 興味があれば登録して覗いてみてください.

「たかが数学, されど数学」はいろいろなところで紹介している, 同名のエッセイタイトルから部活名を取りました. 次のリンク先にPDFを置いてあります.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/Univ.Yamagata.Kawamura.takagasuugaku_saredosuugaku04u.pdf

この内容に沿った方向性で, 毎日ゆるく数学を続けようというコンセプトで展開しようとしています. ここでは毎日「今日はこんなことをやった」という短かめの投稿をしています. もしあなたが中高数学系の勉強をしようと思っていて, 一人では勉強を続けられないという悩みがあるなら, こちらに参加してみてください.

今月はまだ出張があってパンパンなので, かえって, どうゆるくやっていくか考えるにはちょうどいいのかもしれません.

今回はこんなところで. ではまたメールします.

2021-02-21 なさそうでないコンテンツ/相転移プロダクション

なさそうでないコンテンツを作りたい

最近あまりできていないのですが, なさそうでないコンテンツとして「簡単なことを難しく考える」タイプのコンテンツが作りたいと思っています. 実数論やR^nの議論をあえて関数解析の定理で書くとかいうタイプの議論です. 関数解析のモチベーションが云々とか実数論がどうの, みたいな話を具体的にどういう意図があるのか示す事案です.

これは「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」でやっている内容でもあります. この間, 関数解析の話に絡めて実数論の話をしたとき, Twitterで少しやりとりした内容です. まずはそちらの会で試して少しずつ調整していこうと思っています.

関数解析の主定理の強さ

上のネタに関連したツリーを引用しておきます.

関数解析の主要定理の強さを知りたい(仰る通り有難みが分からない)

これに関して次のように返信しています.

返信集

実数論・ユークリッド空間論の拡張の側面を持つ定理がいくつかあって、実数論でのありがたみをわかっていないとそもそも何も感じられない可能性があります。無限次元ダイレクトでもいいのですが、弱位相など余計な要素が入ってきてややこしくなるので。 情報系だと何に当たるのかよくわからないのですが、(実数体・複素数体上での)解析学は物理で言う解析力学のようなもので、各定理だけではなくその証明・論法まで含めて実数論はアーキタイプになっていて、何らかの形で実数論のハートを掴めていないと関数解析・ルベーグは何が嬉しいのか体得大変です 実数論は何というか武道などの型に当たる役割もあり、その型に流し込むと自動的に色々なことができたり、こういう言明が成り立っていてほしいという気分が出てきます。たぶん情報系でも似たような分野や概念があると思うのですが、関数解析では実数がそれです。 ルベーグも同じです。ルベーグ積分も定理や証明自体が実数論の議論の直輸入の部分があり一方でルベーグ積分自体が関数解析のあらゆる基礎にもなっています。私の院の指導教員は募集要項的な資料で「ルベーグ積分を修めていないとうちの(関数解析系の)研究室に行くのは無理」とはっきり書いていました あくまで数学科で研究ベースで考える上での話ではありますが、それでも数学科では一つの決定的な現実ではあります。細々とした細部の話でありつつ、よく言われる「お気持ち」の部分そのものが実数に関わる諸々に直結しているので、急がば回れで実数をきちんとやるのは一手です。

横からの質問

これに対して次のような質問が来ました.

横からですみませんが、もしよければおすすめの実数論の本を教えていただけないでしょうか? 当方物理出身で、黒田関数解析はひとしきり眺めてやはりお気持ちはよくわからず、無限次元は危ないということくらいしかわからなかったくらいのレベル感です。

これには次のように返しています.

レビュー見る限り新旧でテイストが変わっているらしいですが、学部一年の時に読んだこれは薄い中に一通り集合・実数・位相が書いてあってとりあえずこれを勧めています。(間違いが多く初学者向きではないのでは、とメルマガ読者に言われたこともあります) http://mmatsuo.com/%e7%90%86%e8%ab%96%e7%89%a9%e7%90%86%e5%ad%a6%e8%80%85%e3%81%ab%e5%b8%82%e6%b0%91%e3%81%8c%e6%95%b0%e5%ad%a6%e3%82%92%e6%95%99%e3%81%88%e3%82%88%e3%81%86%e3%81%ae%e4%bc%9a/ あとは松尾さんとやっていてYouTubeに公開している勉強会の内容でしょうか。作り直したバージョンをいまだ公開していませんが https://phasetr.com/mtlp1/ とか。というか、まずこれを見ろ、という気分で作ったのでこの辺見てください。(いわゆるわかりやすいかどうかは別です) あと https://phasetr.com/mtex1/https://phasetr.com/mtexpdf1/ は有料コンテンツの案内ページですが、このページの内容だけ読んでも参考になるように書いたのでこの辺も眺めておいてください。

既存の現代数学観光ツアーは整理してあって未リリースなのもありますが, いまの視点で改めて「簡単なことを難しく」講座が作りたいですね. 最近, 幾何で調和積分までは一通りやり直して, 解析と幾何について改めて頭にロードしたのでそこまで含めてコンテンツ作りたいです.

おおもとの方程式の解と近似方程式の解の比較

これまたTwitterを見ていて思った話ですが, 最近, 黒木さんの統計学のipynbをもとにした勉強会をやっていて, スターリングの等式の近似の具合を見るプログラムなどがありました. これをやっていて「定性的・定量的にそうなるのはわかるが, やはりプログラムを書いて図で実際に確認するのは楽しい」という話が出ました. 私もそう思います.

学部一年の教養の数学で出てくるネタを実際に計算練習として追いかけるのと同時に, プログラムを書いて遊ぶコンテンツが作りたいと思ぅています. プログラミング系の勉強会でネタにするかどうするかと思っています.

こういうコンテンツ, 探せばどこかにある気もするのですが, 見つけられないのでやはり自作するしかなさそうで, 作りたいモノはたくさんあっても時間が追いついていない状態です.

語学, 特に単語の話

最近執念深くアインシュタインの原論文を読む会を続けています. ここ一週間くらいいろいろ諦めて, ドイツ語の原文を見ることによる無理やりのドイツ語単語暗記に励んでいます.

フランス語やイタリア語は英語との関連が見やすくて割とすぐに頭に入ってくれるのですが, ドイツ語はちょっと凝った単語になると英語と離れてくるので, なかなか頭に入りません.

20回くらいくり返し英語と比べつつドイツ語を読んでいると, ようやく少し頭に入ってきます. その副産物で, いままでさっぱりわからなかったドイツ語の文構造が少し掴めるようになってきました. 原論文を見るとわかりますが, 一文一文が異様に長く非常に読むのが大変です.

それはさておき単語暗記です. 何度も調べるのに余計な時間を使って読解どころではないので, やはり単語をきちんと覚えなければと思ってやっています.

いいオンラインコンテンツ・教材がなく, 英語・フランス語だとできる手法が使いづらく困っています. やりたいのはごく単純で, 語源を掘り込んで単語への印象を強めるというタイプの勉強がしたいのです.

日本語の紙の辞書で語源が書いてあるのはありますが, 紙は時間がかかるのと持ち歩くのが大変なので, やはりオンラインの資料がほしいです.

英語とフランス語だとWiktionaryがあって, これがかなり楽しいです. ドイツ語版もありますが, いまひとつ充実度が足りません.

少し調べたらドイツ語だと http://dwds.de が有名だそうで, 少し眺めてみたら, 完全にドイツ語のサイトで, 語源は書いてあってもドイツ語です. ドイツ語の文法もザルなのにまともにドイツ語単語を覚えていないので, 全く読めないという厳しさがあります. Wiktionary は英語サイトなので読めてありがたいのですが.

ちなみに, 語学に関してはきちんと人に教わっていて, その人から紙の辞書はお勧めされているのですが, オンラインコンテンツがほしいという我侭を言っています. 運動不足の解消も兼ねて, エアロバイクを漕ぎながら, ChromebookでPDFを書きつつメモしつつで勉強しているので, そこに紙の辞書を併用して勉強するのが大変で, それでオンラインコンテンツがほしい.

http://dwds.de の語源の項を読むためにもドイツ語を覚えないといけなくて, ドイツ語暗記が進まない悪循環です. 地道に続けて自作するしかないのでがんばってやっていきます.

単語の勉強が楽しいのは, 数学での (群の) 表現論の趣があるからです. いわゆる印欧祖語とかいうやつですが, 単語にも一応アーキタイプがあって, そこから各言語での単語が出てくるという話があります. 私の修士の研究テーマは作用素環の表現論でもあり, 表現論にはそれ相応の気分というか憧れがあります.

この起源を辿る部分で表現論の趣があり, 広義の数学・物理をやっている気分があって楽しいのです. 各言語にどう降りてくるかを考えるのがまさに準同型を見ているという感じ. 同型ではないのでいろいろ捻じ曲がっていて, 言語ごとに少しずつ違ううつり方をしている部分を眺めて比較するのも楽しいです.

勉強会で数学科出で翻訳をやっている人が参加してくれていて, この辺の多言語ネタも話しています. 面白がってくれているので, うまくやれば, 他にも面白く思ってくれる人がもっといるはずで, その辺の様子見としていろいろやっています.

文法は文法で, 自然を自然法則で読み解くのと似た気分があるので, この辺の視点を重視した語学コンテンツがほしいのですが, 誰も作ってくれないので一所懸命自作しています. いま作っているのは一定程度の単語力と読み書き系英語への耐性を仮定してしまっていて, これだと大元のモチベーションの中高生向けのコンテンツになりません. なかなか調整が難しいです. 実際に中高生と何かしたいとは思うのですが.

今回もいろいろ書いていたら長くなったので, とりあえず今回はこんなところで終わります.

ではまたメールします.

2021-02-14 多様体論は面白くするのが難しい/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツ

期待値の線型性にフビニを使うという衝撃のツイートを見かけたので, ごく簡単にコメントした記事です. 確かに言われてみると混乱するのだろうという気分はあります. 勉強ついでに統計のノートはまとまってきているので, 適切なプログラムつきのきちんとしたコンテンツを整備しないとまずいのでしょう.

実際に読んでみて非常によかったので, とりあえず黒木さんのベイズのノートを勧めておきます.

黒木さんの資料はいろいろあってそれぞれ勉強になるのですが, いろいろありすぎてどれからどう読み進めるかが問題なので, それをきちんと整理する必要があります. 勉強会をしつつそれを整理しているところです.

今週の雑感

今週は幾何・リーマン面の勉強よりも, プログラミングについていろいろやっていました. ベイズ関係で Julia のコードをよく見ていたのと, プログラミングの勉強会の次のネタ用に計算機科学系の本を読んでいます. アンダースタンディングコンピュテーションという本です.

お勧めしてもらった本です. Ruby で書いてある本で, この手の本は Haskell で書かれた本が多いとか聞くのですが, プログラミングというか計算機科学に突っ込んだ本をあまり知らないので, 実際に Haskell で書いてある本も知りたいですね. それも読んでみたい.

いまは Jupyter notebook があるので出力結果つきの プログラミングのノートが作りやすくて本当に便利です. Ruby を入れようと思ったら MSYS2 のインストールではまったので, Docker で iruby を使えるようにして, それで動かしています. まだ全然慣れていないものの, 多少なりとも Docker を使えるようにしておいてよかったです. Docker があると Windows でも環境構築がだいぶ楽になるように思います.

ただ, これをプログラミングに慣れていない人にインストールして 使ってもらうのは厳しいとも思います. その辺はやはり Google Colab がある Python がまだまだ圧倒的に強いです. 一通り勉強し終わったら Python 版と Julia 版を作りたいですね.

幾何の話: 多様体論

今週は他に書くことがなかったので, 久しぶりに幾何の勉強のログというか, ここまで勉強してきた上での多様体論の勉強のポイント的なところを適当にまとめます.

何度か書いた気もしますが, とりあえず多様体の話からはじめましょう. 何一つ面白くありませんが, 結論から言うと歯を食いしばってやるしかありません.

以前, 岩波の現代数学の基礎などの付録の小冊子か何かで, 深谷賢治さんが書いていた記憶があるのですが, 多様体論は幾何の舞台整備なので必ずしも面白くありません. 一通り終わってようやく幾何がはじまる趣があります. その意味で一番楽なのは, 数学科でとにかく無理やり一通りやらされて叩き込まれることです.

私自身, 数学科ではないにせよ, 学部一年で集合・実数・位相を叩き込まれつつ, 物理学科の学生として物理は最低限触れてきたからこそ, 何かを勉強するときにもある程度の感覚が育っていて便利なことがよくあります.

大人になってからの独学・再勉強だとこういう強制力が何もはたらかず, やりたいことだけやる, もしくはやりたいことしかやれず, 面白くはなくても大事なところが抜けがちになります.

実際に幾何の人と話したことがある話として単位の分割があります. これは「一回はやらないといけないが二度はやりたくない」ネタです. 微分形式に関わる局所理論は組み合わせ論的な議論は書くのが面倒で, これもそう何度もやりたくありません.

微分形式やホモロジー・コホモロジーは 「具体的な構成はどうでもよく使い倒せばいい」と言われることがあります. ただ, ところどころで具体的な構成を使って計算する場面はあり, そういうときに「やはり基礎から, 構成からきちんとやらないと駄目か」と思わされる面倒さがあります.

よく古典的な曲線論・曲面論をやるといいという話も見かけますが, これらは多様体論を避けた記述があって, 多様体論の勉強に役立つと思えたことがありません. むしろ一般的なリーマン幾何をやってから, その具体例として古典的な曲面論に落とした方が私にはよく気分が掴めました. そもそも曲面論をきちんと多様体論・一般的なリーマン幾何に きちんとつなげてくれている本があるのかどうかさえわかりません. 幾何の人または純粋な数学科の人が曲線論・曲面論と 多様体論の接続をどう勉強しているのか知りたいくらいです.

「理論物理学者に市民が数学を教える会」で実際に話したことなのですが, 物理学者が書いた本だといきなり位相空間や多様体の定義だけ出てきて, 数学的な気分は全然わかりません. あれだと逆に何も書いていなさすぎて本当に無味乾燥で, 逆に何であれで勉強できるのか・わかるのかが不思議です.

そんな感じで何からどう攻めると取り組みやすくなるのか, いまだによくわかっておらず, コンテンツ整備も後回しになっています.

それだけで足りるわけはないのですが, それでもとりあえずはリーマン面から攻めるのがいいのではないかと思っています. 多様体論というか幾何の議論でポイントはいくつかあり, そのうちの一つは局所座標を取って議論を進める部分です. やってみるとわかりますが, 実は記号的に非常にやっかいで, テンソル解析的な議論だけではカバーしきれない部分があります. その点, リーマン面だと複素一次元なので記号の面倒がだいぶ減っていて, 都合のいい座標系を取るという視点ががだいぶ見やすくなります. そこだけでもだいぶ変わります.

ここまででも言ってきたように, リーマン面は学部三年くらいまでの数学の総合格闘技の趣があり, そう簡単ではありません. 次回以降, 多様体の各論についての概要と, リーマン面のための基礎知識みたいなところをまとめていこうと思います.

今回はこのくらいにしましょう. ではまたメールします.

2021-02-07 物理と微分形式/相転移プロダクション

今週のコンテンツ

前回, 勉強会でフランス語と英語の語彙がよく似ているという話になったので, フランス語とイタリア語も割と共通点が多く, フランス語を経由して英語とイタリア語にも共通項が多いという話をするべく, ちょっとイタリア語の話をしています.

この辺の単語まわり, 何というか数学の表現論の趣があります. 印欧祖語やら何やらの母胎があって, そこから各言語に対して準同型があるかのような感じ.

これに絡めて, 改めてドイツ語と中国語の単語を覚え直そうと, 日々ちょこちょこ進めています. やはり文法より先に単語をやらないと勉強が捗りません. 相対論の論文は1000単語程度あって, 物理や数学系の論文を読むにはこの1000語だけでもかなりできるようになりそうなので, まずはここにフォーカスをあててやっていこうと思っています.

挨拶用・日常会話で大事な単語だとすぐ飽きるので, もうこういうところからやるしかないと腹を括りました.

集合・位相の勉強に関して

森の未知さんとやりとりしたのを紹介しておきます. はじめに書いておくと, 何でもそうですが, 才能やら何やらいう前に膨大な量の修行が必要です. 没頭する時間的な余裕が必要とも言えます.

旧帝大未満の偏差値の数学科で集合・位相を教えるなら、まずは集合の無限族の共通部分・和や写像の逆像の計算を徹底的にやらせるのが大事ではないかと最近思う。 あの辺の集合論の基本演算ができないと位相空間論でも詰む。 「集合・位相こそそれまで習った計算中心の数学と一線を画する数学科らしい数学」みたいな先入観のある人も少なくないかもしれないけど、全くそんなことはなくて、基本的な計算演習を疎かにしている人が多すぎるだけだと思う。

最近機械学習方面でなぜか話題の測度論・確率論ではまる理由、大抵ハードな集合演算+実数論周りの極限処理の暴力的な演習量の足りなさだといつも思っています。測度論・確率論の議論、集合論部分がリアルにつらい一方でそこをカットして来る応用の人が多いので本物の地獄になっている気分があります。

そういえば学部レベルでの測度論も地味に集合演算が重たかったのを思い出しました。そう考えるといかにもありそうな話ですね……。

ちなみに私は冗談抜きで確率論・測度論に耐えられません。作用素環でも直積分まわりで測度論・確率論を酷使するのですが、処理しきれず挫折しました。ルベーグ積分の極限処理と測度論・確率論の処理は全然違います。「市民感覚の確率論の本が欲しい」とよくいうのはこの深い挫折に基づいています。

ちなみにくるるさんによる次のような話もありました.

「基本的な計算演習」がここでどのようなものを指すのかはわからないのですが、普通に数学をやってきたくらいの人は、∀∃または∃∀の形の論理式に当たる概念(例えばG_δやF_σ)が出ると最初は完全に詰まるので、そこは練習しないと越えられないと思う。 という話は @kadamasaru さんが何度もされてますが。機械的に論理式を解釈していけばちゃんと証明になっていくじゃん!みたいなのは少なくとも本学のレベルでは通用しない印象。

よく「努力できること自体が才能」という話もありますが, 何の役に立つかもわからないタイプの数学に没頭できるのは確かに才能かもしれません. いいことなのかどうかは別問題です.

統計学の本の記述で確かにそんな問題があったか事案

TwitterでRTで回ってきた話です.

前にブログのネタにしたことあるけど、平均値の線形性 E [a X + b Y ] = a E [X ] + b E [Y ] とかも、ちゃんと証明するにはフビニの定理とか必要なはずなんだけど、雑にしか説明してない本が多い。

ここから少しやりとりして次のような記事が出てきました.

間違っているのでリンク先は読まなくて構いません. これを見て少し考えたのですが, よく統計の本に書いてある期待値の定義を杓子定規に考えると, 確かに期待値の線型性に関する E[X+Y] の認識は破滅するかもしれません. きちんと確率空間上の可測関数とその積分というセットアップで見れば何の問題もなく, 無意識にそれで補完してしまっていて, 気付きさえしませんでした.

前にどこかで書いた気もしますが, 高校の確率のセットアップをきちんとやると実はかなり大変です. 試行回数を増やすことは積空間・積測度を考えることにあたります. たまに大学受験の問題でも確率に関する級数が出てくることがある (少なくともその記憶がある) のですが, その構成には無限積空間・無限積測度が必要です.

大学受験のレベルなら可算積で済む一方, 確率積分などを考えるときは非可算の積がところどころで出てくるので, 微妙な回避処理が必要でかなり大変なところがあります. 学生の頃, 非専門の身で時々その辺の面倒な処理にぶちあたり, 確率論には挫折したままです.

それはそれとして, 最近統計の勉強会でずっと講師役をやっていて, 黒木さんのipynbを読んでいます. 特に先週次のipynbを読み終えました.

これまでの蓄積もあるとは思いますが, 本腰を入れて読んでようやくある程度全体像が掴めるようになりました. この資料はお勧めです. あえて数学的に細かいところには踏み込み切っていない (ギチギチに証明を書き切っていない) ようなので, 細かい計算はともかくまずは全体像を掴みたいという人にむしろお勧めです. 一部の計算は他の資料に詳しく書いてあることもあるようです. 私はいまKL information and descriptive statistics.ipynbを読んでいます. これも数値実験つきでなかなかよさそうな資料です.

ベクトル解析を微分形式で書く

Twitterで時々浮上してくるこの話題, いつも思っていることを何となくツイートしました.

ベクトル解析を微分形式で書くのがいいとかいうやつ、数学はツール・言葉で、みんながそれを使わないと意味がないので数学部分だけ伝えたところで意味がなく、その分野の教科書を全部微分形式で書いて揃えて教科書シリーズを作るくらいの労力をかけないと何の意味もない。勉強しても共通言語にならない. この微分形式で書くというやつ、物理でよくやる近似周りの議論とどれだけ相性がいいのかよくわかっていない。微分形式のルールに則ったお行儀のいい近似のほうが色々捗るみたいな研究も必要なのだと思うが、面白くなくて誰もやらなさそう。

物理で微分形式が役に立つというのをどういう視点で強調してコンテンツを作ればいいのかがいまだによくわからない。数学・幾何だと幾何的な情報を持つ・コホモロジーを記述できると言えるが、物理で使うとき、必ずしもこういう話はせず「方程式が綺麗にまとまる」くらいの話ばかり見かける。 あとは計算が楽になるというやつ。計算が楽になるのは間違いなくご利益だが、それで「こんな風に物理の理解が深まる」という感じで使われているのをあまり見かけない。そして実際ここがよくわからないので、何かコンテンツを作ろうにもどういう切り口にすればいいのかいまだにわからない。 電磁気学を公理的に微分形式で書き進めるという本があるのだが、相対論のために記述がこう色々と面倒になっていて、逆にかなりややこしくなっている気分がある。曲がった時空などへの対応もすぐできるとか書かれていたが、それがどこまでの利点になるのかよくわかっていない。 特に必ずしも相対論的な定式化を意識しないタイプの議論でどこまでどんなご利益があるのか。幾何と関係がある以上、位相的な効果が出てくる電磁気の問題や量子力学の問題では便利なところもあるのだろうが、特に工学的なところでどの程度ご利益になるのかわかっていない。 理論物理方面の話だけ考えていればいいわけでもない。数値計算への応用があるのも知っているが、工学の人がどのくらいスクラッチで数値計算コードを書くのかもよくわからない。数学だけ勉強して物理・工学の本を微分形式で自力で書き直せというのも無茶がある。 あと物理・工学への応用を考えるとき、テンソル解析と微分形式による処理がどのくらい気分が違うのかなどもよくわからない。 あと応用向けに微分形式をやるという話にどれだけの意義があるかわからない事案として数学のPDEの人達の流儀がある。幾何解析だといわゆるテンソル解析になるだろうしふつうのPDEでベクトル解析の代わりに微分形式を使おうという人をみたことがない。こういうのが徹底的に書いてある本、洋書でもある?

ツイートでは「こんなのがある」とだけ書いて面倒で文献紹介をしませんでしたが, 具体的な文献を知っている範囲で一応紹介しておきます.

Hehl-Obukhovの本, 時間の方向を特別扱いしないといけない局面があり, そこの扱いで記号も面倒になっていてあまり読むのはお勧めできません. 面白い試みだとは思っていますが, ふつうの人が読むには趣味的に過ぎます.

我らが久徳先生からのコメントもちょっと載せておきましょう.

安直に微分形式を役に立てようとするなら積分量を定義するところかなあ。テンソル解析だけだと不変性が怪しいので

完全に数学としての幾何の本でもテンソル解析スタイルで進めて不変性もがんばって示す本はよくあるので, この不利・不便さを超えた物理として意義がどの程度あるのかがわかっていません. よけいな数学的苦労を背負い込ませるだけの大義名分がないとなかなか勧めづらいです.

いま別に進めている幾何の方は, 物理のことを何も考えておらず, ふつうに幾何・微分幾何をやるだけで, 微分形式にはご利益があるというより空気のような存在で, 吸えないと即死するみたいなタイプの不穏ささえあります. リーマン面も細部は適当に流しつつ, わかる部分だけTeXでノートを書いて日々少しずつ復習して細部を埋めていくスタイルで勉強を続けています.

何を読んでいたのかのメモさえ残していない昔のノートと, 適当な英語の講義ノートPDFで勉強していて, 日本語の訳語がわからないことが時々あります. いくつかリーマン面の本のストックがあってもいい気はするので, 何か日本語の本を買おうかとも思っています. 証明や議論の構成でも参考になるでしょうから.

集合・位相はもちろん必要で, 多少の多変数まで含めた微分積分, 線型代数, 多少の代数とそれなりに予備知識が必要なのは厳しいところですが, 逆にそれらをモチベーション豊かに勉強できるのがリーマン面のいいところです. そこから広がる世界も深く広く, 超弦関係の物理でなら実際に使うのもひとつお勧めポイントです.

ぜひあなたもリーマン面やりましょう.

プログラミングと数学

プログラミングに関しても, 既にリリースしたコンテンツをもとに勉強会をしていて, それがそろそろ一周終わります.

一通りやってみて改めて思ったのは, プログラムはメンテが必要で本当に面倒くさいということでした. メンテが極限まで減らせるのにしないとやっていられそうにありません.

いろいろあって, その勉強会では前半でIT基礎知識, 後半でコンテンツで数学・プログラミング学習という形でやっています. プログラミングもちょっと突っ込むとIT基礎知識が割といろいろ必要で, それに絡めてやはりアルゴリズムとデータ構造に近い形で数学遊びできるネタで何かやるのがよさそう, というか, そうでないとコンテンツのメンテが面倒でやっていられない, という感触があります. 一通り終わったらデータ構造とアルゴリズムをやる一方で, Project Eulerを進めるタイプの勉強会にしようかと思っていろいろ考えています.

いつも以上にとりとめがないですが, 今回は勉強のログとコンテンツ制作雑感といった感じで, こんなところで終わります.

ではまたメールします.

2021-01-31 勉強のアドバイスをするとアドバイス"した側"の成績が上がる/相転移プロダクション

とりあえずはTwitterからコンテンツ紹介を.

コンテンツ紹介

MITでは,コンピュータサイエンスの授業の準備に, シェルやvim, git, デバッグ等,便利で基本的なツールを「授業では何百時間,キャリアでは何千時間使う」として,1ヶ月学ぶ授業が開講されているようですね https://missing.csail.mit.edu/2020/ 講義動画等が公開されていますが,他大学もやったら面白いのでは

MIT なので当然のように英語です. ここ数ヶ月は微分幾何しかしておらず, そして今月はといえば本当にリーマン面しかしていません. プログラミングのコンテンツ整備・勉強が完全にストップしています. しかし毎週二時間, クローズドでプログラミングの勉強会はやっていますし, 中高生向けのコンテンツ整備もやっていく必要があるため, いつかはもっと本格的に踏み込まなければいけない話です.

MIT の教育ノウハウが叩き込まれていると思うので, 自分用の備忘録としても紹介しておきます.

幾何の話の前に

以前メルマガに書いたか何かしたとも思うのですが, 「勉強のアドバイスをするとアドバイス"した側"の成績が上がる」という話, 最近改めて感じています.

特にクローズドの統計の勉強会で私が黒木さんの統計の資料をもとに話しています.

一度読んでそれなりに把握したことでも, 講師役で話していると頭の使い方が切り替わります. 話している最中に「これはこういうことだったのか」と私自身が謎の納得を深めることがあります.

不思議なものでオンラインの勉強会であったとしても, 実際に時間を共有して反応を気にしながら進めるのは全然違います. メルマガで数学系の解説を書いているのも形式的には「教える」モードなのに, 少なくとも私に関してはどうも違うようです.

人のためなどと四の五の言う前に, 自分自身の勉強のためにこそ人に教えるのがいいという気分さえあります.

もちろん他の人に参加してもらうためにいい感じに興味関心を擦り合わせる必要があり, そこをどう調整するかが私自身の今後の課題なのだと思っています. いま実際にやっている勉強会も実質的に聴衆は一人というのがあります. 忙しいのに毎週時間を作って参加してくれるのでありがたい限りです.

幾何の話

何週間が塩づけにした幾何の話というか, 勉強のログを少し共有します. 幾何の専門の人には自明すぎるほど自明と思いますし, きちんと書いてある本も探せばあるのでしょうが見つけられていません. もしあなたが幾何に興味がある一方, 幾何の理解度が私と同程度だというなら参考になるはずです.

複素多様体論での複素化

複素多様体では実多様体と比べて局所理論がちょっと面倒になっています. もちろん線型代数の話でタイトル通り複素化です.

複素化自体はどの本にも書いてありますが, なぜ必要なのかが書いてありません. そして以前リーマン面を勉強したとき, 何も考えずに当然と受け入れていたことがまさに複素化が必要な理由そのものであることに, 最近改めて気付きました.

面倒なので一変数に限定して書くことにすると, 複素化する理由は $dz$ と $d \overline{z}$ を使いたいからです. つまり (余) 接空間を複素二次元にしたいからです. リーマン面だと $dx$, $dy$ を $dz$ と $d \overline{z}$ に置き換えられる, という感じで複素化と言わずにさらりと出てくる部分がまさに複素化なのでした.

一般論も書いておきましょう. 一般に多様体の次元と接空間・余接空間の次元は同じです. 複素多様体の複素次元が $n$ のとき, 接空間も複素 $n$ 次元です. これをどうにかして複素 $2n$ 次元にしないといけません.

ここで複素 $n$ 次元は実 $2n$ 次元です. この実 $2n$ 次元を複素化すると複素 $2n$ 次元の空間が作れます. 複素 $n$ 次元は複素化しようがないので, いったん実 $2n$ 次元を経由するのが複素化です.

ここ数ヶ月の集中的な微分幾何学習でようやく気付いたという話でした.

数週間空いてしまったので, 項目だけ立てて何を書こうとしていたのか忘れてしまいました. 来週以降, また適当に幾何の話をします. 三次元での曲面論でのいわゆるガウスの驚異の定理なども, まじめにきっちり詰めて証明もノートにつけて, ようやく気分が掴めてきました. この辺の話もきちんとまとめたいと思っています.

ではまたメールします.

2021-01-24 数学は体力だ/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずはいつものコンテンツのまとめからです.

基本的には公開にしているオンライン勉強会の記録です.

コンテンツ紹介

今回はいくつかTwitterで見かけたコンテンツなどを紹介します.

BorcherdsのYouTubeチャンネル

フィールズ賞受賞者であるBorcherdsのYouTubeチャンネルがあります.

これ以外にもいろいろな研究所や数学者のYouTubeチャンネルがあります. 基本的には英語なので英語がわかる人は聞いてみてはどうでしょうか. Borcherdsに関してはやはり超一流の知見が散りばめられた講義のようで, 知人の数学者もよく聞いていると言っていました.

時々「英語はちょっと」という人がいて, 英語系のコンテンツを勧めるのはどうしようかと思うことも増えてきました. 語学系, 特に英語のコンテンツ・勉強会をはじめた理由はこの辺にもあります. 最低限英語が読めないと数学・物理の勉強は本当にきついです. 実際, 数学で何かわからないことがあると英語で検索することがよくありますし, そして Math Stack Exchange や適当な PDF で問題が解決できることがこれまたよくあります.

YouTubeだとリスニングが必要ですが, 上記webサイトやPDFなら学校英語で完全にカバーできます. そうはいっても今更, という人も多いようなので, 「理工系のための語学」という感じで勉強会をやっています. 数学科卒でいま翻訳をやっているという人が参加してくれています. 楽しい・勉強になると言って実際, 毎週積極的に参加してくれているので, それ相応の内容であってきちんと価値のあるものを提供できるはずという自信がついてきました.

もしあなたが興味があるなら, 上記の記事や勉強会の様子を公開しているYouTubeの動画を見てください. ただし私は吃音があり, YouTube は聞きづらいかもしれないので予めご了承ください.

松尾さんからのコメント

現代数学探険隊を買ってくれた理論物理学者の松尾さんと, 試験的に「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」というオンライン勉強会をやっています. それに関して次のページでコメントをまとめてくれています.

これも勉強会の様子はYouTubeに上げているので, 興味があれば見てみてください.

『集合・関係・写像・代数系演算・位相測度』石谷茂/著

単純にタイトルを見ただけの話ですが, 私が作っている現代数学観光ツアーや, いま幾何入門としてまとめているコンテンツと内容がぴったり重なっています. おそらく私は自分の勉強も兼ねてもっとこってりと, そして別の視点で同じような内容を改めてまとめることになるでしょう. もしあなたがいますぐ概要を掴みたいと思っているなら, ぜひ買ってみるといいのではないでしょうか. 2300円と安いのでもしあなたが大人なら冒険してもいい値段です. 中高生だとさすがに高いとは思うのですが.

そもそも私が買って読んでレビューするべきところではあります. もしあなたがこれを読んでみたなら, ぜひレビューをまとめてもらえると助かります. 記事を書いたら教えてください.

体力をつけよう

これも大事なので.

これは自覚しづらいことでもあるけれど、 創造力や集中力の低下は、体力の低下に直結している。 アイディアがどんどん生まれるのは動ける身体がベースにあって、 脳の前頭葉が活発に働くからだ。 「自粛期間で創造力や集中力が落ちた」と感じる人には(僕もそのひとり) 基礎体力づくりをおすすめしたい。

「数学は体力だ」という数学関係者には有名な話がありますが, やはり体力は非常に大事です. 数学と言わず日常生活でももちろん同じです. 特に最近は別の意味でも重要になってきてしまいました.

私はもともと体が弱く, ちょっと不安なのでジム通いはいったん止めてしまいましたが, エアロバイクを買ったので毎日二時間やっています. ゆるく漕ぐだけでその間は適当にコンテンツを作っています. 最近だと語学系のコンテンツを整備しています.

前もメルマガで書いたように, 筋トレはいい感じの人体実験でもあり, 日常に活きる科学といった趣もあって面白いので, 再開したいとは思っています. あまり長引くような器具を買う方がいいのかもしれません.

国立大学法人のウェブのアーカイブ

私も時々引用する河東先生のセミナーのやり方ページ, 先生が定年退職したらどうなるのかといった事を呟いたらコメントをもらいました.

国立大学法人のウェブは、国会図書館がアーカイブを公開する。例えば、件の記事は https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11573930/www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/sem.htm

他にも既にいろいろなアーカイブが残っているようです.

小林治先生の超コンパクトにまとめられた「講義資料・セミナー資料」、退職されてから閲覧できなくなってしまい残念に思っていたが、保存されている! https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9531540/www.math.sci.osaka-u.ac.jp/~kobayashi/

もしあなたが国立大学のサイトから何か大事なモノが消えてしまって悲しい思いをしたことがあるなら, こちらで探してみてはどうでしょうか.

アンケート回答へのコメント

現代数学観光ツアーのアンケートで 「応用に出てくる数学を数学的にきちんとやるとこんなにきついのか」といったコメントがありました.

これ, いい加減きちんと整理したいというのがあります. まず一回一回の配信分がそれだけで独立させるべきボリュームです. 整理自体は終わったのですが, 配信に関して改めてどうするかを考えているところです.

もうひとつは, そもそもが初期の物理・数学系にゴリゴリに特化した読者向けだったことによる内容のハードさです. そろそろ適性なレベルの数学系コンテンツを作り直さないといけません. その前哨戦が松尾さんとの勉強会なので, ぜひ松尾さんの勉強会に関するYouTube勉強会を見てみてください.

今回も書くべきネタがたくさんあって, 幾何の話ができませんでした. ネタがなければ次回書きます. 今回はこんなところで.

ではまたメールします.

2021-01-17 日々の勉強に復習を取り込む方法/相転移プロダクション

毎週アウトプットとして勉強会をやっているので, そのうちで記録を公開している英語の勉強会の記事をシェアしておきます.

こんなに真面目に英語を読むのははじめてなので, 毎回今まで・ふだんどれだけ適当に英語を読んでいるかを痛感します. ここでまじめに読んでいるおかげでふだんの英語の読み込みにも役立っている気分はあります.

統計の勉強会でも黒木さんの ipynb を読んでいます. これも面白いもので, 自分で整理しつつ読んでいるときには気付かなかったことも, 勉強会でまさに話している最中に気付くことがいろいろあります. 勉強会は聞くよりも話す側で参加した方がいいという話を改めて実感しています.

日々の生活に復習を取り込む方法

完全に人によると思うのですが, 最近私がやっている復習までセットにした勉強法を紹介します. それは「とにかくノートを作りつつ毎日少しずつ見直す」です. ここでのノートは TeX で取っていて, いろいろなミスを復習しながら直しています. 単純な数学的なミスはもちろん, あとで見たらギャップがあったところを追記したり, 日本語がおかしいのを直したりもしています.

あとで修正しやいので TeX によるノート作りを勧めます. PDF 化するとスマホやタブレットに入れて持ち運ぶのも便利で, 隙間時間でも勉強できます.

私の場合は基本リモートワークなのもあり, 朝と昼に本当にのんびりできる時間があります. そこでコーヒーを飲みながらのんびり読んでいます.

おそらく完全に個人的な事情なのですが, ふつうに教科書を読むよりも自分が書いたノートを読む方が私は集中できるようなのです. たぶん, 理由は次の通りです.

  • 自分のノートは基本的にどこか間違っている・おかしいと思っている
  • ミスを探すつもりで注意深く読める
  • 間違っている部分をすぐ修正できつつまとまった形で手元に残るので気分がいい. 紙の教科書だといちいちその本を開かなければならず, 電子の教科書でも事情は大きく変わらない
  • 自分がすらすら読めるように書いているので当然ギャップレスですらすら読める

ふつうに教科書を読んでいると飽きてくるのですが, それを適宜まとめた自分のノートだと読み続けられます. 特に現代数学観光ツアーや現代数学探険隊は自分が面白いと思ったことを, 自分が面白いと思えるように書いているので, よけいに飽きません.

集合論の入門の本や入門的な記述など, いまでもいろいろな勉強や調査で読むことがありますが, どうしてもすぐにだれて来ますが, 自分の集合論ノートだと不思議といくらでも読めます.

もしあなたにもこうした心あたりがあるなら, 単に教科書を読むだけではなく, ぜひ自分でノートを作ってみてください. ノートのおかしい箇所を修正しながら復習でき, 理解の定着をはかる上では非常に効率的で効果的です.

TeX は環境のセットアップがめんどうなので, オンラインの overleaf を使ってもいいでしょう.

  • https://ja.overleaf.com/

私はいろいろな都合と趣味によって overleaf は使っていませんが, 前に少し使った感じではかなり便利でした.

TeX のコードについては現代数学ビギナーズマニュアルにも多少の記述はありますが, ある程度まとまった数学コードがあるソースとして, 昔作ってとりあえず公開してある次のリポジトリを見てもらうといいでしょう.

PDF も生成して置いてあるので, 比較しながら見てもらうと TeX の勉強にもなるはずです.

学生時代に書いていたノートへの継ぎ足しで, 正直ソースというか書き方自体はかなりひどく, 書き方は参考にしない方がいいです. どんなソースを書くとどんな出力が得られるか, よくあるコマンドとその説明といった形ではなく, ある程度まとまった文章ベースでの出力確認として役立ててください.

関数論が楽しい

最近は関数論・リーマン面が楽しく, 休日も一日中やっています. 他にやるべきこと, 作るべき・整理すべきコンテンツがあるのに全然手がついていません. 私にとって触りやすいレベル・内容で ホモトピーを含めたトポロジー・層の勉強もついでにできるのが非常にいいです. どうしても代数トポロジー・純代数・幾何の趣が強くなりがちなところでもあり, 解析面からアプローチできるのが本当に便利です.

ちなみに, 関数論から多少ずれますが, 集合・位相から代数トポロジー・微分幾何に触れるコンテンツとして, シンガー・ソープの本はよくまとまっています.

正直あまり読みやすいとは思えませんが, 多様体の基礎まで含めて要領よく書いてあります. 明示的にそうは書いていませんが, 結果的にファイバー束レベルでの接続・平行移動の話まで書いてあります. 読み込むのは大変ですが, 眺める分には楽しいでしょう.

関数論に話を戻すと, 関数論・リーマン面を勉強するといろいろできていいという話を具体的に書いてあるのは, 例えば以前も紹介した次の本です.

これも出たときに買うだけ買っていまだにまともに読んでいないのですが, 目次から伺える内容自体は最高です. 確か圏の部分がかなりイレギュラーな書き方をしているとか何とか見かけた気はしますが, 数学のプロになるわけでもないならそんなに気にしなくてもいいとは思います.

同じ著者の線型代数・微分積分と集合・位相の本の続きという水準のはずなので, その基礎知識がないと厳しいとは思います.

ちなみにリーマン面というか被覆空間論でもガロア被覆という話があり, 実際にデッキ変換群と有理関数体の拡大という形で関係するので, 数学原論でガロア理論があるのもおかしい話ではありません.

あと本にもよる部分ですが, 関数論・リーマン面方面からあっさり多様体に入門してみるのはひとつお勧めのルートです. ふつうに多様体論の本を読むと, どうしても実多様体論に関するこってりした話が続きます. それを使っていろいろやるのは楽しいのですが, 「一度はやっておくべきだがそう何度もやりたくない」系の面白くない話が続く部分があります. リーマン面でさらりと複素多様体に触れると, いわゆるベクトル場がどうこうといった面倒なことが起きにくくなります. ベクトル場を抜きに直接微分形式を定式化する方法があり, それで微分形式を議論している本もあります. 複素一変数なので記号も重たくならない利点があります.

いいことづくめなのでぜひリーマン面をやりましょう. 私はまだ勉強できていませんが, ディーバー方程式など, ゴリゴリの解析学・偏微分方程式を使っていろいろやる手法もあり, 代数・幾何・解析のいろいろな視点から勉強でき, それら自体の勉強にもなるというお得なことしかない分野です.

ちなみに先程のシンガー・ソープは, 多様体論の面倒なところを最小限にして応用まで見せてくれるのもいいところです. 読みやすければもっといいのですが.

もう少し具体的な幾何系の勉強のヒント的な話をする予定だったのですが, リーマン面の話などが長引いてしまったので今回はこのくらいにしましょう. 次はもっときちんと幾何の話をする予定です.

ではまたメールします.

2021-01-10 証明を計算問題にする/相転移プロダクション

今週のコンテンツ

今週の公開コンテンツとしてはこの記事/動画だけです. 裏で猛スピードで幾何系のノート作りをしつつ, 数学・物理のための語学という感じのコンテンツを作っています. 数学方面はしばらくノート整理で動けない (楽しくて他が手につかない) です.

ちなみにクローズドの統計勉強会では黒木さんのコンテンツを勉強しつつ, これらをプログラミングも込めて順番に勉強していけるように整理・整備しています.

雑に勉強していたのを気合入れてやりはじめたので, 少しずつ細部の様子が見えてきました. 自分の勉強の記録にもなるので, 焦らずきっちり整理していこうと思っています.

証明を計算問題にする

つい先程, Twitter で森の未知さん (若手の数学者) とちょっとした会話をしました. 次のツイート周辺の会話です.

ちょっと進んだ数学の分野の馬鹿みたいな計算練習がやりたい。

実際こういう問題を作る必要は教員として感じるんですよね。 例えば写像の逆像の計算問題とか。

いま私が欲しいというか作りたいと思っているのは、色々な定理の証明それ自体をいわゆる論理の部分を問題の小問で分解して、計算をさせるタイプの問題です。証明の流れを概観できる利点もあります。小さなclaimに分けるみたいな気分で。YouTubeに流せるミニコンテンツを作ろうという気分もあります。

最近途切れている YouTue での線型代数や力学のコンテンツはここへの布石でもあります.

とりあえず細かいところは気にせずゴリゴリ計算するだけの動画にしかなっていませんが, これだと 1 コンテンツ・1 動画が長くなりすぎることもわかりました. 見るのも作るのも大変なので自動小分け法としても上のアプローチは大事と思っています.

森の未知さんのコメントにもあるように, 集合や位相を計算ドリルの手法で勉強するというのは大事です. 新しく問題それ自体を作るのはけっこう大変ですが, 証明それ自体を計算問題化するのなら上にいったように小さな claim をつむげばいいので大分楽になります.

どの分野でも適当な計算練習が必要です. 数学は証明というか論理が強く出がちで一般には計算が軽視されている雰囲気を感じます. しかし代数や幾何であっても一定量の計算は絶対に必要です. ホモロジー代数の可換図式の処理なども「計算」です.

すぐにはコンテンツは作れませんが, もしあなたが数学の本を読むのに苦労しているのなら, 証明を計算に分割できるように工夫するとだいぶ読みやすくなると思います. ぜひ工夫してみてください. いつになるかわかりませんが, いつかはやる予定です.

いっそどなたかやってくれないでしょうか?

幾何の勉強について

最近は語学コンテンツ作成と幾何ノートの整理の合間にちょこちょこ統計をやるという感じの生活です. 大分前から超弦理論や一般相対性理論での必要性からか, 幾何を勉強してみたい人が一定数います. どういう感じで作っていくといいかを考えるため, 2年くらい雑な勉強をしながら方向性を探っていました.

もういい加減四の五の言わずに具体的にノートを作りつつがっつり勉強しようと思って作りはじめたら, 当然のように今までより遥かに理解が深まってきたので, 2年をドブに捨ててしまった気分になっています.

それはそれとして大雑把に掴んできた気分はあるので, 具体的な話と絡めながら幾何の勉強をしたい人向けのコメントをしようと思います. 基本路線として, 私は学部が物理, 修士で解析学専攻なので, 数学的背景としては一般理工系の人達と共通部分が多く, もしあなたが幾何の勉強をしてみたいと思っているなら参考になるはずです.

結論から言うとがんばって関数論をやろうという方向でいま考えています. これに向けて話を展開させます.

まず線型代数と微分積分を軸に計算練習しながら幾何に挑むなら, 小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』に代表される古典的な微分幾何でのアプローチはあると思います. 最近, 工学でも幾何の需要が高まっているとかいう話もありますし, とりあえず幾何らしい話はできます.

ただ, 数学としての微分幾何との距離が恐ろしく遠いように感じます. リーマン幾何につなぐ構成の本もありますが, あまり接続の仕方がよくないように思います. いわゆる第1基本形式 (リーマン計量) と, それを E,F,G などで書くまさしく古典的なスタイルがあり, 記号として計量の記号は導入してはいますが, 何かこうリーマン幾何や多様体論とのつながりが私にはうまく感じ取れない本ばかりという気分です.

逆にベクトル束の微分幾何・リーマン幾何の一般論をある程度やったあと, 曲面論に落としてくる流れでようやく古典的な曲面論の幾何がようやく掴めたくらいの気分があります. これはそもそも私は幾何系の感覚が薄く弱い上, 本腰を入れて勉強をはじめたのがベクトル束からだから, という異様な勉強順序が理由だと思います. 何にせよ微分積分と線型代数の計算練習に幾何的な直観を載せるにはいいと思うのですが, 多様体論などのいわゆる現代数学としての幾何につなげるのは私には厳しかったというのがあります. あとリーマン幾何などをやっていると, 多様体の位相と曲率などで基本群が突如出てきて, この辺の勉強が雑なままなので結局気分を掴み切れない部分がまだあります.

そこで何を選んだかと言えば関数論です. 多変数だと層のコホモロジーの母胎でさえある分野ですし, その中でネーター環といった可換環論の基礎的な部分も出てきます. 解析学としてもディーバー方程式などのアプローチがあり, 代数・幾何・解析が多方面からモチベーション豊かに勉強できてやはり本当にいいとつくづく感じています. 実際, 次のノート作りのターゲットはここです.

次という以上, いまは違うところをやっています. それが何かというとリーマン面, つまり1変数の関数論です. リーマン面自体が超弦理論などで本当に出てくるというのもあります. しかしそれ以上に重視しているポイントがあります.

まず物理学科では留数定理などの計算の道具として勉強しますし, 関数論ユーザーとして一定の土地勘があります. 実際問題として関数論がカリキュラムに組み込まれた理工系の学科は少ないように思いますが, ふつうの微分積分・ベクトル解析からの発展として勉強しやすい分野とは思います.

他には解析接続のような, よく聞く格好よさげな話の終着点として出てくる分野であることです. 私も複素多様体のような方面の方がかえってきちんと勉強する機会が多かったくらいで, 実はあまり真面目に勉強しきれていません. そしてこの筋を追いかけると, 多変数と違ってホモトピーの基本的な話を総ざらいする必要が出てきます. ホモロジー・コホモロジーはいたるところで出てきますが, ホモトピーが私にとって解析学と絡めて気分が掴みやすい形で出てくるところがいまだにわかりません. その数少ないというか唯一の分野です. 関数論なのでコホモロジーは当然のように出てきます. その意味で解析学からの位相幾何入門としてもかなりすぐれた分野なのではないかと見ていて, その検証のために本腰を入れた勉強をはじめたところです.

他にもジュリア集合やら何やら複素力学系との関係もありますし, これはプログラミング・お絵描きと絡めて遊んでみたいテーマです. 代数曲線論として代数幾何への入門として機能する部分もあります. さらにリーマン面自体いまでも研究されているほど汲めども尽きぬ分野です. 楕円関数論などの議論もあり, 単品でも面白くこれまた代数幾何入門としても機能するテーマがあります. これだけでも一生遊べる分野です. 複素領域での常微分方程式論といったテーマもあります. いい加減きちんとアタックするべきだろうと思い, 手始めにふつうにリーマン面を基礎から勉強しているのが今のフェーズです.

本当は幾何系の話をもっといろいろ書こうと思っていたのですが, リーマン面への導入だけで尋常ではないボリュームになってしまいました. 幾何系の勉強のヒント話は来週も続ける予定です.

ではまたメールします.

2021-01-01 数体の素元星座定理/理工系の総合語学・リベラルアーツ/相転移プロダクション

数体の素元星座定理

細かいことは何もわかっていませんが, とりあえず数学情報を共有します.

【ご報告】 あの定理に出会い、憧れてから十余年。 博士号取得後、あの定理に真剣に向き合い始めてから約四年。 この東北・仙台の地における我々の仕事について、 ようやく一つの形にできたことをここに報告致します。

Green-Taoの定理を有理数体の定理と見た際に一般の数体に拡張可能かという問題に関し、Terence TaoがGauss数体の場合を2006年に証明しました。Taoは一般の数体の場合にも成立すると予想し、少なくとも整数環がUFDかつ単数群が有限群(10個しかない)の場合には証明できるだろうと予想していました。 これに対し、我々はTerence Taoの予想を全ての数体に対して精密な形で解決しました。名付けて「数体の素元星座定理」

フィールズ賞の業績にもなったグリーン-タオの定理の拡張が証明された, という話です. もちろん, まだプレプリントを出しただけなので, 数学者集団の厳しいチェックに通るかどうかという部分はあります.

グリーン-タオの定理はフェルマーの最終定理よろしく, 「中高生でも意味はわかるが証明が破滅的に難しい」タイプの定理です. そしてグリーン-タオの何が面白いのかいまだによくわかっていませんが, 関さんの話なので面白いことは絶対に間違いないと思っています. 新年早々景気のいい話でもあり, とりあえずシェアしておきます.

今年の目標: 「理工系の総合語学・リベラルアーツ」を進める

11-12 月, 毎週の怒涛の出張対応で生活習慣が破壞され, ペースが掴めずにメルマガも出せていませんでした. 今月以降も仕事が忙しくなりそうでどうなるかわかりません. YouTube 動画など日々の形のコンテンツをどこまで出せるか微妙ですが, 裏では方向性を決めてコンテンツを作り続けています.

いくつかオンラインの勉強会をやっていて, それは強制的に半公開になるので少なくともそこでの成果は外に出せると思います.

ようやく統計学に少し慣れてきたので, 統計学・機械学習系の勉強会ではベイズ統計とそのプログラミングを, 黒木さんのツイートや資料を整理するところからはじめていこうと思っています.

中高数学 + Python 勉強会はそのコンテンツ自体のブラッシュアップと, これの Julia 化を目指してやっていく予定です. 上の黒木さんの統計コンテンツの整理で Julia に触れるので, それと並行して進めます.

あとは語学, 特に英語です. アインシュタインの相対性理論の原論文, 学部 2 年でのドイツ語原文へのアタック以来の再挑戦です. あのときは物理以前にドイツ語にやられましたが, 今回は私の語学力もあがっている上, 英語論文をメインに据えたので問題なく読み進められるでしょう. 1 回 1 時間で 1 文進むか進まないかという進捗なので, 他に参加してくれている人達が飽きてしまわないか問題があり, これを飽きさせずに継続させられるか, 私のコンテンツ力が試されています.

語学に関してこれはこれできちんと進めますが, これだとそこそこの量のコンテンツを読み切らないといけない問題があり, もっといい意味でつまみ食いできるコンテンツを作らないといけないこともわかったので, 並行して短期集中で勝手気ままにつまみ食いが許されるコンテンツ案を練っています.

ここまでの反省: ガチガチの数学・物理系コンテンツしかない

上記語学系コンテンツ案はいまコンテンツ自体を仮組しながらブラッシュアップしています. その中でも反省的に盛り込んでいるのは, 私が数学・物理方面でガチガチのコンテンツしか作れないことです.

ときどき「文系プログラマー」みたいな人からの相談を受けていて, 最近の機械学習関係で中高数学の内容+プログラミングでいいのがないかという話があります. ごく単純に機械学習という話なら, この辺は本以外にも Udemy での動画コンテンツなどいろいろなコンテンツが出ているので, わざわざ機械学習素人の私が作る必要はないと思っているところです.

ただ, 私が作った中高数学+プログラミングのコンテンツの案内ページにも書いたように, 私がほしかったタイプのコンテンツがいまだ完全に不足しています.

  • https://phasetr.com/mthlp1/

この方面はこれでまだいろいろ作る予定ですが, もう 1 つ根源的な問題があります.

数学に苦手意識を持つ人達の話を聞いていると, 「数学的思考」みたいなものに対する憧れみたいなものもかなりあるように思います. これをどうしようかと.

「数学的思考」とやらが何なのかもよくわかりませんが, 何かそれっぽいモノは見せたいという気分があります. 新型コロナで完全に止まって久しいものの, 地元の中高生向け理工系学習支援の中にも, 何というか, 「文系向け数学・数学的思考訓練」みたいな要素は取り入れたいと思っていました.

ただふつうに数学・物理でやってしまうと, 私はガチガチのものしか作れないのでどうしようかという問題に帰ってきます. それならそれらしきことを別のモノに載せてやればいいのですが, どうしたものかわからず, プログラミングと組み合わせてみたという気分もあります.

ここで文系自認の人なら, 数学よりもまだ語学の方が親和性があるだろうというのが 1 つ, プログラマーなら英語ドキュメントは読まないといけない機会はあるからそれと絡めればもう少し何とかなるのではないかというのが 1 つ, 一般理工系でも英語に触れる機会は多いのに理工系視点での語学コンテンツはあまりないのでそこを埋めたいのが 1 つ, という感じで「語学で学ぶ数学的思考」という気分のコンテンツを作ってみています.

最終的に理工系中高生に向けたコンテンツ展開を考えていますし, 数学・物理は理工系にとっての言語でもあります. そこで「理工系のための総合語学」という立て付けにして, しばらく数学・物理・プログラミング・英語 (語学) で進めてみようと思っています.

今年の数学: 幾何を充実させる

去年から勉強内容を本格的に幾何にシフトしました. 現代数学探険隊の案内ページでも 「指数定理などの幾何の重要な定理の勉強にここで紹介した解析学の知見は役に立つ」 と書いていましたが, 本当にきちんと役に立つ内容に仕上げられているのがわかって, 改めて安心しました.

とりあえず軸になる本を決めてそれを読み進めてノートを取りつつ, 自分のノートを見直してわかりにくい記述をゴリゴリ埋めていきつつ, 「この定理もほしい」「これは別のところに移動させたい」など構成を練っています.

微分幾何をメインに進めていますが, とにかく線型代数です. 関数解析方面とはまた違う線型代数・微分積分のミックスで, 線型代数がまるでわかっていない・使えていないことを痛感させられ, 厳しい気持ちになっています.

もう少しで微分幾何の基礎の基礎に関わる内容について一通りノートが取り終えられるので, 次はトポロジー関連の話を解析学からアタックする方向を考えています. 具体的には関数論をやります. 1 変数だとホモトピーもかなりよく出てきますし, 多変数なら層のコホロモジーでゴリゴリにコホモロジーができるはず. それ以外にもネーター環など可換環の基本的なところも必要になって, いろいろな所を解析学ベースで勉強できる利点がある分野です. 改めてきちんとノートを取って進める予定です.

多様体論のノートは作りかけで止まっているので, それもじっくり進めようと思っています. ホイットニーの定理やらなめらかな三角形分割やら調和積分やら, 基本的な定理の証明がまとまった本がなく, 本当にいらついています. ド・ラームの本にホイットニーは載っていて, 捩形式の議論もあればカレントによる調和積分もあるものの, 何か読みにくくて放置したままとかいう状況で, 多様体のノート作りをしばらく放棄していました. コンテンツ公開するときにこれでは困るので, まだしばらく幾何系のコンテンツが公開しにくい状況です.

いま整備しているのは微分幾何でもベクトル束を前面にゴリゴリに押し出した記述なので, もっと他のコンテンツを整備しないと, という気分です.

ちなみに YouTube でしばらく線型代数系のコンテンツを集中投下していたのは これで線型代数の整理が必要になったその成果です.

超弦理論や指数定理に興味があるという人がときどきいます. そこではやはり微分幾何が基本的な道具です. 先々まで行けば他にもいろいろありはしますが, 少なくとも私が把握できている素朴なレベルの指数定理では, 最低限, 私と同レベルで線型代数が制御できないとどうにもなりません. ぜひ線型代数をゴリゴリとやってください. 多様体の基礎がない状況でどこまでできるかは微妙なところですが, ベクトル束を勉強するといい感じで必要な線型代数の知見やレベルがわかります.

多様体の基礎から調和積分まで, 過剰な一般化がなくベクトル束もきちんと書いてある本として, 北原・河上の『調和積分論』を勧めておきます.

私はいったんディラック作用素と楕円型方程式の解析からのノートを作ったのですが, この本は多様体の基礎からはじめて, 熱方程式のアプローチで調和積分にアタックしています. 熱方程式からの調和積分ノートを作るときのために参考文献としてストックしてあって, なかなかよさそうです. 誰か読んでくれるならオンライン勉強会をやってもいいくらいです.

あとは解析学から入れる幾何としてモース理論もやろうと思って幾星霜です. 有名なミルナーの本もある程度読んだことがあるのですが, いくつかの命題の証明が当時の文献に丸投げされている箇所があり, 「そんなものが手に入るか」と思って放り投げた記憶があります. 幾何の本はこんなのばかりでどう勉強しろというのかと思っていて, それが現代数学探険隊を作りはじめたモチベーションの 1 つでもあります.

ちなみにモース理論は微分積分, 特に微分をやっていると何故か幾何がわかるといういい話です. もう少し具体的に言うと, 高校で散々やった導関数の増減表からのお絵描きを激烈にハードにやると, それできちんとグラフの概形よろしく多様体の情報が取れることを示す理論です.

一応モース理論も文献を 2 冊紹介しておきます. 幾何の人に教えてもらった本でかなり有名な本のようです.

後者はフレアーホモロジーから触発されたという理論構成で, ソボレフ空間などをゴリゴリ使います. これを読んだときソボレフ系の数学に対してまだまだ不慣れだったので, 私には厳しい本でした. いまならがんばればもう少し読めるとは思いますが.

前者はミルナーの本をもっと丁寧にした本だと思えばいいでしょう. たぶん. CW 複体の基礎だけは仮定されていますが, CW 複体のホモロジーはきちんと書いてあります. 多様体の基礎はどうしても仮定されてしまっていますがそれは仕方ありません. 現代数学探険隊の解析学編, 幾何としては明らかに不足してはいるものの, 陰関数定理・逆写像定理と多様体論の関係について最低限触れた上で, ベクトル場と微分形式もできる限り多様体論との接続がいいように書いておいて本当によかったと思っています. 出せるコンテンツがいまだに全く何もないわけではないと言えるので.

いろいろやりたいことはあります. まずは線型代数含め, 関数論と幾何のための代数の整備みたいなあたりを YouTube に出そうとは思っています.

今年も地味に・地道にやっていきましょう.

ではまたメールします.

2020-11-29 ツイートメモ: いろいろなコンテンツへの思い/相転移プロダクション

数学の本が難しいとかいう事案

発端のツイートはこれ.

https://twitter.com/chokudai/status/1331878035314786306 これ厄介なのが、数百時間とか学習して、「結局これさえ分かってれば出来るんだね!」って本質を理解した上級者さんが、初級者にそれだけ教えれば十分だと勘違いしちゃうケース。訓練して洗練された結果シンプルな思考回路が自分の中に出来たのを、「自分は遠回りした」と勘違いしちゃうのよね。

https://twitter.com/poyothon/status/1332100736507789312

数学の教科書はマジでこれなのでやめてほしい。 学問の対立を煽るとかじゃなくて、実際に数学科の人達が「行間を埋める」をして苦労して教科書を読み解いてる。 本に書かれてる順序と人が最初に理解するときの論理の順序が大きくかけ離れてる。(最近はそうじゃない教科書も増えたらしいけど)

これに対する私の連続ツイート.

私は院での数学と学部の物理と多少のプログラミングしか知らないが、何故か他の分野は何かを理解した気になりやすいだけで、数学のリアクションの方が普通なのではないかという気分がある。学部の専門だった物理、そして工学の本は何が書いてあるのか本当にわからないし数学の方がまだわかる。 https://twitter.com/poyothon/status/1332100736507789312

これ、数学科以外だと該当学部学科の学生は自分野の教科書をサラサラ読めるという話なのだろうか。少なくとも物理はそんなことなかったが。どういうふうに世界を見ているのか、本当にわからない。哲学や宗教学、神学などでも同じように本サラサラよめるのだろうか。 そもそも数学に限らず「議論をその時々の自分なりに細かいところまで追いきれた」以上に何かを理解できた記憶・経験がないので、元ツイートの意味というか理解という概念自体が本当にわからない。皆そんなにいろいろ理解できるものがあるのかといつも困惑している。 数学の本、気持ちが書いていないとかいうそうだが、とりあえず物理は何が書いてあるのだろうか。謎の計算と物理学者の気分だけが書いてあるという気分で、その気分が取れないと何もわからない。工学はもっとすごい。最後に自然(実験)と合えばいいとしか書いていない気がする。何を「理解」すればいいのか.

それこそ一流の数学者が執筆陣の岩波の「現代数学の基礎」シリーズだとか、はじめと最初に理論の概要と目標、現代数学への展望コーナーがあったりするので、こういう人たちが何を読んでいるのかが割と本気で気になる。それらに書いてあることが何もわからないというならわかる.

数学科では教科書で定理の有用性とか応用例を挙げると破門される決まりでもあるのかってくらい何も書いてくれない

「何も書かれていない本には確かに何も書かれていない」という程度の意味にしか思えないのだが、具体的にどんな本を読んでいるのか教えてほしい。

あと物理でいうと謎の気分の引き写しだけで、正しい気分が書いてある本は激烈に少ないのでは。きちんと気分が書いてある本がたくさんあるなら、みんな熱力学で困ったりしない。何の話をしているのか全然わからない。そんなに熱力学はいい本たくさんあるの。 非数学サイド、とりあえずエントロピーの意味・意義について過去の引き写ししかしていない熱力学の本を破滅させてから文句言ってほしい。あと何かよくわからない量子力学の本もつぶしてほしい。 数学の本が難しいという人、何なら読めるのかを教えて欲しいし、その理解度的な何かを自己測定する方法なども教えて欲しい。 コンテンツを作るのでこの辺を改めてずっと考えているのだが、私が聞く限り数学の人間は少なくとも理工系の他分野の本を読むときも広い意味で「何が書いてあるかわからない」というケースをよく見かけるので、数学科の人間を引き合いに出しても情報量全くない気分がある。何見てもわからない種族では。 https://twitter.com/poyothon/status/1332100736507789312

「人が最初に理解する論理の順序」という、適当に18歳以上などに制限するにしても人類レベルの大きな話、それだけ普遍性のある(数学科向けの?)数学の話もどの程度あるのかよくわからない。順序もおそらくそこまでの知識・経験に強く依存する。これは線型空間と実数論と集合と位相を基本装備した状態からの論理(これ、正体は何なのだろう。そこからして齟齬がありそう)展開、だいぶ趣違うのでは。

あと、学部で微分積分を教わった郡先生が講義中に言っていて今でも覚えているほど印象的だった数学科学生の理解のエピソードがあってそれは「接ベクトルは曲線に接したところに住んでいるのではなくてあくまで別の空間の原点から生えている。これが分からなくて理解が遅れた」というのがある。 当時の私の感覚だとおよそ直観的ではなく何を言っているのか多分よくわかっていなかったが、主張としてはおそらく接空間の話だろう。これもおそらく、人によっては数学の本の議論の順番でないと本当に何も分からない可能性は十分にありうる。元ツイは人の理解の多様性を排除したひどい話とさえ思える。 多分学部一年で松本幸夫の多様体の基礎で接空間を見たときにすぐには分からなかったが、適当にしばらくしてから「これがあの郡先生の話か」と思ったような記憶がある。多様体の気分、最近ようやく少し掴めてきたくらいなので当時の「理解」などとたかが知れすぎていて厳しい気分はある。

多様体のホモロジー・コホモロジー集がほしい

おさえておくべき有名な多様体のホモロジー・コホモロジーの計算が馬鹿みたいにたくさん書いてある本ないの。ホモロジー代数の一般論よりも計算がたくさん書いてある本を読んでみたい。洋書ならあるか? これ、逆に一部であってもコホモロジーが計算できて教育的な例がどれだけ系統的にあるか、みたいなところもある。 本当に知らないので馬鹿みたいに計算をし続けるコンテンツを勉強ついでに作りたい気分もある。

難聴者のための教材を作ろう

そういえばbioのところに難聴と書いてある高校生にフォローされているのだが、よくあるYouTubeの動画講義、しゃべりに重点がある系統のが多い気がするし、吃音に起因する私の書くだけの動画、作る分にも視聴する分にも障害者対応の気分があり、逆にこれを貫くべきという気分になってきた。

2020-11-22 幾何のための (線型) 代数コンテンツを整備する/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずはいつものコンテンツのまとめからです.

記事

動画

忙しいときの対応をどうするか

先週出張もあって忙しくていまひとつやる気が出ず, メルマガを書きませんでした. ふだんオフィスにずっといる中, 外で実証実験していたので肉体的に非常に疲れていて, コンテンツ制作などプライベートでやるべき作業も全然できませんでした. 今週と来週も 1 泊・2 泊の出張があるので, その中でどう体力と時間を作るかが課題です.

コンテンツ制作状況

ここ最近はずっと幾何のための線型代数をずっとやっています. コンテンツの準備じたいは複素多様体の局所理論のための線型代数パートに入りました. ここで困ったのは幾何の復習ノートで複素多様体を少しやっていて, そこと少しかぶってしまっていることです.

いろいろな事情から同じ内容をまとめ直すのは仕方ないとして, 無目的に同じコンテンツを作っていられるほど暇ではないので, 既存の幾何ノート, 特に多様体の基礎のノートで何をどこまで書いたか確認・整理中です.

その一方で「幾何のための代数・線型代数」シリーズを作るために ベクトル束の微分幾何をやっていて, やはりある程度現代的な微分幾何で, ベクトル束を無視してはいけないという気分も出てきます. ベクトル束を早い段階から導入できる多様体論の基礎コンテンツも作りたい気分があり, この 2 つをどううまく噛み合わせて進めるかがいまの課題です.

幾何の理解, 特に直観的な理解は全く進んでいないものの, 確実にきちんと計算できるようになってきていて, 幾何的腕力がついている気分はあります. 引き続きやっていきます.

リリースしたいコンテンツ

Mathpedia はまだ構想の第 0 段階らしいのでまた少し違うものの, 最近 Mathlog なり何なり数学の記事系のコンテンツやプラットフォームが増えているようです.

このあたりで私が気に入らないというか困っているのは, 記事レベルの断片的な知識ばかりで体系的な知見を自分の中にためるのが難しいことです. Wiki もリンクがいっぱい張られているとリンク先も全部見たくなり, 思考が発散してきちんとたまらない気分があります.

もちろんどんな勉強スタイルで何をどう勉強したいかに強く依存しますし, 皆が皆そう思うわけはないのは前提として, それでも私がほしいタイプの方向性で発展している気分はありません. 他の人が何をどう整備しても, やはり最後は自分なりのノートなりコンテンツなりを作るしか, 自分の気に入るコンテンツが手に入らない気分はどんどん高まっています.

そして同じように思う人もきっといるはずなので, その人達に向けてどう動くかがいまの私のテーマです. 動画作成して, コンテンツの種類・メディアを増やしつつ, 明示的に何をどう作っているか見せてはいますが, 言う程体系的にかっちりしたコンテンツはリリースできていません. いい加減何か体系的なコンテンツを出したいと思っています. もちろんマネタイズも意識しながら. 前から言っているように, 数学でどう食べていけるようにするかは私の活動のメインテーマの 1 つなので.

現代数学探険隊をやってみて出て来た課題も多いので, それを乗り越えたコンテンツを作りたい気分もあります. 解析学はある程度既知として, 解析学の知見を活かしつつ幾何に向かうための代数コンテンツをリリース前提で きちんと体系的に整備しはじめています.

内容的には抽象論ばかりになりがちな代数を, 解析または幾何からサポートするタイプのコンテンツからはじめる予定です. 何にせよ微分積分と線型代数は基本中の基本なので, これを軸に攻めようと思っています. 現代数学観光ツアーや, 現代数学探険隊での代数ミニマムで素案は出していますが, 今度は幾何を意識してもっと内容を拡充する予定です.

YouTube は計算系コンテンツの拡充の一環として作っている面もありますが, 単純な数値計算だけが計算ではないので, ゴリゴリ計算していろいろな理解を深めていけるコンテンツがうまく作れないか, ずっと検討しています.

方向性自体ははっきりしているのですが, 相変わらず細部については試行錯誤を続けていてあまりまとまりがありません. とりあえずこんな感じで進めているよということで.

ではまたメールします.

2020-11-08 勉強持ち寄りミニパーティー/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずはいつものコンテンツのまとめからです.

記事

動画

勉強持ち寄りミニパーティー

とりあえず数学・物理・プログラミング・語学あたりを大横断した勉強持ち寄りミニパーティーを定期開催するのをやりたい。できる限り毎日ゆるくゆるく続けたい。その場で「これわかんねえな」という10分をみんなで過ごすとかそのくらいのゆるさを許容する感じで。

先程つぶやいたツイートです. 微妙な反響があったので企画を立ててちょっとやってみようかと思います. 先程思い立ったばかりなので, 適当に趣旨などをまとめてまずは Twitter で募集をしてみます.

いい加減物理を本格的にはじめよう.

Twitter で Mathlog というサービスが立ち上がったそうです.

最近数学関係のサービスがやたらたくさんできてきています. 私自身数学は数学で勉強したいことがいろいろあるので 数学方面のコンテンツ作りなどはやめませんが, もっと本格的に物理方面に舵を切っていいだろう, または切らないとという気分が高まっています.

動画作りで計算メインの古典力学をしばらくやっていたのは飽きたので休止中ですし, 物質の安定性も完全休止状態なので, 実際問題改めてきちんと勉強したい物質の安定性を軸に再開しようと思っています. 他には電磁気や熱力学, 相対論や量子力学など, いわゆるふつうの物理も何かゆるくはじめたいところです. この辺のゆるいスタートに上の勉強持ち寄りミニパーティー企画を活かせないかというのもあります.

何にせよやりたいことは掃いて捨てるほどあるので, 飽きないように適度に分散させつつ, 引き続き実験していきます.

Mooc のメモ

書こう書こうと思っていた Mooc ネタのツイートメモをいい加減供養します. いま改めて見たら 2019/2 のツイートでした.

Paul のツイートだけ引用しておきましょう.

MOOCについて私見も含め ・現在の技術でバーチャル大学は難しい ・大学の講義の一部をMOOCにしても教育効果は下がる ・実際にMOOCの利用は下火に ・社会人の再教育など特殊な用途でMOOC自体は今後も残る 普通に考えてそうだろうなあと思うことでも,データに基づくことは大切

日本でMOOC元年と言われた2013年にすでに海外では下り坂だった https://doi.org/10.1241/johokanri.57.367 実際,数学の場合にe-learning的なものだけで勉強を進められるかというと,よほどの超技術でもないと難しいように思う。ただ,MOOCに限らず新しい技術をどう教育に取り入れるかは継続して考えないといけない。

色々ご意見をいただきました。社会人など大学に来るのが難しい方に対して,復習や新しい技術の習得などの用途にMOOCは残るでしょう。また,研究・教育youtuberみたいにワンポイント・レッスンが増えるかもしれません。初学者に基礎から教える大学では,MOOCを中心に据えるのは難しいのでしょう。

新型コロナでオンライン講義・ハイブリッド講義がどうのとなっています. MOOC がどうかはともかく, しばらくはオンラインをうまく使わないといけないのは間違いありません.

2020-11-01 数学カフェと数学家庭教師案内の宣伝/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずはいつものコンテンツのまとめからです.

記事

動画

今週の反省

今週土曜, ちょっと用事があってプチお出かけしました. それで疲れ果てて土曜日はおろか日曜日も使い物にならず, 動画が作れませんでした. プログラミングの勉強会はやったので最低限のタスクはこなしたとみなすことにします.

最近引きこもりで体力が一段と落ちている感があります. 給付金でエアロバイクを買って毎日やってはいますが, 今後はもう少し負荷をかけてもっと体力作りに意識を向けることにします. 以前も「筋トレの科学」みたいな話をしたように, いまこそ数学を続けるための体力増強みたいなテーマが大事だと痛感しています.

「大学の数学の家庭教師を募集」の拡散協力

いつも通り infinity_topoi さんのやっている事案です.

  • https://twitter.com/Infinity_topoi/status/1322804711460753408

大学の数学の家庭教師を募集している人(生徒側も講師側も)、リプライとか送ってくれればRTで拡散しますよ。ただ、多分生徒側が貴重なので、生徒側の人が送ってくれれば講師をやりたい人たちから連絡が行きやすいかな。

このメルマガを読んでいる人, どちらかと言えば生徒側の方が多いような気がするので, 興味がある人は Twitter にアカウントを作ってリプライを飛ばしてみましょう.

すぐに流れてしまう Twitter でしか連絡できないみたいなのが厳しい気分もありますが, 仕方ありません.

数学カフェの宣伝協力

前々から微妙に縁がある数学カフェが NPO 法人化して活動の幅を広げるというアナウンスがありました.

Twitter を見ると「もくもく会」をやっている案内などもあるので, これももしあなたが興味あるなら積極的に参加してみてください. 毎日だと大変で私はいま 1 つやる気合が湧かないことをやってくれています.

私の観測範囲が数学方面に偏り過ぎていてよくわかっていませんが, 物理方面で似たようなことやっている人はいるのでしょうか? その辺も探して何をしているか把握したいところです. もしあなたが何か知っていることがあれば, ぜひ教えてください. 私も最近少しずつ物理にシフトしていますし, 他の人がやってくれていることがあるなら, かぶらない方向で何かやりたいと思っています.

何はともあれ, 私の復習兼ねてのコンテンツ整備が当面の行動予定ではあります.

オンラインサロン (仮) 募集

現代数学探険隊の購入者の方々からほとんど反応がない (一人だけ反応があった) ので, それなら一般展開しても大丈夫かという気分が出てきたので, もう少し待ってみてからまたちょっと別の動きというか案内をしようと思います.

購入者の方からのリアクションがないのは, 参加のメリットをうまく伝えきれていないのが原因なのでしょう. このご時世にあまりメリットごり押しなのもどうかという気分がありつつ, 何かもっと楽しそうな雰囲気は出した方がいいのだろうとも思っています.

準備は大変な一方, 少人数勉強会の日常への組み込みはできてきたので, まずは着実にコンテンツと知見を積んでいくようにします.

こんな感じで基本ひたすらに失敗を続けていますし, 特に最近はメルマガでも具体的に話をしているつもりです. たまに「自分もコンテンツを作ってみたい」みたいなコメントはもらうので, 悪いところは捨てていいところは拾って, ぜひあなたもいろいろ実践したり, 紹介しているコミュニティなどに参加してみてください.

ではまたメールします.

2020-10-25 プチコミュニティの案内/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずはいつものコンテンツのまとめからです.

今週, 金曜に体調を崩したので作成コンテンツは少なめです.

記事

動画

プチコミュニティの案内

今週, ようやく現代数学探険隊の購入者・受講者の方々に案内を出しました. 何らかの理由でメール不達になってしまっている方がいらっしゃれば, ご連絡頂ければ別途ご案内し直します.

とりあえずは少しずつでもいいから必ず毎日勉強をしようの会にしようと思っています. 私もその日勉強したことを小まめに報告しようと思っています. この手の報告はメルマガでやったら鬱陶しいですが, コミュニティ内でちょこちょこやる分にはいいのではないかと考えています. 何はともあれ, やってみては調整していきます.

私がパンクするので本格的にはやれませんが, かえってそれがいいという話もあるので, 以前から紹介しているもくもく会的なプチ勉強会もできれば, と思っています.

健康は大事

金曜日, 体調を崩して語学の勉強会をキャンセルした上, 頭痛も残っていて気分が乗らなかったので, 土曜日の動画作成もさぼりました.

少しのことで身体の調子が気分にも影響しますし, 心身の健康は本当に大事だと改めて痛感しました.

これから冬になり, さらに身体の健康を維持するのが難しくなってきます. 私はただでさえ身体が弱いので, 体調管理に気をつけます.

物理で何をやるか

一時期力学の動画を作っていました. 微分幾何をきちんと勉強しようという以前からのモチベーションがあったので, そちらは勉強ついでにコンテンツ制作が精力的に進められていますが, 物理の方のコンテンツ作成が滞っています.

必ずしも「物理」でなくても, 偏微分方程式やベクトル解析・関数論の計算でもいいとは思っているのですが. 飽きないように適当に混ぜ混ぜしつつ, そろそろ偏微分方程式や関数論の計算からはじめようとは思っています.

まだ完全に体調が戻っていないのか, 文章を書く調子が上がらないので今回はこんなところで.

ではまたメールします.

2020-10-18 新型コロナ禍での ICT 教育と数学・物理/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずはいつものコンテンツのまとめからです.

月・金は勉強会だけにしました. 無理して動画を作ろうとすると疲れて破綻するので, ゆるく進めることにしました.

物質の安定性と量子測定理論は 適当なタイミングできちんとやろうと思っています. 月曜の「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」で 触れる話題にしてもいいでしょう.

記事

動画

語学コンテンツ作成が楽しい

6 回かけてまだ序文の第 3 文までしか進んでいません. 単語の解説をほとんどしていないにも関わらずこの進度ですが, まだまだ解説し足りないほどに解説することがあります.

単語の解説はどう考えても追いつかないので, 本文解説のコンテンツ作成がメインで, 単語は少しずつ作っていくしかありません.

はじめは単語編をざっと作ってしまい, 文法は学校の勉強で十分, 読解は自分でがんばって, 自分 1 人でつらいという人には勉強会的な形でのコミュニティ応用的な コンテンツ提供スタイルを考えていたのですが, 何をどう考えても単語コンテンツの整備が最後になりそうです.

読解編もコンテンツを作っていると, 思っていたよりも解説するべきことが多いことがわかりました. 勉強会に参加してよくコメントをくれる人が数学系出身の人で, 物理をよく知らない状態で参加してくれているので, 逆に物理に関わる各種背景知識をきちんと解説するモチベーションになっています. 単純な物理の話なら他にいくらでもコンテンツがあり, さらに言えば私よりも詳しい人もたくさんいるので, 純粋に英文, ひいては一般の文章読解の精度をあげるのに重要な物理の話をしています.

私自身, 英語のいい復習+学習になっていて, 楽しくなってきました. やはり人を巻き込んだ勉強会スタイルの勉強は楽しいです.

あなたもぜひやってみてください. いまリアルで勉強会でできない状態ですが, 数学・物理だとかえってオンラインの方が興味関心が重なる人を見つけやすいでしょう. よくも悪くも zoom 会議は定着しはじめていますし, そうした知見をプライベートに応用するいい機会です.

中高生への ICT 教育

前から言っているように, 語学コンテンツ作成自体, 去年からの中高生向けコンテンツ・サービス展開への布石です.

私は昔自分が通っていた柔道の道場の稽古への参加ついでに運営協力もしているのですが, そこに通っている高校 3 年生の事情を聞いています. いまちょうど推薦試験の季節で, 今年は推薦の面接もオンラインになっているようです.

私の地元だと高校生だけではなく, その親の IT スキルも高くないのが一般的で, 不安に思う親の相談に乗っています.

この半年, よくも悪くもオンライン教育をせざるを得ない状況で, 教育学・教育工学関係の人達がいろいろ知見を出してくれています. 私も Twitter でゆるく追いかけている人がいるのですが, 本来, オンライン授業やら授業・教材への ICT 機器活用といった話以前に, 連絡帳や文房具としての ICT 機器利用, 日常に IT を埋め込む工夫こそが最優先という話をしています.

ここ数週間の感じだと, 少なくとも私の地元では, この日常に IT を埋め込むという方向性から 話を組み直した方がいいのだろうと思いはじめました.

具体的にどうするかはまだ何も考えられていませんが, 相談している地元政治家の先生に改めてこの方向からの話をしておこうと思っています.

Chromebook ももう少しプログラミング環境について考える必要はありますが, 文房具として本当に使えるという実感が出てきました. 11.6 インチで軽めなので持ち運びもしやすく, セカンドマシンとしての使いどころは完全に確定しました. 使ってみないとわからないことは多いと, これも改めて実感しています.

仮称オンラインサロンの話

本当は先週現代数学探険隊の購入者の方々にメールを送る予定だったのですが, 時間が取れずまだ連絡できていません.

とりあえず何が必要か聞くだけ聞いてみて, その意見を見つついろいろ試して広く展開するための方針を探る予定です.

現代数学探険隊では具体例はたくさん紹介していますが, 具体的な計算はあまり取り込めていません. いま作っている Youtube 動画講義シリーズは, その計算練習編の外出しでもあります.

もっと基本的な線型代数や微分積分, 関数論, フーリエ変換, 偏微分方程式関係の計算が全然できていないので, その辺をカバーしつつ現代数学探険隊の本編の理論と絡めていくのがいいかとは思っています. 何にせよきちんとコミュニケーションを取る必要があり, 全てはそれからです.

関係される方, もう少しお待ちください.

コメントへの返信

読者アンケートで, 最近 2 年のメール配信全体についての感想として 次のようなコメントが来ました.

  • 配信内容を具体的かつそれぞれ一話完結にしてほしい.
  • 今までの配信内容はどれも予告的, 目次のみ, 概要のみに留まっている.

少なくとも今年に入ってからは, こう考えているがまだできていない, 考えていることをこんな感じで実行しているという感じで, 具体的な話しかしていないつもりなのでちょっと驚いたのですが, 何をしてほしいのかがよくわかっていません.

具体的に書けという話がメインなのでしょうが, 個人的には常に具体的な構想と取った行動を書いているつもりなので, 抽象度が合ってはいないのだろうとは思います. 具体的な行動結果はコンテンツにしているので, メルマガだけでは概要にしかなっていないと言われたらそれはそうかもしれません. もしかしたらそういう話でしょうか.

まだ予告・概要の話しかしていないことに関しては, 読者の誰かがやってくれると嬉しいなと思って書いているので, そういうものです.

あと読んでいて面白くなければ, メルマガは気楽に解除してください. 試行錯誤はあるにせよ, 役に立つ・意味があると思うことしか書いていないので, それが噛み合わない方に時間の無駄遣いをさせるのは本位ではありません.

メルマガで言ったかどうか忘れましたが, 最近はメルマガの内容をサイト https://phasetr.com にもあげているので, わざわざメルマガを取らなくても問題ありません. コンテンツも最近はほぼ全部 YouTube かサイトにあげています. フル公開していないのは, プログラミング勉強会くらいです.

長くなりましたが結論を言うと, まだしばらく, 今年に入ってからのスタイルを続けるので, 感覚が合わないなら気楽にメルマガ解除してください. つながる形はいろいろあります.

今回はこんなところで終わります. ではまたメールします.

2020-10-11 現代数学探険隊を無料化したい/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

いつも通り今週のコンテンツから紹介します.

記事

動画

理論物理学者に市民が数学を教えようの会

本文

今週 (先週?), ちょびちょびコンテンツ制作をさぼっていて, 物質の安定性と量子測定理論の動画が作れていません. 勉強会をぶっこんだというのもあります. ペースが無茶と言えば無茶なので, ちょっと考えた方がいいのでしょう.

理論物理学者に市民が数学を教えようの会の反省

途中アドリブで適当なことを言ったらそれがおかしくて反省しました. アドリブを効かせられるような頭の回転はないので, よけいなことは言わないようにします.

また 1:1 での会話と思えばいいかもしれませんが, YouTube の動画講義に耐えるクオリティではないと思うので, その改善も大きな課題です. 頭の回転の悪さと吃音がかなり大きな問題になっていて, 本質的なので厳しいところもありますが, それならそれで何ができるかを考えないといけません.

語学

理工系向けリベラルアーツと称して英語のコンテンツ制作, 勉強会を開いています. 今回は論文の第 1-2 文の単語を 4 つ紹介するだけで終わったのですが, understand の解説で改めて思ったことがあります. 日本語の理解という言葉, 解像度が低いというか抽象的だなと思うようになりました.

まだきちんと理解しきれていないところがあるのですが, いまのところ 「理解する」と訳される単語の understand, apprehend, comprehend は次のような意味のようです.

  • understand: 混沌としていた状況から頭をすっきりさせる.
  • apprehend: 何か 1 つをがっちり掴まえる.
  • comprehend: (apprehend と比較して) 包括的にがっちり掴まえる.
    • 「comprehend できてはいないが apprehend はできている」状況がある.

これは数学や物理の勉強の仕方でも大事です. いろいろな知識は仕入れられたがいまひとつすっきりしない状況は understand できていない状況で, それなら一般論や抽象論を勉強するといいのでしょうし, 一般論を勉強しているときに曖昧模糊としてよくわからない状況ではまず apprehend を目指し, 具体例を徹底的にいじり倒してみるとか, 自分の理解の様子を詳しく分析するのに使えるでしょう.

私自身, いままで「理解」という単語の解像度が低く, きちんと説明しきれていなかった気分がありますが, 何か少し掴めた気がしています.

この辺りまで突っ込んでリベラルアーツと呼べるレベルにまで仕上がったコンテンツ作成を目指して勉強会を進めています. 上に載せたように勉強会の動画は YouTube にもあげて, 記事も作っているので, 使える時間に合わせて眺めてみてください.

Mathpedia 運営のいいところ

Twitter でも書いたのですが, お金の突っ込み方・使い方がいいと思います. 特に理学の人はお金に対する忌避感が高いので, お金をクリーンに使っているように見せることがとても大事だと思っています. その辺が本当にうまいので感心しています.

そして「寄付したい」「協力したい」という申し出も自然と出ているようで, そういうのは私は全くできていないので, その辺, 私は下手なのだろうと反省しています.

だからといってこれからどうするかという問題があり, いまの 1 番の課題です.

