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2015

2015-01-03 青色 LED Nobel 物理学賞関係メモ

超いまさらだがブログ記事用ストックにあったので 自分用メモとしても記録しておきたい.

物理, Nobel 物理学賞, 青色 LED

2015-01-04 aki_room さんによる 12-01 東大での田崎さん集中講義で出てきた文献の紹介ツイートまとめ

12-01 東大での田崎さんの集中講義のあと, ピカチュウパイセンが次のようなことを言って 関連文献を紹介していたので, メモとして私も残していきたい.

以下, 文献紹介ツイート.

2015-01-05 西森さんと大関さんの量子アニーリングの解説があるようなので

アニーリングは名前しか知らないのでとりあえず軽く眺めた. これについて詳しくはメルマガにでもまとめよう. 物理ももう少し勉強したい.

2015-01-06 論文・教科書紹介: Zeng, Chen, Wen, Quantum Information Meets Quantum Matter -- From Quantum Entanglement to Topological Phase in Many-Body Systems

ドラフトバージョンとのことだがとりあえずメモ. 量子情報もちゃんとやってみたいと思いつつ, 全然勉強できていなくて悲しい.

2015-01-24 arXivの謎論文紹介: Quantum voting and violation of Arrow's Impossibility Theorem

  • 物理, 量子力学, 政治

意味がわからないが読んでみたい. これがquant-phに上がっているというのも魔界っぽくてすごい.

2015-01-30 田崎さんが繰り込みに関して連続ツイートしていたので備忘録としてまとめた

  • 物理, 繰り込み, 場の量子論, 統計力学, 普遍性

田崎さんが繰り込みに関して連続ツイートしていたので備忘録としてまとめる.

田崎さんのPDF, 学生の頃にダウンロードして一度は読んだが, 内容を全く覚えていなくてつらい.

2015-02-02 今や流体力学を Navier-Stokes まで計算機で速習できるオンラインコースウェアがあるという

  • 数学, 物理, 流体力学, プログラミング, 数値計算, 数値実験, python

流体に限らず目で見えるタイプの現象については, 方程式の妥当性だとかそういうのをある程度数値実験で検証するとか そういうのがあるとすごい楽しそう.

すぐに何かできるわけではないが備忘録として記録しておきたい.

追記

上のリンクが死んでいたので, おそらく本質的に同じであろうGithubのリポジトリのリンクを張っておく.

2015-02-12 真空中の光の群速度は一定ではないという研究が出たらしいので

  • 物理, 相対論, 群速度

あとで論文も読んでみたいが無料で読めるようになっているだろうか. こういうとき本当に市井の身がつらい.

追記: プレプリントのリンクを教えてもらった.

2015-02-24 バークレーでの村山斉さんの量子力学の講義録が充実しているそうなので

何かあったら参考にしたい. あと次のツイートもまとめておこう.

取り組みとして参考にしたい.

2015-02-28 Witten京都賞受賞時の座談会の記録が公開されたそうなので

  • 数学, 物理, 数理物理, Witten, 京都賞, 大栗博司, インタビュー

PDFはあとで読もう.

2015-03-29 警察官とのやり取りの記録が面白かったので

  • 推理, 物理学者

何か面白かったので記録. こういうのを見ると普遍市民Im_Weltkriege師はすごいなと改めて思う.

2015-04-21 清水さんが thermal pure quantum formulation での統計力学の本を出すらしいので

thermal pure quantum formulationの統計力学は気になる. 読みたい.

2015-04-29 原-田崎の『相転移と臨界現象の数理』が2015/6にようやく発売になるらしいので

ようやく出るのか, という感じだ. Togetterでも査読の宣伝をしたが, 市民なので, 実際に東大で東大の助教さんやポスドク, 院生の方ともちょっとしたセミナー形式で査読をしたりして, そうした形でも査読に貢献した.

査読に名前(本名)を載せてくれるらしいので, 学術にも貢献するニコマスPとして活動をさらに広げ, 積極的に数学や物理をプロデュースしていきたい.

2015-05-10 記事紹介: 液体・液体相転移

いくつか引用しよう.

