2022-03-05

数学・物理 数学を続ける秘訣: 中途半端で止める/相転移プロダクション

今回のテーマ

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数学を続ける秘訣: 中途半端で止める

ちょっとしたコメントがあったので, たまに・簡単にタスク管理・モチベーション管理的な話も書くことにしました. 私が把握している限り学生さんよりも仕事をしている大人の方が読者に多いので主にそちら向きです.

勉強に限りませんが, よい意味でいい加減さを取り入れるのが続ける秘訣です. 今回はいい加減さの一つとして「中途半端にしてもよく, かえってそれがいい場合さえある」ことをお伝えします.

ここでいう中途半端は, 例えば問題を解いていたとして, その問題を解き切れなくても勉強を打ち切ってしまうことです. 具体的にはある日の勉強時間が10分しか取れないなら10分やるだけやって, 解けなくてもその日はそこで打ち切りましょう. 解けないと気になって仕方ありません. そしてこれが大事です. 気になって仕方ないので次の日以降の勉強のモチベーションになります. 「気になるからもっと時間を取ろう」と思えるからです. 仕事終わりで疲れていてついダラダラしてしまうことは私にもよくあります. それでも「こんなダラダラしている時間ももったいない. 早く問題を解き切りたい」と思えるようになります. ダラダラした時間を過ごしてしまい「時間を無駄にしてしまった」と後悔した経験がある人は多いでしょう. それを削る方策でもあるのです.

さらに無駄な時間を削る上で他のご利益もあります. ずっとその問題が気になっているので, ちょっとした空き時間にもその問題を考えるようになります. すき間時間の有効活用にも役立ちます. そして何より数学学習の習慣化には本当に効果的です.

半端なところで止めていいと思えば取り組むときの初動のパワーも少なくて済みます. 勉強をはじめるときに億劫さを感じるなら, ぜひ5分だけやろう, 中途半端でも5分でとにかく止めて終わらそうといった感じで挑んでみてください.

物理と現実の対応を考える

我らが久徳先生とのTwitterトークです.

引用は次の通り.

「現実との対応とか興味ない、有効数字?何それおいしいの?」的な理論物理があるかないかは皆さんへの宿題とします

有効数字とはまた違いますが、物性だとオーダーが上から下まであってまた別の視点が出てくるのでは感があります。

ここでオーダーと言うと?

しばらくまともな物理から離れていて数値含めた具体的な話できなくてアレですが、電気伝導度は上から下まで身近な物質でも20桁くらい違いがあり、二・三桁ずれていてもそこそこ(定性的には)OK的な意味です。

なるほど、しばしば宇宙では一桁二桁は気にしないと(雑に)言われる類の話と同じやつですね。物理だと物性でも宇宙でもどの分野でも「自分が今しないといけないのは依存性の話なのか桁の話なのか数の話なのか」みたいな切り分けの感覚が重要な印象です

良くも悪くももう一定の位置を占めてしまったのでアレですが、ハバードくらいならまだしも、スピン系のような暴力的なモデルがどこまで物理かが割と私にはクリティカルです。依存性でも桁でも数でもなく、定性的な議論と呼んでいいかさえ微妙です。量子情報の視点で見ているわけでもないので。

なるほど、そのへんの感覚は自分でやっていない僕にはないですね。てっきり現実の物質の挙動を大掴みにでも説明していて十分に物理なのだろうと思っていました

スピン系は、難しすぎてそのままではまるで手が出ない多体系特有の現象が、実際に温度という日常的で操作しやすいパラメーターを軸に、相転移というこれまた直観的な現象が数学的に再現できたところに価値があると理解しています。あとは計算練習のモデルや理論構成のモデルになっている点だとか。 色々批判もあるとはいえ一定の有効性を持つとされる平均場近似などの統計力学の手法が物理的・直観的に把握しやすく、計算もしやすいので技術的な習熟に使えるといった面もあるでしょう。あとは場の理論でφ^4との関係があり、発散の困難と臨界現象の処理の類似といったこれまた数学上の関係もあります 物理をつかんでいるというよりも、理論的な模型としての位置、計算処理・技術の実験場としての立ち位置が非常に優れていて、強引な点があるにせよそれらを温度と相転移に関する直観を繋いでさえくれるところに強い意義がある議論だと思っています。 論点はいろいろあって、以前誰かが言っていたのでロシアの古い物理の本(の和訳)を読んだことがあるのですが、かつては周期境界条件が物理として意味があるかが問われていて、それに対して意味があることをきちんと論じなければいけない時代があったようです。続 その本では「イジングで計算するとこうなっている。他の模型でも似た形になると推測できて云々」と書かれていた覚えがあります。スピン系の物理的な意義を疑う人はもはやいないと思いますが、その意義の確立は自明ではなく、統計力学系の物理をやるなら一度きちんと考えるべきテーマと思います。

