2022¶
2022-12-31¶
数学・物理 自らの苦痛を解決する/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 式の読み上げ
- ゆるふわ情報共有のすゝめ
- 量子コンピューターを作るための参考文献
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ一月, なかなか数学をやる気が出ず, 仕事関係の勉強もたまっているため, 現実逃避気味にデータ構造とアルゴリズムの勉強, 特に競技プログラミングばかりしていました. ここ最近一つに集中しすぎるのはよくないとずっと言われているため, 来年(明日)からはもう少しゆるく広く進めようと思っています. ここ半年ほどまともに語学・言語学も勉強できていません. 来年はもっとゆるく広く手がけるのを目標にします.
いま会社でも一人プログラマーで, 自社仕事に関して技術相談できる人もおらず, 競プロは競プロで相談できる人がいません. 数学や物理ではとりあえず相談できる人がいるのと比べると精神的なきつさが違います. この苦しさを何とかして解決するべく自分自身行動とこれまでとは違うタイプの行動が必要なのを実感します. そしてメルマガ執筆に関わる数学・物理系の活動でも, 他の人達のこうした苦しみにこたえないといけないのを改めて実感しています.
競技プログラミングの勉強でありがたいのは, やはりAOJなりAtCoderなりの自動採点システムです. 入力例では通っても他のデータで通らない場合はよくあります. 大量のデータでは遅くて仕方ない場合もあります. これらをチェックしてくれる勉強の仕組みは本当に偉大です. あとは適切な質と量の問題の必要性も痛感します. やはりある程度の量の問題に取り組まないと身につきません. 問題演習系の通信講座+勉強会は継続的に実践しなければと思っています.
現代数学探険隊の改訂も少しずつ進めています. 集合・位相・実数論を中心に, 数学系の通信講座・勉強会も開きたいですね. この人集めも来年の課題です.
式の読み上げ¶
現代数学探険隊をブラッシュアップしていて復習の仕方として挙げていました. 特に一定程度英語文献にアタックしなければならない状況もあるため, 英語への慣れも含めて書いた話です.
これはこれでよい取り組みと思っています. ただ独学しているとそもそも式の読み方がわからないでしょう. それを伝える必要があります. 既に世の中には「式を(英語で)どう読むか」といったコンテンツもあるにはあります. ただし本の数は少ないというか一冊しか知りません. そもそも英語の数学・物理・プログラミングの文献を読むための勉強会なども必要な気がしています. どこからどう攻めるか悩みの種です.
ゆるふわ情報共有のすゝめ¶
先日(確か)Discordでの数学徒向けプログラミング自助コミュニティを紹介したと思います. 私も主に次のようの目的で勉強会・コミュニティに参加・運営しています.
- 一人ではやらないがゆるく細く長くチェックが必要なテーマがある.
- 一人だとつらいため複数人を巻き込んで強制力をつける.
- 一人だと情報を集め切れないため, 個々人の興味に応じてゆるふわで情報共有する・してもらう.
最近だと一般のAI応用的な話, ウェブ関係の話をするコミュニティに所属してゆるふわ情報共有をしています. 来年は私のメインである数学・物理・プログラミング・語学でもゆるふわ情報共有コミュニティ作りたいですね. 何をどうするといいか見えきっていないため具体的には何もできておらず, 上記のコミュニティ所属もその様子を掴むための調査も兼ねた活動です.
量子コンピューターを作るための参考文献¶
量子コンピュータ作りたいって人にいつもすすめる参考文献
- ・Qmedia
- ・藤井先生著「驚異の量子コンピュータ」
- ・量子技術教育プログラムの動画達
- ・Quantum Native Dojo
- ・清水先生著「量子論の基礎」
- ・ニールセン・チャン
ニールセン・チャンはとくに1,2,4章を。これ読んでも量子力学が納得できなければ清水本。7章は古いのでQmediaのハードウェア記事と量子技術教育プログラム動画で補足。5,6章のかわりにDojo見ればユーザがどう使うかも勉強できる。誤り耐性は"Quantum Computation with Topological Codes"でマスター ハミルトニアンからゲートにするまでのテクニックはバンデルサイペン・チャンのレビュー。NMRじゃない人にこそ知って欲しい内容。 https://arxiv.org/abs/quant-ph/0404064 まぁでもここであげた全部を読み切っちゃう前に研究室の門を叩くのをオススメします。結局、目の前でラビ振動見るのが一番早いんだよなぁ。 量子コンピュータを作りたい人のために特化した授業がしたいなぁと思ってたところ、大阪公立大学の @ayumu_sugita さんから集中講義の依頼があったので引き受けました。2月6日〜8日なので、年末年始に準備を頑張っています。 途方もない作業で終わるのかとかなり焦ってたけど、久しぶりに一つのことに集中できててとても楽しくなってきた。自分の知識の全てを伝授できたらととにかく詰め込んでみる。授業の名前は「量子情報工学」と「量子制御工学」のどちらが良いかな(大阪公立大には違う名前で登録した気がするが。。。)
必ずしも量子コンピューターの議論はしませんが, ニールセン-チャンの二章は来月リリース予定の通信講座・勉強会のテーマです. 実際ニールセン-チャンの二章は量子力学・量子条件をモチベーションに線型代数が勉強できます. 非常にお勧めです. 翻訳もあるとはいえ読み切れる自信がない人はぜひ通信講座・勉強会を楽しみに待っていてください.
日々の自分用メモ¶
AIの進化はSEO・検索順位・広告・EEATとかすっ飛ばしてネット検索は次の時代に突入している?¶
【点訳版・PDF版】数学&情報処理点訳ガイドのダウンロード¶
「Rustでやると知らないうちに詰む設計」を避けるためのTipsを集めてみる¶
完全なくじ引き読書法を実践するためのWebページを作った¶
国立国会図書館のデジタルコレクションの大幅バージョンアップ¶
本日から、国立国会図書館のデジタルコレクションが大幅バージョンアップされています。全文検索可能な資料が5万点⇨247万点に拡充され、また類似画像の検索機能が付加されました。https://ndl.go.jp/jp/news/fy2022/__icsFiles/afieldfile/2022/12/02/pr221202_01.pdf
【証明にミスがあった模様】: 四色問題をコンピューターなしで解いた可能性のある論文¶
え?これ、マジならすごすぎん?? 四色問題をコンピューターなしで解いた可能性のある論文が提出されたぞ https://arxiv.org/abs/2212.09835
7 Tips for Building a Good Web API¶
線形代数演習講義へのjulia導入を考える¶
こういう教育現場で導入されるの素晴らしい。 https://mti-lab.github.io/blog/2022/12/22/julia_linear_algebra.html
情報幾何¶
情報幾何 フリーダウンロード公開中 #期間限定 (12/31迄) 古畑仁 (北海道大学教授)著 「統計部分多様体の微分幾何学を目指して」 Perspective Statistical Submanifolds Differential Geometry DoublyMinimal HalfACenturyOfInformationGeometry
開成高校の中高生向け講義「位相的場の理論への誘い」の講義録¶
開成高校の中高生向け講義「位相的場の理論への誘い」の講義録が公開されました。録画からの書き起こしで丁寧にタイプしていただいたので、予想以上に臨場感のある講義録になったと思います。大雑把な話ですが予備知識はあまり必要ないので中高大生はぜひ読んでみてください。 https://kaiseigakuen.jp/wp/wp-content/uploads/2022/12/2021Yamazaki.pdf https://kaiseigakuen.jp/about/contents/feature/mathematics/には他にも二つの講義録[2017 年度] 有限体上の方程式を通して見る現代整数論(三枝洋一先生)[2018 年度] 結び目理論の圏論化(伊藤昇先生)が掲載されています。
2022-12-25¶
数学・物理 祝・競プロ入門300題一周完了/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 思考力より試行力
- 数学ノート(現代数学探険隊)の整理
- 自分自身の双対空間と等距離同型で非回帰的なバナッハ空間の存在
- 証明手法を軸にした議論の展開
- 独断と偏見による逆数学のすすめ
- 物理の理論構造, 孤立系と相互作用系・散逸系
- 素粒子・場の理論の教科書
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
体調自体は問題ないものの, 新型コロナ感染による生活リズム崩壊の余波は続いています. ここ数日会社仕事用の勉強で慌てているのもあるのか, 数学をやる気が出ません. そこで今年中にとにかく一周終わらせようと思っていたAtCoder Problems300題を進めていて, 今日一応終わりました. ハードはほぼ自力で解けていません. 来年は実際にコンテストでAtCoderのABCのC/D程度まで解き切るのを目標にしようと思っています.
あとこれは読者のあなたにもお勧めしたい話として, いわゆるアウトプット系の学習がやはり大事です. AtCoder Problems300題については来年以降に向けて解説を作りはじめました. やはり解説を書くと曖昧な箇所をいい加減なままにしていてはいけない圧力が加わります. もちろん一題あたりの時間はかかりますが, その分明らかに一題一題への踏み込みと理解が上がるのを実感します.
思考力より試行力¶
森の未知さんがまたいいことを言っているため紹介します.
和田秀樹の暗記数学本には「思考力(しこうりょく)よりも試行力(しこうりょく)」的なことが書いてあったように記憶しているが、あれは数学学習・教育における不変の真理だと思う。 例えば、「ある実数xが存在して、任意の負の数yについて、x+y<0」という主張の真偽を判定させるとする。 すると、様々なxについて「任意の負の数yについて、x+y<0」を判定するわけだが、xが0以下なら良いと気付くまで試行できるかがこの真偽判定できるかの分岐点となる。 「数学」とか「数理」の付く学科で習うような高等数学での躓きは、このような施行ができないことによるものが多く、巷で思われているような抽象的な思考能力は大して重要でないのが実感。 で、試行力を支えるのは処理能力で、一回一回の試行を素早く正確にできるかが本当に大事。 大学数学で苦労するタイプの学生に上の問題を指導すると、具体的なx(例えばx=1)について「任意の負の数yについて、x+y<0」が正しいか判定するのに異様に時間がかかることに気付く。 もちろん、そんな処理能力ではxが0以下なら良いと気付くまで試行回数を稼げずに途中で匙を投げることになる。 試行回数を稼ぐための粘り強さも数学学習においては重要であるが、教育者の観点では処理能力の方が後天的に伸ばしやすいので、処理能力を意識的に鍛えさせることは重要となる。
ちょうど今日も競プロの解説を書いていて, よくわからなかったアルゴリズムに対して解説を書いていて, それを理解するために具体例を作っていたりしました. この構成力は数学でも非常に重要です.
処理能力で試行スピードと正確さを上げる話も, TwitterのJuliaコミュニティで数式処理・記号処理の話が出ていて, 自分の手計算が信じられないからSymbolic.jl
をうまく使いたいという話をしている人がいました. 以前書いたように, 私もリー群学習時, 行列の対数計算(予想)でsympy
を使ってゴリゴリ計算していて何て便利なのかと感銘を受けたのを思い出します. こうした点でも数学学習にプログラミングをうまく活用して試行力・スピード・正確性の共存を目指す取り組みは引き続き来年以降のテーマです.
数学ノート(現代数学探険隊)の整理¶
現代数学探険隊の位相空間論と実数論を整理していて, ノート整理方針が固まりつつあります. 以前の記述もブラッシュアップしつつ全体に手をつけています.
いまは改めて先頭の集合論から進めています. 「自分がこんなのを知りたかった」と思った記述を散りばめているため, 読んでいてとにかく楽しいです. いま進めている競プロ解説でもお気に入りのF#布教の側面があり, いいと思ったものはもっときちんと勧めないといけない, お蔵入りさせるのは損失だと改めて思っています. 現代数学探険隊ももっと広めるために来年は久しぶりに広告なども使おうかと考えています. 通信講座・勉強会にももっと人を増やしたいのもあります.
私が参加している語学のコミュニティは数ヶ月ごとに新しい人が入ってくるのもあり, 各国の言語に関して数ヶ月ごとに同じ基本的な内容を勉強しています. そしてそこまでゴリゴリに勉強・暗記をしているわけではないため, 毎度の復習がルーティンになっているのがかかなり助かっています. 必ずしも専門でもない基本的な内容を定期的にゆるく復習できる機会を作る重要性を実感しているため, 通信講座・勉強会でもこの辺のメリットや楽しさをどう打ち出すかが鍵で, これも来年の課題です.
ちなみに整理していて実数論や位相空間論で次のようなネタが出てきています.
- $p$進数
- コイン投げの空間とポーランド空間
- 不動点定理
確率論ノートは多少埋めたものの, ポーランド空間がゴリゴリ出てくるようなところまでは書けていません. 不動点定理もよく使われる微分方程式系統の議論はまだまだ道半ばです. $p$進数・$p$進解析にいたっては全くノータッチです. 超距離不等式由来の$p$進関数解析の変な性質は恐ろしく扱いづらいものの, いままでに見たことがない位相空間論・距離空間論としても楽しみで, 改めて勉強意欲がわいてきています. 早くノート整理して, 幾何関係のノート作りも一段落させて解析学がやりたいです.
自分自身の双対空間と等距離同型で非回帰的なバナッハ空間の存在¶
単純なメモです.
[James 1951]: There is a non-reflexive Banach space which is isometrically isomorphic to its dual.
ヒルベルト空間ならともかく, バナッハ空間は変な空間で双対と等距離同型にするのも一苦労で, 非可分だと本当に魔界です. その魔界にこんなよい空間があるというか, 魔界だからこそこんな凄まじい現象が起きているというか, どちらで理解すればいいかよくわかっていません. ただ, なかなか強烈な例です.
文献探して証明を収録しておきたいと思いつつ探索できていません. それも込めて備忘録としての記録です.
証明手法を軸にした議論の展開¶
私の数学コンテンツには「証明手法を軸にした議論の展開」といった軸の補足説明もたくさんあり、例えば適当な条件を満たす位相や加法族の構成、ツォルンの補題を適用するハーンバナッハの定理や極大イデアルの存在証明など私が知る範囲の数学を縦横断した解説があるが、もっとそういうのが欲しい。
そもそもとしてボホナーの消滅定理やらdiagram chasingやら定理よりもむしろ証明手法の方が重要な議論もあるはずで、そういう縦横断系の話ももっと知りたい。
最近の現代数学探険隊ノート整理で集合論や位相空間論用の注意やコラム的に散りばめた記述を見ていると, いい話, そして最近あまり明示的に紹介していない, 忘れていた大事な話がたくさん書いてあります.
当時は一所懸命書いていてその当時の全力ではありましたが, とにかく文章が冗長でイライラしてくるのも事実です. これ含めて現在大改訂中です.
独断と偏見による逆数学のすすめ¶
超準解析ノート作りが半端なままなのも思い出しました.
物理の理論構造, 孤立系と相互作用系・散逸系¶
そういえば年明けすぐくらいから, 通信講座第三弾として「量子力学で学ぶ線型代数第二段」の通信講座の募集をはじめようと思っていたところ, 生活リズムの崩壊で何もできていません. いま二月開始を目処に考えているため, 興味がある人は三ヶ月分の勉強時間をおさえておいてください.
それはそれとして, 次にやろうと思っている熱力学とそれ向けノート整理で考えている話です. 熱力学は何となく身近な温度パラメータと環境がある系の議論からはじめるスタイルが多いように思います. しかし古典力学でも量子力学でも電磁気学でも, まずは理想的・非現実的な孤立系の議論をしてから, 現実的な系を考える非直観的なスタイルで進めるのがふつうです.
力学でいえばいったん摩擦がない系を考え, それから摂動的に摩擦を入れているとも思えます. 量子力学だとわかっているところからの摂動の視点は特に重要でしょう. 電磁気学でも電磁場だけを考えるケースと, 外場中の荷電粒子の運動を考えるケースのあと, 荷電粒子自身が作る場を考えるケースに進みます. 量子力学でもまずは水素原子の孤立系を考えます. 水素原子の励起状態は固有状態でいわゆる安定な状態です. しかしレーザーを考えればわかるように励起状態は光の形でエネルギーを吐き出して基底状態に落ちるはずです. ここで外場として古典的な電磁場を入れるとゼーマン効果とシュタルク効果にしかならず, 基底状態に落ち込む議論にはなりません. もちろんエネルギーを吐き出す対象として具体的に理論に自由度を追加する必要があり, それがいわゆるテンソル積による量子電磁場用の空間の導入です.
熱力学でも同じように孤立系を考えてから環境との相互作用や温度を考えるのが筋ではないか, そうするといまのノートの順番だとよろしくない, という状態です. 有名どころの教科書で言えば, 形式的には清水流か田崎流かという感じ. 熱力学の定式化の自分なりの整理を進めているため, 熱力学の講座はまだまだ時間がかかりそうです.
こういう内容の通信講座兼勉強会をやろうと思うと, そもそも一定以上の物理の素養がないと意義さえ感じてもらえないため, そこの種蒔きももっと真剣にやらないといけません. 量子情報でのクラウスの定理などもう少し分野横断の話をしようと思ったのですが, 今回は力尽きました. 改めて物理ネタももっと取り上げたいですね.
素粒子・場の理論の教科書¶
単純な情報共有です.
60 冊もの素粒子論物理&場の理論の本がSCOAP3 でただで見れるように
CERN's open access SCOAP3 initiative has released 60 particle physics and QFT books free for download here: https://scoap3.org/scoap3-books/
格子QCDシミュレーションの創始者のM. Creutzによる格子QCDの教科書がオープンアクセスになったそうです https://www.cambridge.org/core/books/quarks-gluons-and-lattices/2D0B198BB10DB7ACF56252909590DD6C?fbclid=IwAR3Q0DwJf8I79iPPLRnUVShXOeztqscAQeXE8xZxvIdB8EeM9P_FgIi7HbA
日々の自分用メモ¶
クリスティアーノ・ロナウドの言葉¶
献血ができなくなるからという理由で、体には入れ墨を一切入れておらず[357]、かつて受けた「動機が不純。単に自らの名誉と影響力を拡大したいだけ。言ってしまえば、ショーにすぎない」という批判に対しては、「もし、他人を助けることがショーだと言うなら、僕は永遠にこのショーを止めるつもりはない」と語っている[358]。
国立国会図書館デジタルコレクション¶
本日から、国立国会図書館のデジタルコレクションが大幅バージョンアップされています。全文検索可能な資料が5万点⇨247万点に拡充され、また類似画像の検索機能が付加されました。 https://ndl.go.jp/jp/news/fy2022/__icsFiles/afieldfile/2022/12/02/pr221202_01.pdf
理系の読み物でクラシックな本を丁寧にまとめたリスト¶
シェルスクリプトの正しい実行方法は一つだけ! ~ sh や source で実行するのが良くない理由とシバンの話¶
大島利雄先生の「大学における数学教育の問題点と工夫」¶
素因数分解の一意性と一階言語の文¶
それでは一階言語の文になっていません。一階言語では量化子の可変個の入れ子が書けないからです。ではどうするかは、リプライで。 https://marshmallow-qa.com/messages/9223c77e-8c18-4dfb-847d-e3504e5f62a5?utm_medium=twitter&utm_source=answer
まず、自然数のリストの自然数によるコードを何か採用し、必要なだけのリスト処理関数の定義をPA言語で書きます。次に、それらを使ってリストの要素の積を返す単項関数prodを作ります。 それとともに、二つのリストがバッグとして等しいことを表す二項述語bageqの定義とリストの要素が全て素数であることを表す単項述語allprimeの定義を書きます。 以上の準備の下で、
∀x∀y(allprime(x)∧allprime(y)∧prod(x)=prod(y)→bageq(x,y) です。 あ、括弧があっていない。 ∀x∀y(allprime(x)∧allprime(y)∧prod(x)=prod(y)→bageq(x,y)) です。 なお、リスト処理の部分はさまざまな変種があり得ますので、便利なのを採用すれば良いです。例えば、nilとconsとcarとcdrからLisp風に組み立てていっても良いですし、ゲーデルのβ関数を使っても良いです。
困っている人のための精度¶
世の中には困ってる人を助ける制度がたくさんあるのに何が使えるかを教えてくれないっていう理不尽仕様なんだが、そんな世界をなんとかしようとしてる人たちがいて、そのためのWebページがこの前リリースされたってことを僕はフォロワーさんに知っておいて欲しいと思ったんよ https://compass.graffer.jp/handbook/landing
岡村博の話¶
昔は闇市で手に入れたものは食べないと言って餓死した数学者もいたわけで、大学教員はその程度の意地は貫き通してほしい。 今時の大学教員は知的誠実さのために餓死もできない軟弱な人間ばかりで辟易する。 ちなみに餓死(栄養失調)で亡くなった(日本人)数学者の例として岡村博がいる. 常微分方程式の本があって、以前Paulが言及していた記憶がある。 さらについでに井川満による本の書評 「付録として収録されている山口昌哉の,著者についての文章も是非読んでもらいたく思う. 敗戦の混乱のなかで,闇物資を口にすることなく,42 歳で栄養失調の故に逝去した一生であったことが分かる」とある。
「岡村博は言葉を大切にし,学生と交わす些細な会話でさえもどこまでも大切にした日常であったことが記されている. 数学に携わる者が,言葉を大切にしないならば,どこに存在意義が見つけられるのだろうか. 最近私は,数学をする者の言葉遣いがふやけているのが気になっている.」
https://twitter.com/phasetrbot/status/1595002909535522818と書いたのはまさにこの文章のような状況が最近の大学関係者によく見られるのを指している。特にオープンレターズは大学教員どころか人として最低限の誠実ささえ持ち合わせておらず人の心を持たない差別主義者ばかりで最近ずっと衝撃を受け続けている。
物理・工学以外にも数学を濫用する人間が増えるのはいいことなのかという気分はある。ポストモダン的な地獄を生まないか、大学関係者の知的誠実さがどこまで信用できるのか、ただひたすらに気になる。
ドイツ語の表現¶
サッカーとドイツ語といえば
- 日本をLand des Sushis「寿司の国」と呼ぶのはセーフ(定冠詞+寿司が単数属格)
- でも定冠詞+寿司が複数属格のLand der Sushisだと「寿司野郎どもの国」的な意味になってしまって1文字違いで完全アウト
――というものすごい地雷があるらしい https://german.stackexchange.com/questions/63303/connotation-of-land-der-sushis これはどうも単数属格を加えるだけなら純粋な食べ物の意味になるけど複数属格だとそれを食べる人々への揶揄的なあだ名を加えた感じになるかららしい 実際、過去にドイツのサッカー番組では後者の表現を使ってしまったキャスターに盛大な批判が集まったことがある (※昨日の試合の話ではありません) d-で始まるドイツ語の定冠詞は英語のtheに当たる要素で語源も共通している ドイツ語では名詞自体は一部を除いてあまり変化しなくなっていて、冠詞の性・数・格の変化が語形変化の代わりになっていることが多い Sushi「寿司」は中性名詞として扱われて、単数では属格のみ-sがつくこともある
競プロのテーマ¶
人間には大変な, 膨大な量の計算を行って数学的な問題を解く
吉野元, 深層ニューラルネットワークの解剖 統計力学によるアプローチ¶
深層ニューラルネットワークの解剖 統計力学によるアプローチ 吉野元 https://jps.or.jp/information/2021/10/76_589.pdf
確率変数の数(ベイズなのでパラメータ数)が無限大に行くという意味での無限自由度系という意味で「統計力学」なのはこちらの方.時々誤解している人がいるけど,渡辺理論はそういう意味では有限自由度なので統計力学にはあまり似ていません. 漸近論で尤度関数全体を確率変数として扱うという意味では「汎関数的」なのですが,それはまた別の(もっと技術的な)側面だと思います. 「尤度関数を確率変数として扱う」は正しくないかも.対数尤度を扱うのに,まずパラメータの分布を正規近似するのではなく,漸近的な行く先を関数とみてガウス過程で近似をするというような意味です. (これは特異モデルを扱うために開発された方法と思いますが,正則モデルだからといって何でもかんでもまずパラメータで展開するという行き方に疑問を差しはさんだという意味で漸近論にとっては重要です) しかしながら,NNの理解に役立つような統計力学の意味で「無限自由度」の理論はまた別に開発しなければならなくて,その意味では吉野さんのような情報統計力学と高次元統計学のコラボが重要かと. 「平らな部分が重要」という意味では特異モデルのベイズ理論はよい点を突いているように思いますが,無限自由度の解析ではおそらく別の側面が重要.
Enriques曲面のPDF¶
びびる.Enriques曲面で1000ページ.3月の名古屋に向けて(?) Enriques Surfaces I,II http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~kondo/papers.html
記事期限切れ:¶
大栗博司先生の幻冬舎連載「数学の言葉で世界を見たら」 「計算されたリスクを取ること」で、ベイズの定理を 身近な例がいっぱいで、メチャおもしろく、わかりやすく、ためになる説明をしてくれてます。 http://gentosha.jp/articles/-/375
公理とinterface¶
逆にプログラマには公理は interface だと伝えると群とか環の公理が何のためのものなのか分かってもらいやすい
平行線の同位角の証明¶
トランプの「ババ抜き」で、勝率を "相手の3倍" にする方法¶
トランプの「ババ抜き」で、勝率を "相手の3倍" にする方法を見つけましたので記事を書きました。 なんと… 「誰から配るかを変えるだけ」ですっ。 記事→ https://kuina.ch/notebook/page33
工学のための関数解析の行間埋め¶
関数解析の資料探してたら良さそうなの見つけたけどこの資料作った人エグすぎる 工学のための関数解析PDF
ガウスの消去法と誤差, 検算の難しさ¶
ガウスの消去法にめっちゃ誤差が入って、あやしいと思って検算しても(検算にも誤差が入って)残差が0になってしまう、なんてこともあるので、検算したから安心とは言えない。
Haskellでの競技プログラミング¶
YouTubeのSampouOrgチャネルで米田優峻(@e869120)さんの『競技プログラミングの鉄則』をHaskellで楽しむ動画シリーズをはじめました。主目的はHaskellプログラミングを(和紙が)楽しむこと。ついでにアルゴリズム力、思考力が向上するといいな。つづくといいな。
追加しました。尺取虫法 = mapAccumL + span かな? A13: Close Pairs — 『競技プログラミングの鉄則』をHaskellで楽しむ 024 https://youtu.be/KiXQVixpamg @YouTube より
中国語は不思議¶
橋本陽介『中国語は不思議』読了 新書を読むのはかなり久しぶりではあったのですが、コレが語学ダメダメ人間でも ちょっと中国語分かってきたんじゃない? と自惚れさせられる感じでちょっと勉強再開しようかしらと思いました それは置いておくとして「疲労回復」「汚名挽回」のトピックスが面白い
ChatGPTの応用¶
日本人がネイティブな英語を書くのは、今までかなり難しかった(オンライン英文校正サービスもほぼ無力だった)けど、ChatGPTを使えば簡単に書けるし文脈も伝えられるのでやはり革命。実際に出力を見てみると、RT元が問題があると言っている部分もすべて修正されており、良い。
ロシア語で日本語の「かわいい」が導入¶
場末ホステルのロシア人(日本が好き/ピカチュウが好き)が「かわいいぬ」と言ってて何故急に日本語?(しかも"ぬ構文"?)と思ったら、日本語の「かわいい」がそのまま形容詞「カワイヌィ」(каваиный)になっているんだと。ほんまかいなって思って調べたらちゃんと存在してたし、鬼の格変化もするみたい。
ChatGPT¶
ChatGPTを試してみた。 有効な使い方のひとつに「自分が知らない分野の関連ワードを挙げてもらって思考を発散させる」ことがありそうだなと。 ある程度の知識がないとGoogleで検索するワードがそもそも思いつかないが、ひとつのキーワードを端緒にChatGPTに関連語句を色々挙げてもらうことができる。
2022-11のAIの進歩の包括的なリスト¶
いい記事見つけた 11月に最も重要なAIの進歩の包括的なリスト Cutting-edge AI: NOVEMBER Digest
同朋舎出版のビジュアル世界再発見と中高の世界の名著¶
同朋舎出版のビジュアルシリーズ世界再発見はいいぞ。 あれで入門すれば世界地理は答え合わせできてたのしい。 あと中公の世界の名著はいいぞ。本文の訳の気合の入り方もそうだが、訳者によるガチ解説がたのしくてわかりやすい。当時はB1くらいの学力で読むものなんだろうけど今ならB4くらいじゃね…?
2022-12-11¶
数学・物理 新型コロナにかかって大変な目にあいました/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- カントール集合
- 実践計算物理学: 物理を理解するためのPython活用法
- 基礎からの物理学とディープラーニング入門―Pythonで実践―
- F#による競技プログラミング学習の資料
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
家族が通院時に新型コロナをもらうというひどい目にあった余波を受けました. ちょうど先週の土曜, 夜から体調がおかしく, 朝になったら38.9度あって四日ほど寝込んでいました.
生活リズムが崩壊してしまったため立て直すのが大変です. AtCoder Problemsも今年中に一周する十二分な余裕があったものの, 10日潰れたためもうカツカツです. 無理して終わらせるものでもないため焦っているわけでもありませんが, げんなりしています.
心配しすぎていても仕方ないとはいえ, ブレインフォッグのような恐ろしい後遺症もあるようで, これが本当に憂鬱です.
世の中は平常化に向けて動き出しているようですが, 読者の皆様もお気をつけください.
今回は手短に済ませます.
カントール集合¶
先日から書いているように, 現代数学探険隊のノートを見直しています. カントールの三進集合を久し振りに見直して, やはり面白いテーマだと関心しています. 記号力学系から情報系の議論もあれば, 同じく作用素環にはねる経路もあって展開は異様に豊富です.
実践計算物理学: 物理を理解するためのPython活用法¶
ただでさえPythonはライブラリのバージョン管理が死ぬ程面倒で, これ以上自分で何か作りたいとは思わないため, よさそうなのはどんどん他の人のコンテンツを紹介しようと思っています.
メンテナビリティの高い数値計算プログラミングの可能性は相変わらずゆるく探り続けています.
基礎からの物理学とディープラーニング入門―Pythonで実践―¶
統計力学系のネタはもっと突っ込んで勉強したいため, これは読んでみようと思っています.
F#による競技プログラミング学習の資料¶
来年に向けた助走として, 競プロコンテンツの前に自分の学習ログの意図で記事を書きはじめました.
命令型・オブジェクト指向型の言語だと読み書きしていて元気が出ないため, お気に入りの言語で遊んでいます. F#はMicrosoftが機械学習用のライブラリを整備しているようで, 上で書いたようなディープラーニング系の話でもいい感じに使えないか検討したいところですが, まだまだそこまでいきません.
2022-11-26¶
数学・物理 子供の背中を見て反省する/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 昔書いた文章・ノートが冗長でつらい
- mathlib documentation
- 最近のプログラミング学習: 競プロ
- 新しく勉強するときの苦労
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近, 数学としてはシコシコと代数の基本的なノート作りと競プロばかりです. 代数はもう少しガロア理論の基本的なノート作りが終わるため, それが終わったら多様体の項目メモを仕上げつつ, 層のコホモロジーに関わる議論と加群のノートを整備する予定です.
長い間の懸案だったトポロジーのノート作りもしたいところですが, ここで代数のノート作りを止めてしまうとまた半端な状態が続くため, いまこの焦点が合ったときしかないと思ってふんばって進めています.
昔書いた文章・ノートが冗長でつらい¶
幾何ノートの整備と合わせて, 特に重要な位相空間論のノートも並行して整備しています. 書いていた当時はもちろん真剣に一所懸命書いていましたが, いま見ると冗長で読んでいて自分でイライラする記述があります.
それはそれとして, 通信講座として書いたときにはまだ書けていなかった定義や定理が既にあるため, その引用整理も合わせて進めています.
ただ改めて思ったのが, 「こういうのがあるといいのに」, 「こういう記述があると自分が楽しい」と思った記述を盛り盛りで詰め込んでいるため, 読んでいてとにかく楽しいです. 特に何度となく眺めて整備を進めていた部分は証明も詳しく, ストレスフリーで読めます. 凄まじく面倒ではあってもわざわざ自前のノートを整備してきたご利益を感じる部分です.
mathlib documentation¶
ノート整理で補有限フィルターを調べ直していたら見つけました.
証明支援系のライブラリのサイトで, Microsoft Research所属のプロによるサイトのようです. いつか証明支援系の議論にも取り組みたいとは思っているため, メモがてらシェアします.
最近のプログラミング学習: 競プロ¶
勉強方針を少し変えたのもあって, AtCoder Problemsを一日二題ペースでゴリゴリ進めています. 入門者向け基準とはいえハードの問題を自力でさっと解ける場合も出てきて, 一年間ほぼ毎日やってきた成果が上がっているようで気分もいいです. 自分用リファレンス・ライブラリも溜まってきました.
競プロ勢, もっと言えばF#・Haskell勢ともっと交流を持ちたいと思っているのですが, もっと競プロ系の記事なども書かないといけないのだろうと思います.
仕事のプロジェクトである程度自由にできるため, サーバーサイドでF#を使ってみようと思うものの, ネットに情報が少ないため二の足を踏んでいます. JavaScriptなどは新しい情報も大量にあって参考にする機会も多く, お世話になった分, プログラミング関係でももっと情報を出さないといけないのだろうとも思います.
新しく勉強するときの苦労¶
12月からAndroid開発のプロジェクトに参加します. Android・Kotlinを猛スピードで勉強しているのですが, 基本的な本を読んでいてレイアウトの説明など面白くもない記述をがんばって眺めています. 数学でも, 面白くなくても一度は一通り勉強して, 言葉だけでも頭に入れておかないといけない内容はあります. くり返し眺め続けてようやく少し慣れてきました.
既存コードの引き継ぎの面もあって仕事時間でもずっと眺めています. 朝から晩まで二週間もずっと浸っていてさすがに少しは慣れてきました. 仕事になると苦痛だろうと何だろうとやらねばならず, 嫌でも勉強は捗ります. 何か勉強したいことがあれば仕事にしろとはよく言いますが, 改めてそれを実感しています.
JavaScriptでも困っているのですが, Androidもテストの書き方・作成方針が全然わかっていません. 何かいい本や資料をご存知の方がいればぜひ教えてください. 小・中規模のAndroidアプリのリポジトリがあればそれも教えてくれるとありがたいです. 絶対的な量が足りておらず, もっと浴びるようにコードに触れたいと思っています.
勉強するときの実際を苦労を味わい続けた方が「こういうのがあればいいのに」という自分の問題意識も育つため, 程々に勉強の苦労を続けないといけないのだろうと最近良く思います.
以前から時々書いているように, 私は昔から柔道の道場に通っていていまや指導側です. 類は友を呼ぶ話のごとく, 通ってくる子供達はとにかく不器用で, 何年もくり返し言っていてもなかなか身につきません. ただ, 子供達は子供達で学校での勉強も含め, 毎日大量の情報に触れて覚えなければいけないことも多く, 5年-10年言い続けたくらいでどうにかなるなら苦労しないという話もあります. 子供達の様子も見ていると時々猛烈に反省することがあります.
2022-11-19¶
数学・物理 早いうちに基礎をゴリゴリやろう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 早いうちに基礎をゴリゴリやろう
- 来年に向けた競プロの取り組み
- アダマールの不等式
- 量子多体系の対称性とトポロジー: 統一的な理解を目指して
- 「無限次元」の代数と解析
- ドイツ語と英語が合成された学術用語“Eigenvalue”に関する数理的考察
- 理系向けの語学教材制作に向けて
- 世間的な理系の差別的な扱い
- いろいろなウェブサービス
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
もう少しで量子力学と線型代数の三ヶ月間短期集中の通信講座が終わります. 先日の勉強会で受けた質問で, やはり行列と線型写像の区別に関する難しさを実感しました. 量子力学と線型代数もまだ最低限取り組んでほしい内容の残りがありますし, そもそも復習としてもう一度取り組む部分さえ需要があるとは思っています.
とりあえず量子力学をもとにした線型代数を続けますが, その先は自分の頭の整理も兼ねた熱力学もやりたいですし, 物理を考えずただただ数学する方向までいろいろ考えています.
数学ノート作りでは幾何ノート整備に向けて, 解析学編の位相空間論の整理もはじめました. 改めて見ると書きはじめた頃はまだノートを作っていなかった定義・定理も大量にあり, 並行してその参照もつけています. あとは箇条書きノートの見やすさが気に入ったため, 箇条書き化も進めています. 定義や定理の言明も箇条書きで整理した方が見やすいため, 必要に応じてそれらも整理し直しています.
やはりある程度幾何にけりをつけないと落ち着かないのがわかったため, 指数定理までの一通りのノート作りを今後二年の目標に置きました. やる気が出ないときに指数定理の本をパラパラと眺めていると, 解析学編でがんばって作ったノートの内容がゴリゴリと出てきます. 偏微分方程式はもちろんのこと, 閉作用素など作用素論も出てくる部分はテンションがあがります. 当たり前といえば当たり前であるものの, 執念深く整備してきたノートの内容はだいたい全て必要で, もちろんわかっていたことではあるものの, 案内ページに書いてきた内容の嘘偽りのなさを改めて実感しています.
早いうちに基礎をゴリゴリやろう¶
最近ずっとこの話をしている気もしますが, 幾何のためのノート整備をしていて痛感しているため何度でも強調して書き続けます.
特に多様体のノートを書いていると, 一度はある程度勉強しているため本当に身が入りません. ノートの参照などもあるため, いま証明は抜きに定義と命題だけシコシコと追記しています.
何となく一回はやっているが身についていない内容があるのはもちろんですが, それ以上にそもそもまともに勉強したことはない内容もたくさんあります. しかしもっと面白い話がたくさんあるのを既に知っているため, そうした基本的な内容に取り組んでいるとうんざりしてきます. だからこそ今改めて幾何まわりの基本的な内容に関するノートをがんばって作っています.
熱力学のノート作りでは, 内容は学部二年レベルのド基本であるにも関わらず, 頭の再整理の視点で取り組めてものすごい楽しいのと対照的です. 一度徹底的にやった上で思い出しつつ理解を深める楽しさとは全然違います.
先の話を知ってしまうと基礎的な内容に取り組むのにうんざりしてしまいます. 自分基準でよいので, やはり早いうちに一度基礎を徹底的にやるのをお勧めしたいです. そう思うとやはり学部一年の必修で実数・集合・位相があったのは, 私にとって本当に決定的でした.
来年に向けた競プロの取り組み¶
AtCoder ProblemsでMediumまで終わってから数ヶ月, しばらくAOJに取り組んでいましたが, 今年も残りわずかになってきてAtCoder Problemsの300題を終わらせたい機運が高まってきました. 残り56題で, これから一日二題取り組んでいったん年内に終わらせるのが目標です.
最近は10分考えてアルゴリズムを思いつかなければ解説を見て実装し, 30分経っても実装できなかったら他の人の提出コード, 特にHaskellコードを見て気に入った読みやすいコードをF#に引き写すようにしています. どうせ300題を一周した程度で身につくわけでもないので, ある程度問題量をこなすのが今の目標です.
AOJの基本的なデータ構造やアルゴリズムの対応も進めたいところですが, お気に入りのF#が使えないのが難点です. そんな中, 少し前に最近競技プログラミングの鉄則という本が出ました. 本の評判が非常に良いようですが, AtCoder対応しているいい話があります. せっかくなのでこれをF#/Haskellで取り組もうと思っています. これも150題程度あるらしく, 取り組みやすいところでF#が使えるのはAtCoderしか知らないため来年の楽しみです.
まだまだ量が圧倒的に足りていないため, これらをくり返して復習しつつ, 飽きないように新規コンテストで追加された問題などにも取り組んでアルゴリズム系の技能を鍛えようと思っています. 数学・物理系のプログラミングだと馬鹿みたいな計算量が必要ですし, 数値計算法もまさにアルゴリズムなので, この意味でも私にとって競プロは物理や数学です.
アダマールの不等式¶
行列解析系のネタです.
【ポッキーの日問題】 ポッキー(数字の1)を並べて目指せ高得点!
※行列式の計算は計算機を使用しても構いません(リプにサンプルコードをつけておきます)
Z^{n×n}の行列式の上界に関する定理何かあったはずだけど思い出せない Hadamard's inequalityだ。 Wikipedia
私の現代数学探険隊解析学編にも収録していますが, 実はFeldmanらによるRenormalization Group and Fermionic Functional Integralsという本があり, この中にもアダマールの不等式が証明つきで載っています. 以前, この本の誤植を送ったことがあって, タイポのPDFに私の名前も載っています.
ツイートに行列式の計算に計算機を使っても構わないとあって, こうしたお遊びネタとプログラミングの話もあれば, 上限を決定する不等式とゴリゴリの数理物理の関係もあります. 最近こういうのが面白くて仕方ない感じになってきて, 学生時代とは大分違う視点が得られている実感があります.
量子多体系の対称性とトポロジー: 統一的な理解を目指して¶
ツイートで渡辺さんの何かの話が流れてきて, 改めてこの本が読みたいなと思ったため宣伝ついでのメモです. 先日も情報理論と物性の論文を紹介したように, 幾何も量子多体系・物性の関係が強くなってきて, いよいよ幾何で遊ぶのを本格化させたいと思って改めて幾何ノート整備に乗り出した部分があります. 幾何それ自体で遊び倒すのも兼ねていて必ずしも物理だけに比重があるわけでもありませんが, 日々遊びたいおもちゃがどんどん増えてきて楽しいことこの上ない日々を送っています.
「無限次元」の代数と解析¶
これもちょっとした記録です.
佐古先生、可分なヒルベルト空間は有限次元でない限り全て非可算次元ですよ・・・。
可算個の正規直交系が存在しても非可算次元なんですか
はい、可算個からなる完全正規直交系が存在しても非可算次元です。これは例えばBaireの範疇定理から簡単に証明することができます。
文章で書くのは少し手間ですので、次のURLを見ていただけると幸いです・・・。https://planetmath.org/banachspacesofinfinitedimensiondonothaveacountablehamelbasis
なるほど分かりました 可分/非可分の区別を可分/非可算次元と勘違いしていたわけですね
Hilbert空間に対して次元というときは,特に断りが無ければCONSの濃度を指すことが多いと思います. 勿論,例えば線型空間としての次元と混同する恐れがあれば,Hilbert次元/Hamel次元のように呼び分けるのが妥当ですね. 以上は一般的な話です. 一方,Mathラブ娘さんの投稿については,かかる用語の選択そのものを取り上げられていると思います.これは概説全体で統一されているかどうかが問題の焦点になると思っていますので,引用されている画像からは判断しかねることを踏まえ,言及を差し控えます.
わたしはHilbert次元を単に次元というのはごく少数という認識です。特に、そういう言い方をしたいならHilbert次元/Hamel次元と言い分けるべきと考えています。が、この件については押し問答とならざるを得ないと思いますので、これ以上の議論は止めておきたいと思います。
そうですね,流儀の問題ですからね(蛇足ですが,個人的には言い分けるのも結構好きです).
これ大昔,大学の演習助手の就職試験で聞かれて間違えたことがありました.ヒルベルト次元と代数的な次元を全くごっちゃにしていて,へんな答えをしてしまったのですが,面接官の一人だった組み合わせ論で有名な Hanfried Lenz先生が,まあこれはいいとして,と次の質問に移ってくれ結果合格しました.
ちなみに物理バックグラウンドの人がヒルベルト次元を使う傾向があるのかはわかりませんが、試しに素論系の知人にインタビューしたところヒルベルト次元で答えました
物理学で使う数学のほとんどは,reverse mathematics で言うところの Big Five の弱い方の体系に落とし込めることがほとんどなので,集合論的な非可算がそこでは必要になっていないわけですが,これは,非可算性が hidden variable のようなものとして物理世界のどこかで本質的に機能していること↓ ↓ ↓ ↓の可能性を完全に否定しているわけでもないと思います. 少なくとも,数学世界では非可算性は,"hidden variable" 以上の役割を果たしているし,これをさらにどう考察するかが,数学の未来にかかっている,と個人的には思っています (人類の未来がないのに数学の未来があると言えるのかはちょっと疑問ですが).
まさに私はよくヒルベルト空間の次元をCONSの濃度の意味で使っているため, よい習慣ではないと反省しました. 齟齬が起きかねないのは間違いないため, 自分用のメモも兼ねてシェアします.
ドイツ語と英語が合成された学術用語“Eigenvalue”に関する数理的考察¶
知っている人は知っているでしょうが, eigenはドイツ語でeigenvalueはドイツ語と英語のチャンポンです. ついでにいうとvalueはフランス語valeurに起源があり, さらにラテン語に起源がある変な合成語です. この文献によると量子力学の発展に伴って現れた用語で, 固有といってよく使われる英語properでproper valueというと他の言葉と紛らわしく, あえてeigenを使ったという話があるようです.
語学・言語学が好き・興味がある人がどのくらいいるかわかりませんが, ちょっとシェアしてみます.
理系向けの語学教材制作に向けて¶
行方先生の新刊本。ジュニア新書ですが、これまでの著作から考えるに、また、取り上げられている著者の名前から判断しても、大人でも十分やりごたえのある英文が出てくるのだろうと想像します URL: 読解力をきたえる英語名文30
こういうのは人文・社会科学系の人にはいいのかもしれませんが, 理工系の人間は必ずしも楽しくありません. 最近語学系の動きが全然できておらず情報収集さえ微妙です. 忘れてはいない・忘れてはいけないのと, 「こんなコンテンツが面白かった, 勉強法が楽しい」という読者コメント収集も兼ねてシェアしておきます.
世間的な理系の差別的な扱い¶
理系女子、建築系や化学系に流れているだけでいないわけではない。工学系が少ないだけ。そして、工学系に女性が少ない理由はこの画像が全てを物語っている。安い床屋でスポーツ刈り、お母さんがしまむらで買ってきた服を着ている人が大半を占めている限り難しいでしょう。
例えばある看護学校が女性ばかりの点を議論してる際、「いる学生が化粧も服装もダメな醜く太った女ばかりだから。男は行かない」と言う人がいたとして、そんな感情は考慮に値しないどころか発言者が差別的と批判されるべきもの。この発言もそれと同水準の差別的暴言。 世の中には「黒人貧民街訛りの人間は受け付けない」「同性愛者は生理的にアウト」のような人もいるのだろうが、そのような心理は差別的発想に起因するもので、社会的には一切考慮すべきでないとされる。先のtweetのような露骨な差別的発想を表立って正当なものかのように語るのは論外。 こういう「恥ずべき感情」を抱いてしまう人がこっそりとその心理に従って選択をすることはあろうが、そうした差別的な侮蔑を当然のごとく語り、それに共感や賛同を送る人が多数いるという事実は、こうしてステレオタイプに語られた「理工系男子」への差別がいかに根深いかを図らずも明らかにしている。 理工系学部の女子率の低さはこうした心理が主要因ではないと思いたいが、少なくともここで語られたような心理の存在は、「理工系が不当な偏見と差別を受けている」がゆえに理工系の女子率が下がってしまうという、理工系が差別被害者である側面を明らかにしている。
最近またTwitterで『高専に進んだ女子が「こんな気持ち悪い男達ばかりの環境には耐えられない. 高専の内容には興味はあるが, もっとふつうの高校生ライフを送りたいと悩んでいた」』という伝言情報が流れてきました. 個人的には白血病で一年留年した上に吃音という言語障害まであるので, その「ふつうの高校生活とかいうのはありとあらゆる意味で何だ」という感じがあります. 一方で上記の世間的な理工系イメージと実態もそれ相応に知っています. よくも悪くも当たり前すぎて言われるまで気付いていませんでしたが, 確かにゴリゴリの差別と言えばそれはそうです.
私個人の話で言えば, 私はもういいおっさんですが, ファッションには全く興味がない一方, 変な格好をしているといろいろな意味でまずいため, 困り果てた最果てで十年くらい前から和装の方向に進んでいます. (おそらく)社交辞令ではなく似合うと言われることも多いので, 考えるのも面倒だから似合うらしいこれで行こうと決めました. ここ数年は普段着から作務衣にして, 一年中自宅でも(プライベートの)外出でも, 夏には夏用の, 冬には冬用の作務衣を着ています.
いわゆるチェックシャツ以外の理工系ファッションも何か考えた方がいいのだろうという気分があります. ワークマンのスーツという概念さえ出てきているので, ファッションに頭を使いたくない理工人向けファッションももっと提案した方がいいのではないかと最近思いはじめました.
いろいろなウェブサービス¶
ワールドミュージック界隈で話題騒然、世界中の民族音楽が聴ける慶應大Global Jukebox 、マジで直感的に操作できるのがすごく良い…。世界地図からも行けるし、動画後半のように円グラフ状に表示された地域一覧からも調べられます。 https://theglobaljukebox.org
最近面倒というか幾何ノート作りの方が楽しくて止めている物理学ギャラリーがあります. 現代数学探険隊や通信講座をはじめとして, 「こんなのがほしいが誰も作ってくれないので自分で作る」は私の大きなモチベーションなので, 「こんなサービスもあって喜ぶ人もいるのか」というのは参考になる場合があります.
正直このサービス自体にそこまで強い興味があるわけではないものの, 言葉にできない感じるモノがあったため, メモがてらシェアします.
2022-11-06¶
数学・物理 箇条書きノートのすすめ/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 箇条書きノートのすすめ
- 代数学習・復習で得た実感
- 非可逆行列の可逆化
- 数値計算とソボレフ空間
- 学習物理界隈へのコミットをはじめたい
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
最近メルマガ書くのもサボり倒しつつあります. 本職の方も今月で区切りがついて来月からまた新しいほぼ未経験の内容に関するプロジェクトがはじまるため, きりきり舞い状態です.
ここ最近は来年以降に向けた幾何コンテンツのリリースも見越して, 幾何ノートを集中的に整備しつつ復習しています. 全然書けていないと思っていた多様体論のノートが思ったよりも書けていたため, 思ったよりも速くリリースできるかもしれません.
ここ1-2週間, そしてしばらくは幾何というより代数の整備が中心です. ホモロジー代数はもちろんのこと, それを駆使する関数論が視野に入っているからです. 関数論には解析学の側面もあれば, 代数的場の量子論などでも楔の刃の定理など限定的とはいえ関連する議論があります. もう一つやはり学部四年-修士一年程度の内容くらいはきちんと勉強してみたい代数解析でもホモロジー代数を駆使するため, 私が守備範囲に入れたい広い意味での解析学にとって重要だからです.
毎日少しずつノートをためてきて, 途方もなく長い道のりでうんざりすることも多かったものの, リリースも考えてノートを整備しはじめたところ, 自分が勉強してみたいと思っていた学部四年程度の幾何への道が少しずつ整備されてきたのが具体的に感じられてとてもいい気分です.
箇条書きノートのすすめ¶
先日メルマガタイトル自体を「証明の構造がわかる数学ノートを作りたい」にした程度に, ノート整備のついでに証明の箇条書き化を進めています. そして単純にできるわりには非常に効果的でした.
現状ではいったんほぼ何も考えずにまずは箇条書きベースで書き換えています. これで次のような形式が強制されます.
- 1センテンス1トピック
- 箇条書きによる1トピックの視覚的表示
よくテクニカルライティングなどの文脈で「1センテンス1トピックにしろ」と言われます. 知ってはいたものの改めてその威力を実感しました. もともと通信講座用に作りはじめたノートで, 細切れの時間でも勉強しやすいようにと節もかなり細かく切っていました. 節・小節の単位でタイトルがつけられるため, あとでトピックを探す上でも便利で気に入っていたのがさらに徹底的になりました.
「情報を出している」という感じが強くなっていて, 文章の色気みたいなものまでほしい人には向かないのかもしれませんが, 少なくとも私には読みやすくなりました.
他にも箇条書きでまとめているため, 1トピックの区切りが明確です. 改めて眺めたときに「何だこれは」と詰まる部分もはっきりしやすくなりました. 箇条書きだと不明点も一段下げて「次のように考えればよい」といった補足が入れやすくなり, 追記・修正もしやすくなりました. あとで見れば「もはや自明」と思うような部分も, 箇条書きで一段下げて補足的な内容と明示させれば読み飛ばしやすくなります. やっているうちに気付いた点も取り込んでノートを少しずつ進化させる予定です.
代数学習・復習で得た実感¶
いま代数, 特に群と環の学部2-3年程度の基礎の基礎程度の内容のノート作りを終え, 体論・多項式論・ガロア理論の学習をはじめています. 実際には作用素環の部分因子環論で必要そうだから, と当時物理学科の学部四年のときに数学科の講義にもぐって一度は勉強していた内容です.
当たり前ですが全く身についていません. 久し振りに勉強して当時もよくわからなかった分離拡大などは, 改めて本を読んだら「標数0の体では全ての代数拡大は分離的」と書いてあって, いまだに慣れていない正標数の体でしか本質的な意味を持たない議論がわかるはずがありません. そもそもいまだに体論の理解はこの程度です. 学部一年から集合・位相をやっていて, 関数解析方面の基礎体力は多少ついていたにせよ, 非専門で適当に勉強した内容の理解度などこの程度だと改めて実感しました.
通信講座なりコンテンツ制作なりで, 必ずしも面白くない復習系のコンテンツをどう作っていくべきかなど, 改めて考えている中で注意しなければいけないポイントです.
非可逆行列の可逆化¶
わかれば一瞬かつ一言で直観的にも明らかである一方, 慣れていないときちんと証明がつけられない事案を観測しました. 参考になる方もいるでしょうからメルマガにも転載しておきます.
正方行列に怖い思いをさせてガタガタ震えさせることで、固有ベクトルがズレて可逆になる(?) 直感的には任意の非可逆行列 A と任意の ε > 0 について、可逆行列 B が存在して、すべての単位ベクトル v について |(A-B)v| < ε に出来ると思うんですけど、ほんとうでしょうか線形代数力が無さすぎてわかりません
直観的には少し要素をずらせば行列式を非ゼロにできて可逆化します。特に非可逆な行列は基本変形でブロック対角型にできて「右下」が空くため、そこに成分がεの対角行列Dを埋めれば可逆化します。ブロック的な和としてA+Dを取れば大体Bが得られます。
ジョルダン標準系の0ブロックを適当に小さい数で埋める、確かに
相手がどこまで線型代数の諸概念を知っているかわからなかったため, 「このくらいは通じるだろう」という範囲で説明しました. 直観的に「それはそう」という話をきちんと詰めて話したところ, 相手からさらにそれを表す概念を使って一言でまとめる形で返ってきました. このやり取りだけでも線型代数の基本的な部分からある程度深い部分まで網羅されている上, 面倒な議論を一言で返せる概念が整備されている点にも気付きます.
先日Twitterで「数学まなびはじめ」の新井仁之さんの記事にあった, 「簡単な場合の証明を, 簡単な場合の特殊事情を使わず極限まで難しく書け. それが難しい場合の一般論を構築する上でのヒントになる」といった話をしました. 知識がある程度ある前提で復習するときは, 進んだ知識で簡単な議論を一言で表す訓練をしてみるといい勉強になります.
これの極端な場合が「大定理から系で示す」議論です. 有名どころはアティヤ・シンガーの指数定理です. 三次元空間内の曲面に対するガウス-ボネの定理は一般次元に持ち上げられる一方で, リーマン-ロッホの定理への一般化もあります. さらに一般的な議論がアティヤ-シンガーの指数定理で, 指数定理の系としてガウス-ボネの定理を証明する牛刀をもって鶏を割く話があります. そのままだと「すごいことはわかるが, いまひとつ心に落ちて来ない」ような場合に, 大定理の影響範囲が具体的に見えるする上で一つ大事なポイントになってきます. 進んだ議論を理解するためにこそ牛刀として使い倒すのは一手です.
数値計算とソボレフ空間¶
物理の人に必ずしも通じていないようなのですが, 数学, 特にソボレフ空間論は物理でもフォークロアになっている部分があるのを明示的にしたやり取りをシェアしておきます.
数値積分はいいけど数値微分はだめな理由 pic.twitter.com/HXQZqVaxD8
— horiem (@yellowshippo) November 7, 2022
あるいは、微分操作が高振動数成分を際立たせて、積分が低振動数成分を際立たせるということな気がする。。
— 🐟さかな🐟@威風堂々 (@ShunSakana) November 7, 2022
例えばソボレフノルムで見るとこのノイズは非常に大きなノルムを持っているので「ノイズ」とは言わないわけですね(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
「小さい」変化があったとき、結果の変化も「小さく」あって欲しい、そうなるように「大きさ」を決めてしまえばいいわけですよ(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
>RT
— 🐟さかな🐟@威風堂々 (@ShunSakana) November 7, 2022
これは、数値微分がダメということを表してない気がする。。
単に、微分自体の問題な気がする。。
これが全てのノルムが同値になってしまう有限次元位相線形空間になれてしまっている我々が、関数の空間にいったときに戸惑う理由の一つ...(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
数値的には線形作用素は行列で表現するしかなく、行列は常に有界にしかならないので非有界になる操作を近似すると上手くいかず、一方でソボレフ空間の様に微分の大きさに仮定を置かないと微分演算は非有界になる、という点を合わせた結果これは数値微分の問題だという主張はまぁあり(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
数値計算の話はほんとはこういうのをしたいんだけどね...(´・ω・`)
— てらモス🈚 (@termoshtt) November 7, 2022
一様な誤差εが乗っただけでも全空間積分、特にエネルギーの積分は発散しますし、supノルムでどれだけ近くても三角関数型の摂動でエネルギーは跳ね上がりますし、何より20世紀的量子力学で節が増えるとエネルギーも高くなる事案があるので、単に物理を真面目に考えていないだけではないか感もあります。
— 数学女子 (@phasetrbot) November 7, 2022
関数解析や数学的な微分方程式論が数値解析の具体的な問題に直結している様子が見えます. 数値解析に興味がある人がどれだけいるのかよくわかっていないのですが, 私もいまプログラミングとの兼ね合いで改めていろいろ考えている部分なので, それとも合わせて注意している点です.
学習物理界隈へのコミットをはじめたい¶
先日, 科研費で学習物理のプロジェクトをやっている富谷さんに, 「物理界隈向けの情報関係, 特にプログラミングまわりの具体的な教育面で何か手伝えることはないか」とTwitterで打診してみました. 先日も紹介した永井さんの数値計算本など, このあたりでいろいろ遊んでみたいことはあるもののなかなか踏み込むのは大変です. いっそコミュニティに入ってその中でいろいろやろうと思い, 具体的な貢献をしますよベースで話を持ちかけてみました.
以前からGitの使い方といったレベルであっても, 物理の数値計算コミュニティにはうまく浸透していないという話がTwitterであがっていました. 少なくともこういうところなら協力できる要素が必ずあるので, とにかく何か小さな1アクションを取ろうと思います.
やはり一人だと限界がありますし, 先日知人から「あなたは具体的な技術や知見を深めて突破口を作るよりも, 新たな人との出会いで道ができていくタイプだよ」と言われました. 同じことばかりしていてもどうにもならない感じもあったため, 意図的にこれまでとは違う動きをして, 人を巻き込み, 巻き込まれるべく動いていこうと思っています.
2022-10-29¶
数学・物理 証明の構造がわかる数学ノートを作りたい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 中平健治, 図式と操作的確率論による量子論がようやく出版
- 非可換確率論
- 準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれる
- 純粋数学への取り組み方
- 最近のフロントエンド事情
- 高橋憲一『コペルニクス』
- アムロが教育するとしたらどうなるか
- 地理学習
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
いい加減きちんと勉強しなければと思ってAOJで基本的なアルゴリズムとデータ構造学習をしていたものの, AOJでF#が使えないのもあってうんざりしてきたためAtCoderに戻りました. そしてAtCoderは楽しいですね. 知らぬ間に少しずつアルゴリズム力も鍛えられているようで, AtCoder ProblemsのHardも前より取り組みやすくなっている気がします. 年始に本格再開したAtCoder Problemsもうまくいけば今年中に300問解き切れるかもしれません.
通信講座向けコンテンツ整備の一環としての熱力学ノート整備はやる気が出ないため, 既存のノート整理・復習と代数ノート整備を進めています. 先日Twitterで「ふつうの文章の体裁での証明は話の流れや構造が掴みにくい. 実際の本や論文ならともかく, 個人学習ノートなどなら箇条書きをうまく使って証明の構造を掴めるようにした方がいいのでは?」というツイートが流れてきました. 実は私もホモロジー代数ノートでは図式をTeXで書くのは面倒, しかし文章形式は読みづらいと思っていて箇条書き形式のノートにしていました. 試しに復習ついでのノート整理で証明をゴリゴリ箇条書きに変えています. 情報伝達に振り切った形式で好き嫌いは別れそうですが, 一文一文が簡潔で区切りも明確になって流れは掴みやすくなっている感覚はあります.
そもそも大人向け通信講座のコンテンツとして, 細切れの時間でも取り組みやすくするため小節をかなり細かく刻む方針にしています. 具体的にはAubinの幾何解析の本では注意や命題や証明自体を一つの節に切り分けて節番号が振られているのを参考に, 命題程度のレベルで小節をわけていました. いまはこれをさらに細かく, Aubinの本と同じく命題と注意と証明を小節にわける形式にしつつ, 証明を箇条書きベースに書き換えています. 細かな形式はまだ試行錯誤中ですが, 議論の流れを掴む目的でのノート作りを考えている人にはお勧めです.
中平健治, 『図式と操作的確率論による量子論』がようやく出版¶
先日宣伝した中平さんの本も出版されました.
まだパラパラと読みはじめたばかりで何も言えませんが, 量子力学の通信講座展開もあって読まないわけにもいきません.
この本では次のようなコメントがあります. (私の脳内翻訳です.)
線型代数の計算も大事だが必ずしも皆が皆慣れているわけではない. 計算ばかりでは事の本質が掴みにくいときもある. もちろん図式だけで全てが汲み尽くせるわけでもなく, ふつうの線型代数の計算力の意義・重要性は微塵も揺るがないが, いくつかの点で明確なご利益がある.
以前も紹介した気がしますが, 図式による議論は圏論的なストリング図とも関係があるらしく, 圏論への親しみも増すだろうと思いつつのんびり眺めている最中です. 図式によるTeXノート作りも大事なので, TeXの書き方に関して情報が出ていなければ何か参考情報をシェアしてもらえるよう働きかける予定です.
非可換確率論¶
Twitterで鍵アカウントの博士学生に対する応答をシェアしておきます. 何度となく言っている内容ではありますが, タイミング次第で同じ内容でも入ってくる情報量が変わる場合もあれば, 興味関心が合致する場合もあります.
作用素環の主な二つのクラスとして、C^環とvon Neumann環がある 可換C^環に対してはGelfand-Naimark双対性によってコンパクトHausdorff空間と反変圏同値があるが、可換von Neumann環に対してもcompact strictly localizable enhanced measurable spacesとの反変圏同値が成り立つらしい 他にもmeasurable locales、hyperstonean locales、hyperstonean spacesの圏としての表示もある https://arxiv.org/abs/2005.05284 この対応があるという意味で、一般のC^*環の理論は非可換位相空間論で、一般のvon Neumann環の理論は非可換測度論と見放されるらしい
圏論・幾何方面ならC^*というかもっと一般に非可換幾何ですが、ゴリゴリの解析で非可換積分論だと少し古いもののhttps://arxiv.org/abs/1208.5197のような話があります。非可換確率論もあり、最近圏の本をいろいろ書いている西郷甲矢人さんが非可換確率論の人です。Twitterにもいます。
準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれる¶
Observing quasiparticles through the entanglement lens https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.106.L161104 準粒子の情報がエンタングルメントスペクトラムや相互情報量に含まれるよ理論。物性屋さんも情報理論を本格的にやらんといけん時代かな?
いままで量子情報に興味が持ちきれない状態だったところ, こんな話まで出てきたとなれば物性から情報の勉強ができるパスが開かれたとも言えます. いよいよ私にとって情報理論を勉強しやすくなる環境が整ってきたのでしょう. とても楽しみです.
純粋数学への取り組み方¶
小中高で触れる数学は人間同士の間の競争という文脈と結構固く結びついている印象がある。大学以降も純粋数学を続けるなら、まず敵は人ではなく数学であり、対人戦ゲームではなく協力プレイのゲームであるという意識を持つところから始める必要がありそう。 まあ大学に入ってからも大学院に上がる際に院試があって、そこではどうしても対人の数学をやらなければいけないのだけどね。 僕は大学入試で2敗、修士の院試でも1敗してるので、もう対人の数学はあまりやりたくないですね…笑
書いといてなんだけど,小学校はそうでもなかったかもしれない.あと僕がこういう風に思ってるのは,高校受験とか大学受験みたいな受験戦争に身を投じたときに歪んだ価値観を植え付けられたからなのかもしれない…
これに対するくるるさんのコメント.
なんでもとあるアメリカの大学教授が、黒人学生が微積分でつまづくのをなんとかしようと観察・調査をした結果、白人やアジア系学生はグループで勉強し簡単なミスや勘違いを素早く修正できるのに対し、黒人学生は一人で勉強し細かい点で時間をかけすぎる傾向にあることを発見したそうで(続く) 小中高で触れる数学は人間同士の間の競争という文脈と結構固く結びついている印象がある。大学以降も純粋数学を続けるなら、まず敵は人ではなく数学であり、対人戦ゲームではなく協力プレイのゲームであるという意識を持つところから始める必要がありそう。 黒人学生もグループで勉強するように誘導したところ劇的に成績が改善し今ではむしろ黒人学生の方が平均値が高くなるようになったそうで。「負けたくない」「バカにされたくない」という意識は小中高でも十分ネガティブに働くのではないかと思う。 とはいえ、コミュ障の私にはどうも納得いかない面があるわけなのですが。まあとりあえずそういう研究・実践の報告があるということで。ちなみに本の文脈では、「黒人は数学ができない」というステレオタイプが最初に挙げた傾向の違いに影響しているという話になります。
何にせよ一人で勉強を続けられること自体が異常よりの行動力の持ち主です. 役に立つわけでもない話ならなおさらです. ここが私の領域だとも思うので通信講座は続けなければと思います.
最近のフロントエンド事情¶
プログラミングの話です. 細かなツールチェーンの話はいまだに山程あれど, 基本的にはReact一強にはなったため前よりは勉強しやすく, 取り組みやすくなっている印象があります. ツールチェーンも日々新しいのが出ているとはいえ, いろいろなモノをごちゃごちゃと組み合わせるのではなく, 簡素化の方向に向かっているのも有り難いです. もちろん開発者自身がもう耐えられないのでしょうし, Denoは明確にそこに舵を切っているようです.
それはそれとして書きたいのは高速化とRustの利用です. Rustは少なくとも他のメジャーな言語には搭載されているメカニズムがあり, 単純にそれを使った実装に興味があります. 前に微分方程式のプログラミングで少し使ったことはあり, 慣れないため面倒なことこの上なかったものの, バグを生みにくいプログラムを作るための面倒さ, もっと言えば既存の言語の悪癖の修正を促す言語という点がかなり気になっています.
そしてもう一つの高速化に対する明確な強い欲求が気になっています. アルゴリズムとデータ構造の話はそれ自体面白くなってきましたが, 高速化・効率化に関わる明確なご利益がある議論でもあります. そしてRust自体の速度だけではなくアルゴリズム上の工夫もたくさんあるようで, Rust+アルゴリズムはもっと面白い世界になっていくのではないかと見ています.
AOJを見ている限りではRustの競プロコードはそれなりにボリュームがあり, HaskellやF#ほどの簡潔さはなさそうです. 長いコードは読むのに体力を使い, Haskellでよく思うように短すぎても読みにくく, F#の程々さが気に入ってもいるためしばらくRustはお預けですが, 何かしらのタイミングでもっとしっかり勉強したいところです.
高橋憲一『コペルニクス』¶
先日『チ。』が微妙に燃えた影響でいくつか関連コメントが出ていました.
『チ。』で近世の天文学に関心をもった方にはこの本が超絶オススメ.若い読者向けということで「話し言葉」で書かれてあるのですが内容は初学者に配慮しつつも本格的.科学史という学問がどういった手法で過去の天才の思想と対峙しているのか,第一人者が手の内を明かしてくれている点にも大注目で コペルニクスが地球を動かした理由をどう考えればよいのか?高橋憲一先生の立場を結論から言います.
一般的にいって何らかの主義ないし信念をもちさえしたら「太陽の静止」と「地球の運動」の観念が得られると考えることこそ天文学研究の現場を素通りした想定だと言わなければならないであろう.
ここでの主義とは,コペルニクスの場合は新プラトン主義(とヘルメス主義)による「太陽中心」へ影響を想定しています.これをきっぱりと否定するのですが,その根拠の示し方に私は著者の史料への誠実さを感じるわけです.新書には収めきれなかった議論を少しご紹介します. まずコペルニクスは「ヘルメス・トリスメギストス」を「トリメギストス」と誤記しています.私であれば誤記は毎日のことですが,コペルニクスが「主義者」であれば,この誤記を見逃すわけがない.Twitterであれば,直ぐに引用RTで「間違ってますヨ」とマウントを取られるところです😂 また新プラトン主義者であるフィチーノは「太陽=神=宇宙の中心」というようなことを『太陽論』(『原典 ルネサンス自然学 上』に邦訳あり)で語るのですが,それは⬇のようなイメージ(月・水・金・「太陽」・火・木・土)であり太陽が宇宙の中心(最低部)でありません. 太陽のある「そこ」を「宇宙の中心」と見なしたのがフィチーノの斬新なのです. なお「地球中心から太陽中心への転換」はこの新書のクライマックスの一つではありますが,科学の歴史というものをどう検討すればよいのか?ということ考える実例として秀逸な本ですので,広く読まれて欲しい本です. 訂正:フィチーノ『太陽論』は「下巻」⬇です.なお訳者は,フィチーノの「太陽中心」(というより太陽中央というべきと思いますが)はコペルニクスに影響があったのでは??という期待を持っているようです. https://unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0881-5.html
アムロが教育するとしたらどうなるか¶
教官としてのアムロ、「どうすれば自分のような反射速度や判断ができるか」を真面目に考えると思うので、「反応出来なくても対応できるようにしよう」って教え方をすると思うんですよ 後ろから攻撃が来る場面を想定するなら、「反応しろ!」ではなく「こういう時は後ろからの攻撃も考えておく」とか カミーユに「後ろにも目をつけるんだ!」は「お前なら俺と同じく感覚を使えるんだからやれ!」なので、部下や生徒とかにはかなり基本に忠実になりながらも自分の経験を踏まえた的確な指導が飛んでくると思いますね ファンネルとかなら「オールレンジ攻撃はいかに的を絞らせないかだ、回避に専念するのではなくダミーを展開しつつ敵機への牽制をやめてはいけない」とか、「接近戦であればパイロットの気を反らしやすい、複数機でのダミー撹乱をしつつ一撃離脱を繰り返すんだ」とか、かなり具体的かな、と
この「反応出来なくても対応できるようにしよう」的な話がすごい好きで, また今後の教育関係の動きでも大事だと思うので自分用の備忘録も込めてシェアします.
地理学習¶
地理情報サイト「Geographia」を公開します。 地理の教養記事、受験に役立つノウハウや各種記事のピックアップ、地理関係書籍の情報を共有していきます。 「誰もが平等に学ぶ機会を」 これをモットーにコンテンツを充実させていきます。 応援いただければ幸いです。 https://itgeographia.com
まだ見切れていないものの, 地理は理系向けの人文系の切り口としてかなりよいという感覚があります. 今後きちんと勉強したいので自分用備忘録も兼ねてシェアします.
2022-10-15¶
数学・物理 基礎が必要なら早めに・徹底的に/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 基礎が必要なら早めに・徹底的に
- 河東YouTube講義録: エニオンの圏論的対称性と作用素環
- 第二不完全性定理と「コーディング」への依存関係
- 図解する整数論
- 藤岡敦『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』
- 永井セミナーの動画: 機械学習による材料物性シミュレーションの高速化
- 続 熱力学・統計力学学習の指針
- 熱力学の復習メモ
- 神学大全の羅和対訳
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近急に気温が下がって体調がいまひとつでやる気も出ないため, 無理せずのんびり関数論の勉強をしていました. 久しぶりに少しアドバンストな勉強でもしようかと, 複素代数幾何への応用を意図した多変数関数論の入門の本を読んでいたところ, やはり代数の基礎が足りていないのを痛感しました. 最終的に関数論はもっときちんとやろうと思っているため, 何となく代数のノート作りを並行して進めていました. 学生時代に一度勉強していたとはいえ, 大して使っていない以前にやり込みさえ甘かった分野はなおのこと身についていない, 身につかないのを痛感させられました.
ノート整理をしていたら, 細かい精査の必要性を認識しつつ, 幾何のノートを早く充実させて作り切りたい気分が高まってきています. 少なくとも現状では研究にまで届くような内容への興味だとやはり解析学が中心で, 幾何で興味がある分野と内容は基本的な部分がわかれば当面は十分です. 一般論としては位相幾何(トポロジー), モース理論, 指数定理が揃えたいです. (多変数)関数論は私の中で解析学判定もありますし, ホモロジー代数も必要な範囲は位相幾何とモース理論を勉強すれば, ある程度はノートができるでしょう. あとは多変数関数論と代数解析を進めれば層のコホモロジーの基本的なノートが充実するはず.
復習・整理していると, やはり控え目に言ってもリリースできるレベルではありません. 定着のためにのんびり復習する時間も作って, リリースに向けた準備をはじめたいです. 書きっぱなしなので最低限の整備でさえ一年半はかかるでしょうけれども. そういえば多様体の基本的な内容もノートが作り切らずに止まっています.
一般論が整備できれば, 具体例と計算フェーズがもっと楽しくなります. 微分幾何もよくある2-3次元での曲線論, 3次元空間内の曲面論と一般的なリーマン幾何の対応が見えるノートを作りました. ずっと精神的な重しになっていた内容をクリアしたので, 具体的な計算で遊び倒すモチベーションも高まっています.
あと数ヶ月やっていたAOJも飽きてきた上に, 進めていたAOJの基礎教材はHaskellと相性がよくなさそうで, F#に慣れた頭でOCamlもつらいため, AtCoderに戻ってきました. 基礎教材と問題という違いもあるのでしょうが, 何となくHaskellとの相性もよく, Haskellerのコードが簡潔・明快で読んでF#に翻訳するだけでもよい勉強になっていて, とても楽しいです.
AtCoderで優先度つきキューを使うとよい問題が出てきて, HaskellではIntMap
, F#だと集合を使った解法がありました. .NET6で優先度つきキューが入ったようですが, .NET core 3のAtCoderでは使えず, しかもちょっと微妙な仕様のようで閉口しています. AtCoderに戻った途端にデータ構造学習の基本的な課題に当たったため, この数ヶ月の苦闘も無駄ではないものの, (F#による)関数型データ構造学習の道のりはまだまだ長いです.
C/C++やRustでやればよいのではという話もあり, Rustは興味があるものの, 「F#を書いて遊びたい」がモチベーションの一つになりつつあるため, なかなかうまくいきません.
自然言語で「英語は好きではないがフランス語はとても肌に合う」と言った話を聞いてそんなものかと思っていましたが, いままさに「他の言語ではなくF#を書きたい, F#で遊びたい」になっていてこういう感覚かという思いです.
基礎が必要なら早めに・徹底的に¶
近況報告に書いた話の続きです. いま代数のノートを作っていて改めて実感しています. なまじある程度知っているだけにノート作りが面倒で仕方ありません. かといってさぼると, あとで本を探すときにふだんその分野の本を読まないため奥に追いやられて手繰り寄せるのも面倒なのも実感しました. 思い立った今やるしかないと歯を食いしばって進めています. 先々の面白い話を知っているのもさっさと終わらせたい嫌な気分に拍車をかけます.
対照的に, 物理の勉強の場合だと少なくとも一度はまじめに・徹底的に勉強した上で, 改めて基礎の繊細な部分を徹底に考え直す側面があり, 逆に新たな発見というか楽しみが生まれてくるのが面白いです. いままさに作っている熱力学ノートでそれを実感しています. 学生時代に勉強した, 最低限知っている内容であっても, 明らかに理解が深まっていて理解できる内容もそこにいたるスピードも上がっています. 学生時代に物理学科だったご利益を実感しています.
先々の面白い勉強を進めたい人は多いと思いますが, いつかどこかで基礎に向き合うことになるのはよく覚えておいてください. ここでいう基礎はハードな計算を遂行しきる計算力も含んでいます.
河東YouTube講義録: エニオンの圏論的対称性と作用素環¶
面倒になったので転記をさぼりましたが第九回まであります. 第一回しか見られていないものの, ヤング図形の解説をはじめてまともに聞いたのですが, これがなかなかよかったのでそれだけでも聞く価値があると見ています.
第二不完全性定理と「コーディング」への依存関係¶
第二不完全性定理が、多くの自然なコーディングに依存していることは不完全性定理の研究者を除きあまり知られていないけど、証明はともかくその事実だけは割と知られていて良いと思っている。このサーベイがかなりわかりやすく説明されていて、intensionalityと言っている。
最近計算機科学にも興味が出てきて, その中である程度集合論の議論の要素を見かけます. 集合論ノートも作りたいと思いつつ幾星霜です.
図解する整数論¶
図解する整数論 - 丸善出版 https://buff.ly/3yAHsgO この本,ヤバいです,面白すぎる.最初の数え上げからこの手があるのかの連続で,平方剰余の相互法則が力学系で証明されていたり,ペル方程式の解を2次形式のトポグラフという図形的な手法で構成されています.素晴らしすぎる.
私も広い意味では$C^$-力学系・$W^$-力学系として力学系の基本的な部分を勉強・研究していましたし, 研究会で作用素環関係の力学系の話題にも触れていたため, 数論と力学系のようなテーマなら数論にも興味が持てそうな感覚があります. エルゴード理論・確率論と数論という話もあります. 数学としてのエルゴード理論は射程範囲が長いので, これもいつか解析学からのノート作りに勤しみたいです.
藤岡敦『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』¶
『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』 「本書は、このようなことから生じる高校までの数学と大学以降の数学の間のギャップを埋めるための教科書である。」
一定数興味がある人がいそうなのでシェアしておきます. 藤岡さんが最近書いている「手を動かして学ぶ」系は評判がよいようです. 内容は確認しきれていませんが, ここ一年私が主張し続けている計算の重要性もまさに手を動かして学ぶ系のコンセプトで, 様子を見る限り大きな方向性は同じようです. その大方針も合わせてお勧めです.
永井セミナーの動画: 機械学習による材料物性シミュレーションの高速化¶
そういえばこの前1時間位「機械学習による材料物性シミュレーションの高速化」って内容でオンラインセミナーしてきたのですが、その動画が公開されました。 |【オンラインセミナー】第3回 アドバンス・シミュレーション・セミナー https://youtu.be/KMLDPsktQ-w @YouTubeより
最近統計勉強会ではJuliaの統計パッケージを読むのに飽きてきたためsympyのコードを読んでいます. 高速化を意識したコードをしばらく読んでいたからか, sympyのコードで簡単で本当に微々たる量ではあっても, 明らかに効率化できるコードを見て「書き換えたい」と思うようになる程度には高速化への意識も芽生えてきました. まだ見られていないのですが, 気になってはいるのでメモついでにシェア.
続 熱力学・統計力学学習の指針¶
前回は熱力学の話をしました.
今回は統計力学です. はじめに断わっておくと熱力学と違って統計力学を数学的にきちんと議論しようとするのは勧めません. 単純に血反吐を吐くほど難しいからです.
まず数学方面の興味がある人向けに書いてしまいましょう. 例えば量子統計で言えば平衡状態の存在そのものがいまも論文になるレベルで大変です. もっと言えばBECがあるため自由場の議論さえ数学的にきちんと議論するのは大変です. 新井朝雄先生の「量子統計力学の数理」も自由場のBECが一つの山です. そんな中, 物理的な意義もおさえながら統計力学の基礎を勉強するのにお勧めなのは, 原・田崎の「相転移・臨界現象の数理」です. イジング模型には可解格子模型のようなテーマもありますがこれはもっと地味な議論です. しかし逆に物理学科の物理にとっても意義のある形・内容なので, 数学的に完全に厳密に物理にアプローチしたいならお勧めというかぎりぎり限界の内容です.
次に物理学科水準で統計力学の基本的な内容を勉強するときのポイントです. 結論から言えば, これも田崎さんの統計力学を読むのがいいだろうと思います.
統計力学には凄まじく多彩な展開があります. 先日沙川さんの非平衡統計力学の本も紹介したように, もはや非平衡統計も完全に市民権を得ています. 統計力学自体, たいていの物理学科では学部三年程度でようやく必修として処理できる内容です. そして四年では完全に研究室配属で専門的な話題の準備にうつるでしょうから, 基礎を修めたあとはもうゴリゴリの専門に向けたテーマの本に挑むはずです. 何を勉強するにしても大事な基礎となると本当にオーソドックスな内容を丁寧に勉強するのが一番で, 田崎さんの本ではシュレディンガー方程式系の議論に基礎を置いた量子力学の話も基本的なところから解説してくれていて, 偏微分方程式を駆使する(20世紀型の?)量子力学への導入にも使えて便利です.