単一成分の液体が複数の液体相を有し、その液体相間を一次転移する現象を液体・液体転移と言う。これまで、炭素や水で見られるように単一成分からなる物質であっても、複数の結晶相を持つ結晶多形を示すことはよく知られていたが、無秩序相である気体や液体には1つの相しか存在しないと考えられてきた。

今回の研究では、時分割小角・広角X線散乱法を用いて、転移の過渡的過程における構造変化を一分子スケールからメゾスコピックスケールに渡る範囲で追跡した。その結果、液体・液体転移の進行に伴って、数個程度の分子で構成されるクラスターの数密度が急激に増加し、その変化が理論的に予測された秩序変数の時間発展方程式で記述できることが分かった。

また、このクラスターの協同的形成により駆動される秩序変数の空間揺らぎも観察され、田中肇教授らの研究グループが以前に行った位相差顕微鏡観察の結果とよく一致することが明らかになった。

これらの結果から、このクラスターが液体・液体転移を支配する隠れた構造ユニット(局所安定構造と命名)であり、分子性液体における液体・液体転移の存在が明確な形で示された。

相転移の物理, もっときちんとやらないといけないのだがさぼりまくっている.

コメント

この先生のセミナーは4月か5月ごろに聞きましたが、内容自体はそんなに難しくなかったですよ。今までは、動径分布関数だけを使って解析していたので、液体の構造が十分見えなかったのだけれども、それに、たしかに水素結合の角度分布という情報を加えることで、より細かい区別ができて、上の相の違いがわかるようになって、さらにその相転移に構造変化のステップも見られたということでした。要旨だけをのべればこんな内容でしたね。

相転移の物理はどうしても物理を中心に学ぶと混沌してきて終わりが見えないんですよね。かといって数学的に完備しているかというとそこもいまいちよくわからない。

2015-05-24 Togetter紹介: 変分法でオイラー・ラグランジュ方程式を出すときに端点の条件は必要か?

このTogetterに関連した中村さんのブログポストはこれ. いま時間が取れないが, とりあえず記録だけして後でじっくり読みたい.

2015-05-27 メモ: 名大谷村省吾さんのPDF『ハミルトン力学の幾何学的定式化と幾何学的量子化・変形量子化』

PDFのタイトルは『ハミルトン力学の幾何学的定式化と幾何学的量子化・変形量子化』だった. 正準量子化はともかく, 幾何的量子化・変形量子化は名前しか知らないので適当な時に眺めたい. メモを残しておこう.

2015-06-29 ツイート紹介, メモ: 日本物理学会誌「現代物理のキーワード」が無料で公開されているそうなので

詳しく中身を見ていないがとりあえずメモ.

2015-07-17 ノーベル物理学賞受賞者の南部陽一郎さんが亡くなったそうなので南部さん情報をまとめてみた

【速報 ノーベル物理学賞受賞の南部陽一郎さん死去】 物質を構成する「素粒子」の理論的な研究に取り組み、7年前の平成20年、ノーベル物理学賞を受賞したアメリカ・シカゴ大学名誉教授の南部陽一郎さんが今月5日、急性心筋梗塞のため亡くなりました。94歳でした。

— NHK科学文化部 (@nhk_kabun) 2015, 7月 17

さすがに衝撃を受けた. 自分用の備忘録も込めて南部さんの業績や仕事を簡単にまとめておこう.

世間的にはノーベル賞を取ったことが一躍有名になった人だろう. 私にとっては相転移関係, 自発的対称性の破れがやはり印象深い.

ノーベル賞受賞時, 日本人が 3 人受賞という話になったが, アメリカに帰化しているので厳密には「日本人」ではない. 1960 年代に量子色力学と自発的対称性の破れの分野において先駆的な研究をしていたり, 弦理論 (string theory) の創始者の 1 人でもある. 現在の素粒子物理学の基礎に猛烈に貢献していていろいろな領域に大きく貢献していて凄まじい.

もちろん自発的対称性の破れに関係して小林・益川とともに2008年にノーベル物理学賞を受賞している.

1945年, 終戦後に東京帝大で朝永グループに参加している. 朝永は Klein-Nishina で有名な仁科芳雄の下にいて, 仁科芳雄はボーアを中心とするコペンハーゲン学派にいた.

