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先週, あまり気分が乗らなかったため, 「こういうときはもう諦めよう」と思い, ずっと読まずにいた鬼滅の刃をやや遅めの時間から読みはじめたら, 止まらずに朝 4 時まで読み続けていました. 生活リズムが破滅したので日曜もめちゃくちゃで, もっと言えば先週一週間生活が破滅していました.
あれだけ面白ければ流行る理由もわかります. 煉獄さんが 400 億の男になるのもむべなるかなと言わざるを得ません. 現状シーンとしては義勇が何も言わず禰豆子を守るために命を張っていたところが一番好きで, 戦闘キャラ特性としては壱ノ型しか使えず, ただそれだけをぶち抜きで鍛え続けた善逸が好きです. NARUTO で言うと完璧ノーセンスのところから体術だけをただただ鍛え続け, イタチ・カカシ父・マダラなどの実力者だけに狙い撃ちで認められているガイが好きで, ああいうのは男の子が好きなやつだと心の底から信じています.
ああいうのを数学でもやらねばならんのです. 煉獄さんが言っていたように, 「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと 心を燃やせ 歯を喰いしばって 前を向け」, これです. しばらくビビって進めていなかったことがあるので, これを読んでやらねばならぬと覚悟を決めました.
先週の個人指導で出た話です. 定義で「---に関して閉じている」などとさらっと書かれているところ, 改めて見るとこれは相当数学に慣れていないと読めないというか, 何を言っているかわからないはずだ, というのを確認してみたらやはりできないね, というわかっていたことを改めて確認しました.
定義をきちんと読もうの会みたいな勉強会, 顕在化しているかどうかはともかく, 潜在的なニーズは相当あるのだろうと思います. 個人指導の方でいろいろ検証してみてまた大事そうなことを共有します.
ちなみにベキ集合のベキ集合はイメージできるか? みたいな話が出てきました. こういうのはプログラムでリストのリストみたいな形で, 有限集合に対するベキ集合を作ってみるといいのではないか, みたいなのも思います. 有限集合であってもベキ集合の時点で自力で書くのは大変です. 位相空間論の位相や, 測度空間論の加法族のレベルでさえふつうは大変です. 準基のような概念を考えると部分集合族の部分集合族が出てくるので, ここでつらいね, という話でした.
前回のメルマガに対するコメントで教えてもらいました. 名前のスペルと最後の University of Cracow, Poland からポーランドの人なのでしょう.
イントロダクションでピタゴラスの定理のいろいろな証明に関する文献と同じく, 代数学の基本定理の多彩な証明を載せた文献もあるという話があり, ここだけでも参考になるのではないかと思います. ちなみに素数が無限個存在する定理もたくさんの証明が知られています.
超準解析を突っ込む議論で「純代数?」という感じもありますが, この情熱がすさまじいと感心します. 本当にこの数週間で超準解析を勉強しはじめたので面白いタイミングで来たなとも思っています.
メモも兼ねて簡単に内容を紹介します. 何かしら連続性が必要だという話があり, 実は二種類の連続があって一つは the continuity of total order (これ何のことだろう?), もう一つは (多項式) 関数の連続性です. 後者を使わないのがこの論文での証明です. やはり実閉体の議論は重要で, 一般の連続関数ではなく多項式関数に対する議論さえあれば十分なことをうまく使います.
P.6 にアルティン-シュライアーで「実閉体上では全ての奇数次多項式は少なくとも一つ解を持つ」ことが示されていると言及があります. ふつうここに関数の連続性と中間値の定理 (連結な集合の連続像は連結) を使うので, ここをどう乗り切るかが大事とコメントされています. P.7 の命題1は「順序体上の多項式に対する中間値の定理をみたすなら $\sqrt{-1}$を付加して得られた体は代数的に閉である」が重要です.
雑に眺めた範囲で言えば位相の代わりに順序を使っています. Ordered field の記述は随所に見えます. 順序集合に順序を使って位相を入れる話もあり, ふつうは面倒だから位相を入れる部分をがんばって順序でおさえて処理したという話なので, むしろ位相または位相的な議論のおかげでどれだけ議論がシンプルになるかが確認できたと見るのがいいのでしょう.
次のツイートを見かけました.
Julia言語で物理系の数値計算をする本の原稿を無事編集部に送った。Juliaによる数値計算を一週間で学ぶ、というコンセプトで書いた本。量子力学、統計力学、固体物理学、などの計算を入れた
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) September 30, 2021
非常に気になっています. というか買います. 微分方程式などの近似計算だとあっと言う間に難しくなっていくので, 数学・物理・プログラミング系のネタで扱うのはどうなのかとは思っていますが, それはそれとして鍛えないといけないのは間違いないので.
Mathpedia が最近何をしているか全く追いついていないのですが, 純粋な数学については私よりもカバー範囲が広いはずなので, 興味がある方は利用してみてはどうでしょうか.
まあ, いい値段がしますが, 実際個人指導をやっていて, まじめにやるならこのくらいの労力はかかります. 講師・教師側からの持続可能性からするとそれはそうですが, これだと受講側の持続可能性に乏しいなと前から思っています. このギャップを埋めるようなのを何か考えないと, と思いつつ幾星霜です.
Twitter でちょっとやりとりしたので転載しておきます.
上でもコメントした「定義を読もうの会」でイメージしている内容の一つがこういう話です. こういうさらっと書かれていて, 分厚い背景知識がないと意味が取れないような話をちゃんと拾うのが大事だろうと.
物理の本なんですが重ね合わせの法則が成り立たないなら散乱が起こってるって言うのはどう言う理屈ですか?
