2021-11-13

数学・物理 微分幾何プログラムは一段落?/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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整数からの実数の構成

以前紹介したかもしれませんが再びツイートを見かけたので再紹介します. 前回きちんと読み込んで内容を紹介しようと思っていたものの, 時間が取れませんでした.

前も紹介したけど、数学科の学生に実数の構成を教える際にオススメの流儀の一つがこの方法。 なんと、有理数を経由せずに整数からいきなり実数を構成できる。

[math/0301015] A natural construction for the real numbers

有理数から距離を使って実数を構成するのが現在標準的な方法だが、それと同じく同値関係は用いるので、同値関係に習熟している必要はある。

Function Differential Geometryとsicmutils

ここしばらくsicmutilsを使ったFunctional Differential Geometryの実装確認を進めていて, ようやく一段落しました. 残課題はまだあってしかもSussmanへの問い合わせが必要でさえあるようです. とはいえテストがなかったChapter 10-11にもテストが入りました.

まだプログラムを追いかけただけで, これから本の中身は全く追いかけられていません. それでもまずはテストを読んで実装, 特にClojureのお作法を改めて確認するのが先決です.

これが終わったらいい加減アルゴリズムの勉強に戻ります. この数ヶ月でかなりLisp系の言語の読み書きに大分慣れました. せっかくなのでもう少し詰めたいですね. アルゴリズムもHaskellと並行してClojureでも書いてみようと思っています.

もともとsicmutilsはSICPの古典力学版でもある(らしい)SICM用のライブラリなので, いっそSICM読んでみるのもありなのかもしれません.

量子力学の基礎

現代数学探険隊では構成上, 線型代数の基本的な議論が散在しているため, それをきちんとまとめた章を作ろうとは前から思っています. 最近は量子力学でも有限次元の量子力学, 特に量子情報・量子測定的な議論が非常に重要になっているそうなので, それと絡めて私自身再勉強しつつ整理し直す方向で進めています.

これもやはりプログラミング利用の計算もセットにしたいと思っていて, 検算も兼ねてちょこちょことJuliaでのプログラムも作っています.

まだ量子情報の面白さが何もわかっていません. 一方で量子測定は前から非常に興味があり, かつ面白いです. これは小澤正直さんの文献があり, すぐに「数学」の話に持っていけるからなのだろうと考えています. 量子情報だと情報の話の比重が重過ぎて「早く数学(線型代数)に入れ」と思っているような気がします. もっと言えば情報理論の面白さもわかっていないのでしょう.

とはいえ, 量子力学・物理からしても量子情報は根源的に大事という話になっているそうですし, 歯を喰いしばって勉強を進めています. コンテンツ整備も兼ねてNielsen-Chuangの解答を作るために読み進める体で, Nielsen-Chuangを読んでいます. 演習問題を見ているとこれもきちんと具体的な計算が必要だ, と思うところがよく出てくるので, それらも計算問題として自分のメモに突っ込んでいます.

ちなみに量子情報では抽象的なテンソル積が本質的に重要です. 量子情報としてはディラックのブラケット記法で吸収できてしまう面があるとはいえ, 「テンソルなんて相対論系の添字だけ計算するスタイルでやれればいい」といった態度がもはや通じなくなっているのは時代の変化を感じます.

ついでに言えば古典情報理論はなかなかすさまじく, 有限体$\mathbb{F}_2$上の線型空間も出てきます. 量子情報の比較対象として有限体上の線型空間の議論も必要なので, 数学サイドとしては線型代数の抽象論の導入に使えるネタが増えて便利な世の中になっているように思います.

符号理論は現代数学観光ツアーで一つ節を割いてコンテンツを作っているので, 興味があれば読んでみてください.

有限体上では実数・複素数のような形では内積・ノルムが定義できません. しかし情報理論的に自然な意味を持つ距離としてハミング距離が定義できます. これも符号理論の面白いところです.

符号理論と言えば代数幾何が応用される分野としても有名です. 量子暗号と比較する対象として古典暗号があり, ここでも代数幾何・数論が出てくるため, 純粋な数学・暴力的な量の計算・プログラミングでの実現などいろいろな分野が交錯します. 量子情報と言われるとまだ面白さは見えず, 単に情報理論と言われても同じであるものの, 自分が興味関心を持てる点も見えているので, これを上手く絡めてコンテンツを作れないかはずっと考えています.

語学 英語学習と数学・物理・プログラミング/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 先日から引き続き, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

今週は勉強会がありませんでした. プログラミング関係の現実的な要請もあり, ここ最近は英作文・スピーキング・音読練習をがんばっていて, 他の言語の探求がだいぶ疎かになっています. せめてここくらいは何とかしようと思ってやっています.