熱力学の本も同じで, 田崎さんの本はとにかく丁寧なのがよい点です. 比較的最近の本なので物理的な基礎づけとエルゴード理論の(無)関係などにも注意があります. 強いて言えば二巻あって長いと言えないこともありませんが, 丁寧さの裏返しと思った方がよいでしょう.
応用に関する部分でも書いたように, この本だけだとさらなる魅力的な現象へのアプローチや具体例の計算が足りません. 熱力学の本でも引用があるように, 埋める一つのアプローチは久保亮五編の演習書です. なくしたようでいま手元にないので記憶で書くと, まず物理学科向けなのでかなり難しいです. もちろん最新のトピックもありません. それでも統計力学の幅の広さは実感できる特異な本です.
私は物性の数理物理に進んでしまったため, 物理としては深いものの極端に狭い世界しか把握できていません. ただそこまで広く深く勉強したい人はもはや研究志望の大学院生くらいで, もう私の手に負えるレベルの人ではないでしょう. まずは熱力学・統計力学ともに素直に田崎さんの本を読んでもらうのがいいと思っています. その先はもうほぼ研究水準です.
熱力学の復習メモ: エントロピーが温度をパラメーターに含まない理由¶
冷静に考えると大した話ではないものの, 本腰を入れて勉強し直したご利益的な形でいい気分なのでメモがてら共有します.
何というか, 完全な熱力学関数としてのエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由がようやく腑に落ちました. 全くもって高尚な話ではなく, 断熱系の定義のもと, 断熱系の状態間遷移を制御する量としてのエントロピーという既に知ってはいた定義を整理しつつ認識し直して, 改めて熱力学の理論の構造が見えてきて, 当たり前のことを当たり前と言えるようになりました. 田崎さんの本の二章の定義は本当に大事なので, 田崎本を読む人はぜひ注目して読んでください.
念のため簡単に理由を書いておきます. 温度は外部の環境に関するパラメーターとして熱力学に導入されます. 一方断熱系はいわば孤立系の議論で環境の情報は持ちません. 外部環境と比較した上でしか出て来ない温度の情報を使って断熱系を特徴づけるのは原理的に不可能です. これが断熱系の完全な熱力学関数がエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由です. わかる人にしかわからない説明かもしれません. 勉強会つき通信講座の形でノートを公開する予定なので, 興味がある人は楽しみにしていてください.
さらっと流しただけの代数や幾何と違い, 一度自分なりに徹底的に勉強した上での物理の復習は頭が整理されてとてもいい気持ちです.
神学大全の羅和対訳¶
なんと,慶應の上枝美典先生による『神学大全』の羅和対訳がGitHub上に公開されているだと・・・. http://ueeda.sakura.ne.jp/translation/
人文系でもGitHubの活用があるようで, インフラとしてのGitHubがどんどん広がりを見せているようです.
2022-10-08¶
数学・物理 ノーベル物理学賞は量子情報: ベルの不等式/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 社会の厳しさ
- 「チ。地球の運動について」
- 磁性の数値計算
- 熱力学・統計力学学習の指針
- 技術資料のあり方
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ノーベル物理学賞はいままさに通信講座で展開している部分とも重なる量子情報, ベルの不等式に関わる議論で個人的にはとてもタイムリーでした. ベルの不等式は一連の不等式を指し, それぞれがいろいろな状況を扱っていて一概にこうとは言えないようですが, 面白い議論がたくさんあるのは間違いありません.
いまの通信講座でも一連のベルの不等式のうちCHSH不等式を扱っていて, このCが今回授賞対象のクラウザーです. ここ一年ずっと言っている具体的な計算・線型代数の計算・行列の計算の文脈からもドストライクです. 次の通信講座も予定ではいまの続きで, 線型代数の一般論を量子力学に役立つ形でゴリゴリ具体的に低次で計算するスタイルで続けます. 興味がある方は楽しみにしていてください.
特殊相対性理論のノートも力学部分は大まかに作り終えました. まだいろいろな本やPDFなどの切り貼り状態なので, 後で見たら「何だ, このわかりにくい構成は」となるはずです. このまましばらく寝かしておいてから整理して, 一定のレベルになったらまた通信講座としてリリースする予定です.
学生の頃, 学部三年で勉強したときは量子力学・統計力学と同時平行で進めていて, それぞれ計算も大変で物理どころではない状態で, 物理の理解以前で止まっていました. ようやく一歩踏み出せたのでこれからのさらなる追い込みが楽しみです.
これから熱力学ノートをざっと整理して, イジング模型の数理物理に進む予定です.
社会の厳しさ¶
「数学やってます」と言ったら心底嫌そうに顔を顰めて「しっしっ」と追い払う動作をされたことがあり,それをやられたらもう,自分は仮に自分の大嫌いなこと(それがあったとして)に従事している人が目の前にいてもそんなことをしないという誇りを胸に生きていくしかないと思った.
最近のTwitterでは「数学をやっていると言って嫌な目にあったことがない」との話をよく目にするようになって, そんな異世界があったのかと衝撃を受けていたものの, やはり社会はあったと現実を思い知らされた気分になりました.
「チ。地球の運動について」¶
『チ。地球の運動について』というマンガが人気のようです.コミック売り場で平積みになっていたりします.近世の地動説をテーマにしていますが,科学史的にはありえない話ばかり.近世の政治史,宗教史からも突っ込みどころ満載ではないかと思います.
実はこの手の成文化された批判を心待ちにしていました。最終巻を読むと、あの異端審問官が一体「誰」なのか分かるとともに、事実を反映しない云々の批判が瞬時に無効となります。
未読の漫画なのですが気になる話があったのでメモがてら共有です. ガリレイの異端審問的な記述に関して無茶苦茶だが, 最終的などんでん返しがあり, それを知ってもまだなお不満があるという話もあるようで, どんな話なのか逆に気になっています.
磁性の数値計算¶
イジングの数理物理をやる一方, 永井本を読んで, 改めてプログラミングネタとして格子模型をやるといいのでは, という天啓を得たため適当にツイートしたら教えてもらいました.
(答えてもらっておいてなんですが、専門外という事を含めていただいて話半分に聴いてください) 古典と量子で色々と異なる気はしますが、ネット上だと 川島直輝, 物性物理におけるモンテカルロ法(第52回物性若手夏の学校(2007年度)講義ノート), 原田健自, 量子モンテカルロ法の最近の発展とかでしょうか。 本だと計算物理〈3〉数値磁性体物性入門 基礎物理学シリーズが良かったと記憶してます。
数値計算でトロッター公式や経路積分といったテーマも重なるようで, 線型代数の一般論ネタとしても昇華できる部分があります. 富谷さんのツイートを見ていると, 物理学者向けのプログラミング教育的な部分も全然足りていないようなので, そこにも貢献できるようなことができればな, と妄想しています.
熱力学・統計力学学習の指針¶
これからまさに私自身これらを再学習します. 学生時代物理学科で一通りやっていて, イジング模型の数理物理については原・田崎のイジング本の査読に参加して謝辞に載せてもらった程度には勉強しているため, 直接役に立てるのも難しいと思うかもしれません. 逆に数学色が強い人間から見た勉強のつらさといった視点で何がどうつらいのか言える部分もあるので, 興味がある人はぜひ参考にしてください. ノートを整理したら通信講座も展開する予定です.
まず熱力学はここに田崎本・清水本の書評を書いています. これも参考にしてください. 清水本は2021年に二巻本として第二版が出ていますが, 私は一巻本の第一版しか持っていません. 内容・構成が大きく変わっているかもしれませんが, ここでは第一版に基づいた記述にします.
おそらく多くの人はエントロピーを理解したいと思うでしょう. どう書かれればわかりやすいと思うかは人によって大きく変わる点に注意が必要です. 古い(?)統計力学の本だとエントロピーは乱雑さを表すと言ったりしますが, 熱力学のレベルではそんな話は原理的に出てきません. 統計力学をどういう立場で捉えるかもあります. 少なくとも熱力学(だけ)を勉強するなら乱雑さの視点から捉えるのはやめた方がよいです.
最近の新しい本は調査できていないものの, とりあえず熱力学は田崎本と清水本を読むのがいいでしょう.
特に初学は田崎本を勧めます. 気体の力学的扱いからはじまって状況を表す図も差し込まれているため, 理論を直観的に理解しやすいはずです. 力学を軸にした熱力学の理論の立て方に慣れたあと, 断熱操作を軸にしたエントロピーの立ち位置を明確にしていて, 熱力学としてのエントロピーの意義が見やすい構成になっています.
あともう一つ, 初学にお勧めの田崎本の圧倒的な利点があります. それは完全な熱力学関数の記号的な識別です. 例えばヘルムホルツの自由エネルギーといっても, 何を変数としているかによって熱力学的に持つ情報量が変わります. 系の完全の情報を持つのは適切な独立変数を持ったときだけで, その場合に関数の引数を角括弧で書く区別をつけています. これだけでも熱力学の議論の見やすさが段違いです.
社会人や非専門の人だと時間もないでしょうから田崎本一冊読めばそれで十分です. もっといろいろ勉強してみたい人は清水本を読むといいでしょう. 次にこちらの特徴を書きます.
田崎本のいいところはよい意味で熱力学に閉じて, 熱力学の理論構成を教えてくれます. 一方, 清水本は物理の中の熱力学を教えてくれます. 例えば場の量子論や統計力学, 相対性理論との関係も一章割かれています. 他には離散的な量であるはずの物質量を連続とみなす感覚の説明もあり, 物理として明らかに一歩踏み込んだ記述があります. おそらく相当物理に慣れていないと読めません.
もう一つ, 初学者殺しになりがちな清水本の特徴があります. 著しく数学的な記述スタイルです. ここでいう「数学的」はいわゆる厳密な論理展開といった話ではありません. 実は清水本では田崎本と違ってエントロピーから話がはじまります. そして次のように議論が進みます.
- エントロピーという量が大事なことがわかっている.
- こういう量として定義する.
- エントロピーが持つ性質を解明しよう.
この「まずとにかく大事な量・概念を定義する」, 「何だかわからないまま話を進める」スタイルがいかにも数学の議論の趣があります. 特に途中までは具体例の計算もかなり少ないように思います. ふつうの物理の本のスタイルではないことも難しさに拍車をかけます. 念のために書いておくと数学関係者なら読みやすいかと言うとそうでもありません. 肝心の物理部分が難しいので物理に対するかなり高い耐性が必要だからです. そういう意味ではまずは四の五の言わず田崎本を読んだ方がいいでしょう.
本当は統計力学も書こうと思ったのですが, 長くなったので次回に回します.
技術資料のあり方¶
よく技術資料を書く人間としては背筋が伸びる資料だった。よく整理されていると思った。A群向けの記事を書きたいと常々思いつつ、B群向けの記事を執筆・量産している気がしてならない/テクノロジーマップ、技術カタログの在り方について
A群とB群はリンク先のPDFで次のように定義されています.
- [A群] 組織に少数ながら隠れて存在する、独立した頭脳を持ち、試行錯誤を好む、実質的技術的決定権者たち
- [B群] 組織の経営事務的機構(サラリーマン的集団)
私もA群と解されるような人達向けの情報を出す方だと思いますが, もっときちんと考えてやるべきなのでしょう.
今週の問題¶
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-10-01¶
数学・物理 格子模型の数値計算が面白そう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 計算統計・計算物理の諸手法
- 機械学習のための関数解析入門, 線型代数対話
- 同値な主張の言い換え
- 関真一朗, グリーン-タオの定理
- 中平健治, 図式と操作的確率論による量子論
- フォンダ, クルツワイル-ヘンストック積分入門
- 小学校でのプログラミング教育
- ラテン語派生語表
- 人生のはじまり, 勉強の我慢
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近いまひとつ気分が乗らずメルマガが隔週になってしまっているものの, 数学・物理・プログラミング自体はのんびり進めています.
統計の勉強会で永井本のイジング部分を読んでいます. 微分方程式はあまりにもつらいものの, 何かしら物理に関わる数値計算はやりたいと思っていたところ, 改めて格子模型をいじっていたら「そうか, これもあるか」と今更ながらに気付きました. 格子模型の数値計算ネタや本がないか, 勉強会で読み終わったらちょっと永井さんに相談してみようと思っています.
あと最近よく触っていて, Juliaの統計パッケージのライブラリ読みも飽きてきたので, sympyのソースを読もうかとも思っています. プログラミングも改めて純粋に数学・物理に絡んでくるような方向が見えてきたので, とても楽しみです.
数学・物理に関しては通信講座関連で特殊相対性理論ノートがもう少しで雑に組み上がります. 一般相対性理論はいまひとつやる気が出ないので, 特殊相対性理論ノートができたらいったん熱力学ノートを作り, イジングでの統計力学ノートを作る方向に進もうと思っています. 上で書いたようにイジングは数値計算もセットで遊ぼうと思っていて, いまから楽しみでなりません.
計算統計・計算物理の諸手法¶
これ講義聞いてみたいと思うでしょう.ところが実は動画が全部無料で公開してるんですが https://sites.google.com/view/lecture-algorithm/ なぜか誰も聞きにこない.
そしてネット上で入手できる壮大な文献リストまでついているのである https://sites.google.com/view/lecture-algorithm/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/%E6%96%87%E7%8C%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88
計算物理関係の文献リストもあるのですが, いまひとつ何からどう読んでいけばいいかわかりません. よく知らないところに対して文献リストをボカンと出されても困るのを改めて実感しています. 今年に入ってからの通信講座・計算練習もこの反省というか実感に基づいて展開しています. よく知らない上に吟味する時間も取りにくい状況だとそれだけで困るので, とりあえずこれをかちっとやろうと出してくれると楽だろうと.
機械学習のための関数解析入門, 線型代数対話¶
これ(機械学習のための関数解析入門)は名著です。関数解析ガチ勢は、著者が「何を狙ったか」たぶんすごくわかって感動するのでは。内容は易しいが、理念はあくまで高い!
ありがとうございます!『線型代数対話』もいずれは関数解析までいくつもりなのですがまだ道は遠いのです。関数解析の方にむしろ読んで(ニヤリとして)いただきたいのは『指数関数ものがたり』ですね(付録は圏論)。下記Grassmannianさんという方のレビューが詳しいです。
11,12章は著者の専門に若干寄せた発展的なトピックというところだろうか。Fourier変換からGelfand変換へと話を進め非可換確率論に触れ、超関数を定義し中心極限定理で幕が下りる。本当はここからさらにBrown運動の話をしようと思っていたらしい。続編に期待したいがそれは演習問題とされていた。 私は付録がとても面白いと思った。本文で位相の話ができなかったからということで、圏論的に集合、超準解析、距離空間を取り扱っている。
西郷さんは比較的専門が近いので前からかなり気になっています. 『指数関数ものがたり』も読みたいですがとにかく時間がないですね.
作用素環も学生の頃にノートをTeXで作ろうと思ったものの, あまりに時間がかかるので断念した記憶があります. 今から思えば時間がありあまっていた大学院の頃にこそやっておけばよかったと非常に後悔しています.
同値な主張の言い換え¶
函数fについて、「任意のxについてf(x)は0以上」と「fの最小値(正確には下限)は0以上」は同値な主張ではあるが、学生視点だと前者の方が圧倒的に難易度が高い。それくらい(数学者以外の)人間にとって述語論理は難しくて分かりづらい。 現実に学生を指導する際には、「正確には最小値でなくて下限だけど、下限概念は難しい」とか「前者のように理解する方がより自然」とかあったりするわけですが、前者のような表現が学生の理解に負担をかけていること自体は意識したいと自戒。
この手の言い換えは受験数学のテクニックみたいに思われがちだけど、大学以降の数学でも実は大事で、リーマン積分の理論は過剰和と不足和を導入することで実質的にこの手の言い換えを駆使して記述を大幅に簡略化しているんですよね。 こういうものの見方は私も最近できるようになったもので、学生時代の理解力だと教科書や授業ノートの議論をフォローする(それもできたのか怪しい……)ので精一杯で全然ゆとりがなかった。 これぞ年の功である。
最近よく引用する森の未知さんのツイートです. 森の未知さんはかなり教育熱心で, かつツイートで知見を共有しているのでとても参考になります.
ちなみに上記引用の一番最初のところ, 実際にどちらの方がわかりやすい・わかりにくいというのはあるでしょうか? 私はむしろ前者の方がすっと入るくらいですが, それほどふつうではないと聞いてむしろびっくりしました.
関真一朗, グリーン-タオの定理¶
実物を見てない人がわいわい言うのはアレかもしれないですが、これ多分名著なので皆さん買いましょう。 というのも、この手の本にはしてはとても珍しいことにself-containedらしいんですよね。
グリーン・タオの定理 |朝倉書店 「素数には任意の長さの等差数列が存在する」ことを示したグリーン・タオの定理を少ない前提知識で証明し,その先の展開を解説する。〔内容〕等間隔に並ぶ素数/セメレディの定理/グリーン・タオの定理/ガウス素数星座定理/他。
21世紀に発見された大定理を一冊の本でself-containedに証明全て説明すると普通はガチ専門家にしか読めない本になるわけですが、非専門家(と言いつつ学部レベルの数学はある程度知ってた方が良いかもしれないが)向けで証明全て説明するのはとても珍しいです。
これも森の未知さんツイートです.
ちなみに関さんはいわゆる素数大好き人間です. 私は学部が物理, 修士は解析学専攻だったのであまりこの手の人に実際にお目にかかる機会がなく, 関西すうがく徒のつどいではじめて話を聞いたときに「素数大好き人間, 本当にいたのか」と思った記憶があります.
中平健治, 図式と操作的確率論による量子論¶
いま通信講座もやっている量子力学関連でまた本が出ます. いわゆる「21世紀の量子力学」的な内容でピンと来る本にいまだに出会えていないのですが, Twitterでの様子を見る限り, 中平さんの議論のスタイルはかなり肌に合いそうなのでとても気になっています. Amazonでもうポチっておきました. 10/21発売だそうなので到着が楽しみです.
フォンダ, クルツワイル-ヘンストック積分入門¶
リーマン積分とゲージ積分で微分積分学の基本定理の主張と証明がどう違うのか比べると結構面白い。 リーマン積分だと証明に平均値の定理を使う関係で被積分函数の可積分性の仮定が必要だが、ゲージで区分だと単に微分の定義なので被積分函数の可積分性は仮定ではなく結論となる。
これまた森の未知さんツイートで, 私の中で微妙な盛り上がりを見ました.
ルベーグを一般化できている面もあるようで, 何年も前からそれなりに気になる話ではあります. 私がルベーグ積分を使う・使いたい場面は, $\mathbb{R}^n$を越えた一般の測度空間上の議論が大事な局面が多いので, どこまで「使える」のかが気になっています.
関数解析・関数空間論的な方向も重要で, クルツワイル-ヘンストック積分可能な関数の空間論がどこまで論じられているかも問題です. ここがよい性質を持ってくれていないと使いづらく, リーマン積分の一般化だけに集中されて関数空間論に踏み込んでもらえていないとさすがに食指が伸びないですが, そこまで調査する気力と時間がないです.
どなたかご存知の方がいればぜひ教えてください.
小学校でのプログラミング教育¶
オープンアクセスになりました。無料でPDFをダウンロードできます。 ついに始まった小学校プログラミング教育 -その現状と課題-, 情報処理, Vol.61, No.8, Aug. 2020 http://id.nii.ac.jp/1001/00206050/
中高生向けの動きで何をするかずっと考えているので, 参考資料としてメモ+共有です.
ラテン語派生語表¶
題名は「ラテン語派生語表」だが、内実はラテン語由来の英単語を系統的に集め訳語を添えた解説書、ラテン語幹を記憶の鍵とし芋づる式に英単語を整理できる。ラテン語の英訳と和訳に用いた漢字とがなるべく意味の上で一致するよう配慮、相互関連が看取し易い。まさかの無料😳 http://bit.ly/3c8rIWs
ラテン語は学術用語として数学・物理に息づいています. そんなかたいことを言わずとも, アニメ・漫画・ゲームでもちょこちょこと出てきます. 文系人向けの「語学からの理工系入門」的な調査も進めているのでそれ用のメモ.
人生のはじまり, 勉強の我慢¶
二十台半ば、既に人生は本番中だったと気づいた。その頃は、まだ人生の準備中で勉強したり経験を積んで力を蓄えているのだと思い込んでいた。でも、それでは何もできないで終わると気づいた。今も時々思い出さないと、勉強や成長の快楽に逃げてしまう。 だから、何かを勉強してできるようになったら挑戦するとか、自分自身にとって大事なことを先延ばしにしている人には、あなたの人生も本番が始まってますよと言ってあげたい。勉強が得意な人生を歩んできた人ほど、この事実に気づきにくい。 確かに何かの目標に向けて勉強が必要という場面はある。しかし、自分の場合は、本能的に勉強が好きだから、勉強するのは仕事をサボっていることが多いと自覚している。だから、がんばって勉強するという精神がわからない。むしろ、勉強を我慢することが大事だと思ったりする。 研究者になる人にとっても、勉強フェイズから研究のフェイズへの遷移は難しい課題だ。勉強すると、短時間でたくさんの知識を蓄積できるのに、研究をすると、ほんの少しの知識を生み出すのに、無駄に終わるかもしれない行動をたくさん取らないとならない。
上でもずっと書いているように, 勉強ばかりで中高生向けの活動を行動にうつしていないので非常に反省するツイートでした. 地元の政治家に何か進める手立てが打てないか, 改めて話を持ちかけたので少しずつでも何か動かしたいですね.
今週の問題¶
つい先程ノートを作っていたローレンツ変換の導出に絡めて一つ.
ローレンツ変換の導出には光速度の不変性と相対性原理を使うことになっています. しかし実際には座標変換を線型変換に制限するために空間の一様等方性も使っています. 改めてノートを作って線型変換に帰着する部分の理解の曖昧さに気付きました.
こんなところも線型代数です. 特殊相対性理論でも線型代数は重要です. 一般相対性理論・微分幾何でも局所理論は線型代数で, ベクトル束とその演算としても線型代数は酷使します. 一般相対性理論の入門段階でそこまでどぎつい微分幾何は必要ないものの, もしあなたが数学としての幾何に興味があるなら避けては通れない対象です.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-09-17¶
数学・物理 興味が燃えてくるまで待ち, 耐える/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 興味が燃えてくるまで待ち, 耐える
- Web上学習がつらい
- 集合・位相, または微分積分・線型代数の通信講座
- アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近, 通信講座の次の展開用に物理として相対性理論のノートを作っています. 学生時代は相対論的場の量子論用に特殊相対性理論を少し使ったくらいで全然身についていないので, まずはリハビリです. 微分形式といった部分にどこまで踏み込むかと思いつつ, 特殊相対性理論だけならそこまでいらないかとも思い, いろいろ検討中です. 一般相対性理論にいまひとつ食指が伸びないので, 復習がてら特殊相対性理論ノートを作ったら統計力学, 特にイジングのノートを作る予定です.
永井さんのJulia本にもイジングの話があり, それはそれで別途勉強会でいま読んでいるところなので, 数値計算との絡みももう少しやりたいですね. そこまで含めて楽しみが続いています.
興味が燃えてくるまで待ち, 耐える¶
近況報告にも少し書いた一般相対性理論の話です. 学生時代, 講義に出て一度は一通り勉強したものの, いまひとつ食指が伸びずいまもそのままです.
いま仕事でこれまでいろいろあって手を出してこなかったフロントエンドまわりの勉強をはじめていて, 強制力でゴリゴリ進められているのを考えると, 興味が出てくるなり必要に迫られるなりして本腰を入れたくなるまで待つのがいいか, と思ってとりあえず特殊相対性理論に集中しています.
学術界隈だと何かを理解したければ研究するのが一番だとよく言われます. これにあてはめるなら, プログラムだと何かしらプログラムを書く・開発するのが一番なのでしょう.
中高生向けの展開のために言語学やアルゴリズムなどの情報科学の基礎を勉強しはじめ, 学生時代はまるで興味がなかった言語設計などにも興味が出てきたほどです. 自然な興味の発展を待ってじっくりやるしかないかと改めて感じています.
Web上学習がつらい¶
主にプログラミングでの話です. 最近は公式ページが充実していて本当に助かります. 変な本や解説を読むよりよほどしっかり丁寧に書いてあることさえよくあります.
しかし私にとってつらいのはハイパーリンク系の発想そのものです. リファレンスを読むような必要な部分のつまみぐいではなく, はじめから順を追って勉強したいとき, どこからどう読むのがよいのかとてもわかりにくい点です. そしてリンクが張ってあるとそちらに飛んでいきたくなり, 順番がめちゃくちゃになって混乱します.
「コースが三つある. 初心者向け, 中級者向け, 上級者向けだ. 興味・関心・状況に応じて好きなところからはじめよう.」と並列に並べられていて, 「あとで起点のこのページに戻って中級をやろう」みたいなのがもう面倒でたまらないです.
この点, 本は基本的にはじめから最後まで単線で読み進める前提で構成されています. 頭を使わず前から読めばいい点が本当にありがたいです. こういうスタイルの方がいい人もいるのでしょうが私にはつらいです. ウェブサイトやコンテンツを作るときの自戒として最近本当によく思います. 体系立ったコンテンツを何でどう作るべきか改めて気にしています.
ちなみに私のようにハイパーリンクに満ちたウェブ上の資源で勉強するのがつらいタイプ, どのくらいいるでしょうか? 結構気になっています. いま展開している通信講座は既存のコンテンツ・私の学習ノートがあるため, コンテンツの配布としてははじめに関連するPDFをドンと出した上で, 「今回の講座は全体の中のこれとこれとこれ, それ以外は時間があればどんどんやってほしい. もしくは講座の期間が終わってから復習がてらのんびり取り組んで」という形です. これももっと色々なアプローチがあるでしょう. 余計なコンテンツが入っていると混乱して嫌という人もいるはずで, いい形はずっとゆるく考えています.
集合・位相, または微分積分・線型代数の通信講座¶
当面は物理(の計算)系をメインに進めようとは思っているものの, 数学系をもっとやりたい人もいるのかもしれないと思っています. 以前文系プログラマー勢からコメントされたこともあり, いま量子力学や特殊相対性理論のノート作りでもsympyを使ったプログラムを改めてちょこちょこ貯めています. 以前作ったnumpy+sympyで中高数学に取り組むコンテンツも作っていますし, 数値計算系プログラミングを勉強したい理工人もいるでしょう. 既にいくつかモノはあるのにきちんと伝え切れていないとも思っているため, ずっと気にはしています.
Twitterにも少し書いた話で, よくプログラミングでは「何か作るのが大事で, ゲームやアプリを作るといい」と言われます. そして作るモノがない人が「自分はプログラミングに向いていないのか」と思ってしまう話もあるそうで. 「それなら計算したらいいじゃない」, 「競プロやるといいじゃない」というのが特に今年頭から私が模索している道です. それはそれで素数判定のミニコンテンツから先を作れていないため, そろそろ第二段を作らないとと思っています.
やりたいことがたくさんあって手が回らないので, どなたかよいコンテンツ作ってくれるとありがたいですね. がんばって宣伝協力するので.
アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング¶
アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング この本、パラパラ読んでたけどこれからプログラミング学びたい人はこっから入ると良さそうなくらい、いい本だった。
最近特に情報関係を再勉強中で, もっと具体的な本を必死に読んでいる最中で追い切れないものの, 面白そうなので読みたい本リストに叩き込んでおきました. いつも通りシェア+メモ.
今週の問題¶
最近は(特殊)相対性理論モードなのでそこから.
- マクスウェル方程式はガリレイ変換で不変ではない.
学生の頃にも散々計算した内容ではあります. それでも改めて計算して確認する意味があります. 例えば変に色気を出して一般的にやるより, とにかく成り立たないことだけ示せばいいから$X$軸方向のブーストを考え, それで見やすい解だけ取ってくれば十分です. これはまさに数学で反例を作るときの発想でも重要です. 変な色気を出すよりも簡単なところからしっかり詰める意義を再確認しました. 実際変に一般的にやろうとして「これどうすればよかったっけ?」と謎の混乱を起こしてしまいました.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-09-10¶
数学・物理 密度行列に関する話/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- テンソル積とは何か
- 関真一朗, グリーン・タオの定理
- 関数解析的な量子情報の本
- Helgasonの本
- 式の錯視
- Wigner-Araki-Yanaseの拡張
- 密度行列に関する話
- 数学屋さんとCS屋さんで問題意識とする点が異なるため、片方の問題意識がもう片方に上手く伝わらないという例
- 150分で学ぶ高校数学の基礎
- 田崎晴明, 統計力学Iの修正
- カーリングはなぜ曲がるか
- 統計の実例
- 大人の学び直しサイト
- ハーバード大のコンピューターサイエンス入門講座
- 法令APIを利用したリサーチツール
- メルカリのデータセット
- 不偏分散の分母
- 【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ①
- 数学ソフトウェアの作り方
- 教養としてのラテン語の授業
- 大学以外で言語学を勉強する方法
- 仕事のコツ
- ハードワークの捉え方
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
通信講座がはじまりました. そう組んだのだから当然ではあるものの, (私からすれば)そこまでハードな計算ではない一方で使い出がある計算が多くて眺めているだけでも楽しいです.
最近プログラミングを改めて意識しはじめたので, sympyでちょこちょこ検算プログラムを書いています. 二次の正方行列がさくさく計算できてこれも楽しいです. 統計とはかなり離れてしまうのが難点ですが, 今度, 統計の勉強会でsympyを読むよう提案してみようかと思うほどです. 統計をやるならnumpyで書いた方がいい一方で, 中高数学からやり直す系統ならsympyの方がいい面もあります.
何にせよ量子情報・量子開放系の議論で二次・三次の正方行列の具体的な計算の面白さを今まで以上に実感しましたし, そこにリー群・リー環系でもう少し高次まで計算したい要求も出てきたので, sympyの活用はいま私の中でホットです. 特にリー群・リー環は一般論を理解するための具体例の計算で割とすぐに五次・六次程度が出てきてしまい, 手計算したくない領域にすぐ突入します. ちょうどいま, 通信講座の勉強会で計算ミスを指摘され, 検算していたら混乱してきたのでsympyを使ったところです. テンソル積も計算できるので便利なことこの上なく, 感銘を受けています. ぜひ読者の皆さんもsympyを使えるようになってください. 本当に便利で助かります.
最近半年以上も延々と同じ話ばかりしています. しかしこれでもまだまだ汲み尽くせないほど楽しく重要な対象です.
そう言えばプログラミングに関連して, 以前作ったコンテンツはあります. ただこれに沿った中高数学復習系の勉強会つき講座もあった方がいいのか?とも思うようになってきました. 興味がある方がいれば連絡ください. 一人でもいれば何か考えます.
それはそうと, 今回もメモがもりもりです. そしてちょうど先週, 知人から「情報を集めすぎてそれをさばくために頭を使い過ぎて, 判断力が落ちているのではないか. もう少し情報を遮断した方がよいのでは?」と言われてしまいました. 自覚症状はないものの, だからこそ問題という話もあるわけでどうしたものかと悩み中です.
テンソル積とは何か¶
量子情報系のアプローチも大切なので通信講座でも触れざるを得ません. 今回はほぼいわゆるクロネッカー積による具体的な計算しか触れないとはいえ, 多少なりとも何か説明しないわけにはいきません. しかしなかなか説明するのが大変です.
私は一応学部一年で志賀浩二のベクトル解析30講で微分形式に絡めて触れたのがはじめてです. 少なくとも私が学部の頃の学部低学年の物理で微分形式は使わず, テンソルの言葉だけは解析力学・電磁気・流体・相対性理論で出てきても物理気分で適当に処理していました. そして学部3-4年の量子系の数理に絡めて改めてまじめに勉強し直す形になりました. このときは量子多体系, 特に合成系の構成としてその当時の私にとってこれ以上ないほど具体的な対象として出くわしたため, テンソルについて真面目に悩んだ記憶がほとんどありません. 量子力学をある程度勉強した上で改めて数学的定式化に挑んだときの気分ベースの理解こそあれ, 他の場面でのテンソルをどうするかほとんどわかっていません.
流体を改めて勉強し直したときに応力に関するテンソルの気分は把握したものの, 連続体の力学では四階のテンソルも出てきます. 幾何でも曲率は四階のテンソルで, リッチ曲率は縮約して二階になっていて, といろいろなテンソルまで含めてきちんと説明できるほどテンソルの多様な姿を把握できていません.
世間的な直観的でわかりやすい説明ではこの多種多様なテンソルをどう処理しているのでしょう.
関真一朗, グリーン・タオの定理¶
ついに!12月1日発売決定!! こちら→https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=11871
素数大富豪の作者で, 素数大好き系数学者として知っている人は知っている関真一朗さんが書いていた本がようやく出版されるようです. 数学は修士からだったこともあるのか, 素数が好きという数学者をはじめて見たのが関さんでなかなか衝撃でした. すうがく徒のつどいで二回話を聞いたことがあり, 話がうまい人ではあったので本も楽しみです.
関数解析的な量子情報の本¶
Holevoの著書などは、基本的に無限次元をカバーしてます。 Holevo, Probabilistic and Statistical Aspects of Quantum Theory (Publications of the Scuola Normale Superiore Book 1) (English Edition)
Holevo, Statistical Structure of Quantum Theory (Lecture Notes in Physics Monographs, 67)
あと、これのPart I V: Holevo, Quantum Systems, Channels, Information: A Mathematical Introduction
また本ではないのですが,この博士論文は勉強しました Kruger, Quantum Information Theory with Gaussian Systems
この間, クラウス表現とシュタインスプリング表現のよい具体例も書いてある文献を紹介しました. Twitterでもメルマガを流したところ, 量子情報系のプロが反応をくれたのでついでにいくつか文献を聞いておきました. D論はちょこちょこ眺めようと思っています. 楽しみです.
Helgasonの本¶
そうそう,ヘルガソン先生の Groups and Geometric Analysis... は調和関数だけじゃなく,球関数についても詳しいが,ハウ先生による書評がめっぽう面白いのでおすすめ. https://ams.org/journals/bull/1989-20-02/S0273-0979-1989-15786-8/S0273-0979-1989-15786-8.pdf
bioに著書名を入れていてツイートでもちょこちょこ自著と言っているため, 名前をどこまで出していいものかと悩んでいるmathraphsodyさんのコメントです.
調和関数は表現論のテーマであり, 微分方程式論や固有値の理論, 関数解析のテーマであり, コンパクト多様体上のラプラシアンの固有値解析とも絡んだりと勉強してみたいと思って幾星霜のテーマ含め, 私の趣味によくあう対象です. もちろんリー群・リー環とも相性ばっちりの対象です.
式の錯視¶
傾いて見える数式の錯視. 数学を使う文献の中にありそうであまりない錯視です.
↓↓新井仁之『ウェーブレット』(共立叢書現代数学の潮流、共立出版)の p.32 と p.75 にある数式。錯視を意図して書いたわけではありません。
上記ツイートのリンク先に錯視に見える式の画像が載っています. 興味がある人はぜひ見てみてください.
Wigner-Araki-Yanaseの拡張¶
論文を発表しました:https://arxiv.org/abs/2208.13494 九大の倉持さんが主著です。 「保存量と非可換な物理量は誤差なし測定不可」を意味するWigner-Araki-Yanase(WAY)定理は1960年の確立以来、非有界な物理量(運動量など)への拡張が未解決でしたが、この問題をYanase条件と呼ばれる条件下で解決しました。
WAY定理が非有界な物理量に成立すると、「位置の射影測定は、運動量保存の下で誤差なくできない」が成立するため、この問題は物理的にも重要です。WAY定理にはYanase条件(プローブ系にかける測定が保存量と可換)を使う設定と使わない設定があり、どちらも未解決でした。今回解決したのは前者です。 WAY定理は類似の結果がたくさんあり、測定、ユニタリゲート、誤り訂正符号などにそうした結果が知られています。最近、こうした結果を統一して一つの定理から導けることを示しましたhttps://arxiv.org/abs/2206.11086。この定理からは熱力学やブラックホール物理への応用も出ます。ご興味があればこちらも是非。
論文を軽く眺めても何だったか思い出せないものの, 確かこれは学生時代に関係するテーマを何か勉強していた記憶があります. 量子情報絡みで無限次元で直接的に作用素環を匂わせる話にも出くわして作用素環熱が微妙に高まっているのもあり, ちょっと気になっています.
密度行列に関する話¶
いま展開中の通信講座でもついでに状態や密度行列に関わる概念整理をやっています. Twitterで数学系の人と関連する話をしたのでここでもシェアしておきましょう.
密度汎関数理論(DFT)に出てくる密度行列って大体はトレースクラス作用素だと思うけどトレースクラスに入らない密度行列が物理的に重要になる場面ってあるのかな?
自分が普段扱っている密度行列は、トレースは確率の規格化の観点から1になっているので、トレースクラスでない密度行列というのはなかなかイメージが沸かないのですが、DFTでは密度行列がまれにトレースクラスでない場合が有るのでしょうか?
私は数学畑の人間なので物理のことは何も(本当に何も)分からないんですが、数学的にはトレースクラスでない密度行列を扱う研究もあります(トレースは粒子数に対応していますから要は粒子が無限個あるという状況です)。トレースが常に1の状況を考えることもあることは初めて知りました。 · 量子統計の状況ではありますが、数学的に相転移を起こすためには無限体積極限などが必要で、その場合の形式的な密度行列は連続スペクトルを持ちます(冨田竹崎)。相互作用系(または開放系)になると励起状態の準安定化で固有状態が消えます。基底状態の存在は発散の困難問題で数学的には非自明です。
このツイートだけからではちょっとよく分からないのですが、この話題について適切な文献等ありますでしょうか?>とても興味があります。
量子統計の数学の基礎という意味ではBratteli-Robinsonが基本的な文献です。ただ肝心要の密度作用素の話はそれ自身でほぼ出てこない問題があります。補足をいくつか書いておきます。密度作用素がどこで出てくるかといえば、平衡状態に対して$\omega(A)=Tr(\rho A)$と書くときで要は平衡状態の議論で出てきます。平衡統計力学では平衡状態はKMS状態で表されるとされていて、KMS状態に付随する作用素としてモジュラー共役Jとモジュラー作用素Δがあります。このΔをΔ^{it}=e^{itL}としたときのLが系のハミルトニアンにあたります。大まかにいえばΔが密度作用素です。 Δは冨田-竹崎理論の基本的な対象で、スペクトルの性質が作用素環の性質に反映するため、荒木・竹崎・コンヌらの作用素環的な決定的な結果がたくさんあります。密度作用素は大体e^{-H}にあたるため、ほぼハミルトニアンの解析にあたるものの、量子統計の文脈になるとハミルトニアンの解析がとにかく難しく、具体的なモデルに対する詳しい解析結果はあまりありません。先ほど書いたように作用素環論のレベルで作用素巻自体の解析の文脈で作用素環の性質とハミルトニアンのスペクトルの対応がわかっているくらいです。
私は密度汎関数の議論をほぼ知らず、私が知る限りその文脈から大きくずれると思うのですが、量子統計で興味がある系での密度行列はほぼ例外なくトレースクラスではありません。密度行列のスペクトルがハミルトニアンのスペクトルと関係がある前提のもとで、理由は無限体積極限での挙動にあります。 数少ない見やすい例としてラプラシアンがあります。有限の超立方体上のラプラシアンは指数関数が固有関数で、よく知られているように固有値は離散的です。しかし\mathbb{R}^d全体では全ての正の実数がスペクトルになり、固有値も消えます。調和振動のような例もあるとはいえ多くのハミルトニアンは連続部分を保つため、その時点で密度行列はただの有界作用素でコンパクト作用素の要件である離散的なスペクトル性がありません。おそらく密度汎関数の文脈と本質的に違う形で密度行列を使うため、あまり密度汎関数の議論に役立つ話はないだろうと思います。 密度汎関数業界でもE. H. Liebは有名人だろうと思う(少なくとも論文が一定数あるはず)のですが、Liebは物性・統計力学の幅広い分野で論文があります。Liebの仕事を眺めてみるのと密度汎関数からの議論で何かあるかもしれません。
きわめて丁寧な解説ありがとうございます。私はPDE畑の人間ですが、ある論文は方程式の背景を説明する際に明らかに密度汎関数の観点から密度行列を導入しているのに、途中から「トレースクラスではない密度行列を考えることも大切である」みたいな感じで量子統計っぽい具体例を引っ張ってきたりしていて謎なんですよね。まあ数学屋なので物理なんか知るかという態度も取れますが、やはり気になります。「量子統計の数理」みたいな本を眺めると作用素環の話が必要になるっぽくてつらいところです(作用素環ぜんぜん知らないので…)。
密度汎関数での密度は波動関数の絶対値の2乗にあたる量(関数)(のはず)、一方で密度行列は行列環(作用素環)上の線型汎関数としての状態がトレースとトレースクラスを使って書ける事情から切り出した作用素で、そもそも出所も何もかも違う概念です。密度汎関数で密行列という言葉を使うの自体がそもそもおかしいのではないかと思います。
数学屋さんとCS屋さんで問題意識とする点が異なるため、片方の問題意識がもう片方に上手く伝わらないという例¶
よく話題にあがる解析力学の$L(q, \dot{q})$の話です. 物理と情報系を両方一定程度知らないとわからないのかもしれません. 幾何的には接束上の関数の一言で終わりです.
150分で学ぶ高校数学の基礎¶
特に文系プログラマー系の人が概要を掴むのにはいいかもしれません. プログラミング関係は日々のデータ構造とアルゴリズム学習で手一杯で, あとは通信講座関係のsympyコード作成くらいしかできていないので, せめてもの宣伝協力です.
田崎晴明, 統計力学Iの修正¶
拙著『統計力学 I』でおそらく最も不親切だった(で、評判が悪かった)と思われる pp. 76, 77 の状態数の漸近的な振る舞いについての議論をより直観的で簡略なものに差し替えることにしました。「第 17 刷以前への修正」をご覧ください。以前の議論の簡単な解説もあります。 https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/statbook/errata.html
時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.
カーリングはなぜ曲がるか¶
こちらも時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.
統計の実例¶
この分析の精度はともかく, 興味が持てる実データがあるかどうかがとても大事という気分がずっとあります. 私自身なかなか統計系の勉強が続かないので. 語学・言語学で遊びたいとずっと思っています.
大人の学び直しサイト¶
- URL
- いろいろな科目を学ぶ: ただよび, 岐阜県総合教育センター, eboard, スタディチャンネル
- 英語と数学: NSGL, 数基礎
- 違う視点で学ぶ: schoo, Clearnote
こちらも時間が取れなくて読めていないもののとりあえずシェア+メモ.
ハーバード大のコンピューターサイエンス入門講座¶
ハーバード大のコンピュータサイエンス入門講座のCS50、久々に覗いたら教材だけでなく、講義動画も機械翻訳ではない日本語訳付きになってた。プログラミング学びたいと言ってる初心者に投げつける教材はもう全部これで良さそう。 https://cs50.jp
これも記録がてらシェア.
法令APIを利用したリサーチツール¶
最近仕事関係で改めて必要なプログラミング系の情報に集中的に触れるようにしていて, その中で見つけました. これもここ数ヶ月ずっと言っているように数学・物理・語学系でアプリを作っているので, その参考にもなるだろうとシェア+メモです.
メルカリのデータセット¶
うおおおおメルカリのデータセットだ、デカすぎんだろ!!!!
商品データ,コメントデータはCSV形式で,サイズはそれぞれ約100GB,約40GBです。画像データはサムネイル画像で約2TB,オリジナル画像で約1TBです。
データがあってもこれをどう解析しよう事案があります.
不偏分散の分母¶
よくある「$n$ではなく$n-1$で割るのはなぜ?」事案です. いろいろな角度からの解説があった方がいいだろう, そのストックをしておこうと思いシェア+メモです.
【AbstractAlgebra.jl】Juliaで代数学をやってみたいんじゃ①¶
JuliaにはPyCallによるsympyのバインディングがあり, 他にも代数系の処理ソフトがあったはずです. Juliaは数学系でいろいろな動きがずっとあるのがいいところです. これも自分用の備忘録も兼ねてシェア.
数学ソフトウェアの作り方¶
「コンピュータが育む数学の展開」(全10巻)に引き続き、姉妹編となります新たなシリーズ「コンピュータと数学の織りなす革新」(全5巻)の刊行を10月より開始します。第1回配本は『数学ソフトウェアの作り方』です。ご注目いただけますと幸いです。 本書は、数学ソフトウェアを開発するために知っておいて欲しい事柄をまとめております。著者は皆、計算代数システムRisa/Asirなど、数学ソフトウェアの開発に携わってきています。本書には、その経験が随所にちりばめられており、この上ない解説書になっておりマス。
Cは昔仕事で書いていたこともあります. 結局ポインタの理解がいま一つのままで終わり, 今となってはあまり覚えてさえいない厳しさがあります. 書くのはともかく読めた方がよさそう言語だとは思っていつつ, そこまでやる気が出るわけでもない言語でもあり, 競プロ関係ではC/C++は基本的な言語なのでその範囲では毎日ちょこちょこ触ってはいます.
何はともあれ執筆陣がRisa/Asirの開発者で, 最近よくsympyにお世話になっている関係からとても気になっています. 勉強したいことが山程あって目が回っています. 近況でも書いたようにこの状況はもう少し是正した方がいいのでしょう.
教養としてのラテン語の授業¶
気になる新刊『教養としてのラテン語の授業』 著者は非常に面白い経歴の人物。「本書はバチカン裁判所の弁護士、ハン・ドンイル氏が行った名講義を整理したもの。ラテン語がわかれば、歴史、教養、文化の根底がわかる。西洋文明の根源であるラテン語を通して、歴史、文化、宗教、経済を学ぶ。 カエサル、アウグスティヌス、レオナルド・ダ・ヴィンチ。先人たちの知の息吹に触れる。 全世界で30万部のベストセラー」
これ, 語学系の話をやる上で多分私に決定的に欠けていて, 必須の知識ではないかと直観しています. ラテン語は科学の言語でもあり, そこまでカバーしたコンテンツがないだろうかと日々悶々としています. 自作はさすがにつらすぎるので.
大学以外で言語学を勉強する方法¶
言語学もちょこちょこと勉強していて, 例えば最近は印欧祖語に関する基本的な日本語文献という新書を買ってみました. 基礎はなかなか書き換わらない物理, 基本的に正しいものはずっと正しい数学に浸っているため, 新発見があるとすぐに話が変わってしまう非数学・非物理の世界はそれだけで勉強がつらいです.
それはそれとして, レベル・種類ともに豊富な中高数学系コンテンツ, そして応用上の議論は統計絡みの微分積分・線型代数で, 300ページほどの本を一冊さらえば知識としては大抵何とかなるはずでおそらく知識は極小で済むであろう数学でさえ独学が大変と言われているのに, 独学が多少なりとも楽にできる分野は何かあるのでしょうか?
仕事のコツ¶
40代になってわかった仕事のコツ。時間が足りないと悩んでいる人は、この4つでマジで楽になる。試してみてほしい。
- できることはすぐやる. (準備の手間が減るから)それが最速.
- マルチタスク厳禁, 一つずつ答えにして格納.
- 常に20%の余力を確保すれば知恵が回る. 余力はイレギュラーのために使う.
- 急がば回れ. 忙しい時ほど丁寧にこなせ. 差し戻しによる余計な仕事を減らそう.
この間「一所懸命やりすぎて没頭しすぎるのはよくない」と指摘されたため, 改めて仕事術的なのも気にした方がいいのかと思ってちょっと気にしています.
最近先延ばし癖があり, 先延ばしするとそれだけで心理的負担として重くのしかかってくる上, 着手までの精神的負荷も凄まじいため, 「できることはすぐやる」は本当に目下最大の課題です.
ハードワークの捉え方¶
「やったことのないこと」に挑戦し、自身の考え方の枠組みに落とし込んで再現性を作ることは「スキーマ」の構築と言えるでしょう。それは「What」がやったことないことの場合もだし、「How」のやり方を再定義して「やったことない方法」に置き換えることも新たなスキーマの構築と言えると思います。成長というのは新たな認知スキーマの構築をしてスキルに習熟させることとも言い換えられるのだと思います。ハードワークをすることと、新たなスキーマを構築することはイコールではないのでしょう。
最後に、「成長」が人生の全てではないことを付け加えておきます。私の世代は成長をすることを強く求められました。成長を追い求めず、人生を謳歌すること、穏やかに暮らすことを人生の主目的におきたい人も多いし、むしろ多くの人がそうなのではないかと思います。やったことないことに挑戦することは面白みもありますが、心身のエネルギーも使います。既にできることの実行に時間を多く割いて、それ以外で人生を充実させるということも人生の主目的によっては有意義なのかもしれません。
いまちょうど研修でいろいろやっているのでどう落とし込むかいろいろ考えています.
今週の問題¶
まだやるべきことはたくさんあれど, 量子力学は一段落させたので何をしようかと思っています. 一応もう少し物理をやろうと思っていて, イジングに浮気しようかと思いつつ, 当初の予定通り相対性理論のノート作りをしています. 微分形式をどこまで導入するかは悩みどころで, まずはベクトル解析ベースのノートを作ってから考えます. ベクトル解析はともかく, 微分形式は完全に線型代数なので相変わらずの線型代数推しです.
問題ではないものの, 計量の符号に関して一つコメントを.
- $(x^0,x^1,x^2,x^3)$のもとで$(+,-,-,-)$は素粒子・高エネルギー系の物理で標準的.
- $(x^0,x^1,x^2,x^3)$のもとで$(-,+,+,+)$は宇宙物理・天文学で標準的.
計量の符号以外にも曲率の定義由来の符号の揺れがあり, 本を比較するときに非常に苦労します. もしあなたが相対性理論, 特に一般相対性理論に興味があるならぜひ覚えておいてください.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-08-27¶
数学・物理 量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見
- 完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相
- グロタンディークが独力でルベーグ積分を構築した話
- ドナルドソンの定理への直観
- Hal Tasaki, Variations on a Theme by Lieb, Schultz, and Mattis
- プログラムを書きながら数学で遊ぶ
- 子供に対する広義のIT教育
- 中高数学の復習の話
- 変節にまつわる悲しい話
- ヤング図形の講義録
- Non-metrizable Manifolds
- Paul筋の情報: 微分ガロア理論
- 上田晴彦, 物理科学における数学的方法
- 具体例の解析
- PDF: Johnny Nicholson, Exotic Spheres
- 博論のPDF, Muhammad Ilyas, 2022, Quantum Field Theories, Topological Materials, and Topological Quantum Computing
- ラグランジュの未定乗数法
- JAXA宇宙教育センターによる夏休みの宿題
- 遊んでみたい機械学習・統計学: 自然言語処理の具体的なテーマ
- 絵画史から見るとAI絵画はカメラ
- 2022-08時点でのAIの実応用をいくつか
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先週は体調不良でメルマガが出せなかったので今週は先週分のネタもあって大量です. 通信講座の案内もできず直前の一回だけになってしまいました.
何はともあれば, 数学版の定義・定理を眺めるアプリ, React;KaTeXでいい感じにレンダリングする方法の探索にけりがつきました. 最終的には既存のライブラリにプルリクしてマージしてもらいました.
大したことはしていない上に自分で実装しきれない点もあったものの, たぶんissueやドキュメントの修正ではない, プログラムを書いたプルリクとしては初でちょっと感慨深いです.
ようやく現代数学探険隊からのデータを抜く部分も終わりました. 数学版のアプリも第一段まであと少しです. 物理版のアプリの法則集も毎日少しずつ作業して116まで来ました.
これも地道に続けます.
「三ヶ月短期集中講座 量子力学のための線型代数とその計算の募集」も明日までです.
興味がある方は申込を忘れないようにしてください.
量子情報・量子力学の行列計算のいい例・文献を発見¶
次の文献です.
もしあなたが量子力学・量子情報に興味があるなら, P.14からの6.1.6節の具体例には必ず目を通してください. 三つ例があり, それぞれ2x4=8, 2x3=6, 2x2=4次のモデルでノイズがある系の量子通信路の例を紹介しています. 量子情報よりも物理としての趣が強い例で, 最終的に大事な対象系の解析は二次正方行列の計算です. 二次正方行列の世界の懐の深さを改めて実感しました. この三つの計算だけでシュタインスプリング表現・クラウス表現の気分がかなり掴めます.
取り上げられている例は物理的にはレーザーの原理などにも関係しますし, 物理的な筋も非常によい例です.
このPDF自体は全体的に無限次元を含めた関数解析的な用語・議論がわかっていないと読めません. しかし上記の例は完全に有限次元の線型代数の知識だけでよく, 驚くほどに教育的なよい例です. この一年, 強調に強調してきた二次正方行列レベルの具体的な線型代数の計算の重要性もわかります.
今回の短期集中講座の範囲ではありませんが, 次回以降に必ず触れるべき内容でもあり, 今後の勉強の指針にもなる部分は同梱する方針なので配布コンテンツには既に取り込んであります. まだPDFの内容ほぼそのままで計算が雑ですが, 通信講座の対象になったら計算はもっと詳しくする予定です. 勉強してみたいという人がいて, 通信講座の勉強会で質問があればその時点で詳しい計算を載せようとも思っています. そのくらい簡単なわりに重要で面白い例です.
完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相¶
「完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相」という事実、「とても有名でよく言及される」ものだったのか。。
僕も初めて知りましたw
今検索して出てきた文献なのでガッチリそのものが書いてあるわけではないと思いますが、https://google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwjmvr-UkcT5AhVQmFYBHfa9D1QQFnoECAQQAQ&url=https%3A%2F%2Feprints.lib.hokudai.ac.jp%2Fdspace%2Fbitstream%2F2115%2F6077%2F1%2FETDS13.pdf&usg=AOvVaw3zJ3kkcIDECFMU30Xd-2cMには(記号)力学系とC*力学系の文脈で完全不連結なコンパクト距離化可能空間が出てきて、引用文献のレベルですがCantor集合への言及があります。 他にも大学院の頃ではありますが、千葉大の松井さん(作用素環の人)の講演など、力学系と作用素環界隈の講演でよく言及されていた記憶があります。私の知る限り記号力学系はそれなりに影響範囲があるため、割合有名な事実の可能性があります。
カントール集合は力学系理論やジェネラル・トポロジー周りの講演でしばしば登場しますが、上記の事実はその際によく耳にしました。 最近だと例えばこの本でも証明なしで言及されてました(なお、ちょくちょく違和感のある表現があります)。 https://www.amazon.co.jp/dp/4768705707
私が学部四年のときに読んだKadison-Ringroseの作用素環の有名な教科書には, 可換なフォン・ノイマン環と同型なコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環の性質として載っていた性質です. 他にはエルゴード性・エルゴード理論との関係で可分で完備距離づけ可能な位相空間としてのポーランド空間も作用素環でよく出てきます.
さらに森の未知さんのコメント.
完全不連結で孤立点のないコンパクト距離空間はカントール集合と同相という、とても有名でよく言及されるけど証明を見たことがない事実だけど、和書だとこの本に証明が書かれていますね。
距離空間のトポロジー: 幾何学的視点から (ひろがるトポロジー) | 川村 一宏 本書では,単体分割できるとは限らない距離空間のトポロジーを,位相空間論的というよりはむしろ幾何学的な側面に焦点を当てて研究する理論の一部を紹介する。 このような理論は一般位相幾何学の一分野「幾何学的トポロジー」をなしており, 複雑な構造をもつ距離空間を多面体の極限としてとらえ, 無限反復および極限操作を通じて調べることにその特徴がある。 様々な極限操作で得られる空間についての考察から始めて,
この本の証明だとnerve複体(本書では「脈複体」と翻訳)で証明しているけど、古典的事実の割に証明がナウい気がしている。 私がnerve複体を知らなすぎるせいだろうか。 なお、学部生向けの教科書に見えて特殊な位相空間や連続体にやたら詳しくて研究者でも読んでて面白いのがこちら。 ついでにいうと、「だから学部生には難しい」というわけでもないのがこの本の真にスゴいところだと思う。相対位相の説明などは見事なもの。
グロタンディークが独力でルベーグ積分を構築した話¶
Feynmanの言う微積分とはいわゆるcalculusのことだと思いますが,Grothendieckが独力でルベーグ積分論を構築したエピソードは有名ですね。 https://ams.org/notices/200808/tx080800930p.pdf (Notice of AMS,独文の英訳)
どなたかのブログに私訳がありますね。 https://taro-nishino.blogspot.com/2019/03/blog-post033.html
どこで見かけたのか忘れてしまったものの, ゲルファントは中学の頃に独力で関数論を建設したエピソードがあります.
ドナルドソンの定理への直観¶
Q1. ドナルドソンの定理を砕けた表現でいうならばどんなものか?
A2. 4次元多様体の古典的な不変量(交叉形式)に,可微分構造由来の極めて強い制約が存在する
補足1:このようなタイプの定理の最初のものとしてRokhlinの定理があり、Donaldson以前から知られていました。 Donaldsonの定理はRokhlinの定理と比べると適用できる状況が多く(ただしDonaldsonの定理とRokhlinの定理は互いに独立の定理なので,あくまで主観的な基準), また理論物理由来のゲージ理論を用いて証明されたトポロジーにおける非自明な定理の最初の例なので,知名度が高いのだと思います。 尤も4次元業界ではRokhlinの定理も基本定理の一つです。
補足2:交叉形式は位相4次元多様体に対しても定義される不変量です。 Donaldsonの定理(やRokhlinの定理)が与える制約を破るような交叉形式を持つ位相4次元多様体の存在がFreedman理論から分かるので、 Donaldsonの定理(やRokhlinの定理)は4次元におけるトポロジカルな世界と滑らかな世界が全く違うということ意味します。
Q2. ある多様体の非同値な微分構造の数を求めるにはどういう手法が使われるのか
A2. 5次元以上においては手術理論が使われます。 これを一言で言うと、多様体の微分トポロジー的な問題を代数トポロジーに帰着させる手法です。 また多くの場合、分類したい多様体の接束の特性類が重要な情報を持ち、それが区別に使われます。 有名なMilnorのエキゾチック球面をdetectする議論がこの例です。 しかし多様体がある程度複雑だと、帰着させた先の代数トポロジーの問題が難しいものになり、可微分構造の正確な個数が分からないこともしばしばあります。 ただ、代数トポロジーの問題に帰着できた段階で微分トポロジーとしてはとりあえず原理的に解決した、という立場を取ることも多いです。
一方4次元では、可微分構造が完全に分類できている位相4次元多様体の例はまだ一つもありません。 可算無限個の可微分構造が入ることが分かることが多いのですが、発見されている可算無限個の系列で尽きているかを確認する手段がないのです。 またそもそも2つ以上の可微分構造が入るか分からない4次元多様体も沢山あります。 とりあえず互いに異なる微分構造が存在することを示すのには、典型的にはゲージ理論から来る不変量(Donaldson不変量、Seiberg-Witten不変量)が使われます。
接束が思った以上に重要なようでびっくりしました.
Hal Tasaki, Variations on a Theme by Lieb, Schultz, and Mattis¶
リープ先生の卒寿を祝う国際会議での講演が予想以上に好評だったので戻ってから動画を作りました。「捻り演算子」だけを使って様々な定理を初等的に証明しまくるという内容で、量子スピン系を知っていれば面白いと思います。英語ですが(編集したので)字幕がちゃんと出ます。 YouTube
Lieb, もう90なのかと衝撃です.
プログラムを書きながら数学で遊ぶ¶
数値計算のプログラムを書くときは「抽象的な数式を具体的な計算処理として書き下す作業」が必ず発生するので,適切なお手本さえあれば高い学習効果が得られる気がします. そんなわけで,電磁気学の難関(?)である「ベクトル解析」をプログラムを書きながら具体例で学べるように準備しています.
そういった意味では「ディジタル信号処理」はプログラミングと不可分なので,個人的にはかなり学びやすい分野だと思います.
とはいえ「回路は作れるがディジタル信号処理は一切ダメ」みたいな技術者の話もよく聞くので,良いお手本(教材)がないと「難しい数学」みたいに見えるのかもしれません. 数値計算や信号処理は「他人が用意したサンプル・コードをとりあえず写経すれば自分のパソコン上でも結果が表示される」ので,学習の過程で成功体験を得やすい.これはゲーム等と同じ構造. 抽象的な数学でも「例題を解く」という成功体験が用意されているのに,なかなか気づかない人が多いですね.
「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」はこれと重なるコンセプトで作っています. 興味がある方はどうぞ.
子供に対する広義のIT教育¶
いわゆる数学・物理・プログラミングのネタではありません.
うちの息子がとんでもないことやらかしてくれました😭 友達とスマホで通話しながら対戦ゲームしてて てっきりLINEの無料通話してるのかと思ったら相手はキッズ携帯で 普通に通話してて電話代が2ヶ月で28万円😭 しかも相手の子は親から言われてこちらからかけなおさせてた😭 もっと早く気づいていれば
最近の子供は生まれたときからスマホがあります. そして機器的な取り扱いには長けていても金銭的な感覚が育っているわけではありません. 特に凄まじく便利なツールさえ無料で使えるモノが大量にありますし, ゲームでさえ無料が基本になりつつあります. いまは広い意味でのお金の教育, IT教育はどこかしら何かしらでやらないといけないのでしょう.
中高数学の復習の話¶
いま某所で話していて思ったんですけど、高校の数学の授業相当のものがYouTube等で見れるものってないですかね。大学受験対策とかではなくて、その分野を全く勉強したことがない人が聞いてわかるレベルのもので、良質なものないですかね。 なぜこんなことを言っているかというと、大人になってから数学勉強し直したいという人で、「昔勉強したけど忘れた」という人以外に「全く履修したことがない」という人もいるんですよ。高校の卒業要件が数Ⅰまでなので、学校によっては数Ⅰしか履修してなくても高卒の肩書は得られるんですよね。 履修科目の問題だけではなく不登校等でほとんど授業出てないけど卒業する人もいるし、つまり数Ⅱ・数Bあたりを一切勉強せずに高校卒業したけど、その後やっぱり勉強したいって人に対してよいコンテンツないかなあと思いました。 もちろん無料であればいいなと思うんですが、現状では有料コンテンツでもほぼないという認識なので、無料・有料問わず、いいものがあったら教えてほしいです。 YouTubeで予備校講師の動画があるのは知ってるんですが、ああいうのは基本一度履修した人向けじゃないですか。
この件色々情報を頂いてますが、僕がざっとみてよさそうだと思うものを列挙しておきます。
もちろんこれ以外はすべてダメと言っているわけではなく、内容が確認できてそれなりにおすすめできそうなものということで3つ挙げました。また、ここでおすすめしたのも、もちろんざっと眺めた程度で全部見ているわけではないです。 ここでは動画に絞って紹介しましたけど、もちろん本で勉強する手もあって、その場合まずは検定教科書をおすすめしておきます。値段も安いし質も高いです。書籍だけのほうが理解が進む人、動画のほうがわかりやすいと感じる人、両方いると思うので。
コンテンツベースとしては上でも紹介した「プログラミングで数学を 中高数学虎の穴」, そして特に文系プログラマー向けにアルゴリズム系統からやるのはどうかというテスト目的で素数判定のコンテンツも作って以前紹介しました.
この辺もいい加減本格化させたいと思っていて, これもやはり既存コンテンツをもとにした通信講座や, またはアルゴリズム系と絡めて見繕った書籍を使った勉強会的な講座を作ろうと思っています. どういう感じの内容だったら参加したいか要望があればぜひ教えてください.
一応書いておくと, ふわっと中高数学全体みたいな感じにすると多分勉強していてつらいと思うので, 何かの目的に特化して一つのストーリーを紡ぐ感じで勉強した方がよいと思います. 興味があって継続して勉強していれば数学力も上がるので, 必ずしも興味がなかったところを勉強するときにも格段に勉強しやすくなるはずです.
変節にまつわる悲しい話¶
近藤誠先生は、昔はエビデンスの鬼でした。近藤誠先生の変節についての詳しい経緯は、こちらにまとめています。
知らない人は知らないと思いますが, 近藤誠氏は「がんもどき」などの話でがんに関する偽医療事案で悪名が高い人です. 先日亡くなったので話題になった, という文脈があります.
ヤング図形の講義録¶
さる事情があって, 講義録をまとめ直してアップしました: [「ヤング図形の組合せ論講義」]https://bit.ly/3ArsZFt()
メモ&シェアです.
Non-metrizable Manifolds¶
このNon-metrisable Manifoldsという本、パラコンパクトでなかったりHausdorffでなかったりする連結位相多様体について考えるという異常な内容でおもしろい。long lineには2のaleph-one乗個の異なる微分構造が入るらしい。
実数全体を2つ用意してそれぞれの負の実数の部分を同一視してできるYみたいな多様体はHausdorffでないけど、こういう枝分かれを単なるグラフではなく多様体として表現できるため量子力学の多世界解釈における時空のモデルとして使われるかもしれないとか書いてある。 「異なる」というのは単に異なるという意味でも、互いに微分同相でないという意味でもあるらしい。濃度はちょうど2のaleph-one乗であるとのこと。
上でドナルドソン理論の話も紹介しています. 距離化可能ではないため, 多様体論でよく仮定される第二可算性もなく, パラコンパクト性さえ破壞される世界です. 多様体だからといって位相多様体のレベルではいくらでも凄まじい例があって楽しそうです.
Paul筋の情報: 微分ガロア理論¶
いくつか質問を整理します
1) 初等函数の積分がいつ初等函数か? リッシュのアルゴリズムです。一松さんや佐々木さんの解説がわかりやすいでしょう。
2) 初等函数の積分を全部含む函数族はあるか? Liouville拡大体を考えることになります.
リッシュの方法で、原理的にはどんな初等函数に対しても不定積分が初等函数になることを判明できますが、速いアルゴリズムを考える計算代数の問題になります。 Liouville拡大は、微分ガロア理論的には拡大群がCの加法群と見なせますが、そう見てもあまり良いことは少ないです。wiki参照。
ありがとうございます!とても助かります。もうひとつ質問なのですが、もしかしてこのリウヴィル拡大体というのは具体的にいくつかの特殊関数を導入すればいいものなのか、代数方程式の解のように具体的には書けないものもあるのか、どうなんでしょうか。
不定積分ですので、e^(-x^2)でしたら誤差函数を導入すればいいわけです。ただ、初等函数と言っても合成函数を作ればいくらでも複雑になりますので、不定積分は必ずしも知られている特殊函数にはなりません。その意味では、代数方程式の解のような感じです。
特殊関数に関わる疑問を呟いている人がRTでまわってきたので, Paulをつないだ話で, 微分ガロア理論的な話です.
上田晴彦, 物理科学における数学的方法¶
/ わかったつもりなのに演習問題が解けない、そういうあなたに役立つ1冊 \
『物理科学における数学的方法』上田晴彦/訳(プレアデス出版) 先生、数学の理論はわかりましたが問題を解くことができません。 いつの時代でも紙と鉛筆での手計算が身につく第一歩。書泉オンライン⇩ https://www.shosen.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=5003144
内容はよくも悪くも20世紀の物理数学の趣があります. 大事なのは「先生、数学の理論はわかりましたが問題を解くことができません。」です. いくら数学それ自体を勉強したとしても物理の現場で計算できないとはじまりません. 大事なことなので何度でもくり返しますが, ここを鍛えるべく企画しているのが最近の計算力向上通信講座です. 今回の量子系のための線型代数は明日で締切なので興味のある方はぜひどうぞ.
具体例の解析¶
(c)みたいな問題が高校の教科書には必要だと思ってる
2.3.12 次の練習を行って, 例2.3.2を完全に理解せよ.
(a) $\sqrt{3}$が有理数でないことを示せ. (b) $\sqrt{6}$が有理数でないことを示せ. (c) $\sqrt{49}$に対して同じ証明をしようとすると, その論証はどこで破綻するだろうか.
『エレガントな問題解決』という本で、日本では高校数学にあたる内容を題材に数学の問題に対する取り組み方などを中心に扱ってるとても面白い本です。 https://oreilly.co.jp//books/9784873
この「うまくいかない例」の調査という視点, 非常に重要です. 私のコンテンツにももっと盛り込みたいですね. とりあえず記録しておきます.
PDF: Johnny Nicholson, Exotic Spheres¶
https://www.ma.ic.ac.uk/~jknichol/exotic-spheres.pdf これ読んでます。異種球面の作り方。面白いので共有
単純にメモ&シェアです.
博論のPDF, Muhammad Ilyas, 2022, Quantum Field Theories, Topological Materials, and Topological Quantum Computing¶
博論!204ページ! 場の量子論、トポロジカル物性、トポロジカル量子計算っていうタイトルで基礎から書いてくれてるらしくて助かる。 個人的には圏論と場の量子論、TQFTのセクションが気になる。 https://arxiv.org/abs/2208.09707
物理としては物性の人間で, トポロジカル物性もずっと気になっています.
ラグランジュの未定乗数法¶
丁度多様体論的に見たLagrangeの未定乗数法をYouTubeの陰関数定理の続編としてやりたいと思っていて結局1年以上経つのですが、Submersionさんの記事を見つけました。こういう話あまり教科書に載っていない気がします。 メモ:Lagrange未定乗数法の多様体論的な見方 https://mathlog.info/articles/2376 #Mathlog
正直多様体論やってから解析力学とかでLagrange未定乗数法とか陰関数定理、逆写像定理あたりをみるとかなり見方が整理されて世界が変わる気がします。
先々に進んではじめて見える景色があるよという話です.
JAXA宇宙教育センターによる夏休みの宿題¶
JAXA宇宙教育センターが出してる夏休みの宿題が面白そう!好きな天体を選んで、Pythonを使ってその星への軌道を自由に設計してパワポでまとめて提出せよとのこと。解説付きで高校数学物理が分かればできるらしい(ほんとに?) プロの解説を見るだけでも勉強になりそう。いざ。 https://edu.jaxa.jp/news/2022/j-0805-1.html
プログラム利用としてメモ&シェアします.
遊んでみたい機械学習・統計学: 自然言語処理の具体的なテーマ¶
AIを利用し失われているテキスト部分を読み解く
http://u0u1.net/tFpw 2018年からプロジェクトがスタート 破損し一部しか解読できない粘土板を読み解く際、データベース化された他の破損粘土板から文章を引用し翻訳するシステムを構築中 完成すれば研究者らの強い助けに
これ自体は各種専門知識とプログラミング技能が必要なので首を突っ込めたものではありませんが, 言語学関係はいろいろ遊んでみたい話があります.
単語に限らず暗記にはイメージと結びつけて覚えるとよい場合があり, スマホの単語アプリには単語の意味を絵で表して選ばせるクイズがよくあります.
私がほしいのは理工系向け多言語学習アプリで, 見た限りの既存のコンテンツだとかゆいところに手が届かない感じがあります. アプリとして真面目に作ろうと思うと大変ですが, 機械学習で自動生成した画像には単語本来のイメージがある程度は載るはずで, 人間の単語学習に裏回し的に自動生成画像が使えないかと最近思っています. このあたりの研究もしないといけなくて時間がいくらあっても足りません.
絵画史から見るとAI絵画はカメラ¶
ここ数日, Twitterでお絵描きAIの話題が盛り上がっていて, それにまつわる話です.
2022-08時点でのAIの実応用をいくつか¶
実際に仕事で少し使ったこともあったので, そのときに調べた・知った一般的な話をいくつか紹介します.
連続“果樹園荒らし”…犯人は「クマ」モモも被害(2022年8月19日) - YouTube カメラが捉えたのは、体長2メートルほどのクマ。そばには、プラムの木が植えられていました。今回、枝を折られたプラムの木。この木の向かい側に設置されたAIカメラに、クマの姿が映っていました。17日午後9時ごろ、札幌市の果樹園でクマにプラムの木が折られ、実が食べられる被害がありました。少し離れた場所では、クマの足跡... こういう場面で登場する「AIカメラ」って、どういうところが「AI」なんですか?
https://aismiley.co.jp/ai_news/what-is-ai-camera/ 異常検知系の仕組みが入ったカメラではないでしょうか。判断法・基準は色々あるでしょうが、侵入者などの見慣れない対象を検知して報告まで上げてくれるシステム(のはず)です。
AIカメラとは?できることや活用事例・導入事例をご紹介 AIカメラは、AI(人工知能)を搭載したカメラのことです。AIカメラのディープラーニングを活用することで、従来 […]
レス、だんけです。「AI」との売り文句は本件の場合、どの程度信用していいものなんでしょう。というか、どのへんの機能を以て「AI」の呼称の根拠としているのか、「判断法・基準」はナ変に、ぢゃなくて奈辺にあるのかといったところが気になります。
AIの定義からして割と問題ですが、いわゆる機械学習的な手法による監視・巡回・点検システムはもうそれなりに一般的です。システムの作りの話で、ユーザーからは見えにくい・見えないものの、「AIによる」と言われたら機械学習なり統計的な手法で何かやっていると思って問題はないでしょう。 問題は監視・巡回・点検システムとして適切に動くかどうかで、ガワで何と呼ばれていようが適切に動くならそれでいいとは言えます。そしてAI(機械学習)システムは適切な設定のもとでの稼働なら十分に動くレベルであろうと思います。問題はそもそもこの「適切な設定」を作る難しさにあります。 例えばソーラーパネルが壊れているかどうかの異常検知問題があります。比較のために正常な画像と異常な画像をいくつか準備する必要があるのですが、正常はともかく異常な画像を準備するのが大変です。何を異常とすればいいかがまず難しいからです。 例えば鳥のふんが引っかかっていたら清掃が必要でアラートが欲しいですが、それを検知できるだけの画像の鮮明さが必要です。他には「点検画像の撮影時にパネルの上をたまたま鳥が飛んでいてその影を異常と判定した」といったケースもあります。 「パネルを置いていた場所の草が伸びてきてパネルを塞いでいる」といったタイプの、システム導入当初には起こらない、時間差で現れる異常もあります。こういうモグラ叩きが必要です。人間が目視で点検していれば「そういう異常」と判定できますが、それを適当な形にシステム化する必要があります。 良くも悪くも人間だと柔軟に対応できる部分を機械化・自動化しようと思うとこの手の判断基準の設定・更新が必要です。これが適切な設定を作り維持する難しさです。いわゆる条件分岐によるエキスパートシステムのAIが頓挫した理由の一端でもあります。 余計な話ですが動画を使うとなると鮮明さと動画容量と一定期間の保管を両立させるシステム上の難しさもあります。あっという間にGBレベルの容量になり、異常検知の解析自体にも時間がかかります。運用にはシステムと現場のプロの高いレベルの連携が必要です。困難は色々ありますがそれは別の話なので。
いたって素人臭い連想に過ぎないのだろうとは思うのですが、たとえば、 集合写真からも人物特定、議論を呼ぶ最新の顔認証技術 - YouTube https://youtube.com/watch?v=B6Fsyc_DgSY のようなものから想像すると、そのあたりはすでにコストの問題なのかもしれませんね。 集合写真からも人物特定、議論を呼ぶ最新の顔認証技術 「クリアビュー・AI」の顔認証技術は、世界で最も有名だが、プライバシーや個人情報、自由といった観点から、最も議論の的となっている。BBCのジェイムズ・クレイトン北米テクノロジー記者が、同社の共同創業者である ホアン・トン=ザット氏を取材した。BBCニュースサイトの記事はこちら。https://www.bbc.co...
高齢化の問題もあって発電所のような場所でも巡視点検のニーズが高まっているそうなのですが、発電所といえば原発さえ含むためいわゆるパブリッククラウドは使えず、サーバー管理などもセキュリティをガチガチに固めた内部にとどめざるを得ません。施設内のネットワーク設備もあれば、 人間が動く前提で作られた設備内の移動をロボットにやらせる(電線などの高所や僻地もあれば、下水など入り組んだ地下施設さえある)ためのインフラづくりなどもあって、コストの問題は凄まじい問題になります。 カメラは固定され、映像中から変化を検知し撮影を開始するといったレヴェルなら、そうとう安上がりに出来るということでしょうか。 そもそも誰がどういう場所でどう使うかという問題があります。https://securityhouse-network.net/blog/%E6%9E%9C%E6%A8%B9%E5%9C%92%E3%82%92%E5%AE%88%E3%82%8B.html には果樹園だと電源が取りにくいといった話もあります。果樹園を例にするなら、むしろ対象に応じた最適な解決策の提案の方が重要なように思います。鳥獣対策ならむしろ侵入させない方にコストをかけたいはずなので
クマが食い荒らしていたことをメインにした報道からは、おそらくはヒトを怪しんでカメラを据えたのだろうといえそうですよね。ヒトが対象だとすると、果樹園を狙った不届き者の身元を割り出すことが最優先のではないでしょうか。鳥獣対策は本件に関する限り、これからの課題ではないでしょうか。
話を拡散させすぎたのと、状況に応じて何をどうするのがベストかという視点にこだわりすぎたのが失敗だったと反省していますが、コストと実用という話でいうと、侵入者検知ではないものの、農業用環境管理IoTだと https://japan.cnet.com/article/35167509/ で「機器費用が2万4750円、システム利用料が月990円」
畑の異常を電話で知らせる低価格な農業IoT「てるちゃん」--KDDIウェブが提供開始 KDDIウェブコミュニケーションズは3月9日、センサーが圃場(畑)の温度・湿度・照度の異常を検知して農業生産者へ電話・メール・SMSで通知する農業IoT「てるちゃん」をリリースした。
といった話があります。ハウスの環境制御だと https://pr.nepon.co.jp/lp/mc01 いわく「地上部の統合制御が50万円から」、参考までに農機具一般として中古トラクターが https://ummkt.com/market/category/tractor/ くらいの値段帯です。最初の月990円はおそらく容量も少なく抑えられ、事前処理もしやすい数値データを素直に解析すればいいだけのはずなので月額990円、メールなどの通知系で必要に応じてもう少し課金というのは妥当な値段と思います。画像・映像解析は安ければ数千円から数万円レベルだろうと推測しています。農家の収益・コスト感覚は把握できていないのですが、
なるほど、それくらいのコストなら、農耕機など他のコストに加わることがあっても、さほど懐具合に厳しいということはなさそうですね。
今週の問題¶
今週の問題はメルマガのタイトルでもある例です.
これのP.14, 6.1.6節の三つの例を眺めてください. シュタインスプリング表現とクラウス表現それぞれのご利益もよくわかる上, 量子開放系・ノイズの議論と熱力学や統計力学での環境に対する感覚も深まります. 計算上では本質的に二次正方行列の世界であり, ありとあらゆるいい話が書いてある例です.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-08-13¶
数学・物理 通信講座「量子力学のための線型代数とその計算」募集開始/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08 開講案内
- Looman-Menchoffの定理
- ヴィラーニの自伝と不等式の数学
- 直観と愚直な計算と
- 21世紀の量子力学学習に関連する諸々
- JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』
- 医療系オープンデータが取れるPhysioNet
- テクニカルライティングの基本
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先日からはじめている物理や数学のギャラリーの開発で苦戦しています. 特に現代数学探険隊から各定義・定理を切り出して眺める定理鑑賞アプリが課題です. KaTeXをいい感じにレンダリングさせるReactコンポーネントの開発で詰まっていて, 昨日一つ山場を越えたもののもう一つ最終解決すべき問題が残っています. これもさっさと片付けて語学用のアプリもほしい言語に関するデータ整備して, とやることが山積みです. せっかくの機会なのでテストも書きたいです. 早くふつうの物理・数学・語学学習モードに戻りたいです.
それはそうと, 物理学ギャラリーは66式(?)まで進みました. これは地道に増やします.
手持ちの本からテンションが上がる式をゴリゴリ入れています. 「まずはこれを載せろ」という要望があればぜひ挙げてください. TeXつきで送ってくれるとなお嬉しいです.
ここ一月くらい開発ばかりであまり物理や数学ができておらず, 語学はなおのことできていません. ただ, 開発に関連して一人で解決できない問題にぶちあたりまくっているため, 英語で各所に質問を投げているのですが, プログラミングに関わる英語は割とサラサラ書けるようになっていて, 今年に入ってから10分であっても毎日ちょこちょこがんばっている分が多少は効いてきているか? という感じもします.
あとは現代数学探険隊の再整理もしたいですね. 例と計算練習編をずっと追加し続けています. 以前通信講座として展開していた現代数学探険隊の解析学編, この中にも例や計算がいくつかあり, 全体構成を考えればこれを改めて整理した方がよさそうです. ただとにかく時間がありません. 一日10万時間くらいほしいです.
