2020¶
2020-11-09 続 量子力学の無限井戸問題の取り扱い問題¶
堀田さんの発端ツイート¶
量子力学の無限井戸問題で混乱させるTWがあるようなので、改めて書いておきます。初等教科書の古い取り扱いは物理学の立場では問題です。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
RT 他の可能性あっても「現実的には」初等教科書の取り扱いでおk、そんなにヤバくないというのが私の(というか料理切り額の関数解析やってる人共通の)意見です
次の過去記事で言及した話題に関する話だろう. せっかくなので記録しておく. 堀田さんの量子力学の本, このあたりの話もしているのだろうし, 来年出るという話なので楽しみにしている.
TODO (要移行) 参考: 過去記事¶
- 量子力学の数理: 非有界作用素の和や積の定義と notorious domain problem
- 量子力学の連続スペクトル周辺の話: 田崎さんと全さんのトークまとめプラス私の雑感
- 量子力学教育の現代化に関する適当な考察
ツイート引用¶
量子力学の無限井戸問題で混乱させるTWがあるようなので、改めて書いておきます。初等教科書の古い取り扱いは物理学の立場では問題です。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
RT 他の可能性あっても「現実的には」初等教科書の取り扱いでおk、そんなにヤバくないというのが私の(というか料理切り額の関数解析やってる人共通の)意見です
まず最初に、量子力学の関数解析に対する数学と物理学での価値観の差を書いておきます。 pic.twitter.com/AjxIOvz3IJ
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
数学では、言わば1つ1つの自己共役演算子が主役で、それが作用する状態空間は脇役です。1つの演算子ごとにそれが作用する状態空間を決めています。ですから演算子毎に、それが定義される状態空間は異なっても良いのです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
一方、物理学徒の皆さんはもう実感があると思うのですが、物理学では状態空間が主役で、それに自然に作用できる自己共役作用素が脇役です。1つの共通した状態空間が、そこで意味のある物理量の演算子の集合全体を決めるという順序で考えます。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
この辺, 一応言うだけ言っておくと, 物理の人間が「ハミルトニアンは自己共役たれ」と言ったから, というのが数学サイドの言い分だろうとは思う. これもさらに言えば, 自己共役たれと言ったのは厳密にはフォン・ノイマンであって数学者だ, 物理学者のせいにするなという話でもあるのだろう.
話は少し変わってしまうが, 私のスタンスは完全に数学のサイドのそれだという立場は明らかにした上で, 物理なんなりがこういう「二枚舌」を平然と使ってくる中で「数学者の書く本は気持ちが書かれていなくわかりにくい」とか言われても「お前ら正気か」というのはよく思う. そもそもとしておかしな記述が長く残っていてそれを語り継ぐ種族にとっての気持ちやらわかりやすさやらは何なのか, まずきちんとさせてから数学に文句を言ってほしい.
本題の引用に戻ろう.
では具体的に無限井戸問題を、数学と物理学の立場で考えてみましょう。 pic.twitter.com/Gic8SxYXl6
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
数学の立場では例えばハミルトニアンという1つの演算子を主役にして、それが自己共役になる状態空間は何かと考えます。その結果の1つがΨ(0)=Ψ(a)=0です。数学では稠密性なども考える必要があるのですが、基本的にはこの条件を満たす関数空間でハミルトニアンが自己共役であることが確かめられます。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
しかし物理学の立場で言うと、その状態空間には不満足な点があるのです。単に壁の両側で波動関数が消えるという条件ならば、下記の2次関数はその条件を満たし、物理的な状態を表すはずです。しかし問題が起きます。まずハミルトニアンを2回作用させてみましょう。 pic.twitter.com/Zeg4JPrVfc
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
するとハミルトニアンの2乗の期待値を計算する時に、計算の方法に依存して答えが変わってしまいます。ハミルトニアンを作用させた関数のノルムは非零なのに、それに一致すべきハミルトニアンの2乗の期待値は零のように見えて、物理的に変なわけです。普通の意味でのエルミート性が壊れているわけです。 pic.twitter.com/iZdBC0OLNp
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
しかし数学ではこの点は問題視されません。それはハミルトニアンに対する状態空間とハミルトニアンの2乗に対する状態空間は異なって良いからです。数学者にとって先の変な計算結果は、ハミルトニアンの2乗に対して良い状態空間ではなかったことを意味するだけです。 pic.twitter.com/nd5o6vSuiO
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
数学者はハミルトニアンの2乗という演算子に関して、別個に状態空間を考えます。それは1乗の演算子に比べて厳しい条件で指定されますが、その狭い空間のおかげで2乗演算子も今度は自己共役であることが示されます。 pic.twitter.com/I748bOSiji
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
ところが物理学では、そうはいきません。ハミルトニアンを測定して1つの値を得たら、自動的にハミルトニアンの2乗やハミルトニアンの関数の値も同時に観測されたと解釈するのが、物理学者ですから。 pic.twitter.com/lAZd9HKyx5
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
ここがよくわからないというか, そういうのがどの本・論文にいつどう書いてあったのかという気分がある. そもそもとしてこう考えたい物理の気分もよくわかっていない. 気持ち, どこに書いてあるのだろうか. 実験のセットアップ問題から来ている気分はあるがむしろそれこそ何もわからない.
ですから物理学者の立場では、無限井戸問題の状態空間は古い初等的教科書にあるようなΨ(0)=Ψ(a)=0という条件だけ決まるというのは、やはりおかしいのです。偶数回微分した関数も壁で消えなくてはいけません。Ψ(0)=Ψ(a)=0しか書いていない教科書の内容は、今後書き直される必要があります。 pic.twitter.com/00oiuO1pXo
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
ただし幸いにも、Ψ(0)=Ψ(a)=0だけでなく任意の偶数回微分も消える条件を課しても、無限井戸問題のハミルトニアンの固有関数は古い教科書と同じになります。ですから答えの形の修正はしなくても済みます。 pic.twitter.com/PmzRXNPN2Y
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
超関数の空間あたりで考えるときちんと動くのか, みたいなことは気になる.
また偶数回微分まで消えるよう条件を課した状態空間でのハミルトニアン固有関数の完全性も独自に証明できます。 pic.twitter.com/ouqKLvwhU7
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
それは井戸の幅の倍の長さのリングを考えて、フーリエ級数の定理を使うと示せます。 pic.twitter.com/3urLBZibjs
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
証明の概略は下記のような感じです。 pic.twitter.com/0Y2ZKkle3f
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
ここでの完全性, どの空間で議論しているのかがまずわからない. そもそもとして私は完全性はヒルベルト空間上でしか議論したことがないので, 数学的な感覚が掴めていない. フーリエ解析も正直さほどよくわかっているわけでもない. 何がしたいのかよくわかっていないので, 内積はありつつ完全性だけはうまく動く空間, どこだろうか. どこでどういう収束を考えるといいかもよくわからない.
物理学では状態空間が主役である主な理由は、確率解釈です。区別できる量子状態への遷移確率を計算する状態空間が最初にあり、独立事象の各直交状態に対して物理量の値を割り振るという順序で、物理量演算子は定義されるからです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
ちなみに有限井戸ポテンシャル問題を先に考えて、無限極限をとる方法もありますが、そのときに無限井戸極限でも壁に構造を持たすことができます。 pic.twitter.com/cv98tMy4tO
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
例えば普通の無限井戸問題では固定端であるディリクレ条件を課しますが、壁の構造を調整した無限井戸の場合は、開放端であるノイマン条件の解も許されます。 pic.twitter.com/Lj1r2fsyRU
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
この場合の固有関数はsin関数ではなくcos関数ですが、その固有関数の完全性も、前と同様にフーリエ級数の定理で証明できます。 pic.twitter.com/6rUXGZ0hAv
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
証明という言葉に対する気分が根本的に違うというのは感じる. いつものことではある. 悪い意味での「お気持ち」問題ではあり, 意思疎通を困難にする部分ではある. お互い敬して遠ざけるべきという気分もある.
追記:なお問題を起こしていた先の2次関数は、2階微分が壁で消えないため、ハミルトニアンの2乗の期待値の計算でトラブルを起こしたのですが、それは正しくは状態空間に属さない関数だったという「オチ」になります。 pic.twitter.com/osSxh0BVwN
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
Leipzig さんとの大事そうな質疑応答の記録¶
何にせよここのやりとりで状態の方が大事というのは察した.
