2021-09-18

数学・物理 明日はオンラインすうがく徒のつどい/相転移プロダクション

今回のテーマ

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明日はオンラインすうがく徒のつどい

以前アナウンスしたようにオンラインすうがく徒のつどいで講演希望を出して通ったので, 「理論物理学者に数学を教える上でのコツ」というテーマで話をしてきます. 役に立つ話ができるかと戦々恐々です.

二次元アニメーションのグラフに関して

オンラインすうがく徒のつどいで物理と数学の狭間ではまること, みたいな話をしますが, 数値シミュレーションに関連して, それとも関係あるような質問をもらったので共有します.

アニメーション:x, yで空間2次元なのはわかりますが z 軸のラベルをuとしているのがちょっとわからないです。空間2次元・時間1次元のケースだったはずがアニメーションが空間3次元になっているのはなぜなのでしょうか。

これは一次元のときに横軸が変数の$x$で縦軸は関数の値$u$, アニメーションの「コマ」の意味でも時間変化が時間発展で$t$を表しているのと同じで, 単に$z$軸が関数の値$u$になっただけなのですが, 確かにきちんと言われないとわからないのかもしれません.

これの前に空間一次元の熱方程式のシミュレーションもやっていてそちらには質問がなかったので, むしろ一次元だとなぜ何の問題もなく受け入れられたのかが大事なのかもしれません. 三次元グラフはあまり見かけないからというだけなのかもしれませんが.

何にしろわからないポイントは人によって様々というのを改めて実感しました.

プログラミングの地道な学習

今も新しい本が出続け, いろいろな形で陰に陽に使われていますし, 競技プログラミングも含めて遊ぶための裾野さえ広がっているので, データ構造とアルゴリズムの勉強を地道に進めています.

2021年に初の LISP でのアルゴリズム本が出たというので, それを買ってみたり, 以前買った競プロ系の本を読んだりしています. 大事なことはわかっていつつどうしても飽きてしまうので, 勉強会ネタにして人を巻き込んで無理やり勉強する理由を作って進めています.

ふと思ったのですが, 関数型言語によるデータ構造とアルゴリズム本があったのを思い出して読んでみたのですが, 不思議とこれは続きます. ちなみに Haskell を使った本です.

Haskell はデータ構造をデータ型で表現でき, 関係する関数も型から自然に導けてサンプルコードも読みやすく, 読んでいて楽しいです. そもそも Haskell が気に入っているというのはあります.

Haskell これ自身は純粋性からこういろいろと面倒なことがあり, Unix 系でないと困る点もあって, 実際には F# に移植していろいろやっています. 私の F# の腕では直接でなくも移植するのは大変なのですが, VSCode での REPL 連繋のよさもあって F# は本当に快適で気に入っています. LISP は LISP で私のメインエディタである Emacs との相性というか設定の楽さがあって, コーディング体験自体は非常にいいです.

語学の方で多言語を無理やり進めていますが, 言語の方もそれなりに多言語の特徴を見てみたいというのはあり, とりあえず飽きずに勉強を進められるようにすることを優先させています.

経路積分

量子力学レベルでの基本的な部分はノート作りが終わりました. この内容だとやはり Simon の Functional Integration And Quantum Physics が基本文献のようで, いつかはこれにもアタックしなければいけないと思っています. Simon は関数解析系数理物理の聖典, Reed-Simon のきつさの印象が非常に強く, この本もそういう厳しい感じの本でなければいいのだがと戦々恐々しています.

最近新しいことを詳しく勉強しようモードなので, 超準解析・超準確率論と量子力学という方向の経路積分の勉強をはじめました. 超準解析に関して適当に質問するとさっと答えてくれる知人がいるので非常にありがたいです. 超準解析は小澤正直さんが量子測定に応用しているそうなので, そういうところも勉強したいと思っています. 公理的集合論や数理論理もいつか改めてきちんとやりたいところです. 勉強したいことはいろいろあります.

最近モードチェンジしてしまって, リーマン面まとめ企画が頓挫していますが, これもそのうち復活させるのでしばらくお待ちください.

語学 フォーマルな英単語と外来語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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フォーマルな英単語と外来語

これは勉強会で小ネタとして紹介した内容でもあります.

Twitter で次のツイートを見かけました.

表は下に転載しておきました. 今週ワクチンの副反応による体調不良で時間がなくて調べ切れておらず, 上で引用したような意見もあるので必ずしも正確ではないようですが, いくつか明らかに informal はゲルマン系, formal がラテン系の語彙になっています.

異文化を受け入れた側にとって固い言葉が外来語というのはよくある話なのかもしれません. ラテン語にしてもその前の古代ギリシャ語の語彙をそのまま使っているケースがあります. 哲学や自然科学系統のラテン語単語はギリシャ語由来の単語がよくあります.

逆にフランス語やイタリア語などのラテン系の言葉での口語・文語がどういう区別になっているのかが気になっています. 日本語・英語についてはある程度まで外来語が formal な用途に使われると言えますが, 大元の外来語の方ではどうなっているのかがいまの私の問題意識です. 先のツイートでもゲルマン語内での informal/formal 問題があるので語感がかなり気になっています.