通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08 開講案内¶
ようやく案内が完成しました. 募集期間は二週間で8/29(月)から開講予定です. 詳しい内容は上記ページを参照してください. 何か質問があればメールやアンケートでお願いします.
書くべき内容は上記ページに書いてあるのでメルマガではこのくらいで.
Looman-Menchoffの定理¶
Looman-Menchoffの定理、「デリケートな定理であるので、初学者は手を出さない方がよいだろう」とはあるが、野村隆昭先生の「複素関数論講義」(共立出版)には紹介されていた。 リンク先は文献 [34](アクセス制限があるかも)。 https://jstor.org/stable/2321164?seq=1#metadata_info_tab_contents
読もう読もうと思ってずっと読んでいない論文です. ずっとメモの奥底に沈んでいたのでまずはシェア.
ヴィラーニの自伝と不等式の数学¶
気晴らしにヴィラーニの自伝を読んだ。この本は評価が分かれていると聞いていたが然もありなん。いわゆる不等式の数学が構築される現場の様子が露わに描かれている。私はこのタイプの数学は全く専門ではないけれど昔ある友人にそういう数学の存在と楽しむ様を教えてもらったおかげで親しみを感じる。
こう書かれるとヴィラーニの自伝にも俄然興味が出てきました. ちなみにヴィラーニは最適輸送などが専門で, ボルツマン方程式とランダウ減衰に関する研究でフィールズ賞を取った魔人です. 物理まわりの力学系をやっている知人が「自分にとってはスーパーヒーローだ」と言っていました.
直観と愚直な計算と¶
「現代物理」のレポートの採点を終えましたが、選択課題1(相対論的光行差の問題)の選択者のうち1/4ぐらい間違ってました...高校生のように(?)作図で済ませようとした人は概ね間違いで、何も考えず愚直にローレンツ変換した人はあってました。直観に頼らず計算したほうがよいということかなと思います。
直感に頼らず愚直に計算した方が間違いは少ない. 一方,直感に従って何もないところに一歩を踏み出すときに新しい理論は生まれる.間違いを恐れてはならない. 間違いを起こす曲がった角に神か悪魔がひっそりと佇んでいる.我々はだいたいそれには気がつかない.
最近ずっと推している計算の話です. これ以外にもう一つ, 直観が届かない世界に辿り着くためにこそ計算する世界観があることも追加しておきましょう. このうちの一つが上記ヴィラーニの不等式の数学に関わる話です.
以前書いた次の記事を引用します.
はるか彼方からの光芒を信じ, 膨大な計算を遂行し尽したときに初めて地平が見えてくるようなハードな解析は解析学の真骨頂であろう. ハード・アナライザーたちの数ヶ月からときには数年に及び, 岩に穴を穿つような計算を続行するその強靱な精神力と体力には畏敬の念を覚える. 不幸にしてその途上で力尽き果てた人もいた. 畏敬とともに深い哀悼の念を表する.
しかし, 例えば, モーメントの評価や相関関数の評価などのようなわずかな手掛りを頼りに必ず道が拓けるとの信念のもと, 恐ろしいほどのハードな計算を遂行し切って, 数学に新たな地平を切り拓くハードな解析はやはり解析学の真骨頂である.
私の数学・数理物理の原風景でもあります.
21世紀の量子力学学習に関連する諸々¶
通信講座をはじめるのでそれに合わせて私自身地道に再学習を進めています.
図式で学ぶ量子論 番外編 ~2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい~|Kenji Nakahira @KenjiNakahira #note https://note.com/kenji_nakahira/n/nbdaa609a3273 数学系学習者としては、どちらかといえば論理的に導出できるかよりも、何を仮定として議論しているかを明示してほしい。
すいません。完全に明示することは紙面の都合上(&一般読者にとって複雑なため)難しいのですが,強いて述べると一般確率論および St_2≅Den_2 が成り立つと仮定して,St_N≅Den_N を導けるかという問題を考えています。 一般確率論が成り立つことは,note記事の文献[5]のIII章で述べていることが成り立つとおきかえて頂いて構いません。無条件でSt_N≅Den_N を導くことは恐らく不可能ですので,(十分に知恵のあるほぼ全ての人が)自然だと思えるような前提を追加してもよいものとします。 この最後の条件は自然という言葉を用いたりして厳密性に欠けるのですが,ここの厳密性を高めることは難しいのでご容赦ください(汗)。
こちらこそすみません。記事の内容自体の話ではなく、物理の教科書に対する一般的なスタイルの話です。私は学部は物理だったのですが、かつて(今も?)熱力学や統計力学の教科書が大混乱していた時期の地獄スタイルは物理学科の学生にとってさえよくないはずなので。
いえ,コメントくださりありがとうございます。お気持ちよくわかります。何を仮定しているかや各用語をどう定義しているかなどが曖昧になっていると,混乱してしまいますよね…。
発端になった議論と直接関係のある部分だと思いますが、一般論を議論している中で理想気体など具体例での話が始まって終わったと思ったら、その具体例での知見がいきなり一般論に敷衍して適用され始めたりします。そういう習慣を改めない限りここでいう論理的な議論に耐えられる人間は育たないのでは?
はい。少なくともどこまでが論理的(=演繹的)でどこからがそうではないかを明確に区別することは重要だと思います。
一番気になるのはこれ.
ポイントはそこではなく,(私がお伝えしたいことの一つをまとめると)具体的にどのような前提を用いているかが不明瞭であることが問題であると主張してます。 用いている前提を具体的にお知らせ頂けないでしょうか?
ごく単純な話として前提をできる限り明らかにした方が自分にとってもチェックしやすくていいと思っているのですが, なかなかそうもいかないようで. それこそ研究中の話として暗黙の前提があることさえ気付けておらず, それが決定的なポイントだった事案がたくさんあるのが量子力学なので.
中平さんは秋に本を出すそうですしそれも楽しみです.
JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』¶
JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』、もともと新書として販売するという企画で書かれたらしいというくらいなので、とても内容の充実した文章です(リンク先PDF注意)
https://www.jamstec.go.jp/es/jp/publication/pdf/Development_ES.pdf
まだ読めていません. とりあえずシェア.
医療系オープンデータが取れるPhysioNet¶
PhysioNet をご存知でしょうか。今更感がありますが紹介いたします。 これは医療系オープンデータで、簡単な手続きだけでかなり大規模なデータも自由に使えるようになります。 無料でここまでデータが入手できるなんて, と感動ものです。
特にMIMICという集中治療系のデータが有名(というか論文が沢山出ている)ようです。その辺りがご専門の方にはお馴染みなのでしょうかね。 触ってみた感じでは、
1)GoogleのBigQueryに直結しているのでSQL書けると直ぐにデータの加工が出来そう。 2)直接ダウンロードも可能。
データが大きいので直接ダウンロードしてもデータは開けない。 なので開くには多少のコツが必要になる(この辺が一般には使いにくい理由なのかも)。 DBI packageとdbplyr使えば普通にRで操作できました。 ファイルによってはコマンドプロンプトからwgetを使って落とさなくてはならないっぽいです。 私のPCにはwgetがインストールされていなかったので、以下のページの容量でインストールを最初にしました。 その後は普通にデータダウンロードできました。 え、宝の山がこんなに簡単に!?って感じです😊 ちなみに、データダウンロードにはCITIトレーニングが必須(無料)です。 倫理に関する文章を読んでクイズに沢山答えるというもの。 結構大変でした(英語が得意な人なら簡単に終了すると思います)。 この修了証明書を送ると約2~3週間でデータダウンロード可能になります。忘れた頃に来る感じでした。
最近, 何かのテーマで統計学・機械学習で遊べそう, と思ったのですが何か忘れてしまいました. 語学ネタだったような気もします.
テクニカルライティング¶
cybozuの新入社員向け研修資料「テクニカルライティングの基本」(無料公開)が超勉強になった...! 本来は技術的な内容をわかりやすく伝えるための方法論だけど、リモートが普及しテキストコミュケーションが重要になった今、非技術者でも一度は目を通すべき内容かと思います。 https://speakerdeck.com/naohiro_nakata/technicalwriting
英語ベースですが私も学生時代にテクニカルライティングを勉強しました. 早稲田にテクニカルライティングの専門家がいて, TEPテストというテクニカルライティングの資格試験もありました. いわゆる教養系の講義で開講されていて, 学期終了直前に資格試験が開催されるため「受講者はせっかくだから受けてみては?」という担当教員のコメントのもと, 受講してみて二級は取りました.
今検索してみたら, コロナ禍に入ったからか2019年から試験の情報が更新されていません. 技術英語・工業英語・テクニカルイングリッシュで検索すると書籍が引っかかるので興味がある方は調べてみてはどうでしょうか. 近況にも書いたように最近は止まってしまっていますが, 語学系, 特に英語のコンテンツ作成ではテクニカルライティングなども視野に入っています.
今週の問題¶
今週は量子力学講座開講に向けてのカリキュラムの最終検討に入っていました. TODOもいくつかあったためそれを埋めていたところ, クラウス表現やシュタインスプリング表現がTODOのままでした. 今回の範囲ではありませんがいい機会なので調べ直したら無限次元版の議論を見つけたため, そのノートを作っているところです.
無限次元含めた議論, 系統的に議論されているは何かあるかと改めて探しています. 以前買った量子測定の数理物理本には載っていそうな気もしますが, もう内容を全然覚えていなくて愕然としています.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-08-06¶
数学・物理 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内
- 引き続き募集: 物理学ギャラリー・数学ギャラリーに載せてほしい式・法則募集
- Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke, 2022, The classification of surfaces via normal curves
- Stefan Friedl, Algebraic topology I - VI
- mathraphsodyさんによる調和多項式とべき零多様体の本
- 書かれていないことを書かれていないと認識する能力
- Understanding topology: 動画が面白い
- Wikipediaの数学記事: 確率変数の収束とフーリエ級数の収束の優秀さ
- フーリエ変換に対するある主張の当否
- 『代数学のレッスン計算体験を重視する入門』
- 微分チートシート: 「ベクトルで微分・行列で微分」公式まとめ
- 永井佑紀, 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング
- 聖地巡礼の意義
- 「ルンバが走るには片付いた部屋が必要」
- 「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
昨日知人に改めて指摘されて反省したことがあります. 何事も全力でやろうとしすぎていて, 無我夢中になってしまって周りが見えなくなりすぎになっています. そして一つに集中しすぎて手を止めるべきタイミングを見失っているとも言われました.
ちょうど先週, 一日かけて解決できなかったプログラミングの課題を, 基礎基本に忠実に, 動くところから積み上げて対応したらすぐ解決した事案を報告しました. まさに上記指摘事項が全て悪い方にあてはまっていて, わかっているならちゃんとしなさいと. そしてむしろ「ぼちぼちやろう」くらいの方が真のフルパワーが出せるテンションなのでは? という話にもなりました.
先月, 本格的にフロントエンド学習をはじめたところ, 楽しかったからでもありますが, 事実上食事や風呂などを除いて本当に朝から晩まで, それこそ16時間とかいうレベルでプログラミングに没頭していた日が何度もありました. 休みの日もほぼ変わりません.
もちろん人や状況にもよりますが, 私の場合, 集中力とそれを続ける意志の力があっていいというよりも, 止め時を認識できないただの馬鹿事案のようです. というわけで, 今年の残りはこの馬鹿みたいな集中力を適切に分散させるのを課題に設定しました. 実際, 通信講座の案内やら何やら, 完全に放置状態になっていてよろしくありません.
まさに急がば回れというか, ほどよいところで止めて落ち着く時間を作った方が結局は課題も早く片付くタイプの人間のようです. 細々としたことが滞りに滞っていますが, もうしばらくお待ちください.
通信講座 量子力学のための線型代数とその計算: いったん簡単な案内¶
予定を遥かに越えて案内が滞っているので, いったんできているところまで案内ページをシェアしておきます.
あとでページ内にももっと強く書いておく予定ですが, 量子力学を元ネタにした, またはその用語が散りばめられた計算をするのが目的です. 量子力学を勉強するのに必要な線型代数の理論を案内する通信講座ではありません.
まだ練り込み切れてはいないもののカリキュラム案も載せています. 「こんなはずではなかった」とならないよう特に強調しておきます.
さらに言えば計算にフォーカスがあるため量子力学の物理にも踏み込みません. 上記ページにも推薦書をいくつか書いているのでそれを見てください. そして独学で捌ける人には鬱陶しいくらいのスローペースでしょう. 紹介してある本や文献を読んで一人では対応できないと思ったら受講を検討してみてください.
引き続き募集: 物理学ギャラリー・数学ギャラリーに載せてほしい式・法則募集¶
時間の都合で物理学ギャラリーしかできていませんが, 式を25本まで増やしました.
通信講座の副教材としても使おうと思っていて, 毎日コツコツ1-2本式を追加しています. まだ25本しかないからつまらない, 見る気も起きないという人も多いでしょう. 何より私が一番そう思っています. 式をバンバン増やしたいのでぜひ協力してください.
式の増強に関してはプルリクしてもらえるとなお嬉しいです.
phys-exprs.csv
に集約していて, これをts
に変換したのをソース中で使っています. 他のところで流用したくなる機会もあると思い, csvをオリジナルファイルにしています. ミニファイなしのjsonだとスペースで余計な容量を食い, ミニファイすると読み書き編集しにくいのでいったんcsvです.
Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke, 2022, The classification of surfaces via normal curves¶
同じようなことは考えていましたが先にやられました。 学部の講義で紹介しても良さそうです。
[2208.00999] The classification of surfaces via normal curves The classification of surfaces via normal curves
The classification of surfaces via normal curves Fethi Ayaz, Marc Kegel, Klaus Mohnke
We present a simple proof of the surface classification theorem using normal curves. This proof is analogous to Kneser's and Milnor's proof of the existence and uniqueness of the prime decomposition of 3-manifolds. In particular, we do not need any invariants from algebraic topology to distinguish surfaces.
微分幾何での数学+プログラミングでのお絵描きをやる野望はずっとあり, 数学パートを作るときの参考になりそうなのでメモ&シェアです.
Stefan Friedl, Algebraic topology I - VI¶
2919ページある大作です. これをじっくり読むかはともかく辞書として手持ちに置いておくといいかもしれません. 私も何かの参考になる機会があるだろうと文献ストックに突っ込んでおきました.
mathraphsodyさんによる調和多項式とべき零多様体の本¶
調和多項式とnilpotent variety(?)について 体系的に纏まってる洋本ってありますか? 『洋本』はきっと私たちの「代数群と軌道」を避けるための条件だと思います.とりあえずその宣伝を (^^;; 冗談でなくこの本は入手不可能になる可能性があると思うのでお見逃しなく https://sugakushobo.co.jp/903342_53_mae.html
さて,nilpotent variety については,もちろん
Nilpotent Orbits in Semisimple Lie Algebras An Introduction ByDavid H. Collingwood, William M. McGovern
にトドメを刺すでしょう.An Introduction に惑わされてはなりません. https://www.taylorfrancis.com/books/mono/10.1201/9780203745809/nilpotent-orbits-semisimple-lie-algebras-david-collingwood-william-mcgovern しかし,この本は variety というよりも,冪零軌道に詳しいと言えるかも知れません. 日本語によるよい書評 (^^;; があります. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/70/3/70_0703330/_article/-char/ja/
洋書ではないのですが,もう冪零多様体というとかなり専門的なので,書籍とか言ってないで Kostant の論文をお薦めします. この論文は教科書みたいなもので,読んでみるとたくさんのことを学べます.78ページもあるしね.無料です. https://jstor.org/stable/2373130?casa_token=5TPumCaXZIIAAAAA%3AKiCpSIiwr2CWgJRthtSWZ0Jr0GmE_xZC3cVHtOVI9R92xq2ni0EyDBFEOt5Yj5AEbZBuhjfCaOYx6k277D1f3bd6UKUhIjFMjGfsb85NnkNy83yjEPM#metadata_info_tab_contents
調和多項式と不変式環の関係,冪零多様体の正規性,完全交叉性,関数環の構造などなど,ついでに(?)半単純軌道についても書いてあります. だって,冪零軌道は半単純軌道の退化極限ですからねぇ. これを読んだあとは Kostant-Rallis をお勧めします. この論文,リー環の場合の冪零多様体の対称空間への『一般化』と思われがちですが,それは大きな間違いです.冪零多様体とは何か.私はそれをこの論文で学びました. https://jstor.org/stable/2373470?casa_token=tt_JneBq_HIAAAAA%3Ajwdi_JIUcN3CbmeLL4Hu4poHTEKRm6hk-inPwgxCmhstDSX5znd3qJ1EiqTGeZq2oQ5yUVRE0n7rah3Vpk5KOO5XkAj7KNPErpQel7K51JftPh9FhpM#metadata_info_tab_contents それでいま,たまたま見つけて,ああ,これがよいと思った論文があります.それは Brulinski-Kostant. Brylinski は Jan Luc ではなく,Ranee の方で,奥さん.7/🧵 日本に招待したことがあったけど「いまは起業ビジネスで忙しい」と断られたことがある. https://jstor.org/stable/2152759?casa_token=isYTJNPmTTcAAAAA%3AQeIfqIFrCdLuKgpi8A3n5SlkE7Bvxk553Qw70SvtFs17p4nhEMACZkWNW-5ltpxO7eeEYiGKx3_VrE-2KHwxMVO7euImxP1CXqY4Dfkr3HqLHvZJURo#metadata_info_tab_contents 彼女はもうとびきり優秀だったんだけどなぁ.惜しい人をなくした. (^^;; (いやもちろんまだご健在ですが,数学会からはいなくなっちゃった)
で,Brylinski-Kostant に話を戻すと,要するに nilpotent variety って隨伴作用の Hamiltonian reduction なのである,ってことが書いてあるんだと思う. だから冪零多様体を特別視する必要はなく,リー群のハミルトン作用を考えて Hamlitonian reduction すれば自然と冪零多様体みたいなものが現れるって訳だ. その一番原始的な例が冪零多様体で,それを深く理解しておけば Hamiltonian reduction は怖くない. (^^;; コワイケド これに関連して言えば,Fu さんの論文で,孤立シンプレクティック特異点は局所的に極小冪零軌道の閉包の特異点と解析的に同型であるという定理はとんでもないもので,びっくりしたなぁ. https://link.springer.com/article/10.1007/s00222-002-0260-9
まぁしかし,冪零多様体が symplectic reduction の特別なものに過ぎないということからするとある意味で当然の帰結かも知れない. そういえば『冪零多様体』という言葉にはなんとなく「冪零元の全体がなす多様体」というニュアンスがあるけど,この見方は誤解を招く. 不変式たちが定義する多様体,あるいは幾何学的不変式論で言うところの不安定点の全体という認識が正しい. その意味では,Mumford-Forgaty-Kirwan の Geometric Invariant Theory は冪零多様体を理解する一番よい教科書なのかも.ちなみに私は読んでません.
全く知らない分野ですが楽しそうに文献紹介されているのでその楽しそうな気分のお裾分けです.
書かれていないことを書かれていないと認識する能力¶
読解力が話題になってるみたいなのでなんとなく。理学、特に数学では「書かれていないことを書かれていないと認識する能力」が強く要求されてこれは読解力の一つだと思うわけですが、世間一般ではむしろこれは読解力の不足とみなされてそうだなと思ったり。
RT/Likeがたくさんつくのはこういういい加減な与太話だなぁ。「書かれていないことは読み取るべきでない」とは書いてないのだけれども、そういう筋の引用RTがそこそこついてる。書いていないのだからそう解釈してはいけないとは言わないけどさ。
【単に分野によって読み方・書き方が変わるだけ】と言っている人がいて、それはそうかなとも思うのだけど、まあ数学が割りと「書いてないことは書いていないと認識する」能力を要求するのは確かだと思う。 まあ、数学やってないときに数学者がその能力を発揮できるとも限らないけどさ。
最近ブログの記事を整理してアーカイブに再録し直しています. 昔の記事を見ていてこれは, という内容がありました.
競プロ勢が次のような主張をしていました.
- 数学の本はわかりにくすぎる.
- 数学科の人間でさえ苦労している.
- 人間の本来の理解の仕方に沿っていない.
これに対して雑にコメントすると, 単に他の分野はわかった気になりやすいだけで本来は数学くらい理解に対するハードルは高いはずではないか, そしてお前の言う「人間の本来の理解の仕方というのは何だ. 証拠でもあるのか.」です.
これについて私は実際に凄まじいエピソードを知っています. 学部一年のとき, 教養の微分積分の講義を担当していた郡先生が, 多変数の微分積分に入ったときにこう言っていました.
- 接ベクトルと言ってよく曲線上の点上からベクトルを生やす図が描かれることが多い.
- しかし実際には接ベクトルはあくまでベクトルであって原点から生えている.
- これがわからなくて私は理解が非常に遅れた.
これ, 大半の人には何を言っているのか全くわからないのではないでしょうか. 私も学部一年のときは「ベクトルだしそれはそうだが, そんな面倒なことをいちいち考えるか?」と思っていました. そしていつかも覚えていないものの, ある程度数学, 特に幾何を勉強したときにふと思い出しました. 「あのときの郡先生のコメント, 接空間の話をしていたのではないか」と. 多様体論はいろいろな点でとにかく面倒です. 微分作用素を接ベクトルと呼びますし, 本によっては大したモチベーションの説明もなく本当に抽象的に接空間や接束の議論がはじまります. しかし本当にこのスタイルでないと理解できない人がいるようなのです.
私の先輩の山下真さんも, 抽象的でないと理解できないタイプの人のようでした 学生向けの講義で自分のスタイルの抽象性の高い議論ベースの講義をしてしまい, その講義を聞いた学生達は有限集合の間の全単射さえろくに構成できない程に何も理解できなかったそうです. 他の先輩が「お前の理解のスタイルはよくわかっているが, そうではない人も多いのだからもう少し配慮しろ」と怒るくらいのレベルで指摘した話を聞かされました.
こうした意味で数学の本にも読み方があります. もちろん物理の本にも読み方があります. 通信講座の目的の一つは物理の本の読み方を伝えたい意図もあります. 先日も「綺麗な理論でどうにかするしようとするより泥臭い計算力で捻じ伏せる」といった話を書きました. 言葉で伝えるだけでわかる話ではありません. 実際の計算を見せて, そしてやってもらって肌で実感してもらうのが計算系通信講座の目的です.
Understanding topology: 動画が面白い¶
シンプルに遷移先の動画を見てほしいです. これは面白い.
Wikipediaの数学記事: 確率変数の収束とフーリエ級数の収束の優秀さ¶
Wikipediaの「確率変数の収束」と「フーリエ級数の収束」のページが有能すぎる。 わざわざ「〜の収束」という独立した記事がある時点で驚きな上に割と専門的な重要事項が簡潔にまとまっている。英語版には確率変数の収束の証明まで載っている。Wikipediaのくせに数学書より便利。 他にも「バナッハ空間の一覧」とかあってマニアックかつ便利すぎてビビる。オタクかよw 「ヒルベルト空間上のコンパクト作用素」「コンパクト作用素のスペクトル理論」とかやけに詳しいし、「ガウス関数の原始関数の一覧」「三角関数の公式の一覧」「円周率を含む数式」とか公式集的な記事もある。 Mathpediaっぽい雰囲気。 物理の絡むやつで「量子力学の数学的定式化」「一般相対性理論の数学」という数学的側面に限定した解説記事もある。 「水素原子におけるシュレーディンガー方程式の解」なんて丸々一つの記事を使って解の導出が詳しく載ってて教科書レベル。なんでこんな記事あるんだw
単純なシェアです.
フーリエ変換に対するある主張の当否¶
フォロワーの方々が教えてくださったのですが、これはほぼ正しいようです。例えば G. B. Folland の "Fourier Analysis and Its Applications"のp.218や小松彦三郎『Fourier解析』定理3.9などを参照してみてください。
Follandを見ると正確な言明の次のようです.
関数$f$が可積分で$\mathbb{R}$上で区分的に連続とし, 不連続点では$f(x) = \frac{1}{2}(f(x-) + f(x+))$をみたすとする. このとき \begin{align} f(x) = \lim_{\varepsilon \to 0} \frac{1}{2 \pi} \int e^{i \xi x} e^{- \varepsilon^2 \xi^2 / 2} \hat{f}(\xi) d \xi, \quad x \in \mathbb{R} \end{align} が成り立つ. さらに$\hat{f}$が可積分ならば$f$は連続で, \begin{align} f(x) = \frac{1}{2 \pi} e^{i \xi x} \hat{f}(\xi) d \xi, \quad x \in \mathbb{R} \end{align} が成り立つ.
証明の細部はともかく減衰因子が入っているならそれはそうか, という話でした. あとは元の関数の滑らかさはフーリエ変換の可積分性に伝播するから, というのも書いておいた方がいいのでしょう. その前に補足はあると思いますが, もとの黒板上の「区分的に滑らか」がどこまで強い主張なのか(まさか$C^{\infty}$ではないはず)も気にはなります.
『代数学のレッスン計算体験を重視する入門』¶
【好評発売中】『代数学のレッスン計算体験を重視する入門』 雪田修一/著 正規部分群やイデアルはなぜ必要なのだろう? ―こうしたことに引っかかった人に読んでほしい! 「計算体験=数学的現象の観察」から出発。証明にはデザインパターンがある!
私の意識がそちらに向いているからよく目に入るだけの可能性の方が高そうですが, 最近計算を重視する本がよく出ている印象があります. 「計算体験=数学的現象の観察」という指摘が非常に重要です.
微分チートシート: 「ベクトルで微分・行列で微分」公式まとめ¶
いま物理学・数学ギャラリーを整備していますが, やはりこういうのもほしいです. いろいろな定式化によるフーリエ変換の計算結果はリストに入っていますが, 微積分関係のリストも作らないと, と楽しみが増えました. 既にベクトル解析の諸式はいくつか突っ込んだのでもっと増強します.
永井佑紀, 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング¶
ありがとうございます。 こちらにとりあえず3日まで動作確認したコードが置いてあります。残りは順次確認次第載せる予定です。 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング(KS情報科学専門書)
ようやく手に入れました. 特に統計力学に関する数値実験をやろうと思っているのですが, 写経が大変で時間が取れていません. Twitter上で相互フォローなので聞いてみたところ, コードは公開準備中でいま三章までは出しているとのこと. 数値計算はバグ取りが地獄のようにつらいので早くコードを公開してほしいところです. いまTwitter上の知人とやっている統計勉強会もいまはJulia勉強会のようになっています. そこではイジングで遊び倒す機会も作ろうと思っています. 非常に楽しみです.
聖地巡礼の意義¶
今回一番注目したのが「聖地巡礼によって街の名前を知られた結果、地域住民が自分の街に誇りを持つ」っていう点で、これが聖地巡礼が地域に及ぼす最大のインパクトだと思う。 知名度を上げ、誇りを持たないと地域振興は難しいが、聖地巡礼にはその壁を乗り越えるパワーがある。
俗な話だけど、自分の街に誇りを持つときって、外から「○○の方ですか!」って言われる時が一番じゃないかと。 現代においては知名度と街への誇りは一体不可分だけど、殆どの地域でこれが大きな課題になってる。 その壁を同時に乗り越えられるからこそ、聖地巡礼による町おこしが注目されるのでは。 より平たく言えば、自分の街をいう度「○○ってどちらですか?」って聞かれ続けたんじゃ自分の街なんてその程度と思ってしまうし、そんな街よくしようとは中々思わんよね、という話。
物理や数学に直結するわけではありませんが, 気になったのでメモ&シェア.
「ルンバが走るには片付いた部屋が必要」¶
ルンバが走るには片付いた部屋が必要
という言葉がDXと要件定義の関係における、1番わかりやすい例えな気がする
これすごくわかりやすいな。「DXはデジタルの活用ではない。デジタルを活用するために自分と組織が変わること」という言葉が刺さる
最近, 会社の研修でDX関係のセミナーに出ているのでそれに関するメモです.
「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」¶
私はAIを勉強し始めたとき(2017)、自分にも「古典文学を博士まで勉強して、今更AIの勉強?」と何回も思った。でも、やり続けたのは本居宣長の言葉があった。
「才のともしきや、学ぶ事の晩きや、暇のなきやによりて、思いくずをれて、止ることなかれ」
「自分には才能が乏しいとか、学び始めるのが遅かったとか、する暇が無いといった理由で思い悩んだり落ち込んだりして、進歩すること止めてはいけない。」
これは日本に留学するレベルで日本古典文学に興味を持ったものの, 肝心の崩し字が読めなくてつらかったため崩し字のハードルを越えるためにアプリケーションを開発したという人の話です. 私もいま理工系の総合語学に向けていろいろ検討し, アプリを作って情報も整理しているところで, いろいろな示唆があります.
今週の問題¶
ようやく行列リー群の基礎の基礎を終えました. リー群・リー環の基礎といえばやはり次の命題でしょう, というわけで.
- 同型なリー環を持つ単連結なリー群は互いに同型である.
非同型なリー群が同じリー環を持つ現象は初等的な範囲でもたくさんあります. この壁を乗り越えてリー環でリー群を記述しきるための鍵は位相にあり, それが単連結性だという決定的な定理です.
何度か書いているように, 代数+位相のセットは互いに恐ろしく強い制約を与えます. 微分幾何では曲率という微分幾何的・リーマン幾何的な構造が位相に制約を与えるのが面白さの一つで, 位相に制約を与える以上, 多様体が代数的な制約を持つときには代数にも影響を与えます. 当然代数的な制約から微分幾何的な制約が入るとも言えます.
位相がわけわからないという人は多いようですが, 行列・行列群の性質から少しずつ位相に慣れ親しむパスがあってもいいでしょう. リー群・リー環の議論, 行列計算のハードさもあるため位相への意識が薄くなってしまいかねない懸念はあるものの, 位相の射程距離を知るにはいいテーマです. ぜひリー群・リー環も勉強すると楽しい分野リストに入れてあげてください.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-30¶
数学・物理 載せたい方程式募集/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 質問の仕方・アンケート利用案内: 困った質問が来たので
- 基礎・基本の意義・重要性
- 物理への取り組み方と次の短期集中講座
- 集中して取り組む
- 載せたい方程式募集
- 計算できない理由を考える
- 大人の数学
- 幾何の講義YouTube
- SymPyが便利で感銘を受けた記録
- ニュートンの三法則の解釈
- 文理工の科学的世界観で考えるファンタジーの設定
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
土曜日で行列リー群・リー環の基礎の基礎くらいのところ, 終わると思ったら終わらなかったのですが, さすがに日曜には終わるでしょう. モース理論入門をリー群・リー環で最低限触ろうというネタも見つけて, それも調べつついろいろやりたいところですが, いったんリー群・リー環はいったん休止して物理モードに戻ろうかと思っています.
何故終わらなかったかというと先週宣言した物理の式のギャラリーを作っていたからです.
実物を見せないとイメージもわかないと思ったので.
Twitterに先週のメルマガの内容を放流したらQmQさんからリアクションが来たので, 継続的に一日一式くらい追加してやっていく予定です. 「こんな式を載せてほしい」というのがあればぜひ教えてください. TeXで式を作って送ってもらえるとなお嬉しいです.
物理モードに入ったので改めて量子力学の基本的な理論の部分や, 相対性理論を再勉強しています. 相対性理論の本を眺めていたら, 特に一般相対性理論で計量の符号の流儀に由来する曲率の表式の違いが問題になっているのを見かけました. 数学でも曲率の符号が問題になる場面はよくあり, 流儀ごとの計算結果は現代数学探険隊にまとめているのですが, これも改めてきちんとまとめようと思っています.
フーリエ変換も$2 \pi$をどこにどう置くか, 三パターンくらいありますし, これも現代数学探険隊にまとめています. 私が参照しやすくする目的も兼ねて公開しようと思っています.
私の勉強・参照の役に立つなら万人とは言わずとも役に立つ人は必ずいるはずで, そこを狙ってやっていきます.
疲れているときや昼食の休憩時など, ちょっとしたすき間時間はだらだらしがちなのですが, そういう時間に使うアプリとして非常に楽しみです.
質問の仕方・アンケート利用案内: 困った質問が来たので¶
率直に言ってとても困った質問が来たので改めて案内します. リー群・リー環に興味があるようで次のような質問が来ました.
- 物理に必要な最低限のリー群・リー環だけを勉強したい.
- わかりやすい教材を教えてほしい.
何回かコメントをもらったことがある人で確か理工系出身の人だったとは思うのですが, どういう背景を持つのかあまりよくわかっていません. 以前簡単な自己紹介をもらった気もしますが, 何年も前なのでさすがに覚えていません. そんな中で「物理に必要な最低限」と言われてもどう答えればいいのか全くわかりません. 同じく, どんな教育を受けてきて何を勉強してきたのか, 背景や状況を教えてくれずに「わかりやすいのを教えて」ともよく言われるのですが, 私と同程度にゴリゴリに物理と数学をやってきている人もそういないでしょうし, 集合・位相・実数論の背景がない人に勧められる数学の本もほとんど知りません.
それで「数学と物理をやってきた人だと思って期待していたが残念だ」と言われたので, 理工系の素養があってそれなりにやってきている人間からここまでどうしようもない質問が来た上で, こんな返信をもらうのかとさすがにげんなりしました.
回答の負担になるのであえてあまりくどくどと書いていませんが, アンケートには「質問があるならせめてこのくらいは情報をつけてほしい」という項目を入れてあります. 真剣な質問で回答がほしいなら, どのくらいの数学・物理・プログラミングなど項目ごとに適切な情報をつけてください.
せっかくなので上記の質問に関してここにもコメントをつけておきます.
物理に必要な最低限のリー群・リー環¶
何をやりたいかに強く依存します. そして私の知る限りの学部から修士の物理での「最低限」の線で言えば, リー群・リー環の勉強は無駄なのでやめようと言います. 一般論を勉強するよりも都度出てくる計算を処理しきれる計算力を育てる方が汎用的で重要です. 最近の計算押しもまさにここにフォーカスしています.
私の「物理」に関しても補足でコメントします. 主に修士の頃にやっていた範囲ですが, 物理としては場の量子論の赤外発散の数理・基底状態の存在, 量子統計での平衡状態の存在です. リー群・リー環の議論は全く使いません. 勉強の段階ではローレンツ群・ポアンカレ群というリー群らしいリー群, 非可換なリー群は出てきましたが, リー群の一般論をまともに勉強しきったことはありません. いま再勉強している様子を伝えている通り, 本を一通り眺めたことはありますが当時も今も身についていません. 具体的にどのくらいの勉強をしたかについては, 新井朝雄先生の『フォック空間と量子場』を見てください. その範囲しか勉強できていません.
勉強の段階でさえ私のメインの対象は場の量子論では時空並進群$\mathbb{R}^d$, 量子統計では空間並進群として$\mathbb{Z}^d$です. 後者にいたっては形式的にはリー群ですがわざわざリー群とみなす方が大変です. 自由場のボース-アインシュタイン凝縮関係で$U(1)$も少し触ってはいるものの, リー群の議論がいるかと言われれば全く必要ありません.
「数理物理」と言ってもいろいろあります. 数学的には関数解析が専門で, それ相応の範囲を勉強してもいますが, 研究で一番大事なのは収束制御のための極限処理の腕力です. 直接の修士の専門だった作用素環でも, 一番大事なのは学部四年で既に勉強済みだったGNS構成定理です. まわりまわっていろいろ必要になることは多々あります. それでもまず最低限と言われたらこのくらいです.
物理で最低限必要な数学と言われたらもっと数学の知識は減りますし, 何より数学をやるより計算力をつけろと言いますし, それへの回答として計算力養成講座を運営しようとしているくらいです. 数学の勉強よりもぜひ計算力の涵養を最重視してください. 「数学」をやるより余程役に立ちます.
わかりやすい本¶
わかりやすいかどうかは微妙ですが, 小林・大島の『リー群と表現論』が読んでいて抜群に面白いです.
私を越える数学力があれば難なく読めるでしょう. 自分に必要な範囲の解析学しか修めていないので, 幾何と代数に関して私程度は越えていないと気楽には読めません. リー群とその表現には届かないものの, 平井武『線型代数と群の表現I・II』は集合・位相のようなゴリゴリの数学の知識なしで読めて楽しい本です.
私は私より数学ができない人でも読めるリー群・リー環の本を知りません. 知らなくて困っているからこそ多様体ベースのリー群ではなく, 行列リー群・リー環で愚直に計算を進めるタイプのコンテンツを整備しているくらいです.
持っているだけ持っていて読めていないのですが, 物理, 特に素粒子系で有名なところだとジョージアイの本があるようです.
レビューによると独学にはつらいようですが, 物理の大学院レベル, それも素粒子系の専門性があるなら物理数学的腕力でねじふせられるのかもしれません. そもそも最近はもっといい本が出ている可能性もあります.
基礎・基本の意義・重要性¶
この間プログラムを書いていたときの話です. 一日かけて解決できなかった問題がありました. 夜寝る前に「手を抜くからいけない, 一から動く部分を少しずつ積み上げて問題を一つずつ潰そう」と, 正攻法で挑み直したら翌日10分程度で解決できました. 基礎の重要性を噛み締めています. 急がば回れとは本当によく言ったものです.
上でも少し書きましたが, 物理でも数学でも計算力は基本中の基本です. 特に物理では数学の綺麗な一般論で片付けるよりも, 泥臭かろうが剛腕で押し切るのは非常に重要です. もっと言えば私の専門の数理物理がそうであるように, その時点の数学で処理しきれない問題があって数学に頼れないこともよくある以上, その場しのぎであろうとも計算力さえあればねじ伏せられるならそれを使うしかありません. 最近では「計算力」の中にプログラミングも含まれるようになってきています.
通信講座でも計算力が足りなくて困っている人がいました. それなりに面倒な近似とその計算も含め, やはり古典力学は物理に馴染む上で最初に取り組むべき分野です. 応用上カバーする分野も恐ろしい程に広く, まさしく一生かけても遊び切れないほどテーマも豊富です. 物理, またはもっと物理を勉強したい人も読者に多い中で, 数学の話ばかりしているのもよくないと思っていたところなので, これまで以上に物理での計算の意義の強調, そして計算力向上プロジェクトの推進を進めなければと思いを新たにしています.
物理への取り組み方と次の短期集中講座¶
というわけで物理と計算です. 他のいろいろな取り組みが楽しすぎて全く準備が進めていませんが, 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数, 特にその計算」です. 二次または三次の行列計算をがんばってやろうという企画で, 一般論の趣が強い話はほぼ扱いません. 量子力学に関わる話もほぼ直接的には出てきません. 計算力さえ身につけば量子力学の本も自力で読めると思うので, まずはそのための力を育てるのがいま私が一番できる貢献と思っているからでもあります.
もちろん三ヶ月でできる範囲には限度があるので, 堀田量子・谷村量子あたりに挑むための基礎計算力を身につけるための第一段です.
念のため書いておくと, 学部教養レベルの線型代数の一般論は絶対に必要です. 何をどうしても一般の有限な$N$次元は処理できないと困るからです. そして具体的な2-3次元と$N$次元の処理はやはり多少のギャップがあります. さらに言えば$N$次元の一般論が処理できたとしても, 2-3次元のハードな計算をこなす腕力・計算的体力があるかも別問題です. 極端に言えば一般論は純粋な数学の人に聞いたり教えてもらう形でも対応できますし, 物理についても物理の人に聞く手があります. しかし計算を詳しくカバーするのは骨が折れます. 大学の学部でも演習系の講義はよく必修として組み込まれています.
最近大人向け数学塾的なところも増えていますし, 個人指導も増えています. そんな中, 計算力涵養講座は必ずしもカバーされていない領域ではないかと思っています. 個人指導だといくらでも聞けるとは思いますが, 個人指導に高いお金を払おうというときに計算だけ面倒見てくれ, 計算練習だけしたいという要望もないでしょう. 大事な割に軽視されがちな部分をきちんと追いかけようと思っています.
集中して取り組む¶
プログラミングに関してCSSを含めたフロントエンドにここ一月集中して取り組んでいます. だいぶ慣れてきました. これまで直したいと思って放置してきたこのサイトのCSSも微修正しました. 慣れてしまえば大したことはなかったものの, そこに至るまでの精神的なハードルの高さは凄まじかったのです. この一月でそのハードルが著しく下がりました. 長期間継続すると言うと聞こえはいいですが, ダラダラと長い時間やっていても必ずしも望み通りの結果は産めません. 集中するべきときは資源を全集中してガツっとやった方がいいのも改めて実感しています.
もちろん数学や物理は一月程度でどうにかなるわけではありません. 正直プログラミングは本当に大したレベルではないので, プログラミングの初期学習時にゴリっと時間を取るのはかなりよさそうな感じがします.
載せたい方程式募集¶
先週少し紹介した式を眺めるアプリ事案, 文章だけではイメージが掴めるはずもないのでさっとWebアプリを作ってみました.
イメージが違うと思う人もいれば, もっとこうしてほしいというのもあるでしょうし, 式が少なくてつまらないという人もいるでしょう. 式が少なくてつまらないのはまさにいまの私の感想です. すき間時間を潰すにもせめて500本くらいはほしいです.
物理の有名な法則や式を載せればいいのでネタは豊富にありますが, 式を打つ時間がかかります. 載せる順番の問題もあります. 「この式を優先して載せてほしい」といった要望があればぜひ教えてください. 式をTeXで打ってもらえるとなお嬉しいです.
もちろんこれの数学版も作りたいですし, 物理で言うならもう少し一般向けの内容として, 物理学者名言集のようなものも作りたいです. 数学についてはいまある現代数学探険隊から定義・定理・命題・補題を切り出してズバンと数百レベルで作ろうと思っています. そのためのテキスト処理プログラムを作ろうと思って時間が取れていない状況です. これも早く何とかしたいです. これがあればすき間時間のリー群・リー環の復習・定着に取り組みやすくなるので, 何より私がほしいアプリです.
計算できない理由を考える¶
今回ずっと計算づくしですが, そのくらい大事だからです. 最近私もずっと計算していますし, 通信講座で他の人の様子も見たのでその辺からいくつかピックアップします.
計算が進められない理由はいくつかあります. まず一つ, 文章が読めていない場合があります. 「そんな馬鹿なことがあるか」と思うかもしれませんが, Twitterを見たり通信講座で質問を受けていると, 「それ, きちんと証明の中で『こうやる』と書いてあるのですが」というところで「わからない」と言っている人が本当にいます.
- 「こうすればいい」
- 「そうだったのか」
このやりとりをしたあと, きちんと本を見たらそう書いてある場合が本当にあります. 根気強く丁寧に文章を読むのも計算力のうちのようです.
もう一つ, 特に初学者によくあるのは定義が頭に入っていない事案です. もっと言えば定義が大事だとわかっていない状態です. 分野のはじめの方であればあるほど使えるのは定義しかないので, 「定義に沿って計算する」, 「定義にあてはめられるように計算する」しかできることがありません. その状態で「何を計算したらいいのかわからない」のは単純に定義の重要性がわかっていないからです.
これは文章が読めていないと言ってもいいのでしょう. 何と言えばいいのかわかりませんが, 「論理的に進めるスタイル」とでもいうのか, 少なくとも物理・数学の専門書の本の読み方がわかっていなさそうな状況もよくあるようです.
次の短期集中講座でも週に一回か二回は勉強会またはもくもく会の時間を作る予定ですが, そこで問題を見たときにまず真っ先に何に着目してどうすると考えるのか, ミニレクチャーをはさんだ方がいいのかもしれません.
大人の数学¶
以前も少し紹介した事案です. 特に機械学習なり何なりで線型代数や微分積分が必要というとき, 実際には中学, せめて高校くらいの段階からみっちりやる必要もあります. それをカバーする教育体制がどこにどのくらいあるのかという話.
高校数学または中学数学くらいからのいい感じのアプローチはずっと考えている部分でもあります. これは特に私が一番やりたい部分である中高生へのアプローチとして, 先々の面白い話をどう手早く, それもきちんと腹落ちする形で見せられるかにもつながるからです. 競プロがあってコミュニティもできているから, アルゴリズム系の計算, そして計算でがんばるタイプの微分積分・線型代数, さらにはそのお絵描きがいいのではないかと思っています. 以前, 実際に微分積分・線型代数はコンテンツを作りましたが改めて具体的に要望あるでしょうか. SymPyもそれなりのボリュームで扱っていますし, 微分方程式にも触れているので, 古典力学はもちろんのこと量子力学の行列計算でもそれなりに役立ちます.
実際, リー群・リー環の場合も含めて行列計算ではsympyやnumpyにお世話になっています. 私はできる場合には数式処理的な厳密な計算をしたいのでsympyが主な対象ではあるものの, 数値的にそれなりにできれば十分という人もいるでしょう. sympyをがんばるよりnumpyで数値的に処理する方が簡単な場合も多いですし, sympyの限界でそうするしかない場合もあります. これも実際に二次正方行列の極分解でsympyだと二重根号の処理ができず, はまり倒しつつ三日かけて手計算をがんばったことがあります. 二重根号で処理できること自体, 一日半かけてようやくわかったのです. numpyで数値的に解くだけなら一瞬で終わるのですが気にくわなかったので.
幾何の講義YouTube¶
大分前のメモで共有できていなかった分です. いま改めてサイト・メルマガを整理していて書きかけを見つけたのでここで供養します.
SymPyが便利で感銘を受けた記録¶
今週の問題ネタでもあります. 特殊線型リー群$\mathrm{SL}(2,\mathbb{C})$は弧状連結なので任意の要素が指数写像の像の積で書けます. 一方, 具体的な$\mathrm{SL}(2,\mathbb{C})$の要素を分解してみせるのはなかなか大変です. そこでSymPyを使って探索したらあっという間に見つかりました. 二次であっても行列の計算は面倒でミスも多発します. 試行錯誤となると余計にやりたくなくなります. それをカバーしてくれるこんなに嬉しいモノがあるかと感銘を受けました.
何でもできるとは思えませんが, SymPyには行列の指数・対数もあります. まず適当な(簡単な)行列を積で分解しておき, 各因子の対数を取れば対応するリー環の要素がすぐに計算できます. これもまた便利で感銘を受けました. リー群・リー環の計算練習系コンテンツはもちろんのこと, 次の短期集中通信講座, 量子力学と線型代数ネタでももっと積極的に使った方がいい気持ちを新たにしました.
プログラムを書いて探索するのもぜひもっと使ってほしいですね.
ニュートンの三法則の解釈¶
科学哲学・自然哲学系の人です.
山本義隆先生は,Landau-Lifshitz 物理学小教程の『力学・場の理論』の解説で,「論理的に純化したときの力学原理としての「慣性の法則」は何かと言えば〔…〕慣性座標系の存在要請ということになる」(p. 419) と述べているが,私がこの主張に賛同できない理由の一つは,下記のスライドに書いた通り.
- 第一法則は第二法則の特殊ケース($F=0$の場合)であり, 余計ではないのか? -> そうではない.
- 第二法則だけでは, どういうときに「外力が加わった」と言えるのかが明らかではない.
- 第一法則は「外力が加わっていない自然な状態」がどういう状態なのかを基底しており, 第二法則はそれを前提としている
もう一つの理由は,そもそも座標系というのは人間の都合で設定されるもので,物理現象はそれとは独立なので,力学法則が座標系への言及を含むのは不適切だと思うから. 慣性の法則は,相対論における測地線原理(質量のある自由粒子はtimelikeな測地線上を運動する)の古典的時空における対応物だと思うので,その対応が明確になるような形で(座標系に言及しない形で)定式化するべきだと思う.
もう一つ当人の補足.
整理すると,第一法則は「外力が働いていない」状態がどのような状態なのかを規定しており,第二法則はそれを前提としている.したがって第一法則を慣性系の存在要請としなくても,第二法則の特殊ケースとはならない. 第二法則から「$F = 0$ のとき加速度$= 0$」が出てくるので,第一法則はその特殊ケースではないかと思われるかもしれないが,これは「$F = 0$のとき静止もしくは等速直線運動」と同じではない.例えばアリストテレスやガリレオにとって天体の一様円運動は「変化のない運動」,つまり加速のない運動だった. 気になるのは,アリストテレスにとって天球(エーテル)の一様円運動は「自然」な運動だから外力を必要としないと思うんだけど,同時に彼は天球を動かす「不動の動者」を考えていること.このあたりの整合性はどうやって取っているんだろう. SEPによると,アリストテレスの言う「自然な運動」は「外力を必要としない運動」というわけではないらしい.https://plato.stanford.edu/entries/aristo
これに対するコメントがいくつかあります.
非常に興味深いです。そのスライドに書かれていることはまさに「慣性座標系の存在要請」のように思えるのですが、どの点が違っているのでしょうか。
スライドに書いた慣性の法則は,座標系への言及を含んでいない(座標系とは関係なく成り立つ)ので,慣性系の存在要請とは違うと思います.ちょうど相対論における測地線原理(質量のある自由粒子はtimelikeな測地線上を運動する)が座標系への言及を含んでいないのと同様です.
そもそも山本先生は,慣性の法則が第二法則の特殊ケースになってしまうのを避けるために,それを慣性系の存在要請として解釈しているようですが,私はその議論の前提(慣性の法則を慣性系の存在要請として解釈しないと,第二法則の特殊ケースになってしまうという前提)が間違っているように思います.
では、第一法則を「静止あるいは等速直線運動をおこなっている物体には(トータルで)外力が働いていない」という意味での外力の定義とみなせば良いでしょうか
そうですね.外力の定義として考えるのは良いと思います.
他のコメントその二.
特殊な座標系(慣性系)においてのみ第二法則は成立し、第一法則はそのような系の存在を要請している。
よって、座標系に無関係に成立するという主張は支持しない。
「慣性の法則」の意義の話をする時にネーターの定理を持ち出さないのは違和感があります。山本義隆さんの言うように理論的にはユークリッドな慣性座標の存在から直ちに導かれるものです
あまり真面目に考えたことがない上に正確な状況設定も理解していないのですが, 慣性以前に座標系をいつどこでどう定義したことになっているのか把握できていません. 上の当人コメントでは「外力の定義として考えるのは良い」と言っていますが, 外力以前に単純な力の定義もどこでどう設定したことになっているのでしょうか.
上で「文章が読めていない」という話をしましたが, 特にこの辺の議論の前提に関わるところはこの前段で何をどう設定したかに強く依存しますし, いちかわけんとさんコメントもそこに関わる話でしょう. そこが明示されない状態での空中戦は本当に不毛です.
文理工の科学的世界観で考えるファンタジーの設定¶
ずっと構想してたけど供養す
魔法は世界に対する API の query で、図形化のプログラミング言語を利用して現実化させるみたいなやつで
言語学や民俗学も絡めて、さらに異世界薬局とかの物理や化学に基づいた物質創成・操作とか
つまり文理工の科学的世界観で考えるファンタジーみたいな設定が欲しい
自分でやる気は起きませんがこれはすごい楽しそうです. ファンタジーを作る気はしないものの, アーカイブのトップに書いた「理工系の総合語学」のコンセプトはこれと強い関係があるとは思っています. とりあえずは語学・言語学・プログラミングに力を入れてやっていく所存.
今週の問題¶
今週は行列リー群の当面の締めとして, 単連結なリー群についていろいろまとめていました. 単連結という位相的特徴と代数の関連はもちろん自明に大事なのですが, もう一つ面白かったのは次の事実です.
- 実・複素係数のリー環$\mathfrak{g}$に対してトレースはもとリー環の$\mathfrak{g}$から実数体・複素数体への準同型である.
理由は指数関数の行列式に対する有名な等式$\det e^A = e^{\mathrm{Tr} \, A}$です. これ自体は散々見て使ってきた等式でしたが, リー環の準同型を示唆すると思って見たことがなく自分の目の節穴ぶりを見せつけられました.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-23¶
数学・物理 式や定理を眺めるアプリを作ろう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 単語学習アプリとその数学・物理への展開
- 勉強しやすくする環境作り
- メタバースとオンライン教育の食い合わせ
- データ同化と作用素環
- 『インド数学研究』
- 「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」
- Stack projectのPDF
- 古典場と量子系の共存
- 『進化思考』における間違った進化理解の解説
- 居眠りを苛立たしく思わない方法
- Coqで書き直したPrincipia Mathematica
- 単語と世界史
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
ここ最近, 仕事のアプリ開発用の調査も兼ねたプログラミングをしていたら, 「勉強ついでにやってみよう」で自分用のアプリ開発を進めています. 技術不足でなかなかうまくいってはいないものの, 「これもほしい」「これができるならあれも何とか自力でできそう」という感じで, 妄想と実装が進んでいてなかなか数学・物理が進んでいません. 贅沢な悩みなので大きな問題ではありませんが, 次の通信講座の準備も放置したままです. 無理やりにでも時間を作って来週のメルマガでもう少し具体的な話をしようと思います.
単語学習アプリとその数学・物理への展開¶
現状ほぼロシア語しかありません. そしてこれ自体にはほぼ興味ある人はいないでしょう. しかしこれができるなら, と思って妄想しているのが定理版や物理法則版です.
実際に勉強しているとき, ちょっとした空き時間やいまひとつやる気が出ないときの気力充填用のアプリとして, 既に整備しているコンテンツから定義・定理だけ抜き出して眺めたり, お気に入りの定理や式や物理法則をパラパラ眺めるアプリがあったらいいのではないかと思っています.
これは単純に勉強する上でも実はかなり大事です. 何をやるにしても復習は非常に大事です. そして大事な定義・定理の主張だけ眺めるのはかなり大事です. 証明の細かい議論の追跡や計算の完遂も重要ですが, 個々の定義や定理の言明に親しむのも同じく大事です. 定義や定理はエッセンスをまとめた対象なわけで, 証明は証明, 言明は言明とわけて考えて慣れるのには一定の意義があります.
自作のコンテンツは基本的に自分にわかるように計算を詳しく書いているため, どうしても長くなります. 定義や定理だけ抜き出してさっと眺められると便利とは前々から思っていて, それを実現する方法としてこの手のアプリを作るのは一手と思っています.
他にも通信講座の各回のコンテンツ配布用にPWAアプリの形の配布も割と便利ではないかと思っています.
何にせよ自分自身の復習効率向上のために早くアプリ作りたいです.
勉強しやすくする環境作り¶
7/20(水)で古典力学に関する三ヶ月間の短期集中講座が終わりました. 7/23(土)に最後にちょっとした振り返りをして感想を聞いたので, いくつかシェアします.
まずは次の二点.
- 勉強会がよい強制力になった.
- ペース配分してもらえるのがよい.
週に二回, オンラインで一時間ずつ勉強会と称して時間を取っていました. 社会人で忙しくともせめて週に二回, 一時間ずつくらいは勉強してもらいたいからです. もちろんこの時間には質問も受け付けていました. 勉強会への参加がいい強制力になっていたそうです.
もう一つ, 全体が見えている人間による内容とペースの配分がよかったようです. はじめはやる気や意志の強さの問題かと思っていたが, 三ヶ月で最低限の内容を無理のないペースで進める, という視点からの配分がかなり助かったと. いまやっている議論が先々どんな意味があるか, どう発展するかもいろいろな形で伝えていた点もよかったようです. 例えば調和振動子は量子力学や場の量子論でも重要, といった話を各所で展開していました.
あともっと計算を詳しくしてほしいという要望がありました. もちろん詳しくするべき箇所は詳しくしますが, 少なくとも手元にある元にしたいくつかの参考文献よりは計算を詳しく書いてあります. 計算力がないという自覚のある方だったので, このくらいは捌けるようにもっと計算力をつけてほしいとは伝えました.
まさに計算力強化を目的にした通信講座であり, 理論の理解と同じく, 実際にたくさん計算して計算力を育ててもらわないと理論の理解も覚束ないのが現実です. 広い意味での計算力のなさが理解を阻むのは自分自身苦しんできた部分でもあり, 引き続きこの線を追いかける決意を新たにしました.
ここ何回かメルマガでもプログラミングに関して書いてきたように, 一人でやっていても効率が悪いことはよくあります. 役に立つわけでもないタイプの勉強なら必ずしも効率を求めなくてもいいでしょう. しかしむやみやたらに苦行にするのも違います. その辺をよりよくバックアップするための処方箋として, まずは自分がほしいアプリ開発も優先順位をあげて対応しています.
そしてよく言われる一番よい勉強法は「人に教える」です. 大学でのゼミ形式です. 教えるために勉強するのもありますが, 教えていると頭の使い方が変わって, それまでに思いつかなかった説明の仕方をひらめくことがあります. 私もフロントエンドまわりのプログラミングに関して, 自分の中の圧力を上げるため, 勉強会の講師役をやる前提で知人が運営しているコミュニティに参加させてもらうことにしました.
もちろんここまでの圧をかけるのは大変なので安易にお勧めはしません. ただ特に計算力涵養に対していろいろなテーマの短期集中講座で対応していく予定です. 使える人はぜひ使ってください.
メタバースとオンライン教育の食い合わせ¶
最近各方面と話してて思うけど、メタバースとオンライン教育の食い合わせは完璧に近いのに、環境を整えるコストがボトルネックすぎて双方向授業やワークショップの活用事例があまりにも少ないのが悲しすぎる 既に現場にいる人が活用事例を創出しまくってオイデオイデするしか勝ち筋がない
子供たちはMMOの延長として捉えて導入がスムーズなのに対して、大人は自分たちが知らない別の世界へ連れていかれるようなモノというイメージを持ってるケースがあって…リケジョ教育もそうですが、先に伝達すべきは親御さんや先生ですね
Vtuberをやっている人と少し仲良くなったので, その人の活動を横目にしながら, 私も何かしらやろうと思っています. Vtuberを動かしつつ3Dの数学・物理系アニメーションコンテンツを作っている人もいるようですし, そういう方向性でもいろいろ遊びたいと思っています.
データ同化と作用素環¶
時間がなくてプレプリントは読めていませんがとりあえずシェア. 情報系, 割と滅茶苦茶な数学が出てくるようで時々驚きます. こういうのを見ていると関数解析をやっていてよかったと思うときもあります.
『インド数学研究』¶
『インド数学研究』オンデマンド版ということでペーパーバックだと思っていたのですが眩しいくらいに立派な装丁の本でした.光ってます😂 先週末時間をとって取組んだのですが思った以上に難しいですね.インド数学特有の表現法に慣れないといけません.数学ってもの凄く地域的で文化的なのだと再認識.
この小学校の円の求積の説明でみかけるこの図.ギリシャ数学ではまず見かけないのですが,どうやらインド数学の図版にはあるらしいのです.こういったアイディアの(現存する)初出に触れられるのも古い科学文献を読む楽しみです.
この小学校の円の求積の説明でみかけるこの図.ギリシャ数学ではまず見かけないのですが,どうやらインド数学の図版にはあるらしいのです.こういったアイディアの(現存する)初出に触れられるのも古い科学文献を読む楽しみです. pic.twitter.com/ltgYmQa60J
— 古代ギリシャのヘルメスさん (@kodaigirisyano) July 22, 2022
私もこの図はよく使います. インド起源らしいと知ってちょっとびっくりしました.
「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」¶
「数学も英語も強くなる! 直訳では伝わらない意外な数学英語たち」にDST Triangleというのが出てきて、Distance, Speed, Timeとあって、悪評高いはじき、くもわの図は日本だけじゃなかったんかーい、ってなってる。
「はじき」系の話もありますが, 理工系向けの語学コンテンツの方向性もいろいろ考えているので, その参考にもなるだろうと思いメモ+シェア.
Stack projectのPDF¶
オリジナルのStacks projectのページで全体のpdf版もダウンロードできて,現在7,500頁超の模様.↓pdf直リンク注意: https://stacks.math.columbia.edu/download/book.pdf
このレベルの内容の7500ページのコンテンツ, 読むのにどれくらい時間がかかるでしょうか. 何はともあれ面白いことがいろいろ書いてあるのは間違いないので, 改めてシェアします.
私が作っている現代数学探険隊のPDFは議論を詳しくするため, 何よりも自分があとで読んですぐわかるように, なるべく詳しく定理・定義・式の参照を張るようにしていて, 参照が6000近くあります. ページ自体10000ページを越えているので, 私のマシンだとコンパイルに30分かかります.
古典場と量子系の共存¶
勉強になる。古典場と量子系を共存させるのは(重力でなくても)難しい https://twitter.com/yujitach/status/1549913475425906688
曲がった時空上の場の量子論?
その例えで行くと、曲がった時空上の量子力学でも、波動関数から重力場をきちんと決めましょうね、という話 (元々は重力だけ量子化されないとするとどうなのか、みたいな話だった)
古典重力の部分と重力以外の量子論の部分が相互作用する、みたいな系ですかね。 それならば、半古典近似という呪文を使わず、全体として整合的な定式化を構築せよ、というのが本質かと(見たことないけど)。
そのとおりですね
時間がなくてオリジナルのツリーまで記録できていないものの, 専門家のこういう話を見るのは楽しいですね.
『進化思考』における間違った進化理解の解説¶
『進化思考』における間違った進化理解の解説 ここで批判の対象になっている本の内容、 進化という言葉を使ってなにかいいこと言ってやろうという人間がやる間違いのカタログみたいになっているようだ。 ある意味で勉強に良い
生物, 高校レベルですら覚束ず, 勉強しようと思って幾星霜です.
居眠りを苛立たしく思わない方法¶
大学で教え始めた頃は、この私といえども居眠りしている学生に腹が立っていたものである。しかしニュートンの学生時代について少し調べた中で、おそらく彼も居眠りしてケンブリッジで居眠りしていただろうという想像がついたので、以来全く腹が立たなくなった。なぜならその居眠りしている学生は(1/n) きっと夜中に微積分学及び力学を構築していたに違いないからである。私はこの話が好きなので、講義の中だるみの時期、「居眠りは全く問題がない。きっと21世紀の微積分学か力学を構築しているのだろうから」と口走ると、教室は緊迫する。もちろん学問でなくても良いから、若きニュートンのように(2/n) 大いに熱中したまえ、それで居眠りをするのは偉大なことである、とフォローするのだが、Z世代の諸君はこれを甚大なる圧力のように感じるようである。私は本心で言っているし、大学人は皆そう考えるべきだと思う。一体あなたは誰がニュートンなのかわかると思っているのか?と。私は自信がない。(3/n) 講義で居眠りする学生がいたらそれはニュートンかもしれないと思うべきだ。図書館に入り浸る変な人間がいたらそれはマルクスかもしれないと思うべきだ。謎にふざけあうおっさん二人組がいたら寒山拾得かもと思うべきだし、七歳の女の子が衆生を救う教えを説くことも当然ある。そういう意味で私は(4/n) 「信仰」を持っていると言っても良いだろう(カルトは無論断罪するが)。決して「立証」されえないことを信じるのが宗教であるならば、それは確かに宗教かもしれない:あなたは私やあなた自身が思うよりもさらにすごいかもしれない、と私は信じる。しかしそれこそが教育の要諦ではないか。(5/n,n=5)
はっきりとは名乗っていませんが, ツイートを追っていると自著を紹介したりしているので, この人が誰だかはわかります. 面白い人なのでTwitterをやっている人はツイート追いかけるといいでしょう.
Coqで書き直したPrincipia Mathematica¶
最近改めて定理証明系にも興味が出てきたので, とりあえずメモしておきます.
単語と世界史¶
単語の語源を調べると、そこに世界史が見えてきます。 例えば英語にvandalize「破壊する」という動詞がありますが、これは455年にローマを略奪したヴァンダル族(ラテン語でVandali)の名前が語源です。 また、スペインの「アンダルシア地方」の名前の元もこのヴァンダル族です。
このあたり「理系の語学」でやりたい話でもあります. 一つ一つ丁寧に彫り込んでいくと多言語・多文化に共通の要素が見えてくる, みたいな話はまさに数学や物理でもよく出てくる面白い話で, 言語学者も言語の中で同じことを面白がっています.
特に音に関して物理で決まる言語現象がいくつかあります. 人間の口の形や音の出し方で決まることは当然言語や文化を越えます. こういう話をするべく「理工系の総合語学」という標語のもと, 日々地道に勉強を進めています. アプリを作ってロシア語などの英語以外の言語を勉強している理由もこれです.
今週の問題¶
行列リー群・リー環入門の佳境に入りつつあります. 位相と代数の絡みという関数解析でも重要なテーマを改めて眺めていて, 群・多様体の世界で何がどうなるかを見ています. 関数解析ではあまり表に出てこない連結性まわりの話が面白いです. 例えば次のような定理の言明・証明をまとめました.
- 行列リー群$G$に対して, 単位元の弧状連結成分は$G$の正規部分群である.
弧状連結成分は単なる部分集合でしかなく, 位相的特徴こそ持っていても代数的な制約は何もありません. しかし実際には正規部分群という極めて強い代数的制約が課されます.
関数解析, 特に作用素環, フォン・ノイマン環では, ある$C^$-環$\mathcal{M}$がフォン・ノイマン環である必要十分条件として, 「$\mathcal{M}$があるバナッハ空間の双対空間である」があります. 今では境の定理と呼ばれている基本定理で, 双対空間という代数的な性質が$C^$-環の位相に効いてくる事情を見せてくれます. 実際, フォン・ノイマンはリー群, 特に行列リー群の基礎づけに深く関わった人物でもあり, 作用素環版の議論にもその影響が色濃く残っています.
幾何・代数だけではなく解析学への影響もある言明なので, ぜひいろいろ調べて遊び倒してみてください.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-16¶
数学・物理 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 教育需要の話
- 次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」
- 数学と計算
- 良書メモ: 調和積分論
- 良書メモ: 総合的研究 論理学で学ぶ数学
- Mathematics for Machine Learning
- 方程式を解く
- 若い女性がいい匂いがする理由
- Grafferお悩みハンドブック
- リーマン多様体上での最適化pymanopt
- 数学リテラシー
- 本格的な数学×プログラミングがやりたい
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先週もメルマガを書こうと思っていたのですが, 安倍元首相のニュースが衝撃で二日くらいほとんど何も手につきませんでした. 今の日本で総理経験者という重鎮があんなにあっさり亡くなってしまうのかと. 歳を重ねたせいもあるのかもしれません.
それはそれとして, 仕事用のプログラミング学習で, 落ち着いてはいませんが緊急事態は脱したので少しずつ数学モードに戻しています. プログラミングはプログラミングで楽しく, そして今回のプログラミングは仕事にも直結していてやや焦りがあったのも関係しているものの, やはり数学をやっているときの心の癒され具合が大きく違います.
しばらく止まっていたリー群・リー環学習も再開して, それも佳境に近づいて来ました. これが終わったら対称空間あたりをやろうと思っていましたが, 純粋な数学方面ではトポロジーに舵を切る予定です. これも何度か挫折を続けているので, 今回はわからなくても一周やり切るのを重視して進めます.
物理だと堀田量子的な量子力学の復習+コンテンツブラッシュアップ, 熱力学の復習+コンテンツ制作, 電磁気の数学・線型代数コンテンツ制作, 特殊相対性理論の復習+コンテンツ制作, そして統計力学の復習として原・田崎の『相転移と臨界現象の数理』あたりが念頭にあって, 何をどこからやろうかとぜいたくな悩みを展開中です. とりあえず次回の短期集中講座は量子力学に決めたので, それと合わせてウルトラショートコンテンツとして電磁気も整備したいとは思っています. やりたいことが多くて時間がいくらあっても足りません.
教育需要の話¶
「学部2,3年レベルの専門科目の勉強をやりたい」って思っているやつ、多分高校の授業から始めたほうがよく、社会人の学び直しにおいてここをサポートしている組織どこにあるんだ?って思う。
文系プログラマー勢のための数学みたいなところ, まさにここなのだろうと思っています. 以前出したプログラミング用コンテンツもありますし, これをもとにした短期集中講座もやった方がいいのかもしれません. やってほしいという方いたら連絡ください.
次の短期集中講座は「量子力学のための線型代数」¶
この間, 久し振りに量子力学に関するアンケート回答が来ました. 特に以前いくつか書いていた堀田量子に関する話です.
最近はどうしても量子情報的な視点が重要なようです. そしてその量子情報的な議論では行列レベルではあるものの, テンソル積が本質的な点でおそらく相当高いハードルがあると見ています. そもそもとして教養の線型代数自体, 私が期待している水準も相当高いと思うので, それも認識を合わせたいと常々思っていました.
そこで量子情報系の議論に耐えられる基礎体力を作ろう, そして線型代数用の計算力も磨いてもらう趣旨で, 次の短期集中講座を作ります.
テンソル積を除いて知識としては完全に教養の線型代数ですが, これを数学科水準の認識に持っていくのが一つの狙いです. 例えば対角化とスペクトル分解は同値な概念であり, 私のお気に入りの齋藤正彦『線型代数入門』にはスペクトル分解の記述もありますが, あまり認知・理解は高くないと見ています. こうした認識のギャップを埋めるのが目的の一つです.
あともう一つは線型代数の計算力向上です. 力学とその計算から攻めようとする中で, 特殊相対性理論のコンテンツも検討しています. 物理としては物理の意味でのテンソル計算が一つの山場である一方, 線型代数に関わる計算がやはり本質的な要素を占めます. 量子情報系の線型代数の計算とは必ずしも重ならないものの, 鍛えた計算力自体は当然相対性理論でも役に立ちます.
前も書いたと思いますが, いい本もたくさん出ていますし独学できる方はそれで構いません. ただ, いまの短期集中講座での質問を見ていると, 非専門の人にはやはり物理学科的常識が身についていないために物理学科民からすれば当然なことでもいちいちつまづくようですし, 物理卒でも長い間触れていないために計算力が落ちていて自力でカバーしきれないことなど, いくつものハマりポイントがあります. このあたりに困難を抱えているなら, ぜひ短期集中講座を活用してください. 正式な案内を二週間程度で出せるよう調整中です.
ちなみに「非専門の身からすると地獄のようにつらい」事案, この一月くらいで私も改めて嫌というほど体験しました. 最近の近況でも書いている通り, もちろんプログラミングの話です. 本職は一応プログラマーなわけでプログラミング自体は最低限こなせます. しかし慣れない言語・ツールを使うとそれだけで一気に非専門の素人ワールドに落ちます. 実際, わかってみれば一行レベルの課題を2-3個解決するためだけに休日含めて二週間まるまる潰しました. 「少しのことにも, 先達はあらまほしき事なり」は心のからの叫びです.
数学と計算¶
「ワーキング・メモリ」みたいな脳科学用語を使うとトンデモ臭くなると思うものの、大学の抽象数学を理解する上で処理能力はかなり重要だと思っている。 ただ、大学の抽象数学で求められる「処理能力」とは、述語論理で書かれた文章をスラスラ読む能力である。 これは高校数学までの計算能力とは違うものなので、「高校数学や受験数学と違って大学の数学では“暗記や計算でない本物の理解”が求められる」的な言説が発生するわけであるが、単に求められる処理能力が異なるだけの問題をこういう風に捉えるのは極めて有害である。 処理能力の問題だということが分かれば、それを「計算問題」の反復練習で鍛えれば良い。 しかし、どういう「計算問題」が好ましいかは残念ながらあまり蓄積がなく、これから我々が考えないといけない問題だと思う。
このツイートをしている森の未知さんは実際にプロの数学者です. 教育に関して本当にいいことをよく言っているので, ぜひ直接Twitterの発言もフォローしてください.
ここ最近の計算押しの決めた理由の一つは森の未知さんの発言を見ているからでもあります. あまり数学科の数学向けの計算もそのうち何かやりたいとは思いますが, まずは物理のための計算を重点的に進めようと思っています.
良書メモ: 調和積分論t¶
調和積分論をどうやって倒すか。一番簡単なのはWarnerの教科書を読むことだと思いマスが、ストーリーを一番はっきりと把握できるのは中島先生の講義の記録を読むことだと思いマス。 https://member.ipmu.jp/hiraku.nakajima/Lecture/04_Bibunkika.html Gilbarg-Trudingerを片手にこれを読めば、自力で証明を完成させることができると思います。
これはメモ+シェアです. 調和積分論は一度多様体上のソボレフ空間論のレベルでざっとノートを書いたものの, 見直していないので多分タイポなどボロボロです. 実際ノーテーションもかなりハードです.
調和積分論は楕円型, 特に多様体上のラプラシアンが主戦場で, リーマン幾何をうまく使って多様体の位相の情報を刈り取る議論です. もちろんリーマン面でも大事な議論です. 私が微分方程式畑ではないからという理由もあるかもしれませんが, 解析の人間からしても全くもって簡単ではありません. そしてGilbarg-Trudingerもそう簡単な本ではありません.
実は熱方程式の時間無限大極限として楕円型の解を考える議論もあります. 別に簡単になっているわけでもありませんが, 熱核の方法として有力なアプローチで指数定理にも応用されます. 解析的にも面白い部分がたくさんあって私としてももっと詰めたい分野です.
ちなみにWarnerの本は本格的なソボレフ空間論こそ避けているものの, トーラス上のフーリエ解析からコンパクト多様体上のソボレフ空間論をうまく処理していて, 解析的な予備知識をぎりぎりまで削って調和積分論をきちんと証明しています. 調和積分論の結果自体は非常に重要なのでいろいろな使われる一方, 証明は「Warnerやde Rham参照」として省略されがちです. その省略されがちな証明が初等的な範囲で書かれている貴重な本です.
良書メモ: 総合的研究 論理学で学ぶ数学¶
「男子:数学の点がいつも俺より良いなんて、かわいくないぞ.」(『総合的研究 論理学で学ぶ数学』https://obunsha.co.jp/product/detail/037704 12ページ) 数学の成績が良いとかわいくないとの価値観を、学習参考書で冗談でも披露しないでほしい。本筋でないところで良書の価値を毀損させてほしくありません。
こうした細かい難点はあるものの, 鴨浩靖さんが良書と認める本なのでメモ+シェアします.
Mathematics for Machine Learning¶
「Mathematics for Machine Learning」は、微積・線型代数・統計など、機械学習に必要な数学をまとめて学べるテキストです。Amazonで5000円以上するのですが、なんとPDF版は無料で公開されてます。AIを勉強したいけど、数学に自信がない方には超おすすめです! https://mml-book.github.io/book/mml-book.pdf
実際, 機械学習勢はどこまで数学必要なのでしょうか? 大半の人はライブラリ使えばそれで十分と思っていたのですが, そうでもない? ずっと疑問です.
方程式を解く¶
\begin{align} \begin{cases} x^6 - x^5 + x^3 + 2x^2 - x - 2 &=0, \ x^6 - x^5 + 2x^2 -2 &=0. \end{cases} \end{align}
一次とは限らない連立方程式を解かせる問題だけど、必要条件を絞る操作と同値変形の区別がついているかを問う上で格好の題材なので大学で数学科の一年生にやらせるネタとしてはかなり良いと思う。 教えていて思うけど、方程式をいじる時に必要条件を絞っている操作なのか同値変形なのかを意識できない学生は学部三年生ですらめっちゃ多いぞ。 数学が専門の学生については一年生のうちにガツンとやった方が良い気がしている。 それなりの大学の理系であれば必要条件と必要十分条件の区別は普通にできて、いかにも「論証問題」っぽい問題はできたりするのだが、それでも「方程式を解く」という操作が何なのかは分かってない感があるんだよな。 例えばこういう連立方程式は「方程式を解く」がどういうことか分かる人にとっては易しいけど、「方程式を解く」ことを決められたアルゴリズムに従うことだと思っている人には難しいのではなかろうか。 (xの方の潰れた数字は6です)
xの方→xの肩
眠れない深夜にこういう話を延々としているのは、学生が微分方程式を理解できてない根本的な原因が微分方程式以前に「方程式を解く」を分かってないにあるように最近思ったからですね。 更に易しい問題としてこういうのもあるが、これが分からない学生は(それなりの大学の数学専攻でも)結構いると思う。
式も書いておきました. この方程式, きちんと解ける方どのくらいいるでしょうか. 解けなくて解法が知りたいという方いたらアンケートで何か書いておいてください. 要望があって時間的余裕があれば次回解説します.
若い女性がいい匂いがする理由¶
この匂いを突き止めたロート製薬は確かにすごいのだが、回答している三味線奏者だという萩原さんは何者なんだ。
萩原 遼さんによる「一般的に若い女性が良い匂いがするというのは何故ですか?」への回答 https://jp.quora.com/ippan-teki-ni-wakai-josei-ga-yoi-nioi-ga-suru-toiu-no-ha-naze-desu-ka/answers/199981164?ch=15&oid=199981164&share=1c5ce8f5&target_type=answer
詳しくデータを確認し, 吟味したわけではないので単なる感想ですが, 「いい匂い」や「乳臭さ」が本当に「いい匂い」かつ「乳臭い」だという話だそうです. いい匂いはともかく「乳臭い」が本当に「乳臭い」というのはちょっとびっくりです.
Grafferお悩みハンドブック¶
“世の中には困ってる人を助ける制度がたくさんあるのに何が使えるかを教えてくれないっていう理不尽仕様なんだが、そんな世界をなんとかしようとしてる人たちがいて、そのためのWebページがこの前リリースされたってことを僕はフォロワーさんに知っておいて欲しいと思った…” https://togetter.com/li/1911629
【拡散希望】 製作者が病んでる間に #お悩みハンドブック がまた少しバズっていた(感謝🙏)ので、関連情報まとめます🍀 お役立ていただけた声や反響👉 https://determined-structure-45e.notion.site/f2dd423c29784b3c856644337f6dbda1 公式サイト【20万ユーザー突破】👉 https://compass.graffer.jp/handbook/landi
これも単純にシェアです. いまのご時世の問題もありますし, あなた自身はいいにしても, 知り合いに本当に困っている人がいる可能性はいくらでもあります. そうした方にもぜひ伝えてください.
リーマン多様体上での最適化pymanopt¶
リーマン多様体上での最適化を行う pymanopt というフレームワークがあるんですけど,自分がここ最近実装していた問題を解かせたら爆速で解いちゃうし,コードの記述が分かりやすくてその意味でも勉強になりました. この辺の疑問についても実装例が提示されていて為になった.
最適化計算で途中のログを吐き出す良いプラクティスが分からないぽよ…。
ここ三ヶ月くらい統計学の勉強会で統計学を直接やらずにJuliaの統計計算パッケージのソースコードを読む会をやっています. これが思っていた以上に面白く, しかもいくつか問題を見つけたのでGitHubにissueを挙げたら速攻解決してもらえている点でも楽しいです.
これを使うというよりも眺めて楽しそう系プログラムとしてメモ+シェアです. 文系プログラマー勢にはこういうライブラリを読む系の勉強会もいいのかもしれません.
数学リテラシー¶
微積分学の講義で知らない文字は「集合30講」にのってたのね.(^^;; つまり微積分以前で,高校では教えない... まずは「数学リテラシー」みたいな講義が必要なのかも知れないな.
力学に関する短期集中講座で物理リテラシー・力学リテラシー問題に直面しましたし, 私自身も専門外の勉強をするときに常にリテラシー問題に直面します. 上でも書いたようにプログラミングでは現在進行形で完膚なきまでにやられていますし, リー群・リー環のような数学でもまだまだ常識が身についていません.
本格的な数学×プログラミングがやりたい¶
上でも少しコメントしたようにJuliaの勉強会が楽しいです. Juliaの多重ディスパッチの使い方を見て「こう使うのか」という発見がありますし, マクロや生成関数などのメタプログラミングコード, 抽象型で書かれたライブラリコードの読解なども見応えがあります.
ただいわゆる数値計算よりもどちらかと言えば数式処理の方が興味があるので, maxima (common lisp)を読む勉強会などもやりたい野望があります. 他には以前紹介したGeometry for programmers読む勉強会もよさそうです.
最近ちょくちょく低次元でのリー群・リー環の議論で, 計算があまりに大変なので本質的な部分にsympyの補助を借りて計算する機会が何度かありました. 行列の計算は二次元でも面倒で三次元で既に破滅的です. 特に計算ミスが多発しますし何度もやりたくありません. やりたいことだけはどんどん増えていくので大変です.
今週の問題¶
今週は行列に対する指数写像・対数写像の議論をやっていました.
- リー群の単位元近傍で指数写像と対数写像は互いに逆写像で, 特に同相である.