「以前は問題だったがいまや悩む必要さえなく, ショートカットしてどんどん進んでいい」話はたくさんあるはずで一概に悪いことではないとはいえ, このあたりの話, 数学の本はもちろんのこと, 物理の本でもあまりきちんと書いてくれていない気がします. イジングも原・田崎本を改めてきちんと読みたいですね. 2021年のノーベル物理学賞を取ったパリージの有名な統計的場の理論の本(Statitical Field Theory, 和訳『場の理論―統計論的アプローチ』)もスピン系・イジングの議論があります.

プレプリント: Shirai, Sakumichi, Negative Energetic Elasticity of Lattice Polymer Chain in Solvent

Negative internal energetic contribution to elastic modulus (negative energetic elasticity) has recently been observed in polymer gels. This finding challenges the conventional notion that the elastic moduli of rubberlike materials are determined mainly by entropic elasticity. However, the microscopic origin of negative energetic elasticity has not yet been clarified. Here, we consider the n-step interacting self-avoiding walk on a cubic lattice as a model of a single polymer chain (a subchain of a network in a polymer gel) in a solvent. We show the occurrence of negative energetic elasticity based on an exact enumeration up to n=20 and analytic expressions for arbitrary n in three cases where the chain is highly stretched. Furthermore, we demonstrate that the negative energetic elasticity of this model originates from the attractive polymer-solvent interaction, which locally stiffens the chain and conversely softens the stiffness of the entire chain. This model qualitatively reproduces the temperature dependence of negative energetic elasticity observed in the polymer-gel experiments, indicating that the analysis of a single chain can explain the properties of negative energetic elasticity in polymer gels.

東大の作道さん (@sakumichi) との共同研究に関するプレプリントを出しました! 単純な格子モデルで得られた1本鎖の弾性が高分子ゲルの実験で観測されていた負のエネルギー弾性 (https://doi.org/10.1103/PhysRevX.11.011045) と定性的に同じ温度依存性を示すことを見出しました [Fig. 1参照]。 負のエネルギー弾性を特徴付ける温度について得られた有理式(式6; nは自己回避ウォークのステップ数)はお気に入りの1つです。もう少し複雑な有理式をあと2つ導出していて、3つの解析線がFig. 4に描かれています。ある指数で解析線がすべて重なるのも見どころです。

まだプレプリントを読めていないのですが, 作道さんのゴムの話は講演を聞いたことがあって非常に面白かったです. やはり統計と物性が好きで面白い分野だと気付かせてくれる研究でした. ゆっくり読む時間が取れなくて悲しいですが, メモしておかないと忘れてしまうのでメモがてらシェアしておきます.

多様体の多様性

manifoldはどの辺が多様だったんです(´・ω・`)?

ホイットニーの定理が示されてしまったのと我々が慣れすぎてしまっただけで、manifoldの守備範囲は十分に異常な広さ・多彩さを持つとは思います。あの定義で一般化された図形と認識できるのは凄まじい訓練を受けた人間しかいないでしょう。

中島啓さんの単調体の話などもあって, 「多様体のどこが多様なのか」はよくある突っ込みになりつつあるとは思います. しかし多様体の定義だけを見ても, そもそも何を言っているか理解するだけでも大変ですし, あの定義から一般化された図形を定義しようとしていると理解するのも困難を極めます. 射影空間やグラスマン多様体は「ユークリッド空間の線型部分空間を集めた集合に適当な遠近感(位相または計量)が入り, それ自身図形になる」と言っているわけで, 無茶にもほどがあります.

計量による空間観もそう自明ではありません. リーマン計量だけではなく, 山登りのように登りと下りで変わるべきフィンスラー計量のような計量概念もあります.

いま対応中のリー群・リー環の基礎が一段落したら, 等質空間や対称空間の形でリーマン幾何・微分幾何をやろうとも思っています. いろいろな数学が交錯する面白い世界ですし, ここで遊び倒しておくと一般相対性理論の数学的足腰を鍛える助けにもなるので, 私自身楽しみにしています.