どうせならやろうと思いつつ全くできていないロシア語・中国語・アラビア語あたりをやった方がいいかとも思っています. どれも広い意味で理工系ネタで遊ぶなら大事な言語だと思っています. アラビア語はアラビア文字自体も勉強しないといけません. やりたいことは山程あるのですが, まずはサボり倒していた英語をもっとやらないといけない感じが出てきたので, しばらく英語をがんばります.

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ドイツ語で遊ぼう

基本的に語源や関連語はWiktionaryとDWDSで調べています.

mit

これは前置詞で意味としては英語のwithにあたり, 英語のmidと同根です. 「生徒たちと(議論する)」のように相手を表す他, 「バスで(行く)」のように「手段」を表す用法もあります.

もちろん英語のmidは「真ん中」のような意味です. 手段の意味は媒介物としての「真ん中」なのでしょうし, 相手の意味の用法は自分と相手で一体という意味なのでしょう.

ちなみにwithはwithは印欧祖語・ゲルマン祖語から来ている言葉で, ドイツ語内部でもwider (against), wieder (again)と関係があります. 中英語でoppositionからassociationに意味が変わり, これがゲルマン語の古い形に由来するmidを置き換えたようです. 確かに古い形を残すドイツ語ではwiderがagainstの意味で, 本当にoppositionの意味が残っています.

調べてもまだピンと来ていないものの, againとagainstの違いがよくわかっておらず, もう少し突っ込んで調べたいと思っています. ちなみにWiktionaryいわく, この-stはamong->amongst, mid->midst, while->whilstの-stと同じ-stのようです.

auch

これは英語のalso, tooにあたる副詞です. これもゲルマン祖語に由来する単語で, オランダ語やルクセンブルク語, スウェーデン語, アイスランド語などにも同根の単語があります.

古い英語でもekeという単語があり, これと同根のようです. chとkの類似は見えます. やはり古い英語を追いかけるとドイツ語と英語の共通点が見えます. ちなみにドイツ語でのalsoはso, thusといった意味があります.

können

これは助動詞で英語でいうcanです. ゲルマン祖語・印欧祖語に由来する言葉で, 印欧祖語の*ǵneh₃-はknowにあたる言葉とのこと.

知ることとできること, 可能性がつながるというのも示唆的です. フランス語で「知る」にあたる単語はsavoirとconnaîtreがあります. 後者はいわゆるコネです. 意味・用法の違いにはついてはいろいろなところに解説があり, 例えばここを見てください. またconnaîtreはcognitionなどの語源であるラテン語cognōscereに由来します. さらにsavoirは「学んで身につけている」という意味での「できる」の意味・用法があり, pouvoirとの使い分けが基本的で重要でこれもいろいろなところに書いてあります. 例えばここを見てください.

さてkönnenに戻りましょう. 印欧祖語でgneとあるところで思い出してほしいのが, キリスト教の宗教関係の言葉であり, ゲームなどでも良く出てくるグノーシスです. これはギリシャ語で「知識, 認識」といった意味があります. ギリシャ語にもはねる面白い言葉で, 印欧祖語はもっと掘りたいとずっと思っていて, そもそもどこからどう攻めればいいかわかっていない領域です.

フランス語で遊ぼう

donner

この単語の基本的な意味は「与える」です. 英語または日本語の「ドナー」を考えればすぐに覚えられるでしょう.

英語のgiveまたは日本語の「与える」から想像されるように, シンプルに「モノを与える」意味もあれば, «Il donne l'impression d'être fatigué.»で「疲れている印象を与える->彼は疲れているようだ」のような表現もあります. 前置詞surと一緒に使うと「---に面している」という意味になります.

このsurはsurfaceなどのsurでsuperとつながる意味があります.

英語学習と数学・物理・プログラミング

数学・物理系メルマガでも書いたように, プログラミングに関するやりとりであってごく限定的ではあるものの, やはりもっと流暢に英語を使えるようにならないと時間がかかって仕方ない状況が本当に出てきました.

中学レベルの一般的な英作文・スピーキングの勉強もしていましたが, いったんそれよりも量子力学基礎の勉強も兼ねて, 量子情報・量子測定系の文献を和訳・英訳で例文を作って進めています. 日本語の文章が長いとさっと作文・スピーキングできないので, もとにした日本語・英語自体も短めに書き直しつつ, 読んでいる本の翻訳の体で例文集を作っています.

中学レベルの一般的な短い文, 理工系の完全に型にはまった文の両方が口をついて出るようにするのが当面の目標です. 多少時間をかけてよければ英作文では困りません. しかし即出るかどうかが大事でこれがいまの課題です.