いくつか非可換性にまつわる実数・複素数の指数写像との違いを埋める部分の議論があり, ここをうまく処理する部分が実はかなり頭を使います. 「できるだろう」で終わらせていてまだ完全に細部の計算を詰め切っていない部分があります. そしてこの事実から山のように面白い話が出てくるのもいいところです. ようやく行列リー群の山場に指しかかって楽しくなってきました. 位相が出てくるとなると当然本格的な多様体論も射程に入ってきます.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-07-02¶
数学・物理 幾何の本, そして幾何入門とは/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- サーストンの本, Geometry and topology of three-manifolds
- 幾何の本とその入門とは何か
- Maxwell方程式の表現論
- 証明の構成のポイントと苦しみ
- 何度目かの量子力学と関数解析
- 齋藤正彦『線型代数入門』を読むポイント
- ムペンバ効果
- 長さ2cmの細菌発見
- スマートニュース, 国会議案データベースを無償公開, 過去20年分をGithubで
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
今週はほぼ数学なしで, それこそ朝から夜寝るまでプログラミングの勉強をしていました. 研修期間の終わりも近付いてきて, 本格的に現場復帰を意識した勉強が必要で, そのためにしようと思っていた準備が終わりそうにないからです. 何にせよ朝起きて夜寝るまで食事や風呂以外の時間, 本当に全てプログラミングに当てていてよくやるものだと自分でも驚いています. 何だかんだでプログラミングが本当に気に入っているのでしょう.
ただしプログラミングへの集中もさすがに行き過ぎで, 最近ほとんどまともに語学に時間を使えていません. 数学や物理の時間さえ削っているのでそれはそうです. やはり無理やり時間を作るために勉強会です. 理工系向けの語学, 文系のための数学・物理入門としての語学に向けて改めて始動しようかと思っています.
それはそれとしてプログラミングです. 逃げ方もあると言えばあるものの, 仕事利用と思うと世に出ている情報量を気にしなければいけません. 基本的にフロントエンドはJavaScriptだろうと思うので, それならもういっそバックエンドもJavaScriptにしようと思い, これに関して調査しつつ勉強しているのですがとにかく面倒です. 情報がすぐ腐る. 数学のように一度正しくなったら前提が変わらない限り正しくあってほしいものの, この前提が本当に変わるのがプログラミング言語なのでただただつらいです. 終日プログラミングに張りついている理由でもあります. サービス・コンテンツ制作にも直結しますし, いい機会だと思ってがんばります.
サーストンの本, Geometry and topology of three-manifolds¶
ラミネーション知らなかった. Laminations, as introduced by Thurston, are a key tool in low-dimensional geometry, topology and dynamics; see e.g. [27], Chapter 8.5. [27] はサーストンのノート.っていうか,本か.
サーストンの本,MSRI で公開されてる. http://library.msri.org/books/gt3m/
この話と関係があるわけでもないのですが, サーストンは超直観型の数学者だったそうです. それもフィールズ賞受賞者なので, 見えている世界の深さと広さが尋常ではなく, 数学者相手にさえ自分の幾何が伝わらないのに業を煮やし, CGの研究にも手を出していたと聞いたことがあります.
これはそのまま私がプログラミングをがんばっている理由にもつながります. やはり視覚的なところは面白いです. CSSもうまくできず怒り狂いながらやっていますが, 綺麗にできると気分がいいのもそれはそうです. いつまで続くのかわかりませんが, Web系は比較的若者もマネタイズしやすい分野で, 中高生向けの理工系教育としても面白いのではないか感があり, いろいろ考えています.
幾何の本とその入門とは何か¶
https://amazon.co.jp/dp/4130629255 「数学の隣接分野の宇宙科学とか経営工学とかへの応用例などは1文字もありません」数学の本だからそれはそうでは、というのと「数学の先生が例えばベクトル空間などと言うとき、(中略)あまり複雑でない曲面が頭にあるはず」曲面が思い浮かぶ人、いなくない? そもそも宇宙科学や経営工学は数学に隣接しているか? 幾何の本なら図が欲しいとかいう発想、改めて言われると言葉に詰まる。しかも2-3ページには一枚とか。こんなにもコミュニケーションできないものかと驚くといえば驚くし、当然と言えば当然かとも思う。トポロジーが役に立たない数学科だけのものだったらこうはならなかったろうに、社会は厳しい。
学生の頃に友人と「幾何とは何か?」で雑談して、結局「位相が入ったら幾何だ」というところに着陸した覚えがある。
どこまで本気だったのかはわかりませんが、数論幾何専攻の人に「位相は甘え」と言われたことがあります。何が幾何かは時代の関数の部分もあり「数学者が幾何と判定したらそれは幾何」としか言いようないのではないでしょうか。アブストラクトナンセンスレベルの圏論であっても人によっては幾何でしょう
学生が教員免許(数学)を取れるようにサポートしようと既存の科目に「代数、解析、幾何、……」のラベルを貼ったことがあったんですけど、グラフアルゴリズムの科目が幾何になっていて、さすがにちょっと……って気持ちになりました。
最初の引用ツイートは「トポロジーの基礎」のAmazon書評です. もはや「幾何の本に図がほしい」と言われても「幾何はそういうものではないので」と自然に口をついて出るようになってしまっています. いいかどうかは微妙なところですが, 現代的な統計学, いわゆるビッグデータ解析では本当にどう可視化するか自体が超がつくほど巨大なテーマです. 「図がほしい」という視点から言えば, これも広い意味では幾何の仕事でしょう. 現代的な統計学ではプログラミングも必須でしょうから, 私の目指すところとも無関係ではありません.
それはそれとして世間での幾何のイメージ, どんなものなのでしょうか? そういえば買うだけ買ったもののいまだに読めていない数学ガール ポアンカレ予想, これも三次元球面でこれ自体は目に見えない対象です. これで何をどう扱っているか, いい加減確認しないといけないと思って幾星霜.
Maxwell方程式の表現論¶
Maxwell方程式の表現論(0) - https://m-a-o.hatenablog.com/entry/20150125/p2 日本語の文章です。ものすごく詳しくて目からウロコですね!こんな研究があったとは…… URL
Maxwellそのものではありませんが、 QEDまたはローレンツ群・ポアンカレ群の表現と作用素環は比較的最近でもまだあるようです。 単に検索で出てきただけですがhttps://art.torvergata.it/retrieve/handle/2108/117066/236199/QED-RMP.pdfだとか。 粒子描像と表現に付随する無限小生成子のスペクトル解析のようなテーマもあります。 Hans-Jürgen Borchers, Translation Group and Particle Representations in Quantum Field Theory
私のツイートで紹介したBorchersの本, 学生時代に読もうと思って難しすぎて読めなかった本です. 学生時代よりも明らかに不等式処理能力が落ちているであろう現在, 昔以上に読めないだろうと思いますが, ずっと興味があります.
ちなみにBorchersに聞いてみたいことがあったものの, 気付いたときにはもう亡くなっていて呆然とした記憶があります. 思い立ったが吉日は本当だったといまも後悔しています.
証明の構成のポイントと苦しみ¶
めっちゃ汎用性ある数学の考え方。 「当たり前」だと思うことを証明するときに、「なぜ当たり前だと思うか」を数学的に表現すれば証明ができる。 もし証明ができないなら、実はもっと面白くて、その「当たり前」に数学的に難しいものが潜んでいることが分かる。
数学書にある「自明」で苦しむポイントとも言えます. そもそも「当たり前」と思えていないから苦しい事案で, 私もいろいろな意味で現在進行形で苦しんでいます. 数学であってもよく知らない・勉強したことがない分野では非数学科の人と苦しむポイントは大きく変わらないでしょう. 今で言うならプログラミングで腸が煮えくり返っています.
何度目かの量子力学と関数解析¶
私はむしろこれが本当に面白くなったので, やるならぜひどんどんやってほしい勢です. ただ興味関心が物理にあるならやめた方がいいです. 先日もTwitterで物理の学生が数学的にきちんとやるには面倒, そして物理として気にする理由はないところで, 無駄に数学的な記述を追い求めていたのを目にしたばかりだったので, ふと流れてきたツイートに改めて反応して呟いた記録です.
量子力学をやるのに関数解析をやったら何も始まらずに終わってしまうから、本当にやめた方がいい。数学をやりたいならどんどんやればいい。学部三年レベルの物理に対応する議論が軒並み研究ネタになる。 もしイメージがつかないなら、有名なクレイ研究所のミレニアム問題でナビエ-ストークスの解の存在と一意性が問題なのを考えてほしい。学部三年次程度の流体力学の入り口が既に数学的な大難問になっている。程度の差こそあれ、数学的にきちんとやろうとするとこのくらいのレベルからわかっていない。 平衡統計力学だとまず平衡状態の存在が明らかではない。相転移があるので状況に応じて本当に一意性がない場合はよくある。物性だと磁性に関する有限次元の線型代数に関わるハバード模型で既に論文・研究マターなので有限次元の線型代数だけで数学以前に物理でさえ研究マターになる。無限次元だと 他の余計な要素が入ってきてさらに面倒。そういえば学部三年レベルの統計力学は量子力学に輪をかけて地獄なのだが、統計力学の数学の話をする人間を全然見かけない。アレは修羅の世界だからぜひもっと人が増えてほしい。物性のトポロジカル何たらなどの格好いい方ではない部分にはきちんと地獄がある。 昔Amazonの斉藤正彦「線型代数入門」に関係するレビューを書いたのだが、見当たらない。あの本は行列の解析学の話が書いてあり、指数関数なども載っているのでそのくらいまで把握できて使い倒せれば十分だ。
「量子力学の前に関数解析の本を一冊くらい読む必要がある」みたいな杓子定規な解釈をする人間がマジで存在してしまうのが問題で「量子力学を普通にやるときは並行して関数解析の初歩的な知見をつまみ食いするのがほぼ必須」くらいに言っておけば平和に済みそう(他の分野にも当てはまる)
これも言い方が難しいのですが、何というか「教養レベルの線型代数を数学科水準で勉強しておけば十分」というのをうまく言う方法はないかと思っています。量子情報の本を読んでいるとまさにこう言う感じなので。例えば対角化をスペクトル分解のレベルで認識するとかそう言う感じです。
物事をジャンル(この場合には分野)に分けて認識しようとするとどうしても機微を取りこぼす面があるのは避けがたいですね。僕は「グダグダ言ってないで量子力学をやってから考えろ」でいいと思います
私は「数学をやりたいなら数学科に行け」の線を押して行きましょう。
そうそう、私が関数解析の「思想は大事」で言いたかったのはそういうことです。そう言えばよかったのかも。
次の三ヶ月短期集中講座は「量子情報のための線型代数」みたいな感じにしようかと思っています. 自分用の計算メモの体で整備したコンテンツでもあり, ちょっと数学的な水準が高く見えてしまうかもしれません. 上で書いたような「対角化をスペクトル分解のレベルで徹底する」みたいなスタンスを貫いています.
齋藤正彦『線型代数入門』を読むポイント¶
前節の続きです. では実際にどんな本でどう勉強すればいいか, 何をどう読めばいいかという話があり, それをまとめたTogetterがあります.
知識としてはこのレベルで十分です. あとはとにかく使い倒すのが大事で, 最近見たところではNielsen-Chuangと量子情報科学入門がなかなかよさそうです. 正直, 量子情報よりの話はまだ自分なりの面白さを見出せていません. 量子測定だと一気に興味が出てくるので, その辺で面白いコンテンツが整備できないかと勉強を進めていす.
ムペンバ効果¶
前も紹介した気がしますが, この間早川さんがツイートしていたのが流れてきたので共有します.
Which freezes faster: hot water or cold water? The simple question has stumped physicists, but recent experiments show how some types of hot substances could beat cold ones. @adamspacemann Controversy Continues Over Whether Hot Water Freezes Faster Than Cold
100度の水と35度の水、同時に冷凍庫に入れたら先に凍るのはどっち? 熱い方が先に凍るのを発見したのはタンザニアの高校生。ただし、どういう条件なら再現するのか、はっきりとわかっていない。 非平衡物理学は難問。1次相転移の系では、高温から始めたのほうが先に基底状態に落ちることも。
Mpemba効果は非平衡状態の記憶効果で不思議は何もない。 最近、コロイドの実験が出るなどして急速に研究が進んでいる。 我々の論文では粘性発熱の有無による緩和率の差を利用してMpemba効果を定量的に示した。
非平衡も興味はありますが手に追えません. 平衡状態関係の数学や平衡状態での相転移もまだまだ勉強が必要です. そう言えば改めて統計力学を勉強しようと思い, ずっと買いそびれていた原・田崎のイジング本, 相転移と臨界現象の数理を買いました. この本は東大の物理の人達と査読ゼミをやった思い出があります. 謝辞にも載せてもらっています.
田崎さんの統計力学の本と言えば, 比較的最近出た洋書も全然読めていません. いつか時間を取ってきちんと読みたいと思ってはいます.
長さ2cmの細菌発見¶
概念覆す長さ2cmの細菌発見→長さだけでなくその構造も非常に特殊だった「ミッシングリンクの実例の発見かも」 URL
きちんと読めていませんが, とりあえずメモ&シェア.
スマートニュース, 国会議案データベースを無償公開, 過去20年分をGithubで¶
国会で審議された法案や予算案、条約、決議案といった議案は、衆参両議院のWebサイトに掲載されている。提出者や審議された委員会、賛成・反対した政党(衆院のみ)などの情報も確認できるが、国会の回次ごと、また議案ごとにページが分かれているため、集計や検索、一覧が難しかった。 今回、同社の「メディア研究所」が、各議案のページに掲載されている情報を収集、整理し、CSVファイルとJSONファイル形式で公開。MITライセンスに準拠し、商用・非商用を問わずオープンデータとして誰でも無償で使えるようした。 主に報道機関や研究者に、選挙報道や調査報道、研究活動に役立ててもらいたいという。
勉強のためにも統計学や機械学習で遊びたいと思っていつつ, 自発的に遊ぶネタを思いつけていません. とりあえずデータは必要なので, 使えるテキストデータとしてきちんと記録しておきます.
今週の問題¶
今週はほぼ数学ができていませんが, 何もやらなないのもどうかと思って, 水曜あたりに少しだけやった分があります.
- シンプレクティックリー環の単純性を示せ.
念のため書いておくとここでの単純性の定義は「自明なイデアルしか存在しない」です. 次元が1のときは二次の特殊ユニタリリー環で, やはりこれも単純です.
特殊直交リー環が恐ろしく面倒だったので証明を追う前からうんざりしていたものの, シンプレクティックリー環は四元数係数の行列とみなせ, 四元数の事情を使うとかえって簡単になるのが面白いです. 議論自体はそれなりに長いのですが, 行列の計算がだいぶ楽です.
特殊直交リー環でも行列単位とその簡単な和から基底を作り, その基底に対する計算で証明を構成しています. この証明を眺めて, 色々な意味で人類は一般の行列の計算・処理ができるほど賢くはないようです. 具体的な低次の計算でも手計算ではうんざりしますし, そこをカバーできるプログラムだと今度は一般論の展開が地獄です. 基底への帰着, 基底を使いたくなる理由にはこんなのもあったかと今更ながらに実感しました.
証明を読み終えてからじわじわとその意義・世界が見えてきて, 個人的にかなり大きな発見だったようです.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-06-25¶
数学・物理 分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」
- 代数の難しさ
- 特殊関数と微分方程式
- IoTの難しさ
- 心肺蘇生
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
仕事関係の勉強が忙しいというか楽しいというか, そんな状況で数学は亀のような進捗です. もともとずっとやろうと思っていたフロントエンドまわりで, この仕事の蓄積をそのまま通信講座などにも援用する予定なので, 回り回って全て数学のためではあります.
今日も一日, 朝に一時間程度データ構造とアルゴリズム関係でAOJを眺め, その後はひたすらプログラミングです. 先程もいつの間にか通信講座の勉強会の開始時間を過ぎていて, 泡を食ってしまいました. どう控え目に言っても私のプログラミング能力は低いのですが, 一日中続けられるのだから性に合ってはいるのでしょう.
フロントエンドまわりはデザインをもっと固め打ちしようと思っていて, もっと実践的に取り組もうと思っています. 実際にフリーランスでやっているタイプの数少ない知人がいま再びクリエーションのチームを立ち上げようとしているらしく, そこに講師役で乗り込むくらいの感じでフロントエンド, 特にデザインコーディング回りで巻き込み・巻き込まれていこうかと画策しています.
ここ数年勉強会をいくつかやってみて思いましたが, 人を巻き込まないとなかなか動けません. もっと言うと少しはじめるくらいはできても, 続けられないことがはっきりしてきました. 結局, 私が問答無用で続けられるのは数学くらいしかないようです.
これはもう私の現実として受け入れざるを得ません. だからやりたいことは私の脳内で数学にしてしまうか, 人を巻き込むしかないようです.
これも何度か書いているように, 最近の通信講座に勉強会を盛り込んだ理由でもあります. 時間は無理やり作るしかありません.
そういえば本の書評をやってほしいというアンケート回答がありました. 本は何かしらずっと読んでいますが, ノートを取りながらじっくり読んでいるため亀の歩みで, 読んでいる冊数は極小です. 書評というより参考文献集ですが, 以前ある程度書いた分がここあるので, 興味があれば眺めてみてください. 日付を見ると2015年で, 最近の量子力学の物理まわりの話など大事な本に対する更新がありませんが, 一つの参考にはなるでしょう.
「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」¶
アカウントがはっきりと紐づけられているわけではありませんが, 自己紹介欄の本を見ると多分これの著者が中の人なのだろうと思います.
数学の対象は幾通りもの考え方やそこにたどり着く方法(証明方法)があって,そのどれかはすごく簡明かつ簡単で,他のものは辿り着くのも計算も不可能なくらい複雑,そういうものですからねー.どんなものでも当てはまりそうです.1/n
ある方法ではあっという間に片がついて,他の方法だと不可能そうに見える.その「ある方法」に気がつくのが数学の本質だ,そう思いますね.2/n
数学女子さんの挙げた曲率なんかもそう. おそらく講義では長さパラメータ s を取って... と決める.しかし,実際に s を計算して定義通りに曲率求めようとするとすぐに破綻する. 「うまい」局所座標を使って求めなくちゃ. これはいい演習問題になりますね.3/n
どんな局所座標を持ってくれば,どんな計算になるか. n 次元空間内の曲線のときはどうか. 面積も同じかな. 4/n
幾何学とは本来,そのような局所座標の取り方によらずに決まる「不変量」を研究対象としているので,まぁ幾何学的対象なら何でもOK. オイラー標数とか.穴の数で数えてもいいけど,積分してもよい.積分をどう計算するのか? 5/n
ホモロジーもマイヤーヴィートリスを使って計算するとき,どのように曲面や立体を分割するのかによって計算は変わってきて,商群の取り方が思いもかけないものになったりしますね.6/n
レンズ空間や結び目の補空間なんかをうまく工夫して分割し,自分で計算するととてもおもしろいと思います. 7/n
一方,そのような具体的な計算よりも,数学の本質は 「計算しなくても答えは出る」というところにある, それを忘れない方がよいと思います. 8/n
私の友人のM先生がテストで,2つの上半三角・下半三角行列 A, B をもってきて,まず積 AB, BA を計算させ,その行列式を問うたそうですが,AB, BA を基本変形する人たちが続出したそうです. 9/n
行列式の計算はそれなりに楽しいものですが,答えは計算しなくても分かる.そこがポイントだと思います. 10/n
前半は予備知識も必要なので人によって全くわからない内容もあるでしょう. 特に大事にしてほしいのは9・10で, このツイートが行列・行列式を知っているなら何を意図しているのかぜひ考えてみてください. 一般的な行列で書かれているので逆に意図が掴みやすくなっています. 具体的な行列で書かれていると, ツイートにあるようについつい具体的に計算してしまう人も出てくるでしょう. 議論の一般化・抽象化のご利益を感じられる問い掛けでもあります.
これの前提のツイートも収録しておきますが, そもそもとして私のリプライがもとにあります.
「分かっていれば難しくはないが初学者がするには難しい計算ノート」みたいなのを公開してもらえると私のような雑魚市民が喜びます。例えばちょっと面倒な多様体の曲率の計算や、ある多様体に対して単体複体・胞体複体などいろいろな見方をした時のホモロジー群の計算だとか。
この辺の計算メモを作ろうと思ったのが例と計算編のもとで, いまの通信講座の元ネタになっています. じっくり整備を続けて例と計算編は1100ページを越え, 現代数学探険隊の全体PDFは10000ページを越えました. 引き続きじっくり計算を続けてためて, 通信講座を含めて何らかの形で公開する予定です.
前提ツイート¶
Quillen が毎日数学ノートを付けてて,それがすべて公開されているとは! 知らなかったよ. Quillen の直筆を見た.(^^;; タンナルミーハー
Did you know that Daniel Quillen (Fields medallist 1978) kept detailed notes of his day-to-day mathematical research? They are available here 👉🏼 http://www.claymath.org/publications/quillen-notebooks
数学も物理や生物なんかと同じく,実験ノートつけるべきだなぁ.データもつけてさ.もっとも毎日1行だけ, 『今日も頑張ったけど進まなかった』 とか書くことになりそうな気がするが... そうか,追試と同じく,読んだ論文のまとめとか書いといてもいいわけか.あとで役に立つかも.
代数の難しさ¶
代数は、すごく発展しているように見えて、 基本的なところでさえ難しい。 たとえば、
A = C[X1, ..., Xn]/(f) BはCの部分環
として「環準同型A→Bを取る」なんて簡単に言えるけど、 これf(X1, ..., Xn) = 0のBでの解を考えてるってことだからね。 超難しいよ。 具体的な問題がすごく難しいということを意識すると「じゃあ抽象的だけど上手く行っている理論はどういうメカニズムになっているのか」ということが、 気になり出すのではないですかね。
言われてみれば確かにそうですが, この辺がまだ自分でさっと思いつけないので, 私の代数力の低さを痛感しました.
ちなみにこの視点を徹底すると, 準同型と方程式の解の関係に注目が集まり, その極致の一つが代数解析です. これは堀田良之『加群十話---代数学入門』の最後の方に少し記述があります. この最後の部分に限らず, この本はめちゃくちゃに面白い本なので, ぜひ買って読んでみてください. おすすめです.
特殊関数と微分方程式¶
5億回くらい言ってるけど、特殊函数持ってきて「微分方程式が解けました!」って言うのあんまり好きじゃないんだよね。よくわからない部分を先送りにしただけ感があるので。 解の存在はわかって、一意性ももしかするとわかるかもしれなくて、でも具体的な形とかがわからないので、情報は幾分増えているのだけど、なんかなぁ、という感情がないでもない 数学的に十分というのはよくわかるんだけど、物理の視点だとなんかなぁという感情が特に増す。いや数値計算で十分なのかも。
三角関数も微分方程式の解だし、特殊関数も三角関数も性質がよく調べられている関数では?みたいに思ってくると物理な数学になってくる。三角関数の和で書けたからってそれもある意味先送り説という
いくつかの視点がぐちゃぐちゃになっている印象があります。まず(多分)昔の人は適当な意味で特殊関数をよく知っていて、よく知っている対象で書けたからそれなりによくわかる(解けた)と言えたはずで、それを今も踏襲しているギャップがあるのだろうという話。 あとは多重極展開のように高次が無視できるようなタイプの特殊関数表示は特殊関数のおかげで実際によくわかると言っていい状況がある点を完全に無視している点。これと共通点がある話として、今知られている特殊関数は背後に固有値問題や群の表現論の話があり、 特殊関数で解けることそのものに意味がある(何かしらの意味、特に対称性の意味で本当に数学または物理が見えている)点があります。対称性というと物理的に自明な場合もよくありますが、解析力学(と幾何の関係)から非自明な話もあります。これらを知らずに特殊関数で書ける点だけ見たらそれは確かに先送りですが、 それは教育・カリキュラム・現代の研究情勢からくる要請の問題でもあります。あと先送りの定義も今ひとつよくわかっていません。いまの各学科のカリキュラムでどのくらい特殊関数論が教えられているか知らないのですが、先送りどころかそもそも特殊関数論をまともにやらないなら、カリキュラムの観点からすれば先送りでさえありません。
他にも同じようなコメントをしている人を見かけました. 特殊関数はそれで書ける事実そのものに強い意味があるので, 計算にうんざりしてきたらその背後にある表現論を勉強するといいでしょう. 逆に抽象論でうんざりしてきたら, 馬鹿になったつもりでこれらの計算をやるといいです. 物理まわりで遊び倒せるネタが掃いて捨てるほどあります. 微分方程式とも関わるので数値計算で遊んでもいいでしょう.
IoTの難しさ¶
スマート農業、まさに「実験いらないでしょ?工学の進んだ技術でやれば、時代遅れの農業なんて現地で簡単にできるでしょ?」みたいな感じでやられてて、大量の討ち死に(ほぼ全滅)がでてる感じ。
田んぼの水量管理だけでも自動化してほしい、何なら稲の様子を観察できる屋外用ネットワークカメラ(10年耐久)もほしい。 ケーブルと電源の敷設は自分でやるから
私も一年半程度仕事でIoTをやっていたので多少の知見はあるのですが, ハードと連携する部分がとにかく大変です. 実証実験中に急に動かなくなったと思ったらハード側が壊れていた, そんなことがよくありました.
他にも例えば今よく話題にあがるドローン運用だと, 夏は暑すぎてモーターが消磁するレベルまで熱を持ってしまい, 運用に支障をきたしているとか. ふだんはゴリゴリの引きこもりなので, いろいろ出張して外回りしたのも含めて, 非常に勉強になった経験でした. 高温で消磁する, まさに相転移の実例にこんな形で再開するとは, という明後日の感動もありました.
心肺蘇生¶
あ、心肺蘇生について。 この論文の存在は知っておいた方がいい。非医療者の方も。救命にあたったのはこの事例では救急法指導員の肩書を持つ「一般の方」だが、それでも処置中のことがきっかけで心的外傷を負ってるんですよね。 https://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/08/cprtrauma.htm
もちろんこの発表時点から15年経過していて今ではもう少し救命処置も一般に広がってるかもしれないが、ただでさえ救助側の人間はこんな風に「プレッシャー」に押しつぶされそうになってるんですよ。しかも彼女は「指導員」ですらあるにもかかわらず。 これは医療者だけじゃなく一般の方も是非読んでみて、そして考えてみてほしい。そのうえで「AED装着の時に脱衣への配慮を」という言葉についてもう一度考えてみてほしい。 日本語で書いてあるから読みやすいからね。絶対読んでほしいです。
上記論文の要約の引用¶
1990年以降,国内外の航空機内にAEDが搭載され,客室乗務員らが救命する事例が相次いで報告されている。日本でも2001年10月に日本航空国際線にAEDが搭載されたことを契機に,航空機を含む公共の場所へのAED設置が普及している。そのような中,平成18年2月17日金曜日,成田発東南アジア行きの外資系航空機内にてツアー旅客(55歳,男性,会社員)が心肺停止に陥った。同機にたまたま乗り合わせていた日本赤十字救急法指導員を持つ個人客(31歳,女性,会社員)が1時間に渡り1人で心肺蘇生を行い救命した。心肺蘇生と並行して行われたドクターコールに応じる者はおらず,客室乗務員に繰り返し要請されたにも関わらず機内に搭載されていたAEDが心肺蘇生の現場に持ってこられることはなかった。また客室乗務員は心肺蘇生を手伝わなかった。加えて多数の他の乗客が野次馬と化して現場に殺到し,心肺蘇生の現場を写真やビデオで撮影した。当の男性は軽度の手指の運動障害を残したのみで,元の勤務先に復帰した。しかし救命した女性は心肺蘇生時の出来事が元で惨事ストレス症状を呈して急性ストレス障害,外傷後ストレス障害を発症し,帰国後も長期間に渡って社会生活に支障を来たす状態が続いた。惨事ストレスは大災害の被害者のみならず,被害者を救援する救援要員にも生じ,日常的な救援活動でも見られる。また,バイスタンダー(たまたま生命の危険に陥った人の側にいて救援する人)も同様の症状に見舞われることがある。本事例では幸運にも,結果的に帰国後の女性の周囲の対応が適切であったため,それが精神療法的な役割を果たし症状は徐々に軽減した。しかし本邦に於いてはバイスタンダーの心のケアを行う制度が構築されておらず,本例は図らずも制度的欠陥を露呈させた。従って早急に全国的組織を構築して,バイスタンダーの精神的問題をサポートすべきである。
関連する話題¶
この感覚は常識的には当然なんだけども、救急の現場としてはかなり深刻らしく、実際に心停止で倒れた女性は男性に比べて有意に被救命行動割合が低くなります。若い年代では尚更そう。 ソースは嫁さんの共著論文 https://www.resuscitationjournal.com/article/S0300-9572(20)30105-2/fulltext
データは日本のものだけど、欧米でもその傾向は強いらしい。たしかに男性としては倒れた女性の胸まわりに触れたり服を切ったりというのは大変抵抗を感じる。が、もし自分の妻や娘に万一のことが起きたとしても、女性であることが理由で救命活動をしてもらえない可能性が高いということでもある。 私としては、そういう社会よりも、女性でも倒れたら救命活動がなされるべきだというコンセンサスがある社会の方がいいと思うし、そうなるように嫁さんを応援する。蘇生ガイドラインの策定委員でもある嫁さんは、近い将来必ず「若い女性が倒れたときの救命プロトコル」を作るはず。
この論文の実データをきちんと見るともっと色々な地獄が顕現してくるようです. 紹介ツイートを見かけたのですがメモしていなくて見つからなくなってしまいました.
今週の問題¶
今週も仕事関係のプログラミングで遊び倒していたので, 数学はあまり進捗がありません. それでも次の問題(命題)はかなり面白くお気に入りです.
- 四次特殊直交リー環は三次特殊直交リー環に直和分解できる.
三次特殊直交リー環はベクトル積を入れた三次元実線型空間と同型で, さらに純虚四元数の全体と同型です. この事情をうまく使うと証明できます.
このとき私が見かけた証明では, 四次特殊直交リー環の基底をうまく使って純虚四元数の基底を二組作っていました. 一組は明記されていたものの, もう一組は明記されていませんでした.
具体的に計算すればよく, 一般の四次の行列ではなくほぼ行列単位レベルの計算なので難しくはありません. しかし四次行列なので計算が非常に面倒です. そこでSymPyを使ってプログラムを書いて計算させました. とても便利でいい気分です.
基本的な証明は現代数学探険隊のPDFにまとめつつ, プログラムをメンテナンス性・実行性を兼ね備えた形でどう公開すればいいかがずっと懸案です. とてもつらい.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-06-18¶
数学・物理 新たな通信講座の妄想がはかどる/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- どんなコンテンツがあると理解が進む?
- 12 Unique Design Books That Show the Pure Beauty of Mathematics
- Karoubi, K-theory. An elementary introduction
- Cubical Homotopy Theory
- carp-lang
- chot.design
- 256times
- 「外国語を使えるようになりたい」のill-definedness
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
先々週体調を崩した上にそれが少し長引き, さらに崩れたリズムをまだ完全に取り戻せていない状態です. メルマガもようやく再開です.
前々からちょこちょこ書いているENERGEIAでの活動に関連して, 文系の人に語学ネタの話をしたら食いつきがよかったので, 改めてそちらもきちんとやる機運が高まっています. 古典力学の通信講座も折り返し地点を過ぎたので, 次どうするかを考えています.
どんなコンテンツがあると理解が進む?¶
学校教育の中で、 こういった視覚的理解が促進できるような教材が当たり前のように出てくると、 生徒たちの理解は飛躍的に加速するように思う。 特に高校数学以降は顕著になってくると思う。
ところがどっこい実は理解が進まないんだよね。 一瞬で忘却の彼方に消えていく。 生徒自身が自由に動かせない道具の効果はうすいと思う。 実際に2次関数の最大最小問題を、 学校できれいなアニメーションで学んできた生徒達の解ける率は0です。 最新器具を使えばダイエット成功率が上がるか?答えはノーであるのと同じ。 ダイエットは自分が動かないの意味がないのと同じで、生徒自身が考えないと理解は進まない。 上の内容を理解させる最強の道具はおそらくビニールボールとハサミ✂
これの引用リツイートを見るとまたいろいろなコメントがあります. 根本的に当人のやる気がないと何もはじまらない以上, 教材だけでどうにかなると思うのは話にならないとは思いますが, ならばどうするか, がひたすらに問題です. いまやっている通信講座も当人にやる気がある前提での短期スパルタです.
そもそも「面白ネタ」で興味を持ったとしても, 雑学的に好きなだけで勉強しようとまでは思わない層もいるはずで, そこをどう扱うかも問題です. そしてこの層の扱いもとても大事です. 何故かと言えば「数学好きなの? こんな人がいてこんな楽しい話聞かせてくれるよ」という口コミの起点になってくれるからです. ちょうどいまこの辺で, 以前少し準備していた語学からの数学系の話を復活させられないかと検討中です.
12 Unique Design Books That Show the Pure Beauty of Mathematics¶
These 12 unique design books seem like coffee table books, but they have the power to inspire your imagination.
先の視覚的な要素のコンテンツに関連して, そういう話を展開している人はもちろんいて, それが流れてきたメモです.
この手のコンテンツ, いつも困るのは「数式を使わずに説明」みたいなノリが多く, さらにその数学部分にどう突っ込んでいけばいいか, 参考文献などもろくになかったりして私が発展させて遊べないのがいつも大体いらっと来ます. CGアート系のコンテンツもプログラムを載せてほしいのですが, なかなかそういうのもありません. プログラムがあるにしても試したいモノに限って載っていないとか, もっと面白く見せるために本に載っているプログラムとは違うプログラムで書いた図版を載せていることもあり, 猛烈にいらつく経験を何度もしていて, いまやあまり追いかけていません.
いま進めている数学×プログラミング系の話としてはいいネタなので, 何とかしたい部分ではありますが. CG系で何かいいコンテンツご存知の方がいたらぜひ情報をください.
Karoubi, K-theory. An elementary introduction¶
かなり面白い。分野の常識中の常識を大御所が纏めてるのエラすぎる
K理論は作用素環にも展開があって興味はあったものの, 全く触れていない分野です. 眺めるだけでも, と思ったら体調不良でまださらっと眺めることさえできていません. とりあえず自分の記録がてら共有しておきます.
Cubical Homotopy Theory¶
@1123sodium氏に教えてもらったこの本で勉強してます. 今までどうも覚えることができなかったホモトピー論の様々な定理を、図式を使って統一的に理解することができてかなり良いです.
ホモトピーは解析接続とリーマン面関係でも基本的で, 基本的なところは一応勉強したものの全く身についていません. これもとりあえずメモがてらシェア.
carp-lang¶
線形論理を用いてGCを消したLispなら1992年にこんな論文が。https://cs.utexas.edu/users/hunt/res そしてその成果も (おそらく) 取り込みつつ、静的型付きでGCがなくリアルタイムアプリ向きなLispがあってですね。 いま気付いたんですがREADMEに"ownership tracking"とか書いてあるのでもしかすると元ツイートで書かれている境地に肉薄してそう (なのにまださわってない…)。
あまりに面倒で結局全然勉強できていませんが, Rustは一回きちんとやりたい言語です. そこと絡む形のLisp系言語と言われると俄然興味が湧いてきます.
これも以前書きましたが, 数学×プログラミングの方向性を考える上で参考になるかと思って, 素数夜曲のコードをがんばって写経した記録がGitHubにあげてあります. これでかなりLisp系に慣れたというか, 心理的な障壁がものすごく低くなれ, Lisp系にも今まで以上に興味が出てきました. まだ全く身についてはいないものの, まさかLet Over Lambdaを買って読む日が来るとは思ってもいませんでした.
LispはMaximaもありますし, これまた以前も宣伝したsicmutilsもあります. Lispだけの特権ではありませんがREPL駆動開発は本当に気持ちいいです. 最近はREPLのある言語やJupiter含めた広義の環境も増えています. 数学抜きにしてもプログラミング学習に興味がある人はぜひ言語を選ぶときに楽に使えるREPLがあるか, 検討材料にしてください.
chot.design¶
有料デザイン学習サイトのhttp://chot.designが事業譲渡により、全てのレッスンを無料公開してるので、今のうちにチェックしておいた方がいいかも
メルマガ読者に興味がある人がどれだけいるかわかりませんが, 情報発信用に自分のサイトを作りたい勢もいる可能性はあると思ったので, 一応シェアしておきます.
私も状況は詳しくないのですが, 例えば大学のドメイン・サーバーにファイルを置かなければならず, どうしてもHTMLで作らないといけないとかいうのでもなければもっと楽な方法はいくらでもあります. 手軽に作りたいなら逃げ道はいろいろあり, HTML手打などはあまりお勧めできませんが, 一回やってみて「これは駄目だ(つらい)」と思うならそれはそれで意味のあることです.
256times¶
「ワンコインからはじめる自走型プログラミングスクール」と謳っていて, これはなかなか面白く, 通信講座の展開でもちょっと気になっています. プログラミング学習と一週間以下の短期集中プログラムなど, 特性を活かした面白い特徴のあるスクールです.
数学や物理だと一週間以下は少し短すぎないかと思うかもしれませんし, 私もそう思いますが, 例えば「太鼓膜の振動に対する波動方程式の特殊関数を駆使した計算」のような形でテーマを絞れば, 仕事もしている大人向けのプチ講座としては一週間くらいのいい塩梅の量でしょう. 「双子のパラドクスに関わる計算を自分でもやってみよう」のようなテーマ設定もありえます. 他にも物理・微分方程式絡みの重ための計算の特訓講座として, 一週間から二週間使った固め打ちなども考えられます. もちろん需要があるかどうかという問題はあります.
256times本体は「先生も模範解答もない」「自分で考え手を動かし, 他の人のコードを読んでスキルを伸ばす」コンセプトですが, 別に先生と模範解答はあってもよく, 手を抜かず計算しよう・計算ノートを提出しなさい, というタイプに変えてもいいでしょう. 進捗報告を怠ると脱落というのもそういうシステムを組むのは面倒なので, これは無視してもいいでしょうし, いろいろバリエーションは考えられます. 期間を三ヶ月にして他にもいろいろ調整したバージョンがいまやっている通信講座とも言えます. これの数学×プログラミング版として, データ構造とアルゴリズムや競プロ的な話をしてもいいですし, とにかく妄想がはかどります.
ちょうど同じ方向性の通信講座をやっていることもあり, 妄想を膨らませてくれるいいサービスだったので紹介しました. これに触発されて何か関連する面白いサービスを作った, という方がいたらぜひ教えてください. 宣伝にも協力します.
「外国語を使えるようになりたい」のill-definedness¶
最近の学生は真面目だけれど,コスパ至上主義なのでできるだけ勉強しないである種の技術を身につけたいという人が多い印象を受けるな. 英語史をやっていると,どうしても歴史の話をしないといけない.しかし,外国語・国際系の学部の学生は優位に歴史が嫌いという人が多いので,工夫が必要. 外国語を使えるようになりたいと主張する人は,だいたい「その外国語で話ができるようになりたい」という願望を持っていることが多い.そかし,会話を続けるためには,言語の技術よりは何を話すかという話題の方が重要で,共有できる話題は多ければ多い方がいい.それを教養と呼んでもいいのだが. この問題は軽視されがちで,教育再生実行会議の遠藤利明さん,英語教育の視学官・直山木綿子さんがよく顔を出してくる.彼らの主張は「内容はともかく話したい!」そのため,理想の会話の具体例が非常に薄っぺらい.「何色が好き?好きな食べ物は?」の後で話題が続かない. https://globalization.chuo-u.ac.jp/global_person/special/taidan1/taidan2-1/ ぼちぼち本学でも海外研修が復活できそうだけれど,海外に行く機会がある学生さんには,現地と日本の政治・経済・文化の基本知識を英語で理解でき,説明できるようになっていて欲しい.ホームステイ先や留学先で,基本的なことを知っていないとそもそも会話にならない.「元気?」はただの挨拶なので.
よく英語のレベルに関して「日常会話」程度と言いますが, 日常会話が一番難しくないでしょうか? よく言う旅行時の用を足すといった話は, 自分がほしい情報を引き出すだけのボールの投げつけに等しく, あれは会話ではなく, 言うにしても情報交換でしょう. 謎だ, と思ったのを単に改めて記録しようと思い, 今回取り上げました.
外国語とコミュニケーションと言えば, 私はやはり文章の読み書きが一番身近で, 少なくとも読む方なら毎日です. 下手をしたら日本語よりも英語を読む方が多いくらいの日もあります. ちょうど今日もプログラミングの勉強をしていて, ドキュメントにおかしいところがあったのでGitHubでイシューを立てたら, プルリク立てて直してくれる? と返ってきました. そもそも吃音があって会話というか発話にいろいろ問題があることもあり, 読み書きを何とかする方向のコンテンツくらいは何とかしたいです.
今週の問題¶
仕事関係のプログラミング学習ばかりで最近数学がだいぶ適当です. この三週間程度でやったのは次の命題くらいのような気がします.
- 特殊直交リー環は次元5以上で単純である.
実際に4次だと非単純なので次元の条件は本質的です. これに合わせて証明も5次以上の条件を使う必要があり, 単純計算ではあるもののそこそこ息の長い議論が必要です.
行列単位に対する計算がたくさんあって, かなり大変です. 五次・六次でSymPyによる計算もつけると証明がもっと具体的に見えてよさそうな感じがします. 高次になると手計算だと計算ミスも多発してきますし, 厳密計算も近似計算も取り込みやすいと思えば, 数学×プログラミングネタで行列関係の話をもっと本格的に検討してもいいのかもしれません.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-05-28¶
数学・物理 数学と思考の訓練/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 数学と思考の訓練
- 数学から見た超関数
- プログラミングと数論の本
- Python+Matplolibの資料
- 試行回数の増やし方
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
量が尋常ではないほど多いのも間違いないのですが, 思った以上に会社の研修の進捗もよろしくありません. 最低限の分は十分さばけているものの, プラスアルファの分, 特に勉強してみようとずっと思っていていい機会だからとやってみようと思っている分が全然終わらず, 本当に朝から夜までプログラムを書いています. ここまで勉強モード, それもプログラミングの勉強モードなのは久し振りです.
冷静に考えると毎週統計の勉強会でJuliaのライブラリのコードを読んでいますし, 今年に入ってからは毎日ほぼ二時間は競プロの勉強はしています. それ以外にもずっとちょこちょこプログラミングを勉強してはいますが, ここまで朝から晩まで固め打ちなのは久し振りです. サイトのデザインも変えたいと思っていたところで, デザイン・フロントエンドの勉強が入ったのでいろいろ妄想しています.
競プロでは最近ようやくSTモナドなどのプログラムが少し読み書きできるようになってきました. AOJで使える言語・書きたい言語がHaskellしかありません. C++は勉強した方がよく, Pythonあたりでさっと書く方がデータ構造とアルゴリズムの勉強に集中できてよいのですが, AOJで使える言語の中で書いていて楽しく, 程々の勉強で済み, さらに勉強が続くのがHaskellなので仕方ありません. OCamlは勉強するとよさそうですが, アルゴ式でも使える言語と思うとHaskell, OCamlはWindowsで使う言語でもないそうで. そこまでいろいろな言語を勉強したいわけでもなく, 特にコンテンツ化を目指す段で触れるような言語でもないので, 歯を食いしばってHaskellです.
具体的な方向性はちょうど明日少し話をすることになったのですが, プログラマーのための数学的な方向でまた何かオンラインイベント的なことをしようと思っています. メルマガでも案内を出すので興味があればぜひ参加してください.
数学と思考の訓練¶
法学部の入試で数学を課しているのは、法学がそれを使うからではもちろんなくて、順序立てて物事を考えたり、抽象的な思考をしたりする訓練を受けている学生が欲しいから。知識は全て忘れても、まあ、それでいいのです。
法学自体の学習カリキュラムとして課せないのでしょうか? たいていの人にとって数学は苦行のはずで, 法学によく馴染む人にとって取り組みやすい思考の訓練方法はあると思うのですが.
Twitterで見てみると人文系・社会学系の教員は, 教育方面に関して本当に知的怠惰としか言いようがないようにしか見えず, 本当に衝撃を受けています. あの人達, 本当に何なのでしょうか.
数学から見た超関数¶
数学の人、ディラックのデルタ関数嫌いな人多そう(偏見)
https://1-blog.net/author/detail/1360 おそらくこの辺りで、私は読んでいませんが、有名な「量子力学の数学的基礎」ではディラックのデルタが関数ではないことの証明があるそうです。ただしこれはシュワルツによる超関数の発明以前という時代背景があるので、物理の人の想像とはかなり違うような気がします。
そもそも生の超関数は位相的に使いづらい上、もはや超関数自体ほとんどやらないらしいので名前以上の興味ないのではないか感がある。さらっとやったら即ソボレフで、方程式ごとの必要に応じて適切な空間論に流れるのでは。
デルタ関数, 数学だと超関数のモチベーションとして出て来つつ, いくつか面白い性質を持つ例として出て来ます. 嫌いになるような登場の仕方をしないと思いますし, むしろモチベーティブな例として好意的に受け入れられているのではないでしょうか. 佐藤幹夫の佐藤超関数論文でも真っ先に比較対象として出てきたような記憶があります.
ちなみにディラックのデルタ関数はヘビサイド関数というふつうの関数の超関数微分で出てくる純粋な超関数という面白い性質があります. また十分大きな$s$に対するソボレフ空間$H^s$に属する点もよく例に挙がるのではないでしょうか.
プログラミングと数論の本¶
「プログラミングと数論」みたいな本ないんかな。具体的な言語を使いながら整数論の概念を学ぶ感じの。 例えば、Pythonで素イデアル分解を実装していく、とか。
読んだことはありませんがLewinter, Meyer, Elementary Number Theory with Programming, Cohen, A Course in Computational Algebraic Number Theoryのような本はあります。yokoemon2112さんがまさに計算数論なので伺ってみるといいのではないでしょうか。
本当にその場で調べて出て来た本なので内容を全く知りません. しかし内容自体には興味がありますし, 読んでみたいですね. とりあえず備忘録ついでにメルマガにも放流します.
Python+Matplolibの資料¶
科学技術計算を念頭に、matplotlibによる高度な可視化を解説した書籍「Scientific Visualization: Python + Matplotlib」は、コードとともに全文が無料公開されている https://github.com/rougier/scient
これも備忘録がてら放流します. 興味ある人はぜひ勉強してみて感想を教えてください.
試行回数の増やし方¶
なんやこの資料… やばすぎる… 全人類が読むべきことが詰まっている… 脳汁がやばい… Increasing number of attempts ver. 2021
割とこう, いわゆるライフハック的な文脈でよく出てくる話だろうと思います. ただ, いま私がやっている計算練習系の観点からも大事な指摘があるため, いくつかピックアップします.
- 成功の方程式: 成功回数=試行回数×成功率
- 成功率はコントロールしづらい
- ならば試行回数を上げよう
- 試行回数=手持ちの時間 / 一回の試行にかかる時間
- 手持ちの時間は差がつきにくい: ならば試行にかかる時間を短くしよう
- 試行にかかる時間の内訳
- プログラムの実装時間・実行時間: 運ではなく技術
計算編で意図しているのもまさにこれです. 計算速度を上げて一回の試行にかかる時間を短くするのが大事です. さらに計算力を上げれば計算ミスをなくす方向でも時間を減らせますし, そもそも計算力が必要な問題にも挑めます.
ちょうどいま展開している通信講座でも, 計算結果の解釈だけできてもやはり計算の細部まで自分で再現したくなるのが人情です. 何度でもくり返しますが,
理解を深めるのはもちろん大事です. しかし「理解を深める」は何でどう測るかが難しく, いわゆる成長の実感が難しい部分です. 一方計算はできる・できないがはっきりしますし, できなかったことができるようになるのもわかりやすいのがよい点です. 物理はもちろんのこと, 解析学での不等式処理に関わる計算力もあれば, ホモロジー代数など代数でのハードな計算に対する計算力もあります. 競技プログラミングやデータ構造とアルゴリズムも, コンピューターでの計算に対する計算力強化です. スパコン利用のプログラミングも人類の計算力強化が目的です.
古典力学が終わったら, いまのところ量子力学というか, 量子情報と(有限次元の)線型代数系の通信講座にしようかと思っています. とにかく計算をやりましょう.
今週の問題¶
直交群・特殊直交群関係で, 一度やってあってノートにもまとめていたにもかかわらず, 忘れて微妙にはまった問題です.
- 全ての自然数$n$に対して$SO(n) \subset O(n)$は真の正規部分群だが, リー環は一致する.
- 各自然数$n$に対して商群$O(n) / SO(n)$は$\mathbb{Z} / 2 \mathbb{Z}$である.
正規部分群自体が群の重要な概念ですし, 商群は初学者がよくはまるところです. 上記の議論は準同型定理と行列式で処理でき, 線型代数とふつうの代数の関係というか, よい修行になるのでぜひ取り組んみてください.
雑に眺めただけでまだ証明がきちんと腑に落ちてもいませんが, $SO(n) / SO(n-1)$, $O(n) / O(n-1)$, $SO(n) / O(n-1)$なども対称空間論でよく出てくる基本的な例で, 一気に微分幾何・リーマン幾何・表現論が視野に入ってくる面白い例です.
最初に挙げた問題は簡単すぎて(微分)幾何として議論する点はほぼありませんが, 代数の勉強には役立つ例です.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-05-21¶
数学・物理 直観を調べるには"intuition"で検索してみる/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 近況報告
- 直観を調べるには"intuition"で検索してみる
- Farah, Combinatorial Set Theory of C*-algebras
- 大野克嗣, 熱力学ノート
- well-definedではない例
- 確率論とルベーグ積分
- 山下真由子さんの第1回羽ばたく女性研究者賞受賞
- Karel Svadlenka, 偏微分方程式: 講義ノート
- 永井佑紀さんの新刊: 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング
- ClingでC++のREPLが使えた
- 要点抽出と途中計算の補足
- 次回の演習系通信講座
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
近況報告¶
二週間メルマガを書くのを忘れていました. いま研修で本当に一日中, 朝から夜まで勉強しています. こういう書き方にしてしまうと労基法的にアレな気もしてきますが, 今までアプリ開発やスタイリング(デザイン)学習なども勉強してみようとずっと思っていたところだったため, 渡りに船という感じでシコシコプログラムを書いています.
もちろんデータ構造とアルゴリズムを引き続き勉強を続けています. AOJとアルゴ式ではHaskellまたはOCamlしかなくF#が使えないため, いくら競プロ特化とはいえ現状でそこまでいろいろな言語を勉強している余裕もありません. かといってもうREPLなしのプログラミングはつらくてやっていられません. 念のためと思って検索してみたら, C++のREPLがあるClingがあるのを知ったのでそれを入れてみたりもしたのですが, やはりC++はつらいです. AOJはソートアルゴリズムに関連して, ソートの各ステップの結果を出力しなければならず, これが単なるソートのアルゴリズムにprintを差し込めばいい言語と違って凄まじく実装が面倒になります.
最近F#でのAtCoder学習で勉強用にmutable版も書くようにしたので, もういっそHaskellを命令型的に書くことにしました. モナドの学習が甘かったので単にMVectorを使うだけでも苦労したものの挿入ソートは書けました. 既存のAOJの問題もMVectorで書き換えたバージョンを書いて修行する予定です.
今年になってから競プロでデータ構造とアルゴリズムの学習を本格的に再開しましたがもう少しで半年です. 半年もやればもう少しできるようになっていると思っていましたが仕方ありません. 引き続きやっていきます. もちろん数学・物理系の計算練習も計算練習用通信講座の整備も続けます.
直観を調べるには"intuition"で検索してみる¶
数学の概念の気持ちを知りたいときは、検索でその英単語に加えて "intuition" (直観)とつけるといい感じの回答が見つかりがちです
私も困ったときはTwitterで詳しい人に聞く以外によく英語で検索しています. そのキーワードが一つ追加されたので今度何かあれば使ってみます.
Farah, Combinatorial Set Theory of C*-algebras¶
はい、というわけで。これでゼミするって言って興味のある人いますか? Farah著 Combinatorial Set Theory of C*-algebras
何度か書いたと思いますが, ちょうど修士のときの日本数学会でカルキン環と集合論の講演がありました. もう本一冊になるほどのテーマになっていると知って驚きました. 集合論も勉強したいと思って幾星霜です. もう適当なタイミングで勉強会を開くしかないと思っています. 優先度を見極めて何とかしたいですね.
大野克嗣, 熱力学ノート¶
基礎部分の考察がよいという評判を見かけました. まだ読めていないのですが備忘録も兼ねてメモしておきます.
- 電気化学の基礎論的重要性.これなしで質量作用を仕事と対等に扱うことを正当化する経験事実は存在しない.
この記述が非常に気になっています.
well-definedではない例¶
これいいな
鍵RT
well-defined の説明, そうである例を話すよりそうでない例を話す方が初見はわかってもらえそう
有理数全体からの関数fを分母と分子の和で定義してみましょう ワオ!!!!! f(1/2)=3 なのに f(2/4)=6 だ!!!!!!!!!! みたいな感じで
ちょうどこの間の計算練習通信講座で似た話をしました. そこでは物理で出てくるベクトル・テンソルの定義の話でした.
- 物理では変換性をもとにベクトルやテンソルを定義する.
- もちろんふつう物理で出てくるのは適切な変換性を持つ対象しかないから, 独学していると, この定義にどんな意味・意義があるのか全くわからないだろう.
こんな話をしました. もちろんそこでも変換性を満たさない例を紹介したのですが, 「わかる人にはわかる」, 「わからない人には何を言っているかさっぱりわからない」例しか出せませんでした. 当然のごとく不自然な例なのですが, 不自然さの気分が何に依存しているかと言えばまさに上で書いたように, 「物理でそんな量をそんな風には扱わないから」で, 論理的にはともかく気分的には循環論法です.
それでも上の数学の例はまだwell-definednessについて気分を伝えてくれていると思いますし, よい例だと思います.
完全に別件ですが, 確か計算機科学系の人だか文献を読んでいたときだか, well-definednessを「整定義性」と訳しているのを見かけました. 文脈は数学とは必ずしも一致しないものの, 最近はなるべく日本語にきちんと訳して使おうと思っているため, well-definednessをこれで置き換えようか悩み中です.
確率論とルベーグ積分¶
確率論・ルベーグ積分を勉強するにあたって,原『測度・確率・ルベーグ積分』→ 清水『統計学への確率論,その先へ』→ 舟木『確率論』がスムーズな感じがするんだけどどうなんですかね.解析系がしっかり分かってる人であればいきなり舟木で良いと思うんですけど.
確率論は測度論をさばけないと困る一方、関数解析・作用素論・偏微分方程式系統への応用に意識を向けたルベーグ積分論はあまり測度の細かいことを知らなくても何とかなるので、混ぜると危険な感じがあります。確率論としての積分論・測度論はその成り立ちからもかなり独特です。 そもそも本当に数学科水準の確率論とルベーグが必要なのかどうかからよくわかっていません。あくまで数学としていうならルベーグというと関数解析方面への方向性が強く、確率論は確率論でそれ自体として一から組んである本も多いです。これも念のため書いておくと、 高校でさえ現れる独立性の概念は測度・加法族のレベルで定式化されるので学部一年の数学科の数学の集合論と実数論の一番きついところだけが必要で、それが確率論らしさで、関数解析系ルベーグだとあまり出てこない点です。R^nでのルベーグを頑張ってもあまりご利益がありません。
少なくともTwitterでは何度か言っている話です. 私自身, 確率論に取り組むときに測度回りで時々どはまりすることがあります. 修行が足りていません. 確率論的集合の実運用はかえって集合論入門として使えるのではないかとさえ思っています. これも計算練習的にまとめられないか思案中です.
山下真由子さんの第1回羽ばたく女性研究者賞受賞¶
山下氏は幾何学の代数トポロジーと呼ばれる分野と、理論物理学との関連を研究。世界的に実力が高く認められていることなどが評価された。
以下のリンク先の文献はどなたかが紹介していた山下真由子さん関係の仕事です.
一応, 形式的には大学院の研究室の後輩にあたりますが, すごい人はいるものだと感心します. 微分幾何で指数定理はずっと勉強したい対象として私の中にありますし, あまりそれらしいことはやっていなかったとはいえ作用素環専攻ではありましたし, だいぶ趣は違いますが格子上の議論は厳密統計力学的に私の主たる興味関心なのでどこからどう見ても興味しかありません.
幾何・微分幾何も1500ページ程度は学習メモがありますがまだ全然足りません. 計算も追い切れなくてとりあえず本なり何なりに書いてある分を記録しただけの断片が大量にあり, それらを馬鹿みたいに詳しくノート化する作業も残っています. 行列リー群に関連して群と位相関係で馬鹿みたいに計算してノートを準備したり, 曲線論や曲面論のノートも拡充して幾何に慣れたり, やるべきことはたくさんあります.
リー群にしても等質空間系の話からの微分幾何もあります. ある程度難しいところも眺めて基礎力の足りなさを実感してきたので, 歯を食いしばって計算力を鍛えます.
全然別件ですが, やはりRIMSに若手の助教として室屋晃子さんが在籍しています. 何にせよ若く強い数学者が着々と育っているようで感銘を受けます.
Karel Svadlenka, 偏微分方程式: 講義ノート¶
京大数学教室のKarel Svadlenkaさんが書いた偏微分方程式の講義ノートがかなり分かりやすくて、参考文献についても詳しく書いてて、カバー領域も広そうなのでオススメ(あと日本語上手すぎる)https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~karel/files/notes_pde_2015.pdf
何か流れてきたのでシェアしておきます. ダウンロードするだけしてほとんど読まないのですが, 何かあってふと調べ物をしようとしたときに役立つことがあります.
永井佑紀さんの新刊: 1週間で学べる!Julia数値計算プログラミング¶
ClingでC++のREPLが使えた¶
EmacsでREPLを起動させるところまで進みました. WindowsだとビルドしないといけないようでWSLやDockerなどもあるのでしょうが, とりあえずMacで試しています.
Elispは最低限という感じでそれほど使いやすくはないものの, 当面の競プロ学習用には十二分そうです. 気に入らない部分は少し修正・追加しつつ, キーバインドも追加しました.
やはりREPLは本当にいいです. どんな言語にもREPLつけてほしいです.
要点抽出と途中計算の補足¶
http://everything-arises-from-the-principle-of-physics.com 要点抽出と途中計算補足をしたpdfのサイト神すぎる JJサクライお世話になった。場古典とシュッツ相対論は持ってるからそのpdf見ながら読み返すか
これは私もぜひやりたいと思っています. 自分のメモも兼ねて計算の補足をやっているのが例と計算編であり, もっと拡充したいですし, 毎日少しずつ進めています. 上でも少し書いたように, 年始から進めているリー群関係は最近進捗が悪くなってはいますが, 進みが遅いだけでほぼ毎日少しでも進めています.
次回の演習系通信講座¶
まだ気が早いですが, 今回のパイロット版も次回を見据えて進めないと意味がありません. 予定としては古典力学版の再募集をするかどうか, あとは量子情報の基礎に触れつつの行列計算講座を作ろうかと思っています.
行列計算も時々とんでもない量の計算が出てきます. 二次の正方行列の計算であるにも関わらず, ミスとTeX化の苦労もあって, 5日くらいかかった計算もありました.
今週の問題¶
- 二次の特殊線型リー環$\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})$上で指数写像$\exp \colon \mathfrak{sl}(2,\mathbb{C}) \to \mathrm{SL}(2, \mathbb{C})$は全射ではない.
リー群・リー環の一般論のきちんとした理解が甘いため, 「連結なリー群だったら全射になるのでは?」と思って混乱しました. 「連結かつコンパクト」だとか「実の場合だけ」とか, 何かしら厳密な条件づけを抜かして標語的に覚えた気になっていると, こういうところで足元をすくわれるいい例です.
この非全射性は一般の$n$次でも成り立つ性質でしょうか? ご存知の方がいたら文献教えてもらえると嬉しいです. あとどうも複素一般線型リー環でも成り立つ(指数写像が全射でない)ようなのですが, 練習問題扱いで証明がなく, 苦戦しています. こちらも何か情報・文献あれば教えてください. きちんと読み込んだわけではないため, 手元にある我らが小林・大島にこの手の記述があるのかどうかわからず, 見つけられていません. 表現論の本だから書いていなくてもおかしいわけでもありません. リー群は代数と位相と幾何が密接に絡んでいて, いろいろな部分群, その位相と代数の関係などとても示唆的で本当に勉強になります. 二次正方行列であっても計算が楽なわけでもないとか, つらさもてんこ盛りですが.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今回はお休み/相転移プロダクション¶
2022-04-30¶
数学・物理 つどいの講演終了/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- エアコンを試運転しておこう
- 追い詰められないとやれない(こともある)
- 通信講座関連でコメントしたことその1: 全体を見よう
- 通信講座関連でコメントしたことその2: 諦めが肝心
- 通信講座関連でコメントしたことその3: 計算をできるようにしよう
- オンラインすうがく徒のつどい講演資料: 数学のためのプログラミング入門・学習案内
- 物理の数学
- 代数と単位元
- ヘイヘイによるregularityや交叉理論まとめ
- リー群と特殊関数
- 漸化式と固有値問題
- トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』
- トポロジーの入門書
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
エアコンを試運転しておこう¶
このメルマガの本体と全く関係ないのですが, Twitterで回ってきたので私も注意喚起に協力します. 特にコロナ禍の影響もある中で, 今年はさらにロシアのウクライナ侵攻の影響で修理用の部品などがどうなるかわかりません. お住まいの地域によるとは思いますが, 夏が地獄のような地域もあるでしょう. 早めのチェックが肝心です.
毎年これくらいの季節になると先に注意喚起をしているのですが、今年どころかずっと前からエアコンをお使いのご家庭へ、エアコンの試運転をしておかないと真夏の修理待ちで詰みます。買い替えでも在庫なしで詰みます。買えても設置待ちで詰みます。あわせて実家のエアコンも試運転。冷房18度で10分。 真夏に備えるエアコンの試運転、くわしくはこちらを。もし調子が悪い場合の問い合わせ用に、ほぼ全メーカーのページもスレッドに載せています。
追い詰められないとやれない(こともある)¶
いま仕事で研修をしているのですが, ありがたいことに三ヶ月みっちり, 業務時間をフルに研修にあてていいと言われてweb系の技術をいろいろ勉強し直しています. 特にデザイン系も基本的な技能を磨いてほしいと言われていて関連する研修を受講しています. 今までやりたいなとは思っていてもなかなか取り組めなかったテーマでもあります. 何をどう考えても三ヶ月でどうにかしきれる話でもありませんが, 口実と時間ができたのも間違いありません. いま必死でやっています.
フロントエンドの話やアプリの内容もあり, 自分のコンテンツや通信講座, そして何よりサイトの構成にも応用したいと思っています.
追い詰められてはじめて取り組めるタイプの話もあるよね, と改めて感じています.
通信講座関連でコメントしたことその1: 全体を見よう¶
今週から通信講座がはじまりました. 今日も22:00-23:00で勉強会を開いています. 「確かに一人でやっているとわからない部分だな」と思う質問を受けましたし, 「位置ベクトルとは何ぞ」のような, 解析力学や相対性理論とも絡みつつ数学的にはそこそこ面倒な議論もありました.
そちらでも話したことはいろいろな人の参考になると思うので, メルマガでもシェアしておきます.
- 途中が飛んでも気にせず来たメールの内容に対応する
- 全体像の把握も大事なのでとにかく全部見る
- 独学で挫折すると本当に途中で終わって最後まで見られない
独学で進めて本を読むのに挫折すると, 途中までしか読まずに止めてしまうことがよくあります. 最後の方にこそ面白い話が書いてあったり, 前半の議論のイメージしやすい具体例が書いてある場合もよくあります.
通信講座関連でコメントしたことその2: 諦めが肝心¶
いま考えている通信講座はくり返し受講してもらう前提で組んでいます. それはいままさに私が研修で味わっている問題でもあります. 一度やったくらいでわかるようになるわけがなく, 身につくわけもありません. いきなり理解は深まらない, 時間がかかると諦めて我慢する必要があります.
いままさに研修でコンテンツを勉強していて, チュートリアルに沿って作業していても一回では全く頭に入りません. 早いところ数稽古に入らなければいけません. 身につけたところでちょっと凝ったことをしようと思うと, どうすればいいかわからず, いろいろな本を読んでみたりノウハウを調べないと手が出ません. デザイン系だと良く目にするデザインもある程度自分で作りたい・作らねばならない状況になるわけで, これも大変です.
通信講座関連でコメントしたことその3: 計算をできるようにしよう¶
これは前に作った語学系コンテンツに書いた内容とも関わります. 理解はどう測ったらいいかわからない一方, 計算はできる・できないがはっきりします. 上達も自分でしっかり測れます. 計算をできるようにしようと言っている理由の一つもこれです. 力学でやってみるとよくわかりますが, 計算の詳細を埋めるのも重要な勉強です. 特に近似絡みの議論は近似のセンスのような話もあります.
ちょうど今日, オンラインすうがく徒のつどいで数学・物理・プログラミング関係の話をしました. プログラミングが絡んだ計算もこれはこれで数学・物理・計算機科学の総合格闘技の趣があります. 計算は決して簡単な話ではありません. 質的に内容が少し変わりますが, 基礎論系で計算論といった分野・テーマさえあります.
オンラインすうがく徒のつどい講演資料: 数学のためのプログラミング入門・学習案内¶
次のリンク先に資料を置いてあります.
PDFの他, デモ用の数値計算プログラムも置いてあります. 念のためシェアしておきます.
物理の数学¶
文脈をよく知らないのですが, 「波動関数が連続なのは何故か?」みたいなことを言っていた人がいたようで, それについて何となくツイートした記録です.
「波動関数」が何を指しているのかよくわからないが、物理は言葉遣いが粗雑だからデルタ関数も波動関数の一種に含めると思うし、そもそも関数でさえないのに何で(L^2の)関数やら連続性やら何やらに言及するのか本当に意味がわかっていない。 連続性だとか収束の問題を一度も気にしたことなかろうに、なぜ量子力学でだけそんなどうでもいいことを気にするのだろうか。数学している暇があるなら物理をやれの一言で終わりでは。それでも数学したければ数学科に行けばいい。
波動関数はなぜ連続なのかとか本当にくだらない以外に言及しようのない疑問を持つ前に、まずは自分が考える波動関数の定義を明確にしてほしい。この思考に自力でたどり着けない時点で数学側からの回答は受け止めきれない。物理学者のコメントに数学的な意味はなく、求めるものでもない。 書くのを忘れていたが、数学者からの解答のようなものがあったとして、物理に基づいている可能性がほぼない(そういうことをする人たちではなく、興味関心が噛み合わない)ので、それはそれで物理の人間が物理として傾聴する意味がない。 物理を数学的にきちんと議論しようと思うと、まず解の存在とその場所(と一意性)がまず問題になるのだが、いちいちそんなことがやりたい人、どれだけいるのだろうか。ちなみに赤外発散に関連して一時期本当に物理として問題になったのは確かだが、今更物理で気にしている人はいないだろうし、数学的には基底状態・平衡状態の存在問題がいまだにほとんどどうにもなっていない。量子力学にしても、2006年ではあるが、https://mathsoc.jp/activity/awards/haruakilist/isozaki2006aki.html 三粒子の散乱に関わる数学的問題にさえ日本数学会賞が与えられるほど何もできていない。 数学科で数学として数学をやる以外の理由で物理の問題を数学的にきちんと議論しようと思うのは本当にやめた方がいい。
代数と単位元¶
部分環って単位元の一致は仮定しないのが一般的なの?冪等を作用させた環とかも部分環ですって言うためなんかな
行列環で簡単に破壊される(二次正方行列全体がなすM_2に対して、(1,1)成分だけが非零の行列全体は単位元がdiag(1,0)の部分環)ので、それなりに意味のある仮定です。
圏論的に捉えるとどうも違和感を覚えてしまうというのはありますね、、、部分環と呼ぶ以上は包含が環準同型であってほしいので、、、(non-unital?なら何も問題はないですが、、、)
部分環が部分対象とは限らないのキモいなってなった (nonunital ringの圏なら大丈夫だけど)
まじそれ、勝手に定義変えようかな笑笑
Non-unital ring上の加群論作ってみたら?
そんな恐ろしいもの触れたくないお
作用素環だとフォン・ノイマン環は中心極大射影を単位元とみなせるため, 常に単位元が存在すると思ってもよいのですが, $C^$-環は局所コンパクトハウスドルフ空間上の無限遠で消える連続関数環, コンパクト作用素がなす環は基本的な$C^$-環でしかも単位元を持ちません. 他には単位元を持たないバナッハ環としてたたみ込みを積として$L^1(\mathbb{R}^d)$もあります.
純代数の人から「非可換なのはまだ許せるとして, 単位元の存在は仮定させてほしい」と言われたこともあり, 単位元を巡る事情はいろいろあります.
ちなみに少なくとも$C^*$-環は常に近似単位元を持ちます. 近似単位元と言いつつ実体は点列またはネットです. 先の$L^1(\mathbb{R}^d)$で言えばディラックのデルタ関数近似列が近似単位元です. 解析学としては確かにそれはそうという部分があります.
あともとの$C^*$-環に単位元を付加した環という概念もあって, 局所コンパクトハウスドルフ空間$X$上の無限遠で消える連続関数環で言えば, 単位元の付加で得られる環は$X$の一点コンパクト化上の連続関数環です. つまり環に対する操作がその下に住む位相空間にも影響を与えています. これはこれで今度は非可換幾何への道でもあります.
ヘイヘイによるregularityや交叉理論まとめ¶
- 射影多様体に写像を作るには"関数"が必要
- でもコンパクト多様体上には定数関数しかない
- 定数関数は自明直線束の大域切断
- 代わりに一般の直線束の大域切断を使えば各自明化開集合上では関数が作れる
- これはもちろん貼り合わないがそれは変換関数が定数関数じゃないから
- でも斉次座標なら問題ないので有理写像が作れる
- いつ本当の射や埋め込みになるのか→regularityや交叉理論の話
というセミナーをした
コンパクト多様体上に定数関数しかない話, 特にリーマン面でも出てきます. 証明は割と単純な割にインパクトの強い性質です. 代数幾何は全然勉強できていないので, この話がこう展開していくのかと思うとなかなか趣深いものを感じます.
リー群と特殊関数¶
Lie group theory and special functions http://www-users.math.umn.edu/~mille003/lietheoryspecialfunctions.html
いまちょうど計算・理論ともに線型代数強化期間として取り組んでいるリー群で, 解析学と直接的な関係がある話題のPDFが流れてきたので, 一応共有しておきます. 電磁気や量子力学での偏微分方程式と固有値問題とも深い関係があるテーマです.
漸化式と固有値問題¶
漸化式 x_{n+1} = p x_n + q の特性方程式を解くってのは、行列 (p q) (0 1) の固有ベクトルを求めることなんです。 という話を書いておくのを忘れていたことに、今、気づきました。
これは確率論・力学系などの議論でも重要です. 特にエルゴード性が関わる力学系では, 適当な時間発展に対して時間無限大でどこかに収束する場合があります. この収束先の計算がまさに固有値問題だからです. 線型代数はこんなところにも顔を出します.
トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』¶
Twitterで流れてきたのでシェアします.
トポロジー(位相幾何学)をテーマにした、図形の数学的変形で解くパズルゲーム『Tandis』が登場。 https://famitsu.com/news/202204/22259060.html
脳がぐるぐるするけどプレイ自体に数学的知識は不要。プラットフォームはPC/Mac/Linux。4月22日発売。
トポロジーの入門書¶
河澄先生の講義ノートは東大数理名物らしく, 東大数理勢が湧いていました. トポロジーももっときちんと勉強したいので私も正座待機しています.
『トポロジーの基礎・上』 ついに来た http://utp.or.jp/smp/book/b603128.html
ポアンカレ双対定理をゴールとして上下巻で出るっぽい 和書でポアンカレ双対定理について書かれてるものには服部『位相幾何学』があるけど、あの本はだいぶ敷居が高い。 この本は「非専門家を読者対象とし、徹底的にていねいに解説」してるらしいから新しいスタンダードになりそう
今週の問題¶
短期集中の通信講座がはじまって物理熱が高まってきたので, 今週はリー群絡みよりも量子力学のための線型代数みたいなところの計算ノートを作っていました. 特に純粋状態まわりの議論をしていました.
作用素環ベースでやると解析学がかなり強く絡んで, 面白くも大変な一方, 行列ベースだと比較的簡単に面白い結果がバリバリ出てきます. やはりニールセン-チャンの教科書第二章は抜群に面白いです. 量子力学(物理)に根差しつつ線型代数の勉強するには本当にお勧めです.
純粋状態に関わる議論は物理的な重要性もありつつ, 数学的な面白さもたくさんあって本当に楽しいです. 広い意味での幾何的な議論は作用素環や量子統計にも影響があります. 作用素環もまたやりたくなってきています. とにかく楽しい.
例えば次のような問題を考えてみるといいでしょう.
- Exercise 2.72: 二量子ビットの混合状態に対する任意の密度行列$\rho$はノルム1以下の実三次元ベクトルで$\rho= \frac{1}{2} (1 + \boldsymbol{r} \cdot \boldsymbol{\sigma})$と書けることを示せ.
いわゆるブロッホ球の議論です. これの一般次元の議論がハマりポイントでもありつつ面白いところです.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第六文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第六文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第六文¶
文構造¶
- Если же магнит находится в покое, а движется проводник,
- то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;
- зато в проводнике возникает электродвижущая сила,
- которой самой по себе не соответствует никакая энергия,
- но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.
- --- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---
動詞は次の通りです.
- находится: 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь), to be found, to turn up
- возникает: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть), to arise, to appear, to emerge, third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格, concern
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать), to call, to send for
接続詞は次の通りです.
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- но: 接続詞: but, yet
- которой: 関係代名詞
- которая: 関係代名詞
Если же магнит находится в покое, а движется проводник,¶
動詞は不完了体находится (<- находиться, to be in some condition), движется (<- дви́гаться, move)があります. さらにа (and/but)とЕсли же (if)が接続詞で, Если жеが導く従属節の中にаがあります.
動詞はどちらも三人称単数で, магнит (magnet)が男性名詞単数の主格・対格, проводник (conductor)が男性名詞単数の主格・対格なので, これらがそれぞれの動詞の主語でよいでしょう.
残るはв покоеで, покое (rest)は男性名詞不活動体の単数前置詞格だから, вは前置詞格をしたがえるときのin, at, onの意味で取ればよいでしょう.
これをまとめると次のように英訳できます.
- If the magnet is at rest and the conductor is moving,
то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;¶
動詞はвозникает (<- возника́ть, to arise, to appear)で三人称単数現在形です. 冒頭のто (<- тот, that)は中性名詞として単数主格・対格だからこれを主語とみなせばよいでしょう. さらにвокруг (around, about)は生格支配の前置詞で, магнита (магнит, magnet)は男性名詞の単数生格だからこれがтоにかかります. не (no)は副詞として動詞を否定します.
最後にникакого (<- никако́й: 代名詞, no, none)は男性・中性の生格, электрического (<- электрический, electric)は形容詞で男性形単数生格・対格, поля (field)は中性名詞不活動体複数の主格・対格です. ここではполяを対格とみなし, никакогоとэлектрическогоがполяにかかると見ればいいでしょう.
これの英訳は次のようになっています. ロシア語と文法的に正確な対応はないものの意味はこの通りです.
- no electric field arises in the neighbourhood of the magnet
зато в проводнике возникает электродвижущая сила,¶
この文の動詞はвозникает (возника́ть, to arise, to appear)で, 三人称単数の現在形です. 主格を探すと不活動体の女性名詞силаが主格・対格です. さらにэлектродвижущая (элѐктродви́жущий, electrodynamic)があります. 後半のдвижущаяはдви́жущийがдви́гатьの現在分詞で, движущаяは女性形の主格です. 特にэnлектродвижущая силаで起電力と訳せます.
зато (on the other hand)は副詞です. 男性名詞проводнике (проводник, conductor)は前置詞格なので, вは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onの意味を持ちます.
まとめると次のように英訳できます.
- instead, an electromotive force arises in the conductor,
которой самой по себе не соответствует никакая энергия,¶
冒頭のкоторойは関係代名詞で, силаを受けているとみなすのが自然でしょう. 実際女性形の生格・与格・具格・前置詞格です.
ここで動詞はсоответствует (<- соотве́тствовать, correspond)で三人称単数現在形です. いま不定代名詞никакая (<- никако́й, not any, none)は女性単数主格, энергия (energy)は女性名詞で単数形主格です.
最後にсамой (<- сам, self)は代名詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, поは前置詞で対格・与格・前置詞格支配でどの格かによって意味が変わります. себе (<- себя́, oneself)は再帰代名詞で与格・前置詞格です. ここではсам по себеでon one's own, by oneself, aloneの意味があります. 最後にнеはnoです.
まとめると次のように訳せます.
- which in itself does not correspond to any energy,
но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.¶
まずно которая вызываетを調べます. но (but, yet)は接続詞で, которая (<- который, which)は疑問詞・関係代名詞で女性単数主格です. 直前の女性名詞のэнергияを受けていると見てよいでしょう. 動詞はвызывает (<- вызыва́ть, to cause)で不完了体の三人称単数現在形です. 主語は関係代名詞котораяです. 残りを確認しましょう.
次はэлектрические токи той же величиныの塊です. электрические (<- электрический, electric)は形容詞で複数の主格・対格, токи (<- ток, current)は名詞の複数主格・対格, той (<- тот, that, the one)は限定詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, же (and, but, on the other hand)は接続詞, величины (<- величина́, amount)は女性名詞の単数生格です. ここまでを上に添えた訳語で直訳すれば, electric current of that amountです.
最後にи того же направления, что и электри́ческое поле в первом случаеを調べます. и (and)は接続詞, того (<- тот, that, those)は限定詞で男性生格・対格 же (very, same)は強調の不変化詞, направления (<- направле́ние, direction)は不活動体中性名詞の単数生格または複数主格・対格, что (that, what)は代名詞・接続詞・疑問詞, иは強調の不変化詞, электри́ческое поле (electric field)は электрическое (<- электрический, electric)は形容詞の中性主格・対格, поле (field)は不活動体中性名詞の主格・対格, первом (<- пе́рвое, the first thing)は不活動体中性名詞の単数前置詞格, случае (<- слу́чай, case)は不活動体中性名詞の単数前置詞格で, ここからвは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onのような意味で訳せます. まとめると次のように英訳できるでしょう.
- and the direction of the electric field of the first case
まとめて綺麗にすると次のように書けます.
- but which causes electric currents of the same magnitude and direction as the electric field in the first case.
--- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---¶
при (in the presence of; in the time of; at, by)は前置詞格支配の前置詞です. предполагаемой (<- предполага́ть, assume)は過去分詞で, 形容詞として女性形生格・与格・具格・前置詞格, тождественности (<-тождественность, identity)は女性名詞の単数生格・与格・前置詞格または複数の主格・対格です. 特に前置詞格と思えばいいでしょう. したがってこれらをまとめて前置詞格とみなせばよいでしょう.
さらに形容詞относительного (<- относи́тельный, relative)は男性生格・対格または中性生格で, движения (<- движе́ние, movement)は中性名詞単数生格, 複数主格・対格で, тождественностиに対する修飾としてof relative motionの意味で取ります.
前置詞в以下はслучаях (<- слу́чай, case)は中性名詞の前置詞格の複数形なので, вを前置詞格支配(in, at, on)とみなし, 数詞обоих (<- о́ба, both)は男性・中性複数形の前置詞格, интересующих (<- интересующий <- интересова́ть, to interest)は複数前置詞格, 代名詞нас (<- мы, we)は複数前置詞格とみなせばよいでしょう. ここは全体でin both cases of interest to usとでも訳せます.
上記英訳では次のように訳されています.
- ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---
次のように訳すともう少し直訳調になるでしょう.
