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「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
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現代数学観光ツアーへの衝撃のコメントがあったので回答します.
辞書を引いたりしたがヤコビアンが何なのかがいまいちわからない。
もちろん岩波数学入門辞典などもあるとはいえ, ふつうの人が「辞書」と言ってこれらの数学辞書を指すとも思えません. ふつうの辞書は数学用語を調べるためには出来ていないので意味がありません. よく間違いが多いと言われはしますが, まだWikipediaの方が役に立つでしょう.
よく言われる中で一番直観的なのは変数変換での体積の変化比で, 上記Wikipediaにも書いてあります. ただ, これにしても具体的な座標変換で計算してみて実感しないとピンと来ないはずです. 二次元でも十分で, もっと言えば一次元でもいいとはいえ, 何をどう具体的に計算すればその気分が掴めるかは人によります. 何がピンと来る例になってくれるかが人によるとも言えます. もっと言えばある例が適切な例であることを認識するために一定の「レベル」が必要です.
何にせよ, 数学用語を(ふつうの)辞書で調べても意味はないのでやめましょう. あくまで数学の概念なので数学の本または数学辞典で確認すべきです. 数学辞典ならともかく, どの分野のどんな本に定義が書いてあるかわからないこともあるでしょう. 現代数学探険隊は一冊の「本」にいろいろな分野を詰め込んだため, 作っているうちにそうした辞書的な使い方もできると気付いたので, 案内ページにも書いてあります. 安くないので簡単にはお勧めできないのが難点ですが.
こういうのも言わないと通じないらしいというのが今回の衝撃ポイントでした.
言われてみればという感じで気付いていなかったので, 自分用の備忘録も兼ねてTwitterのやりとりを引用します.
なんかめちゃくちゃ混乱してきた。逆に完全不連結なものも位相群と呼んだら、位相群でない群ってなに?という気がしてきますね。(群であり位相構造の入らないもの)
付加構造の考え方で混乱しているかもしれませんね。
厳密には ・位相空間は「位相の入る集合」ではなく「集合と開集合系の順序対」 ・群は「群演算の入る集合」ではなく「集合と群演算の順序対」 と定義されるのと同様に、 ・位相群は「位相の入る群」ではなく「群と位相の順序対」 と定義されます。 なので群は(群と位相の順序対でないので)位相群ではありませんし、位相群も厳密には群ではないです。ただ ・直線Rとその加法+の組(R,+) ・(R,+)とユークリッド位相τの組((R,+),τ) を全部Rと略記するのと同様に、位相群(G,O)も第1成分である群Gと同一視することで位相群を群とみなします。 こうやって「位相群を群とみなす」のは第1成分を取り出す(第2成分を忘却する)だけなのであまり問題が置きないのですが、逆向き(群を位相群とみなす)はみなし方を固定するごとにしか意味を持たず、それをしないと「群はいつ位相群か?」という問いが意味を持たない感じです。
参考になる人もいるでしょうからシェアしておきます.
いままさに勉強中のところでよくわかっていないところだったのでメモ・シェアです. わかっている人にはいまさらなのでしょう.
このあたり, 私はまだ理解しきれておらず今まさに再勉強中です.
ベルの不等式(の破れ)の理論とエンタングルメント、基本的に別の話なのは、勉強している人には常識で、ちょっと言葉だけ知ってる勢は弁別してない。 一般向けの本で「エンタングルメントの発見!」とか大字が踊ってて、中を見るとベルの不等式の話でした。。。というのはありがち 物理学者でも、結構この辺はてきとうだったりする。ベルの不等式破らないエンタングル状態もあるけど、そういうのは両者の定義が同じだったら、起こり得ないよね。 例えば、アインシュタインはエンタングルメントを!っていうのはきっとEPRの思考実験のことだろうけど、あれに繋がるのはベルの不等式の破れの方だと思う。。。 シュレーディンガーはエンタングルメントという言葉を使ってた!というのはきっと正しいんでしょうけど、言葉が同じだからなに?という感想。 もちろん、(Efの意味での)エンタングルメントがないとベルの不等式は破れない。直感的にも見るからに関係ありそう。なので、両者をどう関係づけようか皆考えているが、悩ましい話題だということ。 例えば、抽出エンタングルメントがゼロだけれども、ベルの不等式を最大限破る状態もあります。
エンタングルしててもベルの不等式破れるとは限らないけど、ベルの不等式破れるにはエンタングルしてないといけない(んだったよね?) はい。それはおっしゃる通りです。ですから、両者に何か関係があるとは皆思うわけですが、部分的な成果はあるけれど、悩ましい問題として残っています。 そもそも、ベルの不等式は量子力学すら仮定していませんから、理論の作りが全然違って、両者の理論はかなり異質です。
Twitterで絡んだような形になってしまって申し訳なかったのですが, 面白かったのでシェアします.