今後の方針

この間もブログにはあげたと思うのですが, 現代数学探険隊は共通言語として使いたい関係上, これを無料化する方向でいろいろ探っています. 既にお金を払ってくれた人に対する話もあるので, 当然いろいろ配慮は必要で, それが大事なポイントです.

まずは既に買ってくれた人向けに何かやってみて, そこから広げていく予定です. 復習的なミニ勉強会をやる方がいいのか, もっとアドバンストなことをやった方がいいのか, 具体的に聞きつつ進めます.

私もふだんの仕事があって時間が取りきれないこともある中で, できる限り私自身の負荷もなく, 意味のあることがどれだけできるかが勘所です. 負荷をかけなくてもできる数学みたいな部分をもっと追う必要があると思っていて, 自分に負荷がかかるようなことをやっていてははじめから破綻しているので, 何をどうしようか工夫のしどころです.

現代数学探険隊の無料化からの展開, 既に大量のコンテンツを持っている現在の出版社などにも真似してほしいと思っているので, きちんとしたビジネスモデルの形にしたいと思っています.

とりあえず今回はこんなところで終わります. ではまたメールします.

2020-10-04 数学・物理・プログラミングを全て語学と強弁しようの会/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

いつも通り今週のコンテンツから紹介します.

記事

動画

理論物理学者に市民が数学を教えようの会 第 1 回の感想

最初の記事のところにも置いてありますが, 「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」の第 1 回をやりました.

明日 (10/5) に第 2 回をやります.

一応, 面白いと言ってもらえたので, まずは私が持っていてほしいと思っている「物理のための数学的センス」についてもう少しいろいろ話したあと, 数学的な詳細に入っていこうと思っています.

数学的な詳細について念頭に置いているのはまず実数論です. 実数論で距離空間論と位相空間論の話をして, それらの議論の中で集合論の記法や議論に慣れてもらうという流れを考えています.

あとは適当に必要なら平行しながら ヒルベルト空間論を中心にした関数解析・線型代数をやろうと思っています. 一通り終わったら量子現象の数理にあるような話題でも詳しく見てみる予定です.

何にせよ, 関数解析の基本的な概念と物理・気分を把握してもらわないと困るので, しばらくその辺の話をします.

現代数学観光ツアーよりももう少し現代数学探険隊よりの話をしている気分があるので, もしあなたが現代数学探険隊の内容に興味があるが, 買うのはちょっと, と思っているならぜひ眺めてみてください.

なかなか進められていませんが, 物質の安定性や量子測定理論まわりの YouTube の話も, 同じく現代数学探険隊の気分で進めます.

アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会

第 4 回まで来ましたが, 話の感じから改めてコンテンツ制作の方針ももう少し突っ込んで話した方がよさそうだと思い, 文法がなぜ大事なのかといった話もしています. いまだはじめの 2 文さえ終わっておらず, 次回, この 2 文の単語の話をしますが, 終わらなさそうな気がします. 焦って進める理由が何もないので, のんびり進めます.

実際, このレベルでゴリゴリに進めることこそ理工系の語学に必要なことだと思っています. 特に工学は下手をすると文章の誤読や書き方の悪さで人が死ぬからです. 理学, 特に数学は気楽なものですが, 理工系と銘打った以上あまり気楽なことをやっているわけにもいきません.

勉強会自体は語学としての英語メインですが, 中高生向けの物理・数学・プログラミング・英語というコンテンツラインナップの中で, 物理は自然とコミュニケーションするための語学, 数学は物理に対して言語学, プログラミングは語学 (言語学レベルの話はとりあえずしない予定) という感じで, 全体的に理工系のための語学という気分があります. 特にプログラミングにも活きる形で英語・文法と付き合いたいと思っていて, そのあたりまで視野に入れた上で英語コンテンツで文法をどう捉えて取り組むかが課題です.

数学科出身で翻訳をやっている人が参加してくださっていて, いろいろコメントを頂いているのですが, やはりプロは違うという感じのコメントをくれるのでとても助かっています. まさに勉強会をやっているご利益を感じています.

準備以前に人集めが大変だとかいろいろ課題があるのはわかりますが, いまは https://connpass.com/calendar/online/ などオンライン勉強会を簡単に案内できるサービスも増えているので, あなたもぜひやってみてください. 数学の勉強会もあるので, 面白そうなのがあれば一参加者として参加してみるのも一手です.

いま見ていたら次のようなサービスもあるようです.

実際語学の勉強会を毎回話す前提でやりはじめて, 毎回 1 時間は話さないといけないので嫌でもコンテンツ制作が進むようになりました. もしあなたが何かをやる弾みがつかないと思っているなら, 主催で自分が話す前提で無理やりはじめる手があるというのはお伝えしておきます.

「ぐだぐだになるかもしれないがそれでも進む」, 「ぐだぐだなのが嫌ならはじめから参加しないで」と強調しておけば, お互い楽だと思いますし, そのくらい振り切ってまずはスケジュールをおさえるのが大事です.

前も紹介したと思いますが, 特に交流などを目的にせず, とにかく作業・勉強をしようというオンラインの「もくもく会」スタイルもあります.

  • https://rust-online.connpass.com/event/181088/

特になかなか勉強する時間が取れないというタイプの人は, スケジュールをおさえる目的でこの手の催しに参加するのをお勧めします.

この辺, せっかくメルマガをやっているわけで, むしろ私が主催して何かした方がいいのだろうと思いますが, 無闇やたらに勉強会を主催しすぎたせいで全く時間的な余裕がありません. それでも, 興味があるという人が多ければそれなりに何か考えるので, もしあなたに何か希望があるならアンケートに書いておいてください. YouTube の動画コンテンツ作りの時間をそれに割り当てることはできるので, 何か考えて実行・実験します.

今回はこんなところで終わりましょう. ではまたメールします.

2020-09-27 現代数学探険隊の展開とオンラインサロン的な何か/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

いつも通り今週のコンテンツから紹介します.

記事

動画

今週のまとめ

コンテンツを作り切れなかった反省

今週はちょっとしたお出かけをする機会があって肉体的な疲れがあり, 動画を作れなかった日が何度かありました. 無闇やたらに勉強会を増やした関係で今後動画を作れなくなる日も出てきそうで, どう調整していくかが課題になってきそうです.

今後の目標

まずは積分論入門への入門をさっさと作り終えたいです. 微分幾何もプレプリントの微分幾何パートがそろそろ終わるので, 電磁気本体の話をしようと思いつつ, 飽きてきたから他の話をしようかとも思っています. 一般相対性理論まわりの話, 具体的な計算をしようかとも思っています., ホッジまわりの線型代数的な話も詰めたいですし, やりたいことは山程あります.

プログラミング系コンテンツ

いまは F# と Julia で Project Euler を解いて, シコシコと GitHub にあげています. これをもとにコンテンツを作ろうかとも思ったのですが, 方向性が見えないので GitHub にあげるだけにしています. Python のコンテンツは勉強会をしつつブラッシュアップをしていますが, これをもっときちんと宣伝しないといけません. 必要な人はいるはずなので, ちゃんと届ける責務があります.

最近の動向からすると数学・物理系プログラミングの文脈では Julia をやるべきだと思うのですが, いまひとつ気分が乗り切りません. F# が触っていて楽しいのでこれをやりたいというのが 1 つあります. さらに中高生向けの動きとして Chromebook を使ってみようと思い, 買いました. 買ったマシンは容量が 32GB しかなく, 余計なソフト・ツール・言語がそんなにバリバリ入れられません. 何でどう遊ぼうか, そして 1 回書いたコードがいつまでも動いてほしい問題の解決のため, いっそ Common Lisp やってみようかという気分になりつつあります.

記事にも書いたように何はともあれ Chromebook にエディタとして Emacs は必ず入れますし, そこと相性がいい Common Lisp は 1 つ決定打なのではないかと. ただ, いまどきの中高生に教える言語か? という気分もあり, そこでうじうじと Julia と悩んでいます. 勉強しても損はないと思うので, とりあえず Common Lisp を勉強しようと思います. コンテンツ化を意識しつつ勉強したいです. Common Lisp による数学系ライブラリなども調べないといけません. Scheme だと Racket が数学方面もやたら発展しているようですし, Common Lisp でも何かあるはずなので, そのあたりもきちんと掘る必要があります.

Try Jupyter でも Scheme があるので Scheme は割と大事な選択肢という気分もありますが.

何ににせよ, プログラミング関係はもっと強化したいですし, 数学・物理以上に強化が必要なところです.

現代数学探険隊のテイストと現代数学観光ツアーのテイスト

アンケートでコメントが来ていたので簡単に返信しておきます. 現代数学探険隊はお値段が張るのでテイストを知るために現代数学観光ツアーに登録された, という方がいました. 現代数学探険隊と現代数学探険隊はだいぶ気分が違うので微妙なのですが, 強いていうならいまやっている動画シリーズの方がまだテイストが合っていると思います.

具体的にどうテイストが違うかというと, 現代数学観光ツアーはとにかく概要をざっと見て慣れ親しんでもらうことが目的です. 一方現代数学探険隊は細部をとにかく細かくやって細部を理解してもらうことが目的です.

このあたり, 集合・実数論・位相くらいは公開してもいいかとは思っていますし, この間記事にもしたように, コンテンツ無料にして数学のオンラインサロンという名の勉強会をメインにしたサービスを立ち上げるかという気分もあります.

集合と位相はいろいろな人が意識を向けるので, かえって実数論をもっと充実させた上で公開するのかいいような気分もあります. 私が 1 番見てほしいのは実は実数論だからというのもあります. 少なくとも距離空間への接続はとてもよく, 積分論を勉強する上でも大事です.

さっそく 9/28 (月) から松尾さんとはじめる「理論物理学者に数学を教えようの会」でも集合・位相をきちんと勉強したいという要望が出ているので, 公開用のすっきりしたコンテンツをそこで整備しようかという気分もあります.

いろいろ考えつつ実践・研究しているところです. 引き続き私の活動を注視してもらえれば, と思います.

ではまたメールします.

2020-09-20 理論物理学者の数学を教えようの会/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずは今週のコンテンツのまとめをします.

記事

動画

今週の反省

今週は寝落ちしてしまったり, いろいろ平行して作業していたら文章を書くだけ書いて動画化を忘れていたりで, 動画コンテンツが少なくなってしまいました. 習慣が途切れると非常にまずいのですが, 今日はもう時間が取れないので明日から立て直します.

今週, 語学の勉強会も 1 時間やったのに 録音ができていなかったという最悪の事故を起こしてしまったので, その辺も再発防止策が必要な状況です.

プログラミングを強化したい

GitHub へのプッシュをよく忘れるのですが, とりあえず Project Euler を地道に解き進めています. 物理サイドの視点からは微分方程式がいいと思っていて, 実際プログラムもいろいろ書いていますが, 数学サイドの視点, それも中高生に勧める視点からはそれだけというのもどうなのかと思い, 紆余曲折を経ていったん Project Euler に焦点を絞ることにしました.

やってみるとわかりますが, 少なくとも前半の簡単な問題の中には手計算でもできる問題があり, 数学というより算数で処理できる問題もあります. それでもプログラムにバグなく起こすのはかなり大変です.

このあたりやはりアルゴリズムの構成や意識に目が向くので, 1 ついい入門だなと改めて感じています. 結局私の趣味で F#, 実用性から Julia のコードを書くようにしています. この 2 言語, 特に F# はもっと慣れたいと思っています.

理論物理学者の数学を教えようの会

前回のメルマガで現代数学探険隊の感想を頂いた, というので松尾衛さんのお話をしましたが, そのあと数学市民ともう少し突っ込んだ話をして, 企画を進めることになりました.

私からは「理論物理学者に物理を教わる」では面白くないので, 「その辺の市民がなぜか理論物理学者に数学を教える」だったら異様で面白いのでは, という話をしたところ, それがよさそうだという話になり, 私からはとりあえずそれをやることにします.

とりあえず現代数学観光ツアーなどもあるので, その辺も整理しつつ, 物理のための解析学という感じで何かやっていこうと思っています. 趣味で数学・物理をやろうとしている人ではなく, 明確に物理学者なのでこれまで以上に物理オリエンテッドな話をする予定です.

メルマガを書くまでに概要ページを作ろうと思っていたのですが, 今週は忙しくて間に合いませんでした. 連休がまだ 2 日あるので, その間に書き上げる予定です.

まだ細かいことは決めていない (相談していない) のですが, Zoom でオンラインセミナーやりつつ, その録画を YouTube に放流する形を考えています.

人が多くなると大変そうなので, とりあえずオンラインセミナー自体はクローズドで進めることにしました. もしあなたがこの勉強会に興味があるなら, YouTube に放流するのでそちらを眺めてみてください.

何にせよ連休中にどんな内容をどんな感じでどう進めるか, 何を目的にこの勉強会をするのか, 数学市民との意図の違いやら遠い目標やらを改めてまとめる予定です. ここまでメルマガやコンテンツ, さらには各種コンテンツの案内ページで書いてきたことを, 今の状況・進捗に合わせてまとめます.

次回のメルマガではその記事自体は確実に発表できると思うので, 楽しみにお待ちください. 再来週くらいからは勉強会をスタートさせたいと思っています.

今回はこんなところで. ではまたメールします.

2020-09-13 微分幾何コンテンツに関して物理学者からお褒めの言葉を頂いたので/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずは今週のコンテンツのまとめをします.

記事

動画

休日, あまり作業できなくて進捗感がないのですが, 何だかんだでそれなりに作れているのかと安心しました. 線型代数と情報理論, 符号理論は 現代数学観光ツアーで作った分を整理して作り切りました.

現代数学観光ツアーは改めて整理しないと, とずっと思っていたので動画しつつ改めて整理して, PDF としても再構成していこうと思います.

ニュース

Twitter の河東セミナーニュース bot https://twitter.com/kawahigashinews で Jones の訃報が流れてきました. 67 歳だったそうです. 竹崎正道先生の 80 歳記念の研究会のあと, 「昔からの仲間もどんどん亡くなりはじめ, 娘にも先立たれたが, 友人や息子のような人々がこんなにもたくさんいる」 などと言っていたことを思い出します. 竹崎先生, また悲しい思いをしているのだろうという気分です.

Jones の訃報を見て, ついでに作用素環系の情報を探っていたら, 作用素環系ニュースをいくつか見かけたのでついでに紹介しておきます.

北大に河東研の人が准教授になっていて, 戸松さんはどうなったのだろうと思っていたら, 戸松さん, 北大から早稲田に移っていました. 私が院にいた頃, 戸松さんはポスドクだったので, 時の経過を感じます.

メールでの告知

メールで宣伝してほしいと頼まれたので, 宣伝しておきます.

  • 大阪市大, 物理工学特別講義, 谷村省吾
  • 2020年9月23日(水)~25日(金)
    • 10:00~12:00、13:30~15:30(ないし16:00頃まで)
    • 25日(金)15:00~16:00 コロキウム講演
  • ネットを介した遠隔講義
  • 現代の量子論, 量子論の弱値と負の確率
  • http://statphys-ml.issp.u-tokyo.ac.jp/2020/09/statphys06202.html

上のページにある通り学内者優先だそうですが, 学外でも状況によっては OK らしいので参加してみたい方は連絡してみるとよいのでは, という話です. さすがに平日は私は厳しいので参加できませんが, ようやく今週から量子測定理論の動画を作る体で勉強をはじめますし, 興味だけはあります.

あとその人から「ZOOM で量子情報の講義を聞く会の参加者募集」とのことです. 以下引用.

量子測定に特化しているわけではないのですが、 量子情報の講義動画をZOOMで画面共有して、 疑問点などを話し議論を深める勉強会をしたいのですが、 参加してくれそうな知り合いがいないので募集できないでしょうか?

見ようと思っている講義動画は、 Reinhard F. Werner https://scholar.google.com/citations?user=yNI3gVcAAAAJ&hl=ja Mathematical methods of quantum information theory https://youtu.be/vb0ZEsATUcw シラバス https://tjoresearchnotes.wordpress.com/2018/09/10/mathematical-methods-of-quantum-information-theory/

他の友人とToplogical Order 関係の動画を一緒に見たときに分からないとこなどを 議論し理解を深めていったのでそれを量子情報の勉強でもやりたい。

教科書を予習して発表する必要がないため、ゼミの担当者が準備不足になることがない。 忙しくて予習ができない人も参加できる。 一人で動画を見ると集中できないとか別のことに時間を使いたいとか言い訳言って見ないので、 2人以上で見ることで動画に集中でき、 日時を決めて毎週コンスタントに動画を見て勉強する機会を動機づけにしたい。

ということだそうです. 私は参加しませんが, 興味があるという方は取り次ぐので, メールで返信お願いします.

この辺, トラブルになったときにどうするか問題もあるとはいえ, 私のメルマガに登録している人は興味関心もそれなりに似ていると思いますし, 交流も活発化させられたらいいなという気分だけは前からあります. 勉強会に関する告知・宣伝協力をしてくれという話が具体的に来たので, 試験的にやってみようと思います.

これ, 主催者の情報も伝えないと参加要望出しづらいのではないかという話もあり, 告知・宣伝要望を出すなら出すでこの辺の当たり前の要件を 自分から書いてきてほしいという気分もありつつ, 何をどこまで情報を出していいのかわからないのでその辺手探りです.

むしろ今回の件でその辺の案内募集要項を受けるフォーマットを作ればいいか, という気分です.

これはこれで希望者がいたら, その人と上の希望を出した当人とのやり取りの結果を教えてもらって, 募集の仲介するのに必要な情報を聞き取るための フォームを作ろうと思っています.

多少の自慢: コンテンツに関して物理学者からお褒めの言葉を頂く

@Infinity_topoi さんのサイトで知った @phasetrbot さんの微分幾何の講義動画視聴中.テーマ選び絶妙,数学/物理スタイルを行き来しながら,抽象的な定義と具体的な計算のギャップを埋める計算の細部の実演.こういうコンテンツを渇望していました

http://mmatsuo.com/ を見るといま中国にいらっしゃるようですが, いままさにゴリゴリと作っている微分幾何系のコンテンツを見て, 「具体的な計算を重視しつつ, 物理スタイルと数学スタイルを行き来しながら進むので物理の自分には理解しやすく, 数学の本を読むための訓練までできて, こういうのを求めていた」というメールを頂きました.

物理系の勉強をしてみたいという人の目標の 1 つにやはり相対性理論があり, 一般相対性理論のために多少は微分幾何をやらねばならないというのを前から思っていました. 物理, できれば工学的なイメージまで持ちつつ, 微分幾何の最低ラインが一通り勉強できるコンテンツを探していて, 5 年くらい前から光学迷彩のプレプリントを見つけました.

ちょうどいい感じでまとまっているのでこれを紹介すればいいが, どうしたものかと思っていたところに YouTube でコンテンツ紹介するタイプの人も出てきたので, それならプレプリント紹介スタイルでやればいいと思って作ったコンテンツです. この辺の題材の選択まで含めて物理サイドからは取り組みやすいとの高評価を頂きました.

もう少し楽に読めるかと思ったら, 物理スタイルの記述がろくにわからず, 「このくらい計算できるでしょ」「他の本にあるでしょ」という感じで, 細部が全然わからないことも多く, 数学の本の対応する記述を読んでようやく埋めるとか 本末転倒みたいな感じで苦労して読解していたのが, かえって功を奏したようです.

微分幾何の計算, n 次元で考えると計量は大まかに n^2 個の成分, 接続係数 (クリストッフェル記号) は大まかに n^3 個の成分があり, 計算がハードで有名です. これまでその辺は適当に避けてきたのですが, 今回改めてきちんとやろうということで計算を詳しく書いたので, その辺まで含めて「とにかく計算できるようになろう」という視点で 重要なコンテンツが作れたと思っています.

自分が重要だと思って作った部分がまさにフィットしたということで, 私の嗅覚も捨てたものではないと改めて確認できたのが収穫です.

現代数学探険隊 https://phasetr.com/mtexpdf1/ も買ってくださったようで, これも物理向けにモチベートしてくれるコンテンツですごくいいとのことでした.

「一般ゲージ理論と共変解析力学」http://mmatsuo.com/cam/ の本も近刊で, 気になっていたので, 将来的に関連する研究に活かしてもらえるよう, またいろいろなコンテンツを作っていこうと思います. もう少しでプレプリントの微分幾何部分のノートが作り終わるので, それが終わったらいったん電磁気には進まず, ホッジ理論まわりの線型代数と関係する幾何の基礎コンテンツを整備する予定です.

もとが数学市民 https://twitter.com/Infinity_topoi 経由だそうなので, 3 人で対談コンテンツとか撮ってみたらまた面白いのではないか感もあります.

Mathpedia 雑感

Mathpedia https://mathematicspedia.com/ が猛烈なペースでコンテンツを作っているので, 改めて宣伝しておきます. そして上に挙げたブログの記事で『最終的には「森の中の山道」を目指す』という目標が掲げられています.

私はある視点から見た大きな姿・全体像を見せることと, 自分の生育歴から面白い具体例や計算に特化した話を作っていくのをメインに据えています. 分野と目標がいい感じにずれていますし, 集合・位相系をかなりしっかりやってくれるようなので, もしあなたが Mathpedia 方面の話に興味があるなら, ぜひ追いかけてみてください.

具体例に関する議論や, いろいろな定義にまつわる話もしていて, この辺はある程度アプローチが似ている部分があります. 数学をやっていて誰もが苦労する部分はあり, その辺を埋めたい・埋めてほしかったというのはよくわかります.

私の場合はかなり物理よりの例を出しますが, 私には出せない純血の数学人から, 純粋に数学的視点で見て重要な例が出てくるので, 私とはまた違う味の話や例が見られます. これも Mathpedia で見てほしい点です.

例えば可換環論のページはそういったことにチャレンジしている。可換環を調べる手法には環の内部構造であるイデアルに注目する方法と外部構造である加群(とホモロジー代数)に注目する方法があり、Serreによる正則局所環のホモロジー論的特徴づけはエポックメイキングな出来事であった・・・

専門から遠い可換環でのエポックメイキングな事件は掌握しきれないので, こういうのも書いておいてもらえるとやはり助かります. 私は私で物理・数理物理の視点からやはりいろいろ書いています. 勉強する上で大事だからと思ってやってきましたが, 同じことを考える人がいて, 「やはり大事だな」と改めて確認できました.

大分長くなってきたので今回はこのくらいにしておきましょう. ではまたメールします.

2020-09-06 高校までの数学と大学の数学/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

新たな動きとしては, 理工系向け語学の勉強会をスタートさせました. その第 1 回を動画で公開してあります. 参加者は理工系出身の大人ですが, 面白いと言ってもらえたので, この方針は 1 つの方向性だと自信が持てました.

1 時間あるので軽い気持ちで見られる内容ではありませんが, 勉強会の資料は記事を公開してあり, そのリンクも以下で紹介しているので, 興味があれば記事だけでも眺めてみてください.

記事

動画

プログラム

宣伝: Mathpedia

現代数学探険隊でも言及した, 位相空間の定式化で使うネットとフィルターの話, Mathpedia に記事が載ったので紹介しておきます.

現代数学探険隊でも書いたように, チコノフの定理の証明の簡略化としてよく使われる議論です. 簡略化といっても, その前にネットまたはフィルターの議論の準備が必要なので, 本当に簡略化されているのかは微妙なところですが, 証明だけに着目するならすっきりシンプルにはなっています.

私自身フィルターはあまり使いませんが, ネットは作用素環でときどき出てくるので多少馴染みはあります. しかし私はいまだにネットやフィルターがよくわかっていません.

上記ページにある程度の一般論を追いかける程度は特に問題はありません. 問題なのは, ネットやフィルターでないと掴まえられない世界の位相です. 具体的には, 私が扱う空間はノルム空間や内積空間がメインですし, 弱位相を取るにしてもそれなりに強い性質を持つ空間です. 特に強位相で考えるなら距離空間になります. 距離空間は第 2 可算公理をみたすかなり強い空間です.

一方, ネットやフィルターがその威力を 1 番発揮するのは, こうした可算公理が成り立たない空間です. 最近 Twitter で話題になって圏論的に位相空間論を議論するという本 https://www.math3ma.com/blog/topology-book でもネット・フィルターの話が出てきます. ここでは [0,1]^{[0,1]} に直積位相を入れた空間が第 1 可算ではないとか, P.58 の例 3.5 で収束する点列を持たないといった議論がぱっと追えません. 第 1 可算公理をみたさない厳しい世界に慣れていないため, 何をどうすればいいのかすぐにわからないのです.

さすがにがんばれば何とかなるとは思いますが, これに割く時間があるなら他のことをしたいのできちんと考えていません.

ツイキャスでも infinity_topoi さんが話していたのですが, 位相空間論といっても対象とする分野によって必要な位相空間は大きく変わるので, 自分の趣味に合った位相空間を勉強するのが大事ということでした. 確かに関数解析系で非ハウスドルフ空間を触るのはほとんど意味がありません.

単に推測ですが, 複素幾何などで層が必要な人達でも, 非ハウスドルフの位相空間をゴリゴリやるのは違うのではないかと見ています.

かといって層が必要な人達がハウスドルフだけやっていればいいというのは違うでしょう. 少なくとも幾何で出てくる非ハウスドルフな層の例はきちんとおさえておくべきです. 代数解析だと代数的な事情を重視するために, 第 1 分離公理さえ満たさない位相空間が出てくると聞いています. その辺の温度差を吸収した多彩な位相空間のコンテンツがあるとありがたいです. 関数解析系はとりあえずヒルベルト空間論とバナッハ空間論をやっておけば十分で, さらには実数論も重要です. この辺は現代数学探険隊にまとめてあるので, 興味があれば眺めてみてください. 募集・案内ページを見るだけでも様子はわかると思いますし, 別途無料で配布している参考文献集から関数解析の適当な本を見繕ってもらっても構いません.

p進解析だと超距離とそこから出てくる位相空間が完全非連結だったりする関係で, 実数や複素数体上の関数解析とはまた趣の違う関数解析です.

書くべきことはたくさんありますが, とりあえずこのくらいにしておきましょう.

頂いたアンケート回答から

久しぶりに現代数学観光ツアーに高校生からの回答がありました. 「DVD に傷がついても見られるのは何故かに興味がある」みたいなコメントがあったのですが, いまちょうど動画でその部分を作り直しているところです.

PC のブラウザ, 特に Chrome から見ているなら, 次のツールで 5 倍速くらいにしつつ, 一時停止を併用するとテンポよく見られると思います.

私自身を含め, 動画よりも文章がいい派もいるのは知りつつ, 文章のリリース方法を決めてきれていなくて何もできていませんが, そちらもそのうち何かします.

現代数学観光ツアー, 内容としてはいまでも面白く役に立つとさえ思っていますが, いかんせんボリューム設定などがおかしすぎる欠点があります. はじめて作ったミニ講座だったので, 気合が入りすぎていたとかいろいろな理由はあるにせよ, ちょっとよろしくない部分も目につくコンテンツです.

毎日新しい動画を内容から作るのも大変なので, 整理する目的も兼ねて動画を作っています.

高校までの数学と大学の数学

大分前のアンケートで質問をもらって, 回答を書いたままで放置しているようだったので, いまさらながら回答を放流しておきます.

当時の回答なので自分自身「何の話だ」と思う部分もあるのですが, 少し書き換えたり記述を追加した上で適当に放流しておきます.

質問紹介

次のような質問を頂きました.

高校までの数学をやりきっても大学レベルの数学には余り結び付かないと聞くことがあります。中高数学をやり直しても無駄になるのでしょうか?

いま作っているミニ講座でも書いていることなので, 簡単に紹介します.

勉強の視点

まずどういう視点で中高数学をやり直そうとしているかによります. 大学レベルの数学といって物理などの応用向けの数学, 特に微分積分や線型代数を想定しているか, 集合・位相のような数学科の数学を想定しているかでも変わります.

大学レベルの数学に結びつかないのは当然と言えば当然で, 単純に高校数学が簡単すぎるからです. 「実用」に足るレベルではないのです. これは小学校のマラソンレベルで速く走れるからといって, 42.195km のフルマラソンに耐える力はないという程度の意味です.

もちろん必ずしも無駄なわけではありません. 小学校のマラソンも走れる程度の体力もないのに, フルマラソンに耐えられるはずがありません. 基礎体力向上のためには役に立ちます.

もう 1 つ大事なのは, 大学の数学では一般性と抽象性が高くなる上に, 読む本によっては取っつきやすい具体例が取り上げられていません. 中高数学はその具体例を提供してくれます.

そして大学の数学でも一定の計算練習が大事です. 中高数学はその計算練習ネタを提供してくれる側面もあります. 大学数学の演習書ももちろんありますが, やはりそう簡単ではありません. 下手な本を選ぶとふつうに本を読むよりも大変です. 特に昔エリートしか大学に進学していなかった頃に 書かれた古い本は恐ろしく難しいことがよくあります.

エリートがエリート向けに書いているわけで, 「このくらいでわかるだろう」の水準が噛み合わないのは当然です. よく「解析入門と言いつつ解析門前払いになっている」 という言いがかりをつける人がいますが, 「お前が対象なのではない」というだけです. それはいろいろな意味で.

適切な本を選ぼう

適切な本を選ぶのも大事なことで, それがあるから参考文献をいろいろ紹介しています. あと, 私は数学・物理を本格的に勉強する前提で本を選んでいるので, 上で「解析門前払い」と書かれた杉浦光夫の解析入門を推薦書に入れていたりします.

実際私はこれを一通り眺めた (完全に理解して頭に入っているとは言っていない) のですが, 証明が非常に丁寧で, コンテンツを作るときや復習するときにも実際によく参考にしています.

この本が厳しいのは, もちろん数学科水準の内容であること, そして他の本ではなあなあで済ますことをいちいちギチギチに書いているので, 通読しようと思うと心底鬱陶しいことです. 辞書として使うと非常に役に立ちます. 実際, 先程書いたように, 私はこの本を辞書として使っています.

加藤文元さんによるチャート式大学数学

あと紹介しようと思って忘れていたのですが, 最近, 東工大の加藤文元さんが書いた大学教養数学に対応する, チャート式の演習書があります.

詳しく読んでいる人に様子を聞くと, 加藤さんの執筆による本体はよくても, 演習書の出来にはいまひとつな部分はあるようです. それでも 1 つ定番になりそうな本ではあるので, 紹介くらいはしておきます.

「大学の数学」で何を指すのか問題

先程書いたように大学の数学といって何を指すかも大きな問題です. 物理などの応用に使うための数学と, 数学科の数学でかなり趣が違います. 高校までの数学は物理などの応用に使う, 微分積分や線型代数 (ベクトルと行列) がメインです.

一方, 数学科の数学をやる上では集合・位相との戦いが必須です. これは中高の数学をいくらやったところでほとんど意味はありません. 知識ではなく純粋な数学的体力だけが求められます.

私は学部が物理学科で集合・位相が必修でした. 大学受験の数学は本当に駄目で, 私は数学科進学ははじめから考えてさえいなかったのですが, 物理学科の大半の人間が撃沈していた一方で, 私はむしろ数学科の数学世界に高い耐性を持っていたようで, むしろ取り組みやすいくらいでした.

どうやら本質的な向き不向きはあるようですが, 少なくとも数学科の数学を勉強する上で表面的に必要なのは, 予備知識ではなく数学に挑む気概と尋常ではないレベルの忍耐, そして数学に没頭する時間です. こちらは知識としての中高の数学なしでダイレクトに挑戦できます. 試しに挑戦してみるのもいいでしょう.

参考文献集

次の PDF は何度かリンクを共有している参考文献集です. この中にお勧めの集合・位相の本とその簡単な書評もあるので, ぜひ参考にしてください.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_expedition_000_003_FPWpc.pdf

最近だと数学市民による Mathpedia も参考になるでしょう.

  • http://mathematicspedia.com/

これは管理者が数学科卒で非常に強い人なので, 内容的に一定の信頼がおけます. 参考書ページに簡単な書評もあるので, そこにある範囲の本については参考になるでしょう. 最近できたばかりでまだ充実度は低い面があるものの, 私がカバーできる範囲とは全く違うところが強い人ですし, これからの充実を期待しています.

何を意図して中高数学を勉強するのか

まとめると, 何を意図して中高数学をやるかによります. 大学数学の「理論」学習のための準備としてはほぼ使いものになりません. 簡単すぎるからです. 一方, 最低限の基礎体力をつけたり, 理論だけで理解を上滑りさせないように具体例を触る目的なら, 中高数学の復習には一定の意味があります.

どちらにしろ, 中高数学はただただ箱庭であって, 完全に実用もしくは数学のための数学になる大学の数学を勉強する上では限定的な意味しかありません. 基礎体力がないなら, 大して役に立たないことを承知で, 歯を食いしばって中高数学をやるしかないでしょう.

数学科の数学に挑むことが前提なら, とりあえず集合・位相の本を読んでみてください. 予備知識はほぼ不要です. いまはオンラインの数学教室もありますし, 適切な指導者をつけることをお勧めします.

参考までに書いておくと, 動画作成のために数学・物理を復習もしながら計算の詳細を詰めていますが, 本や論文で「読者に任せる」と書かれた 1 行の計算結果を出すのに 2 週間くらいかかったこともありますし, 何ならこれで軽いくらいです. 学生の頃は 3 年くらいしてようやく計算できた (計算できただけでわかったわけではない) みたいなこともよくありました. この手の苦労を少しでも減らしたいなら, きちんとお金なり適切な対価を支払って指導者をつけましょう.

具体的なサービス紹介

私がぱっと思いつく (覚えている) のは次の 2 つです.

  • 和から https://wakara.co.jp/
  • すうがくぶんか https://sugakubunka.com/

他にも探せばもう少しあります. これ以外にほぼ無料で参加できる, 相互扶助勉強会もいくつかあります.

上の 2 つはもともと対面の教室ですが, このご時世なのでオンライン指導もやっていると思います. すうがくぶんかは 1 時間あたり 7,000 円が相場です.

どう控え目に言っても高いですが, もし私がやるにしても同じくらいの金額をチャージするでしょう. そのくらいしないと労力に見合いません.

では今日はこんなところで. またメールします.

2020-08-30 量子系の数理がやりたい/相転移プロダクション

今週作ったコンテンツのまとめ

まずは近況報告がてら今週作ったコンテンツのまとめから. 20-30 分かかる動画もあるので, 興味のあるコンテンツだけでも眺めてみてください.

私は動画はよく倍速再生して見ていますし, ものによっては 5-6 倍で見ることもあります. Chrome または Firefox なら Video Speed Controller という 16倍速までできるプラグインがあるので, ぜひ使ってみてください.

記事

YouTube

GitHub

アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会

メルマガでは上の記事集に突っ込んで書いただけでまじめに宣伝していませんでしたが, この表題の勉強会を開いてみることにしました.

詳しくは次の記事にまとめています.

現時点で 4 人参加して頂けるようなので, 楽しみにしています. これも作る作ると言って何もできていなかったのですが, 勉強会をやると宣言してからは「作らないと参加してくれる方に失礼だ」モードになって, コンテンツ制作に時間を割くようになりました.

他人を巻き込んで無理やり進める手法, 劇薬ですがやはり効果は抜群です. 現代数学探険隊の講座を作っていたときのように, 毎日毎週, 準備でだいぶ忙しくなりますが, がんばってやっていきましょう.

参加者自体はまだ募集しているので興味あればどうぞ. 現時点で数学系の人が参加することもあり, 物理は読解に必要な範囲で軽く説明しますが, 記事などでも強調してある通り, 語学系のコンテンツを作るために私の語学力を上げるのが趣旨です. 物理や数学には深入りしないのでもしあなたが参加希望されるなら, その前提のもとでご参加ください.

ちなみに原論文を読むための数学・物理学習に関しては次の本がお勧めです.

後半は実際に原論文の翻訳を読む形で原論文にアタックしています.

量子系の数理をやりたい

次のツイートを見かけて改めて思ったことです.

  • 堀田さんの連続ツイートの大元 https://twitter.com/hottaqu/status/1299828585218203648
    • 日本でも、理学部物理学科で当たり前に量子情報の講義が聞ける環境があって然るべき。みなさん本当に前世紀のままの講義体系で良いのでしょうか?
    • たとえエネルギー準位が計算できても、量子技術でどれだけ精密に測れるかという部分に知識がなければ、今世紀のこの国の物理学は衰退するしかありません。測定は理想測定だけで十分で、水素原子の演習問題を解くことのほうが、量子力学の本質を知るには大切だと言う方は、是非考え直して頂きたいです。

量子力学の本質とかいうのはよく知りませんが, 水素原子の解析からはじまる QED の数理物理が私の大学院生活の原点なので, 物質の安定性を改めてきちんと勉強する体で Lieb-Seiringer の Stability of Matter を読む動画を作りたいと思っています.

あともう一方, 量子測定に関しても数学・数理物理スタイルの本があって, それも理解があやふやなままです. これを読む基礎は現代数学探険隊で書いていますし, これまた勉強ついでに読む動画を作りたいです.

最近, 古典力学と微分幾何ばかりなのに飽きてきたので, もう少しバリエーションを増やしてローテーションで動画を作ることにしました. 微分幾何は個人的な趣味もあるので継続ですが, 力学は特殊相対性理論をやる予定だったのを物質の安定性に変えようかと思っています.

線型代数は現代数学観光ツアーでも触れた, 符号理論に関わる有限体とその上の線型空間論あたりが終わったら, 上記の量子測定理論の本を読もうかと思っています.

どちらも片手間で読むような本ではないのですが, わからないところはわからないと投げていくスタイルの動画を作ればいいか, くらいの気分でいます. 作者がよくわかっている系の動画と, わかっていないのにいい加減なことをいう動画はありますが, 勉強しつつ「わからないものはわからない」と素直に言うタイプの動画はあまり見かけませんし, 「わからないことをわからない」と素直に言えることが大事だという話もよくあるので, むしろそれを実践してみようという気分です.

何ににせよ, いま進行中のシリーズを落ち着けてからなので, はじめるまでもう少し時間がかかりますが, 見切り発車で適当にやっていこうと思います.

こういう趣味に走ったことをしているから中高生向けの話が進まないのですが, おさえるとストレスになるので仕方ないと割り切っています. だからこそ勉強会で他の人を巻き込んで強引に進めているわけで.

ではまたメールします.

2020-08-23 勉強を続けるコツ/相転移プロダクション

今週のコンテンツ

それなりに数があるので, 興味のあるものだけ眺めてみてください.

記事

力学

微分幾何とその計算

チャンネル登録

ぜひ次のリンクからチャンネル登録もお願いします.

続けるコツ

勉強に限らず, なかなかやりたいことが続かないという人がいるようです. よく言われることをまとめただけではありますが, 参考になる方もいるでしょうから, 簡単に紹介しておきます. もしあなたがやりたいことがあるのに続かない悩みがあるなら, ぜひ採用してみてください.

「継続は力なり」とよく言います. 実際, 何をやるにも膨大な練習・訓練を積まないことには一定の水準には到達しません. 頭を使わずただたやっていても出来るようにはなりませんし, それ以前にそもそもコツコツとやり続けること自体に高いハードルがあります.

言うは易しといういつもの話ではありますが, 続けるにはどうすればいいか, 定番でしかも効果の高い方法を紹介します.

  1. ルーティン化・習慣化
  2. 雑に軽くやる
  3. 目標は定量化
  4. 休む日を入れる
  5. 環境を整える
  6. 人を巻き込む

ルーティン化・習慣化

毎日決まってやることを決め, それを淡々とやることです. これが全ての前提です. どうやって続けるかの工夫が以下の 5 項目です.

雑に軽くやる

雑に軽くやるというのは, はじめから完璧を求めないことです. 完璧にできるならはじめから何も困りません.

子どもに対する教育を考えてみてください. できなくても何度もくり返させるはずです. 「できない」と泣く子どもをやさしく励まして, 少しできるようになったら大げさなくらい褒めるはずです. こういうのが大人, もっといえば自分に対しても必要です. とにかく続けることを第一に, 雑でいいから毎日少しずつ, そして必ず実行しましょう.

目標は定量化

「英単語を毎日必ず 5 つ覚える」というように具体的に量で設定することです. ここで特にはじめのうちは前日の分を忘れていても構いません. 原理的に無理です.

ちなみに 5 個覚えるというような定量化がしにくいタイプのタスクもあります. 勉強用に本を読むとして, そのページ数で決める方法もありますが, 難しい本だとそれだけで 1 日の時間が溶け切ることもあります. そういう場合は毎日 5 分読む, 10 分読むという時間の区切りにすることも大事です. そして「それ以上の時間はやらない」というタイプの制限も大事です. それだけで 1 日の時間を溶かし切らないようにする工夫です. 私はこれで毎度痛い目を見ています.

特にはじめのうちは休む日を入れないとうんざりして挫折まっしぐらです. 休むときは休む, やるときはやるというメリハリも大事です. いろいろ試してみて自分にとっていい塩梅を見つけてください. 継続してみてはじめてわかることでもあります.

私としては, 平日に 5 分でも 10 分でもいいから毎日やることにして, 週末は完全オフ, みたいなスタイルを勧めます. 週末の休みは一日しばりの予定が入りやすく, かえって何かしづらいときが多いのです. 週末は使えるときのボーナスタイムという扱いにして, 平日にどれだけのことがやれるかという基準で考えるのを勧めます.

環境を整える

要は「やらなければいけないこと・やるべきことをやらざるを得ない状況を作る」ことです. 勉強結果を毎日 SNS で報告するといったことでも構いません. 私の場合はメルマガを書く・勉強会を主催するという部分で嫌でもやらざるを得ない状況を作っています. 心構えや気持ちではどうにもなりません. そうせざるをえない環境の整備が重要です.

環境の整備と言われてもわかりにくいかもしれません. 具体的には「人を巻き込む」と思ってください. 例えば定期的に誰か, それも尊敬する人相手に報告するとなると, 「こいつ挫折したな」と思われたくない, といった気分が強くはたらくようにもなります. こういう強制力をうまく使いましょう. 単にがんばるというだけの「心構え」ではなく, 人を巻き込んだ形での「心構え」にするのがポイントです. 私の場合は勉強会の主催という形で人を巻き込んで継続させている部分があります.

要点の再掲

最後に改めて要点をまとめておきます.

  1. ルーティン化・習慣化
  2. 雑に軽くやる
  3. 目標は定量化
  4. 休む日を入れる
  5. 環境を整える
  6. 人を巻き込む

1 番お勧めなのは人を巻き込むことです. ふつうの人は「何だあの嘘つき」と言われたくないので, そういう部分でがんばる強制力がつきます. この強制力をうまく持ち込むのがポイントです. ぜひ試してみてください.

ではまたメールします.

2020-08-15 解析系コンテンツ再始動/相転移プロダクション

まずは今週作ったコンテンツの一覧から.

記事 - 2020-04-19_introduction オンラインプログラミング勉強会 - 2020-08-12 数学を市民化するプロジェクト/メルマガから - フランクリンの「生まれたての赤ん坊が何の役に立つか、あなた答えられますか?」と科学・技術の倫理 - 2020-08-01_hw オンライン プログラミング勉強会 - GitHub

力学 - 質点系の全角運動量と保存則 - 質点系の全エネルギーと保存則

幾何 - 計量テンソルの導入 - 計量テンソルの変換則・不変性 - 計量テンソルと体積形式 - 極座標のリーマン計量・体積形式, 反変ベクトルの変換則

今度から主催している勉強会の資料もアップしてみることにしました. 毎日必ず何か 1 つコンテンツを作って出すことを日課にしていて, それに追いまくられていてあまり何もできていない感があります. リストを見てようやくできてはいるなという気分になれます.

他のやるべき勉強が止まっている部分があるのが厳しいところで, 時間配分の下手さを感じます. いまメインで進めているコンテンツ, 一度はやった計算であるにも関わらずはまると数時間簡単に持っていかれるので厳しいです. だからこそ計算練習コンテンツをたくさん作らないとと思い, 現代数学探険隊の補足コンテンツとして改めてがんばって作っています.

最近プログラミングの新コンテンツ制作・勉強が完全に死んでいて何も書けません. 一応物理教育とプログラミングという点で 1 つ参考になる論文を紹介しておきます.

これは Haskell, 特に強い型システムを使って, 「プログラムに物理を教える」スタンスで数値計算とともに 物理を教えるという教育プログラムに関する論文です.

既にこういう講義を実践しているという話だったので, 著者にメールして公開できるコンテンツはないのかと聞いたら, 本を書いているといって草稿を送ってくれました. まだ全くの書きかけで参考になるレベルではなかったのですが, 非常に気になっている話ではあります.

ライブラリ自体は公開されているのですが, hmatrix を使っていて, これが OpenBLAS などに依存しています. Mac ならともかく Windows で動かせなくて挫折した苦い記憶もあります. いまなら WSL があるのでセットアップももう少し楽だとは思いますが.

この辺, 1 ヶ月くらいいろいろがんばって挫折した苦労があるので, この間リリースしたプログラミングコンテンツでは環境構築不要にするため, そしてレビュアーの方からのコメントもあったため, Google Colaboratory 前提にがんばって調整したという経緯もあります.

あとは infinity_topoi さんが精力的に動いているので, こちらでも宣伝協力しておきます.

Mathpedia あたり, もしあなたが数学系のコンテンツを作ってみたいが 1 から自分で作るのはちょっと, と思っているなら, ためしに参加してみてはどうでしょうか. 求められるハードルはそれ相応でしょうが, 必ずしもゴリゴリの数学科の数学でなくても, 工学的視点から数学みたいな感じでもそれはそれで大事なコンテンツとみなしてもらえるような気はします.

あと YouTube コンテンツに関しては基本的に何らかの意味で 数学をゴリゴリにやっている・やってきた人達ばかりが紹介されているので, 興味があるところだけでも見てみるといいのではないでしょうか.

私も今後は以前の無料公開系コンテンツの整備も含め, 解析系のコンテンツを作っていこうと思っています. 特に測度論・積分論・関数解析あたりへの入門の入門くらいのやつを. これも本当は先週のうちに作りはじめる予定だったのですが, 力学と微分幾何の計算のコンテンツの計算ではまりまくって全然進められていません. 何とかします.

ではまたメールします.

2020-08-12 数学を市民化するプロジェクト/相転移プロダクション

Twitter メルマガで宣伝協力しようと宣言したので宣伝です.

次のアカウントの人の活動の宣伝です. 後半で数学面を中心にある程度この人の人となりを書きます.

私は実際に中の人に会ったこともあります. 数学に対する十全な訓練を受けている人で, Infinity_topoi さんの数学は信頼できます.

メールアドレスも公開になっているのですが, それをここに張っていいかどうかわかりません. ツイートを見ると辿れるので, 必要ならメールを送ってみてください.

Twitter を見るとコメントが RT されているので, 眺めてくるといいでしょう. 実際によくある要望で共感する人も多いはずです. あとでここにも引用します.

まだブログの記事もそんなにないので, ざっと眺めてみるといいでしょう. 例えば次の「市民向け数学コンテンツ」など.

まずはどんなことをしようとしているのか, 上記ブログから引用しましょう.

ツイキャスでも話しましたが、その一つの目的は「数学の敷居を下げる」ことです。自分は学生の頃から問題意識を感じていましたが、どうしても大学の数学は極めて丁寧な取り扱いが求められる一方で教科書等が必ずしも丁寧とは言えず「実は別に大したことのないハードル」を苦に感じて苦手意識を持ってしまう人が多いと思います。また、一度大きな抽象化を挟むことによってその抽象化のモチベーションが分からなくなり、迷子になってしまう方も多い筈です。

そういった「ギャップ」を丁寧に解説することによって、そういったギャップを消滅させようという試みがこのプロジェクトです。

大きく言えば私も同じことをやっているわけですが, この人の場合は純血の数学で, 特に圏論方面に強い人です. 私が全くカバーできない範囲なので, 圏論や位相空間論に興味がある人はぜひ動きをフォローしてください.

次の記事を見てもらうとわかるように, 代数幾何系の幾何の素養もあります.

もしあなたが大学に通っているか通ったことがあるなら, 大学の教員やその講義を見ればわかるように, 自分の中で理解しているからといってそれをうまく伝えられるかどうかはまた別の問題です. そして Infinity_topoi さんはその伝える方面の能力も優れています. どうも自分の理解を深めること自体が他者への説明力を上げることに繋がるタイプの人のようです.

Infinity_topoi さんの話で大事なことはたくさんあるのですが, とりあえず「市民向け数学コンテンツ」の次の一節を引用しておきます.

こういった依頼を行う上において、有償で依頼をするということは非常に重要な要素だと考えている。どうしてもこのような普及活動というのは無償のボランティアになりがちだ。しかし、それでは研究を生業としている方々にとってはメリットが存在しない。自己犠牲的な活動はサステナビリティに欠けるのも事実だ。

前から言っているように, 私が有料コンテンツを作っている理由もまさにこれです. 正直, 私がやっている範囲ではメルマガ配信スタンドに契約したり何だりで, 利益はないか赤字のレベルです. それでもきちんとお金を産めるようにすることが大事だと思い, 有料サービスをいくつか展開しています.

「多少なりとも食っていくことに繋がるなら自分もやってみるか」, そう思ってくれる人が少しでも増えるようにと思って.

いろいろ言うべきことはありますが, とりあえず教育意欲と能力の高い人が戻ってきたので, みんなで応援して盛り上げましょうということで.

最後に, Twitter で RT されている, 「こんなコンテンツがあったらいいな」も共有しておきます. 本来は Twitter の正式な方法で引用するべきですが, さぼります.

入口に案内するだけでなく、ある程度の基礎的な事柄まで 経路に沿って案内するような入門解説があれば助かります。 読み物では満足できない。教科書を読むほどの気力はない。 さりとて雰囲気だけでも分かりたいという我侭な願望です。

どうしてもこれ迄の歴史や経験が本と紙ベースなのでwebベースな数学百科の詳細なもので具体例が沢山コンパクトに(詳細と矛盾しない形で)纏めてあり直ぐ確認できるもの

気軽にセミナーを開ける仕組みも欲しいですね。大学レベルに限らず「数Ⅰの教科書を読んでみようセミナー」とか「生活に役立つ確率統計の初歩セミナー」とかを中学、高校生も含めた誰でも参加できる感じで。あんまり大人数なのは良くないだろうから同じようなセミナーが同時多発してもいい。

独学では行間を埋めるのは難しく、解けない演習問題はスルーするしかないとか。

各科目の講義動画があれば将来の日本人の資産になると思う。線型とか群論はいくつかありますがすごく丁寧なのばかりですね。大学の講義くらいのスピード感でしてくれる動画もあれば選択肢が増えていいかも。作る人大変すぎでボランティアの域超えるので、クラウドファンディングして資金集めとか

必要な定理への最短経路(逆引きの必要「経費」集とでもいいますか)への手引きと、それに一味足したもう少し先には、、、なる先達のコメント (教科書読んだらいいわけですが、こういうコンテンツもあっても良いなぁと)

実例いっぱい欲しいわね。

勉強したことが正しく理解できているか見てくれて適切なコメントをくれるメンターの存在、分からないことを相談しあえる仲間の存在。

工学的応用の例示

改めて書いておくと, この中のいくつかについては自分なりに作ったコンテンツもあります.

実は自分の中での 1 番のお気に入り, 京大であった関西すうがく徒のつどいで話した内容を DVD 化した「よくわからない数学 色々な反例で遊ぼう」です. Amazon でもレビューつけてもらえています.

これ, いま法外な値段の中古品しか出ていないのですが, Amazon からの納入依頼が来なくて新品が送れない状況です. 久しぶりに思い出したのですが, YouTube で公開した方がいいのかという気もしています.

あとこの DVD, 高知工科大学の全教授が見かけて「こんなタイトルの DVD を作る馬鹿は面白いに違いない」とメールをくれて, 実際に大学で講演するきっかけになったコンテンツでもあります.

講演の様子は動画にして YouTube に上げてあります. 上記ページにリンクがあるので興味がある方は見てください.

ではまたメールします.

2020-08-10 線型代数への道/相転移プロダクション

まずは今週のコンテンツから.

力学 - 角運動量と保存則 https://youtu.be/oUzc22dsfio - 地表に固定した座標系での運動方程式 https://youtu.be/er9sR9SdOfY - 自由落下とニールの曲線・フーコーの振り子 https://www.youtube.com/watch?v=k0EQgamEUQk&list=PLSBzltjFoprZJU6Eacjer96rAhyc9KDPN&index=37&t=0s - ビリアル定理・断熱定理 https://www.youtube.com/watch?v=KbRaQ0LdwQM&list=PLSBzltjFoprZJU6Eacjer96rAhyc9KDPN&index=38&t=0s

幾何 - ヘルムホルツ方程式と関数論 https://www.youtube.com/watch?v=KwQa558ZJgU&list=PLSBzltjFoprbFRDKuwstOqZ7Rx81QlorP&index=10&t=0s - 3次元の理論に向けた知識の整理 https://youtu.be/YbFWWRut-p8&list=PLSBzltjFoprbFRDKuwstOqZ7Rx81QlorP&index=11&t=0s - ベクトル場と無限小変位の変換則・極座標の変換行列 https://youtu.be/JTX8Vlrd4D0

記事 - 小学校高学年での分数の除法: 割り算を逆数の積とみなしつつ小中連携 https://phasetr.com/blog/2020/08/02/education-fraction/

興味あるのをぜひ眺めてみてください. 動画については Chrome と Firefox には Video Speed Controller という拡張があるので, これを使うといい感じで早送りできます. 16 倍速まであります.

最近オンラインの勉強会にいくつか参加しています. 自分が主催していて毎回自分が喋る数学・プログラミング系の勉強会が 1 つ, 自分が主催していて適当に担当変えつつの統計・機械学習系の勉強会が 1 つ, 知人が主催していて聞くだけのホモロジー代数の勉強会が 1 つです.

これにアインシュタインの特殊相対性理論の論文を 原語+英語で読もうの会がはじまるかもしれない, という感じ. これは数学・物理系ではなく語学系の知り合いとやるやらないの話をしているところで, 数学・物理というよりもドイツ語・英語, 特に英語の勉強用です.

中高生向けのコンテンツとして数学・物理から学ぶ英語, みたいなのを作ろうという話を以前したと思いますが, それのためです. コンテンツにドイツ語原語をどこまで入れるかは未定ですが, いくつかの言語で翻訳があるので, その辺を比較しながら読もうと思っていますし, コンテンツにもある程度盛り込みたいと思っています.

興味がある方向けにいくつかリンクを紹介しておきます.

  • 原論文の英語版へのリンク https://www.fourmilab.ch/etexts/einstein/specrel/specrel.pdf
  • 原論文へのリンク https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/andp.19053221004
  • 原論文のフランス語版へのリンク http://classiques.uqac.ca/classiques/einstein_albert/Electrodynamique/Electrodynamique.html
  • 原論文のロシア語版へのリンク http://path-2.narod.ru/02/03/kedt.pdf
  • 原論文のスペイン語版へのリンク http://webs.ftmc.uam.es/juancarlos.cuevas/Teaching/articulo-original.pdf
  • 原論文のイタリア語版へのリンク http://www.roma1.infn.it/exp/webmqc/A.%20Einstein%20-Sull%27elettrodinamica%20dei%20corpi%20in%20movimento%20-%201995.PDF
  • 原論文の中国語版へのリンク http://www.path8.net/tn/wp-content/uploads/2014/11/%E8%AE%BA%E5%8A%A8%E4%BD%93%E7%9A%84%E7%94%B5%E5%8A%A8%E5%8A%9B%E5%AD%A6%EF%BC%88%E7%88%B1%E5%9B%A0%E6%96%AF%E5%9D%A6%EF%BC%89.pdf

他の言語でもあるとは思いますが, いま興味があるところを検索して探してきただけです. 著作権的なものがどうなっているのかよくわかっていないのでアレな気分はあります.

ちなみに, どうして多言語の視点を重視しているかと言うと, 単純に面白くするため, 何をどうしても必要な暗記を楽に, そして楽しくするためです.

例えば日本語というか感じでも, さんずいがあれば水系の意味というのがあります. 英語や他の言語でも単語に似たような構造があるわけです. 例えば英語で sp とあれば適当な意味で「破裂」のイメージがあります. ディズニーランドでもスプラッシュマウンテンというアトラクションがありますが, その splash は水がシュパーンと飛び散る意味で, 日本語としての擬音のシュパーンもまさに sp です. (シュパーンという擬音, これ, 日本語にもとからあったのでしょうか?)

他には speak も話すのは口から音を飛び散らせるから「話す」のイメージに持ち込めますし, sparkle も光が飛び散る感じのきらめき・輝きのイメージです. この辺, 「数学は類推の学問」とも言われていますし, 実際に適当な類推力の涵養はとても大事です. その辺を単語・言語をまたいで強化するパワーをつけてもらいたいわけです.

あと, こういうのがあった方が理工系の生徒・学生は取り組みやすいとも思います. 私が知る限り英語は単語レベルだとドイツ語 (ゲルマン系) が本流で, フランス語 (ロマンス系) がその上に乗っかっている構造です. そしていわゆる難単語はフランス語の標準的な語彙だとも聞いていますし, この辺を同時に攻めると私が面白いといういつもの話です. いつだって私は昔の自分がほしかったものを作っていくスタイルなので, このスタイルでやってみようと.

あと, 中高数学・プログラミングの軸でもいくつかやりたいことがあります. そしていつも通り迷走しています. アルゴリズムは自分のためにもやりたいのですが, 全然進んでいません. 言語も F# が猛烈にやりたいものの, 情報がとにかく少なく厳しいので, 再び Julia を検討する方向で考えています.

数学ネタもどうするか悩み中で, 代数方面で何かないかと思っていて, 符号理論・暗号理論方面から, 計算がたくさんできるタイプのネタをうまく持ってこられないかと探しています.

暗号理論も興味あるのですが, 楕円曲線みたいな方向だと私の勉強が多くなりすぎてコンテンツがすぐに作れない問題があります. 勉強しながら小出しにするテクニックはなくもないですが, 多分途中で飽きそう.

一方, 符号理論は線型代数パートがあり, 線型代数は幾何ともいろいろあって, 量子情報・量子暗号は量子力学だから線型代数大事みたいな趣があります. この方向で何か数学・物理・プログラミングに持ち込めないかと画策しています.

この間リリースした「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」で 偏微分方程式 (PDE) まで 一通り扱っていますが, これ以上の PDE は本当にゴリゴリの世界でかなりつらいため, 別の方向で検討しています.

  • https://phasetr.com/mthlp1/

統計系でも線型代数必要だし, 需要も多いので何かやりたいです. 単純な統計・機械学習方面なら既存のコンテンツがたくさんあるというか, 出てきていますが, これも物理方面から私が気に入る方向性で何かやりたいです.

動画シリーズの古典力学が一段落したら, こちらは特殊相対性理論にうつる予定で, これはこれで線型代数が大事です. 動画シリーズの微分幾何も光学迷彩が一段落したら, ホッジのスター作用素やら何やらの線型代数部分にうつろうと思っていたので, 再来月くらいには線型代数に入れるといいなという気分です.

メルマガで活動報告の形で振り返りをしていることになりますが, 報告のたびに迷走しまくっている感が顕になります. 実際 1 年以上何がいいのかよくわからなくて迷走しています. とにかく勉強したことをコンテンツにまとめて出力する方向に切り替えたので, 多少なりとも進んでいる気分にはなっていて, 精神衛生は多少向上してきました.

他にもセミナーのような形で人を巻き込んでやっていく計画がいくつかあります. 無駄に自分を追い込んでどうする, という気分もありつつ, そうしないとコンテンツ制作が進まないのもわかったので, 本当に社会は厳しいなと痛感しているところです.

引き続き迷走を続け, 報告・共有を続けます. ぜひあなたも何か作って共有してください. 特に数学・物理・プログラミング系のコンテンツを Julia で作ってまとめていってもらえると私が喜びます.

ではまたメールします.

2020-08-01 フィンスラー幾何/相転移プロダクション

今週のコンテンツから案内します.

力学 - 保存力場, そして場の概念 https://www.youtube.com/watch?v=4coP0WI5c38&list=PLSBzltjFoprZJU6Eacjer96rAhyc9KDPN&index=31&t=0s - 保存力の例, 角運動量とトルクの定義 https://www.youtube.com/watch?v=5RvzENYnMn8 - 軌道角運動量の極座標表 https://www.youtube.com/watch?v=DZUXbndyGZw

光学迷彩の数理 ハリーポッターの透明マントの科学 - イントロダクション https://www.youtube.com/watch?v=Lm3ZNsf9Zmg - フェルマーの原理と光の経路 https://www.youtube.com/watch?v=Y2DhuH_yq-c - 共形変換と二次元の理論 https://www.youtube.com/watch?v=YbK-3-lP7co&list=PLSBzltjFoprbFRDKuwstOqZ7Rx81QlorP&index=9&t=0s

いまは日替わりで力学と幾何をやっています. 実は力学も最初の運動学でちょっとした微分幾何を議論しています. それなら微分幾何も平行してやるといい気がしてきたこと, ふつうの古典力学が一通り終わったら, 復習も兼ねて特殊相対性理論から一般相対性理論に流そうと思っているので, その前哨戦という趣もあります.

もともとこのコンテンツ群自体, 現代数学探険隊の計算練習パートから派生している事情があります. 計算こそ丁寧にしているつもりではあっても, 微分幾何の方は幾何の議論の基礎的なことをあまり議論していないので, どうしようかという気分はあります.

それはそうと光学迷彩の方で, 先週メルマガを書いたら物理のプロから次の文献を教えてもらいました.

  • Amemiya, Nishiyama, Taki, 2012, Asymmetric Cloaking Theory Based on Finsler Geometry ~ How to design true invisibility cloak with a scientific method ~
  • https://arxiv.org/abs/1211.3040

これは動画で紹介している本はリーマン幾何で議論している一方, それはうまくいかないという定理があるようです. それは「方向」をきちんと考えていないから, ということで, 方向を考えられるフィンスラーでやってはどうかと 純理論的な提案をしているプレプリントです. フィンスラー幾何は名前しか知らず, チャーンが本を書いていることくらい知らない, と思ったらまさにその本が参考文献に入っていました. ここに興味があるならチャーン達が書いた本を読むといいでしょう.

ちなみにフィンスラーについては前にフィンスラーと経路積分みたいな論文を見かけたことがあります.

  • Takayoshi Ootsuka, Erico Tanaka, 2009, Finsler Geometrical Path Integral
  • https://arxiv.org/abs/0904.2464
  • Run-Qiu Yang, 2018, Complexity for quantum field theory and bi-invariant Finslermanifolds
  • http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~tadashi.takayanagi/wsMarch2018/Qiu.pdf

両方ともぐぐって上の方に出てきた文献でまともに目を通していません. ちゃんと議論があって続いている対象だと言いたいだけです. フィンスラー幾何はリーマン幾何以上に何も知らないので, これ以上はコメントできません.

話を光学迷彩に戻すと, Amemiya-Nishiyama-Taki 論文も 2012 年なのでいまはもっと進展しているでしょう. もしあなたが何か面白い発展・文献をご存知でしたら, ぜひ教えてください. 私に対応できる幾何力があるなら紹介したいと思います.

あと動画コンテンツについてコメントもらって, これが面白かったので簡単にここでも共有しておきます.

たぶん 1 番の勘所は「(コメントしてくれた人にとって) 動画は勉強するのに向かない」という話なのだろうと思います. いくつか意図があってあのスタイルなのですが, 動画では勉強しづらい・できない点に関しては私も同じです. ふつうに文章を読む形で自分のペースでやりたいクチです. ただ, 最近の中高生は本よりも YouTube の動画を見て勉強している (人もいる) と聞きますし, 可能性としてそこにも届きますように, という気分です. あんな動画を今時の中高生が我慢して見るか? という疑問はとりあえず無視しています.

実験的にあんなのでもないよりいいと思っているのでやっています. もっと言えば「あんなのでいいなら自分でも作れる」という人はいるでしょうし, そういう目的もあります.

ちなみの動画は LyX https://www.lyx.org/ で式と文章を書きつつ, 動画としては Zoom の録画を使っています. PC さえあれば作れてカメラなども不要です.

動画として音がないのは異様とも言われています. 実際音を入れるくらい, 質を問わないなら作業的に私には何でもないのですが, 少しでも手を抜いてコンテンツを作りやすくして, 習慣構築のリハビリをするのが目的だからサボっているのが 1 つです.

もう 1 つは私の特性です. 今回の指摘を受けて改めて考え直したところ, どうやら私は勉強 (情報の受け入れモード) に入るとき, 音があるとそちらの情報も受け入れてしまい, 気が散って勉強できないようです. 「出力モード」だと音があっても問題ないようなのですが. そして発達障害の診断確定済みの知人がいて, 音に対する知覚過敏があるようで生活音でさえつらいそうで, 余計な音はない方が入れたくないという気分があります.

この間リリースしたコンテンツの案内ページでも, 「万人向けのコンテンツはなく, 少なくともこういう人はこのコンテンツには向いていない」という説明をつけています. 人や状況によって善し悪しは変わるので, 自分が対象としている層にとってよいものを作ろう, という話でした.

今回の動画コンテンツについては私の動画作成習慣づけ作りの面も強く, 誰向けというのもそれほど強く意識していないので, そういう部分も出ている趣はあります.

音については「せめてしゃべればいいのに」と思う人がいるかもしれません. ただ, 話も入れるのに関しては「失敗」事例があるのです. YouTube に音声入りの (自分でしゃべった) コンテンツは公開状態でもいくつか挙げています(非公開コンテンツもある). それに対して「しゃべり方が気持ち悪い. 障害者か?」というコメントがついたこともありますし, Twitter でも知人から「聞きづらいし話すのやめた方がいいのでは」と言われたことがあります.

私は吃音という発話障害があって, この点, 本当に障害者なのです. Twitter での知人とは「そうはいっても話す練習もしないといけないし」みたいにコメントしたところ, 「話す練習は別でしたら? 視聴者に聞きづらさを押しつける形になっているがそれはいいのか」みたいに言われたこともあり, いまデイリーで作っている動画コンテンツではしゃべらないことにしています. 音を入れず, 話さえしないのにはこういう理由もあります.

ついでにあの動画の作成意図はもう少しあるので, その辺も書いておきましょう.

あれは「TeX の教育・LyX の布教」の側面があります. 私が学生だったころ, TeX の勉強はかなりのハードルがありました. 「これはどう書いたらいいのか?」というタイプの話です. いわゆるサンプルコードがほしいという問題です. 実際に TeX で書いて見せて, 「この式はこう書ける」というのを見せる意図があります.

あとは手計算の代わりに LyX で計算するという手法です. 計算ノートの電子化もついでにやろうという話でもあります. 昔は私も手書き一辺倒であり, TeX は計算結果をまとめるだけであって, Lyx (TeX) で計算できるかと思っていました. 実際いまでもモノによっては手書きでないとつらい計算はあります.

ただ, あとでコンテンツを作ることまで考えると, TeX・LyX で直接計算ノートを作っていくのにメリットが出てきました. 微分幾何の長く鬱陶しい計算が必要な場面で, 転記ミスが多くて大変だったとき, コピペで済む TeX 打ちノートが便利だったこともあります. あとミスを一括置換できるのも魅力の 1 つです.

いまのところハードな不等式評価をするときは, 自分のノートテイクの都合でまず手書きにしますが, それ以外はほぼ直接 TeX・LyX でやっています. 特に微分幾何系の添字が面倒な計算は TeX・LyX です. この辺を宣伝するのも動画の目的の 1 つだったりします. 字が綺麗なわけでもなく, 最終的にマルチユースする前提だと電子記録がかなり大事なので, もしあなたがコンテンツを作ってみたいと思うなら, ぜひ一度試して自分に合っているかどうか検証してみてほしいです. 計算ノートをそのまま配布できたりもするので便利です.

いまの形の動画は学習コンテンツとして使いものにならないにしても, 計算ノートは需要があるはずなので, どこかで公開したいのですがどうしようかは検討中です. 他の数学系 YouTuber の人達は note で販売していたりしますし, そういう形を試してみようとは思っています. YouTube 動画化した分だけでももう 120 ページを越えたので, 本当にミニコンテンツになってきています.

ではまたメールします.

2020-07-26 中高数学・プログラミングコンテンツをリリースしました/相転移プロダクション

今週から作ったコンテンツをきちんと書くことにしました. 力学に関しては次の動画です.

  • 硬いばねの時のダフィン方程式の周期の近似 https://www.youtube.com/watch?v=bjD09N5FZwI&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=173&t=0s
  • 軟化ばねのダフィン方程式の周期 https://www.youtube.com/watch?v=0Cechk5YJxE&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=174
  • 軟化ばねのダフィン方程式の周期の漸近評価 https://www.youtube.com/watch?v=p1UoyqTPbm8&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=177
  • パラメータ振動 https://www.youtube.com/watch?v=PSdpEbbq5J8&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=178
  • エネルギーと仕事 https://www.youtube.com/watch?v=o9DKAEqpMK4&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=179

微分幾何とその計算シリーズは次の動画を作りました.

  • 3次元でのベクトルの代数と微分形式 概要編 https://www.youtube.com/watch?v=uoSom32AfJ0&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=173
  • 微分幾何とその計算 ベクトル場と微分形式の対応 https://www.youtube.com/watch?v=osgu374z0zY&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=175
  • 3次元でのベクトルの代数と微分形式 諸公式の証明 https://www.youtube.com/watch?v=tna8Y9DRmXw&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=176

力学は引き続き標準的なコースをあっさりめで, 計算重視で進めていきます. 微分幾何の方はメタマテリアルに関する次のプレプリントの数学解説の形で議論を進めてみようと思っています.

  • Transformation Optics and the Geometry of Light
  • https://arxiv.org/abs/0805.4778

私も全くもって詳しくありませんが, メタマテリアルは「光学迷彩」の物理のようです. 一般相対論の手法, つまり微分幾何を光学に持ち込んでいろいろやる話です. ネタが面白い上に微分幾何が一通りまとまっているので取り上げるのに良さそうと思い, 取り上げることにしました. 動画にするのは著作権がどうなるかという話もあり, かなり微妙と言えば微妙です.

海外には論文紹介系 YouTuber もいるようですが, 内容に細々と踏み込むタイプがどこまで問題ないのか, 私はよくわかっていません. 何にせよ手元の計算ノートをひっそりと公開する分にはそこまで影響なさそうなので, それ自体は適当な形で公開する予定です.

毎日, 無理やりにでも動画を 1 つ作る習慣は何とかできあがりつつあります. 引き続きやっていくので応援よろしくお願いします. ぜひチャンネル登録や動画のシェアや動画への評価もお願いします.

  • チャンネル登録 https://www.youtube.com/channel/UCZ0p3rtw65Kw7BeR-hdndMw?sub_confirmation=1

さて, ようやく Google Colab 対応版のコンテンツをリリースしました. 通告していた通り, 今度は有料版として公開しています.

  • プログラミングで数学を 中高数学虎の穴
  • https://phasetr.com/mthlp1/

詳しいことは上記ページに書きました. 基本的に有料化以外の記述は変えていません.

もしあなたが無料版を受講していて「これはいいものだ」と思ったなら, 「お布施」してもらえると嬉しいです.

せっかくなので有料化について改めて少し書いておきます. お金のやりとりというと嫌な感覚になる人もきっと多いでしょう. 私自身, 昔はそうでした.

実はある出来事をきっかけにかなり感覚が変わりました. 今日はその話をしようと思います.

もう 3-4 年前の話ですが, 単発のコンテンツだけではなく, (ミニ) 通信講座を作りはじめたときです. 現代数学観光ツアーです.

これは当初の想定が数学科・物理学科学生向けで, かなりやりすぎでボリュームもおかしいので, 適当に調整・再構成して作り直そうかとは思っています.

それはさておき, これを作っている中で次のようなメールやアンケートをもらいました.

こんないいものを無料で受講させてもらえるなんて申し訳ないので, 少なくても申し訳ないが受講料を振り込ませてほしい.

かつてニコニコ動画ではいいコンテンツに対して 「振り込めない詐欺」というタグがついていたりました. まさに「こんないいものを無料で見られていいのか」という話です. 本当にこういうメールを自分がもらえるのかと驚きました. あと, 「いろいろ質問などもしたいが, ただでさえこんないいコンテンツを無料で受講させてもらえているのに, そこまで要求するのは申し訳ない」というメール・アンケートも頂きました.

無料だからこそかえって人の学習を妨げてしまっているのかという衝撃です.

ちゃんとお金をもらった方がいいことさえあると, 本当に心から実感した瞬間です. 以前, 救急車の出動に関して, 無料であるよりも有料の方がかえって気持ちよく呼べるという話を聞いたことがあります. こういう話だったのかと.

他にも語るべき話はいろいろあると思いますが, 今日はこんなところにします.

ではまたメールします.

2020-07-19 今週のコンテンツ/相転移プロダクション

最近は日々の TODO を決めて淡々と暮らしていて, 日々浅く広く勉強をしている感じで, 前のように猛烈にしている感じがなく, あまり何かをしている感じがありません.

しかし, 日々の TODO で計算をしつつ, そのまとめを YouTube で動画投稿しているので, コンテンツ整備はきちんと進めています.

  • 力学 https://www.youtube.com/playlist&list=PLSBzltjFoprZJU6Eacjer96rAhyc9KDPN
  • 微分幾何とその計算 https://www.youtube.com/watch?v=uHaIAOuWmY0&list=PLSBzltjFoprbFRDKuwstOqZ7Rx81QlorP&index=2

これはいったん PDF を準備してから動画にしています. 動画よりも自分のペースでテキストで読みたい方も多いと思います. 何より私がその手のタイプです. 最近, 大学なり何なりでオンライン講義が話題になっていますが, 動画講義よりも資料の PDF を配ってもらった方が嬉しいという声もよく聞きます. この PDF もある程度まとまったら, きちんとチェックした上でリリースしようと思っています.

あと微分幾何は線型代数まわりの暴力的なテンソル計算があり, それは PDF よりも TeX の形でリリースしたいと思っています. 微分幾何はコンテンツを作るという体で, 自分自身改めてきっちり勉強し直しています.

他にも各種計算ノートを徐々に整備を進めていきます. その他プログラミング系のコンテンツも準備を進めているので, そちらもお待ちください.

今回は手短かですがこのあたりで. ではまたメールします.

2020-07-16 数学や物理を可視化する/相転移プロダクション

今回は現代数学観光ツアーのアンケートで気になる回答があったので, コメントするためのメルマガ配信です.

数学は基礎が全くないためか、不明な記号をみて、いやになります。式の展開が省略しており、先に進めない。

問題解決につながる応用を意識しています。数学でも、物理でも、具体的な動作を可視化するような、サンプルプロブラムと簡単なコード解説があったらいいなと思います。

前者については世に詳しいコンテンツがたくさんあるので, 私個人の活動としてはそれらを案内するに留めていて, 特に自作コンテンツはありません. 大事なのは後者だと思っていて, 特に後者のコンテンツは準備しているので, そのコメントです.

まず, 現代数学観光ツアーは上記のどちらも全く意図していない講座です. 一方そうしたニーズがあることもわかっている (いた) ので, 専用の講座も準備してあります. たぶんこちらの方が勉強の役に立ち, 面白いとも感じてもらえると思うので, 改めて案内します.

それは次の 2 講座です.

  • 応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう https://phasetr.com/mrlp1/
  • プログラミングで数学を 中高数学虎の穴 https://phasetr.com/mthlp1/

詳しいことはリンク先の案内ページをぜひ読んでみてください. ここではそれぞれを改めて簡単に説明しておきます.

前者は無料講座で, 微分方程式をプログラムを書いて数値的に解くことを通じて, 中高数学を概観する講座です. ここでは細かい式展開よりも, 中高数学を概観すること, プログラムで可視化することを重視してテンポよく進めています.

後者は有料講座ですが, いまはまだ無料公開中です. ようやく再調整が終わったので, いま有料化に向けて準備をしています. 無料でお試ししてみたければいまのうちです.

再調整で何をしていたかというと, コンテンツをレビューして頂いたとき, Google Colaboratory を標準環境にした方がいいのでは, というご指摘を頂いたので, その調整をしていました. 毎日少しずつ確認し, 約半年かけて調整が終わったので, その調整版を有料コンテンツとして近々リリースします. もちろん本質的な内容は無料版と変わりません.

簡単に内容を紹介すると, 前者の講座を受けて, もう少し数学をきちんと解説する講座にしています. もちろん可視化を中心にプログラミングを使いながら. 最近や統計学や機械学習への応用を目指したコンテンツもたくさん出ています. 同じようなコンテンツを作っても仕方ないので, 別の軸を据えてコンテンツを作っています. それは次の 2 つです.

  • 中高数学で実際に出てくる厳密な文字計算用の sympy を随所で使っている.
  • 物理への応用, 特に常微分方程式・偏微分方程式の数値計算を議論している.

特に微分方程式はアニメーションを作っているので, 見ているだけでも面白いと思います.

あと, 微分方程式に関しては, 教材としてまとめきってはいませんが, プログラムと動画自体はいろいろ作っています. 次の GitHub のリポジトリにはいくつかの言語でのプログラムがあり, その数値解のアニメーションを YouTube にあげた動画のリストです.

  • GitHub https://github.com/phasetr/mathcodes
  • 対応する動画集 https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU

これも興味があれば参照してください. 「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」を見たあとならある程度はわかると思います.

あと, 少し別の話で, 中高で出てくる数学が何の役に立つか, 式を一切使わずに解説したコンテンツもあります.

  • 中高数学駆け込み寺 役に立つ数学 https://phasetr.com/mrjhlp1/

これも詳しい内容は上記リンク先のページに書いてあります. 興味・必要に応じてぜひ受講してみてください.

まだまだバリエーションが足りないとは思っているので, 引き続きいろいろなコンテンツを作ろうと思っていますし, いまも実験的にいろいろ作っています. 基本はメルマガで告知していくので, ぜひメルマガをチェックしてください.

ではまたメールします.

2020-07-12 基礎数理のモチベーション・歴史的経緯と物理まわりの数理/相転移プロダクション

YouTube のコンテンツ作りだけは何とか続けています. タスクを詰め込み過ぎなだけではありますが, 他の作りたいコンテンツ制作が止まっています. タスクを整理しないといけないと思いつつ, 「やりたいことだから」とタスクを残し続けて精神的な負債がためています. 多分あなたも心当たりがあるであろう, 例の嫌な感じです.

時間は短くてもいいから毎日やるべきこと, コンテンツ制作は曜日でやることを区切るなど, 適当なメリハリをつけようと思います.

さて, メルマガタイトルにもしたネタです. 現実逃避で Twitter をしていて, そこでいろいろコメントしたことをまとめました.

  • 実数論やフーリエ変換に関わる基礎数理のモチベーション・歴史的経緯 https://phasetr.com/blog/2020/07/12/mathematical-motivation-for-theory-of-real-numbers-and-fourier-analysis/
  • 偏微分方程式まわりの物理の数理: グリーン関数に関わる数学の難しさ https://phasetr.com/blog/2020/07/12/math-for-physics-pde-green-function/

両方とも物理系の人との会話の記録です. 数学学習のモチベーション向上に役立つと思うので, こちらでも紹介しておきます. この辺も動画コンテンツにした方がいいのだろうとは思います. というか, 今本当にこれを書いているときに思ったのですが, 動画コンテンツ化すべきですね. TODO に積んでおきましょう.

で, 動画です. 力学の本をいろいろ読んで, 物理で出てくる計算訓練の体で数学の具体的な計算練習をするという形のコンテンツを作っています. もしあなたが物理を勉強したい, またはそのために数学を勉強しているなら, ぜひ眺めてみてください.

  • リスト「力学」 https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFoprZJU6Eacjer96rAhyc9KDPN

多少は数学の人にも取り組みやすい形で書いているつもりです. 数学向け丁寧さが足りなければ足りないで, ぜひその旨教えてほしいです.

よく同人作家の人なり何なりが言っていますが, 読者コメントは本当に嬉しいです. もちろん批判的なコメントでも結構です. コメントをつけてもらえると制作意欲に繋がるので, ぜひコメントお願いします.

あとチャンネル登録やシェアもお願いします.

  • チャンネル登録 https://www.youtube.com/channel/UCZ0p3rtw65Kw7BeR-hdndMw?sub_confirmation=1

コンテンツを作りたいという方もいらっしゃるので, 一応書いておくと, こういうのを地道に言い続けるのはとても大事です. 言うほど人は気にしていませんし, そもそもそれほど真剣に自分の活動を見てくれている人はいません. そういうものです. こういう「宣伝」が鬱陶しいと思う人はこちらに興味がなく, 勝手に離れていきます.

こちらが気にかけるべき人は, 自分に継続的に興味を持ってくれて応援してくれる人, ともに歩んでいこうと思ってくれる人です. 「こんなことをやっている」という主張は積極的にしていきましょう. 主張しなければ伝わりません.

言うだけではなかなか伝わらないので, 私自身がそれを実演している形です. 「確かにそんなに言うほど鬱陶しいとは思わないな」と思ったら, ぜひあなた自身でもやってみてください.

引き続き次なるコンテンツ制作のために勉強も続けています. 先日何度かメルマガにも書いたように, 70 歳を越えた方さえ, 新型コロナの解析で出てきた SIR モデルの数理を理解したいと言って, 微分方程式の勉強のために私のコンテンツを受講しているというメールを送ってくださいました. そういう謎の気概を持って地道にみんなでやっていきましょう.

ではまたメールします.

2020-07-05 力学の動画コンテンツ, 鋭意制作中/相転移プロダクション

最近, 無理やりにでもコンテンツ作成モードに切り替えようと奮闘しています. 実際, ほぼ毎日力学に関わる動画講義を作っています.

YouTube に日々アップしているので, ぜひチャンネル登録して確認してください.

  • チャンネル登録 https://www.youtube.com/channel/UCZ0p3rtw65Kw7BeR-hdndMw?sub_confirmation=1
  • 力学のリスト https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFoprZJU6Eacjer96rAhyc9KDPN

コンテンツ作成といえば, プログラミング+数学系については, 引き続きアルゴリズムとデータ構造まわりの勉強をしています. 他にも離散数学のようなところで参考になるいいコンテンツがないかも探索中です.

競プロまわりで素因数分解ネタがよく出ていますし, Project Euler もあるので, まずはその辺かとは思っています. 次のページだとか.

  • https://qiita.com/drken/items/a14e9af0ca2d857dad23

他にも何かいいコンテンツ, もっと言えば方向性がないか探しています. もしあなたがいいネタをお持ちなら, ぜひ教えてください. できる限り中高生でも挑めるレベルの数学ネタだと嬉しいです. 非専門もはなはだしいので感覚が全くなく, どこから探索すればいいかも検討がついていません.

名前だけは知っている整数計画法も, ちょっと何かしようと思うと一気に難しくなるとかいうのを見かけるので, どうしたものかと思っています. 交付金もあるので, 数理モデル入門みたいな本を何冊か買い漁って読んでみようかとも思っています.

数論系の探索問題・研究課題みたいなのももっとあると思うのですが, これも非専門の壁に阻まれています.

前も書いた気がするのですが, アルゴリズムとデータ構造まわりだと, numpy, matplotlib, sympy のようなライブラリは必要なく, 書いたコードが腐りにくく, かつ根源的な意義は持ち続けるタイプのコンテンツになってくれるのではないかと思っています.

いままさに整備中のコンテンツでさえ, 既にライブラリまわりの微妙なバージョン問題が起きているので, この辺は死活問題なのです. ライブラリなしの徒手空拳で扱えて, しかもプログラミング技術向上と数学力向上に役立つコンテンツが作りたいのです.

こちらもそろそろ試作品を作りはじめようと思っています. がんばらなければ.

あと無料配布していたプログラミングコンテンツ, そろそろ再整備が終わりそうです. 有料化する予定なので, もしあなたが興味はあるがお金を出すほどのものなのかと思っているなら, いまのうちに手に入れておくといいでしょう.

  • コンテンツ案内ページ https://phasetr.com/mthlp1/

自分でもコンテンツを作りたいという読者の方がいるので, やはり改めてこれもお伝えしておきます. 無料だと確かに多くの人に届きます. 無料なら見てみるか, そういう考えの人もいるからです.

一方で人は無料で得たモノを大事にしません. ダウンロードするだけして全然使っていない・読んでいない, そんな積読コンテンツをたくさん抱えている方も多いのではないでしょうか.

お金を払ってまで得たものだからこそ大事にする, 真剣に勉強するという話もあります. 有料化は相手を真剣にさせて勉強の効果・効率を挙げてもらうための 1 つの手段とも言えます. 最近これもどうなのか, という話はありますが, それでもまだ一定の効果・意味がある視点でしょう.

あと, これもやろうやろうと思ってできていませんが, 月額 200 円程度の「お布施」を募って, ミニファンクラブ的なことをする人も増えてきています. ゆるいコミュニティと言ってもいいでしょう.

これも前書いたと思いますが, 数学ガールで有名な結城浩さんが note のサークルを使って, 月 200 円で運営しているコミュニティもあります.

  • https://mm.hyuki.net/circle

サポートの使い道も次のように書いています.

いただいたサポートは、本やコンピュータを買い、 さまざまなWebサービスに触れ、 結城が知見を深める費用として感謝しつつ使わせていただきます! アマゾンに書評を書いてくださるのも大きなサポートになりますので、 よろしくお願いします。

これ, 本当に大事です. 今回, 私も直接的に情報がほしいと書いていますが, 知見を深めるための費用があると本当に助かります. 私が有料のコンテンツを販売している分は, ほとんどメルマガなどの運営維持費に消えるか, 持ち出しです. これがなくなるだけでもかなり助かるのは実感としてあります.

他にも pixiv 絡みのコミュニティ運営サービスなどもありますし, そういう活動もぜひ参考にしてみてください.

今回はこんなところで. ではまたメールします.

2020-06-28 物理の計算動画作成をはじめました/相転移プロダクション

相変わらず競プロの勉強をしつつ, プログラミング系コンテンツの案を練りつつ, 関係する勉強を進めています.

タイトルにあるように, やるやる詐欺になっていた動画コンテンツの作成をはじめした. まだはじめて 1 週間も経っていませんが, 現状ほぼ毎日作っています.

  • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFoprZJU6Eacjer96rAhyc9KDPN

いまのところ, ネタとしては力学に出てくる計算を中心にしています. もともと現代数学探険隊の付録として計算問題を大量に作ろうという話があり, できる限り物理をネタに取ってこようとしていました. そのついでに物理コンテンツも整備しようとしていて, 何やかんやで方針が定まらずに右往左往していました.

今回, 計算ノートを整備するという体で, 物理の本を読むのに必要な数学を紹介しつつ数学を復習しながら, 計算の詳細を埋める形でコンテンツを作っています.

1-2 時間かけて計算ノートを書き, その結果が 30 分程度の動画になっている状態です. 私自身, 生活含めていろいろやるべきことがありますし, 動画の時間が長いと見るのが大変でもあるので, 計算ノート作成時間ももう少し短くしつつ, コンテンツの時間も短くして作成・視聴ともに楽になるように調整していきます.

これで必要な計算を確認しつつ, 現代数学探険隊の付録コンテンツも充実させていこうと思っています.

あとは実際に着実に続けていくのが大事なので, それをがんばっていこうと思います.

