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ここ最近急に気温が下がって体調がいまひとつでやる気も出ないため, 無理せずのんびり関数論の勉強をしていました. 久しぶりに少しアドバンストな勉強でもしようかと, 複素代数幾何への応用を意図した多変数関数論の入門の本を読んでいたところ, やはり代数の基礎が足りていないのを痛感しました. 最終的に関数論はもっときちんとやろうと思っているため, 何となく代数のノート作りを並行して進めていました. 学生時代に一度勉強していたとはいえ, 大して使っていない以前にやり込みさえ甘かった分野はなおのこと身についていない, 身につかないのを痛感させられました.
ノート整理をしていたら, 細かい精査の必要性を認識しつつ, 幾何のノートを早く充実させて作り切りたい気分が高まってきています. 少なくとも現状では研究にまで届くような内容への興味だとやはり解析学が中心で, 幾何で興味がある分野と内容は基本的な部分がわかれば当面は十分です. 一般論としては位相幾何(トポロジー), モース理論, 指数定理が揃えたいです. (多変数)関数論は私の中で解析学判定もありますし, ホモロジー代数も必要な範囲は位相幾何とモース理論を勉強すれば, ある程度はノートができるでしょう. あとは多変数関数論と代数解析を進めれば層のコホモロジーの基本的なノートが充実するはず.
復習・整理していると, やはり控え目に言ってもリリースできるレベルではありません. 定着のためにのんびり復習する時間も作って, リリースに向けた準備をはじめたいです. 書きっぱなしなので最低限の整備でさえ一年半はかかるでしょうけれども. そういえば多様体の基本的な内容もノートが作り切らずに止まっています.
一般論が整備できれば, 具体例と計算フェーズがもっと楽しくなります. 微分幾何もよくある2-3次元での曲線論, 3次元空間内の曲面論と一般的なリーマン幾何の対応が見えるノートを作りました. ずっと精神的な重しになっていた内容をクリアしたので, 具体的な計算で遊び倒すモチベーションも高まっています.
あと数ヶ月やっていたAOJも飽きてきた上に, 進めていたAOJの基礎教材はHaskellと相性がよくなさそうで, F#に慣れた頭でOCamlもつらいため, AtCoderに戻ってきました. 基礎教材と問題という違いもあるのでしょうが, 何となくHaskellとの相性もよく, Haskellerのコードが簡潔・明快で読んでF#に翻訳するだけでもよい勉強になっていて, とても楽しいです.
AtCoderで優先度つきキューを使うとよい問題が出てきて, HaskellではIntMap
, F#だと集合を使った解法がありました. .NET6で優先度つきキューが入ったようですが, .NET core 3のAtCoderでは使えず, しかもちょっと微妙な仕様のようで閉口しています. AtCoderに戻った途端にデータ構造学習の基本的な課題に当たったため, この数ヶ月の苦闘も無駄ではないものの, (F#による)関数型データ構造学習の道のりはまだまだ長いです.
C/C++やRustでやればよいのではという話もあり, Rustは興味があるものの, 「F#を書いて遊びたい」がモチベーションの一つになりつつあるため, なかなかうまくいきません.
自然言語で「英語は好きではないがフランス語はとても肌に合う」と言った話を聞いてそんなものかと思っていましたが, いままさに「他の言語ではなくF#を書きたい, F#で遊びたい」になっていてこういう感覚かという思いです.
近況報告に書いた話の続きです. いま代数のノートを作っていて改めて実感しています. なまじある程度知っているだけにノート作りが面倒で仕方ありません. かといってさぼると, あとで本を探すときにふだんその分野の本を読まないため奥に追いやられて手繰り寄せるのも面倒なのも実感しました. 思い立った今やるしかないと歯を食いしばって進めています. 先々の面白い話を知っているのもさっさと終わらせたい嫌な気分に拍車をかけます.