先生のツイートを読んで、1つ理解が不十分な点があります。教えて頂ければ幸いです。すべての偶数階微分が境界で消える関数の集合をDで表します。先生の形式では、Dの要素をDの中にうつす演算子のみが無限井戸で意味を持つ演算子、という理解でよろしいでしょうか。
— Leipzig (@Leipzig_math) November 16, 2020
もしそうだとすると、位置演算子はDの要素をDの中にうつすとは限らないので、位置演算子は無限井戸で意味を持たない、という結論になってしまうと思います。これは物理的には問題ないのでしょうか。
— Leipzig (@Leipzig_math) November 16, 2020
「Dの要素をDの中にうつす演算子のみが無限井戸で意味を持つ演算子、という理解でよろしいでしょうか」ええ、その通りです。「位置演算子は無限井戸で意味を持たない」これも普通の座標演算子は意味を持たないということで合っております。しかし位置に相当する別な演算子は作れます。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
普通の位置演算子は波動関数Ψ(x)にxをかける操作です。つまりΦ(x)=xΨ(x)という関数を作りますが、Φ(x)の2階微分はx=0とx=aで一般に消えません。つまりΦ(x)は物理的な状態空間の外に飛び出しています。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
しかしある極限で、井戸の中の位置演算子を意味する別な演算子を作ることができます。それにはまず井戸の中のある位置に局在する波動関数を作る必要があります。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
以前のスレッドのこのページで示した完全性を意味する上式から、その関数は読み取れます。https://t.co/YmC70zNxcS
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
普通の実数空間では粒子がある位置xoに局在する波動関数はδ(x-xo)です。そしてこの関数は物理量の固有関数の位置表示の右辺に出る単位演算子Iの位置表示として得られますよね。<x|I|xo>=δ(x-xo)と言う形で。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
ところが無限井戸での<x|I|xo>は、このページの上式の右辺に現れたデルタ関数の和の差となります。https://t.co/YmC70zNxcS
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
位置xoに局在した波動関数が分かっているので、単純に思うとそれにxを書ければ位置演算子の座標表示が得られるようにも思えますが、これでは普通の位置演算子と同様に状態空間の関数に作用すると、できた関数の2階微分はまた消えません。 pic.twitter.com/u8pSvAU545
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
そこで極限で無限井戸の位置演算子になれるようにします。xの関数であるX(x)を導入して、極限で下記のような性質を持つようにすれば、2階微分は消えます。つまり壁の近くだけでその固有値が変形される位置演算子を考えようということです。物理としてはこれで十分だと思うわけです。 pic.twitter.com/LU9U5mz6Va
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
そこで極限で無限井戸の位置演算子になれるようにします。xの関数であるX(x)を導入して、極限で下記のような性質を持つようにすれば、2階微分は消えます。つまり壁の近くだけでその固有値が変形される位置演算子を考えようということです。物理としてはこれで十分だと思うわけです。 pic.twitter.com/LU9U5mz6Va
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
物理としての量子力学では、実は観測される固有値はさほど重要ではなく、それより完全性と直交性をもつ固有状態の存在が量子測定という視点からは重要なのです。固有状態が測れれば、その名前の付け方としての固有値は便利なものを選択すれば良いのです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
無限井戸でも位置xoに局在した固有関数は定義されているので、各固有関数に対する固有値を適当にとれば、位置演算子はいろいろ作れるということになります。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
お返事をありがとうございます。まずはゆっくり考えてみたいと思います。
— Leipzig (@Leipzig_math) November 16, 2020
ありがとうございます。何かありましたらご連絡ください。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 16, 2020
なおX(x)という関数ですが、x=0からx=aまで単調増加関数で、x=0とx=aでX(x)
の奇数階微分が全部消えるという性質さえあれば、物理屋は困ることがありません。
これ, 何の固有状態を考えているのかがまずよくわからない. 何にせよ空間の設定がよくわかっていない. 来年出るという堀田さんの本, 非常に楽しみにしている.
Yuki Nagai さんとのやりとり¶
輪をかけてよくわからないがとりあえず収集.
やりとりその 1¶
ここでいう物理屋が、自分の想定する物理屋と多分違うんだろうな。ハミルトニアンの二乗の話する前に「本当の境界条件はそのさき全部無限大なのに一つの境界条件にしたからおかしくなった。その解はなし」とすると思う
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
「本当の境界条件はそのさき全部無限大なのに一つの境界条件にしたからおかしくなった。その解はなし」という意味を正確に理解したいのですが、もう少し具体的に説明して頂けると助かります。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
微分方程式を差分化してその差をいくらでも小さくできる素晴らしい計算機があったとして、その場合の境界条件は、井戸の外を考えない、になりますからその先全部無限大ということになります。ただまだ整理ついていません
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
やりとりその 2¶
よくわかってないんだけど、無限井戸型ポテンシャルってそれより先全部無限大みたいなものだから、その境界から微小に外に出た波動関数も0で、それで「はいその解だめ」で終了じゃいけないのだろうか
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
それならば普通の固有関数であるsin(nπx/a)も除外されませんか?x=0でx(x-a)もsin(nπx/a)も大して変わりませんよね。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
確かにそれはそうですね。あれ?
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
全ての微分がゼロだとどんな解もだめになりますね。差分化すればわかりそうです
有限井戸を先に考えて、その束縛状態のみを扱って極限をとるのが自然かとは思います。その場合でもポテンシャルの極限の取り方に自由度があるわけですが。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
数値計算として問題を解いた時にどうやきなおせるかを考えています。数値計算なら井戸の外側を考えないことにするので無限大ポテンシャル考えていることになりますよね。その時にsin関数がオーケーな理由について考えていました
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
数値計算では有限井戸からの解析が良いかなと思っています。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) November 9, 2020
それはわかるのですが、計算機では無限空間を考えられないので、周期境界でなければ、無限大ポテンシャルを考えていることになりますよね。そことの整合性につい
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
考えています。もう少し考えます
ShunSakana さんとのやりとり¶
これもよくわからない.
よくわかってないんだけど、無限井戸型ポテンシャルってそれより先全部無限大みたいなものだから、その境界から微小に外に出た波動関数も0で、それで「はいその解だめ」で終了じゃいけないのだろうか
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
個人的には、境界の外の話より、波動関数の微分可能性の方が気になりましたー
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
その波動関数微分できないけどSchroodinger方程式満たすの??的な。。
微分できない微分方程式の解概念じたいは数学としてはどうとでもなるというかどうにかするから, そこは問題ではないのでは感. むしろそこは物理で気にところなのかというのが衝撃でさえある.
それも気になりますね
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
たぶん微分が可能ではないので、そもそも差分近似が成り立たず、無限井戸型の問題を差分法で「そのまま」解くことはできないんだと思います。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
で、これを無理やり解くために、差分の定義を変えて「井戸の中の閉じた空間だけでの演算を考える」ことにしたのがnagaiさんの考えてる差分法なんだと思います
無限大ポテンシャルがたってる場所は確かに微分定義できませんが、微小にずれた場所では定義できるのでなんとかなりませんかね
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
微小であっても無限井戸側にはみ出した瞬間にハミルトニアンの演算が定義できなくなるので、井戸側に微小でもはみ出した波動関数が定義できなくって、差分で近似できないんだと思います。なんとなく微小という概念が入り込めないシャープな発散があることが問題で差分近似できない気がします。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
うーん、差分近似できないならなぜ数値計算で問題が解けている様に見えるんです?
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
微小に内側にいる点の自分を定義したときに、境界での波動関数がゼロ、とおくことを数値計算でやるわけですが、その場合境界値がゼロしか使ってません。前進差分でも大丈夫なようにするならそこ以降全部ゼロになります
おそらく、nagaiさんのおっしゃる差分法は「普通の微分の差分近似」ではなく「境界の外ではn階の微分すべてがゼロになる差分近似」という感じで「微分」という演算を「今考えている空間だけで閉じた新たな演算」に置き換えた計算をしていることに対応していることになると思います。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
いえいえ、そんなことないですよ。数値計算するときにやりますが、波動関数の値自体をゼロにするだけで定義できます
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
正に、その操作が「普通の微分」の定義を変更して「考えている空間内で閉じた新たな演算」に置き換える操作だと思います。一次元の差分の行列を考えた時に、通常の微分だと考えている領域の外側の情報まで必要ですが、これを「手で落として」新たな演算を再定義することに対応していると思います。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
うーん、よくわかりません。話の最初に戻るのですが、手で落としてるわけでなく、境界条件が外側全部で波動関数ゼロなので、境界条件から自然に定義されます。微分方程式を差分化して解こうとすると、通常の差分の定義をしたあと境界条件代入するだけで出ます
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
例えば、今f(x=0)=0の境界条件を課しているときに、ハミルトニアンHを演算したH*f(x)という関数のx=0での値はどうやって決まっているのでしょうか。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
ここではH*f(x)|_{x=0}=0で定義していると思うのですが、これは微分から来る帰結ではなく、「手で」演算を再定義していると思います。
あー、なるほど!私はx=0でのいかなる演算も考えてません。その隣の点しか考えてなくて、その内側の点の微分演算子に出てくるx=0の波動関数がゼロ、って考えてます。もしx=0を考えたければ、x=0で差分化して、さらに外側ゼロです。極限はそのあと取ります
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
x=0(井戸の端)での演算を考えないとSchrodinger方程式が解けない気がします。。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
無限の井戸だと、井戸の端(x=0)で境界条件を課すと、そこでのハミルトニアンの演算(特に差分近似では)が普通の意味では定義できないので、演算子自体を手でいじってH*f(x)_{x=0}=0と再定義している気がします。。
実際解けてるんですよね。多分極限の順番の問題のように思います。もし世界が離散的な点からできていたとしても問題が起きないようになっている気がしています
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
あ、ぼくが言いたいのは実際に解いてる問題は、上のような感じで演算を再定義したものだということを言いたい感じです。。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
うーん、定義してますかねえ
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
長かったのでこっちに付けたしました。。https://t.co/khU9t7qbhB
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
切り出されたやりとり¶
例えばべき乗法で基底状態を計算するとして、h*f(x)|_{x=0}が定義されていないとべき乗法が破綻してしまいます。これは、暗にh*f(x)|_{x=0}=0を仮定した新たな演算(微分とも差分とも違う)を使っていることに他ならないと思います。。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
なぜ破綻するんです?