念のため, 最後に現代数学探険隊がどんなコンテンツなのか, 紹介ページを案内しておきます.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

毎度案内しているように, このページを読むだけでも数学・物理の勉強に役立つようにしています. もしあなたが勉強のヒントがほしいと思っているなら, ぜひ眺めてみてください.

ではまたメールします.

2020-06-21 数学・プログラミング系コンテンツ/相転移プロダクション

最近, 具体的なコンテンツとしてのアウトプットはありませんが, データ構造とアルゴリズムや競プロに関するプログラムをゴリゴリ書いていて, その成果物としてのプログラムは GitHub にアップしています.

  • https://github.com/phasetr/AlgorithmsAndDataStructureByFSharp

競プロが楽しいのはそれとして, 今の私のレベルで難しい問題に取り組みすぎていた問題があり, 他のことが完全に疎かになっていました. 私は熱くなるというか, 一度集中すると他のことが全くできなくなるタイプです. そのあたりの悪い癖が出ています.

競プロは問題を解くことでアウトプットしているのでまだましですが, 他の勉強内容のアウトプットが完全に止まっています. 何とか都合をつけて復活させるので, もうしばらくお待ちください.

アウトプットといえばインプット方面で, また新しく面白そうな本が出ました. 宣伝しておきます.

  • 新井朝雄, 熱力学の数理, https://www.amazon.co.jp/dp/4535789185

最近いろぶつ先生の熱力学の本の査読といい, 熱力学づいています.

この本, 目次を見てどういうスタンスで何をやるのかと思っていたら, Lieb-Yngvason スタイルだと気にいらない点が多く, 自分なりに再構成したというタイプの公理論的熱力学だそうです. 清水明さんの本よろしく, エントロピーからはじまるようです.

まだ出たばかり, 買ったばかりなので, 読み終わったらレビューを書く予定です.

第 1 章で多様体の基礎や微分形式を論じています. 新井先生の本はとにかく馬鹿がつくほど丁寧です. その辺を復習したい人にもいいかもしれません.

物理系コンテンツへの仕込みがなかなか進んでいませんが, それでも今年に入ってから熱力学の本を 2 冊読んでいるので, 熱力学からやっていけという御託宣なのでしょう. この辺もやっていきます.

今回は短いですが, この辺で. ではまたメールします.

2020-06-14 競プロが厳しい/相転移プロダクション

本格的に勉強をはじめたばかりなので当然ではありますが, 競プロ, 全然できないです.

「探索」系の問題も多いのですが, 高校の頃, 順列・組み合わせで苦しんでいたことを嫌でも思い出します. 逆にそのリベンジと思えばいいのかと思い, のたうち回って勉強しています.

一応改めて宣伝しておくと, AtCoder では企業主催的なコンテストもあります.

  • https://atcoder.jp/contests/tokiomarine2020

最先端のデジタル技術、IoT機器や人の行動から生まれた複雑なデータを有効に活用することで、 より安心・安全な社会を実現していくためには、 これまで以上に高度なアルゴリズム構築力やプログラミング力を持った人材がキーになると考えています。 本コンテスト参加者の皆さまが、こうした先端技術や複雑化したデータを駆使して、 安心・安全な社会の実現に向けた新たなビジネスを生み出している、 あるいは誰かのそうした挑戦を後押ししている。

この辺の背景があるので, それなりに中高生にとっては投資対象になるのではないと思っています. 順列・組み合わせ系, そして因数分解などの中高数学もよく出てくるので, その手の数学遊びにもいいはず.

さらに数学に重きを置いたプログラミング問題集みたいなのがほしい人もいるかもしれません. そういう人にはプロジェクトオイラーを勧めておきましょう.

  • https://projecteuler.net/

本当にだいぶ前にちょっとやって, そのときはまだプログラミングの腕もしょぼかったので, 挫折したままです. いまやったらまたもう少し違うか, とも思っています.

これもこれで世界的に有名ですし, 数学特化型なので, AtCoder でもっとまともになったらこれも取り上げて何かしようと思っています.

AtCoder が全然できなくて, YouTube 動画作成などが滞りまくっています. この辺, 1 つ何かやりはじめると他が完全に疎かになる悪い癖が出ています. 他にもやるやる詐欺化していることがたくさんありますが, がんばって何とかしていきます.

AtCoder に集中していて他はほとんど何もしていないので, 今回はこんなところで.

ではまたメールします.

2020-06-07 プログラミングがつらく厳しい/相転移プロダクション

何はともあれ宣伝協力からはじめます.

  • 新井朝雄, 熱力学の数理
  • 発売予定日 2020年6月30日
  • https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784535789180

紹介文は次のような感じ.

熱現象を数理物理学的に厳密な形でとらえ、熱力学の公理論を説く。 必要とする数学として、多様体の入門的な理論も解説する。

まず新井先生の紹介を簡単にしておきましょう. 私が (学生でないにも関わらず) いろいろとお世話になった先生です. 私は学部 3 年から新井先生の本と論文で育っていて, 新井-廣川論文で一般論が書かれていたのを具体例に適用した, というだけの修論を書いた程度には仕事にお世話になっています.

学生時代に読み込んだ本の誤植を新井先生に送り, それを覚えてもらっていたようで, 「とても助かりました」と言ってもらえた記憶もあります.

もちろん最低限の数学的体力は前提ですが, 馬鹿がつく程丁寧なので新井先生の本が読めなければ, 作用素論方面の量子系の数理物理はまず何もできないでしょう.

そんな新井先生の新作なので当然内容が気になるわけです. 専門も比較的近いし, 完全にオーバーラップもあるところなので Lieb-Yngvason 流に行くのかと思ったのですが, 多様体とか言っているので何だろうと.

ちなみに Lieb-Yngvason 流というのは次の記事で少し触れています.

  • Lieb-Yngvason による The entropy concept for non-equilibrium states が arXiv に出たので読んでみた
  • https://phasetr.com/blog/2013/05/21/lieb-yngvason-による-the-entropy-concept-for-non-equilibrium-states-が-arxiv-に出たので読んでみた/

熱力学ではよく形式的な微分形式が出てくるので, その辺の話をするのでしょうか. 相転移や臨界現象でいろいろ厳しい部分があるはずで, ちゃんとやろうとすると超関数を飛び越えてカレントが出てくるはず. 300 ページもないのに何をするのか心配になるほどです.

いい復習なので読みますが. これをネタにして数学者のための熱力学みたいな YouTube 講義動画も作ってみたい気もします. 動画作成が止まっているのでそろそろ新作を作らねば, というのもあります. もう少し待っていてください.

さて, プログラミングです. 先週も書いた通り, アルゴリズムとデータ構造の勉強をしています. 記録は次のリポジトリ.

  • https://github.com/phasetr/AlgorithmsAndDataStructureByFSharp

まだ 1 度本の写経をしたという程度で, 全く理解が進んでいません. C++ で書かれた本の内容を F# で書き直すのも手つかずですが, 少しずつ進めます.

アルゴリズムとデータ構造の勉強をしていて思うのですが, プログラミングという面では面倒な言語機能を使わなくてよく, 最低限の言語機能だけ覚えたあとは純粋に頭と技術の勝負なので, プログラム用コンテンツとしてはメンテが極小で済みそうなコンテンツです.

数値計算をやっていると高速化は最重要課題ですし, アルゴリズムとデータ構造はそこにモロに関係する話でもあります. もっと速くからきちんとやっておくべきだったと悔やまれてなりません. いまが 1 番若いわけで, これから取り返していきましょう.

アルゴリズムとデータ構造は就職前後に, 知人から「プログラミングするなら基礎教養だから」と言われて, 本当に簡単に勉強しただけで全く身についていないのを痛感しています. 特に競プロでは問題が少し難しくなっただけでもう手も足も出ません. 初学者の苦しみを味わい抜いています.

プログラミングが少しできる程度ではどうにもならない, 頭の使い方のレベルの話なので, 歯を食いしばってやるしかないのでしょう. 半年から 1 年鍛えればもう少しましになると思うので, 少しずつ競プロ界隈の人達とも交流して, これが実社会にどう活きるか/活きているかといったところにも突っ込んでいきたいと思っています.

先日リリースしたプログラミング系コンテンツのページにも書いたように, 最終的には理工系中高生に対して社会で生き抜くための力も身につく教育をしたいと考えていて, 実際にアルゴリズムを組み上げられる力は大事だと思っています. 予備知識としては数学や物理よりは比較的少ないようにも思いますし, プログラミングを鍛えてから数学や物理に入る方法もあります.

そのためには私自身がもっと強くならないといけません. 最低限アルゴリズマーと同じ世界観を共有できないと, 話が通じないですし, 信頼もしてもらえないので.

というわけでやっていきましょう.

ではまたメールします.

2020-05-30 詰将棋から始める ε-δ 論法/相転移プロダクション

最近 F# のお勉強が楽しくて数学・物理系コンテンツの作成はさぼり気味です. やはり間が空いてしまうと再開させるのも大変なので, 面倒でも毎日きちんと続けて習慣化しないと厳しいものがあります.

それはそうと F# が楽しいわけです. Haskell をはじめて見たとき, 「こういうふうにプログラムが書きたかった」という感じのプログラミングスタイルで なかなか感銘を受けたのですが, Haskell は純粋性なり後方互換性ぶっちぎりだったり, 過激すぎるところ, F# はいい感じのバランスです.

ここで詳しく話すようなことでもないので省略しますが, Haskell と OCaml はエコシステムが Linux/Unix 系を前提にしているような部分があり, Windows で使いにくく, なかなかつらかったのですが, Microsoft の全面的な支援がある F# は当然 Windows でも楽に動かせるので快適です.

割と最近まで「.NET 系だから Windows でしか使えない」と思っていたのですが, かなり前から Mac, Linux でも使えるようになっているとのことで, びっくりしました. 最近 Microsoft は OSS 界隈にも強く貢献していますし, .NET 系だからエンタープライズ用途に使えないこともない言語です.

ここしばらくメルマガでも書いていたように新たな言語学習に関して迷走していたのですが, 成熟したエコシステムという面でもよさそうで, しばらく F# をやっていこうと思っています.

F# の概要については次の記事がお勧めです.

  • https://qiita.com/cannorin/items/59d79cc9a3b64c761cd4

F# に恐ろしく強い人が書いた記事で, 参考になります. 最後に参照されている F# for fun and profit と Wikibooks/F# Programming のうち, 特に前者を少しずつ読み進めています. 前者はブログなのですが, PDF でも提供されていて, それが 1930 ページあるとかいう凄まじい量です. のんびり読んでいます.

後者は簡単な言語リファレンスという風情で, ざっと眺めるにはいいです. F# にはまともな本が見当たらないので, その意味でもちょうどよいように思います.

いい機会なのでデータ構造やアルゴリズムも再勉強しようと思っていて, 関数型用のコードを GitHub に上げています.

  • https://github.com/phasetr/AlgorithmsAndDataStructureByFSharp

本などを含め Haskell のコードから引き写したりしていて, F# としてはこなれていない部分もあるかもしれません. もし詳しい方がいらっしゃればぜひ教えてください.

ついでに AtCoder もはじめてみました. 最近コンテンツもリリースしてそこでも明白に掲げているように, 中高生向け教育に本格的に乗り出したいと思っています. プログラミングコンテンツも作りたいので, その参考でもあります.

また, アルゴリズムやデータ構造については日々更新の激しいライブラリを使ってどうこう, ということもなく, コンテンツのメンテナンスも比較的楽そう, そしてプログラミング技術向上も兼ねた意義も高いので, 改めてかっちりやる意義を感じているところです.

AtCoderJobs のように技術向上が仕事に直結する話でもあり, 鍛えた技術が社会で活きる様子も多少は想像しやすいだろうとも思っています.

話は打って変わって, 大分前にリリースしたコンテンツ, 数学駆け込み寺に来たアンケートの回答をちょっと紹介したいと思います.

内容の前にアンケート回答をくれた方がすごいのでその話をします. 実際にときどきいらっしゃるのですが, 何と 73 歳の方です. いろいろあって, 昔から挫折しっぱなしだった微分方程式に挑みたい, というので登録されたとか.

私は病気があるので, そもそも 73 まで生きられるか事案もありますが, 73 まで生きて, それでもなお「昔から挫折しっぱなしの数学を何とかして理解したい」 みたいな執念を燃やし続け, 実際に挑戦を続けるなんてできるだろうかと思わされます.

具体的にどんなコメントが来たかというと, 導関数の言葉の意味です. 導関数は英語だと derived function で英語でも「導かれた」という意味です. 「微分によって導かれたから導関数というのだ」と説明を書いただけなのですが, 「忘れていたり読み飛ばしていただけかもしれないが, ようやく名前の気分が掴めた」というアンケート回答を頂きました.

量子力学の波動関数など, 数学や物理では概念の名が体を表していないことも多いので, 名前にこだわり過ぎるのもよくないのですが, こういう話もきちんと書いた方がいいのだと改めて思った次第です.

ちなみに線型代数での言葉遣いに関して, 最近次のような動画も作りました. ぜひ見てみてください.

  • 言葉のはなし: 写像・関数・汎関数・作用素・演算子/応用ヒルベルト空間論 よくわからない数学
  • https://www.youtube.com/watch?v=txMpRdtkFzg&list=PLSBzltjFoprYIRkgAQqBYitUOBWcEKKeV&index=3&t=0s

最近このコンテンツ作成が滞りがちなので, がんばります. 期待されていると思うとやる気が出るので, ぜひ YouTube のチャンネル登録もお願いします.

最後になってしまいましたが, 表題の「詰将棋から始める ε-δ 論法」は木原さんの YouTube 動画です.

  • ツイート https://twitter.com/tri_iro/status/1265198348098654212
  • YouTube https://www.youtube.com/watch?v=2Laco2L_Zqw

Twitter の bio にあるように, 数理論理や計算可能性などのプロなので, その辺のプロの感覚が活きた解説です. 最後にゲーム理論の紹介などもあります. 動画としてもかなりよく出来ていると思うので, ぜひ見てみてください.

ではまたメールします.

2020-05-24 楽しさ推しで数学の話をしない/相転移プロダクション

最近, ろくにアニメや漫画を見ていません. ゲームはなおさらです. 昔はあんなに好きだったのに.

そんな中 Twitter を見ていたら, いまハンターハンターのキメラアントが無料で公開されているようで.

  • https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480028736763

キメラアントは途中で止まっていたので, いい機会だと思ってちょっと眺めてみました.

キメラアント編, 全編にわたって異様な緊張感に満ちていて, 何なのだろうとはじめて読んだときからずっと不思議でした. 世間的な評判も非常によいようですし, 何か人の心に強く訴えかける要素があるのでしょう.

いろいろと胸を打つシーンがあるわけです. とりあえず 1 つ挙げておきます.

  • https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480028738935

この話には「かわりに祈る時間が増えた」という, よくネタで出てくるシーンがあります.

武道家を理想化しつつカリカチュアした姿として, ひたすらな正拳突きやらある種の宗教性を帯びさせるのまではある意味誰でも思いつきます.

すごいのは感謝の一日 1 万回の正拳突き, 練習の果てに 1 万回の正拳突きにかかる時間が一日一時間を切る, そして最後に祈る時間が増えたみたいな形にもっていく構成です. 馬鹿でも思いつくようなことを徹底させ, ここまで昇華させるのが本当に凄まじく, 冨樫義博は少年漫画の書き手として本当に天才なのでしょう.

ネタとしてよく引用されるようなキャッチーさ, 本編の流れの中でのインパクト, どれをとっても尋常な仕事ではありません.

あとネテロの「祈りは心の所作」というのも本当に好きで, まさに私にとっての数学という趣があります.

何にせよ, 久し振りに漫画に触れて, とても楽しい時間でした.

これで思うのは, 数学なり物理なり何なりで, 楽しさを謳うタイプの言説です. これ, 本当に筋が悪いと思っています.

エンタメのプロがそれに特化して死力を尽くして作った作品が世の中にたくさんあるわけです. 数学や物理がこれと楽しさで勝負してどうにかできると思うのは, よく言えば破綻していますし, 傲慢とさえ思います. そこを勝負所にしてしまってはどうにもならないでしょう.

ちなみに私の現行の行動指針は, 既に「目覚めてしまった」ものの, なかなか勉強のよすがに辿り着けない人への橋渡しをすることです. 各種無料コンテンツが概要を説明する方向に振り切っているのもそれが理由です. あと, なるべくふつうのコンテンツで見かけない話をしようとしています.

「楽しい」系は成功しているかはともかく, それを狙っていろいろやっている人は多いので, 別の線を意図的に狙ってやっています.

最近は役に立つ, 特にお金になる・それで食べていける方向性をはっきり示す線もやっています. 先日リリースしたコンテンツはその 1 つです.

  • https://phasetr.com/mthlp1/

生きていれば数学はできると信じて, とにかく「泥水」をすすってでも生きていこう, そういう感じが出せないかと思っています.

実はこの間, 73 歳の方から, 最近の新型コロナで時々言及される SIR モデルを勉強しようと思い, 微分方程式を勉強しようという中で私の無料講座に辿り着いたというご連絡を頂きました.

いろいろあって若い頃にきちんと勉強できず, これまでの人生でも何度か挑戦してきたが歯が立たず, それでもまだなお挑戦し続けるというのが本当に凄まじいの一言です.

私は中学 3 年で白血病になりました. 同じく新型コロナで「喫煙習慣があった人は, 既に肺がダメージを負っているから肺炎のリスクは極めて高い」という話があったように, 私も闘病で既に身体に大きなダメージがあると言われています.

そもそも 73 歳まで生きられるかという問題はありますが, 仮に生きられたとして, 若い頃からの執念を燃やし続けられるのか, 新たなことに挑戦する気概を持ち続けられるのか, そういうことを思います.

ところで, さっきの話で「泥水」のような言い方をすると工学の人に失礼な気しかしないので, 何かいい言い方を考えています. もしあなたにいい案があれば, ぜひ教えてください.

ではまたメールします.

2020-05-09 なかなか行動できないときに/相転移プロダクション

先週メルマガを書くのをすっかり忘れていました. GW 中ほとんど進捗がなく, あまり書けることもありません. むしろ進捗がないこと, そしてその理由自体があなたの参考になるかと思い, それを書くことにします.

進捗が少ない理由の 1 つは先日リリースしたコンテンツ, 「プログラミングで数学を」の Google Colaboratory 対応の中で sympy の調整がうまくいかなかったことがあります.

  • プログラミングで数学を https://phasetr.com/mthlp1/

先々週きちんと動いたコードがうまく動いてくれず, 公式情報もどこにあるかよくわからない状況で怒り狂っていました. これだからはプログラミングは, という気分になるのですがだからこそ自分が作らねばという事案なので, さめざめと泣きながらがんばります.

ただ, これは進捗が生めなかったメインではありません. 主力は次の 2 点です.

  • 数値計算する言語を Julia に切り替えたこと
  • YouTube 講義への展開

どちらも共通点は「新しいことをやろうとしている」です. 人間, やり慣れていないことをやるのは精神的な負荷が非常に高いです. あなたも, GW 中何かこれまでさぼっていたことをやろうとして, 結局やれなかったみたいなことがなかったでしょうか? それはまさに「新しく何かすることへの精神的な負荷」の問題でしょう.

まず Julia. これは新しい言語で最低限の勉強が必要になってしまい, アウトプットの習慣が一時的にでも途切れてしまったのが 1 つの原因です.

その上, エディタの設定やら何やらの環境構築がうまくいかず, それで嫌になってしまったというのもあります.

ちなみに環境構築については, ふだん使いのエディタである Emacs での Julia プラグインの話です. Linux ならご機嫌なのに Windows だと M-x term がうまく動かない問題で破滅する話のようです.

この 2 点, 特に後者のせいで 新たに数値計算コードを書く動きどころか, Julia の勉強さえ完全に止まってしまいました.

習慣が途切れてしまうと復活させるのが本当に大変で, たったの数日途切れただけで破滅しました. 仕方ないので, まずは気楽な Julia の勉強から習慣を復活させます.

あと Julia と数値計算関係に関して, 黒木さんから次のいろいろなコメントをもらっています.

  • https://twitter.com/genkuroki/status/1255635824210665472

そのうちブログにもきちんとまとめますが, あなたの参考にもなるでしょうから先にシェアしておきます.

次は YouTube 講義です. Twitter アンケートでとりあえずやることは決めましたし, 実際問題としてネタも十分にあり, 動画の作り方なども何 1 つ迷う要素がありません.

  • Twitter アンケート https://twitter.com/phasetrbot/status/1256228038636908547

さらに言えば Google Colaboratory 用調整のための毎週 2 時間の zoom 勉強会などもっとハードなことはできているのに, もっとちょろいはずのことができていません. ちなみに YouTube 講義動画は, 事前に 15 分程度の動画になる内容のメモを準備しておいて, それを LyX で文字/式を書き, 動画による画面キャプチャで作る想定です.

これまで勉強会をしてきて 15 分でやりきれる内容がどのくらいかもわかっています. しゃべらなくてもいいので, それが必要不可欠な勉強会よりもハードルが低いはずなのに, いまひとつ食指が伸びないというか, 精神的なハードルを感じるのです.

これについては, 他人を巻き込んでしまっていて強制力がある勉強会と違って, コンテンツ制作は自分だけで閉じていて強制力は自分の精神力しかない違いがあります.

他人を巻き込んで無理やり回すことの意義は理屈でわかっていますし, 実際にオンライン勉強会を 2 つやっていて実践面でもわかっていたはずなのに, 改めてこんな形で強制力をどう作るか問題に直面しています.

メルマガ読者の多くの人にとって, 私はかなりアグレッシブにいろいろなこと/新たなことに挑戦し, 行動する/できるように見えていると思います. それでもこの体たらくです.

1 人で何かしようとしてもなかなか進みません. どうにかして他人を巻き込んで何かするようにしましょう.

人を巻き込むというのは次のくらいのゆるいやつでも全く問題ありません.

  • Rustオンラインもくもく会 https://rust-online.connpass.com/event/174601/

次のような感じの「オンライン勉強会」です.

毎週土曜日の午後に時間を決めて各自が独自にRust関係の作業をする会です 最初と最後にslack上で報告をします rust-jpのslackに参加しておいて下さい rust_mokumoku channelで行います 途中参加・途中抜け自由です。主催者はたまに寝落ちします

私がこれに参加しているわけではありませんが, こんな程度でも本当にだいぶ違います. 移動時間などを考えてもなお 1 番ベストなのは, やはりリアルに集まることです. もちろん現状, 社会的にリアルでこんなことができるわけでもないので, オンラインで何かする次善の策を取るしかありません.

もしあなたが GW に何かしようと思っていてうまく始動できずに GW を終えてしまったなら, 必ず参考になるはずです. どうすれば他人を巻き込めるか考えてみてください. メルマガ読者用の「もくもく会」があってもいいのかな, とも思っています.

ではまたメールします.

2020-04-26 Julia をはじめました/相転移プロダクション

最近プログラミング関係のことばかりで, ふつうの数学や物理系の話が何も進められていません. 広い意味で仕事に関わるというのもありますが, プログラミング関係はやっているとあっという間に時間が溶けること, 半端な状態だと気持ち悪くてやめられないことが重なっています.

無駄なことをしているわけではないとはいえ, やろうと思っていること, 並行して進めたいことができていないのは精神的によろしくない面があり, そろそろどうにかします.

ちなみに最近よくある YouTube での動画講義コンテンツを作ろうと思っているのですが, 吃音があって, 実際に YouTube のコメントでも 「喋り方が気持ち悪い. 障害者か?」みたいなコメントがついたりしたこともあります. 実際問題として聞きづらいことはコンテンツとして見たときに どうしようもなく欠点ですし, 作成に二の足を踏んでいるのはその辺の精神的な負荷がないわけでもありません. それなりに対策もあるので地道にがんばります.

で, プログラミングの話. まず, 最近コンテンツをリリースしたわけですが, これに関しては近い知人相手にオンラインの勉強会をやっています.

  • https://phasetr.com/mthlp1/

もちろんちゃんと作ったコンテンツですが, 勉強会用コンテンツ/講義用コンテンツとして使ってみると, いろいろ気になるところは出てきています. これ自体をコンテンツとして見るのと講義用コンテンツにするのとで やるべきことは違うのでどこまでどうするかは考えどころですが, 修正するべきは少しずつ修正していこうと思っています.

1 番修正したいのは Google Colaboratory 対応です. 当初全く想定していなかった分, 特に sympy 利用に関わる部分で明らかな不備があることはわかっているので, その辺を改めてチェックして Colaboratory 対応を進めるのも勉強会の目的です.

Colaboratory 対応を進めないといけない強い理由があります. 最終的に中高生向けコンテンツにしたいからです. 実際にコンテンツをリリースしてから質問でもあったのですが, ローカルに環境を構築するのはやはり大変です.

数学・物理への学習意欲があっても, パソコンに詳しくない中高生には大変でしょうし, 周囲の大人のカバーが得られるとも限りません. かといって環境構築手順を説明するのも大変なので, 私としてもサボりたい部分です. コンテンツのメンテナンスもできる限りなくしたいので, そう思うと環境は Colaboratory 固定にしたいのです.

これも質問をもらってようやく気付いたのですが, 世間的にはまだ 32bit os が現役で動いているはずなのです. そして Anaconda の Windows インストーラーを見ると, 最新の 2020-02 版にさえ 32bit os 版があります. 32bit os については対応しないと言い切るのも一手です. しかしそれだけで済むような話ではありません.

もちろん Colaboratory がいつまで続くかという話もありますが, その辺のデメリットは引き受けざるを得ないでしょう.

という感じで Colaboratory 対応を少しずつ進めています.

実際にリリースするまとまったコンテンツとは別に, 自分の勉強も兼ねた散発的なシミュレーションコンテンツの勉強をしています. こちらが Julia です. しばらく Rust・gnuplot・ffmpeg で作っていました. ffmpeg はいいのですが, gnuplot の部分がかなり厳しくなってきました. 歴史があるので情報はそれなりにありますが, いまの私では探しあてるのが非常に面倒です. うまく情報が取れず, 情報が取れてもうまく調整できなかったりするので, 可視化部分は Python を使ったりもしています.

ただ 1 つ簡単なシミュレーションをするだけでもいちいち 2 つの言語にまたがった処理を書く必要があり, 本当に面倒です. 1 つにまとめたいものの, Python は遅くていらいらするし, Rust だといい感じの可視化ライブラリが見つからず, 数値計算それ自体のライブラリもまだまだ整備途上です. Go で Gosl という科学技術計算系のライブラリ群はありますし, F# でも機械学習・科学技術計算系のライブラリ群はあります. ただ, 情報が少ないという欠点があります.

自分だけの勉強用ならまだいいのですが, 最終的に勉強した成果をコンテンツにしたいわけです. 私が作ったコンテンツで勉強したあと, もっといろいろ勉強してみようと思った人が 勉強するのに厳しい言語・ライブラリを使うのはどうなのか, という話があって, この辺は選びづらい状況があります.

そこで Julia に目をつけました. 標語として「Python のように書け C のように速度が出る」という話もあります. 最近流行りで人口も増えています. 情報もポツポツ出はじめ, 何より私の周囲にもやっている人が多くなってきた感じがあります. 何かあったときに私自身も相談しやすいので, 言語選びは 2 ヶ月くらい迷走していますが, 一応しばらく Julia で遊んでみようと思います.

勉強の成果は次の YouTube のリスト, そしてそこの概要欄, GitHub に載せていくので, ぜひチェックしてみてください.

  • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU

2 次元だと一般論として強い制約がついてしまう事情はありますが, 3 次元の力学系になるとかなり一般的に嫌な (面白い) 現象も出てきます. ベクトル場と積分曲線という多様体論で基本的な概念を視覚的に掴むヒントにもなりますし, 数値計算にもいろいろないいところがあります. 何より, きちんと突き詰めればこれで飯も食えるわけで, 中高生向けの教育コンテンツにうまく組み込むことを意識しながら進めていこうと思っています.

ではまたメールします.

2020-04-19 『数学原論』が来た!!/相転移プロダクション

先にアナウンスからはじめます.

ようやくずっといっていたコンテンツをリリースしました. 登録ページはまだまだ作り込みが足りないとは思っているのですが, このままではいつまで経っても終わらないので公開に踏み切りました.

  • https://phasetr.com/mthlp1/

いつも通り登録ページを眺めるだけでも勉強・参考になるようにしています. 特にもしあなたが自分自身でコンテンツを作っていきたいと思っているなら, ぜひ参考にしてください. 私自身, 勉強していて困ったこと, 具体的なニーズをまとめています. こういう具体的なニーズを拾っていくことが大事です.

ずっと有料と言っていましたが, 昨今の事情を見て無料公開することにしました. いつもそうですが, 無料公開だからといって手を抜いているわけではありません.

ただ, よくも悪くも無料公開の形にしたので, ここからさらに反応を見てブラッシュアップしていこうと思います.

また, 変な話ですが, 私自身のサイトや私または他の方の GitHub 含め, 既にどこかにコードまたはその断片があるコンテンツでもあります. ポイントなのはこの「断片」というやつで, どこか 1 コンテンツにまとめておいてあると嬉しいのに, という話があり, それを実行したのがこのコンテンツです.

的確にまとめ上げることもそれ自体極めて重要かつ大変なタスクです. コンテンツを作るときはこういう視点も持つといいでしょう.

あと, このコンテンツをネタにして, 少数の知人相手にオンラインの勉強会をすることにし, ちょうど今日第 1 回を開きました.

概要は次のページにまとめています.

  • https://phasetr.com/blog/2020/04/16/online-study-group-python-math-physics/

せっかく無料公開にしたので, ぜひ上のコンテンツをもとにオンライン勉強会をやってみてください. 本当に中高生に使ってもらうコンテンツとしてどんどん改良していきたいので, 勉強された方はぜひコメントをください. 「確かにそれはいかん」と泣きながら修正・改善します.

さて, タイトルの『数学原論』の話をしましょう. 結論から言うと 4/13 に出た次の本です.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4130639048/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4130639048&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=32530fddf854b22bd92f58281182d2dc

この本, 圏・層を軸に代数・幾何・解析, 特に代数・幾何をやろうという本で, 私が代数・幾何系のコンテンツとして思い描いていた内容が詰まっている本です. まだ全く読めていないのですが, パラパラ眺めるだけでも楽しいです.

誰でもサクサク読めるような本ではありえません. ただ, 数学のある程度大きな姿を掴むこと, いろいろな分野の結びつきを見るには適した本であることは間違いないでしょう. もしあなたが数学に興味があるなら本棚に置いておいて損はありません.

読み込んで状況を掴んだら, この知識を前提にしつつ, ここには載っていない方面の微分幾何系コンテンツが作りたいです. そのときはプログラミングも絡めて何かしたいと思っています. 微分方程式・力学系・微分幾何は相互に重なりがある分野ですし, 前二者は目下数値計算をゴリゴリやっているところです. うまい落とし所を探りつつ勉強している最中です.

何にせよ, ずっと懸案だったコンテンツがリリースできたので, これからは YouTube 講義を中心にミニコンテンツをバリバリ作っていこうと思います. 作り込みがまだ甘いとはいえ, やはりかなりすっきりしました.

ブルドーザーのようにいろいろやっていくので, 私のやり方の悪いところは真似をせず, いいところはどんどん取り入れる形であなたもコンテンツを作り, 世に問うてみてください.

ではまたメールします.

2020-04-12 力学系をやろう/相転移プロダクション

楽しくないからといって中高数学+プログラミングコンテンツの 紹介ページ作成をサボりまくっています. いつまでも負債として精神的な重荷になっていくので, さっさと対応した方がよく, やらないから余計に紹介ページ作成への精神負荷が高まるという悪循環です. ここまでわかっていてなおやらないというのが人間, という趣があります.

一応書いておくと, 数値計算に関するコンテンツを作っているわけで, その知見を貯めつつ情報も出していくのは大事で, プロモーションの一環と言えなくもありません.

言い訳はこのくらいにして, 今週の活動記録をシェアします. あと最近いろいろなところで有料コンテンツの無料公開の流れがあるので, 上のコンテンツは当初の想定とは変えて当面無料公開する予定です. 興味はあるがお金の問題が, という人, 特に中高生の人はもうしばらく待っていてください.

相変わらずずっと数値計算をやっています. 大まかにいって今週は次のような方針です.

  • 格子ボルツマン法
  • ジェネラティブアートの挫折
  • (2 次元) 力学系

まだ勉強中なので何もわかっていないのですが, ふつうのちょっと凝った数値計算だとメッシュを切る必要があり, メッシュを切るだけならともかく, そのパースや出力/可視化があまりに面倒です. 特に適当なコンテンツ化まで考えると, 手軽にプログラムを読み書きしたいのです. 一方, 格子ボルツマン法や粒子法はそのメッシュ生成の手間がある程度減るという話を見かけたので, とりあえず勉強しようという感じです.

流体は見ていて楽しい現象がたくさんあり, 流体系の計算ができるこれらの方法に興味を持っている状況です.

次の動画はネットにあった Python のサンプルコードを実際に実行した結果です.

  • https://www.youtube.com/watch?v=1mSGfU9hKvc&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=107&t=0s

動くサンプルコードを見つけたので, これを Rust 移植してプログラミングの感覚を掴んでいく作戦です.

数値計算はプログラムのバグなのか, そもそもの数学的な設定がおかしいのか, 離散化などの理論麺の問題なのか区別しづらく, きちんと動くサンプルコードを前提にそれを移植したり, 書き直したりする方向で進めるのがいいと思っています. 馬鹿みたいに雑にコードを書いては GitHub に挙げつつ, YouTube に動画を上げている理由がこれです. 他の人の勉強の参考にもなるし, おかしかったりしょっぱいプログラムについては指摘が受けられるだろうと.

最初に書いたコンテンツの続きとして何を意図していて, どんなことができるかを具体的に見せる目的もあり, いろいろな動画を事前に作っている面もあります.

格子ボルツマン法もそうですが, まだ粒子法についてまともなサンプルを探せていません. 可視化まで含めて何かいいサンプルコードをご存知の方はぜひ教えてください. C/C++ や Fortran でもがんばって読みます.

-

さて, 次はジェネラティブアートです. 次の本を眺めました.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4297104636

Rust の勉強もしたいので, これを Rust で書き直そうかと思ったのですが挫折しました. Python (matplotlib?) や JavaScript の canvas を使えばやりやすそうな気もしましたが, 面倒なのとあまり食指が動かず, いまは放置としました.

次のページを見ると, やはりこの分野では Processing がいい出来のようです.

  • http://octahedron.hatenablog.jp/entry/2017/12/07/211252

上で紹介した本はプログラムもきちんと載っていますし, 必要な範囲の中高数学の復習もあったりするので, もしあなたが興味あるなら買って読んでみるといいでしょう.

ところで, 本の中でシェルピンスキーガスケットが出てきました. 有名なマンデルブロー集合もありますし, フラクタルやら力学系の話にすれば目で見て楽しく, かつ微分方程式論だと思い, その方向を模索すべく (2 次元) 力学系で検索して見つけたのが, 例えば次のページです.

  • https://qiita.com/akoamay/items/50ecc312cd84596203c1

いままさにこれを Rust で実装しています. YouTube に動画であげてあります.

  • https://www.youtube.com/watch?v=4-35rRRQS8I&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU&index=108&t=0s

これ, 実装が非常に簡単な割に見て楽しいので, 常微分方程式系/力学系はもっとやってみたいと思っています. 常微分方程式ならサンプルコードがなくても実装が楽なので, もしあなたが面白い方程式がたくさん載っている本をご存知なら, ぜひ教えてください.

ここまで書いて思いましたが, Twitter で近そうな幾何の人にも実際に聞いてみることにします. いままさに聞いた結果がこれです.

  • https://twitter.com/phasetrbot/status/1249312176331829250

もしあなたがこの辺に興味があるならぜひ読んでみましょう. 私もこれから眺めますが, いまの私の力では面白さを感じられずにスルーしてしまう可能性もあるので, 「この辺が面白かった」というのがあればぜひ教えてください.

引き続き数学・物理・プログラミングでやっていくので, 何か面白い情報があれば教えてください. そして紹介するので, コンテンツを作ってください.

やはり何かを作っているとそのシェアという形で情報発信しやすいですね. 当たり前ではありますが, 改めて発見しました.

ではまたメールします. 数学と向き合っていきましょう.

2020-04-05 言語選択の難しさ/相転移プロダクション

仕事の関係もあるものの, 最近本当に 1 日中数値計算をしています. いま本当にフルリモートでスペックがそこそこいい Linux ノート PC がずっと手元にあるので, 仕事が終わったあとも引き続きで数値計算プログラムを書いている状態です. いいのか悪いのかわかりませんが, 完全に趣味と仕事が一体化した状態で驚くほど楽しいです.

全部きちんと記事にしているわけではありませんが, 少しは具体的な情報を出した方がよかろうと思い, 節目で次のような簡単なまとめ記事も書いています.

  • https://phasetr.com/blog/2020/03/31/rust-gnuplot-ffmpeg-1dim-wave-eq/
  • https://phasetr.com/blog/2020/04/03/rust-gnuplot-ffmpeg-2dim-wave-eq/

Rust は速くていいですね. よくある差分法の簡単な数値計算コードが for で直移植できて, しかも工夫しなくても速いはずなので本当に便利です.

適当な頻度で GitHub にコードを挙げているので, もしあなたに興味があるなら, 是非眺めてみてください.

  • GitHub https://github.com/phasetr/mathcodes

たまにサボりますが, 動画はもっと頻繁に上げています.

  • YouTube のリスト https://www.youtube.com/watch?v=Ckp-WeNICTo&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU

今年の目標はバリバリコンテンツを作っていくことで, この程度であっても作り続けるのは大事なことだと思ってやっています.

年始からずっと言っている有料コンテンツですが, 偏微分方程式パートが重過ぎると思い, もっと軽めのコンテンツに書き換えました. そもそも中高数学復習系のコンテンツであり, そんなに重くしてどうするという部分はあったので.

ただ, 四則演算をやりきれればここまでできるというのは示したかったので, 1 次元の移流方程式・波動方程式・拡散方程式・ラプラス方程式, そして 2 次元の波動方程式を紹介するのに留めました.

動画はやはり YouTube で公開しています. 必ずしもプログラムを動かせる状態で勉強するわけでもないでしょうから, そういう状態でも動画を見て楽しめるようにする意味もあります.

  • YouTube のリスト https://www.youtube.com/watch?v=IXKZAR0IcZY&list=PLSBzltjFoprZAz2zWQeXBBBDUHY-K7552

そして Python でやっていて, きつい部分がありました. 次の 2 次元の波動方程式です.

  • https://www.youtube.com/watch?v=MqjWCUIOl4A&list=PLSBzltjFoprZAz2zWQeXBBBDUHY-K7552&index=6&t=0s

これ, numpy で書いて matplotlib で動画にもしているのですが, 10×10 の格子で 300 ループしかしていないのに, 信じられないくらい重かったです. 何度も回す気も失せたのできちんと時間をはかっていないのですが, そんなに時間がかかるの? とうんざりするレベルです. Julia 投入, 割と真剣に検討するべきかもしれません. 最近本も出たのでそういうタイミングなのかとも思ってしまいます.

ただ, 仕事にも関わる Rust・Haskell と並行して新しい言語を勉強しつつ, 数値計算自体の勉強をしつつ, 数学・物理・プログラミングにコンテンツを作るのも大変なので, どうしたものかという感じ. コンテンツの Julia 版作ってくれる人いないかと探したいレベルです.

ちなみに Julia は最近数学者・物理学者もよく使っているようで, 黒木玄さんは Twitter でよく Julia による数学・統計学コンテンツを放流しています. その辺の資源も使えるようになるので, いま Julia はかなりいい選択肢だと思います.

もちろん将来のことはわかりませんが, 何か 1 つの言語に慣れておけば他の言語を勉強するときも圧倒的に楽になるので, 遊び倒しやすいネタ・言語から入るのは本当にお勧めです.

スケジュールは遅れに遅れていますが, 新たなコンテンツのリリースと, もっとバリエーション豊かなミニコンテンツ群を作る方針は変わっていません. もうしばらくお待ちください.

今回はこのあたりで. ではまたメールします.

2020-03-29 数値計算が楽しい/相転移プロダクション

最近, 本業も忙しいと言えば忙しいのですが, それ以上に数値計算が楽しくてコンテンツリリース用の作業をサボりまくっています. note のサークルの準備なども止めてしまっていて申し訳ないのですが, 何にせよ, 中高数学と物理に向けた動きにとっては必要なことでもあります. 気長に待っていてください.

まず, 今度リリースするコンテンツは Python で作っていますし, コンテンツとしてはメインの言語は Python にする予定ではいます. しかし, 大した計算をしていないにも関わらず, Python は既に遅くてイライラしています. 耐え切れないので, いま勉強も兼ねて Rust・Gnuplot・ffmpeg でコーディング・可視化をやっています.

  • https://phasetr.com/blog/2020/03/28/pyhton-vs-rust-gnuplot-ffmpeg-1dcfd-burgers-equation/

上記記事にもあるように, GitHub にコードを上げていますし, YouTube にも動画を上げています. GitHub はともかく, YouTube のチャンネルはぜひ登録して眺めてみてください. 今度公開するコンテンツについても, それで作れる動画については YouTube に公開しています. どんなことをするのか興味があれば, そちらも眺めてみてください. 特に次のリストにまとめています.

  • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU

チャンネル登録は次のリンクからどうぞ.

  • https://www.youtube.com/channel/UCZ0p3rtw65Kw7BeR-hdndMw?sub_confirmation=1

OpenFOAM による計算でもない限り, 必ずしも見ていて楽しい動画だとは思いませんが, 写経しただけのコードとはいえ, 書いたコードが動くと作っている分には楽しいです.

いくつか買ってみた本を読んだあと, 工学的なゴリゴリの数値シミュレーション以外に, ゲーム系の物理 CG にも手を出してみたいのですが, どうしたものかと思っています. ちょっと調べると Autodesk の Maya がデファクトスタンダードのようですが, 高くてつらいです. 中高生ならかえって教育機関・学生向けプログラムが使えるのかもしれませんが, 私が使えません. 積んだままの Processing の本も改めて読んでみようとは思います.

CG アート系の人達が何をどうしているかも知りたいところですが, その界隈に知り合いがいないし, 何だかんだリアルの交流の方が濃密になっていい一方, いまの状況でそれはない, というのもあり, いろいろ考えています.

最近, 社会の状況に合わせて, 自学自習とそのためのコンテンツ整備・提供が進んでいます. Twitter で相互フォローで, 何度かやりとりしたこともある物理学者による, 物理系のコンテンツも紹介しておきます.

  • https://twitter.com/cometscome_phys/status/1243868619034873856?s=21
  • とりあえず「物性実験家のための無料でできる第一原理計算入門」の雛形を作った。
    • https://github.com/cometscome/DFT

まだできたばかりで整備中のようですが, 興味があれば眺めてみてはどうでしょうか. 最近数値計算界隈ではやりの Julia で作っているようです.

Julia と言えば, 本が出るようです.

  • https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029055/

この間地雷を踏んだばかりのコロナ社なので非常に不安なのですが, 興味はあります. いまはいろいろな都合から Rust・Gnuplot・ffmpeg で攻めていこうとは思いますが, もしあなたが Python に食指が伸びないなら, Julia はいいかもしれません.

とりあえず, 今は買った本を中心に, いままで勉強したことがない有限体積法・格子ボルツマン法・粒子法をやろうと思っています. 工学というか, 企業での応用などを考えるとおそらく有限要素法がいいのではないかと思うのですが, これはメッシュを切り, それを読み取り, さらに出力する部分を書く, いわゆるプリ・ポストの部分がまず大変なのです. プリ・ポストの処理を書きたいわけではないので, とりあえずその手間が少なくできそうな計算手法を勉強しています. いつかはやらないといけないとは思うのですが.

そして, 改めて数値計算を再勉強していて, これは本当に勉強がつらい分野で厳しい気持ちになっています.

  • https://twitter.com/phasetrbot/status/1243864733762998272

数値計算のプログラム、何をもって正しいとすればいいかもわからないし、本当にやりづらい。むしろわからないからこそ数値計算させるという趣もあるので、とにかく厳しい。Cでいいからコードサンプル欲しい。でも産業廃棄物はやめて欲しい。市民なのでとにかくわがままを言う。 あと、線型代数パワーも込めて有限要素法をやるのもいいとは思うのだが、あまり大量のコードを書きたくない問題がある。これに限らず、サンプルあるやつ1次元と2次元ばかりで3次元も書け感あるし、かと言って3次元つらい問題もある。

ある程度寿命の長いコンテンツを作るという前提で, 言語まで含めて何をどう作るかはかなり悩ましいです. それもあってプログラム系はあまり作ってこなかったのですが, もうそうも言っていられる時代ではないという気分もあります.

何はともあれ, いろいろ実験していきます. さすがに来月には YouTube 講義も本格化させたいので, コンテンツリリースもがんばります.

ではまたメールします.

2020-03-22 物理の数値計算をやっていく/相転移プロダクション

今回はビジネス系のネタを最初に持ってきます.

いい加減やるやる詐欺になりつつあるので, 中高数学とプログラミングのコンテンツの販売に向けて案内ページの作成をはじめました. まだ書きかけですが, 次のような感じで作っています. もしあなたが興味あるならぜひ見てみてください.

  • https://phasetr.com/members/myfiles/file/math_python_programming_course_highschool_lp_01.html

念のため書いておくと, まだ販売ページは作っておらず, リンクもありません, リンク先に飛んだところで売り込みがかけられるわけでもないので, 安心して (?) 眺めてください.

いつものことですが, このページだけ読んでも意味があるようにしています. 私自身いまのコンテンツ事情に不満があり, それを解消するための第 1 歩と思って作っていて, それが具体的に何なのか, 今回のコンテンツは何を意図してどう解決したのかを語っています. もっと言えば私の勉強ログでさえあります. 自分の勉強ログ自体コンテンツになると知ってほしいというのもあります.

他にもこの辺を勉強するときに何にどう困るかを私が先に体験しておいたので, もしあなた自身これから勉強しようと思っているなら, 先にハマり所がわかって便利でしょう. 私は子どもの頃, まわりの大人に理工系の相談ができなくて本当に困っていたので, それができる大人を増やすのが 1 番の目的です.

今日は何か Twitter で数学の勉強に関していろいろ適当なことを書きました. いくつか面白い反応もあったので引用しておきます.

  • https://twitter.com/phasetrbot/status/1241480162434117633

数学の話、数学というより日本語がまともに読めていない問題が極めて大きいと思う。理系、文章読めなくても計算できれば何とかなってしまうから、根本的に文章を読む訓練の問題があると思っている。熱力学が難しい理由も物理法則が方程式ではなく文章になっているからではないか説を考えている。

数学理解の上でセミナーが大事というのは、理解の確認をするためには当人にそれを自分の言葉で語らせると見えやすくなることを使っていて、時間をとってまとめて喋らせる機会をセミナーで作っているに過ぎない。要は出力確認で入力の正当性を確認している。

中学生や高校生に数学を教えていると,文章から図に翻訳することが苦手になっている生徒に多数遭遇してきました。

  • https://twitter.com/phasetrbot/status/1241523981640798208

数学ができない原因の一つが国語の読解力という話、私が知る範囲の物理の人間を見ていると、少なくとも大きな要因の一つなのだとは思う。計算ができても日本語の文章が読み書きできる保証はなく、読解力が上がる保証も特にない。

  • https://twitter.com/phasetrbot/status/1241525802606268416

本当に不思議なのだが、他人にいい加減なことを吹聴して数学関係者が激怒する以外に数学の理解が甘くて困る事案、何かある?学部の時、実験のレポートで微分方程式を解く時に「解を何とかと仮定して定数を求める」と書かなかっただけで「いい加減だね」という工学系の教員がいるくらいの状況があるのに

これ、学部2年のときなのだが、相手が何を言っているのか本当にわからなかった。あと、学部3年の固体物理で電子工学出身の担当教員がベクトルの内積をベクトルで割った量をベクトルと呼んでいることもあった。これでもNatureに論文を通したりしている.

上で紹介したコンテンツと合わせて, しばらく物理の数値計算にフォーカスをあてていろいろやっていこうと思います. その一環として前回ブログの記事も紹介した本はいま C から Rust 化しています.

  • https://github.com/phasetr/mathcodes/tree/master/fundamental_for_CFD

ここに Rust のスクリプトをあげているので, 興味がある人は見てみてください. ほぼ C の直移植です. Python だとある程度速度を出すために numpy のブロードキャストで書く必要があり, それを合わせるのが大変だったので Rust での直移植に変えました. C よりはよほど書きやすいです.

いまは動画を作るポスト処理を CSV からの matplotlib+ffmpeg での mp4 にしています. 動画を作る部分が重くて (遅くて), もう少し何とかならないかと思っています. もしあなたに何かいい案があるならぜひ教えてください.

あと, この間書いた note のサークルですが, 人柱として有料での質問箱みたいなのを実際にやってみようと思い, いま準備を進めています. 人に挑戦しろと言っている以上, やはり自分が先陣を切ってやらないといけないでしょう.

他にもいろいろやろうと思っていることはあります. 少しずつ進めていくので, ぜひ参考にしてください.

ではまたメールします.

2020-03-15 数学質問箱/相転移プロダクション

最近, 仕事関連で勉強が必要なことが多く, コンテンツ制作に時間が割けていません. 生活がかかっているので手が抜けない問題もありつつ, これはこれで楽しいのもあり, コンテンツリリースが伸びに伸びていてよくないのですが.

一応その勉強の記録もつけて記事や成果物 (コード) にしているので, 興味のある方はどうぞ. まずは買った本の書評的なところか.

  • 書評記事: 「今まで読んだ中で最低の本: 肖鋒, 長崎孝夫, 数値流体解析の基礎 – Visual C++とgnuplotによる圧縮性・非圧縮性流体解析 2020/1/9」
  • https://phasetr.com/blog/2020/03/12/book-review-fundamentals-of-cfd/

この本のコードを Python で書き直していて, 次のリポジトリに置いています.

  • https://github.com/phasetr/mathcodes/tree/master/fundamental_for_CFD

計算結果のアニメーションは YouTube の次のリストにまとめているので, ぜひ眺めてみてください.

  • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFopragPoCA2WAfkYzJkoNq-4Ms
  • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU

これからも継続的にプログラムを書いて動画にしていくので, ぜひ YouTube チャンネルにも登録してください. 短い動画だと 10 秒ありません.

また, この間も具体的な (有料) コンテンツを紹介しましたが, 数学科のゴリゴリの数学はともかく, 物理を勉強するときにはプログラミングはかなり役に立ちます. いろいろな点から数値計算は本当に勉強しにくいのですが, その辺は整備を進めていきます. 今後, 関係する情報も増やしていく予定ですし, 何でもいいので, 1 つ言語を決めて勉強してみてください.

私の好みではありませんが, 言語としてとりあえず Python をお勧めしておきます. 機械学習などで入門系のコンテンツが世に溢れているからです. 数学とも絡めつつ, ある程度入門的なコンテンツが揃っているのは Python だろうと思います. ちょっと何かするだけですぐに速度がほしくなるので, そういうときは C/C++ または Fortran になるのでしょうが, いきなりこれはハードすぎます. 環境設定も大変なので. 何がいいか・適切か判断できないならとりあえず Python でいきましょう.

私もいままさに Python による数学という点のコンテンツを作っています. Python の解説も多少はつけていますが, きちんと解説しようと思うとそれだけで本 1 冊ですし, バージョンアップ対応も大変なので, それは世間のコンテンツにお任せすることにしました.

プログラミング利用は来年以降の物理への展開を意識していますが, 中高数学の勉強への展開もあります. 先のコンテンツもそこを狙っています. そもそも中高数学の勉強としていい (らしい) 本の話があったので, 念のため共有しておきます.

  • https://twitter.com/mathedr/status/1237375140905676801?s=21

えーーなんと小倉先生この流れで『入門問題精講』紹介されてたのか。 私も教科書だと勉強しにくいと思う人にはこれオススメと言おうとしていた。 意見が合いすぎて自分の考えに自信出てきた笑(てか何回引用RTしてるんだ

  • https://twitter.com/yuji_ogura_/status/1237331559889301509
  • 新高校3年生、高卒生
  • 教科書以外だと「入門問題精講」がオススメです
  • 「分からない」というのは成長への入り口です!
  • ごまかさずに書いているので、難しく感じる部分もあるかもしれませんが、諦めずにチャレンジしてください
  • あなたのさらなる成長、応援しています!

時間がなくまだ私自身は中身を確認できていないのですが, MathEdr さんはかなり信頼できる人なので, この人の発言ももチェックしておくといいでしょう.

そして本題の「数学質問箱」です. 有料のサービスで, 「グレブナー基底大好き bot」さんが主催しています.

  • note のサークル https://note.com/groebner_basis/circle
  • Twitter の該当コメント https://twitter.com/groebner_basis/status/1237302490732748801?s=21

【月額・数学質問箱】 月額1000円で数学の質問し放題の「数学質問箱」を始めましたぶな。 現在は「グレブナー基底」の質問の回答をしていますぶな。 今度は質問できるジャンルが増えていく予定ですぶな。 あったらいい数学分野などありましたら、 リプでお知らせくださいぶな。

グレブナー基底 bot さんは次のラノベを書いている, かなりのイレギュラーです.

  • 妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。
  • https://www.amazon.co.jp/dp/B01LZHYKVK

私は一度お会いしたこともあって, 叶数理さん主催の同人誌を一緒に書いたこともあります.

  • https://next-nexus.booth.pm/items/1157480

代数に関しては龍孫江さんが担当するとか何とかいうのを見かけました.

  • https://www.youtube.com/channel/UCO34XpHxdG8P2n5aTPXSaZQ

龍孫江さんも YouTube や note でいろいろコンテンツを作っているので, もしあなたが代数に興味があるなら追いかけるといいでしょう.

ただ, 私のメルマガを読んでいる方はあまり代数代数した代数方面に興味が強いとは思えないので, その辺が難しいかもしれません. ただ先の note には集合論もあったので, 数学の基礎としての集合論や位相には対応してくれそうなので, そうしたところに興味があるなら参加してみるのも一手です.

ちなみに, この手のサービス, 私がやるなら解析系で, 解析のための線型代数みたいなところも守備範囲に入ります. 興味がある方が多ければやろうと思わないでもないのですが, 需要あるのでしょうか? 通信講座でも質問が大量に来たときにさばくのが大変になったことがあり, どういう塩梅でやるといいのかが見えていない部分があります. 人柱としてやってみるべきだ, という話もあるので, ずっと検討していることではあります.

やってほしいという方が多ければやろうと思うので, 何かあればメールへの返信なり, 読者アンケートなりで要望をあげてもらえれば.

ではまたメールします.

2020-03-08 状態に関する物理と数理/相転移プロダクション

先週は仕事が立て込んでいてあまり何もできていません. 家に帰ってからも仕事関連の勉強をしています. 知見自体はたまっているのですが, なかなか提供に足るまとまった形・レベルになっていません.

ひとまず仕事に関わる勉強ついでにやっている, いろぶつ熱力学の査読メモツイートと, 量子系の状態概念に関するブログの記事を紹介しておきます.

  • 熱力学での状態概念の扱い「いろぶつ先生こと前野昌弘さんの熱力学」の査読雑感その 3
  • https://phasetr.com/blog/2020/03/02/irobutsu-thermo-dynamics-3/
  • ケットベクトルとは何か?量子系の状態概念の数理
  • https://phasetr.com/blog/2020/03/08/what-is-ket-vecotr-concept-of-states-in-quantum-physics/

いま並べてみて気付いたのですが, 両方とも状態概念の話でした. 平衡状態と基底状態の数理については私もそれなりに専門的なところに触れたので, いろいろ言いたいことはあるのだと改めて感慨深いです.

あと, コードを全て公開できているわけではないのですが, OpenFOAM による数値実験, 自前で Python を書いた数値実験やアニメーションサンプルは, 次の YouTube のリストに突っ込んでいます.

  • https://www.youtube.com/watch?v=8RIrq4j8Qg0&list=PLSBzltjFopraTJUYDMXnj1GdYCdR0QyzU

もしあなたが数値計算主体の物理や数学の勉強に興味があるなら, ぜひチャンネル登録してみてください. 継続的にいろいろやっていく予定です.

コンテンツの制作は一通り終わったものの, 販売向けの準備が全然できておらず, その方面の状況報告もできていません.

コンテンツの追加というか作り直しも入るのですが, 販売プラットフォームも再検討していて, いまごろになっていろいろ悩んでいます.

ちょっと試してみたいと思っているのが次の Udemy です.

  • https://www.udemy.com/ja/

もともとアメリカの会社だったのをベネッセが買い取って, 日本国内向けの展開もあります. これをやってみようかとも思っています.

ただ, Udemy のコンテンツは基本が動画で, ある程度しゃべらなければならず, 吃音の私には厳しい面があってどうしたものか, という悩みがあります.

買う人にとって音声が聞きづらい動画でしかないので, 私の言語障害は文字通り受講の障害にしかなりません. Amazon での DVD 販売でもしゃべっていて, それで駄目というコメントをもらっているわけでもないので, ある程度はどうにかなるか, と思わないでもないのですが.

それはそれとして, Udemy にも「文系向け Python での統計学」みたいな講座もあります. 時々 90% オフとかいう異常な値段になるようで, この辺の話に興味がある人は Udemy を受講してみるのもいいのではないでしょうか. ちなみに, これからプログラミング系の話はかなり強化していきますし, しばらく Python は 1 つの軸になる言語だろうとも思うので, Python の勉強をしておくと私の情報も受け取りやすくなるだろうと思います.

中身を見ていないので良し悪しはわかりませんが, レビューはいいようなのでとりあえず次のコースを紹介だけしておきます.

  • https://www.udemy.com/course/python-beginner/

あと 3 日間は 24000 円が 1620 円とかいう異常な値引き状態のようです. 30 日間の返金保証もあるようですし, とりあえず買ってみてもいいのではないでしょうか.

もしあなたが自分でコンテンツを作ろうとしているなら, 「このくらいの内容でこの値段帯で出せるのか」という発見にもなるでしょう. あと数日は異様に安い値段で買えるので, 多少なりとも自腹を切ってみるのも大事です.

ではまたメールします.

2020-02-29 中学生受講者に向けてメッセージ/相転移プロダクション

相転移プロダクションの関根良紹です.

現代数学観光ツアーのアンケートで中学生からのコメントがあったので, それに答えるのが今回のメインです.

いつも通り本題はあとにして, まずはシェアしたい情報から. 今週はあまり報告すべきネタ・進捗がないなと思いつつ, 足立区の理工系教育提案でまとめた情報があったことを思い出し, まずはそのシェアをしておきます.

区議・職員の方に共有した PDF を次のリンク先に貼っておきました. 興味があればぜひ読んでみてください.

  • https://phasetr.com/members/myfiles/file/2020-02-29-081234.tmp.pdf

プログラミング教育と教育系 YouTuber として有名なヨビノリたくみさんの情報です. A5 で 5 ページ程度なので絶対的な量は多くはありませんが, メールの文章に書くのは長いので PDF にしてあります.

次は以前も共有した, いろぶつ先生の熱力学の教科書の査読に関する雑感を Twitter でつぶやいた内容もまとめです.

  • https://phasetr.com/blog/2020/02/29/irobutsu-thermo-dynamics-2/

もしあなたが物理・数学を勉強しようとしているのなら, 勉強するうえでの参考になると思います.

最近は OpenFOAM によるシミュレーションの動画を毎日投稿しています. まだほとんどチュートリアルをやっているだけで, 必ずしも (いまの私にとって) 面白いシミュレーションばかりではありません. しかし物理とシミュレーションは今後の活動のメインにしていく予定なので, 地道に準備を進めています. リストにしてあるので, 気になる動画だけでも眺めてみると楽しいでしょう.

  • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFoprYN0Rh3tLmoHWqjPRYwJukv

ぜひチャンネル登録もしてみてください. やろうと思って挫折しているシリーズもいくつかあり, その辺の取り組みの死骸も見えます. もしあなたが自分でコンテンツを作ろうと思っているなら, その辺の試行錯誤と挫折感, とりあえずいろいろやってみること, 誰でも見える形でログを残しておく意味なども考えてみてください.

さて, 中学生から現代数学観光ツアーのアンケートに関する話です. 何度か書いていますが, これは結果的にいろいろ設計をミスしているので, いい加減刷新したり, そもそもとして新たな無料講座を作るなりしないといけないと思いつつ, 何もできていません.

現代数学観光ツアーも, 中高生の頃の私が読んだら喜んだだろうと本気で思って作っていますが, どう考えても一般的ではないので.

とりあえず, 中高生も読め, これまた面白いはずだと信じている講座として, 無料講座として公開している次の講座をお勧めしておきます.

  • 応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう 中高数学駆け込み寺
  • https://phasetr.com/mrlp1/

現代数学観光ツアーはきつすぎると感じたらぜひこちらを受講してください.

通信講座一覧ページも念のため.

  • https://phasetr.com/blog/2014/06/09/トップ固定記事:メルマガ・数学カフェ・その他/

もう 1 つ, 上記「自然を再現しよう」の続編として, いままさに準備を進めている, 仮題「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」があります. いったんレビュー結果も反映し終わっていて, 今回のコンテンツとしてはいったん完成はしています.

今後, これは本当に中高生向けコンテンツを作る上で, 叩き台にしていくコンテンツという位置づけですし, 本当に中高生に受講してもらって感想を聞きたいこちらの事情もあり, メールなり何なりでコメントくれればコンテンツをお渡しするので, 興味があればぜひ連絡をください.

よくも悪くも, 深く味わうにはプログラミングの知見が多少必要になってしまうので, ふつうの中高生が味わい突くすのは大変とは思いますが, 環境構築なども含めて実際どのくらい大変なのか, それはそれで知りたいところです.

ちなみに, いまのうちならレビューの名目が立ちますし, 中高生には無料でプレゼントします. もしあなたが興味を持っているなら連絡をください.

早く販売まで持っていって気分的に身軽になりたいですね. がんばりましょう.

ではまたメールします.

2020-02-22 「わかりやすい」の意味/相転移プロダクション

本題の前に諸々のコンテンツ制作について, 現状を報告します.

中高数学・プログラミングに関するコンテンツは, いったんレビューとその対応も終わって, いまはコンテンツ紹介用のページを作っているところです. その状況報告をできれば, と思っていたのですが, タスクの進捗が悪く, まだお見せできるレベルの内容がありません.

今月販売まで行ければいいなと思っていましたが, スケジュールがずれにずれています. 焦ってゴミができても意味がないのでじっくり進めます.

昨年末, 体調不良で流れた地元の理工系教育向け提案で, ようやく区役所の人と話ができました. キャリア教育の視点から進めるとどうか, という提案を頂いたので, それに対する素案を作ってお送りしたところです. これも地道に進めます.

タイトルや中高数学コンテンツとも絡む話として, やはり来年以降の物理の入門系のコンテンツに向けて, プログラミングというかシミュレーションも強化しないといけないと思っています. それで, OpenFOAM による数値シミュレーションを, 勉強ついでに Youtube に放流してみることにしました.

  • OpenFOAMによる数値シミュレーション
    • https://www.youtube.com/playlist?list=PLSBzltjFoprYN0Rh3tLmoHWqjPRYwJukv
  • 対応する設定ファイルを置いてある GitHub のリポジトリ
    • https://github.com/phasetr/OpenFOAM

流体の代表的なシミュレーションを一通り動かしつつ, チュートリアルの内容をいろいろな領域で数値実験し直し, さらには電磁気に進みたいと思っています.

OpenFOAM に詳しい方がいらっしゃったらいろいろ教えてほしいです. 物理の教科書に書いてある, 基本的な系に関して一通りシミュレーションを作ってみたいです. 乱流のような大規模計算が必要な系をどう処理するか, そこまで難しくなくとも無限系をどうシミュレーションするかなど, いろいろな問題があることはわかっています. 時期的にリアルの勉強会をするのも厳しいので, オンライン勉強会で講師役やってくれる方いたらぜひお願いします.

さて, 本題です. 何かというと, 現代数学観光ツアーのアンケートで次のようなコメントが来たのです.

現代数学観光ツアーに期待することを教えてください 兎に角、物理数学が分かりやすいこと

私はこの「わかりやすい」というのがいまだによくわかりません. そもそもとして「わかる」「わかった」というの自体がよくわからないのです. 生まれてこの方, 何かがわかったと思えた経験は 1 度しかありません. 大学受験の頃, Z 会の問題を解いていて, 合計で 20 時間近く考え続け, その末にようやく解けたときです. もう 20 年近くも前のことなのに, 「これが『わかる』というやつか」「確かにこれは感動的」と思ったことを 今でも覚えているほどに印象的でした. そしてこれくらいしか経験・記憶がありません.

はじめて勉強したときすっきりせず, 何年か経ったときに「確かにそれはそう」, または「何でこれがわからなかったのだろう」という感じで, 勝手に理解が深まっていたことは何度となくあります. ほぼいつも長いこと「わからない」を続けて, 年単位で関連する勉強や実践をいろいろやり続けた末に, レベルアップによっていつの間にかクリアしていた, そういう経験しかなく, 強いていえば全てがほぼ例外なく私にとっては「わかりにくい」のです.

アンケートを見ていてわかりやすさを求める人は確かに多いのですが, わかりやすさとは何なのか, いまだによくわかっていません.

ちなみにちょうど昨日, 数学者と Twitter で次のような話をしていました.

  • https://twitter.com/pueeeeeeeb/status/1230540298847059968
  • https://twitter.com/darkjojonjon/status/1230740664175882240

丁寧じゃない本は著者が無能なだけでしょ、特に誤植だらけの本は著者の注意力が足りないと評価している

そういう風に思っていた時期が私にもありましたが、知識が十分にある人が読む場合は余り丁寧に説明しない方がわかりやすい、ということが往々にしてあるんですよね。

そもそもとして丁寧さ自体が状況、相手が誰かに依存する概念でしょう。ゴリゴリの専門家相手なら気分の話を丁寧にした方がいいでしょうし、学生がゼミをやるなら証明の細部を丁寧にした方がいいでしょう。その辺の定義を明確にしない時点で数学スタイルの議論は発散してしまいます。

確かに元のツイートはどういう意味での丁寧さを論じているのかわかりませんね。私は証明の細部を書くか書かないかという丁寧さという意味で捉えましたが。

3 番目が私のコメントです. 丁寧さであってわかりやすさではありませんが, 人によって意味が大きく変わりうる未定義用語でふわっと話していると, まともに意思疎通できません.

証明や議論を丁寧に書いてほしいという意味での「わかりやすさ」なら, それはそうだとはいつも思います. しかしこの証明の丁寧さが人によって変わるのです. 例えば, 現代数学探険隊では後半のある程度まで進んだところで, 「ここまで来たらこのくらいの記述の粒度でいいだろう」 と思ったところに「もっと詳しく書いてほしい」というコメントが 何度も来たことがあります.

ネタ自体が本質的に難しくなっている後半部分で, 私自身これは難しいだろうと思ったところ, あえていえば本当に難しいところは丁寧なのですが, 「ここまでの議論で身についているはず」, 「これはもう多少省略しても大丈夫だろう」という ごく基本的なところでとにかく徹底的につまづいているコメントが来たのです.

上の 4 番目のじょんじょんさんのコメントにもあるように, くどいと逆に読むのが疲れてわかりにくくなることがあり, それでさらっと省略した部分に初学者がつまづくのです.

話がずれてきたので戻しましょう. 最近コンテンツを作る方に回ってほしい, というメッセージを出しているので, それとも合わせて書きます. 「わかりやすさ」をどこにどう設定しているのか, それをはっきりさせましょう.

例えば私が作っている無料コンテンツは, たいてい「大きな姿を掴むこと」を目的にしています. 高いところから全体像を見ることに特化しているので, 細部の説明はほぼありません. 細部まで知ろうと思って読むと, わかりづらいどころか何もわからないでしょう.

細部が詳しいコンテンツは既存の教科書を勧めればいいと思っているので, リストを作って紹介しています. いろいろあると悩むというのもよくわかるので, 最近はあえて数冊に絞って紹介する機会も増えています. さらに前提が揃わない本をいろいろ買ってつぎはぎで読むのも大変だろうから, ということで現代数学探険隊という学部レベルの解析学の多くを 1 つにまとめた通信講座・コンテンツを作っています. いろいろなレベルのいろいろなわかりやすさを意識してコンテンツを作る必要があります.

物理数学・教養数学ももっといろいろなコンテンツを作りたいと思っていますし, 足りていないとも思っています. 既にあるコンテンツはそれとして勧めつつ, もっといろいろな人がいろいろなコンテンツを作ってくれないかと思っていて, それで今年から「みんなもコンテンツを作ろう」という話をしはじめています.

私が目下 1 番やりたいと思っているのは, 各種の具体的な計算をとにかく丁寧にやっていくコンテンツです. 上でも書いたように, 理論は長期間の没頭でその世界観を馴染ませる必要があり, コンテンツでどうにかする話ではありません. そして理論に関しては既存のいい本がいくらでもあります.

全体像についてはそちらに任せて, ピンポイントで計算を追いかけるコンテンツがほしいです. これなら, 1 つのコンテンツも短く小さくなり, 作りやすくなる, というのもあります.

いま数学系のコンテンツ制作を一所懸命やっているのも, 細かい理論よりもまずは強引に計算をやり切る腕力で捻じ伏せろ, という話をあまり聞いてもらえず, 理論の勉強を一所懸命しようとする人が多いからです. その要望に応えるためです.

やるべきことはたくさんあり, 理想は遠いです. 一歩ずつ進んでいきましょう.

ではまたメールします.

2020-02-16 時間を奪う/相転移プロダクション

ここ最近, 割とお金の話をたくさんしてしまっていて, 数学と物理の話が聞きたいのにもううんざり, という人もいらっしゃるようです. 情報を出す方向として「一緒に数学・物理をやる人を増やそう」から 「一緒に数学・物理のコンテンツまで作る人を増やそう」 に少しシフトチェンジしたこともあり, ちょっと申し訳ないとは思っています.

この間 Twitter でいろぶつ先生の熱力学の本の査読の話をしたら, 物理の人と少し盛り上がったのでその話をまとめようかと思ったのですが, まだまとめきれていません. 今回は各種メールの返信やアンケートから, 私にとっては同じ, もしくは関連する話題が振ってきたのでその話題にします.

まず来た内容を転載します. その 1 はミニ講座, 中高数学駆け込み寺に関して来たメールです.

これまでの記事, なかなか時間が取れず, 未読のままとなってしまっておりました. 最近ようやく生活が落ち着いてきたので, この機会にフォローさせていただきます.

二月中に, こちらのメールのアンケートを返信させていただきます. ペースについていけず恐縮ですが, 今しばらくお時間をいただきますようお願いいたします.

その 2 はこの間のメルマガへの返信です.

なお, 物理の本を読むのなら, 物理の数学は付録の部分の数学で十分と書かれていましたが, この付録の部分が十分読者に答えていないものが大部分ではないでしょうか. おそらく多くの方の意見ではないかと思っています.

これだけ見ると関係なさそうに見えるかもしれません. もちろん直接的には関係ありませんが, 「時間」の観点からは似た話題なのです. コンテンツを作ろうという人だけではなく, コンテンツを受講しようという人, 何か勉強が必要または勉強したいという人にも関係ある話題です.

まず前者に関して明白なのは「時間が (取れ) ない」ことです. 中高数学駆け込み寺は 1 回 5-10 分で読み切れる分量を意識して作っています. この時間で読み切るためには細部を気にしてもらっては困りますし, とにかく読み切って大きな姿を掴むことに集中してほしいという体にもなっています.

つまり 5-10 分の時間を作るのも厳しい, そういうコメントなわけです. これがいいとか悪いとかではなく, 「それはそう」という話で, その辺の話をするのが今回の目的です.

状況はいくつかありえます. 例えば家で老親の介護をしている人は気が休まらず, 本当に 5-10 分の時間さえ作れないでしょう.

そうでなくても, いろいろな状況があります. ものすごい忙しくなると時間・肉体以上に精神的な余裕がなくなります. そうなると少しの隙間時間であっても本当に小休憩を入れたくなりますし, そうするべきでもあります.

そしてさらに, たいていの人は数学や物理を知らなくても困りません. 勉強するモチベーションはあるのかもしれませんが, 必要性に乏しいのです. 優先度が極めて低く, 上げる根本的な理由もありません.

特に中高数学駆け込み寺の受講者となると, 数学が苦手だったりもう忘れてしまって勉強するにも時間がかかるという人も多く, 数学する精神的なハードルも高いのです. 5-10 分の勉強時間を作るためにも十分な精神的余裕・準備が必要です.

コンテンツの受講時間だけは 5-10 分であっても, それにいたるもろもろの時間・余裕が必要で, それがない・取れない問題です.

このあたり, 何というか, いわゆる自己啓発というか, 時間管理みたいな話もした方がいいのだろうかとも思っています.

ここで少しコンテンツ作成側の人向けの話をします. 何かというと, コンテンツを受講してもらうために, 時間という相手の大事なモノをもらう必要があるのです. 大事な話・面白い話をしているからといっても, それを受け取ってもらうため, 楽しんでもらうために時間を出してもらう必要があります.

これまでの話は大事なモノとしてお金しか挙げていませんでした. 実際には無料のコンテンツであっても時間をもらっています. 可処分所得という概念がありますが, 仕事など生きていくのに必要な時間を差し引いた, 可処分時間とでも言うべき概念が考えられます. そしてその可処分時間をもらっています. 「時間を奪っている」とさえ言えるでしょう.

どうすればその時間をもらえるか, きちんと考える必要があります. そして「いい時間を過ごせた」と思ってもらえるような, 時間を無駄遣いさせない良いコンテンツを作る必要もあります.

このあたりに関しては, 先日からメルマガでも書いているプログラミング系コンテンツが作り終わったので, プロモーションの形で具体的にどうすればいいか, 私がどうやっているかを紹介します. もしあなたがコンテンツ制作に興味があるなら, ぜひそれを追いかけてみてください.

ここからその 2 の話です. 再掲しましょう.

なお, 物理の本を読むのなら, 物理の数学は付録の部分の数学で十分と書かれていましたが, この付録の部分が十分読者に答えていないものが大部分ではないでしょうか. おそらく多くの方の意見ではないかと思っています.

まず, この認識が全然違います. 何が違うかというと時間の使い方の問題であり, どんな環境でどう時間を使っているかとも言えます.

まず結論から言えば, 単純な数学知識ベースの議論では, 本当に付録に書いてある内容しかないのです. 数学科の人が物理の本が読めるかという問題でもあります. 数学の本で証明を読み込んでもあまり意味はありません. いろいろな定理を知っているかどうかにもそれほど意味はありません.

問題は物理の実際の議論の中で必要な数学を見極めて使えるようにすること, ハードな計算に耐える計算力です. これはまさに物理をやることそのものなので, 付録ではなく本文を読む以外に勉強のしようがありません.

実際の物理ではいろいろな近似を使う話もありますし, 数学的にはおかしい, 数学としては暴力的な議論・計算もあります. 強いていうならやるべきは付録の充実よりも, 本文での計算のフォローを増やすことです.

ちなみに, 数学だと付録だけで厳しいことはよくあります. 例えば基本的な微分積分や線型代数の本を読み込んで, まずはその世界自体に親しむこと, そしてそれ以上に微分積分や線型代数の証明の詳細が追えないことにははじまらないからです. 数学の付録はその辺はカバーしている前提での, 本当に単なる知識ベースの整理でしかありません.

物理の話に戻りましょう. ここから時間とその使い方の問題です. まず大前提として, いくら優れた指導者が適切な指導をしてくれたとしても, 当人が勉強しなければどうにもなりません. この点, 例えばスポーツと同じです.

勉強していないと言いたいのではなく, 絶対量としての勉強の時間が足りていないのです. 1 月勉強しないといけないところを 1 時間しか勉強していないのでは, 何をどうしたところでできるようになるわけがないのです.

はじめに書いたように, たいていの人は物理をやらなければいけないモチベーションも環境もありません.

究極的な比較対象としては物理学科の学生です. 極端に言えば, たいていの学生は物理をやる気はなくても 単位取得して卒業するモチベーションはあります. 少なくとも卒業できる程度には物理をやる必要があります. この強制力があり, 困ったときには適当な助けが得やすい環境があります. このカンフル剤で無理やりにでも適切に時間を使わざるを得ない環境にあります.

あと物理だと「論述」にもほぼ必ず計算が必要です. 少なくとも学部だと勉強内容はほぼ理論です. とりあえず計算できないとはじまらないので, 理屈 (数学) はともかく, 物理の現場で必要な計算をごり押しするのです. もっというと, 数学科の学部 3 年でようやく出てくるような, 超関数, フーリエ解析, 偏微分方程式論に学部 1-2 年から対応せざるを得ないので, 理論など勉強も理解のしようもありません. 物理の現場の計算練習で何とかするしかありません.

付録が足りないのではありません. 実際に付録の以上の数学の知識は使っていなくて, あとは鍛え上げた剛腕で処理しています. 剛腕を鍛えること自体も物理なので, さっさと物理をやりましょう, 物理をやるしかありません, そういう話です.

理論がわからなくても剛腕で押し通す, 押し通さざるを得ない状況に追いこまれていて, どうにかせざるを得ないのです. 付録で足りないというのは物理をやる気がない, そう言ってもいいくらいです.

また, 独学でふつうに本だけ読んでいると, この手の剛腕を鍛えるカリキュラムがない問題もあります. 独学だとカリキュラムの存在も知らず, 必要性に気付くことさえできないと言ってもいいでしょう. そして剛腕を鍛えるには膨大な時間が必要です. 見るだけなら単純なことであっても, スポーツで何かの技術を習得するには膨大な時間がかかるのと同じです.

少なくとも早稲田の物理では, それまでに全く勉強していない数学に関して, 物理的なモチベーションの説明さえほとんどなく, 四の五の言わずに計算練習をしろ, という必修の演習の時間があり, 単位も設定されていました. こういう意味でも環境が整備されていて「指導」もあったのです.

私の実体験でもあるので, もう少し話をしておきましょう. いまはよくわかりませんが, かつての早稲田の物理では「物理学研究ゼミナール」というのがありました. 学部 1 年で研究室にお邪魔して, 何か実験させてもらったり何なりして, ちょっと難しい話にも触れてみましょう, みたいな感じと思ってもらえばいいです.

いろいろあって, 私は 2 つやることになりました. はじめの 1 つは学部 1 年なりたてで 複素関数論に関する発表をするようにという話になりました. もちろん本を読んでみようとして読んでもみましたが, 何一つわかりません.

もう 1 つはブラウン運動の解析です. ちょっと実験した上で, 拡散方程式を調べて発表するという話で, 私は拡散方程式を具体的に解く手法として フーリエ解析に関して発表することになりました.

勉強開始は学部 1 年の夏の時点でした. その時点で数学の講義は 1 変数の微分関係の話で, 多変数の話も全くやっていない頃に 偏微分方程式とフーリエ解析について発表しろと言われるわけです. 偏微分方程式もフーリエ解析も, 数学の本を読んでも当然何もわかりません.

「物理とフーリエ解析」という本があったので読んでみました. いま読めばそれなりによくまとまった本とも思えるのですが, 学部 1 年の夏の時点だと, 講義では力学で常微分方程式の議論で四苦八苦している程度の状態です. 例として X 線の解析などが出ていたのですが, 当然電磁波, 電磁気学です.

大学レベルの電磁気はわからない, 大学レベルの振動・波動の議論もわからない, X 線も当然よくわからない, 出てくる多変数の解析もわからない, 当然のように出てくる留数定理 (関数論) もわからない, この状態で何とか発表を数学ではなく物理として形にせざるを得なかったのです.

ここでヒルベルト空間だの何だのにも手を出したり, 数学の本も読み漁ったのが 1 つの契機で, 結局その方向に進みさえしたわけで, 「三つ子の魂百まで」という感さえあります.

物理学科だと, 本当に数学の理論がわからなかろうが計算だけはできるようになれ, 習うより暴力的な物量で慣れろ, 物理の現場で何とかしろ, そういう状況・環境に追いこまれますし, そういう時間の使い方を叩き込まれます.

私がいた頃の早稲田の物理学科の教育方針がいいとは思いません. 数学の計算練習をさせるのは必要だし構わないが, さすがにもう少し物理のフォローを入れろとは思いますし, その辺を結実させたのが現代数学観光ツアーでもあります. もちろん現代数学観光ツアーも数学に偏り過ぎなきらいはあり, もっと物理っぽいのは作る必要があるとは思っていますが, 純粋な数学サイドから見れば, 相当に物理 oriented です.

いろいろ書きましたが, 言いたいのは「この付録の部分が十分読者に答えていない」のではなく, 読者が勉強の仕方を知らない (本なり何なりで説明していない) こと, 付録の使い方と勉強の仕方 (時間の使い方) がよくないこと (きちんとした説明がないこと), 社会人は要求される暴力的な量をこなす時間が取れないこと, たいていの人は物理・数学を勉強する必然性がなく, それを強制する環境が現状大学の物理学科をはじめとした物理が必要な環境にしかないことなどです.

学生でもない限り, 暴力的な量をこなす時間が取れないことは仕方ありません. その分, 時間というか期間がかかることはしっかり認識する必要がありますし, このあたりをきちんと指導してくれる指導者または環境を見つけ, 活用することが大事です.

まだ時間が取れないのでしばらく先にはなりますが, 私が物理系のコンテンツを作るなら, まずは電磁気あたりで適切な物理の問題を持ってきて, それに関する計算を遂行することを目的にしたコンテンツを作ります. いわゆる物理的な意味・議論は既存の物理の本を読めば済むので, 計算にフォーカスしたコンテンツを作り込むでしょう.

かなり長くなりました. 今回はこの辺にしておきましょう.

ではまたメールします.

2020-02-09 コンテンツの伝わらなさ/相転移プロダクション

今回も本題の前にミニビジネス的な話をします. 知っている人は知っていて, 私も各種講座の中で紹介している数学ガールの著者, 結城浩さんの note のサークルです.

  • https://mm.hyuki.net/n/n8ed441c0bf54

プログラムの本で知っている人も多いでしょう. これは月額 200 円で運営されています.

公式からの案内は次のページにあります.

  • https://note.com/info/n/n3820f314922d

何がよさそうかというと, いい意味で気楽なことです.

結城さんだから, というのもありますが, コンテンツにずっと触れていると, そのコンテンツを作っている人にも興味が出てくることがあります. 特に最近は「この人はどんなことに興味を持っているのだろうか?」, 「ちょっと応援したい」みたいなことを考え, 実行する人も多くなっています. かつてニコニコでは生放送などに課金する人もたくさんいましたし, もちろんいまも YouTube の生放送なり何なりで応援課金する人はいます. そういう仕組みができあがりつつあるのです.

ゴリゴリにコンテンツを作るのは大変なのですが, 気楽に, それも多少なりとも活動資金を得ながら, コンテンツを作るのは励みにもなります. 実際に応援してくれている人がいるのだと.

ちなみに数学系, それも大学受験などではなく, 完全に大学の数学に踏み込んでいる人もこの辺に取り組んでいたりします.

  • https://note.com/masakikoga1/n/nc0defb252ffa
  • https://note.com/ron1827/n/nd38d10d95a97?magazine_key=m3e36a7cd8bab

一方は京大の数学専攻の人で, もう一方もそれなりに数学がきちんとできる人なので, こちらもこちらで「強すぎる」人ではありますが, 月額 140 円とか, 1 つ 300 円みたいな気楽な値段設定がポイントです.

さらに大事なのは, YouTube では完全に無料でやっておいて, その資料を販売, という形でお金をもらっていることです. ここにお金を出してくれる人は, コンテンツを買っているのではなく, ほぼ純粋に応援の気持ちなのです.

生臭すぎますし, 「売上」はどのくらいかと聞けるわけでもありませんが, その売上は純粋な応援の気持ちの定量化なので, コンテンツを作り続ける励みにもなります. 多少なりとも本当に金銭的な支援にもなるわけで, 馬鹿にしたものでもありません.

もちろん, 私自身, この辺にはきちんと取り組んだことがなく, あまり体感もありません. 言うだけ言いっぱなしなのもよくないですし, 私自身動いてみないとな, と思っているので, いま作っているコンテンツが一段落したら, YouTube コンテンツを作りはじめるついでにはじめてみようと思っています. メルマガでも適当に情報は共有しようと思っています.

とりあえず, 最近は「マネタイズ」にもいろいろあること, そしてマネタイズの形も変わりつつあることは意識しておくべきでしょう.

ここから本題です. 最近, 無料講座の「応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう 中高数学駆け込み寺」のアンケートが よく来ます. そして時々コンテンツや講座の意図がうまく伝わっていない, と思うこともあります. もちろんこちらの作り方もよくないと反省する面はあります.

ただ, それはそれとして, 人は他人の言うことを本当に聞かないこともきちんと意識する必要があります.

人に何か言ったとき, 「前からずっとそれ言ってるでしょ」と言われ, 言われてみればそうだった, という経験がないでしょうか. 人は他人の言うことを本当に聞いていません. もっといえば, そのときは一応聞いてはいてもすぐに忘れます.

今回だと次のようなコメントが来ました.

和尚がさらりと行っている式の説明が素人にはかなりキツイということがわかった。 馴れないスペイン語を読んでるみたいな感覚で、 意味をつかむことに終始してしまいその奥行きをみる余裕がもてないというか、

講座の趣旨が「まずは全体像をきちんと見よう」なので, 式の説明をさらりとしかやっていないのは意図的ですし, 考えてほしいのは式の意味でもありません.

ちなみにこれは第 3 回へのコメントでした.

  • 第 3 回のページ https://phasetr.com/blog/2016/12/28/math_refuge_differential_equations_in_economics_biolog/

正直なところ, この講座の特に前半は, これを読んで何かわかるようなことは何も書いていません. 講座名にも「応用からの中高数学再入門」とつけてありますし, 登録ページにも「微分方程式が物理, 経済, 生物で使われていることを見る.」としか書いておらず, まさに「使われていることを見た」だけです. 1 回が 5-10 分で読み切れるボリュームにおさえている事情もあります. 登録ページでもコース紹介では「見る」「眺める」としか書いていません. 「理解する」のが目的ではありません.

こう書くと「ちゃんと読んで受講しろ」というメッセージかと思うかもしれません. そうではなくて, この講座を受講する理由は人によってまちまちで, こちらの意図に合わせて受講を決めたわけでもなく, こちらの意図に沿って勉強するわけでもないのです.

考えるべきこと/やるべきことはいろいろあります. 例えば実際問題として「ここが足りない」「ここがほしい」というメッセージでもあります. コメントを見ていてそういう人が多いなら, 「ではその足りないところを埋めるコンテンツを作ろうか」となるわけです. この辺を丁寧にやっていると, 前半で「この人はよくやってくれるから応援しようか」となっていく公算も高まります.

冷静に考えると, ネット越しでいろいろやろうと思うと, 応援の意思を伝えるのは実はなかなか大変です. 最近, 特に若い人だとメールベースのコミュニケーションはかなりハードルが高いと感じるようですし, かといって必ずしも LINE 交換するような状況でもなかったりします.

はじめの note のサークルも, 結城さん自身がいろいろ注意コメントをつけています.

