2023-03-04

数学・物理 思った以上に熱力学がつらい/相転移プロダクション

今回のテーマ

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近況報告

ここ最近アラビア語学習に関連してChatGPTを使いはじめました.

比較的最近はじめた知人とゆるくやっているWeb系のオンライン勉強会があり, その知人はイラスト・映像系の仕事もしているため, Midjourneyなど最近のAI関係の話もゆるく共有していました. 数学・物理に関わる教材でイラストや動画を作るのにも転用できないかとずっと興味はあったものの, なかなか具体的な遊び方が見つからず悶々としていたのですが, ふとこれまた別途やっている(教えてもらっている)アラビア語勉強会で, アラビア語学習に使えないかと思い立ち, ちょこちょこ使っています. 簡単にその状況を紹介します.

はじめは翻訳ついでに母音つきアラビア文字を書くのに便利だと思ったものの, 実際には間違いが多いのでこの方向は捨てました. 他の人はともかく私はEmacsで母音まで自力で打てるため, 余計な確認・調整が不要な点で自分でやった方がよほど早く正確にできる結論にいたりました.

他に便利な点があります. 特に勉強会で教えてもらったあとに「これはどう取ればよかったか」とわからなくなったとき, 簡単な文の文法的解説をしてもらうときに役に立ちました. オンライン勉強会なので録画すればよかったものの忘れていたのでその補助です.

文字からして勉強が必要なロシア語・アラビア語・ヒンディー語, そして格変化が激しい言語を勉強するとよくわかるのですが, 単語の認識と文法的な役割の把握がとにかく大変です. そして単語はよくても熟語の把握が大変です. 単語さえ覚束ない状況で, どんな熟語があってどの組み合わせで熟語になるか判定するのも大変です. 一度勉強会で聞いたあと, 大雑把であっても本に解説がある文を復習する目的にはかなり役立ちます.

微妙に使いにくい(不正確)なことはあるものの, 大雑把に発音を調べたり, 動詞や格変化の活用を調べるのにも多少は役に立ちます. ちなみに「たまに(少し)間違えている」という勉強への利用が難しい状況もあるため, あまりお勧めはできない用法です.

他にはためしに一つ数学の証明を聞いてみたらまるで駄目でした. 全く期待していなかったので単に共有です. 全然関係ないですが, 割と前から初等幾何の定理の発見と自動証明というテーマがあります. グレブナー基底の有名な本にも書かれているので興味がある人は読んでみるといいでしょう.

最近新版の和訳が出たはずです.

あと最後に言葉遊びとして数学川柳も作らせたりしてみました.

他にも勉強会で共有した内容として, ブレストに付き合ってもらうとか, 一日の最後にAIに褒めてもらっていい気分で一日を終えるといった応用をしている人もいるようです. 何かを教えてもらったり検索するばかりが応用ではありません. 少なくとも簡単なプログラムについては自分で考えるよりChatGPTに聞いた方が早い場合もあれば, 最近の知見を踏まえてプログラムを提案してくる場合もあってよい再学習にも使えるという話もあります. 私も自分なりの付き合い方を考えるために今後もちょくちょく遊んでみる予定です. 一番はコンテンツの挿絵・動画作りに応用できるといいのですが.

熱力学のリハビリ

タイトルの話です. 思った以上につらいです. いくつか本を漁りつつ具体例を引っ張って計算しているのですが, 具体的な関数に対する多変数としての凸性の証明で一週間以上悶絶していました. 微分可能な関数はヘッシアンの半正定値性や半負定値性を示せばいいものの, 計算ミスしたりどう示せばいいかすぐにわからなかったりと大苦戦しました. 多変数の凸関数に対してここまで理解が浅かったかと反省しています. 学生時代は一般的な状況下でのいわゆる微分形式的な微分の計算などで苦戦していた記憶があり, 学生のときに読んだ田崎さんの教科書も一般論中心に読んでいたため, 熱力学に対する具体的な例の計算がここまで弱いかと自分で驚きました.

凸関数に対する肌感覚もなく, 具体的な命題の定式化や反例構成にも苦労しました. 証明を読めばわかるものの慣れていないと簡単な命題さえ自力で証明するのは一苦労です. ついでにヘッシアンの議論などを現代数学探険隊にきちんと収録していなかったのにも気付いたため, いい機会と思ってそこからノートをまとめています. 改めて物理にも触れながら多変数の微分と極値問題の計算練習ができる教材として, 熱力学はなかなかよさそうという気分も出てきています.

ちなみに多様体上でのヘッシアンは座標系への非依存性を課す必要があるため, 臨界点でしか定義されません. ユークリッド空間上での議論ではそうした点への言及なく定義されます. 多様体上での議論に持ち上げるときには注意するべき要素でもあり, ヘッシアンの定義と議論だけでも実はそれなりの背景があります.

ところで清水本の第一版を読んでいて, 定理4.9などでエネルギー$U[S,X_1,\cdots,X_n]$が$X_i$達に対しても下に凸などの議論がありますが, あれは正しいですか? 具体的な$(U,V,N)$変数なら他の本などとも合わせてそうなるのはいいとして, 清水本の一般的な設定から一般の示量変数に対して4.6節の内容がどこまで成り立つのかさっぱりわかりません. $U$が$S(U,X)$の$U$に対する逆関数であるだけでは変分原理も自明ではないのでは? 凸関数に対する肌感覚がないため, 自力で証明がつけるのが困難で苦しんでいます.

日々の自分用メモ

An Algebra of Observables for de Sitter Space

Wittenらによる論文。de Sitter空間上でのオブザーバブルのなすフォンノイマン環が、通常場の量子論の文脈で現れるIII型と違い、重力の影響でII型になるらしい。そのうち読みたい。 An Algebra of Observables for de Sitter Space

ChatGPTと認知症

chatGPTって凄いのよ。と母に説明したら、「私の友達の認知症の人に似ている」というびっくりする感想が帰ってきた。母曰く、その人はなくした記憶を補完するために勝手にエピソードを記憶して、辻褄を合わせるのだという。 母は健康のためにプールに通っているのですが、その友達は先生の指示をよく忘れて間違える。例えば腕を〇〇回回してください。みたいな指示でも間違えるのだけれど、聞いてみると、忘れてしまったという自覚は一切なく「先生が途中で指示を変えた」などの存在しない記憶を言うのだという。 そう考えると、これも脳の働きなんだろうかという気になってきました。例えば私達の視覚は盲点とか、結構抜けがあるんですが、脳の方で処理して辻褄を合わせるために普段はおかしいと気がつけない。で、もしかしたらですが、視覚がそうであるなら、記憶や認知も似たようなもので、 抜けがあった場合、そこを無理やり補完して何事もなかったかのように処理を続ける機能がついているのではないかと。認知症になって、記憶自体がボロボロ抜け落ちるようになっても、そのつじつま合わせの機能は動き続けているので、勝手に記憶を捏造する。ということが起こると。 chatGPTにお題を2つ入れると、その点と点を時にはアクロバティックにつないでくれるんですが、この動きってもかして、人間も同じようなことをやっていて、だからこそ、人間っぽく見えるのかもしれません。 人間は記憶を思い出す時、細部を勝手に捏造する(ので思い出すたびに微妙に変わっていく)という話を聞いたことが有るので、もともとそんなものであるのかもしれません。