以前, Twitter で「自分の書く論文でもネイティブから見ると 『我々はこの手法を用いて研究しまちゅ』みたいな文章を書いていないか時々不安になる」みたいなのを見かけたことがあります. あまり気にしても仕方ないとは思いますが, 本当に気になるならフランス語・ラテン語を軽く勉強してみるという手法はあるのかもしれません.

あとこれもTwitterで見かけてメモしたはずがどこにあるかわからない事案で, 「日本語が完全に流暢に話せる外国人の知り合いに, 滞在許可的な公的な話をする役場に行く上で日本人の自分が付き合わされた理由」的なツイートがありました. その外国人が話せるのは完全に日常会話の語彙しかなく, いわゆる formal な言葉が話せず, formal に話すべきところで formal な語彙・表現を知らないデメリットを強く知った, みたいな話がありました. formal な表現を知るべき理由みたいなところでちょっと衝撃を受けました. 確か特にその知人がアジア系の若い女性だったようで不法滞在系の疑義を受けやすく, その状態で「だからそう言ってるじゃん」みたいな口語日本語しか話せないようだと, いわゆる TPO の問題で場に合った表現ができないと非常に印象が悪いわけで, 冗談ではすみません.

そもそもの話として, こうしたフォーマルな表現は日本語でも説明ができません. 日本人ネイティブでも個々の単語に関して判定はできても一般的なルールは説明できません. 英語であっても, 言語学者でもない限りルールは説明できないでしょう. きちんとした英語を話さなければいけない人や, そうしたニーズはあると思うのですが, いいコンテンツがないように思います. とりあえずフランス語・ラテン語を勉強するといいのではないかという暫定的な判断をして, これらを勉強しています.

informal formal
choose select
maybe perhaps
show demonstrate
look for seek
first of all to start with
live reside
whole entire
blow up explode
anyway nevertheless
sorry apologies
I think In my opinion
to sum up in conclusion
in the end finally
but however
point out indicate
go up increase
stand for represent
leave out omit
think about consider
seem appear
rich wealthy
ask enquire
buy purchase
climb ascend
check verify
get receive/obtain
go leave/depart
help assist
keep retain
see observe
stop cease
start commence
tell inform
try endeavour
use utilise/consume
want desire/wish for
good positive
childish immature
free release
buy purchase
give provide
ask enquire
so therefore
check verify
get by survive
say express

フランス語で遊ぼう

aller

これは異様な活用をする単語として有名です. あとで直説法現在と単純未来の活用表を載せておきます. 直説法現在は va と原形 aller 系の語根があり, 単純未来では ira 的な要素が語幹になっています.

Wiktionaryによると補充形 (ほじゅうけい、suppletive form) の動詞で, 補充形とは異形態の一種で他の異形態と音韻的な共通性のないものを指します. これはラテン語 vādō ("I go") が現在形を与え, eō と同義の現在能動不定形 īre が未来形と条件法を与えます. all- の形は中フランス語 aller, 古フランス語 aler (with subjunctive aill- and other forms with all-), 俗ラテン語 *alō から導かれたようです.

英語でも go-went-gone のように過去形で went という異様な要素があり, 基本単語は基本的なだけに, 意味としても形としてもよく使われるいくつか基本的な単語を巻き込んで一語になっていることがあります. 英語の know を調べてみてください.

aller の意味を少し掘ってみましょう. まず意味については中心的な意味は「行く」です. ここから物事や機械が「調子よく進行する・動く」ことや, 毎日の暮らしや健康状態が「順調に進む」ことも意味します. 例えば «Ça va?» (元気?) は有名でしょう.

他には服や家具などが人やモノに「似合う・調和する」ことにも aller が使えます.

英語で be going to がいわゆる未来形を表せるように, 助動詞的な用法があります. 一つは「---しに行く」という表現で, もう一つは近接未来の表現です.

近接未来は直後, または確実に起こることに使う表現で, 単純未来よりも主語の意志や主観が強く出ます. 例えば「お金を返すね」と言いたいときは近接未来で言うべきで, 単純未来で言うと「余裕ができたら返すかも」のような意味で取られてしまうようです. こうしたニュアンスを時制や助動詞で表現できるのがフランス語の面白いところで, 文学・言語表現上のポイントのようです. 近接未来を過去形にするときは半過去になるといった話もあります. フランス語は英語と比べて少なくとも文法上の時制は非常に複雑です. 私もいまだにまったく勉強が進んでいません.

ちなみに古い言語では「行く」と「来る」に区別がなく, 同じ単語になっているようです. 例えばロシア語はいまでもその古い特徴を保っていて, 実際「行く」と「来る」が同じ単語です.

直説法現在
人称 単数形 複数形
一人称 je vais nous allons
二人称 tu vas vous allez
三人称 il va ils vont
直説法単純未来
人称 単数形 複数形
一人称 j'irai nous irons
二人称 tu iras vous irez
三人称 il ira ils iront