ルベーグ積分って何をもって理解したと言っていいのかわからん。具体的な計算はリーマン積分を使うはずなので、関数空間とかを決めて測度論的な議論、証明に使えれば最低限の理解と言っていいのかな?
最低限は、とりあえずは用語に怯えずに、積分はリーマンで計算するのと同じ、測度は体積、と思って論文を読み進めることができること。。じゃないですかねー その次は、フビニの定理の主張を理解すること(証明はともかく) その次が、ルベーグの優収束定理とその前後を押さえること。できるかぎり証明含めて。(実解析に限ると、リーマン積分よりそんな主張が強くなるわけではないが、どうせ忘れてる人が多いとおもう。。。)
数学だと実解析はバリバリにルベーグ前提で議論する分野だと思うので数学人と違う言葉遣いをしていそうな雰囲気を感じる。
そりゃそうでしょ。ここで指摘したのは、リーマン積分でもほぼルベーグの収束定理に近い定理がなりたつし、教養レベルの教科書にも書いてあるということ。
「ほぼ近い」で指す内容が全く噛み合わないミスコミュニケーションが起きている、という感想です。 類似の定理と言われればそれはそう、と思うが、近くはないのでは?という言語感覚がある。
工学などへの応用が念頭にあるので、関数はリーマン積分可能かつルベーグ積分可能な関数に制限し、測度はルベーグ測度で、測度ゼロの点については良きにはからえ、ということで。 類似かどうかは、そういう局面での極限の入れ替えをするにあたって、より強力な技を供給してくれるか、という視点です。
緩募 類似の定理・定義・概念だが近くはないモノ。なかなか伝わらなさそうだが例:フォンノイマン環上の正規状態に対して単調収束定理が成り立つ(実際は正規状態の定義、非可換積分論)だが、普通のルベーグ積分と近いか?と言われるとそういう話ではない気分。 もう一つの例:非可換幾何。可換C^環に対してコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環が存在する。非可換なC^環に対しても類似の議論をすることで「非可換な空間」を構成・想定する。類似の議論ではあるが「近い」が何をどう指すのかがそもそもわからない。 ABC予想の多項式類似があったか。類似だがあまり近くはないのではと思うが、数論勢はどう思うのだろうか。
ABC予想に限らず、数論だと数と(特に有限体上の)多項式の類似性をもとに様々な対象がしばしば研究されていますが、似てたり似てなかったりするので(だから面白いわけですが)、近いかと言われると微妙です
この類似と遠近感、多分他の分野にもあってそこが擦り合わないのは常にコミュケーションの障害なのだろう感があります。極端にいえば物理的正当化はともかく古典力学と量子力学は正準交換関係の点で類似といえば類似の構造を持つものの似ているかといえば全然似ていない判定でしょう。 数学でもこれに触発された非可換化・量子化は適当な(それもある程度広範な)分野でよく話題になっていると思いますし、q類似のようにまさに類似という言葉も使いますが、近いかというとそうではなく、類似なのに遠いのが面白ポイントでさえあると思っています。
ひどい勘違いをしてはじめ解析関数を含む集合をピックアップしてしまいました. 注意して読んでください. 鍵アカウントとのやりとりなので適当に抜粋します.
実解析的関数に含まれる面白い部分空間は何かあるか? $L^p$はどうなのか?
まずは連続関数環があります。非コンパクト集合上では実解析的でも有界(特に可積分)とは限らないので、必ずしもL^pは含みません。コンパクト集合上(またはそこへの制限)なら連続関数の有界性と有界収束定理によって可積分でL^pを含みます。 「含みます」ではなく「$L^p$に含まれます」でした。
コンパクト集合上だと実解析的なら連続で連続なら$L^p$?