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
例えば、h*f(x)という関数を求めた時、h*f(x)|_{x=0}の値が定義されていないと、h*[h*f(x)]が定義できなくなって、べき乗法が破綻しませんか?
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
ハミルトニアンは無限に近く大きい行列から定義されているので常にx=0での値も計算できます。波動関数の方がゼロになっているだけなので。
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
途中からの派生¶
考える極限の順番が逆なんです多分
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
たぶん、そうかもです。僕は、矩形の井戸型を考えているので、そもそも「微小」というのが定義できないと思っているんですが、nagaiさんは何となく井戸の変化に対して「微小」な量を定義できるという前提で話しているのかもですね。。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
そんな気がしていました。。
途中からの派生¶
いえ?非常に多い数Mの差分点からなるベクトルを考え、境界条件でその内N個だけ有限であと全部ゼロとします(境界条件)。次にM次元ハミルトニアンを差分化します。作用させます。べき乗法になります。
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
えっと、ここでのM次元というのは無限の井戸の無限側に足を突っ込んでいて、そもそも演算が定義されていない領域ではないですか?
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
なぜ演算が定義されていないのですか?シュレーディンガー方程式は運動量の項Tとポテンシャルの項Vがあり、運動量の項TがVによって定義できなくなるという意味です?私は一度も「演算が定義されていない場所がある」とは言っていないです
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
なるほど。私は差分化しているからポテンシャル無限大入れているんですよ。だから定義されないことがない
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
わかってきました。「井戸型ポテンシャルの問題を考えてから差分化する」と「シュレーディンガー方程式を差分化してから井戸型ポテンシャルの境界条件を考える」の違いですね
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
なるほどです。ここから、何となく無限の井戸を差分で解くことを考えているのかと思ってしまいました。。https://t.co/bWsKNHTCqi
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 10, 2020
今気がついたのですが私は常に無意識に「先に差分化してから」考えていることがわかりました。
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 10, 2020
途中からの派生¶
何となく、Vが無限大の所では演算が定義されていないと思って話をしていました。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 9, 2020
何となく、f(x)は有限の値を持った発散していない関数の空間を考えていると思うので、Vが発散しているとその空間からはみ出すのでそこでは演算は定義されていないと考えていました。
ふむふむ。そこが違いですね。私は「世界は実は差分化されてるんじゃない?」過激派かもしれません。何より先に舞台を差分化してから条件を入れるので...
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) November 9, 2020
僕はそこまで過激ではありませんが、少なくとも微分不可能だったり発散したりはしてないはずなので、無限井戸など人工的な問題はともかくとして、自然の問題は差分近似できるだろう、くらいで考えています。。
— ★さかな★@唐揚げチーズバーガー?? (@ShunSakana) November 10, 2020
2020-09-28 理論物理学者に市民が数学を教えようの会 第 1 回を終えて¶
理論物理学者に市民が数学を教えようの会 第 1 回¶
先日別の記事でアナウンスしたように, 「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」を立ち上げ, 2020-09-28 に初回を 1.5h 程度やった. (大したことではないが, 数学者が教えるというのでは面白みが全くない企画なので「誰が教えるか」を明示する企画名に微修正した.) これに関して次のような記録・報告をしてもらったので共有しておく.
内容としてはいつも言っていること, または必ずしも無料・オープンとは限らないいろいろなコンテンツで言ってきたことを改めてまとめたにすぎないが, それなりに喜んでもらえたようで何よりだ.
ここで話したこと・今後やっていくことに関して常々言っている傍証として以前のいくつかの連続ツイートを張りつけておく. 「物理学者はまじめに自学科の物理・数学教育をやる気があるのか」と言っているときに意識している話をこの「理論物理学者に市民が数学を教えようの会」でコンテンツとして具体的に整理していく予定なので, もしあなたがこの内容に興味があるなら継続的にチェックしてほしい. 週 1 回メルマガ形式で YouTube にあげたコンテンツに関するアナウンスをしているので, 自発的にチェックするのが面倒ならぜひメルマガに登録してほしい.
物理学科の数学教育に関する連続ツイート集¶
数学の本のわかりづらさ¶
とりわけ物理の人間が勘違いしているのだが、数学科向けの数学の本は適切な水準の数学科の学生に向けて書かれていて、他の誰をも対象にしていない。他学科の身で「わかりづらい」というのはそもそも「お前は対象ではない」事案なので、あるなら物理の人が書いた本を読むか、我慢するしかない。
— 相転移P (@phasetrbot) January 29, 2020
数学科の学生が物理の本なり工学の本を読んでいて「数学的に厳密ではない」と言い出したら「国に帰れ」と言わざるを得ないだろう。「お前のための本ではない」と。それと同じなのでさっさと諦めて欲しい。諦めて読むのをやめるか、数学科の数学とダイレクトに戦うしかない。
— 相転移P (@phasetrbot) January 29, 2020
もちろんいつだって最終手段の専門家,友人との議論と、自分で本を書く手段は残っている。私のような市民ならともかく、大学生ならもう最終手段を取るしか、ほぼ全ての場合に道はない。はやく諦めて本を書け。
— 相転移P (@phasetrbot) January 29, 2020
具体例がほしい問題¶
具体例が欲しいとかいう話、どのくらいの本をどう読んできてどのくらい数学ができてどんな本を読んでいるかがまず真っ先に問題になる。https://t.co/1Zu7Yygtv4 の話。適切な具体例がたくさん書かれていても「抽象的で意味がわからない」となっている可能性がある。 https://t.co/F30mlA9Opm
— 相転移P (@phasetrbot) January 30, 2020
それを読むための基礎体力がないので、諦めて暴力的な基礎体力作りに励むしかない。基礎体力がなければもちろん数学科学生であっても読めない。物理の本でも最低限の計算力を少しずつ鍛えるのであって、いきなり量子力学や電磁波をやると計算量で圧死する。社会は厳しいのでもうどうしようもない。
— 相転移P (@phasetrbot) January 30, 2020
https://t.co/5W6CflAxvE このような具体例が構成されている。「線型空間のテンソル積と本質的に同じなので詳細は省略する」と環や加群のテンソルでやられるし、そこから同値条件だと言って普遍性に飛ばされたりする。「集合と写像という数学の基礎だから」と言われても応用系でやらないから即死もある https://t.co/o1L5PREGAZ
— 相転移P (@phasetrbot) January 30, 2020
数学を勉強するうえで物理なり工学なりへの応用事例が欲しいというの、端的にその専門家の怠慢だし、数学サイドにそんなものは見えるわけもないので専門家をきちんと突っついてほしい。無理に数学関係者にやらせてもピント外れなものにしかならない。
— 相転移P (@phasetrbot) August 12, 2020
こういうことを言う学生なり何なりを見ると、応用サイド、本当に教育をサボり切っているという感覚が強まる。
— 相転移P (@phasetrbot) August 12, 2020
数学と物理と具体例と数理物理: 統計力学を例に¶
統計力学で数学的にまともに解析できているのがスピン系とハバードくらいしかない厳しい事情を考えてもらうと、数学的に具体例を調べるのがどれだけ厳しいか物理の人にも通じるのではないか。そして線型代数と極限くらいしか道具がない世界がある。
— 相転移P (@phasetrbot) August 23, 2020
桂法称さんとか割と恰好いいことをやっている印象あるが、一方で原さんのような微分積分と線型代数と極限だけしか使えないハードアナリシスの修羅・権化のようなスピン系周辺の話もある。スピン系ならまだしも原さんのようなところに興味がある物理または数学関係者がどれだけいるか事案もある。
— 相転移P (@phasetrbot) August 23, 2020
数理物理といった瞬間に数学としても物理としても微妙だが、数理物理という文脈の中ではれっきとした意味を持つ、とかいう微妙な線も出てくるし、私が割とその辺なので、ほとんど誰とも興味関心が噛み合わないことまで織り込んで書いている。
— 相転移P (@phasetrbot) August 23, 2020
勉強するのは楽しくても研究となると本当につらいという気分なので、趣味人以外におすすめできない。
— 相転移P (@phasetrbot) August 23, 2020
数学の「具体例」の抽象性¶
数学で具体例が必要事案、何をもって具体例とみなすかがまず大問題で、多分初めのうちは線型空間に具体例がいるはずなのだが、そのうち別の概念の具体例として(抽象的な)線型空間が出てくるし、初学者にとって抽象的な例がある程度知っている人には手触りのある最高に具体的な例になったりする。
— 相転移P (@phasetrbot) January 29, 2020
当然、多段階で具体例を山ほど知っていることが前提になっている。数学的な段階を吹っ飛ばして本を読むと「この本を読む数学の人間ならこのくらい知っているだろう。そうしないとまともなページ数で本かけない」問題もあり、そこを飛ばしてアタックした他学科の学生は地獄を見るだろう。
— 相転移P (@phasetrbot) January 29, 2020
https://t.co/cGUaWKhHj6 「この証明ではテンソル積の具体的な構成を用いています」(そして現れる、バカでかい線型空間のバカでかい部分空間による商空間)
— MarriageTheorem (@MarriageTheorem) January 29, 2020
2020-09-28 「理論物理学者に数学を教えようの会」の内容や開催にいたる経緯¶
はじめに¶
表題の通りの勉強会というかオンラインセミナーをやろうという話が出ている. とりあえず試しにやってみようという部分もあり, 詳細はともかくやることは決まった感がある. 内部での共有・方向性確認が第 1 の目的だが, 公開することに意義がある内容もあるので, その内容説明・共有やここに至った背景などをいくつか説明したい.