1950年, 朝永振一郎の推薦で早川幸男, 山口嘉夫, 西島和彦, 中野董夫とともに大阪市立大学理工学部に理論物理学のグループを立ち上げた. 早川幸男というとTwitterにもいる早川尚男さんのお父上だ. 西島和彦というと相対論的量子力学の本が勝手に印象深い: 読んでいないのだが. 大阪市立大ではベーテ=サルピーター(=南部)方程式の導出, K中間子の対発生の研究などの成果を挙げている. ベーテ=サルピーター方程式というと, 雑誌の『数理科学』か何かで英略のBSE(Bethe–Salpeter equation)が牛のBSEのときに「このBSEはもちろんいま話題の牛のBSEではない」という注があったというどうでもいいことを良く覚えている. あまり歴史的経緯などを知らなかったのだが, Wikipediaによると次のような経緯のようだ.

The equation was actually first published in 1950 at the end of a paper by Yoichiro Nambu, but without derivation.

南部さんやばい.

1952年, 再び朝永の推薦を受けて木下東一郎とともにプリンストン高等研究所に赴任する. 木下東一郎というと相対論的量子電気力学の摂動計算というイメージがあるが, 他にどんなことをしているのだろう. 1954年にゴールドバーガーの誘いを受けてシカゴ大学の核物理研究所に着任したそうだが, 同研究所には小柴昌俊らもいたとのこと. 羨ましい.

シカゴ大ではグリーン関数の表示法を研究したそうだが, 表示法の研究というのは何をしたのだろう.

もちろん(当時)どんな意味・意義があったのかも知りたいし, いま全く知らないのだが.

そして1970年にアメリカ合衆国に帰化.

1960年代にはクォークが持つ自由度としてのカラーチャージの導入, 自発的対称性の破れなど素粒子の強い相互作用において先駆的な研究をしている. 自発的対称性の破れに関しては素粒子模型での研究がやはり難しくて, 何か調べやすいモデルを探していたらIsing, Heisenbergなどのスピン系が調べやすく直観も効きやすいため強磁性の研究の隆盛が起きたと聞いている. 私はこの強磁性相転移の流れを組んで数理物理している.

1970年にハドロンの性質を記述する模型として弦理論(ひも理論)を提案. 弦理論はハドロンの理論としては問題点があった. 一方でゲージ理論としての量子色力学が確立していった時期でもあり, 多くの研究者は弦理論から離れていった. 弦理論はジョン・シュワルツ達が重力を含む統一理論として研究が続けられて, 今の超弦理論の流れに繋がっている.

この辺は大栗さんの『大栗先生の超弦理論入門』にも書いてあった気がする. あとで読み直そう.

他にもまた最近話題になったヒッグス機構も南部さんのアイデアが始まりとか, クォークに連なる「西島-ゲルマンの公式」も南部さんが西島さんに与えたヒントが基礎とか何とかいう話だし, もうだいたい意味がわからない. 「素粒子理論の10年後の姿を見たいなら南部の論文を読め」とか言われていたそうだが, 改めて凄まじさを感じる.

いろいろ見ていたら面白そうな話があった. 次のURLから引用する.

そこで、一般の人にも南部さんの「すごさ」がわかるのは、インタビューに答えて、何気なくもらした言葉かも知れません。南部はアメリカ在住五〇年ですか ら、当然英語は完壁なので、「何語で考えるのですか」という質問に対し、「だいたい数式で考えます」と答えています。また、「私は計算は、だいたい頭の申 でやります」とも答えています。計算といっても勘定書の計算ではなく、理論物理の計算です。ギリシャ文字の数式を移項したり微分したりの計算ですが、紙何 枚にわたる数式が、頭の中に完全に正確に見えていなければ出来ない計算です。紙に書いて計算するより、その方がはるかに速いし、先が見えるからでしょう。 将棋の名人も同じでしょうが、常人のとても真似できない精神集中の結果と思います。 精神集中というと、沈思黙考、自己沈潜の人を想像しますが、仕事から見える南部の人柄は違います。大物理学者を、自己の思考にだけ集中して一挙に真理に 達する湯川秀樹タイプと、最高の武器を手に入れ、つねに最先端での計算を絶やさない朝永振一郎タイプに分けると、南部は基本的には朝永タイプです。しか し、自分の思考を確信し、大胆なことを考える点は、湯川さんの影響でしょう。

あと次のページもあった. 全文引用したい勢いで面白かったのでぜひ読んでほしい.

私も研究したいし, こんな研究を見せてくれる友達もたくさんほしい. 数学も物理もただただ楽しい.

