2022-01-22

数学・物理 ブロッホ表現と量子力学と代数と幾何/相転移プロダクション

今回のテーマ

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ワイエルシュトラスの加法定理

https://arxiv.org/pdf/math/9806077.pdf たった2ページでびっくりしたんですけどワイエルシュトラスが証明した加法定理に関する論文です このワイエルシュトラスの定理から考察すると加法定理って2n個の関数さえあれば他の点での関数の値が完全に決まる(線形代数的に)みたいなことなんですっごく面白いですよね オイラーの発見した加法定理です https://greggkelly.com/ABEL.html アーベルの加法定理は19世紀で最も讃えられた代数積分定理である

今週の対応内容: 線型代数とプログラミング

今週の問題でも書くように, 今週はブロッホの定理まわりの議論・計算をしていました. ちなみに, 一般次元の議論について関連する話題を調べていたら芋蔓式に問題が出てきて, それではまり倒していてまだ終わっていません.

三次の行列式の文字計算もしていて本当に嫌になりました. 行列の計算は三次元で既に嫌になるので, 具体例を調べるのが本当に大変です. (Juliaでの)SymPyでいい感じに計算してもらえないか確認したりしていて, あまり計算それ自体での進捗がありません. さらにICMUtils, 特にfdg-book関係の作業もしていて, 余計に例と計算編それ自体の進捗が微妙です. 別に無駄なことをしているわけではないものの, 進めたいところが進まないのは嬉しくありません.

SICMUtilsにも文字計算があり, せっかくかなりの時間を割いているので, そちらで処理できるかも検討しないといけません.

今週の問題: 一般のブロッホの定理

今回はこれに関わる問題をいろいろやっていました. 2022-01-22版の例と計算編, 「2.5.5 量子力学と線型代数」に2-3準位系の具体例を含めて書いているので, 購入されている方は参考にしてください.

ブロッホの定理という言い方があるのかよくわかっていませんが, いわゆるブロッホ表示・ブロッホ表現(Broch representation)の話です. 二準位系の状態は二次元球内の点で表せ, 特に純粋状態は二次元球面$S^2 \subset \mathbb{R}^3$上の点として表せます. 「幾何的に表せて嬉しい」らしいですが, その感覚はよくわかりません.

何はともあれ, 私の観測範囲では量子情報系の議論だとブロッホ表現はよく出てきます. 作用素環的な純粋状態は状態空間の端点として定義されるため, 純粋状態が実際に(幾何学的な)端点として現れているのは気分がよいです.

それはそれとして, 勘違いを具体例で正せたのでそれをシェアしておきます. 二準位系では全ての状態(密度行列)をブロッホ表現で表せ, 逆にブロッホ表現は全て密度行列に対応します. しかし三準位以上ではこれが破綻します. これ自体は知識として知ってはいたものの, 一般論としてまとめようと思ったとき, この事実が骨身に沁みていなかったため, ブロッホ表現の非負性を示そうとして数時間はまってしまいました.

「きちんと具体例で確認しよう」と思い, 二準位は既に具体的に調べてあるから次は三準位だと思って調べたら, そんなことは成り立たない例がすぐに出てきました. 例を見れば一発だったのを猛烈に時間を無駄にしたわけですが, 具体例で勘違いを正すのは正攻法なのでそこはよかったです.

一応書いておくと, 三準位系は状態ベクトルの空間次元が3であり, 行列で言えば$n^2 = 9$次元なのでもう計算が嫌になります. 数値計算をやっていればいいわけでもなく, きちんと文字計算で処理しないといけないタイプの話題もあります. 検索しつつ文献を辿っていったら2003年くらいのarXivの論文などに辿り着いたので, いまはそれを読みながら例と計算編に記述を整理しています.

あまり意識していなかったのですが, 量子情報系の有限次元の議論はリー群・リー環の議論が陰に陽に出てきます. スピンの表現論があるのでそれはそうという面もあるにせよ, 構造定数やカシミール元なども出てきます. この間から書いているように, 代数・幾何への展開としてリー群・リー環の記述を増やしている最中なので, 物理と数学でやっていることがちょうど交差しています. 別に私のコンテンツを買わなくても構いませんが, 量子情報の議論, 特に線型代数に関する数学的側面に対する訓練としても, 深く広い数学の世界への探求としても, 具体的な計算練習にしても, 行列に関わる議論は本当に深く広く重要です. 特にリー群・リー環は絶対的に役に立つので, 何らかの形でゴリゴリと具体例を勉強するのを勧めます.