きっかけ¶
先日松尾衛さんからinfinity_topoiさんのMathpedia経由で私のYouTubeを知り, それを微分幾何系の動画を見てみたらいたく気に入ってもらえたそうだ. 勢いで現代数学探険隊のPDFも買って頂けたそうで, それもセットでいたく気に入って頂けたそうで, メールでご連絡を頂いた. そこで少しやりとりして 3 人で何かやれたら面白そうという話になった.
いくつか案はあるのだが, 気楽にはじめられて相互に意味がある話として「理論物理学者に物理を教えてもらう」ような誰でも考える自明な話よりも「理論物理学者に数学を教えよう」の方が異様で面白いだろうという私の提案によってとりあえずこれをやってみようという話になった.
内容案¶
方針¶
基本的には数学をゴリゴリにやるよりも数学を勉強しやすくするための概要を紹介・案内する内容を考えている. 理由はいくつかある.
- ゴリゴリと計算なり議論なり何なりしていく YouTube 講義シリーズは別働隊として作っている.
- 物理的なモチベーションも重視した (解析系の) 数学コンテンツは現代数学探険隊の PDF として用意してある.
- 物理数学的な面に注目して概要を議論した現代数学観光ツアーはかなり無茶な構成になっているのでネタを作りつつ整備して組み直したい.
ちなみに現代数学観光ツアーは A5 で 600 ページあるのでこれだけでも相当持つ. もちろんこれだけでは微妙な点もあるので物理と数学の意識のギャップや, その他あまり触れてきていないテーマなども紹介する.
当面予定している内容¶
現代数学観光ツアーでも多少触れているが, 1 ついい入口になると思うので次のような内容ではじめたい.
- 摂動論の謎
- 物理の摂動論と数学の摂動論の趣とその違い
- 行列レベルで既に難しい: ハバード模型と行列の摂動
- 自由粒子・調和振動子・水素原子と摂動
- 励起状態の処理: 古典電磁場と量子電磁場
- 基底状態の処理: 赤外発散
- ヒルベルト空間論に向かう道
- $\mathbb{R}^n$ と $\ell^2 (\mathbb{N})$
- いろいろな内積と直交関数系
- 直交関数系と弱収束
- いろいろな収束と物理
- LSZ の還元公式と作用素の収束
- 作用素環上での収束
- 超関数論
- 高校数学と直結した地獄
- 極限を取るとすぐに修羅の世界が出てくる
- 極限で出てくる特異点の物理
- 赤外発散: 場の理論での「デルタ関数処理」
- 赤外発散処理といろいろな収束
- 紫外切断の除去と物理の階層性
- 有限温度と絶対零度の特異性
- レゾルベント・グリーン関数とスペクトル
- 以前田崎さんがこの辺で「ぼくの教科書でのスペクトルの定義は近似点スペクトルを使う。これは標準の定義より物理の人に馴染むと思う」とあったが, この辺が気になる.
- 物理の人にとって気分的に把握しやすいのはむしろレゾルベントではないか.
- レゾルベントの積分核をグリーン関数と呼ぶ.
- ある作用素に対してレゾルベントが取れない値の全体がスペクトル.
進め方¶
あとで書く背景の実現という点からするといろいろ思うことはあるが, YouTube で動画を配信する前提があるので当面は松尾さんとの 1:1 オンラインセミナーをし, それをさらに録画配信することを想定している. ある程度素性が知れている (適当な意味で私がその人の人柄を知っている) 人に限定しないと場がめちゃくちゃになるこおを改めて実感した. 松尾さん以外にいるのかどうか知らないが, もし参加希望者がいるとしてもオンラインセミナーにリアルタイムで出席する人は限定したい.
背景¶
Slack でいろいろやりとりをした. クローズドでやっているので全部公開するわけにもいかないが, 私の発言に関してはいくつか抜き出しても問題ないだろう. それをいくつか紹介する.
私の中の 3 つの趣味¶
時々いうのですが, 私は趣味が三通りあって, 物理としての物理, 数学としての数学, 数学にも物理にもならないタイプの数理物理です. 物理は物理としてやれるし, 数学も数学としてやれるのですが, 修士までとはいえ研究対象として興味を持ったのは何かよくわからない数理物理というやつで 難しい数学を使うというより数学の使い方が難しいか, もしくは既存の数学にないので自分で必要な数学を作るという感じの話が好きです. 数学の使い方が難しいというのは収束評価・不等式評価を頑張るとかそういう感じの腕力が大事なやつです. 人の数だけ数理物理があるようで, 物理が元ネタなだけのいわゆる純粋数学というのもよくあります. いいとか悪いとかいう話ではなく. 日本評論社の数理物理シリーズの巻頭言で, Dobrushin の「応用数学を順数学にすること」に対して, 「数理物理学とは物理に用いられた数学を純粋数学にすることだ, といってもよさそうだ」という荒木先生と江沢先生のコメントがあります. この二人はもともと物理で, 荒木先生は RIMS にいたとかいう事情もあってもはや数学の人ですし, その手の趣味嗜好の人はもう少しいます.
数理物理的な趣味と「教える会」でやろうと思う方向性¶
私は早稲田の物理出身で, 早稲田紀光はその出自から学部 1 年で集合・位相必修だったとか, 地理的にご近所の大学の田崎さんの熱力学で Lieb 方面にいったので, あの辺が心のふるさとです.
無料で教えることと有料で教えることに関して¶
プロがそれをやってしまうと「あの高名な人が無料でやってくれるのにお前ご時の実力・指導力で金取るの? 」になりかねないので結構厳しい気分があります. どちらかというと教えるのは価値のあることで, それはきちんとお金をもらえることだ, というお金とのうまい付き合い方みたいなのをきちんとやるべきという気分. いわゆる塾講師などは需要があるわけですが, そういう需要が作れないかという部分が私の問題意識です. 月 20 万でも何とか生活できるはずで, その線にどう載せるかが数年来の問題意識で, 実際何ともなっていないところです. すうがくぶんかなどは需要の掘り起こしなどもやっていると思うのですが, いかんせんリアルで東京の制約があるので, オンラインで頑張るという方向がこれまでの活動です.
これに対して次のような指摘があった.
- 需要をもっときちんと掘り起こし, マーケットを立ち上げる必要がある.
- 理由?
- 数学が何をやっているかを整理した情報がない.
- 学ぶためのカリキュラムとテキストの不在.
- これらがない限りどういったものがあって, 何が自分にとって面白そうか, そして実際にチャレンジしてみて自力では無理そうだから人に頼もう, というところまでたどり着きもしないはず.
これについてはいろいろなコンテンツを準備してはいるが, もっと広告を打つなりして広める必要性は感じている.
- 中高生向け
- 専門的な物理・数学
コンテンツだけではなく, これらのページにも物理・数学の展望を書いているので興味があればぜひ眺めてほしい. これ以外にもメルマガ登録特典として参考文献集+内容紹介リストも配布している. 他にも YouTube でいろいろな動画シリーズを作っている.