追記

大栗さんによる南部さんの記事が出ている. あと特別栄誉教授になっていた阪大からもニュースが出ている.

2015-07-31 記事紹介: 雷雲の中で反物質が見つかったとかいうニュース

何ですと, という感じで 観測から6年後にようやく「反物質(アンチマター)」が雷雲の中で発見 というニュースが.

いくつか引用したい.

そんな反物質が、なんと雷雲の中で検知されたことが明らかになりました。

ニューハンプシャー大学で大気物理学者として働くジョセフ・ドワイヤー博士が、雷雲の中で予期せず反物質を検知していたことを明かしています。

よく知らないのだが大気物理の人がどれだけ反物質関係の物理に強いのか, その辺からまず気になる.

そして懐疑的なコメント.

そして観測から6年後の2015年になってようやく反物質が存在していたかもしれないことが明らかになったわけですが、CERNの粒子物理学者であるジャスパー・カークビー博士は、ドワイヤー博士の検知したデータには「確かに信号がある」としながらも、「ドワイヤー博士の解釈を裏付けるための説得力が足りていない」とコメントしています。より具体的に言うと、ドワイヤー博士の研究チームが推測した陽電子雲のサイズ推測があいまいすぎる、とのことです。

面白いのは面白いのでどんどんやってほしい.

2015-08-07 イベント宣伝協力: 2015-12-06 市民講座「物理と宇宙」12月6日@京大の案内

どうでもいいことだが, 佐々さんはいわゆる「ら抜き」言葉をよく使うなと前から思っている.

東京だったらぜひ行きたかったので無念.

2015-08-10 論文メモ: Hal Tasaki, 2015, Typicality of thermal equilibrium and thermalization in isolated macroscopic quantum systems

読みたい. 読んだらメルマガにアウトプットとして流そう.

2015-09-11 超高温超伝導と1960年代末にアシュクロフトとギンツブルクの議論

高温超伝導の理論, どのくらい確立しているのだろう. それがとても気になる. 低温であっても超伝導の勉強をまともにやっていないのでそれをきちんとやりたい.

やりたいことがたくさんある.

2015-09-12 大栗博司さん筋の情報: 役に立たない研究の効能

大栗博司さんが【役に立たない研究の効能】と題して文章を書いているので. いくつか印象的な部分を引用したい.

これは70年も昔の記事ですから、もっと最近の引用をしましょう。カリフォルニア工科大学の学長であるジャン=ルー・シャモーは、今年春に次のようなスピーチをしています。

「科学の研究が何をもたらすかを予め予測することはできないが、真のイノベーションは人々が自由な心と集中力を持って夢を見ることのできる環境から生まれることは確かである」

「一見役に立たないような知識の追求や好奇心を応援することは、わが国の利益になることであり、守り育てていかなければいけない」

数学や理論物理学などの研究を目的とする高等研究所の初代所長のフレクスナーが役に立たない研究の弁護をするのは当然と言えるかも知れませんが、土木工学を専攻とするシャモー学長がこれを奨励するのには説得力があります。しかも、これが米国の利益になるというのです。役に立たない研究の重要性を理解してもらう素地は十分にあるのだと思います。

いま東大にいる儀我先生の言葉を思い出した. Allen-Cahn方程式だかCahn–Hilliard方程式だか忘れたが, このCahnの方が非常に有名な工学者で,

Cahnが数学的に厳密な偏微分方程式の解析がとても大事だと言っている. 自分達数学者が言っていても説得力はないだろうが, 工学畑の人でもこういう人はいるし, しかも著名な研究者がこう言ってくれている. 私達もその期待に答える義務があるだろう.

みたいなことを言っていた.

私が所属するカリフォルニア工科大学は私立大学なので、財団や篤志家に基礎研究の意義を説明する機会がよくあります。その際に、

「このような研究が精神的な豊かさをもたらすことはわかるが、それが人々の生活をどのように改善することになるのかも知りたい」

ということをよく聞かれます。後者のような理由のほうが、幅広い支援を得やすいという親切なアドバイスなのだと思います。このようなときには、「興味の赴くままに研究しているのだ」と突き放すのではなく、質問の意図を真摯に受け止めて、基礎科学の普遍的価値について丁寧に説明するようにしています。

その辺の愚鈍な凡夫が言っているならともかく, 大栗さんレベルでこう言っている. 私も非常に反省した.

