2022-08-13

数学・物理 通信講座「量子力学のための線型代数とその計算」募集開始/相転移プロダクション

今回のテーマ

式を含むこともよくあるため, 記事本体はアーカイブサイトへのリンク先にまとめています.

メルマガのバックナンバーは次のページにまとめてあります. 興味があればどうぞ.

感想をください

「読んだよ」だけでもいいのでぜひ感想をください. メルマガを書く励みになります. 最近感想を頂く機会が増えてきたので素直に嬉しいです.

メルマガへの返信でも構いませんし, 次のアンケートフォームへの回答でも構いません.

ではまたメールします.

近況報告

先日からはじめている物理や数学のギャラリーの開発で苦戦しています. 特に現代数学探険隊から各定義・定理を切り出して眺める定理鑑賞アプリが課題です. KaTeXをいい感じにレンダリングさせるReactコンポーネントの開発で詰まっていて, 昨日一つ山場を越えたもののもう一つ最終解決すべき問題が残っています. これもさっさと片付けて語学用のアプリもほしい言語に関するデータ整備して, とやることが山積みです. せっかくの機会なのでテストも書きたいです. 早くふつうの物理・数学・語学学習モードに戻りたいです.

それはそうと, 物理学ギャラリーは66式(?)まで進みました. これは地道に増やします.

手持ちの本からテンションが上がる式をゴリゴリ入れています. 「まずはこれを載せろ」という要望があればぜひ挙げてください. TeXつきで送ってくれるとなお嬉しいです.

ここ一月くらい開発ばかりであまり物理や数学ができておらず, 語学はなおのことできていません. ただ, 開発に関連して一人で解決できない問題にぶちあたりまくっているため, 英語で各所に質問を投げているのですが, プログラミングに関わる英語は割とサラサラ書けるようになっていて, 今年に入ってから10分であっても毎日ちょこちょこがんばっている分が多少は効いてきているか? という感じもします.

あとは現代数学探険隊の再整理もしたいですね. 例と計算練習編をずっと追加し続けています. 以前通信講座として展開していた現代数学探険隊の解析学編, この中にも例や計算がいくつかあり, 全体構成を考えればこれを改めて整理した方がよさそうです. ただとにかく時間がありません. 一日10万時間くらいほしいです.

通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08 開講案内

ようやく案内が完成しました. 募集期間は二週間で8/29(月)から開講予定です. 詳しい内容は上記ページを参照してください. 何か質問があればメールやアンケートでお願いします.

書くべき内容は上記ページに書いてあるのでメルマガではこのくらいで.

Looman-Menchoffの定理

Looman-Menchoffの定理、「デリケートな定理であるので、初学者は手を出さない方がよいだろう」とはあるが、野村隆昭先生の「複素関数論講義」(共立出版)には紹介されていた。 リンク先は文献 [34](アクセス制限があるかも)。 https://jstor.org/stable/2321164?seq=1#metadata_info_tab_contents

読もう読もうと思ってずっと読んでいない論文です. ずっとメモの奥底に沈んでいたのでまずはシェア.

ヴィラーニの自伝と不等式の数学

気晴らしにヴィラーニの自伝を読んだ。この本は評価が分かれていると聞いていたが然もありなん。いわゆる不等式の数学が構築される現場の様子が露わに描かれている。私はこのタイプの数学は全く専門ではないけれど昔ある友人にそういう数学の存在と楽しむ様を教えてもらったおかげで親しみを感じる。

こう書かれるとヴィラーニの自伝にも俄然興味が出てきました. ちなみにヴィラーニは最適輸送などが専門で, ボルツマン方程式とランダウ減衰に関する研究でフィールズ賞を取った魔人です. 物理まわりの力学系をやっている知人が「自分にとってはスーパーヒーローだ」と言っていました.