そうです。正確にはコンパクト集合上の連続関数は有界かつルベーグ可測で、これと有界収束定理によって可積分性が出ます。可測かつ有界なことから$L^\infty$なことがわかり、有界(ルベーグ測度有限な)集合上で$1 \leq p<q$なら$L^q \subset L^p$も別途示せて、特に$L^\infty \subset L^p$です。
ちなみに非有界(ルベーグ測度無限大)な集合上で$L^p$と$L^q$に共通部分はあっても包含はありません。共通部分としてはコンパクト台の連続関数などがあります。この事情は幾何でコホモロジーにもはねます。リーマン幾何・調和積分論でコンパクト性(閉多様体)を仮定するのは、積分によるペアリングで可積分性と微分可能性がうまくマッチするからです。非コンパクトだと一般に可積分な微分形式を別に考える必要が出て来ます。(もちろんドラコホやるだけでも究極的には楕円型偏微分方程式の処理で関数解析・ソボレフがバリバリ必要ですが)
あと、同じ事情で解析関数は局所可積分ではあります。局所可積分性は関数をシュワルツ超関数と見なすときに大事な要件で、これはこれでそれなりの発展性があります。 考えてみれば可積分な正則関数はヘルマンダーのディーバーで基本的な対象なので、実ではなく複素になってしまうものの、解析性(微分可能性)と可積分性の食い違いは関数解析とその応用での一つの大きなテーマだと思います。
先日からsicmutilsなど数学・物理系プログラミングに本腰を入れはじめました. ドキュメントが足りない(らしい)というのもあって, 質問に非常に親切に答えてもらえていて質問を続けていたらついでにバグも踏んでいたようです.
本のプログラミング部分を全部通せたら, 新ためてFunctional Differential Geometryのテストも読みつつ, GitHubにコードを上げる予定です. 自分のリポジトリに上げるよりも, 少しがんばってsicmutils本体のテストコードにコントリビュートしたいとも思ってはいます.
これをやっていて, やはり数学・物理・プログラミングまわりならライティングが割とできると改めて実感しました. もちろんまだまだ力が足りていません. 語学メルマガもやっているように, 理系のための語学, さらにはせめて数学・物理・プログラミング用の語学コンテンツは整備しなければと思っていたところです. ちょうどいいタイミングだと思い, 本格的にライティング・スピーキングの勉強をはじめました.
最近は量子力学基礎論, または量子情報・量子測定系の勉強もはじめたので, これの洋書や論文・プレプリントを自分で翻訳して, そこから逆に元の文章を復元するといった形の自分用コンテンツを整備しています. 必ずしもゴリゴリの一かたまりの論文を書かなければいけないわけでもないので, DeepLなども使いつつ, 和訳した上でさらに英語に再翻訳し, 意味を損なわずにシンプルに書き直し, 日本語に再翻訳してさらに調整して, といった形で自分でもさっと書けて話せる英文を作っています. 毎週やっている英語の勉強会には本当に翻訳をやっている人も参加してくれているので, そこでも取り上げてブラッシュアップしようかとも思っています. ついでに量子情報・量子力学の勉強会という名の私のさらなる学習機会も作れそうで, 楽しみです.
幾何やその他やりたい物理・数学の勉強に手が回らなくなっているものの, 堀田量子以来量子力学の再勉強がテーマになっているため, いまは量子力学系の勉強と語学に集中するべきなのだろうと思い, その方向に切り替えています. 木村太郎さんのランダム行列の深掘りも気になっていますし, 線型代数のコンテンツの再編集もあります.
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
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勉強会として科学雑誌を読む会を開催してナショジオキッズの英文を読んでいます. 日本語の感覚で考えればわかるように, 「大学受験英語」の感覚からは恐ろしく難しい単語であってもさらっと出てきて驚くこともあれば, 読めば読むほど英語らしい面白い表現がたくさん出てくることもあり, 勉強になる上に楽しいです.