線型代数コンテンツのさらなる拡充が必要: 特異値分解

手元のいくつかの線形代数学の教科書の索引に特異値分解がなくってびびった

Laxは行列不等式の章に特異値分解あった(´・ω・`)

そういうのもきちんと書いてある数学・数理物理系の文献を作らねばならないと思う方の市民です。私のコンテンツももっと線型代数を拡充したいのですがなかなか時間が取れていません。

特異値分解はPDEの数値計算で使う機会がありました. 数学の本ではあまり見かけませんが工学的応用ではかなりよく出てくるようです. 例えば機械学習やら統計系の数値計算でもよく見かけます. 他にもこの間勉強会でQR分解が出てきて関連する分解を調べていたら, これの一般化は岩澤分解だとか. 岩澤分解もいつかどこかできちんとやりたいテーマです. 「役に立つ岩澤分解」とも言えるでしょう. こういうのも計算し倒す上では大事な話で注目しています.

ちなみに上記の勉強会で読んでいたのはGitHub上にあがったipynbです.

ipynbはJuliaで書かれていてJulia入門としてもお勧めです. 私が読んだのは主にJulia版の和訳ipynbですが, 上記ページにPython版へのGitHubへのリンクもあります.

勝手に宣伝協力: はじめての数学ブログ講座

可換環論botやYouTubeの動画によって一部界隈では有名な龍孫江さんによるブログ講座です. 最近はTeXをインストールしなくてもTeXを書ける環境が増えてきました. もう一歩広げて数学コミュニティ作りといった部分にまで踏み込んだサービスも増えてきています.

私自身, 一人ではやる気が起きないテーマに取り組むために人を巻き込んだ勉強会を主催する形で進めていますし, いろいろな人がいろいろなことを試してほしいとも思っているので, 興味がある人はぜひ参加してみてください.

Twitterで反響があったのでもっとがんばらないといけないと思った事案

以下紹介するツリーでのやり取り+コンテンツの案内ページだけで6人からの購入があってびっくりしました. そしてきちんと情報を伝えるべき人に伝えられていないのだと反省もした事案です.

私の物理数学をまとめたPDF、目次や索引含めれば9964ページある。そしてまだ全然書き足りない。 普通の本では150ページくらいの分量の位相空間論を(数理)物理への応用や例も盛り盛りにして700ページ弱になっている。元が通信講座用のコンテンツなので同じ話を何度も繰り返していて膨れている部分もあるが、議論を自分基準で丁寧にして膨れた分もある。通読には向かないまさに辞書。

純粋に読みたいです・・・

いろいろあって有料提供なのですが、例えば解析学基礎編についてはここ{target=blank}でどんな気分でこれを作ったか(作っているか)書いています。最近は例と計算編に力を入れています。幾何ですがYouTubeのこのリストも参考になるかもしれません。 すぐ見ます_φ(・

すいません。質問なんですが先にかうならどっちがオススメですか?

何をしたいかによります。教科書または辞書がほしいなら解析学編のほうがよく、たくさん計算練習したいなら例と計算編の方がよいです。後者は今まさに拡充中で、「もっとこんな計算も紹介してほしい」というのがあれば拡充します。(前者もまだ書いていないことはありちょこちょこ追記してはいます。)

うむむ。 分かりました。計算編にします。 ちなみにプログラムって書いてありましたが、コードも記述されているんですか?言語はpython ですか?

そちらにはまだプログラムは載せていなくて、いくつか手元で計算したのがあるだけで未公開です。Julia(のSymPy)を試したり普通のSymPyにしたり、コードが腐りにくいかどうかまで含めて検討中だからです。Clojureのsicmutilsやmaximaにするかなども検討中で、 sicmutilsについてはここここ程度には調査していて、Pythonについては別枠でコンテンツも作っています。とにかくGitHubに置いてあるという意味ではmathcodesでRustやJuliaも少しあります。 プログラミングに関して最近特に力を入れているのは競プロ(中高生向けコンテンツとして場合の数や素数判定などの数学とも深く絡むため)で、ここでは私の趣味でF#(とHaskell)で修業中です。これもPythonによる素数判定のミニ講座を今作っていて、近々無料で公開する予定です。 主に偏微分方程式の解のアニメーションに関してここにリストを作っています。作るだけ作ってとにかく公開したまま未整理状態のものも多いです。整理するいい機会でもあるので、何か追加質問あればお気軽にどうぞ。