直観と愚直な計算と

「現代物理」のレポートの採点を終えましたが、選択課題1(相対論的光行差の問題)の選択者のうち1/4ぐらい間違ってました...高校生のように(?)作図で済ませようとした人は概ね間違いで、何も考えず愚直にローレンツ変換した人はあってました。直観に頼らず計算したほうがよいということかなと思います。

直感に頼らず愚直に計算した方が間違いは少ない. 一方,直感に従って何もないところに一歩を踏み出すときに新しい理論は生まれる.間違いを恐れてはならない. 間違いを起こす曲がった角に神か悪魔がひっそりと佇んでいる.我々はだいたいそれには気がつかない.

最近ずっと推している計算の話です. これ以外にもう一つ, 直観が届かない世界に辿り着くためにこそ計算する世界観があることも追加しておきましょう. このうちの一つが上記ヴィラーニの不等式の数学に関わる話です.

以前書いた次の記事を引用します.

はるか彼方からの光芒を信じ, 膨大な計算を遂行し尽したときに初めて地平が見えてくるようなハードな解析は解析学の真骨頂であろう. ハード・アナライザーたちの数ヶ月からときには数年に及び, 岩に穴を穿つような計算を続行するその強靱な精神力と体力には畏敬の念を覚える. 不幸にしてその途上で力尽き果てた人もいた. 畏敬とともに深い哀悼の念を表する.

しかし, 例えば, モーメントの評価や相関関数の評価などのようなわずかな手掛りを頼りに必ず道が拓けるとの信念のもと, 恐ろしいほどのハードな計算を遂行し切って, 数学に新たな地平を切り拓くハードな解析はやはり解析学の真骨頂である.

私の数学・数理物理の原風景でもあります.

21世紀の量子力学学習に関連する諸々

通信講座をはじめるのでそれに合わせて私自身地道に再学習を進めています.

図式で学ぶ量子論 番外編 ~2準位系から多準位系への演繹による拡張は難しい~|Kenji Nakahira @KenjiNakahira #note https://note.com/kenji_nakahira/n/nbdaa609a3273 数学系学習者としては、どちらかといえば論理的に導出できるかよりも、何を仮定として議論しているかを明示してほしい。

すいません。完全に明示することは紙面の都合上(&一般読者にとって複雑なため)難しいのですが,強いて述べると一般確率論および St_2≅Den_2 が成り立つと仮定して,St_N≅Den_N を導けるかという問題を考えています。 一般確率論が成り立つことは,note記事の文献[5]のIII章で述べていることが成り立つとおきかえて頂いて構いません。無条件でSt_N≅Den_N を導くことは恐らく不可能ですので,(十分に知恵のあるほぼ全ての人が)自然だと思えるような前提を追加してもよいものとします。 この最後の条件は自然という言葉を用いたりして厳密性に欠けるのですが,ここの厳密性を高めることは難しいのでご容赦ください(汗)。

こちらこそすみません。記事の内容自体の話ではなく、物理の教科書に対する一般的なスタイルの話です。私は学部は物理だったのですが、かつて(今も?)熱力学や統計力学の教科書が大混乱していた時期の地獄スタイルは物理学科の学生にとってさえよくないはずなので。

いえ,コメントくださりありがとうございます。お気持ちよくわかります。何を仮定しているかや各用語をどう定義しているかなどが曖昧になっていると,混乱してしまいますよね…。

発端になった議論と直接関係のある部分だと思いますが、一般論を議論している中で理想気体など具体例での話が始まって終わったと思ったら、その具体例での知見がいきなり一般論に敷衍して適用され始めたりします。そういう習慣を改めない限りここでいう論理的な議論に耐えられる人間は育たないのでは?

はい。少なくともどこまでが論理的(=演繹的)でどこからがそうではないかを明確に区別することは重要だと思います。

一番気になるのはこれ.

ポイントはそこではなく,(私がお伝えしたいことの一つをまとめると)具体的にどのような前提を用いているかが不明瞭であることが問題であると主張してます。 用いている前提を具体的にお知らせ頂けないでしょうか?

ごく単純な話として前提をできる限り明らかにした方が自分にとってもチェックしやすくていいと思っているのですが, なかなかそうもいかないようで. それこそ研究中の話として暗黙の前提があることさえ気付けておらず, それが決定的なポイントだった事案がたくさんあるのが量子力学なので.