私はプロでもないしやりたいようにやるが, それでもこの辺, 意識はしたい.

2015-09-08 超弦理論が特許に繋がった話: Dブレーンが量子細線のジャンクションを通じて米国での特許へ

さすがにこれは驚く. 量子細線とかもちゃんとやってみたい.

量子細線というとちょっと違うが, 無限に長い 1 次元系の両端に違う温度の熱浴をつけて非平衡定常状態を実現させるとかそういう話を田崎先生がやっていて, 数理科学にそういう記事を書いていらっしゃった気がする.

遠い記憶になりつつあるのが悲しい.

2015-09-17 大栗さんのブログメモ: ストーニーブルック大学, サイモンズ物理学幾何学センターのワークショップでの講演動画

該当記事へのリンクはこれ. 講演の動画は次のリンクから見られる.

講演内容については次の通り.

講演を2つ依頼されたので、ひとつは、「エンタングルメント・エントロピーの不等式」と、「ホログラフィー原理で対応する重力理論のエネルギー条件」の関係について、昨年の12月に書いた論文の話を、もうひとつは、先月中山優さんと書いた重力理論の局所作用素に対応する共形場の理論の作用素を構成するという論文の話をしました。

大栗さん, やっていること手広い感ある.

2015-09-18 田崎さんの『熱力学: 現代的な視点』の本でCarnotの定理の証明の改良がなされたとのことなので

あとでしっかり読み込もう.

2015-10-11 2015年Nobel物理学賞梶田さんに対するNEWS小山さんの質問に対する私の感想と他の人の反応紹介

ニュースの小山さんがNobel物理学賞の梶田さんにした質問というのが話題になっている. 最後に私の感想をまとめるが, まずは他の人の反応をいくつか紹介したい. 例えば次の記事とか.

いろいろな反応があると思う. いくつか引用したい. まずはニュースから.

7日放送の番組「news every.」(日本テレビ系)で、NEWS・小山慶一郎の質問にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章教授が答えに詰まる場面があった。

この日の番組では、梶田教授が東京大学から中継で生出演し、スタジオからの質問に答えていった。

梶田教授は、子どものころ好きだったという鉄腕アトムの「お茶の水博士」について質問されたが、「申し訳ないんですけど、わたし、覚えてないんですよね」と飄々と答えるなど、リラックスした様子で質問に答えいた。

そんな中、小山が「今後ご自身の研究をどのように活かしていかれたいと思われていますか?」と質問した。

ところがこの質問には梶田教授が、目を大きく開いてきょとんとした表情に変わった。

梶田教授は質問の内容がわからないようで困惑しながら「え? どういう意味ですか?」と聞き返した。小山が再度質問を繰り返しても、教授は「活かしていくというと…ちょっと、申し訳ない。意味がわからないんですけども」と、恐縮した様子で答えていた。

小山は慌て始め、「どのように、こう、役立てていくということになるんでしょうかね?」と質問を言い換え、藤井貴彦アナウンサーが「基礎研究ですと難しいと思うのですが…」とフォローする。すると梶田教授は「役立たない…」と言い始め、スタジオの面々は「いやいやいや」の大合唱となった。

梶田教授はつづけて「…ぐらいに思っていたほうがよろしいんじゃないでしょうか」と和やかな表情で述べ、次の質問を受け付けていた。

小山さんへの否定的な意見として次のような記事がある.

明治大学という立派な大学を“模範卒業生”として修了しているわけですから、いくら物理学とは縁遠い文学部出身とはいえ、基礎物理学の分野での発見が直ちに工学的分野への応用にはつながらないことくらい、理解できると思うんですけど…

もし知らなかったとしても、「こういう質問をしたらどういう答えが返ってくるのか」といった想定問答をきちんと準備しておけば、こんな恥ずかしい事態にならなかったのでは?

梶田教授だってなんだか微妙な気分になったことでしょうし、お茶の間の皆さんから「やっぱジャニーズキャスターは無知だな…」って思われるのが、なんとも悔しいというか…

櫻井くんならこんなアホなことにはならなかったでしょうし、もっとちゃんと真面目に仕事して下さい!

梶田さんというか科学コミュニティへの否定的な意見はこれ.