中高生向け, 特に中学生用のコンテンツとしては難しすぎるとは思う一方, 程々の長さなので理系高校生向けのコンテンツとしてはかなりよさそうです. 読むのもさることながら, やはりライティングに使いたい文がたくさんあります. 次のテーマ, ライティング・スピーキング修行では多様な文に触れるために日常系の文章が散りばめられた本で勉強しています. あえて選んでいるからとはいえ, どうしても面白くなくてつらい部分があります. その一方, 勉強会の形で一人の孤独さを解消しつつ読んでいることもあり, 科学雑誌の文章はかなり楽しく取り組めます.
勉強会でいろいろ聞いたり確認したりしつつ進めていることによる部分も強そうで, 勉強会・セミナー方式の利点を改めて実感しています.
数学・物理系メルマガでも書いたように, プログラミングを本格化したため, そのやり取りで英語ライティングが必要な局面が本格的に出てきました. どちらにしろコンテンツは作らないといけない上, さらに鍛えないといけない部分でもあるため修行を再開しました.
ここで作った英作文コンテンツも適当なタイミングで勉強会投入しようとも思っています. 私自身非常に楽しみです.
Wiktionaryを見るとゲルマン語の古い形をそのまま残した形のようで, 対応する英語は廃れてしまっているため英語からの感覚だとすぐにはわからない単語です. ただラテン語のvertere (to turn)と同根のようです. ここでverto, そしてDerived termsを見ると, adverto, convert, pervert, versionという形で英単語と関係することがわかります.
私が教わっている言語学者いわく, ドイツ語はがんばって掘っていけばゲルマン語の名残りを残す英単語の何かと必ずぶつかるそうなので, その英単語を探りたいと思って幾星霜. 「ドイツ語語源小辞典」や「スタンダード英語語源辞典」がドイツ語語源探索にいいとずっと言われていますし, 買って地道に調べるべきであるところ, ずっとさぼっています.
それはそれとしてドイツ語のwerdenをもう少し掘りましょう. これは非常に不思議な単語です. 本動詞としてはbecomeにあたる意味を持ちつつ, 未来表現の助動詞や受身の助動詞としても使えます. WiktionaryでもDWDSにFurther readingのリンクがあります. ただこれは完全ドイツ語のサイトなのでなかなか読めません.
最近ようやく無理やり機械翻訳してでも概要を掴むという割り切りを受け入れました. 今後は多言語学習に機械翻訳もうまく取り入れるべきなのだろうと思っています. 私が把握できているのはヨーロッパ, それも西欧系の言語のごく一部です. 多少なりとも多言語・文化をまたいでその最奥を覗きたいと思うなら, 機械翻訳をうまく活用できるパワーが必要で, その知見も貯めないといけないのでしょう. やるべきことは山ほどあります.
勉強会のときに改めてラテン語ページを見る機会がありました. そのときミサイルにつながるmissilis, permitにつながるprētermittō, commit, omit promise, submit, transmitなどもDerived termsにあり, 思った以上に世界が見えていないことに気付きました. 楽しいですね.
もちろん英語のserveにあたります. 大きく見れば意味も同じで「仕える・給餌する・役立つ」といった意味があります.
特に人や国, 職務に仕える・奉仕することがもともとの意味で, 他動詞としてservir sa partie (祖国に尽くす), servir Dieu (神に仕える)という表現があります. しかし日常で一番使われるのは「給仕する」, つまり食べ物や飲み物を出す意味だそうです. この意味ではservir un clientのように人が目的語になることもあれば, servir du vin (ワインを注ぐ)のように食べ者や飲み物が目的語になることもあります.
自動詞としては「役立つ」の意味があり, servir àで「誰かの・何かの役に立つ」という意味を持ちます. 前置詞àに不定代名詞や疑問代名詞が続く表現があり, 定型表現として覚えておくと役に立ちます. いわゆるto不定詞のservir de ---もあります.
代名動詞se servir de ---では「---を使う」という意味があります. これはにはse servirで「自分で食べ物・飲み物を取る」意味もあり, «Servez-vous.»とあれば「どうぞご自分でお取りください」と人に促すときに使えます.
名詞形のserviceも動詞に対応した意味があります. これも英語と同じです.
過去分詞はservi, 現在分詞はservantで, -ir動詞なので活用も次のように特殊です.
単数 | 複数 |
---|---|
je sers | nous servons |
tu sers | vous servez |
il sert | ils servent |