しばらくは、結城が日々の活動記録をときどき投稿する予定ですので、 掲示板でゆるやかに交流しましょう。 掲示板は参加メンバーだけが読み書きできます。 参加後の自己紹介などは不要。 投稿を読むだけの参加でも大歓迎です。

別に自分から何かしたいわけではなく, ただ見ていたいだけ, という人もいるのです. そういう人にとって応援メッセージを送ったり, アンケートに答えたりするのはハードルが高いのです.

こういうとき, ニコニコ動画などの界隈でよく言われていた 「お布施」という言葉がよく合うように思います. まだこの感覚をうまく言葉にできていないのですが, 必ずしも「ありがたや」という気持ちだけから来る行動でもなく, 場合によっては悪意でさえある不思議な言葉/文化です.

ただ, それでも, お金は誰にとっても大事です. その大事なモノを突っ込む程度には興味関心を持っている姿勢を示すのが, 「お布施」です. そしてどうすればお布施をもらえるかというより, どうしてもらえれば自分はお布施を払いたくなるかを考えるのがいいようにも思います.

それはそうと, 来週, 中高生向けの学習支援提案について, 役所で話を聞いてもらう機会を作ってもらえることになりました.

  • 理工系を志す中高生向け学習支援の提案 https://phasetr.com/members/myfiles/file/math_plan_2019-10-31.pdf
  • 理工系教育の趣旨 https://phasetr.com/members/myfiles/file/math_plan_2019-12-14.pdf

いろいろな人に実際にリアルでやってほしいので公開しています. ぜひ積極的にやってみてください.

ではまたメールします.

2020-02-01 最近のアンケートから/相転移プロダクション

ここ最近, あまりアンケートに答えられていなかったので, その回答をしてみます. 今後 1-2 年で集中的にやろうと思っているターゲットである, 高校生からのコメントがあった, というのもあります.

実際に自分でコンテンツを作ってみようという人もいますし, こんなコメントがつき, どんなところで困っているかを知ると, コンテンツを作るヒントにもなるはずです. もしあなたがコンテンツを作ろうと思っているなら, そういうスタンスで眺めてください.

宣伝: 前野昌弘『よくわかる熱力学』の査読

いきなり脱線ですが, 宣伝をしておきます.

知っている人は知っている, 琉球大の「いろもの物理学者」こと前野さんが熱力学の本を書いていて, それの査読者を募集しています.

  • https://twitter.com/irobutsu/status/1222523529737801729?s=21

このツイートから募集ページに行けるので, もしあなたが興味があるなら, ぜひ査読に参加してみてください.

私は最近仕事で熱力学を使う羽目になりつつあるので, 復習も兼ねて査読に参加します.

ツイートからも辿れますが, 念のため参加の上での注意を転載しておきます.

これから査読していただく段階のものですから、 エラーや私の誤解による間違った記述などが含まれている可能性がありますので 「これで勉強しよう」という意図で査読に参加することはお勧めしません。

昨日の日記に、「これで勉強しよう」という意図で 査読に参加することはお勧めしません、と書いたのですが、 熱力学を全然知らない人は参加するな、という意味ではないです。 「知らない人から見るとここが難しい」という指摘はとてもありがたいので。 そういうわけで「よく知らない人の立場で査読するぞ」という、 ありがたいお気持ちでの参加でしたら、ぜひお願いします。

いま冒頭の数ページだけ読んだ段階でも気になるところがあり, コメントを書きながら読み進めています. 査読として問題点を明らかにするためという範囲ではありますが, 疑問があればかなり丁寧な返答が返ってくるだろうとは思います. 期間は短いですが, 前のめりに参加するならかなり得るところはあるはずです.

熱力学に興味があったがまともに勉強できなかったと思っているなら, 査読期間の短かさもあって, かえって集中して熱力学に取り組めるでしょう.

アンケートへの回答その 1: 現代数学観光ツアー

現代数学観光ツアーに高校生から, ある意味苦情的な内容のアンケートが来て, まさにその通りという趣の内容だったので, まずはその回答や展望からはじめます.

端的に言って「難しすぎる」という話です. まず毎度の言い訳からはじめると, あの講座は自分と似た感性で, ガチガチの物理・数学系の人だけが読む想定で作っています. 中高生の頃の自分が読んだら喜んだろうと思う内容で, 理解できるかどうかをほぼ一切考えていないので, それはそう, という反省点があります.

第 3 回については, 工学部の教員から 「難しすぎて読むのやめた」というアンケートまでもらっていて, ある程度理解したいという人も当然いるはずで, その点, 本当によろしくないのです.

こういう言い方もアレですが, 腐っても学部は早稲田, 修士は東大に入って曲がりなりにもそこで学術的には それほど大きな問題なく生きてこられた方なので, 私の感性なり数学的耐性なりは異常な方に振り切れているはずです.

アンケート項目で「面白い」にもチェックは入っていたので, 大枠としては同じような感性を持っている高校生にも 通信講座が届いていることには安堵はしていますが, 表に出ている講座が少なすぎる大問題は何とかしなければ, と改めて危機感を覚えました.

もう少し理解にも重点を置いた入門講座は作りたいと思いつつ, さらにゴリゴリの現代数学探険隊を作りはじめてしまい, 対応ができていない部分でもありました.

今年からはもう本格的に中高生向けの展開も考えはじめたので, コンテンツは充実させていきます.

現状の現代数学観光ツアーも, いまの 1 回分を独立講座にしてまとめるべき内容ですし, その辺も整備を進めています. やることがてんこもりなのですが, 優先度を設定しつつ進めています.

もう少しまともに中高生に向けたコンテンツとしては, 次の講座があります.

  • 応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう 中高数学駆け込み寺
  • https://phasetr.com/mrlp1/

現代数学観光ツアーがきつすぎると思ったら, ぜひこちらも受講してみてください.

アンケートへの回答その 2: 中高数学駆け込み寺

こちらにもアンケート回答はちょこちょこ来ています. ちょっと気になる回答があったのでコメントします. 大学所属の研究者かつ科学教育をやっているという方らしく, こう余計に気になったので.

「対応ルール」という見方をすれば、数列も微分方程式もベクトルも関数も同じものである、というのは目からウロコ、でした!

実はここ, 純数学的には微妙な書き方で, はっきり言えば誤解を招きかねない書き方をしている部分です. 数学の人間だけが気にすればいいと言えばいいところですし, プログラミングの視点/中高数学復習の視点としては, それなりに意味もあり, 害も少ないかと思って書いた部分です.

数学的にどう問題かはあとで書くことにして, まずプログラムを書くときの視点から改めて書いておきます.

プログラムを書くときのことを考えると, 関数も数列もベクトルも配列またはリストで表現します. 微分方程式も解だけ考えれば関数なので, やはりプログラム上での対応物は配列またはリストです.

こう思えば数列も微分方程式もベクトルも関数も, 広義の対応ルールで, 数を並べた配列です.

プログラム, 特に数値計算プログラムを書いたことがあるなら, この辺はおそらくごく自然な発想になるだろうと思います. 現代の科学教育では, 研究でも卒業後の進路に関する話でも, よくも悪くもプログラミングは欠かせない存在になりつつあるように思います. 現在の科学教育にそういう視点がどこまであるのか, かなり気になりました. 逆に言えばそこにいろいろやるべきことがあるのだろうとも思います.

いままさに次のような企画提案を進めているので, そこでも活かしたいところ.

  • 理工系を志す中高生向け学習支援の提案 https://phasetr.com/members/myfiles/file/math_plan_2019-10-31.pdf
  • 理工系教育の趣旨 https://phasetr.com/members/myfiles/file/math_plan_2019-12-14.pdf

最近は小学校でのプログラミング教育をどうするか, みたいな話もよくあります. 現場で対応しきれないのでは? という懸念も含めて.

ここでも次のようなツイートを見かけますし, この辺もどうなのかといろいろ思うところはあります.

  • https://twitter.com/chibafx/status/1223150674851971072?s=21
  • https://twitter.com/ssci/status/1223143536226234368

小学校のプログラミングの授業はこれで十分と思われ

スイッチサイエンスは、大人気のシングルボードコンピューターの最新モデル「Raspberry Pi 4」を手軽に利用することのできる、「Raspberry Pi 4 スターターキット(4GB RAM版)」を2020年1月30日に発売しました。

中高生にプログラミング教育をしようと思うと, そのマシンの調達も必要です. それをどう調達するか, マシンとして何を選ぶか, 資金面からも大きな問題です.

アメリカだと子ども向けにはタブレットであっても, 中高生に持たせるならやはり適切なスペックのノート PC で, 現状, そうでなければ少なくともプログラミングに関わる クリエイティブな活動には耐えきれない, とかいう話も見聞きします. どうしたものかと.

むしろ科学教育に対しては, それを物理・数学に関して受けただけであって, 科学全般に対して教育学を勉強したわけではありません. 専門的な知見や蓄積についてはそもそもアクセスする方法すら持っておらず, 自分・自分の身近なところの状況だけ見て, 「こういうのがあると嬉しかった」, 「こうしてくれると嬉しかったのに」という視点でしか活動できていません. 科学教育専門の方からのコメントをもらうと, その辺の自分の穴だらけさを改めて感じ, これでいいのかと恐ろしくもなります.

中高生の教育にも関わろうとしていて, それなりに子どもの将来に影響する活動を展開しようとしているわけですし, 最近の大学入試でベネッセが見せてくるような地獄を 自分が作り出さないとも限りませんし, 将来への配慮なく個人の狭い了見でやりきれる話でもないので.

数学的コメント

さて, いい加減数学的な問題について書きましょう. 一言で言えば, (十分に一般化された) 関数は単に対応ルールと思ってよく, むしろそう思うべきなのですが, 数列とベクトルはもっと特殊な対象だからです.

一言で言えば, 両方とも次元が違うだけで, 両方ともベクトルです. そしてベクトルは線型代数の対象であり, ベクトルが住む空間は線型空間であり, ベクトルはその制約を受けて, 和とスカラー倍が定義できる対象でなければならないのです. そして単なる対応ルールである関数には, 和もスカラー倍もへったくれもないのです.

これが中高数学として問題ないのは, 高校で出てくる関数は実数値または複素数関数しかなく, 実数値または複素数値関数の全体が線型空間になっていて, 本当にベクトルとみなせるからです.

再びここで問題になるのは, 講座の中でこれらが同じというのは対応ルールというより, ベクトル・線型空間の視点から見て同じであると言っていることです.

この線型空間という抽象論とその視点こそ, 大学教養の線型代数で 1 番難しい部分です. そこを理解する上で障害になりかねない記述で, その悪影響を懸念しています.

抽象線型空間論が必要な人がどこまでいるかなど, 数学サイドから見て考えすぎという可能性もありますし, むしろ抽象論を意識した数学サイドの気の回し方こそ, 応用サイドから見て邪悪な可能性もあります.

そのあたりの塩梅は難しいです. 通信講座を展開してみて, 思った以上にいわゆる文系の方も多く受講していること, 私が物理出身で早稲田水準で見てさえ抽象論への理解が厳しそうであること, 最近仕事で工学系の人との付き合いも増えている中での状況判断など, 振り切ってこう書いてもいいだろう, むしろこう書くべきではないか, そう思って書いた部分ではあります.

それでもやはり, 私の中の数学部分が「これはまずい記述になりうる」 と思いつつ書いた部分ではあるのです.

最後に: 自分のコンテンツの査読募集

既に大分長くなっていますが最後に改めて. 中高数学駆け込み寺の続編の有料コンテンツを作っていて, もう少しで叩き台が作り終わります. これの査読に参加してくれる方を募集します. 参加したいという方はこのメールに返信を下さい. 作り終わり次第, 個別にコンテンツの叩き台をお送りします.

前提として, 中高数学駆け込み寺と同じく, Python を使ってプログラミングします. 私個人でカバーしきれないので, 基本的に Python と必要なライブラリのインストールは 自前でやりきれる人を前提にします.

一応, Anaconda というサービス (?) を使ったり, Google Colaboratory を使えばインストールなしで 大半は動くとは思うのですが, Google Colaboratory での動作を完全確認するのも大変ですし, そういう点も込めた「査読」またはチェック依頼という話でもあります.

コンテンツは Jupyter Notebook 形式で配布するので, コードを写経する必要はありません. さらにコンテンツを完全に Jupyter Notebook 形式だけにしているので, 既存の本であるような, Jupyter Notebook にはコードしかなく, 本を一緒に見ながら勉強しなければいけない, といった面倒はありません. nbconvert を使って HTML 形式でも配布するので, 一部のアニメーションこそ実行できませんが, スマホでいつでもどこでも勉強できるようにしています.

プログラミングを軸にして中高数学を復習するコンテンツで, 上の中高数学駆け込み寺よりもう少し踏み込んだ議論をしています. 最近, 機械学習関係で統計学絡みのコンテンツは増えているので, その動きも見つつのコンテンツです.

ただ, 私はあくまで物理・数学系ですし, そういう視点からの議論がないのが非常に不満です. そこで微分方程式に関する議論を最後に突っ込んだところを 1 つの特長としています. 最後は流体力学に関する偏微分方程式を議論して終わります.

これも念のため書いておくと, 常微分方程式パートについては, 既存の中高数学駆け込み寺をそのまま収録する形にしています. 当然, この講座を受講していない方も対象にしていますし, レベル感もありますし, 既に受講された方にとって何度勉強してもいい内容だとも思ったからです. そして既存の配布コンテンツは全て Jupyter Notebook の形にまとめているわけでもなく, Jupyter Notebook にまとめた形で提供すれば, コンテンツ全体の一部として提供する範囲では, それだけでも十分な意義があると思ったからです.

あと, これもきちんと書いておきましょう. コンテンツを作ろうと思っている人に向けて, 有料にする意義を説明しておきます.

これまでコンテンツを作ってきて, 何度か言われたことがあるのです.

  • こんなにいいコンテンツを無料で受講できるのは嬉しいが, 申し訳ない気分にもなる.
  • 質問したいこともあるが, 無料のいいコンテンツを受講させてもらった上で, 質問までするなんて厚かましいのではないか.
  • 「お布施」の意味も込めて有料のコンテンツを買おうかと思ったのだが, いまある有料のコンテンツは難しすぎて, さすがに買っても完全に無駄になりそうなコンテンツを買うのは二の足を踏む.

最後のコメントはまた別問題ですが, 上の 2 つは適切な有料コンテンツさえあれば, 気兼ねなく質問できたはずで, 貴重な教育機会を奪っているとも言えるのです. もちろん無料で勉強できるのはいい部分もあります. しかしやり過ぎると教育という, 優秀な人達の豊富なマンパワーが必要なところで, そこで食べていけるはずの人達の食い扶持を奪うことにも繋がります.

もう 1 つ「責任」の問題もあります. 実際, 私自身直面した問題でもあります. 無料でやっていると, 続ける責任が何もありません. 「もう余裕がなくなったのでコンテンツを公開し続けられなくなりました」, 「作る余裕がなくなったので今後はもうコンテンツを更新しません」, こういう話になります. 実際, 進めていたプロジェクトが頓挫したことなど何度もあります.

一方で, 有料の通信講座は 2 年にわたる内容がありますが, 有料で提供しているモノが「もう作れません」では無責任にも程があるので, 2 年間, 本業と並行して毎週新たなコンテンツを作り続けるのは大変でしたが, それでも続けられたのは有料ゆえの責任感です.

有料になると受講できる人数自体はもちろん絞られます. しかし受講する人達も「元を取ろう」と真剣になりもしますから, 学習意欲は多少なりとも高くなるはずなのです.

それ以外にも, 世間のよくない風潮として, 無料のコンテンツは「その程度の大したことない内容だ」と刷り込まれている部分もあり, 無料だとそもそも気合を入れて勉強しない・できないという問題もあります.

この辺のいろいろなことを考えながら, 有料・無料を使い分けてコンテンツを作っています. この辺の判断基準もぜひ参考にしてください.

ではまたメールします.

2020-01-25 数学・物理・プログラミングの 3 点セットで行こう/ 相転移プロダクション

まず本題と全く関係ない話をします. 次のツイートに量子ハッカーとかいう単語が出てきました.

  • https://twitter.com/hottaqu/status/1219475110458822656

多分世界的に、その量子チャンネル特有の脆弱性を見つけてサイバー攻撃をする「量子ハッカー」人材の奪い合いになる気がする。裏側の部隊はもちろん、正規の表部隊でも。

Twitter 検索するとどうやら FGO (Fate Grand Order) でも出てくる単語のようですが, たぶんそちらの話とは関係ありません.

要は量子情報をきちんと知って応用できる人の話です. 情報系の本質的な素養は 0 とはいえ, 私も多少なりとも量子系の人間ですし, やはりハッカー (クラッカーではない) にはそれなりの憧れを持っています. こう言われたらやりたくなるわけで, 量子情報の勉強をはじめてみました.

改めてやりはじめてみて思うのは, やはり量子測定理論は楽しそうだが量子情報だとだいぶ興味関心が違うこと, 楽しみ方がよくわからない厳しさがあります. 一人だと心が折れるタイプのやつだという感覚があります. まあできる限りがんばってみます.

ちなみに一緒に勉強してみたいという方, いるでしょうか? 自分一人だとどうしても雑になる一方, 誰かと一緒にやると細かいところまで詰められてよいので, 興味がある方いらっしゃれば一緒にやりましょう. 数学ではなく物理がやりたいので, 必要な数学的予備知識はほぼ完璧な方がいいです. 具体的には数学科水準で線型代数ができて, 量子力学の基礎はおさえている方がいいです.

ここから本題です. 前回, 地雷コンテンツをどう避けるかという話をしつつ, 数学・物理の勉強を続け, 応用していく上でプログラミングが大事になりつつあって, それをどうするか, というような話をしました. そして実際, その手のコンテンツを改めて作っているとも.

今年から本格的に中高の理系教育に乗り出しますし, 自分のようにコンテンツを作っていく人をもっと増やそうという心算もあるので, それに絡めた話をします.

まずコンテンツを作ろうという人に向けてお話をします. これは今後, 私自身もこういうスタイルを使ってコンテンツを作っていき, そして販売もしていこうという話でもあります. 中高生に向けて理工系教育をする上で, それで具体的に食べていけるという話もしなければならないと思っています. 知っている人は知っているポスドク問題も, 収入・生活の問題だからです.

ちなみに今回はやりませんが, 上で書いた勉強会も適切なスタイル・方針でやれば, そのまま有料の勉強会にできます. 自分は自分として勉強しつつ, それでお金がもらえる話にもできます.

こう書くと「ふざけているのか」と思う人もいるようですが, 実は割とふつうのことです. 大学の教員でも, 自分が興味ある分野で勉強しようと思っていることを, 学生セミナーで学生にやらせて勉強するという人が本当にいます. これは研究, つまりそれで食べていくこととも直結しています. もちろんそれで研究することまで含めているので, 学生自身, その勉強したテーマで研究できるようになる可能性も十分にあり, その意味でもおかしな話ではありません.

こういうスタイルで有料勉強会を開くのもありなので, もしあなたに興味があれば, ぜひやってみてください. 一定の力量があって指導するというスタンスを持つなら, 数学・物理・プログラングなら需要はあるはずです.

買うだけ買って全ては読み切っていないのですが, 1 つ参考になりそうな本として次の本を勧めておきます.

  • Anders Malthe-Sorenssen
  • Elementary Mechanics Using Python: A Modern Course Combining Analytical and Numerical Techniques
  • https://www.amazon.co.jp/dp/3319195956

いまよくも悪くも科学技術計算では Python が覇権を取っています. 最近は Julia が出てきたり, 速度面では C/C++ の代わりに Rust が台頭しつつあるようです. ただ, それでも基本的な情報量は Python が圧倒しています. いま流行りに流行っている統計学・機械学習関係も 射程距離に入るからです.

よほど強いこだわりがない限り, とりあえず Python を勉強するのを勧めます.

私は速度面の問題なども気になるので, いま Rust をメインに勉強したりもしていますが, 実は一番使ってみたいのは F# です. 次のページを見て, C# のライブラリ群も使えてかなりバランスがよさそうで, かつ成熟していそうだからです.

  • https://qiita.com/cannorin/items/59d79cc9a3b64c761cd4

ふだん仕事で Haskell を使っているので, 別の関数型言語を使うことで仕事に直接活きるだろうとも思っています. いろいろやりたいことはあるのですが, なかなか時間が取れません.

あと上の記事を書いた人と Twitter でやりとりして, F# での数学には致命的なほど情報がない問題もあるようでした. いまの状態で細かいことを調べつつやっていくのは大変なので, 会社でも微妙に話題に上がったことがある Rust にしようと思って Rust にしました.

もしあなたが F# の数学に詳しいなら, ぜひ教えてください.

話を元に戻しましょう. 自分で勉強しつつ, そのネタで有料の勉強会を開いたり, コンテンツを作ったりする話です. 実は私の中でいまの話とも大きく関係するのですが, 実は最近, 少なくともプログラミング界隈では 海外の大手出版社が次のようなことをしはじめています.

  • 本を作りかけの状態で安価で販売する.
  • 購入者をレビュアーにしつつ, 場合によっては 1 年以上かけて本を執筆する.
  • 執筆し終えたら, 正規の値段での販売に切り替える.
  • もちろん安価に事前購入していた人には完成版も同じ値段で提供する.

例えば次のページ・本での MEAP がまさにそう.

  • https://www.manning.com/books/rust-in-action

これ, MEAP began July 2017 Publication in April 2020 となっていて, 3 年近くかけてまだ完成していないわけで, こういうのが本当に商業ベースに乗っているのです.

先の話とどう関係しているかと言えば, 「自分はよく知らないテーマでの有料勉強会開催」も, 要は作りかけのコンテンツです. 別に有料にはしませんが, 私の量子情報学習に関していえば, それに必要な最低限の数学と物理は備えていて, 必要ならそれはフォローすると言えるわけで, これが「作りかけ」にあたります.

最近流行りの工業系クラウドファンディングも同じです. こちらはもっと積極的に, 先行投資してくれた人達には安価に提供するから開発費がほしい, そういう名目でさえあります.

前もどこか・何かで書いたような気がするのですが, 教材作成サイドとしてお金を取ることの「メリット」はあります. 何かというと, もうお金をもらってしまっているので, 完成に対する強い義務ができるのです.

完成を前提に何かしようと思うと, やっているうちに「これでいいのか」と思いはじめ, 作るのをやめてしまうのです. 数学・物理に限らずコンテンツを作ろうとしている人が身の回りにたくさんいるのですが, みな途中で心が折れます. それを強制的に立て直すのがお金をもらったことに対する義務感です.

実を言うと, 私が以前有料の通信講座を作ったときはまさにこのスタイルでした. 配信に追いつかれないようにはじめに 2 ヶ月分程度は作っておきましたが, あとは最初に受講された方のペースに追いつかれないように, 作りながら進めていたのです.

そうはいっても, と思う人はいるでしょう. そこで今度, 私自身, この手のクラウドファンディングスタイルのコンテンツ販売をやってみようと思います. ぜひその様子を見てどうするといいか, どんなスタイルなら自分でもできそうか, 見極めてみてください.

最後に補足しておくと, もともと私はニコニコに数学・物理の動画を上げるところからはじめました. いわゆるボランティアで無料でコンテンツを作っていたわけです. そこから通信講座作成・メルマガ配信などで経費がかかる活動がはじまり, このくらいはペイしないとさすがにきついと思いはじめて今にいたります.

スタートは無料ベースでも構いません. 取り組み方はいろいろあります. ただ, 私がやってみつつ, 他にもいろいろな人の活動を見たり話したりしてきて, 一定の商業ベースに載せないとそもそも継続性がなくなることはわかっています. 無料だとかえって変な人が入ってきて, 文句ばかり言われて嫌になる, そんな様子も見てきました. 楽しく続けるためにも何かしらの形でマネタイズはどうしても必要なようなのです.

自分自身を含め, いろいろな人が痛い目を見てきた末の話なので, ぜひ参考にしてください.

ではまたメールします.

2020-01-18 地雷コンテンツとの戦い/相転移プロダクション

ここ数日 Twitter ではオリエンタルラジオ, 中田敦彦の「YouTube 大学」が燃えていますが, いかがお過ごしでしょうか.

これに関していくつか共有しておくべきことがあると思い, メルマガを書いています. 結論から言うと, 「どうやっていいコンテンツを探せばいいか」です.

実はこれ, 私もよくはまる問題です. 数学に対してさえそうです. 例えば, 非専門の分野では数学でさえどんな本がいいかわかりません. そもそもどんな本があるかさえわからないし, どんな分野があるのかさえわからないので, ぴったり興味がありそうなモノ・こと・分野があっても, 気付くことさえ難しいのです.

これもはじめに言っておくと, 私の対処法はゆるく薄く専門家とつながっておくことで, Twitter はまさにそのために使っています.

もちろん, 現実的には皆が皆, 私のような対処法が使えるわけでもありません. そしてはじめに書いたような, 少なくとも専門家から見てよろしくないコンテンツを掴まされる厳しさもあります.

そしてもちろん, 世の中, 専門家から見てよろしいコンテンツだけが望まれているわけではありません. それでも私のメルマガをわざわざ読んでいるあなたは, しっかりしたコンテンツで勉強したいと思っているはずですし, 自分自身でもそういうコンテンツを作っていきたいと思っているはずです.

そこで特にこれから自分でコンテンツを作っていこうという人に向けて, 簡単に状況を話しつつ, 私がこれからやろうとしていることなども簡単に説明しようと思います.

まず次のツイートとリプライを引用します.

  • https://twitter.com/hamukazu/status/1218002351287484416
  • https://twitter.com/kamo_hiroyasu/status/1218004708670898176?s=21

ざっと見た感じでの印象ですが、YouTubeで歴史を学ぶのはやめたほうがよさそう。数学を学ぶのはまあまあいけそう。 それは、はむかずさん、数学動画に地雷探知能力が働きますから。地雷探知能力を持たない初学者にはきついです。

これははじめに書いた中田敦彦問題です. 数学にもいいコンテンツはあります. 例えば大学の数学科, それも京大の雪江先生 (著名な先生です) の講義なども配信されています.

  • https://www.youtube.com/watch?v=pZMusy4HJjI&list=PLOD7NSMz_CFRX4PBdVD3dkp7BBM75EbXS

ただ, これに辿り着けるか問題があり, さらに「京大の数学? 私についていけるのだろうか」問題が出て, 辿り着けても見ようとしない人もいるでしょう.

大学の講義だとある学科に特化した形になってしまうのも問題です. 自分の専門は違うがある他の分野の議論が必要になり, そして自分の問題意識や言葉で語られたコンテンツがほしいのにない, という問題もあるでしょう.

要は物理数学みたいなものです. 工業数学やら経済数学みたいな形ならありますが, 「物理出身だが遥か昔のことでもはや物理さえ怪しい. 物理に程よく触れつつその勘を取り戻せて, 必要な数学もバランスよく説明してほしい」 という虫のいいコンテンツがあるかといえば, まずありません.

物理数学だとそこまでの物理の知識などは仮定されていて, そこさえ怪しくなっていると物理出身の人でさえ厳しいのです. あなたもそうかもしれません.

こういう問題があるので, 物理数学のような山ほどコンテンツがあるテーマでも, 独自の視点でコンテンツを作る意義はあります. そもそも自分も勉強し直す過程をそのままコンテンツにすることこそ 大事だったりします.

物理数学なり何なりに関して, 最近一般向けにうまいところを突いているのはやはりヨビノリでしょう.

  • https://www.youtube.com/channel/UCqmWJJolqAgjIdLqK3zD1QQ

私は耐えがたいのでもう見ていないのですが, あなたにとっていいコンテンツである可能性はあるので, 紹介しておきます. 本もあるので, 必要なら買ってみてください.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4489023162
  • https://www.amazon.co.jp/dp/4815601747

もちろん酷評している人もいます. まさにヨビノリ (予備校のノリ) のノリが合わないのでしょう. 万人受けするコンテンツを作ることなど無理なので, 一部の人に酷評されようとも, 自分の信じる「よいコンテンツ」を作る気概が必要です.

こんなレビューがあったりもします.

執筆されたたくみ先生のYouTubeチャンネルは大学数学を主に扱っており、 当然、わたしには理解できないハイレベルの講義がほとんどなのですが、 先生の持つ独特の雰囲気、 人柄の魅力により「冒頭のボケだけでも見てみようかな」なんぞとつい再生ボタンを押すことがあります。

そんな、たくみ先生の扱うレベルの講義を少しでも 理解できる日がくるかどうかはわかりませんが、 少なくとも、ド文系のわたしが抱いていた「数学」に対する嫌悪感は消えていました。

わかるかわからないかではなく, コンテンツから滲み出る人柄とかそういうレベルの話もあるのです. 特に最後の『少なくとも、ド文系のわたしが抱いていた「数学」に対する嫌悪感は消えていました。』 は人によっては本当に決定的な要素です.

そのヨビノリ筋の話をもう少ししておきます. ヨビノリのたくみさんは「教育系 YouTuber」界隈ではすでに一定の知名度があるので, その知名度を活かしていろいろやれるわけです.

その中で次のような話があります.

  • Twitter https://twitter.com/jaguring1/status/1215603760304553985?s=21

数学検定1級に9歳で最年少合格した少年に会ってきた話 https://note.com/yobinori/n/nf00745ab61d9 どのような教科書や参考書を使って勉強したのか?という質問に対し 少年「そういうものは持っていない。全部YouTubeを見て勉強した」 すごい。数学者や科学者による講義動画がもっと必要なんだろうな

どちらかというと, これが今回の本題です. よくも悪くも YouTube のコンテンツで勉強している子供達がいるのです. ここに「子供向け」のいいコンテンツを置くことはかなり大事になってきています.

はじめに書いた中田敦彦問題はここでも出てきます. YouTube に限らず, コンテンツはいつでもどこでも玉石混淆です. そして玉石概念も人によって変わります. 私が作るような「ゴリゴリのコンテンツは嫌だ, それは石なのだ」 という人ももちろんいるわけです.

一方で私が作るようなコンテンツこそ求めるものだった, そういう人もいるわけです. 年始のメルマガで書いたように, 今後中高生向け教育に本格的に舵を切ろうと思っているので, そこに向けて布石として YouTube コンテンツを作っていこうと思っています.

ちなみにネタとしては私にとってはド定番・ド直球の物理・数学融合ネタです. もっといえば, そこにプログラミングまで絡めます.

前から言っていますし, 昨日・今日も Twitter で呟いたのですが, 数学と物理, 数学とプログラミング, 物理とプログラミングのペアでできる人はいても, 物理・数学を専門とする学生のレベルで学部 2-3 年程度の知識を持ちつつ, プログラミングもある程度できて, しかも物理や数学に関する数値計算の知見を持つ人となるとほぼ絶無です.

まず物理と数学を学部 2-3 年のレベルで両立している人がほぼいません. 大学には一定数いますが, コンテンツの形で社会に広く出てくることがありません. こういう人たちでプログラムができる人ももちろんいますが, 逆にこの手の数物系大学関係者でプログラムの話をする人がほぼいません. 実は物理よりの理論系なら「研究にプログラムも使っている」人はこれまた一定数いますが, それを何らかの形でコンテンツに練り上げてくる人がいないのです.

私はこの辺の微妙な匙加減を突こうと思っています. そのための第一弾の無料講座が先日も案内した https://phasetr.com/mrlp1/ です.

何かタイミングでもあるのか, 最近新たにいくつかアンケートで反応が来ています. いまはこれを拡充して中高数学, 特に高校数学をプログラミングの視点から ある程度網羅的に扱うコンテンツを作っています. あと 1 月くらいでできそうです. 使う言語をマニアックにしても仕方ないので, 言語は Python です.

あとで案内ページにも書くのでここにも書いておくと, 最近機械学習の隆盛があって同じようなコンセプトの本はたくさん出ています. ただ, numpy を使って純粋に数値計算ばかりする本が多く, 厳密な数式処理も必要な中高数学の復習には向かないと思っているので, sympy の解説を多く盛り込んでいます.

sympy を使って高校数学を解説している本も見つけました.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4822295915

きちんと中身を見切ってはいませんが, 大まかに言えばコンセプトは同じだろうと思います. 雑に眺めただけのせいで見落としたのかもしれませんが, sympy を使っていることはあまり強調していないようでした. もったいないと思います. これ, sympy の解説もちょっとゆるい (少ない) ようですが, 私の新たなコンテンツはもう少しこってり紹介しています.

ここまでの話だと「二番煎じをやってどうする」という突っ込みが来るでしょう. ここで私の趣味が発動します. 物理ネタとして微分方程式の話もします. 上で紹介した無料講座では常微分方程式の話だけでしたが, 偏微分方程式の話も盛り込みます. それも応用上重要な流体力学からネタを取ります.

これもついでに言っておくと, 数値流体力学という巨大な分野があり, 大学でも精力的に研究されています. そして企業でも実運用されています. いまの私の仕事も強く関係しています.

入門レベルで偏微分方程式の数値計算をそこまでゴリゴリにやるのは無理ですが, 最近のプログラム+数学コンテンツは機械学習ネタばかりで, 子供の頃の私が知りたかった物理関係の話が全くありません. なのでその辺まで 1 パックにしたコンテンツを作るのが目的です.

一応, 最低限のプログラミングが読み書きできる人向けのコンテンツとして企画・制作しているので, そのままふつうの中高生向け教材に転用するのはどう考えても無理ですが, これを元にブラッシュアップさせていくつもりです.

こう書くと, 自分なりの独自性をコンテンツの内容に 組み込まないといけないと思う方がいるかもしれません. しかし先程ヨビノリ話で書いたように, 滲み出る人間性や人柄の「ファン」になる事案もあります. 全く同じ内容であっても, 「あなたが語っている」ことそれ自体に独自性がつきます. もしコンテンツを作ってみたいと思っているなら, ぜひ挑戦してみてください.

自分が詳しい分野の話をする必要さえありません. 人によっては教えてもらうことよりも, 一緒に勉強していこうと思っている人とともに歩んでいこう, そういう要素を重視している人もいます.

いいコンテンツができたと思ったら教えてください. 共有すべきコンテンツ・内容ならメルマガでも紹介します.

ではまたメールします.

2020-01-11 相対性理論のための数学?/相転移プロダクション

次の無料講座のアンケートで, 物理出身の方から「相対性理論がやりたい」, 「相対性理論の数学をものにしたい」 みたいなコメントが来ました.

  • 応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう https://phasetr.com/mrlp1/

アンケートの性質上, 短文でポンと書かれていて意図が正確に掴めておらず, 私との認識のギャップもあるでしょう.

それを承知の上で, あくまで物理として一般相対性理論を 1 から勉強する (し直す) 前提でいくつか書きます. わかっているかどうかは別として, いわゆる教養の数学は使えて, 学部 2 年くらいまでの物理の本は読めることを前提にします.

結論から言うと, 物理をやりたいなら物理に集中すべきで, 相対性理論に関わる数学を勉強するのは控えるべきです. ここでいうのは多少なりとも数学科の数学水準で勉強しようとすることで, 例えば多様体論を勉強しようとか, リーマン幾何を勉強しようとか, そういう話です.

物理として勉強していく上で大事なこともあり, それも書きますが, まずは数学面の話をします.

たいていの一般相対性理論の入門書には, 必要な数学的予備知識も書いてあるはずで, そして数学に関してそれで十分なはずです. そこにある数学の解説が読めないなら, そもそも一般相対性理論を勉強する水準に逹していません. 「習うよりも慣れろ」の側面もあるので, 本を読み進めてとにかく使い倒して慣れることも考えるべきです.

どうしてもその数学解説を読んでもわからない・使えない場合, 何がハードルなのかはあなたの状況によりますが, 1 つ, というかおそらく 1 番ありうるのはテンソル解析でしょう. それ以外で詰まるのは教養レベルの数学が使えない以外に考えられません. (私はそういうレベル設定で考えています.) これも数学の本を読むより, 電磁気学あたりでベクトル解析をゴリゴリ使い倒せるようにするのがいいと思います.

一応, 数学科水準での数学の勉強が, とりあえず物理として一般相対性理論を勉強しようというとき, ほとんど役に立たないことも説明しておきます.

まず, 一般相対性理論に必要な数学は準リーマン幾何 (擬リーマン幾何) です. これが数学としてまともに書いてある本は日本語ではないように思います. 岡部洋一さんの「リーマン幾何学と相対性理論」はありますが, もちろん数学科の数学の本ではありません.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4903814696

一般相対性理論の数学の解説で足りないならこれを読んでみるのも一手なのかもしれませんが, それはまた別の話です.

ちなみに洋書なら準リーマン幾何について書かれた本や, 準リーマン幾何と一般相対性理論について書かれた数学の本もあります. もちろんこれらを読むためには基本的な数学を知っていなければなりません. 特に基本的な幾何の素養 (多様体論・リーマン幾何) はありつつ, 準リーマン幾何だけはよく知らない, というタイプの人に向けて書いてあったりもするので, 凄まじいハードルがあります.

この間 Twitter でも少し書いたのですが, 多様体に必要な数学というと集合やら位相やらをイメージする人が多いようです. しかし, 実際にはそれ以上に, 微分積分と線型代数の力が問われます. 例えば, 物理で出てくる添字だけのテンソルではなく, テンソル代数という代数の理解が必要です. そこから商空間を取って微分形式の空間を作るので, 数学科の数学の水準で線型代数の基礎事項を身につける必要があります.

微分積分・微分方程式論に関してもかなり甘く見ている人が多いように思います. まず微分積分に関して, 必要なのは陰関数定理・逆写像定理です. これを使う部分こそ非数学科の人には大切であるにも関わらず, これらを使い倒せることが前提にされています.

微分方程式に関しては幾何に耐えるレベルで常微分方程式論を勉強している非数学科の人はまずいません. 必要なのは常微分方程式の解の存在と一意性に関する議論です. 指数写像のようなリーマン幾何に関わる基礎事項で, この定理が引用されます. 局所解と大域解の存在の違いが幾何として本質的なので, そこまでわかっていないと詰まります.

物理学科の人間が物理を勉強する適切なスタンスを身につけているなら, その辺はいくらでもどうとでもなるのですが, 「数学」にこだわる姿勢を見せた時点で, たぶんそのスタンスが発動しません.

一般の理工系の人と話していて, 「微分積分と線型代数はわかるんだけど」と言われることがあります. そしてそれはたいてい「ある程度計算ができる」程度の意味しかなく, 上でコメントした必要最低限の水準には全く達していません. 経験上, 全くです. 逆に言えば, 幾何を数学的に勉強する上で, そのくらい線型代数と微分積分の水準が尋常ではないほどに高いのです. 身近な若手の物理学者を見ていても, そこまでわかっている人はそういません. 理論の人であっても, です. 数学として幾何をやるにはそのくらいの要求水準が課されると思ってください.

もちろん, あくまで一般相対性理論の物理に興味がある人にとっては, 単に物理がやりたいだけなのにそこまで要求されるのは耐えがたいでしょう. 実際, 必要ありません. だから, はじめに書いたように, 一般相対性理論の入門書にある解説でどうにかしてほしい, そう書きました.

さて, そろそろ物理の話をしましょう. 大人になってから再勉強する人がよく陥る問題があります. やたら本格的でぶ厚く難しい本を読みたがるか, 薄くてわかりやすそうに見えつつ, 必要な説明さえ省略されていてかえってわかりにくい本を読んでハマるか, です.

1 つの対策は状況と目的に応じて読む本を変えることです. 元の講座, 「応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう」 の募集ページにも書いたので参考にしてください.

  • 応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう https://phasetr.com/mrlp1/

一般論は上で紹介した募集ページの記述に任せて, ここではもう少し具体的に書きます. 薄めで全体像を掴みやすい本としては, ディラックの『一般相対性理論』を勧めます.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480089500/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4480089500&linkCode=as2&tag=phasetr-22

文庫本で 172 ページなので驚くほどに薄いです. 江沢先生のコメントや挿絵もあります. まずは細かいところは気にせず, わからないところがあっても深くは気にせず, この本を最低でも 2-3 回は眺めて全体像を掴みましょう.

そのくらいはやってからきっちりした本を読むようにしてください. 残念ながら本格的なタイプの本について, 私は詳しくありません. 定評のある本くらいは知っていますが, きちんと読み込んだわけでもなく, 物理の本の最近の出版動向も追い切れていません.

有名どころは次の記事にまとまっています.

  • http://generalrelativity.hatenablog.com/entry/2018/03/10/125132

やはりシュッツは有名です.

全く読めてはいないのですが, 次のような本もあります.

  • 一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する https://www.amazon.co.jp/dp/4860644980

ふつうに物理として勉強するだけなら, 一般相対性理論の本はたくさんあるので, いろいろ眺めてみてください.

本の紹介記事にもあるように, 必ずしも一冊の本をくまなく読み切る必要はありません. 一冊 4000 円も出せば買えるので, 何冊か買ってみるので手です. 知覚に図書館があるなら, 購買申請してみるのもいいかもしれません.

私は既に感覚が麻痺してはいるものの, おそらく一般的に見て本に対して 4000 円が安いとは思いません. しかしこれで年単位で遊び倒せると思えれば, 相対的には安い買い物だろうと思います.

そうは言っても 4000 円が出せない状況にある人もいるでしょう. あなたもそうかもしれません. そして中高生読者もいるので念のため書いておくと, 物理学者が講義ノートを公開してくれていて, ネットで検索すればそれが出てきます. いろいろな意味で質は保証されていません (計算がかなり省略されていたりもする) が, 勉強はできます. 探せば YouTube で講義動画も上がっています.

  • (英語) https://www.youtube.com/watch?v=hbmf0bB38h0

英語の動画を紹介しましたが, 英語で探せば本格的な講義録も見つけやすくなることはお伝えしておきます. 200 ページ近い本のような講義録さえあります.

  • http://www.roma1.infn.it/teongrav/VALERIA/TEACHING/RELATIVITA_GENERALE/AA2015inpoi/dispense.pdf

いろいろ探してみてください. そしていいのがあれば教えてください.

ここまで読んでいる方がどのくらいいるのかわかりませんが, 熱心に読んでくれたあなたのために少しアナウンスします. 結論から言えば, 物理の勉強会をやろうかな, というところです.

いままで数年間, 今回のように「物理のための数学を勉強したい」 という方は多く, そのたびごとに 「数学よりも物理に集中しよう」と言ってはきたのですが, それでも数学をやりたいという方のためにずっと数学方面を整備してきました. ただ, やはりいい加減物理の話もしないといけないとは思っています.

今年から中高生向けの話も本格化させますし, そこでは理科, もっと言えば工学よりの話もしたいですし, そうなると物理の話は本格化させざるを得ません. 一般相対性理論のようなゴリゴリの理論物理の本格始動は来年からと思っているのですが, 早い段階で調整ははじめたいと思っています.

そこで, とりあえず相対性理論にしぼって, これを本格的に勉強してみたいという人がいれば, オンライン勉強会を開きます.

ただいくつかの条件があります. このオンライン勉強会では私は講義しません. いわゆるゼミ形式で, 参加者が発表します. 週に 1 度, 1 時間を考えています.

ここ 1 年くらい, 私も発表者側に回るオンライン勉強会をやっていて, そちらの様子は掴めつつあるのですが, 私が主催しつつ私が全くしゃべらないゼミ形式はやったことがなく, IT 知識や持っている周辺機器など含めて, 参加者の状況が掴めない状況で募集するのもはじめてなので, その点, かなり挑戦なのです.

スマホだと厳しいでしょうから, PC かタブレット利用が前提になるでしょう. TeX が使える人は LyX でやるのもお勧めです. 講義で書いた内容があとでそのままノートとして配布できるので.

相対性理論といっても特殊と一般がありますし, まずは特殊相対性理論という方もいるでしょう. もっと言えば, 関係する数学さえ怪しいという人もいるでしょう. そういう人であっても必ず講師サイドに回ってもらいますが, 読む本などは配慮します. 例えば次の本は特殊相対性理論に関して, 高校数学くらいからはフォローしてくれています.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480094423/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4480094423&linkCode=as2&tag=phasetr-22

少なくとも都市圏ではリアルの勉強会をしているところがあるので, リアルの勉強会を希望される方はそれを探してみてください. リアルにすると地理的な問題が出てくるので, ここではやりません.

参加希望者がいなければ今回はやりません. 逆に希望者がいれば 1 人でもやります. もしあなたにご興味があるならどうぞ.

念のため書いておくと, ゴリゴリの物理の学部生や院生が来るとは思っておらず, 基本的には趣味でのんびりやる勉強会になる想定なので, そういうつもりで参加表明して頂けると助かります.

この間, 9 歳の男の子が YouTube で講義動画を見て勉強している, という記事を見かけました. 先日メルマガで宣言したように, 今年から中高生向け教育に本腰を入れるので, YouTube に講義動画を上げるのも大事なのだろうと思っていて, その辺もいろいろ検討中ではあります.

ではまたメールします.

2020-01-01 中高大連携と職業教育を目指す/相転移プロダクション

明けましておめでとうございます. 今年もよろしくおねがいします.

さて, 早速

  • 理工系を志す中高生向け学習支援の提案 https://phasetr.com/members/myfiles/file/math_plan_2019-10-31.pdf
  • 理工系教育の趣旨 https://phasetr.com/members/myfiles/file/math_plan_2019-12-14.pdf

本当は去年のうちに宣言しようと思っていたのですが, 去年の年末は体調不良でヘロヘロだったので, このタイミングになりました.

去年はどんなことをしようかとずっと迷走していて, 後半も後半になってようやく次の方向性が見えてきました. そして少しずつその方向性に向けて進めていて, そのための資料が上の 2 つの PDF です.

去年, 広い意味での知人が地元の区議に当選しました. そこでこの人の伝手を辿って, 地元の中高生を相手にした教育サービスが展開できないかと思い, そのために作った提案書が最初の PDF です.

2 つ目の PDF は, 区議の方から区の担当者に話をつないでもらえたので, その人と話すときの参考資料として作りました. 本当は 12/24 にその初回面談をする予定だったのですが, 体調不良で流れてしまい, いま新たなスケジュールを調整中です.

詳しい話は資料を見てもらうことにして, 要は長いことかかったものの, ようやく新たな方向性に踏み出しました. もともと数学・物理系の情報発信をはじめたときにも 中高生向けの活動をやりたいと思っていたので, その意味では 10 年越しです. まだ腰を上げただけでこれからどうなるかもわかりませんが, 去年, 1 つでも具体的な新しい動きをはじめただけでも大きなことです.

何故この資料を公開したかというと, あなたにも同じようなことをやってほしいからです. 時々, 数学・物理以外でも, 私のようにコンテンツを作ったり情報発信してみたいという方がいます.

これまであまり情報発信の仕方それ自体について, ほとんど話をしたことがありませんでした. この手の話ももう少し出した方がいいのだろうとも思い, 今回改めて具体的な提案書を出してみました. 早稲田・東大出身を前提にした話など, そのまま使えない部分もあるでしょうが, 話の骨子は使えるはずです. ぜひ参考にしてください.

そして実はこの提案には裏テーマがあります. それは実際に中高生にお金を稼ぐこと, 将来の生活まで意識してもらうこと, できればその実践までやってもらうことです. プログラムを教育の 1 つの軸に入れている理由でもあります.

区向けの提案としてそのまま盛り込むと問題が起きそうなので, 明確には書いていません. しかし私の地元に関していえば, 昔の私のように家が貧乏で学費を稼ぐ必要がある子供もいるでしょうし, そういう点も含めて「食っていく」意識を持ってほしいのです.

これに関して, ちょうど昨日, 次のような中学生の話を聞きました.

  • キメラゴン 月収7桁中学生 https://twitter.com/kimeragon01/status/1211856695871193091

月収数十万を稼いでいる中学生で, その稼ぐための勘所を伝えるコンテンツを販売しています. いまの時代, もはやこういう中高生は珍しくありません. こういう「強い」中高生を育てたいのです. もっと言えば私自身こういう強い中高生になりたかったですし, 「昔自分がほしかったモノを作る」というのは私がコンテンツを作り, 情報発信する強いモチベーションの源泉なので, ここまで見据えた活動をしたいと思っています.

ここまで書いて思い出したのですが, 実は去年, コンテンツ作成や情報発信に関するコンサルもはじめて, クライアントが 1 人できたのでした. 来年, この手の活動も本格化させるべく今からいろいろ考えています.

このコンサルのためにも自分自身でいろいろ実験して, 新たなコンテンツを作って展開していきます. まずは中高大の数学を連結したプログラミング系のコンテンツを作るのが第 1 目標です. これも去年から企画をはじめて制作に取りかかっています.

今年はこんな感じで, 本格的に中高生向け数学・物理, 中高大連携, 広い意味での生涯学習・職業教育みたいなところをやっていこうと思っています.

最後, 流れを無視した話になってしまいますが, 物理や物理に関する数学について, 質問・要望を頂いたので念のため案内しておきます.

いまある無料の講座は次のページにまとまっています.

  • https://phasetr.com/blog/2014/06/09/%e3%83%88%e3%83%83%e3%83%97%e5%9b%ba%e5%ae%9a%e8%a8%98%e4%ba%8b%ef%bc%9a%e3%83%a1%e3%83%ab%e3%83%9e%e3%82%ac%e3%83%bb%e6%95%b0%e5%ad%a6%e3%82%ab%e3%83%95%e3%82%a7%e3%83%bb%e3%81%9d%e3%81%ae%e4%bb%96/#i-7

一応, 公開できる状態のモノもあるのですが, まだここのページに追加できていません. その辺は今年どんどん追加していくので, しばらくお待ちください.

それぞれの講座で設定したレベルや内容については, 各登録ページを見てもらえばわかります. 登録ページだけ見ても勉強になるように書いているので, 興味があるコンテンツはぜひ登録ページを眺めてみてください.

また, 有料にはなってしまいますが, 解析学, 特に学部の物理で出てくる解析学を 数学的に厳密に展開した PDF コンテンツを販売しています.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

最近, 物理や工学でも幾何の重要性が高まっています. 解析学に集中した内容ではありますが, 幾何にも直接活用できる内容です. 幾何系の講座を作っていて, やはり何だかんだでちょっと踏み込んだことをしようと思うと この解析学講座の内容はガチガチに必要になるので, 自分の知識を整理して, 自分が苦労せずわかるように丁寧に証明もつけておいてよかったと思っています.

書くべきことはもっといろいろあるのですが, 長くなってきたので今回はこの辺で終わります. 去年は迷走し続けていたものの, 後半でようやく方向性が見えてきたので, 今年はそれに向けて突っ走ろうと思います.

ではまたメールします.

2019-09-30 新学期に向けて数学の勉強体制を整えよう/相転移プロダクション

今年という単位で見るともう後半も後半ですが, 学生からすると折り返しのタイミングで, 後期がはじまるタイミングです.

改めて数学の勉強をやっていきたいので, 勉強の仕方や参考文献を教えてくださいという相談がいくつか来ました. メルマガを出していない間, そのあたりの情報も整理したのでまとめて案内します.

次の URL でいろいろなレベルに応じた 参考文献や勉強法を紹介しています. 100 ページ近いボリュームがあるので, 必要なところを読んでみてください.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_expedition_000_003_FPWpc.pdf

これはここまでいろいろな相談を受けたときの回答や, 各通信講座で案内している参考文献や勉強法をまとめています. 小説やドラマなどライトに数学を楽しむ, 中高数学を深める, ゴリゴリに大学数学を勉強する, いろいろな視点からの案内をまとめています.

それぞれの方向性に応じて具体的な文献も紹介していますし, 私が作ってきたコンテンツ全体で紹介している 200 以上の参考文献一覧もついています. まだまだ整備中ですが, 本格派コンテンツの現代数学探険隊の内容も含めた索引も入っています. 専門用語だけ眺めていても楽しいと思うので, こういう要素も入れてあります. 思い思いの楽しみ方をしてください.

さて, ここで 1 つ上の文献一覧の問題を指摘しておく必要があります. 私が何か新しいことを勉強するときにいつも思うことでもあります. それは文献をたくさん挙げられると, どれで勉強すればいいか,どれを買えばいいかで悩むことです.

例えば最近, 中高生向けの英語コンテンツを作ろうと思っていて, 改めて既存の英語コンテンツを眺めてみたり, 英語だけではなくフランス語などのコンテンツも眺めてみたりしました. (ちなみにいま考えている英語のコンテンツは 「相対性理論で学ぶ英語」というコンセプトです.)

どんな本がいいか, ネットで検索したりするわけです. たいてい本の 6 選だとか 26 選, みたいなのが引っかかります. 自分で勧めるときのことを考えても, 人によって合う合わないがあるから, いろいろ挙げておくので本屋さんで具体的に見てみてね, としたいわけです.

英語の学習参考書くらいならまだしも, 理工系の専門書がたくさん置いてある本屋などそうはありません. そうした品揃えがある図書館もそうはありません. 中身を選ぶということ自体に高いハードルがあるのです.

あと理工系の本のお勧めという話でいうと, 例えば理工系の教養数学として線型代数, 微分積分, ベクトル解析, 関数論, フーリエ解析, 微分方程式などがあります. 必要知識が多い分野の本は, 仮定される予備知識も多くなりますし, 本ごとに仮定される知識も変わります.

実際, 「物理のためのフーリエ変換」のような本だと, 具体例に波動方程式や電磁気やら出てきて, 事前にある程度の物理を知らないと手も足も出ないようなこともあります. 岩波数学講座のシリーズものであっても, 正式な読む順番があるわけではなく, 本の間に知識や必要な数学的体力のギャップがあります.

こうしたギャップには私も苦しみました. そこでそれをカバーするため, 1 冊でまとまった内容をカバーするコンテンツが必要と思い, 作ったのが次の現代数学探険隊です.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

これはもちろん有料ですが, もしあなたがこの内容に興味があるなら, ぜひ購入してください. 詳しいことは上の案内ページに書いてあります.

ちなみに, 上のページ自体, 数学や物理の勉強に役立つ「コンテンツ」になっているので, ぜひ読んでみることをお勧めします.

少なくとも応用上大事な解析学まわりに関して, ゴリゴリのコンテンツはこれでいいと思うので, 今後は中高数学や, 物理などで必要な範囲の数学を物理に必要な範囲のレベルで議論するといった コンテンツを作っていきます. それも楽しみにしてください.

ではまたメールします.

2019-09-29 計算しながら数学しよう/相転移プロダクション

メルマガもだいぶご無沙汰になってしまいました. さぼっていたわけではなくて, 知人と実用向きの統計学の勉強会をしていたり, いろいろなコンテンツの企画を考えてはそれ用の勉強や資料を探したり, 既存のコンテンツを調査したりといろいろやっています.

数学的に深いところにまで突っ込んでいく本格的な講座は 1 つ作ったので, 今度は中高数学, そしてそれと大学教養レベルの数学をつなぐ コンテンツ作りにフォーカスして考えています.

その 1 つとして「応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう」 という無料講座は既に作って前から公開しているので, もしあなたが興味あるなら, ぜひ受講してみてください.

  • https://phasetr.com/mrlp1/

いま, とりあえずこの続編的な講座を作っています. まだ作りはじめなのですが, サンプルを公開しておきます.

  • https://phasetr.com/members/myfiles/file/2019-09-29-232657.tmp.pdf

最近, 統計学からの数学需要は増えているようですし, プログラムを書いて計算させることの重要性も上がっているので, その点にも配慮して高校数学と大学教養数学をブリッジする方向の企画です.

まだサンプルではありますが, 悪名高い ε-δ を数値的に確認したり, 具体的な数値解析での評価戦略との関係とそのご利益, みたいな部分も書いています.

こんな感じのことも書いてほしい, みたいなことがあればぜひコメントください. 反映させたコンテンツを作っていきます.

それ以外に, 特に学生さんだと新学期がはじまる頃で, いくつか質問も来ています. それに対するコメントも返す予定です.

ではまたメールします.

2019-05-11 多様体論のはまりどころ/相転移プロダクション

久し振りのメルマガです.

最近, いろいろなところで幾何まわりを勉強している人をよく見かけます. 情報幾何だったり, ベクトル解析の現代化という文脈だったりいろいろあるようです.

どこまで固い動きなのかはわかりませんが, 最近は機械工学でも積極的に力学系の議論や, そのための幾何教育を取り入れていこうとしているようです.

  • https://www.jsme.or.jp/uploads/sites/6/files/kiriki7.pdf

近年発達した数学理論 (微分幾何、多様体理論をはじめとした幾何学的解析手法)を 積極的に取り入れて、 解析制御をおこなうことが、その手段です。

こんなのもあります.

  • 大阪大学 機械工学専攻 機械動力学領域 石川研究室 研究室を希望される方へ
  • http://masato-ishikawa.blogspot.com/p/blog-page_21.html

【研究室に入ってから学ぶこと】 研究テーマ次第ではありますが,非線形制御理論, 微分幾何学(多様体論),力学系理論,ロボティクスなどは研究室の共通言語になりますので, これらを学びながら研究を進めていきます.

何にせよ, 純数学ではないところでの幾何の需要が増えているようです.

いままでいろいろな人の様子を見たり, 話を聞く中で多様体論の勉強ではまるところがあるようです. それを適当にツイートしたのを PDF にまとめました.

  • https://phasetr.com/members/myfiles/file/2019-05-09-212614.tmp.pdf

数学関係者だと自明すぎてあまり意識しないところですが, 物理含めた応用系の人達にとっては盲点になっているところなので, その辺の人はぜひ眺めておいてください.

現代数学探険隊も一段落したので, この辺もコンテンツを整備していこうと思っていますが, 転職してから仕事が忙しいというか楽しすぎて, そちらにかかりきりでコンテンツの制作方面であまり動けていません. そろそろはじめたい.

幾何に関連してもう 1 つ. 「量詞と古典の物理と幾何」という研究会が 2019/08/02 (金) 10:00 ~ 2019/08/03 (土) 17:00 で開かれます.

  • 量子と古典の物理と幾何@東大先端研
  • https://atnd.org/events/105974

平日込みなので微妙ですが, 私は参加します. もしあなたがご興味あるなら, ぜひ参加してみてください.

研究会なので誰でも簡単に理解できるような内容を期待されると困りますが, 最先端の話に触れてみたいと思っているなら, いい機会だろうと思います.

今回はこんなところで. またメールします.

2019-03-31 物理をやろう/相転移プロダクション

メルマガを書くのもご無沙汰になってしまいました.

書いたかどうか忘れたのですが, 実は去年 10 月に転職して, いまは数値解析系のプログラマーをやっています. それに合わせて物理をシコシコと再勉強していて, そろそろアウトプットをはじめようと思っています.

勉強会もいろいろ企画してやってみて, うまくいかないものもあり, 次への改善点を検討しているところです.

勉強会は zoom を使ってオンラインセミナー形式でやっていて, それを動画にしたりしています. いくつか試験的に YouTube に上げたりもしています.

明日から新年度なので, 1 つギアを上げてコンテンツメイキングを 本格的に再開します.

年始の目標からだいぶ遠ざかってしまったので, そろそろ気合を入れ直していきます.

あなたも年始に決めた目標があったかもしれません. そしてそれがうまく進んでいないかもしれません.

8 割以上の人が 2 月には目標達成を挫折する, というデータもあるとか.

明日から心機一転, あなたも数学や物理の勉強を再開しようと思っているかもしれません. ちょっと奮発して本を買ってみて, モチベーションを上げようと思っていたり, 今まで勉強したことがない分野に挑戦してみようとしているかもしれません.

そこで今までいろいろな講座などで紹介してきた文献紹介を 1 つにまとめた PDF をシェアします.

  • https://phasetr.com/members/myfiles/file/2019-03-31_reference.pdf

  • ゴリゴリの数学や物理を勉強してみたい,

  • ゆるく中高数学に触れてみたい,
  • 数学をネタにした小説など気晴らしまで生活を数学の染め上げたい,

こんな要望にも応えられるような文献紹介コンテンツになっています. ここ最近の文献/コンテンツの情報を追加しきれていないのですが, 十分参考になるでしょう. 数値計算/プログラミング系の話も多少あるので, そういうところからも攻めてみてください.

リスト内のコンテンツは量が多すぎて選びきれない, あなたはこんなふうに思っているかもしれません. もしあなたが数学をきっちりフォローしたコンテンツがほしいと思っているなら, 現代数学探険隊の PDF コンテンツもお勧めてしておきます.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

ここまでの様子を見る限り, 通信講座版よりも, PDF コンテンツの方がかえって要望が多そうな気がしたので, PDF 版だけリンクをつけておきます.

何度も書いているように, 案内ページ自体も 1 つのコンテンツとして読む価値があるように作っているので, 特にあなたがまだこのページを読んだことがないなら, ぜひ読み込んでおいてください.

ゴリゴリの現代数学にとどまらない, 勉強の仕方一般についてもコメントしています.

ではまたメールします.

2019-01-12 筋トレと実験科学/相転移プロダクション

メルマガで書いたかどうか忘れたのですが, 去年の年末, コミケの合同誌に寄稿しました. booth で買えるので, 興味があればどうぞ.

  • https://next-nexus.booth.pm/items/1157480

コミケの会場では 150 部くらい売れたそうです.

で, これで集合論のネタを書きました. それもあって, 少し集合論を勉強し直して, 次のプレプリントを眺めました.

  • Tom Leinster, Rethinking set theory
  • https://arxiv.org/abs/1212.6543

圏論的な集合論に関する話です. 圏論的というのは圏論を本質的に使うという意味ではありません. いわば集合一元論ではなく, 集合と写像の二元論として集合論を定式化しようという話です.

知っている人は知っていると思いますが, 有名な ZFC 公理系による集合論では全ての数学的対象は集合です. もちろん関数も集合ですし, 円周率のような数ですら集合です.

これ自体はそういうものか, と思える余地はあります. しかし ZFC の集合論の議論をそのまま素直に捉えると, 「集合としての円周率はどんな要素を持っているか?」 という言明が意味を持ってしまいます.

純粋な公理的集合論の文脈でこそ意味はあります. しかし数学の日常会話でこう言われても, 「この人, 数学わかっているのだろうか」と思ってしまうような質問です.

この辺の「気持ち悪さ」を解消しようというのが 上のプレプリントの内容だと思ってください. 8 ページしかないので, 気楽に読めると思います.

そしてタイトルの話. 大分前, 本格的に筋トレをはじめた, という話をしたのですが, それはずっと続けています. 最近, 私の観測範囲で筋トレが流行っているのでそれも受けつつ, いろいろあって柔道もやっていてそのため, というのもあります.

しばらくやっていて, 面白い/続けられると思った理由が おそらく他の人と違うので, それについて書いてみようと.

一言で言えば, 筋トレを実験科学だと思っているのです. 基本的に私は理論屋さんよりで, 実験に関してはずるずるですが, 実験としての筋トレは楽しいなと.

一言で言えば, 適切なトレーニングをした上で, 適切な栄養を取って適切に休めば, ちゃんと筋肉がつくわけです. 鬼のような再現性があるので, まさに科学.

もちろん細かくいうといろいろあって, 筋力をつけたいのか, 筋肉をつけたいのか (筋肥大させたいのか), 筋持久力をつけたいのかでやるべきことが変わります. 私はそれぞれ興味があるというか必要なので, いろいろ考えながらやっています.

個々のトレーニングについて YouTube で動画を見てみたり, それだけだと全体像が掴めないから本を買ってみたり, YouTube で気に入った人が販売しているコンテンツを買ってみたりもしています. 本はともかく, コンテンツはなかなかいい値段がするので どうしようかと悩んだものの, 投資と思って買ってみたりしました.

眺めていて面白かったのは筋トレに関する理論.

  • https://katagirisho.com/mechanism-of-muscle/

超回復うんぬんというのを聞いたことがあって, 古いコンテンツだと確かに超回復という言葉が出てきます. しかし最近 (どのくらい最近なのかは不明) は ストレス応答という話になっているそうです.

この理屈が正しいかどうかという話がしたいわけではありません. そもそも専門外もはなはだしいのでよくわかりません.

私が面白いと思ったのは, そういう「理屈」はともかく, きちんとトレーニングしてきちんと栄養を摂って, きちんと休んでいれば, きちんと筋トレの効果が出ることです.

いわば理屈は後付けであって, 圧倒的な再現性のある実験事実は変わらないことです. ふだんゴリゴリの理論をやっているので, こういう実験事実が何より優先される世界を, 自分で実験して確かめるというのは初体験です.

学生時代の実験は理論としても既に確立されたことを 単に確かめるという趣が強いです. そんな中, 実験事実は圧倒的に正しいとして, 理論がまだコロコロと変わっているというのが面白い.

物理はかなり安定していて, 学部で勉強する基礎理論が崩れるというのは考えづらく, 数学も理論が崩れることはそう考えられません.

スポーツや医療関係はしょっちゅう基礎理論が書き換わる (?) という話は聞いていて, 何となくは知っていたものの, 筋トレを通じてその世界に少し足を踏み入れたのが新鮮で面白かったのです.

人によっては難しい要素もあるとは思いますが, 科学を実感できるので, 実験科学として筋トレを捉え, 実践してみるのは, 実感として面白かったので, あなたにもぜひお勧めしたいです.

反応があれば, いろいろ眺めていて面白かった筋トレ系のコンテンツも紹介します. 数学や物理と同じく, 無料の範囲でもいろいろできるしわかるのですが, ある程度体系的にまとまっていて全体像をきちんと掴めるのは 有料のコンテンツになってしまいますね. 時間をお金を買う感覚です.

無料でどこまでがんばれるか試してみたのですが, やはりお金を出してしまった方が早い部分はありました. その意味でも参考になった経験です.

今回はこのくらいで. 書きたいと思うことはいろいろあるのですが, 日々知見を貯めていて更新されていくので, なかなか綺麗にまとまっていきません.

何にせよ, またメールします.

2018-12-17 トポロジーと幾何学入門/相転移プロダクション

現代数学観光ツアーのアンケートを見ていて, あまりきちんと紹介していない本を 紹介するタイミングだと思ったので, メール書きます. 半年くらいシコシコやっていた, 幾何に関する話の簡単なまとめでもあります.

最初に前提を書いておきます. 既に定年を迎えた方で, 『昔の夢「数学をしたい」をもう一度』ということでした. いまの予備知識・数学的能力については, 記述がなくてよくわからない状況です. これ, アンケートにきちんと 項目をつけておかなかったのが敗因でしょう.

今後アンケートフォームは一本化する予定なので, いったんふだんのメルマガ用の フォームには項目追加しておきました.

よく的確なアンケートを作るのはプロの仕事, というのを聞きますが, あれは本当だ, というのを アンケート取りはじめて痛感しています.

それはさておき, 本のお勧めです. まず「測度, トポロジー, 関数論への再挑戦ガイド」 というコメントがありました. 統一感がなく, なぜその 3 つなのか, というのもわからないのでなかなか困ります.

この論文を読んでみたい, とかもっと具体的な「こんな問題にアタックしてみたい」みたいなのがないので.

それはさておき.

質問された方がどのくらい数学の基礎学力を お持ちかよくわからないので, まずは一番予備知識と能力が少なくても 切り込んでいけるトポロジーに関して本を紹介します.

とりあえずトポロジーを基礎から概観する目的では, シンガー・ソープの「トポロジーと幾何学入門」 をお勧めしておきましょう.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4563001503/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4563001503&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=1b9511aeb4d57274a51f96dcb23fe47c

東北大助教の黒木さんの推薦コメントの ツイート URL も紹介しておきます.

  • https://twitter.com/genkuroki/status/972634449102843904

この本のいいところは集合と位相空間が 異様にすっきりまとまっていて, 代数トポロジーの基礎である ホモトピーとホモロジーも書いてあり, 多様体と微分幾何入門まで盛り込んである本です.

黒木さんのコメントにもあるように, 簡単に読める本というわけではありませんが, 200 ページそこそこにいろいろ書いてあるので, ある程度大きな姿を見通すのにとても便利です.

測度論が少し特異で, その他 2 つと どういう関係で書いているのかが掴みかねています. 食い合わせがあまりよくないと言ってもいいでしょう. ルベーグ積分論とどういう区別をつけているのか, という話もあります.

関数論も幾何の色彩が強くなっているので, 他 2 つを幾何と思うなら, 幾何的測度論を眺めてみると楽しいのかもしれません. ただ, 幾何的測度論の本は測度論をある程度知っている前提で 書いてある方が多いでしょうから, 入門や再挑戦にはあまり適切な方向性ではありません.

ルベーグ積分と関数論の絡みであとで少し書くことにして, 測度論についてはルベーグ積分論または確率論で 勉強してほしい, ということだけ書いておきましょう.

関数論の入門としては, 以前, 早稲田・東工大の学生に対してセミナーをしたときの 原稿を紹介しておきます.

  • https://github.com/phasetr/math-textbook

A4 13 ページくらいで 1 変数関数論の大枠を紹介しています. 現代数学観光ツアーとスタンスが違うので, 証明が割ときちんと書いてあります.

その当時の活動のモチベーションなどいろいろな理由から, 英語の原稿だけしかありません. 和訳は作る時間が取れていないままです. アンケートを見る限り, 英語を苦にしなさそうな感じがあったので, 紹介することにしました.

最近の関数論は幾何との関連が強くなっています. そうでなくてもリーマン面は 数学として (複素) 多様体が出てきた地でもあり, ホモトピーやコホモロジーとの関係も深いので, トポロジーの実践の地として真っ先に目指すべき場所です. 以前紹介した Forster の本を改めて紹介しておきます.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/1461259630/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=1461259630&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=d4bbba505c768a851d7b6add548e6958

リーマン面に限らずトポロジーを含めても, 幾何で調和積分論は基礎教養です. これは楕円型の偏微分方程式論との関わりが深く, 必然的にルベーグ積分論との結びつきが強いので, その線から測度論, ひいてはルベーグ積分論の 動機づけをするといいのではないかと思います.

もう 1 つ, ヘルマンダー流の多変数関数論では, 関数解析を駆使したディーバー方程式の理論があります.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/0444884467/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0444884467&linkCode=as2&tag=phasetr-22

これも全くもって簡単な本ではありません. 私にとっても, 多少の必要性があって学部 4 年でアタックしたとき, 非常にきつかった本でさえあります. 現代数学観光ツアーのメインである 関数解析と関数論の関係として 1 つ重要な要素があるので, 紹介しておきました.

最後, 簡単にまとめておきます. 急ぐことでもないと思うので, まずはシンガー・ソープをじっくり読むのがいいのではないでしょうか.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4563001503/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4563001503&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=1b9511aeb4d57274a51f96dcb23fe47c

現状の現代数学観光ツアーは 一般の位相空間論をほとんど議論していないため, 測度論はともかく, トポロジーや関数論を勉強するには向いていません.

来年は現代数学観光ツアーの再編を予定しているので, そこで位相空間論のイントロもちゃんとやろうかとも思っています. 私が勉強した講義・本と, 解析的な志向性の強さから, 現代数学探険隊では実数論からの導入という流れにしていますが, これは幾何の人からすると必ずしもとっつきやすいわけではない, という話も聞いています.

どうやって導入するか悩むよりも, いろいろな導入を作ってしまう方が楽そうなので, まずは私の趣味で作り直して, あとはいろいろな導入の流れを考えていこうと思っています.

というわけで改めてシンガー・ソープへの Amazon リンクを貼っておきます.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4563001503/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4563001503&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=1b9511aeb4d57274a51f96dcb23fe47c

日本語だと中古しかなく, しかも高いので, 英語の安い中古を買うのも一手です.

今回はとりあえずこんなところで. またメールします.

2018-12-16 物理の勉強会/相転移プロダクション

先日宣言した通り, いまは量子力学の観測理論を勉強しています. いつも通信講座などでも書いているように, まずは大雑把な全体把握のために 本を流し読みしていて半分を過ぎたくらいです.

思った以上に, というか, ほぼ完全に正作用素値測度の話でした. まだ観測理論の議論を正作用素値測度の 議論に帰着させる理由が見えていません.

最後の章で正作用素値測度を議論する 理由が議論されるようです. 本来は先に読んでしまうべきでしょう. 急ぐわけでもないので, 何となく本の順番通りに読もうと思い, 初読の順番としてとってあります.

実は 11 月からいろいろな目的があって 多言語学習塾というのに入り, そちらの勉強も進めています. かなりてんてこまいです.

平日は毎日 1 時間オンライン講義があります. やってもやってもいろいろなことを忘れるのですが, 毎回の授業でくどく復習してくれるので, 非常に助かっています.

特に雑に読んでいる関係上, 量子力学の観測理論の勉強をしていても, 細かな定義をすぐに忘れます.

こういうのを思うと, コンテンツまたは講義で細かく復習を入れていくのは 大事だなと改めて思います. こういう実感を掴むためにも, 純粋な学習サイドに回る機会を作るのも大事なことがわかりました.

いま中高数学のオンライン勉強会でも, いったん私の講義として概要を話しているところですが, そちらも丁寧に復習しないといけないと思っています.

ただでさえ忙しいのにさらに忙しくなってしまいますが, 来年の種蒔きがしたいので, 簡単なアンケートをします. 最近久し振りに多少なりとも物理らしいことを勉強しているので, その辺の絡みもあります.

タイトルに書いたように, 来年は物理の勉強会をしようかと思っています. これまで何年も数学の話ばかりしていたので, そろそろ物理をやろうと. ある程度数学・物理ができる人相手を想定していて, さらに東京近郊でのリアルの勉強会を考えています.

メルマガ読者の中には 恐ろしく広範囲の趣味・志向を持つ人がいるので ここでの「ある程度」はレベル設定が難しいのですが, どんなに低くても高校数学はクリアしているくらいを考えています. そうしないと大学レベルの物理ができないからです.

もしあなたが参加希望されるなら, 何を勉強してみたいかなどを教えてください. いつもの Google のアンケートだと誰だかわからないので, メールに返信する形で回答お願いします. リアルの勉強会のために会議室を借りる必要があるので,

大事な注意です. こちらは毎回会費として, 貸し会議室の利用料も含めて事前に一人二万円ほど頂く予定です. ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ちなみにこちらは私が一方的に講義するスタイルではなく, 参加者の皆さんが何かの本を輪読していくスタイルを考えています. 理由はこちらの方が絶対に定着するからです.

最初は 5 人くらいで, 様子を見て隔週から月一くらいでできたらいいな, と思っています. Facebook のグループあたりで 参加者用の交流の場というか, 日々の質疑応答の場も準備する予定です.

集まる人にもよるのでまだ何とも言えませんが, 次の本あたりを使って量子力学か相対論の入門的なところを かちっとやろうかと思っています.

  • 「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」 https://www.amazon.co.jp/dp/4860644980
  • 「原論文で学ぶアインシュタインの相対性理論」https://www.amazon.co.jp/dp/4480094423
  • 「量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために」 https://www.amazon.co.jp/dp/4781910629
  • 「ブラックホールと時空の方程式」 https://www.morikita.co.jp/books/book/3153

集まった人の要望にもよるため, あくまで本や内容は未定で, 上に挙げたのはいまの想定です. 自分でゴリゴリできる人よりも, 勉強の助けがほしい人が来るだろうという見込で, そうなるとこのあたりだろうか, という感じで選びました. 相対論の方は数学の解説も詳しいので.

あとは相対論と量子力学をやってみたいという人も多いので, そこを重視したというのもあります.

念のため. どうしても今すぐ高校レベルの物理をやってみたい, そして教えてほしい, という方は 大学受験の予備校利用を検討してみてください. 高校生に混じって講義に出るのが恥ずかしかったり, 身近にリアルの塾などがなくても, 最近はサテライトの映像授業もあります. もちろん月額 980 円で授業取り放題, というサービスなども出てきています.

今回の物理はリアルでみっちりやる想定ですし, いまの大人向け学び直し市場の相場感も見ながら 費用感を考えています. 安くしすぎると本業でやっている人達の首を締めることになり, それは絶対にやりたくないからです.

貸し会議室の費用などもあり, 有料にはなってしまうのですが, もし興味があればぜひご連絡ください. 現状の技術では, やはりオフラインでないと できないこともたくさんあるので.

ではまたメールします.

2018-12-01 量子と情報/相転移プロダクション

一時期, 量子力学で有名なハイゼンベルグの不等式が 破れているという話題がありました. その破れに関する小澤の不等式で有名な小澤正直さんの これまでの論考がまとまった本として, 『量子と情報』という本が出ました.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4791771109/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4791771109&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=4715ba026270a8d54daf801224f3b78d

これ読んだら面白かったので紹介しておきます.

もともと青土社の『現代思想』という雑誌への寄稿なので, 数学的な記述はほぼありません. 話題が話題なので, 物理の言葉自体は乱舞していますし, 最低限の量子力学の知見がないとさすがに 内容をきちんと理解することは無理ではあります. それでも, 雰囲気は掴めるはずです.

もしあなたが量子力学の基礎理論に興味があるなら, ぜひ買ってみてください. お勧めです.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4791771109/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4791771109&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=4715ba026270a8d54daf801224f3b78d

これで終わっても何なので, 多少は感想を書いておきましょう.

以前, 小澤の不等式が話題になったとき, それ程興味なくてあまりきちんと追いかけておらず, これでようやく状況が何となくわかりました. もともとハイゼンベルグは測定誤差の話をしていたのに, いつの間にかゆらぎの話に変わっていて, そのギャップを正確に追いかけることが話のキモでした.

この辺, あまりきちんと勉強していなくて, いわゆる射影仮説がいまや否定されていて, それも小澤の不等式が成り立つ理由の 1 つのようです. 射影仮説が否定されているのを知らなくて, さすがに驚きました.

私は観測理論について何もわかっていないことがわかったので, 大きな収穫です.

小澤正直さんは超準解析も使ったりしているようで, その辺は私の制御の及ぶところではないにせよ, フォン・ノイマン以来の作用素論/作用素環論による 量子論の数学的定式化を比較的に素直に継承しているはずで, 私は数学的バックグラウンドはかなり近い方です. そういう事情も手伝ってかなり興味が湧いてきました.

知識のブラッシュアップも含めて, いままで量子情報関係の話を勉強してみようと思いつつ, あまり手が出ていなかったのですが, この本を読んで, 私は量子情報というよりも 観測の理論あたりの基礎理論にこそ興味があることに気付けたのも収穫です.

何冊か文献を教えてもらったので, 何となく新しめの方がいいかと思い, 奮発して次の本を買いました.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/3319433873/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=3319433873&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=e067100c398e6859ca5d06be0e8aef8f

約 20,000 円です. 1 冊でこの値段とか信じられないくらい高いですが, 洋書の専門書だとだいたいこのくらいですね. かなりつらい.

せっかく買ったのだし頑張って勉強します. 幾何系の勉強やらコンテンツ制作などはいったんストップして, しばらくこれの勉強に集中しようと思っています.

小澤正直さんの本を読んだ感想ももう少し書きます.

最後のところで代数的場の量子論関係の話も出てきました. このあたりも小嶋泉先生の話で前から興味あったところなので, かなり面白かったです. これも勉強してみたい.

そこの記述で Halvorson という人が出てきます. 修士での専門を決めるべくいろいろな本や文献を流し読みしていた頃, この人の教科書 (? レビュー?) を読んだことがあります. ずっと数理物理の人だと思っていたのですが, 科学哲学の人だというのをはじめて知りました.

  • https://arxiv.org/abs/math-ph/0602036

これの所属を見ると, 確かに Department of Philosophy, Princeton University とあります.

  • https://philosophy.princeton.edu/content/hans-halvorson

これ見るとけっこう若い. しかも本来, (数学としては) 圏と数理論理の人っぽい.

Curriculum Vitae 見ると, 基本的にはガチガチの哲学畑の人のようです.

  • https://philosophy.princeton.edu/sites/philosophy/files/person/cv/Halvorson_cv-18.pdf

この人, 何をどう考えても私より 数学も物理もできますね. 国内外問わず, 数学・物理系の数理哲学・科学哲学系の人は それぞれ数学なり物理なりかなり出来る人がいるのは知っていますが, そのタイプの人です.

こんな形で学部 4 年の頃に知った名前, Halvorson と出会うことになるとは思いませんでした. 純粋に数学としても面白いところだと思っているので, 改めて勉強意欲が湧いてきます.

改めて紹介し直しておきますが, 私が作った通信講座またはその PDF 版は, 小澤正直さんの仕事を追う上での数学的基礎はあらかたカバーしています. 興味あればぜひどうぞ.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

先程紹介したこれから読もうとしている本でも, 簡単なところは復習があるとはいえ, いま軽く眺めた限りでは私の講座で扱っているレベルの内容は 事実を紹介しているだけで証明はないようです.

私のコンテンツでなく, 何を使っても 勉強できる内容ではありますが, 数学の本だと物理的なところに関するコメントはまずありません. 多少なりとも物理に配慮された新井先生の教科書シリーズにしても, どこまで読むか・揃えるか考える部分はあります.

ここであえて『量子と情報』に関わる内容に触れている部分を 全ておさえようと思うと, 量子力学の数学的構造の I, II, 量子現象の数理, 量子統計力学の数理あたりが必要です. これでだいたい 25,000 円くらいします.

上で紹介した観測理論の本も約 20,000 円ですし, 専門書を揃えるとやはりこのくらいかかってしまいます. いまやある程度ネットで拾える コンテンツでも勉強自体はできます.

今度は勉強を続けるための環境整備, 具体的にはわからないことがあったときに 質問できる人々がいるかどうか問題もあります. このあたりも改善していきたいです.

ちなみに. 上で紹介した Halvorson による arXiv の文献で, 形式的には AQFT が勉強できます. ただ代数的場の量子論という分野自体, 私は修士の頃に数学力が足りずにアタックできず, まずは興味がありつつ出来るところからはじめようと思い, 新井朝雄先生方面の 構成的場の量子論に照準を合わせたという経緯があります. 半端ではないほど難しいので注意してください.

環境と言って思い出したのですが, 先日も案内した中高数学のオンライン勉強会, 5 人くらい集まって, 来週あたりからはじめる予定です.

主婦の方や高校生も参加しています. その辺の事情がいろいろあって, いったん連絡手段を LINE にしています. 興味ある方は連絡先を教えるので, 個別に連絡をください.

ではまたメールします.

2018-11-24 中高数学のオンラインセミナーの案内/相転移プロダクション

前のメールから一月空いてしまいました. 2 年間来る日も来る日も作り続けていた通信講座を 一通り作り終わり, 次に何をしたものかと考えつつ, この一月は幾何を雑に勉強していました.

その中で小さめの動きを 1 つ, そして新たなトライアルを 1 つやることになったので, その報告とお誘いです.

まず, 数学系 VTuber の人達と, コミケで合同誌を出すことになりました. 他にもいるのかもしれませんが, 次の 2 人が主催です.

  • https://www.youtube.com/channel/UCermM-2n0vZM47b7g_U-Cqg
  • https://www.youtube.com/channel/UC2lJYodMaAfFeFQrGUwhlaQ

数学ネタなら何でもいいらしいので, 最近いろいろ勉強もしている物理と幾何, そしてプログラミングみたいなところで書く予定です. 12/10 が締切なのであまり余裕がなく, 直近はこれにかかりきりになるでしょう.

で, もう 1 つ. これはメールタイトルの通りです. 中高数学に関して改めてちゃんとモノを整備しようということで.

何を作ったらいいのかわけがわからない, というのもあるので, もう実際に人集めてオンラインセミナーしつつ, 具体的に要望なり何なりを吸い上げていこうと思います. 一人, 具体的にやろうという人を見つけたので, こちらも開催決定です.

基本的には中高数学を復習したい大人向けを想定しています. 基本的には大人の復習向けにやりますが, 中高生ももちろんウェルカムです. ただし, メインの対象の大人はそれをモチベーションにできないので, 学校の試験対策みたいなことはやりません.

あと, 実際に運営している通信講座の 案内ページでいろいろ書いている方針, つまり, 大枠を掴むことを重視して, 細かい理解はあとから少しずつつけていくスタイルを 考えているので, 今すぐ, やっているところを 1 つ 1 つ丁寧に理解したい, みたいなところはあえて目指しません.

オンラインセミナーのノリに関しては, だいたい次のページ, 特に前者のような感じです.

  • https://phasetr.com/mrlp1/
  • https://phasetr.com/mrjhlp1/

いまの想定では, 中学数学を雑に眺めたあとに 関数と微分積分を中心にして雑に高校数学を眺め, そのあと少しずつ興味関心の高いところ, そして高校数学の大事なところを深掘りしていく形です.

もしあなたが興味あるなら, このメールに返信する形で参加表明してください. 無記名のアンケートに回答されてもこちらから個別に連絡取れないので, ご注意を.

最近流行っているので, zoom を使ってオンラインセミナーやろうと思っています.

  • https://zoom.us/jp-jp/meetings.html

少なくとも iPhone にはアプリがあるので, それでも OK です. もちろんパソコンでも動きます.

今回はこのくらいで. ではまたメールします.

2018-10-06 Skype 相談およびリアルの勉強会/相転移プロダクション

新たな動きに関するお知らせです. 年のはじめだか切り替わりのタイミングで, 今年は中高数学系も強化したいと言いつつ, なかなか対応できていませんでした.

理由の 1 つが何をしたらいいか, どんなコンテンツを作ればいいかわからなかったことがあります. そこで, もう実際に会って聞こうと思います.

2 つ手段を考えました.

  1. (特に遠方の方向け) Skype 相談
  2. リアルの勉強会またはセミナー

今回, 勉強しようと思った経緯はともかく, 結果としてとにかくいまは中高数学をやってみたい, という方向けに話をする機会を作ります.

できればリアルで会う機会を作りたいので, リアルの勉強会・相談会またはセミナーも何度か開きたいと思っています. 場所は私が行きやすいところということで, 東京近郊 (山手沿線) です.

勉強会は適当な会議室をおさえるので, 事前に会場代の実費を頂こうと思っています. 開催時間と勉強会の内容によっては, 終わったあとの懇親会 (これも実費) も考えています.

Skype 相談に関しては, 実際, スウェーデンにお住まいの方さえいらっしゃいます. そこまですごくなくてもさすがに遠方で来られない, という方はいらっしゃると思うので.

念のため事前に書いておくと, 私は吃音があって話すのに難儀する部分があり, こちらの話が聞き取りづらいこともあると思います. それはご了承ください.

実際にどんなことを勉強しているのか, 勉強したいのか, 何で困っているのか, 座談会的に聞いてみたいですし, 必要なら軽く私が話してもいいかな, と思っています.

私がふだん散々情報を出していますし, あなたの話が聞いてみたいので, あまり私がゴリゴリと話すことは考えていません. むしろそこで聞いたことを元に, 新しく何か作ったり, 全体に情報を出すことを目的にします.

何というか, 参加資格は中高数学をやってみたい方です. それ以外に年齢や性別などは問いません.

参加希望の方は次の内容を書いて このメールに返信してください.

  • 連絡先 (氏名・メールアドレス)
  • 参加したいのはSkype 相談かリアル勉強会か (両方でも可)
  • 何を相談したいか, どんなことを聞きたいか
  • 勉強会をやるとしたらどんなことをしたいか・してほしいか
  • Skype 相談の希望日時
  • 勉強会をやってほしい曜日・時間 (土曜日のお昼にランチしつつとか, 平日午後とか, 休日に飲み会的にやるとか)

他にも聞きたいことができたら, やりとりの中でさらに追加で伺うことにします.

大学レベルの数学や物理に関しては, もうコンテンツがありますし, メルマガでもちょくちょく流しているので, 今回, そちらは考えていません. (要望がよほど多ければやろうとは思います.)