冒頭のツイートがなぜか(私にしては)大量のファボを受けていて何故かフォローも増えました. ついでに現代数学探険隊 解析学編を実際に購入された方が何人かいらっしゃって驚きました. カバー範囲からすればごくごく真っ当な値段で, 専門性が高くなると特に洋書で本が万単位するような領域にも踏み込んでいるため, その意味では安い部分もあるとはいえ, 総合的にはどう控え目に言っても安くないコンテンツです. それでも案内ページの内容を見て信じて買ってくれた方が何人もいらっしゃるわけで身が引き締まります.

あと単にちょろっとバズったツイートにリンクとやりとりをつけただけでこうなったので, きちんと情報を伝えられていないのだろうとも思って反省しています. 必要ない人に売りつけても意味がないどころか害悪ですが, 必要な人に必要なモノを届けられていないのはここ数年の私の怠慢の面も大きく反省しています. またちょっとTwitter広告もやってみようかと思っています. Energeiaでの勉強会ももっとメンバーを増やしたいとも思っています.

人が集まるとコントロールも大変ですが, そこで生まれるよいモノもいろいろあります.

あとTwitterで解析系数理物理コミュニティを作ってみたので, それに関する話ももう少しきちんとしたいですね. 基本はここで書いてそちらのコミュニティにも流す, またはそちらで書いたのをこちらにも流す形にしようと思っています.

数学コンテンツ作りのノウハウ共有

それほど本格的な内容でもありませんが, 書いておくことには意味があると思ったので共有します.

本一冊の内容じゃなくてここまでの量を全部一つのノートにまとめてる人あんまり見たことなかったから(複雑な相互リンクが発生しすぎて)事実上無理なのかと思ってたけどできるもんなのか でもこの量をNotionでやったらいずれ重くなって詰みそう…

集合・位相などの基本的なところでは特に定理や命題の参照もなるべく細かく入れて何を理由にどの事実が成り立つか詳しく書くようにしていて、相互参照が5000以上あります。(証明を詳しくしたいならもっと必要。)全体のコンパイルに20-30分かかります。

20-30分…すごいですね。 個人的には、詳細の「折りたたみ」のようなことができると良いと思っていて、WYSIWYGで編集もできるので、Notionを使いたいなと思っています(肝心の数学の勉強のほうは全然足りていないのですが…)

サイト潰してしまったようですが、少なくとも7年前に証明や具体例の折りたたみがあるといいよね、と言ってサンプルを作った人がいました。記事へのURL いまも現役の若手の数学者の人です。あとはDLCよろしく具体例やら何やらを追加購入できるパックとかも欲しくない?だとか。 HTML(またはepub)系も考えたのですが、やはり面倒なのと、数学の本道に関わる部分でTeXの表現力を超えられない部分がある・TeXの資源を完全には使い回せない部分があるのでひとまずTeXメインにしています。 表現力を超えられないというのはalg-dさんがよく書くような凄まじい可換図式で、複雑な式は式だけコンパイルして画像にするとかやりようはありますし、もちろんcanvasなどHTML専用のものを考える手法もありはします。ただHTML側で綺麗にするとTeXと二重管理が必要でコード自動生成もつらいので。 epubならともかく、HTML(でのウェブ公開)だと通信ができるところでしか見られない・MathJaxのレンダリング待ちが鬱陶しい問題もあります。数学への集中力が途切れてしまうので。レンダリングを減らすためにページを分けると検索や一覧性に問題が出ます。 あとは色々な数学系プログラム(数値計算・数式処理)との関係もあります。その辺を色々考えたうえでいまは自分用ノートを作り続ける方を優先させています。課題は色々あるので是非自分なりの工夫でいい方法を開発してほしいです。 いまの私はとにかく単独ファイルに突っ込んでPDF検索とセットで辞書を作る方に倒してコンテンツづくりをしています。

実体験に基づくお話で大変参考になります。以前から興味のある話題で、実はそちらのサンプルも知っていました。 やはり可換図式は鬼門ですよね…今調べてみたら、Notionで使われているKaTeXでは斜め矢印が使えなさそうです。外部プログラムとの連携も盲点でした。 また色々考えてみます。

何度も書いているようにプログラムはすぐ腐る上, そこのメンテナンスに力を割きたくもないのでどうするか今も答えが出ていません. いまはそもそも腐りにくいデータ構造とアルゴリズムに向けて私自身が勉強している最中です.