中平さんは秋に本を出すそうですしそれも楽しみです.

JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』

JAMSTECが無料公開している『地球シミュレータ開発史』、もともと新書として販売するという企画で書かれたらしいというくらいなので、とても内容の充実した文章です(リンク先PDF注意)

https://www.jamstec.go.jp/es/jp/publication/pdf/Development_ES.pdf

まだ読めていません. とりあえずシェア.

医療系オープンデータが取れるPhysioNet

PhysioNet をご存知でしょうか。今更感がありますが紹介いたします。 これは医療系オープンデータで、簡単な手続きだけでかなり大規模なデータも自由に使えるようになります。 無料でここまでデータが入手できるなんて, と感動ものです。

特にMIMICという集中治療系のデータが有名(というか論文が沢山出ている)ようです。その辺りがご専門の方にはお馴染みなのでしょうかね。 触ってみた感じでは、

1)GoogleのBigQueryに直結しているのでSQL書けると直ぐにデータの加工が出来そう。 2)直接ダウンロードも可能。

データが大きいので直接ダウンロードしてもデータは開けない。 なので開くには多少のコツが必要になる(この辺が一般には使いにくい理由なのかも)。 DBI packageとdbplyr使えば普通にRで操作できました。 ファイルによってはコマンドプロンプトからwgetを使って落とさなくてはならないっぽいです。 私のPCにはwgetがインストールされていなかったので、以下のページの容量でインストールを最初にしました。 その後は普通にデータダウンロードできました。 え、宝の山がこんなに簡単に!?って感じです😊 ちなみに、データダウンロードにはCITIトレーニングが必須(無料)です。 倫理に関する文章を読んでクイズに沢山答えるというもの。 結構大変でした(英語が得意な人なら簡単に終了すると思います)。 この修了証明書を送ると約2~3週間でデータダウンロード可能になります。忘れた頃に来る感じでした。

最近, 何かのテーマで統計学・機械学習で遊べそう, と思ったのですが何か忘れてしまいました. 語学ネタだったような気もします.

テクニカルライティング

cybozuの新入社員向け研修資料「テクニカルライティングの基本」(無料公開)が超勉強になった...! 本来は技術的な内容をわかりやすく伝えるための方法論だけど、リモートが普及しテキストコミュケーションが重要になった今、非技術者でも一度は目を通すべき内容かと思います。 https://speakerdeck.com/naohiro_nakata/technicalwriting

英語ベースですが私も学生時代にテクニカルライティングを勉強しました. 早稲田にテクニカルライティングの専門家がいて, TEPテストというテクニカルライティングの資格試験もありました. いわゆる教養系の講義で開講されていて, 学期終了直前に資格試験が開催されるため「受講者はせっかくだから受けてみては?」という担当教員のコメントのもと, 受講してみて二級は取りました.

今検索してみたら, コロナ禍に入ったからか2019年から試験の情報が更新されていません. 技術英語・工業英語・テクニカルイングリッシュで検索すると書籍が引っかかるので興味がある方は調べてみてはどうでしょうか. 近況にも書いたように最近は止まってしまっていますが, 語学系, 特に英語のコンテンツ作成ではテクニカルライティングなども視野に入っています.

今週の問題

今週は量子力学講座開講に向けてのカリキュラムの最終検討に入っていました. TODOもいくつかあったためそれを埋めていたところ, クラウス表現やシュタインスプリング表現がTODOのままでした. 今回の範囲ではありませんがいい機会なので調べ直したら無限次元版の議論を見つけたため, そのノートを作っているところです.

無限次元含めた議論, 系統的に議論されているは何かあるかと改めて探しています. 以前買った量子測定の数理物理本には載っていそうな気もしますが, もう内容を全然覚えていなくて愕然としています.

現状このコーナーは線型代数の宣伝のようになっています. ぜひ積極的に日々の学習に取り入れてみてください.

例と計算編は私自身のためにも日々せっせと計算して更新しています. 購入された方はぜひ参考にしてください.

例と計算編は次のリンク先から購入できるので, 興味がある方はどうぞ.

語学 今回はお休み/相転移プロダクション