- with the assumed identity of the relative motion in both cases of interest
単語¶
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- же:
-
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
-
- магнит: 男性名詞, 単数主格・対格, 不活動体 (inan): magnet
- находится <- находиться: 動詞, 不完了体, 三人称単数
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- to be found, to turn up
- to be located, to be situated (no perfective form)
- to be in some condition (no perfective form)
- to happen to have, to be found, to be discovered
- passive of находи́ть (naxodítʹ)
- 動詞, 完了体, находи́ться • (naxodítʹsja) pf (no imperfective form)
- to walk for a long time
- to tire oneself by walking
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- покое <- поко́й: m inan, rest
- prepositional singular of поко́й (pokój)
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- движется <- дви́гаться: 不完了動詞, 自動詞, impf (perfective дви́нуться): move
- third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
- проводник: 男性名詞, 単数主格・対格, 活動体・不活動体, genitive проводника́, nominative plural проводники́, genitive plural проводнико́в, feminine проводни́ца,
- conductor
- то: 限定詞: тот • (tot) m (demonstrative)
- neuter singular nominative of тот (tot); that
- вокруг: 前置詞, 生格(属格)支配: round, around, about
- магнита <- магнит: 男性名詞, 単数生格
- не: 不変化詞(Particle)
- (negative in full) not, no, -n't, without
- Idiomatic negative usage
- (partial negative) perhaps not, whether ... or not
- will never (implying impossibility to do something)
- (usually not translated, gives affirmative meaning for expression, especially in exclamations)
- возникает <- возника́ть: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть)
- to arise, to appear, to emerge, to originate, to spring up
- (slang) to object, to protest
- third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- никакого <- никако́й: 代名詞, not any of possible variants, no, none; (in a negative context) whatever, whatsoever, absolutely
- inflection of никако́й (nikakój)
- genitive masculine/neuter singular
- animate accusative masculine singular
- электрического <- электрический: 形容詞, electric, 男性単数生格・対格
- поля: 中性名詞, 不活動体, 複数主格・対格, field
- зато: 副詞
- (hedge) on the other hand
- but for all that
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- проводнике <- проводник: 男性名詞, 活動体・不活動体, 単数前置詞格, conductor
- bian masc-form velar-stem accent-b
- guide (person)
- conductor, guard, train attendant (on a train)
- conductor (physical, electrical)
- электродвижущая <- элѐктродви́жущий: 形容詞, 女性単数主格, electrodynamic
- эnлектродвижущая сила: 起電力
- дви́жущий: 現在分詞, движущая: 女性形の主格
- сила: 女性名詞, 不活動体(síla), 主格・対格
- которой: 関係代名詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格, which
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of кото́рый (kotóryj)
- самой <- сам: 代名詞, self, 女性生格・与格・具格・前置詞格
- сам по себе: on one's own, by oneself, alone
- по: 前置詞
- with accusative case
- up to
- till
- indicates distribution (with numerals other than one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending these words)
- with dative case
- along
- over
- around
- about
- on
- according to
- showing the cause that is unwanting or unwilling (see indicates the direct object of some verbs of striking or hitting indicates repetition of time indicates distribution (with numerals one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending in these words)
- with prepositional case
- on, immediately after
- for
- to the liking of
- with accusative case
- себе: 再帰代名詞, oneself
- dative/prepositional of себя́ (sebjá)
- не: no
- соответствует : 動詞, 三人称単数現在, correspond
- third-person singular present indicative imperfective of соотве́тствовать (sootvétstvovatʹ)
- никакая: 不定代名詞, none
- nominative feminine singular of никако́й (nikakój)
- энергия: 女性名詞, 単数形主格, 不活動体, genitive эне́ргии, nominative, plural эне́ргии, genitive plural эне́ргий
- energy, power
- vitality
- vigor
- но
- 接続詞: but, yet
- 名詞, 不活動体, 不変: but
- которая <- который: 疑問詞, 関係代名詞, 女性単数主格: which
- при: 前置詞 (pri), +locative case or prepositional case: in the presence of; in the time of; at, by
- предполагаемой: 過去分詞, (形容詞として)女性形生格・与格・具格・前置詞格
- present passive imperfective participle of предполага́ть (predpolagátʹ)
- тождественности <- тожде́ст венный
- equality
- то́ждество: identity, equivalence
- относительного <- относи́тельный: 形容詞, 男性生格・対格または中性生格
- relative
- (grammar) relative (as in relative clause)
- comparative
- движения <- движе́ние: 中性名詞単数生格, 複数主格・対格, movement
- inflection of движе́ние (dvižénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- обоих <- о́ба: 数詞, both
- inflection of о́ба (óba)
- animate accusative masculine/neuter plural
- genitive/prepositional masculine/neuter plural
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格
- интересова́ть: 動詞, 不完了体, интересова́ть • (interesovátʹ) impf (perfective заинтересова́ть)
- to interest, to concern
- нас <- мы: 代名詞, we, 複数生格・対格・前置詞格
- случаях <- слу́чай: 中性名詞
- case
- occurrence, event
- occasion
- opportunity, chance
- слу́чаях • (slúčajax) m inan pl
- prepositional plural of слу́чай (slúčaj)
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать)
- to call, to send for
- to challenge, to defy
- to summon
- to arouse, to cause, to stimulate, to evoke, to call forth
- third-person singular present indicative imperfective of вызыва́ть (vyzyvátʹ)
- электрические <- электрический: 形容詞, 複数主格・対格, electric
- токи <- ток: 男性名詞, 不活動体, 複数主格・対格: (water, electricity) current, (agriculture) threshing floor
- то́ки • (tóki) m inan pl
- nominative/accusative plural of ток (tok)
- той <- тот: 限定詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格: тот • (tot) m (demonstrative)
- that, those
- the one
- the other
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of тот (tot)
- же
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
- 接続詞
- величины <- величина́: 女性名詞, 単数生格, amount
- величины́ • (veličiný) f inan
- genitive singular of величина́ (veličiná)
- и: 接続詞, and
- того
- 限定詞 <- тот, that, those
- inflection of тот (tot), 男性生格・対格
- 述語
- (colloquial, euphemistic) not right in the head, daft, crazy
- (colloquial, euphemistic) tipsy, drunk
- (colloquial, euphemistic) not great, not very good
- (colloquial, euphemistic, crime) taken care of, murdered
- 限定詞 <- тот, that, those
- же: 上記参考
- направления <- направле́ние: 中性名詞, 不活動体, 単数生格, 複数主格・対格, direction, orientation
- направле́ния • (napravlénija) n inan or n inan pl
- inflection of направле́ние (napravlénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- что: 代名詞・接続詞・疑問詞: that, what
- и: 接続詞, and
- электрическое <- электрический: 形容詞, 中性主格・対格, electric
- электри́ческое поле: electric field
- поле: 中性名詞, 不活動体, 主格・対格, field
- в: 前置詞, 上記参照
- первом <- пе́рвое: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, the first thing
- пе́рвом • (pérvom) n inan
- prepositional singular of пе́рвое (pérvoje)
- случае <- слу́чай: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, слу́чай • (slúčaj) m inan (genitive слу́чая, nominative plural слу́чаи, genitive plural слу́чаев)
- case
- слу́чае • (slúčaje) m inan
- prepositional singular of слу́чай (slúčaj)
2022-04-23¶
数学・物理 通信講座の募集は明日までです/相転移プロダクション¶
今週は通信講座の準備で忙しく, メルマガは書きかけのメモしかないため, 案内の最終連絡だけ手短に.
ここ何回かで連絡してきた, 三ヶ月の短期集中の力学通信講座は明日で締め切ります.
継続的に勉強してもらうための工夫なので, またいつか開講するタイミングはありますが, 少なくとも三ヶ月より先です. 今回はタイミングが合わなかった人も, 次回ぜひ積極的に参加してください.
来週はいつものメルマガに戻ります. ではまたメールします.
語学 相転移プロダクション¶
お休み.
2022-04-20 号外¶
数学・物理 号外: 通信講座に関して/相転移プロダクション¶
はじめに¶
通信講座に関して問い合わせがあって, 返信を書いていたらすごく長くなった上に他の人にも参考になると思ったため, メルマガにも放流します.
最初に書いておきましょう. 毎日22:00-23:00でもくもく会(オンライン勉強会)をやっています. 最後にそれをやっているオンライン部活サービスENERGEIAへのリンクをつけました. そこで具体的なURLなどをアナウンスしているので, 直接相談したい人はそちらからどうぞ.
ゴリゴリ計算する時間が作れない人はつらいだけだから時間ができてからにしてね, と案内ページで書いているように無理な勧誘などはしません.
質問内容¶
大雑把に言えば「理工系を出てはいるが, しばらく触れていないため高校数学の知識さえ結構抜けている. それで参加しても大丈夫か?」という話でした.
回答概要¶
語学や最近私自身がプログラミング学習でやっている方法を例に, 勉強の取り組み方自体を変えてみてはどうか, それを身につける時間に使ってはどうかと提案しました. 最終的には明日以降, ENERGEIAのもくもく会・勉強会タイムで話をします.
回答(を整理・抜粋)¶
うまいことまとまらずものすごく長くなりました. 大事なので後でメルマガでも流そうと思います.
結論から言えば, 「独りだと続けられないから人を巻き込もう」の方が重要なコンセプトで, こちらに心が反応するかどうかだろうと思います.
そしてもう一点. どう書こうかと思っていろいろ考えていたのですが, 一つ心に留めておいてほしいのは「まずは解答をしっかり読む」です. 定義や定理が頭に入っていなくて困るというのは, 何も見ずに自力で解こうとするからではないでしょうか? 定義や定理が頭に入っていない状態で慣れていない問題を自力で解くのは本当に大変です. 英単語や英文法がわからないのに英作文しようと言っているようなものです. 以下説明を続けます.
さて, まずは最近プログラミングがらみで実際に私も積極的にやっている内容を紹介します. これをそのまま勧めたいからです. あとで語学の事例も書きますが, プログラミングの例がよくわからなければ語学を考えてみてください.
いま私はプログラミング学習でAtCoderやAOJで競技プログラミングをやっています. 特にデータ構造やアルゴリズム学習学習のためで, プログラミング系コンテンツ作成のためでもあります. 最近は少し難しめの問題に挑戦するようになってきたのでさっと簡単に解くとはいきません. まずは10分くらい考えます. 頑張れそうなときはそのまま頑張りますが, 何も思い浮かばければ解説を読み, 解説の通りに実装しようと頑張ります. うまくいかない場合, 他の人の解答を読みます.
コードゴルフほどではないにしろ, 競プロのコードは圧縮された形で書かれていたり, 逆に自分用ライブラリで埋めつくされた解答があります. 短めで読みやすそうな解答をいくつか見繕ってそれを読みます. 特によさそうな解答に対して, 変数名を自分にとってわかりやすくしたり, 必要があれば分解したり, 一つにまとめたりして自分の解答として整理していったん終わりにします. その上で何回か復習します.
ポイントは自分でプログラムを書くよりも, むしろ他の人の解答の理解を重視する点です. これを語学に即して説明しましょう.
このメルマガを読んでいる人は, 多少なりとも英文はある程度読めて聞けるでしょう. しかし書く・話す方は読むのに比べてかなりレベルが下がると思います. 少なくとも私はそうです. 小学生の発言に対応するリーディング・リスニングはできても, 小学生の発言に対応するライティング・スピーキングは絶望的に難しいです. 物理・数学・プログラミングの用事は足せても日常会話がまるでさばけません.
何かと言えば, 受動的な方はある程度何とかなるものの, 能動的に出力しなければならない方が大変です. プログラミングでも同じで「読めても書けない状態」です. 「英作文は英借文」と言われます. いくつか典型的な文はきちんと覚えておいて, それをうまく変形したり組み合わせる必要があります. 個々の単語や文法も必要ですが, その上で単語や文法をどう使って具体的な文章を作るか自体も覚えておく必要があります.
私の語学のメルマガを読んでいる人はわかると思いますが, いま私はアインシュタインの特殊相対性理論のロシア語翻訳を読みつつロシア語を勉強しています. ロシア語は全く書けませんが, 文法を並行して勉強していて読む方は多少なりとも何とかなるようになりました. 英語・ドイツ語と比較しながら読んでいるからでもあります. 単語や活用も早く覚えないといけないのですが, オンライン辞書を使うと覚えていなくても何とかなってしまうため, まずはやる気が出るところからはじめて習慣作りを大事にしてロシア語(語学)に取り組んでいます. なぜ英語以外の語学をやっているかは次のページに書いたので, 興味があれば読んでみてください.
物理や数学も語学やプログラミングと同じです. 書くよりも読む方が楽です. 学部初年次の難なく理解できる証明でも, 空で書けるかと言われたらきついことは多いでしょう. 特に計算がハードだと計算ミスも頻発します. 語学でも三単現のsを忘れたり時制の一致を忘れたり, 冠詞を忘れたり, 読む分には問題なくても常にきちんと英文を書き切れる自信がある人はそういないのではないでしょうか.
というわけでまずは解答や証明を読めるようになりましょう. 形式的に「問題」と呼ばれる対象であっても, 無理に自力で解こうとせず, 解答をじっくり読むことに注力してください. 解答を読んでわからない問題が自力で解けるわけがありません.
数学や物理で言えば, 公式を見直して自力で問題を解くために議論の組み立て方そのものもある程度覚える必要があります. Twitterでも時々話題に上がります. 数学で言えばよく「定義を大事に」と言われますし, 結城浩さんの数学ガールで言えば「例示は理解の試金石」として有名なフレーズもあります. これは学習法でもあれば議論の組み立て方でもあります.
高校では数学力の制限もあって, エネルギー保存なども個別具体的な暗記事項になりがちです. 大学の物理(古典力学)だと全ては運動方程式から出てくるのであって, 全て運動方程式から出すという思考の組み替えが必要です.
以前, 高校物理・数学はいくらやっても大学の数学・物理の役に立たないと書いたことがあります. その理由はこれです. 知識の話ではなく取り組む姿勢や議論の構成そのものが決定的に変わりますし, この思考様式の構築が物理や数学と言えるケースさえあります. 高校の物理・数学と大学の物理・数学のギャップ, 特に集合や位相のような基礎科目でのギャップとして抽象性などが挙げられる場合があります. そこはそこで確かにハードルですが, もっと根本的なハードルはゲームそのものが変わっていて, 取り組み方を変えないといけない点です.
数学で定義を大事にしろというのは, 定義に議論のエッセンスがつまっているからです. 「よい命題は定義になる」という言葉もあるほどです. (誰の発言か忘れましたが, 数理物理的関数解析の聖典, Reed-Simonの確か第一巻に発言が引用されていた記憶があります.) メルマガ読者の方なら「よい命題」概念は多かれ少なかれ通じると思いますが, 命題の良さの尺度として「定義として採用されるか」もあるのです.
例を挙げれば例えば連続性や微分可能性です. この性質があればいろいろなよい命題・定理が成り立ちます. よい命題・定理を支える性質だからこそ重要でわざわざ名前をつけるのです.
いいはじめるときりがないのでこのくらいにしますが, せっかく膨大な時間を割いて今回の通信講座に参加するなら, 具体的な計算力とともにこの思考様式を身につけてほしいと思っています. Twitterで小学生から高校生まで一気通貫で見る機会の多い塾講師の人達の発言を見ていると, 「できない子は手を動かそうとしない」とよく言っています. 今回改めて強調したいのは, 今回身につけてほしい「手を動かす習慣」にあたる行為は「解答をしっかり読みこなす」です. 解答は証明と読み替えても構いません.
「言われなくてもやっている」と言う人もいるでしょうが, 特にもしあなたが社会人で学生時代の専門が物理や数学ではない上でこれらを勉強しようとしているなら, 物理学科・数学科水準で本を読む姿勢を身につけられていると自信を持って言えるでしょうか? 「例示は理解の試金石」を知っている人は, 数学で必要なときに必要な例をさらっと出せるでしょうか. 何度か紹介しているように, 数学ではクリティカルな例や反例を作るだけで論文になります. 例を作るのをこのレベルで重視しているので, 何か言われて即座に例を作れない人に対する理解度判定は極めて厳しくなります. 「知っているべき有名な例」という概念さえあります.
この意識の変容に取り組むのは本当に大変で, 計算力以上に三ヶ月でどうにかなる話ではありません. しかし裏テーマとして常に抱えておくべきなのだろうと改めて実感しています.
自分用メモ¶
- これまでとコンセプトが違うコンテンツ・通信講座でもあるため, 通信講座用に簡単な公式集的なモノもあった方がいいかもしれない.
ENERGEIAへのリンク¶
最後に相談用の勉強会zoomのリンクを出しているENERGEIAへのリンクを張っておきます.
- 数学和尚の数学かけこみ寺
- 部活への直リンク https://energeia.app/club/36
今回の通信講座用のもくもく会・勉強会は上記部活用のもくもく会とは完全に切り離して運営します. 上記部活のもくもく会は私の体調や都合が悪くない限り土日でも毎日開催していますし, 参加も自由です. 興味があれば気軽に参加してください. 部活のもくもく会はコンテンツ作成などの作業タイムでもあるため, 話かけられても応えられないかもしれません. 予めご了承ください.
2022-04-16¶
数学・物理 通信講座の正式案内/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 位相のハマりポイント
- 群の内部自己同型の名前の由来
- 計算数論システム入門
- Google Scholar
- 宣伝: いろいろなプログラミング入門
- 通信講座の正式案内
- 今後の予定
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
位相のハマりポイント¶
位相空間Xの開集合Uと位相空間Yの開集合Vとの直積U×VはX×Yの開集合になる?
XxYに直積位相が入っていることを前提にしたコメントしかないようだが、そもそもどの位相を考えているかさえ言及がないのだから誠実な回答は「考えている位相による」なのでは。
そうか・・・そうですよね・・・
実際に直積にどんな位相を入れるかが大問題になる議論としてチコノフの定理がある(いわゆる直積位相ならいいが、無限直積の時に箱位相で問題が起きる)ので、考えている位相を意識しないと本当にハマります。
そうなんですね。直積の時は気をつけないとですね…
関数解析(バナッハ空間)だとノルムによる強位相が普通の位相である一方、弱位相があり、双対空間にはこの二つに加えて弱*位相が入ったり、作用素環でも(形式的には)七つ位相が入ります。
他にはザリスキ位相で積空間に入れる位相と個々の空間の積からの積位相で挙動が変わる有名な例があります。Math StackExchange, Zariski Topology question ある(よく使われる)位相での常識が他の位相で通じない例もあるので、位相は気を抜けるところがあるイメージがありません。
位相そんなに奥が深いのか…
私も学部は数学ではないので、私の位相への認識は数学科の常識レベルに達しているとさえ思えません。何を目的にどうしたいのかよりますが、余裕があるなら最近増えている個人指導お願いしたほうがいいのではないでしょうか。位相空間に挑む上で数学の勉強の仕方そのものが問題になる可能性があります。 変な例の把握まで含め、位相の基本ができていないと先々のありとあらゆるところで詰まります。位相を使う・使わないではなく、先々でそこで身につけているべき数学的態度・思考が前提になるからです。単純な知識以上の問題で身につけるのも大変で、明記さえされないからです。
そうなんですか…個人指導に頼むのも一つの手か…
良くも悪くも、数学科の教科書は数学科で使うこと(だけ)を前提にしていて、低学年でやっていることは前提にしないことにはまともな分量の本になりません。もちろん数学に限らない話ですが。
最後の「低学年でやっていることは前提にしないことにはまともな分量の本になりません」は本当に厳しく, 通信講座用に復習も組み込みながら書いたといった理由もあるにせよ, 実際に私の現代数学探険隊解析学編は集合・実数・位相までで1500ページ程度の異常な量があります.
ちなみに物理で数学科の集合・位相にあたるのは, 現状では何だかんだ言っても古典力学でしょう. エネルギー・運動量やそれらの保存, 近似に対する感覚の養成などは力学で培われたと思います.
以前堀田さんの量子力学の教科書が出たときに何度かコメントしましたが, 最近では現代的な理解に即した量子力学学習も決定的になりつつあるように思います. これについては私自身まだ追いつき切れておらず大きな課題です.
群の内部自己同型の名前の由来¶
内部自己同型って、どのあたりが内部なの?
私の守備範囲でいうとhttps://math.stackexchange.com/questions/2242038/characterization-of-inner-automorphisms-of-a-von-neumann-algebraの話題があります。つまりフォンノイマン環Mのユニタリ元自身(内部の元)でuxu^と書ける自己同型が内部自己同型です。適当な意味でフォンノイマン環の自己同型は全てユニタリによってuxu^と書けるのですが、u \in Mかどうかが問えます。
リプライに気付いて、読んで考えていて、(私のツイートは群の内部自己同型のことを特に考えていたのですが、)内部の元(と二項演算)で書こうとすると、両側からこの形で挟むしかないんですね。(単位元を単位元に移さないといけないから。)なるほど、"内部"ということに納得が行きました。
内部同型と自己同型については次のMath StackExchangeの議論も面白いです.
上のコメントを受け入れると可換群の内部自己同型は自明な変換に限ると言え, そうした点についても指摘がまとまっています.
ちなみに連続体仮説を仮定するとカルキン環と呼ばれるC^*環に内部的でない自己同型が定義されます. きちんと調べ切れておらず詳しい状況はいまだ把握できていないのですが, 私が修士二年のときの日本数学会で基礎論の人が関数解析の部でこの講演をしていて, 基礎論の非専門家に向けて「こういうふうに言ってしまうと語弊があるのですが」と言った譲歩つきの発表をしていたのをいまも覚えています. 基礎論は数学者相手でさえ誤解を招かないように話すのが本当に大変なのだろうと.
計算数論システム入門¶
6/27-7/1 に京都大学数学教室にて集中講義を担当します。一度しっかり計算数論システムの入門をやってみたかったので、理論より実践を意識した内容にするつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。
何回か数学+プログラミング関係で反響を頂いていますが, そういう方はちょっと眺めてみてはどうでしょうか? 京大での集中講義ですしさすがにそんなに簡単とは思いませんが, 遊び倒す方向のヒントになるかもしれません.
私も早く確認したいところですがなかなか時間が取れません. 数論はある程度まで厳密計算もできる部分もあり, プログラミングで遊ぶ観点からはかなり気になっています.
Google Scholar¶
数学論文の探し方 https://youtu.be/JCmHSVeotBQ より 数学の論文の検索方法などについて説明しています。 修士課程に入学したばかりの学生や学部4年生くらいを想定しています。
私はGoogle Scholarをよく使うのですが、以前関連ツイートをしていたので本ツイートのツリーでRTします ここに書いてあることに加えて、Google Scholarで単語検索するとおそらく論文本文まで検索して候補出してくれるのが強いですね。 いま思い出したんですけど、MathSciNetだと AMS Mathematics Subject Classificationの区分ごとに論文一覧出せるので、特定の分野の最新の論文を網羅的に見たい場合は非常に便利です。
これのリプライツリー読んでふむってなった。私はGoogle Scholar酷使マンなのでMathSciNetの仕様は知らないんですけど、GSの方の特徴(体感)としては
- ・被引用リスト漏れは滅多にない
- ・自著に限らず論文被引用アラート設定ができる
- ・出版論文にプレプリント版がある場合は関連バージョン一覧に載る
- ・カンファレンスのスライドや、大学のレポジトリで公開された学位論文や個人のノートなども出版論文と同列に扱われる(反映は遅いかも)
- ・bibtex等の引用データはある程度は出力できる(画像参照)。ただし私はbiblatex使ってるのでこの機能は使用しない。
なので、大きな違いは、アラート機能の有無と、出版物以外の文献の扱いなのだと思う あ、あとMathSciNetのレビューも
考えてみれば体系的な文献検索法をきちんと習った記憶がないですね. 図書館のイベントで文献検索法みたいなのはあった気はします. 今になってそういう基礎教育の重要性を思います. きちんと参加しておけばよかった.
宣伝: いろいろなプログラミング入門¶
いまオンラインすうがく徒のつどいに向けて改めていろいろな調べ物もしています. 前もいくつか紹介したと思いますが, ゲームでプログラミングを学ぶ方向もあります. 私のメルマガに登録している人達にはあまり興味ない方向性のような気はしますが, ご自身のお子さんや親戚の子供などに聞かれる機会もあるでしょう. そしてプログラミング勢ばかりが読んでいるわけでもないので, 念のため共有しておきます.
通信講座の正式案内¶
さすがに土曜には終わるかと調子に乗っていたら日曜の終わりも終わりまでかかってしまいました.
詳しいことは上記リンク先の案内ページを見てください. いつも公開後はずっと申込をオープンにしていますが, 今回は「三ヶ月の期限を区切ってがんばろう」という講座なので, 申込期限を区切ります. 改めてここでも書いておくと有料です.
来週日曜まで口を開けておくので, 興味がある方はぜひ受講してください. 例と計算編の一環として他にも短期集中講座は続ける予定ですが, いわゆる古典力学はしばらくやらないと思います. 機会が噛み合った方はぜひどうぞ.
今後の予定¶
短期集中講座を続けると書きました. 今のところ作りたいと思っているのは次のあたりです.
- 電磁気とベクトル解析ノート
- 量子力学と線型代数
- 特殊相対論的力学
- 熱力学と偏微分・凸関数ノート
このうち, 電磁気と言われると微妙なものの, ベクトル解析は既にある程度できています. 量子力学と線型代数はニールセン・チャンの第二章の解答集で相当いろいろ遊べます. 確か第二章の問題は100題くらいあったと思いますが, いま60題程度まで解答をつけてあるので, これもうまくいけば今年に組み込めます.
熱力学は原・田崎のイジング本の前哨戦としても復習したいと思っていて, 改めて理論の大枠を確認しつつ, 面白い計算問題をピックアップできればという野望だけはあります.
(特殊)相対性理論は学生の頃にほとんど真面目に勉強できていなかった分野です. 一般相対性理論は準リーマン幾何であってなかなか面倒な部分はあるものの, 微分幾何への直観を育む点からも面白そうと思っていて, 手始めに特殊相対性理論から計算し倒す野望があります.
行列べったりのリー群・リー環も日々計算を進めています. これは微分積分・線型代数の直接的な延長からの数学科の数学, 特に位相空間論・位相幾何的な議論・多様体論への接続としても便利ですし, 表現論は量子力学や素粒子への応用もあります.
リー群上での微分幾何も対称空間論など大きなテーマがあります. リー群の特殊事情を使っていくつか微分幾何の一般論が簡単になっている面もあれば, 特殊事情を使って比較的初等的な範囲で過剰な予備知識なしにさらに深く突っ込める面もあり, とにかく面白いところしかない分野です. 一般論を低次の具体的なところで計算するだけでも十二分な意味があり, これで一生遊び倒せる分野です.
リー群はいろいろな本やコンテンツがあり, 講義ノートもたくさん落ちていて独学のためのコンテンツ自体は山程あります. そのうち通信講座も作ろうと思いますが, もし待ち切れないなら自分のペースでどんどん突っ込んでいってください.
今週の問題¶
今週は通信講座の詰めをずっとやっていてあまり進展がありません. 強いていうなら息抜きにNielsen-Chuangの二章の問題2.66を解いたくらいです.
ここ三ヶ月くらい, 具体的な計算といいつつ文字の一般論ばかりだったので, パウリ行列のようなふつうの数を要素にした行列の具体的な計算は久し振りでした. 計算が合っているか不安になったのでsympyで検算したりもしました.
Python本体のsympyは記号が重たい一方, Juliaから呼び出す方が書きやすくなっています. ただJuliaの方はフルの機能が使えないようでそれがつらいです. いっそMaximaをうまく使えないかとも思っていますが, これはこれでMaximaの勉強が追いついていません.
プログラム援用コンテンツをどう作るかもさることながら, 自分の日々の計算にどう組み込むかもずっと懸案です. WolframalphaのようなWebベースの無料のモノもありますし, これを使うようにした方がいいかといった話もあり, 悩みは尽きません.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第五文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- ロジバン言語:
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第五文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
ロジバン言語¶
魔法少女(もはやそういうスクリーンネームは設定しないが, Twitterの特定アカウントを指す)がエスペラントと対比してコメントしていたので気になってとりあえずごく簡単に検索しました.
言語表現の論理的な構造を正確に(そしてしばしば簡潔に)記述するために開発されてきた述語論理を文法の基盤としている。
ロジバンの表記法や統語法はいかなる不規則性もきたさないように設計されているため、コンピュータによる解析や人による読解が容易である。実際、1997年時点でロジバンの公式の文法は Yacc 文法で書かれており、2015年現在では PEG で書かれた文法もある。そのため、ロジバンの構文解析器は非常に実装しやすく(その容易性の観点からみれば、ロジバンは自然言語よりもプログラミング言語に近い)、いくつかの構文解析器はロジバンの学習過程において広く使われている。このことから、日常会話としての言語だけでなく、プログラミング言語としての可能性も秘めている。
上記の記事中, こう書いてありました. 非常に気になっています. ロシア語・中国語・アラビア語も勉強したく, 述語論理などの数理論理も勉強したく, とにかく時間が足りません.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第五文¶
文構造¶
- Если же магнит находится в покое, а движется проводник,
- то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;
- зато в проводнике возникает электродвижущая сила,
- которой самой по себе не соответствует никакая энергия,
- но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.
- --- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---
動詞は次の通りです.
- находится: 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь), to be found, to turn up
- возникает: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть), to arise, to appear, to emerge, third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格, concern
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать), to call, to send for
接続詞は次の通りです.
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- но: 接続詞: but, yet
- которой: 関係代名詞
- которая: 関係代名詞
Если же магнит находится в покое, а движется проводник,¶
動詞は不完了体находится (<- находиться, to be in some condition), движется (<- дви́гаться, move)があります. さらにа (and/but)とЕсли же (if)が接続詞で, Если жеが導く従属節の中にаがあります.
動詞はどちらも三人称単数で, магнит (magnet)が男性名詞単数の主格・対格, проводник (conductor)が男性名詞単数の主格・対格なので, これらがそれぞれの動詞の主語でよいでしょう.
残るはв покоеで, покое (rest)は男性名詞不活動体の単数前置詞格だから, вは前置詞格をしたがえるときのin, at, onの意味で取ればよいでしょう.
これをまとめると次のように英訳できます.
- If the magnet is at rest and the conductor is moving,
то вокруг магнита не возникает никакого электрического поля;¶
動詞はвозникает (<- возника́ть, to arise, to appear)で三人称単数現在形です. 冒頭のто (<- тот, that)は中性名詞として単数主格・対格だからこれを主語とみなせばよいでしょう. さらにвокруг (around, about)は生格支配の前置詞で, магнита (магнит, magnet)は男性名詞の単数生格だからこれがтоにかかります. не (no)は副詞として動詞を否定します.
最後にникакого (<- никако́й: 代名詞, no, none)は男性・中性の生格, электрического (<- электрический, electric)は形容詞で男性形単数生格・対格, поля (field)は中性名詞不活動体複数の主格・対格です. ここではполяを対格とみなし, никакогоとэлектрическогоがполяにかかると見ればいいでしょう.
これの英訳は次のようになっています. ロシア語と文法的に正確な対応はないものの意味はこの通りです.
- no electric field arises in the neighbourhood of the magnet
зато в проводнике возникает электродвижущая сила,¶
この文の動詞はвозникает (возника́ть, to arise, to appear)で, 三人称単数の現在形です. 主格を探すと不活動体の女性名詞силаが主格・対格です. さらにэлектродвижущая (элѐктродви́жущий, electrodynamic)があります. 後半のдвижущаяはдви́жущийがдви́гатьの現在分詞で, движущаяは女性形の主格です. 特にэnлектродвижущая силаで起電力と訳せます.
зато (on the other hand)は副詞です. 男性名詞проводнике (проводник, conductor)は前置詞格なので, вは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onの意味を持ちます.
まとめると次のように英訳できます.
- instead, an electromotive force arises in the conductor,
которой самой по себе не соответствует никакая энергия,¶
冒頭のкоторойは関係代名詞で, силаを受けているとみなすのが自然でしょう. 実際女性形の生格・与格・具格・前置詞格です.
ここで動詞はсоответствует (<- соотве́тствовать, correspond)で三人称単数現在形です. いま不定代名詞никакая (<- никако́й, not any, none)は女性単数主格, энергия (energy)は女性名詞で単数形主格です.
最後にсамой (<- сам, self)は代名詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, поは前置詞で対格・与格・前置詞格支配でどの格かによって意味が変わります. себе (<- себя́, oneself)は再帰代名詞で与格・前置詞格です. ここではсам по себеでon one's own, by oneself, aloneの意味があります. 最後にнеはnoです.
まとめると次のように訳せます.
- which in itself does not correspond to any energy,
но которая вызывает электрические токи той же величины и того же направления, что и электри́ческое поле в первом случае.¶
まずно которая вызываетを調べます. но (but, yet)は接続詞で, которая (<- который, which)は疑問詞・関係代名詞で女性単数主格です. 直前の女性名詞のэнергияを受けていると見てよいでしょう. 動詞はвызывает (<- вызыва́ть, to cause)で不完了体の三人称単数現在形です. 主語は関係代名詞котораяです. 残りを確認しましょう.
次はэлектрические токи той же величиныの塊です. электрические (<- электрический, electric)は形容詞で複数の主格・対格, токи (<- ток, current)は名詞の複数主格・対格, той (<- тот, that, the one)は限定詞で女性生格・与格・具格・前置詞格, же (and, but, on the other hand)は接続詞, величины (<- величина́, amount)は女性名詞の単数生格です. ここまでを上に添えた訳語で直訳すれば, electric current of that amountです.
最後にи того же направления, что и электри́ческое поле в первом случаеを調べます. и (and)は接続詞, того (<- тот, that, those)は限定詞で男性生格・対格 же (very, same)は強調の不変化詞, направления (<- направле́ние, direction)は不活動体中性名詞の単数生格または複数主格・対格, что (that, what)は代名詞・接続詞・疑問詞, иは強調の不変化詞, электри́ческое поле (electric field)は электрическое (<- электрический, electric)は形容詞の中性主格・対格, поле (field)は不活動体中性名詞の主格・対格, первом (<- пе́рвое, the first thing)は不活動体中性名詞の単数前置詞格, случае (<- слу́чай, case)は不活動体中性名詞の単数前置詞格で, ここからвは前置詞格支配の前置詞としてin, at, onのような意味で訳せます. まとめると次のように英訳できるでしょう.
- and the direction of the electric field of the first case
まとめて綺麗にすると次のように書けます.
- but which causes electric currents of the same magnitude and direction as the electric field in the first case.
--- при предполагаемой тождественности относительного движения в обоих интересующих нас случаях ---¶
при (in the presence of; in the time of; at, by)は前置詞格支配の前置詞です. предполагаемой (<- предполага́ть, assume)は過去分詞で, 形容詞として女性形生格・与格・具格・前置詞格, тождественности (<-тождественность, identity)は女性名詞の単数生格・与格・前置詞格または複数の主格・対格です. 特に前置詞格と思えばいいでしょう. したがってこれらをまとめて前置詞格とみなせばよいでしょう.
さらに形容詞относительного (<- относи́тельный, relative)は男性生格・対格または中性生格で, движения (<- движе́ние, movement)は中性名詞単数生格, 複数主格・対格で, тождественностиに対する修飾としてof relative motionの意味で取ります.
前置詞в以下はслучаях (<- слу́чай, case)は中性名詞の前置詞格の複数形なので, вを前置詞格支配(in, at, on)とみなし, 数詞обоих (<- о́ба, both)は男性・中性複数形の前置詞格, интересующих (<- интересующий <- интересова́ть, to interest)は複数前置詞格, 代名詞нас (<- мы, we)は複数前置詞格とみなせばよいでしょう. ここは全体でin both cases of interest to usとでも訳せます.
上記英訳では次のように訳されています.
- ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---
次のように訳すともう少し直訳調になるでしょう.
- with the assumed identity of the relative motion in both cases of interest
単語¶
- если: 接続詞: if, in case
- если же: if
- же:
-
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
-
- магнит: 男性名詞, 単数主格・対格, 不活動体 (inan): magnet
- находится <- находиться: 動詞, 不完了体, 三人称単数
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- to be found, to turn up
- to be located, to be situated (no perfective form)
- to be in some condition (no perfective form)
- to happen to have, to be found, to be discovered
- passive of находи́ть (naxodítʹ)
- 動詞, 完了体, находи́ться • (naxodítʹsja) pf (no imperfective form)
- to walk for a long time
- to tire oneself by walking
- 動詞, 不完了体, impf (perfective найти́сь)
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- покое <- поко́й: m inan, rest
- prepositional singular of поко́й (pokój)
- а: 接続詞: but, and (introduces a new or different meaning)
- движется <- дви́гаться: 不完了動詞, 自動詞, impf (perfective дви́нуться): move
- third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
- проводник: 男性名詞, 単数主格・対格, 活動体・不活動体, genitive проводника́, nominative plural проводники́, genitive plural проводнико́в, feminine проводни́ца,
- conductor
- то: 限定詞: тот • (tot) m (demonstrative)
- neuter singular nominative of тот (tot); that
- вокруг: 前置詞, 生格(属格)支配: round, around, about
- магнита <- магнит: 男性名詞, 単数生格
- не: 不変化詞(Particle)
- (negative in full) not, no, -n't, without
- Idiomatic negative usage
- (partial negative) perhaps not, whether ... or not
- will never (implying impossibility to do something)
- (usually not translated, gives affirmative meaning for expression, especially in exclamations)
- возникает <- возника́ть: 動詞, 不完了体 (perfective возни́кнуть)
- to arise, to appear, to emerge, to originate, to spring up
- (slang) to object, to protest
- third-person singular present indicative imperfective of возника́ть (voznikátʹ)
- никакого <- никако́й: 代名詞, not any of possible variants, no, none; (in a negative context) whatever, whatsoever, absolutely
- inflection of никако́й (nikakój)
- genitive masculine/neuter singular
- animate accusative masculine singular
- электрического <- электрический: 形容詞, electric, 男性単数生格・対格
- поля: 中性名詞, 不活動体, 複数主格・対格, field
- зато: 副詞
- (hedge) on the other hand
- but for all that
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- проводнике <- проводник: 男性名詞, 活動体・不活動体, 単数前置詞格, conductor
- bian masc-form velar-stem accent-b
- guide (person)
- conductor, guard, train attendant (on a train)
- conductor (physical, electrical)
- электродвижущая <- элѐктродви́жущий: 形容詞, 女性単数主格, electrodynamic
- эnлектродвижущая сила: 起電力
- дви́жущий: 現在分詞, движущая: 女性形の主格
- сила: 女性名詞, 不活動体(síla), 主格・対格
- которой: 関係代名詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格, which
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of кото́рый (kotóryj)
- самой <- сам: 代名詞, self, 女性生格・与格・具格・前置詞格
- сам по себе: on one's own, by oneself, alone
- по: 前置詞
- with accusative case
- up to
- till
- indicates distribution (with numerals other than one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending these words)
- with dative case
- along
- over
- around
- about
- on
- according to
- showing the cause that is unwanting or unwilling (see indicates the direct object of some verbs of striking or hitting indicates repetition of time indicates distribution (with numerals one, a thousand, a million, a billion, a trillion, etc. and compound numerals ending in these words)
- with prepositional case
- on, immediately after
- for
- to the liking of
- with accusative case
- себе: 再帰代名詞, oneself
- dative/prepositional of себя́ (sebjá)
- не: no
- соответствует : 動詞, 三人称単数現在, correspond
- third-person singular present indicative imperfective of соотве́тствовать (sootvétstvovatʹ)
- никакая: 不定代名詞, none
- nominative feminine singular of никако́й (nikakój)
- энергия: 女性名詞, 単数形主格, 不活動体, genitive эне́ргии, nominative, plural эне́ргии, genitive plural эне́ргий
- energy, power
- vitality
- vigor
- но
- 接続詞: but, yet
- 名詞, 不活動体, 不変: but
- которая <- который: 疑問詞, 関係代名詞, 女性単数主格: which
- при: 前置詞 (pri), +locative case or prepositional case: in the presence of; in the time of; at, by
- предполагаемой: 過去分詞, (形容詞として)女性形生格・与格・具格・前置詞格
- present passive imperfective participle of предполага́ть (predpolagátʹ)
- тождественности <- тожде́ст венный
- equality
- то́ждество: identity, equivalence
- относительного <- относи́тельный: 形容詞, 男性生格・対格または中性生格
- relative
- (grammar) relative (as in relative clause)
- comparative
- движения <- движе́ние: 中性名詞単数生格, 複数主格・対格, movement
- inflection of движе́ние (dvižénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- обоих <- о́ба: 数詞, both
- inflection of о́ба (óba)
- animate accusative masculine/neuter plural
- genitive/prepositional masculine/neuter plural
- интересующих <- интересующий <- интересова́ть: 複数生格・対格・前置詞格
- интересова́ть: 動詞, 不完了体, интересова́ть • (interesovátʹ) impf (perfective заинтересова́ть)
- to interest, to concern
- нас <- мы: 代名詞, we, 複数生格・対格・前置詞格
- случаях <- слу́чай: 中性名詞
- case
- occurrence, event
- occasion
- opportunity, chance
- слу́чаях • (slúčajax) m inan pl
- prepositional plural of слу́чай (slúčaj)
- вызывает <- вызыва́ть: 動詞, 三人称単数現在形, 不完了体: вызыва́ть • (vyzyvátʹ) impf (perfective вы́звать)
- to call, to send for
- to challenge, to defy
- to summon
- to arouse, to cause, to stimulate, to evoke, to call forth
- third-person singular present indicative imperfective of вызыва́ть (vyzyvátʹ)
- электрические <- электрический: 形容詞, 複数主格・対格, electric
- токи <- ток: 男性名詞, 不活動体, 複数主格・対格: (water, electricity) current, (agriculture) threshing floor
- то́ки • (tóki) m inan pl
- nominative/accusative plural of ток (tok)
- той <- тот: 限定詞, 女性生格・与格・具格・前置詞格: тот • (tot) m (demonstrative)
- that, those
- the one
- the other
- genitive/dative/instrumental/prepositional feminine singular of тот (tot)
- же
- 接続詞
- (contrasting) and, but
- on the other hand, whereas, as for, as to
- 不変化詞(Particle)
- Emphasises identity: very, same
- With expressions of time and order: emphasises promptitude: very, right, immediately, without delay
- Marks an objection by pointing to the rationale behind said objection: after all, but
- Especially in questions: expresses consequence of or reaction to what was said before: then, so
- In questions and imperatives: imparts a note of insistence and urgency: ever, on earth, for goodness' sake
- 接続詞
- величины <- величина́: 女性名詞, 単数生格, amount
- величины́ • (veličiný) f inan
- genitive singular of величина́ (veličiná)
- и: 接続詞, and
- того
- 限定詞 <- тот, that, those
- inflection of тот (tot), 男性生格・対格
- 述語
- (colloquial, euphemistic) not right in the head, daft, crazy
- (colloquial, euphemistic) tipsy, drunk
- (colloquial, euphemistic) not great, not very good
- (colloquial, euphemistic, crime) taken care of, murdered
- 限定詞 <- тот, that, those
- же: 上記参考
- направления <- направле́ние: 中性名詞, 不活動体, 単数生格, 複数主格・対格, direction, orientation
- направле́ния • (napravlénija) n inan or n inan pl
- inflection of направле́ние (napravlénije)
- genitive singular
- nominative/accusative plural
- что: 代名詞・接続詞・疑問詞: that, what
- и: 接続詞, and
- электрическое <- электрический: 形容詞, 中性主格・対格, electric
- электри́ческое поле: electric field
- поле: 中性名詞, 不活動体, 主格・対格, field
- в: 前置詞, 上記参照
- первом <- пе́рвое: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, the first thing
- пе́рвом • (pérvom) n inan
- prepositional singular of пе́рвое (pérvoje)
- случае <- слу́чай: 中性名詞, 不活動体, 単数前置詞格, слу́чай • (slúčaj) m inan (genitive слу́чая, nominative plural слу́чаи, genitive plural слу́чаев)
- case
- слу́чае • (slúčaje) m inan
- prepositional singular of слу́чай (slúčaj)
2022-04-09;¶
数学・物理 Haskellでの物理が楽しい/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- オンラインすうがく徒のつどいの案内が出た
- 通信講座はリリース最終段階
- 江沢・中村・山本『演習詳解力学』が来た
- 勝手に宣伝: Learn You a Haskell for Great GoodのJupyter notebook
- とうとう出版か: Scott Walck, Functional Programming for Physics Geeks
- Walck, Functional Programming for Physics Geeksを軽く眺めた感想
- Julia(のStatsbase)に少しだけ貢献したので
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
オンラインすうがく徒のつどいの案内が出た¶
【スケジュール公開&参加者の募集開始!】 お待たせいたしました!第3回すうがく徒のつどい@オンラインの講演スケジュールを公開しました!
参加者の申込みを開始しました! HPの参加者募集要項をお読みの上、応募フォームから申込み下さい。期限は4月24日(日)までです。 https://tsudoionline.netlify.app/03/
聴講側の参加者申込がはじまりました. 私は講演者側で出ます. アブストにもあるように先日案内した素数判定プログラミング講座に関連する話をします. さらに以下で言及するWalckの本のネタなども紹介します.
江沢・中村・山本『演習詳解力学』に関連してプログラミングで遊ぶ話もコメントしているように, そうした話にも少し触れます. ただし数学関係者がいきなり独学でやるのは大変だから, あまり余計な知識が必要ないアルゴリズム, 特に数学関係のアルゴリズムからはじめようという話をする予定です.
ちなみにこの間ちょっとした提案をもらったので, ここで話す話を組み直して『プログラマーのための数学入門』として類似の話をする予定です. これはプログラムを一定程度読み書きできる人向けに, 逆にお絵描き系の勉強からはじめようという話をする予定で, これまた以前紹介したGeometry for Programmersなども案内する予定です.
今年の目標「たくさん計算しよう」がいい具合にいろいろ絡んできています. お待たせしているモノもたくさんあります. 一所懸命準備を進めているのでもうしばらくお待ちください.
通信講座はリリース最終段階¶
二週間くらい案内を続けている力学の通信講座, メインのPDFコンテンツを修正したので, あとは案内ページを作ればとりあえずはスタートできます. 今日書き切れれば, と思っていましたが全く間に合わなかったので正式な案内は来週です.
ちなみに何を直していたかというとベクトルの記号です. 数学だと物理と違ってベクトルの記号に太字を使いません. 数学の流儀に合わせて書いていたのですが, やはり物理向け計算のコンテンツとしてわかりにくいと思い, 一通り修正しました. 私も物理学科だったので力学は物理の風習に沿って勉強したため, やはり書き直したバージョンの方が読みやすいです. 物理っぽい計算の章は都度記号を書き直していく予定です.
例と計算編もちょこちょこ拡充していて, 単に項目出しだけの部分もあるとはいえ1100ページを越えています. そして1100ページあってこれからも増えていくので, いくらでも遊び倒せるコンテンツでありつつ, 一方では量が膨大すぎて途方に暮れるコンテンツにもなっています. そこをうまく再構成しつつサポートを入れるのがいま整備中の通信講座です. お待たせしていて申し訳ありませんが, もうしばらくお待ちください.
物理に集中的に触れてきたら私も物理熱が高まってきました. 偏微分の計算練習と線型代数の計算練習も兼ねた(特殊)相対性理論の計算に関する通信講座, 同じく偏微分の計算練習も兼ねた熱力学の通信講座, 線型代数の計算と絡めた量子情報的な通信講座, 微分積分と線型代数の融合(関数解析)を目指した電磁気学の通信講座など, 作りたい講座(自分が昔ほしかった講座)の作成予定がたくさんあります. そうすぐにはできないですが, 計算し倒す中で自分が計算していて楽しい例として外せない対象ばかりです.
江沢・中村・山本『演習詳解力学』が来た¶
先日宣伝した本です. ちょうど今日来たので本当にパラパラと眺めただけです. 文庫本の事情もありますが, 索引なども入れて665ページあります. これで1800円です. この1800円で人によっては一年遊び倒せるでしょう.
サービス内容が全然違うため単純な値段比較に意味はありませんが, いま準備中の力学の通信講座は当然これより値段が高いです. 独力で進められるなら本を買った方が遥かに安上がりです. 通信講座の初回に取り上げるくらいですし, 古典力学は本当に大事です.
数学的には常微分方程式論なので, ソルバーを使ったお絵描きも取り組みやすく, 曲線論(微分幾何)への発展も考えられます. いろいろな近似をかけたとき, 厳密解といろいろな近似解の数値比較も面白いでしょうし, 保存系の数値計算といった数値計算特有のテーマもあります. 今回の通信講座でここまで盛りだくさんにはできませんが, 力学は物理としても数学としてもネタの宝庫です. これまで挫折してきたならこの機会にぜひ取り組んでみてください. 単純な計算それ自体の楽しみも見つけられればなお良いです.
勝手に宣伝: Learn You a Haskell for Great GoodのJupyter notebook¶
「すごいH本」の元になった Learn You a Haskell for Great Good が IHaskell を使って Jupyter notebook に移植されてる!Binder を使えばWeb上で実行しながら読み進められるのも便利👀 https://github.com/jamesdbrock/learn-you-a-haskell-notebook
これはとても良い本なのでもしあなたがHaskellに興味があるならぜひ取り組んでみてください. いちいちコピペする必要がなくなっただけでも勉強が非常に楽です.
Walck, Functional Programming for Physics Geeksを軽く眺めた感想¶
先日紹介した本です.
まだ書きかけ状態の本である上, まだ物理パートの前のHaskellの言語説明のところまでしか読めていません. 型クラスが終わったくらいです. ちょうどすごいH本の紹介をしたのでちょうどいいと思ったので軽くコメントします.
すごいH本は一般的なHaskellの本なのである程度一般的な領域に踏み込んで解説しています. しかしこの本はあくまで物理に応用する本なので, 物理に必要なところに絞って解説しています. 型クラスも数値クラスに限定されていて, 入門としてはいいのではないでしょうか.
他にも「プログラムを書いてコンピューターを教育する」体で書かれているため, 自然と関数設計の形でプログラムの設計にも触れられています. 計算しながら暗号の勉強をしようと思ってJavaを使った暗号の本を読んだことがあります. 型を意識してプログラムを書く習慣がなかった上, コンパイルが必要な言語にも触れたことがなく, 全く何もできずに時間も本を買ったお金もドブに捨てたようなものでした. 型を意識した設計はなかなか面白いのでそこを読むだけでも楽しいでしょう.
ちなみにこの型を意識した読解, ドイツ語やロシア語, ラテン語などを読むときにも役に立ちます. これらの言語は格の支配が強く, 格の支配を型支配のようにみなして読むと文が読めるようになります. ちょうどこの間, 私が語学・言語学を教わっている言語学者が「ドイツ語やロシア語では動詞を中心にした読解が大事」と言っていて, それに関連して私のロシア語の学習ログ(語学メルマガで共有している内容)をシェアしました. 私はこの感覚をまさにHaskellで学びました. 別に何でどう勉強してもいいわけで私の学習経路はふつうではないと思いますが, 型を重視した思考法が他でも役立つ事例として紹介しておきます.
ちなみに英語・フランス語・イタリア語・スペイン語あたりは格がほぼなく, 代わりに語順が重要です. 語順が型になっているとも言えるでしょう. このあたりは『理工系の総合語学』ネタとしてとても大事にしています.
まだ読み進めていないのでどこまでカバーされているか見えていないのですが, Gnuplotを使ったお絵描きをする意志が見える(Gnuplotのライブラリを使うプログラムが出てきているのと, Githubのlearn-physicsにもGnuplot連携がある)ので, 上で書いたお絵描き用の訓練はこの本の勉強からでも得られるでしょう.
実はライブラリはhmatrixを使っていてBLASやLAPACKの導入が必要です. 昔, Walck論文を見つけたときにWindowsで導入しようとして挫折した苦い経験があります. いまならDockerで何とかなるとは思いますが. あといま仕事でMacを使っているのですが, M1になってから余計に不自由になったようで, プログラミング環境の構築が死ぬ程大変です. その辺が書籍でどう扱われるかはかなり気になっています. 正式出版が10月らしいですが, 早めにコメントを入れれば環境構築まわりもドキュメント化してくれると思うので, いまがんばって読んでコメントを入れようとしている最中です. これも通信講座というか勉強会で採用したいと思っています. Haskellを勉強してみたい人もいるはずで, 私のメルマガの読者なら数学・物理と絡めてやりたいはずなので. 楽しみしかないです.
Julia(のStatsbase)に少しだけ貢献したので¶
貢献というのもおこがましいのですが, いまやっている統計学の勉強会でJuliaの統計学ライブラリを眺めていて, ドキュメントのタイポを見つけたので「ここおかしくない?」とissueを立てたら, 「確かにおかしいね」と修正してmasterに入れてもらえました.
OSSはみんなで応援して育てて行くべき対象なので, こんな程度でもちゃんと開発者の人達は応えてくれますよ, ということで.
今週の問題¶
- (特殊)直交行列は歪対称行列の指数関数で書ける.
半群理論なりベクトル場の局所一係数部分群の議論なり, もっと言えば行列の指数関数の処理を知っていれば, 歪対称行列の指数関数化$e^X$の特殊直交性は苦労なく示せます.
言われて見れば当たり前ですが, これの逆, つまり全ての特殊直交行列に対して$e^X$をみたす歪対称行列が取れるかを真面目に考えたことがありませんでした. リー群・リー環対応で前者は簡単にわかるので, そこで思考を止めていたのです. 上で書いたような話を知っていなくても線型代数の理論と計算が一定水準のレベルにあればそれほど苦労なく示せます. 行列の対数とも関わる話でなかなか趣深い面もあります.
何はともあれ, 逆も具体的にきちんと示したことがなかったのでいい勉強になりました. リー群とリー環は有名ですし, 耳学問レベルで「知ってはいるが証明したことがない」話がたくさんあります. 特にハール測度の存在はいまだにきちんと議論したことがありません. 具体的な計算モードに入っているので多様体論と表現論が深く絡む理論的な部分はだいぶ後回しになる予定ですが, いつかはきちんと埋めたいところではあります. リー群・リー環の表現論は量子力学のスピンはもちろんのこと, 素粒子系でも出てくるので, これも例と計算編マターとして取り込む予定だけはあります.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第四文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第四文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第四文¶
文構造¶
- Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита, "The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet,"
- в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
- согласно обычному представлению, "according to the usual notion,"
- в которых движется либо одно, либо другое из этих тел, "in which either one or another one of these bodies moves"
- в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
- The phenomenon observed here depends only on the relative motion of the conductor and the magnet, whereas, according to the usual view, the two cases in which either one or the other of these bodies moves must be strictly distinguished.
まず動詞を確認すると過去分詞のнаблюдаемое (observe), 三人称単数現在形のзависит (depend), 三人称単数現在形のдвижется (move), 原形のбыть (be)があります. したがって主文の他に従属文が二本あり, 接続詞・関係代名詞も二つあります. これにしたがって上にように分けました. 各要素を詳しく見ましょう.
Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита¶
動詞はзависит (depend)で三人称単数現在形なので, 主語は三人称単数, зави́сеть от + 属格でdepend onなので属格の名詞も必要です. ここではявление (phenomenon)が中性名詞の単数主格・対格なのでこれが主語, Наблюдаемое (observed)はявлениеにかかります. здесь (here), только (only)は副詞なので文構造上は無視できます. относительного (relative)は男性形で属格の形容詞, движения (движение, motion)は中性で単数属格または複数主格・対格なのでこのセットでзави́сеть отのотの支配を受けます. 最後にпроводника и магнита (conductor and magnet)は男性名詞単数形の属格, 男性名詞単数形の属格なので, of conductor and magnetの形でmotionを修飾します.
まとめると次のように英訳できます.
- The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet
в то время как, два случая, должны быть строго разграничены¶
動詞はбытьです. (TODO 不定形なのはどういうこと?)
まず冒頭のв то время какは熟語でwhile, whereasの意味です. должны (obligated, distinguished)は形容詞で複数形, строго (strictly)は副詞, разграничены (TODO これ何?)
- (TODO) whereas two cases must be strictly distinguished
согласно обычному представлению,¶
これは前置詞が導く副詞句です.
先頭のсогласно (according to)は与格支配の前置詞, обычному (usual)は男性与格, представлению (notion)は中性名詞の単数形与格です. (TODO 格は噛み合うが性が合わない. どう理解すべき?)
- according to the usual notion,
в которых движется либо одно, либо другое из этих тел,¶
これの動詞はдвижется (move)で不完全動詞の直説法三人称単数現在形です. ここから主語が決まります.
冒頭のвは前置詞格または対格支配の前置詞です. 次のкоторыхはwhichにあたる男性名詞・疑問詞・関係代名詞で, 複数形の属格または前置詞格, 活動体の対格です. (TODO 関係代名詞が受けるのは何? 文章からすればこれはслучая <- случайを受けるべきだが, случаяは単数(属格)では? случаяはдваを修飾し, これが複数だとみなす?)
ли́бо оди́н, ли́бо друго́й=either one or the otherの熟語表現に注意して続きを読みましょう. либо (if)は接続詞, одно (one)は男性名詞の中性単数主格・対格, другое (other, another)は限定詞で中性単数の主格・対格, из (from, out of)は属格支配の前置詞, этихはэтот (this)の複数属格・前置詞格・活動体与格, тел (body)は中性名詞の複数形属格です. したがってлибо одно, либо другоеがセットでeither one or the other, из этих телがセットでout of these bodiesです. либо одно, либо другоеは単数の主格と見るべきで, 動詞からしてもこの見立てが正しいです.
まとめると次のように訳せます.
- in which either one or another one of these bodies moves
単語¶
- наблюдаемое: 動詞, 不完了体: to watch, to observe; to study; to supervise, to take care of
- present passive imperfective participle of наблюда́ть (nabljudátʹ)
- явление: 中性名詞, 単数主格・対格, phenomenon
- зависит <- зави́сеть: 動詞, 不完了体: to depend (on), to rely (on) [+ от (genitive)]
- third-person singular present indicative imperfective of зави́сеть (zavísetʹ)
- здесь: 副詞, here
- только: 副詞: only, but
- от: 前置詞, 生格(属格)支配: from, since
- относительного <- относительный: 形容詞, relative
- 男性形, 属格, accusative animate
- движения <- движение: 中性名詞, 不活動体, 単数属格または複数主格・対格, motion
- inflection of движе́ние (dvižénije): genitive singular, nominative/accusative plural
- проводника <- проводни́к: 男性名詞, 活動体・不活動体: conductor
- inflection of проводни́к (provodník): genitive singular, animate accusative singular
- и: 等位接続詞, and
- магнита <- магнит: 男性名詞, 不活動体, 単数属格: magnet
- в: 前置詞, 副詞
- в то время как = while, whereas
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- prep., Adverb, infinitive marker: (en) at, in, into, per, to, (ja) に, (de) im, (fr) dans, (it) nel, (sp) en, (cn) 在, (tw) 在, (ko) 에, (ar) في, (fa) که در, (da) i, (el) σε, (eo) en, (hi) में
- то <- тот: 中性主格・対格, that, those, the one
- время: 中性名詞, 単数主格・対格, 時間
- как: 接続詞, 副詞, how, what, like, as, suddenly
- согласно
- 前置詞 (+ dative case, 与格支配), according to, as to
- 形容詞: short neuter singular of согла́сный (soglásnyj)
- обычному <- обычный: 形容詞, 男性与格, usual, customary
- представлению <- представление: 中性名詞, 不活動体, 単数形与格
- introduction, presentation, performance, idea, concept
- два: 男性・中性名詞, 数詞, 2
- случая <- случай: 中性名詞, 単数属格, case
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- которых <- кото́рый (kotóryj): 男性名詞, 疑問詞, 関係代名詞: which
- genitive/prepositional plural
- animate accusative plural
- движется: 不完全動詞, 直説法三人称単数現在形, move
- third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
- либо: 接続詞, if
- ли́бо оди́н, ли́бо друго́й = either one or the other
- одно <- оди́н: 男性名詞, 中性単数主格・対格, one
- nominative/accusative neuter singular of оди́н (odín)
- другое <- друго́й: 限定詞 other, another, different, else, next, second
- nominative/accusative singular neuter of друго́й (drugój)
- из: 前置詞, 属格支配
- from
- out of
- of, through
- этих: pl (demonstrative), inflection of э́тот (étot)
- genitive/prepositional plural
- animate accusative plural
- тел <- тело: 中性名詞,複数形属格, 体
- должны <- plural of до́лжен (dólžen), 形容詞, obligated
- быть: 動詞, 不完全動詞: to be
- строго
- 副詞: rigorously, strictly, strongly, pronouncedly, religiously, definitely
- 形容詞: short neuter singular of стро́гий (strógij)
- разграничены ?
2022-04-02¶
数学・物理 勉強会が役に立つ/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 通信講座の詳細
- すうがく徒のつどいの講演決定
- ツイート紹介: アラオグルの定理と量子状態空間
- 再宣伝: 江沢洋, 中村孔一, 山本義隆, 演習詳解力学第2版
- とうとう出版か: Scott Walck, Functional Programming for Physics Geeks
- 書評紹介: 「C&Fortran 演習で学ぶ数値計算」書評
- 記事紹介: オブジェクト指向関係の話
- 勉強会が役に立つ
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
通信講座の詳細¶
先週日曜にさらに少し話をして金銭的なところも詰めました. 概要については前回のメルマガを参照してください.
一度やった程度で身につくわけもないため, くり返し使える・使ってもらう意図で値段設定しています. 特に例と計算編のコンテンツの使い回しでもあるため, その購入者向け金額として三ヶ月で10000円で提供する想定です. これは月3000円相当で, もっと具体的に言えば「毎日ジュース一本我慢してもらう」くらいの費用感です. ジュース一本分の費用, そしてジュースを飲むような細切れの時間もうまく使ってもらうための通信講座だ, という精神性を反映した設定です. もう一つ, あとで説明する1500円版も作ります. ちなみに例と計算編を買っていない人には月5000円相当の費用感にする予定です.
これで大事なのはサポートです. 続けてもらうことが前提なので何かしら続けてもらうための場を用意します. もちろん費用から言ってそんなに手厚いことはできません. そして時々メルマガでも紹介しているように, 最近個人指導サービスがたくさん立ち上がってもいます. 手厚い個人サポートはそちらに任せてこちらはゆるく長く続けることを意図したサポートを実験します. 具体的にはここ数ヶ月, ENERGEIAで毎日やっているいまのもくもく会を有料サービス用に切り分け, 質疑応答の時間にあてます. このあたりがお互いに負担が少ない線ではないでしょうか. 専用の時間としては週二回, それぞれ平日と休日に一時間ずつくらいを想定しています. もちろん参加者の様子を聞きながら調整します. これ以外にも基本的に毎日私はENERGEIAで一時間もくもく会の時間を取っているので, そこに参加してもらっても構いません.
ちなみに金額とともにサポートは二種類考えています.
- 上位(3000円版): こちらは上記の有料サービス用でサポートつき: 具体的な質疑応答用のもくもく会つき.
- 下位(1500円版): 教材だけ配信して自分でもくもくとやってもらう.
こう書くと下位版には何もしないように見えるかもしれませんが, もちろん誤植の指摘に対する対応や, 内容の間違いに関する問い合わせには対応します. 単純な「ここがわからないので教えてほしい」といった質問への対応の優先度を下げるだけです.
通信講座はメール配信形式で, パスワードで保護したコンテンツ一覧ページも案内します. こちらは期間が終わってもずっとアクセスできるようにします. 各回ごとに確認問題や前回の復習, 関係する小ネタ紹介や応用例の紹介も入れる予定です. 定着させるためのくり返し学習には復習も重要なので, ここは気合を入れたいところです. ゆるく長く, そしてしつこく何度でも基本を確認できるような仕組みをブラッシュアップしつつ, 実践を積んでさらに練り上げていきたいと思っています.
いまコンテンツの記述整理をしているところで, それが終わったら正式に案内ページを作って募集をはじめる予定です. 何をしているかというと, 数学方式でベクトルの文字をふつうの細字の$x$などを使っていたのですが, 物理をやるなら太字にした方が気分が出る上, やはり便利なので変えることにしました. 来週のメルマガでは案内できる予定なので, ぜひ楽しみにお待ちください.
すうがく徒のつどいの講演決定¶
まだプログラム・アブストは公開されていないものの, 講演者は決まったようで, 私も応募が通りました.
素数判定のミニ講座に関する話をします. 特に数学とプログラミングの連携と, どう絡めて勉強していくかを議論します. これについて考えていて, また改めて大事な視点に気付いたのでその辺の話も盛り込みます. 講演が終わったら資料のスライドも公開する予定です.
ツイート紹介: アラオグルの定理と量子状態空間¶
先に書いておくと私のツイートではありません.
下記引用の内容について数学学としては現代数学探険隊の解析学編に載せてあります. 物理についてここまで詳しくないにせよ, 作用素環や赤外発散の視点からいくつか議論しています.
数学に飲まれずに物理にどう数学を使うのか, 気になる人はぜひ上記ツイートのツリー(または以下の引用)を読んでみてください.
引用¶
Alaoguluの定理(閉じた球は弱*位相でコンパクト)というものがあります。これをもって、量子あるいはGPTの状態の空間はコンパクトだ!と言えるかというと、いろいろと違います。 まず、小さな点から。Alaoguluの定理で球といっていることに注意。球面ではない。球面は、閉じてすらいないので、ここは本質。>つまり、トレースが1以下のものも全部いれておく。 ついて、弱*位相とは何者か。細かいことはさておき、「線形汎関数の空間」に入れる位相です。今の間合いであれば、有界作用素(値が有限の範囲に限られる物理量)の線形汎関数の空間です。これのうち、正でω(I)=1を満たすものたちの集合がコンパクトである、、 というのがAlaoguluの定理の主張になります。しかし、「正でトレースが1の線形汎関数」たちは、どのようなものが入るでしょうか。
量子よりも簡単な古典の場合を考えます。例えば、整数上の確率分布。これは普通の意味で状態と思っていいでしょう。しかし、「整数上の一様分布」はどうでしょうか。 もちろん、そんなものは確率分布としては存在しないのですが、「整数上に値を取る確率変数から実数への関数」としては定義できます。具体的には、有限なところで一様分布を作って、近似していった極限で作ればよい。 ところが、このようにして作ったものは、確率の法則のうち、非常に基本的な「σ加法性」、つまり「排反な事象の和事象の確率が事象ごとの確率の和になる」という性質を満たしません。 このことは、すぐにわかります。先の「一様分布」である一点からなる集合の「確率」を定義すると、ゼロにしかなりませんから。 こういたものも含めて、初めて「コンパクト」になります。もちろん、こういった状態も数学的にはすごく有用です。
例えば、ガウス状態族の最適クローニングの問題。このときは、一度状態の空間を、線形汎関数の意味での状態を含めて拡張しておいて、答えを出します。その上で、この状態に対応する密度演算子が存在することを証明します。 ですが、この線形汎関数としての状態は、「確率の和の法則」を満たしませんから、物理的な状態に入れないことが多いです。小澤先生の書かれた論文などでは、必ずや物理的な状態は密度作用素をもつ状態です。 「状態汎関数の意味での状態」は、かならずや密度をもつ状態で「近似できる」のですが、この「近似」はあまり性質のよいものでないことも、要注意だと思います。弱*位相をセミノルムの族で定義したのを見て「ほとんどノルムじゃん!」と早合点してしまうと、とんでもないです。
例えば、「整数上の一様分布」は、現実に存在する確率分布で「いくらでもよく近似できる。」 ですが、今精度を与えて、「この精度以下で近似する状態を探したい」とします。 すると、これは「どんな組の一連の観測するか」によって答えが変わってしまいます。ある観測の選択をしたときはこの状態が近似をあたえ、別の観測の時はあのまた別の状態が。。。となります。 なんでこんなことになるかというと、実は、先ほどの「一様分布」の構成が少し嘘を書いているからで。。。。本当は極限だけでは構成できなくて、「ある部分空間上で極限で定義しておいて、後はハーンバナッハの定理で拡張」という捻ったことをします。 つまり、「点列として収束する列がとれる」わけではない。 ですから、「観測の選択に、近似状態が依存する」のは、単に収束のスピードの話ではないです。「「一様分布」を含む任意の近傍の中に、少なくとも一つ確率分布がある」だけです。
再宣伝: 江沢洋, 中村孔一, 山本義隆, 演習詳解力学第2版¶
4月上旬新刊『演習詳解力学第2版』江沢洋/中村孔一/山本義隆(ちくま学芸文庫) 一流の執筆陣が妥協を排し世に送った至高の教科書。練り上げられた問題と丁寧な解答は知的刺激に溢れ、力学の醍醐味を存分に味わうことができる。
以前も宣伝した本だと思います. 私自身ちょうどこれから力学の通信講座をはじめますし, 興味のある方はぜひチャレンジしてみてください. 力学はそれ自身いろいろな工学への応用もあれば, 数学の常微分方程式論, 微分幾何・曲線としての展開も広く深くあり非常に面白い分野です.
いろいろな物理系の工学への応用まで考えれば, いまも現役でバリバリ使えます. モノにもよりますが, 自分で実験できるネタもあれば数値実験もあります. とにかくありとあらゆる角度から意味をつけられ楽しめる分野ですし, 数学的な展開もたくさんあります. 歴史的な話でいえば, ポアンカレの有名な話があるように天体力学はトポロジーの基礎でさえあります.
とうとう出版か: Scott Walck, Functional Programming for Physics Geeks¶
New Early Access Book: Functional Programming for Physics Geeks
素数判定ミニ講座でもコメントしていた論文の著者による本がようやく出るそうです. あなたもぜひ買って読みましょう.
これのAppendixに「A Installing Haskell」があるのですが, この本で使うHaskellの線型代数のライブラリ, hmatrixはバックエンドにBLASとLAPACKを使っています. 以前Windowsでのインストールで死ぬ程苦労して結局Windowsではインストールできずに諦めた経緯もあり, Windowsでの導入にはDockerなり何なりの工夫が必要なはずで, その辺を盛り込んでほしいという要望を早めに出さないと正式に出版されてしまうと思って, ちょっと焦っています. これをネタに何かやりたいと本当に思っているのですが, そこのサポートは本に盛り込んでおいてほしいので.
書評紹介: 「C&Fortran 演習で学ぶ数値計算」書評¶
これも数値計算本です. 数値計算をどこまで真面目にやるかはともかく, Cは何だかんだでいろいろなところでお目にかかってしまう可能性が高いとは言えます. やりたいことが他に大量にあるのでどう考えてもすぐに取りかかれませんが, 自分用の備忘録も兼ねて紹介しておきます.
記事紹介: オブジェクト指向関係の話¶
先日ほぼ純粋なプログラミングネタにも多少の反響があったので, 今回もちょっと紹介しておきます. 私もだいぶ前に読んでおけと言われたGoFのデザインパターンなど, オブジェクト指向に関する勉強は多少したのですが, あまりにも難しくていまだに全然わかっていません. 実際難しい上に現実に適用するのも大変という話が最近出てきていると思っていますが, 何だかんだでオブジェクト指向的なモノが世に溢れている中でどう対応するかが(私の)課題です.
上の記事の私の理解を簡単にまとめると次のような感じです.
- オブジェクト指向以前に, そもそも組み込み系や昔のハードのようにメモリなどの資源が限られた世界では可変(mutable)な要素でプログラムを組むしかなかった.
- この可変性はバグの温床になっていた.
- いまは(少なくともWeb系なら)ある程度コンピューター資源は潤沢に使えるから, それを前提にした不変(immutable)な要素の取り扱いが大事になってきている.
- パフォーマンス向上に直結する並行・並列処理でもimmutabilityをうまく使うのが大事.
- 関数型言語がいいというより, そこで培われた参照透明などの知見が役に立つ.
前述のScott Walck, Functional Programming for Physics Geeksはまさにこの関数型言語のHaskellで書かれています. 何というか「素人」におすすめできるような本または言語ではないと思いつつ, 物理・数学からの導入ならかえっていいのかもしれないという気もしています.
これをネタにした勉強会もよさそうですね.
勉強会が役に立つ¶
昔からの知り合いとクローズドでやっている統計学の勉強会, いまはJuliaにもっと慣れようの巻でJuliaの統計のライブラリ(集)であるJuliaStatsのコードを読んでいます. これがなかなか楽しいです. 恥ずかしながらライブラリのコードを本格的に読んだことがなかったので, そういう意味でも楽しいです. マクロの実装まで含めたマクロ利用(を意識した)プログラムの読み書きをしたこともなく, 読むだけでもかなり勉強になります.
Juliaとして標準的なプログラミングスタイルで書かれていると思いますし, それが見られるのもよいです. 多重ディスパッチも概念としてしか把握できていなかった部分が多かったものの, 実際のコードでどう使われているか, 実用的なコードとともに眺められているのが大きいです. (改名するらしい)SICMUtilsが採用しているClojureでも多重ディスパッチやマクロプログラミングを酷使する言語ですし, 対Clojure戦・SICMUtils戦の役にも立ちそうでいい感じです.
何度も言っているように, この手の「一人ではやる気は起きないがやってはみたいテーマ」を進めるのに, 勉強会というか他人を巻き込むのは本当にお勧めです. 人, 特に大人に時間を取ってもらって勉強会をやるので, 準備不足で挑むわけにはいかないからです. 嫌でも一定の時間を捻出する機運が生まれます. 何か勉強してみたいことがあるなら, ぜひあなた自分でも勉強会を立ち上げて人を巻き込んでみてください. 自分で立ち上げるのはちょっと, というなら以前から案内しているENERGEIAでの私の部活のもくもく会に参加してみるところからはじめるのも一つの手段としてお勧めしておきます.
私もここで面倒で作ってこなかったプログラミング系のコンテンツを作ってリリースにこぎつけたりしています. そういう普段やらないことを無理やりやる時間を作る手段として使うのもありですし, 私はまさにそういう使い方をしています.
今週の問題¶
今週は通信講座の準備で線型代数・リー群系のノート作りがほとんどできていません. 何もやらないわけにもいかないので, 今日の午前中に上でも連続ツイートを紹介した定理であるアラオグルの定理に関して, 改めて事実をまとめたノートを作りました.
- 無限ヒルベルト空間の単位球面は強閉である
- 無限ヒルベルト空間の単位球面は強コンパクトではない
- 無限ヒルベルト空間の単位球面は弱閉ではない
- 無限ヒルベルト空間の単位球面は弱コンパクトではない
- 無限ヒルベルト空間の単位球は弱コンパクトである
- 無限次元単位球面は単位球の中で弱稠密である
いくつかは解析学編でも触れているのですが, 断片的になっている部分もあるため, 改めて例と計算編に関数解析の章を追加してまとめました. どれも関数解析を勉強したと自称するなら自力で証明をつけられないといけない問題です. そしてどれも無限次元固有の現象であり, 関数解析の基礎を華やかに彩る言明です.
上で紹介した藤井さんの言明では量子力学基礎系の話題に触れていますが, よくも悪くも無限系の統計力学や場の量子論の数学的側面でも大事な性質です.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第三文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第三文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第三文¶
今週から翻訳作成修行に並行してロシア語文法学習を再開しました. 簡単に全体像メモと暗記用の表を作っているところで, この暗記作業を進めつつ翻訳パートを整備していく予定です. 暗記は本当につらいのですが, 逃げると逆に後がつらいのではじめに気合を入れてやらねばなりません. 文法学習と単語・活用暗記がないと毎回その調査で面倒なことこの上ないので, やらざるを得ない状況を作るための翻訳学習でもあります.
文構造¶
- Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита, "The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet,"
- в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
- согласно обычному представлению, "according to the usual notion,"
- в которых движется либо одно, либо другое из этих тел, "in which either one or another one of these bodies moves"
- в то время как, два случая, должны быть строго разграничены "whereas two cases must be strictly distinguished"
- The phenomenon observed here depends only on the relative motion of the conductor and the magnet, whereas, according to the usual view, the two cases in which either one or the other of these bodies moves must be strictly distinguished.
まず動詞を確認すると過去分詞のнаблюдаемое (observe), 三人称単数現在形のзависит (depend), 三人称単数現在形のдвижется (move), 原形のбыть (be)があります. したがって主文の他に従属文が二本あり, 接続詞・関係代名詞も二つあります. これにしたがって上にように分けました. 各要素を詳しく見ましょう.
Наблюдаемое явление зависит здесь только от относительного движения проводника и магнита¶
動詞はзависит (depend)で三人称単数現在形なので, 主語は三人称単数, зави́сеть от + 属格でdepend onなので属格の名詞も必要です. ここではявление (phenomenon)が中性名詞の単数主格・対格なのでこれが主語, Наблюдаемое (observed)はявлениеにかかります. здесь (here), только (only)は副詞なので文構造上は無視できます. относительного (relative)は男性形で属格の形容詞, движения (движение, motion)は中性で単数属格または複数主格・対格なのでこのセットでзави́сеть отのотの支配を受けます. 最後にпроводника и магнита (conductor and magnet)は男性名詞単数形の属格, 男性名詞単数形の属格なので, of conductor and magnetの形でmotionを修飾します.
まとめると次のように英訳できます.
- The observed phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and magnet
в то время как, два случая, должны быть строго разграничены¶
動詞はбытьです. (TODO 不定形なのはどういうこと?)
まず冒頭のв то время какは熟語でwhile, whereasの意味です. должны (obligated, distinguished)は形容詞で複数形, строго (strictly)は副詞, разграничены (TODO これ何?)
- (TODO) whereas two cases must be strictly distinguished
согласно обычному представлению,¶
これは前置詞が導く副詞句です.
先頭のсогласно (according to)は与格支配の前置詞, обычному (usual)は男性与格, представлению (notion)は中性名詞の単数形与格です. (TODO 格は噛み合うが性が合わない. どう理解すべき?)
- according to the usual notion,
в которых движется либо одно, либо другое из этих тел,¶
これの動詞はдвижется (move)で不完全動詞の直説法三人称単数現在形です. ここから主語が決まります.
冒頭のвは前置詞格または対格支配の前置詞です. 次のкоторыхはwhichにあたる男性名詞・疑問詞・関係代名詞で, 複数形の属格または前置詞格, 活動体の対格です. (TODO 関係代名詞が受けるのは何? 文章からすればこれはслучая <- случайを受けるべきだが, случаяは単数(属格)では? случаяはдваを修飾し, これが複数だとみなす?)
ли́бо оди́н, ли́бо друго́й=either one or the otherの熟語表現に注意して続きを読みましょう. либо (if)は接続詞, одно (one)は男性名詞の中性単数主格・対格, другое (other, another)は限定詞で中性単数の主格・対格, из (from, out of)は属格支配の前置詞, этихはэтот (this)の複数属格・前置詞格・活動体与格, тел (body)は中性名詞の複数形属格です. したがってлибо одно, либо другоеがセットでeither one or the other, из этих телがセットでout of these bodiesです. либо одно, либо другоеは単数の主格と見るべきで, 動詞からしてもこの見立てが正しいです.
まとめると次のように訳せます.
- in which either one or another one of these bodies moves
単語¶
- наблюдаемое: 動詞, 不完了体: to watch, to observe; to study; to supervise, to take care of
- present passive imperfective participle of наблюда́ть (nabljudátʹ)
- явление: 中性名詞, 単数主格・対格, phenomenon
- зависит <- зави́сеть: 動詞, 不完了体: to depend (on), to rely (on) [+ от (genitive)]
- third-person singular present indicative imperfective of зави́сеть (zavísetʹ)
- здесь: 副詞, here
- только: 副詞: only, but
- от: 前置詞, 生格(属格)支配: from, since
- относительного <- относительный: 形容詞, relative
- 男性形, 属格, accusative animate
- движения <- движение: 中性名詞, 不活動体, 単数属格または複数主格・対格, motion
- inflection of движе́ние (dvižénije): genitive singular, nominative/accusative plural
- проводника <- проводни́к: 男性名詞, 活動体・不活動体: conductor
- inflection of проводни́к (provodník): genitive singular, animate accusative singular
- и: 等位接続詞, and
- магнита <- магнит: 男性名詞, 不活動体, 単数属格: magnet
- в: 前置詞, 副詞
- в то время как = while, whereas
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- prep., Adverb, infinitive marker: (en) at, in, into, per, to, (ja) に, (de) im, (fr) dans, (it) nel, (sp) en, (cn) 在, (tw) 在, (ko) 에, (ar) في, (fa) که در, (da) i, (el) σε, (eo) en, (hi) में
- то <- тот: 中性主格・対格, that, those, the one
- время: 中性名詞, 単数主格・対格, 時間
- как: 接続詞, 副詞, how, what, like, as, suddenly
- согласно
- 前置詞 (+ dative case, 与格支配), according to, as to
- 形容詞: short neuter singular of согла́сный (soglásnyj)
- обычному <- обычный: 形容詞, 男性与格, usual, customary
- представлению <- представление: 中性名詞, 不活動体, 単数形与格
- introduction, presentation, performance, idea, concept
- два: 男性・中性名詞, 数詞, 2
- случая <- случай: 中性名詞, 単数属格, case
- в: 前置詞
- (location) in, at, on [+prepositional]
- (direction) to, in [+accusative]
- (time) at, in, on [+accusative]
- per [+accusative]
- которых <- кото́рый (kotóryj): 男性名詞, 疑問詞, 関係代名詞: which
- genitive/prepositional plural
- animate accusative plural
- движется: 不完全動詞, 直説法三人称単数現在形, move
- third-person singular present indicative imperfective of дви́гаться (dvígatʹsja)
- либо: 接続詞, if
- ли́бо оди́н, ли́бо друго́й = either one or the other
- одно <- оди́н: 男性名詞, 中性単数主格・対格, one
- nominative/accusative neuter singular of оди́н (odín)
- другое <- друго́й: 限定詞 other, another, different, else, next, second
- nominative/accusative singular neuter of друго́й (drugój)
- из: 前置詞, 属格支配
- from
- out of
- of, through
- этих: pl (demonstrative), inflection of э́тот (étot)
- genitive/prepositional plural
- animate accusative plural
- тел <- тело: 中性名詞,複数形属格, 体
- должны <- plural of до́лжен (dólžen), 形容詞, obligated
- быть: 動詞, 不完全動詞: to be
- строго
- 副詞: rigorously, strictly, strongly, pronouncedly, religiously, definitely
- 形容詞: short neuter singular of стро́гий (strógij)
- разграничены ?