Skype 相談はともかく リアル勉強会に関しては, 続くメルマガで通達がなかったら, 希望者がいなくてお流れになったと思ってください.

ではまたメールします.

2018-09-29 『物理数学の直観的方法』へのコメント/相転移プロダクション

購読者アンケートで何か次のようなコメントが来ました.

「高校の力学くらいならまだしも, 「式や計算を抜きにして直観的に理解する」というのは, そもそもありえません. 何となく雰囲気を知ることと, 深く理解しようともがくのは全く別の営みです.」 この一節に強く共感するものです. 筆者には是非巷の物理, 数学の学習者に好評のある「物理数学の直感的方法」 「相対性理論の直感的方法」などについて御意見, 書評等お聞かせ願えれば有難いです.

何というか, 世間的な意味で「批判的」な文章を書くことを 期待されているように感じました. 書き方が曖昧なので何とでも取れるとはいえ, こうした本が出版されている状況そのものに対してさえ 批判的な感じもします.

ちなみに『物理数学の直観的方法』の著者, 早稲田の応物で数理物理系研究室に入ったそうなので, 応物か物理かという違いだけで基本的に私と同じ経歴です. 早稲田では大学院で 「先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻」 になるほど応物と物理は入ったあとの垣根がないので, 年次以外は本当にほぼ同じです.

『物理数学への直観的方法』は学生時代に読んだので, それに対するコメントを書くことにしましょう. 本へのリンクも張っておきます.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4062577380/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062577380&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=efb997cdcb4be43e6912d85979975c2d

最初に結論から言えば, 理解のために必要なことは全てやる必要があり, 直観的な理解も絶対に必要なので, 上掲書も使えるところは使い倒せという他ありません.

私もよくやってしまうのであまり人のことは言えませんが, 多分このコメント書いた方, 少なくとも『物理数学の直観的方法』は読んだことないのではないでしょうか.

序文を読むとわかるように, 表に出てきたコンテンツはともかく, 「既存のコンテンツと学習者のニーズのギャップを埋める」 という意味では私も全く同じことをしています.

そして, 基本的な対象は計算できるようになっても, その意味がうまく腑に落ちなくて困っている, というよくある具体的なニーズに応えている本です.

ここ何回かのメルマガで 「きちんと計算できるようになりましょう」と書きました. 次に来るステップは「計算はできたが何をやっているのかわからないし, 計算結果をどう理解すればいいかもわからない」です. 少なくとも『物理数学の直観的方法』は このステップに対する対策・回答です.

今回, 細々としたことまでは書きませんが, きちんと物理や数学を勉強しているなら乗り越えるべき壁です. 「この一節に強く共感する」とか書いていますが, 本当にその一節だけ切り取って, 勝手に共感されてしまっている気分です.

今回は数物ゴリゴリ型 (の非学生) と 数学・物理をさらに応用したい方, 特に学生さん向け両方に関してお話します. この本, 学生の頃に眺めたことがあり, そのときの記憶を元にしているので, 多少おかしなことがあるかもしれません. もちろん本当はきちんと読み直した方がいいのですが.

まずは『物理数学の直観的方法』の本自体に関する一般的なコメントを書き, 次に数学・物理が非専門の方に対するコメント, 最後にゴリゴリ型の方に向けたコメントを書きます.

本自体に関するコメント

まずは次の Amazon ページの中身検索で序文を見てみてください.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4062577380/

「何よりも厳密さというものを絶対的に尊ぶべしという, 近代数学の掟」という, どう考えてもこの人, 数学がそうならざるを得なかった経緯や歴史を 全くわかっていないのでは? という地雷文が出ていますが, 非数学科の学生にはだいたい同じことを 思うであろう内容が書いてあります.

例えば次の 1 節.

大学の数学の講義というのはえてしてこのようなものであり, 一体何のためにそういうことを行うのかについて, あまり明確に語ってくれないのである.

不満はこれだけにとどまらない. 目的ばかりではなく, 概念自体のあら筋だけでも説明してくれれば, 学ぶ側としてずいぶん楽なのだが, 大部分の先生はそれもしようとしない.

年次はだいぶ違うとはいえ同じ大学の学部・学科所属であったこと, 大学という環境の使い方などあらゆるところで 突っ込みたいことはあるものの, たいていの学生の実感としてはそれなりに 共感するところがあるのではないでしょうか.

1 つだけ, 時間制限のある講義で教えてくれないと嘆くなら, 講義のあとに研究室に押しかけていくなり, 教官が忙しても院生に聞くなり, 取れる手段はいくらでもあるので, 講義だけで何とかしようというのが そもそもの知的怠惰だとは言っておきます.

昔は大学に進学する人間じたいが本当に ごく一部のエリートで言われなくてもそのくらいわかるし, そもそも研究者という生業を選ぶくらいなのだから, 教えてくれなくても自分で勝手に考えるという種族であり, それでも不明点があるなら質問や議論に行く種族でもあるので, そのギャップはあるのだろうという感じもあります.

それはそれとして, 本の話に入りましょう. 一言で言うなら, この本は既存のコンテンツやサービスのギャップを 埋めるために作られています.

そして語る対象と内容が違うだけで, 私も同じことをやっています. 私の場合は関数解析系の解析学に関して, 純粋に数学的な話と物理への応用両方をやっています.

この本, 復刻版も出ているくらいですし, 一般的に評判はいいはずで, きちんと市場のニーズはおさえられているはずです.

学生の頃の記憶を掘り起こすと, 例えばベクトル場の回転がなぜあの形になっているのか, もしくは何故あの形で回転が表現できているのか, といった, 誰でも一度はぶちあたるであろう問題を それなりにきちんと解答を与えています.

いまと昔で状況で違いますし, 私もチェックはしきれていないので, 他にもいい本は出ているかもしれません.

ただ, それでも歴史の審判をくぐり抜けつつ, 新書で 1,166 円と安いので, 私のメルマガの読者の方なら 手元に置いてもいいだろうとは思っています.

あと, 念のために書いておくと, 「何よりも厳密さというものを絶対的に尊ぶべしという, 近代数学の掟」というのが地雷だというところ, 例えば現代数学観光ツアーでは 第 1 回の面積に関する議論で何故厳密にやらないと いけなくなってしまったのかを紹介しています.

  • https://phasetr.com/mtlp1/

実際に理論系の学生であるという程度に 基礎体力があるゴリゴリの物理・数学系の人向けに作っていて, 実際にコメント頂いているように, どう控えめに言っても簡単ではありませんが, 受講されていない方や改めてもう一度受講してみたい方はどうぞ.

厳密さを絶対的に尊ぶべきというのではなく, 一定の厳密さを保たないと矛盾だらけになってしまったから, ある意味, 仕方なく, できる限りの精度を保つようにしているのです. 厳密さを絶対的に尊ぶべきなら, 全員公理的集合論などまでやるべきでしょうが, そうなっているわけでもないので, 際限なく厳密さを要求しているわけでもありません.

非数学系の学生さん向け

次に非数学系の学生さん向けのコメントです. 例えば物理専攻の 2 年程度なら うまいこと使いこなせるでしょうし, 人によっては本当にぴったりはまるでしょう. それ以外でもある程度物理の素養があれば いい感じにはまる部分はあるだろうと思います.

上にも書いたように, 私はこの本を「計算はできるがその結果が腹に落ちない」 という人向けの本だと思っています. もう少しゆるめて「計算に苦労はするが, 式と現象をうまく対応づけて理解していこうという基本的な姿勢があり, 物理に対してある程度の直観がはたらくようになっていて, 多変数まで含めて微分積分にもある程度の親しみがある」程度は必要です.

後者の事情をもっとはっきり言えば, 「大学受験を突破した」程度ではかなり厳しいだろう, ということです.

これに関して, 私は苦い思い出があります. 早稲田の物理では 1 年のとき, 物理学研究ゼミナールというのがあります. 応物にも対応する科目があります.

  • https://www.waseda.jp/student/weekly/contents/2005b/2005b3.html#081n

上のページで「研究」というコメントがあります. これは実際に研究室に行って, 実験してみたり, その考察をしたりもします.

もちろん研究といっても本当に論文が書けるような内容ではなく, どちらかといえば 1 年から研究室に遊びに行きやすくするような, 学科側からの配慮という感じがあります.

私はこれでブラウン運動をやりました. 実際に研究室の設備を借りて実験するところと, ブラウン運動, 特に拡散方程式の解析をするところが 発表のテーマになっていました.

私はここで拡散方程式の解析部分を担当しました. もちろんフーリエ解析です. これが本当につらかったのです.

最終的にまわりまわって, 広い意味ではフーリエ解析に関する数学の道に進む程度には 「3 つ子の魂百まで」事案になってしまいました.

何が困ったかというと, 数学と物理両面で困ったのです. 物理の学部生がふつう考えるなら, フーリエ解析の数学は微分方程式論の枠で見るでしょう. 数学の微分方程式論の本を読んでもさっぱりわかりません. 実際に私が眺めたのは関数解析系の本でした. 今読んでさえ厳しい本かもしれませんが, そういう判断能力がないのです.

発表時期は確か 12 月だったので, 勉強していたのは学部 1 年の夏から秋です. いわゆる応用数学, 物理数学系の本を読んでも, 数学の基礎体力がないので耐えられません.

偏微分の計算くらいはできても, 偏微分方程式を解き切る力があるかと言われると無理です. 後期にはベクトル解析の講義もはじまっていましたが, この発表用に勉強しているときには まだマクスウェルや波動方程式を扱えるだけの力はありません.

というわけで数学色が強いアプローチはどうにもなりません.

かと言って物理色が強いアプローチもつらいのです. 具体的には「物理現象のフーリエ解析」を読みました.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4480098372/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4480098372&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=1e4afa688a964457e77d95b2aa1c7888

物理色が強くなると, 当然物理的なイメージも前に押し出してきます. 偏微分方程式の導出というテーマもあります. そして物理ができなさすぎて, これらに全く対応できません.

物理系の文献になってくると, 物理的な直観をうまく表現してくれる部分があるので, デルタ関数もゴリゴリ出てきます. これに関連した計算ができることも 物理的な直観も両方要求されます.

手元に文庫があるのでいま改めて眺めると, このテーマでコンテンツを作るなら, 多かれ少なかれ自分でもこんな感じで書くだろう, と思える内容です. しかし物理学科の学部 1 年でさえ, 「物理現象のフーリエ解析」はきついのです.

記憶ベースではありますが, 「物理数学の直観的方法」は 「物理現象のフーリエ解析」ほどハードではありません. しかしそれなりの物理的・数学的感覚は備えていないと読めません.

Amazon のレビューも見てみてください. 例えば次のようなレビューがありました.

親切な説明では無いと思う

高校生に勧めたい等のレビューを見て買ったが、知識がある人のための本だった。 線積分やら面積分なんて高校でやりましたっけ…?

「知識がある人」というコメントがいろいろな意味で目を引きます. 線積分や面積分を知っているだけではどうにもならないでしょう. やはり「計算はできるが, ただそれだけ」状態にある人が 基本的な対象だろうと思います.

せっかくなので物理学研究ゼミナールの思い出を もう少し書いておきます.

ブラウン運動の解析だから, ブラウン運動もきちんと勉強した方がいいだろうと思って, 大学の図書館で「ブラウン運動」と書かれた本を 読んだことがあります. わかる人にはわかる, 飛田武幸のブラウン運動です. 学部 4 年くらいでようやく知ったのですが, これはゴリゴリの数学の本です.

学部 1 年の頃, 当然高校の化学でやる ブラウン運動しか知らないので, 「これ, 何をどう考えても私が知っている ブラウン運動ではない」 と思って困惑した記憶があります.

これはこれでまわりまわって, 修士で場の量子論の数学に関連して 確率解析的なアプローチがあって, それ用の勉強をするところで 4 年がかりで 学部 1 年の頃の伏線を回収しました.

数物ゴリゴリ型

この数物ゴリゴリ型, 少なくともアンケートの回答というレベルでは, 例外なく「元文系」という方です. こうした方々には厳しい本だろうと思います.

「物理数学の直観的方法」は, 大学の正規の教育課程の中で「計算はできるが, イメージが湧かない」タイプの人向けの本です.

「とりあえず超弦理論を勉強してみた」といった タイプを読者に想定していません. 物理の例に挙がるのは古典的な電磁気学や熱力学, 解析力学であり, それなりに古い本なので最近の幾何との交点についても 深い言及はありません.

古典論の物理とそのための数学の計算的基礎があることが前提です. 自己申告を見る限り, とりあえず超弦理論を眺めてみて, やはりきちんとやるには必要そうだから量子力学を眺めてみて, そこからさらに解析力学に, というような, 大学のカリキュラムから見て非正規のルートを通っていると, この本を読むのに暗黙に仮定されている 物理的・数学的な素養が育っていないはずです.

物理数学系に関しては次の講座のテーマとして考えていて, まずはミニ講座を作るための計画を練りつつ, 幾何の視点を強化するべく再勉強しています.

他にもプログラミングも絡めた, 中高数学よりの展開も考えていて, うまいこと複数の流れを合わせて ミニ講座群を構成したいと思っています.

うまい構成が見つからなくて, 止まってしまっているプロジェクトもありますが, 裏で少しずつ進めているので, 期待していてください.

ではまたメールします.

2018-09-16 電磁気からの物理数学入門/相転移プロダクション

年単位で物理の話をろくにしていないような気がしたので, 少し物理よりの話もしておきましょう.

今回の話のメインターゲットも, 基本的には趣味で物理や数学をやりたい人の方で, 他の専門がある人には微妙にはまらない部分があります. それでも, これまでのゴリゴリの数学の話にくらべれば, 遥かに参考になることが多いと思うので, 気楽に眺めてみてください.

ずっと言っているように, 物理は計算ができてなんぼです. 物理は数学を使った議論をメインに据えられるほど, シンプルで簡単な分野です.

高校の力学くらいならまだしも, 「式や計算を抜きにして直観的に理解する」というのは, そもそもありえません. 何となく雰囲気を知ることと, 深く理解しようともがくことは全く別の営みです.

わざわざ私の情報を受け取ろうという人が, 単に何となく雰囲気を知りたいだけ, ということはありえないと思っているので, ここまで言い切って書いています.

前置きが長くなりましたが, まずは計算できるようになることが大事です. 細かいかどうかはともかく, 使う数学に関して厳密な証明を理解する必要はありません.

ベクトル解析や常微分方程式論など, 一部の議論では物理や応用上のハートに沿った証明もありうるので, そういうところでは証明つきで勉強した方が 理解しやすくなることすらあるでしょう. それはそれでうまい塩梅で勉強してください.

いきなり話が逸れましたが, 物理のための数学, さらには他の応用のための速習物理という観点からは, とにかく使い倒して感覚を掴むことが大事です.

そのとき, 1 つの軸になるのは電磁気です. なぜかというと, 物理数学で大事な次の数学が全て出てくるからです.

  • ベクトル解析
  • 偏微分方程式
  • フーリエ解析
  • 関数論

いまあなたがどういうステータスであるにしろ, 電磁気の本を眺めて, これらが現場でどう使われているかを確認して, 勉強のモチベーションにすることをお勧めします.

現代数学観光ツアーでもコメントしているように, 無限次元の線型代数という側面もあるので, 上の 4 つに線型代数は自動的に含まれています.

相対論まで入れれば, 有限次元の線型代数も完全に射程圏内です. 状況をまとめて知るには格好の材料です.

もちろん量子力学でもいいのですが, うまくやらない限り, 物理的にも数学的にもよけいな要素におされて, 注意が散漫になりかねません.

ぎりぎり物理としても直観的に理解できる範囲にありつつ, 物理数学の腕力を鍛えられる電磁気を軸に 物理数学の力を鍛えるのはお勧めです.

そのための具体的な本ですが, とりあえず一冊勧めるとしたら次の本です.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4314008547/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4314008547&linkCode=as2&tag=phasetr-22

この本のいいところは計算が丁寧なところです. 付録でベクトル解析も載っていますし, しょっぱなにデルタ関数のフーリエ変換と, 留数定理による定積分計算が出てきて, 物理数学のフルコースが冒頭から味わえることもポイントです.

電磁波の理論は計算が本当にうっとうしいので, 計算が詳しい文献は助かります. 特に独学するときには.

他には次の本も割とこってり系です.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/462104804X/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=462104804X&linkCode=as2&tag=phasetr-22
  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4621048058/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4621048058&linkCode=as2&tag=phasetr-22

私の電磁気は学部のときの知見がメインで, ここ最近の本や洋書の探索までは追いついていないので, 数学系のコンテンツ制作が落ち着いたら, きちんと再調査したいとは思っています.

一方, もしあなたがもっと物理に軸足を置きつつ, 数学にも触れたい, という方向性なら, そして特に物理自体も基礎からやらないと, と思っているなら, やはり力学をやるのが最善です.

常微分方程式の議論がメインなので, 数値計算で遊んでみるのもやりやすく, 数値シミュレーションの範囲で「目で見て遊ぶ」のもやりやすいです.

シミュレーションに関しては, 中高数学の復習という観点から, Python コードも紹介しつつ常微分方程式を議論した 無料の講座があるので, 必要なら受講してみてください.

  • https://phasetr.com/mrlp1/

解析力学まで行くと, 物理としてもまた 1 つ深い地点に辿りつけますし, 量子力学や統計力学への準備もなります.

場の解析力学という観点からは, 流体力学への導入にもなります.

流体力学もいろいろな物理数学の導入に使えますが, 中心的な概念の 1 つ, 応力が割とややこしいのがつらいのではないかと思います.

テンソル解析が本当によくないので, その辺もつらく厳しいところ. 微分形式にすると今度はそちらの数学的基礎で苦しむので, 何をどうやっても厳しいとは思うのですが.

何にせよ, 物理数学の全体像を現場で見たければ, 電磁気の本を眺めるのをお勧めします.

電磁気も各種シミュレーションが発達しているはずなので, その辺を知見を教育にも盛り込めれば, と思っているのですが, 私にシミュレーション方面の知見がなさすぎて, あまり具体的な動きにできていません.

レンズの設計なども広い意味では電磁気ですし, いろいろ遊べる要素が多いとは思うのですが, 私が工学系応用に弱いため, そちらもあまり具体的な動きにできません.

読者のどなたか, 講座作ってくれませんかね? その筋の人, 絶対いると思うのですが.

今回はこんなところにしておきます. ではまたメールします.

2018-09-12 幾何入門のお勧め/相転移プロダクション

結論から言うと, リーマン面を勉強しようという話です. 参考文献含め, 順にコメントしていきます.

ここ 1-2 ヶ月, 新たな物理数学系ミニ講座への展開のためもあり, 本業の仕事のためもあり, 微分に関する諸々を再勉強しています.

となると, 幾何をきちんと考える必要があります. 微分法そのものが幾何の色彩にあふれているからです. そこで改めてふつうの多様体論も勉強し直しています. この基礎固めをきちんとしていないと, ミニ講座もぐたぐだになって, 再構成/再作成が必要になるので, 新講座はいったん作るのを止めています.

参考文献紹介のためもあり, 多様体論はいろいろな本を漁って, 見比べつつ勉強しているところです. このあたりの詳しいところは, そのうち (といっても数ヶ月は先) 情報を出します.

で, 幾何入門のお勧めです. 改めて書くと, リーマン面を勉強しようという話です.

私は背景として物理学科卒で, 修士は数学科, 特に解析学専攻なので, 数学としては感覚がある解析から アタックしたいと思っています.

そのあたり, 解析学に猛烈に特化していること以外, 数学的な背景はたいていの物理系統の 非数学科の人と同じです.

同じというのはだいたい次のような内容を 知っているということです.

  • 微分積分
  • ベクトル解析
  • 微分方程式論
  • フーリエ解析
  • 関数論

フーリエを無理やり表現論やリー群論と絡めるなら, だいたい全て幾何とのつながりがあります. むしろ多様体論の基礎基本として, 知らないことには話が先に進みません.

一方で幾何の基礎教養もかなり広いです. 特に, 要望が多い超弦理論関係の数学となると, 幾何のほぼ全てと関係があるといってもいいくらいです. どこまできっちりやるかはともかく, まずはいろいろな分野の様子, そして関係をつかめるような形で勉強することも大事です.

いま自分がどこにいるのか, いま自分が勉強していることが数学の中でどう展開していくのか. 各種通信講座でも書いているように, これらを感じられるようにしつつ勉強するのが大事です.

その中で, リーマン面はやはり非常に優秀な分野です. 先日も書いたとおり, 次のような分野を, 1 変数関数論を軸にして一気に勉強できます.

  • 複素多様体論
  • ホモトピー, 被覆空間
  • コホモロジー
  • 偏微分方程式論
  • 変分法
  • ベクトル束

ガロア被覆に関連して当然代数の ガロア理論も関係してきますし, コホモロジーに関連して代数の基礎知識や 基本技術も仕入れられます.

解析としても, アプローチ次第では, 偏微分方程式論に首を突っ込むこともでき, これはこれで幾何解析というゲージ理論と関係する 分野の基礎体力を鍛えることにもつながります.

全体的に幾何, 特に微分幾何は, 代数・解析・幾何をバランスよく勉強しておく必要があり, 歯をくいしばって勉強するとそれだけご利益があります.

そこでいま読んでいるのは, 先日も宣伝しておいた Forster の Lectures on Riemannian Surfaces です.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/1461259630/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=1461259630&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=d4bbba505c768a851d7b6add548e6958

これはまさに上で書いたことが網羅されている文献です.

まだほとんど読めていませんが, 東北大助教の黒木玄さんは Gunning の Lectures on Riemann Surface を推薦していました.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/0691619255/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0691619255&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=d208a459a3857b74753f7437d3a4f836

私の手元にあるのはタイプライターによる本で, その時点でかなり読みにくいのですが, 内容に関してはお勧めらしいので, ここでも名前を挙げておきます.

他にもリーマン面の本は和書でもいろいろあるので, 面白そうな本やアタックしやすそうな本があれば, それを読んでみてもいいでしょう.

ただし, 現状, 数学科のための数学というスタイルの本しかないはずで, 基礎知識として要求されていることが少ないとしても, 数学への耐性と覚悟が絶対的に要求されます.

いろいろなレビューを見ても, 数学科水準でのわかりやすさに関するコメントしかないはずなので, そういうつもりで見て, そういうつもりで挑まない限りはどうにもなりません.

リーマン面は共形場理論でも大事な理論です. 共形場理論は現代数学でも特別な位置を占める理論で, 幾何だけでなく, 作用素環や確率論とも関係があります.

ここ数十年, 共形場理論に関わる数学でフィールズ賞が 何回も出ているほどに活発に研究され続けています.

超弦理論としても, AdS/CFT の CFT が共形場理論 (Conformal Field Theory) なので, 基本的な意義があります.

というわけで, もしあなたがちょっと突っ込んで現代数学を勉強してみたいというなら, その一歩としてリーマン面を目標にするのは, なかなかいいと思います.

物理学科レベルでいいので, 1 変数関数論は知らないとさすがに厳しいでしょうし, 位相空間論もないと厳しいでしょう.

関数論はともかく, 位相空間論に関しては, どのくらいのことを知らないといけないか, 雰囲気を掴むために見ておくという使い方もありでしょう.

それで Forster の 10,000 円を出すのは きついとも思うので, そういう場合は適当にネットで PDF を探しましょう.

英語で探せば講義資料を含め, 100 ページオーバーの PDF もたくさん置いてあります.

調べきれませんし, 内容も精査しきれないのでここでは紹介しません. むしろ何かいいのがあれば教えてください.

ちなみにもしあなたが, 比較的軽めのノリで, 集合・位相から微分幾何を勉強したいというなら, シンガー・ソープの本がおすすめです.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4563001503/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4563001503&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=1b9511aeb4d57274a51f96dcb23fe47c

もっと物理のノリでやりたければ, シュッツの本がいいでしょうか.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4842702168/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4842702168&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=50a0fef38a03c486e77d068b31df24fd

中原の有名な本もあり, こちらの方が内容が現代的ではありますが, 数学色は強くなっています.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/0750306068/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0750306068&linkCode=as2&tag=phasetr-22

全部和訳があるので, 英語が嫌なら和訳の方でもいいでしょう. 超弦理論を追うなら英語の情報を追えた方がいいので, 和訳にこだわるのはお勧めしない, ということくらいは言っておきましょう.

今回はこんなところで. もしあなたが物理数学ミニ講座をご所望なら, もうしばらくお待ちください. 物理で実用的な微分として, 流体力学の物質微分などもあり, これは幾何学的にはリー微分です.

物理からも数学からも, 改めてきっちりやっておかないとろくなことにならないので.

ではまたメールします.

2018-09-08 物理学におけるトポロジー/相転移プロダクション

読者の方から紹介して頂いたので.

  • 2018/10/13 第23回久保記念シンポジウム「物理学におけるトポロジー」 https://sites.google.com/view/23rdkubosymposium

案内ページの内容を一部コピペしておきます.

日時: 2018 年 10 月 13 日 (土) 場所: 学士会館 320 号室 東京都千代田区神田錦町 3-28 tel:03-3292-5936 地下鉄都営三田線又は半蔵門線「神保町」下車

プログラム 13:00 ~ 13:10 開会の辞 13:10 ~ 14:00 永長直人 (理化学研究所創発物性科学研究センター・東京大学工学系研究科) 「固体電子系における量子位相の幾何学と物性」 14:10 ~ 15:00 向井哲哉 (NTT 物性科学基礎研究所) 「冷却原子実験の発展とその応用」 15:10 ~ 16:00 川口由紀 (名古屋大学工学研究科, 昨年度久保亮五記念賞) 「原子気体 BEC におけるトポロジー」

(講演時間の内訳は, 講演 40 分と質疑応答 10 分) 申し込みは不要です. ご興味のある方は是非ご参加ください. 会場の定員は 100 名です. シンポジウム終了後に, 第 22 回久保亮五記念賞贈呈式が行われます.

時間があるので私も参加する予定です. あなたも興味があるならぜひ参加してみてください.

今回は手短に. またメールします.

2018-09-07 多様体の勉強のために/相転移プロダクション

アンケートで質問が来て, 今後のためにもある程度まとめた方がいいだろうと思い, 回答します. 特に超弦理論を勉強したい系の方だったので, その前提で書きます.

割とこう日本語が崩壊した感じの文章が送られてきていて, 何を言いたいのかよくわからなかったので, 意図が汲めたところだけ回答します.

まずは多少具体的に多様体論に アタックするための最低限の武装の話をします. そのあと, 少し話を広げた話をしていきます。

まず私の基本的な認識とスタンスに関して改めて書いておきましょう. 私の各種講座に参加されている方は 主に次の 2 パターンです.

  • 理工系で他に何か専門があり, そのために必要な範囲の数学を要領よく勉強したい.
  • 物理や数学に目覚めたので, それ自体をガッツリと勉強したい.

アンケートなどの回答を見ている限りの話ですが, 実際, 後者には学生の頃は文系だったという方が割と多く, 特に超弦理論が勉強したいという方がよくいます. この 2 つで勉強のスタイルや方法, 読むべき本も全然違います.

今回は超弦理論をやってみたい という方からのコメントなので, 後者の物理・数学ガッツリ系の話をします.

まずやってみてほしいのは, 実際に多様体の本を眺めてみることです. 多様体に限らず, たいてい前書きに必要な知識に対するコメントがあり, 本によっては冒頭または巻末付録にまとめがあります. それを見て確認してください. このあたりはどんな分野を勉強するときにも必要な作業です.

その他役に立つのは数学科のカリキュラムを見ることです. 学年を経るごとに基礎知識からそれを前提した議論へと 進んでいくわけで, それを見てもある程度判断できます. 教官の講義用資料ページにもいろいろ書いてあることがあります.

これをやっているのかどうかわからなかったのですが, 最低限このくらいはやっておけば, 自力で何とかできることが増えます.

その上でもう少し具体的な話をしましょう. 多様体論でギリギリ最低限必要なのは線型代数と微分積分, 常微分方程式の理論です.

詳しい話は追々していくとして, 必要なのはいわゆる理工系教養の数学の 一番難しいところです. ~~~~~~~~~~~~~~~~

つまり抽象的な線型空間論, 陰関数定理と逆写像定理をはじめとした多変数の微分積分, 常微分方程式の解の存在と一意性, そして初期値への C^1-級依存性に関する議論などです.

多様体論を勉強していると, 自分がいかに線型代数と微分積分を理解していないかを 思い知らされます. 特にあなたが数学科で正規の数学教育を受けていないなら, 自分で「ある程度わかってきたかな」というレベルでは 全く足りません.

だから駄目だと言いたいわけではなく, むしろ多様体論を勉強することでそれらの理解を深めにいく, という覚悟で臨む必要があります.

これは本を執筆する前提が変わるからです. 同じ微分積分の話をするにしても, 工学への応用なのかゴリゴリの数学科向けかで, 著者が読者に期待することが全く変わります.

それと同じようにして, 多様体論に挑むという時点で一定の数学的耐性が仮定されています. これは知識だけの話ではありません. 極端に言えば, 集合論や位相空間論は, 予備知識はほとんど仮定していない本は多いですが, 尋常ではないレベルの数学的耐性を要求しています. 読み進めながらさらに鍛え上げることも要求しています. 上の「レベル」感はこの意味で捉えてください.

実戦を重ねてみて, いまの自分の力量では話にならないことを知り, どんな議論や定理がどう使われているか, それを自然に受け入れられるようになるまで 血反吐を吐きながら取り組む必要があります.

その辺の理工系の学生よりも遥かに 線型代数と微分積分の理論に 精通している必要があるのだと思ってください. その程度の根源的なパワーが要求されています.

特に質問された方は文系出身とのことですし, 数学科水準で要求される理解の水準もわからないでしょうから, 初学段階ではまず確実に多様体論に跳ね返されるでしょう.

そこで「まだ自分の力が足りないのか」と思うのではなく, 多様体論とのバトルで強制的にレベルを上げにいく, という気概や発想の転換が必要です.

陰関数定理と逆写像定理, そして常微分方程式の解の存在や一意性定理は, 証明を眺めることにも意義があるタイプの定理なので, 必要なら証明を見直すのもいいかもしれません. しかしこれは使い倒してその意義を体得すべき定理でもあります.

だから, とりあえず多様体論の本にアタックして, とにかく使い倒すことで強制的なレベル上げをはかってください.

一方, 陰に陽に必要な知識ではあるものの, 集合と位相は実際どの程度要求されているのか 正直あまりよくわかっていません.

私は物理学科の学部 1 年で, よくわからないうちに正規の講義で叩き込まれたので, 集合・位相の基礎知識なしで 現代数学にアタックしたときの感覚がわかりません.

多様体論の入門レベルだといわゆる集合・位相は そんなにいらないのではないかと勝手に思ってはいますが, 実際のところどうなのかはよくわかりません.

接ベクトルの定義では曲線の同値類を使います. それ以外でも具体的な多様体の構成でも同値類が出てきます. そして多様体の定義そのものに同相のような 位相空間論由来の概念が出てきます. これらはふつう集合と位相でカバーする内容です.

ただ, この辺はゴリゴリに勉強しなくても, 気分と常識で十分にカバーできるのではないか, という気はします.

「気分では無理だった」というのであれば, むしろそのテスト結果を教えてほしいくらいです. それならそれで「多様体をやろうというなら, もう諦めて集合・位相をやってください」と言えるようになるので.

当たり前ですが, 突っ込んだことをやろうと思うなら, 何をどう考えても位相空間論を きっちり仕上げる必要があります.

次は線型代数です. もしあなたが行列式や固有値・固有ベクトルの計算問題が 解ける程度で「線型代数ができる」と思っているようでは, まるで理解が足りず, 話になりません.

必要なのは抽象的な線型空間論です.

  • 多様体の各点での曲線の同値類から線型空間を構成する.
  • さらにその双対空間として余接空間を定義し, そのテンソル積を考える.
  • 適当なイデアルで商代数を作って外積代数を構成する.
  • 各点でのテンソル積を束ねていろいろなベクトル束を構成する.

こうした操作の全てで線型代数の抽象論が出てきます. これ以外にも線型代数ができないと, 幾何のありとあらゆる場面で何もできません. 早い段階で諦めてきっちり数学をやってください. いつまでもずるずる半端な状態でいるのは, 時間と労力の無駄です.

ベクトル束は指数定理の基本的な対象でもあり, これが理解できないのでは超弦理論に進む上で話になりません. もちろんすぐにわかるようになる必要はありません. しかし 1 つのステップとして決定的です.

そしてゲージ理論では族の指数定理がアイデアのレベルから 大事なようで, 指数定理の理解が甘いようでは ゲージ理論系の議論で困ると聞いています.

これ以外にもファイバー束, 特に主束の議論でリー群が出てきます. リー群も線型代数の理解が問われる分野なので, どれだけ自分が線型代数を理解していないかが 嫌というほど思い知らされるでしょう.

今回の話からは大分離れますが念のためコメントしておきます. ミラー対称性関係に進もうと思うと, 代数幾何に関わるハードな議論があり, 代数系ももっと勉強する必要があります.

これは微分多様体とはまた趣の違う 代数多様体の議論が必要です.

ミラー対称性に関しては有名な基本的な文献が ネットにあるので紹介しておきましょう.

  • https://www.claymath.org/library/monographs/cmim01c.pdf

私はこの文献はほとんど全く読めません. 以前紹介されたことがあるので, 言及するだけにしておきます.

またもう少し違う方面からコメントします. 今度はむしろ物理の話: 最近の数学の展開もあり, 超弦理論に興味がある人が必ずしも 物理にも興味があるとは限りませんが, 私のメルマガの読者の方には超弦の物理に興味がある方も多いので.

まず私の基本的な認識や方針は, 現代数学探険隊, 特に通信講座の案内ページで書いたことにあります. 何度も基礎の振り返りをしないでいいように, 集合・実数・位相など基礎を叩き上げるのが, 結局一番早くて楽です.

  • 現代数学探険隊 通信講座 https://phasetr.com/mtex1/
  • 現代数学探険隊 PDF 販売 https://phasetr.com/mtexpdf1/

これ, 何度も有料コンテンツの宣伝をしているように思われるようで, それが鬱陶しいという方もいらっしゃるようです. しかしこちらとしては, 何度も聞かれることに対する返答としてまとめたものであり, さらにいろいろな情報やコメントをまとめて書いたページ, そしてコンテンツなので, 結局回答する内容はここに書いてあることなのです.

多様体論ではサードの定理で測度 0 が出てきますし, 微分形式からの代数的トポロジーで調和積分論 (楕円型の微分方程式論) が出てきたり, ベクトル場とフローでは常微分方程式の解の存在と一意性, 初期値への C^1-級依存性などなど, ちょこちょこと解析学の知見が出てきます.

幾何でもフレドホルム作用素はよく出てきます. そしてこれは話題としては作用素論なので, これもきちんとカバーしています.

超弦理論の数学といってもいろいろあります. その中で特に指数定理やゲージ理論のように, 多様体上の微分方程式論が大事な議論があります. そういうところでは直接的に 現代数学探険隊の内容が活きてきます.

そして何より, 超弦理論をやるなら最低限物理に対する理解も必要で, その中では各種解析学が絶対に必要です. そこもケアしないとどうしようもないので, 超弦に興味があるなら, とりあえず現代数学探険隊の内容を確認してください.

どうしても私の有料コンテンツを買いたくないというなら, それはそれで構わないので, 案内ページに書いてあるカリキュラムをもとに, 対応する本を買って勉強してください.

講座のラスト, 微分論とベクトル解析の章では, R^m 内に限定してはいるものの, 実際に多様体論を議論しています. 当初そこまでやる予定はなかったのですが, その方面に興味がある人が多いので, もう盛り込んでしまおうという判断です.

名著, ミルナーのモース理論のように, R^m 内の多様体に限定して議論を進めている本は 実際にありますし, それほど不当な扱いではありません.

今回は多様体に行き着くにはどんな数学が必要か, という話だったのでこのくらいにしておくことにします. 今回の内容を叩き台にして, 幾何系の勉強案内のコンテンツを整備する予定です. もっと参考文献もつけます.

ではまたメールします.

2018-09-03 新しい国際単位系の公開シンポジウムの紹介/相転移プロダクション

メルマガに書きたいことはたくさんあるものの, なかなか書く時間が取れていません. かなり面白そうなイベントなので, 忘れる前に優先して案内しておきます.

  • http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/265-s-3-1.pdf 日本学術会議 公開シンポジウム 新しい国際単位系 (SI) 重さ、電気、温度、 そして時間の計測と私たちの暮らし

上の PDF の下の方に申込ページへのリンクがあります. 近日公開予定だそうなので, あなたも時間があうならぜひ参加してみてください.

私も参加してみようと思っています. そもそも申込を忘れないようにする必要があって, まずそれが一番の問題です.

野尻美保子さんと田崎晴明さんの宣伝ツイートも 紹介しておきます.

  • https://twitter.com/Mihoko_Nojiri/status/1035152495541018625

キログラム原器を廃止して、 プランク定数から重さを定義する単位系の大改訂が予定されています。 学術会議ではこれを記念するシンポジウムを 12/2(日曜日)に行います。 特に学生、学校の先生などこに来ていただけるとうれしいです。 http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/265-s-3-1.pdf

  • https://twitter.com/hal_tasaki/status/1035513095186071553?s=12

このシンポジウムは参加する価値があると思う。 単位は科学・技術の根本的な基盤だし、 単位の定義から原器がなくなるのは人類の文明にとって大きなイベント。 おまけに超高精度の時間測定を実現した (数年以内にノーベル賞を受ける可能性が高いとされる) 香取さんも登壇する。

申込を忘れないようにしないといけません.

今回はこんなところで. ではまたメールします.

2018-08-22 数学が弱くて先に進めない/相転移プロダクション

Twitter で大学教官のある呟きを見かけたので 共有しておきます.

トップツイートはこれ.

  • https://twitter.com/paul_painleve/status/1032062702124916736?s=12

続くツイートも一緒に引用しておきます.

学生の中に社会人の方が工学部に再入学してきている。 やはり勉強し直さないといけないと思ったそうだ。 自分が仕事に使ってきたことと理論の繋がりが 専門の講義を聞いている最中に感じられて楽しいそうだ。 ただ、どうしても数学が弱く、 数学で躓いてなかなか先に進めないそうだ。

「今勉強していることが将来役に立つよ」と言っても、 若い普通の学生にはなかなか伝わらない。 その学生も周囲の若い人に言ってるそうだけど、 もどかしく感じているようだ。 「若いときに勉強してとにかく詰め込んでなかったら、 なかなか先に行けない」というのは確かだが、 若い時はわからない。

大学低学年での非数学科向け数学教育 (微積、線型、微分方程式・ラプラス展開、 ベクトル解析、複素解析、フーリエ解析、確率統計など) が将来必要であることくらいは 学生も感じ取ってはくれている。 が、ある程度理解して楽しくなるステージにまで なかなか到達できない。

特に注目してほしいのは次の部分です.

「若いときに勉強してとにかく詰め込んでなかったら、 なかなか先に行けない」

わかりやすいので何度も引き合いに出してしまうのですが, 先日紹介した超弦理論を勉強してみたいといっていた 文系出身の方,

けっきょく適当な時期, それも若くて湯水のように時間が使える頃に, 意味がわかるか, 理解できるかを棚に上げて, とにかく基本的なことをたくさん 詰め込み, 叩き込まなかったことが効いているわけです.

もちろん理工系というわけでもないのに, 数学の基礎など叩き込めるわけはありません.

ここで言いたいのは, 面白くないとか面白くないとか, いまの自分がやりたいかやりたくないとか関係なく, それを生業とし, その未来を自ら作り出そうとしている 教官陣が学生のこれから先の永い人生でもきっと役に立つはずだ, そう信じて組み上げたカリキュラムに沿って, とにかく徹底的にやっていくのが大事だということです.

細かな動きについては外れることなどいくらでもあるでしょう. それでもこれさえやっておけば, 後で新しいことにもいくらでも追従できるはずだ, そういう内容がカリキュラムとして組まれているわけです.

むしろ興味がないことであっても 強制的にやらせることがカリキュラムの意義です. 何といっても興味があることは言われてなくても 勝手にやる前提なので, 面白くないことこそカバーするべきだ, とさえ言えるでしょう.

興味にかまけてさぼっていると, 何十年ごしで痛い目を見るという話で, これは健康問題にも重なります. 若い頃の不摂生が, というやつです.

よく言われる話ではありますが, これを読んでいるあなたも, けっきょく今が一番若いのです. やりはじめるなら今ここからで, 以前どうだったかというのは全く関係がありません.

そして人は忘れる生き物なので, 最初の気合は即刻なくなります. 覚悟を決めてじっくり取り組んでいきましょう.

もしあなたが物理または物理の応用に興味があるなら, まずは古典力学からやるのが大事です. 何だかんだで一番大事ですし, 物理で必要な数学も一通り出揃います.

あなたが化学なりその他一般の理工系の方なら, 力学と電磁気をきっちりやれば, 数学の知識も計算用の基礎体力も両方身につくので, まずはこれを馬鹿みたいにやりましょう. 実際, 物理学科の学生は頭がおかしくなるほど これを叩き込まれるのです.

学部一年のころ, 私の友人で, 試験直前に「対角化される夢を見た」と言っていた男がいました. 悪夢にうなされるくらいやるのです.

あなたがある程度数学科の数学の水準まで 数学をやりたい・やらねばならないなら, 取り組むべきはやはり実数・集合・位相です. 参考文献集でも取り上げているので, あなたが適当な通信講座を受講されているなら 既にご存知かもしれませんが, 初学者へのお勧めは次の本です.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4061539647/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4061539647&linkCode=as2&tag=phasetr-22

『集合と位相 そのまま使える答えの書き方』というタイトルで, よくあるしょっぱい本かと思いきや, 話題を絞って証明を丁寧に書いた本で, 非常にいい本です.

ページ数も少ないので読み切りやすく, 適切な図もたくさん入っているところもポイントです.

四の五の言わず, とにかく基本的な分野をやるのが, 結局一番楽です.

ここで強調したいのは, それが「楽だ」ということです. 特にあなたが社会人で数学や物理を勉強し直そうとされているなら, 先々の進んだ内容・勉強したい内容はそれとして 横目で見てニヤニヤしながら, 徹底的に基礎を叩き込むことからはじめましょう.

ではまたメールします.

2018-08-19 物理の勉強に関して心に刻んでおくべきこと/相転移プロダクション

最近は多少なりとも物理に意識が向いているので, ちょっと物理の話を.

もうリアクションなくなって, もしかしたらメルマガ講読解除されたのかもしれませんが, 先日超弦に関する勉強に関して多少のやりとりもありました.

物理の勉強に関して大事なことに関して, 簡潔にまとまった動画を Twitter で見かけたので共有しておきます.

  • https://twitter.com/LTQDu71SDNqmRGn/status/1030456202222661632

・物理におけるイメージとは。 ・物理ができない人はどこでつまずくか。 (引用元:苑田尚之、ハイレベル物理、東進、2000年)

ちょっとアレですが, 私のサーバーにも動画を上げておきました.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/sonoda_physics_and_image.mp4

内容を簡単にまとめておきましょう.

  • イメージが大事というのは, 基本法則がわかってそこから考察できるようになった人であれば, そこから見た物理的なイメージがわかっていれば役に立つ.
  • 物理法則を知らない人はイメージも何もない.
  • やっている計算が正しいことがわかっても, それが自分の感覚に馴染まないからわかるように説明してほしい, というのはその人の感覚が間違っているだけだから, そのイメージは早く捨てなければならない.
  • 人間の素朴なイメージは自然に対してほぼ 100% 合わない.
  • 計算もせずに感覚でわかることは絶対にない.

講義中の口頭ベースの話なので, 前半と後半でちょっと話が変わっている部分もあります.

ここで私が強調したいのは, 引用部での最後のところ, 「計算もせずに感覚でわかることは絶対にない」というところです.

プロですら直観が効かない世界は掃いて捨てるほどあります. ある分野の専門家であっても, 他の分野ではずぶの素人同然の判断しかできないことも 日常茶飯事です. これは物理の他の分野であってさえそうです.

自分の直観を修正してくれるのは, 何よりもまず実験事実であり, 実験が及ばない世界に関しては, 基本法則に則った計算結果しかありません.

超弦のようなちょっとやそっとで 実験の及ばない世界で頼れるのは もう計算しかありません. だから計算できないのは, 数学できないのはもうどうにもならないのです.

いあま私がメインで作っている 数学科レベルの数学のコンテンツの内容を 最大精度で理解しきる必要は全くありませんが, 式を読み書きして計算できないのは論外です.

うるさいことを言いはじめるといろいろあって, 勉強と研究はまた違う, 勉強は好きでもないし実際苦手でさえあるが, 研究は好き, という人ももちろんいますが, これは研究者を目指す人向けの話なので, また全然違う話です.

そして, 何度も書いているように, 物理の啓蒙書を読んで楽しみたい, という人ではなく, それでは満足できないからもっときちんと 物理やりたい, という人が集まっているのだと思うので, だったらきちんと計算できるようになりましょう, そのための数学的体力をつけましょう, という方針で情報を出しています.

ちゃんと計算できるようにしてください.

関係するようなしないような話ですが, ゴリゴリの現代数学の通信講座作成が 一段落したので, 大人向け数学復習的な内容に関して, 21 世紀の教養数学と勝手に題した方向性で コンテンツを検討しています.

イメージとしては理工系の学部教養レベルの 数学入門のためのコンテンツ, くらいの位置づけです.

試作品第一弾がこれ.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_expedition_002_014_002_ve2CU.pdf

最近はやりの統計学入門も 兼ねた内容として考えています. 基本的に非物理・数学系または統計に興味がある人, 他には物理に興味があって数学を勉強したい人向けで, 中高の数学はある程度親しみがある人くらいを想定しています.

どのくらいのどんな内容が需要ありそうか, 実際に試作品を作ってみて 検討しているところです.

前回の失敗があるので, レベル感がおかしくないか, といった点が大きなポイントです.

何かコメントや要望があれば教えてください.

ミニ講座への登録はこちらから.

  • https://m.phasetr.com/p/r/bhTiMyu7

できあがってから「これじゃ使えない」と言われてもきついので, 細かくコメントもらえた方がありがたいです. 自分が作りたい, そして昔の自分がほしかった ごついコンテンツはもう作ったので, 今度はきちんとニーズにあったコンテンツにしたいです.

ごついやつはごついやつできちんと 一定のニーズは拾えているとは思っていますが, やはりマニア度が高くなりすぎてしまいます.

さらに, これと通信講座補足コンテンツとしての 計算練習章のために いろいろ文献やコンテンツをあさって勉強し直しています. 私としては知っている事実の詳しい確認の方が多いので, これまでと違って気楽に本が読めて 気持ちが楽です.

これまでは発展的な内容の紹介をするために, 専門とは遠い分野の本を読むことが多く, やはりかなり消耗していました.

いくつか面白いのがあったので, それもシェアしておきます.

まず微分方程式系統で面白かった概説書として, 『東京大学工学教程 基礎系 数学 非線形数学』があります.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4621089927/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4621089927&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=bb9291ffda85d2db5f36eb7584224022

最初の 1 章に線型作用素の理論があり, 通信講座の作用素論と常微分方程式に書いたところが いい感じにすっきりまとまっています.

他のところも相転移関係, 力学系やソリトンの話が書いてあって, 概要を掴むのにはかなりよさそうです.

工学教程とはいえ, 数学分冊なので, 気分的に数学よりの印象です.

あと, 幾何の復習と知識定着のために, リーマン面の勉強をしています. その文献として Forster の本を読んでいます.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/1461259630/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=1461259630&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=d4bbba505c768a851d7b6add548e6958

1 万するので気軽に勧めにくいのですが, 被覆空間というトポロジーとの関連からはじまり, 層とコホモロジー, 接ベクトル抜きの微分形式の直接定義, 超関数を導入しつつの調和形式などの解析的な議論など, 話題がてんこもりです.

もちろんリーマン面抜きの 1 変数関数論は 知っている前提ではありますが, 代数・幾何・解析の基本的なところが さらえてお得感があります.

超弦理論でもよく出てくる AdS/CFT の CFT (共形場理論) でもリーマン面は大事なので, もしあなたがこの辺に興味があるなら, 1 つの基点になる分野でしょう.

他にも通信講座のベクトル解析の章で 強く参考にしたスピヴァックの本も勧めておきましょう.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/0805390219/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0805390219&linkCode=as2&tag=phasetr-22

異様に簡素な記述で, 面倒になりがちな陰関数定理と逆写像定理の証明も読みやすく, やはりお勧めです.

和訳も昔からあり, 新版も出たのですが, 品切れのようでAmazonでは中古が 8,806 円とかいう 高値で出ています. 英語の方がまだ安いので, 英語で読んでしまいましょう.

ちなみに和訳は学生の頃昔の版で読んで, continuously differentiable を強可導とか 変な訳語で訳してあって閉口した記憶があります. 新版にしたときに訳語も見直したそうなので, この辺は改善されているのだろうとは思いますが.

何にせよ, 定価なら 3000 円くらいだったはずなのに, 馬鹿みたいな値段になっているのは頭来ますね.

3 冊合わせると 20,000 円突破するので, なかなか厳しいとは思うのですが, 面白そうと思った本はぜひ眺めてみてほしいです. 学生さんなら大学の図書館行きましょう.

ではまたメールします.

2018-08-12 !!!やっと終わった!!!/相転移プロダクション

苦節 2 年, ようやく有料の通信講座として 作り続けていた現代数学探険隊を 一通り作り終えました.

このページのコンテンツです.

  • 通信講座 https://phasetr.com/mtex1/
  • PDF コンテンツ https://phasetr.com/mtexpdf1/

値段や募集ページを改訂し, PDF を購入された方には更新案内済みです. もしあなたが PDF 購入済みなら, メールを確認しておいてください. 届いていない場合は念のため迷惑メールフォルダの確認もお願いします.

当初, 2 年で終わらせたいが 2 年半から 3 年になるかも, と思っていたところ, ほとんどぴったり 2 年で終わりました.

通信講座に関して教えてもらった人が 「何だかんだでこのくらい, と思って狙ったところに実際に落ち着くから, 最初の想定はきっちりやっておいた方がいいよ」 と言われて, どうかな, と思っていたら, 講座の期間設定に関してはぴったりそれではまりました.

参加者もだいぶ増えたのですが, もちろんもっと増やしたいです. そろそろ物理の話もしたいのですが, 数学的基礎のレベルが揃っていてくれないと なかなかそういう話もできないので.

無料のミニ講座も含めて, もっとコンテンツの布陣を充実させていくので, 楽しみにしていてください. 現代数学探険隊にしても, タイポの修正や索引を充実させるなどの課題が まだ残っています.

新たに追加した最後のベクトル解析の章, R^n 内の多様体とはいえ, けっきょくベクトル解析の中で 多様体を議論してしまいました.

当初の構想ではもっとあっさりすます 予定だったのですが, 曲面論があまりに面倒で, これなら多様体を導入しても大して変わらないか, という話になってしまいました.

それに合わせて外積代数や微分形式, 特異単体やある程度一般的なストークスの定理を議論しています. もしあなたがご興味あるならぜひどうぞ.

  • 通信講座 https://phasetr.com/mtex1/
  • PDF コンテンツ https://phasetr.com/mtexpdf1/

実際に通信講座としてコンテンツを作ってみて, いくつか反省点や実際にこれから修正していく点があります.

自分でもコンテンツを作ってみたい, という声はちょくちょく聞くので, その参考のため, そして何より自分用のまとめとして 情報をまとめておきます.

  • 各回の記号については最初にまとめておく.
  • 宿題には今回のまとめ, 適当な回やテーマの復習を入れる.
  • 計算練習の章を作る

いまパッと思いつくのはこのくらいですが, 思いつき次第手元にまとめていこうと思います.

  • 各回の記号については最初にまとめておく.

大人向け通信講座用コンテンツとして毎日空き時間にちびちび勉強する, PDF コンテンツとして必要なところを辞書的に調べるという コンテンツの特性上, あるところをパッと見たとき, できる限り記号や概念の意味がわかるようにした方がいいのです.

これは多様体の仮定に第 2 可算性を仮定する, といった本の最初に書いてあって, あとはもう言及しない, みたいなことはよくあります.

ここで参照用の定義や節を適宜入れた方がいいだろうと.

特に通信講座では各回はその回の分の PDF しか配布しないので, ある程度は各回の先頭にまとめておいて, 「どこに書いてあったっけ?」と探さなくていいようにした 方がいいだろうという感じです.

  • 宿題には今回のまとめ, 適当な回やテーマの復習を入れる.

これは使っているシステムに宿題という機能があったから 入れてみた, という側面があり, あまり使い方を練り込めていなかった部分です.

いろいろな形で印象に残しやすくするため, そして講座の改善につなげていくため, その回の感想を書いてもらったりする「宿題」もあり, ふつうに問題を出していることもあります.

ここに今回のまとめをする課題を入れたり, 前にやった大事な事実の確認や, 次回触れる内容の復習を入れておくとか, そういう活用もあるべきですね.

他の講座の募集ページ含め, くり返し書いていることとして, 意味はよくわからなくても, 何となく言葉を知っているだけでも全然違う, というのを強調しています.

もちろん意味まで覚えていられればベストですが, まずは言葉だけでも心に刻みつけておいてほしくて, 宿題はそういう用途にも使えるなと改めて思っています.

  • 計算練習の章を作る

これは実際にこれからやっていく課題です. 本当はこれも含めて 1 章にして最終的なコンテンツとして展開する予定でしたが, この間「物理やるなら計算できてなんぼ」と言ったのと絡めて, もう少し一般的に別枠で展開した方がいいな, と.

もちろん PDF を購入された方と 通信講座を最後まで受講された方には無償で提供します.

この方針転換と合わせて, 数学的に厳密な極限交換をきちんとやるようなタイプの計算はもちろん, 物理でやるような厳密ではない計算についても フォローしていくことにしました.

これはちょびちょび進めていきます. 計算については PDF でごりっと販売する方がよさそうな気はします.

同時並行で考えている中高数学だと, かえって計算だけ延々やっていく通信講座があってもいいような気はします.

このあたりは対象にもよる部分です.

  • 次に作る通信講座

まずは読者のレベルの底上げをはかるための 無料の講座を整備します. がっちりした内容の講座はもう作ったので, 今度はもう少しゆるく, いわゆる物理数学的な内容とレベルにしていこうと思っています.

最近, 機械学習だの何だので統計のための数学, みたいなところもあるので, そういう層も折り込んだ講座内容を考えています.

何だかんだいって, やはり 2 年講座を続けられた秘訣は, 有料講座にしたことです.

数学じたいはやめろと言われてもやっていきますが, 通信講座を作るという骨の折れる作業は, さすがに有料講座を提供しているという責任感なしでは続けられませんでした.

終わったばかりでまたすぐに有料講座だとあまりにつらいので, それも込めてしばらく調査しつつの無料講座で, 次の構想を深く練り込んでいこうと思っています.

メルマガだとあまり感想メールなどの反応がなくて悲しいのですが, Twitter だと割と反応くれる人が多く, その手の話の内容に関して 具体的に相談できる人も何人かいるので, その手の人にはいろいろ協力をあおぎたいですね.

  • 物理もやりたいが, まずは数学

先程も書いたように, 物理の講座も作りたいのですが, 物理の講座をやるなら物理に集中したくて, 途中で数学の話をしないですむようにしたいと思っています.

まだしばらくはそのための数学講座を整備していくつもりです.

ちなみに物理の講座を作り, 有料で提供してみたいという方がいらっしゃれば, ぜひやってください. 必要があれば適宜宣伝協力などもしますし, 募集ページの作成などのサポートもやります.

有料講座やるなら, いわゆるレベニューシェアのコンサルティング的な形で, 入ること前提ですが.

この辺はきちんとやらないと逆にあとで余計な責任問題が起きて, お互いに苦しくなるので, ちゃんとしておきたいですね.

適当な意味での責任が発生しないと, かえって長続きしないことをこの 2 年で学んだことが 一番の収穫かもしれません.

とりあえずは有料講座のブラッシュアップと, 無料講座の大量生産に勤しみます. ぜひそれを楽しみにしていてください.

ではまたメールします.

2018-08-03 物理のためにどこまで数学をやるのか?/相転移プロダクション

この間, 超弦理論に関する話を少ししました. 念のため, 私の考えをもう少し書いておこうと思います. 今回は数学それじたいよりも それを使って何か, 特に物理を勉強したいという人向けの話です.

あと物理の勉強という言葉で 私が意図する中身も説明します.

まず, 私のところにやってくる時点で, いわゆる啓蒙書レベルでは満足できず, がっちり勉強する意志があるのだと思っています.

物理に対する態度もいろいろあります. アンケートを見ていると 情報やら応用化学やら いろいろな専攻の学生さんがいますし, 物理それじたいが応用の対象で, そのための数学強化が目的の人もたくさんいます.

もともと私だって物理の学生なので, その辺の気分はよくわかります. 実際学部 2 年くらいまで物理よりも 数学を勉強する機会の方が多いくらいでした.

ひたすらに腕力を鍛えないといけなくて, スパルタでつらいのです.

話を元に戻しましょう.

ここで, 勉強したい物理が学部レベルの物理, 特にふつうの量子力学や統計力学にあるなら, この間書いたような無茶は言いません.

むしろ微分積分と線型代数をどこまで 強化できるかがキモで, 関数解析的な認識があると両方を鍛えられるから便利, というくらいの気分です.

書きっぷりはともかく, 現代数学観光ツアーはまさにその視点で書いています. プログラムによるシミュレーションまで含め, このくらい数学の視野があれば 学部レベルの物理を勉強するのに 十分な水準だろうと思います.

最近は物性系の理論物理であっても トポロジーが必要になっていたりする事情もあります.

しかし学部レベルの物理でいうなら, 現代数学観光ツアー以上にハードな数学は まずいらないでしょう.

集合・位相もヒルベルト空間に特化して勉強すれば十分ですし, それもほぼ線型代数で出てくる有限次元の内容を かっちりやれば十分です.

一般相対論も, 準リーマン幾何とかいったりはしますが, 微分積分と線型代数をきっちりやっておけば 困らないでしょう.

問題というか大変なのは, 超弦理論に興味がある人達です. この分野, そもそも基本的な語彙じたいが 尋常ではありません.

余剰次元の話で出てくるカラビ-ヤウ多様体は, 定義それじたいのために ケーラー多様体に対する基本的な語彙が必要です. 独学分を無視するなら, 数学科の学部 4 年で到達するような内容です.

一年中毎日数学をやっていて, 自他ともに数学への耐性があると思っている人々が 湯水のように数学の勉強に時間を使った上で 4 年かけてようやく辿り着く世界です. しかもそれでようやく入口くらいなわけで, もう尋常ではないのです.

そして半端に進んだことを勉強してしまうと, 基本的な勉強をするのが億劫になります. そこで億劫になる前に基礎をとにかく叩き込め, そういうコンセプトで現代数学探険隊を運営しています.

興味津々の状態で超弦理論の世界を覗いたあと, もっとちゃんと勉強しようと思って 古典力学やら電磁気学やらを勉強しようと思っても, 「多分知ってないと駄目なんだろうな」という程度の思いで やりきれるほど甘くないですし, 何より何がどう超弦理論の理解につながっていくかもわからなくては, 勉強が続かないでしょう.

スポーツでも派手な技を披露するためには, 基礎体力や筋力の向上, 地道な訓練が必要です.

スポーツだとこの辺の基礎がないと, 怪我という肉体的に痛い目を見るのでわかりやすいのですが, 勉強だとこういう痛い目を見ないので, やばい状態が見抜けません.

基礎の訓練なしでやるのは 精神的・知的に緩慢な自殺に向かっているとさえ言えます. これで逆に参っている人を何人も見かけたからこそ, もういい加減基礎からきっちりやりませんか? というストーリーを描いてサービスを展開しています.

そしてあくまでも物理は物理できっちりやることを考えています. ここでいう「きっちり」は物理で出てくる計算を 物理のレベルでやりきれることです.

とにかく計算が追えなくて困るというのは, わかりやすく痛い目を見るための方法でもあります. まだ基本的な力量が足りないのだと.

いつも困るのですが, 半端な人に限って 次のようなファインマンの有名なエピソードを持ってきます: 細部は怪しいですが, 大意は合っているはず.

ファインマンが学生と議論しようとしていた. 学生が黒板に向かって計算をはじめると, ファインマンがこう言った. 「計算はいい. その現象に対してどんなイメージを描いているのか, それを教えてほしい. その上で議論しよう.」

この話を適当に引用して, 「計算よりもイメージ作りの方が大事」みたいなことを言ったりします.

これ, 本当に本末転倒です. 直観ではどうにもならないからこそ, 数学に頼って方程式を立ててゴリゴリ計算して, その結果を一所懸命物理として解釈するという 戦略を取っているのが物理です.

計算はできて当然, その後にようやく物理がはじまるくらいの気分があり, 計算できない人はそもそもスタートラインにさえ 立てていないと思っています.

前回, 「計算は追えているのか」と書いたのには こういう背景があります.

ディラックの有名な言葉で 「この方程式 (ディラック方程式のこと) は私よりも賢い」 というのがあります.

これはディラック方程式を 一所懸命計算して出てきた結果を考えると 思いもよらない話がいろいろ出てきたという経緯によります.

計算自体が大事な思考様式なので, それが抜けていてはどうにもならないのです. 計算しないのはそもそも頭使っていない, 何も考えていないくらいに思っています.

ファインマンにしても, ファインマンダイアグラムは どんな認識のもとで何を計算しているか 理解しやすくするための方法という側面があります.

経路積分にしても新たな計算手段の提案という側面があります. ファインマンの有名な仕事は どう見通しよく計算するかに焦点があって, むしろファインマンは計算に 一家言ある人とさえ言えるでしょう.

だから計算は大事だし, そのための数学的な足腰から 作ってしまおうと言っています.

ちなみに数学でもこの手の事情はあります. 定理は証明したし例も作ったが, その論文の著者がその例の意義を理解しきれていないという事例があります.

次の河東先生の論文のコメント集を見てみてください.

  • http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/bib.htm

該当箇所を引用します.

1998 年の春と秋にイギリスでやった. 私の論文中最長のもの. Ocneanu と Xu のやっていることは見掛けはまったく違うが, 同じもののはずだ, という Evans の洞察で始まった. 両方とも私の [18] の 例が元になっているのに, 私はまったく気づいていなかった. それは私は最初 DHR 理論が全然わかっていなかったからだ.

一通りの証明が終わったあと, それをどう理解してどう使っていくか, これがまた別の話で, 難しいことがたくさんあるのです.

それはそれとして, ここまで超弦までカバーできるような 厳格な数学的基礎に的を絞りすぎたので, いわゆる物理数学水準にまで厳格さを落とした 講座を作る必要があるな, というのを感じています.

やるべきことはまだまだたくさんあるので, 地道にがんばります. あなたも地道に数学なり物理なり, さらに自分の専門なりを地道に深めてください.

一所懸命宣伝したおかげか, 現代数学探険隊に参加してくださる方が ここ数日でけっこう増えました.

まだもっと増えてほしい, 物理の話ができるくらいの数学の基礎は早く身につけてほしいと思っているので, 改めて宣伝しておきます.

  • 通信講座 https://phasetr.com/mtex1/
  • PDF https://phasetr.com/mtexpdf1/

さっさと基本的な数学の足回りは固めてしまいましょう. 急がば回れで, 最初にゴリっとやってしまうのが結局早くて楽です.

ではまたメールします.

2018-08-01 続 アンケートへの回答/相転移プロダクション

昨日のメールでアンケートへの回答に さらに回答がありました. 他の方にも参考になると思うので, メルマガ上でさらに回答します. (購読者アンケートから回答されているので 直接やりとりしようにもできない事情もあります.)

きりがないのでやめておきますが, これでもレベルが足りてないのでしょうか? あと 10 年かかりますか?

いろいろ書いたのですが, 結局, 回答して頂いた方の状態が 全然わからないという一言に尽きます.

あと 10 年というのは 「少なくともあと 10 年は遊び続けられるネタがある」 という話で, むしろいい話だと思っています.

少しずつ突っ込んでいきましょう.

物理に関してどのくらいのレベルなのかは, 情報が少なくても何とも言えません. (解析力学や電磁気の復習がいるという自己認識の時点で 超弦まで数年レベルの距離があるだろうという感じはあります.)

数学としては次のコメントなどから判断する限り, 基礎の基礎から叩き直す必要があります.

そもそも有限の線分を, 点に細分化するという事は, 無限に分けるということですよね. しかし, 有限なものを無限に分ける事自体矛盾しているような気がします.

この誤解に関してはどこからどうコメントすればいいのか わからないレベルです.

そもそも集合の記号自体難しいし, 全単射などは, 知りませんでした.

全単射はともかく, 集合の記号が難しいと思ってしまうようでは, 先は本当に長いです.

誰でもここからはじまるので, いいとか悪いとかいう話ではありません. 単純な事実として 10 年を見た方がいいレベルで 先は長いです.

朝起きてから夜寝るまで物理や数学をやっている, 専門の学生がようやく 4-6 年で到達するレベルなので,

仕事のかたわら趣味でやる大人が 2 倍程度の期間で何とかなるなら むしろ異常なくらいの優秀さだろうと思います.

そんなに自分の物理や数学の理解力に自信があるのでしょうか. それはそれで感心しますが, そこまでできる人に差し延べられる手を 私はもっていません.

そんなにできるなら, 本当に勉強の記録をコンテンツ化してほしいです.

物理に関してはいろいろな意味で何とも言えないので, 数学サイドからの参考情報を出しておきます.

私の知る限り, 物理ベースで超弦理論に必要な数学として, とりあえず次の江口徹さんの文章があります.

  • 江口徹さんの大学院志望者向け要望 http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/kyoumu/documents/02eguchi.pdf

これ, 東大数理の大学院の志望者向けに教官が書いたファイルです. 私が修士の頃にも見た文章なので もう 10 年以上前の文章で, 超弦の発展ぶりからすれば, もっと爆発的に必要な数学は増えているでしょう.

上の PDF には 表現論・複素多様体論・低次元トポロジーと 具体的に書いてあります.

数学サイドからのちょっとしたまとめ コンテンツも紹介しておきます.

  • セシルさんの数学小まとめ http://kansaimath.tenasaku.com/wp/wp-content/uploads/2016/04/sst-1.pdf

7 ページなのでさっと眺めてみてください.

ここで「3 カラビヤウ多様体」とあります. これはいわゆるコンパクト化の 6 次元分にあたる空間で, 複素多様体です.

カラビ-ヤウ多様体はケーラー多様体であり, 第 1 チャーン類が消えることで特徴づけられます. チャーン類は複素多様体上のコホモロジー類として定義されていて, リッチ形式と書いてあるように曲率が重要です.

D ブレーンのところで導来圏が出てきます. これがまた抽象論の極みで, 集合論の記号で難しいというレベルでは あと何年かかるかわかりません.

導来圏周辺だけに特化すれば これ自体は 1-2 年もあれば何とかなるかもしれませんが, 導来圏を使っていろいろやることが目的なのであって, それだけ知っていても何にもなりません.

念のため言っておくと, 大学に入ってから何だかんだで数学を 15 年続けていて, 数学で修士は取っている私ですら, 専門外なので本当に気合を入れて, 腰を据えて挑まないと基本的な文献さえ読めません.

超弦の物理の様子をほとんど知らないので, 「本当にここまでいるのかな」という気はするのですが, どこまで深く理解しているかはともかく, 私が知っている超弦理論周辺の人は 導来圏を名前くらいは確実に知っている感じがあるので, たぶん常識的な数学なのだろうとも思っています.

このあたり, 「ああ, あのことね」とサクっとわかるでしょうか? 少なくともカラビ-ヤウくらいをさっと調べて 感じがつかめないようでは, 物理と並行して数学を勉強する前提だと 5-6 年平気でかかると思います.

他にも連接層の導来圏だとか, シンプレクティック多様体やら何やらいろいろあります. しかも 6-7 ページを見る限り, 物理とダイレクトに対応している部分があるようなので, たぶん知らないと駄目なのでしょう.

あと, ミラー対称性に関して数学者サイドが まとめた文献も紹介しておきます.

  • https://www.claymath.org/library/monographs/cmim01c.pdf

952 ページあって, 物理の視点からの話もいろいろ書いてあるようです: 目次のレベルで言っているだけで, 中身は確認しきれていません.

ちなみに私はこれの P.25 からすでに厳しいです. 射影空間や層の基本の基本なら「知って」はいても, 超弦理論の幾何で要請されるレベルの「理解」は持ち合わせていません.

私が想定しているのはこれらをきちんと制御できるレベルです. 私は専門外なので, 理論物理レベルの理解であっても, あと 2-3 年は軽くかかるレベルの話です.

最後にもう一度. 10 年かかるというのは むしろ異常な猛スピードだと思ってください.

物理はおいておいて, 数学だけでも学部 4 年から修士レベルの内容がバンバン出てきます. 理論物理ベースなのでもっと雑な勉強でもよく, 純粋な数学にかかる程の時間はかけなくてもいいかもしれませんが, それでも物理と並行して勉強する前提で どう控え目に言っても 3-4 年はかかるでしょう.

別に研究者になろうというわけでもないなら, ゆっくりであっても何ら問題ないと思うので, 何でそんなに期間を気にするのかよくわからないのですが.

この間メルマガでも書いたように, 3 行の不等式処理に 4 週間かけ, 著者に何度か質問してようやく解決, というくらいの進捗もざらですし, 何でそんなに理解力に自信があるのかが不思議です.

「いつまで経っても進まない」と思って 挫折しないといいのですが.

何はともあれ今回はこのくらいで.

またメールします.

2018-08-01 メモ

昨日のメールでアンケートへの回答に さらに回答がありました. 他の方にも参考になると思うので, メルマガ上でさらに回答します. (購読者アンケートから回答されているので 直接やりとりしようにもできない事情もあります.)

きりがないのでやめておきますが, これでもレベルが足りてないのでしょうか? あと 10 年かかりますか?

頂いたコメント, 結論としてはこういう回答でした. で, 私の回答を結論から言いましょう. 頂いた文章を私のフィルターで解釈するなら, 十年かかるでしょう.

これ, 読者の皆さんがどう思うかよくわからないのですが, 私はむしろ「10 年は遊び続けられることが確定している」 という認識で, とてもいい話だと思っています.

ぜひやってほしいというか, もっと強く, 勉強の記録を コンテンツとしてまとめてほしいくらいです. それこそ売り物になるでしょう.

ここで私の想定 (要望と言ってもいいかもしれない) は, 物理はさておき, 「理論物理ベースで超弦理論のための 数学も理解しようと思っている」という状況です.

この点からすると, このコメントをされた方, 前回回答した集合論に対するコメントを見る限り, 数学的にはマイナスからのスタートくらいの気分です.

超弦ではなくてふつうに量子力学や相対論というなら 集合がどうのという話はしなくていいと思っていますが, 超弦はちょっとそれだと困るように思います.

少しずつ細かい話もしていきましょう. まずは物理, そして定義の確認から.

マクマホンの本に関する内容で 「こんな内容だった」という文章のまとめを頂いています. これはこれで役に立つ人もいそうなので, 転記しておきましょう.

===引用開始 マクマホーンさんの本は, 読んだことありますか? 僕的には, 簡単だと思って, 以前そう書きました. 第 2 章から本格的になりますが, そこも解析力学的に変分原理で, 相対論的点粒子と南部・後藤のひもの方程式を導出しています. 相対論的点粒子のラグランジアンから, 南部・後藤のひものラグランジアンを推測する部分は, 素晴らしい. 二種のひもを区別する為に, 境界条件の事がかいてある. 力学なら当たり前で特殊解にひつようだから. 天下り的にポリヤコフ作用を紹介. 量子化が, 南部・後藤のひものラグランジアンだと困難だから. 共形ゲージで固定して計算を進める. 光錐座標の導出 作用の書換え→ひもの方程式の書換え 共形ゲージで固定して, ひもの方程式が波動方程式に, 解の形がわかるので, それをモード展開, それぞれ開いてひも, 閉じたひもと. 第 3 章 EM テンソル, ポリヤコフ作用の対称性から連続の方程式が. ここは現代物理的に, ネーターの定理より, 対称性から出てくる保存量を紹介. ゲージ固定として, パラメータ付け替え不変性およびワイル不変性を採用. 第 4 章 ひもの量子化 弦座標 正準運動量 およびひものモード係数に第 1 量子化. モード係数が振動子である事が, 量子力学のハミルトニアンの式からわかる. ヴイラソロ演算子の紹介 後に世界面上の共形対称性から, 共形変換をつくる生成子, これこそヴイラソロ演算子である. 量子論においては, 中心拡大を含み, アノマリーがあるが, 共形場理論的にこのアノマリーが相殺されるのが, ちょうど 26 次元. また EM テンソルとヴイラソロ演算子の関係も重要で EM テンソルどうしの OPE からセントラルチャージの共形アノマリーを確認. →ゴーストの EM テンソルのどうしの OPE の第 1 項と相殺. 質量演算子→スペクトル解析→タキオン状態を確認. 両ひものスペクトル解析を簡単にやってる. 共形場理論の説明. ウィック回転から. 複素変数の導出. →ポリヤコフ作用の書換え→変分原理→ひもの方程式導出 共形変換の生成子, 2 次元共形群, など. ひもの方程式→モード展開 あと BRST 量子化を軽く説明. まず RNS 超弦から. ボソン項に, ディラック場のラグランジアンを追加などです. ===引用終了

超弦の物理, 私はよく知らないので 正しいのか私には判定できませんが, 知っておかないといけないキーワード集としては 役に立つのでしょう.

そういえば, マクマホンといわず, 私は超弦理論の物理の本を読んだことがありません. 大栗さんの啓蒙書をレビュアーとして 読んだことがある程度です. 超弦の数学方面はちょこちょこ眺めています.

それはそれとして.

まず確認したいのは, 上に書いた内容に関して, 計算は完全に追えているのでしょうか?

この計算が追えるレベルにある人が 前回の集合関連のコメントをするとは思えないので, 本当に謎です.

もっと言うと, 上の内容が「わかる」というなら, その時点で私よりも物理も数学もできるとしか思えないです.

そして物理, それも超弦理論のような 非直観の極みのような量子論の分野で 計算を追い切れない状態で 何かを「理解」できるというのが想像できません.

この辺, 「わかった」というのは どう定義されているのでしょうか?

ここからは数学の話.

私の知る限り, 物理ベースで超弦理論に必要な数学として, とりあえず次の江口徹さんの文章があります.

  • 江口徹さんの大学院志望者向け要望 http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/kyoumu/documents/02eguchi.pdf

これ, 東大数理の大学院の志望者向けに教官が書いたファイルです. 表現論・複素多様体論・低次元トポロジーと 具体的に書いてあります.

こういうのがわかっていそうにないのに, 超弦のことが何かわかるのだろうかというのが疑問です.

数学サイドからのちょっとしたまとめ コンテンツも紹介しておきます.

  • セシルさんの数学小まとめ http://kansaimath.tenasaku.com/wp/wp-content/uploads/2016/04/sst-1.pdf

7 ページなのでさっと眺めてみてください.

ここで「3 カラビヤウ多様体」とあります. これはいわゆるコンパクト化の 6 次元分にあたる空間で, 複素多様体です.

カラビ-ヤウ多様体はケーラー多様体であり, 第 1 チャーン類が消えることで特徴づけられます. チャーン類は複素多様体上のコホモロジー類として定義されていて, リッチ形式と書いてあるように曲率が重要です.

D ブレーンのところで導来圏が出てきます. これがまた抽象論の極みで, 集合論で挫折するようでは手も足も出ません.

「ここまでいるのかな」という気はするのですが, どこまで深く理解しているかはともかく, 私が知っている超弦理論周辺の人は 名前くらいは確実に知っている感じがあるので, たぶん常識的な数学なのだろうと思っています.

このあたり, 「ああ, あのことね」とサクっとわかるでしょうか? 少なくともカラビ-ヤウがわからないと 致命的なように思うのですが.

他にも連接層の導来圏だとか, シンプレクティック多様体やら何やらいろいろあります. しかも 6-7 ページを見る限り, 物理とダイレクトに対応している部分があるようなので, たぶん知らないと駄目なのでしょう.

あと, ミラー対称性に関して数学者サイドが まとめた文献も紹介しておきます.

  • https://www.claymath.org/library/monographs/cmim01c.pdf

952 ページあって, 物理の視点からの話もいろいろ書いてあるようです: 目次のレベルで言っているだけで, 中身は確認しきれていません.

ちなみに私はこれの P.25 からすでに厳しいです. 射影空間や層の基本の基本なら「知って」はいても, 超弦理論の幾何で要請されるレベルの「理解」は持ち合わせていません.

で, 集合論が記号じたい難しいという人が, 数学や物理の知人が周囲におらず, 指導者も身近にいない状態で大人が勉強を進める前提だと, この内容は余裕で 10 年コースでしょう.

物理の勉強しながら平行して進めることになるのでしょうし, 理論物理レベルのパワー押しですら そのくらいかかっておかしくありません.

期間的な話について, もう 1 つの判定基準を出しておきます. 現代数学観光ツアーが軽く理解できるというなら, 数学としてはあとは幾何だけなので, 大分軽くなるでしょう: 半分にはなるはずです.

物理は物理でまた別なので何とも言えませんが, 数学としてはあと 3 年くらい頑張れば, 論文を読んで楽しめるレベルになるだろうと思います.

この 3 年というのは私が大学院進学レベルで 集中して幾何と代数の勉強をきっちりやれば, そのくらいはいくだろう, という見立ての上での数字です.

現時点の私の数学力と数学への耐性を見込んでこの数字なので, それを越えられる自信があるなら, もっと短期の計画を立ててもらっても構いません.

何でこう言っているかというと, ただでさえ数学の勉強なんてうまく進まないのに, 「想定より遅れている」なんて思ってしまうと, それだけで余計な挫折の原因になるからです.

もっと気長に気楽に構えた方がいいのでは? という感じで.

何というか, 超弦理論のレベルをボディビルダーの コンテスト優勝者レベルと思うなら, 現代数学観光ツアーの前半部分は 腕立 5 回できるくらいだと思ってください. まずは腕立 10 回くらいはできてもらわないと 何も話が通じません.

物理に関しては状況がよくわかりませんが, 数学に関してはこのくらいの状況だろうという認識です. 地道にがんばりましょう.

ではまたメールします.

2018-07-31 「購入通知メールが届いていない?」/相転移プロダクション

昨日メールで現代数学探険隊の PDF の連絡をしたら, 新たに何人か購入されている方が いらっしゃいました.

ありがたいですし, 身が引き締まる思いですが, それはそれとして,

クレジット購入された方で, メールがエラーになってしまっている方がいるようです.

販売ページはサイトで公開しているとはいえ, 昨日の今日での購入なので, メルマガ読者の方だろうと思います.

購入の申込なのでおそらく 名前は本名だろうと思うのですが, それをここで出すわけにもいかないし, メールアドレスも出すわけにいきません.

個別でもメールは送ったのですが, 念のためメルマガでもご連絡しておきます.

PayPal からの受領通知が来ているのに PDF のリンク通知が送られてきていない! という方がいらっしゃったら, ご連絡ください.

銀行振込は定期的にチェックしていますが, 振り込んだら連絡入れて頂けるとスムーズです.

一応, 改めて購入ページへのリンクを貼っておきます.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

くり返しですが, このページ, 見るだけでも あなたの勉強の参考になるように作っています.

買う買わないは別にして, ぜひ一読してみてください.

ではまたメールします.

2018-07-31 アンケートへの回答/相転移プロダクション

予告通り頂いたアンケートに回答します. 現代数学観光ツアーの第 1 回へのコメントでした.

  • https://phasetr.com/mtlp1/

これ, オーバーキルすぎるというクレームを 多数頂いているので, あと一月くらいで現代数学探険隊を 一通り作り終わったら, 物理数学的な内容に特化しつつ, ばらしてミニ講座を作り直す予定です.

それはそれとしてアンケートで頂いたコメントに 回答していきます.

たまにいらっしゃる, 超弦理論に興味があるという方ですね. 超弦を明確に指定されるのには 文系だという方も多いようで, 毎度「そうなのか」と驚きます.

結論を先に言っておくと, 物理・数学を専門にする学生でさえ 4-6 年程度かかるので, 10 年計画で勉強を進めてください.

では具体的にコメントをつけていきます.

しかも極限, 積分ていう代数的演算が文字通り幾何学との繋がりがわかって,

あくまで数学をやっている立場からのコメントとして, 極限はともかく, ふつう積分を代数的演算とはいいません. 確かに足し算という代数的な演算の極限ではあるのですが.

そもそも有限の線分を, 点に細分化するという事は, 無限に分けるということですよね. しかし, 有限なものを無限に分ける事自体矛盾しているような気がします.

何か根本的な勘違いがあります. 確かに純粋な有限集合は無限個にわけようがありません. しかし, ここで言っているのはそういう話ではありません.

有限の長さの線分とか, 有限の大きさの長方形とかいう意味での有限性を議論しています.

少なくともこの中には無限個の有理数は入っているので, 無限個の点は入っていますし, それらを両端とする区間を考えれば, 区間も無限個あります.

僕は, 大学は文系でしたが, その時から独学で相対性理論を勉強したものです. それ以降, 量子力学から弦理論に至るまで, 色々本をあさって読みましたが, いまいちよくわかりませんが. 具体的な事を言うと, 英語のマクマホーンさんの弦理論は, 読めましたが, ポルチンスキーさんの邦訳の本は, よめませんでした.

マクマホーンの本というのは次の本でしょうか?

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/0071498702

「これは読めた」とのことですが, 「読めた」の定義は何でしょうか? 他のコメントを見る限り, この本を読みこなせるような物理・数学力は ないように思います.

むしろ, これを読めるなら 私よりも数学も物理もできるはずで, 私からコメントできることないくらいですね.

それから基礎物理や数学がたりないのではないか? と思い, 力学, 電磁気学, 熱力学, 解析力学, , 数学では, 複素関数, フーリエ解析, 群論ぐらいはやろうと順番ずつ計画してやっております.

物理はさておき, 超弦に必要な数学としては全く足りません.

あと経路積分がいまいち分かりません.

何をもって理解とするのかよくわかりませんが, 複素関数やフーリエ解析がわからない程度の 状態で理解できるものではありません.

あと共形場理論なんかも, 良さそうな本は, 絶版になっていて, アマゾンで数万円になっているのが現状です.

この辺, 詳しいことはあまり知りませんが, ネットを探すと英語の PDF がゴロゴロ転がっているので, そういうのを見繕うのも一手です.

超対称性理論にいたっては, そもそも本があるかどうかさえ, わかりません.

どういう認識なのかよくわからないのですが, ググればすぐにたくさん出てきます.

前提にしていることがたくさんあるので, どんなに低く見積もっても 学部 4 年の物理学科水準の力がないと 読めません.

関根さんには, これについて何か助けて頂ければと思っております.

超弦理論は数学としても物理としても研究最前線で, いわば長い下積みが必要な分野です.

物理また数学漬けの学生生活を送る 物理学科または数学科の学生ですら, 4 年以上かけて辿り着く地平なので, 10 年計画くらいで勉強を進めてください.

あとワークチャットなのですが, iphone アプリ入れたのですが, チャットには入れません. 何故でしょうか?

情報少なくてどうアドバイスすればいいのか よくわからないです.

ここでは簡潔に回答しましたが, まさにこの手の要望に応えるために作ったのが 現代数学探険隊です.

この講座を受講し終えたとしても, 超弦のために必要な物理は全くカバーできませんし, 何より超弦に必要な数学, 特に幾何もカバーしきれていません.

それでも, 10 年計画のうち, 数学の基礎を作る 2 年の内容としては 1 つきちんと方向を指し示す内容にはなっています.

実際に購入・受講されるかどうかはお好みですが, 勉強の方向性として確実に役に立つ内容になっているので, 下の 2 ページはぜひ読み込んでみてください.

  • 通信講座 https://phasetr.com/mtex1/
  • PDF 販売 https://phasetr.com/mtexpdf1/

この質問された方に対しては, お勧めは PDF よりも通信講座です. 基本的な集合論などの足腰から鍛える必要があり, 最初からきっちりやってほしいからです.

あと仕組みとして毎週メールで 強制的にコンテンツを送り続けるので, 長い目で見た勉強のペース作りのサポートもできるからです.

超弦理論は数学や物理学専攻であってさえ厳しいので, 啓蒙書を読んで楽しむというレベルではなく, 本気で勉強してみたいというなら, どうしてもそれ相応の覚悟が必要になってしまいます.

その覚悟に応えるための第一歩としての コンテンツは準備しているので, 必要なものはぜひ参考にしてください.

千里の道も一歩からです. めげずにやっていきましょう. 私も引き続きコンテンツを作り続けていきます.

ではまたメールします.

2018-07-30 あと少し!/相転移プロダクション

つい先程, 5 週間はまっていた 計 3 行の証明のギャップ埋めに成功し, 現代数学探険隊の偏微分方程式パート, 特にシュレディンガー方程式の解析に関する節を作り終えました. そのあまりの開放感にメルマガを書いてしまいます.

当たり前と言えば当たり前ではありますが, いくつか参考文献を見比べつつ, 講座を作っています.

基本的には以前読んだことがある文献を中心にしていて, 不明点やさらなる面白ポイントがないかを調べるために, 新たな文献も漁るスタイルで書き進めています.

以前読んで完全に詳細まで埋め切っていなかったが, 何とかなるだろうと思っていた文献のギャップが埋められず, 本当に苦労しました.

しかも著者にメールして確認したところ, やはり一部は本の記述が間違っていたこともわかり, そこにいたるまで 2 週間かけていました. あまり詳しく勉強したことがない 調和関数に関する議論がつらく, 非常に苦労しました.

私の専門は大きく言えば解析学ではありますが, 専門外の話題で学部 4 年から修士レベルの内容だと, 本当にこのくらい苦労するのもふつうです.

世間には

「数学がわかる人は わからない人の気持ちがわからない」

とかいうわけのわからないことを 言う人も多いようですが, ちょっと専門外のことを眺めるだけで, もうわけわかりません.

そういうのを伝えるのも大事だろうと思い, あえてメルマガを書いている部分もあります. たった 3 行で 5 週間ですが, よくあることです.

やっている間に微分パートもできたので, 追加コンテンツが入った PDF は, コンテンツ版を購入された方には連絡しています. 値上げもしたので, 新たに購入を検討されている方はご注意を.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

ちなみに, もしあなたがまだ このページを見たことないなら, ぜひ眺めてみてください.

買う買わない関係なく, 数学の勉強の仕方のノウハウも書いてありますし, PDF の目次も書いてあるので, それを参考にしてあなた自身の勉強の道筋を つけるのにも役立つはずです.

むしろ, そういうふうにも使ってもらえるようにも 書いていて, これ自身コンテンツになっていると 思っています.

通信講座もあと一月くらいで一通り作り終わるので, 新たな通信講座ネタを考えています. まずはちょびちょび作っている中高数学系の講座の 継続的な調査/開発と, 物理数学系の講座のための基礎知識を持ってもらうための 無料のミニ講座を作ることを考えています.

まずは集合位相ネタと, 微分積分の基礎ですね.

現代数学観光ツアーはハードすぎたので, もっとゆるく, 短いボリュームでいくつか作ってみて 反応・様子を見ていくつもりです.