対照的に, 物理の勉強の場合だと少なくとも一度はまじめに・徹底的に勉強した上で, 改めて基礎の繊細な部分を徹底に考え直す側面があり, 逆に新たな発見というか楽しみが生まれてくるのが面白いです. いままさに作っている熱力学ノートでそれを実感しています. 学生時代に勉強した, 最低限知っている内容であっても, 明らかに理解が深まっていて理解できる内容もそこにいたるスピードも上がっています. 学生時代に物理学科だったご利益を実感しています.
先々の面白い勉強を進めたい人は多いと思いますが, いつかどこかで基礎に向き合うことになるのはよく覚えておいてください. ここでいう基礎はハードな計算を遂行しきる計算力も含んでいます.
面倒になったので転記をさぼりましたが第九回まであります. 第一回しか見られていないものの, ヤング図形の解説をはじめてまともに聞いたのですが, これがなかなかよかったのでそれだけでも聞く価値があると見ています.
第二不完全性定理が、多くの自然なコーディングに依存していることは不完全性定理の研究者を除きあまり知られていないけど、証明はともかくその事実だけは割と知られていて良いと思っている。このサーベイがかなりわかりやすく説明されていて、intensionalityと言っている。
最近計算機科学にも興味が出てきて, その中である程度集合論の議論の要素を見かけます. 集合論ノートも作りたいと思いつつ幾星霜です.
図解する整数論 - 丸善出版 https://buff.ly/3yAHsgO この本,ヤバいです,面白すぎる.最初の数え上げからこの手があるのかの連続で,平方剰余の相互法則が力学系で証明されていたり,ペル方程式の解を2次形式のトポグラフという図形的な手法で構成されています.素晴らしすぎる.
私も広い意味では$C^$-力学系・$W^$-力学系として力学系の基本的な部分を勉強・研究していましたし, 研究会で作用素環関係の力学系の話題にも触れていたため, 数論と力学系のようなテーマなら数論にも興味が持てそうな感覚があります. エルゴード理論・確率論と数論という話もあります. 数学としてのエルゴード理論は射程範囲が長いので, これもいつか解析学からのノート作りに勤しみたいです.
『学んで解いて身につける 大学数学 入門教室』 「本書は、このようなことから生じる高校までの数学と大学以降の数学の間のギャップを埋めるための教科書である。」
一定数興味がある人がいそうなのでシェアしておきます. 藤岡さんが最近書いている「手を動かして学ぶ」系は評判がよいようです. 内容は確認しきれていませんが, ここ一年私が主張し続けている計算の重要性もまさに手を動かして学ぶ系のコンセプトで, 様子を見る限り大きな方向性は同じようです. その大方針も合わせてお勧めです.
そういえばこの前1時間位「機械学習による材料物性シミュレーションの高速化」って内容でオンラインセミナーしてきたのですが、その動画が公開されました。 |【オンラインセミナー】第3回 アドバンス・シミュレーション・セミナー https://youtu.be/KMLDPsktQ-w @YouTubeより
最近統計勉強会ではJuliaの統計パッケージを読むのに飽きてきたためsympyのコードを読んでいます. 高速化を意識したコードをしばらく読んでいたからか, sympyのコードで簡単で本当に微々たる量ではあっても, 明らかに効率化できるコードを見て「書き換えたい」と思うようになる程度には高速化への意識も芽生えてきました. まだ見られていないのですが, 気になってはいるのでメモついでにシェア.
前回は熱力学の話をしました.
今回は統計力学です. はじめに断わっておくと熱力学と違って統計力学を数学的にきちんと議論しようとするのは勧めません. 単純に血反吐を吐くほど難しいからです.
まず数学方面の興味がある人向けに書いてしまいましょう. 例えば量子統計で言えば平衡状態の存在そのものがいまも論文になるレベルで大変です. もっと言えばBECがあるため自由場の議論さえ数学的にきちんと議論するのは大変です. 新井朝雄先生の「量子統計力学の数理」も自由場のBECが一つの山です. そんな中, 物理的な意義もおさえながら統計力学の基礎を勉強するのにお勧めなのは, 原・田崎の「相転移・臨界現象の数理」です. イジング模型には可解格子模型のようなテーマもありますがこれはもっと地味な議論です. しかし逆に物理学科の物理にとっても意義のある形・内容なので, 数学的に完全に厳密に物理にアプローチしたいならお勧めというかぎりぎり限界の内容です.