- チャンネル登録
- リスト: 数学・物理・プログラミング
- リスト: 解析学入門
- リスト: 応用ヒルベルト空間論
- リスト: 力学
- リスト: 微分幾何とその計算
- リスト: 測度論・積分論入門への入門
- リスト: 線型代数と情報理論 符号理論に出てくる謎の線型空間と位相・距離
- リスト: アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会
- リスト: 物質の安定性
- リスト: 量子測定理論
リアルも大事¶
いまコロナで止まっていますが, 去年から地元レベルのリアルでの実験をしたいと思って実際に地元の区の政治家・行政に働きかけたりもしています.
いまは新型コロナで厳しくなっているが, リアルで密な関係を育むことはとても大事だと思っている. いますぐに動けないからこそいろいろ準備をしている. 例えば中高生向け数学・物理・プログラミングコンテンツや, プログラミング学習でどうしても必要になる英語学習コンテンツを整備している.
あと, さっきの PDF は, ネットはネットで大事ですが, 全国各地, 津々浦々のリアルにそういう相談ができる人がいるべきだと思っていて, そのリアルを育てるための企画という側面があります.
ちょっと話がずれますが, AKB の「会いに行けるアイドル」で「会いに行ける研究者」概念は結構重要で, オンラインではなくリアルで集まるというのに素朴な価値はいまだにあると思っています. 旅行かどうかみたいなのはまた別の話で.
私が観測しているネットビジネス系のオンラインサロンも, むしろオフ会での価値を非常に重視しています. ネットの権化のような人たちなのですが, 一歩踏み込んで深いことをしようと思うとリアルがいるという. よく合宿をやっています.
さっきの PDF でもリアル (地元) を大事にしたのはこの側面があります.
(職業に関する) 知っているか知らないか問題¶
https://twitter.com/rikei_hayanon/status/1305630231772852224専門書という概念をよく知らなかったので探す発想さえないのが問題です.
コンテンツの提供形態¶
メルマガ読者で動画だと自分のペースでやれない, テキストがいい派もいるので, いろいろな勉強の仕方に合わせたコンテンツ提供が大事で, ワンソースマルチユースできる形で作って配布もそうするのがいいのだろうという気分はあります.
コンテンツ販売よりも, コンテンツ自体は無料にしておいて, それを使って勉強会をする方を有料でやる, みたいな形がいいとは思っています. 課金スタイル・金額はいろいろ調整必要と思いますが, 一人でやりたい人は勝手にやって, 一人でつらい人はみんなでやろうという勉強会スタイル.
ネットで情報発信するうえでその道できちんとやれている人の話を聞くのがいいだろうと思い, 世間でいろいろ言われているネットビジネス系の人たちのコンテンツ買ったりセミナーいったりしていろいろ勉強してきたのですが, 一番参考にしている人たちが最近割と「コンテンツ無料, コミュニティ参加で体験・共有に価値を置くスタイルでコミュニティ参加に毎月 2000 円」みたいなことをやっているので, 時代がそういう方向に動いているという気はします.
いわゆるオンラインサロンですが, ああいうのの数学版・物理版・プログラミング版みたいなのはもっといろいろあっていいでしょうと思っています.
詳しくないことはオンラインで相談して, 詳しい人の意見を募る形にすればいいので.
これ, 数学・物理・プログラミング以外だとどんな人に何をどう相談したらいいかわかりませんし, そういうのは大学内部でさえまるでできていないと思うので, アカデミックな知見を持つ人が緩く集う場所を作ろうというのは 1 つあります. Twitter はある意味そんな感じですが.
そこの仕組みを作りたいので, 価値のあるコンテンツは売りましょうスタイルを実験しているという気分です. まだいろいろやる必要があり, 実際にそんなに売れているわけでもないので.
まさにそこも本当にずっと言われていて, 何を軸にして集まるか, 共通言語が何かと言えば提供しているコンテンツで, その理解の深さがそのまま絆になるという話をずっと聞いています.
前, 何かの案内ページに書いたのですが, すでにコンテンツ・書籍を持っている出版社が「本はただで提供する代わりに毎月 2000 円で勉強会に出られるサービス」みたいなのがあれば, サブスク的に継続的な収益の見込みが立つので経営も安定するしニーズもあるしでだいぶいいはずなのですが, そういうのが出ないですね. 一度読んでも忘れるので, 同じ本・内容の勉強会であっても何度も出席する価値が出ます.
勉強会スタイルもいろいろあって, 例えば人それぞれの悩みを持ち寄って, それを話してもらい, 集団コンサルみたいにすることで自分でコンテンツを作らなくてもいいというスタイルが 1 つあります. コンテンツ提供スタイルでは「受講者の状況に合わせて臨機応変にコンテンツを作る」という名のもと, 本のように全部作ったうえで提供するのではなく, 通信講座的に少しずつ提供していくスタイルがあります. これ, プログラミング系では Manning の MEAP というのがあったりもします.
私も今実際に英語のコンテンツについてその内容をもっとよくしたいので教えてくれ形式の勉強会をしていますが, これも勉強しつつ作りつつで進めています.
実際に私が受けた集団コンサルスタイルは, ビジネス系のコミュニティで, 各人各様の問題があるので, それを各人発表していま抱えている課題を主催者がコメントしていくというスタイルです. 数学・物理でいうなら本の輪読みたいな感じだと思っておけば. 各人がこの本を読みたいと言って読んできて, 詰まった部分をよく知っている人が「これはこうで」というようなのをビジネスでやる感じ.
大学の教育方針に対する問題¶
学部どころか大学院でさえもはや博士に行って研究者になる人だけの専売特許ではないのに, それが前提の教育スタイルがいまだに続いているのが問題という話だとおもっています.
他のコンテンツ案¶
まずはふつうにこの辺の話を対談的に話す動画作って, いろいろな意図を紹介していくだけでもそれなりに意義はあるのではないかと思います. 思っていることをきちんと形にするのは大事なので.
あとは勉強会などでも同じなのですが, 「こういうことを考えて実行しているのが一人ではない」というのも結構大事です.
あと, 今パッと思いつきですが, 「現役物理学者から物理を教わろう」ではなく「現役物理学者に数学を教えよう」シリーズみたいなのがあっても面白いとは思います.
どちらかというと学生向けですが, 現代数学観光ツアーで, 物理・量子力学のための関数解析みたいな話をしているので, その辺を改めて整理するついでに何かやるというのは割と手間なくできます. 現代数学観光ツアーと題したコンテンツ, 600 ページくらいあるので.
計算系コンテンツを作る理由¶
理屈が何一つわからなくてもとにかく計算ができるようになれ, というのは私も学部で叩きこまれました. 結果がおかしい場合は物理的に結果が変なのでそこでリジェクトという荒業が使えます.
理屈の理解がガバガバでも物理の数学をやっていけるからくりを紹介・公開するのもいいかもしれないという話も出た.
ガバガバなのも理由があって, きちんと詰めると一気に数学の勉強を超えて研究になるから気にしたくない人は気にするな, 気にしたい人は諦めて数学をしろ, というのもちゃんと悦明した方がいいと思っています.
「こまけぇことはいいから計算しようぜ」というとき, 数学サイドの数学, 物理サイドの物理からも「いや, それは無視しちゃダメな細かいところでしょ」事案があるので, そういうのはきちんとやりたいと思って力学の計算コンテンツを作ったりしています.
物理学者に数学を教えようシリーズは明らかに異様で, かつ私の方はいろいろコンテンツあるので割とすぐに実現できます. 変なことをやっているのがいるなアピールはできるでしょう.
あまりいないタイプの人材っぽい話¶
物理学科の 3 年, 数学科の 3 年くらいの話ですでに両方, 最低限何となくでも埋められる, 少なくとも独学できるという人材自体がレアっぽいので. 大学には多少いても社会にはいないタイプという感じもあります. これに最低限プログラム書けるとなるとさらにレアキャラ度が増すようです. 物理とプログラミング, 数学とプログラミング, 物理と数学ならいても, 3 つそれなりにこなせる人間というのがほとんどいないという.
幾何の勉強がつらい¶
幾何系, とにかくロストテクノロジーというか古い本にしか書いていないのが多くて勉強しづらくてうんざりします.
これがあるから「微分幾何とその計算」と題したシリーズでいろいろ作っている.
ミルナーのモース理論もちょっとした命題が軒並古い論文参照で勘弁してくれと思って途中で放り投げました.
トポロジー回りは本当に魔界ですね. 関数解析とはまた違う趣があります. 関数解析だとまずノルムを入れて収束制御したいところから始まるので.
集合・位相が持つハードル¶
It's greek to me 的に集合・位相による言語の壁が厚い印象があります. 本質的に同かはともかく, 精神的なハードルの高さが尋常ではないという意味で. 「これ, 俺の知ってる数学じゃない」という.