2022-03-26¶
数学・物理 ミニ講座完成/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 勝手に宣伝: 長谷川雄之, 数論アルゴリズムの数学的基礎
- 勝手に宣伝: 雪田修一, 代数学のレッスン 計算体験を重視する入門
- ツイート紹介: 楕円曲線の魅力
- 勝手に宣伝: 沙川さんが本を出すらしい
- 勝手に宣伝: 片桐孝洋・大島聡史, C&Fortran 演習で学ぶ数値計算
- 勝手に宣伝: 宮岡礼子『極小曲面』
- ツイートから: 場の量子論の数理物理の研究者
- 大島利雄先生のPDF紹介: Japanese TheoremとRisa/Asir
- 例と計算編をもとにした通信講座を作ろう
- 通信講座の具体的な話
- プログラミングのミニ講座, 素数判定編完成
- 適切な言語で読む
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
勝手に宣伝: 長谷川雄之, 数論アルゴリズムの数学的基礎¶
3月下旬新刊『数論アルゴリズムの数学的基礎』長谷川雄之(学術図書出版) 理工系の学生を対象として,初等整数論とその応用について解説する目的で書かれた.
- ユークリッド互除法
- 合同式
- オイラー関数
- 原始根
- 平方剰余の相互法則
- ミラー?ラビン判定法
- リュカ数列
- 2次ふるい法
ちょうどいま進めているプログラミングミニ講座のテーマとしてばっちりそうでとても気になっています. これ以外にも勉強しないといけないこともあって, なかなか時間取れないですえん. とりあえず読書リストに突っ込んでおきました.
勝手に宣伝: 雪田修一, 代数学のレッスン 計算体験を重視する入門¶
4月上旬新刊『代数学のレッスン 計算体験を重視する入門』雪田 修一(日本評論社) 代数学でつまずいた学生を想定して書かれた本。演習問題で計算体験を習得し、証明のパターンを身に着けることに主眼を置いた。
この『演習問題で計算体験を習得し、証明のパターンを身に着ける』が重要です. 今年, 例と計算編を展開している大きな理由です. まだ出版されておらず中身を見たわけではないのでこの本自体の評価はできませんが, 例と計算編の意義をサポートしてくれる本でもあるため注目はしています. まだしばらく純代数の議論には進められないので, もしあなたが代数に興味があるなら手に取ってみてはどうでしょうか.
ツイート紹介: 楕円曲線の魅力¶
面白いツイート群だったのでまとめておきました. 楕円曲線も一度きっちり勉強してみたい対象です.
数学詳しい人に聞きたいけど、楕円曲線ってなんで豊かな性質を持つのですか?もっと高次式の曲線考えたらそれも楕円曲線みたいに豊かな性質持ちますか? 人類はまだ高次の曲線の性質を知らないから楕円曲線の研究をやってるのか、もうすでにいろいろ分かった上で楕円曲線が特別に面白いのかどっちなんだろ。
(ガチの代数勢でないので詳しくは知らないですが、)昔見た動画。 楕円曲線はなぜ特別か?@第10回日曜数学会 お酒を飲みながら数学の話をするイベント「日曜数学会」。そのメイン企画である数学LT(5分間の発表)...
座標の有理式で書ける点と点の演算が定義され、曲線そのものがそれでアーベル群になるからでしょう。こういう性質を持つ曲線は楕円曲線しかありません。(高次の曲線への拡張(ヤコビ多様体)もあるけれど、関係は直接ではないし、手でかけるほど簡単でもない)
これに対してもう少し詳しい話.
「楕円曲線はなぜ豊かな性質を持つのか?」というのは大変興味深い問いだと思います。 「穴の数が1個だから」という答えが僕の理解です。 例えば楕円曲線が持つ豊かな性質として、その幾何学と非常にマッチした「群構造」があります。?/(格子) という構造を持つと言い換えても良いです。
上の話をまとめると、楕円曲線が持つ様々な性質のうち群構造については 穴の数が多い曲線に対しては一般化できず、代わりに?^g/(格子)に一般化できる ということです。 となると群構造以外の他の性質はどうかが気になりますが、どうやらあまり研究が進んでおらず未解明の部分が多いような気がします。 例えば、楕円曲線が持つ豊かな理論の一つに楕円関数論がありますが、これを他の曲線に拡張する研究は他分野ほどは進んでいない印象があります。 (※楕円関数論の拡張については、岩手大学の大西良博先生が大変興味深い研究を精力的にされております。参考:URL ……というような事情から、 「高次式の曲線も楕円曲線のように豊かな性質を持つか?」 という元ツイ2番目の問いに対しては ・元の曲線は持たないがC^g/(格子)が持つ性質もある ・持つかどうか未解明な性質もたくさんある というのが私の持ちうる答えになります。 ※ここで「高次式の曲線」と「穴の数が多い曲線」を同一視して話をしています。一般に曲線の定義方程式の次数が上がると穴の数も上がります。
ここで 「楕円曲線が豊かな性質を持つのは穴の数が1だからだ」 という最初の話に立ち返ってみたいと思います。 これは逆に言うと 「曲線の穴の数が1なら豊かな性質を持つ」 と言ってしまえそうです。 ※対偶ではないので論理的には間違っています 3月19日 そこで、抽象度の高い数学の理論では 「穴の数が1の曲線を楕円曲線と呼ぶ」 としてしまうのです! ※数学ではこういう逆転現象がよく起こります 実際のところ、この定義は元々の楕円曲線の定義と等価であることが分かります。 y^2 = ax^3 + bx^2 + cx + d という定義方程式を持つ曲線だ、というものです 「穴の数が1の曲線を楕円曲線と呼ぶ」 という定義を採用することのメリットは、適切な高次元化の方向性を考えやすくなるということです。 この方向性での高次元化としてカラビ・ヤウ多様体というものが考えられ、現在非常に活発に研究されています。
※1次元カラビ・ヤウ多様体が楕円曲線
まとめると、 「楕円曲線はなぜ豊かな性質を持つのか?」 という問いは 「楕円曲線の穴の数が1だから」 と答えることができ、しかもこの答えを掘り下げることで現在最前線で研究されている概念(カラビ・ヤウ多様体)に到達できる、ということになります。 元の問いの重要性が分かると思います。 ここで書いたことは脇道に面白い話題がとてもたくさん転がっていて、本当はそれも話したいのですが、思っていたよりずっと分量が長くなってしまったのでここで打ち切ります。 この話題で僕が大好きなモジュラー曲線について触れないのは僕にとって有り得ないことなのですが、ぐっとこらえました(笑)
楕円曲線は代数曲線で閉リーマン面と関係があります. リーマン面については別途サイト内にに参考情報を書いています. ぜひ参考にしてください. リーマン面もいったんノートを書いたきり, きちんと復習できていないのでこれもどこかできちんと整理したいとは思っています.
勝手に宣伝: 沙川さんが本を出すらしい¶
4月発売(arXiv版あり) Entropy, Divergence, and Majorization in Classical and Quantum Thermodynamics
6月発売第2版 量子測定と量子制御 2016年 03 月号 [雑誌] (数理科学 別冊) URL
7月発売シリーズの「非平衡熱力学」 基本法則から読み解く物理学最前線
量子情報・測定まわりの量子力学は前から気になっていますし, ノーベル賞のパリージの場の理論・統計の本が面白いというのも見てから改めて統計力学熱が高まっていますし, この間相談を受けてから熱力学熱も高まっています. きちんとノート作りつつ再勉強しつつ, コンテンツ化もしたいですね.
勝手に宣伝: 片桐孝洋・大島聡史, C&Fortran 演習で学ぶ数値計算¶
これも読んでみたい本です. 数値計算も体系的に勉強したわけではありません. CやFortranだと何でグラフやアニメーションを作るのでしょうか. Gnuplot? お絵描きが絡んだところで腐りにくいコードを何でどう書くか, いまだに解が見えていません. 数値計算はほんの一歩進んだだけで一気にとんでもなく難しくなることもあり, どこまでどう手を出すかも難しいです.
勝手に宣伝: 宮岡礼子『極小曲面』¶
唐突ですが、間もなく「共立叢書 現代数学の潮流」の新刊を発行します。本書は、他分野に及ぼす影響も期待される、と言われている「極小曲面」に関する書です。https://kyoritsu-pub.co.jp/series/18/
本書は、極小曲面論が研究の原点でもあった筆者による、極小曲面論の基礎を中心として執筆された書籍である。基本を身に付けることができるよう、Euclid空間内に議論を絞り、関数論的アプローチと幾何解析的アプローチ、双方の良いところを取り入れ、解説している。また、前半は多くの知識がなくとも理解できるように、また後半は専門的な議論もあるが、今後の研究の展開につながるように、意識して書かれている。さらに、類書にはあまり見られないPlateau問題の解の存在とレギュラリティについても解説しており、価値の高い1冊と言える。
関数論と幾何解析という私の興味があるところにフォーカスがあるようで, とても気になっています. 関数論や微分幾何もいろいろノートを作ったのですが, その見直しさえできていません.
ツイートから: 場の量子論の数理物理の研究者¶
トポス量子論は全く把握していませんが、場の量子論の数学方面で、作用素論方面だと新井朝雄先生とそこの関係者(北大の宮尾さん、信州大の松澤さん、佐々木格さん、鈴木章斗さん)あたりがいます。 後は確率論と作用素論で九大の廣島先生(とその関係者)がいて、作用素環だと定年退官されていますが小嶋泉先生とその関係者(例えば西郷さん)がいます。完全に数学としてやっている人なら東大の河東先生もそうです。 九大は原さんもいますし、比較的近いと言えば近い厳密統計力学の松井先生も九大です。あと服部さんはTwitterにもいます。これは私の守備範囲の解析系の人達です。場の量子論ではなく超弦系なら何というかいっぱいいます。 mp_arcやarxivのmath-phを眺めていると、人と研究の様子がわかるので眺めてみてはどうでしょうか。ずっと眺めているとどんなキーワードで調べると何が出てくるか、どんなテーマやどんな人の研究に興味があるかも少しずつ見えてきます。
大島利雄先生のPDF紹介: Japanese TheoremとRisa/Asir¶
大島利雄先生による「Japanese Theoremについて」相変わらずRisa/Asirに対するHackがすごいです.https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~oshima/lecture/sangaku0.pdf os_muldif.pdf が540ページ超えてる.https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~oshima/muldif/os_muldif.pdf
大島先生に関して次のような逸話を聞いたことがあります.
研究科長のような職につくと事務の負担でふつうは研究が捗らなくなり, 出せる論文も減るのがふつうだろうが, 大島先生は東大の研究科長になって論文数が増えた. 理由はライブラリを書かなくなったから.
上の引用にもあるように大島先生はプログラムをゴリゴリ書ける人で, 研究をはじめるときにはまずライブラリの整備からはじめるそうです. 研究科長になって時間が取れなくなるから, とプログラムを書かないようにして研究時間を捻出したとか.
当人から聞いたわけでもないので完全に真偽は保証できないものの, 化け物クラスの人類ではあることも間違いありません.
例と計算編をもとにした通信講座を作ろう¶
この間いくつか相談を受けたので, 改めて通信講座を作る予定です. あとでまたきちんとした文章を書く予定ですが, いったんいくつか考えていることをシェアしておきます.
まずどのような要望があったか整理します.
- 大学レベルの数学や物理がやりたい.
- 理工系の共通言語としてきちんと理解したい.
- 必ずしも数学・物理が専攻だったわけでもなく, 教養レベルの内容も定着しているわけではない.
- 自分自身の専門を含め, いろいろな分野を勉強する上で障害になっている. 必要だから勉強しなければならない面もあるが, 数学や物理が純粋に面白いとも思っている.
- 一人ではなかなか続けられない. 行き詰まったときには相談できる相手もほしい. 独学では勘違いしたままになってしまうかもしれない.
- 自分でペースを作るのは大変だから予め小分けにしてもらえると嬉しい.
- 通信講座の形式は魅力的.
- (以前私が展開していた通信講座は)値段もお手頃だったので, このくらいだと嬉しい.
- 物理では熱力学や量子力学など, 単なる教養を越えて幅広く勉強したい.
- 毎回確認のミニクイズなどもあると嬉しい. クイズには解答もほしい.
細々とした話はもっとありますが, おおよそこんなところです.
以前やっていた現代数学探険隊解析学編はさすがにハードすぎます. 時々メルマガでも宣伝協力しているように, 最近個人指導系のサービスはかなりたくさんできていますし, 個人で請け負っている人もそれなりに見かけます. ただ個人指導系はかなりの金額になるため, 何かいい落とし所を作りたいとはずっと思っていました. 例と計算編のコンテンツ販売もその一つです. そして今回, 実際にお問い合わせも入ったので, モニターになってもらっていい落とし所を探ろうと思っています.
いま考えているのは, 例と計算編の拡充を進めつつ, これをもとにした通信講座コンテンツです. 具体的に要望をもらったところから整備しようと思っていて, 特に物理の方, 古典力学からはじめたいと思っています. これは常微分方程式とそのシミュレーションの観点から, プログラミング系のネタ・コンテンツも作りやすい利点があります.
以前YouTubeに古典力学の動画を投稿していて, ちょうどそのコンテンツの資産もあります. それを通信講座として整え直そうと思っています. いい感じに微分積分の復習もできますし, 運動学として曲線論(微分幾何入門)にも触れられます.
問題は料金と課金体系です. 例と計算編をもとにする以上, その購入者の方に対する金額には配慮が必要です. 一方で通信講座の運営という点で別のサービスでもあり, その運営費用も必要です.
あと, どうしても外せない大事な点があります.
- 一度では身につかないから何度もくり返し取り組んでほしい. (気軽にくり返し受講できる金額・課金体系が必要.)
- あまり長期だと集中が切れる上, 社会人だと長期にわたると状況も変わってくるため, 長くても3ヶ月ワンセットくらいの塊で提供したい.
- 一回分はなるべく短く.
- お金を出したからこそ続く.
最後の項目はこの間全然違う知人と話したときの話でもあります. 安くないお金を払ったのだからやらないと損だ, という話でもあります. そういえば, 上に書いたように(多少間違い(タイポ)もあるのは許してもらうとして), 古典力学などいくつかのコンテンツはYouTubeに放流しています. リストにまとめてもいるのでそれで勉強したい方はそれで進めてもらっても構いません. 異様なやる気を継続できるなら問題ないでしょうが, そうではないと思っているから通信講座を作る話になっています.
ちなみに, 私自身, 有料の通信講座を止めている間, 調査も兼ねていろいろな通信講座に参加していたことがあります. 例えば一週間に一度, 15分程度の動画コンテンツが一年半配信される講座を受講していて, この程度でも結構大変でした. もちろん興味があってそれなりの金額を払ったにも関わらず, 少し気を抜くと後回しにしがちでした. 最終的には気合を入れて必ず勉強の時間をおさえて取り組んではいたものの, 一定の興味があって受講した講座さえ, 毎週15分がこれ程きついのかと驚いた経験があります. やる気があったはじめの二ヶ月程度はともかく, やはり一年半の長丁場がきついのは実体験としてあります. せっかく相談を頂いたので, 自分の講座としてこのあたりを調整するいい機会だと思っています. きつすぎず, 気分もリフレッシュしつつ, モチベーションを保ちながらテンポよく勉強できる通信講座の形を探っています.
長くなってきたのでいったん切ります.
通信講座の具体的な話¶
まずは改めて予定している内容を書きます. 正直ベースで書いておきます.
- 例と計算編を追記・整理しながら, テーマごとに切り貼りしてコンテンツ集の形にして配布する.
- 2-3ヶ月の短期(?)集中講座にする.
- たくさん作りたい.
- バリバリ進めたい人向けにその期間分のコンテンツ全体は配布してしまいたい.
- これとは別に各回のコンテンツを配布する.
- 短期集中の特性を活かして, 一週間に二回配布程度の頻度にしたい.
- 一回分はなるべく小さくする.
- 上位(?)コースではオンライン自習室を作り, そこで簡単な交流や質疑応答対応する.
- 下位(? 安価な)コースでは原則コンテンツ配布だけ.
- 念のため: コンテンツのタイポ指摘・確認などを含めた問い合わせは当然受け付ける.
- 必要に応じて複数回受講を前提にする.
- まず私自身の負担を小さくする目的がある: 質疑応答は大変なのでなるべく減らしたい.
- ハードな質疑応答が続いてしまって疲弊するのを避けたい.
- (現状)専業で数学・物理教育をしているわけでもなく, 私が潰れたら元も子もない.
- もちろん配布するコンテンツの質自体には妥協しない.
- 全体像を掴むのも大事なのであえて細かいところにこだわりすぎないスタイルの勉強法を推したい.
- 仕事や種々のプライベートもある大人で細かいところにこだわりすぎると全く進まない.
- 一回やってわからなくてもずっと続けていれば三年後くらいにわかる可能性もある.
- のんびりじっくり進めてほしいし, 折に触れて気軽に復習できるようにもしてほしいし, それを促しもしたい.
- まず私自身の負担を小さくする目的がある: 質疑応答は大変なのでなるべく減らしたい.
この基本方針のもとでコンテンツの配布法や金額も決めます. 例と計算編を買った人には当然その分安くします. 私がメンテしやすいような仕組みも必要で, 細部はまだまだ詰める必要があります. 本当に細かい部分はやりながら調整する予定です.
ここでも適宜案内はする予定ですが, もしあなたが通信講座に興味があれば, メールなり何なりでご連絡ください.
プログラミングのミニ講座, 素数判定編完成¶
上記ページにミニ講座本体の三コンテンツへのリンクと, メール講座用の原稿が置いてあります. 一応メール講座登録ページへのリンクも置いておきます.
コンテンツと原稿は上のページに置いてあるので, もしあなたがバリバリ読み進めたいなら, メール講座を待たずにどんどん読み進めてしまってください.
タイトル通り素数判定の話で, ごく基本的な話しか書いていません. 他にも何というか「物理学科の数学スタイル」というか, 「習うよりも慣れろ」方式で書いています. これは世にいろいろな本やコンテンツがあること, 陳腐化を回避するための対処でもあります. プログラミング学習として基本的なことは意図的にほぼ省いてあり, これでどこまで受け入られるかの調査の意味もあります.
これはこれで計算に力点を置いてあり, 今年のテーマ, 例と計算の一環です. メール講座では数学系プログラミングの学習案内も書いています. 一応リンクも張っておきます.
- メール講座第一回 プログラムも使ってたくさん計算しよう
- メール講座第二回 プログラム利用の意義: 教えることで深く学べる
- メール講座第三回 素早く大量に計算する
- メール講座第四回 プログラミング学習の落とし穴
- メール講座第五回 中高数学学習コンテンツの案内
- メール講座第六回 馬鹿みたいに計算しよう
- メール講座第七回 競プロで遊ぼう: AtCoderの紹介
- メール講座第八回 アルゴリズムをしっかり
- メール講座第九回 計算力を身につけよう
特に第五回以降が学習案内です.
久しぶりに本格的に活動しようと思っていて, TwitterかFacebookで広告を打ってみようと思っています. もしあなたも宣伝協力して頂けるなら, メール講座登録ページをぜひ紹介してください.
もちろん「これだとこういう点が勉強しにくい」といったご批判も大歓迎です. あと地元の区議の方にも改めて活動報告しないといけないですね.
適切な言語で読む¶
中高の古典の授業、枕草子の音読課題で先生が「君ら関西人なんやから関西弁で読みなさい。当時の標準語は京言葉やで」と言うので関西アクセントで読んだら、訳のわからなかった呪文が途端に生きた言語としてスルッスル入ってきたカルチャーショックから 古典を好きになったきっかけは何ですか
いやほんとあの体験は凄かった 関西弁で読むだけで聞き慣れない古典単語や文法も感覚的に意味が通じるんだもの あの感動が忘れられなくて、阿岐の書く平安小説の登場人物はああいう口調なのです そしてこれは大学受験あまりに関西人有利では、と圧倒的不公平を感じもした だから関西圏の高校生には社会は日本史選択にしとけと思うし古典を出題する大学を受験しろと思う 平安京藤原京長岡京の位置関係を問う問題で悩まないでいいのは君らだけの福音なんだぞ門前の小僧ども! 世の中、単語帳で必死に覚えなければ「淀川」の河川名を忘れてしまう人のほうが多いんだよ?
(こっちにもぶら下げておこう) 10代の多感な頃にそういう衝撃を受けると大人になって平安時代舞台の歴史小説とか書いちゃうんだぜ、もちろん台詞は古語+京言葉??
語学ネタに入れるべきかもしれませんが, あえてこちらに入れました. プログラミング言語ネタとしての議論でもあり, 数学や物理の話でもあります. やはり自然に関する議論がしたければ, 自然言語よりも数学を使うべきでしょう. プログラミング言語にしても, 問題ごとにある程度は適切な言語があります. トレードオフがあるにせよ, 高速な処理が必要なところで遅い言語でがんばるのは非効率です.
メモだけしておいて何を書こうとしていたか忘れてしまいました. 思い出したらまた何か書きます.
今週の問題¶
- 行列不等式を(も)背景にした不等式(広義の二次形式)
- 一次元のアフィン変換群
不等式処理能力を持つ大学受験生はそうそういないという点で実際にはまずありえないとは思うものの, 前者は大学受験でもありそうな和に関する不等式が, 二次形式, もっと言えば正型関数・特性関数・ボホナーの定理関係の深い議論につながり, さらに量子情報系の議論にまで発展します. 例えば完全正値性と関係があります. 2022-03-26時点では例と計算編の「2.9.3いろいろな不等式, 2.9.3.2 広義の二次形式」に収録しています. ボホナーの定理は解析学編でミンロスの定理として何度か触れています. 通信講座とも絡めた販売中のPDFコンテンツには入っていませんが, 手元の解析学編の続編ノート中, 確率論パートには収録してあります.
全然関係ない(はず)ですが, 微分幾何でもボホナーの定理という有名な定理があります. これも未公開の微分幾何ノートには収録してあります. いったんゴリっとノートを書いたきり, 詳しくチェックしていないのでタイポなどが大量にあり, 公開できるレベルではありません. これも早く公開したいとは思っていますが, まだまだ時間がかかります.
一次元のアフィン変換群は非コンパクトで非可換かつ連結な二次元リー群です. リー環や指数写像が具体的に書ける上, いろいろな計算もやりやすいのでこれも例と計算編としては一つ大事な対象です. これはいったん幾何編の線型代数パートに突っ込んでいて, 例と計算編に移動するかどうか考えているところです. 幾何編で行列リー群の一般論の指数写像につなぎで入れたのですが, 具体例にうつした方がいいかを検討中です.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第二文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- ドイツ語Zucker
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第二文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
ドイツ語Zucker¶
私が所属している語学コミュニティのウクライナ語の講義中に出た話題をちょっと調べてみたら面白い話が出てきたので.
ウクライナ語の「砂糖」はцукорと書き, カタカナで無理やり読みを書けば「ツコル」です. 上記リンク先を見るとわかるように, ポーランド語cukierやドイツ語Zuckerの借用語で, Zuckerは英語sugarと同根です. さらにWiktionary先生によると, Zuckerはアラビア語・ペルシャ語・サンスクリットと同根です.
面白かったのは英語のところです. 人名由来でありつつ微妙に意味も交錯するZucker ratのような概念もあるようでちょっとびっくりしました. 例えばZucker fatty ratという概念があります.
- 由来
1961年 Zucker らにより13C 系ラットとM系ラットの交雑種13M 系の中に突然変異体として発見された。
1980 年代前半、米国インディアナ大学において通常は糖尿病を発症しない肥満モデルであるZucker fatty ラットの中に糖尿病を発症するラットが見い出された。これらのラットを選択的に交配することにより確立された自然発症糖尿病モデルが Zucker Diabetic Fatty (ZDF) ラットである。
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第二文¶
文法を並行して勉強中なので, まだよくわかっていない部分があります. 他にもわかった気になっているだけで実際には全くわかっていない(間違っている)部分もあるでしょう. 変なところがあればぜひ教えてください.
ついでに, ゼレンスキー演説をネタにウクライナ語 (いま話題なように一応ロシア語とも近い)を勉強したいとも思っています. 各国の演説で各国への翻訳はあっても原文が見当たりません. 日本のウクライナ大使館アカウントにもリプライを飛ばしてみましたが, 返信がない状態です. もしかしたらウクライナ本国のサイトには演説原文が置いてあるとか, 他にも何かしらどこかしらに演説原文があるかもしれないと思ってはいますが, ウクライナ語(またはロシア語)はまだ全然読めないので探せません. もしあなたがご存知でしたらぜひ教えてください.
文構造¶
- Вспомним электродинамическое взаимодействие между магнитом и проводником с током.
- например
напримерは副詞の挿入で, 残りがシンプルな文です.
TODO 先頭のВспомним (to recall)が動詞です. 上記の英訳ではtakeが対応しています.
электродинамическое (electrodynamic)は形容詞の対格で, взаимодействие (interaction)は中性名詞の主格または対格なので, взаимодействиеは対格で, электродинамическоеが修飾しているとみなせます. между (between)は具格支配の前置詞で, магнитом (и) проводникомはともに具格だからこれらがセットです. ここでиはandの意味の等位接続詞です. さらにсは具格支配の前置詞でтоком (current)も具格だからこれらもセットです.
まとめると次のように英訳できます.
- Recall, for example, electrodynamic interaction between a magnet and a conductor with current.
単語¶
- вспомним <- вспомнить: 動詞, to remember, to recall, to recollect
- first-person plural future indicative perfective of вспомнить
- например: 副詞, for example, e.g., for instance
- электродинамическое: 形容詞, electrodynamic
- динами́ческое: accusative animeate, 中性
- взаимодействие: 中性名詞, 単数主格・対格, interaction
- между: 副詞, (with instrumental, rarely with genitive) between, among
- магнитом <- магни́т: 男性名詞, 単数, 具格, magnet
- и: 等位接続詞, and
- проводником <- проводни́к: instrumental singular: 男性名詞, conductor, 具格単数
- с: 前置詞
- with (+ instrumental)
- from, off, from off, from below (with abstract nouns; nouns entailing a flat, open area; and special exceptions; + genitive)
- током <- ток: instrumental singular, 電流
2022-03-19¶
数学・物理 数学を独学で勉強した人にありがちなこと/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 微分演算子に関わる議論
- ガウス型確率変数に対する問題
- 講座紹介: 『線形代数と群の表現I, II』に関する講座
- ページ紹介: 原岡喜重先生の「数学基本動作集」
- 数学を独学で勉強した人にありがちなこと
- note紹介: 「わかりやすい説明をすると「結論を理解する労力」が「その結論を導き出した労力」と誤解されるときがある」
- 書籍紹介: 池田岳, 『テンソル代数と表現論 線型代数続論』(東京大学出版会)
- 近藤効果の近藤淳氏死去
- 記事紹介: 「プログラミングの最初の壁は逐次実行」
- 書籍紹介: Numerical Methods for Scientific Computing
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
微分演算子に関わる議論¶
Twitterで見かけた量子力学の作用素論の話題に対していくつかコメントしたので, こちらにも転載しておきます.
量子力学の演算子の具体例として行列ってありなんだ(そこから…)
有限次元の線型空間は全て同型なので、適当な線型全単射(具体的には、演算子Aの固有関数を|n>として、
をm,n成分に持つ行列)によって、固有関数に対応したベクトルを基底とした数ベクトル空間に飛ばして議論できるというのが背景にあります (有限次元なら微分演算子の空間だろうと使えます) うぉぉ…線型空間の同型ってそこに生きてくるんですか… 微分演算子を含んでいてもその議論ってできるんですか…?
無限次元で微分演算子(作用素)を含んでいても適当な範囲でいろいろな議論があります。離散性を外れたところの議論で典型的なのは例えばスペクトル理論として知られています。新井朝雄先生の著書群にかなりの程度まとまっています。ボリュームはそこそこあります。 話が少しずれますが、量子力学と関係するところで微分作用素の固有値解析や作用素的な性質と物理との関係で出てくる多彩な議論があります。量子力学では作用素の固有値と観測値を関係させるわけですが、微分方程式を記述するタイプの微分作用素にも一定の物理が乗るべきです。 典型的には量子力学・電磁気学での特殊関数論とそこからの固有値・固有関数の議論があります。ここからさらに一般の微分方程式論に波及します。例えば境界条件の設定は物理と直結することになっているので、境界条件が変わると微分方程式に対応する微分作用素の数学的な性質にはねてほしくなります。 量子力学の(少し古い?)数理物理の典型的な課題の一つが作用素の自己共役性(エルミート性)の議論です。よく堀田さんが「その議論に何か意味がありますか?」みたいなことを言いますが、微分方程式が自然をよく近似する範囲では、逆に物理を反映した議論として数学的には重要です。 応用上問題になる(と数学サイドが思っている、または主張する)のは、数値計算または工学的な議論です。応用上、境界をはじめとして一部の情報しか数値計算に使えません。数学的には無限個情報が必要なところに有限個の情報しか使えないとも言えます。 具体的に何かはともかく、例えば初期条件・境界条件に対してセンシティブな系で精度が悪い情報しか取れない状況下でどれだけのことが言えるかは、工学的にも意味がある(可能性がある)議論です。そして「鉄の製造現場を動かす数学イノベーション」のように数学者と企業の共同研究もあります。 ここで議論になっている逆問題は工学でも議論している人がたくさんいます。例えば「数学で命を救う…!? 数学の"超難問"を解いたら「痛くない乳がん検査装置」が実現した…!」。専門でもないので最近の事情は把握できていませんが、伝統的にロシアが強い(強かった)と聞いています。 以前偏微分方程式の逆問題?拡散方程式の数学と物理と工学というトークをしたこともあります。
ガウス型確率変数に対する問題¶
ガウス分布 N(x) があって x1, x2 ~ N(x)のとき、x1-x2 の値って何分布に従うかご存じの方いらっしゃいますか?どうやって求めたらいいのか。
例と計算編の例によさそうなので収録しようと思っています. どうやって例を見つけて何を計算したらいいかわからない人もいると思うので, それに対するヒントとしてもコメントしておきます. 他人が考えている問題からヒントを得ることもよくあるので, ぜひ参考にしてみてください.
これのリプライにネット上に落ちている参考資料を紹介している人もいます. こういうのを読んでいろいろ計算してみるのも大事です. 今回, 時間がなくて計算しきれなかったのですが, これも例と計算編に突っ込んでおこうと思っています.
講座紹介: 『線形代数と群の表現I, II』に関する講座¶
【講座のお知らせ】4月から平井武先生の『線形代数と群の表現I, II』(朝倉書店)の講座を開講します。線形代数や群について、豊富な応用例と共に高校程度の予備知識で解説します。演習問題の添削もやります。土曜午前隔週開講、オンラインで講義録画も自由にご覧になれます。
これは「すうがくぶんか」の梅崎直也さんのツイート・講座です. 梅崎さんと直接お話したことなどはありませんが, 非常に優秀な人だとは聞いています. 私が例と計算編で取り組んでいるリー群・リー環系の議論とも深い関係がある分野・本なので興味がある人にはおすすめです.
この本, 学部の頃だかいつだか忘れましたが, 一通り読んだのは間違いありません. そしてかなり面白いです. 二巻に物理と関わる話が載っていて, そこにも面白い記述があります.
例えばヴェイユの述懐として, 「数学者が手を出せなかったところを, ディラックとウィグナーが自らの研究の必要性のために数学者に先んじて無限次元表現論の道を切り開いた.」というような話が書いてあります. これは私の学生時代の専門と直結する話でもあります. 難しすぎて手を出し切れなかったものの, 四次元時空で相対論的場の量子論を考え, それに対する作用素環の自己同型群への作用は作用素論的にはだいたいユニタリ表現論で, まさにディラックとウィグナーが議論した世界です. ここの解析でいまだにわかっていない(はずの)話もあります.
番外編として, 自己準同型群に拡張するとふつうに作用素環上の調和解析として未知の世界が広がっているようで, 京大の泉さんの主要な業績の一つでもあります. 例えば次のPDFの4節を見てください.
表現論の近くは他にも凄まじく広大な世界があります. リー群・リー環と絡めた形で言えば微分幾何にもあって, 等質空間論・対称空間論などの議論もできます. 代数・幾何・解析のどこにもアプローチでき, 物理との関係も深い分野なので勉強して得しかありません. まだ私がしばらく触れない領域の講座なので, もし興味があるなら積極的に参加してみてはどうでしょうか?
ページ紹介: 原岡喜重先生の「数学基本動作集」¶
原岡喜重先生の「数学基本動作集」。 数学を学び始めた人に役立つQ&Aが載っている。 例えば 「Q.2つの集合A, Bが等しいことを示せといわれました.このときあなたは,何と何を示せばよいでしょうか?」 http://sci.kumamoto-u.ac.jp/~haraoka/action0.html
例と計算編というか, 数学・物理の学習の秘訣的なモノをいろいろ作らないといけないと思っています. 量が少なすぎてさすがにこれだけではどうにもならないでしょうが, こういうのももっと蓄積しないといけません.
量が少ないとはいえ, もしあなたが数学に興味があるなら必ず参考になるページなので, ぜひ眺めてみてください.
数学を独学で勉強した人にありがちなこと¶
これはp進大好きbotのコメントです.
数学を完全独学で勉強した人たちにありがちな間違いに 「厳密な定義は難しいから簡単な日本語に翻訳しよう」 「簡単な日本語に翻訳したらすごく簡単に理解できた!」 っていうのがありますが、これまでの経験上このパターンで本人に誤りを説明しても理解できた試しがほとんどないんですよね。
これ厳密な定義が分からない本人が簡単な日本語に変換する過程で全く別物になってしまっていて、理解したと思っているものは元の概念ではないんですよね。 なのに「いやこんな簡単な概念を間違えるはずない」みたいな循環論法をしてしまうんです。簡単だという結論がそもそも誤った変換に基づくのに。 この循環論法部分は(概念自体が理解できなくてもある程度誠実に数学を勉強していれば)簡単に理解できるはずなのですが、結局どう説明しても「厳密ではないかもしれないが完璧に理解している!」ってなっちゃう人たちを何年も見てきました。せっかく勉強に時間割いたのにもったいないですよね・・。
数学・物理ならともかく, 専門的な教育を受けていない情報科学や語学ではこれと類似のことをやっているのではないかといつもヒヤヒヤしています. 他山の石ということで.
note紹介: 「わかりやすい説明をすると「結論を理解する労力」が「その結論を導き出した労力」と誤解されるときがある」¶
"おまけ2:試行錯誤の様子は、わかりにくいからブログにも出てこない" とあるけど、むしろ逆で、だからみんなウェブ検索するときに "-qiita" するようになってしまったような
まず「わかりやすい説明」概念がいまだによくわからず, 記事の内容もそれほどよくわかっているわけではないのですが, 「試行錯誤」に一つ力点があったのでそれについて.
何にせよ理解を深める上でこの試行錯誤はとても大事で, 数学・物理・プログラミングを勉強する上での決定的な要素の一つが, まさに今年の目標である「具体例を遊び倒す」です. これを言いたいがためにこの記事を紹介したとさえ言えます.
特に自分の認識がおかしくないかを判定するのに役立つのが反例の構成です. 以前作ったDVDで反例をテーマにしたのも, 現代数学探険隊の解析学編のページで反例に触れているのも, 例と計算編をひたすらやっているのも, 競プロ学習の一環としてここ三ヶ月毎日問題を解いているのも, 全て具体的な問題を丁寧に扱うことからはじめようという意識に基づいています.
書籍紹介: 池田岳, 『テンソル代数と表現論 線型代数続論』(東京大学出版会)¶
3月下旬新刊予約受付中 『テンソル代数と表現論 線型代数続論』池田岳(東京大学出版会) ジョルダン標準形の理論、そしてテンソル代数から群の表現論までの道すじを、明確に動機付けながら案内する。豊富な具体例と演習問題により、理論的にも直感的にも理解が深められる。
池田岳さん, 数え上げ幾何学講義などかなり気になる本を書いている人です. 上の方で梅崎さんの表現論関係の講義の紹介をしていますが, 私も学生時代の専門は$C^*$-環・フォン・ノイマン環の表現論ですし, やはり表現論は射程が深く広く楽しいです. テンソル積は量子情報でも基本的な演算ですし, そういう視点からのアプローチもあります. 気になるモノがあればぜひ遊び倒してみてください.
近藤効果の近藤淳氏死去¶
日本物理学会の名誉会員の近藤淳先生が3月11日に逝去されました。近藤先生は、極低温領域での微量の磁性分子を含む金や銅などの電気抵抗の異常な振る舞いについて、その原因を理論的に解明され、その現象は「近藤効果」と呼ばれています。ご逝去を心よりお悔み申し上げます。
近藤効果, 学生時代に読んだ高橋康さんの「物性研究者のための場の量子論」に出てきたのを思い出しました. 大学院レベルの物性ももっときちんとやりたいと思って幾星霜です. まずは原・田崎のイジング本や, 田崎さんの量子多体系の本を読みたいとは思っています. 学生時代に集中講義に出たりして数理物理系の基本的な知識・全体像は知っているのですが, 具体的な数学的技術が身についていません. イジング本は査読に参加した(本に謝辞も載っている)ものの, やはり細かいところまで詰め切れてこその本なので, もっとやりたいですね.
記事紹介: 「プログラミングの最初の壁は逐次実行」¶
プログラムに慣れた人にとって、プログラムが上から順に実行されるというのは当たり前で学習が必要なことには思えないと思います。 「見たままやん」 となるのではないかと。
ここで詰まった記憶がないので, そういうこともあるのかとちょっと衝撃を受けています. 何か言えることがあるわけでもありませんが, 自分の備忘録的に残しておきます.
書籍紹介: Numerical Methods for Scientific Computing¶
Redditを見ていたら流れてきました. 例と計算編のそのものずばりの内容でもあります. しばらくはもっとシンプルなことしかしませんが, 興味がある人はいるだろうと思ったので, 一つの資料のシェアということで.
今週の問題¶
- 行列リー群の正規部分群による商群は行列群とは限らない.
こういう事例があることだけ知っていて, いまだに具体例を知りません. 調べていてこの言明だけ出てきて例がきちんと書かれていない (正確には例は挙がっていたが証明がなく, まだその証明をつけていない)のでいい加減きちんと調べようと思っているところです.
この一方で面白いのが, 有限次元リー環は行列リー環への忠実な表現を持つというアドの定理です. 確か正標数への一般化もあったような気がします. これも事実だけ知っていてまだ証明を読んだことがありません. リー群とリー環の事情の違いもあれば, リー環のレベルなら行列で片がつく面白さもあり, リー群・リー環, そして線型代数の学習をお勧めする部分でもあります. リー群を議論するなら嫌でも多様体が必要という話でもあります.
上の言明自体, 数学を勉強していく上で一つのキーになると思います. 興味があればぜひ深掘りしてみてください. 私もいつかはきちんと証明を読もうと思っています. 疑似乱数, 特にメルセンヌ・ツイスターは正標数の体上の議論を使っていて, 最近の軸の一つである情報科学・計算機科学との関連も馬鹿にできません. 勉強したいことがいつまで経っても尽きません.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 特殊相対性理論ロシア語版第一文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第一文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版第一文¶
文法は並行して勉強している常態で, よくわかっていない積み残し部分があります. どなたかわかる方いたらぜひ教えてください.
とにかく触れ続けて慣れるフェーズだと思って無理やり進めています. 暗記もやらないといけません. 先は長い.
文構造¶
- Вспомним электродинамическое взаимодействие между магнитом и проводником с током.
- например
напримерは副詞の挿入で, 残りがシンプルな文です.
TODO 先頭のВспомним (to recall)が動詞です. 上記の英訳ではtakeが対応しています.
электродинамическое (electrodynamic)は形容詞の対格で, взаимодействие (interaction)は中性名詞の主格または対格なので, взаимодействиеは対格で, электродинамическоеが修飾しているとみなせます. между (between)は具格支配の前置詞で, магнитом (и) проводникомはともに具格だからこれらがセットです. ここでиはandの意味の等位接続詞です. さらにсは具格支配の前置詞でтоком (current)も具格だからこれらもセットです.
まとめると次のように英訳できます.
- Recall, for example, electrodynamic interaction between a magnet and a conductor with current.
単語¶
- вспомним <- вспомнить: 動詞, to remember, to recall, to recollect
- first-person plural future indicative perfective of вспомнить
- например: 副詞, for example, e.g., for instance
- электродинамическое: 形容詞, electrodynamic
- динами́ческое: accusative animeate, 中性
- взаимодействие: 中性名詞, 単数主格・対格, interaction
- между: 副詞, (with instrumental, rarely with genitive) between, among
- магнитом <- магни́т: 男性名詞, 単数, 具格, magnet
- и: 等位接続詞, and
- проводником <- проводни́к: instrumental singular: 男性名詞, conductor, 具格単数
- с: 前置詞
- with (+ instrumental)
- from, off, from off, from below (with abstract nouns; nouns entailing a flat, open area; and special exceptions; + genitive)
- током <- ток: instrumental singular, 電流
2022-03-12¶
数学・物理 コンピューターに教える教師になろう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- コンピューターに教える教師になろう
- プレプリント紹介: Shintaro Minagawa, Hayato Arai, Francesco Buscemi, von Neumann's information engine without the spectral theorem
- Maximaを使いはじめてみた
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
コンピューターに教える教師になろう¶
いま作っているミニ講座に関連して次のようなツイートをしました.
収束やら数値計算が云々以前にまともに計算できる人自体激レア人材では。私が学部の頃の固体物理の講義を持っていた工学出身の表面物理の教員、講義でベクトルの内積をベクトルで割る荒技を披露していたくらいまともな計算概念で指す対象も違う。 これ、手計算なら何となくふんわりうまくいってしまうことがあるから是正されなかったのだろうが、それこそ数値計算しだした時にこの計算を実行しようとしたら破滅的なことになるから、数学学習にプログラミングをうまく組み込むの、数学科の数学学習にとっても本質的な気がしてきた。 型が強い言語にコンパイルエラーを吐いてもらいたくなる市民感覚的な話にもつながる。
素数判定の算数・数学・プログラミングのミニコンテンツの案内ページを作ってみた。 https://phasetr.com/lp/mpga01pd/ 今日適当につぶやいていたら、「コンピューターに教える教師になろう」的なコンテンツはもっと作った方がよさそうな気がしてきたのでもっとたくさん作りたい。
いま「今後の学習案内」といった後書き部分を作っている最中ですが, プログラミングコンテンツ部分はできました. もし興味があるならぜひ登録しておいてください.
プレプリント紹介: Shintaro Minagawa, Hayato Arai, Francesco Buscemi, von Neumann's information engine without the spectral theorem¶
今日読もうと思っていたら寝落ちしてしまってまだ読めていないのですが, 面白そうなのでメモがてらシェアします.
今は、量子論でもエントロピーを使って情報理論が研究されていますが、フォン・ノイマンが初めてエントロピーを量子論に導入したときは、古典論の情報理論さえもありませんでした。 ではどのようにエントロピーを導入したかというのが、『量子力学の数学的基礎』に載っている「半透膜の思考実験」です 彼の議論では、量子論の数学的な構造、すなわちヒルベルト空間の性質(とくにスペクトル分解)と、熱力学を利用しています。 我々の結果は、半透膜の思考実験をヒルベルト空間に頼らず操作的な記述で再構成し、「半透膜が存在すること」と「熱力学第二法則」を認めた時点で、 エントロピーについて、凹性のような情報理論的に重要な性質が、スペクトル分解を使わなくとも第二法則の帰結として導かれる、というものです。 ※正確には凸結合した状態に対してもエントロピーが定義できるという仮定がいります
自分が望む理解度に達していないものの, 学生の頃から熱力学は本当にお気に入りなので, そうしたところと関係がある議論は非常に興味があります.
あとはエントロピー. 概念上もいろいろあるのだとは思いますが, 豊富な数学的内容を持つ対象です. 例えば私の修士の頃のテーマである平衡状態の存在や作用素論・摂動論の枠でも関連する議論を使います. 次の論文で相対エントロピーやその議論でよく出てくる概念が出てきます.
- Derezinski, Jaksic, Pillet, 2003, PERTURBATION THEORY OF $W^*$-DYNAMICS, LIOUVILLEANS AND KMS-STATES
他にも確率論では大偏差原理のレート関数としてエントロピーが出てきますし, 数学的に重要な役割を担う概念でもあります. 大偏差原理も統計力学の数理物理で重要な概念のようで, 勉強したいと思いつつ幾星霜です.
付録を見るとわかるように, 二次正方行列とそのテンソル積に関する議論もあります. 最近はリー群・リー環に特化していて量子情報関係の線型代数は手薄になっているものの, 例と計算編でのNielsen-Chuangの演習問題解答作りでもこうした計算をたくさんやっています. 最新の論文ベースでも大事な例の構成に使われているわけで, 有限次元の線型代数で遊び倒す意義がますます深まっています.
線型代数の勉強の進め方がわからなくて困っている方も多いでしょう. 特に物理や量子力学の興味があるなら, 一つの方向性として量子情報から入るのは非常にお勧めです. かなりの抽象論が展開されているものの, 線型代数のどんな議論がどこでどう使われているか知るには便利でしょう.
小澤正直さんといえば元々数理論理の方ですし, 超準解析の応用などもあって, そうした方面の勉強もしたいですが, 特に超準解析はいまストップ中です. これも以前紹介しましたが, 記述集合論を使って作用素論・作用素環の問題を考えるという話もあります.
コンヌが超準解析系のことをしていたことがあるようで, 超積の作用素環への導入はコンヌによると聞いたこともあります. 集合論・数理論理もこの視点から勉強をしたいと思いつつ, これも幾星霜. 少しずつやっていきましょう.
Maximaを使いはじめてみた¶
腐りにくい数学系プログラミングコンテンツのため, Maximaの調査をはじめることにしました. もちろん完全な安定は望むべくもありませんが, これはこれで恐ろしく長く使われているアプリケーションですし, 一定の意義があるだろうと. (Androidの)スマホアプリもあるようです.
wxMaximaがJupyterのような感じで, もっと言えばJupyter上でMaximaを使えるようにもなっているようです. シンプルなテキストによるバージョン管理がしたいので, どうするかいろいろ考えています. 例えばEmacsのmaxima-modeならMaximaのREPLにパチパチ流し込めるので, 私としてはこれが嬉しいのですが, (Windowsでのimaximaによる)TeX連携がうまくいっていません.
これのためにエディタの調整・調査で時間を使うのも馬鹿馬鹿しいと思う一方, これはこれで楽しくなってしまう病理もあります. この辺の調査で得られる経験値もあると言えばあるものの, 困ったものだとも思います.
コンピューターに教育する観点からは自分で簡単なライブラリを再発明することにもなりますし, もう一方のアルゴリズム学習・応用の観点からもMaximaのコードを調べたりするのも大事になりそうなので, いろいろな視点から調査を進める予定です.
今週の問題¶
相変わらずプログラミング系の調査・講座制作がメインになっていて最近はかなり緩めに進めています. 今週は一般化回転群として$\mathrm{SO}(n)$, $\mathrm{U}(n)$, $\mathrm{SU}(n)$, $\mathrm{Sp}(n)$の極大トーラスと中心の議論をしていました. ほぼ自明なトーラスが実際に極大トーラスで, 中心もほぼ自明です. この「ほぼ」自明のところで二重被覆という位相幾何的話題が出てきますし, 群構造との関連がある部分も面白い点です.
もう何度目かわかりませんが, 大事なことなので何度でも強調しましょう. 上記のプレプリント紹介で, 量子情報からの線型代数入門について改めてコメントしました. 線型代数からの位相空間論・位相幾何・多様体・代数入門として, リー群・リー環論を使うのも面白いアプローチです. リー群・リー環をある程度やっておけば, 対称空間・等質空間の幾何につなげることもできれば, 表現論への・からの広い数学への展開もあります. 線型代数はやればやっただけ数学それ自体への理解が深まる分野です.
現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版タイトル/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 続ベラルーシのベラ
- 禁止された文字列・発音
- 暗記が大事
- 今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版タイトル
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
続ベラルーシのベラ¶
読者の方からコメントで教えてもらいました.
「ベラルーシ」の国名の由来は明らかではないが、ルーシの人々は13世紀から16世紀にかけてモンゴルの支配を受け(「モンゴルのルーシ侵攻」「タタールのくびき」参照)、ベラルーシの国名の由来である白ルーシ(英語版)の名前の由来をモンゴルに関連付ける説がいくつか挙げられている [3]。その際、モンゴル人が中国から学んだ文化である「方角を色で呼ぶ方法(五行思想)」をルーシに持ち込んだため、「赤ルーシ」(南部ルーシすなわち現在のウクライナ西部)、「白ルーシ」(西部ルーシすなわち現在のベラルーシ)、「黒ルーシ」(北部ルーシすなわち現在のモスクワ周辺)という名称が生まれ、そのうちの白ルーシ(ベラルーシ)が国名として残ったと言われている[3][4]。モンゴル系の国家で用いられたテュルク系の言語の影響を受けて生まれた、「自由な、支配から解放された」白ルーシと「隷属した」黒ルーシの呼称を起源とする説も存在する[3]。
最近のウクライナ情勢でもタタールの軛の話が出てきましたが, こんなところにもタタールの軛が出てくるとは, と驚いています.
禁止された文字列・発音¶
まず,なぜ
という綴字がストレートに「アエロ」に対応しないのかについて解説します.一言でいえば,英語では「アエ」という音連鎖が許されないからです(身も蓋もないですが).なぜ特定の音連鎖が許されたり許されなかったりするか,というのはなかなかの難問です.例えば,日本語では「ん」は正規の音素なのに,なぜ語頭では現われてはいけないのかというのと同じ類いの問題です.このような問いに対しては,音韻論では「分布」なのだ,といって逃げるのが普通です・・・.
「よくわからないがとにかくそうなっている」系の話で, 物理なり何なりやっていても出くわすタイプの話です. 文法を筆頭に言語の世界にもいろいろな法則があり, 理工系にこそハマる世界観ではないかと思っていて, 語学を通じた理工系の視点入門に使えないかとずっと言っている部分です.
例えばイタリア語で皿をpiatteと言います. これは英語のplateに対応している単語です. 実はイタリア語でplの並びが許されていないからで, 英語(フランス語?)とイタリア語の単語比較に役立ちます. 似た単語にfiore (flower)があります. 「花の都フィレンツェ」を知っていればfioreとフィレンツェはつながりやすいでしょう.
本文で日本語で語頭に「ん」が来れない話がありました. 子供の頃, くにおくんのドッジボールでアフリカチームに「んじょも」がいたのを今でも覚えています. ちなみに2010年にフィールズ賞を取ったベトナム人のNgoさんも名前の先頭が「N」です. Wikipediaを見ると, ベトナム語はその表記にいろいろな歴史的経緯があるようです.
暗記が大事¶
ここまで英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・中国語あたりを雑にやってきて, ロシア語・アラビア語で改めて出会った問題があります. 単純な暗記量の問題です.
英語をある程度やってきたおかげで, ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語は何となく単語もわかりますし, ドイツ語やフランス語を雑にでもやっておいたおかげで, 活用も何となく共通で何となくわかります. 中国語もある程度漢字がわかるメリットがあります.
ただロシア語とアラビア語はそうもいきません. ロシア語は相対性理論の論文で勉強しているため, 専門用語がバリバリに共通語彙なのは面白いです. そもそもとして文字の暗記から入らないといけないハードルがあります. アラビア語の場合語頭系・語中系・語末系と同じ文字が最大三種類の形を持つので, それも厄介です. もちろんひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字を持つ日本語よりは遥かにましだとは思いますが.
単語もさることながら, 文法というか各種活用も本当に暗記が面倒です. 手持ちのロシア語文法書に「暗記しなくても表を見ればいいという人はいるが, やはり暗記してしまった方がよい. 何より時間がかかってしょうがない. 暗記にも時間を取った方が最終的な学習時間が圧倒的に短くて済む」みたいなことが書いてありました. まずは楽しめる作業をしようと思って暗記は後回しにしていますが, 確かにいちいち見慣れない文字が詰まった活用表で調べるのは消耗が激しいため, さっさと暗記した方が最終的には楽なのだろうとも思います. そこまでロシア語をやり込む気もないため余計やる気が出ないのですが, それはそれです.
ちなみに, 数学でも何をどう覚えるかがやはり重要なテーマです. よく「理解こそが大事で暗記はいらない」のような極論を言う人もいますし, 理解が深まると形式的には暗記量が減るのも間違いありません. ただ, 語学のコンテンツを作るときに思い至った話として, 理解度測定に「どれだけ暗記が楽にできるようになったか」という指標の提案があります. 暗記がいらなくなるというより, 忘れたことを思い出すかのように暗記ができるようになります. 暗記作業そのものが楽になるのが理解の深まりと定義してもよいのではないかと思っています. 単純な暗記事項と思っていたらそれにきちんと意味を持たせられるようになれるというか.
例えばフランス語とイタリア語の男性名詞単数形に対する定冠詞はそれぞれle, ilで, これはラテン語のthisにあたる指示詞(?)illeの前半・後半を取った形になっています. なぜそうなったかと言われても困ります(言語学的な知見はあるかもしれないが, そこまで私に言語学の知見がない)が, ラテン語に由来があると言えばそれはそうなのは確かなようです.
ラテン語を知らないといけないではないかという話もある一方, ラテン語を知っていると統一的な視点が得られる(こともある)とは言えます. 知識が理解を呼び, 理解が知識を呼び, さらに探究心を刺激する例ではあると思っています. ラテン語は学術用語の母胎としての側面もあるため, ラテン語に帰着させるのには一定の意義があります.
こういうのをもっと積極的にやりたいと思って, いま語学を雑に幅広く勉強しています. そのうち語学ではなく言語学にも踏み込みたいです.
今週のロシア語: アインシュタインの相対性理論の原論文, ロシア語版タイトル¶
タイトルは以前紹介した気もするのですが, 再挑戦ということで改めてはじめから.
文構造¶
- К ЭЛЕКТРОДИНАМИКЕ ДВИЖУЩИХСЯ ТЕЛ
- ローマ字転写: K ÈLEKTRODINAMIKE DVIŽUŜIHSJa TEL
まずКは与格支配の前置詞でここでは英語のto・ドイツ語のzuにあたります. ЭЛЕКТРОДИНАМИКЕは女性名詞で原形はэлектродинамикаです. 特にе終わりなので与格か前置詞格で, ここでは前置詞кの支配下なので与格です. ТЕЛ(body)は中性名詞телоの複数形属格で, ДВИЖУЩИХСЯは不完全動詞двѝгаться (move)の現在分詞движущийсяの複数属格です. このтелの属格性はドイツ語と同じなのでドイツ語自体が直接的に参考になるでしょう.
まとめると次のように英訳できます.
- TO THE ELECTRODYNAMICS OF MOVING BODIES
単語¶
- К: 与格支配の前置詞, to, toward, by, for
- ЭЛЕКТРОДИНАМИКЕ <- электродинамика: 不活動体, 女性名詞, 単数形与格・前置詞格, electrodynamics
- ДВИЖУЩИХСЯ <- двигать: 他動詞: to move
- ТЕЛ <- тело: 中性名詞の複数形属格
2022-03-05¶
数学・物理 数学を続ける秘訣: 中途半端で止める/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 数学を続ける秘訣: 中途半端で止める
- 物理と現実の対応を考える
- プレプリント: Shirai, Sakumichi, Negative Energetic Elasticity of Lattice Polymer Chain in Solvent
- 多様体の多様性
- 線型代数コンテンツのさらなる拡充が必要: 特異値分解
- 勝手に宣伝協力: はじめての数学ブログ講座
- Twitterで反響があったのでもっとがんばらないといけないと思った事案
- 数学コンテンツ作りのノウハウ共有
- 強調語と不思議な専門用語
- 競プロ: Haskellコードが見ていて楽しく勉強になる
- Common Lispの面白そうな解説
- 勝手に宣伝協力: 連載講座「短時間フーリエ変換入門」
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
数学を続ける秘訣: 中途半端で止める¶
ちょっとしたコメントがあったので, たまに・簡単にタスク管理・モチベーション管理的な話も書くことにしました. 私が把握している限り学生さんよりも仕事をしている大人の方が読者に多いので主にそちら向きです.
勉強に限りませんが, よい意味でいい加減さを取り入れるのが続ける秘訣です. 今回はいい加減さの一つとして「中途半端にしてもよく, かえってそれがいい場合さえある」ことをお伝えします.
ここでいう中途半端は, 例えば問題を解いていたとして, その問題を解き切れなくても勉強を打ち切ってしまうことです. 具体的にはある日の勉強時間が10分しか取れないなら10分やるだけやって, 解けなくてもその日はそこで打ち切りましょう. 解けないと気になって仕方ありません. そしてこれが大事です. 気になって仕方ないので次の日以降の勉強のモチベーションになります. 「気になるからもっと時間を取ろう」と思えるからです. 仕事終わりで疲れていてついダラダラしてしまうことは私にもよくあります. それでも「こんなダラダラしている時間ももったいない. 早く問題を解き切りたい」と思えるようになります. ダラダラした時間を過ごしてしまい「時間を無駄にしてしまった」と後悔した経験がある人は多いでしょう. それを削る方策でもあるのです.
さらに無駄な時間を削る上で他のご利益もあります. ずっとその問題が気になっているので, ちょっとした空き時間にもその問題を考えるようになります. すき間時間の有効活用にも役立ちます. そして何より数学学習の習慣化には本当に効果的です.
半端なところで止めていいと思えば取り組むときの初動のパワーも少なくて済みます. 勉強をはじめるときに億劫さを感じるなら, ぜひ5分だけやろう, 中途半端でも5分でとにかく止めて終わらそうといった感じで挑んでみてください.
物理と現実の対応を考える¶
我らが久徳先生とのTwitterトークです.
引用は次の通り.
「現実との対応とか興味ない、有効数字?何それおいしいの?」的な理論物理があるかないかは皆さんへの宿題とします
有効数字とはまた違いますが、物性だとオーダーが上から下まであってまた別の視点が出てくるのでは感があります。
ここでオーダーと言うと?
しばらくまともな物理から離れていて数値含めた具体的な話できなくてアレですが、電気伝導度は上から下まで身近な物質でも20桁くらい違いがあり、二・三桁ずれていてもそこそこ(定性的には)OK的な意味です。
なるほど、しばしば宇宙では一桁二桁は気にしないと(雑に)言われる類の話と同じやつですね。物理だと物性でも宇宙でもどの分野でも「自分が今しないといけないのは依存性の話なのか桁の話なのか数の話なのか」みたいな切り分けの感覚が重要な印象です
良くも悪くももう一定の位置を占めてしまったのでアレですが、ハバードくらいならまだしも、スピン系のような暴力的なモデルがどこまで物理かが割と私にはクリティカルです。依存性でも桁でも数でもなく、定性的な議論と呼んでいいかさえ微妙です。量子情報の視点で見ているわけでもないので。
なるほど、そのへんの感覚は自分でやっていない僕にはないですね。てっきり現実の物質の挙動を大掴みにでも説明していて十分に物理なのだろうと思っていました
スピン系は、難しすぎてそのままではまるで手が出ない多体系特有の現象が、実際に温度という日常的で操作しやすいパラメーターを軸に、相転移というこれまた直観的な現象が数学的に再現できたところに価値があると理解しています。あとは計算練習のモデルや理論構成のモデルになっている点だとか。 色々批判もあるとはいえ一定の有効性を持つとされる平均場近似などの統計力学の手法が物理的・直観的に把握しやすく、計算もしやすいので技術的な習熟に使えるといった面もあるでしょう。あとは場の理論でφ^4との関係があり、発散の困難と臨界現象の処理の類似といったこれまた数学上の関係もあります 物理をつかんでいるというよりも、理論的な模型としての位置、計算処理・技術の実験場としての立ち位置が非常に優れていて、強引な点があるにせよそれらを温度と相転移に関する直観を繋いでさえくれるところに強い意義がある議論だと思っています。 論点はいろいろあって、以前誰かが言っていたのでロシアの古い物理の本(の和訳)を読んだことがあるのですが、かつては周期境界条件が物理として意味があるかが問われていて、それに対して意味があることをきちんと論じなければいけない時代があったようです。続 その本では「イジングで計算するとこうなっている。他の模型でも似た形になると推測できて云々」と書かれていた覚えがあります。スピン系の物理的な意義を疑う人はもはやいないと思いますが、その意義の確立は自明ではなく、統計力学系の物理をやるなら一度きちんと考えるべきテーマと思います。
「以前は問題だったがいまや悩む必要さえなく, ショートカットしてどんどん進んでいい」話はたくさんあるはずで一概に悪いことではないとはいえ, このあたりの話, 数学の本はもちろんのこと, 物理の本でもあまりきちんと書いてくれていない気がします. イジングも原・田崎本を改めてきちんと読みたいですね. 2021年のノーベル物理学賞を取ったパリージの有名な統計的場の理論の本(Statitical Field Theory, 和訳『場の理論―統計論的アプローチ』)もスピン系・イジングの議論があります.
プレプリント: Shirai, Sakumichi, Negative Energetic Elasticity of Lattice Polymer Chain in Solvent¶
- arXiv, Shirai, Sakumichi, Negative Energetic Elasticity of Lattice Polymer Chain in Solvent
- ツイートURL
- ツイートURL
Negative internal energetic contribution to elastic modulus (negative energetic elasticity) has recently been observed in polymer gels. This finding challenges the conventional notion that the elastic moduli of rubberlike materials are determined mainly by entropic elasticity. However, the microscopic origin of negative energetic elasticity has not yet been clarified. Here, we consider the n-step interacting self-avoiding walk on a cubic lattice as a model of a single polymer chain (a subchain of a network in a polymer gel) in a solvent. We show the occurrence of negative energetic elasticity based on an exact enumeration up to n=20 and analytic expressions for arbitrary n in three cases where the chain is highly stretched. Furthermore, we demonstrate that the negative energetic elasticity of this model originates from the attractive polymer-solvent interaction, which locally stiffens the chain and conversely softens the stiffness of the entire chain. This model qualitatively reproduces the temperature dependence of negative energetic elasticity observed in the polymer-gel experiments, indicating that the analysis of a single chain can explain the properties of negative energetic elasticity in polymer gels.
東大の作道さん (@sakumichi) との共同研究に関するプレプリントを出しました! 単純な格子モデルで得られた1本鎖の弾性が高分子ゲルの実験で観測されていた負のエネルギー弾性 (https://doi.org/10.1103/PhysRevX.11.011045) と定性的に同じ温度依存性を示すことを見出しました [Fig. 1参照]。 負のエネルギー弾性を特徴付ける温度について得られた有理式(式6; nは自己回避ウォークのステップ数)はお気に入りの1つです。もう少し複雑な有理式をあと2つ導出していて、3つの解析線がFig. 4に描かれています。ある指数で解析線がすべて重なるのも見どころです。
まだプレプリントを読めていないのですが, 作道さんのゴムの話は講演を聞いたことがあって非常に面白かったです. やはり統計と物性が好きで面白い分野だと気付かせてくれる研究でした. ゆっくり読む時間が取れなくて悲しいですが, メモしておかないと忘れてしまうのでメモがてらシェアしておきます.
多様体の多様性¶
manifoldはどの辺が多様だったんです(´・ω・`)?
ホイットニーの定理が示されてしまったのと我々が慣れすぎてしまっただけで、manifoldの守備範囲は十分に異常な広さ・多彩さを持つとは思います。あの定義で一般化された図形と認識できるのは凄まじい訓練を受けた人間しかいないでしょう。
中島啓さんの単調体の話などもあって, 「多様体のどこが多様なのか」はよくある突っ込みになりつつあるとは思います. しかし多様体の定義だけを見ても, そもそも何を言っているか理解するだけでも大変ですし, あの定義から一般化された図形を定義しようとしていると理解するのも困難を極めます. 射影空間やグラスマン多様体は「ユークリッド空間の線型部分空間を集めた集合に適当な遠近感(位相または計量)が入り, それ自身図形になる」と言っているわけで, 無茶にもほどがあります.
計量による空間観もそう自明ではありません. リーマン計量だけではなく, 山登りのように登りと下りで変わるべきフィンスラー計量のような計量概念もあります.
いま対応中のリー群・リー環の基礎が一段落したら, 等質空間や対称空間の形でリーマン幾何・微分幾何をやろうとも思っています. いろいろな数学が交錯する面白い世界ですし, ここで遊び倒しておくと一般相対性理論の数学的足腰を鍛える助けにもなるので, 私自身楽しみにしています.
線型代数コンテンツのさらなる拡充が必要: 特異値分解¶
手元のいくつかの線形代数学の教科書の索引に特異値分解がなくってびびった
Laxは行列不等式の章に特異値分解あった(´・ω・`)
そういうのもきちんと書いてある数学・数理物理系の文献を作らねばならないと思う方の市民です。私のコンテンツももっと線型代数を拡充したいのですがなかなか時間が取れていません。
特異値分解はPDEの数値計算で使う機会がありました. 数学の本ではあまり見かけませんが工学的応用ではかなりよく出てくるようです. 例えば機械学習やら統計系の数値計算でもよく見かけます. 他にもこの間勉強会でQR分解が出てきて関連する分解を調べていたら, これの一般化は岩澤分解だとか. 岩澤分解もいつかどこかできちんとやりたいテーマです. 「役に立つ岩澤分解」とも言えるでしょう. こういうのも計算し倒す上では大事な話で注目しています.
ちなみに上記の勉強会で読んでいたのはGitHub上にあがったipynbです.
ipynbはJuliaで書かれていてJulia入門としてもお勧めです. 私が読んだのは主にJulia版の和訳ipynbですが, 上記ページにPython版へのGitHubへのリンクもあります.
勝手に宣伝協力: はじめての数学ブログ講座¶
可換環論botやYouTubeの動画によって一部界隈では有名な龍孫江さんによるブログ講座です. 最近はTeXをインストールしなくてもTeXを書ける環境が増えてきました. もう一歩広げて数学コミュニティ作りといった部分にまで踏み込んだサービスも増えてきています.
私自身, 一人ではやる気が起きないテーマに取り組むために人を巻き込んだ勉強会を主催する形で進めていますし, いろいろな人がいろいろなことを試してほしいとも思っているので, 興味がある人はぜひ参加してみてください.
Twitterで反響があったのでもっとがんばらないといけないと思った事案¶
以下紹介するツリーでのやり取り+コンテンツの案内ページだけで6人からの購入があってびっくりしました. そしてきちんと情報を伝えるべき人に伝えられていないのだと反省もした事案です.
私の物理数学をまとめたPDF、目次や索引含めれば9964ページある。そしてまだ全然書き足りない。 普通の本では150ページくらいの分量の位相空間論を(数理)物理への応用や例も盛り盛りにして700ページ弱になっている。元が通信講座用のコンテンツなので同じ話を何度も繰り返していて膨れている部分もあるが、議論を自分基準で丁寧にして膨れた分もある。通読には向かないまさに辞書。
純粋に読みたいです・・・
いろいろあって有料提供なのですが、例えば解析学基礎編についてはここでどんな気分でこれを作ったか(作っているか)書いています。最近は例と計算編に力を入れています。幾何ですがYouTubeのこのリストも参考になるかもしれません。 すぐ見ます_φ(・_・
すいません。質問なんですが先にかうならどっちがオススメですか?
何をしたいかによります。教科書または辞書がほしいなら解析学編のほうがよく、たくさん計算練習したいなら例と計算編の方がよいです。後者は今まさに拡充中で、「もっとこんな計算も紹介してほしい」というのがあれば拡充します。(前者もまだ書いていないことはありちょこちょこ追記してはいます。)
うむむ。 分かりました。計算編にします。 ちなみにプログラムって書いてありましたが、コードも記述されているんですか?言語はpython ですか?
そちらにはまだプログラムは載せていなくて、いくつか手元で計算したのがあるだけで未公開です。Julia(のSymPy)を試したり普通のSymPyにしたり、コードが腐りにくいかどうかまで含めて検討中だからです。Clojureのsicmutilsやmaximaにするかなども検討中で、 sicmutilsについてはここやここ程度には調査していて、Pythonについては別枠でコンテンツも作っています。とにかくGitHubに置いてあるという意味ではmathcodesでRustやJuliaも少しあります。 プログラミングに関して最近特に力を入れているのは競プロ(中高生向けコンテンツとして場合の数や素数判定などの数学とも深く絡むため)で、ここでは私の趣味でF#(とHaskell)で修業中です。これもPythonによる素数判定のミニ講座を今作っていて、近々無料で公開する予定です。 主に偏微分方程式の解のアニメーションに関してここにリストを作っています。作るだけ作ってとにかく公開したまま未整理状態のものも多いです。整理するいい機会でもあるので、何か追加質問あればお気軽にどうぞ。
冒頭のツイートがなぜか(私にしては)大量のファボを受けていて何故かフォローも増えました. ついでに現代数学探険隊 解析学編を実際に購入された方が何人かいらっしゃって驚きました. カバー範囲からすればごくごく真っ当な値段で, 専門性が高くなると特に洋書で本が万単位するような領域にも踏み込んでいるため, その意味では安い部分もあるとはいえ, 総合的にはどう控え目に言っても安くないコンテンツです. それでも案内ページの内容を見て信じて買ってくれた方が何人もいらっしゃるわけで身が引き締まります.
あと単にちょろっとバズったツイートにリンクとやりとりをつけただけでこうなったので, きちんと情報を伝えられていないのだろうとも思って反省しています. 必要ない人に売りつけても意味がないどころか害悪ですが, 必要な人に必要なモノを届けられていないのはここ数年の私の怠慢の面も大きく反省しています. またちょっとTwitter広告もやってみようかと思っています. Energeiaでの勉強会ももっとメンバーを増やしたいとも思っています.
人が集まるとコントロールも大変ですが, そこで生まれるよいモノもいろいろあります.
あとTwitterで解析系数理物理コミュニティを作ってみたので, それに関する話ももう少しきちんとしたいですね. 基本はここで書いてそちらのコミュニティにも流す, またはそちらで書いたのをこちらにも流す形にしようと思っています.
数学コンテンツ作りのノウハウ共有¶
それほど本格的な内容でもありませんが, 書いておくことには意味があると思ったので共有します.
本一冊の内容じゃなくてここまでの量を全部一つのノートにまとめてる人あんまり見たことなかったから(複雑な相互リンクが発生しすぎて)事実上無理なのかと思ってたけどできるもんなのか でもこの量をNotionでやったらいずれ重くなって詰みそう…
集合・位相などの基本的なところでは特に定理や命題の参照もなるべく細かく入れて何を理由にどの事実が成り立つか詳しく書くようにしていて、相互参照が5000以上あります。(証明を詳しくしたいならもっと必要。)全体のコンパイルに20-30分かかります。
20-30分…すごいですね。 個人的には、詳細の「折りたたみ」のようなことができると良いと思っていて、WYSIWYGで編集もできるので、Notionを使いたいなと思っています(肝心の数学の勉強のほうは全然足りていないのですが…)
サイト潰してしまったようですが、少なくとも7年前に証明や具体例の折りたたみがあるといいよね、と言ってサンプルを作った人がいました。記事へのURL いまも現役の若手の数学者の人です。あとはDLCよろしく具体例やら何やらを追加購入できるパックとかも欲しくない?だとか。 HTML(またはepub)系も考えたのですが、やはり面倒なのと、数学の本道に関わる部分でTeXの表現力を超えられない部分がある・TeXの資源を完全には使い回せない部分があるのでひとまずTeXメインにしています。 表現力を超えられないというのはalg-dさんがよく書くような凄まじい可換図式で、複雑な式は式だけコンパイルして画像にするとかやりようはありますし、もちろんcanvasなどHTML専用のものを考える手法もありはします。ただHTML側で綺麗にするとTeXと二重管理が必要でコード自動生成もつらいので。 epubならともかく、HTML(でのウェブ公開)だと通信ができるところでしか見られない・MathJaxのレンダリング待ちが鬱陶しい問題もあります。数学への集中力が途切れてしまうので。レンダリングを減らすためにページを分けると検索や一覧性に問題が出ます。 あとは色々な数学系プログラム(数値計算・数式処理)との関係もあります。その辺を色々考えたうえでいまは自分用ノートを作り続ける方を優先させています。課題は色々あるので是非自分なりの工夫でいい方法を開発してほしいです。 いまの私はとにかく単独ファイルに突っ込んでPDF検索とセットで辞書を作る方に倒してコンテンツづくりをしています。
実体験に基づくお話で大変参考になります。以前から興味のある話題で、実はそちらのサンプルも知っていました。 やはり可換図式は鬼門ですよね…今調べてみたら、Notionで使われているKaTeXでは斜め矢印が使えなさそうです。外部プログラムとの連携も盲点でした。 また色々考えてみます。
何度も書いているようにプログラムはすぐ腐る上, そこのメンテナンスに力を割きたくもないのでどうするか今も答えが出ていません. いまはそもそも腐りにくいデータ構造とアルゴリズムに向けて私自身が勉強している最中です.
強調語と不思議な専門用語¶
ちょっと本筋からずれた話題だったのですが気になったのでコメントした記録です. 元ツイートを見つけられないのですが, 大元は大学で徹底的に叩き込まれたから「非常に」という文章を書くと「どのくらい?何と比較して?」のような脳内セルフ突っ込みを入れるようになってしまったという話です.
強調語、非常にめちゃくちゃすごくたくさんいっぱい使ってるけど、この点は数学科と他の理系学科は違いそう(そもそも「すごく」とか「非常に」とかを学術的なコンテキストで見た事ない) 「この定理は非常に大きな影響をもたらした」みたいな文脈で見たことあるから普通に偽だ
豊富な直線束 私自身は非専門の領域であまり語感がないのですが「非常に豊富」(very ample)という専門用語があります。豊富・非常に豊富ともに明確な定義があります。
なるほど、存じ上げませんでした。。。! どうだろう、これだと「非常に豊富」で一つの記号だと思うので、「非常に」だけで意味を成してるのかは謎ですが〜
どちらかと言うと「非常に(豊富)」という語に専門的な意味を付与する事例(学術の文脈で正式に使う、おそらく珍しい事例)として紹介しました。今思い出したのですが、(ルベーグ)積分論で「ほとんど至るところ」(almost everywhere)というのもあります。
これが面白いのは「いたるところ」が割と曖昧さのある表現である一方、「ほとんどいたるところ」の方がかえって常に厳密な意味を与えられて使われることです。
たしかに一般生活でほとんどいたるところ、聞いたことないかもです。。。!
競プロ: Haskellコードが見ていて楽しく勉強になる¶
データ構造とアルゴリズムの何度目かの再勉強は競プロのおかげで続いています. やはり読み書きしていて勉強になり, かつ私の感性にあっていて楽しいのはHaskellです. 少なくともAtCoder・AOJでも取り上げられていてそこでの人口も多く, サンプルプログラムがたくさんある圧倒的な利点があります. まだHaskellでのREPL開発に慣れていないためメインはF#にしていますが, F#勢は本当に少なく, 私しか提出していないこともあって, 結局Haskellを見にいってそれをF#に翻訳することがよくあります. やはり勉強するときに人口が多く情報が多いのは重要です. 数学系ならとりあえずPythonをやっておこうと書いている理由でもあります.
Common Lispの面白そうな解説¶
引用RTを受けてツイートを眺めにいったら上記のような記事を書いている人だったので, メモついでにシェアしておきます. Eazy-gnuplotはともかくNumclというCommon LispのNumpyクローンがあり, これはいいかもと思ったので. ふつう何年も更新されていないライブラリというともう死んでいるのでは? と思ってしまいますが, Common Lispだとそのくらい割とふつうでしかもちゃんと動くそうなのでこれはかなり気になっています.
あとはmaximaがどこまで素直にライブラリとして動いてくれるかですね. ClojureはSciclojも活発なようで, sicmutilsもありますし, Javaの資産も使える上, clj-maximaもあるのでこちらの方がいいのかとか色々思います. プログラミングだけならいいのですが, メンテを少なくしようと思うと一気に面倒になって本当に嫌です.
勝手に宣伝協力: 連載講座「短時間フーリエ変換入門」¶
連載講座「短時間フーリエ変換入門」の最終回が無料オンライン公開されました! jstage, 矢田部浩平, 第六回:時間周波数領域のスパース表現, 日本音響学会誌
物理やいくつかの工学ではフーリエ変換・フーリエ級数は嫌になるほど使い倒します. そして純粋な数学としても凄まじく広い守備範囲があります. ただ数学の人には必ずしも応用の裾野が知られていない気もするのでちょこちょこ布教するシリーズでもあります. 軽く眺めてみて次の文が面白かったです.
ビッグデータとは対極にある,二度と取得できないスモールデータの解析に注力している研究も多く,今後の進展からも目が離せないと思っている。
もちろんタイトルにある「スパース」も数値計算上で重要な要素です.
今週の問題¶
引き続き例と計算編はプログラミングコンテンツに集中していて, 純粋な数学部分の進捗はあまりありません. 先週と大きく変わりばえはしないものの, 特殊ユニタリ群の弧状連結性の証明もつけました.
- ユニタリ群と特殊ユニタリ群の違い: 弧状連結性
これ, 「幾何のための線型代数」という幾何編に突っ込んでいて, 例と計算編に入っていないことに気付きました. 例と計算編を購入された方にはあとで別途お送りします. 興味があればぜひ議論を追ってみてください.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 ベラルーシのベラと白の多言語/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- グリムの法則
- ベラルーシのベラとフランス語のblancと白
- publicの多彩な意味
- 今週のロシア語
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
グリムの法則¶
ハーグってロシア語/ウクライナ語だと「ガーガ」なんですね。そいえばロシアのドラマを見てたら、ゲロー、ゲローっていってて、どうやら英雄の意味らしいとわかったし、病院のことをゴスピタルっいってた。
既にご存知であろうとも思うのですが、hとkは両方息を吐きだすタイプの音で、kが濁ってgになるので大体同じ音(言語をまたぐときによく変わる)のようです。この辺、物理と人体の構造と言語が関わって理工系も面白がれるネタのはずですが、そういう話をしてくれる人がいなくていつも厳しい気分です。 現代英語を英語史の視点から考える 第8回 なぜ「グリムの法則」が英語史上重要なのか 言語の世界にも物理に支配された法則があるとかいえばそれだけでも語学・言語学へのバリアーが減る人もいると思うので、高知工科大でもそういう講演ができる人を呼んだり、カリキュラム工夫したりしてコースを開発してそれを公開してもらえると非常にうれしいです。
私自身, 目下この視点からコンテンツ作りを考えていて, 日々の進捗報告・知見メモ・シェアにメルマガを利用しています. もう放送大学にでも入って言語学やった方がいいかもしれないとも思っています. 費用は恐ろしく安いので時間をどう捻出かが問題でどうするか悩んでいるところです.
ベラルーシのベラとフランス語のblancと白¶
いま話題のベラルーシに関連してちょっとやりとりしたので.
ベラルーシの「ベラ」の部分(ラテン文字にすると Belarus の bela らしい)は、フランス語で「白」の「blanc」と語源とか関係あるのかな
参考リンク: ベラルーシ共和国, 東京都立図書館 以前も少し調べたことがあるのですが、素直に白で良さそうです。Wikipedia: ベラルーシ 由来は割と面倒そうな気がします。続 これを見るとフランス語はいいとしてラテン語・ギリシャ語がalbus系(いわゆるアルプスが多分ここが語源なような気がする)の言葉で、色などの基本的な語彙は割と各言語のネイティブとしてあまり変わらないような印象があり、スラブ語のベラが何由来なのか気になっています。
フランス語とラテン語とギリシャ語で「白」ってなんていうんですか?読みかたと綴りをおしえてください 「白」というより「白い」なら、★フランス語:Blanc(ブラン)★ラテン語:Albus(アルブス)★現代ギリシャ語:άσπρος(アスプロス)です。
参考: бела, wiktionary 我らがwiktionary先生に聞いてみたところ、スラブ祖語からの印欧祖語が直接の由来のようです。 フラ語のblancはこれを見る限り印欧祖語のレベルだと別単語です。
似ているが元をきちんと辿ると違うらしい語もあれば, 紆余曲折を経て同じ単語になってしまったが全然違う由来を持つ語もあります. 例えば魚の群れを表すschoolは学校とは関係ありません.
publicの多彩な意味¶
ツイートを発掘できないのですがTwitterで見かけました. 確かいま問題のウクライナ関係の情報をきちんと見る, といった文脈だったと思います.
of ordinary people 1. only before noun] connected with ordinary people in society in general
for everyone 2. [only before noun] provided, especially by the government, for the use of people in general
of government 3. [only before noun] connected with the government and the services it provides
seen/heard by people 4. known to people in general
5.open to people in general; intended to be seen or heard by people in general
place 6. where there are a lot of people who can see and hear you
勉強会で翻訳をやっている人にも「基本的な単語こそ入念に調べます」みたいに何度か言われたことを思い出します. 英語と言わずとも数学でも基本的な用語の使い方が雑だと一気に信用できなくなりますし, 何でも同じかと反省とともに.