「研究が何の役に立つのか」ってのは一般大衆からすればFAQなわけで、梶田先生も事前に回答を用意しておくべきだった。てか、事業仕分けで予算削減された教訓は活かされていないのか。 - iGCN のコメント / はてなブックマーク

一部には質問をした小山さんを責めるコメントも見られたけど、ニュースショー番組の司会者として、一般視聴者が知りたがっていることを質問するのは至極当然のことと思う。

先端科学技術の研究はそれ自体が一般大衆には分かりにくい未知の領域であり、さらにそれが基礎科学の研究テーマともなればわれわれ一般大衆は内容について想像のしようもない。

そうなると最もナイーブな質問として「それって何の役に立つの?」というのは、誰しもが訊ねたくなってしまうFAQ(Frequently Asked Question)と言えるのではないか。

NHKではなく民法の、一般視聴者向けのニュースショーに出演するのであれば、それは想定質問の一つとして事前に答えを用意しておくべきだったと思うのだ。

本当にFAQなのか, 何故FAQなのか, FAQになってしまったのかという経緯がまず気になっている. そもそも【役に立つ】の定義からしてかなり曖昧だ.

ちなみにこの記事, 蓮舫さんの「二位じゃダメなんでしょうか」を典型的な悪意ある誤解で解釈している. 全てきちんと見たわけではないが, スパコンの仕分けにはきちんと音声を聞いて経緯を追ったことがある. 少なくともスパコンの仕分けに対しての上の発言は, きちんと文脈を追うと

  • 2 位じゃダメなんでしょうか?
  • そんなことはないですよね?
  • その辺の理由はきちんと準備していますよね?
  • それを聞かせてもらえればスパコンの予算削減は食い止められますよ!

という救いの手だった.

それはともかく引用を続ける.

一流の科学者は研究だけに専念していればいいと言う意見もあるかもしれない。それはごもっともな意見だけど、ならば周りの広報担当者などが適切なアドバイスをしておくべきだったと思うのだ。

東京大学宇宙線研究所, そもそも広報担当者が存在するのだろうか. そんな人を雇う資金の余裕があるのだろうか. それがない状況ではただの難癖だろう.

科学コミュニケーションについては、日本科学未来館と言う施設がお台場にあり*1、そこには多数の科学コミュニケーターが勤務されている。

彼らの地道な活動が日本国民の科学知識の底上げに繋がっている。ここで科学に興味を持ったこども達の中から、未来のノーベル賞学者が生まれるかもしれない。

いつも思うが他人任せ過ぎるだろう. 別に自然科学に限らず, 各家庭なり何なりで 各人ができる範囲でいろいろやるしかないとずっと思っている. これは学生時代に江沢先生の『理科が危ない』を読んでからずっと思っていることだ.

ここまで長かったが私の感想をまとめておく.

モーズリーの話については改めて後でまとめて調べてメルマガにしよう.

あと上のコメントに対して次のような反応もあった.

やはり最後は人とお金の話になる. マネタイズは真剣に取り組みたい.

2015-10-27 文献紹介: 中西㐮『余次元は物理として意味があるだろうか』

中西㐮さんの余次元は物理として意味があるだろうかというPDFを発見した. 超弦理論に批判的な文章をどこかで見たことがある.

読んで動画にしよう.

2015-11-02 変分と最小作用の原理: いろぶつ先生のページ紹介

変分の勉強きちんとしたい. 新規に立ち上げる(予定)の数学・物理コミュニティの宣伝も兼ねた動画教材でその辺の紹介はしていく予定だ. そういう強制力をつけて勉強していく.

2015-11-07 【速報】早稲田の生物物理の木下一彦先生が亡くなったらしい: 一分子生理学で著名

ニュース

少なくとも個人的には衝撃のニュースが飛び込んできたので. 早大・木下一彦教授、滑落死か 南アルプスで遺体発見.

こういう速報, どこまで信じていいのかわからないが, 特にこんな誤報だったら喜んで訂正するので, とりあえず書いておく.

またあまりよくないことではあるが, ネットのニュース, 特に日本の報道関係はすぐリンク切れというか 表示されなくなってしまうのでとりあえず全文引用しておく.