人口的に言っても当然ですが, やはりゴリゴリの数学よりも, 応用向きというか, もう少し軽めの需要の方が 遥かに高いことも改めて感じたので, そういう方を少しずつ準備しようと思っています.

あと, 現代数学観光ツアーで 何か長めの感想+質問ももらったので, 近いうちに何かしら回答する予定です.

やはり超弦関係やりたい, という話でした. 超弦は辿りつくまでですらハードで, 一足飛びにどうにかなるものではありません.

じっくりやってもらうしかないのですが, その「じっくり」をどう進めるかが問題です.

何度か書いてはいることとはいえ, 私自身勉強を重ねていますし, 多少考えていることも変わっていれば, 知っている参考文献も増えています. その辺を改めてまとめるいい機会と思って回答つける予定です.

ではまたメールします.

2018-07-03 サッカーと数学/相転移プロダクション

ワールドカップ, ベルギーの試合で 盛り上がっていたようですが, 素人が見ても感動するモノが見せられる類の活動, 本当にすごいと思いますし, 数学でそういうことができないかだけを 考えていたい方の市民です.

さて, この間メールで質問が来ました.

いったん回答はしたのですが, 先日も答えるのが大変な質問が来ましたし, 改めて質問フォーマットを作らないといけないか, と思っています. 今回の質問に関して困った点をまとめる形で 注意点を書くことにします.

これ, 私が他の人に質問するときにも大事なことなので.

まず質問は次の通りです.

位相空間論について学びたいです。 位相空間論について分りやすく説明している教科書や参考書があれば教えてください。 マセマシリーズの純粋数学版みたいなのってありませんかね?

先日も質問に対するコメントで書いたように, 情報が全然ないので意味のあることは何も答えられません. ついでにいうとマセマシリーズは読んだことがないので, 「マセマシリーズみたいなの」と言われても 何もわからないという.

で, 回答です.

「わかりやすい」の定義もなければ 目的も何もかもわからないので、 何もコメント出来ません。

時々Twitterで数学関係者が話しているように、 抽象性の極みに行かないと見えない世界があって、 そこを得られない限り わざわざ位相空間論をやる意味もありません。

適当に制限されたところでやれば十分です。 目的に合ったレベルの抽象度の本を探して読んでください。 物理のための位相空間とか、 工学のための関数解析だとかモノはいくらでもあります。

ピュアな位相空間論に興味があるなら、 既存の本で良書とされる本を適当に選んでください。 人の趣味もあるので、いい本を適当に選ぶなり、 私が適当な講座の中で紹介している本なりから適当に選んでください。

あまりに雑な内容で, こちらも回答しきれず, 一次回答として簡潔に書いて返しました.

2 日経ってまだ返事はない状態です. 毎日メールを見る人ではないのかもしれませんが, 返信ないのは失礼ですね.

それはそれとして, 何がわかると適切にコメントが返せるかという観点で いろいろ考えてみましょう.

まずほしい情報として思いつく内容をいくつか列挙してみます.

  • 数学はどのくらい知っているのか.
  • 何を目的に位相空間論をやりたいのか.
  • わかりやすいというのは何か.
  • どんな本を持っているのか.
  • どんな本を読んできたのか.
  • 英語の本でも構わないか.
  • どんな分野を専攻していた/しているのか.
  • 純粋に数学としてやりたい気持ちはどの程度あるのか.
  • どのくらいまでなら苦労を許容できるのか.

このくらいのことがわからないと, 意味のある回答は返せません.

それぞれコメントしておきます.

  • 数学はどのくらい知っているのか.

位相空間を勉強しようというとき, 集合論を知らないならまずそこからです. 微分積分にしてもε-δの認識は前提にしたいし, 線型代数にしても抽象的な線型空間論のレベルで把握していないなら, 位相空間論のための予備知識や数学的体力は 0 と言い切れます.

特に ε-δ と開集合の抽象化への道は かなり強く関係があり, できる説明そのものが強く制限されます. 根本的な言葉そのものが通じない, がんじがらめの状態になってしまいます.

あと「初学者」とかいうのは本当にやめてほしいです. もっと具体的に算数からしてダメとか, 中学数学から怪しいとか, 理工系教養の微分積分や線型代数なら大丈夫だが ε-δや線型空間論はわからないとか, 物理で出てくる範囲のフーリエ変換, ベクトル解析, 関数論は問題ないがそこで打ち止め, だとか, 代数専攻で解析の不等式評価が本当にきつい, とか詳しく書いてほしいです.

  • 何を目的に位相空間論をやりたいのか.

無目的にとにかく位相空間論をやってみたいというなら, とりあえず四の五のいわずに既存の本を読んでもらうしかありません. 私の主観で言うと議論が丁寧で, 議論のギャップが少なく内容を追いやすい本はたくさんあります. (あなたにとって「わかりやすい」かどうかは別です.)

関数解析方面に進むための位相空間論ということなら, 距離空間やノルム空間で十分に慣れてから 位相空間に進む道が考えられます.

点列を一般化したネットやフィルターの収束で 議論を押し切るスタイルさえありえます. 対応するいいコンテンツが思いつかないのが難点ですが.

幾何方面の勉強のための位相空間論なら, やはり開集合の話を素直にやらないと意味がありません.

  • わかりやすいというのは何か.

これに共通認識があると思っているような 人間と話が合う気がしません. これほど ill-defined な言葉もないでしょう.

タイミングよく次のようなツイートを 見かけたので紹介しておきます.

  • https://twitter.com/kuro_topo/status/1013303373544558593?s=12

分かりやすさは聞き手の属性・状況に依存するので、 普遍的な「分かりやすい説明」というものは無いと思います。 相手に合わせて説明内容を変えられる人が 「優秀」とは言えるでしょうが、 それはもう、 「頭の良さ」とは別の「スキル」とでも言うべきものでは。

これがあるので, 上で「わかりやすい」と書かずに 「議論が丁寧で, 議論のギャップが少なく内容を追いやすい本」と書きました. それも, あくまで (今の) 私にとっての話です.

わかりやすいかどうかというより, 私が「ほしい」説明は時と場合によって 次のようなケースがあります.

  • 議論に関係する言葉とその使い方, どんなところでどう出てくるのかを大掴みにしたい.
  • 細かい話よりも議論の大枠を知りたい.
  • 議論のモチベーションになった具体例が知りたい.
  • 定理の気持ちがわかる例・反例が知りたい.
  • 状況を雑に表した図解.
  • 大局的に何をしているかよりも, 不等式評価などをとにかく細かく徹底的に詳しく知りたい.

これ以外には次のようなこともあります.

  • 定理の証明よりも計算ができるようになりたい.

物理のための数学, みたいなところだとまさにここでしょう.

ちなみに, 私が無料の講座で提供しているのは, 上のリストの前半, 大雑把な状況認識に関わる内容です. 俯瞰してくれるモノをあまり見かけないからです. そして細かく徹底的に, というのが有料でやっている講座です.

わかりやすさをどこに持ってくるかで 回答するべき本やコンテンツが変わります. ほしいモノがあるならそれに見合った精度の情報を 出してほしいですね.

マセマと言っている時点で 中高生とは思えないので, いい大人ならそのくらい言われなくてもやってほしいです. Twitter のような短文しか書けない 伝達手段を使っているわけでもないので.

  • どんな本を持っているのか, どんな本を読んできたのか.

これは「マセマシリーズの純粋数学版」と 言ってきた部分とも関係します. 私はこのシリーズ, 一度も読んだことないので, 「みたいな」と言われてもわかりません.

他の知りたいことにもあるように, こういうのがあると, 私と違う世界で生きている人だ, というのがわかります. 私のゴリゴリの数学系の感覚で 回答してはいけないのがわかります.

あと持っている本で「これはこういう理由で いまほしい本ではない」みたいなことも言ってくれないと, 同じ本を勧めたときに「いやそれはちょっと」みたいに言われて, 「それならはじめからそう言え」という話になるので.

「これとこれを読んだが挫折したので, こういう視点で本を探している」というのを出してほしいです.

あと「難しい」とか言われても, 簡単にすぐわかることなど何もありません. それは大学レベルと言う必要すらありません.

どの程度までの苦労ならする気があるのかを はっきりさせてくれないと, 「がんばる気がないなら無理でしょ」と言うしかないので.

こういうの, ダイエットやら筋トレやら, いろいろなスポーツやら何やらと同じです. 最後にはどこかしらで気合とか覚悟が必要です.

  • 英語の本でも構わないか.

これ, 割と真面目な話なのですが, 「英語はちょっと」と言ってくる人は その時点で敬遠します. 特に自称文系の人に言われたら 瞬間的に怒りのボルテージが高まります.

こういうときこそ, よく批判されている読み書きの英語が 死ぬほど役に立つからです.

それはそれとして, 英語なら本もたくさんあって, しかも世界中の人が本を書いているので, バリエーションが圧倒的に増えます.

例えば次のようなサイト, サービス, コンテンツがあります.

  • https://betterexplained.com/

450k Monthly Readers と言っているので, この数字を信じるかはともかく, 一定の読者はいるはずです.

あと実際に本も出ていて Amazon のレビューもいいようなので, そこそこいい内容なのではないでしょうか.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/B006J5L3VU/

ちなみに私は次の ebook は買ってみました.

  • https://betterexplained.com/ebook/math/

正直, いまひとつ私にはピンと来なかったのですが, 世でウケているコンテンツとして 研究する価値はあるのだろうとは 思っています.

  • どんな分野を専攻していた/しているのか.

最近, かなり純度の高い位相空間関係の話が 割といろいろなところで使われています.

パーシステントホモロジーは かなりいろいろなところで聞きますし, 私が知る限り, 情報系 (?) で 「ネットワークのトポロジー」というときの トポロジーは位相幾何の意味なので.

既存の本やコンテンツがどこまであるかはともかく, そういうネタを紹介する手掛かりになります.

むしろこういう情報を出してこない人, まともに勉強する気があるのか疑わしいとさえ思っています. 正直, 貴重な時間をそんな人に使いたくないですね.

  • 純粋に数学としてやる気持ちはどの程度あるのか.

応用が目的であっても, 諦めて数学は数学と割り切って数学スタイルで勉強するなら 選べるコンテンツ・紹介できるコンテンツが増えます.

数学分はほどほどに, と言われたら, その時点でほとんど私が知っているコンテンツがありません.

本当にたったいまちょろっと調べたところ, 次のようなページを見つけました: 「topology engineering applications」で調べた結果の 上の方のページです.

  • https://math.stackexchange.com/questions/505670/references-for-topology-with-applications-in-engineering-computer-science-robo
  • https://www.quora.com/What-are-some-applications-in-other-sciences-engineering-of-Differential-Topology-Differential-Geometry-Algebraic-Topology-and-Algebraic-Geometry
  • https://www.ima.umn.edu/2013-2014

厳密にはさっきの話ですが, やはり日本語でいいのが見つからないなら 英語で探してほしいですね.

どうしたって興味関心と仮定できる能力や 時間配分が違うので, 数学者は数学関係者向けにしか書けません. それでもバリエーションは増えてきたと思いますが, 限界があります.

そういえば, 最近次のような本が出ました.

  • 「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史
  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4774196126/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4774196126&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=a34e973eac03c2b2bf3300e089c3845c

数学者からするとこういう感じになるだろう, という例として挙げておきます. まだ読めていないのですが, 目次を見るだけでも何となく伝わる雰囲気があり, かなり良さそうです.

研究ベースだと「トポロジーうんぬん」というのが 工学系でも割といろいろあるようです.

例えば次のページ.

  • http://www.gijutu.co.jp/doc/s_808207.htm
  • トポロジー最適化の自動車分野への応用
  • 優れた“かたち”の設計、効率の良い“レイアウト”の解析!
  • ★ トポロジー最適化と3Dプリンターの連携!

この辺, どこまで各専門で 学生向けコンテンツに降りて来ているのでしょうか. 専門外なのでこのあたりは様子が見えていません.

いろいろ書きましたが, これ, どこにどうまとめるかを思案中です.

ではまたメールします.

2018-06-17 線型代数と量子力学のためのヒルベルト空間論/相転移プロダクション

現代数学観光ツアーの終了時アンケートの項目 「この講座に参加してどんな数学を身につけたかったですか?」に, 「数学よりの物理数学 (例えば, ブラケットよりヒルベルト空間論)」 という回答があったので, ちょっとコメントしてみました.

式も少しあるので, PDF にしてあります.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_expedition_sample_20180617.pdf

「数学よりの物理数学」という 言葉に対する認識が おそらく根本から噛み合っていないので, たぶんコメントされた方の ほしい情報ではないだろうと思います.

ただ, それでも他の方の役には立つだろうと思ったので. もちろんあなたの役に立つことを願って, メルマガに流してみました.

休日はじっくり仕事ができる日なので, 仕事に戻ります.

ではまたメールします.

2018-06-16 グリーン関数や関数解析に関するミニコンテンツ/相転移プロダクション

さっき Twitter で適当につぶやいたのをまとめたので, メルマガでもシェアしておきます.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_expedition_sample.pdf

この間, アンケートで関数解析のことを書いてほしい, というのが来ていたのにちょっと応えてみた形です.

前も書いたように, ここ 2 年くらい, 現代数学探険隊をずっと作っていて, 関数解析はそっちで嫌というほど議論しているので, メルマガでまでやる余裕がありません.

おかしなことを書くと速攻でツッコミが入ることもあって, Twitter はある程度無責任に書き飛ばせるので, そっちだと時々関数解析系の話もしています.

大半がろくでもないツイートばかりなので, フォローするのは必ずしもお勧めはしませんけれども.

今日, 宣言通り 若者のための現代幾何入門に行ってきました.

  • https://sites.google.com/site/presentedbysmatsh/

メルマガ読者で参加された方はいたのでしょうか.

今回, 植田一石さんの初観測に成功した (隣に座った) ことも報告しておきます.

当たり前ですが, 専門外もはなはだしいので, 層の定義などのごく簡単な内容だった最初の 2 時間以後, 内容はほとんど全くわかりませんでした.

知識だけはある前半部分でも, 今までピンと来ていなかったことについて, 改めて指摘を受けることで少し理解が深まったところもあったので, 十二分な収穫がありました.

特に Mittag-Leffler の定理の (コホモロジー的な) 意義, 当の昔にわかっていてもおかしくなかったのに, 今日の話でようやく少し意義がわかりました.

よく「数学がわかる人は数学ができない人の気持ちがわからない」 とかいういい加減なことを言う人がいますが, 違う分野の話を聞くだけでちんぷんかんぷんなわけで, 上のようなことをいうひと, 本当にふだんよほど頭を使っていないのだろうと思います.

たった今気付いたのですが, 今日の話の概要はだいたい次のページにある PDF にまとまっているようです.

  • https://sites.google.com/site/microlocaldustbox/home/micro_symp

あとで今日の講演の手書き原稿も スキャンしてアップする, みたいなことも言っていました.

久し振りに東大に行ったので生協の本屋にも行ってきました. 本屋, 本当に物欲が刺激されます.

いくつかほしい本はあったものの, 先日置く場所がないために大量に本を捨てたばかりなのもあり, 買いはしませんでしたが.

本を読んではミニコンテンツやミニ講座を作る, というフローをもっと回したいのですが, やはり本業のせいでなかなか時間が取れません.

数学を本業にできるよう, マネタイズをがんばらなければならないという思いが 日に日に強まります.

ではまたメールします.

2018-06-10 若者のための現代幾何入門/相転移プロダクション

Twitter を見ていたら講演会の情報が流れてきたので シェアしておきます.

  • https://sites.google.com/site/presentedbysmatsh/home

ちなみにテーマや日時は次の通り.

  • 講演者およびテーマ
    • 池祐一「超局所層理論と幾何学」
    • 桑垣樹「深谷圏と超局所層理論、およびその応用」
  • 場所:東京大学大学院数理科学研究科
  • 日程:2018年6月16日(土)~17日(日)
    • 6月16日(土)数理科学研究科棟123教室 10:30-12:00 池祐一 13:30-15:00 池祐一 15:30-17:00 池祐一
    • 6月17日(日)数理科学研究科棟123教室 10:30-12:00 桑垣樹 13:30-15:00 桑垣樹 15:30-17:00 桑垣樹

次のように書かれているので, それ相応の内容です.

講演者には、修論のネタを探している大学院生を念頭に置きつつ、 意欲的な学部生から研究者まで幅広い層に興味の持てるような 講演をして下さいという(やや無茶な)お願いをしています. どなたさまも奮ってご参加下さい.

関東の方限定にはなってしまうだろうと思いますが, 東大観光, そしてふつう滅多なことでは入らない 東大数理観光みたいな感じで 参加してみてもいいのではないでしょうか.

私も少なくとも 6/16 の方は参加する予定です.

話を大きく変えて. Twitter で前からの知り合いに, 中高数学の復習+Python のお勉強的な感じで, 前からやっている無料の通信講座を勧めてみて, ちょっと感想をもらいました.

  • https://phasetr.com/mrlp1/

第3.5回の「ある程度の食べやすい分量で 毎日少しずつ進むのが大事なのではないか」というところです。 わたしは勢いに任せてやりがちなのですが、 すると復習の時間の確保は難しいわ寝食の時間を犠牲にするわで大変になるので。 ペースの管理難しいですよね。

目の前に大きな(関心の高い?)課題があると平行して 作業を進めるのが難しいこともありますね。 また主観で全然構わないので 方法論的なものを紹介してもらえると嬉しいです。

上の無料の通信講座, 各回の合間に勉強の仕方だとか, ちょっとした tips みたいなのを挟んでいます.

継続は力なり, という話に対して, 21 日継続できればそれはずっと続けられる, とかいう話もあるらしく, 21 日以上の講座にしようと思って, 1 日おきに小ネタをいろいろ紹介しています.

その 1 つがよかったようで.

せっかくなので, 最後にその内容を転載しておきます.

募集ページから登録すれば無料で読めるので, 役に立つかも, と思ったら登録してみてください.

  • https://phasetr.com/mrlp1/

今回は募集ページでも説明した, 分厚い本を読むのはつらいという話をします. ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ふつう分厚い本はそれだけ説明が丁寧です. 数学はわかりづらい, わかりづらいとよく言われます.

それに合わせて懇切丁寧な本があり, 600 ページを越える本もあります. 参考までに何冊か買ってみましたし, 確かに本当に基本的な内容を こってり丁寧に説明しています.

高校受験用に中学 3 年生の子に 貸してあげたら, それを見た中学生 1 年の女の子が 「説明が丁寧でわかりやすい!」 とかなり気に入ったようです.

そのままその子に貸してあげました. 500 ページくらいあるのに鞄に入れて 学校にも持っていると聞きました.

ただ, そういう本を大人が読むのは つらいこともあるでしょう. 確かに読み進めやすいけど, 分厚いから「まだこんなにある...」 みたいな感じになるようなのです.

本だから厚さはわかりますし, 形式的には「いまこの辺にいる」というのはわかります. しかし数学的な理解の度合いが 読んだ量に比例するとは限りません.

特に微分積分はふつう本の後半に回ります. で, ここがリベンジのメイン, そんな方も多いです. 文系で経済や統計学でも良く使いますからね.

そこに来るまでに挫折してしまうと, 逆に絶望感が深まるのではないかと, そう思っていて, そこへの対策は立てておいてほしいです. この講座はその問題に対する私からの回答です.

ちょっと余計な話もしましたが, 大事なことは, 分厚いのを一所懸命最初から アタックしていくのではなく,

ある程度の食べやすい分量で 毎日少しずつ進むのが大事なのではないか, そういう狙いに基づいて通信講座にしています.

手元に分厚いのがあると, ついつい頑張ってしまう人がいます.

そして最初のペースが保てなくなってくると, 勉強じたいは続けているのに 「最初は頑張れていたのに」と 必要以上に自分を責めてしまって, やる気がなくなる, あなたにもそんな記憶がないでしょうか?

だからもう一定以上進めないように, そして一回の分量は少なめにして 配信していって, 強制的に私の方から ペースを作っていくことにしました.

ではまたメールします.

2018-06-07 統計学のための中高数学の復習コンテンツ/相転移プロダクション

メルマガはしっかりしたのを書かないと, という気持ちが強過ぎて, メルマガで全然共有していないので, 改めて軽く進捗をお見せしておきます.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_refuge_lecture_office_20180523_v2.pdf
  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_refuge_lecture_office_20180606.pdf
  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/math_refuge_lecture_office_20180606_v2.pdf

これは会社でプログラマ向けに, 統計学のための中高数学復習勉強会 というのをやりはじめて, そのために作ったコンテンツです.

マニアックなことを書きすぎてしまうのが本当によくなくて, もっとさらっとポイントおさえて書きたいです.

年始に今年は中高数学のやつをきちんとやる, といいつつ, ある程度見せられる形になるレベルでは 思うように進んでいなくて, メルマガとかモニターのやつには全然出せていません.

で, ちょこちょこ作っているのを頭の整理と コンテンツの整理を兼ねつつ, 会社で勉強会の講師をやっている状態です.

これに関係するコードの整理もやらないといけません. ちなみにコードは GitHub の次のところに置いてあります.

  • https://github.com/phasetr/mathcodes

近々もっときちんと整理する予定です.

今回はこんなところで.

ではまたメールします.

2018-06-02 ウィッテン続報と量子系ネタ/相転移プロダクション

久し振りに量子系の話をしたら, その筋の人からいくつかコメントもらいました. 共有するのをサボっていたので, いい加減共有します. あと, 最後にいくつかコメントもらっていることがあるので, それに回答しておきます.

まずウィッテンがまた情報系のプレプリントを出しました. (という情報を 2 人から教えてもらいました.) (さらについでに言うと, Twitter でも話題でした.)

  • Witten, A Mini-Introduction To Information Theory
  • https://arxiv.org/abs/1805.11965

まだ全く読めていません. 古典系の話から量子系の話までありますし, 情報系の話は本当に何も知らないので, このくらいはおさえないとまずいのだろうとも思っています.

とりあえず, ふだんから 「雑な勉強法はそれはそれで大事」 「言葉だけでも知っておくと深く勉強するときにも役に立つ」 みたいなことを言っているので, 言葉だけでも改めて確認するために 流し読みしようとは思っています.

で, その他にいろいろ教えてもらったことがあるので, 共有しておきます.

原・田崎イジング本の謝辞に名前がある, という話をしましたが, 共立出版のイジング本のサイトに序文の PDF があって, それに名前きちんと書いてあることを教えてもらいました.

  • http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/978432011108

これ, 確か前に Twitter で 田崎さんに直接コメントもらった記憶も思い出しました.

あと量子情報あたりの文献やコンテンツに関するいろいろな情報です.

私も数理科学の量子情報と物理学のフロンティアを買いました。 以前のメルマガで河東さんの講義の動画の情報が知らなくて有益だったので、 今回の数理科学の記事に関係しそうな動画の情報をおくります。

まず、吉田紅さんの講義がPerimeter研究所のVideo Libraryで見れます。 少なくともToric Code とColor Codeを扱っています。吉田紅さんの講義は7回目からです。 https://www.perimeterinstitute.ca/video-library https://www.perimeterinstitute.ca/video-library/collection/iqc-quantum-error-correction-gottesman-and-yoshida

他にペリメータのVideo LibraryにはMARTIN-MARTINEZさんの相対論的量子情報の講義などもあるようです。 https://www.perimeterinstitute.ca/video-library/collection/psi-2017/2018-relativistic-quantum-information-martin-martinez

Tensor Networkに興味をもった方には、 物性研の研究会の動画があるので、紹介した方がいいかもしれません。 http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/public/tnqmp2016/program.html

Twitterで流れていて未視聴ですが、youtubeに 大栗博司さんのEntanglement and Geometry 01-04があるようです。 https://www.youtube.com/watch?v=f_TmZZ9zBzc

無料で読める量子情報の文献情報です。こちらも共有します。 Preskill以外の文献は正式に出版されたもののドラフトです。 Preskillのものも出版予定だと思います。

John Watrous : The Tehory of Quantum Information https://cs.uwaterloo.ca/~watrous/TQI/

M M Wilde ; Quantum information theory のarXiv のDraft版 From Classical to Quantum Shannon Theory https://arxiv.org/abs/1106.1445

John Preskill http://www.theory.caltech.edu/~preskill/ph219/index.html

藤井啓祐 Quantum Computation with Topological Codes https://arxiv.org/abs/1504.01444

あとこんなのも.

私は既存の教科書だと、次の2冊がいいと思うのですがどうでしょうか? 2冊ともあまり和書には書いていない話題を扱っています。

Ballentine, Quantum Mechanics: A Modern Development http://amzn.asia/7ntZVhk

Peres, Quantum Theory: Concepts and Methods http://amzn.asia/5mRZqsE

紙面の関係でどうしても話題が少なくなるので、 量子情報は量子情報の教科書で学んだ方がいいと思いますがどうなんでしょう? 量子情報のための量子力学なら量子情報の教科書にブラケット記法の説明などとともに書かれています。量子情報の教科書で説明されている純粋状態と混合状態、密度行列、量子測定理論(POVM測定など)、量子エンタングルメントなどの量子力学版が欲しいのでしょうか? 量子力学基礎論はどのような内容が知りたいのでしょうか? Bellの不等式、Marminの魔法陣、Kochen Speckerの定理、量子測定理論、一般確率論とかでしょうか?

あと何か表現論関係の話.

SPT相関係で射影表現が出てくるのは、 確か前メールで送った物性研のテンソルネットワークの研究会の押川正毅さんの講義にも出てきたはず(うろ覚え) または、2015年の千葉大学での戸塚圭介さんの集中講義の資料の第4章 http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~keisuke.totsuka/lecture_notes.html

田崎さんと戸塚さんの両方で参考文献として挙げられているのは、 D. Perez-Garcia, M.M. Wolf, M. Sanz, F. Verstraete, and J.I. Cirac, String order and symmetries in quantum spin lattices https://arxiv.org/abs/0802.0447

ここら辺は以下の出版された教科書のドラフトで勉強をしようと 思っているのですが、時間がとれていないのが現状です。

Peter Woit Quantum Theory, Groups and Representations: An Introduction http://www.math.columbia.edu/~woit/QM/fall-course.pdf

表現論の件ですが、 杉浦・山内の「連続群論入門」 は図書館で借りてきました。 時間がある時に読みたいと思います。

林正人さんの「量子論のための表現論」は、 中古を持っていて読んでいなかったのですが、 今見ると射影的表現と書かれて射影表現の説明が書かれているようです。 こちらから、読んでみようと思います。

また、昨日か今日のarXivのWitten のA Mini-Introduction To Information Theory https://arxiv.org/abs/1805.11965

に林正人さんが謝辞に名前が出ています。

メルマガを読んでいる方, 時々ゴリゴリの研究畑の人もいるので, そういう人には多少なりとも役に立つでしょう.

あなたがもしそちらの畑でなくても, 研究者が見ている世界を垣間見る機会なので, 無料のやつはどんどん触れてみてください.

みながみな, 1 から 10 まで隅々まで 論文を理解したいというわけでもないですし, 何となく雰囲気がわかるだけで 楽しいし十分ということもあるでしょうから.

ちゃんと理解したいと思うのなら, ちゃんと数学または物理をやってもらうしかないので, がんばって勉強しましょう.

現代数学観光ツアーの最後に文献案内をつけているので, それでぽちぽちやってください. いま見たら物理の文献, 全く書いていないですね.

次のページにいくつか情報を載せているので, 必要なら適当に眺めてみてください.

  • https://phasetr.com/blog/2015/08/06/数学・物理の参考文献紹介/

有名だからとりあえず突っ込んだだけの本も多く, 必ずしも全部は読んでいませんし, 読んだ本も隅々まで読み込んだわけではありません.

もちろん必要なら現代数学探険隊も使ってください. 通信講座と PDF コンテンツ販売両方あります.

「よくわからん」と言っておくと, 勝手にいろいろ教えてくれるこの状況, 本当に最高なので, あなたも積極的に情報発信して仲間を作りましょう.

知人 (と言っていいか微妙ですが) が次のように言っていました.

インターネットだと, 発言しない人は生きていないのと一緒.

この人, ネットを使ってビジネスを展開している人で, そういう文脈での発言でもあります. ただ, やはり存在を示さないとどうにもなりません.

ほしいものがあれば, きちんと手に入れようとがんばらないといけなくて, 奇蹟を待っていてもどうしようもないという, 身も蓋もない現実です.

ここからは頂いたコメントに対する返信です.

数学でも確率、ギャンブル学に興味があるのですが、 確率や統計について初心者が学びやすい本などはありますでしょうか?

ギャンブル学, ちょっと調べたのですが, これ, 「数学」ではないですね.

あと, 何でもかんでも知っているわけでもないので, こちらがギャンブル学について知っているような前提で 書かれるとすごい困ります.

あと初心者というのも, 小学校の算数も覚束ないと言う人から, 大学の数学はよく知らないという人までいて, どこを想定すればいいのかもよくわかりません.

ギャンブル学が何かもよくわからないし, 出ている情報も雑で, 詳しく聞き取るのもめんどいので, 回答は断念しました.

あまりにも厳しい.

そしてもう 1 つ.

関数解析の事も書いて貰えたらいいと思います。

何か継続的に似たタイプのコメントが来るので, 多分同じ人だと思います.

ここ 2 年, 現代数学探険隊で関数解析の話を延々書き連ねていて, メルマガでまで書きたくないという感じがあります. メルマガ, やはりまとまった情報を出すために使っていて, 書くのにかなりの気合と時間がいるので.

Twitter はちょこちょこ書き飛ばせるメディアなので, そちらを見てもらえば多少はカバーできるだろうと思います. 実際, この間も関数解析とか作用素論的な つぶやきを見てコメントしたりしていたので.

関数解析について言いたいことは 現状, ほぼ全て現代数学観光ツアーにまとめてありますし, 本質的にそれを越えることは言えないので, 受講していないならぜひそちらを見てください.

  • https://phasetr.com/mtlp1/

これ, 私が知っていることは とにかく叩き込んであります. そのせいで挫折者が増えすぎたらしくて実にアレですが.

もっときちんと知りたければ, 先程と同じく, 参考文献を案内しているので, そちらを読んでみてください.

ネットに (多分ちょっとアレな感じで) 落ちている 本も紹介していますし, どうしてもお金が作れないという状況でも それでカバーできるはずです.

お金をつめるなら現代数学探険隊を受講してください. 集合論の時点から関数解析との関係を 延々と展開し続けています.

このへん, 「それならこれ読んで」 と言えるコンテンツを準備しておいたので, だいぶ楽になりました.

まだまだバリエーションが少なすぎるので, もっといろいろ作りたいですし, 早く現代数学探険隊のコンテンツは作りきりたいですね.

https://github.com/phasetr/math-textbook これも海外の人の watch もあったりしますし, 英語のコンテンツも作って世界展開もやってみたいですし.

夢と希望だけはいくらでもあるのですが, 時間と資金がないというアレです. 私もいい年なので, 本気で数学によるマネタイズをしっかりして, 数学をきっちりやれるような体制を作らないといけません. 引き続き地道にマネタイズを模索していきます.

ではまたメールします.

2018-06-02 他の無料の通信講座の紹介/相転移プロダクション

きちんと紹介しているところがあまりないので, 改めて簡単に案内しておきます.

あまり自分のコンテンツを体系立てて紹介していないのは よくないな, と思っていたところで, さっき現代数学観光ツアーのアンケートで 次のような回答が来ていました.

「数学や物理を勉強したいが, どこから始めれば良いのか分からないので, きっかけとして」

この間も Twitter で少し話をしたというのもあり, 簡単にいまある講座を紹介しておきます.

次のページにまとまっていて, 最後のごついやつ (現代数学探険隊) 以外は無料です.

  • https://phasetr.com/blog/2014/06/09/トップ固定記事:メルマガ・数学カフェ・その他/

数学と物理の手始めということなら, 次の「応用からの中高数学再入門」がおすすめです.

  • https://phasetr.com/mrlp1/

詳しいことは登録ページを見てください. 最近, 次のようなコメントも頂いています.

  • https://twitter.com/eyecot/status/1001105656953253888

全く同じ内容のコンテンツを 次のページでひとまとまりの PDF にして出してみています.

  • https://phasetr.booth.pm/items/881502

プログラミング言語 Python を使ったシミュレーションも つけているので, プログラミングで遊んでみたい方の 導入としてもいいだろうと思います.

あと, 中高の数学はこんなところでこんな役に立っています, というお話だけ (式は出てこない) 講座として 「中高数学駆け込み寺 役に立つ数学」というのも作っています.

  • https://phasetr.com/mrjhlp1/

これは上のと逆に, 最初, 中高生またはその親向けに Kindle 用に作って, 今も有料で売っている電子書籍の内容を, そのまま無料の通信講座にしています.

現代数学観光ツアーは, 当初, 適当に要望も聞きながら作ったとはいうものの, 当時はゴリゴリの数学/物理系の人向けだけが集まっていたので, 内容と方向性もそうなってしまっています.

新しいのを作りたいと 2 年くらい言っていて, 有料の通信講座を作るので手一杯で, 新しいのが作れていません.

現代数学観光ツアーは, 本当に学部 4 年分の解析学を一気に眺める内容で, あれで何かが理解できるということはありません. 登録ページで書いているように, 大きな流れを掴んでもらうことだけを意図しています.

式をもっと入れてほしいという, 正直よくわからない要望もあったのですが, この講座の目的はそこではないので. やるなら新しいミニ講座をたくさん作って, そっちでやります.

ちなみに, きちんと理解してもらうことを目的にするなら, 現代数学観光ツアーみたいに雑にやらずにもっときっちりやりますし, その結果が現状 3000 ページ近くある「現代数学探険隊」の内容です.

これだけ書いてもまだ現代数学観光ツアーで書いたことを 5-6 割かそれ以下の内容でしかありません.

取り急ぎ, アンケートに対して簡単にコメントしておきました. 平日, 配信するべき内容をサボっていた分がいくつかあるので, またあとでいくつかメールします.

2018-05-26 量子情報と物理学のフロンティア/相転移プロダクション

Twitter で話題だったので, 数理科学 6 月号を買ってみました.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/B07BZC5KPP

この特集が今回のメルマガタイトルです.

執筆陣が Twitter にもいる人だったり, 実際に見たことあったり会ったこともある人だったり, 指導教官だったりでなかなか楽しいです.

今月から会社の勉強会で 「統計学のための中高数学復習」講座をやっていて, 記事によっては統計や情報系の様子を 見るのにも微妙に役立つようです.

河東先生が出てきていることからも, 物理的にも数学的にも専門と割と近く, その意味でも楽しいです.

本当に適当に, いくつか備忘録がてらの メモも兼ねてコメントしておきます.

まず, トップの上田先生の記事. ゲージが大事でその幾何構造が大事, というのがのっけからあり, 最近の動向にも合わせるなら, 量子系の議論にももっと幾何的な視点を 取り入れないと駄目っぽいです.

現代数学探険隊の探険パートにも もっと幾何のコメント増やすようにしましょう.

沙川さんの記事, P.20 の 注 19 で次のような記述がありました.

ただし定理 1 を連続変数 ($L^1$ 空間) に拡張するには, Hahn-Banach の分離定理など関数解析が必要である.

いまはやりの量子情報でも, 多少なりとも関数解析の話が出てくるので, 通信講座なりコンテンツなりで 量子系の数理といって関数解析やっているのにも 多少は意味を感じてもらえるのではないかと思います.

ちなみに沙川さん, 作用素環のノートだとかも公開しているので, もしあなたが興味あるなら覗いてみるといいでしょう.

  • http://www.taksagawa.com/others.html

ただし英語です. ぽしゃるかもしれない検討中の企画の内容を ぼろぼろ出していいのかという気はしますが, 先日から言っている院生さんの勉強ノートは 日本語で作用素環の基礎もすっきりまとまっていて, この特集内でコメントがある冨田-竹崎理論などまで 書いてあります.

改めて眺めているのですが, 趣味が近いこともあり, 解析学特化のコンテンツとしては かなりお気に入りなので, 何とかして公開/販売したいですね.

この記事, いくつかスピン系に関する記述がありました. 特に吉田紅さんの記事ではトーリックコードのループ, みたいな記述があります.

これはイジング模型の中で, 確率幾何とか何とか言われているようで, いろいろな議論があります.

この点に関する解説として, 次の原・田崎の本を勧めておきます.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320111087/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320111087&linkCode=as2&tag=phasetr-22

これはイジング系に特化させた, 数理物理的に徹底的な解説です. 以前にこの本の公開査読をやっていて, それに参加していまして, 謝辞のところに私の名前が載っています.

ただ, 出版されたときは絶望的にお金がなくて買えず, それ以来何か買うタイミングを逃したままになっていて, 自分できちんと確認していません. 田崎さんから載っていると Twitter で教えてもらったのでちゃんと載っているはず.

大栗さんの記事は, この間紹介したウィッテンの話とも関係あると 思っていいのでしょうか. タイトルとしてはそういう印象を受けます.

これのイントロ, かなり明快でよく書けている気がします. 私はごく単純な特殊相対論的な 場の量子論しか知らないので, 一般相対論と量子論ミックスで起きる現象の 困難の一端がちょっとわかりました.

具体的には P.47-48 の ブラックホールに関する記述です. ちょっと引用しておきましょう.

一方, 相対性理論では, エネルギー $E$ は 質量 $m$ と $E = mc^2$ と関係しているので, ある領域にエネルギーが集中していると, その領域は大きな質量を持つことになる. エネルギーを高くしていくと, その領域はブラックホールの事象の地平線に包まれ, 外部からは観測できなくなる. エネルギーが高いほど, 事象の地平線に包まれる部分は大きくなる. つまり, 高エネルギーの現象が, 事象の地平線の存在によって, 短距離の自由度を隠してしまう. これは高エネルギーにいくほど短波長の自由度が重要になる, 量子力学からの期待とは異なる.

イントロ最後の次の記述も, 物理の人から言われると不思議な感じがします.

この応用の例として, 重力を含む有効理論が数学的に整合性を持つ理論に 昇華されるための判定条件について最近の研究を紹介しよう.

あとこの記事, 専門外であることもあるのか, 物理的な概念に数学が強く絡んでいることにやたら目が向きます.

例えば P.48 右下方の 「その非自明な表現に属する物質」というところ. これは対称性を表す群があり, その群の表現に関連した概念で, これを「表現に属する物質」と書いているわけです.

3 節, AdS/CF 対応と量子誤り訂正符号の話, 作用素の表現論が出てきていて, これ, まさにどストレートに趣味のところで楽しいですね.

河東先生の記事, 以前メルマガだかどこかでも書いた, とても大事なことがあるので, それを引用しておきましょう.

有限次元んでも十分に難しく, また興味深い現象が起こるのである. 上述のチョイの言葉として, $2 \times 2$ 行列はかなり易しいが, $3 \times 3$ 行列は十分に難しく, 無限次元に近い, というものがある.

私は昔, 大学 1 年生のときの広義で, 微分積分学は底が深くずっと先までつながっているが, 線型代数学は底が浅い, と言われたこを覚えている. 今考えてみるとそのような見方は全く間違っていると思う.

P.63 で冨田-竹崎理論が出てくること, 相対エントロピーの話が出てきます. これは先日のウィッテンの論文でも出てきた話題です.

相対エントロピーというと, 私は修士の頃に読んで, 実際に修論の発展形でも少し使った 次のレビューの論文を思い出します.

  • https://www.worldscientific.com/doi/abs/10.1142/S0129055X03001679
  • http://www.ma.utexas.edu/mp_arc-bin/mpa?yn=03-94
  • http://webdoc.sub.gwdg.de/ebook/e/2002/maphysto/publications/mps-rr/2001/45.pdf

1 つ目のリンクが何というか正式版で, 後 2 者がプレプリントです. 2 つ目は mp-arc というプレプリントサーバーにあるページです.

これは非平衡統計力学での平衡への回帰を扱った論文で, 数学的に重要な拡張が議論されています. いろいろなところで何度か紹介している論文です.

この論文, 実際にセミナーでも読んだ論文です. 最初は他の本のセミナーをやっている裏で 予習しながら読んでいたのですが, ある 1 行がどうしてもわからず, 1 ヶ月くらい悩んでいたことがあります.

ダイソン級数という, 物理の形式論でもよく出てくるタイプの級数が出てきます. これ, 以前京大 RIMS での量子場の数理に行ったとき, 新井研の臼井さんの講演でも出てきて, 有限温度版で似たのがあると言って紹介したことも思い出しました.

同じく新井研の臼井さんと二口さんの arxiv のプレプリントへのリンクも適当に紹介しておきましょう.

  • https://arxiv.org/search/?searchtype=author&query=Usui%2C+K

プレプリントが 2015 年で止まっているの, もう研究やめてしまったのかと心配になりますが, どうなんでしょうか? 適当にしか探していないせいで 見つけられていないというだけならいいのですが. 下の 2017 年の研究会のやつを見る限り, 臼井さんは生存しているようです.

  • http://math.shinshu-u.ac.jp/~mathphys/SSMS2017/program.pdf

記事に戻って. 4 節のコンヌの埋め込み問題の話, なかなかすごいことになっているようで.

作用素環専攻だったのに作用素論とか, 非相対論的な場の量子論や量子統計ばかりやっていて, ほとんど作用素環らしい作用素環を知らないのですが, 改めてもっときちんと数学としての作用素環やりたいですね.

あと, 番外編として, 表紙裏の SGC ライブラリーの近刊, 「物性物理のための場の理論, グリーン関数」がちょっと気になります. 結局, 大学院レベルの物理, 特に 1 番趣味の物性理論が いまだにほとんどわかっておらず, 勉強し直したいとずっと思っています.

早く通信講座の基本的な執筆を終わらせて, 新しいことやりたいですね. もうそろそろはじめて 2 年になりますし, 自分自身再勉強にもなるので 飽きることは全くないものの, 小さめの新しい企画をたくさん立てて回したいです.

最近, 通信講座の関係で, 解析学に関する基本的な足回りは固まりつつあり, 通信講座の探険パート執筆のための 幾何の概要に対する知見も増えていますが, やはり新しいことをもっと組織的にやらないと, そしてやり続けないと駄目な気がしています.

量子力学もきちんと勉強し直したいです. 以前 Twitter で東北大の堀田さんに, 量子情報や量子力学基礎論的な話題も盛り込んだ, 新しいタイプの教科書ないですかね? 的な話をしたことがあるのですが, そういう教科書がほしいです.

量子相転移と絡めた量子 1 次元系であっても circuit QED だとかいろいろな進展があり, 形式的には (行列係数の) 常微分方程式で済む事情もあり, 入門レベルの話題ももっといろいろ選べるように思います.

通信講座のコンテンツを一通り作り終わって, 時間をもっと使えるようになったら, 自分の勉強も兼ねつつ, 小さなコンテンツをたくさん作っていきたいです.

死ぬほど時間がほしいですし, 時間を自由に使えるようにするために, 金銭的な自由も大事だな, と最近本当に強く思っています. 数学徒にもできる副業的なところは もっと開拓していきましょう.

ではまたメールします.

2018-05-24 「私もついていけるでしょうか?」/相転移プロダクション

連投に連投で申し訳ないのですが, 質問が来ているので回答します.

「私にもついていけるでしょうか?」という質問を頂きました. ちょっと意図をつかみかねているのですが, まず今回案内した PDF 販売に関しては, 本を買うのと同じだと思ってください. 自分のペースで勉強してくだされば問題ありません.

これがもし「難しそうな内容の本についていけるだろうか?」 という話なら, 基本的に証明はこってりと書いているので, ある程度数学ができる人からすれば 回りくどくて鬱陶しい, もう少しすっきり書いてもらえないだろうか? と思われるようなレベルの丁寧さだとは思っています.

もちろん, それでもいくつか質問を頂くので, そのたびにちょこちょこと記述を修正しています. 記述が詳しくなる方向の修正です.

当然といえば当然なのですが, 質疑のやりとりをしていて, 私もかなり発見があります.

「ここは区別して書かないと, 慣れていない人は混乱するのか」 と言った知見も少しずつたまっています.

頂いた質問とそのやりとりそれ自体も PDF に収録しているので, それも参考になるだろうと思います.

何にせよ, 証明や議論は丁寧に書いているとはいえ, 現代数学観光ツアーのような適当に面白いところだけ 読んで楽しんでもらえれば十分なコンテンツと違い, 現代数学探険隊はゴリゴリの数学科の数学を厳格に展開しています.

それを本当にきちんと理解してもらうことを目的にしている以上, あなたに一定の決意と覚悟を要求せざるを得ない部分があります.

それについては, 究極的にはがんばってください, としか言えません. 「誰にでもわかる」なんていい加減なことはいえません. こちらから出せるものは絞り出しています.

そもそもとしてこってり系のコンテンツをほとんど作っていないので どのくらいの感じか, サンプルをお見せできなくて申し訳ないのですが, 費やしているページ数という形で丁寧さを表現しておきます.

ふつうの本, 例えば有名な松坂和夫「集合・位相入門」が 320 ページ程度で集合・実数・位相を 一通り議論しているところ, 現代数学探険隊では A5 の大きさで, 集合論で 400 ページ, 実数論で 140 ページ, 位相空間論で 590 ページという感じです.

ルベーグ積分も 656 ページあります. 関数解析も本によっては 100 ページ程度で さらっと終わらせる内容を, 量子系の具体例の解析も込めて やはり 400 ページ近く使って議論しています.

復習や探険パートで重複する話題を 何度もしている分も含めての長さですし, 何より長ければいいというものではありません. それだけ通読するのが大変ですから.

私としてお勧めの使い方はやはり辞書ですね. 頭から読んでいくのは大変と思いますが, 辞書として適当につまみ食いすると楽しいと思います.

何か質問があれば何らかの手段で連絡してください. ではまたメールします.

2018-05-23 質問への回答/相転移プロダクション

連続で申し訳ないのですが, 現代数学探険隊 PDF 販売に関して 質問が来たのでいくつかお返事しておきます.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

まず銀行振込に対応しました. 今回, 通信講座の方の現代数学探険隊と違う 決済系のテストをしていて, 銀行振込は自分で手動確認します.

ちょっとタイミングが遅れると思いますが, ご了承ください.

で, もう 1 つ. 次のような質問が来ました.

該当分野に関するメールでの質問は可能とのことでしたが, スカイプなどでの質問は受け付ける予定はないのでしょうか? メールでは, どうしても限界があると思いますので.

これは非常に際どい質問なので, 考えていることをきちんと書いておこうと思います.

まず, 最初のところにコメントしておくと, 「該当分野に関するメールでの質問は可能」 とは書いていないはずです.

「PDF コンテンツの内容に関する質問はもちろん可能」と書き, 次のように書きはしました.

PDF コンテンツ以外の学習相談をして頂いても構いませんが, 内容によってはお答えしない・できないことがあります. 例えば私が作った PDF コンテンツ以外のコンテンツ以外への質問は原則としてお受けできません. ただし, 「ある本にはこう書いてあり, それはこの PDF の記述とは矛盾するようだ. どう理解すればいいのか」といった質問にはきちんと回答します.

該当分野というのが何を指すか不明瞭です. そして危険です.

例えば線型代数と言われても, 正標数の世界の話や p 進の話は入門レベルでも 私は耐え切れないでしょう.

p 進については強三角不等式の世界は 実数/複素数の世界と本質的に大きく違っていて, 本当に私の直観が効きません.

p 進の人も「実数は異常で本当に気持ち悪い」と 良く言っていますし, 線型代数であってすら少し外れるだけで, もう私の制御圏外です.

あと, いまのところ Skype はやる予定がありません. 募集ページにはっきり書いていなかったかもしれませんが, 現代数学探険隊の通信講座の方では, 宿題提出でポイントがたまる仕組みになっていて, たくさん出した方にはポイント消費で Skype なりで直接質問できる機会を提供するようにしています.

Skype だと時間を合わせる必要があり, その時間調整も必要で, さらにどんな質問が来るかわからないので 答えきれないことも増えるだろう, という事情があります. その他, これから書くように, いろいろな負担があって厳しいです.

これ, 特に情報発信をやっていこうという方には 特に参考にしてもらいたいのですが, 常識的に考えて, 1 章 4000 円相当の 売り切りコンテンツのサポートで, そこまでやると, プライベート含めて 本当に生活に差し障りが出ます.

最近, 労働問題がいろいろ取り沙汰されているように, 「安売り」するとそのサービス維持で身体も心も壊します. 自分が壊れるだけでも問題ですが, 数学のサービスが完全に展開できなくなり, 多方面に影響が出てしまいます.

だから「安売り」はしません. 他の「お客さん」にとって明らかに不利益になるからです.

参考までに, 通信講座の方でも 比較対象に出している「和」のサービス内容と 金額を改めて紹介しておきます.

  • https://wakara.co.jp/service/personal_sugaku/characteristics

受講チケット 50分チケット1枚あたりの料金 7,000円~

「和」はリアルの教室で, 場所による間接経費込みの値段であることもおさえつつ, 50 分で 7,000 円「から」という値段設定であることを 考えてみてください.

Skype 相談にしても, 本来このくらいの価値がある対応だろうと思います.

実は以前, 相談だけもらって 結局連絡が来なくなったためにぽしゃったのですが, 個人指導するという話がありました.

このとき「1 時間いくらでどんな質問でもしていい, というような指導は無理か?」との相談を受けました.

これ, 質問者側からすれば, その 1 時間を有効活用するために いろいろと質問をしたくなるでしょうが, 質問を受ける側からすると本当に大変です.

ぱっと答えられることばかりではないですし, 事前に準備しておいてそれに回答, とすると, 今度は準備で膨大な時間を使います.

1 時間の話をよどみなく効率的にやろうと思うと, 準備にかかる時間は 3 倍ではきかないでしょう. 実際, 文章にすれば 3 行の回答を作るのに ほぼ 1 日費したことがあります. この 1 日は休日の朝起きてから夜寝るまで, というレベルの「1 日」です.

1 時間 5,000 円にしても 準備 3 時間+1 時間の質問タイムで計算すると, 時給たったの 1,250 円です. これはどう考えても割に合いません.

私もそうなのでよくわかりますが, 数学・物理系の人達はお金の話を嫌います. 「そんなにお金が大事か」という方もいらっしゃるでしょう. あなたもそうかもしれません.

しかし私が潰れるといまやっているサービスも 全て潰さなければならなくなります.

本当にサービスを長く続け, 仲間を増やしていきたいなら, 自分を強く守る必要があり, それは譲ってはいけない線です.

だから, PDF コンテンツの内容に限定してしか 質問を受け付けない, という厳しい制限をつけてもいます.

そしておそらく, この値付けを私の知り合いに言うと, 「安売りしすぎだ」 「お客さんのこと, 本当に真剣に考えてる?」 と怒られるだろうと思っています. 「そのサービス回せる自信あるの? 無責任だよ」 とまで言われるかもしれません. そのくらいかなりギリギリの線でやっています.

自分でも何かをやってみたいという方, この辺に気をつけてサービスを組み立てるようにしてください.

「このくらいならいいだろう」という無理が つもりつもって心身を壊してしまって, そのサービスが続けられなくなっては あなたのサービスを楽しみにしている 他の「お客さん」にとっても不幸です.

私はこれで本当に数学や物理を専門にしている人が, その専門性を武器に食っていける道を 作ろうと思っています.

お金の話が苦手な, 本当に純粋な人達が, 罪悪感を感じないどころか, 喜んでお金をもらって, 相手も幸せにできるような道を作ろうと思っています.

そのためにも安売りにつながりかねないところは 譲れない一線です.

いま次の展開として, 先日お話した, 関数解析系, そして量子系の数理を専門とする 大学院生の勉強ノート販売について 案を練っています.

当人が私と方向性が一緒と言っているくらいなので, 内容じたいも本当に好みの方向で, あなたにもぜひ紹介したいですし, 何より, 上で書いたように学生さんの 学費の足しにもなるようにしたいですし, 考えることがたくさんあります.

近いうちにそちらも案内するので 楽しみにしていてください.

ではまたメールします.

2018-05-23 東大数理の河東泰之の名講義/相転移プロダクション

先日, ウィッテンの場の量子論と 量子情報理論の論文を紹介したとき, 紹介するのを忘れていた気がするので, 改めて紹介しておきます.

2018-04-9~13 に, 京大で河東先生が 代数的場の量子論に関する集中講義をしたそうです.

  • https://twitter.com/paper3510mm/status/987697007048310784
  • https://www.math.kyoto-u.ac.jp/ja/node/3355
  • http://ktgu.math.kyoto-u.ac.jp/bizlatweb/contents-list.do

私は河東研の学生だったにも関わらず, 学生時代に河東先生の講義を受けたことがありませんでした.

講義がうまいというのは聞いていたのですが, 修士修了後, Summer School 数理物理で はじめた講義を聞いて, いや, これはすごいと感心したのを覚えています.

で, 今回紹介する講義も非常にクリアな講義で, さすがです.

時間が取れず, まだ 2 回目までしか 見られていないのですが, 専門がかなり近いという理由はあるにせよ, かなりの名講義です.

先日案内したウィッテンの論文ともども, ぜひ勉強してみてください.

  • https://arxiv.org/abs/1803.04993 Edward Witten, Notes on Some Entanglement Properties of Quantum Field Theory

この論文も何かコメントなり 解説書こうと思ったのですが, これ以外のコンテンツ準備で時間が取れず, 頓挫したままです.

先日も「もう無料の通信講座は作らないんですか?」 という問い合わせも受けてしまって, 作りたい作りたいと口だけになってしまっているのが 悲しいです.

今年で有料の通信講座のコンテンツ作成に けりをつけて, 新しいことやりたいですね.

そして念のためもう 1 度. 昨日連絡した現代数学探険隊の PDF コンテンツ販売, まだ見ていないなら ぜひ次のページを見て内容を確認してください.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

数学や物理を勉強する上で 参考になることを書いているので, 必ず参考になるところがあるはずです.

ではまたメールします.

2018-05-22 数学学習をはかどらせる辞書/相転移プロダクション

大分時間がかかってしまいましたが, 現代数学探険隊の PDF コンテンツ販売の準備が整いました. 次のページを見てください.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

何度かご案内している現代数学探険隊ですが, いくつかのコメントを頂いています.

その中で特に次のようなコメントがありました.

自分のペースで勉強したいので 通信講座に対しては興味ないが, コンテンツ自体には興味がある,

知っている分野をいちいち再勉強したくはないが, 知らない分野のコンテンツはほしい.

そんなご要望にお応えして, 今回, 現代数学探険隊を PDF コンテンツとして 販売することにしました.

他の無料コンテンツや通信講座の募集ページと同じく, このページだけでも数学や物理を勉強する上で ヒントになることがたくさんあります.

ぜひこのページを読み込んで, あなたの数学ライフに活かしてください.

  • https://phasetr.com/mtexpdf1/

ご自分でも通信講座やコンテンツ作成, 数学や物理の情報発信をしてみたいという方も 何人かいらっしゃいます. そうした方にとっても参考になるはずです.

言うべきことはこのページに盛り込んであるので, 今回はこのくらいにしておきます.

ではまたメールします.

2018-05-21 受講アンケートへのコメント/相転移プロダクション

最近, 無料講座へのアンケートに ほとんどコメント返せていないのですが, 全く返さないのもさみしいので, ピックアップしてコメントします.

何度でもくり返して言い続けるべき 大事なこともあるので.

最近, また 60 代, 70 代の方からのコメントあって, 私もここまで生きて数学と添い遂げたい, という気持ちを新たにしたこともあり.

第 1 回に関するコメントです.

此の文章に限らず学習者に理論物理の素養を要求しているのでしょうか?

実際に受講される方がどう思うかはともかく, 私の意図としては気楽な「観光ツアー」なので, 素養は特に何も仮定していません.

で, 何度でもくり返す大事な話なのですが, 私はこれを中高生の頃の自分に向けて書いています. そして中高生の頃の自分がこれを 理解できるなどとは全く思っていません.

むしろ細かな数学に関しては 何一つ理解できないでしょう.

ただ, それでも昔の自分は絶対にこれを 読んで喜ぶはずだ, と思っているから, 馬鹿みたいに何百ページもがんばって書いたのです.

これも良くいうのですが, 小学生が宇宙やら何やらの話を 真剣な眼差しで聞いているシーンは 時々テレビで流れたりします.

いまだに研究も活発な分野ですし, どれだけ簡単にしたとしても子供が 理解できるような内容であるわけもありません.

それでも子供が真剣な眼差しで憧れの目を向けるのは, 1 つにはそれを真剣に語る大人の心意気に胸を打たれているから, というのがあると信じています.

いい大人が全身全霊をかけて, 一所懸命がんばって追いかける価値のあることだと, 伝えているその心が大事なのだと思っています. 現代数学観光ツアーもそのつもりで書いています.

これもはっきり書いておくと, 現代数学観光ツアーの記述は 根本的に説明としては粒度も何もかも無茶苦茶で, 何かを理解できるような内容ではありません.

これをもとに数学を眺めてもらって, 興味があるところが出てきたら, 最後の参考文献集を使って 興味に合わせてゴリゴリ勉強してもらうための素材です.

その意味で, そもそも何かを理解してもらうことを 目的にしてさえいません.

問, 計算練習問題, 等の学習者への課題 (宿題と言うと人によっては拒絶反応を起こしてプレッシャーで高熱をだして卒倒する人がいるかも知れないので) が在っても良いのではと.

これも強いていうなら, 興味のある分野を自分で調べて, 自分で勝手に突っ走っていって, 面白いことを見つけたら私にも教えてください, という課題を出しているつもりです.

ふだん Twitter だと本当にいつも そういう感じでやっています.

そして実際, Twitter で知り合った頃は 学部 1 年くらいで, その頃は知識としては私の方が上だったから 私からいろいろコメントしていた人達が, いまや大学院生です.

わからないことがあって質問すると 逆にいろいろ教えてくれるようになってきました. 求めているのはこういうのです.

知らないことは山程あって, こっちが知っていることはいろいろな形で出すから, こっちが困っていることがあったら SOS を出すので助けてほしい, そういうのがやりたいので.

ではまたメールします.

2018-05-11 確率・統計の話/相転移プロダクション

前のメールで書くと言った確率の話です. 改めて書いてお願いしておかないといけないし, くり返し伝え続けないといけないこともあるので, そこまで含めて.

お願いの話はあとに回して, まずは質問に答えます.

数学でも確率, ギャンブル学に興味があるのですが, 確率や統計について初心者が学びやすい本などはありますでしょうか?

というのが来ました. まずギャンブル学ってなんだ, というところからはじまり, 知らないのでちょっと調べたらギャンブルの社会学とか ギャンブルの情報学とかいう話が出てきて, 何か大雑把に言って次の本の話っぽいです.

  • http://sekaishisosha.jp/book/b354686.html

「本の内容」も引用しておきましょう.

人はなぜ賭けるのか? ― 人間の歴史あるところ賭博の歴史あり。 心理学、歴史学、社会学、文学、教育学、法学など、 多角的、複合的な知の動員によってギャンブルを吟味検証した異色の論集。 「ギャンブル学」事始め。

これ, 「数学」ではなく, 私の力ではどうにもならないので, とりあえずスルーしておきます. 少なくとも上でコメントがある分野, ぜんぶ人文か社会学で, ギャンブルの情報学という文脈で確率なり統計なりが 出てくる程度の話でしかないようです.

  • https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=79924&item_no=1&attribute_id=1&file_no=1&page_id=13&block_id=8

読者の方で何か面白い文献とかご存知の方いらっしゃれば, ぜひ教えてください. 数学と物理以外の話をやらないわけではないですが, 知らなすぎて何もコメントできないのがつらいところです.

あと, 「初心者が学びやすい」というのは これまでの経験上, コミュニケーションの齟齬を 高確率で発生させる危険ワードで, 取り扱い注意な感じです.

何とも言いづらいのですが, とりあえず大学受験の参考書の「ハッとめざめる確率」あたりをお勧めしておきましょう.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4887420447/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4887420447&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=0d51d5651046cf2213a19078c48a5228

これ, 極端なことを言えば 大学受験に関する確率問題が解けるようになるだけで, 必ずしも実用に役立つ確率や統計に対する 知見が深まるわけでもないのですが, 確率で遊び倒して慣れる方が優先だろうと思い, この本にしてみました.

最近人工知能やら何やらで統計学ブームが来ていて, その手の本は爆発的に増えています. ある程度プログラム書けるなら, そういう方面から攻めてみるのもいいでしょう. 次の本だとか.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4798155063

で, 以下お願いに関する話です. きちんと継続的に整備しつつ, どこかにまとめておかないといけないですね.

質問して頂くのはいいのですが, その場合は次くらいの内容を書くようにしてください. 「初心者」を自認する方は特にお願いします.

  • 初心者というのはどういう意味か? 例えば, どのくらいまでなら算数/数学に耐えられたと思っているか? 小学校? 中学校? 高校?
  • いまどういう状態でどうなりたいと思っているか?
    • 例えば数学も高校まではどうにかなったとは思っているものの, もう昔のことでほとんど何も覚えていないから 1 から勉強したいと思っているのか.
    • 中学で早々に挫折して, 中学の数学くらいからやり直したいと思っているのか.
    • 物理を勉強してみたくて, そのための数学を勉強してみたいと思っているのか.
    • 最終目標は微分積分で, それに関わる話だけを最短経路で勉強できないか.
  • 目標がたくさんある場合, 優先したいのはどれか?
  • 狭義の数学/物理以外が関わる話の場合, それに対する参考文献や参考サイトはどれか? 例えばギャンブル学なら http://sekaishisosha.jp/book/b354686.html とか.

これまでのやりとりでのはまりポイントを きちんとまとめてこなかったので, あまり精度のいい書き方になっていないですね. これから整備していきます.

この辺の情報がないと, 適切な答えが返せず, 1 番困るのは適切な情報がほしいと思っているあなたです.

適切な質問を練り上げる力が育っていないとこういうときに困ります. 実際, 上に書いた質問事項も練り上げきれていないので, いま現在進行形で私が困っています.

こういう話, 研究フェーズで決定的に大事で, 博士課程だときちんと鍛えられることになっていて, 博士の価値はここにある, ということになっています.

問題を練り上げる訓練みたいな通信講座とか, ある種の問題集みたいなの, あったらよさそうだと今思いました.

いろいろな意味ですぐはできないので, 時間かけて考えてみることにします.

まとまりないですが, 今回はこのくらいにしておきましょう.

ではまたメールします.

2018-05-10 続 超弦理論/相転移プロダクション

朝起きたらちょっとした反響があったので, それをシェアしておきます. 確率の話についても問い合わせがあったのですが, これが長くなりすぎたので次回に回します.

専門が何なのかいまだによくわかっていないのですが, Twitter 経由で知り合った物理の人が メルマガに登録されていて, この間のメールへのコメントで 今年の 3 月に出たウィッテンの論文を教えてくれました.

  • https://arxiv.org/abs/1803.04993 Edward Witten, Notes on Some Entanglement Properties of Quantum Field Theory

ウィッテンは歴史学科卒からの物理転身で, 数学最高の賞であるフィールズ賞を取った魔人です. 超弦理論に関する議論でいまもなお世界をリードしています.

で, そのウィッテンが冨田-竹崎理論にフィーチャーした プレプリントを出したので, 解説をしてほしい, とかいう凄まじい無茶ぶりが飛んできました.

冨田-竹崎理論は数学的に私の専門だった作用素環の大理論で, この竹崎は昨日のメールでも紹介した竹崎正道先生です.

いまプレプリントを読んでいますが, さすがウィッテンというべきか, 異様にまとまっています. かなりよさげなので, 興味があればぜひ読んでみてください. 私も読んで, あとで適当にコメントする予定です.

あと, プレプリントの内容とは関係なく, 「冨田-竹崎理論にはこんな方向からの近付き方もある」 という解説をちゃちゃっと書いたのを先の物理の人に送っておいたので, それをこのメルマガでも共有しておきます.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/2018-05-10-231220.tmp.pdf

相手が相手なので相対論的場の量子論と 量子統計は前提にした内容になっていて, そう簡単に読める内容ではないでしょう.

ただ, 現代数学観光ツアーのように, 数学・物理的に進んだ世界の様子を, 啓蒙書のレベルを越えて触れ, いろいろな分野を横断して世界を眺める, そういう点からするときっと役立つはずなので, こちらでも共有しておきます.

多少研究の話も入れているので, そういうのが好きな人はぜひ眺めてみてください.

現代数学探険隊のページで, 「超弦理論をやる上でもこの講座の内容は役に立ちます」 と書いておきました. これは超弦理論で出てくる幾何的な議論をやる上でも, 基本的な数学の知識はいるし, それをきちんとカバーしているということ,

微分幾何系の議論の中で非線型偏微分方程式なども出てくるし, そうした解析学の基礎はきっちりやるから, その意味でも役に立つという意味で考えてい, 超弦理論との関係という意味では 作用素環のことは考えていませんでした.

しかし, 実際には作用素環や代数的場の量子論の 基本的な成果に興味が持たれつつあるようです. 思った以上に本格的に意義のある内容になりそうで, むしろ驚いています. ここまでの展開はさすがに想像していなかったので.

現代数学探険隊で作用素環自体はかっちり議論しませんが, 現代数学観光ツアーでは散々紹介したように, 関係ある話はいたるところに散りばめています.

この冨田-竹崎理論フィーチャー, 実は別の意味でもタイムリーなのです. 昨日次のように書きました.

また別の新しい企画が立ち上がっています. 具体的な動きはまだ形になっていませんが, いったん, こんなことも企画しているよ, ということで近い内に案内だけは出します.

まだ金額など基本的なことも調整ついていなくて, ぽしゃるかもしれませんが, いろいろ考えていてやりたいことの 1 つでもあるので, 企画案を公開してみます.

実は Twitter で知り合った大学院生の 勉強ノートを販売してみよう, という企画を進めています. A4 で 1300 ページあるので相当の量です.

この学生さん, 当人が私と趣味が似ていると 言っているくらいなので, この勉強ノートで扱っている内容は 私の趣味関心ともよく合っています.

特に作用素環も議論していて, 冨田-竹崎理論も載っているのです. これ, この場で告知しろ, というどこかの誰かからの メッセージだろうと思ったので, 案内してしまいます.

参考までに, この PDF の目次を載せておきましょう.

  • 選択公理, 位相空間, 実数
  • 線型代数
  • 位相線型空間
  • ユークリッド空間上の関数の微分, 初等関数
  • 測度と積分
  • ユークリッド空間内の多様体上の微積分
  • 複素解析
  • 超関数, Fourier 変換, Sobolev 空間
  • Banach 環 C^*-環のスペクトル
  • Hilbert 空間上の線型作用素論
  • 微分方程式
  • 局所コンパクト群のユニタリ表現論
  • 基本的な Schrodinger 作用素のスペクトル
  • 確率論の基礎
  • 作用素環論の基礎
  • 付録.1 古典力学の基礎への数学的アプローチについて
  • 付録.2 古典力学的視点からの統計力学の原理について
  • 付録.3 特殊相対論的時空と電磁気学の基本法則について

これ, ここまでで A4 で 1300 ページ程度のボリュームです. まだ追記していくとのことでした.

これは元が自分向け勉強ノートですし, 完全に定義・定理・証明のスタイルで, 必ずしも定義や定理の解説などは入っていません.

しかし, この構成それ自体が 1 つのストーリーになっていますし, 関数解析系の解析学の王道と呼べる流れです.

ふつうの位相空間論さえありませんが, 関数解析系にフォーカスさせきって, ストレートに研究の現場までの道を描いている清々しい構成です.

現代数学探険隊はいろいろな意味で, その関数解析系数学の王道を崩しています. それは勉強しやすくするため, そして数学の基礎を固めるという意味でです. 完全に関数解析にだけフォーカスするなら 私もこれに近い構成にしただろう, という内容で, 本当に趣味が似ています.

まず真っ先に線型代数おさえるよね, 積分ははやめにやりたいけど, 微分もやっておかないとあとで困るから 微分は先行投入したくなるよね, とか.

現代数学探険隊とまた少し違う趣で, これ自身, 通信講座化させてもいいような 構成だと思っています.

むしろ, この学生さんとうまく連携できて, これをコンテンツ展開できれば, 作ろうと思っていたアドバンストコースも こちらのコンテンツを案内すればいいだけで済み, その時間を他のコンテンツ制作に使えるようになり, 私の活動としても凄まじいメリットです.

現代数学探険隊の PDF コンテンツとは 切り口が違いますし, 重なる部分があるにせよ, 平行して販売する事にも十分な意義があります.

現代数学探険隊だと, ある意味で関数解析系の数学から見て 「よけいなこと」もいろいろやっています. そしてある程度集合や位相の知識がある方からすると, 過剰に基本的すぎるでしょう.

そうした「よけいなこと」よりも, 関数解析系の実戦的な内容をストレートに突き進みたい, という方にはお勧めの内容です.

もしあなたがこれに興味があるなら, もう少し待っていてください.

ではまたメールします.

2018-05-09 超弦理論の読書案内/相転移プロダクション

お問い合わせを頂いた内容に いろいろ返信したのですが、 メルマガで共有した方がよさそうなこともあったので シェアします.

  • 物理学者や数学者のブログやサイトの紹介
  • 超弦理論に関する読書案内

まずは前者から.

数学物理学で生きておられる 先生のブログや生き方にふれられる ホームページがありましたら教是非えてほしいです。

サイトでも書評を書いていたりするのですが, 「数学まなびはじめ」はまさに数学者の生き様が書かれていて, 非常に面白いです.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4535785155/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4535785155&linkCode=as2&tag=phasetr-22
  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4535785163/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4535785163&linkCode=as2&tag=phasetr-22
  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4535785929/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4535785929&linkCode=as2&tag=phasetr-22

竹崎先生は直接お会いしたこともあり, 特に印象深いので, その記事は引用しておきます.

  • https://phasetr.com/blog/2013/02/16/書評:数学まなびはじめ-第-1-集-竹崎正道/

現代数学観光ツアーなどでも紹介していますが, 深谷先生のエッセイ「数学者の視点」も 激烈面白いのでこれは本当にみんな買って読んでほしいです.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4000065351/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4000065351&linkCode=as2&tag=phasetr-22

これも書評を載せておきましょう. これと「数学まなびはじめ」はとにかくみんな買ってほしい.

  • https://phasetr.com/blog/2013/02/01/書評:数学者の視点/

紹介したすぎて本題からずれてしまいました.

研究者のブログやサイトはいろいろあります. 日常を知りたいということなら, Twitter がお手軽です.

1 人研究者を見つけると, そのフォロー・被フォローから近い分野の研究者が大量に見つかるので, それでフォローを増やしていくといいでしょう.

Twitter にはたくさん研究者がいますが, ここでは日頃からゴリゴリ物理や数学の話をしている人の アカウントをいくつか紹介します.

  • 京大の物理の教授, 佐々真一さん https://twitter.com/sasa3341
  • 東工大の数学の教授, 加藤文元さん https://twitter.com/FumiharuKato
  • 学習院の物理 (数理物理) の教授, 田崎晴明さん https://twitter.com/Hal_Tasaki
  • 数学の教授 (当人が名前を出していないので名前なしで紹介) https://twitter.com/Paul_Painleve
  • Caltech の物理の教授, 大栗さん https://twitter.com/planckscale

佐々さん, 田崎さん, 大栗さんは ホームページ (日記サイト) も持っています. 大栗さんは超弦理論の研究者として著名なので, ホームページ含め追いかけると楽しいと思います.

  • 超弦理論に関する読書案内

ちょっとした読書案内です. ちょうど今日メールが飛んできたこともあり, サイエンス社の別冊 SGC ライブラリの電子版で, 超弦理論に関わる数学や物理の冊子が いくつか売られているのを紹介しておきます.

  • http://www.saiensu.co.jp/?page=field_list&field_id=30&field_name=&offset=20

現代数学探険隊のページで 超弦理論に興味がある方も多い, と書いています. 実際, 今回問い合わせされた方も 超弦理論に興味があるとのことでした.

この辺, やはり需要があるんだな, と改めて感じています.

さて, 上のライブラリーの本ですが, それぞれの本はだいたい 200 ページです. それだけの薄さで高度な内容も議論しているので, 読むのに予備知識も必要ですし, 議論や説明も飛ばし飛ばしになっている部分があります.

しかしこれは欠点ではなくいいところです. ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

啓蒙書だと一般受けを狙って 式がほとんど書かれていませんし, 説明が断片的にならざるを得ません.

かといってもう少し勉強してみようと思っても, ゴリゴリの専門書しかありません.

上のページにある電子版の本も, 基本的にはゴリゴリの本ですが, その本は専門的になりすぎず, その分野への導入にはほどよいレベルになっています.

もちろん読者対象として一定以上の 専門能力を持つことを前提にしているので, 専門家向けの入門や概要ですが.

で, これをどう使うかが問題です. ある程度の予備知識からはじまり, 200 ページくらいでそこそこまとまっているので, どんな勉強をどうしていけば 超弦理論まで辿りつけるか, それを見通すために読むのです.

細かいところがわかるわけがない (私が読んでも細部は追い切れません) ので, 大きな雰囲気を掴んでください.

そして, 基礎的なことを勉強するときに, 「いまやっていることは将来こんなところにつながる」 というのを少しでもイメージしやすくし, 勉強のモチベーションアップに使ってください.

この使い方は現代数学観光ツアーの スタンスとも一致しています. 細かいところはさておき, 大きな姿を掴んでもらって, 勉強のモチベーションアップに 役立ててもらうことが大事にしています.

あとサイエンス社のこのライブラリを応援したい, そんな理由もあってあえてこれを紹介しています.

先日, Twitter でも愚痴ったのですが, ゴールデンウィークに衣替えがてら 大掃除したとき, もう家に本が置けないので 本を大量に処分しました.

最近あまり読んでいないというだけで, まだ時々読むだろうしずっと手元に置いておきたい本を, です.

紙の本, もう家に置く場所がないので, いわゆる電子書籍を売ってほしいのです. 漫画だとファイルの容量などまで含め, またいろいろな問題があると思いますが, 特に数学や (理論) 物理の学術出版は ほぼ字だけですし, PDF だと非常に容量も軽くおさえられます.

だから epub がうんぬんというよりも, TeX で原稿出てくるのだろうし, 素直に PDF 出してほしいのですが, なかなかそうなりません.

その中で PDF を出してくれているので, これは応援したいと思っています.

雑誌の数理科学なども PDF で出してほしいし, Web+DB が 10 年分の記事を DVD でまとめて 出しているような感じで, 過去何十年分を DVD で出してほしいとか もっとやってほしいことはいろいろありますが, そのためにも PDF 販売が盛り上がってほしいのです.

本来, 時代の先端をひた走る技術・学術出版は, それに合わせて革新的なスタンスを取ってほしいのですが, 現状, IT 化の動きが非常に遅いように感じています.

規模の問題もあるのでしょうが, プログラミング関連の書籍で有名な オライリーは PDF 販売していますし, 英語だと GitHub で公開しながら 本を執筆していることさえあります.

大学側も書籍や論文誌を置くスペース問題がありますし, けっこう大事だと思っています.

もう 7-8 年も前ですが, 獣医学の教官が「最近は本も論文も PDF で読んでいて, すっかり紙で文献に触れなくなった」 と言っていました. よくも悪くもそういう時代になりつつあるので, 学術出版もそういう動きをしてほしいです.

紙は紙でどう考えても保存の用途には強いですし, いろいろなビジネス上の都合や海賊版的な 問題もあるのは知っていますが, それを何とかすることこそ出版業界の仕事でしょう.

いい加減長くなりすぎてきたので, 今日はこの辺で切ります.

先月くらいから言っている PDF 販売について, また別の新しい企画が立ち上がっています. 具体的な動きはまだ形になっていませんが, いったん, こんなことも企画しているよ, ということで近い内に案内だけは出します.

ではまたメールします.

2018-04-13 無料でアクセスできる数学・物理系の文献とサイト/相転移プロダクション

ここ数日, Twitter で漫画村に関するネタが出ていて, 無料かつ合法的に読めるサイトがいくつか紹介されています.

昨日, これから有料コンテンツの準備中だよ! と言っておいたあとに「どういうこと?」 とあなたは思っているかもしれません.

何人かの方から, 自分でも数学や物理の情報発信をやってみたい, という声を頂いていますし, そうした方のことも考え, その辺の事情を簡単に説明しておきます.

まず第 1 にどう考えても食い合う サービスではないからです. 基本的に私の活動は既存のコンテンツを活かすために いろいろなギャップを埋めることが目的です.

ビジネスライクに言うなら, 既存のコンテンツを勉強してもらった上で, そこで大いに困ってもらう必要があるとも言えます.

あともう 1 つ. いろいろなところで言っているように, 私自身の活動の当初の目的は数学や物理の話が できる友達を増やすことです. そしてそれはいまも変わっていません.

お役立ち情報はきちんと共有しましょうね, ということです. で, そういう情報を出し続けると, 今度は「こんな情報があったから共有しますよ」 と逆に情報をくれる人も出てきます.

世間的に世知辛く言えばいわゆる give and take ですが, 逆に言うなら数学/物理界隈での give and take をもっと気楽にやろう, ということでもあります. もともとその気が強い文化も持っていますし.

さて, いい加減サイトを紹介していきましょう. 参考ツイートなどは次の通り.

  • https://twitter.com/dc1394/status/984421487372152832
    • http://2969.hatenablog.com/entry/2018/04/11/165555
  • https://twitter.com/astrophys_tan/status/984099971161968640
  • https://twitter.com/f_nisihara/status/984385563787649024

サイトの情報を簡単に抜粋していきましょう.

  • 統計科学のための電子図書システム http://ebsa.ism.ac.jp/
  • 漫画村閉鎖!?代わりの無料読み放題サイト4選!!
    • OpenStax http://openstax.org 主に大学レベルの教科書を無料で提供しているサービス。 物理学、経済学、心理学など様々な科目の教科書が用意
    • Google Scholar https://scholar.google.co.jp Googleが提供する、世界中の論文や学術誌が検索できるサービス。 海外のものだけでなく日本語論文も検索できます。
    • Stanford Encyclopedia of Philosophy(スタンフォード哲学百科事典) https://plato.stanford.edu/index.html 無料で閲覧可能な哲学のオンライン百科事典です。
    • Biography.com http://www.biography.com 歴史上の人物から現在活躍中の俳優まで、さまざまな人物の伝記を取り扱ったサイトです。
  • 宇宙物理たんbot
    • 超ド定番!!数物系論文プレプリント無料読み放題サイト https://arxiv.org
    • 天文系に大人気!!パブリッシュされた論文まで結構出てくる激ヤバ無料読み放題サイト http://adsabs.harvard.edu/
    • 岩波書店憤死!?ファインマン物理学の原書全巻の無料読み放題サイト http://www.feynmanlectures.caltech.edu
    • アインシュタインさんの個人情報まで暴露!!アインシュタイン全著作の無料読み放題サイト http://www.einstein.caltech.edu
    • 定価で買ったわたくしは一体!?日本評論社のシリーズ現代の天文学の天文学辞典の無料読み放題サイト http://astro-dic.jp/
    • たまには文系の本でもお読み!!スミソニアン協会図書館の蔵書の無料読み放題サイト https://library.si.edu/books-online

あと私からも数理物理系の arXiv を紹介しておきましょう.

  • Mathematical Physics Preprint Archive http://www.ma.utexas.edu/mp_arc/

ここは上の https://arxiv.org とかぶっているプレプリントもあります. ファインマン物理学は私のサイトでも紹介したことがあります.

これ以外にも, 現代数学観光ツアーの中など, ネットに (おそらく合法ではなく) 落ちている文献の ダウンロードを紹介していたりしますし, 必要ならいろいろ物色してみてください. 「こんな情報はない?」という要望があれば, 出せる情報は出すつもりです.

ここまで書いて改めて思ったのですが, やはり英語情報が多いですね. MIT では講義映像を公開していたりしますし, 英語で勉強できて, かつ独学を続けられる 尋常ではないレベルの気迫があるなら, 独学もかなりやりやすくなっているのではないでしょうか.

一応書いておくと, 独学でハードルになるのは, やはりカリキュラムの非存在です.

学校での勉強だと好き嫌い関係なくとにかくいろいろやらされます. これは, 興味があってもなくても一通り, その時代の専門家が大事だと思う基礎を眺め渡せるという点で重要です.

面白いところしかしないとなると, 結局いろいろなところが穴だらけになってしまい, あるところで足元をすくわれたり, 基礎がないために必要な情報があってもそれを理解するのに やらなかった分のツケを支払わされることがあるからです.

これも尋常ならざる気迫があれば乗り越えられることですし, そうでなくても乗り越えなければいけないことではあります.

余計な話をしてしまったので本題に戻ります. それは英語の話です.

少なくとも IT 関係の技術系だと, 最新の情報に関してはふつう英語情報が 1 番早いです. 文献の量も多いですし, ソフトのマニュアルやドキュメントも当然英語です.

そういう状況であるにも関わらず, 私の会社でも技術系の人が「英語が読めない」ということはよくあります. 本当に全くお手上げということもないと思うのですが, 理解に苦しむレベルで忌避感を持つ人はいます.

これから 10 年以上先にどうなるかはともかく, 直近, 英語が読み書きできなくて困ることはないと思うのですが, 数学や物理を独学する上では英語が読めて聞けると明らかに得ですね.

最近 4 技能とか言われているように, 書くのと話すのはまた別です. とりあえず情報を受け取れればいいので, そのための読む/聞くが大事です.

この辺も以前検討したことはあって, 例えば次のような本はあります.

  • ロジックとリーディングに強くなる 英語で算数 (数のリスニング特訓CD付き) http://www.amazon.co.jp/gp/product/4255004951/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4255004951&linkCode=as2&tag=phasetr-22
  • 数学版 これを英語で言えますか?―Let's speak mathematics! https://www.amazon.co.jp/dp/4062573660/
  • 語源で増やすサイエンス英単語 https://www.amazon.co.jp/dp/4860643992

これに限らず, もっと理工系のための英語, みたいなコンテンツやサービスがあってほしいですね.

現代数学探険隊でも数学や物理で役立つ英語表現, みたいな節を作っていく予定なのですが, これはもっと本格的に展開したいと前から思うだけは思っています. どなたか一緒にコンテンツ開発しようという人いないですかね? 時間的な制約もあって, さすがに 1 人で作りきれないので.

サイトで「理工系のための歴史」みたいな本ももっとあると嬉しい, みたいな話をしたこともありますし, こういう話も本当はもっとやりたいです.

  • 炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす http://www.amazon.co.jp/gp/product/4106037327/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4106037327&linkCode=as2&tag=phasetr-22

あと, この辺に関して 1 つ実体験を紹介しておきます. これもどこかで書いた気がするのですが, フランスは数学が強く, しかもやつらは代数幾何を中心に 大事な文献をフランス語で書くことがあります. 他にもいろいろあってフランス語を勉強しようと思ったことがあり, 実際に多少勉強していました. 大学の第 2 外国語ではドイツ語だったので, 本当に大学を出てからの独学です.

あなたが大学で第 2 外国語を勉強したことがあるなら たぶん納得してくれると思うのですが, きついのは暗記です.

ヨーロッパ系ならある程度英語とも単語が似通っているので そこからの類推が使える場面はあります. ただ, それでも定期的に触れない限り, 記憶には定着しません. フランス語でもそれで非常に苦労しました.

最近は全く勉強していないので, 文法も怪しく勉強のつらさを実感しています.

で, 言いたいのはそんなことではなく, フランス語の勉強に数学を使うことです.

最低限のフランス語と英語, そして数学を一定以上理解していることが条件ですが, 一時期, 数学の論文を読むことでフランス語を勉強していたことがあります. 具体的には Serre の論文を読んでいました.

数学それ自体をある程度わかっていて, その文献で議論されていることがわかっているなら, 「ここにはこう書いてあるべきだ」というのが数学的な内容から 規定されるわけです. それを使ってフランス語を読み, 理解していこうという趣旨です.

実際, これは想定外の効果がありました: 暗記の役にも立ったのです.

明白に覚えているのは si の意味です. 英語の if の意味で使われます. これ, ふつうに勉強しているときには何度やっても覚えられなかったのですが, Serre の本で出てきたときに「ああ, これは if だね」と辞書を引かずに 意味を類推できました.

すごいのはその後で, 数学の中で出会ったあと, この意味を忘れていないのです. もはやふだんフランス語には触れていないのに, 何年経っても忘れていません.

この忘れにくい覚え方・出会い方が大事です. もしあなたが英語に苦手意識があるのなら, 自分が得意なところに引きつけて理解する手法を取ってみてください.

念のため言っておくと, 小説は難しいです. 日本語でも会話文で省略なり何なりよくあるわけで, 口語表現などにも馴染んでおく必要があります.

他にも最近出版系の人に翻訳に関する話を聞いて それはそうか, と思ったのですが, CM に流れているフレーズが文章中に出てくることがあって, そういうのは英語そのままだとほぼ理解不能です.

よくある「聖書を理解していないと英語の新聞が読めない」 みたいな話と同じです. イギリスなりアメリカなりの日常を理解していないと 全く意味が理解できないことが多々あります. 日本の古文が理解しにくい原因でもあります.

話が逸れましたが, 数学を仲介にして英語なりフランス語なりを理解するのは 割といける手法だと思っています.

もちろん一定以上の数学じたいへの理解を前提にした上で.

もし数学がある程度できる上で英語をもっときちんとやりたいと思うなら, ぜひ洋書を読んでみてください. そのとき, 今回紹介した文献やサイトを使ってみてください.

洋書を買おうと思うといろいろとハードルがあるでしょうが, 無料で手に入るなら「買ったけど読めなくて損した」 みたいな事態にはなりません.

個人的には英語よりも「数学で学ぶフランス語」が本当にほしいです. メルマガ講読されている中のどなたか, フランス語の方の専門家, それも数学に対して拒絶反応を示さない人, 紹介してくれませんかね?

ではまたメールします.

2018-04-12 また魔人のような受講者の方があらわれた/相転移プロダクション

最近全く返事できていないのですが, 各種通信講座のアンケートに ポツポツ回答が来ています. その中で強烈なのがあったので紹介します.

40 代の専業主婦の方で, 現代数学観光ツアーの第 3 回に対するアンケートで, 「大変興深く面白いです.」というコメントを頂きました.

はっきりと主婦を名乗って参加される方は 多分はじめてで, かなり驚いています.

この回, 多くの人を叩き落とす回らしく, 急に難しくなったという声もよく聞きます. それに対して, 次のような内容評価を頂きました.

  • ちょうどいい
  • 面白い・楽しい

最近, 現代数学観光ツアーには 「もっと 1 回 1 回を短くして」 だとか 「難しすぎる」だとか, ゴリゴリの数物系という 当初の想定を越えた範囲を越えた層の方からは 厳しいコメントを貰っているので,

「喜んでくれる人がいた. 良かった」 と多少なりとも安堵しているところです.

で, 本題はここからです. 「私は数式が好きなので数式ももっと学びたい気持ちがございます.」 というコメントがあったので, いちおう改めて宣伝をしておこうかと. 個別に送ろうにも, アンケートに連絡先を記入するようになっていないので, 全体メールで送ります.

現代数学観光ツアーが一通り終わってからも 案内があるのですが, もっと数学を勉強してみたい, という方向けに現代数学探険隊という 通信講座を用意しています.

詳しいことは次のページにまとめているので, ぜひこちらを読んでみてください.