今週のロシア語¶
以前買った本で文法の復習をやっていたため今週は特に記録なしです. 独・仏・伊・西・中と違って一般的な単語があまりに英語と違う上, 文法的にも細かい違いが多いためどんな要素があったか雑に再復習をしています. 雑に総復習しつつ, 実際の文にあたって実践しつつで進める予定です.
数学・物理ではもはやほぼ味わえない初学者の苦しみを思い出すいい機会でもあり, のたうち回って来ます.
2022-02-26¶
数学・物理 数学を続ける秘訣・ダイエットと数学学習の関係/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 数学を続ける秘訣
- ダイエットと数学学習の関係
- 書籍紹介: 数学のとびら ルベーグ積分と測度
- 書籍紹介: 岩井敏洋(著)/ネコの着地を理解するための幾何学・力学・制御講義
- 書籍紹介: 川平友規, 入門複素関数
- 書籍紹介: 演習詳解力学
- 代数幾何チャンネルの紹介: 榎本 觀 代數幾何學
- 物理と(厳密な)数学
- ベンチマークからの統計学入門
- Dependency Injection in F#
- eagle, .NET 6で始めるF#デスクトップアプリ開発
- Common Lispのクイックリファレンス
- ピアノと気合(語学版に掲載)
- Windowsでの音声読み上げツール(語学版に掲載)
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
数学を続ける秘訣¶
以前話したEnergeiaでのもくもく会は出張中や帰ってきた当日のヘロヘロ以外は基本的に土日も毎日22:00-23:00でやっています. 私としては言われてなくても毎日勝手にやっている時間にzoomをつけてみただけですが, 一ヶ月程度ずっと一人でやっていたところ, 最近メルマガから来た方が時間があるときに参加してくれるようになりました. 知人にこの話をしたら「いくら毎日やっているからといって, 誰も来ていないオンラインもくもく会を良く続ける気になるね」と言われました. せっかくなのでちょっとこれについて書こうかと思います.
これはまず信用の問題があります. メルマガ発行もそうですが, やったりやらなかったりの状態だと参加者も参加しにくいです. 主催者の本気度がわからないというか. だから参加者がいなくても毎日続けるのが大事です. 続けていると「少なくともこいつは口だけではない」とは思ってくれます. それで即信用につながるわけでもありませんが. 少しでもいいから日々続けるのが大事, そして去年末からはたくさん計算しようとも言っているわけで, それを実践する姿を見せようという意図もあります.
最終的には習慣化とそれにいたるメンタルケアが必要です. 読者の方もいくつかの層にわかれていますが, 最近は単純な数学やらプログラミングの話よりもこの手の時間管理というか, 環境構築というか, その手の話が必要そうな人が多いのかもしれないと思うようになりました. この辺, 世間的には自己啓発的な分類に入り, 社会的にはタスクマネジメント・ビジネススキルの話にもつながります. 少なくとも数学・物理・プログラミング勢はあまりこの辺を見ておらず, むしろ忌避しているのではないかという霊感があります. そして同じことを言うにしても私からそういう話を出した方が受け入れやすいのではないかという気もしています. 興味がある人が多そうならこの手の話もちょこちょこ入れようと思うのでアンケートでコメント入れておいてください.
少し書いておくと結城浩さんの活動を見るとそれだけでも十分参考になります. 日々の行動ログを見せてくれる投げ銭系のサービスもありますが, そこまでせずともTwitterで活動記録を見ているだけでも参考になる. ポイントは二つあります.
- 気分は掴めていても, 明確に言葉として提示されてようやく腑に落ちる.
- 言葉としてはわかっていても, 行動してようやく腑に落ちる.
どちらかではなくどちらも大事です. 前者だけでどうにかなることもありますが, 後者の実際に行動する部分が抜け落ちている人もよくいます. 特に理屈重視で腰が重い, 私のような人間です. 多分わざわざ私のメルマガを読み続けるような人はよくも悪くも似た人なわけで, これこそはっきりと「あなたがそうです」と言った方がいいのかもしれません.
この辺, 言霊と定義・定理みたいな話をよく思います. 言霊みたいな話をするとうさんくさいと思う人がいるかもしれないのでちょっとコメントします.
時々「すぐれた定理は定義になる」と言われます. 代表的なのは微分積分です. 微分積分が重要な局面は数多く, だからこそそれらの源である連続性・微分可能性・可積分性が理論の核になります. このとき「この性質が大事だ」と名前をつけて概念に魂を吹き込みます. ディラックが「私の方程式は私よりも賢い」と言ったように, すぐれた記号や概念運用はそれ自身が強い意味を持ち, 思考をリードしてくれます. これに宗教色を与えた言葉が言霊だ, というくらいの感覚を持っています.
多分言霊というとうさんくさいと思っても, 数学・物理・プログラミングでの定義や概念に対する適切な命名や記号化と言えば受け取りやすい人も多いのではないでしょうか. 上でタスクマネジメントみたいな話も私からなら受け取りやすかろうと書いたのはこういう話です. 数学・物理・プログラミング勢に伝わるように変換できるからです. 結城浩さんの名前を挙げたのも, 結局この技術を磨き抜いている人で, 数学・物理・プログラミング勢を越えた層に届く変換能力を持つ人だからです.
この話, 今回はこんなところで.
ダイエットと数学学習¶
習慣とメンタルと言えば, ということでちょっとダイエットの話もします.
新型コロナで肥満が危険因子と言われていました. 私は白血病で身体が弱く, あまり運動もできない時期が続いてその間じわじわと太り続けていてやや肥満でした. できる限り適性体重にしようと医者に言われたため, この一年くらいダイエットを続けていて, 無事適性体重にはなりました. 目標にはまだもう少しあるのでダイエットは継続中です. ここ数ヶ月は停滞中ですが, 半年で6kg程度は痩せました.
痩せた方法はごく単純です. 摂取カロリーが消費カロリー以下なら嫌でも痩せるわけで, 食べ過ぎず適度に運動すればよいのです. これまで食べ過ぎだった面もあるので, 毎食の食べる量を少し減らしつつ, エアロバイクを買って毎日二時間から三時間, 作業・勉強をしながら漕いでいます.
これは去年いきなりはじめたわけではありません. まず七年程前にいい加減体力をつけるための工夫をしようと思い, 子どもの頃にやっていた柔道を再開しました. そのうち中学生くらいともっと稽古できるようになるべく筋力もつけようと思い, ジム通いをはじめました. せっかくならしっかりボディメイクもしようと思い, 食事や生活に気をつけるようになりました. 五年程度じわじわ環境と習慣を作ってきたのです. そして今回, ようやくダイエットモードとしてお腹がすいても我慢する・我慢できるようにするメンタルも作り上げました. いわゆるチートデイなど嫌にならない工夫も入れ込んでいます.
前もメルマガで書いていたように, このときの一つのキーは「実験科学の視点」です. ダイエットなり体力作りなり筋トレというとなかなか精神的なハードルが高いのですが, 自分の身体での人体実験・検証と思うと多少なりとも心と身体を動かしやすくなったのです. これも言霊バリアーなのだと思います. どういう言い方をすれば自分が受け入れやすいのか工夫したわけで. 世間的には「人体実験」と言った方が嫌がられそうですが. 何かやる上で自分に合った言霊を見つけるのは大事なのも改めて実感した次第です.
あなたも数学・物理・プログラミング関係で何かしたいのだろうと思います. 自分が行動しやすくなるような言い換えを探してみてください. 今年は競プロやプログラミングを含めた計算し倒す系に集中しようと言っているのも新たな言霊獲得のための特訓中なのです.
書籍紹介: 数学のとびら ルベーグ積分と測度¶
2月下旬新刊予約受付中 『数学のとびらルベーグ積分と測度』山上滋(裳華房) 測度論を経由せず、積分を線型汎関数として捉えるというアプローチで記述された、これまでのルベーグ積分とは異なる画期的な入門書。
これは私が愛してやまないリース-マルコフ-角谷の定理を背景にした議論で, 現代数学探険隊解析学編でも取り上げています. 実は現代数学探険隊でも当初はこの本にあったようなアプローチを取ろうかと思っていました. 学生時代の私の専門である作用素環, そして線型代数とのリンクもいいお気に入りのアプローチでもあります. ついでにいうと山上先生も作用素環系の人(のはず)です.
このアプローチを取らなかった理由も念のため書いておきます. 端的に言うとルベーグ積分に制限がつくからです. 少なくともリース-マルコフ-角谷の定理を前提にしようと思うと.
リース-マルコフ-角谷の定理ではコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数環の双対空間を考え, この元が上記の「積分を線型汎関数として捉える」の線型汎関数です. つまり基礎の空間に位相が, それもコンパクトハウスドルフ性が必要です. 応用上この仮定を満たすことも多いとはいえ, 特に確率論では裸の可測空間上での議論が必要な局面が多いのも実状です. ちょうど今書いたように応用上はどうにかなる場合も多いのですが, 入門書で書かれる基礎理論では逆に位相空間論を知らないといたるところでハマる可能性があります. もっと言えば「位相空間を知らないとこの本は読めないのでは?」と思わされる可能性です.
積分論の本当に最近の進展は追えていませんし, 位相空間論を意識しなくても問題ない, 私が知らない定式化があるのかもしれません. いい傾向とは思えませんが, 機械学習などで測度論を知らないといけないとかいう風潮が一部にあるようで, その議論をおさえられるこの本に興味がある方もいるでしょう. 今年は計算モードなので読む時間が取れなさそうです. これから読もうという方がいればぜひ感想を教えてください.
書籍紹介: 岩井敏洋(著)/ネコの着地を理解するための幾何学・力学・制御講義¶
今日2月22日は #猫の日 『猫の着地を理解するための幾何学・力学・制御講義』 岩井敏洋(京都大学名誉教授)著 https://bit.ly/36lchuG
"The falling cat is an interesting theme to pursue"で始まる数学書 https://bit.ly/3s7IHRM #LectureNotesinMathematics 第2289巻(2021年刊)です.
結論からいうと猫の宙返りは力学的・制御的に面白いという話で, そこに幾何学の事情も絡みますよ, といういろいろな視点から楽しめるテーマです. いまだ勉強しきれていないのですが簡単にいまの私の理解を書いておきます.
猫が宙返りするには尻尾をうまく使っています. 力学的には何か力がはたらかない限り運動できません. 空中にいる猫には重力しかはたらいていないので, ふつうに考えると回転にあたる宙返りは不可能です. これを可能にするのが尻尾の存在で, 尻尾と身体を逆向きに捻れば反作用的に自分の内部で力を産み出せ, 空中でも身体を回転させられる寸法です. もちろん角運動量の話です. ここには幾何の事情もあり, 物理的にはゲージ場と等価な話だ, といっていろいろな研究があります.
学生時代, 作用素論・表現論的な視点から勉強していたアハロノフ-ボームとも関係があり, 前々から興味があったものの, 微分幾何方面の素養がないから微分幾何をはじめとした幾何を勉強していたのがここ数年, という何度か書いている経緯があります.
書籍紹介: 川平友規, 入門複素関数¶
普段は全然使わないくせに、要所で伏兵のように経済学徒を襲ってくる複素関数論、この教科書は大変おすすめです。高校数学の教科書みたいな圧倒的な読みやすさです。 フレンドリーで丁寧な説明で、章末問題は解答が充実してます。これはゼミが助かるなあ。
何に使うとかあまり意識していなかったですが経済でも使うんですね! 今ちょうどこの本の線積分の章を読み進めているところです
経済学そのものよりも、経済学で使う統計学で不意打ちしてくる困ったやつです。
計算結果だけ使えばいいのでは感しかないのですが, そういうこともあるのかと思い紹介しておきます.
いろいろな積分計算と言えばフーリエ変換やラプラス変換もあり, 常微分方程式の解法としてのラプラス変換の計算の応用は電気回路の理論にもあります. 学部のとき応用物理系の講義もあったのでそこに出ていたら, 工学出身の先生が「これは表を見て使えればいい」と言っていました. その辺の割り切りをすればいいので経済で関数論の勉強とかやめた方がいいという気分しかないのですが, 経済には経済のいろいろな事情もあるのでしょう.
書籍紹介: 演習詳解力学¶
われらが筑摩が演習詳解力学を復刊してくれるようです. 猫の話を紹介したように力学由来の話は汲めども尽きぬ物理の源泉ですし, 馬鹿みたいな計算が出てきて必要な分野でもあり, 常微分方程式の数値計算で遊べる分野でもあり, いろいろなポイントがあります. 計算で遊び倒すが今年のテーマで手元に置いて損はなかろうと, とりあえず予約注文しておきました.
代数幾何チャンネルの紹介: 榎本 觀 代數幾何學¶
第一回が閉リーマン面でした. 時間が取れずながら聞きしかできていませんが, 期待のテーマなので応援も込めて宣伝します.
物理と(厳密な)数学¶
数理物理やるんでもなければ物理に厳密な数学はあまり有用でないと思っているが一方で様々な数学を知っていて使えることはどこに行っても大いに役立つという感覚
厳密な数学で物理に挑もうと思うとナビエ-ストークスを筆頭にスタートの遥か手前で既に死ぬので、あくまで物理と思って取り組みたいなら取り組む問題が死ぬほど限定されるか、もしくはそこだけピンポイントに狙い打てる凄まじい物理の嗅覚が必要です。
若い頃のPenroseとかはまさに嗅覚が凄まじかったんだろうなと思います
今日も堀田量子の堀田さんが「厳密な数学で物理に挑む」的な話に暴言を吐いていて困ったものだと思っていましたが, それはそれとして数理物理を物理にするのは大変ですよというのは何度でも言っておくべきだとも思っています.
ベンチマークからの統計学入門¶
先日から言っているように, いま数学・競プロからのプログラミング入門として素数判定コンテンツを作っています. 出張が思ったよりもボディブローのように効いていて今月中にリリースまで行きませんでしたが, もう少しでできそうです. 3月第一週にはリリースしたいです. (ちなみに世のいろいろなコンテンツに挑むたためのミニコンテンツで, 無料です.)
素数判定高速化に関して時間測定が必要なわけですが, そこで時間測定に関連して平均をみたりする簡単な統計処理が必要です. もちろん本格的な統計学は大変で当面そこまでやる予定はありませんが, 簡単なプログラミングでも数学絡みで統計処理が必要な場面として一つの導入になるとは思っています. そのばらつきを考えた時間測定からの統計学入門の入門というか. この辺も一つコンテンツを作り込んでみるといろいろ議論するべき点が見えてくるので, 試行錯誤しているところです.
Dependency Injection in F¶
DI, 関数型言語なら単に関数を差し替えればいいのでは? という雑な理解しかありません. ただReaderモナドやFreeモナドで議論するという話になっているようで, そこに興味があります. FSharpPlusを使っているとのことで, その辺も興味があるのでちょっと読んでみようと思っています. まずは無料サンプルを読んでみます.
ちなみに我らがF# for Fun and ProfitでのDIの解説.
Clojure版のデザインパターンを論じた次のページも非常に面白いです. 言語こそClojureですが発想としてはどの関数型言語でも使えるはずです.
eagle, .NET 6で始めるF#デスクトップアプリ開発¶
本書ではWindows環境にて、Visual Studio 2022と.NET 6を用いてWindows用デスクトップアプリケーション開発を行います。 開発言語にはF#を採用します。
DIの記事を見ていたら見つけたので. F#, .NET系の資産を使えるタイプの言語なのでもっと遊んでみたいとは思っています.
Common Lispのクイックリファレンス¶
これは自分用の備忘録でもあります. 古びないプログラミング系コンテンツにふさわしい言語として一つ候補に挙げているからです. あとはやはりREPL開発が本当に気持ちいいからです.
今週の問題¶
最近コンテンツ制作と競プロ演習でプログラミング系の計算ばかりやっていてなかなか例と計算編が進んでいませんが, 今週は少し進捗を生みました.
- 直交群と特殊直交群の違い: 弧状連結性
- 弧状連結な位相群の代数的特性: 弧状連結成分は部分群をなす
どちらも位相空間論の面倒な議論はさほど必要ではなく, 定義を適切に扱えればそれで終わるタイプの議論です. あくまで知識ベースの話としては, しかし十分な習熟がないと位相の言葉に目が眩んでどうしたらいいかわからないという人も多いでしょう. 単純に行列の話にまで落とし込んだとしても, です.
数学的にも意外といろいろなところに尾を引く面白い議論です. 何せ行列群の特性と位相空間論が結びつくわけで, こうしたところから位相空間論に親しむ手さえあります. 直交群・特殊直交群自体は絵に描けませんが, 絵に描ける事情が群の代数と位相に影響しているという意味では絵に描けます. そして後者は位相的性質と代数的性質の連携を謳う重要な命題で, ヒルベルトの第五問題に直結する大きなテーマです.
まとめましょう.
- 証明を眺めると定義の確認だけ. それも行列の抽象的な計算処理で対応できる.
- 定義の確認をする, ただそれだけの証明が意外と書けないことに気付かされる.
- 位相と代数のセットが描く世界を見られる.
- 行列論から位相空間論に迫る経路を与えてくれる.
この問題は良さを実感するだけでも相当の数学力が必要だとは思いますが, とにかくいいところが散りばめられた問題(命題・性質)です.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 今こそロシア語をやろう/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 来週からはロシア語をやります
- ピアノと気合
- Windowsでの音声読み上げ
- アインシュタインの原論文, スペイン語第八文の学習ログ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
来週からはロシア語をやります¶
何となく(アインシュタインの特殊相対性理論の)スペイン語は読めそうな自信がついてきたので, 来週から本格的にアラビア語, 特にクルアーンの読解をはじめる予定でした. しかしこの世界情勢下で新たに言語を勉強するなら, ロシア語だろうと思い, 急転直下ロシア語の(再)勉強にシフトします.
本来はウクライナ語の方がいいのでしょうが, ウクライナ人はほぼ全員ロシア語が話せ, 実際に非常に近い言語だとも聞いています. 私の観測範囲・検索能力では教材などを含めた情報量はロシア語の方が多く, 勉強しやすさが違うのでいったんウクライナ語ではなくロシア語に向かいます.
ピアノと気合¶
ピアノをやると頭が良くなるというより、ピアノみたいに正確性と忍耐力の求められる細かい反復動作を一人で毎日何時間も根気強く練習し続けられる時点で、そもそも勉強にも向いているよねと思う
数学・物理・プログラミングでも同じです. そしてこの手のコンセプトから最近『英語のハノン』という本が出版されました. 「スピーキングに役立つ文法」というコンセプトで, とにかく発音のくり返し練習をさせる本です. 実際去年末あたりから毎日夜寝る前に一時間やっています. 一日たった一時間とはいえ, 一年続ければ少しはまともになるだろうと思い, 歯をくいしばって続けています.
少し長めの文だと覚えきれないだろうと思ってはじめは本を読みながらの音読だけにしていたのですが, 苦手だからと逃げてばかりではいけないと思い, この数週間は本を開かずに音声を聞くだけのリピートでがんばっています.
Windowsでの音声読み上げ¶
Windows SAPIを使って合成音声を直接ファイルに落とすコマンドラインツールが欲しかったのだが、適当なフリーソフトがない。仕方ない、作るか・・・
Macでコマンドがあるのは知っていたのですが, Windowsにもあると知ったのでメモがてらシェアします. 以前単語暗記用にフランス語単語集を作って, その発音チェックしつつの暗記のためにMacで音声ファイルを作ったことがあります. こういうのもちょっとしたプログラミングができれば自作で対応できます.
散発的な対応ならGoogle Translateでも対応できます. ただ大量に生成してくり返し聞き込みたい場合, やはり音声ファイルを作るべきです. そんな自分用メモでした.
アインシュタインの原論文スペイン語第八文¶
文構造¶
- Basándonos en la teoría de Maxwell para cuerpos en reposo,
- estas dos hipótesis son suficientes para derivar una electrodinámica de cuerpos en movimiento
- que resulta ser sencilla y libre de contradicciones.
先頭は現在分詞が導く分詞構文で副詞句です. カンマからも区切りが明確です. 他の動詞はson (<- ser), derivar, resulta (<- resultar), serがあります. 英語と違ってスペイン語では動詞の原形は本動詞として使えないため, 本動詞はsonとresultaの二つです. 他の要素を大きく見ればカンマのあとからson (<- ser)が動詞の主節で, そのあとにqueが導く関係代名詞節が来ているはずと推測できます. この推測が正しいか検証します.
Basándonos en la teoría de Maxwell para cuerpos en reposo,¶
冒頭がbasando+nos (<- basar)の現在分詞です. 英語でいうbased onがbasar enでla teoríaが続きます. そのあとのde Maxwellがof Maxwellです. さらに前置詞paraが導くpara cuerpos, 前置詞enが導くen reposoがあります. あとは名詞の性数などの注意点があるだけで構造は素直です.
まとめると次のように英訳できます.
- Based on Maxwell's theory for bodies at rest,
英訳すると見かけの構造が多少変わります. at restはコロケーションの問題でふつうenに対応しないatが来ています.
estas dos hipótesis son suficientes para derivar una electrodinámica de cuerpos en movimiento¶
冒頭のestasは英語theseにあたる女性形の複数形です. アクセント記号の有無でbe動詞estarの二人称単数tú estásと区別しましょう.
先程書いた通り本動詞はsonでserの三人称複数現在形です. 主語は三人称複数なのでhipótesisは単複同形性に注意すれば, 素直にestas dos hipótesisとすればよいでしょう. 動詞がbe動詞なので英語で言う第一文型か第二文型の型になるはずで, 後ろは副詞・副詞句だけか補語が来ます. ここでは形容詞suficientesが複数形の活用形で出ているため, 補語で判定できそうです.
次に原形derivarがparaをしたがえている点に注意します. 英語で言えば目的用法のto不定詞です. derivarは他動詞なので目的語があるはずで, 確かにuna electrodinámicaが続きます. さらにこれを補足説明するde cuerpos, en movimientoが続きます. 物理の話の流れとしてはこれで一まとまりとみなしていいでしょう.
まとめると次のように英訳できます.
- these two hypotheses are sufficient to derive an electrodynamics of bodies in motion
que resulta ser sencilla y libre de contradicciones.¶
本動詞はresultaです. 特に原形のserがあるためturn out to beにあたる熟語resultar serとみなします. 形式的にはbe動詞のようにみなします. 三人称単数現在形だから主語は三人称単数で, 後ろは副詞・副詞句か補語が来ます.
queは主語にあたる関係代名詞と判定でき, 先行詞は単数形ですがmovimientoでは意味が通りません. 意味が通る先行詞は単数形の名詞electrodinámicaです. 文法的にもう少しサポートします. 補語にあたる単語はyで連結された二つの形容詞sencilla y libreです. スペイン語では主語に合わせて形容詞が活用し, 前者は女性形だから主語も女性名詞でなければなりません. この点からも先行詞は男性名詞のmovimientoでは駄目で, 男性名詞かつ複数形のcuerposはなおのこと問題です.
最後のde contradiccionesはlibreとセットにして, 英語でいうfree of contradictionsと判定します.
まとめると次のように英訳できます.
- which turns out to be simple and free of contradictions.
単語¶
- basándonos <- basando+nos <- basar: 現在分詞+nos, base
- en: in, at, on
- la: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- teoría: 女性名詞, theory
- de: of
- Maxwell: マクスウェル(人名)
- para: for, to, by, due
- cuerpos <= cuerpo: 男性名詞, body
- reposo: 男性名詞, rest
- cf. reposar
- estas <- esta <- este: 女性複数形, this
- cf. tú estás
- dos: 男性名詞, 2
- hipótesis: 女性名詞, 単複同形, hypothesis
- son <- ser: 三人称複数現在形
- suficientes <- suficiente: suffiecient
- derivar: derive
- una: 不定冠詞, un-una-unos-unas
- electrodinámica <- electrodinámico: electrodynamic
- movimiento: 男性名詞, move
- que: 関係代名詞
- resulta <- resultar: 三人称単数現在形
- ser: be動詞
- (f) sencilla <- (m) sencillo
- 形容詞: simple
- 女性名詞, single
- y: and
- libre: 形容詞free (動詞librarの活用形)
- contradicciones <- contradiccion, 女性名詞
2022-02-19¶
数学・物理 馬鹿みたいに計算する/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
今回は日曜から前泊で出張で, 夜もヘロヘロで何もできなかったので情報共有系のネタがあまりありません.
- 田崎さんのオンラインレクチャーシリーズ
- 馬鹿みたいに計算する
- clj-maxim計算する
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
田崎さんのオンラインレクチャーシリーズ¶
以前スピン系の本か何かの査読応募に出したときの話か, 田崎さんからメールが来ていたのでここでもシェアします.
田崎さんのホームページのトップからリンクされていて, 非公開のページではありません. むしろYouTubeにあがってさえいる動画なので積極的に宣伝していい動画でしょう.
一昨年のスピン系の本さえまだ読み切れていないくらいですが, 学部二年のとき田崎さんの熱力学の本を読んで感動して, 学習院に遊びに行ったり, 数理物理を本格的に意識したきっかけの人です. 私の修論も田崎さんが書いたレビューを参考にしていますし, ハバード模型の拡張でさえあります. 講演も非常にうまいので興味がある方はぜひ聞いてみてください.
馬鹿みたいに計算する¶
出張で平日はほぼ何もできなかったのですが, 出張の移動中, そして月曜の夜だけは何とか競プロの問題を解いていました.
いま私が把握している限り, 私のメルマガを読んでいてプログラミングに興味があるのは, 「プログラムが一定以上書けて, 何らかの理由で数学を勉強したい・しなければいけない人」と思っています.
(数学よりのスタンスでプログラミングもやってみたい人がいたらぜひ教えてください. このあたりにも書いたように, 私はまさに「数学よりのスタンスでプログラミングもやってみたい」勢です.)
さて, 上記の層の人で, いわゆる「文系プログラマー」の方もいらっしゃいます. 特に「数学的思考力」(とかいう何か)に課題を感じている人もいます. かといって何をしたらいいかわからない人も多いようです. 実際にプログラムを書いて中高数学の問題を考えてみよう・解いてみようというコンセプトのコンテンツがまさに応用からの中高数学再入門 自然を再現しよう 中高数学駆け込み寺, プログラミングで数学を 中高数学虎の穴です. もちろんとにかく数学がしたい, 私と同タイプの人には勧められる一方, これは良くも悪くも数学しすぎているきらいもあります. 入口としてどこがいいかはずっと考えています.
そしてこれも何度も書いているように, いまその入口としてアルゴリズムとデータ構造・競技プログラミングを考えています. 動的計画法やら何やら, 明らかに知るべき知識・技術もあり, 本もたくさん出ています. ただ本は読むだけ読んで知識としてもプログラミングを組み上げる能力としても全く身についていないので, 年明けからまずはAtCoder Problemsにひたすら取り組んでいます. もともと10題くらい解いていたところから, 毎朝起きて朝の支度をしたあとの時間を使って取り組み続け, 300題中114題まで来ました.
少なくともMediumの13問程度まで, 問題を解くのにアルゴリズムとデータ構造の深い知識はほぼ不要です. プログラミングとしては適切な配列の処理をがんばるだけです. 問題もほぼ例外なく場合の数の数え上げで, 小学校の算数または中学・高校の場合の数の問題で, 数が冗談みたいに多いバージョンです.
こう書くと状況は明らかに限定的ですが, それでも数学・プログラミング学習に役立つ点があります. いまの時点でいくつか気付いた内容を紹介します.
まず「場合分けの必然性」です. 高校の頃, 数学の問題を解いていていろいろな場合分けが自力でできずにハマりまくっていたことがあります. 数学の先生は「場合分けはいわゆる発想やひらめきによるのではなく, 自然とそうやるべきことなのだ」と言っていました. 「自然とそうなると言われても」と途方に暮れていたのを思い出します. 今は多少なりともその気分はわかります. 自然と「この場合は大丈夫か?」と心配になるのです: ある程度できるようになれば. AtCoderでもWA(Wrong Answer)になったとき, 何かのコーナーケースを落としているときがありました. 解説を見るなり他の人のコードを見るなりして「ああ, 確かにこの場合が抜けていた」, 「考えてはいたがプログラムに表現しきれていなかった」と思うことがよくあります. この場合分けの思考は場合分けだけではなくありとあらゆる数学の場面で基本的です. プログラミングなどの実務でもテストでのコーナーケースの問題に直結します. プログラミングができる勢は場合分けはこうした場合分けをコーナーケースの確認なのだと思うと, 少しは場合分けに関する数学的思考を体感する糸口になるはずです.
あとは人力での計算とコンピューターにさせる・させられる・させたい計算の違いがあります. 人間(自分)がやるならこう, という計算の処理をコンピューターに直接辿らせるのは難しい, 少なくともその処理が自分にはさっと書けないことがあります. 競技プログラミングの制約として時間内に処理させきらなければならず, その点もアルゴリズム構築上の制約になる場合があります. 人間(自分)が考えるようにプログラムを書いた方がいい場合もあれば, 剛腕で全部計算させるタイプのプログラムを書いた方がいい場合もあれば, 少し工夫しないと意図通りの計算をさせられない場合もあります. 初心者レベルだとこの少しの数学と少しのプログラミングの技術の組み合わせで答えでさっと書けます. もしあなたにプログラミング系の素養があって数学的思考に難を抱えている自認があるなら, 騙されたと思ってAtCoder Problemsの300題を解いてみてはどうでしょうか? 上で書いたように, 少なくともコーナーケースの嗅ぎ分け能力を上げると, 場合分けに関して数学のありとあらゆる場面で役に立ちます.
一覧ページがすぐに見つからなかったのですが, AtCoderだと大体どんな言語でも使えるはずです. プログラムを書いたことがなくても, 公式でC++入門コンテンツがあるのでこれを読むといいでしょう. 最近はPythonによる本が充実してきているので, 入門レベルならPythonで十分です. (私は趣味でF#が基本, 最近Common Lispを並行して勉強しているところです. 聞ける人が少ないと思うのでどちらも初学者にはお勧めしませんが.)
今年は計算しまくる年にしようと宣言したわけで, プログラミングでも年始から計算し続けていて, まだまだ本当に続けているぞという宣言を改めてしておきます. 年始に目標を掲げても二月になるとその目標への取り組みをやめてしまう人が8割を越えるとか. 私はまだまだ続けています. 競プロはようやく少し楽しくなってきたところです. 現状私がプログラムネタで気楽に楽しめる数少ない領域です. ぜひ一緒にやりましょう.
clj-maximaまたはmaxima¶
数学系プログラミングもいろいろ調べて実践もしている証拠として, clj-maximaのREADMEのサンプルコード修正プルリクを出しておきます.
READMEのサンプルコードとはいえ, 明白なコード修正のプルリクを送ったのははじめてで, 取り込まれたのもはじめてだったので自分用の記念です.
上でCommon Lispをやっていると書いたのもこれの影響です. 去年から素数夜曲のためにSchemeをやっていて, さらに先日からfdg-bookやSICMUtilsの話をしているように, ここ最近割とClojure・Schemeづいています. Clojureはすっきりしていてかなりお気に入りですが, 上記ライブラリがまだ発展途上なのが面倒です. Pythonはnumpyやらsympyやらあって私自身学習の記録を整理してコンテンツも作っていますが, 微妙なメンテナンスが入って面倒です. 今も開発が続いてはいるものの, かなり枯れていて後方互換性がかなり強く担保されていそうな言語としてCommon Lispはだいぶ前から視野に入っています. AtCoderでプログラムを書くレベルならもう少し強化しても罰は当たるまいと思ってついでに強化中です. (Common) Lispは古い言語なのでかなり設計も古くて半端なところはあります. 改善のためのrutilsなどのライブラリもありますが, このライブラリはAtCoderで使えないのでがんばって裸のCommon Lispで書いています.
ちなみにmaximaのプログラムを実際に読み解く勉強会, 需要あるでしょうか? 私の場合, 例と計算編のような自発的なやる気が出る話以外は, 勉強会形式で無理やり話すための勉強時間を作らないと続かないことが見えています. 興味がある人がいたら連絡ください. 何か考えます.
今週の問題¶
今週は忙しくて何もできなかったため, 残念ながら新規追加はありません.
とはいえ, 例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 アインシュタインの原論文, スペイン語第七文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
今週は日曜前泊からずっと出張でほぼ何もできていません. 先週出していなかった分の学習ログを共有します.
- アインシュタインの原論文, スペイン語第七文の学習ログ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
アインシュタインの原論文スペイン語第七文¶
今回は未公開分の先週の学習ログです. 単語について詳しくは単語集ページも参考にしてください.
文構造¶
- Queremos llevar esta suposición al nivel de hipótesis y además introducir una hipótesis adicional
- (cuyo contenido será llamado de ahora en adelante "principio de la relatividad")
- que solamente a primera vista parece ser incompatible con el principio de la relatividad.
- Dicha hipótesis adicional sostiene
- que la luz en el espacio vacío siempre se propaga con cierta velocidad $V$
- que no depende del estado de movimiento del emisor.
簡単に全体を見渡すべく動詞を数えます.
- queremos <- querer: 一人称複数, 現在形
- será <- ser: 三人称単数, 未来形
- parace <- paracer: 三人称単数, 現在形
- sostiene <- sostener: 三人称単数, 現在形
- se propaga <- propagarse: 三人称単数, 現在形
- depende <- depender: 三人称単数, 現在形
途中のllevar, introducirは原形なので不定詞句で出てくるはずです. つまり五つの文または節が必要です. これを上のように分解しました. いつも通り動詞の活用から主語を割り出し, 自動詞・他動詞の区別から目的語の有無を判定し, 関係詞節の欠けた要素を割り出しましょう.
Queremos llevar esta suposición al nivel de hipótesis y además introducir una hipótesis adicional¶
querer+不定詞はwant+to不定詞なのでqueremos+不定詞で抜き出します. ここのestaにはアクセント記号がないため, estarの三人称単数現在形ではなくthisにあたる指示形容詞です. introducirは不定詞なので適当な不定詞句で解釈する必要があり, ここではyによる並列も考える必要があります. 特にqueremos+to不定詞が並列で置かれたと解釈するのが自然でしょう. これで動詞回りがわかり, ついでに大きな文構造も取れました. to不定詞句の不定詞は他動詞だからあとは主語・目的語・形容詞句・副詞句などを特定してピースを埋めます.
queremosは一人称複数形だから主語は明らかにweの省略です. 目的語は形式的にはto不定詞句で, 特にto不定詞句の目的語として(llevar) esta suposiciónと(introducir) una hipótesisが候補に挙がります. 前者には前置詞句al nivel de hipótesisがさらについていて, 後者には名詞句una hipótesis adicionalがついています.
まとめて英訳すれば次のように書けます.
- We want to bring this assumption to the level of a hypothesis and also to introduce an additional hypothesis
(cuyo contenido será llamado de ahora en adelante "principio de la relatividad")¶
動詞は明らかにserá llamadoで, スペイン語がよくわからなくてもフランス語との類似で何となく未来形感を感じます. 何にせよllamadoが過去分詞だから未来形の受動文で, seráが三人称単数形だから主語は三人称単数です. ここでは明らかにcuyo contenidoです. cuyoはcontenidoを受けて男性形なので先行詞探しは別枠で考える必要があります. もちろん文の流れ, そして意味を考えればsuposiciónしかありません.
次にllamarを考えます. これはcallにあたり英語でいう第五文型を導けるため, 補語的な要素を持つ可能性があります. de ahora en adelanteでfrom now onの熟語で副詞なので, 「相対性原理」が浮いています. これはまさにSVOCのCでしょう. これで全ての要素に役割が与えられました.
まとめると次のように英訳できます.
- (the content of which will be called from now on "principle of relativity")
que solamente a primera vista parece ser incompatible con el principio de la relatividad.¶
本動詞はpareceで三人称単数現在形です. 原形のserがあって形容詞incompatibleが続くためparecer+不定詞+形容詞の述語句が見えます. 文の流れからするとこのque節はuna hipótesis adicionalの内容を説明しているはずで, solamenteは副詞, a primera vistaで熟語的な副詞(at first glance)であり, principioとcon el, relatividadはde laで前置詞の支配を受けているため, 浮いている名詞は関係代名詞とみなしたときのqueしかありません. これで主語が確定しました.
意味としてincompatibleに対して何がincompatibleなのかを補足するべくcon el principioがあります. 定冠詞つきだから何の原理なのか気になるわけで, それを示すのがde la relatividadです.
まとめると次のように英訳できます.
- that only at first sight seems to be incompatible with the principle of relativity.
Dicha hipótesis adicional sostiene¶
ここはsostieneが三人称単数現在形で, 三人称単数の女性名詞hipótesisを 形容詞dichaとadicionalが挟んでいます. (Dichaを見てもhipótesisの性が推測できます.) sostenerはholdの意味でhold that構文が推測できます.
まとめると次のように英訳できます.
- This additional hypothesis holds
que la luz en el espacio vacío siempre se propaga con cierta velocidad $V$¶
英語holdにあたるsostenerに続くのでおそらく完全な文を作るはずの節です. それを念頭に置いて読みましょう. 動詞は再帰動詞のpropagarseで, ここでのpropagaは三人称単数現在です. そもそも浮いている名詞はla luzしかなく三人称単数なので主語は決まりました. 残りは名詞句el espacio vacíoが前置詞en, cierta velocidad $V$が前置詞conの支配を受けているため, 副詞句と解釈すれば全ての要素が分類できます.
まとめると次のように英訳できます.
- that light in empty space always propagates with a certain velocity $V$
que no depende del estado de movimiento del emisor.¶
意味としてもcierta velocidadが何なのか気になりますし, 文の流れからしてもこれを先行詞とした節のはずです. 動詞は(no) dependeで三人称単数現在で, 他の名詞はdel estado, de movimiento, del emisorと全て前置詞の支配を受けているため浮いた名詞は関係代名詞とみなしたqueだけで, 主語の判定と節の分類ができました.
dependerと言えば英語のdepend onが想像され, depend onの形で他動詞とみなしたときの目的語がほしくなります. スペイン語ではdepender deで(del = de+el) estadoが目的語です. 単にestadoでは意味がわからないのできちんと補足があり, de movimientoが続き, さらに何のmovimientoかがわからないためそれを補足するdel emisorがあります. これで全ての要素に役割が与えられました.
まとめると次のように英訳できます.
- which does not depend on the state of motion of the emitter.
単語¶
- queremos <- querer: 一人称複数現在形, to desire, to want, to want to
- querer+不定詞: ---したい
- cf. query
- lleva <- llevar: 三人称単数現在形, take, cf. lever
- esta: this
- cf. él está <- estar
- suposición: 女性名詞, assumption, guess, supposition
- cuyo: whose
- contenido <- contener: 男性名詞, content
- cf. 過去分詞, contain
- será <- ser
- Formal second-person singular (usted) future indicative form of ser.
- Third-person singular (él, ella, also used with usted) future indicative form of ser.
- llamado <- llamar: 過去分詞
- de: 前置詞, of
- ahora: 副詞, now, just now, today, however
- cf: de ahora: nowadays, today, latter
- en: 前置詞, in, at, to
- adelante: 副詞, forward
- principio: 男性名詞, principle
- la: 女性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- relatividad: 女性名詞, relativity
- al=a+el
- el: 男性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- nivel: 男性名詞, level
- hipótesis: 女性名詞, hypothesis
- y: and
- además: in addition, as well
- introducir: 他動詞, introduce
- una <- un: 不定冠詞, 女性形
- adicional: additional
- que: 関係代名詞, 疑問詞, that, which
- solamente: 副詞, only
- primera <- primero: 形容詞, former
- vista: 女性名詞, sight, view
- a primera vista: 副詞(熟語) at first glance
- parece <- parecer: 動詞, to seem
- ser: be動詞
- incompatible: 形容詞, incompatible
- con: 前置詞, with
- dicha <- dicho: 男性名詞, remark
- sostiene <- sostener: 動詞, hold, sustain, support
- cf. tener: yo tengo - tú tienes / tenés - él tiene - nos. tenemos - vos. tenéis / tienen - ellos tienen
- luz: 女性名詞, light
- espacio: 男性名詞, space
- vacío: 形容詞・男性名詞, vacant, vacuum
- siempre: 副詞, always
- se: 代名詞, 三人称単数目的格, 再帰的に使う
- propaga <- propagar: 動詞, propagate
- cierta <- cierto: true
- velocidad: 女性名詞, velocity
- no: 否定
- depende <- depender: 三人称単数現在形, depened
- del = de+el
- estado: 男性名詞, state
- movimiento: 男性名詞, movement
- emisor: 男性名詞, emittor
2022-02-12¶
数学・物理 何もかも正確にやればいいわけではない/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- QCD: 詐欺から納得へ
- 何もかも正確にやればいいわけではない
- 『第2、第3の「KUMON」はなぜ出ないか』
- 木田雅成, 連分数
- 数論とエルゴード理論, Yuya Murakami: Extended-cycle integrals of modular functions for badly approximable numbers
- お気に入りのプログラミング言語を探せ
- Pythonでの動画作成
- $\mod$の総和の最大値
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
QCD: 詐欺から納得へ¶
この記事、めっちゃ面白かったのでオススメです 「QCD: 詐欺から納得へ」
いろいろな読み方があるでしょう. 素粒子系が好きな人はそれだけでも楽しめるかもしれません.
今回のポイントとしてはリー群がたくさん出てくる点です. 最近ずっとやっている計算系の話で数学としてはリー群・リー環だと言っています. 物理での具体的な応用先としては有名な話で, 改めて強調しておきます.
何もかも正確にやればいいわけではない¶
しかし、そんな彼らもどうやら数学は厳密すぎて面倒になることがあるらしい。 理論は数式化されなければいけないから、物理にとって数学は必要不可欠な基盤だ。 だから日常的に数学には触れているはずだが、どうやら数式の正確な操作や証明はしばしば彼らを疲弊させるらしい。 Twitterのタイムラインでも、この手の数学者と物理学者の意識というか守備範囲のちがいを見かける。 反対側の極にいる自分からは、厳密すぎるくらいに正確に研究に取り組んでいるように見える人たちが、数学の厳密さにうんざりしている。 その様子にはある種の微笑ましさを覚えるし、同時に、どの複雑さを受け入れて、どの正確さを犠牲にするのか、それぞれの場所で考えているのだなと感じる。
この数学と物理の話、なんとなくニュアンスの差を感じますね。ある領域の物理でその数学を厳密化しても、考慮していない新しい物理法則が働き出してしまって無意味な場合には、自分は無駄な数学はしません。一方もし物理に本質的ならばいくらでも厳密な数学を使おうとします。
私は「物理のための数学」と称してオーバーキルなコンテンツを作っている身としてはどうかという気はしますが, 物理学科での実際という意味では, もしあなたが物理をやりたいなら, 数学にこだわるべきではありません. 堀田さんが上に書いた理由とは全く別で, 数学的にきちんと議論できる領域自体ほぼないからです.
例えば流体力学はその基本方程式であるナビエ-ストークス方程式は解が存在して一意かどうかさえわかっていません. 数学としてはこれがスタート地点で, そもそもスタートさえ切れていないのが流体力学です. 物理的には論外の段階で止まっています. そうまでしてもやりたければやればいいと思いますが, 物理の遥か手前で失速します.
ちなみに私が常々文句を言っているのは教科書の記述です. 例えば以前いろぶつ先生の熱力学の本の査読をしていたのですが, 一般論を話している中で段落の変更さえなくいきなり具体例の話をはじめたり, 文章として無茶苦茶です. 他にも熱力学で初学者の混乱を引き起こすと有名な関数の引数を平然とやります. 「慣れればその方が楽だから」とは言いますが, 初学者に読ませるための教科書で, 散々悪評が定着している分野でどういうつもりなのか, 本当に理解に苦しみます.
この点, 温度を基本変数にした点で多少の批判がある田崎さんの熱力学の本は常に引数を明記し, さらに完全な熱力学関数(と変数)の場合は括弧の形を変えて明記する念の入れようです. 悪癖とわかりきったことを何故やめないのか, 異様としか言いようがありません.
熱力学というと, 私の学部の指導教員の話も思い出します. 「熱力学の第二法則は公理だと言ってくれればわかったのに」と学生時代から40年を越えてなお言い募る執念に感心しました.
『第2、第3の「KUMON」はなぜ出ないか』¶
KUMONの仕組みは、一見すると、初期資本も少なく、真似しやすそうに見える。しかし、KUMONの強みというのは、標準化された教材それ自体ではない。「子どものために」を合い言葉に指導者たちを動機づけ、指導に必要な知識を共創し、優れた教材の見返りとしてロイヤルティを徴収する、という仕組み全体にある。
そして、その仕組みを成り立たせているのが、教材を共通言語に、日々指導の改善に励んでいるコミュニティ・ネットワークなのである。このような仕組みがあって、日本においても世界においても独自のポジションに立つことができている。
よくよく調べてみると、同じようなことをするのが至難の業だということがわかる。生半可な気持ちで模倣すると大やけどを負うという仕組みなのだ。
これはまさに現代数学探険隊でやりたいことです. 例えばいろいろな本を読んでいると細かい部分で非常に困ります.
勉強していて困ることはいろいろあります. 例えば勉強したい大目標があってそこにいたるにはどうするか: 具体的には素粒子を勉強するために何をどう勉強していけばよいか, などです. 全体像を掴むとでもいいましょうか. ただ, ここで議論したいのは別のテーマです.
何を言いたいかというと, 「この本のこの定理のこの証明がわからない」という疑問です. 実際にその本を持っていないと質問に対応できません. そしてピンポイントでその定理やら何やらとその証明を見せられても回答できません. 定義・命題群の構成が違うとその本のその議論で使っていい命題も違います. 「この定理を使えば示せる」と言われても, その本ではあとに出てくる場合があります. 究極的には一冊丸々の全体構造がわかっていないと質問に答えられない可能性があります. これを削るために一気通貫で作ったコンテンツを共通言語にして, 「このコンテンツではこう」と言いたいわけで, それが私にとっては現代数学探険隊です. 研究室ではゼミで使う本だったりします.
最近はプログラミング(プログラミング言語)も共通言語にしたいと思っています. 最近プログラミング関係でいくつか反響があります. 思っていたより望まれていたようで, これも進めなければいけないなと改めて実感しています. ちなみに素数判定に関するコンテンツと書いたらこのくらいの, 知っている人にはごく入門的なコンテンツにさえ反応がありました. いま精力的に制作中です. 楽しみにしていてください.
入門系の小さなコンテンツをいくつも作っていく予定です. いま勉強中の競技プログラミング, アルゴリズムとデータ構造系とも絡めていろいろやりたいです.
木田雅成, 連分数¶
初等整数論への入門、連分数。問も豊富な一冊! これまで,多くの有名な数学者がそれぞれの立場から連分数を研究し,重要な役割を果たすことを明らかにしてきた.特に2次無理数とよばれる数の整数論を深く理解するには,連分数の研究がかかせない. 本書の目的は,連分数の基礎的な理論を大学一年生程度の知識,とくに行列の理論を仮定して解説することである.また,各節には計算を中心とした問を掲載し,巻末に略解も用意している.初等整数論への入門として,更に群論などの抽象代数学の活用が具体的な問題に対していかに有効であるかを,本書を通して学ぶことができる.
Twitterで眺めていたら出てきました. プログラミングで計算し倒すのに楽しいのではないかと思い気になっています. 単純に計算練習系のコンテンツとしても取り組みたいです. 連分数を近似計算し倒すのも面白そうですし, すぐ次の不良近似の問題もまさに計算機で死ぬほど計算させて収束が悪いのを実感したりもできるでしょう.
数論とエルゴード理論, Yuya Murakami: Extended-cycle integrals of modular functions for badly approximable numbers¶
明日 9:10から、Workshop 「数論とエルゴード理論」にてこちらの論文 https://twitter.com/MurakamiMath/status/1450390950832840714?s=20&t=ifX19xZ_3ihxatcBO4U3sA… の内容を発表させて頂きます。 連分数や記号力学系と関連する研究なので、もしかしたらエルゴード理論を応用すると何か新しいことが分かるかも……と思っています。よろしくお願いいたします。
論文を書きました! 「実二次無理数」wに対し、j関数の測地線積分val(w)という値が九州大の金子先生らによって定義・考察されているのですが、現状は謎に満ちた量です。 この論文では「不良近似数」という実数xに対しval(x)を定義する試みを述べました。
それはもはや測地線積分ではなく、エントロピーのようなある種の極限値として定義されます。 エルゴード理論では「ほとんど全ての点でエントロピーが一定になる」というタイプの定理が扱われますが、この論文では反対に個々の点に対して定まる個々のエントロピーに着目しています。>またこの論文ではval(x)をxの連分数展開が ・どんどん大きくなる巡回部分を持つ場合 ・巡回部分を全く持たない場合(Thue-Morse語) のときに計算しています。
まだ論文が読めていないので先程の不良近似とここでの不良近似が一致するかわかりません. ただ近似の精度・速度問題はとても大事です. 例えばテイラー展開や数値計算まわりで収束すること自体はわかっていて, 収束のスピードが遅いこともよく知られている例がいくつかあります. スパコン利用など高速化が必要な事例はよくあり, 何より最近流行りの機械学習系でも高速化は真っ先に重要になるテーマです. 入門を少し越えた教科書になると必ず出てきます. 実用上も重要なテーマです.
お気に入りのプログラミング言語を探せ¶
質問者はJavaScriptの初歩の初歩しか学んでおらず、このようなコードは見たことがないはずだ。しかしわかりやすいと言う。再帰は正しく理解できていることが確認できた。 質問者にはHaskellのような純粋関数型の言語のほうが向いているのかもしれない。
Twitterで「何年もプログラマーをやっているのにif文やfor文が書けない人がいる」という話に, 「for文やif文は書けないがfor式やif式は書ける・わかる人はありうるか?」と書いたら教えてもらいました.
これに限らず, あるアプローチではどうしても無理だが他のアプローチならすんなりわかる経験はよくあります. 数学の本でも, 本当に微妙な表現の違いなのに, 「ある本の記述はよくわからない一方である本の記述はよくわかる」ケースはよくあります. がんばって取り組むべきメインの本を据えつつ, 不明点を調べられるように何冊か持っておくといいと言われる理由でもあります.
プログラミング言語に限らず自然言語でもあります. 調査・勉強のためにここ数年語学・言語学界隈にも顔を出していますが, そこで「英語はあまり好きではない」, 「(実際に留学含めて台湾に数年住んでいたレベルで中国語はできる人が)英語は本当に嫌い」, 「英語はよくわからないが, フランス語はよく馴染む」と言っていたりします. 英語は実用言語なので好き嫌い言うものではなく, 他の自然言語はおもちゃという感じで付き合っているため, 自然言語に対して好き嫌いという感覚はあまりありません. 正確に言えば, ドイツ語はほどほどに格が強くて読みやすいとか, 格は強いが格変化が厳しすぎてロシア語は暗記が面倒で嫌になるとか, 格がさらに強いおかげで前置詞と名詞の位置が遠く離れられるラテン語は凄まじいな, といった感覚はありますが.
ただプログラミング言語に関しては嫌いとは言わないまでも, 明確に好きな言語はあります. 私の場合はいわゆる命令型の言語よりはいわゆる関数型の言語の方が好きです. 肌に合います.
あまりまとまりのある話にはなりませんでしたが, いろいろ考えつつそれなりの意図はきちんと持って日々勉強し, 成果をコンテンツ化していることを伝えようとしています.
Pythonでの動画作成¶
単純に面白そうだったので紹介です. これでコンテンツ作っても面白いかもしれません. 私自身はもっと原始的な計算し倒す形のコンテンツが作りたいので, 現状あまり気乗りしませんが, 何か作った方がいればここでも宣伝協力するので教えてください.
$\mod$の総和の最大値¶
年明け前後から毎日ずっとやっているAtCoder Problemsで出会った問題です. 面白かったので紹介します. 形式的には完全に数学の問題です. 面白いのは一見すると無限個のチェックが必要なところ, mod演算を考えているために計算機で計算できるレベルで完全に有限の世界に落ちている点です. 小さいところで実際に計算してみると周期性が見えたりもします.
ただし考えなしに計算しようとすると簡単にオーバーフローしたり, いつまで経っても計算が終わらなかったりします. この辺を工夫して計算する点も面白いです.
AtCoderは全部自力で考えてもよく, 公式の解説を見て実装部分だけ自力で考えてもよく, 人の実装を見て意図を読み解く訓練をしてもよく, いろいろな遊び方があります. Projet Eulerは面白いのですが正解しないと解説が読めない点がつらいです. ぜひうまいこと使い分けて遊んでみてください.
今週の問題¶
一般論の中に組み込んだため計算練習コンテンツには入れていないのですが, 四次特殊直交群の部分群と四元数体の自己同型群の話が面白かったです. これは特にSO(3)でもあり, 四元数体の自己同型群が面白いのなら, それ自身は結合律を満たさず代数的には厳しい八元数代数も自己同型群は面白いかもしれない, そしてそれは例外型リー群$G_2$だと言及されていました.
私がこの分野に疎いから知らなかっただけで, 何をどう考えても有名すぎるほど有名な話でしょう. ここでは「ある対象が面白いなら他のこんな例も考えてみるべきで, 面白いことがあるかもしれない」という示唆を得る例として紹介しました. こういう話は数学でも物理でもコンピューター関係でもあります. いま特にデータ構造とアルゴリズム周辺をやっていて痛感していますが, 毎日小さな一歩を積んでいくしかありません. 今年は私自身の小さな一歩を具体的に見せていく年にしようとも思っています. 特に競技プログラミングはAtCoder ProblemsのEasyでさえいまだ二時間かかって終わらないことがあります. 今まできちんと取り組んで来ておらず, 知らないこと・できないことばかりなのは仕方ありません. 小さな一歩から踏んでいけないので歯を食いしばってやっていきます.
そういえば前回のマズール-ウラムには反響がありました. まさにコンテンツ内の注意として書いた点が面白いと言ってきた人がいました. 面白い定理なのです.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 科学英語文法 覚書/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 科学英語文法 覚え書き(冠詞について)
- 単語の議論: beefとcow
- 単語の議論: pero
- アインシュタインの原論文, スペイン語第六文の学習ログ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
科学英語文法 覚え書き(冠詞について)¶
またaかtheかそれとも冠詞を付けないかでよくわからなくなってきたのでググってたら「科学英語文法 覚え書き(冠詞について)」というのを見つけて読んでる。奥が深い・・・ 文献へのリンク(target=_blank)
理工系の英語に関する教育的な見地からの(?)論文紹介です. 最後に次のような恐ろしい例文が出てきました.
- An estimated 200 samples were tested.
- おおよそ200個のサンプルについて検査が行われた
名詞の複数形にaがついています.
私の実用面から言って英語が本当に最優先で英語情報はよく目にしますが, 多言語での冠詞の振る舞い比較みたいなのも知りたいです.
単語の議論: beefとcow¶
さすがに英語関係の話をしないのもどうかと思うので少し. 以前も書いたか勉強会で話したかと思いますが, 英語でbeefとcowがあります. 英語でbeefは牛の肉(食事用)に使い, cowは家畜としての牛などを指すときに使います. しかし元になったフランス語bœufは肉の意味もあるものの, ふつうの牛(ox)も意味します.
これは世界史でも出てくるノルマンコンクエストでフランスに占領され, 英語にフランス語が流入してきた痕跡のようです. 王侯貴族・上流階級がフランス人で, フランス人は食べるモノ, 下々のイギリス人は家畜・労働力として普段接する違いが今でも言葉に残っているわけです.
理工系の皆が皆このような話に興味があるとは思いません. しかし嫌でも使う英語から歴史やら何やらの話に波及すれば, 多少なりとも色々な話に親しみが持てるのではないかと思い, 語学・言語学についても少しずつ知見を貯めています.
単語の議論: pero¶
スペイン語をやっていたらbutの意味でperoがよく出てきます. 何故peroでbutなのか謎なのでWiktionary先生に尋ねたところ, ラテン語per hoc (by this, for this reason)に由来するとのこと. 意味がだいぶ変わっていて謎ではありますが, 日本語でも「さうざうし」などの例があるのでそんなものかという気分です.
Wiktionaryは見ていると時間が溶ける魔界です. 何もやる気が出ないとき, だらだら眺めるのに使ってみてください.
アインシュタインの原論文スペイン語第六文¶
今週の学習ログです. スペイン語に慣れてきた上にDeepL併用という技も取得したため, 学習速度も上がっていて既に第七文まで大雑把な自分用解説をつけています. そんなに張りつきでやっているわけでもないのでこの程度の歩みですが, きちんと勉強を進めています.
単語について詳しくは単語集ページも参考にしてください.
文構造¶
- Otros ejemplos de esta índole así como los intentos infructuosos para constatar un movimiento de la Tierra con respecto al "medio de propagación de la luz" permiten suponer
- que no solamente en mecánica sino también en electrodinámica ninguna de las propiedades de los fenómenos corresponde al concepto de reposo absoluto.
- Más bien debemos suponer que para todos los sistemas de coordenadas, en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas, también tienen validez las mismas leyes electrodinámicas y ópticas, tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.
Otros ejemplos de esta índole así como los intentos infructuosos para constatar un movimiento de la Tierra con respecto al "medio de propagación de la luz" permiten suponer¶
いい切れ目がないのでこの固まりで考えます. 前から順に調べましょう. まず動詞を見つけます. いくつか候補がある中でpermiten suponer queに注目します. これはallow to suppose thatと読めます. 後ろにsuponerの内容にあたるque節が続き, 主語は三人称複数が来るはずです. この上で主語が何かと言えば先頭のotros ejemplosです. つまり基本構造は次のようになっています.
- Otros ejemplos permiten supponer que
他の部分は副詞かotros ejemplosへの修飾しかありえません. まずdeは前置詞なので後ろに何かしら名詞が来ます. 次のestaは(アクセントを除けば)estarの三人称単数現在とも同形ですが, ここでは指示形容詞としてのesta (this)で取るべきです. 続くíndoleが女性名詞(type, nature, character)ので, まとめてof this typeと訳せます.
次のasí comoはas well asの意味です. 何とas well asかを見るべく続きを見れば, los intentos infructuosos (the unfruitful attempt)が来ています. これはotros ejemplosとの並列と見ればいいでしょう. 先程はotros ejemplosだけにしてしまったこの文の主語は, 実はlos intentosまで含むのでした.
次にparaのあとに動詞の不定形が来ています. スペイン語では原則として不定形は本動詞にならないため, ここではpara+不定詞(英語のto不定詞)と見ればよく, constatarの目的語があとに続くはずです.
constatarの目的語はun movimiento de la Tierraで良いでしょう. ここの大文字のTierraは地球です. さらにcon respecto alが続きます. これは直訳でwith respecto toと思えばよく, 何に対する相対運動なのかを考えているはずです. そこでまさに(al) "medio de propagación de la luz"が出ます. 光の媒質であるエーテルが出てきました.
まとめると次のように英訳できます.
- Other examples of this kind as well as unsuccessful attempts to establish a motion of the Earth with respect to the "medium of light propagation" allow us to assume
主語が長いだけで実はシンプルな文でした.
que no solamente en mecánica sino también en electrodinámica ninguna de las propiedades de los fenómenos corresponde al concepto de reposo absoluto.¶
これはsuponerの内容にあたるque節です. 主語・動詞が揃った完全な文が来ているはずです. まず動詞はcorrespondeで三人称単数現在形です. 主語は三人称単数で目的語も存在する可能性があります. 直後にal (a+el)が来ているので目的語相当の存在があり, 特にel concepto de reposo absoluto (= the concept of absolute rest)です. これで後半部の解釈が確定したので前半部分を解釈しましょう.
まずは主語を確定させましょう. 名詞として明らかに浮いているのはningunaで女性形の名詞です. 三人称単数形なのでこれが主語でしょう. そのあとのde las propiedades de los fenómenos (= of the properties of the phenomenon)は修飾句です.
残りは冒頭のno solamenteからの部分の解釈です. まずno solamente A sino también Bはnot only A but also Bの形で, これに気付く必要があります. 何が並列されているかを見れば, en mecánicaとen electrodinámicaで明らかに副詞句です.
以上をまとめると次のように書けます.
- that not only in mechanics but also in electrodynamics none of the properties of phenomena corresponds to the concept of absolute rest.
Más bien debemos suponer que para todos los sistemas de coordenadas, en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas, también tienen validez las mismas leyes electrodinámicas y ópticas, tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.¶
これまた異様に長い文です. 冒頭にsuponer que (= suppose that)があるためここで一旦切れます. 特にque以下は主語・動詞がある完全な文です. まずは前半分をさっと確認します.
- Más bien debemos suponer que
先程触れたsuponerは原形なので明らかに本動詞ではありません. 本動詞はdebemos (<- deber)はmustにあたる助動詞で一人称複数現在形で主語が省略されています. Más bienはこれでratherを表します. 念のため書いておくと次のように英訳できます.
- Rather, we must assume that
次にque節の中を調べます. カンマで区切られているのでそこに注目して分けて解釈しましょう. 明らかに前置詞が導く副詞句などは分けてあります.
- que también tienen validez las mismas leyes electrodinámicas y ópticas
- para todos los sistemas de coordenadas
- en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas
- tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.
まず動詞はserの三人称複数現在形であるson, tenerの三人称複数現在形tienen, 「haber+demostrarseの過去分詞」型のse ha demostradoがあります. このうちsonはcualesの支配下にあり, se ha demostradoはtal como (= just like)の支配下にあるため, que節の本動詞はtienenでしょう. 主語として浮いた名詞を探します. 直後に女性名詞単数形のválidasがあり, その次に女性名詞の複数形las leyesがあります. 主語は三人称複数としてlas leyesを選べばよいでしょう. 間にあるmismasはmismoの複数形で, electrodinámicas y ópticasは後置の形容詞句でlea leyesと文章の流れ・概念上の相性もよく, これで主語にあたる名詞句がわかりました. 間にあったválidasは他動詞tienen (<- tener)の目的語です.
英訳してまとめます.
- (suppose) that the same electrodynamic and optical laws are also valid
あとは前置詞paraが導く副詞句, 前置詞enが導く副詞句があり, se ha demostradoを核にした分詞構文があります. 順に調べましょう.
- para todos los sistemas de coordenadas
これは素直に英語に直訳でき, 例えばfor all the systems of coordinatesです.
- en los cuales son válidas las ecuaciones mecánicas
このen直後のlosは関係代名詞を受ける定冠詞と思えばよく, sonがbe動詞相当だから in which the equations of mechanics are validとすればよいでしょう. 直訳のmechanical equationsだと「力学の方程式(運動方程式)」のニュアンスが出ないため, ここではequations of mechanicsとしました. また文の流れからしてen losのlosが受ける名詞(cualesの先行詞)はcoordenadasです.
- tal como ya se ha demostrado para las magnitudes de primer orden.
これはse ha demostradoをhave been demonstratedと受身で訳出します. 最後のlas magnitudes de primer ordenはいわゆる「一次の微少量」にあたる表現で, 標準的な英訳を選んだ方がよい程度で, あとは順序もほぼそのままに直訳でき, as have already been demonstrated as the first order quantitiesとでも訳せます. 直訳を心がけたら先頭と二つ目にasが来ていて微妙な英訳になってしまいました. 実際の英訳とも比較してみてください.
まとめた上で少し調整すると次のように英訳できます.
- for all the coordinate systems, in which the equations of mechanics are valid, the same electrodynamic and optical laws are also valid, as have already been shown to the first order quantities.
単語¶
詳しくは単語集ページも参考にしてください.
- Otros <- otro: other
- ejemplos <- ejemplo: example
- de: 前置詞, of
- esta: 指示形容詞, this
- cf. estar: 三人称単数現在
- yo estoy - tú estás - él está - nos. estamos - vos. estáis / están - ellos están
- índole: 女性名詞, type, nature, character
- así: like this
- así como: as well as
- como: 副詞・接続詞 like
- los: 定冠詞 el-la-lo-los-las-lo
- intentos <- intento: attempt
- infructuosos: fruitless, unfruitful
- para: 前置詞, for, to, by, due
- para 不定詞: ---のために, to不定詞の副詞的用法
- constatar: verify, confirm
- un: 男性不定冠詞, un-una-unos-unas
- movimiento: 男性名詞, movement
- de: 前置詞 of
- la: 定冠詞 el-la-lo-los-las-lo
- tierra: 女性名詞, terra, earch
- con: with
- respecto: respect
- al: a+el
- medio: 男性名詞, media, medium
- propagación: 女性名詞, propagation
- luz: 女性名詞, light
- permiten <- permitir: 三人称複数現在形, permit
- suponer: suppose
- que: 関係代名詞
- no: no
- solamente: only
- no solamente A sino también B = not only A but also B
- en: in, at, to
- mecánica: mechanics
- sino: but
- también: also, too, as well, so
- electrodinámica: 女性名詞, electrodinamics
- ninguna <- ninguno: 女性形, 限定詞, not any
- de: of
- las: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- propiedades <- propiedad: property
- los: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- fenómenos <- fenómeno, 男性名詞
- corresponde <- corresponder: 三人称単数現在, correspond
- al: a+el
- concepto: 男性名詞, concept
- reposo: 男性名詞, rest
- absoluto: absolute
- más: more
- más bien: rather
- bien: well
- debemos <- deber: 一人称複数現在形, owe, must, should
- para: for, to, by, due
- todos <- todo: all, each
- sistemas <- sistema: 男性名詞, system
- coordenadas <- coordenado
- cuales <- cual: 関係代名詞: what, which, which one
- son <- ser: 三人称複数現在形
- válidas <- valido: valid
- ecuaciones <- ecuacion: 女性名詞, equation
- mecánicas <- mecánico: mechanics
- tienen <- tener: 他動詞, have, (fr) tenir
- validez: 女性名詞, validity
- mismas <- mismo: (fr) même, same, similar
- leyes <- ley: 法則
- electrodinámicas <- electrodinámico
- y: and
- ópticas <- óptico: optic
- tal: such
- tal como: 副詞句, just like
- como: like
- ya: now, already, yet
- se: 代名詞
- ha <- haber: 一人称単数現在, exist(?)
- demostrado <- demostrar: 現在分詞, to show
- magnitudes <- magnitud: 女性名詞
- primer <- primero: 形容詞, first
- orden: 女性名詞, order
2022-02-05¶
数学・物理 素数判定に対するプログラミング・数学入門/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- WebでLinuxを勉強できる
- 動的計画法問題集があった
- 数学からのプログラミング入門コンテンツを作りはじめた
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
WebでLinuxを勉強できる¶
もう「Linux分かりません」って言い訳出来ない環境が用意されてしまった...。 WebAssembly製のx86仮想マシン「WebVM」が登場、Webブラウザ上でLinuxや各種コマンド、アプリがそのまま実行可能 - Publickey
あくまでも自らの技術力の評価のためだけらしく, 永遠に公開されるわけでもないでしょう. ただ今後似たような環境提供は出てくるでしょう. 例えばGoogle Colaboratoryでも一応Linuxコマンドが実行できます.
もちろんプログラミング勢からすれば(Windowsでも)WSLがあるとか, そもそもMacなら大丈夫という人もいるでしょう. MacならまだしもWSLはインストールそれ自体にハードルがあります. Microsoftストアでクリック一発ならいいわけでもありません. ローカルにインストールするとそこから壊してしまわないか問題があります. 最近はストップをかけられているとはいえ, いわゆるrm -rf
問題もあります.
私も就職してはじめて入った会社で, VMでバンバン作って壊せる環境で二ヶ月くらいいろいろ遊ばせてもらえた記憶があります. 教育体制が整った会社とは言えませんでしたが, 勉強し倒せる時間はかなりたっぷり与えてもらえたように思います. それで今の体たらくかと言われると言葉もないですが, 無ければもっと技術力は低かったでしょう. 狼藉を働ける環境をどう手軽に作るかは本当に大事です.
動的計画法問題集があった¶
- Qiita: 動的計画法超入門! Educational DP Contest の A ~ E 問題の解説と類題集
- Educational DP Contest / DP まとめコンテスト
- Typical DP Contest
今の私のアルゴリズム力からすると入門でさえきついです. 確かProject Eulerをゴリゴリ解くのをやめてまずはアルゴリズムをきちんと勉強しようと思ったのが「あとで出てくる同じ問題は調べる数がただ増えただけだが, brute forceではまともな時間で解けない. 動的計画法などを使おう」みたいな記述があり, AtCoder Problemsでもそろそろ中級なのでレベルアップが必要と思い, 挑んだのですがあっさりと跳ね返されました. アルゴ式にも動的計画法がありますし, こちらも見てみようかと思っています.
無理してHaskellで書こうと思わず, サンプルが多く読みやすいのも広いやすいはずの, C++あたりで勉強した方がいいかとかいろいろ考えています. アルゴ式にもF#入ってくれると嬉しいのですが.
数学からのプログラミング入門コンテンツを作りはじめた¶
先月から本格的にENERGEIAでほぼ毎日, 22:00-23:00でもくもく会の一つとしてzoomを立ち上げています. 短い時間であってもたまに参加して下さる方も出てきました.
以前メルマガでも森の未知さんとのやり取りを紹介しました. 最近は機械学習のおかげでプログラミング入門から応用数学系までかなり幅広いコンテンツ群が揃ってきています. ただ, それでも, 少なくとも日本の純粋な数学関係者にはまだまだハードルが高いだろうとも思います. 数学関係者向けのプログラミング入門がもっとあるべきだろうと思い, このもくもく会の時間を使ってコンテンツを作っています. まずは入門的にPythonでの素数判定をするコンテンツを整備しています.
これは今まさに並行して進めている例と計算編の裏コンテンツ・補足コンテンツでもあります. 次の項目でも少し書くように, 実際に行列の計算は本当に大変なのでできるところはプログラムに流したいです. 常微分方程式からの中高数学再入門はここ, その続編の中高数学虎の穴は微分積分と簡単な線型代数のまとめを作ってはいますが, これらはnumpy・matplotlibなどライブラリを駆使したコンテンツで, 大事な要素はたくさんあるもののライブラリの使い方特集の面もあり, 徒手空拳でプログラムをゴリゴリ書く楽しさがあまりないようにも思えます. 素数判定は計算量の削減のようなアルゴリズム系情報科学の基礎基本を身につけるのにも役立ちますし, 定義を確認する訓練にもなれば, 証明をプログラムに翻訳するといった側面もあります. 微分積分などもプログラムに載せるには定義を重視する必要がありますが, そうそう直接書かないと思うので, 直接証明をプログラムに載せる経験をするにはもってこいの題材でもあります.
それこそ素数夜曲のような本もあれば, 計算数論のような発展的な問題・分野もあります. 少なくとも私の視界に入ってきた文献では, 数学系の視点から迫るコンテンツがありません. 素数判定のプログラミングからはじめる数学の観点からコンテンツを作ろうと思っているので, 興味ある方はぜひ楽しみにしていてください. 需要があるかわかりませんが, 上記もくもく会で作っている様子を見せているので, 制作過程にも興味がある方はどうぞ. 世にインストール含めて基礎から議論しているコンテンツはあるので, 私のコンテンツではGoogle Colaboratory実行を前提に, 実行できるipynb配布とともに, 文法の解説などよりも計算し倒す方面に寄せ切る予定です. 「もうちょっとこういう解説もほしい」と言われたら, プログラミングに関しては他の本などを紹介したり, 数学系のテーマに関してはコンテンツを作る予定です.
今週の問題¶
今週面白かったのは次の例・問題・定理です.
- マズール-ウラムの定理
- ハウスホルダー変換
前者はノルム空間の等距離写像のアフィン性を謳う定理で, 後者は超平面に対する鏡映を表す射影作用素の構成です. 後者はこれを使って具体的な行列も構成できて便利です. 例と計算編の2022-02-05コンパイル分では, 「2.8.9.9鏡映の具体例: 実二次元の直線に関する鏡映」周辺でいくつか具体例を計算しています.
前者は今回改めて調べていてはじめて知った定理です. はやくリー群関係の文献・量子情報系の議論を進めたいものの, もっと基本的なところで詰めておきたい議論や計算するべき例が山程出てきていて, 全く進みません.
ちなみに四元数についてはPythonでSymPyを使った計算も併用しています. 計算ミスを頻発したからでもあり, 四次行列などが出てきて手計算がきつくなってきたからでもあります. 便利です. いまはアルゴリズムの本に集中しているのでまだしばらく手は出ませんが, 早くMEAPのGeometry for Programmersも読みたいです.
例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 地道にスペイン語を進める/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- アインシュタインの原論文, スペイン語第五文の学習ログ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
スペイン語第五文の学習ログ¶
文構造¶
- 第一ブロック
- Pero si el imán está en reposo y el conductor se mueve,
- al rededor del imán no aparece ningún campo eléctrico
- 第二ブロック
- sino que en el conductor se produce una fuerza electromotriz que en sí no corresponde a ninguna energía,
- pero da lugar a corrientes eléctricas que coinciden en magnitud y dirección con las del primer caso,
- suponiendo que el movimiento relativo es igual en cada uno de los casos bajo consideración.
まずは明らかな接続詞とカンマ, 関係代名詞に注目して調べましょう. 二文に分けて訳している英語も参考になるはずです. 区切りの目安はbutにあたるpero, if notにあたるsino, さらにもう一つpero, 分詞構文を示唆するカンマの直後のsuponiendoです.
Pero si el imán está en reposo y el conductor se mueve,¶
途中にy (and)があり, 三人称単数の動詞estáと(se) mueveがあるため, yで二つの文の等置されていて, 全体をsiが包んでいるとみなせます. 主語にあたる単語は定冠詞つき男性名詞imánとconductorでいいでしょう. 話の流れからも対比される概念です. 動詞もestá en reposoとse mueveでまさに対立しています. 全体的には次のように英訳できます.
- But if the magnet is at rest and the conductor moves,
al rededor del imán no aparece ningún campo eléctrico¶
冒頭が明らかに前置詞+定冠詞のal=a+elではじまり, no+apareceの動詞が三人称単数で来ているため主語は倒置されているはずで, 実際三人称単数の男性名詞からなる (ningún) campo eléctricoがあります.
まとめると次のように英訳できます.
- no electric field appears around the magnet,
この文はNingúnとnoが両方入っていて, 少なくとも英語ではあまり見かけないタイプの構文です. 実際に次のような文があり, スペイン語の特徴なのでしょう. (TODO 本当に?)
- Además, no vendemos ningún dato.
- またどんなデータでも販売することはありません.
- No debes tocar este interruptor en ningún caso.
- どんなことがあっても絶対にスイッチにさわってはいけません.
- Ellas no se permitieron ningún obstáculo.
- どんな障害も物ともしませんでした.
sino que en el conductor se produce una fuerza electromotriz que en sí no corresponde a ninguna energía,¶
長いのでいったんここで切りましょう. 冒頭にsino = if notがあります. ここではsino queのセットでbut相当とみなします.
まずen el conductorで前置詞が導く副詞句があり, 次に再帰動詞・三人称単数のse produceがあります. こうなると主語は後置された三人称単数の名詞のはずで, 素直にuna fuerza electromotrizを主語とみなします. この次のqueは関係代名詞と思えばよく, en síはin itselfにあたる副詞句なので queの中に浮いた名詞がないためuna fuerzaが主語にあたるはずです. 動詞correspondeは三人称単数なので人称と単複は一致します.
まとめると次のように英訳できます.
- but an electromotive force is produced in the conductor which in itself does not correspond to any energy,
pero da lugar a corrientes eléctricas que coinciden en magnitud y dirección con las del primer caso,¶
冒頭のperoはbutにあたる等位接続詞で何と何を結びつけているかが問題です. まずdaはdarの三人称単数現在形なので主語は三人称単数です. 次に無冠詞名詞lugarがあり, 前置詞aが続きます. この直後に名詞が必要で実際女性名詞複数形のcorrientesが続きます. さらに直後の形容詞eléctricasは複数形でcorrientesを修飾しているとみなせます. 直後のqueはおそらく関係代名詞節でしょう. 見たところ主語にできる浮いた名詞はなく, 動詞coincidenは三人称複数現在形だからcorrientesを修飾しているはずです. こうなるとpero以下にdaの主語はなく, sino que以下の主語una fuerzaがdaの主語でなければなりません. 物理的にも「起電力が電流を与える」で筋が通ります.
最後にqueが導く関係代名詞節を調べましょう. 動詞coincidirは自動詞なのでこれで基本構造は閉じています. あとはen magnitud y direcciónがあり, con (= with)が導く前置詞句で何とcoincidenしたかが示されています. このcon lasのlasはmagnitud y direcciónで, magnitudとdirecciónがどちらも女性名詞で二つ(複数)あるため, 女性の定冠詞複数形のlasが来る事情を正当化します.
まとめると次のように英訳できるでしょう.
- but gives rise to electric currents which coincide in magnitude and direction with those of the first case,
suponiendo que el movimiento relativo es igual en cada uno de los casos bajo consideración.¶
先頭はsuponerの現在分詞なので分詞構文で, 特にsuponiendo queはsupposing thatです. queのあとには完全な文が来ていると推測して続きを見ます.
動詞はserの三人称単数現在のesだから主語の人称と数が決まり, 補語にあたる語句があるか副詞句だけかという全体構造も見えました. 素直に文頭のel movimiento relativoが主語と見ます. 補語は形容詞igualで何に等しいかが説明されているはずと思って続きを見ます. cada unoで熟語的にeachを表すため, en cada uno deはin each ofと英語に直訳できます. 次に前置詞deの勢力下に男性名詞casoの複数形としてlos casosが来て, 前置詞bajoの勢力下にconsideraciónが来ます.
まとめると次のように英訳できます.
- assuming that the relative motion is equal in each of the cases under consideration.
単語¶
- pero: but
- si: if
- el: 男性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- imán: 男性名詞, magnet, cf (fr) aimant
- está <- estar: 三人称単数現在形
- en: in, at, to,
- reposo: 男性名詞, rest
- y: and
- conductor: 男性名詞, conductor
- se: 代名詞, it
- mueve <- mover: move
- se mover: get a move on
- al: a+el
- rededor: 男性名詞 contour, surrounding
- del: de+el
- no: 副詞, no
- aparece <- aparecer: 三人称単数現在, appear
- ningún: not any
- campo: 男性名詞, field
- eléctrico: electric
- sino: if not
- que: 関係代名詞
- produce <- producir: 三人称単数現在, produce
- una: 不定冠詞, un-una-unos-unas
- fuerza: 女性名詞, force
- electromotriz: electromotive
- sí: yes
- en sí: in itself
- corresponde <- corresponder: 三人称単数, correspond
- a: to, by, at
- ninguna <- ninguno: no, none
- energía: 女性名詞, energy
- da <- dar: 三人称単数, 現在形, give
- lugar: 男性名詞, place (cf. location)
- corrientes <- corriente: 女性名詞, current
- eléctricas <- eléctrico: electricの女性複数形
- coinciden <- coincidir: coincide
- en: in, at, on
- magnitud: 女性名詞, magnitude
- y: and
- dirección: 女性名詞, direction
- con: with
- las: 定冠詞, 女性複数, el-la-lo-los-las-lo
- del: de+el
- primer <- primero: former, first
- caso: 男性名詞, case
- suponiendo <- suponer: 現在分詞
- movimiento: 男性名詞, movement
- relativo: 形容詞, relative
- es <- ser: 三人称単数現在
- igual: 形容詞, equal
- cada: each, every
- cada uno: each
- uno: 不定冠詞, uno-una-unos-unas
- de: of
- los: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- casos <- caso: 男性名詞, case
- bajo: 前置詞, under
- consideración: 女性名詞, consideration
2022-01-29¶
数学・物理 算数・数学系プログラミング系コンテンツを作ろう/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 医学知識の高速インストール法
- ヨーヨー振り回しからの話
- 一般化確率論
- 対称多項式
- SymPyと四元数計算, Geometry for Programmers
- OpenFOAMなど微分方程式の計算結果
- 実用Common Lisp
- プログラミングコンテンツを作ろう
- 今週の問題
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
医学知識の高速インストール法¶
「医学知識を高速インストールしたければ看護師向けのテキストがよい」というのは司法修習で教えてほしい(本当にめちゃくちゃ役に立つ)
今度何かしら読んでみようと思います. 知識自体も気になりますが, それ以上にこれの数学版を何かしら作る上での参考になるかも気になる点です.