長野県警伊那署は6日、南アルプス小仙丈ケ岳の登山道から約50メートル下の斜面(標高約2600メートル付近)で、早稲田大学理工学術院教授の木下一彦さん(69)=横浜市都筑区茅ケ崎南4丁目=の遺体を発見したと発表した。死因は頭部外傷。署は、木下さんが凍った地面で足を滑らせたとみている。

署によると、木下さんは10月31日に単独で入山。家族に詳しい行程を伝えていなかったという。4日夜、山梨県警南アルプス署に木下さんの妻から「登山に出かけた夫が帰ってこない」と届け出があり、5日から同署員と長野県警ヘリが捜索していた。

木下さんは、分子一つひとつの機能を知る「一分子生理学」という分野の発展に大きく貢献。1990年代半ばに、生命がエネルギー源として利用するATP(アデノシン三リン酸)を作る酵素の分子が回転する様子を、光学顕微鏡で観察することに成功した。

個人的な思い出

個人的な思い出としてはやはり学生時代の記憶だ. あまり直接的なやり取りはなかったが, 早稲田の応物・物理の学生部会の活動の一環で新入生の歓迎的なイベントについていったときの一幕が印象的だった. 特に赴任したばかりの先生はそこで研究紹介したりするのだが, そこで「量子系の先生方には怒られてしまうかもしれませんが, 私にとって電子というのは玉っころみたいなものでして」という言葉が出てきた. 物理学科でこういう言葉が聞けるところに意義がある. 何でもない一言なのだろうとは思うが今でも覚えている一節だ.

ちなみに赴任したばかりの先生がする研究紹介, 新入生にとってはどの先生も「新しい」のであって赴任したばかりの先生に 回るというのもよくわからない風習ではある.

業績とかはあまりよく知らない. Nobel 賞のうわさがどうの, というのもあったらしいが, もちろんそういうのもよく知らない. 詳しい人がどこかでまとめるだろうし, 早稲田の応物・物理からも適当に情報が出るとは思うので, 私が知っている (不確かな) 話を少し.

早稲田の生物物理で石渡信一という先生がいる. この先生も生物物理の重鎮と聞いている (業績 (の重み) がよくわからないので) が, この石渡先生と学生時代からの付き合いらしい. 早稲田に引き抜いたのも石渡先生だとか何とか聞いている.

浅井先生という背の小さい不思議な先生がいたのだが, その後任で来たという記憶があるが, それは高野先生だった気もする.

ロゲルギストとの関係

あとロゲルギストと『理科系の作文技術』で有名な木下是雄先生のご子息だ.

ちょっと調べて見つけたのだが, 2015-07-03 に名大で『講演題目:夢を見させてくださいな。』という講演していたらしい.

とてもつらい.

張り忘れていたので.

番外編: 登山と数学者

2015-11-12 ツイート・講演紹介: 米倉和也「ラグランジアンの無い(かも知れない)場の理論について」

素頓狂な感想だが, こんなところでWightman公理系という単語を見るとは思わなかった.

Lagrangian, いまだによくわかっていないし, 解析力学もいまだによくわからない.

2015-12-17 イベント紹介: 2016-03-07~03-08 第4回統計物理学懇談会のお知らせ, 学習院

今の時点でわかっている講演者も突っ込んでおこう.

講演者  宇田川 将文(学習院大物理)  江澤 雅彦(東大物理工学)  桑原知剛(東大物理)  沙川 貴大(東大物理工学)  田島裕康(理研)  中村 壮伸(東北大 AIMR)  西田 祐介(東工大物理)  畠山 哲央(東大総合文化)  平野 哲文(上智大理工)  森前 智行(群馬大理工)

平日なので行きたくても行けない. つらい.

沙川さんの研究室のページにリンクがあったので 飛んでみたが, 写真, めっちゃフォトショ入っている印象がある.

あと沙川さん, 総合文化だか何かから物工に移ったのか. 沙川さんというと, 「相転移P」と自己紹介して通じることがわかっている. 以前Twitterにいた頃に少しお話したことがある程度なのだが 覚えられていて割と衝撃を受けた記憶がある.

2015-12-21 記事紹介: 佐藤文隆さんとPenroseの対談『われわれはフィジカルな世界をもっともっと知る必要がある』

せっかくなので読んでみた. ペンローズというと, 鴨浩靖さんがいつも『皇帝の新しい心』で(鴨さんの専門である) 計算論についてめちゃくちゃ言っていて, 読者のそこから来る誤解を何度となくとく羽目になって本当に迷惑しているという話をこれまた何度も目にしていて, 非常に印象が悪い.

いくつか気になるところを引用する.