強調語と不思議な専門用語

ちょっと本筋からずれた話題だったのですが気になったのでコメントした記録です. 元ツイートを見つけられないのですが, 大元は大学で徹底的に叩き込まれたから「非常に」という文章を書くと「どのくらい?何と比較して?」のような脳内セルフ突っ込みを入れるようになってしまったという話です.

強調語、非常にめちゃくちゃすごくたくさんいっぱい使ってるけど、この点は数学科と他の理系学科は違いそう(そもそも「すごく」とか「非常に」とかを学術的なコンテキストで見た事ない) 「この定理は非常に大きな影響をもたらした」みたいな文脈で見たことあるから普通に偽だ

豊富な直線束 私自身は非専門の領域であまり語感がないのですが「非常に豊富」(very ample)という専門用語があります。豊富・非常に豊富ともに明確な定義があります。

なるほど、存じ上げませんでした。。。! どうだろう、これだと「非常に豊富」で一つの記号だと思うので、「非常に」だけで意味を成してるのかは謎ですが〜

どちらかと言うと「非常に(豊富)」という語に専門的な意味を付与する事例(学術の文脈で正式に使う、おそらく珍しい事例)として紹介しました。今思い出したのですが、(ルベーグ)積分論で「ほとんど至るところ」(almost everywhere)というのもあります。

これが面白いのは「いたるところ」が割と曖昧さのある表現である一方、「ほとんどいたるところ」の方がかえって常に厳密な意味を与えられて使われることです。

たしかに一般生活でほとんどいたるところ、聞いたことないかもです。。。!

競プロ: Haskellコードが見ていて楽しく勉強になる

データ構造とアルゴリズムの何度目かの再勉強は競プロのおかげで続いています. やはり読み書きしていて勉強になり, かつ私の感性にあっていて楽しいのはHaskellです. 少なくともAtCoder・AOJでも取り上げられていてそこでの人口も多く, サンプルプログラムがたくさんある圧倒的な利点があります. まだHaskellでのREPL開発に慣れていないためメインはF#にしていますが, F#勢は本当に少なく, 私しか提出していないこともあって, 結局Haskellを見にいってそれをF#に翻訳することがよくあります. やはり勉強するときに人口が多く情報が多いのは重要です. 数学系ならとりあえずPythonをやっておこうと書いている理由でもあります.

Common Lispの面白そうな解説

引用RTを受けてツイートを眺めにいったら上記のような記事を書いている人だったので, メモついでにシェアしておきます. Eazy-gnuplotはともかくNumclというCommon LispのNumpyクローンがあり, これはいいかもと思ったので. ふつう何年も更新されていないライブラリというともう死んでいるのでは? と思ってしまいますが, Common Lispだとそのくらい割とふつうでしかもちゃんと動くそうなのでこれはかなり気になっています.

あとはmaximaがどこまで素直にライブラリとして動いてくれるかですね. ClojureはSciclojも活発なようで, sicmutilsもありますし, Javaの資産も使える上, clj-maximaもあるのでこちらの方がいいのかとか色々思います. プログラミングだけならいいのですが, メンテを少なくしようと思うと一気に面倒になって本当に嫌です.

勝手に宣伝協力: 連載講座「短時間フーリエ変換入門」

連載講座「短時間フーリエ変換入門」の最終回が無料オンライン公開されました! jstage, 矢田部浩平, 第六回:時間周波数領域のスパース表現, 日本音響学会誌

物理やいくつかの工学ではフーリエ変換・フーリエ級数は嫌になるほど使い倒します. そして純粋な数学としても凄まじく広い守備範囲があります. ただ数学の人には必ずしも応用の裾野が知られていない気もするのでちょこちょこ布教するシリーズでもあります. 軽く眺めてみて次の文が面白かったです.

ビッグデータとは対極にある,二度と取得できないスモールデータの解析に注力している研究も多く,今後の進展からも目が離せないと思っている。

もちろんタイトルにある「スパース」も数値計算上で重要な要素です.

今週の問題

引き続き例と計算編はプログラミングコンテンツに集中していて, 純粋な数学部分の進捗はあまりありません. 先週と大きく変わりばえはしないものの, 特殊ユニタリ群の弧状連結性の証明もつけました.