  • https://phasetr.com/mtex1/

面白そうだ, と思ったら, ぜひ参加してみてください. 無料期間もあります.

参加しなくても, 数学を勉強する上で大事なことを いろいろ書いていて, 単純にページを眺めるだけでも参考になるはずです.

あと, 何人かの方から要望を頂いていたのですが, この通信講座で使っている PDF を 単独でコンテンツ販売するためにいま準備中です.

通信講座としてのサービスがない分, 単純な金額だけなら PDF コンテンツ販売の方が安くなっています. サービス内容自体が根本的に違うので, 金額も当然別体系にします.

この PDF コンテンツはこれを読み進めていく教科書というよりも, 「辞書」という立ち位置なのではないかと思っています.

何にせよ, 近い内, 1 月以内には案内を出す予定なので, もう少し待っていてください.

ではまたメールします.

2018-03-11 量子系の数理と線型代数/相転移プロダクション

時間もないのにやってしまった感があるのですが, 埋もれかねない文章なので, メルマガでも公開して供養しておきます.

私の「物理の数学」に対するスタンス表明でもあるので, もしあなたがそういうのが好きなら, 読んでいて楽しい文章だろうと思います. 「いや, その考えは違う」みたいなのまで含めて.

このメールの最後にも書いておくので, 興味があればコメントもらえると嬉しいです.

学生の頃, Amazon で東大出版会の線型代数入門に 書評を書いたことがあって, それに関する話です.

物理の勉強をするのに抽象的な線型代数が とても役に立つのでこの本を読んで 勉強しましょう, という話です.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1KKQ5EX6N3T7T/ref=cm_cr_arp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4130620010

そしてこれにとある数学系の人から 2 年前にコメントがついたので, それに対してコメントをし返したのに さらにコメントがついていたことに今気付いたので, またコメント返した, という話です.

私のメルマガを読んでいる方は 物理にも興味があることも多く, 参考になることも多いと思うので, そのコメントはともかく, 上の書評はぜひ読んでおいてください. ついでに次の togetter のまとめも役に立つはずです.

  • https://togetter.com/li/108307

せっかくなので, この書評を書いた理由も書いておきましょうか.

いまはもう消えているようですが, 物理の関係者を名乗る人が 「この本を読んでも物理の役に立たない」という しょうもない書評を書いていたのです.

全く知らない人の書評ですが, その当時, それが物理関係者として あまりに恥ずかしかったので, カウンター的にコメントしたのです.

さらにその後, 学部 4 年のときに書き換えたのが今の書評です. もう数学に行くことは決まっていて いろいろ勉強していました.

最後の汎関数積分とかいうあたりを追記しました. あと, 内容は本質的に変わらないものの, 気に入らなかったので, 全面的に書き換えた記憶があります.

で, 今回返したコメントは次の通り.

私は早稲田の物理を出ていますし, 修士では東大数理 (作用素環専攻, 特に場の量子論と量子統計への応用) を 出ているのでその立場で改めて書いておきます.

まず主張が数学サイドに偏りすぎていて, 物理の視点がほぼありません. それが本当に困ります.

あなたは数学者が書いた物理の本などではなく, 物理または工学の人間が書いた 物理の本を読んだことがあるでしょうか?

直交関数系などもちろん ヒルベルト空間論が背景にある数学は ゴリゴリ出てきますが, 関数解析を知らないと 読めないようには書いていません.

実際知らなくても読めるし, 読めて物理が理解できないと困ります. 物理の学生だった人間としての実感でもあります.

物理といっても東大数理の河東先生が 代数的場の量子論の界隈を指して 「あの人は自分は物理と言っていますが, あの内容から論文のスタイルまで見て どう考えても彼らは数学ですよ」という レベルの人もいますが, 一方で量子系とはいえ実験の人まで いろいろいます.

そして私は実験の人まで含めて考えています. その上で関数解析までやるくらいなら 物理をきっちりやる方がよほど 大事だと考えています.

あなたは何をどこまで意識して 「(数学としての) 解析学が大事」と言っているのでしょうか? いまこの話はあくまで量子力学の 物理の理解に重点があります. その上でゴリゴリの数学が必要か, という話をしています. そして私はいらないと思っています.

しかし早稲田大学の友人は 1 年生の段階で松坂和夫の本くらいの分量と 程度で集合論の超元帰納法までは必修です. 選択科目では物理学と関係が深い解析学や 位相空間論を理論的な数学として学びます. 明らかに使わないなら役に立たないなら教えません.

実験系の方が人数多いという前提で 書きますが, 早稲田の応物・物理のほとんどの学生 (中ではほとんど一体. 実際院では 1 つの専攻になっているし, 実数論・集合・位相は応物の学生までやる), 位相空間論使っていないと思いますよ.

宇宙論で一般相対論, 準リーマン幾何必要な学生でも どこまでゴリゴリの数学が必要か, 使っているかと言われるとけっこう怪しいような.

また彼が出席した学会では 非常に高度な数学が使われていたそうです.

超弦系の学会なら当然すさまじい 数学使うでしょう.

ただ, 絶対多数を占め, 工学まで含む実験系で そんな数学の話が出てくるとは思えません.

学会の話をしようというなら そこまで情報持ってきてください. 私は一部の理論系の話がしたいのではありません. 物理の話をしてほしいです.

最近は機械工学でも 力学系や微分幾何が必須の素養になりつつあるらしい https://www.jsme.or.jp/uploads/sites/6/files/kiriki7.pdf というのも見かけていますし, 一般の理工系にとって必要な数学の素養は 高くなっているようですが,

ガチガチの関数解析の知見や 超関数論がどこまで量子力学の 「物理」を理解するのに必要か, 研究するのに必要かと言われたら, どう考えてもそこまでの深度は求められていないでしょう.

あなたは物理学科の視点で 量子力学の理解について考えているのでしょうか. それがまずわかりません. 私はここで数学の人間の意見が 聞きたいのではありません.

あなたはどんなスタンスを取った上で 関数解析系の数学の重要性を説いているのでしょうか. 数理物理という話なら, 私はまさにそこが専門です. それもゴリゴリの量子力学・場の量子論の数理物理です. むしろこのスタンスで言うなら, 必要な数学が足りないから 自力で作らざるを得ないという視点で取り組んでいます.

もう 1 つ教育面からの話もあります. 私はある程度一般向けの数学や 物理のコンテンツや通信講座を作っていますが, そうした人達にも量子力学は憧れの的です.

そしてそうした人達に 「量子力学を理解するのに 関数解析が必要だから 関数解析をやりましょう」と言うか, と言われたらそうは言わないですね.

ハードルが高すぎるし, 実際にいらないでしょう. 線型代数で十分です. (これは私が求めている 線型代数のレベルもそれはそれで 相当に高いといえば高いのだろうとも 思っています.)

極限制御こみの関数解析の視点は 工学上大事だから理工系一般に対して 関数解析のハートはおさえた方がいいとは 思っていて,

そういう通信講座も作ってはいますが, 量子力学の物理の理解に必要か, と言われると, 2018 年の時点でそれはないです.

Twitter 上で研究者を含めて 物理の人とも交流していますが, その人達があなたが言うほどの 関数解析系の数学をきっちり おさめているとは思えませんし, 少なくともいまの時点で困っているとも思えません.

あと研究に関係するところからも. ミレニアム研究所のナビエ・ストークスの 解の存在と一意性のように, 数学的には大難問であったとしても, 物理や工学ではゴリゴリ使われているわけで, その中でどうやって数学科ベースの数学の学習の 意義を説くつもりなのでしょうか?

量子系の数学でも, 学部 3 年の講義で扱われるような内容が いまだに数理物理の研究最前線だったりします: これはまさに私の研究テーマでもあります.

数学科の数学ベースの議論では 学部 3 年の物理すら満足に議論できません. その上で「物理をやるのに 数学科ベースの解析学が必要」などとは 私は口が裂けても言えません.

そしてそうした人達に 「量子力学を理解するのに 関数解析が必要だから 関数解析をやりましょう」と言うか, と言われたらそうは言わないですね.

この辺, 現代数学探険隊の募集ページで 「ゴリゴリの物理学科の学生ならともかく, 物理がやってみたくて数学にも興味がある, という人ならこういう数学にも興味があるだろう」, みたいな言い方してしまっているものの,

あくまでも物理がやりたくて 数学はそんなにしたくない人向けには やはり上記コメントのように言いますね.

何をどうしたところで, 物理にとってあくまで数学は単なる道具ですし, たいていの理工系の人間にとっては 物理も単なる目的達成のための道具でしょう.

趣味で数学やりたい人ならともかく, 趣味で物理やりたい人であっても 数学はただの道具でしょう.

数学にフォーカスがない人間に対して そこに過剰に負荷を強いるのはよろしくない, というスタンスですね.

何かコメントしたいことがあれば, このメールに返信するなり, このあとにある連絡先のどれかに コメントするなり, 適当な手段でどうぞ.

2018-03-05 3/10 の数学カフェの案内/相転移プロダクション

2/25 の感想も教えて, みたいなコメントももらったのですが, それを書く時間が取れそうにありません. それでも何か記録は残しておきたいので, 次回の案内と合わせてコメントしておきます.

今回は次の 3 本立てでいきます.

  • 現代数学観光ツアーの感想への回答
  • 「manavee 解散で考えたこと」のコメントへの回答
  • 次回数学カフェ 3/10 への案内

  • 現代数学観光ツアーの感想への回答

急に難しくなると評判の第 3 回へのコメントでした. 例の 73 才の方から.

ルベーク積分は関数の極限を使って, フーリエ級数のような形で積分を定義していると解釈していいのでしょうか?

どう理解されたのかよくわかりませんが, フーリエ級数と比較している点で多分全く違うだろうとは思います.

定義がよくわからなくても, もっと言えばルベーグわからなくても困ることないと思うので, あまり気にしないでください.

バリバリの解析学勢は死ぬほど困るので, 死ぬほど気にしてください.

フーリエ変換のところはわかった気にさせてくれました.

これもどう捉えるといいのか, どうすればいいのかよくわかっていませんが, 「わかった気になる」ということにほとんど価値を置いていないので, こういう感想もらうというのは私の意図通りでなく, 講座作りに失敗しているな, と思ってしまいます.

いまさら言うまでもなく, あまり意図通りに稼働していない講座ではあるのですが.

数式を用いて説明してくれたほうがたとえ話をするよりわかりやすいと思います.

今見直したのですが, たとえ話というのは何を指しているのでしょうか? ふつうたとえ話というと数学や物理外の卑近な話, という感じだと思っていて, あまりそういう話を入れた記憶はないし, 見返した限りどれのことなのかよくわかっていません.

ただ知らない記号もあるので記号の意味を丁寧に説明してくれるとほかの参考書を読むときにたすかります

これは講座の目的の捉え方の違いですね. 「こんな記号でこんな議論を展開する世界がある」 というのを知ってもらうことが目的であって, 細かい記号の意味を説明することを目的に作っていません.

反応を見ながら作っていて, 途中から少し方向性が変わったりもしたので, 歪みは間違いなくありますし, 当初想定のバリバリの数学/物理以外の人が 大量に受講されている, という, 私にはありがたいものの, 受講された方にははた迷惑でしかない 議論の展開でただただ申し訳なくなるところです.

結論としては, 来年, ちゃんとしたミニ講座をもっと作るので, しばらく待っていてください, というところでしょうか.

今年の目標は現代数学探険隊の完結と, 中高数学の講座の運営開始, そして様々なマネタイズ方法の実践と 成果出しで, たぶんこれだけで今年が終わります. この 3 つ, どれも死ぬほど気合入れないと できないので, まずはこれを片付けます.

今年は勝負の年です.

次のネタにいきましょう.

  • 「manavee 解散で考えたこと」のコメントへの回答

下記の天才たちの物語を調べて動画で紹介して、貧乏学生を鼓舞されたし

という, 割と謎のコメントをもらいました. 下記の天才達というのは次の面々のようです.

天才アーベルや・グロタンディークの晩年・ポアンカレ予想を解き受賞を辞退した天才・戦時中の岡潔・南部先生・佐藤幹夫など、どん底での意志の凄さに頭がさがります。

これ, 私もいろいろ知ってはいますが, もちろん私が知らないことや資料もあるでしょうし, 参考資料教えてくれればいいのに, やってくれ, というならその手間を惜しむな, いいものを作るのにきちんと協力しろ, という感.

あと, 全般的にまとまりがなく, 何がメインの主張なのか全然わからなかったですね.

もっと言うと, 「どのメールに対するコメントなのかを判定するため、 該当のメールのタイトルを教えてください」 と書いているのに, 「補助金を受けたことによる事務コスト増大」とコメントされていて, いや, それ, 「manavee 解散で考えたこと」でしょ? という感じで意思疎通できなさそうな雰囲気を感じます.

何にせよ, 長文コメントだったので, ちょっとコメント返そうかと思います. 次のあたり.

無料動画で学べることは今後とも無くならないとお思います。 それは現在はYOU TUBERという、東大ほか有名大学の院生などが 動画投稿で稼ぎまくっています。また膨大な東大・京大・海外の名門大学の 講義が無償で見れるからです。

例えば実際に何年も前から MIT の講義なども公開されています. 東大数理もビデオアーカイブスといって講義を公開しています.

これらについて, 以前記事を書いたことがあるので, あなたが興味をお持ちならぜひ読んでみてください.

  • 大学によるオンライン無料講義が出たとしても大学含めしばらく「学校」の意味は失われない
  • https://phasetr.com/blog/2013/09/08/大学によるオンライン無料講義が出たとしても大/

これもう 5 年も前の記事でした. 今でも基本的な考えは変わっていません.

その記事には書いていないことを書いておきます. 一流の教官の給料が馬鹿みたいに高く, 学費も馬鹿みたいに高い MIT が講義の動画などを公開する理由です.

それは端的に言って, オンラインで配信する講義に 彼らにとって本質的な価値がないからでしょう.

発展が早い分野だとどんどんアップデートされていく 最新の知見が随時更新されつつ提供されていくのは 非常に魅力的で, その点価値は高いです.

しかし単に知識を身につけ, 勉強するだけのことに彼らはほとんど 価値を置いていないのだろうと思っています.

価値を置いていないというより, やって当たり前のことなので, このハードルも越えられないやつが 何をする気なの? という感じ.

そこまでやっている大学が, それでもリアルに人を集めるのは, 人を一箇所に押し込めて, リアルにコラボさせることこそが 大学の機能なのだと考えているはずです.

社会でもテレワークの導入などの効率化が 謳われている中, IT 関係でも世界のトップを走る アメリカの大学がわざわざ人を集めるのは, そうした「効率」を重視していては 賄えない世界があって, それこそ重視しているのだろうと考えています.

人と人のリアルのネットワークと協働が 大きな流れを生み出すのであって, 時間も空間もともにして濃密な関係を築くことこそ 重要なのだろうと.

それでもいろいろやれることはあるはずですし, 実際に私が目指しているのも このリアルのネットワークから外れた世界で 何をどうするか, ではあります.

先程の記事にもあるように, ネットで勉強できることは山程あるのに, 自律的にできない人が多いことの方こそを 問題にしています. 「できない方が悪い」と突っぱねても仕方ないし, そここそが「ビジネスチャンス」でしょうし.

これは本当に頑張らないといけないと思っていて, 今年の大きな目標です.

最後.

  • 次回数学カフェ 3/10 への案内

とりあえず応募ページをぺたり.

  • https://connpass.com/event/81376/

今回は流体と幾何という話で, 行こうと思っていたのですが, 時間管理的にそれどころではなさそうなので, 今回の参加は見送りました.

来年に向けた下準備もあるので 流体と幾何はちゃんとやりたいのですが, 来年いろいろやる余裕を作るためにも 今年は勝負なので, 切って捨てる勇気を発動させます.

で, 2/25 さんの松本さんの講演ですが, 多分私が 1 番質問をしていたと思います. 思っていたのとはかなり違いましたが, とりあえず幾何は多少なりともお絵描きできて うらやましいという印象が第一です.

解析だと不等式ゴリゴリなので, どうしたものか, というアレです. 代数の人も分野によっては厳しそうな. 暗号だとかの役に立つ系の話はあるにせよ, 身近であっても直接目に見えるわけではない応用が 死ぬほどあるので.

ちなみにこのあたりの数学応用ネタについては 次の無料講座でいろいろ紹介しているので, 興味があればどうぞ.

  • https://phasetr.com/mrjhlp1/

数学カフェについては Twitter アカウントあるので, これもチェックされるといいでしょう.

  • https://twitter.com/mathcafe_japan

あと自分の感想はともかく, 他の人の感想がいくつかあがっているので, それは紹介しておきます.

  • http://lyricalmaestrojp.hatenablog.com/entry/2018/03/04/112454
  • http://blog.goo.ne.jp/nakanaka_pierrot/e/438820b517b4fe5e5d7f516d631ca64e

松本さんがスライドを公開し, 講演の感想も書いているので, 興味があればこれも読んでみてください.

  • https://twitter.com/ymatz/status/969564546514927616
  • http://ymatz.net/journal/20180303/
  • http://ymatz.net/docs/20180225-mathcafe-slide.pdf

もう一度参加募集ページも張っておきます.

  • https://connpass.com/event/81376/

学生時代, 直接専門に関係なかったので, 幾何はほとんど勉強できておらず, 本当に基本的なことも全く身についておらず, いま急ピッチで自分の頭に 幾何の世界を形作ろうとしているところです.

道は長い.

何か今回やたら長くなった気がします.

ではまたメールします.

2018-02-27 manavee 解散で考えたこと/相転移プロダクション

以前わたしのサイトで紹介したことがある manavee (マナビーと読むらしい) という 学習サイト/サービスがたたまれていました.

サイトの manavee.com からのアクセス解析があり, どんなふうに言及されているのか, と思ったらサービスが閉じられていたという.

メルマガの読者の方の中には 教育サービスとまではいかなくても, わたしのように数学や物理の情報発信をしてみたい, 広い意味で教育サービスに興味がある, という方が何人かいらっしゃるようです.

もしあなたがそうしたことに興味があるなら, 発起人の花房孟胤さんのコメントが面白いので, ぜひ読んでみてほしいです.

  • http://manavee.com/

どこまで本当か, などはともかく, それ以外にもいくつか関連するコメントもあり, それも勉強になります.

  • manaveeとは何だったのか?~予備校なんてぶっ潰そうぜ。~ http://takurououen.com/2017/07/12/manaveee/
  • manavee(マナビー)の失敗から学ぶ https://readmaster.net/plan/service-review/manavee
  • manavee終了|MANAVIE誕生 http://genuinestudy.seesaa.net/article/441254361.html
  • 教育者によるmanavee批判TL https://togetter.com/li/504662

サービス運営という点から, 私が気になったポイントを紹介しておきます.

法人化後は、次のような難点が表面化しました。はじめに、決算書類の作成や会員とのやりとりを始めとする継続的な経理・総務コストに貴重な人的資源を宛てざるを得なくなった点。

第三の反省点は、ある財団から補助金を頂いたことに起因する、無限に続くとも思われた事務コストを発生させたことです。

本件から得られた教訓は、紐付きのお金は大変面倒になりうるということです。社会課題を解決できると見込まれる人材ならば、労働時間の1割ほどを資金稼ぎに費やすだけでも十分な報酬を得られると思います。数千万程度の資金であれば、個人でやりくりする見込みも十分に立てられるため、余計なステークホルダーを介在させないという選択肢も妥当です。

一言で言えば, 事業にともなって必然的に起きる事務作業と, 金銭面の配慮です.

私にしても確定申告があったり, メール配信に関わる事務作業がいろいろあります. コンテンツ配信のためにサーバーにファイルを置く, といったことも事務作業でしょう. こういう時間は馬鹿になりません.

コンテンツを作ってサービス展開し, それらだけ考えていればいいわけではなく, いわば守りの部分, 価値や利益は生まなくても やらなければならないことがあります.

こればかりはやってみないとわからないことです.

あと資金面. manavee じたいは究極的なところでは 資金繰りに問題があったわけではないようですが, サービスを続けようという場合は いつだって資金的な問題が出てきます.

ボランティアというところも大きいですね. 以前から震災のボランティアに関する有名な話として, 次のような話があります.

18:00 ごろになると必ず引き上げてしまう ボランティアの人達がいて, 「他の人達は残ってがんばってやっているのに」, と陰口を叩かれていたが, かたくなにそれを守っていた. しかし, 他の人達がボランティアの支援をやめていく中, 最後まで継続的に支援を続けたのは 18:00 頃になると帰っていく人達だけだった.

ボランティアはしょせんボランティアであって, 余裕がなくなったら自発的に続けられないのであり, 引き上げざるをえません.

そしてもちろん, それが悪いわけでは全くなく, 余裕があってはじめてできることで, 無理のないようにやっているからこそ続けられる, という当然の話です.

これは全てにおいてそうです. 生活が 1 番なわけで, 余裕がないなら生活に集中せざるを得ません.

あなたは単に数学や物理を勉強したいだけだと 思っているかもしれません. しかし仕事や家事で手一杯だったら, 数学どころではありません.

何か新しいことをやるには, 必ずそれに見合った余裕が必要です.

最初の話と絡めるなら, 事務作業がその余裕を奪っていくわけで, それは manavee のサイトにも書いてあったことです.

私の活動に関してもコメントするなら, 一時期は完全に無料, つまりボランティアベースでいろいろやっていました.

Amazon での DVD 販売にしても, 有料での販売というより, ニコニコ動画や Youtube や Twitter ではなく, Amazon というメディアで展開している, というくらいのつもりでした.

ただ, こういうのは強制力がありません. それは受け手側はもちろん, 作り手側にとってもそうです.

いくつかのプロジェクトは 余裕がなくなったとき, 結果的に真っ先に切られていきました.

余裕がないと駄目だ, というのはこのときに本当に痛感しました.

あともう 1 つ, 先日博士を取った知人達と話したときにも 話題になったこととして, 「有料でやることの意義」があります.

それは作り手側から見た コンテンツやサービスの質の担保はもちろんですが, 受け手側の気持ちもあります. それは「お金を払ったのだからちゃんとやろう」 という意識です.

以前, Twitter で Springer 祭りというのがありました. Springer という世界的な専門書を扱う書店が, 書籍の PDF を無料で提供, というのをやっていたのです.

で, これでいくつか本を ダウンロードした人たちがいました. しかしその本を読んだか, といったら読まないのです.

自腹を切ったわけではないから痛くないので, 読もうという気がしないわけですね.

ついでにいうともう 1 つ, ボランティアと余裕と絡めていうと, お金を出したとしても 強制力がないと続けられないということです.

小中高, そして大学の力の 1 つは, 試験をはじめとして, 勉強をやらせる強制力がそれなりにあることです. 生徒/学生どうしのある種の同調圧力も 使いながら勉強するような強制力があるわけですね.

私がやっているような通信講座には 圧力・強制力はつけようがありません.

しかし勉強しやすくする配慮は必要で, それはなるべくコンテンツを小分けにして 渡す, というところです.

一部の講座ではまだ全然徹底できていませんが, 継続性を上げるために, 1 つ 1 つを小さくして, 小さな成功を積んでいけるようにする, というのも大事です.

もちろん私も含めて, 人間の心や意志なんて脆いことこの上ないので, 配慮の上に配慮を重ねなければ 長続きするようなことはできません.

manavee もトータルで見れば 継続性に難あり, という問題を抱えていたわけで, 事業の継続性は決定的に大事です.

続かなければそこに込められた 思いも途切れてしまうので.

あなたが単に数学や物理の勉強をしたい, というだけであっても manavee に書かれていたことは大事です.

この講座にはお年を召した方もいらっしゃいます. そうなると金銭面の問題から大学どころか 高校進学を諦めて中卒で社会に出た方もいらっしゃるかもしれません. もしかしたらあなたもそうかもしれません.

私の母も大学に行きたかったそうですが, 高卒で働き出していますし, 私の父は中卒です. 私自身も博士に行きたかったものの, 金銭面の問題から修士で社会に出ています.

金銭面の心配, 事務作業に代表される「よけいな作業」に わずらわされること, 「事業」の継続性などは誰が何をやるにしても立ち塞がる壁です.

私にしても, ふだんの会社員の仕事がなければ もっといろいろコンテンツ作れるし, サービスも立ち上げられるのに, と日々思っています.

有料サービス展開に向けて本格的に舵を 切りはじめたのはいい加減, こうした事情に本格的にメスを入れようと思ったからです.

あなたもぜひ自分なりに何か参考にしてみてください.

ではまたメールします.

Manavee サイトの記録の転載

manavee.comは、2017年3月31日を以って、サービスの運営を終了いたしました。 【利用者の皆様へ】

利用者の皆様には、ご不便をおかけして申し訳ありません。

授業動画は、Youtube上で引き続き掲載しており、利用できるものもございます。

しかし、授業動画を引き続き掲載するかどうかは、それぞれの先生の判断に委ねられておりますので、利用ができなくなる場合もございます。

どうぞご容赦ください。

NPO法人manavee代表理事 花房孟胤

【支援していただいた皆様へ】

本サービスについては、個人寄付、法人寄付をはじめとして、様々な形で応援していただきました。それは、本サービスの継続的な発展が期待されていたからであったと考えております。この度、manavee.comの運営を終了することで、そうした未来への可能性が閉ざされることになります。皆様の期待に応えられず、申し訳ありません。

【参加された先生の方々へ】

本サービスの運営は、先生として参加していただいた大変多くの方々の協力で成立しておりました。第一に、manaveeの活動に参加していただいてありがとうございました。第二に、本事業を通じて掲げていた目標を達成することができずに申し訳ありません。

授業動画の撮影は骨の折れる作業ですが、膨大な活動の積み重ねによって1万を超える授業をインターネットに公開することになりました。

活動の初期には、顔を出して授業を公開するということは一般的でなく、心理的な抵抗の強いことでありました。実際、アップロードした動画は、批判を受けたり、好ましくない自体を引き起こしたこともございました。こうしたリスクを一緒に背負って活動し、また実際に発生した多くの問題に対応していただき、ありがとうございました。

同時に、こうした先生方の膨大な労力の結集を、十分に活かしきれなかったことについて、情けなく思っております。すでにmanaveeという活動を終了する以上、manaveeの活動の枠内ではこの点について満足のいく責任のとり方ができません。重ねて申し訳ありません。

本活動とサービスは、先生方の想像もできないほどの膨大な労力なしには、利用価値のあるものにはなりませんでした。感謝の念に堪えません。

【経緯】

創業・運営・終了した者の責任として、これまでの経緯を整理した上で、反省点を以下に述べます。

<理解の前提>

manaveeは、社会的企業でした。社会的企業とは、利益の最大化を第一の目的とする代わりに、社会課題の解決、緩和を目的とする団体です。

社会課題として、例えば自然破壊など環境に関する課題、介護など医療に関する課題などいくつかに分類されています。そして我々は、教育に関する課題を取り扱う団体でした。より具体的には、「日本の大学受験における地理的・経済的格差」(2012年 - 2013年5月)、「日本の受験における地理的・経済的格差」(2013年6月 - 2014年5月)、「日本の教育における機会格差」(2014年5月以降)を解決する課題と定めて活動してきました。

<社会的企業の失敗>

社会的企業が失敗するのは、第一には課題が消滅すること、第二には、課題に対する解決策が有効でなくなることが挙げられます。第二の場合には、同じ課題に対して別の解決方針に変更することで、社会的企業として意義のある活動を継続することが可能です(ピボット)。manaveeは、第二の場合が当てはまり、課題を効果的に解決することができませんでした。また、ピボットについても失敗しました。

<解決の失敗>

manaveeの失敗について説明するとき、時間的な変化を考える必要があります。

2012年4月から2014年5月までの間は、キャンパス制度の失敗でした。「キャンパス」という大学生サークルを主にした団体を組織すること(キャンパス制度)で、授業動画の制作を試みました。この活動は、2013年の活動をピークにして限界を迎え、諸々の試行錯誤にもかかわらず、一定の規模以上に拡大したり、安定的に継続することができませんでした。

2014年5月、キャンパス制度の継続的な運営はできないと判断し、別の解決策を模索するため、事業部を立ち上げました。先に言うピボットを試みるためです。事業部では、manaveeに所属するメンバーの内的な動機をもとにプロジェクトチームを結成し、事業化を支援する形式をとりました。結果的には、大半のプロジェクトが途中で頓挫し、キャンパス制度とmanavee.comによる授業の制作、配信に代わる仕組みをつくることができませんでした。

2015年10月、団体として事業を立ち上げる能力、体力がないと判断し、事業部制度は失敗しました。manaveeはこの時点で、当初の解決策に次いで、新しい解決策を模索するピボットについても失敗しました。2015年10月から2016年6月まで、代替の解決方針を模索しましたが、manaveeの枠内で活動を継続する合理性がないと判断したため、manaveeという活動全体を失敗したと判断しました。

【反省点】

失敗した地点から本プロジェクトを振り返ることで、反省点を挙げて検討します。

第一の反省点は、活動開始当初に想定した法律関係にあります。具体的には、動画コンテンツの著作権が講義作成者の先生にあるという点です。manaveeは、Youtubeと同プラットフォーム上にて定められた方法でのみ使用するというように権利を限定する形で、先生方との法律関係を結びました。この背景には、当時大学生であった私のナイーブな良心があります。ボランティアで依頼するにもかかわらず、その上動画の著作権までmanaveeに所属するというのは公平でないと考えたため、上記のように自ら権利を制限する旨を明文化した経緯があります。

結果的には、その法律関係が原因となって、その後の発展の妨げとなりました。協業を持ちかけていただいた企業との連携が進まなかったり、動画コンテンツの新たな利用方法を試行錯誤すべき段階でも、先生方の逐次の承諾が原則となり、実務的に対応できなくなりました。さらには、manaveeの運営終了に際しても、いくつもの譲渡の相談があったにもかかわらず断念せざるを得ませんでした。動画コンテンツを有効に使うという点ではむしろ、著作権を一括してマナビー側に帰属させるべきでした。

第二の反省点は、manaveeにNPO法人格を与えたことです。manaveeの法人化の動きが始まったのは2013年です。当時、組織の拡大と知名度の向上にともなって、「ちゃんとした」組織になることが組織内では義務感のように感じられていました。その結果、「一般社団法人かNPO法人か」という二者択一のもと、NPO法人になるための手続を開始しました。判断に際しては、認定NPOになった際に寄付金が経費扱いになるという点がメリットとしてあげられていました。

法人化後は、次のような難点が表面化しました。はじめに、決算書類の作成や会員とのやりとりを始めとする継続的な経理・総務コストに貴重な人的資源を宛てざるを得なくなった点。次に、NPOの理念を後ろ盾にした保守的な意見が通りやすくなり、社内全体が保守化した点。第一の点は、NPO運営のみならず小規模法人の運営では一般的な課題であるため割愛します。

保守化の問題については、予見できずに悔やまれる点です。社会課題の解決というのは、元来、困難を伴うため、柔軟な発想と試行錯誤の繰り返しが必要になります。しかし、NPO法の立法趣旨がそもそも「市民活動の発展」にあるように、NPOにおける意思決定は多数決原理が原則です。実際、NPO法人化の後は、常識的で妥当な結論が支持され、一見して非常識な提案や奇抜な論理が受け入れづらくなる傾向が生まれました。実務的にも、1つ1つの意思決定を総会で後追いしたり、実現可能性の低いリスクの対応について時間を使う(いわゆるゼロリスク症候群)など、NPO法人を取得する果実がほとんどないままにコストと制約だけが増加する結果となりました。

結論としては、リーダーが責任と裁量を引き受けて一貫した意思決定をすることを目指していた我々の団体には、NPO法人は適しておりませんでした。

第三の反省点は、ある財団から補助金を頂いたことに起因する、無限に続くとも思われた事務コストを発生させたことです。

2013年末に同財団に申請したことがきっかけとなり、100万程度の補助金をいただきました。もともと、プロジェクトの採用担当者がmanaveeについて認知があり、アドバイスを受けて実際の利用用途とは異なる事業内容を申請したことが原因となり、監査の段階で問題が表面化しました。

同財団が申請時の書面通りの厳格な成果物を要求する一方、実際のプロジェクトは人員が変更になったり、プロジェクト内容の変更があったため、齟齬が生まれました。さらに、manavee内では継続的にバックオフィス業務に従事する人員がおらず、エビデンス作成にも多大な労力を要しました。

本件から得られた教訓は、紐付きのお金は大変面倒になりうるということです。社会課題を解決できると見込まれる人材ならば、労働時間の1割ほどを資金稼ぎに費やすだけでも十分な報酬を得られると思います。数千万程度の資金であれば、個人でやりくりする見込みも十分に立てられるため、余計なステークホルダーを介在させないという選択肢も妥当です。

100万という金額でも補助金を申請した背景には、マナビーの創業当時からビジネスモデルの脆弱さを指摘されていた危機感がありました。NPO法人格取得後には、創業者個人の持ち出しの状態を寄付と補助金によって解決するという道筋が想定されており、そこに向かってのアクションでした。

第二、第三の反省点には、主観的には共通した問題を見いだせます。すなわち、代表者として自分自身が正しいと考える解よりも、社会的な正しさを優先したことへの後悔です。私自身は、法人格の必要性や目指すべきビジネスモデルについて判断しきれていませんでした。自分で判断できなかったため、その場ではなんとなく正しいと思われた解をとりあえず選択してしまいました。このことが重大な悪影響を呼び込みました。

不透明な試行において道しるべとなるのは、結局のところ意思決定の一貫性であって、リーダーとしては常に自分が確信できる判断を貫くべきでした。社会的な正しさを窺って日和見をすることとは反対の考え方です。その観点から言って、とりあえず真っ当な組織を取り繕うためにNPO法人格の取得に手を出したことや、ビジネスモデルがないことを理由に組織の永続性を疑われた回答として補助金に申請しはじめたことは、間違いだったと言えます。

こうした日和見を許したのは、代表者として私自身の勉強不足と経験不足です。

法人格の問題であれば、民法を手にとって法人についての整理された考え方を学んだ上で判断すべきでした。資金の不安については、社会で自分の能力を換金する経験を積むことで、自分が使える金額感を育てておくべきでした。

社会課題は、その重要性にもかかわらず、現行の公的な制度や経済合理性の観点から見合わないために残されてきた課題であって、万人が納得する常識的なアプローチを積み重ねても、成功は見込めません。この度、manavee.comのサービスの停止だけでなく、manaveeの法人まで解散させる理由は、このようにもはや団体を自由な試行錯誤ができない環境にしてしまったためです。

【ご連絡】

必要がございましたら、以下のメールアドレスにまでご連絡ください。

communication.manavee@gmail.com

【注意】manavee.comについて、譲渡の相談を受けることがたびたびございますが、ソースコードについては特段の価値のあるものでなく譲渡する合理性が見いだせないこと、また動画コンテンツについては権利的な問題でmanaveeの判断で利用を許諾できないことなどを理由に、基本的にお断りすることになります。

2018-02-25 数学カフェに行ってきます/相転移プロダクション

明日というか今日 2/25, 数学カフェがあるので行ってきます. それについては最後に紹介します.

最初に何を書くかというと, おそらく同じ方からいくつか一斉に アンケート回答があったので, それをピックアップして答えておきます.

何とすさまじいことに 73 歳の方でした. アンケートで 60 オーバーの方がいることは 把握しているのですが, たぶん 3 人目くらいの 70 代の方です.

まず現代数学観光ツアー第 0 回アンケートから.

関数とは何だろうという本で関数解析とは複素解析で複素数を扱わない段階では関数解析とは言わないことと複素数を扱うのが本当の解析でそれで数学のいろいろな分野がいっぺんに見通しがよくなると読みました. とても楽しみです.

この本でしょうか.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/B00ZR7XQ0M

そしてこの本の著者, この人でしょうか.

  • 関西学院大のページ
  • http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/ja/modules/people1/index.php?id=2#HideshiYamane

教員紹介分を抜いてきましょう.

これまで研究して来たのは偏微分方程式論と複素解析の境界領域です。(1)複素解析を使って双曲型偏微分方程式の解の特異性について調べる(2)正則関数を係数とする複素領域の線型偏微分方程式の解がどこまで解析接続できるかを調べる(3)複素数の位相をもつ指数関数を用いて調和関数を積分表示する(4)数理物理に現れるパンルヴェ解析を参考にして、非線型偏微分方程式の特異解を構成する――というテーマを主に手がけて来ました。応用数理 (逆問題) に関する研究も多少はしています。 著書は『明解複素解析』『高校生のための逆引き微分積分』『関数とはなんだろう』『実例で学ぶ微積分知恵袋』の4冊があります。

複素数を扱うのが本当の解析というの, この人のただのポジショントークという感じがしますね.

物理や諸工学など, 実に限定しないと意味がない世界, 実係数での偏微分方程式論も正しく数学で, それも「本当の解析学」です.

私もバリバリの複素係数の関数解析ユーザですし, そういうスタンスの著者がいてもちろん 構いませんが, まあ人によるよね, という感じ.

そもそも人によっては $p$-進解析の人もいますし, こっちは「数学の王道」数論で出てくるので, こっちの方が多様な世界が 交錯する数学という感じもします.

  • 現代数学や物理を勉強するときにこんなのがあったらいいのにな, というのがあれば教えてください: 記事 URL http://language-and-engineering.hatenablog.jp/entry/20140620/PDFLectureNotesOnUniversity

今後の学習案内として, 参考文献一覧は最後に紹介しています.

で, この手の文献の一覧の難しさを少し. まず真っ先に挙がるのは, 上の文献を読み進める難しさです.

一貫したスタンスで書かれたわけではなく, いろいろな著者がいろいろな理由で 書いた文献なので, 「これらを順番に読んでいけば無理なく 自然に数学を理解していける」 という形になっていないことです.

私は多くの人が独学で数学を勉強するのが大変な理由がここにあると思っています. そしていくつかの通信講座群でこれらの問題を解決するための手法を提案しているつもりです.

この講座は解析学の大きな姿を見せるのが目的で, 順序よく勉強するという方向はまたちょっと違うのですが.

ただ上のいろいろな文献をつまみぐいにも利点があります. それは著者のスタンスが色濃く出ることです. 教科書だと網羅性を意識するので, 端々に著者の個性が滲み出ることがあっても, 初学者がそれを認識するのが大変です.

よく Amazon レビューで数学をよく知る人が その本のいいところを紹介してくれています. しかし, 自分で読むときに実際にそういう 読み方ができるかというとなかなか難しいわけで.

独学の難しさはこうしたギャップを どう乗り越えていくかにあると思っています. モチベーションを上げるための 面白いトピックに触れ続けること, その一方で基礎的なことを 着実に積み上げること,

この 2 点をバランスよくこなすための サポートをするのがこの講座の目的です.

この講座単独だといろいろと微妙なので, 他の本や雑誌, 私の他の講座もいろいろ見てみて, 肌に合うものを探してください.

ここからは現代数学観光ツアー 第 1 回に関するアンケート回答.

  • 面積と集合の関係がよくわからなかった. 面積を定義するのに連続無限でなく加算無限を使わなければいけないということを理解すればいいのかと思ったが

可算無限・非可算無限という言葉そのものが 集合論の言葉だ, というところです. 面積についてきちんと考えようと思うと, 必然的に集合論の言葉が必要になるという話です.

  • もっとこうしてほしい, といった要望があれば教えてください: 先に集合論を説明してくれたほうが理解しやすかった.

集合論が必要になるモチベーションを先に語る, という構成で書いているので, この構成じたいは変えるつもりはありません.

講座に関して全体的に書き方にもっと工夫は必要で, それは何度も突っ込みを受けています.

これを書き直すというよりも 新しいのをどんどん作るつもりで考えています. 2018-02 時点でメインの通信講座があと半年から 1 年くらいで 終わるので, それが終わったら本腰を入れたいと思っています.

がんばらなければ.

次は中高数学駆け込み寺の第 3 回から.

$\alpha$ と $\beta$ が具体的に何を意味しているのかよくわかりません.

大雑把に言えば $\alpha$ は増加率, $\beta$ は減少率です.

とりあえず Wikipedia を引用しておきます.

  • https://ja.wikipedia.org/wiki/ロジスティック方程式

この講座はロジスクティス方程式の細かい話をすることは意図していないというか, そもそも私にその能力がないのであまり深いところには突っ込めません.

この講座, いろいろなところで使われている微分方程式という道具を紹介し, それに必要な数学が何か, そしてそれがどんなところでどう使われているかを見ることが目的なので, 現象の説明に深入りすることが目的ではありません.

それに興味があれば, それぞれ個別に専門書があるので, それを見てほしい, そういう気持ちですし, それをやりたければきちんと数学をやるしかなく, そのための勉強のサポートをしようというところが目的なので.

いま, Twitter でちょっとだけ話題になった 物理数学 2.0 のネタを考えるために 幾何の再勉強中です.

まあどれだけ幾何わかってなかったの, という感じで疑問が死ぬほど出てきて 本当に困っています.

それもあって明日というか今日, 次の数学カフェに参加してきます.

  • https://connpass.com/event/79382/

この講師の松本佳彦さん, Twitter で軽くやりとりしたこともあり, 1-2 回お会いしたこともあります. とても穏やかな人です.

いま見たら 5 名ほど空きがあったので, このメルマガでも案内しておけばよかった, と今さらながら思っています.

毎月やっているらしいので, 東京近郊の方は次回参加してみてはどうでしょうか? ちなみに毎回, この勉強回のための予習もやっているようで, そういうのに参加するのもいいと思います.

東京は本当にいい環境ですね. そしてこの環境が使えない人達のために, オンラインの環境を充実させなければならない, と決意を新たにしています.

あとちょっと思ったのですが, 私に会ってみたい, という方いらっしゃいますか?

数年前は早稲田とか慶應とか東大の 学生相手のセミナーとかよくやっていたのですが, 仕事なりコンテンツ作成で忙しくて全くやっていません.

要望があるならやってみてもいいかと思っています.

ちなみに前にやっていた講演やイベント一覧です.

  • https://phasetr.com/blog/2015/08/06/講演・イベント/

DVD の元ネタにした京大遠征も もう 5 年前ですね.

ではまたメールします.

2018-02-15 「ラマヌジャンの級数を調べたい」/相転移プロダクション

件名のような質問を頂いて, それに対して回答するのに 1 時間くらいメール書いていて, せっかくなので共有しておきます.

その内容は最後に書いておくことにして, その他の連絡をしておきます.

この間, Twitterで次のようなツイートを見かけました.

  • https://twitter.com/adastraperardva/status/960858534387712001

引用 物理はそろそろ特殊関数は縮小して、 物理数学2.0として多様体とか 微分幾何や代数の基礎や位相や測度の初歩を教えるべきだと思う

実は最近, 集中して取り組んでいる有料講座の 現代数学探険隊も関数解析の終盤に 差しかかってきて, 講座の当面の終着点に近づきつつあります.

構成を考えながら論理的に隙なく順序よく コンテンツを作るだけでも厳しいのに, 単純に書くのに時間と労力もかかり, 内容的な難しさも上がっているので かなり大変な状況になっています.

中高数学も塩梅がわからなくて 苦労しています.

そのへんの現実逃避も兼ねて, 仮題物理数学 2.0 として, 本当にふつうに物理をやるための数学の 準備的な感じでイントロを作ってみました.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/2018-02-15-225754.tmp.pdf

1 週間くらいまえに作った内容で, いまの時点で既に幾何方面への勉強と 練り込みが全然足りていないですし, 今の時点で既に講座の流れに不満もあります.

ただ, これはこれで参考になる人も いるだろうと思うので, 放流しておきます.

はやく物理もやりたい, と思いつつ, その前段階の数学で死ぬほど 時間を取られているのが現状です.

ちょっと書くつもりが大分長くなりました. 以下, 頂いた質問への回答です.

以下, 返信内容

なかなか難しい質問です. 最初, ちょっと悲しい感じの話をせざるを得ないのですが, 本などは後で紹介するので, 適当に流し読みしてください.

何が難しいかというと, 「調べる」というのが何をどこまで意図しているかによるからです. 下手なものを調べると現代数学の最奥にまで 突撃するので, 私の手にも負えません.

よりにもよってラマヌジャンとなると, フェルマーの最終定理並に「何が問題かはわかっても ちょっと詳しく調べようと思うと途端に破滅的に 難しくて手に負えない」タイプの話もあります.

級数, とにかく何かを無限個足しているだけなので, 上辺を知るだけなら簡単ですが, 解決が尋常ではないほど厳しいことが多いです.

まず単純に, 高校くらいの論理的厳密性で議論するなら, 数列のあとにすぐ級数の理論にいけばいいので, 適当に高校の数学の本を読んでもらえばいいでしょう.

どんな級数を想定しているかわからない (ラマヌジャンはよくわからない異常なことをたくさんしている) ので何とも言えませんが, ラマヌジャンがやったことからすると 高校レベルで調べられる級数には当然限界があります.

  • https://ja.wikipedia.org/wiki/ラマヌジャン・ピーターソン予想

厳しいことで有名なラマヌジャンの仕事の 1 つです. これは数学界のノーベル賞と言われる フィールズ賞に関わる話で, おそらく taguchi さんの想像を遥かに越えるレベルで 尋常ではないレベルの数学が必要になります.

次のような話もあります.

  • https://cluster.tokushima-u.ac.jp/cluster-list/cluster-list-all/92.html

数学に限らず魅力的なものは 破滅的に難しいことも多いので, 中高高校程度の勉強をいくら一所懸命やったところで, それらを理解するのにはほとんど何の役にも立ちません.

中高の数学それ自身に楽しみを見出せるなら別ですが, ラマヌジャンの仕事を知りたい, 調べてみたいというのなら中高の数学は頭に来るほど無価値です.

雰囲気を知って楽しみたいというならともかく, 調べてみたいというなら, 本腰を入れて数学をやる以外の方法はありません.

何も知らなくても見ていて楽しい プロスポーツなどと決定的に違う, 本当に嫌な話です.

何か素人めに見て楽しむ方法や, 軽く遊べる道があればいいのですが, なかなかそういうのが見つかっていないのが実情です.

級数の理論はいわゆる解析学なのですが, ラマヌジャンとなると整数論の香りづけも必要です. 私の知る限りでは 1 番論理的に寄り道なく その筋の数論と級数という話に辿りつけそうなのは 私が知る範囲では次の本です. (読んだことはありません.)

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/462106536X/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=462106536X&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=10b5be421a4ef94151b0cb27fae003bf

おそらく論理的には最短経路で 数論と級数の理論に辿りつけるでしょう. ゼータをはじめ, 数論的な級数もいろいろあるので, いくつかは何となく触れるようになるだろうとは思います. これを直接読みこなせるのなら.

純粋に数論と級数論というなら, まず通るべきはここまでに紹介した 2 つの道のどちらかでしょう. 中高の数学をあてもなく満遍なくやっていたところで 数論と級数論への理解が深まるわけではないので, 具体的に何をするかはちょっと考えないといけません.

広く解析学への知見を広める, という意味では私が作った次の 2 講座をいちおうお勧めしておきます.

  • https://phasetr.com/mrlp1/
  • https://phasetr.com/mtlp1/

前者は中高レベルの数学がどこでどんなところに使われているか, という観点から微分方程式を議論しています.

後者はガチガチの大学数学です. 最初の方で級数の理論を扱っているといえば 扱っています.

いちおう私が作っている通信講座の一覧も張っておきます.

  • https://phasetr.com/blog/2014/06/09/トップ固定記事:メルマガ・数学カフェ・その他/

数学に限りませんが, 理工系のネタを探すとき, 日本語文献に限定しない方がいいです. 英語に限ってもいいので海外の本まで視野に入れるべきです. 量とバリエーション, そして一般向けの本ということでいうなら, 質も高いものに出会える可能性があがります. 何のために学校で英語をやっているのか, という話でもあるので.

その他, 日本語でラマヌジャン周辺の数論に関して ある程度一般向けの本まで含めていえば, 黒川信重先生の本もいくつかあります.

  • https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=カタカナ&url=search-alias=stripbooks&field-keywords=黒川信重&rh=n:465392,k:黒川信重

級数はともかく, 数論に関してはいろいろな一般向けの本もあるので, そういうのを読んでみるのもいいかもしれません.

有名なサイモン・シンの『フェルマーの最終定理』も 保型形式という適当な条件下で級数にもなる 数論的対象にまつわる人間ドラマを描いているので, まだ読んでいなければぜひ読んでみてください. これは文句なく面白いです.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102159711/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102159711&linkCode=as2&tag=phasetr-22

ろくな答えが返せず申し訳ないのですが, 現状, 人類がアマチュア的に数学を楽しむ方法が あまり知られておらず, 数論関係の級数を調べる, というふうにネタを限定しまうと特に厳しくなります.

ラマヌジャン関係の数論と級数というところからは大きく離れますが, 最近, 大人向け中高数学の復習をする有料の通信講座の準備中で, そのモニター募集中です.

  • https://m.phasetr.com/p/r/DoXk594g

かなり遠回りになるでしょうが, ご興味あればどうぞ. 今年中には書き溜めた分をある程度修正し, 実際に講座をはじめようと思っています.

ではまたメールします.

2017-02-05 モース理論をやろう/相転移プロダクション

久し振りのメルマガになってしまいました.

お金を頂いて通信講座を作っているわけで, 講座と直接関係のないことであっても 毎日いろいろ勉強しています.

現代数学探険隊の募集ページでは 幾何との接続についてもいろいろ 書いているので, 特に幾何はちょこちょこ勉強しています.

  • https://phasetr.com/mtex1/

で, 最近, ようやくモース理論を少し勉強したのですが, やはり面白そうだ, という感じでちょっと テンションが上がっています.

そのテンションのまま メールを書いています.

幾何の素人からして, モース理論と言えばミルナーなわけです.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/0691080089/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0691080089&linkCode=as2&tag=phasetr-22

ただ, ウィッテンの仕事でモース理論も 装いを新たにしたところがあったわけで, それを承けた展開はどうなっているのだろう, と思うわけです.

Twitter で適当に呟いたところ, 幾何の人から次の本を教えてもらいました.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/3034896883/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=3034896883&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=1a69b47e4cfa2b6153f692bac956cc77

並行してこれ以外にもイントロ系の PDF を眺めていて, 何となく雰囲気は掴めてきたので, この本をまず 1 周させようと思っているところです.

これ, ゴリゴリの解析という趣があり, 解析の人が幾何に近づくには かなりいいのではないかと思っていて, それで今回紹介しようとメールを書いているところです.

これに関して情報探索中, 中高数学の講座向けの コンテンツも見つけたので, それを自分なりにアレンジした コンテンツを中高数学講座のモニターにも 流してあります.

モニターはまだ募集中なので, 興味があればぜひ登録してコメントください.

  • https://m.phasetr.com/p/r/DoXk594g

本題のゴリゴリの話に戻します.

一応書いておくと, ゴリゴリの解析というのは, 本当に数学科の解析学という意味でゴリゴリで, ソボレフ空間とか出てきます.

現代数学探険隊では ルベーグ積分パートでソボレフ空間を 扱っていますし, 偏微分方程式を議論するところでも 基礎は議論することになりつつあるので, 講座の続きで幾何を勉強したいという方に ちょうどよさそう, と思っています.

そもそもモース理論をほとんど知らないから, 関係を語れないから, と思っていま必死で勉強をはじめたところです.

ちなみにあなたがソボレフみたいな ゴリゴリの解析を知らなくても, ミルナーのモース理論は読めるはずです.

こっちの少なくとも最初の方は 学部教養レベルの数学しか使っていない (はず) なので.

n 次元空間に埋め込まれた多様体, とくにトーラスをイメージして 議論を進めていて, ミルナーの本は初学者で 取り組みやすい本です.

幾何と解析の交点という意味で, ちょうどいい感じでおすすめできますね.

何か今日はメールの内容が あっちこっちに飛んでいますね. まあいいか.

ウィッテンからの流れに関して ごく簡単に説明しておきましょう.

ウィッテンからの流れは 論文にもある通り, 超対称的量子論を使った議論が背景にあります.

モース関数を指数関数の肩に載せた 関数を外微分作用素に引っかけて 新たに外微分作用素を作ります.

そしてこの外微分作用素に関する (ド・ラーム) 複体を作って, ホッジ理論をやる, というのが大雑把な流れです.

ホッジ理論は楕円型作用素の ラプラシアンの解析なわけで, ゴリゴリの解析です. これは楽しそうなわけですよ.

モース理論自体, ポアンカレ双対性を高さ関数の 時間逆回転として理解するなど, 幾何的示唆に溢れた理論で, これ自体楽しい理論 (ということを今さら知った) なので, せっかくだしあなたもやりましょう.

そうは言っても読み切れるかもわからない 本を買うのはちょっと, とあなたは思っているかもしれません.

割と気楽にさらりと全体像を掴める PDF がネットに落ちています. 私もこれで大雑把なところを掴みました. ぜひこの辺を眺めてみてください.

  • https://math.berkeley.edu/~alanw/240papers03/chen.pdf
  • http://people.maths.ox.ac.uk/ritter/morse/ritter-book-introduction.pdf
  • http://math.bme.hu/~gabor/morse.pdf

ではまたメールします.

2017-12-31 中高数学の通信講座作ります/相転移プロダクション

時間ぎりぎりで 2018 年に 食い込んでしまうかもしれません.

今年は仕事はプロジェクトで炎上し, プライベートは現代数学探険隊で手一杯で, あまり何もできなかったという感覚があります.

かといって現代数学探険隊で 経験を積んできたわけで, 残ったものもきちんとあります.

今年やり残したことが そのまま来年の目標です. 具体的にはやろうやろうと言って 全くできていなかった,

中高数学向けの 有料の通信講座を本格的に展開します.

どうして有料にこだわるかは あとできちんと説明するとして, まずは現代数学探険隊の反省に立ち, 最初は無料のモニターを募集して 小さくはじめます.

ぜひ次のフォームから 登録しておいてください.

  • https://m.phasetr.com/p/r/DoXk594g

不定期になると思いますが, どんなに長くとも 1 週間に 一度はコンテンツを流していきます.

さて, 今年の反省と それを受けた来年の目標を 宣言しようと思います.

正確には今年というか去年からの 内容ですが, 2 年かけて次くらいのことをやってきました.

  • 作った無料ミニ講座の登録者数: 2 つ合わせて 1026.
  • 有料の通信講座の登録者数: 現在 15 名, 退会者含めるとここまでの参加者 25 名.
  • 作ったコンテンツ
    • 有料の通信講座: A5 で 1995 ページ分.
    • 無料のミニ講座: 作りかけ含めて 7 本, A5 で 722 ページ分.
    • Kindle: 4 冊 (ミニ講座のマルチユースで作成).

他にもメルマガ書いたり, チャットワークで試験的に コミュニティの運営をはじめたり, こまごまとしたことは他にもあります.

この 2 年で私が一番 進んだと思っていること, そして価値があったと思っていることは,

有料サービスを本格的に 展開しはじめられたこと, そして 1 年半近くで 15 名と なかなか寂しい状況ではあるものの, ゴリゴリの現代数学の通信講座という 極北の市場でも需要はあると具体的に示したことです.

これをはじめたおかげで, 逆に他の活動に回す時間も限られてきたので それは良し悪しですが, 強制的にコンテンツと実績を積み増せるという意味では 非常に強力な環境ができました. どマニアックな方向に関して, 確実に 1 つ, 人にも言える成果が出せたと思っています.

数学でやれるのだから, 他の人がいくらマイナーな分野でやっていても, これ以上の数字は必ず出せる基準が作れたはずだと.

私があえて有料の講座も作った理由は, 他の専門家にも同じようなことを やってほしいからです. 何より私が参加したいからです.

そのためには屍の山を 積み上げなければならず, それをやろうと決意しました.

もう 1 つは, 現代数学探険隊をはじめて思ったことで, お金が絡むと責任が発生するということです.

お金をもらっているから, さぼるわけにもいかないし, やめるわけにもいかないのです.

当たり前ですが, これは強制力がはたらきます. これのおかげであれだけの コンテンツを作れたわけで.

もちろん広告を打ってみたり, 他の実験や活動資金にもなりますし, お金があってはじめてできることも あるので, お金の重要性を 改めて感じています.

多分実験系の方だと, 試薬買ったり装置買ったりで, 嫌でもそういうシビアさが 身についているのだろうとは 思いますし,

金銭面の理由で博士進学を 断念したのだから, 私自身わかっていたであろうに, まだまだ何も見えていないのか, と反省しきりです.

逆にできなかったことは, 今までの殻を破り切れなかったことです. どうしてもマニアックな方, マニアックな方に行ってしまいます.

ターゲットを広げる方向が弱く, 当初の目標であった, 実際にもっと広い層に届けるという部分が 甘かったのが反省点です.

そして来年の目標はまさにここです. 今度こそ本格的に中高数学くらいの 広い層を狙った有料通信講座を立ち上げ, それだけでも食べられる程度に収益化することです.

あえて人数出しましたが, どマニアックな層狙いでも 15 人いるのだから, どう考えても有料講座にしても 10 倍は人いれられるだろう, それができなければどこかしらおかしい, そのくらいの感覚でいます.

いま実際にリンクをクリックしてくれて, 配信したコンテンツを見てくれる人, という意味で熱心に参加してくれている人は, どうやら 100 名程度のようです. まずはこれを 10 倍に増やしたいですね.

これができれば, それが私の声が届く人が増えるから.

やはり鍵は習慣化というか, 生活に組み込むことだと思っていて, それを具体的にはじめました.

これまで通勤時の時間や隙間時間を使って, 有料の講座を作っていたのですが, その時間を一部切り出して回すことにします. やはり日々ちょこちょこ作っていくのが強いことを この 1 年半で実感したので, その小さなステップを刻み続けます.

どこまでの需要があるかはわかりませんが, 自分で物販ビジネスをしている知人から, 大久保さんから数学マーケティングの勉強のために 数学がやってみたい, という相談も受けています.

そういう層もどう取り込むか, どうすれば取り込めるか, そのために何をどう見せていくかが課題です.

あとまた少し違う視点から耳目を集めるという点で, ちょっとした YouTuber 的なことをやってみようと 思っています.

これは社会の動き, 特に実際に市民の人目をひくという 芸能関係のネタをしっかり調べ, 勉強して,

そこから数学と物理に どう繋げるかという 動画をひたすらに作っていこうと思います.

数学ネタというよりも, 社会の動きを知ること, そこにどう数学・物理を当てこんでいくか, そして 1 数学徒として 私がそれらの情報を受け取っているかを 緩く発信していく形を考えています.

こちらはいわゆる数学の話はしません. あくまで一般層に向けて, 一般層による再生数を重視し, 見てもらえるものを作るのに こだわろうと思っています.

他にも語ろうと思えばまだありますが, いったんこのくらいにしておきます.

現代数学・物理系の話は あと 1 年くらい現代数学探険隊と, チャットワーク上での日々のやりとりに 限定されるでしょう.

それ以外に力づくで動かす話として, 中高数学の通信講座もやっていきます.

まずは無料のモニター募集中です. ぜひ次のフォームから 登録しておいてください.

  • https://m.phasetr.com/p/r/DoXk594g

ではまたメールします. よいお年を.

2017-12-30 数学×コンピュータの実験数学/相転移プロダクション

来年具体化したい動きと 多少は関係があるネタを紹介しておきます.

日本数学検定協会賞というのがあって, それを受賞した女子中学生の 業績がちょっと話題になったので.

  • https://twitter.com/groebner_basis/status/946207234303737858

RT 日本数学検定協会賞を受賞した女子中学生の受賞作品「フィボナッチ数列は2進数でも美しいのか」Python3 でプログラム書いて実験しててすごいぶな。 http://www.rimse.or.jp/research/pdf/5th/work10.pdf 自由研究っていうと物理や化学を連想しやすいぶなけど、数学×コンピュータの実験数学的なものもすごく面白いぶなよね。

やりたいと思いつつ, ミニ講座を 1 つは作りつつ, なかなかきちんとできていないので, ネタがあったら紹介するくらいはしようということで, 今回紹介しました.

プログラミングも絡めて, 物理や大学レベルも含めた理工系ネタと 中高数学の接続, というテーマで 作ったミニ講座があります.

  • https://phasetr.com/mrlp1/

他にも代数幾何で世界的に著名な 飯高茂先生が最近出している次のシリーズもあります.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4768704549
  • https://www.amazon.co.jp/dp/4768704581
  • https://www.amazon.co.jp/dp/4768704654
  • https://www.amazon.co.jp/dp/4768704794

基本的には数論で遊んでみよう, という話ですね. 第 1 巻しか読めていませんが, プログラムとまで明言はしていないし, ソースコードがあるわけではないものの, パソコン利用についてははっきりと書かれています.

プログラムと数論と言えば素数夜曲もあります.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/4486019245

あとプログラミング+物理なら, 例えば次のような本もあります.

  • https://www.amazon.co.jp/dp/487783303X
  • https://www.amazon.co.jp/dp/4877833129

他にネット上の記事もいろいろありますし, 私が以前書いたコードもいくつかあります.

  • https://github.com/phasetr/mathcodes
  • https://github.com/phasetr/pymathphys

プログラムはメンテナンスが大変で, 何よりもっときちんと勉強が必要なので, まだ私の活動として本格展開はできませんが, 遊び道具として使ってみたいとは思っています.

もしあなたが興味あるなら, これらの本を眺めてみるなり, プログラム書いて遊んでみるなりしてみてください.

私の趣味ぶっ放しでよければ, 他にもいろいろな本やコンテンツを 紹介するだけはできます.

ではまたメールします.

2017-12-29 自然数と有理数の間の全単射/相転移プロダクション

私が展開している無料の通信講座, 現代数学観光ツアーに, 久し振りに明示的に高校生の参加者が現われました.

彼女または彼から第 1 回の内容に関して 質問を頂いたので回答をつけてみました. アンケートに回答を出してくれたタイミングから 遅れてしまいましたがないよりはましだと思ってもらえれば.

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/2017-12-29-230455.tmp.pdf

これでわかるのかどうか, 全くもって自信はないのですが, とりあえず 1 つ手を打ってみました.

議論用にチャットワークでのコミュニティも作っていますし, そちらの方が機動性と相互作用がよく コミュニケーションできるので, ぜひそちらにも来てください.

メールのフッタにも案内あるはずですが, 本文にも載せておきましょう.

  • 数学・物理マニアックス: https://chatwork.com/g/dhn4ku2tschdsa
  • 数学・物理駆け込み寺: https://chatwork.com/g/tb4y95olggbfmx

念のため書いておくと, アカウント名は本名である必要はありません.

質問も 3 つくらいは回答せずに溜まっています. いつかはきちんと回答したいと思いつつ, 時間が全く取れていません. すみません.

とりあえずそれはそれとして, 今年の総括というか来年の目標というか, 年内にその辺に関するメールをもう 1 つ出す予定です.

来年こそは中高向け数学講座をゆるくはじめます. もうそういうルーティンを生活に組み込ました. これも案内を正式に出すので, もうちょっと待っていてください.

ではまたメールします.

2017-12-18 いろいろな勉強の仕方/相転移プロダクション

現代数学観光ツアー 第 7 回のアンケートで勉強の仕方に 関する質問がありました.

具体的には次のような内容です.

文献が非常に多く紹介されていました. ある本を読むにも自分は数年かかってしまいそうなものばかりのように感じました. 数学がわかる人たちは, これらの文献を小説でも読むようにサクサク読めてしまう怪人なのでしょうか? または, 文献を読むコツみたいなものがあるのでしょうか? (「学問に王道はなし」といいますが, あれば知りたいです) 「数学の本の読み方もまだ全然身についてなくて, ひどい勉強の仕方をしてました・・・・」とありました. (P279 の下段.) 数学の本のよい読み方やよい勉強の方法があるということでしょうか? (脳内セミナーは, よい勉強方法にあたると考えておけばよいでしょうか?) 今までの人生の中で, 本を戦略的に読んだことなどありませんでした. 現在, 49 歳で人生の半分以上を過ぎており, この先できれば効率よく勉強していきたいと考えています. こんなこと聞くな, 自分で考えろと言われそうですが, 教えて頂けたら幸いです.

第 7 回で紹介した文献もありますし, 受験用をメインに私自身が書いた電子書籍などもあります. それは最後に紹介するとして, まずはいろいろな勉強法があるし, 使い分けなければいけないことに関して改めて説明します.

まず目的に応じていろいろな 勉強の仕方がありえます. 数学を勉強するというだけでも, いろいろなスタイルがありえます.

例えば, 学部から大学院にかけて 数学科で数学を勉強するという前提だと, 基本的な知識を身につけ, その運用力を 上げるというフェーズです.

この場合は, 本をはじめから 最後までみっちり読み込む 必要があるでしょう.

一方, 物理学科で数学を勉強するという状況なら, 物理にも力を割かなければいけないわけで, 物理に必要な数学を 要領よくおさえている必要があります.

理論よりもいろいろな計算を やりきるパワーが必要に なるときの方が多いです.

そもそも, 物理の学部 3 年程度で 勉強することになる流体力学では, 基礎方程式であるナビエ・ストークス方程式が, いまだ解の存在と一意性に関する満足な 状況になく, ミレニアム問題と呼ばれる 7 つの有名な未解決問題に リストアップされています.

数学科ベースの数学で言うなら, 最先端の研究レベルでまだなお, まるで足りないわけで, 勉強とかいうレベルではなく研究です.

数学科の数学でいってもいろいろありえます. 先程は学部から大学院で基礎知識を 身につけるフェーズに関して書きました.

研究, それも研究者として生きていくことを 意識すると大きく変わる部分があります.

一言で言えばのんびり勉強している暇はありません. あとで紹介する『数学まなびはじめ』その 2, 岡本清郷さんのところで書かれているように, 論文の主定理を探して自分に必要な結果だけを どんどん取り出していく, といったスタイルの勉強です.

というわけで, 数学を勉強するというだけでも, 状況に応じていろいろなやり方があります.

いつも言っているのですが, 数学や物理に限らず何でも同じで, 銀の弾丸などは存在しないことを 肝に命じる必要があります.

目的に応じて適切な勉強法を 使い分けてください.

実際, 具体的な勉強法については, 各通信講座のラストで, その講座の対象受講者に合わせて いくつか勉強法を提案しわけてもいます.

細かいところに関しては, 以下で紹介する参考文献を眺めてみてください.

数学に限らず, ゴリゴリに 学術的にド専門の勉強をする場合は 『新・数学の学び方』と 『志学数学 -研究の諸段階 発表の工夫』, 『独学のすゝめ 大学受験勉強法 あなたが大学受験で失敗・後悔しないために 私はなぜあなたにいい大学・難関大に入ってほしいのか』 が特に参考になるでしょう.

細く長く勉強を続けていくことが目的なら, 『たかが数学, されど数学』が参考になるはずです.

資格試験のような勉強が必要な場合には 『独学のすゝめ 大学受験勉強法』 が特に使えると思います.

最後, 勉強の仕方に関する本の案内です. 適当にコメントもつけておくので, 興味がある本を眺めてみてください.

  • 『新・数学の学び方』
  • Amazon へのリンク: http://tinyurl.com/poysx3d
  • コメント: 学部 1 年のとき, もとの『数学の学び方』を読んだ. 「こんな風にやるのか」と思って, 素直に実践していった. 今思うと全然書かれている風にできていなかったが, それでも小平スタイルの勉強法に学部 1 年で触れられたのはよかったと思っている. 願わくば中高生のときに知りたかった. そしてそんな気持ちがあったからこそ受験関係のプロジェクトをはじめた.

  • 『数学まなびはじめ』

  • Amazon へのリンク 1: http://tinyurl.com/z3cpsxd Amazon へのリンク 2: http://tinyurl.com/o4oj8rk Amazon へのリンク 3: http://tinyurl.com/jkknlo4
  • コメント: 問答無用で面白いので早く買って読むべき. ブログに何人かの人に関する書評というか感想を書いているので, 興味があればそちらを見てほしい. 特にその 2 の岡本清郷さんの研究者としての勉強法は, 研究ベースの勉強について参考になる.

  • 『志学数学 -研究の諸段階 発表の工夫』

  • Amazon へのリンク: http://tinyurl.com/juubntl
  • コメント: 数学会の会誌で河東先生が「とりあえず買って読むべき」と書いたほどいい本. 数学者の卵への思いやり溢れる穏やかな筆致で話が進んでいく. 一般の人が「数学者はこんなことを考えながらこんなことをしているのか」という感じで読んでいっても十二分に楽しめるだろう.

  • 『たかが数学, されど数学』

  • http://phasetr.com/members/myfiles/file/Univ.Yamagata.Kawamura.takagasuugaku_saredosuugaku04u.pdf
  • コメント: 山形大数学科の数学エッセイコンテストで入賞していた作品. 理学部や数学科の HP 改訂でどこにあるのかわからなくなってしまった. 数学エッセイの過去ページも見当たらない. 人類の損失レベルの素敵な文章なのでどうにかしてほしい. 仕方ないので手元にある分を自分のサーバーにアップした. 著作権的によろしくないのだろうが, 皆に読んでほしいのでこちらで公開している.

  • 『独学のすゝめ 大学受験勉強法 あなたが大学受験で失敗・後悔しないために 私はなぜあなたにいい大学・難関大に入ってほしいのか』

  • Amazon へのリンク: http://tinyurl.com/np3nttq 一時期, 大学受験関係でいろいろやっていたことがあり, そのときに勉強法についていろいろ書いたことをまとめた電子書籍. 書き方として大学受験に特化させただけで, 一般的に使えるように書いたつもり.

2017-12-11 量子論の数理とリーマンのゼータ関数/相転移プロダクション

以前連絡したような気がするのですが, Math Advent Calendar 2017 というのがあります.

  • https://adventar.org/calendars/2380

ここで記事を書いたのに その連絡をしていませんでした.

記事はメールタイトルの通り, 量子論の数理とリーマンのゼータです.

  • https://phasetr.com/blog/2017/12/04/math-advent-calendar-2017-12-4-quantum-mechanics-riemann-zeta/

時間がない中で強引に書いたので, 説明不足の点はありますが, 参考文献はいろいろつけてあります.

ぜひ, 興味があるところを つまんでみてください.

あと, 現代数学観光ツアー, 小旅行 2 のアンケートに来ていた質問に 簡単に回答しておきます.

具体的には次の質問です.

現代数学探検隊に参加すると位相を深く理解でき, 小旅行 2 の素数無限個の証明が理解できるようなレベルに達するのでしょうか?

細かい話はさておき, 素数無限個の証明の理解に関しては, 何ら問題ないレベルにまでは 問題なく到達します.

もちろん, きちんと継続的に, 地道に勉強を続けてもらえることは 前提ですが.

私のメルマガ, 何をどう考えても私より 数学できる人から中高の数学を勉強しようという 人までいろいろいて, なかなか「深い理解」の定義が難しいです.

それはそれとして, 現代数学探険隊の水準は 関数解析系の解析学に関する 位相空間論に関して, 基本的なところはきっちりおさえます.

いちおうちゃんと書いておくと, 上で「関数解析系の解析学に関する位相空間論」 と限定したのにはきちんと理由があります.

例えば幾何にとっての位相空間は, 微分幾何だともっと微分多様体論を 意識した構成にした方がいいでしょうし,

代数幾何を意識するなら, 必ずしもハウスドルフではない 位相空間, 特にザリスキ位相にも もっと強くフォーカス当てたくなります.

解析と言っても代数解析では, 代数幾何なみにピーキーな 位相空間が出てくるので, またちょっと趣が変わります.

以前, 数論幾何をやっている人に お酒を飲んでいるときに かなり真面目な顔をして 「位相空間は甘え」と言われたこともあり, 分野によって必要な位相空間は けっこう違います.

関数解析だと基本はノルム空間であり, 弱位相でも局所凸線型位相空間くらいには なってくれていて, 私が知る限り, ハウスドルフではない空間はあまり出てきません.

しかし代数幾何ではザリスキ位相が ハウスドルフではなく, さらに実用的な位相空間として有名だったりします.

この「実用的」というのが曲者で, 代数幾何は符号理論や暗号理論など 応用でも重要な分野で, 冗談抜きで社会でも使われる実用性があります.

与太話が長くなってきたので 改めてまとめると, 関数解析系, 特にハウスドルフな位相空間に 関しては完全に数学科の学生とも 張り合えるレベルの内容は網羅しています.

かなりじっくりやっているので, ちゃんとやれば必ず身になるはずです.

集合と位相をおさえておけば, 現代数学を独学するための 基礎体力は完全に身につくので, そのつもりで気合を入れてコンテンツを作っています.

一所懸命作っていますし, 何よりもともと物理学科で そこから数学科に進んだ身として, 「自分がほしかった」と思う内容を 作り込んでいます.

お試し期間などもつけているので, 興味があればとりあえず 気楽に参加してみてほしいです.

  • https://phasetr.com/mtex1/

安いとは言えないにせよ, 無茶な料金設定ではないと思っています.

この辺, 私がこうしたかなり 突っ込んだマニアックな内容の通信講座を 成功させることで, いろいろな分野のポスドクの人達の 収入源を作るための第一歩にも なると思っています.

成功させる義務がある, と勝手な使命感に燃えてさえいます.

というわけで何度でも しつこく宣伝しておきます.

ではまたメールします.

2017-11-21 質問は随時受付中:長くなりそうならぜひチャットワークで!/相転移プロダクション

今回はプログラミングも絡めた通信講座に 関して問い合わせを受けたので、 それに対する回答です。

質問があれば、メール含めて いくつか公開している適当な手段で 連絡してください。

で、メールなど私にしか通知が来ない手段だと、 私が動けないときに何も 応答できない問題があります。

交流できる場としてせっかく チャットワークを作ったので、 コードに対する質問含めて何かあれば、 チャットワークに登録して、 次のリンクからグループ参加申請して、 そこに質問投げてもらえると嬉しいです。

  • 数学・物理マニアックス: https://chatwork.com/g/dhn4ku2tschdsa
  • 数学・物理駆け込み寺: https://chatwork.com/g/tb4y95olggbfmx

他の方が回答してくれるかもしれないですし、 むしろそういうのを期待して作っています。

最近本業が燃えていて、 さらにプライベートの方でも いろいろな実験的な活動をしています。

返信が死ぬほど遅くなる可能性もありますが、 気長に待っていてください。

忙しい忙しいと言っていると何もできないので、 無理やりにもで何かやろうと思い、 次のアドベントカレンダーにも登録してみました。

  • https://adventar.org/calendars/2380

これ、Python x Math でネタ書く人もいるみたいですし、 ご興味ある方は自分でも記事書く方で参戦しても 楽しいのではないかと思います。

「中学・高校レベルでも実用的な話題でもなんでもいいです.」 とのことなので、別に気にせず書けばいいと思っています。

むしろ「中学・高校レベルのこんな勉強したいのだが、 いい情報が取れなくて困っている!」みたいな こと書いてもいいと思いますし、 堅苦しい企画ではないはずなので自由にやればいいのでは? ということで、 advent calendar の宣伝協力しておきます。

来年 5 月にプロジェクトが一段落するのですが、 ここからエンドに向けて本業が さらに燃え上がっていく予定です。

数学・物理関係の話で対応できるのは 極小におさえざるを得なくなってしまいますが、 ご意見や質問じたいは随時受け付けているので、 気楽にコメント投げてください。

やりたいことは山程あります。

ではまたメールします。

2017-10-16 オンラインコミュニティ 利用法/相転移プロダクション

だいたい 1 月前に チャットワークでオンラインコミュニティを 作ってみる, という案内をしました.

  • 数学・物理マニアックス: https://chatwork.com/g/dhn4ku2tschdsa
  • 数学・物理駆け込み寺: https://chatwork.com/g/tb4y95olggbfmx

こちら, 私の中で当面の 運用スタイルが見えつつあります.

それを連絡しつつ, 再度募集をかけてみようと思います.

まずは数学・物理マニアックスから.

実際にやってみて, メルマガに出すほどのボリュームではないものの, 何かちょっとやっていることを報告したい, という欲求がありました.

例えば, いま実際にこんな コンテンツを作っていて, こんな感じになっている, という報告だったり,

コンテンツのためにこんな視点で こんな本をこんなふうに勉強している, という話だったりです.

最近だと, 物理と幾何に関する本を 読んでいたりしたので, その様子をちょこちょこ報告したり,

読んでいる幾何の本の, その日読んだ分を簡単に まとめたり, といったところです.

実際に私がどんなふうに 勉強しているかをリアルタイムで 流しているので, それもけっこう参考になるのではないでしょうか.

今だと有料講座の現代数学探険隊の コンテンツ制作のために 関数論 (複素解析), 特にリーマン面 を 復習していて, その話もちょこちょこ書いています.

そしてこれまたメルマガで 出すほどではないちょっとした コンテンツを試験的に出してみたりもしています.

そのコンテンツはメルマガでは流さないので, あなたがそういうゆるい感じのコンテンツを 見てみたいなら, 気軽に参加してみてください.

数学・物理駆け込み寺に関しては, 具体的にどうしていこうかと 思いつつ, 参加者の方とも ちょっとやりとりしてみています.

こっちもそろそろメルマガで流すための ガッチリしたコンテンツのもとになる ミニコンテンツを作って配布していこうかな, と考えています.

有料講座を作るのに忙しく, こうした小さなアウトプットの機会がないと, 私自身, なかなか新たなコンテンツを 作っていけない状態なので, そういう感じで活用してみるのもいいかと思って.

そんな感じで私自身, 自分の勉強のためにも利用しつつ, ゆるく運用しています.

ご興味あれば気軽にどうぞ. 私もメルマガと違って, かなり気楽にコメントしています.

  • 数学・物理マニアックス: https://chatwork.com/g/dhn4ku2tschdsa
  • 数学・物理駆け込み寺: https://chatwork.com/g/tb4y95olggbfmx

ではまたメールします.

2017-09-23 オンラインコミュニティで集おう/相転移プロダクション

アンケートを見ていると, やはり 1 人で勉強するのが大変, という話をよく聞きます.

そこで, 試験的にちょっとした オンラインコミュニティを 作ってみます.

リアルの場には集まりづらい, だからこそオンラインでいろいろ 展開してきた経緯もあるので, ある程度オンラインにこだわります. 海外から参加されている方もいますからね.

あなたがもし興味があるなら, ぜひ参加してみてください. 参加方法は後半に書いてあります.

コミュニティの目的は, メルマガや通信講座参加者の交流です.

単純にいま自分が勉強していることで, わからないことがあったら 質問を投げてみてもいいです.

質問についてもちろん私も 時間があれば議論や回答に参加するつもりですが, 一定以上勉強されている方が 解答したりしてくれると面白いですね.

何より人に教えることこそが 一番の勉強です. 一時期受験関係でも 情報発信していましたが, そこでは人に教えるのが 難しいなら自分に対して授業しよう, ということで「脳内授業」という 方法をお勧めしていましたし.

他には, 人を募って オンライン勉強会を 開くための場として 使ってもらうのでもいいです.

以前 Skype+Pixiv 絵チャットでのセミナーを やったこともあるので, その辺のノウハウはお伝えできます.

教えること, もっと言えばアウトプットしてこそ 知識や経験が身につきます. そういう場に使ってもらえれば, と思います.

あまりこういうことは 言わないことがいいのでしょうが, それでもあえて書いておきます.

これははじめてやることであり, まさに研究です. その意味でうまくいかないことが前提です.

試験的な展開なので, 将来的にどうなるかもよくわかりません. 実際どんな人が集まるかもよくわからないので.

とりあえず, ぜひ気楽に 参加してみてください.

これも念のため. わざわざ大人になってまで 数学や物理をやろうという人に そんな人はいないとは思うのですが, マナーの悪い人には適切な対処を取ります.

ちなみに.

コミュニティは 2 つ作ります. 1 つは数学・物理で マニアックなところをメインにするやつです. こっちはもうぶっぱなしでやりましょう.

特に継続的に作り続けている有料講座の コンテンツを作っていて, ちょっとしたネタはいくらでも 湧いてくるのですが, メルマガに書くほどのボリュームでもないので, そういうのが結構眠ってしまっている 気がしています.

そういうネタを気楽に 流す場としても使えないかと考えています.

もう 1 つは中高数学や理科に関する コミュニティです.

マニアックなコンテンツや ミニ講座に参加される方は 割と好き勝手にやれる能力が 既にありそうなので,

単純にそれを伸ばすようにすれば いいだろうと思っています.

しかし中高数学や理科向けに関しては もっとサポートあった方がいいのかな, と.

「ここがわからないんですが...」 「私も実はよくわからなくて...」 「いや, 実はそこはすごく難しいところで...」

みたいな話ができるだけでも だいぶ違うのではなかろうかと思っています.

こちらは何か手頃な大学受験関係の 問題集などをもとに, 単なる解答だけではなく, 着眼点に関して説明するとか, ちょっと違ったことをしようと思っています.

以前, 大学受験生を指導したことがあって, 2 ヶ月くらいでその子達の 数学や物理の偏差値が 15 くらい上がったことがあります.

特別なことをしたわけでもなく, 筑波を目指していた子達で もともと優秀というのはあったにせよ, 私の言っていることや指導方針にも 一般性や一定の効果があるな, と改めて思ったので,

そのときに作ったコンテンツを もとに, ちょっと何かしてみようかと 思っています.

ツール・サービスに何を使うかというところで, 実名だと嫌な人もいるかと思うので, Facebook のような実名メインではなく, チャットワークでやってみます.

  • 数学・物理マニアックス https://chatwork.com/g/dhn4ku2tschdsa
  • 数学・物理駆け込み寺 https://chatwork.com/g/tb4y95olggbfmx

あなたがチャットワークのアカウントを 持っていないなら, 作成が必要です. 無料なので適当なメアドで 作ってみてください.

私自身, どうなるか全く予想がつきません. 実験的に気楽にやってみます. あなたがご興味あるなら, ぜひ参加してみてください.

そして単に参加するだけではなく, 積極的に行動してみてください. 「こんなのがわからない!」というのを出して, それに対して何か議論するとか, 有意義な場になればいいなと思っています.

ではまたメールします.

2017-09-06 リンク再送: 量子力学からの熱力学第二法則の導出/相転移プロダクション

先程お送りしたプレスリリースの URL, 直したつもりがリンクが壊れていたという指摘を頂いたので, 再送します.

プレスリリース http://www.t.u-tokyo.ac.jp/foe/press/setnws_201709061614152431248138.html 論文 https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.119.100601 arXiv https://arxiv.org/abs/1603.07857 https://arxiv.org/abs/1706.10112

1 本目の arXiv の論文の冒頭が読めないという指摘も頂きましたが, 私も Firefox で見ていると読めません. ダウンロードすれば読めるはずです.

それで読めなければもうわかりません. 環境ごとの問題という感じしかしないので, ご自分で調べてみてください.

ではまたメールします.

2017-09-06 量子力学からの熱力学第二法則の導出/相転移プロダクション

久し振りの純物理ネタです.

知人 (といってもいいはず) が, 論文出したというのを Facebook で言っていたので, 読もうという決意表明と宣伝がてら, シェアしておきます.

量子力学から熱力学第二法則を導出する論文が Physical Review Letters から出版されました。 プレスリリースと論文のURLは以下の通りです。

プレスリリース http://www.t.u-tokyo.ac.jp/foe/press/setnws_201709061614152431248138.html 論文 https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.119.100601 arXiv https://arxiv.org/abs/1603.07857

前もメルマガで純粋状態の統計力学的なネタを 紹介した記憶があります. 論文じたいは arXiv から取るのがいいでしょう. 無料です.

概要を知りたければプレスリリースで 日本語の文章をざっくりと読みましょう.

Facebook で「読む」とコメントしたら, 次のコメントを頂きました.

どうもどうも。 証明を読んで「これだと短時間領域だけじゃないか!」と思った場合には、こちらもどうぞ。 https://arxiv.org/abs/1706.10112

こちらは 10 ページ程度です. 合わせて 60 ページくらい.

適当に読んで, 余力があれば, コメント/感想を流す予定です.

これは本当に楽しみ.

ではまたメールします.

2017-08-28 数学は体力だ/相転移プロダクション

最近, 筋トレが面白くてはまっているので, その理由をお話しようと思っています.

数学かどうかはともかく, 物理や科学には確実に関わることなので, 「筋トレなんて興味ない」と言わず, ぜひ話に付き合ってください.

知っている人は知っている, 「数学は体力だ」という話があります.

  • http://nc.math.tsukuba.ac.jp/column/emeritus/Kimurata/

前々から言ってはいたものの, 私自身はほとんど実践できていませんでした. 方々で言っているのでご存知の方も多いと思うのですが, 私は中学 3 年で白血病になり, それ以来まともに運動していない期間が 20 年近くあったからです.

体力がなくて困っていたからこそ, その意義を痛感していたとも言えはします.

いい加減何とかしようと, 小学校の頃からお世話になっている道場で 3 年前に中学の頃にやっていた柔道を再開したのですが, やはりふつうの人よりも明らかに 体力もなければ力 (筋力) もありません.

中学 2 年生にすら乱取りで ボコボコに投げられる始末です. それが悔しいということもあり, 筋トレを始めました.

死ぬほどきつくて毎度嫌になるものの, それはそれとして筋トレが面白いです.

何というか, スポーツ科学とかその辺の科学からすれば もはや激烈自明なのでしょうが, ある種目で鍛えられる筋肉が 限定されているというのがひどく面白いです.

これの何が面白かったかというと, 例えばベンチプレスでダンベルを 持ち上げるのに腕を使うにも関わらず, ちゃんとやると腕はそれほど疲れず, ちゃんと胸の筋肉に来るところ.

もちろんやっている重量が軽いこともあるでしょう. しかし本当に腕よりも胸にくるのです.

ダンベルカールをやっていると二頭筋にしかきませんし, 他の種目でもかなり影響が限定できます.

ショルダープレスも形式的には腕で ダンベルを持ち上げているのに, 疲労が来るのは肩です. もちろん肩の筋肉を使って上げているからです.

腹筋をやっていて腹にくるとか そういう自明な話ではなかったのがすごく面白くて, それで続いている感じもあります.

他にもきちんと休まないと 筋肉が壊れたままでむしろ筋肉が痩せていくとか,

栄養を取らないと身体が回復せず, 筋肉がつかないとか, 激烈自明のことが本当にクリティカルに効いてきます.

つい毎日ハードに, と思ってしまっていました. しかしこうした子供でもわかるようなことが きちんとできていなかったことを知りました.

自分でやれる科学といった感じで筋トレやるのは, 実はめちゃくちゃいいのではないかと思いはじめています.

これは通っている道場で子供達の指導を しながら思うことでもあります. どうすれば生活に根差した形で 数学や物理を叩き込めるだろうかと.

いろいろ調べてはいたのですが, 筋トレの科学という観点から話をしてみるのは どうか, ということで自分自身を 実験台にして奮起してみたところでもあります.

半年くらい色々調べつつ, 実践しつついい本やコンテンツを探し, 実践もしてきました. プロテインとかサプリを買って試したり, といったことまではじめました

最近, 仕事が忙しく残業や休日出勤も増えている上, もともと健康ではないですし, そろそろいい年なので, ちゃんと身体に気をつけようと思い, 本腰を入れはじめた, という感じです.

近いうちミニ講座を作ったり, いいコンテンツを紹介したりしたいです. 自分が変にまとめるよりも, これを読んで, といった方がいいことも多いので, いいやつをお勧めようと思っています.

