数学的な転置の記法を取るときに $t$ を適切な位置に置きたい

嫌な出力とほしい出力例

嫌な出力とほしい出力例

結論

このツイートで教えて頂いた. 次のようなコマンドを定義すればいい.

\newcommand{\setSymbolUpLeft}[2]{{\vphantom{#1}}^{#2}{#1}}

これで次のように書くと (私の) 意図通りになる.

\setSymbolUpLeft{\circ}{\sum_{ k = 0 }^{ N - 1 } ...}
\setSymbolUpLeft{\circ}{\rbk{\exp \sqbk{\int_0^1 f(x) \dx}}}

応用

元素記号で左上に書きたいときにも使えるだろう.

疑問

それこそ化学で元素記号を書くとき左下につけたい場合が出てくる. 元素記号で下に伸ばす必要があるのかわからないが, 下に伸ばしたい場合はどうすればいいのだろうか?

イメージ画像

はじめに貼った通り.

これは上記コマンド定義のもとで次のコードで作った.

\begin{align}
\text{嫌な出力: }&
{}^\circ \rbk{\exp \sqbk{\int_0^1 f(x) \dx}}. \\
\text{ほしい出力: }&
\setSymbolUpLeft{\circ}{\rbk{\exp \sqbk{\int_0^1 f(x) \dx}}}.
\end{align}

経緯

いろいろあって中村徹『超準解析と物理学』を読んでいた. これで標準化写像としてまさに数学スタイルの転置のように左上に$\circ$をつけていた. これをどう書けばふと気になった. これまで転置の記号で困っていたこともあってツイートしてみたら教えてもらった. ありがたい.

余談: 転置の記号

私は基本的に齋藤正彦『線型代数入門』で育った. この本が左上つきの$t$で転置を表していたのでそれを使っている. 物理では右上に$T$を使うと思う. このページでは次のような記号群が紹介されている.

\begin{align}
A^T \\
A^\mathrm{T} \\
A^\mathsf{T} \\
A^\intercal \\
A^\top
\end{align}

行列の転置を書きたくなるたいていの数学の文脈でかぶらない記号は$\top$だろう. ただ明らかに他の用途がある記号を流用するのも気持ち悪い. 私の観測範囲ではサンセリフ体は使う機会は圏の記号くらいで比較的少なく, 私の用途からすると, 転置を右上つきにするならサンセリフ体にするだろうか.

私は現代数学探険隊といった数学コンテンツを作っている. ここでまさに上のような転置の記号がいい感じに表示されない問題に出会い, 一時期転置の記号を書き換えることも検討していた. ただ, 大量にある上, 微妙な調整が必要になるから面倒だと思っていたところで, 今回いい感じに表示されている事例を見つけたので虚空に向かって質問したら即解決したという話.