これ, 「幾何のための線型代数」という幾何編に突っ込んでいて, 例と計算編に入っていないことに気付きました. 例と計算編を購入された方にはあとで別途お送りします. 興味があればぜひ議論を追ってみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 ベラルーシのベラと白の多言語/相転移プロダクション

今回の内容

数物系のメルマガが式を含むことも多いため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

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グリムの法則

ハーグってロシア語/ウクライナ語だと「ガーガ」なんですね。そいえばロシアのドラマを見てたら、ゲロー、ゲローっていってて、どうやら英雄の意味らしいとわかったし、病院のことをゴスピタルっいってた。

既にご存知であろうとも思うのですが、hとkは両方息を吐きだすタイプの音で、kが濁ってgになるので大体同じ音(言語をまたぐときによく変わる)のようです。この辺、物理と人体の構造と言語が関わって理工系も面白がれるネタのはずですが、そういう話をしてくれる人がいなくていつも厳しい気分です。 現代英語を英語史の視点から考える 第8回 なぜ「グリムの法則」が英語史上重要なのか 言語の世界にも物理に支配された法則があるとかいえばそれだけでも語学・言語学へのバリアーが減る人もいると思うので、高知工科大でもそういう講演ができる人を呼んだり、カリキュラム工夫したりしてコースを開発してそれを公開してもらえると非常にうれしいです。

私自身, 目下この視点からコンテンツ作りを考えていて, 日々の進捗報告・知見メモ・シェアにメルマガを利用しています. もう放送大学にでも入って言語学やった方がいいかもしれないとも思っています. 費用は恐ろしく安いので時間をどう捻出かが問題でどうするか悩んでいるところです.

ベラルーシのベラとフランス語のblancと白

いま話題のベラルーシに関連してちょっとやりとりしたので.

ベラルーシの「ベラ」の部分(ラテン文字にすると Belarus の bela らしい)は、フランス語で「白」の「blanc」と語源とか関係あるのかな

参考リンク: ベラルーシ共和国, 東京都立図書館 以前も少し調べたことがあるのですが、素直に白で良さそうです。Wikipedia: ベラルーシ 由来は割と面倒そうな気がします。続 これを見るとフランス語はいいとしてラテン語・ギリシャ語がalbus系(いわゆるアルプスが多分ここが語源なような気がする)の言葉で、色などの基本的な語彙は割と各言語のネイティブとしてあまり変わらないような印象があり、スラブ語のベラが何由来なのか気になっています。

フランス語とラテン語とギリシャ語で「白」ってなんていうんですか?読みかたと綴りをおしえてください 「白」というより「白い」なら、★フランス語:Blanc(ブラン)★ラテン語:Albus(アルブス)★現代ギリシャ語:άσπρος(アスプロス)です。

参考: бела, wiktionary 我らがwiktionary先生に聞いてみたところ、スラブ祖語からの印欧祖語が直接の由来のようです。 フラ語のblancはこれを見る限り印欧祖語のレベルだと別単語です。

似ているが元をきちんと辿ると違うらしい語もあれば, 紆余曲折を経て同じ単語になってしまったが全然違う由来を持つ語もあります. 例えば魚の群れを表すschoolは学校とは関係ありません.

publicの多彩な意味

ツイートを発掘できないのですがTwitterで見かけました. 確かいま問題のウクライナ関係の情報をきちんと見る, といった文脈だったと思います.

of ordinary people 1. only before noun] connected with ordinary people in society in general

for everyone 2. [only before noun] provided, especially by the government, for the use of people in general

of government 3. [only before noun] connected with the government and the services it provides

seen/heard by people 4. known to people in general

5.open to people in general; intended to be seen or heard by people in general

place 6. where there are a lot of people who can see and hear you

勉強会で翻訳をやっている人にも「基本的な単語こそ入念に調べます」みたいに何度か言われたことを思い出します. 英語と言わずとも数学でも基本的な用語の使い方が雑だと一気に信用できなくなりますし, 何でも同じかと反省とともに.

今週のロシア語

以前買った本で文法の復習をやっていたため今週は特に記録なしです. 独・仏・伊・西・中と違って一般的な単語があまりに英語と違う上, 文法的にも細かい違いが多いためどんな要素があったか雑に再復習をしています. 雑に総復習しつつ, 実際の文にあたって実践しつつで進める予定です.

数学・物理ではもはやほぼ味わえない初学者の苦しみを思い出すいい機会でもあり, のたうち回って来ます.