筋トレをしたいという方はもちろん, 筋肉をつけるためには何をすればいいか, 筋肉がなぜどうつくのか, そのためにはどうすればいいのか, というスポーツ科学的なことを知りたい方にも ぜひ読んでほしいコンテンツがあります.

筋肉を作りたいなら それはもちろんタンパク質もいるよね, という話もリアルに実感しています. ある程度ハードワークしなければ 筋肉つかないというのも改めて実感しました.

軽い筋トレをいくらやっても全く筋肉がつかなかったのが, ダンベルで毎回今までにはないレベルの きつさでやってみたら, 一週間で明らかに筋肉がついたりしましたし.

ちょっとの筋トレですぐに筋肉がついたのは, それだけ私がろくに運動をしていなかった, 筋肉/筋力がなかったという証拠でもあります.

しかし栄養まで考えてちゃんとトレーニングしたら 1 週間で結果を実感できたというのも 本当に面白い経験でした.

数学や物理のためにも, あなたもきちんと身体を動かしましょう.

身体を動かすということでいえば, 大学院のセミナーで高尾山ハイキングセミナーをする 人もいるくらいですし, 数学科秘奥義の散歩もあります.

それからすれば, 身体が動きはじめると 頭も動きはじめるという感じがあります. こもって勉強・研究もいいですが, ちょっとした運動も取り入れてみてください. 軽いところからはじめるための 方法もいろいろ考えて実践した結果もまとめます.

数学をやっていると心身ともに消耗するので, 心身の健康と体力は本当に大事なこと, 改めて実感しています.

最近, 筋トレを実験とみなして 色々遊ぶのが本当に楽しいです. しかしつらい.

ではまたメールします.

2017-08-16 お便りへの返信/相転移プロダクション

次のようなお便りを頂いたので, とりあえず思うことをつらつらと.

いつもメイル送信ありがとうございます。 当方も貴殿の様な講座を立ち上げたく 研究、調査に励んでいます。 それに関連して最近「12才が書いた量子力学」という本に はまっています。

入門と専門の中間部分について書いたとのことで 貴殿の講座で扱っていない部分と思いますが 貴殿の見解をお聞かせくだされば 幸いです。

最初に断わっておくと, 私はこの本を読んでいませんし, 読む気もないです. いかにも, といった感じの地雷臭しかしないので.

目次の記述が妙に気になるので, 後半で内容も読まずにそこだけ突っ込んでおきます.

まず次の部分, 指示が曖昧で 何を求められているのかわかりませんでした.

入門と専門の中間部分について書いたとのことで 貴殿の講座で扱っていない部分と思いますが 貴殿の見解をお聞かせくだされば 幸いです。

何に対する見解なんでしょうか? 「入門と専門の中間部分について書いた」という部分? それとも「貴殿の講座で扱っていない部分」という部分?

まずは前者, 「入門と専門の中間部分について書いた」という部分に 対するコメント要求と思って書きます. 結論から言うと, 上掲書の 入門と専門の定義がよくわからないので何とも言えません. ここでは適当に私が思うところを改めて書いておきます.

人の趣味は多種多様なので, いろいろな人がいろいろな思いを載せて いろいろ作ればいいんじゃないでしょうか.

Amazon のレビューを見ても, 彼の作った「12才が書いた量子力学」で喜ぶ人がいるのだし, それはそれできっと意味があったのでしょう.

ちなみに一番これは「しょっぱいな」と思ったのは 内容紹介の次の記述.

10歳の頃には物理学の他にも天文学、 歴史、哲学、医学、論理学、経済学、 法学などあらゆる学問分野の本を読み漁り (最盛期には年間3000冊)

「いや, 1 冊読むだけで 1 年かかるのでは?」 と思っています. ろくな読み方をしていないか, その程度の本しか読んでいないのでは? という感じしかしないですね.

これ, ペレ出版側の大人の事情的な, コピーライティングなのでしょうし, こういうところに惹かれる大人もいるのでしょうが, これが覿面に嫌ですね. これだけでこの本を読む気が失せるレベルの 嫌なコピーです.

この点については我らが伊原先生の 『志学 数学』を勧めておきます.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4621061593/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4621061593&linkCode=as2&tag=phasetr-22

特にこの P.17 の記述を引用しておきましょう.

「自分は一ヶ月に一冊読んでいる」などという先輩な仲間に惑わされないように. 本質的なところを感じとれない人の方が, すぐ数値的な評価をしたがる. 数学者になる, ということは, より深い価値がわかる人をめざす, ということでもあると思います.

もちろん, これはこれで「偉い先生のお小言」のように思い, 不快感を感じる方も多いのでしょう.

ペレ出版の人達はこの辺のことは「わかっている」でしょう. それよりもこの本のターゲット層に響く言葉として, 「年間 3000 冊」を挙げたのでしょう. それはそれでマーケティング, コピーライティングとして理解できます.

そしてこの辺, 決定的な認識のギャップというか, はっきり言えば嫌悪感というかある種の倫理観が出るところですね.

数学や物理などのアカデミックな人達が 踏み越えられない一線であり, マネタイズするときのハードルです.

実際, 私もこの手のコピーは受け入れられないですね. ならどんな文章をどんな人達に向けて書いて 届けるのか, それについては実際に募集ページを見てみてください. 理工系の知人に見せると「あれもうさんくさい」と よく言われるのですが, いまの私に書ける精一杯ギリギリのラインです.

あと言葉に対する書き手側の意識と受け手側の意識の問題もあります. 例えば, 私の認識では, 現代数学観光ツアー 物理のための解析学探訪 (http://phasetr.com/mtlp1/) は入門です.

「小学校の面積からはじめているし, 中学校の頃の自分が喜ぶと思って書いた. 紛うことなき入門用コンテンツである」 といまでも思っています.

ここでの「入門」はゴリゴリの数学・物理系の 志向を持つ人への入門という意味ですね. 「解析門前払い」と名高い 杉浦光夫の『解析入門』で言うところの, 入門もこの意味であろうと思います.

この認識からしてずれていそうな気がするので, コメントに苦慮しています.

ちなみに「中高数学に挫折したのでリベンジしたい」 とか「昔挫折した中高数学をじっくりとやり直したい」 という意味での「入門」を想定して 「応用からの中高数学再入門 中高数学駆け込み寺」 (http://phasetr.com/mrlp1/) を作りました.

ここでの入門は「役に立つ」という視点から 数学の世界に入ってみましょう, 特に興味関心がある人が多いっぽい 物理への応用を意識したところから, まずはどこに何を使うのかを知ることからはじめましょう, という意味での入門です.

懇切丁寧にわかりやすく, というタイプの入門ではありません.

これ, いまスウェーデンの理学部数学科に通ってらっしゃる方 2 人のお子さんを持つ方から, 「内容は結構腰を据えて読まなければいけないようなものが多かった」 というコメントを頂いたので, 「そんなに難しかったのか」とか 「もっと気楽に読み進めて大きな姿を 視界におさめることに意識を向けてほしい」とか 思ったりしました.

なかなかうまくいかないものです.

すでに大分長いですが, 「貴殿の講座で扱っていない部分」について.

私の認識だと, 私が作っているコンテンツやサービスは 「入門, または入門から専門への橋渡し」です.

数年前までは数学科や物理学科の学生向けに, 学部 1-2 年が大学院または研究最前線を見る, というスタンスの「橋渡し」セミナーをよくやっていました.

DVD にもした「よくわからない数学 色々な反例で遊ぼう」は 京大で開催された数学のイベント, 関西すうがく徒のつどい (通称つどい) で, 学部 1 年や高校生にもできる「研究」くらいのスタンスで 勉強から研究への「橋渡し」としたという認識でいます.

  • つどいのページ http://kansaimath.tenasaku.com/
  • DVD へのリンク http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00FYU9LQ0/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00FYU9LQ0&linkCode=as2&tag=phasetr-22

こういう認識なので, やはりこのコメントを寄せてくれた方とは, きっと決定的に認識がずれているのでしょう.

一応言っておくと, その認識のずれはいいとは悪いとかいう話ではありません. 強いていうなら私の認識のずれは 多分大きな問題で, それで「マネタイズ」したいというのなら, むしろ致命的な問題でもあるのでしょう. 実際よく言われることでもありますから.

最後, ちょっとした目次へのツッコミを.

第3章 数学的定式化―量子論から量子力学へ

本読んでないので量子論という言葉と 量子力学という言葉を どう定義して使っているのかわからないものの,

私の感覚だと量子論の方が抽象性が高く, 「極微の世界の物理」くらいの意味で 使われている方が多い印象です.

一方, 量子力学は有限自由度かつ非相対論での 量子論, くらいのイメージがあります.

前期量子論とかその辺の言葉の上っ面を適当にかじって, 量子論から量子力学とかそういうイメージで 言葉を使っているんでしょうか? このメールを下さった方, コメント頂けると嬉しいです.

第4章 内在的矛盾と解釈問題―量子力学は正しいか?

地雷感高まる節タイトルで, やばそう. 内在的矛盾というの, 何を言っているのかは気になりますね. 「量子力学は正しいか?」という問いも, 量子力学がどう定義されているかにもよりますし.

相対論的量子論や, 必然的に出てくる (無限) 多体系の扱いを考えると, その時点で相当厳しい感. 水素原子も励起状態が固有状態になっていて, そのままだとレーザーも作れず, どうしたって量子電気力学, 場の理論が必要です.

有限自由度の量子力学では記述しきれない, というかなり限定された意味なら量子力学が 間違っているかどうかはともかく, 間違いなく限界はあります.

他にも気になることはあったのですが, とりあえず簡単にコメントできることと言えば このくらいでしょうか.

こんな人間がこう考えてこう活動している, というところを紹介できると思ったので, いろいろ書いてみました.

今回からメルマガにアンケートフォームもつけてみました.

  • https://goo.gl/forms/hn7bUP4sblqOkBcI3

他にもいろいろ連絡手段は出していますが, 匿名の方が送りやすそうな気がするので. 何か思うところがあれば気軽にコメントしてください.

2017-08-15 数学ソフトウェアの世界/相転移プロダクション

この間、日大生物資源の教官、 濱田龍義さんのお話を聞いて来ました。 内容はタイトル通り「数学ソフトウェアの世界」です。

知っている人は知っている、 DVD から起動できて数学系ソフトウェアが詰まっている MathLibre (旧 Knoppix/Math) を開発されている方です。

一言で言えば面白かった、という話をするわけですが、 まずはもっともっと宣伝すべきいいソフトがあるので、 きっちりその宣伝をしておきましょう。

MathLibre

MathLibre は DVD 起動で数学系ソフトウェアが 大量に使えるようになります。

  • http://www.mathlibre.org/index-ja.html

厳密には DVD で Debian ベースの Linux 系 OS を立ち上げ、その上でソフトウェアを使う、 という形です。

GeoGebra, SageMath

純粋なソフトウェアという観点からは、 GeoGebra や SageMath が特に話題に上がっています。 世界的なプロジェクトとしても動いているので。

SageMath は「応用からの中高数学再入門 中高数学駆け込み寺」でも使っている Python を基盤言語とするソフトです。

超大雑把に言えば、 Mathematica のような総合的なソフトウェアです。

ちなみに上記講座の申込ページはここ。

  • http://phasetr.com/mrlp1/

上記講座では特に numpy, matplotlib を使っていて、 これも SageMath に取り込まれています。

SageMath のページはここ。

  • http://www.sagemath.org/

確か Windows はインストールが 死ぬほど面倒だった気がします。 面倒なインストール抜きでオンラインで使いたいなら、 次の CoCalc にアクセスしてみてください。

  • https://cocalc.com/

一方 GeoGebra はもっとお絵描き的にも使える楽しいソフトです。 もちろんかなりのハードユースにも耐えます。

  • https://sites.google.com/site/geogebrajp/

こちらもオンラインで使うことができます。

  • https://www.geogebra.org/graphing

Geogebra と SageMath の開発、新講座作成への道

GeoGebra か SageMath は開発にも 参加してみたいと思っていて、 どちらに参加するか検討中です。

GeoGebra は JavaScript が基盤言語になったようです。 JavaScript はインストール不要で動かせるので、 プログラミング系の通信講座を作るうえで こちらの方がいいかな、と思って心が揺れています。

ただ、最近、JavaScript は動きが激しすぎて ついていけないですね。

数学のように、一度証明されたらそのままの形で ずっと使えるならいいのですが、 続々と新たなライブラリは出てくるわ、 実行環境のブラウザもどんどんバージョンアップして 古いコードのメンテナンスが大変だわ、 と数学と物理の片手間でやるにはハードすぎるのです。

どなたか、JavaScript シミュレーション的な方向で 一緒に講座作ってくれる方いないでしょうか? そういう本も出てはいて、 遊んでみたいと思いつつ、なかなか時間が取れていません。

講演内容

基本的な宣伝もすみました。 いいものはどんどん共有したいですね。 では講演本体の内容を簡単にお話していきます。

ちなみに講師である濱田さんの 今の所属は生物資源学科です。 しかし専門はバリバリの数学、微分幾何です。

この辺、あなたが大学院くらいまで行っているなら 多少は意味わかると思います。 「何でこの人、専門全然違うのにこんな学科に所属しているの?」 という例のアレです。

それはそれとして内容の話にうつります。 昔、TeX もない頃は大島利雄先生による 大島ワープロなどの数式入力ソフトもあったとか、 歴史的な話もいろいろあり、 昔から大島先生はすさまじいことやっていたのか、 と改めて衝撃を受けました。

灘の生徒だったころからプログラミングをやっていた、 とかいう話が出て、「大島先生、灘だったのか」という新知識。 確か元学生で現東大教授の小林俊行先生も灘だったような。

大島先生の謎エピソードとして、 東大の数理の学科長になったときの 有名なエピソードがあります。

ふつう学科長になると忙しくなるので、 研究も進みにくくなりますが、 大島先生は逆に論文増えたそうです。

理由がすごくて「時間がないので研究用の ソフトウェアを作る時間を削ったから」 という話でした。

この話は他の東大の先生から伺いました。 数学の研究をするにあたってまずライブラリを作るそうで、 もう何なの、と思わざるを得ません。

大島先生、城西大に移ってからは、 数学教育にもプログラムを積極的に取り入れているそうで、 行列を入れたら基本展開してくれるソフトを Risa/Asir で作って講義でも使っているという話をしていました。 こういうのも取り入れてみたいですね。 夢だけはどんどん膨らんでいきます。

数学者トークで言うと、森重文さんの話がありました。 濱田さんが大学院の頃にデファクトスタンダードだったという 久保ワープロに関して、森さんは開発に携わっていたそうです。 どうも森さんはアセンブラを書ける数学者として一部で有名らしく、 「100 ページの論文を書いていたら落ちた」から 何とかしようというので関わってきたそうです。

他の分野の様子はよく知りませんが、 数学で 100 ページの論文は滅多になく、 本当に大論文でそんなもんよく書くわ、という話がありました。

計算機科学の科学史

科学史にも関わる部分では、 ソフトウェアに関して記録が残っていないという話がありました。 古いコードは全く保存されていないし、 ある教官がやっていたとしても、 退官されるとそれが引き継がれずなくなってしまう、という話です。 コードなども残っていないそうです。 計算機関係の科学史を追う上でかなり面倒なことになっていますね。

ここで、ソースコードと実行環境の保存に関しては、 他にも問題があります。

実用的な話としては、昔書いたコードが動かない場合、 バージョンアップが必須です。 言語の改良でパフォーマンスやセキュリティも上がるので、 コスト (要はお金や人的資源) が合うなら、 素直に書き直します。

役に立つライブラリもどんどん出てきていて、 そうしたライブラリは古いバージョンに対応していないことも多いので、 新しくできるならそうした方がいいわけです。

これを科学史研究の観点から見ると大変なことになります。 ふつうに考えれば古いコードを持っていても仕方ないので、 削除してしまいます。 少なくとも積極的にメンテナンスしたり、 保持しておく理由がありません。 実際にそういう状況になっています。

こうすると、昔のコードやその実行環境が どんどんなくなっていきます。

一般に科学関係だと古い装置があっても、 それは実用にとってはほとんど意味がないので、 実用的には取っておく必要がありません。 歴史的な経緯からの意味はあるにしても。

例えば有名な話として、キュリー夫人のノートはいまだに 放射能を持っていて、ふだんは鉛の箱に入れて保管されていて、 閲覧するにも免責同意書にサインして防護服を着て閲覧しなければならないそうです。

  • http://gigazine.net/news/20150802-marie-curie-paper-still-radioactive/

そしてこの問題は他の文化遺産にもはねていきます。 観光資源としてお金になるとかいうならまだしも、 場所や保管代でむしろ出費の方が大きいなら、 廃棄する理由の方が大きいですから。

そういう問題があって、 こう、難しいと。

お金の話

とても世知辛い話ですし、 数学系の人は特に猛烈に嫌がるとは思うのですが、 お金の話をします。 実際、講演のときにも最後に大きな問題として 取り上げられていたのです。

先の科学史のための資料・史料保存は そのものずばりですね。 管理・維持に途方もないお金が必要です。

先のキュリー夫人の研究遺産の管理を考えてください。 記事にもあるように、 キュリー夫人の研究室をそのまま保持するなら除染が必要でした。 放射能を持つ物質を保管するなら当然厳重な保管が必要で、 人もお金も必要です。

キュリー夫人となるとノーベル賞受賞者であり、 世界的にも有名なので、取り壊したり廃棄するとなったら それなりに大きな反響が出るでしょう。 科学者団体からも抗議声明が出るのではないかと思います。

かといって、その保管の手間とお金をどこの誰がどう払うのか、 という大きな問題があります。 いつまでもどこまでもひたすらにお金がついて回ります。

一般にマネタイズ能力の弱い学者では、 解決しきれない問題です。 特に継続的に施設設備と 専門的な知識を持つ人材を雇い続けるための 大きな金額が必要です。

単に装置などの形を残しておくだけならまだしも、 それらを動かせるようなレベルにまで メンテしないといけないとなると、 さらにコストが跳ね上がります。

これを無駄といってしまうと、 科学館や博物館が死滅しかねません。 深刻な問題です。

他の分野を見てみよう

ただ、これがまた難しいです。 先日、ニュースで日本最古の ティンパニーの話題がありました。

  • https://jcc.jp/news/12541282/

東京芸術大学の前身の東京音楽学校の 教師・ドイツ人音楽家・アウグストユンケルから 1904年に贈られたことを示す JUNKERの文字が刻まれたティンパニーについて、 東京芸術大学・元特任教授・瀧井敬子は 「もっとも古いといって間違いないと思う。 オーケストラが日本に根付く過程をしめす貴重な物的証拠」と話す。

これ、あなたはどう思うでしょうか? 「貴重な資料だ。ぜひ保存しなければ」と思ったでしょうか?

小平邦彦先生のように、 数学、または数学者と音楽には 割と親和性があります。

しかし「いや、オーケストラが 日本に根付く過程と言われても 特に興味ない」という方もいらっしゃるでしょう。

もっとはっきりいえば、 単にティンパニーがあればいいだけではなく、 きちんと場所と時間と人、さらにお金を使ってこれを 保管しようというときに「そこまでやる意味はどこまであるのか?」 と言われて、きちんと答えられる人は まずいないのではないでしょうか?

先のキュリー夫人の研究遺産に関しても、 どの程度までその意義を見出せばいいでしょうか? 実際、音楽関係者と予算の取り合いになるわけで、 他人事ではありません。

役に立つ問題

よくある「何の役に立つ」問題とも強く関係します。 私の専門である数学や物理なら、 「いや、役に立つから」と言い切れるし、 何なら「あなたがそれを知らなくても、 理解できなくても一切関係ない」と まで言い切ることすらできるでしょう。

専門家を育てる必要はあって、 彼らに対する教育が第一で、 数学を知らなくてもほとんどの人は困らないし、

何なら日常生活を営む上で、 数学よりも勉強すべきことはたくさんあるとすら言えます。 学校の勉強にしても理科や法律、歴史などの方が よほど重要と判断できる 真っ当な判断基準も作れるでしょう。

しかし、科学史上の史料についてまで 「いや、これ役に立つから」と言い切るのはなかなか厳しいです。 明らかに有限な場所・人・お金をどう配分するか、 という問題まで絡んでくるときにどうするか、という問題です。

別に答えがあるわけでもなく、 ただただ厳しいです。

数学ソフトウェアの発展と資金調達問題

そしてこの問題は数学ソフトウェアにも同じ問題があります。 これも 1 つの大きな要素はお金です。 実際に講演の後半でマネタイズに苦労しているという話が出ました。 濱田さん自身「DVD を無料で頒布したら よけいマネタイズ厳しくなるのに何でそんなことやってるの?」 という指摘を受けている、という話もありました。

GeoGebra はイギリス政府だかの補助があり、 まだ何とかなっているそうですが、 SageMath は本当に資金が厳しいそうです。 教育用の用途だけでなく、研究用の用途もあり、 企業活動などの実用上の用途もあります。

企業からの寄付もあるとはいうものの、 まるで足りないそうで。 特にオープンなソフトウェアの開発ではよくあることですね。 開発者はボランティアでやっていることも多く、 家庭の事情など何かしらの理由で開発しなくなる、 できなくなることも多いので、 継続的に回したければやはりビジネスにするしかありません。

開発を進めるためには開発者が必要で、 それも場合によってはプログラミングだけでなく、 数学にも精通した高度な人材が必要です。 そんな人は引く手あまたなわけで、 そうした人に開発に集中してもらいたければ、 雇ってしまってそれで 生活できるようにしてしまうのが一番でしょう。

ポスドク問題と同じで、人には生活があるのです。

一方、多くの人が使うからといって、 それにお金を出すかはまた別の話です。 なくて困るかと言われると 必ずしもそんなことはないので。

GeoGebra, SageMath の広報や使いやすさを高めること

GeoGebra、SageMath ともにオンラインで ソフトを使える環境も整備されています。

  • https://www.geogebra.org/graphing
  • https://cocalc.com/

充実したハードウェアを持たない人や、 必ずしも身の回りにコンピュータに 詳しい人がいなくても使えるように、 という配慮もありますし、

使いやすい環境を用意して知名度をあげて、 寄付を募るといった目的もあります。

ただ、このオンライン環境も維持管理に人とお金が必要です。 「なら、やめれば?」と言われてもそういうわけにもいきません。 いわゆる「理念」というやつです。 そして理念だけでは食っていけない、 という世知辛い話でもあります。

私も、それこそ継続的に寄付したい、 と思いはしても、なかなかその余裕がありません。 こういうとき「稼ぐ」という意味での 自分の明らかな無力さを強く感じます。 本当に、きちんと稼げるようになって、 こういうところに少しでも寄付したり、 開発にも参加したりしたいです。

私の活動に関して

そういう話をしたので改めて言及しておくと、 私がやっている活動でも同じです。

細々としたことを抜かせば、 事実上、いまはほぼボランティア状態でやっています。 上記のソフトウェア開発や災害救助なども含め、 ボランティアの限界はまさにボランティアであることです。 ボランティアで活動できる余裕があることです。 余裕がなくなった瞬間にその活動は止まってしまいます。

私もある時期、一年程度、 ほとんど全く活動できなくなったことがありました。 そのときに改めて痛感したことでもあります。

「きちんと活動を続けるためには、 マネタイズすること、きちんと継続に回し続けられる ビジネスにすることが大事だ」と。

DVD を作って Amazon で販売してみたり、 直近では有料の通信講座を 運営してみたりしている理由の 1 つでもあります。

何度か言っているように、これはもちろん、 他の専門家にも、その人独自の色が強くでた、 有料の通信講座などをやってほしい、というメッセージでもあります。 特にポスドク問題が起きているので、 そうした人達が生きていく術としても確立したいと思っていて、 そのための「人体実験」としても実験・活動しています。

生きていなければ数学もできません。 もっときちんとこの社会で生きることも考えなければならない、 そんなことも改めて考えさせられた講演でした。

今後のメルマガ

今後、こうした世知辛い系統の話もしていく 機会が増えると思います。 1 つにはそうした状況を伝えないといけないと思うからです。 特に中高数学向けの通信講座には、 必ずしも現在の大学院の状況を ご存知の方ばかりではないからです。

上に書いたように、私が愛してやまない研究者達が 研究を続けながら生きていけるように、 私なりのポスドク問題への対処法の研究や、 その研究発表も兼ねています。

重たい話をしたいわけではなく、 私にとっては生きることも数学なのです。 生きていなければ数学できませんし、 そのための生計を立てることも数学です。 一数学徒の生き様を眺めてもらおうと思っています。

「また変なことやっとるわ」と気楽に眺めていてください。 その筋の方々も「これなら自分でもできる」と思ったら、 ぜひやってみてください。

私がやっているメルマガや通信講座は トータルでのべ 1000 人の読者がいるので、 面白い話があればどんどん共有します。

通信講座の「今後の勉強の指針」とか 参考文献紹介の中で、 他社サービスや大人向け数学塾なども 紹介していますし、その一環です。

現代数学観光ツアーのアンケート解答も滯っているし、 メルマガもネタはあるのでどんどん発刊したいですね。 試験的にポッドキャストもやってみたいと思っています。 引き続きいろいろがんばります。

ではまたメールします。

2017-05-29 個別質問タイム/相転移プロダクション

先日, ある読者の方から, 聞きたいことがあってもメールだと ハードルが高くてなかなか連絡しづらい というご相談を頂きました.

それはそれでよく聞くので アンケートを使ったりもしているのですが, それはそれで双方向の やりとりになりづらいからちょっと, という話もあるようで.

というわけで試験的に 連絡先としていくつかのサービスの アカウントを公開しておきます.

  • Twitter https://twitter.com/phasetr
  • Facebook https://www.facebook.com/yoshitsugu.sekine
  • LINE https://line.me/R/ti/p/@oxg2753d

Twitter が一番アクティブですが, どれもきちんとチェックしています. そして Twitter が一番 ろくでもないことばかり言ってもいますが, ふだんからたいがい数学と物理の ことしか考えていないのが一番伝わるのも Twitter でしょう.

ご興味あればぜひフォローしてみてください. あとアカウントを持っていらっしゃる方は Facebook ページにもいいね! しておいてもらえると嬉しいです.

  • https://www.facebook.com/phasetr

すべてに丁寧にお返事するのも なかなか難しいのですが, すぐに答えられることなら なるべくお答えしていこうと思います.

何かあればお気軽にどうぞ.

ではまたメールします.

2017-05-26 書評: 山下真『量子群点描』面白かったからあなたも読もう/相転移プロダクション

Amazon で予約していた本が今日届き, とりあえず 1 周さっと眺めて面白かったので, 興奮さめやらぬ状況でとりあえず感想をまとめました.

本は次のリンクから飛べます.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4320113136/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320113136&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=b11a99e86cb888afac89d78994526aa0

ご興味ある方はぜひ次の URL から 記事に飛んで読んでみてください.

  • http://phasetr.com/blog/2017/05/26/書評-山下真『量子群点描』面白かったからあなた/

私の読書メモ程度ではありますが, ある程度物理寄りの視点というか, 代数的場の量子論, 量子統計力学の数理的な 視座からのコメントを載せています.

私のメルマガに登録したり, 通信講座を受講されている方なら, 本と合わせて記事を読むと 楽しみがさらに増えると思います.

中高数学駆け込み寺の方だと 大分参加されている方の趣が違うので, 微妙なところではありますが, 面白がる方もいるかと思ってご連絡しておきます.

記事にも書いたのですが, 山下さんは院のときの 1 つ上の先輩です.

研究室が同じだったので, それなりに似た方向性はあるわけで, 現代数学観光ツアーの続編のような内容とも言えます.

  • http://phasetr.com/mtlp1/

具体的にはフーリエ変換と双対性の議論, 群の表現論からはじまるので, まさに現代数学観光ツアーの 最後の部分を進めたところからはじまります.

あなたがもし現代数学観光ツアーが楽しめたなら, これもきっと楽しめるでしょう. ぜひ買って読んでみてください.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4320113136/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320113136&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=b11a99e86cb888afac89d78994526aa0

詳しいことは記事に書いたので, この辺で.

ではまたメールします.

2017-05-20 Bernhard-Jablan unknotting conjecture の否定的解決 (?)/相転移プロダクション

Twitter で musubimeriron さんの ツイートを見かけたので, 備忘も兼ねて記事を書きました.

  • http://phasetr.com/?p=5538

いちいち記事に飛ぶのも面倒という方も いらっしゃると思うので, メルマガの最後に転載しておきます.

見やすい方で見てください.

一番言いたいことを簡単にまとめておくと, 予想の否定的解決のために反例構成をした, というところに注目してほしいです.

私が展開している通信講座, 現代数学観光ツアーや現代数学探険隊でも強調していますし, Amazon で販売している 「よくわからない数学 色々な反例で遊ぼう」 https://www.amazon.co.jp/dp/B00FYU9LQ0 ではそのもののメインテーマとしている反例,

これが実際に (まだプレプリントですが) 論文になっている具体例なのでぜひ紹介したい, というところです.

すごいレベルになると本当に反例を作ること それ自体が創造的な営みなわけなので.

久しぶりに Amazon の販売ページみたのですが, 私の DVD を国内正規版とか言って 中古で売っている人がいました.

しかも値段が新品とほとんど変わらない. やるならもっと安く売ってあげればいいのでは, という気しかしないですね.

何なのでしょう.

記事中でもコメントしていますが, 現代数学探険隊 http://phasetr.com/mtex1/ では, 実際に自分でも小さく反例を作っていくようにしてほしい, それを基軸に据えて講座を展開しています.

具体的に宿題として出していますし, 毎回解答もつけています. それ以外にも例・反例はをたくさん挙げていますし, その例が先々の数学や物理でどんな意味を持つか, どう面白いのか, どう重要なのかも たくさん解説をつけています.

ご興味ある方はぜひ参加してみてください. ちなみに上で紹介した DVD は, 参加者特典として無料で見られるようにしています.

2 週間のお試し期間があって, その間でも見られるようにしています.

何か意図に反して宣伝のようになってしまいましたが, そのくらい反例構成は大事ですよ, ということで.

以下, 記事の転載です.

またメールします.

私は真偽判定する能力を持たないが, ツイートを見かけたのでとりあえず張っておく.

これは衝撃的です。 A counterexample to the Bernhard-Jablan unknotting conjecture https://arxiv.org/abs/1705.05985

結び目理論の未解決問題10 https://matome.naver.jp/odai/2133489552895746501 の一つでしたが、否定的に解決されました。

Bernhard-Jablan解消予想がもし正しいとすると、原理的には、結び目解消数が帰納的に決定されることになるので、非常に都合が良過ぎる予想ではある。

2 つ目のツイートで「結び目理論の未解決問題10」 に関する Naver まとめが張られていて 「何でそんなに異常なまとめが Naver にあるのだろう」と思ったら, musubimeriron さん自身のまとめだった.

私の結び目理論への知識は, 学部 4 年のときにちょっと講義に もぐった程度でほとんど何も知らない.

Jones 多項式関係で 院のときの専門だった作用素環と こう割といろいろ関係があるとか, 3 次元時空での代数的場の量子論での DHR-DR 的な話でも組み紐群が出てくる (はず) だとか, その程度しかない.

ただツイートの中にある反例を挙げる形での 否定的解決というのがかなりツボ. 私が運営している通信講座,

現代数学探険隊 http://phasetr.com/mtex1/ は, 例や反例を自分で作っていくことを重視して 数学学習していこうという 趣旨で内容を構成しているので, 反例を作ることで本当に論文になる話として メルマガでも流そう.

あとプレプリントをパラっと眺めて 気になった点を挙げておこう.

The bulk of the work needed to reach these conclusions was carried out by computer.

ある意味 4 色定理とも似通っているのだろうか, プログラムで片をつけた部分も大きいとのこと. 最近中高数学駆け込み寺 http://phasetr.com/mrlp1/ という 中高数学復習のための無料のミニ講座で, 多少のプログラムもつけて講座を展開している.

数学とプログラムの遊び方みたいなところは 最近かなり気にしているので, その点でもとても気になる.

SnapPy https://www.math.uic.edu/t3m/SnapPy/ という Python によるソフトもあるようなので, やはり Python をもっときちんとやらねばならないか, という気になっている.

個人的には Haskell をやってみたいのだが, グラフを手軽に書く, 数値計算も手軽にやる, そういったところからすると資料が少なく (というか観測範囲でほぼない) Haskell で やるのは極めてハードルが高い. となるとやはり Python かという感じ. これも頑張らないといけない.

2017-04-19 魔方陣 C* 環/相転移プロダクション

2017年4月25日 16:30~18:00 の 慶應の微分幾何・トポロジーセミナーで 勝良健史さんが次のようなタイトルの 講演をするそうで.

  • Unitary representations of locally compact groups, and magic square C*-algebras
  • http://keiomath.jp/seminar/265

URL も張っておきました. 平日の夕方の早めの時間, 参加しようもないのですが, 中身がとにかく気になるので.

一応内容も転載しておきましょう. 上のページに行くと見られます.

本講演では, 局所コンパクト群の例から始め, ユニタリー表現やポントリャーギン双対などの話題を通して, C環という概念が自然と現れることを見たあとに, 群や空間の量子化の考え方などを例を通して説明する. 講演の後半では, 対称群の量子化として導入された魔法陣 C環に関して既に知られている事や最近分かったことを解説する. 特に魔法陣のサイズが 4 のときは, 魔法陣 C*環が 3 次元射影空間をクラインの四元群 2 つの直積群の作用で割った orbifold から 4 次正方行列への連続関数のなす環として表現できることを説明する. この結果は 16 年度の小川正瞳君による修士論文の結果に基いている.

魔方陣 C* 環とか名前の時点で 既に勉強したすぎる概念なので, 本当にずるいですね.

知人に聞いたところ, オリジナルは次の論文とのこと.

  • https://arxiv.org/pdf/math/9807091v1.pdf

リンク先は arXiv のプレプリントなので 誰でも読めます.

非可換幾何や量子群の話のようです. ぱらぱらと眺める限り, 何となく読めそうだし俄然興味が高まってきます.

悲しいことに今すぐ読める暇もありません. ただあなたは読みたいと思っているかもしれません. とりあえず講演概要に関して簡単にコメントしておきます.

まず勝良さんからですね. 勝良さんは大学院の研究室の先輩です. 何度かお会いしたこともあります.

いま何をやっているのか正確なところは全くわかりませんが, 私が大学院生だった頃はグラフ C* 環の あたりをやっていました.

グラフというのは情報理論, 離散数学とかそのへんでも出てくるグラフのことです. グラフから C* 環を系統的に構成する方法があって, 群の表現論あたりも絡めて何かごにょごにょやっていた という曖昧な記憶があります.

Kazhdan の property-T という言葉だけ よく覚えています.

群の表現, 特にユニタリ表現との関係については, 次の定理が重要です.

定理 C* 環の任意の元は ユニタリ作用素の有限個の和で書ける.

実際には 4 つの和で書けます. C* 環の functional calculus を使うと 適当にユニタリが定義できて, それで処理できます.

このあたりからユニタリ作用素さえ作っておけば いくらでも C* 環の元が作れてうんぬん, という話ができます.

functional calculus は 作用素の関数を作ろうという話で, Stone-Weierstrass の定理を基礎に 正規作用素の多項式を連続関数に持ち込んで, とか, Cauchy の積分定理を レゾルベントに適用したりとか,

はたまたスペクトル定理で 定義したりとかいろいろあります. スペクトル定理からは von Neumann 環の話も関係してきます. 両方とも射影が重要だからです.

内容を見る限り, 修論を見るとほどよくいろいろな 数学に触れられそうなので, 修論を読んでみたい欲求にかられています.

最悪勝良さんに問い合わせてみるまである.

何はともあれ, あなたがご興味あるならぜひアタックしてみてください. P.6 からの 3 節はじめを見ると, 有限集合上の話や, 有限次元の行列環の話をするようで, がんばれば読めるところもいろいろありそうです.

最後に. このメール, 私が作っているもろもろの講座なり メルマガなりに登録している人あてに送っているため, 知らない方もいらっしゃると思うので, 改めて宣伝しておきます.

現代数学, 特に解析学に関して, 非可換幾何とかのネタも盛り込んである, 無料の通信講座を作って運営しています. 興味があればぜひ次のページから登録してみてください.

  • http://phasetr.com/mtlp1/

あなたが既に登録していて, 今回の講演や論文に興味があって, 非可換幾何ってなんぞ, と思ったなら該当回を復習してみてください.

ではまたメールします.

2017-04-05 位相空間での収束理論: フィルタとチコノフの定理

平行稼働している現代数学探険隊に関連して, 調べたものの何か中途半端になってしまっていた ネットやフィルタの収束に関して資料をまとめました.

供養と思ってまとめたら 割とよさげな内容になったので, 現代数学探険隊にも適当な形で統合する予定です.

ただ一般向けにも公開する前提で作ったので, まあいいかということで公開します.

  • http://phasetr.com/blog/2017/04/05/convergence-in-topological-space-filter/

記事にも書いたのですが, フィルタのうち特に極大フィルタは 超フィルタとも呼ばれ, 超準解析でも出てくる概念です.

超準解析自体がマイナーですが, これはこれで興味がある人も多い話でしょう. その意味で役に立つこともあるだろうし, 必要な人もいるだろうということで.

現代数学探険隊の講座でやっていることも もう少し具体的に知りたいという要望も頂いています.

登録されている方の中にはどう考えても私より 数学できるだろうという方もいらっしゃいます.

その意味でも無理に参加させようという気は全くありませんが, 入った方がいい人・入るべき人に 二の足を踏ませてしまうのもよくありません.

これに限らずちょっとしたサンプルを 改めて公開してみようと思っているので, ご興味ある方はぜひ眺めてみてください.

ではまたメールします.

2017-03-23 数学は何故役に立つように見えないのか?/相転移プロダクション

先日撮影した動画の案内です.

  • http://phasetr.com/blog/2017/03/23/why-does-math-seem-useless/

数学を効果的に伝えていくために 私はある勉強会に参加しています.

そこで映像コンテンツを作る コンテンツ制作実践会があり, 表題の通り「数学は何故役に立つように見えないのか?」 というタイトルのミニセミナーをして, その映像を YouTube にアップしました.

次のページに動画をはりつけてあるので, ご興味ある方はぜひ見てみてください. 中高数学に関する通信講座を作った理由についても 改めて説明しています.

吃音 (いわゆるどもり) があって 聞きづらいと思うので, スライドの元原稿もセットで 貼ったページになっています.

吃音で聞きとりづらいのを よく動画で人に聞かせようと思ったな, と自分でも思います.

しかし吃音は吃音はなかなか 理解されないところがあるため, これはこれで, 吃音というのはこんな感じで うまく話したくても話せないのだ, というのもついでにお伝えできるかと 思ってやっています.

これさえなければもっと動画や 音声コンテンツも作れるのですが.

黒板やらホワイトボードやらに証明を 書いていくタイプの動画については 吃音で言葉が出なくても書けばいい という裏技があります.

一時期動画も作っていたので, それはそれでまた作りたいと考えています. 幾何をやるなら図を描きたいので, そういう場面では活用したいですね.

感想があればぜひ教えてください.

記事・動画へのリンクをもう一度張っておきます.

  • http://phasetr.com/blog/2017/03/23/why-does-math-seem-useless/

ではまたメールします.

2017-03-20 『関数解析的思考法のすすめ』/相転移プロダクション

関根 (相転移P) です.

先日, 40 代で 2 児の母, そして理学部数学科に 通ってらっしゃるという方が 現代数学観光ツアーに新たに参加されました. http://phasetr.com/mtlp1/ こんな人が本当にいてしかも参加してくるのか, と衝撃を受けました.

その方からのアンケート回答を読んでいて 改めて思ったのは, この講座はこの講座でいいと思っているのですが, いろいろな意味で重すぎるのは否めないことですね.

もうちょっとゆるいのも急ぎ整備していかないと, また新たな挫折を生んでしまいそうなので それが気がかりです.

で, 同じ感じの内容に関して もっとさらりとすっきりまとまったものが 数理科学 2017-04 号で 特集されていたので紹介しておきます. https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01N37MED9/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B01N37MED9&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=25adb692d25c12421da5eb52312e98d4

関数解析的思考法のすすめとして, 線型代数, 微分積分からの流れ, 微分方程式論との関係, 量子力学との関係, 作用素環, 確率論と関数解析, リーマン幾何と関数解析, 工学と関数解析, こんなラインナップです.

数理科学の今回の特集に触れられた範囲の 確率論, リーマン幾何, 工学ネタは 現代数学観光ツアーでほぼ触れていませんが, それ以外はかなり近い範囲を扱っています.

これからはもっと軽めのトピックごとに特化した 「現代数学観光ツアー」を作っていこうと思っています.

そしてその第 1 弾で扱おうと思っていた ストルム-リウビル系の話題に 触れられている記事があって, 考えることはみな同じなようですね.

もちろんページ数の制限も全然違いますし, いまの私が勉強を進めながらカバーできる範囲も あるので, 視点は当然変わってきます.

ストルム-リウビルの後には もっと作用素論的な方向, 一般論の方向でもう 1 つミニ講座を作る予定なので, そこにもつながる形で内容を作ります. いま目次を作り込む形で大枠と 細かな部分の想定を詰めているところです.

近々具体的に募集ページを作るので, ご興味のある方はどうぞ.

ではまたメールします.

2017-02-20 関数解析の初学にいい本 その 4/相転移プロダクション

前回から今回にかけての内容で, 割と最近の成果がまとまった本として 次の本をおすすめしていきます.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4903342484/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4903342484&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=b15cbf059366a8ff28ab3f5e52017a06

私も参加していた Summer School 数理物理 2013 の 講演内容をまとめた本です.

内容の大雑把なところに関しては 当時レポートを書いたので参考にしてください.

  • http://phasetr.com/blog/2013/10/02/summer-school-数理物理-2013-量子場の数理に参加してきたがスー/

でははじめましょう.

作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析

前回少し作用素論方面の話をしました. 関数解析系の量子系の数理の核の 1 つは ハミルトニアンの解析です.

ふつうハミルトニアンは線型作用素だから 作用素を調べることになり, そこで作用素を研究することに特化した 作用素論の出番になるわけです.

その作用素を詳しく調べるために確率論を使う手法があります. 物理としてはいわゆる「経路積分」の厳密解析にあたります. 場の理論では特に超関数を変数とする関数の積分論になるため, 汎関数積分と呼ばれることがあります.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320019326/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320019326&linkCode=as2&tag=phasetr-22
  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/3110201488/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=3110201488&linkCode=as2&tag=phasetr-22

前者の新井先生の本は丁寧でいいんですが, 論文を読むには全く足りません. この方面の 1 冊目には最適だろうと思います. 量子力学だけでなく場の理論の話も書いてあります.

Simon の「Functional Integration And Quantum Physics」もありますが, これに限らず Simon の本は難しいです. 読むにしても新井先生の本で きっちり基礎を固めた後にしましょう.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/0821835823/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=0821835823&linkCode=as2&tag=phasetr-22

後者の廣島先生の共著の本は 完全に場の理論の本です. 正確には粒子系と場のカップリングを考えているので, 粒子系, つまり量子力学の話ももちろん書かれてはいます.

ただこれ, 確率論に関するかなりの予備知識が必要です. いきなり Levi 過程の話が出てきます. その確率論や確率過程, そいて確率積分に関しても基本的なことが 新井先生の本にいくらか書いてあります.

この方面に進むにしてもまずは 新井先生の本を読むのをお勧めします.

量子電気力学に関する解析でも 汎関数積分を使った結果に決定的な成果があります. 対応する結果を確率抜きの純粋な作用素論で証明したり, 作用素環で見てみたりといった研究をするにも, ある程度は結果をフォローできないといけません.

研究フェーズの話ではありますが, 楽しいところなのでぜひトライしてみてください.

確率論じたいの参考書もいくつか紹介しておきましょう. まずは舟木先生の本をお勧めします.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4254116004/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4254116004&linkCode=as2&tag=phasetr-22

例えば分布の収束の定義について 「どうしてこういう定義なのか」という 「気分」についての説明もあり, 初学者が疑問に思うところを丁寧に潰しています. 舟木先生の教育力, 経験が光る本です.

Markov 鎖の場合に限ってはいますが エルゴード性に関する記述もあります. 確率積分は書いていないので, 別の本を読む必要があります.

確率論の基本的なところについては 西尾さんの確率論も証明が丁寧で 読みやすくていい本です.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4407021896/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4407021896&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=0e4eb70831e6bfd9b2517eec4bd3c869

    あとできちんと書く

確率積分に関しては初読は 新井先生の汎関数積分の本を勧めます.

    • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320019326/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320019326&linkCode=as2&tag=phasetr-22

突っ込んだ内容に関しては, 例えば次の本が有名どころです. 読んだ本もあれば きちんと読み込んでいない本もあります. 順に舟木直久, 長井英生, 渡辺信三, エクセンダール, カラザス・シュレーブです.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4007302170/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4007302170&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=abeae27cb09f60ca03cd098cdd7bb49e
  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4320015797/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320015797&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=7c751841cb0b94d03a58ef4d97159732
  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4782806094/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4782806094&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=25be2052534440c535807491f7ce8e96
  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4621061763/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4621061763&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=e0fd5b9601cf50fa3e92dab77643c9e3
  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4621062859/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4621062859&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=d3284893ab6807b8ce48a5437b5b8057

結論から言うと廣島先生の本が研究に直につながる本です. しかしここにいたるギャップが激しいです. 関数解析だけでは足りず, 確率論に関してもかなりカバーするべきことがあります.

作用素論の定理の確率的証明だとか 確率的解釈のようなことも面白いので, 数学としてもかなり面白いところです.

少なくとも作用素論と確率論という 2 つの分野の交点にあるわけで, 複数の分野をまたがる話に興味があるなら 挑戦するべき価値のある話です.

くり返しになりますが, 専門書と入門のギャップ, 特に関数解析だけではほとんど足りません. そこを埋めるのがかなり大変です.

私が知る限り, 直接量子系の話とはつながらない 部分も含めて確率論をふつうに相当かっちりやった上で 対応していかないといけません.

ダイレクトに絞っているのは 新井先生の本です.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320019326/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320019326&linkCode=as2&tag=phasetr-22

しかしこれでは明白に分量が足りません. そこを埋める, それもダイレクトに埋めてくれる 具体的な本はないと思います. 何かご存知でしたらぜひ教えてください.

特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析

一応, 厳密にはこれが私の専門です. 研究室は作用素環が専門の東大の河東研だったので, 本来はここです. 修士論文では作用素論しか使いませんでしたが, その後の展開では積極的に絡めています.

河東先生は相対論的な場の理論でしたが, 私は非相対論的な場の理論と量子統計方面です. 量子統計は, 河東先生の指導教官である 竹崎先生の巨大な仕事があるので, むしろその血を受け継いだ感じがあります.

学部の頃の指導教官筋で言えば, 私の指導教官のさらに指導教官は黒田成俊先生ですが, そのさらに指導教官が加藤敏夫先生です. 加藤敏夫先生は量子力学の作用素論の大家ですし, 実際に加藤-レリッヒの定理は修論でも使いました.

直接の指導教官よりも先祖返りして, 指導教官の指導教官とか そういう人達の強い影響下にある研究をしています.

ちょっと話がずれました. 具体的に作用素環の話をしましょう.

相対論的場の量子論, 非相対論的場の量子論, 量子統計でそれぞれ微妙に違う趣があります.

しかしどれも基本的なところは同じで, Bratteli-Robinson が聖典です.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/3642057365/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=3642057365&linkCode=as2&tag=phasetr-22
  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/3642082572/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=3642082572&linkCode=as2&tag=phasetr-22

全部読む必要はなく, 最低限おさえるべきは次の節です.

  • 2 章
  • ここは全部読む.
  • 2.7 は軽く眺めるだけでもよし.
  • 3 章
  • 3.1 は全部
  • 3.2 はある程度眺めて必要になったときに適宜見るくらいでも可.
  • 4 章
  • 飛ばしていい.
  • 必要になったら泣きながら読む (難しい).
  • 5 章
  • 5.2 は新井先生の「フォック空間と量子場」を読んでから読んだ方がいい.
    • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4535783179/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4535783179&linkCode=as2&tag=phasetr-22
    • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4535783187/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4535783187&linkCode=as2&tag=phasetr-22
  • 5.3 は 5.3.1 の KMS 条件のところは特に前半は必ず読み, あとはさっと眺めておく. 必要なところは必要なときに詳しく読めばいい.
  • 5.4 はさっと眺めておく. 概念的には全て重要. 証明の詳細よりもどんな事実が示されているか, 物理として対応することは何かに注目する.
  • 6 章
  • 6.2 は必要になったときに読めばいい. スピン系をやりたいなら必ず読むこと. 具体例で遊んでみたい人は別途読んでみても楽しい.
  • 6.3 は読まなくてもいい: 修羅の世界. 本当に難しい.

少なくとも作用素環の基礎である 2 章と, KMS の 5.3 は必ず読みましょう. KMS に関連して 3 章の半群理論が そこここに出てくるので, 必要なところをピンポイントでやるもよし, 必要だからと全部ガッとやってもいいです.

非相対論的場の量子論だと ほぼ作用素環の基礎だけで事足ります. むしろ作用素環の基本中の基本, GNS construction が魂です. 作用素環的な赤外発散処理のための道具です.

非相対論的場の量子論でも 有限温度との関係がありますし, 量子統計も自然と視野に入ってきます.

有限温度なら平衡状態を議論しないといけないし, そうなると KMS 状態の話になります. Bratteli-Robinson の 5.3 節ですね. KMS は冨田-竹崎理論との関係も極めて深いので, 冨田-竹崎理論は必ずやりましょう. これは 2.5 節です.

2.5 節の冨田-竹崎理論は weight に関する フルの理論ではありませんが, 場の理論への応用上は十分です. 必要になったら weight の場合の理論は 適宜結果だけ使えばいいでしょう.

相対論的場の量子論の散乱理論では weight を使おうという話もあるようで, そういうところでは関係してくるのでしょう. ド専門の話で完全に研究マターです.

Bratteli-Robinson を読んだら 論文がかなり読めます. 私が見ている範囲の作用素環を使う非平衡量子統計では 作用素論もある程度必要だったりはしますが, その辺は新井先生の本を読めば十分です.

論文になってしまいますが, Bratteli-Robinson の話の拡張でもある Derezinski-Jaksic-Pillet の PERTURBATION THEORY OF $W^*$-DYNAMICS, LIOUVILLEANS AND KMS-STATES は楽しいです. 作用素論との絡みもあるので, ぜひ読んでみてください.

あと相対論的場の量子論に関してもう少し補足しましょう. 河東先生がやっている方面の話です. 概要を把握するには最初にも引用した次の本がベストです.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4903342484/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4903342484&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=b15cbf059366a8ff28ab3f5e52017a06

これについて詳しく突っ込むには次の本を読みましょう.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/3055016556/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=3055016556&linkCode=as2&tag=phasetr-22

Bratteli-Robinson 程度は知っていないと話になりません. 特に冨田-竹崎理論は全開で使っています. むしろ魂です.

この方面だと実際に河東先生がやっているように, 非可換幾何を介して幾何が絡んできたり, 低次元の話でジョーンズ多項式が出てきたり, それ以外にも共形場が絡むところでは 頂点作用素代数をはじめとして いろいろな数学が関係してきます.

明らかにいろいろな数学が交錯する分野です. あなたが数学に興味があるのならとても楽しい分野です.

あとは私の好みでいうなら $C^*$-力学系の話とスペクトル解析みたいなところですね. 数年前に亡くなってしまったのですが, Borchers がこのあたりをやっていた人です.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/3662140780/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=3662140780&linkCode=as2&tag=phasetr-22

これは多変数関数論と超関数論を駆使しつつ, $\mathrm{R}^{d+1}$ の作用素環上への表現として $C^{*}$-力学系を考え, そのスペクトルを調べるという話です.

このスペクトルは粒子の情報も含んでいて, 相対論的場の量子論のやはり基本的な話を 数学的にがっちり議論するテーマです.

あなたが興味があるなら 「Quantum Field Theory as Dynamical System」という 論文を読んでみるのがいいでしょう. これを詳しく解説したのが上記の本です.

作用素論から見た私の専門はスペクトル解析ですし, やはりスペクトル解析好きなんですね. 多変数関数論や超関数論で, その分野じたいではあまり有名ではないし, 古い話を使うのですがそういうところがまたかなり好きで. どなたか興味がある方いれば一緒に勉強しましょう.

あと多変数関数論と超関数論が絡むところとして 楔の刃の定理 (edge of the wedge theorem) があります. これは代数解析への展開があります.

代数解析は全く手が出ていないのですが, 興味だけはずっとあります. これについては次の本に書いてあります.

  • http://www.amazon.co.jp/gp/product/4320016599/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4320016599&linkCode=as2&tag=phasetr-22

場の理論関係だと最近そんなに話を見かけません. しかし量子力学に関しては河合隆裕さんが 何かいろいろやっている感じがします. 例えば Borel 総和法だとか, 完全 WKB 解析とかですね.

本もあるのであなたがその辺に興味があるなら 読んでみてはどうでしょうか.

  • https://www.amazon.co.jp/gp/product/4000062913/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4000062913&linkCode=as2&tag=phasetr-22&linkId=3a75fd0dee4af25f13a8fa674dad5304

私はこの本はきちんと読んだことがありません. 以前眺めた限りでは 1 次元の話をいろいろやっていて, 代数解析勢は常微分方程式論をいろいろやっているので, その辺の話なのかと勝手に思ってはいます.

代数解析の話は全く追えていませんが, イジングやスピン系の厳密解など 代数解析は昔から量子力学, 場の量子論, 統計力学とある程度の関係があります.

もはや関数解析の初学どころか 関数解析の話ですらなくなっていますが, まあいいでしょう.

最後にまとめ

長くにわたってごちゃごちゃと書いてきました. 数学パートが死ぬほど長くなりましたが, バリバリド専門, お気に入りの話をしたので こんなものでしょう.

量子力学と関わる関数解析の全てとはさすがに言えません. しかしある程度の広さはおさえたとは思っています.

現代数学探険隊の募集ページ, http://phasetr.com/mtex1 でもいろいろ書いたように, 幾何や代数, 数論との関係もあります. (このページ, 相当長いので 必要なところだけ適当につまみ読みしてください.)

関数解析以外にも興味がある数学を いろいろやってみてほしいですね. 幾何については最近コンテンツ制作が滯っていますが, 微分幾何・幾何解析関係の話も少しずつやっていく予定です. そちらも楽しみにお待ちください.

物理の話もしたいんですが, 最低限の数学の話を準備できないことには なかなか話ができません.

それに合わせてミニ講座は いくつか準備しようと思っていますし, がっつりやりたい人には 現代数学探険隊 http://phasetr.com/mtex1 もあるので ご興味あればぜひどうぞ.

毎度こんなに長い返信はしきれませんが, 何か質問があれば時間がある限り答えますし, みなに共有する価値があることは積極的にシェアします.

こんな講座を開いてほしいというのもあれば, 要望を挙げてみてください. どこかに何かの形で反映させていきます.

ではまたメールします.

2017-02-17 関数解析の初学にいい本 その 3/相転移プロダクション

まずは復習.

前々回は物理をやりたいのか, それとも数学をやりたいのか はっきりさせようという話で, 物理を数学的にきちんとやろうと思うと 学部レベルの物理すら厳しいという話をしました.

前回は数学をやろうというなら, という方向で軽く新井先生の本や, 日合-柳の本の紹介をしました.

  • http://tinyurl.com/hccf47w
  • http://tinyurl.com/ksnfh69
  • http://tinyurl.com/gp8wzck

さらに大雑把に 5 種類の方向性を挙げ, そのうちの最初, ヒルベルト空間の一般論や抽象論が ほぼいらない物理に関する数学を 具体的な本とともに紹介しました.

その 5 種類は次の通りです.

  • 特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理.
  • シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析.
  • ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析.
  • 作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析.
  • 特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析.

今回は後半の 4 つを紹介します. 2 番目, 微分方程式の解析に関して話をしましょう.

シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析

これは何をやるかによって 一般論・抽象論がかなり必要なところも出てきます. 例えば初回に説明した散乱理論は 作用素論に関する抽象論がかなり出てきます.

自己共役作用素の解析も必要になるので, そこで作用素論の一般論が必要になる局面があります.

当然ソボレフ空間論も必要なので, 前回の Lieb-Loss 程度のソボレフ空間論は カバーしておく必要があります.

数学としては非線型シュレディンガー方程式も 視野に入ってくるので, そちらに進んでもいいでしょうね.

非線型シュレディンガーは ソボレフや偏微分方程式の基礎を みっちりやった上での話なので, その基礎部分に関して参考文献を紹介していきます.

関係が深い話も多いですから, 前回紹介した Lieb-Loss の Analysis は 相変わらずお勧めの 1 冊に入れられます.

  • http://tinyurl.com/zr7fzex

散乱理論のような作用素論の趣も強いところは ヒルベルト空間の一般論・抽象論が必要です. これに関しては日合-柳は相変わらずお勧めですし, 新井-江沢の『量子力学の数学的構造』もお勧めです.

  • http://tinyurl.com/hccf47w
  • http://tinyurl.com/ksnfh69
  • http://tinyurl.com/gp8wzck

『量子力学の数学的構造』の II 巻の後半は 基本的に場の理論・量子統計をやるときに 必要な内容なので, 飛ばして構いません.

具体的な作用素の自己共役性や 散乱理論の一般論など, 量子力学の数学に関してもう一歩踏み込んだ本としては 同じく新井先生の『量子現象の数理』がお勧めです.

  • http://tinyurl.com/olnudbs

高いのでおいそれと買えとは言えませんが, 私は専門の関係で読むしかなかったので 買って全部読んでいます. 本質的なものでもないですが, 誤植はいろいろあったので それは新井先生にお送りしています.

研究会で会って自己紹介したとき 「丁寧な誤植訂正を送って頂いて ありがとうございました. とても助かりました」と言って頂いたこと, 今でも覚えています. その程度には新井先生の本や論文を 読み込んで育っています.

Hausdorff-Young の不等式など Lieb-Loss の Analysis レベルの 不等式処理力は前提とした上で, 『量子力学の数学的構造』や 『量子現象の数理』のネタも 1 章で ある程度証明までカバーしつつ 量子力学の散乱理論に深く踏み込んだ本として 磯崎洋先生の「多体系シュレディンガー方程式」は なかなか面白いです.

  • http://tinyurl.com/hhqgr97

一般論・抽象論が必要とは書いたものの, 全部 $L^{2}$ 上で考えておいて問題ありません. 基本は全部 $L^{2}$ ですからね.

数学として, 微分方程式としての取り扱いなら, 方程式の解の存在といった議論も視野に入ります. 時間発展を考えるときは発展方程式の議論で, Hille-吉田の定理などはふつう抽象論レベルでやるでしょう.

偏微分方程式も主戦場は $L^{p}$, $W^{k,p}$ だとはいえ, 関数解析の一般論・抽象論は必要です.

これについてはやはり 偏微分方程式関係の本がいいですね. 関数解析の抽象論からカバーしてくれる本としては, もともとフランス語でそれが和訳された ブレジスの本がいいバランスです.

  • http://tinyurl.com/z97b2pf

上の URL は日本語版へのリンクです. しかし最近改めて英語で出た バージョンの方をお勧めしておきます.

  • http://tinyurl.com/hex4zzs

ページ数が増えているので「ちょっときつい」と思うかもしれません. しかしこれはフランス語の英訳ではなく, 新たに書き直されたバージョンです.

各章末の発展的な話題にも最近の進展が反映されていますし, 実係数しか扱われていなかったのが, 付録で複素係数までカバーするようになりました.

複素係数まで含めた関数解析の本としての 完成度も高まっています. そして分厚くなった理由の 1 つとして, 演習問題の回答がついたことが挙げられます.

もともと関数解析からはじまり, $L^{p}$ の不等式やソボレフ, Hille-吉田など関連する重要な話題もカバーしつつ, 変分を基礎に具体的な線型方程式の解析も やっていて広い範囲をバランスよくおさえた本でした.

その完成度がさらに高まっているので これは本当にお勧めです. その後非線型解析に進むにしろ, 基礎としておさえておくべき内容です.

関数解析の基礎があるなら Evans の本もお勧めです.

  • http://tinyurl.com/h7bbvpt

この本は次の 3 本立てです.

  • 線型非線型問わず具体的に解ける方程式の解析.
  • 線型方程式の理論.
  • 非線型方程式の理論.

具体的に解けるところで偏微分方程式に親しみ, 線型の理論でソボレフ含め 偏微分方程式の本格的な理論への地ならしをし, 最後に非線型方程式の基礎を見るという, こちらもバランスのいい構成です.

半群理論も線型の Hille-吉田だけでなく 非線型半群も議論していますし, その辺もいたれりつくせり感があります.

非線型方程式を射程に入れているなら, 読んでみていい本でしょう. 東大の偏微分方程式の研究室の 学部 4 年セミナーでも使われている本なので, その意味でも確かな内容です.

ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析

これはばっちり私の専門です. もう少し広げて話すこともできるのでしょうが, 半端な話をするよりは特化させることにしました. 量子統計は微妙ですが, 場の量子論は射程距離に入れて話をします.

私は新井先生の本と論文を読んで育ち, その中で抽象論もバリバリやってきましたし, その方面が基礎です. どうしても $L^2$ の具体的なところを離れた議論, いわゆるヒルベルト空間論が必要不可欠です.

これに関しては新井先生の本が一番です. まずは『量子力学の数学的構造』を読んでから 『量子現象の数理』を読みましょう.

  • http://tinyurl.com/gp8wzck
  • http://tinyurl.com/ksnfh69
  • http://tinyurl.com/olnudbs

ここからさらに量子力学方面に進むなら Cycon, Froese, Kirsch, Simon の本でしょうか.

  • http://tinyurl.com/zhqs85h

新井先生の本は奇蹟のように読みやすいですが, これはそこまで読みやすくはありません. 気合を入れないと読めない部分も増えます.

場の理論に行くならこれもまた新井先生の 『フォック空間と量子場』ですね.

  • http://tinyurl.com/hykydmp
  • http://tinyurl.com/gltyprc

『量子力学の数学的構造』, 『量子現象の数理』と来て 『フォック空間と量子場』を読めば, 作用素論的な方面の場の理論の論文が読めます. 少なくとも新井先生の論文はかなり読めます.

I, II と上下全部合わせるとページとしては 1700 ページくらいあるのでしょうか.

こう思うとかなりのボリュームに 感じるかもしれません. しかし新井先生の本は本当に読みやすいので 体感はもっと軽いです.

他の昔の本で半ページくらいの証明を 3-4 ページ程度に渡って 懇切丁寧に書いてくれているのだと思ってください.

実際に Reed-Simon と新井先生の本で 何かの定理の証明を比較したとき, そういうことがありました.

新井先生の本が読めなければ おそらく他の本は全く読めません. 他の本や論文を読むのは本当につらかったですからね.

ここに来ると一冊一冊がもう専門書のレベルで 1 万円越えたりしますし, 学生で大学の図書館を自由に使えるならともかく, 大人なら事実上本を買うしかありません.

余計なことは考えず新井先生の本を 買った方がお金を無駄にしないですみます.

私の専門が近い話で 書けることが増えてきたせいで またかなりのボリュームになりました.

また残りは次回に回します. 確率論は勉強しきれていないのですが, 最後の作用素環に関しては修士の頃の 研究室レベルでの専門なので, また多少詳しい話になるでしょう.

数学的にもいろいろ関係することが増えるので, 数学をやりたい人には楽しい話になるはずです.

ではまたメールします.

2017-02-15 関数解析の初学にいい本 その 2/相転移プロダクション

最初に: 前回の記事を張り直し

前回, 「Hilbert 空間メインの関数解析の初学には 日合•柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい」 という記事へのリンクを きちんと張っていませんでした.

いちいち検索するので面倒と思うので, 念のため張っておきます.

  • http://phasetr.com/blog/2013/09/27/hilbert-空間メインの関数解析の初学には日合•柳の『/

あと関連する記事ももう 1 つ.

  • http://phasetr.com/blog/2013/07/09/何度も言っている線型代数と量子力学と関数解析/

他にも関係する記事はいろいろあるのですが, 思い出せないのでまずはこの 2 つを.

前回の復習

それはさておき, 前回, 量子力学の勉強のために ヒルベルト空間論や関数解析を勉強したいと 思っている方から, 具体的に何をどう読もうか, という相談を受けたという話をしました.

それに対してまずは数学をやりたいのか, 物理をやりたいのかはっきりさせること, そして物理をやりたいなら, 現代数学観光ツアー以上の ヒルベルト空間論はやったところで無意味だから, さっさと物理を勉強しようと言いました.

数学的に厳密にやろうとすると, ちょっとしたことが既に研究最前線マターであることを, いくつか具体例を挙げて紹介しました.

厳しめのことを書きましたが, 私は実際にその方面, つまり数学的に厳密なスタイルで 物理をやる数理物理を専門にしていたので, どれほど大変なのかの実体験があります.

甘くはありません. しかし非常に楽しい分野ではあります. 少なくとも私にとっては.

というわけで書いていたら楽しくなってきて, とんでもないボリュームになりました. 1 回では長すぎるので何回かに分けて配信します.

今回からは数学よりの話をします. 量子系の数理といってもいろいろあります. それは扱いたい物理による話で, 質問された方がどの辺を意図しているのか, それがよくわかっていないので 何とも言えないところはあります.

先に質問者に聞けばいいじゃない, という話でもありますが, ある程度は網羅的に説明しようと思ったので, まあまずは情報を出そうという感じです.

新井先生の本の紹介

まず具体的に書名が挙がっていた 新井先生の『ヒルベルト空間と量子力学』と 『量子力学の数学的構造』に関して.

  • http://tinyurl.com/hccf47w
  • http://tinyurl.com/ksnfh69
  • http://tinyurl.com/gp8wzck

『ヒルベルト空間と量子力学』はきちんと 目を通していないし, 増補版は余計見切れていないものの, 少なくとも『ヒルベルト空間と量子力学』の旧版には スペクトル定理は使うだけであって, 証明が書かれていなかったはずです. その代わりに水素原子に関する議論が載っている, そういう認識です.

新井先生方面, つまり作用素論的な方面から言うなら, スペクトル定理抜きの議論には魂が入りません. 新井先生の本を読んで量子系の話をするなら, 最初から『量子力学の数学的構造』を読んだ方が早いですね.

水素原子の解析にしても, ハミルトニアンの自己共役性に関して, 続編の『量子現象の数理』で加藤-Rellich の定理からはじめて 1 章まるまる割いて議論されている程度には面倒ですし, 議論するべきこともたくさんあります.

『量子力学の数学的構造』を読む前提なら, 『ヒルベルト空間と量子力学』を読む理由をあまり感じません. 中途半端にやってもね, という感じ.

あともう 1 つ, 一般には『量子力学の数学的構造』を勧めないと書いた理由です. これは単純で, 記事ではヒルベルト空間メインとはいえ 「関数解析」に焦点を当てたからです.

新井先生の本, 特に『量子力学の数学的構造』と 続編にあたる『量子現象の数理』は, 極端なことを言えば, 新井先生の視点から量子力学に関わる数学にフォーカスしています.

関数解析の基本的で大事な定理でも, 本で扱っている範囲で使わないなら解説がありません. 『量子現象の数理』に ようやくハーン-バナッハが出てきますが, 証明がありません.

ハーン-バナッハの定理は ブレジスの本で一番最初に証明する定理ですし, 関数解析の魂となる基本定理の 1 つです.

ツォルンの補題を使うので, 集合論への耐性を必ずしも要求していない 『量子力学の数学的構造』からの流れでは 証明に触れられなかったのでしょう.

あとで触れる作用素環の話だと どうしてもハーン-バナッハがいるので, そういう方面に興味があるならやらざるを▼え

日合-柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』

  • http://tinyurl.com/oxv8czy

しかし日合-柳の本は, 付録まで含めると関数解析の本として立派に使えます. リース-マルコフ-角谷の定理までありますし, こちらなら関数解析をやったと言える内容です. スペクトル定理の証明もあるし, 量子力学の数理でもときどき出てくる コンパクト作用素の議論もあります.

量子統計やるならある程度トレースクラスの議論も 必要ですし, その意味でも無駄ではありません. そういうわけで日合-柳をお勧めしています.

数学的にもリース-マルコフ-角谷の定理を使って スペクトル定理を証明していてなかなか気分がいいです. リース-マルコフ-角谷の定理も証明も載っていて, 至れり尽くせり感が素晴らしい良書です.

関数解析の基本定理は都度やると 割り切るなら新井先生の本だけでもいいでしょう. きちんと勉強していれば数学力もつきますし, その段階で改めて関数解析のふつうの本を読めば, 苦労なく読めるはずですから, それはそれで一手です.

テーマごとのお勧め

さて, ここからは物理のテーマごとに 合わせた数学という方向で話を進めます.

現代数学探険隊の募集ページで 量子力学がいろいろな数学と関係していることを お伝えしたので, そちらを見た方は何となくはご存知でしょう. 一応募集ページのリンクも張っておきます. 長いので, 読むにしても 必要なところだけ読んでもらえれば結構です.

  • http://phasetr.com/mtex1/

ここでは詳しい話に踏み込むので, 私が知っている分野・範囲の話しかできません. 幾何は一切抜きにしてゴリゴリの解析方面の話です.

数学から言うと大きくわけて次の通りです.

  • 特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理.
  • シュレディンガー方程式などを微分方程式と見た上での微分方程式の解析.
  • ハミルトニアンを作用素と見た上で作用素論的な解析.
  • 作用素論・不等式処理に確率論を使っていく解析, 特に経路積分の解析.
  • 特に場の理論・量子統計で作用素環を使う解析.

これらは全て独立しているわけではなく, お互いに深く関係しています. 全ての数学をきっちり勉強しきるのは難しいですし, 好き・嫌いまたは得意・不得意があるので, ふつうはどれかをメインにします. 私は作用素論・作用素環論を使う方面で, 量子力学というよりも場の理論・量子統計に重きを置いています.

下の 3 つに関してはヒルベルト空間論を こってりやる意味があるし, その必要もあります.

まずはヒルベルト空間の一般論が それほど必要ないところからやりましょう. 大雑把に言って先のリストで 上から順にヒルベルト空間の一般論や, 関数解析の抽象論が必要になっていきます.

特に基底エネルギーを評価する不等式処理, 実解析的な処理

これは $L^{2}$ やソボレフ空間 $H^{1}$ が主戦場で, 特にそこでの不等式評価がキモです.

本としては Lieb-Loss の Analysis が 突き抜けています.

  • http://tinyurl.com/zr7fzex

これはこの分野の世界的権威である Lieb (と Loss) が応用の現場を意識して, とっつきづらい関数解析の抽象論には 一切触れず $L^{p}$ の中で議論しきろうと書かれた本です.

ヒルベルト空間やバナッハ空間上での 基本定理は全て $L^{p}$ で議論されています. ルベーグ積分の定義からはじまってはいますが, 事実上ルベーグ積分は既習が前提です.

この本, Lieb-Loss の「現場の数学」を貫き通しすぎて, 抽象論がないからといっても 全く簡単ではありません.

それは不等式評価が苛烈だからです. 具体的な $L^{p}$ や $H^{k}$ での議論であり, 物質の安定性のように ハードな評価が必要な分野への応用も意図しているため,

ふつうの数学書で滅多に見かけない 最良定数評価もきっちりやっていて そういう部分は本当にきついです.

ただ量子力学への応用を意識して, ソボレフ空間の議論も過度に一般化せず, 詳しい議論はほぼ $H^{1}$ と $H^{1/2}$ に限定しています.

後半で量子力学, 特にシュレディンガー方程式の 解析にも関わる, クーロンポテンシャルの解析や ポアソン方程式などの議論があった上で, シュレディンガー方程式自体の議論もあります.

固有値評価に関する詳しい議論もあれば, 量子化学で重要な密度汎関数でもある トーマス-フェルミ汎関数の議論もあって, そこまで含めて参考になります. まさに量子系の数理という感じです.

ただトーマス-フェルミに関しては 引用されている原論文を読んで方が わかりやすいですね.

以前, 実際にこの辺を専門にしたいと 言っている院生から Lieb-Loss の Analysis のトーマス-フェルミパートが わけわからん! という相談を受けたので, トーマス-フェルミに関する セミナーをやってこともあります.

どうしてもわからないところがあったので, 原論文をあたってみたら その方が遥かにわかりやすかったという話です.

物理として何をやるかは難しいところですが, Lieb-Loss を読み終わったあと Lieb の方面としては物質の安定性や BEC がとっつきやすいでしょうか.

BEC でも議論される Gross-Pitaevski 方程式は 非線型シュレディンガー方程式と呼ばれるタイプの方程式で, 非線型の偏微分方程式論をやるという手もあります.

何はともあれ同じく Lieb が書いた本として, Stability of matter と The Mathematics of the Bose Gas and its Condensation (Oberwolfach Seminars) を勧めておきましょう.

  • http://tinyurl.com/oaujpaj
  • http://arxiv.org/abs/cond-mat/0610117

どちらもかなり難しいです. 基本的に使っている数学は $L^p$ や $H^1$ と そこでの不等式評価だけで, 一般論・抽象論の出番はほぼありません.

また長くなってきたのでまた切ります. 残りは次回に回します.

2017-02-14 関数解析の初学にいい本/相転移プロダクション

はじめに: 今回の背景

読者の方からメール頂いた話で, 多分他の方にも役に立つだろうから いったん全体への返信という形でお返事します.

量子力学を深く勉強するために ヒルベルト空間論, 関数解析をやろうとしていて, それに対する本の選択とかそういう相談です. たぶん.

Twitter というか私のサイト http://phasetr.com に 「Hilbert 空間メインの関数解析の初学には 日合•柳の『ヒルベルト空間と線型作用素』をお勧めしたい」 という記事を書いていて, その中に『新井先生の『量子力学の数学的構造』があるが, 一般にはあまりお勧めしない』と書いたりしました.

  • http://tinyurl.com/oxv8czy
  • http://tinyurl.com/ksnfh69
  • http://tinyurl.com/gp8wzck

その方がこれを読もうとしていたそうなので, それでどうしようか, という問い合わせです.

ちなみにこの人, 量子力学の数理, 特に量子測定などで知っている人は皆知っている 小澤正直先生に相談して von Neumann の 「量子力学の数学的基礎」を勧められたものの, 古いから新井朝雄先生の「ヒルベルト空間と量子力学」を読もう と思っている, とかいう訳のわからないことを言ってきました.

世界的な研究者に相談しておきながら, そこで勧められた本を無視して ど素人が勝手に自分の趣味で本を選ぶという行為が そもそも全く理解できなくて衝撃を受けました. 世界的な研究者の時間を奪っておいて, その話を聞かないとか何がしたかったのか全くわかりません.

率直に言って, すごいことするな, 何のために小澤先生に相談したんだ, こいつは何を考えているんだ, と.

確かこの人, もともと量子化学の研究者だと 言っていたと思うのですが, ふだんからこんな感じでやってたのでしょうか. 謎です.

小澤先生を無視しつつ, 何で私なんぞの意見あてにするんだ, 重鎮の意見を無視するのにこっちの意見は聞くのか, 何なんだと.

それはともかく, 参考になるところはあると思うので 私の見解をまとめます. いつも言っていることとはいえ, あなたははじめて聞くかもしれませんし, 改めていうことにも意味はあるはずですから.

あなたがしたいのは物理ですか? 数学ですか?

究極的なところからはじめます. 数学をやりたいのか, 物理をやりたいのかをはっきりさせてください.

あくまでも物理がやりたいというなら ルベーグ積分や関数解析をいくらやっても無意味です. 本当に無意味です. 数学はさっさと捨てて物理をやりましょう.

何故無意味かというと, 学部 3 年レベルの量子力学で出てくる話ですら, 数学的に追いきれないことが山程あるからです. これは私やあなたが愚かだから, とかそんなちゃちなレベルではありません. 現実問題として研究マターです.

あなたが研究者なら「そうは言っても 皆がやっていない穴とかあるんじゃないの? そういうところなら何とかなるのでは?」 と思うかもしれません. 残念ながらそんな都合のいい話はありません.

優秀な人が一所懸命やってできるところは たいがい潰されています. 残っているのは本質的な ブレークスルーが 5-10 個ないと進まない, そういう感じと思ってください.

数学的に厳密なスタイルの限界

レーザー, 量子電気力学, 散乱

具体例を挙げましょう. 物理の学部 3-4 年でレーザーに関する話, 量子光学的な話をやります. これを厳格にやろうと思うと 非相対論的量子電気力学が出てきます.

そしてこれは 2017 年現在でも 数理物理の研究最前線です.

もう 4 年も前の話ですが, これよりもう少し簡単な Nelson モデルの散乱理論に関して Dybalski さんからメールを頂いたことがあります. この人はもともと相対論的場の量子論の散乱理論を 研究している人で, 具体的なモデルの研究ということで, 非相対論的場の量子論にも踏み込んできたようです.

多体系の量子論, 量子統計に関するプレプリントを arXiv に上げたときに「自分も多体系に興味があって 研究しているからぜひ論文を読んでほしい」というメールでした.

そのときメールで教えて頂いたのは次の論文です.

  • http://arxiv.org/abs/1302.5001
  • http://arxiv.org/abs/1302.5012

これ, 電子と場の相互作用系なのですが, 扱う電子は 2 つですからね. 1 つでも厳しいというのが現状です.

この時点でまともな物理の人なら 「数学的に厳密な話なんて 全く使いものにならないな」と 思うでしょう.

もしかしたらあなたは「これは場の理論だから 厳しいのでは?」と思ったかもしれません. しかしその見込は甘いです.

量子力学の散乱

例えば数学的に厳密な量子力学の散乱理論ですら, 2 体はだいたい何とかなったものの, 3 体で既に研究の最前線のようです.

  • https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/59/2/59_2_171/_pdf
  • https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/59/2/59_2_172/_pdf
  • https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/62/2/62_0622278/_pdf

最後の PDF が一番状況がよくわかるでしょう. 9 年前の話ではありますが, 3 体問題が難しいという絶望的な話をしています. 数学ベースであっても散乱理論の研究は 50 年以上続いているので, 一般の N 体に関する知見が この 8 年程度で爆発的に広がったとは思えません.

数学に厳密な物理の厳しさ

数学的に厳密な話など いくらがんばったところでこの程度です. もちろん数学サイドなら別にいいのです. 数学として面白いならそれでいいし, 実際磯崎先生がそれで数学会の賞を取るほどに 面白い話が展開できているわけですから. もちろん世界的にも認められている業績です.

しかし物理としては 2 体, 3 体の散乱で いくらシャープな結果が出ても, ご利益は何も感じないでしょう.

こんなことしたいですか? という話です.

現代数学観光ツアーで十分

というわけで, 物理がしたいという人はヒルベルト空間論や 関数解析をやっている暇があるなら, さっさと物理にうつりましょう.

現代数学観光ツアーで紹介したレベルの 話がおさえられていれば十二分です. 関数解析というよりも線型代数の適用範囲を もっと積極的に広げたよ, 一度慣れておけばいろいろなことを 統一的に眺められて便利だよ, そのくらいの認識でほぼ完璧です.

あなたは現代数学観光ツアーを知らないかもしれないので, 一応改めて宣伝しておきましょう. 次の URL から登録ページに飛んでください. 講座の説明もしてあります. 無料ですし気に入らなければすぐ登録解除もできます.

  • http://phasetr.com/mtlp1/

長くなってきので, 残りは次に回します. 次回は数学をやると決めた場合の対応です.

ではまたメールします.

層の基本的な構成: 現代幾何編/相転移プロダクション

アンケートで希望が多かった幾何について, 第 2 回を作りました. 次の URL から PDF をダウンロードしてください.

記述が粗いところもありますが, あとで適宜詳しくしようとも思っています.

これまでの文は次の URL からも取得できるので, 参考にしてください.

最近のメルマガはサイトにも転載してあるので ご興味あればこちらもどうぞ.

中高数学を微分方程式の数値計算から見直し, プログラミングとも絡めて展開している 中高数学駆け込み寺という企画についても載せています.

次回から多様体の話に入ります. 数学科の数学の基本的なスキルセットを持っていないと きついと思いますが,

逆にどんな道具がどのくらい必要なのか 測る目安にもしてください.

またメールします.

層と前層: 現代幾何編その 1/相転移プロダクション

先日, 現代数学観光ツアーとこちらの本家の 数学と物理のぶっ放し系のメルマガで 登録されている方の現状アンケートを取りました.

その結果で割と要望が多かった現代幾何に関して, いったん初回分を次のようにまとめました.

次の URL から PDF をダウンロードしてください.

本編は 1 番最後の 01_01 からはじまります. 前 2 つはイントロです.

現代数学観光ツアーでやった話, 特に代数-幾何対応を前提に進めています. 代数パートがまさに層なので, 層の話からはじめています.

いまのところ証明はあまり詳しくしていません. 必要なら次のセールの論文を読みながら眺めてみてください.

こうなると, むしろもっと全面的にセールの論文から 議論を持ってくればよかった気がしないでもありません.

理工系の教養レベルは大丈夫, そんな方が多かったですが, 集合論や位相空間論は大丈夫なんでしょうか?

その辺はもう全開で使いまくってるんですが.

現代数学観光ツアーでその辺の参考文献は紹介してますし, いいかと思ってやってしまっています.

超弦理論にアタックしようとされている方で まだ学部生の方もいらっしゃるようですし, このくらいの数学がいるんだよ, というイメージにもなるかと思って.

ある程度進めてきたら少しずつだれてくるし, 飽きてもくると予想しています. 誰がだれるって私がだれる.

そうしたら量子系のネタで物質の安定性でも やろうかな, と考えています. こっちはバリバリルベーグを使う ハードアナリシスになる予定です.

超弦みたいなのじゃなくて量子力学やりたいんだ! って方はもうしばらく待ってください. 交互に適度に進めていく予定です.


最近忙しくてどこに何を流したのか 忘れつつあるんですが, 中高生または中高数学が復習したい大人向け講座として, 中高数学駆け込み寺という企画もやっています.

ご興味ある方は次の登録ページから登録してください.

次の URL からはこれまでに配信した分の情報が辿れます. 物理, 工学から見たいわゆる役に立つ方面の話をしています. プログラミングに関する話もしているので, そっちに興味がある方もぜひ参加してみてください.

ではまたメールします.

数物小ネタ: バナッハ空間と潮汐力と熱力学と

週末でようやく平日に情報収集して仕入れた小ネタを 多少なりとも消化できました.

その辺はふだんブログにメモとして残しているばかりで あまりメルマガにまで流していません. 久し振りにその辺も流してみようかと思います.

バナッハ空間

発端は次のツイート

  • https://twitter.com/__dingdongbell/status/795158590247956480

バナッハ空間で「有界閉集合はコンパクト」と「有限次元」って同値なの

これに対して p 進大好き bot 答えて曰く:

@__dingdongbell なんかnが大文字になってしまいました。 Q^nは全体が有開閉かつ非コンパクトなのに有限次元。

@non_archimedean なるほどありがとうございます・・・ (ちなみに逆は成り立つんですか…?)

@__dingdongbell 「有界閉集合がコンパクト」→ 「0次元または体が局所体か有限体」なので、 体が局所体または有限体の場合のみ考えればよく、 その場合はバナッハ空間が直交化可能(l^2空間と同型)なので 正規直交基底を持つ場合を考えればよく、

@__dingdongbell 正規直交基底は有界離散部分集合を定め、 離散集合がコンパクトであることは有限集合であることと同値なので、 有限次元であることが示されます。

@non_archimedean 知らない事実のオンパレードでしたorzありがとうございますm(__)m

@__dingdongbell 「有界閉がコンパクト」→ 「reductionが有限次元」は簡単に言えるので、 最初から正規直交基底を持つことが分かっている状況なら もっと簡単に示せますけどね。

そしてしばらくやりとりが続いて私が首を突っ込みます.

@non_archimedean @__dingdongbell これ、 体が実数か複素数なら元の同値は成り立つのでしょうか? wikipediaには局所体に実数、複素数を含めることもあるとか 書いてあって付値あたりの話をまるで知らないので判断つかない状態です

@phasetr @__dingdongbell 僕は非アルキメデスのみ考えていましたが、 RとCでも成立します。 正規直交化可能性は成り立ちませんが、 同値性を示したいだけならリースの補題から同様に無限離散集合を作れば良いです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Riesz%27s_lemma

@non_archimedean @phasetr なるほど、ありがとうございます

これはもとの命題が実数と複素数なら成り立つと思っていた (証明も読んだはずだがパッと思い出せなかった) ので, かなり驚いて「実数と複素数でも本当に成り立つんだったか」と 不安になって思わず聞いてしまったという経緯です.

超有名な事実ですが非アルキメデスだと反例が あると知って本当に驚きました.

ちなみに R や C 上の議論は次の PDF, 特に最終のページの命題に綺麗にまとまっています.

  • http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~noby/pdf/fana/10/fana10_2.pdf

非アルキメデス体では本当に R や C 上の関数解析の 直観がまるで効かないことを改めて実感しました.

潮汐力

発端は次のツイートです.

  • https://twitter.com/hiroki_f/status/794530022354599936

PDF への直接リンクは次の通りです.

  • http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~noby/pdf/fana/10/fana10_2.pdf

確かに面白いんですが, これ, 序盤で次のように出てきます.

地球物理・惑星物理の専門家にとっては完全に解決されている問題なのだが、 門外漢たちが何度も誤解を蒸し返しているのである。

この話が中心になるのかと思っていたら, 物理の人間からの考察がメインで, 「いや, 完全に解決された視点で話した方が速くて正確なのでは」 という気持ちになりました.

こういうコンテンツももっと出した方がいいのだろうな, とは思っています.

身近なネタというか何というか. あまり「遊び」のある話ができていないのは ずっと懸念点として持っています.

一般の熱エンジンの効率とスピードに関する原理的限界の発見: 要は熱力学

これも適当に Twitter で見かけた話です. いくつか関連リンクを張っておきましょう.

  • 慶應のプレスリリース: https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2016/10/31/28-18691/
  • 何故か PC watch のニュースになっていた記事: http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1027753.html
  • プレプリント: https://arxiv.org/abs/1605.00356

PC watch の記事が端的にまとまっています. 慶應のプレスリリースもかなり丁寧に書いてあります.

時間がなくて読み込めていないけれども原論文も張っておきました. アンケートの中に「論文が読めるようになりたい」と書く方もいたので, 一応論文もぺたっと張ってみた形です.

プレスリリースなどにもあるように, 正確には熱力学の枠ではなく (古典) 統計力学の枠でやっています.

少なくとも平衡系の熱力学には原則として 時間の概念はないのでそもそも効率の話をできるわけがありません.

確率過程論と統計力学との関係だとか, 不等式で限界評価する議論だとか, いろいろなポイントがある論文っぽいので読んで楽しそうな感じはします.

ちなみに不等式による評価を結論とする 議論は熱力学では大事です.

プレスリリースにもあるように 「何かができない」という形での明確な主張を持つ言明が多く, その不可能性が不等式で表現されるタイプの理論だからですね.

潮汐力に続き, 物理小ネタももっと紹介したいし 論文の紹介もやりたいですね. そしてこの辺が楽に通じるように 読者レベルの底上げ用コンテンツの整備も急がれます.

がんばろう.

またメールします.