他の例をあげてみると, 例えば, 鉄道もそうですね. 運行システムも駅の構造も, 日本の場合, じつに整然と作られている. 他の国では, プラットフォームと列車の乗車口の高さが違っていたりします.

どこだったか忘れたが, 東京都内でも激しくプラットフォームと列車の乗車口の高さが違っているところとかあった気がするし, プラットフォームと乗車口の幅が広くて落ちてしまいそうなところも時々ある.

物理学をやる場合, アーティスティックな価値に対するある種の感性が必要だというのは, 絶対的に確かです. 物理学, 数学を含めて, あらゆる科学に当てはまるのですが, それらに取り組む際には, 事物/ 事象のアーティスティックな価値に対して鋭敏な感受性をもっていなければなりません. 特に数学はそうですね. アーティスティックな感性がないと, 自分がやっていることが何かわからないという ことになってしまう. 純粋数学の場合には, これは一種の駆動力でもあります. 純粋数学は, いわば純粋数学がもたらす喜び, 主題の美的な質のために, やっているわけですから. しかし, 物理学の場合は少し違う. 物理学の場合は, 世界がどのように機能しているかを見出そうとしているわけですから, 必ずしもアーティスティックな価値が重要になるとは断言できない. まあ, 数学もその点では同じかもしれませんけれど.

「アーティスティックな価値」とか「ある種の感性」とか, 「未定義語」が多くて割と困る. 私は純粋な数学の人間でもなければ純粋な物理の人間でもないので仲間外れ感あって切ない.

佐藤-- 純粋数学の美というのは, 専門家でない人にとっても感得しうるものでしょうか? それとも,それを感知するには特別の訓練が必要なのでしょうか? ペンローズ-- 私としては, 専門の訓練を受けていないと, 理解するのはなかなか難しいだろうと思いますね. 数学においては特にそうです. 数学は一種の奥義と言っていいものですから, あるアスベクトを十全に理解し味わうには, 絶対にエキスバートである必要があります.

いつもつらいところではある. 何とかしたいとは思っているが.

佐藤 -- 純粋数学というのは極端なまでに専門化されている. しかし, 幾何学的な記号や幾何学的な美, 単純さといったものは, 一般の人々にも感得しうるものだ,と. ぺンローズ -- そうです. その点で, いつも大変皮肉だと思うことがあって, よく, 一般の人たちにこれこれの考えを説明してくれと頼まれるのですが, その際, できるだけ図をたくさん使ってくれ, 幾何学的な形で説明してくれと言われます. ところが, 数学を専攻する学生たちは, 幾何学的な捉え方が非常に苦手だという場合が往々にしてあるんですね. 計算をやっているほうがずっと楽らしい. 数学の専門家ですら, 幾何学を十全に理解し味わうのはたいそう難しいという場合が多いのです.

「幾何学的な単純さ」というのがよくわからないし, わかった気になれるだけの話がどれだけ意味があるのかもよくわかっていないが, 「わかった気になれた」錯覚がモチベーションを上げてくれるというのもわかる.

後半のペンローズの話, そもそもうまく図に描けない話もたくさんあるから自然と図から離れていって, そのうち本当によくわからなくなるのだとは思っている.

幾何, やはりもう少しきちんとやらねば駄目か.

重要なのは観念であって, それを表現する手段, 形ではないということですね. 数学ではもちろんそれは真です. よく, 数学は一つの言語であるというふうに言われますが, 私自身はそうは思わない. 確かにいくつかの記号は使うし, 特定のかたちでの操作も行なう. でも, それは本質的なことではない. 厳密にそれをどう書くかということは, まったく重要なことではない. 重要なのは, 基底にある概念です. 要するにあなたは, あらゆるものの基盤に存在するものを抽出されたわけだ. この中国古典の言葉と数学は近いところがあるように思えます.

中略

「松葉杖」という言葉が適切かもしれません. 松葉杖が必要なあいだは, 杖にすがって歩かなくてはならないが, いったん不要になったら. . . . . . . そういうことですね.

松葉杖という例えは面白い.

私はまた, ディラックから量子力学を学びました.

何て羨ましいんだ.

読んで面白かったのはこの辺り. 人によって面白いところは当然違うから興味がある人はぜひ読んでみてほしい.

やはりもう少し幾何はきちんと勉強しないと駄目かと改めて思っている.