私は集合・位相の壁を学部一年の必修の講義で叩きこまれて楽しんで乗り越えたので, そこが決定的な違いだと思っています. あと, 早稲田の物理の学部一年で物理学研究ゼミナールという説明しづらい講義があるのですが, そこで拡散方程式を解く中でヒルベルト空間やら何やらに触れて, 今から見ればこのセットが勉強・研究の流れを決定づけたので.
学部の教育, 訳が分からないときに必ずしも面白くもない話を一通り叩き込んでくれるので, あとで勉強するときさらっと確認するだけでも相当楽になるのですが, 非専門だとその面白くない話を独学で埋める地獄があってつらい事案がよくあります.
ノルムだと代数・位相の連携によってかなり事情がよくなる気分があるので, 代数が入らない距離で商と位相の相性が悪いのは重要な指摘と思います.
2020-09-21 現代物理での保存則と対称性, 量子情報・測定理論: 堀田さんのツイートまとめ¶
はじめに¶
私はどうももはや数学によりすぎていて, 対称性と保存則に関しても数学色を強めすぎている. 物理学者のコメントを収集しておく目的でまとめる.
ツイートまとめ¶
人類が馴染んできたモノの実在性はそのエネルギーや電荷等の保存則に支えられており、それに基づいた「1つの見方」に過ぎないとも言えます。その保存則の背景には対称性があるというのは現代物理学の基本的理解です。私の中で保存則は、情報処理コードにおける単なる対称性の拘束条件という感覚です。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
物理法則やモノの実在性は、例えある観測者が死んだ後でもあるはずという意見をもらうことがあります。しかし考えてみると、特定の一観測者にとって、それは反証不可能なメタ科学的な問いであるだけでなく、物理学の議論の中だけでも微妙なところもあるわけです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
例えば今の我々の周囲の宇宙はある1つの準安定状態に留まっていて、未来のあるときにトンネル効果で別な状態に遷移することも可能性は否定できないのです。その場合、粒子の質量や電荷の強さなどの素粒子の相互作用に関わる法則は、大きくガラリと変わることもあり得ます。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
トンネル効果, いまだに何なのかまったくわかっていない.
実際ヒッグス粒子の質量の値が従来の予想より大きく出たことで、このような宇宙の相転移やトンネル現象を解析する研究者もいます。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
見えた月が次の瞬間に振り返っても実在し続けることは、応用上問題なく使っていいのですが、基礎的レベルでは非常に疑問です。日常生活レベルでそれは信じられないという実感も理解できるわけですが、かといって「実在性」というものは、それほど強固な基盤を持っているわけでもないという感じです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
モノの実在性ですが、その延長線上で人間の実在性も問えるわけです。量子力学ではある人間が生まれたという1つの歴史も実は観測者依存な概念です。「ある人物が実在した」ということは、量子力学の思考実験としては、ある観測者にとっては正しくても、他の観測者にとっては意味のない内容となります。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
シュレディンガーの猫の思考実験というのがありますが、これは猫がやがて生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせになるという話です。しかしこの初期条件を置く時刻を、その猫が生まれる前の時刻に持っていくこともできますよね。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
親猫からその猫が生まれてくる前の状態を量子的な純粋状態として準備すると、時間発展によって異なる様々な猫が生まれる歴史との線形重ね合わせが生じます。これは外部観測者にとっては確かに事実であり、その異なる歴史の間の干渉効果も、原理的にはその外部観測者は実験で測定することもできます。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
つまりその外部観測者にとっては、「ある特定の猫がその親猫から生まれ、実在していた」と述べることはできません。その猫が実在した歴史もあるし、実在しなかった歴史もあります。そしてその系は量子的な純粋状態として、それらの歴史の重ね合わせにあるからです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
内部観測者を考えれば、その観測者にとって、その猫は実在したか、またはしなかったかのどちらかになります。しかし外部観測者にとっては、その内部観測者の記憶自体も異なる、様々な歴史状態の線形重ね合わせになってます。内部観測者が何を確認したかは、外部観測者にとっては意味がありません。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
仮に人類が生まれる前に外部観測者(宇宙人!?)が地球全体を純粋状態に設定できたとして、その後エネルギーはコヒーレントにしか出入りさせないとしながら、地球の量子状態の純粋性を保つ思考実験をすれば、その外部観測者にとっては、「徳川家康は実在したか?」という問いは意味を持たないのです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
その外部観測者にとっては、家康が実在した歴史の状態も、いない歴史の状態もあり、そして地球系全体の量子純粋状態は、その異なる歴史の状態の線形重ね合わせになってます。また原理的には、その外部観測者は異なる歴史の干渉項も測定できることになります。家康のいる歴史といない歴史の干渉項です。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
この思考実験を考えると、家康の実在性すら、量子力学では危うい概念だと感じて頂けるかもしれません。私たちは家康が生まれた歴史の中を生きていますので、それは確定的であり、実在性の脆さを実感できません。でも我々自体をも量子系として扱う外部観測者にとっては実在性という概念は崩れるのです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
これらの思考実験の結果は、なんら特別変わった量子論での話ではなく、通常のコペンハーゲン解釈を用いた標準的な量子力学の帰結です。モノや人間の実在性は、決して強固な概念ではないのですね。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
このように量子力学は、世界の見方を大きく変える力を持っています。ただこれらの話を知ると、また一知半解で量子力学をオカルトに結びつける方も出てくるかもしれません。量子力学は、どれかのパーツを端折るとすぐに邪道化します。ちゃんと基礎から積み上げて、きちんと理解することが大切です。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) September 21, 2020
雑感¶
純粋状態, まず定義からしてよくわかっていないし, その実用に関してはなおさらわからない. 保存則と対称性の話がどう絡んでくるのかも見えていない. この辺の話, やはりきちんと勉強したい.
2020-09-12 自己共役拡大の物理と教育: 「理論物理学者に数学を教えようの会」でも取り上げたい¶
発端¶
次のツイートによるようだ.
ほぼ全ての量子力学の教科書の無限井戸の解析やばいよという話:https://t.co/aMWc66K5QZ
— Masazumi Honda (@masazumi318) September 12, 2020
・関数解析的に気をつけるべき点を見落とすと、xの多項式になるように重ねた状態に対して、エネルギーのベキの期待値が計算方法に依存する(矛盾
・より一般の無矛盾な境界条件があり、それが物理量に影響する
あとこれ.
前半は田崎さんが日記を書いてた頃に議論してた話https://t.co/1Jd1oAyuxC
— Ryo Suzuki (@suzuki__r) September 13, 2020
後半の Weyl-von Neumann の self-adjoint extension まで議論してるのを見たのは初めて https://t.co/hjGm5Av1D9
まず上でも引用されている, 田崎さんと全さんのやり取りをまとめた記事を記事名つきで引用しておこう.
上記ツイートに全さんが反応した.
いま時間見つけてちゃらと読んでみました。結論言うと、無限壁で量子力学として一般的に許される境界条件であるよく知られた「ロビン」条件を、古典的なフォンノイマン風自己共役拡張法から再導出した、という「だけ」なので、アルヴェベリオ達の教科書「Solvable models ...」に全て載てるやつです。 https://t.co/SChk9VesU4
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
で最後にチャラと書いてある実験的検証ですが、そのような壁を具体的に構成する手順がないとダメで、それは実はすでになされてて Fulop-Tsutsui-Cheon 2002にあります。実際の実験屋さんによる検証が待たれます。
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
技術的にいえばこの論文 https://t.co/nzyIAZw8Tb は、も少し一般的な点状相互作用を同様なフォンノイマン式自己共役拡張であつかったFulop-Tsutusi 2000のサブセットをやった事に相当します。
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
ついでにこれ.
有限壁を普通に高くしていくと必ずディリクレになるので、量子的な無限壁が数学的に非自明であることから「無限壁ヤバい」とする本論文の主張はちょっとアレで、寧ろ「凸凹な壁の特異な無限極限でやばい無限壁も実際に作れますよ」ってのがこの問題の状況の正しい説明だと、私には思えまする https://t.co/SChk9VesU4
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
ふげんしますと、この話をちょっと違ったふうに拡張してったのが、我々のコロナ社の教科書に書いた「量子グラフ理論」なので、興味ある人はそっちも読んでみてください
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
言及されている論文¶
次の論文だ.
For the example of the infinitely deep well potential, we point out some paradoxes which are solved by a careful analysis of what is a truly self-adjoint operator. We then describe the self-adjoint extensions and their spectra for the momentum and the Hamiltonian operators in different physical situations. Some consequences are worked out, which could lead to experimental checks.
私のコメント¶
全さんにリプライを飛ばしたツイートを引用していこう. 自分のツイートだし面倒なので引用はコピペでさぼりつつ編集する.