散乱はふつう何かしらの相互作用の結果なので線形の理論は重ね合わせが起こるだけで互いに干渉しない(散乱が起きない)が、重ね合わせが成り立たない波は非線形波動だからその波が出会ったときには非自明な現象として散乱が起きている(からそういう現象が起きたら非線形波動を考えろ)という印象です
なるほど。ここで言う散乱って実際に古典的に粒子と粒子がぶつかる、というよりはポテンシャルとポテンシャルが相互作用を起こす現象ということですか?
これをポテンシャルと呼べるのかわかりませんが、(私の気分では)そのまま素直に「非線形波動方程式に従う波がぶつかり合うと散乱が起きる」と読むのだと思っています。あと粒子という言い方がかなり微妙で、非線形波動として有名なKdVで「粒子性を持つ波動現象」からソリトンが出てきます。
なるほど。ちょっと逆説的な言い方であることも否めないですがなんとなく腑に落ちました。
物理を無視すればクラインゴルドンは型的にあくまで波動方程式なので、まずは波動方程式として理解する方がいいのではないかというのと、粒子としてみるなら、相互作用しない粒子は衝突してもすり抜けるだけなので相互作用の視点は重要です。
なるほど、アプローチとしてはそれが正しいのかもしれないんですが
相互作用しない粒子は衝突してもすり抜けるだけなので というのはどう言う原理から導き出されるんですか?浅学なので初めて聴きました
これは衝突の定義と先の用法の曖昧さの問題で、いわゆる粒子が「衝突して」「散乱する」のはデルタ関数的なポテンシャルがあるからで、相互作用しないならもちろんデルタ関数的なポテンシャルもなく、「衝突(粒子が同じ座標に来る)」してもポテンシャルがないので相互作用せず、散乱もしません。
なるほど。うまくまとめてくれてありがとうございます。ちょっとこう言うことをアプリオリに仮定されるのは(もしかすると物理の方にとっては常識なのかもしれませんが)読み進める上で障害になるので解説助かります
集合・位相・実数論あたりを知らずに現代数学にアタックするのが無茶という程度に、学部物理の基礎体力なしに場の量子論のアタックするのは無謀なので、アプリオリな仮定というよりも「この本を読むならこのくらいの基礎知識・体力は仮定する」というところのミスマッチ感があります。
なるほど、失礼しました
物理なり他の専門の人が学部二年くらいであっても数学の本を読むとき、このくらいふとした一文でハマるのだと思ってもらえれば。この辺に関する話をこの間オンラインすうがく徒のつどいで話した所です。
なんか逆説的だけど、物理だと近接相互作用をする事を「衝突」と言っている気がするよ(´・ω・`)
今リプライしたのですが、「点粒子の衝突」には「同じ座標に来る」ことと「デルタ関数的なポテンシャルがあってそれで相互作用する」の二つの意味があり、同じ座標に来ても自由粒子だと相互作用・散乱の意味での衝突はしない、だというアレで空気を読んで使い分ける感があります。
確かに暗黙にそういう仮定を置いているとするのが妥当っぽいですね(´・ω・`)
自由粒子の統計力学というか気体分子運動論というか,その辺りだとさらりと流される邪悪なやつなのかもしれません。
統計力学だとさらに散乱と平衡への緩和の問題も絡むのにふわっとスルーしがちですね…(´・ω・`)
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これは古フランス語 devenir, ラテン語 dēvenīre (present active infinitive of dēveniō) に由来し, dē + veniō と分解できます. もちろん前回の venir に由来する言葉です. この de はフランス語の前置詞でもある de で, of や from のような意味があります. 他の単語, もっと言えば日本語と英語でもよくあるように, 英語と意味が一対一に対応するわけではありません.
意味は「---になる」で, 英語で言うと become の意味です. 単純に of + veniō と思うと意味不明ですが, ラテン語で arrive のような意味を持つため, 「何かに辿り着く」から「辿り着いて何かになる」というふうに意味が発展したのでしょう. もちろん語源をもっときちんと掘らないとこの意味の展開が正しいかはわかりませんが, 何にせよ語幹を育てるのは大事です. 他にも Wikitionary のラテン語で Related terms を調べてみるといいでしょう. 明らかに英語で良く見かける単語が並んでいます.
明らかに英語にもある接頭辞があります. これらはフランス語を経由してラテン語が英語に入っているのです.
英語だけで見ていると関係性が見えない単語の関係性が見え, 英語・フランス語単語を暗記する上でもとても役に立ちます.
現代フランス語としての意味・用法をもう少し説明します. 属詞 (英語でいう補語) の位置に来るのは原則として形容詞か, 職業・みぶん を表す無冠詞の名詞で, 「(形容詞が表す状態) になる」, 「(ある職業・身分) になる」が基本的な使い方です. 職業名でも形容詞がついて個別化すると不定冠詞がつきます. 「彼の妻になる」 devenir sa femme のように所有形容詞がつくこともあります.
ここで無冠詞の名詞と書きましたが, 冠詞も言語ごとに意味・用法に微妙な違いがあります. フランス語には部分冠詞という英語やドイツ語にはない冠詞概念があれば, 不定冠詞にも複数形があります.
疑問代名詞 que を使った表現もあります. 特に「何になるのか」, つまり事態や状況が「どうなる」のか, 人が「どうしている」のかをたずねられます.
他には非人称構文も持ちます. «il devient (ça devient) de plus en plus + 形容詞 + de + inf»で, 「---するのはますます (形容詞の状態) になっている」という意味です.
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