次に物理学科水準で統計力学の基本的な内容を勉強するときのポイントです. 結論から言えば, これも田崎さんの統計力学を読むのがいいだろうと思います.
統計力学には凄まじく多彩な展開があります. 先日沙川さんの非平衡統計力学の本も紹介したように, もはや非平衡統計も完全に市民権を得ています. 統計力学自体, たいていの物理学科では学部三年程度でようやく必修として処理できる内容です. そして四年では完全に研究室配属で専門的な話題の準備にうつるでしょうから, 基礎を修めたあとはもうゴリゴリの専門に向けたテーマの本に挑むはずです. 何を勉強するにしても大事な基礎となると本当にオーソドックスな内容を丁寧に勉強するのが一番で, 田崎さんの本ではシュレディンガー方程式系の議論に基礎を置いた量子力学の話も基本的なところから解説してくれていて, 偏微分方程式を駆使する(20世紀型の?)量子力学への導入にも使えて便利です.
熱力学の本も同じで, 田崎さんの本はとにかく丁寧なのがよい点です. 比較的最近の本なので物理的な基礎づけとエルゴード理論の(無)関係などにも注意があります. 強いて言えば二巻あって長いと言えないこともありませんが, 丁寧さの裏返しと思った方がよいでしょう.
応用に関する部分でも書いたように, この本だけだとさらなる魅力的な現象へのアプローチや具体例の計算が足りません. 熱力学の本でも引用があるように, 埋める一つのアプローチは久保亮五編の演習書です. なくしたようでいま手元にないので記憶で書くと, まず物理学科向けなのでかなり難しいです. もちろん最新のトピックもありません. それでも統計力学の幅の広さは実感できる特異な本です.
私は物性の数理物理に進んでしまったため, 物理としては深いものの極端に狭い世界しか把握できていません. ただそこまで広く深く勉強したい人はもはや研究志望の大学院生くらいで, もう私の手に負えるレベルの人ではないでしょう. まずは熱力学・統計力学ともに素直に田崎さんの本を読んでもらうのがいいと思っています. その先はもうほぼ研究水準です.
冷静に考えると大した話ではないものの, 本腰を入れて勉強し直したご利益的な形でいい気分なのでメモがてら共有します.
何というか, 完全な熱力学関数としてのエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由がようやく腑に落ちました. 全くもって高尚な話ではなく, 断熱系の定義のもと, 断熱系の状態間遷移を制御する量としてのエントロピーという既に知ってはいた定義を整理しつつ認識し直して, 改めて熱力学の理論の構造が見えてきて, 当たり前のことを当たり前と言えるようになりました. 田崎さんの本の二章の定義は本当に大事なので, 田崎本を読む人はぜひ注目して読んでください.
念のため簡単に理由を書いておきます. 温度は外部の環境に関するパラメーターとして熱力学に導入されます. 一方断熱系はいわば孤立系の議論で環境の情報は持ちません. 外部環境と比較した上でしか出て来ない温度の情報を使って断熱系を特徴づけるのは原理的に不可能です. これが断熱系の完全な熱力学関数がエントロピーが温度をパラメーターに含まない理由です. わかる人にしかわからない説明かもしれません. 勉強会つき通信講座の形でノートを公開する予定なので, 興味がある人は楽しみにしていてください.
さらっと流しただけの代数や幾何と違い, 一度自分なりに徹底的に勉強した上での物理の復習は頭が整理されてとてもいい気持ちです.
なんと,慶應の上枝美典先生による『神学大全』の羅和対訳がGitHub上に公開されているだと・・・. http://ueeda.sakura.ne.jp/translation/
人文系でもGitHubの活用があるようで, インフラとしてのGitHubがどんどん広がりを見せているようです.
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