どこまで扱うかはともかく、境界条件の設定は「物理」なわけで、境界条件に応じて非可算無限個の自己共役作用素がある(新井・江沢の量子力学の構造に1次元区間での例がある)、この現象があるからこそ数学で物理を書けるというのはコメントすべき感があります。
— 相転移P (@phasetrbot) September 17, 2020
どこまで扱うかはともかく、境界条件の設定は「物理」なわけで、境界条件に応じて非可算無限個の自己共役作用素がある(新井・江沢の量子力学の構造に1次元区間での例がある)、この現象があるからこそ数学で物理を書けるというのはコメントすべき感があります。
数学では病的と言われ、物理の人間は興味がなく、数理物理だと(重要性は)自明扱いなのか自己共役拡大の議論でほとんど言及されないっぽいこの話題、かなり好きな問題です。私の知る限りですが、具体的なモデルでの解析は極端に難しく一般論もほぼないようなものなので、物理では気分以上無理でしょう.
これまた私の観測範囲だと、全空間で議論する例が多く、ほとんど本質的に自己共役なクラスで済ませるので、数理物理でも自己共役拡大が多彩な研究事例はほとんどないのではないかと思います。アハロノフ-ボームだとトーラスを抜く関係上境界条件問題が出てその周りで議論があるらしいのは知っています.
谷村さんが非単連結領域上の量子力学といってアハロノフ-ボームをやっている(いた:前に数理科学で見かけた)のもありますが、これは微分幾何との関連みたいな話がメインで自己共役拡大の話はあまり触れられていなさそうな気分があります。
これ, 数理科学での実際の記事タイトルは何だっただろうか. 忘れてしまった.
自己共役拡大が問題になる例、初等的には境界条件が出る有界な量子系かアハロノフ-ボームのようなトポロジカル無効果が出るところかで、前者は井戸のような面白さを主張するのが難しそうな初等的な例、後者は(数学的に)難しくて手に負えないので、あまりいいネタがないように思います。
私の物理はほぼ学部3年で止まっているのでまったくわからないのですが、井戸の問題、あれは学部3年で扱う以上に物理的に何か面白いことあるのでしょうか?
あっまないですね。
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
大して面白くもない問題で語っても「数学の話をしたいなら数学科でしてください」事案になってしまうのでさすがに厳しいと思います。本質的に自己共役なところでしかやったことがないので私もまともな具体例を全然知りません。強いていうなら量子統計の熱力学的極限を取る前の有界系くらいです。
Hirokawa, 2000, Canonical Quantization on a Doubly Connected Space and the Aharonov-Bohm Phase 私が知っているのは廣川先生のこの論文です(院の頃読もうと思って難しく読めなかった)。物理の学部レベルが既にバリバリの研究水準という数学・数理物理あるあるです。ご存知とは思いますが、アハロノフ-ボームの話は新井先生の量子現象の数理でも少し言及があります。
「理論物理学者に数学を教えようの会」をやることになったので、この辺の話も盛り込もう
今ふと思い出したが、非平衡統計で有限系の両端に温度が違う系をつなげた場合に実現する非平衡定常状態にミクロのハミルトニアンがどう影響を及ぼすかみたいな問題設定で自己共役拡大な話関係したりするか?非平衡で上のような設定が実際に論じられているのは知っているが無限スピン鎖だったような。
理論物理学者に数学を教えようの会¶
今度「理論物理学者に数学を教えようの会」をやることになったので適当なタイミングで触れようと思うのですが、何か物理的にいいネタあるでしょうか?さっきの論文くらいですか?
ちとその辺考えて私もまとめてみます。ひまみつけられたら、ですが。
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
多分物理的に興味が持てるのは、単電子トランジスタとかへの応用の考えられる「量子グラフ理論」方面への拡張だと、私の興味からすると、思えます。
— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020
本を買いたいもののお金がない厳しい社会に生きているのでお金に余裕が出たら買って眺めます。
Solvable models in quantum mechanics, 理論物理学者に数学を教えようの会でも取り上げたい. これの紹介記事, 早く書いてまとめて勉強会をスタートさせたい.
2020-08-12 フランクリンの「生まれたての赤ん坊が何の役に立つか、あなた答えられますか?」と科学・技術の倫理¶
はじめに¶
Twitterで時々見かける, 研究者による次のツイートを見た.
研究者各位。
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 12, 2020
「その研究は何の役に立つんだ?」
と問われたら、
「ほお。生まれたての赤ん坊が何の役に立つか、あなた答えられますか?」
こうクールに問い返して、くそカッコ悪い質問をしてしまったと思い知らせましょう♪
source ベンジャミン・フランクリン*役に立たない科学が役に立つ
研究者各位。
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 12, 2020
「その研究は何の役に立つんだ?」
と問われたら、
「ほお。生まれたての赤ん坊が何の役に立つか、あなた答えられますか?」
こうクールに問い返して、くそカッコ悪い質問をしてしまったと思い知らせましょう♪
source ベンジャミン・フランクリン*役に立たない科学が役に立つ
これに連なるツイート群は後半にまとめておくことにして, 次のような引用 RT をしたら少しやりとりが続いたので記録する.
https://t.co/rBUFWUYxYv こういうのよく見るが、物理学者として有名なアインシュタインが原爆を提起していたり、「この赤ん坊がヒトラー・スターリン・毛沢東にならない保証がないので、真っ先に息の根を止める」と返されたらどうするのだろうというのをいつも思う。
— 相転移P (@phasetrbot) August 13, 2020
やりとり¶
「(生まれたとき)すべての人に天国の門を開く鍵が与えられています。ただしその鍵は地獄の門を開くこともできるのです」
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
物理学者 リチャード・ファインマン
(仏教の諺を引用して)https://t.co/npX9LZ59hO
「(生まれたとき)すべての人に天国の門を開く鍵が与えられています。ただしその鍵は地獄の門を開くこともできるのです」
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
物理学者 リチャード・ファインマン
(仏教の諺を引用して)https://t.co/npX9LZ59hO
それをクールな問い返しだと認識しているという理解でいいでしょうか。
— 相転移P (@phasetrbot) August 13, 2020
元の疑問に沿ってお答えすれば、
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
「赤ん坊は生まれたときからヒトラーなのではない。
経験と教育によってヒトラーのようにも、ガンジーのようにもなり得る」ですかね。
その言説、当初のコメントをしてくる人間にどの程度意図通り適切に通じるのか、(個人的な)検証結果はあるのでしょうか。
— 相転移P (@phasetrbot) August 13, 2020
ないです。
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
ぜひ科学教育・科学コミュニケーションのような人たちとも連携しつつ実践してみた結果を発表してもらいたいです。他の研究者の参考になるはずなので。
— 相転移P (@phasetrbot) August 13, 2020
やり取りのあとのツイート¶
https://t.co/EXBuJSS7oN https://t.co/G9evHxBCGZ これ、経験に基づくラッセル=アインシュタイン宣言という方針修正の歴史はあるにせよ、科学者が真っ先に地獄を生み出していて、その後もサリドマイドのような未知の地獄を継続的に生み出している人達がどの程度の覚悟の下での発言したか常に気になる
— 相転移P (@phasetrbot) August 13, 2020
サリドマイドやフロン、役に立ちかつ有害であるという地獄のような存在なので本当にどの程度の覚悟で「クール」とか言えるのか、科学・技術系の倫理みたいな点からどう思っているか、いまだにわからない。
— 相転移P (@phasetrbot) August 13, 2020
こういうの、高校3年の社会で出てきて、同じクラスにいた薬学部に進学しようとしていた友人がどう感じたか、ショックを受けなかったかとか気になったが聞けなかったし今でも聞けない。当時のショックをえぐられる面もあり、この辺の倫理は勉強しなければいけないと思いつつ何もできていない。
— 相転移P (@phasetrbot) August 13, 2020
こうは書いたが, 高校の頃の私でさえ考えたことなので, 科学・技術の倫理では相当の議論の蓄積があるはずだから, いい加減何か勉強した方がいいのだろう. 何かよい本をご存知の方がいればぜひ教えてほしい.
研究者にシンパシーがある人達のツイートまとめ¶
物理学科の学生や物理学者にさえ「数学科の数学が何の役に立つ」とさえ言われるので, 私もこうは言いたいがどの程度受け入れてもらえるのだろうか?
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 12, 2020
1783年にパリで気球の実験を見物していたベンジャミン・フランクリンが、群衆の一人から「あの玩具が何の役に立つのか」と問われ、「赤ん坊が何の役に立つのかね? (What good is a newborn baby?)」と切り返したというのがこの逸話の出発点のようです。 https://t.co/2M17v1G9xF
— Shuuji Kajita (@s_kajita) January 26, 2020
「その研究は何の役に立つ?」に対する別解。
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
これもカッコいい!https://t.co/JUPvFzoKfY
「火山なんか取材して何の役に立つんだ」と色んな人から言われたけど、火山が吹くたびに呼び出されたのは私です。
— 加藤 大和 (@YamatoKato) August 12, 2020
ちなみに尊敬する火山学者は同じ質問に「意味なんかあるか!分からんから研究しとるだけや」と言っていた。
超カッチョいい。 https://t.co/tUU3LJLjfb
まあね、学術研究に対して「何の役に立つ?」と質問すること自体、
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
「私は金儲けにしか興味のない俗物ですぜ、げへへ」と白状しているようなものだと私は思ってる。
こう発言できるその素朴さがとにかく本当にただただ羨ましく, まぶしい.
