2021-07-24

勉強会での発見/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

申し訳ないのですが, 今回もリーマン面の話はお休みです.

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勉強会での発見

教えてようやくわかること

先日お伝えした通り, これまで公開で進めていた理論物理学者である松尾衛さんとの勉強会は, 今週から有料のクローズドな勉強会になりました. クローズドにしたので, ここでそんなにベラベラと書けはしないものの, いくつか私自身改めて勉強になったことがあり, それを共有しておきます.

先日, すうがくぶんかの紹介をしたとき, メールで感想をくれた方が 「こんなところで個人指導をしてもらうのもいいのかもしれない」と言っていました.

実はそこで「教わるのもいいが, 教えることでようやくわかることもある」という返信をしました. そしてまさに今回, それを体感しました. 何というか, わかっていたことではあったのですが, 改めて質問されて大事なことを再認識したというか.

写像の記法

一つは写像の記法です. 数学は定義域・終域を生真面目に書きます. それは定義域 (始域)・終域にもいろいろな情報が入っているからです. 物理やその他の分野では面倒だからなのか何なのか, そうした記法や運用を取り入れていません. それを無視するからいろいろな無理や, 数学の理解に齟齬をきたすのだろうという話をしました. これも以前どこかで誰かに話したことがあるものの, 改めて認識しました.

自分用の記録としてもここに残しておきたいと思います. もしあなたが数学をきちんと勉強したいと思っているなら, おそらくあなたの想像を遥かに越えて大事です.

もしあなたが数学を現代数学のスタンスできちんと理解したいと思っているなら, 記号の用法なども大切にしてください. 記号一つ・用語一つにしても適当に書いているわけではありません.

概念間の関係

もう一つは概念間の関係です. 記号に関して一つ質問を受けたのですが, そこから実数論・位相・関数論・作用素環など多方面に話が展開されました.

以前公開の勉強会でも何度か言った話ですが, 次のようなポイントに注意して勉強する必要があります.

誰かに何を教えてもらうとき, 大事なことは最後の「一人でもできるが人に聞いた方が遥かに速いこと」に注目する必要があります. これも細分するといくつかあります.

ある程度までなら前者は放っておいて進めておいて, 後で戻る手法で対応できます. しかし後者には本当に長い時間と労力がかかります. 人に何かを教わるときにはとても大事な要素です.

実際今回改めてやり取りして, 一つの記号の話の話から数学に対する大局的な展望をいくつかお話することになりました. そうした事情を知るのは, やはりよく知っている人から指導を仰ぐ利点なのだと改めて確認しました.

ちなみにこの個人指導は, 私が以前から作って販売している現代数学探険隊をもとしています. 自分が面白く役に立つようにと作ったので, 面白く役に立ち, 自分が講義しやすいようにできていて, 我ながら惚れ惚れしています.

最近進めている勉強

ここ半年程度幾何づくしです. リーマン面で多少のガロア理論が出てきたので, いい加減代数も勉強し直さなければいけないと思っています.

リーマン面との関係から代数曲線論も勉強したいところがあり, まずは可換環論のノートを雑に作りました. まだ細部が埋まりきっていませんが, 以前よりはだいぶ世界観の把握が進みました.

それ以外にも幾何のための代数として, いわゆる群・環・体の基礎, そして幾何のための線型代数として, リー環, 内部積・リー微分, ホッジ理論 (調和積分の局所理論), 複素微分形式あたりがあります.

外積代数はもう現代数学探険隊の解析学編で書いていることもあり, 線型代数方面はほぼノートを作ってあります. あとはノート自体のブラッシュアップと, 私自身の理解の定着です.

他には層とホモロジー代数, そして簡単な圏くらいまでのノート作りを考えています.

このノート群は幾何をやりたい人の誰にとっても大事なはずで, 早く公開したいところですが, あまりにも完成度が低い (タイポなども未チェック) のでまだ寝かせざるを得ません. もうしばらくお待ちください.

その他, いろいろな理由から確率論の勉強も再開しています. 新井先生が書いた汎関数積分の本での確率積分は読めるものの, ふつうの確率解析や確率過程の本は全然読めないので, 基礎からやり直す必要性を感じていて, いままさに基本的な本からノートを作っています.

量子力学の基礎知識

先日から堀田本をもとに量子力学の勉強会を計画しています. 猛スピードで私自身再勉強を進めていて, いまのところ 8 月中旬からはじめることを想定しています. もう何人かの方からお申し込みを頂いていて, あと数名は受け付けられそうです.

8 月中旬まで時間が空いてしまい, 単純に待たせしまうのも申し訳ないので, 受講希望の方向けの特設ページを作って, そこに堀田さんの本に書かれていない基礎知識なども載せることにしました.

興味のない方にいつまでも案内をお見せしていてもご迷惑でしょうから, 今後はしばらく量子力学系の話は勉強会用メルマガで展開します. もしあなたが「勉強会には必ずしも興味ないが, 量子力学関係の話は知りたい」と思っているなら, ぜひ登録しておいてください.

時間が空いてしまうこともあり, 最終的にまた勉強会受講希望も取るので, 登録したからといって受講を強制したりはしません.

ちなみに今後基礎知識コンテンツとして作ろうと思っている内容を簡単に箇条書きにしておきます.

今日配信予定の基礎知識メルマガでは, Twitter で量子力学基礎論の専門家で, 量子情報などの研究もされている木村元から頂いたコメントなども紹介しています. 量子情報からの視点や, 観測の理論と測定理論の違いについてもコメントを頂いていて, 非常に面白いです.

動詞sportの意外な意味/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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動詞 sport の意外な意味

「数学・科学の英語記事を読もうの会」で次のような文が出てきました.

あなたはこの sport の意味がわかるでしょうか? 見ればわかる通り動詞です.

一応 (オンラインの) 英和辞典にも関連する意味は書いてありました.

ただたまたま書いてあっただけで, やはりこの手の特殊な用法は英英辞典で調べた方がよいのだろうと思います.

以前も書いたか動画で話をしたと思いますが, 典型的なのは have や make のような基本的な単語です. 私の中でこうした単語の中に sport が降臨した瞬間でした.

一緒に勉強している K さんも「はじめてこの用法を見た」と言っていました. 上記オンライン辞書でも口語とあったので, 口語表現・会話の難しさを感じます.

まだ英作文ノートに転記しきれていないのですが, 雑誌記事には理工系向けによい例文が揃っていて, 読解+英作文コンテンツとしてこれは使えるな, という確信を深めています.

ある程度慣れていれば英語から和訳はできるものの, その和訳から英語を復元するのが難しい文がたくさんあります. さらに和訳を作るのは簡単でも, 生物学的にきちんと意味を取り切る難しさもあります.

私も高校では生物を履修していないので, その意味では正式に持っているのは中学レベルの知識なのですが, それだけでもある程度は読めます. しかし K さんにそれを話してみると, 意外と通じなかったりもしました. こうしたところから, 実践的に科学のいろいろな分野の知見を深めるのもありだな, という感覚もあります.

私も生物はもっとふつうに高校くらいの内容は知らないといけないとは思っていて, 以前多少勉強したものの, 当然その程度で身につくほど甘くありません.

大人向けに, 中高生物の内容を, 大学くらいの視点から深く切り込んでくれるコンテンツがほしいです. 地歴公民方面でもそう.

とりあえず, 数学・物理・プログラミング・英語でそれらを組み上げるのが いまの自分の一番の仕事だと思っていろいろやっています.