ヨーヨー振り回しからの話¶
娘が玩具のヨーヨーを振り回す姿を見ていてぼんやりと考えたこと。
— Kentaro Fukuchi (@kentarofukuchi) January 28, 2022
そもそも3コマ目のようになるのかどうかすら僕にはよくわかりませんが… pic.twitter.com/CEqQf1i1rz
紐がピンと張ってないと回らないじゃん、と思っている人は、こう回転する、という主張かな? pic.twitter.com/vXj9eosDoF
— Kentaro Fukuchi (@kentarofukuchi) January 28, 2022
この場合、紐を構成する各質点にかかる重力は、下図のように場所によってどんどん方向が変わっていくことになることに注意しよう。 pic.twitter.com/QArktir3tT
— Kentaro Fukuchi (@kentarofukuchi) January 28, 2022
質量0で一切伸び縮みせず張力のみをつたえる高校物理的な《糸》を近似ではなく厳密なものとして考えると日常で見かける糸とはまったく異なる振る舞いをみせる。 まず相対論だと光速で運動するmasslessの糸を想像することになる。非相対論で考えても空気分子ひとつにぶつかっただけで弾かれる。 質量のない糸の先端に重りを固定しようにも、糸の先端は光速以外の値をとれない。 そしてさらに「一切伸び縮みしない」という相対論的に"邪悪"な設定が《糸》に付与される。
一般化確率論¶
一般化確率論(General probabilistic theories) https://arxiv.org/pdf/2011.01286.pdf https://arxiv.org/abs/2103.07469
なんか量子論が部分集合に思える枠組みらしい
量子力学系の人が時々言及する一般化確率論, 何なのかとずっと思っていたのですが, 参考になりそうな文献がTwitterで回ってきたのでメモがてら共有します. 確率論は経路積分(汎関数積分)とも関わるため学生の頃からずっと気になっている対象です. マルチンゲールあたりまでは簡単なノートは作ってあるものの, せめてブラウン運動くらいまではやりたいですし, 確率解析と汎関数積分は本腰を入れてやりたい対象です.
対称多項式¶
プロ向けですがこういうのがあります: Macdonald, Symmetric Functions and Hall Polynomials あとはランダム行列本の付録にもちょっとした対称多項式の章があります.
何でいきなり対称多項式かというと, 密度行列のブロッホ表示に関連して, ブロッホ表示で表した行列の正値性が対称多項式を使って特徴づけられ, その中で行列式と対称多項式の話が出てきたからです. こんなところでこんな形で出会うことになるとは思いませんでした. 線型代数の射程距離の果てしなさを感じる事案なのでシェアしておきます.
こうなるとやはり木村さんのランダム行列の数理も計算を詳しく埋めるノートを作りつつ, もっと精読したくなってきます. 「この辺の具体例もきちんと調べないと」と思ってちょっと脇道に逸れたら逸れっぱなしでなかなか本筋に戻れません. 線型代数コンテンツ作りの調査も兼ねた量子情報系の基礎をさらうのが当面の目標で, とりあえずざっと目を通したところ, ちょっとやそっとで対応できそうな話でもありません. すぐに取り組むべきテーマというよりTODOとして突っ込んでおくテーマに分類しました.
これも低次で具体的にいじり倒すと楽しそうな対象で, 腰を据えて取り組む日を楽しみにしています.
SymPyと四元数計算, Geometry for Programmers¶
先日量子系の線型代数とも距離が近いといったリー群・リー環方面も少しずつ進めています. いま基本的な回転の話をいろいろやっていて, 特に二次正方行列に複素数と四元数が埋め込める部分をしつこく計算しています.
四元数の計算で計算ミスを連発したため, 何かないかと思ったらSymPyにも四元数があったのでそれを使いました. 二次の行列でさえ計算ミスしてはまりました. 完全に代数だけでかたがつく, 低次の行列の計算はやはりプログラムをうまく使いたいです. 文字込みの四元数の計算も計算ミスに悩まされにくくなりました.
とは言っても先日紹介した極分解では二重根号が出てきて, 必ずしも二重根号をきちんと処理してくれるわけではないこともわかっています. よい連携のさせ方も探っています. Geometry for Programmersはnumpyやscipyよりもsympyを使う本のようなので, いまの執筆分だけでも早く読みたいですね. まだ寄り道分のノート作りさえ終わっていないのでいつになることやら, といった状況ですが.
ちなみにSICMUtilsにも四元数が追加されたようです. SICMUtils本体の開発に参加できるほどClojureの読み書き・数学プログラミングができるわけではありません. しかしfdg-bookは手助けできることがありそうなので, プルリクも送っています. こちらはついでに幾何の計算もできるので非常に楽しみにしているプロジェクトです.
OpenFOAMなど微分方程式の計算結果¶
思い出したので念のため共有しておきます.
Python・Julia・Rustで書いたプログラムで作った動画を載せています. 数年前に書いたプログラムなので一部は既に動かなくなっているかもしれませんが, 各動画にGitHubへのプログラムのリンクも張っています. 興味がある方はぜひ眺めてみてください.
OpenFOAMもGitHubに設定ファイルを置いています. OpenFOAMはWSLを使えば一応Windowsでも動くらしいので興味がある方はどうぞ. 偏微分方程式の数値計算は本当に大変です. OpenFOAMにしてもメッシュを切るだけで大変ですし, それを長時間実行しなければいけないのも面倒です. 数値計算の面倒くささを実感できます. 数学・物理系プログラムに関して私が微分方程式ネタを避ける理由がわかってもらえるでしょう. 難しすぎてプログラミングやコンピューターサイエンス系統の問題になってしまうのです.
実用Common Lisp¶
びっくり。GrammarlyってCommon Lispで書かれてるんだ…!
名前が微妙に違いますが, Common Lispのアルゴリズム本の著者でしょう. この人はウクライナ人のようなのでキリル文字のローマ字転写の問題のようで, 本だと著者名がVsevolod Domkinになっています.
まだほとんどわかっていない言語ですが, (Emacsでの)SLIMEとREPL開発が非常に気持ち良いです. このREPL利用開発の気持ち良さがわかったので, PythonなどでもIPythonを使うようにしました. JuliaもVSCodeでREPL使ってパチパチ小さく実行しながら組むのが楽しいです.
いまプログラムを書くというとほぼ競プロで, 実際にCommon Lispはまだ競プロでしか使っていないのですが, 何となく適切なライブラリセットを組んで使うべき言語のようで, 標準ライブラリだけでは競プロでいろいろ面倒な気がします. この点Clojureはインターフェースも統一されていて, 最低限の関数も揃っているので便利です. ただClojureはJVMの関係からかAtCoderとの相性が悪い (現状, 競プロは基本AtCoderでしかやっていない: Project Eulerは割や早い方の問題で「数が少なければblute forceでいいが, 後で出てくる数を増やしたバージョンはblute forceで解くとものすごい時間がかかる」と出てきて, 基本的なアルゴリズムを知らないと解けないと思っていったん放置状態)ため, AtCoderでのClojure利用は諦めています. SICMUtilsのためにもできればClojureを使いたいのですが仕方ありません.
プログラミングコンテンツを作ろう¶
去年暮れあたりから心を入れかえて取り組みを再開したデータ構造とアルゴリズムや競プロ系, ようやくAtCoder ProblemsはEasyで67問目まで行きました. 今日は数学をやる気が出なかったのでずっとこれをやっていました. いまだにはまると一題解くのに二時間かかることがあります. げんなりしますがいまの私の実力なので仕方ありません.
それはそれとして. 上で書いた微分積分・線型代数系は一応コンテンツを二つ作っています.
これ以外のテーマとして, 自分用のまとめも兼ねて, 素因数分解あたりの算数・数学・計算系のコンテンツを整備しようと思っています. 「プログラミングはできるが数学はちょっと」系ではなく, 「数学はそれなりにできるまたは数学科だがプログラミング入門したい」系の人向けを考えています. 上の微分方程式やお絵描き系もこれはこれで大事で役に立つと思っていますが, ライブラリを使うのがメインだったりして必ずしもよろしくない面があります. ライブラリのバージョンアップに関するメンテの問題さえあります. 言語選択もかなり強く効きます. 内容のミスはともかく, プログラミング言語・ライブラリ事情によるメンテナンスに時間を割きたくありません. 余計なライブラリはなく, 基本的なループなど言語としてもそうそう変更されない要素だけで処理でき, 数学的にそこまで難しいわけでもないが, プログラムをバグなく組もうとすると割と大変, みたいなところでいい感じの塩梅にあるのが素因数分解などのテーマだと思っています.
あと大事なのは小さな例での計算です. プログラムを組む上でも重要ですし, 年末から年始にかけてプロモーションした例と計算でも強調したテーマです. これを習慣づけてもらうためにも一つよいテーマではないかと思っています.
引き続き, コンテンツを作るなら言語はPythonですね. PythonはPythonで実際の仕事利用でのPythonはライブラリ関連で面倒くさいとよく言われてはいます. しかしGoogle Colaboratoryを使えばある程度問題は回避できますし, 何より言語導入ドキュメントを書きたくないですし, そのメンテナンスはなおさら嫌です. あとPythonは最近情報がたくさんあって続く独学が比較的やりやすいのも採用ポイントです. 私が競プロのコードを書くのに愛用しているF#などはさすがに勧められませんし, Haskellも好きですが素人にそう気楽に勧められる言語でもありません. ClojureやCommon Lispも気が引けます.
これも一応書いておきましょう. 一般的な競プロ系に関しては何冊か本が出ていますし, 最近は割と精力的にがんばって広めようとしている人達も出てきています. オンラインの無料のリソースとしてAtCoderのC++コンテンツとアルゴ式を勧めておきます.
アルゴ式は見切れていませんが, AtCoderのC++入門は一度一通りやりました. AtCoderやAOJで遊ぶだけなら入門として十分でよいコンテンツです. そしてAOJはAOJでこのページなど, データ構造や基本的なアルゴリズムを組むお勉強用課題・コンテンツがあります. AOJもサンプルコードでC++, Java, Python, Haskellなどがあり, AOJはAOJでとても勉強になります. AOJの問題を使った競プロ本としてプログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造もあります. 途中までしか読み込みきれておらず, アルゴリズム初心者には難しい問題も入っていますが丁寧ないい本ではあります.
AtCoderだけでも1000題以上あり, 多少なりとも算数・数学と絡めて, プログラムを組んでたくさん計算・勉強したい人には一つお勧めの分野です. データ構造とアルゴリズム自体は計算機科学の大事なテーマでもあって勉強して損をすることは全くなく, 合わなければすぐやめればよいので, 数学系プログラミングで何をしたらいいかわからない人にも具体的な問題がたくさんあるという点からもお勧めです.
ついでに言えば, AtCoderやAOJは他の人が提出したプログラムも読めるので, プログラムの読解練習としてさえお勧めできます. 直接比較となるといろいろな論点はあるものの, 数学の証明が読めない問題と他人が書いたプログラムが読めない問題にはそれなりの共通点があり, もう少し一般には伝わる文章を書く難しさとも関係があります. コンピューターだけではなく人間も読むプログラムを書くことから, 読みやすい文章(プログラム)をどう書くかという視点があり, これを鍛える教育的視点からも競プロに注目しています. 短いが(人間には)わかりにくいプログラムもあれば, 多少冗長だが(人間に)わかりやすいプログラムもあります. 全く同じことをやっているのにちょっとした書き方の塩梅で読みやすさが大きく変わることもあります. こうした点からもプログラム・文章をたくさん読み書きしてほしいとも思います.
今週の問題¶
今週面白かったのは次の問題です.
中心を三次元空間の原点に置いた正六面体(立方体)の中に正四面体を置き, 正四面体を自身にうつす回転がなす群を考える. 特に図の1/3回転は次の16個の四元数 \begin{align} \pm \frac{1}{2} \pm \frac{\boldsymbol{i}}{2} \pm \frac{\boldsymbol{j}}{2} \pm \frac{\boldsymbol{k}}{2} \end{align} で表せる.
三次元空間の回転を四元数で表す方法を知らないと手も足も出ない問題です. CGなどのプログラミングでは回転を四元数で表すのが標準らしいので, この辺もやらないとと思ってがんばって計算しています. 四元数による回転以前に四元数自体に慣れていないため, はじめどう手をつけたらいいかわからなかった問題です.
ついでにいうと, 正多面体まわりは置換群とその表現など群の表現論の入門でもよく出てくる話題で, これまた非常に有名です. いまちょっと手元で見つからなくて記憶でしかありませんが, 有名な平井武『線形代数と群の表現』にも載っていたはずです. 有限群関係でもおそらく基本的な対象でしょう. 上記の平井本は具体例も込めて非常に面白い本でお勧めです. 確か「$\ell^2$-ノルムからしか内積が入らない」といった関数解析方面でも大事な話が書いてあったり, 最後の方に無限次元ユニタリ表現に対するディラック・ウィグナーの貢献, ヴェイユの述懐などの話もあり, こうしたちょっとした横道の話題も楽しいです.
上記の議論は例と計算編の2022-01-29コンパイル分では, 「2.8.11.20 四元数による回転と正四面体の回転2」にあります. 私自身のためにもせっせと計算しているので, 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 アインシュタインの原論文のスペイン語第2-4文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 学習メモ
- スペイン語第2-4文の学習ログ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
学習メモ¶
スペイン語はDeepLに突っ込んで英訳すると対応が一気に見やすくなって構文を解析しやすくなるのがわかりました. これはアラビア語だと使えず, Google翻訳に叩き込んでみてどうなるかが気になります. アラビア語の原論文の訳はいまだに見つかりません.
興味があって読み続けられそうでいろいろな情報が取りやすいとなると, もうクルアーンがいいかと思っています. クルアーンとなると今度は逆に凄まじい量のコンテンツが出てきます. スマホアプリもあるくらいです. 2ヶ月くらい固め打ちしたら何となく読めるようになると思いますし, いったんそのレベルで十分なのでそこまではがんばります.
前も何かしらで書いたのですが, やはり理工系情報を取る上で中国語が大事だろうとも思っていて, これもこれでもっとやりたいと思っています. 語学はゆるく, その代わりに執念深くやっていく予定です.
スペイン語第2-4文の学習ログ¶
他の言語に関してはアインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会のページにいろいろな情報があります.
スペイン語第2文¶
文構造¶
- Pensemos en la interacción electrodinámica entre un imán y un conductor.
- por ejemplo,
単純な文ではあるものの他の言語と比較すると俄然面白くなります. まずpor ejemploは英語for exampleと全く同じ副詞的挿入句で, 特にコメントはありません. 主文の動詞は単純にpensemosで, これはpensarの一人称複数現在形なので主語が省略されています. 英語が命令形, ドイツ語はMan denkeでManが主語, フランス語はAnalysonsで一人称複数の直説法現在または命令形, イタリア語はSi pensi(TODO 何か調べる)でバリエーション豊かで, 英語では恐らくコロケーションでtakeを使っていますし, フランス語も直接的にthinkにあたる単語を使ってはいません. 訳者の癖や趣味もあるとは言え, ここだけでも言語ごとの違いが見え隠れしています.
単語¶
- pensemos <- pensarの一人称複数現在形, : think
- por: for
- por ejemplo
- ejemplo: example
- en: in, at, to
- la: 女性定冠詞単数, el-la-lo-los-las-lo
- interacción: interaction
- electrodinámica: electrodynamics
- entre: between
- un: 不定冠詞の男性単数, un-una-unos-unas
- imán: 磁石, cf (fr) aimant, (en) diamond
- y: and
- conductor: conductor
スペイン語第3文¶
文構造¶
- el fenómeno depende solamente del movimiento relativo
- entre el conductor y el imán,
- fenómeno que se observa
- En este caso,
- mientras que
- de acuerdo a la interpretación común se deben distinguir claramente dos casos muy diferentes,
- dependiendo de cuál de los dos cuerpos se mueva.
el fenómenoで三人称単数の男性名詞でdependeと性数が合うため, まずこれが主語-動詞と見ていいでしょう. ドイツ語のDas beobachtbare Phänomen hängt abとも合います. ドイツ語nurとsolamenteが対応し, ab以下Magnetまではdel movimiento relativo entre el conductor y el imánです. ドイツ語hierはEn este casoに対応すると思えば, ドイツ語の主文との対応が見えます. 残りはwährend (whereas, mientras que)以下です.
次にde acuerdo a la interpretación común se deben distinguir claramente dos casos muy diferentesを考えます. まずどこで切れるかが問題です. deは前置詞なので次に名詞が来るはずで, ここではacuerdoです. さらに前置詞のaがあって定冠詞つきの名詞interpretaciónが来ます. スペイン語は形容詞が後ろからつくためcomúnは形容詞として interpretaciónを後ろから修飾していると見ればいいでしょう. 次はse deben distinguirの固まりで見る方が適切なはずで, ここで切れ目を与えます. ここまではaccording to the common interpretationと訳せます.
後半の動詞を持つ部分を考えましょう. これを詳しく追いかけます. claramenteは副詞なので無視して考えます. seが入っていてdeberの三人称複数系debenが来ているため, se受身文またはse不定人称文の可能性があります. ここではse受身文で判定しましょう. 残りはdos casosに副詞・形容詞のmuy diferentesがついたと見ればよく, 全体としてtwo very different cases should be clearly distinguishedと訳せます.
最後のdependiendoはdependerの現在分詞であり, dependiendo deでdepending on, cuál de los dos cuerpos se muevaで which of the two bodies is movingです. ここでmuevaは接続法現在なので, ドイツ語での接続法bewegte seiと対応します.
単語¶
詳しくは単語集を参考にしてください.
- En: 前置詞, in, at, on
- este: 限定詞, this
- caso: 男性名詞 case
- el: 男性定冠詞, el - la - lo - los - las - lo
- fenómeno: 男性名詞, phenomenon
- que: 関係代名詞
- se: 代名詞, 三人称単数目的格, 再帰用法
- observa: 二人称への命令形 (タイポではないか?)
- depende <- depender: depend, 三人称単数形
- solamente: only (<- solo)
- del: de+el, of the, from the (男性名詞の単数系が続く)
- movimiento: 男性名詞, movement
- relativo: 形容詞 relative
- entre: 前置詞, between
- conductor: 男性名詞, 導体
- y: and
- imán: 男性名詞, magnet
- mientras: 副詞・接続詞, meanwhile, while
- mientras que: ---する一方で, while
- de: 前置詞 of
- acuerdo: 男性名詞, agreement
- a: 目的語の前に付加
- la: 女性単数につく定冠詞, el - la - lo - los - las -lo
- interpretación: 女性可算名詞, interpretation
- común: common
- deben <- deber: 三人称複数現在, to owe, must
- distinguir: distinguish
- claramente: clearly
- dos: 2
- casos <- cas0: 男性名詞, case
- muy: very
- diferentes <- diferente: different
- dependiendo <- dependerの現在分詞
- de: of
- cuál: what, which, which one
- los: 男性定冠詞複数形; el - la - lo - los - las - lo
- dos: 2
- cuerpos <- cuerpo: 男性名詞, body
- mueva <- mover: 接続法現在, 三人称(?)
スペイン語第4文¶
文構造¶
二文に分かれているのでそれぞれ調べましょう.
- Si se mueve el imán mientras que el conductor se encuentra en reposo,
- al rededor del imán aparece un campo eléctrico con cierto valor para su energía.
冒頭のSiはラテン語由来のifでフランス語と同じです. 間にカンマがあるため, 素直にここでsiが導く副文が切れると思えばいいでしょう.
Siの文は間にmientras queがあってさらに副文が挟まっています. Mientras queは接続詞(while)で, このあとに完全な文が入るはずです. 動詞は再帰動詞se encuentraでto be located, en reposoは前置詞が導く副詞句でat restの意味です. 動詞encuentraは三人称単数現在形だから主語も三人称単数で, 残りの要素から見てもel conductorです. となるとsiは動詞se mueveで主語がel imánと思えばいいでしょう. (TODO これ主語の倒置と思ってよい?)
次のように英訳すると対応・構造が見やすいはずです.
- If the magnet is moved while the conductor is at rest,
後半の主文も(今の私が)わかるところから見ましょう. まず動詞はapareceで, aparecerの三人称単数現在です. 主語も三人称単数で, 浮いている名詞はun campo eléctricoだけです. 先頭は前置詞句al rededor del imánで, これはaparecerを修飾する副詞句と見ればよいでしょう. 残りはcon以下です. 前置詞conは名詞としてvalorを従えていて, さらに前置詞paraが名詞energiaを従えています.
次のように英訳すると対応・構造が見やすいはずです.
- an electric field with a certain value for its energy appears around the magnet.
次のスペイン語文も比較的素直に読めます.
- Este campo eléctrico genera una corriente en el lugar
- donde se encuentre el conductor.
途中のdondeの後ろはse encuentreが再帰代名詞で主語がないため, これは関係代名詞dondeと思えばいいでしょう. もちろんその前に主文があり, generaは三人称単数現在なので三人称単数の名詞を探せば, 主語は素直に冒頭のEste campo eléctricoです. このeléctricoはフランス語と同じく形容詞が後置です. 目的語はuna corrienteでそこに前置詞句en el lugarによる修飾がかかっています.
まとめて次のように英訳すると状況がよくわかるでしょう.
- This electric field generates a current at the location of the conductor.
単語¶
- si: if
- se: 代名詞, 三人称単数
- mueve <- mover: 三人称単数, 現在
- el: 男性定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- imán: 男性名詞 magnet
- mientras que: while
- conductor: 男性名詞, conductor
- encuentra <- encontrarの直説法現在の二人称
- en: in, at, on
- reposo <- reposar: 直説法現在, 一人称
- al = a+el: at the, to the
- rededor: 男性名詞, contour, surrounding
- del = de+el
- aparece <- aparecer: appera
- un: 不定冠詞, un-una-unos-unas
- campo: field (cf. camp)
- eléctrico: electric
- con: with
- cierto: 形容詞, true
- valor: value
- para: for, to, by, due
- su: 限定詞, 三人称単数
- energía: 女性名詞, エネルギー
- este: 限定詞, this
- genera <- generar: generate
- una: 不定冠詞, un-una-unos-unas
- corriente: flowing, current, common, usual, ordinary
- en: 前置詞, in
- el: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- lugar: place (cf. local, locate)
- donde: 副詞・接続詞・前置詞, where
- se: 再帰代名詞, 三人称単数目的格
- encuentre <- encontrar: meet, find, think
- 再帰用法でto be located
- el: 定冠詞, el-la-lo-los-las-lo
- conductor: 男性名詞, 導体
2022-01-22¶
数学・物理 ブロッホ表現と量子力学と代数と幾何/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- ワイエルシュトラスの加法定理
- 今週の対応内容: 線型代数とプログラミング
- 今週の問題: 一般のブロッホの定理
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
ワイエルシュトラスの加法定理¶
https://arxiv.org/pdf/math/9806077.pdf たった2ページでびっくりしたんですけどワイエルシュトラスが証明した加法定理に関する論文です このワイエルシュトラスの定理から考察すると加法定理って2n個の関数さえあれば他の点での関数の値が完全に決まる(線形代数的に)みたいなことなんですっごく面白いですよね オイラーの発見した加法定理です https://greggkelly.com/ABEL.html アーベルの加法定理は19世紀で最も讃えられた代数積分定理である
今週の対応内容: 線型代数とプログラミング¶
今週の問題でも書くように, 今週はブロッホの定理まわりの議論・計算をしていました. ちなみに, 一般次元の議論について関連する話題を調べていたら芋蔓式に問題が出てきて, それではまり倒していてまだ終わっていません.
三次の行列式の文字計算もしていて本当に嫌になりました. 行列の計算は三次元で既に嫌になるので, 具体例を調べるのが本当に大変です. (Juliaでの)SymPyでいい感じに計算してもらえないか確認したりしていて, あまり計算それ自体での進捗がありません. さらにICMUtils, 特にfdg-book関係の作業もしていて, 余計に例と計算編それ自体の進捗が微妙です. 別に無駄なことをしているわけではないものの, 進めたいところが進まないのは嬉しくありません.
SICMUtilsにも文字計算があり, せっかくかなりの時間を割いているので, そちらで処理できるかも検討しないといけません.
今週の問題: 一般のブロッホの定理¶
今回はこれに関わる問題をいろいろやっていました. 2022-01-22版の例と計算編, 「2.5.5 量子力学と線型代数」に2-3準位系の具体例を含めて書いているので, 購入されている方は参考にしてください.
ブロッホの定理という言い方があるのかよくわかっていませんが, いわゆるブロッホ表示・ブロッホ表現(Broch representation)の話です. 二準位系の状態は二次元球内の点で表せ, 特に純粋状態は二次元球面$S^2 \subset \mathbb{R}^3$上の点として表せます. 「幾何的に表せて嬉しい」らしいですが, その感覚はよくわかりません.
何はともあれ, 私の観測範囲では量子情報系の議論だとブロッホ表現はよく出てきます. 作用素環的な純粋状態は状態空間の端点として定義されるため, 純粋状態が実際に(幾何学的な)端点として現れているのは気分がよいです.
それはそれとして, 勘違いを具体例で正せたのでそれをシェアしておきます. 二準位系では全ての状態(密度行列)をブロッホ表現で表せ, 逆にブロッホ表現は全て密度行列に対応します. しかし三準位以上ではこれが破綻します. これ自体は知識として知ってはいたものの, 一般論としてまとめようと思ったとき, この事実が骨身に沁みていなかったため, ブロッホ表現の非負性を示そうとして数時間はまってしまいました.
「きちんと具体例で確認しよう」と思い, 二準位は既に具体的に調べてあるから次は三準位だと思って調べたら, そんなことは成り立たない例がすぐに出てきました. 例を見れば一発だったのを猛烈に時間を無駄にしたわけですが, 具体例で勘違いを正すのは正攻法なのでそこはよかったです.
一応書いておくと, 三準位系は状態ベクトルの空間次元が3であり, 行列で言えば$n^2 = 9$次元なのでもう計算が嫌になります. 数値計算をやっていればいいわけでもなく, きちんと文字計算で処理しないといけないタイプの話題もあります. 検索しつつ文献を辿っていったら2003年くらいのarXivの論文などに辿り着いたので, いまはそれを読みながら例と計算編に記述を整理しています.
あまり意識していなかったのですが, 量子情報系の有限次元の議論はリー群・リー環の議論が陰に陽に出てきます. スピンの表現論があるのでそれはそうという面もあるにせよ, 構造定数やカシミール元なども出てきます. この間から書いているように, 代数・幾何への展開としてリー群・リー環の記述を増やしている最中なので, 物理と数学でやっていることがちょうど交差しています. 別に私のコンテンツを買わなくても構いませんが, 量子情報の議論, 特に線型代数に関する数学的側面に対する訓練としても, 深く広い数学の世界への探求としても, 具体的な計算練習にしても, 行列に関わる議論は本当に深く広く重要です. 特にリー群・リー環は絶対的に役に立つので, 何らかの形でゴリゴリと具体例を勉強するのを勧めます.
比較的最近, 杉浦・山内の連続群論入門が復刊したとかいうのを見た記憶があります. 私は読みたいと思いつつ未読のままですが, 聞くところによれば具体例を扱っていつつ, 議論自体は一般論に合わせて展開しているそうで, そのままリー群・リー環論に進めるよい本だそうです. 何でもいいですが, 何を勉強したらいいかわからない, 何か新しい勉強のネタを探しているならぜひリー群・リー環に挑んでみてください. リー群はどうしても多様体や位相的な議論もしたくなる一方, リー環は(線型)代数だけで議論を進める部分が多いため, 線型代数からの接続では特に便利です. リー群の話ではありますが, 対称空間のようなリーマン幾何のテーマにも直結しますし, 無限次元ユニタリ表現に行けば関数解析・表現論にも直結します. ジョージアイの本が有名なように素粒子でも出てくるので, もしあなたが素粒子に興味があるなら, そういう枠で眺めてみてもいいでしょう.
何度も同じ事を書いていて見飽きた方もいるかもしれません. しかし大事なことは何度でもの精神で, 何度でも強調しておきます. ここ数年, 私が今一つ理解が深まっていなかった部分を埋めるための取り組みに選んだ程度には重要なのです.
上記の議論は例と計算編の2022-01-22コンパイル分では, 私自身のためにもせっせと計算しているので, 購入された方はぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 アインシュタインの原論文のスペイン語第一文/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 今週の進捗
- スペイン語第一文の学習ログ
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
今週の進捗¶
アラビア文字はかなり認識できるようになったものの, 文法はもちろんのこと単語がからっきしです. 単語をある程度頭に入れていないと文法の勉強をするときに延々単語を調べる羽目になり, 単語を勉強しているのか文法を勉強しているのかわけがわからなくなり, 文法に集中できません. あとは活用練習で発音も必要なので, 発音をちょこちょこ確認しつつ, 単語をやろうと思っています.
そんな状態なので, まだアラビア語の話は全くできません. スペイン語は地道に進めているので, スペイン語での特殊相対性理論論文の解析結果を出す形でメルマガに代えます.
スペイン語第一文の学習ログ¶
コンテンツの非公開メモから取ってきました. 何か変なところなどあればぜひ教えてください. 多言語・他言語のメモがあるところから切り出しているので, その前提の記述があります. 気になる方は勉強会の記録から資料・動画を確認してください.
第一文¶
Se sabe que cuando la electrodinámica de Maxwell – tal como se suele entender actualmente – se aplica a cuerpos en movimiento, aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.
文構造¶
英語よりもフランス語の文構造の方が参考になるはずです.
- Se sabe
- que aparecen asimetrías
- que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.
-
- tal como se suele entender actualmente -
- cuando la electrodinámica de Maxwell se aplica a cuerpos en movimiento,
- que aparecen asimetrías
私の理解の範囲では英語ではちょっと考えられない語順で出てきます. 順に確認しましょう.
単語¶
詳しくは単語・熟語集を参考にしてください.
- se: 代名詞, 三人称単数
- yo - tú - él/ella/usted - vosotros/vosotras - nosotros/nosotras - ellos/ellas/ustedes
- sabe: saberの三人称単数現在
- que: 関係代名詞, that
- cuando: when
- la: 女性単数の定冠詞, el - la - lo - los - las - lo
- la electrodinámica: 電気力学
- de: 前置詞, of
- Maxwell: 人名
- tal: such, cf. (francais) telle
- tal como: such as, just like
- como: as, like, about
- suele <- solerの三単現: to pave
- entender: 原形, understand
- actualmente: at present
- aplica <- aplicar: apply
- (reflexive) to apply oneself, to apply, to hold true
- a: 前置詞, to, by, at
- cuerpos <- cuerpo: body
- en: in, at, on
- movimiento: 男性名詞, movement
- aparecen <- aparecer: appear, 三人称複数現在形
- asimetrías <- asimetria: asymmetry
- no: no, not
- parecen <- parecer: seem
- estar: be動詞, 主語の状態を表す
- la correspondencia: correspondence
- con: with
- los: 男性定冠詞・複数形 el - la - lo - los - las - lo
- fenómenos: 男性名詞, phenomenon
- observados: 過去分詞男性複数形
Se sabe¶
これはsaberの再帰動詞的用法で, 英語を見ればわかるようにit is knownです. このsaberはホモサピエンスの由来のラテン語sapereが語源です.
- tal como se suele entender actualmente -¶
queが導く節の中の挿入句で, 英語・フランス語と比較すれば見やすいはずです. ここのtal comoはjust likeのように捉えればよく, actualmenteは英語のactualの意味とはずれがあります. (詳しくは単語ページを見てください.) 意味上のキーse suele entenderはtend to understandとでも訳せばいいでしょう.
cuando la electrodinámica de Maxwell se aplica a cuerpos en movimiento,¶
冒頭にカンマでもあればともかく, なかなか衝撃的な挿入節です. 英語で言えばit is known that when the electrodysmics ...にあたるのでしょう. 私はそんなに見かけた記憶がありませんが, 私が一般的な英語を知らなすぎるだけで実は英語にもよくある形だったりするのかしれませんが. 何はともあれば英語・フランス語と単語も含めて比較すれば意味・構文は明らかでしょう.
que aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.¶
メインはque aparecen asimetríasで後半のque節は関係代名詞節です. 前半の動詞はaparecerの三人称複数現在形で, asimetríasが三人称の複数形です. 意味からしてもこれが主語とみなすのが素直でしょう. つまりここでは主語が後置されています. 関係詞がついて主語が長いときに後置される現象と思えばよく, 後半の関係詞節がasimetriasを修飾していると予想できます.
後半のque節を見ましょう. 動詞は(no) parecen estarでよいでしょう. 「estar結果構文ではよく動作主句が省略される」ため, この現象が起きていると推測できます. あとは英語の気分で読めます.
2022-01-15¶
数学・物理 今週の衝撃: 科学哲学の態度/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 数学書の読み方
- 科学哲学の態度「世界観にあうか」
- リー群・リー環と吉田近似
- 環論のデータベース
- 現代数学探険隊のお試し版公開?
- プログラミングの進捗
- 今週の問題
- 解答案内
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
数学書の読み方¶
参考になる人もいるでしょうから, いくつか引用しておきましょう. 興味がある方はぜひ上のリンクから全文眺めてきてください.
数学書1冊の読了に時間がかかることを受け入れる 1章が終わらないのはザラ。1行しか進まない日もある。
文学修士の方のようですが, これを特記しないといけないという判断がなかなか衝撃です. よほど非自明なのでしょう. 実際すぐあとに次の記述があります.
普通の本は1~2日、簡易な内容であれば数時間で読み切れるような中、 年単位でようやく1冊読み切る、というような経験はとても大変だった。
こちらとしては逆にこれが理解できないくらいです. 極端に言えば「そんな簡単な本しかないの?」, 「そんな中身の薄い本しかないの?」とでもいうか. 数学(や物理)の本の冗談のような行間が異常で, それに慣らされているだけなのかもしれません. プログラミングはプログラミングでまた違う行間またはハードルがあります.
「定義」と「定理」は違う 少なくとも「定理」は「定義」に基づいた「証明」が必要。
これについて, 中学二年のときの数学の先生が「いくら言っても通じないし, 君達もすぐにはわからないかもしれないが, この二つは別物だ. わからなくても(中学の)数学はできるが, わかる人は心に留めておいてほしい」と強調していたのを今も覚えています. その当時で既に40代の先生だったと思いますし, 20年以上も話していてどうしても通じない経験を積んできたにも関わらず, それでも諦めずに毎年必ず説明していたのでしょう. これが本当にすごかったのだと最近改めて思います. いい先生だった.
何ができれば「理解した」ことになるのかについて、自分の中で本にある記述が正しい根拠を自分の言葉で表現できることであろうと解釈できる。 本の記述を自分の言葉で表現できるようになるためにはどうすれば良いのか?というのが次の問いになる。
文学修士の人のこのコメントをどう取ったらいいか微妙なところはあります. いわゆる直観的な理解みたいな話をしているのでしょうか. むしろ「本の記述に対して余計な再解釈を挟まず, きちんと文字通りに理解」する方が大事ではないかと思っています. 自然言語的な言葉の用法に惑わされず, 数学の本に書かれた用語に沿って数学の言葉を理解するのは尋常ではない程苦労するようなので. この話, 一応すぐあとに書いてはあるのですが.
②例を考える
私もよく引用する結城浩さんの数学ガールの「例示は理解の試金石」が引用されています. これについては私も最近コンテンツをリリースし, 本格的に進めるぞと言っている程度には重要です.
- 図を描く.本には図を入れた方がいいことは著者も分かっているのだが,ページ数の都合で図を省略する, あるいは小さい図でお茶を濁すことがある.そういうときは読者自身で図を描けばよい.
元が統計の勉強なのでこういう話になっているようです. 数学の場合, 無限次元を含む高次元は原理的に何をどうしても絵が描けないことがあります. 平面内の曲線であってもカントールの悪魔の階段などもあります. 描けないから描かない・載せない世界もあります.
他には絵に引きずられて間違う事例もあります. これは現代数学観光ツアーの小旅行3 目で見える世界に頼ることの危うさでも書いたので, 興味がある人は眺めてみてください.
こうして見ると、特に数学書においては「自分が理解した」ということに十分にリソースを割くことが重要そうである。
文学だとこのステップはそんなに軽いのでしょうか. カルチャーショックでは言い表せないほどのショックを受けました. いまも受け止めきれません.
文化のギャップを感じつつ, この記事へのコメントを終えます.
科学哲学の態度「世界観にあうか」¶
自分のメモだけで書くつもりはなかったのですが, 先の節を書いていて思い出したのでメルマガにも載せておきます.
そもそもこの本の解釈ってどれくらい 科学哲学的に メジャーなんですか? ほら,和文の科学哲学の書籍とか割とひどいじゃないですか.なので書籍として1冊出てるだけだと分野がひどいのか著者がひどいのかよくわからないなって. Oxford Handbook of Philosophy of Physics によるとこんな感じ.これは予想外に思想が強く出ていて面白いぞ.
Philosopher の立場が予想外だった.彼ら的には「現象を説明できること」よりも「物理観に合うこと」のほうが重要度高いんだ.もし物理観にはあってるけど現象を説明できないモデルがあったら修正するのはモデルの方であるって立場なのか. ここ最近で一番衝撃を受けた.わたしには「現象を説明できる」と「世界観にあう」が比較できるって感覚が全然なかった.世界観が first class object の民はこれらを比較できるのか.
科学哲学でやりたいのは哲学であって科学ではないことは認識していましたが, その内実がここまで違うとは思っていませんでした. ここまで世界観が違うとなると, もう科学哲学の人と対話できる気がしません.
リー群・リー環と吉田近似¶
最近の具体例の話で線型代数をがんばっていて, アドバンストな話とも絡むところでリー群・リー環に注目しています. 特にリー群(の単位元の連結成分)の元はリー環の元の指数化$e^A$で得られます. テイラー展開による定義を自明と言うならともかく, 実数のときと違って指数と対数の定義が非自明です. 実数のときも含めて, これを改めてきちんと書いてまとめるのも私のタスクとしてリストアップしています.
実は大学の教養の数学で触れた対数関数の定義は $\log x = \int_1^x \frac{1}{t} dt$でした. 「これを『定義』としてはじめていいのか」とちょっと驚いたことを今も覚えています. 私は数学に対する感受性が恐ろしく低いというか, 「理解」にいたるのが恐ろしく遅いので「ほほー, そういうのもあるのか」くらいにしか思えていませんでした. いま思うとこれは本当に面白いですね. その講義以外でこのスタイルを見かけた記憶がないので, いいことを教えてもらえたと今も思います. そもそも微分積分を改めて基礎から勉強する機会もあまりないですね. あったとしても教養数学のスタイルにはなりづらいのもあります. いわゆる教養の数学も, 突っ込んだ視点から見て面白いところがたくさんあるのを伝えることも, 例と計算編の重要なタスクと思っています.
話を戻して吉田近似です. 指数関数の定義として $e^x = \lim_{n \to \infty}(1 + \frac{A}{n})^n$があります. 実はこれは関数解析でも重要な定式化です. 正確には非有界作用素の事情があるため, $e^{tx} = \lim_{n \to \infty}(1 - \frac{tx}{n})^{-n}$のように書きます. この$x$に作用素を叩き込みます.
非有界作用素であっても$(1 - tA)^{-1}$が有界になることはあり, これならいくらでも積が取れます. この事情を使って作用素半群を作るのがヒレ-吉田の定理です. また$(1-tA)^{-1}$が有界になるような複素数(または実数)$t$の全体をレゾルベントといい, $(1-tA)^{-1}$の形の元をレゾルベントと呼びます.
無限次元の場合は作用素論や位相的な問題があってさらに非自明性は上がります. それでもリー群・リー環の議論が関数解析のような解析学にも直結することは指摘しておくべきでしょう. レゾルベントに関する議論自体は解析学編でも書いたのでここで詳しくは議論しません. 何にせよ学部は物理で数学分は修士で解析学べったりの私が, 代数や幾何への習熟のためにリー群・リー環に興味を持つのにはそれ相応の理由があることには触れておこうと思い, 簡単にコメントしておきました.
別に私のコンテンツを買ってくれなくてもよいのですが, ぜひリー群・リー環は勉強してみてください. これらの表現論も非常に面白く, 量子力学や素粒子ともいろいろな関係があります.
環論のデータベース¶
先程Twitterで見かけたのでシェアします.
another super useful (and cool) maths website! https://ringtheory.herokuapp.com search for specific rings, or for rings satisfying (or not satisfying) collections of properties! e.g. "show me rings that are commutative and connected but not integral domains"
this reminds me of π-base, which does the same for topological spaces https://topology.jdabbs.com is there one for categories? somebody (i.e. not me...) should build this functionality on top of the n-lab or something...
環論のデータベース!これは便利そう! 他の便利なデータベースも紹介しておきます:
だいぶ趣は違いますが, 名前だけは作用素環を専攻していたわけで, 環論にも一定の興味があります. 何だかんだ代数はかなり好きでもっと突っ込んで勉強したい対象です. 面白そうな例を見つけたら例と計算編にも収録したいですね. これもかなり楽しみな文献です.
現代数学探険隊のお試し版公開?¶
この間「購入検討のためにサンプルとしてこの節を見てみたい」というメールを頂きました. いちいち答えていると事務負担が増えてしまうこともあり, オンラインだとAmazonの本のページ公開はほとんどなく, 現代数学観光ツアーなど無料公開しているコンテンツもたくさんあるので, それで判断してほしいと返信しました.
内容からすればむしろ安いくらいとは思っていますが, 絶対的な額面の金額は何をどう考えても安くありません. テイスト把握にも役立つと思って例と計算編を安めに提供したというのもあります. 何にせよ高い買い物ですし, もっとしっかり事前に中身を見たいという要望自体は真っ当なので, どうしようかとは思っています. 最近は幾何方面に乗り出そうと思っている関係上, 幾何とも強く関わる微分の章など何かの公開は検討中です. まだどうするかはわかりませんが.
一応有料にしている理由も改めて書いておきます. これは本当に単純で, 実際に大事にしてほしい・読んでほしいからです. 人は本当に無料で提供されたモノを大事にしません. 他人のことを言うまでもなく私がそうです. ネットにもいろいろな文献が落ちています. 私自身調査をしているときに重宝します. しかしダウンロードするだけして全く読んでいない文献・コンテンツもたくさんあります. 有料で買うと多少なりともそれを大事にします.
無料提供の方がリーチは増えますが, 大切にしてくれる人が増えるかというと微妙です. もちろんその塩梅は簡単ではないのですが, いろいろ考えた上で現状は有料にしています.
プログラミングの進捗¶
毎日朝の一時間はAtCoder ProblemsをEasyから地道にやっています. 楽しいですね. あとはBird, GibbonsのAlgorithm Design with HaskellをF#で書き直すのをやっています. まだ読んでいる最中ですが, 読み終わったらGitHubjにもアップする予定です.
このHaskellの本, 前に関数型でデータ構造とアルゴリズムの勉強をしていると言ったら読者の方にも勧めてもらった本で, まさにそのときも読んでいた本です. 私よりもプログラミングに強い人からもお勧めされたので, 「やはりこれはいい本なのか」と思い, 改めて再挑戦しています. 単純に時間が取れなくなりフェードアウトしていたのですが, 今年のテーマとして無理やり時間を作って読み進めています. 面白いこと自体は間違いないのでお勧めです. サンプルコードも出すと本に書いてあるものの, いまだにアップロードされていません.
Haskellの本なので素直にHaskellでサンプルを写経した方がもちろん楽なのですが, 趣味でF#にしています.
あと, こちらで紹介したか忘れましたが, ManningのMEAPでGeometry for Programmersという本が出ています. これはSymPyで書かれています. 幾何方面の具体例計算とも合わせてこれもかなり気になっていて, まだいい本かどうか判断できるほど読み込めていませんが, いま出ている分を少しずつJuliaのSymPyで写経を進めています. プログラミングと数学関係も期待しているというコメントも頂いています. この辺の調査・研究も精力的に進めたいですね.
幾何とプログラミングと言えば, OSSのsicmutils/fdg-bookにも参加しています. メイン開発者のSam Ritchieがいま忙しいようでちょっと止まっていますが, 口先だけではなくきちんと進めているぞ, ということで. まだ深いところまで使い倒していないのですが, もとがSICMで古典力学との関係もあれば, 微分幾何への応用として曲率の計算などもできます. 物理とも絡められるプログラミングとして私も進展が楽しみです.
今週の問題¶
毎日ちょこちょことやっていて, ある問題を調べていて芋蔓式に辿り着いた問題などもあり, 何をどうしたか覚えきれません. 何をどう登録したらきちんとメモしておけばよかったと反省しています. Git管理はしていますが, いろいろなファイルをごった煮で管理しているリポジトリに入れていて, 個別で取り出すのはちょっと面倒なので.
それはそれとして覚えている範囲で面白かった問題・命題を紹介します. 今週は複素係数の$n$次全行列環の中で, エルミート行列がなす集合は実$n^2$次元の実部分空間です. これを証明してみてください. 特に一つ基底を具体的に求めてみてください.
この問題の意義をいくつか紹介しておきましょう. まずリー群・リー環の視点からコメントします. 歪対称行列や歪エルミート行列の全体は, それぞれ特殊直交群と特殊ユニタリ群のリー環です. リー環論の入門として半単純リー環が一つの山で, この中でこれらの次元や基底を求めるタスクがあります. 上で紹介したのはただのエルミート行列ですが, 歪エルミートを考えるときの参考になります. エルミート行列はふつうの線型代数での対角化計算, そして量子力学で馴染みがあるはずで, いきなり歪エルミートを考えるより取り組みやすいはずです.
もう一つ大事なのは複素線型空間(いまは全行列環)の中の実線型空間という視点です. 実は複素多様体論では, 接空間を考えるとき, まず$n$次元の複素多様体を実$2n$次元の実多様体とみなし, 実のレベルで実$2n$次元の接空間を考え, これを複素化して複素$2n$次元(実$4n$次元)の(接)空間を構成します. 上のエルミート行列がなす実線型空間では, まさに複素線型空間内の実部分空間を考えるので, 思考の訓練になります. ついでに半単純リー環の議論でも, 実カルタン部分環を考えるところがあり, そういう場合の参考にもなるでしょう.
ちなみに複素多様体の接空間に対して, 上記のひねくれた構成を取る理由はいくつかあり, まだ未公開の幾何編ノートにはコメントがあります. ちなみに私の観測範囲の数学の本には, 構成法は書いてあっても何故こうするかのコメントがなく, はじめかなり戸惑った記憶があります. 形式的に大学院で数学科を出たといっても, 数学内部であっても専門外を勉強すると本当に困るのです. 上で文学修士の方の数学学習法メモをシェアしましたが, 一行読むのに本当に苦労するのです.
解答案内¶
上記の問題の解答は例と計算編の2022-01-15コンパイル分では, 2.6.8節の「実次元は$n^2$: (正規直交)基底とともに」で議論しています. そこでは一般の$n$次元で議論していて, 次の節で二次元版の例も書いています. 一般の$n$でわかったのをあえて二次元・三次元で確認するのも重要です. 自分でやると大変な部分もあるでしょう. 私自身のためにもせっせと計算しているので, ぜひ参考にしてください.
例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.
語学 いろいろな言語に触れてみよう/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 緩募: アインシュタインの特殊相対性理論の原論文アラビア語訳が探せる方
- アラビア語学習状況
- アインシュタインの原論文: スペイン語第二文
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
緩募: アインシュタインの特殊相対性理論の原論文アラビア語訳が探せる方¶
「クルアーンを読むぞ」という趣旨の本を勧められ, それはそれで読む予定ではあるものの, やはり理工系のための多言語プロジェクトとの兼ね合いもあって, アインシュタインの原論文読解にもアラビア語を加えたいと思っています. 他の言語は何となく見つけられましたが, 現状アラビア語は何もかもわかりません. アラビア語での特殊相対性理論に関する文献自体はある程度見つかるものの, アインシュタインの原論文の翻訳が見つけられていません. 他にも私が所属している語学コミュニティでも聞いてみる予定ですが, そちらは物理・数学系に詳しい方がおらず, アラビア語自体はわかってもアインシュタインの原論文かの判定がつかない・つけられない可能性があり, 頼れる伝手は頼ろうと思っています.
どなたかご存知の方, もしくは探索できた方はぜひ教えてください.
アラビア語学習状況¶
まずアラビア文字を読めるようにしなければなりません. 現状取った方法・取っている方法はここにまとめました. この辺は理屈をうんぬんしているより力づくで覚えた方がいいと思っているため, そういう方法を取っています.
一番やりたかったのはロシア語のときにやったような, 数学者名のアラビア文字表記で慣れる手法なのですが, いいリストが得られませんでした. (ロシア語の場合は『数学者のためのロシア語』的な本があって, そこにリストがあった.) 代わりに外語大のモジュールとアラブ人名辞典を使っています. 女性名でアーイシャがあり, 「ロマサガ1のアイシャはここからか?」とか, 同じくロマサガ1のジャミルがアラビア語にあって, これももしかしてアラビア語由来?とかいくつか発見があります.
特殊相対性理論の文献探索中に「アラビア語での物理用語辞書」という600ページ程度のPDFを見つけたので, これもちょっと眺めてみようと思っています. 用語解説などでは時制の面倒な話が出てきづらいはずで, 動詞の活用に関する記憶負担も減るメリットはあります. ただ構文が複雑になったりするデメリットがあるので, いろいろなことを考えて進めます.
アインシュタインの原論文: スペイン語第二文¶
最低限の全解説作成が間に合わなかったので, 今回は軽いコメントに留めます. フランス語とイタリア語, またはラテン語を何となく知っていると何となくわかります. ちなみに第一文の全体は次のようになっています.
Se sabe que cuando la electrodinámica de Maxwell – tal como se suele entender actualmente – se aplica a cuerpos en movimiento, aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.
いきなりこの長さと構文的複雑さです. 初学者がアタックするような文章ではないですが, わかるところにはアタックしてみましょう.
実際にドイツ語・英語・フランス語を眺めつつ進めます.
まず(Se) sabeに対応するはずのドイツ語は(ist) bekannt, 英語はIt is knownです. フランス語ではIl est connuです. フランス語はいわゆる「コネ」のconnaitreに対応する単語で, やはり「知る」に関わる意味です. 同じくフランス語で「知る」に関わる単語でsavoirがあり, bとvが入れ替わっているだけで, スペイン語のsabeもやはり「知る」に関わる意味でしょう.
こういう感じの議論を積むと, 何となくスペイン語も読めるようになります. 次のqueやcuandoはフランス語の疑問詞・関係代名詞でqueやquandがあります. イタリア語だとcheなどになりますが, 音は「ク」「クアンド」のような感じで, イタリア語もcheで「ケ」と読みます. スペイン語も同じだろうと推測できます.
他にも英・独・仏・伊比較をすると意味が推測できる単語はあります. 具体的に大きく見れば一致するはずの文の中での登場具合も見ると, 例えばaplicaはapply(application)にあたるでしょう. 他にはaparecenは英語のappear, asimetríasは同じく英語のasymmetries, correspondenciaはcorrespondense, fenómenosはphenomena, observadosはobserveにあたるのが想像できるはずです.
こう見るとこれらの英単語はロマンス語(ラテン語)由来なのが見えてきます. 一応書いておくと, 実はsymmetryはギリシャ語由来です. sym (syn)にもいろいろありますが, 後半の-metryはgeometryやtrigonometryなどと同じく, 「測る」の意味です. 他にはfenomenosのphenomenaは英語の方がギリシャ語由来が見やすいです. 英語の中でギリシャ語由来の単語にはよくphがつきます. ファイナルファンタジーでも出てくるテュポーン先生のtyphoonや, pharmacyが例です.
この辺の話の何が大事か改めて書いておくと, 例外が掃いて捨てるほどあるとは言え, 言語の中にも一定の法則があります. その法則を探る体を取ることで, 理工系の語学として楽しめる点を見出せるのではないかと思っています. 逆に「文系のための数学・物理入門」として, こうした言語に潜む法則を探る視点が使えないかと思っています.
まだヨーロッパ方面に偏っているとはいえ, 半端であってもいろいろな言語に無理やり触れているのは, こうした言語をまたいだ共通法則を探るためです. ヨーロッパ方面だけでは本当に半端なので, ヨーロッパ外に出るべくまずはアラビア語というチョイスです. よくも悪くも現代の中国は理工系強いので, そのラインから中国語もやりたいですし, アジア系の言語もまずは一つ触れたいと思っています. ある種の原点であるサンスクリットに行くか, ヒンディー語にしてみるか, やはりサンスクリットの痕跡が見やすいと聞くタイ語にするか, というのもあります.
2022-01-08¶
数学・物理 明日でキャンペーンは終わりです/相転移プロダクション¶
今回のテーマ¶
式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
今回はTwitterの転載含め, 凄まじいボリュームになってしまいました.
- Nielsen-Chaungを読もう
- 量子力学と具体的な計算
- プログラミングの状況
- ディリクレ-ノイマン写像
- 基本的な演習の重要性
- ローレンツ群のユニタリ表現論
- 関数解析とルベーグ積分論
- 機械学習関係と作用素環, Reproducing kernel Hilbert C*-module and kernel mean embeddings, Yuka Hashimoto, Isao Ishikawa, Masahiro Ikeda, Fuyuta Komura, Takeshi Katsura, Yoshinobu Kawahara
- $\varepsilon$-$\delta$論法が必要な議論
- フレーリッヒの講演
- キャンペーンは明日で終了
- 今週の問題: 二次正方行列の極分解
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
Nielsen-Chaungを読もう¶
現代的な量子力学では量子情報的な視点が大事というのもあり, たくさん計算しよう・例をたくさん作ろう事案もあり, 改めてニールセン-チャンの演習問題をはじめから解いています.
まだ二章の途中までしか見ていませんが, パウリのスピン行列を含め, 二次正方行列での計算がたくさん書かれています. これだけでも線型代数の一般論と物理で重要な例での確認があり, 恐ろしく役に立ちます. 特にスペクトル定理を応用したいろいろな計算, 行列の関数がたくさんあります. スペクトル定理は私の専門である作用素論的な議論でも酷使する定理で, 本当に重要です.
他にも極分解のようなふつうの線型代数ではなかなか見かけない議論もあります. 具体的には今週の問題で軽く紹介します. ニールセン-チャンでの極分解の証明も非常によいです. 特に面白いのは部分等距離作用素の構成です. 私が知っているのは無限次元での存在証明だけで, もとの行列が正則なら簡単に計算できるものの, そうではない場合に演習問題だけ見てどう計算すればいいのかなどと思っていたところ, 行列の特殊性を使って具体的な構成で証明していました. その意味でも線型代数の教科書としてふつうに使えます. 少なくとも物理学科の線型代数の教科書はこれの二章でいいのではないかとさえ思えるほどです.
全部の証明を詳しく検討したわけでもないため, もしかしたらレベル感などに多少のハードルがあるかもしれません. 基本的に演習問題しか見ていないため, 線型独立性や行列式の定義などの基本的なことが書いてあったかも確認していません. それでも応用に根差したアドバンストな線型代数, そして物理学科民の興味を引く面白い例・計算問題に満ちていて, 物理系で線型代数を復習したいと思っている人は必読です.
ちなみにこの解答は例と計算編でいままさに解答を作り続けているので, 興味がある方はどうぞ. そしてこれを買う買わないは好きにしてもらえればよいのですが, ニールセン-チャンはぜひ手に取ってみてください. 確か和訳もあったはずです. いろいろな点で学生指導されている方もいると思うのですが, そうした方は応用に役に立つ計算例がたくさんあるため, 学生指導や演習問題のネタにも使えると思います. 二次正方行列とそのテンソル積である四次正方行列の計算だけで, いわゆるベルの不等式やエンタングルメントなどの量子情報で一番基本的かつ大事な概念と戦えるので, 本当にお得です.
量子力学と具体的な計算¶
新たに現代数学探険隊を購入された方からメールを頂いて, こちらで全体に共有していい内容だったので私が書いた内容を転載します.
最近、量子力学は量子情報との関係を真剣に検討しなければならないようで、 量子情報の視点を十分に取り入れたアプローチ・本も市民権を得てきています。 私もまさにその視点からの再勉強を進めているところで、 ちょうど年末にリリースした問題演習コンテンツの大きなテーマの一つです。
数学的には有限次元の線型代数、 特に2次元と四次元の線型代数が重要で、 ベルの不等式のような有名どころがまさにこの世界です。
高いものを買ってもらった後に(無料提供するとはいえ)別のコンテンツを勧めるのもなんですが、 元々相補的なコンテンツでもあります。 ぜひ無理のない形で取り組み、楽しんでください。
ちなみにまだMEAPですが画像だと次のような本が出ています.
昨年末に半額のときに買いました. 計算編のテーマとして私の幾何学習もあり, プログラミングも使って計算し倒す方向でもかなり気になっています.
私もやりたいことがたくさんあり, 「あれもこれもできていない」と嫌になることもあります. それでも一歩一歩進むしかないので, じっくり計算力を高めていこうと思っています. ぜひ一緒にやっていきましょう.
この幾何の本, SymPyを使うようです. Julia版で書き直したり, もしくはSICMUtilsで書いてみたりなどいろいろ遊んでみたい本です. これもかなり楽しみにしています.
プログラミングの状況¶
プログラミングの話が出たので軽く書きます. どうするといいのか, そして何よりどうすると私自身楽しく勉強できるのかという問題さえあります. 紆余曲折をいろいろ書いていますが, 現状はF#でAtCoder ProblemsのTraining300題をEasyから解いています. SICMUtils用にClojureではじめから解き直していたのですが, JVMの立ち上がりの問題か, 本質的にはほぼ変わらないコードのCommon LispやF#版が軽く通るのにタイムアウトになってしまうのに苛ついて, いまは結局F#で解き進めています.
データ構造やアルゴリズムの理論の本も並行して読んでいますが, いまだにアルゴリズムの理論面の楽しみ方がわかっていません. もうゴリゴリ問題を解いていって, 解説で「---法を使えばいい」みたいなのが出てきたらそれを読む形にしようと思って, いまはメインを問題演習にあてています.
言語に関して, CやC++, または最近だとPythonサンプルも多いですが, 自分が書いていて楽しい言語となると, 現状ではいわゆる関数型なのもほぼ確定しました. 私のスタイル(技量ともいう)だとHaskellではREPLスタイルの開発がうまくいかない(一応VSCodeでREPLプラグインも入れてみたものの, 使い方も悪いのかもしれないが気持ち良くない)ので, いまの私の技量・エディタ設定能力で気分よく使えるF#を使っています. ClojureもEmacsのCIDERが非常によいです. Common LispとSLIMEもかなりよいのですが, これは標準機能でいわゆる関数型の処理を書きやすいのがリストだけで, Clojureのように配列でも同じインタフェースが使えるような機構がないのがつらいところです.
データ構造とアルゴリズムは2021年にHaskellによる本が新しく出ていて, これが読みやすく楽しいです. これもふつうのCやC++で書かれた本だと楽しく読めないので, これをできる限りF#に翻訳しつつ読もうと思っています.
一方で数値計算を本格的にやる面では現状はJuliaで趨勢が決したように思います. 先のGeometry for Programmersよろしく一般向けコンテンツはPythonなのでしょうが, ちょっと凝ったことをコードを楽に楽しく, そしてさらに速くしたいならもうJuliaでしょう. SymPy自体もJuliaから使えますし, Juliaネイティブの記号計算ライブラリもあるにはあるようです.
昨日もTwitterで次のライブラリの話が出てきました.
量子力学はもちろん, 量子情報でも重要な記法であるディラックのブラケット記法をJuliaで使えるライブラリです. 見たところ, ユニコードで変数を書けるというJuliaの数学的なノリの良さそのままで$| \psi \langle$的な変数名にできるわけではないようですが, それでも一つ象徴的で良さそうなライブラリです.
最近SICMUtils対策にClojureとCommon Lispに簡単に触れたら, この辺の記号乗っ取り系はCommon Lispが相性良さそうなところですね. Clojureは言語に^
と/
が乗っ取られて自由度がCommon Lispより減っていて, SICMUtilsでは苦労しているようです.
取り留めもなくダラダラと書きましたが, 中高数学の問題をSymPy・Juliaで解いたり, 計算・お絵描きするのも今年の例と計算編に関わるテーマです. これだけいろいろ書くのもその程度には調べたり実践しているということで. 面白計算ネタがあればぜひ教えてください.
ディリクレ-ノイマン写像¶
こちらも例と計算編関係で質問が来たので返信を共有します.
ディリクレ-ノイマン写像に関して何でどんな情報を得ているかわからず, さらに予備知識または力量的な情報がないため, 現代数学探険隊を一通りこなしている前提で書きます.
まずはじめに書いておくと, 私はこの言葉やテーマをはじめて知ったので, 完全に素人です. 少し調べただけなので既にご存知のことばかりかもしれません.
この二つを見る限り, 境界条件を変えて偏微分方程式を簡単にするのではなく, 工学や逆問題的に境界(の一部)しか情報を取れない状況で, 内部のデータを推定する手法なのではないでしょうか. 同じ名前がついているだけの全く違う手法を私が見つけただけかもしれませんが, 名前しか情報を渡してもらっていないので判断できません.
少し眺めた限りでは, 次の文献が比較的様子が見やすそうな印象を受けました. 読み込んではいないので実際の行間などはわかりません.
現代数学探険隊ではあまり議論していないトレースの話が出てはいますが, 基礎になるソボレフの埋め込みは議論しているので, 結果を追うだけならさほど苦労はないように思います. (念のため書いておくと, ここでの「トレース」は線型代数的なトレースではなく, ソボレフ空間上でのベクトル解析のように, 境界上での値や滑らかさを真剣に考えないといけない状況で出てくる, ソボレフの埋め込み関係の議論です.)
あとは現代数学探険隊でも双線型形式まわりではスタンパッキアの定理, ラックス-ミルグラムも議論していますし, コンパクトレゾルベントを持つ自己共役作用素, フレドホルムの択一定理も収録しているので, 現代数学探険隊があれば予備知識は問題ないでしょう.
こう見るとちょっと進んだことをやる上で, ぎりぎりまでの内容はおさえられているな, とちょっとほっとしています. そして少し凝った内容では, すぐトレースが必要になるのも改めてわかったのが私にとっても収穫です. 応用上, 境界(の一部)までしか情報が取れないこともよくあるので, 境界に絡むトレースはもう少し補足コンテンツを作った方がいいのかもしれません.
(学生時代の)専門外なので, いま言えることはこのくらいです.
簡単にトレースの話を補足します. まず偏微分方程式論では境界条件があります. そして一般に境界は元の空間より次元が低く, 測度零の集合です. 測度零の集合で値を指定するのが境界条件であり, 測度零の集合上での振る舞いを無視するのがルベーグ積分論で, ルベーグ積分と関数解析を軸にした偏微分方程式論では, 境界条件の取り扱いははじめから猛烈な困難があります.
現代の関数解析的な偏微分方程式論では, まずはソボレフ空間からはじめるのでそれを基本にした話をします.
ソボレフ空間は適当な階数だけ超関数微分可能な可積分関数の集合です. 不連続な関数であっても超関数微分できるとはいえ, それなりによい性質が必要です. そして適当な階数だけ超関数微分ができ, さらに適当な可積分性もあるなら, この適当によい性質を持つと主張するのがソボレフの不等式とソボレフの埋め込みです. 特に十分多く超関数微分でき可積分なら, 本当に連続または微分可能になります. この事情をうまく使って境界条件をうまく指定する手法がここでいうトレースの議論です.
ソボレフの不等式まわりの議論が必要なので, それ程簡単ではありません. しかしソボレフの不等式に耐えられるならトレースの議論もシンプルな範囲は十分カバーできます. ソボレフの不等式の一般論は考える領域にも依存して非常に面倒です. 私も専門ではないため, とても完全な状況までカバーしきれていません. 当然多様体上のソボレフ空間論もあり, これはこれでまた曲率やリーマン多様体の測地的完備性も影響してきて, 別の難しさが出てきます. このようにソボレフ空間論自体もかなり色々な展開があり, 偏微分方程式を抜きにしても面白いテーマです.
基本的な演習の重要性¶
この間, ちょうど森の未知さんとお話をしてやはり, と思うことがあったのでシェアします.
以下で書いたようなことを念頭にコンテンツを作っています. あとで書くように明日でキャンペーン終わりなので, 「これは」と思った方は早めに購入するとお得です.
やりとりその一¶
大学数学では計算しなくなる?みたいな言説、計算練習を積まなくなる原因になってないだろうか
これは本当にその通りで、学生も基礎的な鍛錬をしなくなるのみならず、教員も基本的な問題を演習問題に出さなくなるんですよね。 あの手の言説は徹底的に滅ぼすべきですね。
私が今まさにそれで困り果てていて、今年の目標はたくさん計算することで、その結果を問題集に転用して提供する予定です。いつになるかわかりませんが、幾何系の基本的な空間のコホモロジーの計算だとかも叩き込みたいです。あとは数値計算・グラフ描きも込みで。
ちなみにスターリングの公式の近似の数値的検証みたいな形でグラフお絵描き込みの話を勉強会でやったのですが、すでに分かり切った(数学的な計算はやったことがある)結果でも、グラフを目で見るとそれはそれで含蓄があるのを実感したので、数学の人もどんどん数値計算やってほしいです。
ありがとうございます。 数値計算は実際大事だと思うのですが、プログラミングかマセマティカを習得するのが重たいんですよね……。
逆にそここそが自分が貢献できるところだろうなと思って、今年はいろいろやろうと思っています。ちなみに https://phasetr.com/lp/mpgh1/ こんなのは作ったことがありますが、これは中高数学メインなのでもうちょっと微分積分・線型代数をゴリゴリ計算したいと思っています。
やりとりその二¶
それはなかなか素晴らしい企画かと思います。 コホモロジーでなくホモロジーですが、『計算で身につくトポロジー』は参考になるかもしれません。
それも手元にあって読まねばと思いつつ読んでいないので、バリバリ計算する予定です。あと森の未知さんには言うまでもない話ですが、一般次元の議論を二次元・三次元で書くとか、一次元で書いてほぼ自明、みたいタイプの具体例と計算も大事と思っています。
その手の具体例と計算はガチで大事ですね。 習ったらその場で自分で簡単な例を考えて手を動かせるのが理想といえば理想ですが、現実問題として手の動かし方も経験値がないと分からなかったりするので、そこで適切な例を出せるかが教育者の腕の見せどころなのかなと思っています。
あとは「これは計算する価値のいい例だ」もきちんと協調するべきだと思っています。価値についても、そもそも計算できる例自体少ない貴重な例とか、基本的な手法が一通り身につくとか、先々で延々使うとか色々あるので、できること・やるべきことはたくさんあります。
ローレンツ群のユニタリ表現論¶
Twitterでちょっとやりとりしたので転載します. これも前にどこかで似たようなことを書いていたりするテーマです.
@物理やってるフォロワーの人 ローレンツ群のユニタリ表現論ってなんか本に体系的にまとめられてたりするんですか? カクミチオの場の理論の本に書いてあるのは知ってるんですけど、ユニタリ表現について書いてる本はないんですかね?WikiにはBargmann?Wigner equationsというものが関連するってあるんですが 午後4:20 ・ 2022年1月5日・Twitter Web App
新井朝雄先生の「フォック空間と量子場」(確か下巻の方)にはフォック空間上へのユニタリ表現の議論があります。他には代数的場の量子論の文献にもいくつか基本的な記述があります。実は代数的場の量子論で大きな基本的残課題が(たぶんいまだ未解決で)あって、Borchers, Translation Group and Particle Representations in Quantum Field Theoryに記述あり。
同じBorchersの Quantum Field Theory as Dynamical Systemという論文があり、これは20ページくらいで端的に問題がまとまっています。他にも有限温度でローレンツ対称性が破れる問題があり、ローレンツ対称性は破れても並進対称性は生き残るはずだ、みたいな研究もあります。
ちょっと記述の不備というか勘違いに気づいたのですが、先のBorcherdsの本と論文はローレンツ対称性の破れに起因する時空並進群の表現論で、ローレンツ群の表現論ではありません。
あと、ローレンツ群というよりSL_2(C)で議論していることがあります。ローレンツ群と$SL(2, C)$ 私の観測範囲だと相対論的な場の量子論をやっているのは代数的場の量子論(作用素環)の人たちなので、そちらの文献を見ると陰に陽に記述があります。 相対論的場の量子論はいまだに四次元のまともな理論の存在さえ示されていないはずで極端に難しいので、一般論・抽象論よりも作用素環ベースの話の方が数学色の強い文献は見つけやすいでしょう。代数的場の量子論の文脈でのC^* dynamical systemで検索するとまた少し関連文献があります。 あとは作用素環上だとユニタリ表現というよりも作用素環上の自己同型群への表現になるので、automorphism groupで見た方が作用素環(代数的場の量子論)系の文献は見つかりやすいかもしれません。
(非コンパクト群の)無限次元ユニタリ表現はともかく, ローレンツ群や$SL(2,\mathbb{C})$などの計算もゴリゴリやりたいですね. 特殊相対性理論に関してはパラドクスまわりの丁寧な計算も収録したいです. とにかくいろいろやりたい.
関数解析とルベーグ積分論¶
前も転載したような気がしますが, 大事な話は何度でもということで, 再度転載. この間ファボがついて「こんなの書いたな」となったのです.
もとのツリーを追うと途中でいかにも半端なことしかしていなさそうなコメントがありますが, ルベーグ積分抜きの関数解析には本当に魂がありません. この辺の具体例については現代数学探険隊の解析学編全体で議論しています. 数学科でもないなら別にルベーグも関数解析もいらず, 関数解析だけでルベーグに触れる必要もないと思いますが, 数学科で教養程度の関数解析というならむしろルベーグをべったりやらないと数学的教養にはならないでしょう.
発端¶
関数解析ってルベーグ積分論いるんだね、初めて知った ルベーグ積分論がいるというよりはただの関数空間において関数の定義域がもうちょい大雑把でも成り立つような命題があるけどその大雑把ってのが測度論とかないと書けないって感じ?>
他の人とのやりとり¶
別に具体例を扱わないなら殆ど要らなくないですか?
やっぱり大筋には関与してこないんですかね??
Lp空間の性質を完備性に押し付けることで抽象化しているので...圏論自体を勉強するのにはホモロジー代数は要らない みたいなことです. (但し, 関数解析にはBochner積分という測度論と密接関わった概念がありますが)
おーなるほど無茶苦茶わかりやすい例えですね、、、そう言ったものとして飲み込んで話進めても体系的に破綻しないって感じですかね!
私のコメント¶
https://ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/guide06.htmで作用素環(関数解析の一分野)をやるのに「ルベーグが分かっていない人は無理」という一文があります。抽象的な関数解析の理論もあるにはありますが、決定的に重要な具体例で関数解析の魂とさえいえるのがルベーグで、ルベーグなしの関数解析は魂の抜けた抜け殻にだけ触れているようなもので、一般的にはあまりお勧めできません。関数解析の抽象論だけがとにかく好きで、そういう方向の勉強をしたいだけなら特に問題ありません。
私が知る限りフィールズ賞を取ったガワーズは少なくとも抽象的な関数解析の結果もありまさにそれがフィールズ賞の業績だと理解しています。何にせよルベーグを知らないと関数解析系の人とコミュニケーションできないレベルで困りかねないとは言っていおきます。
なるほど、ルベーグ積分への応用(?)が重要な分野でもあるのが関数解析なんですね、僕は関数解析を専攻したいほど関心があるわけでは無いのですが、教養程度に知っておきたいなという気持ちがあります、、
ルベーグ自体が激しい応用を恐ろしく広範に持っていて、その中で陰に陽に関数解析が出てくると思った方がもう少し正確です。関数解析の中でも作用素のスペクトル理論(行列の対角化の一般化)でスペクトル測度という測度が出てくるので、関数解析の理論中でもルベーグが本質的に必要な場面があります。あと圏論的な背景さえあることでも有名なリース・マルコフ・角谷の定理は表面的には積分論が不要な連続関数環に対して、その双対空間がラドン測度の空間であるという大定理で、これも関数解析で測度論・ルベーグ積分論が本質的な例です。
機械学習関係と作用素環, Reproducing kernel Hilbert C*-module and kernel mean embeddings, Yuka Hashimoto, Isao Ishikawa, Masahiro Ikeda, Fuyuta Komura, Takeshi Katsura, Yoshinobu Kawahara¶
どこまで「実用的」なのかはわかりませんが, まさか作用素環と機械学習まで絡むと思わなかったので. そして研究室の先輩と知人が関係する論文を書くとは, という話もあり宣伝も兼ねて紹介します.
最近位相論, 関数解析を独学で勉強し, すごい面白いと思いました! この辺の数学をデータサイエンスに応用するような分野, それにかんする本, 論文など何かご存知でしょうか?
良いですね! そしたら、深層学習とか、勾配ブースティング決定木の、普遍近似定理の証明とかを探して見てみるのが良いのではないでしょうか!(^o^)
位相空間論やら関数解析が必要なところがどれだけ応用上で役に立つのか正直私は懐疑的ですが, 引用された論文の著者の勝良さんは修士のときの研究室の先輩ですし, その他, 学部の頃から知っている知人もいるので宣伝しておきます.
$\varepsilon$-$\delta$論法が必要な議論¶
「ε-δ論法を理解できないと函数の連続性を扱えない」では大学教養レベルの解析学が破綻するけども、じゃあどこからがε- δ論法を理解する必要のある話かというと難しいな。
不等式処理が必要になったらもうε-δが必要という気分があります。そして応用ではたいてい近似を含めた等号しか使わないのでほぼ不要という気分です。 よく言うのですが、むしろε-δは形式的な一つの極限の等式を無限個の不等式で表現する様式なので、不等式で色々な制御が必要にならない限り担ぎ出す理由が本当にありません。
これは確か「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」でも話した記憶があります. 興味があればYouTubeの記録を見てみてください.
フレーリッヒの講演¶
これは私の守備範囲である厳密統計力学・構成的場の量子論分野の数理物理の神々の一人, Jürg Fröhlichがフランス語で講演している動画をYouTubeでたまたま発見したので共有しておきます.
フレーリッヒはスイスの人で, スイスは公用語がドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語だからフランス語も話せるのでしょう. この辺は語学ネタなので興味があれば語学メルマガも見てみてください. そちらは語学をやるというより, 語学からどう数学・物理を勉強するかという視点でいろいろやっています.
キャンペーンは明日で終了¶
去年末, ラストのラストでリリースした例と計算編は明日でキャンペーン終了です.
キャンペーン終了後も販売は続けますが, 値上げするので興味がある方は今のうちにどうぞ. 今後どんどん例や計算を追加しますが, 既に購入されている方には追加分も無料です.
こちらに混ぜた方がいいだろうと思う記述も移行したら1000ページを越えました. これでもまだほしい例やコンテンツが全然載せられていません. 自分自身, コンテンツの充実が待ち遠しいです. 中高生向けコンテンツの充実の面から, 一変数の微分積分や二次正方行列の例もどんどん充実させなければ, と私自身楽しみで, そして楽しみながら作っているコンテンツです. ぜひ一緒にバリバリ計算していきましょう.
通信講座は廃止したので, 各回の宿題と称した問題集も例と計算編に移行しようかと思っています. 本編にある例への参照もつけたいですし, やることが山のようにあります.
今週の問題: 二次正方行列の極分解¶
ニールセン-チャンのExercise 2.50では行列 \begin{align} \begin{pmatrix} 1 & 0 \ 1 & 1 \end{pmatrix} \end{align} の極分解の計算があります. (ウェブ上でうまく表示されないようですが, 二次の正方行列としてがんばって読み取ってください.) これだけシンプルな行列でも極分解の計算は本当に大変です. 実際にこれは例と計算編でも計算していて, A5版で5ページ使っている大変な計算です.
これだと大変なので, \begin{align} \begin{pmatrix} 1 & 0 \ 1 & 0 \end{pmatrix} \end{align} を計算してみてください. こちらの計算は簡単で, ゆったりペースを使っても(TeXによるコンテンツ内の)1ページで計算が終わっています. これもコンテンツで計算しています.
語学 今年はとりあえずスペイン語とアラビア語/相転移プロダクション¶
今回の内容¶
数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.
- 理系のための国語教育
- 今年は新しい言語に取り組みたい
- アインシュタインの原論文: スペイン語タイトル
メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.
- 今回のページ
- メルマガ バックナンバー
感想をください¶
「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります.
メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.
ではまたメールします.
理系のための国語教育¶
2018年のツイートですが知らない方もいると思うのでリツイート URL
Nature公式、論文要旨の書き方。 授業でこれを扱うと国籍問わず大半の大学院生が知らなかったと言うので簡易和訳版を作成。 もちろん、Nature以外の論文にも流用する事が可能。 注目は、[結果]に使える文の少なさ(2~3文。全体の20~25%)。 和訳の修正案、大歓迎です。 英語版: URL, PDF
この辺, 理系のための国語教育として取り組みたい内容です. 科学英語や工業英語みたいなところの一環でやるべきリストに突っ込んでおきました.
今年は新しい言語に取り組みたい¶
ただでさえいろいろやろうとしているのにアレですが, 語学は語学でいろいろ触れたいというか遊びたいと思っています. そして既存のコンテンツだと勉強が続かないのもわかっています.
そこでコンテンツの充実にもなるので, これはもうアインシュタインの原論文を多言語で読もうの会枠で扱うべきだと思って, それでスペイン語とアラビア語をやろうと思っています. こうでないと勉強が続かないのがはっきりしたので. というわけでやっていきましょう. 文法もまずは概要を把握しないといけないので, 東京外語大の言語モジュールを雑に眺めていこうと思っています.
アラビア語は文字から再トライで道は長いのですが, やっていくしかありません.
アインシュタインの原論文: スペイン語タイトル¶
アラビア語は間に合わなかったので, まずはスペイン語だけ簡単に解説をつけます. 会員限定という名の現状非公開ページの記述を追加し, その現状を転載しています.
相対性理論の原論文は一文が異常に長く, 読むのは本当に大変です. いまはドイツ語を多少読めるようになり, 比較でがんばれば他の言語も多少は読めるようになったものの, 全くもって初学時点で挑む文献ではありません. ただ他にいい感じのコンテンツもなく, ついでに相対性理論の勉強もしたい思惑があるので, しばらくこれでがんばります.
記述¶
- Sobre la electrodinámica de cuerpos en movimiento
構造はフランス語とほぼ同じです. 単語もよく似ています. 英語・フランス語・イタリア語と比較しながら進めて大体わかるでしょう.
Sobreはsuperで, 英語で言えばonにあたります. 英訳でもまさにonを使っています. 英・仏・羅・西などの単語間での子音のbとpの入れ替わりはスペイン語に限らずよくある話で, 日本語での「ぶ」と「ぷ」の違いでしかありません.
次のla electrodinámicaは女性名詞electrodinámicaに定冠詞laがついた形です. スペイン語の定冠詞はスペイン語の文法解説ページを見てください. 単数形はフランス語の女性定冠詞と同じで, 複数形には素直にsがつく英語と同じタイプなので覚えやすいでしょう.
次のde cuerposは英語のof bodiesです. 前置詞deはでフランス語と同じで, 英語ではofが対応します. 英語でよく「分離のof」といってdepriveなどがあるように, 分離的な意味も持ちます. 例えばDNAのデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)のdeがこれです.
男性名詞のはcuerposはラテン語由来で, ドイツ語のKörperとも同根です. むしろ英語のbodyが浮いています. (ロシア語はまた別系統ですが詳しくないのでそのうちきちんと調べたい.) 英語でも遺体の意味でcorpusがあり, 言語コーパスのような形でのcorpusがあるので, この意味では英語の感覚から理解できる単語でもあります.
ドイツ語のKörperもスペイン語のcuerpoも数学で「体(群・環・体の体, 英語のfield)」の意味があります. これはこれで英語での「体」がfieldなのか謎で, 調べ切れていません.
最後のen movimientoもフランス語のen mouvementと同じで, 英語でもin motionと書けます. フランス語でもenは英語のinにあたり, スペイン語でも大きく言えば同じです.