「株主優先」だの「貧困は自己責任」だの、金儲けにしか興味のない俗物を正当化するロジック*だけ*が社会に幅を利かせるようになっちゃだめだと思うのだ。
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
(補足)
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
「日本の財政は危機的状況だから、目的をもって研究しなきゃならない」
という小理屈も蔓延しているが、財政が危機的状況ってのをまず疑うべき。
自由な学術研究が出来ないほど貧乏な国が、オリンピックを誘致しますか?
(補足)
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
「日本の財政は危機的状況だから、目的をもって研究しなきゃならない」
という小理屈も蔓延しているが、財政が危機的状況ってのをまず疑うべき。
自由な学術研究が出来ないほど貧乏な国が、オリンピックを誘致しますか?
そういう扱いしか受けていないことに対してもっと積極的に行動を起こしてほしい.
シンクロニシティ。
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
良き哉♪https://t.co/cmYS5ECfcS https://t.co/SPrzxV2oTt
「この研究って何か意味があるの?」「何の役に立つの?」
— わったんさん(仮) (@hwataru_tk66) August 13, 2020
と聞かれたときは、「お前は野球とか歌舞伎とか映画とか音楽がこの世に無い方が良いとでも思っているのか?」と答えることにしています。
何か目的のために存在してる訳じゃなくて、人類の知的探究の存在そのものに意義がある、と僕は思う。
芸術とかスポーツみたいな文化って、何かの役に立つかって言われたらそういう訳じゃないけど、人の心をどうしようもなく動かすし、人間にとってなくてはならないものだと思うんです。うまく説明できないけど。学問も同じで、「もっと知りたい」という根源的な欲求に、ある種採算度外視でつき動かされ→
— わったんさん(仮) (@hwataru_tk66) August 13, 2020
どうしようもなく心を動かすから戦争利用もちゃんとできるという部分, 芸術界隈はどう処理しているのだろうか?
天文学の偉い人曰く。https://t.co/0w772lJWPR
— Shuuji Kajita (@s_kajita) August 13, 2020
天文台の大師匠から聞いた答えがこちら
— ラーリン (@Typholin) August 13, 2020
「人類にとって一番の武器が好奇心。好奇心が無ければ人類の発展はなかった。宇宙の研究をやめるということは好奇心を捨てるようなものであり、ライオンが牙を捨てることに等しい。種の存続が危ぶまれる。」 https://t.co/zk1xBZjsLa
気分が落ち込んできたのでこのくらいにしておこう.
2020-03-07 ケットベクトルとは何か--量子系の状態概念の数理¶
Twitterでのコメントをまとめておく. 本題は後半の方.
状態概念¶
ケットベクトルって数学的に問題なく定義するにはどうすればいいんだろ
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) March 7, 2020
ケット自体は単にヒルベルト空間、特に適当なL^2の元で、一般に物理の人がいう |x>やら何やらが超関数でふつうのL^2には入らないのが問題です。数学または数理物理サイドで超関数が必要な時にそのまま超関数を使う人もいます。続
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
作用素環では大まかにいうと波動関数Ψからψ(A)=<Ψ|A|Ψ>として(作用素環の意味での)状態ψを作っていて、量子力学のレベルだと多分それほど大きく変わらないか、むしろ面倒です。場の理論まで行くと発散の処理で色々あって概念操作の上では作用素環が楽です。
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
コメントありがとうございます。デルタ関数がでてきそうなところで厳重な取り扱いが必要そうな感じなんですね
— Yuki Nagai (@cometscome_phys) March 7, 2020
指数関数もフーリエ変換すればデルタ関数なのでデルタ関数といえばデルタ関数ですが、要は普通に物理の人が議論する対象がやたら特異的でとにかくその処理が大変です。e^ikxも箱に閉じ込めておけば普通のL^2関数ですが全空間ではL^2に入らない、というタイプの特異性もあるので。
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
あと状態がらみでいうと、量子統計で密度行列とトレースで平衡状態を書くのがそもそも駄目です。トレースが取れる作用素は固有値(スペクトル)が離散的でなければならず、一方で大抵の連続系のハミルトニアンは連続部分を持つのでその時点で破綻します。
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
(連続系の)量子統計は物理でのスタート地点から数学的に破綻していて、いまだにそれを埋め切れていません。どのくらいひどいかというと、量子統計系のハミルトニアンの自己共役性を示すだけでも論文になるほどろくな議論がありません。
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
場の理論の発散周りの処理でもdressed particle の状態がどこにあるかが割と問題で、モデル依存で色々あることも分かっています。QEDだと居場所自体は素直である(らしい:難しくて論文読めなかった)一方で、フォノンとの相互作用系だと居場所特定自体がつらいとか。スピン-ボソンでさえ難しいです。
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
物理と数学と工学と: 壮絶なコミュニケーションギャップ¶
物理にまつわる数学はまず物理の人が言うことを数学的に意味を通すことが厳しく、意味を通すのがきちんと定義すること・存在を示すことのレベルからしてすでにに厳しい。それで本当に論文になるし、数学的にすでに面白い(と私は思う)ので、
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
物理からすると「数学は何をしているのか」と思うかもしれないが、物理はそのくらい常に数学的に筋が通しにくいことばかり言っている。工学は物理でさえ筋が通らないことをいうので、コミュニケーションギャップは常に厳しく、またげる人材は特殊能力者だが、特に望まれているわけでもない厳しさがある
— 相転移P (@phasetrbot) March 7, 2020
2020-02-21 相対論的量子力学の謎: ディラックの海は必要か¶
Twitterで見かけたので自分の備忘録としてまとめておく.
クラインゴルダン方程式などの相対論的な波動方程式は場の量φの時間に関して2階微分なので、保存則を満たす正定地の確率密度を導入することはできないので、確率解釈ができる波動関数とは解釈できなかったわけです。そこでφを物理的場と解釈し、その量子力学として生まれたのが場の量子論です。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) February 21, 2020
現在多くの物理学科では、古い慣習に従って相対論的量子力学(つまり1体系のディラック方程式)の後に場の量子論を教えてますが、これが量子場と波動関数の概念の混乱を物理学徒に引き起こす原因です。炎上覚悟で言いますが、相対論的量子力学なんか飛ばしてすぐに場の量子論を教えたほうが良いです。 https://t.co/SGVAq4L7Nf
— Masahiro Hotta (@hottaqu) February 21, 2020
歴史的にディラックがどのようにしてディラック方程式にたどり着いたのかは、科学史としては面白いですが、現代に生きる我々が最先端の物理学を学ぼうとするときに、彼や当時の人々の思考を辿って場の量子論に行くつく必要はありません。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) February 21, 2020
ディラック方程式だって、無限に深い負エネルギー準位が出てくるため、その全部が電子で埋まっている「電子の海」を考える必要があります。結局ディラック場は電子の1体系の波動関数なんかではなく、多粒子を記述する物理量演算子としての場です。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) February 21, 2020
ディラック場演算子から定義される消滅演算子aで消える(a|0>=0)と真空状態は定義され、その真空状態に生成演算子をN個かけてN粒子状態|N>を作るわけです。最終的に電子の海なんか必要ありません。そんな迂回路を物理学徒に通らせるから、量子場と波動関数の区別がつかなくなるわけです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) February 21, 2020
物性分野でも、シュレーディンガー場で多体粒子系を記述するわけですが、その場合でも場と波動関数の混同がないように教えているはずです。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) February 21, 2020
あたかも1体系の相対論的量子力学があるように教え始めながら、結局多体系の場の理論になってしまうため、最後にゴミ箱に全部捨てさせてから、場の量子論をまた最初から教えるのは、教わるほうも教えるほうも時間の無駄だと思います。
— Masahiro Hotta (@hottaqu) February 21, 2020
私の感覚からすると, そもそも波動関数が何なのか, もっと言えば物理で何を指しているのかよくわかっていないし, 量子場を何だと思っているのかもよくわかっていない.
数学として波動関数は無限次元の$L^2$の元, 量子場はフォック空間を代表とする, 場の量子論に対するヒルベルト空間上の適当な作用素という認識で, 混同しようがないが, 物理だとどう教育しているのかよくわかっていない.
物理, この手の教育のブラッシュアップがほとんど全くされていない印象がある. 熱力学もたいがいひどい. 他の分野ではどうなのだろう. 統計学が地獄なのはわかっている. 統計学は自分でコンテンツを作る体できちんと勉強したい.