比較的最近, 杉浦・山内の連続群論入門が復刊したとかいうのを見た記憶があります. 私は読みたいと思いつつ未読のままですが, 聞くところによれば具体例を扱っていつつ, 議論自体は一般論に合わせて展開しているそうで, そのままリー群・リー環論に進めるよい本だそうです. 何でもいいですが, 何を勉強したらいいかわからない, 何か新しい勉強のネタを探しているならぜひリー群・リー環に挑んでみてください. リー群はどうしても多様体や位相的な議論もしたくなる一方, リー環は(線型)代数だけで議論を進める部分が多いため, 線型代数からの接続では特に便利です. リー群の話ではありますが, 対称空間のようなリーマン幾何のテーマにも直結しますし, 無限次元ユニタリ表現に行けば関数解析・表現論にも直結します. ジョージアイの本が有名なように素粒子でも出てくるので, もしあなたが素粒子に興味があるなら, そういう枠で眺めてみてもいいでしょう.

何度も同じ事を書いていて見飽きた方もいるかもしれません. しかし大事なことは何度でもの精神で, 何度でも強調しておきます. ここ数年, 私が今一つ理解が深まっていなかった部分を埋めるための取り組みに選んだ程度には重要なのです.

上記の議論は例と計算編の2022-01-22コンパイル分では, 私自身のためにもせっせと計算しているので, 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 アインシュタインの原論文のスペイン語第一文/相転移プロダクション

今回の内容

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今週の進捗

アラビア文字はかなり認識できるようになったものの, 文法はもちろんのこと単語がからっきしです. 単語をある程度頭に入れていないと文法の勉強をするときに延々単語を調べる羽目になり, 単語を勉強しているのか文法を勉強しているのかわけがわからなくなり, 文法に集中できません. あとは活用練習で発音も必要なので, 発音をちょこちょこ確認しつつ, 単語をやろうと思っています.

そんな状態なので, まだアラビア語の話は全くできません. スペイン語は地道に進めているので, スペイン語での特殊相対性理論論文の解析結果を出す形でメルマガに代えます.

スペイン語第一文の学習ログ

コンテンツの非公開メモから取ってきました. 何か変なところなどあればぜひ教えてください. 多言語・他言語のメモがあるところから切り出しているので, その前提の記述があります. 気になる方は勉強会の記録から資料・動画を確認してください.

第一文

Se sabe que cuando la electrodinámica de Maxwell – tal como se suele entender actualmente – se aplica a cuerpos en movimiento, aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.

文構造

英語よりもフランス語の文構造の方が参考になるはずです.

私の理解の範囲では英語ではちょっと考えられない語順で出てきます. 順に確認しましょう.

単語

詳しくは単語・熟語集を参考にしてください.

Se sabe

これはsaberの再帰動詞的用法で, 英語を見ればわかるようにit is knownです. このsaberはホモサピエンスの由来のラテン語sapereが語源です.

- tal como se suele entender actualmente -

queが導く節の中の挿入句で, 英語・フランス語と比較すれば見やすいはずです. ここのtal comoはjust likeのように捉えればよく, actualmenteは英語のactualの意味とはずれがあります. (詳しくは単語ページを見てください.) 意味上のキーse suele entenderはtend to understandとでも訳せばいいでしょう.

cuando la electrodinámica de Maxwell se aplica a cuerpos en movimiento,

冒頭にカンマでもあればともかく, なかなか衝撃的な挿入節です. 英語で言えばit is known that when the electrodysmics ...にあたるのでしょう. 私はそんなに見かけた記憶がありませんが, 私が一般的な英語を知らなすぎるだけで実は英語にもよくある形だったりするのかしれませんが. 何はともあれば英語・フランス語と単語も含めて比較すれば意味・構文は明らかでしょう.

que aparecen asimetrías que no parecen estar en correspondencia con los fenómenos observados.

メインはque aparecen asimetríasで後半のque節は関係代名詞節です. 前半の動詞はaparecerの三人称複数現在形で, asimetríasが三人称の複数形です. 意味からしてもこれが主語とみなすのが素直でしょう. つまりここでは主語が後置されています. 関係詞がついて主語が長いときに後置される現象と思えばよく, 後半の関係詞節がasimetriasを修飾していると予想できます.

後半のque節を見ましょう. 動詞は(no) parecen estarでよいでしょう. 「estar結果構文ではよく動作主句が省略される」ため, この現象が起きていると推測できます. あとは英語の気分で読めます.